1: 2016/03/30(水) 20:56:44.35 ID:V8og3LHJ.net
これが私、高坂穂乃果!
仲良しスクールアイドルグループμ’sのメンバーで、海外公演を明日に控えた女子高生!
光の落ちた遠い異国のホテルのベッドで。私は今、静かに猛っていたのです!

2: 2016/03/30(水) 21:00:43.19 ID:V8og3LHJ.net
「んー……(そりゃ確かにみんなとはぐれて心配も迷惑もかけたのは事実だけど、よく考えたら穂乃果のことに気付かないでホームに降りちゃうみんなも結構酷くない……?)」

「むー……(誰か一言ぐらいそのことについて触れてくれたって良かったんじゃない!?)」

「に……こ……」

「んむむむ……(……なんか、段々怒ってきちゃったよ……もう!海未ちゃん!あんなに大声出して叱らなくったって良いじゃん!穂乃果だって好きでみんなとはぐれたわけじゃ……!)」

「違う……違う、にこ……」

「む……ん?(……ぅあれ……?なんか、こんなこと、前にもあった……ような……)」

『たるみ過ぎです!』
『だって!みんな起こしてくれないんだもん!酷いよ!!』

ーーーーあ。
そういえば、そんなことも。

3: 2016/03/30(水) 21:02:33.73 ID:V8og3LHJ.net
秋の合宿。電車での移動で。寝過ごす私を誰も起こしてくれなくてーーーーもしかして私、電車と相性悪いのかな……?

「にっこ……にっこ、に~……」

「む、むぅうっ……(あれだって!みんな私のこと起こしてくれないで!寝過ごす私が一番悪いかも知れないけどさ!穂乃果、そこまで怒られることしてないよーーーー)」

「にゅふふ……グローバルスーパーアイドルにこにーの基盤はこれで盤石ね!」

「…………」

「どぅめどぅめどぅめぇえ~っ……ニコ・イズ・エブリワンズ♪」

「 ……にこちゃんの寝言が、うるさい…… 」

「さあ……みんなで一緒にっ……」

「にこちゃんの寝言……か……もうμ’sのみんなとこうやって一緒に外泊するのも、結構な回数重ねてるんだよね」

4: 2016/03/30(水) 21:04:58.83 ID:V8og3LHJ.net
『しゅ、しゅっぱぁあ~……つ…………』

初めては……あの夏の海辺の別荘だっけ。
学校での練習が暑すぎて。真姫ちゃんに無理言って、家の人に手配してもらったんだよね。
まだ9人が揃って日が浅い中。

『よーし!じゃあ花火にするにゃー!』
『その前にごはんの後片付けしなきゃーーーー』
『ーーーーそれなら私が』
『練、習、です!』
『私は寝るわね』
『私は……お風呂に……』
『第3の意見出してどうするのよ!』

穂乃果は全然気にしてなかったけど、今に比べれば、実はみんな、ちょっとだけお互いの距離を測りかねて。ほんの少し、どこか据わりの悪いところがあった時期。
そして。

ーーーー真姫ちゃんの話を聞いたことがある。

あれは、確か。
海未ちゃんが帰りの電車で零した。独り言のような、少しだけ長い状況整理。

真姫はーーーー。

5: 2016/03/30(水) 21:06:53.67 ID:V8og3LHJ.net
▽ ▽ ▽ ▽ ▽

「真姫は、私と似ています」

「……真姫ちゃんと、海未ちゃんが?」

「でも真姫は、私よりも臆病でした」

「?」

「自分が変わって行くことが、誰より怖かったのです」

「真姫ちゃんが、怖がり……」

「ええ。でもそれは、真姫が本質的にそうであると言っているのではありません。
私には小さな頃から穂乃果と言う存在がありました」

「真姫は……そうですね。言うなれば一度に8人の穂乃果と交わったようなものです」

「むー、なにそれー。なんかあんまり良い意味で穂乃果を使ってなくない?」

「そうですね。一面の事実として、刺激が強過ぎたのです」

「人を劇物みたいに言うね……」

「穂乃果はこの合宿中、真姫の不安定な様子を見ましたか?」

「不安定、だったの?」

「いつもよりちょっとよそよそしい雰囲気を感じたり、もっと言えば一人でいることが多かったり。
少しくらい印象に残っているでしょう?」

「うぇっと……そう、言われれば……」

6: 2016/03/30(水) 21:08:26.03 ID:V8og3LHJ.net
「穂乃果」

「うん」

「あなたは自覚したことはないのかも知れませんが。人に影響を与えることにかけて、私はあなたの右に出る人間を他に知りません。
私はもとより、ことりに花陽、凛。再起と言う意味では、にこ。さらには希と、極めつけは絵里。
誰一人として、あなたが居なければ音ノ木坂学院の廃校を前に、スクールアイドルを始めたりなどしませんでした。
あなたが意を決し、幾度現実を前にしても、それでもと立ち上がり、声を上げ続けた結果として。先に挙げた私たち7人はーーーーそうですね、運命を変えられるように、こうしてμ’sに参画したのです」

「7人?え、だって真姫ちゃんもーーーー」

「ええ、そのとおりです。もちろん、真姫も例外ではありません。しかし」

「……しかし?」

「真姫はきっと、穂乃果と出会い、μ’sと出会い、誰より変化を求められたメンバーです。
将来を嘱望され、その人生の一道程としてたまたま音ノ木坂学院に配された真姫。
もしかするとその未来は、既に一分の隙もなく組み上げられていたのかもしれません。
その真姫が、あなたと出会いーーーースクールアイドルと出会い、曲を提供し、友人の背を押し、気付けば自身もスクールアイドルに加わることになっていたとき。
何も変化を、その末の選択を。求められなかった筈がありません」

8: 2016/03/30(水) 21:10:02.23 ID:V8og3LHJ.net
「もしかしたら、将来の展望を一つ格下げしたのかもしれない。数少ない趣味を一つ、諦めたのかもしれない。活動の条件に、親に何か苦い条件を呑まされたのかも知れない。
彼女が変化を機にどのような対価を支払うことになったのかまでは、私には考えが及びません。
私はーーーーふふ、そんなに苦い顔をしないで、穂乃果」

「…………」

「私はあなたと出会い、変わっていく中で、確かに多くのものを失ったのかもしれません。
ですが、代わりに得ることのできた今までの日々の中。私は一度として後悔したことはないのですよ。
そしてそれは、これからもきっと……」

「ーーーー真姫は。
真姫は、おそらく、変わることが初めてだった。
それ故に、自分が変わる中で選んだ今という結果に、途方もない未知への不安を感じていたのでしょうね。
新たなメンバーの加入と、μ’sのグループとしての完成。発展を象徴するような初めての合宿。迫られる更なる変化。入り混じる期待と不安……
だから、あまりの変化へ耐えきれず、ブレーキを掛けるように。私たちから距離を取ろうとしてしまった。
そして、未だ変化の入り口ゆえに。真姫がそれを拒みさえすれば、そのまま彼女は変化を捨て元の道を辿り、それきり私たちは行く末を違えていた未来すらあった」

