1: 2013/03/19(火) 00:07:40.90 ID:uZd7H3FX0
西住みほ は知らない場所で目を覚ました。

みほ「う…… んっ― ここは?」グラッ

材質が混合土ともセラミックとも知れない白い壁と天井が永遠と続く場所。
そして両サイドの壁には何時の時代ともしれない“扉”が敷き詰められていた。

みほ「―ッッ!!! ……いたい― って血……?」ヅキッ

何気なく頭部にやった手のひらを見ると、自分の血が付着していた。
どうやら目覚めても尚、感覚が今ひとつ掴めないのは頭に怪我を負っているかららしい。

ナンダオマエ? ベトコンドモジャ ナイヨウダガ-ッッ!! ノミコマレ―

みほ「えっ― だれ!?」クルッ

まだ感覚は虚ろであったが背後から確かに人の声が聞こえた。
おそらく日本語ではなかったが、とにかくそちらを見ようと立ち上がり振り返った。
ガールズ&パンツァー 最終章 第4話 (特装限定版) [Blu-ray]

2: 2013/03/19(火) 00:08:41.21 ID:uZd7H3FX0
紫「………。」

みほ「………。」

紫「………。」ピラッ

妙な男がいた。
もちろん直接みたことはないが、ニューヨークのオフィスで働く男性そのまんまが、
この奇妙な空間と同化しているような光景だと、みほ は思った。

みほ「こっ、 こんにちは……」

紫「………次」カッ

みほ「えっ?」

4: 2013/03/19(火) 00:11:15.88 ID:uZd7H3FX0
【Next 20XX  西 住 み ほ】

紫の手には西住みほ のプロフィールが握られていた。
そして彼は入社面接でもしているかのように、
プロフィールとそこに書かれた彼女自身を、メガネの奥から見比べていた。

みほ「えっ!? いやっ― そのここはどこですか…… それにっ―」

紫「…………。」

みほ「みんなは! 大洗― あんこうチームの皆はどこですか!!?」


彼女の記憶ではここに来る直前まであんこうチームの皆と一緒にⅣ号戦車に搭乗していた。
その途中いきなり戦車が大きく揺れ、その時に頭部をぶつけ負傷したのだが、
今はそのことよりも、あんこうチームの安否の確認が先であった。

5: 2013/03/19(火) 00:16:00.03 ID:uZd7H3FX0
紫「………。」チラッ

みほ「―って言っても、 わかりません……よね」シュン

紫「……………。」カッ カカッ

みほ の様子を見ていた紫が彼女のプロフィールに万年筆を走らせる。そして、

【Now 西 住 み ほ】

ズッ―ゾゾゾッ!!

みほ「――えっ?」グニュ

みほ は廊下に並んだ扉の1つに“吸い込まれた”
気づいた時には右腕の半分が向こう側の暗闇に飲み込まれ、
抵抗する暇もなく彼女の姿はこの紫がいる空間から消えた。


紫「…………次」

???「……なんだお前ッッ!? ここは どこだっ バカヤロウ」

7: 2013/03/19(火) 00:18:46.84 ID:uZd7H3FX0
~エルフの森~

みほ「………。」グタッリ

子供エルフ「なんだろう………もしかして―ヒト!?」タタッ

みほ「……いった……い……。」グググ

今のみほ には先ほどのように立ち上がる力は残っていなかった。
怪我の痛みも思いだし、出血も酷くなっていた。

子供エルフ「ケガしているみたい…… でも―」


子供エルフ「この言葉― もしかして漂流物(ドリフ)?」

10: 2013/03/19(火) 00:22:02.97 ID:uZd7H3FX0
子供エルフ「きのうマーシャ兄たちが大きな男のドリフを運んだって言ってたけど……」オドオド

みほ「タスケ……」バタッ

みほ は完全に気を失った。

子供エルフ「た、大変だっ! とりあえず助けてあげないと」

子供エルフ「だけど村に連れて行くわけにはいかなし…… やっぱり―」

11: 2013/03/19(火) 00:24:53.00 ID:uZd7H3FX0
~エルフの森 奥部~

子供エルフ「うんしょ! うんしょ!」グイッ

みほ「………。」グタッ


エルフという種族は、その長い耳と一族一人残らず美形な顔つきで高名だが、
大人の身体能力はさほど人間のそれとは変わらず、
そのため幼少のエルフの体力では、みほ を引きずって運ぶのが精一杯だ。


子供エルフ「おもいよっ! マーシャ兄みたいにカラダが大きければいいんだけど」




???「トマーレ!」ギギッ

子供エルフ「!!!!」

13: 2013/03/19(火) 00:29:01.15 ID:uZd7H3FX0
突如、エルフの後方頭上から声がかけられた。
だがその言葉はエルフらが口にする流暢さはなく、 また言葉とともに弓を引いてる音も微かに聞こえた。


???「何ノ用ダ?」ギギギ

子供エルフ「いやっ― ボクは廃城に―」

???「ソレ以上オ 城に近ヅイタラ―」ギギギ




???「良か まだガキじゃ」スッ

子供エルフ「漂流物――ッッ!!?」オドオド

???「どうやら昨日の俺(オイ)と同んなじようだ」


みほ「……………。」グタァ


???「ここまでソイツを運んでくれて、ありがとうごわった 」ペコッ

子供エルフ「………?」

14: 2013/03/19(火) 00:30:55.30 ID:uZd7H3FX0

――
―――

みほ(………。)

???「ミホ? ナンダ ネチャッタカ……」

みほ(だれかの……せなか?)

