1: 2012/01/08(日) 01:14:26.31 ID:KtoLuO3q0
──秋

妻「ん~~! 今日もいい天気だ! こんないい天気の日には部屋にこもってオXXーに限るな!」

夫「……はぁ。いくつになっても、結婚しても、女さんは全然変わりませんね」

妻「なにをー!? わたしだって成長してるっての! 見ろよこのムチムチボディを!」

夫「あいかわらずの絶壁です。背も低いまんまです」

妻「背のことは言うなっつってんでしょ!」

夫「ふふ。ほら馬鹿やってないで、座りましょう。朝食が冷めちゃいますよ?」

12: 2012/01/08(日) 01:24:51.76 ID:KtoLuO3q0

5: 2012/01/08(日) 01:16:42.44 ID:KtoLuO3q0
妻「なあ、男………おまえはいま幸せか?」

夫「え? どうしたんですか急に」

妻「んーにゃ、別に………ただ何となく聞きたくなっただけ。で、どーなのさ」

夫「そりゃあ幸せですよ。だって、こんな素敵な嫁さんと暮らしてるんですから」

妻「あぅ………、そ、そうか! ///」

夫「まぁ、口が悪くて、いつも下ネタばっかで、変態行為を自重しないちんちくりんの奇妙生物でもありますが」フッ

妻「………おいコラ」

夫「お金持ちの御令嬢っていう肩書がこれだけ似合わない人もいないですよね。食べ方汚いですし」

9: 2012/01/08(日) 01:21:36.45 ID:KtoLuO3q0
妻「てめぇ言わせておけば、……………この包茎が」ボソ

夫「ッ! ……他人の身体的特徴を責めるのは卑怯だと思います」

妻「どの口が言ってんだコラ」

妻「………はぁ~ぁ」

妻「まぁでも、そうか、………幸せならいいんだよ、うん」ニコニコ

夫「何なんですか今日は、気持ち悪いですね」

妻「べっつにー。まぁ細けぇーこたぁいいんだよ! 気にすんなって! あはは」バンバン!