10: 2016/03/30(水) 21:11:57.13 ID:V8og3LHJ.net
「そんな真姫へと寄り添い、懇篤の限り導いた稀代のおせっかい焼きが、どうやら私たちの中にいたようですがーーーー」

「ねえねえ。ようするにそれって、真姫ちゃんがμ’s辞めちゃうかもしれない……って、こと?
そんなのーーーーそんなのだめだよ!絶対だめっ……どうしよう、穂乃果、そんなこと全然ーーーー」

「今回に限ってはあなたにお鉢は回らなかったようですねーーーー穂乃果……もう、穂乃果っ、最後まで話を聞いて下さい!」

「真姫はーーーー真姫は、」

『ちゃんとここにいますよ。』

△ △ △ △ △

11: 2016/03/30(水) 21:13:53.25 ID:V8og3LHJ.net
結局ーーーー真姫ちゃんがほんとはどんな状態にあって、なにに悩み、どうそれに折り合いを付けたのか。
今日に至るまで、私にはちゃんと理解してあげることは出来なかった。

でも、真姫ちゃんはそれからもずっと、私たちと一緒にあり続けてくれた。
海未ちゃんの言ったとおり、『ちゃんとここにいて』くれた。

それは、穂乃果では気付くことができなかったーーーーけれど、そこに確実にあったーーーー真姫ちゃんの不安を、誰かが私に代わって取り払ってくれたから。

私が強引に引き込んで、その先で私の考えの及ばないような大変なことに苦しんで。
きっと、とっても辛い思いの中で。真姫ちゃんは声にならない声を上げていた。

ほんとなら、私が受け止めて。どんな力になれるかわからないけど、ただぎゅーってーーーーどこにもいかないで。私のできることならなんでもするから。一緒にいて。一緒に、μ’sを。スクールアイドルを、続けて下さいーーーーって、思いの限り。
抱き締めてあげたかった。
ううん。そうしなきゃ、だめだったんだよ。

12: 2016/03/30(水) 21:14:55.86 ID:V8og3LHJ.net
私は自分にそんなものがあるだなんて一度だって考えたことはないけど。海未ちゃんの言う、私には誰かを変えちゃうような力が本当にあるっていうんなら。
私が真姫ちゃんを。必要なら真姫ちゃんの悩みに関わるすべての人たちを、笑顔に変えてーーーー真姫ちゃんの苦しみを無くしてあげなきゃ、いけなかったんじゃ……ないのかな。

「よく、わかんなくなってきちゃった……でも」

確かに言えることは。
やっぱり、穂乃果はーーーー

『あなたはーーーーあなたは最低です!』

私をはたく乾いた音が、確かに耳の奥で響いた気がした。

にこちゃんもとっくに深い眠りに入って。部屋にはもう遠い街の喧騒も響いてこない。

「そっか……それってつまり。あのことにも、繋がってたのかな……」

はたかれたほっぺが痛くて、熱くて。でも海未ちゃんにそうさせてしまったのが何より辛かった、あの屋上での一幕。

耳に残る幻の響きと、痛みをともなった頬の熱さを感じながら。もうとっくに眠れそうもなくなっていた私は、忘れもしない。
穂乃果の生涯でもとびきりの失敗を、思い返していた。

14: 2016/03/30(水) 21:16:17.09 ID:V8og3LHJ.net
胸に蘇るのは。
一つの光めがけ夢中でひた走る私の隣で、静かに泣いていたことりちゃんの姿。
立ち止まった私を揺り動かす、にこちゃんの声。
そして。今までの歩みを否定した私を拒絶する、海未ちゃんの手のひら。

最後に。
すべてが終わったあの夜の。絞り出すようなことりちゃんの囁きを覚えてる。

小さくて。聞いてるだけで切なくて。でも、強い芯がかよった。それは、強い決意を誓う、長い長い告白だった。

15: 2016/03/30(水) 21:19:56.73 ID:V8og3LHJ.net
▽ ▽ ▽ ▽ ▽

「穂乃果ちゃんは」

「ん?」

「穂乃果ちゃんは、すごいよね。やっぱり」

「ええ?どうしたの、急に」

「私、お泊まり会の間もずっと今日のこと、思い出してたんだ。そしたらね。それしか言葉が、出てこなかったの」

「……?」

「……私、穂乃果ちゃんが空港に来てくれたとき。あんまりびっくりしてないふうに、見えなかった?」

「え?そんなことなかったと思うけど……」

「なにかーーーーどこか、用意してたみたいに。穂乃果ちゃんに謝って、自分の気持ち、伝えてなかった?」

「うーん、考えすぎじゃ……」

「ーーーーでもね、それは……」

「……ことりちゃん?」

「それはね……」

「……こんなこと言われても、穂乃果ちゃん、きっと困っちゃうと思う。でも、穂乃果ちゃんにはどうしても聞いてーーーーううん。これは多分、ことりが穂乃果ちゃんに話したいだけ。
あんなことがあったのに……まだ、こうやって自分の気持ちにうそをついちゃうだめな私だけど。
どうしても穂乃果ちゃんに、ことりの話、聞いてほしいの」

「ことりちゃん……泣いてるの?」

「ごめんね……全然話、まとまってないよね。
ことり、わがまま言ってるの
、分かってる。
もうこれ以上穂乃果ちゃんに甘えたら、もしかしたらことり、穂乃果ちゃんと友達じゃいられなくなっちゃうかも知れないっ……。
頼るだけで、穂乃果ちゃんにはなんにも返してあげられないだめな子になっちゃうかも知れないっ。
それでも、今日……今日、こんな自分勝手な私に、行かないでって、一緒にいてって、言ってくれた穂乃果ちゃんに。
ことりの話を、聞いて……もらいたいの」

「ことりちゃん……」

「ことり、全部話すよ。全部、話すから。
穂乃果ちゃん。どうかことりの話を、聞いて……下さい……」

16: 2016/03/30(水) 21:23:49.20 ID:V8og3LHJ.net
あれは、あの長い夏の終わり。
穂乃果がばらばらにして、おしまいになるはずだったμ’sが、またひとつになって。
新しい夢を見つけて歩き出した、その夜のこと。

どっちが言い出したのか……覚えてないや。だけど、自然と。最初から決まってたように。
ことりちゃんとふたりで、私のうちでお泊まり会をすることになったんだ。

まるでことりちゃんの留学なんて始めからなかったみたいに。
ふたりで今日のライブの話で盛り上がったり、他のスクールアイドルのライブ映像や面白いネット動画を探したり。とりとめのないことを話しては笑い合ったり。
いつもと変わらないことりちゃんとの夜を過ごしてた。

そろそろ寝ようかってなったとき。ことりちゃん、

「今日はことり、穂乃果ちゃんと一緒に寝たいな、なんて……だめ、かな」

って。全然真剣に言うようなことじゃないはずなのに、すごく真剣に聞いてきて。

17: 2016/03/30(水) 21:25:08.56 ID:V8og3LHJ.net
穂乃果、本当に人の気持ちに疎いんだね。

「くふふ……さっきの短編ドラマ、怖かったもんねっ。
そんな怖がりさんにはぁ~?……じゃーん!
ベッドだけじゃなくて、穂乃果のあったかお手てもお貸ししちゃいましょー!
まだまだ暑いから、逆に寝苦しくて悪い夢を見ちゃうかもしれないのだーっ!がぁーお~っ!」

