550:◆58jPV91aG. 2009/07/14(火) 11:21:15.44 ID:ElE255w0

551: 2009/07/14(火) 11:22:07.45 ID:ElE255w0
4.チャナガブル 「アンコウの肝は美味しいんですぞ」

―翌朝、樹海、ヤマツカミの聖域―

テオ・テスカトル 「それでは、向こうの大陸に渡るのは私、クック殿にナルガ殿、そして女児ということでよろしいな」
ラギアクルス 「あまり大勢で押しかけられても困る」
ラギアクルス 「そちらに戦争の意思が皆無であるというのであれば、少数で来られるのが礼儀であろう」
テオ・テスカトル 「仰るとおりだが、こちらにも事情というものがある」
テオ・テスカトル 「レウスとレイアには遠慮を願ったが……」
テオ・テスカトル 「キング殿はいかがする?」
キングチャチャブー 「…………」
少女 「キングさんも一緒に行こうよ」
キングチャチャブー 「……餓鬼の観光ァ、俺の趣味じゃァねぇ。勝手にやってろ……」
少女 「そっか……残念だな……」
キングチャチャブー 「…………」
テオ・テスカトル 「そういうわけだ、妻よ。留守の間を頼む」
ナナ・テスカトリ 「ええ、かしこまりました」
ナナ・テスカトリ 「少女ちゃん、ウラちゃんも充分に気をつけるのですよ」
少女 「うん!」
ウラガンキン 「うもー」
モンハン イャンクック ペン画 原画
552: 2009/07/14(火) 11:23:39.50 ID:ElE255w0
ラギアクルス 「時間が惜しい。日が天中となり、少し傾き、日差しがおさまった時分に出立したいが」
テオ・テスカトル 「かしこまった。クック殿、よろしいか?」
クック 「こちらからは依存はないよ。ナルガは?」
ナルガクルガ 「……別にはない」
ナルガクルガ 「ただ、こちらに卵を盗んできた猫はどうする?」
ラギアクルス 「あぁ……それを失念していた」
ラギアクルス 「とりあえず、会わせてくれるか?」
ナルガクルガ 「いいだろう、少し待っていろ。連れてくる」
ラギアクルス 「…………」
ラギアクルス 「(今ここにウラガンキン様がいらっしゃるということは、その猫は、砂原の秘境、ボルボロス様の皇居に侵入したということ……)」
ラギアクルス 「(あのあたりはドス一族の縄張り……警備が薄かったということか……?)」
ラギアクルス 「(通常では考えられん……)」
ラギアクルス 「(戻ったら、あ奴らも詰問せねばなるまい)」

553: 2009/07/14(火) 11:25:02.17 ID:ElE255w0
~数分後~

トレニャー 「ひぃぃ。お助けぇぇ」
ナルガクルガ 「無駄口を叩くな。行け」
トレニャー 「もう知ってることは全部話しましたニャァァ……(おどおど)」
ヤマツカミ 「君が、卵を盗んだというアイルーかね?」
トレニャー 「い……いかにもそうでさぁ。でもそんな重要な卵だとは思わなくて……」
トレニャー 「そ、それに、崖の下に落ちてたんでさァ!」
トレニャー 「オイラはそれを拾ってきただけでさ! 無実なんでさ!」
ラギアクルス 「何だって……? 崖の下に?」
トレニャー 「ひぃぃ! また何か変なのがいるニャ!」
ナルガクルガ 「騒ぐな。質問に答えろ……」
トレニャー 「わ、分かりましたニャ……雪原と水没林の間あたりで拾ったんでさ……」
トレニャー 「水にプカプカ浮かんでやして……」
トレニャー 「その時は、何となく荷物に放り込んだんでさ」
トレニャー 「オイラは無実でさ!」

554: 2009/07/14(火) 11:26:00.14 ID:ElE255w0
ラギアクルス 「…………」
ナルガクルガ 「と、いうわけだ。こちら側はこう主張している」
ラギアクルス 「一つ、質問したい」
トレニャー 「な……何だニャ?」
ラギアクルス 「もしかして、洞窟の裏側にひっかかっていたのか?」
トレニャー 「!! ま、まさにそうでさ!」
トレニャー 「船を止めたら、浮かんでるのが見えたって訳で……」
ナルガクルガ 「それが、どうかしたのか?」
ラギアクルス 「雪原と水没林を繋ぐ運河は、流れが速い……」
ラギアクルス 「卵が引っかかるとしたらその位置しか考えられぬ」
ラギアクルス 「少し水流を外れれば、真っさかさまに滝の下に落ちていたところであった」
ラギアクルス 「(偶然か……?)」
ラギアクルス 「(いや、これは、この猫の言うとおりだとすると、もしかしたら……)」
ラギアクルス 「…………」
ラギアクルス 「(…………我は何を考えているのだ)」
ラギアクルス 「(身内を疑うなど…………!)」

555: 2009/07/14(火) 11:27:10.32 ID:ElE255w0
トレニャー 「そ……そろそろオイラを解放しておくんなせぇ。本当にただ拾っただけでさ」
ヤマツカミ 「ふむ……ラギアクルス殿、どう思われる?」
ラギアクルス 「本来、皇居に猫が侵入できるとは思いがたいところがあった」
ラギアクルス 「どうしてそんなところに卵が浮かんでいたのかは分からないが……」
ラギアクルス 「どちらかというと、その言の方が信憑性はある、としか言えぬ」
トレニャー 「旦那ァ! 話が分かりやすぜ!!」
ナルガクルガ 「……黙っていろ」
トレニャー 「……ひゃい…………」
ラギアクルス 「………………」
ラギアクルス 「(雪原付近は、我が騎士団もあまり立ち入らない場所だ……)」
ラギアクルス 「(しかし、あそこを通れば、遠回りをせずにすぐに砂原に出ることができる)」
ラギアクルス 「(……ドス家を呼ぶか……?)」
ラギアクルス 「(…………いや…………)」

556: 2009/07/14(火) 11:28:18.74 ID:ElE255w0
ラギアクルス 「トレニャーと言ったな。本来なら故意だろうが何だろうが、卵を盗んだ者は重罪だ」
ラギアクルス 「解放などという生易しい言質などとれるわけもない」
トレニャー 「そ……そんニャ…………」
ラギアクルス 「しかし、お前……雪原の地理を知っているか?」
トレニャー 「! へへんニャ! おいらにとっちゃぁ、あのあたりは庭みてぇなもんでさぁ!」
ラギアクルス 「猫ならではの柔軟性というわけか……」
ラギアクルス 「そこを通れば、ボルボロスさまのところに近いのだが……」
ラギアクルス 「生憎、我ら龍族は滅多に近寄らぬ」
ラギアクルス 「トレニャーとやら。雪原の道案内、斥候を勤めるのであれば、そちの罪、酌量の余地を与えてやっても良い」
トレニャー 「えぇぇぇぇぇえぇええ!? またあそこに行くんですかィ!?」
ラギアクルス 「? 嫌か?」
トレニャー 「嫌って聞かれりゃ嫌でさぁ! だってあそこには…………」
ナルガクルガ 「(ギ口リ)」
トレニャー 「(はぁぁ~…………)分かりやしたよ。いきゃァいいんでしょ。いきゃぁ」
トレニャー 「それで無罪になるってんなら、たとえ火の中水の中、オトモしやす」

557: 2009/07/14(火) 11:29:45.72 ID:ElE255w0
ヤマツカミ 「(ふむ……ただの激情漢と思っていたが、中々この男、冷静な判断を下す……)」
ヤマツカミ 「テオ殿、いかがじゃろうか」
テオ・テスカトル 「土地勘に詳しいものがついてくるというのは心強い。断るにべもない」
テオ・テスカトル 「道案内人が詳しくないと言うのであれば、尚更だ」
ヤマツカミ 「そういうわけじゃ、トレニャーよ。共にゆくのじゃ」
トレニャー 「へいへい。しかたねぇっすねぇ…………」
ラギアクルス 「……まだ貴様が、ウラガンキン様を盗んだことは許してはおらぬ」
トレニャー 「ひぃっ。オイラぁ勝ち目のねぇ戦いはしねぇんでさ」
トレニャー 「ウラガンキン? ……あひゃぁ! 変なのがいる!」
ウラガンキン 「まんま!(ばたばた)」
少女 「あ……っ……怖がらせないでください」
トレニャー 「こいつは失礼しゃした……でも、もしかしてアレが……」
ナルガクルガ 「……ああ。うまれている。既にな」
トレニャー 「へえあぁ!? 何てこった!! 生きてたんですかい!?」

558: 2009/07/14(火) 11:31:08.01 ID:ElE255w0
―雪原、モンスターの墓場―

×××××× 「(バサァッ! バサァッ!)」
×××××× 「ちぃ! いつ来ても辛気臭いところだよ!」
×××××× 「寒くって冷たくって、目も上手く開きやしない!」
×××××× 「けぇ! こんなところに住んでる奴の気が知れないね!!」
ベリオロス 「…………」
×××××× 「おっと、聞えてたのかい」
ベリオロス 「電撃の姫か……」
ベルオロス 「何をしにきた……この、墓場に……」

559: 2009/07/14(火) 11:32:11.62 ID:ElE255w0
ベルキュロス 「あたいだって好きでここに来たんじゃないさ」
ベルキュロス 「ただ、ちょっと気になることがあってね」
ベリオロス 「………………」
ベルキュロス 「あんた、今の王政に反対してるクチだろ?」
ベリオロス 「……」
ベルキュロス 「隠すこたぁないのよ。見てれば分かる。あんたもあたいも、同じ穴のムジナならぬ、ドラゴンってわけさ」
ベルキュロス 「やっとこさ、あのうざったいウラガンキンが氏んで、別の王家に王族の権利が回ってくるとこだったんだ」
ベルキュロス 「あんただって、王家直属の墓守なんて仕事抜け出して、日の当たる場所に出れるチャンスだっただろ?」
ベリオロス 「…………我輩は、この仕事に誇りを持っている」
ベリオロス 「話はそれだけか……?(くるり)」
ベルキュロス 「誇りィ? 誰も来ない、この冷たい墓場を守り続けることが誇りかい?」
ベルキュロス 「安っぽいプライド! 笑いがこみ上げてくるね!」
ベリオロス 「……愚弄するか……?」
ベルキュロス 「奥さんも子供も捨てて、こんなところに押し込められて、そんであんたは満足ってか!」
ベルキュロス 「ハッ! あたいの飛んだ見込み違いだったみたいだね」

560: 2009/07/14(火) 11:33:03.77 ID:ElE255w0
ベリオロス 「…………」
ベルキュロス 「ねぇ、見込み違いなら見込み違いでさ、それでいいんだけど」
ベルキュロス 「どうせ退屈してんだろ? ちょっといい話があんだよ」
ベルキュロス 「小娘の戯言ってことで聞き流してくれていいからさ」
ベリオロス 「…………」
ベルキュロス 「……卵、なくなったの知ってるだろ?」
ベルキュロス 「あれやったのあたいなんだよね」
ベリオロス 「…………」
ベルキュロス 「あたいだって王家だ! ガンキンが氏んだら、第二継承者のあたいが、継承権を持つはずだったんだ!」
ベルキュロス 「なのにあのクソドラゴン、よりにもよって懐妊してやがった……!!!」
ベルキュロス 「今思い出しても胸くそ悪くなるぜ……あの幸せそうな顔……!!!」
ベルキュロス 「…………」
ベリオロス 「…………」
ベルキュロス 「ヘヘっ……だからさ、ちょっとね」
ベルキュロス 「捨ててやったンだ。卵」

561: 2009/07/14(火) 11:34:04.82 ID:ElE255w0
ベルキュロス 「でもおかしいんだよねぇ」
ベルキュロス 「あたいは、完璧滝つぼ真ッさかさまなコースで落としたはずだったんだけど」
ベルキュロス 「どうにも、その『氏んだはず』の卵がさ、別の大陸にいるかもしれない、らしいんだよ」
ベルキュロス 「ラギアの野郎がとりにいってる。もうじき帰るとか、そんな噂も出てるくらいだ」
ベルキュロス 「いや、まぁ生きてはいないと思うんだけどさ」
ベルキュロス 「もし、ラギアの野郎が、卵を持ち帰ってきたら……おかしいし、面倒なことになると思うんだよねぇ」
ベリオロス 「…………」
ベルキュロス 「なぁ……? あんた、この付近で卵ォ見なかったか? こう、こんな形をしててさ」
ベルキュロス 「湯気立っててさ……」
ベルキュロス 「岩みてぇな、不細工な卵」
ベリオロス 「…………」
ベリオロス 「……知らんな」

562: 2009/07/14(火) 11:35:32.27 ID:ElE255w0
ベルキュロス 「…………ふぅん。そう、そうなんだ」
ベルキュロス 「なら、いいんだけどさ」
ベルキュロス 「あんた、これからのこと考えたら、あたいとあいつら、どっちにつくべきか、分かるよね?」
ベリオロス 「…………」
ベルキュロス 「ね、命令していいかな? 墓守さん」
ベルキュロス 「(ぐぐっ……)もしラギアが卵持ってきたらさ、ここ通ると思うんだ」
ベルキュロス 「やっちゃってくんない?」
ベルキュロス 「あんたなら、造作もないだろ?」
ベルキュロス 「もう、こんな墓を守る任からも解かれたいだろ?」
ベリオロス 「…………」
ベルキュロス 「あたいは耐えられないなぁ!! こんな寒くて暗くて冷たいところに一人!!」
ベルキュロス 「ずっと一人!!」
ベルキュロス 「きゃはは! 永遠の孤独って奴!? なぁ?」
ベルキュロス 「あたいにつけば、あんたをそこから解放してやるよ」

563: 2009/07/14(火) 11:36:30.00 ID:ElE255w0
ベリオロス 「…………姫よ」
ベリオロス 「(くるり)今の話は聞かなかったこととしよう」
ベリオロス 「去ね」
ベルキュロス 「あぁらま、連れない男」
ベルキュロス 「ま、独り言だよ、独り言」
ベルキュロス 「でも良く考えてみるんだねぇ」
ベルキュロス 「あんたのこれからのことと、照らし合わせてさ」
ベルキュロス 「(バサァッ!)」
ベリオロス 「…………」
ベリオロス 「(やはり姫が…………)」
ベリオロス 「…………」
ベリオロス 「(これから……)」
ベリオロス 「(我輩の……これから……)」

564: 2009/07/14(火) 11:37:28.75 ID:ElE255w0
―樹海、ヤマツカミの聖域近くの海岸―

ウラガンキン 「すぅー……すぅー……」
クック 「よっ……と、しかし本当に重いな、この子は……」
クック 「ラギアクルスさん、ここでいいかい?」
ラギアクルス 「ああ、ウラガンキン様は、我の頭の近くにお座りいただきたい」
ラギアクルス 「貴殿らは、どこへなりと好きなところに乗るが良かろう」
テオ・テスカトル 「いや、私もイャンクック殿も、ナルガクルガ殿も、ある程度までなら飛ぶことができる」
テオ・テスカトル 「羽休みに貴殿の背中を借りるくらいで大丈夫だ」
ラギアクルス 「そうか、それは助かる」
少女 「失礼します……」
ラギアクルス 「うむ。お主は我の頭にまたがるが良い」
ラギアクルス 「ウラガンキンさまのお世話をするのだ」
少女 「うん、よろしくね。ラギアクルスさん。私頑張る!」
ラギアクルス 「…………あぁ、よろしく頼む」

565: 2009/07/14(火) 11:38:36.76 ID:ElE255w0
ヤマツカミ 「食料は皆の背中に分配した。問題はなかろうの」
××××× 「(ドドドド)お……お師匠さまぁぁ!」
ヤマツカミ 「! オオナズチではないか」
オオナズチ 「(ズザァァァ!)少女、わ、わすれもんだって……」
キリン 「(バッ)少女ちゃん!」
少女 「お姉ちゃん! オオナズチさん!!」
キリン 「(ダダッ)少女ちゃん! 久しぶり! しばらくの間に、大きくなったわねぇ」
少女 「お姉ちゃんは相変わらずふかふかだねぇ」
キリン 「うふふ。ちょっと密林の方で、ガノトトスさんたちの巣穴を作るのを手伝ってたの」
キリン 「お話は途中でナナ様にお聞きしたけれど、大変なことになってるのねぇ」
キリン 「私も一緒にいきたいところだけれど……」

566: 2009/07/14(火) 11:39:33.01 ID:ElE255w0
少女 「うぅん。その気持ちだけで嬉しいよ」
キリン 「(かみ)もしもの時のために、私のたてがみを少し持っていくといいわ」
少女 「ありがとう!!!」
オオナズチ 「そ……それに、血を忘れてるんだな」
少女 「あ! そういえば!!」
オオナズチ 「こ……これ、人間が捨ててった……ビンに、キリンちゃんが、ぼ、ぼくの血を詰めてくれたんだな(スッ)」
少女 「嬉しい! 大事に飲むね!!」
オオナズチ 「へへ……へ……」
クック 「(バサァッ)おお、これは! オオナズチ君とキリンちゃんじゃないか」
キリン 「おじさま!」

567: 2009/07/14(火) 11:40:34.77 ID:ElE255w0
キリン 「お気をつけてくださいね。それに、少女ちゃんも充分と……」
少女 「うん。すぐに帰ってくるよ。お土産いっぱい持ってくるね!」
キリン 「うふふ。楽しみにしてる」
オオナズチ 「ぼ、ぼくはオオシッポガエルがいいんだな」
少女 「分かったよ。憶えておく」
テオ・テスカトル 「それでは、皆の者、ゆくぞ!!」
ラギアクルス 「……みたことのない幻獣と古龍だ。こちらの大陸も、中々謎が深いな……」
キリン 「あなたが、少女ちゃんを連れて行く龍さん?」
ラギアクルス 「あ……あぁ」
キリン 「少女ちゃんは私の妹なんだから、手荒なことしないでくださいね。絶対ですよ!」
ラギアクルス 「…………分かっている」
ラギアクルス 「こんなに皆に大事にされている娘を、どうこうできるわけもないだろう」

