759: ◆6osdZ663So 2013/10/30(水) 15:50:42.02 ID:VGnoWT7Po

モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ



美穂ちゃんVS普通力投下します
ここの所忙しく、予約したのに大幅に遅れちゃってすみません

しかもこれが最後なら良かったんですが、まだ終わってません
前回は、「前編後編→前編中編後編に分け方変えます、許してください、すんません」とか言ってたのにね!

本当ごめんなさい

760: 2013/10/30(水) 15:52:32.93 ID:VGnoWT7Po


前回までのあらすじ


わたくし、小日向美穂は、

学校の先輩と一緒に行列の出来る隠れ家的お店なラーメン屋さんに行きました

美穂「メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ」

朋「お待ちどうさま」

美穂「わぁっ、すごい量ですね、渚さんっ!」

渚「そうだねェって、ちがう!!!」



参考 >>117- 美穂と普通力 その1 (美穂と渚)
     >>504- 美穂と普通力 その2 (美穂と朋)


----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




761: 2013/10/30(水) 15:53:05.64 ID:VGnoWT7Po



『メールが一通届いてます』


From:セイラさん
Title:美穂ちゃん大丈夫?

待たせちゃって、本当にごめんね(-人-)
アタシの代わりに、そっちに行ける人が
居たから連絡したよっ(゚ー゚)b
あと1時間もしない内にそっちに着くと
思うから待っててくれるかな
場所は万年桜の公園で



『メールを送信しました』


To:セイラさん
Title:Re:美穂ちゃん大丈夫?

ご心配掛けちゃってすみません!
今、なんとか解決の糸口が見えてきたところです
私のために人を呼んでいただいて
ありがとうございます!
万年桜の公園ですねっ!わかりました!
えっと、どんな人ですか?

762: 2013/10/30(水) 15:53:52.08 ID:VGnoWT7Po


――


と言う訳で、やって参りました。

季節はもう秋になろうとしているのに、

未だに春うららかな香りの漂う、桜の公園。

今日も今日とて、『万年桜』は凛々しく咲き誇っております。


美穂「ここで待っていれば、セイラさんの知り合いの人が来てくれるみたいです」

渚「チャンスは待っていればすぐに訪れるって。この事だったかもねっ」

渚「で、どんな人たちが来てくれるのォ?」

美穂「うーん、ちょっと変わってる人達って・・・・・。一目見れば、それだってすぐわかるって書いてました」

渚「変わってるかァ・・・・・・・て言うか人たち?」

美穂「はい。二人組だそうです」

渚「なるほど、じゃあきっと『美女と野獣』なんだろうね」

二人と言うなら、それは占い師の言うラッキーパーソンの事、きっと『美女と野獣』なのだろう。

美穂「そうだといいですね」

クスリと美穂は笑った。

もしそうなら、これから来てくれる人たちがチャンスを運んできてくれる。


良い流れができている。朋の占いも、きっと当っているのだろう。

そう思えば、不安なんてどこかに飛んで行ってしまった。

公園に漂う温かな空気も、美穂をリラックスさせるのに一役買ってくれている。


美穂(チャンスは必ず来る。だから後は決断する勇気を持たなきゃ)


そうして、しばらく待っていると一台の車が公園の前に止まった。

 

763: 2013/10/30(水) 15:54:43.98 ID:VGnoWT7Po

謎の運転手「付きましたよー、せんせー」

そんな言葉とともにドアが開き、

車の中から会話が聞こえる。

謎の先生「ご苦労様ぁ。フフッ、それにしても7スレ目にしてやっと出番が回ってきたのねっ!」

謎のウサコ「もう登場機会は無いのかもって、不安だったウサー」

謎の運転手「せんせー、一言目からさらっとメタ発現するの慎もうよ」

謎の先生「ちょっとした冗談よねぇ?」

謎のウサコ「可愛げのあるお茶目くらい許して欲しいウサ」

謎の運転手「あのさ、せんせー。この後も結構予定詰まってたと思うんだ」

謎の先生「あら、運転手さんはいじわるですねぇ」

謎のウサコ「つれないウサー」

謎の運転手「はいっ!車降りてくださぁい!」


運転手が少し怒ったように声を上げると

しぶしぶと女性は車を降りて、「万年桜」の公園に降り立った。


美穂「えっ!あ、あの人はっ!」


亜里沙「うふふっ、お待たせっかな!小日向美穂さんっ♪」

ウサコ「はじめましてウサー!!」


美穂「あ、亜里沙先生!?」

764: 2013/10/30(水) 15:55:39.47 ID:VGnoWT7Po

渚「・・・・・・知り合い?」

美穂「え、えっと!し、知り合いじゃないんですけど」

美穂「そ、その!て、テレビでもたまにですけどよく見る人でっ!」

美穂「あ、アイドルヒーロー同盟の人なんですっ!!」

渚(ああ、そう言えばなんか見たことあるような気がするなァ、あのウサギパペット)

インパクトの強い、ウサギパペットを右手に嵌めた女性は、

美穂の言うとおり、アイドルヒーロー同盟に所属する人間である。



 《ウサコと亜里沙のヒーロー指南教室!》と言うテレビ番組のコーナーをご存知だろうか?

 アイドルヒーロー同盟がスポンサーをするテレビ番組をよく視聴している良い子諸君ならば、きっと何度か見かけていることだろう。

 《指南教室!》は、『亜里沙先生』と、その相方パペットである『ウサコ』が、

 ひたすらヒーローの活動について熱く語ると言う、ヒーローを目指す若者達向けの企画である。

 ちなみに、この企画を進行する『亜里沙先生』こと「持田亜里沙」は、アイドルでも、ヒーローでもない、同盟の人間であり、

 《指南教室!》以外で見かけることはほとんど無いのだが、しかし、そんな彼女にもこっそりとファンが居たりするらしい。

 訓練されたファンは彼女の事を「てんてー」と呼び慕うようだ。


亜里沙「うふふっ、それにしても”ひなたん星人さん”にも知ってもらえてるなんて」

亜里沙「先生も有名になっちゃったのかなぁ?照れちゃうわね!」

ウサコ「もぉ、有名ウサギなんて困っちゃうウサー!」

美穂「あ、うぅ・・・・・・」

照れるのは美穂の方であった。

まさか亜里沙先生にも「ひなたん星人」の事を知られているとは。

765: 2013/10/30(水) 15:56:53.22 ID:VGnoWT7Po

美穂「あ、あのっ・・・・・・指南教室よくみてますっ!」

美穂「亜里沙先生の話っ!わかりやすくって、すっごく参考になりますっ!!」

亜里沙「うふふ、現役のヒーローさんにそう言ってもらえて嬉しいわぁっ!」

ウサコ「せっかくだからサインとかいるウサ?最近ウサコはずっとサインの練習ばかりしてるウサー」

謎の運転手「ウサコがサインの練習しないと、せんせーはサイン書けないもんね」


さて、そう言いながら、亜里沙先生の後ろから、

彼女の乗ってきた車の運転手を勤めていたらしい一人の・・・・・

一人の(?)・・・・・・何者かが現われた。


美穂「ふぁっっ!!??」

渚「うぇっ!!??」

今度は美穂だけでなく、渚も驚いた

なぜならその人物は、


白熊「どうも、こんにちはー」


どこからどう見てもクマだったからだ。

真っ白な、クマだったからだ。
 

766: 2013/10/30(水) 15:57:40.09 ID:VGnoWT7Po

美穂「く、くクマっ!?!!」

渚「な、なんでクマっ!?!てか喋っ!?!」

白熊「おっと、驚かせちゃったかな」

亜里沙「そうねぇ、初登場からせんせーの登場シーンを喰うなんてどうかと思うの」

ウサコ「ちょっとそのキャラは卑怯だと思うウサー」

白熊「熊が歩いて喋るなんて今時珍しくもないと思うんだけどね」

白熊「て言うかキャラ云々に関しては、人の事言えないでしょ。せんせー達は」

現われた熊と親しく話し合う亜里沙先生。

その様子を見て、美穂も渚も開いた口が塞がっていない。


白熊「さてと、小日向美穂ちゃんとそのお友達かな?驚いてるところ悪いけどさ。自己紹介させて貰うね」

そして、二人は、

いや、一人とニ匹は名乗る。


亜里沙「アイドルヒーロー同盟のヒーロー応援委員会から来た持田亜里沙よーっ!そしてこっちはウサコ」

ウサコ「ウサコはラブリーでキュートなウサコウサ!」

シロクマP「わたしはシロクマP。アイドルヒーロー同盟に加盟している某プロダクションのプロデューサーだよ」


果たして、このような形で、美穂達の前に美女と野獣達が現われたのだった。

767: 2013/10/30(水) 15:59:04.18 ID:VGnoWT7Po


肩書きを名乗られて状況を理解する。

なるほど。今回、美穂が助けを借りようとした水木聖來は元アイドルヒーロー。

つまり、彼女が呼んでくれる知り合いと言うのは、アイドルヒーロー同盟の人間だろう。

・・・・・・とまでは、まあ予測できていたのだが。

渚(変わってる・・・・・・とは聞いてたけど思ってたより、すごい人達が来たなァ)