夫「ごふっ! ……ッ人がもの食ってる最中に背中を叩かないで下さい!」

15: 2012/01/08(日) 01:29:17.60 ID:KtoLuO3q0
──夏

妻「………はい、最近は安定しています」

「そうですか。それではしばらくはこのまま様子を見ましょう。こっちは……いつも通りに、忘れずに」

妻「はい、分かりました。いつも通りにですね」

「来月初旬にでもまたお越しください。もちろん何か問題が起こればいつでも」

妻「はい、心得てます」

「それでは」

妻「はい、ありがとうございました」

「………」

19: 2012/01/08(日) 01:39:40.99 ID:KtoLuO3q0
──春

妻「青姦シーズン到来! もうお姉さん今から身体がうずいてうずいて!」

夫「やめろ変態。花見、連れて行きませんよ」

妻「はっ! そんなこと言ってー。期待してるくせにぃ」

夫「あのですね、お母さんも一緒に行くんでしょ? 娘のそんな姿見たら泣きますよ」

妻「大丈夫大丈夫! ほら、うちのママ、子どもをスルーするのには慣れてるから!」

夫「………うわぁ、キッツい自虐ネタですねぇ」

22: 2012/01/08(日) 01:49:31.53 ID:KtoLuO3q0
夫「お父さんの方はやっぱり忙しいんですか?」

妻「えッ!? あー……………うん、パパは……ね………………」

夫「そう……ですか………」

妻「あはは、ほらそんな顔しないで! わたしは男さえいれば幸せなんだから! おまけに最近はママも優しいし!」

夫「ええ、………そうですよね」

夫「ふふ。お父さんが来れない分、僕が優しくしますから」

妻「男………。うん、……ありがとね」ニコ

26: 2012/01/08(日) 01:59:50.07 ID:KtoLuO3q0
──冬

妻「………」

父「………おい、コーヒーだ」

妻「………はい」

母「あぁそうそう、この荷物出しておいてちょうだい」

妻「………はい、わかりました」

妻「………」

妻「……」

27: 2012/01/08(日) 02:07:00.66 ID:KtoLuO3q0
──秋

妻「うだーーー………」

夫「ちょっと最近家にいるときだらけ過ぎじゃないですか、女さん」

妻「なによ、いいじゃんべつにー。わたし平日はちゃんと仕事してるしぃー」

夫「………ふぅ。スポーツの秋、読書の秋と言いますが女さんの場合は……」

妻「ずばり、オXXーの秋ね!」ドヤァ

夫「いや、あんた一年中盛ってるから」

29: 2012/01/08(日) 02:17:05.75 ID:KtoLuO3q0
妻「もー! 文句ばっかり言わないの!」

妻「わたしだってねー。人間なんだから色々悩みごともあったりするし、疲れもするってーの!」

妻「だから休みの日くらいだらけさせなさいよぅー」

夫「悩みごとって……。何かあるなら言って下さいよ。相談にのりますから」

妻「………………それができたら苦労しないっての」ボソ

夫「え? なんですか? 聞こえませんでした」

妻「いーんにゃ。なんでもにゃーい」

31: 2012/01/08(日) 02:25:21.22 ID:KtoLuO3q0
──夏

夫「女さん………? 女さん………! どこにいるんだ女さん!」

妻「男!? どうしたの!?」

夫「あぁぁ、よかった………いやな夢を見たんだ」

夫「女さんが遠くに行ってしまうような」

夫「でもよかった………、本当によかったぁ……」

妻「もう……。そんなに不安がらなくていいわよ」

妻「私はどこにも行ったりしないんだから」ナデナデ

35: 2012/01/08(日) 02:33:45.67 ID:KtoLuO3q0
夫「………」

妻「………ふふ。少しは落ち着いた?」

夫「………ごめん。取り乱して。みっともなかったよな ///」

妻「いいっていいってぇ! わたしにだけ見せてくれる弱さってやつ? そういうの憧れてたもん!」

夫「……でも、これじゃ格好がつかないよ。いくら年下とはいえ、男なんだからさ」

妻「はーん。一丁前なこと言っちゃってぇ! あんたは典型的な尻にしかれるタイプじゃない!」

夫「………む。そんなことない。僕だって、好きな女を守ることくらいできるよ」

妻「………」

夫「女さんは、僕が守るよ」

夫「この先何があろうと、僕が守るから」

妻「………」

妻「………ふふ。ありがとね」ニコ

36: 2012/01/08(日) 02:39:25.96 ID:KtoLuO3q0
──春

「あなたを長年苦しめてきた私なんかがとてもこんなこと言えた義理じゃないけど……」

妻「………」

「やめておきなさい、不幸になるだけよ」

妻「………」

「なんて、今更母親ぶっても説得力なんてないわよね」

妻「………ううん、ママ、ありがとう」

妻「でももう私は決めたから」

妻「覚悟、できてるもの」

37: 2012/01/08(日) 02:46:32.24 ID:KtoLuO3q0
──冬

「……ありがとう」

妻「………ッ」

「本当に感謝してるの。あなたのおかげで、悔いを残さずに逝けるから……」

妻「でも………私は………ッ」ポロ

「…………どうして泣くの?」

妻「私は………嘘つきだから。ほんとうは、私は弱い……醜い………」

「……………」

39: 2012/01/08(日) 02:55:37.86 ID:KtoLuO3q0
妻「彼が好き………ッ」

妻「誰よりも大好き! 他のことなんてどうでもいいくらい!」

「……………」

妻「自分でも自分が歪んでるって分かってる! でもッ、止まらないの……。自分じゃ止められない………」

妻「ごめん……ね。ごめん、なさい……」ポロ..

妻「こんな女………。あなたに『ありがとう』なんてッ……言われる資格ない!」ポロポロ....

「ふふっ。………なんだ、そんなこと」

41: 2012/01/08(日) 03:00:09.44 ID:KtoLuO3q0
妻「……え?」

「そんなの、ずっと前から知ってることだもの」

「……むしろ、そうじゃなかったら安心できない」

妻「………ッ」ポロ..

「あなたはそれでいいのよ。そんなあなただから、任せられる」

「あとのこと、よろしくね」ニコ

妻「………ヒッグ……ヒック」ポロポロポロ….

43: 2012/01/08(日) 03:05:31.37 ID:KtoLuO3q0
──秋

男「………」スヤスヤ..

