1: 2009/06/27(土) 13:21:19.33 ID:7DF+8IK80
男「そうか、よかったな」

女「はい!よかったです!」

男「……」

女「……」

男「……ところで君は誰なんだろう?」

女「はい!処Oの女ちゃんです!」

男「いや、そういうことじゃなくて……」

女「ごめんなさい!あたし処Oだけど馬鹿ですから!難しいことよくわからないですから!」

男「……これが噂のゆとり?」

女「いえ!そういう安易な世代差別は自らの劣等性を喧伝するようなものだと思います!」

男「なんの嫌がらせなんだよお前は」

2: 2009/06/27(土) 13:26:39.25 ID:7DF+8IK80
男「とにかく俺はこれから休日出勤しないといけないんだ、すまないが帰ってくれ」

女「はい!ちゃんと留守番してます!」

男「違う、帰れと言っている」

女「はい!ちゃんと裸エプロンでお料理作って待ってますから!」

男「あ、もしもし?警察ですか?」

女「国家権力は駄目ですー!」

男「あっ、おい携帯返せ!」

女「もう通報しませんか?」

男「お前が帰ってくれるならな」

女「でも、あたし料理上手いですよ?」

男「そういう問題ではないな」

女「女子高生ですよ?可愛いですよ?」

男「だからそういう問題じゃないって言ってるだろ!馬鹿か!」

女「はい!馬鹿ですけど処Oですから!」

男「ああああなんでこんなのが俺の所に……」

3: 2009/06/27(土) 13:30:52.79 ID:7DF+8IK80
男「とにかく帰れ、今すぐ帰れ」

女「……ショボーン」

男「凹むなよ!凹みたいのは急な休日出勤が決まった上にお前みたいなのに絡まれてる俺だよ!」

女「仕事とあたし、どっちをとるんですか!?」

男「だから意味がわかんないんだよお前は!」

6: 2009/06/27(土) 13:35:29.04 ID:7DF+8IK80
隣「あ、あの……?どうしたんですか?」

男「あ、お隣さん、すいません、なんか変な女子高生が突然押しかけてきて……」

女「あ、こんにちはー!初めまして、あたし男さんとお付き合いさせて頂いている女です!」

男「大嘘ついて俺のプライベートな人間関係を荒らすな!」

隣「え、えっと……?」

8: 2009/06/27(土) 13:40:11.70 ID:7DF+8IK80
男「すみません本当に……何かあったら、すぐに俺の携帯か警察に連絡してください……」

隣「はい、休日なのに大変ですね……お仕事頑張ってください」

男「いえ、こちらこそ本当にすみません、こんな面倒なことに巻き込んで……」

女「あんまりペコペコすると、男さんの男を下げますよ?」

男「誰のせいで俺がこんなに頭を下げてると思ってんだ、お前は」

隣「ま、まあまあ……悪気はなさそうですし……」

女「はい!あたし馬鹿だけど悪意はないですから!」

男「……俺なんかお前に恨まれるようなことしたか?」

10: 2009/06/27(土) 13:44:22.33 ID:7DF+8IK80
隣「えーっと……と、とりあえず私の部屋に来る?
  男さんは夜にならないと帰ってこないでしょうし……」

女「はい!是非お邪魔します!男さん帰ってくるの楽しみです!」

隣(この子、微妙に会話が噛み合わないわ……)

女「あ、カラス!黒いですね!」

隣「え?あ、ええ、うん、そうね……」

女「うわー!雲大きい!夏ですね!さすが夏って感じですね!」

隣(つ、疲れる……)

13: 2009/06/27(土) 13:48:55.23 ID:7DF+8IK80
男「ただいま帰りました!隣さん無事ですか!?」

女「あ!男さんだ!おかえりなさい!嬉しいな!嬉しいな!」

男「お前の安否はどうでもいい、隣さんはどうした?」

女「なんかね!頭が痛いって言ってさっき寝込んじゃった!心配です!心配だね!」

男「確実にお前のせいだな、隣さん大丈夫ですか……?」

隣「す、すいません……色々と疲労が……」

男「いえ、こちらこそすみません、本当に申し訳ない……」

女「なんだか謝りっこおかしいね!どっちも悪くないのにね!大人って不思議です!」

男「不思議なのはお前の頭の中身なんだよ」

隣(ほ、本当に疲れた……)

