1: 2016/04/18(月) 16:10:43.34 ID:qn+JAEG3.net
第一部:カボチャ大王の青春時代
【前回のラブライブ!】
間近に迫ったハロウィーンのライブ!
μ’sのFuture StyleをMosakuして、ろくすっぽ寝ずにMeetingを重ねること三日三晩!
深夜のテンションで、ついに新しい宗教が生まれたよ!
ことり「おいまて、私たちが衣装をつくってる間に何をしてるんだあ!」
【前回のラブライブ!】
間近に迫ったハロウィーンのライブ!
μ’sのFuture StyleをMosakuして、ろくすっぽ寝ずにMeetingを重ねること三日三晩!
深夜のテンションで、ついに新しい宗教が生まれたよ!
ことり「おいまて、私たちが衣装をつくってる間に何をしてるんだあ!」
2: 2016/04/18(月) 16:11:56.63 ID:qn+JAEG3.net
海未 「まあまあ」
ことり「ハアハア……ごめんね、取り乱しちゃって。
でも大声をあげたくもなるよ。
にこちゃんと花陽ちゃんと私が一生懸命ミシンで衣装を作ってるときに、海未ちゃんたちは……」
穂乃果「Zzz」
海未 「驚かずに聞いてください、ついに新しい宗教が生まれました!
その名も『グレート・パンプキン教』」
ことり「ふざけるなあ!」
海未 「チュン!?」
穂乃果「Zzz」
ことり「ハアハア……ごめんね、取り乱しちゃって。
でも大声をあげたくもなるよ。
にこちゃんと花陽ちゃんと私が一生懸命ミシンで衣装を作ってるときに、海未ちゃんたちは……」
穂乃果「Zzz」
海未 「驚かずに聞いてください、ついに新しい宗教が生まれました!
その名も『グレート・パンプキン教』」
ことり「ふざけるなあ!」
海未 「チュン!?」
穂乃果「Zzz」
3: 2016/04/18(月) 16:13:05.46 ID:qn+JAEG3.net
ことり「何が『ついに新しい宗教が生まれました』だあ!
『ついに』……って、ほかにやることあったでしょ?」
海未 「さすが、ことりです。
たしかに私たちは、当初は新曲をつくるためにミーティングを始めたのでした」
ことり「そうでしょ?
それが分かっていて、どうして……
だいいち、コンセプトも決まっていて、それに合わせて衣装作りを並行して進めたんだよね?
ハロウィーンらしく、メルヘンチックな仮装をしてみようと……」
海未 「そうです。
しかし私たちは気づいたのです。
『あれ? 仮装ってA-RISEがもうやってるよね?』と」
ことり「そんなこと言っても、仕方ないじゃない。
ほかにやりようがないでしょ」
海未 「しかし、もっとインパクトを与えることができるかな、と。
そこで私たちは、検討に次ぐ検討を重ねました。
そして寝ぼけて朦朧とした意識の中で、さまざまな案が出たのです」
ことり「いったん寝ろよ」
穂乃果「Zzz……
ムニャムニャ……いつ寝るの? 今でしょ!」
ことり「今じゃねーよ!」
『ついに』……って、ほかにやることあったでしょ?」
海未 「さすが、ことりです。
たしかに私たちは、当初は新曲をつくるためにミーティングを始めたのでした」
ことり「そうでしょ?
それが分かっていて、どうして……
だいいち、コンセプトも決まっていて、それに合わせて衣装作りを並行して進めたんだよね?
