1: 2016/05/16(月)22:35:38 ID:FpI
私の名前はジュディ・ホップス。
小さい頃から警察官になるのが夢だった。
『ズートピアでは誰でも何にでもなれる』
そう信じて、辛い訓練にも耐えて人一倍頑張ってきた。
その甲斐があって、ウサギ初の警察官としてズートピアへの配属が決まった日は本当に嬉しかったっけ。
……でも、実際は期待ばかりされていたわけではなかった。
「そんな小さい体で」
「田舎でニンジンでも作ってればいいのに」
「お前には向いていない」
見た目で、ウサギだからという理由だけで、周りから評価をされる。
誰も私の中身を見てくれない。
それがたまらなく嫌だった。
小さい頃から警察官になるのが夢だった。
『ズートピアでは誰でも何にでもなれる』
そう信じて、辛い訓練にも耐えて人一倍頑張ってきた。
その甲斐があって、ウサギ初の警察官としてズートピアへの配属が決まった日は本当に嬉しかったっけ。
……でも、実際は期待ばかりされていたわけではなかった。
「そんな小さい体で」
「田舎でニンジンでも作ってればいいのに」
「お前には向いていない」
見た目で、ウサギだからという理由だけで、周りから評価をされる。
誰も私の中身を見てくれない。
それがたまらなく嫌だった。
2: 2016/05/16(月)22:37:47 ID:FpI
映画『ズートピア』絶賛放映中!
次のレスから多大なネタバレを含みます
まだ見てない方は速やかに睡眠を取って朝一で映画館へ足をお運びください
次のレスから多大なネタバレを含みます
まだ見てない方は速やかに睡眠を取って朝一で映画館へ足をお運びください
3: 2016/05/16(月)22:38:58 ID:FpI
ニック「」ンゴー ンガッ
ジュディ「……って話聞いてるの?」ブロロロ……
ニック「……ん、着いたか?」ムクリ
ジュディ「はぁ……今はパトロール中でしょ?職務怠慢よ」
ニック「いいじゃねーか、もう署に帰るだけなんだからよ」
ジュディ「最近平和だからって気が抜け過ぎよ、ニック」
ニック「へいへい……」
ジュディ「……って話聞いてるの?」ブロロロ……
ニック「……ん、着いたか?」ムクリ
ジュディ「はぁ……今はパトロール中でしょ?職務怠慢よ」
ニック「いいじゃねーか、もう署に帰るだけなんだからよ」
ジュディ「最近平和だからって気が抜け過ぎよ、ニック」
ニック「へいへい……」
4: 2016/05/16(月)22:40:07 ID:FpI
こんなだらけた彼はこれでも私の相棒。
名前はニック・ワイルド。
以前は詐欺師だったけれど、当時ある事件を私と一緒に解決したの。
それをきっかけにスカウトし、今ではキツネ初の警察官になった。
……彼もまた、色々と辛い思いをして生きてきたみたい。
ずる賢いとか、嘘つきとか、信用ならないとか。
キツネというだけで色眼鏡で見られてきた。
何をやっても認めてもらえない彼が、ずいぶんと色の濃い眼鏡をかけてあくどい商売をしていた事を私は強く咎められなかった。
だって、私もかつて彼に対して失礼な事をしてしまったのだから。
名前はニック・ワイルド。
以前は詐欺師だったけれど、当時ある事件を私と一緒に解決したの。
それをきっかけにスカウトし、今ではキツネ初の警察官になった。
……彼もまた、色々と辛い思いをして生きてきたみたい。
ずる賢いとか、嘘つきとか、信用ならないとか。
キツネというだけで色眼鏡で見られてきた。
何をやっても認めてもらえない彼が、ずいぶんと色の濃い眼鏡をかけてあくどい商売をしていた事を私は強く咎められなかった。
だって、私もかつて彼に対して失礼な事をしてしまったのだから。
6: 2016/05/16(月)22:41:36 ID:FpI
ジュディ「……ねぇニック」
ニック「なんだ?」
ジュディ「あの時の事、覚えてる?」
ニック「どの時の事だ」
ジュディ「あの事件の、記者会見の時よ」
ニック「……覚えているか?えぇ、よく覚えていますよ」
ジュディ「私のあの発言が、肉食動物と草食動物との隔たりを大きくしたの」
ニック「……」
ジュディ「今ではもう、偏見も差別も少なくなった」
ジュディ「でも、なくなってはいない」
ジュディ「全ての動物が仲良く暮らすユートピアには、今一歩届いていない」
ニック「……」
ジュディ「ねぇニック、私は……」
ニック「……偏見も差別もない世の中なんて、来ないさ」
ジュディ「……」
ニック「それでも、警察官に似つかわしくない二人がここにいる」
ニック「誰のおかげかわかるか?ニンジン」
ジュディ「……恨んでない?」
ニック「……まさか」
ジュディ「ありがとう……」
