1: 2010/01/14(木) 00:27:19.59 ID:tqA9Ab/T0

3: 2010/01/14(木) 00:33:37.83 ID:tqA9Ab/T0
私、佐天涙子は今日いつものように帰宅をする途中だった

「こんにちは」

誰かに声をかけられたその瞬間、後頭部に激しい痛みと共に目の前が真っ白になった―

7: 2010/01/14(木) 00:37:19.02 ID:tqA9Ab/T0
上条「はぁ・・・不幸だ・・・」

上条当麻は不幸な少年であった。なので「並大抵の不幸」に対しては、この愚痴一つで諦めが付く

―しかし、今彼を取り巻いている状況は明らかに「並大抵の不幸」で収まる範疇ではなかった

警官「兄ちゃんそう気を落としなさんな。妹さんに連絡して、今保護者が来るってよ。」

保護者・・・?まさかあの居候のシスターのことだろうか
あり得ない、というより信じて貰えないだろう。両親?いやいやまさか

警官「お、来たみたいだぞ」

8: 2010/01/14(木) 00:43:44.64 ID:tqA9Ab/T0
―信じられない人ではあったが、なるほど。今の自分の保護者としては一番妥当だろう

小萌「上条ちゃん!」
禁書「とーま!大丈夫!?」

上条「え!?先生!?」

驚きを隠せずに裏返った声が出る。しかし頭の中では納得している自分がいた

禁書「とーま、わたしm」
小萌「シ・・・妹ちゃんから上条ちゃんが警察に捕まったって聞いて、慌てて着たのよ!」

息も絶え絶えなところから、おそらく走ってきたのだろう。とりあえずここは警察所ではなく、ただの留置所である

警官「ええと・・・?妹さんかな・・・?」

上条「あ、ちょtt」

小萌「先生ですけれども?」

にっこりと微笑み、されども警官から目を離さない小萌は、まさしく蛙を見る蛇そのものであった

10: 2010/01/14(木) 00:50:19.16 ID:tqA9Ab/T0
小萌「で、上条ちゃんがその現場にいた・・・と、そう仰る訳ですね?」

こちらから彼女の顔は見えないが、警官の顔が時間の経過と共に蒼白していくのはよく分かる、そんな数十分であった

警官「は、はい!分かりました!彼の担任の先生なんですね!」

禁書「とーま!あの人具合悪そうだよ!」

その一言を契機に警官がいかにもな咳払いをし始める

警官「ゴホ!そ、そうなんですよ!私今風邪気味でしてね!移すといけないし、もう手続きは終わったから帰った方が良い!」

最後の力を振り絞るというのが適切な表現だろうか
半ば強制的に三人は留置所を後にし、とりあえずと近場のファミレスで話をしようと小萌の提案で足を運び始めた

11: 2010/01/14(木) 00:57:23.80 ID:tqA9Ab/T0


-同時刻

初春「はぁ・・・今日はつっかれたなぁ」
放課後すぐジャッチメントの仕事に追われ、そのまま直帰してよいとのことでテクテクと帰路についていた

T字路に差し掛かったその時、聞き覚えのある声がした

佐天「・・・る・・・」
初春「え?おっと!」

不意打ちではあったが、親友のスカート捲りを回避すべく後ろへ大きく後ずさる

―それが幸いした
おおよそ人間技とは思えない速さで腕を天から地へ下ろした彼女は、明らかに普段のそれとは違う雰囲気を出していた

15: 2010/01/14(木) 01:06:27.64 ID:tqA9Ab/T0
初春「え?え・・・?」

佐天「・・・はる・・・逃げ・・・Uryy・・・はる逃げ・・・」

親友の思いがけぬ姿と発する明確な殺意に足が竦む
かろうじて気を持つ事が出来たのは、それでも彼女が、いつも馬鹿をやるあの親友であるのが分かるからであった

・・・あぁ、夢かな。凄く生々しい夢。早く目を覚ましたいよ・・・

一歩も動けず、膝をつく。目の前の彼女が腕を首にゆっくりと震えながら、それでも少しずつ伸ばしてくる
途中、嫌々と首を振り、片腕を振り回しレンガ壁を、電柱をへし折りながらもゆっくりと確実に近づいてくる

夢だと盲信的に思いつつも、初春は氏を覚悟した

17: 2010/01/14(木) 01:14:55.23 ID:tqA9Ab/T0
「あー、お嬢さん。痛かったらごめんよ・・・」

佐天「ア・・・ガァッ・・・!?」

老人「ふーむ・・・もうこんな所にまで刺客を送りつけておったか・・・こりゃ老体に応えるのう・・・」

飄々とした口調、しかし力強く貫禄のある背中。
目の前の老人の手から伸びる、ツタのようなものが佐天を縛り付けていた

老人「さて困ったのう・・・この子についた肉の芽を取り除こうにも、ワシも動けんしのー」

くるっと首を回し、初春を見る。その顔は優しい顔であった・・・が、一瞬台無しになり、また戻った

老人「縞々・・・あ、いや!君、この辺りに特殊な能力を使える子って知らん?出来れば強力な拘束とか出来る可愛い子ちゃんとか」

え・・・?なにこれ・・・?映画?このお爺さん能力者なの・・・?
ぐるぐる回り、一向にまとまらない初春の頭は既にパンク寸前であり、その質問に答えることはできなかった

そこに高い声が響く

禁書「とーま!こもえ!こっちだよ!」

20: 2010/01/14(木) 01:21:38.90 ID:tqA9Ab/T0
上条「おい!どうしたんだ・・・って何だこのレンガの破片!?」
小萌「変質者にいたいけな女子が襲われかけてますよー!」

老人「いや、ちょっと・・・違うんじゃよ!誤解じゃ!」

その一瞬の油断に拘束が緩み、佐天の腕が初春に振り下ろされようとする

上条「危ない!」
老人「しまっ・・・!やむを得んッ!」

自らの身を省みず倒れ込む少女をかばう上条
勢いよく振り下ろされた手が、彼の頭を砕く寸前そのコースを変更し、彼の肩から背中を浅く裂くのみに留まった
そして佐天は酷い痙攣を起こし、ゆっくりと倒れ伏せた

老人「手荒なことはしたくなかったんじゃが・・・」

21: 2010/01/14(木) 01:31:14.37 ID:tqA9Ab/T0
―小萌宅

小萌「で、どうしてこの子を病院に連れて行ってはいけないんですか!」

ジョセフ「この子は病気や発狂した訳じゃない・・・これが原因なんじゃ」

ジョセフと名乗る謎の老人は先程気絶した佐天の額を指さす。そこには小さいが植物のつぼみのようなものがあった

初春「な、なにこれ・・・気持ち悪い」

禁書「・・・とうま。これ、ダメなものなんだよ」

普段の彼女を知る者からはおおよそ信じがたい面持ちで、彼女はそう呟く

ジョセフ「これは肉の芽、我がジョースター家の宿敵DIOの手によるものじゃ。」
ジョセフ「この芽を植えつけられた者はDIOの手先となり、そしてやがて・・・」

出来れば言いたく無い、聞いては行けないであろう雰囲気が伝わる。

小萌「・・・やがて、どうなるんですか?」

最年長であり、彼らを指導する立場故に彼女が聞く。聞かざるを得なかった

ジョセフ「・・・この娘は・・・数年のうちに脳を食いつくされ、氏んでしまうじゃろう・・・」

22: 2010/01/14(木) 01:41:44.64 ID:tqA9Ab/T0
初春「なっ・・・!」

息をのむ一同

小萌「・・・で、でも、あなたはこの治療法を御存じなんですよね?これだけ詳しいんですから」
ジョセフ「・・・治療法は・・・無い。この芽はまだ生きていて、摘出しようとすれば今度はそのものが寄生されていくじゃろう」

初春「そ、そんな・・・そんなのって・・・」
まるで世界の終わりだと言わんばかりに蒼白となった少女が虚ろに呟く

ジョセフ「対DIOの組織、スピードワゴン財団の施設であればある程度の延命は出来るじゃろう。じゃがそれ以上は・・・」

―それ以上は無理である。老人が力なく発言しようとした瞬間

上条「ふざけるな!!」

今まで黙っていた少年が突如声を荒げる。その両肩は怒りからか震えていた

上条「氏なせねぇ!」

魔法であれば彼の幻想頃しで打ち消す事が出来るのだ。彼は両手を佐天の額に押しあてる

ジョセフ「やめろ少年!言っただろう、その芽はまだ生きているのじゃ!」

上条「うおおおおおおおおおおおおお!!」

彼女の顔色がみるみるうちに良くなっていき、肉の芽が消えて行く

ジョセフ「な・・・それはまさか・・・こんな波紋を使えるものがおったとは・・・!」

23: 2010/01/14(木) 01:49:41.72 ID:tqA9Ab/T0
佐天の肉の芽は奇麗に消え去り、嘘のように何も残らない

禁書「とーま!凄いんだよ!」
小萌「上条ちゃんは馬鹿なだけじゃなかったんですよ!」
初春「ありがとうございます!ありがとうございます!」

全員が床が抜けんばかりに喜ぶ中、ジョセフは神妙な面持ちをしていた

ジョセフ「少年。君の名前を教えてはもらえんかね・・・?」

上条「上条・・・当麻・・・」

ジョセフ「上条・・・そうか・・・君がこの時代のジョジョなんだな・・・」

先程初春をかばって裂けた衣服から、彼の肩に不思議な痣が見えたのを、老人は見逃していなかった

ジョセフ「ワシは、君を探していたんじゃ」

26: 2010/01/14(木) 01:58:37.96 ID:tqA9Ab/T0
それからジョセフは様々な説明を始めた
ジョースター家とDIOの壮絶な争いの歴史、上条当麻の「幻想頃し」はジョナサンよりジョースター家に伝わる波紋(ジョセフから見ても非常に特異な波紋)であるということ
ジョセフはDIOを倒しにエジプトへ向かう途中であるということ。そして上条当麻には「ジョースター家」の血が薄く流れているということ

上条「何で俺にその血が?」

ジョセフ「い、いや!?ワシのせいじゃないよ!?・・・多分」

何故か慌てるジョセフに、それを冷ややかな目で見る小萌、首をかしげる少女二人と少年

ジョセフ「ゴホン!と、ともかく、遠縁とは言え我が一族の君に害が及ばぬ様にと、探しにこの学園都市にまで着たと言う訳じゃ!」

上条「・・・その件なんですけど」

上条「俺も・・・俺もエジプトへ連れて行って下さい!」

28: 2010/01/14(木) 02:08:29.87 ID:tqA9Ab/T0
強い意思の少年の発言は、もはやテコでも鬼でもビリビリが来ても動かない

―そう思われた

小萌「駄目ですよ上条ちゃん!」
禁書「またそういう危ない事は駄目なんだよ!」

上条「え、ちょっとお二人とも・・・?今上条さん凄く格好がついたつもりなんですけど・・・?」

小萌「大事な生徒をわざわざ危険を承知で旅立たせる教師がいますか!」
禁書「とーまがいなくなったら、誰が私のごはんをつくるんだよ!」

上条「二人とも聞いて欲しい・・・んです。もし、俺が原因で周りの誰かが傷つけられる事があると分かっていて、指をくわえることした出来ないのであれば」

上条「その方が俺は自分が殺されるよりも嫌なんだよ!・・・です」

小萌「上条ちゃん・・・」
禁書「とーま・・・」

少年の決意の固さを知り
やがてどちらからともなく―分かった―と小さく部屋に呟いた

30: 2010/01/14(木) 02:11:57.05 ID:tqA9Ab/T0
ジョセフ「それは・・・願っても無いことじゃが・・・氏ぬかもしれんぞ、それでも良いのか?」

上条「良いぜ・・・!そのDIOって奴の、何でも思い通りになるっていう幻想をぶち壊してやる!」
それに―と付け加える

上条「こうも言われちゃ、絶対氏ぬ訳にはいかないじゃないですか」

具体的な決めごとは改めて、という事で検査などの為に佐天をスピードワゴン財団の病院に運びその日は解散となった

32: 2010/01/14(木) 02:24:09.84 ID:tqA9Ab/T0
御坂美琴が佐天涙子が入院したと聞いたのはその翌日のことであった

彼女の身に何があったのか、親しい友人である初春に聞こうと声をかけようとしたが、彼女は口を濁すばかりで結局具体的な事は分からなかった

放課後、美琴はいつものように例の自動販売機へと足を運ぶ

「いつも行くから行くだけなんだから」と誰にでもなく独り言で良い訳をしながらである

美琴「あっ・・・!アイツ・・・とあれは初春・・・?」

二人の会話する姿なんて今まで見たことがなく、そして初春のあの態度を見るに恐らく佐天もアイツ絡みなのだろう
美琴はそう直感し、「佐天の仇!」という口実と『女の子を見れば誰これ構わず手を出す不届き者』という心の声を胸に、気づかれぬ様に今にも襲いかかる用意をする

初春「やっぱり危険です!エジプトなんて行かないでください!氏んじゃうかもしれないんですよ!」

―え?エジプトって何の話?それよりも氏ぬって・・・

33: 2010/01/14(木) 02:31:09.70 ID:tqA9Ab/T0
二人は何事かの会話を続け、やがて初春が両手で顔を覆い走り出す
危うく見つかりそうになったが、彼女には美琴が見えて居なかったのだろう

美琴「ちょっとアンタ!」
我慢の限界である。先程の怒りと大事な友人を泣かされ、病院送りにさせられた(であろう)以上、これ以上我慢する道理はない

上条「うおっ、ビリビリ!」

美琴「説明しなさいよ・・・!」

上条「え、えーとそのですね。実は上条さんにもさっぱr」

美琴「説明しなさいよッ!!」

静かな通りに彼女の怒号が響いた。両手をぎゅっと結び、その目は真剣そのものであった

34: 2010/01/14(木) 02:41:49.30 ID:tqA9Ab/T0
上条当麻は諦めた

恐らくこれはもう誤魔化しても無駄だろう
のらりくらりと避け続けていても、今の彼女はいつまでも自分を追いかけ続けることは明白であった
それによくよく考えるに、彼女に事実を一切合切説明をすれば、来るかもしれないDIOの手先から都市を守って貰えるかもしれない。
それに、説明をした所で不安を煽る事ことはあれど、彼女の身が危険になるわけじゃない。

「というわけで、俺はエジプトへ行くんだ」
全ての説明を終えると、ビリビリはぽかんと口を開け放心していた

美琴「え・・・?嘘だよね・・・?」

上条「嘘じゃない」
真剣な面持ちでそう告げる

美琴「・・・アタシの・・・そう、アタシとの勝負は・・・」

上条「悪いな、御坂」
心配をかけまいと自然に精一杯の作り笑いをし、そう答える

美琴は下を向き、全速力でその場を走り去っていった

36: 2010/01/14(木) 02:53:37.04 ID:tqA9Ab/T0
三日後

上条「んー・・・良い朝だな」

今日はジョセフ達がここに迎えに来る日。そしてエジプトへ旅立つ日でもある
自然体でいようといつものように精一杯寝た
清々しい朝日、小鳥のさえずり、居候の幸せそうな寝顔、表から聞こえてくる爆音、黄色い悲鳴、窓から見える逃げ惑う人々

・・・爆音?悲鳴?
地震か?火事か?慌てて表へ飛び出す

美琴「吹っ飛べェェェッ!」

初春「や、やめて下さい美琴さんー!」

ワーワー ワーワー ワーワー

・・・何これ?
ぽかんと口をあけて目の前の地獄絵図を見て居ると、地獄の主がこちらに気づいた

美琴「おはよう!」
さわやかな笑顔をこちらに向け、手は休まず車を破壊しつづけ、足元には気絶をした財団関係者が転がっていた

37: 2010/01/14(木) 03:05:04.56 ID:tqA9Ab/T0
初春「すみませんすみませんすみませんすみません!」

先程から何度目だろうか、彼女が上条に、ジョセフに、そして財団メンバーに平謝りを続けている

ジョセフ「・・・で、そちらのお嬢さんは彼氏が止められないのなら、ワシらを止めようと思った訳か・・・いたた」

美琴「か、彼氏なんかじゃないわよ!」
―違う、そこじゃないだろ!と突っ込みを入れかけたが、旅立つ前に氏にたくないので上条は諦めた

上条「・・・どうしましょう。確か財団の飛行機で行く予定だったんですよね・・・でもこれじゃ・・・」

美琴「中止よ中止!アタシとの勝負を捨ててそんなことさせられないわ!」
初春「え、美琴さんは上条さんが危kヒャアアアアァツ!なっ、なんでもないです!」

突如身をよじり言葉にならない声を出す初春
彼女の腰を美琴が触れて居たことには誰も気づいていない

ジョセフ「うーむ・・・悪いが中止とは言わなくとも、少し延期にはなりそうじゃな・・・」

老人は左腕を持ちあげると、腕の途中からあり得ない方向に垂れ下がった手を見せた

39: 2010/01/14(木) 03:16:15.06 ID:tqA9Ab/T0
美琴「え・・・?ちょっと嘘・・・っ」

ジョセフの折れた左腕を見た美琴はみるみる内に蒼ざめて行く
―どうしよう・・・ここまでやるつもりじゃなかったのに・・・

初春から出発の日時と場所を聞き出した時は、そいつらを「追い払ってやる」程度の考えだった
しかし、まさかこれほどまでの重傷者を出してしまうとは思っていなかったし、手加減もしたつもりだった
―どうしよう・・・大変なことをしちゃった・・・!

ジョセフ「いくら義手とは言え、すぐ直せるものでもないし、かといって片手で奴らとやり合うのは無理じゃわい」
残った右手で髭を撫でながら呟く。軽いパニックに陥った美琴にそれは聞こえていなかった

上条「じゃ、じゃあ俺だけでも!」
ジョセフ「流石に君だけでは心もとないのう。戦える力がないと・・・な」
言葉につまる上条「で、でもっ!一刻も早く行きたいんです!」などと食い下がるが老人は許可を渋る

美琴「あっ!あのっ!私・・・」

美琴「私もエジプトに連れて行って下さい!」
人一倍責任感の強い彼女の頭の中にはもう、邪魔をするなんて出来なかった
しかし上条を危険に晒すわけにはいかない

―ならば、自分も一緒に行く事がベストである。そう判断した

41: 2010/01/14(木) 03:28:47.44 ID:tqA9Ab/T0
ジョセフ「・・・お嬢ちゃん、何を言っているのか・・・分かっているのかね?」
普段の態度からは想像もつかぬ真剣そのものに問うジョセフ

美琴「・・・不意打ちとはいえ、ここにいる全員に勝ったアタシを信じられないのかしら?」

ふむぅとうなずくジョセフ。確かに彼女の戦闘力は非常に優れているという証明はされた
いきなり可愛い少女に声をかけられ、不意打ちでいの一番に張り倒されたジョセフではあるが、本気の真っ向勝負で戦って勝てるかは怪しい

ジョセフ「しかしのう・・・健全な若い男女が二人っきりで旅というのも・・・」
美琴「え・・・っ!あっ・・・その、仕方なくだから仕方ないのよ!そうよ!」
しどろもどろに答える美琴に、流石に上条も事の意味を理解したのか慌てている

禁書「二人っきりじゃないんだよ!」
―いつのまに起きたのか。いや今までの騒ぎの中で起きなかったのが凄いというべきか
禁書「私もいくんだよ!とうまと短髪だけで旅なんてさせないんだよ!」

互いの目を見、火花を散らす少女達。

『旅の途中、この二人の喧嘩をなだめるのは自分なんだろうな』そんな事を考えると目頭が熱くなってくる
上条「ふ、不幸だ・・・」

結局飛行機の手配もあり、小萌が何とかしてくれる当麻はともかく美琴は連絡無しに長期休学をしては困るという理由で出発は翌日の同じ時間になった

43: 2010/01/14(木) 03:44:56.14 ID:tqA9Ab/T0
上条「それじゃあ先生、行ってきます」
禁書「こもえーいってくるんだよー!」
美琴「大船に乗った気でいてくださいよ!」

初春「みなさんどうか御無事で!」
ジョセフ「うむ、定期的に連絡をするのを忘れずにな」
財団「カイロ行きの飛行機ですからね!お間違えないように!」
小萌「・・・行ってらっしゃいー・・・」

折角の旅立ちの送迎なのだから、もっと明るく送り出して欲しいものである
お気楽な上条の考えとは裏腹に、小萌の心は複雑であった

―何で昨日出発のはずなのにまだ居るのか
―財団関係者及びジョセフまでもが見送るこちら側にいるのはどういうことなのか
―上条ちゃんと何故か少女二人だけというのは道徳的にどうなのか
―シスターちゃんはうちで預かるという話はどこへ流れて行ったのか

そして
―どうか彼らが無事に帰って来てくれますように


彼らが飛行機に搭乗し姿が見えなくなるまで、彼女はずっとそう祈っていた

45: 2010/01/14(木) 04:03:35.27 ID:tqA9Ab/T0
カイロ行き飛行機内

・・・誰だ・・・?誰かが俺を見ている・・・
凍てつくような視線を感じ、上条は目を覚ます。

禁書「うーん・・・もうないのぉ・・・むにゃ・・・」
窓際の席ではしゃぎ過ぎたのか、左手に座る少女が意味不明な寝言をうちながら眠っている

美琴「ん、んんん・・・?」
目を擦りながら、まだ寝ぼけて居るのか上条の右肩にもたれかかりながら再び夢の世界に向かおうとする

両手に華、そういえば聞こえはいいが華がラフレシアなどの食虫植物の場合はどういう意味になるのか

―なかなか哲学的なんじゃないか俺?
軽く自嘲しつつ次第に頭を覚醒させていく
意外なことに、二人の少女は空港からここまで全く喧嘩をせず、それどころか座る座席も非常に速やかに決めた

曰く、窓際から景色を堪能したいという少女
曰く、高所からの景色が好きではないという少女
必然的に自分が中央になるのだが、全くもって問題ない。そう、問題が起きなければ問題はないのだ

まるで初めから打ち合わせていたかのような手際の良さに加え、機内食にあるミートボールを美琴が禁書にあげるなど非常に仲良しである
上条は自分の杞憂であったと胸を撫で下ろしていた

46: 2010/01/14(木) 04:19:24.78 ID:tqA9Ab/T0
美琴「んんっ・・・!」
嫌な夢でも見て居るのだろうか、突如美琴がビクッっと身体を揺らす

するとすぐさま機内アナウンスが響く
内容を大雑把に説明すると、計器に軽微の異常が見られた為、一度最寄りの空港で着陸し点検を行うとのことである

幸い大半の乗客は眠っており騒ぎやパニックを起こすことはなかった
が、美琴は心なしか青白い顔をしている

上条「どうした?」
美琴「・・・ごめん、多分これアタシ原因だわ・・・」

気を緩めてしまい、やや強い電磁波が出てしまったそうだ。顔が青白いのも帯電の影響なのだろうか

肩と肩が触れ合う―突如上条に電流走る

上条「な、なぁビリビリ」
美琴「・・・何よ」
若干棘のある返し方。ひょっとして原因は自分なのだろうか。しかし乗客の命がかかってる以上、ここで退くわけにもいかない

上条「ほれ」
彼女の手に自分の右手を重ねる

美琴「」
上条「こうすれば電磁波も出ないんじゃないか?・・・どうした?」

美琴「そそそそそそ、そうね!そうだわ!その通りね!仕方ないわよね!」

―やはり上条さんの予想通りですよ!
帯電もなくなったお陰か青白く見えたビリビリの顔色も赤みを取り戻しつつあることに満足をする上条であった

47: 2010/01/14(木) 04:30:53.71 ID:tqA9Ab/T0
御坂美琴は今とても幸せであった
今の彼女にかかれば、後ろの座席から聞こえてくるオッサンのいびきも、そこで寝て居るシスターの寝言も何もかもが好きになれた

ほら!後ろのいびきも寝言もクワガタもアタシを祝福してるわ!
ブォン                      ブォン
    ブォン

ほら!ウフフフフ、アハハハハ

上条「おい!しっかりしろ!」
彼の声で我に変える。繋いでいた手もいつのまにやら離している

美琴「な、なななによ!」
上条「飛行機内にクワガタムシが見えるのは、はたして上条さんの錯覚なんでしょうかね」

・・・確かにクワガタなんているわけがない。とするとあれは恐らくジョセフから聞いた能力『スタンド』

二人『敵か(ね)!』

48: 2010/01/14(木) 04:44:06.21 ID:tqA9Ab/T0
DIO様からの命令は「ジョースターとその仲間の抹殺」である
目の前の少年、上条当麻は既にターゲットとして認識している。だが後の少女は全く知らない

―ジョセフはどうした?
クワガタ型のスタンド、『灰の塔(タワーオブグレー)』は肩透かしを食らうと同時に、この仕事のチョロさを再認識した
恐らく二人の少女も何かしらの能力者であろう。だが、波紋の使い手であり、歴戦の猛者である一番の強敵ジョセフさえいなければ何とでもなる

上条「また計器を狂わすなよ!」
美琴「きちんと加減するってのっ!」

ボーイッシュな少女が懐から何かを投げつける
ピッチングマシーンのへなちょこストレートといったところか、飛行機の心配をしてか威力も無く数で勝負といったところなのだろうか

全ての弾を回避し、少女の口の目の前に一瞬で到着する
―このままこの娘の舌を切り取ってやったら、どんなにか面白いだろうか!

こちらの意図に気付いたのか隣の少年が、少女の舌に向け打ち出した口針の軌道上に手を差し出す
―馬鹿め!スタンドでもない肉体なんぞ貫通して舌を頂くだけだ!

49: 2010/01/14(木) 04:54:34.33 ID:tqA9Ab/T0
上条「うっぐぅ!」

敵が口から吐き出したチェーン付き針のような者は、自分の口の中に到達する前に彼の手によって止められた
しかし、上条の手に針は突き刺さり、そこから真っ赤な血を滴らせていた

―そこで美琴はキれた

何かを感じ取ったのか、一気に距離を取るクワガタにコインを向ける

塔「ファハハハハ!またか!例え1㎝の距離から10丁の拳銃で撃たれたとしても俺は殺せんよ!」
まぁ当たらないけどな!と笑いながら付け足す

美琴「うるさい、黙れ」
異様な迫力に圧され、塔に恐怖が湧きあがる。恐怖?馬鹿な、例え能力者の攻撃だろうがあんなもの当たらなければ何でもない!

美琴「消えろ」
指先がわずかに動く、今だ!これをかわして前に突っ込めば今度こそ俺の勝ちィィィッ!

50: 2010/01/14(木) 05:10:26.18 ID:tqA9Ab/T0
美琴「へぇ、昆虫って頭だけでも生きられるのね」

少女が冷ややかに告げる。それが遺言か?
・・・?このアマどんどんデカくなっていってねぇか・・・!?

違う!俺が!俺の下半身がァァァッ!!
美琴「バイ、バイ」

おはじきで遊ぶかのように、頭だけとなったタワーオブグレーに最後の一撃が落とされた

52: 2010/01/14(木) 06:08:47.41 ID:tqA9Ab/T0
上条「えー、コホン。御坂美琴さん?」

美琴「・・・ハイ」

上条「確かにね、非常事態ではありましたし、上条さんもあまり強く言う気はございません」

美琴「・・・ハイ」

上条「でもね、かといって飛行機に穴二つも開けちゃうのは流石にマズいと思うわけなんですよ」

美琴「・・・ハイ」

上条「添乗員の皆々様の素晴らしいご活躍により、私共は全員香港沖に不時着という形になったわけですが」

確かにあの時彼女が敵を倒さなかったら、あの場でリタイアになっていただろう
しかし、他の乗客を危険にさらしたのは事実であり、飛んでいる飛行機に穴を開けた事を見過ごす訳にもいかない

上条「でもまぁそのなんだ、ありがとうな」

とは言え、返事の度に小さく縮こまって見える美琴をあまり攻めるのは可哀想だとは思う為適当に切りあげる
乗客を危険にさらしたとは言え、彼女は少なくとも彼女なりに自分たちを救ってくれたのだ

そもそも彼女を責めるのは筋違いなのだ。攻められるべきは、あの戦いで何もしていない自分の無力さである
格好良いことを言うだけで、あの中で自分に何が出来たというのであろうか
自らの不甲斐無さに唇を強く噛む

禁書「とうまー、お腹すいたよー・・・」

彼女の気の抜けた言葉も、すっかり消沈している今の二人には救いであった
もしかしたら彼女なりの気遣いだったのかもしれない

53: 2010/01/14(木) 06:31:27.70 ID:tqA9Ab/T0
レストラン

禁書「とうま!とうまこれ凄くおいしいんだよ!」

上条「はいはい分かったから落ちついて食えよ」

上条当麻は貧乏学生である。金欠の理由は働かない居候が主だった理由であるが、その為か彼女にとってレストランお腹いっぱい食べるなんて嘘のようであった
その彼に「好きなもん食っていいぞ」との許可が出たのだ。
本人曰く「メニューの最初から最後まで全部を注文するのが夢」とのことで、同居人の上条も初めて聞く夢である

美琴「・・・これ、支払い大丈夫なの・・・?」
上条「ああ、任せておけよ!ジョセフさんからしっかり旅行資金を預かって・・・」

急に全身を叩き始める少年の姿に、御坂美琴は最悪の事態を頭に巡らせる

美琴「ねぇ、あんたもしかして・・・」
上条「ふ、不幸だ・・・!」

禁書「あ、このエビとアヒルとフカのヒレとキノコの料理あと10皿持ってきて欲しいんだよ!」

上条&美琴「ダメーッ!!」

禁書「えぇえええ!?酷いよ二人とも!」

上条「と、とにかく財布捜してくる!」
そう言って慌てて立ち上がりかける上条を止める

美琴「アンタが行ったらまた厄介事拾ってくるだけでしょ!不時着した時に届いてないかアタシが見てくるわ!」
大金の入った財布の落し物が拾われている可能性もある。しかし二人はその可能性だけには頑なに目を背け続けた

55: 2010/01/14(木) 06:51:46.66 ID:tqA9Ab/T0
美琴が店を出てから数十分、既に全ての料理を平らげた禁書はお皿が下げられたテーブルに突っ伏していた

禁書「お腹すいたんだよー。ねぇとうまー、もうちょっとだけ・・・」
上条「駄目だ!」
禁書「あと5・・・6・・・8・・・10皿だけでもいいから!」
上条「何で増えて行くんだよ!どっちにしろダメ!」

このようなやり取りを何度か繰り返していると、見知らぬ男に話しかけられた
男「あの・・・ちょっとよろしいですか?」

上条「え、えぇ?」

男「実は私フランスから来た旅行者なんですが、漢字が難しくてメニューがわかりません。助けて欲しいのですが・・・」

上条は弱ってしまう。自分だって香港のメニューなんて読めない。暴食シスターが片っぱしから頼んでいたのをつまんでいただけなのだ

上条「あ、コイツなら分かりますよ!」
全部食べて居て、お前の記憶力なら余裕だろ?たまには協力してくれよと、居候に助言を請う

禁書「だめなんだよとうま」
上条「へあ?」

56: 2010/01/14(木) 07:07:16.59 ID:tqA9Ab/T0
禁書「今おなか減ってるから、メニューなんて見たら氏んじゃうんだよ」

男「ンッー?どういうことですか?」

上条「いやお恥ずかしい話、この子がまだ食べ足りないって言ってるんですが、今ちょっとお金忘れて着ちゃって、連れが取りに行ってるんです・・・」
本当に恥ずかしい話以外の何物でもなく、次第に声が尻すぼみになるのを感じつつ答える

男「ハッハッハ!お嬢さん、もし私にメニューを教えて頂けるのでしたら今まで食べたのも含めて全部ごちそうしますよ」
愉快そうにそう答える。テーブルの上に皿がなくなったから知らないだろうが、それは自殺行為である

上条「いやそんな事を見ず知らずの方n」
禁書「何でも教えてあげるんだよ!一緒に食べるんだよ!」

まるで水を得た魚かの如く目に輝きが戻る少女。その身体のどこにあの料理が入ったのだろうか

男「おお、ありがとうお嬢さん。ではエビとアヒルと・・・」
禁書「これなんだよ!あとこれも美味しいんだよ!」
男「ははは、じゃあそれも頼みましょうか」

57: 2010/01/14(木) 07:14:10.64 ID:tqA9Ab/T0
上条「あの、本当にお気になさらず結構ですよ!もうすぐ連れが戻ってきますから大丈夫ですよ!」
今ならまだ間に合う。この人を救えるのだ、上条は自分でもよくわからない使命感に駆られ、男を止める

男「ノーノー、約束を守らないなんて騎士の名折れです」
―それに、と男は付け加える
男「私はメニューを、あなたがたは勘定を、困った時はお互い様でしょう?ましてやこんなに可愛らしいシスターでしたら喜んで」
その「可愛らしいシスター」は口いっぱいに料理を詰め込み至福としか言い表せない表情をしていた

・・・すまない・・・!本当にすまない・・・!俺では救えなかったッ!
上条当麻はこの男の為に、心の中で泣いた

58: 2010/01/14(木) 07:31:01.84 ID:tqA9Ab/T0
男の名前はJ・P・ポルナレフ(ジャン・ピエール・ポルナレフ)と言う
DIOとの戦いに敗れ、哀れにも手先となったアヴェンジャーである

思い出せないが、彼にはとても大切なことがあった
目の前で幸せそうな顔をしている少女と、もしかすると何か関係があるのかもしれない

だが今の彼にあるのは『ジョースター家とその仲間の抹殺』という命令のみである

彼は根っからの騎士であり、誇り高き精神は肉の芽に支配された今も失われていなかった
挨拶程度はともかく、不意打ちなどはしない。正々堂々と宣戦をし、相手を下すことを良しとしており、そしてそれを実行する自信も技量もあった

59: 2010/01/14(木) 07:38:38.27 ID:tqA9Ab/T0
ポルナレフ「それにしてもよくこさえてありますなー」
ジョースター家の人間とDIOには星型の痣がある
星型に調理された人参を用い、「同じ形をした痣をもつ友人が居るのだ」とでも伝えてやれば分かるだろうか

そう思い人参に手を伸ばそうとした矢先
禁書「そうだね、本当においしいんだよー!」
ひょいぱくと人参を目の前で少女に食べられてしまう
目的を失ったポルナレフの箸は仕方なくそのまま伸ばして行きティエンチー(蛙の丸焼き)に手をつける

・・・まぁ良い、他にもあるさ

結局男は考えた矢先から少女に料理を取られ、その度に引っ込みがつかない箸で食べ物を掴むのであった

ポルナレフ「・・・君たちに言いたい事がある。私はDI」
禁書「ねーねー!このデザートも食べてもいいのかな!」

―少女がデザートの杏仁豆腐を食べ終わるまで言うに言えなかった

60: 2010/01/14(木) 07:53:59.75 ID:tqA9Ab/T0
ポルナレフ「・・・私はDIOの手先で、君たちを始末しに来たのだ」

上条「そ、そんな・・・!また不幸だ・・・!」
主な理由は二つあり、片方がこんなに良い人が敵であるということ
そしてもう片方は、敵ならば勘定をしてくれるわけがないということであった

ポルナレフ「フフ・・・ここで戦っても良いが、それは君たちには都合が悪いだろう?」
―確かにその通りである。周囲の人間を巻き込んでしまうことは避けたいし、主力の美琴が居ない以上戦闘は得策ではない

ポルナレフ「先に行きたまえ、場所はそうだな・・・タイガーバームガーデンでの決闘はどうかな・・・?」

上条「・・・良いだろう」
少しでも時間を稼げるのであれば好都合である。禁書を連れて店を後にする

ポルナレフ「フフ・・・君、ここのお会計を頼めるかな?」

後にポルナレフは語る
―香港のとあるレストランは旨い飯の後に臭い飯が食える最低の店だ―

68: 2010/01/14(木) 12:59:33.16 ID:tqA9Ab/T0
まさか保守があるとは

美琴「・・・で、それを信じろっていうのかしら?」
戻ってきた美琴が呆れたように聞く
無理もない話だ、DIOの手下を名乗る親切な男に食事を御馳走して貰ったなどとどうして信じられようか

禁書「本当なんだよ!良い人だったんだよ!」
上条「敵とはいえ悪い事しちゃったな・・・」

ポルナレフがあまりにも遅いのでこっそりと戻って来てみた所、丁度レストランの前から強制連行されている状態だった
何の騒ぎかと戻ってきた美琴とそこではち合わせ、今に至るというわけだ

美琴「それよりも、結局お金は見つからなかったし」
これからどうしようか、と肩を落とす彼女に上条は告げる

上条「一応さっきジョセフさんに連絡をしたんだけど、こっちに2.3日も滞在すれば人を送ってくれるってさ」
この明るい知らせに一番喜んだのは当の本人であることは言うまでもなかった

69: 2010/01/14(木) 13:16:35.73 ID:tqA9Ab/T0
2.3日というのは短いようでありとても長い時間であった

上条「えぇ、そうですか。分かりました、じゃあこれからその船でシンガポールに向かいます」

本当なら一刻も早くDIOの元へ向かいたかったが、公共機関も利用出来ない徒歩と比べたらこの数日を待つ方が結果的には速く着く

美琴「はぁ・・・余計な所で時間を食ったわね」
とは言いつつもさほど不満は無さそうな様子の皮肉

上条「深く反省しております・・・」
しかし上条の精神にダメージを負わせるには十分であった

70: 2010/01/14(木) 13:29:19.47 ID:tqA9Ab/T0
船上

美琴「んんん・・・っ!潮風が気持ちいいわねー」
大きく息を吸って、吐いて大きく伸び

禁書「うー・・・気持ち悪いんだよ・・・」
対象にこちらはシートで横になったまま動かない

上条「ありがとうございます、自分たちを乗せてくれて」
船長「なぁに、ワシらも財団に雇われているだけだからね。これも仕事さ」

上条の感謝に、いかにもな海の男な風体の男が答える
見た目とは裏腹になかなか気さくな人であった

―このまま何も無いと良いんだけどな
不幸を呼び寄せる体質の彼がそう思ったからなのか、その幻想は簡単に打ち壊されてしまう

船員「密航者だ!」「そっちへ行ったぞ!」「捕まえろ!」「どこへ行った!?」
急に慌ただしくなる船内。その騒ぎはこちらに次第に近寄って来て

「おー!ねー!えー!さー!まぁぁぁぁぁああ!!」

73: 2010/01/14(木) 16:01:35.37 ID:tqA9Ab/T0
あ、そろそろバイトの時間だし、読んでる人いないかなと思ってた

―遡る事二日前

白井黒子は非常に機嫌が悪かった
美琴「黒子アタシちょっとしばらく留守にするわ!学校にはもう伝えてあるから!」

と、心から慕うお姉さまが有無を言わさぬまま、そのまま出かけていったっきり帰ってこないのである

翌日学校では「御坂美琴がスピードワゴン財団にスカウトされ、その協力の為にしばらく休学する」と言う事を聞いた
スピードワゴン財団いえば、世界的に有名な大会社である。そこに目をつけられるとは流石お姉さま

黒子「・・・でも、お姉さまの性格から言ってそんなのに喜んで行くわけありませんし、あれと無関係とは思えませんの」


先日の佐天が入院したという話とおそらく何か繋がりがあるに違いない

75: 2010/01/14(木) 16:07:03.00 ID:tqA9Ab/T0
入院先を黒子は知らなかったが、初春がここ数日見舞いに行っているのは明白である
日ごろの弛まぬ鍛錬による、素人とは思えないストーキング技術によって入院先を突き止める

ロビーで友人だと伝え、佐天の病室を聞く。部屋のドアに耳を当てると佐天と初春が何やら話している

佐天「そっか・・・んー、私もそろそろ退院出来るらしいし、上条さんに何かお礼出来ないかなぁ」
―やはりこの件にはあの男が関係していましたのね・・・もっと何か・・・

初春「今頃もう三人ともエジプトについてるのかなぁ」
・・・!?

