288: 2010/03/03(水) 18:00:55.12 ID:zEd69/Q0


最初から読む:【禁書×DMC】ダンテ「学園都市か」

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最終章

―――

ダンテは空の漆黒の穴の内部に光る三つの赤い光を遠くから眺めていた。

ダンテ「バージル…」
兄の名を呟く。

ステイル『あ、あれは…』

ダンテ「魔帝さんが降臨だぜ」

ステイル『くそ…』

ダンテ「おっとお前は立つんじゃねえ。その体じゃもう無理だろ」

ステイル『…』

ダンテ「俺が行く―――」

そう言い、ダンテは魔帝の方へ跳躍し姿を消した。

ステイルはただ一人、力なくその場に座していた。
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163: 2010/03/03(水) 00:02:26.12 ID:zEd69/Q0

ネロ「いいかげんその体返してもらうぜ」

神裂の体を乗っ取っている者に声を飛ばす。

上条「…!」

上条は感じる。
先ほど相対したバージルと同じ感覚。
全身が押しつぶされるような圧倒的な威圧感がネロから発せられていた。

ネロ「どこのどいつかは知らねえが」

ネロの全身の青い光が増す。

ネロ「その体からさっさと出てけやクソ野郎」

その瞬間ネロの全身が青く眩く輝いた。
そして光が収まると。

ネロの背後に青い半透明の巨人が現れた。

ネロ『Do it!!!!!』

164: 2010/03/03(水) 00:06:37.33 ID:zEd69/Q0
あまりの力に、上条はその場にいるだけで意識が飛びそうになった。

今のあいつ―――
バージルやダンテと同じくらい―――
いやそれ以上に強いんじゃねえか―――?

そう上条は思った。

そのネロを見て神裂も動きが一瞬止まった。目を丸くしている。
先ほどまで一切ひるむことが無かった神裂が初めてみせた動揺。

ネロ『What's up!? C'mon!! Baby!!』
エコーのかかった声の挑発。

その声で拘束が解けたのか、神裂がネロへ突進する。
そして七天七刀を振り下ろす。ネロの顔面に直撃する。

そして神裂は続けて何度も何度もネロに七天七刀を叩き込む。
先までよりも更に激しく凶暴に。

まるで怯えた子供ががむしゃらに暴れるように。
だがその間もネロは微動だにしなかった。傷一つついていない。

ネロ『Is that all you've got?』

ネロが笑いながら問いかける。神裂が鋭く睨み返す。
そして左手の巨大な腕を振り上げ、ネロの頭頂部へ打ち下ろした。

だがそれでもネロはびくともしなかった。

168: 2010/03/03(水) 00:11:25.76 ID:zEd69/Q0
ネロ『Let's rock!!』

叫び、今度はネロがレッドクイーンを神裂へ振るう。
それに連動し、背後の巨人の巨大な大剣も神裂へ向かう。

そして二重の剣が直撃する。

神裂の体から白い光の一部が引き剥がされ、飛び散る。

神裂の体が後方へ吹っ飛―――びかけたところを、
ネロがデビルブリンガーで宙の彼女の足を掴む。


そして引き寄せると更にレッドクイーンを打ち下ろした。

神裂が地面へ仰向けに叩きつけられる。

衝撃で彼女は七天七刀を手放す。刀は宙を舞った。

再び白い光が飛び散る。
だがシールドはまだ完全に破壊されていない。

ネロ『全部剥ぎ取ってやるよ!!!』

170: 2010/03/03(水) 00:13:51.89 ID:zEd69/Q0
ネロは宙を舞う七天七刀を右手でキャッチする。

そして左手のレッドクイーンを神裂の右手の、
右手の七天七刀を神裂の左手の光の衣に、それぞれ腕本体へ直撃しないギリギリのところへ突き立てる。

ガラスが砕かれるような音を立てて二本の剣がシールドを突き破り、神裂の体を地面に磔にした。


ネロ『神裂。先に謝っとくぜ。ちょっと我慢しな』


ネロは屈むと神裂の頭を左手で鷲掴みにし、右手を大きく振り上げた。


ネロ「Show down!!!!!」

そして右の拳を打ち下ろす。
連動して背後の巨人も打ち下ろす。

ネロ『オァァァァァァァァァァァ!!!!』

何度も。
何度も。

轟音と共に光が引き剥がされ飛び散る。

172: 2010/03/03(水) 00:15:56.06 ID:zEd69/Q0
ネロと背後の巨人の拳が下ろされるたびに大地が連続して震える。
神裂とネロは地面に沈んでいき、彼らを中心としたクレーターも巨大化していく。

そして。

ガラスが砕け散るような音を立てて光の像が弾けとんだ。
彼女の頭を掴む左手に柔らかく暖かい感触が戻る。

ネロ『―――!』

慌てて右手にブレーキをかける。

ネロ『―――Ha! Shit!』

ギリギリの所で寸止めする。
僅かに反応が遅れていたらそのまま彼女を叩き潰していたところだ。
一気に冷たい汗が吹き出た。

ネロ『来い!!』

すぐさま上条を呼ぶ。
上条もそれに反応して跳躍して神裂のところへ行く。

そして着地と同時に神裂の頬へ右手を当てる。

上条「神裂ィィィィィ!!!

