116: ◆6osdZ663So 2013/09/29(日) 01:48:17.13 ID:Ba5bNvc4o

モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです

前回はコチラ


 高校の友人関係で美穂ちゃんのお話投下しまー

117: 2013/09/29(日) 01:48:52.63 ID:Ba5bNvc4o


”これは、今まで普通だったことが『普通』ではなくなっていた話”


 

118: 2013/09/29(日) 01:49:18.23 ID:Ba5bNvc4o
――

美穂「おはよう・・・・・・・。」

母「おはよう、美穂」

肇「おはようございます、美穂さん。」

ある日の小日向家の朝。

美穂が憂鬱な気分で、茶の間に起きてくると、

母と同居人は既に起きており、朝食の準備もすっかり出来ていた。


肇「・・・・・・おや?美穂さん、今日は元気が無いですね?」

美穂「うん・・・・・・。」

軽く頭を抱えながら、食卓の席についた美穂。

そんな彼女の様子をみて、同居人から心配の声が掛かる。

母「学校が始まるからでしょ。」

美穂「うん・・・・・・・・・・・・。」


そう、本日は夏休みが明けて、初めて学校に行く日。

つまり始業式の日だった。


----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




119: 2013/09/29(日) 01:49:49.48 ID:Ba5bNvc4o

この夏は、美穂にとって大変忙しい夏だった。

カースと戦ったり、

カピバラ怪人を追い掛け回して真っ二つにしたり、

カースと戦ったり、

憧れの元ヒーローと出会ったり、

カースと戦ったり、

肇と妖怪祭りに出かけたり、

あとは、カースと戦ったりもした。


美穂「・・・・・・ほとんどヒヨちゃんに振り回される毎日だった気がする。」

美穂の頭の上で、照れたようにその身をくねらせるアホ毛。

褒めてはいないが。

美穂(だけど充実してた・・・・・・のかな?)

真っ当な少女の過ごす夏休みとはかけ離れた日常だったが、

まあ、それでも美穂はかねがね満足していた。

美穂(ちょっとずつだけど、夢にも近づいてる気がするから。)

憧れのアイドルヒーローになる。

ヒヨちゃんや、肇ちゃんや、セイラさんと出会ったことで、

夢が叶う兆しが見えてきた。


ただ、それに伴う問題点も少なからずある。


例えば、以前、カピバラ怪人を燃やし斬った際に、

ヒーローとして地方新聞に載ってしまったことだ。

120: 2013/09/29(日) 01:50:41.55 ID:Ba5bNvc4o

肇「美穂さん、パンが焼けましたのでどうぞ。」

美穂「ありがとう、肇ちゃん。」

トースターでこんがり焼いた食パンに、

食卓の上に置いてある、マーガリンを適量塗りたくり、齧る。

時々、母が焼いたであろうハムエッグと、それに添えられたサニーレタスにも手をつけつつ、

朝の栄養補給を続ける。

あの日の朝も、そう言えば食パンを齧っていた事を思い出す。


小日向美穂は、あの朝、新聞に載ってしまっていた意味を考える。

美穂(・・・・・・今更、恥ずかしがってちゃダメなんだろうけど)

美穂(そ、それでも卯月ちゃんや茜ちゃんに私のヒーロー活動のこと知られてると思うと・・・・・・)

地方新聞に載る、

それはクラスメイトに小日向美穂のヒーロー活動を知られると言う事。

すなわち、


「あ~はっはっはっはっは!」

と人目も憚らず高いところで高笑いとかしながら、

「愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたん星人ナリ!」(笑)

とか電波な言葉を飛ばしつつ、

「このまるごとぜ~んぶ私のもの、ひなたっ☆」

とかカワイイポーズを決めて、刀をぶん回してる事を知られているのだ。


美穂「う、うわぁあああああああ!!」

肇、母「!?」

美穂「冷静に考えるとやっぱりダメだっ!!ダメッ!氏ぬっ!恥ずかしさで氏んじゃうっ!熊本に帰るっ!!」

肇「急に元気になりました?」

母「情緒不安定ねえ、まあこのくらいの年のころは私も色々あったわ。」


果たして、美穂の恥ずかしがりやな性格が悪いのか、

ひなたん星人の豪放かつ電波な性格が悪いのか。


美穂(・・・・・・いや、ヒヨちゃんが悪いわけじゃないけれど)

実際、小春日和のおかげで、

最初にカースと出会ったときも対応できたし、街の平和を守ることが出来ている。

恨めるはずはない。恨めるはずはないが、


美穂(私、クラスでも目立つ方じゃなかったから、)

美穂(いきなりひなたん星人とか言っても、みんなドン引きに決まってるよ・・・・・うぅ・・・・・・。)


この夏、小日向美穂は大切な物を手に入れたが、大切な物を失った気がする。

121: 2013/09/29(日) 01:52:05.63 ID:Ba5bNvc4o

現在、あの記事に関する、

つまりニューヒーロー「ひなたん星人」として小日向美穂が活動していることに関する、

学校の友達の反応は保留と言う事になっている。


美穂(あの日から、卯月ちゃんや茜ちゃんと出会う機会もなかったからなあ・・・・・・。)

カピバラ怪人の件で、ひなたん星人が新聞に載ったのは夏休み中の事。

そして、新聞に載ってからの夏休みの残りの期間の間、

ヒーロー活動や、祟り場などの発生のため、奔走していた美穂は忙しく、

学校の友達と遊ぶ機会がまったく無かった。


さらに言えば連絡も、全然とってはいなかった。


美穂(あれ・・・・・・?)


何気ない、小さな違和感。


美穂(・・・・・・忙しかった私からはともかく。)

美穂(卯月ちゃんからも連絡が無い?)

