133: ◆.VOE29MKZs 2014/11/03(月) 01:42:38 ID:7fhZaS920
梓「ブルーリボン」

134: 2014/11/03(月) 01:43:14 ID:7fhZaS920
菫「お茶淹れました」

梓「ありがとう」

菫がティーカップをそっと差し出してくれた。
一口飲んでほっと一息。
これだけでもなんだか落ち着いた気分になれる。

純「はぁ~……生き返る……」

隣に座っている純が目を瞑ってそんな風にひとりごちた。
なんか毎日同じようなセリフを聞かされてる気がする……。
憂は憂でずっとにこにこ笑顔。
直はパソコンとにらめっこ。何を考えているのかは表情だけだとちょっとわからない。キーボードがカタカタ鳴っている。
私は菫が着席したのを確認してから、両手を合わせて。
けいおん! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

135: 2014/11/03(月) 01:45:57 ID:7fhZaS920
梓「じゃあ今日は……」

純「今日のお菓子なにー?」

むっ。

憂「今日はショートケーキだよ」

純「やったー!」

おのれ、純め……。

菫「いつもすいません……」

憂「ううん、気にしないで。家でお菓子作るの楽しいから!」

136: 2014/11/03(月) 01:46:22 ID:7fhZaS920
直「今度私にもお菓子の作り方を教えてください!」

あ、直が食い付いた。

憂「うん、いいよ! じゃあ今度わたしの家で作ろっか!」

直が作るお菓子かあ。一体どんなのに……って、

梓「練習しないと、練習!」

純「まあまあ。もう少しいいじゃん」

梓「で、でも」

純「梓だって今までの二年間ティータイムを楽しんでたんだからさ! それにモタモタしてるとケーキいただいちゃうよ~?」

梓「それはダメだよ!」

137: 2014/11/03(月) 01:48:07 ID:7fhZaS920
純「じゃあ食べちゃいなって!」

梓「うー……」

またいつものペースにのせられちゃった……。
先輩たちもそうだったけど、純にもうまくかわされてるような。
それにしても、憂の作ってくれたケーキは本当においしそう……私も教えてもらおうかな?

純「放課後はティータ~イム♪」

憂「え、新しい曲?」

純「違うよ、今即興で思いついたんだ!」

直「!!」カタカタカタカタ

純「おおっ!?」

菫「直ちゃん、何か新しいアイデアが思い浮かんだみたいですよ!」

138: 2014/11/03(月) 01:49:03 ID:7fhZaS920
純「え、もしかして私が原因……?」

憂「どんな音楽になるのかな~♪」

梓「…………」

わ、私がケーキを食べてる間にすごい展開が……。
直の作詞と作曲に期待しておこうっと。

梓「はぁ……」

それにしても、ここの雰囲気は変わらないなあ……。
紅茶と甘いお菓子の匂い。いつでも心があたたかくなる場所。
いつまでもこうしていたい、って思わせてくれる。
……先輩たちも、その前の先輩たちもそんな風に思ってたのかな?
今度昔の軽音部についてさわ子先生に聞いてみよう。

139: 2014/11/03(月) 01:49:45 ID:7fhZaS920
純「どうしたの、ため息なんてついちゃって~」

梓「えっ? 別に何でも……あっ」

純「?」

純の制服のリボンは赤色。私も憂も一緒の赤色。
菫と直は……

梓「そういえば青色なんだ」

純「……??」

梓「菫と直の制服のリボン、青色なんだね」

純「え、えー……」

私がそう言うと、純が呆れた表情を浮かべながら背もたれに体を預けた。

140: 2014/11/03(月) 01:50:38 ID:7fhZaS920
梓「な、なによ」

純「それ今さら言うことなの……?」

梓「だ、だって……急に先輩たちのこと思い出しちゃって……」

純「ああ、そっか。梓は先輩大好き人間だもんね!」

純がいたずらな笑みを浮かべながら私の方を見た。
いつの間にか、直もパソコン越しに少しだけ身を乗り出している。
心なしか、メガネの奥が光ってるような……。

直「そうなんですか?」

梓「また食い付いてきた!? でもまあ、もちろん大好きだよ」

直「なるほど」カタカタ

梓「なにが“なるほど”なの……。でもなんか不思議な感じ」

141: 2014/11/03(月) 01:51:49 ID:7fhZaS920
憂「わたしも梓ちゃんの言うことなんとなくわかるかも。お姉ちゃんたちと一緒の色だから」