黒子「ちょっとそこのお二人」
無意識のうちに病室に入っていたことも、目の前の少女二人が驚きの表情を見せるのも関係なかった

黒子「今のお話、詳しくお話していただけませんこと?」
―丁寧な物言いではあるが、決して有無を言わせるつもりがないのは明らかであった

行ってきます。残ってたら書きたいけど、無理だろうな

104: 2010/01/14(木) 23:25:03.86 ID:tqA9Ab/T0
黒子「はぁ、なるほど・・・」

初春の説明が終わり、一息ついて頭を整理をする

佐天が通り魔に襲われ気絶していた所に初春が通りがかり、あわやという所で類人猿に助けられた事
通り魔は逃げたが、そいつとその一味を追うスピードワゴン財団の要請のもと、あの男がエジプトへ旅立つことになった事
あやつの命の危険があるというのを知ったお姉さまが、旅立ちを止めようと財団メンバーに襲いかかり、全滅させた事。流石お姉さま!
そしてその責任から、そう責任から一緒に一味を追う流れになってしまったという事

何やら胡散臭い話ではあるが、それでも彼女の真剣そのものな顔と、実際に入院にまでしている佐天の現状を見るに事実なのだろう
―とは言え、全てが事実でないのだろうが

本人は気づいていないだろうが、話の途中でちらちらと佐天の方を見る辺り恐らくどこかに、もしくは全てが嘘である可能性も吝かではない
とは言えそこは大きな問題ではなく、大事なのは『お姉さまが今どこにいて何をしているのか』である
そこを問い詰めても初春は「今頃はエジプトへ向かっているんじゃないでしょうか?」としか答えない。知りたいのは現在の詳しい場所である

初春「そそそ、そういえば。定期連絡をしているジョセフさんなら知っているかもしれませんよ!」
黒子「へぇ・・・?それで?」
初春「え、ええとその・・・」
黒子「・・・」
初春「・・・う・・・」

初春「・・・案内します・・・」

彼女がその言葉を言い終わる前に黒子は既に椅子から立ち上がり、初春の首根っこを掴み上げていた

106: 2010/01/14(木) 23:45:50.40 ID:tqA9Ab/T0
ジョセフ「ほほ・・・こんなにカワイ子ちゃん達がワシを目当てに訪ねてくるなんて、ワシもまだまだ捨てたもんじゃないの!」
目の前の飄々とした老人はひどく機嫌が良さそうにお茶を入れる

黒子、初春、そして「リハビリだから良いのよ!」と自分ルールを持ちだしてきた佐天の三人はジョセフの泊まる部屋にいた

初春の案内で宿泊先に向かい、要件を伝えたのだが理解されていないのだろうか
―ボケていらっしゃいますのかしら

黒子「ありがとうございますわ、おじい様。で、今美琴お姉さまはどこにいらっしゃいますの?」

ジョセフ「・・・悪いがどこに敵の目があるか分からんからの。それに、聞いても追い付けはしまいよ」

ジョセフは真顔でそう答える。自分を誰か知らないのだろう

黒子「お姉さまの為ならこの白井黒子、例え火の中水の中猛獣の中吸血鬼の中、どこへでも馳せ参じますわ!」

ジョセフ「ふむぅ・・・何やら飛行機よりも早く追い付く手段があるようじゃな?」
お茶を入れる手を止め、自信満々な黒子に関心を示したジョセフではあるが、続く言葉は「しかし」であった

ジョセフ「あの子達は戦いに行っている・・・それでもどうしてもと言うのなら」
ジョセフがゆっくりと立ち上がる。先程まで鼻歌をまじえながら軽口を叩いていた老人と同じ人物とはもう思えなかった

黒子「あなたより強ければ、文句はございませんでしょうか?」
気圧される佐天と初春とは反対に、老人をの目を強く睨みつけ返す黒子

109: 2010/01/15(金) 00:08:20.43 ID:pRKHyp+20
ジョセフ「降参もしくは戦闘不能になったら負けで良いかな・・・?ワシの怪我への遠慮はいらんよ、お嬢ちゃん」
先日美琴にへし折られた義手はそのままに、残った腕で髭を撫でる

ジョセフ「ワシを頃す気でかかっておいで」
しかしその目は獲物を狩る戦士そのものであった

黒子「・・・ッ!」
―強い、歴戦の猛者と言ったところですわね・・・!
乙女の柔肌突き刺さる空気に思わず半歩下がる黒子。しかし負ける要素はなかった

初春の話を聞くと老人の能力は手から植物を出して相手を拘束する・・・
という程度の情報ではあるが、極めて大きなアドバンテージを得て居る
対して相手は自分の能力を知らない

この差は極めて大きく、黒子の絶対的優位を盤石のものにしていた

ジョセフ「先手は君に譲ろう」

ジョセフ「かかっておいで」

その言葉と同時に黒子はジョセフに攻撃を仕掛けた

110: 2010/01/15(金) 00:24:56.58 ID:pRKHyp+20
部屋では手狭であるという理由から、人払いをした広いホテルのロビーで老人と向き合う。それを離れて見る佐天と初春

距離は正面数メートル、健全な一般男性であれば2.3秒もあれば駆け寄れる距離である
普段ジャッチメントで相手をする輩のような短慮な不良程度であればいくらでも自分の中でのマニュアルが存在する
しかし、こんな相手は

ジョセフ「・・・どうした?まさか先の自信はワシの見間違えかのー」
待ちくたびれたのかジョセフが見え透いた挑発をする
少々癪ではあるが、このままでは埒が明かないのも確かで、黒子は鉄矢を飛ばす

黒子「・・・何を言っておりますのお爺さま。とっくに私はあなたに攻撃をしていましてよ」

ジョセフのコートの肩口に、テレポートをさせた鉄矢が刺さっている
肉体部分をあえて狙わなかった矢は老人のコートを貫通している

ジョセフ「お、おぉ・・・!?いつのまに!」
ジョセフの顔から余裕が消える

通常、相手の肩や靴に鉄矢をテレポートで飛ばし、動きを封じる。というのは待っている相手にはまるで効果がない
しかし、何も知らない相手への牽制としては十分なものであった

111: 2010/01/15(金) 00:48:51.63 ID:pRKHyp+20
初春は緊迫した空気はそのままに、目の前で対峙する老人と友人を見守っていた

ジョセフ「お嬢さんの能力は狙撃や暗殺に向く飛び道具と言ったところかのう」
年頃の少女が使うにはちと物騒すぎやしないかね、と付け加え冷静な判断を下す

―違います
言葉にこそ出さなかったが、心の中で老人の考えを否定する

自分には黒子が何を思ってコートを鉄矢で貫いたのかは分からなかったが、もしかするとこの判断ミスを誘ってのことだったのだろうか
友人の策士ぶりに思わずため息が出てしまう

黒子「さぁ、次はそちらの番でしてよ?」
笑みを浮かべながら、今度はジョセフに番を譲り余裕を見せる少女

ジョセフ「こりゃ君には悪いが、ちょっとおねんねしてて貰おうか」

老人とは思えない速度で走り寄るジョセフ、距離を詰めながら残った右手を大きく振りかぶる

佐天「え?ちょっとおじいちゃん!そんな所からパンチじゃ遠すぎるよ!」
親友が思わず叫んでしまう、しかし初春には老人の意図は分かった

113: 2010/01/15(金) 00:53:03.20 ID:pRKHyp+20
ジョセフ「ハーミット・パープルッ!」
老人の右腕から突如伸びるツタはネット状に広がり、黒子を覆う

ジョセフ「にひひ、驚かせてしまったかの!」
嬉しそうな老人、それに対する少女の声は目の前の網からではなく、背後から響いた

黒子「どこを見ていらっしゃいますの?」
あの程度の攻撃であれば、黒子のテレポートを捕まえることはできない

ジョセフ「おお!?」
目の前と背後を交互に見る老人

「拘束する」能力である老人と黒子の相性差は、初春にもハッキリとよく分かった
―ちょっとこれ、ジョセフさんが可哀想です・・・

自分が相手をしているわけでもないのに、初春は胸にチクリとしたものを感じるのであった

114: 2010/01/15(金) 01:06:12.24 ID:pRKHyp+20
ジョセフ「ク・・・くふふふふ・・・」

それから数回に渡る攻撃全てが少女を捉えられず、攻撃する度に背後で余裕の笑みを浮かべる黒子
馬鹿にされているのは誰の目から見ても明らかであった

突如うわはははと大声で笑い出す老人を見て、ちょっと気の毒に初春は思った
―自分の攻撃が全て効かなくて負けるのを待つだけとなれば、無理もありませんよね・・・

隣で見て居る親友も「おじいちゃーん!大丈夫!?しっかり!」と声をかけている

ジョセフ「いや!いきなり大声ですまんかった!」
黒子「あら、それは降参という意味ではありませんでして?」
笑いを止めた老人がそう告げると、黒子が継戦の意思を問う

ジョセフ「お嬢ちゃんは覚えているかのー」
質問を質問で答える老人。これがテストであれば0点である

ジョセフ「ワシが最初に言った勝ち負けのルールを」

黒子「何を言っていますの・・・?降参もしくは戦闘不能・・・に・・・まさか!?」
訝しげに答える黒子であったがやがて何かに気付いたように声を荒げる

ジョセフ「ジョースター家に代々伝わる闘い方を教えてやろう!」

佐天「まさか、ここから逆転出来る必殺技とか!?」
初春「ええぇ!?そんなのあるんですか!?」

ジョセフ「逃げるんじゃよォォォッ!!」

突如老人はホテルの入り口に身体を向けると、再び老人とは思えない速さで走り出した

116: 2010/01/15(金) 01:15:07.82 ID:pRKHyp+20
黒子「な・・・!?」
佐天「え?え?どういうこと?」
初春「ええと・・・つまりですね・・・」

初春の平和な頭にも、老人の行動の意味がよくわかった
『降参もしくは戦闘不能にならない限り、勝ち負けは決まらない』というだけのルール
つまり、逃げ続けていてもタイムアップなんてものは存在せず、本来の目的を考えるとそれは黒子の負けなのである

佐天「うわー・・・おじいちゃんせっこー・・・」
―確かにずるいけど、白井さん相手では全く意味がないんですよね・・・

黒子「ふ、ふふふ・・・!」
馬鹿にされたと思ったか、変なところに触れてしまったのか、黒子からドス黒いオーラが見えた気がした

黒子「この白井黒子!逃しはしなくってよ!」

すかさずテレポートでホテルを出ようとする老人の頭上に飛び、必殺のドロップキックを仕掛ける

ジョセフ「・・・かかったなッ!」
黒子「えっ?」

いつのまにか張り巡らされていたツタに絡めとられ、黒子の身体はそのままの姿勢で宙にぶら下がったまま、ぴくりとも動かなかった

122: 2010/01/15(金) 01:27:13.49 ID:pRKHyp+20
迂闊であった。まさか怒りのあまりこんな失態を晒すとは

足元で既に勝ち誇ったかのような顔をしている老人に殺意が芽生える
まずは一つ深呼吸をして冷静さを取り戻す

ジョセフ「おーいお嬢ちゃんや、降参してくれんかのー。ワシャ女の子に手荒な真似はしたくないんじゃよ」
しなければそのまま根競べに付き合うぞ、と言わんばかりであった

黒子「あら、ひょっとしてこの程度で勝ったつもりになっていらっしゃいますの?」
精神統一をして再び老人の頭上にテレポートするイメージを作る
―この程度の拘束では、私には一生勝てませんでしてよ!

124: 2010/01/15(金) 01:37:06.45 ID:pRKHyp+20
そう、何も変わらない。いつも通りにテレポートをして、この拘束から逃れる。それだけであった

黒子「!!!うぐあッ!?ヒぎアアあアァアアッ!!!」
しかし突如全身に激しい電流が流れ、その試みは失敗に終わる

ジョセフ「・・・OH NO!すまんのーお嬢ちゃん」
普段通り冗談めいた軽口をまじえ、残念そうに首を振る老人。しかしそれも次の瞬間には変わっていた

ジョセフ「・・・いや常盤台中学中学、第177支部風紀委員レベル4テレポーター、白井黒子ちゃんや」
力強く、そしてはっきりと答える男。その姿はもはや老人のそれではなかった

黒子「・・・!な、なん・・・でそれを・・・」
ゼェゼェと息を荒げつつ問う黒子、戦いの開始から初めてその眼に焦りと不安、そして疑問の色が映る

ジョセフ「・・・ある程度の能力者ともなれば、DIOの手先に対する戦力になるし、逆に肉の芽を植えられるケースに備えて居ての」

ジョセフ「この都市のある程度の能力者と、上条当麻や最初の被害者である佐天の周辺人物全てを調べさせてもらったのじゃよ」

ジョセフ「こういうケースもありえるからの。騙されたフリをしてたのよ」
黒子「なっ、この!」

ジョセフ「次にお前は『卑怯者!』と言う」
黒子「卑怯者!ハッ!」

126: 2010/01/15(金) 01:53:31.41 ID:pRKHyp+20
黒子「うああああああっ!!」
これでもう何度目であろうか、黒子はツタからの脱出を試み、その度に全身を激しい苦痛に襲われ悲鳴を上げる

初春「もうやめて白井さん!」
佐天「おじいちゃんも止めてよ!もういいでしょ!?」

黒子「・・・ゼェ!何を・・・っおっしゃ・・・っておりますの二人とも・・・!」
ジョセフ「・・・無駄じゃよ、ハーミット・パープルは君の身体に変化を僅かにでも感じ取ったら、すぐさま波紋を流すようにしてる」

ジョセフ「君のテレポート能力は、もう封じたんじゃよ・・・」
満身創痍とも言える少女に、こちらももう何度目かの説明をする
君の身体にも毒だからと、ジョセフは再び強く降参を勧める

黒子「この・・・程度で、私が降さ・・・んする・・・ハァッ・・・とでも思いましたの・・・!?」
―お姉さまの電撃の方が遥かに強いですわ!

氏なない程度とは言え、それでも常識的な範囲を遥かに超える激痛にも負けず、再びテレポートを試み
黒子「ああああぁああああああああああぁっ!!」

大量の波紋を受け、ぐったりとする少女。しかし彼女はまだ諦めていなかった
少女の瞳は決して敗北を認めて居ないというのは、ジョセフにしか分からなかった

131: 2010/01/15(金) 02:26:18.32 ID:pRKHyp+20
黒子「うああああああああああああああああっ!!!」
ジョセフ「・・・」
波紋を流しているジョセフ本人だからこそ分かることが一つある

それは、白井黒子のテレポートを妨害に必要な波紋量が徐々に増えて来ているということであった
そしてその量はもはや命に関わるレベルにまで到達しようとしていた

ジョセフ「・・・お嬢ちゃん、悪いがこれ以上君に時間をかけるつもりはない」
意を決したジョセフは黒子に冷たく語りかける

黒子「・・・ハァッ!・・・こち・・・ら・・・も・・・し・・・よ・・・!ハァッ!」
強がりのつもりなのだろうか、既に何を言っているのか聞き取れなくなっていた

ジョセフ「次が最後じゃ。もし次にテレポートをしようとした場合・・・」
一息ついて出来る限り冷酷に、そしてはっきりと

ジョセフ「すまないが持てる全力の波紋を使い、君には再起不能になってもらう」

132: 2010/01/15(金) 02:32:32.86 ID:pRKHyp+20
佐天「もう、もうやめてえええええッ!!」
初春「白井さん!もういいよ!もう氏んじゃうよ!」

ジョセフの表情に嘘が無いと感じた外野の少女達も大声で降参を促す

黒子「・・・お姉さまのお傍に・・・いられなくなる・・・くらいでしたら・・・」
ジョセフ「そうじゃ、生きていればまた会えるじゃろう!何ならこのまま根競べを続けても良いんじゃぞ!?」

黒子「お姉さまが危険な時に傍にいられない位でしたら!白井黒子はッ!氏ぬ方を選びますわッ!!」

瞬間黒子の身体が光に包まれ、ジョセフの目の前に現れる。その右手はジョセフに今にも掴みかかろうとしていて
・・・そして力無くその場に倒れた

ジョセフ「・・・OH NO・・・全くワシは、この歳になってもこんな少女に根負けしちまうのか・・・」

独り言を呟き、気を失った黒子を抱え上げ、病院から脱走に近い外出をした佐天と付き添いの初春を連れを財団の病院へ向かうのであった

134: 2010/01/15(金) 02:51:06.95 ID:pRKHyp+20
黒子「・・・そ、そんな・・・い、いけませんわお姉さま・・・お姉さま・・・!はっ!?」

目を覚ました先にあるのは、見覚えのない白い天井と、日にちの入ったデジタル目覚まし時計を始めとする小物
自身の周りを取り巻く環境も、白い清潔なシーツと白を基調とした簡素な部屋

―ここは・・・?
首を傾げる。何か素晴らしい夢を見ていた気がするし、他にも何かとても大切な事があった気がする

佐天「あ、目が覚めた!?」

同じくベッドの上でだらしない格好で退屈そうにしている、よく見知る友人、佐天涙子が声をかける
ほ、本当ですか!?とその脇でリンゴの皮をむく初春もこちらを見る

黒子「あ・・・」
思い出した、自分はあの後最後の力でテレポートを試みて
・・・能力を使う前に気絶してしまったのだろう

でなければ、老人の宣言通り、少なくとも今頃廃人になっていたであろう

135: 2010/01/15(金) 03:06:44.10 ID:pRKHyp+20
黒子と佐天、二人のベッドの間の簡素なイスに、呼ばれてきたジョセフが座る

ジョセフ「波紋は基本的に人体に害のあるものではないからの。」
勿論一度に大量に流し込めば、少女どころか成人男性をも気絶させることは難しくは無い

黒子「・・・」
両手でぎゅっとシーツを握り込み、うつむいたまま沈黙を守る

ジョセフ「そ、それにしても君はその、非常に・・・少々タフすぎやしないかね?」
黒子「・・・」
いつもの軽口にも、目の前の少女は反応しない

耐えきれず、意を決したジョセフは努めておどけた口調で別の―それも少々危険な―話題に切り替える
ジョセフ「そっ、それにしても、今の中学生はあんな際どいパンティーを着用してるのかのう!」
ジョセフ「あ、いや違うよ!?君がワシの頭上に来たときちらりと見えちまったというか、見ちゃったっていうか!」

佐天「も、もうおじいちゃんったらー!そんなわけないじゃない!とくと見よ!これが今の普通のJCのパンツよ!!」
目にもとまらぬ早業で、ベッド脇に立つ少女のスカートをまくりあげる。白

ジョセフ「NOOOOOOOOO!!OH MY GOD!!」
初春「ひゃああああああ!何をするんですかああああああああん!!!」
佐天「あひゃひゃひゃ!かわいいやつよのー!」
黒子「・・・」

空気を呼んだ少女達の漫才にも反応しない、相当負けたというのが響いているのだろう

137: 2010/01/15(金) 03:28:11.82 ID:pRKHyp+20
名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
E-mail:
内容:
一同「・・・」
異様に重たい空気が場を支配する

黒子「・・・けてませんわ・・・!」
ジョセフ「え?」
黒子「私はまだ!降参なんてしていませんわ!」

部屋のガラス窓を突き破らんばかりの怒号、今にもジョセフに掴みにかからんといった形相である

初春「しっ、白井さん!これ以上は無理ですよ!」
うろたえる初春

佐天「・・・戦闘不能も負けだってルールだったよね・・・気絶は戦闘不能でしょ?」
念を押す佐天。言い方は違えども、二人はこれ以上友人を危険に晒したくなかった

黒子「そ、それはっ・・・!でも、でも・・・!」
ならば今すぐに再戦を申し込みますわ!と黒子は吼える

ジョセフ「んんん?戦闘不能?はて・・・何の事かな」
三人「え?」
飄々と答える老人に、意味が分からないと三人の少女が目が点になる
―ついにボケが来てしまわれたようですの・・・
―ついにボケたのか・・・
―ついにボケてしまったんですね・・・

138: 2010/01/15(金) 03:35:33.10 ID:pRKHyp+20
何やってんだ俺('A`;)もう寝るかな

微妙な空気をも意に介さず老人は続ける
ジョセフ「実は君の最後のテレポートを止めようとしたら、ハーミット・パープルのエネルギーがバテちゃっての!」

ジョセフ「ワシも君も戦えなかったんだから、休戦中じゃろ今は!」

ワッハッハと一人で大笑いをするジョセフであった

ジョセフ「・・・そして今再開ということで良いのかな」
黒子「望むところですの!」
もう負けない。油断なんて絶対にしない、相手の心理戦にも乗らない、そう心に誓う黒子、「えええ!」と慌てて距離を取る佐天と初春

ジョセフ「あ、違うよ?」
黒子「いきま・・・へ?」
早速出鼻を挫かれる黒子、どこから持ってきたのか、分厚い週刊漫画を盾にしている佐天と、鉄鍋をかぶる初春がジョセフを見る

ジョセフ「こういうことは対戦相手に伝えなければいけないからの」

ジョセフ「白井黒子くん、ワシの負けだよ。降参する」
黒子「・・・はい?」

一対一の決闘で、おそらく歴史上もっとも間抜けな顔をした勝者がここに誕生した

4: 2010/01/17(日) 01:46:23.89 ID:cKCq4zlW0
何を言っているのか分からない、そう言いたげな顔でベッドの上の少女はこちらを見る

ジョセフ「だから降参じゃよ。約束の通り君に彼らの居場所を教えよう」
はっきりともう一度言ってやる
恐らく今の自分は、それはそれはいじわるそうな顔をしているんだろうな、年甲斐もなく考えてしまう

黒子「・・・どういう事が、説明してくださいますの?」
目的の達成による喜びと、馬鹿にされているのだと思っているであろう怒りの両方を器用に瞳に含ませ少女が問う

ジョセフ「別にワシに勝てば場所を教えるなんて一言も言っとらん」

佐天「・・・そうだっけ?」
初春「うーん・・・どうだったっけ・・・」

ジョセフ「ワシが本当に知りたかったのは、君の強さだけではない。それに―」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべるジョセフ

ジョセフ「ワシは君のその意思をッ!勇気を確かめたかったのだ!!」

黒子「・・・・・・わ」
黒子「分かりましたわ・・・この白井黒子に、お姉さま方の居場所を教えてくださいまし」
少女は、静かにそして深く目の前の老戦士に頭を下げた

5: 2010/01/17(日) 02:01:09.27 ID:cKCq4zlW0
老人に連れられ、黒子達は病院のすぐ傍の建物内に居た

ジョセフ「彼は明日、シンガポールへ向かうこの船に乗る」
そう説明を受け、渡された様々な道具やお金や地図のの入ったポーチの中身を確認する

黒子「分かりましたの。それで、今お姉さまはどこに・・・」
結局、知りたいのはそこである。装備やお金などどうでも良い

ジョセフ「ほほ、そう慌てるでない」

老人はそう言って部屋に備え付けられているテレビの電源を入れる

黒子「・・・悪いですけど、そんな悠長な事しないでくださりまして?」
自分でも分かる程の苛立ちを含めた声

ジョセフ「まぁ見ておれ。ハーミット・パープルッ!!」

佐天「え?」

すると、突然テレビの画像が変化し始め―

6: 2010/01/17(日) 02:12:21.77 ID:cKCq4zlW0
上条「か、上条さんはやっぱり別の部屋を借りて寝ようと思うわけなんですよ!」
・・・突如見たくもなんともない類人猿の全身が映る

美琴「な、何いってるのよ!一人で寝込みを襲われたらどうするつもりなのよ!」
!!お姉さまキタ―(゜∀゜)―!!!

ジョセフ「・・・大丈夫かこの子・・・?」

初春「いつものことです」
佐天「いつも通りだね」

突然テレビに張り付いて息を荒げる少女への老人の心配は、別の少女達によって一蹴されるのであった

佐天「それよりもこれってどういう事?」

ジョセフ「これもワシのスタン・・・まぁ君達の言う能力といったところかの」

初春「植物による拘束、捕獲した対象への攻撃、さらに遠距離の撮影・・・こんな能力は初めてみますね」
驚いた顔をして少女が呟く

黒子「お姉さま!ああお姉さま!お姉さま!!」

テレビの中に今にも入らんとばかりに黒子は顔を押しあてる

上条「で、でもやっぱり男女が同じ部屋で寝るなんて良く無いと思うんですよ!」
隣の居候をチラリと一瞥して上条が答える

・・・今、何と?

9: 2010/01/17(日) 02:22:54.06 ID:cKCq4zlW0
美琴「おっ・・・、おなっ・・・」
見ているこちらにも分かる程、急に顔が蒸気する美琴

禁書「今は緊急事態なんだよとうま!だから良いんだよ!」
事の重大さを知ってか知らずでか、真っ白な衣服を纏った少女が美琴の代わりに返事をする

上条「そ、そうは言われましても・・・」
チラリと部屋を見回す上条、しかし彼の寝室の代わりとなるようなものはそこにはなかった

上条「ふ、不幸だ・・・」

ジョセフ「ほっほ!青春しとるのう!」

初春「頑張れ!頑張って御坂さん!」
佐天「おせー!そこだー!おせー!」

などと能天気な野次を飛ばす仲良し少女

ジョセフ「今このホテルを調べさせよう。学校のことはわしらに任せて、君も今日はゆっくりと休んで、明日の出発に・・・そ・・・?」

時既に遅し。大事なお姉さまの貞操の危機を目のあたりにした黒子は、老人達の前からとっくに居なくなっていた

11: 2010/01/17(日) 02:42:38.60 ID:cKCq4zlW0

シンガポールへ向かう船の上

「おー!ねー!えー!さー!まぁぁぁぁぁああ!!」

あれから何度かのテレポートを駆使し、空腹にも睡魔にも耐え、夜通しの強行軍であった
三人の宿泊している宿(あの日お姉さまがいたのはホテルではない。断じて違う)の場所を聞かずに飛び出してきたのは致命的であった
一度ジョセフの所へ戻ろうか、とも思ったのだが一刻を争う事態に加え、もう既に日が明けていた

結局ジョセフに聞いた船を探し出し、お姉さまとその他が来るのを船倉で見つからぬよう待ち伏せていたわけである
安心感とジョセフとの戦い以降の疲労で、あっという間に黒子は眠りに落ちてしまい、そこを通りすがった船員に追われて

―そして今に至るのであった

黒子「お会いしたかったですわお姉さまあああっ!さあこの黒子と熱いベーゼをぉぉぉっ!!」

とある黒子の超電磁砲(レールガン)は、素早く反応し回避ををする美琴を飛び越え

上条「・・・へ?んおっ!?」

禁書&美琴「ああああああっ!?」

―よりにもよって、普段類人猿と忌み嫌う上条当麻と熱い接吻をかわしていた

13: 2010/01/17(日) 02:55:36.52 ID:cKCq4zlW0
上条「・・・」

黒子「・・・」

文字通り目を点にした二人。唇ごとずるずると自然落下する黒子を、上条が両手で受け止める

黒子「・・・何か、言い遺すことはございまして?」
上条は彼女のことを良くは知らなかったが、太陽のような少女の笑みとは対称に、その言葉の裏に猛毒が仕込まれているのはよく分かった

上条「・・・あ、あの・・・可愛い顔が台無しですよ?」
遺言としてはあまりにもあっけない事を震えながら呟く。その言葉に何故か黒子の背後にいる美琴がぴくりと反応する

黒子「サメの餌に・・・!」
美琴「頭冷やしてこぉぉぉぉいっ!!!!」

黒子が上条を海上に飛ばすよりも早く、美琴の右アッパーが彼を船上からノックアウトさせた

上条「ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁっ!!!」

奇麗な放物線を描きつつ上条は海へ落下していった

14: 2010/01/17(日) 03:08:14.24 ID:cKCq4zlW0
船長「お、おい!まずいぞ!この海域には人を襲うサメが多く出没するんだ!」
慌てた船長の声に、少女達の顔にも焦りの色が浮かぶ

禁書「とうま!速く上がってきて!食べられちゃうんだよ!」
美琴「う、浮輪は!?浮輪とかはないんですか!?」
船長「待ってろ!今持ってくる!」
パニックに陥る少女達と、大慌てて船倉へと走る船長

黒子「・・・!」
確かにサメの餌になってしまいなさい!とは言った(本当は言う前に美琴の右が炸裂した)。だが当然それは本意ではなかったのである
元はと言えば、自分が原因であるのは事実であり、それが今彼の命を脅かしているのは紛れもない事実であった

黒子「今行きますわ!」
―浮輪などを待つよりも、自分が直接テレポートで救い上げた方が早い!

そう判断した黒子は見事な着水を決め、上条の元へ泳ぐ。そして彼を船上へとテレポート・・・

黒子「・・・え?なんでですの・・・?」

彼女はまだ知らなかったのである。彼が幻想頃しを持っているということを。そしてそれが彼女のテレポートを阻止しているということを

15: 2010/01/17(日) 03:20:16.58 ID:cKCq4zlW0
上条「な、何やってるんだよお前!!」
上条もまた彼女の行為を理解出来ず困惑していた

黒子「う、うるさいですわ!大人しくしていなさいですの!」
再び試みるも失敗、失敗、失敗

禁書「!?二人とも!下!」
突如船上の少女が叫ぶ

黒子「ひっ!?」

二人のそばに、一つの大きな影が近寄って来ていた

美琴「二人ともこれを!速く!」
どこからかロープを持ってきた美琴が彼らの元へと垂らす。柱に縛るなどではなく、禁書と美琴二人で引き上げるつもりのようだ
しかし、彼ら二人を同時に引き揚げるには船上の少女達ではあまりにも力不足であり、一人ずつ登りきるにはあまりにも時間が足りなかった

16: 2010/01/17(日) 03:30:06.86 ID:cKCq4zlW0
上条「くそ!先に行け!」
黒子「な、なにを言ってるんですの!?」

意を決して上条が黒子に叫ぶ

上条「良いから言う事を聞け!このままじゃ二人とも食われちまう!」

黒子「で、でも・・・!」
何度も上条とのテレポートを試みたまま、黒子も引かない。元来がそういう性格であり、また彼に対する負い目もあった
自分だけがテレポートをし、彼がロープを使えばいい。そんな事も考えられないほどに混乱していたのである

黒子「そ、それなら男性であるあなたが先に昇った方が二人とも速く昇れますわ!」

上条「こんな場面で女の子一人おいて先に行けるかっ!」
上条は叫ぶ。もうこれ以上は言い争うだけ無駄であろう

黒子は気づいていなかった。先程から心臓の鼓動が張り裂けんばかりに暴れるのは、サメの恐怖だけが原因なのかどうか

黒子「わ、わかりましたの!」
言うや否や黒子は大急ぎでロープにしがみつく

おおよそ木登りの経験などないであろうお嬢様は、それでも一刻も早くとロープを昇る。スカートの中身が上条に見られることも気にしない

17: 2010/01/17(日) 03:41:00.54 ID:cKCq4zlW0

上条「やりゃできんじゃねぇか・・・」
横目で黒子の安全の確認をした上条は安堵の息をつく。そして再び気を取り直して、止まる事なく迫りくる巨影を睨みつける。もう3mも無い

上条「久々の餌を食えるとでも喜んでるんだろ・・・?だが悪いな、そのふざけた幻想、ぶち壊してやる・・・!」

覚悟を決め、もう数秒もしないうちに食らいついてくるであろう相手を、睨み頃してやらんとばかりに見る。そして―

船上から放たれたレールガンが、影が上条に触れると同時に海底へと叩き込んだ

上条「ビ、ビリビリ!!」

助かったと、船上にいる命の恩人で(あると同時に、窮地へ追い込んだ原因でもある)あろう少女を見上げる
そしてそれと同時に

禁書「た、短髪!私一人じゃ支えきれないんだよ!」
自身も引き込まれてしまいそうになり、思わず手を離してしまう

黒子「へ・・・?きゃ、きゃああああああ!!」
支えを失った黒子は急落下して

―布地の少ない黒の下着が彼の顔面に降ってきた

20: 2010/01/17(日) 03:54:58.05 ID:cKCq4zlW0
船長「・・・で、その娘さんはお前らの仲間である、と・・・」
密航者は認めないんだがなァ・・・と目の前の大男が呟く

倉庫で倒れていた船長を見つけた一向は、事の次第を船長に説明をする。勿論レールガンで助けた事は内緒である
曰く「大慌てで浮輪を探しに行ったら派手にこけてしまった」らしく、身体のあちこちが痛むそうである

船長「しかし坊主。海から上がったと同時にこけたって言っても、どうすりゃそうなるんだぁ?」
満身創痍といわんばかりの少年、その原因が彼を取り巻く少女達であるというのも勿論内緒である

美琴「う、運が悪かったのよねぇ!おほほほほ!」
禁書「と、とーまはふこうだからねー!」
黒子「サ、サメに襲われなかっただけ運が良かったとも言えますわね!」

―いっそ襲われてしまえば良かったのかもしれない
少女達の心は確かにこの瞬間、繋がっていた

上条「・・・ええ、上条さんは不幸なんですよ・・・」
怪我でもしたのだろうか、先程サメに触れられた脇腹のかさぶたを左手で掻き毟りながらそう呟く

三人「何か?」

上条「何も言ってません!」

―あぁ・・・不幸だ・・・!
これからの旅を思うと、心なしか身も心も重くなる上条であった

船長「なぁ、ところでお前達。ちょっと船上へ来てくれないか?見せたいものがあるんだよ・・・!」

21: 2010/01/17(日) 04:06:03.94 ID:cKCq4zlW0
船長に連れられ、一行は再び潮風のあたる甲板へと足を運ぶ

禁書「もう船酔いなんて怖くないんだよ!」
どこから拾ってきたのか、元気よく船首で風を堪能する禁書

美琴「・・・ね、ねぇ。アンタ本当にそれ大丈夫なの・・・?」
黒子「や、やはり先程で御怪我を・・・?」

対してどんどん顔が青ざめて行く上条を心配そうに見る二人

上条「な、なぁに・・・上条さんはへっちゃらですよ・・・」

船長「・・・あァ・・・すぐに元気になるさ・・・!」

一向「え?」

上条「!?がっ・・・!」

脇腹を抑え膝をつきその場に崩れる上条。慌ててシャツをめくると、びっしりとフジツボがはっていた

黒子「なん・・・ですの・・・!?」

22: 2010/01/17(日) 04:18:46.52 ID:cKCq4zlW0

関をきったかのように大笑いをし出す大男

船長「フハハハハハ!!ジョースター一族たるこいつさえ倒しちまえば、残ったガキ相手にわざわざコソコソやる必要なんてねぇよなぁ!!」

美琴「・・・!アンタッ!」

船長「俺のスタンドは!嘘と裏切り!未知の世界への恐怖を暗示する暗青の月『ダークブルームーン』!!」

船長「ククク・・・そいつはもう終わりだ。そのフジツボが力を奪い、もう立つことすら出来んだろうよォッ!」
俺の勝ちだと鬨の声を上げる

上条「・・・へぇ、そうかい。こいつが能力だっていうなら話は速いぜ」
ドガッ!