122: 2013/09/29(日) 01:52:50.10 ID:Ba5bNvc4o

美穂(・・・・・・あ、卯月ちゃんが暇人ってことじゃなくって)


島村卯月のパーソナル。

なかなかパッとは思いつかない彼女の個性だが、

その一つに『長電話』と言う物がある。

「趣味は長電話ですっ!」とでも言ってのけてしまいそうな程に、

彼女はよく、友達に電話をかける。

メールでもツ○ッターでもなく、電話がいいのだそうだ。

文字ではなく、相手の声を聞かないと落ち着かないらしい。

美穂も何度かそれに付き合わされたことがあるが。

徹夜するまで付き合わされてしまうのは、きっと後にも先のも彼女との電話だけだろう。


そんな三度の飯よりも、寝る時間よりも、長電話が好きな彼女が、

この夏、

いや、夏休み当初は何度か掛かってきたのだが、

しかし、夏休み後半。美穂が新聞の載ったあの日を含めての、しばらくの期間、

まったく電話をかけてこなかった。と言う事実が、意外と言えば意外であった。

123: 2013/09/29(日) 01:53:37.46 ID:Ba5bNvc4o
――

朝食を食べ終え、学校に行く仕度を済ませる。

久しく着る制服は、クリニーング仕立てで着心地が良い。


美穂「着信履歴は、っと。」

ふと先ほど気になった疑問を解消するため、

携帯電話のデータを確認する。

島村卯月に限って言えば、

発信履歴ではなく、着信履歴を確認した方が早いと確実に言えるのは、

彼女の確固たる個性を示してる気がした。


美穂「卯月ちゃん・・・・・・卯月ちゃん・・・・・・。」

スマホを画面を上方向にフリックして、

着信履歴のリストをスクロールさせる。

そうやって目的の名前を探す。

美穂「?」

美穂「あれ?おかしいなぁ・・・・・・。」

美穂「着信履歴なんて消さないはず・・・・・・だと思うけど。」


もちろん、携帯を機種変更や修理に出した覚えも無い。

普段触らない履歴に関するデータが消えるような事はなかったはず。

しかし、美穂の携帯の中には、


『卯月ちゃん』からの着信履歴が、一件も存在してはいなかった。

124: 2013/09/29(日) 01:54:38.62 ID:Ba5bNvc4o

美穂「『お母さん』や『肇ちゃん』の名前はあるから、履歴を消した訳じゃないよね?」

美穂「うーん??」

疑問に思うが、考えてもこの現象の謎は解けず、

美穂「意外と、いつも私の方から電話してたのかな?」

そう言って、クスリと笑う。

『長電話』が好きと言うイメージから、いつも向こうから掛けてくるイメージに繋がっていたのだろうか。

美穂「私って、寂しがり屋なのかも?」

今まで意識してなかったことだったが、

毎回、自分から友達に電話を掛けていたのだと思うと、ほんのちょっと恥ずかしかった。


母「美穂ー、学校遅れるわよー。」

美穂「わっ!もうこんな時間!今出るからー!」

携帯電話をポケットに仕舞って、

『小春日和』を入れた袋を背負い、カバンを左手に持つ。

肇「美穂さん、いってらっしゃい。」

美穂「いってきます、肇ちゃん!」

慌しく、美穂は家を飛び出て、登校することとした。



この時、もし発信履歴の方も確認していれば、

あるいは、アドレス帳を確認していれば、

携帯電話から”友達の名前が完全に消えている”と言う異常に気づけたのかもしれないが、

それは何らかの事態に巻き込まれている、と気づくことが少し早まるだけの事で、

この後の展開については、きっと何も変わらなかっただろう。


この時点で、とっくの昔に、

小日向美穂にとっての『普通』は、普通ではなくなっていたのだから。

125: 2013/09/29(日) 01:55:31.49 ID:Ba5bNvc4o
――


通学路。

久しく歩く、その道は、以前よりもずっと、歩きにくかった。

何故ならば、

美穂(し、視線が気になって・・・・・・。)


「あれ?あの子、もしかして”ひなたん星人”じゃない?」

美穂(う、噂されてるっ!?)

「あっ、本当だ。ヒーローって本当に居るんだ。おーい」

美穂(手振られたっ?!)


まったく知らないOLに手を振られ、小さく手を振り返す。


「きゃああっ、手振り替えされちゃった!可愛い!」

美穂「う、うぅ~。」

集まる視線に、カバンで顔を隠してしまう。

美穂(は、恥ずかしい・・・・・・。)

恥ずかしがってばかりだが、しかし、それも仕方ない。

人に注目されていると自覚するのはやはり、どうしたって恥ずかしい。

それは、”たくさんの妖怪の目があった舞台に立つ”と言う経験をしたとしても、なかなか慣れはせず。

と、言うよりも

緊張感のある舞台の上で多くの目で見られるより、

何気なく油断して過ごしている日常を見られていることの方が、案外ずっと恥ずかしいのかもしれない。

美穂(けれど、嬉しいかな。)

注目されていると言うのは、認められていると言う事。

小日向美穂がヒーローとして認められていると言う事だ。

それは、彼女にとってはとっても嬉しいこと。


そうは思ってもずっと視線に晒されるのは、なかなかに居心地がよろしくは無い。

嬉しいのに居心地が悪いとは複雑な心境なのだが、

とにかく、この場は逃れてしまおうと歩みを急がせ、そそくさと立ち去るのだった。

126: 2013/09/29(日) 01:56:22.79 ID:Ba5bNvc4o
――


人目を避けるために、

少しだけ早足で通学路を歩いていると。


卯月「それでね・・・・・・だったから・・・・・・。」

茜「へぇ・・・・・・・・うん・・・・・・・・そうなんだ。」


美穂「あっ。」

前方に、よく見知った2人が並んで歩いているのを発見する。

横断歩道を渡りながら、何か話し込んでいるようだった。

追いつこうとして、小走りになる。


しかし、

美穂「あれっ。」

たまたま、彼女達が横断歩道を渡りきったところで、

まるで美穂の歩みだけを遮るように、信号が赤に変わってしまった。

それならば、

美穂「茜ちゃん!卯月ちゃんっ!」

と、横断歩道の手前から声を掛けて、先に行く2人を止めようとしたが

ブロロンっ!!

