1: 2009/07/04(土) 17:32:01.62 ID:58QvGWVq0
男「そうか、良かったな」

女「貴様、信じてないな」

男「いや、信じてるぞ。信じてるから今すぐ帰ってくれ」

女「それはならん。これからの戦いにはお前の力が必要なのだ」

男「社会や常識と戦うのはお前一人でいい」

女「もっと自分に自信を持て」

男「違うだろ、お前の妄想に俺を巻き込むなと言っているんだ」

女「むう、強情な奴め」

2: 2009/07/04(土) 17:33:41.85 ID:58QvGWVq0
女「わかった」

男「わかってくれたか」

女「脱げばいいのだな?」

男「帰れよ」

7: 2009/07/04(土) 17:38:28.93 ID:58QvGWVq0
女「しかし私にも使命がある。おめおめと引き下がるわけにはいかん」

男「お前がどんな使命感を抱こうが自由だが、頼むから俺を巻き込まないでくれ」

女「ふむ、決意は固いようだな。今日のところは一旦帰ろう」

男「二度と家には来ないでくれ」

女「また明日学校でな」

男「クラスでも俺に話しかけるな」

女「思春期か?」

男「違うよな、俺のクラスにおける市民権の問題だよな」

女「恥ずかしがることはないぞ?」

男「無理を言うな。むしろお前こそ恥ずかしいと思えよ」

9: 2009/07/04(土) 17:44:10.14 ID:58QvGWVq0
友「おーす」

男「……おいっす」

友「なんだ男、元気がないな?あの日か?」

男「男に生理は来ないわけだが」

友「ばっか、あの日って言ったら月曜日だろ普通。工口イ発想力だな」

女「思春期なのですから、致し方ないでしょう」

男「なっ」

友「おーっす、女ちゃん」

女「おはようございます友さん、そして男さん」

男「……おっす」

友「なんだなんだ?なに照れてるんだ?」

女「思春期なのでしょう」

友「男ってムッツリだからな」

女「若い殿方ですから仕方がないことです」

男「……」

10: 2009/07/04(土) 17:49:23.23 ID:58QvGWVq0
女「ところで男、私は弁当を作ってきたぞ」

男「……」

女「思春期のお前に配慮して、こうして人の目を避けて昼食の誘いをしているわけだが
  何か不満があるのか?」

男「その配慮は褒めてやる。だがここは男子トイレだ、今すぐ出て行け」

女「私のことなら気にするな、用を足してくれ」

男「無茶言うな。あと俺の前でも猫を被り続けてくれると嬉しいんだが」

女「本当の私でいられるのはお前の前だけなんだ、光栄に思え」

男「俺を選ばないでくれ」

12: 2009/07/04(土) 17:54:09.31 ID:58QvGWVq0
男「なぜ着いてくる」

女「パーティを組んでいるんだ、当然だろう」

男「お前の反社会的な行動計画に俺を組み込むな」

女「私に選ばれたのだ、誇りに思うがいい」

男「都合のいい解釈はやめろ」

女「ところでお前にも何か二つ名が必要だと思うのだが」

男「あんな恥ずかしい名前はいらない」

女「光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女騎士か?エレガントだろう?」

男「お前は自分の美的感覚を少し疑うべきだな」

14: 2009/07/04(土) 17:58:26.62 ID:58QvGWVq0
女「それでだな、お前には前衛タイプのジョブに就いてもらおうと思う」

男「……」

女「私も一応は前衛をこなせるのだが、どちらかと言うとスピード系特殊タ技能タイプだからな
  パーティのことを考えればお前には白魔法も使える男騎士がお薦めだ」

男「……」

女「なぜ黙っている?私と同じ騎士になるのが恥ずかしいとか思春期なことを言う気か?」

男「迷惑がってることを察してくれよ」

16: 2009/07/04(土) 18:04:55.11 ID:58QvGWVq0
女「ふう、いい湯だった」

男「ところでお前はいつになったら帰ってくれるんだ?」

女「お前も一日の汚れを落すといい」

男「もちろん風呂には入る。だがその前にお前を帰さなければならない」

女「なに、気にすることはない。パーティを組んだ者は同じ釜、同じ部屋で回復するものだ」

男「だからパーティなんか組んだ覚えはない。それにお前といると回復どころか疲弊するんだよ」

女「そうか、思春期の煩悩というものは大変なのだな」

男「そういう意味じゃないよな」

女「だがお前も男だ、高貴な美貌を誇る私の寝巻き姿に欲情するのは仕方がない
  特別に私をネタにすることを許可しよう。風呂場で一発抜いてくるがいい」

男「抜かねーよ」

女「む、なら手で手伝うくらいなら……」

男「いいから帰ってくれ、頼むから」

17: 2009/07/04(土) 18:09:47.37 ID:58QvGWVq0
男「……ああ?」

女「起きたか。朝食の仕度はできている、顔を洗ってこい」

男「……」

女「パンは何枚だ、一枚か?二枚か?」

男「……」

女「どうした?まだ寝ぼけているのか?」

男「なぜ昨晩に追い出した筈のお前が朝食を作っているんだ?」

女「光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女騎士だからな」

男「理由になってないよな」

女「重量を操れれば大概のことは可能だぞ?」

男「あああ……今更だが変なのにロックオンされちまった……」

18: 2009/07/04(土) 18:17:17.58 ID:58QvGWVq0
女「そんなわけでパーティ強化の為に放課後は買い物だ」

男「……帰りたい」

女「まずはここ、ポーションのたぐいからだな」

男「うん、ただのドラッグストアだよな、ここは」

女「男騎士が白魔法を覚えるのにはレベルがある程度必要になる
  それまではポーションや毒消しは必須だぞ?」

男「わかった。わかったから店員や周りの人に聞こえない音量で頼む」

女「ポーション……毒消し……ちょっと高いけどエーテル……」

男「待て、買い物カゴにコンOームを忍ばせる理由がわからない」

女「私達はまだクリアしていない、避妊は必要だ」

男「工口ゲーかよ」

20: 2009/07/04(土) 18:21:20.31 ID:58QvGWVq0
女「うむ、会心の出来だ」

男「会心なのはいいんだが、このクソ暑い日にウナギとトロロとか……」

女「精力をつけないと冒険は乗り切れないからな」

男「……なんか違う目的に感じるんだが」

女「思春期だ、そう思ってしまうのも仕方がない。だが私は理解がある、安心しろ」

男「俺にはお前が理解できないんだがな」

21: 2009/07/04(土) 18:24:03.28 ID:58QvGWVq0
女「夜だな」

男「夜だな」