15: 2009/06/27(土) 13:53:19.77 ID:7DF+8IK80
男「というわけで結局お前はなんなんだよ」

女「好きなんです!男さんのことが!すっごく!ハイパーすっごく!」

男「俺はお前など知らん。どこの誰なんだ?いつ俺を知ったんだよ?」

女「うん!一度に沢山質問されるとわかりません!わからないです!困ったね!困りました!」

男「お前の世界では二つから沢山なのか……」

女「弱ったね!弱りました!」

男「困っているのも弱っているのも俺の方だろ……」



18: 2009/06/27(土) 13:56:20.98 ID:7DF+8IK80
女「でもほら!あたし処Oですから!処Oですし!」

男「俺が童Oだからって処O処O連呼しても無駄だぞ」

女「でもほら!今時の女子高生で目ぼしいのは大体突っ込まれちゃってますから!貴重かなって!」

男「何を突っ込まれるんだよ!つーかお前の場合その性格だから当たり前だ!貴重とかそういう話じゃねえ!」

女「ふと思うんですが、そんなに血管浮かせて怒鳴ってばかりだと疲れませんか?」

男「……本当に俺はお前に何をしたんだよ……どんな罰ゲームだよこれ……」

22: 2009/06/27(土) 14:00:29.39 ID:7DF+8IK80
>>21
心底すいません、本当にごめんなさい
スレを立ててみないと続けられるかどうかわからない本当の馬鹿で申し訳ありません

26: 2009/06/27(土) 14:04:29.51 ID:7DF+8IK80
男「本当に帰ってくれ。もう隣さんに迷惑かけるわけにもいかないんだよ」

女「えっと、でも、今日はここに泊まるつもりで……」

男「だからなんで俺の都合とか関係ないんだよお前の言動は!」

女「……ごめんなさい」

男「あ、え、え?」

女「馬鹿でごめんなさい……でも、男さんを困らせたいわけじゃないんです……ごめんなさい……」

男「あー!泣くなよ!俺が悪いみたいじゃんか!!」

女「うぅ……ひぐっ……ごめんなさい……」

29: 2009/06/27(土) 14:10:02.43 ID:7DF+8IK80
隣「あ、あの~?」

男「あ、すみません、五月蝿かったですよね……夜中にこんな大声で……」

隣「いえ、それはいいんですけど……もしよろしければ女ちゃん、今晩はこっちで預かりましょうか?」

男「いえいえ!丸一日ご迷惑をおかけして、これ以上は……」

隣「で、でも、女の子をここに泊めるのは色々な意味でちょっと……」

男「あー、いや、それはそうなんですが、警察に連絡すれば
  家出少女の届出とかあるかもしれないですし……」

女「うぅ……ごめんなさい……でも…警察は勘弁してください……」

男「あー!いい加減泣きやんでくれよ!」

隣「私のことは大丈夫ですから……女ちゃんも大人しくなった見たいですし……」

女「ごめんなさい……ごめんなさい……見捨てないでください……」

男「うう……」

30: 2009/06/27(土) 14:12:56.34 ID:7DF+8IK80
女「すぴー……すぴー……」

隣「泣き疲れて寝ちゃったのね……」

女「すぴー……すぴー……」

隣「寝てるとお人形さんみたいで可愛いなあ、やっぱり肌のはりとか全然違うのね……」

女「う……う~ん……」

隣「あらあら、お布団這いじゃ駄目よ……って、えっ?これって……」

女「うぅ……ごめんなさい……ごめんなさい……」

隣「……」

31: 2009/06/27(土) 14:19:50.49 ID:7DF+8IK80
女「おはようございます!今日も良い天気ですね!やっぱり夏パワーは凄いです!」

男「夏本番はまだ先だけどなー」

女「でも、こう、なんと言うか、ポテンシャル!ポテンシャルを感じますよね!」

男「……(こんなに明るくて元気なのになあ)」


~回想~

ピンポーン

男「……うう?」

ガチャ

男「はい、どちら様で……て、隣さん?」

隣「すいません、あの、まだ起きてました?」

男「いえ、寝てましたが……あ、大丈夫です?どうしました?」

隣「ちょっと話しておきたいことが……女ちゃんのことなんですが……」

男「??」

35: 2009/06/27(土) 14:25:12.80 ID:7DF+8IK80
女「男さんは夏は好きですか?暑いの好きですか?あたしは好きです!」

男「あー、俺はあんまり暑いのはなあ……」

女「でも、カキ氷美味しいです!スイカも最高です!地球みたいに美味しいです!」

男「そうかー壮大な味だなーそれは」

女「はい!水の惑星の象徴的な果物ですよねスイカ!」

男(虐待か……)