568: 2009/07/14(火) 11:41:40.94 ID:ElE255w0
ラギアクルス 「それでは、出発するぞ!!」
少女 「うん! じゃあね! お姉ちゃん! オオナズチ君!」
キリン 「帰ってきたら、お話をいっぱい聞かせてね!!」
オオナズチ 「ほ、本当に気をつけるんだなー!!」
クック 「(バサァッ!)」
テオ・テスカトル 「(バサ! バサッ!)」
ナルガクルガ 「(シュバッ!)」
少女 「(す……すごい!!)」
少女 「見えないけど……私、今海を進んでる!!」
ラギアクルス 「人間よ、海は初めてか?」
少女 「うん!!」
ラギアクルス 「海はいい……深く、広く、どこまでも続き、そして澄んでいる」
ラギアクルス 「地平線の向こうまで続く宝石のようだ……」
少女 「ぼんやりと……明かりが見える……」
少女 「これ、全部海……水に、光が反射してるんだ!!」
少女 「(ザバァッ)きゃっ!」
少女 「しょっぱい!!」
ラギアクルス 「(くすり)」

569: 2009/07/14(火) 11:42:49.98 ID:ElE255w0
少女 「ん? なんだろこれ……」
少女 「こんなところに袋なんて置いてないのに……」
××××× 「(バッ!)こりゃぁ!」
少女 「きゃぁ!」
紫ガミザミ 「わらわを置いていくとは、お主本当に友達か!」
少女 「紫ちゃん!」
ラギアクルス 「何だ? カニの子供か?」
紫ガミザミ 「子供ではない! わらわは英才教育を受けたスーパーカニ、紫である!!」
ラギアクルス 「そ……そうなのか……」
少女 「紫ちゃん! ついてきちゃったんだ……」

570: 2009/07/14(火) 11:44:12.37 ID:ElE255w0
クック 「(バサァッ!)女児! 大丈夫か? …………ややや! 紫殿!!」
紫ガミザミ 「クック殿、久しゅう。わらわも行くぞな!」
クック 「ついてきてしまったのか……!」
ラギアクルス 「もう戻れぬぞ。このまま海流に乗って進むのみだ」
紫ガミザミ 「こんな面白いことに行かずして、スーパーカニがどうする!」
紫ガミザミ 「少女も人が悪いぞよ」
少女 「うん……ごめんね」
紫ガミザミ 「おうおう、変な顔じゃのう」
ウラガンキン 「すぅー……すぅー……」
クック 「……(仕方ないか……)」
クック 「(何事も起こらねばよいが……)」

571: 2009/07/14(火) 11:45:33.82 ID:ElE255w0
―モガの村、船着場―

ハンマー 「(雪山での調査が終わったがいいが……)」
ハンマー 「(少女のことも気がかりで、密林での調査を延期して、こちらの大陸に渡ってしまった……)」
ハンマー 「(こちらの大陸のモンスターは凶暴らしい……)」
ハンマー 「(何事もなければいいが……)」
太刀 「どしたの? ハンマー、船酔い?」
ハンマー 「いや……少しばかり考え事をしていた」
ハンマー 「しかし、こちらの大陸は暑いな……」
太刀 「そりゃ、船で三日もかかる場所にあるんだから、天候も違うよ」
太刀 「薬でも飲む? クーラードリンク」
ハンマー 「助かる(グビッ)」
太刀 「少し離れた場所には、渓谷を下がっていったところに、万年雪の場所があるし、ここいらの地形も安定しないんだけどね」

572: 2009/07/14(火) 11:46:39.23 ID:ElE255w0
太刀 「でもどうしたの? あたしの交易船に乗りたいなんて、あんたがね」
太刀 「確か密林の調査に行くんじゃなかったっけ?」
ハンマー 「ああ……」
ハンマー 「少し気晴らしだ。雪山の地図も作り終わったしな」
ハンマー 「それに、気になることもある……」
ハンマー 「(武器の、古龍の大宝玉が淡く光っている……)」
ハンマー 「(少女……やはりこちらの大陸に来たのか……)」
太刀 「気になることって……あんたが前から言ってた、その、モンスターと一緒に暮らしてるって女の子? こっちの大陸にいるの?」
ハンマー 「…………」
太刀 「あたしは見たことないけど、不気味だよねぇ」
太刀 「ひょっとしたら、チャチャブーが進化した姿かもしれないよ。あいつら得体が知れないもん」
ハンマー 「……少女はそんなものではない」
太刀 「え……?」
ハンマー 「……船が泊まったな。外に出よう」
太刀 「あ、ちょっと待ってよハンマー!」

573: 2009/07/14(火) 11:47:59.00 ID:ElE255w0
太刀 「(何よ……折角二人で船旅だったっていうのに……)」
太刀 「(あいつ、ずっとあの変な玉見て考え込んでるし……)」
太刀 「(その、少女とかいう女の話が噂になってから、何だか様子が変だし……)」
太刀 「(どうしちゃったのかしら……)」
ハンマー 「日差しが強いな……さすが、海沿いの村だ」
ハンマー 「何をしている、太刀。おいていくぞ」
太刀 「今行くってば!(ダダッ)」
太刀 「で、どうすんの?」
太刀 「相手の交易業者と話をするのは明日だし、今日は特にすることはないね」
ハンマー 「確か、スラッシュアックスの家がこの辺りにあったな」
太刀 「げっ。あいつと会うの?」
ハンマー 「? 小さい頃、よく一緒に遊んだではないか。忘れてはいないと思うが」
太刀 「まぁいいけど……あいつ、気難しいから苦手なんだよねぇ」

574: 2009/07/14(火) 11:48:50.61 ID:ElE255w0
漁師 「お、あっちの大陸からのお客さんかい」
ハンマー 「こんにちは。ハンマーといいます」
漁師 「太刀ちゃん、久しぶり! 今日は彼氏同伴かい?」
太刀 「かっ……彼氏だなんて、そんなんじゃないよ。こいつはただの幼馴染」
ハンマー 「ああ。それより聞きたいことがある」
太刀 「………………(ふぅ)」
漁師 「何だいあんちゃん? しっかしすっげぇ武器だな。Gランクハンターか……」
ハンマー 「このあたりで、モンスターの群れに混じった女の子を見かけなかったか?」
漁師 「モンスターの群れに? 何だ? 連れ去られでもしたのかい?」
漁師 「見かけたって話はきかねぇなぁ。もしそうだったとしたら、大変な騒ぎになってらぁ」
ハンマー 「そうか……」
漁師 「太刀ちゃん、今スラッシュアックスさんは族長の家にいるよ。顔出してやんな」
太刀 「あはは、ありがと。そうするよ」
漁師 「肌ァ出しすぎじゃねぇか? 日焼けに注意しろよ~」
太刀 「うっさい工口おやじ。あたしはこれで、雪山も火山も通してるの!」

575: 2009/07/14(火) 11:50:04.38 ID:ElE255w0
ハンマー 「(人間に目撃はされていないのか……)」
ハンマー 「(それとも、まだついてはいないのか……)」
ハンマー 「…………」
ハンマー 「(少女には、沢山のモンスターがついているじゃないか……)」
ハンマー 「(それこそ、俺独りではかなわないような強力な奴らが……)」
ハンマー 「(なのに何故、ここまで気になると言うんだ……)」
ハンマー 「(…………古龍の大宝玉はまだ光り続けている……)」
ハンマー 「(俺にはどうも、こいつが、少女を守れと言っているように見える……)」
ハンマー 「(それとも、俺自身の意思なのか……?)」
太刀 「(ぐいっ)ハンマー、行くよ?」
ハンマー 「あ……ああ」
太刀 「あんた、最近ちょっとおかしいよ? 何? その武器に恋でもした?」
ハンマー 「…………」
太刀 「それとも、その謎の少女ってのに恋でもしてんの? あんた昔からゲテモノ趣味だからねぇ」
ハンマー 「…………」
太刀 「ちょっと、黙んないでよ……」

576: 2009/07/14(火) 11:50:57.27 ID:ElE255w0
―モガ村、族長の家―

ハンマー 「失礼する」
太刀 「やっほー。元気ィ? 根暗男」
スラッシュアックス 「……太刀? それに……ハンマーではないか」
ハンマー 「久しぶりだな。子供の時以来だ」
スラッシュアックス 「ふむ……奥に入れ」
太刀 「何よ、あたしにはたいした挨拶もないわけ?」
スラッシュアックス 「突然押しかけてきて、礼儀もへったくれもなかろう。ツチハチノコのビールでいいか?」
ハンマー 「すまないが、俺は酒は飲めないんだ」
スラッシュアックス 「そう言うな。ここでは一杯目は飲み干すのが礼儀だ(ドクドクドク)」
ハンマー 「……分かった。いただこう」
太刀 「(ぐび、ぐび、ぐび)ぷはぁ。あぁ生き返るわ。むさくるしいのと一緒で、氏ぬかと思った」
太刀 「ねぇ、お風呂貸してもらえない?」
スラッシュアックス 「どうせここに泊まるつもりだろう。勝手に使え」
太刀 「あら、わかってるのね。それじゃ遠慮なく。二人とも後でまた~(バタバタ)」
ハンマー 「(グビリ)」
スラッシュアックス 「まぁ、座れ」
ハンマー 「ああ」

577: 2009/07/14(火) 11:51:54.85 ID:ElE255w0
スラッシュアックス 「何用だ? こっちに移り住むつもりか?」
ハンマー 「いや……休暇のようなものだよ。しかし、こっちの村は発展しているな」
ハンマー 「城下町で流行り病が起こったとき、特効薬をいち早く海輸してくれて助かった」
スラッシュアックス 「……あれは太刀が、勝手に持っていっただけだ。俺ではない」
ハンマー 「それでも黙認してくれたお陰で、沢山の命が救われたんだ。代表して礼を言わせてもらいたい」
ハンマー 「! そうだ、忘れていた。これはオオモロコシの種だ」
ハンマー 「こちらの大陸にはあまりないと聞いてな。持ってきた。収めてくれ」
スラッシュアックス 「こんなに大量に悪いな……遠慮なくいただこう」
ハンマー 「俺も少し、ここで厄介になっていいか?」
スラッシュアックス 「別に問題はない。俺一人の家ではないしな」
ハンマー 「何だ、結婚したのかい?」
スラッシュアックス 「いや……ここは、旅人などを一時的に留め置く場所にもなっている」
スラッシュアックス 「俺やお前のような偏屈には、まだまだ結婚は早かろう」
ハンマー 「ふっ……違いない。変わらないな、昔と。お前は……」

578: 2009/07/14(火) 11:53:15.09 ID:ElE255w0
ハンマー 「どれ、俺も潮風がべたつく。川か何かがあれば、流してこようと思うんだが」
スラッシュアックス 「この家の裏手に泉がある。使えばいい。話は夕食の席でいいだろう」
ハンマー 「助かる……なぁ、一つ聞きたいことがあるんだが」
スラッシュアックス 「何だ?」
ハンマー 「後程訳を話すが、モンスターに混じった女の子を、お前はみかけなかったか?」
スラッシュアックス 「何だそれは……? モンスターに、人間が?」
スラッシュアックス 「このあたりのモンスターは凶暴だ」
スラッシュアックス 「完全に人間とは敵対している。それに、最近はモンスター達の警戒が妙に強まっていてな……」
スラッシュアックス 「先日も、熟練のハンターが数人やられた。現在は治癒処で治療を受けているところだ」
スラッシュアックス 「もし子供が飛び込んででもいったら、すぐに八つ裂きにされている」
スラッシュアックス 「お前も、一人ではモンスターの縄張りに近づかないようにするんだ」
スラッシュアックス 「……最近は、なるべく刺激をしないようにしているが……」
スラッシュアックス 「何かがおかしい…………」
ハンマー 「…………そうか」
ハンマー 「(少女……やはり、彼女が言っていた、王族の卵というのが原因なのか……?)」

579: 2009/07/14(火) 11:54:33.66 ID:ElE255w0
―水没林、夜―

テオ・テスカトル 「しかし、まさか紫殿がついてくるとはな……」
紫ガミザミ 「まだ言っておるのか、てお。わらわは邪魔にならんというに。立派な戦力として役に立つ(ジャキン)」
ナルガクルガ 「……ガキが……遊びじゃァないんだぞ……」
紫ガミザミ 「! 子ども扱いするでない! まったくお主は……友達おらぬじゃろ?」
ナルガクルガ 「………………」
ウラガンキン 「むー(ぐりぐり)」
紫ガミザミ 「ぬ? 少女、ウラが腹をすかせているぞ」
少女 「ほんと? 紫ちゃんにもウラちゃんがなついてくれてよかったよ。はい」
ウラガンキン 「(もぐもぐ)むー!」
紫ガミザミ 「はっはっは。じゃ、またあとで遊ぼうの」
ウラガンキン 「むんむ(もぐもぐ)」
トレニャー 「ぐがぁぁー…………ぐがぁぁー………………」
紫ガミザミ 「こいつはよく、こんな揺れる場所でずっと寝ていられるのぅ」

580: 2009/07/14(火) 11:55:24.49 ID:ElE255w0
クック 「……まぁ、過ぎたことをいくら言っても仕方はないだろう」
テオ・テスカトル 「確かにそのとおりだが……適当なところで送り返す必要がある」
クック 「そうだな……ダイミョウザザミ殿は、このことをご存じないだろうし……」
ラギアクルス 「ご三方、水没林に入り申した」
ナルガクルガ 「(バサッ)ふん、やっとついたか」
ラギアクルス 「海流の流れによる遅延もある。時間としては最速だったといえる」
クック 「あぁ。しかし、こう暗くてはどこに何があるのか分からないな……」
クック 「ラギアクルス殿、近くに休める場所はないか?」
テオ・テスカトル 「そうだな……少し羽を休めよう」
テオ・テスカトル 「……む? 何か、提灯のような光が近づいてくるな……」
チャナガブル 「止まれ!!」

581: 2009/07/14(火) 11:56:26.82 ID:ElE255w0
チャナガブル 「(ズォォォォ)何奴!? 名乗れ!!」
テオ・テスカトル 「な……(水中から、巨大な魚のようなものが……)」
テオ・テスカトル 「(あの発光体で獲物を引き寄せるのか!)」
クック 「うわっ! な……何だ!?」
チャナガブル 「ここは、我が聖騎士団の領域と知っての進入か! ならば覚悟をしてもらうぞ!」
ラギアクルス 「待て、チャナ!」
チャナガブル 「団長……!?」
ラギアクルス 「この方々は、ゆえあってあちらの大陸からお招きした。敵ではない」
チャナガブル 「お戻りになっていたのか! お迎えが遅れてしまい、申し訳ない」
少女 「(何か、すごく大きな……でも、ラギアさんと同じ、すんだ水の匂いがする人がいる……)」
チャナガブル 「……して、団長。あなたの頭に乗っているものどもは……」
少女 「びくっ」
チャナガブル 「…………人間……! 人間臭いぞ……!!(グルルルルル)」

582: 2009/07/14(火) 11:57:32.68 ID:ElE255w0
ウラガンキン 「(バッ)グルルルルルル」
少女 「ウラちゃん!」
紫ガミザミ 「こ……こやつ、少女を守ろうとしておる!」
ラギアクルス 「やめないか、チャナ! 事情はおって説明するが、この人間は普通の人間ではないのだ」
ラギアクルス 「それに、この御方の前で、そのような威嚇は許さぬ」
チャナガブル 「御方……もしかして!!」
チャナガブル 「そ……そのお顔は、ウラガンキン様!!!!」
ウラガンキン 「まんま(ぐいぐい)」
少女 「う……うん。ありがとう」
チャナガブル 「ど……どういうことだ……?」
ウラガンキン 「らむー(バシバシ)」
ラギアクルス 「御前様、敵ではございませぬ。こやつは、聖騎士団副団長、チャナガブルと申す者。あなた様の忠実なる部下でございます」
チャナガブル 「はっ!(バッ)」

583: 2009/07/14(火) 11:58:26.01 ID:ElE255w0
テオ・テスカトル 「成る程、副団長殿か。私はテオ・テスカトル。お初にお目にかかる」
クック 「私はイャンクック。こちらはナルガクルガだ。縄張りとは知らず、失礼している」
ナルガクルガ 「…………」
クック 「子供達もいる。できれば、休める場所が欲しいんだが?」
チャナガブル 「……分かり申した。私の後についてきてください(スイーッ)」
紫ガミザミ 「お、光が動いておる。これは分かりやすいぞな!」
テオ・テスカトル 「よし、行こう。ラギア殿、よろしいか?」
ラギアクルス 「ああ。この先に、大木が連なっている場所がある。そこで休むといいだろう」
少女 「(なでなで)ありがとう、ウラちゃん。私を守ろうとしてくれたんだね」
ウラガンキン 「まんまぅー(ゴロゴロ)」
ラギアクルス 「………………」

584: 2009/07/14(火) 11:59:37.54 ID:ElE255w0
―水没林、夜、大木の秘境―

チャナガブル 「…………成る程。ではウラガンキン様は、今は少女を母とお思いなのか」
ウラガンキン 「スピィー……スピィー……」
少女 「(なでなで)ごめんなさい……私、わざとじゃなくて……」
チャナガブル 「いや……話を聞いている限り不可抗力であろう。君の責任ではない」
チャナガブル 「しかし、気になるは卵を皇居から持ち出したもの……」
チャナガブル 「団長、もしや王族が……」
ラギアクルス 「言うな、チャナよ」
チャナガブル 「はっ。失礼を……」
ラギアクルス 「我々が仕えるべき王族の悪口など、口が裂けても申すものではない」
ラギアクルス 「(だが……)」
ラギアクルス 「(あのトレニャーが逃げずについて来ているということからも、本当に卵は投棄されたという可能性がある……)」
トレニャー 「グガァァ……グガァァ……」
紫ガミザミ 「なぁなぁ、提灯アンコウ殿」
チャナガブル 「提灯アンコウ……? 私のことか?」
紫ガミザミ 「うむ。腹が減ったぞな。何か食わしてくりゃれ」

585: 2009/07/14(火) 12:00:40.04 ID:ElE255w0
テオ・テスカトル 「これ、紫殿。淑女がはしたない……」
チャナガブル 「いや、はは。あまりにとっぴな話が続いたので、すっかり忘れておりました」
チャナガブル 「少しお待ちくださいな(トプリ)」
紫ガミザミ 「ありゃ、潜っていってしまった」
ナルガクルガ 「…………して、ラギア。これからどうする?」
ラギアクルス 「うむ……なるべく早くウラガンキン様を、ボルボロスさまの御前にお連れしたい」
ラギアクルス 「そのため、水没林から、渓谷を下り、雪原を通って砂原に向かいたい」
ラギアクルス 「最も、滅多に我らも通らぬため、トレニャーの案内が必要になるが……」
ラギアクルス 「だが、雪原には騎士団の男が一人いる」
ラギアクルス 「大分前に一度会ったことがあるが、信用の置ける奴だ」
ラギアクルス 「…………」
ラギアクルス 「そういえば、お主……」
ナルガクルガ 「……?」
ラギアクルス 「いや……だが、お主はあちらの大陸出身なのか?」

