1: 2008/10/07(火) 04:39:04.71 ID:oMUn57MG0
男「一休みしたら」
先輩「わたしは本を読んで行きますから」

男「勝手にやってますんでお気遣いなく」
先輩「しません」
男「……」

ぱらっ。ぺらっ。

先輩「……」
男「……」

ぱらっ。ぺらっ。

先輩「……」
男「……」

ぺらっ。

先輩「……」

社畜さんは幼女幽霊に癒されたい。 10巻 (デジタル版ガンガンコミックス)

2: 2008/10/07(火) 04:39:42.43 ID:oMUn57MG0
男(Mp3でも聴くか。よいせっと)

ぱらっ。ぺらっ。

先輩「……」
男「……♪」

ぱらっ。ぺらっ。

先輩「……」
男「……」

ぱらっ。

先輩「……」
男「……」

ぺらっ。ぱらっ。

先輩「……」
男「……。……♪」ちらっ


5: 2008/10/07(火) 04:40:46.16 ID:oMUn57MG0
先輩「……」
男「……」

ぱらっ。すとんっ。

先輩「……時間、です。閉めますよ」
男「ん。ああ。はい」

かちゃん。がちゃ

先輩「図書室の鍵は返しておきます。ではこれで」
男「はい。また」
先輩 すたすたすた

男「……」

男「……また、明日。とか」

男「……」

男「今日は、一緒に2時間いれたな」

男「帰ろう」


7: 2008/10/07(火) 04:44:50.22 ID:oMUn57MG0
――休み時間

男「あ。先輩だ。移動教室かな」
先輩 すたすたすた
男(手、ふってみよっかな。ふってみるか)
男 ぱたぱた

先輩 すたすたすた
男「……」

友男「お前、何やってんの?」
男「手ふってみた」

友男「ああ。まだやってんの? あの愛想のない先輩に」
男「うん」

友男「いい感じになってきたの?」
男「最近会話が出来る」
友男「すげー進歩じゃん!」

男「一日3行くらい」
友男「進歩ではあるんじゃん?」


9: 2008/10/07(火) 04:49:22.09 ID:oMUn57MG0
――放課後、図書室

男「こんちわ」
先輩「……こんにちは」

男「今日も読書ですか?」
先輩「……」

ぺらっ。ぱらっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらっ。……ぱら。

男「……」
先輩「……」

ぱらりっ。

先輩「……今日は棚替えみたいな力仕事はないです」

ぺらりっ。


14: 2008/10/07(火) 04:54:15.33 ID:oMUn57MG0
男「了解です。俺も勝手に本読んでますんで」
先輩「……ご自由に」

ぺらっ。ぱらっ。

男「……」
先輩「……」

ぱらりっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらっ。……ぱら。

男(Mp3プレイヤ出してっと……)
先輩「……」

ぺらりっ。

男「……」
先輩「……」


17: 2008/10/07(火) 04:59:38.38 ID:oMUn57MG0
ぱらっ。……ぺらっ。

――ぺらっ。ぱらっ。

――――ぱらりっ。

男「……あ」
先輩「……」

ぺらりっ。

男「雨降ってきましたよ。先輩」
先輩「……そうですね」

男「白く煙ってますね」
先輩「驟雨(しゅうう)ですね」

男「なんです、それ」
先輩「にわか雨です。すぐに止みます」

ぺらっ。……ぱら。


20: 2008/10/07(火) 05:03:40.14 ID:oMUn57MG0
ぺらりっ。

男「……」
先輩「……」

ぱらっ。……ぺらっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらっ。ぱらっ。

男(本当だ。陽もさしてきた。白い霧みたいだな)
先輩「……」

ぱらりっ。

男(先輩、綺麗だな)
先輩「……」

ぺらっ。……ぱら。

男「……」
先輩「……」


22: 2008/10/07(火) 05:08:36.18 ID:oMUn57MG0
ぱらっ。すとんっ。

先輩「……時間、です。閉めますよ」
男「ん。はい」

かちゃん。がちゃ

先輩「図書室の鍵は返しておきます。ではこれで」
男「はい。また」
先輩 すたすたすた

男「……明日もまた、とは中々云えないのであった」

男「……去るの早すぎだろ」

男「ま、いっか」

男「今日は結構話せたな」

男「シュウウはにわか雨なのか」

男「おし。覚えたぞ」

男「……」

男「帰ろう」


23: 2008/10/07(火) 05:12:38.48 ID:oMUn57MG0
――休み時間

男「……」
友男「よっ。どしたの?」

男「いや。先輩通らないかなーっと」
友男「うっわ。お前、一途なーっ」

男「んなことはないよ」
友男「そうなん?」
男「べつに。……そういうんじゃないよ」
友男「ふーん」

男「……あ」
友男「通ったな」
男「うん」
友男「2秒くらいで視界から消えたな」
男「向うの校舎だしな」

友男「どうしてああいうのが良いかな」
男「美人じゃん」


25: 2008/10/07(火) 05:17:24.32 ID:oMUn57MG0
友男「でも愛想無いだろう。いつも不機嫌じゃん」
男「まぁね」

友男「女ってにこにこ笑ってて、ちっこかったり
 くるくる表情変わったりするのがよくねぇ?」
男「そうな」

友男「んじゃなきゃ、もうえろえろで。ちゅっちゅとか
 いちゃいちゃとか。濡れまくりであんあんとか」
男「素晴らしいね」

友男「そのわり毎日通いつめてるんじゃね?」
男「暇だから暇つぶしに図書室にいるだけだよ」

友男「ふーむ。まぁ、いいけど」
男「うん」

友男「ま、たしかに美人だけどな。キツイ感じだし、
 不機嫌だし、睨むような視線が怖いけど」
男「あれでいいんだよ」

友男「そか」
男「うん」


26: 2008/10/07(火) 05:22:01.18 ID:oMUn57MG0
――放課後、図書室

男「こんちわ」
先輩「……こんにちは」

男「今日も何を読んでるんです?」
先輩「……」

ぺらっ。ぱらっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらっ。……ぱら。

男「……」
先輩「……」

ぱらりっ。

先輩「本を読むならどうぞご自由に」
男「……はい」


28: 2008/10/07(火) 05:27:41.47 ID:oMUn57MG0
ぱらっ。……ぺらっ。

――ぺらっ。ぱらっ。

――――ぱらりっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらりっ。

男「……」
先輩「……」

ぱらっ。……ぺらっ。

男(見た。見てしまった)
先輩「……」

ぺらっ。ぱらっ。

男(『ハムスターの飼い方』読んでるぞ。先輩)


