704: ◆6osdZ663So 2013/09/08(日) 05:50:23.62 ID:PIVFd/nCo
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです
前回はコチラ
705: 2013/09/08(日) 05:51:42.27 ID:PIVFd/nCo
その少女は踊る。
薄暗い祟り場を照らす、銀色の月明かりの下。
その少女は舞う。
狂騒の宴が開かれる公園、少しだけ高い、小さな舞台の上。
その少女は魅せる。
目がくらむほどに美しく、そして激しい剣達の舞を。
今宵の祟り場、彼女がこうして踊るのはもう幾度目か。
しかしまあ、何度見ても、見事なもの。
次々と現れる剣と共に踊る、危うくも可憐なその姿、一瞬たりとも目が離せぬ。
そして観客達は、これまで同様、その次に起こる何かにも期待を馳せる。
一舞、純白の姫君は黒き闇の兵達と戦い、白銀の王子に救われた。
二舞、邪悪なる蒼白の魔女は、姫と王子の愛の前に倒れた。
三舞、深遠なる海に囚われた姫は、王子と共に鎧の海魔と戦った。
四舞、姫は、機械の音楽家と花の踊り子と共に、光と音の世界を作り出した。
そして此度は五舞目、さあさあ、果たしてお次は何が起こる?
----------------------------------------
それは、なんでもないようなとある日のこと。
それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。
~中略~
「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
706: 2013/09/08(日) 05:53:12.49 ID:PIVFd/nCo
――
妖怪達が沸き立つ公園の広場の、
少女が踊る小山を挟んでその反対側。
向こう側からは見えない、比較的静かな木陰の裏。
そこで美穂達3人は自分達の出番を待ちながら、
少女と剣の織り成す、美しき舞を観覧していた。
美穂「あの・・・・・・・・。」
犬面の姫「何かの。」
美穂「たしか噂だと、扱う剣は5、6本って話だったと思うんですけど・・・・・・・。」
犬面の姫「だったの。」
美穂「あれ、何本あるんでしょう・・・・・・?」
少女の動きに合わせて、中空に舞う剣。
その数はとても片手で数え切れる本数ではなく。
犬面の姫「ふむ・・・・・・伝聞情報は当てにならぬな。10本からは数えておらぬが。」
肇「手に持っているものも合わせて、”今は”15本ですね。」
”今は”と肇が言ったように、明らかに人外の技で操られる剣は、
踊りが盛り上がる度に増えてるように見える。
美穂「・・・・・・まさかあんな風にたくさんの剣を操るなんて。」
踊る少女が手を触れずとも、その剣達は、それ自体がまるで命を宿すように、
時に彼女を厚く守る騎士のように、時に彼女を傷つける悪意のごとく、怒涛の乱舞を繰り広げる。
剣は手で扱うものなんて固定観念が美穂にはあったが、
そのような常識はまったく通用しないお相手だったようで。
妖怪達が沸き立つ公園の広場の、
少女が踊る小山を挟んでその反対側。
向こう側からは見えない、比較的静かな木陰の裏。
そこで美穂達3人は自分達の出番を待ちながら、
少女と剣の織り成す、美しき舞を観覧していた。
美穂「あの・・・・・・・・。」
犬面の姫「何かの。」
美穂「たしか噂だと、扱う剣は5、6本って話だったと思うんですけど・・・・・・・。」
犬面の姫「だったの。」
美穂「あれ、何本あるんでしょう・・・・・・?」
少女の動きに合わせて、中空に舞う剣。
その数はとても片手で数え切れる本数ではなく。
犬面の姫「ふむ・・・・・・伝聞情報は当てにならぬな。10本からは数えておらぬが。」
肇「手に持っているものも合わせて、”今は”15本ですね。」
”今は”と肇が言ったように、明らかに人外の技で操られる剣は、
踊りが盛り上がる度に増えてるように見える。
美穂「・・・・・・まさかあんな風にたくさんの剣を操るなんて。」
踊る少女が手を触れずとも、その剣達は、それ自体がまるで命を宿すように、
時に彼女を厚く守る騎士のように、時に彼女を傷つける悪意のごとく、怒涛の乱舞を繰り広げる。
剣は手で扱うものなんて固定観念が美穂にはあったが、
そのような常識はまったく通用しないお相手だったようで。
707: 2013/09/08(日) 05:54:37.00 ID:PIVFd/nCo
肇「剣一本一本の造りの精巧さも見事ですが、」
肇「意思を与えられたかの様に振舞い、そして無数に増える剣のその在り方。興味深いですね。」
肇「なんだか、あの剣達を操る彼女に出会えた事には運命の様な物さえ感じます。」
刀匠見習いの少女は、舞い踊る剣達に興味を示し、食い入るように舞台を見つめている。
目を輝かせるその姿は、まるでヒーローを見つめる子供のようで、微笑ましかったけれど。
美穂「ちょっとだけ悔しいかも。」
小さな声でぼそっと呟く。
犬面の姫「心配せずとも、美穂どのはきっと、あれほどまでに踊れるようになるよ。」
舞台を集中して見ていた肇には聞こえなかったようだが、お姫様には聞こえていたようだ。
美穂「・・・・・・15本は無理です。」
彼女の言葉に、出来るようになるのだろうかと、少しだけ考えたけれど。
しかし、どう考えても人間業ではないあの領域にまで到達するのは、流石に不可能であろう。
犬面の姫「いやいや、まさかあの神業をそのまま真似ろとは言えぬ。」
犬面の姫「しかし全く同じ事はできずとも、同じほどに魅せることはできよう。」
犬面の姫「美穂どのには美穂どのにしか出来ぬ事もあるであろうからの。」
美穂「私にしかできないこと・・・・・・。」
なんだかそれも難しい事である気がした。
犬面の姫「まあ、それはこれからじっくり探すと良い。」
犬面の姫「さて、もうすぐのようであるな。」
もうすぐ、との彼女の言葉に舞台に目を戻す。
708: 2013/09/08(日) 05:56:00.86 ID:PIVFd/nCo
それまで静かだった公園に歓声が沸き起こった。
どうやら仮面の少女の舞が一段落付き、
見入っていた妖怪達が、次々と称賛の声をあげているらしい。
つまりもう間もなく、美穂の出番である。
美穂「えっと、私は黒い刀のお姫様で」
美穂「白い剣のお姫様のライバル・・・・・・」
美穂「それで、えっと」
舞台に上がる前に、自分の役目を口に出しての確認。
美穂「派手に登場して、とにかく向かって行くだったっけ。」
アバウトな指示であった。
美穂「お、お姫様かぁ・・・・・・私に勤まるのかな。」
美穂「うぅ・・・・・・意識するとまた緊張してきちゃったっ。」
美穂「こ、こう言うときは『人』って言う字を書いて」
美穂「人、人、人、人・・・・・・。」
飲み込むのも忘れ、『人』が数十人ほどに達した頃である。
犬面の姫「美穂どの、出番であるぞ。」
美穂「えぇっ?!も、もうですかっ?!」
美穂「ま、待ってください!今抜きます!」
携えた刀の柄に手をかけ、
美穂「・・・・・・ヒヨちゃん、よろしくね。」
そうして、とうとう彼女は『小春日和』を抜いたのであった。
709: 2013/09/08(日) 05:56:49.64 ID:PIVFd/nCo
――
舞台の上では、仮面の姫君が、
誰かを待つように、佇んでいた。
手には一本の純白の剣。
それを両手で持ち、祈るように目前に掲げている。
周囲に舞っていた剣たちは今は居ない。
姫はただ1人、待ち人が来るのを静かに待っていた。
観客達もまた、その様子を静かに見守る。
「 あ ~ は っ は っ は っ は っ は !!! 」
突如として、舞台に高笑いが響いた。
何事かと、どよめく妖怪達。
漆黒の流星が、舞台に落ちてきた。
小さな舞台、上空から現れたのは、
一本の美しき刀を手に持ち、黒い和装を纏う少女。
その姿はまるで戦国姫と言ったところ。
顔には獰猛な笑みを浮かべている。
此度のゲストの登場に、歓声が上がった。
舞台の上では、仮面の姫君が、
誰かを待つように、佇んでいた。
手には一本の純白の剣。
それを両手で持ち、祈るように目前に掲げている。
周囲に舞っていた剣たちは今は居ない。
姫はただ1人、待ち人が来るのを静かに待っていた。
観客達もまた、その様子を静かに見守る。
「 あ ~ は っ は っ は っ は っ は !!! 」
突如として、舞台に高笑いが響いた。
何事かと、どよめく妖怪達。
漆黒の流星が、舞台に落ちてきた。
小さな舞台、上空から現れたのは、
一本の美しき刀を手に持ち、黒い和装を纏う少女。
その姿はまるで戦国姫と言ったところ。
顔には獰猛な笑みを浮かべている。
此度のゲストの登場に、歓声が上がった。
710: 2013/09/08(日) 05:59:19.51 ID:PIVFd/nCo
突如現れた漆黒の姫君は、公園に集う観客達に目を移すと、
すぅーっと息を吸って、
美穂「わたしはっ!愛と正義のはにかみ侵略者ひなたん星人ナリぃっ!!」
高らかに宣言した。
それは、辺り一帯に響く、渾身のシャウトであった。
いきなりの事に静まり返る観客達。
