626: 2015/02/05(木) 20:28:50.61 ID:sbyXTd0uo


627: 2015/02/05(木) 20:38:10.67 ID:xkQJ+68Bo

【寒い日】

まゆ「美希さん、美希さん起きてくださぁい」

美希「……やーなの。昨日も遅かったからもう少し寝かして欲しいの」

まゆ「今日はクロスVステップ教えてくれるって言ってたじゃないですかぁ」

美希「ん~……しんどいの……」

まゆ「……えいえいえい」

美希「うぐぅ……揺れるの……酔うの……」

まゆ「えぇーいっ」

 (45kg程の物が落ちる音)

美希「ぐへっ……まぁ~ゆぅ~」

まゆ「うふっ、目が覚めましたかぁ?」

美希「ちょっと表でるのっ!」

まゆ「嫌ですぅー」

 (駆け足音)

響「……」 あみあみ

幸子「……最近あの二人仲良いですね」

響「ん? うん、そうだな。よく一緒にレッスンしてるみたいだし、
  美希にしては珍しく色々指導したりしてるみたいだぞ」 あみあみ

幸子「はぁ……っと、ここはどうやるんですか?」

響「左の人差し指を……こう、下の糸をくぐらして上の糸を引き込んで……」

幸子「あぁ、なるほど」

響「しかしまゆも美希に目を付けるとは見る目あるよなー」

幸子「そうなんですか? ダンスとかに関して聞くなら響さんか真さんだと思ってましたけど」

響「ん~、そうだな。確かに事をダンスに絞れば美希に負けるつもりは全然ないぞ。
  なんと言っても自分は完璧だからな! ふふーん」

幸子「はぁ……、あ、絡ま、あぁっ」

響「んもー。ここはこうだって! なんで同じところで失敗するかな」

幸子「だって難しいですよ指編みって……なんで鈎針を使わないんですか?」

響「えーだって、耳掻きとなんか、間違えない?」

幸子「普通は間違えません!」

響「まぁいいじゃないかー。出来上がるものは同じだぞ、だったら指編み覚えたほうがいいって」

629: 2015/02/05(木) 22:05:39.51 ID:xkQJ+68Bo

幸子「……そろそろ指攣りそうなんですけど」

響「んー、じゃあちょっと休憩する?」

幸子「お、お願いします……」

響「わかったじゃあちょっと待って、そのまま指外したら崩れ――

幸子「え?」 ふぁさ

響「……よし、最初からだ」

幸子「えぇぇぇ!?」

響「なんで自分に聞かないでやっちゃうかなー」

幸子「いや、でもほら。ここから指を通して拾い上げれば……」

響「うん、見事にバラけたぞ」

幸子「そんな! 今までのボクの努力はどこに行くんですか!?」

響「バイバイ哀愁でいと」

幸子「田原俊彦!?」

631: 2015/02/05(木) 22:13:33.47 ID:xkQJ+68Bo

―――

幸子「……あぁー」

響「どう? さんぴん茶は」

幸子「美味しいです。……けど、これって結局茉莉花茶ですよね」

響「やいびーん」

幸子「はい?」

響「肯定だぞ」

幸子「否定はどう言うんですか?」

響「あいびらん」

幸子「難しいですね」

響「あいびらん」

632: 2015/02/05(木) 22:27:36.47 ID:xkQJ+68Bo

―――

響「で、さっきの話だけど」

幸子「はい?」

響「ほら、ダンスとか美希とまゆの話だぞ」

幸子「そんな話しましたっけー」

響「したぞ! というか幸子から振ってきたんだろ!?」

幸子「覚えてませんね」 ずずっ

響「……もういいっ」

幸子「あはは、冗談ですよ。もーすぐ拗ねるんですから」

響「自分拗ねてなんか居ないぞ!」

幸子「はいはい。そうですね、……で、なんですか?」

響「むー……まっいっか。で、ダンスとかステップなんだけど。
  繰り返すけど自分や真の方が上手い事教えられると思うぞ」

幸子「でしょうね」

響「あくまで、自画自賛じゃなくて客観的に見て。だからな? 美希がどうこうって訳じゃないんだけど」

幸子「はいはい。わかってますよ」

響「ただ、あれなんだよなー。ほら、自分達ってアイドルだろ?」

幸子「え、そりゃそうですよ。じゃなかったらなんなんですか」

響「いや、もちろんそこはそうなんだけどさ。肩書きと職業の違いっていうか……ゲーム的に言うとさ。
   まぁ例を挙げると、自分とか真はダンサーだと思うさー」

幸子「はい? ……はい、まぁ確かに」

響「亜美真美とか春香は、エンターテイナーかな? あずさや千早は同じ系統で言うならシンガー……かな?」

幸子「なるほど」

響「で、その流れで言うとさ美希はパフォーマーなんだと思うんだ。
  ダンスに限れば自分だと思うけど、ステージ上での演出とかを込みで考えると美希の方が
  まゆに教えるのには向いてると思うんだよねーって話」

幸子「パフォーマー……不思議と納得できますね」

響「でしょー?」

638: 2015/02/05(木) 23:50:52.52 ID:xkQJ+68Bo

幸子「……ちなみに、他の人はどうなんですか?」

響「なにが?」

幸子「ですから、他のAngel´sの人達の肩書きというかですよ」

響「んーそうだな。まず貴音はオールラウンダーって感じだな。
   ダンスも歌も高いレベルで持ってて、スタイルも良いしあの髪も目を引く。
   ステージ映えもするしキャラも立ってるからバラエティでもクイズ番組でもニュースでも埋もれない」

幸子「それでいて親しみやすさもありますしね」

響「最近はそういう面を推し過ぎだとも思うけどなー。
  ……で、律子はプロモーター……かな」

幸子「プロモーターって実業家って意味じゃなかったでしたっけ?」

響「うん。基本的にはやっぱりプロデューサーがやるけど、
  Angel´s内での立ち位置で言ったらそんな所かな」

幸子「へぇ」

響「で、やよいと雪歩はサポーター。……あ、サッカー的な感じのアレとは違うぞ?」

幸子「いや、わかってますよ。続けてください」

響「……なぁんか冷たいよなぁ……。まぁアレだぞ、
  二人はあまり前に前にって感じじゃなくて特にみんなとの輪を重要視して、支えてくれるって感じかな」

幸子「ふむふむ……で、最後に伊織さんですね」

響「えっと……伊織は、そうだなぁ……少し方向性が変わるけどリピューターだな」

幸子「リピューター?」

響「機械の名前なんだけど……この場合火付け役って思ってくれていいぞ」

幸子「火付け役ですか? ……どちらかというと目付け役ってイメージですけど」

響「あっはっは! うん、それも間違ってないなー!」

幸子「ふぅん……しかし、ダンサー・シンガー・エンターテイナー・パフォーマー
   オールラウンダーにプロモーター・サポーター・リピューター……」

響「一人一つにするなら春香はリーダーで雪歩は……ヒーラーとか?」

幸子「ヒーラーはともかく、リーダーはそのまんまじゃないですか」

響「あはは……。ま、役割がなんにせよ自分達はみんな『スター』なんだけどな!」

幸子「……」

響「ふふーん」 どやぁ

幸子「うわぁ……」

響「な、なんだよ! その反応は!? 幸子だって似たような事言ってるじゃないか!」

幸子「いえ、なんか人が言ってるのを見るとちょっと引きますね……あとドヤ顔やめましょうか」

響「もー!」

642: 2015/02/06(金) 07:42:48.16 ID:jKcHhmfko

幸子「ふむ、しょうがないですね。ではボクがお手本を見せてあげますよ」

響「なんの?」

幸子「見ててください。いいですか? ……フフーン!」どやぁ

響「うわぁ、にっくたらしいぞ」

幸子「憎たらしい? 愛くるしいの間違いでしょう? さぁ存分に愛でていいんですよ!」

響「……じゃあ目を瞑って欲しいさー」

幸子「シーサー? いくら沖縄出身でも脈絡なさすぎません?」

響「……」いらっ

幸子「それに目を瞑って欲しいって……いくらボクが可愛くてもキスするのはやめてくださいね!
    ボクはそんな趣味ないので!」

響「自分だってそんな趣味はないさー! こうしようとしたんだよ!」

幸子「あいたたた! 目が! 目がっ! 押すのやめてください! 眼球がつぶれちゃいます!」

響「このっ! このっ!」

歩「おーっす……なにやってんの?」

幸子「あいたた……編み物ですけど……」

響「うん、編み物」

歩「……なにを言ってるんだこの二人」


643: 2015/02/06(金) 08:14:48.11 ID:jKcHhmfko

幸子「あーもう……また最初からになったじゃないですか……」

響「それは幸子がまた毛糸を手放すからだぞ」

幸子「あんなことされたら手放すに決まってるじゃないですか!」

歩「あー……え、本当に編み物してたの?」

響「それ以外になにに見えるんだよー」

歩「そりゃあ……後輩いじめ?」

幸子「まさにそれです」

響「うがぁー!」

幸子「あいたた! いたいいたい!」

歩「えっと……どうしよう……え? どうしたらいい?」

幸子「助けてくださいよ!」

歩「あ、うん。ほら、びっきーストップストップ」

響「しょうがないなぁ」

幸子「うぅ、目がチカチカしますよ。これはしばらく続く奴ですよ」

響「はぁ、どっちにしろまた最初からだしお茶入れて休憩しよっか」

幸子「そうですね」

歩「しかし編み物かぁ……リリアンくらいしかしたことないな」

響「うわっ! リリアン懐かしい!」

幸子「まぁ本来僕らが懐かしいと言うのもおかしいんですけどね。親世代じゃないんですか?」

歩「今でもやってるよ。ブームがあったのは確かに昔だけど」

響「はいお茶っと、歩もやる? 教えるけど」

歩「いいけど。道具は? 針とか使うんじゃないの?」

幸子「指編みですから、指と毛糸だけです」

歩「指で編めるの?」

響「編めるさー。こう、両手の指に毛糸を絡めて……人差し指、中指、小指で引っ掛けて中指で通して人差し指」

歩「ごめんちょっと全くわからない」

幸子「ですよね」

歩「ちなみになに作ってるの?」

響「靴下だぞ。幸子が作りたいって」

幸子「アイドルですからね。ごつい防寒靴とかはちょっと嫌なので、せめてと思いまして」

歩「あーなるほどね」

644: 2015/02/06(金) 08:23:56.62 ID:jKcHhmfko

幸子「まぁまさか指編みで来るとは思ってなかったので難航しまくってますけど」

歩「それこそリリアンみたいな簡単のでよかったんじゃ?」

響「うるさいなーもー。指編みできればセーターだってなんだって編めるんだぞー」

歩「いやでも初心者にはハードルが高いって」

幸子「あっ、そういえば関係ないんですけど響さん」

響「なんだいさっちん」

幸子「……えっとびっきーに聞きたいんですけど」

歩「なにその呼び方! 仲良さそう!」

響「舞浜さんもそう思う?」

幸子「やっぱりそう思いますよね舞浜さん」

歩「すごい疎外感! ちょっと、なにこれやっぱり後輩いじめ!?」

響「んくふふっ……で、なにかな?」

幸子「あーはい。さっきはAngel´sだけで話してましたけどそういえば歩さんもダンサーですよね?
    どうなんですかその辺」

歩「おっ? おっ? なんの話?」

響「んー、技術は自分から見ても高いと思うけど……ほら、中身がね」

歩「え、侮辱された?」

幸子「あー……」

歩「納得された!? 本当なに? なんの話!?」

響「そういえば最近お腹が痛いんだよねー、どうすればいいかな歩」

歩「え? そりゃダンスでしょ! 身体を動かして腸を活発にすれば元気になるよ!」

幸子「しかし最近寒いですよねぇ、雪も降りそうですし。積もったらどうします歩さん」

歩「そりゃダンスでしょ! ダンスは全身運動だから身体も暖まるし風邪だって引かないよ!
  乾布摩擦ってあるだろ? アタシは毎朝部屋の窓を開けて寒い中全裸でダンスを――