ニック「なんだ?」
ジュディ「あの時の事、覚えてる?」
ニック「どの時の事だ」
ジュディ「あの事件の、記者会見の時よ」
ニック「……覚えているか?えぇ、よく覚えていますよ」
ジュディ「私のあの発言が、肉食動物と草食動物との隔たりを大きくしたの」
ニック「……」
ジュディ「今ではもう、偏見も差別も少なくなった」
ジュディ「でも、なくなってはいない」
ジュディ「全ての動物が仲良く暮らすユートピアには、今一歩届いていない」
ニック「……」
ジュディ「ねぇニック、私は……」
ニック「……偏見も差別もない世の中なんて、来ないさ」
ジュディ「……」
ニック「それでも、警察官に似つかわしくない二人がここにいる」
ニック「誰のおかげかわかるか?ニンジン」
ジュディ「……恨んでない?」
ニック「……まさか」
ジュディ「ありがとう……」
7: 2016/05/16(月)22:42:35 ID:FpI
ジュディ「はい、着いたわ」キキー
ニック「今日も運転ご苦労さん」バタン
ジュディ「あなた免許持ってたわよね?」
ニック「持ってたよ、しかし助手席でのろのろ運転に揺られるのも心地よくてね」
ジュディ「また急ブレーキしてほしい?」
ニック「おっと、そいつは勘弁」
ジュディ「とにかくボゴ署長の所へ報告に行くわよ」
ニック「了解」
ニック「今日も運転ご苦労さん」バタン
ジュディ「あなた免許持ってたわよね?」
ニック「持ってたよ、しかし助手席でのろのろ運転に揺られるのも心地よくてね」
ジュディ「また急ブレーキしてほしい?」
ニック「おっと、そいつは勘弁」
ジュディ「とにかくボゴ署長の所へ報告に行くわよ」
ニック「了解」
8: 2016/05/16(月)22:43:29 ID:FpI
受付のクロウハウザーさんに挨拶を済ませ、署長室へと向かう。
ノックをすると、何か慌てた様子の署長の声がした。
中へと入り、二人でパトロールの報告をする。
退勤の許可を得て部屋を出ると後ろで大きなため息が聞こえた気がした。
帰ろうと受付前を通ると、クロウハウザーさんが他の署員にスマホを見せていた。
「ガゼルの横にいるの、誰だと思う~?」
……一応帰る前に挨拶だけしよう。
ノックをすると、何か慌てた様子の署長の声がした。
中へと入り、二人でパトロールの報告をする。
退勤の許可を得て部屋を出ると後ろで大きなため息が聞こえた気がした。
帰ろうと受付前を通ると、クロウハウザーさんが他の署員にスマホを見せていた。
「ガゼルの横にいるの、誰だと思う~?」
……一応帰る前に挨拶だけしよう。
9: 2016/05/16(月)22:44:42 ID:FpI
ジュディ「お疲れ様です、クロウハウザーさん」
クロウハウザー「あ、二人ともお疲れ様ー」
クロウハウザー「見て見てこのアプリ、あのガゼルと一緒に踊れるんだ~」
ニック「……こんなのが流行ってるのか」ボソ
ジュディ「こんなのって言っちゃ失礼よ」ボソ
クロウハウザー「何二人でコソコソ話してるの?」
クロウハウザー「あ、そういえばジュディ、もうすぐ誕生日じゃなかった?」
ジュディ「えぇそうよ」
クロウハウザー「いいなぁ~、みんなからプレゼントもらえるでしょ?」
クロウハウザー「僕も何を送ろうかなぁ、何か欲しいものはあるかい?」
ジュディ「もうお祝いしてもらう年でもないわよ」テレテレ
ニック「一体いくつなんだ?」
ジュディ「レディに年を聞くなんて失礼よ」
クロウハウザー「若いっていいなぁ~」
クロウハウザー「あ、二人ともお疲れ様ー」
クロウハウザー「見て見てこのアプリ、あのガゼルと一緒に踊れるんだ~」
ニック「……こんなのが流行ってるのか」ボソ
ジュディ「こんなのって言っちゃ失礼よ」ボソ
クロウハウザー「何二人でコソコソ話してるの?」
クロウハウザー「あ、そういえばジュディ、もうすぐ誕生日じゃなかった?」
ジュディ「えぇそうよ」
クロウハウザー「いいなぁ~、みんなからプレゼントもらえるでしょ?」
クロウハウザー「僕も何を送ろうかなぁ、何か欲しいものはあるかい?」
ジュディ「もうお祝いしてもらう年でもないわよ」テレテレ
ニック「一体いくつなんだ?」
ジュディ「レディに年を聞くなんて失礼よ」
クロウハウザー「若いっていいなぁ~」
10: 2016/05/16(月)22:45:19 ID:FpI
世間話もそこそこに署を出て、車へと向かった。
先ほどのパトカーじゃない、真っ赤な私の車。
こんな車を持つのもちょっとした夢だったのよ。
まっすぐアパートに帰っても全然安らげないから、最近は外食して帰る事が多い。
「じゃあ今日もよろしくな」バタン
……こいつと一緒にね。