それはそうだ。このタイミングで、まさかのシャウトである。
しかも愛と正義のはにかみ侵略者って何だ、それは。
美穂「あ、今回ははにかみ戦国姫だったひなたっ☆」
いや、そんな事はどっちでもいい
舞台の空気を完全にブチ破っての叫び。これには、その場に居る全員が困惑する。
その様子には意にも介さず、
漆黒の少女は真っ直ぐと、純白の剣の姫君を見つめ刀を向ける。
美穂「主演女優の座を賭けて勝負ひなたっ!!」
そんな形で、黒の姫君は、白の姫君に宣戦布告したのであった。
すぅーっと息を吸って、
美穂「わたしはっ!愛と正義のはにかみ侵略者ひなたん星人ナリぃっ!!」
高らかに宣言した。
それは、辺り一帯に響く、渾身のシャウトであった。
いきなりの事に静まり返る観客達。
それはそうだ。このタイミングで、まさかのシャウトである。
しかも愛と正義のはにかみ侵略者って何だ、それは。
美穂「あ、今回ははにかみ戦国姫だったひなたっ☆」
いや、そんな事はどっちでもいい
舞台の空気を完全にブチ破っての叫び。これには、その場に居る全員が困惑する。
その様子には意にも介さず、
漆黒の少女は真っ直ぐと、純白の剣の姫君を見つめ刀を向ける。
美穂「主演女優の座を賭けて勝負ひなたっ!!」
そんな形で、黒の姫君は、白の姫君に宣戦布告したのであった。
711: 2013/09/08(日) 06:00:04.14 ID:PIVFd/nCo
――
肇「・・・・・・すみません、こうなってしまう事くらいは多少なり予測しておくべきでした。」
舞台の様子をみて、頭を抱える肇。
肇「多くの妖怪達の箍が外れてしまうこの祟り場で、」
肇「ひなたん星人さんが暴走してしまわない保障なんて何処にもなかったですよね。」
妖刀から作られた人格であるところの、ひなたん星人は、
祟り場の影響を受けないどころか、むしろ溢れる妖気の影響を色濃く受けているだろう。
精神干渉をシャットアウトできる『小春日和』の特性であるが、
テンションの高揚は彼女にとっては、良い影響なのだからシャットする必要も無く、
舞台の上と言う事もあってか、
まあ、舞い上がってしまっているわけである。
犬面の姫「あはは♪面白いね、ひなたん星人ちゃん。」
犬面の姫「まあまあ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。」
犬面の姫「白いお姫様と黒いお姫様の対決って意味では予定通りだしね。」
肇「貴女がそう言うのなら、大丈夫なのだとは思いますが・・・・・・・。」
犬面の姫「たしかに、これが本物の舞台で本当のお芝居なら、ちょっとした事故だったかもしれないけどさ。」
犬面の姫「ここはお祭りの場だよ?」
会場が沸き立つ声が聞こえる。
犬面の姫「ほら、ね?」
肇「・・・・・・すみません、こうなってしまう事くらいは多少なり予測しておくべきでした。」
舞台の様子をみて、頭を抱える肇。
肇「多くの妖怪達の箍が外れてしまうこの祟り場で、」
肇「ひなたん星人さんが暴走してしまわない保障なんて何処にもなかったですよね。」
妖刀から作られた人格であるところの、ひなたん星人は、
祟り場の影響を受けないどころか、むしろ溢れる妖気の影響を色濃く受けているだろう。
精神干渉をシャットアウトできる『小春日和』の特性であるが、
テンションの高揚は彼女にとっては、良い影響なのだからシャットする必要も無く、
舞台の上と言う事もあってか、
まあ、舞い上がってしまっているわけである。
犬面の姫「あはは♪面白いね、ひなたん星人ちゃん。」
犬面の姫「まあまあ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。」
犬面の姫「白いお姫様と黒いお姫様の対決って意味では予定通りだしね。」
肇「貴女がそう言うのなら、大丈夫なのだとは思いますが・・・・・・・。」
犬面の姫「たしかに、これが本物の舞台で本当のお芝居なら、ちょっとした事故だったかもしれないけどさ。」
犬面の姫「ここはお祭りの場だよ?」
会場が沸き立つ声が聞こえる。
犬面の姫「ほら、ね?」
712: 2013/09/08(日) 06:01:38.95 ID:PIVFd/nCo
――
「ははは!またえらく可愛いのが来たな!」
「おもしれー!勝負事なら見届けてやるぜー!」
「お前どっちが勝つと思う?」
「そりゃあ白い剣のほうだろー」
この程度の事故なんて言うのは、祭りを盛り上げる華でして。
酒も入ってる観客達にはその場のノリで、あっさりと受け入れられるのでした。
疎らに聞こえていた野次は、次第に広がり、会場全体を包む喝采へと変わる。
美穂「あははっ♪」
この様子には、漆黒の少女も調子に乗って得意満面に笑うのであった。
仮面の少女「むふふっ♪」
それまで黙っていた彼女もまた、口を開いた。
仮面の少女「恋の演目にトラブルは付き物ですからねぇ♪」
仮面の少女「いいですよぉ、それならそれでお相手いたしましょう♪」
その言葉と同時に、彼女の周囲に無数の剣が現れ始める。
漆黒の少女もまた、己の持つ刀を構えた。
向かい合う両者。
当初の予定とは、ほんの少し違えど、
白と黒の剣の舞が今始まる。
「ははは!またえらく可愛いのが来たな!」
「おもしれー!勝負事なら見届けてやるぜー!」
「お前どっちが勝つと思う?」
「そりゃあ白い剣のほうだろー」
この程度の事故なんて言うのは、祭りを盛り上げる華でして。
酒も入ってる観客達にはその場のノリで、あっさりと受け入れられるのでした。
疎らに聞こえていた野次は、次第に広がり、会場全体を包む喝采へと変わる。
美穂「あははっ♪」
この様子には、漆黒の少女も調子に乗って得意満面に笑うのであった。
仮面の少女「むふふっ♪」
それまで黙っていた彼女もまた、口を開いた。
仮面の少女「恋の演目にトラブルは付き物ですからねぇ♪」
仮面の少女「いいですよぉ、それならそれでお相手いたしましょう♪」
その言葉と同時に、彼女の周囲に無数の剣が現れ始める。
漆黒の少女もまた、己の持つ刀を構えた。
向かい合う両者。
当初の予定とは、ほんの少し違えど、
白と黒の剣の舞が今始まる。
713: 2013/09/08(日) 06:02:46.77 ID:PIVFd/nCo
――
まずは、漆黒の少女が地を蹴った。
まさに疾風の如く、純白の剣の姫君に近づかんと、舞台を駆ける。
しかし、その動きは、眼前に迫り来る幾本もの黒き剣、
姫君を守る忠臣達に邪魔される。
彼女目掛けて飛んできた1本目と2本目の剣を、刀を振り下ろして同時に叩き落とす。
3本目は身体を捻らせて回避。そのまま流れるように刀を目の前に持ってきて4本目を防ぐ。
ギチギチと音を鳴らし、4本目との打ち合いとなるが、
その状態から漆黒のオーラが刀から放たれ、4本目は弾き飛ばされる。
弾き飛ばされた4本目が、続いて迫っていた5本目6本目にぶつかり、それらも撃墜。
その間に、背後から戻って来ていた3本目を打ち落とす。
すぐ様振り返り、7本目8本目9本目による三方向からの同時攻撃を刀の一振りで防ぐが、
続く、10本目による上方からの突撃を防ぐ術が無く、
仕方なく後方に退避、彼らが追ってきた所を迎撃し、まとめて薙ぎ払った。
それは一瞬の攻防。
漆黒の少女は迫り来る10人の兵達を捌き切ったが、
しかし、純白の姫君との距離はほとんど詰められてはいない。
まずは、漆黒の少女が地を蹴った。
まさに疾風の如く、純白の剣の姫君に近づかんと、舞台を駆ける。
しかし、その動きは、眼前に迫り来る幾本もの黒き剣、
姫君を守る忠臣達に邪魔される。
彼女目掛けて飛んできた1本目と2本目の剣を、刀を振り下ろして同時に叩き落とす。
3本目は身体を捻らせて回避。そのまま流れるように刀を目の前に持ってきて4本目を防ぐ。
ギチギチと音を鳴らし、4本目との打ち合いとなるが、
その状態から漆黒のオーラが刀から放たれ、4本目は弾き飛ばされる。
弾き飛ばされた4本目が、続いて迫っていた5本目6本目にぶつかり、それらも撃墜。
その間に、背後から戻って来ていた3本目を打ち落とす。
すぐ様振り返り、7本目8本目9本目による三方向からの同時攻撃を刀の一振りで防ぐが、
続く、10本目による上方からの突撃を防ぐ術が無く、
仕方なく後方に退避、彼らが追ってきた所を迎撃し、まとめて薙ぎ払った。
それは一瞬の攻防。
漆黒の少女は迫り来る10人の兵達を捌き切ったが、
しかし、純白の姫君との距離はほとんど詰められてはいない。
714: 2013/09/08(日) 06:03:14.78 ID:PIVFd/nCo
再び、地を蹴り直す漆黒の少女。
美穂「ラブリージャスティス・・・・・・。」
美穂「ひなたんロケットッ!!」
彼女の足先から、地面に漆黒のエネルギーが放たれる。
地面は穿たれ、そして弾け飛ぶように、漆黒の少女が仮面の姫君に迫る。
疾風迅雷の強行突破。
先ほどと同じ様に黒い剣たちが彼女に襲い掛かるが、
少女の身体中から発される漆黒の闘気によって、彼らは触れること敵わず、弾かれ散っていく。
そして、瞬く間に仮面の姫君との距離をつめた少女が、
漆黒の闇を纏いし刀が振り下ろした!!