船長「ガッ!?な、なぜ貴様!」
もはや立つ事すら出来ないはずである少年から、まさかのパンチを貰う

上条「俺はちょっと特別でね。悪いがそのふざけた能力、打ち壊させて貰った」

身体を大きくよろめかせる大男
船長「そうかよ!ならこっちにもまだ考えはあるんだぜクソ野郎共がッ!」

禁書「!?とっ!とう―」

船首にいた少女を掴み、海に飛び込んだ

24: 2010/01/17(日) 04:36:10.38 ID:cKCq4zlW0

上条「イ、インデックスッ!?」

黒子「お姉さま!」
美琴「・・・くっ、無理よ!当たっちゃうわ!」

人質の少女を抱えたまま海中へと潜る男。下手にレールガンなど撃てば彼女に当たってしまうかもしれない

船長「ククク・・・!そこのアマのスタンドはさっきこれでもかって程味わったからな・・・!」
気絶しちまう程痛かったゼェ?と男は笑う

船長「おい!そこのジョースター、いやお前は上条当麻と言ったかな?」

船長「海中でテメェとサシでの勝負だ、飲まないならコイツを・・・!」
禁書の顔を海中に圧しつける

禁書「・・・がっ!がぶぁ!」
力でも負け、当然息の出来ない彼女は苦しそうに悶えるしかない

船長「俺は別にそれでもいいんだけどなァ・・・?」
禁書の顔を引き揚げ、ニタリと笑う

26: 2010/01/17(日) 04:57:53.09 ID:cKCq4zlW0


禁書「げほっ!と、と・・まぁ・・・とうまあ・・・」
海水を飲んでしまったのか、普段の彼女とは思えないほど弱々しくなっている

ザバン!
上条「上等だ・・・!タイマンなんだろう!?その子を離せ!!上で手当をさせろ!」

返事をするよりも早く、彼は海中に身を投じていた

船長「ククク・・・!シブいねぇ・・・まったくおたくシブイぜ・・・!」
計画通りと言わんばかりの笑みを浮かべ、余裕の表情を浮かべる相手

船長「だ!がッ!!」

船長「このガキは人質だ!俺の目の届く場所に置かせて貰う!そこのアマ共が余計な邪魔をすればこのまま頃す!」

ギ口リと美琴と黒子を見、そのまま禁書を海底から強く根を張る海藻で縛り付ける

船長「なァに、下手な真似さえしなければ安全なんだからよぉ・・・?」
最も少し長生き出来るかどうかの差だけどな、と腹の底から笑い出す

上条「くっ・・・、分かった、それで良い!行くぞ!」
―長引けば海中に慣れていないこちらが不利になる、短期決戦で全てを賭ける!

言うが否や上条は暗青の月のもとへと泳ぎ出した

27: 2010/01/17(日) 05:09:58.48 ID:cKCq4zlW0
上条「なっ・・・!」
突如足を引っ張られ、海中へと沈む少年

船長「ククク・・・ようこそ・・・この暗青の月の独壇場へ・・・」

上条(くそっ、しまった・・・!)

慌てて腕を振るも、水中で鈍った攻撃はあっさりを回避されてしまう
声を出すことも、新鮮な空気を吸う事も出来ない上条に追い打ちをかけるかのように続ける

船長「どうした?スタンドでなら海中でも話も戦闘も出来るんだぜ・・・?だがしかし、貴様は先程から一切スタンドを出していない!」

ニヤリと笑い
船長「無能力者なんだろォー!貴様はよォー!!」

上条「・・・!!」

29: 2010/01/17(日) 05:23:40.62 ID:cKCq4zlW0

―痛い所を突かれた
上条にとって、それを敵に知られてしまうのは出来れば避けたい出来事であった

「虎の威を借る狐」という言葉がある
彼らにとって、「ジョースター家」というのはとてつもない存在であるらしく、今までの戦闘全てにおいて無能であるはずの、自分が率先して狙われているのは事実であった
しかし、それは「ジョースター」の持つ戦闘力を警戒してのことであり、脅威が無くなれば自分への攻撃優先度は幾分が落ち、仲間がそれだけ脅威に晒されるであろう

少年、上条当麻にとってそれだけは避けたかった
自分のせいで誰かが傷つく所など、絶対に見たくなかった

船長「更に、俺の潜水の自己ベストは6分12秒!常人の三倍以上の肺活量なんだよ!」
相手の呼吸が切れるのを待つ、という根性論ですら否定する、絶望的な数字を叩きつけられる

上条「・・・!」
射殺さんキッと強く睨みつける、息が苦しくても、攻撃が全て当たらなくても、ここで負ける訳にはいかない

船長「おーおー、粋がっちゃってまぁ・・・!なら御望み通り!」

上条「!!ガッ・・・!?」

上条の全身に細かい鱗が刺さる

船長「いたぶり頃してやるよォォォッ!!!」

30: 2010/01/17(日) 05:38:21.26 ID:cKCq4zlW0
静寂な船上で、ここからでは見えぬ少年の心配をする少女二人

美琴「水中じゃあいつの攻撃なんて何も通らないじゃない・・・!」
なんでアタシがいかなかったのか、と美琴は頭を抱えてうずくまる

黒子「お姉さま!これをあやつの元へ送れば・・・!」
太股から愛用の鉄矢を取りだし、そして

黒子「・・・せめて、場所が・・・場所さえ分かれば・・・!」
肩を落とす。まさか海中に投げるわけにもいかない
下手をすれば囚われのシスターに害が及ぶであろう、相手に拾われでもしたらそれこそ致命的になりかねない

美琴「・・・!それよ黒子!」
突如何かを閃いた美琴が立ち上がり、黒子を強く抱きしめた

黒子「おおお!お姉さま!!」
緊迫した空気が、辛うじてネジ一本彼女の理性を保っていたのであった

上条「せめて・・・せめて何か武器があれば・・・!」
鋭い鱗に身を裂かれ、それでも反撃を機会を窺う少年
だが、今の彼では渾身の力で拳をお見舞いした所で全くダメージはないであろう

船長「なんだァ・・・?その目はよォ・・・気にいらねぇ」

ギャキィィン!
船長「この暗青の月の水かきはスクリューの回転をする水中カッター」

船長「今刺身にしてやるよォォー!!」

人のそれとは思えぬスピードで、絶望が上条当麻に向かってきた

31: 2010/01/17(日) 05:50:28.14 ID:cKCq4zlW0
船長「氏ねッ!ジョースターの小僧!!」

上条(クソッ!万事休すか・・・!)

その時、金属の矢が二人の間に突如として現れた

上条「!?」
―しめた!これなら、あるいは・・・!
咄嗟に一筋の救いの光に右手を差し出す

船長「させるかよォォッー!!それごと切り刻んでやる!!」
同時に暗青の月がスクリュー状の右手を差し出す


美琴「黒子!どう!?」

黒子「場所はバッチリですわ!お姉さま!!」

船上で二人の少女達が声をかけあう

美琴の能力をレーダーにし、黒子に場所を伝える
そして黒子がテレポートで鉄矢を彼の前に飛ばす
咄嗟のレーダーで二人の場所を判別するには、どちらかが動くしかなかった
人間離れをしたスピードで泳ぐなど、上条に出来るわけがないからである

美琴「お願い・・・!もう出来る事は・・・勝って・・・!」
―神様、お願いします。どうかアイツを助けて・・・っ!

少女はその場に跪き、ただただ都合の良い祈りを捧げた
それしかもう、今の彼女に出来る事はなかった

32: 2010/01/17(日) 06:04:28.29 ID:cKCq4zlW0
上条「うおおおおおおっ!!」
残る酸素を全て吐き出し、全力で右手を差しのばす
―間に会え!

ガシッ!
彼の手に鉄矢がしっかりと握られた

船長「だからどうしたァァアァッ!!その手ごと引き裂いてやるよォォォッ!!」

スクリューのカッターが上条の手に触れる、勝利を確信した次の瞬間

船長「う、うおおおおおおおおおおお!!!?」
触れたスタンドの右手から先が消えて行く。勢いは止まらず指が、腕が、肩が、そして

ザクッ

船長「・・・あ・・・あぁ・・・?」

上条の手に握られた鉄矢が、男の目を深々と貫いていた

上条「・・・ッ!」

33: 2010/01/17(日) 06:40:22.36 ID:cKCq4zlW0
美琴「!一人、上がってくる・・・!」
ハッと顔を上げる美琴

黒子「・・・!」
その声に呼応した彼女もまた真剣そのものの目でその先を見ていた

上条「ぶっはぁ!」

少年が海上へ顔を出したその時、力が抜けたように二人の少女はその場にへたりこんでしまう

上条「待ってろインデックス、今助けてやる!」

既に気を失っている少女の元へ泳ぐ少年

その数m後ろで突如水柱が立つ

船長「こんなもので!俺を倒したつもりか小ぞっ・・・」

光が走り、直後に彼の姿は見えなくなってしまった

美琴「巻き込む心配がなければ、あんたなんて・・・ッ!」

怒りに声を震わせる少女、しかし男は既にその言葉が聞こえる距離にはいなかった

34: 2010/01/17(日) 06:55:45.92 ID:cKCq4zlW0
上条「あの野郎・・・本当にロクなことしねぇな・・・!」

あの後、強敵を退けた喜びもそこそこに、船が突然火の手を上げ没する
―恐らくあの野郎が爆弾でも仕掛けていたんだろう

密航中に船倉で避難用のボートを見たという黒子の勧めで、とりあえず船と一緒に海の藻屑となることは避けられたのだが、そこまでである
雲一つない晴天、普段なら何とも思わない太陽が悪魔の使いのように見えてくる

美琴「とりあえず、この子は大丈夫。」
気絶しているだけでじきに目を覚ますだろう、その言葉を聞いて上条当麻は戦い以降初めて気が休まった
それと同時に、激しい渇きが彼を襲う

それに逸早く気がついた美琴が、一緒に持ちだした避難用具から水筒を出して押しつける
美琴「・・・ほっ、ほら!さっきまでずっと海に居たんだから、水分補給しておきなさいよ」

上条「あ、ああっ。悪いな・・・」
水筒に口をつけグビリ、グビリと音を立て飲む

美琴「・・・!」
美琴(す、水筒に直接口をつけて・・・それって、か、間接・・・ききききき・・・!)
輝く太陽に照らされ顔が蒸気するのが気付かれなかったのは彼女にとって幸いであった

黒子「・・・貴重な水ですので、飲みすぎないでくださいまし」
彼女の指摘は極めて正論であり、救助が来るまでの命綱である水を一人で飲みすぎる訳にもいかない
だが彼女の口調は強くなく、むしろ彼女を知る者からすれば非常に弱々しいものであった

35: 2010/01/17(日) 07:07:02.86 ID:cKCq4zlW0
上条「・・・なぁ、アレ・・・!」

美琴「そっ!そう!仕方なくよ!水分補給しなきゃ氏んじゃうものね!・・・あれ?」
間接キスになるのは彼と自分だけではないという事には考えが至らなかった様で、突如素っ頓狂な声を上げる美琴、二人の視線が痛い

美琴「・・・あっ、あれはなにかしらー!」
何故か棒読みで、先程上条が言った事と似たような発言をする
彼女が指をさす方向に、「年代物」というにも少々古すぎるであろう巨大な船があった

上条「助かった・・・のか!?おーい!」

手を振り船に助けを求める少年、それを黒子が止めた

黒子「お待ちくださいまし」

上条「え?」
頭に疑問符を浮かべる

黒子「そう都合良く救助船が通りすがると思いまして?」

上条「・・・確かに、それは・・・」
でも、と続ける

上条「こいつを速く安静な場所へ連れて行ってやりたんだ・・・!」
あり合わせの荷物で簡素な日陰作り、その下で寝ているシスターを見る

36: 2010/01/17(日) 07:18:05.62 ID:cKCq4zlW0
上条「だから、俺一人で調べに行く。それからで良い」
よろよろと立ちあがろうとする少年を少女が止める

美琴「む、無理よ!まだフラッフラじゃないアンタ!」

黒子「・・・分かりましたわ。この不肖白井黒子、偵察に行ってまいりますわ」

美琴「ちょっ、ちょっと!?もしあの船に敵がいたらどうするのよ!」

黒子「!!勿体ないお気遣い・・・!黒子は・・・ッ!黒子はァァァッ・・・!」

そう言い残し、少々距離のある船へとテレポートをする黒子であった

上条「・・・あの子、テレポーターなのか」
そういえば知らなかったな、と呟く

美琴「そうよ。確かに一番適しているといえばそうなんだけど・・・

38: 2010/01/17(日) 07:31:27.96 ID:cKCq4zlW0
甲板異常無し、部屋異常無し、機械系統異常無し
様々な部屋を渡り歩き、黒子は船に敵がいないかを調べる

黒子「・・・おかしいですわ」

そう、敵もいないが、そもそも人そのものがいないのであった
それに、この事態に対してあまりにも異常がなさすぎる。その事が既に異常であった

―これなら大丈夫だろうか
黒子「・・・あら?」

目の前に檻に入れられたゴリラ(本当はオラウータンであるが、彼女が分かる訳もなく)を見つけたのである
人でないとは言え、少なくとも生きている動物に会えた。それだけで彼女の救いになった

黒子「・・・ふう。ねぇあなた、あなたの飼い主さんは今どこにいらっしゃいますの?」
ゴリラ「・・・フォホッ?」
―通じる訳ありませんわね

これならあの類人猿も一緒に連れて来てやれば良かったですわね、と考えてクスリとしてしまう

トントン
黒子「ん・・・?」

音に反応して檻を見ると、ゴリラが錠前を指さしている。開けて、と言っているのだろう

黒子「・・・ごめんあそばせ。今はあなたを構っている時間はありませんの」

そう言って他の部屋の様子を探りに向かう黒子であった

39: 2010/01/17(日) 07:39:42.89 ID:cKCq4zlW0

・・・時間がないのは分かっていた。しかし

黒子「やはり・・・少々匂いますわね・・・」
ジョセフと戦ってからこの数日、彼女はお風呂に入っていなかった
いや、もしかしたら病院で気絶している間に誰かが身体を拭いてくれる位はしてくれたのかもしれない

しかし、年頃の乙女である。やはり出来ることであれば毎日シャワーくらいは浴びたいものである
それに、強行軍による汗や汚れ、海に入ったことなどでもう身体がベトベトなのだ

黒子「・・・もし誰かいたら、あちらから気付いてくれるかもしれませんわね」

覗かれるという可能性を一切考慮せず、彼女は都合良くそう考え自らの行動を正当化する

着なれた制服を脱ぎ、下着もリボンも全て外し、生まれたままの姿で黒子はシャワールームへと入る

―やはり機械系統に問題はありませんですの
うんうんと納得、シャワー口から温かいお湯が出るのを確認しシャワーを浴び続ける

黒子「お姉さまに臭いと思われてないでしょうか・・・」

船の上の行動を思い返す。考えると甲板で飛びかかり、そのまま彼に・・・

40: 2010/01/17(日) 07:51:09.49 ID:cKCq4zlW0
黒子「!!」
思い出したくない事が蘇る、あれは事故。そうノーカウントである。自分の初めてはお姉さまの為に取ってあるのだ
・・・そういえばあの男、確かあの後自分の事を「可愛い」と・・・

頭を振り慌てて愛しのお姉さまを思い浮かべる
―この黒子の為に、あの男を成敗するお姉さまの雄姿!

あんなに奇麗なアッパーは初めて見た。そしてあんなに奇麗な放物線を描くのも。流石お姉さま!
それから・・・それから彼を救出しに海へ飛び込んだ。そう、今の自分がこんなにも汚れている原因なのだあの男は
自分のように自力で脱出することも出来ない無能、そんな奴にお姉さまは渡せるものか

上条『俺にかまわず先に行け!』
上条『こんな場面でお前みたいな可愛い女の子を置いて先に行けるか!』

黒子「~~~っ!!!?」

41: 2010/01/17(日) 08:02:43.53 ID:cKCq4zlW0
状況が状況だっただけに、記憶が曖昧である。その事が黒子をおおいに混乱させていた
―気がするだけ!気がするだけですわっ!そんな馬鹿な事ありえませんの!
無意識のうちに、肌に張り付く髪を指でいじりつつ、当時の記憶を整理する

―そういえば・・・あの時私を身を呈してサメから隠して続けてくれていた様な気がしますの・・・

黒子「ああああああもう!!もうなんなんですのあの男はーッ!!」

自分でもよくわからなくなってしまい、思わず声を荒げ、それに相づちが入る

ゴリラ「フォッホ!?」

黒子「・・・え?」

考えに集中し過ぎていたのだろうか、狭いシャワールームの入り口を塞ぐように、先程のオラウータンがいたのに気がつかなかった
・・・その異常な目は明らかに黒子を見ており、そして彼の目付き、そして下半身にそそり立つものを見て、これらがどういう意味なのかお嬢様にも理解出来た

黒子「・・・ひゃあ!?」

裸体を隠す事もせず思わず後ずさる彼女の背に冷たい壁が当たる
しかしすぐに気を取り直しとっさに太股の鉄矢に手を伸ばす

黒子「あ・・・」
装備を始めとした彼女の衣類は、全てあのゴリラの脇の籠の中であった

全身ずぶ濡れの全裸で太股に手を伸ばす扇情的なその姿に、ゴリラは抑えきれなくなり、

―ついに飛び掛かって来た

44: 2010/01/17(日) 08:30:22.32 ID:cKCq4zlW0
ボート上

禁書「ん・・・」

上条「あ・・・!起きたか!?」

美琴「良かった・・・!」

少女の目覚めに心からの安堵を覚える二人

禁書「んんん・・・とーま・・・?短髪ぅ・・・?」
目を擦りながら呟く。まだ寝ぼけているのだろう

上条「いいからまだ寝てろ。ごはんが出来たら起こしてやるから・・・」

禁書「うんー・・・」
そう言って少女はまた眠りに落ちた

美琴「・・・それにしても、黒子ちょっと遅く無いかしら・・・?」

上条「・・・何かあったのかもしれないな」
重い空気が二人の間に流れる

お湯沸かしてお茶飲むまでもう少しやるます('A`)

45: 2010/01/17(日) 08:44:35.93 ID:cKCq4zlW0
美琴「アタシ、ちょっと様子見てくる!」
既にすぐ傍にまで救命ボートをつけており、何故か降りてきているタラップへと足を踏み入れる

上条「お、おい待てよ!一人は危険だ!俺が行く!」

美琴「何言ってんのよ!アンタ一人の方がよっぽど危険じゃないの!」

言葉につまる

上条「でっ、でも!」

上条「お前にもし何かあったら、俺はどうしたら良いんだよっ!」

美琴「え」

上条「俺がコイツをおぶって行く。それで一緒に行こう、それで良いだろ?」

美琴「うん・・・うん・・・」
機械的に頷く彼女の耳には、既に彼の言葉は入っていなかった

46: 2010/01/17(日) 08:57:22.76 ID:cKCq4zlW0
黒子「ハァッ・・・!ハァッ・・・!」

間一髪でテレポートで逃れ、見つからない様に移動をしつつ様子を窺う

―間違いありませんの、あれがこの船の船員達を・・・!

彼女の知る動物のそれとは遥かに一線を画していた

黒子「早く・・・この事をお姉さま方にお伝えしなければ・・・!」

ゆっくりと気付かれないように歩を進める。そう広くは無いはずであるが、迷ってしまったのだろうか、見覚えのない通路である

その時であった

美琴「黒子ー!いるなら返事してー!」

黒子「!お姉さま!!」
思わず駆け出してしまいそうになる、嗚呼・・・お姉さまが私の心配をしてくださっておりますの・・・!

上条「無事なら返事をしてくれーッ!」
―!?

47: 2010/01/17(日) 09:15:22.75 ID:cKCq4zlW0
咄嗟に足が止まってしまう
―そ、そういえば今私は・・・!!

ふと思いだす。そう、彼女の着替えはあのゴリラの傍にあり、とても持ちだす事が出来なかったのである
テレポートでボートまで移動をしなかったのも、乙女の本能から無意識のうちに制限でもしていたのだろうか

黒子「あ・・・やだ・・・!」
誰にも見られていないと分かっているが慌てて両手で身体を隠し、咄嗟に今来た道を戻る。流石にこのような姿を見せることなどできない

―もうあそこにはいらっしゃりませんですわよね・・・!

黒子は自らの衣類を取りに、先程のシャワールームへと足を急がせた

何かの気配を感じた上条が、先程まで黒子の居た位置を見る
上条「ん・・・?」

美琴「ど、どうしたのよ?」

上条「い、いや・・・今ここに何か居たような・・・」
ペシペシと小気味の良い音を立てて場所を示す

美琴「や、やだ・・・何言ってるのよアンタ・・・」
一歩後ずさり、顔に恐怖を張りつけて少女は少年の発言を否定する

美琴「壁の中に人なんているわけないじゃない・・・!」

黒子の居た通路は、上条当麻が気付くより前に壁に埋まってしまっていた―

50: 2010/01/17(日) 09:29:10.40 ID:cKCq4zlW0
黒子「どこ・・・!?どこですの・・・!?」

自分の荷物を置いたと記憶しているシャワールームを探しても何も見つからず、もしや記憶の間違えかとそれらしき部屋を一通り探すもやはり見つからない

ギィ・・・

黒子「!?」

ゴリラ「・・・フォホ!」

先程のゴリラが黒子の目の前に再び現れる

ゴリラ「フォホ!フォッホ!!」
黒子を見つけ喜ぶゴリラの頭には・・・

黒子「ちょっ!ちょっと!それ私の下着ですわよ!」
返しなさい!と彼の頭に思わず手を伸ばす

ゴンッ!

黒子「・・・あ・・・?」

天井のランプが落下をし、黒子の後頭部を直撃する
意識はあるものの身体が動かせず、倒れこむ黒子

ゴリラ「フォッホ!グォッフォ!!」
頭上からの獣の嬉しそうな声をただ聞くだけにしか、少女には出来なかった

51: 2010/01/17(日) 09:44:29.90 ID:cKCq4zlW0
海の真ん中に浮かぶ巨大な船の主、それがこのオラウータンであった

彼は自分のその特異な能力を自覚しており、自らこそが全ての王であると信じていた

力を与えてくれたDIOと名乗る人間に協力しているのは、いずれその寝首を掻く為の準備であった

最初一人の少女が中に入ってきた時、彼は新しい玩具が手に入ったと喜んでいた

この少女の知能はいかほどであるのかを試すべく、自らを檻の中に閉じ込め、鍵を開けられるかどうか試しもみたが彼女には難しかったようだ

ここでの生活に彼は概ね満足をしてはいたものの、一つだけ満たされない事があった

―それは収まらぬ性欲である

元々野生の生物であることに加え、船上では相手が見つからないのである

そこでこのメスは丁度良かった。まだまだ彼好みとは言い難い幼い身体つきではあったが、それでも無いよりは遥かに良い

彼のスタンドは「力『ストレングス』」と言う

その能力はとても単純なものであるが、同時にとても強いものであった

人型を形成するので精一杯である人間と違い、彼のスタンドとは

この船そのものであった

52: 2010/01/17(日) 10:01:30.84 ID:cKCq4zlW0
船の形を変え、全裸で怯えている少女を意のままに動かす

自分を見下すような目で見た、このメス猿にはお似合いの姿であり、この哀れな少女を観察していると何故か彼はとても興奮をした

この船に迷い込んだ漂流者から様々なものを彼は得ており、その中の一つには彼のお気に入りのスーツがあった

それは今のように、彼が特等席に居る間にのみ着用をすると、本能に忠実な彼自身が決まりごとを作るほどであある

彼は知っていた。「下等な生物は服などを着ない」「下等な生物は自分に従わなければならない」「下等な生物は氏ぬまで自分のものである」と

この船そのものが彼自身であり、少女がどこで何をしているのか、彼女の身体はどうなっているのか、その隅々まで彼は見ていた

恐らくこの少女を救出しにきたであろう、男と女の二人が船に侵入してきたのがわかる

力「・・・この女は嫌いだ」

何故かは分からないが、酷く嫌な感じがする女がいた。男の方は何かを背負っているのだろうか両手を後ろに回している

―この二人はいらない

そう考えた彼は、少女とは決して鉢合わない様に通路を巧みに作り変えた

少女は何を考えたのか、彼の意に反して元の通路を戻り始める

―違う、そうじゃない。お前は俺の思う通りに動けば良いんだ!

少女の身勝手な行動に怒りを覚えた彼は、自らの手で直接少女をしつけてやろうと、少女の元へと足を運んだ

53: 2010/01/17(日) 10:18:01.36 ID:cKCq4zlW0
黒子「やめ・・・なして・・・はな・・・し・・・」
少女は声にならない哀願をする。しかしそれすらも彼にとっては逆効果でしかなかった

自然界において、メスがオスに身体を許すということはオスの強さの証明であり
また、メスがオスに心を許し、他のオスよりも優れていると認めたということである(勿論、例外は多数存在するが彼には必要のない知識であった)

彼は良い事を思い付いた。この生意気そうな下等なメスを、自分に服従させてやる、より効率的な方法を

黒子「う・・・あ・・・」

片手で少女の身体を持ちあげ、通路を歩く
本当であれば適当な棒を使って彼女自身を撃ち、這いつくばらせるつもりであったが、まだ動けないようだ

彼は目的地に到着すると同時に、壁に少女を押しつけた

黒子「あ・・・が・・・っ」
―やめて!お願い、やめてくださいまし!

まだ回復していないのか、少女は抵抗も出来ず為すがままにされてしまう

黒子「あ・・・」
―まさか・・・!やめて!お願い誰か助けて!お姉さま!

少年と少女達からは見えなかったが、黒子の瞳には透き通る薄い壁一枚を隔てた先に、彼らの姿が見えた

彼は背後から少女の両手を掴み上げ、少女と自身のまぐわりを見せつけてやらんとばかりにゆっくりと、少女のメスへと向けて腰を落とし狙いを定めた―

56: 2010/01/17(日) 11:22:26.09 ID:cKCq4zlW0
禁書「んんん・・・」

先程まで呪文のような寝言を唱えていた少女が、彼の背中で目を覚ました

上条「あ、悪い。起しちまったか・・・?」

ふるふる、と首を振る少女

禁書「おといれ行きたいんだよ・・・」

顔がやや赤いのは、寝ている間に体温でも上がってしまったのだろうか

上条「あ、トイレか。待ってろ、今連れて行って―」
美琴「ちょぉぉぉっと待ったぁあああ!!」

美琴が割って入る

美琴「アンタ変態!?女子トイレにまで来るつもりなの!?」

上条「え、いやだって状況が状況なら仕方がないんだって・・・」
この数日で何度か二人の少女から聞かされた言葉を反芻する

禁書「とーまはえOちなんだよ!」
美琴「アタシ達だけでいくから、ここで待ってなさい!」

上条「・・・は、はい・・・」

二人の少女が女子トイレへと入って行くのを見ているだけしか出来なかった

65: 2010/01/17(日) 14:52:14.88 ID:cKCq4zlW0

お姉さまとシスターの二人が別の部屋に、自分から離れて行く姿を見て、黒子は絶望してしまった

残された少年はは手持無沙汰なのか、今までずっと背負っていたせいで固まってしまった手首をブラブラと動かしストレッチをしている

こちらを見ながら―

―ごめんなさい、お姉さま。黒子は今から、この汚らわしい野獣に・・・野獣に・・・

「野獣」の単語に、今以上の屈辱を覚え、満足に動かないはずの目から思わず滴が零れる

男性の知識があまりない少女ではあったが、今から自分がされるであろう行為は分かった

―何でこっちを見ておりますの、上条当麻・・・

壁を隔てて数十㎝という距離ではあるが、見えてないということは分かっている

だが、彼がこちらを見ている。ということが更に少女を辱めていた

少年はこちらに気づいていない、そしてこちらは数秒後には・・・

―あ・・・あはははは・・・救いのない文字通り美女と野獣ですわ・・・

事実上の「詰み」に、黒子はもう思考を放棄してしまっていた

―白馬の王子様なんているわけありませんわ・・・現実は非情ですの・・・

66: 2010/01/17(日) 15:12:54.30 ID:cKCq4zlW0
上条「うーん・・・!」

少女を背負っていたせいで腕が痛い
少年は大きく伸びをしながら彼女達を待つ

―それにしても、先程の違和感はなんだったのであろうか

伸びを続けながら考える

上条「・・・やっぱり、気のせいかな」

壁に右手を突き身体を休めようとすると、突如壁が崩れてしまう

上条「う、うわわ!」
一度ついた勢いは簡単には止まらない

ムニュ

柔らかいものに突如触れ
黒子「・・・あ・・・!」

上条「!?・・・ええと・・・」

崩れた壁の奥から現れた、全裸の少女とゴリラという即座に理解出来ない光景ではあったが、それもゴリラの下半身を見るまでであった

上条「・・・!おい!お前何やってるんだよ!!」

考えるよりも早く、彼はゴリラを殴り飛ばしていた

67: 2010/01/17(日) 15:35:14.11 ID:cKCq4zlW0
ゴリラ「ッ!プギィッ!!」

手空きであった左手で殴り抜ける、利き腕ではないものの野生の動物を驚かすのには十分だったようだ
情けない悲鳴を上げて彼は一目散にその場を離れる

上条「おい!白井!大丈夫か、しっかりしろ!おい!」
駆け寄ってくる少年に抱え起こされる

黒子「・・・う・・・」
―私は大丈夫ですの・・・

まだうまく喋れないが、目線でそう答える

上条「・・・!よかった・・・!」
少女抱え起こしたまま、彼女の無事を心からの安堵し、少年は彼女の胸元に頭を預ける

黒子「・・・ッ!」

上条「・・・ん、この柔らかいのは・・・」
おそるおそる頭を上げ

美琴「かーみじょーうくぅーん・・・?」

禁書よりも早くトイレから出てきた、鬼が彼の背後に立っていた

美琴「何やってんじゃあぁァァアァッ!!」

上条「ちょっ、ちょっと誤かッ!不幸だああああッ!!」

70: 2010/01/17(日) 16:01:09.66 ID:cKCq4zlW0

上条「・・・はい、その通りでございます。全ては私が悪うございます」
日本人の誉れとも言うべきであろうか、これ以上無い程にピシッと決まっている土下座をしつつ彼は答える

美琴「謝罪する相手が違うんだけど?」
にっこりと笑いながら突っぱねる少女

上条「はっ!白井様、この愚かな上条当麻に御慈悲を!」
向き直り、上条の上着だけを羽織っている少女の足元で頭を下げる

黒子「べっ、別にそんなの良いですわ!」
すっかり回復したのか、普段通りの少女が答える

もっとも、実際彼女の心の中は何とも形容しがたい感情で激しく揺れていたのだが、それを彼が知るよしはなかった

黒子「そ、それよりも!あのゴリラのことですわ!!」

71: 2010/01/17(日) 16:15:56.20 ID:cKCq4zlW0
美琴&禁書「ゴリラ・・・?」

顔を見合わせる少女達

上条「そっ!そうだアイツ!」

勢いよく顔を上げ―

黒子「きゃっ!」

今の彼女の唯一身につけている、丈の短いスカート状態であった上着を一気に捲りあげてしまう

上条「・・・」
サァーっと蒼白する彼の肩にぽんっ、と手がおかれる

美琴「ねぇ、とうまくーん・・・?ひょっとして、それわざとやってない?」

絶叫が艦内に響いた

72: 2010/01/17(日) 16:41:15.53 ID:cKCq4zlW0
―あいつら頃してやる!絶対に頃してやる!

少年に殴られたという事実は彼のプライドを酷く傷つけた

絶対の自信を持つスタンドによる作られた壁が崩れた事も、あのメス猿が奪われた事も全てが腹立たしかった

彼は自分では気づいてはいなかった。当然、彼は完璧でも全ての王でもないことに

長い間船上で御山の大将をしていたが為に、野生の動物に必要な能力が既に欠如していることに

たかだか人間風情の拳一つに、無意識下に恐怖を覚え逃げてしまったという事実に

力「!」

交尾かそれともスキンシップか、はたまた毛繕いを終えたのか、メス猿を囲んだボス猿と思われる男が移動を始める

都合の良い事に、移動先はこちらである

グッフォ、と邪悪な笑みを浮かべる。彼は少年を頃し、メス猿達を奪い返す為に動きだした

75: 2010/01/17(日) 16:57:17.55 ID:cKCq4zlW0

美琴「安心しなさい黒子。その工口猿ぶっ飛ばしてやるわ!」

事の次第を黒子から説明を受け(とは言っても、犯されかけていましたなどとは口が裂けても言えなかった)、美琴は可愛い後輩の為にも宣言をする

上条「あのー、御坂さん。何で上条さんを見たまま言うんでせうか・・・?」

美琴「・・・自分の胸に聞いてみればぁ・・・?」
禁書「とうまがいけないんだよ!」

少年はばつが悪そうにしている

―悪い人ではないみたいですの・・・

彼女が敬愛して止まないお姉さまをたぶらかすと思っていた。しかし少年への評価は彼女の中で徐々に変わりつつあった

上条「はぁ・・・」

肩を落としてトボトボ歩く少年。誰からとも言わず、自身から進んで先頭を歩いているのは彼の性格なのだろう

・・・ガラッ

突然天井の一部が損壊し、彼の頭上へ降りかかる。あまりにも急なことに動けずにいる少年

76: 2010/01/17(日) 17:13:11.32 ID:cKCq4zlW0
黒子「・・・!危ないですわ!」

ダッシュの勢いでそのまま少年を押し倒す。間一髪と言ったところであろうか、幸い二人とも怪我はなかった

上条「・・・うぅ、っ悪いな白・・・イ・・・サーン・・・!」

突然少年の性質が堅くなる
黒子は気付いていなかったが、上着一枚だけしかつけていない彼女の胸が少年の背に当たっていたのであった

黒子「べ、別にこの程度何でもありませんでしてよ!」

微妙な空気が二人の間に流れる

―ははは、早くどいてさしあげませんと!
顔を赤くする黒子。下にいる少年の顔も心なしか赤い

78: 2010/01/17(日) 17:28:34.87 ID:cKCq4zlW0
今の二人を知らない人が見たら何と思うだろうか


美琴「・・・私」

上条「!み、御坂さん!これは不可抗力ですよ!?上条さんのせいじゃ!!あ、でも立ちあがるのはもうちょっと待って!」

美琴「私、先に行くから・・・!」

全力で疾走しだす美琴。それを追いかけようと思った上条であったが、上の黒子と

―今立ち上がったら下の方が・・・

上条当麻の中に残るほんのわずかなプライドが、あのゴリラと同類とみられることだけは絶対に避けたがっていた

79: 2010/01/17(日) 17:35:36.60 ID:cKCq4zlW0
―!一人が分かれた!

船の天井を崩し、少年を始末するつもりだったが、それを例のメス猿に邪魔をされてしまう

その事におおいに腹を立てた彼ではあったが、この好機を前に思わずにやけてしまう

何故だろう、近寄ると全身に嫌な感じがするメスであり出来ることなら関わりたくなかったのであるが、そうは言ってられない

―あのオス猿を動けなくしてやり、その目の前であいつを囲うメス共との行為を見せつけてやる!

これ以上身にも心にもダメージを与えられることはないだろう

通路を作り変え、巧みに少女を自分の部屋へと誘導する

力「ブォッフォ!」

そしてついに、少女が彼の思惑通りに目の前に現れたのであった

81: 2010/01/17(日) 17:50:09.37 ID:cKCq4zlW0
美琴「・・・アンタね?」

メス猿が何か言っている。理由は分からないが、殺気だっているところからあの群れから飛び出してきたのだろうか

―まずは両手足を拘束して、動けなくしてやってからその衣服を剥ぎ取ってやろう。その方がお似合いだ

そして次は首輪でもはめて飼い慣らしてやろうか、彼はそう考え、少女の足元の床を変化させて自由を奪おうとし―

力「プアッ!?」

少女の膝が彼の顔面に食いこんでいた。見えなかった、あんな速さは野生に居たころですら見たことがない

何が起きたのか理解できない

82: 2010/01/17(日) 18:15:54.08 ID:cKCq4zlW0
美琴「・・・可愛い後輩を良くも好き勝手してくれたみたいねぇ・・・ッ!」

果たしてそれだけが本音なのだろうか、更に少女が彼を激しく殴打する

美琴「うあああああああああッ!!!」

彼に反撃する暇も与えず、音速にまで加速した少女による一方的なリンチが始まる

力「ギィアァッ!」

慌てて壁の中に潜り、避難しようとして―

ドッグォン!
次の瞬間、彼のほんの数㎝横の壁が爆散をしていた

それを見た彼は、ついに理解した
―俺は王なんかじゃなかった

理解をした
―あの全身を刺激する感覚は、王の持つオーラであるのだ

そのまま、大人しく少女に殴られ続ける事を選ぶのであった。
そして理解をした
―俺の王になるのはあなた以外にいないです・・・!