先ほどのパトカーじゃない、真っ赤な私の車。
こんな車を持つのもちょっとした夢だったのよ。
まっすぐアパートに帰っても全然安らげないから、最近は外食して帰る事が多い。
「じゃあ今日もよろしくな」バタン
……こいつと一緒にね。
11: 2016/05/16(月)22:46:32 ID:FpI
ニック「今日はワインでも飲みたい気分だな」
ジュディ「私はお抱えの運転手じゃないわ」
ニック「そう言うなって、この間はサラダバイキングに付き合ってやっただろ?」
ニック「野菜づくしはいいとして肉も魚も無いなんて、ありゃ最悪だった」
ジュディ「いいじゃない、肉食動物だって野菜を食べる時代よ」
ニック「の割に、お前はニンジンばっかり食ってるな」
ジュディ「好きなのよ、悪い?」
ニック「悪かない、だが偏食は体に良くないな」
ニック「ほら、ここなんてどうだ?」スッ
ジュディ「どれどれ……」ブロロロ……
ジュディ「私はお抱えの運転手じゃないわ」
ニック「そう言うなって、この間はサラダバイキングに付き合ってやっただろ?」
ニック「野菜づくしはいいとして肉も魚も無いなんて、ありゃ最悪だった」
ジュディ「いいじゃない、肉食動物だって野菜を食べる時代よ」
ニック「の割に、お前はニンジンばっかり食ってるな」
ジュディ「好きなのよ、悪い?」
ニック「悪かない、だが偏食は体に良くないな」
ニック「ほら、ここなんてどうだ?」スッ
ジュディ「どれどれ……」ブロロロ……
12: 2016/05/16(月)22:47:36 ID:FpI
ニックのスマホに映ったマップを見てウインカーを出す。
そんなに遠いわけでもないからいいかな。
大体いつもこんな感じで食事を済ませる。
その後はニックを送って、私も帰路についた。
そしてお風呂に入って、寝て、起きたら出勤。
いつもと代わり映えのしない毎日。
相変わらずゴタゴタは多いけど、凶悪事件の匂いもしない。
言ってしまえば『平和』なんだと思う。
「……これでいいのよ」
偏見も差別もない、誰でも何にでもなれる街。
ズートピア。
そんな夢を追い求めて、今まで頑張ってきたわ。
諦めなければいつか叶うはず。
でも、急いだところで世間は変わらない。
今までしてきた事を、これからもやるだけよ。
これからも、いつまでも……。
そんなに遠いわけでもないからいいかな。
大体いつもこんな感じで食事を済ませる。
その後はニックを送って、私も帰路についた。
そしてお風呂に入って、寝て、起きたら出勤。
いつもと代わり映えのしない毎日。
相変わらずゴタゴタは多いけど、凶悪事件の匂いもしない。
言ってしまえば『平和』なんだと思う。
「……これでいいのよ」
偏見も差別もない、誰でも何にでもなれる街。
ズートピア。
そんな夢を追い求めて、今まで頑張ってきたわ。
諦めなければいつか叶うはず。
でも、急いだところで世間は変わらない。
今までしてきた事を、これからもやるだけよ。
これからも、いつまでも……。
15: 2016/05/16(月)22:48:36 ID:FpI
ジュディ「報告は以上です、ボゴ署長」
ボゴ署長「ああ、ご苦労」
ジュディ「それでは失礼致します、お疲れ様でした」
ニック「お疲れ様でした」バタン
ジュディ「ふぅ……今日はなかなか慌ただしかったわね」
ジュディ「今日はスタミナの付くものでも食べに行かない?おごるわよ」
ニック「悪いが、今日はちょっと都合が悪いんだ」
ジュディ「そう……」
ニック「すまないな、また明日よろしく頼む」
ジュディ「分かったわ、お疲れ」
ボゴ署長「ああ、ご苦労」
ジュディ「それでは失礼致します、お疲れ様でした」
ニック「お疲れ様でした」バタン
ジュディ「ふぅ……今日はなかなか慌ただしかったわね」
ジュディ「今日はスタミナの付くものでも食べに行かない?おごるわよ」
ニック「悪いが、今日はちょっと都合が悪いんだ」
ジュディ「そう……」
ニック「すまないな、また明日よろしく頼む」
ジュディ「分かったわ、お疲れ」
16: 2016/05/16(月)22:49:32 ID:FpI
ここ数日、何故かニックがつれない。
彼は署から近い所に住んでいるから私の送り迎えも必要ではないけれど。
でもいつも横にいる人が居ないだけでなんだかそわそわする。
アパートに帰ればレトルト食品はあるけど、どうも味気ない。
一人でご飯なんて久しぶり……。
ニックの言動にカチンと来る事もたまにはある。
それでも、二人で食べるご飯は美味しかったな。
……寂しい。
本人は用事があると言っていたけれど、一々聞くのも野暮よね。
また悪いことをしてなきゃいいんだけれど……。
……まさかね?