ガィイン!
純白の剣が、黒の斬撃から主を守る。
2人の姫の視線が交差して、
打ち合いが始まった。
美穂「ラブリージャスティス・・・・・・。」
美穂「ひなたんロケットッ!!」
彼女の足先から、地面に漆黒のエネルギーが放たれる。
地面は穿たれ、そして弾け飛ぶように、漆黒の少女が仮面の姫君に迫る。
疾風迅雷の強行突破。
先ほどと同じ様に黒い剣たちが彼女に襲い掛かるが、
少女の身体中から発される漆黒の闘気によって、彼らは触れること敵わず、弾かれ散っていく。
そして、瞬く間に仮面の姫君との距離をつめた少女が、
漆黒の闇を纏いし刀が振り下ろした!!
ガィイン!
純白の剣が、黒の斬撃から主を守る。
2人の姫の視線が交差して、
打ち合いが始まった。
715: 2013/09/08(日) 06:03:46.43 ID:PIVFd/nCo
漆黒の姫は、縦横無尽に姫君の周囲を駆巡りながら、
刀を振りかぶって、強烈な攻撃を何度も放つが、
純白の剣は踊るように、のらりくらりとそれらの攻撃をいなしていく。
何度となく、そんなやり取りを繰り返しながら、
徐々に、二人の剣戟の速度は上がっていった。
黒の猛攻、白の舞踏
反する二種の輝きが彩る舞台に観客達の興奮が高まる。
彼らが黒と白の姿を、目で追うのもやっとの速度になった頃、
漆黒を纏う刀が、ついに仮面の姫君の頭上を捉えた。
美穂「貰ったナリっ!」
これまでのやり取りの中で最も強烈なトドメの一撃が放たれる。
力強くも美しきその刀の軌跡に、誰もが恐れおののく。
白の姫に逃げ場は無い。
だが、
716: 2013/09/08(日) 06:04:50.63 ID:PIVFd/nCo
ザンッ!
突如現れた白銀の剣によって、漆黒の刃は防がれた。
彼の剣によって、仮面の姫君がまたも脅威から救われた事がわかり、拍手が沸く。
必殺の攻撃を防がれた黒の少女は、慌てて後退した。
白銀の剣に続くように、襲撃した純白の剣をどうにか彼女は回避する。
しかし、
彼女が後退した先には、姫君に仕える騎士達が待ち構えていた。
漆黒の少女が回りを見渡せば、
黒の剣達が、彼女を完全に包囲している。
立場逆転、漆黒の姫が剣達の檻に囚われる。
美穂「・・・・・・まずったナリ」
冷や汗をタラリと垂らす。
剣を掲げ、仮面の姫君が号令を出す。
その合図と共に、何十本もの剣が一斉に少女に襲い掛かった。
717: 2013/09/08(日) 06:05:27.76 ID:PIVFd/nCo
少女の持つ漆黒の刀が、何十と迫り来る怒涛の剣の乱れ撃ちを、
次々と打ち落としていく。
前後左右、上下問わずに降り注ぐ剣の雨。
その全てを、稲光の如く素早く、確実に一本一本切り崩す。
漆黒の少女は檻の中をくるくると嵐のように舞い踊った。
剣達が次々と、叩き落され、打ち上げられ、弾き飛ばされてゆく。
10本、20本、30本、
そして・・・・・・
彼女を襲った全ての黒の騎士達が地に伏して、剣の檻は打ち破られた。
少女は見事に窮地を乗り切った。
だが、檻を脱した直後、
息を整え、次の攻撃に備えて姿勢を正す前の、そのわずかな隙を狙われた。
白銀の剣が、漆黒の少女目掛けて、真っ直ぐと飛んでくる。
すぐに刀を前に出して、その重い一撃を少女は受けたが・・・・・・
それと同時に姿勢を低くして、猫の様に素早くしなやかに近づいて来た姫君の、
純白の剣の鮮やかな攻撃から身を守ることが出来ず。
美穂「しまっ・・・・・・。」
カァンッ!
と金属音が鳴き、漆黒の少女の手から、妖刀が弾き飛ばされた。
彼女の刀は、大きく飛ばされ舞台裏の方に消えていく。
美穂「・・・・・・えっ」
718: 2013/09/08(日) 06:06:14.19 ID:PIVFd/nCo
仮面の少女「これでは打つ手無しですかねぇ?」
刀を弾き飛ばされ、無防備となった少女に純白と白銀の剣の刃先が向けられている。
美穂「う・・・・・・。」
美穂(どどどどどうしようっ!!!)
なお、言うまでも無く、現在の彼女の人格は小日向美穂本人である。
『小春日和』が弾き飛ばされたことで、ひなたん星人の人格は引っ込み、
ついでに負のエネルギーで編みこんだ、衣装も既に霧散してしまっている。
仮面の少女「それでは、お仕舞いにしましょうか♪」
美穂「えっ、まっ」
抵抗の声はむなしく、
少女に向かって、無慈悲にも純白の剣が振り下ろされ。
彼女はギュッと目を瞑って
覚悟を決めた。
719: 2013/09/08(日) 06:06:56.49 ID:PIVFd/nCo
キィンッ
っと、剣同士がぶつかり合った音に、
美穂が意を決して目を開くと、
一振りの刀が、純白の剣を抑えていた。
どこかで見覚えがある、その刀。
たしかその刀は、
桜舞う公園で鬼の少女と共に出会い、
美穂の相方と、同等に、対等に打ち合った一振りの刀。
美穂「・・・・・・『桜花夜話』?」
それは折れてしまったはずの、肇の刀に似ていた。
犬面の姫「なんだか美味しいとこ取っちゃうみたいでごめんね。」
その美しき刀の使い手は妖の姫であった。
720: 2013/09/08(日) 06:07:27.00 ID:PIVFd/nCo
彼女は美穂を守るように純白の剣からの攻撃を防いでいた。
仮面の姫君の傍らから、妖の姫に向け白銀の剣が差し迫る。
純白の煌きに呼応するように、白銀の閃光が舞う。
これを避けるために妖の姫は、美穂を脇に抱えるようにして飛び退いた。
この時、一瞬の事ではあったが、
美穂には、犬の面の隙間から、その裏に隠された素顔を見ることができた。
その顔は、美穂にとってよく知る人物で。
美穂「えっ?!せ、せい!?」
犬面の姫「ふふっ、やっと気づいてくれた?」
美穂「な、なんっ」
なんで、と言おうとして、彼女の唇の前に人差し指が立てられる。
犬面の姫「説明は後で。」
犬面の姫「今は舞台に集中しなきゃ、ね?」
721: 2013/09/08(日) 06:08:11.14 ID:PIVFd/nCo
純白の姫君と、妖の姫、両者の間に距離が開く。
犬面の姫「さあ、美穂ちゃん。これを持って。」
妖の姫は、傍らに立つ少女に、
何処からか取り出したのか、一本の刀を差し出した。
美穂「・・・・・・これは」
手に取った刀は、妖刀『小春日和』。
ではなく、
それに似た姿をした別の刀。
ただそれは、いつも『小春日和』を目にしている美穂でさえ、見間違いそうになるほどにそれはよく似ていた。
手に握ればずっしりと重みを感じる。
しかし、握っても人格が形成されないと言う事はやはり別の刀なのだ。
少女は、両手で抱えるようにしながら、いつも”自分”がやっている様にその刀を構えた。
重みに少しだけよろめいたが、どうにか構えを形にする。
それを待っていたかのように、
妖の姫と少女の周りに、無数の剣が現れ始めた。
そして再び何十もの黒き騎士達による、一斉同時攻撃が行われる。
またしても全方位からの、何十本もの剣による同時攻撃。
その脅威が2人の姫に襲い来る。
犬面の姫「ツキアカリ」
妖の姫が、中空に刀を振ると同時に、辺りに光が舞い散った。
722: 2013/09/08(日) 06:09:40.58 ID:PIVFd/nCo
幻想的な光景であった。
辺り一面に、七色の光が迸り、
美穂達を守るように幾本もの刀の華が咲き乱れる。
黒の剣たちは、立ち並ぶ刀の防壁に弾かれて、
彼らの突撃は失敗に終わった。
美穂「刀を・・・・・・作った・・・・・・?」
犬面の姫「少し違うね。」
犬面の姫「写し出したんだよ、記憶にある刃の幻想を。この丘に転がる無数の小石や木の枝なんかにね。」
妖の姫が手に持つ『桜花夜話』も、
少女に手渡された『小春日和』も、
そして地面に突き立つたくさんの刀も。
それらは全て一本の刀が、
その記憶から、世界に写し出した幻想の輝き。
犬面の姫「『月灯』は無限で夢幻な、日本一、欲張りな刀だよ。」
パチン、と
妖の姫が指を鳴らすと。
地面が盛り上がり、幾人かの土で出来た武者達が現れる。
土くれの武者達は、それぞれ地面に突き立つ刀を手に取った。
さきほど、刀の防壁に弾き飛ばされた黒の騎士達が、
再び、主の敵を討たんと、舞い戻ってくる。
土くれの武者達は、妖の姫たちを守るようにそれらを迎え撃った。
犬面の姫「それじゃあ美穂ちゃん、一緒に踊ってくれるかな?」
彼女が左手を差し出して、
美穂「は、はいっ!」
少女の右手がその手を握る。
そして、二人は共に駆け始めた。
723: 2013/09/08(日) 06:10:48.28 ID:PIVFd/nCo