渚(いや、人じゃなくってクマか・・・・・・)

しかし流石に、クマが来るとまでは思わなかったようだ。


渚(て言うか熊がプロデューサーってなんなのサ)

・・・・・・本当になんだ。


まあ、とにもかくにも彼女達が今回、美穂のために駆けつけてくれた助っ人なのだろう。
 

768: 2013/10/30(水) 16:00:02.61 ID:VGnoWT7Po

シロクマP「わたし達について気になることがあるみたいだね」

シロクマP「だから、簡単に順を追って説明させてもらおうかな」

こちらが戸惑っているのを察してか、熊は言った。


シロクマP「まあ、とりあえず最初に言っておくと、わたしは獣人なんだよ」

渚「獣人・・・・・・あ、あぁ!なるほどねっ!獣人かァ」


獣人と言うならば、最近は街中でも普通に見かける。

後輩達から、喫茶店で働く猫の獣人の話や、

メンバーに獣人を含むガールズバンドの話なども聞いたこともあった。


渚「けど思いっきり見た目クマだったから、ちょっと驚いちゃったよ」

シロクマP「いやぁ、なんかごめんね」

769: 2013/10/30(水) 16:00:41.13 ID:VGnoWT7Po


ウサコ「ちなみにウサコは獣人じゃなくってウサコウサっ!」

シロクマP「話をややこしくしないでくれませんか」

渚(・・・・・・こっちの方が気になると言えば気になるんだけどね)

渚(パペット・・・・・・だよねェ?付けてる亜里沙さんの口動いてないけどさ・・・・・・)

ウサギのパペットのウサコが喋っている(?)間、持田亜里沙の口は全く動いておらずニコニコしているばかり。

腹話術・・・・・・だと思うが、もしかして本当に生きていたりするのだろうか。まさか。


シロクマP「さて、次はわたし達がやってきた理由の説明だけど。」

シロクマP「その子が気づいてからにしよっか。」

渚「?」

美穂「ぷしゅぅ・・・・・」

渚「うわっ!美穂ちゃん!?しっかり!!」

どうやら、いきなり目の前に現われたアイドルヒーロー同盟の人とクマに驚いて、思考がショートしてしまったらしかった。

770: 2013/10/30(水) 16:01:22.48 ID:VGnoWT7Po
――


美穂「すみません・・・・・・お騒がせしちゃって」

亜里沙「いいのよぉ、いきなりシロクマちゃんが出てきたら誰だってびっくりしちゃうものね!」

ウサコ「美穂ちゃんは悪くないウサー、ぜんぶシロクマちゃんのせいウサ♪」

シロクマP「えっ、酷くない?」

美穂「で、でもびっくりしましたよぉ、本当に」

美穂「寿命が10年は縮んだかと思っちゃいました」

シロクマP「あはは、それは本当に悪いことしちゃったね」

シロクマP「お詫びと言う訳ではないけどさ、今回の件で協力は惜しまないつもりだよ」

美穂(・・・・・・驚いちゃったけど、怖いクマさんじゃないみたい)

話してみれば気のいいクマであった。


美穂「えっと・・・・・亜里沙さんとシロクマPさんが」

渚「聖來さんが呼んでくれた、助っ人の人たち。でいいんだよね?」

シロクマP「うん、そうだよ。その通り」

改めて美穂達が彼らの素性を確認し、シロクマPは答える。


シロクマP「わたしはセイラちゃんの元プロデューサーなんだ。」

渚「あァ、なるほどね。そう言う縁があったわけかァ」

アイドルヒーロー時代の水木聖來のプロデューサーを勤めていたのは、熊であったらしい。

美穂(クマさんがプロデューサーさん?なんか凄いなぁ)

アイドルの隣に並ぶクマを想像してみる。

美穂(あ、ちょっといいかもしれない)

美穂の妙な想像はさておいて、

シロクマPが話を続ける。

771: 2013/10/30(水) 16:02:15.84 ID:VGnoWT7Po

シロクマP「セイラちゃんからさ。珍しく相談されちゃってね。」

シロクマP「可愛い後輩のヒーローを助けてあげて欲しいってさ。」

シロクマP「そう言うわけで、わたし達はやってきたんだ。」

美穂「あっ!わ、私の事で、わざわざ来てもらってすみませんっ!」

美穂「考えたらアイドルヒーロー同盟の人まで呼んじゃうなんて・・・・・・」

自身の手だけではどうにもならなかった事だとは言え、

頼りに頼って、たくさんの人を巻き込んでしまった。

美穂「うぅ・・・・・・すごく大事にしちゃってますよね」

その事に気づき、自責の念にかられる美穂。

亜里沙「美穂ちゃん、いいのよ?そんなの気にしなくて」

ウサコ「本当に大事だから仕方ないウサー」

そんな美穂の様子に彼女達(?)は優しく声を掛けた。

亜里沙「それに美穂ちゃんに頼ってもらうのが、私のお仕事だものっ♪」

渚「お仕事?」

シロクマP「うん、そうだよ。わたし達は半分お仕事で来てるようなものでね」

シロクマP「わたしは言うまでもなく、噂の”ひなたん星人”ちゃんがどんな子か見に来たかったから」

シロクマP「同盟のプロデューサーとしては、在野のヒーローのことは気になっちゃうからね」

美穂「う、噂になってるんだ・・・・・・うぅ・・・・・・恥ずかしい・・・・・・」

シロクマP「・・・・・・」

ところで、アイドルヒーロー同盟に加盟するプロから、

プロデューサーが在野のヒーローに直接会いに出向くと言うのには、

大きな意味があるのだが、巻き込まれてる事態に対する色んな感情もあってか、

この時点での美穂は、その重要さには気づいてはいないようである。

772: 2013/10/30(水) 16:03:14.34 ID:VGnoWT7Po

亜里沙(ねぇ、シロクマちゃん。スカウトはしなくていいの?)

シロクマP(あの、いきなり頭の中に話しかけないでくれません?)

亜里沙(うふふっ、ごめんねっ。でも気になちゃったから)

シロクマP(・・・・・・したいと言えばしたいですけど、今はタイミングじゃないでしょ?)

頭の中での会話、つまり思念による通信、

これこそ持田亜里沙の力の一端である。

鬼の少女、肇も似たような妖術を使えるが、

亜里沙の使うテレパシーは、妖力とは別の系統の力を根幹とする。

シロクマP(悩み事がある女の子にそんな話を振るつもりはありませんよ)

シロクマP(今回は顔合わせだけできれば、わたしはそれでいいですから)

亜里沙(うふふっ、それを聞いて安心したわぁ♪)

美穂「?」

渚「?」

シロクマP(ほら、わたし達が黙っちゃったから、2人が不思議そうにこっち見てるでしょ)

亜里沙(あら、本当ね。もうお話を続けてもらっても大丈夫ですよぉ)


彼女との脳内会話を打ち切ると、再びシロクマPは自分達がやってきた経緯の話を続ける。

773: 2013/10/30(水) 16:04:01.82 ID:VGnoWT7Po

シロクマP「セイラちゃんに連絡を貰った時に、美穂ちゃんの身に起きている事はおおまかに聞いたけどさ」

シロクマP「わたしは、それはまず能力絡みの何かだろうなあ。と思ったんだよね」

シロクマP「こう言う一件には、専門家を呼んだほうがいいかなって事で」

ウサコ「ウサコとせんせーに話が回ってきたってことウサー!」

渚「専門家・・・・・・?」

亜里沙「ええ、同盟の本部からヒーロー応援委員に選ばれた私のお仕事は、」

亜里沙「ヒーローの活動のサポートなのよぉっ♪」

ウサコ「ありさお姉さんは先生ウサー、ヒーロー達の事もよく知ってるウサー!」

シロクマP「そう言うわけで、せんせーは能力について色々詳しいし、誰かの悩みを聞くのも得意だからね」

シロクマP「今回の事件についても、せんせーなら何かわかるんじゃないかなって事で来てもらったの」

シロクマP「ここまでが、わたし達が助っ人としてやってきたあらましだね」

なるほど、確かに今回の美穂を巻き込む事態にぴったりの助っ人なのだろう。

アイドルヒーロー同盟の人間であり、テレビ番組で《指南教室!》をやっている亜里沙は、

多くのヒーローに関する知識を持ち、その能力についても広く詳しい。

今現在、美穂達を悩ませる”力”の正体が未だに掴めていない状況において、

彼女の見識は非常に頼りになることだろう。


ウサコ「ウサコ達に任せてくれれば、間違いないウサーっ!」

亜里沙「ええっ!困ったことの解決は、先生に任せてもらえるかしら?美穂ちゃんっ!」

美穂「・・・・・・はいっ!亜里沙先生!よろしくおねがいしますっ!」

優しい助っ人の申し出に、美穂はぺこりとお辞儀をして答えるのだった。


亜里沙「うんっ♪それじゃあ早速、美穂ちゃんのお話を聞かせてもらおうかなぁっ!」

ウサコ「だけどその前にウサ」

美穂「?」


亜里沙「ちょっと場所を変えましょうかぁ♪」

774: 2013/10/30(水) 16:05:28.91 ID:VGnoWT7Po


――

――


ウェイトレス「い、いらっしゃいませ??ご、ご注文は?」

シロクマP「ドリンクバー4つ、以上で」

ウェイトレス「か、畏まりました。ご、ご注文繰り返しますねっ」

ウェイトレス(クマ???なんでクマ?????)