~回想~

男「え?身体に傷が?」

隣「はい、お布団を直そうとした時に偶然……
  お腹とかわき腹、背中にみみず腫れや痣が沢山あって……」

男「……」

隣「それで、寝言でもうなされながら必氏に謝ってて……」

男「逃げて……来たんですかね?でもなんで俺の所に?」

女「さあ……でも、私このまま女ちゃんを帰すのは心配なんです」

男「う、う~ん……」

36: 2009/06/27(土) 14:30:35.41 ID:7DF+8IK80
女「スイカ!スイカです!凄いです!」

隣「うふふ、スーパーにもう出てたから、奮発しちゃいました」

男「すいません隣さん……あの、お金は後でちゃんと……」

隣「いいんですよ、女ちゃんも喜んでますし、気にしないでください」

男「はあ、すいません、何から何まで……
  でも女の衣類代なんかは俺が……」

隣「うーん、じゃあそれは半分ずつってことで」

男「そんな!それじゃあまりにも」

隣「良いんですよ、なんだか私、あの子のことが好きになっちゃったみたいです」

男「隣さん……」

女「ぐわっ!スイカさんが!スイカさんの体液があたしの目に!顔に!ドピュって!」

男「黙って食えよお前は!」

女「あ、あはは……」

38: 2009/06/27(土) 14:37:16.59 ID:7DF+8IK80
男「いいか、俺はこれから会社に行ってくる」

女「了解であります!」

男「お前は対外的にはしばらく遊びに来ている親戚の子ということになっている」

女「サー!イエッサー!」

男「だが電話には出るな、チャイムにも反応するな」

女「ジーク!ジーク・ハイル!」

男「何かあったら俺の携帯にかけろ、緊急の時は隣さんの携帯だ
  幸い隣さんは近くの花屋に勤めている。だが、できるだけ迷惑はかけるな」

女「委細承知であります!隊長!御武運を!」

男「本当に理解しているのか・お・ま・え・は」

女「あうう……つむじを押さないでくだひゃい……」

40: 2009/06/27(土) 14:44:14.03 ID:7DF+8IK80
ピンポーン

女(ビクッ)

隣「女ちゃんいるー?私よ、隣です」

女(ホッ)

ガチャッ

隣「ただいま、元気だった?」

女「はい!あたしはそれだけが取り得みたいです!」

隣「うふふ、元気なのは良いことね。ところで男さんは今日何時に帰ってくるか聞いてる?」

女「はい、7時半には帰れるそうです!待ち遠しいです!」

隣「そう、女ちゃんは本当に男さんが好きなのね」

女「はい、隣さんも男さんが好きですか?」

隣「ええっ?あ、いや、その、そりゃ嫌いじゃないし、感じの良い人だとは思ってたけど
  今回のことで……あ、その、恋愛感情とかじゃなくて、ほら、なんていうか、えっと……
  そ、そう!スイカ!スイカ食べましょう?まだ半分あるから!」

女「地球の味です!」

隣「そうそう、水の惑星の味よね!」

41: 2009/06/27(土) 14:52:20.25 ID:7DF+8IK80
男「ただいま戻りましたー、女、生きてるか?隣さんに迷惑かけなかっただろうな?」

女「アニキ!お勤めご苦労様であります!」

男「勝手に俺をその筋の人にするな」

隣「お、おかえりなさい、女ちゃん良い子でしたよ?」

男「そうですか、それは良かっ……た、って、あれ?」

隣「え、え?え?(何?なんでそんなに距離を縮めてくるの?)」

男「んー、隣さん、なんだか顔が赤くないですか?また疲労が?それとも風邪を……」

隣「えっと、あー、いやいや!平気です!大丈夫です!ちょっと今日は暑かったから……」

男「なるほど、お花に水をやるだけじゃなくて、隣さん自身も水分補給をしないといけませんね」

隣「そ、そうですよね、そうですね、あはははは……(女ちゃんが変なこと聞くから意識しちゃうじゃない!)」

女「義理と~人情~量りにかけりゃ~」

42: 2009/06/27(土) 15:01:27.81 ID:7DF+8IK80
女「唐突ですが衝撃の事実!」

男「なんだよ藪から棒に」

女「藪から棒が出てくるなら、藪の中には棒があったのではないでしょうか?」

隣「……羅生門?あ、映画じゃなくて小説ならそのまま藪の中ね」

女「芥川vs黒澤!これは東京ドームが埋まりますよ!」

男「どっちも故人じゃねーか」

女「そこをなんとか!」

男「なんとかなる問題じゃないだろ。つか前々から思っていたんだが、お前アホの子だろ?」

女「アホじゃない!馬鹿だけどアホじゃないです!」

男「何故そんな不思議な怒り方をするんだお前は」

隣「……(汗」

43: 2009/06/27(土) 15:05:46.96 ID:7DF+8IK80
女「暑いけど暑くない!」

男「いや、暑いから普通に」

女「地球を大事に!」

男「俺達だけがクーラー我慢したところで地球には大した影響ないだろ」

女「一寸の虫にも五分の魂!」

男「塵も積もればの間違いだな」

女「ちょっと男さん、エコなんだから真面目にやりましょう」

男「そんだけ意識が高いなら普通に喋れよ!」

女「脱!没個性!」

男「伸ばす方向が間違ってる。絶対間違ってる」

隣(入れない……会話に入れない……)

