1: 2016/04/09(土) 21:10:04.20 ID:TGo9aYtt.net
ことり「この前の話、どうなったの?」

海未「この前の?」

ことり「告白の事」

海未「あ……」

ことり「まだしてないんだよね?」

ことり「もうすぐ卒業だよ?」

海未「で、ですが……」

ことり「早くしないと」

海未「そうなんですけど」

ことり「モタモタしてたら本当に卒業しちゃうよ?」

海未「……タイミングを見てですね」

2: 2016/04/09(土) 21:11:38.73 ID:TGo9aYtt.net
もうすぐ三年生は卒業してしまう。

そうなれば会う機会も少なくなってしまうでしょう。

想いを伝える時間は、僅かしか残されていない。

もっと一緒に居たい。

もっと触れ合っていたい。

ずっと見ていたい。

最近では授業中も部活中も、その事が頭から離れないでいる。

授業中にボンヤリしてしまい、穂乃果やことりに心配され

部活中はダンスのズレを指摘される始末。

4: 2016/04/09(土) 21:13:45.17 ID:TGo9aYtt.net
気分転換に作詞をしようとするもペンを持つ手が何度も止まる。

いつもならもっとスラスラ出てくるはずの詩が全く思い浮かばない。

集中しようとしてもある人の顔を思い浮かべてしまい

作詞する所ではなくなってしまう。

少し休憩を取ることにして、縁側に出て外の景色を眺めた。

お日様がポカポカしていて、もう春なんだなと思い知らされた。

春……それは別れの季節

心が締め付けられるのを感じた。

外を眺めながら、ふぅ……とため息を付いた。


告白のタイミングが……と言いながら、勇気を出せないまま

ずるずると引き伸ばし、時間だけが過ぎていきました。

6: 2016/04/09(土) 21:18:12.07 ID:TGo9aYtt.net
そんなある日

生徒会室

ガチャッ

絵里「あら、海未だけ?」

海未「絵里?」

海未「私は生徒会の書類作成を……」

今、絵里と二人きり……

二人きりになるなんて滅多になかったですし

心の準備も無かった私の胸は鼓動が高まる。

海未「あ、あの絵里は?」

絵里に胸のドキドキを悟られぬように、話しかける。

絵里「うん……もう卒業だから何かやり残した事無いかなって」

海未「そうなんですか」

7: 2016/04/09(土) 21:20:42.98 ID:TGo9aYtt.net
海未「……絵里達もうすぐ卒業しちゃうんですよね」

絵里「……そうね」

絵里が、ふと寂しそうな表情を見せる。

絵里「もっと海未達とμ'sやりたかったわね……」

その眼には、うっすらと涙が浮かんでいた。

海未「!」

その姿を見て一気に感情が高ぶる。

私だって、絵里達と一緒にずっとμ'sをやりたい。

μ'sで活動していて悲しかった時、辛かった時

隣で絵里が支えてくれた。

まだ気持ちだって伝えてないのに……

このまま伝えられないまま卒業してしまうなんて。

8: 2016/04/09(土) 21:23:45.96 ID:TGo9aYtt.net
絵里「海未?」

海未「え?」

絵里が私の頬に、スッと手を伸ばす。

絵里「どうしたの?」

海未「あ……」

その時、初めて自分が泣いている事に気が付いた。

自分が泣いているんだと分かった瞬間、ポロポロと涙が溢れる。

堪えようとすればする程に、涙が流れ落ちる。

海未「うっ…グスッ……」

海未「……色んな思いがよぎってしまいまして」

絵里「大丈夫?」

9: 2016/04/09(土) 21:26:08.16 ID:TGo9aYtt.net
今なら、少しくらい絵里に甘えたって

海未「あの……」

海未「あの時みたいに抱きしめてもらえますか?」

皆で遊びに行った帰りの駅のホーム。

皆で泣いて、抱き合った。

その時絵里は、泣いてる私を抱きしめてくれた。

もう一度やって欲しくて。

絵里「あの時?……あっ」

絵里「良いわよ、おいで」

海未「はい///」

両手を広げて私を迎え入れてくれた。

私も絵里の身体に腕を回し抱きつく。

とても柔らかくて温かい。