響「あっ馬鹿だぞ」

幸子「それは流石にやめましょうよ!」

歩「えー……でも、ほら。やっぱりダンスは万能だからさ! 二人もそう思うよね?」

響「……あいびやん」

幸子「はい、あいびやんです」

歩「なにそれっ!?」

645: 2015/02/06(金) 08:24:40.08 ID:jKcHhmfko
おわり

気付いたら弄られキャラ三人の漫談みたいになってました

654: 2015/02/06(金) 20:08:14.55 ID:jKcHhmfko

【節分】

P「節分かぁ」

ちひろ「はい。比較的関係ないイベントだから穏やかなものですけどね」

P「まぁな、2月はバレンタインがメインだからなぁ」

小鳥「でもみんなは一応豆まきするみたい。厄払いにーって」

P「ふぅん。……豆か。あれって年齢分食べるだろ?」

小鳥「あ、ストップ。わかったから言わなくていいから」

P「もう年齢分の豆を食べるのもしんどくなってきたな」

小鳥「言わなくていいって言ったでしょ!?」

ちひろ「そういってやめた事ないじゃない」

P「そうそう」

小鳥「もー! P君あっち行って!」

P「ふはっ! お、お前……自分のデスクで仕事してる人間にあっち行けって……すげぇ事言うな」

ちひろ「あはは、まぁ休憩してくれば?」

P「んーじゃあそうすっかなぁ。豆まきしてるみんなの様子でもみてくるよ」

小鳥「はいはい、さよならさよなら」

P「おう」

655: 2015/02/06(金) 20:16:07.01 ID:jKcHhmfko

―――

P「って言ってもな、去年も別段なにがあったわけじゃないからなぁ……」

P「精々寮と事務所内で軽く撒いて掃除して、恵方巻食べたくらいで……っと?」


仁奈「文香おねーさん! なんで豆で鬼を追い払えるんでごぜーますか?」

文香「えっ……それはちょっとお話があるんですけど」

環「どんな? 聞かせてっ」

文香「じゃあ……談話室に……えと、杏さん」

杏「あいよー。じゃあ用意してくるよ」

P「よぉ」

文香「あっ、Pさん……」

環「おやぶん! おはよう!」

P「おうおはよう環、元気だな」

仁奈「仁奈も元気でごぜーます!」

P「よしよし、仁奈も元気一杯だな! ……で、なんだ。また読み聞かせ会か?」

文香「読み聞かせ、とはちょっと違います……。手元に本があるわけじゃないので……」

P「ふぅん。鬼が豆をどうして嫌がるか、だっけ?」

文香「はい」

仁奈「文香おねーさんのお話は楽しくて好きでごぜーますよ」

環「たまに怖いのもあるけど!」

P「そっかそっか……なぁ文香」

文香「ダメです」

P「……」

文香「……ダメ、です」

P「どうしてもか?」

文香「はい。……恥ずかしい、ので」

P「そっかー……」

杏「よいしょただいまっと、あれ、プロデューサー?」

P「おう杏。……なんだその袋」

杏「いやぁ、あれでしょ。必須アイテムでしょ?」

P「わからん」

657: 2015/02/06(金) 21:07:14.44 ID:jKcHhmfko

―――

 談話室

 (カランカランとベルの音)

杏「ほーら、文香のお話はっじまるよー」 カランカラン

育「わーい」

杏「飴欲しい子はこっちおいでー」

仁奈「飴くだせー!」

杏「はいはい、水飴だよー。よく練って食べなよー」

P「……紙芝居屋かよっ!」

杏「紙芝居じゃなくて語り聞かせだし、そもそもお金とって無いけどねー……水あめ居る?」

P「いややめとく。子供の頃はよかったけど今はその甘さはダメだ。一口で十分」

文香「というかなんでいるんですか……、でてってください……!」 ぐいぐい

P「あいてて、えー、本当にダメかふみふみ?」

文香「ダメ、です! ……あと、ふみふみは恥ずかしいです」

 (扉の閉まる音)

P「……本当に追い出されてしまった」

ありす「……なにやってるんですか?」

P「おや、ありす。見ての通り、締め出しをくらったんだよ。文香は本当に恥ずかしがり屋だな」

ありす「あぁ、語り聞かせですか」

P「ありすもよく参加してるのか?」

ありす「えぇまぁ。文香さんがしてくれるお話はわかりやすくてためになるので」

P「へぇ……どんな感じなんだ?」

ありす「どんな感じ……、みんな大人しく聞いてて普通ですよ?
     お仕事でやってた朗読会と対して変わりません」

P「じゃあなぜ俺は追い出されるんだ……」

ありす「さぁ? とりあえずそこどいて貰っていいですか? 入れないんで」

P「あぁうん、ごめんな」

ありす「いえ。……あ、それと」

P「ん?」

ありす「亜美さんと真美さんが、悪い顔して地下の方に向かってましたから、気をつけてください」

P「……それは、わかった。気をつけるよ。かなり」

ありす「では」

664: 2015/02/07(土) 21:07:33.18 ID:MJUbaSYfo

―――

 談話室扉直ぐ廊下

P「さて……どうしたものか。文香の年少組相手の語り聞かせもこっそり聞きたいが
 ありすの言っていた亜美真美の事も気になる――」

 ざわ……

P「……とか言ってるうちに談話室の中が随分静かになったな。そろそろ始まるのかな?
  んー、まぁとりあえずはここに居るか。……階段も近いしあの二人が暴れるつもりなら直ぐ気がつけるだろ」


 文香『昔、悪い鬼が居ました』


P「っと、始まった」


 文香『鬼は大きく、力強く。そして人に迷惑をかける悪い鬼で、
     近くの村にふらりと足を運んでは暴れたり食べ物を奪ったりしていました』

 文香『村の住人はとても困っていましたが、けれどどんなに大勢でかかっても
     鬼には勝てないので、鬼が来て暴れてもどうする事もできませんでした』

P(まぁよく聞くタイプの鬼だな……)


 文香『しかしある日鬼はいつもの様に村に足を運び食べ物を奪おうとして、
     偶然見つけた若い娘に一目惚れしてしまいます』

 文香『その娘は髪は長く美しく瞳は黒曜石のように輝き。
     肌は陶器のように白く透き通ったそれは美しい娘で、鬼はすぐさま彼女に告白します』

 ありす『そんなの断るに決まってるんじゃ……』

 文香『そう。女の人は鬼に嫌だって言いました。けど、鬼は諦めませんでした。
     「もう乱暴はしない。食べ物も奪ったりしない。村の人に謝ります」って』

 杏『すげー素直』

 文香『お願いしますお願いします。鬼は幾度娘に断られても、諦めませんでした。
     貴女が好きだ、愛しているんだ。って毎日の様に娘の家に向かい頭を下げたんです』

 文香『娘が鬼に求婚されている。それを知った娘の祖母がある日鬼にこう言います。
     「なら鬼よ。お前が本当に改心したか試させてもらう。今から渡すこの豆を
      家に帰り蒔いて、見事に芽を出させてみろ。
      毎日水をやり、大事に世話をして芽吹かせる事ができたら認める。
      ただしそれまでもうこの村にはくるな」』

665: 2015/02/07(土) 21:08:48.04 ID:MJUbaSYfo

 文香『鬼は二つ返事でそれを受け取り。家に帰って近くの日当たりのいい場所に蒔きました。
     毎日水をやって、丁寧に丁寧に面倒を見ました。けれど豆は一向に芽吹きません』

 文香『やがて季節が変わって一年経ち。約束の季節になりました。
     鬼は娘の家に行き。もう一度チャンスをくださいと頭をさげました。
     祖母はそれを聞いてまた新しく豆を渡しました』

 文香『鬼はまたそれを近くに蒔いて、水をあげて世話をします。けれどいつまで経っても芽吹きません』

 文香『二年。三年、その季節が来るたびに鬼は祖母に豆を貰いに行きます。
     決して諦める事はしませんでした。……やがて豆を渡すのが祖母から母に代わり、
     娘が少女から大人になっても。決して諦めず、毎年豆を受け取っては今度こそと世話をします』

 文香『そして……結局鬼が豆を芽吹かせることができないまま。娘は流行り病でこの世を去ってしまいました』

 仁奈『なんで豆は芽を出さなかったでごぜーますか?』

 文香『……それは、祖母と母が渡した豆は実は炒り豆だったんです。
     だから絶対に、どれだけ熱心に世話をしても豆は芽をださないんです。
     娘を鬼に渡したくないし、毎日家に来られても迷惑だと思った祖母と母が鬼を遠ざけるためについた
     嘘の約束だったんです。それを知った鬼はどうしたと思う?』

 ありす『……怒った、んですかね?』

 文香『いいえ、鬼は悲しみました。そして悔いました。自分が過去に村の人にした事はとっても悪くて、
     何年経っても、どれだけ自分が必氏に豆を芽吹かそうとしても、
     それでも信用されないくらい悪いことだったんだって』

 文香『鬼にとって。豆はそれを思い出させるんです。だから、豆を見ると逃げてしまうんです』

P(……へこむ話だ)

 文香『余談ですけど……娘はもうとっくに嫁いで居る年齢だったそうですけど、
     言い寄る男性は居たにも関わらず結局流行り病にかかり命を落とす時まで一人身だったそうです。
     祖母と、母が渡した豆が炒り豆であることも、知らなかったみたいです』

P(……さらにへこむ話だ)

666: 2015/02/07(土) 21:23:28.08 ID:MJUbaSYfo

P「……なんだろうな。昔話って結構エグいのとか、切ないのって多いよなぁ」

P「教訓的って言うか寓話的なものというか、……あまり年少組に聞かせる話じゃないんじゃないだろうか」

P「文香に今度それとなく……いや、それだと盗み聞きしてるのがバレる……」

 (破裂音)

P「んぅっ!? いてぇっ! なんだっ!?」

亜美「よし、命中!」

真美「次は真美のショットガンタイプで!」

 (破裂音)

P「うおっ!? なんだこれ!? ……豆かっ!」

真美「外した!」

亜美「集弾率悪すぎっしょ→!」

P「お前ら! なんだその豆鉄砲は!?」

亜美「あっ! やばやば! 逃げろー!」

真美「その前に足止め豆!」

 (弾倉を抜いて入っていた大量の豆をばら撒く音)

P「しまっ!」

 (豆を踏んでこける音)

P「いったっ! 豆がっ! 背中に豆がっ……!」

亜美「ずらかれずらかれー」

真美「兄(C)バイバーイ!」

 (駆け足の音)

P「……くそ、文香の方に意識を持っていかれすぎて気付くのが遅れた……」


667: 2015/02/07(土) 21:30:20.47 ID:MJUbaSYfo

P「二人は……流石に逃げ足が速いな……」

智絵里「あ、あの……」

P「ん? 智絵里か、どうした?」

智絵里「え、えと……大丈夫……ですか?」

P「おう、大丈夫だ。背中が痛いけどな」

智絵里「そう、……ですか。なら、……よかったです」

P「ありがとな、心配してくれて」

智絵里「い、いえ! ……その、むしろ……ごめんなさい」

P「え?」

智絵里「え、えぇいっ!」 

 パチコーン(投げられた豆が顔にぶつかって床に散らばる音)

P「うがっ!?」

智絵里「ご、ごめんなさい!」

 (走り去る音)

P「……」

 (扉の開く音)

ありす「ふぅ……って、うわっ! ……プロデューサーが豆の海に沈んでる……」

P「……」

ありす「どうしたんですか? というか、なにがあってこの惨状になったんですか?」

P「……鳩に豆鉄砲を食らった気分だ」

ありす「は? 鳩が、じゃなくてですか?」

P「鳩に」

ありす「……はぁ」

674: 2015/02/09(月) 20:23:47.33 ID:hebPAs66o

―――

ありす「で、なにがあったんですか?」

P「お前がさっき言ってた悪戯好きの双子悪魔に襲撃を受けてな」

ありす「あぁ……やっぱり悪巧みをしていたんですね」

P「馬鹿威力の豆鉄砲で撃たれた……気をつけろ。奴等はまだ事務所に潜んでるからな」

ありす(プレデターみたいな扱い)