まほ「みほ、あんまりダラシない顔してると またお母さんに怒られるよ」ヨイショッ

みほ(ああ…… 子供のころはそんなコトもあったな……)

みほ(たくさん遊んで疲れて―  いつも帰るときはおんぶされて……)

―――
――

16: 2013/03/19(火) 00:33:15.18 ID:uZd7H3FX0
~エルフの森 廃城付近~

みほ「………オネエチャン―」ギュッ

???「――!?」スタッ

???「しかし昨日の貴殿といい、今朝方の少女二人といい―」

???「いきなり日本の者が増え― どうか成されましたか」クルッ

???「背負っているのが女子(おなご)とはいえ、病み上がりの身ではお辛いですか?」

???「いや…… なんでもなか」

18: 2013/03/19(火) 00:37:33.58 ID:uZd7H3FX0
~廃城 内部~

みほ「……うんっ― ここはっ?」パチッ

最初に起きた場所とは大きく違い、石で出来たレンガを積み上げた部屋の中。
しかもだいぶ古びているようであり、その部屋の中を焚き火が照らしていた。

沙織「あっ!? みぽりん が起きたっ! まこぉ~ みぽりん がおきたよー 」

みほ「沙織さん!!」

みほ が目覚めたところに同じあんこうチームの武部沙織が近寄ってきた。

麻子「うるさいぞ 沙織。みほ は怪我してるんだから、まだ無理に起こさない方がいい」

沙織が来た方向から冷泉麻子の声がする。どうやら同じ部屋にはいるようだ。

みほ「麻子さんもっ!!」バッ

21: 2013/03/19(火) 00:41:09.97 ID:uZd7H3FX0
みほ「……良かった、2人が無事で。 他のみんなもっ―


のぶのぶ(むし むし むし むし むし むし むし)

よいちー(むし むし むし むし むし むし むし)

おとよひさ(むし むし むし むし むし むし むし)

みほ「・・・・・。」

部屋を改めて見回すと、みほ は3人のヒトが野鳥の羽を懸命にムシる姿を目にした。

22: 2013/03/19(火) 00:44:51.45 ID:uZd7H3FX0
与一「おや? 目が覚めましたか 重畳重畳」ムシムシ

3人の中でおそらく1番若く、またエルフのように美形な人が みほ を気遣った。
だが鳥をむしる手は止めてはいない。


信長「おい、お武! お前らの頭(かしら)はまだ寝てていいが お前はコレを毟れい」ヒョイ

信長「自分のメシくらい自分で用意せんか」ムシムシ

眼帯を付けた長髪の男が、まだ首を折ったばかり鳥を沙織に向ける。

沙織「やだもー! ゴハンするからって 可愛いトリさんを頃しちゃうなんてー」フルフル

沙織「―あとその“おたけ”って呼び方 可愛いくないよ。 ノブノブー」ビシッ

信長「うるさいわッ! お前こそ俺のことは“信長様”と呼べいっ!」ムシムシ


みほ「・・・・・・。」

23: 2013/03/19(火) 00:48:20.69 ID:uZd7H3FX0
信長「それに見ろ お前の連れを。 黙って毟っとるぞ」

麻子「・・・・。」ムシムシ

与一「おや? そなたは羽を 毟るのが達者ですな。」ムシムシ

麻子「ばっちゃんがむかし鶏を飼っていたからな。 よく潰すのを手伝わされた。」ムシムシ

与一「それは、結構結構。」ウフフ


みほ「・・・・・・。」

豊久「なんだ寝んのか? 寝んのなら先に焼いた肉があるが・・・ 喰うか?」ナマヤケー

みほ「・・・・寝ます。」(レイプ目)


みほ はそのまま床に横たわり2時間ねむった…
そして……目を覚ましてからしばらくして
現実は非常であることを知り………泣いた…

25: 2013/03/19(火) 00:51:29.46 ID:uZd7H3FX0
~廃城外 森林部~

みほ たちの喧騒を双眼鏡片手に監視している者がいた。

オルミーヌ「なに話いるんだろう? さすがにこの距離だとなあ」ガチャ

通信水晶「セム 応答しろ セム どんな感じだ 補足したか」

オルミーヌ「はいはい たしかに漂流物5人確認しましたが……」

オルミーヌ「どうやらもう一人増えたようです。 昨夜と同じ“少女”です。」

通信水晶「なんだと? 武士の次は少女と一体どういう組み合わせなんだ―」

オルミーヌ「たしかにお似合いって感じではないですけど……」

オルミーヌ「しかし漂流物6人もろとも ひとかたまりにいます― 信じられない」

27: 2013/03/19(火) 00:56:03.37 ID:uZd7H3FX0
~カルネアデス王国 / 砂漠地帯~

通信水晶「そっちの方はどうだ ハム」

カフェト「はい こちらハム」

カフェト「こちらの方は、仰っしゃった通り 2人補足」

カフェト「こちらの漂流物は どうも老人2人の様ですが……」

カフェト「大喧嘩の真最中です。」



ハンニバル「パクリじゃあーッ パクリじゃあ!!」

ハンニバル「なんでここにパクリ野郎があーーッ」クワッ

スキピオ「パクってなどおらんわっ!! それを言うなら貴様こそだっ」

スキピオ「勝った者が正義なのだっ」ゴゴゴゴ

ハンニバル「うるしぇええーーッ パクったろてんめえーッ!」

ハンニバル「ワシのカンナェのパクリじゃあーッ」ゴゴゴゴ

28: 2013/03/19(火) 00:59:11.48 ID:uZd7H3FX0
ナニヲイウカー コノジジイメ! ジャアカッテミセロヨ 
ムギイイイッ ナニソノチョウセンミン ポイイイグサッ


