1: ◆EyREdFoqVQ 2018/01/04(木) 17:54:29.17 ID:rW2Sb/7eo

前スレ

【艦これ×影牢】提督「鎮守府が罠だらけ?」【中編】
【艦これ×影牢】提督「鎮守府が罠だらけ?」【後編】

・DMM【艦隊これくしょん】と
 同じくDMM【影牢トラップガールズ】(2016/07/29サービス終了)のクロスオーバーです

・キャラ崩壊注意

・提督も艦娘も殆どが不幸属性持ちです

・前スレを読まないと話がわからないと思います



前スレのあらすじ

太平洋上の孤島に建てられたとある鎮守府に、島流し同然の扱いで着任した提督。
彼が助けた艦娘と暮らしていたある日、突如として罠の化身「メディウム」たちが現れ、鎮守府を乗っ取ってしまう。

やがて和解したメディウムたちは提督を魔神様と呼び、
彼に付き従い深海棲艦や、提督を消そうとする海軍を撃退していく。
しかし、海軍の策略にかかり、提督は部下の駆逐艦を失い、魔神として覚醒。
自分もろとも島を火の海に沈めてしまう。

提督をなんとか保護したメディウムたちは、深海棲艦の力を借りて
海軍の研究施設を乗っ取り、提督の復活を目論んでいた……。


艦隊これくしょん -艦これ- おねがい!鎮守府目安箱1 (電撃コミックスNEXT)

2: 2018/01/04(木) 17:56:53.04 ID:rW2Sb/7eo

 * 太平洋上 研究施設の沿岸 戦闘海域 *

古鷹「……深海棲艦が、一斉に退き始めましたね……」

朝雲「何かの罠かしら」

筑摩「まさか利根姉さんの身に何か……!?」

山雲「……ねえ、あれ、なぁに~?」

 ザザザァァ

アーニャ(ロ級騎乗)「久々の海だぁ~!」

シルヴィア(ハ級騎乗)「こら、遊びじゃないんだから。ちゃんと釣竿掲げて!」

ミーシャ(ロ級騎乗)「これが降参って意味でいいんですか……?」

(W大佐部下:以下「W」)熊野「あれは……白旗ですの?」

W多摩「姉ちゃん、あの人、見覚えあるにゃあ」

W球磨「あー、確かにどこかで釣り上げた覚えのあるヒレクマ」

W鈴谷「ヒレで見分けてんの!?」

3: 2018/01/04(木) 17:58:05.96 ID:rW2Sb/7eo

最上「あ、あの人……シルヴィアだね。シャークブレードの」

三隈「旗を持っているのはアーニャさんとミーシャさんではありませんか?」

初雪「……釣竿に白旗をひっかけてきてるみたい」

黒潮「やっぱりメディウムが絡んでたんでたんやなあ」

W伊勢「めでぃうむ……って、あの島で会った罠娘たちのこと?」

W日向「まさか、白旗も罠じゃないだろうな」

伊勢「いや、彼女たちは信用できると思うよ」

日向「ああ。摩耶たちと一緒に投降してきたのがあの3人だ。信じていいだろう」

青葉「そもそも、罠にかける気なら最初から姿を現さずに来るでしょうからねえ」

五十鈴「でも、白旗だなんて、本当に何があったのかしら」

4: 2018/01/04(木) 17:59:09.00 ID:rW2Sb/7eo

 * 戦闘海域の後方 中佐の巡視船内 *

通信(那智)『メディウムが白旗を掲げてきたか……』

中佐「罠かどうかは正直わからない。だが、墓場島の艦娘たちは来てほしいというのが、あちらからの伝言だ」

通信(那智)『……では、私たちも研究施設に向かっていいんだな?』

中佐「ああ。速やかに突入済みの艦隊と合流して、提督少尉の確保に向かってくれ」

通信(足柄)『ええっ!? 提督、生きてるの!?』

中佐「信じられないが、蘇生すると聞いている。でも、あまり良い知らせには思えない。くれぐれも用心して突入してほしい」

通信(千歳)『わかりました……って、白露! 島風! 競争じゃないのよ!!』

通信(足柄)『ね、ねえあれ、由良とはっちゃんじゃない!?』

通信(那智)『中佐、我々にも迎えが来たようだ。これから上陸に向かう』

中佐「うん、よろしく頼むよ」

中佐「……」

H中将「……大丈夫なのか」

中佐「……」

H中将「……中佐?」

中佐「……はい……?」

H中将「……目が半分氏にかけてるぞ……しっかりしないか」タラリ

中佐「ははは……何と言いますか、僕がやっていることが本当に正しいのか、少々自信を失いつつありまして」

中佐「人間は無力ですね……こんなときですら、ただ彼女たちを当てにするだけで、何もできないなんて」ウツムキ

H中将「そんなことはない。中佐はよくやっている」

中佐「……ありがとう、ございます」

5: 2018/01/04(木) 18:00:50.33 ID:rW2Sb/7eo

 * 研究施設内 会議室 *

初春「」グッタリ

キャロライン「」ウットリ

利根「のう若葉よ。そろそろ縄を解いてやっても良いのではないか?」

若葉「そうか?」

利根「うむ、本人の望まぬ苦行は苦痛でしかないからな」

若葉「むう……利根さんがそう言うなら」

オリヴィア「やれやれ、また派手にやってくれたねえ」ノッシノッシ

武蔵「お前はオリヴィア!」

霞「最初から姿を見せてくるなんて、どういうつもりよ!」

オリヴィア「そうつんけんするんじゃないよ。不本意だけどね、アタイたちはギブアップしに来たんだよ」

武蔵「ギブアップだと?」

川内「うん、もう戦う必要ないんだって」

神通「私たちも怪我した人たちを連れて行くのを手伝ってほしいとお願いされたんです……」

若葉「川内さんと神通さんも無事だったのか」

霞「ふたりとも人質って感じじゃないし、信用していいのかしら?」

オリヴィア「そのために連れてきたんだ。アタイたちだけじゃ信用できないかもしれないからね」

カサンドラ「そ、そういうわけで、私たちも最初から姿を見せて……見せ……恥ずかしいぃぃ!!」ピャッ

利根「そこでオリヴィアの陰に隠れたら説得力がないぞ……」

オリヴィア「カサンドラ……あんた何しに出てきたんだい」

6: 2018/01/04(木) 18:02:16.14 ID:rW2Sb/7eo

利根「まあ良い、してギブアップというのはどういうことじゃ?」

メリンダ「これ以上抵抗は致しません。皆様をご主人様のところへ案内してくださいと、ルミナからの言伝がありました」

武蔵「この状況では分が悪いと判断したわけか」

初春「す、すまぬ、わらわがいてこの体たらく、痛恨の極みじゃ……」

オリヴィア「仕方ないよ初春、ほかのメディウムたちも散々な目に遭ってる。ここは負けを認めようじゃないのさ」

メリンダ「そういうことですので、まずはロープを解いていただけないでしょうか」

霞「じゃあ、朝潮に、これ以上私たちを襲わないように説得してくれる?」

朝潮「むぐう……」グッタリ

ハナコ「ふええ……」グッタリ

カサンドラ「も、もう抵抗のしようがないと思うんですけど……」

オリヴィア「ちょっと我を失ってるねえ。アタイが担いで連れて行くよ、道すがら宥めながら行こうじゃないか」ヒョイッ

若葉「そういうことなら仕方ない。解くとしようか」

カサンドラ「は、はい、お願いします……!」

メリンダ「あの……もし若葉様がご不満でしたら、私を縛っていただいても……」ポ

カサンドラ(へ、変態だー!?)ハナヂ

若葉「申し出は嬉しいが、それはまた今度にしよう」キリッ

武蔵(若葉は手遅れか……)

ジェニー「どうでもいいから早く解いてくれないかしら」グッタリ

ツバキ「うちら完全に忘れられとるわけじゃありゃあせんか?」グッタリ

霞「忘れてないから待ってなさい、今ロープを解くわ」シュルシュル

7: 2018/01/04(木) 18:03:27.62 ID:rW2Sb/7eo

オリヴィア「ところでル級。アンタ、どうして武蔵たちにフォージド兵の素材を渡したんだい?」

ル級「……」

霞「それは私も聞きたいわね。なんか考えがあったんでしょ?」

ル級「提督ガ、変ワッテシマウノガ嫌ダッタカラヨ」

オリヴィア「変わる?」

ル級「モトモトノ素養ガアッテニセヨ、彼ガ人間デナクナッテシマウコトガ嫌ダッタノ」

ル級「私ニハドウシテモ、アノ容レ物ノ中ニ入レラレタ彼ガ、別ノモノニ作リ替エラレテイル気ガシテ……ネ」

ル級「蘇ルコト自体ハ良イコトダロウシ、私モ良イトハ思ッタ……ケレド、彼ガ彼デナケレバ、何ノ意味モナイワ」

ル級「メディウム生成ノ素材ヲ集メテ長門ニ渡シタノハ、オ前タチノ都合ノ良イヨウニ作ラレタ提督ヲ壊シタカッタカラ」

ル級「結果的ニ艦娘タチハ、提督ニ会ウタメノ手段トシテ使ッタノダケレド」

武蔵「ル級の思惑とは違っていたわけか」

ル級「デモ、ソレデ良カッタノカモシレナイワネ」

武蔵「軽巡棲姫はどうなんだ?」

ル級「アノ子ハアノ子デ考エガアルヨウダケド……私ハ聞イテイナイワ」

神通(それにしても……この部屋、すごく目のやり場に困ります……)カオマッカ

川内「うわ、結び目固すぎ! これ切っちゃってもいいよね?」ナイフトリダシ

リンメイ「い、痛くなければなんでもいいね!」

サム「早めにお願いしますよ」ハァ

8: 2018/01/04(木) 18:04:10.72 ID:rW2Sb/7eo

 * 施設内 地下通路途中の小部屋 *

長門「……」カオマッカ

摩耶「……」カオマッカ

加古「いやあ、すごい光景だったねえ」

鳥海「……」ハナヂポタポタ

敷波「まあ、あたしは目隠しされてて見てないんだけどね」

加古「で、当の本人は熟睡中、と」

潮「スヤァ……」

加古「いいなあ、あたしも一眠りしたいなあ」

クリスティーナ「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう?」

摩耶「っ! いつの間に!」

クリスティーナ「警戒しなくていいわよ、マヤ。この場は私たちも矛を収めるわ」

摩耶「え? ど、どういうことだ?」

フウリ「あの、わたしたち、もうケンカしなくていいんです……!」

敷波「しなくていい?」

榛名「はい、メディウムのみなさんは投降するそうです」

比叡「司令がいるお部屋に、みんな連れて行きましょう、って話になりました!」

敷波「比叡さんに榛名さん!? 二人とも無事だったの!?」

9: 2018/01/04(木) 18:05:14.25 ID:rW2Sb/7eo

榛名「無事といいますか、普通に過ごしてましたね……」

セレスティア「むしろ私たちは比叡さんからお料理を教わっていましたので」

クリスティーナ「不愉快にはさせてなかったと思うわ」

摩耶「霧島さんも一緒なのか?」

フウリ「は、はい! 今は魔神様のいるお部屋にいます……!」

クリスティーナ「私たちだけじゃ信用してもらえないだろうし、この二人にも同席してもらおうと思ってね」

摩耶「そっか、みんなが無事ならそっちは安心だな」

榛名「それと、長門さんの治療もしないといけません。高速修復材をお持ちしましたので、使ってください」

長門「すまない、助かる」ヨロッ

敷波「ああ、動いちゃ駄目だってば!」

長門「無理はしないさ。とりあえず、私よりも彼女たちを心配してやってくれ」チラッ

朧「……」ボーゼン

オボロ「朧殿、しっかりなされよ!」オロオロ

電「こんなの……こんなのひどいのです」メソメソ

パメラ「もうお嫁にいけない……」ズーン

イサラ「もう引きこもりたい……」ズーン

マルヤッタ「み、みんなしっかりするじょ……!」

マリッサ「たまにはこんな風に激しく責められるのもいいかもぉ」ウットリ

タチアナ「この人だけはぶれませんね……」

10: 2018/01/04(木) 18:06:49.41 ID:rW2Sb/7eo

チェルシー「だからもう陸の上は嫌なんだよぉ……」グスグス

セレスティア「チェルシー、あなたの苦手なクラーケンは海の魔物ではありませんか」

チェルシー「このあたしの心の傷を癒してくれるのは海しかないんだああ!」ウワーーン

摩耶「どんだけ海が好きなんだよ……わからなくねーけど」

加古「まあ、あんだけのことをされちゃってたら、こうなるのも仕方ないかねえ」

セレスティア「鳥海さん、何があったのか教えていただけませんか」

鳥海「……く、クラーケンの、触手が……パメラさんやチェルシーさんの……はうっ」ハナヂブパァ

セレスティア「鳥海さんっ!?」

敷波「思い出しただけで鼻血を出すとか、いったい何が起こってたのさ……」

加古「うん、つまり鳥海が説明できないくらい触手で工口工口な宴が繰り広げられてたんだよね」

長門「ま、摩耶は平気なのか?」

摩耶「あー、た、多少は耐性あるっすから」

摩耶(駆逐艦連中が隠し持ってた工口本にああいうのあったんだよな……予習してなかったら危なかったぜ)ポ

セレスティア「加古さんは平然としておられますが……」

加古「だって駆逐艦たちが持ってた工口本に、ああいうのあったんだよね」

長門「」

摩耶「……」アチャー

鳥海「ど、ど、どういうことですかっ!!」

加古「そんなん訊かれても知らないよー」

長門「……ほ、本当か、敷波」

敷波「え、えーっと……あたしは知らないかなっ」プイッ

11: 2018/01/04(木) 18:07:53.89 ID:rW2Sb/7eo

加古「まあとにかくさ、メディウムたちがこれ以上戦う意思がないんなら、怪我してる子たちを運ぶの手伝うよ?」

長門「そ、そうだな……私のニードルフロアの怪我もあるだろうし」

クリスティーナ「そのために戦艦の二人に来てもらったの。あなたたちもダメージ受けてるんだから、こっちは任せて」

セレスティア「電さん、肩を貸しますよ」

電「セレスティアさん……神様は残酷なのです……!」グスグス

セレスティア「ど、どうしたんですか」

電「潮ちゃんのおっOいには勝てなかったのです!」

セレスティア「……は?」

朧「朧は……井の中の蛙でした」

クリスティーナ「ふ、ふたりとも、どうしたの?」

フウリ「い、いったい何があったんですか?」

加古「あー、潮の艤装に乗ってたクラーケンが調子に乗っててさあ……よいしょっと」

フウリ「潮ちゃんを後ろから抱きかかえて……?」

クリスティーナ「何をするの?」

加古「早い話が、触手がこういうことをしたんだよねえ」ウシオノムネモチアゲ

潮「」タユンタユンタユンタユン

クリスティーナ「」

セレスティア「」

榛名「」

比叡「うわあ……」カァァ

12: 2018/01/04(木) 18:09:18.51 ID:rW2Sb/7eo

朧「……あれを見たとき、どうやっても潮には勝てないって……」

オボロ「くっ……し、忍びに巨Oは不要……っ!」プルプル

電「電だって育ったはずなのに……!」グスグス

パメラ「う、ウエストでは負けてないわ……」

摩耶(かける言葉が見つからない……)

加古「っていうかさあ?」フウリノウシロニマワリコミ

フウリ「きゃあ!?」

加古「フウリちゃんだって結構凶悪だよねえ?」フウリノムネモチアゲ

フウリ「いにゃあああああああ!?」ポユンポユンポユンポユン

クリスティーナ「」

セレスティア「」

榛名「」

比叡「ひええ……」

長門「なにをしてるんだ加古ぉぉぉ!!」

加古「ん? いやあ、いいじゃんか、減るもんじゃないしぃ」

マルヤッタ「やってることは完全にセクハラおやじだじょ……」

13: 2018/01/04(木) 18:10:06.07 ID:rW2Sb/7eo

潮「ん……むにゃ……ふえっ? な、なにかあったんですか?」

フウリ「う、う、潮ちゃああああん!!」ダキツキッ

潮「ふ、フウリちゃん!? い、いったい何があったの!?」オロオロ

クリスティーナ「高く飛ぶには、軽いほうがいいのよ……」ズーン

セレスティア「火のそばにいれば汗をかいてしまうんですから……」ズーン

榛名「提督は、榛名が慎ましやかでもきっと大丈夫です……」ズーン

比叡「ちょっ!? 被害拡大してる!?」

イサラ「フォローに来たメディウムの心まで折っちまうなんて、ひどすぎッス……」

マリッサ「それよりもぉ、早く魔神様のところへ引き上げたほうがいいと思うんだけどぉ?」

タチアナ「一番正論を言いそうにない人がそれを言いますか」

比叡「いえいえマリッサさんの言う通り、とにかく急ぎましょう? ニコちゃんから、司令がもうすぐ復活するって聞いてますから!」

全員「「!!」」


14: 2018/01/04(木) 18:13:13.76 ID:rW2Sb/7eo

 * 施設内 地下の広間へ続く通路 *

ルミナ「まったく……若葉君には困ったものだ」

金剛「メディウムにまで悪い癖を炸裂させるなんて、若葉も罪深いデスネ……Charrolline は大丈夫デスカ?」

ルミナ「…………Possibly、かな」

金剛「Oh...」

ルミナ「それよりもだ。味方だと思っていた深海棲艦のル級君に、まんまとしてやられたよ」

ルミナ「彼女はなにかと私たちのやることに消極的だったし……彼女はいったい何に憂いていたのかね?」

軽巡棲姫「……」

ルミナ「軽巡棲姫君も何を考えているのか……そろそろ話してくれないかな」

軽巡棲姫「……」プイ

ルミナ「やれやれ、嫌われてしまったかな?」ポリポリ

龍驤「雲龍、泊地棲姫背負ってもらってるけど、重たない?」

雲龍「重いけど大丈夫」ヨイショ

陸奥「泊地棲姫は魔力槽に入れてあげるの?」

ナンシー「うーん、応急処置的に魔力槽の液体をバケツに汲み上げて、かけてあげたほうがいいんじゃなーい?」

如月「そうね。修復材も混ぜてあげればいいと思うわ」

龍驤「今に始まった話じゃないとはいえ、その辺の仕組みがよくわからへんなあ……」

ナンシー「まー、私たちも全部わかってるわけじゃないしね~」

15: 2018/01/04(木) 18:14:18.17 ID:rW2Sb/7eo

ルミナ「私は全力で解析中だよ。むしろ私には、君たちがなぜそれを疑問に思わないのかのほうが疑問なんだけどねえ……」

ディニエイル「皆が皆、あなたのように疑い深いわけではないのですよ」

不知火「好奇心は猫を頃す、などと言う言葉もありますし、深入りは控えるべき事案もあります」

リンダ「……ほんまに似た者同士やな、デニやんとヌイヌイは」

不知火「ぬい!?」ギョッ

ノイルース「なんですかその愛称は」

リンダ「ええやん、ヌイヌイ。可愛いやんか~、デニやんもそう思わん?」

ディニエイル「……」ウーム

ディニエイル「……ヌイヌイ……」ボソ

不知火「なんですか!? その嬉しそうな顔はいったいなんですかディニエイルさん!?」カァァ

五月雨「……ぷっ……」

吹雪「……ふ、ふふ……」

不知火「なんですか二人とも!? その笑いは! 何がおかしいんですか!?」ワタワタ

大和「……なんだか、いいですね……こういう雰囲気」

如月「そうよね。私たち、本当はこういう雰囲気を求めていたのよね……」

大和「ええ……あのときまで、時間が戻ってくれれば良いのに……」

ルミナ「ああ、戻したいねえ……さて、魔神君はこの事態をどうしてくれるかな?」

軽巡棲姫「……」

16: 2018/01/04(木) 18:17:21.19 ID:rW2Sb/7eo

 * 施設内 地下の広間 *

 分厚い扉<プシュウウウ

ルミナ「やあやあ、みんな連れてきたよ!」

ルイゼット「来ましたか……」

カオリ「結局、こうなっちゃったのね」

金剛「Oh, 怪しげな機械がいっぱいデス!」キョロキョロ

五月雨「あ、あそこに霧島さんと扶桑さんがいます!」

扶桑「ああ……あなたたちも来たのね」

霧島「金剛お姉様……!」

金剛「霧島! Are you fine !?」

霧島「……ファ、ファインと言いますか……大事はありません」

金剛「Okay, 無事なら何よりデス。比叡と榛名はどうしまシタ?」

霧島「お姉様たちは、別の場所で交戦していた武蔵さんや長門さんたちを迎えに行きました」

扶桑「川内と神通も一緒に行ったわ」

不知火「……!」

陸奥「不知火? どうしたの……あれは!」

不知火「山城さん……!」

17: 2018/01/04(木) 18:18:49.72 ID:rW2Sb/7eo

山城(半深海化)「……不知火……? 戻って、きタの?」フラッ

不知火「……はい」

山城「そう……じゃあ、どウして、那珂ちゃんは、戻ってきテくれないのかシら……」

不知火「……」

(山城が振り返った先には、緑色の液体で満たされた円筒型の水槽)

(その中で目を閉じて漂っている那珂の姿は、八割ほど深海化が進んでいる)

山城「どうしテ、那珂ちゃンは、私たちと一緒ニ来るこトを拒むの……?」

山城「扶桑お姉様は戻ってキてくれたノに、どウして……」

陸奥「どういうことなの……!?」

扶桑「那珂ちゃんは、提督やメディウムたちと一緒に戦うように、山城に説得されていたらしいの」

軽巡棲姫「……泊地棲姫ト一緒ニ、ネ?」

扶桑「そうよ。その『説得』に那珂ちゃんは必氏に抵抗した結果が……こうなってしまったの……」

霧島「彼女は酷く衰弱しています。しばらくは、魔力槽からは出さないほうが良いというのがニコさんの判断です」

金剛「……その、那珂ちゃんの隣の暁も、そうデスカ?」

 (那珂の隣の魔力槽に、暁が眠るかのように浮かんでいる)

霧島「はい……比叡お姉様の呼びかけにも、全然反応しません……」

金剛「……」

18: 2018/01/04(木) 18:19:48.86 ID:rW2Sb/7eo

大和「……ニコさんはどちらに?」

ルミナ「ええと、ああ、いたいた。ニコ君!」

ニコ「……」ジロリ

ルミナ「そんな風に睨まないでくれたまえよ。私たちの被害を抑えるためにやったことなんだから」

ニコ「ぼくは、魔神様を倒しに来た奴らと仲良くするルミナの気がしれないよ」

金剛「No ! 私たちは、提督の艦娘デース! 慕いこそすれ、傷つけるような真似はしたくありまセンヨー?」

ニコ「力づくでここを追い出すつもりのくせに、よく言うよ」

金剛「ここにいるのは危険デスから、避難しましょうって話デス。メディウムのことを考えれば、提督ならわかってくださると思いマス!」

ニコ「……魔神様の人の好さを利用しようとしているんだね……!」

金剛「Ah, Nico ? アナタ、ちょっと heat up しすぎデス。Please calm down !」

ニコ「……」ハァ

ニコ「まあ、いいよ。魔神様は、もうすぐ復活する」

 (ニコが金剛たちに背を向けると、その正面にある巨大な円筒状の魔力槽の中の液体がコポリと泡立つ)

不知火「司令……!」

金剛「テートク……!!」

大和「提、督……っ!!」ポロポロ

(巨大な円筒状の魔力槽の真ん中に、身体が完全に元に戻った提督が目を閉じたまま浮かんでいる)

19: 2018/01/04(木) 18:21:02.33 ID:rW2Sb/7eo

大和「提督……また、生きて、そのお顔を……見ることができるなんて……っ!!」ポロポロポロ

金剛「Nico , 提督の復活は、もう間近なのデスネ?」

ニコ「……」コク

金剛「わかりまシタ、私はもう止めまセン」

不知火「金剛さん……」

金剛「私もテートクと、お話がしたいデス。これからのことは、みんなで話し合って決めまショウ?」

金剛「皆さんもよろしいデスカ?」

大和「大和は……提督に、従います」

雲龍「私もそれでいいわ」

龍驤「早っ!? もちっと考えんかい!」

陸奥「まあ、選択肢はあってないようなものじゃないの?」

龍驤「せやなあ……なあニコちゃん? 復活した提督は、まともに話ができるんやろな?」

ニコ「当然だよ。魔神様の頭の中を弄るようなことは絶対にしない」

龍驤「そっか。なら、ええわ」ニコ

五月雨「私からも、お願いします!」ペコッ

陸奥「私もよ。邪魔するような野暮はしたくないわ」

吹雪「みんな……!」

20: 2018/01/04(木) 18:21:52.02 ID:rW2Sb/7eo

ナンシー「良かった……これでまたマスターとお喋りできるね!」

如月「ええ……!」ウルッ

不知火「ニコさん。よろしく、お願い致します」ビシッ

ニコ「……わかった」ニコッ

ニコ「もうすぐ。もう少し魔力を魔神様に注げば、魔神様が目覚められる。さぁ、仕上げに入るよ」スッ

全員「「……」」ゴクリ


 バッ!!


ニコ「!?」ガッ!

陸奥「え!?」

後ろから腕で首を絞められるニコ「ぐ……ぇ!?」ギチッ

ルミナ「ニコ君!」

不知火「何故……あなたがそんなことを!?」

 ドタドタドタ

摩耶「おいおい、なんだよこりゃあ……」

榛名「い、いったい何があったんですか!?」

 バタバタバタ

利根「ル級よ、これはどういうことじゃ!?」

ル級「コレハ……!」

神通「……ニコさん!」

21: 2018/01/04(木) 18:23:04.56 ID:rW2Sb/7eo

大和「ニコさんを離しなさい! 軽巡棲姫!!」

軽巡棲姫「……来ルナ。コイツガドウナッテモ知ラナイワヨォ……!?」

ニコ「あ……が……!」ギュウゥ

ナンシー「ニコちゃん!!」

金剛「どういうことデス!? あなたは提督と会いたくないのデスカ!?」

軽巡棲姫「黙レ。オ前タチコソ、提督ノコトヲ何モワカッテイナイ……!」

武蔵「これはどういうことだ……!」

ヴェロニカ「あの子、向こうの世界でもずっと坊やのそばにいたはずよ」

カトリーナ「なんで魔神様の復活を邪魔するんだ!?」

軽巡棲姫「私ハ……提督ヲズット見テキタノ……ダカラワカル」

軽巡棲姫「提督ハ……自身ノ復活ナンカ望ンデイナイ、ト……!」

大和「何を根拠にそんなことを!」

軽巡棲姫「根拠? ソレナラ、アノ燃エ盛ル島デ私ダケヲ助ケタノハ、ドウシテ!?」

軽巡棲姫「アノ方法デ、自分ノ体モ島ノ外ヘ出ソウトシナカッタノハ、ドウシテ!?」

軽巡棲姫「アノ人ハ……提督ハ、終ワリニシタカッタノヨ。永遠ニ、眠ルツモリデイタノヨォ……!」

軽巡棲姫「彼ノ復活ハ、アクマデ、オ前タチノ望ミデシカナイノ……提督ノ望ミハ、安ラカナ永遠ノ眠リ……!!」

軽巡棲姫「ソレヲ、オ前タチハ、ワザワザ寝タ子ヲ起コスヨウナ真似ヲシテ……!!」ギリッ

ニコ「っ……っ……!」ミシッ

22: 2018/01/04(木) 18:23:55.86 ID:rW2Sb/7eo

フウリ「あわわわ、ニ、ニコちゃんが……!」

不知火「ルミナさん、罠の力でなんとかなりませんか」ヒソッ

ルミナ「厳しいな。ニコ君をどうにかして引き剥がさないと、どのやっても巻き込んでしまうだろう……」

ルミナ「かといって罠の威力を手加減したんでは、軽巡棲姫君に通用しないだろうし」

ルミナ「しかも彼女たちの背には魔神君が入った魔力槽がある。砲撃して魔力槽に流れ弾が当たっては彼女の思う壺だ……!」

不知火「……しかし、このままでは……」

霧島「確かに埒が明きませんね……」ジリッ

摩耶「霧島さん、迂闊に突っ込むなよ。軽巡棲姫もフォージド兵を積んでるかもしれねーんだ、何を仕掛けてくるかわかんねえぞ」

軽巡棲姫「ふぉーじど兵? フフフ……ソンナモノ積ンデイナイワ。私ガ持ッテイルノハ、コレヨォ……?」バッ

 捕獲牢<ガシャン!

加古「なんだあのでかい鳥カゴ!?」

タチアナ「あれは人間を捕獲するときに使う道具です。何故彼女があれを……?」

軽巡棲姫「……」スッ

ニコ「……っ!?」

軽巡棲姫「フッ!」ボディブロー

 ドボッ

ニコ「えぅっ……!」ガクッ

23: 2018/01/04(木) 18:25:16.73 ID:rW2Sb/7eo

軽巡棲姫「アナタハ、コレニ入ッテナサイ……!」ポイッ

ニコ(気絶)「……」ガシャン

ルミナ「ま、まずいぞ! 早くニコ君を助けるんだ!!」

 魔力槽<ゴポッ

鳥海「!? 司令官さんの魔力槽の様子が変です!」

 魔力槽<ゴポゴポゴボボッ

五月雨「み、見てください! あの水槽の中の水が、沸騰してるみたいに泡立ってます!」

ルミナ「魔力の暴走だ……あの魔力槽の魔力をコントロールしているのはニコ君なんだ!」

ルミナ「そして捕獲牢は、捕まえた相手を無力化するために、体力や魔力を吸収する力がある……!」

陸奥「コントロール不能ってことじゃない……提督もニコちゃんも危ないってこと!?」

金剛「Goddamned !! すぐにあの Cage を壊さないと!!」ジャゴッ

如月「駄目よ! ここからじゃニコちゃんや提督の魔力槽にあたっちゃうわ!」

金剛「でも!!」

軽巡棲姫「ソウヨ! モウ、遅イノヨォォオ!!」ジャキッ

ジェニー「ちょっと!? あの子、魔力槽を撃つ気!?」

五月雨「やめてえええ!」

24: 2018/01/04(木) 18:26:41.64 ID:rW2Sb/7eo

 ドガガガァァン

 魔力槽<ドガァァン

パメラ「う、うそでしょ!?」

長門「なんだ……なにをしているんだ軽巡棲姫は!」

朧「提督……っ!!」

川内「あ、あいつ、何やってんの!?」

 魔力槽<ドガァァァン

ハナコ「魔神様が……!」

ル級「……アノ子、ナンテコトヲ……!」

若葉「見てる場合じゃない! 軽巡棲姫を止めるぞ!!」ダッ

神通「い、いけません! あの設備から離れてください!」

 魔力槽<バチッ バチバチッ

龍驤「機械から火花が……退避! 総員退避や!!」

大和「そんな……提督!!」

金剛「もう間に合いまセン!! 大和、伏せて!!」グイッ

如月「提督!!」

不知火「如月も!! 早く!」ガシッ

25: 2018/01/04(木) 18:27:40.53 ID:rW2Sb/7eo

陸奥「あなたたちも伏せて!」ガバッ

ナンシー「きゃっ!?」

ルミナ「しかしこのままではニコ君が!」

ディニエイル「駄目です! 行けばあなたも巻き込まれますよ!」

ノイルース「ケイティー、あなたも伏せなさい!」

ケイティー「いや! 嫌ああああ! 旦那様あああああああ!!」

イブキ「リンダ! もっと気合入れて押さえつけろっての!」

リンダ「やっとるわ! こいつが馬鹿力やっちゅーねん!」

吹雪「……うああああっ!」ダッ

金剛「ブッキー!? Where aru you going !? Come back !!」

吹雪「ニコちゃんっ!」ガシッ

ニコ(気絶中)「」

吹雪「ニコちゃん! 目を覚まして!! ニコちゃん!」ガシャガシャッ

ニコ(気絶中)「」

軽巡棲姫「来ルナッテ言ッタデショウ……道連レハ、私ダケデ良ヨカッタノヨ?」ニコ…

 ゴゴゴゴゴゴ…

吹雪「あ……!」

 ドゴォォォォォンン…!



