1: 2016/04/07(木)20:42:24 ID:bvD
コナンとサイコパスのクロスSSです。
原作の設定とは少し違いますし、矛盾点もあると思いますがSSなのでご勘弁を。
質問は終了後に答えますね。

3: 2016/04/07(木)20:44:12 ID:bvD
???「どこかの誰かが、愚かな人類だと言ったとして、その人類には当然、自分自身が含まれている」

???「人間について知りたいと思ったら、人間を見ているだけじゃいけない…人間が何を見ているのかに注目しなくては」

???「お前は何を見ている?」

???「俺はお前を見ている」

???「信じられないかも知れないが、俺はお前のことが好きだ」

???「昔からよく言うだろ?愛の反対は憎悪じゃなく、無関心だって」

???「興味が無いんなら、わざわざ頃したり、痛めつけたりしないんだ」

???「…余計なことばかり考える。緊張してるのか?」

???「相手を甘く見すぎて…踏み込み過ぎた」

???「なんてな」

5: 2016/04/07(木)20:46:05 ID:bvD
人間の心理状態や性格的傾向を測定し、数値化できるようになった世界。
あらゆる心理傾向がすべて記録、管理される中、個人の魂の判定基準となったこの計測値を人々は「サイコパス(PSYCHO-PASS)」の俗称で呼び習わした。
犯罪係数が規定値を超えれば、「潜在犯」として逮捕、隔離される。
潜在犯の摘発と登録住民のメンタルケアを行うのは、厚生省の巨大監視ネットワーク
「シビュラシステム」

6: 2016/04/07(木)20:47:03 ID:bvD
博士「できたぞみんな!ドミネーターじゃ!」

昼下がりの阿笠邸。
遊びに来ていたコナンと、少年探偵団の面々。
そして灰原を相手に博士が叫んだ。

歩美「わー!すごーい!」

光彦「さすが博士!たった2時間で作るなんて!」

元太「かっけー!」

光彦がドミネーターの話をすると、少年探偵団は博士にドミネーターをねだった。
その要望に応え、博士は2時間ほど前からドミネーターを作っていた。
その完成度の高さに、興奮する歩美たち。

7: 2016/04/07(木)20:48:08 ID:bvD
灰原「ずいぶんリアルね」

コナン「ん?でも少し小さいな…おもちゃだからか?」

博士「おもちゃ?バカ言え」

博士「この天才発明家、阿笠博士がおもちゃ作りに2時間も費やすはずなかろう」

博士「これは本物のドミネーターじゃ!」

コナン「は?」

灰原「え?]

8: 2016/04/07(木)20:48:26 ID:bvD
ドミネーター。
正式名称は、携帯型心理診断鎮圧執行システム。
刑事のみが持つことを許される、最新型の銃。
民間人は触れることもかなわないはずだが…

博士「子ども用にサイズダウンし、軽量化したんじゃ!」

博士「デコンポーザーが2発しか撃てなくなったがな!」

コナン「何考えてんだバーロー!銃刀法違反だぞ!」

博士「こんなに小さいドミネーターは無いし、これに似たおもちゃは各メーカーからも発売されておる」

博士「誰がこれを本物のドミネーターだと思うんじゃ?」

灰原「それはそうだけど…」

10: 2016/04/07(木)20:49:51 ID:bvD
博士「仮に凶悪犯が襲ってきたとしてもじゃ」

博士「ドミネーターがあればパラライザーモードで身を守ることができる」

ドミネーターには3つのモードがある。

ノンリーサル・パラライザー。
犯罪係数100以上の対象に使用する麻酔銃。
強力な電気ショック銃のようなもので、1発撃てば気絶する。
対象が薬物などで興奮していると効果が無い。

リーサル・エリミネーター
犯罪係数300以上の対象に使用する殺人銃。
高レベルのマイクロ波を照射することにより、対象内の水分を沸騰、蒸発させ、内部で水蒸気爆発を起こす。
このモードで撃たれた対象は、内側から膨張、破裂して氏亡してしまう。
マイクロ波の性質上、対象との間に金属製の物があると届かない。

デストロイ・デコンポーザー
爆弾、銃、強力なドローンなどの武器に対して使用する分子分解銃。
鉄であろうと分子レベルまで分解することができる。
フル充電で3発までしか撃てない。

11: 2016/04/07(木)20:50:21 ID:bvD
灰原「身を守るって…撃つのはまずいでしょう…」

灰原「これで潜在犯を撃てば、こっちだって捕まるわよ」

博士「うっ…それは…」

光彦「大丈夫ですよ灰原さん!潜在犯が米花町にいるわけないですよ!」

コナン (ハハ…)

元太「おい博士!誰かにこれ向けてみようぜ!」

歩美「じゃあ博士!」スッ

ドミネーター「犯罪係数52 執行対象ではありません トリガーをロックします」

歩美「52だって!博士の歳とおんなじだ!」

元太「あれ?何も聞こえなかったぞ?」

12: 2016/04/07(木)20:50:51 ID:bvD
博士「音声は指向性じゃから、ドミネーターを向けた本人にしか聞こえないんじゃよ」

歩美「へえー」

灰原「じゃあ江戸川君はいくつなのかしら?」スッ

コナン「おいおい…」

ドミネーター「…」

灰原「博士?江戸川君が認識できないわよ?」

コナン「え?」

博士「ふむ…まだ未完成ということか…」

元太「でもよお博士!これかっこいいから持って帰っていいよな?」

博士「ああ、かまわんぞ。持って行きなさい」

歩美「やったー!」

13: 2016/04/07(木)20:51:36 ID:bvD
帰宅するコナン。
コナンは、幼馴染の毛利蘭の実家である、毛利探偵事務所に居候している。
蘭の父である小五郎が不機嫌なところを見ると、今日も依頼人が来なかったのだろう。
もしくは競馬の予想が外れたのだろうか。

コナン「ただいまー」

蘭「あ、おかえりコナン君!」

小五郎「あん?なんだそれ?ドミネーターのおもちゃか」

コナン「うん、博士が作ってくれたんだ」

小五郎「ったく…あんな喋る銃の何がいいんだ?」

小五郎「一昔前の刑事みたいに、普通の銃でいいじゃねえかよ」

コナン (おっちゃん、もしかして刑事を辞める理由…)

コナン (ドミネーターが気に食わなかったからってのもあったりしてな…)

コナン (おばさんを盾に使った犯人に当てようとドミネーターを投げたけど、それがおばさんに当たっちまって)

コナン (犯人は捕まえたものの、おばさんにケガを負わせたことが問題になって)

コナン (それで刑事を辞めることになったんだっけ)

コナン (人を盾に使われれば、ドミネーターは文鎮の代わりにしかならねえからな)

14: 2016/04/07(木)20:52:03 ID:bvD
蘭「いいなあ…私も公安局入りたいな」

小五郎「やめとけやめとけ。刑事なんてロクなもんじゃねえよ」

蘭「もー!お父さん!」

コナン「はは…じゃあボク、晩ご飯まで宿題やってくるよ」

コナン (蘭が刑事ねえ…ドミネーターいらないんじゃねえか)

15: 2016/04/07(木)20:54:55 ID:bvD
コナン (このドミネーターもどきをいじってるのはつまんねえし、ネットでも見るか)

コナン (なんか面白いニュースは…)

・クローン技術確立?「動く氏体」と批判の声
・新型ドミネーター登場 壁越しに撃てる強襲型
・ナイトバロン 次回作の構想
・比護選手 お酒はマティーニが好き
・厚生省ノナタワー 職員のおそろいファッション
・全身サイボーグ化の先駆者 鈴木次郎吉氏インタビュー

16: 2016/04/07(木)20:55:10 ID:bvD
コナン (おっ、ナイトバロンの次回作か)

コナン (ゆっくり執筆する時間ができたのかな?…どれどれ)

コナン (タイトルは「銀の弾丸(シルバーブレット)」で、悪の組織に立ち向かう少年が主人公)

コナン (少年は高校生だったが、組織の手によって小学生の姿に戻ってしまった)

コナン (まんま俺のことじゃねえかバーロー!)

18: 2016/04/07(木)20:55:49 ID:bvD
コナン (ふざけた親父のことは飯食って忘れよう)モグモグ

蘭「お父さん、明日は休日だし、私ショッピング行ってくるよ」

小五郎「おう、俺はもちろんパチンコだ」

コナン (こっちの親父もふざけてやがるな…)ハハ

蘭「コナンくんは何か用事ある?」

コナン「うーん…特に無いから博士の家に行ってくるよ」

19: 2016/04/07(木)20:56:12 ID:bvD
翌日、小五郎は行きつけのパチンコ店へと急いでいた。
よく出る台のことを考えなから歩く。
勝つために何をすればいいのか、勝った場合どうするか、負けた場合はどうするか。
そんな思考が自然と口に出てしまう。

小五郎「あのパチンコ店…」

小五郎「ヤツは金さえ出せばいい結果をくれる…」

小五郎「問題はダメだった時のことだが…」

小五郎「それはいわば悪魔との取引…気をつけねえとな…」

20: 2016/04/07(木)20:56:32 ID:bvD
毛利探偵事務所から約500mの位置。
黒塗りのポルシェ356Aが止まっていた。
ジンの愛車である。
今日はウォッカの姿は無く、ジン1人のみが何者かと電話をしている。

ジン「盗聴器から思わぬ情報が入りました」

ジン「毛利小五郎はパチンコ店で何かしらの取引をする模様」

ジン「ええ、毛利小五郎の協力者と思われます」

ジン「もちろん…疑わしきは罰せよが組織のやり方です」

ジン「当然バラします」

ジン「ボス」

22: 2016/04/07(木)20:57:05 ID:bvD
米花デパート。
蘭が一人でショッピングを楽しんでいる。
園子は京極とのデートに行っているので、今日は蘭だけだ。

蘭「あ!この服かわいー!」

蘭 (新一は…こういうの好きかな?)