女「明日に備えて床につこう」

男「いや、その前にお前は帰ろうな」

女「しかし夜は街の外のモンスターが強くなる。私一人では悔しいが危険だ」

男「ここにいる方が危険なんだよ」

女「もしお前が望むなら……恥ずかしいが私は構わない……」

男「危険なのは俺だ。俺が構うんだよ」

25: 2009/07/04(土) 18:27:25.60 ID:58QvGWVq0
女「さて、サブイベントのルートに入ったな」

男「最近は夏休みをそう呼ぶのか」

女「パーティの仲間同士で絆を深めるイベントだ」

男「そんなイベントはいらないな」

女「む、すると男はサモンナイトや最近のシャイニングシリーズを否定するのか?」

男「俺が否定しているのはお前だ」

28: 2009/07/04(土) 18:29:44.52 ID:58QvGWVq0
女「てれってー、女ちゃんはレベルアップした!」

男「キャラ変わってるぞ」

女「む、こういうのは嫌いか?」

男「俺の好みに合わせる気があるなら帰れよ」

女「従順な女が好みとは古風な。ここは和風キャラで行くべきだったか」

男「なんかどんどんボロが出てきたよなお前」

31: 2009/07/04(土) 18:34:56.36 ID:58QvGWVq0
女「仕方がないだろう、まだ情報がオーディン(笑)くらいしか出てないのだ」

男「むしろ最近のペルソナだろお前は」

女「む、男はメガテン派か?」

男「ゲームの話だと素で食いつくのな」

33: 2009/07/04(土) 18:36:55.62 ID:58QvGWVq0
女「人生は冒険だ!冒険こそが我が人生!」

男「そんな人生は嫌だ」

女「思春期か?モラトリアムか?」

男「言い方を帰る、俺は、お前が、嫌だ」

女「オレサマ、オマエ、マルカジリ!みたいだな」

男「俺の心の叫びをさらっとネタにして流すな」

35: 2009/07/04(土) 18:41:52.16 ID:58QvGWVq0
女「しかしお前もわからん奴だな」

男「お前にだけは言われたくない台詞だな」

女「高貴な女騎士のどこが不満なのだ?凛々しい女は好きじゃないのか?」

男「なんて言いえばお前にわかって貰えるのかわかんねーよ」

女「むう、やはり日本の男性は自立した女性像に引け目を感じるのか
  高貴であるならば何か弱点を……料理下手……方向音痴……天然……」

男「わけのわからない弱点はいらん、俺は別に劣等感の塊とかじゃない」

女「ならば高貴な美貌を誇る自立した女性像のシンボルである私を素直に愛するがいい」

男「お前の場合、自立した女性像とかじゃないだろう」

女「高貴な美貌は否定しないのだな」

男「うぐっ」

36: 2009/07/04(土) 18:45:31.29 ID:58QvGWVq0
女「さて、男が私に惚れていることが確認できた。フラグが立ったようだな」

男「惚れてない。フラグも立ってない」

女「そろそろお色気シーンが必要か」

男「人の話を聞け」

女「夏といえば水着……よし、プールに行くぞ」

男「もはやファンタジーでもなんでもないな、プールは」

女「海は紫外線と潮風が苦手なのです」

男「いきなり素かよ」

38: 2009/07/04(土) 18:47:31.35 ID:58QvGWVq0
男「……」

女「どうした、私の水着姿に見惚れたか?」

男「……いや、高級ホテルのプールという発想はなかった」

女「高貴だからな」

男「金持ちは違うなあ」

女「どうだ、私を選べば玉の輿だぞ?」

男「ファンタジーを忘れるくらい俗っぽい台詞だよなそれ」

40: 2009/07/04(土) 18:50:23.67 ID:58QvGWVq0
男「……」

女「どうした、何を呆れたような目で私を見ている」

男「いや、なんと言うか」

女「言いたいことがあるなら率直に言え。パーティ内で隠し事は良くない」

男「パーティとかでは断じてないが、じゃあ聞かせてもらうと、なんで浮き輪なんだ?」

女「私は泳げないからな。浮き輪を装備しないと危険だ」

男「う、う~ん……」

女「ん、あれか?ここは恥ずかしがった方がギャップに萌えるか?」

男「コメントし辛い」

41: 2009/07/04(土) 18:53:07.63 ID:58QvGWVq0
男「……」

女「今度はなんだ?今度こそ私のスレンダーかつ伸びやかなスタイルに見惚れたか?」

男「まあ、手足は長いよな」

女「ふっ、美しいものには素直に賛辞を贈っていいんだぞ?」

男「下手に見た目がいいと、頭の温かさが際立つよな」

女「失礼だな」

男「お前の親御さん、可愛そうだなあ」

女「待て、本気で憐れまれるとさすがに私も辛い」

42: 2009/07/04(土) 18:58:30.37 ID:58QvGWVq0
男「高い……珈琲一杯で800円って……高級ホテル恐るべし……」

女「だから私が払うと言っているじゃないか。プール代もお前の財布には辛かったろうに」

男「それはできない」

女「男が女に奢られることを恥ずかしがるのは差別でもあるんだぞ」

男「男女関係ないな、単純に人に奢られるのが嫌いなんだ」

女「……」

男「待て、別にアピールで言ってるんじゃない。熱い視線を俺に送るな」

女「いや、わかっている。幼い頃に両親を失って以来、高校で独り暮らしを始めるまで
  叔父さん夫婦の世話になっていたから自立志向が強いのだな」

男「人の経歴を勝手に調べるなお前は」

43: 2009/07/04(土) 19:01:33.65 ID:58QvGWVq0
女「さて、上に部屋をとってある」

男「帰る」

女「待て、女に恥をかかせる気か?」

男「プールに付き合ったんだから、それで満足してくれ」

女「私の誘いを断わるとは……」

男「そもそもお前に惚れられる理由がわからない」

女「お前となら世界を救える気がしたんだ」

男「電波かよ」

45: 2009/07/04(土) 19:03:31.70 ID:58QvGWVq0
女「わかった、それについて説明しよう。だから部屋に行こう」

男「ロビーでいいだろ」

女「個人的な話だ、人のいない場所でしたい」

男「……絶対何もしないと約束できるか?」

女「成り行き次第だな」

男「帰る」

女「待て、高貴だから嘘がつけないんだ!」

男「言い訳になってないだろ」

女「くっ、わかった。約束する」

男「絶対だぞ」

46: 2009/07/04(土) 19:06:16.92 ID:58QvGWVq0
男「おお、スイートルームすげえ……最上階だけに眺めもすげえ……」

女「街中だとこれが限界だな。海外には劣るがリゾート地だともう少し広々としているんだが」

男「やはりお前とは住む世界が違うな、二重の意味で」

女「パーティに王族や貴族が紛れているのはよくある話じゃないか、遠慮するな」

