1: ◆2CDIMkCmzU 2016/05/22(日) 14:10:04.52 ID:5RiVxedq0
短髪「彼の行動が全てを物語っているよ。
思い出して欲しい。彼はどこへ行ったと証言した?そう、事務室だ。
なぜ事務室へ行ったのか君は問うたが、それに対する答えが――」
眼鏡「カレンダーを見るため、だろ。前置きはいい。さっさと話を進めろ」
短髪「"雰囲気"を壊さないで欲しいな。こほん。
さて、その通り。カレンダーを見るためと彼は答えた。
ではここで率直な疑問が浮かび上がってくる。『なぜカレンダーを見る必要があったのか?』」
思い出して欲しい。彼はどこへ行ったと証言した?そう、事務室だ。
なぜ事務室へ行ったのか君は問うたが、それに対する答えが――」
眼鏡「カレンダーを見るため、だろ。前置きはいい。さっさと話を進めろ」
短髪「"雰囲気"を壊さないで欲しいな。こほん。
さて、その通り。カレンダーを見るためと彼は答えた。
ではここで率直な疑問が浮かび上がってくる。『なぜカレンダーを見る必要があったのか?』」
2: 2016/05/22(日) 14:18:15.15 ID:5RiVxedq0
スーツ「日付を確認するためです。それ以外のやましい考えなんて……」
短髪「そうだね。カレンダーってその年の日付確認のためにある、と言ってもおかしくはない」
眼鏡「一体全体、お前は何が言いたい?」
短髪「日付を確認するために事務室へ行った、という行動自体が『おかしい』んだよ。だって、彼、スマートフォンを持っているじゃないか。
スマホのアプリないしブラウザを起動して、日付を確認すれば良かったじゃないか。僕ならそうする」
スーツ「……電源が切れていたんです」
短髪「カレンダーを確認するために事務室に行ったのは、午前中と言っていた気がするんだけれど」
スーツ「充電するのを忘れて寝てしまって。会社に行く前にしようとしたんですが、そんな暇が無くて」
短髪「まあいいよ。分かった。彼の言うことを信じよう。
でもさ、カレンダーって本当に日付を確認するためだけにあるのかな?」
眼鏡「どういう意味だ?」
短髪「カレンダーはスケジュールの確認も出来ると思うんだ。大抵のカレンダーには一日毎に下に小さな枠線がある」
眼鏡「なるほど、つまり彼はカレンダーに書かれていた予定、あるいはメモ書きなのを見るために事務室に行ったと。
だがそれがどうやって犯行に繋がる?そんなもの、一々気にすることでもないだろう」
短髪「そうだね。カレンダーってその年の日付確認のためにある、と言ってもおかしくはない」
眼鏡「一体全体、お前は何が言いたい?」
短髪「日付を確認するために事務室へ行った、という行動自体が『おかしい』んだよ。だって、彼、スマートフォンを持っているじゃないか。
スマホのアプリないしブラウザを起動して、日付を確認すれば良かったじゃないか。僕ならそうする」
スーツ「……電源が切れていたんです」
短髪「カレンダーを確認するために事務室に行ったのは、午前中と言っていた気がするんだけれど」
スーツ「充電するのを忘れて寝てしまって。会社に行く前にしようとしたんですが、そんな暇が無くて」
短髪「まあいいよ。分かった。彼の言うことを信じよう。
でもさ、カレンダーって本当に日付を確認するためだけにあるのかな?」
眼鏡「どういう意味だ?」
短髪「カレンダーはスケジュールの確認も出来ると思うんだ。大抵のカレンダーには一日毎に下に小さな枠線がある」
眼鏡「なるほど、つまり彼はカレンダーに書かれていた予定、あるいはメモ書きなのを見るために事務室に行ったと。
だがそれがどうやって犯行に繋がる?そんなもの、一々気にすることでもないだろう」
3: 2016/05/22(日) 14:31:17.36 ID:5RiVxedq0
短髪「そこが僕の推理の中核なんだ。
いいかい、知っての通り被害者は支店長のデスク近くで発見された。
氏因は後頭部への強い打撃による脳出血」
スーツ「…………」
短髪「被害者は女性、29歳。前職は某中小企業の事務員。勤務2年目。
転職してきた身とはいえ、中々の愛嬌溢れる方で周りから愛しい存在として活躍。
無論、女性同士のいざこざはあったらしいけれど」
眼鏡「今更状況説明なんてどうでもいい。さっさと進めろ」
短髪「苛々するなって。あえて一から説明することで事実が浮かび上がってくることもあるんだから。
えー、そういうわけで、彼女は誰からも愛される存在でした。無論、彼からも」
スーツ「私はあくまで営業で――」
短髪「彼は彼女に好意を抱き、連絡先も交換した。君のスマホから彼女のアドレス、メールも確認済みだよ。
しかし最近はLINEやらなんやらでアプリ内で連絡を取る人が多いのに、君はメールで連絡を取り合っていたんだね。
良くも悪くも全時代的というか……。まあ、それはいい。
彼と彼女が親しい仲であったという証拠もここにある。この紙を見て欲しい。
これはタイムカード履歴とインターネット上で申請した勤務申請と休暇申請をまとめたものだ」
いいかい、知っての通り被害者は支店長のデスク近くで発見された。
氏因は後頭部への強い打撃による脳出血」
スーツ「…………」
短髪「被害者は女性、29歳。前職は某中小企業の事務員。勤務2年目。
転職してきた身とはいえ、中々の愛嬌溢れる方で周りから愛しい存在として活躍。
無論、女性同士のいざこざはあったらしいけれど」
眼鏡「今更状況説明なんてどうでもいい。さっさと進めろ」
短髪「苛々するなって。あえて一から説明することで事実が浮かび上がってくることもあるんだから。