45: 2009/06/27(土) 15:18:02.08 ID:7DF+8IK80
隣「さー、ソーメン茹で上がりましたよー」

女「アニサキス!アニサキス怖いよ!」

隣「うん、似てなくもないけど食欲が減衰するからそういうのはやめてね女ちゃん」

女「はい!サバじゃないから!アニサキスいないから!」

隣「う、う~ん……」

女「あれ?ミカン?なんでソーメンにミカン?」

隣「あら、女ちゃん、ソーメンとミカンを一緒に食べる習慣なかったの?」

女「ソーメンはご飯。ミカンはデザートですか?」

隣「うふふ、ソーメンが続くと飽きるでしょう?夏は食欲も減るし」

女「はい!だからミカン?」

隣「そうよ、箸休めにミカンを食べるのよ」

女「凄いです!新しいですね!ノーベル料理賞ですね!」

男「……」

隣「あら?ソーメンお嫌いですか男さん?だったら他に……」

男「あ、いえ、違うんです……その……」

47: 2009/06/27(土) 15:21:18.69 ID:7DF+8IK80
男「何ていうか、俺の両親って俺がまだ小さい頃に離婚しちゃってて
  こういう家庭的な空気ってあんまり馴染みがなくて、その……」

隣「男さん……」

男「いや、すいません!飯が不味くなりますね!よし女!伸びる前に食うぞ!」

女「はい!頂きます!地球の恵よありがとう!感謝だね!感謝です!」

男「おう!後は作ってくれた隣さんに感謝だ!」

女「隣さんは女神です!崇拝対象です!むしろあたしの嫁に是非!」

隣「はいはい、よく噛んで食べてくださいね」

49: 2009/06/27(土) 15:28:24.49 ID:7DF+8IK80
隣(始まりはなんであれ、それは騒がしくも温かい、素敵な初夏の日々でした)

女(勿論それは一つの猶予期間。いつまでも続くものではないと誰もが理解していました)

男(でもそれは、あまりにも温かくて、優しくて、俺達は考えないようにしていたのだと思う)

隣(だからそれが唐突に終わりを告げた時)

男(俺達は大きく戸惑うと共に)

隣(深く、深く……)

50: 2009/06/27(土) 15:35:43.61 ID:7DF+8IK80
男「あー、最近テレビは海水浴とかプールの話題ばっかやってますねー」

女「水風呂は偉大です!冷たいです!」

男「あー、次の休みにでも近くのプール行くか?隣さんもどうです?」

隣「えっ」

男「あ、いや、その別に水着姿が見たいとか、そういうつもりじゃなくてですね…」

女「駄目っ!!水着は絶対駄目です!!!」

男「え?……あ!」

隣(あちゃあ……)

女「あれ?……えと……あ、あの……あたし……」

隣「女ちゃん……」

男「す、すまん……つい……」

女「……ごめんなさい。そうですよね、知ってましたよね……」

隣「ごめんね女ちゃん、最初に泊まった夜に布団を直そうとして……」

女「いえ……いいんです……」

男「す、すまん……」

52: 2009/06/27(土) 15:39:40.67 ID:7DF+8IK80
男「すみません、無神経なことを言ってしまって……」

隣「悪気があったわけじゃないですし、女ちゃんも多分……」

男「すみません本当に……」

隣「とにかく、男さんは明日も仕事なんですし、ゆっくり休んでください
  女ちゃんは大丈夫、いつも通りあたしが一緒に寝てあげますから」

男「はい……ご迷惑を…」

隣「迷惑じゃないです」

男「あ……」

隣「男さんのことも、女ちゃんのことも全然迷惑じゃないです
  だからそんなに他人行儀な態度とらないでください。ね?」

男「……はい、すみませ…じゃなくて、ありがとう、隣さん」

隣「はい、どういたしましてです」

53: 2009/06/27(土) 15:43:29.44 ID:7DF+8IK80
女「すぴー……すぴー……」

隣(……)

女「う、うぅ……うう……」

隣(ここしばらくはうなされてなかったのに……女ちゃん……)

女「うぅ……ぉ……ゃ……」

隣(?)