ハロウィーンらしく、メルヘンチックな仮装をしてみようと……」
海未 「そうです。
しかし私たちは気づいたのです。
『あれ? 仮装ってA-RISEがもうやってるよね?』と」
ことり「そんなこと言っても、仕方ないじゃない。
ほかにやりようがないでしょ」
海未 「しかし、もっとインパクトを与えることができるかな、と。
そこで私たちは、検討に次ぐ検討を重ねました。
そして寝ぼけて朦朧とした意識の中で、さまざまな案が出たのです」
ことり「いったん寝ろよ」
穂乃果「Zzz……
ムニャムニャ……いつ寝るの? 今でしょ!」
ことり「今じゃねーよ!」
4: 2016/04/18(月) 16:14:02.85 ID:qn+JAEG3.net
海未 「まあ聞いてください。
新生μ’sとしてインパクトを与えるために、私たちは色々なアイディアをちぎっては投げ、ちぎっては投げ……」
ことり「投げたらダメでしょ……
それで、どんな案が出たの?」
海未 「部活動系アイドル、立場交換、デスメタル……」
ことり「ごめんね。やっぱり投げるしかないね。
深夜のテンションでドツボにハマっていく様子が目に浮かぶようだよ」
新生μ’sとしてインパクトを与えるために、私たちは色々なアイディアをちぎっては投げ、ちぎっては投げ……」
ことり「投げたらダメでしょ……
それで、どんな案が出たの?」
海未 「部活動系アイドル、立場交換、デスメタル……」
ことり「ごめんね。やっぱり投げるしかないね。
深夜のテンションでドツボにハマっていく様子が目に浮かぶようだよ」
5: 2016/04/18(月) 16:15:05.31 ID:qn+JAEG3.net
海未 「そんなわけで、紆余曲折ありまして。
色々と考えたすえに、私たちは消去法によって一つの結論に達したのです。
『あれ? これ新しい宗教興すしかなくね?』と」
穂乃果「Zzz……
ムニャムニャ……いつ興すの? 今でしょ!」
ことり「今じゃねーよ!
いや……いついかなるときでもスクールアイドルは新興宗教をつくらねーよ!」
色々と考えたすえに、私たちは消去法によって一つの結論に達したのです。
『あれ? これ新しい宗教興すしかなくね?』と」
穂乃果「Zzz……
ムニャムニャ……いつ興すの? 今でしょ!」
ことり「今じゃねーよ!
いや……いついかなるときでもスクールアイドルは新興宗教をつくらねーよ!」
6: 2016/04/18(月) 16:15:42.30 ID:qn+JAEG3.net
海未 「しかし論理的には……」
ことり「寝ぼけた海未ちゃんたちの頭のどこにロジカル・シンキングが宿るというんだあ!
だいたい消去法って、おかしいでしょ!
デスメタルか新興宗教かの二択って……もっとこう……もっとこう、何かあるでしょ!」
海未 「しかしロックンロールのムーヴメントには、いつも新興宗教に通じる危うさがあると思いませんか」
ことり「それ今関係ないよね?」
海未 (・8・)?
ことり「とぼけるなあ!」
ことり「寝ぼけた海未ちゃんたちの頭のどこにロジカル・シンキングが宿るというんだあ!
だいたい消去法って、おかしいでしょ!
デスメタルか新興宗教かの二択って……もっとこう……もっとこう、何かあるでしょ!」
海未 「しかしロックンロールのムーヴメントには、いつも新興宗教に通じる危うさがあると思いませんか」
ことり「それ今関係ないよね?」
海未 (・8・)?
ことり「とぼけるなあ!」
7: 2016/04/18(月) 16:16:24.55 ID:qn+JAEG3.net
海未 「まあまあ、そんなに荒ぶらないでください。
だってあなたは、われらの新興宗教『グレート・パンプキン教』の唯一神なのですから」
ことり「ごめん、ちょっと取り乱しちゃって……
……って、何を言っているんだあ!
どうして私が神に祭り上げられてるんだ、筋の通った理屈があるなら言ってみろお!」
穂乃果(・8・)?
ことり「やっと起きてくれたの、穂乃果ちゃん」
穂乃果「……!
唯一神、カボチャ大王さま!」
ことり「カボチャ大王じゃねーよ!」
だってあなたは、われらの新興宗教『グレート・パンプキン教』の唯一神なのですから」
ことり「ごめん、ちょっと取り乱しちゃって……
……って、何を言っているんだあ!
どうして私が神に祭り上げられてるんだ、筋の通った理屈があるなら言ってみろお!」
穂乃果(・8・)?
ことり「やっと起きてくれたの、穂乃果ちゃん」
穂乃果「……!