ありす「で、でもそれだけならまだ……いえだけって事もないですけどこの惨状だと
     けどそこまで凹む程の事でもないですよね?」

P「そうだな。俺に致命傷を与えたのは智絵里だからな」

ありす「え?」

P「……智絵里に豆をぶつけられた。顔面に」

ありす「……それは……へこみますね。色々と」

P「と、言う訳で亜美と真美は地下四階に連れて行きます」


676: 2015/02/09(月) 20:33:48.35 ID:hebPAs66o

―――

 別所

智絵里「ほ、本当に大丈夫なんですか。こ、こんなことして……」

亜美「大丈夫大丈夫! 今日は節分だし、ちえりんだって兄(C)に厄が付いたら嫌でしょ?」

智絵里「で、でも……」

真美「これは真美達の感謝の表れなのだよ! いつも世話になってる人に福が来ますよーにって。ね、亜美」

亜美「そーいう事なのだ! だから気に病む必要はないのだよ!」

智絵里「じゃ、じゃあ……えい!」

 (豆が散る音)

真美「ぶあっ!?」

亜美「のあっ!」

智絵里「や、厄が来ませんように!」

真美「……うぅん、こうくるか」

亜美「純粋すぎて心配になるね」

智絵里「?」

真美「……ま、いいっしょ! よし、次は小梅ちんゴー!」

小梅「……え?」

亜美「ほらほら、とりあえず一升分あれば足りるっしょ! 多分まだ同じところに居るから兄(C)にアタックだ!」

小梅「で、……でもプロデューサーには色々憑いてるけど……わ、悪いのは……多分居ないよ?」

真美「……」

亜美「……」

小梅「あ、新しく憑く余裕も……な、ないから……大丈夫だと……」

真美「……えーっと」

亜美「小梅ちん。そういうガチで怖い話はノーで、二度と亜美達の前でしないよーに」

智絵里「ち、ちなみにどんなのが憑いてるんですか?」

真美「あれ、ちえりん真美達の話聞いてないぞ」

亜美「やめろー! き、聞くんじゃない! 間に合わなくなっても知らんぞー!」

小梅「……詳しくは、わ、わからないけど……天魔における……神仏、の類だと……」

智絵里「ふわぁ……す、凄いです……」

亜美「もうやだ……この人達……」

真美「扱いづらいよー!」

679: 2015/02/09(月) 21:22:00.94 ID:hebPAs66o

―――

ありす「ち、地下四階!? じ、実在したんですね……噂だけだと思ってましたけど」

P「実は、実在したんだ」

ありず「ディズニーランドでミッキーに暴力を振るったり等、夢を壊した人が連れて行かれる
     ディズニーマジックルームと同等の危険度と噂のあの部屋が……」

P「……それは尾鰭が付き過ぎてる気がする……どっちにも」

ありす「まぁ、それは冗談として。いくらなんでもそこまでしますか? 普段の悪戯とかを考えても……」

P「いや、あいつら俺を襲撃するときにスキル使ったからな。許可なしに悪戯の為にそれはちょっと」

ありす「スキル……そういえばあの二人のスキルってどんなのなんですか?」

P「二人ともカテゴリは運命干渉系だな」

ありす「運命干渉系……あずささんの『迷えば迷うほどその後選んだ道が自分にとって
    良い結果になる』みたいなのですか?」

P「あれは運命干渉系の中でもハイエンド級だ。そこまでのじゃないよ性格がよくでてるというか……。
  真美は『その場に最も適した罠を即座に思いつく』ってのと『その罠に必要なアイテムが都合よく手元に集まる』っての」

ありす「なんというか、悪戯特化ですね」

P「使い方によってはかなり性質が悪いけどな。で、亜美が『真美がセットした罠に対象を最良の形で引っ掛ける』って奴」

ありす「……二人揃ったら手が付けられないじゃないですか!」

P「逆に言えば分断すればなんとかな――

小梅「……あ、あの」

ありす「あっ……」

ありす(なんか後ろでに隠してる……)

P「おっ、小梅どうした? なんか用か?」

小梅「えと……ち、ちょっと……しゃがんで……」

P「おう、いいぞ」

ありす「……」

小梅「え、……えいっ」

 ざー

ありす(……豆のシャワー浴びてるみたいです)

P「……えっと、小梅。……これは?」

小梅「や、厄が……祓われて、ふ、福が来ますように……って」

ありす「亜美さんと真美さんですか?」

小梅「う、うん……」

P「そっか、うん。ありがとう小梅。ところでその二人はどこだ?」

小梅「……?」

P「ほら、俺もみんなの厄を祓わないといけないからな。とりあえずあの二人に豆ぶつけてくる」


691: 2015/02/10(火) 10:02:06.64 ID:D5boGCY/o

―――

ありす「……大丈夫ですか? ってもう何回か既に聞いてる気がしますけど」

P「おう、服の仲に入った豆も全部だしたし。……掃除手伝ってくれてありがとな」

ありす「いえ、それくらいはべつに……というか、なんで回避しなかったんですか?
     今のは流石に事前にわかってたでしょうに」

P「ん、小梅の事か?」

ありす「はい。警戒されない人を使うってのもある意味では罠ですし、その辺気がつかない人じゃないですよね?」

P「……けど、仮に違ったらどうする? もし、俺が無意味に小梅や智絵里から距離とって傷ついたら?
  だったら俺はわかってても食らうよ。うん」

ありす「そうですか」

ありす(そう考える事も含めての人選というか罠、なんでしょうね……手ごわい)

P「さて、とにかくこっちも豆鉄砲をとって手に入れないとな。
  ……なんか節分というよりただのサバゲーみたいになってるけど」

ありす「はぁ、わかりました。では私もプロデューサーにつきますよ、一人では難しいでしょう?」

P「いいのか?」

ありす「はい。それに私も普段からあの二人には悪戯されてそこそこ腹に据えかねていたので、
     こういうゲームでなら先輩とか関係なくやり返せそうです」

P「そうか、なら助かるじゃあ早速―――

麗奈「ここでレイナ様参上!」

P「なっ! 麗奈!?」

麗奈「食らいなさい、新作バズーカよ!」

 (爆発音)

P「うわっ! ……網?」

ありす「うわわ、バラエティとかででてくるネットバズーカですよこれ。動けないです!」

P「くそ、また撃たれ、る……?」

麗奈「よし! 今度は成功したわ! ざまーみなさい!」

 (去っていく音)

P「……豆関係ねぇ!」

701: 2015/02/13(金) 21:18:27.44 ID:zg8ZbEMho
>>691

―――

P「……」

ありす「……」

P「びびったー……」

ありす「流石に網に囚われた状態で遭遇する財前さんは洒落になってないですね」

P「まぁとにかく。とにかく! 色々あったが脱出はできた。あとは三人をお仕置きするだけだ」

ありす(三人? ……あぁ小関さんもですか、ははっ)

P「しかしこうも上手く人を使われると二人だとキツイな」

光「なら、アタシが助太刀に入ろう!」

P「おぉっ、光じゃないか」

ありす(……)

光「さっき色々企んでる麗奈を捕まえて一通り話は聞いたよ。アタシにも手伝わせてくれ!」

P「流石だヒーロー。だが、既に麗奈には一発お見舞いされた後なんだ」

光「なに? ……くっ、なら一緒に連れてくるべきだったな。アタシとしたことが
  『まだなにもしてない』という言葉にすっかり騙されてしまった」

P「いや、お前はそのままでいてくれ」

光「とにかく、はいコレ」

P「これは……亜美真美が持ってた豆鉄砲と同じ奴か?」

光「これは麗奈が持ってたんだ。とりあえず取り上げといたんだけど……っていうかさ」

P「?」

光「……いや、本当に話は聞いて疑われるのもわかるんだけどアタシは別に先輩達の手先じゃないからさ、
  その物騒な物をおろしてくれないかな?」

ありす「……そうですね。ここまでの発言に嘘も矛盾も誤魔化しも一切ないようでしたしね」 チャキ

P(この豆鉄砲……こうして手に取るとわかるが、とんでもなく手の込んだ代物だな)

光「あー、怖かった。……それがありすのスキル?」

P(軽くて取り回しが良いし、形の不揃いな豆を弾丸としてジャムらせずに連射する技術)

ありす「えぇ、具現操作系の一種です。……ね?」

P(そしてなにより、この製作時、まだパーツ段階でしか打ち込めないだろう位置に刻印されたLoveの文字……)

ありす「……プロデューサー?」

光「どうしたんだ相棒? 精神攻撃か!? スタンドか!?」

P「ま、やっぱり黒幕はその辺だよな……って」

705: 2015/02/14(土) 09:06:08.88 ID:1amxzwPRo

【節分はとりあえず置いておいて】

P「……だからさー」

小鳥「……うわぁ匂いがすでに」

ちひろ「胸焼けしそう」

P「なんでうちには女のアイドルしか居ないのにこんなにチョコが大変な事になるのかなー……」

小鳥「真ちゃんを筆頭に女性に人気の子ややよいちゃんみたいに満遍なく愛されてる子やら」

ちひろ「最近は逆チョコとかも流行ってますしね……」

P「これをまたファンレターと同じくこれから分配していくのかと思うと……」

小鳥「手作りは処分しないといけないし……」

ちひろ「高校時代不二家のチョコ工場でバイトしてた時を思い出すなぁ……」

P「さっさとやってさっさと終わらせよう……の、前にコーヒーをブラックで頂きたいな」

小鳥「キムチが食べたいです」

ちひろ「じゃあ私はカレーで」

P「はい、昼に勝手に食ってくれ。全身から甘い匂い発しながらな」

706: 2015/02/14(土) 09:16:24.94 ID:1amxzwPRo

―――

響「うぅーがぁー! いぬ美ー! なんで今日はそんなにも逃げようとするんだよー!
  自分がなにをしたっていうんだー!」

優「アッキーってば! じっと、じっとして! もーっ!」

翼「うわー、なにこの動物大暴走……いたっ! あ、ペロだ」

雪美「ペロ……今日、落ち着かないみたい……」

翼「あーまぁ、犬猫にとってチョコ。……ってかカカオかな? は猛毒だもんね」

響「うわぁぁ……」ずるずる

翼「こんだけ匂いしてたら身の危険を感じずにはいられないのかな~」

優「あーっ! 窓、窓からっ!」

翼「うわわ、ま、窓、落ちっ……ふぅ、あっぶな~い」

優「あ、ありがとう翼ちゃん」

響「わぅぅぅ……」ずるずる

翼「ううん、大丈夫大丈夫! でもあれだよね、甘いの好きでもこの匂いはキツイもんね~」

雪美「あまい……」

優「鼻が人よりずっと利くんだからね。やっぱり寮に置いてきた方がよかったかな」

翼「……ところであれ、どうにかした方がいいのかなっ?」

響「……」ずるずる

雪美「……楽しそう」

翼「……雪美ちゃんは可愛いねっ!」

710: 2015/02/14(土) 21:20:16.01 ID:1amxzwPRo

―――

里美「ほわぁ~……甘いいい匂いがしますぅ~」 ふらふら

未来「だからそっちは事務所の方向です! 何回目ですか!?」 ぐいっ

あずさ「そうよ~、今日の現場は……確かこっち……」 ふらふら

未来「違います! そっちは逆……あぁ里美さんだからチョコの匂いに誘われないで!」 ぐいぐい

里美「あまぁ~い」

未来「どこで買ったんですかそのクレープ!」

あずさ「あら、美味しいわね」

未来「こっちも!?」

里美「あちこちから甘い匂いがします~」 ふらふら

あずさ「あら、あれはなにかしら~」

未来(春日未来14歳! この二人を無事に現場まで連れていける気がしません!)