黒の騎士達と、土の武者達が争う戦場を駆ける二人の姫。
加熱する争いをさらに盛り上げるかのように、辺りには花が舞う。
不屈の黒の騎士団は、土の武者を一体二体と打ち倒すと、
純白の姫君を守るため、二人の行く手を阻もうと追ってくる。
一本、二本と、彼女達目掛けて飛んでくる剣達。
犬面の姫「右に飛んで!」
美穂「は、はい!」
犬面の姫「次は左っ!」
妖の姫のリードで、少女は踊るようにそれらをかわす。
妖の姫は再び中空にその刀を振るう。
舞い散る花びらが、彼女の持つ刀の刀身に写ると、
花びらを七色の光が包み、そして刃へと変わった。
宙に舞う刃が、彼女たちがかわしきれなかった黒の剣撃を防ぐ。
右へ、左へ、舞いながら、黒の剣の猛攻を切り抜けていく二人。
そうして、迫り来る全ての剣をかわしきって、
彼女たちは純白の姫の下にたどり着いたのだった。
724: 2013/09/08(日) 06:12:29.41 ID:PIVFd/nCo
少女は再び、純白の剣と対峙した。
すぐ背後からは、討ち損ねた幾本もの黒の騎士達が迫っている。
妖の姫は繋いでいた手を離し、少女に背を向け、背後の脅威と対峙した。
彼女の周りの地面が盛り上がり、再び土くれの武者達が集う。
どうやらこちらは任せて、
純白の姫との決着をつけろと言う事であろう。
少女の手には一本の刀。
それは普段頼りにしている相方ではなく、よく似てはいるが別の刀だ。
使い手たる少女自身、いつも戦うときの”自分”の姿を真似て、どうにか構える事こそできているが、
正直言って、このままでは戦うどころか刀を振り回すことすら難しいだろう。
それでも
目の前の、純白の剣のお姫様に対峙する勇気が欲しくて、
美穂(お願いヒヨちゃん、力を貸して。)
彼女は願った。
途端に、その呼びかけに答えるかのように、
目の前に流星が飛来した。
ザクリと目の前に突き刺さったそれは、一本の美しい日本刀。
その登場の仕方は、まるで彼女達が初めて出会った時みたいの事で、思わず少女には笑みをこぼれた。
少女は、『小春日和』を手にとった。
同時に、彼女の笑みは獰猛なそれに変わる。
夜色の和装が改めて編みこまれ、
左右それぞれの手に持つ”二本の刃”には、暗い闇が灯る。
美穂「ふっふっふ・・・・・」
美穂「 あ ~ は っ は っ は っ は っ !!!」
漆黒の戦国姫が舞台に舞い戻った。
725: 2013/09/08(日) 06:13:00.98 ID:PIVFd/nCo
その様子の一部始終を見守っていた仮面の姫君は、純白の剣を構える。
彼女の傍らに控えているのは、勇ましき白銀の剣。
漆黒の姫も、また準備は整ったとばかりに刀を構えた。
その両の手に持つのは、漆黒の闇を纏う”二本の”美しき刀。
さあ舞台は整った。
両者の距離は零になり、
そしてその剣が、刀が、ぶつかり合う。
白と黒、二人の姫が、
銀色の月の下、小さな舞台で舞い踊る。
純白と白銀、二本の漆黒、
四本の刀剣が、激しく打ち合った。
熱烈に、華麗に、謡うように、気紛れに、
炎のように、鮮やかに、優雅に気高く、堂々と力強く、
優しく撫でるように、荒々しく求めるように、
英雄の様に、戦争の様に、愛らしく、愛を込めて、
ただ剣と刀の奏でる音楽だけが、辺りに響き渡る。
726: 2013/09/08(日) 06:13:55.22 ID:PIVFd/nCo
既に、黒の騎士達も、土くれの武者達も、地に伏して、
唯一、妖の姫だけが立ち上がり、その戦いの行末をじっと見守っていた。
最後の瞬間は、きっともう間もなく。
一進一退の激しい攻防に息を呑む観客達。
仮面の少女は、やや上方から純白の剣で斬りかかり、
漆黒の少女は、右手に持つ刀でそれを受け止めた。
同時に左側から飛んできた白銀の剣を、
左手に持つ刀で撃ち払おうとする。
だが、白銀の剣は、突如旋回し
その軌道を変えて、漆黒の少女の右側より迫る。
漆黒の少女は、純白の剣を受け止める刀に流し込んでいる負のエネルギーを増幅させて、
仮面の少女を吹き飛ばすと、続く白銀の一撃を受け止めようとするが。
それは間に合わず、右手の刀は払い飛ばされた。
いや、払い飛ばされたのではない。
それはわざと手放したのだ。
漆黒の姫は、左手に持つ刀をすぐさま両手に持ち替え、
白銀の剣に向け、渾身の一撃を放つ。
美穂「ラブリージャスティスひなたんフラッシュっ!!」
カァンン!!
その威力に競り負け、白銀の剣は激しく弾き飛ばされる。
急いで、漆黒の少女は、仮面の少女へと向き直り、
漆黒の少女の胸元で、純白の剣がピタリと止まった。
仮面の少女「はい、チェックメイトです♪」
美穂「・・・・・・。」
美穂「やられちゃったナリ。」
大きな拍手と歓声が鳴り響いた。
727: 2013/09/08(日) 06:14:51.31 ID:PIVFd/nCo
――
――
――
美穂「すみませんでしたっ!」
賑やかな公園の広場の、舞台となった小山を挟んでその反対側。
向こう側とは打って変わって、静かな舞台裏で、
ぺこりと頭を下げる少女。
美穂「あのっ、そのっ、舞台に上がってすぐに勝手なことしちゃって、」
美穂「し、しかも、しゅ、主演女優とかなんか生意気な事言っちゃってて、」
美穂「ちょっ、ちょっとテンションが変になっちゃったんです!」
美穂「と、とにかくすみませんっ!!」
実際にやらかしたのは、ひなたん星人なのだが、
まあ、それも美穂自身が発した言葉には違いなかったために、謝らずにはいられなかったようだ。
仮面の少女「いえいえ、良いんですよ~。楽しかったですからぁ。結果オーライです♪」
仮面の少女「美穂さんのおかげで、また一つ素敵な舞台ができましたよ。」
美穂「・・・・・・そう言ってもらえると助かります。」
彼女の優しい言葉にほっと、胸を撫で下ろす美穂。
仮面の少女「むふふっ♪美穂さん、初めての舞台はどうでしたか?」
美穂「えっと、どうと言うか・・・・・・。」
美穂「舞台に立ってる時は、その、何か考える余裕なんて全然なかったです・・・・・・」
美穂「私自身、楽しむ余裕も、緊張すらしてる暇も無くて・・・・・・。」
美穂「だけど」
美穂「そうですね。何か、やり遂げた感じはしましたっ!」
それがきっと素直な感想。
仮面の少女「いいですねぇ、素敵なお返事です♪」
仮面の少女「また同じ舞台に立つ事があれば是非、よろしくお願いしますねぇ。」
美穂「は、はい!よろしくお願いします!」
仮面の少女「むふふ♪」
――
――
美穂「すみませんでしたっ!」
賑やかな公園の広場の、舞台となった小山を挟んでその反対側。
向こう側とは打って変わって、静かな舞台裏で、
ぺこりと頭を下げる少女。
美穂「あのっ、そのっ、舞台に上がってすぐに勝手なことしちゃって、」
美穂「し、しかも、しゅ、主演女優とかなんか生意気な事言っちゃってて、」
美穂「ちょっ、ちょっとテンションが変になっちゃったんです!」
美穂「と、とにかくすみませんっ!!」
実際にやらかしたのは、ひなたん星人なのだが、
まあ、それも美穂自身が発した言葉には違いなかったために、謝らずにはいられなかったようだ。
仮面の少女「いえいえ、良いんですよ~。楽しかったですからぁ。結果オーライです♪」
仮面の少女「美穂さんのおかげで、また一つ素敵な舞台ができましたよ。」
美穂「・・・・・・そう言ってもらえると助かります。」
彼女の優しい言葉にほっと、胸を撫で下ろす美穂。
仮面の少女「むふふっ♪美穂さん、初めての舞台はどうでしたか?」
美穂「えっと、どうと言うか・・・・・・。」
美穂「舞台に立ってる時は、その、何か考える余裕なんて全然なかったです・・・・・・」
美穂「私自身、楽しむ余裕も、緊張すらしてる暇も無くて・・・・・・。」
美穂「だけど」
美穂「そうですね。何か、やり遂げた感じはしましたっ!」
それがきっと素直な感想。
仮面の少女「いいですねぇ、素敵なお返事です♪」
仮面の少女「また同じ舞台に立つ事があれば是非、よろしくお願いしますねぇ。」
美穂「は、はい!よろしくお願いします!」
仮面の少女「むふふ♪」
728: 2013/09/08(日) 06:15:58.79 ID:PIVFd/nCo
犬面の姫「今回は、無茶を聞いてもらってありがと。」
仮面の少女「いえいえ、どういたしまして~。」
仮面の少女「その子の事、本当にお好きなんですねぇ。」
犬面の姫「うん、大事な後輩だからね♪」
そう言って、彼女は美穂に笑いかけた。
