663: 2014/07/19(土) 09:02:43.57 ID:h4554XdCo

675: 2014/07/19(土) 18:32:09.85 ID:h4554XdCo

このみ「でもそうでしょう?」

あずさ「はい?」

このみ「色々とできるでしょ、大きいほうが」

比奈「いろいろって……」

あずさ「工口工口?」

比奈「ちょっ、本当にあずささんしっかりしてください!」

このみ「でもそういう事じゃない」

比奈「まぁそうかも知れないですけど……」

あずさ「挟んだりね」

比奈「……どうしたんスか? 今日は」

このみ「CMの間に飲むから」

比奈「あ、言っちゃうんスねそれ」

あずさ「でも実際はどうなのかしら?」

 (机の上のトークテーマの中から「好み」と書かれた物を取る)

比奈「なにがッスか?」

あずさ「年を重ねるごとに下に下にって言うじゃない」

比奈「下に?」

このみ「角度が?」

比奈「か、角度? ……ぶふっ」

あずさ「そうじゃなくて、胸から腰に行って」

このみ「あぁ、お尻から太ももにって言う奴ね」

比奈「角度って……んふっ」

このみ「落ち着いて比奈ちゃん」

比奈「落ち着くべきなのはあんたらッスよね!?」

あずさ「大丈夫よプロデューサーさんもなにも言ってないから」

比奈「いやいやいや! あれはもう面倒だから後で摘めばいいやって言う諦観ですよ!?」

このみ「よっこいしょっと……」

 (このみが立ち上がりセットに置いてある冷蔵庫からビールを取り出す)

比奈「あ、もうCM待たないんスね」

あずさ「私の分もー、比奈ちゃんは?」

比奈「……いただくッス」


676: 2014/07/19(土) 19:30:06.60 ID:h4554XdCo

このみ「で、どうなのかしら?」

比奈「あーどうなんでしょうね」

あずさ「手のひらを広げて親指が十代って言うわよね」

比奈「え、そっちッスか」

このみ「じゃああそこのスーツマンは中指だから……」

比奈「あの……中指をあわせて見るのやめましょう」

あずさ「遠近法的に凄い大きさに……」

このみ「腕くらい?」

比奈「なんなんスかあんたら」

このみ「あーでも私ももっと身長と胸が欲しいわ」

あずさ「このみさん位のが好みの人も世の中には一杯いますよ、ね?」

比奈「私に振りますかそれ……、まぁでもそうッスよ」

このみ「でもそれって社会的に相手にされない人でしょ?」

比奈「辛辣! ファン全否定ッスよ」

あずさ「こういうのは男性の意見がないと……」

 (おもむろにカメラに向かうあずさ)

あずさ「ということでプロデューサーさんこっちへ」

比奈「え」

P「おい馬鹿やめろ!」

このみ「いらっしゃ~い」

P「あー、またお前らは……」

あずさ「で、どうなんですか?」

P「なにがだよ!? ……まて、言うな!」

比奈「流石に危機回避能力高いッスね」

P「お前も一緒になって……」

比奈「一人でコレはしんどいッス」

このみ「まぁまぁプロデューサーも飲んで」

P「……はぁまったく」

677: 2014/07/19(土) 19:31:13.07 ID:h4554XdCo

―――

P「だから、さ~。女が思う理想の女と男の思う理想の女には高い隔たりがあるんだよ」

あずさ「そうなんですか~?」

P「足が長くて背も高い、スラッとした女が居たら見るけど、
 それは綺麗なCG見てすげーって思うのと同じで、性的には見れないんだよなー」

このみ「胸とかは?」

P「胸に関しても同じ、でかかったらつい『おっ?』って思うけど
  だからって誰でもでかいのが好きって訳じゃないよ」

比奈「おっ、とは思うんスね」

P「そりゃあな、同姓でもでかいの居たら『うおっ』って見るからそれと同じだろ」

あずさ「みるんですか?」

このみ「食いつく所そこ?」

P「そら見るだろ」

比奈「まぁでも女としても巨Oの女性を見てしまうときはありますしね」

このみ「そうよね……え? 時間? もうちょっとだけー」


  結局だらだらとおしゃべりを続けたこの回はほとんど無編集で放送されましたが
  割とよくある事なので別段大きな話題にはなりませんでした

679: 2014/07/19(土) 20:25:20.09 ID:h4554XdCo

【涼ちんが小さいゃを手に入れる為に小さい矢を無くそうか悩むお話】

「……これが新しい義胸体になる。以前より通気性を上げてみた」

 地下三階。晶葉ちゃんの研究所で、
僕は彼女の前に座り、女性の上半身。特に胸部を模したコルセットの様な物を受け取る。

「早速試してみてくれ、サイズや身体にフィットするかも大事だ」

 僕がアイドルとしてデビューしてずいぶん経つけれど、
ファンはおろか同じ事務所のアイドルにもバレずに過ごせているのは
ひとえに彼女の力が大きいと思う。

「んっ……、いい感じかも」

 自分の薄い胸板に貼り付けるように受け取ったソレを纏うと、
僕自身ですら女性としか見えない身体に変わる。
公式プロフィール通りのサイズに仕立てられた義胸は
見た目も質感も感触も完全に本物だ。……本物を見たことも触ったこともないけど。

「そうしてみると本当に女の子ね」

 背筋を伸ばして調子を確かめていると、
律子姉ちゃんが後ろからからかう様に話しかけてくる。

「……そうかな?」
「あら、否定しないの?」
「……」

 少しだけ真面目な声に、僕は返事をできず俯いた。
視界に映るのは偽者の胸。……偽者の僕の身体。

「ねぇ晶葉ちゃん」
「ん? なにか違和感でもあったか?」

 僕に渡してすぐ、コンピューターを弄り始めた彼女に声をかける。
なにを言おうとしてるんだ僕は? ダメだ、それを口にしたら……。

「本当の女の子に、なれないかな?」

 でも、口にしてしまった。ここ最近ずっと考えていた事。
アイドルとして活動していく中で……ううん、違う。
プロデューサーと接していく中で生まれてしまった感情。

「っ……それは……」

 目を少し見開いて、僕の顔を、真意を問う様に見つめてくる。

「あんたなに考えてんの?」

 やってしまった、と考える前に律子姉ちゃんがいぶかしむ様に聞いてくる。
でも、そこに動揺はないように感じたのは、勘違いかな。

680: 2014/07/19(土) 21:29:57.03 ID:h4554XdCo

「なれないこともないかもよー」

 不用意な発言で凍り付いた空間を壊したのは
そんな気の抜けた四人目の声。

「志希、いつ入ってきた?」
「にゃはー、いまさっきー」

 くるくるとラボ内を飛び跳ねながら志希さんは僕の前に立つ。

「これなーんだ?」

 そして懐から取り出したのは液体の入った三角フラスコ。
白衣の内側にどうやって三角フラスコを収納してたんだろう?

「また変な薬作ったんじゃないでしょうね?」
「にゃっははー! これはー……水!」

 水? ……なんでそんなものをフラスコに入れてるんだろう?
と、思ったが速いか。

「ま、まさか志希それは!」
「そー! この間晶葉ちゃんに解析頼んだ中国のとある泉の水!」
「泉の……?」
「そう! これを浴びると摩訶不思議! 女の子に変身してしまうのだー。
 まぁこれは晶葉ちゃんに解析してもらって私が成分調整して
 更に小梅ちゃんにうにゃうにゃしてできた模造品だけどね」

 まるで魔法みたいですね。と感想を漏らす僕に志希さんは
フラスコの栓を抜いて悪戯っ子そのものの表情で。

「で、使ってみる?」

 と聞いてきた。

 ――僕は……。

693: 2014/07/20(日) 14:13:33.56 ID:xKe+KtuCo

―――

 場所は移って談話室。

「はぁ……」

 僕は一人、椅子に座りフラスコと睨めっこ。
「欲しいならあげる、使うかどうかは自分で決めたらいいよん♪」
その場で決めきれずに居た僕に彼女はあっさりとフラスコを渡し去っていった。

「あ、涼しゃん!」

 で、受け取ったフラスコ。
曰く「頭からかければおけー」な液体を使うか使わないか。
僕は未だに悩んでいて……。

「あ、歌鈴ちゃん」

 僕はフラスコを隠しながらついちゃん付けで呼んでしまう年上に応えていた。
本当に志希さんはどこにどうやってこれを隠し持っていたのだろうか?