29: 2008/10/07(火) 05:31:44.73 ID:oMUn57MG0
ぱらりっ。

男(このネタならいけるか? いけそうか?
 「ハムスター好きなんですか?」じゃひねりがないか。
 「ハムスター美味いすよね」とかそういう冗談が
 通じる人じゃないし……。
 「ハムスター可愛いですよね」くらいが無難かな。
 よし、それでいくか。帰り際にそこから会話を始めて……)


ぱらっ。……ぺらっ。

――ぺらっ。ぱらっ。

――――ぱらっ。すとんっ。

先輩「……時間、です。閉めますよ」
男「ん。はい」

かちゃん。がちゃ

先輩「図書室の鍵は返しておきます。ではこれで」
男「はい。ハム」
先輩 すたすたすた

男「……スタープラチナッ。時は止まる」


34: 2008/10/07(火) 05:36:00.70 ID:oMUn57MG0
男「止まってしまう俺」

しーん。

男「……そして時は動き出す」

男「去るの早いっちゅんじゃ」

男「……」

男「なんか不毛だな」

男「独り言が増えるのは精神がやばい前兆らしいですよ」

男「わー怖いわ」

男「……」

男「帰るか」

男「でも。ハムスターの飼い方読んでる先輩は
 ちこっと可愛かったな」


36: 2008/10/07(火) 05:40:05.80 ID:oMUn57MG0
――登校時

男(あ。先輩だ。挨拶、できっかな。
 道路の反対側だし、渡れるところ探すか……)

先輩「……」
男「……」

男(なんであんな表情してるんだろうな)

先輩「……」
男「……」

男(思いつめたような、張り詰めたようなさ)

先輩「……」
男「……」

男(イライラすんな。やっぱ。向いてないのかな、俺)

先輩「……あ」
男「おはようございます。先輩」

先輩「おはようございます」
 すたすたすたすた

男「挨拶は、出来た。と」


38: 2008/10/07(火) 05:44:34.28 ID:oMUn57MG0
――日曜。街中。

男「あ」
先輩「!」
男「先輩。びっくりっすね。こんにちは」
先輩「こんにちは」

男「えーっと。その」
先輩「……」

男(私服はこんななのかぁ。くそ。思ったより
 三倍くらい可愛いな。つか、凶悪だなっおい!)

先輩「……では」
男「あ、あの」
先輩「?」
男「買い物ですか? 校外では珍しいですね」
先輩「……」じっ
男「……う、う」

先輩「猫の砂を買いに来ました」

男(猫飼ってるのか。先輩の家は。今日は出かけてよかった。
 こんな良いもの見れた! おれGJ。俺ナイス! びば日曜日っ。
 そうだ、ついでにランチ誘うとか! せめてお茶でも!)

先輩「では」
 すたすたすたすた


42: 2008/10/07(火) 05:54:30.71 ID:oMUn57MG0
男「去るの早いっちゅーの」

男「避けられてるのか、俺」

男「……」

男「いかんいいかん。それは考えないようにしていたことだ」

男「それは弱い考えですよ。判りますか。
 勇気を蝕む惰弱思想ですよ。敗戦主義ですよ」

男「それにしても……」

男(先輩の私服、可愛かったな。……きつめの眼鏡美人なのに
 私服はふんわりピンクのカーディガンとかなのな~。
 あれはなんつか……。反則だろ。うむ)

男「いや、眼福であった」

男「遠くから見つけたら写メってたねっ!!」

男「……」

男「ストーカーかっつの。俺は」


44: 2008/10/07(火) 05:58:37.06 ID:oMUn57MG0
――放課後、図書室

男「こんちわ」
先輩「……こんにちは」

男「昨日は偶然でしたねっ」
先輩「……」ちらっ

ぺらっ。ぱらっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらっ。……ぱら。

男「……」
先輩「……」

ぱらりっ。

男「静かに本を読んでます」
先輩「ご自由に」


45: 2008/10/07(火) 06:02:43.24 ID:oMUn57MG0
ぱらっ。……ぺらっ。

――ぺらっ。ぱらっ。

――――ぱらりっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらりっ。

男「……」
先輩「……」

ぱらっ。……ぺらっ。

男(なんか、もう。いたたまれないっす。
 この沈黙が、なんかもーなんかもーっ)

先輩「……」

ぺらっ。ぱらっ。

男(やっぱ機嫌悪いんかな。先輩。
 昨日あんなところで会ったのを恨まれてるんかな)


48: 2008/10/07(火) 06:07:47.12 ID:oMUn57MG0
ぱらっ。……ぺらっ。

先輩「……」
男(さっきのちらっの視線なんてな。なんかあれですよ。
 どうしてこの人喋ってるのかしら?
 くらいの温度だったですよ! おいは凍えそうになったきに。
 もう先輩は本に集中しちょるきに。方言出るほどだよ)

ぺらっ。ぱらっ。

先輩「……」
男「……」

ぱらりっ。――かたり。

男「ん?」
先輩「今日は先に帰らせてもらいます。鍵は職員室へ
 返却をお願いします。それでは」

男「はい、先輩。また」
 すたすたすたすた

男「結構、なんかキたな」

男「きついな」

男「……帰るか」


50: 2008/10/07(火) 06:12:25.78 ID:oMUn57MG0
――自習時間

男「……」
友男「?」

男「……」
友男「ぼんやりしてんな。平気かよ」

男「ああ? うん。へーきへーき。俺大丈夫」
友男「ダメっぽいなお前」

男「んなことはない」
友男「だから三次元はやめておけって云ったのに」
男「全力後ろ向きなお前には言われたくないよ」

友男「いいんだって。おれには沢山の嫁が待ってるんだって。
 そうだお前にも何本か貸して、あ」
男「ん?」

友男「お前の先輩だ」
男「どこ?」
友男「体育なんじゃね? ほら、校庭で」

男「あ」


51: 2008/10/07(火) 06:17:07.65 ID:oMUn57MG0
先輩「……っ。……っ」

友男「持久走かな」
男「らしいな」

友男「なんかいいな、女子の体育も」
男「おまえ二次元専門だろう」

友男「いいもんはいいじゃん。短パンからのびた脚っ」
男「おやじくさいぞ」
友男「なんとでも云えよ」

先輩「……っ。……っ」

男(先輩、やっぱスタイル良いのな。
 つか、隠してるけど巨Oバレバレな)