美穂は少し顔が赤くなる。
肇「・・・・・・。」
美穂「肇ちゃん?」
肇「ズルいです。私も美穂さんの事好きですよ。」
美穂「へっ?!急に何を言い出すの?!」
ますます赤くなる美穂。
またも、肇のブレーキは何処かに行ってしまっていたらしい。
仮面の少女「むふふ、両手に華ですねぇ♪」
美穂「えっ、いや、そ、そういうことではなくてですねっ!」
仮面の少女「そう言う愛の形もアリだと思いますよ~♪」
美穂「あれっ?何か凄く変な勘違いされてるようなっ?!」
たぶん、からかわれているだけである。
仮面の少女「むふふ♪積もるお話もあるのでしょうし、」
仮面の少女「馬に蹴られてしまう前にわたしは退散させていただきますねぇ。」
仮面の少女「あ、お三方にも、これを渡しておきます。」
彼女は、3人に厳かな装飾が施された封筒を手渡す。
美穂「これは?」
仮面の少女「招待状です♪日程は追ってお知らせ致しますから、是非お越しくださいね。むふふ♪」
そう言って意味深に笑った彼女は、再び賑やかな公園へと戻っていった。
729: 2013/09/08(日) 06:17:08.61 ID:PIVFd/nCo
―
犬面の姫「いやあ、それにしても、本当に凄い子だったね。」
美穂「はい。ヒヨちゃん本気だったのに負けちゃいました。」
美穂の頭上でショボくれているアホ毛。
これまで多くの脅威を打ち破ってきた、ひなたん星人にとって、
舞台の上でとは言え、初の真っ向勝負での敗北。
そんな経験をしてしまったためか、どうやら落ち込んでいるらしい。
犬面の姫「お芝居、とは言っても実質的には3対1の戦闘のようなものだったのに、あんなに余裕だなんてね。」
美穂「3対1?」
舞台に立っていたのは3人で、2対1の格好だったから1人多い計算になる。
肇「私ですよ、美穂さん。」
美穂「あっ、そっか。肇ちゃんも舞台裏から妖術を使って助けてくれてたんだよね?」
肇には裏方で盛り上げて欲しいとか、そんな指示があった覚えがある。
肇「はい。土の武士達を作り出したのは私の妖術です。」
肇「『鬼土合落』と言います。土に形を与えて遠隔操作する術ですね。」
肇「ふふっ、土を弄るのは結構得意なんですよ。」
肇「アレだけの数の土人形を作って操れたのは、祟り場で溜め込んでしまった妖力があったからですが。」
美穂「ありがとう、肇ちゃん。私たちを守ってくれて。」
肇「いえ、土人形が振るうための刀を用意してもらえたからこその活躍ですよ。」
犬面の姫「それはお互い様だよ、『月灯』の特性はやっぱり振るい手が居てこそだからね。」
美穂「・・・・・・。」
『月灯』(ツキアカリ)
彼女はそれを日本一、欲張りな刀だと言った。
日本一、欲張りな刀。それは肇が美穂の憧れの人に渡したと言う鬼神の七振りの一本。
その刀を持っていると言う事は、やはり彼女は。
美穂「・・・・・・話は変わるんですけど」
美穂「とりあえずはっきりさせておきたい事から聞かせてもらっていいですか?」
犬面の姫「何かな?」
犬面の姫「・・・・・・なんてね、聞きたいことはだいたいわかるけどね。」
美穂「えっと、セイラさん・・・・・・でいいんですよね?」
犬面の姫「ふふっ、うん、アタシ。」
犬面の姫「セイラだよっ。」
そう言って犬面の姫こと水木聖來は、
被っていた仮面を少しだけズラして顔を見せた。
美穂に向けて一度だけウィンクすると、彼女はすぐに仮面を元の位置に戻す。
犬面の姫「いやあ、それにしても、本当に凄い子だったね。」
美穂「はい。ヒヨちゃん本気だったのに負けちゃいました。」
美穂の頭上でショボくれているアホ毛。
これまで多くの脅威を打ち破ってきた、ひなたん星人にとって、
舞台の上でとは言え、初の真っ向勝負での敗北。
そんな経験をしてしまったためか、どうやら落ち込んでいるらしい。
犬面の姫「お芝居、とは言っても実質的には3対1の戦闘のようなものだったのに、あんなに余裕だなんてね。」
美穂「3対1?」
舞台に立っていたのは3人で、2対1の格好だったから1人多い計算になる。
肇「私ですよ、美穂さん。」
美穂「あっ、そっか。肇ちゃんも舞台裏から妖術を使って助けてくれてたんだよね?」
肇には裏方で盛り上げて欲しいとか、そんな指示があった覚えがある。
肇「はい。土の武士達を作り出したのは私の妖術です。」
肇「『鬼土合落』と言います。土に形を与えて遠隔操作する術ですね。」
肇「ふふっ、土を弄るのは結構得意なんですよ。」
肇「アレだけの数の土人形を作って操れたのは、祟り場で溜め込んでしまった妖力があったからですが。」
美穂「ありがとう、肇ちゃん。私たちを守ってくれて。」
肇「いえ、土人形が振るうための刀を用意してもらえたからこその活躍ですよ。」
犬面の姫「それはお互い様だよ、『月灯』の特性はやっぱり振るい手が居てこそだからね。」
美穂「・・・・・・。」
『月灯』(ツキアカリ)
彼女はそれを日本一、欲張りな刀だと言った。
日本一、欲張りな刀。それは肇が美穂の憧れの人に渡したと言う鬼神の七振りの一本。
その刀を持っていると言う事は、やはり彼女は。
美穂「・・・・・・話は変わるんですけど」
美穂「とりあえずはっきりさせておきたい事から聞かせてもらっていいですか?」
犬面の姫「何かな?」
犬面の姫「・・・・・・なんてね、聞きたいことはだいたいわかるけどね。」
美穂「えっと、セイラさん・・・・・・でいいんですよね?」
犬面の姫「ふふっ、うん、アタシ。」
犬面の姫「セイラだよっ。」
そう言って犬面の姫こと水木聖來は、
被っていた仮面を少しだけズラして顔を見せた。
美穂に向けて一度だけウィンクすると、彼女はすぐに仮面を元の位置に戻す。
730: 2013/09/08(日) 06:18:18.91 ID:PIVFd/nCo
美穂「セイラさん、どうして妖怪のお姫様をやってるんですか?」
聖來「話せば長くなるんだけどね。」
聖來「元はと言えば、アタシの能力のせいなんだ。」
彼女がこんな状況に陥っている原因は、彼女のその能力にあるらしい。
美穂「セイラさんの能力・・・・・・たくさんの犬に寄ってこられてしまうあの能力ですよね?」
以前、公園で彼女と出会った時は、
ベンチの周りにあふれんばかりの犬を集めていた。
聖來「犬に限らず、他の動物だとか、場合によっては妖怪にも効いちゃうんだよね。アタシの能力。」
しかし、動物だけではない。あらゆる人外を寄せ付けてしまうのが彼女の能力だ。
肇「祟り場では、致命的な体質ですね。」
聖來「そうなんだよっ!もういきなりアタシの周りにわんさか妖怪が寄ってきちゃって!」
聖來「こう暗いと、『正体隠しのサングラス』もかけてられないから、」
聖來「危うく本当に百鬼夜行を引き連れちゃうところだったよ、あははっ♪」
美穂(明るく言ってるけど、それって凄く危険な状態だったんじゃ・・・・・・。)
祟り場においては、人間は大なり小なり運気が落ちる。
そして妖怪たちは箍が外れており、中には悪意がある者だっているだろう。
そんな中に、たくさんの妖怪を寄せ付けてしまう人間が居ると言うのは、
相当に危険な状態であろう事は、簡単に想像がつく。
そう言った力のない美穂ですら、今日は何度も妖怪たちに絡まれたのだから。
聖來「と言う訳で、アタシを追ってくるたくさんの妖怪達から逃げてたんだけど。」
聖來「その時に助けてもらったんだよね。犬頭の妖怪たちに。」
人に対して悪意を持つ妖怪も居れば、
人に対して好意を持つ妖怪達も居る。彼ら犬頭達は後者であったようだ。
聖來「あの子達にこの仮面を貰ったんだ。結構便利でね、妖怪たちの中に馴染める効果があるの。」
聖來「その上、これのおかげでアタシの能力の効果も抑えられたから、本当に助かったんだよね。」
彼女が今も犬の面を外さないのは、そのような理由があってのことだ。
731: 2013/09/08(日) 06:19:35.08 ID:PIVFd/nCo
聖來「それで、聞けばこの近くにはあの子達の縄張りがあるらしいんだよ。」
肇「ああ、なるほど。祟り場が開かれてしまえば、そこには周囲から妖怪が寄ってきますから。」
聖來「住処が無茶苦茶になるよね。」
美穂「だから、犬頭さんたちも祟り場を収束させたかったんですね。」
聖來「うん、あの子達にとっては自分達の庭に入ってこられて宴会騒ぎをされてるようなものだからね。」
いくら祭りが楽しいと言っても、自分の家も含めて強制的にその会場にされると言うのは、例え妖怪であっても困るのだろう。