女「……ぉにぃちゃん……」

隣(!!)

女「ぁぃたかったよ……ぉにぃ……ちゃん」

隣(……そういうことだったのね)

55: 2009/06/27(土) 15:49:27.33 ID:7DF+8IK80
男「え!?女がいなくなった!?」

隣「ごめんなさい……起きた時にはもう布団も畳まれてて……」

男「やっぱり俺が昨日……」

隣「それもあると思うけど、そうじゃなくて……」

男「??」

隣「あの子、昨日寝言で『お兄ちゃん、会いたかった』って……」

男「!?」

隣「確証はないけど、前に男さん、両親が小さい頃に離婚したって……」

男「は、はい、俺はお袋の方に引き取られて、親父とは連絡とってないんですが、まさか……」

隣「たぶん、そういうことだと思う。だから男さんの所に来たのは偶然じゃなくて……」

男「くそっ!」

隣「あっ!男さん!?」

56: 2009/06/27(土) 15:55:46.91 ID:7DF+8IK80
男「女は……?まだ帰っては?」

隣「うん……まだ……」

男「くそっ!」

隣「待って、闇雲に町中を探しても……男さんも凄い汗だし、少し休まないと……」

男「……はい」

隣「……」

男「……お袋に電話してみました。親父、再婚してるって……」

隣「じゃあ……やっぱり……」

男「はい……再婚相手との間に娘がいるはずだって……俺の妹です」

隣「……」

男「くそっ、あいつ……なんで最初からこのことを言わなかったんでしょう?
  最初からそう言ってくれればあんな冷たい対応なんてとらなかったのに……」

隣「……それは私にもわかりません」

男「……」

隣「でも、女ちゃんは男さんに会いたかった。それだけは間違いないと思います」

男「……女……いや、妹……か」

58: 2009/06/27(土) 16:00:44.16 ID:7DF+8IK80
父「何週間もどこほっつき歩いてたんだお前は!」

妹「あうっ!」

父「ったく、お前はどれだけお前は俺に迷惑かければ気が済むんだよ!」

妹「うぐっ……」

母「あなた、あんまりやりすぎると……」

父「お前は黙ってろ!お前が甘やかすからこいつがこんな風になったんだろうが!」

母「……そんな……あたしはべつに……」

父「うるせえ!口答えすんじゃねーよ!」

母「きゃっ!」

父「どいつもこいつも!俺はお前らの為に働いてるんだぞ!
  馬鹿な上司相手にペコペコ頭下げて!もっと俺を労れよ!畜生!」

母「あなたっ、やめて……あっ、殴らないで……」

父「ちきしょう!」

妹(……お兄ちゃん……あたしもう……)

父「!?」

60: 2009/06/27(土) 16:08:03.12 ID:7DF+8IK80
男「渋りに渋ってましたが、ようやくお袋から親父の今の住所を教えてもらいました」

隣「女ちゃんはそこに?」

男「はい、おそらく」

隣「……」

男「あいつは……あいつは馬鹿でうるさい奴でしたが、俺を頼ってきた妹です
  あいつが今、幸せでないなら……辛い思いをしてるなら……俺がなんとかしてやりたい」

隣「男さん……」

男「俺にはお袋しかいなかったし、そのお袋も仕事仕事で家にはほとんどいませんでした
  でも……少なくともお袋は俺に暴力なんて振るわなかった
  時々ヒステリックに怒鳴ることはあっても、絶対に手はあげなかったんです」

隣「……」

男「だから、あいつの居場所は……あいつの居場所はここだと思うんです」

隣「……女ちゃん、楽しそうだったもんね」

男「はい、だから、迎えに行ってきます」

隣「うん……」

男「だから、隣さんはここで……俺達の場所で……美味い飯を用意して待っていてください」

隣「……・はい!飛び切り美味しい夕食作って待ってます!」

62: 2009/06/27(土) 16:10:15.72 ID:7DF+8IK80
男(待ってろよ女……いや、妹!)