なんて、からかいながら。
ことりちゃんの想いなんか、これっぽっちも考えずに。彼女の手を引っ張って穂乃果のベッドにふたりでとびこんで。
階段の下からうるさいって怒ってるお母さんにベッドの中から謝って、ふたりでくすくす笑い合いながらーーーーその間もしっかりと手は繋いだまま。部屋の明かりを消したんだ。

しばらくして。
さっきまでここいっぱいに溢れていたくすくす笑いが嘘みたいに静まり返った、真っ暗な穂乃果の部屋の中で。
小さく、ひとつ。
誰かが、深呼吸をする音が聞こえた。

繋いだ手がぎゅっと握られる。

それは穂乃果の知らない、ことりちゃんの強い想いが。
静かに動き出す、音だった。

18: 2016/03/30(水) 21:27:06.54 ID:V8og3LHJ.net
「ことりね。全部穂乃果ちゃんのせいにして逃げ出してからずっと、考えてたことがあるの。
それは、いつーーーーううん、次の瞬間にでも。穂乃果ちゃんがことりの前に現れて、ことりのことを引き留めてくれないかなって、こと。
留学の手続きで久し振りに行った学校の廊下で。
向こうの生活で使う日用品を新しく買いに行った百貨店のお会計の列で。
パスポートの更新に行く途中の駅のホームで。
荷物が少しずつなくなっていく、ことりの部屋の中で。
穂乃果ちゃんが今すぐにでも駆けつけて。ことりの決意も、未練も、しがらみも、将来の夢すらも。全部、壊してーーーーなにもかも。
そうして、私を……引き留めてくれないかなって。
気が付くとそんなことばっかり妄想して、期待してた。
だから今朝、穂乃果ちゃんが空港のターミナルで、ことりの腕を掴んでくれたときも…………私、とっても上手に穂乃果ちゃんに、謝れたでしょ?」

「ことりちゃん……」

「ねえ、穂乃果ちゃん。幻滅したかな……?これが、ことりなの。
穂乃果ちゃんが自分を責めて、みんなと対立して、たくさん苦しんで。
それでも、何もかも省みないで。がむしゃらに、必氏になって引き留めてくれた女の子。
でもね。その子には穂乃果ちゃんの言葉も、想いも、全部、ぜぇーんぶ。何もかも。届いているふうで、全然届いてなかったの。
心は最初から決まってて、自分の勝手に決めつけた未来にたどり着きさえすれば。
そうなるまでに自分のため、どれだけ人が傷付いたって。どれだけ人が苦しんだって。きっと全然問題にしないような人間なの。
それが私なの。
それが、あなたが一番の友だちだと信じてる、南ことりって女の子なんだよ?穂乃果ちゃん……」

「………………」

19: 2016/03/30(水) 21:28:45.94 ID:V8og3LHJ.net
「今日、穂乃果ちゃんが私を引き留めに駆けつけてくれてなくっても。私、きっと向こうでもずっと、穂乃果ちゃんを待ってた。
それが当たり前みたいに、私を日本へ連れ帰ってくれるような言葉を永遠に期待して。それになんて応えるか、妄想し続けた。
もうなにもかも手遅れになってるのに、そんなの全然気付かない振りをして」

「…………」

「留学課程が修了して、日本に帰るときになって。私はようやく別のことを考える。
穂乃果ちゃんが私を引き留めなかったのは、連れ戻さなかったのは。私の夢を尊重してくれたから。
留学を終えて夢に大きく近付いた今の私に、穂乃果ちゃんはなにも遠慮する必要はないのよ。
時間は空いてしまったけど、きっと穂乃果ちゃんはことりのことをまた受け入れてくれる。
あの懐かしい日々のように、変わらない眩しい笑顔で私に笑いかけて。ときどきとんでもないことを思い付いては、私の手を引っ張って。
単調な日常から見たこともない輝きに満ちた場所へ、連れていってくれるはずだわーーーー
……穂乃果ちゃんが、私といっしょにいたいって。いっしょにスクールアイドルをやっていたいって願った、”一番”の時間は……もうとっくに過ぎ去っているのに。
私にはそんなこと、全然関係なかったんだよ」

「……」

20: 2016/03/30(水) 21:30:05.97 ID:V8og3LHJ.net
「ねえ、穂乃果ちゃん。聞いてくれた?ことり、穂乃果ちゃんのことがこんなに大好きなの。
こんなに好きで、ずっと、ずうっと一緒にいたいの。
でもね、穂乃果ちゃんの気持ちなんて、いつからか全然関係なくなっちゃったんだ。
穂乃果ちゃんといっしょにいられれば……」

「…………そう、スクールアイドルなんて!
ふふふっ……心の底から、どうでも良いことだったんだーーーー」

「違う!」

「違わない!」

「ことりちゃん、だってーーーー」

「言ったよね、穂乃果ちゃん。ことり、全部話すって。
……ごめんね。これがその”全部”なの。私が穂乃果ちゃんに伝えたかった、知っておいて欲しかった、ことりの全てーーーー」

「じゃあ!」

「…………」

「じゃあ、なんで、ことりちゃんはーーーー
ことりちゃんは、今まであんなに楽しそうに……スクールアイドル、してたの……?」

「そんなの、穂乃果ちゃんに合わせてーーーー」

「うそ」

「え……?」

21: 2016/03/30(水) 21:31:33.49 ID:V8og3LHJ.net
「私、他人の気持ちが全然見えてない。
スクールアイドル始めて、そのことをすっごく感じることが多くなった。
でも、私、スクールアイドルを始めてから。本当に楽しいって感じてる瞬間の人を、たくさん見てきたよ。
A-RISEや他のスクールアイドルを見つめる人たちが思わず零した、感動のため息。
μ’sのライブに来てくれた人たちの、私たちと一緒になって盛り上がる割れるような拍手。
辛いはずの練習中、緊張しない筈のないライブの直前、それが楽しくて仕方ないみたいに絶えることのない、みんなの笑顔。
そして、ライブのさなか。ステップを間違えて、歌い出しで遅れて、それでもとっても楽しそうにキラキラ輝いてた、ことりちゃんの瞳ーーーー」

「……ぅ……」

「全部!
……そう、全部……覚えてる。
だから穂乃果、人が楽しいって感じてる瞬間だけは、絶対に見間違えたりしないんだ」

「…………」

22: 2016/03/30(水) 21:32:58.33 ID:V8og3LHJ.net
「ことりちゃん。穂乃果に全部話すって言って、まだ話してないこと、いっぱい残ってるでしょ」

「……ぁ……」

「話して、ことりちゃん。そして、穂乃果に教えて?
ことりちゃんがそうやって穂乃果を好きでいてくれるのと同じように。
スクールアイドルのこと、本当はどう想ってるのか」

「あ……ぁ……」

「私、ちゃんと聞くよ。ことりちゃんの想い。全部聞いて、全部受け止めて。
それでも、きっと。私、これからもずっと、ことりちゃんと一緒にスクールアイドルを続けるんだ。
だって穂乃果、スクールアイドルが好きだから。
穂乃果といっしょにスクールアイドルを好きでいてくれるみんなのことが、大好きだから。
穂乃果とずうっといっしょにいてくれる。ことりちゃんのことが、大好きだから」