男「金銭的な話よりも、そっちの方にお前とは隔たりを感じる」

47: 2009/07/04(土) 19:10:03.40 ID:58QvGWVq0
男「で、なんで俺に付きまとう。理由がわからん」

女「もちろん惚れているからだ」

男「男前だな」

女「高貴な女騎士だからな」

男「それはいい。で、なんで俺なんかに惚れる
  身よりもないし、貯金だって大学入る頃には危険な額しかないぞ」

女「それは……」

男「それは?」

女「そう、あれは私が箱庭の生活に飽き飽きして普通の高校に通おうと決めた日のことだ」

男「あらかじめ言っておくが、作り話だと怒るぞ」

女「本当に信用がないのだな私は」

男「自業自得って言葉を体現しているな」

50: 2009/07/04(土) 19:16:25.16 ID:58QvGWVq0
女「お嬢様学校というものは私にとって心底退屈でな」

男「周りにゲームの話が出来る奴がいなかっただけだろ」

女「ああ、勿論だ」

男「自信満々だな」

女「とにかくそれでこの高校を選んだんだ、私は」

男「ふむ、それで?」

女「しかし私としては今までゲームの話を人としたことがなかったわけで
  いったいどうすればゲームの話を人と出来るのかわからないんだ
  誰も私にゲームの話をしてくれないし……」

男「ああ、お前は学校じゃ見るからにお嬢様なオーラ出してるからな
  そりゃゲームの話を振れる奴はいないだろう」

女「そうなんだ、それで私は今までどおり、お嬢様の仮面を被った生活を余儀なくされていたんだ」

男「社会の為にはその方が良いとも思うが……」

女「そう、でも私にとっては地獄なんだ、それは」

男「……生まれ育ちと嗜好が合わないってのも不幸な話だな、おい」

51: 2009/07/04(土) 19:23:26.87 ID:58QvGWVq0
男「でもネット使えばいいだろうに。ゲームの話なんか幾らでも出来るぞ」

女「駄目だ、そんなのリアルじゃない」

男「お前にリアルじゃないと言われたらネットやってる人達も浮かばれんな……」

女「違うんだ、私は雑談を求めているわけじゃないんだ
  世界を共にできるなまの人間を求めているんだ
  必要なのは体温なんだ。吐息、温もり、肌触り……」

男「ますます電波だな……で、それでなんで俺なんだよ」

女「……覚えているか?」

男「何を」

女「お前は覚えていないだろうな……」

男「だから何をだって」

女「お前、一年の時にクラスメイトだったオゥフのことを覚えているか?」

男「ああ、なんかいつも工口ゲーとかアイドルの話してた奴な」

女「そうだ、あいつが虐められそうになった時、お前庇っただろ?」

男「……あんま覚えてないな」

女「そうだな、お前はそういう奴だ」

52: 2009/07/04(土) 19:31:24.69 ID:58QvGWVq0
女「クラスの連中がオゥフの趣味を馬鹿にしだした時、お前はこう言ったんだ」

男「ふむ」

女「『まあ待てお前達。オゥフは確かに気持悪い。見た目も喋り方も話題も全てが気持悪い』」

男「……凄い酷いこと言ったんだな俺」

女「『だがちょっと待って欲しい。オゥフが気持悪いのと、オゥフの好きな物の気持悪さは別問題だ』と」

男「……(汗」

女「『だからオゥフを虐めるのは別に構わない。だが人の趣味を否定するのだけはやめてやれ』」

男「ある意味オゥフの人格っつーか存在を全否定したんだな俺」

女「そうだな。だが実際にお前の台詞でクラスメイトはオゥフを嫌いこそすれ
  趣味を馬鹿にしなくなった」

男「でも結局オゥフ転校したよな。虐めのせいで」

女「それはオゥフの問題であってお前の問題ではない」

男「話がいまいち見えない。どこに要点があるんだ?」

54: 2009/07/04(土) 19:39:36.52 ID:58QvGWVq0
女「つまりだ、お前がありきたりの正義を振り回す
  偽善的な輩ではないということだ。
  物事を明確に分けて捉えることのできる人間だということを
  私はあの時に知った。そしてお前に興味を持った」

男「……ああ?よくわからん」

女「わからないか?」

男「いまいち」

女「じゃあ、私に対するお前のスタンスを省みてみろ」

男「ふむ」

女「お前は自分が私に巻き込まれることを拒みこそすれ
  私の趣味自体は否定しない。それがキーポイントだ」

男「それは当たり前だ。お前が俺に迷惑をかけない限り、何をしようがお前の自由だ
  だからってお前の趣味を肯定しているわけでも受け入れているわけでもないんだがな」

女「そう、それだ。お前は私にお嬢様であることを求めていない
  むしろ私に何も求めていない。お前は他人が不快でなければ何も求めない人間だ」

男「俺は自分の人生で手一杯だからな」

女「だからこそ、私はお前に関わりたいと思ったんだ」

男「ほんと迷惑な奴だなお前は」

56: 2009/07/04(土) 19:45:40.74 ID:58QvGWVq0
女「オゥフの件以来、私はお前に着目した。家の者を使って調べさせもした」

男「犯罪すれすれだな」

女「そして確信したんだ。お前は私と世界を共に出来ると」

男「どこをどうすればそういう結論が出るのかさっぱりわからない」

女「要するに、お前はまっさらなのだ」

男「ますますわからん」

女「ゲームの話もそれなりにできる。スポーツの話もそれなりにできる
  音楽もゲームもマンガも小説も『それなりに』理解している」

男「ふむ」

女「だが、それがお前自身であると思っている物はない。まっさらだ」

男「……なんとなく言いたいことがわかってきたが、別にそれは俺に限った話じゃないな
  クラスの連中だってまだ何も見つけられてない奴ばかりだろう」

女「そう、そのくせ彼らは、あるいは彼女達はオゥフのような人間を攻撃する
  あれは一つの嫉妬、恐れなのだ。だが、お前には羨望も嫉妬もない。そうだろう?」

男「俺には関係ないからな」

女「そう、何も見つけていないのに、自分を隔離した在り方がお前の個性だ」

男「……わかるようなわからないような」

57: 2009/07/04(土) 19:49:23.83 ID:58QvGWVq0
女「なあ、私を求めてくれないか?
  私がお前の中身になろう。お前の空っぽな中身を私の世界観で埋めてやる」

男「光速の異名を持つ重力を自由に操る高貴な女騎士的な世界観はいらん」

女「違う、光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女騎士だ」

男「細かいところはこの際どうでもいい」

58: 2009/07/04(土) 19:53:43.16 ID:58QvGWVq0
男「だいたいだな、周囲にどうやってゲームの話をすればいいのか迷うような奴が
  なんで俺には全開で妄想ぶつけてこれるんだよ」