男「……さて、このあたりだと思うんだが……ん?なんだかパトカーの音がうるさいな……」

66: 2009/06/27(土) 16:15:42.76 ID:7DF+8IK80
警官「はーい!下がってください!救急車が来ますから!道を空けてくださーい!」

男「えっ」

野次馬A「聞いた?奥さん、包丁で刺されたんだって」

野次馬B「まあ!怖いわねえ……」

男「……」

警官「救急車が通ります!下がって!下がってください!」

野次馬C「でも、この家いつも大きな声で喧嘩してましたしねえ……」

野次馬D「ここのご主人、○○社に勤めてたんでしょ?大手なのにねえ……」

男「なんだよ……これ……」

警官「そこの君!下がって!」

男「なんだよこれはああああああああああ!!!」

69: 2009/06/27(土) 16:21:10.34 ID:7DF+8IK80
妹「にぃ……男さん?」

男「妹!?」

妹「ぴっ」

警官A「こら、君!下がって!」

男「家族です!あれは妹なんです!話をさせてください!」

警官A「なにぃ……おい、この家の家族構成はどうなってる!?三人じゃないのか!?」

警官B「はい、そのはずですが……」

男「腹違いなんです!でも、あれは俺の妹なんです!お願いします、話をさせてください!」

警官A「今はこちらも状況が把握できていないんだよ」

男「そんな!何が!何があったんですか!?」

警官A「あの子の父親は氏亡、母親も腹を刺されて重症なんだ!彼女は参考人なんだよ!」

男「え……」

警官C「救急車!到着しました!」

警官A「よし、急げ!その子はパトカーに入れとけ!野次馬を下がらせろ!」

男「そんな……」

72: 2009/06/27(土) 16:27:39.69 ID:7DF+8IK80
男『あいつは……あんな家庭で……誰にも頼れなくて……』

隣『男さん……自分を……自分を責めないで?』

男『……勇気を振り絞って……俺の所に頼ってきたのに……』

隣『ねえ、しっかりして男さん!』

男『状況が詳しくわかったら……また電話します』

隣『待って、男さん、大丈夫なの?ねえ……』

ピッ

男(くそう……何があったんだ……まさか……)

背広「あー、君かね?彼女の兄というのは」

男「あ、はいっ!」

背広「とりあえずの事情聴取は終わったよ、また来てもらうことになるけど
   彼女は実家じゃなくて君の所で預かって欲しいと言ってるんだ」

男「えっ」

背広「だから一応連絡先を聞かせてくれないかな」

男「あ、はい、住所は……」

74: 2009/06/27(土) 16:32:13.51 ID:7DF+8IK80
背広「現場保全の為もあるしね、身内が預かってくれるならそれが助かるんだ
    じゃ、連れてくるよ」

男「は、はい……」




妹「……にぃ……ちゃん」

男「妹!」

妹「……お兄ちゃん……って呼んでもいいの?」

男「当たり前だろ!大丈夫だったのか!?」

妹「ごめんなさい……あたし……ひぐっ……お兄ちゃん……」

男「大丈夫だ、もう兄ちゃんがついてる……安心して頼ってくれていいんだ……」

妹「ううぅ……お兄ちゃん!お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!」

男「よしよし……俺の方こそすまなかった……」

妹「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん……」

76: 2009/06/27(土) 16:36:03.38 ID:7DF+8IK80
隣「……おかえりなさい」

兄「た、ただいまです……あの……なんか怒ってません?」

兄「……いきなり携帯を切りましたよね?その後何度書けても出ませんでしたよね?」

兄「あ、あの、その、状況的に……」

妹「あう……隣さんごめんなさい……」

隣「女ちゃんは良いのよー?あ、もう妹ちゃんね、で、男さん、じゃなくって兄さん
  そう、悪いのは兄さんなんだからねー?」

妹「あうう……お、お兄ちゃんのこともあんまり責めないであげて……」

隣「……ふむ、なんとか上手くいったのかしら?なんか大変だったみたいですけれど」

兄「あ、はい、説明させて頂きます……今後のこともありますんで……」



77: 2009/06/27(土) 16:43:35.26 ID:7DF+8IK80
兄「と、いうわけで、思い余った妹の母親が親父を刺して
  親父は自分の腹に刺さった包丁を抜いて母親を刺して……」