83: 2010/01/17(日) 18:33:14.06 ID:cKCq4zlW0

美琴「たっだいまー!」
やけに上機嫌に少女が帰還する

上条「は、ははぁ!御坂様!御無事でしたか!!」
少女の足元で土下座スタイルを維持し、彼女の機嫌をこれ以上損ねない様に、ちらちらと顔色を窺う
―あ、また短パンはいてる

そこではない

黒子「おっ、お姉さま!その御怪我は・・・!?」
両手を胸の前に組み、世界の終わりのような声を上げる黒子

そう、御坂美琴の全身は赤い血で染まっていた

禁書「・・・?これ、短髪の血じゃないんだよ!」

美琴「んー?まぁ、ちょーーーっとねぇー?」

爽やかな笑みの浮かべる少女。無意識のうちに、三人は「聞いてはいけないこと」があると理解をした
結局その時の彼らは、その笑顔の裏に隠された事実を追及することは出来なかった

美琴「さあ!大きな船も手に入ったし艦内探索でもしましょうか!」
足元で跪いている少年の腕を、ぐいっと持ちあげる

上条「キャアアアアァッー!お願い、お願いだからまだらめぇー!」

下半身に未だ収まらぬテントを張る少年

本気美琴の第二ラウンド開始のゴングが鳴り響いてから、KOのゴングが鳴り響くのに、そう時間はかからなかった

95: 2010/01/17(日) 21:09:49.41 ID:cKCq4zlW0
禁書「zzZ」

美琴「よし、これでこの子はもう大丈夫かな」

豪華な客船のベッドに少女を横たえると、すぐに眠りに落ちていった

上条「・・・」

黒子「ところで、この船。どうやって動いていらっしゃいますのでしょうか」

黒子が呟く。確かに乗船している人間の姿は無く、いたのはあの醜悪なゴリラだけだったのである

上条「・・・」

・・・やり過ぎたかもしれない
美琴「それなのよね、とりあえず動かし方だけでも」

分かれば、と美琴がそう答えた瞬間

ゴリラ「・・・フォッファ!」

黒子「ひぃっ!」

美琴「こ、こいつ!まだ!?」

美琴が先程仕留めたと言っていた、この船の主が少女達の前に現れたのであった

98: 2010/01/17(日) 21:29:24.36 ID:cKCq4zlW0
ズル・・・ズル・・・
美琴「・・・!?待って、何か・・・様子が・・・」

先程の攻撃が効かなかったわけなどあるはずがない。ゴリラは一歩、そしてまた一歩と少女達に近寄る
破れたスーツから覗くその手はロープをくくりつけた箱を引きずっていた

黒子「・・・あ・・・!あぁ・・・っ!!」

恐怖がフラッシュバックする。その場から逃げだすこともできずに、美琴にしがみつく

ゴリラ「・・・ファ・・・」

―来るか!
反射的に構える美琴

美琴「・・・え?」

先程のゴリラは美琴の顔色を窺うように、持ってきた箱を差し出すのであった

美琴「・・・これ、くれるの?」

言葉が通じたわけではないだろう。しかし、ファッフォ!と力強くうなずく彼の姿からはそれ以外は考えられなかった

99: 2010/01/17(日) 21:43:05.74 ID:cKCq4zlW0
彼は黒子の目から見ても、美琴に対し非常に従順であった

美琴「ゴリ太ー」

そのセンスはどうなのだろうか。彼女がそう呼びつけると、瞬く間に彼が現れた

危惧していた食料と、シャワー水以外での飲み水はの問題は、彼の持ってきた箱によって全て解決した

食料の大半は彼が既に食い荒してしまったのだろう、残っているのは缶詰などといったものが主であった

黒子「・・・やはりお猿さん程度では、缶詰めなんて開けられなかったんですわね」
精一杯の皮肉、強くいってやるつもりであったのだがやはり聞こえないような声しか出せなかった

―お姉さま、大丈夫なのでしょうか

アゴでゴリラを扱き使う愛しの彼女を心配する。別に、決してあのゴリラが羨ましいわけでは・・・!

100: 2010/01/17(日) 22:01:34.89 ID:cKCq4zlW0
黒子「・・・今は、そんな気分にはなれないですわ」
普段の彼女を知る者であれば、天変地異の前触れか、彼女に良く似た別人と思っていたであろう

何でもこの箱に入れていたのであろう、黒子の衣服もすぐに見つかった。
これで全ての目的を達成し、思わずため息が出てしまう

―・・・何で今私、ため息なんて・・・?
自分の感情が理解出来ず、困惑してしまう

頭を振り、衣服を広げる。しかしずさんなしまい方をした為であろう、食べカスやほこりまみれで洗う必要があった
―し、仕方ないですわね、もう少しこの上着を借りておいてさしあげますわ!

少女は、何故か心の底から湧きあがる自らの感情にまだ気づいていなかった

美琴「黒子ー、アタシちょっとシャワー浴びてるわねー」

もう既にシャワールームに居るのであろう、水の流れる音がする
もし何かあればヨロシク、という意味だったのだろうが、黒子に意図は伝わらない

黒子「はぁーいっ!今私も行きますわ!お!ね!え!さ!まぁぁぁぁあぁん!!」

普段の調子に戻った黒子は、自らもと再びそう広くはないシャワールームへと足を運ぶのであった

102: 2010/01/17(日) 22:23:46.26 ID:cKCq4zlW0
美琴「ちょ、ちょっと!?狭いってば!?やぁん!?どこ触って―」
黒子「ああお姉さまお姉さま!私、白井黒子の初めてはお姉さまのものですわー!」

少女達が裸のお付き合いをしている間に、上条当麻は目を覚ました

上条「・・・うぅ・・・?」

何があったのだろうか、ここは・・・
―そうだ!あいつは!

ゴリラ「フォホ?」
上条の目の前にある扉の入り口の前に彼がいた。何かしていたのかもしれない、だがそんな事どうでも良い

上条「おっ!お前っ・・・!」

慌てて立ち上がり、少女達の姿を探す
―禁書はいる。クソッ、後のビリビリと白井は・・・

上条「おいお前!二人をどこへやった!」

駆け寄り、彼のスーツの胸倉を掴みにかかる

103: 2010/01/17(日) 22:40:21.47 ID:cKCq4zlW0
ゴリラ「ギィアァッ!」
自分を少年から守るべく、彼は少年の足元に突起を作ってすっ転ばす。勢いはとまらず、少年は頭から飛び込むように彼の後ろのドアへと飛び込む

上条「う、うわわあっ!?」

美琴「も、もうアタシ先に出るわよ!」
黒子「ああ御待ちくださいまし!お姉さまのそのおみあし!透き通る様な柔肌!黒子は、黒子はもうッ!!」

ダンッ

上条「い、いてててて・・・、あの野郎、なに・・・を・・・」
身体を起こす少年。その目の前に、美琴とその背後から抱きつく黒子がいた
それは全く問題ないのであるが、問題は彼女達の格好。一糸まとわぬ姿、後ろにいた黒子はともかく、美琴の方は―

美琴「・・・なっ・・・!?」
黒子「・・・き・・・きゃ・・・」

第三ラウンドが鐘が鳴り響く。その日上条当麻は再び目を覚ますことはなかった

104: 2010/01/17(日) 23:05:45.59 ID:cKCq4zlW0
時は遡り、黒子が出発をした翌日
学園都市

佐天「ジョセフさん、お二人がいらっしゃいましたよ!」
少女の呼びかけにジョセフは反応する

ジョセフ「やあ、いらっしゃい」

彼との交渉は熾烈を極めたが、ある条件を元に彼らは渋々とOKを出した

ジョセフ「早速で悪いのだが、君にはこれからシンガポールへと向かって貰いたい」

柔らかい語り方ではあったが、反論を一切許すつもりがないというのも分かっていた

ジョセフ「本当はもう一人一緒に連れて行く予定だったんじゃが、どうにもせっかちな娘さんでの」

ジョセフ「この飛行機は財団の私有物で、シンガポールまでまっすぐに行ける。そこで彼らと合流してほしい!」

少女「飛行機に乗るのをすっごく楽しみにしていたんだよ!ってミサカはミサカは飛び跳ねて喜んでみたり!」

少年「おィ、はしゃいでンじゃねぇ。遊びに行くわけじゃねぇンだぞ」

一方通行と呼ばれる少年と、打ち止めと呼ばれる少女はシンガポールへと向かう飛行機へ搭乗した

106: 2010/01/17(日) 23:25:24.13 ID:cKCq4zlW0
財団員「このホテルに明日彼らは到着するとのことです」
飛行機から降り、財団の男の案内でホテルの前に案内される

一方通行「へェ・・・なかなか良さそうなホテルじゃねェか・・・」

打ち止め「大っきくててっぺんが見えないね!ってミサカはミサカは興奮してみたり!」

飛行機を見た時同様ピョンピョンと飛び跳ねて気持ちを表現する少女

―取りあえずまァ、ホテルでチェックをしてゆっくり待つかね

フロント「ではこちら、912号室と、1212号室のカギです」

打ち止め「ありがとうお姉さん。ってミサカはミサカはぺこりと頭を下げてみる」

912号室前

一方通行「じゃあ俺が1212号室の方でいイな」
じゃアな、と言ってエレベーターへと足を運ぶ

彼にとっても少女と同室というのは気が休まらないというのは口が裂けても言えない

え?と目を丸くする少女
打ち止め「違うよ!ミサカはあなたと一緒の部屋なんだよ!ってミサカはミサカは腕を引いて部屋に引っ張っていってみたり!」

108: 2010/01/17(日) 23:42:25.03 ID:cKCq4zlW0
一方通行「おっ、おい!」
バン!と勢いよく部屋の扉を開く少女

打ち止め「わー・・・!すごい・・・!ってミサカはミサカは・・・」
眺めの良い景色と、高価そうな調度品のある品の良い部屋であった
ガラス窓はぴかぴかに磨かれていて、テーブルの上には飲み物や果物が用意されている

感動を隠せない少女は背後の少年を振りかえる

だが、少年は少女の予想とは逆の、真剣な顔をしていた

一方通行「おィ・・・同じ部屋で良ィ。が、1212号室にする。先にイってろ・・・」

打ち止め「え・・・?え・・・?」

一方通行「良ィから早く行け!じゃねェと今すぐ学園都市に送り返すぞッ!」
少女への説明をしている暇はない

打ち止め「わ、わかったよ・・・ミサカはミサカは大人しくあなたの指示に従って・・・」
瞳に涙を溜めたたたっと駆け出す少女。彼が何かを感じ取り、足手まといになる自分を逃がしているのだ、という事は頭では理解出来ていた

一方通行「・・・こんな間抜けな刺客がいたとはなァ」
第三者にも分かる程の苛立ちを含め、スチャと隠し持っていた銃と、財団に渡された特殊なデバイスを構える少年

一方通行「さァ・・・今すぐにそこから出てこい・・・」

ギィ・・・

全身に傷のある男が殺気を含ませ、中からゆっくりと這い出てきた―

110: 2010/01/17(日) 23:58:34.14 ID:cKCq4zlW0
男「・・・よく俺が隠れていると気がついたな・・・」

一方通行「ケッ・・・てめェも脳味噌に補助デバイスがいるみてェだなァ・・・?」

テーブルの上に視線を移す
一方通行「炭酸に果物を、こんな日の当たる部屋に置いたままにするわけねェだろうがッ!!」

男「・・・俺の名は呪いのデーボ。スタン―」

ダンッ!ダンダン!

デーボ「・・・がっ!?」

一方通行「てめェの能力なんざに興味はねェんだよ・・・」
少年の放った凶弾が男の腕を、腹を、そして片足を貫いた

痛みに顔をゆがめるデーボ。しかしその顔にはどこか余裕の色が浮かんでいた

デーボ「・・・グヒッ!ウハハ!ウハハハハハー!やりやがったな!」

一方通行「なンだコイツ・・・!狂っていやがる」

追いつめているはずの男は勝利の確信を得ていた

115: 2010/01/18(月) 00:12:03.99 ID:nhVXBrQq0
デーボ「痛えよォーッ!!グエヘヘヘ!!よくもよくもやりやがったなぁ!これでお前を思いっきり恨めるというものだ!ヒヒヒヒャハハハハァアアッ!!」

痛みで気がふれたのか、男は続ける

デーボ「俺のスタンドは!俺の悪魔『エボニーデビル』は恨めば恨むほど強くなるのだッ!チクショオオォッ!!バババヒヒヒファハァー!!」

先程のまでの男とはまるで別人かのように豹変をするデーボ

デーボ「わざと見つかって、わざとやられてやったんだよォォォッ!!ヒヒヒヒヒ!!」

一方通行「・・・うるせェなァ・・・」

デーボ「おいおい!足元がお留守だぜ坊やァーッ!」

少年に気付かれぬ様に配置していたスタンドで、少年のにナイフを突き刺―

デーボ「う、がぁぁぁぁっ!?な、なじぇ!なんで俺の手にぃっ!!」
―確かに俺の悪魔は奴の足を貫いたはずだッ!
しかしそのダメージはデーボ本人が貰っていた

116: 2010/01/18(月) 00:27:58.27 ID:nhVXBrQq0
デーボ「チクショオオオオッ!!偶然だ!スタンドの手元が狂って偶然突き刺しちまっただけだ!この恨みで更に俺のスタンドは強くなる!!」
それから何度も何度も悪魔は少年を斬りつけようとして

数分後

一方通行「・・・何やってンだてめェは一人で・・・」
呆れた様に男を見る少年、瞳に憐れみの色が含まれているのを本人は自覚しているのだろうか

デーボ「チクショォォォッ!てめえまたやりやがったなあああ!恨んでやる!恨んでやるぞぉぉぉっ!!!」
悲痛な声を上げて男が床を転げまわる。少年が付けた傷は最初の3発の銃痕のみであり、それ以外は勝手につきはじめたのだった

一方通行「なァ・・・?ひょっとして、俺を通り魔だとか、凶悪犯罪者とかに仕立てあげようとでも思ってンのかァ・・・?」
それなら意味ねェぞと、頭を掻きながら少年は付け加える

一方通行「お前の負けだ、何をやっても俺には勝てねェよ・・・」

デーボ「ヒィ・・・ッ!ハァッ・・・!!クク・・・・!」

男の目に一筋の邪悪な光が宿っていたのを、少年は気が付かなかった

117: 2010/01/18(月) 00:39:58.03 ID:nhVXBrQq0
突如男は立ち上がり、急スピードで部屋の入り口へ走る

一方通行「なっ、待ててめェ!!」
更に数発銃弾を浴びせてやる、しかしその弾は目にも止まらぬ速さで間に割って入った彼の人形により粉微塵にされてしまう

デーボ「てめぇはよォォォッ・・・!さっき言ってたよなぁッ・・・!」
まだ部屋に居る少年にも聞こえる程の大きな声で男が叫ぶ

デーボ「1212号室だろォォォッ!!!?」

一方通行「ンなっ!?」

少年の顔に初めて焦りが浮かぶ

一方通行「テメェェェェェェェッ!!!」

全力で少年は駈け出した。少女に自分から離れる様にと命じた数分前の自分を、彼は恨んだ

もし彼が悪魔のスタンドを持っていたのであれば、数分前の自分を呪い殺さんばかりに、自らの愚行を恨んだ

118: 2010/01/18(月) 00:55:03.23 ID:nhVXBrQq0
打ち止め「・・・ぐすっ」
少年に追い立てられた少女は、1212号室のベッドに顔をうずめていた

―ほんの少し前までなら、自分がいなければ彼はまともに戦う事すらできなかったのに

それは彼女自身が彼と共に在ることの出来る理由であり、もしそれがなくなってしまえば自分はもういらないのかもしれない

急に不安になる
―もし、この旅が終わって彼の脳が以前と同様に回復をしたならば・・・

彼の完治というビジョンが思い浮かぶ。彼女はいやいやと頭を振ってそれを頭から追い出す

ジョセフ『この依頼を受けて貰えるのならば・・・財団で君の脳の治療を請け負い、君の為の簡易デバイスの提供をしよう』

それが彼らが出し、また少年が呑んだ条件であった
最初、少女はこの条件を聞いた時は自分の事の様に喜んだ。好きな人の幸せを願わぬ人などいない。人として当たり前の感情だろう

119: 2010/01/18(月) 00:58:58.19 ID:nhVXBrQq0
―私、最低だ
彼にとって、脳の完治はこの上なく望むものであろう。彼の願いを今自分は否定した
―私・・・は・・人じゃないのかな・・・

あの頃を思い出してしまう。毛布一枚で、一人で街中を彷徨っていたあの頃を
人として生きていたわけでもなく、誰にも必要とされなかった頃の自分を

打ち止め「いや・・・嫌だよ・・・ミサカは・・・ミサカは・・・っ!」


男「大丈夫だよォ・・・!お嬢ちゃああああん・・・!」

打ち止め「!?」

見知らぬ男が部屋のドアを突き破り彼女のすぐ背後に迫り来ていた―

120: 2010/01/18(月) 01:16:53.54 ID:nhVXBrQq0
一方通行「ちィッッッッッくしょオオオオオッッッッ!!!!!」

手遅れであった。デーボの仕業であろう、近くのエレベータは破壊されており、少年は全力で階段を駆け上がってきた

突き破られた1212号室のドア、そしておそらく少女が抵抗を示したのであろう、部屋のあちこちに散乱した調度品が転がっていた

おそらく、そのまま連れ去られたのではないだろう。両者の力量を考えれば、少女など一瞬で捕まってしまっている

それでも、部屋がこれほどまでに荒れているというのは・・・部屋の中を逃げ惑う彼女を弄ぶように追いかけまわしたのだろう

とても怖かっただろう、苦しかっただろう。白いベッドの上に少量ではあるが、血が飛び散っている。それが何を意味するのか、考えたくは無かった

デーボは『屋上へ来い』と大きく部屋の壁に書き残していた

一方通行「あの野郎・・・!頃す!頃してやる・・・ッ!!」

ぴぴぴっと気の抜けた音がし、簡易デバイスがタイムリミットが迫ってきていることを告げる

デバイスなんて無くても、能力が使えなくても構わなかった
―頃してやる

少年は例え自分がどうなろうとも、あのクソ野郎だけは頃すと誓い、屋上へ急いだ

122: 2010/01/18(月) 01:33:27.15 ID:nhVXBrQq0
デーボ分終わったら寝ます('A`;)

打ち止め「・・・う・・・あ・・・」

一方通行「おいっ!しっかりしろ!!返事をしやがれェェッ!」

デーボ「おやおやぁ~?ようやくナイト様のご登場かねェェッ?」

一方通行「このクソ野郎がァァァァッ!!!」

男の足元で、ぐったりしている少女。辛うじて意識があったらしく、少年の声を聞くと目に光が宿った

打ち止め「・・・あ・・・!」

一方通行「!!良かった・・・ッ!ぐっ・・・」
悲痛な声を上げる少年、最悪の事態だけは避けられていた。しかしその次の最悪が彼を襲う
―補助デバイスの効果時間の終了

124: 2010/01/18(月) 01:46:43.18 ID:nhVXBrQq0


デーボ「今お前の考えている事を当ててやろうっ!」
男は続ける

デーボ「『この少女が、俺に殺されているという最悪の事態は避けられた』と!」

デーボ「だが、本当に最悪なのはそうじゃあないッ!」

ガッと少女の頭を人形の足が踏みつける

打ち止め「うっ・・・ぐっ・・・」

一方通行「やめろォォォッ!お前のターゲットは俺だろう!俺をやりやがれェェェッ!!」
一気に全身から血の気が引く、もう自分でも何を言っているのか分からない

デーボ「その通りだよ」

男が少年の言葉に相槌をうつ

デーボ「取引だ、貴様がその銃で自らの命を断てば、このガキの命は助けてやるッ!」
―勿論嘘だけどなァーッ!!

125: 2010/01/18(月) 01:57:01.94 ID:nhVXBrQq0
ザアァァと、屋上に強い風が吹き付ける。既に騒ぎになっているのだろう、下では人だかりが出来ている
目線を合わせたまま、二人は動かなかった

デーボ「ククク・・・どうした・・・?出来んのか?」

―こいつが約束を守るわけなンてねェ・・・!
もし本当に約束を守るというのであれば、少年は喜んで命を差し出していた。彼もまた、そういう種類の人間なのであった

打ち止め「・・・だ・・・め・・・ミサカは・・・ミサ・・・カは・・・」

ぐぐぐっとスタンドに頭を押さえつけられながらも、少女は少年を止めていた

デーボ「制限時間だ。後10秒で決めろ、出来ぬのならこのガキを頃し、俺は逃げさせてもらう」
お前が育ててくれた、この悪魔の力ならここから落下するくらい容易いものだ。と彼は付け加えた

一方通行「おい・・・打ち止め・・・」
少女に呼び掛ける

一方通行「悪ィ・・・お前の命は無駄にしねェ・・・!」

互いの目を見る
打ち止め「・・・うんっ!ミサカはミサカはその言葉を信じる!!」

デーボ「ククク・・・戦場のラブ・ロマンスかね?泣かせるじゃないか」
喜劇を見ているかのように手を叩く。絶対の余裕があるのだろう、邪魔をするなどもしない

デーボ「あと5秒だ。ここから貴様が何かをするよりも、俺の悪魔がこのガキの頭をブチ抜く方が遥かに早いッ」

一方通行「ならその後でも!俺がてめェをぶン殴ってやらァッ!!」
少年が駆け出す

127: 2010/01/18(月) 02:02:21.73 ID:nhVXBrQq0
デーボ「馬鹿が・・・!悪魔よ!そのガキの頭を潰れたトマトのようにブッ潰してやれ!ブチュンとなァーッ!」

ブチュン

スタンド越しに、足に妙な感覚が生じる
―ククク哀れなガキだったな

デーボ「な・・・ッ!?」

力の限り少女の頭を踏み抜いたはずの足は、彼の身体にめり込み、肩から骨を突き破るまでに至っていた

一方通行「助かったぜ・・・てめェが分かりやすいクソ野郎でなァ・・・!」
目の前にまで迫りくる少年

一方通行「おオオオオオオオオオオッ!!」
力の限り、腕を男の顔をめがけて振り抜く

デーボ「ガッ!っぶわああああああああッ!!!」
勢いをそのままに屋上から落下をする、スタンドも再起不能な今、彼が生き残る手段は無い

一方通行「大事なこいつの命をてめェごときなんぞにくれてやるなんざ、それこそ無駄なんだよ・・・!」

少女を抱え起こし、少年はそう教えてやる
しかしその言葉を男が理解することは永遠になかった

大好きな彼に抱えられ、少女は緊張の糸が切れたかのようにゆっくりと目を閉じ、そして気を失った―

149: 2010/01/18(月) 20:00:58.38 ID:nhVXBrQq0
「・・・!!~~~!!---ッ!」

部屋を突き破らんばかりの怒号
それに呼応するかのように少女の目が覚める

打ち止め「・・・んっ」

気がつくとベッドの上で、目の前には少年がいた

一方通行「!!おっ、おいィ!大丈夫なのか!?」

少年も少女に気がついたようで胸倉を掴む手を離しこちらに詰め寄る

一方通行「痛いところはねェのか?なンか食いてェもンはねェか!?」

打ち止め「う、うん・・・!ってミサカはミサカは困惑しながら答えてみる」

医師「ゴホンッ!・・・だから言ったじゃないですか、すぐに目を覚ましますよって・・・」

先程まで少年に胸倉を掴まれていた男が割り込む

打ち止め「・・・誰?とミサカはミサカは・・・」

見知らぬ男の存在に今更気がついた少女は目を点にしていた

151: 2010/01/18(月) 20:11:55.89 ID:nhVXBrQq0
医師「まったく、大変だったんですよ。電話越しに急いで来いだの、何で目を覚まさないのかだの」

一方通行「うっ、うるせェ!もう用はねェからとっとと出ていきやがれ!」

男を叩きだす少年
―何か、とても怖い事があった気がする。そして、それ以上に嬉しいことが

一方通行『大事なこいつの命を―』

打ち止め「・・・あ・・・!」

一方通行「・・・ったく、で起きて大丈夫なンだ・・・なっ!?」

少女はベッドから跳ね起き、少年に力の限り抱きついた

打ち止め「ミサカは、ミサカは・・・っ!」

自らの胸元に泣きながらしがみつく少女を無碍にすることなどできず、少年は少女が落ち着くまでそうさせてやることにした

152: 2010/01/18(月) 20:20:17.45 ID:nhVXBrQq0
打ち止め「怖かった・・・怖かったんだよ、とミサカはミサカは泣きながらあなたに訴えかけます」

一方通行「・・・悪ィ・・・俺がアイツをとっとと倒さなかったから・・・」
当然の反応だ、と少年も思う。あのクソ野郎に対する怒りが再び込み上げてくる

打ち止め「違うの、そうじゃないんだよとミサカはミサカは・・・」

そして、少女がぽつり、ぽつりと切り出した

しばらくの後、少女は少年に全てを打ち明けた

153: 2010/01/18(月) 20:34:02.88 ID:nhVXBrQq0
一方通行「・・・そうかァ」

少女が恐れていたのは、あの男などではなかった。
本当の恐怖は、自分に必要とされなくなることであった
この旅が終われば、自分の脳が治ってしまえば、もう少女は少年にとっていらない存在になってしまうのではないのかと

打ち止め「ごめん・・・なさいっ・・・!ごめっ・・・」
自分が、少年に対し酷いことを考えてしまった。と少女は泣きながら謝っていた

一方通行「・・・」

少女が自分の目の前からいなくなってしまうことなど、少年には考えることもできなかった
確かに、少女がいつの間にか自分の後ろからいなくなって姿をくらませることは何度かあった

しかし、少女はしばらくするとまた自分の後ろに着いて来ていた
自分が探し出すでもなく、少女は消えた時と同じように。いつの間にか自分の傍に居たのである

一方通行「・・・ったく、てめェは本当に能天気だな・・・」
少女にすら聞こえないような声で、ぼそりと呟く

―俺にとって、てめェはな・・・

少女は少年に、自分を人間にしてくれたのだと言った
しかし、少年からすればたかだか一つの借りでしかない。そう、たったの一つだけ
自分が今までどれほどこの少女に救われたのか、それに気付いていないのだ

自分の愚鈍さに、唇を噛む少年

156: 2010/01/18(月) 20:52:28.18 ID:nhVXBrQq0
>>154
だれうま('A`;)オレノカワリニカケバイインジャナイカナ


打ち止め「・・・でも、今は違うよ。とミサカはミサカは精一杯の笑顔を作ってみる」

涙でぐしゃぐしゃになった顔で、言葉の通り笑顔を作る少女

打ち止め「あなたの脳が治って欲しい、そう思うよ。とミ―」

一方通行「うるせェ!!」

ここにきて少年が声の限り怒鳴る。その怒りの矛先は目の前の少女でなく、自分

懐から財団から渡された携帯電話を取り出し、どこかへと電話をかける

ジョセフ「おぉ、どうした?定期連絡は朝にでもしてくれれば―」

一方通行「ジジィ!あの取引はなしだ!キャンセルさせてもらう!」

打ち止め「・・・え?とミサカはミサカは思わず目を見開いてしまったり」
―何を言い出すのだろうか

ジョセフ「なっ、おいっ!どういうことじゃ!」

一方通行「代わりの条件を出す!ペア遊園地の予約をしとけ!飯代もだ!」
一方的に電話を切る少年、そして気恥かしそうにこちらを見て

一方通行「・・・そのォ・・・なんだ、一人じゃァ・・・保護者がいねェとダメだろうが」

158: 2010/01/18(月) 21:08:20.44 ID:nhVXBrQq0
「俺には・・・必要なんだよ」

と、誰かがぽつりと言った
しかし誰が言っているのか、既に頭が真っ白な少女には理解出来なかった。でも確かに少女は聞いた

打ち止め「・・・え・・・?え・・・?」

一方通行「てめェには、俺が必要なんだよ!ガキがぐだぐだ考えてるんじゃねェ!てめェは俺の傍にいりゃァ良いんだ!」
分かったか!と一方的な会話の一方的なキャッチボールを終える少年

一方通行「・・・遊園地、嫌か・・・?」
こちらの顔を窺う少年は、他者が見たら別人のような弱気な姿勢であった

しかし、本当の顔を知る少女にとって、それは少年そのものであった
自分の大好きな、ずっと一緒に居た、そしてこれからもずっと一緒に居たいと思う少年であった

打ち止め「・・・行きたい!!ミサカはミサカは今から凄く遊園地を楽しみにしてみたりっ!!」
心からの、最高の笑顔を彼に向ける。少年を抱く手の力が強まるその瞬間、デーボに殴られた顔に痛みが走る

打ち止め「いたっ、ってミサカはミサカは殴られた顔を手で押さえ」

一方通行「医者ァァァアアッ!!てめェ早く来やがれェッ!!今戻ったァ!?うるせェ知るかアアアッ!!」

いつの間にか電話を手にした少年の怒号が部屋に再び響いた

私は大丈夫だよ、と少年を落ちつかせる少女。早くきやがれ、と声を荒げる少年
少年とこうしてじゃれ合う瞬間に、彼女は今、幸せを感じていた

そして少女には分からなかったが、少年もまた幸せであった

159: 2010/01/18(月) 21:25:21.69 ID:nhVXBrQq0
同刻、力の船の中

上条「・・・で、明日にはシンガポールに着くはずなんだよな?」

と、隣に立つボス猿・・・もとい御坂美琴に確認を取る

美琴「そうだって、ゴリ太が言ってたわ」
フォッホ!と声を上げ胸を叩きながらゴリラが肯定する

黒子「・・・お姉さま、いつのまにゴリラと会話をする手段を会得しておりましたの・・・?」
今更憧れの少女が人間離れした業を披露した所で、動じることのないと自負していた少女も流石に驚いてしまう

禁書「10万3000冊の魔導書の中にも、書かれてなかったんだよ!」
などとのたまわっており、その真意は不明

上条「ジョセフさんの話だと、既にシンガポールには人を送ってくれてるんだってさ!」
明日はうまいものが食えるぞ、とは禁書と呼ばれる少女に向けての発言

禁書「うん、今から楽しみなんだよ!」
と、こちらも嬉しそうな少女

美琴「はあ・・・お気楽ねぇ・・・」
黒子「同感ですわ、でも私白井黒子はお姉さまのいるところ、例え火の中水の中草の中、お姉さまのスカートの中!」

慣れた手付きでセクハラをかます少女、そしてそれに対し電撃で答える少女

上条「・・・」

しかし少年は何か、違和感を感じていた

161: 2010/01/18(月) 21:39:46.57 ID:nhVXBrQq0
上条「やっとついたな、シンガポールに・・・」
長かったなと呟く少年

美琴「名残惜しいけど、ここでお別れねゴリ太」

ゴリラ「・・・フォ・・・」
少女の言葉を理解したのか、肩を落とし落ち込む

禁書「ねぇねぇ。ゴリ太連れて行っちゃいけないのかな!」
きっと強いんだよ!と力説する少女

黒子「・・・ゴリラなんて連れてたら目立って仕方がありませんわ」
即座に理論的に否定をする。本音を言えばストレートに嫌だというのは明白である

美琴「大丈夫よ、財団の人達が面倒みてくれるって言ってたしね!」

上条「ああ、それはOKだってジョセフさんも言ってたから安心していいな」

165: 2010/01/18(月) 21:53:21.27 ID:nhVXBrQq0
シンガポール

上条「ええっと、確かこのホテルだったはず・・・」

少年達は今朝ジョセフから聞いた大きなホテルの目の前にいた

禁書「・・・ねぇとうま、あっちもホテルなんだよね?」
と少女が指を指す先には、恐らく最高級ホテルと思わしき建物があった

黒子「どうせならあちらにして下さればよろしかったのに」

こちらの少女の言い分はもっともである。と言うより、そもそも当初はそのホテルを手配されていたのだが、彼らが知るはずがなかった

美琴「まぁまぁ、こっちのだって十分立派なホテルじゃないの」

と美琴はぶつくさ言う少女達をなだめる

上条「財団の人からホテル前でカギを受け取って、このホテルでゆっくりしていけってさ」

急ぐ旅ではあるが、確かにこれまでで彼らの疲労はもう限界に近かった

上条当麻自身も、この休息は必要なものであると思う

少年「・・・あァ、やっと来たか・・・」

少女を連れた少年がホテルの入り口から出て来て、こちらに近寄ってきた

167: 2010/01/18(月) 22:06:31.37 ID:nhVXBrQq0
上条「な・・・、お前は・・・!」

一方通行と呼ばれる、かつて自分と氏闘を繰り広げた白髪の少年が目の前にいた

一方通行「・・・ほれ、これがてめェらのカギだ」
ぽいっと上条に、ホルダーごといくつかのカギを投げる

上条「おっ!おい!どういうことか説明を・・・」
目線を離さず、キャッチし彼に説明を要求する

一方通行「・・・悪ィが後にしてくれ・・・」
と自分の腕を顔で指す

打ち止め「早く!早く!ミサカはミサカは腕を引っ張って急かしてみる!」

少年の腕にぴたりと張り付いた少女は飛び跳ねながら急かす

御坂「・・・あれは」

黒子「・・・お姉さまにそっくりですわね」
勿論お姉さまの魅力と比べれば月とスッポンですわ、と当然の様に付け加える

169: 2010/01/18(月) 22:17:27.86 ID:nhVXBrQq0
上条「・・・どこかへ行くのか・・・?」

打ち止め「うん!今からデートに行くんだよ!ってミサカはミサカは照れながら―」
一方通行「なっ!?おいィ!!」

慌てて少女の口を塞ぐ少年

打ち止め「んー!んー!」

しかしそれすらも楽しんでいるかのように笑顔を絶やさない少女

一方通行「とっ、とにかく、説明は今夜してやる!誤解してンじゃねェぞ!」

少女を連れ、その場から逃げるように走り去る少年

上条「・・・まぁ、いいか・・・」
少年に自分の姿を重ねた上条当麻は、それ以上彼を追いつめるような事は出来なかった

172: 2010/01/18(月) 22:38:33.05 ID:nhVXBrQq0
上条「さて・・・」

適当に部屋を割り当て荷物を置いた少年達は、再び集まっていた

美琴「どうしたのよ?ゆっくりしていくんでしょ?」
と彼の招集を疑問に思う少女

上条「・・・あぁ、ちょっと皆着いて来てくれないか・・・?」

少年は禁書をちらりと見ると、そう少女達に言う



禁書「ねぇとうま、まだ着かないのかな」

しばらく歩き、少女が先頭を歩く少年に尋ねる

上条「いや、もう着いた。ここだ」

禁書「え・・・?」
少女が不安そうな顔をする

少年が案内した場所は大きな病院であった

173: 2010/01/18(月) 22:51:03.63 ID:nhVXBrQq0
女医「はい、それじゃあ服を上げて」

美人女医の言葉に素直に従う美琴。冷たい聴診器が彼女の胸に触れる

上条『念の為、今日は検査を受けてくれ』

彼のその言葉に従い、病院で各々検査を受けていた

女医「うん、ちょっと疲れが溜まっているみたいだけど大丈夫そうだわ」

美琴「そうですか、ありがとうございます」

医者に礼を述べ部屋を後にする

ロビーでは一番最初に検査を受けに言った後輩が既に椅子に座っていた

174: 2010/01/18(月) 23:04:12.71 ID:nhVXBrQq0
黒子「あ、お姉さま!」

少女も美琴に気が付き顔を上げる。自分は大丈夫だったと教える

黒子「それは何よりですわ!私は2.3日激しい運動は控えるようにとのことですわ・・・」
残念そうな顔をするのは一瞬で、すかさず愛して止まないお姉さまに華麗なセクハラを決める

美琴「・・・くっ!」
思わず手を出しかけるが、寸でのところで思いとどまり、距離を開ける

ここまで黒子の計算通り。病人特権を使い、すかさず追い打ちを決めようとして

上条「よう、どうだった?」

そこに最後に診察を受けに行った少年が戻ってくる。何やら爬虫類がどうこう言っていた気もするが、二人は気にしなかった

175: 2010/01/18(月) 23:20:08.29 ID:nhVXBrQq0
上条「・・・そうか、良かったな!」

美琴達の説明を受けた少年は心からの声でそう言った

美琴「べ、べつに当然よ!あんな奴らにアタシが・・・」
美琴が胸を張って答えるが、既に少年は聞いていなかった

上条「そんで白井・・・悪かったな、こんな事に巻き込んじまって・・・」

深く頭を下げる少年。大事はないとは言え医師から安静にするようにと言われたと聞き、彼の悲痛な思いを打ち明ける

白井「あ、あなたの為ではありませんわ!」
それに、と小さく呟く

白井「あなたがあそこで助けて下さらなかったら、今頃私は・・・」
下を向きか細い声で述べる。しかし少年はやはりそれも聞いていなかった

上条「・・・ところで、禁書は・・・?」

その時アナウンスが禁書の保護者を呼びだす

未だに戻らぬ少女を心配する少年のその顔には、緊張が張り付いていた

176: 2010/01/18(月) 23:30:04.96 ID:nhVXBrQq0
医師「という訳です」

あまりにも若い保護者の登場に、最初は思う所があったような素振りではあった医師だが、最終的に信じ彼に説明をした

上条「・・・しばらく家で安静にしていれば、命に別状はないんですね」
何度目かの同じ質問を少年は繰り返し、強く念を押す

医師の説明を一言で言えば、彼女が非常に衰弱しているとのことであった
あの暗青の月との戦いで、少女は海水を飲まされ気絶し、そしてそのまま短い間とは言え海上に放置されていたのだ
それだけが原因ではないだろうが、それもきっかけの一つであったのは違いない

空元気だったのだろう。少女はそんなそぶりを全く見せることはなかった

177: 2010/01/18(月) 23:38:40.72 ID:nhVXBrQq0
―違う
見せていなかった訳じゃなかった

船の中を探索している時、少女は中々目を覚まさなかった
トイレと言って起きてきた時、少女の顔は赤みが指していなかっただろうか
そして、昨日の「うまいものが食えるぞ」という少年の言葉の返し、普段の少女ならもっと喜んでいたのではないだろうか

考えれば思い当たる節がいくつもある。今更気がつく自分の鈍さに怒りが込み上げてくる
強く手を握り締める。爪が手の平に食い込んで血が流れることも気にしない

上条「・・・この事を、あの子・・・インデックスには・・・?」

医師「まだ言っていないが、彼女自身もう分かっているだろうね。まあしつこい様だが命に別条はないんだ」

そう落ち込むなよ、と医師が少年を励ます

この時少年の胸には、ある一つの決意があった

179: 2010/01/18(月) 23:50:29.64 ID:nhVXBrQq0
>>178
やめて!書いてる本人すらそう思っているけど言わないんだから、やめて!!