23: 2016/03/30(水) 21:34:38.82 ID:V8og3LHJ.net
「穂乃果……ちゃん……」

「うん……なあに?ことりちゃん」

「……穂乃果ちゃん!ごめんね……私、スクールアイドルも好き!!
穂乃果ちゃんを好きなのと同じくらい、大好きなのっ!」

「うん……!」

「みんなの衣装を作ってるときが好き!
みんなと息を上げながらステップの確認をするのが好き!
歌の練習でいつも変調がうまくいかなくて、その度に真姫ちゃんに叱られるのが好き!
ライブでお客さんといっしょにどこまでも昇りつめていく、スクールアイドルでいられる瞬間が大好き!!」

「うんっ……!」

「私、怖かった……っ。
今まで穂乃果ちゃんと海未ちゃんと、3人でいられれば満ち足りた世界から。急にそれだけじゃ満足できないくらい、たくさんの人と、たくさんの出来事と出会って。もっと、もっと楽しいことがあるってわかって。
私がこれだけ変わったんだもん。海未ちゃんもーーーー穂乃果ちゃんも、きっと。ことりとは比べられないくらいスクールアイドルのことを好きになってるって思ったよ。
だって2人とも、私よりずっと広い世界を持ってるんだもん!
その、ことりよりずっと広いはずの世界から、2人はスクールアイドルを選んで。とっても楽しそうに毎日、輝いてた。
ことり、2人に置いて行かれないようように必氏で。
自分も2人に負けないくらいスクールアイドルのことを好きになりたくてーーーーもっとスクールアイドルに真剣になりたくて。
色んなこと、したよ?」

24: 2016/03/30(水) 21:36:38.29 ID:V8og3LHJ.net
「どのグループにもーーーーA-RISEにだって負けないくらいかわいい衣装を作るために、毎日時間を見つけて服飾の勉強をして。
ライブで頭が真っ白になって失敗ばかりするのを改めてたくて、自分には絶対無理だって思ってた接客のアルバイトも始めた。
夕食の後には苦手なジョギングだって、毎晩欠かさなかったんだよ?」

「それなのに、みんなどんどん前に進んで。
穂乃果ちゃんなんか、ライブを重ねる度に信じられない勢いでスクールアイドルとして進化してーーーー
ことり、スクールアイドルのこと、嫌いになるんじゃないかって、ずっと不安だった。
だってこんなに頑張ってるのに、穂乃果ちゃんと同じ目線でスクールアイドルでいられたことなんか、一度も無かったんだよ?
でもーーーー好きだった。
大好きなままだったよ。
大好きな穂乃果ちゃんがことりからどんどん離れて、スクールアイドルに夢中になっていくのを見つめながら。
私、それでも歌うのが、踊るのが。みんなで盛り上がって、みんなで元気になれる。スクールアイドルが大好きだった……!」

25: 2016/03/30(水) 21:38:26.87 ID:V8og3LHJ.net
「 手紙を貰って……お母さんに留学の話を聞かされたとき。ことり、ほんとは一言で断りたかった。
だって、スクールアイドルでいられる時間は。みんなといっしょにμ’sでいられる時間は今しかないって、わかってたから。
でも、ことりの中の弱虫が、やっぱり言ったの。
こんなに頑張っても追い付けない穂乃果ちゃんと、このままいっしょに居続けて。私はこれからも穂乃果ちゃんと一番の友だちのままでいられるの?
そのせいで、いつかスクールアイドルのことを嫌いになるときがきたとして。ことりは後悔しないって言い切れるの?
だったら、スクールアイドルじゃなくて、なにかことりの穂乃果ちゃんに負けない部分を伸ばして。今じゃなくてもいい。いつか、胸を張って。穂乃果ちゃんの隣にいられるようになればいいんじゃないの?
ーーーー私、その弱虫な声のこと、全然否定できなかった。
一度聞こえてきたら、どんどんその声は大きくなって、内容もどんどん増えて。
穂乃果ちゃんにかき消して欲しかった。そんなの大丈夫だよって。心配しないで私についてきてって。引っ張っていって欲しかった。
無理をする穂乃果ちゃんを無責任に応援しながら。私、心の中ではもう弱虫の声がいっぱいになって、答えがいつ逆転してもおかしくない状況になってた。
でも、穂乃果ちゃんなら絶対その言葉を言ってくれるって信じて。ことり、勝手に期待して。文化祭に、ラブライブに夢中な穂乃果ちゃんを邪魔しちゃ悪いからって。勝手な信頼の上から、さらに勝手に気を回して。ずっと答えを先延ばしにして。穂乃果ちゃんを追いつめてた……」

「穂乃果ちゃんがライブで倒れたとき、ことりは思ったんだ。
ああ。これは、神さまが甘ったれな私に下した罰なんだ、って。
私は、もうこれ以上わがままを重ねて穂乃果ちゃんを苦しめるのをやめて、この機会に穂乃果ちゃんの元から離れるべきだって。心の弱虫だけじゃなくて、神さまもきっとそう言ってるんだ、って」

「ことり、ようやくそれで決心が付いた。
大好きな穂乃果ちゃんからーーーースクールアイドルから離れて、自分をどこまでも高めて。
いつか、穂乃果ちゃんにどこも気後れすることのない人間になって。
その隣で心から笑いたいって、決めたの」

26: 2016/03/30(水) 21:39:30.85 ID:V8og3LHJ.net
「決めた、はずだった」

「でも、そんなのーーーーことりにはできる筈がなかった!
大好きな穂乃果ちゃんを理由に、大好きなスクールアイドルを諦めて。
いつか大きくなって、穂乃果ちゃんの隣にいられる自分を取り戻す。
こんなの違う、違ったんだよ。
こんなのーーーー逃げてるだけだよ!
ことりのなかでほんの僅かに残ってた小さな勇気が、そう泣きながら叫んでた。
好きなら。本当に好きって、自分が信じられるなら。
どれだけみっともなくても、どれだけ遠く果てしない思いでも。
立ち向かって、何度でも立ち上がってーーーー力の限り!
最後に皆と歌った、あの歌のようにーーーー!!」

「ーーーー全身全霊!!!」

「……できる気がしていた。できる気がしながら、でも、今日。ことりは空港に居たの。
弱虫な私と、ちっちゃな勇気の私。随分時間はかかっちゃったけど、ことりの心は、一つになってた。
勇気の私にずっと寄り添われ続けて、心のほとんどを占めてた弱虫な私もようやく答えを変えることができたの。
でも、それは……」

27: 2016/03/30(水) 21:41:12.05 ID:V8og3LHJ.net
『行きたくないよ……』

「精一杯の正直な気持ちはとっても素直で。でも、それだけで。
自分から動くことはまだできなくて。
最後の最後でーーーー最初の一歩を踏み出すことがどうしてもできなかった。
誰でも良い。誰か、ことりの背中を触るみたいでいいから、力を貸して欲しかった……」

