496: 2010/02/28(日) 11:56:31.06 ID:05pn8HxA0


最初から読む:【禁書×DMC】ダンテ「学園都市か」

前回:【禁書×DMC】ダンテ「学園都市か」【その01】

一覧:ダンテ「学園都市か」シリーズ

 ―――

ダンテ「で、そっちはどうだ?」

トリッシュ『順調よ』

ダンテ「…」

トリッシュ『なに?なんかあるの?』

ダンテ「ガキのお守りは飽きた」

トリッシュ『イギリス清教がくるまで我慢しなさい』

ダンテ「わぁったよ」

トリッシュ『あとネロも来るみたい』

ダンテ「つーことは『ボルヴェルク』の野郎、やっぱり来やがるのか」
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499: 2010/02/28(日) 11:58:42.65 ID:05pn8HxA0
トリッシュ『それともう一人』

ダンテ「まだなんか来るのか?」

トリッシュ『わかるでしょ』

ダンテ「あ~…」

トリッシュ『バージル』
トリッシュ『やっぱりあなたも感づいてたわね。どう思う?』

ダンテ「さあ。確かなのは観光目的じゃねえって事だな」

トリッシュ『彼が狙いそうなのはいくつかあるけど』
トリッシュ『禁書目録の中にあるフォルトゥナの術式とか、あと今私のところにある「スパーダ」とか』

500: 2010/02/28(日) 12:00:45.16 ID:05pn8HxA0
ダンテ「…」

トリッシュ『もしかしたらあなたに会いに来たのかもね』

ダンテ「ハッ」

トリッシュ『あなた、人の家庭事情に首突っ込むなってよく言うでしょ?』
トリッシュ『だからなんかあったらよろしくね。バージルの事。任せるわよ』
トリッシュ『もし戦り合うことになったら、まともにアレと戦えるのあなたしかいないからね』

ダンテ「へいへい」

やはりバージルも来る。
少し嫌だ。

会話を終わらせ、黒い石を乱暴にポケットに放り込む。
そして少年と少女を待たせているファミレスへ向かう。

―――

501: 2010/02/28(日) 12:02:52.20 ID:05pn8HxA0
―――

上条・インデックス、そして戻ってきたダンテはとあるファミレスにいた。


禁書「まだかな♪まだかな♪」

彼ら三人は先ほどLサイズのピザ三枚頼んだ。

上条「ダンテさん、さっきもピザ食べてなかったか?」

ダンテ「まあな」

上条「ピザ好きなのか?」

       
ダンテ「ああ」

ダンテ「ピザとストロベリーサンデーと酒が無い世界は地獄だ」

上条「(…なんかどっかで聞いたことのあるようなフレーズだな)」

503: 2010/02/28(日) 12:05:19.59 ID:05pn8HxA0
上条「ダンテさん…聞いていいか?」

ダンテ「なんだ?」

上条「ダンテさんが使ってた剣、…普通の剣じゃないよな?」

今、ダンテはギターケースに剣を入れている。
抜き身のまま背負うわけにもいかない。

ダンテ「まあな」

上条「もしかして…それも『魔剣』ってやつか?」

ダンテ「ああ」

禁書「『リベリオン』。かつてスパーダが作り出した『魔剣』の一つだよ」
禁書「『スパーダ』、『閻魔刀』とこの『リベリオン』が魔剣の中でも最強の三本なんだよ」

上条「そんなすげえ物なのか…俺が右手で触ったら…やっぱやばいよな?壊れたりするんだろ?」

禁書「壊れないし、別に力を失ったりもしないよ」

上条「そうなのか?」

禁書「『魔剣』っていうのは意思と魂を持つ生命体の一つだから」

504: 2010/02/28(日) 12:06:50.63 ID:05pn8HxA0
上条「せ、生命体?つまり生きてるのか?」

禁書「うーん、まずとうまには霊装と魔具の違いから説明するんだよ」
禁書「霊装は、形を神聖なものに似せたり術式を組み込んだりした物で、
禁書「霊装その物の材質は人間界のただの金属や材木なの」

上条「だから俺の右手で触れば術式とかが効果を無くしてただのガラクタになるんだよな」

禁書「そう。でも魔具は違うの。魔具にも色々種類があるんだけど、」
禁書「基本的に全て魔界で精製、もしくは魔界のもので作られてるの」
禁書「例えば悪魔が姿を変えて武器になったりとか、」
禁書「そうでないものも魔界の金属生命体が材料になってたりするの」

上条「それで『生きている』ってことなのか」

禁書「そう。とうまの右手でも魂は消せないし、その生き物が持つ本来の力は消せないでしょ」
禁書「例えば聖人の力とかも」

上条「なんとなく…わかってきたぞ…」

506: 2010/02/28(日) 12:09:32.39 ID:05pn8HxA0
禁書「魔具が作り出した間接的な攻撃、例えば火とかは魔力を使う魔術の一種だからとうまの右手で消せるけど、」
禁書「魔具のもつ直接の破壊力は無効化できないんだよ」

上条「なるほど…火を纏ったチェーンソウってところかな?」
上条「火は消せてもチェーンソウ自体は止められないっていう」

禁書「そう。これは魔具だけじゃなく、通常の悪魔の攻撃にもいえることだよ」
禁書「さっきダンテや短髪が戦った悪魔は、肉体を駆使した直接的な攻撃をするタイプだから、」
禁書「とうまの右手は一切効き目が無いよ」

上条「そういえば…あいつら普通に腕でコンクリぶち割ってたしな…」

禁書「他にも魔具には恐ろしい点があるの」

上条「まだあるのか?」

禁書「霊装も術式とかで魔術的な力で攻撃するけど、基本的に結局は物理ダメージでしょ?」
禁書「でも魔具にはそれとは別に、魂へもダメージを加えるの」

上条「魂のダメージ?※」

※魂のダメージ=DMCのゲーム内でのライフ。体力。

508: 2010/02/28(日) 12:11:17.13 ID:05pn8HxA0
禁書「魔具のもつ魂の力を使って、相手の魂を削るの」
禁書「これは悪魔の攻撃にもあるんだよ」
禁書「魔界特有の攻撃方法なんだよ」

上条「…良くわかりません…」

禁書「例えば物理的な破壊力が低くても、その魂への攻撃が強ければ相手を傷一つ負わせずに殺せるの」

上条「つまり…その魂への攻撃が強ければ指先で突っついただけで殺せるのか?」

禁書「理論上ではね。基本的にそれに比例して物理的な破壊力も高くなるけど」

上条「それじゃあ無駄なんじゃないか?物理的な破壊力だけで充分じゃないのか?」

禁書「普通の悪魔の戦いなら特に必要ないんだけどね」
禁書「下等の悪魔なら、肉体の損壊に耐えられずにそのまま氏んじゃうけど、」
禁書「大悪魔となると別なの。魂の力が莫大だから体をいくら破壊してもほとんど効果が無いんだよ」
禁書「だから魂を直接削る攻撃が必要なの」

上条「そういえばさっきダンテさんも頭半分なくなったのにピンピンしてたのも…」

禁書「普通の武器じゃ大悪魔にダメージを与えるのは不可能なんだよ」

509: 2010/02/28(日) 12:15:33.73 ID:05pn8HxA0
上条「…そうか…」

禁書「ところでとうま」

上条「なんだ?」

禁書「まだこないんだよ…ピザ…」

上条「…はあ…お前って奴は…待ってなよ。そろそろ来ると思うから」

ダンテ「ああ、来たぜ」

上条「?」
上条は店内を見渡すが、ピザを持っている店員はいない。

上条「?来てないみたいだぞ?」

ダンテ「いんや」

さっきまで空腹でしきりに体をもぞもぞさせていたインデックスが急に固まる。

禁書「…き、来たかも…」

ダンテ「そーら、『お客さん』だぜ」

その時、辺りが急に暗くなった。


―――

511: 2010/02/28(日) 12:17:45.07 ID:05pn8HxA0
―――

窓の無いビル

アレイスター「(はじまったか…予定よりも3時間以上はやいな)」

アレイスター「(イギリス清教の増援も未到着)」

アレイスター「(例の件の準備も整って無い)」

アレイスター「…」

prrrr
ガチャ

『お呼びでしょうか?』

アレイスター「第一級警報発令。」

アレイスター「状態はデフコン1、市民の避難を開始。」
アレイスター「それと、至急ラストオーダーを保護しろ。」

『了解』ブツッ

アレイスター「…少々…まずいな…」

―――

512: 2010/02/28(日) 12:19:25.21 ID:05pn8HxA0
時刻は昼の二時。
天気は快晴だった。

一分前までは。

今は辺りが薄闇につつまれている。

その暗さは何かがおかしい。

店内に置かれているメニューの字は簡単に読めるのに、
まるで完全な暗闇にいるような感覚。

上条「な、なんなんだ!?」

ダンテ「奴らさ。学園都市に魔界を『重ね』やがった。」

突如、
ウウウウウウウウウウウウウウ!!!っとけたたましくサイレンが鳴り響いた。

513: 2010/02/28(日) 12:21:13.89 ID:05pn8HxA0
街頭のスピーカーから機械的な声がしている。


第一級警報及び第一級戦時態勢が発令されました―――

市民の皆さんはアンチスキル及びジャッジメントの指示に従い―――

最寄のシェルターへ迅速に避難してください―――


上条「や、やばいんじゃねえのか?!」

店内の客が半ばパニックになりかけながら出口へ殺到している。

ダンテ「まあな」

禁書「とうま…」

上条「ど、どうする?!俺達もシェルターに避難したほういいのか?!」

ダンテ「奴らにとっちゃシェルターなんぞダンボール箱と同じさ。」

上条「じゃ、じゃあどうするんだ!?」

ダンテ「もう少しここにいようぜ」

―――

520: 2010/02/28(日) 12:37:34.88 ID:05pn8HxA0
―――

学園都市 とある路上

打ち止めと芳川は、シェルターへ向かう人の流れに身を任せていた。

アンチスキルやジャッジメントの的確な指示のおかげか、
市民は比較的落ち着いている。

黄泉川は先ほど緊急に召集された。
今頃どこかで市民を誘導しているだろう。

打ち止めは一方通行が置いていった、
菓子が詰まったコンビニの袋を大事そうに胸に抱いている。

打ち止め「あの人どこいっちゃったのかな?ってミサカはミサカは心配で心を痛めてみる…」

芳川「大丈夫、彼もきっとどこかに避難してるわよ」

その言葉は気休めにもならない根拠の無い言葉だということを芳川は自覚していた。

一方通行はマンションの入り口まで来たにもかかわらず、結局顔を見せなかった。
そしてこの事態。

関係ないわけが無い。
彼女もかつて学園都市の闇にいたからわかる。
あの少年は学園都市側の最大戦力の一人である。

恐らく動員されたのであろう。

521: 2010/02/28(日) 12:42:40.16 ID:05pn8HxA0
その時、後ろから芳川に声がかかった。

「芳川桔梗か?」

振り向くとそこには黒いスーツを着た屈強な男が三人。
一目でわかる。
一般市民じゃない。

「ラストオーダーを保護する」

芳川はああっと納得する。
重要な個体だけもっと安全な場所に移すのだろう。

「ラストオーダーは『どこ』だ?」

芳川「?」

『どこ』?彼らは打ち止めがどのような姿なのかを知らないのか?