―――

174: 2010/03/03(水) 00:18:57.83 ID:zEd69/Q0
―――

真っ暗だ。
何もわからない。

周りから何かのざわめきが聞こえる。
だが何を言っているのかがわからない。

最後に見たのは上条とインデックスが恐怖の目を自分に向けていた光景。
その時に何か叫んだようだったが思い出せない。

思い出せない。

そして最後に見た光景すら思い出せなくなる。

自分の中が真っ黒に塗りつぶされていく感覚。

「…私は…誰ですか?」

―――全部壊せ―――

「…あなたは…誰ですか…?」

―――全員殺せ―――

「わからない…怖い…」

175: 2010/03/03(水) 00:21:36.48 ID:zEd69/Q0
―――身を任せろ―――

「…だれか助けて…」

―――力に身を委ねろ―――

「…お願い…助けて…」

―――楽になれ―――

「…けて…」

『神裂。先に謝っとくぜ。ちょっと我慢しな』

―――やめろ―――

「かん…ざき…?」

―――よせ―――

「神裂…」

―――戻るな―――

「私は…神裂…火織…!」

『神裂ィィィィィィィ!!!!』

―――

176: 2010/03/03(水) 00:24:24.37 ID:zEd69/Q0
―――

上条の右手が触れると同時に神裂の体が波打った。
そして全身から力が抜け、ぐったりとする。

上条「神裂!!聞こえるか!?」

反応は無い。
まるで氏体のように微動だにしない。

ネロ「(…くっそ…まずいな…ちょっとやりすぎたかもしれねえ…)」

神裂の体には特に外傷が無い。
だがネロのデビルブリンガーが彼女の魂も引き剥がしてしまったかもしれない。

上条は神裂を抱きかかえて揺さぶる。

上条「おい…!頼む…!」

禁書「戻って…戻って…!」

その時、神裂が大きく息を吸った。

上条「神裂!!!」

神裂「…じょう…と…ま…」

177: 2010/03/03(水) 00:26:59.67 ID:zEd69/Q0
上条「わかるか!!!神裂!!!」

禁書「帰ってきたんだよ!!!!」

神裂「はい…あれ…?私は一体…?」

上条「うおおおおおお!!!!」

禁書「良かった!!!良かったんだだよおおお!!」

上条はそのまま神裂を力いっぱい抱きしめた。
インデックスも飛びつく。

神裂「えッ…!!あ、あのッ…!ちょ、ちょっとッ!!///」

二人が突然抱きつく、というよりは上条に抱きしめられて神裂は動揺する。 

上条「良かったなあ!!!神裂!!!本当に良かった!!!」

ネロは冷めた目でその光景を眺めていた。
ネロ「(…感動的なはずなんだが…なんだこれ…妙にムカつく)」

神裂がその魔剣士の姿に気付く。

神裂「…?ネロさん…?」

ネロ「よっ」

180: 2010/03/03(水) 00:29:49.19 ID:zEd69/Q0
事の顛末を、神裂を抱きかかえたまま上条が説明する。

神裂「そう…ですか…すみません…また私…皆に迷惑を…」

上条「気にするな。神裂が俺達を守ってくれたんだしな!!」

禁書「良いんだよ!!!」

ネロ「まあ、あんたがその力を使わなければ結果的にボルヴェルクに殺されて禁書目録も奪還されてただろうしな」

神裂「はい…」

上条「そうだぜ!結果オーライってやつだ…ん…?」

冷静になったところでようやく上条も気付く。
全身に当たる柔らかい感触。女の子特有の甘い良い香り。

上条「…///」
ぎこちなく神裂をから体を離す。

神裂「…あッ…」

神裂がなんだか名残惜しそうに小さな息を吐く。

禁書「…」

ネロ「…」

185: 2010/03/03(水) 00:33:25.66 ID:zEd69/Q0
ネロ「…(落ち着け…俺にはキリエが…)」

ネロ「で、全体の状況はどうなってんだ?」

インデックスが説明する。

ネロ「へえ…ダンテの兄貴がね…」

上条「でももう大丈夫だぜ!」
上条「その術式は俺がぶっ壊してやったし、インデックスも取り戻したしな!」

禁書「…」

上条「…もしかして…違うのか…?」

禁書「…とうま…あれ」
インデックスは指差す。

上条「…!?なんでまだ残ってるんだよ!?」

インデックスの指した方向の空に、いまだにあの巨大なヒビが残っていた。

禁書「あの術式を壊しても、次元に入った亀裂は無くならないんだよ」

上条は思い出す。似たような事を過去にいくつか経験したことがある。

例えばカーテナ。
カーテナによる次元の切断自体は上条の右手で打ち消せるが、
その切断によって切り落とされた次元の破片そのものは打ち消せなかった。

187: 2010/03/03(水) 00:35:54.15 ID:zEd69/Q0
上条「で、でももうあれ以上開く事はないんだろ?!」

禁書「そうなんだけど…そのね、あの術式は次元に穴を開けて、魔帝が封印されている狭間の空間へ繋がる門を作るものなの」
禁書「それでね、とうまが来た時点で既にその作業が9割方完了してたの」

禁書「そこまでくれば、あとは術式を使わなくてもバージルなら…」

ネロ「『閻魔刀』…か…」

上条「ど、どういうことだ?!」

禁書「バージルが今持っている『閻魔刀』はありとあらゆる物を切断できるの」

上条「つまり…!」

禁書「そう、さすがのバージルも『閻魔刀』だけじゃ狭間への穴は開けられないけれど、今の状態なら…」



―――

188: 2010/03/03(水) 00:38:54.42 ID:zEd69/Q0
一時まで休憩。風呂行って来る
その後二時まで投下する

195: 2010/03/03(水) 00:59:30.93 ID:zEd69/Q0
―――



一方通行『ラァァァァァァ!!!!』

六枚の黒い羽が振動し、大気を振るわせる。
その振動で周囲の瓦礫が砕け、貯水塔がひしゃげる。

その一方通行の変化に気付き、バージルも彼に目を戻す。

一方通行『はッはァ!!!やっと本番だぜェクソヤロー!!!』

その言葉と同時に一方通行の体が音速の数十倍まで一気に加速し、
バージルへ向かって射出された。

六枚の羽のうち、下の四枚が前に伸び、左右二枚ずつ腕を覆う。

一方通行『かァッ!!』

黒い羽で覆われた左手をバージルの首目がけて放つ。
だがバージルは体を僅かに移動させてかわす。
そしてあの時と同じように。
すれ違いざまに抜刀する。

196: 2010/03/03(水) 01:01:51.81 ID:zEd69/Q0
だがその刃は防がれた。
黒い羽によって。

一方通行は左手を振り切ったその力を利用し、さらに羽で体を加速させそのまま駒のように回転する。
そしてその速度と破壊力を右手に載せ、バージルの顔面へ裏拳を振るう。

今度は手加減をしない。本気の一撃。
一方通行の制御からあぶれた力が衝撃波となってその場の地面に円形の深い筋を刻む。

バージルは姿勢を落とし、それをかわそうとする。
そして裏拳がバージルの頭上の空を切る瞬間。

バージルはその向かってくる右手を包んでいた黒い羽が一気に広がったのを見た。
瞬時にさらに姿勢を低くする。

一方通行はそのまま振り切った。衝撃波で屋上が完全に破壊される。

一方通行『(チッ!!かわされたかァッ!?)』

確認しようとした瞬間。

ハァァッ!!!と掛け声が聞こえると同時に胸に強い衝撃が走る。
瞬時に羽でガードしたものの、後方に大きく弾き飛ばされた。

197: 2010/03/03(水) 01:03:26.10 ID:zEd69/Q0
二人の激突にビルが耐え切れず爆散する。一方通行は50m程離れた空中で静止した。
バージルは近くの別のビルの屋上に降り立っていた。

一方通行は羽を見る。バージルの刃を防いだ羽には一筋の深い傷。すぐに修復する。
これがバージルの全力かどうかはわからないが、それなりに本気で切りかかったようだ。

そしてバージルの姿を見る。

一方通行『ハハッ!こいつァよかったぜ!』

バージルは完全にはかわせなかったようだ。額から赤い液体が垂れ、顎先へと一筋の線を形作っていた。

一方通行『血が出るってこたァ一応殺せるってことだよなァおィ!!』

普通ならあの一撃がかすっただけで体が跡形も無く吹き飛ぶのだが。
そんなバージルの馬鹿げた耐久力を目の当たりにしながらも彼は喜んでいた。

確かにバージルの強さは底が知れない。
だが傷をつけることができた。
絶対的な力の差ではない。
同じ舞台にいる。
手を伸ばせば届く。

そう一方通行は思った。

その思いは数分後に無残に砕け散るのだが。

198: 2010/03/03(水) 01:04:59.20 ID:zEd69/Q0
バージルの表情は、先ほどとは一見違いが無い。
だが一方通行は気付く。

明らかに微妙に違う。
バージルは額の血を手に取り、そして一方通行の黒い羽に目を向ける。

一方通行『あン?そンなに意外だったか?』

ニヤリと笑みを浮かべ、バージルへ問いかける。
バージルは一方通行の攻撃で傷を負い、そしてあの刃の直撃を防がれたことに少し驚いているようだった。

バージル「面白い」

一方通行『あァ??』

バージル「人間にしては強いな」

一方通行『なンだ?いきなり口達者になりやがって』

200: 2010/03/03(水) 01:06:24.49 ID:zEd69/Q0
バージルは少し驚いていた。
いままでこんな人間には会った事は無かった。

実はこう見えて、バージルは非常に研究熱心だ。
特に『力』の分野についてはかなり貪欲だ。
何日も蔵書に篭ったりもする。

そんなバージルがこの目の前の少年に興味を持たない訳が無かった。

別段力が凄いというわけでもない。この少年のレベルなら魔界にはゴロゴロいるし、バージルの敵ではない。
しかし問題はこの少年は人の身のまま、悪魔化もせずにこの力を使っていることだ。
それにあの黒い羽。以前に比べればかなり進化して洗練されているが、まだ成長の余地はかなりある。