586: 2009/07/14(火) 12:01:32.70 ID:ElE255w0
ナルガクルガ 「……そんなことを聞いてどうする?」
ラギアクルス 「単なる興味本位だ」
ナルガクルガ 「…………出身は分からぬ。生まれてすぐに、親に捨てられたからな……」
ラギアクルス 「…………」
ラギアクルス 「(もしかして……)」
ラギアクルス 「(そういえばこの男、奴に似ている……)」
ラギアクルス 「(色の違いはあれど、そっくりだ……!!)」
ラギアクルス 「(だとしたら、上手く話が運ぶかも知れぬ……)」
ラギアクルス 「(無論その反対もありえるが……)」
チャナガブル 「(ザパァァン)ほら!(ドサッ)」
 >ビチビチビチビチビチ
紫ガミザミ 「! わぁ! 魚が沢山おるぞな!!」

587: 2009/07/14(火) 12:02:44.07 ID:ElE255w0
ラギアクルス 「ふむ……まぁ、少し遅いが、夕食とするか」
クック 「すまない、チャナガブル殿。どれ、少女の分は私が焼いてあげよう」
少女 「おじさん、ありがとう!」
ウラガンキン 「(もぐもぐもぐもぐもぐ)」
紫ガミザミ 「ああ! ウラ! お主みんなの分までもう……!!」
チャナガブル 「はっはっは。いや、すぐにまたとってきますので、気にしないで(トプリ)」
ラギアクルス 「……今日は休んで、明日、雪原に向かおう」
ラギアクルス 「かなり寒くなる。我らモンスターの墓場とも呼ばれる」
クック 「モンスターの墓場……」
ラギアクルス 「我々竜は問題ないが、少女や紫は、防寒対策をしていった方がいい」
紫ガミザミ 「それなら問題ないぞな。わらわは少女の服の中に入っておる」
少女 「二人でくっついてたら、あったかいから大丈夫だよ」
ラギアクルス 「ふむ。まぁ、今日は休んでくれ」
クック 「ほら、少女。焼けたぞ」
少女 「わぁい!!」
トレニャー 「(くんくん)飯の匂いだニャ!(ガバッ)」
ナルガクルガ 「ふん……現金な奴よ……」

588: 2009/07/14(火) 12:03:42.48 ID:ElE255w0
―少女の夢の中―

少女 「……(真っ白い……何も見えない……)」
少女 「(私、目、本当に見えるようになるのかな……)」
少女 「(もしかしたら、ずっとこのまんま……)」
少女 「…………」
少女 「(でも、今はおじさんもいる、紫ちゃんも……ウラちゃんも……)」
少女 「(みんなが近くにいてくれる)」
少女 「(それだけで、とっても幸せ……)」
少女 「?」
少女 「(何か、光が見える……)」

589: 2009/07/14(火) 12:04:33.77 ID:ElE255w0
少女 「!! あれは……」
白アイルー 「(ニコニコ)」
少女 「白い猫さん!! 久しぶり!!」
少女 「あれ? 何でだろう、あなたのことだけは、はっきり見える……」
白アイルー 「(なでなで)」
少女 「あはは……くすぐったい」
白アイルー 「(くいっ)」
少女 「あ……これ?」
少女 「あなたが作ってくれた、小さなてるてる坊主、ずっと大事に首に下げてるの」
少女 「大事なお守り」
白アイルー 「(にこにこ)」
白アイルー 「(スッ)」
少女 「? もう一つ……てるてる坊主?」
白アイルー 「(こくり)」
少女 「私に……? ありがとう!」
少女 「可愛い!!」

590: 2009/07/14(火) 12:05:36.35 ID:ElE255w0
少女 「また、首にかけておくね!」
白アイルー 「(こくり)」
少女 「あ……待って。もっとお話したいこととか、沢山……」
白アイルー 「(パタパタ)ミャァ!」
少女 「……あ……」
少女 「(遠くに、黒い猫さんと白い猫さんが見える……)」
白アイル 「(パタパタ)」
少女 「うん! またね!」
少女 「あなたがくれたもの、大事にする!!」

591: 2009/07/14(火) 12:06:40.70 ID:ElE255w0
―翌朝―

少女 「…………」
少女 「(夢……?)」
少女 「!! (てるてる坊主の首飾りが……二つに増えてる!!)」
少女 「(白い猫さん、本当に来てくれたんだ……)」
少女 「(また会えるかな……?)」
クック 「少女、起きたか。そろそろ準備をして、雪原に向かうぞ」
少女 「うん。おはよう、おじさん」
クック 「これを食べて、顔を洗ってくるんだ」

592: 2009/07/14(火) 12:07:43.98 ID:ElE255w0
トレニャー 「はぁぁ……まーたあそこに行くんですかい……」
クック 「何か、嫌なことでもあったのかい?」
トレニャー 「嫌なの何も、あそこにはおっそろしい墓の番人がいるんでさ」
トレニャー 「真っ白くて、金色の牙を生やした……」
トレニャー 「ん? そういや、あんた……」
ナルガクルガ 「…………?」
トレニャー 「い、いや! 何でもねぇっす」
ラギアクルス 「それでは準備をしてくれ! 一刻も早くボルボロスさまのもとに向かわねば!」
チャナガブル 「団長、私は水路から回る。気をつけて」
ラギアクルス 「ああ。道中、騎士団は砂原に集結するように伝えてくれ」
紫ガミザミ 「ふぅ。ここの魚は美味しくて、いくらでも食べれてしまうぞな」
チャナガブル 「はは。気に入ってくれたなら嬉しい。帰りにでもまた寄るがいい」
紫ガミザミ 「うむ!」

593: 2009/07/14(火) 12:09:19.82 ID:ElE255w0
―渓谷、雪原―

紫ガミザミ 「(ガチガチガチガチ)なななな何じゃこれはぁぁ……凍ってしまうぞなァ…………!!」
少女 「そ……そうだね……山を下ったら、すごい氷……」
ウラガンキン 「まんま、むー?」
少女 「あ! ウラちゃんが少し温かくなった!」
紫ガミザミ 「お主便利じゃのう!」
ラギアクルス 「私の頭から落ちないよう、気をつけてくれ」
ラギアクルス 「(幸い雪も降っていない。すぐに抜けることができるだろう)」
トレニャー 「うぅ……」
ラギアクルス 「どうした?」
トレニャー 「オイラの髭にビンビンくるんでさぁ。何か妙な気配を感じやす」
ラギアクルス 「妙な気配?」

594: 2009/07/14(火) 12:10:40.95 ID:ElE255w0
テオ・テスカトル 「確かに、誰かに見られているような……」
ナルガクルガ 「…………」
トレニャー 「悪いこたぁ言いませんぜ。少し待ってからのほうが……」
ラギアクルス 「ならん。我は今は、一分一秒も惜しいのだ」
トレニャー 「そうは言いますけどねぇ」
 >ゴゴゴゴゴゴ
ラギアクルス 「!! 何の音だ!?」
クック 「(バサァッ!)!! 何だ!? 雪崩がこっちに向かってくるぞ!」
ラギアクルス 「何!?」
ラギアクルス 「こ、こんな谷底で雪崩に襲われたら、すぐに埋もれてしまう……!!」
テオ・テスカトル 「走れ、ラギア殿!! (バサァッ!)」
テオ・テスカトル 「雪崩は私達が何とかする!!(ゴゴゴゴゴ)」
ラギアクルス 「かたじけない!!(ドドドドド)」
少女 「きゃっ……」
紫ガミザミ 「うわ!」
トレニャー 「お……オイラも乗せてぇぇ!!」
ラギアクルス 「しっかりつかまっていろ!!」

595: 2009/07/14(火) 12:11:33.06 ID:ElE255w0
テオ・テスカトル 「クック殿は火球を! 私は炎の力で雪崩を溶かす!」
クック 「あい分かった!(ゴウッ! ゴウッ!!)」
ナルガクルガ 「!!」
ナルガクルガ 「何だ!? 雪崩の中から何かが……」
クック 「!!?」
ベリオロス 「ギャォォォォ!!(バッ)」
テオ・テスカトル 「(ザシュッ!)ぐあぁぁ!」
クック 「テオ殿!!」
ナルガクルガ 「!!」
ベリオロス 「ギャォォ!(シュバッ! シュバッ!)」
ナルガクルガ 「……ふん!(ガキィィン!!)」

596: 2009/07/14(火) 12:12:36.80 ID:ElE255w0
ナルガクルガ 「な……何だ!?」
ベリオロス 「(ズザザザザザ……!!)」
ナルガクルガ 「この白いモンスターの姿……太刀筋……」
ナルガクルガ 「(俺にそっくりだ……!!!)」
ベリオロス 「!!! (何だ、この黒いモンスターは!!)」
クック 「ナルガ! 雪崩が!!」
ナルガクルガ 「!!!!」

597: 2009/07/14(火) 12:15:05.74 ID:ElE255w0
お疲れ様でした。次回へ続かせていただきます

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50秒規制と、最近のパー速の重さのため、書き込み時間が不定になっています
ご了承ください
また、私の体調具合があまりすぐれないため、速度が低下している部分があります
ちゃんと続けますので、気長にお待ちいただけましたら幸いです

614: 2009/07/22(水) 14:59:50.91 ID:oVCt.mo0
5.クルペッコ 「俺のホイッスルを聴け」

―雪原―

ラギアクルス 「! あれは……もしや、ベリオロスか!?(┣¨┣¨┣¨┣¨)」
少女 「すごい音……! どうしたの!?」
紫ガミザミ 「てお達が……雪崩に……」
トレニャー 「ぎゃぁぁぁ! 速い! 速いにゃァァ!」
紫ガミザミ 「……! ナルガ殿が今、ちらりと見えたぞ!」
紫ガミザミ 「このままではナルガ殿が……雪崩に巻き込まれてしまう!」
紫ガミザミ 「ッ!!(バッ)」
少女 「紫ちゃん!」
ウラガンキン 「むー!」
ラギアクルス 「何だ!? カニの子が飛び降りたのか!?」
紫ガミザミ 「ナルガ殿ぉぉ!!(ダダダダ)」

615: 2009/07/22(水) 15:00:52.30 ID:oVCt.mo0
ナルガクルガ 「(何だこの白いモンスターは……)」
ナルガクルガ 「(まるで、俺の亜種のようだ…………!!)」
ナルガクルガ 「(どういうことだ? 俺は何かのモンスターの変種かと思っていたが……)」
ナルガクルガ 「(こんなところに、血族がいたのか!?)」
ベリオロス 「(この黒いモンスター……)」
ベリオロス 「(あいつにそっくりだ!!!)」
ベリオロス 「(も……もしかして…………)」
テオ・テスカトル 「ナルガ殿! そこを離れるんだ!」
クック 「ナルガ!! 雪崩に巻き込まれるぞ!!」

616: 2009/07/22(水) 15:01:56.25 ID:oVCt.mo0
ナルガクルガ 「……くっ……」
ベリオロス 「(じり……じり……)」
ナルガクルガ 「(動けん……まったく隙がない)」
ナルガクルガ 「(もし俺が一瞬でも背中を見せれば、その瞬間に殺られる……)」
ナルガクルガ 「(理屈ではない……感覚でわかる!)」
ナルガクルガ 「(じり……じり……)」
 >┣¨┣¨┣¨┣¨ドド
ナルガクルガ 「!」
ベリオロス 「ガルルルルッ!(シュバッ)」
ナルガクルガ 「(ズバァッ!)ガッ……(サッ)」
ナルガクルガ 「はぁ……はぁ……」
クック 「ナルガ!! 雪崩が!!」
クック 「!? あれは……」
紫ガミザミ 「ナルガ殿!!(バッ!)」
ベリオロス 「!!」

617: 2009/07/22(水) 15:03:02.28 ID:oVCt.mo0
紫ガミザミ 「はよ逃げるのじゃ! ここは飲み込まれて……」
ベリオロス 「(カニの子供!? なぜこんなところに……)」
ナルガクルガ 「(! 隙が出来た!)」
ナルガクルガ 「ガルルルルルッ!(シュバッ)」
ベリオロス 「!!」
ナルガクルガ 「(シュバッ! シュバッ!)」
ベリオロス 「(ザシュッ!)グゥ……ッ!!」
ナルガクルガ 「(ズザッ!)……(スタッ)何故来た!?」
紫ガミザミ 「何を言うておる! ボーッとしておったのはおぬしではないか!!」
ナルガクルガ 「俺は……」
クック 「ナルガァァ!!」
 >ゴゴゴゴゴゴゴ
ナルガクルガ 「くっ……掴まっていろ!」
紫ガミザミ 「う……うぬ!(ガシッ)」

618: 2009/07/22(水) 15:04:11.18 ID:oVCt.mo0
ナルガクルガ 「とぅぁ!(バッ!!)」
テオ・テスカトル 「! だめだ!! 高度が足りぬ!」
ナルガクルガ 「くっ……」
紫ガミザミ 「……きゃぁぁ!!」
 >ゴゴゴゴゴゴゴ
クック 「飲み込まれた!!」
ベリオロス 「!」
ベリオロス 「…………(ズボァッ!)」
テオ・テスカトル 「あのモンスター、自分から雪崩に飛び込んでいったぞ!!」
テオ・テスカトル 「くっ……雪崩の規模が大きすぎる!!」
クック 「ナルガ! 紫殿ォォ!!!」

619: 2009/07/22(水) 15:05:20.84 ID:oVCt.mo0
ラギアクルス 「くっ……ベリオロスめ! 謀ったか!!」
少女 「紫ちゃん! 紫ちゃん、戻ってきて!!」
トレニャー 「こ……こここ、こっちにも雪崩が押し寄せてきやがりやすぜ!!」
トレニャー 「(バシバシ)は、早く谷の向こう側に逃げておくんなせぇ!!」
ラギアクルス 「……いたしかたあるまいっ!(ダダダッ)」
少女 「待って! まだ紫ちゃんが!!」
ラギアクルス 「雪崩に巻き込まれたら、いくら我とはいえ無事では済まぬ!」
ラギアクルス 「後続のおぬしの仲間に任せるのだ!!」
少女 「(おじさん……! みんな……!!!)」
ウラガンキン 「むー! むー!!」
トレニャー 「ひぃぃぃぃぃぃ!!」
 >ゴゴゴゴゴゴゴゴ

620: 2009/07/22(水) 15:06:12.21 ID:oVCt.mo0
クック 「ナルガー!!! 少女ォォ!!」
テオ・テスカトル 「まずい……巻き上がった雪で、ラギアクルス殿の居場所も見失ったぞ!!」
クック 「くっ……雪も強くなってきた……飛ぶのも困難になってきた……!!」
クック 「!! テオ殿! あそこにナルガが!!」
テオ・テスカトル 「! 切り出した岩に掴まっている!」
ナルガクルガ 「!! ……!!!」
紫ガミザミ 「た……助け……」
クック 「ナルガ、今行くぞ!(ヒュゥゥゥゥ)」
テオ・テスカトル 「待て、クック殿!(ヒュゥゥゥゥ)」
ベリオロス 「(ズボァッ!)ギャォォォ!!」
クック 「! 雪の中から……」
ベリオロス 「シャァァ!(ズバッ)」
クック 「ぐあぁぁ!」
テオ・テスカトル 「クック殿ォォ!」
ナルガクルガ 「……くっ!」
テオ・テスカトル 「クック殿が墜落された! ナルガ、早く私の体に掴まれ!!」
ナルガクルガ 「す……すまない……!!」
紫ガミザミ 「うぅぅ……う……」

621: 2009/07/22(水) 15:07:04.06 ID:oVCt.mo0
―雪原、少し離れたエリア―

ラギアクルス 「しくじった……雪崩を振り切れん……!!」
トレニャー 「も……もっと早く走れないんですかい!?」
ラギアクルス 「無茶を言うな! 我の体は、陸上用には出来ていないのだ」
少女 「!!」
少女 「何か……聞こえる」
トレニャー 「聞こえるゥ!? 雪崩の音で何がなんだかわかんねぇっすよぉ!!」
少女 「ラギアさん、何か、ラッパのような音が聞こえる!」
ラギアクルス 「ラッパ!? どこからだ!」
少女 「右上の方から!」
少女 「長く三回吹くのを繰り返してる!」
ラギアクルス 「もしやホイッスラーか! わかった、右上だな!」
ラギアクルス 「とぅぁ!!(バッ)」
トレニャー 「ひぃぇぁ!! 雪にダイブしてどぉぉぉすんですかぁぁぁ!!」
ラギアクルス 「(ホイッスラー・ペッコの誘導だとすると、逃げ道があるということ……)」
ラギアクルス 「(空耳以外であってくれ!!)」

622: 2009/07/22(水) 15:08:26.96 ID:oVCt.mo0
ラギアクルス 「(ドバァッ!!)」
トレニャー 「こ……こいつぁ! 氷壁に、抜け穴が!!」
ラギアクルス 「助かった!!」
ウラガンキン 「まんま! まんま、むー!」
少女 「ウラちゃん、大丈夫……? …………紫ちゃん…………」
トレニャー 「ひぃぃ、もう抜け穴の入り口が、雪で埋まっちまった……」
トレニャー 「ここは……洞窟ですかねぃ。オイラもこんなところにくるのは初めてでさぁ」
トレニャー 「……何か高くポッケポイントもらえそうなもんねぇかなぁ……(スタッ)」
トレニャー 「(トテトテトテ)」
ラギアクルス 「! 勝手に出歩くな猫! 逃げる気か!」
トレニャー 「人聞きの悪いこと言わねぇでくだせえ。第一、こんな洞窟の中でどうやって逃げるってんでさぁ」
トレニャー 「おいらの中のトレジャーハンティングの血が騒ぎ出しただけで……」
 >ピュルッピュ、ピュリュッピュ
少女 「あ……さっきのラッパが、また聞こえる……」
ラギアクルス 「この音はまぎれもなく、ホイッスラーの笛の音!」
ラギアクルス 「この奥か……」

623: 2009/07/22(水) 15:09:21.85 ID:oVCt.mo0
―雪原、洞窟内―

少女 「おじさんたち、大丈夫かな……」
ラギアクルス 「翼がある者達は逃れているだろう。心配することはない」
少女 「うん……でも……」
少女 「(変な胸騒ぎがする……)」
トレニャー 「……こいつは、自然に風と水で削れて出来た洞窟ですな」
トレニャー 「奥から変な笛の音と、風が吹いてきやす」
トレニャー 「どっかに繋がってるみてぇですな」
トレニャー 「お! こんなとこにメランジェ鉱石!」
トレニャー 「(サササッ!)」
ウラガンキン 「…………まんま…………(ぐりぐり)」
少女 「(なでなで)大丈夫だよ。私がついてるから……」