「? いまなにか隠しました?」
「あ、いや……その」

 べつに見られて困る物ではない、と思う。
でも彼女に見せるのはなんだかいけない気がした。
紗南ちゃんの言うフラグの様な気がする……。

「えいっ」
「わわっ、あ、危ないよ!」

 ぼうっとしていた所為で彼女の接近に気づかなかった。
歌鈴ちゃんは僕が後ろで隠したそれを取ろうと腕を伸ばして、……そして案の定。

「ひやっ!?」

 足元の注意散漫によって勢いよく転んだ。
僕を巻き込んで。

694: 2014/07/20(日) 14:50:56.76 ID:xKe+KtuCo

 世界がゆっくりになった。
宙を舞うフラスコ、液体が前後不覚になっている。
迫る床、頭をぶつけたら痛そうだ。
歌鈴ちゃん、それはそれはびっくりした顔をしてる。

 そして、そして。

「つめたいっ!」

 遠心力で栓が抜け、中身が零れ落ちて
中々気持ちを決められない「男らしくない」僕の頭上に、降りかかる。

695: 2014/07/20(日) 18:59:14.79 ID:xKe+KtuCo

 髪の毛を、顔を、服を濡らす液体。
そして最後に頭に落ちてくる空っぽになったフラスコ。

「あわわ、す、すみましぇん!」

 こん。と思っていたいより軽い音と痛み。

「あ、あはは……。気にしないで」

 慌てて謝り舌をかむ歌鈴ちゃんに僕は笑顔で気にしてない旨を伝える。
実際、怒りはまるでない。あるのは使っちゃったという軽い後悔が半分、
そしてもう半分は、自分の意思で使ったわけじゃないからという、
理由ができた事に対する喜びに近いものだった。

「で、でも……」
「本当に気にしないで? えっと、じゃあ私ちょっと着替えてくるから」

 謝り倒されそうな雰囲気を感じてそそくさとその場を去る。
今のところ、身体に異変はない。……もしかして、効果なかったのかな?
模造品とか言ってたし、とか思いながらエレベーターに乗り込む。

「えっ……い、いたっ! いたた……なにこれ……」

 突然胸が痛んだ。偽物の胸の下、自分の胸が物理的に。
強く圧迫される感覚、義胸が内側からの圧力に押されてる。

「う、うわぁ……」

 痛みに耐えかねて、誰かが入ってくるかもわからないエレベーター内で
咄嗟に義胸を取り外すと、その下に……。

「うそ……だよね?」

 義胸と遜色ない。……ううん、少し大きいくらいの胸ができあがっていた。

704: 2014/07/20(日) 19:29:25.21 ID:xKe+KtuCo

―――

「どうした涼、顔色悪いぞ?」

 とりあえず服を着替えどうしようかと頭を抱えている内に
次の仕事の時間がやってきてしまった。

「そ、そうですか?」

 声は変わってない、身長も多分変化があったらプロデューサーが気づくだろうから
変わってないんだろう。変わったのは、胸と、あと……その、うん。

「体調が悪いなら早めに言ってくれよ?」
「あう……はい」

 心配そうな声をかけられながら、ぽんぽんと私の頭に軽く触れる。
いつも通りの、優しくて暖かいプロデューサー。
……私の身体の事を言ったらどんな反応をするのだろうか?

 受け入れて、くれるかな?

706: 2014/07/20(日) 19:44:30.86 ID:xKe+KtuCo

「……本当にどうした? 表情が硬いぞ」

 頭を触れていた手が、顎に触れる。
俯いていた顔が、すっと上げられて、目と目があう。
千早さんの歌の一節が頭の隅で流れた。

「熱でもあるんじゃないか?」

 もう片方の手が顔に迫る。
前髪をかき上げられて、プロデューサーの顔が、近づいて。

「っ!」

 つい、目を瞑る。そんな筈ないってわかっていても。
額にその感触を感じるまで、勘違いしていたい。

「ん~、熱はなさそうだな……って涼? どうした、おい!」
「へ?」

 吐息を感じるくらいの距離で少しの間額を合わせ、
そして離れていったプロデューサーは、私の顔を見て大きな声をあげた。

「なんだ、なにがあったんだ!?」

 私の肩を掴む大きな手、本気で心配した表情。
再び近くなった彼の瞳に映った自分をみて、初めて私が泣いていることに気がついた。

715: 2014/07/20(日) 21:47:09.75 ID:xKe+KtuCo

「なんでもっ……ないんです……」

 不思議なもので、一度気がつくとあとはもう。
ポロポロと涙がこぼれてしまう。

「なんでもないってそんな訳……!」

 戸惑いと、心配と、不安と……。
色々な感情が混ざってる。

「ねぇプロデューサー」

 言っちゃダメだ。

 言いたい。

 聞かないで。

 聞いて欲しい。

「私が本当の女の子になったって言ったら、信じてくれますか?」

 濡れた頬を拭う事も忘れ、
暖かい言葉に胸を振るわせた私は。
滲む視界で彼を見つめ、言ってしまった。

738: 2014/07/21(月) 16:29:40.39 ID:WnXBN9cCo

「……信じるよ」

 唐突にこんな事を言われて戸惑っただろうに、
それでもプロデューサーはおくびにもださず答えてくれた。
期待に応えてくれた。

「確かに荒唐無稽かもしれないけど……」

 また柔らかく、さっきよりも優しく頭を撫でて。
よくする、困ったような笑顔で。

「お前が本気で言うなら、信じるよ」
「……プロデューサー」
「なるほどな、なんだか雰囲気がいつもと違うと思ったら……。
 晶葉の発明品か? 志希の薬か?」

 あいつらの好奇心は凄いけど、参った奴等だな。
と空いてる手で頬をかく。

「き、気づいてたんですか?」
「気づいてたというか、まさか性転換してるとは思っても見なかったけどな」

 そういって笑うから、
つい、つられてくすくすと笑ってしまう。
さっきまで泣いてた癖に。

「お、笑ったな。ったく、笑ってた方が可愛いぞ? って男に言う台詞じゃないか、
 ん? いまは女の子だからいいのか? ん?」
「あはは……ありがとうございます」

 眉をひそめて考え込んでしまった。
けれどそれも束の間で。

「で、どっちにやられたんだ?」

 と聞いてきた。プロデューサーの中では
もう晶葉ちゃんか志希さんのどちらかで決定したらしい。
まぁ女装してアイドルをやっている事を知っている人は限られているし、
その中でこんな事ができるのは確かにその二人だけだから仕方ないか。
――ただ。

「やられた……って訳じゃないんです」
「どういう事だ? まさか漫画みたいに朝目覚めたらって訳じゃないだろう?」

 原因が機械でも薬でも十分漫画みたいですけどね。とは言わない。
なんか、色々と触れてはいけない気がする。
だから私はいまいうべき事だけを伝える。

「私が望んで、志希さんから〝それ〟を受け取って……。
 だからやられたんじゃなくて、やった、が正しいんです」

 今度こそ、困惑の色を隠せないでいる。
どうして、と顔に書いてある。

739: 2014/07/21(月) 16:53:54.34 ID:WnXBN9cCo

 どうして、どうしてだろう?
……そんなの決まってる、胸の中にあるモヤモヤがそのまま答え。

 事務所で、数少ない男同士ってだけだったのかも知れない。
偽りの姿でアイドルをやらされている私に対する同情とかもあったかも。
……けど、理由がなんであれプロデューサーは優しくしてくれた。

「プロデューサー、私は……」

 自意識過剰かも知れないけど、他のアイドルよりも、近い距離で居れたと思う。
それが心地よかった。撫でられるとくすぐったくて、褒められると嬉しかった。
ずっと、気づかない振りをしていた気持ち。

「ううん、僕は……プロデューサーが、好きです」

 以前僕に告白してきた彼を笑えなくなってしまった。
いや、元々笑えない冗談だとは思っていたけど。
男らしくなろうとアイドルを目指して、こんな事になるとはまるで思ってなかった。

