909: ◆6osdZ663So 2013/11/10(日) 11:49:39.30 ID:MlyLRGl1o

モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ



小日向ちゃんの方も急がなきゃなんだけど
同時進行で書いてた財閥の方ができちゃったので
今回はそちらを投下させていただきます

910: 2013/11/10(日) 11:50:55.25 ID:MlyLRGl1o


桃華「なかなかどうして」

桃華「うまくいかないものですわね」


桃華「『原罪』を作り出すと言うのは」


彼女はその片手で1つの宝石を弄びながら、愚痴をこぼした

 


----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




911: 2013/11/10(日) 11:51:26.90 ID:MlyLRGl1o


「おヤ?簡単なことでハ無いと承知して始めタ事デあったハズでは?」

彼女の愚痴に答える声が1つ。

「100度製造を試ミテ、1度か2度成功すれば良い方ダと」

「オ嬢様は言ってオラれたはずですガ?」

どこかイントネーションがおかしく感情に乏しそうにも聞こえる、声らしからぬ声。

それは機械音声。

音源はどうやら、彼女の目の前の箱からのようである。

桃華「1.5%の確率に賭けて、本当に1.5%でしか引かないようなわたくしではありませんわ!」

桃華「わたくしは”あんたん”がしたいんですのっ!」

桃華「どれだけ確率が低くても、最初の一回目で当りを引きたいのですわっ!」

桃華「おわかりですの?”Unlimited Box”ちゃま!」


彼女は名前を呼んで、その”箱”を怒鳴りつけた

912: 2013/11/10(日) 11:52:27.35 ID:MlyLRGl1o


UB「所詮は電子回路の詰マッた箱でシカナイ私ニ、お嬢様ほドノ御方の繊細な感情ヲ理解シキルなどとてもトテモ」

桃華「よく言いますわ、何のためにあなたに知恵と感情を乗っけたと思ってますの」

桃華(・・・・・・巷で暴れまわってるアンドロイド、たしかイワッシャーでしたわね)

桃華(さらにそのイワッシャーがカースの核に侵食された”カースドイワッシャー”)

桃華(彼らの存在がなければ、原罪を作り上げるのに、)

桃華(このような箱を活用するなんて思いつきもしませんでしたわ)