美穂「わわっ!」

大きな音をたてて美穂の前をトラックが通過した。

美穂の声は、その音に掻き消され、届かなかったようだ。

トラックが通り過ぎれば、2人は既にずっと先の方へ行ってしまっていた。


美穂「タイミング、悪いなぁ・・・・・・。」


この時点では、

異変は、ごく自然で、『普通』に起こりうることで、

静かに美穂を巻き込んでいたために、彼女はそれに気づくことはなかった。


しかし、この先にて。

つまり学校にたどり着いた時点で、


小日向美穂は、やっと今回の『普通』ではない異常事態に気づくのだ。

127: 2013/09/29(日) 01:57:19.67 ID:Ba5bNvc4o
――


学校にたどり着いた。

そこまでは、何も問題なかった。

2年の教室が並ぶ階にたどり着く。

そこまでは、変わったところは無かった。


いつもの教室の前に立つ。

2年1組。

夏休み前まで、ずっと普通に通っていた教室。

美穂の学校では、学期毎のクラス替えなどは行われないために、

継続して、この教室を使うことになる。


はずが、


「あれ、小日向さん。どうして1組に入ろうとしてるの?」

美穂「えっ?」

「小日向さんは私達と同じ2組じゃない。」

美穂「えっ、あの?」

「ほらほら、みんなヒーローを待ってるんだからさ。」

美穂「わわっ?!」


あまり話したことも無い、違うクラスの女子に手を引かれ、

隣の教室、2年2組に連れて行かれる。

128: 2013/09/29(日) 01:57:56.93 ID:Ba5bNvc4o

「待ってました!ヒーロー!」

「新聞見たよー!小日向さんかっこよかったー!」

「うちの家族も小日向さんに助けられたって言ってたよ!ありがとうねっ!」


美穂「えっ!?えっ!?!」


こうやって騒がれる事には覚悟してきたつもりだったが、

恥ずかしいとか思う以前に、美穂の頭を支配していたのは混乱であった。

美穂(ど、どう言う事?!)

美穂「ど、ドッキリ??」

「あはは、確かに驚いちゃうよね。こんな風に騒がれちゃったら。」

美穂「えっと、いやあのそれ以前に、私・・・・・・隣のクラスで・・・・・・」

「? 何言ってるの?」

「夏休み明けで混乱してるんじゃない?」

「あー、あるある。長いこと学校休んでると、あれ、自分の教室ってどこだっけーってど忘れしちゃうことあるよね。」

「確かにあるかも。まあでもクラスのみんなの顔を見たら思い出すでしょ。」


「小日向さんは”2組の仲間”なんだから。」

美穂(・・・・・・何これ・・・・・どう言う事?)


彼女達がふざけてこんな事をしていたのならばよかった。

しかし、それは違う。

結論から言えば、彼女達の言っている事の方が正しく、

彼女達のとった行動は、まったくもって『普通』。

普通に、”クラスメイトの女子”が取り得る行動だった。


小日向美穂は”2年2組”の生徒と言う事になっていた。

129: 2013/09/29(日) 01:58:45.78 ID:Ba5bNvc4o
――

時は飛んでお昼。

何時の間にか始業式は終わっていて、既に生徒達は帰る準備を始めている。

始業式が終われば、学校での時間は終わり。授業は明日から。

つまり本日は半ドンと言う訳で、生徒達は思い思いにこれからの予定を話し合っている。


「今日どこか寄るー?」

「あたしドリンク無料件あるけど。」

「マルメターノおじさんの店のソーセージ食べたいなー」

「出た、都市伝説(笑)。謎のおじさんのソーセージ店(笑)。」

「本当にあるの?そんなお店。」

「本当にあるし!美味しいんだよっ!たまにしか見かけないだけで!」


美穂「・・・・・・。」

周囲で2組の人たちが何か話しているが、

美穂の頭の中に、その会話の内容は全く入ってこなかった。


美穂(勘違いとかじゃないよね、私はたしかに1組の生徒だった・・・・・・。)

夏休み前までは2年1組の生徒として『普通』に過ごしていたはずなのに、

それが『普通』ではなくなっていた。


では何が今の『普通』なのかと言えば、

小日向美穂の所属するクラスは2年2組。

2組の担任がクラスで出席を取った時も、しっかり名前を呼ばれた。

名簿にさえ『小日向 美穂』の名前が存在していたらしい。

始業式のときも2組の列に並ばされた。

その事にすら、誰も違和感を覚えなかったようだ。

教師も生徒も、誰一人、疑問を挟むことは無かった。

2年1組の列には卯月ちゃんや茜ちゃんが並んでいたが、

1組の列に美穂が居らず、2組の列に美穂が居ることに

まったく思うところは無く、むしろ変だと気づいてすらいなかったようだった。


美穂(おかしいのは私・・・・・・?)

自分の中にある常識を疑ってしまう。

世界はこんなにも不確かだっただろうか。

130: 2013/09/29(日) 01:59:48.55 ID:Ba5bNvc4o

「小日向さんも、良かったら一緒に行かない?」

美穂「ふぇっ!?」

「これから、ご飯食べて、適当にどこかぶらつくつもりなんだけどさ。」

「ソーセージを食べられるかは、場合によります。」

「まだ言ってるし。」

”2組のクラスメイト”からのお誘い。

はっきり言えば、そう言う気分では無かったのだけど。

「でもさ、私らも一緒に遊ぶの久しぶりだよなー。」

「夏休みもたまに遊んだじゃん。」

「学校帰りは久々って事。学校帰りっていつも何してたっけなぁ、休み長かったからノリわかんない。」

「まあ、適当に話してたら何か思い出すでしょ。」

美穂(適当に話してたら・・・・・・!)

美穂(そうだ!卯月ちゃん達と話せれば、何か分かるかもしれない!)