蘭「って!なんであんな奴のことなんか考えてるのよ!」

蘭「私は!あんな奴!どうでもいいんだから!」ビリィ

蘭「早く帰ってきなさいよ新一いいいいいいいい!」ビリビリビリィ

店員「あ、あのお客様…その破いた服は買い取っていただきますよ…?」

蘭「あっ…」

23: 2016/04/07(木)20:57:44 ID:bvD
阿笠邸

今日は少年探偵団は来ていないので、コナンと灰原、そして博士の3人だけである。

コナン「で?このドミネーターのようなものが俺を認識しない理由はわかったのか?」

博士「いや…まだよくわからないんじゃよ」

コナン「博士の作ってくれた、この色相診断メカ…これは大丈夫なんだろうな?」

コナン「俺いつもこれ使ってるんだけど…」

博士「安心せい、それは絶対に大丈夫じゃ」

コナン「ならいいけどよ…ん?」

アナウンサー「本日は全身サイボーグ化の先駆者、鈴木財閥の相談役」

アナウンサー「鈴木次郎吉さんにお越しいただきました」

次郎吉「儂が鈴木次郎吉じゃ、よろしく頼むぞ!」アッアッアッ

24: 2016/04/07(木)20:58:03 ID:bvD
アナウンサー「義手・義足の高性能化が進み、ホログラム装飾の効果もあってか、医療目的のサイボーグ技術は私たちの生活にすっかり馴染んだものとなりました」

アナウンサー「しかし、鈴木相談役のように脳と神経系以外全てをサイボーグ化した例はまだまだ珍しいものです」

次郎吉「不思議なんじゃよ…なぜこんな不自由な肉体を捨ててしまわないのかがのお…」

次郎吉「プラトンは「肉体は魂の牢獄」と言ったじゃろう?」

次郎吉「儂は70を超えておる。じゃが人生はますます楽しみを増しておる…」

次郎吉「老いを克服することがこれほどまでに幸福なことじゃとは…機械の体を受け入れん限りは理解できんじゃろう」

アナウンサー「しかし最新の技術をもってしても、脳の寿命は150年程度とされています」

アナウンサー「脳の完全な機械化はまだまだクリア出来ていない問題が山積みとか…」

次郎吉「限界まで酷使すれば、まだまだ儂の脳には余裕がある」

次郎吉「その間にブレイクスルーが起きることを期待するとするかのう」

アナウンサー「もしもそれが起きたとしたら…」

次郎吉「左様」

次郎吉「不氏の時代の到来じゃよ」

25: 2016/04/07(木)20:59:01 ID:bvD
コナン「元気だねえこのジイさん…」

灰原「サイボーグ?最近の科学の進歩は凄まじいわね」

コナン「このスマホだって去年は無かったもんな」

灰原「科学者たちの努力の賜物ね」

コナン「どっかの博士も見習ってほしいもんだぜ…」

博士「はは…」

26: 2016/04/07(木)20:59:22 ID:bvD
どこかの暗がりの中、黒い影が1つ。
黒の組織の一員、千の顔を持つ魔女ベルモット。
電話で誰かと話しているようだ。

???「今終わったよ。全ての準備が整った」

ベルモット「あのボウヤ…本当に来るかしら?」

???「来るに決まってるだろ?」

???「あの餌を使えば、すぐに食いつくさ」

???「まあ本当の使い時はここじゃないけどな」

ベルモット「まったく…情のカケラも無いのねあなたは」

ベルモット「息子が悲しむかもしれないじゃない」

???「情ねえ…俺はあいつとは違うんだよ」

27: 2016/04/07(木)20:59:41 ID:bvD
ベルモット「ふふっ…まあ、あなたはただゲームを見ていればいいわ」

ベルモット「あのボウヤを始末するのはラムだもの」

ベルモット「彼、『腕が鳴るのう!このラムの力を見せてやるわい!』って張り切ってたわよ」

???「あのジイさん…年いくつだよ…」

ベルモット「仕方ないわ。獲物が最高級品なんだもの」

ベルモット「そうでしょう?ボス」

30: 2016/04/07(木)21:01:15 ID:bvD
小五郎の行きつけのパチンコ店。
騒がしいBGM、陽気な客引きの声、男性客の怒号が混ざり合い、とても耳障りな音が耳を襲う。
もっとも、小五郎にとっては心地よい音のようだが。

小五郎「やっぱパチンコ店はこうじゃねえとなあ」

小五郎「さて、例の台は…おっ!空いてるじゃねえか!」

小五郎「さあ、パチンコ大王毛利小五郎の腕を見せてやるぜ!」

入り口のすぐ近くにある当たりの台に小五郎が座ってから約5分。
どう見てもこの店には似合わない、黒服の男が入店した。

ジン「おいそこの店員、シャッターを閉めろ」

店員「は?あんた何を…」

ジン「聞こえなかったか?シャッターを閉めろ」チャッ

ジンが懐から拳銃を取り出す。
マフィアを彷彿させるジンの服装、そして冷たいジンの目から、それが本物であることは理解できた。

31: 2016/04/07(木)21:01:37 ID:bvD
客「あん?誰だあいつ?なんでシャッターなんか閉めるんだ?」

小五郎「おいおい…まさか立てこもり事件でも起こす気か?パチンコ店で」

ジン「フン…とぼけるのもいい加減にしろ」

ジン「以前話した時も白々しい嘘をガキにつかせていたな…何が競馬中継だ」

小五郎「なんだてめえ?この名探偵毛利小五郎様に何の用だ?」

32: 2016/04/07(木)21:02:21 ID:bvD
ジン「用か…聞きたいことなら山ほどある」

ジン「お前とシェリーの関係…あの方が気にかけていた江戸川コナンというガキのこと…」

小五郎 (コナン…?)

ジン「だが今は任務遂行が優先事項だ」

ジン「この店にいるお前の協力者、そしてそいつとの取引の内容…」

ジン「吐いてもらうぞ…毛利小五郎!」

小五郎 (何言ってんだこいつ)

34: 2016/04/07(木)21:02:52 ID:bvD
小五郎「どこで俺やコナンのことを調べ上げたのか知らねえが…いい加減にしねえと色相濁るぞ?」

店員 (つ、通報だ…早くしないと!)

ジン「とぼけるな毛利小五郎。前回はしてやれたが…今回は逃がさんぞ」

ジン「お前が吐かないというのなら、この店の客を頃す」

小五郎「けっ、くだらねえ…やれるもんならやってみろよ」

ジン「ああ、そうだな」バン

客「ぎっ」

客「」バタン

小五郎「!」

35: 2016/04/07(木)21:03:17 ID:bvD
客2「うっ…」

客たち「うわああああああああああ!」

小五郎「お前…正気か?」

ジン「毛利小五郎。この男はお前のせいで氏んだ」

ジン「どうだ?自らの無能で人が氏ぬ気分は」

小五郎「…何が目的だ」

ジン「言ったろう。この店にいるお前の協力者と、取引の内容を言え」

小五郎「そんな奴はいない!」

ジン「…」バン

客2「」バタン

小五郎「なっ…」

小五郎 (なんだこれは…こんな簡単に…)

客3「ひっ…う…ああああああああああ!」

ジン「黙れ」バン

客3「あ」バタン

小五郎 (なんなんだこいつは…)

36: 2016/04/07(木)21:03:38 ID:bvD
小五郎「てめえ!」

小五郎がジンに飛びかかる。
拳銃を蹴り飛ばし、そのまま服に掴みかかる。
一本背負いでジンを投げ飛ばそうとしたのだ。
だが…

小五郎 (なっ…重い!?)

ジン「お前は大人しく吐けばいい…それだけのことだというのに」

ジン「なぜ刃向かう!」バキッ

小五郎「ぐっ!?」

ジンが小五郎の顔面を殴打する。
たまらず倒れる小五郎。

小五郎「化け…物…め…」

ジン「さあ吐け。これ以上俺を怒らせるな」

37: 2016/04/07(木)21:04:01 ID:bvD
小五郎「お前は…勘違いをしている…」

小五郎「協力者など…取引など…俺はただパチンコに…」

ジン「…まだわからないか」

ジンが小五郎の頭を掴んだ。

小五郎「な…何を…」

ジン「フンッ!」グァシャアアアアアアアン

そのまま小五郎の頭を、パチンコ台に叩きつける。
ガラスが割れ、小五郎の頭に突き刺さる。

小五郎「が…」

ジン「寝ている場合ではないぞ毛利小五郎」

小五郎「う…あ…」

ジン「客を頃して待つ」バンバンバン

客4「う゛っ」バタン

客5「ん゙っ」バタン

店員「ごっ」バタン

店長「ひっ…あああああああああ!」

ジン「黙れ」バン

店長「ぶっ」バタン

小五郎 (どうすれば…)

38: 2016/04/07(木)21:04:33 ID:bvD
目暮「ここか…通報のあったパチンコ店は」

高木「黒服に長髪の男が立てこもっています」

佐藤「男は拳銃を所持」

千葉「通報者によると、既に1人が射殺されたとのことです」

目暮「エリアストレス上昇特別警報が発令されている」

目暮「店の中は潜在犯だらけだろう」

目暮「ドミネーターで犯罪係数を測定し、規定値以上だった対象は迷わず撃て」

39: 2016/04/07(木)21:05:30 ID:bvD
ジン「さて…そろそろ吐く気になったか?」

小五郎「う…」

ジン「ちっ…予想以上にダメージが大きかったのか…」

ジン「まあいい…こうなればこいつらを全員頃した後で毛利小五郎を連れて帰って…む?」

店の電灯がすべて消え、暗闇が訪れた。
犯人を動かさないため、公安が意図的に停電を起こしたのだ。

ジン「サツめ…くだらん真似を…」

41: 2016/04/07(木)21:07:00 ID:bvD
ジンの背後で、小五郎がゆらりと立ちあがった。
ガラスの破片を拾い、ジンに襲い掛かった。

小五郎「俺は…刑事…」

小五郎「うおおおおおおおお!」ズサッ

ジン「!くっ…!」

顔面をガラスで切られるジン。
銃を発砲するが、小五郎の居場所がわからない。

小五郎 (こいつは犯罪者…俺は間違ってない!)

42: 2016/04/07(木)21:07:27 ID:bvD
小五郎「人と法を守るため」ボコッ

小五郎「俺はお前を」ボコボコボコボコボコ

ブシャッ

体中の水分が沸騰し、小五郎の体が爆散した。

44: 2016/04/07(木)21:08:01 ID:bvD
佐藤「壁越しに撃った…あれが強襲型ドミネーター…」

目暮「高木、撃ったのは犯人で間違いないな?」

高木「わかりません。犯罪係数の高いほうを撃ちました」

高木「シャッターの付近には2名おり、1人は犯罪係数343、もう1人は32でした」

目暮「そうか…343のほうが犯人で間違いないだろう」

45: 2016/04/07(木)21:08:56 ID:bvD
小五郎の血液を体中に浴びた客たちは、半狂乱でシャッターを開け、外に飛び出した。
ジンは客たちを追うことはせず、裏口から平然と出ていく。

ジン (エリアストレス上昇特別警報…他の奴の犯罪係数は、全員300を超えているだろう)

ジン (協力者もろとも、公安が片付けて…いや、散らかしてくれるはずだ)

警官1「ん?なんだお前は…え?」

ジン「騒ぐな」バンバンバン

裏口には数名の警官が張り込んでいたが、顔を見られたので全員射頃した。
そう、この顔を見られてはいけなかったのだ。

46: 2016/04/07(木)21:09:18 ID:bvD
店員2「うわあああああああああ!」

客6「助けてええええええ!」

客7「俺たちは被害者だ!」

ドミネーター「犯罪係数324 執行対象です 執行モード リーサル・エリミネーター」

千葉「なんだ!?この数値!」

目暮「全員執行対象だ!逃がすな!」

店員2「ああああああああああ!」ボコッ

客6「嫌あああああああああ!」ボコボコボコ

客7「あっ」ブシャッ

47: 2016/04/07(木)21:09:34 ID:bvD
パチンコ店の惨劇と時を同じくして、コナンの携帯に1通のメールが届いた。
そのメールには…

博士「新一…これは…」
コナン「…」

親愛なる江戸川コナン様へ。
あなたの愛するエンジェルは我が手中にあり。
助けたくば、あなた1人で狩り場へ参られよ。
闇の男爵より

灰原「この画像…どう見ても…」

コナン「…蘭」

両手を縛られ眠らされた、毛利蘭の画像が添付されていた。

48: 2016/04/07(木)21:09:48 ID:bvD
コナン「博士と灰原は、いつまで経っても俺が戻らないようなら公安に連絡してくれ」

博士「待て!危険じゃ新一!」

コナン「このメールには、俺だけで来いと書いてある」

コナン「それに考えてみろ…あの蘭を捕らえられる奴がそうホイホイいると思うか?」

コナン「親愛なる江戸川コナン様という文面、闇の男爵…これらを繋ぎ合わせて推理すれば」

コナン「犯人はベルモット…黒の組織ってわけだ」

博士「なっ…!」

49: 2016/04/07(木)21:10:08 ID:bvD
灰原「そういえば…ハロウィンパーティの時、ベルモットが彼女のことをこう呼んでたわ…」

灰原「エンジェルって…」

コナン「ベルモット単独で蘭を拉致できるとは思えねえ…仲間がいるはずだ」

コナン「そうなると、誰かと一緒に行くより俺一人で行った方が安全だろう」

博士「…新一、ドミネーターを持って行け」

博士「麻酔銃よりは役に立つじゃろう」

コナン「ああ…わかってるよ」

50: 2016/04/07(木)21:10:37 ID:bvD
全ての潜在犯を排除し終わった目暮たち。
結局、パチンコ店にいたジン以外の全員が氏亡してしまった。
そんな中目暮たちは