彼は署から近い所に住んでいるから私の送り迎えも必要ではないけれど。
でもいつも横にいる人が居ないだけでなんだかそわそわする。
アパートに帰ればレトルト食品はあるけど、どうも味気ない。
一人でご飯なんて久しぶり……。
ニックの言動にカチンと来る事もたまにはある。
それでも、二人で食べるご飯は美味しかったな。
……寂しい。
本人は用事があると言っていたけれど、一々聞くのも野暮よね。
また悪いことをしてなきゃいいんだけれど……。
……まさかね?
17: 2016/05/16(月)22:50:29 ID:FpI
「はぁ、重たい」
今日は仕事はお休み。
せっかく街まで買い出しに来たのだから、色々と買い置きしなきゃ。
スーパーに行って、ドラッグストアに寄って、服屋にも……。
すっかりサバンナ・セントラルの事に詳しくなった私は、前々から目をつけていたお店を手際よく回る。
最近では駐車違反の車もめっきりと減り、心なしか治安も良くなってきた気がする。
新米の頃は重大な任務でも捜査をさせてもらえず、違反者の取り締まりばかりだったなぁ。
切符を切る度に罵声を浴びて落ち込んだりもしたっけ。
今ではニックと一緒に様々な任務を任され、我ながら警官らしくなってきたなぁなんて思う。
ウサギやキツネでも警官として仕事を任せてもらえる世の中になってきつつある。
これはきっと、大きな進歩。
『誰のおかげかわかるか?ニンジン』
あなたのおかげよ、ニック。
あなたが居たから、事件を解決できた。
本当に感謝しているわ。
そんな事を考えながら、次の目的地へと向かっていた。
今日は仕事はお休み。
せっかく街まで買い出しに来たのだから、色々と買い置きしなきゃ。
スーパーに行って、ドラッグストアに寄って、服屋にも……。
すっかりサバンナ・セントラルの事に詳しくなった私は、前々から目をつけていたお店を手際よく回る。
最近では駐車違反の車もめっきりと減り、心なしか治安も良くなってきた気がする。
新米の頃は重大な任務でも捜査をさせてもらえず、違反者の取り締まりばかりだったなぁ。
切符を切る度に罵声を浴びて落ち込んだりもしたっけ。
今ではニックと一緒に様々な任務を任され、我ながら警官らしくなってきたなぁなんて思う。
ウサギやキツネでも警官として仕事を任せてもらえる世の中になってきつつある。
これはきっと、大きな進歩。
『誰のおかげかわかるか?ニンジン』
あなたのおかげよ、ニック。
あなたが居たから、事件を解決できた。
本当に感謝しているわ。
そんな事を考えながら、次の目的地へと向かっていた。
18: 2016/05/16(月)22:51:41 ID:FpI
「この信号、捕まると長いのよね……」
信号待ちをしながらルートを頭の中で思い描いていると、交差点の角のお店から見覚えのある人影が出てきた。
「ニック……?」
いつもの私服で彼が出てきたお店は、ここらでも有名な宝石店だった。
私とニックはパートナーだから彼も今日は休みのはず。
買い物でもしてたのかしら?
出てきた彼の手には何も握られていない。
一体何しに行ったの……?
私の頭の中では何故だか良からぬ方向に妄想が膨らんでいく。
「……ニックはそんな事しない!」
そうよ、私はニックを信じてるの。
やましい事なんて彼はしない。
明日正々堂々と聞くわ。
きっと答えてくれる。
信号待ちをしながらルートを頭の中で思い描いていると、交差点の角のお店から見覚えのある人影が出てきた。
「ニック……?」
いつもの私服で彼が出てきたお店は、ここらでも有名な宝石店だった。
私とニックはパートナーだから彼も今日は休みのはず。
買い物でもしてたのかしら?