里美「ほわぁ……ほっとちょこれーと、おいしいです~」

あずさ「ほら~、二人ともこっちよ~」

未来「……誰か助けて」

711: 2015/02/14(土) 21:33:59.66 ID:1amxzwPRo

―――

まゆ「うふ、うふふふ……」

春香「どうしたのまゆちゃん、機嫌よさそ……うじゃないね。声だけで顔が怖いよまゆちゃんどしたの?」

まゆ「あら、春香さんおはようございます」

春香「あぁ、うん。おはよう。……で、なにしてるの?」

まゆ「チョコの仕分けですよぉ。一杯あって……ホントにイッパイあって……」

春香「……えっと、一杯あるのはいいことじゃないかな? 私より多いんじゃない? そのチョコの山」

まゆ「うふふ……これ、まゆ宛のじゃないんですよぉ?」

春香「え? そうなの? ……じゃあ誰の」

まゆ「Pさん宛、です」

春香「えっ、嘘だよ。去年まではほとんど……」

まゆ「毎年まゆのファンだって言う局員さんに頼んで局留めにしてもらってたんですけどぉ……」

 『今年はちょっと多すぎてこっちで預かりきれませんごめんなさい』

まゆ「って言われちゃったのでぇ……」

春香「へ、へぇ……。ちなみにいくつあるの?」

まゆ「1769個、だそうですよぉ。身の程知らずが多いですねぇ……」

春香(……言い方が)

まゆ「仕方が無いのでまゆのを安全確認してくれてるPさんにお返しとしてまゆがPさんのを検品してるんです」

春香「そっかー、まゆちゃんはえらいなー」

712: 2015/02/14(土) 21:34:32.05 ID:1amxzwPRo

まゆ「……で」

春香「ん?」

まゆ「……1770個目をお持ちですか?」

春香「……ううん? ないよ?」

まゆ「……」

春香「……」

まゆ「……ですよねー。この環境下に長時間身を置いてるPさんに
   わざわざチョコを渡す人は事務所内には居ませんよねぇ?」

春香「そうそう。あげるなら日を置いてか、あえて塩気のあるものかなって思っ……て」

まゆ「……」じー

春香「……」

まゆ「やっぱり……あるんですねぇ」

春香「……うん。チョコではないけど1770個目」

まゆ「……うふっ」

春香「っ」びくっ

まゆ「……じゃあこっちの箱にどうぞぉ」

春香「箱?」

まゆ「誰かが抜け駆けとか、お仕事の関係とかで直接だったり間接だったりするのはアレなので。
    アイドルからはまとめてPさんの机近辺に置いておきますからぁ。
    ……あ、ちゃんとまゆのも同じ扱いですのでご心配なく」

春香「あ、はい」

春香(基本的にはいい子なんだけどなぁ……)

まゆ「うふっ」

春香「っ」びくっ

714: 2015/02/14(土) 22:11:23.17 ID:1amxzwPRo

―――

P「終わった……」

小鳥「ウサちゃんロボに手伝って貰わなければ即氏でした」

ちひろ「テッペン超えると思ってたましたけどなんとか22時ですね」

小鳥「しばらくチョコはみたくない。というか包装された小箱がみたくない」

P「いや、本当に……つーか腰いってぇ……」

ちひろ「あと、匂いの所為か頭も痛い」

P「来年も再来年もコレがあるのか……」

小鳥「……そんなこと言ってると鬼が笑うわよ?」

P「この間二人程小鬼を退治したから大丈夫だ」

ちひろ「……そんなあなたに朗報。そちらの壁際をどうぞ」

P「ん? ……おぉうなんだこれは」

小鳥「『プロデューサーへ。アイドル一同より』だ、そうです」

P「……」

ちひろ「ふー! 愛されてるー!」

小鳥「どう? 見たくない?」

P「……いや、これは別腹だろ」


 Pの目標。ホワイトデーまでに食べきる。

727: 2015/02/15(日) 21:42:40.05 ID:RJob+uO2o

【懐かれた】

朋花「……」 てくてく

蘭子「……」  てくてく

朋花「…………」 てくてくてく

蘭子「…………嘘を愛してもらいたい」  てくてくてく

朋花「……」 くる

蘭子「?」 にこ

朋花「……」 てくてく

蘭子「……嘘を見抜いて貰いたい」  

朋花「……」 くる

蘭子「……信じないで!」

朋花「やめてください」

蘭子「汝が生み出すは天上の魅惑!」

朋花「やーめーてーくーだーさーいー」 ぐいぐい

蘭子「更なる高みへ。次なる調べは我と共に行かん!」 がくがく



莉緒「あれ、なに?」

愛「ひよこみたいですね!」

莉緒「いや……んー、なんで?」

愛「なんか、蘭子さんが『maria trap』に感銘を受けたとかなんとか」

莉緒「あー」

728: 2015/02/17(火) 08:06:41.28 ID:7Imq63cHo

【いくさ】

「うわー! きらりに勝てる奴いんのー?」
「真まで沈むとは……次は誰が行くの?」
「立候補する人ー?」
「いるわけないじゃーん」
「にょわー、誰の挑戦でも受けるにぃ」

凛(……盛り上がってるなぁ)

 (扉を開ける音)

凛「お疲れさまでーす」

真「……うぅ、ボクは無力だ……」

有香「もっと精進しないと……」

凛「え、なにこの氏屍累々。こわっ」

春香「じゃあよし、次は杏ちゃんが行こう!」

杏「勘弁して! マジで勘弁して!」


凛「……えー。誰か、誰か状況を説明して」

このみ「あ、おはよう凛ちゃん。いつの間に?」

凛「たった今、思いっきりお疲れ様って行って入ってきたんですけど。……盛り上がってますね」


春香「ほら杏ちゃん!」

杏「いやだいやだ! あんな音と反応見せられていけるか!」

春香「でも杏ちゃんはきらりちゃんのパートナーなんだから! いける!」

<いける! やれるよ!

<頑張れ杏ー

杏「無理だって! ……ってかさっきから杏にやらせようとしてる奴はなに? 杏が氏ぬところを見たいの?」


幸子「いま、きらりさんにみんなで挑戦してたんですよ」

凛「挑戦? 腕相撲とか?」

このみ「まま、見てればわかるわよ」

729: 2015/02/17(火) 08:08:14.66 ID:7Imq63cHo


杏「本当に! 本当にやめてくださいお願いします春香大先輩!」

春香「……きらりちゃん、ごめんね。杏ちゃん嫌だって」

きらり「……きらり達、パートナーじゃなかったにぃ?」

杏「……パートナーだよ! そんな顔すんなよきらり!」

春香「はい杏ちゃん参戦でーす」

杏「くっそー!」


凛「なにあの小芝居」

このみ「いやぁみんなノリノリよねぇ」

幸子「あ、始まるみたいですよ?」

凛「握手? え、握力勝負って事?」

このみ「惜しいわね」


杏「待って! 最後に1つお願い!」

春香「なぁに?」

杏「なにその優しい声。怖い……じゃなくて、せめて次の挑戦者を指名制にさせて!
   杏がやられたら次の挑戦者を杏に決めさせて!」

春香「おっけー。じゃあ始め!」

きらり「にょわー!」

杏「……ふぅ」


きらり「せーんそー!」
杏「せーんーそー」

きらり「軍艦軍艦朝鮮」


凛「あ、勝負ってコレ? 懐かしい」

このみ「うん、最初は私も単にそう思った」


杏「ハワイハワイ軍艦」


凛「最初は?」

幸子「すぐにわかりますよ」


きらり「一本とーって!」

730: 2015/02/17(火) 08:16:16.93 ID:7Imq63cHo

―――

杏「ぉぉぅ……」


凛「……これ、私の知ってる遊びと違う」

このみ「でしょ?」

幸子「見事なワンショットキルでしたね」


春香「きらりちゃんの勝ちー」

きらり「にょわー! 次の挑戦者を待つにぃ!」

春香「じゃあ杏ちゃん、次は誰にやらせる?」

杏「……こ、このみさんで」


凛「あ」

幸子「行ってらっしゃい」

このみ「なんでっ!?」

杏「仲間、ほら仲間だから」

このみ「それ、同類って事でしょ!? 同じ結果になるに決まってるじゃない!」


凛「さっきまでの余裕の観戦ぶりが嘘のよう」

幸子「……これ、ボク達にも回ってこないですよね?」

凛「……逃げよっか」

美希「逃がさないの」

幸子「美希さん!?」

美希「美希の手の甲も大変な目にあったの。逃げるとか許されないの」

凛「そんな馬鹿な……」


きらり「せーんそー!」
このみ「……せーんそーう」

731: 2015/02/17(火) 08:30:23.10 ID:7Imq63cHo

―――

このみ「大丈夫? 私の左手、ちゃんとある? 手首から先なくなってない?」

凛「大丈夫。ちゃんとありますよ」

このみ「よかった……じゃあ、次幸子ちゃんお願いね」

幸子「えっ!? なんでボクなんですか! そこは流れ的に早苗さんとかじゃないんですか!?」

早苗「私もうやったし」

幸子「じゃあ心さんとか! まだ居るじゃないですかそういう近い人!」

このみ「さっき逃げようとしてたから」

凛(私が選ばれなくてよかった……)

春香「じゃ、幸子ちゃんね」

幸子「ちょ、ちょっと待ってください。というか春香さんはやらないんですか!?」

春香「私ももうやったもん。しばらくお菓子作れない身体になったかと思ったよ」

きらり「手加減はしたにぃ」

春香「……うん! というわけで幸子ちゃんも行こう!」

幸子「いや、いやです! ボクはそんなキャラじゃないですから!」

杏「いや、むしろ幸子の領分でしょこういうの」

幸子「そういうのは望んでな――あぁっ! 引っ張らないでください! せめて、せめて心の準備を!」

732: 2015/02/17(火) 08:39:26.05 ID:7Imq63cHo

―――

凛「偉い」

杏「よく頑張った」

このみ「凄い」

春香「幸子ちゃんってなんだかんだ頑張り屋さんだよね」

美希「それがいい結果に繋がるとは限らないけどね」

幸子「……いたぃ……」

春香「まさか三発耐えるとは思って無かったよ」

きらり「二回叩かれちゃったにぃ」

美希「手加減してたの?」

このみ「音的にそれはないと思うわよ」

幸子「痛すぎると気絶できないって話。本当だったんですね」

杏「いくら痛くても手の甲で気絶はできないと思う」

凛「けどきらりに勝てる人居るのかな」

貴音「では、次はわたくしが参りましょう」

のあ「この勝負、なんとしても勝つわ」

杏「で、でた! 事務所でなんでもできそうな人ツートップが!」

凛「か、勝てる! この二人ならきっときらりを!」

733: 2015/02/17(火) 08:52:19.69 ID:7Imq63cHo

―――

のあ「なるほど、これが絶望なのね……」

このみ「なんか今までで一番凄い落としたけど……大丈夫?」

貴音「あぁ、星がこんなにも近く……」

凛「落ち着いてください。ここ室内ですから」


杏「……ダメか。……ってかあの二人運ないなー」

春香「一回も自分側に回ってきてなかったもんね」

美希「結局ジャンケンで勝たないとあいこになっても叩けないの」

貴音「いたい……」

のあ「えぇ、いたいわね」

凛(叩かれた瞬間の顔面白かったなぁ……というかこのままの流れで私はやらないまま済んだり……)

春香「じゃあ次は……まだやってない凛ちゃんかな」

凛「ですよねー」

「ちょっと待った!」

このみ「こ、この声は!」

舞「私にやらせてもらえないかしら」

杏「事務所最強。否、芸能界最強の登場だ!」

凛(よし、うやむやになりそう)

舞「きらりちゃん、私が相手でいいかしら?」

きらり「全然大丈夫だにぃー!」

734: 2015/02/17(火) 09:05:49.60 ID:7Imq63cHo

―――

杏「惜しい人を亡くした」

凛「きらり誰が相手でも容赦ないなー……」

舞「……帰る」

春香「あ、起きた。……だいじょぶですか?」

舞「帰って慰めてもらう。Pに」

春香「ちょっと待って、そんなの許される訳ないじゃないですか」

舞「だって! だって本当に一切の容赦なかったわよ!? いったー! なんなの!?」

杏「まいさん は こんらん している ! ▼」

舞「これが噂のスキルって奴なの!? 最近のアイドル怖い!」

美希「違うの、あれはきらりの素ステなの」

 (扉の開く音)

桃子「そろそろ仕事行けってお兄ちゃんが言ってたよー。あと、騒ぎすぎって」

凛「あ、もうそんな時間? ……ってそうだ。桃子先輩」

桃子「え、なに?」

杏(悪い顔してる)

736: 2015/02/17(火) 10:54:50.37 ID:7Imq63cHo

―――

きらり「あー負けちゃったにぃ」

桃子「ふふん、桃子の勝ちー。ってもしかしてみんなこんな遊びではしゃいでたの?」

このみ「あははー……つい熱くなってね」

凛(よし。大人に容赦ないっていうより、むしろ手を抜かないで挑むって
  感じなのかなと思って桃子ちゃん先輩をぶつけてみたけど……上手くいってよかった!)