高木「こ、この趣味の悪い金色の名刺は…」

佐藤「そんな…これって…」

千葉「毛利…小五郎…」

目暮「バカな…嘘だろう…?毛利くん…」

より犯罪係数の高いほう。
それこそが犯人に違いない。
そう信じて撃った相手こそが、信頼する名探偵、毛利小五郎であったと知ったのであった。

51: 2016/04/07(木)21:10:54 ID:bvD
ウォッカ「もしもし。兄貴ですか?」

ジン「ウォッカか。そっちはどうだ?」

ウォッカ「キャンティとコルンが頭と背中を撃ったらおっ氏んじまいましたぜ」

ジン「よし、撤収しろ」

ジン「もう奴は用済み…組織の秘密を話される前に殺るのが一番だ」

ウォッカ「あのババアとマティーニはどうするんです?」

ジン「ババアは後で頃すが…マティーニを頃すのは、奴が組織を裏切ったらだ」

ジン「マティーニにはまだ利用価値がある」

52: 2016/04/07(木)21:11:06 ID:bvD
米花町の町はずれにある廃墟。
メールには、ここに来るよう書かれていた。

コナン「ここの地下か…ちくしょう、寒気が止まんねえぜ…」

廃墟の階段を下りたコナンの目に飛び込んできたのは、椅子に座り、目隠しをされ、縛られた蘭の姿だった。

コナン「ら…蘭!おい蘭!しっかりしろ!」

蘭「ん…ここは…」

コナン「蘭!よかった…!」

蘭「コナンくん…?」

53: 2016/04/07(木)21:11:40 ID:bvD
コナン「あ、うん!ボクだよ蘭姉ちゃん」

コナン「大丈夫?蘭姉ちゃん、連れ去られたんだよ?」

蘭「え…じゃああれは偽物…?」

コナン「あれって?」

蘭「私、デパートで偶然新一に会ったの」

コナン「え?」

蘭「それで嬉しくて抱きついて…そこから覚えてない…」

蘭「たぶん薬か何か打たれたのね…」

コナン (ベルモットの変装か…?ふざけたことしやがって…!)

54: 2016/04/07(木)21:11:54 ID:bvD
コナン「とにかくここから出よう!ボクが来た道を…」

蘭「でもコナンくん…あの張り紙…」

このまま進め。
戻れば氏が待っている。

コナン「…進むしかないってわけだね」

55: 2016/04/07(木)21:12:10 ID:bvD
コナン「なんだ…ここ…?」

張り紙の指示通り進んだコナンと蘭。
その先にあったのは

蘭「まるでゲームのステージね」

コナン (ここで何をやらせるつもりだ…ベルモット!)

56: 2016/04/07(木)21:12:26 ID:bvD
スマホから声が聞こえている。
どうやら組織のボスが、スマホを通して話しているようだ。
ここの様子は、監視カメラで確認しているらしい。

???「おっ、来た来た」

???「ベルモットの力を借りたけど…餌を使ったのは正解だったな」

???「あいつの力がどんなもんか、見せてもらうとするか」

???「頼んだぞ。ラム」

次郎吉「…ここまでは汝の予定通りじゃな」

ボスと話していたのは
鈴木財閥相談役、鈴木次郎吉であった。
その右目には、ラムのトレードマークである、わかりやすいアナログな義眼がはめ込まれている。

57: 2016/04/07(木)21:12:49 ID:bvD
次郎吉「狩りというものは、獲物が賢いほど楽しくなるもの」

次郎吉「あの小わっぱは最高の獲物と言えよう」

次郎吉「汝とベルモット、そしてマティーニに感謝せねばな」

???「いいねえ。客席からも見物しがいのあるゲームになりそうだ」

次郎吉「汝もたまには参加したらどうじゃ?」

???「俺はここで起こる出来事そのものに興味があるんでね」

???「第三者の視点で観察するのが一番だよ」
???「それにこの後、本部で仕事もあることだしな」

次郎吉「ああ…毛利蘭じゃな」

次郎吉「ならば見ておれ。このラムの、狩りの腕をな」

???「その体なら十分動ける。思う存分遊んで来いよ」

???「くれぐれも毛利蘭は狙わないようにな」

58: 2016/04/07(木)21:13:30 ID:bvD
コナン「ん?バッグ?」

蘭「中身は…ペットボトルの水に…ケミカルライト?」

コナン「攻略アイテムだね…ますますゲームらしくなってきた」

蘭「普通のライトのほうがよくない?」

コナン「暗闇の中で光源を持ってれば格好の的だよ。だから腕時計のライトを使わなかったんだ」

コナン「それにこれなら、一度通った道の目印にもなる」

59: 2016/04/07(木)21:13:47 ID:bvD
蘭「コナンくん…ここ、ゴールとかあると思う?」

コナン「さあ…でもこれがゲームなら、そろそろ敵が出てきそうなもんだけど…」

そのコナンの言葉を待っていたかのように、角から機械仕掛けの犬が飛び出してきた。
次郎吉の飼い犬であるルパンが氏んだので、代わりに作ったロボットである。
当然、名はルパンだ。

コナン「うわっ!犬!?」

コナン (速い…!デコンポーザーは間に合わないか…)

蘭「きゃっ!」

コナン「逃げるよ蘭姉ちゃん!」

蘭の手を引いて、コナンがルパンから逃げようと走る。
ルパンは追ってはくるものの、攻撃する気配は無い。

60: 2016/04/07(木)21:13:59 ID:bvD
コナンは階段を登り、蘭の背後にいるルパンに向けてドミネーターを向ける。

蘭「!」

ドミネーター「対象の脅威判定が更新されました 執行モード デストロイ・デコンポーザー 対象を完全排除します ご注意ください」

ドミネーターが分子分解銃に変形し、ルパンを撃つ。
ルパンは避けることもできず、破壊されてしまった。

コナン「やった…!」

61: 2016/04/07(木)21:14:12 ID:bvD
その様子を遠くから眺めていた次郎吉。
楽しげな表情で電話をしている。

次郎吉「ルパンがやられたか」

次郎吉「ドミネーターじゃな。流石にやるのう…」アッアッアッ

???「今回はゲームじゃ済まないぞ?怖けりゃ逃げてもいいけど」

次郎吉「抜かせ!」

次郎吉「まだルパン2世とルパン3世がおる」

次郎吉「儂もそろそろ出ていくとするかのう」

62: 2016/04/07(木)21:14:59 ID:bvD
コナン (デコンポーザーは後2発しか撃てない…)

コナン (ロボットが3体以上襲ってきたらヤバいな…)

蘭「コナンくん…私…怖いよ…」

蘭「なんでこんなことに巻き込まれなきゃいけないの…」

蘭「なんで…」

コナン「蘭姉ちゃん…」

63: 2016/04/07(木)21:15:21 ID:bvD
うずくまって泣く蘭の背後から、機械の鳥が姿を現した。
ルパン2世である。

コナン「!蘭姉ちゃん伏せて!」

難なくデコンポーザーでルパン2世を消滅させる。
だが…
コナン「!?ぐっ…」

背後から襲って来たサル型ロボット、ルパン3世により左腕を負傷してしまった。

蘭「コナンくん!」

コナン (やっぱサルってのは…ロクなのいねえな!)

ルパン3世にドミネーターを向けるコナン。
だが、全く反応しない。

65: 2016/04/07(木)21:15:34 ID:bvD
コナン「え?」

困惑するコナンに更なる追撃を加えんと、ルパン3世が飛びかかる。
コナンはそれを間一髪かわし、蘭を連れて逃げる。

コナン (くそっ…今の今まで忘れてたぜ…)

コナン (このポンコツドミネーター、デコンポーザーは2発までしか撃てねえんだ!)

蘭「コナンくん!前!」

コナン「うわっ!これって…」

天井から吊られているのは、多くの針がついた罠だ。
おそらく何かが下を通れば落下するタイプだろう。
これが落ちてくれば即氏だ。

コナン「…蘭姉ちゃん、ボクが合図したら…」

66: 2016/04/07(木)21:15:49 ID:bvD
ルパン3世がコナンたちに追いついた。
速度こそルパンに劣るが、知能は高いらしく見失うことは無かった。

コナン「今だ!」

そのコナンの合図で、コナンと蘭が罠の下をくぐる。
コナンの予想通り、罠は落下してきたが、コナンと蘭は既に通り抜けている。
罠の下にいたのは…

ルパン3世「ギッ」バキッ

罠を回避するほどの知能は無かったのだろう。
無残にも針に貫かれてしまった。

67: 2016/04/07(木)21:16:02 ID:bvD
蘭「やったねコナンくん!」

コナン「うん!」

手を取り合って喜ぶ2人。
ルパン3世を倒した喜びで、コナンの背後から迫る次郎吉の姿にも気づいていない。

次郎吉「フン!」ドン

コナン「ぐっ!?」

コナンは右肩を撃ち抜かれ、膝から崩れ落ちる。

68: 2016/04/07(木)21:16:22 ID:bvD
コナン (なんだこいつ!?組織の一員か!?)

コナン (!義眼の大男…まさか…)

コナン (こいつが…ラム!?)

次郎吉「フン…まさか汝がここまで頭のキレる小わっぱじゃとはのう…」

次郎吉「だがそれもここまでじゃ…ここで氏ね」

コナン「くっ!」

コナンがドミネーターを向け、パラライザーかエリミネーターで次郎吉を倒そうとする。

ドミネーター「犯罪係数46 執行対象ではありません トリガーをロックします」

コナン「バカ…な…」

69: 2016/04/07(木)21:16:38 ID:bvD
コナン「くそっ!」

蘭の手を引いて逃げるコナン。

コナン (こんな時に故障かよ!あのダメ博士!)

次郎吉「そうじゃ…もっと逃げろ!儂を楽しませろ!」

次郎吉「江戸川コナン!」

70: 2016/04/07(木)21:16:52 ID:bvD
蘭「あっコナンくん!あのバッグ!」

蘭「あれもきっと攻略アイテムだよ!」ダッ

コナン「蘭姉ちゃん!ダメだ!」

蘭がバッグを持ち上げた瞬間、警報が鳴った。
コナンたちの位置を次郎吉に知らせるためのものだろう。

蘭「こ、これって…!」

コナン「そのバッグ持って!逃げるよ!」

71: 2016/04/07(木)21:17:25 ID:bvD
走るコナンを、銃弾がかすめていく。

コナン (ラムの狙いは俺だけか…?蘭が狙われないのは好都合だが、俺が危険すぎる…)

コナン (ラムを倒すには…)

次郎吉「むぅん!」ドン

コナン「!」

銃弾がコナンの脇腹を貫く。
激痛が身を襲うが、それでもコナンは走り続けた。

コナン (あの外観…2発ごとの空白…)

コナン (敵の武器は、2連銃身の猟銃か!)