渚(すごく戸惑ってるのが見ててわかるなァ)

美穂(今のシロクマさんの器用に4本だけ指を立てた手、可愛かったな)


さて、大人達に車に乗せられて、

美穂達が連れて来られたのは、街中のごく普通のファミレスであった。

お昼過ぎであったためか、店内に入ってる客はまばら。

その客達の半数ほどは、チラチラとこちらの様子を伺っていた。


渚(そりゃァ、視線も集めるよね・・・・・・)

地方新聞に載ったヒーローである美穂、

テレビでたまに見かける亜里沙お姉さん、

二人とも知る人ぞ知る有名人である。

まあ実のところ、一番視線を集めているのは熊であったりするが。

そんな3人に囲まれてテーブルに座る渚はなんだか落ち着かないのであった。

 

775: 2013/10/30(水) 16:06:51.61 ID:VGnoWT7Po
 

シロクマP「わたしはドリンクを入れてくるよ」

シロクマP「せんせーはアイスコーヒーでいいよね」

亜里沙「ええ、お願いしますねぇ」

シロクマP「渚ちゃんと美穂ちゃんは?」

美穂「え、えっと、それじゃあオレンジジュースで」

渚「じゃあ、私もそれで・・・・・・って、人数分のコップ持てる?」

シロクマP「ん、平気だよ?プロデューサーだからね」

渚「え、それ関係あるのォ?私もついて行こっか?」

シロクマP「あはは、本当に大丈夫だから構わないよ」

シロクマP「2人ともオレンジジュースだったね、それじゃ行って来るね」

ウサコ「ウサコにはジンジャーエールよろしくウサー」

シロクマPが席を立ち、ドリンクバーへとジュースを取りに向かった。


「わぁ!くまだー!」

「くまくまーっ!」

シロクマPが通ると、近くのテーブルに座っていた子供が嬉しそうに足元に近づいていく。

それに気づくとシロクマは笑って対応するのだった。


渚(子供達に絡まれてるね、本当に大丈夫かなァ)

亜里沙「大丈夫よ♪シロクマちゃんも子供達の事好きだから」

渚「まあ確かに良い人(?)っぽいし、騒ぎにはならないんだろうけどサ」

渚「って、うん?今の声に出てた?」

美穂(シロクマさん・・・・・・なんかいいなぁ)

亜里沙「うふふっ、美穂ちゃんもシロクマちゃんのこと気に入ったのね」

美穂「え、ええっとその、なんだかふかふかしてそうで、いいなぁって・・・・・・・」

美穂「あれ?さっき私、口に出してました?」

亜里沙「ふふっ」

亜里沙はただニコニコと笑っていた

776: 2013/10/30(水) 16:07:54.43 ID:VGnoWT7Po

――

シロクマP「いやぁ、お待たせ」

子供達の相手をしていたため、ほんの少し時間を掛けて、シロクマPは戻ってきた。

その手には本当に器用に、3つのドリンクを持っている。

シロクマP「はい、美穂ちゃん、渚ちゃん。」

美穂「ありがとうございます」

手元にジュースを渡される。

シロクマP「せんせー、どうぞ」

亜里沙「ありがとっ♪」

ウサコ「ウサコのジンジャーエールはウサ?」

シロクマP「・・・・・・」


シロクマP「さて、じゃあ早速解決のための話をしよっか」

ウサコ「ウサッ!?」

777: 2013/10/30(水) 16:08:28.02 ID:VGnoWT7Po



シロクマP「・・・・・・って言いたいところなんだけどさ」

子供「くまー、遊んでよくまー」

シロクマP「懐かれちゃったみたいだね」

亜里沙「あらら」

シロクマP「わたしはちょっと遊んでくるよ」

亜里沙「ふふ、子供達のためにもそうしてあげてくれるかしら」

亜里沙「こっちは私に任せてくれればいいですから」

シロクマP「お願いします、せんせー」

そう言って、シロクマPは席を離れていったのだった。


ウサコ「く、悔しいウサっ!ウサコの方がプリティーでキュートウサっ!」

778: 2013/10/30(水) 16:08:54.45 ID:VGnoWT7Po

さて、シロクマPが席を離れ、テーブルには3人と、

・・・・・・カウントしていいのかわからないが1匹(?)が向かい合う。

席は窓際。片側には美穂と渚が、そしてもう片側には亜里沙とウサコと言った席順だ。


亜里沙「さて、じゃあ私達は・・・・・・」

一旦言葉を区切る亜里沙。

美穂「?」

渚「?」

亜里沙(解決のためのお話をしましょうかぁっ!)

美穂「!!」

渚「!?」

突然、頭の中に響いた、亜里沙の言葉に驚く二人。

美穂「い、いまのって?」

渚「頭の中に直接ッ!?」

亜里沙(はぁい、亜里沙先生の声ですよぉっ♪)

渚(も、もしかして、の、能力者ッ?)

亜里沙(渚ちゃん、正解っ!)

渚(!!)

今の言葉は、確実に口には出していなかったはずだ。

779: 2013/10/30(水) 16:09:32.10 ID:VGnoWT7Po

こちらの思っている言葉が亜里沙に伝わり、

亜里沙の言葉が頭の中に響く。

頭の中で会話が出来てしまっている。

そして、それだけではなく、

美穂(あ、あの、もしかして渚さんの・・・・・・頭の中の声ですか?私にも聞こえて・・・・・)

渚(美穂ちゃんッ!?)

美穂(や、やっぱり渚さんにも伝わってるんですよねっ!?)

伝わるのは、1対1では無いらしい。

どうやらテーブルを囲う、3人の間で頭の中の言葉が伝わっているようだ。

亜里沙(うふふ♪これがありさお姉さんの能力ですよぉっ!)

亜里沙(特定範囲内の特定の人たちと交信ができる力なのっ!)

亜里沙(ここに居る私達で共有できるテレパシーみたいなものと思ってくれればいいですからねぇっ!)

ウサコ(私達にはもちろんウサコも含まってるウサー♪)

渚(・・・・・・)

美穂(・・・・・・)

ウサコ(ウサ?)

渚(あの、声が一緒でさァ・・・・)

美穂(・・・・・・亜里沙先生の言葉とどっちなのかわからないです)

ウサコ(ご、語尾とジェスチャーで判断して欲しいウサ・・・・・・)

780: 2013/10/30(水) 16:10:20.19 ID:VGnoWT7Po

渚(えっと、亜里沙さんの能力はわかったけどォ、どうしてわざわざ?)

亜里沙(私の能力について、説明するのはこうするのが早いと思ったからかな)

亜里沙(それと、これからするお話は、きっと美穂ちゃんの私生活にも深く関わるお話だから)

ウサコ(周りのお客さんに聞かれると思うと、話しにくくなっちゃうかもしれないウサー)

美穂(確かに、そうなのかも・・・・・・?)

亜里沙(秘密のお話をするなら、この方法は便利なのっ♪)

渚(でも、それならさァ。最初からファミレスに来なかったら良かったんじゃない?)

渚はもっともな疑問を投げかける。

秘密の話なら、あの公園でする方がしやすかっただろう。

しかし亜里沙の発案で、場所を変え、人の多い街中のファミレスにまでやって来たのだ。

”意味もなく”と言う事はないはずである。


亜里沙(うん、だけど事態の解決のためにはここに来る必要があったから)

美穂(えっ!解決・・・・・ですかっ?!)

渚(解決って・・・・・・この事態のっ?)

亜里沙(ええ、もちろん。美穂ちゃんを巻き込む”『普通』ではない事態”を解決するためにね!)

事態の解決。

早くも亜里沙は、それをすると宣言した。

781: 2013/10/30(水) 16:11:14.00 ID:VGnoWT7Po

このファミレスに来るまでの車内で、

美穂達はあらかたの経緯を、持田亜里沙に話していた。


美穂の周囲の環境が夏休みの間に変わってしまっていたこと。

斥力のような力が存在し、それが美穂と友人達を会えなくしていること。

それから、占い師の元を尋ね、そこで聞いたヒントや、

それに基づく渚と美穂の推測まで、全てを説明したが、


それらの情報から、持田亜里沙はこの事態を解決するための方法をもう見つけてしまったらしい。


亜里沙(正確に言うと、ファミレスに用があったわけじゃないのよ)

ウサコ(ここじゃなくって、この近くに用があったウサっ♪)


頭の中で話しながら、手元のコーヒーにシロップとミルクを器用に左手だけで入れる亜里沙。

それを確認するとウサコがマドラーを持って、コーヒーをかき混ぜる。


渚(・・・・・・話の途中で悪いんだけどさ、それ外さないの?)