カフェト「いかがいたしましょうか。 大師匠さ―???」ガタッ

通信水晶「はぁ……止め―」



???「止めてくださいっ! こんな砂漠の真ん中で喧嘩なんて」ガシッ

スキピオ「おおっ!? 誰だ、この少女は?」

ハンニバル「なんじゃ どこぞのガキッッ― ゴホッ ゴホッ」クタッ

ハンニバル「ぜぇ…… ぜぇ…… パクリ野郎を説教してたら疲れた……」ゼェゼェ


???「お、おじいさん 大丈夫ですか。 これ、お水です。」

ハンニバル「なんじゃ ガキはもう一人おったのか…… しかし、なにを言っておる?」

29: 2013/03/19(火) 01:02:41.36 ID:uZd7H3FX0
~十月機関 本部~

晴明「おいハムッ! 今、日の本の言葉が聞こえたが……!?」

通信水晶「こちら ハム! どうやらセムの方に現れた日の本少女たちが、こちらにもいました!」

通信水晶「老人と同じ2人いるようです…… あの感じだと廃棄物には見えないが―」

晴明「この数日で侍3人に、老人2人…… そして少女が5人か―」

晴明「どちらにしろ保護を頼むぞ、 ハム」

通信水晶「はい! わかりました!!」

32: 2013/03/19(火) 01:09:19.57 ID:uZd7H3FX0
晴明「黒王の南征といい 少女といい…… なんなんだ?」


通信水晶「こちら セム すみません、先ほどの連絡で聞こうと思っていたのですが―」

通信水晶「私が廃城の外に見つけた“アレ”― そちらの方でもわかりましたか?」

晴明「ああ。最初に話しを聞いた時は眉唾ものだったが―」

晴明「お前の言う通り、帝国図書館の奥の奥にその手に関した書物があるようだ……」

晴明「しかしどうして お前がその名を知っていた セム― まさかっ!?」

通信水晶「いや 盗ってませんよ! ただ趣味でちょこっと覗いただけで……」オドオド

晴明「はぁ…… まぁ上に知らせる気はないが 本当なんだろうな―」

晴明「その“ぱんつぁー”という空想兵器を少女たちが所有しているというのは?」

34: 2013/03/19(火) 01:14:08.85 ID:uZd7H3FX0
通信水晶「間違いありませんっ! 森に隠してあったパンツァーをはっきりこの目で見ましたし―」