「海未ちゃんは、最後の夜……私を困らせないように、言うのを必氏で我慢してた……。
別れ際のお母さんは、やっぱり言ってくれなかった。
μ’sのみんなには……”泣いちゃうから”なんてそんな優しい理由じゃなくて、お別れの言葉しか貰えないかも知れないことがなによりも怖くて、会えなかった……」

「空港のターミナルで、ことり、泣きそうになりながら。それでも誰かを待ってた。
自分勝手に期待して、傷付き続けることは辛かったけど。
でも、それでも。最後まで誰かを待っていたかった。
電話でも、メールでも、なんでも良い。
ーーーー誰でも良い。
お願い……誰か、ことりに。
私に、最後の一言を下さい。
お別れの言葉じゃなくて。
がんばれの言葉じゃなくて。
私を引き止めてくれる、”行かないで”の、その一言を……。
誰か……」

(……………………)

(…………穂乃果ちゃん……)

『ことりちゃん!!』

28: 2016/03/30(水) 21:42:46.09 ID:V8og3LHJ.net
「ことりはっ……夢を見てるのかと思った……っ……目が覚めたらそこは飛行機の中でっ……ことりを抱きしめる穂乃果ちゃんの温もりは幻みたいに消えていって……私また泣いちゃうのかなって……っ……。
でもっ……穂乃果ちゃんはいつまでたっても、ずっと……ぎゅぅうって……私にそれが夢じゃないことを教えてくれてた……。
ことりは……ことりは生まれてから一番幸せな涙を流しながら……そのとき決めたの……」

「私はもう絶対に、好きって気持ちを諦めないって……」

「好きって気持ちを……諦めない……」

29: 2016/03/30(水) 21:43:49.42 ID:V8og3LHJ.net
「私、穂乃果ちゃんが好き。
私に大切なたくさんのものを、返せないくらいいっぱいいっぱい教えてくれた、穂乃果ちゃんが世界で一番好きなの。
でも、私はスクールアイドルも好き。
私が想像の中ですら見たこともなかった、きらきら輝くたくさんの景色と思いを見せてくれる。
スクールアイドルのことを、誰にも負けないくらい好きでいたい。
それぞれの好きが、互いにぶつかって大げんかしてーーーー最後には弾け飛んで。
自分がわからなくなって……苦しい思いも悲しい思いもたくさんするって、痛いくらいわかった」

「でも!ことりはもう諦めない!
私は穂乃果ちゃんが好きでーーーースクールアイドルが好きで。
その二つの好きは両方絶対に捨てられないものだから!
どちらかを捨てたら、きっと
そのことりはもうことりじゃなくなっちゃうから!
大好きを諦めない、強い力が。
いつか全てを覆して、その大好きを叶えることができるって。
私をきつく抱きしめて、行かないでって言ってくれた瞬間に。
穂乃果ちゃんが、ことりにそう、教えてくれたから……」

「だから、ことりはもう。
絶対にーーーー大好きを、諦めない!」

31: 2016/03/30(水) 21:46:19.47 ID:V8og3LHJ.net
「…………ことりちゃん……穂乃果、ちゃんと聞いたよ……?
ことりちゃんの話、ちゃんと全部、聞いたから……」

「うん……っ……うんっ……!」

「それでね、ことりちゃん……穂乃果も、ことりちゃんに話したいことが、いっこだけあったの、思いだしたんだ」

「ぇ……?」

「ことりちゃん。私たち、やっぱり親友なんだね。
私も今日、今ことりちゃんが話したのとおんなじようなこと、海未ちゃんに話したんだ」

「そんなこと……あったんだ……」

「私はスクールアイドルが好き。
そして、一緒になってスクールアイドルを好きでいてくれる、μ’sのみんなのことが大好き。
でも、穂乃果がスクールアイドルに夢中になって、そのせいで大好きなはずのみんなにとっても嫌な思いをさせて……。
私、なんでこの二つのことが大好きだったのか、わからなくなった。
こんなに辛い思いをして、それ以上の思いを誰かにさせて。それでもスクールアイドルを続ける理由を見つけられなくて。
全部捨てて。別のことを始めてみようかって、真剣に考えた。
でも。私、やめられなかった。
私、どうがんばっても、どんなにこれかもって思ったものをやろうとしても。
結局最後は歌と踊りと、みんなが揃った、スクールアイドルをやってる自分しか想像できなかった。
スクールアイドルを続ける理由は見つからなかったんじゃなくてーーーーもう当たり前みたいに穂乃果とひとつになって、とっくに穂乃果そのものになってたからなんだって、私はようやく気が付いたんだ。
だから、もう一度やりたいって、みんなでスクールアイドルをやりたいってーーーー大好きを全部、諦めないって。
海未ちゃんに伝えたの」

「私と、おんなじ……」

32: 2016/03/30(水) 21:48:33.44 ID:V8og3LHJ.net
「海未ちゃんは、それを聞いて、ちょっとだけ優しく笑ってから。
私がーーーーそんな自分に嘘をついて、誰かを傷付けるのが嫌だからって、
他人を理由にして二つの大好きをいっぺんに捨てて逃げ出したことに怒って……悲しくて、許せなくて。私を叱ったんだって言ってた。
そして、今度は蹴飛ばすみたいに笑いかけて。
ことりちゃんを今すぐ取り戻してこいって、学校からすごい勢いで穂乃果を追い出してくれた」

「海未ちゃん……」

「海未ちゃんは優しいね。すごいよね。
私のこと、私以上にわかってくれてて。
そして、私が道を誤ったなら、迷わずにそれが間違いだってーーーー誰かの嫌われ者になっても構わずに叱って、教えて……一緒になって泣いてくれる。
でも、穂乃果は、だめ。
海未ちゃんみたいに、大切な人の気持ちが全然見えてない。
だから、大切な人のために一番動かなきゃいけないときにも、私きっとなんにも気付かないで、
いつもみたいににこにこ笑ってることしかできなかった」

「……穂乃果……ちゃん?」

33: 2016/03/30(水) 21:50:18.98 ID:V8og3LHJ.net
「だから、ことりちゃん……ごめんね……穂乃果、こんなに遅くなって……
こんなに苦しくて悲しくて、辛い思いをしてることりちゃんのこと、放っておいて……
こんなにぎりぎりになるまで何もできなくて……
穂乃果、こんなにだめだから……謝って、ごめんねって……
こうやってぎゅって……大好きだよって……うっ……
せめて一緒になって泣いてあげることしか、できないけどっーーーー」

「ううん!そんなことない!!
穂乃果ちゃんは……穂乃果ちゃんはすごいんだよ!
だって!私が欲しくてたまらなかった言葉、あったかい温もり……私たちの未来!
全部あのときに、ちゃんとくれたんだもん!」

「うぁ……ありが、と……ことりちゃんっ…………ひっ、く……
ほ、穂乃果のこと許して……ことりちゃん。ごめんね……?
好き……大好き、ことりちゃん……」

「私も好き!穂乃果ちゃんのことが、大好き!
ごめんねーーーーことりの方こそ、穂乃果ちゃんに言えなくて、勇気がなくて。
だから、ありがとう。穂乃果ちゃん……今日来てくれて……私と泣いてくれて……私と、ともだちでいてくれて……」