我慢できずに渚がツッコミをいれる。

亜里沙(うふふ、何のことかしら♪)

ウサコ(混ぜ終わったウサー)

亜里沙(ありがと、ウサコちゃん♪)

しかし、気にせずに亜里沙は左手だけで器用にストローの袋を取り外して、アイスコーヒーを飲みはじめるのだった。

782: 2013/10/30(水) 16:12:14.79 ID:VGnoWT7Po

美穂(あの、亜里沙さん。事態を解決するために・・・・・・この近くに用があるんですよね?)

亜里沙(ええ、そうですよぉ)

美穂(でも今、ファミレスに入ってこうしてる。と言う事は)

亜里沙(うん、美穂ちゃんが察してくれた通り)

亜里沙(今、待っているそれは、すぐにこの近くに訪れるものじゃありません♪)

渚(その言い方だと・・・・・・人ってこと?)

ウサコ(正解ウサーっ!このファミレスに入ったのはこの近くを通る、ある人を待つためウサー)


チラリと窓の外を伺う亜里沙。

美穂と渚もつられて窓の外を見る。

ファミレスの外は、ただ人が往来する大通り。変わったものは無く、ごく普通の街並みが広がっている。

渚(学生が多い気がするなァ)

行き交う人々を眺めて、なんとなくそう思った。

この付近の学校は、何処も昼以降の予定はなかったのだろう。

となれば、久々に会う友人達と共に過ごすため、この辺りまで繰り出してくる者達もきっと多いはずだ。

783: 2013/10/30(水) 16:13:05.14 ID:VGnoWT7Po


美穂は、占い師・藤居朋の言葉を思い出す。

問題の解決を焦ることはない。チャンスは必ず回ってくる。

美穂(ここで待っていれば、チャンスがやってくるって事だよね)

そして、それは決断の時でもある。

それまで美穂は強く、前向きな意志を持ち続けなければならない。

そうしなければ、「仲直りが出来る」と言う占いの結果は外れてしまうかもしれないのだから。


亜里沙(待ってる人が来るまで、もう少し時間がありそうだし・・・・・・)

亜里沙(その間にお話ししちゃいましょうかぁっ)

美穂(?)

美穂(何を話しちゃうんですか?)

亜里沙(美穂ちゃんを悩ませている斥力の様な”力”について♪)

美穂(!)

渚(!)

こうして、ようやく

彼女達に今回の事態の中心となった、ある力の正体が明かされる。
 

784: 2013/10/30(水) 16:13:45.36 ID:VGnoWT7Po


――



亜里沙(この世界にはね、『普通力』って言う能力があるの)

美穂(えっ・・・・ふ、ふつう・・・・力?)

その名を知るのは、あっさりだった。


亜里沙(ええ、そう。『普通力』)

亜里沙(その名前の通り、身の回りで起きることが、『普通』の事しか起きないって言う力のことねぇ)

渚(『普通』のことしか起きない?それって?)


亜里沙(『普通力』を持つ彼女の周りでは、”普通の出来事”しか起こらない)

 

785: 2013/10/30(水) 16:14:18.12 ID:VGnoWT7Po

彼女は、ある日天使に目を付けられて、聖なる力をその身に宿したりはしない。

彼女は、ある日悪魔に惑わされて、邪なる力をその身に宿したりはしない。

彼女は、生まれながらに魔法を使う才能があったりしない、良き師に出会って魔法使いとしての道を歩む事もない。

彼女は、星を侵し、略奪する者達に抗うための力を、自然の精霊から貰ったりはしない。

彼女は、事故に巻き込まれることはないし、そうして宇宙人に攫われて、改造人間にされたりはしない。

彼女は、祈りの歌声で呪いを浄化する力はない、遥か宇宙の来訪者から母星を救ってくれと請われたりはしない。

彼女は、魔界からやってきた悪魔のお姫様や死神の少女と友達になったりはしない。

彼女は、人を殺せる能力や、誰かの運命を知ってしまう能力や、物体を自在に操る能力に目覚め、悩んだりはしない。

彼女は、『嫉妬』や『暴食』、『怠惰』や『傲慢』や『憤怒』に囚われて、呪われた存在になったりはしない。

彼女は、妖を討つ責務を負わされたりはしない。妖と出会い淡い恋心を抱いたりもしない。

彼女は、悪魔にとり憑かれ、己の欲望を叶えるため、世界を呪いで満たす野望を抱いたりはしない。

彼女は、金属生命体を埋め込まれる実験体にされて、実験体の仲間と共に脱走劇を演じたりはしない。

彼女は、天使の生まれ変わりであったりはしない。気に入った誰かに特別な力をほいほい与えるなんて事もできない。

彼女は、特殊能力部隊の隊員であったりはしない。漂流して、ひょんな事から猫耳メイド姿で働いたりはしない。

彼女は、太古の昔の支配者たる神々に魅入られたりはしない。謎に包まれた仮面を被り、深遠なる王子と共に踊ることは無い。

彼女は、メガネに尋常じゃないまでの愛を注いだりはしない。メガネを広めるために、メガネと共にメガネすることもない。

彼女は、何処かの名家のお嬢様ではない。生命の力を操り人形を操ったり、ましてや錬金術を嗜んでいたりはしない。

彼女は、氏に際に見習いの神様に見初められ、日常を置き去りにする超常を得たりはしない。氏ぬ時は普通に氏ぬのだろう。

彼女は、宇宙から飛来した意志を持つ謎の水晶の企みにつき合わされ、冒険することはない。
 

786: 2013/10/30(水) 16:15:42.52 ID:VGnoWT7Po


そんな『特別』なコトは、彼女の”物語”にはあり得ない



なぜなら、彼女は『普通』だからだ。


生まれながらに『普通』で、『普通』であることに愛された、『普通』でしかない女の子だからだ。


故に彼女は、神の奇跡とも悪魔の誘惑とも出会うことはなく、


祝福とも呪詛とも無縁な、『普通』の日常を送り続ける。



ウサコ(つまり、生涯モブ役を貫き通せる能力ウサー)

渚(身も蓋もないっ!?)

787: 2013/10/30(水) 16:16:09.38 ID:VGnoWT7Po


亜里沙(正確に言えば、『普通』の事しか起こらないんじゃなくって)

亜里沙(その子の周囲に起こってしまいそうな、『特別』を予め取り除いちゃう力ねっ)

ウサコ(それも、その子自身は”無自覚”にウサ)

渚(・・・・・・つまり、その『普通力』って力を美穂ちゃんの友達が持っているから、)

渚(『特別』な力を持つ美穂ちゃんが、その子に近づけなくなってるって事?)

亜里沙(そう言うことになりますねぇ)

ストローからアイスコーヒーを啜りながら答える亜里沙。

余談だが、彼女の能力は、コーヒーを飲んでる最中でも会話が出来てしまう。


美穂(で、でも、おかしいですよね。それっ)

美穂(だって、その子の周りで普通の事しか起こらないなら・・・・・・)

美穂(私が、ヒーローになる事もないはずじゃあ?)

『普通力』を持つ少女の周りで、本当に『普通』のことしか起こらないなら、

そもそも、その友人である小日向美穂が『特別』に選ばれたりする事は無かったはずだ。


亜里沙(そうねぇ、美穂ちゃんを選んだその刀の特性によるところが大きいんじゃないかしら)

美穂(ヒヨちゃんの・・・・・・?)

美穂(私のナリ?)


美穂(・・・・・・・)


なんか今、脳内会話にノイズが入った気がする。

788: 2013/10/30(水) 16:16:57.51 ID:VGnoWT7Po

渚「美穂ちゃん・・・・・?」


どうやら気のせいではなかったようだ。

渚が怪訝そうな顔で美穂の顔を覗いていた。

彼女も驚いたためか、思わず口から声が出ている。


美穂「な、何でもありませ・・・・・・」

美穂(あれ?私も喋れたひなた?)

美穂(あ、でも思考してるだけだから、別に喋ってるわけじゃないナリ?)


美穂(う、ううううわあぁあああああああああ!)

顔を手で押さえ、テーブルに頭を伏せて、何とか声に出して叫んでしまうのは堪えた。

美穂(な、なななななななんで!?なんでっ!?)

どうして、別人格である彼女が、

”ひなたん星人”が会話に割り込んできているのか。


亜里沙(あっ、そうよねぇ。”ひなたん星人”ちゃんは、美穂ちゃんの中に居る人格だから)

ウサコ(ありさ先生の能力が美穂ちゃんに適用された場合は、一緒にお話できちゃうウサ)

美穂(そ、そんなことがっ!?)