妻「ふふ。普段は神経質で皮肉屋なのに、寝顔だけは子どもみたい……」

男「………ぅ、あ」

妻「……?」

男「……おん、な、さん。……………おんな、さん」

妻「………」

妻「はいはい。甘えん坊さんでちゅねー。よちよーち」

妻「ふふ」

45: 2012/01/08(日) 03:11:39.70 ID:KtoLuO3q0
──夏

「今はまだ安定していません」

妻「………」

「医師としてはそれをおすすめしますが、選択権はあなたにあります」

「反対している関係者はいません。………この意味が、わかりますよね?」

妻「………でも、」

妻「私は……」

47: 2012/01/08(日) 03:15:34.38 ID:KtoLuO3q0
──春

夫「……………」

妻「………ほら、りんご、むけたわよー」

夫「……………」

妻「えっと………、そういえば! この間ママが誕生日プレゼントをくれたの!」

夫「……………」

妻「あー、………えと、すごく嬉しかったわ。ママからの初めてのプレゼントだもの」

夫「………そう、なんだ」

妻「あ……う、うん! それで、嬉しくって、わたし泣いちゃって。そしたら、ママも泣いちゃって……」

妻「誕生日なのに、……へへ、泣きつかれてそのまま眠っちゃった」

夫「……………」

49: 2012/01/08(日) 03:22:24.85 ID:KtoLuO3q0
──冬

「────高次脳機能障害です」

妻「………やはり、脳に障害が……」

「はい、検査の結果、記憶障害と見当識障害を併発していることがわかりました」

妻「………どうして。なんで、こんな……」

妻「もとには、戻るんでしょうか?」

「リハビリテーションによって改善する事例もありますが……」

「高次脳機能障害には確実といえる治療法があるわけではありません」

「長いスパンで取り組んでいくことを視野に入れておいて下さい」

妻「………」

51: 2012/01/08(日) 03:28:47.95 ID:KtoLuO3q0
──秋

妻「………」

「驚いた?こんな身体で」

妻「………」

「そんな顔しないで、仕方のないことだもの」

妻「………」

「あなたが無事でよかったわ。本当に、よかった……」

妻「………ッ」キュッ

53: 2012/01/08(日) 03:35:31.70 ID:KtoLuO3q0
「ふふ。今のは素直な私の気持ち」

「だけど……、正直に言うと……ちょっぴり打算もあるの」

妻「………」

「……この意味、わかるわよね」

妻「………」

「わたし、……あんたが好きよ。世界で二番目に好き」

妻「………ッ」

妻「わたし、も、です。わたしも……あなたが大好きです」ポロポロ..

54: 2012/01/08(日) 03:37:56.68 ID:KtoLuO3q0
「辛いことを頼んじゃってごめんなさい」

「でも、あんただから、安心して任せられるの」

「ううん。……あんたにしか、私は任せたくない」

妻「………ヒック……ヒッグ…」ポロポロ..

「だから、ね?」

「お願い」



「───── あんたが男を支えてあげて、少女」

58: 2012/01/08(日) 03:40:46.09 ID:KtoLuO3q0
少女「──……ッッ」ポロポロポロ..

女「あの日、わたしたちが紅葉狩りの帰りに事故にあったとき、血だらけの私を見て発狂したっきり、あいつは戻ってこれなくなった」

少女「………」ポロポロ….

女「まぁ、自分の奥さんの手足がちぎれてるのを目の当たりにしたら、狂っちゃうわよね。逆の立場だったら私だってそうなってたもん」

女「お医者さんの話だと、事故で頭を強くぶつけたことと、私の惨状を見た精神的なショック、両方が原因でしょうって」

女「まぁ仕方ないわ、これも。運命ってやつよ。潔く諦めるわー。あはは」

少女「………でもそれじゃ、女さんが……」ポロポロ….

