948: ◆zvY2y1UzWw 2013/11/15(金) 18:19:45.27 ID:NjuxGSdb0

モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ



学園祭時系列です

949: 2013/11/15(金) 18:20:26.17 ID:NjuxGSdb0
正義…ヒーロー。それは民衆を引き付ける。例えそれが偽りの善であっても、正義は確実に民衆の心に安心を与える。

この世界のヒーローを名乗る者。彼らが本当に善なのかはこの際関係ない。例えヒーローが別の目的のための踏台でも、悪を倒した実績が正義なのだ。

力無き民衆は『ヒーローに守られる自分』に安心して、無意識に正義に依存して同時にいつでも正義を求める。

一度正義と認められれば壁が破壊されようが、道にヒビが入ろうが、爆発が起きようが認められる。

ただ民衆は、正義が悪を倒すことを求める。映像を、己の瞳を通して。それが安心につながるから。

例の死神事件の時だって、あんなに恐ろしい魔術を操る所を映像で見ても、民衆はその安心感があるから外を出歩いていた。

『ヒーローはいつでも悪を倒す存在である』と、正義を信じているから。

やけに都合のいい、正義が勝つという盲信をしているから。


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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




950: 2013/11/15(金) 18:21:09.76 ID:NjuxGSdb0
「…ライトを送り込んだ子供が来ているのか…民衆共も多いし、アイドルヒーローもライブするって日程にあるし…丁度いいな」

黒兎と同じく、白兎も勝手に抜け出していた。目的は南条光。

この環境ならいいデータになるだろう。ヒーローに頼る人が、ヒーローを愛する者が居ればいる程、正義の呪いは力を増していく。

「まずは様子を見ないとな、そこから必要があれば手を加えていけば…うん、うん!」

実に楽しそうに、白兎は邪悪な笑みを浮かべていた。

951: 2013/11/15(金) 18:22:13.27 ID:NjuxGSdb0
光は明日から行われるヒーローショーのリハーサルを舞台で出演メンバーと共に行っていた。

「ぎゃおー!ぎゃおー!がおおおお!」

「ハーッハッハッハ!邪悪なドラゴンを蘇らせてやったわ!これでアンタもお終いよ!」

「まだだ!終わりなんかじゃない!正義は勝つんだ!」

リハーサルの振り分け時間は短い、だからライトやスモークの演出を一気に確認できるドラゴン戦直前のシーンだ。

「はいオッケー!問題ないよ!撤収ー!!」

「ありがとうございましたっ!」

「お疲れさーん!」

小道具や一部持ち込みの機材を回収してすぐに引っ込む。

五日分のリハーサルをアイドルヒーロー等はともかく基本的に今日の昼過ぎまでで一気に行うのだから時間はないのだ。

952: 2013/11/15(金) 18:23:43.69 ID:NjuxGSdb0
「衣装脱いで!シワとかつけないでね!」

「鈴帆の着ぐるみは…えーっと預けるんだっけ?」

大きなドラゴンの着ぐるみを大きな段ボールに丁寧に入れる鈴帆に質問が飛ぶ。

「そーばい、さすがに毎日これを持ってくるのは辛か…バスとか電車に入れんけん…」

「あー…なるほど」

「しっかしアンタのその着ぐるみ、よくそこまで大きくできたわね…」

かなり大きなそれは、手作りと聞いて誰もが驚愕した程の出来だ。

「…殆どばっちゃんが手伝っちくれたけん…あんまり仕事なかったと…でもそのおかげで意外と早く終わったたい!」

「鈴帆のおばあちゃん何者なんだよ…」

「どう考えてもプロの技だよこれ…」

953: 2013/11/15(金) 18:24:34.74 ID:NjuxGSdb0
ショーのメンバー全員が着替えを終え、控室から速やかに退出しようとした…その時、ふと鈴帆が光の腕輪に気が付いた。