742: 2014/07/21(月) 17:32:00.08 ID:WnXBN9cCo

「俺も、涼の事は好きだよ」

 一瞬面食らったように目を瞬かせて、
予想通りの答えを言うプロデューサー。
そういう意味ではないとわかって、そう答えるあなたは。

「ずるい人ですね」
「……最近よく言われるんだ」

 困ったように笑い頬を掻く。
その笑顔はいつもより少しだけぎこちない。

「いまは、それでいいです。ありがとうございますプロデューサー」

 今は。
じゃあいずれは? どうなるかわからない。
少なくともただでさえ障害の多い他のアイドルよりも
更に大変で難しいだろう事はわかる。

「じゃあ、行ってきます」
「行って来い、しっかりな」
「はい。……ばっちり決めたら、いつものお願いしますね」
「おう、任せろ」

 だからとりあえずは、目の前の事に集中しよう。
それで、仕事が終わったら気持ちの確認と、
勇気をくれた志希さんにお礼を言いに行こう。
そう思った。

744: 2014/07/21(月) 17:53:46.79 ID:WnXBN9cCo

―――

「あー、……言っちゃった」

 撮影を終え、戻ってきた事務所。
いつもよりもずいぶん早く終わった。
曰く「今日の涼ちゃんはいつもより艶っぽい」との事。
それはそれは……。

「失敗した……かな」

 普段だったら仕事の報告のため
いの一番に事務室に行くんだけど。
今日はなんとなく5階へ向かう、シャワーを浴びるためだ。

「……本当に広いんだなぁここ」

 ガランとしたシャワールームに独り言が響く。
いつ他の子が入ってくるかわからない為、
いままで一度も使ったことがなかったシャワールーム。

 仕切りがずらっとならび、タイルはピカピカ。
脱衣室ですらそこらの旅館より広い。
少しわくわくしながら服を脱ぐ。
偽物じゃない、感覚のある胸が視界に入る。
いつものブラジャーがきつかったので軽い開放感。

746: 2014/07/21(月) 19:10:09.75 ID:WnXBN9cCo

「っと、ここでいいかな?」

 誰も居ないのにタオルで前を隠しながら仕切られた空間の一つに入る。
数を優先してる所為か、ちょっぴり手狭な印象を受ける。
タオルを胴体部分だけを隠すような戸にかけてコックを捻る。
一つしかないそのコックは捻ると季節に関わらず最初から38度のお湯がでるらしい。

「あったかーい、これも晶葉ちゃんが関わってるんだよね、すごいなぁ……」

 頭から降り注ぐ丁度いい温度のお湯。
照明の熱で埃が舞う所為で埃っぽくなった身体を伝って
お湯が床に……。

「って……えぇっ!?」

 床にお湯がストレートに落ちていっている。
わかりやすく言うとさっきまであった胸がぺたん。

「な、な、なっなんでっ!?」

 そういえばこれを懐から出したとき志希さんは模造品とかなんとか言ってた……。
時間切れ? こんなタイミングで? ……嘘でしょ?

749: 2014/07/21(月) 19:29:42.90 ID:WnXBN9cCo

「と、とにかくでなきゃ……」

 シャワーを止めてタオルを取り、
慌てて脱衣室に戻る。
こんな状態で誰かに出会ったらどんな目に合わされるか。

「……ありゃ?」
「あっ」

 確認してからあければよかったと本当に思った。
転ぶ勢いで力一杯あけた扉の向こうには、
下着姿の志希さんが居た。

「なんで君がここにいるの?」

 あ、まずい。素だ。

「いや、あの、貰った薬(?)を使ってたから、だから女の子で僕はそのえっと」
「あー、そゆことかー。……とりあえずあっち向いててくれる?」
「あ、はい」

 僕全裸、志希さん半裸。
見られたらヤバイ度が倍どころの騒ぎじゃなくなってしまった。

「ん、いいよー。で、シャワー入ってたら戻っちゃったって?」
「えっと、そういう事です。模造品とか言ってたから時間制限なのかなと」

 いいながらコソコソと僕も着替える。
濡れた身体に服が張り付くし、そもそも胸がなくなってるけど
とりあえず全裸のままではいられない。

「にゃふふ~、ごめんね。説明してなかったにぇ~
 あれ、水をかぶると女の子になってお湯をかぶると元に戻るんだ」
「な、なぜそんな面倒な仕様に……」
「元々の泉がそういう性質だからね」

 言って、またにゃふふと独特に笑う。
でも、という事はまた水をかぶれば女の子になれるという事?

「それは無理。元々の泉だったらそうだけど、今回渡したのは戻ったらそのままなんだ
 そういう意味で模造品の劣化版なのさ~」

750: 2014/07/21(月) 19:38:00.80 ID:WnXBN9cCo

「そうですか……」

 残念なような、よかったような。
なんともいえない気分だ。

「ま、お試しって感じだったしね~。
 それはそれとして、さっさと胸、つけて来たら?」
「っと、そうでした。……色々とすみませんでした」
「にゃはー、またなりたくなったら言ってよん♪」
「か、考えておきます」

 最後にもう一度頭を下げてそそくさと立ち去る。
こうして、僕の一日女の子体験は終わった。
不完全燃焼の、曖昧で、尻つぼみに。

 ――と、思っていたんだけどなぁ。
 

751: 2014/07/21(月) 19:58:11.94 ID:WnXBN9cCo

――― それから数日後。夜。

「凄い雨だな」
「台風が近づいてるらしいですから」

 自主レッスンに励んでいる内に随分遅くなってしまい、
事務室で残業していたプロデューサーと一緒に帰る事になった。

「こりゃ明日は大変だな……」
「電車動くんでしょうか?」

 事務所の前、大きな雨粒がアスファルトに当たって弾ける。
ステージの歓声にも似た、耳に心地いい雨音。

「じゃあ俺車取りに行って来るからちょっと待っててくれ」
「あ、僕も行きますよ!」

 時間の所為だけじゃない真っ黒な空の下。
鍵を持って走り出そうとするプロデューサーにそう言って、
二人で雨の中走り出す。

「……うっ!?」

 途端胸に走る圧痛が鈍く走る。

「お、おいどうした涼!?」

 これはもしかして……。
ここが事務所の外であることも忘れて、
胸が圧迫される原因を取り外すと――。

「ぷ、プロデューサー……私、また……」

752: 2014/07/21(月) 20:00:28.44 ID:WnXBN9cCo
涼ちん どっちつかずのまま おわり

このスレの趣旨がとてもわからなくなりました。まる。

769: 2014/07/21(月) 22:16:04.09 ID:WnXBN9cCo

―― 地下三階

「あれ?」

 私が毎度ながら研究室に篭っていると、
不意に後ろから声が聞こえた。

「……また勝手に入ってきたのか」
「今回はノックしたも~ん」

 間延びした喋り方をする彼女に眉を顰める。
よく見ると彼女は手に一つのフラスコを持っていた、
淡い色のついた液体が入った三角のフラスコを。

「どうした? また変な物を作ったのか?」
「晶葉ちゃんにいわれたくにゃーい」

 頬を膨らませけらけらと笑う彼女。
どうにも年上らしからぬ所作にペースを乱される。

「ん~、これこの間涼ちんにあげた筈の試作品なんだけど」
「あの娘溺泉とかいう泉の複製品か」
「そそそ。なんだけど、それがここにあるんだよねぇ」
「……つまりは?」
「本物の泉の水を渡しちゃったかも!」

 志希はとても楽しそうな笑顔でそういった。

771: 2014/07/21(月) 22:32:29.29 ID:WnXBN9cCo
>>770

志希「にゃふふ~、だよねだよね~。てへっ!」

晶葉「……」

志希「ん~、なにかなその顔は?」

晶葉「いや、なんというか呆れて言葉もない。
   というかどうするつもりだ?」

志希「なにが?」

晶葉「本物と言う事はもう戻せないんじゃないのか?」

志希「だいじょ~ぶ、この男溺泉の方を浴びれば……」

 がしゃん

晶葉「あ」

志希「あっちゃ~、おっことしちゃった!」

晶葉「おい」

志希「あっ、そろそろレッスンの時間だ! じゃあね~」

晶葉「おいっ! せめて雑巾がけくらいしていけ!」

778: 2014/07/22(火) 11:16:34.28 ID:+XdcnshCo

【机の下 その1】

P「……」(仕事中)

乃々「……」ごそごそ(ズボンの裾を引っ張る)

P「……?」(下覗く)

乃々「……」(見つめる)

P「……」(撫で撫で)

乃々「♪」

桃子「……」じー

P「……?」(振り向く)

桃子「っ」さっ

乃々「……」ぐいぐい(裾引っ張る)

P「……」(撫で撫で)

乃々「♪」(ご満悦)

桃子「……」じー

779: 2014/07/22(火) 11:39:49.41 ID:+XdcnshCo

――― 翌日

P「……」かたかた

 くいくい

P(また乃々か?)