芳川「打ち止めならこk―――」

横にいる少女に目をやるが

芳川「!!!?」

いなかった。


辺りを見回すが、見慣れたアホ毛の少女の姿はどこにもなかった。
―――

524: 2010/02/28(日) 12:44:46.77 ID:05pn8HxA0
とある路上に停められた、バンの中


バンの中に『グループ』の四人がいた。

結標「…信じられない話ね」

土御門「でもそれが現実に起ころうとしてるんだにゃー」

海原「しょうがないですよ。魔術師の僕でさえ信じられないような話ですからね」

土御門「とにかくだ、奴らを止めないと人類の危機ってことだぜよ」

一方通行はそのやりとりを黙って聞いていた。
学園都市に悪魔の大軍が侵入。
魔帝とやらの復活。

それはあの少女の『世界』が破壊されるということ。
そしてその子本人にも危険が及ぶということ。

一方通行「(ふざけンな)」

525: 2010/02/28(日) 12:47:24.38 ID:05pn8HxA0
一方通行「悪魔だがなンだが知ったこッちゃねェ。皆頃しだ」

土御門「当然だ」

結標「ええ」

海原「もちろんです」

四人それぞれに守らなければいけないものがある。
例え自らの命を失ってでも。

土御門「じゃあ、行くぜよ」

結標「…あなたは残ったほうがいいんじゃない?」

土御門「…それ、俺が使えないって意味か?」

一方通行「テメェは残れ。情報を集めて全体の状況を把握しろ」

土御門「…わかったぜよ。じゃあほら、お前らはさっさと行け」」

三人がバンから離れ、薄闇の街へ消えていった。

土御門「(確かに…さすがの俺でも今回はきついにゃー)」

prrrrr

土御門「お」

528: 2010/02/28(日) 12:50:53.36 ID:05pn8HxA0
プツッ

土御門「なんだ?」

『土御門』

土御門「…アレイスター?わざわざ電話とは珍しいぜよ」

『ラストオーダーと第一位を連れてこい』

土御門「……はい?」

『急げ。この二人が学園都市側の要になる』

土御門「ま、まて、話が良くわからないんだが?」

『策があるということだ。それにはあの二人が必要なのだ。最優先で探せ』ブツッ



土御門「…なんか面倒なことになりそうだにゃ…」

―――

529: 2010/02/28(日) 12:54:05.04 ID:05pn8HxA0
―――

上条達三人はとあるファミレスにいた。

店内はもちろん、通りも無人だ。
辺りは夜の様に暗くなっており、しんと静まり返っている。

禁書「……」

上条「…で、どうするんだ?」

ダンテ「いくつか選択肢があるぜ」

上条「?」

ダンテ「一つ目」

ダンテ「俺が魔帝軍を狩りに行く」

上条「…それは…!?」

ダンテ「そうだ。お前らが無防備になっちまう」

530: 2010/02/28(日) 12:55:17.25 ID:05pn8HxA0
ダンテ「二つ目」

ダンテは腰から巨大な白い銃を取り出し、

ダンテ「これは一番簡単な解決方法だぜ。」

銃口をインデックスに向け―――

ダンテ「そのおチビちゃんのキュートな頭をブチ抜く―――」




上条&禁書「へ?」


引き金を引いた―――

531: 2010/02/28(日) 12:57:14.95 ID:05pn8HxA0
ドンッ!!っと鼓膜が破れそうな大音響。
上条は反射的に目を瞑ってしまう。

上条「インデックス!!!!?」

禁書「ほぁ…あ…」

インデックスは固まっているが生きている。
どうやら銃弾は当たっていないらしい。

上条「お、おぃ!!!何を―――」

バリィィィィン!!ドダン!!っと上条の後ろでガラスが割れるような音がし、それに続いて何か重い物が落ちる音。

上条が驚き振り向くと、そこには巨大なトカゲのような化物が悶えながら倒れていた。
腕には何かの結晶でできたような巨大な爪が生えていた。

『フロスト』と呼ばれる魔帝軍の精兵である。
氷を操る悪魔。

ダンテ「で、これが三つ目だ―――」

ダンテ「交代が来るまでガキのお守りをする―――」

534: 2010/02/28(日) 13:10:42.09 ID:05pn8HxA0
ダンテ「伏せてな」
その声を聞いて上条とインデックスは咄嗟に机の下に潜る。

バキィィィン!!とガラスを割るような音とともに何体もフロストが店内に現れる。

ダンテ「Ha!!!!! Let's party!!!!」

その声を合図に、周りのフロスト達が一斉にダンテへ飛び掛った。

後方の一体がその長い氷の爪をダンテの頭へ突き立てる。
ダンテは頭を僅かに傾けただけでそれをかわし、右手でカウンターを叩き込んだ。

ドギン!!!っと鈍い轟音と共にフロストが大きく吹っ飛ばされる。

左右から一体ずつフロストが接近する。

ダンテ「Ha!!」

足を大きく開き、左右二体の顔面に同時に蹴りを加える。
ゴギン!!!と二重に音が響き、左の一体は大きく吹っ飛ばされた。
だが右の一体は顔をわざと仰け反らせて衝撃を緩和し、そのまま至近距離から再度爪を振るってきた。

ダンテ「(相変わらず芸がこまけえぜ!)」

ダンテはその爪を右手でいなし、左手の白い銃『アイボリー』を至近距離からフロストの顔面めがけてぶっ放した。

535: 2010/02/28(日) 13:12:23.21 ID:05pn8HxA0
バキィィィン!!!っと氷でできた兜のようなものに直撃する。
そのままフロストは後方に吹っ飛ばされたが、空中でするりと体勢を立て直して着地した。

ダンテの放った銃弾によって氷の防具は割れていたものの、すぐにパキパキ音を立てながら再生していった。

ダンテ「(やっぱしぶといなこいつら)」


ダンテはふとフロストの攻撃をいなした右手を見る。
パリッっと見事に凍っていた。

ダンテ「hmmm.....」

まじまじと眺める。
そして何やら閃いたようにニヤリと笑う。

ダンテ「いいねぇ。氷対決としゃれこもうじゃねえか」


ダンテ「CERBERUS!!!!!」


その叫びと同時に、
どこからともなく青いヌンチャクが飛んできてダンテの足元の床に突き刺さった。

547: 2010/02/28(日) 13:43:16.26 ID:05pn8HxA0
そのヌンチャクはケルベロス。
ダンテの使い魔の一つ。

ダンテはそのヌンチャクを足に引っ掛け、蹴り上げて床から引き抜き宙に放り上げる。

右手でキャッチし、そのままぶん回す。
左手に持ちかえて、そして足に引っ掛けて更に振り回す。
一通りの演舞を終えて最後に決めのポーズをする。

ダンテ「さぁて!ワンちゃん!久々にパーっとやろうぜ!!!」

フロスト達が四方から一斉に飛び掛る。

HoooooAAA!!!!

ダンテはその場でケルベロスを右手、左手と交互に持ち変えながら凄まじい速度でぶん回した。

ガギギギギギギン!!!っと衝突音と共にフロスト達の氷の甲冑がはげる。

ダンテ「Chew on this!!!」

そう叫びダンテはケルベロスを地面に突き刺す。

それと同時に前方のを割って巨大な氷柱が突き出てくる。

バギィィィィン!!!っと前方の二体のフロストが下から突き上げられ、
店内の天井をブチ破って階上へ叩き込まれた。

549: 2010/02/28(日) 13:46:43.28 ID:05pn8HxA0
そして今度は左側のフロストへ向くと、凄まじい速度でヌンチャクの乱撃を加える。

HA! Huh! HoAAAAAA!!!

最後に軽く飛び上がり、空中で体を駒のように回転させる。
ジャリィィィィ!!!!っとヌンチャクが3m近くまで伸び、そのままダンテの回転に合わせて風車のように周囲をなぎ払った。

店内の床、天井が紙細工のように破壊されていく。

そして着地と同時に思いっきり伸びたヌンチャクを叩き付けた。
その乱撃を食らったフロストはそのまま悶えながら倒れ、溶けるように消滅した。

ダンテ「Ha! Too easy!」

これで店内にいるフロストは全部片付けた。
ふと外に目をやると、薄闇の中に10体ほど見える。

ダンテ「ハッハ~♪」

心底嬉しそうな顔をしながら、店のドアを蹴破って外に飛び出していった。

―――

551: 2010/02/28(日) 13:52:00.71 ID:05pn8HxA0
―――
上条はテーブルの下に潜りインデックスを抱えている。

ダンテは先ほど ここから動くな と言うと、
どこからとも無く現れ店内に侵入してきたトカゲのような悪魔達と戦い始めた。

ダンテの掛け声、銃声、悪魔の叫び声が連続して聞こえる。

戦いの場は外に移ったようだが、ドン!!!ガン!!!っととてつもない衝撃がこの店を地震のように揺らしていた。

天井や壁の破片が落ちてくる音が絶え間なく続く。

インデックスは上条の服をギュッと握り締め、彼の胸に顔をうずめている。

上条「大丈夫だ…大丈夫」

「Freeeeeeze!!!!!」

一際大きいダンテの叫びが聞こえそれと同時に今まで以上の轟音と振動が彼らを襲った。

鼓膜が破れそうになる。

店が崩れそうだった。
いや、厳密に言うと既に半壊しているのだが。

上条「…」

そうしている内に店内は静かになった。

552: 2010/02/28(日) 13:53:59.45 ID:05pn8HxA0
上条「…ダンテさん?」

テーブルの下から動かずに呟く。
耳をすませる。

上条「誰も…いない?」

とその時
ドンッ!!と巨大なトカゲのような足が目の前に着地した。
衝撃でタイルが割れ、三本の爪が床にめり込んでいる。

上条「…!!!」

禁書「と、とう…!!」

バッとインデックスの口を手で覆う。
彼らはテーブルの下にいるため、
そのトカゲのような悪魔の脛から下しか見えない。

フーッ、フーッと呼吸音であろう音が聞こえる。

553: 2010/02/28(日) 13:55:44.22 ID:05pn8HxA0
その足は向きをかえ、ドンッドンッと地響きを立てながら店の奥へ向かっていった。

上条「(…!俺達を探しているのか…?!)」

上条「(ま、まさか、ダンテさんやられたのか…?!)」

上条「(ど、どうする…?!)」

抱えているインデックスの方を見る。
インデックスは心配そうな瞳で上条を見つめている。

上条「(とにかくこのままじゃ見つかる!!!)」

上条「(隙を見つけて逃げるしかない!!)」

上条は ここにいろ とインデックスに手で伝えると、
ゆっくりとテーブルの下から顔を出す。

上条「(いない…な)」
恐る恐る見渡す。

テーブルの下で縮こまってるインデックスを呼ぼうとした時

ガリっと真上から音がした。
ゆっくりと上を見上げると。

天井にあのトカゲの悪魔が張り付き、赤い瞳で彼を真っ直ぐ見ていた。

555: 2010/02/28(日) 13:58:26.49 ID:05pn8HxA0
ズンッ!!っと上条が動く間もなくその悪魔は彼の目の前に着地した。
その衝撃で上条は尻餅をつく。

禁書「とうまぁ!!!」

上条「来るなインデックス!!!」

やばい―――やばい―――

トカゲの悪魔はググっと上条の顔を覗き込んだ。
虚ろな二つの赤い目が彼を見つめている。

禁書「とうまぁ!!とうまぁああ!!」

後ろから少女の叫び声が聞こえる。

上条「おぁああああああ!!」
渾身の力を込めて、目の前の悪魔の顔面を蹴り上げる。

ゴッ!!と鈍い音がする。

556: 2010/02/28(日) 14:00:41.39 ID:05pn8HxA0
上条「痛ッ…!!!」

まるで鉄の塊を蹴ったような感触。
そして足が焼けるような痛み。

靴の裏がその一瞬の接触だけで白く凍っていた。

悪魔は微動だにしていない。
体表なのか防具かわからない甲羅上のものの隙間から赤い目が彼を睨む。

禁書「と、とうま!!」
インデックスは上条へ向けて駆け出す。

上条「バカッ…!!来るn―――」

その時だった。

ギャリィィイン!!っとその悪魔の頭を後ろから何かが貫いた。

558: 2010/02/28(日) 14:02:28.38 ID:05pn8HxA0
上条「…!!?」

それは銀色に輝く剣。

「動くなと言っただろう」

低い声が続く。

「聞き分けの悪い子は―――」

「たっぷりとお仕置きだぜ―――」

上条「ダンテさん!!」

禁書「ダンテェ!!」

562: 2010/02/28(日) 14:08:14.24 ID:05pn8HxA0
頭を貫かれ、悪魔はギギ…と呻く。
ダンテはそのまま剣で2m以上あろう悪魔の巨体をぶん回し、
床に叩き付けた。

ゴバン!!!っとめり込む。
顔面を貫いていた剣はその衝撃で、悪魔の頭を真っ二つに裂いていた。

しかしその状態でもまだ生きており、起き上がろうと腕を動かしている。

が、ダンテは悪魔の体を踏みつけて押さえ、

ダンテ「おねんねしな」

というとドンドンドン!!っと至近距離から銃を撃ち込んだ。
ビチャビチャと辺りに白い液体と悪魔の肉片が飛び散った。

563: 2010/02/28(日) 14:09:18.69 ID:05pn8HxA0
上条「ダンテさん!!良かった!!」

禁書「どこいってたの?!遅いんだよ!」

ダンテ「ここを離れるぞ」

ダンテ「ついてきな」


三人は店の外に出る。
上条は外の惨状に驚愕した。

何もかもが破壊されていた。

周囲のビルは崩れ、道路は抉れ、辺り一帯を氷が覆っていた。
そして一際目立つのは直径30m程のクレーター。
その表面も氷で覆われている。

そのクレーターはダンテの大技、ケルベロスの『Ice Age』によるものだった。

この街の破壊は9割方ダンテのせいだ。

566: 2010/02/28(日) 14:11:09.17 ID:05pn8HxA0
耳を澄ますと、既に無人の街の静寂は壊されていた。
どこか遠くから銃声と何かの破壊音、
そして人ならざる者の咆哮が聞こえる。