通信水晶「パンツァーにあったエンブレムは、 少女たちの制服のものと同じですし」

通信水晶「漂流物の少女たちのモノで間違いないかと……」

晴明「わかった。こちらでももう少し調べておく―」




晴明「―オルテ大帝国図書館書庫最深部、超A級秘蔵書物 『国父手稿』」

晴明「そこに書かれているという兵器“パンツァー”」

晴明「そんな代物を少女たちが扱えるというのか……?」

37: 2013/03/19(火) 01:18:25.62 ID:uZd7H3FX0
~数時間後 廃城~

沙織「とにかく みぽりん が無事でよかったよー」ダキー

みほ「それは私も同じです。 2人とも無事でいてくれたようで……」

麻子「まぁな。 私たちは昨夜ここ(廃城)に来たんだ。」

沙織と麻子は、みほ がこの世界に来る1日前に共に紫によって飛ばされ、
この廃城の住人たちと出会っていたのだ。

麻子「それに みほ と違って大した怪我はなかったし……」

麻子「頭の傷はどうだ? 与一が手厚く見てくれたから大丈夫だとは思うが。」

みほ「あっ、はい。 だいぶ痛みは引きました― って“与一”って?」

39: 2013/03/19(火) 01:23:04.65 ID:uZd7H3FX0
与一「私(わたくし)で御座います、大洗の大将―」スタスタ

与一「 那須資隆与一 と申します。」

与一「冷泉殿の話だと私は、貴方(あなた)様のいた時代から千年も前の人間らしいですが…… 」


みほ「那須って……」

沙織「みぽりん 知ってる? わたしは初めて聞いたけど」クルッ

麻子「沙織が知らなすぎるんだよ。 平家物語だぞ」

41: 2013/03/19(火) 01:25:00.44 ID:uZd7H3FX0
みほ「失礼ですけど…… ホンモノですか?」

与一「貴方様はどう思われても構いません―」

与一「私は私でございますれば……」


麻子「少なくとも 私は信じてるぞ」

麻子「みほ が寝ている間に、与一とさっき食べた鳥を狩りに行ったんだが……」

麻子「とても私たちの時代の人間には、真似できるとは思えない」

与一「ははは、お褒めの言葉ありがたい 冷泉殿」

麻子「……麻子でいいぞ 与一。 “殿”付で呼ばれるのは一人だけでいい」

42: 2013/03/19(火) 01:27:11.40 ID:uZd7H3FX0
信長「にゃ~ たしかに俺もコイツの弓みてから信じたのぉ」

沙織「ノブノブも麻子とおなじなのー?」

みほ「……のぶのぶ?」

沙織「あっ! さすがに みぽりんは知ってるよねー ノブノブのこと」

信長「だからその呼び方やめろっ 気が抜けてしゃーないわ 」

沙織「だったら みぽりん にも見せてよ。昨日やったギャグ」バシバシ

信長「ぎゃぐ? ああ、口上のことか」フフッ

豊久「アンタ またそれやるんか?」

信長「もちろん」キッパリ

豊久「そうか 強いんだのう さすが元傾奇者 」

43: 2013/03/19(火) 01:29:39.75 ID:uZd7H3FX0
信長は片足を石段にかけ、マントを羽織って高々と口上を述べる。

信長(魔)「天上天下の世を“布武”によって蹂躙しッッ」

信長(魔)「良し悪し共に懐中で弄ぶ“第六天魔王”とは―」

信長(魔)「織田信長っ!! まさに我のことなりィィィ!!」

沙織「キャハハハッー マジオモシローイ 」パチパチパチ



みほ「・・・・・。」

麻子「ちなみにコイツもホンモノだと思うぞ」

豊久「信長め こいつらから先の世で“偉人”として慕われると知ってから 天狗になりよって」

与一「いや 武部殿の反応を見るに只の“うつけ”としか見られてないような」

44: 2013/03/19(火) 01:31:26.34 ID:uZd7H3FX0
麻子「そして みほ を廃城まで担いできたのが……」

麻子「 えっと…… なんだっけ?」

豊久「なんで オイだけ忘れるんだっ!!」ガタッ


信長「なんせ日本(ひのもと)の魔境の端の田舎モノだからな~」

与一「鎮西よりも向こう側というのがなんとも」

沙織「“シマズ”って教科書に出てきたー?」ナニコレー


豊久「やっぱり 全 員 殺 ス !」ガチャ

45: 2013/03/19(火) 01:33:32.98 ID:uZd7H3FX0
みほ「島津の人…… なんですか?」

豊久「む!!」クルッ

麻子「みほ は豊久の事を知っているのか」

みほ「少しだけですけど…… 豊久さん― ですか?」


豊久「ああ、俺(オイ)の名は 島津 豊久―」 

豊久「島津家久が子 そして伯父は島津17代目当主 島津義弘―」

豊久「どうだ!? オイのこと知とるか?」クワッ


みほ「………正直、先のお二人ほどは、その―」

与一「高名ではないと?」

信長「ガハハ! 残念だったの田舎の戦闘民族」

豊久「糞がっ やはり直政の首をとっておくべきだったか!!」

46: 2013/03/19(火) 01:35:16.08 ID:uZd7H3FX0
みほ「で、でも私は知ってますよっ」アセアセ


みほ「たしか…… 関ヶ原の『島津の退き口』で活躍してましたよね?」

豊久「おお、そうだっ! ここに来る前にちょうどその退き口で戦っていた」

豊久「そしたら、コイツらと同じく妙な通路で“あの男”に会ってな―」

豊久「気づいたら この廃城に居たってわけだ……」


信長「俺も与一もだいたい同じようなもんじゃな」

みほ(あの男って あの白い廊下であった外人の人のことかな?)

48: 2013/03/19(火) 01:37:25.16 ID:uZd7H3FX0
沙織「ねぇ~ みぽりん」

みほ「なんですか?」

沙織「その~ みぽりん達が言ってる“ノキグチ”ってなに?

沙織「“セキガハラ”は聞いたことあるけどっ」

麻子「聞いたことあるレベルだと困るんだが 沙織……」

みほ「“島津の退き口”って言うのはですね―」



以下、原作『ドリフターズ』の1巻冒頭説明

49: 2013/03/19(火) 01:38:23.93 ID:uZd7H3FX0
「島津の退き口」とは慶長5年(1600年)、
天下分け目の戦いとも言われる“関ヶ原の戦い”の最中において、
大将:義弘率いる島津軍が起こした退却劇の事である。

島津軍は石田三成を頭にした西軍についていたが、
東軍の快進により西軍は敗北へと追いやられる。
島津軍も例外ではなく、戦力差故に東軍に降伏及び寝返るしか生き残る手立てはなかった。

だが義弘が出した決断は、

「敵陣へ突っ込み、そのまま薩摩へ退却する。」

という誰も予想だにしない行動に躍り出たのだ。
その時の兵力差は島津300対東軍800000 
だが義弘の判断に異論を唱えるものはいなかった。

島津軍は進撃を開始し、東軍の中心である徳川本陣まで接近、
そのまま退却路である伊勢路へとすり抜ける。

50: 2013/03/19(火) 01:39:25.88 ID:uZd7H3FX0
みほ「ですが東軍徳川は、その退却を黙って見過ごすわけもなく―」

みほ「軍監:井伊直政を中心に、逃亡する島津に追軍を派遣します」

みほ「これに対し島津の兵は義弘を逃すために『捨て奸』……

みほ「つまり退却の途中でわざといくつか兵を道中に残し盾となって、追軍を止めたのです。」

みほ「―言葉そのままに“必氏”で」

51: 2013/03/19(火) 01:40:05.05 ID:uZd7H3FX0
麻子「つまり大将を逃すために足止め役を買って出たのが、豊久ってことか」

信長「やっぱりやることが 馬鹿(うつけ)じゃの 田舎者は」ヘッ

豊久「なんだと 信長っ」

豊久「本能寺を燃やされときなんか 誰一人としてお前を庇うなりせんかったろ」

信長「はっ!! 天魔王とは兵(ヒト)に嫌われてなんぼよっ」カカッ

豊久「お前のような外道は 義弘(おじ上)の爪の垢でも飲んどけっ!」

52: 2013/03/19(火) 01:40:56.41 ID:uZd7H3FX0
沙織「ふぅ~ん。 なんだがトヨトヨの話聞いてると プラウダ戦を思い出すねぇ~」

みほ「たしかに ちょっと状況が似てるかもしれませんね」

麻子「あの時は豊久たちのように プラウダの戦力が1番厚いところに突撃して―

麻子「なんとか包囲網を抜けだしたんだったな」

沙織「プラウダの戦車は大洗(私たち)よりも良いヤツばっかで たっくさん戦車いたけど―」

沙織「みんなでフラッグ車の盾になって必氏で守ったもんねっ」ビシッ

信長(ほぉ~ ここに来る奴は日本(ヒノモト)の侍ばかりで―)

信長(コイツらはなんかの間違いで来たのかと思ったが…… なるほどなぁ~)ニヤッ

53: 2013/03/19(火) 01:42:00.91 ID:uZd7H3FX0
豊久「とにかく 俺(おい)のことを知らせてくれて―」

豊久「 ありがとうごわった 」

みほ「そんな とんでもないです」フルフル

みほ「それに私の方こそ、森で助けて貰ったみたいで― ええっと……」オドオド

豊久「 “豊久”で良か 大洗の大将― 叔父上も兵もそう呼んでいた」

豊久「それで― お前(おまんさあ)はたしか……」

みほ「あっ  まだ名前を言ってませんでしたね」

みほ「私は 西住みほと言います。 みんなと同じで下の名前で呼んで下さい」ペコッ


みほ「あと実家は熊本― 薩摩の隣の肥後国にあります」

豊久「おおっ!! 肥後の生まれなのかっ」

豊久「こんなところで 九州のもんに会えるとは驚いたっ」

55: 2013/03/19(火) 01:42:46.66 ID:uZd7H3FX0
沙織「そっかー みぽりんって九州から大洗に引っ越してきたんだったねー」ポンッ

信長「なんだ。 やけにアイツら話が合うと思ったら はじっこ同士か 」ヤレヤレ

麻子「優花里が居たら“ねぇ今どんな気持ち?”って聞いてみたいな……」

沙織「えっ なんでー??」クルッ

56: 2013/03/19(火) 01:43:42.40 ID:uZd7H3FX0
みほ「あっ! そう言えば助けて貰ったお礼がまだでした」オドオド

豊久「別に良か、 さっきの退き口の知らせで十分だ」

豊久「それに 初めにお前さを助けたのは― 」


――ぞぶっ!!