出てきた彼の手には何も握られていない。
一体何しに行ったの……?
私の頭の中では何故だか良からぬ方向に妄想が膨らんでいく。
「……ニックはそんな事しない!」
そうよ、私はニックを信じてるの。
やましい事なんて彼はしない。
明日正々堂々と聞くわ。
きっと答えてくれる。
19: 2016/05/16(月)22:52:18 ID:FpI
ジュディ「おはようございます」
受付「あぁ、おはようジュディ」
ジュディ「今日はクロウハウザーさんはお休みですか」
受付「そうだね、彼は今日休みを取ったらしい」
受付「慣れない受付業務はなんだか落ち着かないよ」
ジュディ「あのう、ニックを見ませんでした?」
受付「いや、まだ見てないな」
ジュディ「そうですか、ありがとうございます」
受付「あぁ、おはようジュディ」
ジュディ「今日はクロウハウザーさんはお休みですか」
受付「そうだね、彼は今日休みを取ったらしい」
受付「慣れない受付業務はなんだか落ち着かないよ」
ジュディ「あのう、ニックを見ませんでした?」
受付「いや、まだ見てないな」
ジュディ「そうですか、ありがとうございます」
20: 2016/05/16(月)22:53:08 ID:FpI
……おかしい。
いくら待っても彼が来ない。
もう集合時間だというのに……。
とにかく席に着こう。
もうボゴ署長が来てしまう。
……ボゴ署長なら何か知っているかな?
いくら待っても彼が来ない。
もう集合時間だというのに……。
とにかく席に着こう。
もうボゴ署長が来てしまう。
……ボゴ署長なら何か知っているかな?
21: 2016/05/16(月)22:53:54 ID:FpI
ボゴ署長「おはよう、諸君」ガラッ
署員「」ワイワイガヤガヤ
ボゴ署長「もういいもういい!」
ボゴ署長「割り振るぞ」
ボゴ署長「その前に、今日はまだ顔を見ていない奴がいるな」
ジュディ「ボゴ署長、ワイルド巡査をご存知ありませんか」
ボゴ署長「いいや、私は何も知らない」
ボゴ署長「というよりホップス巡査、パートナーの事を把握していないとは管理不行き届きではないかね?」
ジュディ「……申し訳ありません」
ボゴ署長「早急に連絡を取れ」
ボゴ署長「なんなら彼の自宅まで行って様子を見てこい」
ジュディ「はい、承知いたしました」
ボゴ署長「では、今日の担当だが……」
署員「」ワイワイガヤガヤ
ボゴ署長「もういいもういい!」
ボゴ署長「割り振るぞ」
ボゴ署長「その前に、今日はまだ顔を見ていない奴がいるな」
ジュディ「ボゴ署長、ワイルド巡査をご存知ありませんか」
ボゴ署長「いいや、私は何も知らない」
ボゴ署長「というよりホップス巡査、パートナーの事を把握していないとは管理不行き届きではないかね?」
ジュディ「……申し訳ありません」
ボゴ署長「早急に連絡を取れ」
ボゴ署長「なんなら彼の自宅まで行って様子を見てこい」
ジュディ「はい、承知いたしました」
ボゴ署長「では、今日の担当だが……」
22: 2016/05/16(月)22:54:58 ID:FpI
携帯を何度鳴らしても出なかった。
「……」ブロロロ……
一体何をしているというの……?
彼の安否が気になる。
それに署長になんらかの報告はしなきゃ……
「……」キキーッ
着いた。
最近あまり来なかった彼の家。
意外と大きい、落ち着いた感じの一軒家。
……体格の差もあるのかな。
借家だって聞いたけど、これだけ大きいとお家賃がいくらかちょっと気になる。
「……今はそんな場合じゃないよね」
チャイムを鳴らす。
……。
出ない。
「……ニック?」
……。
ドアノブに手をかけて、ゆっくりと回してみる。
……回る。
「……」ギィィィ……
「……」ブロロロ……
一体何をしているというの……?