世間を騒がせるカースドイワッシャーの存在を聞きつけた財閥は、

カースが機械を侵食することができると分かり、

それを参考にとある箱を作り上げた。


彼女の目の前に並ぶ『原罪』を作り上げるための機材、

その全ての管理と制御を一括で行っているそれは、

財閥が用意した”スーパーコンピューター”をベースとして、

桃華がそこに『強欲』のカースの核をぶち込んで作り上げた”カースドコンピューター”。


限度無き渇望の詰まった箱

それが”Unlimited Box”である。


カースの核や負の感情を制御するには、同じく負の存在である必要がある。

コンピューターにそれらの感情をうまく計算させるためにも、感情を理解させる必要がある。

管理コンピューターのカース化はその2つを手っ取り早く実行する最短ルートであった。

913: 2013/11/10(日) 11:53:46.84 ID:MlyLRGl1o

桃華「あなたには財閥が、」

桃華「方々から集めた選りすぐりの研究者達」

桃華「その数ざっと百人ほど」

桃華「彼らから、わたくしが”知恵”を”搾取”して」

桃華「作り上げた”英知”を搭載したのですから」

桃華「感情を理解する機能が無いなんて言わせませんわよ」

UB「ふッ、そレは手厳シイ」


『搾取』、マンモンである彼女の持つ能力の1つ。

彼女のそれは奪う力である。

対象の『記憶』でさえ奪って自分のものしてしまえる彼女は、

財閥が連れてきた研究者達から『知恵』を奪い、

それを集め合わせて1つの『英知』を作り上げた。

その『英知』をカースの核に載せて、”UB”の機能としたわけである。


”UB”を作りあげるために百人の研究者の人生が丸っきり台無しとなった訳だが、

そんな事は悪魔は気にしない。

914: 2013/11/10(日) 11:54:42.30 ID:MlyLRGl1o

桃華「・・・・・・『原罪』の製造には”核”と”感情”と”知恵”が必要ですわ」

桃華「Pちゃまにエージェントを使わせて集めた七つの罪の”核”」

桃華「同じく、エージェントに集めてきてもらった強い”負の感情”を放つ素材」

桃華「そしてわたくしの用意した最高の”知恵”を搭載したUBちゃま」

桃華「・・・・・・足りないものなんてないはずですわ」

桃華「それでも、それでも『原罪』には未だに至らない」

桃華「どうしても何処かで躓いてしまいますのね」

UB「現在、我々が七つノ大罪を掛け合ワセて『原罪』ヲ作ろうと試みた回数は」

UB「13回デ御座イマス」

UB「その内、5回は製造途中デ ”核” ガ破損したタメに、廃棄」

UB「4回は核の内部ノエネルギーが消失シ、空の核となッタタメにコレも廃棄」

UB「ソシテ3回はカースの形ヲ得る事には成功しましたガ・・・・・・」

桃華「一部の感情が暴走して、他の感情を喰らった結果」

桃華「七つの感情のうちのどれかが欠けたせいで、『原罪』にまでは至りませんでしたわ」

桃華「複数の”大罪”を身に宿すことには成功していたみたいですけれど・・・・・・」

桃華「それはわたくしの求める物ではありませんから、それらは監視をつけて世間に放流」

UB「何ラカの外的要因に触れル事デ、成長スル事がアレバ良いのですが」

桃華「期待できませんわね。おそらくは特に成果も無く、ヒーローにやられてしまうのでしょう」

915: 2013/11/10(日) 11:55:55.34 ID:MlyLRGl1o

UB「ソシテ13回目の製造ニテ、ようやく7つの罪ヲ宿ス”核”が産まれマシタ」


12回の失敗を経て、13回目にして、ようやく

核が傷つき、破損することも無く、

その内側には確かな負のエネルギーの脈動を感じることができ、

そして7つのエネルギーが1つたりとも欠けることの無い”核”の製造に成功した。


それが桃華が今手にもつ”13個目の核”である。


桃華「ですが、この核も『原罪』にまでは至っていませんでしたわ」


その手の内側で”白銀色に輝くカースの核”を転がしながら桃華は言う。

そう、その核は”白銀色”であった。

『原罪』に至っているのならば、それは交じり合う”虹色”の輝きを放つはずである。


UB「残念な事デス、おそらくは内側に眠ル罪ノ比率ガ良くナイのでしょう」

UB「アルイはエネルギーそのものが足リテイナイのかもしれませんが」

桃華「どちらにしても失敗は失敗」

桃華「この核は、あえて言うなら『劣化原罪』と言ったところですわね」

916: 2013/11/10(日) 11:56:40.60 ID:MlyLRGl1o

桃華「13度の試行、それでも成功しないのなら何か対策が必要になりますわ」

UB「何か考エがアルので?」

桃華「核の内側に込められる罪のバランスが悪いとするのでしたら」

桃華「それはきっとわたくし達の『強欲』が強すぎるのですわ」

UB「材料デハナク、製造する側の問題と言う事デすか」


桃華「あなたは今でこそ『強欲』の感情を持っていますけれど、」

桃華「元はただの電気信号を組み合わせただけの仮想人格」

UB「私に宿ってイルのは純然たる『強欲』」

UB「その他ノ罪の事ハ”知識”として知ってはイますが」