上条「街中に…あのトカゲの悪魔が現れてるのか?」

ダンテ「かもな」

禁書「あれは『フロスト』。かつて魔帝が人間界侵攻の為に創造した精鋭の兵士達なんだよ」

ダンテ「普通の人間にとっちゃ結構キツイだろうがな」

上条「…なんとかして止めないと…!」

ダンテ「止めるさ。だがまずイギリス清教の連中と合流してからだ」

上条「どうやって合流するんだ?」

ダンテ「向こうがこっちに来るさ」

―――

568: 2010/02/28(日) 14:13:23.19 ID:05pn8HxA0
―――


神裂を先頭にステイル、シェリー、そして天草式の52人が無人となった街を突き進む。

彼らは23区の空港に到着した途端、
機体の壁を内側から破壊しそのまま飛び降りて上条らの下へ向かっていた。

トリッシュはその時に別れを言うことも無くいつの間にか姿を消していた。

どうやらトリッシュが渡してくれた黒い石には対称の追跡能力もあるらしく、
ステイルのポケットの中で、ググッと動いて方角を示してくれる。

彼らは先ほど第七区に入った。

ステイル「このまま真っ直ぐ!!」

辺りにはバラバラになった学園都市最新の駆動鎧があちこちに転がっていた。
駆動鎧の残骸の割れ目から赤い液体がドロドロと溢れている。

むせかえるような血の匂い。

570: 2010/02/28(日) 14:14:39.17 ID:05pn8HxA0
五和「これは…アビニョンに現れた…」

走りながら呟く。

ステイル「学園都市の兵だね。ここの部隊は全滅したようだ」

神裂「…」

建宮「ま、前!!」

その言葉と同時に、彼らの前方の地面に複数の黒い円が浮かび上がった。

神裂「このまま突破します!!」

ヴンッ!!とその円の中から2mはあろうトカゲのような悪魔達が姿を現した。

571: 2010/02/28(日) 14:16:07.30 ID:05pn8HxA0
トカゲのような悪魔は氷でできた鎧で急所を守っている。
そして手の先には氷でできた巨大な爪。

悪魔の一体がその氷の爪を猛烈な速さで飛ばして来た。

神裂「ッ!」

持っていた七天七刀で弾く。

ガギィン!!!ッと神裂の手に予想外の感覚と衝撃が走る。

神裂「(固ッ…!!)」

まるで金属の塊のような感触。
弾かれたその氷の爪は砕けることなくアスファルトの地面に深く刺さっていた。

神裂「(普通の氷では無いみたいですね。それとも魔界の氷は鋼鉄並みの強度が当たり前なのでしょうか)」

573: 2010/02/28(日) 14:17:35.24 ID:05pn8HxA0
神裂「天草式!!3人一組で戦いなさい!!」
体格、そして先の攻撃から判断し指示を出す。

そして神裂は前方の悪魔達へ突撃する

向こうからも悪魔の一体が彼女へ突進してくる。
悪魔は右手を振り上げ、その結晶のような巨大な爪を彼女へ振るう。

遅い―――!

確かに相手は強大な力を持った人外の魔物だったが、
今の彼女の敵では無かった。

彼女はその攻撃を難なくかわし、
すれ違いざまに聖人の力を解放し神速の居合『唯閃』を放つ。

574: 2010/02/28(日) 14:21:27.51 ID:05pn8HxA0
キン―――

一瞬で悪魔の上半身と下半身が切り離される。
どう見てもオーバーキルである。

そのまま悪魔の群れの中へ飛び込み、次々とすれ違いざまに切り伏せていく。

ステイル「このまま突破するぞ!!」
ステイルが炎剣で悪魔達をなぎ払いながら続く。
どうやら彼の炎の攻撃はあのトカゲの悪魔には効果抜群らしい。

死神のような悪魔達が絶え間なくあちこちから湧き出てきた。
左右のビルの壁面、時には空中がガラスのように割れその中から飛び出してくる。

577: 2010/02/28(日) 14:30:49.40 ID:05pn8HxA0
前方の悪魔の群れはどんどん厚くなり、
左右後方からも悪魔の壁が押し寄せてくる。

神裂「あの死神もどきは雑魚です!!!トカゲの悪魔に注意してください!!!」

建宮「しかしキリがないのよな!!」

戦いの中で負傷したのか、額から血を流す建宮が叫ぶ。

ステイル「止まるな!!とにかく進むんだ!!」

その時、左側の悪魔の群れが一斉に距離を詰めてきた。

大半があの雑魚の死神もどきとはいえ、数が多すぎる。

神裂「…!!」

579: 2010/02/28(日) 14:32:16.93 ID:05pn8HxA0
ここで掴まり止ってしまうと完全に包囲される。
いや、すぐにでも全周防御陣形に移行しないと乱戦になり確実に氏人が出る。
だがこんなところで時間を潰すわけにも行かない。

任務の為、仲間の屍の上を進むという手段もある。
だが彼ら魔術師は『軍隊』ではない。
戦闘能力は高いものの、その戦いは私情に溢れている『素人』なのである。

神裂「(どうする…!?)」

任務の遂行と仲間の命。
どちらの決意も固い。

だからなおさら天草式の指揮官は迷う。

そうしている内に左側から悪魔の津波が押し寄せてくる。
神裂は決める。

神裂「天草式!!全周防g―――!」

その時だった。

ドガガガッ!!!と目前まで迫っていた悪魔の群れが
巨大な黒い何かになぎ払われた。

585: 2010/02/28(日) 14:54:54.88 ID:05pn8HxA0
神裂はその黒い何かを確認する。
それは7メートルは越えている巨大な悪魔。
体の左右には巨大なハンマーのような腕。

その足元にシェリーが立っていた。
右手には白のオイルパステル。

シェリー「てめえらはさっさと行け!!」

神裂「…な?!」

神裂が悪魔と思ったその巨人は、シェリーの魔術によって作り出されたゴーレムだった。
そのゴーレムの体を構成しているのは

悪魔達の氏体―――

587: 2010/02/28(日) 14:56:44.78 ID:05pn8HxA0
シェリー「ここは任せな!!」

神裂「…で、でも…?!」

シェリー「うるせえ!!てめえら邪魔なんだよ!!巻き添えくうぞ!!」
そう言ってる間もゴーレムを操り、悪魔を群れごとなぎ払い叩き潰す。


神裂「…わかりました…!!」

神裂「…絶対氏なないで下さい!!」

シェリー「いいからはやく行け!!」

神崎ら54人がその場を離れる。

悪魔の群れの一部が神崎らを追う。

シェリー「チッ!やっぱり全部引き止めることはできねえか…」

だが、彼女がここで悪魔を殺せば頃すほど神崎らを追跡する連中の数が減る。
実際にその場にいた悪魔の内七割がここに残っている。

590: 2010/02/28(日) 15:00:30.79 ID:05pn8HxA0
悪魔達は一旦攻撃をやめ、彼女とゴーレムの包囲を固めている。
両脇のビルの壁面、屋上にも大量の悪魔。
ざっと100体はいるだろうか。
無数のおぞましい視線を感じる。

シェリー「最高だろ?『エリス』」

傍らに立つゴーレムへ語りかける。

今までのよりも一回りも二回りも体が大きい。
そして力は何十倍にも増していた。

悪魔の血、悪魔の怨念、悪魔の魂、悪魔の亡骸で作られたゴーレム=エリスは、
今や真の『魔像』となっていた。

592: 2010/02/28(日) 15:03:23.96 ID:05pn8HxA0
莫大な魔力がゴーレムに蓄えられる。

ゴギゴギッ!とゴーレム=エリスの背中からもう一対の腕が生える。
そしてその計四本の腕が更に巨大化する。

シェリー「てめえらが氏ねば氏ぬほど、『エリス』は強くなる」

シェリー「オラ、さっさと来いよ。何ボケッとしてやがる。居眠りでもしてんのか?」


シェリー「なんなら―――」

シェリーの声にあわせ、ゴーレム=エリスがその巨大な腕を振り上げる。

シェリー「叩き起こしてやるよ―――!!」

―――

593: 2010/02/28(日) 15:05:05.41 ID:05pn8HxA0
―――

ドンドンドン!!!と黒い巨大な銃が火を噴く。

死神もどきの悪魔達が一発でバラバラになる。

御坂「(とんでもないわね!!この銃!!)」

御坂は周囲へ電気を帯びた破魔の弾丸をばら撒く。

別の方向では、
ゾンッ!!!と悪魔の頭が消滅し、バスケットボール大の瓦礫と入れ替わる。

黒子「さすがお姉さまですわ!!」

御坂「黒子もやるじゃないの!さっきとは大違いね!」

黒子「舐めてもらっては困りますの!!」
黒子も吹っ切れたようで、この緊張感をどこか楽しんでいる節がある。

594: 2010/02/28(日) 15:07:02.11 ID:05pn8HxA0
御坂「…大体こんなもんね」

辺りを見回す。動く者の気配は無い。

黒子「もうこの辺りにはいないようですの」

御坂「移動しましょ。まだまだやり足り無いわ」

黒子「…お姉さまがどんどんダークサイドに堕ちていく気がしますの」

御坂「アンタも充分ダークサイドに堕ちてると思うけど」

黒子「この白井黒子!!お姉さまとならどこまでもご一緒しますのよォォォォ!!」

いきなり黒子はとびつく。

御坂「ちょっと…!!離れなさい!!!」

黒子「お姉さまぁあぁぁぁ!!!うへへぅ゛ぐふぁああう゛へえ゛え゛へへへへ!!!」

その時、後ろから急に声がかかった。
「お姉様?、ってミサカはミサカはお姉様に変な趣味が無いかちょっと心配しながら声をかけるの!」

御坂「え?」

黒子「へべ?」

595: 2010/02/28(日) 15:10:43.50 ID:05pn8HxA0
黒子「ほぉぉ、ほぉおああ、ほぉぉぉぉぉぉぉぉああああああああ!まぁまぁまぁ!!!まぁまぁまぁまぁ!!!まぁまぁまぁ!!!」
黒子「なぁぁぁぁんて可愛らしい子ですの!!!!まるで小さなお姉様ッ!!!!」

我を忘れて黒子はその小さな少女に飛び付こうとしたが御坂に羽交い絞めにされる。
打ち止めは突然の状況に顔を引きつらせる。

御坂「落ち着きなさい!!!落ち着けぇええ!!!」
そのまま電気を流し込んだ。

黒子「う゛へぁっ!!!」

御坂「あたしの妹よ」

髪が少し縮れている黒子に説明する。

黒子「なるほど…妹さまがいらしたのですね…それにしてもやはりお姉さまの血族」
黒子「その遺伝子の素晴らしさが体中から溢れ出ておりますの…」

打ち止め「いたらぬお姉様がお世話になってます!!、ってミサカはミサカはペコリと礼をしてみたり!」

黒子「ほあああ!!!黒子は!黒子はぁぁぁぁ!!!」

御坂「黒子それ以上近づいたらアフロにするわよ」

黒子「…御意ですの」

596: 2010/02/28(日) 15:12:03.72 ID:05pn8HxA0
御坂「で、あなたはこんな所で何してるのよ!?」

打ち止め「あの人を探してるの!来るはずだったのにまたどこかに行っちゃったの…、ってミサカはミサカはあの人の心配してうな垂れるの」

御坂「あの人…?まあつまり迷子になって逃げ遅れたってわけね」
御坂「黒子。ここから一番近いシェルターは?」

黒子「第七区14番シェルターですわ」

御坂「黒子、この子をそこに放り込むわよ」

黒子「そうですわね。こんな危険な状況で連れて歩くわけにもいきませんし」

打ち止め「それはダメなの!!、ってミサカはミサカは首をふりながら断固拒否するの!!」

598: 2010/02/28(日) 15:14:32.02 ID:05pn8HxA0
御坂「アンタ状況わかってるの?そんn」

打ち止め「あの人が危ないの!!あの人が『また』ミサカを守ろうとして戦おうとしてるの!」
打ち止め「、ってミサカはミサカは信号を確認しながら叫ぶの!」

御坂「『あの人』…?また『守る』…ってまさかアンタの探してる人って…!?」

御坂の脳裏にツンツン頭の少年の姿が浮かぶ。
打ち止めの言っている『あの人』とはその少年とは別人なのだが。

打ち止め「このままじゃあの人が氏んじゃうの!!ってミサカはミサカはネットワークで手に入れた情報を確認しながら足をばたつかせるの!!」

御坂「…!いいわ、あたし達がアイツを助けるから、」

打ち止め「…始まっちゃったの…!!ってミサカはミサカはあの人の戦闘信号を確認したの!!!」

御坂「アンタはシェルターへ…ってちょっと待ちなさい!!」

打ち止めは御坂の話を聞き終わる前にどこかへ向かって駆け出した。

600: 2010/02/28(日) 15:15:59.59 ID:05pn8HxA0
御坂「黒子ォ!!!」

黒子「はいですの!!!」

黒子がテレポートし、少女の小さな体へ覆いかぶさろうとした時、

黒子「へぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

黒子の体がブスブス音を立てながら崩れ落ちた。

御坂「な、なにやってんのよ!!」

黒子「妹さまも…『電気使い』…なのですね…」

御坂「全く…!!!止まりなさい!!!こらァ!!!」

―――

602: 2010/02/28(日) 15:19:10.20 ID:05pn8HxA0
―――

一方通行「弱ェな。悪魔ってこンなモンなのかァ?」
足元に転がったトカゲの悪魔の氏体を蹴る。

当たり一帯に無数の悪魔の氏体が転がっている。

海原「さあ。僕も本物を見るのは初めてですし」

結標「油断しない方良いんじゃないかしら?こいつらどう見ても雑兵っぽいし」

一方通行「チッ! さっさとでてこィやァ親玉さンよォ!!!」

海原「随分とイラついてますね」

一方通行「るせェ。テメェらが使えねェからだ」

結標「本当の事とはいえそう言われるとムカつくわね」

一方通行「ムカついてンのはこっちだ!!俺はさっさと終わらせてェんだよ!」

その時、前方に複数の赤い目が現れた。

603: 2010/02/28(日) 15:20:25.43 ID:05pn8HxA0
結標「さっきのよりは強そうね。」

現れたのは山羊の頭をした悪魔『ゴートリング』
四体いる。

海原「(山羊の頭…!)」

結標「先頭は私が貰うわよ」

一方通行「勝手にしな」

結標が前に出る。

結標「そうね…この車のドアなんかお似合いじゃない?」
そういうと、そばにあった壊れた車のドアが消え、
悪魔の体内に飛んで、その体を真っ二つに裂いた―――

はずだった。

611: 2010/02/28(日) 16:00:20.95 ID:05pn8HxA0
あれっ打ち止め12巻で面識なかったっけ?
『小さな打ち止めの姿を見て不機嫌になった御坂は』うんぬんってあったような気がしてた

結標「!!」

悪魔達はとんでもない速度でいきなり彼女へ向かってきたのである。
車のドアは悪魔のはるか後方に現れ音を立てて地に落ちた。

結標「(速すぎる!!座標の補足ができない!!!)」

海原「下がれ結標!!」

瞬間、悪魔の拳が振り下ろされ、地面に巨大な穴が空く。

海原「結標!!」

すると海原の背後から声がした。

結標「うっさいわね…」
彼女は悪魔の拳が直撃する寸前に飛んだのである。

一方通行「チッ やっぱ使えねェなテメエらは」

612: 2010/02/28(日) 16:02:33.10 ID:05pn8HxA0
一方通行「さァ! きな!!」

一方通行目がけて悪魔の一体が突撃して来た。

ゴアンッ!!!っと悪魔の強烈な蹴りが直撃する。
何もかもを粉砕する破壊力をもった蹴り。

だが粉砕されたのは。
悪魔の足だった。

一方通行「ハッ!!すっげェ蹴りだなオィ!!」

ヴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!!
っと悪魔の叫びが響く。

一方通行「次ァこっちの番だ」

一方通行は悪魔の首を掴む。
ベクトル操作により、彼の左手が万力のように悪魔の首を締め上げる。

そして右足で蹴りあげる。
バヅンッ!!!っと悪魔の腹がその衝撃で裂ける。

一方通行「なンだ、案外脆いじゃねェか」

613: 2010/02/28(日) 16:06:41.47 ID:05pn8HxA0
残りの三体が一斉に向かってきた。

一方通行「ザコにァ用はねェンだよッ!!!」

そばに停めてあった業務用のトラックを標的へ飛ばす。
瞬間的に音速の数倍まで加速されたトラックが摩擦熱で火の玉となって、

ドッズンンンンッ!!!と悪魔の三体をまとめて叩き潰し大爆発を起こした。

結標「もう少し丁寧にできないの?いつもはもっとおとなしいじゃない」

一方通行「うるせェ。俺は今最高に機嫌ワリィんだ。」

海原「まあ良いんじゃないんですか?人間にやるような攻撃じゃびくともしなさそうでしたし」
その時、海原は脇に下げている魔道書の原典に何か違和感を感じた。

海原「(…ッ!これは…!?)」

一方通行「海原ァ。テメェも気付いたか?」

海原「…はい」

結標「何?どうしたのよ?」

614: 2010/02/28(日) 16:09:32.30 ID:05pn8HxA0
海原の緊張を察知し、結標も辺りを見回す。

結標「…はは…私もなんとなくわかってきたわ…」

最初は特に気にするレベルではなかったし、実際彼女も気付かなかった。
だがそれは徐々に強くなり、いまは彼女の体に重く圧し掛かっている。
得体の知れない強烈な悪寒、ジリッと皮膚が焼け付くような感覚。

一方通行「はははは!!!」
一方通行「やっと来やがったみてェだなァッ!!!」

一方通行の視線を海原と結標が追う。

先ほどの一方通行の攻撃で崩れたビルの瓦礫の上に人影があった。
銀髪を後ろになで付けている。
赤い目に。青いコート。左手には日本刀。

海原「あ、あれは…!」

結標「な…な…!」

二人はその赤い瞳を見た途端、まるで心臓を手で鷲掴みにされた感覚に陥った。

一方通行「待ちくたびれたぜェ!!!」

海原「結標!!(『アレ』は次元が違う…!!)」

海原は呆然としている結標の手を強引に引き、その場を離れた。

617: 2010/02/28(日) 16:13:09.23 ID:05pn8HxA0
一方通行は瓦礫の上の人影を睨んでいた。

一方通行は知る由はないが、この銀髪の青いコートの男の名はバージル。
ダンテの兄であり彼と双璧を成す史上最強の悪魔の一人。

一方通行「おィ!!!テメェがこのゲテモノ共の親玉か!!?」

バージル「…」

一方通行「あン?まさかそんだけ殺気撒いときながら味方ですとか言ゥんじゃねェだろうなァ!?」

バージル「…」

一方通行「聞こえなィんですかァ?!!!」

その言葉と同時に、ドッガァァァァァァッ!!!!と瓦礫の山もろともバージルを吹き飛ばす。

一方通行「あン?」

620: 2010/02/28(日) 16:15:22.08 ID:05pn8HxA0
瓦礫の雨がやみ、爆心地が見える。
中心にバージルが先ほどと変わらずに平然と立っていた。

一方通行「(コイツ、俺みてェな自動防御でもあンのか…?)」

トンッと地面を軽く蹴る。
その瞬間周囲の無数の瓦礫がその男目がけて飛ぶ。
小石サイズから車サイズ程もある瓦礫が、急激な加速を受け摩擦熱で発光する。

ドドドドドドドドッ!!!!!と無数の光の矢の雨が男に降り注ぐ。

一方通行「チッ!」

だがその猛攻を浴びても尚、男は変わらずに平然と立っていた。
ただ黙って一方通行を鋭く冷たい目で見ている。

バージル「…」

一方通行「ハッ!!!クールなことで!!!なンならこいつはどうだァ!!?」

ベクトルを利用し体を一気に加速させバージルへ突進する。
そして左手に大気を収束させる。
空気が圧縮され発生したプラズマが彼の左手を覆う。

その左手をバージルの顔面へ叩き込む。
バヂィィィィィィィン!!!!っと炸裂し、周囲の瓦礫がプラズマの温度で形を変える。

だが。
男は素手で一方通行のその突きを正面から掴んでいた。

622: 2010/02/28(日) 16:21:43.88 ID:05pn8HxA0
一方通行「(ンだとッ!!?)」

バージルはそのまま一方通行の腹めがけて蹴りを繰り出してきた。
バギィイイン!!!っとその蹴りが自動で反射される。

一方通行「!!!?」

一方通行の能力がその蹴りのとんでもない威力を検知した。
だが彼をそれ以上に驚かせたのは。

一方通行「なンでだ…!??」

確かに驚異的な威力だったが、難なく反射した。
それなのに何故。
   
一方通行「(なンで傷一つ負ってねェ…!?)」

一方通行は悪寒を感じ、一旦後ろへ飛び距離を空ける。

623: 2010/02/28(日) 16:26:52.40 ID:05pn8HxA0
バージルは一方通行を蹴った自分の足を見ていた。
そしてフンと鼻で笑った。

バージル「…面白いな」

一方通行「ハッ!!喋れるじゃねェか!!!」

バージル「そいつで―――これは防げるか?」

バージルは刀に手をかけた―――

一方通行の今までの実戦で培った感が叫ぶ―――
あれは避けろと―――

キィィィィンッ!!!と地面に細い線が走る。

反射的に一方通行は瞬時に横へ体を飛ばす。
僅かな時間差で彼がいた空間が縦に切り裂かれた。

625: 2010/02/28(日) 16:30:04.42 ID:05pn8HxA0
一方通行「…な…!!」

一見、威力はそれ程でもないように見える。
だが彼はその飛んできた斬撃がどれほど異常なものかがわかった。

一方通行「(…なンなんだよこりゃァ…!!!!)」

何もエネルギーを感知できなかったのである。
大気が、地面が切断されたという痕跡のみで、
それを引き起こしたエネルギーそのものは全く感知できなかった。

いや、これは切断されたと言うより、空間自体がパカッと自然に割れたと言った方が正しいかもしれない。

かつて垣根帝督も未知の攻撃を使ってきたが、あれは未知とはいえ認識でき、最終的に演算できた。

だがこれは違う。

全く認識できない。

反射どころではない。
演算すらできない。

626: 2010/02/28(日) 16:33:27.05 ID:05pn8HxA0
一方通行「(…だが…避けられるッてンならなンとかなる!)」

そう、彼にとって反射は単なる手段の一つだ。
それが封じられたからといって彼が無力になるわけではない。
それに状況が違うとはいえ、反射が無効化される事態は経験済みだ。

彼は慌てずに反撃の手段を探す。

一方通行「(奴は恐ろしくタフだ)」

一方通行「(なら―――耐えられねェくれェの力をぶつければ良い―――)」

能力が地球の自転ベクトル捕え、彼の手へ収束させる。

一方通行「ハァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!!」

そしてその莫大な力が大気を押し出し―――

バージルへ向かう―――

634: 2010/02/28(日) 16:59:52.45 ID:05pn8HxA0
一見地味で小規模だけど実はとんでもなくヤバイ、ということにして下さい。
バージルの『閻魔刀』もかつて魔界の封印に使われたという、よくよく考えるとマジキチレベルの代物だし。


圧倒的な衝撃波が周囲全てをなぎ払う。ビルが吹き飛ぶ。
凄まじいエネルギーの束がバージルへ突き進む。

バージルの目つきが変わる。
先ほどとは違い、今度はしっかりと構える。

腰を低くする。
そして足を前に踏み出すと同時に

バージル「ハァッ!!!」

神速で抜刀した―――

一方通行が地球全土の『3分』を犠牲にしてまで放った攻撃が、
キンッッッ!!!!!と甲高い金属音と共に真っ二つに裂かれ、そのままかき消された。

一方通行「ウソ―――だろ―――おィ―――」

そしてその斬撃の余波が―――

一方通行の左腕を切り落とした―――

638: 2010/02/28(日) 17:03:59.44 ID:05pn8HxA0
一方通行「がァァァァァァァァァ!!!!」

切り落とされた傷口から血が噴出す。
激痛が走る。

瞬時に血管を塞ぎ痛みの信号を遮断するも、
その僅かな時間に失った血の量はかなりのものだった。

一方通行「…クソがァァァァァァァァ!!!」

無駄とわかっていながらも周囲の瓦礫を飛ばす。
当然、全く効果が無い。

タンッとバージルが軽く、かつ猛烈な速さで向かってきた。

一方通行「おァ゛ァ゛ァ゛!!!」

一方通行も向かう。

白髪の少年は周囲のあらゆるベクトルを右手に収束させ繰り出す。
がバージルはそれを難なくかわし、
すれ違いざまに抜刀し一方通行の左脇へ振るった。

再び甲高い金属音が響く。

639: 2010/02/28(日) 17:08:49.93 ID:05pn8HxA0
一方通行「ぐ…ァあ…」

物理的な部分は反射した。
だが認識できなかった刃が彼の左脇を裂いた。
肋骨は寸断され、傷は肺にも届いていた。

ベクトル操作をし、傷口から内臓が飛び出すのを防ぐ。
かわりに器官や肺、体内に溢れた血を傷口から排出する。

一方通行は膝から崩れ落ちた。
最早戦う力は残っていなかった。

一方通行「(くっそッ……なンなンだよこれァ…ふざけンな…)」

その時だった。

少し離れた前方からジャリッジャリッと何者か歩いてきた。
バージルでは無い。奴は後ろにいる。

641: 2010/02/28(日) 17:11:13.47 ID:05pn8HxA0
一方通行は顔を上げ、その第三者の姿を確認した。

一方通行「おィ…!!?」

一方通行「なンで…!!?なンでだァッ!!!?」

脇の傷など忘れその新たな来訪者へ叫ぶ。

一方通行「なンでテメエがここにいるンだァァッ!!!??」


なンで―――

なンでこのガキが―――?


一方通行「ラストオーダァアアアアア!!!!」

―――

644: 2010/02/28(日) 17:22:05.58 ID:05pn8HxA0
―――

打ち止め「あ…あ…ミサカは…ミサカは…」

今にも泣きそうな顔で打ち止めは小刻みに震えながら近づいてくる。
手には見覚えのあるコンビニの袋をギュッと握り締めている。

一方通行「オィ!!逃げろ!!!さっさと行け!!!」

打ち止め「…あなたの傍に…いたいの…ってミサカは…ミサカは…」

一方通行「来るンじゃねェェェェェェ!!!!!」

その小さな少女の体を後ろへ吹っ飛ばした。
避けたコンビニの袋から菓子が散る。
彼が操作したため、地面へ叩きつけられること無く穏やかに着地した。

その時、別の方向で
ドンッ!!と閃光が瞬く。

電気を帯びた破魔の銃弾がバージルへ向かってきたが彼は難なくかわす。

ゴバン!!と外れた弾丸が地面を抉った。

閃光が瞬いた方向から一人の少女が飛び出してきた。
打ち止めを成長させたような顔の少女。

一方通行「(なンでテメエも―――!!?)」

647: 2010/02/28(日) 17:27:55.08 ID:05pn8HxA0
打ち止めが今度は走りながら一方通行に駆け寄ってくる。

御坂「止まりなさい!!!!止まれぇええ!!!!!!」
御坂が叫びながら打ち止めへ向かう。

そしてバージルも動いた。

マズイ―――

このままだと打ち止めをあの刀の衝撃波が襲う。

くっそォォォォォォォォ―――!!

キィン!!!とバージルの冷酷無比な刃が振られた。

御坂と打ち止めは何かに弾き飛ばされた。
その瞬間、さっきまでいた場所の地面がスパァアン!!!と割れた。

御坂「な…!!?」

すぐに打ち止めの姿を確認する。
やや強く地面に叩きつけられたものの、ケガは擦り傷程度だった。

そしてもう一人。白髪の少年方へ目をやった。

御坂「―――!!」

白髪の少年は胸から大量の鮮血を噴き上げていた。
そしてうつ伏せに地面へ倒れこんだ。

650: 2010/02/28(日) 17:30:49.22 ID:05pn8HxA0
血の海に横たわる一方通行を見て打ち止めが叫ぶ。

打ち止め「…いや…いやだ…!!!…いやだ…ってミサカは!!!…ミサカはぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

御坂は、一方通行へ向かおうとする打ち止めの体を押さえ込む。
そして震える手でダンテから預かった銃をバージルへ向け、
絶叫しながら引き金を引いた。

御坂「ぁああああああぁぁぁああああッ!!!!」
ドンドンドンッ!!と無我夢中で連射する。

が全て軽くいなされる。

バージル「その銃…」

バージルは御坂の持っている銃を見るや、ゆっくりと近付いてきた。

651: 2010/02/28(日) 17:33:16.88 ID:05pn8HxA0
御坂はコインを持っている左手をバージルへ向ける。

御坂「うあぁぁぁぁぁぁぁあああッ!!!」

音速の三倍で放たれたコインがバージルへ向かう。

だがその彼女の切り札も
バキィィン!!!と刀で弾かれた。

いや弾かれたというのは正確ではない。
厳密にいうと、刀でキャッチしたのである。

バージルの刀の先に、コインと先ほど放った銃弾が綺麗に並んで載っていた。
切っ先のコインと銃弾を少し見つめた後、バージルは刀を返してそれらを地面に落とした。

御坂「…そんな…」

バージルは何事も無かったようにそのまま歩いてくる。

662: 2010/02/28(日) 17:41:44.71 ID:05pn8HxA0
その時、地獄の底から響くような低い声が。

「…ン…じゃねェ…」

バージルが血溜りに突っ伏している一方通行へ目を向ける。

一方通行「…近付くンじゃねェ…」

彼は残った右手を地に突き、起き上がろうとする。

一方通行「近付くンじゃねェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!」

咆哮と共に少年の背中から黒い何かが噴出し、束となってバージルへ向かった。
バージルは瞬時に抜刀すると
バキィィィィンン!!!!とその黒い噴射物を弾いた。

バージル「…硬いな」

ジッとその黒い噴射物を見つめる。
バージルは切断しようとしたのだが、その黒い噴射物は予想以上に硬かったようだ。

バージル「…」

先とは比べ物にならない程にバージルの目が赤く輝きはじめる。
バージルの体が青く光り始める。

672: 2010/02/28(日) 17:54:32.10 ID:05pn8HxA0
一方通行「オ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!」

一方通行の背から生える黒い噴射物の塊が更に巨大化し、
腰を低くして構えているバージルへ突き進む。

その速度は音速の数十倍に達する。

一方通行の正真正銘の切り札、彼の最強の攻撃。

その攻撃が当たる直前。
バージルの体が青い太陽の様に輝き、体の形がかわる。

そして真の力を解き放った。

『ハァァッッ!!!!』

エコーのかかったバージルの掛け声が響く。

その次の瞬間、青白い光の線が何重にも走った。
黒い噴射物の塊は格子状に寸断された。

バージルはすぐに魔人化を解いため、その姿を一方通行達が見ることは無かった。。

一方通行の黒い羽はザァッと消滅する。
最早一方通行には何も残っていなかった。

それでもその目はバージルを睨み、
打ち止めと御坂の方へ行かせまいと仁王立ちしている。

678: 2010/02/28(日) 18:01:32.93 ID:05pn8HxA0
バージルは余韻に浸るかのようにゆっくりと納刀し、その少年の目を見つめる。
バージルは少し驚いていた。まさか人間の子供相手に魔人化させられるとは思ってもいなかった。

とはいえ、魔人化してかなり軽く振っただけなのだが。

バージル「心配するな」

バージル「あのガキ共を頃すつもりは無い」


彼らにはそんなことはわかるわけも無いだろうが、
バージルは彼女の持つ銃に興味を持っただけで、別段頃すつもりは無かった。


それ以前に、この戦いは先に一方通行が吹っかけたもので、バージルは別に戦うつもりはなかった。

バージル「おい」

御坂を見ながら言う。

バージル「その銃、どうした?」

御坂「…あ…な…!?」
御坂「し、知り合いに貸してもらったのよ!!」

バージル「…そうか」

そっけな言葉を返すとバージルは踵を返し、破壊された街の中へ消えて言った。

680: 2010/02/28(日) 18:03:56.73 ID:05pn8HxA0
御坂「…なんなのよ…一…体…」

一気に体の力が抜け、緊張の糸が切れる。
打ち止めがゆるんだ拘束を抜け出し、依然仁王立ちしている一方通行のもとへ駆け出す。

打ち止め「もう大丈夫だよ…ね?…ってミサカはミサカはなだめてみるの」

一方通行の前へ立ち彼の右手を取る。

一方通行「…ラスト…オーダー…」

途切れ途切れの声。

一方通行「クソ…ガキ…が…」

その言葉を最後に一方通行はドッと倒れた。

御坂「ちょっと!!!」

薄れていた意識を奮い起こし、彼女も一方通行のもとへ駆け寄る。

681: 2010/02/28(日) 18:06:59.85 ID:05pn8HxA0
一方通行は完全に意識を失っていた。

御坂「起きなさいよ!!!」

打ち止め「眠っちゃだめ!!眠っちゃだめだよ!!!ってミサカはミサカはぁぁぁぁ!!!」

御坂「起きろっつてんだよぉぉぉぉッ!!!!!」

その時二つの人影が突然目の前に現れた。

土御門、結標だ。

土御門「ッ!!!クソッタレ!!!!」

土御門はすぐに一方通行の傍へ駆け寄り、息や脈、傷を確かめる。

682: 2010/02/28(日) 18:08:50.78 ID:05pn8HxA0
御坂はそれぞれ彼らと面識があり、
なぜこの場にその二人が揃って現れたか甚だ疑問だがそんな突っ込みを入れてる場合じゃなかった。

御坂「ど、どうなのよ!!!?」

土御門「まだ生きてる!!!結標!!!」

結標「ええ!!!」

土御門は近くに落ちていた一方通行の左腕を拾い上げる。

土御門「ラストオーダー!!お前も来い!!」

打ち止め「うん!!!ってミサカはミサカは当たり前の返事をするのッ!!!」

御坂「どうなのよ!!助かるのコイツ!!?」

土御門「氏なせはしねえぜよ!!!こいつにはまだやってもらんなくちゃなんねえ事があるんぜよ!!!」

そして彼らは一方通行と打ち止めを連れて、現れた時と同じようにどこかへテレポートしていった。

684: 2010/02/28(日) 18:10:26.39 ID:05pn8HxA0
一人になった御坂は思いを巡らす。

なんで一方通行が己の身を挺してでも彼女達を守ろうとしたのか―――

御坂「いつかちゃんと訳を聞かせてもらうわよ」
御坂「もし氏んだら」

一人呟く。

御坂「一万回ぶっ頃してやる。一方通行」

しばらくして彼女のルームメイトが目の前に現れた。

白井「お姉さま!!!こんな所に!!!探しましたのよ!!!」
白井「妹さまはいずこへ!??」

御坂「遅いのよ黒子ォ!!!」

御坂はそのツインテールの頭を引っ叩いた。

―――

697: 2010/02/28(日) 18:34:13.52 ID:05pn8HxA0
飯食い終わってしまったから書き溜めしつつ復習。

ダンテ→イギリス清教が来るまでインデックス護衛。
バージル→目的は不明。魔帝軍とは一切関係なく、単独で行動中。
魔帝ムンドゥス→部下がインデックスを使って封印を解いてくれるのを待っている。
魔帝軍→インデックスを奪う為奮闘中。また敵対勢力へ妨害中。
ネロ→『ボルヴェルク』を頃すため学園都市入り。
神裂達→上条達のもとへ急行中。

702: 2010/02/28(日) 18:42:54.53 ID:05pn8HxA0
―――

上条「おい、さっきのは一体…!?」

1kmほど離れたところからだろうか、先ほど立て続けに巨大な粉塵があがり、地響きが起こったのである。
今はそれが嘘のように不気味な静寂。

ダンテ「…」

上条「!?も、もしかして神裂達が…?!」

ダンテ「…まあ…直接聞きな」

上条「?」

ダンテ「あっちだ」
ダンテが指差した方向に人影があった。

禁書「…!!」

上条「…なッ!!!?」

その30m程のところに立っている男を見て上条達は言葉を失った。
青いコートに銀髪、左手には長い日本刀。
そしてその男の顔はダンテと瓜二つだった。

上条「な…えッ…?」

上条は傍らにいる男と、正面にいる男の顔を交互に見る。状況が全くわからない。

704: 2010/02/28(日) 18:44:48.08 ID:05pn8HxA0
ダンテ「…よう」

バージル「…」

ダンテ「久しぶりじゃねえか」

バージル「…そうだな」

ダンテ「元気そうでなによりだ」

バージル「…」

ダンテ「復活した気分はどうだ?」

バージル「悪くは無い」

上条はダンテの横顔を見てふと気がつく。
そのいつもふざけていた顔が僅かに歪んでいた。
嬉しさと悲しさが複雑に混じった感情がかすかに見える。

上条「(…?)」

706: 2010/02/28(日) 18:46:17.38 ID:05pn8HxA0
ダンテ「で?何しに来た?」

バージル「…」

ダンテ「あれか?俺のこと怒ってるのか?」
ダンテ「なんなら謝るぜ。」

バージル「…」

ダンテ「どうやら仲直りに来た訳でもなさそうだな」


バージル「失せろ」

バージル「禁書目録を渡せ」


ビクッとインデックスが反応し、彼女をかばうように上条が身構える。



ダンテ「…へえ…お前もか…」

707: 2010/02/28(日) 18:47:40.15 ID:05pn8HxA0
ダンテ「で、禁書目録で何するんだ?」

バージル「貴様と戦うつもりはない。失せろ」

ダンテ「おいおい訳ぐらい教えてくれたっていいだろ」

バージル「三度は言わない」

ダンテ「…断る」

バージル「…そうか…」



数十秒間の沈黙。

ダンテが背中の剣へ手をかけながら、
上条とインデックスへ向けて言う。

ダンテ「おい。ここから動くな。」

次の瞬間、二人の史上最強の魔剣士が激突した。

712: 2010/02/28(日) 18:51:45.35 ID:05pn8HxA0
神速で繰り出される刃と刃の衝突音がまるでマシンガンのように続く。

その衝撃波で地面が瞬く間に寸断され粉砕される。

周囲のビルがその嵐に耐えられずに爆散し倒壊する。
その瓦礫の雨が地に着く前にまた新たな衝撃波で弾き飛ばされる。

車ほどの、崩れたビルのパーツが辺りを舞う。

上条とインデックスは一歩も動くことすらできずにその場でただ身を丸めていた。
あたりに巨大な瓦礫の塊が降り注ぐものの、彼らの上には落ちてこなかった。

ダンテが戦いながら、銃で上条達へ向かう瓦礫を撃ち落していたからである。

オァァッ!!
ハァァッ!!!
セイヤァッ!!!!

二人の魔剣士の掛け声が交互に聞こえる。

714: 2010/02/28(日) 18:55:25.91 ID:05pn8HxA0
上条達にはそれは『戦い』には見えなかった。

赤と青の光が残像を引きながらまるでダンスをしているかのように交わり、絡まり、衝突している。
そのたびに眩い光を伴った爆風が周囲を破壊する。

上条は超人達の戦いに何度も身を投じたことがある。
聖人同士の戦いも目の当たりにしたことがある。
だがこの『破壊の嵐』は完全に次元が違った。

上条は身をうずめ、傍らの小さな温もりを抱きしめながら見てるしかなかった。

小さき人間が火山の大噴火を成す統べなくただただ眺めている様な状態だった。

突如、一際大きな衝撃波が発生し、
ゴバァァァァ!!!っと巨大なクレーターを作った。

ようやく上条はその赤と青の光の正体を捉える。

その爆心地で二人の魔剣士が鍔迫り合いをしていた。
ヂリリリリリリリリ!!!っと刃と刃が交わる点から巨大な火花が散る。

オァァッ!!!

掛け声同時に
バギィン!!っと二人の魔剣士がお互いを弾き飛ばした。

716: 2010/02/28(日) 18:57:24.79 ID:05pn8HxA0
ダンテは空中で体勢を立て直し、上条達から5m程の所に着地する。
ダンッ!!とアスファルトが衝撃で割れる。

上条「ダ、ダンテ!!」

見ると、ダンテの頬が大きく裂けて赤い液体が溢れている。
コートの袖からも赤い液体が滴っている。

ダンテ「あん?」

上条「だ、大丈夫なのか!!?」
上条「き、傷は?!」

ダンテ「ああ、それなら心配すんな」

そう言っている間にダンテの頬の傷がみるみる塞がっていく。

718: 2010/02/28(日) 18:58:56.92 ID:05pn8HxA0
ダンテ「おい!バージル!!」

お互いが弾かれ後ろへ跳んだため、二人の魔剣士の距離は100m程ある。

ダンテ「ハッハァ!!すげえじゃねえか!前よりだいぶ強くなってるな!!」

バージルは歩きながらゆっくり近づいてくる。

バージル「当然だ。貴様が人間界で呆けている間、俺はずっと戦い続けていた」

ダンテ「そう言うなよ。こっちでも色々あったんだぜ」

バージル「知っている。全て、な。」

ダンテ「…『閻魔刀』の『前の所持者』のこともか?」

バージル「ああ」

ダンテ「…へえ」

719: 2010/02/28(日) 18:59:57.49 ID:05pn8HxA0
ダンテが剣を地面に突き立て、駒のように回転させている。
チリリリン、チリリリン、とアスファルトと剣先がこすれる音。

ダンテ「で、次の出し物は何かな?そのまま第二ラウンドか?」

バージル「…」

バージル「いや」

ダンテ「へぇ。じゃあ何すんだ?ポーカーでもやるか?つまんねえのは願い下げだぜ」

バージルが鞘から刀を抜く。
それに応じてダンテも肩へ剣を乗せる。

バージル「警告はした」

ダンテ「ああ聞いたぜ」

バージル「…」

721: 2010/02/28(日) 19:02:00.37 ID:05pn8HxA0
バージルはいきなり自分の腕へ刀を突き刺した。
ビチャ!!っと鮮血が足元の地面へ飛び散る。

ダンテ「おいおい。とうとう狂っちまったか?」

バージルは答えずに刀を腕から引き抜き、
次は足元の血溜りへ刀を突き立てた。
その瞬間血溜りが沸騰したように蠢いた。


ダンテ「おいバージル…そいつぁ…」
ダンテの表情から余裕が消える。

禁書「まさか…ダンテ!!」

バージルの狙いがわかったインデックスも叫ぶ。

ダンテ「最高に―――」

ダンテ「つまんねえじゃねえか―――」

その瞬間ダンテの足元の地面に
ズアァァァ!!と黒い円が浮かび上がった。

722: 2010/02/28(日) 19:03:41.29 ID:05pn8HxA0
黒い円の直径は5m程。
その中心にダンテが立っていた。

黒い円から無数の赤い半透明のツタのようなものが飛び出し、
あっという間にダンテの体へ巻きつく。

上条「ダンテさん!!!」

ダンテは振りほどこうと身をよじるが、抜け出せない。
知っている。
ダンテは過去に何度もこれに道を塞がれた経験がある。
封印術の一種。

空間ごと断絶させるため、ダンテでさえなかなか突破できない。

だが使用には莫大な力が必要なため、
大悪魔でさえ壁や扉にしかかけれない術だ。

そんな術をバージルは標的へ直に、このダンテに直接かけたのである。

ダンテ「あー、くそったれ」

バージル「隙だらけだ。相変わらず大雑把過ぎる。少し学べ」

ダンテ「ハッ!!その俺に何回負けたか覚えてんのかお前は?」

赤い半透明のツタがどんどん巻きついていく。

724: 2010/02/28(日) 19:08:16.65 ID:05pn8HxA0
※赤いツタ=DMCで強制戦闘の時に扉とか塞いで近付くと手が生えてくるやつ

上条「ダンテさん!!大丈夫か!!」
上条「おいインデックス!!あれ何なんだ!?」

禁書「ふ、封印術の一種だと思うんだよ!!」

上条「封印術!?魔術か!?なら俺の右手で壊せるんだな!!?」

禁書「た、たぶんできるよ!!」

上条「なら―――!!」

っと上条がダンテの下へ駆け出そうとしたとき。
ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!と目の前に何かが飛び降りてきた。

上条「…ッ!!!」

それは『ゴートリング』。
あの御坂ですら一体倒すのが限界だった大悪魔。
それが三体、上条の前に立ちふさがっていた。

ドンドンドンドン!!っと更に周囲に何体も現れ、
そしてどこからともなくあのトカゲの悪魔も大量に集ってきた。

728: 2010/02/28(日) 19:11:03.76 ID:05pn8HxA0
悪魔達が一斉にバージルへ飛び掛る。

だがキンッ!!!という音と同時にその悪魔達の体がバラバラになる。
そして浅葱色の剣が十数本、バージルの周りに現れる。

『幻影剣』

彼の魔力によって精製された剣。

その剣はそれぞれが意思があるかのように飛び交い、周囲の魔帝軍の悪魔達を次々と切断していく。

上条「くそ…!!!」

上条の前にいる悪魔がじわりじわりと近づいてくる。
インデックスが近くにいるせいか、どうやら破壊的な手段はあまり取れないらしい。

上条が一人でダンテ向かって特攻すれば、インデックスから離れた彼を悪魔達は一瞬でミンチにするだろう。
だがインデックスを担いでこの悪魔達の壁を突破するわけにもいかない。

ダンテ「おい!!坊や!!」

赤い半透明のツタに埋もれたダンテから声がする。
もう体のほとんどが覆われている。

ダンテ「アホな事考えんな!おチビちゃんを連れてさっさと行け!」

731: 2010/02/28(日) 19:18:35.89 ID:05pn8HxA0
上条「…で、でも…!」

ダンテ「イギリス清教が近くに来てる!さっさと合流しろ!」

上条「わ、わかった!!」

バッとインデックスを抱き上げ、ダンテと反対の方へ駆け出した。

それを周囲の悪魔達が追―――

―――おうとしたが、耳をつんざく甲高い音と共に一瞬でバラバラになる。

上条「うぉぉぉぉぉ!!!」

寸断された悪魔のパーツがドサドサと落ちて来る。
悪魔達の血が雨のように降り注ぐ。

上条は無我夢中でその場を離れた。

732: 2010/02/28(日) 19:21:15.48 ID:05pn8HxA0
ダンテ「追わねえのか?」
ダンテ「魔帝軍に取られても知らねえぜ」

バージル「奪い返せば良い」

ダンテ「余裕だな。さっさといかねえとあのガキ達も仲間と合流しちまうぜ?」

バージル「それがどうした?」

ダンテ「眼中にねえってか」

バージル「…」

ダンテ「一つ忠告しといてやる」

ズォア!!っと、ダンテの足元から赤い半透明の巨大な手が現れた。
ダンテを魔界の深淵に引きずり込む為に。

ダンテ「甘く見ねえ方がいい」

734: 2010/02/28(日) 19:24:32.32 ID:05pn8HxA0


その巨大な手はツタに埋もれたダンテを鷲掴みにし、

ダンテ「覚えとけ」

地面の黒い円の中へ引きずり込みはじめた。
ダンテはバージルへ向けて右手を突き出し、
中指を立てる。

ダンテ「人間は強いぜ、兄貴」

ズズズズ!!っとツタに絡まれた男は中指を立てたまま沈んでいった。
そして黒い円も完全に消え、地面は破壊されたアスファルトに戻った。
最早その言葉を向ける相手はいないが、彼はバージルは口を開いた。

バージル「何をいまさら。それくらい―――」

バージルの脳裏に一人の女性の姿が浮かぶ。
かつて幼い頃の彼とその弟を身を挺して守り、命を落とした人間の女性。

バージル「知ってる」

彼は上条達が逃げた方向へゆっくりと歩いていった。

737: 2010/02/28(日) 19:30:08.16 ID:05pn8HxA0
上条は走る。
胸が裂けそうなくらいに心臓が暴れている。

上条「ハァッ…ハァッ…」

辺りを見回すも何も動く気配が無い。

禁書「とうま…」

上条「大丈夫だ…大丈夫だインデックス…何も心配するな…」

どこに向かえばいいか分からない。
インデックスを抱いたまま、ただ走る。

上条「ステイルッ!!!神裂ッ!!!」

来ているであろう友人の名を呼ぶも、
その声は無人の街でむなしく反響する。

上条「くそッ!!どこにいる!?」

その時、ジリッと背中が焼けるような感覚。

上条「…くそ…」

見なくてもわかる。追いつかれた。

738: 2010/02/28(日) 19:32:56.43 ID:05pn8HxA0
インデックスを降ろし、手でかばいながらゆっくりと振り向く。

20m程の所に青いコートの男。
ゆっくりと歩きながら近づいてくる。

バージル「諦めろ」

上条「ふざけんじゃねえ!!!」

バージルは上条の目を見つめる。
『命に代えてでも守る』という強い意志がこもった瞳。

この目を見るのは今日二度目だ。

バージル「どうするつもりだ?」

上条「…ッ?」

上条は拍子抜けした。覚悟を決めていただけにだ。
てっきりすぐに切りかかってくると思っていたのである。

740: 2010/02/28(日) 19:39:15.49 ID:05pn8HxA0
時間稼ぎできればイギリス清教の皆が来てくれるかもしれない。
そう思い、上条はバージルの問いかけに答える。

上条「イ、インデックスは渡さねえ!!」

上条「魔帝軍にも!!」

上条「てめえにもな!!!」

バージル「そうか」

その瞬間、
ドンッ!!と強烈な衝撃が上条の体全身を襲った。

上条「がぁぁぁぁぁぁ!!」

何が起こったのかわからない。
後ろへ大きく吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。



とうまああああ!!!―――

742: 2010/02/28(日) 19:40:56.58 ID:05pn8HxA0
バージルはインデックスの隣に立って、腕を掴んでいた。
インデックスは吹き飛ばされた上条のもとへ向かおうと、その手をどうにかして振りほどこうと暴れている。