梓「でしょ? 一つ上だった色が私たちの後輩の色になるなんて……」

純「うーん……ジャズ研で先輩後輩の入れ替わりを見ていた私にはいまいちわからないや……」

純が肩をすくめてから紅茶を一口飲んだ。
これは自分でもよくわかってない気持ち。
けど、青色のリボンは私にとっては特別な存在……。

菫「梓先輩にとってすごい先輩たちだったんですね……」

梓「すごいかどうかはわかんないけど……うん、すごかった、かな。後輩が私一人だけってのもあるかもしれないけどね」

純「さんざんかわいがってもらったんでしょー? 唯先輩に抱きついてもらったりしてさ」

直「抱きつく……?」

142: 2014/11/03(月) 01:52:20 ID:7fhZaS920
純「そう、部室でも廊下でもさ! こうギュ~って」

直「梓先輩がそんな……」

また変な誤解が混じりそうな気配。ここらで訂正しておかないと……。

梓「言っとくけど、私からは抱きついてないからね?」

直「本当にそうなんですか?」

うっ、なんでこうも疑われるの……。
直の分析で私はどういう風に見られてるのかな。ちょっと気になる。

直「でも、言われてみれば私たち憂先輩にもけっこう抱きつかれてるような」

菫「あ、私もそう思う」

憂「え、そうかな?」

143: 2014/11/03(月) 01:52:50 ID:7fhZaS920
純「もはや無自覚……私も澪先輩にかわいがられたかったなー……」

梓「憧れてたんだったらもっと早く入ってくれればよかったのに」

純「まっ、そこはね。大人な私として空気を読んだってわけだよ」

憂「結束力高そうだったもんね~」

周りから見れば本当にそう見えてたのかな……自分としてはあんまり実感がわかない。
でも……それってうれしいことだよね。
ちょっとだけ心があったまる。

144: 2014/11/03(月) 01:53:18 ID:7fhZaS920
菫「はあ~……先輩たちが卒業すれば、軽音部は私と直ちゃんの二人だけになっちゃいますね……しかも、音楽始めて一年未満の初心者……来年からはだいじょうぶかな……」

ああ……。

直「…………」

そっか。二人も不安だよね。
その気持ちはよくわかる。私も一人だったから。
先輩がいなくなる寂しさ、悲しさ、切なさ……

でもさ、

梓「菫には直がいるじゃない」

菫「え?」

梓「直には菫がいる。二人で力を合わせればきっと何とかなるよ!」

直「梓先輩……」

145: 2014/11/03(月) 01:54:12 ID:7fhZaS920
梓「それにさ、私たちもできるだけ応援するつもりだし、さわ子先生だって絶対に協力してくれるよ!」

純「そうだよ、スミーレ。私たちにできないことなんてないよ!」

憂「一生懸命やればきっと聴いてくれるみんなにも伝わるよ」

菫「純先輩……憂先輩……」

寂しいって思ってくれているってことは、なんだかんだでちゃんと先輩やれてるのかな。
そうだといいんだけどなあ。
二人ともわかばマーク付きの初心者なんだから……学祭が終わった後も先輩の私たちがしっかりリードしてあげないと!

だから、あとあと不安にならないように今しなくちゃいけないのはもちろん……

梓「そうときたら練習だよ、練習! のんびりするのももちろん大切だけど、それなりの練習もやっぱり大切!」

純「おお、なんか急に熱くなったね……」

146: 2014/11/03(月) 01:55:27 ID:7fhZaS920
直「やりましょう、先輩! 菫もやるよ!」

菫「直ちゃんまで!?」

直「来年は私たちが後輩を引っ張っていかないと」

菫「そ、そうだね。 ……うん、私もがんばるよ。直ちゃんと一緒に!」

憂「梓ちゃん、よかったね♪」

梓「え、何が?」

憂「ふふ、何でもないよ」

直「ところで、新しい曲作ったんですけど……」

純「作ってたの!?」

菫「また新しく覚えなきゃいけないことが……」

憂「心配しなくてもだいじょうぶ、だいじょうぶ!」

147: 2014/11/03(月) 01:56:13 ID:7fhZaS920
梓「やっぱりいいなあ……」

こうしていると、みんながとても愛おしく感じる……。
今のこの立場になってからそう思うことが増えた。
ずっと笑って楽しく過ごして……菫と直にもこの軽音部の伝統を引き継いでほしい。

先輩たちも同じ気持ちだったのかな。
今度電話して訊いてみよう。

梓「それじゃあいくよー!」

純憂菫直「おーっ!!!!」

リボンの色が変わっても、部員が入れ替わっても、
私たちの青春の色鮮やかさはいつまでも変わらない。


おわり!

引用: STAND BY ME けいおん!