彼の安否が気になる。
それに署長になんらかの報告はしなきゃ……
「……」キキーッ
着いた。
最近あまり来なかった彼の家。
意外と大きい、落ち着いた感じの一軒家。
……体格の差もあるのかな。
借家だって聞いたけど、これだけ大きいとお家賃がいくらかちょっと気になる。
「……今はそんな場合じゃないよね」
チャイムを鳴らす。
……。
出ない。
「……ニック?」
……。
ドアノブに手をかけて、ゆっくりと回してみる。
……回る。
「……」ギィィィ……
23: 2016/05/16(月)22:55:34 ID:FpI
「「「ハッピーバースデー、ジュディ!!!」」」パンッ パパンッ
24: 2016/05/16(月)22:56:16 ID:FpI
ジュディ「……!」
ニック「やあ、よく来たね」
ジュディ「ちょっとニック、これはどういう事?」
ジュディ「仕事はどうしたのよ、ボゴ署長になんて言えば……」
ニック「あぁ、そのボゴ署長からなんだけど」
ニック「君に伝言を預かってる」スッ
ニック「やあ、よく来たね」
ジュディ「ちょっとニック、これはどういう事?」
ジュディ「仕事はどうしたのよ、ボゴ署長になんて言えば……」
ニック「あぁ、そのボゴ署長からなんだけど」
ニック「君に伝言を預かってる」スッ
25: 2016/05/16(月)22:57:22 ID:FpI
To ホップス巡査
いつもご苦労。
そして、誕生日おめでとう。
ワイルド巡査から君にサプライズパーティを用意したいという話を聞いてね。
私は仕事があるので参加はできないが、一枚噛ませてもらった。
私からのプレゼントは、君とワイルド巡査への今日一日の休暇だ。
たっぷりと楽しむがいい。
そして、すまなかったな。
以前私は、君やワイルド巡査に対して偏見の目を向けてしまった。
それは、ズートピアで起こる出来事を冷静に、公平に見なければならない警察官としてあるまじき事だった。
優劣、善悪。
動物としての価値は種で決まるものではない。
今更ながら、それを君たちに教わった。
このような形で申し訳ないが、何か返礼がしたかった。
言っておくが、君たちに休暇を与えた事を君たちの同僚は知らない。
何事もなかったかのように、明日からまた任務に励んでくれ。
From ボゴ
いつもご苦労。
そして、誕生日おめでとう。
ワイルド巡査から君にサプライズパーティを用意したいという話を聞いてね。
私は仕事があるので参加はできないが、一枚噛ませてもらった。
私からのプレゼントは、君とワイルド巡査への今日一日の休暇だ。
たっぷりと楽しむがいい。
そして、すまなかったな。
以前私は、君やワイルド巡査に対して偏見の目を向けてしまった。
それは、ズートピアで起こる出来事を冷静に、公平に見なければならない警察官としてあるまじき事だった。
優劣、善悪。
動物としての価値は種で決まるものではない。
今更ながら、それを君たちに教わった。
このような形で申し訳ないが、何か返礼がしたかった。
言っておくが、君たちに休暇を与えた事を君たちの同僚は知らない。
何事もなかったかのように、明日からまた任務に励んでくれ。
From ボゴ
26: 2016/05/16(月)22:58:17 ID:FpI
ジュディ「これ……」
ニック「そういう事だ」
ジュディ「騙したのね?……嘘つき」
ニック「……詐欺師、って呼んでくれない?」
ジュディ「逮捕されたい?」
ニック「それは御免被りたいね」
ジュディ「ふふっ……」グス
ニック「……はは」
ニック「そういう事だ」
ジュディ「騙したのね?……嘘つき」
ニック「……詐欺師、って呼んでくれない?」
ジュディ「逮捕されたい?」
ニック「それは御免被りたいね」
ジュディ「ふふっ……」グス
ニック「……はは」
27: 2016/05/16(月)22:59:24 ID:FpI
私の目からは自然と涙がこぼれていた。
嬉しいからなのか、安心したからなのか。
多分その、どちらも。
よくよく周りを見れば、クロウハウザーさんにフラッシュさん。
他にも、仲良くなった署員のみんなもいた。
彼らにもみくちゃにされながら席に着く。
しめやかな雰囲気なんて一瞬で吹っ飛んだ。
ケーキのロウソクを消して、美味しいものを食べて、みんなからプレゼントを貰って。
今日は本当に楽しかったし、嬉しかった。
でも、実は一番嬉しかったのはボゴ署長からの手紙。
ニックの事を認めて、信じて、協力してくれた。
偏った考えを持つ動物が減った事を、深く深く実感した出来事だったの。
私が以前犯した過ちが無かった事にはならない。
でも今の私と、それからニックの努力は無駄じゃなかった。
明日からもまた頑張っていけるわ。
一歩一歩、着実に。
前を向いて進んでいくの。
今できる事をするだけよ。
何度失敗したっていい。