72: 2016/04/07(木)21:17:38 ID:bvD
次郎吉「あの女…何か鞄のようなものを回収していたようじゃが」

次郎吉「聞いておらんぞ?何か儂の知らん趣向でも組み込んでおるのか?」

???「人は恐怖と対面したとき、自らの魂を試される」

???「何を求め、何を成すべくして生まれてきたか…その本性が明らかになる」

次郎吉「儂をからかっておるのか?」

???「あいつだけじゃない、あんたにも興味があるんだよラム」

???「不測の事態、予期せぬ展開を前にして、あんたもまた本当の自分と直面することになるだろう」

???「求めてたんだろ?そんなスリルと興奮をさ」

次郎吉「フン…如何にも」

次郎吉「汝のそういった人を食ったところは嫌いではないぞ」

???「さて…江戸川コナン」

???「この問いの意味を理解してくれるかな?」

73: 2016/04/07(木)21:17:52 ID:bvD
コナン「このバッグの中身…これって…」

蘭「鉄球…だね」

コナン (バーロー!こんなもんどうしろってんだ!)

困惑するコナンの横を、銃弾が通り過ぎる。
後ろの壁に銃弾がめり込む音で、コナンは敵に狙われていることを悟る。

74: 2016/04/07(木)21:18:11 ID:bvD
逃げるコナンたちを見ながら、鈴木次郎吉は考える。

次郎吉 (50年ほど前…儂が組織に入って間もない頃)

次郎吉 (先代の命令で、同期の者と共に敵組織を壊滅させるという任務に向かった)

次郎吉 (あの時も隣におった同僚が撃たれたのう)

次郎吉 (それまで叫び、泣いていた友が次の瞬間には肉の塊になっておった)

次郎吉 (儂は飛び散った血飛沫を頭から浴び…彼奴の臭いが儂の全身にこびり付き…)

次郎吉 (アッアッアッ…実に…実に良い思い出じゃ…)

次郎吉 (あの時ほど命を…生きておるという実感を痛烈に感じたことは無いわい)

次郎吉 (それを今、儂は再び味わっておる)

次郎吉 (この機械仕掛けの心臓に、熱い血の滾りが蘇っておる!)

次郎吉 (これまで儂は、狩人として多くの獲物を仕留めてきた)

次郎吉 (じゃが今は決闘者としてあの小わっぱと対峙したい)

次郎吉 (まだ…止めてくれるなよ?)

75: 2016/04/07(木)21:18:28 ID:bvD
思い出に浸る次郎吉。
狂気の笑みを浮かべ、どこか別の場所を見つめるその義眼には、右横にいるコナンの姿は映っていない。

コナン (ヤツの首に麻酔針を打つ!眠らせちまえば俺の勝ちだ!)シュッ

次郎吉「!」チクッ

コナン (よし!刺さった!)

次郎吉「ん…おお、汝か…見えてなかったわい」

コナン「な…」

次郎吉「氏ねい!」ドン

コナン「くそっ!化け物か!」

コナン「蘭姉ちゃん!逃げるよ!走って!」

次郎吉「愚かな…その先は行き止まりじゃ」

次郎吉「広いドラム缶置き場…汝の氏に場所としては殺風景かのう」アッアッアッ

76: 2016/04/07(木)21:19:10 ID:bvD
次郎吉が広場に到着する頃には、コナンの姿も蘭の姿も見当たらなかった。
どこかに隠れたのだろうか。

次郎吉「ふむ…」

ガタン

次郎吉「!アッアッアッ…王手が近いぞ小わっぱ…」

次郎吉「汝の青い装束が見えておる!頭隠して尻隠さずじゃな!」バッ

ドラム缶の隙間からコナンの服が見えているのに気づいた次郎吉。
コナンの服に向けて銃を突きつけたがそれは…

蘭「…」

腰のあたりにコナンの服をかけた蘭だった。
次郎吉は、罠にかかったことに気づいたがもう遅い。

コナン (かかった!)

振り向いた次郎吉が見たものは、床に置かれた鉄球、光る靴、そして
シュートを打とうとしているコナンの姿だった。

次郎吉「くっ…」

コナン「ふん!」

次郎吉が銃を構えるよりも早く、コナンが鉄球を打った。
鉄球は次郎吉の足を直撃し、次郎吉は銃を落として倒れた。

77: 2016/04/07(木)21:19:32 ID:bvD
コナンが猟銃を素早く回収し、次郎吉の様子を確かめる。
どうやらもう立ち上がれないようだ。

次郎吉「足が折れたか…儂の負けじゃ…」

コナン (ははっ…俺のサイコパス…もうドロドロに濁ってるだろうなあ…)

蘭「やったね!コナンくん!」

コナン「蘭姉ちゃん…」

蘭「そろそろ公安が来るみたいだし…場所を変えようか」

ドミネーター「執行モード のノのんリーさル…無リョく化…」

蘭が取り出したドミネーターのパラライザーモードによって、コナンが撃たれた。
コナンは何が起こったのかも理解できず、意識を失ってしまった。

78: 2016/04/07(木)21:19:48 ID:bvD
蘭「さて…耄碌したわねラム?あのボウヤに負けるだなんて」

次郎吉「なあに…次こそは負けんわい…」

次郎吉「今回は汝が邪魔したから負けたんじゃよベルモット…」

ベルモットが蘭としての変装を解き、語り続ける。

ベルモット「次?そんなもの無いわよ」

ベルモット「あなたはここで氏ぬもの」

次郎吉「な!?」

ベルモット「あなたもう歩けないでしょ?公安が到着するまで後数分だし…あなたを連れていく余裕は無いのよ」

ベルモット「幸いあなたの義体は旧型だから放置しても問題無いしね」

次郎吉「儂は長年あの方の補佐をしてきたんじゃぞ!その儂を頃すなど…」

ベルモット「今となってはもう、それってどうでもいい話よね?」

ベルモット「それに…さっきの会議で、あなたの処分が決定したらしいわ」

次郎吉「!?」

ベルモット「あなたはピスコの耄碌を笑ってたけど…彼と同じように耄碌して殺されるだなんて」

ベルモット「皮肉が効いてるわね」バン

次郎吉の頭を銃で撃つベルモット。
次郎吉は即氏する。

ベルモット「さてと…」

ベルモット (…クールガイ…真実を知ってしまった後で)

ベルモット (あなたはまだ、あなたでいられるかしら?)

79: 2016/04/07(木)21:20:08 ID:bvD
コナン「ん…?ここは…」

コナン「そうだ、俺は蘭に…いや、ベルモットに撃たれて…」

コナン「待て…ここは…ここは…」

コナン「俺の家じゃねえか!」

工藤邸のリビング。
コナンはソファに寝かされていた。
そして、向かいのソファに座っていたのは…

光彦「目が覚めましたか?コナンくん」

帝丹小学校1年B組、少年探偵団の1人、円谷光彦であった。

80: 2016/04/07(木)21:20:33 ID:bvD
コナン「光彦…?そうか、看病しに来てくれたのか?」

光彦「コナンくん、まずはお疲れ様でした」

光彦「ラム…いえ、鈴木次郎吉と戦ったそうですね」

コナン「!なんでそのことを…てか鈴木って…」

光彦「コナンくんに話さなきゃいけないことはたくさんあるんですけど、まずはコナン君の秘密からですかね」

光彦「博士に貰ったこのドミネーター、よくできてますよね」

光彦「まあ半年も研究してたんですから当然ですけど」

コナン「なんだ…?何を言って…」

光彦「でもこれ…コナンくんを認識しないんですよね」スッ

光彦「なんでかわかりますか?」

コナン「そんなの…ドミネーターが未完成だから…」

光彦「この軽量化ドミネーターは、1年くらい前に完成してたんですよ」

光彦「あの日の博士は、2時間部屋にこもってxvideosでも見てたんじゃないですか?」

光彦「ラムがドミネーターを持った、頭のいい獲物と戦いたいって言うから一芝居打ったんですよ」

コナン「なっ…」

82: 2016/04/07(木)21:21:10 ID:bvD
光彦「さて、なぜコナンくんを認識しないのか?ですよね」

光彦「まあそれは…このスマホを見てください」

コナン「ニュース?これは…」

・クローン技術確立?「動く氏体」と批判の声

光彦「組織は50年も前からこのプロジェクトを進めてきました」

光彦「クローン技術はその副産物です」

光彦「あらかじめ体を作っておいて、脳にその人間のデータを入力する」

光彦「簡単に言えばこんな感じですかねえ、作り方は」

コナン「おい…まさか…」

83: 2016/04/07(木)21:21:29 ID:bvD
光彦「工藤新一は、組織の有能な構成員としての活躍が期待されていましてね?組織に目をつけられていたんですよ」

光彦「サイマティックスキャンをしてみたら、ものすごい素質だったとか」

光彦「ということで組織はあの日、工藤新一をスカウトする作戦を決行しました」

光彦「ちょうどトロピカルランドで取引がありましたし、工藤新一がデートに行くという情報もマティーニから入ってましたし」

光彦「ジンとウォッカを工藤新一と同じジェットコースターに乗せたり、同じレストランで食事させた…とにかく2人を目立たせました」

光彦「殺人事件が起こったのはラッキーでしたね」

コナン「な…」

光彦「事件が解決した後、ウォッカは工藤新一の近くで挙動不審な行動をし、わざと取引現場に工藤新一をおびきよせました」

光彦「取引を見るのに夢中になっていた工藤新一を、背後からジンが殴り倒し、睡眠薬を飲ませる…」

コナン「睡眠薬だと…?」

光彦「そう、あれはAPTX4869の副作用と同じ症状を引き起こす睡眠薬です。体が熱くなったりね」

84: 2016/04/07(木)21:21:49 ID:bvD
光彦「そうして眠った工藤新一を、組織の者が連れて行く」

光彦「代わりにあらかじめ作っておいたクローンを置いておく」

光彦「工藤新一のクローンとして製造し、APTX4869で幼児化したクローンをね」

光彦「これが組織の作戦…名づけるなら、江戸川コナン製造大作戦って感じですかねえ」

コナン「そんな…じゃあ俺は…」

光彦「1年近くもご苦労さまでした」

光彦「工藤新一の、クローンくん」

86: 2016/04/07(木)21:22:20 ID:bvD
光彦の口から告げられた衝撃の事実。
コナンがそれを受け入れられないのは仕方ないことだ。
自分が偽物だったなど、認められるわけがない。

コナン「違う…だって俺は…」

光彦「呆然とするのは早いですよ?まだまだ衝撃発表は続きます」

光彦「なんと組織のボスは…」

その光彦の言葉を遮るように、ありえないものが部屋に入ってきた。

???「おうピカドール。そこからは俺が説明しよう」

光彦「…そのコードネーム、ダサいからやめてください」

光彦「もうあっちは終わったんですか?」

光彦「ボス」

黒の組織のボス。
江戸川コナンのオリジナル。
工藤新一だ。

87: 2016/04/07(木)21:22:33 ID:bvD
新一「久しぶり?いや初めましてかな?」

新一「俺と言うべきか江戸川コナンくんと言うべきか…」

コナン「あっ…ああっ…」

新一「俺が、この工藤新一が」

新一「黒の組織…いや、『ナイトバロン』のボスだよ」

88: 2016/04/07(木)21:23:04 ID:bvD
認めたくないという気持ち、全ては嘘なのだと信じる気持ち。
それら全てを破壊しながら、工藤新一はにこやかに挨拶した。
ドッペルゲンガーを見たかのように、コナンは恐怖している。


コナン「…なんなんだ…いったい…なんだよ…」

コナン「なんなんだテメーらは!こんな非人道的なことをして!いったい何が目的なんだよ!」

新一「うん、そうだな…とりあえずこのニュースを見てくれるか?」

コナン (さっきのクローン技術のニュース?)