26: 2018/01/04(木) 18:28:17.85 ID:rW2Sb/7eo
今回はここまでです。

PCがぶっ壊れたときはエタりそうになりましたが、なんとか復活しました。
今年もよろしくお願いいたします。

29: 2018/01/16(火) 22:14:18.97 ID:B82l4vGio
それでは続きです。

30: 2018/01/16(火) 22:15:06.85 ID:B82l4vGio

 * 少し時間を遡り、施設内 連絡通路 *

 タッタッタッタッ…

那智「ということは、提督は魔神として覚醒するかもしれないわけだな?」

シルヴィア「うーん、そうかもしれないけど、そうならないようにコントロールしてるって聞いてるわよ」

アーニャ「その辺はニコちゃんが厳しくチェックはずだよー!」

足柄「んー、確かにあの子は提督にご執心だったみたいだし。信じていいのかしら」

最上「僕は信じてあげたいな」

筑摩「そうですね、ニコちゃんは提督とキスして満更でもなかったみたいですし」

三隈「そ、そんなことがあったんですか!?」

千歳「何それ詳しく」キュピーン

ミーシャ「あ、あれは、半分事故みたいなものですよ。ジェニーさんが後ろから押したせいで……」

五十鈴「っていうか、今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」

初雪「早く行って早く帰りたい……ぶっちゃけ、悪い予感しかしないし」

 ズズズズ…

朝雲「ちょっ……なによ今の地響き!」

山雲「下から響いてきたわ~。何かの爆発かしら~?」

由良「まさカ!? もう戦う理由なんテないハずよ?」

31: 2018/01/16(火) 22:16:52.55 ID:B82l4vGio

古鷹「加古は大丈夫かな……」

筑摩「私も利根姉さんが心配です! ああ、利根姉さん! 利根姉さあああん!!」

ミーシャ「メ、メディウムのみんなも心配です……!」

那智「この先、何が起こるかわからん。引き返すなら今のうちだが、大丈夫か?」

五十鈴「ここまで来てその質問は愚問だわ!」

黒潮「どうせ引き返すんなら、司令はんのところへ引き返さなな!」

伊8「大淀サんと明石さんモ、いイの?」

大淀「無理言ってついてきたんです、最後まで見届けさせてください!」

明石「戦闘は無理ですけど、修理ならできますよ!」

千歳「先に行ったみんなも心配だわ、急ぎましょ!」

那智「ああ、急ご……」

 ズズゥン

「「!!」」



32: 2018/01/16(火) 22:18:23.66 ID:B82l4vGio

 * 施設内 地下の広間 *

「「……」」

雲龍「……」ムク

龍驤「くぅ~……えっらい爆風やったなあ……」

陸奥「……機械が完全に壊れてるわね」

龍驤「雲龍、無事やったか?」

雲龍「ええ。でも、背負ってた泊地棲姫がちょっと」

泊地棲姫「」カミノケボサボサー

龍驤「……あの爆発で目ぇ覚ましとらんのかいな」

泊地棲姫「覚マシタワヨ……」

龍驤「おぉ、ならええわ」

泊地棲姫「チョット……ナンナノ、コノ仕打チ」イタタ…

陸奥「ほったらかしにされなかっただけ良かったと思いなさいよ。今はそれどころじゃないんだから」

泊地棲姫「ナニガアッタノヨ……」

煙<モワモワ…

ディニエイル「これは……」

33: 2018/01/16(火) 22:19:46.73 ID:B82l4vGio

不知火「この状態では、もう動かしようがなさそうですね」

破裂して火花をあげる魔力槽<バチッバチバチッ…

リンダ「それより、魔神はんはどこへ行ったんや……!」

イブキ「見ろ! 吹雪が倒れてんぞ!」ダッ


倒れている軽巡棲姫(損壊)「」

倒れている吹雪(瀕氏)「」

捕獲牢<キュラン キュラン キュラン


ナンシー「ニコちゃんの捕獲牢が上に登っていくわ!」

ルミナ「とにかくニコ君を助けよう、それに吹雪君の治療もしないと……軽巡棲姫君も捕らえておくべきだな」

ケイティー「そんなことより旦那様は……旦那様はどこへ!? どこに隠したのルミナ!?」

金剛「お、落ち着くデース! 私たちと一緒に探しまショウ!」オロオロ

如月「……でも、あの爆発があったんじゃ……」グスッ

大和「……てい、とく……こんなのは、あんまりです……あんまりです……!!」ポロポロ

ノイルース「……」

雲龍「? あなた、どうかしたの?」

34: 2018/01/16(火) 22:20:51.24 ID:B82l4vGio

ノイルース「変だと思いませんか。魔力槽の中に満たされていた魔力の水は、どこへ行ったのでしょう」

陸奥「そういえば……あれだけ大きな水槽なのに、水飛沫も何もなかったわね」

五月雨「全部蒸発しちゃったんですか?」

陸奥「そんなことになったら、飽和した水蒸気がこの建物を吹き飛ばしてると思うわ」

 スピーカー<ビービー! ビービー!

全員「!?」

放送『非常事態発生、非常事態発生』

放送『設備の故障により、館内に異常を観測』

放送『各員、速やかに異常の対応を行うとともに、館内より退避してください』

放送『繰り返します、非常事態発生、非常事態発生……』

龍驤「なんやこの放送は」

ルミナ「設備故障時のアナウンスか。そんな機能まで備えていたなんて、すごいねここは」

泊地棲姫「……オイ」

ルミナ「ん? なにかな?」

泊地棲姫「吹雪ト軽巡棲姫ヲ、スグニコチラヘ連レテ来イ」

ルミナ「? それはなぜ……」

35: 2018/01/16(火) 22:23:28.67 ID:B82l4vGio

 ゾワッ

全員「「!?」」

泊地棲姫「急ゲ! ナニカ、ヤバイモノガ、ココニイル!!」

イブキ「や、やっべえ! リンダ、そっち頼む!」フブキセオイ

リンダ「ケイティーも早う逃げるで!」ケイジュンセイキセオイ

雲龍「……上だわ」

 ギュウウウウウウ…

ナンシー「空中に渦ができてる……!?」

五月雨「……な、なんなんですか、あの渦が放ってる、おぞましい雰囲気……!」ガタガタ

ノイルース「ニコさんが制御しきれなかった魔力が、人間の悪意に穢されているんです」

雲龍「……ごめんなさい、表現がわかりづらいわ」

ノイルース「……私たちの魔力は、人間の失意や悲憤を変換して作っています」

ノイルース「そのときの人間の感情が残ったままの魔力を使うことは大変危険です」

ルミナ「精油していない燃料は危険だっていうのと一緒だよ」

雲龍「それならわかるわ」

ノイルース「……こほん。とにかく、その不純物だらけの魔力が固まって、悪意をまき散らしながら渦巻いている……と、思われるのです」


36: 2018/01/16(火) 22:24:27.37 ID:B82l4vGio

摩耶「ちくしょう、さっきから何が起こってんのかわかんねえぞ!」

神通「提督は……提督はどうなったんですか……!?」

山城「扶桑お姉様、大変です! 那珂ちゃんの魔力槽に入っていた液体がなくなってしまいました!」

扶桑「……なくなった……!?」

那智「……おい、この部屋の有様はどういうことだ!」

シルヴィア「魔神さんはどうなったの!?」


 * 地下の広間の真上にある部屋 *

ミリーエル「魔神様のお部屋はこの次の地下5階です、急ぎましょう!」

コーネリア「ちくしょう! なんてざまだ!」タタタッ

グローディス「あたしたちが見張り番のときにこんなことになるなんて!」タタタッ

コーネリア「グローディス! お前のせいだぞ! お前があの時突っかかってきたせいで、あたしが外に追いやられたんだからな!」

グローディス「あぁ!? 突っかかってきたのはコーネリアだろうが!」

コーネリア「はぁ!?」ギロッ

グローディス「ああん!?」ジロッ

イーファ「け、ケンカしちゃやだよう……!」ビクビクッ

クロエ「その通りですおふたりとも! ケンカしている場合ではありませんよ!」

 ゴゴゥン…!

コーネリア「っ! なんだ、この真下から響いてきた、嫌な雰囲気の魔力は……!」

37: 2018/01/16(火) 22:25:29.63 ID:B82l4vGio

 * 施設内 地下の広間 *

 渦<ギュギィイイイイイ!

武蔵「うぐうう……なんだこの音は!」ミミフサギ

利根「いや、音も酷いがそれよりも……このえもいわれぬ寒気はなんなんじゃ!」

若葉「……あれは」

カサンドラ「ど、どうしたんです!?」

若葉「あの渦の中に、司令官の姿が見える……!」

オリヴィア「なんだって!?」

朝潮「……司令官……司令官っ!!」ダッ

霞「っ! 朝潮! 待ちなさいっ!」


ケイティー「旦那様……あの渦の中に旦那様がいたわ」

大和「ええっ!?」

金剛「それは本当デスカ!?」

ケイティー「ああっ、旦那様……今行きます! 今、あなたの胸に!!」ダッ

泊地棲姫「ナ!? ヤメロ! アノ渦ニ近ヅクナ!!」

 渦<ギョオオオオオ!

 ジュバァァァン!

朝潮「きゃ!?」

ケイティー「あっ!?」

38: 2018/01/16(火) 22:26:27.85 ID:B82l4vGio

千歳「……渦が猛回転して消えたわ」

五十鈴「確かにあの渦の中に提督の姿が見えた気がしたけど、あれはいったい……」


 グワッ


 ズズゥゥンン!


朝雲「きゃああ!?」ヨロッ

アーニャ「も、もう! 今度はなに!?」

フウリ「あ、あれ! 見てください! あれ!」

潮「……!? な、なにあれ……!!」



(壊れた魔力槽の前に、骨張った巨大な悪魔が片膝をついて屈んでいる)



霞「なんなのよ……あの、化け物は!!」

メリンダ「あれは……あれこそは……」


39: 2018/01/16(火) 22:27:56.70 ID:B82l4vGio

ノイルース「ええ。あれこそが、本来の魔神様の姿です」

金剛「あの Demon が!?」

大和「あれが……魔神!?」

ノイルース「はい。ツノや牙、そしてその巨躯。言い伝えにある通りです。ただ……」

不知火「ただ?」

ノイルース「本当はもっと筋肉質といいますか、あのような骨と皮だけの姿ではありません」

金剛「確かにあれでは Zonbie のようデス……」

雲龍「さっきの話の、不純物のせいかしら」

ノイルース「おそらくそうでしょう」

如月「それじゃ、あれが司令官なの……?」

ルミナ「そうなんだねノイルース君?」

ノイルース「……」

泊地棲姫「私ニハ、ソウハ思エナイガ?」

如月「え!?」

泊地棲姫「アノ骨悪魔カラ感ジ取レルノハ、人間ノ悪意ダケダ。アレガ提督ト同ジトハ思エナイ」

40: 2018/01/16(火) 22:29:02.19 ID:B82l4vGio

ディニエイル「本当ですか……!?」

ノイルース「……魔力の穢れが消えていません。それどころか、あの姿になってますます穢れが増幅しています」

ノイルース「人間だった頃の魔神様と、同じお考えを持つ存在かと問われれば、疑わしいと答えざるを得ません」

大和「提督……!」


朝潮「……し、司令、官……?」

ケイティー「旦那様……」

魔神「……GRR……」

魔神「GWOOOAAAA!!」グオッ

ルミナ「魔神が……」

不知火「立ち上がった!?」

 バキ! バキバキバキ!!

イブキ「お、おい! 天井をぶち破ってるぞ!!」

如月「待避! 待避して!!」

陸奥「みんな逃げるわよ!!」

 バキバキバキバキーーッ!!

「「「うわああああああ!?」」」

41: 2018/01/16(火) 22:31:15.86 ID:B82l4vGio
今回はここまで。


今回出した魔神のイメージは、一般的な悪魔像から
筋肉を取っ払ってガリガリになったイメージでお願いします。

45: 2018/02/06(火) 22:45:49.82 ID:3LqtVnAVo

 * 地下の広間の真上にある部屋 *

 ズズゥン

コーネリア「地震か!? でかいぞ!」

 メキメキメキ…

クロエ「! 違います、見てください! 床が!!」

ミリーエル「下から何かが上ってきています!」

 バキバキバキバキーッ

グローディス「で、でかい顔がせりあがってきた!?」

ミリーエル「あれは……魔神様のお顔!?」

コーネリア「なんだと!?」

クロエ「この部屋の天井まで突き破る勢いです! 床が崩れますよ! 早く避難を!」

グローディス「ボケっとしてないで急ぐぞミリーエル!」

ミリーエル「は……はい!」

イーファ「お、おいてかないでぇ!!」

46: 2018/02/06(火) 22:46:43.69 ID:3LqtVnAVo

 * 地下の広間 *

 ガシャーン ガラガラガラ…

「「……」」

龍驤「げっほ、げほげほ……ああもう、滅茶苦茶や」パタパタ

イブキ「……おいおい、この部屋の天井どころか、その上のフロアまでぶち破ってるぜ……」

五月雨「見た目は骨と皮だけなのに、パワーはあるんですね……」

キュプレ「ニコちゃんは大丈夫なの?」

ルミナ「……一応、大丈夫みたいだね。捕獲牢は相変わらず宙ぶらりんだ」

金剛「入りっぱなしは体に良くないのでショウ?」

大和「早く助けてあげないと……!」

陸奥「それはいいけど、あの骨の魔神は味方なの? 敵なの?」

ナンシー「見て、魔神の足元! ケイティーと朝潮ちゃんがいるわ!」



朝潮「ケイティーさん、大丈夫ですか!」

ケイティー「え、ええ……私たち、無事だったのね」

朝潮「おそらく、司令官の足元にいたおかげで瓦礫の直撃を免れたんだと思います!」

47: 2018/02/06(火) 22:47:57.19 ID:3LqtVnAVo

ケイティー「つまり旦那様が守ってくださったのね! 旦那様ーー!」キラキラキラッ

朝潮「……ほ、本当なんでしょうか」

魔神「GR……」ギョロリ

朝潮「っ!」ビクッ

ケイティー「うふふふ……旦那様! さあ、わたしはこちらです……!」

魔神「GOAAA……!」ズシン ズシン

朝潮「ケ、ケイティーさん……!?」

ケイティー「あら、なにを恐れているの? 姿かたちが変わろうと、彼は私の旦那様……」

ケイティー「そのお姿に怖気付いて二の足を踏むようなことはしないのよ……!」

魔神「GWUUOOOO……!」

ケイティー「さあ旦那様……この私とともに……!!」リョウテヒロゲ

魔神「GRR……」カオチカヅケ

朝潮「し、司令官……本当に……司令官なんですか?」

 魔神の口<グパア

ケイティー「えっ」

48: 2018/02/06(火) 22:49:22.72 ID:3LqtVnAVo

 ガブゥ

朝潮「け、ケイティーさんっ!?」

 ガブッ ガシャッ…

カトリーナ「ケ、ケイティーが……」

リンダ「食われた!?」


「そんなことしちゃ、だめぇ~~っ!」

 スパイクボール<ヒュウウウウ…

魔神「GVAAA!?」ゴシャァ!

ケイティー(重傷)「」ドサッ


大和「な、なにかが魔神の頭に落ちてきましたよ!?」

イブキ「あ、ありゃあイーファか!?」

キュプレ「でも、今のでケイティーを吐き出したわ!」

グローディス(上のフロアから)「おーい、イーファ!」

ミリーエル(上のフロアから)「大丈夫ですか!?」

イーファ「う、うん! ぼくは大丈夫だよ! でも……」

49: 2018/02/06(火) 22:51:19.97 ID:3LqtVnAVo

朝潮「ケイティーさん! しっかりしてください! ケイティーさん!」ユサユサ

ケイティー「……だ、んな、さま……な、ぜ……?」

ケイティー「このよう、な、仕打ち、を……」ガクッ

朝潮「ケイティーさん! ケイ……」

イーファ「朝潮ちゃん、危ないっ!」ダンッ

朝潮「っ!?」ドサッ

 魔神の手<ズシィィィン!

「「!?」」

 シュウウ…

朝潮「な……イ、イーファさん……ケイティーさん!?」

イブキ「お、おい、うそだろ……イーファたちが、押し潰されちまった……!?」

ナンシー「……なんで……!? ルミナ、なんでマスターが、ケイティーたちを……!」

ルミナ「……わからない。訳がわからないよ」


朝潮「……司令官……どうして、どうしてこんなことを!」

魔神「GU……RRR……」

50: 2018/02/06(火) 22:52:17.56 ID:3LqtVnAVo

朝潮「司令官!!」

魔神「GAAAAAAAAAA!!」グワッ

 ドゴォォン!

魔神「!?」グラッ

朝潮「ほ、砲撃!? 誰ですか!?」

山城「ふ、扶桑お姉様!? なにをしてるんですか?!」

扶桑「……」

金剛「扶桑!? アナタが撃ったんデスカ!?」

朝潮「な、なぜです扶桑さん!?」

扶桑「……朝潮。あれは、提督ではないわ」

朝潮「え……!?」

山城「な、なにを言ってるんですか扶桑お姉様……」

扶桑「見てくれはメディウムたちの言う魔神と同じなのかもしれないけれど……」

扶桑「私たちの知っている提督は、自分の部下に手をあげるような方ではないわ。そうでしょう?」

山城「……扶桑お姉様……」

51: 2018/02/06(火) 22:53:29.74 ID:3LqtVnAVo

扶桑「メディウムのみんなもそう思うでしょう?」

扶桑「あなたたちの仕えるべき人が、あなたたちを殺そうとするなんて、どう考えてもおかしいわ……!」

ナンシー「……うん。そうだよ、あたしたちが期待していたマスターじゃないよ!」

如月「ナンシーさん……」

ナンシー「ニコちゃんだって、あんなマスターを望んでなかったはずよ!?」

扶桑「これでも、撃つのは躊躇ったのよ。でも、その躊躇いのせいで、イーファちゃんたちを助けられなかった……!」

エレノア「大丈夫よ、あの子たちは無事だから」スッ

扶桑「!」

エレノア「こういう時のために『帰還の指輪』と『魔法石』があるの。私たちだって丸腰じゃないのよ」

ルイゼット「先程、指輪の力によってこちらの部屋に帰還した二人が、魔法石で回復したのを確認しました」

朝潮「ほ、本当ですか!?」

ルイゼット「はい。ですので、どうぞご心配なく……!」ニコ

エレノア「一回きりの使い捨てだから、もう無理はさせられないけどね」

扶桑「そう……でも、良かったわ」

エレノア「ところでルイゼット、扶桑の意見ってどう思う? 私もあの魔神様からは嫌な臭いしかしないんだけど?」

ルイゼット「そうですね……きつい人間のにおいがします」

山城「人間……ですって……!?」

52: 2018/02/06(火) 22:54:28.81 ID:3LqtVnAVo

ルミナ「ということは、ノイルース君? やはりあの魔神は……」

ノイルース「不純物が生み出した混ぜ物のまがい物、ということでしょうか」

魔神「GRRRRR……!」ムクリ

大和「魔神が目を覚ましたわ……!」

武蔵「よし、総員、砲戦用意! 武蔵に続け!!」ガシャッ

全員「「!」」

武蔵「目標、正面の巨大魔神! 我々にも、メディウムにも、これ以上の被害は出させん!」

摩耶「おうっ!」ガシャッ

霧島「はいっ!」ガシャ

比叡「了解です!」ガシャッ

加古「よっし!」ガシャッ

利根「やるしかあるまい!」ガシャッ

ル級「……」ジャキッ

泊地棲姫「……私モ、付キ合ウワ」ジャキッ

大和「は、泊地棲姫……あなたもですか!?」

53: 2018/02/06(火) 22:55:21.93 ID:3LqtVnAVo

泊地棲姫「アア。アレハ提督デハナイ。タダノ、ニンゲンダ」

金剛「What !?」

大和「そ、それはどういう……」


魔神「GWAAAAA!!」


長門「全てのメディウムたちは耳を塞げ! 対ショック防御!!」

ルミナ「みんな伏せるんだ!!」ミミフサギ

ナンシー「!」ガバッ

リンダ「ま、またかいな!」ガバッ

武蔵「よし……構え!!」ジャコッ

魔神「GWOOOOOOOOAAAAAA!!」グワッ

武蔵「撃てええ!!」


 ズドドドドドドーン!


54: 2018/02/06(火) 22:56:20.62 ID:3LqtVnAVo

 煙<モワァァァ…


龍驤「うえっほ! げっほげっほ! 今日何回目や、これ!」

五月雨「ど、どうなったんでしょう……」ミアゲ

顔が吹き飛んだ魔神「」

五月雨「うひゃあああああ!?」ビクーッ

陸奥「や、やったのかしら」

魔神「」グラッ

魔神「」ズズゥン…!

イブキ「倒した……のか?」

陸奥「一応はそうみたいだけど……?」

大和「! み、見てください! 魔神の……断面のところ!」

ナンシー「なにこれ……ゼリーみたいに、中がうっすら透けて見えるわ!」

ノイルース「なるほど、そういうことですか……ルミナ、わかりましたよ。この魔神の正体が」

ノイルース「この魔神の体を構成しているのは、あの魔力槽を満たしていた、緑色の液体です」

ルミナ「……!」

55: 2018/02/06(火) 22:57:34.19 ID:3LqtVnAVo

リンダ「ど、どういうことなん?」

ルミナ「私たちの魔力は、人間の負の感情を変換して作っていることはさっきも言ったね?」

ルミナ「その変換と管理を担うニコ君が捕獲牢に閉じ込められてしまったために、魔力槽の液体の管理者がいなくなってしまった」

ルミナ「するとどうなるか。液体に残った人間どもの思念の残滓が、魔力を使って自分たちの恨みを晴らそうとしたんだろう」

ルミナ「魔神君を媒体にして人型を作り出し、出来損ないの魔神を作り上げた……こういう推察をしたんだが、どうだろうか?」

ノイルース「ええ、良いところではないでしょうか」

五月雨「だからあの水槽が割れた時に、私たちが濡れなかったんですね……!」

キュプレ「骨みたいな姿で現れたのはどうして?」

ノイルース「液体の総量が足りなかったのかもしれません。それか、魔力が不足したかでしょう」

如月「じゃ、じゃあ、この断面からうっすら見えるあの影は……」

ノイルース「おそらく、この魔神を作るための核にされた、魔神様です」

金剛「すぐ助けマショウ!!」

ルミナ「待ちたまえ、なんの防護もしていないのに、不純物の混ざった魔力の塊に手を突っ込む気かい?」

泊地棲姫「ソウヨ。スグニ離レナサイ」ジャキッ

大和「え?」

56: 2018/02/06(火) 22:58:33.96 ID:3LqtVnAVo

雲龍「危険よ。殺気は、まだ氏んでないわ」

 ズズッ

五月雨「!!」

加古「おいおい、砲撃で飛び散った破片が、スライムみたいにずるずる寄ってきてるぞ!」

摩耶「うへ、気持ち悪ぃ……!」トリハダ

 ズズズッ

霧島「まさか、ここから復活すると言うの!?」

武蔵「……冗談だろう?」

 ズズズズッ

ル級「顔ガ、復元シテイク……!」

利根「こ、これではどうやって倒すのじゃ!?」

扶桑「なんてこと……!」


魔神「……」ムクリ


魔神「GOAAAAAAAAAAAAAAA!!」


60: 2018/02/25(日) 18:10:30.12 ID:5UdMzLxlo

 * 広間の上の階 *

グローディス「……なんてこった」

コーネリア「魔神様があのスライムの中に取り込まれてるってことか」

ミリーエル「どうにかして再生できない方法を考えないといけませんね」

クロエ「ですが、どうやって?」

 * 広間 *

朝雲「こ、こんなのどうすればいいのよ!」

霞「戦艦や重巡が一斉砲撃したのに、吹き飛んだのが頭だけじゃあ、焼け石に水じゃない!」

山雲「……んー、どうにかして、ただの水に戻せればいいんだろうけど~」

青葉「ですが、どうやって……」ウーン


那智「……ルミナ。ニコはどこにいるんだ?」

ルミナ「ん? あ、ああ、那智君か。ニコ君はあそこだよ」ユビサシ

 空中に浮いたままの捕獲牢「」フワフワー

足柄「あ、あの鳥籠の中?」

61: 2018/02/25(日) 18:12:35.58 ID:5UdMzLxlo

那智「あの水を管理していたのは彼女だろう? なら、管理者を助けて、なんとかしてもらうしかないな」

千歳「それこそどうやって!?」

那智「あの籠を落とす」ジャコッ

ニーナ「ちょ、ちょっと、砲撃で落とそうとするのは無理があります!」

那智「……底をぶち抜くのはやはり駄目か」

ルミナ「意外と脳筋なんだね……」

那智「ならばやはり、あの天井の近くまで飛んで、虚空につながっている鎖を切るしかないか」

ルミナ「うん、それなら可能じゃないかな」

足柄「でも、飛ぶってどうやって!?」

那智「クリスティーナだったか? スプリングフロアで飛ばせないか?」

クリスティーナ「私はライジングフロアよ。でも、残念だけどあんなに高いところへは飛ばせないわ……」

那智「そうか……それならヒューマンキャノンはどうだ?」

ヴィクトリカ「んん? あたしの出番か? 仰角の計算はできねえけど、それさえOKなら行けると思うぜ?」

那智「ああ、角度調整は任せてくれ。あとはあの鎖を切る役だが……」

ヴィクトリカ「シエラあたりがいいんじゃねえか? デスサイスなら切れるだろ」

シエラ「ヒィッ!?」ビクッ

62: 2018/02/25(日) 18:14:02.20 ID:5UdMzLxlo

ヴィクトリカ「ほらシエラ、隠れてないで出てこいよ」グイグイ

シエラ「ま、待ってほしいのデス! 高いところは苦手なんデスゥゥ!!」ズルズル

那智「なに、飛ぶのは一瞬だ。それに時間がない」チラッ


魔神「GOOAAAAAA!!」ドカーーン

「「きゃあああ!」」

魔神「WOOOOAAAA!!」ガシャーン

「「うわあああ!」」


那智「頼む。私と一緒に飛んでくれ」

シエラ「……わ、わ、わかったデス……手短にお願いするデスゥゥ……」プルプルプル

足柄「そうと決まれば援護するわよ!」

ルミナ「みんなも艦娘の援護を!」

那智「それと、力自慢を集めてくれ! あの籠を叩き落としたときに、受け取り手が必要だ!」

オリヴィア「そういうことならまかせときな!」

カトリーナ「あたしたちが行くぜ!」

長門「……よし、私も行こう」

63: 2018/02/25(日) 18:14:58.60 ID:5UdMzLxlo

敷波「だ、大丈夫なの!?」

長門「ああ、修復材をもらったからな。あの籠を受けるくらいはできる」

長門「敷波は、私たちがあの籠を受け取れるように、白露と島風と協力してあの魔神を撹乱して欲しい」

敷波「……うん、わかった」

長門「白露と島風も、頼めるか?」

白露「うん、まかせて!」

島風「気を引けばいいんだよね!?」

ニーナ「大丈夫なんですか?」

長門「この二人の素早さなら、あの巨体に捕捉される危険は少ないだろう」

ルミナ「うん、まずはニコ君を助けよう。それから魔神君の動きを封じて、ニコ君の力で解呪する……」

ルミナ「解呪自体ができるかどうかはわからないが、今はそれに賭けるしかないね」

ノイルース「ええ、逃げるにしても、ニコさんを置いていくわけにはいきません」

長門「そうだな。いずれ体勢を立て直すにしても、ここにいる誰ひとり欠くわけにはいかない」

那智「よし、腹は決まったな。ヴィクトリカ、シエラ、頼むぞ……チャンスは一回きりだ!」

ヴィクトリカ「おう!」

シエラ「は、はいデスゥゥ……」ガクガクガク

潮(大丈夫なのかなあ……)

64: 2018/02/25(日) 18:15:58.44 ID:5UdMzLxlo

シルヴィア「うーん……」

ミーシャ「し、シルヴィアさん? どうしたんですか?」

シルヴィア「え? ああ、一発勝負は危険よね、って思って」

アーニャ「それはそうだけど、ほかに方法ってあるかなあ?」

シルヴィア「……何度も切りかかれるチャンスが作られればいいのよね」ジッ

アーニャ「?」

ミーシャ「?」


武蔵「くっ、この武蔵がここまで手こずるとはな!」ドガーン

金剛「こちらの砲撃に対する reaction が良くなってきていマス!」

霧島「学習しているということですか……面倒ですね!」

白露「力技が通用しなくなったんなら!」バッ

島風「スピードでかき回しちゃうよ!」バッ

陸奥「あなたたち……!」

65: 2018/02/25(日) 18:17:20.67 ID:5UdMzLxlo

魔神「GR……!」

白露「一番に突っ込むよ!」ドドドドドド

島風「おっそーい!」ドドドドドド

魔神「WOOO……!?」キョロキョロ

白露「真後ろ取ったよ! いっけえええええ!!」ギョライナゲツケ

島風「T字有利だね! いっちゃってええ!」バクライシュート

 ドガガガン

魔神「!! GAAAAAA!!」ブンッ

白露「当たらないよーっ!」ダッ

島風「速きこと、島風のごとし、なんだから!」ダッ

イブキ「すっげえ……ちょこまか駆け回って常に一方が背後を取り続けてるぜ」

那智「よし、今のうちだ! ヴィクトリカ、頼む!」

ヴィクトリカ「よおっし、任せときな!」

 ヒューマンキャノン<ズオッ

那智「!」スポッ

シエラ(in那智の艤装)「ひっ!?」

那智「……いざ入ってみるとちょっと怖いな」

66: 2018/02/25(日) 18:20:15.89 ID:5UdMzLxlo

ヴィクトリカ「角度はこんなもんか?」

那智「そうだな、もう2度ほど下げてくれ。よし、これでいい」

シエラ「だ、だ、大丈夫なのデスか?」

那智「ああ、大丈夫だ」

長門「我々も準備できたぞ!」

カトリーナ「いけるぜ!」

ヴィクトリカ「うっし、じゃあ行くぜ! 発射あああ!」

 ヒューマンキャノン<ズドーーン!

那智「うおおおおおお!?」ギューン

シエラ「ひいいいいいいい!!」

カトリーナ「いいぞ、一直線に向かってる!」

那智「……シ、シエラ! いけるか!?」

シエラ「は、は、はいデスゥゥゥ!!」ジャコッ

那智「……よし、今だ!!」

 デスサイス<ヴンッ!

 捕獲牢の鎖<ジャギィィィィン!

那智「このまま……叩き切るっ!」

71: 2018/04/13(金) 00:39:30.62 ID:lRo1KpAIo

 デスサイス<ギリギリギリッ…!