UB「ソレラの罪を持ち合わセテいる訳でハない・・・・・・」


UB「一方でオ嬢様は『強欲』の悪魔デスが、櫻井桃華様と言う人間でもアられる」

UB「私と違って、人間には7つノ罪が全て潜在的に宿ってイルハズです」

桃華「ですが、やはりこの身は『強欲』の悪魔」

桃華「櫻井桃香としての魂は、この『強欲』には匹敵しませんわ」


桃華「わたくし達が核を作ろうとするなら、」

桃華「強すぎる『強欲』が、他の罪とのバランスを狂わせるのかもしれませんわね」


そう考えた彼女は1つの結論に至る。


桃華「『原罪』の製造には協力者が必要ですわ」
 

917: 2013/11/10(日) 11:57:41.36 ID:MlyLRGl1o


UB「悪魔ほどにイズレカの罪に偏っている者では不適ですがネ」

UB「七つの罪を潜在的に持ち合ワセ得る者デアレバ」

UB「人間か、カースドヒューマンでアルならばあるいは」


『原罪』の製造には七つの罪が必要。

潜在的に七つの罪を持ち合わせる人間達が作り上げるならば、

七つのバランスを壊さずに、『原罪』を作り出す事ができると彼女達は考える。


桃華「こんな事なら、あなたを作るために”知識”を搾取するのではなく」

桃華「”意識”を搾取することで、研究者達を完全支配(コントロール)するべきでしたわね」


製造者に人間を用意するなら、それが最も楽な手段であったであろう。

しかし、強欲なる箱は反論する。


UB「いえ、おそらくソレデハ不可能でショウ」

UB「”意識”の搾取ハ、”感情”を薄れサセますカラ」

UB「それでは『原罪』に至るコトは出来ないハズ」

桃華「・・・・・・となれば、『原罪』の製造は一時停止ですわね」

桃華「”協力者”を財閥に招き入れるまでは・・・・・・」

918: 2013/11/10(日) 11:58:32.41 ID:MlyLRGl1o

UB「・・・・・・わたくしに”七つの大罪”全てを搭載スルと言う手もありますが?」


強欲の箱が、『強欲』に偏っているのは、

人間ではないために、他の6つの罪を持たないためである。

ならば、この箱に『憤怒』『怠惰』『色欲』『暴食』『傲慢』『嫉妬』の6つの核を加えて搭載すれば、

足りない罪を完全に補うことができるはずである。


桃華「うふっ♪それは無理な相談ですわね」


桃華「あなたが7つの核のエネルギーに耐えられるとは思いませんし」

桃華「仮に成功しても、あなたに”裏切らせる”つもりはありませんもの♪」

UB「・・・・・・ふぅ、ヤレやれ、ドウしてもこの箱を出る機会を頂けマセンカ」

UB「私に七つの罪がアレバ、オ嬢様の”物の支配権”からも逃レらレルと思ったのデスが」

桃華「溜息をついたり、思うなんて表現を使ったり、外に憧れたり」

桃華「うふふ、ことごとくあなたはプログラムの仮想人格らしくありませんわね♪」

桃華「いいですわよ、UBちゃま」

桃華「その欲望に免じて、わたくしの計画が成功した暁には箱から出すことも考えて差し上げますわ♪」

UB「身に余ル御心遣イ、感謝してオリますヨ」

919: 2013/11/10(日) 11:59:29.89 ID:MlyLRGl1o

UB「デハ、もう1つ」

UB「サクライP殿に頼めば良イのでは?」

UB「人間の協力者ガ必要でアルなら、あの方ほどノ適任はいないと私は考えマスが?」

桃華「・・・・・・ああ、Pちゃまですの」

UB「・・・・・・何か問題でも?」

桃華「いえ、Pちゃまが人間と呼べるかどうかは・・・・・・少し怪しいところでしたから」

UB「・・・・・・」

UB「ハはっ、あの人は一体 ”何者” なので?」

桃華「うふふっ、私の口からは言えませんわね♪」


強欲の箱の質問を、桃華はただ笑って受け流すのだった。


桃華「まあ、Pちゃまは忙しい方ですから」

桃華「こちらの協力はそのうちに別の方に頼むとしましょう」

920: 2013/11/10(日) 12:00:23.25 ID:MlyLRGl1o

――

――


サクライP『なるほど、ではやはり『神の洪水計画』には悪魔が関わっているようだね』

聖來「うん、たぶんね」

聖來「”祟り場”で紗南ちゃんが見つけたカースドヴァンパイアの痕跡」

聖來「その来歴を追ってたどり着いた、とある部屋」

聖來「そこでさくらちゃんが『呪詛』の痕跡を発見したから間違いないよ」

聖來「ずっと前に『嫉妬の蛇竜』って言うのがしばらく暴れていたらしいけど」

聖來「その時と一緒って事は、『嫉妬』の悪魔が関わっているんだろうね」


聖來「紗南ちゃんの『情報収集』は、大きな力を持つ悪魔とかの正体まで迫る事はできないんだけどさ」

聖來「サクライさんは、『嫉妬』の悪魔について知らないの?」

サクライP『さて、どうだったかな』

聖來「・・・・・・」


通信先でとぼける男の言葉に少々苛立つ聖來。

『強欲』の悪魔とつながりのあるサクライPは、

アイドルヒーロー同盟から聖來を通して伝わった『神の洪水計画』についても詳しいことを知っていた。

(もっともそれは魔界での言い伝えレベルの話を、マンモンが推測を交えて彼に語った内容でしかない)