唯一神、カボチャ大王さま!」
ことり「カボチャ大王じゃねーよ!」
8: 2016/04/18(月) 16:17:47.65 ID:qn+JAEG3.net
穂乃果「まあまあ、落ち着いて。
ちょっと私たちの言い分も聞いてほしいな、ことりちゃん。
ふざけすぎたミーティングの最中に、私たちがどんなふうに考えたのか」
ことり「やっぱりふざけてたのか……」
穂乃果「私たちがアホな話をしている最中にも、
ことりちゃんは、不満ひとつ口にせずに衣装をつくってくれている。
そこで私たちは気づいたんだ。
『あれ、もしかしてことりちゃんって神じゃね?』って」
ことり「そんなむちゃくちゃな理由で納得できるわけないだろお!
海未ちゃんはどう思うの?」
海未 「え、私ですか?
そりゃもちろん『ことり、マジ神』と……」
ことり「お? ふざけてんのか園田?」
海未 「Zzz」
ことり「ごまかすなあ!」
海未 「Zzz……
……いつ寝るの? いm」
ことり「今じゃねーよ!」
ちょっと私たちの言い分も聞いてほしいな、ことりちゃん。
ふざけすぎたミーティングの最中に、私たちがどんなふうに考えたのか」
ことり「やっぱりふざけてたのか……」
穂乃果「私たちがアホな話をしている最中にも、
ことりちゃんは、不満ひとつ口にせずに衣装をつくってくれている。
そこで私たちは気づいたんだ。
『あれ、もしかしてことりちゃんって神じゃね?』って」
ことり「そんなむちゃくちゃな理由で納得できるわけないだろお!
海未ちゃんはどう思うの?」
海未 「え、私ですか?
そりゃもちろん『ことり、マジ神』と……」
ことり「お? ふざけてんのか園田?」
海未 「Zzz」
ことり「ごまかすなあ!」
海未 「Zzz……
……いつ寝るの? いm」
ことり「今じゃねーよ!」
9: 2016/04/18(月) 16:20:05.68 ID:qn+JAEG3.net
こうしてわたしたちは、新しい宗教「グレート・パンプキン教」をつくりました。
信仰の対象は、恥ずかしながら(本当に恥ずかしいのですが)わたしです。
絵里 「衣装、似合ってるわよ。カボチャ大王さま」
凛 「やっぱりことりちゃんの可愛さは、マジ神だにゃー」
ことり「えへへ、そんなに褒められると照れちゃうな。
……それにしても、何でもかんでも『マジ神』という最近の若者言葉には疑問を感じるよ」
信仰の対象は、恥ずかしながら(本当に恥ずかしいのですが)わたしです。
絵里 「衣装、似合ってるわよ。カボチャ大王さま」
凛 「やっぱりことりちゃんの可愛さは、マジ神だにゃー」
ことり「えへへ、そんなに褒められると照れちゃうな。
……それにしても、何でもかんでも『マジ神』という最近の若者言葉には疑問を感じるよ」
10: 2016/04/18(月) 16:20:58.52 ID:qn+JAEG3.net
カボチャ大王としての自分の役割には疑問を感じざるをえませんでしたが、それでも私は、今回の歌詞が好きでした。
真姫 「カボチャ大王さま、この聖歌で貴方を讃えさせてください」
希 「全知全能なる貴方なら、星にもきっと手がとどくでしょう」
ことり「聖歌って……
でも、素敵な歌だよね。
あの星……」
手を伸ばしたら
いつか
つかめそうだよ
にこ 「カボチャ大王さま、まだ手を伸ばさないのですか?」
花陽 「いつ伸ばすのですか?」
ことり「今でしょ……と言いたいところだけど、今じゃないよ。
今は、私の上で踊っている星を見るだけで満足だからね」
真姫 「カボチャ大王さま、この聖歌で貴方を讃えさせてください」
希 「全知全能なる貴方なら、星にもきっと手がとどくでしょう」
ことり「聖歌って……
でも、素敵な歌だよね。
あの星……」
手を伸ばしたら
いつか
つかめそうだよ
にこ 「カボチャ大王さま、まだ手を伸ばさないのですか?」
花陽 「いつ伸ばすのですか?」
ことり「今でしょ……と言いたいところだけど、今じゃないよ。
今は、私の上で踊っている星を見るだけで満足だからね」
11: 2016/04/18(月) 16:21:23.32 ID:qn+JAEG3.net
穂乃果「でも私、信じてるよ。
いつか、ことりちゃんは、ずっと遠くまで飛んでいけるって」
ことり「うん、いつかね」
穂乃果「いつかって、いつなんだろうね」
ことり「高校生の私たちには、まだ先のことすぎて、よくわからないよね。
だって今は、星にまで手を伸ばさなくても、こんなに近くに大切な友達がいるんだもの」
いつか、ことりちゃんは、ずっと遠くまで飛んでいけるって」
ことり「うん、いつかね」
穂乃果「いつかって、いつなんだろうね」
ことり「高校生の私たちには、まだ先のことすぎて、よくわからないよね。
だって今は、星にまで手を伸ばさなくても、こんなに近くに大切な友達がいるんだもの」
12: 2016/04/18(月) 16:22:06.66 ID:qn+JAEG3.net
とはいえ、わたしにも分かっていました。
何が分かっていたのかって?