その先も見てみたい。

バージルの瞳の赤い輝きがより強くなった。

バージル「気に入った」

バージルは『閻魔刀』に手をかけた。
全身が青く輝き始める。

その時だった。

バージルがふと顔をあげた。
その目は一方通行を見ていなかった。

一方通行『(…なンだァ?)』

201: 2010/03/03(水) 01:08:13.32 ID:zEd69/Q0
バージル「…」

バージルはその気配を感じた。

バージル「ダンテ…」

一方通行はそのバージルが立っているビルから50m程離れた空中にいた。

一方通行『(…なンだかわからねェが!!!今ならやれるぜ!!!)』

彼の六枚の黒い羽が巨大化する。
一枚の長さが20mまで伸びる。

そしてその羽を更に凝縮し、腕へ巻きつける。

ベクトル操作で周囲のビルを丸ごと引き抜き、バージルへ飛ばす。

バージルはそれを見もせずに寸断する。
バラバラになったビルの欠片が雨のように降り注ぐ。

その雨の中に紛れて一方通行は一気に距離を詰める。

一方通行『オォォォオオオオ!!!!』

羽で覆われた、先よりも更に破壊力を増した右手を突き出す。

203: 2010/03/03(水) 01:13:39.36 ID:zEd69/Q0
バージルの刀と交差する。
衝撃波でバージルの立っていたビルが爆散する。

一方通行『ラァァァァァァァァァァ!!!!』

そして今度は左手を突き出す。だがその左手が当たる寸前。

バージル「失せろ」

突然バージルが青く輝いた。
その瞬間一方通行の全身をとてつもない衝撃が襲った。

一方通行『ゴァァァッ!!!』

羽でその衝撃を防ぐも、大きく吹っ飛ばされ今度は空中でブレーキをかけるまもなく地面へ激突した。巨大な粉煙が立ち上る。

一方通行『…くそが…』

体に目だった外傷は無いものの、体が妙に重く苦しい。まるでスタミナだけが削られたような感覚。
だがそんな感覚にゆっくりと浸ってる暇は無かった。突如彼の体に重く何かが圧し掛かる。

一方通行『なンだ…?』

彼の体には何も乗っていない。だが何かの重量を感じる。まるで大気そのものが重量を増しているかのようだ。
その何かが彼の体を地面に押さえつける。ふと一方通行はバージルの方へ目を向けた。

一方通行『…なンだよ…!ありゃあ…!?』

205: 2010/03/03(水) 01:16:50.57 ID:zEd69/Q0
そのバージルの姿を見て一方通行は戦慄した。
いやバージルなのかどうかすらわからない。

完全に姿が変わっている。
異形だ。

なんと表現すれば良いかわからない。

サイズはさほど変わっていない。
だが全身が青い甲羅のような物で覆われている。
そしてコートに似た形の羽のような物が背中から伸びている。

頭部はまるで中世ヨーロッパと古代ギリシャの兜を混ぜたような形をしており、
目の部分に細い切れ込みがあり、その中から赤い光が溢れていた。

そして何よりも。
先ほどとは比べ物にならない力が溢れ出ていた。

何かがおかしかった。
空間があの力のせいで歪んでいるような。



―――魔人化したバージルの圧倒的な力に耐え切れず、人間界が徐々に歪み始めた。

207: 2010/03/03(水) 01:19:04.27 ID:zEd69/Q0
魔人化したバージルは上空の巨大なヒビを見つめている。
もう少しこの少年の力を見てみたかったが、ダンテが戻った今その余裕は無い。

邪魔される前にさっさとやってしまった方が良い。

バージル『はじめるか…』

エコーのかかった声で呟く。

『閻魔刀』に手を当て構える。

そして。

バージル『ハァァァァァァァァ!!!!!』

抜刀した。
それと同時に、空のヒビに巨大な青い光の筋が何本も重なる。




―――

209: 2010/03/03(水) 01:22:30.64 ID:zEd69/Q0
―――

トリッシュ「…バージル…」

トリッシュは息を切らしながらその轟音を聞いていた。

彼女の背後には赤い光を放っている『スパーダ』。
そして足元や、周囲には多数の巨大な悪魔の氏骸が転がっていた。

『ブリッツ』と呼ばれる、魔帝軍の中でも最精鋭の電気を操る兵。

己の体も電気に変えることができ、そのまま凄まじい速度で移動できる。
人間から見れば瞬間移動でもしてるかのように見えるだろう。
その戦闘力はかなり高く、下級悪魔でありながら大悪魔にも匹敵する。

そんな『ブリッツ』が先ほど8体程襲撃してきたのである。

目的はもちろん、『スパーダ』の回収。

『ブリッツ』は盲目であり、音と気配のみで敵を探すため、本来は同士討ちを防ぐために単独で動く連中だ。
だが今回は違った。

魔帝の直接の指揮下に入ったことによって彼らは目が見えてるかのように『トリッシュ』だけを狙い、
あげくに複数体でコンビネーションを繰り出してきた。

210: 2010/03/03(水) 01:25:03.62 ID:zEd69/Q0
トリッシュはかつては魔帝軍の幹部であり、かなり上位の大悪魔でもある。

だがそんな彼女でさえこの猛攻は簡単にはやり過ごせなかった。
かなり力を消耗した。

そして『スパーダ』。
近くにいるだけでどんどん力が削ぎ取られる。

この『スパーダ』は人間を守り、悪魔を頃すために作られた。

人間の血が入っていない悪魔達には強烈な敵意を向けてくる。
そして相手の悪魔の力が強大なほど、その妨害も強大になる。

無論、トリッシュも例外ではない。大悪魔である彼女は凄まじい妨害を受けていた。

そしてやっかいな事に『ブリッツ』達は下級悪魔と認識されているらしく、あまり『スパーダ』の影響を受けていないらしい。

トリッシュ「…さすがに…きついわね…」

魔剣『スパーダ』は完全には覚醒していない。今漏れている力は1%にも満たない。

それだけでもこのトリッシュ程の大悪魔を疲弊させる程の力だ。

だがそれ程の力を持つ『スパーダ』を使用したダンテでさえ魔帝は完全に殺せなかった。

211: 2010/03/03(水) 01:27:00.37 ID:zEd69/Q0
魔帝はダンテ達の父、かのスパーダでさえ頃しきれず、封印せざるを得なかった存在だ。