友男「お前おっOい星人だったのか?」
男「え?」
友男「先輩デカイな、と」

男「お前は見るな」
友男「いいじゃねぇか」
男「穢れるから見るな」


55: 2008/10/07(火) 06:22:13.97 ID:oMUn57MG0
先輩「……っ。……っ」

男「なんかさ」
友男「なんだ?」

男「いっつも見てるだけの気がする、俺」
友男「そうか」
男「うん」

友男「俺はモニターに向かって話しかけて
 気分を盛り上げているぞ。時代は双方向だぜ?」
男「一方通行だろそれ」

友男「つまりお前と同じだな」
男「ぐさっ」

先輩「……っ。……っ」
先輩友「……? ……!」
先輩「……♪」にこっ

男「……」

男(なんだ。あんな顔もできるんじゃん)

男(クラスメイトには
 普通に微笑えちゃったりもするんじゃん)


57: 2008/10/07(火) 06:28:30.10 ID:oMUn57MG0
――放課後。屋上。

男「ん、しょっと」

男「空が高いなぁ……。秋だもんな。ヘッドホンが
 あったけぇ感じだしな」

男(図書室は、なんか今日は行きづらいな。
 ニ連ダメージ食らった感じだな。あー)

男(なんつか。こういうの、俺向いてないんだろな。
 大変なのは全然判ってたんだけどさ~。
 なんかあいうのってさ。ああいうのってのはさー)

 あんな風に微笑むなんてさ。

男(うっわ。だって可愛いじゃん。あんな風にさ。
 俺向けじゃないわけですがっ! 俺疎外!!
 わいには向けられてないきにっ! ほうたるかな、まったく)

男「……」

男「べっつにー。この学校、可愛い女の子は
 先輩しかいないわけじゃないし? 年が明ければ
 可愛い下級生だって入ってくるわけだし?」

がちゃ

先輩「!」

61: 2008/10/07(火) 06:34:10.06 ID:oMUn57MG0
先輩「……」
男「……」

先輩&男「あの」

男「……」
先輩「……」

男「どしました」
先輩「いえ。紅茶を買ったらたまたまこちらへ歩くのを見て」

男「……」
先輩「……」
男「えと」
先輩「図書室を開ける関係もあるので、挨拶をしようかと」
男「は、はい」

先輩「来ますか?」
男「行きます」

先輩「……余ったからこれあげます」
男「缶紅茶」

先輩「先に行っていてください」


67: 2008/10/07(火) 06:38:56.24 ID:oMUn57MG0
――図書室

かちゃ、かちゃり。

先輩「開けました。どうぞ」
男「はい」
先輩「ご自由に」
男「勝手にやってます」

ぺらっ。ぱらっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらっ。……ぱら。

男「……」
先輩「……」

ぱらりっ。

先輩(なんかやたらめったら嬉しくないですか。
 あほか!? 俺はっ。缶紅茶一本で懐柔されて
 小学生かよっ! 正真正銘バカですかっ!!)


77: 2008/10/07(火) 06:47:12.07 ID:oMUn57MG0
男「♪」
先輩「……」

ぺらっ。ぱらっ。

男「ん」ぷしっ

先輩「……」
男(この缶紅茶。冷たくなってら。冷めてんのな)

ぱらりっ。

先輩「……」
男「……そっか」

ぺらっ。……ぱら。

男「先輩」

先輩「はい?」

男「俺、先輩の事好きですわ」



83: 2008/10/07(火) 06:51:24.50 ID:oMUn57MG0
らっ。

先輩「……」
男「……」

ぺ、ぺ、ぺらっ。ぷるぷるっ。

先輩「わたしは」
男「はい」
先輩「なれなれしい男の人は好きではありません」

男「うっ」

先輩「……」じっ
男「……うぅぅ」

先輩「……」じぃっ
男「……は、はい」

先輩「判りましたか?」
男「はい……」

男(なんかもう、飛びたい。いや吊りたい。
 樹海に行く手間も惜しんでレイルロードに
 ダイブインしたいっ)

89: 2008/10/07(火) 06:55:59.91 ID:oMUn57MG0
先輩「ですから。なれなれしくしなければ
 ……これからも図書室に来ても良いです」
男「え」

ぺらっ。ぱらっ。

男「……」
先輩「……」

ぱらりっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらっ。……ぱら。

男「……」

男(じわじわ来た。やばい。嬉しい……かもしれない)
先輩「……」

男(……被弾率80%! 船長! 心臓がオーバーヒート
 しそうです! なに!? バラストタンクがなくなった?
 よく探せ! サーイエッサー!)

先輩「……」

ぱらりっ。

93: 2008/10/07(火) 07:00:41.68 ID:oMUn57MG0
りーん、ごーん。

先輩「時間です。鍵を閉めます」
男「いえっさー! 船長」
先輩「?」
男「なんでもないです」

がちゃん。

先輩「図書室の鍵を返しておきます」じっ
男「は、はい?」

先輩「……」じぃっ
男(そんな唇をかんで睨まないでも……)

先輩「昨日は」
男「はい?」

先輩「昨日は態度が悪かったと反省しています。
 プライベートで人と会うことが少ないので、
 動揺してしまいました。すみませんでした」

男「いえいえ、とんでもない。こちらこそすみません」
先輩「では」

男「あのっ」
先輩「?」


98: 2008/10/07(火) 07:05:52.69 ID:oMUn57MG0
男「一緒に帰りませんか? 送らせてください」
先輩「……」

男(云ったー。云ってやりましたぜ! 荒木先生っ!)

先輩「……」じぃっ
男「……」

先輩「なれなれしい男性は好きではない、と
 云ったはずです」

男「うう。……はい」

先輩「判りましたか?」じっ
男「はい」

先輩「ので。駅前のミニストップまでなら良いです」
男「は、はい?」

先輩「職員室に鍵を返してきます。
 先に玄関に行っておいてください」


101: 2008/10/07(火) 07:10:13.31 ID:oMUn57MG0
――下校路。駅までの道。

男「猫、飼ってるんですか?」
先輩「はい」

男「どんなのですか」
先輩「アビシニアン系ですが混じっているようです」
男「ふむ」

先輩「毎日沢山寝ています。動きは鈍い気がします」
男「猫なのに」
先輩「はい」じっ

男「う」
先輩「……どうしました?」じぃっ

先輩(睨んでる! 睨んではるっ!?
 恐ろしい視線だ。目からビームを出せる種類の視線だっ。
 や、やばいか? なれなれしすぎたか!?)