桃子「……」じっ

P「!?」

桃子「……」(裾引っ張る)

P(……う~ん)撫で撫で

桃子「♪」

P「……どうしたんだ?」ぼそっ

小鳥「はい?」

P「あ、いやこっちの話で」

桃子「お兄ちゃんは黙って桃子をなでればいいの」

P「……」なでなで

桃子「♪」

789: 2014/07/22(火) 14:10:29.86 ID:+XdcnshCo

――― 翌日

P「……んー」

泰葉「……」(くいくい)

P(ん、今日誰――

P「うおっ」

ちひろ「どうしたの?」

P「あ、いや……なんでも」

泰葉「……」じー

P(なんで泰葉が……)

泰葉「……」ぐいぐいぐい

P(すごいみてるな……撫でろって事か?)

 (手のひらを下に持っていく)

泰葉「……っ」

 (頭を手の下に持っていく泰葉)

P「……」撫で撫で

泰葉「ふふっ……~♪」

P(なんだ最近……)

泰葉

790: 2014/07/22(火) 14:19:09.01 ID:+XdcnshCo

――― また翌日

愛「おはようございます!」

P「あぁ、隠れる気ゼロなんだな」

愛「はい?」

P「いや、というかなんでお前まで?」

愛「なんか流行ってるみたいです!」

P「机の下が?」

愛「はい。インディの三人がいつも入ってるからって」

P「あー」

愛「とりあえず撫でてください!」

P「……」なでりなでり

愛「んふふ~」

P「満足か?」

愛「もうちょっとぉ……」

791: 2014/07/22(火) 14:29:32.46 ID:+XdcnshCo

【もしもPが】

P「おい志希」

志希「ん? なになに~」

P「あんまり俺もアイドルの趣味に口をだしたくはないけどさ。
  まわりに迷惑かけることだけはやめてくれよな」

志希「迷惑? かけてないよ~」

P「この間の涼はどうなんだよ……?」

志希「あれは望んだものを提供してあげただけだも~ん♪」

P「……」

志希「も~、そんな顔しちゃみんなが怖がっちゃうよん?
    ほらほらこのジュースでも飲んで」

P「まったくお前は……、もらうぞ」

志希「どーぞどーぞ」

 (受け取ったコップに口をつけ飲む音)

P「んっ……? これ美味いな、なんだこれ?」

志希「志希ちゃん特性じゅーすだよ~」

P「へえ……。こういうのだったらみんな喜ぶんじゃないか?」

志希「……そう? じゃあ考えておくよん、ばいび~」

 (走り去っていく志希)

P「ばいび~って……古くないか?」

P「……しかしこれ美味いな……って!」

 (胸の痛みにうずくまるP)

P「な、なんだこれ……? ……あれ? 収まった……うわぁっ!?」

 (そこには胸を膨らませた(物理)Pの姿が)

P「し、志希の野郎!」

793: 2014/07/22(火) 14:34:12.70 ID:+XdcnshCo

―――

ちひろ「で、そんな事になったと」

P「……まいった」

小鳥「志希ちゃんは捕まったんですか?」

P「いや、完全に行方をくらましやがった」

ちひろ「……」パシャ

P「え、なにしてんの」

ちひろ「写真を撮っておこうと」

小鳥「あ、私も」パシャ

P「……はぁ」

ちひろ「で、元に戻れるの?」

P「一日経てば効果は消えるってコップの裏に書いてあった」

小鳥「ほほう、では今日はこのまま?」

ちひろ「仕事はどうするの?」

小鳥「外回りの仕事は……無理よね」

P「大人しく事務室で過ごすとする」

797: 2014/07/22(火) 14:45:05.66 ID:+XdcnshCo

―――

P「と、思っていたのになぁ……」

あずさ「ご、ごめんなさい。そんな事情があるとは露知らず」

P「あぁいえ、アイドルに見つかる分には別に。
  他事務所とか局の人とかに見られると面倒ってだけだったから」

あずさ「すみません。いい加減この方向音痴もどうにかしたいんですけど……」

 (腕を絡めてくる)

P「ちょ、なにして」

あずさ「ふふっ、いいじゃないですか。いまは女の子同士なんですから」

P「いや、でも……えぇ?」

あずさ「さ、事務所まで案内してくださいプロデューサーさん」

P「あーもうっ、行くぞっ!」

あずさ「ダメですよ。今は女の子なんだからそんな言葉遣いじゃ」

P「……はぁ」

800: 2014/07/22(火) 14:51:49.41 ID:+XdcnshCo

―――

あずさ「ありがとうございました」

P「はい、では俺はこれで」

あずさ「はい、失礼します」

 (足音)

P「……まいったな。腕力も女性のそれだし、全然振り払えない……」

このみ「ん? ……プロデューサー? あれ、でも少し小さい?」

P「あん? このみか」

このみ「あ、やっぱりプロデューサーだったのね」

P「あぁ、志希の薬で色々あって……」

このみ「……」

P「ってどこみてんだ?」

このみ「胸、でかいわね」

P「どこみてんだ!」

このみ「なによいいじゃないの、女同士胸見たって」

P「お前らの順応能力高すぎ!」

このみ「どうせ晶葉ちゃんか志希ちゃんの悪戯でしょう?
     その程度慣れたわよ」

P「……そうかい」

このみ「それにしても……」

 (このみがPの胸を鷲掴みにする)

P「ひぃやぁ!?」

このみ「このサイズでノーブラはダメなんじゃないかしら?」

P「なっ、や、やめろ! 変な、変な感覚! なんだこれ!?」

このみ「こんなので外歩いてたら痴女よ痴女」

P「わかった、わかったから離してくれ!」

801: 2014/07/22(火) 15:02:36.01 ID:+XdcnshCo

―――

P「……」どんより

藍子「……プロデューサー」

P「ん、あぁ藍子……」

藍子「お話は聞きました。大変ですね」じー

P「はは、まったく」

藍子「お茶、どうぞ」じー

P「ありがとう。……ふぅ、藍子と居るとほっとするよ」

藍子「そうですか?」じー

P「あぁ……で、さっきからなんで胸を見てるんだ?」

藍子「見てないですよ」

P「いやいや、せめて目を切ってから言おうな」

藍子「だって凄いじゃないですか、どうして男性のプロデューサーの方が大きいんですか?」

P「俺に言われても……」

藍子「身長も高いし、顔も綺麗系ですし……アイドルやったらどうですか?」

P「いやだよ、なにが悲しくて自分をプロデュースせにゃいかんのだ」

藍子「物は試しですよ。ほら、ポーズとってみてくださいよ」

P「え!? いや、それは流石に」

藍子「私達にやらせる癖に自分は嫌だと?」

P「……一度だけだからな?」

藍子「はい。勿論」

P「……こう、か?」

藍子「……」パシャパシャ

P「あいこぉぉぉ!」

藍子「素晴らしいですPさん! では私はこれで!」

 (駆けていく音)

P「くそ、あののんびり雰囲気で忘れてたけどパッション娘だったなあいつ!」

P「……ちょっとどんな感じかみてみたかったかも」

804: 2014/07/22(火) 15:34:26.31 ID:+XdcnshCo


P「ったく、今日は朝から散々だ……」

小鳥「あ、いたいた!」

P「ん、どうしたんだ?」

小鳥「春の感謝ライブイベントの件なんですけど」

P「あぁ……なにか問題でも!?」

小鳥「昴ちゃんが熱が出てこれないって」

P「なんだと!?」

小鳥「イベント開始まではまだ時間があるけど、欠員はまずいわよね……」

P「当たり前だ! ……今日手が空いてるのは!?」

小鳥「それが、現場に間に合う子が今誰も居なくて」

P「……まじか」

小鳥「居るとすれば……」

P「……すれば?」

805: 2014/07/22(火) 15:45:47.69 ID:+XdcnshCo

小鳥「……」 じっ

P「……いやいやいや! なんで俺だよ!?」

小鳥「他にいませんから!」

P「お前がやれよ知名度もあるだろ!」

小鳥「私じゃ体力的にも楽曲振り付け的にも無理があります!」

P「うぐっ」

小鳥「P君なら完璧でしょ?」

P「……いや、でもいきなり見知らぬ奴が現れても観客が……」

小鳥「大丈夫ですって! 今のP君……Pちゃん可愛いから!」

P「……俺はマスコットか?」

806: 2014/07/22(火) 15:50:20.77 ID:+XdcnshCo

―――

真「みんなー! 今日は集まってくれてありがとう!」

晴「全力でやるから最後まで付いてきてくれよな!」

ジュリア「じゃあ一曲目!」

P「THE IDOLM@STER!」

 (軽快なイントロに合わせ四人が踊る)

 (歓声が上がるステージ)

 
真(凄い……完全についてくる)

晴(マジかよ。合わせる時間もなかったのに)

ジュリア(むしろ、置いてかれそうだ……!)