聖來「個人的な理由もあって、この祟り場を一刻も早く収束させたい。とはアタシも思っていたから、」
聖來「助けられた恩もあったし、あの子達に協力する事にしたんだよ。」
聖來「まあ、まさかお姫様扱いになるとは思ってなかったんだけどね・・・・・・。」
聖來「そして、それからそれから美穂ちゃん達に会って、今に至るって訳!」
彼女にもここに至るまでに色々あったようだ。
美穂「・・・・・・・セイラさんの事情はわかりましたけれど、私にまで正体を隠す必要が無いような?」
聖來「ああ、それはちょっとした悪戯だけど。」
美穂「えぇっ、なんでそんな・・・・・・」
聖來「だって美穂ちゃん気づいてくれなかったもん。肇ちゃんはすぐに気づいてくれたのに。」
美穂「うぐっ」
確かに顔を隠していたとは言え、
憧れの人の事がすぐにわからなかったのは、ちょっと良くなかったかもしれない。
美穂「で、でもセイラさん口調変でしたから・・・・・・。」
聖來「あれ?口調変だった?お姫様っぽくなかったかな?」
聖來「うーん、演技はアタシももっと勉強しないといけないか。」
聖來「まあ、せっかく美穂ちゃんが気づいてないみたいだったから、なんか意地悪したくなったんだよ。ふふっ、ごめんね♪」
美穂「うぅ・・・・・・肇ちゃんも、気づいてたなら教えてくれれば良かったのに。」
肇「すみません。面白くなりそうだったので、つい黙ってました。」
美穂「・・・・・・今日の肇ちゃんにはブレーキが無いんだった。」
732: 2013/09/08(日) 06:20:50.21 ID:PIVFd/nCo
聖來「ところで、どうだったかな。美穂ちゃん?」
聖來「舞台に立ってみて、自信はついた?」
美穂「自信・・・・・・。」
聖來「あれっ?あんまりそうでもない感じ?」
美穂「い、いえっ!今から考えたら・・・・・・自分でも結構すごいことしてたのかもとは思ってます。」
聖來「ちょっと他人事感があるね。・・・・・・いきなりの事だったから、実感がないって感じなのかな。」
聖來「でも本当にすごい事したんだよ、美穂ちゃん。」
聖來「だって、途中、刀が弾き飛ばされちゃっても舞台に立ち続ける事ができたんだからさ。」
美穂「せ、セイラさんのおかげです。セイラさんに肇ちゃんも守ってくれたから。」
聖來「はい、ダメ」
美穂「えっ!急にダメ出しっ!?」
何故かバッサリだった。
聖來「美穂ちゃん、感謝の気持ちは大切だけど、そこは胸を張って欲しかったなあ。」
聖來「確かに人の力は借りたかもしれないけれど、それでも私は最後まで舞台に立ったぞってね!」
聖來「美穂ちゃんが最後までやり遂げた事は間違いないんだから。」
聖來「だから、はい、リテイク♪」
美穂「えっ?えっ?!」
聖來「私は最後まで舞台に立ってみせたぞ!リピートっ!」
美穂「えっ!?はっ、はいっ!わ、私は最後まで舞台に立ってましたっ!!」
聖來「うんうん♪上出来だねっ!」
美穂「・・・・・・え、えへへ」
美穂(なんだろう、言葉にしてみると、本当に凄いことをやり遂げたんだって気になれた。)
733: 2013/09/08(日) 06:22:00.36 ID:PIVFd/nCo
聖來「自分のやった事なんて大したことじゃないなんて、思うのかもしれないけれどさ。」
聖來「でも確かにやった。やり遂げた。ってそんなところから自信はつけていけばいいんじゃないかな。」
美穂「・・・・・・もしかしてセイラさん、舞台に誘ってくれたのは、私に自身をつけさせるためだったんですか?」
聖來「まあ、ね。」
聖來「ちょっと荒療治だったかもしれないけれど。またとないチャンスだったから。」
聖來「刀を使っていい、『小春日和』に頼ってもいい舞台なんて言うのはさ。」
聖來「これならきっと美穂ちゃんも、気兼ねなく舞台に立つこともできるだろうなって思ってて。」
聖來「そしてどんな形でも舞台に、人前に立ったって言う経験は、きっとこれからアイドルヒーローを目指す時に勇気になるかなって。」
聖來「と、まあ白状しちゃうと、そんな狙いがあったよ。」
それが水木聖來のこの舞台での狙いの一つだった。きっと彼女なりの美穂に向けてのレッスンだったのだろう。
美穂「セイラさん・・・・・・私のために色々と考えてくれてて、ありがとうございます。」
聖來「ううん、実際にはもう少し複雑な感情が美穂ちゃんにはあったみたいだったから、役に立てたかはわからないけど。」
美穂「私、今日この舞台に立てて本当に良かったと思います!」
聖來「そっか、それなら良かった。」
美穂の答えに彼女は安心したように笑った。
734: 2013/09/08(日) 06:22:48.22 ID:PIVFd/nCo
美穂「・・・・・・あれ、と言う事はもしかして、ヒヨちゃんが弾き飛ばされたのも、偶然じゃなくって・・・・・・」
聖來「・・・・・・あ、あはははっ。」
誤魔化すように彼女は笑う。
聖來「鋭いね、そこも気づいちゃうのか。」
聖來「うん、そうだね。アタシが仮面のあの子に頼んだんだ。」
言いにくそうに彼女は言う。
仮面の少女に、ひなたん星人から刀を手放させるまで、追い詰めるよう頼んだのは聖來であったらしい。
聖來「どうしてわかったのかな?」
美穂「セイラさん、前に会った時に、」
美穂「ヒヨちゃんじゃなくって・・・・・・わ、私を応援してくれるって言ってたから」
美穂「な、なんとなく・・・・・・もしかしたら、ヒヨちゃんじゃない私自身も舞台に立てるようにしてくれたのかなって・・・・・・。」
こちらも言いにくそうに、恥ずかしそうに、言葉にするのであった。
聖來「・・・・・・。」
聖來「ごめんっ!!」
美穂「えっ!」
聖來「こうした方が舞台に立てた実感もあるかなって思って。」
聖來「説明もしないで、いきなりの事だったから怖がらせちゃったよね、余計な事しちゃったかな・・・・・・本当ごめんね。」
美穂「ううん。セイラさん私のためを思ってやってくれたんですよね?」
美穂「だったら、その・・・・・・う、嬉しいですっ!!」
美穂「あのっ!セイラさん、ご指導ありがとうございましたっ!」
聖來「・・・・・・美穂ちゃんは本当に素直な良い子だね。こっちこそありがとうね。」
735: 2013/09/08(日) 06:23:29.62 ID:PIVFd/nCo
美穂「あ、そうだ。これ返さないとですよね。」
そう言って美穂は、先ほどまで使っていた刀を取り出す。
彼女の刀『小春日和』に瓜二つの二本目の刀。
美穂「・・・・・・・これも日本一、欲張りな刀の能力で”写し出した(?)”刀なんですよね?」
美穂「写し出したって言うのが・・・・・・その、よくわからないですけど・・・・・・一体どう言う特性なんですか?」
その美穂の疑問には肇が答えた。
肇「『月灯』はその刀身に他の刃の輝きを写しとることができる刀なんですよ。美穂さん。」
美穂「???」
肇「・・・・・・口で説明するのはちょっと難しいかもしれません。」
聖來「うん、たぶん実演も合わせた方がわかりやすいかな。」
そう言って彼女もまた、先ほどまで振るっていた手元の刀、
『桜花夜話』に瓜二つの刀を前方に掲げると、
聖來「戻れ」
と命じた。
同時に彼女の持つ刀が、ガラスの様に割れて砕ける。
美穂「えっ。」
そして割れた刀の中からは、別の刀が出てきた。
それは美穂も見たことの無い刀。
柄からその刃先まで黄金で出来ている刀。
さらに、その至る所に宝石が埋め込まれた刀。
あまりに装飾過多。故にそれ自体が何かを斬るための刀として機能するかさえ疑わしい。
ただ、その過剰なまでの煌きは、決して朽ちることが無いかのような『不朽さ』を感じさせる。
聖來「これが鬼神の七振りが一本『月灯』の本来の姿。」
聖來「万華鏡の様に虹色に輝く刀だよ。」
736: 2013/09/08(日) 06:24:29.35 ID:PIVFd/nCo
美穂「なんか・・・・・・凄くキラキラしてますね。」
とにかく派手で、セレブっぽいと言うか、もういっそけばけばしいと言うか、
簡素ながらも美しい『小春日和』とは、対極の姿をした刀であろう。
聖來「そして、ここからが面白い所なんだよね。」
聖來「美穂ちゃん、『月灯』をよく見ててね。」
美穂「わかりました。」
言われたとおり、じっと見つめる美穂。
しかし、何度見返しても派手だ。
鍔はなく、柄と刃は一体となっていてその全てが黄金に輝いている。
埋め込まれた宝石は色とりどり。
きっとこの中の1つに『強欲』の核が埋め込まれているのだろう。