先輩「……」

男「ううう」
先輩「……?」じぃっ

男「あのー」

106: 2008/10/07(火) 07:14:36.18 ID:oMUn57MG0
男「ごめんなさい」
先輩「どうしました」

男「ちょっとフレンドリー過ぎました」
先輩「?」

男「いや。先輩睨むので」
先輩「睨んでいませんよ」じぃっ
男「いや、睨まれてました。っていうか、睨んでます。はい」

先輩「……」

男(うわ、何か考えてるっ。そんな難しい顔しないでもっ
 なんかこう、癒しとは程遠い精神状態の下校だなぁ。
 それが幸せな俺もかなりの変態なのか、もしかして)

先輩「……」
男「……」

先輩「わたしは」
男「はい」

先輩「目が悪いのです。近眼です」
男「眼鏡ですもんね」

先輩「人の表情が判りづらい時があり、
 気がつくと注視してしまう癖があるようです」
男「ああっ」


108: 2008/10/07(火) 07:19:54.89 ID:oMUn57MG0
先輩「ミニストップです」
男「あ、はい」
先輩「ではここで」

男「先輩っ」
先輩「?」

男「また明日っ!」
先輩「……また、明日」ぷいっ
 すたすたすたすた

男「早いな。……ほんと先輩らしいや。
 振り返りもしないってのなー」

男「でも、なんだ! 今日はいっぱい喋ったぞ!
 今までの150倍くらい喋ったんじゃないか? うおすげぇ!」

先輩「それにだっ」

……俺、先輩の事好きですわ

男「ま。云ったしな。はははは。やっぱ、仕方ないや。
 友男にごまかしたところで、本音は本音だもんな」


118: 2008/10/07(火) 07:27:21.61 ID:oMUn57MG0
男「しかしなんとゆーか」

(なれなれしくしなければ
 ……これからも図書室に来ても良いです)

男「あれってのは、Yesなのか? 遠まわしなNoなのか?」

男「……」

男「怖い考えになってしまった」

男「いやいや。いやいやいや! 違いますよ?
 あの冷血宰相である先輩と言葉を交わせる数少ない
 一年生の俺ですよ? そんなNoだなんてとんでもないですよ?」

男「『はんっ。お前のような団子虫以下の小僧は
 呼吸する音も押し隠して図書室の端っこのほうで
 生息しておくだけなら見過ごしておいてやらんこともないっ』

 いやいやいやいや! ち、ちがいますよ!?
 そんなに冷たい意思表示ではないですよ?
 先輩はもっと暖かくて優しい癒し系キャラですよ?」

男「『はたしてそうかなっ!?』」

男「ううう。涙が出てきそうなんすけど」

男「帰るか」

121: 2008/10/07(火) 07:34:58.98 ID:oMUn57MG0
……休み時間

男「……いやいやいや」
友男「あー」

男「ち、ちがいますよ? 俺はそんな
 惰弱なファイターじゃないっすよ? いえいえ、とんでもない」
友男「あー」

男「『来たな船虫小僧ッ。さっさと呼吸を止めて
 窓際のカーテンの裏でわしゃわしゃする作業に戻れっ!』
 ひーやーめーてーっ」

友男「コイツ本当に大丈夫違うんじゃないか」

男「こっちはいまやさぐれてるんだよ」
友男「そうなのか?」

男「おう。戦況は厳しいんだよ」
友男「そのわりには、なんかにやけてね?」
男「ふざけるな。国家存亡の危機だ」

友男「あ、お前の先輩だ」
男「えっ?」
友男「嘘だぴょん」

124: 2008/10/07(火) 07:43:23.13 ID:oMUn57MG0
男「お前な。今俺はナイーヴなんだよ」
友男「場末の酔っ払いみたいなこと言ってるよ」
男「キワキワなんだよ」

友男「あ、先輩」
男「嘘つくなって、あ。ほんとだ」

友男「ほらな?」
男「うん」
友男「お」

男 ぺこり
先輩 ぺこり
 すたすたすたすた

友男「へー。お前はともかく、向うもこの距離で
 気がついたりしてくれちゃうわけだ」

男「……たまたまだよ」
友男「まぁな」

男(なんか、最近の俺はダメだ。なんでかなー。
 この程度のことが何でこんなに嬉しいかな)

125: 2008/10/07(火) 07:46:17.15 ID:oMUn57MG0
うっし。
切りが良いのでここで書き溜め休憩してくるです。
ポンチss読んでくれた人に感謝!
もまえらに感謝のママレードサンドやるっ!

149: 2008/10/07(火) 10:01:16.05 ID:oMUn57MG0
――放課後、図書室

男「こんちわ~」
先輩「……こんにちは」

男「ちゃんと静かにしてますです」
先輩「……ご自由に」

ぺらっ。ぱらっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらっ。……ぱら。

男「……」
先輩「……」

ぱらりっ。

男(先輩、髪の毛さらさらやね)
先輩「……」


150: 2008/10/07(火) 10:06:17.28 ID:oMUn57MG0
男(いや、やばいね。西日に透けてさ。
 金色みたいじゃん。細い髪の毛がきらきらしちゃってさ。
 ちっこい猫の毛先みたいなのな)

先輩「……」じぃ
男「……あぅ」
先輩「……」ぷいっ

ぺらっ。……ぱら。

男(い、いかんいかんっ。邪念を捨てろ!!
 相手は手だれの殺人者! 邪念を持てばたちどころに
 察知されるぞ!!

 『はんっ。おい船虫。いまわたしの髪の毛を見てたな?
 いっただろう、べたべたするなと。こっちを見たお前の
 目玉をえぐって犬に食わせてやるっ!』

 ひー。やめてーっ!!)

先輩「……」

男(そうだ! 俺は純粋な気持ちで先輩に告白をしたのだ!
 今は仮採用期間だと思え! ここでボロを出すわけにはいかん!
 確かに先輩はスタイルが良い。隠れ巨Oといってもいいだろう。
 太ももなんかもミルクみたいに真っ白でむちゃくちゃ好みだっ)


151: 2008/10/07(火) 10:10:27.25 ID:oMUn57MG0
男(いつも困ったみたいな怒ったみたいな表情をしているのも
 精神的にはかなり追い詰められるものの、
 決してキライじゃないなっ。
 先輩の困ったようなあの表情、好きだな。
 困らせたい気分になっちゃうのが微妙に困るんだけど。
 実際にはそんなこと出来ないしな……。

 つか、笑ってほしい。
 出来れば俺向けで。俺向け? っていうか。独占したいな。
 独占か。
 いいな、それ。
 激しく良いな! 笑顔独占っ!!

 いまは一個も無いけどな! 資格なし!!