みほ「―えっ!?」クルッ

豊久・信長「「―っっ!!?」」ガバッ

沙織「えっ!? 3人とも急にどうしたの?」

麻子「ん!? 与一……」

与一「 気がつかれたか。 」クルッ

58: 2013/03/19(火) 01:45:04.42 ID:uZd7H3FX0
与一「 気がつかれたか。 」クルッ

与一は5人が談笑している中でひとり古城の窓際に立ち、外の様子を伺っていた。
その与一がいる窓辺に信長と豊久、そして みほ が近寄る。

豊久「何だ この“におい”」ヒクッ

信長「合戦のにおいか……」

みほ「たしかに戦車に乗ってる時みたいに鉄と土と…… あれはっ!?」ズザッ

信長・豊久「「―!!?」」ズザッ


麻子「あれは……ケムリ―」

沙織「なになに火事?」ソワソワ

59: 2013/03/19(火) 01:45:56.29 ID:uZd7H3FX0
信長「いや 野盗か 野伏せりか…… おそわれておるの」

信長「森の向こうに 住む妙な連中の村だ」

信長「おみゃら(豊久とみほ)を助けた 耳の長い『えるふ』という―」


みほ(『エルフ』………あっ!?)

( 子供エルフ『……助けてあげないと!!』)

みほ(たしかにあの時……)


豊久「―っ!!」ドッ

みほ「豊久さんっ!」ガタッ

信長「待てぇい!! 行く気かっ!?」

61: 2013/03/19(火) 01:47:30.29 ID:uZd7H3FX0
外にかけて行ったまま豊久は答えた。

豊久「ここがどこでどうなっているか 何も知らん― 」

豊久「こいが夢か現実(うつつ)か何もわからん!!」

豊久「だったら俺は みほ が話した関ヶ原と同じ― 突っ走る事しか知らん!!」ザザザッ

豊久は城を抜け、満月が照らす森を駆けて走っていった。

みほ「………豊久さん」

62: 2013/03/19(火) 01:48:17.97 ID:uZd7H3FX0
信長「………うつけ(あほ)じゃ あいつは― 昨日まで氏にかけておったのに」

みほ「本当ですか!?」

麻子「ああ、昨日は丸一日寝ていた―」

麻子「みほ が話した通り、 島津の退き口というのは本当に必氏だったんだな……」



信長「あいつは鉄砲玉かなんかかな― だが……」ニタッ

与一「………ふっ―」ガタッ

信長と与一は各々の武器をとり、豊久の後を追った。

63: 2013/03/19(火) 01:50:46.94 ID:uZd7H3FX0
沙織「ちょっと どこ行くのノブノブ―!? 」ガタッ

信長「なぁーに ちょっと“とる”だけだ。 お武はそこで待っとれ」ダッ

沙織「………とる?? 」

麻子「どうやら本当に本物の侍みたいだな…… 国奪りなんて―」



みほ「―っ!!」ダッ

沙織「―って、みぽりんも行くの!?」

麻子「村は危険だぞ、絶対に!」

みほ「危険だから行くんですよっ」

みほ「だって、 あの村にはたぶん 私を助けてくれた あの子が……」

みほ「―それに……」ギュッ

沙織「わかったよ みぽりんっ! だったらさぁ!」スッ

麻子「そうだな。 今日は3人だが“いつもの”で行こう」スッ


みほ「えっ………!?」

64: 2013/03/19(火) 01:51:39.81 ID:uZd7H3FX0
~エルフの森/ 村付近~

豊久「遅い 遅いぞ信長っ どうした第六天魔王っ」ダダダッ

信長「う゛る゛せ゛え゛! こちとら もう五十路なんだよボケっ!!」ダダッ

与一「……豊久殿 おいくつ?」ズパッ

豊久「 30 」

与一「……ニヤッ」←19

豊久「何だぁ そん勝ち誇った面ァ!!」

与一「にひひひっ」ダダダダッ!