どうやら、美穂の頭の中の人格であるところの”ひなたん星人”も、

亜里沙のテレパシー能力の範囲内に存在しているが故のことらしい。

789: 2013/10/30(水) 16:17:44.29 ID:VGnoWT7Po

美穂(あーはっはっは!!)

美穂(よくわからないけれど、いい機会だから”私”に言わせてもらうひなたっ!)

美穂(わ、”私”って・・・・・・私のこと?)

美穂(そうナリ!よく聞くひなたっ!)

美穂(は、はいっ!?)

美穂(いつも、”私”は私の話になると恥ずかしがって叫ぶけど、私に対して酷いナリ!)

美穂(えっ、そのっ、ご、ごめんなさいっ!)

美穂(あなたは私、私はあなたナリっ!そこのところわかってるひなたっ?)

美穂(う、うぅぅ・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・)

二度も謝ってしまったが、なぜもう一人の自分に怒られているのだろうか。

それに私、私、私となんだかややこしい。


渚(えっと・・・・・・状況がちょっと掴めないんだけど)

美穂(あ、渚さんは一応はじめましてひなた?)

美穂(私は愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたんせ)

美穂(そ、それはもういいっ!!もういいからっ!!)

美穂(き、決めフレーズくらい言わせてくれてもいいひなた・・・・・・)

しかも、どうして一人羞恥プレイをするハメになっているのだろうか。

790: 2013/10/30(水) 16:18:24.29 ID:VGnoWT7Po


かくかくしかじか


渚(妖刀に作られた人格ねェ)

美穂(だいたいそんな感じナリ、よろしくひなたっ☆)

はじける笑顔を思わせる声が響く。と同時に美穂の頭の上で踊るアホ毛。

美穂(は、恥ずかしい・・・・・・)

そんなアホ毛の様子とは反して、顔を伏せる少女。

料理を頼む訳でもないのにメニューを開いて、顔を隠している。

渚(・・・・・・なんか可愛いなァ)

美穂(ふぇっ?!)

渚(おっと、伝わるんだったね)

渚(まァ、今のが正直な感想だから。安心してよ、美穂ちゃん)

渚(変に思ったりしないしさァ、2人とも?でいいのかな。可愛いよっ)

美穂(か、かかかか可愛いってっ!)

美穂(えへへ♪嬉しいナリっ☆)

照れるような声と、嬉しそうな声がほぼ同時に響いた。

791: 2013/10/30(水) 16:18:59.43 ID:VGnoWT7Po

亜里沙(ひなたん星人ちゃんとも打ち解けたところで、お話を続けましょうかぁ)

美穂(あ、はい!す、すみません!)

今は解決するべき問題がある、

幸い脳内会話であるため、渚と亜里沙以外の、店内の客にはひなたん星人の声は聞こえていないはずだ。

少しは恥ずかしいが、堪えて話を続けることとした。

美穂(えっと、確かヒヨちゃんの持つ性質があるから)

美穂(噂の『普通力』の影響を受けずに、私は”私”を所有者に選べた。って言う話だったひなた☆)

美穂(うーん、ヒヨちゃんには何か思い当たることある?)

美穂(・・・・・・よくわからないナリ・・・・・・私の性質?)

亜里沙(日本一、『傲慢』で”我の強い”刀)

亜里沙(それが『小春日和』・・・・・・、って亜里沙先生は聞いてますよぉ)

美穂(はい・・・・・・肇ちゃんが言うにはプライドが高くって人に使われるのを嫌がる刀だって)

従属することを極端に嫌う我の強い刀であり、支配力のとにかく強い刀。

それが鬼神の七振りが一本、日本一、横暴な刀『小春日和』。

美穂(そんな『小春日和』だから、抜いている間は所有者の精神を守ってくれるって聞いてます)


美穂(・・・・・・もしかしてそれが関係あるんですか?)

ウサコ(そうウサ!その刀が美穂ちゃんと出会えたのは、その”意志の強さ”があったからこそウサー)

亜里沙(うん。完全にとは行かないみたいだけど、)

亜里沙(『小春日和』はその特性で、『普通力』による干渉を最小限に抑えることができたんじゃないかしら。)


小日向美穂が『普通力』を持つ者の友人であったにも関わらず、

彼女が『小春日和』と出会うこととなったのは、『小春日和』自体の持つ”我の強さ”が、

『普通力』の干渉・支配を抑えて、切り抜けたためであるようだ。

792: 2013/10/30(水) 16:20:25.54 ID:VGnoWT7Po

渚(そう言えば美穂ちゃんさァ、学校が終わった後、)

渚(友達を追いかけても、何かが邪魔するように立ち塞がって近づけなかったって言ってたね)

渚(道路の補修工事とか、前からやってきたお相撲さん達とか、大荷物を抱えたお婆ちゃんとか)

渚(けどさ、幾つかの障害に出会ったってことは)

渚(その幾つかは切り抜ける事が出来たって事だよねっ)

美穂(は、はい。その時はヒヨちゃんの力を借りてました)

美穂(あの時は大変だったナリ)

渚「それじゃんっ!!」

渚が立ち上がって声を上げた。

美穂「えっ!?あっ!!」

美穂も気づく。

『小春日和』は『普通力』と呼ばれる力の干渉を切り抜けて美穂と出会い、

そして『普通力』が引き起こしていたであろう幾つかの妨害も、『ひなたん星人』ならば切り抜けることができていた。

美穂「もしかして・・・・・・解決法っ!?」

もし、全ての斥力を跳び越えることができるならば、

『ひなたん星人』であるならば、彼女達に会う事もできるのではないか。

793: 2013/10/30(水) 16:21:08.65 ID:VGnoWT7Po

亜里沙「二人とも、しーっ」

ウサコ「店内ではお静かにウサー」

亜里沙が、指を一本立てた左手を口の前に持ってきて言った。

美穂「あ、す、すみません」

チラリと店内を伺う。

美穂達以外のお客さんの視線は、子供達と遊ぶシロクマPの方に向いていた。

温和な熊が子供達を相手している姿はどこか癒される光景である。

店内の客達は頬を緩めてその様子を見守っていた。

シロクマPは美穂の視線に気づくと、笑顔で手を振る。

美穂は小さく手を振り返した。


亜里沙(シロクマちゃんがあっちの方で視線を集めてくれてるから)

ウサコ(あまり目立たないようにして欲しいウサー)

亜里沙(会話は頭の中でね?)

美穂(はい・・・・・・)

渚(気をつけます)

亜里沙(うふふっ、二人ともいい子ですねぇ、それじゃ、お話を続けますよぉ)

794: 2013/10/30(水) 16:21:52.50 ID:VGnoWT7Po

亜里沙(2人の予想通りね)

亜里沙(『ひなたん星人』さんなら、『普通力』の起している斥力の影響をぐっと減らせるんじゃないかしら)

亜里沙(きっと、この事態の解決するための鍵になってくれるってありさお姉さんは思うな)

亜里沙(だけど、それだけだと、ちょっとだけ足りないのかもしれませんねぇ)

ウサコ(『普通力』の斥力を切り抜けて、『普通力』を持つ女の子に出会うだけだと解決しないウサ)

ウサコ(斥力の原因自体をどうにかしないと、”ひなたん星人”ちゃんじゃない美穂ちゃんは友達に会えないままウサ)

ウサコ(それだけだと『世界の縺れ』がなくならないウサー)

渚(世界の縺れ?)

渚(あ、たしか占い師さんも似たような事を言ってたけど、運命の縺れとか)

渚(それってさァ、美穂ちゃんを取り巻く環境が変わった事を言ってるの?)

ウサコ(そうウサー)

美穂(・・・・・・)


現在、美穂の友人達に近づけない他に、もう一つ問題が発生している。

美穂を取り巻く環境が大きく変異してしまっていることだ。

携帯や名簿からの記録の抹消と変更、そして記憶の改竄。


美穂(これも『普通力』の影響なんですか・・・・・?)

亜里沙(そうねぇ、『普通力』と『小春日和』の影響を受けた世界の働きかしら)

美穂(え?)

美穂(私と・・・・・・世界の働きひなた?)

795: 2013/10/30(水) 16:22:52.14 ID:VGnoWT7Po

亜里沙(話は変わるけど、『小春日和』が美穂ちゃんと出会ってから)

亜里沙(夏休みが始まるまでは、周囲の環境が変わっちゃう事はなかったのよね?)

美穂(は、はい。でもそれは・・・・・・)

美穂(『普通力』を持つあの子が、私の事を知らなかったからひなた)

亜里沙(ええ、きっと、その時点では何の矛盾も無かったの)

亜里沙(その子は美穂ちゃんを”普通の女の子”だと思い込んでいたから)

亜里沙(その子の”普通であり続ける日常を守ろうとする力”、『普通力』が何かを起すことも無かった)

亜里沙(美穂ちゃんが刀や活動の事を隠そうとする限りは、その子に気づかれることは決して無かったはずですよぉ)

渚(でも、知られちゃったんだよね)

亜里沙(・・・・・・うん、そうねぇ)

ウサコ(ウサー。地方新聞に美穂ちゃんのヒーローとしての活躍が載っちゃったウサー)

亜里沙(それによって『普通力』が『小春日和』に気づいてしまって矛盾ができちゃったのよね)

亜里沙(『普通』であるはずのその子の日常に、『特別』な異分子がいる)

亜里沙(その矛盾を解消するために、『普通力』の影響を受けた『世界』の方が対応しちゃったみたい)

亜里沙(それが『世界の縺れ』になったの)

渚(え、えっと・・・・・・世界の方が対応?)