 『はんっ。船虫小僧。お前ごときがわたしの笑顔だと?
 図書委員会備品の力仕事雑用奴隷の下級生が何か
 大それた事を考えているとは思ったがよりによって
 笑顔だと!? わたしの冷凍凝視でタルタロスにおとしてやる!』

 ひー。やめてーっ!!)

先輩「……」じぃっ
男「す、すいませんっ」
先輩「?」

男「いえ、なんでもないです」

156: 2008/10/07(火) 10:15:50.51 ID:oMUn57MG0
先輩「飴を持っています」
男「はい?」
先輩「一個あげます」

男「……えと。ありがとうございます」
先輩「どうぞ」

ころん

男「……」
先輩「……」

ぺらっ。ぱらっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらっ。……ぱら。

男「……」
先輩「……」

ぱらりっ。

男(なんか。いっか。……これで良い気がする)


159: 2008/10/07(火) 10:24:04.61 ID:oMUn57MG0
――放課後

男「あ。先輩」
先輩「こんにちは」
男「図書室ですか」
先輩「今日はいけません」
男「そうですか」

先輩「……」
男「……」

先輩「今日は」
男「?」
先輩「注文してあった、図書の補修テープが届きます」
男「補修テープ?」

先輩「想定が破損した書籍を治すのに用いる、
 大きな透明のビニールテープです。駅前の林檎堂に
 届いています」

男「んじゃ一緒に取り行きますよ」
先輩「……」じっ

男「うう(にらまれてるわけじゃないと判っても
 これはなれないぞ。凝視攻撃恐るべし!)」

先輩「……」
男(何か考えてる。悩んでるのか?)

162: 2008/10/07(火) 10:29:28.11 ID:oMUn57MG0
先輩「ではお願いします」
男「了解っ」
先輩「今から行けますか?」
男「いけます」

先輩「では」
 すたすたすたすた

男(おお! ついにこのすたすたを追いかけて
 歩ける日が来たぞ! グラシアス!!)

先輩「……」
男「……」

かちゃかちゃ

男「先輩、自転車か何かです?」
先輩「いえ。電車通学なので」
男「じゃぁ、ゆっくり歩きで」
先輩「ええ」

てとてと。てとてと。

男「……」
先輩「……」

男「他の人は行かないんですかね?」
先輩「他の人?」


164: 2008/10/07(火) 10:36:21.82 ID:oMUn57MG0
男「他の図書委員ってことですけど」
先輩「あまり、活発な委員会ではないので」

男「そっすか」
先輩「はい」

男(委員会だから、活発だとか
 そうじゃないとかじゃないよなー。
 さぼりまくりか? まぁ美化も似たようなものだけど)
先輩「……」

てとてと。てとてと。

男「そのおかげでデートみたいに歩けて嬉しいですけどね」

ぴたっ

男(や。や、やばいっ!? つい思った事をそのまんま
 云っちったっ。こ、これは地雷か!?
 まだ間合いじゃなかったかっ!?
 これはどう考えてもなれなれしい発言に該当する気がするぅ。
 う、終った。おれ終ったか!?
 オレ終了のお知らせ。蛍の光で高速ヘッドバンキング中っ)

先輩「……」くるっ

男(やばいっ。怒ってる~っ)


166: 2008/10/07(火) 10:41:34.53 ID:oMUn57MG0
男(怒ってるっていうか、困っているって云うか、ううう。口がへの字にっ)

先輩「先輩をからかってはいけません」ぷいっ
 すたすたすた

男「ごめんなさいっ」
先輩「……」

てとてと。てとてと。

男「……」
先輩「……」

てとてと。てとてと。

先輩「……」
男(空気が重い。重すぎる)

てとてと。てとてと。

先輩「お手伝いの」
男「はい?」
先輩「ご褒美に、飴を一個あげます」
男「……」
先輩「いりませんか?」
男「もらっておきます」

ころん


171: 2008/10/07(火) 10:52:24.21 ID:oMUn57MG0
――画材店「林檎堂」

先輩「ここです」
男「ほう」
先輩「初めてですか?」
男「ええ、初めてっす。大きいですね」

先輩「学校で使う文房具や美術の画材なんかも扱っています」
男「ほうほう」

先輩「教科書や指定参考書もあるはずです」
男「おお。ほんとだ。上履きとかもあるぞ」
先輩「はい」

男「でかいですね~。結構。他の学校のもあるんだ」
先輩「地区のものは全て扱っているはずです」

男「うわ。おれ、これ使ってました。小学校の教科書!」
先輩「わたしも同じものでした」

男「この解説のイルカの顔によく落書きしてました!」
先輩「本は大切に扱ってください」
男「……はい。反省します」


173: 2008/10/07(火) 10:57:47.66 ID:oMUn57MG0
先輩「もっとも……」
男「?」

先輩「自分の本に書き込んで、それで内容が
 頭にきちんと入るなら、本は嫌がったりしないと思います」

男「そうですかね」
先輩「きっと。はい」

男「……」
先輩「?」じぃっ

男「いえ、なんでもっ」
男(あんな言葉が、ちょっと嬉しいとか。
 そんなの照れくさすぎて口が裂けても云えねっす)

先輩「ついでなので、私物のノートも買おうかと思います
 すみませんが……」

男「ああ、気にしないで下さい。
 ここ、けっこう見てて面白いし」

先輩「はい」


177: 2008/10/07(火) 11:02:53.13 ID:oMUn57MG0
男「いや、まじで色々あるのな」

男「うっは、練り消しだよ。でっけー!
 あ、美術用か? 子供の頃はこれで遊んだなぁ」

男「こっちは折り紙か。ほんと色々あるな、ここ」

男「紙粘土って色々種類があるんだなぁ。
 ん? 口に入れても安全? 子供用か?
 いまは色々大変だなぁ……。こっちは画用紙か」

男「ふむふむ」

男「で、こっちは上履きとか体操着だな。おお。
 うちのもあるぞ。他の学校と比べてもさほど悪くないな」

男「!?」

男「こっ。これはっ!?」


180: 2008/10/07(火) 11:06:58.30 ID:oMUn57MG0
男「こ、こ、これは! ま、まさか。
 あの都内ではもはや絶滅して久しい、三次元では
 根絶してしまい、今ではイデアしか残存しないといわれるっ」

ブルマ

男「ではないのかっ!?」

男(って、一人で盛り上がるのもあれだが、
 なんでこんな物があるんだ!? この地区にある全て?
 まさかこの地区にブルマを用いる高校がまだ残っているのか!?
 いやそれはありえない。100%ありえない。
 なぜならそんな高校が残っていれば友がチェックしない
 はずがないからだ。ふふふ、見事な推理だ!!)