豊久「こいつ先に行きよって!」ダダダッ

信長「うぉっ!? 50ったのに俺を置いて行く気か?  畜生」ゼェゼェ

65: 2013/03/19(火) 01:53:33.91 ID:uZd7H3FX0
…………ゴゴゴゴゴ


信長「………本気で先に行きやがった」ポツ~ン


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


信長「人生50とは言うが、老いたくないのぉ― ってなんじゃ?」

信長「さっきから聞こえる妙な地響きはっ……」クルッ


沙織「あっ! お~い ノブノブー」ゴゴゴゴゴ

信長「」ポカ~ン

沙織「一緒にのる~? 走るより楽ちんだよ~」ゴゴゴゴゴ


信長「ククククッ……… あははははははっ!!! 」

信長「人生50じゃと!? 生きのびておれば面白いことばかりじゃ!!」

66: 2013/03/19(火) 01:55:24.01 ID:uZd7H3FX0
~エルフの森/出口付近 ~

―ゴゴゴゴゴ

与一(―うん?! なにやら後方から異様な気配が…… )クルッ

与一「」ポカ-ン


豊久「いたぞっ! 耳が長い奴― 2人っ」ダダダッ

マーシャ「luuu…… (ハッ……ハッ…… たす―)」ヨタヨタ

豊久は目の先に見える暗闇の森の出口付近で、
命辛々逃げてきであろう、2人のエルフの子供を見つけた。だが、

占領兵「…………。」ドドドド

その小さな背中を黒馬に乗った兵士たちが狙っていた。
兵の手に触れるまで、もう数秒もない距離である。

68: 2013/03/19(火) 01:56:52.33 ID:uZd7H3FX0
豊久(間に合わんっ! こうなったら…!)ギュッ


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


みほ「豊久さんっ  ここは任せてくださいっ!」ゴゴゴゴ

豊久「なにっ!?」クルッ

豊久はみほ の声で振り返った。400年前の侍がそこで目にしたのは、
その身よりも遥かに大きい鉄の固まりを、少女が悠々と乗りこなす姿であった。


豊久「なっ、 なんだこいつはっ!!?」

信長「フハハハハハハハッ ! これが第六天魔王の真なる馬よっ!」ガシャ

Ⅳ号戦車の砲塔の横に腰掛けた信長が、己の火縄銃を発砲した。

69: 2013/03/19(火) 01:57:34.93 ID:uZd7H3FX0
占領兵「―ッッ!!」グラッ

火縄銃の鉛球は見事に兵士の兜をぶち抜き、前頭を吹き飛ばす。

占領兵「――っ!!」ズサッ

後に続いていた兵士はその思いもよらぬ攻撃に、エルフ追討の手を止める。

400年も先で登場した兵器にあっけに取られていた豊久であったが、
眼前の敵の動揺を逃すほど、腑抜けではなかった。

豊久「よう小僧ども」ギュリッ

マーシャ・マルク「「…………!!」」

70: 2013/03/19(火) 01:58:18.21 ID:uZd7H3FX0
呆然としている2人のエルフの上を飛び越え、豊久は背から野太刀を振り下ろす。
刀が地上付近まで下ろされた時には、目の前の兵士は上と下、2つに分かれていた。

占領兵「―ッッ!!」スチャ

最後尾にいた兵はその圧倒的な攻撃に対し、剣を盾にして己が身を守るしかなかった。
豊久はその剣に構わず上段から刀をぶつける。


豊久 「首 置いてけ!! 首置いてけっ! なあ!!」

71: 2013/03/19(火) 01:59:33.88 ID:uZd7H3FX0
占領兵「A manna ad roe!! Dirts ref !!(な… 何だ おまえら……ッ!! 漂流者かッ!!) 」ガチガチ

豊久「わがんねぇよぅ 何言ってんのか さっぱりわがらねぇ」ガチャガチャ

豊久「日本語(ひのもとことば)しゃべれよう しゃべれねぇんなら―」


豊久「氏ねよ」


兵が最後に見たのは、己の剣が豊久の刀によって切断されるところだった。
豊久、今宵二人目の首をとる。

みほ「―― あれが示現流……」ゴゴゴ

示現流 それは豊久が見せた一撃必殺の剣技のことである。
みほ は目の前で披露された薩摩の剣術を見聞きはしていたが、
実戦で活用された場面を見たのは、当然初めてである。

73: 2013/03/19(火) 02:00:22.16 ID:uZd7H3FX0
マーシャ「aruru…(あわわ…)」ガタガタ

マルク「duee(ひぃぃ……)」ガタガタ


助けられた2人のエルフ少年、マーシャとマルク
彼らは昨日、この豊久が瀕氏になっているところを助けたのであった。


豊久「……おかしな耳だの」

マーシャ「―ッ!」ゴクリッ

豊久「お前らが 俺(オイ)を助けてくれんだろ。 今度は俺の番じゃな」

マーシャ「………。」


信長「そやつらはいいのか― 」

豊久「!!」

74: 2013/03/19(火) 02:01:10.88 ID:uZd7H3FX0
信長(魔)「そやつらも日の本語なんかしゃべれんぞう? “氏ね”じゃないのかなにゃ―」ザワザワ

豊久「・・・・・。」アセアセ

豊久「……タスケテー ほらっ! くりかえせっ!『タスケテー タスケテー』」

マーシャ・マルク「「? ? ?」」オドオド


豊久「タスケテー タスケテー ほら言えっ!!」

マーシャ「!? タッ― タスケテー ―ッ」

マルク「タスケテケテ――ッ タスタスタスケテー」

豊久「 一 件 落 着 !」ゴゴゴゴゴッ!


与一「……すごいゴリ押しですねー」ホゲー

信長「一向衆並のスゴイ言いくるめを見た」ホゲー

76: 2013/03/19(火) 02:02:34.39 ID:uZd7H3FX0
豊久「……まぁ このことは良いのだが―」

与一(ホントに良いのかっ!?)