美穂(そ、その・・・・・・)

美穂(わかりにくいひなた、もっとわかりやすくお願いするナリ)

美穂には言いにくいこともスパッと言ってしまうひなたん星人であった。

美穂(す、すみません。なんかスケールが大きい話になってて)

急に『世界』がどうって言う話をされても、美穂には何がなんだかわからない。


亜里沙(うふふっ、『世界』って言ってもそんなにスケールの大きい話じゃないの)

亜里沙(全世界って事じゃなくって、美穂ちゃんをとりまく環境の事だから)

796: 2013/10/30(水) 16:24:23.82 ID:VGnoWT7Po

亜里沙(そうねぇ、このファミレスを例えてみましょうか)

亜里沙(例えば、ドリンクバー)

亜里沙(これはみんな、頼んだらグラスを取りにいって)

亜里沙(自分たちでドリンクを入れて飲むのが当たり前よね?)

美穂(は、はい)

亜里沙(それはどうしてかなぁ?)

渚(どうしてって言うか・・・・・・うーん、そうするのがルールみたいな感じ?)

亜里沙(はぁい、正解です♪)

渚(あ、今ので良かったんだ)

亜里沙(店員さんもお客さんもそのルールを共有してるから)

亜里沙(みんな自然とそれができちゃいますねぇっ)

亜里沙(これが『ファミレス』って言う、『世界』のルールなの)

797: 2013/10/30(水) 16:25:00.85 ID:VGnoWT7Po


亜里沙(次はシロクマちゃんね)

美穂(シロクマさんですか?)

美穂(ふかふかしててカワイイ感じがするナリ)

美穂(き、聞かれてないことは答えなくていいからっ)


亜里沙(うふふっ、ファミレスに入ってくるクマさんっていると思う?)

美穂(それは・・・・・・い、居るんじゃないでしょうか)

渚(まあ、現に居るしね)

居るか居ないか。

見かけてしまっている以上は「居る」と答えるしかない。


亜里沙(『普通』なら?)

渚(居ないね)

美穂(居ませんね)

しかし、『普通』ならファミレスに入るクマを見かけたりはしない。


亜里沙(うふふっ、『ファミレス』って言う『世界』のルールの中では)

亜里沙(普通なら『クマさんは居ない』のだけど)

亜里沙(でもここには、シロクマちゃんが居るわぁっ♪)


ルールに反したことが起きている。

普通じゃない事が起きている。


亜里沙(こうして起きてしまったルール違反に、『ファミレス』のルールに従ってるみんなは考えるの)

亜里沙(どうしてクマさんが居るのかなって?)

亜里沙(今日は「そんなものなんだな」って事で受け入れて貰えたみたいですねぇっ)

亜里沙(これが『ファミレス』って言う『世界』の対応ねっ!)

798: 2013/10/30(水) 16:26:03.76 ID:VGnoWT7Po

亜里沙(今この時は、『クマさんは居ない』って言うルールは)

亜里沙(みんなの中から無くなちゃってるの)

ウサコ(だってクマさんが目の前にいるからウサー)

亜里沙(そんな風に『世界』は、元々あったルールに当てはまらない出来事に対して)

亜里沙(その時々でルールを変えたり、あるいはその形を変えるかして『対応』しているわ)

亜里沙(・・・・・・今回の事もそんなお話なの)


亜里沙(”『普通力』に支配された環境”の中では、「普通じゃない存在は彼女の傍には居ない」ってルールがあるけれど)

ウサコ(「『小春日和』を持つヒーロー」って言うルールに当てはまらない『特別』が入ってきたウサー)


亜里沙(このルール違反に『世界』は対応しなければならなかったのね)

亜里沙(でも、シロクマちゃんみたいに受け入れることはしませんでした)

亜里沙(『普通力』は強力な力だから、)

亜里沙(「普通じゃない存在は彼女の傍に居ない」ってルールを無視することは難しかったみたい)


亜里沙(だから、『世界』は)

亜里沙(最初から、”美穂ちゃんは『普通力』の範囲に居なかった”って事にして、対応したのね)

亜里沙(これが『世界の縺れ』になったの)


『美穂と友人を取り巻く環境』はその秩序を保つために、自らその形を変えた。

小日向美穂は、最初から『普通力』を持つ少女と関わりはなかった。

そういう事にしてしまえば、『普通力』を持つ少女の『普通であり続ける日常』は守られ、

同時に、『小春日和』を持つ少女は『特別なヒーロー』であり続ける事ができる。

そこにルール違反は無い。

799: 2013/10/30(水) 16:27:05.36 ID:VGnoWT7Po

美穂(そんな・・・・・・のって)


『特別』に選ばれたから、『特別』になってしまったから、

『普通力』を持つ彼女の傍に居る事が、『世界』に許されない。

そんな話を聞いて、ショックを受ける。


美穂(納得できないナリっ!!)

美穂(・・・・・・ヒヨちゃん)

もう一人の”自分自身”が叫ぶ。

美穂(”私”はここに居るひなたっ!”私”が友達と一緒に居ることがどうしていけないナリっ!)

美穂(『特別』だからダメって!そんなのって酷いナリッ!!)

美穂(・・・・・・)

言いにくいこともスパッと言ってしまう。

”ひなたん星人”の言葉は”美穂”の言葉であった。


美穂(私は”卯月ちゃん”とずっと友達で居たいナリっ!)

渚(えっ、卯月ちゃん?)

美穂(・・・・・・)

わかっていた。今回の事態の中心にある『普通力』。

そんな力を持っていそうな人物の心当たりはあった。

800: 2013/10/30(水) 16:27:48.28 ID:VGnoWT7Po

島村卯月のパーソナル。

なかなかパッとは思いつかない彼女の個性、

そう、彼女は特に『普通の女の子』だ。

いつも同クラスの、同学年の平均点をとってしまうほど、

彼女は『普通』すぎる『普通の女の子』だ

だから『普通力』なんて力を持っているのは、


美穂(きっと、卯月ちゃんの方だろうなって思ってました・・・・・・)

亜里沙(そうねぇ、美穂ちゃんが思うならきっとそうよ)

美穂の推測を、亜里沙が肯定する。

どちらの考えにも確証は無いが、しかし美穂はそれで間違いないと確信した。


美穂(・・・・・・)


小日向美穂は考える。

彼女の事を、

『普通の女の子』の事を、

島村卯月について考える。

801: 2013/10/30(水) 16:28:31.27 ID:VGnoWT7Po

美穂(・・・・・・卯月ちゃん、本当に良い子でとても頑張り屋さんなんです)

美穂(どんな時でも一生懸命で、ずっとずっと前向きで、くじける事なんてなさそうで)

美穂(それに笑顔が素敵ひなたっ☆)

美穂(うん、そうだよね。確かに普通の女の子だけど、でもその笑顔がすっごく魅力的で、)

美穂(あんな風に笑えるのがいいな、っていつも思ってた)

美穂(だから、そんな友達と一緒に居て、一緒に笑えることが)

美穂(とっても素敵な事で、好きだったから)


美穂(やっぱり私は・・・・・・)


美穂「卯月ちゃんと友達で居たいな」

自分自身の気持ちを再確認する。

802: 2013/10/30(水) 16:29:00.10 ID:VGnoWT7Po


美穂「私は、どうすればいいですか?」


友達への思いを胸に、目の前の女性に尋ねる。

彼女は言った。この事態を解決すると。


美穂「どうすればまた、卯月ちゃんと友達になれますか?」


彼女は知っている、美穂がこの後取るべき行動。

どうすればいいのか、その答えを。


美穂「教えてください、亜里沙さん!」


その子と友達になりたいと言う些細な願いを叶えるために、

少女は力強く問うた。



ウサコ(『特別』じゃなくなればいいウサー)

803: 2013/10/30(水) 16:29:25.65 ID:VGnoWT7Po

美穂(えっ?)

亜里沙(『特別』じゃなくなること、『普通』になってしまうこと。それがこの問題の答え。)

『普通力』に認められたいのであれば、

『特別』でなければいい。

そう、『普通』であればいい。

『普通』であるならば、『普通力』は小日向美穂の存在を再び認める事となる。

亜里沙(あなた達が『普通』になれば、この事態はすぐに解決するの)

美穂(わ、私にどっか行っちゃえって言うひなたっ!?それはあんまりナリ!)