男(はっ!? まてよ。そ、そうか!)

男(この巨大文具デパートには地区の全て、と云っていた。
 ちまり、高校以外ではどうだ? 中学はあやしいが、
 小学校ではいまだにブルマの着用を義務付けているところも
 あるのではないか? そういった偶然によってここに生き延びた、
 そう、シーラカンスのように現代までその命の命脈を
 保ったひとつの奇跡が存在するのではないか!?)

男「ならばこれは恩寵なのではないか!?」

先輩「……」じぃぃぃっ


185: 2008/10/07(火) 11:11:18.19 ID:oMUn57MG0
男(終った! オレの大冒険、ただいま駅前にて終了っ!
 今までご声援有難うございました。
 オレ先生の次回策にご期待ください!!)

先輩「……っち」ぷいっ

男「あ、先輩っ」
先輩「……」
 すたすたすた

男「えーっと」
先輩「……」

男(『はんっ!? あーいやだいやだ。この便所蟋蟀がっ!
 肉体労働用の下僕だと思って我慢して付き合ってくれば
 店頭でブルマを見つめるようなペドフェリアだとは
 ついぞ思わなかったよ。タルタロスですら生ぬるいっ!』

 やーめーてー。いーのーちーだーけーはー。

 『はんっ! 微塵の容赦も出来ないねっ。この口リコンめ!』

 いや、そこだけは訂正させてください。
 むしろ想像領域であのブルマの着用モデルだったのは
 ろりなどではなく先輩であって! そこは断じて否定したく。

 『余計に悪いわっ! 団子虫め! 石の下に行けっ!』)


186: 2008/10/07(火) 11:16:05.38 ID:oMUn57MG0
先輩「品物。受け取りました」
男「あ、あ。はいっ」

先輩「……」
男「結構ありますね、紙袋で四つか」
先輩「半分こしましょう」

男「いや、持ちます。持たせてください」
先輩「……はい」

店員「毎度有難うございましたーっ」

てとてと。てとてと。

男「……」
先輩「……」

てとてと。てとてと。

先輩「……」
男(空気が重い。重いというか、痛い。
 なんてんですか。針のむしろ。ニードルマットレスっ。
 どこの拷問器具だよっ。うわぁ、泣きたい)

てとてと。てとてと。

先輩「ああゆうのが」


189: 2008/10/07(火) 11:22:51.39 ID:oMUn57MG0
てとてと。てとてと。

男「うー」
先輩「ああゆうのが良いわけですか」

男「うっ」

てとてと。てとてと。

先輩「……」
男「……それは」

てとてと。てとてと。

先輩「……」
男「そのぅ」

てとてと。

男「ごめんなさい」
先輩「別に謝るようなことでは。関係ありませんし」ぷいっ

男(だってすごい不機嫌そうな表情なんですがっ。
 なんというか、不機嫌通り越してなくの我慢している
 子供みたいな顔に見えちゃうほどだって)


195: 2008/10/07(火) 11:28:24.68 ID:oMUn57MG0
先輩「……」

てとてと。てとてと。

男「えーっと。ご質問の件ですが、当方としても
 思春期の健常なる男子としまして、そのような興味は
 断ちがたく存在するわけでして」

先輩「……」
男「反省してます。ごめんなさい」

先輩「小さい娘がすきなのですか」
男「いえとんでもない」

先輩「ではブルマが?」
男「Don't滅相」

先輩「……」
男「いや、男子としてはやっぱり。半ば本能的に」

先輩「もう」
男「はい」
先輩「女の子と一緒にいるときは、その辺に気を使わないと
 彼女さんが出来ませんよ?」

男「面目ないです」


199: 2008/10/07(火) 11:34:15.30 ID:oMUn57MG0
先輩「反省しているようなので不問に付します」
男「ありがたき幸せ」
先輩「調子が良いです」
男「はっ」

てとてと。てとてと。

先輩「……」
男「……」

てとてと。てとてと。

先輩「……」

男(ってか……。『彼女さんが出来ませんよ』か。
 それっていうのは、やっぱな)

男(先輩は、そういうつもりはないってことなんだろうな。
 いや、甘い見通しだったわけじゃないんだけどな。
 うん、そうそう甘くはないのは承知の上だけどな)

男(やっぱ、へこむな)

男(そりゃへこみますともさ)


202: 2008/10/07(火) 11:38:22.90 ID:oMUn57MG0
――学校。図書準備室。

先輩「えっと、こちらへ」
男「はい。んしょっと」

先輩「数を確認したいです。そちらの袋のも数えてください」
男「了解」

先輩「……1,2,3,4」
男「……4,5,6,7」

先輩「納品書どおりのようですね」
男「はい、ばっちっすね」

先輩「重かったでしょう?」
男「いえいえ。こんなのは得意ですから」

先輩「……」じっ
男「?」

先輩「……」じぃっ
男「なんです?」


203: 2008/10/07(火) 11:44:45.01 ID:oMUn57MG0
先輩「いえ、ちょっとここに座ってください」
男「はぁ」

先輩「……こほん」
男「?」

先輩「今日は重い荷物を持ってくれて助かりました」
男「いえいえ。お安い御用で」

先輩「助かったのは事実です」
男「――まぁ」

先輩「有難うございました」なでなで
男(あたま、撫でっ、撫でられてっ)

先輩「よくがんばりました」なで
男「せ、先輩っ」
先輩「?」
男「頭は、その。さすがに、子ども扱い、というか……」
先輩「……」

男「その」
先輩「すみません。親戚の子供とでは歳が違いますね」
男(っていうか。な、な、なんでこんなに嬉しいんだよっ。
 し、心臓ばくばくうっせーっ!! だ、だまれーっ!)

