1: 2013/02/07(木) 02:39:01.46 ID:KHNVDOBB0
少女「おじさん。こんなところで何してるの」
男「いや、ちょっと眠れなくてね。散歩ついでに一服していたところさ」
少女「ふーん…暇なんだね」
男「まぁね」
少女「……」
男「……」
2: 2013/02/07(木) 02:40:34.18 ID:KHNVDOBB0
男「となり、座るかい?」
少女「うん」
少女「こんな時間に散歩だなんて、おじさん変わってるね」
男「そうかい?静かでいいじゃないか。人も誰もいない」
少女「公園なのに誰もいないなんて寂しいじゃん」
男「そうかな。僕にはこのくらいが心地いいのだけれども」
少女「ふぅん……」
男「……」
少女「おじさん変態って人?」
男「またどうしてそんなことを聞く?」
少女「いや。可愛い女の子がこうして隣にいるのに何も聞かないから」
男「残念ながら僕は人見知りなんだ。誰かが話しかけてくれるのを待つほうが得意だ」
少女「草食系ってやつ?」
男「最近はあまり野菜を食べなくなったなぁ。注意しないと」
少女「意味わかんない」
男「意味なんてないさ」
少女「……」
男「……」
3: 2013/02/07(木) 02:41:31.67 ID:KHNVDOBB0
少女「今日は寒いね」
男「あぁ雨が降ったからね」
少女「私、雨って嫌い」
男「どうして?」
少女「だって髪が濡れちゃうじゃない」
男「雨なんて濡れて何ぼじゃないか。僕は好きだよ」
少女「夏の雨は好きだよ。涼しいし、キラキラしてる。」
男「夏の雨か…僕はあまり得意じゃないな」
少女「雨は好きなのに?」
男「君だって雨は嫌いっていったばかりじゃないか」
少女「だから、夏の雨はいいの」
男「僕も、冬の雨ならいいことにするよ」
少女「いじわる」
男「素直なだけさ」
少女「……」
男「……」
4: 2013/02/07(木) 02:42:28.42 ID:KHNVDOBB0
少女「ねぇタバコっておいしい?」
男「タバコにおいしいもなにもないさ」
少女「じゃなんでタバコ吸ってるの?
男「どうしてだろうね。僕も時々わからなくなるよ」
少女「分からないことのためにお金を費やすんだね」
男「人生なんて総じてそんなものだと思うけど」
少女「おじさん、人生を語れるほど老けてないと思うよ」
男「そりゃ年寄に失礼なことをした。もう少し年を重ねたらすることにしよう」
少女「なにをするの?」
男「女の子にタバコの意味を教えること」
少女「もう少しってどのくらいなの」
男「そうだなぁ…君に彼氏ができるくらいかな」
少女「じゃおじさん私の彼氏になってよ」
男「ありゃ、そう来たか」
少女「だめ?」
男「残念ながら、僕のタイプとはちょっと違う」
少女「おじさんのタイプってどんなの?」
男「大人の女性かな」
少女「じゃあ私じゃだめだ」
男「そうだね」
5: 2013/02/07(木) 02:43:57.42 ID:KHNVDOBB0
少女「おじさんはどうすれば眠くなると思う?」
男「眠れないのかい?」
少女「ううん。私はいつもなら普通に眠れるんだよ。でも今日は少しお昼寝しすぎちゃったから…」
少女「私の代わりにどうしたらおじさんは眠くなるのかなって」
男「それが分かっていたら、こんなところで君と話すこともなかっただろうね」
少女「おじさんは眠れない病気なの?」
男「……病気か。そうかもなのかもしれない」
少女「…ほんとに?氏んじゃうの?」
男「氏にはしないさ。残念ながらね」
少女「……私のお母さん、去年病気で氏んじゃったんだ」
男「そっか…それは悲しかったね」
少女「ううんもう寂しくないよ。お母さんいつも見ててくれるんだって」
男「君のお母さんは優しい人なんだね」
少女「うん。だから雨の日は嫌いなの」
男「どうして?」
少女「だって雲が出てきちゃうじゃない」
男「雲が出ていてもお母さんは見守ってくれると思うけどな」
少女「お母さん、雲にのって遊んでみたいって言ってたもん。きっと遊んじゃう」
男「そっか。僕も遊んでみたくなったよ」
6: 2013/02/07(木) 02:45:03.70 ID:KHNVDOBB0
少女「私が寝る前は、いつもお母さんがお話してくれたの」
男「僕には話せるだけの物語なんて持ち合わせていないな」
少女「なにかあるでしょ?さっきから私だけ話していてつまんない」
男「そうだなぁ…」
男「駄目だ。何も思い浮かばないよ」
少女「じゃあおじさんの初恋の話をしてよ」
男「僕の初恋?」
少女「うん。気になるから」
男「ずいぶんと話辛いことを聞くんだね、君は」
少女「話してくれるまで家に帰らないから」
男「……そうだなぁ」
7: 2013/02/07(木) 02:46:23.07 ID:KHNVDOBB0
僕の生まれ育った町は、田んぼと川が綺麗な田舎だった。
田舎と言ってもそれなりに大きなスーパーもあるし、コンビニだってある、
いわゆる地方のどこにでもある町だと思う。
僕の初恋は、中学生のころの同級生だった人。
自分で言うのもなんだけど、僕は運動も勉強も人並みにはできたし、要領もよかったから比較的モテた。
モテたといっても、クラスで人当たりがいいくらい奴程度だったから告白されたりとかは全く無かったんだけどね。
僕のクラスには3人の可愛い娘がいて、
一人はアイドルみたいな明るくて可愛い女の子、一人は結構サバサバしている元気な女の子、
そして彼女だった。