624: 2009/07/22(水) 15:10:34.76 ID:oVCt.mo0
ラギアクルス 「……ん? 少し開けた場所に出たな……」
ラギアクルス 「あれは……」
クルペッコ 「(♪)ピュルル~ィ、ピュルル~ィ」
ラギアクルス 「ホイッスラー! 駆けつけてくださったのか!」
クルペッコ 「(♪)ピュルルィン(こくり)」
トレニャー 「な……何ですかい、このヘンテコな鳥は……」
少女 「(果物の匂いがする……)」
少女 「(不思議な匂い……誰か、すぐ近くにいるみたい……)」
クルペッコ 「(♪)クルッポ~! クルッポ~!」
クルペッコ 「……カァァァッ!!」
トレニャー 「(ドォォンッ!)ぐぅっはぁぁ!!」
クルペッコ 「カァァァァッ!!」
トレニャー 「(ドォォォンッ!)っぐぁぁ!(ガクリ)」
トレニャー 「…………(ドサ……)」

625: 2009/07/22(水) 15:11:45.30 ID:oVCt.mo0
ラギアクルス 「ホイッスラー、この者達は敵ではない。音玉を使うことはない」
 ※音玉=ものすごくがんばることで、気合を飛ばす攻撃
クルペッコ 「……うむ(こくり)」
クルペッコ 「(♪)ピュルッピュ、ピュリュウゥプ!」
クルペッコ 「!! ハッ!!」
ウラガンキン 「………………」
少女 「…………(口笛で何かを言おうとしてるみたいだけど……)」
少女 「(口笛だから何言ってるのかわかんないや……)」
クルペッコ 「…………マイ、ロード!!」
ラギアクルス 「左様、卵は無事に見つかり、このように御体も無事だ」
ラギアクルス 「ウラガンキン様、この者は騎士団の重鎮、人呼んでホイッスルの申し子、ホイッスラークルペッコです」
ウラガンキン 「ぺこー」
クルペッコ 「……ハッ!!」

626: 2009/07/22(水) 15:12:55.16 ID:oVCt.mo0
クルペッコ 「(♪)ピュルルィ!」
クルペッコ 「!!!」
クルペッコ 「(♪)ピュゥ! 何故~~♪」
クルペッコ 「(♪)人間が~!」
クルペッコ 「(♪)ピュルッポ、ピュルッポン! ピュッピュルウポッポ!」
ラギアクルス 「ホイッスラー。口笛になっているぞ」
クルペッコ 「(♪)ピュルッポ…………」
トレニャー 「……う……何か心臓にドカンとインパクトが…………」
クルペッコ 「カァァァァッ!」
トレニャー 「(ドォォォンッ)ぶぅぁぁぁ!」
トレニャー 「………………(ドサリ…………)」
ラギアクルス 「詳しいことは、ここを出ながら話そう。連れが雪崩に巻き込まれている」
クルペッコ 「うむ(こくり)」

627: 2009/07/22(水) 15:13:59.39 ID:oVCt.mo0
クルペッコ 「…………そうか。こちらのバンビ~ナは、ウラガンキン様の……」
ラギアクルス 「ああ。途中で、ベリオロスの裏切りに遭った」
ラギアクルス 「ホイッスラーが来てくださらなかったら、どうなっていたことか」
クルペッコ 「何……いつもとは違う空気を感じてな……」
少女 「(普通にしゃべれるんだ……)」
クルペッコ 「しかし……」
ラギアクルス 「ああ。ベリオロスは、キュロス王家の傍仕えだ。だんだんと話が見えてきたな……」
ラギアクルス 「考えまいとしていたことだが、これは、早急にボルボロス様に拝謁せねばならぬ」
クルペッコ 「(♪)ピュル」
クルペッコ 「ボルボロス様は……伏せっておられる」
ラギアクルス 「!! 何!?」
クルペッコ 「卵を盗まれたことで、気が落ちておられる。そこから持病が悪化されてしまったのだ……」
ラギアクルス 「何ということだ……! くっ……!!」
クルペッコ 「(♪)とにかく~♪」
クルペッコ 「(♪)ここから出るぞ~~(↑↑)♪」
少女 「(歌った……!?)」
ラギアクルス 「了解した。テオ殿たちも気になるが、引き返せない以上、前に進むしかあるまい……」
少女 「………………(おじさん…………紫ちゃん…………)」

628: 2009/07/22(水) 15:14:51.20 ID:oVCt.mo0
―凍土、ドスバギィの群落―

子バギィ 「チィ。親父ィ、何だァ今の雪崩は?」
ドスバギィ 「…………」
子バギィ 「もうちっとで俺らァもまきこまれっとこだった。どいつかが山の上で暴れたのか? とんでもねぇことしやがる」
ドスバギィ 「………………」
子バギィ 「親父ィ、面倒ごとは御免だぜ。早いとこ戻ろうぜ」
バギィA 「若旦那! 報告です!」
子バギィ 「おう。下ァどうなってた?」
バギィB 「完全に雪で埋まっちまってらさァ。こりゃ、しばらくの間上にはァ行けんでさぁな」
子バギィ 「そうか。巻き込まれたアホはいねぇだろうなァ?」
バギィA 「そいつぁ確認ずみでっせ」
バギィB 「全員無事でさ」
子バギィ 「オーライオーライ。てめぇら、そんじゃ母ちゃんのとこ行って、問題ねぇって報告してきな」
バギィA 「了解しやした」
バギィB 「合点でさ」

629: 2009/07/22(水) 15:16:10.65 ID:oVCt.mo0
ドスバギィ 「…………」
子バギィ 「親父ィ、さっきから黙りこくってどうしたぃ」
子バギィ 「こんな雪崩吹雪じゃ、獲物なんざとれやしねぇ。今日のところは帰ろうぜ」
ドスバギィ 「…………血…………」
子バギィ 「ん? 何か言ったか親父……」
ドスバギィ 「(ドスン、ドスン)」
子バギィ 「お……おい親父ィ!」
バギィA 「若旦那! 大旦那!」
子バギィ 「てめぇらは早く戻れや。おーい、親父ィ!!(ドスン、ドスン)」
ドスバギィ 「………………」
ドスバギィ 「掘れ」
子バギィ 「掘れって……この雪を? 何でさ」
ドスバギィ 「…………(バシッ)」
子バギィ 「痛っ。叩くなよ。ったく……いい歳こいて偏屈はなおらねぇな」
子バギィ 「ここでいいのかい」
ドスバギィ 「………………」
子バギィ 「(ザクッ、ザクッ、ザクッ)」

630: 2009/07/22(水) 15:17:01.74 ID:oVCt.mo0
子バギィ 「しっかしよぉ」
子バギィ 「最近は王族の動きもあわただしくて、統率とれんくなってらぁな」
子バギィ 「いろんなとこで小競り合いもおきてやがる」
子バギィ 「聞けば、ボルボルスの卵がなくなったせいだっつぅじゃねぇか」
子バギィ 「まったくよ。もしこの雪崩がその余波だっつぅなら、とんだとばっちりだぜ」
子バギィ 「(ザクッ……ガチンッ)」
子バギィ 「!? 何だァ? 親父ィ、ビンゴだ!」
子バギィ 「まったく、親父の鼻には驚かされるぜ。獲物が埋まってらぁ」
ドスバギィ 「………………」
子バギィ 「しっかし何だ……でっけぇな……(ザクッ……ザクッ……)」

631: 2009/07/22(水) 15:18:22.22 ID:oVCt.mo0
子バギィ 「……? ンだァ、こりゃ」
クック 「……………………」
子バギィ 「鳥……? 竜……? 何だこのエリマキトカゲの化けモンは……」
子バギィ 「親父? 知ってるか?」
ドスバギィ 「………………イャンクック………………」
子バギィ 「親父が知ってるモンスターなのかい」
子バギィ 「つぅか食えるのかこれ……なんか筋張ってそうだな」
ドスバギィ 「(くいっ)」
子バギィ 「はぁ? 運べって? 食わねぇのか?」
ドスバギィ 「………………」
子バギィ 「まぁ……親父がそう言うならいいけどよ。おい! てめぇーら!」
バギィC 「へい!」
バギィD 「お呼びで!?」
子バギィ 「このヘンテコな物体を、巣の中に運びな」

632: 2009/07/22(水) 15:19:41.60 ID:oVCt.mo0
バギィC 「何だァこの不気味な鳥は!?」
バギィD 「鳥!? トカゲじゃねぇのか!?」
バギィE 「いや、これ竜じゃね? 一応羽あるぜ」
子バギィ 「ガタガタ言ってんじゃねぇよ。まだ息はあんのか?」
バギィC 「生きてるっすが、雪の中に埋まってたんだ。凍傷になってる部分がありやすぜ」
子バギィ 「俺も行くぜ。母ちゃんたちに手伝ってもらって、湯で温めっぞ」
バギィ達 「合点でさ!」
ドスバギィ 「…………」
子バギィ 「親父、戻るぜ?」
ドスバギィ 「…………」
子バギィ 「どうしたんだィ、雪山の上なんて見上げて」
ドスバギィ 「…………異邦の臭いだ…………」
ドスバギィ 「………………」
子バギィ 「異邦?」
ドスバギィ 「巣に全員戻り、入り口を岩で固めろ……」
バギィ達 「合点承知でさ!!」

633: 2009/07/22(水) 15:20:37.82 ID:oVCt.mo0
―クックの夢の中―

青クック 「あなた、もうすぐ産まれそうよ」
クック 「そうかそうか。いや、今度は私が卵を温めよう」
青クック 「本当? お願いしていいかしら」
クック 「どれ……こっちが男の子で、こっちが女の子かな?」
青クック 「ふふ……まだ産まれてくるまでは分からないわよ」
クック 「一度に二つも卵を産むなんて、お前もずいぶん無理をしたなぁ」
青クック 「あら、まだまだ私は大丈夫よ。現役です」
青クック 「それじゃ、私は夕食を作ってこようかしら」
クック 「今日はなんだい?」
青クック 「確か、キレアジの干し物がまだあったわね。焼いてくるわ」
クック 「おお、私のは」
青クック 「ミディアムレアね。分かってるわ」

634: 2009/07/22(水) 15:21:52.38 ID:oVCt.mo0
クック 「(私達の、初めて出来た子供……)」
クック 「(元気に育ってくれるといい……)」
クック 「(外の世界は、つらいことや悲しいことも多いが……)」
クック 「(どうか、そのしがらみにとらわれずに、自由に羽ばたける子に育ってほしい……)」
クック 「(ふふ……いい匂いがしてきたな……)」
クック 「(無事に産まれてくれることが、今は一番の望みだ……)」
クック 「(そうだ、フルフルさんに、子供の育て方をもう一度、明日聞いてこよう)」
クック 「(みんなにも、子供が生まれるということを言わなければ)」
クック 「(みんな驚くぞ……)」
クック 「(どうか……どうか元気に……)」
クック 「(無条件に、幸せに……)」
クック 「(それが、親の願いだ……)」

635: 2009/07/22(水) 15:23:15.49 ID:oVCt.mo0
―ドスバギィの群落、巣の中―

クック 「…………(ズキッ)うっ……」
母バギィ 「……?」
クック 「うう……?」
母バギィ 「目ェ覚めたかい」
クック 「ここは…………」
母バギィ 「父ちゃん、イャンクックとやらが目を覚ましたよ」
ドスバギィ 「(ズン、ズン)…………」
クック 「あなた達は……それに、どうして私の名前を……」
クック 「(ズキッ)……ぐっ……」
母バギィ 「動くんじゃないよ。あんたの足と翼の先は、今凍傷で腫れ上がってるんだ」
母バギィ 「お湯で暖めた薬草を貼り付けてある。剥がすんじゃないよ」
クック 「………………?」
クック 「(本当だ……きれいに処置がされている……)」
クック 「すまない。苦労をかけます」

636: 2009/07/22(水) 15:24:06.49 ID:oVCt.mo0
母バギィ 「うちらはバギィ一族さ。あんたが雪に埋まってるとこを掘り出したんだ」
クック 「雪に埋まって……? そうか……私は、攻撃を受けて……うっ……」
クック 「(処置がなされているが、右翼が切れてしまっている……)」
クック 「(これでは、しばらくの間飛ぶことは出来ない……)」
クック 「バギィさんというのですか。お初にお目にかかります」
母バギィ 「やっぱ父ちゃんの言うとおり、こっちの出じゃないね」
クック 「ええ。私は海の向こうの大陸からやってきました」
クック 「助けていただいて、感謝の言葉が見つからない。何かお礼をさせていただきたいが……」
クック 「あいにく今、相応の代価を持っていないのです」
ドスバギィ 「(ドスン……ドスン……)」
ドスバギィ 「てめぇ……」
母バギィ 「父ちゃんのドスバギィさ」
クック 「助けていただいて、治療もしていただき、迷惑をかけています」
ドスバギィ 「…………馬鹿はモノより口で語ろうとする……」
クック 「は?」

637: 2009/07/22(水) 15:25:51.39 ID:oVCt.mo0
ドスバギィ 「てめえが、腰に下げてるモンは何だ……?」
クック 「これは……」
クック 「(出発前に、少女が私にくくりつけてくれた、狂走エキスの酒ひょうたんだ……!!)」
クック 「…………いや、うっかりしていた」
クック 「収めてください(スッ)」
ドスバギィ 「(パシッ)………………」
ドスバギィ 「(グビ、グビ、グビ、グビ)」
母バギィ 「まったく、父ちゃんは昼間ッから酒かい」
ドスバギィ 「(プハァ)………………」
ドスバギィ 「いーい酒だ……」
クック 「私の故郷の酒です。仲間が作ってくれました」
ドスバギィ 「(グビリ)」
クック 「(どことなくキングチャチャブーに似ているが……)」
クック 「(さらに輪をかけて無口なようだな……)」
クック 「(だが、悪い人たちではないようだ)」

638: 2009/07/22(水) 15:27:23.69 ID:oVCt.mo0
母バギィ 「父ちゃん、あちきにもおくれよ」
ドスバギィ 「昼間ッからはマズいんじゃなかったのか……?」
母バギィ 「あちきはいいんだよ(グイッ)」
母バギィ 「(グビッ)……ふん、あちきの地酒の方がまだましさね」
ドスバギィ 「…………」
母バギィ 「待ってな。もっとうンまい酒のましてやっから(ドス、ドス、ドス)」
クック 「あ……いえ、おかまいなく」
クック 「(行ってしまった……)」
ドスバギィ 「(グビリ)………………で、だ…………」
クック 「?」
ドスバギィ 「てめぇは何代目のイャンクックだ……?」
クック 「! 先代のクックに会ったことがあるのですか?」
ドスバギィ 「(グビ、グビ)………………ずいぶん前の話だがな…………」
ドスバギィ 「そうか、野郎は氏んだか」

639: 2009/07/22(水) 15:29:06.37 ID:oVCt.mo0
クック 「私は、18代目のイャンクックです。先代……私の父、母は流行り病で命を落としました」
ドスバギィ 「………………」
クック 「あちらの大陸にお住まいだったことが?」
ドスバギィ 「……あァ。若ェころ、少しな……」
ドスバギィ 「あの時も俺ァ、イャンクックに酒をもらった……」
クック 「父さんが……」
ドスバギィ 「その餓鬼からも、もらうことになるたぁ思わんかったがな……」
母バギィ 「(ドス、ドス)なんだいなんだい。父ちゃんは今日は、ずいぶんと饒舌じゃないかい」
ドスバギィ 「………………」
母バギィ 「ほらよ、キノコ酒だ」
クック 「すみません、いただきます」
母バギィ 「ぐいっとやるのが粋だよ」
クック 「(うっ……これは……)」
クック 「(狂走エキス酒の何倍のアルコールだ!?)」

640: 2009/07/22(水) 15:30:07.88 ID:oVCt.mo0
クック 「(ええい、ままよ!)」
クック 「(グビッ、グビッ、グビッ)」
クック 「~~~~~~ッカァァッ!!」
母バギィ 「!! こいつ、全部飲み干しよった!」
母バギィ 「ははっ、嬉しいねぇ。おいお前達来てみな! 予想外に粋な奴だよ!」
バギィ達 「何ですかい姐さん」
バギィ達 「うおっ、エリマキトカゲの化け物! 起きたのか!!」
バギィ達 「みればみるほどヘンテコだなぁ」
母バギィ 「お前達も鏡ィ見てきな。ほいよ、イャンクックとやら。どんどん飲みねぇ(ドクドクドク)」
クック 「あ……ありがとうございます。しかし、私はもう行かねば」
母バギィ 「行くってどこにさ?」
ドスバギィ 「………………」
クック 「雪の中から白い獣に襲われて、私の娘や仲間とはぐれてしまいました」
クック 「みな、心配しているはずだ……」
母バギィ 「ふぅむ」
子バギィ 「(ドスン、ドスン)駄目だァ、母ちゃん。雪崩に加えて雪も強ェや」
子バギィ 「裏口からも出れねェな。今日一日、獲物はナシだ」
バギィ達 「若旦那! おかえりなせぇ」
子バギィ 「ふぅ。ん? おォあんた。起きたのか」

641: 2009/07/22(水) 15:31:09.59 ID:oVCt.mo0
クック 「ああ。君達に助けてもらって、このとおりさ。ありがとう」
子バギィ 「ま、食料にしようとしてたから礼には及ばねぇよ。しかし食えそうにもねぇな、あんたは」
クック 「私の肉はあまり美味くはないと思うよ。それより……」
子バギィ 「何だァ? 外にでてぇのかおっさん」
子バギィ 「無理だ無理。雪崩のせいで、雪が強くて、しかも雹がまじってやがる」
子バギィ 「今外に出るのは自殺行為だぜ」
クック 「………………そうなのか………………」
クック 「(少女……紫殿……)」
クック 「(私が墜落して、飲み込まれる寸前に、テオ殿がナルガ達を助けるのが見えた……)」
クック 「(問題は、ラギアクルス殿が、雪崩から逃げ切ってくれているかどうかだが……)」
母バギィ 「で、あんたァ何でこんなとこにおる?」
ドスバギィ 「…………(グビリ)」
クック 「あぁ、お話しよう」
子バギィ 「ん? 父ちゃんいい酒持ってんな。少しくれ(グビリ)……~~ッ効くぜ!」
バギィ達 「若旦那! 俺達にも!!」
バギィ達 「ギブミー! ギブミー酒!」
子バギィ 「おいおいお前ら、慌てるない」
母バギィ 「こら、静かにおし!!」