先輩「でも、がんばってくれたから。嬉しかったです」なで


257: 2008/10/07(火) 14:43:34.18 ID:oMUn57MG0
――放課後、図書室

男「こんにちはー」

しーん

男「めずらしいな。オレのほうが早いのか?
 いや、鍵開いてたしな……。何か雑用で出たかな」

男「ま、いっか。待ってりゃ」

男「……」

――でも、がんばってくれたから。嬉しかったです。

男「そんなさ」
男「つか、下心あるんだっての。好きなんだっての。
 好きな女の子の荷物ぐらい、持つっての。
 見え見えだろ。告白済みだぞ。
 ……ちょっとさ気がついてくれよっての」

男(いや、本当に。へこむっての。
 へこんで当然の状況で、オレ相手されてないのが
 ほぼ確実なのにさ)

――よくがんばりました。

先輩「それでも嬉しいなんて、おれはアホの子かって」


262: 2008/10/07(火) 14:49:13.98 ID:oMUn57MG0
男(『はんっ! アホの子? その柔らかい物言いは
 いかがかとおもうねぇ団子虫。アホなアホであり
 それ以上でもそれ以下でもないんじゃないか?
 いや、アホかどうかはともかく、お前は言ってみれば
 ただの下級生以外の何者でもないんじゃないかね?』

 うーわー。そういう冷たいのだけは勘弁してくださいっ。
 考えないようにしてたのにっ)

男「はぁ……」

男「あーあぁ」

男「ままならんねぇ。実際」

男「おろ、先輩だ。あんなとこに」

てとてと。

男「焼却炉に行く途中か。ゴミ出しだな。
 そんなもん俺にやらせればいいのに」

先輩「?。……」
男「あ、気がついた」ぱたぱた
先輩「っ!」じぃっ

男「うわ。手ふっただけで慌ててこっち来る」


264: 2008/10/07(火) 14:53:19.57 ID:oMUn57MG0
男「こんにちは」
先輩「こんにちは。すみません」
男「え? どうして」

先輩「いえ。席を外していました」
男「またまた。そんなことくらい」

先輩「委員が一人はいないと業務が」
男「ああ、そっか」
先輩「わたし一人ですし」
男「ゴミだしくらい俺にさせればよかったのに」

先輩「そんなに甘えるわけには行きません」
男「そういうものかな」
先輩「はい」

男「……」
先輩「……」

とさっ。

男「……」

先輩「これで準備できました。本はご自由にどうぞ」
男「……うん」

男(なんか、これはこれで。距離を感じちまうな)


267: 2008/10/07(火) 14:58:22.43 ID:oMUn57MG0
男「……」
先輩「……」

ぺらっ。ぱらっ。

男「……」
先輩「……」

ぺらりっ。

男「……むぅ」
先輩「……」ちらっ

ぱらっ。……ぺらっ。

男(『ハムスターの飼い方』、読み始めると奥が深い。
 そうか、イメージで飼うと色々やっちゃいけないことを
 しちまうというトラップか)

先輩「……」ちらっ

ぺらっ。ぱらっ。

男(く、くそうっ。ハムスターがこんなに可愛いとはッ)


269: 2008/10/07(火) 15:05:12.70 ID:oMUn57MG0
先輩「あの」
男「うかつだったぜ。水はボトルで……はい?」

先輩「おなかがすきませんか?」
男「はぁ」
先輩「今日の調理実習で二色クッキーを作りました。
 余っているのでよければどうぞ」
男「お。ありがたいです!」

先輩「はい、今。……あ、お茶があった方が良いですか?
 わたし買ってきます」

男「いや、いいすよ。委員、一人なんでしょ?
 俺かって来ますよ」
先輩「はい」

男「自販機の缶紅茶でいっすよね?」
先輩「はい」

てとてと。

男「んっしょっと。二本で、Hotと」

ガチャコン。ガチャコン。

男「うっわ。やっぱさ調理実習とか言って醍醐味じゃね?
 なんか先輩はさ。よく判らんんが……。いつも不機嫌だし
 本当によく判らないんだけどさ」


273: 2008/10/07(火) 15:10:39.46 ID:oMUn57MG0
男「あちちっ。この季節は、熱いくらいに
 暖めてあるよな、やっぱし。当然だよな」

――いえ。紅茶を買ったらたまたまこちらへ歩くのを見て。

男「だよな」

男(たまたま見て、ちょっと声をかけても冷めないよな。
 だいたいこの自販機、屋上から見たら反対じゃん)

――図書室を開ける関係もあるので、挨拶をしようかと。

男(あの日、貸し出しの準備は図書室の中で、
 もう出来てたじゃん。先輩一人しかいない委員なのに
 図書室抜け出してさ)

――余ったからこれあげます。

男(先輩の表情がよく判らないとか。いつも不機嫌そうとか。
 困った顔ばっかりしてるとか。俺のこと子ども扱いするとか。
 そういうのってあるんだけどさ。
 もちろんそれはそれで、あるんだけどさ)


276: 2008/10/07(火) 15:15:55.18 ID:oMUn57MG0
男「もう、いいや。先輩のこと信じちまおう」

男「いいや。そういうことにしちまおう」

男「てか、最初から決まってたじゃんな。
 それを多少流されたからって撤退準備とは
 そんなんじゃ勝てるものも勝てないっての」

がらがらがら

男「ただいまー。紅茶かって来ました」
先輩「ありがとうございます。あの、お金……」

男「いえいえ。これは奢りで」
先輩「そういうわけにはいきません」

男「クッキーご馳走してくれるんでしょ?」
先輩「はい」
男「それと、とっかえっこですから」
先輩「……はい。それなら」

男「いただきます」
先輩「どうぞ」


277: 2008/10/07(火) 15:20:20.98 ID:oMUn57MG0
先輩「かりっ。もきゅ」
男「もぐもぐ」

先輩「もぐ……」
男「もぐもぐ」

先輩「……」
男「美味しいですよ。そんな顔しなくたってっ」
先輩「良かったです」

男「授業で焼いたんですか?」
先輩「はい。茶色のところはココアパウダーです」

男「うまいすね」
先輩「はい」

先輩「かりっ。もきゅ」
男「もぐもぐ」

先輩「……もぐ」
男「先輩、先輩」
先輩「はい?」

男「彼女になってください」
先輩「え?」

男「彼女になってください。お付き合いしたいです」

281: 2008/10/07(火) 15:24:38.78 ID:oMUn57MG0
先輩「……」
男「……」

先輩「……」
男「そんな、困ったような泣き出しそうな顔しないで下さいよ」
先輩「あなたがさせてるんです」

男「うー」

先輩「冗談でも云っていい種類の冗談と、
 云ってはいけない種類の冗談がありますよ」
男「……」

先輩「もちろんこれはいけない種類の冗談です」

男「本気です」
先輩「……あ、あ」

男「そんなに硬直しなくても。本気で告白してます」

先輩「あ……」
男「紅茶どうぞ」
先輩「は、はい」

男「……」
先輩「……」


285: 2008/10/07(火) 15:30:25.24 ID:oMUn57MG0
先輩「冗談でなければ、勘違いですか?」
男「どっちも違います」

先輩「……」
男「絶句しないで下さい」

先輩「わたしは」
男「……」
先輩「相当つまらない人間ですよ?」
男「えー。またまた」

先輩「気が効いてるとも云いがたいですし、楽しい話題が
 出来るわけでもないし。それに……その……。
 か、か、可愛くないですよ?
 年頃の女性らしく、素直に……。
 笑うとか……苦手ですし……。
 経験もないですし……」