那智「く……こ、このままでは、断ち切るのは無理か!?」

シエラ「だ、駄目デス、空中に飛んでいるせいで踏ん張りがきかなくて……」

 ヒュウウ…

シエラ「落ちるデスゥゥゥ!?」

千歳「那智!!」

シルヴィア「大丈夫よ、保険をかけたわ」

アーニャ「那智お姉ちゃん!」バッ

 クレーン<ガッシャッ!

那智「うお!? な、ナイスキャッチだアーニャ!」

シエラ「し、氏ぬかと思ったデスゥゥゥ……!」ナミダボロボロ

朝雲「でも、あのままじゃ埒が明かないんじゃない?」

足柄「そうね。鋏みたいに、反対側からも切り付けられればいいんだけど……」

シルヴィア「あら、そういうことなら試してみる?」

足柄「?」

72: 2018/04/13(金) 00:40:17.00 ID:lRo1KpAIo

那智「よし、シエラ、もう一回切りかかるぞ」

シエラ「そ、それはいいデスけど、アーニャは大丈夫なのデスカ?」

アーニャ「うーん、ずっと釣り上げっぱなしは疲れるんだよね。あと、衝撃でバラしちゃうかもしれないから、もって3回くらい、かな?」

那智「そうか、なら……」

 <チョットマッテーー!

那智「うん?」チラッ

 ハンギングチェーン<ジャララララッ!

逆さ吊りにされて引き上げられる足柄「あああああああああああああ!?」ゴヒャアアアア

ニーナin足柄の艤装「あああああああああああああ!?」ゴヒャアアアア

那智&シエラ「「!?」」

 ハンギングチェーン<ガッシャンッ!

足柄「おっふ……き、気持ち悪ぅい……」クラクラ

ニーナ「ミ、ミーシャ、もっとゆっくり上昇させて……」ウプッ

ミーシャ「す、すみません! 急がなきゃと思って……!」

73: 2018/04/13(金) 00:41:20.13 ID:lRo1KpAIo

那智「あ、足柄? どうしてお前まで……」

ニーナ「その捕獲牢の鎖ですが、切り付けた時にたわんでしまうから断ちづらいんだと思うんです」

足柄「だから、両側から挟み込むように切り付ければいいんじゃないか、って」

ミーシャ「シルヴィアさんが言ってました」

ニーナ「それで足柄さんにお願いして、わたしを乗せてハンギングチェーンで引っ張り上げていただいたんです」

那智「なるほど……つまりデスサイスとペンデュラムで挟み撃ちにするというわけか」

足柄「言い出しっぺのシルヴィアが来られればよかったのに」

ニーナ「艤装がある艦娘のみなさんだからこそ、私たちもこんなことができるんですよ」

那智「話は分かった。シエラ、もう一回行けるか?」デスサイスカマエ

シエラ「わ、わかったデス……!」

足柄「それじゃ、ニーナも行くわよ! 準備いい?」ペンデュラムカマエ

ニーナ「お任せください!」

那智「狙うは一点!」

 デスサイス<ヴンッ!

 ペンデュラム<ヴンッ!

ニーナ&シエラ「「切り裂け!!」デスゥゥゥ!!」

74: 2018/04/13(金) 00:42:32.78 ID:lRo1KpAIo

 捕獲牢の鎖<ジャギィィィィン!

那智「手ごたえは十分だ……!」ギリギリギリッ

 捕獲牢の鎖<ギリッ ミジミジミジッ…

足柄「鎖にひびが入ったわ!」

 捕獲牢の鎖<バキィィィン!

那智「や、やった!」

足柄「みんな、行ったわよ!!」

 捕獲牢<ヒュゥゥゥ…

武蔵「よし、あとは任せろ!」

大和「来ましたよ!」

陸奥「長門、もう少し下がって!」

長門「こ、ここか!?」

カトリーナ「来るぞぉぉ!」

オリヴィア「氏んでも落とすな!」

 捕獲牢<ゥゥゥウウウウ…!

6人「「今だ!」」バッ

75: 2018/04/13(金) 00:43:29.29 ID:lRo1KpAIo

 捕獲牢<ズガシィィィン!!

武蔵「ぐぅ……っ!」

長門「お、思ったより重たいな……!」

カトリーナ「ち、ちくしょう、ちょっとびっくりしちまったぜ」

陸奥「早く降ろしましょ! 中にいるニコちゃんが心配だわ!」

オリヴィア「手足の指に気をつけなよ!」

大和「はいっ!」

 ズズン

陸奥「……ふぅ」

長門「よし、あとはこじ開けるだけだ!」ガシッ

長門「……ふん……っ!!」

陸奥「長門?」

武蔵「なんだ情けない。代われ! むん……っ!?」

大和「……武蔵?」

76: 2018/04/13(金) 00:44:32.14 ID:lRo1KpAIo

オリヴィア「なんだい情けない。アタイのば」

ルイゼット「皆様、お下がりください」ズイ

大和「あ」

 ブンッ

 バギィン

長門武蔵「「」」

ルイゼット「これで良いでしょう」フゥ

オリヴィア「アタイの出番が……」

陸奥「ギロチンアクスで一撃……」

大和「ニ、ニコさんに当たったらどうするんですか!?」

ルイゼット「僭越ながら、余程のことがない限り、手元が狂うような失態は犯しません。ご安心くださいませ」ニコッ

武蔵(この武蔵が恐ろしいと思うとは……)

アーニャ「ところでさ、あたしたちそろそろ限界なんだよね」プルプル

ミーシャ「あの、二人とも降ろしていいですか?」ガクガク

カトリーナ「えっ」

77: 2018/04/13(金) 00:45:16.47 ID:lRo1KpAIo

アーニャ「釣り上げるのは得意なんだけど……」

ミーシャ「降ろすのは苦手なんです……」

 クレーン<パッ

 ハンギングチェーン<パッ

那智「」

シエラ「」

足柄「」

ニーナ「」

 ヒュウウウウ…

足柄「いやあああああああああ!?」

シエラ「」←すでに気絶中

那智「きゅ、急に離すな……うわあああ!」

ニーナ「だ、誰かあぁぁぁ!!」

 マジックバブル<プクー

那智「!?」ポヨーン

 スノーボール<ズシーン

足柄「!?」ズボフ!

78: 2018/04/13(金) 00:45:53.69 ID:lRo1KpAIo

メアリーアン「なんとか間に合っただか?」

レイラ「そうみたいですね。那智さん、シエラ、大丈夫ですか?」

那智「あ、ああ、私はいいが……おい、シエラ」ユサユサ

シエラ「ウ、ウウゥ……はっ!? こ、ここは地獄なんデスか!?」ビクッ

那智「なんで地獄なんだ……」

ルイゼット「こちらはコキュトス(極寒地獄)のようですが?」チラッ

足柄(スノーボールに埋まり中)「ずっと逆さ吊りだったから、頭を冷やすにはちょうどいいわ……」

ニーナ「御風邪をひく前に出たほうがいいと思います……」タラリ

大和「それよりも、せっかく助かったニコさんがひどく衰弱しています!」

カトリーナ「魔力槽がぶっ壊れちまったからな、どうする?」

朝雲「バケツ使えないかしら」

レイラ「……それだわ」

朝雲「え!? 冗談のつもりで言ったんだけど!?」

レイラ「あなた方の修復剤じゃなくて、私たちの、よ」

ルイゼット「なるほど、魔法石ですね!」

79: 2018/04/13(金) 00:46:55.43 ID:lRo1KpAIo

陸奥「魔法石って?」

オリヴィア「これだ」ゴソゴソ

武蔵「おい今どこから取り出した」

オリヴィア「細かいことはいいじゃないか。この石はその名の通り魔法の力を蓄えた石なんだ」

レイラ「そう、私たちが体力を回復するためにみんなが持っているこの石を集めて、ニコちゃんに使うのよ」

電「その話、本当なのですか?」タタタッ

カトリーナ「ああ、アタイたちメディウムは、魔法石がありゃあ体力も魔力も回復できるからな。今なら電も使えると思うぜ」

長門「いや待て、そうするとお前たちが怪我をしたら治せなくなるのか!?」

レイラ「ニコちゃんを失えば魔神様の制御もままならないわ。そうなれば私たちも共倒れよ」

カトリーナ「心配すんなって! 転送の指輪も全員持ってるし、やばくなったら逃げて隠れてりゃいいんだ!」

レイラ「それより早く魔法石を! ニコちゃんが捕獲牢に閉じ込められていた時間が長すぎて、魔力が枯渇しているわ!」

カトリーナ「お、おう、そんじゃあアタイのも使ってくれ!」ゴソゴソ

武蔵「だから今どこから取り出したんだ」タラリ

ルイゼット「では私はみなさんから集めてまいりましょう」

80: 2018/04/13(金) 00:47:55.31 ID:lRo1KpAIo

電「私のも使ってほしいのです!」ゴソゴソ

ルミナ「待ちたまえ。電君の魔法石は取っておいて欲しいんだ」

電「え……!?」

カトリーナ「ルミナ!? なんでだ!?」

ルミナ「電君は元艦娘のメディウムだ。私たちと、艦娘たちと、そして魔神君を繋ぐ架け橋のような存在だ」

ルミナ「こう言っては非科学的だが、その稀有な存在が持った魔法石が、何かを起こしてくれないか、という希望的観測もある」

那智「おい、それよりも急いでくれ!」

ニーナ「魔神様が……!」


魔神「GOOOAAAAAAAA!!」メキメキメキ

 バサァッ

島風「羽が生えた!?」

白露「飛んで逃げるなんてずるい!!」

イブキ「言ってる場合かよ!?」

魔神「GWOOOOOO!!」

 イビルスタンプ<ズドガァァン

白露「踏みつけぇぇぇ!?」フットビ

島風「意外とシンプルーー!!」フットビ

リンダ「ええからはよ逃げーや!」ダッ

金剛「ブッキーは確保オーケーデース! 全員、一時退避ネー!」ダッ

81: 2018/04/13(金) 00:49:01.76 ID:lRo1KpAIo

摩耶「……ちくしょう、これ以上好きにさせてやるかよ!」ガシャッ

鳥海「摩耶!?」

摩耶「あんなの、ブチ落としちまえばいいんだろ!?」

魔神「WRRR……!!」ギロリ

摩耶「!」ビクッ

魔神「GAAAAAA!!」カッ

 魔神ヘルレーザー<ズバーーーー

摩耶「うわああああ!?」

 バジュンッ

鳥海「摩耶!!」

摩耶「っく……あ、あれ? なんともねえ」

??「……」

鳥海「あ、あれは……!?」

??→フォージド兵「……」シュゥゥゥ…

摩耶「あ、あたしが載せてた、ブラッディシザーのフォージド兵じゃねえか!?」

フォージド兵「……」

摩耶「わ、悪い、助かったぜ……」

 パキン

82: 2018/04/13(金) 00:49:28.85 ID:lRo1KpAIo

鳥海「金色の鎧が……」

 パキパキッ バラバラバラッ

フォージド兵→Fオボロ「……」

摩耶「お、オボロと同じだって……!?」

オボロ「かの者はフォージド兵。それがしの偽物にござる」

摩耶「偽物……!」

Fオボロ「……」ボソボソ

オボロ「……うむ。あいわかった」

摩耶「お、おい、何か言ったのか!?」

オボロ「それがしはここまで。御屋形様を頼む、と」

摩耶「!」

Fオボロ「……」ニコ

 パシュウウウ…!

鳥海「……消え、た……?」

摩耶「あたしのせいで……っ!」ギリッ

オボロ「摩耶殿」

摩耶「ああ、わかってるよ……頭を冷やさなきゃな。くそっ!」

89: 2018/07/22(日) 22:55:22.94 ID:+CGbpl6vo

ニコ「……ここ、は……」

ナンシー「ニコちゃん!」

長門「目を覚ましたか!」

大和「良かった……!」

ニコ「……なにが、あったの……ぼくは……痛っ」ズキッ

ノイルース「ニコさん、あなたが捕獲牢に閉じ込められてから、魔神様が不完全な形で復活しました」

ニコ「!」

ノイルース「人間どもの思念が魔力槽の液体に残留したためです。奴らは魔神様を取り込み、魔神像を模倣した姿で暴れています」

ナンシー「大変だったんだから! ケイティーやイーファも氏んじゃうところだったし!」

ニコ「魔神様が……ぼくたちを、攻撃してるって……?」

ノイルース「はい。提督としての部下だった艦娘もメディウムも見境なく」チラッ



千歳「みんな、艦載機の援護をお願い!」

伊勢「え、援護って言われても……!」

魔神(飛行中)「GOAAA!!」バサバサッ

 ブワァァァ!

五十鈴「きゃっ!? な、なによこの突風!!」

90: 2018/07/22(日) 22:56:23.00 ID:+CGbpl6vo

伊勢「翼で風を起こすことまで覚えたの?!」

日向「くそ、これでは瑞雲も飛ばせないぞ」

朝雲「山雲、後ろに回り込むわよ!」

 魔神ヘルレーザー<コォォ…

筑摩「! 待って! 二人とも下がって!!」

山雲「朝雲姉!!」バッ

朝雲「きゃあ!?」ガシッ ゴロゴロゴロ

 魔神ヘルレーザー<ズバーーーー

朝雲「ひ、ひえええ!?」

五十鈴「砲撃で援護するから、早く避難して!」ドンッ

伊勢「二人とも、はやくこっちに!!」ドンッ

日向「……だんだん戦い方が賢くなってきているぞ」

山雲「ど、どうしようかしら~……」



ニコ「……」

武蔵「くそ、このままでは状況は悪くなるばかりだな……!」

91: 2018/07/22(日) 22:58:33.56 ID:+CGbpl6vo

陸奥「明石、負傷した子の修理をお願い。私たちもまた出るわ!」

鳥海「ちょっと待ってください。体勢を立て直すためにも、一旦引き返すことはできませんか?」

摩耶「鳥海!? お前、半分深海化してんだぞ!? そんな体で戻ったら何をされるかわかんないだろ!」

ルミナ「ああ、やめておいたほうがいいね。この施設で見つけた切り刻まれた深海棲艦の標本を見ているだろう?」

摩耶「……まさか、鳥海だけここに残るつもりじゃないだろうな!?」

鳥海「……」

ニコ「とにかく、その案はやめておいたほうがいいね。それに、時間が経ちすぎると魔神様も危ない……!」

陸奥「え!?」

摩耶「どういうことだ!?」

ニコ「魔神様を包んでいるあの水は、人間どもの悪意を濃縮したようなもの」

ニコ「そんなものに長時間触れていたら、魔神様にとって相当な苦痛になってるはず……!」

如月「そんな……!」

武蔵「一度引き上げるのも手だと思ったが、そんな猶予はないと言うことか」

摩耶「この場で決着をつけるのは賛成だぜ。でも、どうやって提督を助け出す?」

ニコ「そうだね……」

エレノア「それなんだけど、ちょっといい? 霧島が何か気付いたみたいなのよ」

ルミナ「? なにかあったのかい?」

92: 2018/07/22(日) 22:59:44.88 ID:+CGbpl6vo

霧島「魔神との戦いを観察していたのですが、司令と思しき影が、魔神の中を移動しているようなんです」

ルイゼット「わたくしも見ていました。あれに取り込まれた魔神様が怪我をなさらないか心配で、ずっと目で追っていたんですが……」

ルイゼット「前から攻撃が来れば背中側に、脚部に攻撃を受ければ頭のほうにと、頻りに移動しておりました」

霧島「司令は私たちにとっても守るべき対象ですが、あの魔神像にとっても守るべき存在。司令こそが急所、と見るべきかと」

ニコ「……多分、あの人間の思念は、憑代がないと一つにまとまれない、ってことかな?」

長門「ならば、あのスライムと提督を分離させることができれば、提督を助け出せるということか」

金剛「Okay, わかりやすい目標ができたネー!」

ナンシー「で、でも、どうやってマスターをあの中から助けるの?」

霧島「そうですね……ヨーコさんは今どちらに?」

ナンシー「ヨーコなら今こっちに向かってる最中よ? 上のフロアが好きみたいだから」

霧島「でしたら、まず……」ゴニョゴニョ

ルミナ「なるほど、では……」ヒソヒソ

朧「手伝えることはありますか!」

由良「私たちにも手伝わせて!」

ル級「ホラ、泊地棲姫、私タチモ出ルワヨ」

泊地棲姫「シ、仕方ナイナ……」

長門「艦娘、深海、メディウムの共同戦線か……」

ヴァージニア「胸が熱いな」フンゾリ

長門「おいっ!?」

陸奥「はいはい、遊んでないで早く作戦立てるわよ!」

93: 2018/07/22(日) 23:00:43.42 ID:+CGbpl6vo

 * *

霧島「よし。では、この作戦でまいりましょう」

摩耶「最初の一撃が肝心だ! あたしたちが追い込んで、絶対に成功させるぜ!」

ルミナ「それにしても、どうしてヨーコに白羽の矢を立てたんだい?」

霧島「攻撃のスピードがあって、かつ浮いてる相手に当てることができるからですね」メガネクイッ

ニコ「よく見てるね……」

霧島「ええ。こちらにいる間、良くしていただきましたから」ニコッ

摩耶「……そっか。じゃあそのお礼に、あたしたちも気張らなきゃあな!」

ニコ「……ぼくたちも行くよ」フラッ

那智「お、おい、無理はするな!」

ニコ「そうはいかないよ。あの忌々しい人間どもを滅ぼせるのはぼくだけなんだから……!」

ニコ「それに、ぼくは魔神様のお姉ちゃんなんだ……ぼくが、行かなきゃ……!」

ナンシー「ニコちゃん……!」

足柄「無理そうだったらすぐ退くわよ?」

陸奥「それより、ヨーコって子は見つかったの?」

 < くらえええええ!!

全員「「「……あ」」」

94: 2018/07/22(日) 23:02:34.59 ID:+CGbpl6vo

武蔵「いたぞ!」

那智「なんでいきなり魔神の真ん前でポーズ決めてるんだあいつは!」

足柄「メディウムなんだから不意打ちしてなんぼでしょーが!!」

ニーナ「足柄さん、私たちよりよく理解しておいでで……」タラリ

由良「勝つためには手段を選ばないから……」

伊8「戦術です。戦術」

ルミナ「物は言い様だね。全面的に賛同するけど」



ヨーコ「司令……司令がまさか私たちを襲うだなんて……!」

ヨーコ「……いいや、違う。そんなことはない! 司令は操られてるだけだ……そうだね!?」キッ!

魔神「WOOOOO……!!」バサバサッ

ヨーコ「目を覚まさせてあげるよ司令……!」ググッ

ヨーコ「この! あたしたちの! 正義のちか」

 魔神ヘルレーザー< カッ

川内「危ない!!」バッ

ヨーコ「ら……うわあ!?」ガシッ ゴロゴロッ

 魔神ヘルレーザー< ズバーーー

ヨーコ「な、なにすんのさニンジャ! 前口上の途中だよ!」

川内「そんなことしてる場合じゃないでしょ!? そもそも気付かれてなかったんだから、後ろからさくっとやれば良かったのに!」

95: 2018/07/22(日) 23:03:56.15 ID:+CGbpl6vo

魔神「GAAAA!!」バサバサッ

 イビルハイヒール< ズオッ!

川内「げっ!?」

ヨーコ「やばっ……!」

 イビルハイヒール< ズシィンン!

神通「姉さん!!」

ナンシー「ヨーコ!?」

ニコ「……っ!」


川内とヨーコを抱きかかえた人影「……大丈夫!!」


不知火「あの声は……」

山城「……那珂、ちゃん……!?」

扶桑「あれが、那珂ちゃん、なの……!?」


人影→那珂(深海棲艦化)「ソノ通リ! 艦隊ノアイドルゥ! 那珂チャンダヨーー!!」


敷波「な、那珂ちゃんが、完全に深海棲艦になっちゃってるーー!?」

榛名「」フラッ

比叡「は、榛名!? しっかりして!」

99: 2018/07/29(日) 18:09:15.86 ID:CC2XuYRUo

ヨーコ「ふいい……助かったぁ」

那珂「川内チャン、大丈夫?」ストン

川内「……な、那珂、あなたこそ大丈夫なの!?」

那珂「ウーン、芸風ハ変エタクナカッタンダケド……仕方ナイカナー」

ヨーコ「確かに肌も衣装も真っ白になっちゃったけど、これはこれで可愛いよ?」

那珂「ホント!? アリガトーー!!」ダキツキー

川内「ちょっと! じゃれあってる場合じゃないってば!」

魔神「GRRRRUUOOO……!!」バサッ

川内「ほら!」

山城「てぇぇ!!」ドガン!

魔神「!!?」ドゴォン

那珂「山城チャン!」

山城「那珂ちゃんをやらせるもんですか……!」ギリッ

神通「私も行きます!」ドンッ

扶桑「散開して夾撃よ、援護をお願い!」ダッ

不知火「援護します」チャッ

 ドドドーン

川内「みんな……!」

100: 2018/07/29(日) 18:10:21.25 ID:CC2XuYRUo

朧「川内さん! ヨーコさん!」タッ

川内「朧!」

那珂「朧チャンハ那珂チャンノ心配シテクレナイノ?」

朧「い、いえ、そういうわけじゃないですけど! 那珂ちゃんさんも大丈夫ですね?」

那珂「那珂チャン、デ、イイッテバー! マジメナンダカラ~」ケラケラ

ゼシール「笑ってる場合じゃないぞ。ヨーコ、手を貸してくれ、仕事の時間だ」

ヨーコ「おおっと、任務だね!」

朧「提督を、あの魔神の偽物から救い出します! 方法は……」

川内「ふむふむ……」

ゼシール「……という感じで行くぞ」

那珂「オッケー!」

ヨーコ「よおし! 今度こそこのメディウム戦隊メディ・ピンクの出番だね!」

川内「……」

101: 2018/07/29(日) 18:11:31.82 ID:CC2XuYRUo

朧「川内さん、どうしました?」

川内「それじゃあ、私はヤセン・レッド、かな」

ヨーコ「そ、それじゃ那珂ちゃんは……アイドル・ホワイト!?」

那珂「!?」

川内「アサシン・ブラック!」ゼシールユビサシ

ヨーコ「ミスティ・イ工口ーだね! やったあ、五人揃ったあ!」オボロユビサシ

ゼシール「おいちょっと待て」

朧「そんな場合じゃないと思います」

那珂「那珂チャン、ホワイトダト、センタージャナイヨー」

川内「白とピンクはヒロイン枠だから我慢して」

那珂「ハ~イ。ソレジャ、メディウム艦隊ナカチャンファイブ、出ッ撃---!」

ヨーコ「ちょっ!?」

ゼシール「名前くらいいいだろう、譲ってやれ」

朧「いいから配置についてください」

ヨーコ「な、なんでなんだよぉぉ!!」

川内「ご愁傷様」ニシシ


102: 2018/07/29(日) 18:12:32.64 ID:CC2XuYRUo

長門「よし、準備できたぞ! 総員、配置に着け!」

全員「「おーー!」」

朧「朧、行きます!!」バッ

 ブワァァ…

敷波「……なんか、もやっていうか、霧が出てきた?」

吹雪「あれは、メディウムになった朧ちゃんの能力だよ」

金剛「ブッキー!? 起きて大丈夫なんデスカ!?」

吹雪「あ、はい。さっき、魔法石で回復してもらいましたから」

金剛「Oh, そういうことなら安心デス」

霞「ともかく、名前通りの能力がついたってわけね」

吹雪「霞ちゃんでも同じ能力がついてたかもね」フフッ

 ブワァァ…

長門「霧が部屋にいきわたったようだな。よし、いいぞ!」

加古「オッケー!」ガシャン

 フッ

朝雲「きゃっ!? いきなり真っ暗に!?」

山雲「あ、朝雲姉、いきなり抱き着かないで~!?」

陸奥(山雲、なんだか嬉しそうね……)

龍驤「うひゃあ!? う、雲龍どこ触っとん!?」

雲龍「ごめんなさい、怖いからつい」

陸奥(こっちはわざとね)

103: 2018/07/29(日) 18:13:17.77 ID:CC2XuYRUo

 探照灯<カッ!

伊勢「あ、あの光は……神通!?」

千歳「いつの間に上のフロアに!?」

日向「なにをしているんだ……」

那珂「ミンナ、今日ハアリガトーー! 那珂チャン、オン・ステージ! イックヨーーー!」

五十鈴「……なにこれ」

筑摩「もやのスモークをたいて探照灯のスポットライト……」

伊勢「まるで本当にアイドルのライブだね」

日向「茶番か」

武蔵「ああ、魔神の目を引くためのな」

日向「なに?」

魔神「GRRRR……!」バサバサッ

那珂「ハーイ、ミンナ注目ー! ワーン、ツー!」

魔神「WOOOAAAAAA!」グワッ!

那珂「スリーーー!」

104: 2018/07/29(日) 18:16:18.98 ID:CC2XuYRUo

 ライジングフロア<ズバーン!

朝雲「なに!? どうしたの!?」

山雲「あれは……那珂ちゃんが飛んでる~!?」

クリスティーナ「さあ、那珂ちゃんの見せ場よ……!」

那珂「伸身宙返リカラノ……全砲門開放! 行ックヨォォ!!」ガジャッ!

 ドガドガドガドガン!

魔神「WOOOO……!」グラッ

扶桑「すごい……魔神がひるんでるわ……!」

那珂「今ダヨ、ヨーコチャン!」

ヨーコ「よおし! 今こそ! 必殺!!」

那珂&ヨーコ「「メガヨーヨー!!」」

 メガヨーヨー< ギュワァァァ!!

魔神「!!?」ドガァァ

ヨーコ「決まったよ! 見事なアッパーカット!」


ルミナ「クリスティーナ? わざわざ那珂君をライジングフロアで飛ばす理由はあったのかい?」

クリスティーナ「それはもちろん、目立つからよ? 当てやすいってのもあるけど」

ルミナ「やれやれ……彼女が深海棲艦になってなければ、彼女の体が危なかったかもね」

105: 2018/07/29(日) 18:17:01.27 ID:CC2XuYRUo

川内「魔神がひるんでる! いくよ、ソニア!」

ソニア「まっかせて!」

 スプリングフロア<ズバーン!

朧「クレアさん、お願いします!」

クレア「オーケー!」

 スマッシュフロア<ズバーン!

日向「こ、今度は川内と……誰だ!?」

吹雪「朧ちゃんですよ」

千歳「ええ!? って、あなたは誰!?」

吹雪「あ、吹雪です!」

伊勢「ほ、本当に育っちゃってたんだ……」

日向「おい、飛びすぎだぞ! あの二人、魔神を飛び越えそうだ!」

吹雪「大丈夫です、見ていてください!」


川内「朧、行くよ!」

朧「はいっ!!」

106: 2018/07/29(日) 18:17:39.37 ID:CC2XuYRUo

 サーキュラーソー×2<ギュワァァァァア!

朧「これで翼を……」

川内「切り落としてあげる!」

 ズバババババーーッ

魔神「GRRRRGAAAAA!?」

千歳「なにあれ、ゼシールって分身できたの!?」

大和「違いますよ、私が載せていたサーキュラーソーのフォージド兵を、朧さんに預けたんです」

千歳「だから同時に同じ罠を……!」

五十鈴「見て! あいつ、翼を切られてバランス崩してる!」

魔神「GWOOORRRR!」ズシィン…!

武蔵「地に足を付けたな……泊地棲姫!」

泊地棲姫「アア……二度ト空ヘハ逃ゲサセヌ!」

ヒサメ「わらわたちの出番じゃな……!」

Fヒサメ「……」ニヤリ

龍驤「頼むでぇ! うちの分まで気張ったってや!」

泊地棲姫「言ワレナクテモ……!」

 ピキパキ…!

107: 2018/07/29(日) 18:18:16.04 ID:CC2XuYRUo

イブキ「すっげえ、氷が瓦礫を覆っちまってる……部屋の半分、まるっと氷漬けだ!」

ル級「泊地棲姫ノチカラナラ、当然ネ」

ルミナ「ヒサメ君と龍讓君が連れてきたフォージド兵のヒサメ……ブースターが倍いるから、展開範囲が段違いだ!」

 巨大スリップフロア<パキーーーーン!

魔神「!!」ヨロロッ

川内「うわっ!?」ツルッ ステーン

朧「は、範囲が広すぎです!」ツルッ ステーン

リンダ「なんや、偽物の魔神の奴、持ち堪えよったで!?」

イブキ「畜生、往生際が悪ぃな!」

龍驤「せやけど、今ならちょっかい出し放題やな?」バッ

雲龍「ええ」ジャラッ

最上「僕たちは川内たちを助けるよ!」

三隈「はいっ!」

 艦載機たち<ブルーーン!

魔神「!」

108: 2018/07/29(日) 18:19:18.04 ID:CC2XuYRUo

 艦載機の機銃<ババババッ!

魔神「GAAAAA!!」バチュンバチュン

最上「よし、魔神がひるんでる隙に!」

三隈「川内さん! 朧さん! 私たちが飛ばした瑞雲にくっつけた、吊革につかまってください!」

 瑞雲<バゥーン!

川内「これね!」ガシッ

朧「そういうことですか!」ガシッ

川内「あはは、これ、水上スキーみたい!」ツルツルツルー

朧「こ、これ、結構バランスとるの難しいんですけど!?」ヨロヨロツルツルー

ゼシール「おい、那珂は避難していないのか?」

ル級「那珂チャンモ滑ッテナイデ、戻ッテキナサイ」

那珂「エー? モウ少シ滑ッテイタカッタケド……ショウガナイナー」トリプルルッツー

クリスティーナ「なんでスケート靴を用意してるのよあの子……」

不知火「というか、何気なく難易度の高い技を滑っていませんか」タラリ

扶桑「深海棲艦になったせいか、全然物怖じしなくなったわねえ」

山城「のんきにしてないで那珂ちゃん早く戻ってきてぇぇ!」

109: 2018/07/29(日) 18:20:52.24 ID:CC2XuYRUo

龍驤「よーし、みんな氷からおらんようなったな?」ニヤ

雲龍「ええ」ニコ

龍驤「よーっし! それじゃあミルファ! 行ってみよう!」

ミルファ「オーケー! 行きまーす!」

 メガロック<ヒュウウウ…

魔神「!?」ズガシーーーッ!

龍驤「なんや!? あいつメガロック受け止めよった!」

リンダ(うちと同じリアクションしとる……)

ミルファ「滑る足場で良くそんなことを!」

霧島「ですが、これで両手が塞がりました」ニヤリ

カオリ「一斉射撃よ!」

ミリーエル「参ります!」

 アローシューター<バシュッ

 ボールスパイカー<バシュバシュバシュッ

魔神「GAAAAA!!」ヨロッ

霧島「もう一息です……!」

ヴァージニア「よくやった。奴が地べたを這うさまは、この私が見せてやろう」

 クイーンハイヒール<グワッ!