『特別』でなくなる。

それは『小春日和』を手放し、ヒーローでなくなればいいと言うことではないか。

『小春日和』であるひなたん星人は焦る。


ウサコ(まあ、そっちでもいいウサ、けど方法は他にもまだあるウサー!)

亜里沙(『特別』なあなたがそこに居ること自体が、『普通』になればいいんですよぉ)

美穂(・・・・・・『特別』な私が居る事を『普通』のことに?)

亜里沙(ええっ!つまり)


亜里沙(”ヒーローと友達になれる”事を卯月ちゃんの『普通』にしてしまえばいいのっ♪)


”ヒーローと友達になれる”事が、彼女にとって『普通』であるならば、

『普通力』を持つ少女の『普通であり続ける日常』は守られ、

同時に、『小春日和』を持つ少女は『特別なヒーロー』であり続ける事ができる。

そこにルール違反は無い。

804: 2013/10/30(水) 16:30:18.57 ID:VGnoWT7Po

美穂(うーん、なんか言葉尻捉えてるだけみたいナリ)

しかし今亜里沙が言ったように、

『普通力』に「ヒーローと友達になれる」事が『普通』であると認められたならば、

確かに、美穂が卯月の周囲から弾かれてしまうような事態はなくなるのだろう。

だが湧き上がる疑問。

美穂(『特別』なことを『普通』になんてできるんでしょうか・・・・・・)

そもそも『普通』じゃないから『特別』なのに、

『特別』が『普通』になんて成り得るのだろうか。


亜里沙(そうねぇ、美穂ちゃん、それに渚ちゃんも)

亜里沙(『普通』ってどう言うことだと思う?)

美穂(?)

意図のよくわからない亜里沙の質問。

渚(普通は・・・・・普通な事じゃない?なんて言うの?その・・・・・・一般的と言うかさァ)

渚の答えもあやふやであった。


亜里沙(それじゃあ聞き方を変えてみましょうかぁ。ウサコちゃんっ!)

ウサコ(任されたウサー!)

ウサコ(ウサコの質問コーナーウサー!)

突如始まる、謎のウサギパペットによる質問コーナー。


ウサコ(2人とも、学校の宿題があればやってくるのは普通の事ウサー?)

美穂(え、えっと・・・・・・普通だと思います)

渚(まあ、普通だね)

戸惑いつつも答える2人。

805: 2013/10/30(水) 16:31:10.67 ID:VGnoWT7Po

ウサコ(毎日朝ごはんをしっかり食べるのは普通ウサ?)

美穂(普通です)

渚(普通だよ、一日の始まりは朝ごはんからだしねっ)


ウサコ(じゃあ、宇宙人と友達になっちゃうのはウサ?)

渚(普通じゃないかな)

美穂(素敵ですけど、普通じゃないですね)


ウサコ(毎日しっかり身体を動してスポーツするのはどうウサ?)

渚(・・・・・・普通、かな)

美穂(うっ、あまり普通じゃないかも・・・・・・・ヒーロー活動ならしてるんですけど)

ここで2人の意見がズレる。


ウサコ(毎日、教科書や漫画以外の本を読むのはウサ?)

渚(うーん、毎日ってなるとちょっと)

美穂(これは普通ですね、空いてる時間はいつも小説を読んでます)


美穂(なんとなーく言いたいことはわかったひなた)

渚(つまり『普通』って言うのは人それぞれってことォ?)

亜里沙(はぁい、そう言うことですよぉ♪)

ウサコ(卯月ちゃんにとっての『普通』も例外じゃないウサー!)

806: 2013/10/30(水) 16:31:49.30 ID:VGnoWT7Po

亜里沙(『普通力』の選ぶ『普通』は、卯月ちゃんにとっての『普通』なの)

亜里沙(だから彼女が『普通』だと思うことなら、『特別』な事でも『普通』であり得るわ)

亜里沙(例えば・・・・・・美穂ちゃん、今まで卯月ちゃんと友達でいて)

亜里沙(『普通』じゃない変わったエピソードの1つや2つはあったんじゃないかしら)

美穂(変わったエピソード・・・・・・?)

美穂(・・・・・・あ、そう言えば)


美穂(卯月ちゃん、17年間おみくじは「吉」しか引いた事が無いって言ってました!)

渚(あれっ?!普通じゃないっ!?)

美穂(あ、やっぱり普通じゃないんですよね)

美穂(聞いた時はすごいなーとしか思ってなかったんですけど)

ウサコ(卯月ちゃんにとって、それは『普通』のことウサー)

このように、彼女が『普通』の事と思っているなら、

あるいは、『特別』であると気づいていないのであれば、

『普通力』の支配下にある場所でも『特別』な事は起こりうる。


亜里沙(卯月ちゃんに『普通』の事だと思ってもらえれば、)

亜里沙(『普通力』の方も、他の人から見たら特別な事を許しちゃうのっ!)

渚(なるほどねェ、じゃあ今はヒーローと友達になる事が『特別』な事だとしても、)

美穂(友達になれる事が『普通』だと思わせる事ができれば・・・・・・)

美穂(私が卯月ちゃんの友達になっても平気ひなたっ!)

807: 2013/10/30(水) 16:33:07.99 ID:VGnoWT7Po

亜里沙(それとね、”縺れた”糸って言うのは、ちゃんと元に戻せるものなの)

ウサコ(糸が切れちゃってる訳じゃないウサ!)

ウサコ(丁寧に真っ直ぐに伸ばせば、糸は元の形に戻るウサー!)

亜里沙(ええ、だから『普通力』を認めさせることができたなら、)

亜里沙(それに支配されてる環境も美穂ちゃんが居る事をちゃんと認めて、)

亜里沙(”世界の縺れ”もうまくほどけるわぁっ!)


それは美穂を取り巻く環境が元に戻ると言う事。

携帯や名簿やクラスの改竄は、本来ならばあり得なかったこと。

故に、『普通力』と『小春日和』による矛盾さえ解消されれば、

その姿は、正しき姿に戻る。


美穂(本当に・・・・・・元の形に戻るんですね!)

亜里沙(ええ、きっと大丈夫っ!)

808: 2013/10/30(水) 16:33:40.31 ID:VGnoWT7Po

渚(それじゃあ、美穂ちゃんがこれからやるべきことは)

美穂(卯月ちゃんに会って、ヒーローと友達になれる事が『普通』の事だと思ってもらう!)

美穂(だけど、それはどうやってひなた?)

美穂(う、うーん・・・・・・それは・・・・・・・)

人から見れば『特別』な事も、卯月にとっての『普通』に成り得る事はわかったが、

しかしどうすれば、それを『普通』にできるのだろう。

亜里沙(伝えること)

美穂(えっ?)

亜里沙(「ヒーローの私と友達になってほしい」「ヒーローの私と友達で居てほしい」ってただ伝えるだけでいいのよ)

亜里沙(卯月ちゃんにとって「ヒーローと友達になる」事はこれまで無かったから、それは『特別』な事だったけど)

亜里沙(一度起きてしまえば、それは『普通』に起こりえることよ)

美穂(それだけで?)

「伝える」だけで解決するのだろうか。

渚(うん?待って。一度起してしまえばって言うけどさァ)

渚(新聞を通して「美穂ちゃんがヒーロー」だって伝わっても、それは『普通』だって認められなかったんじゃないの?)

そもそもこの事態は、地方新聞を通して、「美穂が特別なヒーローだ」と卯月に伝わった事からはじまる。

卯月およびに『普通力』は、起こってしまったそれを『普通』ではない出来事と判断した結果、

『普通力』の影響を受けた『世界』は美穂を卯月の周囲から弾いたのだ。

渚(順序は逆かもしれないけど、「ヒーローが友達」になれるってただ伝えても・・・・・・簡単には『普通』だって認められないんじゃない?)

美穂(確かにそうひなた。”私”が「友達になって欲しい」って言っても、伝えたこと自体を無かったことにされたりしないナリ?)

809: 2013/10/30(水) 16:34:36.11 ID:VGnoWT7Po

亜里沙(ええ、あなたたちの言う通り。ただ伝えるだけじゃあ、それは無かったことになるかもしれないわ)

ウサコ(だから重要なのは、伝える言葉に伴う”意志の力”ウサー)

美穂(意志ですか?)

亜里沙(ええ、新聞で伝わる内容には強い意志が伴っていなかったから、)

亜里沙(『普通力』の意志には、あともう少し届かなかった)


渚(・・・・・・ねェ、その『普通力』の意志って言うのは、卯月ちゃんって子の意志とは違うものなの?)

ウサコ(ちょっと違うウサー)

美穂(『普通力』自体が、卯月ちゃん自身とは別に持つ意志ですよね?)

亜里沙(はぁい、正解よぉ♪)

渚(『力』自体に意志があるってことォ?)