女「お前だからだ」

男「わからん」

女「私みたいな人間にとって、お前は怖くないんだ」

男「……わからん」

女「容姿や人格の批判などいい。それは私が勝ち取ったものではない。与えられたものだ」

男「ふむ」

女「だが私が自分で選び取ったものが否定されるのは耐えられない。わかるか?」

男「なんとなく」

女「だから私はお前を選んだ。私の本当に汚されたくない部分を否定しないお前をな」

男「否定はしないが拒絶はさせてもらう。俺を取り込もうとするな」

60: 2009/07/04(土) 19:55:34.30 ID:58QvGWVq0
女「わからないことは私がこれから教えてやる。なりきりは楽しいぞ」

男「結構だ。ライダーごっこは幼稚園で卒業した」

女「ライダーじゃない。騎士だ」

男「だから細かい違いはこの際どうでもいいんだってば」

62: 2009/07/04(土) 19:58:36.72 ID:58QvGWVq0
女「よし、じゃあ形からだ。コスプレをしよう」

男「嫌だ。お前じゃあるまいし、典型的な日本人体型の俺が騎士(笑)とか失笑もんだ」

女「じゃあ、段ボール箱のガンダムから始めよう」

男「それはファンタジーじゃないよな」

女「じゃあじゃあ、私を抱こう」

男「話の繋がりが見えないわけだが」

女「この際だ、話の繋がりはいい、体の繋がりを求めよう」

男「意味がわかんねえよ!」

63: 2009/07/04(土) 20:03:02.98 ID:58QvGWVq0
男「だいたいだな、自分のことを好きじゃないと言っている男に抱かれてお前は満足なのか?」

女「性的関係も私にとっては与えられたものだ
  お前と共に生きるという目的の為になら一向に構わない」

男「……」

女「お前の性格だ、私を抱いてしまえば責任を感じるだろう、情も湧くだろう。思う壺だな」

男「なるほど、お前の思考回路は少し理解できた気がする」

女「ならば勇気を持ってお前のエクスカリバーを私の肉壺に突き立てるんだ!」

男「なんか色々と台無しだな」

65: 2009/07/04(土) 20:09:03.75 ID:58QvGWVq0
男「まあ、話は一応わかった」

女「そうか、ではこのままベッドインをしようではないか」

男「それは断わる。理解はしたが、それと俺の意志は別問題だ」

女「お前の側の価値観で言えば、何が不満なのだ?
  高貴な美貌と伸びやかな肢体、適度に膨らんだ柔らかなO房、そしてお金持ち
  一般的な価値観で言えば最高じゃないか」

男「いや、散々言っているがファンタジーに生きようと思うわないんだよ、俺は」

女「ぬう、面倒くさい奴め」

男「お前がな」

68: 2009/07/04(土) 20:13:17.55 ID:58QvGWVq0
男「とにかく俺はファンタジーを生きようとは思わない。現実で手一杯なんだよ」

女「だからその現実は私が補填してやると言っているじゃないか」

男「俺は自分の力で生きたいんだ」

女「私を獲得したと思えばいい。それもお前の力で手に入れたものだろう?」

男「人を物扱いしたくない」

女「ええい、面倒くさい奴め!」

男「だからお前だ、それは。いい加減諦めろ」

女「いい加減私と生きてくれ」

男「あー、本気で困ってきた」

69: 2009/07/04(土) 20:15:19.07 ID:58QvGWVq0
男「わかった、悪いがお前とは断交させて貰う」

女「性交?」

男「断交だ。明日から俺はお前の相手を一切しない」

女「それは無理だな」

男「……なんで?」

女「そういうことをしたらお前の叔父さんが路頭に迷う」

男「もはや高貴でもなんでもなくなってきたな」

70: 2009/07/04(土) 20:17:55.49 ID:58QvGWVq0
女「まあ待て、人質は使いたくて使っているわけではない
  お前の気持ちを尊重しなければ、最初から人質を理由に抱かせているさ」

男「……」

女「わかった、私はどうやら焦りすぎたようだ。お前のペースに合わせようじゃないか」

男「あくまで俺を手に入れるのが既定路線なんだな」

女「そこは譲らん」

男「男前に理不尽だな」

71: 2009/07/04(土) 20:20:54.27 ID:58QvGWVq0
女「というわけで今日は山だ!」

男「昨日の今日でか……」

女「人里離れた山荘で殺人事件に巻き込まれよう」

男「お前の守備範囲はファンタジーだけではないということが最近ようやくわかってきた」

女「緊迫した状況で強まる二人の絆とか最高じゃないか」

男「ただの釣り橋効果だろ」

女「認識など全て錯覚だ。感情だけが本物だ、それの何が悪い?」

男「殺人事件に巻き込まれるとわかってて山荘に行くのは頭が悪いと思う」

73: 2009/07/04(土) 20:25:06.08 ID:58QvGWVq0
女「大変だ!」

男「お前のせいで、ここのところ俺は常に大変だ」

女「屋敷でバイオハザードが起きた!」

男「お前は家で何をしているのかと」

女「じゃあ、授業中にテ口リストが」

男「なんでもありだな、もはや」

女「やっぱり初心に帰って女騎士がいいか?」

男「どれを選んでも何処にも辿り着かないよな」

74: 2009/07/04(土) 20:28:25.02 ID:58QvGWVq0
女「むう、今時二人パーティは戦力的にどうか」

男「これ以上ややこしい奴を増やすのも、俺みたいな被害者を増やすのも反対だ」

女「ぬ、それは二人きりが良いということだな」

男「加害者が増えるのも被害者が増えるのも嫌なんだよ」

女「では諦めて私を抱け」

男「男前に迫られても困る」

女「じゃあ……お兄ちゃん!エOチしよ!」

男「……」

女「すまん、今のは無しで」

76: 2009/07/04(土) 20:35:42.22 ID:58QvGWVq0
男「……なんだその格好は」

女「ん、たまにはゴス口リ風なのも悪くないか思ってな
  女騎士が甲冑を脱いだら凄いんです的な」

男「う、う~ん……」

女「ブリティッシュ口リータの方が良かったか?」

男「う、う~ん……」

女「……やっぱり妹がいいのか?」

男「それはない」

77: 2009/07/04(土) 20:40:31.12 ID:58QvGWVq0
爺「突然ですが男様、お嬢様がお呼びです」

男「はっ?」

爺「ですから、お嬢様がお呼びなのです。今すぐ屋敷に来て欲しいと」

男「待て、あんたは誰だ。あと俺は今バイト中なわけだが」

爺「私は執事です。バイトに関しては先ほど店長に許可を得ました」

店長「ああ、いいよいいよ男くん。行ってきなさい。ちゃんと給料は出すから

男「て、店長?」

店長「ところでグループのお嬢さんの恋人なら最初に言っておいてくれなきゃー
   今までこき使ってて悪かったねえ。これからはもっと自由にやってくれていいからさ」
    」
男「俺の現実が……奴の我侭に侵食されていく……」