男「……」

先輩「そもそも、あなたを含めて、他人の考えてることが
 判りません。きっと本質的な部分で欠陥があるのだと
 思っていて。努力もするのですが……。
 わたしには、難しくて……。よく、わからなくて……。
 あなたが……その。
 いつも手助けしてくれて、すごく。嬉しいのですが」

先輩「本当に凄くですよ。すごく……なんです。
 けれど。うまく……御礼も出来なくて……」

300: 2008/10/07(火) 15:38:24.44 ID:oMUn57MG0
先輩「こういうときも、その……。どういう風に云えば
 一番良いのか……。わか、らないの……ですが。
 きっと、何か、思い違いというか……。
 過大評価をしているんですよ。だって、わたしは
 そういうような……。望まれるような……。
 どこかで失敗をして、凄くがっかりさせて
 しまうと。しまうのだと……」

男「先輩」

先輩「そういうのは、凄く。……怖くて。
 毎日、怖くて……。きてもらってるのに。
 毎日ずっと話も出来ないのは……」

男「先輩っ」

先輩「はいっ」

男「とりあえず、目、ふいて」
先輩「は、はい……。うわぁ。
 やはり、相当に……格好悪いですね、わたし」

男「週末のデートはどこにしましょうか」

先輩「っ! 何を聞いていたんですか、あなたはっ!」
男「いえ、デートの予定を」
先輩「だからっ。そうじゃなくてっ、きっと、わたしはっ」


309: 2008/10/07(火) 15:44:54.83 ID:oMUn57MG0
男「それはどうでも良いので」
先輩「どうでも良くありません」

男「先輩?」
先輩「はい……」

男「自分でもびっくりですが。俺は相当粘り強いみたいですよ?」
先輩「どういうことです?」
男「先輩に振られても諦めませんよ」

先輩「……っ」
男「どんどん好きになりますよ?」
先輩「それじゃ。……ちゃんと説明して
 恥を晒して説得してるじゃないですかっ」

男「5倍は好きになりましたね」
先輩「それじゃ脅迫じゃないですか!」
男「脅迫ですよ。無駄な抵抗は辞めて彼女になってください」

先輩「そんな……」
男「年貢の納め時ですよ」
先輩「うう……」

男「嫌いなら嫌いとはっきりと!」
先輩「そんなわけっ。…………キで、す……」
男「俺も大好きですよ」にこっ


315: 2008/10/07(火) 15:51:08.46 ID:oMUn57MG0
――下校路

先輩「うう」
男「どしました?」
先輩「泣くと、目が腫れるんです。だから絶対
 泣かないようにしてたのに」
男「でも可愛いですよ?」

先輩「そういう事を言うからですっ。
 ……だいたい、あなたがこんなにいぢめっこだとは
 思いませんでした」
男「いや、ほんと。本人もびっくりです」

先輩「色々手伝ってくれる、凄く頼りになって
 可愛い後輩だと思っていたのに……」
男「一皮剥いたらいぢめっこでした」
先輩「本当です」ぷいっ

男「だって先輩の困った顔、可愛いですよ」
先輩「そういう意地悪をいう子は嫌いです」
男「うわ。機嫌、治してください」

先輩「……」ぷいっ
 すたすたすた

男「先輩ってば」
先輩「……むぅ。送ってくれるのでしょう?」
男「はいっ」


328: 2008/10/07(火) 16:01:25.54 ID:oMUn57MG0
先輩「……。きっとクラスの皆にも
 散々からかわれるんですよ。思いやられます」
男「どうしてです?」

先輩「それは……。その……。噂に、なんってたので」
男「?」

先輩「下級生と、仲が……よい、とか……」
男「ああ」
先輩「嬉しそうにしないで下さい。困ってるんですっ」
男「いえいえ、嬉しそうなんて、とんでもない」

男(でも……。そっか。そうか……。
 先輩の、困ったような、泣き出しそうな表情、
 ずっと好きだった)

先輩「責任とってもらいますからねっ」

男(微笑んだ顔を、独り占めしたいって思っていたけれど)

先輩「本当ですからねっ」

335: 2008/10/07(火) 16:04:31.49 ID:oMUn57MG0
男(この困った泣き顔は、ずっと独占してきたんだ)

先輩「聴いてるんですかっ!?」

男「もちろん。ちゃんと。……先輩のクラスに
 挨拶に行けばいいのでしたっけ?」

先輩「そんなことしたら、わたしがなにを云われるかっ!」

男(いつも先輩を独り占めしてきたんだ)

男「大丈夫です。責任ある立派な挨拶をします。
 彼氏としてねっ。ずばっとねっ!」

先輩「な、な、なれなれしい男性は好きではありませんっ」

男「先輩はいつでも可愛いです」

先輩「いっていい冗談と、悪い冗談がっ……」

先輩「聴いているんですか!? そんなにこにこしてっ。
 もう飴もクッキーもあげないんですからねっ」

男「でも、俺は先輩のこと大事にしちゃいますよ?」
先輩「~っ!」
これからもあの図書室で。

おわりっ。

336: 2008/10/07(火) 16:05:00.31 ID:k+bKN/pD0
泣いた

337: 2008/10/07(火) 16:05:25.34 ID:8CStJbod0

341: 2008/10/07(火) 16:06:12.90 ID:G1pOaUSo0

355: 2008/10/07(火) 16:10:25.03 ID:oMUn57MG0
おっす。おら1。てぇへんだ。地球の皆!
男が先輩に惚れたせいでスレが鬱になっちまった!
このままじゃVipがやべぇぞ。ゴハンはたよりにならねぇから
皆の力で男に呪いをかけてやってくれ!

嘘です。

1です。
先輩ってなんかいいよなってことで書きました。
テーマとしてはあれだよ。俺の憧れ+鬱+嫌がらせだよ。

こんな青春ねぇよ。おれも欲しいよっ。くそがー。
つか、高校生とか皆誌ねばいいのにっ。
キラキラしやがってこんちきしょー。

これからこのスレは葬式会場になりますので
埋葬されたい人(俺とか)は遠慮なく吊られてください。
毎度支援してくれた人には大感謝です。
ママレードサンドです。
これは近所のスーパーのおばちゃんが作ったやつで
恋愛成分が入ってない安全な食べ物です。

ではまたどっかで!

引用: 先輩「もう帰ってもいいですよ」