魔帝の業は『創造』。

生命体は当然、一つの世界をまるごと作り出すこともできる。


前回ダンテが封印した時は魔帝の力は不完全だった。
2000年かけて封印からにじみ出した一部の力しか使えなかったのである。
それだけでも魔剣『スパーダ』を所持したダンテと互角に戦った。

今回は違う。封印そのものが解け魔帝は完全に復活する。

その力は余りにも巨大である。
ムンドゥスがもし全ての力を解放すれば小さな人間界程度では耐え切れずに崩壊してしまうだろう。

それはダンテやバージルも同じだ。魔人化しただけで世界が大きく歪む。

ダンテは人間界においては極力魔人化を使わないようにしている。
もし魔人化したとしても、その体に流れるスパーダの血は完全に解放しない。※


※DMC1のラスボス戦のような完全な悪魔化。

212: 2010/03/03(水) 01:29:27.90 ID:zEd69/Q0
魔帝ムンドゥス、スパーダ、ダンテ、バージルの四人にとって人間界は脆すぎるのである。
彼らが己の力を全て解き放てば人間界という器はすぐに砕けるだろう。

かつてのダンテと魔帝の戦いも、魔帝が己の力を最大限発揮するために作り出した頑丈な異世界で行われた。

その激闘から僅かにもれた余波が最終的にマレット島を崩壊させた。

今回も、おそらく魔帝はバージルやダンテと戦う為に頑丈な異世界を作る。

そしてそこで三つの破滅的な力が衝突する。

完全に復活したムンドゥスは前回よりも遥かに強いだろう。
ダンテも前回より遥かに強くなっている。
そしてバージルはそのダンテと互角以上だ。

はっきり言って、余りにも桁違いすぎてこのトリッシュですら誰が最終的に勝利するのかわからない。

214: 2010/03/03(水) 01:31:41.96 ID:zEd69/Q0
そしてその力の余波が少しでも人間界に漏れでもしたら。

被害は前回のマレット島程度では済まないかもしれない。


最早、事態は丸く収まらないところまできていた。

誰が勝っても。

結果がどうなろうと必ずどこかに巨大な傷を残す。

トリッシュにはもう答えを出す事はできなかった。

全てをダンテに託す。
それしかなかった。




トリッシュは銃を握る。

敵の第二波がやってきた。目の前に4体の『ブリッツ』が現れる。


―――

217: 2010/03/03(水) 01:38:11.40 ID:zEd69/Q0
―――

御坂と黒子は空の穴を眺めていた。

黒子「あれは一体…なんですの…?」

御坂「…わからないわ…」

確かにここは学園都市。彼女が住んでいる街。だが何かがおかしい。全く別の世界のような感覚。
彼女は知る由は無いが、バージルの魔人化、
そしてその状態で放たれた特大の次元斬によって人間界が歪み始めているのである。

御坂「…?」

その時、御坂は少し離れたビルの屋上に目が止まった。

御坂「あれ…」

ビルの屋上には巨大な稲妻が何本も走っている。そして銃声が響く。

御坂「誰か戦ってる…!」

銃声があるということは、悪魔ではない者が戦っている可能性がある。

黒子も気付く。

黒子「お姉さま!あそこ!」

御坂「行くわよ!!!」

219: 2010/03/03(水) 01:40:40.00 ID:zEd69/Q0
―――



足元に一体の『ブリッツ』の氏体が転がっていた。

トリッシュの両手にはそれぞれ白と黒の拳銃が握られている。
ダンテのエボニー&アイボリーと瓜二つである。

目の前に移動してきた『ブリッツ』へ銃口を向けて引き金を何度も引く。
単発でありながら、人間離れした速度で連射した為まるでマシンガンのように銃弾の雨が降り注ぐ。

『ブリッツ』の電気の衣が剥げる。

それと同時にヒールのかかとで顔面を蹴り上げる。
インパクトの瞬間、特大の稲妻が彼女の足から走る。

このトリッシュの力も『ブリッツ』同様、電気である。そして電気勝負なら大悪魔の彼女の方が強い。

ブリッツの顔面が消し飛ぶ。

トリッシュ「(これで二体目!!)」

残るは二体。

221: 2010/03/03(水) 01:43:43.91 ID:zEd69/Q0
この至近距離に『スパーダ』がある状態で完全に悪魔化するわけにはいかない。

彼女の莫大な力を検知した途端、『スパーダ』は一気に妨害を強めてくるだろう。
最悪、即氏する。

一体の『ブリッツ』が電気となり、彼女の周りを高速で移動する。

トリッシュは銃弾をばら撒くもほとんど当たらない。
そのトリッシュの背後にもう一体の『ブリッツ』が瞬時に現れ、彼女の首を刎ねようと爪を振るう。

トリッシュ「!!!」

いつもなら背後を取られることなど無い。
だが『スパーダ』の毒に麻痺した体はそれを許した。

瞬間的に背後に力を集中させる。
大気が引き裂かれる音と共に『ブリッツ』の巨大な爪がそのトリッシュの電気の衣に突き立てられた。

彼女の首まで僅か数ミリのところで爪が止まる。

222: 2010/03/03(水) 01:45:31.40 ID:zEd69/Q0
トリッシュ「ハァァァァァッ!!!!」

そのまま彼女は『ブリッツ』の胸へ強烈な蹴りを叩き込んだ。

鼓膜が裂けそうな雷鳴が響き、『ブリッツ』の胸に巨大な穴が開いた。

トリッシュ「…ッ!!!」
その瞬間さらに『スパーダ』の妨害が強まったのを感じる。

激痛が体を走る。

その時。

もう一体の『ブリッツ』が彼女の背後に現れた。

そしてその爪が腹部を貫通した。

トリッシュ「…チッ!!!」

突き刺さったままブリッツの爪が凄まじい放電を起こす。
トリッシュの体が吹っ飛び、彼女はビルの屋上から弾き出された。


その時、聞きなれた銃声が響いた。

彼女は発砲していない。



―――

223: 2010/03/03(水) 01:48:05.02 ID:zEd69/Q0
―――


御坂はその大きな悪魔へ向けて、ダンテから預かった『エボニー』で電気を帯びた銃弾を放った。

だがその銃弾は当たらなかった。その悪魔は稲妻となってとんでもない速度で移動を始めた。

御坂「な…なんなのよあれ…!」

電気使いの彼女でさえ驚愕する。
あまりにも速過ぎて御坂のレーダーですら捉えきれなかった。

稲妻の塊へ銃弾を放つも、全く当たらない。左に現れたと思いきや次の瞬間には右に現れる。

その時、聞きなれた声が響いた。

「後ろですの!!!」

御坂が振り返った。
背後から迫る巨大な爪が目に入る。

御坂「―――」

そのまま爪が雷鳴とともに振り下ろされた。

224: 2010/03/03(水) 01:49:52.73 ID:zEd69/Q0
御坂「…は?」

御坂は一瞬何がおきたのかわからなかった。あの悪魔の爪が見えたと思った瞬間、突如目の前の視界が全く別のものになった。
あの悪魔が20m程前方にいる。御坂も一瞬前まであそこにいたはずだ。