杏「上手くいかなかったら大変な事になってたけどね。
  ……まぁきらりも子供好きだし流石に合わせるだろうと思ってたけどさ」

春香「いやぁ意外な結果になったね」

桃子「? ……あっ、そんなことより早くお仕事! お遊びはもう終わり!」

このみ「はーい」

春香「そうだね。そろそろ……っと、その前に」

凛「さぁ次の仕事は……」

春香「凛ちゃんってまだしばらく時間に余裕あるよね」がし

凛「え」

春香「一人だけやらないのも、ね? わかるでしょなにを言いたいか」

凛「……あ、やっぱりダメですか」




―――


 『あぁぁぁぁぁっ』

P「……あいつらマジで今日うるせぇ」

746: 2015/02/18(水) 21:02:53.57 ID:c/u1DHkTo
>>620

【筒がなく 恙無く】

 私(渋谷凛)が最初に違和感を覚えたのは一月の上旬だったと思う。
寮で目が覚めて数秒、ここがどこだかわからなかった。
時折ある『あれ?』っていうレベルじゃない、焦燥感と困惑、そして少しの恐怖。

 しばらくして、なにをやってるんだろう私は。
と、ひとり苦笑いと共にあっという間に忘れた。
寝ぼけてた所為だろうなんて適当に結論付けて。

 それが、数日続いた。
年末年始を大忙しで駆け抜けて、
その疲れの所為もあるのかもなんて思いながらも。
こうも続くとなにかあるんじゃないかって気持ちも擡げ始める。

747: 2015/02/18(水) 21:21:06.24 ID:c/u1DHkTo

 一月も下旬になる頃には、寝起きだけじゃなくて
さっきまで平然とそこに居たくせに自分の環境、状況、
周りに居る他のアイドル。様々なものに変な感覚を覚えるようになった。

「あれ……事務所ってこんなに大きかったっけ?」

 なんて我ながらなにを言ってるんだというレベルで、だ。
しかも入るときならまだしも(どちらにせよどうかと思うけど)談話室で会話してる時に不意にとか、
つい思ってしまって、みんなに変な目で見られたり。

 日に日に、その違和感は大きくなっていった。
なんだろう、なんだろう、なんだろう。
まるで私の身体に別の誰かが入っているかのような、記憶と感覚のズレとも言うなにか。

「デジャヴュと言う事場は知っているか?」
「知ってるよ。それ位、既視感って奴でしょ?」

 私が仕事場の場所を咄嗟に思い出せなくなった時、
本格的に私はソレに恐怖して同じ事務所の天才科学者アイドル(改めて表記するとやっぱり変)に
相談をしてみたところ、そんな感じに切り出された。

「うむ。……では、未視感。ジャメヴュという言葉には?」
「……知らない」
「だろうな。こちらはデジャヴュという言葉に対して認知度が低いからな。
 まぁ簡単に説明するとデジャヴュの逆。慣れ親しんだ筈のものが未知に感じる、
 初めての様に興奮し、戸惑い困惑し対応に窮する。そういう、まさに今の凛が頻繁に覚えている感覚だな」
「ふぅん……じゃあ私のコレって割とよくある事なの?」
「あぁ、現象自体はさして問題視することじゃない。問題は頻度だが、
 既視感にせよ未視感にせよ精神的な物だからな、理由がどうとは一概には言えない」

 結論。これはジャメヴュなる現象です。しかし理由はわかりません。
との事。でもまぁ、少なくとも脳に異常があるかもとか言われなくてよかった。

 とか思いつつ「一応脳波だけとらせてくれ」という晶葉にはいはいと承諾して、その日は終了。

 ……本当に大丈夫だよね?

748: 2015/02/18(水) 22:16:08.64 ID:c/u1DHkTo

―――

 その日私(島村卯月)はレッスンをしていました。
NJがメインを張るライブが近々あるんですが、
そこでお披露目する新曲の振り付けがイマイチ私だけできてない気がして
事務所にあるレッスン場で一人自主練に励んでいたんです。

「よっ……ほっ! ……あっ、あわわ!」

 右に左にホップステップジャンプ。
この場に居るのは私だけですけど、
凛ちゃんと未央ちゃんが居るのを想像して踊って、……転びました。

「いったー……」
「危なっかしいなぁ……」
「えっ? あっ!?」

 お尻を床にどんとぶつけて、顔を顰めていたら
後ろから呆れた様なプロデューサーさんの声。

「い、いつから見てたんですか!?」
「転ぶ寸前。いやぁ、いいタイミングだった」
「むしろ最悪のタイミングですよっ。うわー、もー」

 みっともないところを見られて熱くなる顔を両手で覆って隠す。

「ははは。まぁまぁ、頑張ってる卯月にほれ」

 穏やかな笑い声と近づいてくる足音。
首に触れる冷たい金属の触感。

「あっ、ありがとうございま……す?」
「おう……ん、どうした?」

 差し入れを受け取るためにおろしていた顔を上げて、
缶を受け取って……不思議な感覚が私を包みました。
なんとも言えない、表現のし辛い。不思議な……。

「あれ? プロデューサーさんって、もっと大きくなかったですか?」

751: 2015/02/19(木) 08:28:19.25 ID:krfxnM3mo
>>748

「……いや、俺はずっとこのサイズだったと思うけどな」

 ぽかんとしたあと、顎に手を当ててわざとらしく考えてからの言葉。

「生まれてからずっとこのサイズだぞ?」
「プロデューサーさんのご両親ってウルトラマンかなにかですか?」
「あぁ、光には内緒な?」

 なんて軽口を叩きながら、すっかりとさっきの違和感が消えている事に気づいて。
なんだったんだろう? って思いながら、でも大して気にも留めずお話を続けていました。

 気にも、留めずに。期を、止め損なって。

754: 2015/02/20(金) 19:39:10.04 ID:YNWanaT6o

―――

 私(池袋晶葉)はアイドルであると同時に科学者である。
などと言う口火の切り方をするとまるで光の好きな特撮物の様な雰囲気を感じてしまうのは
まぁ致し方ないことかもしれない。

「やっぱりおかしいよ……」

 致し方ない。そう、致し方ない事だろう。
科学者であり、自他共に認める天才である私の所に同じアイドルがこうして
自分では解決できない事態に直面した場合に私の所へ相談に来るのも。

「まるで私が私じゃなくなっちゃいそうで……」

 それに対しキチンとした答えを返すことができずしょうもない事を
脳内で考え現実逃避紛いの事をしてしまうのも。

「……確かに、先に言ったジャメヴュでは説明ができないな。頻度といい、内容といい」

 嘆息。それは何に対する嘆きなのか、その答えもわからない。
わからないが、しかし目の前に座り顔を暗くする年上のアイドルに対し
できるかぎり真摯に向かおうと口を開く。

755: 2015/02/20(金) 19:58:28.19 ID:YNWanaT6o

「ジャメヴュというのは前回も説明した様に、状況や雰囲気等に対して漠然と覚える感覚だ。
 だが、凛が感じるそれはもっと明確に特定の人物や場所に対して覚えるのだろう?」
「うん、漠然とおかしいと感じるだけじゃなくてさ。なんていうのかな……、
 『違う』って思うんだ。忘れたっていうかさ、別の記憶があって、重なってるような……」

 俯きがちに喋る彼女。――渋谷凛は普段の冷静で落ち着いた雰囲気を
一体全体どこに落っことして来たのかというくらいに不安げでそわついている。
小さく、呟く様な言葉をぽつりぽつりと口にする彼女の言葉を
注意深く聞き取りながら原因を探ろうと思うものの、
はやり私の知識をいくら検索しても理由は判然としない。

「記憶が重なる? ……どういう事だ?」
「……ねぇ晶葉。私がどこでどうスカウトされたか知ってる?」

 質問に質問で返されてしまった。
これは答えたくない、という訳ではなく前振りという事だろうか?

「伝聞ではあるが、まぁ事務所に来て早々の騒動も込みで一応聞いている」
「うん、騒動の……というか私の第一声については記憶から消して貰うとして」

 少しでも場を和らげ様かと思ってちょっと余計な事を言ったら睨まれてしまった。
うむ、まだそれくらいの元気があるようでなによりだ。うん。

756: 2015/02/20(金) 21:10:59.72 ID:YNWanaT6o

「で、晶葉の知ってる経緯を話してみて?」

 ため息をついてから改めてそう言われ、
私はふむとわざとらしく思案顔を作ってから先輩方に聞いた話を口にする。

「私の知っている範囲だと、助手……プロデューサーと天海春香の両名が
 君の実家である花屋に来店し、談笑の後スカウトされたと言った所だな」

 本人のエピソードを目の前でするというのも中々奇妙な気分で。
簡潔に纏めてさっさと終わらせ内容の如何を問おうかと向き直ってみると。

「……どうした? なにか間違いでも?」

 眉間に皺を寄せて下唇を噛んだ笑顔を常とするアイドルにあるまじき顔をした凛の姿。
                                          ・ ・
「ううん、間違ってない。確かにそれで正しいって思う自分が居る……けど」
「けど?」
「……それとは別の記憶も、あるんだ。道端を歩いてて、突然声をかけられて……これはなんなの?」

 別の記憶。本人が経験したスカウトは間違いなく私が口頭でたったいま言った物の筈だ。
ではもう1つの記憶と言うソレはなんなのか。もう1つの、記憶?