それはもちろん、カボチャにはβ-カロチンが豊富なことです。
それからもう一つ。
カボチャ大王は、いつか友達のそばを離れなければいけないこと。
何が分かっていたのかって?
それはもちろん、カボチャにはβ-カロチンが豊富なことです。
それからもう一つ。
カボチャ大王は、いつか友達のそばを離れなければいけないこと。
13: 2016/04/18(月) 16:22:49.02 ID:qn+JAEG3.net
もちろん、友達がきらいだから離れるのではありません。
そうではなくて、友達のために、何でもしてあげたいからこそ、私は友達のそばを離れるのです。
友達が金の帽子をかぶってほしいと言えば、私は金の帽子ををかぶってみせます。
友達が高く跳んでほしいと言えば、私は高く跳んでみせます。
友達がお空の星をほしいと言えば、私は……
そうではなくて、友達のために、何でもしてあげたいからこそ、私は友達のそばを離れるのです。
友達が金の帽子をかぶってほしいと言えば、私は金の帽子ををかぶってみせます。
友達が高く跳んでほしいと言えば、私は高く跳んでみせます。
友達がお空の星をほしいと言えば、私は……
14: 2016/04/18(月) 16:23:34.28 ID:qn+JAEG3.net
【グレート・パンプキン教 第二聖歌】
金の帽子をかぶりなよ
あの娘が振り向いてくれるなら
それから、もし高く跳べるなら
跳んでごらんよ、あの娘のために
あの娘が声を上げてくれるまで――
「金の帽子の愛しいひと、高く跳べる愛しいひと、
あなたを私のものにしなくちゃ」ってね
(作詞:トーマス・パーク・ダンヴィリエ)
金の帽子をかぶりなよ
あの娘が振り向いてくれるなら
それから、もし高く跳べるなら
跳んでごらんよ、あの娘のために
あの娘が声を上げてくれるまで――
「金の帽子の愛しいひと、高く跳べる愛しいひと、
あなたを私のものにしなくちゃ」ってね
(作詞:トーマス・パーク・ダンヴィリエ)
15: 2016/04/18(月) 16:25:02.10 ID:qn+JAEG3.net
それから二年後、お別れの日が来ました。
みんなにお別れの言葉を告げたあと、わたしは海未ちゃんに電話をかけました。
海未 「どうしたのですか、カボチャ大王」
ことり「だって、みんなと会えなくなっちゃう」
海未 「大丈夫ですよ。
私たちは皆、今でも、グレート・パンプキン教の信者ですからね」
ことり「でも涙が止まらないの」
海未 「それでいいんですよ。
だって今日は、カボチャ大王の青春時代の終わりの日ですからね。
カボチャは畑のダイヤモンド、涙は青春のダイヤモンドなのです」
みんなにお別れの言葉を告げたあと、わたしは海未ちゃんに電話をかけました。
海未 「どうしたのですか、カボチャ大王」
ことり「だって、みんなと会えなくなっちゃう」
海未 「大丈夫ですよ。
私たちは皆、今でも、グレート・パンプキン教の信者ですからね」
ことり「でも涙が止まらないの」
海未 「それでいいんですよ。
だって今日は、カボチャ大王の青春時代の終わりの日ですからね。
カボチャは畑のダイヤモンド、涙は青春のダイヤモンドなのです」
16: 2016/04/18(月) 16:27:42.45 ID:qn+JAEG3.net
ことり「ふふふ。
カボチャって、めっちゃ固いもんね」
海未 「ふふふ、そうですよ。
そのかわり、明日の飛行機の中では、もう泣きやんでいてくれますように」
ことり「うん」
海未 「明日から始まるカボチャ大王の遍歴時代が、幸多いものでありますように」
ことり「ありがとう、海未ちゃん」
海未 「ねえ、ことり。
『カボチャ大王』って、あなたの行く国の言葉では、何て言うのですか?」
ことり「グラン・ロワ・シトルイユ」
海未 「Au revoir, grand roi citrouille」