黒子「お姉さま!!!」
背後から聞きなれた声。そして御坂の肩にかかる小さな手。御坂は瞬時に状況を理解した。

御坂「黒子!!!そのまま掴んでなさい!!任せるわよ!!!」

黒子「はいですの!!!」

再びあの悪魔が高速で移動を始める。御坂は銃弾をとにかくばら撒く。悪魔が一瞬消える。

御坂「黒子ォ!!!(来る!!)」

その瞬間御坂と黒子は5m程後方にテレポートした。

さっきまで御坂達がいたところに悪魔が現れた。悪魔は予想外の事に一瞬動揺する。
その隙を逃さずに御坂はダンテから借りたエボニーを連射する。

225: 2010/03/03(水) 01:51:59.37 ID:zEd69/Q0
電気が弾けるような音を立てて御坂の銃弾が直撃する。だが悪魔は微動だにしなかった。

御坂「(あの…電気の衣…!)」

御坂はすぐにわかった。彼女が使うようなシールドをあの悪魔も使っている。
その強度は彼女の物を遥かに上回っている。

能力を使って剥がそうとするも、悪魔の体を包んでいる電気は操作できなかった。

御坂「…!?」

ただの電気ではない。莫大な魔力が篭められており、性質も人間界のものとは全く別物だ。

その時、悪魔が両手を御坂に突き出した。

御坂「!!!」
ピリッと周囲の電気の異変を感じ取る。

御坂「黒子ォ横に!!!」
その声と同時に御坂と黒子の体が10m程左にテレポートした。

瞬間、悪魔の両手から巨大な黄金の稲妻が放たれた。

226: 2010/03/03(水) 01:54:43.86 ID:zEd69/Q0
巨大な雷鳴が轟く。

御坂「(…!!何よあれ!!)」

御坂でも扱えないレベルの莫大な電力だった。
避けたと思ったのつかの間、悪魔は御坂達の移動先を確認するやその腕を向ける。
それに連動して巨大な稲妻が彼女達へ向かった。

黒子「―――」

テレポートが間に合わない。

その瞬間。御坂達の前に突如金髪の女性が現れ、その稲妻に手をかざす。その手に稲妻が直撃する。

御坂「!!!」

だが女性の体に傷はつかない。
金髪の女性は両手でその稲妻の猛攻を受け止めている。あぶれた稲妻が周囲を砕いていく。

トリッシュ「撃ちなさい!!!」

トリッシュが背後の御坂に叫ぶ。気付いたように御坂がトリッシュの背後から銃を撃つ。だが悪魔はびくともしない。

御坂「(…やっぱり効かない!!ならレールガンで…!)」

コインを取り出しかざす。だがふと脳裏をよぎる。
このダンテの銃はあの山羊の悪魔を簡単にミンチにした。それでもあの悪魔は貫けない。
レールガン程度で果たして貫けるのか?

229: 2010/03/03(水) 01:58:34.50 ID:zEd69/Q0
トリッシュ「それ…ダンテの銃…?」
稲妻を抑えながら、つらそうにトリッシュが聞く。同じ電気を操るトリッシュは御坂がやろうとしたがなんとなくわかった。
原理はわからないが、あのコインを電気を使って撃ち出す気だと。

御坂「…!そ、そうだけど!!!」

トリッシュ「なら…コインじゃなくて…それで撃ちなさい…大丈夫…壊れないわよ…」

御坂「…へ?」

トリッシュ「良いから撃ちなさい!」

ダンテの銃、エボニーでレールガンを撃つ。

御坂は考えもしなかったことだった。だが可能かもしれない。
このダンテの銃なら。最大出力で放てるかもしれない。

御坂は全ての力をエボニーに集中させる。
いつもはコインが摩擦熱で溶けないように弾速を抑えていたが、今回は違う。

最大で放つ。
照準をあの悪魔にあわせる。

そして。

エボニーから巨大な光の矢が射出された―――

230: 2010/03/03(水) 01:59:56.59 ID:zEd69/Q0
そのダンテの魔力が篭められた銃弾の初速は音速の7倍にまで達した。

その光の矢が『ブリッツ』の電気の衣を突き破り、そして上半身を吹き飛ばした。

貫通した銃弾はそのまま遥か遠くへ飛んでいった。



御坂「…やった…?」

黒子「やりましたの!!!!」

ゆっくりと『ブリッツ』の下半身が倒れた。もはや一筋の電気も放っていない。

トリッシュ「…あなた…今の…凄いわね…」
御坂のレールガンにトリッシュはかなり興味を持った。彼女も悪魔である。強い力には魅了される。
正直言うと今の攻撃方法を教わりたいくらいだ。

トリッシュ程の力でレールガンを放てばその弾頭は楽々と太陽系脱出速度まで達するだろう。

231: 2010/03/03(水) 02:00:37.58 ID:zEd69/Q0
御坂「…あの…大丈夫ですか?」
逆に御坂にとってはあの稲妻を手で受け止めるのが信じられなかった。

トリッシュ「大丈夫よ…」
先の『ブリッツ』の稲妻を止める際、魔人化はしなかったがかなり大きな力を使用した。
その力に『スパーダ』が反応して更にトリッシュの体を蝕んだ。


ふとトリッシュは御坂と黒子を見て閃いた。彼女達は人間だ。『スパーダ』の毒に侵されることも無い。
それなりの戦闘能力もある。それにダンテの銃を所持している。面識があるはずだ。

トリッシュ「…あなた達に…一つ頼んで良い?」

御坂「?なんですか?」

トリッシュ「あそこにある赤い剣、…ダンテに届けてくれない?」


―――

232: 2010/03/03(水) 02:02:10.80 ID:zEd69/Q0
今日はここまで
明日は午後も用事あるから再開は夕方から

257: 2010/03/03(水) 13:02:54.27 ID:zEd69/Q0
インフレすまん もっと派手にでっかくぶっ飛んでってやってたら止まらなくなった。
でも設定上では結構こんなもんです。
確か3の製作スタッフのインタビューで、「ダンテの本当の強さを忠実に再現するとゲームどころじゃなくなる」というのもあったので。

ルシフェルとかの部分では説明いれる予定だったんだけど、長ったらしくなるしややこしくなりそうだったので省略。

以下まとめて↓

上条達のいる人間界・ガブリエルや神がいる天界・ルシフェルがいる地獄は一つの建物に収まってるみたいな感じ。
大まかにいうと一階が地獄、二階が人間界、三階が天界という構造で、御使堕しもこの建物内での現象。
この建物が一つの『セフィロトの樹』。

これとは別にもう一つ巨大な建物があって、そこがDMCで言う『魔界』。本来は全く関係の無い完全な異世界。
比較として、『セフィロトの樹』⇔『魔界』、『人間界』⇔魔界内の一つの層『炎獄』という感じ。

つまり、同じく悪魔といっても『セフィロトの樹』の地獄に属してるルシフェルと『魔界』の炎獄に属してるベリアルさんは全く別物。
スパーダの事実が極一部の者にしか知られていなかった事もあって、過去の人間達が勝手にごっちゃにしてしまった。