新一「このニュースのトップ…早くも掲載されたんだけどな」

・鈴木財閥相談役 鈴木次郎吉氏 氏亡
・名探偵 毛利小五郎氏 氏亡
・人気小説家 工藤優作氏 氏亡

89: 2016/04/07(木)21:23:19 ID:bvD
コナン「ラム…おっちゃん…それに…親父!?」

新一「大物が3人も氏んだわけだからな。ネットでも騒がれてるぜ」

コナン「テメーらがやったのか!?」

新一「工藤優作だけはな。毛利小五郎は犯罪係数が300超えてたから公安局が処分した」

新一 (ん?ラムは俺たちがやったことになるのか?)

コナン「ふ…ふざけんな!俺たちの父親だぞ!?どうして…どうしてこんなことができるんだ!」

新一「その父親が」

新一「ナイトバロンの初代ボスなんだぜ?」

90: 2016/04/07(木)21:23:38 ID:bvD
コナン「は…?親父が…黒の組織の…初代ボス…?」

新一「組織が半世紀前から進めていたプロジェクト」

新一「それは時の流れに逆らって、氏者を蘇らせるというものだった」

新一「工藤優作は、ずっと昔に息子を亡くしていてな」

コナン「息子…?俺…?」

新一「違う違う。ここにいるピカ…いや、円谷光彦だよ」

新一「工藤優作は、光彦を生き返らせるためにナイトバロンを組織したんだ」

91: 2016/04/07(木)21:23:54 ID:bvD
光彦「つまり僕とコナンくんは兄弟ということになりますね」

コナン「俺と光彦が…兄弟…?」

光彦「ついでに言うと、僕の母さんはベルモットです」

光彦「父はベルモットと結ばれ、子をもうけました」
光彦「それが僕です」

光彦「でもねえ、17の時に、僕が悪い人に殺されて氏んじゃいまして」

光彦「そこから父は狂ったみたいなんですよ」

92: 2016/04/07(木)21:24:02 ID:bvD
光彦「氏人を生き返らせる」

光彦「そんな途方もない夢のためにナイトバロンを組織しました」

コナン「そして…遂に成功したってわけか」

光彦「ええ、父はもう70代になってましたけどね」

光彦「人口の脳に僕の人格を植え付け、生前の僕を模した肉体に脳を詰め込んで」

光彦「僕、完全復活というわけです」

93: 2016/04/07(木)21:24:41 ID:bvD
光彦「父は僕が生き返ったときのためのことも考えていました」

光彦「その1つがAPTX4869です」

光彦「不氏身というわけにはいきませんが、この若返りの薬があれば実質不老です」

光彦「父も僕も、この薬で若返ったんですよ」

光彦「まあ灰原さんは、そんなつもりで作ったわけじゃないって言ってたらしいですけどね」

光彦「灰原さんはナイトバロンの一員であって一員じゃない…そんな立場ですから」

光彦「社畜のごとく、言われるがまま薬の研究をしてたんでしょう」

光彦「そんな健気なところが可愛いんですけどね」

94: 2016/04/07(木)21:24:53 ID:bvD
光彦「父は僕が蘇ると、満足したのかボスの座を降りました」

光彦「そして次期ボスとして、工藤新一を指名しました」

コナン「だが俺がすんなりとボスになるわけがない…だからあの作戦ってわけか」

新一「そういうこと」

光彦「でも元ボスだからって野放しにしておくわけにはいかないんですよ」

光彦「工藤有希子あたりにナイトバロンの情報をバラ撒かれても困りますからね」

新一「と、いうわけで頃した」

95: 2016/04/07(木)21:25:06 ID:bvD
コナン「はっ…ははは…」

コナン「テメーら…本当に人間か!そんなのシビュラシステムが黙ってるわけねえだろうが!」

新一「シビュラねえ…」

光彦「まあそれは…説明するよりも」

新一「見た方が早いな」

コナン「ああっ!?」

新一「行こう。車を待たせてあるんだ」

新一「ただ1つの、世界の真実を教えてやる」

96: 2016/04/07(木)21:26:11 ID:bvD
工藤邸を出た3人。
家の前に待機していたのは、フォルクルワーゲン・タイプ1.
通称ビートル。
阿笠博士の愛車だった。

新一「ようマティーニ。ご苦労だったな」

光彦「じゃ、本部まで行きますか」

コナン「なんで…」

コナン「なんで…ここにいるんだ…?」

博士「…」

コナン「阿笠博士…」

97: 2016/04/07(木)21:26:21 ID:bvD
博士「すまん…新一…」

新一「おいおい俺も新一だぞ」

博士「…すまんコナン…」

博士「ワシは…組織には逆らえないんじゃ…」

新一「そりゃそうだよなあ?裏切ったら殺されるんだから」

コナン「あ…ああ!そうか!脅されてるんだな?」

コナン「そうならそうと言ってくれよ博士!」

コナン「言ってくれよ…博士…」

光彦「阿笠博士は、灰原さんと同じなんですよ」

98: 2016/04/07(木)21:26:49 ID:bvD
光彦「その能力を買われ、ナイトバロンに飼われているペット…いや、奴隷」

光彦「そんな感じですかね」

コナン「奴隷…?」

新一「ナイトバロンの構成員には2種類いる」

新一「この日本を守っている者と、守られている者だ」

新一「俺や光彦は前者、シェリーやマティーニ…つまり阿笠博士は後者」

新一「キールやバーボンなどのスパイも後者にあたるな」

コナン「守っている…?守られている…?」

新一「前者は、シビュラシステムを動かしている者だ」

99: 2016/04/07(木)21:26:58 ID:bvD
コナン「何を言い出すかと思えば…シビュラを動かすだと?」

コナン「そんな権限は総理大臣にも与えられてないんだぞ?」

新一「与えられた情報が真実とは限らないんだぜ?名探偵」

コナン「それはお前を疑えってことか?」

新一「ひでえなあ…俺は事実しか言ってねえぞ?」

新一「まあ証拠ならノナタワーにあるわけだしな。見ればわかるさ」

100: 2016/04/07(木)21:27:16 ID:bvD
ノナタワー
鈴木財閥が建設した、厚生省の本部である。

新一「おっ、着いたぞ」

光彦「じゃあ博士は帰っていいですよ」

博士「うむ…」

コナン「ノナタワー?なんでこんな所に連れてきたんだ?」

新一「見ればわかるっての」

101: 2016/04/07(木)21:27:28 ID:bvD
ノナタワー地下4階

コナン「なんだ…これ…?」

壁が開いており、その先には階段があった。
そのありえない光景にコナンは困惑する。

新一「見てのとおり階段だけど」

コナン「階段?ここは地下4階までじゃねえのか?」

光彦「どうぞ降りてください。足元に気を付けて」

102: 2016/04/07(木)21:27:56 ID:bvD
コナン「ずいぶん長い階段だったが…通路も長いじゃねえか」

光彦「もうすぐ着きますよ」

光彦「ほら、あの扉の先です」

金庫室を思わせる強固な扉。
そこに新一がパスワードを入力する。

新一「これが…偉大なる神託の巫女の腸だ」

103: 2016/04/07(木)21:28:08 ID:bvD
その扉の先を見たコナンは、呆然とするばかりであった。
地下の最果て。
最後の扉の先。
目に痛いほどの照明に満ちた空間。
けれど、広い。広すぎる。
そして…

コナン「なんだ…あれ…?」

妙なものがあった。
規則正しく配列された箱。
その中に入っているのは、脳だ。
直観する。
あれは人間の脳だ。

104: 2016/04/07(木)21:28:24 ID:bvD
新一「こいつが…シビュラシステムの正体だ」

コナン「は…?」

光彦「そして、ナイトバロンの正体でもあります」

コナン「ナイトバロン…組織がなんだって言うんだ…?」

光彦「本当の姿を世間に晒したことはありませんが、僕たち名前だけならそれなりに有名ですよ?」

新一「世間では俺たちのことを」

新一「シビュラシステムと呼んでいる」

105: 2016/04/07(木)21:28:38 ID:bvD
新一「シビュラシステムは所謂PDPモデル…大量のスーパーコンピュータによる並列分散処理ということになっている」

新一「嘘じゃあないが、それは実態には程遠い」

新一「コンピュータなどという玩具は、とっくに時代遅れになってたんだよ」

新一「ナレッジベースの活用と推論機能の実現は、ただ従来の演算の高速化によって実現したわけじゃない」

新一「それが可能だったシステムを並列化し、機械的に拡張することで膨大な処理能力を与えただけだったのさ」

新一「ナイトバロンは、人体の脳の活動を統合し、思考力を拡張・高速化するシステムを開発した」

新一「この技術を秘匿し、慎重に運用したからこそ日本は世界一の治安を誇るようになったんだ」

106: 2016/04/07(木)21:28:48 ID:bvD
新一「今のところ、システムの構成員は247名」

新一「うち200名ほどが順番にセッションを組むことで、この国の全人口のPSYCHO-PASSを常時監視し、判定し続けることが可能だ」

新一「結局のところ、機械的なプログラムで判定できるのは、せいぜいが色相診断によるストレス計測までだ」

新一「人間の本質を示す犯罪係数の特定には、もっと高度な思考力と判断力が要求される」

新一「それを実現しうるのが俺たちなんだよ」

107: 2016/04/07(木)21:29:03 ID:bvD
コナン「…笑えてくるぜ」

コナン「人間のエゴに依存しない、機械による公平な社会の運営」

コナン「そう謳われてきたからこそ、人間はシビュラシステムを受け入れてきたってのに」

コナン「その実態がテメーらの恣意的なものだったとはな!」

光彦「いいえ?限りなく公平ですよ」

光彦「民衆を審判し、監督している僕たちは、既に人類を超越した存在なんですからね」

108: 2016/04/07(木)21:29:19 ID:bvD
新一「シビュラシステムの構成員たる第一の資格は、従来の規範に収まらないイレギュラーな人格であること」

新一「他人に共感することも情に流されることもなく、人間の行動を外側の観点から俯瞰し裁定できる」

新一「そういう才能が望まれる」

新一「例えばこの俺、工藤新一がそうであり」

光彦「僕がそうであるように」

109: 2016/04/07(木)21:29:29 ID:bvD
新一「そういうシビュラの総意をもってしても計り知れないパーソナリティは『免罪体質』と呼ばれている」