カボチャって、めっちゃ固いもんね」
海未 「ふふふ、そうですよ。
そのかわり、明日の飛行機の中では、もう泣きやんでいてくれますように」
ことり「うん」
海未 「明日から始まるカボチャ大王の遍歴時代が、幸多いものでありますように」
ことり「ありがとう、海未ちゃん」
海未 「ねえ、ことり。
『カボチャ大王』って、あなたの行く国の言葉では、何て言うのですか?」
ことり「グラン・ロワ・シトルイユ」
海未 「Au revoir, grand roi citrouille」
17: 2016/04/18(月) 16:28:38.40 ID:qn+JAEG3.net
第二部:カボチャ大王の遍歴時代
【前回のラブライブ!】
カボチャは畑のダイヤモンド、涙は青春のダイヤモンド。
ダイヤモンドを宝石箱に入れて、カボチャ大王は少しだけ大人になりました。
どのくらい大人になったかって?
そうですね、「わたし」が「私」になるくらいかな。
【前回のラブライブ!】
カボチャは畑のダイヤモンド、涙は青春のダイヤモンド。
ダイヤモンドを宝石箱に入れて、カボチャ大王は少しだけ大人になりました。
どのくらい大人になったかって?
そうですね、「わたし」が「私」になるくらいかな。
18: 2016/04/18(月) 16:29:18.03 ID:qn+JAEG3.net
午後二時。市場で買ったシトルイユの下拵えを終える。
日曜日、辺りはしんと静まりかえり、どこかで教会の鐘が鳴っている。
「金の帽子をかぶりなよ」
きょうのおやつは、ガトー・ドゥ・シトルイユなのである。
「あの娘が振り向いてくれるなら」
うまくできたら、ひさしぶりに国際電話をかけてみよう。
「それから、もし高く跳べるなら」
向こうはもう夜だけど、ちゃんと出てくれるかな。
「跳んでごらんよ、あの娘のために」
どうして私、ここにいるんだっけ。
いつまで私、前に進めばいいんだっけ。
「あの娘が声を上げてくれるまで――
『金の帽子の愛しいひと、高く跳べる愛しいひと
あなたを私のものにしなくちゃ』ってね」
日曜日、辺りはしんと静まりかえり、どこかで教会の鐘が鳴っている。
「金の帽子をかぶりなよ」
きょうのおやつは、ガトー・ドゥ・シトルイユなのである。
「あの娘が振り向いてくれるなら」
うまくできたら、ひさしぶりに国際電話をかけてみよう。
「それから、もし高く跳べるなら」
向こうはもう夜だけど、ちゃんと出てくれるかな。
「跳んでごらんよ、あの娘のために」
どうして私、ここにいるんだっけ。
いつまで私、前に進めばいいんだっけ。
「あの娘が声を上げてくれるまで――
『金の帽子の愛しいひと、高く跳べる愛しいひと
あなたを私のものにしなくちゃ』ってね」
19: 2016/04/18(月) 16:30:05.43 ID:qn+JAEG3.net
お菓子が順調にできあがりそうなのを確かめて、私は電話をかけた。
「もしもし、海未ちゃん?」
受話器の向こうから、なつかしい声が聞こえてきた。
「はい。こんばんは……
いえ、そちらの時間では『こんにちは』ですね。ことり」
オーブンのタイマーが鳴った。
でき上がったカボチャのケーキの甘い香りにつつまれて、私は目を細めてこう言った。
「オレオレ。カボチャ大王」
「もしもし、海未ちゃん?」
受話器の向こうから、なつかしい声が聞こえてきた。
「はい。こんばんは……
いえ、そちらの時間では『こんにちは』ですね。ことり」
オーブンのタイマーが鳴った。
でき上がったカボチャのケーキの甘い香りにつつまれて、私は目を細めてこう言った。
「オレオレ。カボチャ大王」
20: 2016/04/18(月) 16:30:38.67 ID:qn+JAEG3.net
「カボチャ大王、今日のご用事は何ですか?」