ヴァージニア「跪け!」

魔神「GWOOOOOOOO!!」グシャアッ グリグリグリッ

113: 2018/08/25(土) 17:05:52.51 ID:Q82r3i52o

ヴァージニア「フ、姿が違えど所詮は人間。この私の足蹴にされるのが、お似合いというものだ……!」

電「後始末は電たちに任せて欲しいのです!」

ヴァージニア「良かろう。務めを果たせ」

電「なのです!!」

ルミナ(……電ちゃんはヴァージニアのあしらい方が上手いよねえ)

如月「行くわよ、初春ちゃん、吹雪ちゃん!」

初春「うむ!」

吹雪「任せてください!」

 ビュォォオオオオオ…

山雲「こ、今度はなあに~!?」

電「如月ちゃんと初春ちゃんが気温を下げているのです」

長門「そして吹雪が、文字通り吹雪を起こしていると言うわけか……!」

ルミナ「魔神も寒さで動きが弱まってる。畳み掛けるよ!」

魔神「GRRRR……!!」ムク…

114: 2018/08/25(土) 17:06:42.26 ID:Q82r3i52o

陸奥「せっかく転ばせたのに、起き上がったりしないでよ……コールドアロー、もう一回行くわ!」ジャコン

Fディニエイル「……!」

ディニエイル「加勢しますよ、ミス陸奥。ミス霧島、よろしくお願いします」

霧島(コールドアロー搭載)「ええ、このまま畳み掛けるわよ!」ジャコン

陸奥「……ええ、お願いね! 一斉射!!」

 ズドォン!

 無数の砲弾→コールドアロー<ビュオオオオオ!

魔神「GOAAA!?」パキパキパキィィ!

長門「いいぞ、奴の手足が凍りついた!」

カトリーナ「それじゃあ、その左腕! ぶち壊させてもらうぜ!」

 スイングハンマー<ブォォォン!

魔神「!?」ガシャァァァン

シルヴィア「右腕は私がいただくわ!」

リンメイ「左脚、私がもらたよ!」

リサーナ「それじゃ、私は右脚をご指名かなっ!」

 シャークブレード<キシャァァァン!
 メガバズソー<ガランガランガラン!
 キラーバズソー<シュバーーーーッ!

魔神「!?」ガシャガシャガシャァン

115: 2018/08/25(土) 17:07:30.47 ID:Q82r3i52o

アマラ「切り取ったパーツがくっついて復活できないように、お部屋をお掃除致しましょう!」

パメラ「部屋の隅に集めちゃうわね!」

 バキュームフロア<ビュォォォオオオオ!
 スローターファン<ギュアァァァァアア!

朝雲「凍らせた魔神の手足や、切り落とした翼を吸い寄せて集めてるのね……!」

山雲「魔神が4分の1くらいの大きさになったわ~!」

ルミナ「ここまで小さく切り分けられれば、あとは魔神君を救い出すだけだ!」

霧島「さあ、とどめよ!」

陸奥「待って、様子がおかしいわ……!?」

魔神「GGGGG……」グニュグニュグニュ…

武蔵「なんだ!? 魔神の形が変わっていくぞ!」

オリヴィア「もとがスライムだから、どうにでも化けられるってのかい!」

魔神→スライム「GGWWWWOOOO……!」

イブキ「なんだありゃ? 出来損ないの泥人形みたいになっちまった」

ルミナ「……手足を作ろうとしているということは、まだ抵抗すると見えるね」

116: 2018/08/25(土) 17:08:27.95 ID:Q82r3i52o

電「そうはさせないのです!」

 パチッ

陸奥「きゃっ!?」

五月雨「な、なんですか!? 静電気!?」

電「なのです……!」バッ

 バチバチバチッ!!

敷波「うえっ!? 電が放電した!?」

鳥海「し、司令官さんは大丈夫なんですか!?」

ルミナ「か、加減はしているんだろうね!?」

電「加減はしてるのです。しすぎてあまり効果がないみたいなのです……」

グローディス「だったらあたしたちに任せときな! 神通!」

神通「はいっ!」

摩耶「え、神通ってさっき探照灯持って上のフロアにいたよな?」ミアゲ

 タンッ

伊勢「と、跳んだ!?」

足柄「いくら上の階って言ったって、ここ天井高いから10メートルはあるわよ!?」

117: 2018/08/25(土) 17:09:10.68 ID:Q82r3i52o

神通(落下中)「……この一撃で」ヒュウウ

グローディス「ああ、決めてやれ!」

神通「やあぁぁああ!!」ブンッ

 サンダージャベリン<ゴォォ!

スライム「VVLLLLLOOO!!」バリバリバリ

神通「追い打ちです……!」グッ

ルミナ「! みんな、神通君から離れるんだ! 彼女はもう一人メディウムを乗せている!」

武蔵「なに!?」

シェリル「デュエットなんてガラじゃないけどね……響かせてやるぜ!」

 ヘルジャッジメント<ズガシャァァァン!

三隈「神通さんの右手から雷光が!」

最上「投げたジャベリンを避雷針に見立てたんだね……!」

川内「なにあれ自雷也の術!? 印まで組んじゃって超格好いい!」キラキラキラッ

那智「言ってる場合か! 神通を助けないと地面に激突するぞ!」

118: 2018/08/25(土) 17:09:50.73 ID:Q82r3i52o

 ズダンッ!

神通「……ふぅ」チャクチセイコウ

那珂「神通チャン、大丈夫?」

神通「ええ、那珂ちゃんありがとう」ニコ

那智「いや、あの高さから落ちて無傷ってのはどうなんだ」

神通「無傷ではありません、さすがに足が痺れましたが……」

五月雨「そ、それだけなんですか?」

神通「はい」

武蔵「……マジか」

利根「さすがは川内型じゃの」

足柄「その一言で片づけるのもどうなのよ……」

ウーナ「それより! 出番! 出番っ!!」

武蔵「うお!? なんだ!?」

ノイルース「最終段階です。私とフォージド兵の私、そしてウーナの力で、あのスライムを焼きます」

不知火「こちらは準備完了です」

Fノイルース「……」コクリ

119: 2018/08/25(土) 17:10:36.69 ID:Q82r3i52o

ルミナ「あのスライムから魔神君を引き剥がすのが先決だ。そのためにあのスライムに火球をぶち当てて、体積を減らす」

ルミナ「魔神君を覆うスライムが薄くなったら、如月君と大和君をカタパルトで飛ばして、魔神君の身柄を確保する」

ユリア「カタパルトの準備はできてるわ!」

如月「私たちも、いつでもいけるわよ?」

大和「提督は私たちが取り返します!」

金剛「そして私が載せているWペッタンアローで、保護する作戦デース!」

キュプレ「私たちの愛の力の見せ所ね!」

Fキュプレ「……!」ウインクー

スライム「ZZ.RR.Z...」

ミリーエル「電撃が効いてグズグズになってるわ」

ノイルース「今が好機……私たちが、燃やします」メラッ

Fノイルース「……」メラッ

 Wファイアーボール<ゴォッ!

スライム「MYUGYYYYYYY!」メラメラッ

120: 2018/08/25(土) 17:11:19.69 ID:Q82r3i52o

ウーナ「不知火! スライム、燃えて縮んでる! 今だ!」

不知火「了解です……!」ジャキッ ドォン

 砲弾→ヘルファイアー<ボワァァァ!!

全員「「うわあああ!?」」

潮「す、す、すごい火柱なんですけど!?」

フウリ「ウ、ウーナちゃん大丈夫なの!?」

ウーナ「ダイジョブ! あれ見ろ!」

スライム「MIIIYYYYAAAAAAA!!」プルプル

古鷹「スライムが殆ど吹き飛んでます!」

加古「提督の姿がばっちり見えるよ!」

如月「今だわ! 大和さん!」

大和「ええ、ユリアさんお願いします!」

ユリア「さあ、かっとばすわよ! いっちにーの、」

ユリア「さぁぁん!」

 カタパルト<ズバァァン!

如月「!」バヒューン

大和「!」バヒューン

121: 2018/08/25(土) 17:12:29.32 ID:Q82r3i52o

那智「いいぞ、まっすぐ提督に向かっている!」

敷波「……あ、だめっ!」

スライム「MIIIIGGYYYYYYYYYYY!!」

 ズオァ!

吹雪「!? スライムの壁が!?」

如月「きゃあっ!?」ズボォ

大和「いやああ!」ドブッ

長門「おい、まずいぞ! 二人がスライムの壁に取り込まれた!」

オリヴィア「……こっちが罠にかけられたってことかい!?」

ルミナ「やってくれるね……くそっ!」

摩耶「ど、どうすんだよ!」

泊地棲姫「ソレダケジャナイ。切リ離シタ奴ノ手足ヲ見テミロ!」

スライム群「UZZZZOOOOOOO...!」ズルズルズルッ

グローディス「げっ! 氷が解けて手足の分が集まってきてやがる!」

コーネリア「やらせるか!!」

122: 2018/08/25(土) 17:13:22.25 ID:Q82r3i52o

 ギルティランス<ガシャッ!

スライム群「DRDRDRDR...」ドロッ

コーネリア「くっそ、液状なせいで全然ダメージが通らねえ……!」

カトリーナ「ならあたしのハンマーならどうだ!」

 スイングハンマー<ブオンッ!

スライム群「BRRRRRR...」ベチャベチャッ

コーネリア「飛び散るだけで時間稼ぎにしかならねえぞ……」

カトリーナ「ど、どうすりゃいいんだよ……!」

加古「んじゃ、これならどうだ!」

Fフローラ「……」ジャコッ

 チュウシャキ<ポイーン

スライム「!」ブスッ

スライム「BRRROOOONN!」ブルブル ポイッ

 チュウシャキ<カランカランッ

加古「く、薬でもだめかあ」

古鷹「全身に行き渡らせないと、効果は薄いみたい……」

123: 2018/08/25(土) 17:13:59.16 ID:Q82r3i52o

長門「くっ……それならこれでどうだ!」ドォン!

 ドカァン

陸奥「飛び散るだけでダメージにならないわ……!」

敷波「も、もう一回凍らせられないの!?」

ディニエイル「そ、それが……」

 コールドアロー<バシュッ

スライム「」ピキパキッ

スライム「」ヴヴヴヴヴッ

ディニエイル「耐性がついたのか知恵がついたのか、凍らせても細かく振動して、凍結しないようになってしまったんです」

敷波「……ど、どうすりゃいいの?」

スライム→魔神「GRRRRAAAAAAAAAAAAAAA!!」ズシーン

利根「大和と如月を取り込んだまま、元に戻ったと言うのか……!」

ルミナ「最悪だ……!」

武蔵「大和はどうなるんだ!!」

ナンシー「如月ちゃん……!!」

摩耶「あの二人が中にいたんじゃ、攻撃できねえぞ!?」

ニーナ「どうにかして、あのお二人を助けないと……!」


魔神「GAAAAAAAAA!」

127: 2018/09/01(土) 21:31:33.76 ID:r32lG1imo

魔神「GAAAAAAAAA!」ブンッ

 瓦礫<ゴシャアァァ

「「きゃああああ!」」

タチアナ「こちらから攻撃すれば、あの二人がどうなるかわかりません……!」

マルヤッタ「で、でも、このまま攻撃しないわけにはいかないじょ!?」

霧島「……いったい、どうしたら」

鳥海「司令官さん……!」


 ゴポゴポ…

大和(なんて苦しい……! 早く、抜け出さないと……!)

大和(いえ、それよりも、提督を……!)グッ

大和(くっ、スライムとはいえ、なんて頑丈な……)

――ちくしょう……許せねえ……!

大和(!?)

――なんで、私たちが氏ななきゃならないの?

――どうして海軍は、俺たちを守ってくれないんだ!

大和(この声は……まさか、メディウムに殺された人たち!?)

128: 2018/09/01(土) 21:32:24.03 ID:r32lG1imo

――お前は、艦娘か……!?

――どうして艦娘がこいつを助けようとするんだ!

――こいつは俺たちを頃した原因だぞ!

――艦娘だったら、私たちを助けるのが役目のはずよ!

――艦娘のくせに、人間を裏切るのか!?

大和(なっ……そんなつもりはありません!)

――じゃあどうして人間じゃないこいつを助けようとする!

大和(それは……!)

――裏切り者!

――お前が大和だと!? 人間の味方じゃない奴が、大和なんて名乗るな!

――お前なんか大和じゃない! 偽物!

大和(……っっ!!)

――偽物! 偽物め!!

――俺たちを見頃しにしやがって!

――ここにいる奴らは、全員敵なんだろう!?

――私たちの恨みを思い知れ!!

129: 2018/09/01(土) 21:33:32.08 ID:r32lG1imo


 ガシャァン!

ヨーコ「うわああ!?」

ヴェロニカ「ちょっと、見境なしに暴れ始めたわよ!?」

五月雨「い、一旦避難しましょう! 早くこっちに!」

 ブゥン!

霞「やばっ……!」

朝潮「霞!!」

Fジェニー「!」バッ

霞「えっ……!?」ダンッ

 ゴシャァ!

ジェニー「ふ、フォージド兵の私が……」

霞「私を庇って……!?」

ジェニー「偽物だけど……よくも私を……っ!」

フォージド兵たち「「!」」ババッ

長門「!? ど、どうしたんだ!? フォージド兵たちが、魔神の前に並んで身構えてるぞ!?」

リンダ「な、なあ、これ……」

ナンシー「私たちの偽物が、私たちを庇ってる……!?」

130: 2018/09/01(土) 21:34:28.80 ID:r32lG1imo

初春「こ、これ! しっかりせぬか!?」

武蔵「今度はなんだ!?」

ヒサメ「わ、わらわの偽物が……」

Fヒサメ「……」コックリ コックリ

筑摩「か、体が透けて見えませんか!?」

ルミナ「フォージド兵はね、不完全な模倣体なんだ」

ルミナ「彼女たちは私たちと同じように作られるが、殆どは作られて間もなく消えてしまう運命だ」

泊地棲姫「力ヲ使イスギタト……私ノセイ、カ?」

Fヒサメ「……」フルフル

泊地棲姫「違ウ……ノカ!?」

ヒサメ「泊地棲姫よ、このわらわはこう言うておる」

ヒサメ「力になれず、すまなかった、と……」

Fヒサメ「……」ニコリ

 スゥ…

初春「……消えてしもうた」

泊地棲姫「……」

長門「彼女たちは自分の最期の時を理解しているというのか……?」

ニーナ「ならば、彼女たちのためにも、なおのことあの偽物の魔神を止めないと!」


131: 2018/09/01(土) 21:36:41.11 ID:r32lG1imo

霧島「……!」

鳥海「霧島さん、どうしました?」

霧島「あれを見て。大和さんが……」

武蔵「ど、どうしたんだ!? 大和のあの顔……!」


大和(やめて! やめて!!)

――俺たちがどんな惨たらしい殺され方をしたか、知ってるのか!?

――私たちがどんな屈辱的な氏に方をしたのかわからないから、あいつらとつるんでるんでしょう!?

――人間を守れない役立たずのくせに!

大和(勝手なことを!)

――お前は俺たちを守るのが役目じゃないのか!?

――俺たちを守れない奴が、どうして生きていられるんだ!?

――役立たず! 役立たず!

――氏ね! お前だけじゃない! みんな、氏んでしまえ!

――そうよ! 私たちだけが氏ぬなんて、不公平よ!

――氏んじゃえ!!

大和(……っ!)ギリッ


武蔵「……」ゾク

利根「……武蔵よ」

武蔵「……どうしたらいいんだ」ポロ…

武蔵「大和が、苦しんでいる……誰か、大和を助けてくれ」ポロポロ…

利根「……」

132: 2018/09/01(土) 21:37:42.64 ID:r32lG1imo


 ゴポゴポ…

如月(……こんな罵詈雑言を、司令官は一人で受け続けていたなんて……!)

――可哀想とでも言うつもりか!

――一人だけ安全なところに逃げやがって!

如月(……)

――お前はこいつの部下か!

――艦娘のくせに、俺たちを頃したやつらに協力したやつだ!

如月(……)

――こいつらも敵だ!

――殺せ!

――殺せ!

――全員、ぶち殺せ!!


 ドズゥウウン!

ミーシャ「きゃああ!?」

白露「だめだめ! こっちはだめ! 早く逃げるよ!」ウデグイッ

島風「あなたも早く!」

アーニャ「う、うん!」


133: 2018/09/01(土) 21:39:15.98 ID:r32lG1imo

 ガシャアン

千歳「手当たり次第ね……!」

ヴィクトリカ「見てる場合じゃねーって! ずらかるぞ!」

霧島「比叡お姉様、どこへ行くんです!?」

比叡「暁ちゃんが、隣の部屋に! まだ空っぽになった魔力槽のなかにいるんです!」

由良「私も行きます!」

イサラ「あ、その、イーファの様子、見てくるッス!」

カサンドラ「わ、わたしも!」

タチアナ「休んでるキャロラインたちにも連絡を!」

ヨーコ「外で見張ってるシャルロッテたちはどうするんだ!?」

ルミナ「ここより上のフロアで待機させてくれ! 最悪、総力戦になる……シルヴィア、呼んできて!」

シルヴィア「わ、わかったわ!」

武蔵「……大和ぉ……!」グスッ

魔神「GWOOOOOOO!!」ゴォッ!

オリヴィア「武蔵!?」

コーネリア「ぼけっとしてんじゃねええ!!」

134: 2018/09/01(土) 21:40:20.14 ID:r32lG1imo

 ドガァン!

全員「「!?」」

龍驤「な、なんや今の爆発!」

リンダ「見てみい! 魔神の腹が裂けとるで!!」

川内「あれじゃない! あの砲塔!」

武蔵「……大和!」


魔神の腹から見え隠れする大和(大破)「……」プスプス…


潮「ま、魔神のおなかの中で砲撃したんですか!?」

榛名「そんなことをしたら暴発することくらい理解っているはずです!」

武蔵「……大和の顔が、鬼のようだった」

敷波「!」

武蔵「あいつは……あの魔神は、大和の逆鱗に触れたんだ」


若葉「……」

若葉「ふむ、試してみる価値はあるな」

利根「む?」

135: 2018/09/01(土) 21:41:26.29 ID:r32lG1imo

若葉「フォージド兵のオリヴィア、すまないが一緒に来てくれるか?」

Fオリヴィア「?」

若葉「フォージド兵のクレアも手を貸してくれ」

Fクレア「?」

若葉「若葉を、あの魔神の右足めがけて吹き飛ばして欲しい」

Fクレア「……」コク

利根「お、おい若葉、おぬしいったい何をす」

 スマッシュフロア<ズバーーン!

若葉「おおお!?」ビューン!

利根「る気じゃあああ!?」

若葉「これでいボブッ!」ズボッ!


初春「若葉の上半身が魔神の右足に突っ込んでおる……」

ルミナ「若葉君はいったいなにをしているんだ!?」

136: 2018/09/01(土) 21:42:14.96 ID:r32lG1imo

若葉(……よし、ここだ。フォージドオリヴィア、頼む)

Fオリヴィア(!)

――裏切り者の艦娘め! 何をする!!

若葉(……メディウムに殺された人間の声か。しれたことだ、お前たちを供養しに来た)

Fオリヴィア(!)ニヤリ

 クエイクボム<ズズゥン!


 ゴチャァ!

利根「ぬおお!?」

ルミナ「魔神の右足が……!?」

川内「破裂した!?」

オリヴィア「あれは……あの脚の内側からクエイクボムを炸裂させたんだね!」

リンダ「んなムチャクチャな……!」


魔神「GGAAAAAAAAAAA!」ヨロッ

若葉「ぷはっ!」ピョンッ スタッ

Fオリヴィア「……!」サムズアップ

若葉「ああ。いい仕事をした、協力感謝する」

Fオリヴィア「……」スゥゥ…

若葉「……」ケイレイ

137: 2018/09/01(土) 21:43:01.82 ID:r32lG1imo

如月(大和さん……! なんだかわからないけど、魔神の動きが遅くなったわ!)

如月(いまのうちに司令官を!)ザバザバッ


霧島「……如月さんが提督に向かって泳いでいます!」

朝潮「本当ですか!?」

ナンシー「如月ちゃん……お願い、無事でいて!」

グローディス「魔神様……!」


――やらせるか!

――俺たちだって、復讐するんだ!

――邪魔をしないで!

如月(!)ジュゥ…

如月(服が……溶けてく!?)

如月(ふ、服だけじゃないわ!? 体が……焼かれてる!)ジュゥ…!


古鷹「如月さんの様子が変です!」

ノイルース「もしや、あの周辺のスライム、メルトスライムでは!?」

グローディス「げっ! あの遺物か!?」

138: 2018/09/01(土) 21:43:56.49 ID:r32lG1imo

朧「遺物……って、なんですか、そのあからさまにやばそうなのは」

ディニエイル「掻い摘んで言えば、対象の衣服などを溶かしてしまうスライムです」

ミリーエル「メディウムとして目覚めていないので、ただのスライムなのですが……」

カトリーナ「なんたって昔のやつだぞ!? 制御できるかだって怪しいんだ!」

ニーナ「魔神の力を無理矢理引き出しているようですね……!」

ナンシー「如月ちゃん……!!」


如月(くう……! か、髪が傷んじゃう!)ジュゥ…

――溶けろ!

――そのまま俺たちの一部になれ!

如月(そ、そんなのお断りよ! あなたたちと同じになんかなりたくないわ!)

――誰のせいでこんなことになったと思ってるんだ!

――そうよ! 責任を取りなさいよ!

如月(責任!? 笑わせないで! 無理矢理取らせたところで、どうせ元に戻せだの、無理難題を押し付けるんでしょう!?)

如月(それなら、司令官がこんなことになった責任は誰がとってくれるのよ!)

――それは俺たちのせいじゃない!

――そんなのは海軍の勝手だ!

――お前らのせいだ!!

139: 2018/09/01(土) 21:44:58.13 ID:r32lG1imo

如月(他人のせいにするしかないの!? ふざけないで!)

如月(人の不幸を望む存在でしかないのなら、あなたたちのほうがよっぽど悪魔じゃない!)

――違う! 俺は人間だ!

――そうよ! 私は人よ!! 艦娘もやめたあなたに言われたくない!

如月(なにが人よ! あんたたちの姿を見なさいよ! 魔神にすらなり損ねた、醜い異形じゃない!)

如月(それで人を名乗ろうだなんて、笑わせないで! この、ひとでなし!)

――……っ!!


魔神「UUUUWWWWGGGGGGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」


――俺は人間だ! 正しい人間だ!!

――俺は間違ってない! 正しいんだ!

――ひとでなしなんかじゃない!

如月(流れが止まった……今だわ!?)

如月「司令官!!」ザババッ

提督「……」


140: 2018/09/01(土) 21:46:13.08 ID:r32lG1imo

霧島「如月さんが……今、提督を捕まえました!」

金剛「で、でも、彼女たちはまだ魔神の inside デス!」

キュプレ「私たちじゃ引っ張り出せないわ!」

ニコ「別にいいよ」

比叡「ニコちゃん!? どういう意味!?」

ニコ「魔神様が、如月の呼びかけに応えてくれれば、それでいいんだ」


如月「司令官! 司令官っ!」ギュッ

提督「……」

如月「司令官っ!!」ギュウゥッ

提督「……この手のぬくもり……誰だ」

如月「司令官……! 私よ!」

提督「如月、か?」

如月「そうよ!」ブワッ

如月「ずっと……ずっと、会いたかった! お話がしたかったの!!」

如月「見て! みんないるわ! メディウムのみんなも! 艦隊のみんなも! 大和さんも!!」

提督「大和……ぼろぼろじゃねえか。大丈夫か……」スッ

大和「! あ、あああ……提督……提督!!」ボロボロボロ…


141: 2018/09/01(土) 21:47:33.16 ID:r32lG1imo

魔神「GOOOOWAAAAAAAAAAAAAAA!!!」ゴボゴボゴボッ


ウーナ「な、なんだなんだ!? また、魔神、暴れ始めた!」

武蔵「3人はどうなるんだ!?」

ニコ「もう、大丈夫だよ」ニコッ

 魔神の足元に展開される魔方陣<パァ…

ニコ「人間どもが夢を見る時間は、もう終わり」バッ

 魔方陣<カッ!

魔方陣からの光に包まれる魔神「!!!」

 ゴォォォォ!!

 魔方陣<ピカーーーッ!

「「きゃあああ!?」」

「ま、眩し……!」


 ドドドドドド…

長門「くぅ……なんだ、この音」

 ザバーーーーーー!!

龍驤「な、な、なんやああああ!?」ザバー

リンダ「ビッグウェーブやあああ!?」ザバー

 ダパーーーーーン!

146: 2018/10/27(土) 17:56:05.53 ID:dU/gqv+wo

 * *

ニーナ「……」ビッショリ

ナンシー「やーん、もう髪がびしょびしょー」

長門「とんでもない鉄砲水だったな……」

シエラ「ひ、ひどい目にあったデスゥ……」ゼーゼー

黒潮「ほんまやぁ……うう、服が引っ付いて気持ち悪ぅ」

ル級「アレハ、アノ魔神ヲ構成シテイタ水カ?」

雲龍「……そうみたい。でも、あの邪悪な気配も感じなくなったわ」

不知火「ニコさんだけ長門さんの背中に避難していて無事ですか」

長門「いつの間に……」

ニコ「この本を濡らすわけにはいかないからね。一度乗せてもらったし、要領は掴んでたから」

ノイルース「私の火も危うく消えそうだったのですが」

ウーナ「ウーナも、ずぶ濡れだぁ……」

ディニエイル「私の氷も解ける寸前です……」

吹雪「メアリーアンさんの服が水を吸って動けなくなってます!」

メアリーアン「た、たすけてけろ~~!」ズッシリ

ミリーエル「雪玉も水を吸うと重くなりますからね……」

147: 2018/10/27(土) 17:56:46.18 ID:dU/gqv+wo

グローディス「なあ、あたしの隣にいた神通が電撃で痺れて気を失ってんだけど」

敷波「何やってんの!? 神通さんしっかり!」ユッサユッサ

神通「……う、うーん」クラクラ

イブキ「シェリルやカサンドラは大丈夫だったのか?」

シェリル「私はグローディスみたいにしょっちゅう放電してないし」

オリヴィア「カサンドラならイサラと一緒に向こうの部屋に引き籠……避難してたよ」

初雪「なにそれ……羨ましい」

金剛「それよりテートクはどうなったんですか!?」

ナンシー「そうよ、如月ちゃんは!?」

武蔵「大和もだ!」


「全員生きてるよ。一応な」


金剛「その声は」

吹雪「司令官……!」

艦娘たち「「提督!!」」「「司令官!」」キャー!

メディウムたち「「魔神様ー!!」」キャー!

148: 2018/10/27(土) 17:58:33.82 ID:dU/gqv+wo

提督「おう、お前らも大丈夫か」

(両脇に大和と如月を抱えて現れる提督、ただし全裸)

全員「「「……」」」

提督「……」

全員「「「キャアアアァァァーーーーー!」」」

提督(うるせえ)


雲龍「大変。陸奥さんが顔から火を噴いて倒れたわ」

龍驤「おい陸奥!? しっかりせえ!」ペチペチ

潮「ふ、フウリちゃんも倒れちゃってます!!」カオマッカ

ジェニー「潮はなんとか大丈夫なんだ……ほらー、シエラも目をさましなよー」ペチペチ

扶桑「山城? 大丈夫? 提督よ?」

エレノア「この子、立ったまま気絶してない?」

那珂「那珂チャン、提督ニ汚サレチャッタ……」タハー

川内「その割には嬉しそうな顔してない? ねえ神通?」

神通「」プルプル

川内(耳まで真っ赤にして涙目になって固まってる……)

那珂(神通チャン、乙女ダァ……)

149: 2018/10/27(土) 17:59:46.27 ID:dU/gqv+wo

クロエ「ほかにも何人か恥ずかしさで倒れてる方がいますねえ。みなさん大丈夫ですか?」

榛名「はい、榛名は大丈夫です!」ハナヂドバーー

オボロ「それがしも……問題なく……」ハナヂダラダラ

朧「二人とも駄目じゃないですか」カオマッカ

吹雪「でもまあしょうがないよ!」ハナヂポタポタ

鳥海「……そう、ですね」ハナヂポタポタ

大淀(むっつり系の人が鼻血出してますね)ハナヂポタポタ

明石「大淀、はい、ティッシュ。鼻血出てるよ」

大淀「え!? わたしがむっつりだとでも言いたいんですか!?」

明石(自覚なかったんだ……)

泊地棲姫「意外ダナ……ココマデ慕ワレテイルノナラ、裸クライ見慣レテイルモノダト思ッタガ」

朝潮「司令官! 朝潮は興味があるので、もう少しよく見せてほしいです!」キョシュ

若葉「若葉にも見せてくれ」

霞「……」ズツウ

初春「……」ズツウ

摩耶(駆逐艦の連中はいいなあ、自分に正直で……)モジモジ

黒潮「ええなあ、うちもこの流れにどさくさに紛れて乗っかりたいわ……」ウズウズ

不知火「黒潮。口に出ていますよ」

黒潮「!?」カオマッカ

150: 2018/10/27(土) 18:01:10.55 ID:dU/gqv+wo

ルイゼット「魔神様の裸体に欲情するなんて、みなさん精神修行が足りませんね」

電「みんながルイゼットさんのように悟りを開いてるわけじゃないのです!」カオマッカ

初雪「なんでもいいから、司令官は早く前を隠して欲しい」ポ

伊8「提督、はっちゃんの水着、着る?」ヌギッ

マルヤッタ「やめとくじょ!」ガシッ

オリヴィア「しょうがないねえ、それじゃあアタイがひと肌脱ごうじゃないか」ヌギッ

武蔵「おいやめろ」ガシッ

オリヴィア「冗談だよ」

伊8「二人とも裸リボンみたいな恰好してるのに常識的なのね」ボソッ

武蔵&マルヤッタ「「!?」」

提督「……相変わらず騒がしいな」

如月「う、うーん……」

大和「……ううっ」

提督「ん、如月も大和も気が付いたか?」

如月「し、しれいか」ピタッ

大和「ていと」ピタッ

提督「?」

如月「……」カァァァ…

大和「……」ボシューーー

如月「き、如月はいつでも大丈夫ですわ!?」

大和「や、大和も大丈夫です!?」

提督「何言ってんだお前ら」

151: 2018/10/27(土) 18:02:45.06 ID:dU/gqv+wo

金剛「時間と場所は弁えるべきデース!!」カオマッカ

提督「お前も何言ってんだ」

Fノイルース「……」スタスタ バサッ

提督「ん? ノイルース……少し雰囲気違うな。このマントを俺にくれるのか?」

Fノイルース「……」ニコ

提督「体を隠せってか。ありがとな、あとで洗って返す」

Fノイルース「……」フルフル

Fノイルース「……」スゥ…

提督「!」

ノイルース「やれやれ。これは偽物においしいところを持っていかれましたか」

提督「おい、今のは……」

ルミナ「フォージド兵。偽メディウムと言えばいいかな?」

グローディス「私たちの世界で、魔神様に対抗するために作り出された人造メディウムさ」

提督「……どうして消えてしまったんだ?」

ミリーエル「私たちメディウムを作り出すためには、専用の炉と、素材を使います」

リンダ「その炉を使わんと、メディウムが不完全な形で生まれるって話らしいんよ」

提督「だから Forged(偽造)兵ってか」

ルミナ「そのおかげで短命でね。時間が経って魔力が尽きると雲散してしまうんだよ」

152: 2018/10/27(土) 18:03:41.35 ID:dU/gqv+wo

ヨーコ「それはそうとさ、今まで出会ったフォージド兵って、みんな私たちに敵対してたよね?」

アーニャ「うん! 昔、ミーシャの偽物と戦った時も、全然話を聞いてくれなかった!」

カトリーナ「そうそう。やけにあたしたちに協力的っつうのが……なんでだ?」

タチアナ「今もこうして魔神様の前に傅いているというのが信じられません」

ル級「長門。アナタ、ナニカ知ッテルンジャナイノ?」

長門「……確信はないが」

シェリル「心当たりがあるのか」

長門「このフォージド兵たちは、妖精たちに頼んで建造ドックで作ってもらったんだ」

長門「かつて大和たちを建造した時に、妖精たちの意識……提督への好意が大和に反映されていただろう?」

長門「その時と同じように、ドックで作られた彼女たちには、提督を救いたいという意思が込められていたのかもしれないな」

ニーナ「人間が魔神様を討伐するために作った偽物とは、存在意義そのものが違うということですか」

提督「好きに生きればいいのによ。俺のために尽くすなんてな……ったく」

長門「提督……」

提督「安心しろ、ここまでしてもらって、俺なんか氏ねばいいなんて言い出したりはしねえよ」

金剛「Oh, 良い意味で生まれ変わったみたいデスネー」

如月「良かった……!」ウルッ

大和「ええ、本当に……!」

153: 2018/10/27(土) 18:05:06.23 ID:dU/gqv+wo

武蔵「とりあえずそのマントは腰に巻いておいてくれ。目の毒だ」ポ

提督「おう」マキマキ

明石「……お風呂上りみたい」ボソッ

大淀「!」ハナヂドパァ

明石「えっ!? なんでそこで鼻血!?」ビクッ

如月(ああ……)カオマッカ

大和(シチュエーションだけ考えればそうですよね……)マッカッカ

ルミナ「えーと、それでニコ君? あの偽魔神がただの水になったようだけど、いったい何をしたんだい?」

ニコ「あの水に宿っていた人間どもの魂を、魔力に変換したんだ」

ソニア「えええ!? ちょっとぉ、最初からそれやってよぉ!」

ニコ「簡単に言わないでよ。ぼくだけでやろうとしたら、床にちゃんと魔方陣を書いたり、いろいろ準備しなきゃいけないんだ」

ニコ「魔神様の力を借りないと、あんな芸当簡単にはできないんだから」

ナンシー「ってことは、さっきまではマスターの力を借りられなかったの?」

ニコ「あの人間どもの魂のせいで、魔神様が意識と魔力を外へ出さないようにさせられてたんだよ」

提督「つうと、あれか。俺が精神的に引き籠ったせいで、お前らに迷惑かけてたのか」

ニーナ「いえ、それだけではありません。魔力を変換できるニコさんが、捕獲牢に閉じ込められたのも事態が悪化した一因ですね」

154: 2018/10/27(土) 18:06:11.90 ID:dU/gqv+wo

ルミナ「そういう魔神君は、体は大丈夫なのかい?」

提督「だるさが残るが、それほどじゃねえな。あとは少し頭が痛いくらいか」

如月「確かに、あれはひどかったわ。あの中に取り込まれたとき、人の怨嗟の声があちこちから聞こえてくるんだもの」

提督「人の意識に入り込んできて、やれ償えだの、やれ生き返らせろだの、ぎゃあぎゃあがなりたてやがって」

提督「ああ言えばこう言うで主張が一貫してねえ。数百人と口喧嘩してるみたいで、かなり分が悪かったぜ」

ニコ「とにかく、助け出せたのは如月と大和のおかげだよ」

ニコ「二人が取り込まれて魔神様に触れたことで、魔神様の意識と力が初めて外を向いたんだ」

ニコ「そのタイミングで魔神様の肉体を媒介にして、魔力変換を試みたんだ」

イブキ「まー、それもこれも、あいつが引き起こしたんだけど……」チラッ

軽巡棲姫「Zzz……」

吹雪「のんきに寝てるんだ……油性マジックで顔に落書きでもしてあげよっか」

龍驤「いや、そんな程度で許す気なんかい」タラリ

五月雨「吹雪ちゃん、変わってないみたいで安心しますね!」ニコー

リンダ「せやなあ、吹雪はちょっとお子ちゃまやしなあ!」ニマー

吹雪「お子様じゃないですーー!」プンスカ!