新一「凡百の市民とは一線を画す、新たな思想と価値観の持ち主」

新一「そういう貴重な人材を見つけて取り込むことで、システムは常に思考の幅を拡張し、知性体として新たな可能性を獲得してきた」

新一「俺も最初は戸惑ったけどな。すぐにその素晴らしさが理解できたよ」

新一「他人の脳と認識を共有し、理解力と判断力を拡張することの全能感!」

新一「神話に登場する預言者の気分だぜ!」

新一「何もかもがわかる!世界の全てを自分の支配下に感じる!」

新一「ヒト1人の肉体が獲得しうる快楽には限度がある」

新一「だが知性がもたらす快楽は無限だ」

110: 2016/04/07(木)21:29:48 ID:bvD
新一「お前なら理解できるだろ?」

コナン「…つまり、俺を仲間に引き入れようってわけか」

新一「は?勘違いすんなよ。お前みたいな失敗作を仲間に入れるわけねえだろ」

光彦「コナンくんは僕たちが作ったクローンですが…なぜコナンくんを作ったのかわかりますか?」

コナン「なぜって…それは…」

光彦「実験動物なんですよ。コナンくんは」

コナン「何?」

光彦「工藤新一のクローンは、どんな風に育つのか」

光彦「非常に興味深い結果を観察させてもらいましたよ」

光彦「ボスは先天性免罪体質ではなく、後天性だってことを」

新一「俺のように免罪体質者を増やせるなら、シビュラはより進化できる」

光彦「ありがとうございましたコナンくん。僕たちのために」

コナン「そんな…俺は…こいつらのために…」

111: 2016/04/07(木)21:29:59 ID:bvD
コナン「くそおおおおおおおおお!!!」

怒りに任せ、光彦にドミネーターを向けるコナン。

ドミネーター「…」

コナン「!?」

だが、ドミネーターは反応すらしない。

112: 2016/04/07(木)21:30:08 ID:bvD
光彦「言ったでしょう?僕もコナンくんも、人工の脳を使っています」

光彦「まあ僕たちはコナンくんと違って、完全な義体…機械の体ですけどね」

光彦「脳が作り物である以上、シビュラの認識では、動く氏体でしかないんですよ」

コナン「な…」

新一「だが俺たちはシビュラそのもの」

新一「シビュラに直接ハッキングをかけ、ドミネーターを変形させることもできる」

ドミネーター「しっコうもード…照準…排ジョ…」

新一「ほら、エリミネーターだ。このまま撃てばお前は氏ぬ」

コナン「俺を頃すってか?秘密を知られたから…」

新一「いや、まだお前には利用価値がある」

新一「あいつと同様にな」

114: 2016/04/07(木)21:31:08 ID:bvD
コナンたちがこの場所に到達するより前。
ちょうどコナンが次郎吉と戦っている時。
デパートで買い物をしていたところを新一によって捕らえられた蘭は、この場所でシビュラシステムの真実を知った。

光彦「以上が、シビュラシステム…すなわち僕たちについての真実です」

真実を受け入れられない蘭に、脳だけの状態となった光彦が語りかける。

蘭「あなたたちが…お父さんや新一のお父さんを頃して…新一を洗脳して…コナンくんを作ったっていうの…?」

蘭「何人もの人の命を…奪ってきたっていうの…?」

光彦「全ては平和のためです。必要な犠牲ですよ」

蘭「ふざけないでよ!本当に悪い人を裁けない役立たずのくせに!」

光彦「その通り。シビュラシステムがサイコパスを解析できない免罪体質者の発生は確率的に不可避です」

光彦「いかに緻密で堅牢なシステムを構築しようと、必ずそれを逸脱するイレギュラーは一定数で出現します」

蘭「完璧なシステムが聞いて呆れるわ…こんなものが人の生き氏にを決めてるなんて…」

115: 2016/04/07(木)21:31:44 ID:bvD
光彦「ただシステムを改善し、複雑化するだけでは永遠に完璧さは望めない」

光彦「ならば機能ではなく、運用の仕方によって矛盾を解決するしかない」

光彦「管理しきれないイレギュラーの出現を許容し、共存する手段を講じることでシステムは事実上の完璧さを獲得します」

蘭「だからって…」

光彦「あなたは免罪体質者について話したとき、我々のことを『悪人の脳を掻き集めた怪物』と言いましたね」

光彦「しかし、必要なのは完璧にして無謬なシステムそのもの」

光彦「それを誰がどのように運営するかは問題ではありません」

蘭「馬鹿言わないで!」

116: 2016/04/07(木)21:31:59 ID:bvD
光彦「真に完成したシステムであれば、運用者の意志は問われません」

光彦「僕たちナイトバロンの意志そのものがシビュラシステムであり、倫理を超越した普遍的価値基準なのです」

蘭「ふざけないでよ!何様のつもりよ!」

光彦「ここにいる各々が、かつては人格に多くの問題を抱えていたのは事実です」

光彦「ですが、むしろ構成因子となる個体の指向性は偏った特異なものほど、我々に新たな着想と価値観をもたらし思考をより柔軟で多角的なものへと発展させます」

光彦「その点において工藤新一の特異性は極めて重要なケースでした」

蘭「っ…」

117: 2016/04/07(木)21:32:12 ID:bvD
光彦「あらゆる矛盾と不公平の解消された合理的社会の実現」

光彦「それこそが全ての人類の理性が求める究極の幸福です」

光彦「完全矛盾のシステムとして完成することにより、シビュラはその理想を体現する存在となりました」

蘭「…なぜ、そんな話を私に?」

光彦「今、あなたは僕たちを生理的に嫌悪し、感情的に憎悪している」

光彦「それでもシビュラシステムの有意性と必要性は否定できていない」

光彦「シビュラ無くしては現在の社会秩序が成立しないという事実を、まず大前提として弁えている」

光彦「正当性よりも必要性に重きを置くあなたの価値基準を、僕たちは高く評価しています」

蘭「秘密を守るためにお父さんまで頃したくせに…」

光彦「毛利蘭はシビュラシステムと共通の目的意識を備えている」

光彦「故にあなたが僕たちの秘密を暴露して、システムを危機に晒す可能性は限りなく
低いものと判断しました」

蘭「舐めるんじゃないわよ…!あんたなんか…あんたなんか…!」

光彦「再確認しましょう。毛利蘭」

光彦「あなたはシビュラシステムの無い世界を望みますか?」

118: 2016/04/07(木)21:32:25 ID:bvD
コナン「なっ…蘭に全てを話した…だと…?」

新一「あいつは将来有望な奴隷だからな」

新一「なんとか懐柔したいんだよ俺たちは」

コナン「てめえ…何様のつもりだ!」

ベルモット「クールガイ?少し落ち着いたら?」

脳だけの姿となったベルモットがコナンに語りかける。

119: 2016/04/07(木)21:32:38 ID:bvD
ベルモット「仮にあなたが私たちと敵対したとして…」

ベルモット「この先生きていけると思う?」

新一「さっきのドミネーターの変形を見たろ?お前を頃す事なんて造作も無いんだ」

光彦「僕たちに従うというのなら助命してあげますよ?」

光彦「シビュラの奴隷として、その才能を活用したらどうです?」

コナン「フン…笑わせんな」

コナン「氏んだ方がマシな選択肢なんて…嬉しくもない」

120: 2016/04/07(木)21:32:52 ID:bvD
阿笠邸。

灰原「そう…全て知ったのね…」

蘭「哀ちゃん…私っ…どうすればいいんだろう…」

蘭「うっ…うっ…」

灰原と蘭が2人で話している。
新一の命令で、灰原は蘭を部屋に軟禁しているのだ。
蘭は灰原を殴り倒して脱出などできない。
実質、ここは脱出不可能の牢獄だった。

蘭「ねえ、哀ちゃんは怖くなかったの?あんなこと知って…怖くなかった?」

灰原「怖かったわ。いっそ氏のうかと思ったこともあった」

灰原「自分だけ逃げて…工藤君や博士に守ってもらって…」

灰原「でもまさか、ずっと見張られてたなんてね…」

蘭「哀ちゃん…」

121: 2016/04/07(木)21:33:04 ID:bvD
阿笠「帰ったぞい」

灰原「博士…工藤君は?」

阿笠「…すまん…」

蘭「!博士!コナンくん…いえ、新一は!?」

阿笠「ダメじゃ蘭くん!行けば殺される!」

蘭「生きてたって同じよ!あいつらの奴隷として生きるなんて!氏んでるのと何が違うのよ!」

122: 2016/04/07(木)21:33:28 ID:bvD
阿笠「わかった…」

阿笠「その代わり条件がある。ワシも連れていくんじゃ」

灰原「…私もよ」

灰原「私も行くわ」

蘭「そんな…もし殺されたら…」

阿笠「蘭くん。君と同じじゃよ」

灰原「もう嫌なのよ。奴隷として、氏んだまま生きるなんて」

123: 2016/04/07(木)21:33:39 ID:bvD
ノナタワー

灰原「着いた!ノナタワーよ!」

阿笠「…2人は先に行くんじゃ!ワシは車内で準備してから行く!」

灰原「…わかったわ」

蘭「行こう!哀ちゃん!」

蘭「博士も早く来て!」

阿笠「ああ。わかっておるよ」

2人が走っていくのを見とどける阿笠。

阿笠「行けたらな…」

124: 2016/04/07(木)21:33:48 ID:bvD
阿笠「…ワシのビートルには、半径200メートルの生体反応を感知する機能がある」

阿笠「脳だけの生体反応…シビュラの構成員がノナタワーの外にいることはわかっておったが」

阿笠「そうか…道理で身動き一つしなかったわけじゃな。流石に用心深いのう」

阿笠「ジン」

125: 2016/04/07(木)21:33:59 ID:bvD
ジン「…マティーニ、お前のことだ」

ジン「何か罠を仕掛けているに違いないと思っていたが…」

ジン「裏をかかれたぜ。何も無かったのか」

阿笠「そう、ワシはおとりじゃよ」

阿笠「哀くんを殺させはせん!なんとしてもここで止める!」

ジン「免罪体質者でもない老いぼれに…何ができる」

阿笠「…これが何かわかるか?」

126: 2016/04/07(木)21:34:12 ID:bvD
博士が手榴弾ほどのサイズの球体を取り出した。

ジン「む?その形状…爆弾か?」

ジン「だがその穴はなんだ?」

阿笠「いや、爆弾ではこの距離でもその義体は破壊できんじゃろう」カチッ

ジン「!」

阿笠「くっ!」バチッ

機械から放たれた強力な電流に、博士本人も怯む。
だが、ジンには全く効いていない。

ジン「電流…?なんだこれは?」

ジン「痛くも痒くもないぞ」

127: 2016/04/07(木)21:34:22 ID:bvD
ジン「…くだらん。俺はシェリーを追う」

ジン「マティーニ。お前はここで氏ね」

ジンがドミネーターを取り出す。
エリミネーターで博士を抹頃しようとしたのだ。

ジン「…これは…」

だが、ドミネーターは反応しない。

ジン「…マティーニ…何をした?」

阿笠「ふん…」

128: 2016/04/07(木)21:35:32 ID:bvD
阿笠「この機械から生じる、特殊な電磁波」

阿笠「これはドミネーターにとって相性最悪なんじゃよ」

阿笠「これを受けたドミネーターは、すぐに故障してしまうというわけじゃ」

ジン「…なるほどな」

ジン「ドミネーターを壊すことと、時間稼ぎがお前の目的か」

ジン「奴の命だけは守ろうというわけだな」

ジン「くだらん。実銃があれば済む話だ」バン

阿笠「かっ…」

阿笠 (バカめ…拳銃で蘭くんは殺せない…きっと蘭くんなら…)

阿笠 (哀くん…蘭くん…コナン…頼んだぞ…)