「ことりちゃん……ことりちゃんっ……!」

「あぁ……穂乃果、ちゃん……穂乃果ちゃん!」

「「うわぁぁああぁんん!!」」

△ △ △ △ △

34: 2016/03/30(水) 21:51:28.69 ID:V8og3LHJ.net
その夜、私たちはいっぱい泣いた。
抱き合って、涙と鼻水で互いのパジャマをぐちゃぐちゃにして。
お母さんにまたうるさいって怒られないように、薄い布団を頭まで被って。
声がかれるまで。涙が出なくなるまで。朝がくるまで。
ふたりで、いつまでも泣き続けた。

そして、朝目が覚めて。
信じられないくらい腫れ上がった互いの瞼にひとしきり笑い合ってから。
これからもよろしくねって、ふたりで固い握手をした。

晴れやかな秋の予感に包まれた高い空の下。
ことりちゃんと手を繋いで駆けていった学校までの道のりが、どこまでも続く私たちのこれからを示しているみたいでとっても気持ちが良かったのを、
今でも昨日のことのように覚えている。

35: 2016/03/30(水) 21:52:41.05 ID:V8og3LHJ.net
それから。その夜の誓いのとおり、ことりちゃんは変わった。
誰より最初に練習にきて、誰より真剣に自分の弱点に向き合って、ミーティングではどんどん自分の意見を発表して。
どんなに海未ちゃんに恥ずかしいって駄々をこねられても、
にこちゃんにもっと私を目立つようにしなさいって迫られても、
明らかな問題があったりそれが実際に良いアイデアだったとき以外は、絶対に衣装のデザインを変えることは無くなった。

その熱量は、すごい勢いで前へと進んでいく後ろ姿と重なって、見ている私がときどき寂しくなっちゃうくらいーーーーでも、とっても頼もしいものだった。

そう、ことりちゃんは変わった。

でも、穂乃果はーーーー

37: 2016/03/30(水) 21:53:50.80 ID:V8og3LHJ.net
『出なくても、良いんじゃない?』

『たるみ過ぎです!』

『 ええんや、一番大切なのは、μ’sやろ? 』
『ん?どうかしたの?』

『 μ’sに入っても、問題ないですか? 』
『……わからないよ……』

『穂乃果ちゃん。寂しくなっちゃだめ!』

ーーーー『何をやっていたんですか!』

39: 2016/03/30(水) 21:55:36.41 ID:V8og3LHJ.net
「そこまで怒られること、たくさんしてるよ……」

ーーーー穂乃果はまだ……それともまた?
変われない、ままだった。

情けなくて。口の中に苦いものがいっぱいに溢れたみたいになって。
私はたまらずに寝返りを打った。

ーーーーんだけど。

「もう、穂乃果ったら。にこの次はあなたかと思ったら……寝言じゃなかったのね?」

横へ向いた寝返りの先で。少し拗ねた声の絵里ちゃんと、ぱちりと視線が噛み合った。

「ご、ごめんね。もう寝るからーーーー」

びっくりして、ついつい無理そうな提案が口をつく。
そんな穂乃果を見通す碧い瞳が。

「嘘おっしゃい」

そっと、私の唇に指を押しあてる。

40: 2016/03/30(水) 21:57:58.29 ID:V8og3LHJ.net
「まったく、そんな泣きそうな顔をして……すぐに眠れるわけ、ないんだから」

そしてそのまま、穂乃果のすべてを許すように。
小さいころ、私を叱った後のお母さんがそうしたみたいに。
私をその胸に、静かに抱き込んでしまった。

「もう寝ちゃったにこには悪いけど。
今の穂乃果を静かにしなさいって叱るだけ叱って、後はお休みなさいだなんて、そんなこと。できるわけないじゃない」

抱き締められたままなにもできずにいる穂乃果の背中をぽん、ぽんと、優しく撫でる絵里ちゃんの手。

「それに、どうせ叱ったところで結局また落ち着きなくごろごろしだすに決まってるんじゃ、ね」

抱かれた腕が少しだけ緩められ、顔をあげる穂乃果。
そこへウインクを決めた絵里ちゃんは、だんだん興が乗ってきたみたいで。
するすると口上を囁き続ける。

「いいわ、今夜限りのあなたのお姉さんが、安眠が取り柄の妹の夜を狂わすお悩みの正体をーーーー」

愛嬌たっぷりに笑いながら。ちょっとだけ真面目さを残した声が、私に姉(シスター)の眠りを妨げた正体の告解を迫っていた。

「ーーーー聞いてあげる。眠らないこの街の夜が、更けるまで」

「絵里ちゃん……ハマりすぎ……」

お母さんみたいな。お姉さんみたいな。優しい優しい先輩に抱かれながら。

私は、今夜私に訪れた果てのない後悔と自責の束を。
絵里ちゃんの手を借りて一つずつ紐解いて、背中から降ろしていくことができたんだ。

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

41: 2016/03/30(水) 22:00:31.66 ID:V8og3LHJ.net
▽ ▽ ▽ ▽ ▽

絵里ちゃんが教えてくれた。

「穂乃果だって、海未のようにできてるじゃない」

「え……?」

苦しいのも、悲しいのも、嬉しいのも、大切な決意も。涙にしかならない、私たちの結び付きすら。
大きな思いの奔流をひとつひとつ言葉にした、ことりちゃんの長い長い告白。
でも、

「ことりは大好きを諦めないって誓ったはず。
なのにどうして、穂乃果に見抜かれるまで。
最初スクールアイドルのこと、どうでもいいなんて嘘をついたのかしら?」

そこに一つだけ混じっていた矛盾を、絵里ちゃんは穂乃果に諭すように指摘した。

「気持ちが、上手くまとまってなかったから……?」

「それもあるわ。でも、きっと……」

43: 2016/03/30(水) 22:02:17.83 ID:V8og3LHJ.net
ことりちゃんの、気持ち……。
心無い人が、それを知らずに結果だけを見たとき。
最初ことりちゃんがついた嘘の内容に違わず、彼女をただの身勝手だと責めるかも知れない。
ことりちゃんは心の底から私に全てを話すつもりで、でもそのことに気付いてしまって。
どうしようもない不安に突き動かされるままーーーー

「穂乃果に否定してもらいたくて、最後の最後で、とんでもなくあなたに甘えたのね」

「そんなの、全然気にしなくていいのに……」

「ほんと……穂乃果絡みのことになると、ことりもまだまだ困った子なんだから……。
でも、穂乃果はことりの信頼に応えて難なくそれを喝破して……空港と部屋。1日で2度も、ことりの心を正しく導いてみせた」

「大げさだよ……穂乃果は、ただことりちゃんのことが、大切で……」

「そう、それよ。
海未も、きっとそうだった。大切なひとに、正しくあって欲しいから。悲しい未来を歩んでほしくないから。
穂乃果のために、ことりのために。海未はいつも、迷わず動けるんじゃないかしら。
そして海未は、穂乃果やことりより、少しだけその判断が早いだけ。
あなたも、ことりも、海未と変わりない。大切な誰かのために、あなたたちは行動できる。
未来を、変えられる。
それが歪でも、一方的なものでもなく。
3人できれいに循環して……それは今までも、そしてこれからも、ずっと……」