爺「ささ、車を表に待たせてあります」

78: 2009/07/04(土) 20:44:28.18 ID:58QvGWVq0
女「来たか」

男「『来たか』じゃない。俺の生活を荒らすな」

女「む、しかし完成した喜びを分かち合いたかったのだ、許せ」

男「……何が完成したって?」

女「もちろん冒険の為のフィールドだ」

男「は?」

女「屋敷の敷地内に森があってな。多少手を入れてモンスターを用意した」

男「……モンスター?」

女「最近の遺伝子工学の発達には目を見張るものがあるな」

男「俺の現実だけでは飽き足らず、世界の現実を壊す気かお前は」

80: 2009/07/04(土) 20:48:28.25 ID:58QvGWVq0
女「そんなわけで冒険だ!冒険に行くぞ!」

男「自ら用意した危険に飛び込むのは冒険の定義から外れる気がしなくもない」

女「危険とわかっていて踏み込む勇気が冒険なのだ」

男「理屈はなんでもいい。俺は嫌だと言っているんだ」

女「大丈夫だ、お前のレベルに合わせて大したモンスターは放していない」

男「そういう問題でもない。無駄に生き物を頃したくないし、そもそも見たくない」

女「……わかった」

男「菜食主義とか動物愛護とかじゃないんだけどな」

女「騎士じゃなくて白魔導士が良かったんだな?」

男「全然わかってないな」

83: 2009/07/04(土) 20:51:36.50 ID:58QvGWVq0
女「ペルソナ5まだー?」

男「……なぜ俺に聞く?」

女「メガテン4はまだですかー?」

男「だから俺に聞くな」

女「でも、他に話せる相手がいないのです」

男「たまに素だと思ったらこれか」

女「悪魔合体がしたいのです。このままではまたバイオハザードを引き起こしてしまいそうで……」

男「まずは世界の為に我慢を覚えることから始めような」

86: 2009/07/04(土) 20:58:21.74 ID:58QvGWVq0
女「夏休みは続く」

男「悪夢の間違いだな」

女「少年は少女の熱い想いに触れ、自らの中で凍っていた何かが溶けていくのを感じていた」

男「諦めという感情を知っただけだな」

女「待て、ナレーション中にキャラが台詞を入れるのは無しだろう」

男「バイト中に変なナレーションされるのは迷惑なんだよ。仕事に集中させてくれ」

店長「あー、いいからいいから。この時間は暇だし、せっかくお嬢さんが視察にいらしてるんだ」

男「大人って汚いよな」

女「庶民とは悲しい生き物だな」

男「俺に批判する権利はあるが、お前に見下す権利はないよな」

87: 2009/07/04(土) 21:03:23.57 ID:58QvGWVq0
女「動物を遺伝的にいじるのは禁止されたので、ロボット軍団を用意してみた」

男「どうしても妄想を現実に持ち込みたいんだなお前は」

女「機械兵vs光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女騎士だな」

男「俺、そのフレーズいまだに暗唱できない」

女「お前は白騎士→白魔道士と来て、ガンナーにクラスチェンジだな」

男「何でもいいが、俺はロボットなんて見ないし戦わないぞ」

女「……いったいどうすれば満足するんだお前は?」

男「何もするなと言っている」

女「受動的に生きる物は豚だ!家畜だ!
  能動的に生きてこそ人は人足り得る!」

男「家畜でいいから俺のことは放っておいてくれ」

女「私に飼われてみないか?」

男「お前に飼われるくらいなら過酷な野生でいたい」

89: 2009/07/04(土) 21:06:53.76 ID:58QvGWVq0
女「危険な水着を手に入れた」

男「そうか、なら売って金にしてこい」

女「待て、ここは嫌がる私に無理矢理装備させるべきだろう」

男「被虐嗜好か」

女「高貴な女騎士でも時々虐めて欲しい夜があるようだ」

男「工口ゲーでもやっとけよ」

女「お前に虐めて欲しいんだ!お前じゃなきゃ駄目なんだ!」

男「だから男前に変態的なことを叫ぶなと」

91: 2009/07/04(土) 21:11:19.20 ID:58QvGWVq0
女「オーディン(笑)」

男「そこを笑えるなら、高速がどうとか重量がどうとかも同じなんじゃないのか?」

女「光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女騎士か?こっちはいいんだ」

男「違いがわからん」

女「むう、説明が難しいな。なんと言うか、あれだ、こう、がっ!って感じだ」

男「お前って実は馬鹿だろ?」

女「こういうの可愛くないか?」

男「……お前、密かに可愛いキャラに憧れてないか?」

女「ばっ、馬鹿なことを言うなっ!高貴な美貌を誇る私にそんなことあるわけないだろっ!」

男「うーん……」

93: 2009/07/04(土) 21:13:40.42 ID:58QvGWVq0
猫「な゛ー」

女「はうっ!」

男「な、なんだ?」

猫「な゛ー」

女「はうぅ……モフモフ……モフモフしたい……」

男「遺伝子改造とか支持してる人間の態度とは思えんな」

女「それはそれ!これはこれだ!」

男「力いっぱい都合がいいな」

女「人間のエゴだな」

男「自分で言うな」

猫「な゛ー」

96: 2009/07/04(土) 21:16:31.76 ID:58QvGWVq0
爺「突然ですが男様」

男「帰ってください。俺は今から寝るところです」

爺「いや、寝巻き姿のところを拉致ってこいとお嬢様のご命令が」

男「前々から思ってたんだが、あんたは自分の主人があんなんで良いのか?」

爺「……お嬢様の喜びが私めの喜びです」

男「一瞬の間が気になるな」

爺「お嬢様には内密に」

98: 2009/07/04(土) 21:20:41.97 ID:58QvGWVq0
女「来たか」

男「来られるのも迷惑だが、拉致られるのも迷惑だ」

女「さあ、添い寝をしてくれ」

男「断わる。夜中に呼び出してそんな用事か」

女「悪い夢に狙われているんだ。現実では私に勝てない奴等の企みだと思う」

男「妄想の中の現実ってややこしいな」

女「さあ、キングサイズのベッドだ、遠慮することはない」

男「遠慮とかじゃなくて、迷惑だと言っている」

女「私が怖い夢に脅えているのだぞ?それを見捨てると言うのか!」

男「う、うーん……」

女「頼みます、さっきホラーゲームやったせいで怖くて寝れないのです……」

男「お嬢様モードでぶっちゃけられても駄目なものは駄目だ」

100: 2009/07/04(土) 21:25:18.20 ID:58QvGWVq0
女「冒険といえば酒場だな」

男「まあセオリーではある」

女「なら何故そんな不満そうなんだ」

男「未成年をこんなところに連れてきてどうしようというんだ」

女「決まっている。お前を酔わせて既成事実を作ろうとしているのだ」

男「帰る」

女「待て、この私の酒が飲めないと言うのか?」

男「お前も未成年だろ!出来上がってんじゃねえ!」

女「よ、よ、酔ってなどいにゃいっ!」

男「噛むな、どもるな」

101: 2009/07/04(土) 21:27:57.28 ID:58QvGWVq0
女「そろそろドラクエ、FFに続く国民的シリーズが誕生しても良いと思うんだが」