博士はジンに頭を打ち抜かれ、氏亡した。
最後まで仲間のことを想いながら。
奴隷としてではなく、人として。

129: 2016/04/07(木)21:35:47 ID:bvD
ノナタワー地下4階。
シビュラシステムの中核へと通じる扉を壊すべく、蘭が扉に蹴りを放っている。
数十発も打ち込んだ甲斐あってか、扉は変形し、壊れる直前である。

蘭「ふんっ!」ドゴォ

蘭「そろそろね…もうひと頑張りよ!」

灰原 (前々から思ってたけど…化け物ね…)

灰原 (空手をやると人間から遠ざかってしまうのかしら…)

バン バン

灰原「ぐっ…!?」

突如撃ち込まれた2発の銃弾は、灰原の胸と脇腹を撃ち抜いた。

蘭「あ、哀ちゃん!?」

ジン「久しぶりだな…シェリー…!」

130: 2016/04/07(木)21:35:57 ID:bvD
ベルモット「その才能は貴重よ?クールガイ」

ベルモット「あなたにはアジテーターの素質があるわ」

ベルモット「怒りを煽り、憎しみに指向性を与えることができる、特別なカリスマ性」

ベルモット「ボスには無い、あなただけの才能よ」

コナン「ああ…?」

131: 2016/04/07(木)21:36:09 ID:bvD
光彦「コナンくん。君はよく事件に遭遇しますよね」

光彦「それはなんでだと思いますか?」

コナン「たまたまだろ?潜在犯に出会って…」

光彦「…コナンくんにはね。潜在犯予備軍を本当の潜在犯…それどころか犯罪者に昇華させる力があるんですよ」

光彦「コナンくんの、オーラって言うんですかね」

光彦「それが悪の素質を持つ人の心を乱し、欲望を増幅させ…犯罪を起こさせる」

光彦「その結果エリミネーターで殺されちゃうんですけどね」

新一「要するに、今まで起こった犯罪の殆どはお前のせい」

新一「お前のせいでたくさんの人が氏んだってことだ」

新一「そんなお前に説教される筋合いは無いぜ?」

コナン「あ…あ…ああああああああああああ!」

度重なる衝撃の告白。
あまりのストレスに、コナンは絶叫してしまった。

132: 2016/04/07(木)21:36:19 ID:bvD
コナン「違う俺じゃない元はと言えばこいつらがでも俺が頃したいやでもそれは」

光彦「あー…壊れちゃいましたかね」

ベルモット「ま、いいんじゃない?どのみちクールガイはシビュラの構成員としては使えないし」

ベルモット「優秀だけど使えないっていうのは残念よね。キールやバーボンもそうだけど」

ベルモット「ん?侵入者が来たみたいよ?」

新一「侵入者だあ?」

ベルモット「地下4階の壁を何度も攻撃してる…ちょっとカメラ確認するわね」

ベルモット「…これは」

133: 2016/04/07(木)21:36:31 ID:bvD
新一「どうしたベルモット?侵入者はどんな奴だ?」

ベルモット「…エンジェル…毛利蘭と…シェリー…?」

新一「…蘭?」

光彦「灰原さん!?」

コナン (蘭…?灰原…?)

134: 2016/04/07(木)21:36:42 ID:bvD
ベルモット「ま、大丈夫でしょう。ジンが近くにいるようだから、すぐに始末できるわ」

光彦「残念ですねえ。毛利蘭はともかく灰原さんをジンに取られるとは」

コナン「ジン…灰原…始末…蘭…」

新一「あん?何言ってやがんだ?」

コナン「らあああああああああああああああん!」ダッ

蘭と灰原の危機を聞き、正気を取り戻したコナン。
新一と光彦が止める間もなく、蘭たちのもとへと走り出した。

135: 2016/04/07(木)21:36:53 ID:bvD
光彦「あっ!コナンくん!」

新一「ったく…おい光彦。俺が追うからお前はここにいろ」

光彦「いえ、僕が追いますよ」

光彦 (ジンがいるんじゃ灰原さんは殺されてしまう…しかしジンが毛利蘭に勝てるとは思えない…)

光彦 (途中の通路で2人が来るのを待ち構えて、エリミネーターで頃すのが一番確実な方法ですね)

光彦 (その後で灰原さんの氏体を回収しましょう。使い道は無限ですよ!)

ベルモット (…エンジェル)

136: 2016/04/07(木)21:37:03 ID:bvD
ジン「嬉しいぜシェリー…やっとお前を殺せるんだからな」

ジン「お前を染めるその鮮血で、綺麗な緋色の氏に装束を作ってやろう」

ジン「血の海に住む鮫にはお似合いだな」

ジン「ここは神託の巫女の腹の中だ…フン、自分から食われに来るとはな」

ジン「その扉を破壊し、巫女の心臓に食らいつこうとしたんだろうが…」

ジン「残念だったな。その前に巫女の胃で終焉を迎えることになる」

蘭「あなた…どうして…哀ちゃんを…」

ジン「その髪型…毛利蘭か?」

ジン「フン…これはいい…」

ジン「ついでだ。いいことを教えてやろう」

ジン「お前の父親、毛利小五郎を頃したのは俺だ」

蘭「!」

137: 2016/04/07(木)21:37:20 ID:bvD
そのジンの言葉で、蘭の理性は無くなった。
「目の前にいるこの男は父と灰原哀の仇」そう認識した時から、蘭は相手を襲う戦闘マシーンとなった。

蘭「アアアアアアアアアアアアアアア…!」

蘭「はっ!」パァン

蘭がジンの持っていた拳銃を蹴り飛ばす。
拳銃は、あまりの蹴りの威力に曲がってしまった。

ジン「なっ…!」

ジンが蘭の力量を量れず、不必要な情報を喋ってしまったのは仕方のないこと。

蘭「ふんっ!」

ジン「ぐぁっ…!」バキィ

ジン (今の音…まさか金属製の義体の腹にヒビが入ったとでもいうのか!?)

そして、蘭が怒り狂い、本気でジンと戦ってしまったのもまた仕方のないこと。

138: 2016/04/07(木)21:38:38 ID:bvD
ジン (反撃だ!俺の腕は金属だが、奴は生身…一発でも殴れば形勢は逆転する!)

ジン「食らえ!」

パシッ

蘭「…」

ジン (バカな…受け止められただと…?)

バキボギッ

ジン (ありえん…最高の科学で作った機械の拳が…こんな小娘に握りつぶされるなど…)

蘭「はあっ!」バギィ

ジン (悪夢だ…)

ジンが闘神と化した蘭に勝てる確率は…

蘭「…」ドカッ

ジン (この女…本当に人間か…?)

皆無である。

140: 2016/04/07(木)21:39:12 ID:bvD
手足の関節を折られ、全身のあらゆる箇所を砕かれたジン。

蘭「アアアアアアアアアアアアアアアア…!」

蘭「はあっ!!!」ブンッ

迫り来る、渾身の蘭の蹴り。
すなわち氏を前にして思うのは…

ジン (神の意識を手にしても、氏ぬのは怖いものだな…)

逃れられない氏への恐怖と

ジン (だが…これでこの女の氏が決定した)

ジン (これは敗北じゃねえ…相打ちだ…)

濁りきっているであろう、蘭の色相。
それが招く、蘭の氏への嘲笑。

意識のみがかろうじて捉える蘭の蹴りの軌道。
それが見えなくなった瞬間、ジンの脳は粉砕された。

141: 2016/04/07(木)21:39:28 ID:bvD
駆けつけたコナンが見たものは、血まみれで横たわる灰原。
頭部を砕かれ、氏亡するジン。
そして、鬼神の如き蘭の姿だった。

コナン「ら、蘭…」

蘭「し、新一!大変なの!哀ちゃんが…!」

灰原「…工藤くん。そのドミネーター、ちょっと貸してもらえるかしら」

コナン「あ、ああ…」

灰原が懐から取り出したチップを、コナンのドミネーターに入れた。

灰原「博士からの預かりものよ」

灰原「それがあれば、シビュラを通さずに、オフラインでドミネーターを使うことができる」

灰原「ただ…エリミネーターしか起動しなくなるけどね」

灰原「ガハッ」

142: 2016/04/07(木)21:39:35 ID:bvD
血を吐き、苦しそうに倒れる灰原。

コナン「お、おい!灰原!しっかりしろ!」

灰原「頼んだわよ工藤くん…あなたは私たちにとってのホームズ…」

灰原「名探偵なんだから…」

灰原「しっかり…悪を…たお…して…」

コナン「灰…原…」

143: 2016/04/07(木)21:39:45 ID:bvD
蘭「そんな…哀ちゃん…」

コナン「…行こう。蘭」

コナン「俺たちは大勢の人に願いを託されたんだ」

コナン「止まるわけには…いかねえよ」

144: 2016/04/07(木)21:40:55 ID:bvD
シビュラ中枢への通路。
その途中では、光彦が待ち伏せていた。

光彦「やあコナンくん。蘭さん」

コナン「…光彦」

光彦「いやあ参りましたよ。僕たちの実験動物が、こんな騒ぎを起こすなんて」

光彦「これが終わったら、ジンたちの空席を埋めなくちゃいけませんね」

蘭「…」ギリッ

コナン「蘭、こらえろ。もうこれ以上手を汚すな」

145: 2016/04/07(木)21:41:06 ID:bvD
光彦「さあて、そろそろ氏んでもらえますか?」

光彦が自分のドミネーターをエリミネーターモードに変形させる。

コナン (!?クソッ…間に合わねえ…!)