P「悪いとは思うけどやめられない~♪」(ヤケ)

808: 2014/07/22(火) 16:58:40.33 ID:+XdcnshCo

―――

ちひろ「流石! 見て! ファンの皆さんの盛り上がり具合」

P「氏にたい……」

真「さいっこうでしたプロデューサー!」

晴「オレもあんな風に踊れる日が来るかな……」

ジュリア「最高のステージだったぜ!」

P「あぁ~、なんで俺がステージに……」

ちひろ「今回は緊急事態だったから仕方ないじゃない」

真「そうですよ、最初は驚いたけど」

晴「プロデューサーが居なかったらヤバかったよな」

P「……はぁ、志希を叱りにくくなったな」

真「また一緒にやりましょうね!」

P「嫌だ!」

813: 2014/07/22(火) 18:03:52.96 ID:+XdcnshCo

―――

P「ただいま~」

涼「あ、おかえりなさいって、えぇっ!?」

P「おう、見ての通りだ」

 (スーツ姿・身長165cm・B85の美人が玄関に立ってる)

涼「え、あ、志希さんですか?」

P「ま、今日だけらしいけどな」

涼「……僕の時も一回だけって言ってましたよ?」

P「……怖いこと言うなよって、今は男か?」

涼「はい、家に居るときはこっちでいるようにしてますから」

P「まぁアイドルやるなら便利かもなお前のその体質も」

涼「体質っていって良いんでしょうか……?」

P「さぁな」

涼「あ、ごはんできてますよ。それともお風呂ですか?」

P「今日は汗かいたから風呂だな」

涼「はいわかりました」


  こうしてPの一日は終わりました。まる。

820: 2014/07/22(火) 18:59:00.37 ID:+XdcnshCo

【毎年のこと】

P「あけましておめでとう」

小鳥「おめでとうございます」

ちひろ「おめでとうございます」

P「あー! 今年も年跨ぎで仕事か」

小鳥「まぁまぁ、それはみんなも同じだし」

ちひろ「今年は大晦日と元旦ぶっつづけだっけ?」

P「マスプロ年末年始の48時間TVな」

小鳥「数字は?」

P「おう、凄いぞ。過去最高だな」

ちひろ「って事は50超えたの?」

小鳥「確かここまでの平均が52位だったかしら」

P「いやぁ、みんな立派になったなぁ……」

822: 2014/07/22(火) 19:06:27.53 ID:+XdcnshCo

【凄い】

 マスプロ1F ロビー

???「……ちょっといいかしら?」

凛「はい? ……え、えっ!?」

???「P……プロデューサー居る?」

凛「は、はい! 居ると思いますけど!」

???「じゃあ呼んできてもらえるかしら」

凛「わ、わかりました!」

亜里沙「おや、凛ちゃんそこでなにを……って、うそっ! ほ、本物!?」

舞「どうも、本物の日高舞よ」

亜里沙「な、なんで!?」

凛「ぷ、プロデューサーに用があるんだって……」

亜里沙「プロデューサーさんに?」

舞「えぇ」

凛「じゃあ私すぐ呼んできますんで!」

亜里沙「ま、待って! ありさを置いてかないで!」

舞「……ふふっ、元気ねー」

823: 2014/07/22(火) 19:11:52.28 ID:+XdcnshCo

―――

P「……各方面に協力して貰って」

小鳥「?」

P「こっちに送る書類とかにマークシートみたいな記号を角に書いてもらって、
  機械でささっとジャンルとか分けられるようにできないかな」

ちひろ「……馬鹿いってないで早いとこ処理してね」

P「はいはい……」

 バンッ

凛「ぷ、プロデューサー居る!?」

P「居るぞ、どうしたそんな慌てて」

亜里沙「お、おおお、お客さんが」

小鳥「お客さん? 予定にはないわよね」

P「飛び込みかな? 名前は聞いたか?」

凛「日高舞さん!」

ちひろ「うえっ!?」

P「あー舞か、わかった今行くよ」

亜里沙「舞って……知り合いなんですかぁ!?」

P「古い友人だよ」

小鳥「古い友人って……」


827: 2014/07/22(火) 19:32:08.24 ID:+XdcnshCo

―――

舞「あ、来たわね」

P「よぉ、久しぶりだな。どうした急に」

舞「あなたの顔が見たくなって、って言ったらどうする?」

P「気色悪」

舞「ストレートね……」

P「で、なんで俺の職場に? しかも芸能事務所なんてお前からすれば……」

舞「実は、復帰しようかと思って」

P「は? ……復帰って芸能界にか?」

舞「そ、愛も頑張ってるし」

P「どうしてそれをわざわざ俺に?」

舞「あなたがこの業界で影の支配者とか教皇とか言われてるって聞いて」

P「お前も女帝とか芸能界の重戦車とか言われてるじゃないか」

舞「重戦車って次言ったら……ね?」

P「……お、おう」

舞「まー、だから。ほら、ね? わかるでしょ?」

P「俺がお前にできることなんてないぞ?
  お前がやりたいって言えばすぐできるだろ」

舞「ん~、そうなんだけど。そうじゃなくて」

P「らしくない言い方だな」

舞「じゃあ単刀直入に言うけど。……ここ、アイドル募集してる?」

P「……え、うちに来るつもりか!?」

舞「ダメ?」

P「……べつにいいけど、他のアイドルに変なちょっかいかけるなよ?」

舞「わかってるわよ~。ま、向こうが勝手に怯えちゃうのまでは知らないけど」

P「まったくいつも厄介事をもってくる奴だ……」


凛「……すっごいフランクに喋ってるよ」

亜里沙「プロデューサーさんって改めて何者……?」

凛「というか、凄いモノ聞いちゃった気がする」


 こうして、日高舞が所属することになりました!

830: 2014/07/22(火) 19:44:19.39 ID:+XdcnshCo
>>829

アケやった 箱ででるっていうから箱○も買った
L4Uも買ったし書き下ろしだからツインズも買った
PSPも星月太陽買ったし、DSも買った
フェスタも買ったし当然アイマス2も買ったよ

でも、PS3持ってないねん
なんで竜宮プロデュースできるのPS3だけなん?
グラビアも全部買ったよ? できないけど
OFA なんでPS3だけなん? なんで既存ユーザーないがしろなん?

俺も、やりたいよ PS3でプロデュースしたいよ……

834: 2014/07/22(火) 20:02:11.88 ID:+XdcnshCo
PS3買うお金とかないです
だからオーバーランクさんとももうしばらく会えないです