そう思って携帯を取り出す。

ここで彼女はアドレス帳を開いて、

今朝気づけなかった驚愕の事実に気づくのだった。

美穂「えっ?」

アドレス帳には卯月ちゃんの、

いや、それどころか1組の友人の名前が一件も無かった。

背筋が凍る。

131: 2013/09/29(日) 02:00:31.66 ID:Ba5bNvc4o

美穂(う、嘘・・・・・・。)

美穂(2組になったから、携帯からも1組の友達の連絡先が消えた??)

例えば2組の出席簿に『小日向美穂』の名前が存在したように、

1組には、『小日向美穂』の所属していた形跡が抹消されているとでも言うのだろうか。

そしてまさか、

まさか、同じ様にこれまでの友人達との関係もリセットされたとでも言うのだろうか。

あり得ない。

あり得ない。

あり得なさ過ぎて、何が起きているのか見当も付かない。


「それで、小日向さんどうする?」

美穂「ご、ごめん!私、ちょっと今日寄る所があるから!」

こうなったら直接、彼女達と会って話すしかないだろう。

「そう?ちょっと残念かな。」

「また今度、一緒に遊ぼうねー」

美穂「う、うん!また今度!」

立ち上がって、帰り支度を手早く済ませる。

1組はもう解散してしまっただろうか。急がないと2人は帰ってしまってるかもしれない。

132: 2013/09/29(日) 02:01:08.43 ID:Ba5bNvc4o

急いで教室を出て、すぐ隣の教室を伺う。

美穂「うぅ、やっぱり居ない・・・・・・。」

1組もやはり既に解散しており、教室にはまばらに生徒が残っていたものの、

そこには、よく見知った友人達の姿は無かった。

「あら?小日向さん、何かうちのクラスに用事かな?」

1組の女子に声を掛けられた。

美穂「ちょ、ちょっとね。あ、あの卯月ちゃんたちは?」

「卯月ちゃん?もう帰ったけれど?・・・・・・小日向さんって卯月ちゃんと親し」

美穂「ご、ごめん!もう、帰るね!」

「あ、ちょっと・・・・・?」

逃げるように、その場を立ち去った。


彼女と話していると、嫌でも自覚してしまいそうだったからだ。

それなりに親しかったはずのクラスメイトから「美穂ちゃん」ではなく、「小日向さん」と呼ばれた事だとか。

美穂が「卯月ちゃん」の事を気に掛けた事に、疑問を挟まれそうになった事だとか。

そんな事から、


美穂「嘘だよね、こんなの・・・・・・。」


「友達」が「友達」でなくなっていると言う事実を、自覚させられてしまいそうだったからだ。

133: 2013/09/29(日) 02:01:54.01 ID:Ba5bNvc4o

だけど、まだ彼女達と直接話してはいない。

美穂「・・・・・・すぐ追いかければ、まだ間に合うかも。」

まだ希望は残っているはずだ。


生徒達が解散してから、それほど時間は経っていない。

まだ通学路の途中に居るかもしれない。


走って追いかければ、きっと、追いつけるだろう。

そうと決まれば、と美穂は急ぐ。


「こらっ!!廊下を走るなっ!」

美穂「ご、ごめんなさいっ!」


通りがかった教師に怒鳴られてしまった。

焦る気持ちをグッと堪えて、廊下は早足で歩いて靴箱へと向かい、

外靴に履きかえると、茜ちゃんにも負けない気持ちでダッシュを始めた。

134: 2013/09/29(日) 02:02:21.76 ID:Ba5bNvc4o
――

美穂「最近、何か悪いことしたっけ・・・・・・。」

学校を出ると、

まるで急ぐ美穂の足取りを止めるために立ち塞がるように、

幾つも災難が待ち構えていた。

たまたま目の前で、道路の補修工事が始まったり、

たまたま狭い道の前方から相撲取りの行軍がやってきたり、

中でも、たまたま老人が大荷物を持って横を通りがかったのは焦った。


工事はヒヨちゃんが壁を走り、

相撲取りはヒヨちゃんがジャンプで跳び越え、

老人はヒヨちゃんが急いで老人ごと目的地まで運んで戻ってきた。


美穂「見えざる宇宙の意思でも働いてるのかなぁ・・・・・・。」


当らざるとも遠からず。

見えざる何らかの力が、ここまでの難関を引き起こしているのは確かで、

さらに言えば、美穂を巻き込んでいる異常事態の原因もまた、”その力”であったが、

それを知るのはずっと後のこと。

135: 2013/09/29(日) 02:03:05.40 ID:Ba5bNvc4o


卯月「・・・・・・だったんだよぉ!」

茜「・・・・・ですか。・・・・・・・だよ!」

卯月「なんか・・・・・・・・すごいよね・・・・・・・・!」


美穂「居たっ!!」

ヒヨちゃんが頑張ってくれたおかげで、2人に追いつくことが出来た。

それにしても何の偶然か、2人を見つけたのは、

行きの道の時と同じく、彼女達が横断歩道を渡っている時で、

今度こそは逃さないと、必氏に足を動かす。


しかし無常にも信号はまたしても、2人が渡りきったところで赤に変わる。

美穂「うぅっ、見えざる宇宙の意思っ!?」

完全にデジャヴだった。

きっと2人を声で止めようとすれば、またトラックが通りがかって、

美穂の声を掻き消してしまうのだろう。

いっそヒヨちゃんを呼んで、道路を飛び越えてしまえば・・・・・・


と気持ちが焦っていたせいか、

走る勢いが余って道路に飛び出してしまう。

「危ないよッ!!」

美穂「うわっ!」

手を力強く捕まれ、後ろに引っ張られた。

ブロロンッ!