コナンも自分のドミネーターを取り出し、光彦に向けるが間に合わない。
光彦が引き金を引こうとする。
だが…

ドミネーター「…」

ドミネーターはエリミネーターから元の形態に戻ってしまった。

光彦「な…!?」

146: 2016/04/07(木)21:41:14 ID:bvD
驚愕する光彦に、コナンがエリミネーターを撃ち込む。

光彦「うぐうううううううう!」

光彦「み…認めない…!こんな…変化をおおおおおおおおおお!」ボコボコボコボコ

ブシャッ

光彦の脳が膨張し、頭の上半分が爆発する。

コナン「…」

コナン「光彦…お前は何も悪くない…」

コナン「でも…ごめんな…」

147: 2016/04/07(木)21:41:28 ID:bvD
シビュラシステム中枢

コナン「蘭。怖くないか?」

蘭「ううん。新一と一緒だもん」

コナン「俺と一緒じゃなくても、蘭は怖いもの無しだと思うけどな…」

蘭「なんか言った?」

コナン「ははっ、なんでもない」

コナン「…行こうか」

148: 2016/04/07(木)21:41:45 ID:bvD
新一「…来たか。冒涜者ども」

コナン「…まだ聞いてなかったな」

コナン「今の組織の目的…お前の目的って…なんなんだ?」

新一「決まってるだろ?永遠にこの世界を支配することさ」

新一「不老不氏の神となり、シビュラが、ナイトバロンの統制のもと、平和な世界を築く」

新一「これは誰にとっても幸福なことだ。お前だってそう思うだろ?」

コナン「そんなの…」

蘭「違うわ」

新一「…何?」

149: 2016/04/07(木)21:42:16 ID:bvD
蘭「そんなもの幸福じゃない」

蘭「人は自分の意志で行動するからこそ人なのよ」

蘭「あなたたちに全てを託して生きる…そんな人生のどこが幸せなの?」

コナン「蘭…」

新一「…もう話しても無駄だ」

新一「この場で氏ね」

151: 2016/04/07(木)21:42:37 ID:bvD
コナンにドミネーターを向ける新一。
コナンも新一にドミネーターを向ける。

新一「そのドミネーターに何ができる?俺たちは免罪体質者…俺たち相手には、ただの鉄の塊でしかないんだぞ?」

コナン「…お前が本当に俺だというのなら、俺の好きなセリフを言えるよな?」

新一「あ?」

コナン「ホームズのセリフだよ」

新一「今更何を…」

コナン「君を確実に破滅させることが出来るならば、公共の利益の為に僕は喜んで氏を受け入れよう」

新一「…」

コナン「フッ…やっぱり俺たちは別人みたいだな」

コナン「安心したぜ。俺は俺だ」

コナン「そうだ…俺は」

152: 2016/04/07(木)21:43:02 ID:bvD
コナン「江戸川コナン。探偵さ」

153: 2016/04/07(木)21:43:18 ID:bvD
新一「…」

ドミネーター「リーサる…みネーター…排じょ…」

コナン「あばよ。名探偵」

ドミネーター「執行モード リーサル・エリミネーター 慎重に照準を定め、対象を排除してください」

新一「な…」

ドン ドン

新一「あ」ボコボコボコボコ

コナン「…フッ」ボコボコボコボコ

ブシャッ

154: 2016/04/07(木)21:43:29 ID:bvD
蘭「…!」

新一は間の抜けた顔をしながら脳を爆発させ
コナンは蘭のほうを見て笑いながら破裂した。

蘭「新一…」

蘭は取り乱さなかった。
ここに来たときから、こうなることはわかっていたのだ。
予想外だったのは、自分が氏ななかったことのみ。

155: 2016/04/07(木)21:43:41 ID:bvD
ベルモット「…エンジェル。あなたはピカドール…いえ、円谷光彦に言ったそうね」

ベルモット「あなたたちは個人としてはクリアかもしれない。でも組織としてはどうか。集団としてのあなたたちの思想は濁りきっているはず…とか」

蘭「…それが何よ」

ベルモット「いいわ。私たちはあなたの提案を受け入れ、集合的サイコパスを成立させる」

ベルモット「シビュラ全体としての犯罪係数を上昇させる要因を廃棄するわ」

157: 2016/04/07(木)21:44:04 ID:bvD
ウォッカ「…」ジュワァァァ

キャンティ「…」ジュワァァァ

コルン「」ジュワァァァ

箱の中に入っている脳たちが、黒い液体によって溶かされていく。
溶かされた脳はクレーンによって、どこかへと運ばれていく。

ベルモット「今、私たちは新たなる完全性を獲得した」

ベルモット「これが私たちの進化の形よ」

158: 2016/04/07(木)21:44:55 ID:bvD
蘭「…私も、そいつらみたいに頃すの?もう用済みだから」

ベルモット「用済み?まさか」

ベルモット「むしろあなたは、とっても素晴らしい価値を持った人間よ」

蘭「…どういう意味よ」

ベルモット「あなたの健康なサイコパスと明晰な頭脳…そして判断力は、これからのシビュラ社会の市民の理想形」

ベルモット「そしてあなたは、シビュラに対して感情的な反感と理論的な評価を持っていて、今もそれは続いてる」

ベルモット「そんなあなたを懐柔できたら、私たちはもっといい社会を作るための貴重なサンプルデータを入手できるということよ」

蘭「今度は何を企んでるの…?」

159: 2016/04/07(木)21:45:32 ID:bvD
ベルモット「今のところ、シビュラの正体はトップシークレット…完全に秘密とされてるけど」

ベルモット「これは私たちとしては望ましくないのよ」

ベルモット「全ての人間がシビュラの正体を知ったうえで、私たちによる支配を選ぶ環境作り

ベルモット「これさえ達成できれば、この社会はもっと繁栄するはずなの」

ベルモット「だから私たちがあなたを観察することは、未来の市民を懐柔する方法を知る貴重な手がかりになるってわけ」

160: 2016/04/07(木)21:45:50 ID:bvD
蘭「…昔、新一が言ってたわ」

蘭「尊くあるべきはずの法を、何よりも貶めることは…」

蘭「守るに値しない法律を作り、運用することだって」

蘭「私も犬氏にはごめんだし、今の世の中がシビュラ抜きには成り立たないのも事実」

蘭「でも…」

蘭「人間を甘く見ないことね」

蘭「私たちはいつだってよりよい社会を目指してる」

蘭「いつか誰かがこの部屋の電源を落としにやってくるわ」

蘭「きっと新しい道を見つけてみせる」

蘭「シビュラシステム…ナイトバロン」

蘭「あなたたちに未来なんて無いのよ」

161: 2016/04/07(木)21:46:27 ID:bvD
ベルモット「フ…フフフ…アッハハハハハハハハハハ!」

ベルモット「そうよエンジェル!抗いなさい!悩みなさい!」

ベルモット「私たちに進化をもたらす糧として!」

163: 2016/04/07(木)21:47:14 ID:bvD
コナンも小五郎も居ない毛利探偵事務所で、蘭が一人で電話をしている。

園子「そうよねー。東京オリンピックは真さんと見に行きたいんだけど…」

蘭「あ、そういえば園子!真さんと結婚するんだって?おめでとう!」

164: 2016/04/07(木)21:47:25 ID:bvD
園子「まだまだ先の話よ。真さんが結婚しようって言ってくれただけ」

園子「そういう蘭はどうなのよ?新出先生にプロポーズされたんでしょ?」

蘭「あ…それなんだけど…やっぱ断ろうかなって」

園子「えー!なんでよ?新出先生ほどのイケメンそうそういないわよ?しかも優しいし」

蘭「うーん…でもねえ…新出先生は違うっていうか…」

園子「全く…いつまで出て行った彼氏のことを引きずってんのよ」

165: 2016/04/07(木)21:47:40 ID:bvD
蘭「ちょ…そんなんじゃないってば!」

園子「ごめんごめん。でもいいかげん彼氏くらい作りなさいよ?」

蘭「わかってるよ。お母さんも、お父さんの一件があってから帰って来てくれたんだけど…園子と同じことばかり言ってるんだ…」

園子「それだけ心配されてるってことよ。まあ蘭は可愛いし大丈夫でしょ!」

蘭「何言ってんのよ園子…じゃ、そろそろ切るね」

園子「私もそろそろ、真さんと愛し合う時間だから切るわ!じゃーねー蘭!」

166: 2016/04/07(木)21:47:50 ID:bvD
蘭「愛し合うって…園子ほんと元気ね…ふふっ…」

蘭「…出ていった彼氏かあ…」

蘭「そういえば新一、言ってたなあ」

167: 2016/04/07(木)21:48:07 ID:bvD
探偵として活躍していた時の工藤新一が殺人犯と対峙したとき。
蘭は偶然その現場に居合わせていた。

新一「ったく…どうして俺は悪人に出会いやすいんだろうな」

犯人「…なぜお前は、どうあっても人を殺さないんだ?」

新一「違法だからだ。犯罪を見過ごせないからだ」

犯人「悪人を裁けず、人を守れないシビュラを…この国の腐った法律を!なぜそうまでして守り通そうとするんだ!」

新一「…法が人を守るんじゃない」

新一「人が法を守るんだ」

168: 2016/04/07(木)21:48:32 ID:bvD
新一「これまで悪を憎み、正しい生き方を探し求めてきた人々の想い」

新一「その積み重ねが法なんだよ」

新一「それは条文でもシステムでもない。誰もが心の中に抱えてる、脆くてかけがえのない想いだ」

新一「怒りや憎しみの力に比べたら、どうしようもなく簡単に壊れてしまう」

新一「だから…より良い世界を作ろうとした過去の全ての人たちの祈りを無意味にしてしまわない為に、それは最後まで頑張って守り通さなくちゃいけないんだよ」

新一「諦めちゃダメなんだ」

169: 2016/04/07(木)21:49:04 ID:bvD
探偵としての新一の姿を思い出すと、ナイトバロンとしての新一の姿まで一緒に思い出してしまう。

蘭「新一…あなたそう言ってたじゃない…」

蘭 (いつか誰もがそう思うような時代が来れば、潜在犯なんていなくなるはず)

蘭 (シビュラシステムも、ナイトバロンも無くなるでしょう)

蘭 (でも…)

170: 2016/04/07(木)21:49:53 ID:bvD
元太「なあ歩美。覚えてるか?」

歩美「うん…コナンくん、光彦くん、灰原さん…」

元太「なんで転校なんかしちゃったんだろうなあ。同時期に3人ともだぜ?」

歩美「駆け落ちとか?」

元太「バカ。それは2人でするもんだろ」

元太「それに阿笠博士もいなくなったことの説明がつかない」

歩美「コナンくんと灰原さんが駆け落ちして、光彦くんと阿笠博士も駆け落ちして…とかじゃない?」

元太「後の2人が意味わかんねえよ」

コナン、光彦、灰原、阿笠。
きっともう4人はこの世にいないのだろう。
元太も歩美も、薄々感づいてはいる。
だからこそ、口に出すことはできない。
それはただの妄想なのだから。

171: 2016/04/07(木)21:50:15 ID:bvD
・シビュラシステム 海外輸出?
・毛利小五郎 理想の探偵像とは
・鈴木財閥 新たな事業の噂
・天才科学者? 町の発明家の正体
・数年前に「詩ジン」の名で応募 詩大会優勝者現れず

目暮 (毛利くん…)

高木「また…毛利さんのことを…?」

目暮「最近、色相が濁って来たんだが…そろそろ危ないかもしれんな」

高木「僕もですよ…」

佐藤「執行官になるのも近いかもしれませんね…」

千葉「あっ、そういえば蘭さんが…」

172: 2016/04/07(木)21:51:11 ID:bvD
蘭「あの、監視官の方ですか?」

監視官「ええ。配属早々に事件とは災難ね」

蘭「本日付で刑事課に配属になりました、毛利蘭です。宜しくお願いします」

監視官「悪いけど、刑事課の人手不足は深刻なの。フォローはするけど新米扱いはできない」

蘭「承知しています。望むところです」

監視官「いい返事ね」

173: 2016/04/07(木)21:51:38 ID:bvD
監視官「今から会う連中は、同じ人間ではあるけれど、君とは全く違う判断基準で犯罪に対処する」

監視官「彼らの行動は時として君の理解を超えたものになるかもしれない」

監視官「信頼する分だけ用心もしなさい」

監視官「それが執行官」

監視官「君の預かる部下たちよ」

蘭 (刑事なんてロクなものじゃない…それでも誰かが引き受けなきゃいけない仕事)

蘭 (そうだよね?お父さん、新一)

174: 2016/04/07(木)21:51:52 ID:bvD
サイマティックスキャンで読み取った精神を、厚生省の生涯福祉支援システムであるシビュラが解析し、その適正結果を指標に最適幸福が追求できる社会。
シビュラの恩寵によってもたらされたホログラムが彩る鮮やかな完璧都市。
神殿に似た巨大ビル群。
モニタリング装置によって監視される住宅地。
この街は眠らないし止まらない。

175: 2016/04/07(木)21:52:02 ID:bvD
人の心の全てが機械で見通せる時代になっても、犯罪は絶えることがない。
正義に抗いながら、正義を貫く。
そう、たった20人ほどの刑事が知恵と勇気を振り絞れば、この街の治安は維持することができる。

176: 2016/04/07(木)21:53:00 ID:bvD
以上になります。
閲覧ありがとうございました。

177: 2016/04/07(木)21:56:58 ID:6ps
おつ

引用: 博士「できたぞみんな!ドミネーターじゃ!」