ショーの時は衣装に合わないからと、外しておいたのだ。

「ん?光っち、こぎゃん腕輪…もっとったっけ?」

「…!さ、触るな!!」

光の白い腕輪に近づけた鈴帆の手を、思わず振り払ってしまった。

「うぉっ!…すまんたい、大切な物だったと?」

「…あ、ゴメン…うん、大事なんだ…でもゴメン…振り払うつもりはなかったのに…」

「よかよか。怪我もないけん、気にせんでよかよ!」

光は慌てて謝る。そんなことするつもりはなかったのに…腕輪を守る為、腕が勝手に動くような…そんな感覚に襲われていた。

954: 2013/11/15(金) 18:25:20.29 ID:NjuxGSdb0
「何騒いでるのよ、次が来るのよ…」

控室から出ようとしていた麗奈は、その声に振り向いて…

「…!?」

一瞬だけ、光の見た目がおかしく見えたのだ。髪は真っ白、瞳が真っ赤になっているように見えた。

他のメンバーはきっとそうは見えていなかっただろう。しかし、一度悪魔の呪いの力を宿していた彼女は…一瞬、呪いに侵されつつある光を見ていた。

「…麗奈、アタシの顔に何かついてる?」

少し茫然と光を見つめていたからか、光が少し不思議そうに問いかけた。

「あー…マヌケ面ならついてるけど?」

「なんだとー!?」

誤魔化しながらも麗奈はすっきりしなかった。

(…気のせい…?それにしてはなんだか…)

心がざわついた。気のせいと思い込みたいという心、絶対に何か起きていると確信する心がごちゃごちゃになっている気がした。

(…一応、観察だけ、観察だけはしておこうかしら。アイツが心配だからじゃないわ!本番でヒーローショーをぶち壊してレイナサマ・オンステージにする隙を伺う為よ!)