夜、ホテル内の一室にて

上条「なるほど・・・」

自分達の説明の後、一方通行からこれまでの経緯を聞き終える

一方通行「そういうこった。ンで、これからなんだが」

あまり興味無さそうに話題を振る白髪の少年

上条「その事なんだけど、お前にこれからの指揮を取って貰えないか?」
もう一人の少年が頼み込む

彼の腕は信じているし、潜った修羅場の数も多い。間違った判断ではなかろう

一方通行「・・・あァ?お断りだそンなめンどくせーこたァ」
彼の頼みを速攻で否定する

一方通行「こいつはてめェの問題なンだろォ、それにまぐれとは言えてめェは俺に勝ってるんだ」

そのままで良い、と結論を出すと同時に、背後のベッドから能天気な声が上がる

180: 2010/01/19(火) 00:05:28.99 ID:qIi1uaa50
打ち止め「それでね!それでね!そこで彼が私に可愛いって言ってくれてね!とミサカはミサカは惚気てみたり」
両頬を両手で押さえ、幸せそうな顔で

美琴「そそっ、そそそそそそれで!!?」

両手をベッドに着け、頭から乗り出す態勢で、熱心に打ち止めの本日のデート話を聞く美琴
同じベッドの上で、枕を抱きしめている黒子と、頭から布団をかぶり顔だけを出す禁書まで興味津津なのか無言で話の続きを催促する

打ち止め「その後私が王子様なんだよ!って言ったら・・・とミサカはミサカは・・・キャー!!」
恥ずかしさのボルテージが爆発してしまったのか、両手でついに目を覆う

一方通行「ーーーッ!!?」

まるで瞬間移動のような速さで一方通行は打ち止めを抱えると部屋の入口に飛び出す

白髪の少年が少女を(お姫様抱っこで)抱え上げると、他の三人の少女達が顔を真っ赤にして羨むような目で見つめるが、気付いていない

一方通行「ととととと、とりあえず!そういうことだ!良イな!」
そう言い放ち部屋から再び逃げるように飛び出した

何がそういう事なのか分からないが、良い事にする

美琴「あっ、ああ!続きが・・・!」
残念そうな声が部屋に響く

美琴だけならず、三人の少女の心は再び繋がっていた

182: 2010/01/19(火) 00:24:12.67 ID:qIi1uaa50
美琴「・・・」

一同が解散をし各々の部屋に戻ると、彼女はまず着ている制服を無造作にベッドに放り投げ、そのままバスルームへと足を運んだ

美琴「・・・良いなぁ・・・」

久々のバスタブに浸かり、ぽつりと呟く

彼女が考えていたことは、先程の妹の話

素直な妹と、素直ではないあの少年は美琴の目から見てもただならない関係を感じた

彼が少女を抱き上げた時、心なしか赤い糸まで見えたような気がした。それくらい幸せそうで、それくらいお似合いであった

183: 2010/01/19(火) 00:32:47.25 ID:qIi1uaa50
今日はどこで切ろうか・・・('A`;)


美琴「アタシも・・・」
―あれくらい素直になれば、アイツも気がついてくれるのな

晴れない心のもやもやに、若干の苛立ちを感じながらバスタブから出る

シャワールームと部屋との間にある洗面所で丁寧に髪を拭く

美琴「・・・?」

何やら騒がしい。何かあったのだろうか
そう思い、両手で急いで髪を拭いたその時

バタン!
突如部屋とを隔てるドアが開き、その向こうから見慣れた少年が必氏な形相で入ってくる
上条「ビリビリ!?どこだ!?返事をしてくれ!!」

187: 2010/01/19(火) 00:50:39.80 ID:qIi1uaa50
美琴「・・・は・・・?」
―何の話?

上条「良かった!無事だったのか!」

髪を拭く自分の姿を見るや否や少年が強く抱きしめる

ふに

上条「・・・えっ?」
少女に触れた顔が、胸が、そして指先に不思議な感触
我に返ったのか、少年はおそるおそる顔を離し少女の今の姿を確認する

上条「うっ、うわわわわわあああ!?」
ごめん!と叫び慌てて後ろを向く少年

上条「つっ、伝えたい事があって!でもいなかったから!部屋ノックしたんだけど!部屋散らかってて敵に襲われていたら俺どうしようかって!!」
言ってる事は無茶苦茶であるが、結局のところ、自分を心配してくれたのだということだけは分かった

―素直になれば・・・
バスタオルを身体に巻き付けた美琴が腕を伸ばす、気配を察したのかビクッと少年は反応するものの逃げる素振りは無い

美琴「・・・ありがとう・・・とっ・・・とうま・・・」

ぎこちないながらも、少年の背中を優しく抱きしめる

御坂美琴14歳、恋する乙女の持つ勇気を全て振り絞った、捨て身の行動であった―

189: 2010/01/19(火) 01:04:24.04 ID:qIi1uaa50
把握しますた('A`;)

そのままの状態で少しの沈黙、しかし今の二人にはあまりにも長い時間であった

上条「みっ、みみみ美琴さん!?」

意を決した少年ではあったが、声が裏返り、ろれつが上手く回らない

美琴「・・・っ!」

―今、名前で・・・?

ビリビリと呼ばれ、彼に避けられ続けていた少女にとっては、これだけでも大きな一歩であった

美琴「な、な・・・なにかしら!?」
努めて普段通りに、普段通りにと考え返事をする彼女も、もはやその普段を装うことはできなかった

上条「・・・お、怒らないの・・・でせう・・・か・・・?」

自分へと彼が抱くイメージ像に、少女は少し胸が痛んだ

192: 2010/01/19(火) 01:21:05.09 ID:qIi1uaa50
息を呑み、更に彼女は彼に、そして自分に追い打ちをかける
美琴「・・・凄く怒ってる・・・わよ・・・!」

やっぱり、と全身を強張らせる少年

美琴「だっ!だから!」

勇気を更に掻き集める。足りない分は前借りしてやる。そして声を振り絞る

美琴「だから!責任取りなさいよアンタっ!!」
―言ってやった・・・!

自分でも思うほど酷い告白

美琴からは見えないが、鳩が豆鉄砲を貰ったかのような顔をする少年
だがそれも僅かな間で、すぐに厳粛な顔になる

上条「わ、分かった・・・!」

上条「責任を・・・取るよ」

その言葉を聞いた少女は、緊張の糸がぷっつりと切れてしまい、嬉しさのあまりに気絶をしてしまった

遠くから好きな声が自分の名を呼び続けているのを、彼女は心地良く感じていた

193: 2010/01/19(火) 01:32:58.00 ID:qIi1uaa50
美琴「・・・あ・・・」

目を覚ますと少し乱れたベッドの中で、爽やかな朝の陽ざしが部屋に入り込んできていた

美琴「あ、そうだ私昨日・・・」
身体を起こし、昨日あれから気絶してしまったことを思い出す、それと―

美琴「~~~っ!!」
思い出して一人で顔を真っ赤にする少女、そしてその後気絶してしまう自分の情けなさに落胆する少女

同じような一人芝居を何度か繰り返していると―

コン、コン
そこに静かなノックの音が鳴り響く

美琴「あ、はーい!どう・・・ぞ・・・?」
ドアを開けようと少女が身体をベッドから出ようとする。掛け布団と少女の素肌が擦れ合う

―な!?
慌てて自分の姿を確認すると、一糸まとわぬ姿であった

―え、ええええええ!?
慌てて周囲を見渡すと、ベッドの下にタオルが落ちていた。恐らく寝相の悪さが災いしてしまったのだろう

上条「あ、起きてるのか?入るぞー」

布団を掻き寄せ、慌てて潜りこむ少女。それとほぼ同時に少年が部屋に入ってきた

195: 2010/01/19(火) 01:56:11.48 ID:qIi1uaa50

上条「・・・っと、何だ。まだ寝てたのか」

とある乙女の危機一髪(ギリギリセーフ)とでも名付けようか、どうにかこうにかベッドの中に入り顔だけを出す形になっている
隠れきらなかった爪先が少し寒いが、構う余裕なんてなかった

美琴「な、なにか用なの!?」

上条「・・・あ、いや・・・なぁ、ひょっとして」

少年が心配そうな顔を覗かせる

上条「昨日と言い今日と言い・・・ひょっとして、体調悪いのか・・・?」

―それだ!
美琴「そっ、そうなのよ!ちょっと身体が・・・!」

上手い言い訳を見つけ、合わせる美琴

上条「そっか、じゃあ今日は無理だな」
残念そうに少年が呟く

美琴「え・・・?」

196: 2010/01/19(火) 02:07:24.30 ID:qIi1uaa50
上条「いや、今から一緒に出かけないかって呼びに来たんだけど」
それじゃあ仕方ないよな、と苦笑いを浮かべ部屋を立ち去ろうとする少年

美琴「えっ!?ちょ、ちょっと待って!待ちなさいってば!!」

突然のデートの申し込みに、大慌てでベッドから跳ね起き彼に手を伸ばす

上条「!?」

美琴「元気になったわ!今!ほら見てもう健康そのものよ!!」

そう言って―自分の今の姿に気づいてしまった

少女には、突然嘘のような回復をし、ベッドから跳ね起き、健康的な裸体を見せつけられた少年の心境などお構いなしであった

197: 2010/01/19(火) 02:14:50.30 ID:qIi1uaa50

上条「はぁぁ・・・不幸だ・・・」
―やっぱり、昨日は体調が悪かったんだろうな

枕、ティーカップ、リモコンetcetc・・・
掛け布団一枚を巻き付け、涙ながらに様々なものを手当たり次第に投げつける少女をなだめるのに、少し時間がかかった

いくら紳士という事で己の精神に対する終わりのないディフェンス力に定評のある少年でも、年頃の女の子を着替えさせる訳にもいかなかった

では、残る少女達に頼むという可能性はどうだったのであろうかというのも考えた
だが、この光景を見た居候は噛みついてくるだろうし、美琴を尊敬する白井に至っては刺してくるかもしれない。
打ち止めを借りるには、一方通行に許可が必要だろうが、許可を得るには説明が必要であろう

結局、バスタオルのままベッドに寝かしつけるしかなかったのである

200: 2010/01/19(火) 02:22:20.00 ID:qIi1uaa50

後ろを向き正座をする少年。その背後では同じように後ろを向いて着替えを済ませる少女

―もし上条さんが紳士じゃなかったら、見られてしまいますよ・・・

本当は退室をするつもりであったのだが、少女がそれを許さなかった
美琴「ぜっ!絶対にこっち見ないでよ!絶対だからね!」

何度も念を押しそういう少女

―そういえば、昔そんな芸人がいたよな。何だっけかなんちゃら倶楽部・・・?・・・アヒル・・・?ダービー・・・?
などと非常にどうでも良い事を考えていると

美琴「お、お待たせ!」

振り返ると、いつもと同じような制服に身を包んだ少女が居た

しかし心なしかいつもよりその姿は可愛らしく見えた気がしたが、気のせいで済ませてしまうのが、上条当麻という少年であった

201: 2010/01/19(火) 02:31:04.79 ID:qIi1uaa50
―迂闊であった

確かに昨日の出来事もあり、それそれは大層な期待を抱いてしまっていた、その事を御坂美琴は深く反省していた

上条「それじゃあ、そろそろ行くか!」

禁書「わーい!皆でお出かけなんだよ!」

黒子「あら、お姉さまいかがなさいまして?」

そう、上条当麻という少年が自分一人を誘ってデートを申し込んでくるなど、あり得るわけがないのであった

上条「一方通行達は昨日出かけたから今日は良いってさ」
打ち止めには決して言うなよ、と釘を刺しつつ少年は上条の誘いを断った

202: 2010/01/19(火) 02:37:47.92 ID:qIi1uaa50
美琴「・・・で、何でいきなり出かけようだなんて思った訳かしら?」
若干の棘を含み少年に問いかける

上条「ああ、ここ数日の戦いでさ」
ほら、と自分の服を見せる少年。良く見るとあちこちが破けているし、傷んでしまっている

上条「ジョセフさんからも許可が出てるし、ついでだから皆一緒に何か買いに行こうかなと思ったんだよ」

美琴「はぁ・・・まぁ、確かにねぇ・・・」
―・・・あれ?今は学園都市じゃないし、ひょっとして制服以外でもOK?

昨日の妹の話を思い出す、確か、あのぶっきらぼうな少年が「可愛い」と言ったのは試着してみせた時だと言っていたような

―フフフ・・・見てなさい・・・!アタシのスーパーセンスを見せつけてあげるわ!

無意識に気合を入れてしまう少女。周囲の空気がバリバリと鳴っているが、全く気付かなかった

225: 2010/01/19(火) 20:05:45.92 ID:qIi1uaa50

上条「あのー・・・上条さんちょっと外で待っていても・・・」

少女三人「ダメ!」

美琴「もうちょっとだけだから!」

禁書「とうまはデリカシーが足りないんだよ!」

黒子「女の子の買い物にすら付き合うのは、殿方の義務ですわ!」
それぞれ別の試着室の中でいる少女達は、少年の問いに対し見事な連携で答えた

上条「もうちょっと・・・ねぇ」

ちらりと備え付けられている時計を見る
―もう2時間はたっているのでせうが・・・

少年の計画では、最初に買う物を下見をして、軽く観光をしつつ昼食を取り、それから本格的に必要なものを買い揃えるというものであった

しかし、その計画は何と最初の時点で頓挫してしまった

まずは服を、と思い適当に目に着いた店に入ると少女達は水を得た魚の様に生き生きし始めたのであった

上条「・・・はぁ・・・」

退屈を持てあまし、適当な小物を見る少年であった・・・

226: 2010/01/19(火) 20:18:51.36 ID:qIi1uaa50
恋は戦争である

きっと昔の偉い人が言ったのであろう。それはまさにこの世の真理

―べ、別に上条さんに他意はありませんけれども

白井黒子は困っていた

年頃の少女が持ち合わせる程度に、彼女もまた女の子らしいファッションは心得ていた

だが、健全な男性が好む格好とは果たしてどういったものなのであろうか

美琴と禁書、二人の少女もまた目の色を変えて服を選ぶのを見るに彼に対し何か下心があるのだろう

敬愛する少女は、おそらくまたゲコ太という奇妙奇天烈なキャラクターを模した物を選ぶであろう

そうなると
―あのちびっこの方が分かりませんの

一方的に決め付けたライバルに心を燃やす少女であった

227: 2010/01/19(火) 20:30:49.95 ID:qIi1uaa50
浮気は男の甲斐性である

こんな言葉を作った大馬鹿者は天罰に当たれば良い。そんなことを神様が許す訳ないに決まっている

―わたしというものが居るのに、とうまと来たら!

禁書目録は怒っていた

別に、普段愛用している特別な修道服を彼女は嫌いではない

だが、あまりにも変化のない自分にあの少年が見飽きてしまっているのではないだろうか

普段なら意にも介さないが、今の少女はそれだけ焦っていた。もしそうであれば、少年の不誠実さは自分にも非がるのかもしれない

―短髪は相手にならないとして!

あれにだけは負けたくない。というよりも負ける事などありえないと高をくくる

―あっちの、くろこは強敵なんだよ

少女は知っていた。あの少女の着用している下着を

あれはとても大人っぽくて、きっと彼女自身も大人のセンスを持っているのだと思う

胸に燃える意志を秘める少女であった

229: 2010/01/19(火) 20:47:04.29 ID:qIi1uaa50
恋は盲目である

考えた人は一体どんな熟成された人物なのだろうか。今の彼女を言葉で形容するのであれば、まさにこれが相応しい

―私のスーパーセンス・・・すーぱー・・・せん・・・す・・・

御坂美琴は落胆していた
自分の愛用しているゲコ太グッズが無いというのも理由の一つではあるが、問題はそこではない
自分の思い浮かぶスーパーセンスというものが、あまりにも情けないものばかりであったからである

普段であれば気にしない
制服以外の着用が禁止されている以上、選ぶといっても精々パジャマ程度で、意中の相手に見せる服装など考える必要もなかったからである

―今回は・・・!でも、それでも今回は違うの・・・!

ぐるぐると考えのまとまらない頭に渇を入れ直す

―そういえば、あの先生大人っぽかったな

昨日の美人女医を思い出す
あの様な服装が許可されているのかは知らないが、中の物の立派さを強調する開いた胸元に、スラっと伸びた奇麗な足が覗く短いスカート

―あんなの、私じゃ駄目だよね
自信がないし、何よりあんな格好をする勇気はない

美琴「でも・・・!」

打ち止め『彼が可愛いって―』

美琴「それでも・・・っ!」

230: 2010/01/19(火) 20:57:39.53 ID:qIi1uaa50
黒子「お、お待たせしましたわ!」

シャーッとカーテンの一つが開き、少年は目をそちらに向ける

小部屋の中から出てきた少女は、来た時とは違い髪を下ろし、清楚な白を基調としたワンピースに身を包んでいた

他にも気がつかなかったが、様々な小物を用いているのも理由の一つであろう。あまりの印象の変化に、言葉を失う少年

黒子「・・・どうで・・・す・・・でしょうか・・・?」

少年が無言でこちらを見ているのに不安になる少女。無意識のうちに言葉遣いまでも変わってしまう

上条「・・・あ、悪い!」

黒子「ーっ!?」
―ダメでしたわ・・・!

絶望の底に叩き落とされ、目の前が真っ暗になる少女

上条「何ていうか、別人みたいっていうか・・・俺女の子のオシャレなんて分かんないけど、その花模様とかも凄く可愛いと思うぜ!」

大人っぽさのアピールのつもりで、薄い薔薇模様があるのを選んで正解であった

黒子「あ・・・あ・・・、ありがとう・・・」

絶望の底から天国にまで特別超特急で引き上げられる少女。少年の賛辞にか細い声で答える
自分でも分かる程赤みを刺した顔を気付かれない様にと、少女は再びカーテンをしめてしまった

231: 2010/01/19(火) 21:08:01.57 ID:qIi1uaa50
禁書「とーま、とーま!」
少年が黒子の反応に首をかしげていると、続いて別のカーテンが開く

禁書「じゃじゃーん!」
どうだ!とばかりに両手を広げ自らを見せつける少女

星をあしらった模様の入った可愛らしい半袖のシャツに、カジュアルな紺のショートパンツ。勿論頭には何もかぶっていない

上条「おっ!良いんじゃないか!」

素直に思った事を口に出す少年

先程の黒子がお嬢様であれば、こちらは健康少女とでもいうべきであろうか

普段とは180度異なる衣装に身を包む少女は、それでも彼女らしさを少年にアピールしていた

禁書「似合う?ねぇ似合うかな!?」

少女も心なしかうきうきしていて、少年に抱きついて尋ねる

上条「あぁ、凄く良いと思うぞ!超似合ってる!」

自らのチョイスを少年にべた褒めされ、気分を良くする少女

禁書「わたし、他のもちょっと見てくるんだよ!」

少年の返事を待たずに少女は店内を駆けだしていた

233: 2010/01/19(火) 21:27:52.65 ID:qIi1uaa50
上条「さて・・・と、後は」

未だに反応のないカーテンを気にする

―ま、どうせビリビリの事だから子供っぽい服装なんだろうな
彼自身それで良いと思っていたし、それ以上の発想はなかった。ただ、どんな姿を見せてくれるのかは楽しみであった

美琴「ね、ねぇ・・・?」

声に反応すると、カーテンの隙間から顔だけ出した少女がこちらを見ていた

上条「・・・流石の上条さんにも、その発想はなかったわ」

少女の思わぬ行動に、小声で呟いてしまう。これも一つの幻想頃しなのではないだろうか

美琴「・・・笑わない?絶対に、笑わない・・・?」
余計な事を考えている少年とは対称に、少女は自信のなさそうに尋ねる

上条「・・・?あぁ、上条さんはそんなデリカシーのない奴じゃありませんよ」
―どんな服を選んだんだコイツは・・・

はっきりと宣言する口とは裏腹に、内心心配であった
―もし笑いなどしたら、ビリビリの電撃の雷が落雷して上条さんの命の危険が危ないではないですか

美琴「約束だからね・・・っ!」

覚悟を決めたのか、少女は一気にカーテンを開いた

235: 2010/01/19(火) 21:42:09.81 ID:qIi1uaa50
上条「・・・お・・・おぉ・・・!?」

あのいつも自分を見ては電撃をぶっ放し、スカートの下に短パンを着込むような少女がこんな恰好をするなんて、誰が考えるだろう

少年には名前が分からないが、細い肩紐の真っ白な薄手の上着。そして下は膝上何㎝であろうかの黒いミニスカート

すらっと伸びた足はハイヒールと膝まで伸びる黒のタイツを付けていて、頭にはピンクのヘアピンを着け額を出している

身体に張り付くような服装で、彼女の持つ女性的なラインが強調されていた

上条「・・・お、おぉ・・・!?」

あまりの事に言葉を失う少年

美琴「・・・ど、どう、かな・・・?」

顔を赤らめ、上目遣いで少年を見つめる少女。そこで少年の理性は爆発した

236: 2010/01/19(火) 21:52:53.24 ID:qIi1uaa50
上条「いっ、いいいんじゃないでしょうっかっ!?」
目線を逸らし、こちらも顔を真っ赤にして声にならない声を返す

美琴「・・・じゃ、じゃあなんでこっち見てくれないのよ・・・?」
やっぱり似合わないんだ、と涙声を出す少女

上条「そ、それは違うぞ!ただ、その格好があまりにも上条さんには刺激が強すぎまして!眩しすぎて直視出来ないんですよ!」

少年のその言葉にボッと顔を真っ赤にさせる少女。傍から見たらただのバカップルである

それを影から、着衣室の中からと見つめる少女達
黒子「お姉さま・・・」
禁書「短髪・・・」

少女達「恐ろしい子・・・ッ!!」

慌てて次の衣装を探しに行く少女達

結局その日は服の買い出しだけで終わってしまったのであった

238: 2010/01/19(火) 22:04:37.17 ID:qIi1uaa50
翌日

黒子「上条さん!こっちで面白そうなものがやっていましてよ!」

昨日買ったワンピースを身につけた少女が少年を急かす

上条「はいはい、今行きますよーっと」

小走りで先を行く少女を追いかける少年



黒子「買い物にお付き合いして欲しい・・・ですの?」
朝のホテルにて、白井黒子は上条当麻から突然買い物に一緒に行って欲しいと申し込まれた

上条「あぁ・・・あ、ひょっとして俺だけとじゃ嫌かな?」
いくらなんでも急だったしな、と少年は肩を落とす

―二人っきりで・・・こっ、これはデートと呼ばれるものでは・・・!?
黒子「べっ、別によろしくってよ!では、昨日のショップの前で2時間後に待ち合わせでよろしいですわね!」

そういって部屋へと全力で走り出す少女
―違いますわ、お姉さま!私の愛するお方はお姉さまただ一人!これはそう、悪い虫をお姉さまから引き離す為ですの!

上条「・・・同じホテルに居るんだから、一緒に行けば良いのになぁ・・・」

少女の奇行に思わず首をかしげてしまう少年であった

239: 2010/01/19(火) 22:17:49.64 ID:qIi1uaa50
黒子「きゃん!」

昼間の通りは人が多く、華奢な少女は人とぶつかる度に跳ね飛ばされてしまう
少女自信、何でなのかやたらと張り切っておりそれがまた裏目に出てしまう

黒子「あうう・・・」
尻もちを着いて悲痛な声を出す少女

上条「おいおい、ちょっと落ちつけよ。ほら」
そう言って手を差し出す少年

恥ずかしそうに少年の手をとり起こして貰う。だが、少年の手は少女の手を離さない

黒子「・・・あ、あの・・・?もう大丈夫でしてよ・・・?」

上条「何言ってるんですか、さっきからあんなに危なっかしい女の子から、手を離せる訳ないじゃないですか」
ぎゅっと更に力強く手を握る少年。決して痛みを感じる程ではなく、何故か不思議と安心する感覚

240: 2010/01/19(火) 22:28:31.29 ID:qIi1uaa50
黒子「・・・っ」

上条「ほら、行くぞ・・・って、あれ・・・?」

先を歩く少年が少女を振り返ると、先程までの元気が嘘のように、まるで借りてきた猫のように静かになっていた

上条「ど、どうした?ひょっとしてどこか怪我をしたのか?」

腰を落とし、じっと少女の顔を見る少年。もしどちらかが少し前へ出てしまえば、唇が触れてしまう距離

黒子「は、はわわわわ・・・な、なんでもないですわー!」

少女の声が通りに響き渡った

242: 2010/01/19(火) 22:40:47.74 ID:qIi1uaa50
上条「そんなに見たかったのか、これ・・・」

その後、暴走特急になる少女に引っ張られて少年達は見世物を見ていた

何やら手品師がショーをやっているらしいが、後ろ過ぎてよく見えない

右隣の手をつないだ少女を見ると、やはりこちらも残念なのか虚ろな目をしている

少々気まずくなり、再び前の出し物に顔を向ける少年。突然ピクリと少女が反応をするが、気がつかなかった

黒子「・・・ひっ!?」
―今、何かがお尻を触って・・・?

気のせいかとも思ったが、その幻想はすぐにコナゴナに打ち砕かれてしまう

抵抗しないと見たのか、手は少女の身体を弄り始める、片手から両手へと更に勢いは増す

身の危険を感じた少女は、本能からすぐさまテレポートで難を逃れようとして―

黒子「・・・あ・・・」

ぎゅっと握っている彼の右手、幻想頃しが自分の能力を妨げていることに気がついてしまった

246: 2010/01/19(火) 22:57:59.34 ID:qIi1uaa50


少女は知らなかったが、男は痴漢ではなかった。男はこの辺りを縄張りとしているスリであった

観光目当ての育ちの良さそうな外国の少女、そんなのは彼の絶好のカモであった

金目の物を探り、少女の薄い服越しに、彼女の全身を弄り続けていた。恐怖で反応が出来ないと見え、その姿が彼を普段よりも過激な行為に及ばせていた

黒子「・・・あっ・・・ひっ・・・!」

頼みのテレポートも出来ず良い様にされてしまう状態に、船上のアレを思い出してしまい恐怖で身体が動かない

手は初めのうちこそ腹部の両脇などに触れていたが、それもどんどん広がってきていた

やがて、何かを思ったのか手が引っ込む

―た、助かりましたの・・・?
黒子「ーーーッ!?」

少女が安堵に胸を撫で下ろした次の瞬間、男の両手が少女の服の中に入り込んで来た―

249: 2010/01/19(火) 23:11:57.37 ID:qIi1uaa50
黒子「・・・んくっ・・・ふっ・・・んっ・・・!」

少女には耐えるしか出来なかった。せめて隣の少年には気付かれまいと、恐怖から上がる声を必氏に押し頃す
―もう、もう・・・早く終わらせてくださいまし・・・!

悔しさと恥ずかしさに全身が火照る。男の手は止まる事なく、少女の下着の中に手を伸ばし

黒子「だっ、駄目!そこは駄目ですわ!」

思わず声を上げてしまう、その声に少年も反応する

上条「どうし・・・なっ!お前何やってんだよ!!」

力の限り男を殴る少年、男は情けない悲鳴を上げるとその場から一目散に逃げ去っていった

上条「大丈夫か白井!すまない、もっと早く俺が気がついていれば・・・!」

周りの目を気にする事もなく、力の限り少女を抱きしめる少年

―お姉さま、ごめんなさいですの・・・
彼の胸の中で抱かれ、少女はついに自覚した

ああ、これが本当の恋なのですわね・・・と―

250: 2010/01/19(火) 23:26:52.64 ID:qIi1uaa50
上条「どうする?やっぱり買い物は俺だけで・・・」

少女に気を遣い少年が聞く

黒子「・・・大丈夫ですの。一緒に連れて行ってくださいまし・・・」

瞳を潤ませ、ぽやーっとした表情で答える

上条「そ、そっか。悪いな・・・」

元々その予定であったし、今の少女は少年と一時でも長く一緒にいたいと思っていた

黒子「そういえば・・・何を買いに行く予定でしたの・・・?」
手を繋ぐだけではもう止まらない、腕にぴたりとくっ付いて少女が問う

上条「えーっと食料と・・・あと、インデックスが喜ぶようなプレゼントを買おうかなって!」

ピシリ、と音を立て黒子の中の何かが崩れさる

黒子「・・・説明・・・してくださいますの・・・?」

あまりにもデリカシーの無い少年の発言に、腕を掴む力を強め、少女は不快感を露わにするのであった

251: 2010/01/19(火) 23:39:26.15 ID:qIi1uaa50
その夜 ホテルにて

コンコン
上条「インデックス、いるか?入るぞー」

返事を待たずして少年はドアを開ける。手には昼間黒子に選んで貰ったプレゼントを持って

上条「インデ・・・寝てるのか」
ベッドの上で静かな寝息を立てる少女を見て、少年は緊張の糸を解く

上条「・・・寝相、悪いぞ」
少女に布団をかけてあげようとすると、禁書が静かに目を覚ました

禁書「・・・んん・・・?とーま・・・?」

まだ寝ぼけているのだろう、視点が定まっていない

上条「悪い。起しちゃったか」
ばつの悪そうな顔をする少年。それから何か悩んでいるようであったが、決心をしたのかこちらの目をまっすぐ見据える

上条「聞いて欲しい。インデックス・・・」

上条「俺は、お前を・・」

―この先を聞いてはいけない、聞いたらもう戻れない
少女は無意識のうちに感じとっていたが、何も言うことが出来ずに静かに頷いた

253: 2010/01/19(火) 23:55:49.62 ID:qIi1uaa50
上条「頼む、インデックス!この通りだ!」
ガバッと目の前で土下座をする少年。普段やる様なものではなく、今にも頭が床にめり込みそうな勢いであった

禁書「・・・え・・・嫌だよ、とうま・・・?」

少年が言ったことはすぐに理解できなかった

上条「俺は、お前をこの旅から外そうと思っている」

突然の少年の告白を、少女は受け止められずにいた
―何で・・・?わたしがワガママを言ったからなのかな・・・?悪い子だったのかな・・・?

両目から熱い物が流れ出してくる

上条「頼むインデックス!俺はもう、お前のそんな弱々しい姿を見たくないんだよ!!」

いつから、どこからだろうか、全てばれていた
暗青の月での一件以降、少女の身体は激しく衰弱しており、でもそれを決して悟られない様にと少女は振舞っていた

もし気付かれてしまえば、少年が何を言うかは分かっていた。そしてそれは的中してしまった

禁書「やだ・・・やだやだやだやだ!嫌だよとうま!!置いて行かないで!」

癇癪を起こした子供のように、少女は泣き喚きながら、両手で少年の身体を叩く

上条「殴られても良い。噛みつかれたって良い。だから、だから」
お願いだよインデックス・・・と少年は声にならない悲痛な叫びを出した。

254: 2010/01/20(水) 00:06:12.10 ID:vFqRbTfY0
禁書「はぁ・・・はぁ・・・っ」

しばらくすると、泣き疲れたのか、殴り疲れたのか少女はぐったりとしてしまう

上条「・・・もし、もしこの旅で」

静かに少年が語りかける。少女はそれを止めない

上条「この旅で、お前に何かあったら・・・俺は俺を一生許せない」
DIOよりも自分を許せない、と少年が呟く。その言葉に嘘はない、それが上条当麻という少年であった

上条「それだけは、忘れないで欲しい・・・」
おやすみインデックス、とだけ呟き力無く少年が立ち上がって、部屋を後にする

その姿を少女は虚ろな目で見ていて、そしてそのまま今起こった現実から逃げるように眠りに落ちた

256: 2010/01/20(水) 00:24:20.64 ID:vFqRbTfY0
ふらふらと自分の部屋へと戻る少年
自分の部屋の前に、小さな影が一つあった

黒子「・・・おかえりなさい」
昼間少年からの決意を打ち明けられた少女が居た

上条「あ、あぁ、白井か・・・悪い、折角プレゼント選ぶの、手伝って貰ったのにな・・・今は・・・一人になりたいんだ・・・」
渡せなかったよ、と無理矢理笑顔を作りそれだけ言い残して、部屋に戻ろうとする少年

黒子「・・・我慢しないで良いですわ・・・仲間なのでしょう、私達は・・・」
その呟きに、ついに張りつめた糸が切れてしまったのか少年が顔を歪ませ、少女に縋りついて泣き始めた

上条「うああああああ・・・っ!!守れたのにっ・・・!俺に・・・!俺にもっと力があれば・・・っ!!」

激しい自責に圧し潰されてしまいそうな少年。かける言葉が見つからない
少女は自分よりも大きな少年を胸に抱き、彼の気が済むまでその場に居た

物音一つしない、静かな月の夜だった

257: 2010/01/20(水) 00:37:09.41 ID:vFqRbTfY0
翌日

禁書が目を覚ます。頭と目の辺りが痛いのは、恐らくここしばらくの体調の悪化から来るものではないだろう

コンコン
静かにノックの音が響く。一瞬ビクッと反応した少女は、恐る恐る返事をする

禁書「・・・どうぞ・・・なんだよ」

黒子「おっはようございますのー!」

意外な事に、部屋を訪ねて来たのは日頃あまり接点の無い少女であった

黒子「んまあ!何てことですの!」
素っ頓狂な声を上げる少女。どうしたというのだろうか

黒子「ほらほら、顔を洗って来て下さいな。可愛らしい顔が台無しですわよ!」

追い立てられ洗面所の鏡を見ると、酷い顔をした自分がいた

黒子「もしよろしければ、これから買い物に御一緒しませんこと?」

全身が酷く気だるかったが、少しでも昨日の事を忘れていたい。そう思った少女は、しぶしぶと頷くのであった

258: 2010/01/20(水) 00:51:10.16 ID:vFqRbTfY0
黒子「さあ、行きますわよ!」

禁書「あ、待ってよくろこ!」
禁書の手を引き、元気よくホテルを飛び出す黒子

禁書「・・・あ、あれは短髪?」

何時の間にいたのだろうか、美琴がホテルの前にいた

美琴「あら、アンタ達出かけるの?」
なら一緒していい?とにっこり微笑む少女

黒子「・・・ええ!勿論ですわ!」

立案者の許可を得、三人は町へと繰り出していった

259: 2010/01/20(水) 01:03:19.71 ID:vFqRbTfY0

美琴「ほら!これなんて美味しそうよ!」

黒子「そうですわね、美味しそうですわ」
二人の少女がココナッツジュースの屋台の前ではしゃぐ

黒子「はいっ!」
そう言って、飲みながらベンチに座る自分にも一つ渡してくる

黒子「んーっ!冷たくておいしいですわぁ!」
全身を使い、実に美味しそうに少女が表現をする

禁書「そ、そうだね・・・!美味しそうなんだよ!」

黒子「・・・」
少女に違和感を感じたのか、黒子が喋るのを止め―

黒子「そうですわ!とっておきのものが御座いますの!今買って来てさしあげますわ!」
ここで待っててね、と念を押し美琴の腕を引っ張りどこかへ走って行く

美琴「あ、ちょっと!?ちょっと待ちなさいよー!」

黒子に引きずられ、美琴の姿も見えなくなってしまった

262: 2010/01/20(水) 01:18:04.94 ID:vFqRbTfY0


人気の無い通り

美琴「はぁっ、はぁっ、どうしたのよ黒子・・・」
何も無いじゃない、と少女が呟く

黒子「・・・やめてくださいまし」
冷たく少女が言い放つ

美琴「・・・え?ど、どうしちゃったのよ黒子・・・?」

黒子「私の前で、それ以上お姉さまの御姿を騙らないでくださいまし!!」
声の限り叫ぶ。瞬間、美琴の頭上にテレポートをし、蹴りを叩きこむ

グチャリ、バカァッ!
少女の蹴りを受け、文字通り頭が割れそこから血を噴き出させる

「・・・どこから気付いたんだぁー?お嬢さんよおおお?」

裂けていく美琴頭の中から、見知らぬ男が顔を覗かせこちらを見ていた

265: 2010/01/20(水) 01:36:03.86 ID:vFqRbTfY0


黒子「醜い能力ですわね・・・っ!正体を現しなさい!」

男「おいおい、釣れない事を言うなよ。お嬢ちゃ~ん・・・!これが俺の本体のハンサム顔だァッ!」

美琴の姿が徐々に膨れ上がりババァンと音を立て破裂する

男「ククク・・・よく俺の変装に気がついたじゃないかお嬢ちゃん」
何がまずかったのかなぁ~?と首をかしげる

黒子「そうですわね。まずかったというのであれば、私の前でお姉さまを真似たのが一番の間違いでしてよ!!」
―それに、今頃お姉さまは上条さんと一緒にいらっしゃいますの・・・!!