「……凛、今一度検査をさせて欲しい。今度は脳波だけじゃなく、別の視点から」

 背筋がざわつく。私の灰色脳細胞がもしかしてと1つの可能性を導き出す。
まさかと思う、そんな筈はと。

「なにかわかったの?」

 そんなにも深刻な顔をしていたのだろうか。
凛はここまでで一番不安そうな顔で私の顔を覗き込む。

「それを確認するために検査をするんだ」

 肩を竦め軽く笑って対応する。
億が一、否、兆が一の可能性が脳裏をじりじりと焦がすものの、
それを気取られてはいけない。もしこの仮説が正しければ、大変な事になる。
……私が同内容の相談を受けているのは凛一人ではないのだから。

「……わかった」
「ちなみに」
「なに?」
「……凛。君のもう1つの記憶に私はいるか? 私が誰だかわからない瞬間はあるか?」

 私の質問に対する彼女の答えは、是だった。

764: 2015/02/21(土) 09:49:09.24 ID:JumrqzI8o

―――
――

 私(池袋晶葉)はアイドルであると同時に科学者である。
日々新たな研究に手を出し最新鋭の機械を操り、
新たな発明を作り上げる。

 この部屋に敷き詰められた電気で動き
微かに駆動音を鳴らす多くの機械は私の手によって生み出された物で。
当然私が向かい合う目の前の機械も同様だ。

 私にとって自らの発明品は時間と手間と試行錯誤、金銭に時には血と汗も混じった
いわば我が子も同然の存在であり、その機能性に一ミリの疑いも持っては居ない。

「……なんてことだ」

 けれど、自他共に認める天才である私が始めて思う。
私よ、凡愚であれ。目の前の機械が映し出している結果が偽りであれ。
そう、願わずには居られなかった。

「……最悪だ」

 多くの計器が表す数字。針が示す色、グラフ。
全てが最悪の結果を映し出す。

 科学者たるもの、結果を厳粛に受け止め対応しなければならない。
わかっている。わかってはいるんだ。あぁ、そんな目で私を見るな。
いいじゃないか、こんな事になっているなど誰が想像できるか。

 眼鏡越しに仰ぎ見た天井は、計器の光で輪郭がぼんやりとして、
いまにも落ちてきそうに思えた。

768: 2015/02/21(土) 21:21:11.19 ID:JumrqzI8o

―――

「プロデューサーさん! 凛ちゃんが!」

 俺が違和感にはっきり気付いたのは、かなり遅かった。
「うわ、星井美希だ!」と、未央が直前まで話をしていた筈の美希に向かって言った時も、
なんだそりゃ。とは思ったもののまたなにかの冗談かなにかだと思っていた。

 本格的に異常に気がついたのは、
凛が顔を顰めて不安そうにしていた時。
そして呼応するかの様に複数人のアイドルが
ともすれば記憶障害とも思えるような発言をするようになってからだった。

「どうした!? なにがあったんだ!?」
「急に高熱をだして倒れて、今レッスン室で、凄い、それに杏ちゃんも!」

 曰く、別の人間が『プロデューサー』である気がする。
曰く、先輩アイドルや小鳥が他人に思える。
曰く、自分はデビューして間もない気がする、エトセトラエトセトラ。

 個人差はあれど、概ねして発言の内容は上記の様なものだ。
他にはスカウトの記憶が二つある、ここがどこだかわからない。
などといったケースもあり、本格的に原因を探らないといけないと思った矢先。

「なんだって!?」
「いま清良さんが診てくれて、大事はないって事らしいですけど。お仕事は……って」
「……わかった、キャンセルしておく。すぐに顔を見に行く」
「はい」

 完全に遅きに失した。悔やんでも悔やみきれない。
兆候はあった、なのにと。
しかし、事態は矢継ぎ早に進んでいく。後悔の念を募らせる間も与えてはくれない。

「……メールか? ……晶葉」

 震える携帯電話。スマートフォンが主流になった今も使い続けている
二つ折りの携帯は静かにバイブレーションで所属アイドルの池袋晶葉からの着信を知らせる。

『大事な話がある。地下室に来たれり 池袋晶葉』

 メールである以上差出人が誰であるかなど記名せずとも一目瞭然なのだが、
律儀にも本文に自身の名を書いて送られた簡潔な文章。
俺は仕事と体調不良のアイドル達と、このメールとを天秤にかけて。
即座に事務所地下に存在する晶葉の研究所に向かった。

 計ったかのようなタイミングで晶葉からの着信で鳴る携帯。
きっと晶葉はその自慢の頭脳でこの状況を解明し、それを知らせようとしているのだろう。
『個性判別循環呼応機構機事件』の時も『3兆円騒動』の時もそうだった。

 そしてその内容は、いつだって俺の想像を遙かに超えて最悪なんだ。

772: 2015/02/22(日) 20:16:27.81 ID:U51aX5zmo

―――

「遅い。遅すぎるぞ助手よ。まったく、余りにも遅いから弁明を三度も読み返してしまったよ。
この非常事態にどこで道草を食っていたんだ? いや、言わなくてもいい。
哲学書を私が読むことが意外なんだろう? そうだろうともそうだろうともさ、
しかし私は思うのだ。よく科学者はリアリストだのなんだのと表現され揶揄され比喩されるが、
実のところとてもロマンチストだと思うのだ。でなければ海へ潜ろうと思い、
空を飛びたいと思い、宇宙へ行きたいと思い、実現させようとなど思うまい。
 ん、なに? 本題に入れと? まったく君はせっかちだな、現代人の象徴とも言える。
時間に常に急かされ追われている一介の社会人の体現だ。
そう焦る事はない、実のところ哲学というのもこの際僅かながらではあるが
今回の事態に関係してない訳じゃない。環境学、認識論と言った面ではね。
無論少々君に対して嫌味交じりの枕詞として言った言葉であることにも間違いはないのだが……。
 さて、では君の望み通り本題に本題に入るであれば先んじて君に問わなくてはならないことがある。
「平行世界」と言う単語は聞いたことがあるだろう? あるいは「パラレルワールド」でもいい。
……よろしい。そうだろう、流石にこの単語を聞いたことのない人間は
情報過多な現代社会に置いて居ないだろう。むしろ避けて通ろうとしても知らずに居れない単語だ。
どこかの書店にふらりと足を運んで適当に十冊の本をピックアップしてみれば、
ほぼ確実にその中に含まれているだろう言葉だと言っても過言ではない。
勿論手に取った本が全て料理のレシピ本だった場合はその限りではないが、
兎角それ位世間的に深く浸透した言葉であるという事が伝わればいい。
 では、「六軸移動論」と「一元世界論」「多元世界論」についてはどの程度知識があるかな助手君。
む? なんだその顔は。いけない、いけないなぁ。この池袋晶葉の助手ならもう少し勤勉であるべきだよ。
仕方ない、ならばそこの説明から入るとしよう。

774: 2015/02/22(日) 20:30:47.23 ID:U51aX5zmo

「六軸移動とは、つまり言い換えれば六次元間での移動だ。
我々人類は一般的に三次元上の存在であると言われている。
高さ・幅・奥行き。この三つからなるのが三次元。――という訳ではなく、
三つの次元的概念が重なって居るのが三次元――という訳でもないが。
まぁその辺は割愛しよう。とにかく我々の存在は三次元である、
その構成は高さ・幅・奥行きであるということだけ理解してくれ。
 そして、そこに時間を加えて四次元。可能性を重ねて五次元。
さらにエーテルを足して六次元。ん? エーテルとはなにか、か。
そうだな勿論それはRPGにおけるマジックポイント回復アイテムではなく、
有機化合物R-O-R´でもなく、天体を構成する第五元素でもない。
所謂エーテル体。言い換えれば精神体、魂とでも呼ぶべきものかな。
 私は当初、今回の原因をそこにあると見た。
他所からの六軸的干渉。つまり魂への干渉だ。
現実に存在する人間の肉体は繰り返すが三次元上にある、
が、だからと言って人間を構成する、人間のフィールドが三次元であって
それが全てと言う訳ではない。認識できず、感知できないだけで
時間・可能性・エーテル。そして未発見のそれ以上の次元軸に対しても干渉、存在している。
 そこに対して他所からのアクセスがあった場合どうなると思う?
……そこで即答はいけない。考えて見せろ助手、その答えの正誤は問題ではない。
いやはやまったく、わかったわかった。いいだろう簡単に言ってしまうと、
コンピューターのハッキングと同様だ。データを食い荒らされ、操作をされれば
箱こそ変わりないが中身のデータに問題が生じる。
意図的にしろあるいは偶発的にしろ、なんらかの原因で事務所所属のアイドルに
六軸的干渉があれば今回のような形で影響がでてもおかしくはない。
 と、思っていた。現に今回の被害者……という表現を用いてはてさて正しいのかどうかは置いといて、
数名のアイドルを検査した結果確かに彼女達のエーテル体に異変があった。
だから私は中々気付かなかったのだ、それが間違いであることに。

775: 2015/02/22(日) 20:44:03.69 ID:U51aX5zmo

「さて、ここでようやく次の説明に入ろう、『一元世界論』と『多元世界論』だ。
これは今回の事件にとても大きく関わってくる。というより、もはやそのものといってもいい。
まず『多元世界論』だが、これは簡単だ。名称こそ知られずとも、
概要は誰でも説明すればわかる。君は先ほど『パラレルワールド』『平行世界』という単語を聞いて
どういったものを浮かべた? 恐らく僅かに違う可能性、違う選択をした
この世界に似通った別の世界。「もしも」「あぁしてれば」「こうだったなら」、
鼠算の様に増え続ける数多あるフローチャートの如く並ぶ似通った世界。
そういうものを脳裏に描いただろう? そう、それが実在するのが『多元世界論』だ。
同じ過去から派生する現在。同じ現在から派生する未来。
どこかに私が科学者でない世界がある、という考え方だな。
過去に向かうことはできるが未来に行くことはできない、
仮にできてもそれは一つの可能性であって確定ではない。
 対して『一元世界論』というのは世界は過去から未来に続くたった一つ、
唯一無二の筒の様なものだという考え方が『一元世界論』だ。
常に上書きされ、選ばれなかった選択。起きなかった可能性は完全に掻き消える。
いわばVHSのようなものだ。仮に過去に戻り別の選択をした場合、全て上書きされ
元のデータは完全に消え、閲覧することは不可能になる。そして未来に行くことも可能だな。
 さて、大事なのはここからだ。
この『一元世界論』にも『平行世界』と言うものは存在する。
例えばゲームの様な、魔法があり剣で戦い竜が空を舞いケンタウロスが地を駆ける世界。
これは『多元世界論』での『平行世界』では存在し得ないだろう?
どのようにこの世界で選択を変えても、行動を変えても、その様な世界になど分岐しようがない。
けれどそういった世界は存在する。一般的には『異世界』などと呼ばれることの方が多いだろうが、
これも間違いなく『平行世界』なんだ。

777: 2015/02/22(日) 21:34:59.93 ID:U51aX5zmo

「『多元世界』が根本を同じくする僅かな差異の集合体なら、
『一元世界』は根本が異なる世界の流れの個体なんだ。
さぁさぁお立会い。では君はその一元世界、本来根本が全く異なる
その多くの『異世界』の中に、とても似た世界があったらどうなると思う?
 まったく別の可能性のレベルではない違いがありつつも、
しかし数多くの共通点もあったらどうなると思う?
……具体的には、『一元的並行世界』に同一人物が存在していたら?
同姓同名どころの話じゃない。姿かたちも、遺伝子レベルで同じ人間が
偶然にも奇跡が如く『一元的並行世界』に存在していたら。
――そう、それが渋谷凛であり本田未央であり島村卯月であり
双葉杏であり諸星きらりであり高垣楓であり前川みくであり
赤木みりあでありアナスタシアであり緒方智絵里であり
城ヶ崎莉嘉であり城ヶ崎美嘉であり新田美波であり
三村かな子であり佐久間まゆであり川島瑞樹であり
十時愛梨であり小日向美穂であり日野茜であり
輿水幸子であり安部菜々であり白坂小梅であり
小早川紗枝であり佐々木千枝であり上条春菜であり
堀裕子であり及川雫であり片桐早苗であり大和亜季であり
高森藍子であり千川ちひろである訳だ。
 ありえない。あぁその通りだ、ありえない。
天文学的数字を天文学的数字で乗した数字分の一と言ってもまだ足りない。
が、しかしそれでもそうとしか考えられず、そうであれば説明がつくんだ。
結論を言おう、この世界とこの世界に近い『異世界』は統合されようとしている。
それは世界の並ぶ高次元の世界による超自然的現象なのか、
あるいは神とも呼べる何者かの自由意志なのかは定かではない。
けれど、我々が居る世界とその世界はいま1つになろうとしている。
彼女達の異変、つまり複数の記憶が混在している状況はその前兆に過ぎないんだ。
向こうの世界とこちらの世界が彼女達を中心に合併しようとしていて、
今彼女達の中にこちらの記憶と向こうの記憶が同時に流れている。
それが今回の騒動の原因であり、そしていまだ仮定なのだ。