男「ロマサガ、メガテン、テイルズあたりがあるじゃないか」

女「テイルズ(笑)日本三大RPG(笑)」

男「お前の好みがまったくわからない。じゃあポケモンでいいだろ」

女「ピカチュウ元気でチュウ!」

男「……」

女「すまん、わかっている。何も言わないでくれ」

103: 2009/07/04(土) 21:30:20.03 ID:58QvGWVq0
女「……」

爺「……お嬢様、いったい何を?」

女「爺っ!?」

爺「ふむ、ネコミミでございますか」

女「……に、似合わないか?」

爺「お嬢様は凛々しい顔立ちですので、コケティッシュなものはあまり……」

女「わかった、私に一生高貴な女騎士でいろと言うことだな」

爺「それは……」

106: 2009/07/04(土) 21:36:00.15 ID:58QvGWVq0
女「屋敷の地下に巨大迷宮を作ってみたぞ」

男「思いつきで大掛かりな無駄を行うな」

女「ガンナーのままだと兆弾が危ないから、今度は忍者だ」

男「冒険に出ていない俺は、おそらくお前の設定だとLv.1のままだと思うんだが
  クラスチェンジに何か意味があるのか?」

女「忍者はクリティカルの一撃氏もあれば、宝箱の罠を解除することもできるからな」

男「聞けよ」

108: 2009/07/04(土) 21:40:28.18 ID:58QvGWVq0
女「高貴な女騎士と王様ゲームをしよう」

男「何もかもが間違ってるな」

女「不満があるなら言ってみるがいい」

男「二人でやるものじゃないし、やる気もない」

女「エOチなことがし放題だぞ?」

男「お前にそんなことは望んでいないと言っている」

女「がははー!とか言いながら犯してくれてもいいじゃないか」

男「工口ゲーも守備範囲なのか」

112: 2009/07/04(土) 21:43:06.60 ID:58QvGWVq0
女「突然だが、今度グループの末端に消費者金融を作ることになった」

男「あくどいな」

女「大手銀行が消費者金融とグループ化する時代だからな」

男「最悪だ」

女「ちなみにCMも作った。『ほのぼのレOプ』のフレーズは耳に残ると思う」

男「パクリな上に放送できないだろ」

女「しかし惹かれるフレーズだろう?」

男「お前の願望を世間様に押し付けるな」

116: 2009/07/04(土) 21:46:08.68 ID:58QvGWVq0
女「妹がいることが発覚した」

男「なに?」

女「父の愛人の子だ。嫉妬に狂った母が愛人を頃したのだが子供は屋敷で引き取ることになった」

男「……(汗」

女「オウガ的だと思っているか?」

男「怖すぎてどう反応すればいいのかわからない俺にそんな余裕はないな」

117: 2009/07/04(土) 21:49:16.50 ID:58QvGWVq0
妹「あう……」

女「大丈夫だ、母の魔の手からは必ず守ってみせる」

男「……(汗」

妹「あうぅ……」

女「この男は私の婚約者だ、味方だと思ってくれていい」

男「待て、さらっと嘘を教えるな」

女「現在、父と母と爺で交渉中だ。安心しろ、お前は必ず私が守る」

妹「……うぅ」

女「いざとなったら父が母を頃すだろう。お前は大丈夫だ」

男「俺を家に帰してくれないか?巻き込まないでくれ」

118: 2009/07/04(土) 21:53:10.52 ID:58QvGWVq0
爺「まとまりましたぞ」

女「そうか、どうなった」

爺「相続権を放棄し、母方の姓で生きるなら奥方様は引き下がるそうです」

女「そうか、上出来だ」

妹「あう……」

女「もう大丈夫だ。一族間の契約は絶対だ」

男「なあ、話がまとまったなら俺を帰してくれ」

119: 2009/07/04(土) 21:59:01.33 ID:58QvGWVq0
妹「……」

男「相変わらず元気がないな」

女「仕方がない、目の前で母を殺されたのだ、ショックは大きかろう」

男「……お前って現実面ではドライだよな」

女「高貴なものは過酷さと向き合わなければならんからな」

男「良いか悪いかは別にして、妄想も役に立つんだな」

女「信念による取捨選択だ。風の流れに惑わされる愚民と高貴な女騎士は違うのだよ」

男「一見かっこいいこと言ってるようけど、迷惑かけられてる俺としては凄い反応に困る」

121: 2009/07/04(土) 22:02:24.05 ID:58QvGWVq0
妹「うぅ……」

男「……」

妹「うぅ……?」

男「……甘い物、好きか?」

妹「あぅ……」

男「チョコレートあるけど、食うか?」

妹「うぅ……チョコ……?」

男「うん、食べていいぞ、ほれ」

妹「うぅ……(モシャモシャ」

男「甘いか?」

妹「うぅ……(コクン」

男「そうか、甘いと少し癒されるよな」

妹「うぅ……?」

女「……まさか口リコンだったとはな」

男「違う」

124: 2009/07/04(土) 22:05:37.23 ID:58QvGWVq0
女「どうやら妹はショックで言葉に不自由しているようだな」

男「うーん」

女「同情か?私の求愛は袖にするくせに、あうあうな口リコンには御執心だというのか?」

男「お前、嫉妬なのかなんなのか知らんが、凄まじいこと口走ってるぞ」

女「あうあうなのは事実だ。事実を隠蔽することが優しさだとは私は思わん」

男「まず落ち着こう、な?」

女「抱きしめてくれたら落ち着こうではないか」

男「駄々っ子かヤクザだな」

126: 2009/07/04(土) 22:09:04.80 ID:58QvGWVq0
妹「あぅ……」

男「ん?どうした?」

妹「おぉ……」

男「??」

妹「おにぃ……ちゃん」

男「ふむ、俺はお兄ちゃんだったのか」

妹「おにぃ……ちゃん」