159: 2018/11/11(日) 11:26:34.17 ID:RfN4sFNMo

 ドタドタドタ

シルヴィア「ちょっと、今の魔力の放出は何!?」

ロゼッタ「あー! 魔神様が起きてる!!」

エミル「ほら、さっきのはやっぱり魔神様復活の波動だったんだよ!」

ミュゼ「外でお掃除してる場合じゃなかったんですね……」

ブリジット「内装が滅茶苦茶でありますよ!?」

シャルロッテ「それに、なんか水浸しになってなーい?」

マーガレット「おかげで滑って転んで大変だったんですよー!」プンスカ

カオリ「あなたはいつも何もないところでコケてるじゃない……」

カトリーナ「お、見張組が戻ってきたか」

ロゼッタ「っていうかヨーコ! 勝手に持ち場を離れないでよー!」

ヨーコ「そうはいかないよ、こっちで悪の波動を感じたんだ!」

カオリ「単に退屈だからこっちに来たんじゃないの?」

ヨーコ「違うってば!」

ニコ「……ヨーコの独断というか、暇を持て余したからぼくたちが助かったっていうのは複雑だね」

160: 2018/11/11(日) 11:27:25.44 ID:RfN4sFNMo

ティリエ「中間のフロアを守ってた私たちにも、労いを寄越せー!」

ジュリア「……わたくしたち、退屈でしたわ」ハァ

フローラ「ゲンスイさんという方のところに、誰も来なかったのは意外でした~」

千歳「フローラが元帥のところにいたの?」

フローラ「ええ、一応看護師のようなものですから~」

ティリエ「新しいお薬の実験台が来なくて一番退屈してたぞ!」

フローラ「そんなことはありませんよ!?」

黒潮「ジュリアがツッコミ入れへんあたり、ホンマぽいなあ」

フローラ「そんな!?」

 扉<ガチャバーン!!

キャロライン「ダーーーリーーーーーーーン!!」ダッシュ!

ケイティー「旦那様ああああああ!!」ダッシュ!

シルヴィア「なに!? 今度はなによ!」

コーネリア「こっちは休憩組かい」

161: 2018/11/11(日) 11:28:27.67 ID:RfN4sFNMo

メリンダ「すみません、こっそりと様子をうかがっていました」

ツバキ「うちのカビンも入らへんやろしなあ、て、控えておりんした」

マリッサ「私は違う意味で拘束されてたわぁ~」

パメラ「あなたはわざわざ若葉ちゃんを呼んで、縛ってもらってたんじゃないの」

初春「……」アタマカカエ

リンメイ「またくもて意味不明ね。なんで縛られたいか?」

スズカ「そんなん、理解できんほうがええに決まっとるけぇの」

キャロライン「ダーーーリーーーン! 生き返ったノ!? もとに戻ったノーー!?」ダキツキー!

ケイティー「旦那様あああ!! 私は信じておりましたああああ!!」ダキツキー!

提督「うお!?」ヨロッ

大和「ふ、二人とも、提督は目覚めたばかりですし、あまり体に負担を……」

キャロライン「ウワーーン! 良かったヨーーー!」スリスリ

如月「感激しすぎて聞こえてないみたいね」

ケイティー「うふふふふ……旦那様、ここに式場を建てましょう? なんならこの場で私と甘い夜を」サワサワ

 ゴッ

ケイティー「」ガクッ

金剛「調子に乗ってる子には当て身デース」

ニコ「……助かるよ、金剛」ハァ

162: 2018/11/11(日) 11:29:42.17 ID:RfN4sFNMo

ニーナ「ほら、キャロラインもそろそろ離れて」

キャロライン「ウン、でも、本当に良かったヨー……!」グスングスン

イサラ「騒ぎは終わったッスか……」

イーファ「ご主人様、大丈夫?」

朝潮「イーファさん! 無事だったんですね!」パァ

イーファ「うん!」

カトリーナ「ケイティーも同じように潰されてたんだけど……」

チェルシー「そこは日頃の行いってやつでしょ」

長門「なにはともあれだ。全員、無事だな?」

ニコ「……そうだね。みんなのおかげで、魔神様復活の本懐を遂げることができた」

ニコ「ありがとう……!」

全員「……」ウンウン

長門「提督。あなたも一言何か言ってくれ」

提督「何かって……別にいいだろ。面倒くせえな」アタマガリガリ

「「「……」」」

不知火「あなたという人は……」

163: 2018/11/11(日) 11:31:11.56 ID:RfN4sFNMo

如月「くすっ……」

吹雪「あはは……『面倒くさい』だって!」

朧「全然変わってないですね」

初春「まったく、相変わらずすぎてあきれるのう」

電「なのです!」

不知火(照れると頭を乱暴にかく癖もそのままですか……)フフッ

 ハハハハ…

提督「まあ、和やかなのは結構だが、お前らこれからどうするんだ?」

千歳「それは私たちこそ訊きたいわ。提督こそこれからの身のふりを考えないと」

提督「それだったら、俺は海軍に戻る気はさらさらねえぞ」

日向「海軍を離れる気か」

提督「どうせもう除籍されてんだろ。今の俺はメディウムたちを取りまとめる、魔神さ」

提督「だから、俺はこいつらと一緒に向こうの世界に帰ることにした」

伊勢「向こうの世界?」

キャロライン「ということは……!」パァッ

ニコ「ぼくたちと一緒に、神殿に帰るんだね?」

エミル「やったぁ!」

シエラ「これでやっと落ち着けるデス……」

164: 2018/11/11(日) 11:32:28.83 ID:RfN4sFNMo

チェルシー「あー、でも、また海のない生活に戻っちゃうのかー」

シルヴィア「そうねえ……」

提督「まあ、そういうわけでだ、俺はこっちの世界からはおさらばさせてもらう」

榛名「そんな……!」

霧島「いえ、それは無理もないことです、榛名お姉様。今、司令が海軍にお戻りになられたとしても、おそらく歓迎されないでしょう」

長門「そうだな。海軍陸軍がこの施設奪還に投入した人員、この施設の近隣の住人、その被害だけでも数千人に及んでいる」

長門「提督が戻ったとしても、この騒動の原因を追究されて、責任を押し付けられる可能性のほうが高い」

提督「第一、戻りたいと思える場所がねえ。どこへどう転んでも面倒にしかなんねーよ」

提督「だから、俺を悪役にしておけ。人外の魔神が、深海棲艦を呼び寄せて暴れた、ってな」

提督「魔神はお前らが倒したことにして、悪者の俺たちはこのままドロン、のほうがいい」

武蔵「……むう……不本意だが、そうするしかないのか」

提督「あとは泊地棲姫たちがどうしたいか、だが……」

泊地棲姫「……ニコ。オ前タチノ故郷カラ、海ハ遠イノネ?」

ニコ「うん。そうだね」

泊地棲姫「ソレナラ、私ハ元ノ場所ニ帰ルワ。私タチト海ハ切ッテモ切レナイ関係ダ」

鳥海「あの……私も泊地棲姫さんと一緒に行っても良いでしょうか?」

摩耶「鳥海!?」

加古「なんでだよ!?」

165: 2018/11/11(日) 11:33:39.98 ID:RfN4sFNMo

鳥海「なんでって、見ての通りよ。私の体は、もう7割くらい深海棲艦化してきてる」

鳥海「私が那珂ちゃんみたいになるのも、時間の問題だと思うわ。自分の体のことだから、わかるの」

摩耶「鳥海……」

鳥海「司令官さんが無事だったこともわかったし……いい機会だから、少しみんなから離れて、これからを考える時間が欲しいの」

鳥海「私が今の『鳥海』でいられる時間がどれくらいあるか、わからないから」

摩耶「そっか……あ、軽巡棲姫とル級はどうすんだ?」

泊地棲姫「彼女ハ私ガ預カロウ。提督、貴様ノ忘レ形見ダ。私ノ手ノ下ニ置クコトヲ許シテホシイ」

提督「何言ってんだ。俺たちが勝手に押し付けた軽巡棲姫を見ててくれたんだ、許す許さねえなんて話になるわけねえ」

提督「艦娘の敵だってのに、面倒かけさせた。ありがとうな」

泊地棲姫「……フフ。ナラバ、コレクライハ許シテモラエルノダロウナ?」ズイ

提督「!」チュ

全員「「!!」」

泊地棲姫「フフ……私ハコレデ引キ下ガロウカ」

オリヴィア「大人の女の余裕ってやつかねえ」

カオリ「ケイティーが気絶してて良かったわ……」

キュプレ「ああいう人こそ、くっつけてあげたくなっちゃうわ!」

166: 2018/11/11(日) 11:35:09.39 ID:RfN4sFNMo

加古「えーっと、ごめん、ちょっといいかなあ……泊地棲姫! あたしも途中までついて行っていいかな!?」

古鷹「え、ええ!? 加古、どうしたの!?」

加古「あたしもさ、ちょっとだけ海軍から離れたくなっちゃってさぁ……」

加古「どうにも居づらいんだよねぇ、あたしも鳥海も轟沈経験艦だから。だから、泊地棲姫を送るついでに暇をもらおうかなって」

泊地棲姫「……オ前ハ、一緒ニ来ナイノカ?」

加古「居候がいきなり増えちゃあ迷惑だよ。あたしはまだ艦娘だし、気兼ねしたくないよね、お互いに」

鳥海「で、でも!」

加古「いいからいいから! これからのことは、どっかの島にでも停泊して寝ながら考えるって!」

古鷹「加古……」

那智「ところで泊地棲姫。貴様はここから地上に出るのか?」

泊地棲姫「イヤ、コノ施設ノ隠シ水路ヲ使ッテ外海ニ出ル」

那智「そうか……提督」

提督「なんだ?」

那智「私は外で待機している本営の艦隊に、戦闘が終了したことを報告しに行く」

那智「そこで、泊地棲姫とその艦隊にこれ以上の継戦の意思がないことを伝え、彼女たちが外洋に抜けるまで突入を待つように進言する」

167: 2018/11/11(日) 11:36:12.92 ID:RfN4sFNMo

泊地棲姫「私ニ恩ヲ売ル気カ」

那智「恩ならすでに我々が受け取っている。提督を助けるために、共闘したのは紛れもない事実だ」

那智「今度は我々がそれに応える番だろう?」

泊地棲姫「……フン」

千歳「というか、地上に戻れるのかしら?」

足柄「この上のフロアの床も突き抜けてるんだけど……」

エミル「それなら大丈夫だよ? 階段はちゃんと残ってるから!」

ミュゼ「でないと、私たちもここに戻れませんでしたからねー」

日向「那智、私たちも外へ出るために、泊地棲姫の言う隠し水路を通ってはいけないのか?」

那智「我々が帯同しては、泊地棲姫たちの居場所を明確に教えてしまう。狙われないように、我々と別ルートを通ったほうがいいでしょう」

伊勢「そっか……じゃあ、鳥海と加古とはここでお別れね」

那智「……提督。貴様とも、だな」

提督「ああ。俺たちは地上に出る気はねえ。そのまま向こうの世界に行く」

千歳「……提督。今まで本当にお世話になりました」ペコリ

足柄「いきなり押し付けられて、迷惑だったと思うけど……」

提督「そんなことねえよ。むしろそんなやつしかいねえからな、うちは」

足柄「……ふふ、そうね」

168: 2018/11/11(日) 11:37:06.30 ID:RfN4sFNMo

那智「心残りは貴様と一献、呑めなかったことくらいか」

提督「馬ぁ鹿、俺は下戸だ。そもそもお前、禁酒してたんじゃねえのかよ」

那智「ああ。あの島が燃えたあの日から、また禁酒を始めたが……そうだな、今夜ばかりは呑ませてもらう」

那智「貴様の顔を見ることができた祝いと、これからの貴様の無事を祈って、な」

提督「……そうかい」

那智「ではな、提督! 貴様の武運を祈る」ケイレイ

千歳「私たちも行きますね。もし、また会えたときは、一杯おつきあいしていただきますよ?」

足柄「そのときまで、どっかの誰かに負けたりしちゃダメよ?」

提督「ああ」フフッ

泊地棲姫「……私タチモ行クゾ。サラバダ、提督」スッ

鳥海「摩耶、司令官さん……みなさん、お元気で」ペコリ

加古「提督なら大丈夫っしょ。古鷹も! じゃーねー!」

伊勢「……日向。私たちも那智たちと一緒に行こっか」

日向「そうだな……提督」

提督「ん?」

169: 2018/11/11(日) 11:37:48.50 ID:RfN4sFNMo

日向「深海棲艦はどこから来たのか? 艦娘とは何者なのか」

日向「メディウムとは? そして、君自身の存在する理由はなんなのか……君となら有意義な話ができただろうな」

日向「じっくりと、話してみたかった。それだけが心残りだ」クルリ

伊勢「……また逢えたら、話してあげてよ。それじゃ!」タッ

金剛「みなサン、行動力が早すぎデス。せっかくなら記念撮影の一枚くらい、あって良いと思いマース」

朝雲「記念撮影……あ、あれ!? ねえ、青葉さん見てない!?」

山雲「……あら~~?」

五十鈴「そういえば、いつの間にか姿を見てないわ! どこへ行ったの!?」

 瓦礫<ガラン ガシャンガシャン

イサラ「ヒィッ!?」

 扉<ガコン! ガコガコッ!

三隈「瓦礫の裏に扉が……」

マルヤッタ「反対側から誰かが叩いてるじょ」

最上「歪んで開かないのかな?」

170: 2018/11/11(日) 11:38:39.17 ID:RfN4sFNMo

 扉<ガシャバン!

青葉「ども! ご心配おかけしました、青葉ですぅ!」ニカッ

ベリアナ「もう、ひどい目にあったわ~」

霧島「何をしてたんですか、この非常時に!」

ニーナ「ベリアナもどこに消えていたんですか!?」

青葉「実はちょっとこういったものを撮影してまして」

霧島「!」

朝雲「なに? 何を撮ったの?」

霧島「見てはいけません」

青葉「ええ、見ないほうが賢明ですよ~」

伊8「……もしかして」

青葉「はい! 伊8さんもよーく御存知の、この施設の裏側を撮影してきました!」

青葉「メディウムのみなさんがこの施設を支配してることはわかってましたから、こっちから攻撃さえしなければ協力を得られると思いまして!」

ベリアナ「あたしもそっちのほうが面白そうだったし」

ミルファ「もしかして、ベリアナはずっと青葉さんと一緒だったの?」

青葉「はい! 施設の道案内をお願いしてました! いいものをたくさん撮ってきてますよ~!」

171: 2018/11/11(日) 11:39:32.27 ID:RfN4sFNMo

霧島「もしかして、それを使ってお上を脅迫する気ですか?」

青葉「いえいえ、脅迫だなんてとんでもない! 青葉たちの身の安全の保証書として利用させてもらうだけです!」ニマー

提督「本営がお前らに責任転嫁しようとしたときにさす釘、ってところだな」

青葉「はい! いやあ、すごいですよ!? 一世一代の大スクープですよね、これは!」ニマー

霧島「……」アタマオサエ

提督「おう、じゃあその画像、お前ごと消されないように、くれぐれも気を付けて帰れよ」

青葉「いやあ、司令官が言うとシャレになりませんねえ……」

提督「あいつら、くそつまんねーことで命狙ってくるからな。お前も経験者だろ?」

青葉「ええ、重々承知の上ですね。そういうことですので、こういう重要な情報は、ぱぱっと遠地に通信しちゃいましょう!」

通信機『ピピー……』

青葉「そうそう、この通信機ですけどね?」

通信機『ザー……あー、あー、テストテストー。どう? 聞こえるー?』

ヴィクトリカ「その声は……」

提督「隼鷹か?」

通信機『おぉ~、ご名答! さっすがだねえ提督! まさかほんとに生きてたなんて! 今夜は祝杯だよぉ!』

青葉「隼鷹さんは今ショートランド泊地にいるんです!」

172: 2018/11/11(日) 11:40:25.05 ID:RfN4sFNMo

通信機『残念ながら、今のあたしはここから動けなくてさあ。それで青葉に頼まれて、データの仲介役を受けたんだよ~』

青葉「場所が場所ですので、本営が動く前にいろいろできますからね」

通信機『それより青葉、カメラを提督に向けてくれよ~。みんな無事~!?』

通信機『おぉ~、もしかして吹雪!? あんた育ってんじゃん! 電も朧も……うわー、みんないるねえ!』

エレノア「あら、映像見られるの?」

通信機『おぉ! 元気だったかいエレノア! ヴィクトリカやユリアもいるんだろ!?』

ヴィクトリカ「おう! なんだ隼鷹、あんたこっちに来なかったのか!」

ユリア「一緒に飲みたかったけど、また今度の機会になるわね」

提督「ま、今度があるかどうかわかんねえけどな」

通信機『ありゃま。なんだい、もうお別れかい?』

青葉「残念ですけど、司令官がこちらの世界で提督業を続けていくのは難しいかと」

通信機『そっかあ。ま、ちゃんと顔を見てお別れできるだけ、踏ん切りがつくかねえ』

通信機『おっと、あんまり長話してるとまずいんだっけ?』

青葉「あー、まあ、そうですね。とりあえず画像データの転送も終わりましたし、この辺で青葉もおいとましようかと!」

通信機『青葉、あんたはちゃんとあとでショートランドに来るんだよ? 酒の肴に土産話を期待してるんだからね!』

青葉「了解、了解ですよー! では、青葉もこれで失礼します! 司令官!」

提督「ん」

青葉「今までお疲れ様でした!」ビシッ

通信機『じゃあね、元気でやりなよ!』

提督「……ああ、ありがとな」

青葉「では!」タタッ

188: 2020/01/20(月) 00:35:46.57 ID:B4/8xNuCo

朝雲「……そっか、そういう考え方もあるわね」

山雲「朝雲姉~?」

朝雲「ううん、青葉さんが言ってた通り、司令官が退任したって考えれば、別れ方もすっきりするわよね」

五十鈴「……そうね。そういうのもありね」

利根「まあ、今の提督の立場からすると、戦いの中に身を置くさだめに変わりはないのかもしれんが」

明石「そうなっちゃいますねえ」

若葉「私たちと変わらないと言うことか」

白露「そういうことなら、花束でも用意してくればよかったね?」

島風「白露が女の子らしいこと言ってる!?」

白露「それどういう意味!?」

陸奥「ほら、こんなところでまで騒がないの」

龍驤「そん通りや。提督の新しい旅立ちやで、もう少しおめでたいムードちゅうもんがあるやんか!」グスッ

敷波「ちょっ、龍驤さん泣いてるの!? やめてよ!」グス

龍驤「言うて敷波も泣いとるし!」グスグス

敷波「しょ、しょうがないじゃない! 今までたくさんお世話になったし!」

189: 2020/01/20(月) 00:38:01.46 ID:B4/8xNuCo

摩耶「ほんとだよ、世話になりっぱなしだったぜ」グスン

提督「そんなことはねえよ。俺はおまえらが頑張ってたのを見てただけだからな」

五月雨「……それが嬉しかったんですよ。ずっと、見守ってくださったんですから」

提督「……そうか」

扶桑「……あの、提督?」

提督「ん、なんだ扶桑」

扶桑「こんな中で大変不躾なお願いですが、この扶桑……提督について行ってもよろしいでしょうか?」

山城「扶桑お姉様!?」

扶桑「我儘であることは重々承知しております。ですが私は、最期の時まで、あなたのお役にたちたいと思っています」

ル級「覚悟ハ出来テルノ? 向コウノ世界ハ、オ前タチニハツライ世界ヨ?」

扶桑「ええ。製油、製鉄技術も乏しく、火薬の生成もままならない世界だと、由良から聞いてるわ」

扶桑「それでも、もう私はこちらの世界で生きていけると思えないの。つらいことが、たくさんありすぎて」

山城「扶桑お姉様……」

190: 2020/01/20(月) 00:38:46.41 ID:B4/8xNuCo

扶桑「きっと、あなたもそうなんでしょう? ……大和?」

大和「……はい」

武蔵「大和、本気か……!?」

大和「ごめんなさい、武蔵。私は……もう、人間のために戦っていく自信がないわ」

大和「メディウムに殺されたとはいえ、あの人たちの怨嗟の大合唱は、私には耐えられなかった……」ポロッ

武蔵「……」

提督「……なあニコ、向こうの拠点は山の中なのか?」

ニコ「うん。そうだね」

提督「そこから一番近い海はどのへんだ?」

ニコ「! そうだね……」

摩耶「お、おい、提督、まさか……」

提督「拠点を海の近くに移せられれば、少しはマシになるだろ。海好きなメディウムも多いしな」

チェルシー「今の話、本当!?」

シルヴィア「さっすが魔神君! 話が分かるわ!」

191: 2020/01/20(月) 00:39:31.29 ID:B4/8xNuCo

摩耶「本気で、魔神になるつもりかよ……」

提督「ああ。いくら俺が指示したわけじゃないとはいえ、俺のためにこいつらがやってくれたことだ」

提督「ここで俺がメディウムを見捨てるような真似はしたくねえし、お前らと直接やりあいたくもない」

提督「俺が向こうへ行ってこいつらの面倒を見るのが、一番すっきりした落としどころだと思うぜ?」

摩耶「そりゃあそうかもしんないけどよ……」

提督「一応聞いとくが、由良やはっちゃんはどうする?」

伊8「一応聞くまでもないと思うけど?」

由良「ね?」

敷波「……」

電「敷波ちゃん……」

吹雪「そっか、そういえば敷波ちゃんは電ちゃんや由良さんと同じ鎮守府出身だったんだよね」

シルヴィア「うーん、言わせてもらうけど、あなた、迷ってるくらいなら来ないほうがいいわよ?」

敷波「え……あ、うん」

オリヴィア「ああ、こりゃあ納得いってない感じだねえ」

192: 2020/01/20(月) 00:40:16.38 ID:B4/8xNuCo

提督「敷波。俺はもう人間の敵だ。だが、お前はそうじゃないだろう?」

敷波「……」ウツムキ

提督「敷波。お前、人間を撃てるか?」

敷波「そ、それは……」

提督「そこで躊躇するんならやめとけ。お前はこっちに来ないほうがいい」

榛名「……」

黒潮「あー、司令はん? うちもちょっとひとこと言わせてもらいたいんやけど」ズイ

提督「なんだ?」

黒潮「うちは、司令はんが向こうの世界に行くのは、まあ、しゃあないなー、って思うんよ。経緯が経緯やし?」

黒潮「頭ではしゃあない思っとんやけど、それがめっちゃ気に入らんねん。わかる?」

提督「……」

黒潮「司令はんは、何もしてないやん。貧乏くじ引かされとるだけやんか」

黒潮「あの島が燃えたのも、もとはと言えば海軍の内輪揉めに巻き込まれただけやんか。ええように利用されとっただけやんか!」

黒潮「なんちゅうか、うちらの不幸を全部押っ付けて追い出してるみたいで、めったくそ気分悪いわ……!」

193: 2020/01/20(月) 00:41:02.82 ID:B4/8xNuCo

潮「わ、私だって、納得できません……今まで、たくさんお世話になったんです。そのお礼もできないまま、お別れなんて……!」グスッ

潮「ここで別れたら、もう会えないんでしょう? 朧ちゃん、元に戻すこと、できないの……?」

朧「それは……もう、無理じゃないかな」

電「……ごめんなさい」

敷波「それで謝んないでよ……! どうしようもないんでしょ? 謝られたって、別れるしかないんでしょ……?」グス

朝潮「……霞。敷波さんのこと、お願いできますか」

霞「朝潮!?」

朝潮「司令官。朝潮は、司令官についていきます」

敷波「!」

明石「本気なの!?」

朝潮「はい、朝潮は本気です。司令官のために、本営と事を構えることも覚悟の上……むしろ、信用できないとまで思っています」

朝潮「その証拠に、私の体も、鳥海さんのように深海の側に傾きつつありますから……」

敷波「なんなのさ……みんな、そうやって理由つけてどっか行っちゃってさ」

敷波「あたしは……みんなで一緒にいたいだけだったのに、どうしてこうなっちゃうんだよ……!」

霞「……」

194: 2020/01/20(月) 00:41:46.31 ID:B4/8xNuCo

敷波「いいよもう……こうやって泣いてたって、迷惑かけるだけって、わかってるし」

敷波「ほかにあたしが納得できるような良い方法も、あたしには思いつかないしさ」

敷波「由良さんもはっちゃんも、この施設で解体されるはずだったんでしょ? こっちの世界に留まったって、いいことないのはわかってる」

敷波「しょうがないんだよね……」グス

提督「……那珂。お前はどうする」

榛名「!」

川内「!」

神通「!」

那珂「ンー、那珂チャンハモウ、コンナダシー。コッチノ世界ニ残ッテ、万ガ一、ミンナト戦ウコトニナルノモ嫌カナァ」

榛名「……」

那珂「ソウイウワケダカラ、那珂チャンハ向コウヘ行ッテキマス! 提督、コレカラモヨロシクネ!」

川内「那珂……」

那珂「川内チャンゴメンネ! デモ、コレカラ戦ウ相手ニ、那珂チャンガイナイッテコトガ確実ナラ、夜戦デモ躊躇シナクテスムデショ?」

川内「そりゃそうだけどさ……」

195: 2020/01/20(月) 00:42:31.32 ID:B4/8xNuCo

神通「そう、ですね……那珂ちゃんは、向こうで、元気にやっていくって思えば……」グスン

那珂「モー、神通チャン笑ッテヨー。コレジャ、アイドル失格ジャナイ!」グスッ

山城「ええ、那珂ちゃんなら大丈夫よ。私も一緒に行くから」

那珂「!?」

扶桑「山城……!?」

山城「泊地棲姫と一緒に那珂ちゃんをこちら側に引き込んだのは私よ……!」

山城「少しの時間だけでもいい。私の艤装を解体して鋼材なり燃料なりにして、那珂ちゃんと扶桑お姉様に役立てて欲しいんです!」

龍驤「ちょっ、大丈夫なんか!?」

由良「解体するしないにかかわらず、そのほうがいいかもしれないわ。山城さんも、深海の側に傾きかけているし……」

伊8「むしろ扶桑さんのほうが心配かもしれないです」

龍驤「そっか、そうなるんか……」

長門「留まるにしても、深海棲艦になりつつある艦娘は、海軍に居続けても由良のように狙われる可能性もある」

武蔵「ああ。同じ艦娘にも、深海棲艦に恨みを持ってるやつは少なくないだろう」

武蔵「海軍に残るとなれば、最悪、背中を撃たれることも覚悟しなければならん」

長門「そう考えれば、鳥海のように深海に行くのも間違ってはいないな」

陸奥「……そうかもしれないわね」

196: 2020/01/20(月) 00:43:16.43 ID:B4/8xNuCo

霧島「……金剛お姉様はどうなさるおつもりですか」

比叡「!」

榛名「!」

金剛「Hm... 私は、海軍に残ろうと思いマス。テートクと一緒には行けまセン」

榛名「ええ!? ど、どうしてですか!?」

金剛「私がテートクと一緒に行ったところで、お役にたてるとは思えまセン。むしろ足を引っ張ると思いマス」

金剛「私は、テートクが『みんな』と仲良くしてほしいと思っていまシタ。この世界の人間たちも例外ではありまセン」

金剛「そして、世の中にテートクのやっていることが間違っていないことを広めたかったんデス」

金剛「轟沈した艦娘に手を差し伸べ、暴力や悪意で傷付いた艦娘を守ってくれたテートクが、認められて欲しかった……」

比叡「金剛お姉様……」

金剛「テートクは今、世界と決別しようとしていマス。私がそれを拒むことは、テートクを否定することにほかなりまセン」

金剛「テートクが生きているかもしれないことを知って、テートクのもとに集まったあなたたちを否定する気もありまセン」

金剛「私は、この世界に残って、テートクの功績を後世に残したいと思いマス」

榛名「金剛お姉様……!」ウルッ

197: 2020/01/20(月) 00:44:01.28 ID:B4/8xNuCo

金剛「比叡、榛名、霧島。あなたたちがテートクと一緒に行くと言うのなら、私は引き留めまセンヨ」

霧島「いえ、金剛お姉様のご心配に及ばず。私は海軍に戻ろうと思います」

摩耶「え!?」

霧島「……摩耶? 今の『え』はどういう意味かしら?」

摩耶「だ、だって、霧島さん言ってたじゃないっすか、司令についていくって……」

霧島「残念だけど、私の持ち得る知識と力と経験は、あちらの世界で司令が戦うに当たっての助力にはならないと思うの」

霧島「それよりも今、金剛お姉様が進む道のほうが困難に思えます。私の力は金剛お姉様のために振るうべきかと……!」

金剛「霧島……!」

比叡「……司令、ごめんなさい!」バッ

提督「!」

比叡「私も、金剛お姉様と一緒に戦います!」

榛名「……!」

比叡「ただ……暁ちゃんだけは、お願いしてもいいですか? あれからずっと目を覚まさなくて……」グスッ

提督「わかった、預かろう。フローラ、向こうで治療を続けられるか?」

フローラ「ええ、お任せください」

電「電も看病をお手伝いするのです!」フンス!