あの夜、少女は考えた
自分が禁書を連れ、お姉さまには上条さんを連れ出して貰い両者の気分転換を図ろうと

美琴には当然詳しい事は言っていないが、上手くお膳立てはしておいた。大丈夫だろう

そして自分はあえてこちらの役割を選んだ。それがあの少年に対する、自分の出来る精一杯の行為であった

269: 2010/01/20(水) 01:54:29.38 ID:vFqRbTfY0
男「ククク、そうかい・・・ところでお嬢ちゃん、何か感じないかなぁ~?」

男の問いかけに、足に違和感を感じる

黒子「・・・ハッ!?」

先程の蹴りで付いたのだろうか、足に肉片が着いていた。だがそこは問題じゃない
振り払おうと手を伸ばすと、男の声が割って入る

男「おおっと、先にいっておく!それに触ると、その手にも食らいつくぜ・・・!」

男「じわじわと肉を食らうスタンド!食えば食う程大きくなるんだ!絶対に取れんぞ・・・!」

嘘があるかもしれない。そう思い試しに肉片のみにテレポートを試みるが不可能であった

黒子「この肉片・・・もしかして同化しておりますの・・・!?」
すかさず鉄矢をとばし反撃を試みるが、彼の身体の周りの肉片に吸収されてしまう

男「無駄だ、教えておいてやる・・・俺のスタンド、黄の節制『イ工口ーテンパランス』に」

男「弱点はないッ!!ドュー・ユー・アンダスァァァアアァタンンンンンドゥ!!?」

男の叫びに、周囲の空気が震えた

270: 2010/01/20(水) 02:08:21.40 ID:vFqRbTfY0
黒子「・・・ふぅ、やれやれですわ・・・」
一瞬置いて何事か考えたついたのか少女がため息を着く

男「もうお前に勝つスベなどないっ!離れる事はできん!消化してやるッ!」

黒子「確かにこの能力は強いですわ、恐らくお姉さまのレールガンですら倒せるかどうか・・・」

黒子「でも、私一つ思い付いてしまいましたわ。先日教えて頂きました、たった一つだけ残された最後の戦法が」
自信満々な少女。恐らく嘘はないだろう

男「なにィ~?」

黒子「それはッ!逃げるんですわッ!!」

瞬時、少女の身体は男の前から消え失せてしまった

男「ククク・・・勘違いしてるんじゃねぇぞ・・・俺は別に貴様を追う必要はない・・・!だが・・・」
―氏ぬ姿だけは確認しないとな

男は少女に張りつけた自らのスタンドの位置を感じ取り、ゆっくりと歩き始めた

271: 2010/01/20(水) 02:18:25.43 ID:vFqRbTfY0
黒子「・・・くっ!」

肉片は徐々に大きくなっており、黒子に走る痛みも次第に増してきていた

―上条さんなら、上条さんの幻想頃しでなら・・・!
街中を走りまわり少年の姿を探すが、心当たりも無いものをどう見つけようというのか

黒子「誰か・・・誰か見つけないと・・・!」
最悪自分はどうなってもいい、誰かを見つけてあの男の能力を教えなければ手遅れになる

ドンッ!
黒子「あっ!」
少女「きゃ!」

考えながら走っていたせいか、道を歩く少女にぶつかってしまう

黒子「あ、ごめんなさいまし!」

少年「おいィ!気をつけやがれェ!!・・・って、てめェは」
―え?

聞き覚えのある声に顔を上げる

一方通行「何やってンだてめェ?」

打ち止め「大丈夫お姉ちゃんってミサカはミサカは心配してみる」

一方通行と名乗る少年と、打ち止めと名乗る少女が目の前にいた

273: 2010/01/20(水) 02:34:56.73 ID:vFqRbTfY0
黒子「学園都市最強の彼であれば・・・!」
―何とかなるかもしれない

そう考えた少女は話を切り出す

黒子「あっ、あのっ!」

打ち止め「あれ、お姉ちゃん足にゴミが・・・ってミサカはミサカは気にしてみる」

一方通行「・・・チッ、しょうがねェなァ・・・!」

そう言って手を伸ばす少年。黒子の顔から血の気が失せる

黒子「あっ!ダメですの!!」

一方通行「あァ?何が駄目・・・なァッ!?」

遅かった。どんな攻撃をも反射する無敵の能力であったが、自分の指と同化した肉片を反射することはできなかった

男「・・・!おぉ~っとォ~?ゴミがまた一つくっついてしまったかな~?」

遠く離れた場所で男が呟く。その足は既に黒子を追ってはいなかった

男「やぁお嬢ちゃん、待ったかなァァァッ?」

禁書「・・・え?」

少女が振り向くと、知らない男が自分に手を伸ばしていた

274: 2010/01/20(水) 02:44:09.64 ID:vFqRbTfY0
―ククク、楽な仕事だぜぇ・・・!

恐らく自分は幸運の星の下に生まれついたのであろう
この仕事を終えればDIOから1億ドルの報酬が約束されている、マイク・タイソン以上の幸運としか言い様がない

禁書「・・・っ!二人をどうしちゃったの!」
何かを決意したのか、強く睨みつける
―ククク、可愛い反応ッ!

男「ああ・・・可哀想だが、始末させてもらったよ・・・!俺のこの能力・・・

男「黄の節制でなァッ!!」

スタンドを出して少女に殴りかかる。わざわざ肉片を使うまでもない

男「・・・な・・・?」
しかし、節制が出てこない。どうしたのだろうか、こんな事は初めてである

少女達と既に同化している肉片は解除されていないが、これでは新たに肉片を作り出す事も戦う事も出来ない

男「節制よ出ろっ!出ろっォォォ!!」
―俺の身に一体何が・・・!ハッ!?

禁書「――――」
目の前の少女が何やら呟いていたのを見た男は、直観的にこの少女が自分の能力の発動を妨げているのだと理解した

297: 2010/01/20(水) 23:16:43.56 ID:vFqRbTfY0
美琴「・・・ねぇ、ねぇってば!」

上条「え・・・?」
少女の何度目かの問いかけに少年は我に返る

美琴「どうしちゃったのよ・・・、何か、変よアンタ・・・」

例え彼女でなくとも、誰の目から見ても分かる程少年は朝から意気消沈していた


黒子『上条さん、何やら不幸があったらしくて元気がありませんの。お姉さま、今が絶好のチャンスですわよ!』

今朝突然黒子にそう持ち掛けられた。人の弱り目につけ込むなんてあまり気が進まない

黒子『ふぅ、それじゃあこのままずっとこの距離間でお姉さまは満足なんですわね。永遠に・・・』
流石に永遠は言い過ぎではないだろうか、とも考えたがこの超ドの付く程鈍い少年ならありえると考えてしまうのが怖い

そう考えた少女は、結局後輩に勧められるがままに少年を気分転換という名のデートへと誘ったのであった


美琴「・・・何か悩みがあるなら、相談しなさいよ・・・バカっ・・・」
口から出たのはそんな悪態。少年の悲しそうな顔を見て、少女まで泣きだしたくなってしまう

上条「・・・もし、大切な人と別れなくちゃならなくて、でもそいつが嫌だって言って・・・」
ぽつり、ぽつりと少年は少女に語り始めた

298: 2010/01/20(水) 23:29:34.96 ID:vFqRbTfY0
静かに、じっと少年の話を終えるのを待つ少女
美琴「・・・でも、それはその、『女の子』の為なんでしょ・・・?」

少年は人物を男と女に置き換えていた。しかし美琴はそれが分からない程鈍くはない

上条「・・・そうかもしれない、でももしかしたら男の勝手なのかもしれない」

少年が握る拳にぎゅっと力が入る

かける言葉がみつからず、沈黙に身を委ね長い時間少年から目を離さず立ち尽くす

黒子「お姉さま・・・!ハァッ・・・!上条さん!!ハァッ・・・!」

その沈黙を破ったのは、自分と少年をお膳立てした少女であった。その後に白髪の少年に抱き抱えられた少女が続く

血相を変え息も絶え絶えにするその姿に、不吉な予感が二人を襲う。
そして少年は気がついてしまった。黒子が一緒に遊びに行くと連れだした少女の姿が見えない事に

299: 2010/01/20(水) 23:44:30.19 ID:vFqRbTfY0
禁書「・・・はぁ・・・!はぁ・・・!」

男「おいおいお嬢ちゃん・・・もう鬼ごっこは終わりにしてもいいかなァ~?」

スペルインターセプトによって能力を封じられた男は、自らの身体で少女を追いかけていた
しかしそれももう終わり。少女が逃げた先は寂れた港
もう男の追跡を邪魔するような物も無いし、人の気配もない。殺るには最高の環境と言えるかもしれない

少女は男の顔を睨みつけるが、恐怖のあまり足が震えている。恐らく立つのもやっとであろう

禁書「・・・し・・・って・・・」

男「あぁ~ん?聞こえないな~?今更命乞いのつもりでちゅか?」
少女の呟きに笑いながら答える男

カコン
禁書「わたしだって皆の役に立てるんだよ・・・!わたしだって戦えるんだよ・・・!わたしだって・・・っ!」

少女は足元の木材を拾いあげ、自分の恐怖を打ち消すかのように叫びながら男へと殴りかかった

301: 2010/01/20(水) 23:55:15.44 ID:vFqRbTfY0
男「しつけぇぞガキ!」

少女のみぞおちに再び蹴りを入れる

禁書「あっ・・・がっ・・・!」

少女の勇気を振り絞った特攻は、男に難無く避けられてしまう
それから男は苛立った様に少女に身体に何度ともなく蹴りを、拳を入れた

男「もう諦めろガキがッ!」
しかしその度に少女はふらふらと立ち上がり、力無く男に向かって行く

―怖いよとうま・・・でも・・・、でも・・・!

ここで諦めてしまったら、ここで倒れてしまったら、ここで足手纏いになってしまったら、少年は自分を置いて行くだろう
それだけは嫌だった。氏ぬ事よりも、目の前の男に殺される事よりもそれが一番怖かった

303: 2010/01/21(木) 00:07:36.69 ID:xcYlCKtk0
禁書「あ・・・うあああぁぁぁっ!!」
もはや何を言っているのか自分でも分からない

禁書「うあっ・・・!あ・・・っ・・・!」
軽くいなされ、再び蹴りを貰い倒れ込む少女。立ち上がれと脳が命じても、足がそれに応えない

カコン
男「・・・ガキにこれ以上付き合ってられねぇんだよ・・・!」

先程少女が拾った木材を手に、男は少女の正面に立つ
男「おらぁッ!逝っちまいやがれ!!」

―ごめん、とうま・・・買って貰った服、汚しちゃったんだよ・・・

少女の頭を狙う、その狂気の眼差しに寸分違わず、力の限り振り下ろされた

305: 2010/01/21(木) 00:23:32.36 ID:xcYlCKtk0
男「うっ、うおおおおおっ!?」

瞬間、男の身体が大きく吹き飛ばされる

美琴「そんな小さい子に何やってんのよアンタ・・・ッ!」

怒りで全身の毛を逆立てた少女は、男から目を逸らさず叫ぶ

禁書「たん・・・ぱ・・・つ?」

美琴「喋らないで良いわ、今皆来るから・・・!」
空に大きく電撃を飛ばす、例え皆がどこにいても分かるであろう合図

男「おぉ・・・あぶねぇあぶねぇ・・・」

美琴「なっ・・・!?」
頃すつもりとまでは言わないが、少なくとも全治数カ月は覚悟の威力で撃った。それを直撃して立ち上がる人間などいるのか

男「反射でスタンドでガードするだなんて、本当に俺はラッキーだぜぇ・・・!そして、一度出したら俺の勝ちだ・・・!」

禁書が妨害する余裕もなく、男は節制をその身に纏い立ち上がって来た

306: 2010/01/21(木) 00:36:06.97 ID:xcYlCKtk0
それから何度も電撃を見舞うがダメージは通らない。何度試して男の節制に防がれてしまう

―だったら・・・!

スタンドから剥き出しの顔、そこを反応出来ない速度で叩く
音速で少女は男の前に詰め寄り、左足を軸に流れるような速度で回し蹴りを放つ

グシャ
―やった・・・!?

あまりにも呆気ない反応と共に男の顔がめり込み

ドロドロの肉片に変わる

美琴「・・・!まさか・・・!?」

男は自らの顔を顔の上に作り、少女を誘っていた

美琴「うっ!うああああっ!?」
突如激しい痛みが少女の足を襲う

少女の右足は既に節制の肉片に覆われていた

307: 2010/01/21(木) 00:46:03.44 ID:xcYlCKtk0
訪れた希望が絶望に変わる瞬間を、禁書は見ていた。見るだけしかできなかった

喉を切ったのかもしれない、身体が麻痺してしまっているだけなのかもしれない、もう声も出せなかった

男「さて・・・と、順番にトドメを刺してやるよ・・・」
お前はもう助からないんだ、と視線は既に美琴の方に向いていなかった

美琴「待ちなさいよ・・・!待ちなさいってば・・・!!」
少女がいくつもの電撃を飛ばす。だがそれは彼に届く前に節制に吸収されてしまう

男「ごめんよォ~ッ!レディを待たせちゃったねぇ~?」

男が禁書のシャツの襟を掴み、少女を目線へと持ち上げる

―何と言うのかな・・・
男「紹介がまだだったかね、これが俺の能力、黄の節制だ」

―とうまなら・・・
男「そして、お前を今から頃す能力だよォォォッ!!!」

―こんな時、どうしたのかな・・・
黄の節制の拳が少女の頭に振りかぶられる。これから起こる出来事に、思わず目を瞑ってしまう

「絶望してんじゃねぇよ!!」

節制と少女の間に割り込むように少年が伸ばす右手は、確かに今、届いていた

絶望の色に染まる少女の心に、届いていた

309: 2010/01/21(木) 01:00:58.91 ID:xcYlCKtk0
突如現れた少年にスタンドの拳が止められる。腕の先が消えているのも、少年がスタンドも纏わぬ生身であるのも男は気にならなかった

男「次から次へと・・・!邪魔なんだよォッ!!」

少女から手を離し、再生成した節制の拳が再び振られる。しかし何度やっても少年には当たらない、直前で消えてしまう

男「なら俺が直接ッ!」

そう叫ぶと男は少年に襲いかかる。しかしその拳は、蹴りは全て空を切る
男の顔に焦りの色が浮かぶが、それも一瞬のことである

男「俺のこの節制の防御は無敵だッ!お前の攻撃な・・・ぶガッ!?」
少年の右手が男の顔を殴る。男の腹を殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。

男「ヴぉっ!ぼぉうやべでくで!!」

上条「うるさい、黙れ」
更に殴る。男には既に戦意などなかったが、そんな事は関係なかった

禁書「・・・う・・・ま・・・」
その姿は、人の痛みを人一倍嫌う普段の少年からは想像出来るものではなかった

上条「少し、待ってろインデックス。すぐに医者に連れて行ってやる。けど、その前に」
そして更に男を殴る

上条「このふざけた男を、ぶち頃してやる」

312: 2010/01/21(木) 01:13:00.60 ID:xcYlCKtk0
黒子「遅くなりましたの・・・かっ・・・上条さん・・・、何をっ・・・!?」
美琴「もうやめて!やめてよ当麻っ!!」

少年の異変に気付いた少女達が、二人がかりでようやく止める

美琴「そんなことより、あの子の手当てが先でしょ!氏んじゃうわよ!」
その言葉に男の返り血で真っ赤になった少年がようやく我に返る

上条「あ・・・インデックス・・・!インデックス・・・っ!」
少年が少女に駆け寄り、強く抱き起す

少年は少女を抱きしめ、二人の少女達は少年と彼女を見守る

ブヂュル ブヂュル

上条当麻と、御坂美琴と、白井黒子は気付かなかった
血を流し、もはや顔が原型を留めぬ男の節制が、静かに海鳥の肉を食らっていたことを

禁書目録だけが気付いていた

313: 2010/01/21(木) 01:24:15.75 ID:xcYlCKtk0
男「ふ、は!は!は!は!は!は!!」

突然立ち上がり男が高笑いを始める

美琴「こいつ・・・まだっ・・・!」
緊張を顔に走らせる美琴。だがそれも一瞬のことであった

男「俺がお前らを倒せなくとも、お前らの情報だけでも十分な成果だろうよォォッ!俺はずらからせてもらうぜッ!!」

少年の能力が、近距離型だと思いこんだ男は、既に勝利を確信していた。二人の少女では節制を打ち破れない

一方通行「あァ・・・?誰が逃すと思ってンだ・・・?うちのガキに手ェ出して、ただで済むと思うンじゃねェぞ・・・?」
打ち止め「彼をいじめたあなたは許せない、ってミサカはミサカは拾った木材を持って圧力をかけてみたり!」

最後に追い付いた白髪の少年と、少女が男の背後に立っていた

男「おっ、お前らなんぞ!この節制の・・・節制が・・・!出ない・・・ッ!?」
ハッと振り返る男、その視線の先に居る少女が何やら呟いていた

禁書「・・・は・・・負・・・ない・・・よ・・・お前に・・・は・・・けないんだよ・・・っ!」

一方通行「何言ってんだてめェ・・・覚悟は出来てンだろォなァ・・・?」
打ち止め「じり・・・じり・・・とミサカはミサカは詰め寄ってみる」

男の断末魔だけが港に響いた

314: 2010/01/21(木) 01:40:09.94 ID:xcYlCKtk0
明りの落とされた暗い病室で、禁書が静かにベッドの上で眠っている。それを上条当麻は静かに見守っていた

禁書「・・・う・・・」
傷が痛むのだろうか、時折少女は身体をビクリと動かす

骨が折れていないことは幸いであった。後遺症も無い。おそらく数日もすれば外を出歩けるレベルにはなるだろうと医者は言った

上条「・・・ごめんな、インデックス・・・」

部屋のドアが静かに開く

一方通行「・・・よォ・・・少し、いイか?」

少年に連れられ上条は部屋を後にして屋上へ出る
冷たい風が二人を包み、この病院とは対称に、見下ろす街は眠る様子が無い

一方通行「あの女共から聞いた・・・連れていってやれよ・・・」

上条「え・・・?」
意外な人物の意外な発言に目を驚かす。それはまさに、上条が考えていた事に関係していた
上条は知らなかった。デーボに襲われたあの日、打ち止めと呼ばれる少女が彼に何と言ったのか。そして彼は何を言ったのかを

316: 2010/01/21(木) 01:54:49.05 ID:xcYlCKtk0
それから何も答える事が出来ず、二人はここから見える夜景を見ていた

一方通行「・・・そンだけだ、ただ決めるのはてめェだ」
後悔すンなよ、とだけ言い残し立ち去る

再び少女を見守りに部屋に戻る

禁書「・・・おいてかないで・・・とうま・・・」

両目から涙を流し、少女は寝言をうっていた

上条「・・・」

そっとそれを指ですくい、拭いてやる

禁書「・・・とう・・・ま・・・?」

目を覚まさせてしまった
少女が少年の指をぎゅっと握る

禁書「今夜はとうまと一緒に、寝てもいいかな・・・?」

上条「・・・あぁ・・・良いぞ」
ベッドに入り、少女を力強く抱きしめてあげると、少女は安心したのか再び静かな寝息を立て始めた

今度こそ、決めた。もう迷わない

319: 2010/01/21(木) 02:15:39.16 ID:xcYlCKtk0
翌朝、少女の病室にて

上条「・・・突然呼び出してすまない」

少年に呼び出されたのは全員。そして彼らもまた何一つ聞かずに集まった

―インデックスのことであろう
全員がそう直感した。インデックス本人すらも

上条「インデックスの事なんだが・・・」

自分を落ちつかせる様に、すうっと息を吸う少年

―あの子を置いていくだなんて言ったら、ぶん殴ってやるんだから・・・!
美琴はそう、思っていた

―あの子は強い子ですの・・・あの子の勇気は本物でしたわ・・・だから・・・っ
勝てないと分かりながらも、ラバーソウルに立ち向かう少女。その姿はジョセフと戦う自分を思い出してしまう

上条「俺は・・・」

少年が、静かに、その重い口を開く

上条「俺は、インデックスと、ここで別れようと思う・・・!」

静かな病室に、少年の決意を秘めた声が響き渡った

324: 2010/01/21(木) 02:32:31.09 ID:xcYlCKtk0
禁書「・・・!」

美琴「なん・・・で・・・?なんでよ!何でなのよっ!!」
思いがけぬ彼の言葉を聞いて、一瞬の硬直の後に少女が感情を露わにする

黒子「・・・上条さん、私も納得する理由を聞きたいですわ」
静かな口調ではあったが、彼女もまた少年の判断に賛同しかねていたのは明らかであった

上条「・・・もう・・・もう嫌なんだよ・・・こいつがこれ以上傷ついて・・・もしかしたら―」

少年はその先を言わなかった。言えなかった

美琴「でもそんなの・・・!そんなのって・・・!」
黒子「勝手すぎますわ!」

次々に異を唱える少女達

一方通行「うるせェぞ!!」
白髪の少年が吼える

325: 2010/01/21(木) 02:40:50.27 ID:xcYlCKtk0

一方通行「こいつら二人で決めることだろォが、俺らは黙って従や良ィンだよ!」

そして黙っている少女に向き直り

一方通行「てめェも考えてンのか!こいつが昨日の戦いで・・・!」
少年の右手を見る。ラバーソウルを殴り過ぎた右手は肉が裂け、血が噴き出していた。それを包帯が包むだけの簡単な手当て

禁書「・・・!」

間違いなく、あれは自分のせいで負った傷
少年にとって右手の幻想頃しは命綱であり、この旅に自分を守る為にも必要な物であった
その右手が今、包帯に包まれてしまっている。これが彼を頃すかもしれないのだ

禁書「ねぇ・・・とうま」
静かに少女が少年に問う

禁書「・・・絶対に、帰ってきてくれるんだよね・・・?」

326: 2010/01/21(木) 02:53:03.45 ID:xcYlCKtk0
禁書「あれを最後の思い出にしないって、約束してくれるんだよね・・・っ!」

上条「・・・っ」

少女は気付いていた。少年が珍しく気を利かせた二日前の買い物
あの時にはもう、彼は自分を置いていくと決めていたのだろう

だから、衰弱していると知りながらも、彼女を連れ出した

だから、せめて楽しい思い出をもう1つだけでもと思っていた

上条「インデックス・・・俺は・・・」

禁書「お洋服なんていらない・・・!おいしい料理もいらない・・・っ!!」

禁書「とうまがいい・・・!とうまがいい・・・っ!!」

禁書「必ず帰ってくるって、約束して欲しいんだよっ!!」

瞳に涙を溜め、少女は少年に叫びかける

327: 2010/01/21(木) 03:06:06.15 ID:xcYlCKtk0
この約束はとても大切な事。少年は大切な事に関しては、約束を破らない。少女はそう信じている

もしここでこの約束をしなければ。少年は例え命と引き換えにでも、奴らを止めようとするだろう

上条「・・・あぁ・・・約束するよ・・・」

上条「俺は氏なない、そして終わったら、お前をもっともっと楽しい所に連れて行ってやるさ・・・!」

禁書「・・・わかった・・・」
―その言葉だけが、聞きたかったんだよ・・・

下を向き袖でぐしぐしと涙を拭く。そして思いっきり顔を上げて

禁書「みんな、わたしの分も頑張ってきてほしいんだよ!」

涙でぐしゃぐしゃになったけれども、出来る限りの笑顔で―

330: 2010/01/21(木) 03:22:37.87 ID:xcYlCKtk0
一方通行「・・・はァ・・・」

少年は困っていた。それは何故か
上条の事ではない。財団の迎えで禁書が学園都市に戻ってからは、全く弱り目を見せていないどころか、一層張り切っている。では何故か

インドに入り、バクシーシバクシーシうるさい乞食共にげんなりしているのか。それでも無い。では何故か

食事が合わないという訳じゃない、これからの戦いにネガティブなわけでもない。では何故か

打ち止め「ねぇねぇ、私にも同じことして欲しい!とミサカはミサカは照れながらお願いをしてみます」

これが原因である

―こいつにあンな臭ェ芝居見せてンじゃねェよ・・・
上条と禁書の病院での一件以来、ますます少女は少年にお熱になってしまっていたのであった

一方通行「・・・あンなァ・・・!」
―今日こそガツンと言ってやらァ・・・!

振り向いて少女を見る

打ち止め「う・・・、駄目・・・なの・・・?とミサカはミサカは涙目であなたに訴えかけます」

言葉の通り目を潤ませる少女。しかもこれに彼の袖を引っ張りながら上目遣いというオプション付きである

一方通行「ーーーッ!!だァァァァアァァァアァァァッ!!」

逃げるように彼は男子トイレへと駆け込んだ

331: 2010/01/21(木) 03:35:43.09 ID:xcYlCKtk0
―こンなの俺のキャラじゃねェ・・・!
流石に少女はここまでは入ってこなかった。用を済ませ手を洗い、ふと目の前の鏡を見る

生意気そうな目に、真っ白な髪を生やした、男とも女とも区別の付かない中性的な見慣れた顔がそこにある

―もーちょいクールな感じじゃァなかったか俺ァ・・・
鏡で自分を見つめ、こんな事を考える奴のどこがクールなのか。

「それはねーよ」と、突っ込んでくる人が居ないのは幸いである

332: 2010/01/21(木) 03:43:09.26 ID:xcYlCKtk0
鏡の前で様々な顔を作ってみる
まずは喜び。口の端をぎこちなく伸ばし目尻を気持ち下げて見る
―気持ちわりィ・・・

怒り。目頭に力を入れ・・・
―あンまり変わンねェ・・・

ひょっとこ顔・・・どんなだ

などと考えていると、それに近い様な顔が映る
―あァ、そうそうこンな顔・・・あアァlッ!?

急いで振り返るが誰もいない、再び鏡を見ると
―野郎、ナイフを・・・ッ!

鏡の中の男は彼がその場から逃げるよりも早く、ナイフを突き刺した

「ぐ、ぐわああああ!」

打ち止め「ど、どうしたの!?とミサカはミサカは心配になって入ってみる!」

よくわかンねェと言いたげに首を振る少年と、鏡の中で血を噴き出す男が居た

336: 2010/01/21(木) 04:37:54.84 ID:xcYlCKtk0
その後何度か同じような事を繰り返して

男「な、なぜ効かない!何故この俺に反撃出来る!?この俺の無敵の能力吊るされた男『ハングドマン』にッ!」

打ち止め「などと男は意味不明な発言をしており、その真意は不明。各方面の一層の努力に期待です。とミサカは―」

一方通行「・・・てめェも何言ってンだ・・・」

ここまで言ってデジャヴを感じる。そうだ、あのデーボだ。とすれば次の手は・・・

吊「クソガキッ!てめーがダメなら、こっちを狙う手もあるんだぜェェェェッ!」
男がナイフを構え、少女に飛び掛かる

一方通行「ほい」

が、ダメ。通らない
咄嗟に鏡と少女の間に割って入る少年のせいで、少女が狙えないどころか勢い止まらず少年に攻撃をして―

吊「ガッハッ!」

自滅してしまう

一方通行「・・・てめェのその能力・・・」

一方通行「鏡の中を行き来出来る・・・ンだろ・・・?」

呆れたように言う少年を、驚いたような目で見るのが吊るされた男であり
呆れたように言う少年が、何を言っているのか理解できないのが打ち止めであった

338: 2010/01/21(木) 05:28:41.72 ID:xcYlCKtk0


吊「出せ!ここから出せ!」
真っ暗な部屋の鏡の中で男が叫ぶ。反射出来なければその能力も使い様がない

打ち止め「こっちだよ!とミサカはミサカは言われた通りにお姉さまを連れて来てみたり」
鏡は見ちゃダメなんだって彼が言ってたよとも付け加える少女

―何が何だかわからないんだけど・・・!
美琴「な、何よ!ってここ男子トイレじゃない・・・って暗っ!何で明り付けてないのよここ!」

一方通行「悪ィな」

美琴「・・・はぁ・・・?用事ならとっとと済ませてよ・・・」

一方通行「・・・チッ、何も聞かずにこの建物ごと丸焦げにしちゃくんねェか」

美琴「・・・はぁ・・・?そんなことするわけないじゃない・・・何言ってんの」

―あァ・・・もうめんどくせェ・・・

339: 2010/01/21(木) 05:38:09.96 ID:xcYlCKtk0
一方通行「男勝りのガサツ女・・・」

ピクッ
美琴「・・・ごめん・・・聞こえなかったんだけど・・・?」

一方通行「てめェの思い通りにならねェとすぐに癇癪起こして暴力に訴えるガキってンだよ。そンなだからお嬢様学校に通ってるのに男から誘いの声の一つも―」

追い打ちをかけるように少女を突如罵倒し始める少年。最初の方こそ耐えている少女ではあったのだが

美琴「その喧嘩、買ったァァァッ!!!」

ついにキれた

二人のレベル5能力者の壮絶な戦いの結果、建物は全焼

吊るされた男は熱に焼かれて壊れて行く世界の残されたまま、その生涯を終えた―

340: 2010/01/21(木) 05:52:45.39 ID:xcYlCKtk0

学園都市最強

それは彼の二つ名であるが、その座をとうとう明け渡す時が来てしまった

打ち止め「・・・ちゃんと聞いてるの!?ってミサカはミサカはお説教を続ける!」

打ち止め『今のはあなたがいけないんだよ!ってミサカはミサカはお姉さまの肩を持ってみる!』

―それは汚ェだろ・・・
結局、氏闘の果てに勝利を収めたのは全く関係の無い少女であり、そしてその少女は今回ばかりは美琴勢力であった

美琴「・・・へぇ・・・で、鏡の中の世界に敵がいたんだぁー・・・ふっうーん・・・へぇー・・・それはすごいわー・・・」

似てるというよりも、同じ人と言える二人の少女に挟まれる少年

341: 2010/01/21(木) 06:04:49.64 ID:xcYlCKtk0
幼い方はお説教を、そして年上の方は先程の仕返しとばかりにネチネチと嫌味を言ってくる

―こンなの俺のキャラじゃねェ・・・!

一方通行「そう、上条の野郎の役割だろォこれは・・・」
ぶつぶつと小声で呟く

二人「聞いてるの!?」

一方通行「きっ、聞いてらァ!」

美琴「・・・全っ然反省の色が見えないわね!」

嫌な予感がする。少年の背中に冷や汗が流れだす

打ち止め「そうだ、じゃあ罰ゲームをやったら許してあげる!ってミサカはミサカは提案してみる」

美琴「罰ゲーム?」

打ち止め「あのね・・・この前の病院での・・・二人の・・・をやって欲し・・・」

美琴の耳に何やら小声で喋り出す少女。それを聞いた少女は満面の笑みを浮かべそれに同意

もはや逃げる事は不可能。打ち止めの提案する罰と称した羞恥プレイを美琴の前で行った後、ついに少年は悪夢のような時間から解放されたのであった

342: 2010/01/21(木) 06:16:55.49 ID:xcYlCKtk0
同日

上条「んー・・・すっかり良くなったな・・・」

右手を握っては開き、握っては開きを繰り返す。もうシンガポールでの怪我はまったく目には見えない

少年は街に買い出しに行く途中であり、一人で歩いていた

黒子「あ、あら!かみじょーさんぐーぜんですのー!!」

上条「ん、ああ白井か。お前も買い物に行く途中なのか?」

黒子「そ、そうですの!よろしければ、御一緒しませんこと!?えぇ、それが良いですわ!」
―ごめんなさいお姉さま、でも今の黒子の辞書に手加減という言葉はございませんの・・・!

少年が外に出るのを見て、偶然を装い同行する。名付けてすごく自然にデート作戦

少年の返事を待たずして、少女は彼の腕を取り街へと繰り出していった―

343: 2010/01/21(木) 06:31:21.17 ID:xcYlCKtk0
黒子「まぁ・・・このブレスレット、素敵ですのー」
露店に並ぶ古めかしいブレスレットを手に取り少女が微笑む。何やら鳥の絵が描かれているが少年にはよく分からない

黒子は行く先々で楽しそうな笑顔を振りまいていた
ひょっとしてインドに何か思う所があったのかもしれない、シンガポールで買った服を着て、普段よりオシャレをしている気がする

上条「気にいったのなら、買えば良いんじゃないか?」
―ジョセフさんからもある程度は好きに使って良いって許可が出てるしな

黒子「・・・いいえ、こういうのは自分で買ってもダメなんですわ」
はぁと溜息をついて元の位置に戻す少女

上条「そういうものなんですかね・・・あぁ、そうだそれじゃあ」

店主にお金を渡す少年。その手には今のブレスレット

344: 2010/01/21(木) 06:48:38.64 ID:xcYlCKtk0
上条「ほら、これなら良いのか?」

ぽかんと口をあけている黒子に、特に深い意味もなくブレスレットを手渡す少年

上条「白井にはあの事で、世話になっちまったからな」
照れた顔で頬を掻く。誰だって泣き顔を見られるのは恥ずかしい物である

上条「これは上条さんからのお礼の一つっていうことで、受け取って下さいよ」
にっこりと笑う少年

黒子「た、大切に・・・一生大切にしますの・・・!」

上条「い、一生って、大げさじゃあないでせうか・・・」

彼はこのブレスレットに描かれた鳥の事を知っているのだろうか

この小夜鳴鳥が、愛を象徴する鳥だと知っていたのであろうか

345: 2010/01/21(木) 07:03:12.28 ID:xcYlCKtk0
それからは特にめぼしい物も見当たらず、必要な食糧などを買った後ホテルへと戻る

―上条さんって誰か好きな方がもういらっしゃるのでしょうか・・・
黒子「・・・」
先程の元気はどこへ行ったのか。上条の渡したブレスレットを胸に抱き、少女は先程からずっと黙って考え事をしている

―ひょっとして、白井も具合悪いんじゃねぇのか・・・?
禁書の事を思い出す。空元気はもう願い下げである

上条「白井、お前熱でもあるんじゃないのか・・・?」
額に手を当てる少年。これを素で行うのが上条当麻という少年である

黒子「あ・・・っ!あわ・・・」
声にならない声を出して少女が反応をする。ぐるぐると目が回って気持ちが悪い

―何か、何か言わないと!変に思われてしまいますわ・・・!

黒子「かっ!上条さんっ!上条さんって、今っ!おっ、おおおお付き合いしていらっしゃる方がいるのでしょうか!?」

自分でももう何を言っているのか分からない。突然突拍子もない事を言ってしまい、自ら掘った墓穴が更に体温の急上昇を引き起こす

346: 2010/01/21(木) 07:16:08.37 ID:xcYlCKtk0
上条「イヤァァァッ!!いきなり上条さんの胸を抉る発言が聞こえたんですけどもっ!?何!?Sなの!?」

居ないということであろう。狼狽したかと思うと、急に肩を落とす少年

上条「はぁ・・・俺みたいな万年補修の貧乏無能力高校生とお付き合いしてくれる稀有な女性なんていらっしゃいませんよー」
常盤台のお嬢様には分からない世界の人間なんですよ、と自虐を続ける少年

上条「・・・まぁ、白井は可愛いし、モテない組みの気持ちなんて分かんないだろうなー・・・」

―可愛い・・・っ!

黒子「・・・本当に、そう思いますの・・・?」

上条「・・・?ああ、思ってるけど・・・?」

少年から渡された、手元の愛のブレスレットを強く握る

―白井黒子、当たって砕けますわ・・・っ!

黒子「か、上条さん!もしよろしければ、わ!私と―」

356: 2010/01/21(木) 13:19:40.13 ID:xcYlCKtk0
男「待ちな」

上条「ッ!誰だ!?」

突如背後から殺気を帯びた声がかかる。二人から少し離れた位置に、カウボーイの様な格好をした男がいた

男「ホル・ホース・・・俺の名前だぜ・・・皇帝『エンペラー』のスタンド能力ってわけよォ・・・」

手に持った銃で周囲のガラスを手当たり次第にぶちまける男

上条「・・・一対二だってのに随分余裕があるみたいだな・・・」
目線を逸らさずに男に問う。恐らくは相当の使い手

ホルホース「銃は剣よりも強し、ンッンー・・・名言だなこれは・・・」

上条「何を言っている・・・!」

ホルホース「俺の能力はハジキだ、そして武器も持たないあんさんら相手なら俺一人で十分だってことだッ!」
―もうじき奴らをを始末したJ・ガイルの旦那も合流するはずだしなァッ!

手から再び銃を具現化し、少年に向ける男
まだ男は知らなかった。そのJ・ガイルは今鏡の中に閉じ込められており、そしてその後絶命してしまうことを

360: 2010/01/21(木) 13:37:53.46 ID:xcYlCKtk0
少年の頭に照準を定め皇帝をぶっ放す

上条「くっ・・・!」
手に持った荷物を放り投げ咄嗟に回避をする少年。すると通り過ぎた弾丸が少年の頭に再び狙いを定め軌道を修正する

ホルホース「弾丸だってスタンドなんだぜ~っ!それを予想出来なかったのがあんさんの敗因なのさぁ~ッ!」
―ジョースターのガキを殺った!

勝ち誇ったかの様に高笑いをする男

上条「そうかよ!ならこいつが能力だってんなら言っちまったのがお前の敗因だな!!」

咄嗟に右手を割り込ませる少年

右手ごと脳をぶち抜く、という男の幻想ごと少年の手はぶち壊してしまう

ホルホース「なっ!?」
目を奪われるのは一瞬。すぐに気を取り直し再び攻撃を試みようとするが、腕が上がらない

ホルホース「な、なんだこりゃあっ!!」
男の右腕を拘束するように、袖口と脇腹部分の服を金属の矢が貫通していた

黒子「・・・ちょっと」
声に咄嗟に反応する。先程から静かであった少女がいた

黒子「地獄へ旅立つ準備は出来てますかしら・・・?」

男への惜しむ事無き憎悪と怒りを目に宿した少女は、そう言った

363: 2010/01/21(木) 13:57:32.18 ID:xcYlCKtk0
黒子「あなたがっ!気を失うまでっ!殴るのをっ!!」

ホルホース「う、うおおおおおおッ!!!?」
少女に言い様に殴られ続ける男。先程からロクに抵抗をしない。したくても出来なかったのである

空いた手で少女に拳を振るうが、それは空を虚しく切り
瞬間に背後から少女の拳が、蹴りが男の頭を打つ。振り向くと既に少女はそこには居なく、更なる衝撃が身体に走る

―こ、このアマの能力・・・!こいつは・・・!