亜里沙(渚ちゃんには『力』に意志があるって言うと、ちょっと変に聞こえるかもしれませんねぇ)

美穂(でも『力』自体に別の意志が宿っているのはよくある事ひなたっ)

美穂(ヒヨちゃんもそうだもんね)

能力自体が、本体である能力者とは切り離された『意志』を持つ。

『小春日和』を持つ美穂だから、その概念は理解しやすかったようだ。


亜里沙(大抵の能力者は自分の意志で、能力を操れるけれど)

亜里沙(『普通力』は彼女にとって、まったく”無自覚の力”だから)

亜里沙(その制御は、彼女からは”自立した意志”によって制御されていますねぇ)

亜里沙(”卯月ちゃんのありのままの普通の日常を守ろうとする意志”が発する力、それが『普通力』)

亜里沙(だから『普通力』はその意志自体が、力そのものとも言えるかな)

810: 2013/10/30(水) 16:35:43.33 ID:VGnoWT7Po

亜里沙(そしてその『普通力』の意志が、周囲に影響を与えて斥力を引き起こしたり環境を変えたりしちゃいます)

亜里沙(さて、その影響を乗り越えようと思ったら)

亜里沙(『普通力』よりも、ずっと強い『意志』を持ってそれを抑える必要があるの)

美穂(・・・・・・だから、ヒヨちゃんの出番ですね)

亜里沙(うん、最初の方に言ったとおり、『ひなたん星人』ちゃんが鍵になるわ)

美穂(腕が鳴るナリ☆)

美穂の持つ『小春日和』もまた、意志そのものが力となる刀。

『意志』には『意志』をぶつけて、乗り越えてしまえ。と言うことのようだ。


亜里沙(つまり美穂ちゃんがやるべきことは、)

ウサコ(『普通力』の意志を、『小春日和』の意志の力で捻じ伏せるウサー!)

ウサコ(そして斥力を切り開いて、卯月ちゃんと無理やり友達になりなおす事ウサー!)

渚(な、なんか乱暴じゃない?捻じ伏せるとか無理やりとかサ)

亜里沙(ええ、乱暴な方法よぉ♪)

亜里沙(でも、乱暴だからこそ、『友達で居たい』って言う”強い意志”を、『普通力』が無かったことにする事はきっとできないわぁっ!)


美穂(・・・・・・大事なのは、強い意志を持つこと)


「大事なのは強い意思を持ち続けることよ、必ず障害を乗り越えるって言う強い意思をね。」


美穂(百発百中の占い師さんの言葉とも一致するひなたっ☆)

美穂(だからきっと上手く行くなり♪)

美穂(そうだね、きっと大丈夫だよねっ!)

美穂(ありがとう、ヒヨちゃん)

美穂(自分自身にお礼を言うなんてちょっと変な感じナリ)

811: 2013/10/30(水) 16:36:54.14 ID:VGnoWT7Po


亜里沙(うふふ、それじゃあ美穂ちゃん)

亜里沙(窓から外を見てみて)

美穂(えっ?)

亜里沙に言われて、すぐ横の窓の外を見てみれば。


美穂「あっ!?」


ファミレスの外の道には、

ずら~~~~~っと、

いつの間にか行列ができていた


渚(・・・・・・なんの行列?)

亜里沙(この辺りに今来ている、ソーセージ屋台の行列よ)

ウサコ(女子高生に大人気のマルメターノおじさんのソーセージウサ!)

渚(そう言えば後輩も言ってたっけ)

渚(なんか美味しいソーセージ屋が、この辺りにもたまにやってくるって)

亜里沙(うふふ♪行列ができちゃうくらい”噂”になってるみたいねぇ)

渚(噂?)

もしかして、何かこの人がしたのだろうか

812: 2013/10/30(水) 16:37:26.10 ID:VGnoWT7Po

渚(だけど、この行列になんの意味が・・・・・・?)


美穂「・・・・・・う、うそ」

渚(美穂ちゃん?)

渚にはわからなかったが、その光景は美穂にとって驚くに足るものであったらしい。


窓の外にいつの間にか出来ていた行列。

しかし亜里沙が美穂に見せたかったものはそれではなく、


亜里沙(例えば、ヒーローが自ら彼女に会おうとしているのは、『普通』の出来事ではないけれど)

亜里沙(お互いに気づかずにヒーローとすれ違う事くらいなら、『普通』の出来事じゃないかしら)


その行列に並んでいた一人の女の子。


卯月「♪」



美穂「卯月ちゃんっ!?」

もう会えないかと思っていた友達が、すぐ近くに。

ほんの数メートルの内にいた。



おしまい

813: 2013/10/30(水) 16:38:49.76 ID:VGnoWT7Po
持田亜里沙

職業:アイドルヒーロー同盟、ヒーロー応援委員
属性:優しいてんてー
能力:伝達術『メッセージ』、腹話術?

ヒーロー達の夢を応援する素敵なお姉さん先生。
アイドルヒーロー同盟に所属しているが、彼女はアイドルでもヒーローでもなく、
プロデューサーやトレーナーと言った人たちと同様、彼女達のサポート役として従事している。
同盟の本部から委員に選ばれているが、特に同盟の方針や意思に口出しできるほど偉い立場ではないらしい。
困っている人を助けるのがヒーローだが、そのヒーロー達が困った時に”ほんの少し”手助けするのがお仕事だとか。
悩みを聞いたり、ステップアップの方法を考えてくれたりする。云わば相談役。
ヒーローの夢を追う人達を応援しているらしく、ヒーローを目指す皆さんにはヒーローのイロハを教えている。
そのため、彼女の事をよく知る者は親しみを込めて「てんてー」と呼ぶとか呼ばないとか。
《ウサコと亜里沙のヒーロー指南教室!》と言うコーナーに出演しており、それもヒーローを応援する活動の一環だとは本人の弁。
時々、知らないはずの話や、普通は知れない話など、メタい発言が飛び出す不思議な人。
右手のウサギのパペット「ウサコ」を四六時中外さない。など、ほんの少し、秘密があるだけの優しいお姉さん。


『メッセージ』

持田亜里沙の能力。聞き取り、伝える力。いわゆるテレパシー系統の能力。
聞きたい相手から聞きたい事を聞くことが、伝えたい相手に伝えたいことを伝えることが出来る能力。
彼女の腹話術は、この『メッセージ』を利用しているのではないかともっぱらの噂。


 『会話《コミュニケーション》』

 メッセージを利用して、特定の人間同士の脳内会話が出来るようにすると言う通信手段。 
 この術に距離や範囲、人数などに制限は無いが、あまり広い範囲の多くの人間と会話しようとすると、
 混線して訳がわからないことになるのでやらない。(と言うか多くの場合は電話やその他通信手段で事足りる)
 能力名の通り、通信相手に亜里沙と会話しようと思う意志が無ければ、この能力は通じない。

 『噂話《ゴシップ&ニュース》』

 メッセージを利用して、特定地域にうわさ話を流す。
 ひそかに女子高生の間にソーセージ屋台が来ているうわさを流す事などができる。

814: 2013/10/30(水) 16:40:34.62 ID:VGnoWT7Po
ウサコ

職業:ウサコはプリティーでキュートなウサコウサッ♪
属性:キュートタイプウサ。クールやパッションじゃないウサ。
能力:ウサコの耳はとおくの声も聞けるウサ。誰かの悩みの声が聞こえたら駆けつけられるようにウサ。

謎のウサギパペット。持田亜里沙の右手担当。
亜里沙は常にこのウサコと共に行動しており、
パペットを外したところを見たものも、持田亜里沙の右手を見たことあるものも全く居ないらしい。
お喋りなウサギで、亜里沙の言葉を補足したり、代弁したりする。
とは言え、あくまでパペット。もちろんウサコの言葉は亜里沙が腹話術で喋っている・・・・・・はずである。
右手から外さない、ウサコが喋っている時は亜里沙の口は動いていない、
そもそも亜里沙自身、ウサコに対しては他人と話すのと同じ様ように振舞っている。
と言った事から「ウサコ寄生獣説」もあるとかないとか。
この件に付いては、てんてーもウサコもノーコメント。


シロクマP

職業:アイドルヒーロー同盟所属某プロダクションのプロデューサー
属性:白熊の獣人
能力:特になし

某プロのプロデューサーとして働く獣人。アイドルヒーロー時代の水木聖來の元プロデューサー。
見た目はほとんど熊。スーツを着た白熊。熊が歩いて喋る姿に驚かれる事は多いが、
その見た目のインパクトを武器に仕事を頑張る敏腕プロデューサー。性別不詳。
年齢は亜里沙よりも年上なのだが、彼女の事をせんせーと呼ぶ。

815: 2013/10/30(水) 16:42:12.13 ID:VGnoWT7Po
ここで区切ります

気づけば一ヶ月使ってるって言うね、本当にすみません
次こそ本当に終わらせるつもりだけど、先の事は約束できないからもう言わない
渚、卯月お借りしましたー

816: 2013/10/30(水) 17:36:25.05 ID:Ige/1xZB0
乙です
普通を乗り越える意思か…やっぱり普通ってすごい
ありさてんてーメタいですww




【次回に続く・・・】



引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part7