642: 2009/07/22(水) 15:32:00.31 ID:oVCt.mo0
クック 「………………というわけなんだ」
子バギィ 「へぇ、こりゃたまげた。盗まれた卵が、そっちの大陸に行ってるとはな」
母バギィ 「ボルボロスの卵が盗まれたっては聞いたけど、そんな大変なことになってるとはねぇ」
ドスバギィ 「………………」
クック 「私の娘と、ウラガンキンは一緒にいる。何もなければいいが……」
クック 「ラギアクルス殿は王政だと言っていたが、あなた方は関係がないのか?」
母バギィ 「あちきらは、そういったしがらみが嫌でここに住んでるってなところがあるからね」
母バギィ 「ドスジャギィ達ならいざ知らず、王政についてはよぉわからんのよ」
クック 「そうなのか……(いや、むしろそのような方々に助けてもらったのは幸運だ)」
ドスバギィ 「………………ウラガンキン2世がいるのか?」
クック 「あぁ、私の娘と一緒にいます」
ドスバギィ 「で、その娘ってのが人間ってか……」
クック 「…………はい」
ドスバギィ 「……………………」
ドスバギィ 「変わってンな、今も昔も、イャンクックはよ…………顔も、中身もな……」
クック 「はは……よく言われます」

643: 2009/07/22(水) 15:32:54.43 ID:oVCt.mo0
ドスバギィ 「……ドスジャギィにみつかったらコトだな……」
子バギィ 「確かにな、あいつらの人間嫌いは異常だ」
子バギィ 「それに今ァ、卵がなくなったとかで妙に警戒が強くなってやがる」
子バギィ 「なるべくなら遭いたくねぇ相手ではあるな」
ドスバギィ 「…………」
クック 「残った仲間の方は、私よりはるかに強いから問題はないと思うが、やはり娘が心配だ」
母バギィ 「ふぅむ。とにかくさ、ラギアクルスはボルボロスのところに向かってるんだろ?」
母バギィ 「明日になりゃ雪もやむさね。その時に、子バギィ、このおっさん連れてってやりな」
子バギィ 「あん? 別にいいけどよ……揉め事は御免だぜ」
母バギィ 「次期党首が何言ってんだ。ガタガタぬかしてっと、口に尻尾詰め込んで、もっとガタガタ言わすぞい」
子バギィ 「ケェ。母ちゃんの言葉はマジにとれっからやめてくれ」
母バギィ 「あちきはいつでも本気さ。ま、ラギアが無事なら、砂原に出てるだろ。行ってみりゃわかる」
クック 「すまない、お願いできるだろうか」
子バギィ 「あぁ……別に構わねーけどよォ。ジャギィだな、問題は」
クック 「ジャギィ?」
子バギィ 「砂漠に住む、嫌な奴らだ。ハーレムを作って暮らしてやがる
子バギィ 「一応騎士団のメンバーだが、キュロス王家の方だから信用はならねぇな」

644: 2009/07/22(水) 15:35:40.85 ID:oVCt.mo0
クック 「キュロス王家?」
子バギィ 「ああ。王家には二種類あって、ボルボロスとウラガンキンの正当王家と、ベルキュロスの摂政王家だ」
子バギィ 「摂政王家は、正当王家が王政を行えなくなったときに代わりに王座につく奴らさ」
子バギィ 「普段は、政治に関することをやってる」
子バギィ 「どうも、キュロスは昔ィから正当王家にいいイメージを持ってないからなァ」
子バギィ 「あんたらを襲ってきたベリオロスも、キュロス王家に仕える墓守さ」
クック 「なるほど……そうなのか……」
クック 「話が見えてきたぞ……ウラガンキンの卵は、もしかしてキュロス王家が……」
クック 「だから、私達が連れ帰ってきたときに、殺そうとしてきたのか……!!!」
子バギィ 「ま、先走りすぎる考えもどうかとは思うがね」
子バギィ 「人生何しろ慎重が一番だぜ、おっさん」
母バギィ 「誰の言葉だいそれ」
子バギィ 「どっかの若旦那さんの言葉さ。危ない橋には手ェ出さないのが吉だ。いずれ勝手に共倒れになってくれる」

645: 2009/07/22(水) 15:36:50.62 ID:oVCt.mo0
クック 「……一理あるが、娘が巻き込まれている……」
クック 「砂原の騎士団、ジャギィとは、そのキュロス王家に仕える者たちなのか?」
子バギィ 「ああ。ベリオロスが襲ってきたんなら、ジャギィにも気をつけたほうがいいな」
子バギィ 「奴ら、本格的に反乱をたくらんでるのかもしれねぇ」
ドスバギィ 「………………」
ドスバギィ 「…………俺も行こう…………」
クック 「!! ドスバギィ殿! いいのですか?」
ドスバギィ 「…………いーい酒だった」
ドスバギィ 「昔を思い出した………………」
クック 「………………」
ドスバギィ 「それ以上はねぇ……」
クック 「かたじけない……!!!」
母バギィ 「ふぅん、父ちゃんもモノ好きさね。ま、とにかくそういうことなら、今日はしっかり食って傷を休めんさい」
母バギィ 「あちきが、いっちょ精の出る料理を作ってやっか。手ェ空いてる奴は手伝いな!」
バギィ達 「合点っす!!」
クック 「(少女……無事でいてくれ……!!)」

646: 2009/07/22(水) 15:37:55.05 ID:oVCt.mo0
―モガの村、昼間―

太刀 「ちょ……ちょっとハンマー。本気?」
太刀 「スラッシュアックスは、危ないからモンスターのいる場所には近づくなって言ってたじゃない」
太刀 「いくらあんたでも無茶があるよ」
ハンマー 「……しかし、雪原の方で、巨大な竜を見たという話を村人から聞いた」
ハンマー 「それが本当なら、もののついでだ。少し見てこようと思ってな……」
ハンマー 「(それに、先ほどから古龍の大宝玉が静かに明滅を繰り返している……)」
ハンマー 「(赤い光だ……振動はしていないが……)」
ハンマー 「(少女……もしかして、俺に助けを求めているのか……?)」
ハンマー 「(……約束した。俺達は仲間だと)」
ハンマー 「(たとえ適わずとも、役に立たずとも、仲間ならば……友達ならば)」
ハンマー 「(困ったときに助けて、近くにいてやらなければいけない)」
ハンマー 「(なぜなら、あの子は人間なのだから……!!)」

647: 2009/07/22(水) 15:39:17.29 ID:oVCt.mo0
ハンマー 「(ガチャコン)……それじゃ、少し行ってくる」
太刀 「……はぁ。あんたってば、ほんと昔から言い出したら聞かないわね」
太刀 「わかった。あたしも行くよ」
ハンマー 「お前も?」
太刀 「(ジャキィン)この前、武器新調したしね。試し切りができるかもしれないじゃん」
太刀 「連れて行きなさいよ。嫌とは言わせないわ」
ハンマー 「…………分かった。一緒に行こう」
太刀 「そうと決まったら、防寒と防暑対策をしていかなきゃ。あそこまじ寒くて、少し抜けると暑いからおかしくなるよ」
ハンマー 「う……うむ」
太刀 「そんな軽装で行ったら絶対氏ぬ。いいからあたしに任せておきなさい」
ハンマー 「……分かった。よろしく頼む」

648: 2009/07/22(水) 15:40:33.47 ID:oVCt.mo0
―雪原、少し前―

テオ・テスカトル 「ナルガ殿、紫殿、無事か!?」
ナルガクルガ 「俺は大丈夫だ。このガキを頼む」
紫ガミザミ 「ひっく……ひっく……」
テオ・テスカトル 「泣かないでください、紫殿。しかし、二人で力をあわせた方が……」
ナルガクルガ 「奴の狙いは俺だ……あんたは、それよりクックを……」
 >ゴゥゥゥゥゥ
ナルガクルガ 「くっ……(風が強くなってきた……それに、雪も!!)」
ナルガクルガ 「(奴の白い体が保護色になって、どこにいるのかわからない……!!)」
ナルガクルガ 「(上か!? 下か……!!)」
ナルガクルガ 「(切られた部分の出血も止まらない……)」
ナルガクルガ 「(早く処置をしなければ……)」
テオ・テスカトル 「ぐぅ……こう雪が強くては飛び立てん……」
テオ・テスカトル 「それにラギアクルス殿を完全に見失ってしまった……!!」
テオ・テスカトル 「くそ……クック殿ォォォー!!」

649: 2009/07/22(水) 15:41:40.52 ID:oVCt.mo0
ナルガクルガ 「!! 来る!」
ベリオロス 「ガルルルルルッ!!」
ナルガクルガ 「(また雪の中……下からか!!)」
ナルガクルガ 「(ズザッ!!)」
ベリオロス 「(スカッ)……!!?」
ナルガクルガ 「(動きが鈍ってきている……! 疲れているのか!!)」
ベリオロス 「はぁ……はぁ……!!」
ナルガクルガ 「そう何度も同じ手にかかるか!!(ズバッ!!)」
ベリオロス 「(ザシュッ)ぐぁ…………」
ナルガクルガ 「終わりだ! 氏ね!!(バッ!!!)」
ベリオロス 「!!!!」

650: 2009/07/22(水) 15:43:18.13 ID:oVCt.mo0
ナルガクルガ 「…………(ビクッ)」
ナルガクルガ 「な……(何だ!?)」
ナルガクルガ 「(このモンスターの顔を、真正面から見たとき……体が動かなくなった!!)」
ナルガクルガ 「(何だ、この感情は……!!)」
ナルガクルガ 「(胸の奥から、溢れるような……これは……!!!!)」
ナルガクルガ 「(くそっ……攻撃が来る……早く、殺さなければ……!!)」
ナルガクルガ 「(体よ、動けぇ!!)」
ベリオロス 「………………」
ナルガクルガ 「(……攻撃してこない……)」
ベリオロス 「………………」
ベリオロス 「…………貴様、名は…………?」
ナルガクルガ 「………………」
ナルガクルガ 「…………ナルガクルガだ」
ベリオロス 「覚えておこう。勇士ナルガクルガ。我が名はベリオロス」
ナルガクルガ 「(ベリオロス……?)」
ナルガクルガ 「(この声……懐かしい声……!!)」
ナルガクルガ 「(俺は、この声を知っている!!)」

651: 2009/07/22(水) 15:44:25.91 ID:oVCt.mo0
テオ・テスカトル 「ナルガ殿!!(ドドドド)」
ベリオロス 「……また合間見えようぞ(ドバッ)」
ナルガクルガ 「………………」
ナルガクルガ 「……(去ったか……)」
テオ・テスカトル 「奴は!?」
ナルガクルガ 「去ったようだ……ぐっ……」
テオ・テスカトル 「傷が深い。とにかく、休める場所に移動しよう」
ナルガクルガ 「………………」
ナルガクルガ 「(あのモンスターは、もしや……)」
ナルガクルガ 「(俺の…………)」

652: 2009/07/22(水) 15:45:17.07 ID:oVCt.mo0
―雪原、少し離れたエリア―

ハンマー 「……何だこれは……いきなり雪がひどくなったぞ……」
ハンマー 「天候がまったく安定しない島だな……」
太刀 「さ……寒いね……」
太刀 「でもここが、砂原通ってぐるりと一回りするのに最適なコースなんだよ……」
太刀 「ううう寒っ……」
太刀 「ちょっとハンマー、もう少しくっついて歩いてくれる?」
ハンマー 「ああ、こうか?」
太刀 「ちょっ……! そこまでくっつけとは言ってない!」
ハンマー 「…………! しっ」
太刀 「大体あんたは昔から……」
ハンマー 「(大宝玉が強く光り始めた……)」
ハンマー 「もしかして、少女が……」
太刀 「ん? 何?」
太刀 「あ……その武器光ってるじゃん。それにあったかい~~」
太刀 「もうちょいそれこっちによせて」

653: 2009/07/22(水) 15:46:33.81 ID:oVCt.mo0
ハンマー 「(方向は……こちらが、反応が一番強い……)」
太刀 「ちょっとハンマー、聞いてるの?」
ハンマー 「(雪崩でもあったのか……? やけに谷が雪で埋まっているが……)」
ハンマー 「(あっちは氷山のふもとになる……)」
太刀 「……!! あれ! ハンマー、何かいる!!」
ハンマー 「!! あれは……!!」
太刀 「(ジャキィ)あれってまさか……炎王龍と、迅竜!? 何でこんなところに!!」
ハンマー 「(少女と一緒に来たのか……)」
ハンマー 「(しかし、ガミザミの子供以外に少女達の姿が見えないが……)」
ハンマー 「(…………様子がおかしい……)」

654: 2009/07/22(水) 15:47:36.88 ID:oVCt.mo0
ナルガクルガ 「…………ぐっ…………」
紫ガミザミ 「ナルガ殿! ひどい……こんなに深く斬られて……」
ナルガクルガ 「これくらいどうということは……」
テオ・テスカトル 「処置をしようにも、我にはこうやって、酒で消毒をしてやることくらいしか……」
ナルガクルガ 「(ジュッ)ぐっ……」
紫ガミザミ 「ナルガ殿……!!」
テオ・テスカトル 「それに完全にクック殿やラギアクルス殿を見失ってしまった……」
テオ・テスカトル 「見渡す限り雪だ……こんな中で、どう動けと言うのだ……」
テオ・テスカトル 「!!」
テオ・テスカトル 「何か近づいてくる!!」

655: 2009/07/22(水) 15:48:29.69 ID:oVCt.mo0
太刀 「何してんの!? ハンマー、あんなの一時に相手に出来ないよ。逃げるよ!!」
ハンマー 「………………」
ハンマー 「迅竜が怪我をしているのか……!!」
太刀 「え!? 怪我?」
太刀 「ちょっ……待って!!」
ナルガクルガ 「…………人間の臭いだ…………!!」
テオ・テスカトル 「あの武器は…………」
テオ・テスカトル 「まさか、あの時の人間!?」
紫ガミザミ 「ひゃ……に、人間…………」
ナルガクルガ 「俺の後ろに隠れていろ」
紫ガミザミ 「(コクリ)…………(サササッ)」

656: 2009/07/22(水) 15:49:41.28 ID:oVCt.mo0
ハンマー 「(ザッ)…………久しぶりだな、炎王龍、それに迅竜。砦蟹の侵攻の折には世話になった」
テオ・テスカトル 「……グルルルルル」
ナルガクルガ 「グルルルルル…………!!」
ハンマー 「襲いかかってこないところを見ると、やはりあの時の……そう威嚇するな。ここで遭ったのも何かの縁だろう」
太刀 「ハ……ハンマーがモンスターと話してる……」
ハンマー 「太刀、何度も聞かせただろう。このモンスター達は、砦蟹の侵攻のとき、俺を助けてくれた」
太刀 「ずいぶん噂になってたりもしたけど……ご、ごめん。正直作り話かと……」
ハンマー 「迅竜……怪我をしているのか」
ナルガクルガ 「……!!」
ハンマー 「俺も昔、お前たちモンスターの仲間に命を救われた。恩返しをさせてくれ」
ハンマー 「秘薬は……まだ残っているな」

657: 2009/07/22(水) 15:50:55.00 ID:oVCt.mo0
紫ガミザミ 「す……すごいぞな! 人間が薬を塗ったら、ナルガ殿の怪我が治っていく!!」
テオ・テスカトル 「こ奴、やはりあの時の……」
テオ・テスカトル 「もしや少女を追って、ここまで来たのか……」
ナルガクルガ 「……ふん……」
ナルガクルガ 「痛みは消えたが……礼は言わぬ」
テオ・テスカトル 「だが、これでクック殿達を探しにいける」
ナルガクルガ 「………………」
ハンマー 「×××××××!!」
ナルガクルガ 「何かを言っているな……」
テオ・テスカトル 「おそらくは、少女を探すのを手伝わせてほしいとのことだ」
ナルガクルガ 「言葉が、分かるのか?」
テオ・テスカトル 「いや……しかし、どことなく、こ奴の気持ちというものが分かるような気がしてな……」
テオ・テスカトル 「よかろう。人間。我の背中に乗るがよい」
紫ガミザミ 「ひぃぃぇぇ。てお、人間じゃぞ!!」
ナルガクルガ 「お前は俺の頭に早く乗れ」

658: 2009/07/22(水) 15:51:57.96 ID:oVCt.mo0
ハンマー 「む……炎王龍、また背中に乗せてくれるのか!!」
太刀 「ま……マジ? 古龍の背中に乗れるの!?」
ハンマー 「少女が何かトラブルに巻き込まれたようだ。助太刀する!(バッ)」
太刀 「待って、あ……あたしもいいの!?」
ハンマー 「俺の仲間だ! 手に掴まれ!」
太刀 「……うん!(バッ)」
テオ・テスカトル 「ギャォォォ!(バッ)」
ナルガクルガ 「………………(シュバッ!!)」
太刀 「きゃぁぁぁ!! と……飛んだ!!」
ハンマー 「(少女……今、助けに行くぞ!!)」

659: 2009/07/22(水) 15:53:52.12 ID:oVCt.mo0
お疲れ様です。次回に続かせていただきます

http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/19/0000910119/38/imga97a0a7ezikczj.jpeg

コンタクトやトライのお誘いなど、>>613をご参照ください

夏休みですね。蒸し暑かったり寒かったりしますが、体調が一番とも申します
おいしいものを食べて、しっかりと夏を乗り切ってください

679: 2009/07/31(金) 11:01:18.71 ID:eU25ltU0
だいぶ間が空いてしまいまして申し訳ありませんでした
次回更新予定なども書くべきでした
6話が上がりましたので投稿させていただきます