そして白く輝く刀身。
白を通り越して純白と言ったところか。そこには一点の穢れもない。
柄も刃も、その全ては真っ白に輝いてて
美穂「えっ?」
聖來の手に握られていたのは純白の剣だった。
純白の剣、それは先ほどの舞台で、仮面の少女がその手に持っていた剣。
何時の間にか黄金の刀が、純白の剣に変わっていた。
美穂「ええっ?!」
737: 2013/09/08(日) 06:25:07.86 ID:PIVFd/nCo
聖來「見ていてくれた?」
美穂「どうして・・・・・・?一度も目を離してないのに?」
瞬きの間にすりかえられた思えない。
聖來「これが、刃の輝きを写しとる『月灯』の特性。」
肇「刃の輝きと言うのは、時に神秘的な美しさを感じさせますが、」
肇「『月灯』は、その輝きを切り替える事で、他の刃の輝きを見せることができるんですよ。」
肇「虹色に煌くその刀身の輝きを、万華鏡のように切り替えて、別の刃の輝きを写し出し、そしてその幻想を纏う。」
肇「お日様の光を写して、輝くお月様みたいに。」
肇「そうして写しとった幻想の刃は、本物と寸分変わらない刀剣として扱えます。」
聖來の手には純白の剣は既になく、
代わりに『小春日和』が握られていた。
聖來「まあ見た目だけで、その中身まで完全に写しとることは出来ないんだけどね。」
聖來「こうやって『小春日和』を写しても、アタシの中に人格を作り出すことはないし。」
聖來「さっきの『純白の剣』も手を離しても動き出すような事はないだろうね。」
聖來「けれど、切れ味とか頑丈さとか触った感じは全く一緒だよ。」
美穂「形が一つじゃないから日本一、欲張りな刀?」
聖來「ううん。それもなんだけど、贅沢なことにそれだけじゃないんだよね。」
738: 2013/09/08(日) 06:26:08.25 ID:PIVFd/nCo
聖來「アタシが今、手に持ってるのは『小春日和の幻想』を被った『月灯』の本体なんだけど。」
聖來「美穂ちゃんが今、手に持ってる『小春日和の幻想』はまた別の何かが幻想を被ってるってわかるよね?」
聖來が手にもつ『小春日和』も、
美穂が今、手に握っている『小春日和』も、
2つとも全く同じ、『月灯』が『小春日和』から写しとった幻想の刃。
しかし『月灯』の本体は聖來が手に持っていた方なのだから、
美穂の持つそれは、別の何かが『小春日和の幻想』を被っていることになる。
そうだ。彼女は戦闘中言っていた。小石や木の枝に刀の幻想を写し出した。と。
聖來「刃の輝きを受け取って、写しとることもできるけど。」
聖來「その逆、刃の輝きを放って、他の物体に写し出すこともできる。」
聖來「この二つが『月灯』の特性。」
彼女が『小春日和の幻想』を中空で振るうと、
その場所を中心に、辺りが虹色に輝き、光の中から数本の刀が現れた。
それらの刀は、全て『小春日和』の姿をしている。
739: 2013/09/08(日) 06:26:58.43 ID:PIVFd/nCo
肇「その幻想の刀身に写るあらゆる物、」
肇「あらゆる物と言っても刀身に写りきらない物にはダメなんですが、」
肇「主に写った小石や木の枝とかですね。」
肇「それらに刀の輝きを写し出して、幻想を被せることができるんです。」
肇「そうして生み出された幻想の刀は、それもまた『月灯』の刃として、それぞれ振るう者を求めています。」
肇「刀身が、ただ一つの輝きではその刀は満足しない。」
肇「使い手が、たった一人ではその刀は満足しない。」
肇「だからその刀は、無限の輝きを放ち、それを無限に増殖させる、夢幻の刀として存在する。」
肇「それが、『鬼神の七振り』:が一本。日本一、欲張りな刀『月灯』です。」
聖來「実演終了だね。」
肇が説明を終えると共に、聖來が指を鳴らす。
途端に周囲にあった『小春日和』が割れ砕け、その中から木の枝が現われ、地面に落ちる。
美穂「わわっ!」
美穂が手に持っていた『小春日和の幻想』も同時に割れ砕けた。
その中から出てきたのは、黄金に輝く鞘。
美穂「これって。」
聖來「うん。『月灯』の鞘だよ。」
鞘に『小春日和の幻想』を被せ、美穂に持たせていたようだ。
美穂の手から、聖來は黄金の鞘を受け取り、
何時の間にか手に持っていた黄金の刀を納めた。
740: 2013/09/08(日) 06:28:07.27 ID:PIVFd/nCo
肇「今の説明で『月灯』の事はわかりました?」
美穂「えっと、うん。なんとなくは。」
難しかったが、とりあえずまた扱い辛そうな刀なのはわかった。
美穂「無限に増える刀かあ・・・・・・。」
美穂「あっ、そう言えば、仮面のお姫様の剣も似たような感じだったね。」
あの剣達もまた、無限に増える剣と言えるのかも知れない。
肇「ええ。本当に興味深い剣でした。」
肇「『小春日和』の様に意思をもっているかのように振る舞い、『月灯』のように無数に増える剣。」
肇「あれほどの剣を操る彼女は一体何者だったんでしょうね。」
美穂「えっ?妖怪じゃなかったの?」
肇「・・・・・・妖怪とは気配がまた少し違いました、それ以上の事はわかりませんでしたが。」
美穂(・・・・・・ちょっとホラーな気がする。)
一緒に舞台に立ったはずの少女。
その正体は、謎。
背筋がひんやりとした。最後の最後で、本当に肝試しみたいな感じだった。
聖來「あの子が何者だったとしても、あの子の作ってくれた舞台のおかげで」
聖來「アタシ達は目的を達成できたから、それでいいんじゃないかな。」
肇「・・・・・・そうですね。私の溜め込んでしまった妖力も、」
肇「『小春日和』が溜め込んでしまっていた負のエネルギーも、ほとんど解消できました。」
聖來「『月灯』も同じく負のエネルギーを解消できたよ。」
美穂「あ、そっか。セイラさんも私たちと同じで、刀の感情を解消しないといけなかったんですね。」
聖來「うん、3人とも抱えてた問題を解決できたから一石三鳥だったね。」
聖來「あっと、違うか。」
そう言って、聖來はその視線を美穂達からズラした。
犬頭壱「姫様~っ!」
その視線の先には犬頭の妖怪達。
公園の集まりからこちらの方に駆け寄ってきた。
741: 2013/09/08(日) 06:29:10.42 ID:PIVFd/nCo
聖來「どうだった?」
犬頭壱「舞台での姫様のご活躍!我々も遠めから拝見させておりましたが実にお見事でございましたっ!」
犬頭弐「そして今しがた、有志を募ったところ!舞台を見ていた妖怪達の一部から協力を取り付けることもできました!」
犬頭参「これ僕たちの活動も捗るワン!姫様のおかげワンッ!姫様超カッコよかったワンッ!!」
聖來「ふふっ、良かった。上手くいったみたいで。これで一石四鳥だね。」
続いて、駆け寄ってきた大戌に、聖來は跨った。
聖來「さてと、それじゃあアタシはそろそろ行くよ。」
聖來「祟り場の収束の方も放って置けないからね。」
美穂「あのっ!わたし達も手伝います!」
肇「ええ、この事体を放っておけないのはわたし達も一緒ですから。」
聖來「気持ちは嬉しいけれど、手伝ってくれるのはここまででいいよ。」
2人は、この先も手伝うことを申し出たが、しかし意外にもそれは断られた。
聖來「この先は私の仕事。だから美穂ちゃん、肇ちゃん、後の事は任せてくれればいいからさ。」
聖來「特に美穂ちゃんは慣れない事したばかりなんだから疲れてるでしょ?」
美穂「それは・・・・・・。」
確かに疲労はあった。ひなたん星人の方も敗北してヘコんでいるために、精神的にも辛いかもしれないし。
それに肇にしたって今朝は倒れていたのだから、あまり無茶をさせる訳にもいかないだろう。
聖來「手も足りそうだから、心配しなくていいよ。ゆっくり休んでて♪」
美穂「ちょっと歯がゆいけれど・・・・・・セイラさん、後はお願いしますっ!」
肇「お言葉に甘えさせていただきます。」
聖來「うん、任されたよっ!」
742: 2013/09/08(日) 06:30:16.78 ID:PIVFd/nCo
美穂「・・・・・・あのっ!セイラさんっ!」
美穂「今日は本当にありがとうございましたっ!」
聖來「お礼を言うのはこっちの方だよ。美穂ちゃん。手伝ってくれてありがと。」
美穂「いえっ!あの!今回の事で私、グッと自信持てたと思うんですっ!」
美穂「だから良かったら、また今度会ったときも是非ご指導お願いしますっ!」
聖來「ふふっ、美穂ちゃんにとって、いい経験になったみたいで良かった。これは一石五鳥だったのかな♪」