隣「さ、惨劇ね……」

兄「はい、そんなものを目の前で見た妹の気持ちを思うと……」

隣「妹ちゃんの母親はまだ生きてるの?」

兄「ええ、意識不明の重態みたいですが、一応……
  警察の人は今夜が峠になるって言ってましたが」

隣「じゃあ、助かるにしても……駄目だったとしても、妹ちゃんの証言が必要になるわけね?」

兄「まあ、これ以上ない証拠品が残ってますし、妹もすぐに警察に連絡したみたいですから
  ほとんど形式だけみたいですけどね」

隣「妹ちゃんにとっては何度も見たことを聞かれるのね……まさに二次被害だわ」

兄「セカンドレOプですね、まさしく」

隣「妹ちゃん、大丈夫かしら……今は眠っているけれど……」

兄「一人じゃ駄目かもしれません。でも、今は……」

隣「そうね、頼れるお兄ちゃんがいるもんね」

兄「はい、俺がいます。そして頼れるお隣さんも……」

79: 2009/06/27(土) 16:47:13.84 ID:7DF+8IK80
妹「あうー、さすがに疲れたです……暑かったですし……」

兄「あー、夏真っ盛りだしなあ……警察署ってのはなんであんな暑いんだよ……」

妹「うう……このままでは溶けてしまいます……地球の水になってしまいます……」

兄「ちょっと喫茶店でも入って涼もう……本格的に駄目だ、この暑さは……」

妹「賛成です……冷房の効いているところならば語尾にビックリマークが戻るにちがいないです……」

兄「暑さのせいか、兄ちゃんお前が何を言っているのかわからない……」

妹「あたしも自分で何を言っているのはもはやわかりません……」


80: 2009/06/27(土) 16:49:17.73 ID:7DF+8IK80
妹「うひょー!お絞り最高ですね!偉いですね!出来る子ですね!」

兄「でかい声で喚きながらお絞りで顔を拭くのはやめろ」

妹「うひょー!脇の下くすぐったいです!ちべたい!くすぐったい!」

兄「頼むからやめてくれ……周りに笑われてるだろ……」

妹「うひょー!」

84: 2009/06/27(土) 16:53:34.05 ID:7DF+8IK80
兄「お袋さんのことは残念だったな……」

妹「……いいんです。パパもママも一緒ですから
  あちらの世界でもきっと仲良く……じゃないですね
  きっとあっちでもまた騒々しくやってるに違いないですよ
  だから、きっとこれで良かったんだと思います。そう、思うことにしてます」

兄「そっか……妹は強いな」

妹「えっへん!あたしは強いですよー!ラブラブパワーで無敵です!」

兄「ラブラブはなんか違う気がするが……まあ、強さなら兄ちゃんも負けないぞ!
  守るものが出来た俺はブラックな会社でも頑張って働くぞ!」

妹「む、無理はしすぎないで欲しいのですよ、お兄ちゃん……」

兄「ん?なんでだ」

妹「いえ、経験上と言うか、また刃傷沙汰が発生したら……ガクガクブルブル」

兄「あ、待て!落ち着け、大丈夫だ。兄ちゃんはお前を殴ったりしないから!」

87: 2009/06/27(土) 17:00:02.53 ID:7DF+8IK80
兄「でもさ、お前なんで最初に来た時に妹だって名乗らなかったんだ?
  最初から名乗ってくれたら俺だってあんな酷い対応しなかったのに……」

妹「いえいえ、なんだかんだ言ってお兄ちゃんは優しかったですよ、はい」

兄「う、うーん?そうだったか?」

妹「ええ、結局は受けれてくれたではないですか
  あの日々は人生で最良の時間でありましたよ」

兄「過去形じゃないだろ?」

妹「おおう!お兄ちゃんさすがです!そうなのです!
  あたしは今までの暗黒だった青春の恨みを晴らすが如く、日々を楽しむのです!」

兄「おう、その息だ!兄ちゃんも遊ぶぞ!」

妹「……でも、ちょっと怖いんです」

兄「何がだ?」

妹「お兄ちゃんの家に行く時もそうでした、あたし、怖がりなんです」

兄「……」

89: 2009/06/27(土) 17:06:36.96 ID:7DF+8IK80
妹「初めてお兄ちゃんの存在を知ったのは、小学生の頃だったでしょうか」

兄「ん、そんな前から知ってたのか?」

妹「はい、パパとママが喧嘩するようになったのもその頃だったんですが
  パパはママに対するあてつけで、前のワイフとベイベー
  つまりお兄ちゃんとお兄ちゃんにママですね、その自慢ばかりしてたんです」

兄「親父……性格悪いなあ……」

妹「はい、ちょっと酷いですよね。でも、そのせいであたし、これまで我慢してこれたんです」

兄「?」

妹「自分には良く出来たお兄ちゃんがいるんだ!そう思うことで色々な辛いことが我慢できたんです
  いざとなったらお兄ちゃんの所に行こう、きっとお兄ちゃんが守ってくれるって言い聞かせて」

兄「妹……」

妹「父の人の机を漁って、写真とかお兄ちゃんの住所はわかってました
  おかしいですよね?パパは前の奥さんとも喧嘩して離婚したのに
  ママと結婚してからは、前のワイフとベイベーのことを本当に理想的な家族だと思い込んでいたんです」

兄「親父……どこまで都合のいい思考回路してんだ……」

92: 2009/06/27(土) 17:11:29.20 ID:7DF+8IK80
妹「でも、やっぱりいざお兄ちゃんの所に行くのは怖かったです
  パパがあてつけていることはわかってましたから
  もしかしたらお兄ちゃんはパパが褒めるような、よい人ではないかもしれないって」