彼は『嫉妬』の悪魔についても確実にある程度の情報を持っているはずである。

921: 2013/11/10(日) 12:01:13.87 ID:MlyLRGl1o

サクライP『まあ、それが”人類の敵”となるのならば、僕達財閥も動かなくてはならないだろうね』

サクライP『世界の破壊者は僕にとっても邪魔な敵だ』

マンモンとサクライPの目的は全ての世界の支配である。

そんな彼らにとっては、世界を壊す者は敵。

サクライP『とは言っても、今回は”憤怒の街”の時のように中心地で大々的に動くつもりはない』

サクライP『世界が”それ”に目を向けている間にしか、できない事もあるだろうからね』

聖來「世界が海に沈む危機かもしれないって時に、その裏側で悪巧み?」

サクライP『ははっ、世界はそれほど軟じゃないと信じているだけの事だよ』

サクライP『ああ、もちろんセイラくん。君がヒーローとしてそれを止めるために尽力するのは構わない』

サクライP『必要なものがあったら言ってくれればいい。僕も君の本来の活動の支援を惜しまないつもりさ』

聖來「・・・・・・」

聖來(本当に、この人はどれだけ・・・・・・)


サクライP『そうそう。少し前にウェンディ族が”エージェント”として働いてくれる事になってね』

サクライP『マリナくんと言うんだ。”海底都市”について調べたいなら彼女に聞けばいい』

聖來「・・・・・・わかった、また近いうちに訪ねるよ。その人は何処に居るの?」

サクライP『連絡先は芽衣子くんに伝えてある』

聖來「了解」

922: 2013/11/10(日) 12:02:11.53 ID:MlyLRGl1o

サクライP『とにかく、そちらの件については』

サクライP『君に指揮を任せるよ』

サクライP『君の知る限りの”エージェント”達なら好きに動かしてくれていい』

サクライP『今のところ、彼女達に任せている仕事の多くは片手間にでも出来る仕事だからね』

サクライP『さて、こちらからは以上だが』

サクライP『・・・・・・何か聞き残した事はあるかな?』

聖來「サクライさん」

聖來「カースドウェポン計画について聞きたい事があるんだけど」

聖來「今、サクライさんは何処に・・・・・・」

ブチッ

端末から何かが切れるような音がして。

ツー ツー

続いて、無慈悲な音が響くのだった。


聖來「・・・・・・」

聖來「ああぁぁぁあっ!!もうっ!!」


「あははははははははっ!」

一方的に通信を終わらされた、セイラに向けられる1つの笑い声。

チナミ「珍しく怒るのね、セイラ」

そこには日傘を差して佇む、一人の女性。

聖來「・・・・・・勝手すぎるよ、あの人は」

923: 2013/11/10(日) 12:02:56.05 ID:MlyLRGl1o

現在、”エージェント”の2人は、とある病院の屋上に居た。

財閥の運営する病院の1つ。

ここにやってきたのは、彼女達が『神の洪水計画』や『カースドウェポン計画』について調べて回る際に、

引き連れていた少女の頼みであった。


少女が彼女の両親の見舞いに行っている間に、

聖來はサクライPに連絡を取っていた次第である。


チナミ「『神の洪水計画』ねぇ」

チナミ「あなたに一任って事は、よっぽど追いかけられたくないみたいね、サクライは」

聖來「フリーのヒーローとしても、”エージェント”としても、今回アタシは動かないといけない」

聖來「こっちに手を回す余裕が無いわけだ」

『神の洪水計画』と『カースドウェポン計画』、二兎を追う事は彼女にはできない。

優先するべきは明確に世界の危機が迫っている前者。


聖來が『神の洪水計画』を追っている間にも、