案の定、トラックが目の前を通り過ぎる。


美穂(あ、危なかったかも・・・・・・)

そして、やはりと言うべきか。

トラックが通り過ぎた後には、2人の姿はとっくに見えなくなっていた。

136: 2013/09/29(日) 02:03:44.37 ID:Ba5bNvc4o

とは言え、それほど距離が大きく離された訳ではないのだろう。

今からもまた急げば、『普通』であれば追いつける距離だ。


けれど美穂が続けて追いかける気になれなかったのは、

流石にこの事態が『普通』ではない、『異常』である事に気づいていたからだ。


美穂(斥力・・・・・・。)

なんとなく、そんな言葉が浮かんだ。

理科の授業で習った覚えがある言葉。

物体同士が互いに引き合う力である『引力』の反対。

物体同士が互いに斥け合う力。それが『斥力』。

例えば磁石のN極にN極を近づけるように、あるいはS極にS極を近づけるように、

追いかけても追いかけても引き離される。


美穂(何かが私から2人を遠ざけようとしているような・・・・・・そんな感じが・・・・・・。)

美穂(でも・・・・・・どうして?)

「大丈夫?」

美穂「あ、す、すみませんっ!」

そう言えば、と。トラックに轢かれそうなところを助けられていたことを思い出す。

美穂を助けた、その人物は、

茶色の長い髪を、後ろで結った。所謂ポニーテールが目立つ女の人だった。

137: 2013/09/29(日) 02:04:26.43 ID:Ba5bNvc4o

「気をつけなよ?」

その人は美穂と同じ制服を着ていた。

つまりは、美穂と同じ学校に通う女子高生と言う訳で。

美穂「は、はい。ごめんなさい・・・・・・ありがとうございましたっ。」

「いいって、気にしなくても。美穂ちゃん。」

美穂「?」

美穂「あの、どうして私の名前を?」

クラスも違うし、おそらく学年も違うその人に名前を知られていると言う疑問。

「そりゃァ、美穂ちゃんは、既に学校だとちょっとした有名人だからかな。」

美穂「・・・・・・・あっ!そっか!」

ハンテーン騒動で広まった「ひなたん星人」の名前。

本名ではないが、けれど美穂の通う校内であれば、実名は簡単に知れる。

「小日向美穂」の名前も自然と噂になっているのだろう。

美穂(・・・・・・改めて思えば、すごく有名人になってるよね。)