えー、そういうわけで、彼女は誰からも愛される存在でした。無論、彼からも」
スーツ「私はあくまで営業で――」
短髪「彼は彼女に好意を抱き、連絡先も交換した。君のスマホから彼女のアドレス、メールも確認済みだよ。
しかし最近はLINEやらなんやらでアプリ内で連絡を取る人が多いのに、君はメールで連絡を取り合っていたんだね。
良くも悪くも全時代的というか……。まあ、それはいい。
彼と彼女が親しい仲であったという証拠もここにある。この紙を見て欲しい。
これはタイムカード履歴とインターネット上で申請した勤務申請と休暇申請をまとめたものだ」
4: 2016/05/22(日) 14:46:37.45 ID:5RiVxedq0
短髪「勤務申請と休暇申請を見て欲しい。彼は二週間前に有給を申請し、同じく被害者も申請をしている。
申請した曜日は火曜日だ。タイムカード履歴を見てみると、これまで彼と彼女が同時に休んだ、という
記録は残っていない。つまり……」
眼鏡「もったいぶるな。そもそもお前はメールの履歴を見ているんだろう。彼と被害者の女性がデートの約束をして、実際に行った。
それだけだろ?」
スーツ「そ、そうです。その通りです。私は彼女が好きでした。しかし、頃してはいません。
そもそもデートをしたからといって、それが何の証拠になるというんですか!」
短髪「彼女は支店長と結婚の約束をしていた」
スーツ「……っ」
短髪「恐らくそのときに彼女から話されていたんだ。皮肉にも、好意のデートが拒絶のデートになってしまった。
そして貴方は激動に駆られ、朝早く出勤して彼女を後ろから殴った。
しかしそのまま殴りかかるのは非常に危険だ。そこで利用したのがカレンダーだよ。
犯行当日、彼は新しく購入したカレンダーに赤ペンで大きく書いた。おおよそ、『この淫乱女が』とか、まあそういうのでしょう。
カレンダーの日付は1月のものにすれば、さらに彼女の注意を引き寄せる」
眼鏡「だが当日あったカレンダーは新しいものではなく……」
短髪「入れ替えトリックだよ。支店長デスク近くの壁に貼り付けておき、元々あったものは壁から外せばいい。
そして犯行が終わった際に元にあったカレンダーを直せばいい」
申請した曜日は火曜日だ。タイムカード履歴を見てみると、これまで彼と彼女が同時に休んだ、という
記録は残っていない。つまり……」
眼鏡「もったいぶるな。そもそもお前はメールの履歴を見ているんだろう。彼と被害者の女性がデートの約束をして、実際に行った。
それだけだろ?」
スーツ「そ、そうです。その通りです。私は彼女が好きでした。しかし、頃してはいません。
そもそもデートをしたからといって、それが何の証拠になるというんですか!」
短髪「彼女は支店長と結婚の約束をしていた」
スーツ「……っ」
短髪「恐らくそのときに彼女から話されていたんだ。皮肉にも、好意のデートが拒絶のデートになってしまった。
そして貴方は激動に駆られ、朝早く出勤して彼女を後ろから殴った。
しかしそのまま殴りかかるのは非常に危険だ。そこで利用したのがカレンダーだよ。
犯行当日、彼は新しく購入したカレンダーに赤ペンで大きく書いた。おおよそ、『この淫乱女が』とか、まあそういうのでしょう。
カレンダーの日付は1月のものにすれば、さらに彼女の注意を引き寄せる」
眼鏡「だが当日あったカレンダーは新しいものではなく……」
短髪「入れ替えトリックだよ。支店長デスク近くの壁に貼り付けておき、元々あったものは壁から外せばいい。
そして犯行が終わった際に元にあったカレンダーを直せばいい」
5: 2016/05/22(日) 14:52:09.82 ID:5RiVxedq0
スーツ「うっ……ううっ」
短髪「貴方ですね、彼女を頃したのは」
★
眼鏡「お疲れ」
短髪「しかしこれは酷くないかな?」
眼鏡「ああ、わざとこういう台詞回しにした」
短髪「君のことだからもっとねちっこい台詞とか入れてくると思ったんだけれども」
眼鏡「いかにもジャパニーズ風味といったところだろう?さて、それよりどう思った?」
短髪「酷いね。こんな推理小説は絶対に売れないよ。いや、売れたとしても二度と読みたくないよ」
眼鏡「特に証拠の後だしパレードがな」
短髪「そうそう。そういうの好きな作家多いよね。『へへへ、実はここにその証拠が……』って」
眼鏡「研究会では割とこういった作品が多いぞ。某大学で行われた劇は非常に甘酸っぱい想いだった」
短髪「『まあ素人だから』」
眼鏡「よし、今回のタイトルはそれにしよう」
一、まあ素人だから
完
短髪「貴方ですね、彼女を頃したのは」
★
眼鏡「お疲れ」
短髪「しかしこれは酷くないかな?」
眼鏡「ああ、わざとこういう台詞回しにした」
短髪「君のことだからもっとねちっこい台詞とか入れてくると思ったんだけれども」
眼鏡「いかにもジャパニーズ風味といったところだろう?さて、それよりどう思った?」
短髪「酷いね。こんな推理小説は絶対に売れないよ。いや、売れたとしても二度と読みたくないよ」
眼鏡「特に証拠の後だしパレードがな」
短髪「そうそう。そういうの好きな作家多いよね。『へへへ、実はここにその証拠が……』って」
眼鏡「研究会では割とこういった作品が多いぞ。某大学で行われた劇は非常に甘酸っぱい想いだった」
短髪「『まあ素人だから』」
眼鏡「よし、今回のタイトルはそれにしよう」
一、まあ素人だから
完
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