人間界の属してる『セフィロトの樹』は綺麗に整頓・界ごとの境界も厳重に引かれてて、
バランスの崩壊を防ぐために力の上限も厳しく制限されているけど、

魔界はめちゃくちゃの規則無し・界ごとのの境界も薄くてほぼ吹き抜け・力の上限も無いカオスの世紀末状態。
その世界で生き延びるために、『魔界』で生まれた悪魔達は本能的により強大な力を求める。

力の上限が無い事もあって、その競争の果てにとんでもない強者がゴロゴロ現れるようになった。
という設定を一応考えてありますた。

あとレールガン等科学側の原理は良くわかりません 勉強不足です

258: 2010/03/03(水) 13:09:20.21 ID:zEd69/Q0


上条「今のは…!!!」

禁書「バージルが遂にやったんだよ…」

神裂「…痛ッ…!」

神裂はぎこちなく立ち上がる。

上条「おい!神裂!」

神裂「行かなくては…!なんとしてでも…!」

上条「無理だ!! まともに立つのすらできねえだろ!!」

神裂「しかし…」

ネロ「俺が行く」

神裂「…!」

ネロ「あそこで戦えるのは俺ぐらいだろ」

禁書「ネロ…」

259: 2010/03/03(水) 13:11:13.65 ID:zEd69/Q0
ネロは上条達に背を向け、穴の方角へ歩き始めた。



上条「ま、待て!」

ネロ「ああ?」

ネロは振り向かずに返事をする。

上条「俺も行く!!!」

ネロ「バカ言うn」

上条「わかってる!!確かに俺程度じゃ戦力にならねえ!!」
上条「でもよ!この右手はきっと何かの役に立つ!!!」

ネロ「好きにしな」

そっけなく返事をし、再びネロは歩き始めた。

260: 2010/03/03(水) 13:14:26.37 ID:zEd69/Q0
禁書「とうま…」

上条「悪いインデックス。俺行くわ」

禁書「とうま。約束して。絶対帰ってきて」

上条「…ああ。約束する」

インデックスはその返答の前の僅かな溜めを見逃さなかった。
この少年は。
最悪自分の命を捨ててでも―――

禁書「とうまあああ…!」

インデックスが上条に抱きつく。

上条「大丈夫だぜ。ほら心配すんな」
頭を撫でながら優しく囁き掛ける。

上条「ほら…」
へばりついてるインデックスをゆっくりと引き離す。

261: 2010/03/03(水) 13:15:28.22 ID:zEd69/Q0
上条は屈み、両手で優しくインデックスの頬を挟む。

上条「上条さんは大丈夫ですよ。結構俺ってしぶといだろ?」
いつものように腑抜けた笑みを作る。

上条「何だかんだできっと上手くいくさ!」

禁書「…うぅ…」

上条「ほらほら、あの腹ペコシスターはどこいった?」

禁書「……とうま…」

上条「ほーら、いつもの口癖は?」

禁書「…おなか減った…」

上条「おう!帰ったらたらふく食わせてやるぜ!」

わしゃわしゃとインデックスの頭を撫でる。

禁書「…えへへ…」
インデックスは目をこすりながら小さく笑う。

262: 2010/03/03(水) 13:16:55.62 ID:zEd69/Q0
上条「神裂。頼むぜ。こいつの事」

神裂「…はい。任せて下さい。必ず…守ります」

上条「よし、じゃあいってくるぜ!」

禁書「…」

上条「またな!」

禁書「…うん…」

そのやりとりを最後に、上条はネロの向かっていった方向へ走っていった。

インデックスと神裂はその背中が小さくなるのをずっと見ていた。

264: 2010/03/03(水) 13:17:46.79 ID:zEd69/Q0
上条「(もう行っちまったか?)」

ネロの姿は見えない。

上条「(なら、本気で行くか)」
跳躍しようと足に力を入れたとき、横から声がかかった。

ネロ「やっと来たか」

上条「おお、待っててくれたのか?!」

ネロ「…済んだか?」

上条「ああ」

ネロ「じゃあさっさと行くぜ」

上条「おう!」



―――

265: 2010/03/03(水) 13:18:35.06 ID:zEd69/Q0
再開は夕方に

273: 2010/03/03(水) 17:22:23.98 ID:zEd69/Q0
5時45分から

277: 2010/03/03(水) 17:44:30.21 ID:zEd69/Q0
―――


一方通行は地面に屈んだまま動けなかった。


目の先にある圧倒的な存在。
それが一方通行の胸を固く締め付ける。

手が小刻みに震える。

一方通行『は…はは…』

自分の反応に思わず笑い出す。

この俺が―――

それはひさしく忘れていた感情。

この俺が恐怖してやがるだと―――?

280: 2010/03/03(水) 17:46:49.38 ID:zEd69/Q0
バージル『失せろ』

一方通行の耳に声が聞こえる。

一方通行『…あァ?』

バージル『俺の刃を凌いだその命、大事にしろ』

一方通行『…ッせェ…』

一方通行『その魔帝とやらを…復活させるわけにはいかねェんだよ!』

バージル『ならばもう遅い』

一方通行『…ンだと…!?』

281: 2010/03/03(水) 17:49:01.52 ID:zEd69/Q0
魔人化したバージルの一撃によって、空のヒビは巨大な漆黒の穴に変貌していた。
一方通行はその穴を見上げる。