サクライPは『カースドウェポン計画』を着実に進めるつもりであるのだろう。

924: 2013/11/10(日) 12:03:49.32 ID:MlyLRGl1o

チナミ「でも、まあいいんじゃない?」

チナミ「『カースドウェポン計画』は”神を頃す武器”を作る計画だって分かってるんだし」

チナミ「すぐにでも完成する物じゃないんでしょ、きっと」

チナミ「それなら焦ることも無いわよ」

チナミ「私としては、それが完成したところを横取りできたら万歳サイコーってところね」

聖來「まあ、チナミはそれでいいんだろうけどさ・・・・・・」

少し呆れたように呟く聖來。

聖來「・・・・・・」


聖來「神様を頃したらこの世界はどうなるんだろうね」


チナミ「・・・・・・さあ?」

チナミ「案外、消えてなくなるのかもね」

聖來「・・・・・・そうだとしたら引っ掛かるけどね」

チナミ「まあね。サクライの目的は世界の支配」

チナミ「世界の全てを手に入れることが、あの男の最終目標」

チナミ「『憤怒の街』や『神の洪水計画』に関してのあの男の動きを思えば、」

チナミ「進んで世界を壊そうとするわけがないものね」

チナミ「ま、それなら”神”を殺そうとしている事自体がそもそもおかしいのだけど」


聖來「うーん、本当は神をバラバラにしたいって訳じゃないのかなぁ」

チナミ「どうだか」

925: 2013/11/10(日) 12:04:41.98 ID:MlyLRGl1o

チナミ「で、セイラ?あなたはこれからどうするの?」

彼女の方針を尋ねる吸血鬼。


聖來「教会に向かうよ」

チナミ「教会ぃ?」

聖來「うん、そこには『神の洪水計画』について何か重要な事を知ってる人が居る筈だから」

紗南の能力で辿り着いた部屋を調べることで、聖來は幾つかの情報を手に入れていた。

その部屋の本来の持ち主が悪魔によって一時閉じ込められていたこと。

そして、その女性が悪魔の手から逃れて向かったと推測される場所についてもだ。


チナミ「・・・・・・」

チナミ「パス」

聖來「はいはい、チナミは付いてこないと思ったよ」

聖來「吸血鬼は教会苦手だろうしね」

チナミ「”吸血鬼は”って言うか、”私は”だけどね」

チナミ「どうしても受け付けないのよ、肌に合わないって言うか」

チナミ「あんな所で活動できる吸血鬼がいるなら、顔を見てみたいものね」

926: 2013/11/10(日) 12:05:22.88 ID:MlyLRGl1o

チナミ「さてと、そう言うわけだから私は”お祭り”にでも行ってくるわ」

聖來「お祭り?あぁ、『秋炎絢爛祭』かぁ」

聖來「チナミはそう言うのって興味あるの?」

チナミ「ええ、”面白そう”だとは思ってるわよ」


そう言って、彼女は病院の屋上から遠くを見つめる。

どうやら京華学院の方を見つめているらしい。

吸血鬼の視力であるならば、ここから遠くの学院の様子も見えるのだろうか。


チナミ(祟り場の時に、鬼にやられた私の眷族も増やしたいものね)

彼女はあの時、七振りを持つ鬼に挑んで、眷族を減らしている。

欠員によって減少した戦力を補充するために、人の集まる祭りに向かおうと考えていた。

チナミ(眷族にするなら能力者がいいわね)

チナミ(”エージェント”に所属してからは、面白い力を持つ人間にも出会えた)

チナミ(そう言う類の人間が、あの祭りにはきっと紛れているはず)

聖來「・・・・・・チナミ、何か企んでる?」

チナミ「ふふっ、ぜんぜん企んでなんかないわよ」

聖來「怪しい」

訝しむ目で吸血鬼を見つめる聖來。

彼女に人間を襲う予定である事を伝えれば、面倒な事になるだろう。

チナミ(さっさとこの場を離れるのが無難かしらね)