羨ましいわ、と。そう付け加えた絵里ちゃんは、穂乃果の頭をちょっと強引にくしゃっと撫でると、少しだけ寂しそうに微笑むのだった。

45: 2016/03/30(水) 22:04:34.36 ID:V8og3LHJ.net
絵里ちゃんは、続ける。

「希が言っていたわ。
ずっとひとりだった人は、他人との距離の取り方を知らなくて。
ひとりじゃなくなれそうなその瞬間の、
踏み出す最初の一歩をどうすればいいのか、わからないんだって」

真姫ちゃんの思いの正体。それには、きっと希ちゃんにしか上手く寄り添えなかったんだって。

「私だって……そう。
顔の繋がりしかないようなコンクールに何の後ろ盾もないまま、おばあ様の忠告を無視して参加して、
その度に悔しい思いと敵だけを作って泣いていたーーーーあの頃から希に出会うまでの私があったから。
真姫の気持ちを少しだけ考えることができた。
そしてーーーー」

そして、そんな2人の夏があったから。
あの冬の夜。
希ちゃんの夢を、私たちみんなで叶えることができたんだって。

「どうせ冬の希のことも、私にもなにかできたんじゃないかって……そんなこと、考えてたんでしょう……?」

あけすけな穂乃果の考えに、めっと指を立ててから眉間をつついて叱りつける絵里ちゃん。
その声はどこまでも優しく、その眼差しは穂乃果の全てを包み込むように。

「まったく……一年間ずっと一緒にいてわかってはいたけど、調子が悪いときの穂乃果ってば、全部自分のせいにして、際限なく沈んでいっちゃうんだから……」

「た、はは……」

「……だから私は、あの日の言葉を。何度だってあなたに贈るわ、穂乃果」

そう、同じ声、同じ瞳で。穂乃果の部屋で、心をさらけ出して寄り添ってくれた温もりをそのままに。
あのときと同じ言葉を、胸に抱いた私にーーーー優しく、囁きかけてくれた。

46: 2016/03/30(水) 22:08:42.02 ID:qRi/NlnJ.net
「何度でも言うわ、穂乃果。
私は、あなたの手に救われた。
凝り固まった考えのまま、誰の意見も聞き入れず、新しい発見も取り入れず。
自分でももう何が正しいのかわからなくなりながら、それでも多分正しいとされるであろう行動を。
がむしゃらに、いろんなものにぶつかって、
まっすぐの道がどこなのかとっくに見失っても、無理やり歩き続けたせいでーーーー心のどこかで辛いっていつも泣いていた、ばかな私を。
あの日、あのとき。
あなたが救い出してくれた。」

「良いと思ったら、やってみる。
今までと違うことだって、怖がることは何もない。
全然うまくいかなくったって、楽しいと感じる心があるのなら、間違いじゃない。
どれも、みんな。
あの春、突然私の前にあらわれた穂乃果が、次々と見せつけていったーーーーそんな言葉で悔しがるしかない私に、教えてくれたこと。
変わることを恐れないで、突き進む勇気。」

「私と同じように、いろんなものにぶつかりながらも。
ときには根こそぎ引き倒し、ときには巧みに受け入れて、ときには全てを遥か飛び越えて。
そうやって自分の信じる思いを振りかざしながら。
あなたは地べたを這い、空を、穂乃果を、睨み付けることしかできなかった私にも手を伸ばし。
あなたもこっちにきて。
こっちで、一緒に頑張ろう?
楽しもう?
そうやって、出口のわからない暗いだけの道筋から、困難ばかりだけど光の溢れるまばゆい空へ、
私を引っぱりあげてくれた。連れて行ってくれた」

47: 2016/03/30(水) 22:10:37.40 ID:we7BO7XL.net
「ねえ、穂乃果。聞いて?
私の胸、すごいどきどきしてる。
明日のステージのことを考えただけで、一瞬でこんなになっちゃうの。
それは、ちょっぴりの不安と、たくさんの緊張と、ありったけのわくわくのせい。
でも、ちっとも怖くなんてないんだから。
穂乃果に出会う前の私なら、きっとこれっぽっちも耐えられなかった。
こんな風に笑うことなんて、絶対できなかった。
穂乃果はどう?明日のことを考えて、恐怖で胸がきゅん、ってする?
ーーーーううん、きっと私と同じ。楽しみで、この今ですら楽しくて仕方なくて。
いてもたってもいられないから、鼓動が高鳴って眠れなくなっちゃう……違う?」

「……ううん。その通りだね、絵里ちゃん……
私も今、すごいどきどきしてる……」

「ふふ。当たり前よ、穂乃果。
だって、この胸の高鳴りはあなたがみんなに広めた、素敵な病なんだから。
怖さを忘れて、ひたすら楽しく、辛さも笑顔の素になる。
そんな素敵で、おかしな病。
今ではみんなが罹って。熱病に浮かされながらも、確かな予感は常に隣に。
緊張と鼓動と、笑顔が爆発する瞬間を、ただ待ち焦がれてる。
いつも穂乃果の選ぶ、困難で険しい道のりの果てに。
必ずそのときがやってくることを私たちは知っているから……」

48: 2016/03/30(水) 22:12:46.48 ID:V8og3LHJ.net
「だから、みんな……
みんな、あなたに付いていきたいって、引っ張っていって欲しいって。
いつもそう思っているのよ」

「穂乃果に、引っ張って……海未ちゃんもそんなこと……」

「ふふ……ほら、すごいでしょ?
やっぱりみんなそう思ってる。
穂乃果の発想は、突飛で唐突で、限界を超えたものばかり。
普通だったら思い付いても尻込みして、打ち消してしまってーーーー
でも、そうする度、いつも心のどこかがチクリとしてしていた。
誰もが密かに憧れる、無邪気な夢のような光。
穂乃果に見出され、ずっと一緒に駆けてきた私たちだから。
その光を恐れずに、ともに目指すことができるの。
その光を信じることは、容易いの」

「だからね、穂乃果。
あなたがきっと気にしてる、ラブライブ本大会の選曲だって。
私は微塵もわだかまりなんて感じてないのよ?
心の底から、あなたは正しかったって言い切れるから」

「ーーーーっ!」

49: 2016/03/30(水) 22:14:03.10 ID:V8og3LHJ.net
「明日歌うあの曲と、本大会で歌った曲。
真姫が同時に書き上げて、同じように海未も平行して歌詞がほぼ完成しそうだって知ったとき。
本当にびっくりしたわよね?」

「絵里ちゃん、それは……」

「だめ、穂乃果。そのまま聞いて……」

「ぅ……」

「どちらを本大会にぶつけるか……みんな迷って決まらない中。
”Angelic Angel”の曲名が先に決まって、その流れでセンターボーカルも私に決まって、歌詞も先に出来上がっていたそちらを推す意見に全体が傾きかけたとき。
穂乃果が”KiRa-KiRa Sensation!”の曲名を提案しながら言った言葉、よく覚えてる……」