64: 2012/01/08(日) 03:47:22.01 ID:KtoLuO3q0
女「仕方ないわよ。あいつの目には、あんたが、この私に見えてるんだから。あはは、私もあんたも年齢の割に背が低いし、胸もないしねー」

女「………まぁ、否定したってどうしようもないじゃない」

女「ううん、無理に否定して、あいつがもっとおかしくなるなんて、そっちの方が耐えられないもの」

少女「………でも、それじゃっ!」

女「いやぁ……それにね、正直悪い気もしないの」

女「わたしって頭のネジがぶっとんでるでしょ? まぁそれも両親に虐待されてきた影響だって自覚くらいはあるけど」

女「でもそんなキチOイだからさ、わたし。実のところそう悲観してないのよ」

女「正直、夢や幻にまであいつが私の姿を追い求めてくれるのがさ、……けっこう嬉しいの」

66: 2012/01/08(日) 03:57:59.30 ID:KtoLuO3q0
女「それよりも、今後辛くなるのはあんたの方よ、少女」

女「あんたがあいつと関わる限り、あいつはこれからあんたのこと、私として扱うわ」

少女「………」

女「このまま逃げちゃって、二度と顔をあわせなければ辛い思いをしないですむけど」

女「性格的にそれは無理でしょ、あんたは」

少女「………」

女「だからお願いしてるの」

女「私の代わりにあいつのママゴトに付き合ってやってほしい」

女「辛いこと押し付けてごめんなさい。でもあんたは、このことで私に気兼ねする必要もないんだからね」

69: 2012/01/08(日) 04:04:40.91 ID:KtoLuO3q0
少女「………また、来ます」

ガチャ..バタン...

少女(………)

少女(…………女さん)

少女(女さんはああ言っていたけど…………辛くないはずがない)

少女(それに、わたしに女さんの真似なんて…………できるのかな……)

少女(………)

少女(………ううん、できるかじゃなくて、しないといけないんだ)

少女(………それが、女さんと、男さんのためだから)

73: 2012/01/08(日) 04:12:21.16 ID:KtoLuO3q0
ガチャ..

少女「あの、………こんにちは……」

男「あぁ! 女さん! 待ってたよー」

少女「う、うん……。ごめんね待たせちゃって」

男「僕がいないからって無精してない? 少しくらい自分で料理できないと、こういうとき困るでしょ」

少女「あ、はは。ぅ、うんそうだよね! 料理……して、みようかな?」

男「………どうしたの女さん。今日はやけに殊勝だね」

男「いつもなら、『料理なんて下女にやらせておけばいいのよ!』くらい言いそうだけど」

少女「えっ。あっ……!」

74: 2012/01/08(日) 04:17:17.89 ID:KtoLuO3q0
少女「………ふ、ふん! いっつも私ばっかりあんたに料理を振舞ってもらってるからね」

少女「たまには私の腕を見せて惚れ直させてやるんだから!」

男「あはは。うんうん、期待してるよ!」

少女「………ッ ///」

少女(………違う)

少女(……………こんなのダメ)

75: 2012/01/08(日) 04:23:25.19 ID:KtoLuO3q0
男「でも女さんガサツだからなー。繊細な料理とか無理でしょ?」

少女「馬鹿ねー。私がどれだけ繊細な指づかいをしてると思ってんの? 伊達にオナニストNo.1の称号をもらってないっての」

少女(…………やっぱり間違ってる)

男「はぁ……、そのガサツさや下品さが真逆になれば、完璧なお嬢さまですよね、女さんは」

少女「はっ! あのねぇ、貴族ってのは育ちで貴族になるんじゃないの。生まれで貴族になるのよ! だから私は生まれつきのお嬢! 性格なんてかんけーねー!」

男「あはは」

少女(…………こんなこと、間違ってる)

少女(…………こんなことが、……)

少女(…………こんなに幸せに感じられるだなんて、わたしは、ぜったい、間違ってる!!)

78: 2012/01/08(日) 04:32:09.48 ID:KtoLuO3q0
男「あはは、………って、どうしたの女さん!?」

少女「えー? どうしたってなにがー……」ボロボロボロボロ……

男「いや、涙 涙! すごい泣いてるってば!」

少女「……へ? あれ? なにこれ………」ボロボロボロ……

少女「あはは、なんでなんだろーね。わかんないや」ボロボロボロ…

少女「あはははは」ボロボロ…

少女(わたしは、最低だ)

少女(───最低)