恐らく自分との相性は最悪な部類。瞬間移動の能力者
いくら軌道を修正出来るとはいえ、相手が目の前から見えなくなってしまえばやりようがない

軍人将棋というゲームがあり、戦車は歩兵には勝てるが、飛行機には勝てない
剣を持って突撃する歩兵に対しては無二の強さを誇る男にとっての天敵、それが彼女であった

上条「お、おい!白井!もう良い、もう良いだろ!」
慌てて少女を羽交い締めにして止める少年

上条「あんたも、まだやるってんなら俺が相手をしてやる・・・!」
男を強く睨みつける少年。どんな修羅場を見て来たのだろうか。自分より年下の相手に思わず気圧されてしまう

―これはかなわんぜ・・・ッ!

男はその場から振り向きもせずに逃げ去る。少女はそれを追いかけようとするのものの、それも一瞬
幻想頃しに掴まれた少女の身体は、少年の抱擁を振り切る事が出来なかった

そして少女自身、もうしばらくこのままで居たいと思っていた―

364: 2010/01/21(木) 14:15:14.47 ID:xcYlCKtk0
美琴「・・・言い遺すは何かあるの?」
やれやれと溜息一つついて、少女が一歩にじり寄る

男「ひィえェえェェェェェェェェッ!!」

腕だけに異常な筋肉を持つ男が、美琴を見て怯える

運命の車輪『ホウィール・オブ・フォーチュン』
それが男のスタンドの名前であったが、誰もそんなことに興味は無かった

一方通行「・・・てめェの下手くそな追跡のせいで、俺らはここまで歩かなきゃいけなかったンだぜ・・・」

周囲に被害を出さない為に、上条当麻はこの追跡者を叩く事を優先した

そしてその結果が今、この瞬間である

男の能力は自動車をベースに、思う通りに変形して攻撃をしてくるというものであった
そして自動車という「機械」を、美琴相手に用いる時点でこの哀れな男には勝機など無かったのである

ダンプカーに変身し彼らを襲うのも、少女にあえなく吹き飛ばされてしまう
おおよそ車ではありえない位置からの奇襲も、生きたレーダーと化した少女には通用しない
そして奇策とも言えるガソリン銃も、音速で移動する少女には当たらない

上条「・・・悪いが、運が無かったと諦めてくれ」
同情したような少年の言葉を最後に、男の意識はそこでぷっつりと途絶えてしまった

365: 2010/01/21(木) 14:33:08.24 ID:xcYlCKtk0
男を気絶させると、残されたスタンドはみるみるうちに姿を変え、やがて一つのジープが残った

黒子「これが・・・あやつの能力の元というわけですのね」
呆れたのか感心したのか、少女が呟く

一方通行「あァ、丁度良い。こいつに乗ってこうぜ」

上条「お前、運転出来るのか?」
もっともな質問である。免許の有無はともかく、操縦出来る人間がいなければ話にならない

一方通行「あァ?てめェ俺を誰だと思ってやがンだ」

美琴「随分な自信じゃないの、いいわ。見せて貰おうじゃない」
少女の言葉を切っ掛けに、彼らは車に乗り出す

全員口には出さなかったが、運命の車輪を叩くべくここまでずっと歩きづめであり、疲労していた

368: 2010/01/21(木) 14:47:36.27 ID:xcYlCKtk0
一方通行「・・っし、行くぞてめェら!」
そう言って車を走らせる少年、ふらふらすることもなく、真っ直ぐと進む

―おっ、本当に運転出来たのか。まぁこいつは今まで色々やってそうだからな

高校生といえどもバイク程度に乗る奴もいるし、ましてや相手はこの少年
裏社会に生きてきた彼なら、車の一つや二つ、運転出来てもおかしくはない。だが

上条「・・・な、なあ。ちょっと飛ばし過ぎじゃないか?」
正面からのGに耐えながら少年は言う、大きく首を振って同意する少女達

打ち止め「大丈夫だよ!とミサカはミサカは彼のドライビングテクニックを保証してみたり」

上条「そ、そうなのか?でももうちょっと安全運転で・・・」
どこからくる自信なのかは分からないが、少女の力強い言葉に安堵を覚える

打ち止め「彼はとあるゲームセンターでは生きる伝説のドライバーとまで呼ばれていて!とミサカはミサカは自分の事の様に胸を張って―」

・・・打ち止めという少女の口から発せられる言葉は、上条の右手よりも性能が良いらしい
少年達の淡い幻想を一瞬にしてぶち壊す。どうやらこの子もまた幻想頃しの使い手だった様子

少年達「いやああああああぁぁぁっ!!!下ろしてェェェェェェェッ!!!」

少年達の願いはむなしく、そのままジープとは思えない弾丸の様な速度を出し続けた

369: 2010/01/21(木) 15:01:39.72 ID:xcYlCKtk0
上条「生きてる・・・!生きてたんだ・・・!」

黒子「良かったですの・・・!本当に良かったですの・・・!」

涙を流し少年と少女が生きている事の素晴らしさを再実感している

一方通行「・・・で、なンだこの街は」
腰を抜かし動けなくなる少年達を放置して、街を調べに行った白髪の少年と少女が戻ってくる

一行は国境を超えパキスタンのとある街へと入っていた

一方通行「どいつもこいつもまるで氏ンでるみてェにぼンやりしてやがる」
打ち止め「お店もしまってたし、街中に霧が立ち込めて視界が悪いよ。とミサカはミサカは偵察の結果を報告してみる」

美琴「何でもいいわよ・・・とっととホテルを探して休みましょ今日は・・・」

その言葉に同意するように少年達もふらふらと立ち上がると、背後から声がかかる

老婆「もし、そこの旅のお方がた」

上条「え?」
振り返ると腰を曲げた老婆がこちらをみていた

老婆「もし宿をお探しというのなら、うちで休まれていってはいかがでしょうか」
お安くしておきますよ、と言いながら老婆は少年達に微笑みかけた

370: 2010/01/21(木) 15:11:27.14 ID:xcYlCKtk0
美琴「へぇー。小さいけど中々雰囲気あるじゃない」

―この女だけは・・・この手で頃してやる・・・!

美琴「ほら、そこのツンツン頭!最後なんだから宿帳に早く名前を書いちゃってよ!」

―息子を頃したこの女だけはこの手で頃してやる・・・!

ぎりっと杖を握る手に力が入る。憎しみで人が殺せたら、目の前の少女など一瞬で殺せるだろう
老婆はJ・ガイルの母親であった。そして知っていた。息子は彼女に殺されたのだということを

―心の清い愛する息子がこんなガキに負ける訳がない・・・!汚い手を使われたんだろうね・・・!!

美琴「じゃあアタシ達は部屋に行きますね。ありがとうお婆さん」
にっこりと笑いながら手を振り部屋に入る少女達

老婆「てめぇだけは・・・」
噛み砕かんとばかりに歯を噛む

その時フロントから呼び鈴の音がする。誰だろうとフロントへ向かう

ホルホース「奴らはここにご宿泊おあそばしですかい・・・?」

追いかけて来たぜ、と言いながら男はフロントの台に腕をかけていた

391: 2010/01/22(金) 00:06:59.09 ID:3vERpUs80
突然の男の訪問に老婆は思わず涙ぐんでしまう

ホルホース「エンヤ婆どうしたんですかい、いきなり泣き出して・・・!」
とにかくここはまずい、と老婆と奥の部屋に入る

エンヤ「わしゃ嬉しい・・・お前は息子と親友じゃったよな・・・?」

ホルホース「え、ええ!そう親友!だからその仇を討ちに来たってわけですよ!」
男はあの後確認をしていた。焼氏体となったJ・ガイルを

だが別段どうしたというわけでもない、彼の為に墓を作ることなど、以ての外である
―だが、流石に今この婆さんの気を損ねるのはマズい・・・!

そう思い保身に走る男。老婆はくしゃくしゃになった顔を急に上げると

エンヤ「だから嬉しいんだよーーーっ!!息子を見頃しにしたおのれをぶち殺せるからなッ!!」

393: 2010/01/22(金) 00:19:48.24 ID:3vERpUs80
ザクッ

何時の間に持っていたのか、急に男の腕に鋏を振り下ろす

より痛みを感じるように、より傷口が広がる様にと鋏を左右に大きく動かす

ホルホース「ご、誤解だ婆さん!俺が気がついた時にはもう・・・ぐあああっ!!」

傷口にぽっかりと奇麗な丸い穴が空いている。そこからえも知れぬ違和感を感じる

エンヤ「頃してやる!頃してやるぞ!わしのこの正義『ジャスティス』でっ!!」

ホルホース「くそっ!皇帝!!」

応戦すべく慌ててスタンドを発動する。そして老婆の額に照準をつけ、撃つ
―くたばりやがれッ!糞婆ァッ!

その時、銃を持つ男の腕が180度方向を変えホルホースの口の中に、正確に狙いを定め―

ドタン、と派手な音を立て、銃弾を受けた男は後ろに吹き飛んでいった

エンヤ「わしの正義は霧のスタンド・・・この霧に触れた傷口は穴があき、わしの操り人形となる!!」

394: 2010/01/22(金) 00:29:28.45 ID:3vERpUs80
ドタン

美琴「・・・?ねぇ、今何か聞こえた様な」

黒子「気のせいじゃありませんでして?」
美琴の言葉にそう返す少女。事実彼女には特に何か聞こえたわけではなかった

んー、と頭を抱え老婆の事を考える
―お婆さん、一人じゃ大変だろうな・・・何か手伝えるかもしれないわね

美琴「ちょっと、アタシ下いってくるわね!」

そう言って部屋を後にして宿の下の階へと降りる少女

そして見てしまった

美琴「え・・・?おばあ・・・さん・・・?」

血にまみれた鋏を持つ老婆と、腕から血を流し倒れている男の姿を―

395: 2010/01/22(金) 00:44:08.76 ID:3vERpUs80
美琴「え・・・?何やってるの・・・?」

目の前に広がる信じられない光景に、言葉を失う少女

―あいつはジョースターの仲間の女・・・!
ホルホース「う・・・逃げろ・・・!この婆のスタンドに触れた傷口は・・・っ!ぐあっ!!」

一縷の望みにかけ、少女に老婆の能力を伝える。しかしその言葉が終わるよりも早く、穴の空いた彼の腕が彼自身を殴りつける

エンヤ「おのれ・・・咄嗟にスタンドを解除して致命傷だけは避けたか・・・っ!」
まあいい、と振り返り美琴を睨みつける

エンヤ「この糞ガキィィィッ!貴様に殺されたわしの息子の仇を取ってやる!嬲り頃してやるっ!」

鋏を振り下ろす老婆、少女は反射的に回避して難を逃れる

―何を言ってるんだかわからないけども・・・!

即座に敵であると理解をする。そして、あの老婆を相手に傷を負ってはいけないと

397: 2010/01/22(金) 00:55:25.17 ID:3vERpUs80

エンヤ「氏ねっ!氏ねッ!!」

執拗に鋏を振り下ろし、美琴を狙う老婆。回避すること自体は大した問題ではない

―殺さない程度に・・・!
老人を頃すつもりはない。スタンガン程度の電撃を老婆に放つ

が、その瞬間突如現れた謎の男に阻まれてしまう

美琴「え・・・?」

エンヤ「呼び寄せていたのさァッ!!」

ぞろぞろと集まる男達。顔や服から覗く肌は土色に染まり、その目に生気はない
そして一か所だけ、全員に共通していた

美琴「何あれ・・・穴・・・?」

彼らの全身にぽっかりと空いた奇妙な穴の数々を

エンヤ「これがわしのスタンドの能力っ!正義は氏体を操れる霧のスタンド!百人でも千人でも操れるのじゃあああ!!」

398: 2010/01/22(金) 01:06:27.26 ID:3vERpUs80
美琴「くっ・・・!」

次々と現れる氏体に、奥の部屋へと向かい一度逃走を図る少女

エンヤ「逃すかっ!追え!追えっ!!」
老婆の叫びに氏体達が少女を追いかける

バタン!
部屋に入りドアに鍵を閉める。そして目に映るものを手当たり次第にドアの入り口に置き時間を稼ぐ

一息付いて部屋を見渡す。いくつかの小部屋と下へと向かう通路が伸びているだけであった

美琴「この通路は・・・地下牢へとつながってるの・・・!?」

迂闊であった。まさか逃げる為に入った部屋で追い込まれる羽目になるとは

ドンドンとドアから音が聞こえる。恐らくもう時間はないだろう

美琴「諦めちゃ駄目よ・・・!どこかに別の通路とか・・・!」

そう思い小部屋を見回す。しかし見つかるのは独房や備え付けられているトイレのみで何も見当たらない
冷やりとする壁に触れると、ガッシリとした作りであることがわかる。これを壊すとなると自分の身も危険にさらされてしまうだろう

―どうしたら・・・っ

バァンッ!
エンヤ「もう逃げられないじょォォォッ!!」

通路の先で立ち尽くす少女を見つけ、老婆は心から嬉しそうに邪悪な笑みを浮かべた

399: 2010/01/22(金) 01:16:23.47 ID:3vERpUs80
美琴「来ないで・・・っ!来ないでよ!!」

壁にぴたりと背を着け、迫りくる氏体に次々と電撃を飛ばす
最初のうちこそ、電撃は氏体を焼き、その身体を吹き飛ばしていた

美琴「来るな・・・!来るなってばっ!!」

先頭の氏体を盾に、少しずつと距離を縮めてくる。これが生身の人間であれば、感電をさせ動きを封じる位は出来たであろう
しかし相手は老婆に操られた氏体。感電などするわけがなかった

後3m・・・2m・・・1m・・・
そして

美琴「うぐっ・・・!!離せっ!離しなさいよっ!!」

迫りくる氏体の群れに、とうとう少女は組み伏せられてしまった

エンヤ「ひゃひゃっ!息子の恨み、晴らさでおくべきか・・・っ!」

エンヤ「頃してやる・・・!これ以上なく惨めに!」

老婆の腹の底から笑う声が、地下牢に響いた

404: 2010/01/22(金) 01:31:01.89 ID:3vERpUs80

美琴「ちょっと・・・!やめてよっ!やめてってばぁっ・・・!」

泣きだしそうな声で少女が叫ぶ。しかしそれに構う事なく、ビリビリと音を立てて氏体が少女の制服を引き裂く
抵抗をしようにも手足は押さえつけられてしまい、どれだけ身体に電撃を帯びても氏体は反応をしない

そして氏体はついに少女の下着をも剥ぎ取り、生まれたままの姿にされてしまう
一際巨躯な氏体により、吊るされた様に両腕を持ち上げられて宙ぶらりんになる

エンヤ「ひゃっはは!花も恥じらう乙女のスッポンポンじゃ!!」
笑え!と氏体に合図すると、氏体達が一斉に笑い始める

美琴「うっ・・・!うぅっ・・・!当麻ぁ・・・当麻・・・」

エンヤ「おやおやぁ・・・男の名前かえ・・・?」

復讐に燃える老婆への恐怖からか、それとも恥辱からなのか、真っ赤に顔を染め少女は眼を閉じ、無意識のうちの涙を流していた

405: 2010/01/22(金) 01:46:13.21 ID:3vERpUs80
エンヤ「惨めよのぉ・・・物凄く惨めじゃよぉ・・・!じゃがな!わしの息子は貴様に卑怯な真似をされ、もっと惨めな気持ちで氏んだのじゃ!」

怒りの全てを吐き出す様に叫ぶ老婆。そして一息を付き落ちついた声で続ける

エンヤ「さぁて・・・これから貴様に傷をつけ、わしの操り人形になってもらう訳なんじゃが・・・わしも女じゃ・・・」

突如少女の足元に居た二人の氏体が、美琴の足を強く引く

美琴「・・・っ!?嫌だ・・・ッ!!やめて・・・!助けて、助けてよ当麻!当麻ぁぁぁっ!」
声が虚しく地下牢に響き渡る

手は吊るし上げられてしまい、両足を開かされ、彼女はもう隠す事が出来なかった

エンヤ「てめぇの●●●にこいつらの汚い●●●をてめぇ氏ぬまで突っ込んでッ!そこに穴を作ってやるよォォォッ!!!」

エンヤ「氏ぬ前に女の喜びを知る事が出来てよかったなァ糞ガキがァァァァッ!!」

美琴「ひ・・・っ!」

少女を取り囲む、無数の氏体達が服を脱ぎ捨て穴だらけの性器を立てながら虚ろな瞳で彼女を見ていた―

406: 2010/01/22(金) 02:01:49.95 ID:3vERpUs80
美琴「やだ・・・!やだやだやだやだ・・・!!何でもするから・・・っ!何でもするからやめて下さい・・・っ!」

恐怖を顔に張りつけ、少女は泣きながら老婆に懇願する

エンヤ「ケケケッ!そうじゃ!その顔が見たかったんじゃよぉッ!!」

ずい、と氏体の一人が少女の前に立つ

エンヤ「舐めろ!そうしたら考えてやる!ケケケケケケケケケケ・・・ッ!!」

腐臭と膿に包まれて男が少女の前に性器を立てる

美琴「・・・あ・・・あぁ・・・!うっ・・・ぷっ・・・!」
―夢だ・・・こんなの夢だっ・・・!!

美琴「夢なら覚めろ・・・覚めろ、覚めろ。覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ・・・っ」

狂った様に少女が唱える
腐臭と絶望に吐き気がする。力無く頭を垂れ、視点の定まらない眼で床を見る

エンヤ「それじゃあ仕方ないよなァ~ッ!」
老婆が合図をすると氏体達が再び動き出す

上条「おーい、婆さんいないのー?」

美琴「・・・ッ!!」

突如開いたドアの向こうから、少年の声が聞こえた

少女が、今一番聞きたかった、少年の声が聞こえた―

408: 2010/01/22(金) 02:18:46.18 ID:3vERpUs80
エンヤ「またしても邪魔が・・・っ!!」

歯ぎしりをする老婆。そして突然ハッとしてしまう
―ホルホースの奴が見つかれば、一人一人潰して行く計画が潰れてしまう・・・っ!

そう考えた老婆は、踵を返し少年の元へ向かう
しかし、能力は維持したまま。少女の口を封じた以外には、彼らを先程と同じそのままの姿勢で

エンヤ「おっ、御呼びですかな上条しゃま!!」

ドアも閉めぬまま、少女の居る地下牢を抜け、ホルホースの倒れている部屋を抜けたフロントに全力で駆けつけ、少年に問う

上条「いや、ビリビリ・・・いや御坂美琴って子・・・あの短い髪の女の子なんだけど、さっきから見当たらなくて・・・」
何か知らないかな?と問う少年

エンヤ「は、はて?知りましぇんなぁ~・・・?」

この機に乗じて少年を倒すという事も考えた
しかし、老婆はあの少女を惨めに頃す事だけを考えていた為、あえて知らぬ振りを通す

美琴「ーッ!」
―私はここ!助けて!助けて当麻!!当麻!!

上条「そっか・・・ところで婆さん・・・」
老婆の肩に両手を置く

上条「何で、名乗ってもいない俺の名前を知っているんだ・・・?」

少年のその発言に、老婆は言葉を失った―

410: 2010/01/22(金) 02:37:10.16 ID:3vERpUs80

エンヤ「あ・・・その、それは・・・そう!宿帳!宿帳の名前を見ていたんですじゃ!!」

上条「・・・宿帳って、これか?でもこれは・・・」
フロントの台の上に置かれたノートを手に取り、パラパラとめくる少年

上条「・・・やっぱり、書いてないぞ俺」

TOUMA JOESTAR
トウマ・ジョースター

宿帳に書かれた名前を見て、老婆は眼を見張る

少年はジョセフに言われ、旅中はジョースター名義を使って居た
ジョセフに渡されたお金は現金だけでない。カード等も含まれていたが、急な用意であった為にまだジョセフ銘のままであった

万が一のことがあったとしても、財団の手がかかっているのならともかく、毎回毎回そういう訳にもいかない
その理由から、少年はこういった場所では必ずこの偽名を用いていたのであった

上条「・・・婆さん、あんた何か隠してないか・・・!?」

少年の眼は老婆をしっかりと捉えていた

エンヤ「う・・・あ・・・ぁ・・・!」

413: 2010/01/22(金) 02:50:40.18 ID:3vERpUs80
上条「どうなんだよ婆さん・・・?」

エンヤ「か、上条しゃまの・・・そう!上条しゃまのお連れの方がそう言っていたのを聞いたんですじゃ!」
苦しすぎる言い訳。だが老婆はそういう他に無かった

上条「・・・連れ・・・?」
―そういえば、黒子辺りがに呼ばれていた気もする・・・どうだっけか・・・

上条「・・・あぁ、なるほど。それなら納得だよ。で、御坂は知らないんだよな」
黒子がさっき下へ行ったって言ってたんだけどなぁ、と呟き少年はその場で腕を組み頭を悩ませている

少年は老婆を疑うにはあまりも素直過ぎた
もうひと押しをすれば、もう少し老婆を疑えば、気付く事が出来ただろう

エンヤ「そ、それじゃあわしは夕飯の仕込みがありますのでこれで・・・」

逃げるようにフロントを後にし、部屋のドアをしめる

エンヤ「・・・ククク・・・!これであのガキをゆっくり殺せる・・・っ!」
―氏体共の慰み者にされて、あのガキは更にどんな顔をしてくれるだろうか・・・!

老婆は下を向きながら考えに耽り、少女と氏体の待つ地下牢へと足を伸ばした―

419: 2010/01/22(金) 03:59:40.62 ID:3vERpUs80
老婆が地下牢に戻ると、そこには変わらず少女と氏体がいた

しかし、違う所がある

固定していたはずの氏体達は全て冷たい床に横たわっており
その中で氏んだような顔をした少女がこちらをじっと見ていた。何事か呟いているが聞こえない
少女は瞬き一つせず、機械の様な動作で立ち上がり、こちらにゆっくり歩いて来た

エンヤ「なっ、何故!どうやって・・・っ!」
彼らにもし何かあれば、それはスタンドを通して老婆にも分かるはずであった
しかし、何も感じなかった。スタンドからは何も反応が・・・
―正義が何時の間に・・・消えている・・・ッ!!

老婆は気付いていなかったし、知っていればそんなことをさせなかったであろう
霧程度であれば消された所で何の害もない。しかし、その元であるエンヤは違った

上条当麻はあの時老婆の肩に触れていた。その瞬間、正義は文字通り霧散し氏体達の身体を自由にしていた

エンヤ「ならばもう一度・・・がはッ!?」

その瞬間、少女が老婆を殴り倒す
そしてそのまま馬乗りになり、無表情のまま老婆をひたすら殴り続けた
偶然少女の手に触れた棒を拾い上げる。折れた氏体の腕である

それを使い老婆を更に殴る。途中で折れてしまい、放り投げてまた手で殴り続ける

美琴「さめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろさめろ」

少女はそう呟きながら、老婆をひたすら殴り続けた

421: 2010/01/22(金) 04:14:04.50 ID:3vERpUs80

少年の声が聞こえなくなり、隣の部屋のドアがしまる音を聞いて美琴は理性的に考える事をやめていた

氏体が自分の身体から離れた事にも気がつかない
自由になった事にすら気付かず、ただその場に佇んでいた

美琴「ーッ!」

そして地下牢に戻ってくる老婆を見た瞬間、再び恐怖が彼女を支配した

―ああやっぱり夢だ。夢なんだ。ゆめならさめなくっちゃ。はやくこのゆめからさめてよわたしわたしをたすけてよこいつをころしてよさめろさめろさめろさめろさめろ

それに支配された彼女の心とは裏腹に、身体はひたすら老婆を殴り続けていた。頃すつもりで

そして老婆が動かなくなるのことに気がついて、そこで今起きた事に初めて気がついた

―はやく、もどらなくっちゃ・・・

少女はふらふらと立ち上がり、隣の部屋へと続く通路をゆっくりと、何度も何度も倒れながら氏体の海を越え歩き続けた

地下牢の通路から、あの部屋に行けば目を覚ます事が出来る。この悪夢から逃げ出す事が出来る。そう信じていた

ただ、彼の顔が見たかったから。ただ、彼の声が聞きたかったから。ただ、彼の傍にいたかったから―

423: 2010/01/22(金) 04:31:46.62 ID:3vERpUs80
上条「婆さん、やっぱりこっち・・・に・・・ッ!?」

少年が部屋のドアを開けると、触れば今にも倒れてしまうのではないかと思えてしまう様な少女がそこにいた
少女の全身から漂う腐ったような匂いが、少女が生きている人ではないのだと伝えている気がして、少年を酷く不安にさせる

美琴「・・・あ・・・当麻・・・」

普段の少女であれば彼が自分の裸を見たりなどすれば、電撃の嵐を彼に見舞っていただろう
しかし、今目の前にいる少女は身体を隠す事もせず、少年の姿を見ると両目からつぅと涙を流し、彼に一歩、また一歩と近寄ってきていた

少女は少年の前に立つと、そのまま彼に力の限り抱き付いた
美琴「あた・・・怖・・・った・・・戻って・・・夢から・・・っ」

よく聞き取れない声量でいくつかの言葉を呟く

上条「みこ・・・と・・・?」
あまりにも変わり果てた少女の姿に、頭が追い付かない。でも、少年には自分が彼女に対して出来る事が分かっていた

上条「美琴・・・っ!」
力の限り強く抱きしめ返してやる。そうしないと、少女が壊れてしまいそうだったから

少年の鼻を柔らかくて良い匂いがくすぐって、少年は無意識の内にも安心をすることが出来た

―生きてる・・・まだ、生きている・・・っ

そして、更に強く、それでいて優しく彼女を抱きしめた

425: 2010/01/22(金) 04:49:20.86 ID:3vERpUs80
上条「・・・そうか・・・」

裸のまま抱き付く少女に上着を着せてあげようとしたが、少女は少年から離れなかった
やがて少女は安堵からなのか、彼に全てを話した。起こった事を何一つ隠さずに伝えた

少年の表情は、驚き、悲しみ、そして最後に自身の無力さへの怒りへと変わって行った

美琴「もう、大丈夫だから、大丈夫だから当麻・・・」
だから自分を責めないで、と少女は囁く

少年はその言葉に救われた
もし、これ以上彼に何かを背負わせてしまったら、彼自身が潰れてしまうと少女は理解していた

美琴「・・・一つだけ・・・わがままきいてくれる・・・?」

少年はシンガポールでの夜の出来事を思い出した。責任を取ると、そう少女に言った

顔を上げ、少年を見上げる少女。少年は無言のままそれを受け入れる

そのまま互いの目を離さず、少女の柔らかな唇が、少年の唇に触れた


彼らに見つからぬ様に、家具の下に隠れたホルホースが二人を見ていた
ホルホース「ま、今出たら殺されちまうな・・・」

呟き、目を閉じる。彼自身にもわからなかったが、心がとても暖かかった

438: 2010/01/22(金) 13:17:15.53 ID:3vERpUs80
上条「そ、それにしても驚いたよな」

街を出た彼らは、再びジープでの旅を再開していた
あれから宿の外に出ると、霧はすっかり晴れていて周囲の様子が良く分かった
街は宿を覗き、全てが老婆の能力によってカムフラージュされていた墓所であった

上条「まさかあんな大規模な能力まであるなんてな」

美琴「そ、そうね」

少女がぎこちなく少年に同意をする。気のせいか、彼らの様子がおかしい
別に喧嘩などをするわけでもない、ただ互いに顔を合わせることもやめ、少し身体がぶつかるだけで過剰なまでに大きな反応を示すのであった

黒子「お姉さま、上条さんと何か、ありましたのでしょうか・・・?」
呟く。恐らく何かあったのだろう

縄で縛り付けられ、未だに意識の戻らない老婆を見る

この老婆が恐ろしい能力者であり、そして二人で倒したと彼らは言っていた

酷い怪我ではあったが老婆はまだ生きていた。他の能力者について何かを聞き出すと一方通行が主張し、連れて来ていた

そして一行はカラチへと入った

439: 2010/01/22(金) 13:28:50.57 ID:3vERpUs80
打ち止め「このゲバブ美味しいねってミサカはミサカは異国の味に舌鼓を打ってみる」

一方通行「・・・あァ、食べカスが付いてんぞ、ちったァ落ちついて食えよ・・・」

白髪の少年はそう言って少女の口周りを指で拭く

―あいつら、何かあったな
少年も気付いていたが、何かをする訳ではない

結局のところ、これは彼ら自身の問題であり、彼ら自身で解決する必要があるのだと判断した

一方通行「おいてめェら、食いもン買ってきた・・・おい、その婆ァ目を覚ましてんぞッ!!」

少年の言葉に、視線が老婆に集まる。しかし老婆は彼らなどには構う事なく、その顔には恐怖が張り付いていた

エンヤ「わしは何も喋っておらん・・・!な、なぜ貴様が・・・!うぽわあァァァァァッ!!」

咄嗟に少女の目を手で覆い隠す白髪の少年。次の瞬間、老婆の目から口からと飛び出してきた触手に引き裂かれ、彼女は絶命した

男「口封じをさせて・・・いただきます。そしてあなた方・・・お命を頂戴・・・いたします」

440: 2010/01/22(金) 13:41:04.28 ID:3vERpUs80
老婆の最後に見た先に、その身なりを整えた男は居た

男「私の名前はダン・・・鋼入りのダン。スタンドは恋人『ラバーズ』。君達もこのエンヤ婆のようになっていただきま・・・ッ!?」

一方通行「るせェッ!」

男が言い終わる前に、白髪の少年は男を殴り飛ばす。その瞬間

上条「ぐあっ!」

何故か老婆の隣に座る少年が声を上げる

ダン「良いパンチだ・・・だが、気付かなかったようだな」

顔を抑えゆっくりと男が立ち上がる

ダン「私のスタンドは体内に潜りこむスタンド!そして私が受けた痛みを何倍にもしてそいつにも与える!」

ダン「私を頃すか?そこのジョースターの小僧も道連れだがなッ!貴様らは、この俺に指一本触れる事が出来ないのだよォォォォォッ!!」
―そして私の恋人は肉の芽を持っていった!十分もすればエンヤ婆のように、脳内から小僧を食い破るッ!!

男が勝利を確信した瞬間、光が走り男の背後に停まっていた車が爆発をした

441: 2010/01/22(金) 13:55:30.79 ID:3vERpUs80
ダン「な・・・!?」

驚き、振り返る男

美琴「・・・ろしてやる・・・!よくも当麻を・・・頃してやる・・・!」
手を前に突き出し、虚ろな目で男から眼を離さず少女が呟く

ダン「おっ、おい!聞いていたのかガキ!私に攻撃をすればそこの小僧に何倍にも跳ね返るんだぞっ!」
男が声を荒げる

黒子「お、お姉さま!落ちついてくださいまし!」
一方通行「何やってンだてめェッ!!」

美琴「離せ・・・っ!離してよぉ・・・っ!私が当麻を助けるんだっ!私があいつを頃してやるんだっ!!」

二人に取り押さえられたまま少女が気が触れた様に叫ぶ。恐らく考えて発言しているわけではない。無意識からの行動

上条「・・・分かった」

少年がここに居る全員にはっきりと聞こえる様に一言、そう言った

上条「美琴、俺は耐える。あいつには負けない。だから・・・頼む」
背後から抱き付き、耳元で囁く様に少女へと伝える

美琴「・・・あ」
少女の瞳に光が戻り、その言葉の意味を何度も何度も頭の中で考えた。そして自らの行為に恐怖を感じる

上条「俺はお前を信じる。だからお前も俺を信じてくれ・・・!」

少年はそう言い、目の前の男を強く睨みつけた

442: 2010/01/22(金) 14:11:51.36 ID:3vERpUs80
ダン「う、うおおおおおおっ!!」
―狂ってやがるあいつらッ!!

必氏に逃げ回る男、そしてそれを追う少年と少女

少女はダンに向かって何度も何度も攻撃をし、そしてそれを何とかかわす度に、巻き添えを貰った建物や車が爆発を引き起こす

ダン「てめぇら!その小僧もろとも頃す気かッ!!」
―あんなもの当たれば間違いなく即氏しちまうッ!

上条「氏なない!俺は絶対に氏なない!」
―インデックスと、そう約束したんだ。絶対に氏ぬ訳にはいかない・・・ッ!

そう言い放つ。根拠があるわけでもないだろう。だがその眼は自信が満ちていた

そしてついに、袋小路へと追い込まれてしまった

443: 2010/01/22(金) 14:27:21.93 ID:3vERpUs80
美琴「あんたが苦しむ前に、頃してやるわ・・・っ!!」

バチバチッ!という音が周囲に木霊する。その音が大きくなると共に、少女の身体が青白い光に包まれる
少年もまた、一歩後ろでその姿をただ見守っていた

美琴「氏ねェェェェェェェッ!!」

少女の雄叫びと共に、突き出した手に光が収束する

ダン「ラッ!ラバーズよ!戻れ!その女に付くのだ!!」
―てめぇ彼氏なんだろォォォッ!!そのガキが氏んで良いのかよォォォッ!!助けろ!俺を助けろッ!!

男の言葉にハッとする少年
上条「ま、まて!美琴!やめろ!!」

咄嗟に少女に抱きつく。だが少女はもう止まらない

美琴「うあああああああああああっ!!」

―ちっくしょオオオオオォォォォッ!!ラバーズが間にあわねェェェェッ!!
男は氏を覚悟して、眼を閉じる。だがその瞬間は訪れなかった

445: 2010/01/22(金) 14:40:47.16 ID:3vERpUs80
上条「・・・っ!」

右手の幻想頃しが少女の電撃を止める。それは間一髪、間に合っていた

彼女に自分の目の前で人頃しにするわけにはいかない
少なくとも、スタンドでもない生身の人間を消し飛ばす姿など見たくなかった

ダン「ハァー・・・ッ!ハァー・・・ッ!ク・・・クク・・・!どうやら勝負あったみたいだなガキども・・・!」
何が起こったのか理解をした男は、再び勝利を確信する。今、ラバーズは少女の体内へと侵入をした

美琴「・・・そうね、これで終わりね」
視線を下に落とし、少女が呟く

―そうだっ!俺の勝ちだッ!良い彼氏を持ったなッ!!ククククク・・・ッ!

上条「俺達の、勝ちだ・・・ッ!」

少女から手を離した少年が男を睨みつけ、力強くそう言った

446: 2010/01/22(金) 14:59:49.44 ID:3vERpUs80

ダン「ハッ!?今更ハッタリかよ!そこの女の命乞いでもしたらどうだァッ!?」

既にラバーズは少女の脳の奥深くへと侵入している。もう何があっても取り出す事など出来ない

そこで男は気がついた。自らの身体に微弱な電気が走っていることに

ダン「まっ!まさか!!待て!やめてくれェェッ!!」
突如命乞いをする男。慌ててラバーズを少女の体外へと走らせる

美琴「もう遅いっ!!」
少女は全身に激しく電撃を纏い、叫ぶ

ダン「ギィ・・・アアアアアアアアッッッッッ!!」
ラバーズを経由して男に激しい電流が流れだす

上条「・・・最初からこのつもりだったんだよ・・・」

少年が力無く倒れる男を見て、そう呟く

448: 2010/01/22(金) 15:09:44.82 ID:3vERpUs80
美琴「あんたのその能力が、アタシの身体に入り込むのを待っていたのよ・・・ッ!」

生体レーダーと化していた少女がそれに合わせる

―このジョースターの小僧・・・何故肉の芽が出てこないのだ・・・
逃げる事に必氏で気がつかなかったが、男が気を失う前に時計を見るとあれから既に15分以上経過していた

上条「・・・皆の所に戻ろう」

そう言い振り返る事も無く踵を返す少年。少女は足を止め男の方に一瞬だけ振り返る

美琴「・・・恋人・・・か・・・」
―恋人は、そんなものじゃないよね・・・

呟き、愛する少年の元へと走り出して行った

449: 2010/01/22(金) 15:23:16.92 ID:3vERpUs80
黒子「んまぁ、凄い豪邸ですわね・・・!」
打ち止め「すごーい!とミサカはミサカは驚いてみたり」

車から見える景色に驚き眼を丸くする少女達。ラバーズを退けた彼らはアブタビの街へと入っていた

上条「へ?高級ホテル以外には、家なんて上条さんにはどこにも見えませんけども・・・?」

キョロキョロと辺りを見回す少年

一方通行「アホかてめェ・・・全部ホテルじゃねェよ、あれが家なんだよ家」

ジープを運転する少年が毒を吐く。そういう少年自身、眼を見張る光景ではあった

上条「そうかー、あれ全部が家・・・え!?あれ家なのっ!?人が住んでんの!?」

素っ頓狂な声を上げる少年。見ているこっちが恥ずかしい

美琴「オイルショックよ、それ以来この国はまさに夢の様な都市へと発展したって聞いたわ」
学校で習った知識を、無知な少年に伝えてあげる

一方通行「ンなこたァどうでもいいだろ。で、ジジイが言ってた村ってのはこの先なんだな?」

上条「・・・え?あ、あぁ!そう、このヤブリーンっていう村に寄って、ラクダで砂漠を越えろってさ」
放心していた少年は我に返り、地図を広げながら白髪の少年に返す

一方通行「は・・・!?ラクダだァッ!?」

らくだー、と能天気な声が後部座席から聞こえた

451: 2010/01/22(金) 15:35:26.22 ID:3vERpUs80
一方通行「おっ、おいィ!暴れンじゃねェ!!」

ガイドの指示など全く聞かず、力ずくで少女と共にラクダに乗りこむ

打ち止め「これが世に言う愛乗りって奴なのかな、とミサカはミサカは顔を赤らめて考えてみる」

相乗りの字も意味も違うが、誰も気づかない

美琴「・・・っ」

ラクダ「・・・っ」

眼の前の偶蹄類から眼を離さず、じりじりと距離を詰める少女
御坂美琴は動物が好きではあったが、その逆はも然りとは限らないのである
AIM拡散力場という、彼女が無意識のうちに発してしまう微弱な磁場が、この動物を警戒させていた

上条「なんだ、乗れないのか?」
ぬっと横から左手を伸ばし、ガイドの指示通りラクダの手綱を引き大人しくさせる少年

上条「ほら、早く乗れよ」
と、少女に右手を差し出して、騎乗に成功させる

黒子「・・・か、上条さん。私もお手伝いして欲しいのですのっ」

上条「あぁ、いいぞ」
テレポートをして一気に乗り込む事だって出来たが、少女はあえてそれをしなかった

その理由を上条当麻は気付いていなかった

452: 2010/01/22(金) 15:49:53.92 ID:3vERpUs80

黒子「・・・はぁ・・・っ!はぁ・・・っ!」

上条「い、いくらなんでもこれは、熱すぎるな・・・」

ラクダにまたがり砂漠を横断する彼らを、灼熱の太陽が照りつける

一方通行「・・・みてェだな・・・」
自らを影にして、前に座る少女に直射日光が当たる事を避けさせつつ白髪の少年が同意する

少年自身は太陽光線の熱のベクトル自体を反射し、涼しげな顔を見せている

美琴「黒子・・・?大丈夫・・・?」
ぐったりとしている後輩を見る
黒子はラクダの手綱をしっかりと掴んではいるものの、いつ気を失ってもおかしくない程にぐったりとしていた

上条「大丈夫か白井!?夜になれば日が暮れるって言ってたな・・・!」

夕方に村を出発したからもうすぐ・・・と少年は呟きながら時計を確認する

上条「な・・・!?」

午後8時10分
だが、太陽はまだそこにあった

453: 2010/01/22(金) 15:59:48.44 ID:3vERpUs80
美琴「・・・!その岩の裏、何かいるっ!」

すかさず感知する少女

その言葉と同時に黒子がテレポートで岩の後ろへと飛ぶ

男「ドギャス!」

その声とともに太陽が消滅し、辺りは闇に染まり真っ暗な空にいくつもの星明りが灯る

上条「やったのか白井・・・!・・・しら・・・い・・・っ!?」

少年達が岩に駆け寄ると、全面を鏡貼りにした車の様な物に乗った、気絶をした男と

その後ろで、ついに気を失ってしまった少女が見えた

454: 2010/01/22(金) 16:10:55.05 ID:3vERpUs80
ほぎゃあ ほぎゃあ

遠くで赤ん坊の声がする

一方通行「・・・誰だ・・・?」
そして気がついた。自分を取り巻く今の状況に

一方通行「な・・・ッ!?」

観覧車のゴンドラの中に白髪の少年は座っていた。そこから見える景色から察するに、巨大な遊園地だろうか
―俺は確か、あの後見つけた村で・・・!