豊久「なんだ!? このデッカい……… 乗り物は?」

みほ「あっ! はい、これはⅣ号戦車と言いまして―」ガタッ

信長「俺の新しい馬じゃ」ドシッ みほ「違います」


豊久「……とりあえず、そいつはここ(戦場)で使えるんだな」

みほ「はいっ そうです!(なんで分かったんだろう? 薩摩武士のカン― かな?)」

豊久「良し(よか) だったらお前たちがやれる範囲でやってくれ。 詳しい話は後だ」タタッ

みほ「あっ、豊久さん― 行っちゃった…… 」

77: 2013/03/19(火) 02:03:58.66 ID:uZd7H3FX0
みほ「麻子さんっ!!」クルッ

麻子「ああ、わかってる。今のを見たら間違いなくエルフたちが危ない― 」

みほ「そうです。 ですが、無闇に戦車を兵士たちに見せるも得策ではありません」

みほ「ですから… そのー」

麻子「大丈夫だ 止めるつもりはない。 だけど絶対に戻って来てくれ」

みほ「心配をかけてすみません。」

みほ「でも助けたいんです。 豊久さんのように……」

みほ「沙織さんをお任せします。だけど麻子さんも無理はしないで下さい 」


みほ は震える麻子の肩に手をやった。
麻子は表情では冷静を装ってはいたが、みほ には心の動揺を見透かされていたらしい。


みほ「それではまた後で―」シュッ

みほ はⅣ号戦車から飛び降り、闇夜に消えていった。

78: 2013/03/19(火) 02:05:03.92 ID:uZd7H3FX0
麻子「与一っ!」クルッ

与一「わかってますよ」シュッ

与一はみほ とは少しズレた方向へ駆けて行った。
彼の攻撃範囲はおそらく、背に向けたⅣ号戦車以上に広く的確なものである。


麻子「……みほ」

信長「お前らの大将も中々にうつけよのぉ~」

信長「普通の女子(おなご)は―」ツカツカ

信長はⅣ号のハッチ(入り口)まで上り、戦車の中を覗いた。


沙織「…………。」ブルブル

79: 2013/03/19(火) 02:06:38.88 ID:uZd7H3FX0
信長「この反応が正常だ。 まぁ豊久の殺り方がエグいのもあるが……」

麻子「沙織、大丈夫か……?」

沙織「人が…… ノブノブはなんで―」ブルブル

信長「なんでもがなにもにゃ― お武らと俺との“物の見方”が違うって話だ」

信長「そして、 この未曾有有象のこの世界は“どちらか”と言えば、俺らの世(戦国)に近いのよ」スッ


信長は戦車の上で仁王立ちし、炎と叫び声が渦巻くエルフの村を見下ろした。

80: 2013/03/19(火) 02:08:05.65 ID:uZd7H3FX0
沙織「やだよっ! いくら “敵”だからって言って“人”を頃しちゃうなんて―」ガタッ