840: 2014/07/22(火) 20:23:43.61 ID:+XdcnshCo

【そして】

 局 廊下

舞「久々ねこの空気」

P「なんで俺がわざわざお前につかなくちゃいけないんだよ」

 スタッフA「うわっ」

舞「あら、不満?」

P「そりゃそうだ。仕事が腐るほどあるってのに……」

舞「だからじゃない、たまには外でないと仕事の前にあなたが腐るわよ?
  どうせずっと見られてなくても問題ないから息抜きでもしてくれば」

P「そういう訳にもいかない、ウチの所属になったからには
  昔の友人だろうがなんだろうが1アイドルとして接するからな」

 スタッフB「なんだあの組み合わせ……」

舞「……ふぅん」

P「という訳で挨拶だ。と言っても顔は知られてるから
 復帰しました、どうぞよろしく位でいいけどな」

舞「はいはい。……しかし本当に昨日の今日で回らされるとはね」

P「お前がやると言ったんだろ」

 スタッフC「え、なに今日この局潰されるの?」

舞「そうじゃなくて、あなたの根回しの早さに驚いたの」

P「こっちだって、レッスンみてたまげたぞ。現役時代と変わりないじゃないか」

舞「あら、ありがと」

847: 2014/07/22(火) 21:02:55.33 ID:+XdcnshCo

【逆に】

舞「それで? 私はなにをすればいいのかしら?」

ルキ「え、えと……ではまずは一通りの動きを見てレッスン内容を……」

舞「そう。で、踊ればいいの? それとも先に歌かしら?」

ルキ「ぷ、プロデューサーさんからはブランクで体力落ちてるだろうからってダンスを、と」

舞「あら、Pも言ってくれるわね。……じゃあ今の私の全力、見せてあげるわ!」

―――

舞「っと、これでいいかしら」

ルキ「は、はい! 十分です!」

舞「……」

ルキ「あ、あのどうしました?」

舞「あなた、新人さん?」

ルキ「えっと……はい、私は姉達と比べて一番最近入った若輩者でして」

舞「ふぅん、通りで……」

ルキ「あの?」

舞「ちょっと来なさい、トレーナーとして必要な最低限というものを私が教えてあげる」

ルキ「え、えぇっ!?」

―――

P「で、逆にルキちゃんに稽古をつけてきたと?」

舞「えぇ、素直ないい子だったわ」

P「馬鹿だろお前」

舞「あら、私に新人つけるからそうなるのよ」

P「まったく……こっちは誰をメンバーにするか悩んでるっつーのに」

舞「メンバー?」

P「ユニットだよ。ウチは250人全員がなんらかの形でユニットを組んでる。お前も例外じゃない」

舞「ふぅん、……楽しみね」

P(悪い顔だな……)

乃々(も、森久保はぜ、絶対にむりです)

美玲(う、ウチも勘弁だからな!)

輝子(ふひ……、流石にキツイな……)


852: 2014/07/22(火) 21:10:14.88 ID:+XdcnshCo

【思うところ】

愛「プロデューサー!!」

P「お、来たか」

愛「な、なんでママが事務所に居るんですか!?」

P「紆余曲折あってな、ウチでアイドルすることになった」

愛「そ、そんなのって……」

P「まぁお前も思うところがあるのはわかる。
  俺としても仕事が極力かぶらないようにする、
  局とかでも顔を合わせないようにして欲しいなら調整する」

愛「……そもそもなんでウチなんですか?」

舞「そりゃ業界最大手で知り合いがいるんだもの、他の所行く理由の方がないわよ」(机の下から)

P「うおっ!?」

愛「ママ!?」

P「……なんで机の下に居るんだよ、いつ入ったんだよ」

舞「流行ってるって聞いたから」

 小鳥「大人組が入ってると割りと絵的に洒落にならないわね……」ぼそ

愛「っ! わ、私ママには絶対負けないからね!!!」

舞「はいはい期待してるわ」

P「……とりあえず俺の足の間から顔出して喋るのやめろ」

860: 2014/07/22(火) 21:34:11.31 ID:+XdcnshCo

【誕生日】

P「よぉ心」

心「……なぁに☆」

P「おっ、心で返事した」

心「もう面倒臭いからあきらめたし☆ で、なんの用?」

P「誕生日おめでとう。これプレゼント」

心「忘れたかった誕生日をわざわざ思い出させてくれるなんて☆ プロデューサーやさしー☆」

P「安心しろシュガーハートはまだまだ上に行ける。年齢なんて気にするな」

心「うっせー☆ ……でも、ありがと」

P「おう……で、お前にもう一つ話があるんだが」

心「なになにー☆ いまのハァトは機嫌いいからなんでも聞いちゃうかも☆」

P「お前、舞……日高な? と、ユニット――

心「むり☆」

P「……ユニットを――

心「むり☆」

P「……」

心「むーりー☆」

P「……わかった。他を当たる」

861: 2014/07/22(火) 21:34:49.18 ID:+XdcnshCo
遅くなったけどハァトさん誕生日おめでとう!

864: 2014/07/22(火) 21:53:32.39 ID:+XdcnshCo

【いっそのこと】

小鳥「難航してるみたいね」

P「そりゃそうだろ。……舞は実力もある知名度もある」

ちひろ「あるなんてもんじゃないでしょ」

P「でも事務所的には新人だしまだまだ馴染んでない」

小鳥「急にユニットにって言っても難しいか」

ちひろ「年上ってのもあるし、愛ちゃんのお母さんってのもあるし」

小鳥「実力や知名度ってだけならAngel’sのみんなだけど」

P「確かに春香ややよい、貴音なんかは割りと乗り気なんだけどさ。
  一人だけ放り込むのも違うだろ?」

小鳥「そうね、どうせなら縦で他の子も入れてバランスを……」

ちひろ「年齢的にも少し差があるからね」

小鳥「でも年齢だけで合わせると実力がねぇ」

P「いっそお前らと組ませるか?」

小鳥「はぁ?」

P「同い年だし、この間の二人のライブ好評だったからさ……どう?」

ちひろ「それは流石に……」

小鳥「というかアレっきりって話じゃなかったの!?」

P「でもあんだけいい反応返ってくるとプロデューサーとしては見逃せないからな」

小鳥「で、でも」

P「よし、それでいこう」

ちひろ「え、拒否権は」

P「俺は社長だ」

小鳥「横暴な……」

ちひろ「この中に暴君がいまーす」

P「試しに一回だけ、な? 一回だけだから、ちょっとな!」

 という事になりました

886: 2014/07/23(水) 08:21:15.93 ID:ppcwKDXNo

【if~あったかも知れない過去~】

「プロデューサーさん!」

 どん、と後ろから衝撃。

「……おはよう愛。元気なのは良いがタックルはやめてくれ」

 いいながら振り向いて頭を掴む。

「いたたた!! 痛いですっ!」
「じゃあもうやるな」
「はい!!!」
「うるせぇ」

 耳鳴りがするぐらいに元気のいい挨拶に
若干アイアンクローに力が入る。

「い、痛い!!」
「あぁ悪い」

 手を離すとやや涙目でこちらを睨む。
ため息を吐いてその頭に今度は優しく触れる。

「よーしよし」
「あわわ、髪の毛が崩れちゃいますよ!?」

 目を白黒させながら飛びのいて、
俺にあかんべと舌をだしてどっか行ってしまう。

「……ふぅ」
「P君って愛ちゃんに対する扱い雑よね」

 それを見ていた小鳥が不意に不思議そうに呟く。

「そうか? ……舞の娘だからかな」
「なんですかその理由」

 傍からちひろの声が飛んでくる。
まぁ我ながら子供っぽいとは思うが。

「まぁ知っての通り俺と舞は古い……知り合いでな、つい」
「ふぅん、どんな?」

 キーボードを叩く手を止めてこちらを見る。
二人揃って、だ。

「面白くない話だ。……前に家で飲んだときの話を覚えてるか?」
「え、どれ?」
「彼女の事」
「……舞さんが?」
「あぁ、そうだな……いっそ話した方が楽になるか、
 ……誰にも言うなよ?」

 念を押すと二人揃って興味津々に頷く。

「……ったく、そうだな――」

887: 2014/07/23(水) 08:22:49.69 ID:ppcwKDXNo

 ――昔の事だ。出会ったのはもう、十五年前になるのか。
昨日のように鮮明で、前世のように遠い。

 当時、俺は中学生。十四歳だった。
あのころ既に舞はアイドルとして活躍してた、
ん? あぁ、同じ学校だったんだよ。
滅多に顔を合わせる事はなかったし、話した事もなかった。

「ねぇ、なんで一人でご飯食べてんの? しかも屋上で」

 いや、どちらかというと避けてたかな。
俺は、繰り返すけど当時十四歳で、中二だったから。
アイドルとか流行とか興味ないって感じだったし、
周りが騒がしくなるのが嫌いで疎ましくすら思ってた。

「ちょ、なんでどっか行こうとするのよ」
「お前と話してると後でクラスの連中が煩いんだよ。
 そもそも飯は静かに食いたいんだ」

 その日は珍しく学校に来てて、
教室がうるさいから屋上に逃げたんだ。
屋上から教室を見下ろすと囲まれてるあいつが居て、……目が合った。

「……ねぇ、私が誰か知ってる?」

 周りの連中に話しかけながら俺を指差して、
その直後屋上にあいつがやってきた。
へらっと笑いながら。

「隣のクラスの奴」
「なにそれっ!?」

 本当に、うるさい奴だった。

888: 2014/07/23(水) 08:23:24.85 ID:ppcwKDXNo

―――

「ねぇねぇ、あの子才能ありそうじゃない?」
「知らん」

 気がつくと、俺はあいつとちょこちょこつるむ様になってた。
あいつからするとアイドル扱いしないのが逆によかったのかも知れないし、
他に理由があったのかも知れない。聞かなかったし、聞く必要も感じなかった。