198: 2020/01/20(月) 00:44:46.52 ID:B4/8xNuCo

摩耶「霧島さんが海軍に残るんなら、あたしもそうするかな。鳥海も心配だし……今の海軍を放っておけねえもんな」

榛名「……」

武蔵「ほかに提督と一緒に向こうの世界に行くつもりの者はいるか?」

金剛「榛名、あなたはどうしマスカ?」

榛名「……榛名は……」

 PPPP... PPPP...

武蔵「! 私の通信機か」ニュッ

吹雪(胸の谷間から!?)

ニコ「」ハイライトオフ

ニーナ(ニコさんの目から光が消えてる……!)

武蔵「もしもし? おお、那智か、どうした」

武蔵「……うん……うん……わかった。急がせる、那智はもう少し時間稼ぎを頼む」

大和「なにかあったの……?」

武蔵「ああ、この研究所を憲兵隊が取り囲んでいるそうだ」

提督「憲兵隊?」

199: 2020/01/20(月) 00:45:31.14 ID:B4/8xNuCo

武蔵「なんでも、艦娘は見逃してもらえるが、それ以外の者は捕縛するつもりでいるらしい」

提督「……艦娘以外、ね」

ニコ「どっちみちぼくたちが外に出るつもりはないけどね」

武蔵「那智は瓦礫などの後始末のために我々が残っていると伝えたんだが、それを陸軍がやると言っていて……」

武蔵「この研究所に踏み込まれたくないであろう海軍幹部が、連中を抑え込んでいる状態だ」

龍驤「ああ……まあ、見られたくないもんばっかりやろうしなあ……」

武蔵「陸軍もこれまでの鬱憤を晴らしたがっているようで、にわかに殺気立っている」

長門「無理もない。今回の深海棲艦とメディウムの狼藉は陸の上での話だからな」

武蔵「我々艦娘も、もたもたしていると憲兵たちにしょっ引かれかねないと言っていた」

霧島「司令との別れをせっつくなんて、無粋な人たちですね」ムスッ

提督「仕方ねえよ、俺たちは数千人の人間を頃してるんだからな。連中にしてみりゃ十分すぎるお情けだろうさ」

提督「でもまあ……」チラッ

艦娘たち「!」

提督「あの時よりはましだな」フフッ

不知火「司令……」

200: 2020/01/20(月) 00:46:16.17 ID:B4/8xNuCo

朝雲「まるで、さよならを言いに来たみたいになっちゃったわね」

金剛「十分じゃありませんか、そうでショウ? テートク?」

提督「これだけ迷惑かけておいて、労力に見合ってない気もするがな」

ナンシー「なんだか、初めて鎮守府に来たときを思い出すわね~」

ルミナ「ああ、あのときも艦娘のみんなを罠にかけようとしたんだったね」

ニコ「……やっぱり、ぼくたちと艦娘は相容れないものなのかな」

若葉「それは違うな」

オボロ「!」

若葉「最初こそ敵対したが、提督がいてくれたおかげで艦娘とメディウムが手を取り合ったことは事実だ」

若葉「そして今も、みんなが提督の身を案じている。それは提督自身が我々を気遣ってくれたおかげだ」

初春「若葉……」

201: 2020/01/20(月) 00:47:00.41 ID:B4/8xNuCo

若葉「それから、メディウムとの生活も、悪くはなかった……楽しかった」

若葉「若葉は、こちらの世界に戻る。提督は、向こうの世界で戦うのだろう?」

提督「ああ、そうだな」

若葉「若葉は提督と同道できない。だが、幸運を祈っている」クルリ

初春「若葉!」

若葉「若葉たちがもたついて外に出てこないと、あいつらがなにをするかわからないからな」スタスタ

若葉「初春姉、みんな、提督を頼む」スッ

川内「若葉……」

オリヴィア「うーん、いい男……じゃないな、いい女だねぇ」

長門「……ああ。確かに、いつまでも名残を惜しむ暇はない、か」

武蔵「そうだな、急ぐか」

202: 2020/01/20(月) 00:48:03.21 ID:B4/8xNuCo

 * 地上 *

憲兵「だからいい加減突入させろと言っているんだ!」

海軍「まだ安全の確認が取れていないと言っているだろう!」


那智「……まだか、あいつらは」

別の大将「那智よ、本当に生存者は他にいなかったのか」

那智「これは大将殿。そうです、生存者は元帥だけでした」

大将「そうか。しかしその元帥閣下でさえ、心神喪失状態にある。犯人たちは薬物を扱えるのか?」

那智「いえ。おそらくは、直に精神を操ったものかと」

那智「深海棲艦もまた、負の感情から生み出されたと言われておりますが……」

大将「それと理屈は同じだと」

那智「定かではありませんが」

大将「……本来ならば、あの深海棲艦どもを見逃すつもりはなかった」

大将「だが、貴様らが協定を結んだと言うのなら目を瞑る他あるまい」

那智「……はっ」ケイレイ

203: 2020/01/20(月) 00:48:46.17 ID:B4/8xNuCo

 ゾロゾロ…

海軍「おい、施設から誰か出てきたぞ!」

海軍「大丈夫か!?」


那智「やっと戻ってきたか……」

大将「……施設から出てきた艦娘は全員保護せよ! 急げ!」

憲兵「待て! 何があったか話して貰わねば……」

大将「艦娘は海軍の所属である! 我らが先に治療すると決めたのならば、それに従え!」

憲兵「お、横暴な!」



那智「……」

那智(憲兵に捕まれば、地下で起こったことを話させるだろう)

那智(余計なことを言わせないために、私たちを『保護』する、か……)

那智「折角、酒を断ったのにな……また、悪い酒になるか」ハァ

204: 2020/01/20(月) 00:49:31.05 ID:B4/8xNuCo

 * 地下 *

不知火「……」

提督「最後は不知火か」

不知火「……如月」

如月「? なあに?」

不知火「如月は、これで良かったのですか」

如月「今更よ。私は、艦娘ではなくなってしまったもの」

不知火「……そう、ですね。私たちの道理を押し付けるのは筋違い……」

不知火「司令も、私たちとは道を違えるのですね……」ウツムキ

如月「……」

不知火「司令。如月たちを、よろしくお願いいたします」

提督「……ああ」

不知火「そして、これまでのご指導ご鞭撻……ありがとうございました……!」ケイレイ

提督「……ああ。俺のほうこそ、今まで助けてくれて、ありがとうな」ケイレイ

不知火「……では、これで、失礼致します」ペコッ クルリ

 タッ

提督「……」

205: 2020/01/20(月) 00:50:16.37 ID:B4/8xNuCo

ニコ「……行っちゃったね」

提督「仕方ねえさ。これから俺は人間の敵になるんだからな」

提督「お前たちも、覚悟はできてるか? 引き返すなら今のうちだぞ」

那珂「那珂チャンハ大丈夫ダヨー!」

山城「扶桑お姉様……!」

扶桑「心配いらないわ……一度は、人に失望した身だもの」

朝潮「朝潮は、司令官にどこまでもついていきます!」

大和「大和も、地の果て、水平線の果てまで、ご一緒致します……!」

由良「行きましょう……向こうの世界に」

伊8「……」コクン

提督「よし、これでこの世界とはおさらばだ。ニコ」

ニコ「うん」コク

 バッ

 床に浮かび上がる魔法陣 < カッ…!

ニコ「みんな、集まって。僕たちの世界に帰るよ」

206: 2020/01/20(月) 00:51:00.25 ID:B4/8xNuCo

シエラ「や、やっと帰られるデスか……」ホッ

イサラ「早く引き籠りたい……」

シルヴィア「でも、これで暫くは海とお別れねえ」

チェルシー「うああああ、言わないでよ~! ああ、憂鬱~~!」

アーニャ「もっとたくさん釣りたかったなあ……」

ミーシャ「で、でも、それは艦娘さんたちも、一緒ですから……」

ミュゼ「それまでは私たちがお世話しましょう!」

アマラ「お掃除のし甲斐がありますね!」

ルミナ「んー、そうだねえ、ついでに研究にも付き合ってもらえると助かるよ」

ニーナ「そう言ってずっと付き合わされるのは駄目ですからね!」

ナンシー「ルミナってば、研究のことになるとそればっかりだもんねー」

提督「……」

ニコ「魔神様?」

提督「向こうの世界の拠点は山の中だ。まずはとにかく海に進出したい」

207: 2020/01/20(月) 00:52:00.53 ID:B4/8xNuCo

提督「もし海を目指すとしたら、いくつ町を潰せばいい?」

ニコ「魔神様……!」

コーネリア「魔神様が本気になられたぞ……!」

ルイゼット「ついに、愚かな人間たちに鉄槌を下す日が来たのですね……!」

提督「俺たちは向こうの世界じゃ人間の敵だ。鉄槌云々は置いといても、人間どもにおとなしく滅ぼされる気はねえ」

提督「俺たちは俺たちの平和を手に入れる……!」

カトリーナ「よおっし! やってやるぜえええ!」

初春「うむ、そうと決まれば、わらわも本気を出さねばのう」

ヴァージニア「我等が歩むは覇道、それは最初から決まっていたことだ」

提督「ああ。面倒臭いのが嫌で、人から離れて過ごそうとしていたが……逃げたり隠れたりするのはもうやめだ」

提督「この世界で果たせなかった理想の世界を……俺たちの、国を作る」

吹雪「司令官……!」

提督「だから、頼むぜ。お前らが頼りだからな」

如月「勿論よ。どこまでもついて行くわ」

メリンダ「私たちも、御主人様の仰せのままに……!」

208: 2020/01/20(月) 00:52:46.46 ID:B4/8xNuCo

オボロ「我ら、御屋形様の手となり足となり、敵を討つ所存……!」

電「私たちが、やっつけちゃうのです!」

オリヴィア「問題は、向こうの世界に戻ってからだね」

ミリーエル「そうね。大分人間を狩ってしまったし……」

クロエ「どのくらい人間が勢力を戻しているでしょうねえ」

グローディス「それに、あれだけ大勢狩ったんだ、私たちのことも警戒しているだろうな」

クリスティーナ「一筋縄ではいかなそうね」

ニコ「大丈夫だよ。今のぼくたちには、魔神様が付いているんだ」

全員「!」

ニコ「眠ってた魔神様の力を、呼び戻せたんだ……ぼくたちの力も、強くなってるはずだよ」

ニコ「さあ、帰ろう……ぼくたちの家へ。アルス=タリア封印神殿へ……!!」

提督「……」

朧「提督? どうしたんですか?」

提督「いいや。封印なんてされたりしねえよ、と思ってな」

提督「二度も三度も失ったこの命だ、そう簡単に失ってたまるかよ……!」


209: 2020/01/20(月) 00:53:31.73 ID:B4/8xNuCo

 * 施設内 階段 *

明石「さあ、早く外に出ましょ!」タタタッ

不知火「はい……!」タタタッ

大淀「……」タタ…ッ

霞「……? 大淀さん、どうしたの?」タタタッ

大淀「あ、い、いいえ、なんでも……」タ…ッ

初雪「……?」

不知火「大淀さん?」

大淀「……」ピタ…

明石「大淀……!?」

大淀「っ!」クルッ ダッ

霞「ちょっ……!」

不知火「大淀さん!!」

210: 2020/01/20(月) 00:54:16.47 ID:B4/8xNuCo

大淀「ごめんなさい……私、やっぱり提督のもとに行きます!」ダッ

明石「ちょっと、今更!?」

初雪「先、行ってて」タッ

霞「は、初雪!?」

初雪「私も、大淀さんと一緒に行くから……!」

初雪「駄目だったら、引き返して連れてくるから、待ってて……!」

霞「ちょっと……!」

不知火「……先に行きましょう」

明石「不知火ちゃん……!」

不知火「怪我をして遅れたことにしましょう。不知火も、二人の気持ちはわからなくはありません」

霞「……」

明石「……」

211: 2020/01/20(月) 00:55:31.13 ID:B4/8xNuCo

 * 地下 最下層 *

大淀「はぁ、はぁ……」タタタタッ

初雪「大淀、さん……!」

大淀「……私、戻っても、行くところなんかないの」

大淀「大淀として、海軍の任務を、引き受ける自信がないの……!」

大淀「でも、提督は、こんな私に、仕事を与えてくれた……私に、居場所をくれたの……!」

大淀「だから初雪ちゃん、行かせて! 私は……」

初雪「私、止めに来たわけじゃない」

大淀「!」

初雪「私も、一緒にあっちの世界に行って、大丈夫か不安だった」

初雪「でも、ここから海軍に戻った方が、私は不安……!」

大淀「……!」

初雪「行けるんだったら、私も、ついてく……!」

大淀「……急ぎましょう!」ダダッ

初雪「……」コク

212: 2020/01/20(月) 00:56:31.46 ID:B4/8xNuCo

 *

大淀「あった、あの扉……!」

初雪「……提督……!」

大淀「提督……提督っ!」ウルッ

 扉<バァン!

大淀「提督っ!!」

初雪「……!」

 シ…ン

大淀「てい、とく……?」

初雪「……」キョロキョロ

初雪「なに、これ……部屋の真ん中に、大きな穴が……」

大淀「ていとく……」ヘタッ

初雪「……っ」タッ

初雪「どこかに、隠れてたり……してる、かも……」ウロウロ

初雪「どこかに……」タタッ

大淀「……」

大淀「あ、あああ……」ジワッ

大淀「うわぁぁぁああああ……! 提督ぅぅぅ!」

初雪「……本当に、行っちゃったんだ」

初雪「……ぐすっ」




213: 2020/01/20(月) 00:57:51.07 ID:B4/8xNuCo
今回はここまで。

残るはエピローグのみ。

219: 2020/06/28(日) 16:18:04.74 ID:80gS1WPZo

 *三か月後 *

 * 太平洋上 某所 無人島 *

 ザザーン…

浜辺の樹木にかけたハンモックで眠る加古「Zzz...」

加古「……ふぁぁ……むにゃむにゃ」

加古「うん……!」ピク

 ザザァ…

摩耶「……よう」

加古「ふあ……あー、摩耶か……おはよ」

摩耶「ったく、相変わらず寝てばっかだな」

加古「まあ、起きたところでご飯を確保する以外、何もすることないしねー」ボリボリ

摩耶「そうか? 全く体を動かしてねえってわけじゃないならいいけどさ」

 ザザァ…

??「摩耶……!?」

摩耶「! その声……鳥海か!?」

220: 2020/06/28(日) 16:18:49.97 ID:80gS1WPZo

??→鳥海(深海化)「摩耶……! 久シブリネ、元気ソウデ良カッタ……!」ニコッ

摩耶「鳥海も……その顔色だと元気かどうかちょっとわかんねーな」

加古「髪の毛まで白くなっちゃったもんねえ」

鳥海「フフッ、私ハ大丈夫ダカラ、安心シテ」

摩耶「大丈夫なのはいいけどさ、なんで鳥海が加古のところに来てるんだ?」

鳥海「差シ入レヲ持ッテキタノ。ホラ、加古ハドコノ鎮守府ニモ属シテナイデショウ?」

摩耶「加古、お前、深海からも差し入れ貰ってたのか!?」

鳥海「エッ?」

加古「いやあ、助かるよ~。両方から差し入れ貰って、備蓄できるくらいには、あたしも生活できてるしさあ」

摩耶「ちゃっかりしてやがんなあ……まあ、鳥海に会えたからいいけどさ。ほら、こっちはあたしたちからの差し入れだ」

加古「へへ、いつも悪いね~」

摩耶「なんだよ、今更いいって」

鳥海「ソウヨ、私タチノ善意デヤッテルンダカラ」

加古「……だからこそ言わなきゃいけないんだけどさ」

221: 2020/06/28(日) 16:19:34.42 ID:80gS1WPZo

加古「二人とも、もうここに来ないでほしいんだ」

摩耶「なんだって?」

鳥海「ソレハ、ドウシテ……?」

加古「最近、双方からの偵察機が飛んできてる感じなんだよね。視線も感じるようになってきたし。それが誰かはわかんないけどさ」

加古「二人とも親切であたしに差し入れ持ってきてるのは、よーくわかってる」

加古「でも、余所からしてみたら、敵に内通してる相手に資材を横流ししてるようなもんじゃん」

摩耶「……」

加古「特に鳥海は、今の姿こそ深海棲艦みたいだけど、艦娘を裏切ったようなもんだろ?」

加古「こんなことしてたら、深海棲艦たちにだって疑われるんじゃないかな、って」

鳥海「……」

加古「まー、甘えてたあたしが一番悪いんだけどさ。でも、両方とつながりを切るのもためらったのは事実だし」

加古「お返しというわけじゃないけど、丁度、摩耶と鳥海が一緒にいるときに、話したくってさ。時間を合わせられる機会を作りたかったんだー」

加古「あたしくらいならともかく、摩耶と鳥海が逢うチャンスがなくなったら嫌だなって思ってたんだよね」

摩耶「加古……」

222: 2020/06/28(日) 16:20:20.76 ID:80gS1WPZo

加古「ってわけでさ! あたしもこの島から引っ越すんだ。だから、二人と会う機会ももうないと思う」

鳥海「大丈夫ナノ?」

加古「どうかなぁ……ぶっちゃけ不安しかないけど、やるしかないっしょ。こんな生活も始めてから三か月経つし、なんとかなるよ」ニシシ

摩耶「……そうか」

鳥海「ミンナトオ別レシテ、三カ月経ツノネ……」

摩耶「そんなになるんだな……」

鳥海「デモ、コノ姿ニナッテカラ、マタ摩耶トコンナ風ニガデキルナンテ、思ワナカッタワ」クス

摩耶「そだな。こうやって、戦わずに済んでること自体、すげえことだよな」

鳥海「ネエ、摩耶。ミンナハ元気ナノ?」

摩耶「……正直、あんまり良くねえかな」

鳥海「エ……?」

摩耶「何から話したらいいもんかな……いや、いいニュースが全然ねえんだよ」

加古「……」

223: 2020/06/28(日) 16:21:04.45 ID:80gS1WPZo

摩耶「まず、霧島さんたち……金剛姉妹は、あれから一カ月謹慎処分になったんだ。金剛さん以外はみんなあの研究施設に行ったからな」

摩耶「相当罵声も浴びせられたんだけど、金剛さんが全部頭を下げてくれて、事なきを得たって……」

摩耶「言われる筋合いのないことまで金剛さんが丁寧に対応してくれて、それ以上のお咎めは無し……ってさ」

鳥海「……」

摩耶「けどよ、その後の扱われ方もひどいもんだぜ!?」

摩耶「無茶な転戦をやらされて、何度も沈みそうになったっていうし……」

摩耶「一番酷なのは比叡さんかな……うちの比叡さんって料理上手だったろ?」

摩耶「けど、提督と別れて以来、料理させてもらえてないんだ、って」

摩耶「一度だけ、比叡さんが料理をふるまったことがあったらしいんだ」

摩耶「当然、評判は良かったんだけど、その次の日に余所の比叡さんがとんでもねえもん作ったせいで……」

摩耶「やっぱり厨房に立たせちゃ駄目だ、ってなっちまって……元気、なかったんだよなあ」

加古「なんでそうなっちゃうかなあ……」

224: 2020/06/28(日) 16:21:50.01 ID:80gS1WPZo

摩耶「それから大淀だけど、提督の生まれ故郷に行ってみたい、っつってそのままいなくなっちまった」

摩耶「初雪も一緒に行ったらしいんだけど、二人とも行方不明なんだよ」

摩耶「同じ時期に山火事があって、どっかの村がまるっと燃えちまったって話もあって」

摩耶「もしかしたら、そいつに巻き込まれたのかもしんねーんだ」

鳥海「ソンナ……」

摩耶「ほかにも、那智みたいに引退したやつや、青葉とか連絡取れないやつが多くなっちまったしさ……連絡とれんのは島の調査隊くらいだよ」

加古「……摩耶は、今は本営にいるんだっけ?」

摩耶「ん、ああ。ただ、本営は本営で拠点をどこに移すか、いまだに揉めてんだよ」

加古「あー、横須賀っていうか、関東がもうアレだからねえ」

摩耶「舞鶴だと日本海側で不便だし、呉や大湊じゃあ本州の端っこ過ぎるし……」

鳥海「神戸トカ、紀伊半島アタリニ新シク作ルシカナイト思ウワ」

摩耶「結局は横須賀が一番いいと思うんだけど、異常気象の影響が残ってて、関東一帯はまだインフラが回復してないのも痛えんだ」

摩耶「そのインフラ整備は陸軍が引き受けてるけど、あの騒動のせいで陸軍と海軍の仲は最悪の状態なんだよな」

加古「海軍が活動するためのインフラは後回しにされそうだねえ」

摩耶「ああ。あたしはしばらくお家騒動に巻き込まれて日本国内から動けないだろうなぁ……」

225: 2020/06/28(日) 16:22:34.87 ID:80gS1WPZo

摩耶「ここに来たのも遠征部隊の護衛を任されたからさ。ほんっと、運が良かったぜ」

鳥海「ソレジャ、アマリユックリシテイラレナイノ?」

摩耶「そういうこと。だからなおさら、今日は会えて良かったよ」

鳥海「……摩耶。私モ、ヒトツダケ伝エテオクワ」

鳥海「ショートランド泊地ニハ、近ヅカナイデ」

摩耶「……どういうことだ?」

鳥海「私ハ、泊地棲姫ト一緒ニ、北ヘ向カウツモリナノ」

鳥海「ソノ私タチトハ別ノ深海ノ艦隊ガ、ショートランド泊地ヘ向カッテイルワ……」

摩耶「ここ最近、深海の動きが不自然だって誰かが言ってたけど、そういうことか……」

加古「んじゃ、あたしもそっち方面には向かわないほうがいいってことだね」

鳥海「エエ。ソレカラ……」

鳥海「軽巡棲姫ダケハ、ドコニ向カッテイルカ、ワカラナイノ」

摩耶「!」

226: 2020/06/28(日) 16:23:19.53 ID:80gS1WPZo

鳥海「モシ見掛ケタラ……デキレバ、気付カレル前ニ、逃ゲテ」

摩耶「わかった」コク

加古「了解、了解っと。いやー、怖いねえ」

摩耶「ああ……あたしもそろそろ行かなきゃな」

摩耶「最後にさ、二人に逢えて良かったよ」

鳥海「摩耶……元気デネ」ニコ

摩耶「ああ、鳥海も。加古もな!」ニッ

加古「んー」フリフリ

 ザァッ

摩耶「じゃあなーー!」

鳥海「……」ブンブン

加古「……」

鳥海「ソレジャ、私モ行クネ」

加古「ん」コク

227: 2020/06/28(日) 16:24:04.91 ID:80gS1WPZo

鳥海「今マデ、アリガトウ……!」ニコ

加古「……こっちこそ」ニコ

 ザザァ…

加古「……」

加古「行っちゃったねえ……」ノビーッ

加古「さぁて、あたしも荷造りして……昼に行くか、夜に行くか……」

加古「昼のうちに行くかあ……夜は夜で寝たいしなあ」

加古「……」ミアゲ

加古「……また偵察機が飛んでこないといいけど……」

235: 2020/11/14(土) 17:47:33.86 ID:ZzhBdZhho

 * 墓場島沖 *

長門「……」

利根「この辺りも久しぶりじゃな……!」

五十鈴「……」

利根「景色はだいぶ変わってしまったがの……」

利根「かつて緑が生い茂っていたあの島が、溶岩に覆われて今や岩の塊じゃ」

潮「……」

利根「ふむ……風の雰囲気も心なしか味気ないというか」

筑摩「利根姉さん……」

利根「む、なんじゃ筑摩」

筑摩「その……」

利根「まあ、言いたいことはわかる。しかし、いくら嘆いても元通りにはならん」

利根「吾輩も、この島には楽しい思い出をたくさん貰ったからな。この有様を見て、どうしようもない無力さを味わっておる」

筑摩「……」

236: 2020/11/14(土) 17:48:17.57 ID:ZzhBdZhho

利根「どうして、こうなったんじゃろうなあ」

五十鈴「……本営も無神経が過ぎるわ。いくら私たちがここに住んでいたからって、喜べなんて言う?」

利根「まあ、かといって、他人にこの島を探索させるのも……」

長門「ああ。気に入らないな」

潮「3か月……なんだかすごく長い間待たされた気がしますね……」

筑摩「……いつか」

利根「?」

筑摩「いつか、この島に戻ってくる日は、くるのでしょうか」

長門「……難しいだろうな。ただでさえ深海棲艦との戦いで、金も資材も逼迫している」

五十鈴「この調査だって、近々打ち切りになるでしょうね……予算の都合で」

利根「あと、何度……来ることができるんじゃろうな」

潮「……? 誰か、近づいてきてます!」

長門「あれは……!」

237: 2020/11/14(土) 17:49:02.28 ID:ZzhBdZhho

 ザザァ…

ル級「アラ、生キテイタノ? 久シ振リネ……」

長門「ル級……!? 無事だったか!」

ル級「エエ。アナタ達モ、変ワッテハイナイヨウネ?」

長門「そうでもないが……普通に戻ったと言うべきか」

利根「吾輩は戸惑っておるがな。かつての提督からは、吾輩たちに作戦の立案から何からすべて任されておったからのう……」

筑摩「本当ならそれもおかしな話なんですよ。提督が作戦を考えて、提督が進軍するかどうかを決めるのが普通なんですから」

潮「言い方は悪いですけど、丸投げ、ですもんね……」

長門「提督には相応しい言い方でもあるがな」フフッ

五十鈴「この島自体が本営から丸投げされてたようなものでしょ? イレギュラーもいいところだわ」

長門「ああ。そのおかげで我々が救われたというのも、なんと言うか、だな」

ル級「……ナツカシイナ」

ル級「覚エテイルカ? ココデ会ッタトキノコトヲ」

長門「ああ。まさか浜に深海棲艦が流れ着いているとは思わなかった」

238: 2020/11/14(土) 17:49:46.93 ID:ZzhBdZhho

利根「……あのときか。吾輩が立ち直れていなかった時の話じゃな」

潮「ル級さんに、勝負を挑まれた、って話ですよね……?」

ル級「……長門」

長門「ん?」

ル級「モウ一度、勝負ヲシタイノダケレド、引キ受ケテクレル?」

長門「何……?」

ル級「スッキリシナイ日ガ続イテルノ。気分転換シタイノダケレド」

長門「……私もだ。陰鬱な気分を、一度忘れてしまいたかったところだ」

ル級「……」ニコ

長門「潮、合図を頼む」

潮「えっ? は、はい!」

 ザァァ…

五十鈴「あの二人、何する気なの?」

潮「あ、合図って、何をすれば……」オロオロ

239: 2020/11/14(土) 17:50:32.42 ID:ZzhBdZhho

利根「……あの二人は決闘する気じゃ」

五十鈴「決闘!?」

利根「うむ……あのとき一緒にいたのは朝潮じゃったな。沖に出たあの二人の間に砲撃し、水柱を立てたんじゃ」


ル級「……」ガシャン

長門「……」ガシャッ


利根「あの時と同じじゃな。長門とル級が艤装を展開して睨み合ったままじゃ」

潮「あ、あの二人の間に撃つといいんですか?」

利根「うむ。頼むぞ」

潮「は、はい!」ジャキッ

 ドーン

 ヒューーー

ル級「……」

長門「……」

240: 2020/11/14(土) 17:51:17.30 ID:ZzhBdZhho

 ボチャーン

ル級「!」ギンッ!

長門「!」カッ!

ル級「ハァッ!」ドガガガガン!

長門「うおお!」ズドドドドン!

 ドドドドーン!!


潮「……!!」

五十鈴「ちょ、ちょっと! なんで二人とも、回避しないのよ!?」

筑摩「ね、姉さん、止めないんですか?」

利根「筑摩、それは無粋というものだ」

利根「第一、あの間に割って入って止められると思うか」

筑摩「それは……」


241: 2020/11/14(土) 17:52:02.24 ID:ZzhBdZhho

ル級(中破)「……ッ!」ガンガンガン!

長門(中破)「ハァァ!」ドンドンドン!


潮「も、もうやめたほうが……!」

利根「うむ、これ以上は……」


ル級(大破)「ウオォォオオ!」

長門(大破)「!!」

 ドガァァァン!


利根「な……!?」

ル級「グ……」メラメラメラ…

五十鈴「ちょっと!? 今、自分から当たりに行かなかった!?」

長門「ル級、貴様……!」

ル級「コレデ、イイ……」

長門「!!」

242: 2020/11/14(土) 17:52:47.30 ID:ZzhBdZhho

ル級「コレ以上、海ヲ彷徨ッテイテモ、ナニモ感ジナイ……」

ル級「歓ビモ、悲シミモ、怒リスラモナイ……虚無ノ世界」

ル級「私ニハ、戦イスラ、意味ヲ為サナイ……」

長門「……」

ル級「コレデ、イいンダ……」

ル級「スベて……終エるコトガデきる……」

ル級「ナがト……アりガとう……」

 ドゴォォォン!