男「うーむ、どうやら懐かれたらしい」

女「そうか、血を分けた妹と戦わなければならない日が来るとは……」

男「待て、その剣をしまえ」

女「所詮は血塗られた道か……」

男「嫉妬深いところは親から受け継がなくていいから落ち着け」

女「だったら……男「わかったよ!ほら!」

ギュッ

女「えっ」

129: 2009/07/04(土) 22:11:37.55 ID:58QvGWVq0
男「……落ち着いたか?」

女「……」

男「って、おい、なに血の涙を流してやがる!?」

女「……悔しいんだ」

男「何が?」

女「今まで私に触れてくれもしなかったのに、妹の為なら抱きしめられるんだな」

男「!?」

女「やはり頃すしかないようだ……」

男「待て!落ち着けー!」

132: 2009/07/04(土) 22:17:11.73 ID:58QvGWVq0
男「待て、話を聞け!誤解するな!」

女「?」

男「お前に人頃しになって欲しくないんだよ!俺は!」

女「えっ、それって……」

男「……人頃しとは友達でいられないんだよ、俺は」

女「わかった、式を挙げよう」

男「待て、気が早すぎる。別に好きとか愛してるとかそういう話はしていない」

135: 2009/07/04(土) 22:19:46.51 ID:58QvGWVq0
妹「おねぇ……ちゃ?」

男「惜しい。『おねえちゃん』だ」

妹「おね……ちゃん?」

女「私としては『光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女騎士のお姉様』と呼んで欲しい」

妹「こぅそ……??」

男「無理だろ、それは」

136: 2009/07/04(土) 22:22:10.57 ID:58QvGWVq0
妹「ふぁ……ふぁ……」

男「?」

妹「ふぁぃ……ら……」

男「さっそく妹に何を教えてるんだお前は」

女「パーティバランス的に、黒魔道士が欲しいところだからな」

男「お前、この子があうあうだと思って……」

女「あうあう口リコン黒魔道士って新しいな」

男「あうあうな時点で難しいだろ」

138: 2009/07/04(土) 22:26:31.05 ID:58QvGWVq0
妹「チョコ……おぃし……(モシャモシャ」

男「そうか、でも後でちゃんと歯を磨こうな?」

妹「は……みが……く?」

男「そうそう、歯磨きしないと痛い痛いになるからな」

妹「いたぃの……や……」

男「ちゃんと歯磨きすれば大丈夫だ」

妹「うぅ……みがぃ……て……くれる?」

男「ん、まだ自分じゃ磨けないのか」

妹「おにぃ……ちゃん……」

男「わかったわかった、じゃあ最初の内は俺が…女「やはり口リコンか」

男「違うだろ。なんで無理矢理不純な方向に持っていくんだ」

女「まだ幼い妹の口に棒状のものを出し入れしようなどと……」

男「欲求不満ならそのへんでオXXーでもしてこい、な?」

女「その言い草はさすがに酷いと思う」

143: 2009/07/04(土) 22:31:40.33 ID:58QvGWVq0
確かに。あうあう口リ黒魔道士が正しい
というわけでご飯にします。保守はしないでくだされ

151: 2009/07/04(土) 23:03:22.52 ID:58QvGWVq0
買い置きの冷凍唐揚げウマウマ

152: 2009/07/04(土) 23:09:33.96 ID:58QvGWVq0
男「とにかく、だ。俺は口リコンではない」

女「ならば証明して見せろ」

男「……どうやって?」

女「細身ながら伸びやかな肢体を持つ私を抱けたら口リコンではないと認めてやる」

男「却下」

女「何故だ!」

男「常識で考えろ」

女「私の辞書に常識などない!」

男「すまん、言い方が悪かった。諦めろ」

女「嫌だ。お前は絶対に私の夫になるのだ」

男「無理だってば」

女「騎士夫婦とか最高じゃないか」

男「お前の妄想に巻き込むなってば」

女「……なんかパワーダウンしてないか?」

男「突っ込むのは体力いるんだよ」

154: 2009/07/04(土) 23:14:40.76 ID:58QvGWVq0
妹「……目が覚めました」

男「ん?」

妹「わたちは、お母さまをうしなったショックで、どうやらあうあうになっていたようでち」

男「え?あれ?」

妹「お兄ちゃん、ありがとうでち。お兄ちゃんの温かな優しさであうあうから立ち直ったでち」

女「やはり愛か。口リコンか」

男「待て、まず驚くべきだろ、この事態に。人として」

156: 2009/07/04(土) 23:19:34.90 ID:58QvGWVq0
妹「おねいちゃん、まずは助けてくれたお礼をいうでち
  あたちが殺されないで済んだのは、おねいちゃんのおかげでち。ありがとうでち」

女「礼には及ばない。愚かな母の凶行を止められなかったのだからな」

妹「それでもありがとうでち。お母さまのことは残念でちたが
  こうしてお兄ちゃんと出会えたのでち」

男「え?」

女「……なに?」

妹「あたちはこれからお兄ちゃんと暮らしていくでち。この家にいるわけにはいかないでち」

男「え?え?」

女「それは許さん」

妹「お母さまを頃した人と同じ屋根の下では暮らせまちぇん。わかってくださいおねいちゃん」

女「この屋敷を出るのは構わん。だが何故にこの男のところなんだ」

妹「そりは……あたちとお兄ちゃんが相思相愛だからでち!」

男「待て、大嘘を力強く宣言するな。血は争えないのか?」

女「……宣戦布告と受け取った」

男「お前も狂犬みたいな思考回路はやめろ」

158: 2009/07/04(土) 23:24:35.83 ID:58QvGWVq0
妹「お兄ちゃんは間違いなくあたちを選んだでち。おねいちゃんは潔く身を引くべきでち」