「なんでわかんないかなぁ? ほら他の子とちょっと違う雰囲気あるでしょ?」
「同じにしか見えない」

 俺もうるさいとは思ってても、たまにしか学校に来ない奴だし。
邪険に扱うとそれはそれで同級生がうるさいから、付き合ってた。
他に理由があったのかも知れない。考えなかったし、考える必要も感じなかった。

「ま、私の足元にも及ばないけどね」
「お前の自信は凄いな……」

 ただ、不思議と最初の頃思ってたような鬱陶しさはなくて。

「しかしそんなことじゃ女の子スカウトできないわよ?」
「する事ないから」

 むしろ居心地が良いとすら思ってた。

「いつなにがあるかわからないんだから、しっかり私が見る目を鍛えてあげる」

 傾いた振りしても人気アイドルの横に居ることに優越感を感じなかったといえば嘘になる。

889: 2014/07/23(水) 08:23:57.13 ID:ppcwKDXNo

―――

 そんな感じで、学校に来れば話す。
たまのオフには連れ立ってどっかに行く。
といった関係がしばらく続いた。

「おす」
「……まさか高校まで同じになるとは」

 舞はどんどんスターダムを駆け上がっていって、
歴史に名を残すようなアイドルになった。

「どこ行ってもどうせちゃんと通えないんだったら、
 って思ってあんたに合わせたのよ」

 CDを出せばトリプルミリオン。
テレビにでれば視聴率爆上げで、
外に出れば人の波。

「嬉しいでしょ?」

 遠い存在になったようで、
でも手を伸ばせば届くような直ぐ隣に居る。

「ばーか」

 俺が照れ隠しにそういうと、
舞はへらっとだらしなく笑った。

 なんだかんだ、ずっと続くと思ってた。

890: 2014/07/23(水) 08:24:37.74 ID:ppcwKDXNo

―――

「ねぇ」

 関係が変わったのは、俺達が16になって直ぐ。
誰も来ない、放課後の空き教室。

「ねぇってば」

 夏の、ことだった。
埃っぽい部屋、傾いた太陽。
蒸れた空気、汗ばんだ身体。

「怒ってる?」
「別に、怒ってない。ただ、……ちょっとわけがわからない」

 手を引かれて連れて行かれた。
大事な話があるから、と。
そこで俺は、そこで……俺は……。

「ごめんなさい」
「……なんで謝るんだよ」

 前髪が額にはりつくし、
Yシャツも背中に張り付いてる。

「無理やり、みたいになって」
「……ばーか」

 それから、しばらくして舞がアイドルを辞めたと大々的に報道された。
学校にもこの日からしばらく来なくなって、辞めた。

891: 2014/07/23(水) 08:26:31.06 ID:ppcwKDXNo

―――

「お腹減ったー」
「なんか作るか?」

 一年半ぶり位にあった時、俺はどうしていいかわからなかったけど。

「Pって料理上手いよね」
「そりゃどうも」

 家に押しかけてきたあいつはブランクを感じさせない位に
いつも通りで、俺も自然にいつも通りになった。

「大好きー」

 へらっとだらしなく笑って。

「ばーか」

 いつも通りに答える。
この日から、また少しずつ会うようになった。

892: 2014/07/23(水) 08:28:22.36 ID:ppcwKDXNo

―――

「これが大学かぁ」

 たまに会って話して、でかける。
辞めてからずいぶん経っても変装なしだと人に囲まれるから。
あいつは年中帽子と伊達めがねだった。

「なんで来たんだよ?」

 恋人か、と聞かれたら首をかしげるけど。
友達か、と聞かれても首をかしげる。

「Pが通ってる大学はどんな所かなって」

 へらっとした笑い顔。
俺はそれが好きになっていた。

「別に面白くないぞ?」

 変な関係だ。と思う。
当時も思ってたし、今でも、思う。
はっきりすればよかった、と。

893: 2014/07/23(水) 08:30:17.04 ID:ppcwKDXNo

―――

 ある日、舞が娘と歩いてる姿がマスコミに撮られた。

「大きくなって外にでる機会が増えるとダメね、
 一応圧はかけてたけど、人の口に戸は立てられないもの」

 俺は、知らなかった。

「ずっと、隠してたんだな」

 何一つ。知らなかったんだ。

「……隠してたのは、そう。でも、裏切ってはないつもり」

 理解ができなかった。

「相手は?」

 そりゃ、別に俺達は互いに口にした事はなかったかもしれない。

「言えない……」

 でも、と。独りよがりな感情が胸にわいた。

「負担、かけたくないし。迷惑、かけたくないから」

 大学四年の時の事だ。

「ばいばい」

 去り際の彼女は、いつもみたいにへらっと笑いはしなかった。

894: 2014/07/23(水) 08:33:37.44 ID:ppcwKDXNo

―――

 そして、俺がここで働き始めた。

「日高愛です!! トップアイドル目指して頑張ります!」

 このタイミングで、芸能関係の仕事にスカウトされるなんて。
って運命を感じた訳じゃない。

「日高? ……そうか」

 この業界に居れば、逆にあいつと出会う可能性は小さくなるだろうかと思った。
いや、単に触れたかったかもしれない。この世界に、あいつが輝いた世界に。

「? どうしました?」
「いや、……じゃあ君は本日付でウチの所属となる。
 正式な契約書を書いてもらうから、家大丈夫かな?」
「はい! 大丈夫です!」

 もう、わからない。

895: 2014/07/23(水) 08:35:32.97 ID:ppcwKDXNo

―――

「なにか言ったら?」

 愛の家。それはつまり舞の家だった。

「……久しぶり」

 覚悟を決めて行ったものの、
いざ会うとどうしていいかわからなかった。

「まさかこんな形でまた会うなんてね」

 もう会わない、そのつもりだったのに。
まさか娘が俺の担当するアイドルになるとは。

「私があの年の頃やりたい放題やってたから、
 娘にも好きにやらせようと思ってたのよ」

 アイドルになるとは思わなかったけど、と普通に笑う。

「どう? 私が教えたスキルは役に立ってる?」
「……おかげさまでな」

 大事な話だから、と愛を締め出した部屋の空気は
俺の首をじわじわと絞める。

「もう少し普通に話しできない?」
「……」

 無茶を言うな、と思った。
あの日から、俺は心のどこかに蓋をしたままなのに。

「ね?」

 でも、俺だって子供じゃないから。

「……わかったよ舞」

 変わってしまったから、ふんぎりはつけたから。
もう、全部昔の事だから。

「ありがと」

 へらっとしただらしない笑み。
変わらない、なにも変わってないように見えた。

「卑怯者」

 だから俺は、つい悪態を吐いた。

「ばーか」

 昔の俺の様に返された。

898: 2014/07/23(水) 08:38:52.08 ID:ppcwKDXNo

―――

 それから、仕事の事で何度か会った。

「たまには飲みに行かない?」

 少しずつ前みたいに話せるようになった。

「嫌だね」

 その度によくわからないモノが胸の奥に溜まっていくのを感じて。

「つれないわね」

 でもそれも仕事の忙しさに掻き消えていった。

「うっさい」

 母子家庭の事については、聞けなかった。

901: 2014/07/23(水) 08:42:17.53 ID:ppcwKDXNo


―――

「……で、今に至る」

 つい、長話になった。
人は未来を思うとき空を、
過去を思い出すとき足元を見るというのは本当で、
ずっと伏せっていた顔を上げると二人はなんとも言えない表情をしていた。