普段なら恥ずかしさで卒倒しそうな事実だが、

現在、巻き込まれている事態が事態なので、冷静に受け止めることが出来た。


「私は愛野渚、3年生!バスケ部キャプテンだよッ、よろしくッ!」

美穂「えっと知ってるみたいですけれど、小日向美穂、2年生です。よろしくお願いします。」

138: 2013/09/29(日) 02:05:03.34 ID:Ba5bNvc4o

渚「それにしても随分と深刻な顔してたけどさァ。悩み事?だからって道路に飛び出すのはよくないんじゃない。」

美穂「いえ、悩みがあるから道路に飛び出したわけでは無くて・・・・・・。」

美穂「あれ?いや、やっぱりそう言う感じなのかも・・・・・・?」

渚「?」

渚「うーん、私にはよく分からないけど、悩みがあるなら相談になら乗ろうかァ?」

美穂「・・・・・・。」

ありがたい申し出だった。

今起きている事態は、少女が一人で抱えるには少々大きすぎる悩みだったからだ。

美穂「えっと、私自身どうしてこうなってしまったのかとか全然理解が追いついてなくて。」

渚「?」

美穂「もしかしたら、悩みなんて本当は無くて、私の勝手な思い込みなのかもしれなくて。」

渚「??」

美穂「本当に、荒唐無稽で突飛すぎて、訳分からないと思われても仕方ないくらい変な事言うかもですけど。」

渚「???」

美穂「私の悩み、聞いてもらえますか?」

渚「お、おう。」


傍から見れば電波にしか聞こえない発現の数々だったが、本人は至って真剣である。

とは言え、普通なら引いてしまっていてもおかしくない。

愛野渚が面倒見の良い性格であって良かったと、後から美穂は思い返すのだった。

139: 2013/09/29(日) 02:06:00.00 ID:Ba5bNvc4o
――

渚「えっと、話をまとめると。」

渚「夏休みが明けたら、自分一人だけクラスが変わってて、」

美穂「はい。」

渚「友達が友達じゃなくなってて」

美穂「はい。」

渚「友達に近づこうとすれば、何かが邪魔するように立ち塞がって近づけない。って事でいいかな?」

美穂「はい。」


渚「うん・・・・・・本当に突飛だったなァ。」

美穂「ですよね?」

あまりに『普通』じゃない話に、渚は戸惑う。

当然の反応だろう。『普通』なら起こるはずが無いあまりに信じがたい話で、

しかも美穂自身ですら自分の『普通』の方を疑ってしまうほどに確証がない。

渚「けれど、まァ、信じるよ。」

美穂「えっ。」

だから信じると言って貰えたことが、信じられないほどだった。

美穂「ど、どうしてですか?」

渚「更衣室に入ったら宇宙人がいるくらいには起きうる事なのかもって思うから、かなァ。ハハッ」

冗談めかして彼女は言った。

美穂「・・・・・・・う、うぐっ」

渚「えっ?」

美穂「うわぁぁぁん!」

泣いてしまった。それはもう大泣きだった。

渚「わわっ!ふ、ふざけて言った訳じゃなくってさ!ちゃんと信じてるッ!信じてるからさッ!!」

美穂「そうじゃなぐって・・・・・・ぐすんっ」

心細かった。

友達が友達じゃなくなってしまった事が、すごく心細かったから。

だから、

美穂「すごくこわかったけど、信じてもらえたのがうれしくっで、ありがとうございます・・・・・・。」

渚「お、大げさだなァ・・・・・。」

140: 2013/09/29(日) 02:07:03.03 ID:Ba5bNvc4o
――

渚「落ち着いた?」

美穂「はい、どうにか・・・・・・。」

大泣きしたおかげで、精神的にはかなり落ち着かせることが出来た。

美穂「渚さん、泣いてる間、傍にいてくれてありがとうございます。」

渚「イイって、イイって。今日は部活も無くて暇だったからね。」

渚「さて、それじゃあ美穂ちゃんを悩ませる事態を解決しよッか。」

美穂「え、えと・・・・・・そこまで付き合ってもらうと悪い気がします。」

面倒見の良い彼女は、事態の解決まで手伝おうとしてくれているらしいのだが、

この事態は美穂とその周囲にのみ降りかかった異常であり、きっと渚には関係ない事態なのだ。

巻き込んでしまう事には少なからず、罪悪感がある。

渚「ドンマイッ。気にしないッ!一人じゃ解決できない事なんでしょォ」

美穂「それは・・・・・・たぶんそうなんですけど。」

渚「一人だけで超えられるラインなんてさァ、本当はなかなか無いんだ。」

渚「だから頼れる時は、周りに頼るッ!それがチームワークッ!ってね。」

そう言って、胸を叩くようにジェスチャーをした。

困った時は頼ってくれていいと言う事なのだろう。

美穂「・・・・・・ふふっ。」

渚「おっ、笑ったね。」

美穂「す、すみませんっ!おかしかった訳じゃないんですっ!」

美穂「ただ本当にキャプテンって感じで、頼り甲斐がある仕種だったのでつい・・・・・・。」

渚「いや、良い顔だったよォ?やっぱり笑顔が一番だねッ!」

そう言って、彼女も爽やかに笑ったのだった。

彼女のこう言うところに、バスケ部の後輩達は付いて行こうとするのだろう。

美穂「あの・・・・・・渚さん、本当に頼っちゃってもいいですか?」

渚「もちろんサッ、街のヒーローに頼られるなんて光栄だよッ。」

美穂「ご迷惑お掛けしますけどよろしくお願いしますっ!」

渚「オーケーッ!任されたッ!」

141: 2013/09/29(日) 02:08:11.36 ID:Ba5bNvc4o

渚「・・・・・・とは、言ったものの。私にも何か良いアイデアがある訳じゃないんだよね。」

美穂「そうですよね。こんな事、解決するって言っても、どうすればいいかもわからないですし・・・・・・。」

友人が友人じゃなくなっていると言う事態。

あまりに普通ではなく、そもそも原因すらわからない。

けれど、一緒に考えてくれる人が居ると言うのはすごくありがたい事だった。

渚「さっきも言ったけどさァ。困った時は誰かに頼ればいいと思うんだ。」

渚「一人で突っ走ってるだけで、ゴールに辿り付けるとも限らないしね。」

渚「他にもパスを回せる相手が居るなら、そっちに回してみてもいいんじゃない?」

美穂「・・・・・・他に相談できる相手が居ればって事ですね。」

渚「そう言う事ッ!」

美穂「うーん。」

真っ先に思い浮かべたのは鬼の少女。

例えば今回の事態が妖怪によるもの、だとすれば彼女の知識は頼りになるだろう。

けれど、なんとなく今回の事態は、肇に頼れる事では無い気がした。

美穂(肇ちゃん、ほんの少しだけど人里の事情に疎いところあるから・・・・・・。)

今回の事は、美穂の学校での友人関係に密接に関わっていること。

そして、学校とは人間社会そのものだ。

となると鬼の少女にはやや専門外の事情が関わっている気がした。

肇に助けを呼ぶのならば、少なくとも妖怪の類が関わっていると確定してからの方が良いだろう。


後は、頼れる人と言えば。

142: 2013/09/29(日) 02:09:01.38 ID:Ba5bNvc4o
――


聖來『それで、アタシに電話してきたんだね。』

美穂「はい、セイラさん。何か分かりませんか?」

元アイドルヒーロー、水木聖來。

ヒーローとして活躍してきた彼女なら、

こう言う事態に対する策もあるかもしれない。

聖來『何時の間にか、友達が友達じゃなくなってるか。』

聖來『本当だとしたら、すごく怖いことだね。』

美穂「えっと、信じられない事かもしれないですけど、でも本当の事なんです。」

聖來『大丈夫、信じるよ。美穂ちゃんが嘘付くとは思えないからね。安心して。』

美穂「セイラさん・・・・・・ありがとうございますっ!」

「信じる」と即答してくれるような、頼れる人が増えて、心強かった。

聖來『けれど、今の世の中には不思議な事が山ほどあるからね。』

聖來『だから、原因の特定は難しいかもしれない。』

美穂「確かに・・・・・・。」

宇宙人の実験しれないし、未来人の陰謀かもしれないし、超能力者の仕業かもしれない。

今の時代、そのどれが原因だとしても不思議ではないのだ。

聖來(紗南ちゃんを借りれたら一発なんだけど・・・・・・。)

聖來(特に理由もなく連れて行けないからなぁ・・・・・・。)