82: 2012/01/08(日) 04:41:20.53 ID:KtoLuO3q0
──エピローグ

女さんが亡くなっても、男さんは変わらず女さんの幻を追った

男さんは、本物の女さんが亡くなったことにすら気づいていない

そしてわたしは、─── 今も幻の影として、ずっと男さんのそばにいる

男「………」スー…スー…

少女「………」

男「………」スー…

少女「………ねえ、男さん。いつまで夢を見てるんですか」

男「………」スー…

少女「………女さんは、最後まで笑顔でした。翳りなんてこれっぽっちもない笑顔で、『あんたになら任せられる』って逝っちゃいました」

84: 2012/01/08(日) 04:48:47.52 ID:KtoLuO3q0
男「………」スー…スー…

少女「ねぇ。いつまで続ければいいんですかこのバカバカしい茶番を」

男「………」スー…スー…

少女「いいかげん、目を覚ましてくださいよ」

少女「………」

少女「…………なんて、ね」

少女「……………嘘つき。……卑怯者」

少女「わたし、本当は続けたい。あなたと生涯をともに歩みたい」

少女「たとえ私があなたにとって幻でしかなくても………それでも、私は幸せなんです」

87: 2012/01/08(日) 04:59:59.23 ID:KtoLuO3q0
男「………」スー…スー…

少女「でも…………」

少女「でも、なぜでしょうね……」キュゥッ...

男「………」スー…

少女「わたし、最近なぜか、すごく、寒いんです………」カタ...

少女「……………」カタカタ…

少女「………………………寒い………寒い……」カタカタカタ…

男「………」スー…

少女「……わたし、……寒いよぉ、女さん。………女さん、……………女さん……ッ!!」ポロポロポロ…

男「……………ぅ」

男「ぁ………、ショウ、ジョ?」

89: 2012/01/08(日) 05:07:48.27 ID:KtoLuO3q0
少女「っ!?」ポロ…

少女「……………ッ」グシグシ

少女「……やっとお目覚めか? もう夜だぞ。オXXーのしすぎで体力消耗してんじゃないのか? 言ってくれりゃァ手伝ってやるってのに」ニコ

男「………ぇ?」

少女「どうした? 寝ぼけてんのか? なんなら、起き掛けに一発抜いてやってもいーんだけど? あはは」

男「………あぁ、………いや、………………少女、だよな?」

男「………どうしたんだ、その喋り方!? しかもオXXーとか……、女さんの口ぐせがうつったのか!?」

少女「……えっ!?」

男「あの人………、やっぱりその存在自体が子どもに悪影響を及ぼす人だな」

少女「え? えっ 嘘、うそ……………ッッ!!!」

92: 2012/01/08(日) 05:16:45.09 ID:KtoLuO3q0
少女「お、男さんッ!? 目が、目が覚めたんですか!?」

男「え? そりゃぁ、いま起きたけど……」

男「どうしたんだよ、少女。なんかおかしいぞ……」

少女「ぁ………ぁあ、………あああああああああああああぁぁぁぁぁ」ポロポロポロポロ……

男「お、おい!? 本当にどうしたんだ!?」

少女「男さんッ! 男さん、男さん、男さん男さん男さんッッッッッ!!!!!」ギュウウッッッ

男「ッッと!? ………はぁ、その、少女。正直なにがなにやらサッパリなんだが」ナデナデ

少女「わた、わだし………ずっど………………ずっと………独りで………女さんの………わたし………ッッ」ポロポロポロ……

男「ちょっと、落ち着け少女! ゆっくり! ゆっくりでいいから!」

────こうして、わたしと男さんの幻のような関係は、唐突にあっさりと幕を下ろした

95: 2012/01/08(日) 05:26:49.87 ID:KtoLuO3q0
─── あれから男さんになだめられながら事情を説明したあと、すぐに病院に行って診察をしてもらった

驚いたことに、男さんは事故の当日から今日までの数年間の記憶が、一切ないらしい

お医者さんが病院で、こういう事例は極稀ながらあることだと説明してくれた

おそらくは脳の防衛機制がかかり、記憶が閉じ込められてしまったのだろう、と

数日の検査入院の後、問題ないということで、男さんは晴れて退院となった

少女「……本当に、もうなんともないんですか?」

男「うん、ここ数年の記憶がないだけで、その前のことや、最近のことはよく覚えてるよ。まともに考えられるし、お医者さんからも問題ないって言われた」

少女「………そう、ですか。よかった。本当に……」ニコ

98: 2012/01/08(日) 05:39:33.50 ID:KtoLuO3q0
少女「………でも、その……正直、女さんのことを聞いた男さんがどうなるか、不安でした」