一方通行『クソ…!!!』

バージル『さっさと消えろ。好きな所へ行くが良い』

一方通行『…ざけンな…!』

バージル『三度は言わん』

一方通行『…はッ!!!るせェんだよ!!!』
一方通行『話は簡単だ!!!テメェをぶち頃し、その魔帝もぶっ殺せばいィ!!!』


『…人間如きが我を頃すとな…』


その時だった。

空の巨大な穴の中から低い声が響いた。


バージル『やっと来たか』

穴の中に三つの赤い光が浮かび上がった。

282: 2010/03/03(水) 17:53:40.24 ID:zEd69/Q0
一方通行『…なッ…?』

『…ネロ・アンジェロ』

穴の中の三つの赤い光から低い声が響く。

『…今はバージルか?』

バージル『好きに呼べ』

『…まさか貴様が我の封印を解くとはな。礼を言うぞ』

バージル『勘違いするな』

『…どうやら我への忠誠心からやったことでは無さそうだな』

バージル『当然だ』

『ではなぜ我の封印を解いた?』

『何か見返りを求めているのか?』

『父と弟の大罪を取り消せとでも?』

その問いでバージルは鼻で笑う。

バージル『呆けたのかクソジジイ?この俺がそんな事を求めてるとでも?』

285: 2010/03/03(水) 17:56:06.63 ID:zEd69/Q0
『矮小な者の考えはわからぬな』

バージル『一つ聞く』

『…申せ』



バージル『フォルトゥナのネロ』




バージル『殺害を命じたのは貴様か?』




『…ほお』

バージル『答えろ』

『そうだ。我が命じた。スパーダの血族を根絶やしにせよとな』

286: 2010/03/03(水) 17:57:53.56 ID:zEd69/Q0
バージル『…』

バージルの表情は変わらない。
だが確かに殺気が強まる。

『貴様ともあろう者がな…身内の報h』

バージル『黙れ』

バージル『では告げる』








バージル『―――氏ね』




―――


第三章 おわり

289: 2010/03/03(水) 18:04:52.78 ID:zEd69/Q0
ステイル『頼んだぞ…』

呟く。もうその言葉を向ける人物の姿は見えなくなっていた。

ステイル『…』

しばらくすると、何者かの気配を感じた。

ステイル『…?』

「ステイル!!!!」

聞きなれた声だ。
振り向くとそこには神裂とインデックスがいた。

ステイル『インデックス!!!!』

ステイルは修道服を着た少女の姿を見るや、立ち上がろうとした。
だが足に力が入らない。その場に倒れこんでしまった。

神裂「ステイル!!!!」
叫び、ステイルの元へ行こうとするが彼女の足もふらつく。

その横をインデックスが駆けていった。
そしてステイルの傍へ。

290: 2010/03/03(水) 18:08:55.95 ID:zEd69/Q0
禁書「大丈夫?」

ステイル『インデックス…』

禁書「あなたも…」
インデックスはステイルの手のイフリートを見る。

そしてその手を握った。

ステイル『…(暖かい…)』

禁書「…ありがとう」

ステイル『君が…無事で何よりだ…』

禁書「…うん…」
ステイルの手を握るインデックスの手に力が入る。
少女は今にも泣きそうな顔だった。

神裂がようやくステイルのもとに来た。
神裂「大丈夫ですか!?」

ステイル『少し…疲れた…』

禁書「…!?」

292: 2010/03/03(水) 18:10:58.41 ID:zEd69/Q0
ステイル『神裂…インデックスを頼むぞ…』

神裂「…ステイル!!!いけません!!!!ダメです!!!!」

禁書「だめぇ…だめ…」
インデックスの瞳から大粒の雫が落ちる。

ステイル『僕は…少し…休む…よ…』

全て完璧だったとは言えないがステイルは満足だった。

悔い。

視界が薄れていく。

あの愛しい少女の顔がぼやけていく。

音が消えていく。

あの愛しい少女の声が遠のく。

だがその小さな手から伝わってくる温もりはいつまでも残っていた。

ステイル『(…インデックス…)』

心の中で呟く。

そしてステイルの意識が途切れた。

―――

293: 2010/03/03(水) 18:12:41.72 ID:zEd69/Q0
―――

魔人化しているバージルは抜刀した。

巨大な青白い筋が穴の中の三つの光点へ放たれた。

そのとてつもない力によって世界が軋む。

凄まじい爆風が起こる。

その力の余波は一方通行にも襲い掛かった。

一方通行『くァッ…!!!』

咄嗟に羽で体を覆う。
黒い羽の表面が磨り減り、凄まじい圧力で50m程後ろに押しのけられた。

一方通行『…クソ…!!』

その時、一方通行は一つの人影が近くを通って行ったの見た。

このとんでもない嵐の中を軽く駆け抜けていったのである。

一方通行『…!?』

一瞬の事で良く見えなかったが、赤いコートを着ていた。

294: 2010/03/03(水) 18:14:35.07 ID:zEd69/Q0
バージルの特大の次元斬りが穴の中の魔帝へ炸裂する。
あまりの威力に穴自体が軋み、一回り大きくなった。