 ゴボッ ゴボゴボゴボ…

長門「ル級……っ!!」

利根「あやつ、最初からそのつもりで……」

筑摩「……深海棲艦の他の仲間のところに行くことはできなかったんでしょうか」

潮「ル級さん……」グスッ

五十鈴「……とりあえず、長門さんの応急処置をしましょ?」

利根「う、うむ、そうだな……」

243: 2020/11/14(土) 17:53:32.23 ID:ZzhBdZhho

 * *

潮「……これで、少しはもつと思います」

長門「……ああ、すまない」

五十鈴「近隣の鎮守府に応援を呼んだわ。と言っても、そのパラオも最近攻撃を受けてるらしいから、あまり余裕がないけれど」

利根「パラオもか?」

筑摩「関東が機能不全になって以来、泊地も攻撃を受けるようになったんですよね」

五十鈴「ええ、でも、トラックやショートランドみたいに南西海域の泊地だけだったの」

五十鈴「それが半月ほど前から、パラオやリンガ、ブルネイでも被害が出てきてて……」

潮「押し込められて戦線が下がっているんですね……」

五十鈴「言いたくないけど、メディウムたちの反乱がなければ私たちだってもっと戦えてたはずなのよ」

五十鈴「そもそも、本営が私たちを使って実験しようとしてたの悪いんだわ」

五十鈴「そうでなかったら、本営がメディウムたちに付け込まれることもなかったんだから!」

長門「……そうかも、しれないな」

潮「……」

筑摩「……」

244: 2020/11/14(土) 17:54:17.57 ID:ZzhBdZhho

利根「うむ。メディウムに認められた提督が、この島で提督を続けていただけでも、違っていたであろうな」

利根「さすれば、ル級も悲嘆にくれることはなかった……」

五十鈴「……」

利根「提督が存命のころは、おそらく戦争が終わっても、この島で暮らし続けるのではないか、と思っておった」

利根「人間の手を借りることなく、艦娘が暮らせる世界。おそらくその中には、ル級たち深海棲艦も含まれていたはずじゃ」

潮「それじゃ、ル級さんは……」

利根「うむ……ル級は、そんな未来を見出したからこそ、今の未来を悲観してしまったのかもしれぬ」

利根「もっとも、なぜ深海棲艦が人間たちを襲うのか、未だに謎のままではあるが……」

利根「戦い以外に己の存在価値を見出せぬから、そうであったと吾輩は考えておる」

長門「……」

利根「かくいう吾輩たち、艦娘の中にも、戦って散ることを望んでいる者は少なくはなかろう」

利根「かつて船であった吾輩たちも、戦没したものが大半。ゆえに悲願を達成した後の未来を想像できぬ者が多い」

利根「もしかしたら、提督はそんな者たちを導こうとしておったのかもしれんな」

筑摩「利根姉さん……」

245: 2020/11/14(土) 17:55:07.68 ID:ZzhBdZhho

利根「されど、やんぬるかな。今となっては全て終わってしまったこと。吾輩たちは吾輩たちができることをせねばならん」

利根「まずは長門を無事に連れ帰り、本営で修理せねばな……」

五十鈴「……あら?」

潮「? ど、どうしたんですか?」

五十鈴「七時の方向……北に船がいるわ。あの形、海軍の巡視船かしら」

潮「もう助けに来てくれたんですか?」

五十鈴「おかしいわ。私たちは日本から南下してここへ来たのよ?」

五十鈴「パラオに向けて応援を要請したのに、どうして私たちの後ろから……北から船が来るの?」

筑摩「そういえば……」

五十鈴「それに、パラオからの援軍だとしても、いくらなんでも早すぎるわ。もっと時間が……」

 ヒュ

 ボシュッ

筑摩「ごふっ……」

五十鈴「!?」

246: 2020/11/14(土) 17:56:17.45 ID:ZzhBdZhho

 …ガァァァ…ン…

長門「今のは銃声か!?」

筑摩「」グラッ

利根「筑摩!?」

 バシャァァァン!

利根「筑摩!! しっかりするんじゃ!」ダキカカエ

筑摩「利根……姉、さん……」

五十鈴「な……」ワナワナ

長門「筑摩はあの船から狙撃されたのか!? みんな伏せるんだ! 私の艤装に隠れろ!!」

潮「そ、狙撃って、そんな……! どうして筑摩さんが撃たれるんですか!?」

利根「長門! 幸いにも筑摩はまだ沈んではおらぬ! 島の反対側に逃げ……」

 ドパァァン!

利根「」

筑摩「え」

247: 2020/11/14(土) 17:57:17.92 ID:ZzhBdZhho

 …ガァァァ…ン…

長門「利根えええええ!!」

 バッシャアァァァン!

潮「ひ……!!」

筑摩「姉、さん……?」

 ゴポッ

筑摩「待って……」

 ゴボッ ゴボボボ…

筑摩「待って、逝かないで……!」

筑摩「姉さ、ねえ……さ……!!」

 トプン…

筑摩「……あ……ああ……」

長門「なんだ……なんだというんだ!?」

五十鈴「静かにして……!」

長門「何を! ……五十鈴?」

248: 2020/11/14(土) 17:58:17.18 ID:ZzhBdZhho

五十鈴「いいから聞いて! これ……さっきから傍受してる無線。聞こえる?」ジジッ

無線『二射目も命中。首尾はどうだ』

無線『馬鹿。いくらなんでもヘッドショットするやつがいるか』

五十鈴「……」

無線『過去の報告だと、頭に命中して深海化した駆逐艦もいただろうが』

無線『スナイパーライフルじゃ殺傷力が高すぎて、弾丸が貫通しちまうんだよ。弾丸が対象の体内に残らなきゃだめだ』

無線『なんだと? せっかくこの距離から当てたのに』

五十鈴「……」

潮「な……何なんですか……この会話」

無線『頭を吹き飛ばした方は即氏したみたいだな。威力があることはいいことだが、実験としては失敗だ』

無線『そういうことなら最初から二射目を撃たせるな。で、残りは』

無線『残ってるのは軽巡1と駆逐1だな。戦艦もいるが瀕氏の状態だ、間違って頃してしまっては意味がない』

無線『ほかに用意した銃は?』

無線『オートマチックのハンドガンと、サブマシンガン、ショットガン、それからアサルトライフルだな』

無線『リボルバーじゃねえのかよ。だったらサブマシンガンにするか。取りに行くから、射程まで近づいてくれ』

無線『了解』

249: 2020/11/14(土) 17:59:02.59 ID:ZzhBdZhho

五十鈴「……なによ、これ……こんなのに、筑摩さんと、利根さんは……!」ワナワナ

長門「……潮、五十鈴。二人は逃げてくれ」

潮「長門さん!?」

長門「私が時間を稼ぐ。本営のお遊びにこれ以上付き合ってはおれん」ヨロッ

五十鈴「無理よ! そんな体でまともに戦えるわけないじゃない! それに私たちがみんなを見捨てたりできると思う!?」

長門「どうせ氏ぬのなら、戦って氏ぬだけだ。実験台になど、されてたまるか……!」

筑摩「……そう、ね」ムクリ

筑摩「どうせ氏ぬのなら……げほっ……どうせ沈むのなら、利根姉さんの敵を討ってからよ……!」ヨロッ

五十鈴「だから無理だって言ってるでしょ! まともに立っていられないじゃない!」ガシッ

筑摩「たとえそうでも……」ググッ

筑摩「五十鈴、あなたとはずっと一緒に戦ってきた仲間ですもの……その仲間を、守りたいと思うのはいけないこと……!?」

五十鈴「……っ!」

長門「五十鈴。潮を頼む!」

潮「長門さん!!」

 巡視船<ザザァァァ…!

長門「来るぞ!」

250: 2020/11/14(土) 17:59:47.55 ID:ZzhBdZhho
一旦、ここまで。

251: 2020/11/14(土) 21:02:35.72 ID:ZzhBdZhho
続きです。

252: 2020/11/14(土) 21:04:32.31 ID:ZzhBdZhho

 巡視船<ドガァァァン!

長門「な、なんだ!?」

潮「あれは……!?」

 魚雷<シュパァァァ…

 巡視船<ドガァァァン!

潮「ぎょ、魚雷です! どうして……!?」

長門「何が起こってるんだ……?」

 電探<ピコーンピコーン…

五十鈴「こ、これ見て! すごい数の深海棲艦がこの一帯に……!」

駆逐イ級「」ザバッ!

駆逐イ級たち「」ザバザバッ!

潜水カ級たち「」ユラ…ッ!

無線『この海域にこんなに深海棲艦が潜んでるなんて聞いてないぞ!』

無線『早く離脱しろ!』

253: 2020/11/14(土) 21:05:43.96 ID:ZzhBdZhho

駆逐イ級「グパッ」ジャコッ!

 砲弾<ドゥン!

 無数の砲弾<ドンドンドンドン!

 無数の魚雷<シュパパパァァァ…!

 巡視船<ドガドガドガァァァン!

無線『うわああああ!! ザザッ……ジー……ブツッ』

長門「駆逐艦と潜水艦ばかりだな……」

駆逐イ級「」ザバッ

駆逐ロ級「」ザバッ

重巡ネ級「」ザバァ

五十鈴「見て……あれは……!」

潮「あ、あのネ級、頭に、穴が開いています……!」

長門「もしかして……」

筑摩「利根……姉さん……!?」グスッ

254: 2020/11/14(土) 21:06:42.53 ID:ZzhBdZhho

重巡ネ級「……」チラッ

筑摩「!」

重巡ネ級「……」ザシャァッ ドガーン

五十鈴「一瞬こっちを見て、頷いたように見えたわ……」

長門「だとしたらやはりあれは利根なのか……?」

筑摩「姉……さん……!」ボロボロボロ

いきなり長門たちの前に引き返してきた駆逐イ級「」ザザァ

五十鈴「?」

駆逐イ級「」ジャコッ!

長門「しまっ……!!」

 煙幕弾<ボフン!!

長門「!?」

五十鈴「な、なに!?」

??「さ、みなさんはこっちですよぉ!」

潮「あ、あなたは……!!」

255: 2020/11/14(土) 21:07:32.47 ID:ZzhBdZhho

 * 墓場島 南岸 *

 遠くで炎上している巡視船< ゴォォォ…

??「よく燃えますね~」

長門「まさか、お前に助けられるとはな……青葉」

??→青葉「うーん、まさかだなんて、どういう意味でしょう? 青葉、そんなに頼りないですか?」

長門「そういう意味じゃない。青葉、お前わかってて言ってるだろう?」

青葉「えへへへ……」ポリポリ

五十鈴「……筑摩さん」

(波打ち際に筑摩が寝かされている)

五十鈴「……どうして? どうしてよ……!?」グスッ

青葉「おそらく、最初からこれが狙いだったんじゃないですか?」

青葉「今の本営に対して比較的従順ではあるものの、不安要素を抱えた艦娘たちです。体よく始末する方法として……」

長門「青葉」

青葉「……」

256: 2020/11/14(土) 21:08:47.44 ID:ZzhBdZhho

五十鈴「……いいわよ。厄介がられたのは確かだもの……」

長門「……利根と筑摩のことは許せないが、表立って敵対するのも考え物だ。これからどうしたものかな」

潮「……こうなるしか、なかったんでしょうか……」

青葉「今となっては、青葉はこうするしかなかったと思いますよ?」

青葉「巡視船内の通信は青葉も傍受しましたが、深海棲艦製の弾丸を使って、皆さんの殺害を図ったのは事実です」

青葉「あわよくば深海棲艦化の実験台にしようともしてましたよね。未だに続けてるんですねえ、あの実験」

青葉「青葉が情報を散々リークしたのにまだ続いてるってことは、実験の継続が認められたってことなんでしょうか?」

五十鈴「……深海棲艦の調査、って意味では、認められてるみたいよ」

青葉「ん~、そうなんですか。もうちょっと根っこから揺さぶらないと駄目だったんですねえ。ちょっと先走りしちゃったかなあ?」

五十鈴「先走りって……まだなにか企んでるつもり!?」

青葉「ええ、本営に近い協力者にお願いして、今回の襲撃事件についても問い質そうとしてまして」

長門「……連中に具合の悪い情報を突き付けても力づくで揉み消すだろう。あまり意味はないと思うぞ?」

青葉「その時はその時、ですよ。残念な結果になったときはそれ相応の結末になるだけです」

青葉「そうはなってほしくありませんけどね。真面目に頑張ってる提督の方々が不憫でありませんよ」ハァ…

潮「……本当に……」ウツムキ

257: 2020/11/14(土) 21:09:32.08 ID:ZzhBdZhho

ネ級「……」ザザァ…

長門「!」

青葉「戻ってきましたか。向こうの始末は終わりましたか?」

ネ級「……」コク

ネ級「……」ジッ…

(横たわる筑摩を見つめるネ級)

青葉「ああ、なるほど。筑摩さんを弔いたいんですね」

ネ級「……」コク

ネ級「……」ジッ…

潮「……わ、私たちを見てるんですけど……?」

青葉「ああ、それは筑摩さんを連れて行っていいか、皆さんにも訊いてるんですよ」

長門「そうか……私たちにはどうにもできないからな。よろしくお願いしたい」

潮「……そう、ですね……お願いします」コクン

五十鈴「……丁重に、弔ってあげて……」ウツムキ

ネ級「……」コク…

(筑摩を抱きかかえ、ネ級が海に消えていく)

258: 2020/11/14(土) 21:10:47.29 ID:ZzhBdZhho

五十鈴「……はぁ……これからどうすればいいの、私たち」

五十鈴「味方のはずの海軍に襲われて、敵のはずの深海棲艦に助けられて……!」

青葉「一応怪しまれないように、イ級さんに煙幕弾を持たせて、戦ったふりだけするようにお願いしたんですがねえ?」

青葉「もし戻ろうとするなら、海軍と深海棲艦の攻撃から命からがら逃げてきた、ってストーリーで行けると思いますけど?」

五十鈴「……無理じゃないかもだけど……」

潮「あ、あの、青葉さん……」

青葉「はい?」

潮「その……青葉さんの髪の毛が、ずっと濡れてるのって……やっぱり……」

五十鈴「!」

長門「……」

青葉「……あー……はい。お察しの通り、ですよ」ニコ…

潮「……あの、ごめんなさい……!」ウルッ

青葉「あーいやいや、どうぞお気になさらず! 青葉、もともと危ない話に首を突っ込んでましたから!」

青葉「こうなることはある意味予想通りなんです。だから気にしないで!」

長門「……そのお前が姿を現したのは、どうしてだ?」

青葉「それはですね、皆さんがこちらに来る情報を掴みましたので、一度話をしたかったんです」

青葉「ここまできたんだし、正直に言っちゃいましょう!」

青葉「皆さん! 『こちら側』に来ませんか!?」

長門「……!」

五十鈴「……っ!」

潮「……」

261: 2020/11/18(水) 22:13:18.13 ID:zXo21c+Jo

 * ほぼ時を同じくして *

 * 舞鶴鎮守府 大会議室 *

「……ということで、まずは本営を神戸に移す案で進めます」

「関東地方のインフラの復旧については、陸軍が担当することになった」

「我々が関東で活動しようとしても、陸の連中はいい顔をしないだろう。関東地方の防衛は手薄になる」

「大湊の諸君に頑張ってもらうしかないが、物流がな……」

「まったく、なぜ横浜が……!」

「それもこれも『魔神』などという化け物のせいだ! なんで海軍の施設を乗っ取ったりしたんだ!」

「魔神などとそれらしい名前がついているが、結局は深海棲艦と同じだろう! やつらが我々を敵視しているから……」

 ザワザワ…

仁提督「……責任転嫁もいいところだな」ボソッ

L提督「聞こえますよ、仁提督」ヒソッ

仁提督「だが、この事態は海軍の自業自得だとは思わんかね、L君」

仁提督「海軍は、極秘裏に艦娘を使った実験をしていたんだぞ? そんなことをやっていれば、付け込まれて然るべきだろうに」ヒソヒソ

L提督「仁提督……っ!」

262: 2020/11/18(水) 22:14:03.26 ID:zXo21c+Jo

仁提督「ふん……海軍として、国民に対し後ろめたいことをやった。そして、その報いを受けた。それだけのことだ」

仁提督「そしてそういう時に決まって犠牲になるのは、何も知らなかった民間人だ」ハァ

L提督「……」ハァ

 扉<コンコン

「ん?」

 扉<チャッ

榛名「失礼いたします」スッ

「誰だ?」

「艦娘の榛名だな……どこの鎮守府のだ?」

「会議中だ、艦娘が入ってきて良い会議ではない!」

「速やかに退室せよ!」

榛名「申し訳ございません。元帥閣下をはじめとした皆様に、大至急お伝えしたいことがございます」

榛名「先立って決定した通り、深海棲艦の侵攻を止めるべく編成された選抜隊がショートランド泊地へ出発致しました」

榛名「その選抜隊より連絡があり、本営が事前に察知していた情報より、明らかに敵戦力は泊地戦力を上回っていることを確認したとのことです」

榛名「そのため、泊地から救援要請が来ています。大至急、援軍をお願いに参りました」

「何?」

263: 2020/11/18(水) 22:14:49.66 ID:zXo21c+Jo

「馬鹿な。深海も、ショートランドにそんな戦力を向けてどうもならんだろう」

「後で調査したうえで検討する。榛名、退室せ……」

榛名「それから……」

「!」

榛名「過去に火山活動によって壊滅した××国××島……過去に墓場島と呼ばれていた島の調査隊が襲撃されました」

榛名「調査隊は艦娘で編成されていましたが被害甚大、ほぼ壊滅状態……」

榛名「襲撃犯の使用した武器に、深海棲艦の遺骸から製造された武器が使用されていたそうです」

 ザワ…ッ

榛名「深海棲艦から武器を作る技術は、海軍の中でも最重要機密として厳秘管理されているはず」

榛名「その武器を襲撃犯が持っていたというのは、どういうことでしょう?」

「「……」」


仁提督「……あの榛名……もしかして、墓場島のやつじゃないのか?」ヒソッ

L提督「まさか? その榛名はパラオ沖で没したと聞いていますよ?」

仁提督「なに?」



264: 2020/11/18(水) 22:15:33.08 ID:zXo21c+Jo

榛名「……海軍はなぜ、この戦況で足の引っ張り合いをしているのですか?」

 ドヨッ

「き、貴様、言うに事欠いて何を根拠にそのようなことを……!」

榛名「榛名は気付いてしまいました」

榛名「ショートランド泊地に送られた選抜隊の人選に、偏りがあると」

榛名「深海棲艦と友好関係を結ぶ方法を模索していた人たち、深海棲艦から武器を作るのに反対していた人たち」

榛名「それから、今の本営の主要な派閥と意見の合わない人たちや、陸軍とパイプのある人たち……」

榛名「そして、墓場島にいた艦娘たち」


L提督「!」ガタッ

仁提督「お、おい!? 落ち着け!」グイ


「そんなものは偶然だ。我々は、今動くことのできる戦力を送り込んだまでのこと」

「本土もまた、関東地方の防衛がままならない状況にある。すべての戦力をショートランドに割くわけにはいかん」

榛名「緊急事態ではない、ということですね?」

265: 2020/11/18(水) 22:16:18.47 ID:zXo21c+Jo

「そうだ。わかったら速やかに退……」

榛名「果たしてそうでしょうか?」ガサッ

「なんだその紙袋は」

榛名「ショートランド泊地近海の深海棲艦の動向について、本営が入手した情報のすべてです」

榛名「日時と一緒に写真に収めてあります。ご覧になりますか?」バサ

「……これは、本物なのか?」

「もしこれが本物だとしたら、ショートランド泊地に艦隊を集めないと泊地が落とされるぞ……!」

「いったいどこからこの情報を?」

榛名「このメモリーです」スッ

榛名「この中に、本営の特定のメッセージを受け取るための認識コードが入っていました」

榛名「今お配りした情報は、この接続コードを使用できるユーザー限定に配信されていた、厳秘情報です」

「……な、なぜ貴様がそんなものを!」

榛名「これは、深海棲艦と魔神に襲撃された、あの研究施設で見つけたんです」

 ザワ…!

266: 2020/11/18(水) 22:17:02.94 ID:zXo21c+Jo

榛名「つまり、あの研究施設で働いていた人が、この情報を見ることができていた……」

榛名「そして、ショートランド泊地に向かわせられた人たちが、どういう人たちか……」

榛名「榛名が何が言いたいか、お分かりになりますね?」

「……」

仁提督「……本営の意思にそぐわない者を、激戦となるショートランドへ送り込み、戦氏に見せかけ始末しようとしている、とでも言いたいのか」

L提督「仁提督!?」ギョッ

榛名「はい、その通りです」ニィッ…

仁提督「っ……!」ゾク

榛名「ショートランドへ送られた戦力も、この敵戦力の前では焼け石に水です。ただただ犠牲が増えるだけ」

榛名「それなのに、それ以上動こうともしないと仰るのであれば……泊地の者たちを見頃しにするおつもりだと、そういうことですね?」

「貴様! いち艦娘でありながら口が過ぎるぞ!」

榛名「榛名は、泊地の危機をご報告に」

「艦娘が我々の決定に口を出すなと言っている!」

267: 2020/11/18(水) 22:17:47.68 ID:zXo21c+Jo

榛名「そうですか……ですが、榛名は……」

 メキ

榛名「榛名はもう……」

 メキメキメキ

榛名「大丈夫ではありません」

 バギン! バギン!

榛名「榛名はもう、『口』を出さずには、いられないんです……!」

(榛名の艤装が裂けて、裂け目に歯が生える)

 ザワッ…!

「う……!!」

「き、貴様、深海棲艦か!?」

榛名「何をとぼけておられるんですか? これは、あなたがたが望んだ姿ですよ?」

「俺たちが望んだだと……?」

榛名「かつて、艦娘養成所、という、艦娘育成を目的とした海軍の外部組織がありました」

榛名「外部組織と銘打たれてはいますが、それは建前……実態は、海軍の実験用艦娘の管理施設です」

268: 2020/11/18(水) 22:18:32.86 ID:zXo21c+Jo

榛名「研究所では、艦娘と深海棲艦の実態を調査すべく、深海棲艦を鹵獲しての調査が始まり……」

榛名「その中で、深海棲艦の艤装から武器を作る技術の研究を進めるとともに、同様に艦娘の艤装から武器を作る研究もなされていました」

榛名「しかし、艦娘からはなかなかうまくいかず……ならば艦娘を深海棲艦にできないか、というふうに研究がシフトしていったのです」

「何を根拠にそんな作り話を……」

榛名「榛名は、そこで研究対象として実験台にされていた艦娘の一人です」

 ドヨッ…!

榛名「研究所は実験のために、艦娘を、精神的にも肉体的にも追い詰めて轟沈させ……」

榛名「絶望を与えて深海棲艦化させようとし、それを観察しようとしたのです」

榛名「結果は失敗でした。榛名たちは轟沈こそしましたが、深海棲艦化することなく、あの島の砂浜に流れ着きました」

榛名「そこで榛名は、提督少尉……当時は准尉でしたけれど、彼を慕う艦娘によって運良く助けられ……」

榛名「これまで艦娘として、戦い続けることができたんです」


仁提督「やはり……あの榛名……!」

L提督「墓場島の……!?」


269: 2020/11/18(水) 22:19:19.23 ID:zXo21c+Jo

榛名「榛名は幸せでした……提督小尉の下で、艦娘としての本分を全うすることができたのですから」

榛名「ですが、榛名が敬愛した提督も、海軍の内輪もめによって命を落としました……決して、火山活動が原因ではありません」

L提督「……っ!」

仁提督「……」

 シ…ン

榛名「提督少尉を氏に追いやり、その悲劇の原因となった研究は未だに継続され、今なお仲間を己の都合のために氏地に追い込む……」

榛名「榛名は、今の海軍に失望を禁じ得ません……!」

「だから、深海棲艦になったと……?」

榛名「……深い失望によって、こんな姿になるなんて、榛名は想像したこともありませんでした」

榛名「ですから、その問いには、はいと答えることはできません」

榛名「でも、榛名が深海棲艦になってしまったのは……事実ですね……ふフっ、ふふふフフ……!」ザワ…

 チャキッ

拳銃を構える将官1「元帥閣下、ここはお任せを」

元帥「……任せたぞ」

将官1「はっ!」

270: 2020/11/18(水) 22:20:03.00 ID:zXo21c+Jo

榛名「……お待ちを、元帥閣下。ショートランド泊地への援軍の件は、どうな」

 ドンッ

榛名「ぐ……」ヨロッ

L提督「!!」

仁提督「……!」

将官1「黙れ。艦娘の……否、深海棲艦の分際で意見するか」

榛名「……げふ……っ、は……榛名、は……」

将官1「まだ倒れんか……女の皮をかぶった化け物め」

 ドンドンドンッ

榛名「っ!! あ、ああああ……!」ガクッ

榛名「げほっ……げほげほっ……」ビチャビチャッ

「……」

榛名「榛名は……」

榛名「榛名は、金剛お姉様を誇りに思っていました……」フラ…

榛名「どんなときも前を向き、私たちと、人間を助けることを……愛をもって接することを、没する時まで忘れなかった、金剛お姉様……」

271: 2020/11/18(水) 22:21:07.10 ID:zXo21c+Jo

榛名「でも、あなたたちは……本当に、人間を助けようと思って、この海軍を率いているのですか」

 シーン…

将官2「その通りだ。我々は人間のために戦っている」ガシャン

「な、なんだあのでかい鞄」

将官2「海を亡霊どもから取り戻す。その成就のためには、艦娘も、海軍の人間も、駒として扱うだけの話だ」ガパッ ガシャッ

榛名「!!」

仁提督「機関銃……だと!?」

 機関銃<ガガガガガガ…!

榛名「あ……」

榛名「あが、あああ……!!」

将官1「艦娘も深海棲艦も、本当ならこの海には不要なものだ……!」

将官2「勝手に海からやってきて、我が物顔で跋扈する貴様らに、これ以上の勝手は許さん……!!」

榛名「ぐ、ぐぅ……」ヨロッ

272: 2020/11/18(水) 22:21:48.26 ID:zXo21c+Jo

将官1「まだ生きているのか……おい」

将官3「ああ、こいつでとどめだ」ジャコッ

 散弾銃<ドガンッ!

 ドチャッ

「「……」」

 シーン…

L提督「う、うう……おえっ」ヨロッ

仁提督「お、おい、大丈夫か!?」

仁提督「すまん、あけてくれ! こいつは民間出身なんだ、トイレに連れて行く」ガタッ

L提督「うぐ……す、すみません」

 チャッ バタン

L提督「……うう」ヨロヨロ

仁提督「……」

 ヒョイ

L提督「うえっ」カツガレ

仁提督「悪いが少し我慢しろ」カツギアゲ

L提督「す、すみま……うぷっ」

仁提督「礼には及ばん。俺も気分が悪い……一刻も早くあの場から離れたかったところだ」

273: 2020/11/18(水) 22:22:33.20 ID:zXo21c+Jo

 * トイレ *

 ジャー…

L提督「……」グッタリ

仁提督「今日はもう仕事は無理だろう……俺も戻りたくもない、帰るぞ」

L提督「はい……ご迷惑おかけしました」

仁提督「謝らんでいい。陸自出身の俺だって耐えられた絵面じゃなかった。民間出身のお前じゃショックを受けて当然だろう」

L提督「……それも、ありますが」

L提督「僕の鎮守府にいた古鷹や朝雲も、僕の不手際で墓場島に行っていた時期があったんです」

L提督「あの二人の身に何かあったらと思うと……」

仁提督「……」

L提督「こんなことになるなんて……!」

仁提督「考えるのは後にしよう。早く帰って体と頭を休めておけ」

L提督「古鷹……」グス

274: 2020/11/18(水) 22:23:18.30 ID:zXo21c+Jo

仁提督「ショートランド泊地にも、この事実を伝えなければならんだろうな」スマホトリダシ

仁提督「……仁提督だ。金剛、帰り支度だ。ああ、予定より早いがこれから戻る、L提督も一緒だ」

仁提督「車を出しておいてくれ……少々気に入らんことがあってな。L提督もそれで気分を悪くした」

仁提督「俺も今回ばかりは海軍に愛想が尽きそうだ。遠地勤務も考えなければ……」

 ズズゥン…!

仁提督「!? なんだ、この揺れは……!」

L提督「仁提督……早く、この建物を出ましょう……!」アセビッショリ

仁提督「な……L提督、その汗はどうした!?」

L提督「わかりません……けど、悪寒が……!」ガタガタ

仁提督「……金剛! すぐ車を出せるよう準備しておけ! 切るぞ!」ピッ

仁提督「L提督、お前は妖精が見えるんだったな!? だとしたら嫌な予感しかせん! 走るぞ!」ダッ

L提督「は、はい……!」ヨロッ

275: 2020/11/18(水) 22:24:02.84 ID:zXo21c+Jo

 * 大会議室 *

将官1「……う、撃て! 早く撃てっ!」

 機関銃<ガガガガガガガ…!

榛名?「……」バチュンバチュンバチュン

将官2「ひ、被弾しながら迫ってくる!?」

将官1「効いてないのか!?」

将官3「どけ!」ジャキ

 散弾銃<バガンッ!

榛名?「……っ!」バジュッ

 ドシャッ

将官3「とどめだ!」

 散弾銃<バガンッ! ドガンッ! ズドンッ!

 シュゥウウゥ…

276: 2020/11/18(水) 22:24:48.06 ID:zXo21c+Jo

将官1「やったか!?」

将官3「……!」

榛名?「……」ムクリ ジワジワジワ…

将官1「だ、駄目だ……」

将官2「な、なぜ再生するんだ!? これまでの実験でも効くと言ってたんじゃないのか!」

榛名?「ナゼ?」

榛名?「理由ハ簡単ヨ……コノ子モ、海ノ底ヲ見テキタカラヨ……!」

将官1「ど、どういう意味だ……!?」

榛名?「理解スル必要ハ、ナイワ……ドウセ、ココモ海ニ沈ムノダカラ」グラ

 ドシャッ

倒れた榛名の血だまりの中から現れる戦艦棲姫「アナタタチノ、血ノ海ニ、ネェ……!!」ズルゥ

「「「!!!」」」

277: 2020/11/18(水) 22:25:35.60 ID:zXo21c+Jo

「せ、戦艦せ……」

戦艦棲姫『グオォォオオ!!』 ドガン!

「に、逃げろ!」

「退避!! 退避だ!!」

 ドガンドガン!

「うわああああ!」

 ドゴオオォォォォ…!

戦艦棲姫「フフフ……!」

 ドガンドガン!

 ドガンドガンドガン!

戦艦棲姫「アァ、血ノ海モ良イケレド……火ノ海モ良イワネエ?」

 ドガンドガンドガンドガン!

戦艦棲姫「ホォラ、嫌ナラ、抵抗シテ御覧ナサイ……!」

 ドガドガドガドガーーーーーン!

278: 2020/11/18(水) 22:26:18.44 ID:zXo21c+Jo

 ゴオオォォォォ…!