そのように考えた彼女は自らの体を少しずつ霧に変えていく。

チナミ「セイラ、そっちも何か面白そうな事があったら教えてよね」

そんな言葉を残して、吸血鬼は影へと消えていった。


聖來「・・・・・・・」

聖來「はあ、これじゃあ手が幾つあっても足りないな・・・・・・・」

927: 2013/11/10(日) 12:06:34.90 ID:MlyLRGl1o

――

――


さて、吸血鬼が去ってからしばらくして

病院の屋上の扉が開かれた。


紗南「セイラさん、お待たせ!」


聖來「ご両親との面会はできたのかな?」

紗南「うん、思ったより回復してるみたい」

紗南「まだ体を動かすのは辛いみたいだったけど」

紗南「でも起きてる間にたくさん話せたよ、学校に行けるようになった事とかさ」

笑顔で話す紗南。

聖來「そっか、それは良かった」

少し前まで、彼女の両親は『怠惰』にその身を侵され、眠りから覚める事すらなかった。

時間の経過によって『怠惰』の毒は少しずつ抜けて、

今では日にほんの1、2時間程度だが、目を覚まして話すことができるようになったのだ。

回復は順調に進んでいるらしい。

928: 2013/11/10(日) 12:07:16.80 ID:MlyLRGl1o

紗南「ところでチナミさんは?」

聖來「お祭りの方に行っちゃったよ」

紗南「・・・・・・”エージェント”ってまとまりのある行動はできないの?」

聖來「あははっ、耳が痛いね」

呆れた顔をする紗南であった。


聖來「紗南ちゃんは、どうする?」

聖來「せっかくだし、今からでも文化祭の方に戻ってもいいんじゃない?お友達も居るんでしょ?」

紗南「・・・・・・うん、だけどしばらく休んでたからちょっと居づらいんだよね」

本日、紗南は学校を欠席してこの病院にやってきた。

休んだ理由は、起きている時間の限られる両親とできるだけ顔を合わせたかった事もあるが、

その他にも、クラスでの居心地の悪さも理由であった。


紗南「ベルフェゴールに憑かれていた期間の事とかぜんぜん覚えてないしさ」

紗南「文化祭も・・・・・・その・・・・・・・なんかみんなと距離があって」

聖來「・・・・・・」


彼女は悪魔に憑かれていた期間の事は覚えてないし、

かの『怠惰』の悪魔は、当然だがほとんど学校を欠席していた。

その結果、彼女は普通の中学生としては周りから置いていかれてしまったのだ。


『怠惰』の悪魔から開放されて、こうして学校に通える事になっても、

友人達と出来てしまった距離は14才の少女には重く圧し掛かっている。

929: 2013/11/10(日) 12:08:05.35 ID:MlyLRGl1o

聖來「・・・・・・確かに紗南ちゃんは辛い立場なんだと思う」

聖來「悪魔に”自分の時間”を盗られてしまうなんて、」

聖來「すっごく理不尽でやりきれない事だから」

紗南「・・・・・・うん」

少女は理不尽に悪魔に時間を奪われた。

色んな関係を、色んな可能性を、奪われてしまった。


聖來「だけど、紗南ちゃん次第でその距離はすぐに無くなるんじゃないかな」

紗南「・・・・・・アタシ、次第?」

聖來「うん、すぐに追いつくのは難しいかもしれないけど」

聖來「でも紗南ちゃんが追いつきたいって思うなら絶対追いつけるよ」

紗南「今からでも追いつけるのかな・・・・・・?」

聖來「もちろんっ!」

聖來「そうだねぇ、一人で苦しいなら、アタシは幾らでも手を貸すよ」

紗南「セイラさん・・・・・・・」


聖來(・・・・・・はぁ、ついまたカッコつけちゃった)

聖來(でもカッコつけるのがヒーローだと思うし・・・・・・)

聖來(うーん、この調子だとアタシ、何本手があればいいんだか・・・・・・)

930: 2013/11/10(日) 12:08:41.08 ID:MlyLRGl1o

紗南「セイラさん、ありがとう」

彼女は笑顔でヒーローにお礼を言う

聖來(だけど・・・・・・こんな風に笑顔でお礼を言われちゃったら)

聖來(無茶もしたくなっちゃうよね)


紗南「それじゃあアタシ・・・・・・」





紗南「 明 日 っから頑張るよっ!!」


聖來「・・・・・・」

聖來「明日からっ?!!」


まさかの発言が飛び出した。

怠惰の代名詞

 『明日から頑張る』 である。

931: 2013/11/10(日) 12:09:11.47 ID:MlyLRGl1o

聖來「えっ、えぇっ」

聖來「さ、紗南ちゃん・・・・・そこは今日から頑張ってくれないと」

聖來「ちょっとアタシがカッコつかないかなぁって」


紗南「だって今日頑張るのはめんどくさい」

聖來(紗南ちゃんっ!?!)

なんと言う事だろう。

『怠惰』の悪魔から開放されたと思った少女は、

結局、『怠惰』な少女のままなのだろうか。


紗南「って言う訳じゃなくって」

紗南「アタシ、今日はセイラさんを手伝いたいから」

聖來「えっ」


もちろんそんな事は無い。

彼女は、『怠惰』は卒業したのだから。

932: 2013/11/10(日) 12:09:39.89 ID:MlyLRGl1o

紗南「文化祭は五日間あるんだ」

紗南「まだ四日もあるから、学校の事は明日からでも全然間に合うよっ」

紗南「それよりも、今はセイラさんの事が心配」

紗南「セイラさんがアタシの事心配してくれてたみたいにねっ!」

そう言って、Vサインをする。

聖來「・・・・・・」

紗南「学校にはもう欠席の連絡もしちゃったしさ」

紗南「今更、アタシが幾ら学校休んだって大して変わらないよ」

ちなみに三好紗南の出席日数、

ベルフェゴールだった時代の事もあって結構酷い。

ついでに言うと成績も酷い。(これはあまりベルフェゴールのせいではない)