143: 2013/09/29(日) 02:09:45.70 ID:Ba5bNvc4o

聖來『まあ、少しずつでも手がかりを探ってみようか。』

美穂「えっと、お願いします。」

原因の特定が難しいのならば、地道に検証を続けるしかないだろう。

聖來『まず、美穂ちゃんの身に何が起きているのか。』

聖來『1つ目。美穂ちゃんが所属していたはずのクラスが、違うクラスになっている。』

聖來『2つ目。美穂ちゃんが友達と思っていた子が、友達じゃなくなってる。』

聖來『この2つは、美穂ちゃんと周囲の間で認識の齟齬があるって事だね。』

美穂「・・・・・・はい。」

その認識の違い故に、

もしかしたら本当は周囲は元からこう言う形で、

自分だけが異常なのかと、そう美穂に思わせるまでに至った。

聖來『それはないね。』

美穂「えっ?」

聖來『認識を弄られているのだとしたら、美穂ちゃんじゃなくって周囲の方だよ。』

美穂「ど、どうしてそう言い切れるんですか?」

流石にそこまで言いきってしまえるのは、不思議だった。

聖來『もちろん適当に言ってるわけじゃなくって、確証はあるよ。』

聖來『鬼神の七振り、日本一、横暴な刀『小春日和』って言うね。』

美穂「・・・・・・・あっ。」

聖來『『小春日和』は最も我の強い刀。どんな洗脳からも所有者を守ってくれる。』

聖來『そう言う風に肇ちゃんから聞いてるよ。』

『小春日和』の所有者である美穂は、刀を抜いている間はあらゆる精神操作を受け付けない。

そして、「ひなたん星人」と記憶を共有している美穂は、刀を納めている間もその認識を誤解することはあり得ないのだ。

聖來『だから、むしろ。こう考えるべきじゃないかな。』

聖來『何らかの現象の作用によって、美穂ちゃんも含めて周囲の意識と状況は改変されるはずだったけれど。』

聖來『『小春日和』のおかげで美穂ちゃんだけ、意識の操作を免れた。ってね。』

美穂「・・・・・・。」

恐ろしいことだった。何だか気分が悪くなる。

ヒヨちゃんが居なければ、この異常事態に気づくことすら出来なかったのだろうか。

144: 2013/09/29(日) 02:11:00.05 ID:Ba5bNvc4o

聖來『そして、3つ目。友達に近づこうとしたら何らかの邪魔が入って、近づくことが出来ない。』

聖來『この事がそもそもの原因に関わってそうだね。』

聖來『たぶんだけど、美穂ちゃんのクラスが変わったのも、友達であるはずの子が友達でなくなっているのも』

聖來『その近づけない2人の友達から美穂ちゃんを引き離そうとした結果なんじゃないかな。』

美穂「でも、どうしてそんな・・・・・・。」

もし、そうなのだとして。

どうして彼女を、島村卯月、日野茜の両名から引き離す力が作用しているのだろう。

聖來『それは・・・・・・。』

美穂「・・・・・・。」

聖來『ちょっとわからないんだけどね。』

美穂「うっ・・・・・・うぅ。」

意気消沈。元アイドルヒーローでもはっきりした原因は特定できないようであった。

聖來『ごめんね。』

美穂「あっ、いえ!セイラさんが謝ることなんて全然ないですっ!」

美穂「セイラさんのおかげで、ちょっと原因に近づけた気もしますしっ!」

聖來『・・・・・・。』

美穂「セイラさん?」

145: 2013/09/29(日) 02:11:40.39 ID:Ba5bNvc4o

聖來『今回はアタシ、そっちに行けそうに無いんだ。』

聖來『今はちょっと立て込んでてさ。』

美穂「そ、そうなんですか?あっ!ごめんなさいっ!忙しい時に電話しちゃって・・・・・・。」

聖來『あっ、ううん。それはいいんだけどね。』

聖來『ヒーローが助けを求められてるのに、行けないのは情けないな。って思ってね。』

聖來『だから、ごめんね。』

美穂「セイラさん・・・・・・。」

美穂「ううん。こうやって電話で話を聞いてもらえただけでも、私凄く助かってます!」

聖來『・・・・・・ありがと、美穂ちゃん。』


聖來『アタシは行けないけれど、誰か代わりに行ってもらえないか。知り合いに当ってみるよ。』

美穂「セイラさんの知り合いの人ですか?」

聖來『うん。あっ、もちろん悪い人じゃないよ。』

美穂(セイラさんに悪い知り合いとか居るのかな?)

とりあえず彼女の知り合いならば、きっと頼りになる人なのだろう。

聖來『それまで待っててもらえるかな?』

美穂「はいっ!セイラさん、お願いします!」

聖來『うん、それじゃあまた後で連絡するから。』

そうして、元アイドルヒーローとの連絡を終える。

相変らず、この事態の原因は特定できなかったが、

それでも、味方が増えて、解決に動いてくれているのだと思えば、安心できた。

146: 2013/09/29(日) 02:12:47.80 ID:Ba5bNvc4o

渚「ん?電話、終わったかな?」

美穂「はい。セイラさんの知り合いの人が来てくれるみたいです。」

渚「そっかァ、なら少し安心だねッ!」

美穂「はいっ!」

渚「にしても、美穂ちゃんは元アイドルヒーローと知り合いかァ。何だか凄い交友関係だね。」

美穂「う、うん。改めて考えるとすごい事ですよね。」

渚「来てくれるって言う知り合いの人もヒーローなのかな?」

美穂「それは、わからないです。どんな人が来てくれるのもまだわからなくって・・・・・・。」

渚「どんな人が来るかわからないか。」

渚「じゃあさ、こっちも事態の解決のために少しでも動いておいた方がいいよね。」

渚「その知り合いの人が来るまで、まだ時間あるのかなァ?」

美穂「えっと、はい。たぶん、まだ時間は掛かると思います。」

渚「さっき思い出したんだけどさァ。私の後輩に占いとか好きな子が居て。」

渚「何でも、この辺に百発百中の占い師が居るそうなんだよね。」

渚「詐欺とか思い込みとかじゃなくって、本当に百発百中らしいよォ。」

美穂「百発百中の占い師・・・・・・。」

渚「原因を特定するならさ、占いに頼ってみるのもアリじゃない?」

美穂「なるほど。」

手がかりが少ないこの状況。

闇雲に考えても真相まではなかなか辿りつけなさそうだ。

それならいっそ、一か八か、占いに頼ってみるのもいいかもしれない。

美穂「渚さん、お店の場所はわかりますか?」

渚「もちろんッ!そう言うと思って、ちゃんと聞いておいたよ。」

手の中の携帯電話をヒラヒラと見せる。

どうやら美穂が電話している間に、彼女は後輩の子に、その店の場所を聞いていてくれたらしい。

美穂「ありがとうございますっ!渚さん、案内よろしくお願いします!」

渚「オーケーッ!それじゃァ、行ってみよっかァ!」


美穂は事態の解決のため、まずは占い師に会ってみる事にした。

これから美穂の取るべき行動の指針にはなるかも知れない。

果たして、吉が出るのか、凶が出るのかはわからないけれど、

もう一度、友達と「普通」に過ごせる事をただ祈る。


おしまい

147: 2013/09/29(日) 02:13:43.49 ID:Ba5bNvc4o

はい、と言う訳で「普通力」を思いっきり拡大解釈した結果。とんでもない事になったお話。
”ヒーローと友達”は「普通力」さん的にやっぱりアウト判定だろうと思い、こんな話になった模様。
小日向ちゃんがアイドルヒーロー目指すなら、超自然的に回りを「普通」にする島村さんはちょっとした大ボスになり得る。