思い出した。突如倒れてしまった白井という女を介抱するために村に立ち寄り、そこで泊まったのだと
―なら、こいつァ夢か・・・

そう考え、シートに深く背を預ける
―どうせなら、遊園地にくるのなら、あいつと・・・

「ねぇ、わたしと一緒にいても楽しく無いの?とミサカはミサカは悲しい声であなたに聞きます」

一方通行「あァ・・・ッ!?」

いつの間にか目の前に、打ち止めと呼ばれる少女がいた。少女は少年に抱き付く

打ち止め「わたしはあなたといられて嬉しいんだよ・・・!とミサカはミサカは・・・ラァリホォ・・・」

彼の背に手をまわした少女の手に大きな鎌が握られていることに、少年は気付かなかった

455: 2010/01/22(金) 16:28:31.84 ID:3vERpUs80
一方通行「あ・・・」

真夜中に眼を覚ます。目の前に見慣れた少女の顔

打ち止め「大丈夫?とミサカはミサカはあなたに尋ねます」

一方通行「あ、あァ・・・夢か・・・で、大丈夫ってどういうことなンだ?」

とても素晴らしい夢だった気がするが、その内容を思い出せない。少年は仕方なく目の前の少女に今ある疑問を投げかける

打ち止め「だ、だって・・・だってあなたがずっと寝言で私の名前を・・・とミサカはミサカは顔を真っ赤にして答えますっ」
言葉の通りに、少女はそう言いながら耳たぶまで真っ赤にしてしまっている

一方通行「・・・なァ・・・ッ!?いやっ、違ェッ!いや違ェねェのかもしれないがけどよォ!」

夫婦漫才を始める二人。少女はともかくとして、少年はもし他のメンバーが同じ部屋であれば、決して見せないだろう

彼の首筋に、うっすらと血が流れていることに二人は気付いていなかった

456: 2010/01/22(金) 16:39:53.78 ID:3vERpUs80
コンコン

美琴「入るわよ当麻、看病替わるわよ?」
ノックして黒子の泊まる部屋へと入る

すぅすぅと静かな寝息を立てて眠る少女と、その手を握り寄りそう様に座る少年が居た

その光景を見て、胸がちくりと痛む。しかし美琴も気が付いていた。彼女はそれほど鈍くはない

自分を慕う目の前の少女が、この少年に好意を抱き始めていた事に

上条「あ、あぁ・・・でも、美琴もゆっくり休んでいてくれ。俺が看てるから」

少女も確かに疲れていた。しかし少年は恐らく曲げないし、一緒に居ても気を遣わせてしまうだけだろう

そう判断した少女は、部屋を後にして、今見た光景を考えないように眠りに落ちた

少女が部屋を眠りに落ちてから少しして、少年は顔を洗う為に外へと出た

ベッドの中の少女が、その瞬間にビクッと動いたが誰も見ていなかった

457: 2010/01/22(金) 16:42:21.87 ID:3vERpUs80
さて、起きてからずっと投下していた為、流石にそろそろお腹がすいてしまいました('A`;)

小腹を満たすべく、少々休憩に入ります。申し訳ない('A`)ノシ

460: 2010/01/22(金) 18:03:10.32 ID:3vERpUs80
黒子「・・・ここ、は・・・?」

気が着いて見渡すと、そこは広い遊園地

自分の置かれた状況に戸惑い、記憶の糸を手繰る
思い出せたのは、自分があの敵を石で殴打し気絶させたところまで。その先は覚えていない

黒子「ここは夢・・・ですわね・・・」
手をじっと見つめる。ほんのりと温もりがまだ残っている。あの少年のものだ、と少女は理解した

黒子「どうせなら、上条さんと来たかったですわ・・・」

「何言ってるんだよ黒子?」

はっと顔を上げると、そこには少年の姿があった

上条「折角のデートなのに、俺とじゃ嫌だったか・・・?」
肩を落とし少年が尋ねる

―例え夢でも
黒子「ちっ、違いますわ!何でもありませんの!」

少女は少年の手を取り、コーヒーカップへと向かう
―例え夢でも、もう少しだけこのままで・・・

そしてそこで見てしまった

御坂美琴の姿と、その隣で楽しそうに笑う

もう一人の上条当麻の姿を

462: 2010/01/22(金) 18:10:14.56 ID:3vERpUs80
保守ありがとうございました。戻りました
>>456 訂正

× 少女が部屋を眠りに落ちてから少しして、少年は顔を洗う為に外へと出た
○ 少女が部屋を出て眠りに落ちてから少しして、少年は顔を洗う為に外へと出た

あなたを犯人です以上に意味不明です、本当にありがとうございました

>>461
車輪さんと太陽さんはきっと仲が良いと思います。だから差をつけちゃよくないのだと思います

463: 2010/01/22(金) 18:22:57.59 ID:3vERpUs80
美琴「くろ・・・こ・・・?」

彼女もこちらに気付き、驚いた様に目を見張る
そして、どちらからともなく互いの前に立つ

黒子「ここは・・・」
美琴「うん・・・夢・・・なんだよね・・・」

二人の傍に立つ、二人の同じ少年が静かにさらさらと砂の様に崩れさる

黒子「お姉さま・・・私、言わなくてはならない事がありますの・・・」

美琴「・・・うん・・・」

見られてしまった。自分の心の内を
出来る事ならば、言いたくはなかった
自分と目の前の彼女との関係が、壊れてしまうような気がして、怖かった

黒子「私は・・・私も・・・上条さんの事が・・・」

美琴「・・・うん・・・」

消え入る様に呟く少女の声に、美琴はただそう答えるしか出来なかった

そして美琴は、黒子の告白を、しっかり聞き届けた

464: 2010/01/22(金) 18:34:05.12 ID:3vERpUs80
黒子「ごめっ・・・なさい・・・っ!お姉さま・・・っ!ごめんなさい・・・っ!」
ひたすら彼女に謝り続ける少女。しかし決して瞳に溜めた涙は流さない

自分は彼女が彼を好きだということを知っていた。だからこそ、汚いと思う
ここで泣いたらいけない。哀れに涙を流して許しを乞うのは、彼女に対する侮辱に他ならないと思ったから

いつか、言わなくてはいけないと思った。ただ、それが今だっただけのことだった

彼女はどんな顔をしているだろうか、自分をどれ程憎んでいるだろうか
そう考えると、顔を見る事も出来ない。ただひたすらに涙を堪えていた
例え夢だと分かっていても、少女の小さな胸は罪悪感に圧し潰されそうになる

美琴「・・・分かってた・・・」

黒子「・・・え・・・?」
考えていた言葉のどれにも当てはまらない答えが返ってきて、思わず顔を上げてしまう

美琴「怒ってないわよ・・・だから、泣いちゃ駄目」
寂しそうな笑顔で、彼女は少女の頭を撫でる

美琴「これからは、ライバルだね・・・一緒に、頑張ろうね・・・」

その言葉を聞いて、少女は我慢しきれなくなり、彼女に頭を預けて思いっきり泣いた
自分の好きな、尊敬する彼女はやはりとても素晴らしい人であったのだと、黒子は感じていた

465: 2010/01/22(金) 18:50:01.41 ID:3vERpUs80
「ラァリホォ~・・・!」

二人「え・・・?」

声のした方向を見る。そこには再び上条当麻がいた
いつも通りの顔で、いつも通りの笑顔でこちらを見ていたが、それは全くの別人であると分かる

両手に大きな鎌を持ち、殺気を放ちながら少女達を見ていた

黒子「・・・え・・・?」
美琴「これは・・・敵の能力・・・っ!?」

思えば全てがおかしかった。今居る場所も、互いの目の前のあまりにも現実的過ぎる少女も

美琴「え・・・?」
反撃を試みるが、能力が使えない。黒子も同じように不思議な顔をしている

上条「ラリホォー!もう二名様ごあんなぁぁぁぁいっ!!」
突如上空に向かい叫び出す少年

美琴「に、逃げるわよ!」
少女の手を引き、走り出す

それを氏神が追いかけた

467: 2010/01/22(金) 19:03:38.60 ID:3vERpUs80
一方通行「ックショォォッ!なンだこのふざけた世界はッ!!」
打ち止め「・・・ハァ・・・!ハァ・・・ッ!」

少女の手を引き逃げる白髪の少年。途中で迫り来る敵の攻撃から少女を庇い、いくつもの傷を負っていた
気がついたらまたこの世界にいた。それも少女と一緒に

夢の中だから、とあの氏神は言った。夢の中では能力が使えないのだと
なら拳は蹴りはどうだと、襲いかかるが全て氏神は効かなかった。というよりも当たっていなかった

信じられない形で自分の絶対の能力を無力化されてしまい、少年は満足に少女も守れない自身に苛立ちを覚えていた

美琴「あ、アンタっ!」
黒子「お二人もこちらにっ!?それよりも敵の能力が!」

一方通行「てめェらもいやがったのか!」
打ち止め「お、お姉さま!すぐそこに氏神が来ています!とミサカはミサカは焦りながら状況を伝えてみる!」

互いに同じ様な事を言いあい、互いの状況を瞬時に理解する

「ラァリホォォー!」

そして氏神の姿で、氏神『デス・サーティーン』が姿を現した

468: 2010/01/22(金) 19:15:28.20 ID:3vERpUs80
一方通行「・・・ケッ!何がラリホーだこのピ工口野郎ッ!」
白髪の少年が悪態をつく

氏神「・・・君には、余裕のある勝利とハッピーでさわやかな気分を象徴したこの叫びが理解出来ないかな~?」

突然周囲のベンチと、看板に手足が生え、少年を取り押さえる

氏神「ひと思いに頃してやるのもいいけど、嬲ってやってからの方がもっとさわやかな気分になれそうだね・・・」

ドガッ
大鎌を捨て、自らの手で少年を殴り始める氏神

打ち止め「やめて!やめてよぉ!とミサカはミサカは!」

少女が氏神を止めようとするが、触れる事も出来ない

美琴と黒子も必氏に頭を巡らせるが、何も思い付かない
何しろ触る事も出来ないのだ

少年がただひたすら殴られ続けるのを見ているしか出来なかった

470: 2010/01/22(金) 19:30:47.39 ID:3vERpUs80
氏神「ラァァリホォォォッ!気持ちいいねぇッ!」
手を休める事無く少年を殴り続ける

一方通行「・・・ケ・・・ッ!その程度の力しかねェのかよてめェの能力は・・・!オラ・・・もっと本気でやってみろよ・・・!」
しかし少年は更に悪態をつき続ける。その矛先が自分以外に向かない様にと

氏神「・・・もう君は良いよ。早く殺らないと目が覚めちゃうからね・・・!」

氏神「この鎌で首を刈り取ってあげるよォォォッ!!」

先程投げ捨てた大鎌に手を伸ばす

ザクッ
氏神「・・・あれ・・・?」

手に鎌が突き刺さる。その先から鮮血が溢れ出てくる

打ち止め「・・・ハァ・・・ッ!ハァ・・・ッ!彼を・・・!いじめないで・・・!とミサカはミサカは・・・!」

彼自身の能力で生み出した大鎌であれば、彼自身を攻撃することが出来る

少女はそんなことは知らなかった。でも大好きな少年を助けてあげたくて

少年を殺そうとする、この敵を許せなかった

472: 2010/01/22(金) 19:45:34.83 ID:3vERpUs80
持つのもやっとであろう、自分の身体よりも大きな鎌を構え、少女が氏神を睨みつけていた

氏神「んんん・・・?怪我しちゃったよ・・・生意気だね君も・・・」
自らの手から流れ出る血を驚いた顔で見つめ、静かに氏神が呟く

一方通行「ッ!おっ!おいィ!逃げろォォォッ!速く逃げろォォォッ!!」

美琴と黒子が少女を助けに走る。次の瞬間、少年の叫びも虚しく彼らは氏神の呼びだした様々な着ぐるみ達に取り押さえられてしまう

氏神「まずは君からにしようか。その方があっちにもより効果的みたいだね・・・ッ」
氏神が大鎌の刃を少女の首に掛ける

氏神「夢の中で氏ねるって、ロマンティックだと思わないかい?」

473: 2010/01/22(金) 19:51:51.26 ID:3vERpUs80
一方通行「やめろォォォォォォッ!!頼む!やめてくれェェェェッ!!まず俺を殺せェェェェッ!!」

少年の顔からはもう余裕などなかった。例え全てを投げ打ってでも、少女を助けたかった

美琴「離せ!離せってばぁぁぁlっ!!」

黒子「やめて!やめてくださいまし!!その子は戦える子じゃありませんのっ!!」

少年の、少女達の悲痛な声が。氏神にはとても気持ち良く聞こえる

氏神「ラァァァァッリホォォォォゥッ!!!!!実にさわやかな気分だねェェェッ!!この後すぐに残るもう一人も送ってあげるよォォォッ!!」

打ち止め「・・・あ・・・ごめん・・・なさい・・・もう一緒に・・・」

少年を見て少女が悲しそうに呟いた

―遊園地、一緒に行けなくて、ごめんなさい。ミサカはミサカはあなたと居られて幸せだったよ

少女は傷だらけで、それでも自分を心配してくれる大好きな少年の姿を目に焼き付けた

氏神の持つ鎌に力が加わる

氏神「ラァリホォォォォッ!!!!」

そして、少女の目の前が真っ暗になった―

474: 2010/01/22(金) 20:01:25.46 ID:3vERpUs80
黒子「・・・ッ!!」
跳ね起きる。酷く嫌な汗をかいていて、心臓は早鐘を打っていた

何か、とても大切な事がいくつもあった気がする・・・でも、思い出せない

周囲を見回すと宿のようで、自分はベッドの上で寝かされていた

黒子「・・・あ・・・上条さん・・・?」

恐らく夜通しで自分を看病していてくれたのであろう、少年がベッドに突っ伏して眠っていた
少年がそういう人であると分かっていても、嬉しくなってしまう

その瞬間、胸をちくりとした痛みが襲う
―何で、何で私は泣いているのですの・・・?

自分でも分からなくて、何故かとても悲しくて少女は少年を起こさない様に一晩中静かに泣いた

そして、何も起こらない静かな夜が、ゆっくりと明けた

476: 2010/01/22(金) 20:15:00.35 ID:3vERpUs80
黒子「おはようございますの・・・」
結局あれから再び眠る事は出来なかった。何故か、眠る事がとても怖かった

上条「あぁ、もう起きて大丈夫なのか?」
目の下に隈を作り、少年が宿の広場へと歩いてきた

黒子「え、えぇ・・・お陰さまでもう大丈夫ですの・・・」

全然大丈夫ではなさそうな声で少女が答えた

美琴「・・・おはよう」
もう一人の少女が広場へと顔を出した。黒子と同じように腫れぼったい目をしていた

黒子「あ・・・お姉さま・・・」

美琴「黒子・・・」

大切な何かがあったような気がして、二人の少女が互いに見つめ合う

黒子「・・・おはようございますの!」

美琴「・・・おはよう、黒子!」

上条は以前よりも距離の近くなったように見える二人に首を傾げていた

上条「ところで・・・一方通行と打ち止めはまだ起きてきてないのか・・・?」

打ち止めという名前を聞いて、反射的に二人の少女は同時に顔を強張らせた

484: 2010/01/22(金) 22:30:11.44 ID:3vERpUs80
すみません、戻りました('A`)再開します

上条達の泊まる同じホテルの、ベビールームに彼は居た

―何故だ・・・ッ!

氏神の持ち主である赤ん坊は理由がわからなかった
彼はDIOにより力を与えられ、そして異常とも呼べる知性を持っていた

彼のスタンドは、彼らが眠りに陥ると自動的に彼の世界に引き込むことが出来た
そして、夢の世界ではどんな能力も使う事が出来ず、結果的に彼の世界においては誰一人敵う者などいなかった

氏神は、少女達を追いつめ、そして一人の少女の首を切り飛ばした

切り飛ばしたつもりであった。しかし、その前に世界が崩壊をしてしまった
それが何故なのか、持ち主の赤ん坊にも分からない

あの時彼のスタンドは、眠りに落ちた上条当麻を夢の世界に呼び出していた
彼は知らなかったのだ。彼の持つ幻想頃しが常に効果を発揮する能力であるということを
そして、彼の世界に触れた彼の右手により、彼の世界そのものが消滅させられてしまったということを

しかし、彼は大して気に留めてはいなかった
彼のスタンドは夢の中であり、起きた人間の記憶には残らない

まだチャンスはある。そう思っていた

この少女が、自分の目の前に現れるまでは―

486: 2010/01/22(金) 22:43:30.34 ID:3vERpUs80
打ち止め「どうして覚えているのかって言いたいんでしょ?とミサカはミサカはあなたの考えている事を当ててみる」

あの世界で、あと少しで頃す事の出来た少女が目の前に居た

打ち止め「夢の中の能力・・・確かに能力は使えない―」
けど、と彼女は続ける

打ち止め「人間って、夢を見ている間も脳は活動しているんだよ?とミサカはミサカは答えを教えてあげる」

俗に言うレム睡眠なども、その一つである。しかし赤ん坊には理解できない

打ち止めと呼ばれる少女はミサカネットワークと呼ばれるもので、世界中の自分の姉妹へと意識の共有が出来た

例え自分が眠っていても、世界中の姉妹が一斉に眠りについているわけではなく、あの時の出来事を全て彼女は思い出す事ができた

打ち止め「約束して、なんて言わない。今この場であなたの身体に教えてあげます。とミサカはミサカはあなたの腕を取ります」

掴んだ赤ん坊の手には、あの時夢の中で付けた傷が見えた。少女はこれを頼りに彼を探し出したのだ

488: 2010/01/22(金) 22:57:26.63 ID:3vERpUs80
―やっ!やめろッ!俺はまだ赤ん坊だぞッ!!この人でなしッ!!

打ち止め「彼に手を出す人は、例え誰であっても、私は許さない・・・ッ!ミサカはミサカは怒ります!」

彼女も御坂美琴と同じく、電撃の能力を持っている。しかし、その力は彼女のそれとは全く比にならない程弱い物で、戦いに使えるほどではなかった

しかし、相手が生身の赤ん坊であるのなら話は別である

少女は彼を誰もいない部屋へと連れ出した。そして―

赤ん坊「ギッ!?ギィャァッ!アガッ!アギィィッ!?」

その腕に、足に、顔に、身体に何度も何度も火傷する様な電撃を浴びせ続けた

打ち止め「今日はこれで許してあげるよ・・・でも・・・」

もはや息も絶え絶えな赤ん坊をベビールームへと戻し、その顔を笑顔で覗きこむ

打ち止め「もし、次に彼に何かしたらどうなるか・・・分かっているよね?とミサカはミサカはあなたの理解力に期待をしてみる」

大量の汚物が赤ん坊のおしめの中を満たした

そう言い残し、少女は自分と白髪の少年の部屋へと戻っていった

495: 2010/01/22(金) 23:13:01.56 ID:3vERpUs80
一方通行「おっ、おいィ!打ち止めの奴を知らねェか!?」

青褪めた顔で少年が宿の広場へと駆け込んでくる。顔が何故か腫れている気がするのは何故だろうか

上条「知らないも何も、同じ部屋だろ?」
どうかしたのか?と表情を険しくする少年

一方通行「・・・あ、あァ・・・一緒に寝てて昨日真夜中に二人して目が覚めて・・・しばらくしてから俺ァちょっと外の空気吸ってて・・・」

相当慌てているらしく、よく分からない。だがいくつか分かる事はあった

黒子「一緒に・・・寝た・・・」
美琴「・・・やっぱり口リコンか・・・」

一歩退く少女達。冗談を言いつつも顔は笑っていない

一方通行「ちっ!違ェッ!じゃなくて知らねェのかどっちなんだッ!」

打ち止め「・・・呼んだ?とミサカはミサカはあなたを見つけ出して抱きついてみる」

元気いっぱいに、少年に後ろから抱き付く少女

497: 2010/01/22(金) 23:28:15.29 ID:3vERpUs80
一方通行「痛ッ!て、てめェ!どこに行ってた―」

打ち止め「ねぇねぇ、赤ちゃんって可愛いのかな・・・?とミサカはミサカは将来を案じながら聞いてみる」

少年の発言を遮って、少女が彼の顔をじっと見つめながら聞く

黒子「・・・こんな小さな子と一緒に寝て・・・」
美琴「・・・赤ちゃん・・・?」
上条「・・・最近、そういうのに厳しいから気をつけろよ・・・」

上条達が二歩退きながらこちらを見ている

一方通行「だから違ェェエェェェェェェェッ!!!誤解してンじゃねェぞてめェら!!」

打ち止め「そうだよ!いつもは一緒に寝てないよ!たまたま昨日は一緒に寝て、起きたら彼に抱き―」

一方通行「だアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァアアァァァァッ!?」

慌てて少女の口を塞ぐ白髪の少年

黒子「・・・一緒に寝て・・・?」
美琴「・・・抱いて・・・?」
上条「・・・赤ちゃん・・・」

この世のものとは思えない叫び声を上げる白髪の少年と、その彼に抱きついて幸せそうな彼女であった

501: 2010/01/22(金) 23:42:24.52 ID:3vERpUs80
上条「うーん・・・」

ヤブリーンに到着した上条当麻は暇であった

当初の目的ではこの村でセスナをチャーターする予定ではあった

だが、前に偶然立ち寄った村で赤ん坊が全身に火傷をしてしまったらしく、一台しかないこの村のセスナで病院へと送っているのであった

彼らも急ぐ旅ではあったが、その赤ん坊を見頃しにすることなど上条には当然出来ない
結果として帰って来るまで足止めを食らってしまっていた

仲間もその説明で説得をすると、まるで少年がそうすることが分かっていたかのような反応を示した

特に、何故かは知らないが打ち止めと呼ばれている少女は積極的にそうするべきだと主張していた

美琴「身も知らない赤ちゃんの為に・・・良いお母さんになれるわねー」
黒子「本当ですの。でも、だからって早まってはいけませんわよ」

誰とは言わないが、一人の少年に視線を向けたまま、少女達は話していた

503: 2010/01/22(金) 23:58:47.29 ID:3vERpUs80
―本当にする事が無いな・・・

上条「今頃あいつ、どうしているのかな・・・?」

遠く離れた少女を思う。小萌先生辺りに、何か美味しい物を食べさせて貰っているのだろうか

少女を思い出して、同時に自分の力の無さを思い出してしまう

―あれから少しは、強くなったのかな・・・

そんなに短時間で人が強くなれるわけもなく、上条自身にもそれは分かっていた

こつん
足に何かが当たる。古めかしい骨董品だろうか。少年はそれを拾い上げる

上条「なんだ・・・?これ・・・ランプ・・・?」

描いてある柄をもう少し細かく見ようとして、砂を払いのけた

508: 2010/01/23(土) 00:18:14.81 ID:GR9yXXW90
その時、突然ランプが爆発をする

上条「え!?えぇぇぇっ!?」

いきなりの出来事に対処する暇も無く、腰を強かに打ちつけてしまう

上条「いてて・・・不幸だ・・・」
再びランプを拾い上げる。しかし何事もなかったかのように反応はない

上条「うーん・・・?何だったんだろう今の・・・」

首をかしげる少年。たまたま何か凄い静電気か何か起こったのだろうということにしておく

美琴を見ていると、電気の力でランプを爆発させること程度何とでも思わなくなってしまう

少年がそう結論付けようとしたその時

「3つッ!!願い事を言えッ!!ランプから救ってくれた礼にかなえてやるッ!!」

上条「・・・えっと・・・どなたでしょうか・・・?」

目を点にした少年は、そう答えるのがやっとであった

509: 2010/01/23(土) 00:30:48.88 ID:GR9yXXW90
カメオ「わが名はカメオ!3つ願い事を叶えてやる!言え!」

上条「・・・えぇと・・・?」

手元のランプと目の前のランプの魔人とを交互に見る
―ランプに俺の右手が触れて消えないってことは、敵の能力じゃない・・・のか・・・?

上条「え、えぇと・・・!ちょっと待ってくれ!」

カメオ「良かろうッ!それが最初の願いだなッ!」

上条「ちっ!違う!違います!!」

もしかしたら本当に願いを叶えてくれるのかもしれない。頭をフル回転させる
何が起きても不思議ではない学園都市にいた少年は、思わずそう考えてしまう

カメオ「では願いを言えッ!」

―本当に叶うと決まってるわけじゃない!なるようになれ!
上条「こっ!小萌先生のお土産に!高級そうなお酒を出してくれっ!!」

自分の幸せよりも、他者の為になるものを選んでしまうのが少年らしい

カメオ「よかろう!Hail to you!!」

ドサッ
砂漠の中に突如箱が現れる。少年はまさかと思い中を開けると、いかにも高級そうなワイン等がこれでもかと入っていた
中を覗くとド口リとした液体が入っている。こんな辺境の村ではこんな物は売っていないだろう

―まさか、本当にランプの精なのか・・・?

514: 2010/01/23(土) 00:48:23.84 ID:GR9yXXW90
カメオ「次の願いを言えッ!!」

上条「・・・ッ!!」

―本当に、本当に願い事が叶うのか・・・!?

上条「じゃ、じゃあ!上条さんを幸せにするっていうことも出来ますか!?」

カメオ「・・・お前がそれを本当に望むのならば・・・」

上条「・・・じゃあ、今ここにいない人を呼び出す事は・・・」

カメオ「それをお前が望むのであれば・・・」

息を飲む少年。少女の顔を思い浮かべる

上条「分かった・・・あいつと、インデックスと直接話がしたい・・・それが願いだ・・・!」

カメオ「よかろうッ!Hail 2 U!!」

そう言って姿を消す。しかし何も起こらない
―やっぱり、無理だよな・・・

「とーまっ!」

振り返る。そこにいた少女に、驚きの余り目を見開く
上条「インデックス・・・!?どうしてここに・・・!?」

笑顔でこちらに手を振る少女がいた

516: 2010/01/23(土) 01:00:01.69 ID:GR9yXXW90
禁書「えへへ、こもえが学校でね、面白い能力の人がいるって教えてくれたんだよ!びっくりした!?」
いつもの姿で、いつものように少女が笑っている

上条「あ、あぁ・・・!そんな能力者がいるのか・・・!びっくりしたよ、本当に・・・」

禁書「実際に触る事も出来るんだよ!だから、久々にわたしの頭撫でてほしいんだよ」

両手を広げ、抱きしめて欲しいとばかりに少年を受け入れる体勢を作る少女

上条「・・・そうか・・・」

一歩、また一歩と少女の元へ近寄る

上条「なあ、いるか・・・?」
突然立ち止り、ランプの精を呼ぶと目の前に現れる

禁書「とうま・・・?」

立ち止まる少年を見て、言葉に詰まる少女

517: 2010/01/23(土) 01:18:24.51 ID:GR9yXXW90
カメオ「呼んだか?」

上条「・・・最後の願いも、今言う」

カメオ「よかろう」

上条「俺は早くこの戦いを終わらせたい。強くなって早く終わらせたいんだ。そして皆の元へ早く戻りたい・・・これが、俺の最後の願いだ」

両手に力を込め、歯を食いしばり少年が声を絞り出す

カメオ「よかろう!君に幸あれッ!!しかし叶えるのは3つ目の願いだけだァァァァァッ!!」

ランプの精が合図をすると、禁書の姿をした何かが、少年の肉を食らおうと飛びかかる

少年はそれをかわそうともせず、その場に立っている

カメオ「氏ねッ!ジョースターッ!!これで貴様の戦いは終わりだァァァァッ!!」

518: 2010/01/23(土) 01:26:19.12 ID:GR9yXXW90
カメオ「私は審判『ジャッジメント』!そして能力は、願いを反映して土か・・・ら―」

審判が言い終わる前に、彼の姿が消滅してしまう。少年に飛び掛かって来ていた少女も、その場で崩れ落ち土の塊に変化する

上条「だからっ!!」

審判の存在していた場所に右手をかざしていた少年は、数歩の距離にある不自然な穴のあいた地面へと向かいって歩き

上条「だから・・・!こんなところで、お前の創る幻想なんかに負けてなんていられないんだよ・・・!!!」

まっすぐに、真下に隠れている男のいる場所へと、右手を振り下ろした

男「ヒィガッ!!」

頭部に少年の突きを貰った男は気絶をしてしまう

上条「お前なんかが・・・っ!あいつを騙るんじゃねぇよ・・・っ!!」

怒りと、少しだけ悲しそうな表情を浮かべ、少年はその場から立ち去った

519: 2010/01/23(土) 01:32:33.32 ID:GR9yXXW90
禁書「へっくちっ!うぅっ・・・誰かがわたしのことを噂してたんだよ・・・!」

小萌「あららシスターちゃん風邪引いてないですかー?今おかゆ作ってあげますよー」

少女「風邪は。早いうちの。処置が大切だから」

禁書「大丈夫なんだよ!でもおかゆは食べるんだよ!それでね、わたしがそいつを木の棒でやっつけてやったんだよっ!」

その頃、禁書は小萌の部屋で、自らの(脚色入りの)武勇伝を聞かせていた

530: 2010/01/23(土) 03:17:36.39 ID:GR9yXXW90
上条「本当にありがとうございます」

女「気にしないで良いわよ」

帰って来たセスナに乗る一行。その中で上条はパイロットに名乗り出てくれた女性に礼を言う

金なら払うからエジプトまで乗せて行って欲しい

例えいくら積まれようとも、わざわざ見知らぬ彼らの為に、国境を超える様な酔狂な人物など見つからない

途方に暮れていた彼らに声をかけてくれたのが彼女であった

上条「にしても、女の人でパイロットで冒険好きだなんてカッコイイと思います」

女「またまた坊やったら上手いんだからっ!」

美琴「・・・」
―何よ、当麻ったら女の人を見るとすぐデレデレし出すんだから・・・っ!

黒子「・・・」
―この性格は、すぐにでも矯正してさしあげないといけませんわね・・・

そんな会話を続ける二人を、面白く無さそうな顔で後ろから見る少女二人

534: 2010/01/23(土) 03:31:32.25 ID:GR9yXXW90
一方通行「・・・おい上条にオバさん、ちったァ静かにしちゃァくんねェか」
白髪の少年の隣で眠る少女が起きてしまわない様に、二人に頼む

ピクッ
女「あ、あらごめんなさい。気が利かなかったわ」

言い方こそ彼なりではあるものの、理由のあまりの微笑ましさに上条も苦笑しながら了承する

―良く言ったわ口リコン!
―ぐっじょぶ過ぎますわ!

二人の少女が無言で褒め称える

上条「いや、この調子ならすぐにエジプトまで行けそうだな・・・」

ガタン!

女「え!?何、何が起こって・・・!?」

この不幸体質の少年がそう考えたせいなのだろうか、突如セスナが高度を落としフラフラとし始めた

535: 2010/01/23(土) 03:49:01.35 ID:GR9yXXW90
上条「ど、どうしたんですか!?」

急に不安定になる機内で、少年はパイロットの女に尋ねる

女「わ、わからないけど!機体が・・・ッ!」

操縦桿を握り、焦った様に女が答える

一方通行「ッ!敵かッ!」

美琴「・・・っ!何かいる・・・!」

すかさずレーダーで感知した少女が座席を指さす

しかし、指を刺した先に敵の姿が見えなかった

536: 2010/01/23(土) 04:03:08.64 ID:GR9yXXW90
黒子「・・・お姉さま、どこですの・・・?」

美琴「あぁ、もう!そこだってば!!」

小さな電撃を飛ばす、計器の一つがそれに反応をし逃げる

ガタンッ!
上条「わっ!馬鹿!お前最初の飛行機の事忘れたのかよっ!」

美琴「ご、ごめんっ!!」
はっと我に返り、自らの行動に恐怖する少女

女「・・・駄目っ!不時着するわ!」
―あの女、私の女教皇『ハイプリエステス』の位置が分かるのか・・・!

操縦桿を握り締めた女は、静かに狙いを美琴へと定めた
少女の介入により予想外の出来事に計画を変更せざるを得ない

―この機内ではなく、外でこいつらを仕留める・・・ッ!

上条「皆!何かにしがみつけ!!」

そして不時着の衝撃が、機内に襲いかかった

538: 2010/01/23(土) 04:13:58.61 ID:GR9yXXW90
一方通行「・・・チ・・・」

落ちた先は海岸であった
砂がクッションになったものの、不時着の衝撃で彼以外の全員が気を失ってしまっていた

一方通行の能力を持つ少年一人は全くの無傷であった

全員の姿と、息を確認して一先ず安堵のため息をつき

一方通行「・・・おいィ・・・起きてるんだろォ・・・?」

銃を構え、パイロットシートで気絶している女に照準を合わせる。居るとすれば、こいつしかいない

女「・・・あんたも中々良い男と思ってたんだけどねぇ・・・」

一方通行「あァ・・・?」
―何言ってやがるコイツ

女「あんたの、その後ろだよォォォォッ!!!」

少年の背後から、再び計器に化けた女教皇の爪が彼に襲い掛かり

女「ギャァァァァアァアァァッ!!」

―三度目かよ・・・

少年の前で、一人腕を抑えながら女が悲鳴を上げていた

540: 2010/01/23(土) 04:24:17.40 ID:GR9yXXW90
女「腕が!あたしの腕がッ!この糞がァァァッ!!」

一方通行「俺は何もしてねェだろォが・・・」

相手の次の行動はもう既に読めている。銃を女の額に押しつける

一方通行「今、降参すれば命まではとらねェよ・・・」

女「うるせえボケェェェェッ!!あたしの女教皇の能力は―」

一方通行「・・・一番後ろのガキを狙ってるんだろ・・・?てめェの能力とやらは」

女の説明も聞かず、結論だけを言い当てる

女「・・・なぜ・・・お前にも分かるのか・・・?」

動揺をし出す女。その姿に少年は心底呆れ果ててしまう

一方通行「・・・まァ、そういうこった。勿論アイツは既に俺の能力で守られている」

ハッタリをかます。もし少女に何かしようとするのであれば、その瞬間に眉間をぶち抜けば問題無い

一方通行「・・・で、返事ィ・・・」

気だるそうに答えを急く少年

女「・・・こ、うさん・・・します・・・」

女は自ら傷つけた腕を抑え、力無く頭を下げた

541: 2010/01/23(土) 04:31:17.71 ID:GR9yXXW90
さて、キリも良い所なので今回分は終了したいと思います
明日なのですが、お昼ちょっと過ぎから夜11時くらいまで帰ってくることが出来ません('A`;)
更に今から寝るとなるので、朝からの投下もあまり期待できないと思って下さい('A`;)
もしよろしければ、また皆様方のお力をお貸しください。それではおやすみなさい('A`)ノシ

上条「DIOォォォォォォォォッ!!!」【中編】へ続く

引用: 上条「DIOォォォォォォォォッ!!!」