心の中で誰かに言い訳しながら、麗奈はこっそりと決心した。

955: 2013/11/15(金) 18:26:12.96 ID:NjuxGSdb0
…十数分前

白い泥がカギを開け、控室に侵入してくる。

その気配に腕輪の形態をとっていたライトが白猫に姿を変えて出迎えた。

「ライト、調子はどうだ?」

「やぁママ。いい感じだよ、順調に正義を執行してる。この前なんて不法投棄のトラックを破壊してやったよ」

「ふーん、浸食は?」

「彼女の中の聖なる力がジャマだね、まだ完全に浸食したわけじゃない。だから利用する方向で考えてるよ」

「期待してるよ。まだ力が足りない。力を得るまで…油断はしないで行こうな?」

「わかってるよママ。ボクはママの正義の道具でしかないんだから、道具としてちゃんと役目を果たすよ」

極めて無機質な瞳で見つめながら、ライトは白兎に言う。それが彼の存在意義なのだ。

「だってママは勝つんだろう?争いも無い、平和でシアワセな世界に変えてくれるんだろう?」

「そう、それでいい。民衆共の期待通り、『正義は勝つ』。それでいい…正義は何でも手に入れられる…たとえそれが世界であっても」

956: 2013/11/15(金) 18:27:39.90 ID:NjuxGSdb0
白兎はあまりにも自らの『呪い』としての存在に忠実だった。

力を持っているなら、使ってしまえばいい。

世界を壊せるなら、変えられるなら、やってしまえばいい。

ためらう事はない。力を持つ者は正義になれるのだから。

自分は生命体の頂点に立つ者なのだから。

…だって

「こんな世界…いらない」

孤独、嘆き、怒り、痛み、狂気、絶望。それを知りすぎ少女として生きられなくなった、少女の揺れ動く感情の成れの果ての一つであるが故に、確かにわかることは。

「『理不尽な運命によって理不尽な力を身に着けた彼女は、理不尽な理屈を持って理不尽な世界を壊したかった』。それだけ。」

それは壊れてしまった少女の抱いた感情の一つだったということだけだった。

たった一つだけ、それでも決定的に違う事は、白兎は『それしか考えられない』存在という事だけ。

それが彼女が狂っている原因であり存在が呪いという事であった。

精神が崩壊し心が分裂し、そして肉体までもが物理的に分裂できるために起きた、非常にややこしい出来事。

『神谷奈緒』はこの世界を受け入れている。彼女の一部であった白兎は、彼女と分かり合えそうになかった。

もう彼女を縛る鎖はない。もう彼女の力を封じる物はない。

世界を手の上で転がすことを、ただ求めた。

957: 2013/11/15(金) 18:28:38.10 ID:NjuxGSdb0
「ママ、ボクはこの祭り、どう動けばいいかな?」

ライトが問いかける。絶好の機会を見逃さないように。

「力を手に入れるのには丁度いいからな…機会があれば持ち主を乗っ取れ。この祭りにもいるだろう悪人を消してもいいだろうな」

「…思うんだけど、何で食べないの?あの力、食べてしまえばいいのに。強いんだからさ」

「地球人は未だ未知数だ。『アイツ』と同じように精神干渉してくるようになったら困るのはこっち。暫く人間は食うな」

まるで異星人のような視点で言う。そう、あの使い手の人間性を見るに、取り込めばナニカに『悪影響』を与えるのは目に見えていた。

加蓮に認識されたことでアイデンティティを確立するという『悪影響』を受けたナニカを思い出して苛立つ。

958: 2013/11/15(金) 18:30:27.35 ID:NjuxGSdb0
アレが、未だ誰にも認識できない泥の怪物のままだったなら…世界は祟り場で自分が生まれた後、すぐに自分の手の内にあってもおかしくなかったのに。

そもそもありえない筈だったのだ。負の感情しか持っていないちっぽけな泥だったアレが、人に近い姿と豊かな感情を得る事なんて。

ずっと奈緒を恨んでいればよかったのだ。ずっと泣いていればよかったのだ。ずっと絶望に溺れていればよかったのだ。

人肌のぬくもりを、抱きしめられる喜びを、心を動かす程の愛を知ってしまったアレは…非常に面倒な手間を増やした。

『大好きなお姉ちゃん』を頃してやろうかと何度も思ったが、一部となった彼女を頃すことは不可能だった。

また取り込めば、彼女を取り込めば…今度は正義感か?ああ、なんて面倒なんだろうか。

959: 2013/11/15(金) 18:32:09.14 ID:NjuxGSdb0
「…ママ、怖い顔してるよ?」

ライトが首を傾げる。我に返った白兎は思考を落ち着かせた。

「…ああ、何でもない。それと、決してアタシの事は…」

「大丈夫だよ。絶対漏らさない。あたりまえじゃないか。正義の力も、誰にも渡すもんか。正義を執行する者は、限られた者だけでいい」

「そう、アタシを前に出すな。アタシは裏で構えているんだから。ひっぱり出されるような事は勘弁願いたいね。じゃあ、あとは頼んだぞ」

ウサミン星人の様な姿をとり、ウサギのような長い耳を揺らす。

周囲に誰もいない事を確認。普通に扉を開け、泥で鍵を閉める。そのまま泥となって天井を這うように廊下を去って行った。

960: 2013/11/15(金) 18:36:25.31 ID:NjuxGSdb0
以上です
※要約
白兎「この世の全ての悪を、消し去りたい。それを邪魔するルールなんて、壊してみせる、変えてみせる。さぁ!叶えてよライト!!」
ライト「!?」

イベント情報
・おや、光のようすが…腕輪に無意識に執着しているようです
・腕輪は今の所ただの腕輪としか『認識』できません
・悪魔・カースの力を持つ、または持っていた者には光の姿が白髪・赤目に見えることがあるようです

961: 2013/11/15(金) 18:37:32.91 ID:FUrFN3Kqo
おつー
不吉すぎぃ!

962: 2013/11/15(金) 20:09:14.71 ID:0ogl3+R3o
乙乙
すごくバッドな香りがしやがりますよ……
助けてくれそうな人、助けられそうな人っているのかな




【次回に続く・・・】



引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part7