だって諦めなければ
夢は叶うんだもの。
おしまい
嬉しいからなのか、安心したからなのか。
多分その、どちらも。
よくよく周りを見れば、クロウハウザーさんにフラッシュさん。
他にも、仲良くなった署員のみんなもいた。
彼らにもみくちゃにされながら席に着く。
しめやかな雰囲気なんて一瞬で吹っ飛んだ。
ケーキのロウソクを消して、美味しいものを食べて、みんなからプレゼントを貰って。
今日は本当に楽しかったし、嬉しかった。
でも、実は一番嬉しかったのはボゴ署長からの手紙。
ニックの事を認めて、信じて、協力してくれた。
偏った考えを持つ動物が減った事を、深く深く実感した出来事だったの。
私が以前犯した過ちが無かった事にはならない。
でも今の私と、それからニックの努力は無駄じゃなかった。
明日からもまた頑張っていけるわ。
一歩一歩、着実に。
前を向いて進んでいくの。
今できる事をするだけよ。
何度失敗したっていい。
だって諦めなければ
夢は叶うんだもの。
おしまい
28: 2016/05/16(月)23:01:17 ID:FpI
初SSだから色々ひどいと思うけど一瞬でも読んでくれたみんなありがとう
ニックかわいい
ニックかわいい
34: 2016/05/16(月)23:13:41 ID:FpI
おまけ
夜も更け始めて、皆帰っていった。
今いるのは、ニックと二人だけ。
聞きたいことや話したいことは山程あった。
でも、何から切り出せばいいかわからなくて黙ってしまって。
しばらくの沈黙のあと、先に切り出したのは彼だった。
夜も更け始めて、皆帰っていった。
今いるのは、ニックと二人だけ。
聞きたいことや話したいことは山程あった。
でも、何から切り出せばいいかわからなくて黙ってしまって。
しばらくの沈黙のあと、先に切り出したのは彼だった。
35: 2016/05/16(月)23:14:42 ID:FpI
ニック「なぁ、ニンジン」
ジュディ「……何?」
ニック「怒ったか?」
ジュディ「……ニンジンって呼んだ事に対してはね」
ニック「お前、うるさい隣人のいるボロアパートに住んでるって言ってたな」
ニック「……もしも、もしよかったらだけどな」
ニック「……ここで暮らさないか?」
ジュディ「え……」
ニック「ほら、この家は俺一人が住むには広いだろ?」
ニック「お前が越してきた所でちっとも狭くなんてない」
ニック「家賃も一軒分で済む」
ジュディ「……」
ニック「だから……」
ジュディ「……何?」
ニック「怒ったか?」
ジュディ「……ニンジンって呼んだ事に対してはね」
ニック「お前、うるさい隣人のいるボロアパートに住んでるって言ってたな」
ニック「……もしも、もしよかったらだけどな」
ニック「……ここで暮らさないか?」
ジュディ「え……」
ニック「ほら、この家は俺一人が住むには広いだろ?」
ニック「お前が越してきた所でちっとも狭くなんてない」
ニック「家賃も一軒分で済む」
ジュディ「……」
ニック「だから……」
36: 2016/05/16(月)23:15:31 ID:FpI
ニック「……違う、そうじゃないよな」
ニック「なぁジュディ」
ニック「俺のパートナーになって欲しい」
ニック「なぁジュディ」
ニック「俺のパートナーになって欲しい」
37: 2016/05/16(月)23:16:21 ID:FpI
ジュディ「……」
ニック「警察官としてのパートナーじゃない」
ニック「もっと……深い意味でのパートナーに」
ニック「俺は、お前に感謝しているんだ」
ニック「偏見や差別がある限り、何をどう頑張ったって意味が無い」
ニック「そうやってやさぐれていた俺に、希望を見せてくれた」
ニック「世界で初めてのウサギの警察官」
ニック「連続失踪事件を二日で解決」
ニック「おまけに俺まで世界で初めて、キツネの警察官になっちまった」
ジュディ「……」
ニック「未だ偏見や差別はなくなってはいない」
ニック「だが間違いなく減っていっているはずだ」
ニック「お前が、俺達が望む『楽園』はすぐそこまで来ているはずなんだ」
ニック「だからそれを実現したい」
ニック「お前の夢を、支えたい」
ニック「警察官としてのパートナーじゃない」
ニック「もっと……深い意味でのパートナーに」
ニック「俺は、お前に感謝しているんだ」
ニック「偏見や差別がある限り、何をどう頑張ったって意味が無い」
ニック「そうやってやさぐれていた俺に、希望を見せてくれた」
ニック「世界で初めてのウサギの警察官」
ニック「連続失踪事件を二日で解決」
ニック「おまけに俺まで世界で初めて、キツネの警察官になっちまった」
ジュディ「……」
ニック「未だ偏見や差別はなくなってはいない」
ニック「だが間違いなく減っていっているはずだ」
ニック「お前が、俺達が望む『楽園』はすぐそこまで来ているはずなんだ」