気分の落ち着く優しい香り。

絵里「よしよし」なでなで

私の涙が止むまで、抱きしめながら頭を撫でてくれた。

10: 2016/04/09(土) 21:30:31.55 ID:TGo9aYtt.net
海未「ありがとうございます」

絵里「落ち着いた?」

海未「はい。絵里に抱きしめられると凄く気持よくて落ち着きます」

絵里「も、もう…何言ってるのよ///」

本当に思ったことを言っただけなんですけど

絵里は、恥ずかしかったのか顔を赤くしてしまった。

海未「ふふ」

普段見せないような表情がとても可愛かった。

やっぱり私は、絵里が好きなんだ。

伝えたい、この気持ち……

海未「絵里」

絵里「ん?」

海未「私、絵里のことが好きです」

海未「このまま離れたくないです。絵里が好きだから、ずっと一緒にいたいです」


告白する時って、もっとドキドキ緊張するのかと思ってましたけど。

自分でも驚くほど簡単に、その言葉は口から出ました。

13: 2016/04/09(土) 21:34:33.85 ID:TGo9aYtt.net
少しの間ビックリしたような表情で固まっていた絵里でしたが

絵里「……あのね」

絵里「さっき言った、卒業前にやり残した事ってのは」

絵里「海未に気持ちを伝えたかったの」

絵里「でも、中々切り出せずにいたら先越されちゃったわ」

海未「?」

その言葉の意味が分からずに居ると、絵里はゆっくり近付いてきた。

絵里「私も、海未が大好きよ」

そう言って絵里は優しい笑顔を見せた。

その言葉に笑顔に温かく包み込まれた。

15: 2016/04/09(土) 21:36:24.40 ID:TGo9aYtt.net
今まで抑えていた感情が少しずつ溢れ出す。

ずっと好きだった人が私の事を好きだと言ってくれている。

大人しくしてられる訳が無いでしょう。

絵里の腕をグイッと引き寄せ、その身体を抱きしめた。

絵里は大胆な私に少し驚いた様子だったが、素直に私の腕に収まる。

ジワジワと広がる幸せと嬉しさに、絵里の身体をギュッと抱きしめた。

この溢れる嬉しさをどう表現して良いのか分からなくて

ただただ、抱きしめる事しか出来なかった。

手を離したくない。このままずっとこうしてたい。

16: 2016/04/09(土) 21:40:04.77 ID:TGo9aYtt.net
しばらく抱きしめあった後

身体を離すと絵里はジッと見つめてくる。

同じように絵里を見つめ返した。

一瞬の沈黙の後、二人で笑いあった。

絵里「海未ったら、中々離してくれないんだもん」

海未「あ、あんまりにも嬉しかったので///」

絵里「じゃあ……」

不意に絵里が顔を近付けてきた。

これはキス?

その動きに一瞬戸惑ったが、そのままゆっくりと目を閉じます。

私は準備万端ですから、いつでもどうぞ。

閉じた目の向こうで絵里がフフッと笑う。

17: 2016/04/09(土) 21:42:13.58 ID:TGo9aYtt.net
チュッ

海未「あれっ?」

期待を裏切られて思わず素っ頓狂な声が上がる。

待ち望んでいた唇ではなく頬に口付けられた。

絵里「どうしたのかしら?」

クスクスと笑い混じりの声。

海未「な、何でもないです///」

唇へのキスに期待を寄せていた為、顔がカァッと赤くなっていくのが分かりました。

絵里は私の頭に手を置き、ゆっくりと撫でた。

絵里「キス待ちしてる海未があんまりにも可愛かったからつい」

海未「もう///」

18: 2016/04/09(土) 21:45:21.72 ID:TGo9aYtt.net
絵里「今度はちゃんとするから」

海未「はい」

身体を寄せ、ピッタリとくっついた。

絵里「海未、大好き」

絵里は言葉とともに、私の手に指を絡めてきた。

海未「私も絵里が大好きです」

それに応じる様に、絵里の手を強く握り返した。

チュッ

私たちは、幸せなキスを交わした。



おしまい

20: 2016/04/09(土) 21:47:48.34 ID:QjeMyWDw.net
乙!素晴らしかったで

引用: 海未「別れの季節」