兄「……」

妹「それに……・たとえ良い人だったとしても、こんな痣だらけの汚いあたしを見て……
  こんなのが妹だなんて……嫌がられたらどうしようって……だから怖くて……」

兄「……そうか、だから妹って言えなかったのか……ん、そうか
  最初から変なことを言いまくってたのも、もしかして自分から嫌われるようなことをすれば
  たとえ俺が冷たくあしらっても傷つきにくくなるからとかなのか?」

妹「……いや、それは考えすぎです、お兄ちゃん
  あれは単純に舞い上がってテンションが上がりすぎていただけであります」

兄「そ、そうか……」

94: 2009/06/27(土) 17:14:24.90 ID:7DF+8IK80
妹「だから、今でもあたし、ちょっと怖いんです
  なんていうか、今まで楽しいこととか幸せなことを知らなかったから
  未来を前向きに捉えることが苦手みたいです」

兄「妹……」

妹「でも、勇気を出してお兄ちゃんの許に行って良かった
  それは胸を張って言えるあたしの英断です!
  ぺったんこですけど!成長しますから!必ず!」

兄「うん、なんかおかしくなってきたからテンション下げて下げて」

妹「あうう……」

96: 2009/06/27(土) 17:17:00.70 ID:7DF+8IK80
妹「ですから、あたしは頑張って未来を信じます
  まだやっぱり怖いですけど、お兄ちゃんを信じます」

兄「……そうか」

妹「はい!オニイチャンを信じてー!」

兄「ぴっ!?」

妹「え?あ、な、なんでそんなに脅えた顔を!?」

兄「わからない、わからないが今、凄まじく恐ろしい何かが……」

妹「あうあう、エアコンの効きすぎてしょうか?
  隣さんも待っているでしょうし、そろそろ……」

兄「そ、そうだな、そうしよう……」

98: 2009/06/27(土) 17:21:06.34 ID:7DF+8IK80
妹「あうー、やっぱり暑いですねえ……」

兄「そだなー、あちいなあ……」

妹「時にお兄ちゃん、隣さんとはどうなっているですか?」

兄「……何が?」

妹「いえ、相思相愛的な雰囲気をひしひしと感じておりますので
  お兄ちゃんっ子のあたしとしては進展が気になるわけでして」

兄「い、いや、何を言ってるんだお前は!ま、まだそういうのはないって!全然!」

妹「ほー、まだってことは先があるんですなー?」

兄「ちょっ、揚げ足をとるなお前は!」

妹「うひょひょひょひょ!照れなさんな照れなさんな!」

兄「待てっ、お前暑さでおかしくなってるだろ!?」

妹「うひょー!夏最高!」

兄「だから暑いんだから走るなよ!」

100: 2009/06/27(土) 17:26:30.45 ID:7DF+8IK80
隣「……で、あなた達はなんで溶解してるわけ?」

妹「ふ、不覚にも……な、夏が……夏の魔性が……」

兄「こいつが……走るから……あぁ……」

隣「なんだかわからないけれど、とりあえずシャワー浴びなさい二人とも」

妹「一緒に!?一緒に入ろうお兄ちゃん!!」

兄「ちょっ!わけのわからないことを口走りながら抱きつくな!あちい!」

隣「え、いや、そうじゃなくて、兄さんは自分の部屋で、妹ちゃんはこっちで……」

兄「そもそもお前水着姿が嫌なくせに裸は平気なのかよ!」

妹「もう大丈夫!お兄ちゃんは絶対あたしを受け入れてくれるってわかってますから!」

隣「妹ちゃん……」

妹「ねっ!お兄ちゃん、お姉ちゃん!」

隣「えっ……」

妹「さあお兄ちゃん、処Oですから!処Oと一緒にシャワーしましょう!」

兄「なんで成長したと思ったら振り出しに戻ってるんだよお前はあああああ!」

妹「二人とも大好きでござるー!」

101: 2009/06/27(土) 17:27:55.94 ID:7DF+8IK80
夏だ!蟹だ!ハッピーENDだEND

103: 2009/06/27(土) 17:31:22.27 ID:t2QUeeC9O
えっ

104: 2009/06/27(土) 17:31:55.96 ID:j84RIi9lP
まさか終わりじゃないよな

106: 2009/06/27(土) 17:32:52.12 ID:Ell5Ssmk0
終わり・・・?

109: 2009/06/27(土) 17:37:37.55 ID:A28CH5Sq0
よかったよかった

引用: 女「男くん!あたし処女なんです!」