女「そうか、氏にたいのだな。望みのままに頃してくれよう」

男「待て!落ち着け!相手はまだ子供だぞ!?」

女「愛に年齢は関係ない」

男「あるだろ!なかったら児童ポルノとか問題にならないから!」

妹「高貴な女騎士さまが嫉妬に狂って殺人でちか?所詮あの女の娘でちね」

女「母は母、私は私だ。知の繋がり諸共この剣で因果を断ち切ってみせる!」

男「だから格好良さげな言い回しで低レベルな凶行を美化するのはやめろ!」

159: 2009/07/04(土) 23:30:44.31 ID:58QvGWVq0
妹「さあ、お兄ちゃん。二人の愛は永遠でち。一緒に氏にまちょう」

男「はぁっ!?」

女「氏ぬのは妹、お前だけだ」

妹「氏は究極の到達点でと。幻想に生きる人が唯一現実と触れ合う交錯点なのでち」

女「詭弁だな!」

男「待て待て、お互い落ち着け。ついていけない」

妹「ごめんでち、適当に口から出まかせ言ってるだけで、あんまり考えてないでち」

男「おい!」

妹「おねいちゃんをいじると面白そうなので、ちょっと遊んでみただけでち」

女「……ならば男に懸想しているというのも嘘なのだな?」

妹「いや、そこは本当でち」

女「そうか、ならば氏ね」

男「誰かー!止めろ!この姉妹を止めてくれー!」

160: 2009/07/04(土) 23:33:59.85 ID:58QvGWVq0
爺「そこまでですぞ、お嬢様!」

男「執事さん!」

爺「なりません、お嬢さま。先日奥方様の凶行を揉み消したばかりです
  立て続けに事件を起こされては、さすがに旦那さまの立場が……」

女「そうか、長老会が黙っていないか」

妹「ふん、政治的でちね。自らの感情に嘘をついてまで権勢にしがみつきたいとは」

爺「人類はかように情念を押し殺さねばならないところまで来ているのです」

男「お前ら全員馬鹿だろ、実は」

162: 2009/07/04(土) 23:39:49.20 ID:58QvGWVq0
女「というわけで妹は放逐。海外に強制留学だ」

妹「ひどいでち!人権侵害でち!」

男「そこに怒るなら母親を殺されたことに怒ろうな」

妹「ああ、あんなアバズレどうでもいいでち。不倫なんかするのが悪いでち。子供まで作って」

男「う、うーん……」

妹「産まれた子供がどういう気持になるか考えない出産こそ人権侵害でち」

男「う、うーん……?」

妹「あたしたちは自ら選んで生まれくることはできまちぇん
  『この』あたち、つまり連続性を感覚として持つ主体が成立するまでは
  精子だろうが赤ちゃんだろうが、全部ただの『性質』でち。人ではありまちぇん」

男「……うーん」

妹「だから与えられた自分に気付いた時、人はどうしようもなく自らの生を始めなくてはなりまちぇん
  否応なく、あたしたちは始まってしまうのでち」

男「……はぁ」

女「だからこそ、自らが選び、創らなくてはならないのだろう?」

男「……さすが姉妹。お前ら話通じるのな」

妹「お兄ちゃんもちょっとは頭使ってくだちゃい」

164: 2009/07/04(土) 23:45:23.71 ID:58QvGWVq0
女「とにかく、だ。妹は放逐。これは私が私の世界を選び取る上で必要なことだ」

妹「横暴でち!あたちの世界はどうなるでちか!?」

女「自らの世界は自らの力で勝ち取るものだ」

妹「酷いでち!あたちはまだ子供でち!」

女「……ならば権利を主張するな
  自らの世界を口にするものが、子供であることを言い訳にすることは許されん」

男「執事さんはこの馬鹿姉妹が何を言っているのかわかるんですか?」

爺「……内容自体は」

男「遠回しに意味不明と言ってるのと同じだな、おい」

167: 2009/07/04(土) 23:49:33.09 ID:58QvGWVq0
女「そんなわけで妹はオーストリアに行った。危険は去ったのだ」

男「なんだかわからんが、お前が人を殺さずに済んだわけだな」

女「まあ、復讐の種を植えただけなのだがな」

男「自覚はあるのか」

女「だが、芽生えたそれが大きな実をつけ花を咲かせた時こそが刈り時、いや狩り時だ」

男「変質的だな」

女「大丈夫、お前との初プレイはノーマルで構わない」

男「何が大丈夫なのかさっぱりわからないわけだが」

170: 2009/07/05(日) 00:01:03.29 ID:oWB3ayw00
女「久しぶりな気がするな、こうしてお前の部屋で二人っきりというのは」

男「勝手に和んでないで帰ってくれ」

女「どうだ?最近少し胸の成長が著しいわけだが、触ってみないか?」

男「少しは恥らえ。男前を通り越して痴女になりつつある」

女「エOチな女騎士は嫌いか?」

男「高貴の方がマシだな」

女「わかった、ならば決闘だ!」

男「は?」

女「……あ」

男「もしかして、結婚と決闘を間違えたのか?」

女「……(コクン」

男「シモネタで恥らわないお前が、ボケかたを間違えただけで何故そんな風になる」

172: 2009/07/05(日) 00:06:10.04 ID:oWB3ayw00
女「……なあ?」

男「なんだ」

女「もし……もしもだぞ?もし私が……」

男「?」

女「もし私が私は光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女騎士をやめて
  お前が望むような女になったら、お前は愛してくれるのか?」

男「は?」

女「勘違いするな、あくまで仮定の話だ」

男「うーん……」

女「……(ドキドキ)」

173: 2009/07/05(日) 00:09:57.28 ID:oWB3ayw00
男「……いや、わからん。上手く想像できない」

女「えっ?」

男「光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女騎士をやめたお前だろ?
  それはもうお前じゃないんじゃないか?だから上手く想像できない」

女「あっ……」

男「?」

女「……光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女騎士って間違わずに言えた」

男「ああ、そうなのか。適当だったが、覚えたのかもな」

女「……やっぱりお前を選んで正解だった」

男「設定覚えただけでか」

女「いや、違う。そうではない。そうではないんだが……」

男「??」

女「いや、いいさ。私の目に狂いはなかったということだ
  さすが光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女騎士の私だな」

男「……よくわからん」

女「それもまた、お前がお前であるからなのだろうな」

175: 2009/07/05(日) 00:17:19.51 ID:oWB3ayw00
女「そんなわけで今日も冒険だな!」

男「全て未遂だ。そして今日も未遂に終わる予定だ」

女「今度こそ!」

男「今度もだ」

女「……ありがとう」

男「ん?なんか言ったか?」

女「いいや、なんでもない。今日はチョコボだ!チョコボに乗るぞ!」

男「ちょっ!遺伝子工学で変なもの創るのはやめろって言っただろ!」

チョコボ「ぐげげげげげげげげげ」

女「見ろ!モフモフしてて可愛いだろ!」

男「チョコボじゃない!これは絶対チョコボじゃない!モフモフじゃなくてグチョグチョしてるだろ!」

女「じゃあ世界観を変更してゾンビ退治と洒落こもうではないか!」

男「帰せ!今すぐ俺を家に変えせ!現実世界に帰せええええええええ!」

女「駄目だ、お前は私の夫になって夫婦騎士になり、未来の勇者を産むのだ!

男「子供が恨むような産み方はやめろって誰かが言ってただろ!勘弁しろおおおおお!」

176: 2009/07/05(日) 00:20:04.48 ID:oWB3ayw00
ごめんね、終わりなんだEND

177: 2009/07/05(日) 00:21:54.02 ID:LVGmXQFQO
>>176
えっ?

178: 2009/07/05(日) 00:21:56.71 ID:hVMWM7t20
面白かったよ

186: 2009/07/05(日) 00:32:52.20 ID:a5EKpMJS0

久々に面白いSSスレだった

189: 2009/07/05(日) 00:42:10.68 ID:oWB3ayw00
読んでくれた人ありがとうでした
思いつきで書き殴っているだけなので、終わる時は突然終わります
がっかりした人すいません
あと、ぴっを入れるのを忘れたのでしが、氏ぬほどどうでもいいですね

引用: 女「私は光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女騎士 」