「カボチャのケーキがおいしく焼けたから、食べにおいでよ」
「ふふふ、急に海の向こうまで行けるわけないじゃないですか」
「でも日曜日の午後って、急に寂しくなって、急に誰かに会いたくなるんだよ」
「町に出ればいいじゃないですか、可愛い小鳥さん」
「会えれば誰でもいいというわけじゃないんだよ」
「あら、では誰なら満足なんですか?」
「カボチャ大王の忠実な信者だよ」
「カボチャのケーキがおいしく焼けたから、食べにおいでよ」
「ふふふ、急に海の向こうまで行けるわけないじゃないですか」
「でも日曜日の午後って、急に寂しくなって、急に誰かに会いたくなるんだよ」
「町に出ればいいじゃないですか、可愛い小鳥さん」
「会えれば誰でもいいというわけじゃないんだよ」
「あら、では誰なら満足なんですか?」
「カボチャ大王の忠実な信者だよ」
21: 2016/04/18(月) 16:31:03.35 ID:qn+JAEG3.net
「ふふふ、信じてくれているのですか。
いまでも私が、カボチャ大王の忠実な信者だということ」
「うん、もちろんだよ。
信ずる者に、カボチャ大王はいつでも最大限のβ-カロチンとサービス精神を発揮するのだよ。
金の帽子をかぶってほしいなら、君のために金の帽子をかぶろう。
高く跳んでほしいなら、君のために高く跳ぼう」
「ありがとうございます」
「カボチャのケーキが食べたいなら、君のために、とっておきのガトー・ドゥ・シトルイユを焼こう」
「ありがとうございます」
いまでも私が、カボチャ大王の忠実な信者だということ」
「うん、もちろんだよ。
信ずる者に、カボチャ大王はいつでも最大限のβ-カロチンとサービス精神を発揮するのだよ。
金の帽子をかぶってほしいなら、君のために金の帽子をかぶろう。
高く跳んでほしいなら、君のために高く跳ぼう」
「ありがとうございます」
「カボチャのケーキが食べたいなら、君のために、とっておきのガトー・ドゥ・シトルイユを焼こう」
「ありがとうございます」
22: 2016/04/18(月) 16:31:53.35 ID:qn+JAEG3.net
「ねえ、海未ちゃん」
「……どうしたのですか? カボチャ大王さま」
「カボチャ大王は、なぜここにいるのだろうか」
「信ずる者にβ-カロチンを与えるためではありませんか」
「それもあるけど、別の理由もあった気がするんだよ」
「……どうしたのですか? カボチャ大王さま」
「カボチャ大王は、なぜここにいるのだろうか」
「信ずる者にβ-カロチンを与えるためではありませんか」
「それもあるけど、別の理由もあった気がするんだよ」
23: 2016/04/18(月) 16:32:29.99 ID:qn+JAEG3.net
「信ずる者のために、とっておきの綺麗な服をデザインするためではありませんか」
「……」
「グレート・パンプキン教団の最初の信者である穂乃果と私は、いつでも楽しみにしているのですよ。
カボチャ大王が、μ’sのみんなのために作ってくれたような服を、こんどは世界中のみんなのために作ってくれること」
「でも、わからなくなってきちゃった。
μ’sの衣装係は私だったけど、この世界の衣装係は、私以外にもたくさんいる気がするの」
「……」
「グレート・パンプキン教団の最初の信者である穂乃果と私は、いつでも楽しみにしているのですよ。
カボチャ大王が、μ’sのみんなのために作ってくれたような服を、こんどは世界中のみんなのために作ってくれること」
「でも、わからなくなってきちゃった。
μ’sの衣装係は私だったけど、この世界の衣装係は、私以外にもたくさんいる気がするの」
24: 2016/04/18(月) 16:33:18.36 ID:qn+JAEG3.net
「何を仰るのですか、カボチャ大王。
グレート・パンプキン教は、カボチャ大王を唯一神とする一神教ではありませんか。