778: 2015/02/22(日) 21:47:49.63 ID:U51aX5zmo

「いわばいまの状態は二つの円を重ねたベン図の様な物だ。
その重なりあう共通部分に渋谷凛達が居ると思えば概ね正しい。
このまま順調に行けば……そうだな世界が情報の流れるパイプ、
筒と表現される事を加味して少し言葉遊び風に言うなら恙無くだな。
 恙無く進めば世界の筒が一つ無くなる。
勿論私達の世界も向こうの彼女達の世界も消えてなくなるだろう、
二つの世界がくっ付いても筒の中を流れる情報量の制約は二倍にはならない。
二つのコップに入った赤い液体と青い液体を同容量のコップに同時に流し込むように、
私達の世界から50、向こうの世界から50。情報が排他され、
あたかも最初からそうであったかのように全く別の紫色の液体が流れる筒ができあがるという寸法だ。
その際、恐らくは現時点で未だ影響にない君の様な、こちらにしか存在しない存在、
向こうにしか存在しない存在がかき消される事になるのだろう。
 あぁ、わかっている。その通りだ、原因がわかっても対処法がわからなければ意味がない。
どうすればいいかなど私だってこの答えが見えたと同時に考えたさ。
 ……が、どうすればいいのかはわかっても具体案をイマイチだせない私をどうか許してくれ。
この対処法は極めて簡単で、そして同時に難題だ。
例えば、もっともわかりやすいのは頃すことだ。
今回こちらの世界とむこうの世界の接点でありきっかけとなり、影響を受けている人間を皆頃しにすれば
恐らく世界の統合は収まるだろう。あるいは核爆弾でも落とすか。
……そんな怖い顔をしないでくれ、これは極端な一例であって
無論実現不可能であることはわかっている。だが、これ位事は単純で、そして不可能であるが故に
君の求める『どうすればいいか』という質問に具体案を出せないと言っているんだ。

780: 2015/02/22(日) 22:08:37.36 ID:U51aX5zmo

「とにかく、私が言える現時点でのこの現象に対する抵抗方法は端的に一つ。
『パラダイムシフト』だ。『歴史的転換』を起こす他ない、この世界と向こうの世界を
決定的に別の物にして『一元世界上に現れたイレギュラー世界』というステートを捨て去るんだ。
……さて、ここまでで何か質問は?
 おや、気付いていたのか。なるほど『私』はいい助手を持っている。
その通りだ、私は君の知っている池袋晶葉じゃない。
いや、更に正鵠を得ようとするならば君の知っている池袋晶葉であることに間違いはないが、
しかし同時に君の知らない池袋晶葉でもある。と言ったところか、まるでトートロジーだな。
さっきの説明を引き合いに出して言わせてもらうと、第三のコップに注がれた液体は未だ少量で、
どちらのコップからもまだ溢れたりはしていない。
ただ、同時ではあるがどちらかが色濃く出るタイミングがある。
それが今、君にとっての向こうの世界が色濃く出ている状態なんだ。
 今まで君に説明していた内容はこのコンピューターに『こちらの私』が文章として
まとめてあったのをそのまま君に伝えただけだ。
――しかし、驚いた。この設備、発明品。皆々素晴らしい、
よほどこの世界の私はアイドルという物からいい体験、いい経験をしたらしい。
……あるいは、君のおかげか。……っと、話が逸れたな。
なんにせよ、どちらにせよ。『私』にとってもこのまま事態が進行するのは最悪だ。
そろそろ時間もない。影響が遅れてきたようだが、しかし私もまた共通項に存在する人間であったようだしな、
他のアイドルがそうであるように私もいつ倒れるかわからない。
一つの身体に世界二つ分の情報が流れればそりゃオーバーヒートもする。
恐らく、早い段階で兆候が見えていた子達は既に熱を出して倒れているのではないかな?
……はやりか、うん。だろうと思ったよ。
 さて、伝えるべき事は伝えた。この後君が取る行動のサポートをしてやれないのは残念だが。
『私』からも頼むこの事態の収束を、可能な限り行ってくれ。
少なくともこっちの『私』は君ならばやりおおせると信頼している様だ。
全く羨ましい、『私』の世界に君が居ないのが残念だ。
まぁいいさ、言っても仕様のないことだ。
繰り返すぞ、今回のコレは神の地均しだ。偶然できたこの重なりを均そうとする神の足を、吹き飛ばしてやれ」

788: 2015/02/23(月) 20:29:16.81 ID:NyKdte4eo

―――

「……考えろ考えろ考えろ」

 晶葉の研究所からでてきた俺は一人会議室に篭って
脳を過去に無いほどに回転させ思考の海に沈む。
『歴史的転換』を起こせと晶葉は言った。
どうやって、どんな風に。俺にできることは?
どう動けば決定的に世界を違える事になるのかがわからない。
俺には向こうの世界を観測する手段がないのだから。

「……いや、まて」

 そうだ、俺自身が向こうの世界を観測することはできないが。
過去の発言を思い出してみろ、なにかヒントがあるはず。
……まず、向こうの世界に俺は居ない。
少なくとも凛達の周囲には居ない、プロデューサーとして活動していない。
そして未央の美希に対する発言、あれが向こうの未央の発言だとするなら。
未央は美希を見たことがなかった? ……つまりマスターズプロダクションも存在しない、のか?
だが、美希自体は知っている。ということは765プロのまま存在するのか?
じゃあ876は? 961プロはどうなってる? 凛達が所属してるプロダクションは一体どこだ?

「くそ、情報が足りない……」

795: 2015/02/25(水) 09:59:16.52 ID:nBSQk3tOo
>>788

 背中に時限爆弾を背負ってる気分だ。
しかもそれは世界巻き込むレベルの爆弾で、
いつその瞬間が来るかもわからない。
ただただ焦燥感だけがチリチリと肌を焦がす。

 ガタン。と音がした。
発生源に目を向けると会議室の入り口、
鍵をかける事も忘れた扉の隙間から不安そうな目が見つめていた。
――落ちつけ、落ち着け。俺がみんなを不安がらせてどうする。

「……どうした?」
「いま、大丈夫ですか?」

 扉を開いて入ってきたのは二人。
安斎都と今井加奈。おずおずと部屋に入ってくる。

「えっと……現状を打開する方法を探ってみようかと
 色々皆さんから聞き込みをしてみまして……特に様子のおかしかった方達から。
 それで重要そうな事とかをとりあえず――」
「私が要約して箇条書きにまとめてメモして置きました!」

 こんなことしかできないですけど、と。
差し出されたメモ帳には細かい丁寧な字がびっしりと書き込まれている。

 ・346プロダクション。 →ほぼ全員の口から 事務所を認識できない時などに発言
 ・プロデューサー
  ・別人を見てる可能性 大柄? 無口?
 ・先輩方を他人と認識してる可能性大
  ・765プロ 876プロ 961プロの単語が出てくる場合も有り
 ・315プロ 東郷寺プロなどは確認できず → 同様に玲音さん、舞さんも確認できず
 ・日付はキチンと認識してる
 ・異常が見られたアイドル同士はお互いをキチンと認識してる模様

「……これは。なるほど、ははっ。こんなことなんてとんでもない!
 二人とも助かった! おかげで見えてきた!」
「ひゃぁ!?」
「きゃあ!?」

 一通り目を通して思わず二人を抱きしめた。
立場がなければ頬にキスしてやってもいいくらいだ。
これだけわかれば、これさえわかれば十分だ。

「二人に頼みがある。いま無事なアイドル、全員を集めてくれ。
 これから緊急ミーティングだ」

798: 2015/02/25(水) 16:22:58.85 ID:nBSQk3tOo

「は、はい!」

 どたどたとでていく二人。

「……さて、みんなが集まるまでの間に」

 胸ポケットから取り出したるは携帯電話。
前述の通りさして説明する必要のない極普通の携帯だが、
中身は違う。俺がこの業界で培ってきた数多くの人脈への直通電話だ。

「……頼む、みんな誰一人欠ける事無くでてくれよ」

 握って少し意気込む。
向こうの世界のプロデューサーには決して真似できない、
いや向こうだろうがこっちだろうが俺にしか、俺にしか集められない人が居る。

「顔の広さだったらサラリーマン金太郎にだって負けやしねぇ!」

800: 2015/02/25(水) 16:28:07.14 ID:nBSQk3tOo

―――

『もしもーし、菊池真! ただいまニューヨークの地に降り立ちましたよー!』
『四条貴音です。ただいまモスクワに着きました、アナスタシア嬢の先導の元目的地に向かっております』
『秋月涼です! いまブラジリアに……ちょっとあずささん、勝手に……えっと、とりあえず着きました!』
『真美だよ~ん、今北京にとうちゃーく! 今から真美達のソウルを響かせて……え? ソウルは不味い? なんで?』

 次々と報告が上がってくるここは東京、
我らがマスターズプロダクション所有の劇場ドームの裏だ。

「曲セット合わせ早く! 照明と音響の演出もあわせてチェック!」
「モニターチェック! 大丈夫? 繋がってる? タイムラグ考えろよ!」

 数多くの人の怒号がまるで雑踏の様に。

「プロデューサーさん! 伊織達がニューデリーについたそうですよ!」
「あとブエノスアイレス組とウィーン組も到着連絡きました!」
「カイロの雪歩さんチームも到着です。パリは……あと15分位だそうです!!!」
「わかった。……そろそろだな、お前らも準備に入れ! あと愛うるせぇ!」

802: 2015/02/25(水) 18:34:21.33 ID:nBSQk3tOo

―――

 頭がぼーっとしてる。ここはどこだろう。
見たことあるような、ないような。
不思議な感覚のまま天上を見上げる私。

「……渋谷さん、目が覚めましたか?」

 低く男前な声がして、咄嗟に起き上がろうとして
身体が動かず断念。しかたなく顔だけをそちらに向ける。

「……えっと、プロデューサー。だよね?」
「はい」

 眉に皺寄せて見下ろされてる。
けど、心配されてるんだなぁというのがなんとなく伝わってくる。

「えぇっと……なんだっけ、四階のレッスン室で、倒れたんだっけ……?」
「? いえ、送迎中ですが」
「あれ? そうだっけ……?」

 頭がふらつく。まだ万全とは言えない、かな。

「身体の方は異常ないと言っていました」
「ん? あぁ、清良さんか」
「はい?」
「え? ……あれ、清良、さん?」

 あれ? 今口からでたのって……誰?
いや、いやいやいや。誰ってそりゃ、プロデューサーがスカウトしてきて
ナースからアイドルになったという過程においても対愛海においても
早苗さんなみの……。

「ん? んんん?」
「大丈夫ですか渋谷さん。やはり一度キチンと……」
「いや、大丈夫大丈夫」

 整理ができてきた。できてきた。
そっか、もしかしてここは。というかこっちは……私のもう一つの記憶が正しい世界?

804: 2015/02/25(水) 18:50:08.58 ID:nBSQk3tOo

―――

 オーストラリア。ウィーン。
日本で有名なのは少年合唱団とかかな?