少女「………また元のように戻ってしまうんじゃないかって」

男「あぁ………。実は、お医者さんが言うには、その可能性もないわけじゃないらしいんだ。何かの機会に突発的に症状が再発する可能性はあるって」

少女「………ッ。そう、………なんですか」

男「うん。その………少女にはとてつもない迷惑をかけた。何度謝っても、誤りきれるものじゃない」

少女「いえ、………いいんです。私が、したかったことですから」

男「いや、若い時期の数年間を、いわば……僕の介護に使わせてしまったようなものだろう?」

男「君には、その、本当にどうやって償えばいいのかわからない」

男「僕にできることなら、何でも言ってくれ。どんなことをしてでも償うつもりだから」

99: 2012/01/08(日) 05:50:19.06 ID:KtoLuO3q0
少女「…………」

少女「………はぁ。お兄さんは馬鹿ですね」

男「え?」

少女「あのですね、病人が難しいこと考えないで下さい」

少女「女さんの件で、まともな精神状態でいられなかったことはわかります。そんな状態なんですから、誰かに頼ったっていいんです!」

男「………」

少女「まぁとは言え、今回わたしがお兄さんのお世話をしたのは、私がたまたまお兄さんに身近な知り合いだったからにすぎませんけど」

少女「私だって、他に適任の人がいればその人に預けてたかもしれませんし」

少女「本音を言えば、私もお兄さんの相手をしながら、面倒だなぁって思ってました」

男「………ッ」

男「………そう、だよな。すまない。本当に……」

101: 2012/01/08(日) 05:59:38.99 ID:KtoLuO3q0
少女「………」

少女「………ふふ。ゴメンなさい、今のウソです」ウフフ

男「え?」

少女「いつかの仕返しですよ! 覚えてませんか? お兄さんが私を1週間預かることになったときのこと」

男「………ぁ、……ああ」

少女「あのとき、まだ年端もいかない私に随分ひどいことを言いましたよね、お兄さん。まぁ、その愚直で面倒くさいところがお兄さんの味なんでしょうけど。ふふふ、今のはあの時の仕返しです」ニコ

男「……あはは。……うん、一本とられた」

男「それにしても、僕が知らないうちに随分明るくなったなぁ少女は」

少女「それはもう!あんなに長い間女さんの真似をし続けたら、素の人格だって自然と明るくなっちゃいますよ」

男「………んー、でも年頃の娘がオXXーとかとか連呼するのは、ちょっとなぁ……」

少女「………こ、この間のは女さんの真似をしてただけです! わたしの本心じゃありません! /////」

103: 2012/01/08(日) 06:09:31.82 ID:KtoLuO3q0
男「まったくあの人は、亡くなったあとにまで少女に悪影響を与えるんだから……」フフ

少女「………」

少女「……………あの、お兄さん」

男「ん?」

少女「その女さんから、手紙を預かってるんです。『もし男が夢から覚めたら叩きつけてやってくれ』って」

男「………そう、か」

少女「………これです。どうぞ」ガサ…

少女「今、読みますか?」

男「………うん。僕はあいつの最期を看取ってやれなかったから、……」

男「今じゃ、手紙に記されたあいつの気持ちを受け止めてやることくらいしかできないもんな」

106: 2012/01/08(日) 06:17:57.47 ID:KtoLuO3q0
男「すぅーーーーー……………はぁーーーーー……………」

男「………ッ」パンパン!