50: 2016/03/30(水) 22:15:53.25 ID:V8og3LHJ.net
『私……私たちの今を惜しむように……だから”もっと”ってーーーー確実な”なにか”を欲しがる、
切ない決意の通った”Angelic Angel”が好き。
でも、私は……。
いろんな事があったけど、ラブライブを目指して頑張ってきて、それが現実になろうとしていて……
そんな私たちの歩みと重なって、歌と私たちが頂点で一つになって、見たこともないくらいキラキラに輝けそうな、この曲を。
最高の舞台で、みんなと歌いたい。
私だって、”もっと”が欲しい。”もっと”みんなといたい。
でも、あの場所で私が誰かに届けたいのは、私たちの切なさじゃなくて、
私たちがどんなにキラキラした日々を歩んできて、そしてそれが今どれだけ大きく、まぶしくなったのかっていうこと。
その素晴らしいキラキラをーーーーキラキラの感覚を、私はたくさんの人たちと共有したい。
私はそう感じたから。だからこの曲は、”KiRa-KiRa Sensation!”なんだ。
……なんて……どう、かな……』

51: 2016/03/30(水) 22:18:25.84 ID:V8og3LHJ.net
「その後の勢いったら、すごかったわよね。
歌詞を推敲する海未のペン先の鋭さ。
編曲を進める真姫の集中力。
一晩でデザインを終えたことりの笑顔。
喧嘩するくらい全員でのめり込んだ、ダンス考案のミーティング。
あなたの言葉で、私たちは確信できた。
きっと、ラブライブ本番は今までで最高のステージになるって」

「……」

「でも、それを提案したときの穂乃果の顔に、最後に一瞬掛かった影の正体が、私はずっと気になっていたの。
自分の意見がみんなに受け入れられるか不安だったって言うのとはどこか違うーーーー賞賛の瞳であなたを見つめる私からそっと視線を下げた、穂乃果の心のありか……」

「絵里ちゃん……あのね……」

「いいの、穂乃果。何も言わないで……。
それも今夜、穂乃果の話を聞いて確信したわ。
穂乃果……ばかな子ね……私は、μ’sで歌える最後の曲のセンターボーカルを潰されただなんて……
もうっ!そんなの、僅かだって感じてるわけないじゃない……!」

「ぅ……あ、絵里……ちゃん……」

52: 2016/03/30(水) 22:19:32.59 ID:V8og3LHJ.net
「泣かないで穂乃果……私はあなたに、本当に感謝してるの……
穂乃果のあの判断があったから、私たちはきっとラブライブで優勝することができた。
そして、ラブライブの優勝があったから、明日私たちは、この素晴らしい歌をついに披露することができるーーーーしかも、再びμ’sとして。この、9人で……」

「ぅ……くっ……」

「これ以上の今を、あなたは想像できる?
胸を張って、穂乃果。つまらない心配は捨てて。そして見ていて?
穂乃果がくれた最高の今を。明日のステージで、私が証明してみせるから。
私たちが欲しがった”もっと”を越えて、全てのスクールアイドルのための”もっと”をーーーー私たちのためだけじゃなくて。
新しく産まれた、誰かの飛躍を願うありったけの気持ちを込めて。
全てを賭して、歌うから」

「絵里ちゃん……絵里ちゃんっ……」

53: 2016/03/30(水) 22:21:33.35 ID:V8og3LHJ.net
「ねえ……穂乃果。
今夜、こうやって私たちの気持ちをいっぱい語り合ってきたけど。わかってくれたかしら……?
誰もあなたを責めたことはない。
恨んでなんかいるわけない。
あなたには笑顔と感謝と、尊敬以外。
贈るべきものがあるなんて、私たちには考えられないんだから……」

「……そんな……穂乃果、みんなにそんな風に思われるなんて……」

「いいえ、穂乃果。自信を持って……。
例えば、道が見えずに不安でどうしようもなくなったとき。
何かに負けてしまいそうで、怖くて逃げ出したくなったとき。
嬉し過ぎて、楽し過ぎて、どうやって今の気持ち表現すればいいかわからなくなったとき。
あなたが私たちにかけてくれた、かわりに叫んでくれた言葉の数々。
決して忘れない。
大切で尊い、私たちをいつも太陽みたいに照らしてくれるあなたの笑顔。
ねえ……少しだけ、私と思い出してみない……?」

54: 2016/03/30(水) 22:23:11.97 ID:V8og3LHJ.net
『私……やる!やるったらやるっ!!』

『やろう……歌おう、全力で!
だって、そのために今日まで全力で……頑張ってきたんだから!!』

『でも、一生懸命頑張って、私たちがとにかく頑張って、届けたい!
今、私たちがここにいる、この思いを!
いつか……いつか私たち、必ず……ここを満員にしてみせます!!』

『 だから、私たちはまた駆け出します!
新しい夢に向かって……!! 』

『この9人で残せる最高の結果……優勝を目指そう!!
ラブライブの、あの大きな会場で精一杯歌って……私たち、一番になろう!!』

『そんなことない!A-RISEのライブがすごいのは当たり前だよ!
せっかくのチャンスを無駄にしないよう、私たちも続こう!!』

『みんな……本当にありがとう……私たち、今のこの気持ちをありのままに!
大好きを、大好きのまま……大好きって歌います!
絶対……ライブ成功させるね!!』

ーーーー『 私!スクールアイドルやって!よかったあああああああぁぁああぁっっ!!! 』

55: 2016/03/30(水) 22:24:51.86 ID:V8og3LHJ.net
「私も今、あの夜空に叫んだあなたと同じ言葉を、胸が張り裂けそうなくらい叫びたい。
私、あなたに出会えて。あなたと一緒にスクールアイドルができて、本当によかったわ……大好きよ、穂乃果。
ありがとう……」

「ううん……絵里ちゃん、私こそ、いっぱいいっぱいありがとう……
私、こんなに誰かに心を軽くして貰ったの、初めて……私も大好きだよ、絵里ちゃん……」

「じゃあ、穂乃果……」

「うん、絵里ちゃん」

「「おやすみなさい」」

△ △ △ △ △

56: 2016/03/30(水) 22:31:07.19 ID:V8og3LHJ.net
こうして、異国の地で穂乃果に訪れたある長い夜は、生涯でも感じたことのない安らぎとともに更けていきました。

明日。絵里ちゃんは約束に違わず、全霊を賭してあの歌を歌い上げる。
そして、その熱に押し上げられるように。
それはきっとμ’sで最も注目を浴びるパフォーマンスになり……

たくさんの人たちがそれを見て、聞いて。
私たちが歌に込めたその願いのとおり、日本でのスクールアイドルの未来は大きく発展するって、信じてる。

まだ一つ。ただ一つだけ穂乃果の心に残ったわだかまりも。
今はときどき小さく疼いて、決して消えはしないけど。

ーーーー『簡単だったよ。とっても簡単だった』

遠くない未来。きっと答えを見つけられる。
そして、その答えは。
穂乃果たちと、穂乃果たちを応援してくれたたくさんの人に。

最高の笑顔を、くれるはずなんだ。



【おわり】

57: 2016/03/30(水) 22:34:44.91 ID:V8og3LHJ.net
途中Wi-Fiが乱れてなんか変になったようですが、ひとまずFinalに間に合って良かったです

明日は楽しみましょう!

60: 2016/03/30(水) 23:39:51.42 ID:/Eq3rwnb.net
良いね
泣いた

引用: 穂乃果「穂乃果と異国の長い夜」