そして申し訳ないですが、続きます。

学祭が始まるまでに、お話を書ききれなかったけど、
時系列的には、学祭までに問題なく1組に戻って、島村さんたちとも友達に戻ってるはずなので・・・・・・ご安心を(?)。

と言う訳でキャプテンお借りしましたー
後編でも引き続きお借りすることになると思います

148: 2013/09/29(日) 02:14:52.42 ID:Ba5bNvc4o
おっと、島村さんと茜ちゃんもお借りしてましたー

149: 2013/09/29(日) 02:15:34.04 ID:sIYt99n50
乙ー

普通ってなんだっけ?(震え声

世界を改変するレベルだな…恐るべき島村さん


181: 2013/09/29(日) 23:56:18.57 ID:Ba5bNvc4o


学祭はどうなるのかなー
参加するためにも早く島村さんとの決着つけないと・・・・・

プロダクションがまた賑やかになったか
堕天使と竜の2体目って結構な戦力集まってますよね


すげえ短い話投下しまー

182: 2013/09/29(日) 23:56:44.63 ID:Ba5bNvc4o


菲菲「と言う訳で、今日はフェイフェイの誕生日ダヨー!!」


菲菲「マンモンちゃん、祝ってイイヨ!」

桃華「・・・・・・・。」

桃華「急にわたくしの元に直接訪ねてきて、」

桃華「何が、”と言う訳で”なのか全く理解できませんわね。」

菲菲「人間界では誕生日はお祝いするものって聞いたヨー!」

桃華「フェイフェイさん。あなた大昔の生まれで、その上にずっと寝ていらしたのに。」

桃華「産まれた日なんて覚えてますの?」

菲菲「ぶっちゃけ覚えてないネ!」

菲菲「そもそもたくさんの神々を食べて吸収してる内に、最初にアモンとして産まれ落ちた記憶とかほとんど忘れちゃったヨ!」

菲菲「とりあえず今の自意識が芽生えたのがこのくらいの時期だったから今日が誕生日でイイと思ったネ!」

桃華「・・・・・・よくそんな適当なことで、よりにもよって『強欲』の悪魔であるこのわたくしに誕生日祝いをねだれた物ですわね。」

桃華「流石は、初代『強欲』の悪魔と言うべき・・・・ですの?」


桃華「・・・・・・・ですが、まあ」

桃華「丁度わたくしも休憩に入るところでしたし。」

桃華「ついでにですけれど、お茶くらいなら淹れて差し上げますわ。」

菲菲「!」

菲菲「すごく珍しいものが見れた気がするヨ!」

桃華「ええ、本当に。わたくしが直々に淹れるお茶なんて、Pちゃまでも滅多に飲めませんのよ。」

桃華「誕生日祝いと言うなら、これ以上はあり得ませんわね。」

183: 2013/09/29(日) 23:58:01.74 ID:Ba5bNvc4o

桃華「ところで、フェイフェイさんは今ままで何をしてましたの?」

菲菲「お祭りの会場でチャーハン作ってたヨ!」

桃華「・・・・・・・。」

桃華「まあ、何でもいいですけれど・・・・・・。」


菲菲「マンモンちゃんの方は、神を頃す武器は完成させたのカナ?」

桃華「・・・・・・あら?」

桃華「ウフッ♪もしかしてフェイフェイさん、警戒してますの?」

菲菲「当然ダヨッ!対神特化兵器なんて真っ先にふぇいふぇいが殺されそうダヨ!」

桃華「フェイフェイさんは数多の神を束ねた魔神ですものね。」

桃華「神を頃す力は、効き目抜群すぎるはずですわ。」

菲菲「本当ダヨッ!そんなの出来たらすごく困るヨ!」

桃華「あまり困ってるようには見えませんわね♪」


桃華「お茶入りましたわよ。どうぞお召上がりに。」

菲菲「くんくん。いい香りダネ!それじゃあいただきますネ!」

184: 2013/09/29(日) 23:59:31.39 ID:Ba5bNvc4o

菲菲「ごくごく、ぷはーっ」

桃華「・・・・・・もっと味わって飲むとかありませんの?」

菲菲「美味しかったヨー!」

桃華「まあ、当然ですわ。」


桃華「・・・・・ご心配なさらなくても、『原罪』はまだ完成していませんし、」

桃華「ふぇいふぇいさんはわたくし達の協力者。完成しても刃を向けたりはしませんわ。」

菲菲「本当カナー?」

桃華「ええ、神に誓いますわ。」

菲菲「すごく嘘くさいヨ!!?」

桃華「ウフッ、冗談ですわ♪」


桃華「ですが、フェイフェイさん。わたくしは、あなたにもこれから産まれるモノを祝福して欲しいと思ってますのよ。」

桃華「ですから、それに立ち会って頂くまで、わたくしにあなたを頃すような事はできませんわ。」

菲菲「悲しいほどに打算的だからこそ信用できちゃうヨ。」

菲菲「けれど、マンモンちゃんにふぇいふぇいが上手く利用できるカナ?」

桃華「うふ・・・・・ご期待に添えるように、懸命に踊って見せますわ。」

桃華(・・・・・・歴然たる力の差故の余裕。)

桃華(フェイフェイさん。きっとその隙が命取りになりますわよ。)

桃華(・・・・・・とは言え、おそらくそれはずっと先の事。)

桃華(とにかく、今は『原罪』の完成を急ぐくらいしか出来ませんわね。)


おしまい。

185: 2013/09/30(月) 00:00:32.20 ID:eHNcsCXno

すんごく短いけど、
誕生日祝いくらいしてもいいんじゃないとサラッと
(魔神に誕生日とかないんじゃね?、とか思いつつも)

フェイフェイおめでとうダヨー


【次回に続く・・・】


引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part7