聖來「次に会ったときは本格的なダンスのレッスンとかもやってみようか♪」
美穂「!」
美穂「はいっ!」
聖來「それじゃあ、美穂ちゃん、肇ちゃん。またねっ!」
美穂「はいっ!またっ!」
肇「またお会いしましょう。」
そうして、聖來と犬頭の妖怪達は、さらに幾体かの妖怪を引き連れて、去っていた。
743: 2013/09/08(日) 06:30:42.46 ID:PIVFd/nCo
その場には、美穂と肇。2人の少女が残される。
肇「水木聖來さん、いい人でしたね。」
美穂「あの人が私の憧れなんだ。」
肇「美穂さんが憧れるのもわかる気がします。」
肇「私も『月灯』を、あの人に預けることが出来てよかったです。」
美穂「セイラさんなら絶対正しく使ってくれるよ。」
肇「そうですね、きっと大丈夫だと思います。」
美穂「・・・・・肇ちゃん、これからどうしよっか。」
肇「私の妖力も『小春日和』の負のエネルギーもほとんど解消できたので、」
肇「このまま美穂さんの家に帰ってもいいのですが・・・・・・。」
2人は公園の賑やかな方に目を向ける。
小高い山を挟んでいるために、向こう側は見えないのだが、
それでも楽しさはしっかりと伝わってきた。おまけに何かいい匂いもする。
どちらからともなくお腹がなる音がした。
美穂「・・・・・・そう言えば、お腹空いたね?」
肇「確かに、今朝から食事は取ってなかった気がします。」
美穂「わたし達も何か貰いに行こっか。」
肇「ええ、是非お供いたします。」
2人はまた、賑やかな公園へと戻っていくのであった。
肇「そうそう、舞台での美穂さん、すごくカッコよかったですよ。」
美穂「・・・・・・うぅぅ、それ不意打ちで言われると、恥ずかしいなぁ。」
おしまい
744: 2013/09/08(日) 06:31:19.33 ID:PIVFd/nCo
『月灯』
『鬼神の七振り』の一本で、日本一、欲張りな刀。
本体となる刀の通常形態は、鍔が無く、一体となった柄と刀身は全てが黄金で出来ており、
『強欲』の核の他に、色とりどりに輝く宝石が幾つも埋め込まれている。
その輝きが永遠に続くかのような『不朽さ』を感じさせる。鞘も同様に、黄金製で、装飾過多。
輝く幻想を写し取り、それを纏うことで、万華鏡の様にその形態を切り替えることができる刀。
刀身に写った刃物の輝きを写し取って、その刃の姿をした幻想を負のエネルギーから再現して作り出し、
それを被ることで、まるで実際の刃物そのものであるかのように扱うことが出来る。
一度刀身に被ったことのある幻想は、以後いつでも再現可能。
さらに作り出した幻想を、その刀身に写った物体(例えば木の枝や葉っぱなど)にも写し出す事ができ、
これによって幻想の刃物を幾らでも増やし、作り出すことができる。
無限の形態を持ち、無限に増殖する、夢幻の刀。
己の姿がたかが一つでは満足しない、己を振るう者がただ一人では満足しない日本一、欲張りな刀。
振るい方次第では、この世の全てを幻想の刃に変えてしまう。
欲望を暴走させてしまえば、所有者の肉体すらも、刃に変えられてしまうだろう。
『月灯・刀剣形態壱式「桜花夜話」』
妖刀『月灯』によって作り出される『桜花夜話』の再現レプリカ。
『月灯』の通常形態は刀としては、まるで役に立たないので、
この刀の幻想を被ることで、やっと通常の刀としての役割を果たす。
『桜花夜話』の打ち合う度に錬度を増す特性までは再現できてはいないが、丈夫な刀であり、扱いやすい。
例え、折れたり曲がったり歯こぼれしても、どうせ壊れるのは幻想なので、
再び幻想を作り直せば、また再び新品同様に扱えるようになる。
『月灯』を譲ってもらった際に、聖來は肇と模擬戦をしたため、その時の記憶から再現。
『月灯・刀剣形態弐式「小春日和」』
妖刀『月灯』によって作り出される『小春日和』の再現レプリカ。
性能は『桜花夜話』の再現レプリカとほぼ同じ。こちらの方がやや丈夫。
『小春日和』の人格を作り出す特性までは再現できてはいない。
美穂が扱うならばこちらの方が使いやすいであろうと、これを再現。
ひなたん星人は、こちらの刀にも負のエネルギーを纏わせることで、
『小春日和』とほぼ同等の刀として扱うことができた。
『鬼神の七振り』の一本で、日本一、欲張りな刀。
本体となる刀の通常形態は、鍔が無く、一体となった柄と刀身は全てが黄金で出来ており、
『強欲』の核の他に、色とりどりに輝く宝石が幾つも埋め込まれている。
その輝きが永遠に続くかのような『不朽さ』を感じさせる。鞘も同様に、黄金製で、装飾過多。
輝く幻想を写し取り、それを纏うことで、万華鏡の様にその形態を切り替えることができる刀。
刀身に写った刃物の輝きを写し取って、その刃の姿をした幻想を負のエネルギーから再現して作り出し、
それを被ることで、まるで実際の刃物そのものであるかのように扱うことが出来る。
一度刀身に被ったことのある幻想は、以後いつでも再現可能。
さらに作り出した幻想を、その刀身に写った物体(例えば木の枝や葉っぱなど)にも写し出す事ができ、
これによって幻想の刃物を幾らでも増やし、作り出すことができる。
無限の形態を持ち、無限に増殖する、夢幻の刀。
己の姿がたかが一つでは満足しない、己を振るう者がただ一人では満足しない日本一、欲張りな刀。
振るい方次第では、この世の全てを幻想の刃に変えてしまう。
欲望を暴走させてしまえば、所有者の肉体すらも、刃に変えられてしまうだろう。
『月灯・刀剣形態壱式「桜花夜話」』
妖刀『月灯』によって作り出される『桜花夜話』の再現レプリカ。
『月灯』の通常形態は刀としては、まるで役に立たないので、
この刀の幻想を被ることで、やっと通常の刀としての役割を果たす。
『桜花夜話』の打ち合う度に錬度を増す特性までは再現できてはいないが、丈夫な刀であり、扱いやすい。
例え、折れたり曲がったり歯こぼれしても、どうせ壊れるのは幻想なので、
再び幻想を作り直せば、また再び新品同様に扱えるようになる。
『月灯』を譲ってもらった際に、聖來は肇と模擬戦をしたため、その時の記憶から再現。
『月灯・刀剣形態弐式「小春日和」』
妖刀『月灯』によって作り出される『小春日和』の再現レプリカ。
性能は『桜花夜話』の再現レプリカとほぼ同じ。こちらの方がやや丈夫。
『小春日和』の人格を作り出す特性までは再現できてはいない。
美穂が扱うならばこちらの方が使いやすいであろうと、これを再現。
ひなたん星人は、こちらの刀にも負のエネルギーを纏わせることで、
『小春日和』とほぼ同等の刀として扱うことができた。
745: 2013/09/08(日) 06:33:30.43 ID:PIVFd/nCo
『鬼土合落』
肇の習得している妖術。地面の土を弄って操る術。
この術で数体の武者を作り上げ、その全てを見事に操って見せたが、
それは祟り場で溜め込んだ妖力があってこそ。
『犬の面』
犬頭の一族の持つ妖具。
被った人間は妖怪としての属性を持ち、周囲からは妖怪であるかのように映る。
犬頭達は昔から、人間と友好的に接しており、その過程で作られた道具であるようだ。
副次効果として聖來の『カリスマ』を抑える効果もあった。
鬼神の七振りの二刀流はいつかやってみたかったこと
と言う訳で月灯をお披露目する話でした。それにしてもわかりにくい能力だ。
肇の習得している妖術。地面の土を弄って操る術。
この術で数体の武者を作り上げ、その全てを見事に操って見せたが、
それは祟り場で溜め込んだ妖力があってこそ。
『犬の面』
犬頭の一族の持つ妖具。
被った人間は妖怪としての属性を持ち、周囲からは妖怪であるかのように映る。
犬頭達は昔から、人間と友好的に接しており、その過程で作られた道具であるようだ。
副次効果として聖來の『カリスマ』を抑える効果もあった。
鬼神の七振りの二刀流はいつかやってみたかったこと
と言う訳で月灯をお披露目する話でした。それにしてもわかりにくい能力だ。
746: 2013/09/08(日) 11:04:09.81 ID:v96h6TUR0
お二方乙です
そらちゃんが復活してよかった…
そしてバスターフルート強い(確信)
剣舞見事でした
強欲な剣はまさに「その発想はなかった」
そらちゃんが復活してよかった…
そしてバスターフルート強い(確信)
剣舞見事でした
強欲な剣はまさに「その発想はなかった」
【次回に続く・・・】
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります