1: ◆/dCcy0t.c. 2017/10/01(日) 22:35:18.56 ID:82VEg7fQ0
善子「っ………………!!!」
無理やり意識が引き起こされたように目が覚めた。
時計を見れば、アラームより1時間も前に起きてしまったみたい。
霞む視界には、ただ暗い部屋の天井が広がっているだけで、思考も回らない。
脳裏に張り付いた夢の中の私が、延々と頭の中に居座っている。
しばらくの間二度寝を試みたけど、下着が張り付くほど汗をびっしょりとかいているのに気がついた。
善子「――はぁ……お風呂入っておこうかしら」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1506864918
無理やり意識が引き起こされたように目が覚めた。
時計を見れば、アラームより1時間も前に起きてしまったみたい。
霞む視界には、ただ暗い部屋の天井が広がっているだけで、思考も回らない。
脳裏に張り付いた夢の中の私が、延々と頭の中に居座っている。
しばらくの間二度寝を試みたけど、下着が張り付くほど汗をびっしょりとかいているのに気がついた。
善子「――はぁ……お風呂入っておこうかしら」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1506864918
2: 2017/10/01(日) 22:41:09.66 ID:82VEg7fQ0
よしりこです。多分シリアス。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
3: 2017/10/01(日) 22:44:10.47 ID:82VEg7fQ0
―――シャワーを浴びながら、最近見る悪夢について考える。
実のところ、今日のようなことは今回が初めてではない。
むしろ今日で連続3日目の新記録よ。
何回目かどうかは数えていないけれど、多分、両手でも足りないくらい。
流石にこんな夢を見続けて、堪えてきてる。
実のところ、今日のようなことは今回が初めてではない。
むしろ今日で連続3日目の新記録よ。
何回目かどうかは数えていないけれど、多分、両手でも足りないくらい。
流石にこんな夢を見続けて、堪えてきてる。
4: 2017/10/01(日) 22:48:58.26 ID:82VEg7fQ0
……私が泣いている。たったそれだけの夢。
声を押し頃して、顔を手で覆って、その目からただ涙が溢れてくる。
その姿は、懺悔しているようにも、逃避しているようにも見えた。
それ以上のことは、自分でも分からない。
というのも、起きてから夢のことを思い出そうとしても、思い出せるのは泣いている自分だけなの。
不気味すぎて気持ちが悪いわ。
善子(堕天使に与えられた試練だとか、ふざけて言ってられなくなってきたわね……)
不幸体質のレベルなんて、とっくに超えてるもの。
声を押し頃して、顔を手で覆って、その目からただ涙が溢れてくる。
その姿は、懺悔しているようにも、逃避しているようにも見えた。
それ以上のことは、自分でも分からない。
というのも、起きてから夢のことを思い出そうとしても、思い出せるのは泣いている自分だけなの。
不気味すぎて気持ちが悪いわ。
善子(堕天使に与えられた試練だとか、ふざけて言ってられなくなってきたわね……)
不幸体質のレベルなんて、とっくに超えてるもの。
5: 2017/10/01(日) 22:54:21.37 ID:82VEg7fQ0
いつになったら、どうしたら、この悪夢は止むんだろう。
どうしようもない不安に駆られ続けるのは、もううんざりよ……
一日中、咽び泣く自分が脳裏に張り付いて離れないなんて、あんまりよ……
身体がだるい。
学校、行きたくないなぁ…………
―――それでも、Aqoursの皆に迷惑はかけられないもの。
練習しなくちゃ。
善子「よし、今日も行くわよ」
善子「頑張るのよ、堕天使ヨハネっ!」
どうしようもない不安に駆られ続けるのは、もううんざりよ……
一日中、咽び泣く自分が脳裏に張り付いて離れないなんて、あんまりよ……
身体がだるい。
学校、行きたくないなぁ…………
―――それでも、Aqoursの皆に迷惑はかけられないもの。
練習しなくちゃ。
善子「よし、今日も行くわよ」
善子「頑張るのよ、堕天使ヨハネっ!」
6: 2017/10/01(日) 23:15:32.63 ID:82VEg7fQ0
結局あの夢のせいで、最近Aqoursの練習にも身が入らなかった。
私にとって、それが一番避けたい事態だったのだけれど。
曜「ワン、ツー、スリー、フォー!ワン、ツー……」
曜「千歌ちゃん少し走り気味!善子ちゃん遅れてるよ!」
千歌「うんっ」タッタッ
善子「分かったわっ」 アトヨハネ!
ステップの練習も、私は本調子には程遠い。
それはみんなの目にも明らかみたいで……
果南「善子ちゃんどうしたの!全然振りにキレがないよ!」
善子「ご、ごめんなさい……」
私にとって、それが一番避けたい事態だったのだけれど。
曜「ワン、ツー、スリー、フォー!ワン、ツー……」
曜「千歌ちゃん少し走り気味!善子ちゃん遅れてるよ!」
千歌「うんっ」タッタッ
善子「分かったわっ」 アトヨハネ!
ステップの練習も、私は本調子には程遠い。
それはみんなの目にも明らかみたいで……
果南「善子ちゃんどうしたの!全然振りにキレがないよ!」
善子「ご、ごめんなさい……」
7: 2017/10/01(日) 23:20:03.32 ID:82VEg7fQ0
ラブライブ本選が近いせいか、みんな練習に熱が入って、少し雰囲気がピリピリしてる気がする。
でも、それも全部、みんなの夢のためなんだ。
このままじゃだめ、頑張らなきゃ。
迷惑、かけっぱなしじゃないの………っ
善子「ふっ……はっ…………ぅわっ!!」
梨子「善子ちゃん!大丈夫?」
8: 2017/10/01(日) 23:23:19.15 ID:82VEg7fQ0
足がもつれて転んでしまった。みんなの視線が私に集まる。
ダイヤ「………3分休憩しましょう。これでは効率も良くないですわ」
千歌「っはあぁああ、今日もハードだねぇ」
休憩時間だというのに、果南や曜は振り付けの確認をしている。
ほかのメンバーも全く集中は切れていないみたい。
みんな、本気なんだ。
私も……頑張らなきゃ……。
9: 2017/10/01(日) 23:28:40.09 ID:82VEg7fQ0
善子「っ、はぁっ……はぁ…………」ガクッ
立ち上がろうとして、膝から崩れ落ちるように体勢を崩した。
何もない地面でつまずくなんて、今日もヨハネはアンラッキーね……
―――絶対、よく寝られなかったせい、分かってる。
それでも、悪夢程度で揺らいでいたら、みんなに迷惑をかけてしまう。
今が一番大事な時期なの。そうでしょう?
屈してはいけないわ、ヨハネ……
10: 2017/10/01(日) 23:31:13.62 ID:82VEg7fQ0
梨子「ちょっと、よっちゃん大丈夫!?」
善子「だっ、大丈夫よ……気にしないで」
花丸「全然大丈夫じゃないずら!!」
ルビィ「よしこちゃん、休んだほうがいいよぉ」
曜「顔色もかなり悪いし、保健室のベッドを借りた方がいいかも。連れていくよ!」
みんなが駆け寄ってくる。
これも、一度目なんかじゃない。
善子「だっ、大丈夫よ……気にしないで」
花丸「全然大丈夫じゃないずら!!」
ルビィ「よしこちゃん、休んだほうがいいよぉ」
曜「顔色もかなり悪いし、保健室のベッドを借りた方がいいかも。連れていくよ!」
みんなが駆け寄ってくる。
これも、一度目なんかじゃない。
11: 2017/10/01(日) 23:39:36.96 ID:82VEg7fQ0
善子「ダメよ、本選が近いんだから、まだ」
ダイヤ「だからこそですわ!!身体を壊してラブライブに出られなくなったら本末転倒でしょう!」
善子「……っ!わ、分かったわよ」
曜「じゃあ善子ちゃん、おぶってくよ。保健室まで、ヨーソロー!」
善子「流石にそれはいいわ………」
ダイヤの剣幕に圧されて、やっぱり心配だとついてくる曜と渋々保健室へと向かう。
12: 2017/10/01(日) 23:44:13.13 ID:82VEg7fQ0
梨子「――よっちゃん!!」
善子「っ……?なに?」
背中越しに声をかけられた。
声色から不安が漏れてる。
梨子「……ううん、なんでもない。今はゆっくり休んで?」
善子「ええ、ごめんなさい」
梨子は何か言いかけて、飲みこんだ。
また、みんなに迷惑かけちゃったなぁ……
善子「っ……?なに?」
背中越しに声をかけられた。
声色から不安が漏れてる。
梨子「……ううん、なんでもない。今はゆっくり休んで?」
善子「ええ、ごめんなさい」
梨子は何か言いかけて、飲みこんだ。
また、みんなに迷惑かけちゃったなぁ……
18: 2017/10/02(月) 20:08:51.45 ID:d4Eah32H0
保健室に着くとすぐ眠ってしまったらしい。
ドアを開けたあとの記憶がなかった。
気づくと、時間的にはまだ練習中のはずのリリーがベッドの横にいた。
梨子「あ、目が覚めたのね。ほんとに心配したんだから!」
善子「……ごめんなさい」
19: 2017/10/02(月) 20:11:17.32 ID:d4Eah32H0
リリーは本当に心配そうに私を見つめて、しばらくしてやっと少し安心したようにため息をついた。
善子「練習は、どうしたの?」
梨子「ダイヤさんが、今日はもう終わりだって。最近かなりハードだったから、明日もオフにするみたい」
梨子「多分、自分が練習詰めすぎてるせいだって、責任感じちゃったんじゃないかな」
20: 2017/10/02(月) 20:15:44.89 ID:d4Eah32H0
梨子「まったくよ、調子が悪いときはちゃんと言わなきゃダメ。いい?」
善子「はい」
梨子「よろしい」 ニコッ
頷いて、リリーはいつもの、本当に優しい微笑みでゆるしてくれた。
目を細めて、ちょっとだけ困り顔の眉で、どんな私も受け入れてくれる、そんな気さえする。
思えばこの笑顔に、私はいつも救われてきた。
そう、いつだって。
21: 2017/10/02(月) 20:36:42.57 ID:d4Eah32H0
……だから、無意識にも私は、彼女に助けを求めてしまったのかもしれない。
梨子「――ねぇ、よっちゃん。何か心配事があるんじゃない?」
梨子「ずっと、様子が変だったから」
梨子「私もだし、Aqoursのみんなも。どうしたのって、何度も聞いてくれたんじゃない?」
善子「それはっ………」
梨子「何か、言えない理由があるの?」
善子「…………」
22: 2017/10/02(月) 20:56:23.32 ID:d4Eah32H0
梨子「―――私ね、ほんとに不安なの。」
……泣きそうな顔、しないでよ。
梨子「話しかけても、上の空なんだもん。何処かにいっちゃうんじゃないかって、そんな気までして」
私は、あなたにそんな顔をさせるために……?
23: 2017/10/02(月) 21:02:08.60 ID:d4Eah32H0
梨子「ねえよっちゃん」
梨子「私に、話してみて。それにみんな、迷惑なんて思わないよ?」
梨子「私は……ううん。私達は、いつでもあなたの味方なのよ?」
梨子「お願い……っ、よっちゃん」
善子「…………あのね」
24: 2017/10/02(月) 21:07:53.41 ID:d4Eah32H0
私はね……? リリー。
本当はもっと、言うべきことがあるの。
いえ、正確には、ある“ 気がする ”の。
私の心の、ずっとずっと奥に押し込んでしまったもの。
私が、目を背け続けてきたもの。
―――――あなたに、隠し事をしているの。
本当はもっと、言うべきことがあるの。
いえ、正確には、ある“ 気がする ”の。
私の心の、ずっとずっと奥に押し込んでしまったもの。
私が、目を背け続けてきたもの。
―――――あなたに、隠し事をしているの。
33: 2017/10/03(火) 21:49:49.95 ID:cheqrU4L0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
梨子「――泣いている、夢………」
善子「ええ」
思っていたより、話は深刻みたい。
というより、そんなことってあるんだ。
よっちゃんは怯えているように、保健室のベッドの上で膝を抱えている。
34: 2017/10/03(火) 21:55:29.67 ID:cheqrU4L0
話の途中で、
『ふふ、ついに鍛錬を積んできた黒魔術の効果が出てきたのかしら』
なんて言っていたけれど……
やっぱり、不安そうな表情は隠せていなかった。
みんなを心配させないように、よっちゃんはこうして、ずっと無理してきたんだ。
梨子(よっちゃん…………)
35: 2017/10/03(火) 22:05:01.05 ID:cheqrU4L0
怖かったよね。
そんな夢を見続けて、たった独りで耐えていたなんて。
――――私に、出来ることは。
梨子「…………それなら、」
善子「なに?」
36: 2017/10/03(火) 22:12:07.75 ID:cheqrU4L0
梨子「今日はうちでお泊まりにしよっか!!」
善子「ふぇ?い、いいの……?」
戸惑った表情で私を見つめる。
梨子「いいに決まってるでしょっ。今のよっちゃん、放っておけないもん」
善子「……ありがとう、リリー」
37: 2017/10/03(火) 22:14:50.63 ID:cheqrU4L0
梨子「ううん。私に出来ることは、これぐらいしかないから」
善子「―――ほんとはね、夜が来る度に不安だったの」
梨子「うん、よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」
そう言って頭を撫でてあげると、よっちゃんは安心したように笑った。
38: 2017/10/03(火) 22:17:01.23 ID:cheqrU4L0
お泊まりの用意をするために、よっちゃんは一度家に帰った。
私はよっちゃんを迎える準備をしつつ、今日の話を思い出して考える。
……ただ泣いている夢、か。
梨子(ほんとに黒魔術の効果、なわけないし)
―――やっぱり、なにか嫌なことがあって、そのせいなのかな。
39: 2017/10/03(火) 22:19:23.86 ID:cheqrU4L0
お風呂を沸かして、お布団を敷いて、お母さんと夕ご飯を作っていると、インターフォンが鳴った。
善子「お、おじゃまします」ペコリ
梨子「はいっ、どうぞあがって?」ガチャッ
こういうのには慣れていないのか、キョロキョロと頭のお団子を揺らしながら、私の部屋までの階段を登っていく。
40: 2017/10/03(火) 22:22:33.24 ID:cheqrU4L0
善子「なんだかいい匂いがするわね」
梨子「今日はシチューなの。もうすぐできるから、荷物置いたらリビングに行こうね」
善子「悪いわね、夕ご飯までいただいちゃって」
梨子「変なところで気を使わないのっ」
善子「はーい」
41: 2017/10/03(火) 22:24:15.51 ID:cheqrU4L0
梨子「お母さん、善子ちゃんが来たよ」
梨子母「あら!こんばんは~。善子さんね。いらっしゃいっ」
善子「ど、どうも。こんばんは。おじゃまします」ペコ
リビングに入ると、お母さんが明るく迎え入れた。
よっちゃんはだいぶ緊張してたみたいだけど、ひとまず落ち着いたみたい。
42: 2017/10/03(火) 22:26:10.02 ID:cheqrU4L0
梨子「それじゃあ、夕ご飯にしよっか」
善子「ええ。このシチュー、とっても美味しそうね!」
梨子母「ふふっ。今日はね、善子ちゃんが来るからって、梨子が張り切って作ったのよ」
善子「えっ、……そうなの?」
梨子「ちょっとお母さん!いつもみたいに手伝っただけでしょ!?」カァ///
43: 2017/10/03(火) 22:28:19.14 ID:cheqrU4L0
梨子母「なによ~、恥ずかしがることないじゃない。何度も何度も味見して、よっぽど気合が入ってたのね~っ」
梨子「うぅぅううう」////
善子「そうだったのね……ありがと、リリー」
梨子「う、うん。どういたしましてっ」
44: 2017/10/03(火) 22:30:19.96 ID:cheqrU4L0
梨子母「あら、梨子ったらそんな風に呼んでもらってるの?可愛いじゃない」
梨子「もう!からかわないでよっ」//
善子「っ!!」///
今度はよっちゃんも一緒に赤くなって、なおのことシチューが白く見えました。
お母さんったら、からかい過ぎなんだから。
45: 2017/10/03(火) 22:47:38.02 ID:cheqrU4L0
―――よっちゃんが美味しそうにシチューを食べてくれてる、よかったぁ。
あなたの幸せそうな顔をみるだけで、私も幸せなんだよ。
スプーンがお皿を撫でる音が、まるで福音みたい。
………………でもね。
あのね、よっちゃん。
私ね。
46: 2017/10/03(火) 22:50:43.73 ID:cheqrU4L0
梨子(ほんとは全部知ってるんだ。って言ったら)
――――――どうする?
48: 2017/10/04(水) 00:11:31.37 ID:4kXr7mid0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
談笑をしながら夕ご飯を食べていると、すぐに時間は過ぎていった。
少しずつ、気持ちが楽になってきたような気がする。
善子(リリーの作ってくれたシチュー、ほんとに美味しかったなぁ……)
照れていたけど、リリーはやっぱり優しい。
お風呂も先に入らせてもらっちゃったしね。
49: 2017/10/04(水) 00:13:30.74 ID:4kXr7mid0
リリーの部屋で彼女がお風呂から上がるのを待ちながら、物思いに耽った。
リリーや美味しかった夕ご飯のことを考えると、胸があったかくなる。
―――あったかい、はずなのに。
50: 2017/10/04(水) 00:14:35.35 ID:4kXr7mid0
このざわめきは何だろう。
リリーの家に来てから、ずっと感じていた。
彼女の優しさを、温もりを感じるほど、胸が痛くなった。
今だってそう。
チクチクと、拍動の度に胸が針に刺されるように痛む。
何か、大事なことを忘れてしまっている。
そんな気がする。
51: 2017/10/04(水) 00:16:42.72 ID:4kXr7mid0
梨子「――よっちゃーん、お待たせ」
善子「っええ」ビクッ
ぼーっとしていたせいで、リリーが部屋に入ってきただけなのにかなりびっくりしてしまったわ……
梨子「どうしたの?よっちゃん」
善子「ううん、少し考え事してただけ。リリーのシチュー美味しかったなぁって」
梨子「そ、それならいいんだけど……」///
……ちょろい。将来が心配になってくる。
52: 2017/10/04(水) 00:17:46.78 ID:4kXr7mid0
梨子「……そういえばよっちゃん、結構長風呂だったけど」
善子「そうだったかしら?」
梨子「もしかして、一緒に入りたくて待ってたの?」
善子「違うわよっ!」
いきなりなんてこと言うのこの子!?
53: 2017/10/04(水) 00:27:47.02 ID:4kXr7mid0
梨子「えぇ……そんなに強く言われたらちょっと傷つくなぁ」
善子「えっ、ちょっと、あの、恥ずかしかっただけだってば。だから………」
梨子「―――っもう、冗談だってば」クスクス
善子「なんなのよぉもう!」
仕返しのつもりかしら。
ちょっと心配して損したわ。
それに、リリーって意外と大胆なのね。
54: 2017/10/04(水) 00:28:37.86 ID:4kXr7mid0
梨子「それより、まだ寝るまで時間あるよ。なにする?」
善子「そうねぇ……ゲームくらいなら持ってきたわよ。マ〇オとか」
梨子「うん。それじゃあ、ゲームにしよっか!私すごく久しぶりだけど」
そういってリリーは携帯ゲーム機を引き出しから取り出した。
55: 2017/10/04(水) 00:30:00.92 ID:4kXr7mid0
善子「だいぶ昔のやつだけどいい?」
梨子「いいよ。私もそれやってたし、懐かしいなぁ」
善子「へぇ、梨子もゲームやるのね」
梨子「まあねー」
2人でベッドに並んで寄りかかってゲームを始める。
56: 2017/10/04(水) 00:31:01.53 ID:4kXr7mid0
――対戦するモードにしたけど、ほとんど一方的にやられてしまっている。
善子「もう、リリー上手すぎ!」ポチ
梨子「よっちゃんが下手すぎるのよ」ポチポチ
リリーめ、さてはこのゲーム極めたな……
リリーは楽しそうに画面を見つめて、一生懸命に綺麗な指を動かしていた。
57: 2017/10/04(水) 00:35:04.18 ID:4kXr7mid0
負けっぱなしじゃいられないわ。
リリーがうとうとしてる今がチャンス!
善子「……よしっ!やっと勝てた!」フフン
梨子「ああっ!……うーんまあ、仕方ないか」
善子「ふふん、堕天使は最後に勝つのよ」
梨子「はいはい、よく出来ました」
善子「うんっ。……あ、もうそろそろ寝る時間よね」
58: 2017/10/04(水) 00:37:05.27 ID:4kXr7mid0
梨子「そうね、眠くなってきたし、寝よっか」
梨子「それじゃあ、私はこの布団で寝るから、よっちゃんは私のベッド使っていいよ」
善子「なんかいろいろ悪いわね。お世話になってばかり」
梨子「そういうものでしょ?」
善子「そうなの?」
梨子「そうなのっ」
59: 2017/10/04(水) 00:50:18.22 ID:4kXr7mid0
リリーが電気を消して、部屋は真っ暗になった。
梨子「それじゃあ、おやすみ。よっちゃん。」
善子「ええ、おやすみなさい、リリー。」
……目を閉じると、私の世界は一面真っ黒になる。
60: 2017/10/04(水) 00:52:32.80 ID:4kXr7mid0
やっぱり怖いな。
またあの夢をみるんじゃないかって思うと、体が震えてくる。
私が、泣き崩れているだけの、それだけの夢。
……情けないわよヨハネ。
しゃんとしなさい、しゃんと。
61: 2017/10/04(水) 00:55:13.08 ID:4kXr7mid0
善子「……、はぁ…………っ……」
梨子「よっちゃん」
善子「っどうしたの?リリー」
梨子「―――大丈夫だよ。大丈夫」
善子「……ええ、ありがと。リリー」
62: 2017/10/04(水) 00:56:39.49 ID:4kXr7mid0
リリーは、そっと私の手を握ってくれた。
それだけで体の震えはすぐにやんじゃったみたい。
やっぱりすごいのね、リリーは。
私の意識は、静かに遠のいていった――――――
72: 2017/10/05(木) 21:44:14.77 ID:vJwqBb4D0
「―――――――――――ん」
「――――――ちゃん」
「―――よっちゃん」
頭がぼーっとする。
誰かが、私を呼んでいるのが聞こえた。
視界は真っ暗で、声だけが水の中を彷徨うみたいに響いている。
73: 2017/10/05(木) 21:58:31.87 ID:vJwqBb4D0
「…………リリー?」
「おはよう、よっちゃん」
「リリー。私、何も見えないわ」
「ううん、よっちゃん、ちゃんと見えてるよ」
74: 2017/10/05(木) 22:15:29.13 ID:vJwqBb4D0
どういうことだろう。
不思議に思っていると感覚が徐々に戻ってきた。
足が地面についている感じ。私は、立っているのかな。
75: 2017/10/05(木) 22:18:01.25 ID:vJwqBb4D0
「やっぱり、何も見えないわよ」
「よっちゃん、目を開けて?」
リリーがそう言うと、一瞬で視界が開けた。
けど……
ここは………………音楽室?
真っ暗で、リリーがピアノの椅子に座っている以外はほとんど分からない。
なんだか、根拠はないけど、嫌な予感がする。
私の、不幸だけは的確に射抜く直感が、そう告げていた。
76: 2017/10/05(木) 22:29:51.92 ID:vJwqBb4D0
善子「訳が分からないわ、なんで私は音楽室にいるの?」
善子「それとも、また夢を見ているの?あの悪夢じゃ、ないみたいだけど」
梨子「うん。よっちゃんはね、ずっと夢を見ていたんだよ」
善子「ずっと?それじゃあなんで、私は音楽室にいるの?」
梨子「よっちゃんが、ここに来たいと願ったからだよ。ここは、“貴女の夢の中”だから。」
会話になっているようで、なっていない。
77: 2017/10/05(木) 22:43:49.07 ID:vJwqBb4D0
善子「私は、リリーのお家でお泊まりをしていて、部屋で寝ていたわ」
梨子「そうね、でもここは夢の中だもの。」
善子「なんでもありってこと?」
梨子「あなたがそう思うならね」
さっきから、リリーの言っていることの意味がいまいちわからない。
それに、彼女のいつもの穏やかな表情は、そこには無かった。
何かを決意したような、そんな固い表情。
78: 2017/10/05(木) 22:54:26.25 ID:vJwqBb4D0
善子「ここが夢なら、もうすぐ私は夢から醒めるの?」
梨子「―――きっとね」
リリーは少し言葉に詰まったあと、頷いた。
梨子「よっちゃん、少し私とお話しよっか」
善子「急に改まって、なに?話くらいなら、いくらでも付き合うけど」
というか、
善子「これが私の夢の中なら、あなたは誰なの?」
善子「私の中のリリーってこと?」
梨子「ううん、多分私は私だよ」
ますます分からない。
79: 2017/10/05(木) 23:01:22.97 ID:vJwqBb4D0
梨子「だって私は、今こうしていろんなことを考えて、感じているもの」
善子「私から見たら、そんなこと分からないわ」
梨子「そうかもね。でも、そうなの」
善子「ふーん。それで、話って何?」
得体の知れない焦りが、私の言葉尻を尖らせた。
話を聞きたいと思うけれど、同時に心のどこかが、聞いてはいけないと叫んでいる。
80: 2017/10/05(木) 23:15:06.09 ID:vJwqBb4D0
梨子「どうしてよっちゃんは、あんな悪夢を見ていたんだと思う?」
善子「分からないわ。貴女は知っているの?」
梨子「知ってるよ。よっちゃんは知りたい?」
善子「わたしはっ………………」
知ってはいけない。でも、知らなければならない。
自分でも不思議なほど、意識とは関係ないところで思考が駆け巡る。
81: 2017/10/05(木) 23:25:25.06 ID:vJwqBb4D0
善子「私は、きっと知らなきゃいけない」
梨子「うん。よっちゃんなら、そう言うと思ってたよ」
リリーはそう言って、今度は儚げな笑みを浮かべている。
梨子「……それじゃあ、これを話したら、お別れになっちゃうね」
82: 2017/10/05(木) 23:56:52.48 ID:vJwqBb4D0
善子「――――――は?」
善子「ち、ちょっと待って、なんでそんなこと言うのよ」
善子「なんで?あの夢の話をするだけなんでしょ!?」
善子「なんでそうなるのよ!」
言ってることは支離滅裂なのに、頭に入ってきてしまう。
リリーは淡々と続けた。
83: 2017/10/05(木) 23:59:07.43 ID:vJwqBb4D0
梨子「それはきっと、お話を聞いたら分かるよ」
善子「だって今、貴方がお別れって言っ」
梨子「やっぱりよっちゃんは、とっても優しい子なんだよ」
善子「やめて」
梨子「あの夢はね」
善子「やめなさいッ!!!」
梨子「……」
84: 2017/10/06(金) 00:06:00.34 ID:ChffUwC00
梨子「ひどいなぁ、よっちゃんが知りたいって言ったんだよ?」
善子「そっちこそ、どうしちゃったの?全然いつものリリーじゃない。」
梨子「……そうだね。私らしくない」
梨子「ごめん、あんな言い方しちゃって」
善子「……」
85: 2017/10/06(金) 00:12:31.77 ID:ChffUwC00
善子「でも、今リリーが言ってること、嘘だなんて思いにくい」
リリーの嘘にしては上手すぎるもの。
善子「きっと、覚悟が必要なのは私の方」
私がしていた隠し事。
リリーにも、自分にも秘密にしていたこと。
そう思っていたけれど、きっとそれを、リリーは始めから知っていたんだ。
善子「こっちこそごめん。話してくれる?リリー」
86: 2017/10/06(金) 00:17:25.90 ID:ChffUwC00
梨子「……やっぱり、よっちゃんだね」ニコッ
そう言って、リリーはやっと、いつもの笑顔で笑ってくれた。
梨子「あのね、よっちゃん」
善子「…………」ゴクリ
静寂が訪れ、そしてそれは、私にとって永遠にも思えた。
87: 2017/10/06(金) 00:27:31.17 ID:ChffUwC00
リリーは一つ息を吐いて立ち上がった。
ゆっくりと私の元へ歩いてくる。
私はそれを、何も言わず見つめるしかなかった。
そして、リリーは私の目の前に立った。
88: 2017/10/06(金) 00:31:49.93 ID:ChffUwC00
梨子「……やっぱり、お話はおしまい」
善子「ええ、そうね」
梨子「――――今までありがとう、ばいばい」
梨子「愛してるよ、よっちゃんっ」スッ
――――――リリーは私に、顔を近づけて……
唇が触れ合う。
とっても、優しいキスね。
89: 2017/10/06(金) 00:32:39.13 ID:ChffUwC00
……………………そして、私は。
すべてを思いだした。
90: 2017/10/06(金) 00:49:49.06 ID:ChffUwC00
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夏の終わりのある日、リリーは、私を庇って氏んだ。
二人で一緒にバスを待っている途中、運転手が発作を起こして歩道に突っ込んだのだ。
本当に、いっそ氏んでしまいたいと思うほどの不幸体質。
でも、氏んだのは一人、リリーだけだった。
私たちはバス停で、話すのに夢中になっていた。
私より先にバスの異常に気づいたリリーは、すぐ目の前に迫るそれを見て
もう二人で避けることは出来ないと察したのかもしれない。
私を突き飛ばして、間抜けな私が気づいたときには、リリーは道路の随分離れたところで倒れていた。
91: 2017/10/06(金) 00:57:24.67 ID:ChffUwC00
駆け寄った時には、全てが遅かった
なけなしの意識で救急車と警察を呼び、
呆然と立ち尽くす。
リリーのお母さんが通報を聞いてすぐに駆けつけた。
耳を裂いたのは、悲痛な叫びだった。
無力な私は、目の前の出来事がどうか夢であるようにと祈ったけれど、
時間は無常にも、私達を置き去りにしていった。
92: 2017/10/06(金) 01:00:29.12 ID:ChffUwC00
――――みんな泣いていた。
Aqoursはバラバラになった。
本選を目指していた輝きは、とうの昔のことのように感じた。
私は学校に行かなくなった。
お母さんは、何も言わず私の頭を撫でた。
私には、泣くことなんて出来なかった。
そんな権利、私にはきっとないと思ったから。
全部、私のせいだから。
93: 2017/10/06(金) 01:07:16.28 ID:ChffUwC00
この世界はきっと、
一瞬の儚い白昼夢なんだ。
私がそれを自覚した瞬間に、
つまり、ただの空想だと気づいたときに
シャボン玉が割れるようにあっけなく消える
それだけの、夢。
94: 2017/10/06(金) 01:14:40.43 ID:ChffUwC00
本選を目指してみんなで頑張るのも。
リリーのお母さんと仲良くなるのも。
リリーと一緒に遊んで、楽しく喋るのも。
私のわがままな望みの虚像。
後悔からの逃避、苦し紛れの懺悔だった。
95: 2017/10/06(金) 01:16:23.75 ID:ChffUwC00
そして、ただ声を押し頃して泣いていた
あの時夢で見ていると思っていた私こそが、
夢なんかじゃない、
心の一番奥の、本物の私だったんだ。
96: 2017/10/06(金) 01:25:15.15 ID:ChffUwC00
そして、リリーは私を信じていた。
私が、現実を受け止められること、
この夢を、終わりにできることを。
彼女は、それで本当に、もう二度と戻れなくなるというのに。
リリーはあのとき、どんな気持ちで笑っていたのかな。
97: 2017/10/06(金) 01:32:08.26 ID:ChffUwC00
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目の前に、もうリリーはいなかった。
どこを探しても、音楽室だと思っていたそれは、ただ闇が広がるばかり。
善子「ねぇっ……リリー」
善子「返事、しなさいよっ…………」グスッ
善子「消えないでよ!まだ私は」
善子「一番伝えたいこと、あなたに伝えられてないのにっ!!」ダッ
98: 2017/10/06(金) 01:37:46.89 ID:ChffUwC00
闇の中を、ただがむしゃらに走る。
頭では分かっている、もう彼女はいないんだと。
それでも、体はいつの間にか動いていた。
99: 2017/10/06(金) 01:51:40.61 ID:ChffUwC00
彼女の名前を叫びながら、私は必氏に走った。
でもその声は、届くことなんてない。
「リリーーっ!!!―――うぐっ」ドゴッ
……走り続けていると、壁にぶち当たった。
どうやら不幸なのは徹底されてるみたい。
100: 2017/10/06(金) 01:53:40.94 ID:ChffUwC00
私は考える。
善子(どうして、あなたに出会えたのかな)
きっとあなたと繋がってるって、信じていたから?
それが嘘じゃないって、そう信じていたかったけれど。
結局、幻は幻なのね。
あの日に戻りたいって、たった一つの願いも叶わないなら…………
101: 2017/10/06(金) 01:56:41.10 ID:ChffUwC00
善子(自らの手で、終わりにしよう)
102: 2017/10/06(金) 02:00:15.45 ID:ChffUwC00
そこにあったのは、黒い扉
きっとその向こうにあるのは、本物の運命
………………行かなくちゃ。
彼女の為に。
103: 2017/10/06(金) 02:05:13.39 ID:ChffUwC00
……扉に手をかける。
一度だけ振り向いて、声の限り叫んだ。
善子「私も、リリーのこと!」
善子「――――大好きよっ!!!!」
扉を開けたとき、彼女の声が聞こえた気がした。
104: 2017/10/06(金) 02:08:34.45 ID:ChffUwC00
おわりです!
最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!
今回初めてSSを書いてみて、想像以上に大変なんだと知りましたが、同時にとても楽しかったです。
絶対また書きます。そのときは、是非また読んでいただければ嬉しいです!
最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!
今回初めてSSを書いてみて、想像以上に大変なんだと知りましたが、同時にとても楽しかったです。
絶対また書きます。そのときは、是非また読んでいただければ嬉しいです!
105: 2017/10/06(金) 02:11:34.63 ID:ChffUwC00
あと、敢えて答えを出さなかったところがいくつかあるので、よかったら自分なりの答えを考えてみてくださいね。
お気づきかと思いますが、タイトルやストーリーは、
「Daydream Warrior」をもとに考えました。
以上あとがきです。
ありがとうございました!
お気づきかと思いますが、タイトルやストーリーは、
「Daydream Warrior」をもとに考えました。
以上あとがきです。
ありがとうございました!
106: 2017/10/07(土) 01:52:22.09 ID:CD7NIupSO
本編と後書きのノリが違いすぎて引く
引用: 善子「祈りも恋も」
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