680: 2009/07/31(金) 11:02:12.26 ID:eU25ltU0
6.毒リオレウス 「三十年前の結婚式の後悔を、ここで晴らしてくれらぁ!」

―モガの村―

スラッシュアックス 「…………」
熟練ハンターA 「やはり探しに行くべきだ」
熟練ハンターB 「よそ者をほいほいと、この村に入れるからこうなる」
熟練ハンターA 「聞けば、先日ここに来た二人は、止めるのも聞かずに、凍土の方に向かったらしいではないか」
熟練ハンターA 「無茶な刺激でもして、またモンスターに子供が襲われたらどうする?」
スラッシュアックス 「(ハンマー……太刀、あれほどモンスターの縄張りには近づくなと言ったというのに……)」
スラッシュアックス 「(何か訳があるのか……?)」
スラッシュアックス 「(しかし俺は、族長として皆を守らねばならぬ)」
スラッシュアックス 「(…………行くしかあるまい)」
熟練ハンターC 「どうする、スラッシュアックス」
熟練ハンターA 「やはり追いかけて止めるべきだ。皆もそう思わないか?」
熟練ハンターD 「ああ。余計なことでもされたらコトだ」
熟練ハンターD 「こうしてる間にも、モンスターをブッ頃してるかも知れねぇ」
熟練ハンターD 「ここいらのモンスターは報復してくる。それを知らない奴らじゃないと願いたいが……」

681: 2009/07/31(金) 11:03:23.63 ID:eU25ltU0
スラッシュアックス 「……二人を追うぞ」
スラッシュアックス 「凍土でやられたハンターもいたな。そうならないよう、俺たちで向かうぞ」
スラッシュアックス 「この機会に、根絶やしに出来るモンスターは根絶やしにする」
スラッシュアックス 「…………それでいいか?」
熟練ハンターA 「戦うとしたら、そのモンスターの巣まで叩かなきゃ意味がないからな」
熟練ハンターB 「俺達は、あんたの決定に従うまでだ」
スラッシュアックス 「……わかった。準備が出来次第出発だ。二人の確保を最優先に考える」
熟練ハンターC 「奴らはどこに行くつもりなんだ……?」
スラッシュアックス 「…………おそらくは砂原」
熟練ハンターD 「! まさか! 今はあそこは……」
スラッシュアックス 「そのようなことをチラリと言っていた。止めねばならぬ」
スラッシュアックス 「村を守るのだ……!!」

682: 2009/07/31(金) 11:04:16.58 ID:eU25ltU0
―砂原、入り口、夜―

クルペッコ 「(♪)さぁ~♪」
クルペッコ 「(♪)ドッバダ! ドゥバッダ♪」
クルペッコ 「(♪)ダフゥゥゥ!!!(↑↑)♪」
クルペッコ 「(♪)抜けたぞぉぉぉ~~♪」
少女 「(いい声で歌った……!!)」
ラギアクルス 「はぁ……はぁ……」
ラギアクルス 「やっと、凍土を抜けたか……」
少女 「ラギアさん苦しそう……大丈夫?」
ラギアクルス 「何……我の体は陸上には適しておらぬでな……」
ラギアクルス 「地上が少しばかり体に響いているのだ……」
クルペッコ 「(♪)こっちで~休むがいいだろうぉぉ~~~(↑↑)♪」
トレニャー 「いちいち歌わなくていいんだよ、ヘンテコ鳥め」
クルペッコ 「カァァァッ!!」
トレニャー 「(ドゴォォォッ!)ごうっふ!」
クルペッコ 「カァァ! トゥァァ!」
トレニャー 「(フドゴォォ! ドゴニャァ!)ビャ! グギャァ!!」
トレニャー 「(ふらふら…………バタリ)」
トレニャー 「…………」

683: 2009/07/31(金) 11:07:09.70 ID:eU25ltU0
ラギアクルス 「ホイッスラーを甘く見るな」
ラギアクルス 「彼は、今までの人間との戦い、同族との縄張り争いにホイッスルひとつで立ち向かってきている」
ラギアクルス 「彼のホイッスルはもはや口笛の域を超えて戦いの技となっているのだ」
トレニャー 「そ……そういうことは早く言ってくれにゃ…………」
トレニャー 「てか何でおいらばっか……」
ウラガンキン 「まんま、まんま」
少女 「あ…………」
少女 「(空気が変わった……)」
少女 「(夜かな……寒いけど、乾燥した砂のにおいに……)」
ラギアクルス 「……砂原に出たか。これで我の体にはもっと厳しくなったな……」
ラギアクルス 「ホイッスラー、ドスジャギィ達は……」
クルペッコ 「…………」
クルペッコ 「……うむ」
クルペッコ 「奴らは、今はボルボロス様にお会いしようとしている者、すべてに検閲を敷いている」
クルペッコ 「話を聞く限り、遭遇はまずいかも知れぬ」
少女 「(普通に喋ってる…………)」

684: 2009/07/31(金) 11:08:22.32 ID:eU25ltU0
ラギアクルス 「そうなると、少し待たなければならないな……」
少女 「ラギアさん、ドスジャギィさんって?」
ラギアクルス 「うむ。君達には説明をしていなかったが……」
ラギアクルス 「………………と言うわけで、この土地は王政により二つの王族が統治している」
ラギアクルス 「ウラガンキン様は、その王子大公というわけだ」
少女 「そ……そうだったんだ」
少女 「ウラちゃん、すごい人だったんだね」
ウラガンキン 「??」
ラギアクルス 「おそらく、キュロス王家はこの機会に王権打倒を狙っている」
ラギアクルス 「あくまで秘密裏にコトを進めるつもりならば……」
ラギアクルス 「継承者がいなくなったボルボロス様が、王位継承をキュロス家に渡すこと」
ラギアクルス 「それを狙っているのだろう」
ラギアクルス 「そう考えると、ベリオロスの裏切りも説明がつく」
ラギアクルス 「つまり、秘密裏に、生きていたウラガンキン様を始末しようとたくらんでいるのだ」
ラギアクルス 「恐れ多いことを……!!」

685: 2009/07/31(金) 11:09:25.26 ID:eU25ltU0
少女 「そのドスジャギィさんっていうのは……」
ラギアクルス 「騎士団のメンバーだが、我らボルボロス王家ではなく、キュロス王家に仕える者だ」
ラギアクルス 「それに、奴らは数が多い。見つかったら厄介なことになる」
ラギアクルス 「(しかし憶測の域は出ない……)」
ラギアクルス 「(もしかしたら、ベリオロスの独断かもしれない……)」
ラギアクルス 「(仲間を疑うのは……団長としては本来恥ずべき行為……)」
ラギアクルス 「(仲間に裏切りが出ると言うのは、団長としての不敬……)」
ラギアクルス 「(ボルボロスさまに申し訳が立たぬゆえ、極力そうは考えたくないが……)」
ラギアクルス 「(事実は事実として認識しなければ……)」
ラギアクルス 「………………」
ラギアクルス 「ウラガンキン様は、まだお生まれになって間もない。ドスジャギィの裏切りを確認している暇はない」
ラギアクルス 「我も弱っている。ホイッスラーがいるとはいえ、余計な戦闘は避けるべきだ」
クルペッコ 「(♪)ドゥバ~ドゥバダ~(↑↑)♪」
クルペッコ 「………………その通りだ」
少女 「(何でいま歌ったんだろう……)」

686: 2009/07/31(金) 11:10:23.31 ID:eU25ltU0
トレニャー 「うう……まだふらふらしやすぜ」
トレニャー 「ん? あれは黒真珠じゃねぇですか!」
トレニャー 「オイラが一番に見つけたんですぜ!(ダダダダッ)」
ラギアクルス 「あ! おい猫! 待つんだ!!」
ラギアクルス 「それは、ジャギィ一族の、縄張りの印だ!!」
トレニャー 「へ?(ガサゴソ)」
ラギアクルス 「!! 奴め! 早くそこから離れろ!!」
トレニャー 「離れろったって……何も見え……」
ジャギィノスA 「(ドバッ)……!!」
ジャギィノスB 「(ドバッ)……!!」
ジャギィノスC 「(ドバッ)……!!」
トレニャー 「ひぃ!」
トレニャー 「す……砂の中に隠れてやがったのか!!」
トレニャー 「囲まれた!!!」

687: 2009/07/31(金) 11:11:15.31 ID:eU25ltU0
ラギアクルス 「くっ……あの猫、殺されるぞ!!」
ウラガンキン 「にゃー!!」
少女 「ウラちゃん、だめ! 私の方に来て!」
ウラガンキン 「まんま……!!」
ラギアクルス 「くそっ……我の体も上手く動かぬ……」
ラギアクルス 「蹴散らせるか……」
クルペッコ 「………………(スッ)」
ラギアクルス 「ホイッスラー!!」
クルペッコ 「ここは私に任せろ、団長」

688: 2009/07/31(金) 11:12:07.25 ID:eU25ltU0
ジャギィノスA 「何かいるよ」
ジャギィノスB 「何かいるね」
ジャギィノスC 「猫か?」
ジャギィノスA 「猫みたいだよ」
ジャギィノスB 「どうする? 食べる?」
ジャギィノスC 「まずはドスに報告しなきゃ」
ジャギィノスA 「そうだね、ドスに報告しなきゃ」
トレニャー 「ひぃぃぃ。周りをぐるぐる回ってるにゃぁぁ!! キモい! キモいにゃぁぁ!」
ラギアクルス 「あの猫は! よく今まで生き残ってこれたな!」
ラギアクルス 「いくら騎士団とはいえ、縄張りは縄張りだ……」
ラギアクルス 「まずはそこを統括するものに挨拶をせねばならぬと言うのに!」
トレニャー 「お……オイラは美味くねぇですにゃ! やめておくんなましぃぃ!」
ジャギィノスA 「(くすくす)」
ジャギィノスB 「(くすくす)」
ジャギィノスC 「命乞いしてるよ。どうする?」

689: 2009/07/31(金) 11:13:00.33 ID:eU25ltU0
ジャギィノスA 「とにかく動けなくしてから、ドスに報告しよう」
ジャギィノスB 「よっぽどの馬鹿か敵だもん」
ジャギィノスC 「ドスもきっとそう言うよ」
ジャギィノスA 「そうだよ、そうしよう」
トレニャー 「ひ……ひぃぃぃぃ…………」
少女 「トレニャーさんが…………このままじゃ……!」
ウラガンキン 「にゃー……!!」
クルペッコ 「ン……ッ! ン~~ン! マ~ァ~~ァ~~」
少女 「クルペッコさん!?」
クルペッコ 「ンン~~マァァ~~ァァ~~~(↑↑)♪」
クルペッコ 「ふんもっふ! ふんもっふ!」
クルペッコ 「とぅにゃぁぁ!!」
少女 「(ビクッ!)」
ラギアクルス 「少女、下がるんだ。ホイッスラーは今精神集中の儀式に入っている」
少女 「集中? 集中って何を……」
クルペッコ 「(カッ!!)」
クルペッコ 「…………ふぅ」
クルペッコ 「ァァ~ァ、ゴホン」

690: 2009/07/31(金) 11:14:27.49 ID:eU25ltU0
トレニャー 「(ガチン)ぎゃぁぁ!」
トレニャー 「こなくそぉぉ! そう簡単に食われてたまるかってのぃ!(ガチンッ!)」
ジャギィノスA 「こいつ……予想以上に生きがいいね」
ジャギィノスB 「(くすくす)でもあたしたちの包囲網は逃れられないよ(ビュンッ)」
トレニャー 「(サササッ)ひぃぃぃ!」
ジャギィノスC 「ほらほら、必氏に逃げな!(ヒュンヒュン)」
トレニャー 「きゃぁぁ! お助けぇぇ!!」
クルペッコ 『…………何してんだてめーらよー』
少女 「!!!」
ウラガンキン 「!!?」
少女 「(え……!? 今、クルペッコさんがしゃべったはずなのに……)」
少女 「(別の人の声! しかも、少し離れた場所から……!!)」

691: 2009/07/31(金) 11:15:27.53 ID:eU25ltU0
ジャギィノスA 「! ドス!?」
ジャギィノスB 「え!? 嘘! ドスが!?」
ジャギィノスC 「み、みんな、急いで頭を下げよう!」
ジャギィノスA 「そ、そうだね頭を下げよう」
ジャギィノス達 「(ザザッ)」
クルペッコ 『何だ、その猫は……』
ジャギィノスA 「ドス、何かこの猫が縄張りに侵入してきて……」
ジャギィノスB 「それをあたし達が捕まえようとしてたんです」
ジャギィノスC 「そうなんです」
ジャギィノスA 「ドスに差し上げます」
ジャギィノスB 「持ってってください」
トレニャー 「ひぃぃ(ブルブル)どっかから声が聞こえるにゃぁぁ…………」

692: 2009/07/31(金) 11:18:12.28 ID:eU25ltU0
クルペッコ 『いらねぇよ。そんなちいせぇ獲物はよ……バカにすんな』
ジャギィノス達 「(ビクッ)」
クルペッコ 『てめーら……日ごろの狩りはサボってやがるくせに、猫ごときにゃ全力出すのかいオラ』
クルペッコ 『なんとも世知辛いねぇ、ウチの家族は』
ジャギィノスA 「そそそそ、そんなことは」
ジャギィノスB 「あたしたちはサボってなんて」
クルペッコ 『てめーらごときがよぉ』
クルペッコ 『オレに口答えすんのかい』
ジャギィノスC 「(ひそひそ)ば……バカ……謝るんだよ」
ジャギィノスA 「す……すみません!」
ジャギィノスB 「実はサボったり猫をいじめてたりしました!!」
クルペッコ 『…………ケッ』

693: 2009/07/31(金) 11:19:03.48 ID:eU25ltU0
ジャギィノスB 「で、でもドスは今どこに……?」
クルペッコ 『寒ィから土ン中移動してたら、てめーらが見えたわけだ』
ジャギィノスC 「ドス、せっかくきたんなら、あたし達のところで今夜はゆっくりしてください!」
ジャギィノスA 「たっぷりサービスします!」
クルペッコ 『おいおい、俺ァてめぇらのサボりを叱りにきたんだぜ?』
クルペッコ 『とにかく、猫をいじめるのはやめな。王家がうるせぇ』
ジャギィノスA 「わ……分かったわ(ぐいっ)」
トレニャー 「な……何をするにゃ! 離すにゃ!!」
ジャギィノスA 「(ブゥン)」
トレニャー 「(ヒュゥゥゥ)ギニャァァア!! 投げやがったぁぁ!!」
トレニャー 「(ズボッッ!!)ぶぎゃ!!」
トレニャー 「…………(ガクリ)」
ジャギィノスB 「(くすくすくすくす)頭から落ちたよ」
ジャギィノスC 「(くすくすくすくす)氏んだかな? あれ?」

694: 2009/07/31(金) 11:19:55.43 ID:eU25ltU0
クルペッコ 『何遊んでやがる。それよりてめぇら、何だってこんな夜遅くに、入り口なんかの周りを警備してやがる?』
ジャギィノスA 「そ……それは、ドスが……」
ジャギィノスB 「ねぇ、ドスが……」
ジャギィノスC 「うん……ドスが、ラギアクルスが来るからって」
ラギアクルス 「!!」
クルペッコ 『へぇ。あぁ、そんなことを言ったような気もするな』
ジャギィノスA 「ドスは本当に忘れっぽいねぇ」
ジャギィノスB 「本当にねぇ」
クルペッコ 『てめぇら後で、ひいこら泣かせてやるから覚えてやがれ』
ジャギィノスA 「え? ほんと!?」
ジャギィノスB 「私待ってる!!」
クルペッコ 『で、ラギアが来るからどうしろって俺ァ言った?』
ジャギィノスC 「ラギアクルスが来たら、みんなに知らせて……」
ジャギィノスA 「うん、持ってる『卵』を壊せって」
ジャギィノスB 「聞いたよ」
ジャギィノスA 「確かに聞いたねぇ」
ジャギィノスC 「うん、そうだね」

695: 2009/07/31(金) 11:20:59.76 ID:eU25ltU0
ラギアクルス 「………………」
ウラガンキン 「…………?」
ジャギィノスA 「その後、ドスがラギアクルスにとどめをさすって」
ジャギィノスB 「だから私達は今、砂原に集まってるってわけさ!」
ジャギィノスC 「あぁ! ドスがラギアの首を噛み千切るなんて!」
ジャギィノスB 「素敵!!!」
ジャギィノスA 「あいつ、態度がでかくて気に食わなかったんだ!!」
ジャギィノスC 「これで次期団長はドス! 私達は団長の妻だ!!」
ジャギィノスB 「うれしいねぇ」
ジャギィノスA 「うれしいことだねぇ」
クルペッコ 「………………」
クルペッコ 『そうかいそうかい。お勤めご苦労』
クルペッコ 『ついでに、お前ら、俺の巣から何か食い物とってこい』
クルペッコ 『少し小腹がすいたもんでな』
ジャギィノスA 「うん! 分かった」
ジャギィノスB 「とってくる! とってくる!」
ジャギィノスC 「すぐとってくる!!!」
ジャギィノス達 「(バババッ)」

696: 2009/07/31(金) 11:21:56.61 ID:eU25ltU0
ラギアクルス 「…………何と言うことだ…………!!」
クルペッコ 「ゲフン、ゴホン、ン、マァァ~~ァァ~~♪」
クルペッコ 「……とりあえず近くの三匹はどかしたが……」
少女 「す……すごい! 今の何!?」
ウラガンキン 「???」
ラギアクルス 「ホイッスラー・ペッコは、この島に生きるすべてのモンスターの鳴き声や声音をまねることが出来るんだ」
ラギアクルス 「それに腹話術で遠くに声を飛ばしたりもできる」
クルペッコ 「……これもホイッスルを極めた故のパゥワーだ……」
トレニャー 「ひぃ……こら……氏ぬかと思った…………」
少女 「トレニャーさん!!」
ラギアクルス 「次に勝手なまねをしたら見捨てていくぞ」
トレニャー 「ひぃぃん! 怖かったよぉぉ!」
少女 「よしよし、怖かったね(なでなで)」
クルペッコ 「連中は、あなたを狙っている。団長」
ラギアクルス 「…………」
クルペッコ 「急がねば、先ほどの見回りジャギィノスが戻ってくる。行こう」
ラギアクルス 「ああ……」
クルペッコ 「縄張りを避けて秘境に入れば、後はすんなり行ける筈だ」

697: 2009/07/31(金) 11:22:47.12 ID:eU25ltU0
ラギアクルス 「………………」
ラギアクルス 「よし、とにかくここから離れよう。ドスジャギィに遭うのは避けるべきだ」
クルペッコ 「……そうだな。しかしすべて避けていくのは無理な話だろう」
少女 「トレニャーさんは、私の後ろから離れないでね」
トレニャー 「もう一生少女さんについていくっス」
少女 「助けてくれたのはクルペッコさんだけれど……」
クルペッコ 「このまま進んでいてはいずれジャギィかジャギィノスの見張りに遭遇してしまう」
ラギアクルス 「…………」
クルペッコ 「団長の巨体ならなおさらだ」
ラギアクルス 「どうすべきだ?」
クルペッコ 「増援を呼ぼう。幸い、今は夜。歌うには絶好の空気だ」
ラギアクルス 「増援……そうか!」
クルペッコ 「ようは秘境に、ウラガンキン二世閣下をお連れすればよいのだ」
クルペッコ 「私の音玉は多角からの攻撃に弱い。ならば多角からの攻撃に強い者を呼べばよい」