男「よし!」

男(たとえ、どんな恨み言が綴られていようと、すべて受け入れる)

男(僕がお前にやれる最期の手向けはそんなことでしかなくて、ごめんな女────)

男「………………」ガサ

男「………」



女『────よう、口リコン野郎!』



男「──────────────…………………………おい」

108: 2012/01/08(日) 06:24:52.86 ID:KtoLuO3q0
女『少女との爛れたどう性生活の味はどうよー!? 蜜か? 蜜の味なのか?ぅむん?』

男(…………)

男(……………………『同棲生活』を無理矢理な誤字にしたな)

女『あの娘にはあんたの性的なウィークポイントをたっぷり教え込んでやったからな! 悦べよぉ、おい!』

男(………………)

男「教え込まされたのか……?」

少女「…………///////」...プイッ

110: 2012/01/08(日) 06:33:19.95 ID:KtoLuO3q0
女『まぁそんな魅惑のライフもいいけどもだ、』

女『男、分かってるとは思うが、いまお前の隣にいるヤツはな、お前がお花畑で蝶々さんと戯れてる間、お前をたった一人で守り通したすごいヤツなんだ』

男「………………」

少女「………………」

女『不可抗力とは言え、少女には一番つらい役を押し付けちゃうことになった』

女『本当に申し訳なく思ってる。ごめんな少女』

少女「……………………女さん」

男「……………」

女『ごめりんこ!』

少女「!!」

男「……………………はぁ」

112: 2012/01/08(日) 06:40:43.77 ID:KtoLuO3q0
女『なーんつって、まぁ実のところ少女がお前に惚れてるのは知ってたし』

女『本音では『役得役得ぅ!』ってところだろ少女!』

男「……………」

少女「………え、いや、ちが!! ///」

女『まぁ、あんたたちは私にとって世界で最も大切なものランキングの NO.1 と NO.2 だ』

女『だからくらいは寛容な心で許してやる』

女『大いに励めよ若者たち!』

男「……………」

少女「……… ///」

113: 2012/01/08(日) 06:46:47.26 ID:KtoLuO3q0
女『あー、ただし、だ。それ以外の女にそのチンポ突っ込んでみろ』

女『地獄から化けて出てお前の包茎ペニーを切り落とすからな。いやマジで。冗談抜きで』

男「………………………しませんよ、そんなこと」

少女「……………」

女『おほん! まぁ、とにかくだ、男』

女『いい女ならここで「わたしのことは引きずらないで前を向いて歩いて」って言うところだろうがな』

女『わたしは嫉妬心がそこらの女の20倍は堅いから、むしろこう言う。「わたしをひきずれ!」』

女『わたしのことを引きずって、後悔しまくって最期まで生きろ! 」

女『そんでもって、お前らしくうじうじ悩みながら私のことを想いつつ生きるなら………まぁあれだ、お前の半分くらいは、少女に分けてやってもいい』

116: 2012/01/08(日) 06:57:55.94 ID:KtoLuO3q0
女『大切にしてやってな』

女『その娘は強い娘だよ。………でも強いようで弱いから、身近にいて支えてやってほしい』

男「……………」

男「………………はい。約束します、必ず」

少女「……………」

女『最後になったけど、────── 愛してる、男』

女『また来世で抱いてくれよ!』

男「…………」

男「………………はい。また、いつか」

少女「………ッ」キュッ

118: 2012/01/08(日) 07:03:09.49 ID:KtoLuO3q0
男「…………」

女「…………」

男「………女さん、最期まであの人らしかったんだな」

女「………はい。亡くなる直前まで、明るく笑っていました」

男「…………」

男「………君を守る」

男「………この先何があろうと、僕は君を守るから」

女「……………ッ」

121: 2012/01/08(日) 07:05:29.93 ID:KtoLuO3q0
少女「………………」キュゥッ

少女「ありがとうッ………ございます」

男「……約束するよ」

それは悔いるような、

少女「………それじゃあ、」

けれども祈るような、

少女「………お兄さんのことは、」

万感の想いを込めた────

少女「─────── わたしとお姉さんの、二人で守ってあげますね!」



──── 華の蕾がほころびるような、キレイな笑顔だった




男「パン……食べるか?」 少女「……」 &
夫「この先何があろうと、僕が守るから」 妻「………」
── fin.

122: 2012/01/08(日) 07:07:15.58 ID:Hen5EfUw0

123: 2012/01/08(日) 07:07:17.19 ID:GO2yQb7dO

130: 2012/01/08(日) 07:24:37.00 ID:KtoLuO3q0
最後まで読んでくれた人、ありがとう
叙述トリックがやりたくて書いた短い後日談でしたが
これでこのお話は本当におしまい
またの別のSSを書く機会があったらそのときはよろしく!

引用: 夫「この先何があろうと、僕が守るから」 妻「………」