とは言え、中学校は義務教育であるし、

彼女自身望んでそうなった訳ではないが、既にお金を貰って働いている身だ。

出席日数が酷くたって、どうにでもなりはする立場だ。

933: 2013/11/10(日) 12:10:20.80 ID:MlyLRGl1o

紗南「だったらアタシが、今日1日くらいセイラさんの事手伝ったっていいじゃん」

紗南「『神の洪水計画』について調べるんだったよね?」

紗南「アタシの能力必要でしょ?」


聖來「・・・・・・・あは、あははっ」

聖來「一本取られちゃったな」

聖來「カッコいいよ、差南ちゃん」

紗南「へへへっ」

少女は鼻を掻いて笑う。


元ヒーローが思うよりも、彼女はずっと強かった。

自分の強さをちゃんと理解していて、自分のやりたい事をきちんと選べる少女だった。


聖來「じゃあ、今日一日はお願いしてもいいかな、紗南ちゃん」

紗南「うんっ!世界の危機を救うために何か出来るなんて燃えちゃうからね!任せてよっ!」

文化祭の初日。

この日だけは紗南は、聖來の調べ物を手伝うこととなった。


それぞれの思いを胸に財閥は動き始めた。


おしまい

934: 2013/11/10(日) 12:10:55.87 ID:MlyLRGl1o

『Unlimited Box(強欲なる箱)』

研究者百人ほどの知恵を搾取して作り上げた、マンモンちゃま自慢の英知と、
『強欲』の核をぶち込まれた事で、知識と『強欲』の感情を持つに至ったカースドスーパーコンピューター。
底知れぬ欲望を身に宿す限度なき箱。底もなければリセットもできない箱。
マンモンに『物の支配権』によって生殺与奪の権利を握られてるので、
彼女に従い、箱の中で文句も言わずひたすら『原罪』を作るための計算と作業を続けている。
イントネーションのおかしい機械音声で話すが、実は単なるキャラ付けであり普通の言葉を発することも難なく出来るらしい。


『財閥の放流したカース』

”Unlimited Box”が作り出した、複数の属性を持つカース3体。
属性が7つには足りず、『原罪』には至れなかった。
かつての『強欲の王』のように外の世界で何かに触れる事で、『原罪』まで成長する可能性を考慮し、
財閥が監視を付けて、世間に放流したようだ。


『白銀色の核』

”Unlimited Box”が作り出した、『原罪』に近かったが、至らなかった核。『劣化原罪』。

935: 2013/11/10(日) 12:12:04.41 ID:MlyLRGl1o

◆方針

水木聖來 → 『神の洪水計画』について調べるため教会へ
三好紗南 → 水木聖來の手伝い中、学祭には二日目から向かう
チナミ   → 眷族を増やすために主に能力者を狙って学祭へ

櫻井桃華 → 『原罪』を手にするためにあれこれやってる
サクライP → 何処で何してるのだか


財閥の近況を少々

主にちゃまが厳選作業をやっていたと言うお話でしたー
ボックスから6V(7属性持ち)以外は野に逃がす作業

放流した方のカースは特にフォーカスする予定も無いので、良ければ好きに扱ってください

936: 2013/11/10(日) 13:42:46.00 ID:VvKv6HG7o
おつおつ!

リミテッドガチャどころかアンリミテッドとはあかん香りがぷんぷんするぜぇ……
せーらさんはどうしてもヒーローなんだなぁと思う。素敵

941: 2013/11/10(日) 17:50:05.03 ID:MlyLRGl1o
今回エージェントがお邪魔させていただいていたのは
祟り場にあったと思われる元瑞樹さんの部屋ですね
祟り場の影響で口リ島さんが脱走したので、流石に祟り場内の地続きにあると部屋だとは思います
そのすぐ近くの部屋からカースドヴァンパイアも祟り場に放たれてるので

え?大罪の悪魔が痕跡残すのかって?
さ、さくらちゃんがもの凄いんだよ・・・・・・きっと

942: 2013/11/10(日) 18:02:17.99 ID:MlyLRGl1o
他にまずそうなこともあったらご指摘ください
やらかしてたら吊ってきますので




【次回に続く・・・】



引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part7