戦艦棲姫「……アァ……ミンナ、ミィンナ、壊レテシマッタワネ……フフフ……!」

(ぼろぼろになった榛名を抱きかかえる戦艦棲姫)

戦艦棲姫「沈メルダケデハ飽キ足ラズ、殺メ、弄ビ、同胞ヲ傷付ケル道具ニスルナンテ……」

戦艦棲姫「『ヒト』デナケレバ何ヲシテモ構ワナイノカシラネェ」

戦艦棲姫「……」

戦艦棲姫「理解デキテイタナラ、アナタガコンナ目ニ遭ウハズガナイモノネ……」

戦艦棲姫『オォォオオオオォォォオオオ!!』

(戦艦棲姫の艤装が吠えると、数多の弾丸が黒い霧になって艤装の口に吸いこまれる)

戦艦棲姫「サア……『ミンナ』デ海ニ還ルワヨ……フフフフッ」ニコ…

 * * *

 * *

 *

284: 2020/11/21(土) 20:09:03.50 ID:I8THug57o



 * とある回顧録 *

『……私が海難事故に遭ったのは、高校二年の秋でした』

『船が転覆し、私を含めて数百もの人が海に投げ出されて、その大多数が命を落としました』

『私はその海難事故で運よく生き残った一人でしたが、その時に海中で恐ろしいものを見たのです』

『それが何者なのかはわかりません。明確に覚えてもいません。ただ、漠然と、恐ろしかったことだけを、覚えています』

『それからというもの、暗くて深い、海の底にいる夢を見るようになりました』

『私は怖くて、海から離れたくて、山村から来た男性と結婚し、海から逃げるようにその山村へと移り住みました』

『やがてその男性との子を授かり、田舎の暮らしにも徐々に慣れていきましたが』

『それでも、私は海の底を見ているような夢を見続けていました』

『しかし、その夢をぱったりと見なくなったのは、あの子を産んでからです』

『いつしか私の体に纏わりついていた、水の中のような浮遊感が消え……』

『あの子を産んだことで、漸く地に足がついたような感覚を覚えたのです』

285: 2020/11/21(土) 20:09:48.34 ID:I8THug57o

『そのせいか、私は、どうしても、あの子を可愛いと思うことができませんでした』

『泣き声はサイレンのようで、抱いてもそれが水袋のように思えて、どうしても、愛情を注ぐことができなかったのです』

『夫は、もう一人、子供を作りたいと言いましたが、私は不安でした。この子と同じ思いを、その子にも抱くのではないかと』

『しかし、二人目はそんな思いを微塵も抱くことなく、ころころと可愛い笑顔を見せてくれたのです』

『私が息子と呼べるのは、この子だけでした。もう一人の、あの子は、私にとっては、得体の知れない何かなのです』

『私は話しかけることができませんでした。恐ろしくて、遠巻きに見ていることしかできなかったのです』

『最近になって、艦娘という女性の集団が、海に出没する化け物たちを倒しているというニュースを見ました』

『シンカイセーカンという化け物たちもテレビに映し出され……それで、私は思い出したのです』

『私の夢にずっと出てきていたのは、あの海難事故で見た恐ろしいものは、あれではなかったのかと』

『そして、私のお腹から出てきた『あれ』も、そうだったのではないのかと』

『こんなことを、誰にも言えませんが、そうだったのではないかと、感じているのです……』




286: 2020/11/21(土) 20:10:33.71 ID:I8THug57o

 * 舞鶴鎮守府襲撃事件より二年後 *

 * 日本某所 選挙事務所 *

テレビ『歴史的瞬間です! ついにシンミン党による政権交代が実現しました!』

議員「バンザーイ!」

議員「幹事長おめでとうございます!」

幹事長「皆、よくやってくれた! ありがとう!」

幹事長「ところで、『彼』はどこへ行ったんだ?」

議員「い、いえ、それがつい先ほどから退席しておりまして」

幹事長「この政権交代の立役者だというのに、どこへ行ったというんだ?」


287: 2020/11/21(土) 20:11:18.50 ID:I8THug57o

 * 事務所の一室 *

(誰もいない事務所の一室で、提督の父親がたたずんでいる)

提督父「……」

 ス…

提督父「……!」フリムキ

謎の女性「……盗聴器は、私がすべて処理致しました。ご安心を」

提督父「……ご苦労」

謎の女性「……」ペコリ

提督父「ようやくだ」

提督父「やっとここまで来た……!」


288: 2020/11/21(土) 20:12:03.05 ID:I8THug57o

 * 回想 数十年前 *

プリント『○○村 ダム工事に関する連絡会』

若かりし頃の提督父「くそっ、頭の固い役人どもめ……俺たちの村を見捨てる気か!」グシャッ

提督父「村の連中も、最初は俺たちにやめさせろと言ってたくせに、ほいほい手のひらを返しやがって」

提督父「俺だけが馬鹿させられたようなもんじゃねえか!」

提督父「せっかく大学まで出たのに仕事がなくて帰ってきたからって、面白半分で好き勝手に噂しやがるし」

提督父「こんなことならこんな村に戻ってこなきゃよかったぜ……!」

提督父「ガキももうすぐ生まれるし、金もねえから逃げるわけにもいかねえ……!」

提督父「くそっ! なんで、どいつもこいつも俺を認めようとしねえんだ……!!」

 カタッ

提督父「誰だ!」

謎の女性「……はじめまして」

提督父「だ、誰だお前は!? 変な恰好しやがって……どこから入ってきた!」

謎の女性「私は、エフェメラと申します」

提督父「エフ……? 外人か? 俺に何の用だ」

289: 2020/11/21(土) 20:12:48.38 ID:I8THug57o

エフェメラ「……我らが神の命に従い、あなたの元へ馳せ参じました」

提督父「カミ? ……宗教の勧誘か? そういうのは要らねえよ。余所へ行け、余所に」シッシッ

エフェメラ「……このままでは、あなた様は出世とは無縁の人生を送ることになります」

提督父「ああ? 何が言いたいんだ」

エフェメラ「私は、あなた様に信心や金銭を求めるつもりはありません」

エフェメラ「ただひとつ。我らが神に、あるものを捧げていただければ、あなたの人生の成功をお約束いたします」

エフェメラ「あなた様が望む、地位も、富も、名誉も、一族の繁栄も……」

提督父「はぁ……?」

エフェメラ「……」

提督父(……おかしい……言ってることはどう考えてもおかしいのに、こいつの瞳から視線を外せねえ)

提督父(ただの人間じゃねえことはわかる……いや、人間なのか? こいつ、何者だ……?)

エフェメラ「……」

提督父「おい……何が望みだ?」

エフェメラ「私が求めるのは……」

エフェメラ「これから生まれてくる、あなた様の子の、人生そのものを戴きたく」

提督父「!? な、なんだそりゃあ!」

290: 2020/11/21(土) 20:13:33.06 ID:I8THug57o

エフェメラ「もし、あなた様が御子の不幸を望まないのであれば、そのようにもできますが……」

エフェメラ「そのようにしたのなら、あなた様はこれからもこの小さな村で小さく暮らし、やがて生涯を終えることになりましょう」

提督父「何を根拠に……!」

エフェメラ「ですが」

提督父「っ!?」ビク

エフェメラ「我らが神が、あなた様に降り懸かるすべての理不尽と不条理を、すべてあなた様の子に移し替えるのです」

提督父「なんだそりゃ……ガキを、身代わりにしろ、ってことか?」

エフェメラ「はい」

提督父「……待てよ、矛盾してるぞ。お前はさっき、一族の繁栄も夢じゃねえっつったよな?」

提督父「俺の子供が不幸になったら一族の繁栄なんて有り得ねえんじゃ……」

エフェメラ「不幸になるのは、これから生まれてくる子供だけです」

提督父「これから? 二人目以降は問題ねえ、って意味か?」

エフェメラ「はい」

提督父「……」

291: 2020/11/21(土) 20:14:18.39 ID:I8THug57o

エフェメラ「これから生まれてくるその子は、やがて世迷言を言い出すでしょう」

エフェメラ「誰も理解できぬ妄言に始まり、反抗、反発、離反……その子は、間違いなく誰からも認められない不幸な人生を歩むでしょう」

エフェメラ「災いの海より生まれし忌み子……あなた様は、それと道連れなさるおつもりですか?」

提督父「……災いの、海……?」

エフェメラ「はい……心当たりもありましょう」

提督父「……」

提督父「……俺の妻は、学生の時に海難事故に遭っている。海のそばには住みたくない、プールも嫌だというほどだ」

提督父「それが関係しているのか?」

エフェメラ「……あなた様の奥様にどのような過去があったかは、私の語るところではありません」

エフェメラ「ですが、奥様の身籠りしその命には、間違いなく、海との深き縁がありましょう」

提督父「……」

292: 2020/11/21(土) 20:15:03.28 ID:I8THug57o

エフェメラ「……」

提督父「本当に……」

エフェメラ「……」

提督父「お前は、本当に、俺に損をさせないんだな?」

エフェメラ「はい、その通りです、『ご主人様』」

 * * *

 * *

 *



 * 現在 事務所の一室 *

提督父「……あれから三十年か」

エフェメラ「……」

提督父「あのときから全く姿形が変わらん貴様は、やはりこの世のものではないのだな」

エフェメラ「……」

293: 2020/11/21(土) 20:15:48.38 ID:I8THug57o

提督父「海は化物が蔓延(はびこ)る魔境となった。だが、それを退治しようとする化物も、時を同じくして現れた」

提督父「エフェメラ……貴様はどちら側だ?」ジロリ

エフェメラ「……」

提督父「ふん、まあいい。貴様が何を企もうと、貴様は俺たちの一族の繁栄を約束した」

提督父「貴様にくれてやった『アレ』を海軍が買い取り、その数年前には海軍の内紛と火山の噴火で氏んだと聞いているが……」

提督父「それが俺との約束を反故にする理由にはならない。そうだな?」

エフェメラ「はい。その通りにございます」

提督父「ならば良い。まだ政権を取っただけで、その地位を盤石にするためには時間がいる」

提督父「くれぐれも、俺たちに何もないようにな」

エフェメラ「畏まりました」

提督父「……」

 バタバタバタ

 コンコンコン ガチャッ

議員「先生! こちらにいらしてたんですか!」

294: 2020/11/21(土) 20:16:33.21 ID:I8THug57o

議員「おひとりで何をなさっていたんですか?」

提督父(エフェメラの奴は消えたか……)

提督父「悪いな、さすがに疲れて、気分転換したかったところだ」

議員「テレビの取材が来ていますよ!」

提督父「ああ。今行く」

 スタスタ…







再び現れるエフェメラ「……」

エフェメラ「我らが魔神様の真の復活には、大量の魂が必要……」

エフェメラ「人間も、艦娘も、深海棲艦も……増やして、刈り取り……等しく魔神様の糧とするだけ」

エフェメラ「すべては、魔神様のために」


298: 2020/12/06(日) 10:44:32.18 ID:CV0FGmfpo

 * 本営 *

不知火「……以上、ご報告いたします」

新元帥「ご苦労だった。相変わらず苦しい戦況か……」

不知火「はい。しかし、それよりも……」チラッ


テレビ『……以上、シンミン党本部より、喜びの声をお伝えしました。続きまして、惨敗した現政権の……』


新元帥「……俺たちの存続も危うい、か」

不知火「……」

新元帥「負け戦続きで海外の泊地も攻め込まれ、資材調達もままならない」

新元帥「かといって泊地を手放せば、いよいよ奴らの攻撃が本土にまで迫ってくる……」

新元帥「舞鶴の一件が引き金だったかな……」フゥ…


テレビ『……防衛大臣はこれまで、今の艦娘を主力とした海軍の必要性を訴えてきましたが……』

テレビ『今回の選挙結果は、それが改めて否定されたということになります……』


新元帥「……」

不知火「……」

299: 2020/12/06(日) 10:45:18.05 ID:CV0FGmfpo

新元帥「不知火。我々の任務は変わらない」

不知火「はっ」

新元帥「引き続き、深海棲艦の邀撃と、泊地の防衛に当たってくれ」

不知火「承知しました」ビシッ

 クルッ スタスタ…

 扉<パタン

新元帥「……」

テレビ『未だ謎の多い深海棲艦なる勢力が制海権を広げる中……』

テレビ『艦娘と呼ばれる女性たちがその戦線に立つことに多くの国民が疑問を抱いていました……』

テレビ『今回の選挙によって、民意は大きく艦娘不要論に傾いたことがうかがえます……』

新元帥「……」

テレビ『……新政府与党は、今回の選挙で国内海外に駐留する海軍と、その支配下の艦娘をすべて撤退させ……』

テレビ『海軍を解体、それに代わる組織を編成し、艦娘を国防に従事させる公約を掲げてきました……』

新元帥「……」ピッ

テレビ「」プツン

新元帥「……」

300: 2020/12/06(日) 10:46:02.28 ID:CV0FGmfpo

 * 本営 埠頭 *

不知火「……」スタスタ…

不知火「!」

若葉(中破)「……不知火……!」

不知火「若葉……! 無事でしたか……!」

若葉「……ああ。やっとだ……やっと、五月雨のかたきが取れた」ニコ…

若葉「だが……」

不知火「……」

若葉「また、近くの鎮守府が襲撃された。軽巡棲姫の仕業だ」

不知火「……あの人も、まだ司令の影を追いかけ続けているのですね」

若葉「ああ。提督を求めて単身で鎮守府へ攻め込んでは、その鎮守府の司令官を殺害する……『提督』ではないという理由でな」

301: 2020/12/06(日) 10:46:47.03 ID:CV0FGmfpo

若葉「若葉たちのかつての提督は、もうこの世界にはいないというのに」ゴソ

不知火「……」

若葉「……」カチン シュボッ

不知火「……煙草ですか。怪我に障りますよ」

若葉「一服だけさせてくれ」ライターサシダシ

不知火「?」

若葉「若葉は、みんなの無念を晴らしたい。かたきを取りたくて戦っている」

若葉「このライターも、誰かの形見だ……これで、やっと報告できると思ったんだ」

不知火「……献杯ならぬ、献煙、ですか」

若葉「……」スパ…

若葉「しかしだ……こうやって誰かの無念を晴らしても、それ以上にまた別の新しいかたきが増えていく」

若葉「すべてのかたきを取る日は、くるんだろうか……」フー…

不知火「……」

302: 2020/12/06(日) 10:47:32.05 ID:CV0FGmfpo

若葉「……すまない、湿っぽくしてしまったな」フラ…

不知火「!」

若葉「大丈夫だ、一人で歩ける。不知火も任務があるんだろう? 手遅れになる前に、行ってきてくれ」

 グニャ

不知火「……?」

 グニャグニャア…

不知火「?? 空間が、歪んで……!?」

若葉「不知火……!?」

 (不知火の周囲の景色がねじ曲がり、球状の薄い膜が出来上がると)

若葉「不知火っ!!」

 パチンッ!!

 (風船が割れたときのような甲高い炸裂音が響いて)

 (次の瞬間、不知火の姿が消えている)

若葉「……し、不知火っ!!」

若葉「な、なんてことだ……!」

303: 2020/12/06(日) 10:48:36.64 ID:CV0FGmfpo

 * ??? *

不知火「……こ、ここは?」キョロキョロ

(中世の王宮の大広間のような場所)

不知火「……」

不知火「……」

不知火「……」ピク

不知火(背後に恐ろしい気配が……!)ゾワッ

 クルッ

提督「よお、不知火」

不知火「……!!」バッ

提督「!」

不知火「……あ、あなたは……司令、ですか……!?」

提督「……ふん、お前にここまで警戒されるとはな。俺もだいぶ変わっちまった、ってことか」

不知火「……」

304: 2020/12/06(日) 10:49:17.34 ID:CV0FGmfpo

提督「いいさ、俺はこの変化に後悔はしていない。なるべくしてなった、こうなることを俺は選択したんだ」

提督「今の俺なら、お前を頃すのも躊躇しないだろうな。だからこそのお前の態度なんだろうが……」

不知火「……っ」ジリッ

提督「そう身構えんな……っつっても、無理矢理こんなとこに呼び出してちゃあ当然か」

提督「少なくとも俺はお前を手にかける気はない。話をしに来たんだ」

不知火「話……ですか」

提督「ああ、不知火。お前も、こちら側に来い」

不知火「!」

提督「俺がお前を呼び寄せたのは、それを伝えたかったからだ」

提督「人間どもはお前らの奮戦に感謝もせず、それどころか、お前らを支援する人間どもすら厄介者扱いしているじゃねえか」

提督「お前がこれ以上人間に与したところでいいことがあるのか?」

提督「艦だったころとは人間の質が違う。かつてのように、お前たちの帰りを待つ者も、お前たちの無事を願う者もあまりに少なくなった」

305: 2020/12/06(日) 10:50:01.53 ID:CV0FGmfpo

提督「不知火。お前は何のために戦う? 報われもしないのに血と汗を流して、それでいいのか?」

不知火「……不知火は……!」

提督「……」

不知火「……」

提督「そうか。なら好きにしろ。邪魔はしねえよ」

不知火「司令……!?」

提督「そんな顔して即答できないくらい悩んでたんじゃ、こっちに来たくないか、来ることができない余程の理由があるんだろ」

提督「不安要素抱えたままこっちに来たんじゃあ、いざって時の判断力が鈍る。そういうのはよろしくねえ」

不知火「……申し訳、ありません」

提督「いいさ。不利も無理も承知で足掻きたいって姿勢、少し呆れてもいるが、お前らしいとも思う」

提督「だから俺たちはお前には手を出さねえよ。こいつはお前たちの戦争だからな」

不知火「司令……」

提督「……ただし。それはお前が戦えている間の話だ」

不知火「!」

306: 2020/12/06(日) 10:50:47.10 ID:CV0FGmfpo

提督「俺たちは、この世界に戻り、人間どもを駆逐する気でいる」

不知火「な……!!」

提督「俺はもともとこちらの世界の人間だった。だからこそ、けじめをつけてやろうって考えてる」

提督「お前が海に沈んだとき。お前が戦うすべを失ったとき。お前が人間に絶望したとき……!」

提督「そのときは、俺たちはお前のすべてを攫いに行く」

不知火「……っ」

提督「……そうだな、最後に懐かしい顔に会わせてやるか」

 コツ…コツ…

不知火「……! あ、あなた方は……!」

大和「お久し振りです……!」ニコッ

扶桑「不知火は、立派になったわね……!」ニコッ

不知火「大和さんと、扶桑さん……!? ご、ご無沙汰、しております……!」

不知火「それにしても、そのお召し物は……? 艤装は失われてしまったのですか?」

提督「……」

307: 2020/12/06(日) 10:51:32.07 ID:CV0FGmfpo

山城「姉様!」

 タタタッ

山城(深海化)「姉様……アラ、モシカシテ、不知火……?」

不知火「山城さん……!?」

山城「何シテルノヨ、私ト姉様ノ顔ヲ、何度モ見比ベテ」

提督「山城の姿に驚いてんだよ。別れたときはまだ深海化してなかったろ」

山城「ソウイエバ、ソウダッタカシラ」

提督「でだ……なあ不知火? なんでこの二人は、深海化してないと思う? なんで艤装がないと思う?」

不知火「……」

不知火「……あ」ビクッ

不知火「……ま、まさか……!!」


不知火「お二人は……メディウムに……!?」


提督「その通り。大和も扶桑も、艦娘じゃなくなったんだ」

308: 2020/12/06(日) 10:52:17.11 ID:CV0FGmfpo

提督「覚えてるか? 吹雪は、文字通り吹雪を呼ぶようになったよな」

提督「大和と扶桑の名前の付け方の法則は何だったかな」

不知火「……国名……」

提督「そう、国だ」ニヤリ

提督「お前が舞台から退場したら、この二人に出番をくれてやろうと思う」

不知火「……っ!!」

提督「わかるよな? 人間どもの最期を締めくくるのに、最高だと思わねえか」

不知火「……あ、あなたは……っ!!」

提督「言ったろ? お前が戦えていればいいんだ」

提督「お前が戦えている間は、俺たちは手を出さない。それだけの話だ」

不知火「……」

提督「できれば、こいつらに出番がないのが一番望ましいんだがな?」

ニコ「そんなこと、これっぽっちも思っていないくせに」スッ

不知火「ニコさん……!」

309: 2020/12/06(日) 10:53:02.17 ID:CV0FGmfpo

ニコ「久しぶりだね、不知火。ディニエイルが君のことを気にかけていたよ」ニコッ

不知火「そ、そうですか……」

如月「もう、心配していたのは彼女だけじゃないわ?」スッ

不知火「如月……!」

如月「不知火ちゃん、久しぶりね。もういい加減、むこうには見切りを付けたら?」

不知火「……っ」

如月「若葉ちゃんもそうだけど、いつもぼろぼろになるまで頑張ってるでしょう? 心配してるのよ?」

不知火「……」

ニコ「不知火?」

不知火「申し訳ありません、司令。不知火はまだ、そちらには行けないようです」

提督「……ほう?」ニヤリ

不知火「不知火は、まだ、諦めきれません。まだ戦えます。戦い抜いて、この戦争を終わらせます……!」

提督「……そうか」

(提督が手をかざすと、何もない空間に扉が現れる)

310: 2020/12/06(日) 10:54:17.43 ID:CV0FGmfpo

提督「その扉をくぐれば、元の場所に戻れる」

提督「俺たちは、お前に手を貸すことはない。ただ、お前の検討を祈るとしよう」

不知火「……」

提督「だから精々頑張りな、悔いが残らないように……お前の戦争を終わらせるといい」

提督「後のことは何も心配するな。最悪の状況になったら、全部俺たちに任せておけ」ニヤリ

不知火「……っ」ギリッ

不知火「行って、参ります……!」

 ダッ

 扉<バシュンッ!

(不知火を異世界に転送した扉が、音とともにはじけて消える)

如月「あーあ、不知火に睨まれちゃったわ。やん、怖い怖い」

扶桑「提督? 少し、不知火に強く当たりすぎではありませんか?」

提督「いいじゃねえか、反骨心があって……どんな魂に育つか、俺は楽しみだぜ?」

311: 2020/12/06(日) 10:55:02.39 ID:CV0FGmfpo

ニコ「もう、そうやってぼくたちに手が付けられなくなったらどうする気?」

提督「その時はその時さ」ジワ…

 (提督の姿にもやがかかり、口元に牙をのぞかせる)

提督「俺ガ喰エバイイ。ソレデ終イダ」

大和「まあ。提督が直々に? なんて羨ましい」ウフフ

提督「なんだ。そんなに俺のメシになりたいのか?」シュッ

大和「はい、提督とひとつになれるんですよね?」

提督「フン、お前にはまだ働いてもらわなきゃいけねえからな。もう少し我慢しな」

山城「ナニヲ唐突ニ、イチャツイテルンデスカ」イラッ

扶桑「ふふっ、山城? 嫉妬してるの?」

山城「シテマセン」

 ペタッペタッ

伊8(深海化)「提督」スッ

提督「よう、戻ってきたか。どうだった?」

312: 2020/12/06(日) 10:55:49.52 ID:CV0FGmfpo

伊8「青葉サント話シテキタケド、ミンナ準備デキテルミタイ」

由良(深海化)「何人カハ、コッチニ合流シタイッテ言ッテタワ」

提督「そうか。連中に会うのも久々だな」

由良「提督サンニ会エルノヲ、ミンナ楽シミニシテルミタイネ……フフッ」

朝潮(深海化)「司令官! 北方海域ノ深海棲艦勢力トノ交渉、無事成立致シマシタ!」ビシッ

朝潮「防衛ノタメ、攻撃時ノ援護コソデキマセンガ、撤退時ノ救援ハ約束シテイタダケルコトニナリマシタ!」

提督「よし。後ろから撃たれないための最低限の約束はできたな」

ニコ「魔神様。メディウムのみんなも、準備はできているよ」

提督「そうか。久々だな、こんなでかい戦いは」

ニコ「……楽しそうだね、魔神様」

提督「ああ、楽しいな。人間どもが、自分で自分の首を絞めるさまは、何度見ていても飽きねえぜ」

提督「あの国の政府がひっくり返った。これまで深海の連中をかろうじて抑えてきた艦娘を、あいつらは全員武装解除させるつもりだ」

扶桑「まあ。提督、それってもしかして」

313: 2020/12/06(日) 10:56:32.29 ID:CV0FGmfpo

提督「そうだ。不知火にも、戦うなと指示が来るはずだ。その瞬間、不知火はどう思うだろうな……」

提督「そしてその後、不知火がどんな行動に出るか……見ものだと思わねえか?」ニヤリ

如月「だから、不知火が戦えなくなったら、って言ってたのね」ニィッ

大和「提督はお戯れが好きですね」フフッ

扶桑「不知火は、大人しく武器を捨てて、人間が狩られることを選ぶかしらね……?」ニヤァ

山城「拒否スレバ人間ノ反感ヲ買ッテ、マスマス艦娘ノ立場ガ悪クナルンデショウネ。アァ、不幸ダワ」ニタリ

ニコ「あとは海軍そのものが独立勢力になれるかどうか、だけど……国家を敵に回すも同然だろうから、苦しいだろうね?」

提督「だろうな」

ニコ「どの道、不知火は『詰み』だったってことだね」

提督「いいや、詰んでるのは新政府の甘言になびいた連中さ。不知火はそのトリガーに過ぎねえよ」

提督「俺の贔屓目もあるが、不知火は今も必氏に戦っている艦娘の一人だ」

提督「その働きも認められずに処分されようものなら……全部、ぶっ潰したくもなるよなあ?」

全員「「……」」ウナヅキ

314: 2020/12/06(日) 10:57:17.35 ID:CV0FGmfpo

提督「もうじき、海から艦娘が消える」

提督「人間に尽くしてきたあいつらが、人間によって滅ぼされるんだ」

提督「それでも艦娘は、健気に人間のために戦い尽くして、潰えていくんだろう」

提督「だからこそ、艦娘が戦える間は、人間に手出しはしないし」

提督「だからこそ、艦娘が消えた後は、人間どもに容赦はしない」


提督「全員に、晩餐会の準備をしろと伝えろ」

提督「不知火が絶望の淵に沈んだ時が、開始の合図だ」


提督→魔神「さあ、人間狩りを始めるぞ」





提督「鎮守府が罠だらけ?」   END


315: 2020/12/06(日) 11:03:06.65 ID:CV0FGmfpo
だらだら書き連ねましたが、これ以上は書き綴る話がない、ということで、これで完結です。
エンディングは悩みましたが影牢ベースに、提督が魔神になって世界を追い込むストーリーに仕立てました。

今回書き上げたシーンの他にも、例えば、
提督の足跡を求めて、提督の故郷を訪れた大淀と初雪がひどい目にあって村を滅ぼしたりとか、
摩耶が金剛型がどうなったか調べていくうちにいろいろやばい事態が展開していったりとか、
軽巡棲姫が狂気ををまき散らして人間にも伝播していったりとか、明石と北上がグレて単独勢力作ったりとか、
一部の艦娘が戦うことをやめて民間人になったが、政権交代によって、元も含めて艦娘が全員拘束対象になる事態が発生し、
棋士に転職したL提督と同じく民間に入って一緒に暮らしていた香取が捕まるニュースがテレビで流れたりとか、
さらにそれを見ていた那智が、働いていたラーメン屋の店長から「逃げてくれ」とお金を渡されて逃亡劇が始まる、とか
深海化して鬼化した那珂と姫化した神通が、理性にしがみついて深海化を拒む川内をねちねちと言葉責めしたりとか、
書けそうなネタは沢山あったのですが、延々とバッドエンドばかり描き続けたくないので、
特に重たいところというか重要なところだけピックアップした次第です。

それから、対立の構図として、
・提督+艦娘→メディウム
・提督+艦娘+メディウム→海軍&深海棲艦
・深海棲艦+メディウム→海軍+艦娘
・艦娘+フォージド→深海棲艦+メディウム
・艦娘+深海棲艦+メディウム→魔神(提督)
といった感じに一通り描こうと思うと、こういう話の展開にしなければならず。
全方向的なハッピーエンドを望んでいた人には申し訳ありませんが、
こんな影牢らしい結末になってしまいました。

提督の最後の台詞も、その世界を象徴した台詞にしたので、これはこれで話としては綺麗に収まったと思っています。


ここまで読み続けていただいた方に感謝を。
そして、

316: 2020/12/06(日) 11:04:52.76 ID:CV0FGmfpo




続きです。



.

317: 2020/12/06(日) 11:06:17.07 ID:CV0FGmfpo


……。

……。

……誰かな? 僕を呼ぶのは……。

『我が声に応じてくださりありがとうございます』

僕を呼んだのは君かい?

『はい。私は、エフェメラと申します』

世界の最後まで、見せてもらったよ。

君が、この結末を描いたのかい?

「いいえ」

『……!』

誰……!?

「望んだのは愚かな男」

「自らの権力欲のために、我が子を因果の生贄に差し出した男」

エフェメラが、もうひとり……!?

『……』

318: 2020/12/06(日) 11:07:02.70 ID:CV0FGmfpo

「そしてそれを望まずして為したのは、人の憎悪と傲慢と不条理を一身に受けた、生贄の子」

「希望の藁を握りしめたまま絶望の深淵に沈み……」

「人ならざる者たちの力を借りて生還した……」

「昏き海と魔を統べる神に祝福されし忌まわしき子」

……。

「男が混沌を生む」

「その目論見は正しかった」

「更に好都合だったのは、番いの女が海の魔物に襲われたこと」

「その身に宿した深淵の災禍の力を、我らが神が欲したのです」

……神が欲した?

「はい」

「極上の贄として、喰らうために」

……。

319: 2020/12/06(日) 11:07:47.50 ID:CV0FGmfpo

「ですが、その魂は、私の目論見を超えてしまった」

「供物になるはずだった子羊が」

「その男をも飲み込む狼になったのは、私にも予見することができなかった」

「魔神様は、贄の子の肉体と同化して、現世に降臨なさいました」

「そして世界は、少しずつ絶望に蝕まれ、光を失いながら緩やかに終焉を迎えるだけになった……」

「魔神様が世界そのものとなる」

「私も、それを待つのみとなりました……!」

……それが、君たちの望みだと言うんだね?

『いいえ』

……君は違うのかい?

『私は……私たちは、魔神様に造られし自動人形(オートマタ)……』

『そこにいるエフィメラは、魔神様が統べる世界を望むもの』

『私は、魔神様が望む未来を望むもの』

320: 2020/12/06(日) 11:08:32.62 ID:CV0FGmfpo

『魔神様に造られし私たちの役目は、魔神様に祝福されし者たちを、導くこと……』

「そう。だからこそあの子羊を、魔神様のもとに導いたのです……」

『……』キッ

結果はどうあれ、そっちのエフェメラの期待以上の結果になった、ってことか……。

『はい……』

『……ですが、この結末を辿る前に、戻ることも可能です』

え……!?

「無駄なことですよ」

「いかなる世であっても、魔神様のもとには、人間の悪意が集います」

「彼女の手を取ったとしても、混沌の未来は変わりません。もはや手遅れ……」

『……やってみなければわかりません』

「……」

『……人間に脅威が近付いたとき、妖精と心を通わせられる人間が世の中には現れます』

『妖精に祝福されし者、英霊に護られし者……あるいは……』

……その候補が、提督だったってこと?

321: 2020/12/06(日) 11:09:31.16 ID:CV0FGmfpo

『はい。あのエフェメラは、彼が深海の力を受け継いで生まれることを見越して、魔神様の依り代に彼を選んだのです』

『私を、ここに封じてまで』キッ

……。

「……」

……君は、魔神様が望む未来、と言ったね

『はい』

『現代に魔神様として顕現されるほどになった魂が望んだ未来』

『この結末とは、異なる結末を導くのが私の使命……』

……結末はひとつじゃない、ってことかな?

可能性があるのなら、君の言う未来に賭けてみたいな。

『……ありがとうございます』

『その名に“時”を冠するあなた様なら』

『この未来を、変えられるかもしれません』

『参りましょう、時雨様。違う未来を求めて』




.

322: 2020/12/06(日) 11:12:02.59 ID:CV0FGmfpo








   クエスト解放

  エフェメラと邂逅する Cleared!








.

323: 2020/12/06(日) 11:12:51.79 ID:CV0FGmfpo
昔、落としどころは2種類考えてます、と書きました。
今回完結したのが影牢ルート、と考えていただければ。

そのもう一方をこれから書きます。
ただ、時雨をここまで重要なポジションにする気はなかったんですが、わからないものですね。

改めて、今回はここまで。

326: 2020/12/07(月) 00:18:31.19 ID:utFMYmNP0
お疲れ様です。そして頑張ってください。
できれば不知火が戦えなくなった後の人間虐殺の話も読みたかったけど...あと暁がどうなったのか気になる。
これからも睡眠妨害お願いします、

328: 2020/12/10(木) 05:56:08.06 ID:7ek9DABB0
分岐…分岐かぁ
朧、初春、如月、吹雪、電の5人がやられたところからはどうあがいても基本一直線だろうから少なくともそこより前?
どこから分岐するんだろ

【艦これ×影牢】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【中編】


引用: 【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】