上条「てめぇぇぇぇ!!!」

上条「インデックスを離せ!!離せっつてんだよぉぉぉお!!!」
痛みを無視して跳ね起きバージルへ突進する。

が、次の瞬間上条の左肩を何かが貫いた。

上条「ごぁぁぁッ!!!」

そのまま後ろに飛ばされ、ビルの壁面に叩きつけられる。
だが地面には落ちなかった。左肩に突き刺さった何かで磔にされたのである。

禁書「とうまぁああああ!!!」

ミシッ!!っと解放された体重がその左肩に集中する。

上条「がぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛ッ!!!」

上条は左肩を貫いているそれを見た。浅葱色の、ガラスのような剣。

咄嗟に右腕をかざすと、その剣は簡単に砕け散った。
ドザッ!!と上条は地に落ちる。

746: 2010/02/28(日) 19:44:53.00 ID:05pn8HxA0
バージル「…その右手」

ぱっくり開いた左肩からおびただしい量の血が溢れている。意識が朦朧としてくる。

上条「おぁ…あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

それでも上条は立ち上がり、再びバージルへ向かった。

だがドンッ!!と猛烈な衝撃が再び胸から腹にかけて襲う。
ベキベキッ!!と体の中から湿った不気味な音。

上条「ご…ぁ…」

上条はその場に崩れ落ちる。倒れる中、上条の耳に少女の絶叫が聞こえた。

禁書「いやぁあああああ!!!とうまぁあああああ!!!!」

上条は地面に仰向けに倒れた。
胴体は真っ赤に染まり、胸から皮膚とシャツを突き抜け2本の折れた肋骨が飛び出していた。

最早上条にインデックスを連れて逃げる力が無いと確信したバージルはインデックスの手を離した。

禁書「とうまぁ!!とうまぁ!!」

インデックスはすぐに倒れている上条へ駆け寄ると、上条の胸や腹の傷を塞ごうと手を押さえつける。
だがその小さな手をむなしくすりぬけた大量の血が彼女の修道服を真っ赤に染め上げていった。

禁書「とうま…。とうま…。」
上条にはまだ息がある。ヒューッヒューッと呼吸音がしている。

754: 2010/02/28(日) 19:52:20.21 ID:05pn8HxA0
禁書「もうやめてぇ!!…お願い!!!…なんでもするからぁぁぁ!!!」
小さな少女が泣きながら叫ぶ。

バージル「…」

禁書「お願い…殺さないで…」

バージルはその氏にかけの少年と傍らの少女の姿を見つめる。

その光景が再び過去の記憶と重なる。
氏にかけの母に寄り添う、二人の幼い銀髪の少年。

忘れたと思っていた感情。
より人間の血が濃いネロと魂が繋がっているせいなのか、その感情が僅かにこみ上げてくる。

バージルは鼻で軽く笑った。
少し滑稽だった。

己の心がこんな感情に揺さぶられるなど。
だが別段それ程悪い気もしない。

上条「イン……デ…」

かすかに喋った。
虚ろな目が彼女の顔を見つめている。

禁書「とうま…喋っちゃだめ…」

758: 2010/02/28(日) 19:56:00.74 ID:05pn8HxA0
バージルはぬらりと刀を抜いた。

禁書「…!!」
インデックスが上条を守ろうと覆いかぶさる。
バージルは刀で地面のアスファルトに何やら文字のようなものを刻み始めた。

バージル「これで我慢しろ」

禁書「…あ…」
インデックスはその文字の意味がわかった。

バージル「行くぞ」

禁書「とうま…」
インデックスは上条を見つめる。

バージル「さっさとしろ。コレを消すぞ。」
文字が刻まれた地面を鞘で軽く叩く。

禁書「…!!わかったんだよ…」

上条は薄れ行く意識の中、遠ざかる青いコートの男と、
赤と白のまだら模様の修道服の少女を見ていた。


―――

762: 2010/02/28(日) 19:58:10.58 ID:05pn8HxA0
―――

神裂「か、上条当麻ッ―――!!??」

神裂達が彼を見つけたのはそのわずか数分後だった。
五和の悲鳴が響く。

天草式の医療メンバーが手当てにあたる。

神裂「上条当麻ッ!!聞こえますか!!」

ステイル「勝手に氏ぬのは許さんぞ!!!おい!!」

五和「離してください!!!離して!!!離せッつってんだよぉおおお!!!」
パニックに陥った五和は無駄ということもわすれて回復魔術を施そうとし、他の天草式メンバーに取り押さえられている。

765: 2010/02/28(日) 20:01:00.29 ID:05pn8HxA0
「……」
手当てしていた天草式の医療メンバーが顔を上げる

ステイル「…何やってる!!」

「…亡くなりました」

―――

完全な沈黙が一瞬辺りを包んだ。
その後方々から言葉にならない声が漏れる。

氏ん…だ…?
そんな…

ステイルは静かに立ち上がり、その輪から離れた。

輪の中からは
…ふざけるな!!
俺がやる!!
諦めるな…まだだ!いける!!
と声が聞こえる。

768: 2010/02/28(日) 20:04:14.49 ID:05pn8HxA0
ステイル「…」

手が震えている。
上条当麻のことは別段好きじゃない。
むしろ気に入らない。

だが共に何度も氏線をくぐり、お互いを助け合った。
戦友という言葉がしっくりくる。
心にぽっかり穴が空いた気がする。

ステイルは14才ながら、壮絶な人生を送ってきた。
多くの頃し合いに参加し、数々の同胞が斃れていった。

それ故、この喪失感も何度も味わった。だがやはりいつまで経っても慣れない。

ステイル「…全く…またあの子に嫌われそうだよ…僕…」

上条を慕っていた少女の顔を思い出す。
その少女の笑顔が守れるならばなんだってする。

だが、これを知った少女の顔からは笑顔が消えるだろう。

770: 2010/02/28(日) 20:09:33.22 ID:05pn8HxA0
ステイル「(…トリッシュに報告するか…)」
だが今は任務がある。悔やみ悲しむ暇は無い。トリッシュから渡された黒い石を握り、彼女の名前を呼ぶ。

トリッシュ『何?』

脳内に直接声が響いてきた。

ステイル「禁書目録が奪われた」

トリッシュ『相手の姿を見た者はいる?』
ステイルはその言葉になぜか引っかかった。

ステイル「いるが。どうした?」

トリッシュ『話を聞きたいの。ちょっとした確認よ』

ステイル「それは、『誰』が禁書目録を奪ったかが知りたいという意味か?」

なぜインデックスをさらった人物を確認する必要がある?さらうとすれば魔帝軍一つしかないのではないか?
トリッシュは第三勢力がいると考えているのか?

トリッシュ『そう』

ステイル「隠している事があるだろう?」

トリッシュ『話すわ。その前にその目撃者とかわって』

ステイル「生憎だが。直接聞きに行けばいい。彼はかわれないよ」
ステイル「氏んだのだから」

777: 2010/02/28(日) 20:14:58.26 ID:05pn8HxA0
トリッシュ『…わかったわ。行くわよ』

ステイル「…は?」
彼女の声調を聞く限りじゃ冗談に聞こえない。ステイルは皮肉のつもりで喋ったのだが。
その時、目の前の地面に黒い円が浮かび上がった。

さっき腐るほど見た光景だ。悪魔が現れる穴だ。

ステイル「(まずい…!!!)」

他の者達は気付いていない。
彼が叫ぼうとした時、その黒い円の中からトリッシュが現れた。

ステイル「へ?」

トリッシュ「で、どこ?」

ステイル「…向こうだ」

トリッシュ「…?」

その時、トリッシュの目が少し離れた地面に止まった。
そこには魔界の字で文が刻まれていた。

トリッシュ「…へえ」

782: 2010/02/28(日) 20:20:45.93 ID:05pn8HxA0
トリッシュは上条の遺体を眺めていた。左肩の傷口を見る。

トリッシュ「(これは…幻影剣ね…相手はやっぱりバージルか…)」
トリッシュ「この子が今の禁書目録の管理者って訳ね。確か幻想頃しっていう力を持つ手があるって聞いてたけど、どっち?」

神裂「…右手です…」

トリッシュ「こっちね」
すっと上条の右手をとってみる。まだ暖かい。トリッシュは試しに電気を流してみる。
周りの神裂とステイル以外の者は知らないが、彼女の正体は実は悪魔だ。
そして彼女は電気を操ることができる。

トリッシュ「(なるほどね…)」
彼女の流した電気が打ち消された。右手はまだ生きている。

トリッシュ「(まだ完全には魂が抜け切ってないわね)」
トリッシュ「なるほどね。ちょっと待っててね」

そう言うと彼女はそこから少し離れた。きょとんとしている皆を尻目に彼女はその場に魔方陣を描き始めた。

そしてある物を召喚した。
ヴン!!と魔方陣が輝き、中央にゴドンっと何かが現れた。

かなりの重さがあるのか、アスファルトにヒビが入っている。
それは銀色の篭手と脛当て。

魔具『ベオウルフ』。

トリッシュ「何ボケッとしてんのよ。そっちにこれ運ぶの手伝いなさい」

786: 2010/02/28(日) 20:24:00.73 ID:05pn8HxA0
「こ、これどうすれば?!」
『ベオウルフ』を運ぶ天草式の者たちが彼女へ聞く。

トリッシュ「この子の左手と両足に装着して」
そういうとトリッシュは傷にお構いなしに少年の心臓がある部分にナイフを突き立てた。

ステイル「な、何をしてるんだ!?」

トリッシュ「この子の体に悪魔を『流し込む』の」

少年の右手が邪魔して、魔術はうまく動かない。
だが実際に生命体として存在している悪魔なら。
悪魔の力を、魂を直接移植すれば。

地面には只一言こう刻まれていた。

『悪魔に転生させろ』と。


―――

792: 2010/02/28(日) 20:25:59.98 ID:05pn8HxA0
―――


「(ここは―――?)」

上条はどこかの荒野に立っていた。
草木が一切無く、灰色の砂と瓦礫のみ。
空は真っ黒。

「(ああ、そういえば…)」

記憶を探る。

「(俺氏んだのか…)」

「(ここは…天国じゃあなさそうだな…)」

「(悪魔に殺されたんだもんなあ…)」

「(インデックス…)」

「(すまん…)」

その時、後ろから急に激痛が襲ってきた。

803: 2010/02/28(日) 20:29:47.56 ID:05pn8HxA0
「(ぐぉおお!!!)」
「(なんだ?!体がうごかねえ!!)」

「スパーダァアアア!!!」

いきなり口が勝手に開き叫んだ。

「(なんだ!?体が勝手に…スパーダ?)」

体が後ろを向く。
そこには全身が黒い悪魔が立っていた。
右手には巨大な赤い剣。

「貴様!我らを!我が主を裏切るのか!!?」

上条の体が勝手にその黒い悪魔へ飛び掛っていく。

「(おい!どうなってるんだこれ!)」

左目に激痛が走る。

「『ぐぁああああああ!!!!』」

相手の悪魔に左目を切られたのである。
上条の叫びと体の叫びが重なる。視野の左側が真っ黒になる。

上条が見ているその光景は『ベオウルフ』と言う名の大悪魔の記憶。

806: 2010/02/28(日) 20:34:33.53 ID:05pn8HxA0
その後も彼は長い長い記憶を見続けた。

復讐する為、己の誇りを守る為に幾千もの時間をかけ力を蓄えるベオウルフ。

だがその全てを捧げた力さえ、二人の怪物に簡単に砕かれる。

ダンテには右目を切られ、バージルによって頭部を切断され、そして武器に姿を変え使役される。

バージルと融合しダンテと戦い、
次はダンテと融合しバージルと戦う。

上条はベオウルフと共にこの兄弟と融合し、彼らの記憶の奥底を垣間見る。

この兄弟を庇って最愛の母が傷を追い、
そして目の前で息絶えた。

絶望の底。

兄は己の弱さを恨み憎み、全てを捨てて力を求めた。
弟は道を失い目的も無く暴力と殺戮の世界へ飛び込んだ。

811: 2010/02/28(日) 20:37:52.95 ID:05pn8HxA0
そして上条は彼らの魂の叫びを聞いた。

兄と弟が刃を交えた時。
弟は己の進むべく道を見出した。
そしてその道は―――

兄とは決して共に歩めない道―――

弟の叫び―――

『俺達がスパーダの息子なら―――』

『受け継ぐべきなのは力なんかじゃない!』

『もっと大切な―――誇り高き魂だ!』

『その魂が叫んでる』

『あんたを止めろってな!』


そして兄の叫び―――

『悪いが俺の魂はこう言っている』

『―――もっと力を!』


―――

816: 2010/02/28(日) 20:42:16.18 ID:05pn8HxA0
しばらくして視界が急に眩しくなった。
何も見えない。

「(誰だ…?)」

まわりから声が聞こえる。

目を開く。
それと同時に辺りが急に騒がしくなった。
視界が正常に戻っていく。
何かが目の前を覆っている。

「(…?)」

視界がはっきりしてそれの正体がわかった。


上条「い、五和!!?」


―――

817: 2010/02/28(日) 20:45:24.33 ID:05pn8HxA0
上条の左手と両足へ『ベオウルフ』を装着し終えると、トリッシュは突き立てていたナイフを一気に引き抜いた。
それと同時に上条の体が跳ねる。

トリッシュ「押さえて!!」

実はこの方法は確実ではない。一か八かの賭けだ。『ベオウルフ』が彼を認めなかったら体が爆散する。
また莫大な力に乗っ取られ、理性を無くした怪物になる可能性もある。

トリッシュ「さあ…来るのよ」

体の跳ねがやむ。
トリッシュ「呼んで!彼を呼んで!!」

皆が声を荒げ、上条の名を叫ぶ。
すると上条の目が開いた。
その目を見て皆息を呑んだ。赤い光が瞳に宿っている。

トリッシュ「…」
不足の事態に備え、彼女は腰の銃へ手をかける。
するといきなり五和が飛び込み、上条の上へ覆いかぶさった。

トリッシュ「どきなさい」

五和「嫌です!!私は信じてます!!」
他の天草式の物が五和を引き剥がそうとした時であった。

「い、五和!!?」
それと同時に五和の言葉にならない声が辺りに響き渡った。
先ほどとは違う、喜びと安心感にあふれた声が。

818: 2010/02/28(日) 20:50:33.01 ID:05pn8HxA0
五和「ふぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!よ゛がっだ!!よ゛がっだでずぅう゛う゛う゛う゛!!」

上条「お、おいいッ…?!」

神裂「上条当麻!!上条当麻!!」

上条「か、神裂ィッ!!?」

ステイル「生き返ったか…やはり君は何から何までふざけているな」

上条「生き返った…てことはやっぱり俺は一回氏んだのか?」

トリッシュ「そうよ」
上条はその女性を見た。上条自身は直に会った事は無い。だが記憶の中で会った。

上条「トリッシュ…さんですよね?」

トリッシュ「ああ、『それ』の記憶見たのね」

上条「…?」
トリッシュの指した方向を追うと、左手に大きな銀色の篭手が。両足にも脛当てが装着されていた。

上条「…そうか…『ベオウルフ』…か…」

トリッシュ「仲良くなったみたいで安心したわ。ほら、これ」
そう言いながら皮製の右手用の手袋を差し出してきた。

トリッシュ「あなたの右手が効くかどうかわからないけど、万が一の為よ。『ベオウルフ』を素手で触らないでね」
トリッシュ「実験するわけにもいかないし。それが今のあなたの生命維持装置だから」

820: 2010/02/28(日) 20:52:26.54 ID:05pn8HxA0
ふと思い出す。
上条「…インデックス!!!」

周りの者達もピタッと静かになった。

上条「ステイル…皆…すまん…」

ステイル「…」

トリッシュ「で、その禁書目録が奪われた時の状況を説明してくれないかしら?」

上条「ああ…」
上条はこと細かく説明した。

神裂「ダンテさんが…ですか…」

トリッシュ「どうせ余裕かましてたところをやらてたんでしょ」

ステイル「でその相手は魔帝軍ではないんだな?」

上条「ああ…それがな…」
上条はあの男を知っている。記憶の夢の中で見た。ちらっとトリッシュの顔を見る。

トリッシュ「どうぞ」
その視線の意味を理解したのか上条に言う。

上条「ダンテの…兄だ…」

829: 2010/02/28(日) 20:54:16.65 ID:05pn8HxA0
神裂「兄…ですか?」

上条「ああ。ダンテと互角以上に強い」

ステイル「くそ…トリッシュ…これを隠していたのか?」

トリッシュ「ごめんなさいね。学園都市に来たのはついさっき知ったばっかりだし、
トリッシュ「まさか禁書目録を狙っていたとは思っていなかったわ」

神裂「それで、目的は何なのでしょう?魔帝軍と敵対しているのならば、ムンドゥスの復活が目的では無いでしょうし」

トリッシュ「その点については、あなたの方が詳しいんじゃない?幻想頃しの坊や」

上条「…確かに俺はあいつの記憶を見たし、考え方も知ってるけど、10年以上前のだぞ?」

ステイル「何も無いよりはマシだろう」

831: 2010/02/28(日) 20:55:18.73 ID:05pn8HxA0
上条「バージルは力こそが全て、力を得るためなら何だってやるし、何だって犠牲にするってやつだ」

ステイル「つまり、インデックスを使って何かの力を得ると?」

トリッシュ「フォルトゥナの術式には『魔剣精製』があるわ。フォルトゥナでは結局魔力不足で使えなかった代物だけどね」
トリッシュ「まあバージルなら余裕でしょうね」

神裂「上条当麻。どうなのです?その術式を狙いそうですか?」

上条「可能性はあるな…でも確実じゃあないと思う」

トリッシュ「ま、ダンテがいない以上、できることは限られてるわ」
トリッシュ「確実なのは魔帝軍の矛先は全てバージルに向かう」
トリッシュ「その衝突のどさくさに紛れてあなた達が禁書目録を回収、といったところね」

ステイル「『あなた達』?」

トリッシュ「私にはやることがあるの」

837: 2010/02/28(日) 20:58:14.07 ID:05pn8HxA0
ステイル「まだ何か隠してないか?」

トリッシュ「別に。これは私用よ」

ステイル「…」

トリッシュ「心配しないで。途中までついて行ってあげるし、なんかあったら呼んで。いつでも助けてあげるから」

上条「ダンテさん、どうにかできないのか?あの人が居たらかなり有利になるのに」

トリッシュ「さあて、どうしましょうね。」

ステイル「召喚とかはできないのか?」

トリッシュ「あいつを召喚できるくらいの力あったら苦労しないわよ」

840: 2010/02/28(日) 20:59:35.64 ID:05pn8HxA0
上条「そういえば…!インデックスが俺の右手であの封印を壊せるって!」

ステイル「本当か?!」

上条「ああ!!こうしてられねえ!はやく―――」

トリッシュ「無駄よ。話を聞く限りじゃ、その封印術は少しの間ダンテの動きを封じる為のものよ。」
トリッシュ「その間に魔界の深淵に落とされちゃったみたいね」

トリッシュ「拘束自体はもう解けてるだろうけど、魔界にいる彼を探し出してる時間はないわよ」

上条「くそ…」

トリッシュ「とりあえず、あなた達は準備しなさい」
トリッシュ「魔帝軍も体勢を整える為にすこし時間がいるでしょうし」

ステイル「僕達もその間に準備を整える か」

トリッシュ「そう」
トリッシュ「赤毛君もまだ『イフリート』の調整終わってないしね」

849: 2010/02/28(日) 21:06:16.82 ID:05pn8HxA0
トリッシュが敵に探知されない為の悪魔祓いの術を辺りに敷き、
各々がそれぞれ傷の手当や武器の点検を行う。

上条はビルの瓦礫の上に座っていた。

上条「(冷たい…な。一回氏んでる…か…)」
自分の体を触る。ヒンヤリしていて温もりがない。

トリッシュ曰く、今の上条は半人半魔らしい。
ベオウルフはかなり高位の大悪魔である為、力を大幅にセーブさせているとの事だ。

上条の体に流れている力は本来の10%にも満たないとか。
だがそれでも10mは軽く跳躍できるし、自動車くらいなら持ち上げられるとのことだった。

上条「(ははは…上条さんは人間をやめましたってか…)」

いつもと違う感覚もある。
目で見てなくとも、周囲にいる天草式の皆の動向が手にとるように分かる。

胸と腹の傷も10分もしないうちに綺麗に治っていた。

上条「(これなら…皆と一緒に戦えるかもな…)」

だがやはり右手の傷だけは治っていない。
つまり右手だけがいまだ『人間』なのであろう。

852: 2010/02/28(日) 21:09:46.50 ID:05pn8HxA0
トリッシュ「で、どう?調整終わった?」

ステイル「一応ね。」

トリッシュ「そう…まあ自滅しないよう程ほどにね」

ステイル「あの子を救う為なら何回でも自滅してやるさ」

トリッシュ「あらお熱いこと」

ステイル「ふん。で、そっちは?ダンテを戻す件は?」

トリッシュ「あ~からっきしダメ。ダンテが自力で這い出すのを待つしかないわ」


ステイル「自力…て可能なのか?」

トリッシュ「あいつならなんとかなるわよ。ま、どうにもならない場合は私が手をうつわ」」


―――

857: 2010/02/28(日) 21:12:42.60 ID:05pn8HxA0
―――

窓の無いビル

アレイスター「どうなのだ?」

『処置は一通り完了したよ。手術も成功した。容態も安定している。』

アレイスター「そうか。なによりだ」

『あの時の君に比べたらまだマシだよ』

アレイスター「それで―――」

『ああ―――君のその作戦に彼は耐えられないかもしれない』

859: 2010/02/28(日) 21:14:30.84 ID:05pn8HxA0
アレイスター「…君にしては曖昧だな」

『これは未知の領域だ。データも不足すぎる。僕の予想じゃ、成功する確率は五分五分だ』

『そして例え成功しても、その後に命を落とす可能性も高い。』

『一人の医師として言わせてもらおう―――無理だ』

アレイスター「そうか」

『ま、そう言ったところで君は止めないだろうし、僕にそれを止める権限も無い』

アレイスター「…」

『じゃあ』ブツッ

アレイスター「…」

―――

860: 2010/02/28(日) 21:15:57.40 ID:05pn8HxA0
―――

一方通行はとある病室で目が覚める

一方通行「ンあ…?」
一方通行「ッ…!!!!」

鈍痛が体中を這い回った。

土御門「起きたかにゃ~?」

一方通行「テメェか…」

土御門「本来は絶対安静なんだがにゃ、」
土御門「状況がアレなもんだから無理やり起きてもらったにゃ~」

一方通行は自分の体を見る。
得体の知れない医療機器が部屋中にひしめいており、大量のコードや管が彼の体に繋がっていた。

そして彼の右手を握ったまま、打ち止めがベッドの端に突っ伏していた。

861: 2010/02/28(日) 21:16:58.13 ID:05pn8HxA0
土御門「ラストオーダー、泣き疲れて寝ちゃったみたいだぜよ」

一方通行「…うぜェガキだ…」

土御門「…ま、お前もいつも通りの歪んだ愛情表現で良かったにゃ」

一方通行「氏ね」

切り落とされた左手はしっかりと繋がったようだ。指先の反応はかなり鈍いがしっかりと動く。

切断された部分はギプスのようなもので覆われている為見えない。
胸にはなにやら防弾チョッキのような物が着せられていた。

先の事を改めて思い出す。

あの銀髪の男。

さすがの一方通行でも己の事を世界最強だとは思っていなかったし、
自分よりも強い存在がいくつかあってもおかしく無いと考えてはいた。

だがあれ程の力の差があったとは。圧倒的な、絶対的な壁。

863: 2010/02/28(日) 21:19:08.25 ID:05pn8HxA0
土御門「いや~氏ななくて良かったにゃ~」

一方通行「…」

土御門「そんなお前にとっておきの切り札があるぜよ」

一方通行「あァ?」

土御門「さあさあ」
土御門が立ち上がると、病室に黒いスーツの男達が入ってきた。
そしてなにやら医療器機を弄り始め、一方通行の体から管やコードを外す。

土御門「移動するぞ。お前とラストオーダーを作業できる場所へ運ぶ」

一方通行「おィ待て!ラストオーダーになンかすンのかァ!!!?」

土御門「心配ない。危険は全く無いぜよ」

一方通行「テメエ、もし騙しやがったら頃してやる!!!」

土御門「はは、怖いにゃ~」

―――


第二章 おわり

864: 2010/02/28(日) 21:19:57.27 ID:LBHGNbGA0
おつ

866: 2010/02/28(日) 21:20:44.56 ID:nrotw6aG0

867: 2010/02/28(日) 21:21:23.37 ID:qsXsHd2g0

4章構成だっけ?
ちょうど2スレ分くらいか

868: 2010/02/28(日) 21:21:35.93 ID:dfOxNVvQ0


875: 2010/02/28(日) 21:24:49.55 ID:05pn8HxA0
ここで折り返し
あと二章

エピソードを三分の一も削ったのにこの長さ

出番が無くなった方々↓
むぎのん、絹旗、滝壺、浜面、ナンバーセブン、アックア、ヴェント、フィアンマ


 次回へ続く:【禁書×DMC】ダンテ「学園都市か」【その03】




引用: ダンテ「学園都市か」