ニック「だからそれを実現したい」
ニック「お前の夢を、支えたい」
38: 2016/05/16(月)23:17:40 ID:FpI
終始そわそわとしながら彼は言った。
その赤い毛皮の内側が更に赤く色づいているのがわかる。
息を吐くように嘘を並べ立てていたキツネはもういない。
そこにいるのは、自分の本音を恥ずかしそうに吐き出すキツネだけだった。
それが嬉しくて、可笑しくて。
「……ぷっ」
その赤い毛皮の内側が更に赤く色づいているのがわかる。
息を吐くように嘘を並べ立てていたキツネはもういない。
そこにいるのは、自分の本音を恥ずかしそうに吐き出すキツネだけだった。
それが嬉しくて、可笑しくて。
「……ぷっ」
44: 2016/05/16(月)23:20:27 ID:FpI
ジュディ「……くっくっく」
ニック「……ジュディ?」
ジュディ「あっははははは」
ニック「なんだ、何がおかしい!」カァー
ジュディ「何がって……全部が」アハハハハ
ニック「……本当にお前は失礼なヤツだな」ムスッ
ジュディ「ごめんごめん……」グス
ジュディ「……ねぇニック、一つ聞いてもいい?」
ニック「何だよ……」
ジュディ「宝石店で何買おうとしてたの?」
ニック「見てたのか!?」カァー
ニック「……ジュディ?」
ジュディ「あっははははは」
ニック「なんだ、何がおかしい!」カァー
ジュディ「何がって……全部が」アハハハハ
ニック「……本当にお前は失礼なヤツだな」ムスッ
ジュディ「ごめんごめん……」グス
ジュディ「……ねぇニック、一つ聞いてもいい?」
ニック「何だよ……」
ジュディ「宝石店で何買おうとしてたの?」
ニック「見てたのか!?」カァー
45: 2016/05/16(月)23:21:45 ID:FpI
今となっては私の予想は大方当たっていた。
彼は今日のために指輪の一つも買おうとしたみたい。
でも、以前の悪行が祟って売ってもらえなかった。
そして泣く泣く諦め、今に至るというわけ。
その話を聞いて私はまたひとしきり笑ったわ。
そんな私を見て、彼は頭をポリポリと掻いた。
彼は今日のために指輪の一つも買おうとしたみたい。
でも、以前の悪行が祟って売ってもらえなかった。
そして泣く泣く諦め、今に至るというわけ。
その話を聞いて私はまたひとしきり笑ったわ。
そんな私を見て、彼は頭をポリポリと掻いた。
46: 2016/05/16(月)23:23:06 ID:FpI
ニック「まぁ、詐欺師も今日で引退だ」
ジュディ「当たり前よ、今度詐欺なんてしたら今度こそ逮捕するわ」
ジュディ「明日からは泊まり込みで監視させてもらうからね!」
ニック「……!」
ニック「……そうかい、好きにしな」
ジュディ「ええ、そうさせてもらうわ」
ジュディ「当たり前よ、今度詐欺なんてしたら今度こそ逮捕するわ」
ジュディ「明日からは泊まり込みで監視させてもらうからね!」
ニック「……!」
ニック「……そうかい、好きにしな」
ジュディ「ええ、そうさせてもらうわ」
47: 2016/05/16(月)23:24:10 ID:FpI
パーティの後片付けをする彼はどこか嬉しそうに見えた。
今日を最後に、彼は嘘つきを辞めるだろうか。
そうなったら、彼の最後の嘘は私のための嘘になるのね。
そんな事を考えながら、私も後片付けを手伝った。
私達なら、きっと何があっても乗り越えられる。
これほど相性のいい凸凹コンビは他にいないはずよね。
明日からは、どんどん良い日になっていく。
そんな確信があった。
もう何も心配することはないわ。
あ、でも当分枕元にはキツネ避けスプレーを置いておこうかな♪
本当におしまい
今日を最後に、彼は嘘つきを辞めるだろうか。
そうなったら、彼の最後の嘘は私のための嘘になるのね。
そんな事を考えながら、私も後片付けを手伝った。
私達なら、きっと何があっても乗り越えられる。
これほど相性のいい凸凹コンビは他にいないはずよね。
明日からは、どんどん良い日になっていく。
そんな確信があった。
もう何も心配することはないわ。
あ、でも当分枕元にはキツネ避けスプレーを置いておこうかな♪
本当におしまい
49: 2016/05/16(月)23:26:13 ID:FpI
ちなみに書いててすげー困ったのは食べ物の描写
草食うやつはいいとして肉食うヤツは何食ってんだ……
草食うやつはいいとして肉食うヤツは何食ってんだ……
50: 2016/05/16(月)23:26:48 ID:2kI
そこはズートピアの闇だから追求してはいけない
51: 2016/05/16(月)23:27:09 ID:2kI
乙 あったかくてよかったよ
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