この世界に服を着せることができるのは、あなただけなのです」
「でも、現に海未ちゃんは、私がいなくてもちゃんと可愛い服を着てるでしょ」
「いいえ。
あなたが不安なら、いつでも私はスッポンポンになります」
「ちょっと」
「カボチャ大王さまのためなら、脱ぎます」
「海未ちゃん、いかがわしい電話みたいになってるから!」
グレート・パンプキン教は、カボチャ大王を唯一神とする一神教ではありませんか。
この世界に服を着せることができるのは、あなただけなのです」
「でも、現に海未ちゃんは、私がいなくてもちゃんと可愛い服を着てるでしょ」
「いいえ。
あなたが不安なら、いつでも私はスッポンポンになります」
「ちょっと」
「カボチャ大王さまのためなら、脱ぎます」
「海未ちゃん、いかがわしい電話みたいになってるから!」
25: 2016/04/18(月) 16:34:14.27 ID:qn+JAEG3.net
「ほらほら、あとは下着だけですよ」
「わああ、それ以上はだめえ!」
「……ねえことり、これで分かったでしょう。
あなたがいなければ、私、パンツの一枚も履けない無力な人間なんですよ」
「せめてパンツは履いてよ、人として」
「わああ、それ以上はだめえ!」
「……ねえことり、これで分かったでしょう。
あなたがいなければ、私、パンツの一枚も履けない無力な人間なんですよ」
「せめてパンツは履いてよ、人として」
26: 2016/04/18(月) 16:35:02.25 ID:qn+JAEG3.net
「あなたが望めば、世界のみんなが綺麗な服を着られるようになるのです。
目を閉じてごらんなさい。
私は今、どんな格好をしていますか」
「やっぱり、いかがわしい電話みたいになってるよ……」
「目を閉じて、当ててみてください。
私の下着の色は、何色ですか」
「こら」
目を閉じてごらんなさい。
私は今、どんな格好をしていますか」
「やっぱり、いかがわしい電話みたいになってるよ……」
「目を閉じて、当ててみてください。
私の下着の色は、何色ですか」
「こら」
27: 2016/04/18(月) 16:35:41.92 ID:qn+JAEG3.net
「ふふふ、『当てる』という言い方には語弊がありますね。
世界のすべては、あなたが口にしたとおりの装いを身にまとうのです。
だってあなたは、全知全能のカボチャ大王ではありませんか」
「うん」
「お願いします、カボチャ大王さま。
どうか私を、とびっきり可愛くしてください」
「わかった。
それなら、私の言う通りの服を着たまえ」
「仰せのままに」
世界のすべては、あなたが口にしたとおりの装いを身にまとうのです。
だってあなたは、全知全能のカボチャ大王ではありませんか」
「うん」
「お願いします、カボチャ大王さま。
どうか私を、とびっきり可愛くしてください」
「わかった。
それなら、私の言う通りの服を着たまえ」
「仰せのままに」
28: 2016/04/18(月) 16:36:09.45 ID:qn+JAEG3.net
「あたたかいパジャマ。
まだ夜は冷えるから、風邪をひかないようにね」
「色は?」
「海未ちゃんの好きな色」
まだ夜は冷えるから、風邪をひかないようにね」
「色は?」
「海未ちゃんの好きな色」
29: 2016/04/18(月) 16:36:34.87 ID:qn+JAEG3.net
「わかりました。
それから、何をすればいいでしょうか?」
「電気を消して。
明日もお稽古で朝が早いだろうから、ゆっくり休んでね」
それから、何をすればいいでしょうか?」
「電気を消して。
明日もお稽古で朝が早いだろうから、ゆっくり休んでね」
30: 2016/04/18(月) 16:37:05.47 ID:qn+JAEG3.net
「わかりました。
それから、何をすればいいでしょうか?」