8: 2013/02/07(木) 02:48:39.33 ID:KHNVDOBB0
彼女は猫みたいな女の子だった。
髪に少しの癖があって、いつも外側に癖毛が跳ねていたのを覚えている。
あまり笑った顔は記憶にないけれど、とても魅力的な女の子だったんだ。
簡単に笑わないからこそ、彼女は魅力的だったのかもしれないけれど。
彼女は、親しい人以外とは全くと言っていいほど話をしない人間だった。
だから、僕のクラスの人たちは女子も男子も、彼女と仲良くしたくてうずうずしていたんだ。
僕はそんな内の一人だった。
髪に少しの癖があって、いつも外側に癖毛が跳ねていたのを覚えている。
あまり笑った顔は記憶にないけれど、とても魅力的な女の子だったんだ。
簡単に笑わないからこそ、彼女は魅力的だったのかもしれないけれど。
彼女は、親しい人以外とは全くと言っていいほど話をしない人間だった。
だから、僕のクラスの人たちは女子も男子も、彼女と仲良くしたくてうずうずしていたんだ。
僕はそんな内の一人だった。
9: 2013/02/07(木) 02:49:51.47 ID:KHNVDOBB0
ある日の帰り道、僕はいつもと同じように暗くなった坂道を歩いて帰っていたんだ。
頭の中で、ふと彼女のことを考えた。今何してるかとか、明日は話しかけてみよう、とかそんなくだらないこと。
坂を下りきった時、電柱の影に隠れて、彼女が泣いていたのが見えた。
僕は心臓が飛び出るかと思ったよ。まるで今思っていた妄想がいま現実に起こったんだから。
彼女は下を向きながら泣いていた。誰にも気づかれないような静かな暗闇だった。
僕はドキドキしながら彼女に話しかけたよ。人生で一番勇気を出した気がする。
頭の中で、ふと彼女のことを考えた。今何してるかとか、明日は話しかけてみよう、とかそんなくだらないこと。
坂を下りきった時、電柱の影に隠れて、彼女が泣いていたのが見えた。
僕は心臓が飛び出るかと思ったよ。まるで今思っていた妄想がいま現実に起こったんだから。
彼女は下を向きながら泣いていた。誰にも気づかれないような静かな暗闇だった。
僕はドキドキしながら彼女に話しかけたよ。人生で一番勇気を出した気がする。
10: 2013/02/07(木) 02:51:16.65 ID:KHNVDOBB0
彼女は鼻を数回啜ってから、泣いていないと嘘を言った。
僕は彼女の横に立ったまま、彼女と話ができたことにまだドキドキしていた。
どうしたの?
なんでもない。
だいじょうぶ?
なんでもないってば。
僕は何を話していいか分からなくなって黙り込んでしまった。
しばらく無言のまま、僕は空を見て、彼女は地面を見ていた。
すっかり日も暮れて月がいつもより綺麗に見えていた気がする。
11: 2013/02/07(木) 02:53:57.43 ID:KHNVDOBB0
僕には彼女がなんで泣いていたか見当もつかなかったし、
それをと言い詰める勇気もなかった。ただ彼女の隣に立って、同じ時間を過ごしていることに精一杯だったんだ。
でも、なにかしなければと思った。
このままだと彼女がどこかへ消えてなくなりそうな気分になった。
僕は勇気を振り絞って好きだとつぶやいた。
びっくりするくらい小さな声だったと思う。情けなくて帰りたくなったけど我慢した。
緊張して彼女のほうを見ることができなかった。
彼女は少し時間をおいてから、ふっと息を吐いて、悲しそうな声でありがとうと一言だけ言った。
僕はもうそれだけで満足してしまったんだ。
12: 2013/02/07(木) 02:55:52.63 ID:KHNVDOBB0
少女「……それで、あきらめちゃったの?」
男「あぁ、それっきり彼女とは口を交わすこともなかった」
少女「なんだかおじさん。昔から駄目な人だったんだね」
男「そうだね。僕は昔から変わらないままだ」
少女「……」
男「……」
少女「おじさん…」
男「さて、少し話過ぎたみたいだね。体が冷えすぎた。僕はもう帰るよ」
少女「おじさん…また会えるよね」
男「……」
少女「……おじさん?」
男「君……名前は?」
少女「えっと…凛だけど…」
男「違う、苗字」
少女「立花……」
男「…………」
少女「おじさん?どうしたのそんな顔して?」
男「……僕がなんでこんな話を君にしたか、ようやく分かった気がするよ」
少女「どういうこと?」
男「君お母さんにそっくりだ」
少女「おじさん…泣いてるの?」
男「いや、ようやく、会えた気がするよ」
少女「また…お話しできるよね」
男「あぁ…ばいばい」
おわり
13: 2013/02/07(木) 02:59:55.32 ID:KHNVDOBB0
短くてすいません。女の子との会話がやりたかっただけです。
14: 2013/02/07(木) 03:23:28.23 ID:FBrOHuzMo
乙
いつかけいおんの唯とオリジナルのおじさんが一緒に旅行するってssあったけど同じ人?
いつかけいおんの唯とオリジナルのおじさんが一緒に旅行するってssあったけど同じ人?
15: 2013/02/07(木) 03:46:49.30 ID:arK900zv0
>>14 違う方だと思います。ともあれ読んでいただき感謝
18: 2013/02/08(金) 00:37:49.20 ID:BXRC5DNyo
乙でした
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