「んー、ここがウィーン国立歌劇場かー。まさかこんな所でいきなりステージする事になるとは思わなかったさー」

 世界で最も有名な劇場とも言われるウィーン国立歌劇場。
自分達はいま日本を含めて13カ国同時ステージという
なんかもう馬鹿げてるとしか言いようのない事の為の準備を進めている。
舞台の方はてんやわんやで、ここまで喧騒が届いてくる。


 ――薄く白い手袋を肘までつける。

「思ってたより暖かくないんだね。南だからもっと暖かいと思ってた」

 そう言ったのは芽衣子で「オーストラリアの気候は割りと日本に近いみたいですよ。冬は雪が降って
夏は最高気温30度を超える時もあるそうです」とこんな時でもタブレットを手放さないありすが続く。


 ――普段履かないヒールの靴を履いて、つま先で床を鳴らす。

「今日はみんなと一緒だから、そんなに露出度が高くないみたい……」
「あ、風花さんはこっちの衣装?」
「え、えぇぇぇっ! こんな時でも!?」
「がんばって?」

 ――ピンマイクを通して、マイクチェック。ワントゥー・ワントゥー

「30分後に開幕みたいだぞ。みんな準備はいいか!?」

 プロデューサーの代わりに自分が声をかける。
一瞬でみんなの顔つきが変わる。スイッチが入る。
自分たちはこれから、世界を変えるステージを始める。

「神様がもし居るんなら、神様だって魅了する。いくぞっ!」

 全員の掛け声が、重なる。

805: 2015/02/25(水) 18:55:40.63 ID:nBSQk3tOo

―――

 こっちの世界? 向こうの世界?
あれ、おかしいな、なにを言ってるんだ私は。
そりゃプロデューサーだって病院に行くかと明に暗に言ってくる。

「他のみんなは?」
「本田さん、島村さんを始め皆さんも今は横になってます。
 一度に運べる人数でもないので、お医者さんに来ていただいて」

 なるほど、さっきの医者ってのはそういう事か。
見渡せば確かにソファなりベッドなり適当にみんな転がっている。
杏に至ってはきらりの上で寝てる。なんか親亀こけたら皆こけた、って感じ。

「……あれ?」

 ふと、辺りを見渡す。
自分とプロデューサー以外誰も起きていない。

「いま呼んだ?」
「? ……いえ」
「あれ?」

 また、なにか聞こえた。

「呼んでる」

 と、誰かの声。私じゃない。
私も言おうとしたけど、私じゃない。
呟いたのは……未央?

「誰かが呼んでる」

 また、誰かの声。今度は卯月?
そしてぽつりぽつりと、みんなが呟く。
私も、口にする。

「……行かなきゃ」

806: 2015/02/25(水) 19:04:29.01 ID:nBSQk3tOo

―――

『一人ではできない事』

 歓声が、洪水のみたい。

  ――もっと盛り上がれ。

『仲間とならできること』

 汗がフェイスラインに沿って流れて、雫になって落ちる。

  ――もっともっと盛り上がれ!

『乗り越えられるのは Unity is strength』

 腕を挙げる、足をあげる。声を張り上げる。

  ――もっと私達に注目して!

『空見上げ 手を繋ごう』

 私達にできること、それは。

  ――もっともっと私達に夢中になれ!

『この空は輝いてる 世界中の手をとり』

 最後まで、アイドルで居ること。

  ――私達の世界よ。一つになれ!

『The world is all one! The world is all one! unitymind.』

807: 2015/02/25(水) 19:11:02.10 ID:nBSQk3tOo

―――

「おはよう凛ちゃん。私が誰かわかる?」

 目を瞑って、意識が遠のくと同時に
目を開いて、覚醒した。
私を覗き込む顔も、変わっていて。

「……春香さん」

 私はそうスムーズに答えることができた。

「はい正解。もー、遅いよ。私も愛ちゃんも未来ちゃんも待ちくたびれたよ」

 起き上がる。驚く程簡単に起きれた。
部屋の入り口には愛ちゃん先輩と未来。
部屋の中には同じく起き上がった皆。

「みーんな世界中で暴れてるのに、私達三人だけ凛ちゃん達が起きるの待ちだったんだから。
 ……大丈夫? 状況飲み込めてる?」
「……よくわからないですけど。……とりあえず今は、とにかく歌って踊りたいです」

 春香さんは、満面の笑顔で私の手を引いた。

810: 2015/02/25(水) 19:27:29.65 ID:nBSQk3tOo

―――

「よっ、みんな大丈夫なのか?」

 速攻で着替えて、走った。
劇場の舞台袖に息を切らしてつくとプロデューサーが笑って迎えてくれた。
――私の、『私』の知ってるプロデューサーが。

「あいつらが場を暖めておいてくれたぞ、行って来い」
「あいつら?」
「……あぁ、俺の頼みを聞いて駆けつけてくれた気のいい連中が」

 ステージを見る。立っている人たちを見る。
ジュピター。玲音さん。夢子ちゃん。東郷寺麗華さん。
普段ライバルとしてぶつかる人たちが、
よりにもよってウチの劇場で、踊ってる。
笑顔で、手をとって、ここに私達が来るのを待っていた。

「ほら、行って来い。見せて来い、お前達にしかできない、お前達だけの最高のステージをファンと
 この世界と向こうの世界を一緒くたに考える馬鹿な神様に」
「うん。……行ってきます」

811: 2015/02/25(水) 21:05:28.48 ID:nBSQk3tOo

―――

Thank you for...
つくろう 数えきれないステージ
この場所から

 手を振って、袖から飛び出す。
 ステージに立ってた彼らも、急な呼びかけに集まってくれた観客もこっちを向く。

Morning!
ぱっと飛び起きて「おはよう」
ほら見て ステキな出会いの予感の青い空

 ここ数日まともにレッスンもしてなかった身体は、
 けれど嘘の様に軽くて、手も足も、全身が羽根みたい。

Calling!
メッセージ メンバーから「頑張ろう!」
ドキわく 鳴り出す はじまりのベル

 そして客席の裏、大きなモニターが幾つも光ってる。

みんなでつくったの 遅くまで残って
手作りの「ぶどーかん」 看板は虹色
呼ぶよ みんなを さあ おいでよ Let's sing together!

 そこには、この場に居ない私の知ってる沢山のアイドル達の姿が映ってる。

Thank you for... ようこそ 私たちのステージ
この情熱 とめられない! コール 響け
小さくても 愛と工夫でジョーデキ! 汗が弾け 笑顔咲かそう
きらめく出会いをありがとう

 輝いてる。みんな輝いてるよ。私も、私達も、輝いてる?


Growing! きっと 叶えたい この夢
今日は ちょっと近づいた 小さなキセキの日曜日

 初めてこの劇場に入ったとき、なんて大きいんだろうって思ったよ。

Showing! もっと「らしさ」をアピール
衣装 いいっしょ? お揃いでも個性バッチリ

 でも、いまはこんなにも狭く感じる。不思議。

舞台の裏側で 熱気を感じたら
マイクを握りしめ 目と目で合図した
名前 呼ばれ 今 飛び出す Dance with delight!

 感じる。モニターなんてなくても、みんな一緒になってる。心が繋がってるよ。

812: 2015/02/25(水) 21:09:13.79 ID:nBSQk3tOo

Thank you for... つくろう 忘れられないステージ
この衝動 とめられない! クラップ 鳴らせ

 ねぇ。

後ろまでも ちゃんと見えているからね こぶし上げて 声を張って
ときめく舞台をありがとう

 ねぇ、神様見てる?

大好きだ 忘れない いつまでも この瞬間 この胸の アルバムに残そう
歌おう 踊ろう はしゃごう もっと ずっと!

 向こうの私見てる? その道を進んでいればこんなに景色が見れるんだよ?

胸の奥に響く みんなの呼ぶ声に
もう一度 飛び出そう All right! Let's sing together!

 私が、私達が歩んできた道。

Thank you for... 届け ありったけのステージ
この感動 とめられない! ジャンプ 高く

 貴女が、貴女達がこれから歩む道。

虹色の光が つないでくれた 涙ふいて 笑顔咲かそう
輝く時間をありがとう

 お願い神様、私達の歩んできた道を無かったことにしないで。

Thank you for my dears!

 お願い神様、『私』達がこれから歩む道を奪わないで。

汗が弾け 笑顔咲かそう
きらめく出会いを……

『せーのっ!』

 ――お願いします。

『ありがとう!』

813: 2015/02/25(水) 21:21:06.87 ID:nBSQk3tOo

―――

「いやぁ、たまげたぜ。いきなりおっさんに呼ばれたと思ったら何も聞かず
 早急にあのへっぽこの所に行って来いだもんな」
「あはは、でも冬馬君ってばなんだかんだいの一番に向かって『なんかあったのかっ!?』って優しいよねぇ」
「うっせぇぞ翔太! あいつには色々借りがあるからな……」
「ふふっ、しかし実際アタシもこんなメンバーでステージに立つとは思って無かったよ。
 彼の顔の広さというか、彼の人望というかを見せられた。ね、東郷寺さん」
「はぁ? アタシはジュピターや玲音と違ってビジネスで来ただけ。あんな奴しらねっつの」
「よく言うわよ。事務所前でタクシーから降りてる時はそんな風には見えなかったけど」
「あん? 適当な事言ってんなよ夢子。潰すぞ」
「そういうのやめたんじゃなかったの?」

 ステージが終わり、幕が降りた。
控え室には普段の仕事ならまず見ることはない面々が一様に顔を合わせて談笑をしている。

「……くく、助手よ。君はやはり面白い」

 段々と険悪になっているのか、はたまた喧嘩するほどなのか。
仲裁に入るか否か悩んでいるとスポーツドリンクを片手に晶葉が笑いながらよって来た。

「まさかこんな手段を取るとはね、いや、逆に君らしいのか。
 世界が一つにまとめられない為の手段に世界を一つにまとめようとは、ね」

 夢子と麗華が額を突き合わせにらみ合ってるのを横目に俺は笑って返す。

「核よりもでかい、俺に用意できる最大の爆弾だ。大成功だったろ?」

816: 2015/02/25(水) 22:29:13.96 ID:nBSQk3tOo

―――

 目が覚めた。……うん、私はこの短時間で何度この表現を使ったんだろう?
そろそろこの入り方は飽きたとか言われそうだけど、
ま、これが多分最後だから許してよ。

「……おはよ」

 見ればどうやら私が最後だったみたい。
さっきまで寝転んでいたみんなもとっくに三々五々起き上がって、
好き勝手なことをしてる。ううん、よく聞いてみればみんな同じだった。
同じ、あのステージの事を話してる。

「おはようしぶりん」
「凛ちゃん、おはよう」
「おはよう。未央、卯月」

 寝たり起きたりを繰り返してるからか、二人とも髪がぼさぼさ。
多分私も似たようなものだろう。鏡を見るのが怖いけど、
いまは二人の姿をみてくすりと笑みがこぼれる。

「あっ!? 笑ったなー! しぶりんだって大爆発の癖に!」
「やっぱり? あはは、参っちゃうね」

 けらけらと三人して笑っていると、
神妙な面持ちでプロデューサーがやってくる。

「やっほ、プロデューサー。どしたの? 浮かない顔して」
「いえ……」

 そっか、プロデューサーだけが何が起きたのかわかってないのか。

「心配しないでいいよプロデューサー」
「うんうん! 私達みーんな、夢を見てただけだからさ!」
「はい、みんなで同じ夢を見てただけです」
「夢……ですか?」

 示し合わせたかのように、三人で返すとプロデューサーは不思議そうな顔をする。
そんな顔もできるんだ、なんて。

「待っててね、いつか必ず。あれ以上のステージを魅せてあげるから」 

817: 2015/02/25(水) 22:32:15.34 ID:nBSQk3tOo
とかなんとか、ミスを重ねながら長い時間をかけて尻つぼみに終わり

本当はもっと色々脳内にはあったんだけど俺に画力があればと思わずにはいられない
絵に、絵にできればもっと伝えられるのに……


ま、そんな感じで構想30分実作業時間数日の長編が終わったのでまた普通に台本に戻るよー
今月中にこのスレを終わらせようという俺の目標は達成できそうにないけどな!

818: 2015/02/25(水) 22:35:14.60 ID:1Olzb0fQo
乙、346プロもこのスケールの大きさには敵いませんなあ
一応先輩なんだし次元超えて武内PがここのPに相談しに来たりして

819: 2015/02/25(水) 22:58:21.04 ID:EprjuJsUo
乙乙
すっごい分かるわ、限られた立ち絵で物語を作るような苦悩感
楽曲はちょいちょい出てるけどアイドル達が曲についてわいわい話すのとか見てみたい

引用: 総合P「過労死しそうにない」