「カボチャ大王のこと、これからも信じてくれる?」
「当然です」
「カボチャ大王は、どんな帽子をかぶってる?」
「金の帽子です」
「海未ちゃんは、その帽子が好き?」
「だーいすきです」
「カボチャ大王は、どんなふうに跳ぶ?」
「高く跳んでくれます」
「海未ちゃんは、それを見てどう思う?」
「すごく嬉しく思います」
それから、何をすればいいでしょうか?」
「カボチャ大王のこと、これからも信じてくれる?」
「当然です」
「カボチャ大王は、どんな帽子をかぶってる?」
「金の帽子です」
「海未ちゃんは、その帽子が好き?」
「だーいすきです」
「カボチャ大王は、どんなふうに跳ぶ?」
「高く跳んでくれます」
「海未ちゃんは、それを見てどう思う?」
「すごく嬉しく思います」
31: 2016/04/18(月) 16:37:35.28 ID:qn+JAEG3.net
「えへへ。ありがとう。
金の帽子をかぶって、高く跳んだら……」
「ことり?」
「……いつか星にも、手がとどくかな?」
「とどきますよ」
「そしたら、とどけに行くね」
「待ってますよ。夢の中でね」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
金の帽子をかぶって、高く跳んだら……」
「ことり?」
「……いつか星にも、手がとどくかな?」
「とどきますよ」
「そしたら、とどけに行くね」
「待ってますよ。夢の中でね」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
32: 2016/04/18(月) 16:38:03.73 ID:qn+JAEG3.net
電話を切ったあとで、私はカボチャのケーキをオーブンから取り出した。
「いただきます」
ひとりで食べる畑のダイヤモンドは、青春のダイヤモンドの味がする。
「いただきます」
ひとりで食べる畑のダイヤモンドは、青春のダイヤモンドの味がする。
33: 2016/04/18(月) 16:38:34.02 ID:qn+JAEG3.net
今の私は、金の帽子をかぶってはいないし、高くも跳べない。
それでも私のことを信じてくれる人がいるのなら、いつか私の手は、天の星にもとどくだろう。
それでも私のことを信じてくれる人がいるのなら、いつか私の手は、天の星にもとどくだろう。
34: 2016/04/18(月) 16:39:24.49 ID:qn+JAEG3.net
金の帽子をかぶりなよ
あの娘が振り向いてくれるなら
それから、もし高く跳べるなら
跳んでごらんよ、あの娘のために
あの娘が声を上げてくれるまで――
「金の帽子の愛しいひと、高く跳べる愛しいひと、
あなたを私のものにしなくちゃ」ってね
あの娘が振り向いてくれるなら
それから、もし高く跳べるなら
跳んでごらんよ、あの娘のために
あの娘が声を上げてくれるまで――
「金の帽子の愛しいひと、高く跳べる愛しいひと、
あなたを私のものにしなくちゃ」ってね
35: 2016/04/18(月) 16:40:20.35 ID:qn+JAEG3.net
カボチャのケーキを食べ終わったら、お気に入りの帽子をかぶって、町に出かけてみようかな。
知らない人が知らない言葉で話している、未だ私の知らない世界に。
知らない人が知らない言葉で話している、未だ私の知らない世界に。
36: 2016/04/18(月) 16:40:48.05 ID:qn+JAEG3.net
おわり
38: 2016/04/18(月) 17:06:09.89 ID:DZO90OBX.net
乙
面白かった
面白かった
引用: 【SS】グラン・ロワ・シトルイユ

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