698: 2009/07/31(金) 11:23:39.19 ID:eU25ltU0
少女 「(普通にしゃべってればいい声なのに……)」
クルペッコ 「場所は……あの丘がいいだろう」
ラギアクルス 「分かった。移動しよう」
クルペッコ 「ン……ンン……マア~~ァァ~~~」
トレニャー 「また何かを始めるつもりだ……」
クルペッコ 「このあたりでいいか……」
クルペッコ 「ホ……ホァァァ~~~~♪」
クルペッコ 「アァァァ~~~~ァ! アァ~~~~~~♪」
クルペッコ 「アァァァ~~~~~~アァ~~~♪」
少女 「(高らかにうたいだした……!!)」
クルペッコ 「ブルァァァ!!! ブルァァァ!!」
クルペッコ 『キシャァァァアァァァ!!!』
クルペッコ 「アァァ~~~ァァ~~~♪」
クルペッコ 「………………」
クルペッコ 「…………ゲホッ」

699: 2009/07/31(金) 11:24:44.26 ID:eU25ltU0
ラギアクルス 「…………」
少女 「…………」
トレニャー 「…………」
少女 「(ずいぶん遠くまで、叫び声が響き渡ったけれど……)」
少女 「(いろんなところに音が反響して、どこから出てきたのかは判然としないみたい……)」
少女 「(でも、いろんなところから、さっきのジャギィノスさんたちと同じ気配が出てきた……!!)」
少女 「(こ……こんなにたくさん……)」
ウラガンキン 「……まんま…………」
×××××× 「(バサッ…………バサッ…………)」
少女 「!! (後ろ……何か、すごく羽音を小さくして、静かに近づいてくる……!!)」
ラギアクルス 「来たか!」
毒リオレイア 「(シュバッ)……………………」
毒リオレイア 「団長と……変態じゃねぇか……」
毒リオレイア 「こんな夜更けに、こんな色気のねぇ場所にあたいを呼び出して、どーするつもりだい」
少女 「リ……リオレイアさん!?」

700: 2009/07/31(金) 11:25:45.51 ID:eU25ltU0
毒リオレイア 「あん? 何で人間がこんなとこにいんだ?」
毒リオレイア 「(カァ)食っちまうぞ、こら」
少女 「(うっ……お酒臭い……)」
ラギアクルス 「待つんだ毒レイア。事情を話す。少々厄介なことになっていてな」
ラギアクルス 「力を貸してほしい」
毒リオレイア 「そりゃあぁま、色男の頼みとあっちゃ断りようがないけどさぁ(ニヤニヤ)」
毒リオレイア 「相応の代価ってやつぁもらえるんだろうね」
クルペッコ 「こら、毒レイア。お前、目上に対してその口の聞き方は」
クルペッコ 「ンン(♪) 何たることだぁぁ~~(↑↑)♪」
毒リオレイア 「うるさいよ音玉親父。つか、爺ちゃんの声まねすんのやめてくんない? いい加減」
毒リオレイア 「ぶっ頃すよ?」
クルペッコ 「やかましいぃぃぃ~~~♪」
クルペッコ 「お前たちを育て世話した私の頼みくらい~~♪」
クルペッコ 「あ、聞いたら~♪ どうなんだ~~(↑↑)♪」
毒リオレイア 「あーあーウザいウザい。わかったよ。話くらいはきいてやろうじゃねーか」

701: 2009/07/31(金) 11:26:48.41 ID:eU25ltU0
トレニャー 「こりゃまた、リオレイアさんにそっくりなドラゴンですなぁ」
ラギアクルス 「………………と言うわけなんだ」
毒リオレイア 「へぇ、これがウラガンキン二世様々ってことか」
ウラガンキン 「…………?」
ラギアクルス 「ウラガンキン様、この者は我が騎士団でも信用の置ける幹部、毒リオレイアです」
ウラガンキン 「れあー」
毒リオレイア 「はいはいばぶーばぶー。あたい子供はもーこりごりだよ」
毒リオレイア 「つか、団長。そこちょっとどいた方がいいな」
ラギアクルス 「ここを? これくらいでいいか?」
毒リオレイア 「あぁOKOK。もうじきだと思うんだよね」
少女 「(? 何か落ちてくる)」
×××××× 「(ヒュゥゥゥゥゥゥ……)……………………(ズバァァンッ!!)」
少女 「きゃぁぁあ!」
毒リオレウス 「へんだらぁ! ジャリがぁぁ! 人の臭いじゃぁぁ!!」

702: 2009/07/31(金) 11:27:41.55 ID:eU25ltU0
ラギアクルス 「毒リオレウス! 君も来てくれたのか!」
毒リオレウス 「(くんくん、くんくん)ちっ……なんだなんだなんだぁ? 人の臭いがするでぇ?」
毒リオレウス 「って、毒レイア! てめ、わしより先に飛ぶなっつーたやろが! 女(スケ)がこらァ!」
毒リオレイア 「あぁぁん!? やんのかこらぁ! 女(スケ)ナメんなやこらぁ!」
毒リオレウス 「妻は夫の後ろォ飛ぶもんやろがこら! てめ、わしの立場なくね? 夫を立てるべきじゃね?」
毒リオレウス 「いやいいわそれ。それよか人の臭いがするわ。何か臭いわ」
少女 「(今度は、リオレウスさんにそっくりな気配の人…………)」
クルペッコ 「シャッ! ラップッ!!」
毒リオレウス 「ンンンンン……~~~~ッ? 何やぁぁ? このちっぽけな臭ェ人間はよぉぉ~~~」
クルペッコ 「カァァァァッ!」
毒リオレウス 「(ドォォォォンッ)ふぶほっ!」
クルペッコ 「カァァ! カァァ!」
毒リオレウス 「(ドォォォンッ! ドォォォォンッ!!!)ぶっ! ふぶあ!」
毒リオレウス 「(ぴくぴく……)…………(ドサリ)」
毒リオレイア 「あーあー。話聞かねぇから、音玉喰らってやんの」
ラギアクルス 「…………下が騒がしくなってきた。ホイッスラー。毒夫婦。急いだ方がいい」
クルペッコ 「うむ。起きろ馬鹿者(ドゲシ)」

703: 2009/07/31(金) 11:28:34.60 ID:eU25ltU0
毒リオレウス 「……………………へぇ。じゃ、これがガンキン二世と」
ラギアクルス 「ウラガンキン様、紹介がまた遅れてしまいましたが、こちらは毒レイアの夫で、騎士団百人隊長の毒レウスです」
毒リオレウス 「よろしゅう、おチビちゃん」
ウラガンキン 「りおー」
少女 「よ……よろしくお願いします。毒レウスさん、毒レイアさん」
毒リオレウス 「(チッ)人間がァ」
毒リオレウス 「気安く話ィかけんじゃねェ。耳が腐らァ」
少女 「(ビクッ)ご……ごめんなさい……」
少女 「でも私、あなた達によく似た気配の、同じ名前の竜さんを知ってて」
少女 「あっちの大陸では、とても良くしてもらったから、もしかしたら関係があるんじゃないかって……」
毒リオレイア 「よく似た……? もしかして、リオレウスのことかい!?」
毒リオレウス 「あんクソガキャァァ! 見事な軟弱小僧に育ちやがってからに!!」
少女 「え? は、はい。リオレウスさんです」
ラギアクルス 「そういえば、あなた達にそっくりな竜に遭ったな。ただの同種と思って気に留めなかったが……」
ラギアクルス 「何か、関係があるのか?」

704: 2009/07/31(金) 11:29:32.83 ID:eU25ltU0
毒リオレウス 「関係も何も、ウチィ飛び出したバカ息子やねん」
毒リオレイア 「のたれ氏んだと思ってたよ」
少女 「元気ですよ。今は奥さんと…………」
毒リオレイア 「……………………チッ。一度も挨拶にきやがらねぇと思ってたら、そんなことになってたのか」
少女 「びっくり。リオレウスさんのお父さんとお母さんだったなんて……」
毒リオレウス 「…………………………」
毒リオレウス 「で、団長。急ぐんやろ? 何や? クソガキィとクソ人間の話ィはあとや」
ラギアクルス 「助かる。先ほど話をしたとおりに、ウラガンキン様をこの先の秘境、ボルボロス様の御前にお連れしたい」
ラギアクルス 「しかしどうやら、キュロス王家側が寝返って、ウラガンキン様の抹殺をたくらんでいるようなのだ」
ラギアクルス 「ドスジャギィもその一派だ。何とかここを突破したい」
毒リオレイア 「そんであたし達ってことか」
毒リオレウス 「ケケケケケッ! 合法的にジャギィをブッ殺せるのか?」
ラギアクルス 「まだベルキュロス様と話をしたわけではないから、戦争を起こすつもりはない」
ラギアクルス 「しかし、少しばかり注意を引いてほしい」
ラギアクルス 「私達はその隙に、秘境に繋がる洞窟に入り込もうと思う」
ラギアクルス 「ボルボロス様は……?」

705: 2009/07/31(金) 11:30:43.90 ID:eU25ltU0
毒リオレウス 「まだ中にこもったままやね」
毒リオレイア 「ベルの野郎に卵を盗まれたせいでまいっちまったんだ! くそが!」
クルペッコ 「よし。それじゃ、お前らバカ夫婦~~♪」
クルペッコ 「仲良く喧嘩しな~~~♪」
毒リオレウス 「はぁ?」
毒リオレイア 「あたいらが喧嘩ぁ?」
ラギアクルス 「なるほど。それは妙案だ」
ラギアクルス 「ここでひと暴れして、ジャギィ達の目をひきつけてくれないだろうか」
ラギアクルス 「頼めるか?」
毒リオレウス 「頼めるかも何も、このクソ女(スケ)にゃぁ、日ごろから鬱憤たまりまくってるねん(ポキポキ)」
毒リオレウス 「やっと合法的にてめ、ぶっ殺せる機会が来たってもんよ」
毒リオレウス 「三十年前の結婚式の後悔をここで晴らしてくれらぁぁ!!」
毒リオレイア 「上等だぁコルァ!!」
毒リオレイア 「男は女にかなわねぇってことを、またその体に刻みこんだるよ!!」
少女 「(あぁ……)」
少女 「(リオレウスさんは、多分これが嫌で、あっちの大陸に行ったんだ……)」

706: 2009/07/31(金) 11:31:39.00 ID:eU25ltU0
毒リオレウス 「氏にさらせぇぇ!!(ゴウッ!!)」
毒リオレイア 「熱ゥッ! てめぇぇ!!!(ゴウゥッ! ゴウッ!!)」
 >ドォォォンッ! ドォォォン!!
ラギアクルス 「あの二人は、よく酔った末に喧嘩をしているんだ!」
ラギアクルス 「珍しい光景じゃないから、目くらましになる!」
ラギアクルス 「ジャギィ達の目があっちに向いた!」
クルペッコ 「この隙に~~秘境に入るぞぉぉ~~(↑↑)♪」
トレニャー 「ギニャァァ! こっちに火の玉が来たにゃあああ!!」
クルペッコ 「カァァァァッ!」
 >パァァァァァンッ
トレニャー 「滅茶苦茶だにゃぁぁ!!」
毒リオレイア 「しゃぁぁ! んなろぉぉぉ!!(バシッ! バシッ!)」
毒リオレウス 「痛ッ! 痛ッ! マジ痛ッ!!」
毒リオレウス 「もう許さねぇぇぇ! クソがあぁぁあ!!(ゴウゥゥッ!!!!)」
クルペッコ 「こっちだ!」
ラギアクルス 「しめた! 避難したジャギィ達の目がない。洞窟に入るぞ!!」

707: 2009/07/31(金) 11:32:58.69 ID:eU25ltU0
―砂原、別のエリア―

スラッシュアックス 「砂原への抜け道を通ってきたが……騒がしいな」
熟練ハンターA 「スラッシュアックス、あれを見ろ!」
スラッシュアックス 「……!! あれは、火竜と雌火竜!? どうして夜の砂原に……」
熟練ハンターB 「やっぱりモンスターの挙動がおかしい。あのよそ者達のせいじゃないのか?」
スラッシュアックス 「……(ハンマー、太刀、お前たちが刺激したのか……!?)」
熟練ハンターC 「どうする? さすがに二体を相手にするのはきついぞ」
熟練ハンターD 「構うこたぁねぇ。やつらには仲間が数人やられてる。戦うぞ(ガチャコン)」
スラッシュアックス 「……待て」
熟練ハンターD 「何故だ!? 火竜達の暴れっぷりには多大な被害を受けてるんだ」
スラッシュアックス 「前方を囲まれている。火竜の前に、こちらが危ない」
熟練ハンターD 「何だって!?」

708: 2009/07/31(金) 11:33:54.21 ID:eU25ltU0
スラッシュアックス 「(気配を消して砂の中に……多数のモンスターがいる……)」
スラッシュアックス 「この敵意と殺意が混じった気……これは、通常のモンスターではない!」
スラッシュアックス 「D、避けろ!」
熟練ハンターD 「な……うわぁぁ!」
 >ズバァァッ
ドスジャギィ 「キャラォォォ!!(ズバッ)」
熟練ハンターD 「ぐっ……う゛っ……!!(ドサッ)」
熟練ハンターC 「D、大丈夫か!? くそ……腕をやられて気ィ失ってやがる!」
スラッシュアックス 「B、CはDをかばって後退してくれ。A、俺の背中を」
熟練ハンターA 「分かった」
熟練ハンターA 「月明かりだけでは分からん。一瞬、肉食獣の巨大種のように見えたが……」
スラッシュアックス 「俺にもそう見えた。見たことのない種だ……」

709: 2009/07/31(金) 11:34:50.02 ID:eU25ltU0
ジャギィ達 「グルルルル……(ババッ)」
ジャギィノス達 「グルルルル…………!!(ババッ)」
熟練ハンターA 「くそ……砂の中に隠れてたのか! こんなにたくさん……!」
ドスジャギィ 「(ドス、ドス)グルルルルルル………………!!」
スラッシュアックス 「(お……大きい!)」
スラッシュアックス 「(こいつが親玉か!)」
スラッシュアックス 「(俺たちは、あの火竜達が暴れているところ、気が立っているこいつらの縄張りに侵入してしまったんだ!!)」
ドスジャギィ 「…………(ギロ、ギロ)」
スラッシュアックス 「(肉食獣とは戦ったことがあるが、親玉と、こんなに多量の敵を相手にしたことは無い……)」
スラッシュアックス 「(今の手数ではいかんともしがたい……!)」
スラッシュアックス 「Dの様子は!?」
熟練ハンターC 「完全に不意打ちだった……まだ目を覚まさない!」
熟練ハンターD 「………………」
スラッシュアックス 「俺とAが時間を稼ぐ。お前たちは下がってくれ」
熟練ハンターB 「無理だスラッシュアックス。数が多すぎる」
スラッシュアックス 「いいから行け!(ガシャコン)」
熟練ハンターC 「……分かった。すぐに戻ってくる!!」

710: 2009/07/31(金) 11:35:47.09 ID:eU25ltU0
スラッシュアックス 「うおぉぉおお!(ブゥゥン)」
ジャギィ達 「(ドォォォン)ギャァァォ!!」
スラッシュアックス 「チッ……ちょこまかと……つぉら!(ブゥゥン!!)」
ジャギィノス達 「シャァァ!(スカッ) ……ギャォォォ!(バッ)」
熟練ハンターA 「(ズババババッ!!)ぐぁぁああ!」
スラッシュアックス 「A!!!」
熟練ハンターA 「くそ……こいつら、戦い慣れしてやがる……」
スラッシュアックス 「BとC、Dは下がったか……」
スラッシュアックス 「(しかし親玉が……)」
ドスジャギィ 「グルル……グル…………」
ドスジャギィ 「キシャァァ!!(バッ)」
スラッシュアックス 「ぐっ!(ガチィィン)」
ドスジャギィ 「グゥゥァァ!!(ブゥンッ!)」
熟練ハンターA 「な……尻尾が……(ドスゥッ!)ぐあぁぁ!」
スラッシュアックス 「A!! ちぃぃ!(ブンッ)」
ドスジャギィ 「(ガキィィン!)」
スラッシュアックス 「今だ! 属性を開放する!(バッ)」
ドスジャギィ 「!! (ヒュバッ)」
スラッシュアックス 「(何!? 察知したのか……避けた!?)」

711: 2009/07/31(金) 11:36:39.09 ID:eU25ltU0
熟練ハンターA 「はぁ……はぁ……」
スラッシュアックス 「お前も下がるんだ。今の状況では俺たちが不利だ」
熟練ハンターA 「くそっ様ァねぇな……」
熟練ハンターA 「! スラッシュアックス! 火竜と雌火竜がこっちに気づいたぞ!」
スラッシュアックス 「何ィ!?」
毒リオレウス 「ギャォォォォ!!」
毒リオレイア 「シャァァァァ!!(バッ)」
ドスジャギィ 「(ギリ……)グルルル…………」
スラッシュアックス 「(これは本気を出してかからねばならぬようだ……!!)」

712: 2009/07/31(金) 11:42:53.23 ID:eU25ltU0
毒リオレイア 「しゃぁぁ! 氏ねよやぁぁ!!」
毒リオレウス 「あ痛ァッ!! ちょ、もうラギアたちは行ったんからいいんちゃう!?」
毒リオレウス 「かてって腹立つわぁぁ! くらぁ!(ドゴォッ)」
毒リオレイア 「妻の顔殴りやがったなぁぁぁぁ!!」
毒リオレウス 「じゃあぁかし! 殺気むんむんでそな台詞吐くなや! 正当防衛や!!」
毒リオレイア 「!? おい父ちゃん、何か変だ」
毒リオレウス 「! ……そういや、人間の臭いが……」
毒リオレイア 「ジャギィ達が集まってやがる……」
毒リオレイア 「あれは……ドスジャギィ!?」
毒リオレイア 「人間が砂原に侵入してやがる!!」
毒リオレウス 「こうしちゃいられねぇ! ヒャァ! 人間を久々にブッ殺せるぜ!(ヒュゥゥゥゥ)」
毒リオレイア 「あ! 抜け駆けすんなや!!(ヒュゥゥゥゥ)」