沙織はハッチから身を乗り出して信長に叫んだ。

信長「今はアイツらを頼む。 お前との話はそのあとだ……」ビシッ

信長がしっかりと沙織の顔をみて、その背後を指さした。

沙織「えっ……?」クルッ

マーシャ「…………。」キュッ

マルク「………タスケテー」オドオド

沙織「あっ………。」

81: 2013/03/19(火) 02:09:02.85 ID:uZd7H3FX0
信長「お前らはこの「えるふ」を村へ連れて行け。」

信長「大回りして兵士たちに悟らないように動いとけば―

信長「村につく頃には“あの馬鹿共”がなんとかしてる」

信長「―それと武、これだけは間違えるな……」

信長「 豊久も俺も、気狂いで人を殺めてるわけじゃない」

沙織「………わかった。」

82: 2013/03/19(火) 02:10:44.55 ID:uZd7H3FX0
~エルフの村~

アラム「並べ」ズズッ

エルフたちは自分たちの村の広場に集められていた。
彼らを監視する兵士たちはエルフらを跪かせ、また村の家々に火を点けていた。


エルフの村長「これは一体何事です アラム様! 」

エルフの村長「私たちが何をしたと言うのです!?」

アラム「森に入り― 漂流物を助けただろう、貴様ら」

アラム「エルフが森に入る事、弓を作る事―」

アラム「漂流物に関わる事、 どれも大きな罪だ」

エルフの村長「そ… それは… 子供たちの良心で―」

アラム「子供だから目溢ししろ― と? 」

アラム「本当に救い様がなく、あさましくて、あつかましいな― エルフというのは…」

83: 2013/03/19(火) 02:11:52.60 ID:uZd7H3FX0
アラム「漂流物の管理全ては『十月機関』の仕事だ」

アラム「お前たち亜人種(デミ・ヒューマン)が関わることは大罪に値する」

アラム「バレてないとでも思ったか―?」


シャラ「 ふざけるなッ!」

集められたエルフの中から一人の若いエルフが声を張り上げた。

84: 2013/03/19(火) 02:12:42.32 ID:uZd7H3FX0
シャラ「そもそも無理な話だ! 」

シャラ「森に入らねば“たきぎ”手に入らん 木の実も、狩りも出来ん!」

シャラ「した事もない農奴にさせられ、女どもは連れ去られて―」

シャラ「今度は『子供が瀕氏の人間を助けただから罪』だと!! 俺達エルフに―」



シャラ「 氏ね と言うのか 」


アラム「 そうだ。 速やかに氏ぬべきだ 」

86: 2013/03/19(火) 02:13:14.15 ID:uZd7H3FX0
アラム「呪うなら“戦さ”に負けた己の父祖を呪え」

アラム「早晩お前たち“エルフ”も“ドワーフ” “ホビット”も―」

アラム「亜人たちは種族として絶滅する」


アラム「 だろ?」ゾブッ

エルフの村長「―ッッ!!」グラッ

兵士たちの部隊長であるアラムは手に持った剣で、
エルフの村長の胸部に風穴をつくった。

87: 2013/03/19(火) 02:14:55.12 ID:uZd7H3FX0
シャラ「なっ― 何をする……」ガタッ

アラム「間引きだ」

アラム「何人がいい? 半分まで減らしていい、と言われている」グサッ

部隊長の抜刀を合図に、兵士たちは広場に集めたエルフを
一人、また一人と次々に絶命させて行った。

シャラ「やめろ!! 俺を殺せ! 俺を……ッ!!」

アラム「だめだ」

アラム「お前はまだ若い、体を大事にしろ。」

アラム「お前には未来がある― みじめな農奴としてのな」

シャラ「クソっ……」グラッ

88: 2013/03/19(火) 02:16:54.19 ID:uZd7H3FX0
アラム「ああそういえば、漂流物を助けたエルフのガキ共らについてだな」

アラム「あいつらはダメだ。 張本人だからな」

シャラ「そんな……!?」

アラム「しかし お前の弟らは森に逃げて行ってしまってなぁ―」

アラム「糞がっ  今朝方に漂流物を助けたというガキを処分したとき、暴れ叫びよって……」

アラム「お陰で無駄手間をかけることになった。 まぁ、今頃は……」


アラム「そのガキと同じく虫のエサになるだろうが―」クッ

シャラ「………!?」


アラムは村の入口を剣で指した。
その剣先の向こうには、村長と同じように胸部を剣で一突きに貫かれ、絶命した子供のエルフがあった、が―

91: 2013/03/19(火) 02:18:50.26 ID:uZd7H3FX0
みほ「しっかりして下さいっ……!! どうして… なんで…」ユサユサ

みほ は氏体となったエルフの子供を抱いていた。
そのエルフの顔は みほ を見つけ、助けようとした子供の顔で間違いなかった。


みほ「助けられなかった…… なんで……」

シャラ「あれは……?」

アラム「誰だ、あれは!?」クルッ

人間の少女がエルフの氏を嘆く。
その姿に兵士もエルフも、只々動揺するしかなかった。


アラム「まさか…… あれがっ!」

みほ の姿にアラムは憤怒した。
その光景に対し、彼は「自分の行動を責められる」感覚を覚えたからだ。

92: 2013/03/19(火) 02:23:01.95 ID:uZd7H3FX0
アラム「兵士たちッ 何をしている!! アイツを引っ捕らえよっ」

アラムは声を荒げ兵たちを突き動かした。
だが以外にもその声にまず反応したのは、みほ であった。



みほ「あなた…… あなた達なのですね―」ギュッ

涙で溢れた瞳がアラムの方を向く。


 ド オ オ オ オ オ ン ー ッ !!!



その瞬間、この世界の住人誰も聞いたことがない、
あの炸裂音が村を、森を、人を響かせた。

93: 2013/03/19(火) 02:24:42.10 ID:uZd7H3FX0
アラム「なんだ!??? 今の轟音は? 攻撃!?」

その音に兵士たちは慄き、騎馬たちは暴れ逃げていった。
そして、それが合図かのように村の周りに炎が点された。


アラム「今度は一体なんだ!!??」

占領兵「たッ 大変です。 麦畑に火が………」

アラム「何だと―ッ!!」


アラムは次々と起こる予想外の展開に動揺したが、
それら諸現象の根源であろう“それ”に対して憤ることは忘れてはいなかった。


みほ「…………。」


みほ の背後には炎が舞い、その姿には影が落とされていた。
だがアラムには、眼前だけを真っ直ぐ見つめる彼女の瞳だけはくっきりと見えた。

95: 2013/03/19(火) 02:28:17.10 ID:uZd7H3FX0
アラム「貴様が…… 貴様らド―」

―ゴオオオオオオオオオオ

自分たちに抗う者たちの名を叫ぼうとしたとき、
先ほどの炸裂音とは違う、また別の音を聞いた。

その音は 炎が燃え盛るみほ の後ろから― 

兵士たちが、少女の背から迫る一人の侍を認めた時、それが“人の声”だと知った。

96: 2013/03/19(火) 02:29:59.56 ID:uZd7H3FX0
アラム「 漂 流 物 !! 」
      ド リ フ


豊久はみほ に1番近づいていた兵士の頭部を走りざまに切断、
そのまま首を捕らえた。

そして畑の炎によって生まれた煙で身を隠し、
兵士たちの視界から姿を消した。

アラム「何だ!! 何だ!? 今のは!? こ… こんな……」

矢次に起こる攻撃に呆然とするしかなかった。
しかし、そんな彼らの後ろには既に豊久の姿があった。

豊久「―っ!」ヒュッ

アラムの守護2人が、豊久の一太刀で胴から頭が離れる。
その攻撃から逃れた兵士たちも、豊久の蛮行を止めるほどの精神はなかった。

97: 2013/03/19(火) 02:31:22.60 ID:uZd7H3FX0
アラム「逃げるな!! 頃すぞ!!」

兵士たちを叱咤するアラム。
その姿を見た豊久は1つの確信をえる。




  「首、置いてけ  なあ!!」

  
  「大将首だ!! 大将首だろ!? なあ大将首だろ、おまえ!」

98: 2013/03/19(火) 02:32:28.58 ID:uZd7H3FX0
久々の手柄となる大将の存在に嬉々する豊久であったが、
大将に指さした向こうに見知った顔、2人を見た。


みほ「………豊久さん―」ギュッ

みほ が子供のエルフの氏骸を抱きしめ、豊久を真っ直ぐと見た。
その瞬間、豊久はこのエルフの村で起こった様々な出来事に感づいた。



豊久「ようもやってくれたのう…… やっぱりお前の首などいらねぇ―」ゴゴゴ

アラム「これが漂流物―か…… 何を、何を言ってる!?」

豊久「―貴様(きさん)の首はいらん……」




  「 命だけ置いてけ!!」

100: 2013/03/19(火) 02:37:12.04 ID:uZd7H3FX0
あっ ”TO BE CONTINUED”入れるの忘れた。

見てくれる人がいるかどうかは知りませんが、とりあえずここで一区切りです。
今度やるときはもっと早い時間にします。

先に駄文すみませんでした。
変にシリアスはやめといた方がいいですね。



本当は全部書こうと思ったのですが
こういう外伝はガルパンの最終話あとにやった後がいいと思うので
やるとしたら来週以降ですね。 というかこんな組み合わせSS需要があるのかどうか?

あとSSは初めてなので文句あったらお願いします。
やっぱりヒラコーは絵あってナンボなので単行本片手じゃないと何やってるかわかりませんね

101: 2013/03/19(火) 02:40:45.32 ID:uZd7H3FX0
ということで以上
ガルパン11話&12話放送記念&ドリフターズ3巻発売記念SSでした

見ていた方は本当にありがとうございます。
くぅ~疲れましたですね。
誰かくぅ~疲れましたを巻末黒王バージョンに書き代えておいてください

引用: みほ「ドリフターズ (漂流物)………?」