「え、でもそれって……」
「愛ちゃんって……」
「なにボソボソ話してるんだよ」

 昔話をした直後に二人してこそこそと話されると気分が悪い。

「……ちなみに、愛ちゃんのお父さんについては」
「聞いてない、聞く気もないし知りたくもない」

 思い出話で昔の感情がわいたのか、
少しキツイ言い方になった。

「え、あ、この人馬鹿だ」
「もしかして本当にわかってない?」
「だからなんだよ……」

 戸惑ったような、呆れたような態度。
俺としても少々困る。

「あの、それって――

 小鳥が何かを言おうとしたとき。

「プロデューサーさん! 次の私の予定ってなんでしたっけ?」

 てこてこと愛がやってきて。

「お前はなんで自分のスケジュールくらい覚えてないんだよ」

 デコピンをお見舞いする。憂さ晴らしも兼ねてる気がする。

「次はレッスンでしょ、本当に愛は忘れっぽいんだから」

 そしてその後ろから舞も。

「なんだお前ら、いま仕事中だよ」
「そうは見えなかったけど?」

 再開して、もう数年。
すっかり普通に接する事ができる。

902: 2014/07/23(水) 08:44:09.04 ID:ppcwKDXNo

―――

 愛と戯れる彼を見ると、
時々、もしかして、と思うことがある。
こんな風に、と。

「ねぇたまには飲みに行かない?」

 有名になりすぎた私。
アイドルを辞めても、それは続いた。
子供ができた、となれば大きく報道される事はわかっていた。

「嫌だ」

 私はすでに、身を守るすべというか、
そういうものを持っていたけれど。
彼は当時ただの高校生だった。

「残念」

 欲しいものはなんでも手に入れる。
世渡り上手な欲張り、そう自分の事を思っていた。
けど、惚れた腫れたは私の手にも負えなかった。

「……もしかして、ママ」

 そうして隠してるうちに、娘は大きくなり。
いつしか本当の事なんて誰にもいえなくなってた。

「なに?」

 他にやりようが、あったのかも知れない。
彼と、愛と、三人で暮らせるようなやり方が。

「プロデューサーさんの事好きなの?」

 ぼそりと敵対心丸出しで言う娘に対して私は。

「さぁ?」

 にへっと、だらしなく笑って見せた。

903: 2014/07/23(水) 08:45:37.07 ID:ppcwKDXNo
終わり

911: 2014/07/23(水) 08:56:49.50 ID:ppcwKDXNo
仕事中は妄想力が高まるので
勢いでかきました
おかしかったらごめんね

説明不足な所に関しては質問どうぞ

956: 2014/07/23(水) 20:25:09.67 ID:ppcwKDXNo


【ifのif~そしてEP~】

「舞さん、どうですこの後?」

 事務室に顔をだしてみたものの、Pは外回りで居ない

「べつに、いいわよ?」

 らしくもなく肩を落としていると、事務員の一人。

「じゃあ決まりで、ちっひも来るでしょ?」

 小鳥さんにそう声をかけられた。

「え、はい。構いませんけど」

 あまり話したことはないけれど、同い年と言う事はPから聞いた。

「珍しいわね」
 
 だから? とは思ったけど、急にそんな風に誘われるとは思っていなかった。

「えぇ、大事な話がありますので」

 インカムをつけた彼女は、そう言ってニヒルに笑った。

957: 2014/07/23(水) 20:26:13.99 ID:ppcwKDXNo

―――

「で、本題です」

 Pと三人でよく行くと言う居酒屋。

「本題? ……ってなにかしら」

 そう紹介された所は、当然だけど始めてのお店で。

「もしかしてピ……小鳥さん」
「えぇ、いいます。言わせてもらいます」

 私の知らない彼が、ずいぶんと多くなったんだと今更に実感する。

「なにを?」

 それが少し寂しい。だから復帰しようと決めた。

「あなたとPさんと、……愛ちゃんの事です」

 懐かしくなって? 違う。愛が頑張ってるのを見て? 違う。

「……聞いたの?」
「はい」

 愛が日々話す私の知らない彼の姿に、嫉妬したから。

「……そう、彼も意外とおしゃべりよね」

 本当は、本当にみっともない話。

「あなたには、義務があると思います。女として、母として」
「ちょっと、ピヨっち言い方が……」
「普通は、気づきますよ。愛ちゃんの年齢を考えれば、
 ましてやあの人が気づかないなんて、ありえない」

 あの人がよく使うだけあって個室のあるしっかりとした場所。

「そうね。彼、人の機微には特に敏感な方だったもの」

 そういえば、結局一度も彼と飲んだことはない。

「……きっとトラウマなんですよ。
 あの人、以前言ってました。浮気されたって、
 あなたが隠しすぎた所為で、そう思ってます。
 考える事をやめて、完全にそれに蓋をしちゃってるんです」

 私が断られるとわかって彼に飲もうと誘うのはなんでかしら。

「……それで? いまさら言うの? 愛はあなたの娘よ、って
 いままで黙っていてごめんなさいって、いえると思う?」

 きっと、お酒に乗じて言いたい事を、言えない事を言いたかったんだと思う。

「言うべきだと、私は思います」

 わかってる。言うべきなのは、でも『べき』で言えるほど私は強くないから。

「あの人の中では、あなたは裏切り者で終わってます。
 ……そんなの、悲しいじゃないですか」

 彼が思うほど、みんなが思うほど、強くないから。

「でも……」

 それで彼に否定されたら? 愛に嫌われたら? 考えるだけで恐ろしいじゃない。

「……以上。私の言いたい事はいいました。
 人の過去に勝手に首を突っ込んで申し訳ありません」

 すっと頭を下げる彼女。

「……」

 私はどうしても笑って返せなかった。

958: 2014/07/23(水) 20:27:31.14 ID:ppcwKDXNo

―――

「占い、ですか?」

 翌日、藤井朋という同じアイドル。

「えぇ、やってもらえない?」

 占い好きの彼女に声をかけた。

「い、いいですけど。なにを?」

 背中を押して欲しかったのか、もしくは言わない理由を欲しがったのか。

「昔の嘘を、間違いを。正そうと思って」

 真剣な私に彼女も真剣にタロットを取り出し占ってくれた。

「……世界の正位置」

 占いに頼るのなんて、人生で初のことだった。

「意味は?」
「約束された、勝利。この場合は、……まぁ、そのままかな
 上手くいきますよって事です」

 にっこりとよかったですねと笑う彼女。
私は、ちゃんと笑って返せたのか、わからない。

960: 2014/07/23(水) 20:28:30.99 ID:ppcwKDXNo

―――

「ほら動き悪いぞ、しっかりあわせろ」

 複数のユニット合同ライブ。
彼はやたらと広いレッスンスタジオで声をだしていた。

「……大丈夫、大丈夫。いつもの私の調子で……」

 angel's・DearlyStars・TPJに乙女、
Pinky・citrus・cerulean・インディ。
多くのアイドル達がいる。

「どうした、もう期間もそんなに残っちゃいないぞ!」

 檄を飛ばす彼に、皆真剣に答える。
彼を慕う多くの娘達。また、べつのタイミングにしようか。
そんな気持ちが顔を出す。

 十三年という月日は、私をとても弱くしたみたい。

「……すぅ……はぁ」

 それでも、言いたい事言われて黙ってるなんて、日高舞じゃない。

「行くわよ。舞」

 欲張りな私らしく、今からでも落とした物を拾いに行こう。

「たのもー!」

 みっともなくても、情けなくても。

「はっ!? ……舞? いまは見ての通りなんだが?」

 逃げたまま程、格好悪いものはないじゃない。

「大丈夫、すぐ済むわ」

 なによりも。

「あのな、いくらお前でも他のアイドルの邪魔は……んむっ!?」

 やっぱり他の女に彼を盗られるなんて。

「……ん、ぷはっ」
「おい、お前いきなりなんのつもりだ!?」

 絶対に、許せないから。

「ずっと隠してたことがあるの」

 だから。

「なんの話だ馬鹿!」
「愛は私とあなたの娘よ」

 だから。

「……は?」
「気づかなかった? 私の年齢引く愛の年齢は?」
「……じ、十六……ってまさか」

 私は、もう一度我侭で自由奔放で狡賢くて欲張りな。

「そういうことよ」

 日高舞になる。

「……だいすきよ。ずっと」

 そういって、私はまたにへっと笑った。

961: 2014/07/23(水) 20:31:33.14 ID:ppcwKDXNo
頭がぼーっとしてます
そろそろ活動限界なんで寝る

あと>>869だけど8時間睡眠とか言う贅沢は休みの日にしかできねーよ!

962: 2014/07/23(水) 20:32:27.22 ID:ppcwKDXNo
あ、次スレはどうしましょう?

963: 2014/07/23(水) 20:34:15.49 ID:JS6DtJ6Qo
いよいよこのスレもSも終わりか…
思えば勢いだけでよくここまで来た物だなー

964: 2014/07/23(水) 20:34:34.30 ID:F8s4CmzD0
まだまだ見たいです(直球)

引用: 総合P「マスターズプロダクションのPです」