713: 2009/07/31(金) 11:44:06.92 ID:eU25ltU0
ドスジャギィ 「……何だ? バカ夫妻か?」
ドスジャギィ 「ずいぶんと騒がしい夜だなァコラ」
ジャギィ達 「頭領(ドス)、どうする? こいつら?」
ジャギィ達 「細切れにして海に捨てる?」
ジャギィ達 「それとも、重しつけて沈める?」
ジャギィノス達 「バカ夫婦が向かってくる! 手柄を横取りするつもりなんだ!」
ジャギィノス達 「ドス、判決を出して!」
ドスジャギィ 「人間……」
ドスジャギィ 「じゃぁめんどくせぇからよぉ」
ドスジャギィ 「不法侵入と、何かムカつくの罪で、判決ゥゥ、氏刑!」
ドスジャギィ 「やっちまうぜ野郎ども」
ドスジャギィ 「準備が整うまで、バカ夫婦に手柄ァ横取りさせんな」
ドスジャギィ 「ラギアのクソ野郎はとりあえず後だ!!」
ジャギィ&ジャギィノス達 「ギャォォォォ!!」

714: 2009/07/31(金) 11:45:01.41 ID:eU25ltU0
スラッシュアックス 「A、お前も下がれ!」
熟練ハンターA 「スラッシュアックス、お前はどうするんだ!?」
スラッシュアックス 「幸い雷の武器を持ってきている。属性を開放すれば、渡り合えるはずだ!(ジャキィン)」
熟練ハンターA 「無茶だ! お前一人でこんな大勢と……」
スラッシュアックス 「いいから逃げろ! その傷では戦闘は無理だ!!」
スラッシュアックス 「うぉぉぉ!!(ブゥンッ!)」
ドスジャギィ 「(サッ)ギャォォォォ!」
スラッシュアックス 「……閃光玉を食らえ!!(バッ)」
スラッシュアックス 「A、目を閉じろ!」
 >シパァァァッ!!
ドスジャギィ 「ぐっ……光の玉か!!」
ジャギィ達 「うわぁぁぁ!! 目が!」
ジャギィノス達 「きゃぁぁ!!」
毒リオレウス 「……人間めがぁ!!」
毒リオレイア 「目が……やってくれるじゃねぇか……!!」

715: 2009/07/31(金) 11:45:53.44 ID:eU25ltU0
毒リオレイア 「……? 何だ、この地響きは……」
毒リオレイア 「まさか……」
毒リオレウス 「こ、この振動は……」
スラッシュアックス 「うぉぉぉぉ!!」
ドスジャギィ 「(ザシュッ)ちっ…………!!」
ドスジャギィ 「(ニヤリ)」
ドスジャギィ 「(……やっと来やがったか……)」
ドスジャギィ 「(この人間達を入り口で始末することは簡単だった)」
ドスジャギィ 「(だが、ここまで進入させたのには訳がある!!)」
××××× 「(ドバァァッ!)ギャォォォォォォ!!!」
毒リオレウス 「!! ボルボロス様!?」
毒リオレイア 「何でだ!? 伏せってらっしゃるんじゃなかったのか!?」
スラッシュアックス 「こ……これは……土砂竜!? 隠れていたのか!?」
ボルボロス 「人間……!! 人間ンンン!!!! ギャォォォォ!!」

716: 2009/07/31(金) 11:47:20.56 ID:eU25ltU0
―砂原、秘境の洞窟―

クルペッコ 「よし、進入に成功したぞ~(↑↑)♪」
ラギアクルス 「毒夫婦の暴れ方が良かった。このまま奥まで進めば、ボルボロス様にご拝謁できるはずだ」
少女 「ウラちゃん、お母さんに会えるよ」
ウラガンキン 「???」
トレニャー 「ひぃぃ。外で火の玉がビュンビュン飛んでるにゃぁ……」
トレニャー 「くわばらくわばら」
少女 「ウラちゃん。あのね、よく聞いてほしいの」
少女 「私はね、ウラちゃんのお母さんじゃないんだよ?」
ウラガンキン 「??」
少女 「ウラちゃんのお母さんはこの奥にいるの。だから、これからは私みたいな弱い人間じゃなくて……」
少女 「もっと強くて、もっと大きなお母さんに守ってもらってね」
ウラガンキン 「まんま……」
少女 「分かった?」
ウラガンキン 「まんま(ぎゅっ)」
少女 「私の後ろに隠れちゃった……」
ラギアクルス 「…………」
ラギアクルス 「少女、ともかくボルボロス様にご事情を説明せねばならぬ。ウラガンキン様と共に来るが良い」
少女 「はい……分かりました」
少女 「(おじさん……紫ちゃん……大丈夫かな…………)」

717: 2009/07/31(金) 11:48:13.92 ID:eU25ltU0
クルペッコ 「この奥が~~ボルボロス様の寝所だ~~」
クルペッコ 「…………」
クルペッコ 「ボルボロス様、夜分遅く恐悦至極に存じます」
少女 「(普通にしゃべった……!!)」
クルペッコ 「即急にお話差し上げたいことがありまして……」
 >ゴゴゴゴゴゴ
ラギアクルス 「な……何だ!?」
クルペッコ 「これは……ボルボロス様が地面を移動するときの地鳴りだ!!」
ラギアクルス 「何だって!? 何故移動など……!!」
クルペッコ 「御免!(バッ)」
クルペッコ 「やはり、ボルボロス様は、今しがた壁を掘りぬいて外へ……!!」
ラギアクルス 「ボルボロス様!! 何をお考えで……!」
クルペッコ 「団長、うろたえるな。洞窟の天井が不安定になっている。落石の前に外に出るぞ」
ラギアクルス 「あい分かった。少女、ウラガンキン様もこちらに!!」

718: 2009/07/31(金) 11:49:05.72 ID:eU25ltU0
―砂原、少し離れたエリア―

ボルボロス 「グォォォォォォ!!!」
ボルボロス 「人間……!!」
ボルボロス 「わたくしの子供を奪った人間……!!」
ボルボロス 「これ以上何を奪おうというのか……これ以上私から何を奪おうと言うのか!!!」
ボルボロス 「あぁ許さぬ!! 許さぬ!!!」
ボルボロス 「ギャォォォォォォ!!」
ボルボロス 「絶対に許さぬ!!」
熟練ハンターA 「こ……これはまずいぞ。今、土砂竜などと戦う用意はない…………」
スラッシュアックス 「(くそ……これは本当にまずい……)」
スラッシュアックス 「(肉食獣の親玉だけならなんとかなったが、Aが手傷を負っている中、俺一人で……)」
スラッシュアックス 「(いや……)」
スラッシュアックス 「(やるのだ!!)」
スラッシュアックス 「(できないではない、やるのだ!!)」
スラッシュアックス 「(ガチャコン)」
スラッシュアックス 「A、隙を見て安全な地帯まで下がるんだ」
熟練ハンターA 「スラッシュアックス! 氏ぬ気か!?」
スラッシュアックス 「氏なぬ!」
熟練ハンターA 「!!」
スラッシュアックス 「俺は氏なぬ! このモンスターどもにやられた仲間達の重さ、強さ、心がこの武器にはこもっている!」
スラッシュアックス 「それらをすべて開放すれば、俺は負けない!!」

719: 2009/07/31(金) 11:50:20.74 ID:eU25ltU0
ボルボロス 「シャァァァァァ!!(ズン、ズン、ズン)」
スラッシュアックス 「(肉食獣たちが攻撃をしてこない!?)」
スラッシュアックス 「(火竜と雌火竜は離れている……まずは、この土砂竜をしとめる!)」
スラッシュアックス 「うぉぉぉぉおおお!!(ダダダダダッ)」
スラッシュアックス 「つぉら!!(ザンッ)」
ボルボロス 「(ズバァッ!!)……ッギャァァ!!!」
スラッシュアックス 「! (効いた!? この土砂竜、かなり弱っている!!)」
スラッシュアックス 「(やれるか…………)」
スラッシュアックス 「(いや……)」
スラッシュアックス 「(やるんだ!! 頃すのだ!!! 敵を!!)」
ボルボロス 「ギャォォォォ!(ドドドドド)」
スラッシュアックス 「(土砂を飛ばしてきた……!!)」
スラッシュアックス 「そんな緩い攻撃があたるか!!(ザザザッ)」

720: 2009/07/31(金) 11:51:15.97 ID:eU25ltU0
スラッシュアックス 「うおぉぉぉぉ!!」
ボルボロス 「!!!」
ドスジャギィ 「(ニヤッ)」
ドスジャギィ 「(そうだ、頃しあえ人間)」
ドスジャギィ 「(俺がチラッと言ってやったんだ。チラッとな……言っただけだ)」
ドスジャギィ 「(上に、あんたの卵を盗んだ人間がいますぜってな……)」
ドスジャギィ 「(ふん……今の弱ったボルボロスに、戦いなど出来ない)」
ドスジャギィ 「(ベルキュロスは子供を殺せとかまどろっこしいことを言っていたが……)」
ドスジャギィ 「(手っ取り早い方法が、こんなにあるじゃねぇかよ)」
ドスジャギィ 「(あばよボルボロス王妃)」
ドスジャギィ 「(あんたにゃ恨みはねぇが、俺の今後のために、安らかに逝ってくれ)」
ドスジャギィ 「(さびしくはねぇぜ。その後、すぐ子供にも後を追わせてやる)」
ドスジャギィ 「(そうすりゃ、俺はめでたく百人隊長だ)」
ドスジャギィ 「(人生ボロいぜ)」

721: 2009/07/31(金) 11:52:07.02 ID:eU25ltU0
毒リオレウス 「何や!? 何でドスはボルボロス様を助けねぇ!?」
毒リオレイア 「父ちゃん、今のボルボロス様は戦えるような状況じゃねぇ!」
毒リオレウス 「お助けに行くぞ!(ヒュゥゥゥ)」
毒リオレイア 「ああ!(ヒュゥゥゥゥ)」
ドスジャギィ 「(バカ夫婦が近づいてくるが……)」
ドスジャギィ 「(残念、タイムオーバーだ)」
スラッシュアックス 「うぉぉぉ!!」
ドスジャギィ 「!! (あの人間、ボルボロスの頭に取り付いた!!)」
ドスジャギィ 「(剣を突き刺す気か!)」
スラッシュアックス 「つぉら!!(ドスッ)」
ボルボロス 「ギャァァァ!!」
ボルボロス 「(ブンブン)」
スラッシュアックス 「ふり飛ばされて……たまるか…………!!」
スラッシュアックス 「剣は頭の鱗に突き刺した……」
スラッシュアックス 「雷の属性を、全開放してやる……!!」

722: 2009/07/31(金) 11:52:59.66 ID:eU25ltU0
―砂原、秘境入り口―

クルペッコ 「ボ……ボルボロス様が人間に襲われている!!」
ラギアクルス 「ボルボロス様ァァァ!!!」
少女 「ラギアさん、どうしたの!?」
ラギアクルス 「人間にボルボロス様が襲われている!! おそらく、ドスジャギィにハメられたのだ!!」
ラギアクルス 「ここからでは、お助けしようにも間に合わぬ!!」
少女 「人間に……」
ウラガンキン 「………………」
ウラガンキン 「まんま……?」
少女 「(ぐっ…………)」
少女 「(やっと会えるのに……)」
少女 「お父さんや、お母さんに会いたくても会えない人も、たくさんいるのに……」
少女 「ウラちゃんは、これからやっと会えるの!」
少女 「だから、やめて…………」
トレニャー 「少女さん……」
トレニャー 「ここからじゃ声も届かねぇッス…………」

723: 2009/07/31(金) 11:53:51.96 ID:eU25ltU0
少女 「(ぎゅっ…………)」
少女 「(これ……白い猫さんにもらったてるてる坊主のネックレスが、熱い…………!!)」
少女 「やめて…………」
トレニャー 「ひゃっ! 少女さんの体が、薄く白く光りはじめた!!」
ラギアクルス 「こ……これは……」
ラギアクルス 「我ら竜族の神が纏う、白光!!」
少女 「Halten……Sie……es…………an………………」
トレニャー 「……? 少女さん?」
少女 「……Halten! Sie! es! an!!!(やめなさい!!!)」
クルペッコ 「!!!!」
ラギアクルス 「!!!!!」

724: 2009/07/31(金) 11:54:48.90 ID:eU25ltU0
―砂原、少し離れたエリア―

スラッシュアックス 「今だ……属性を……」
スラッシュアックス 「(ビクッ!!)」
スラッシュアックス 「な……何だ!?」
スラッシュアックス 「(今、巨大な何かににらまれたような……)」
スラッシュアックス 「(!! あれは……!!)」
スラッシュアックス 「(水竜!? その脇に、小さな…………)」
スラッシュアックス 「(人間の、女の子!!!!)」
スラッシュアックス 「(何故あんなところに……!? 襲われているのか!? 物の怪の類か!?)」
ボルボロス 「グ……グォォォォォ!!!(ブンブン!!)」
スラッシュアックス 「(くっ……このままでは振り落とされてしまう!)」
スラッシュアックス 「(とどめを……)」
 >ヒュゥゥゥゥゥ
スラッシュアックス 「(何だ!? 何かが上空を飛んでいる!!)」
スラッシュアックス 「(モンスター!? 見たことのない種が、空を……!!)」
スラッシュアックス 「(! 何かが飛び降りた!!)」

725: 2009/07/31(金) 11:55:40.09 ID:eU25ltU0
ハンマー 「スラッシュアックス! 少女の声が聞こえなかったのか!!」
スラッシュアックス 「ハンマー!?」
ハンマー 「剣を収めろ! この戦、俺が預かる!!」
スラッシュアックス 「貴様…………!! モンスターに心を冒されたか!!」
ハンマー 「(このままでは、あの竜が止めを刺されてしまう……!!)」
ハンマー 「(この上空に差し掛かったとき、少女が何かを叫んだのが聞こえた……!!)」
ハンマー 「(その時、大宝玉が強く光り輝いた……!!)」
ハンマー 「(おそらくあれは、少女にとって大切な竜……)」
ハンマー 「(つまり、彼女を母と思っている子竜の親!!!!)」
ハンマー 「(スラッシュアックスは、口で止められる男ではない!!)
ハンマー 「(ガシャコン)」
ハンマー 「(落下の勢いで、力ずくで……!!)」

726: 2009/07/31(金) 11:56:33.63 ID:eU25ltU0
スラッシュアックス 「狂ったか! ハンマー!!!!」
ハンマー 「やらせはしない! うおぉぉぉ!!」
スラッシュアックス 「(駄目だ! 一度この竜から剣を抜いて、迎撃しなければ……!!)」
スラッシュアックス 「つぉらぁぁ!!」
 >ガキィィィンッ!!
ハンマー 「(ドサッ)ぐはっ…………!!」
スラッシュアックス 「(ドサッ)ぐああっ!!」
ドスジャギィ 「(な……何だ!? 見たことのねぇモンスターが空から、人間をもう一匹落としやがった!!)」
ドスジャギィ 「(畜生が! もう少しであの人間は、ボルボロスに止めをさせるところだったのに……!!)」
ボルボロス 「はぁ……はぁ……」
ボルボロス 「人間…………」
ボルボロス 「わたくしの子供を奪った人間……」
ボルボロス 「許さない……絶対に許さない!!!!」
ボルボロス 「ギャォォォォォォ!!!!」

727: 2009/07/31(金) 11:57:24.37 ID:eU25ltU0
―砂原、秘境入り口―

少女 「(ふらり…………)」
ウラガンキン 「まんま!!」
トレニャー 「少女さん、しっかりしてくだせぇ!!」
クルペッコ 「い……今のは紛れも無く、神の言葉……!!」
ラギアクルス 「この少女は、やはり……!!!
 >ギャォォォォォォォッ!!!!
 >ビリビリビリビリビリビリビリ
ラギアクルス 「グッ……何だ……この咆哮は…………」
クルペッコ 「空気……いや、大気が……揺れる…………!!!」
ウラガンキン 「(ピクッ)」
ウラガンキン 「……!!!」
ラギアクルス 「……! いかん!」
ラギアクルス 「少女、ウラガンキン様! はやくそこから離れてください!」
ラギアクルス 「秘境の入り口が、今の大咆哮で崩れるぞ!!」

728: 2009/07/31(金) 11:58:32.30 ID:eU25ltU0
少女 「え…………」
 >ゴゴゴゴゴ
ウラガンキン 「まんま……!!(バッ)」
トレニャー 「少女さん!!」
少女 「(ドガッ)うっ…………」
トレニャー 「く……崩れた岩が少女さんの頭に……!!」
ウラガンキン 「まんま!! まんま!!!」
ラギアクルス 「うぉおおお!!(バッ)」
ラギアクルス 「私の体の下に、早く!!!」
トレニャー 「あ、ありがてぇ! 王子さんもはやく!!」
ウラガンキン 「まんま! (ぐいぐい)」
少女 「………………」

729: 2009/07/31(金) 11:59:26.21 ID:eU25ltU0
―砂原、少し離れたエリア―

ハンマー 「(!!! あそこに少女が!!)」
ハンマー 「(だが、今の咆哮の衝撃で、砂漠のところどころが崩れてきている!!)」
ハンマー 「(……! 少女が倒れた!!)」
スラッシュアックス 「ぐ……モンスターめ!!(ガシャコン)」
ボルボロス 「ハァ……ハァ……(ふらふら……)」
ハンマー 「待てスラッシュアックス!!(ガシャコン)」
スラッシュアックス 「何故止める!!」
スラッシュアックス 「貴様、人間を裏切るつもりか!!」
スラッシュアックス 「我らは人間だ! モンスターは敵だ!!!」
スラッシュアックス 「この土砂竜にはおびただしい数の仲間がやられている!!」
スラッシュアックス 「邪魔をすると言うのならば、貴様も斬る!!!!」

730: 2009/07/31(金) 12:03:53.14 ID:eU25ltU0
お疲れ様でした。次回へ続かせていただきます

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次回の更新は、今の私の体調ですと、およそ一週間後前後(8月4~7日)を見積もっていただけますと幸いです

明日、トライが発売されますね
私も購入いたしますので、一緒に遊べる方は是非合流しましょう
接続しましたら、その旨こちらで告知させていただきます

734: 2009/07/31(金) 15:57:57.78 ID:lUR6zGAo
乙乙!期待してるぜよ

735: 2009/07/31(金) 19:12:35.18 ID:8R9qWIAO
乙です!
今回も楽しかったー

引用: イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 2