魔帝『…なるほど』

だが穴の中からは先と変わらず声が響いてきた。

魔帝『かなり力を高めたようだな。だがその程度では我には傷一つつかんぞ』

バージル『当然だ。この程度で氏なれたらつまr』



「バージル!やけに面白そうな事してんじゃねえか!」



突如横から声が割り込んできた。

バージル『…』


魔帝『貴様も来たか』

296: 2010/03/03(水) 18:16:59.90 ID:zEd69/Q0
魔帝『ダンテ。久しぶりだな』

ダンテ「よう、まさかまたお前に会えるとは思ってなかったぜ」

にやけながらダンテが前へ出る。

魔帝『逆賊スパーダの息k』

ダンテ「俺も混ぜてくれよ」

バージル『失せろ。俺の獲物だ』

魔帝『逆賊スパーd』

ダンテ「そう言うなよ良いだろ」

バージル『消えろ』

魔帝『逆賊スp』

ダンテ「おいおいつれねえなあ」

バージル『三度は言わん』

魔帝『…』

ダンテ「相変わらずだな、少しは弟を…あん?」

その時だった。穴の中の三つの光点の輝きが増した。
そしてそこから赤い槍状の物が凄まじい速度でダンテ達へ向けて二本射出された。

298: 2010/03/03(水) 18:20:17.01 ID:zEd69/Q0
ダンテ「Ha!!!!」

ダンテはその槍をリベリオンで上へ弾いた。瞬間とてつもない爆風が発生した。

バージルは『閻魔刀』で弾き落とす。
弾かれた赤い槍が轟音を立てて地面へ食い込み、そのまま遥か底へとめり込んでいった。

ダンテ「おいバージル!下に弾くんじゃねえよ!」

バージル『知るか』

幸いな事に、その周囲の地下には特に重要な施設は無かった。

魔帝『やはり…人間界は小さすぎるな。脆い』

ダンテ「おっと、悪いがあんまり余裕はねえんだ。ちゃっちゃと封印させてもらうぜ」

ダンテの体が赤く輝き始める。

人間界へできるだけ負荷をかけない為に、魔人化の時間は短くする必要がある。
さっさと魔帝をあの穴の中へ押し戻し、すぐに封印する。

ダンテから赤い光が溢れ出し、爆風が発生する。

そして。

魔人化したダンテが姿を現した。

300: 2010/03/03(水) 18:23:14.65 ID:zEd69/Q0
間髪いれずにダンテはリベリオンを一気に振る。

ダンテ『Drive!!!!!!』

特大の赤い斬撃が穴の中の魔帝へ放たれる。

ダンテ『One!!!Two!!!!!』

更に剣を返し、もう二発放つ。
だが何も起きなかった。その三発の斬撃は穴の中へ吸い込まれるように消えた。

ダンテ『…こりゃあ…めんどくせえぜ』

少し見くびっていた。完全復活した魔帝は予想以上に強い力を持っているようだった。

魔帝『焦るな小僧。楽もうではないか』

その声と同時に、穴の中に赤い魔法陣が浮かび上がった。

ダンテ『…あ~』

非常に面倒な事態になる予感がする。
地面から溶岩が吹き上がった。

そしてその溶岩が巨大な蜘蛛の姿を形作る。
灰色の外郭に巨大なサソリのような尾。全身から炎が噴き出す。

魔帝の創造の力によって、かつてダンテが倒した大悪魔、『ファントム』が蘇る。

―――

301: 2010/03/03(水) 18:23:47.16 ID:zEd69/Q0
すまん飯食ってくる
七時までには再開する

306: 2010/03/03(水) 18:54:55.35 ID:zEd69/Q0
―――

二つの影がビルの屋上から屋上へと凄まじい速度で飛び移りながら進む。

ネロと上条。

ネロ「…」

ネロは複雑な気持ちだった。
この温もりはあのダンテの兄から発せられている。

すごく懐かしく、いつまでも身を委ねていたい奇妙な感覚。
その発信元の人物が魔帝を復活させた。

だが復活させたと思った途端、次は『閻魔刀』の巨大な次元斬が魔帝へ向け放たれ、そしてダンテの斬撃までが放たれた。

何が起こっているのかわからなかった。
事態が全く把握できない。

とにかくあの場所へ行く。

ダンテに。

ダンテの兄に会ってみる。

そうすればきっとわかる。

その時、二人の上に巨大な鳥のような影が落ちてきた。

308: 2010/03/03(水) 18:59:22.99 ID:zEd69/Q0
―――

二つの影がビルの屋上から屋上へと凄まじい速度で飛び移りながら進む。

ネロと上条。

ネロ「…」

ネロは複雑な気持ちだった。
この温もりはあのダンテの兄から発せられている。

すごく懐かしく、いつまでも身を委ねていたい奇妙な感覚。
その発信元の人物が魔帝を復活させた。

だが復活させたと思った途端、次は『閻魔刀』の巨大な次元斬が魔帝へ向け放たれ、そしてダンテの斬撃までが放たれた。

何が起こっているのかわからなかった。
事態が全く把握できない。

とにかくあの場所へ行く。

ダンテに。

ダンテの兄に会ってみる。

そうすればきっとわかる。

その時、二人の上に巨大な鳥のような影が落ちてきた。

309: 2010/03/03(水) 19:00:08.43 ID:zEd69/Q0
※ミスった

その現れた悪魔。巨大な鳥のような姿で、頭部は下顎が無く、複数の上顎が組み合わさっていた。

『グリフォン』と呼ばれる大悪魔である。
その悪魔は甲高い咆哮をあげ、口ばしの中が赤く輝き始める。そしてネロ達へ向けて巨大な赤い稲妻が放たれた。

ネロ「チッ!!!」

上条「うお!!!」

ネロの体が青く輝き、背後に巨大な青い像が出現した。こんな所で時間を潰してる場合じゃない。

ネロ『Scum bags!!!!』

一気にデビルブリンガーを伸ばす。赤い稲妻がその巨大な腕に直撃するも一切怯まずにそのまま『グリフォン』へ突き進む。
そしてその鳥のような体を鷲掴みにし、

ネロ『Get lost!!!!』

そのまま握りつぶした。赤い血が弾け散り、辺りを羽が舞った。


310: 2010/03/03(水) 19:05:13.29 ID:zEd69/Q0
ネロ『行くぞ!!』

上条は瞬く間の出来事に呆然としていた。

そして。

次の瞬間さらに驚くべきことが。

上条「…おい…あれ…!」

ネロ『…おいおい…マジかよ…』

グリフォンは完全に氏んだはず。ネロの右手も反応しなくなった。
だが、バラバラになった肉片が集りグリフォンの体が再生する。

ネロ『どうなってんだよ…?』

ネロの右手が再び反応しだす。
間違いない。

あの悪魔は蘇生した。

ネロ『冗談だろ…?』

再び飛び上がったグリフォンは赤い巨大な稲妻をネロ達へ向けて放つ。

―――

312: 2010/03/03(水) 19:10:09.18 ID:zEd69/Q0
―――

ダンテ『久しぶりだな』

ダンテはその巨大な蜘蛛のような悪魔、ファントムへ声をかける。だが無反応だ。

ダンテ『(…?)』

突如ファントムが獣のような声で咆哮し、大気が震えた。
そしてその8つの目の上に巨大な火の玉が出現する。
その熱で周囲の地面が溶け始め、溶岩の海を形成する。

ダンテ『挨拶も無しかよ』

火の玉が猛烈な速度でダンテに放たれた。

ダンテ『HA!!!!!』

その火の玉をリベリオンで弾き、そのまま切っ先をファントムに向け、

ダンテ『Yeeeeeeeeahhh!!!!!!!』

爆風を巻き上げながら突進し、猛烈な突きを8つの目の中央へ叩き込んだ。
そしてそのまま何度も突きを連続で放つ。リベリオンがファントムの固い外殻を貫き、体液である溶岩が噴き出す。

ダンテ『Break down!!!!!!!』

そして最後に一際強い突きを放つ。ファントムの巨体が後方へ吹っ飛ばされ、仰向けなって地面に打ち付けられた。

315: 2010/03/03(水) 19:16:19.37 ID:zEd69/Q0
ダンテ『…?』

妙な違和感を感じる。攻撃の手ごたえはあった。

ダンテ『どうなってやがる…?』

だがファントムは何事もなかったかのように起き上がる。
ダメージの形跡がない。

その8つの瞳には何も感情が篭っていない。
まるで人形のようだ。

バージル『…創造か』

その言葉でダンテもようやく理解した。
今、ファントムはかなりのダメージを負った。それは間違いでは無い。
だが新しく『創り直された』のである。

魔帝ムンドゥスの力によって。

体が壊れたのなら直せばいい。
氏んだのなら蘇らせればいい。

本物の不氏身の軍団。

316: 2010/03/03(水) 19:20:36.39 ID:zEd69/Q0
ダンテ『相変わらず…ふざけた真似をしやがるな…お前は』

ダンテは無性に腹が立った。前回もそうだった。
この魔帝は己の部下や同族達を消耗品のように使い捨てる。彼らの魂を玩具のように扱う。

氏者でさえ、安らかな眠りから無理やり叩き起こされて強引に使役される。
その苦痛は想像を絶するだろう。



他の誇り高き悪魔達は、同族の為・魔界の為に己の命を捧げている。
だがこの魔帝は違う。

全て己の歪んだ欲望の為。破壊と虐殺を行い、相手が苦痛と絶望の中で氏んでいく姿を見て楽しむ。

ダンテが最も嫌うタイプの者だ。

その邪悪な矛先は時に彼に忠誠を誓う部下達にまで向けられる。

魔帝の嗜みの為、一体いくつの命が無残に散って行っただろうか。
魔帝の破壊欲の為、一体いくつの世界が滅ぼされただろうか。

正真正銘のクズだ。


―――

317: 2010/03/03(水) 19:25:56.36 ID:zEd69/Q0
―――

ネロは赤い稲妻をレッドクイーンで弾く。

そして再びゴッドブリンガーを伸ばし鷲掴みにすると、今度は思いっきり引き寄せる。

ネロ『You're going down!!!!!』

引き寄せられてくるグリフォンへ炎が噴き出しているレッドクイーンを叩き込む。
背後の巨人も連動して大剣を振るう。

ネロ『オァアアアアアアアア!!!!!』

何度も叩き込む。二重の乱撃がグリフォンの体へぶち込まれ続ける。


20発叩き込んだところで強烈な突きを繰り出す。
レッドクイーンがグリフォンの胸を貫く。

そして右手を大きく振り上げて

ネロ『Break!!!!!!!!!!!!!!!』

渾身の一撃を振り下ろした。

地響きを立てながらグリフォンが地面にめり込み、叩き潰された。

318: 2010/03/03(水) 19:29:58.02 ID:zEd69/Q0
ネロ『はァッ!!どうだクソ野郎!』

ネロの右手の反応が無くなる。完全に氏んだ。

だが。

再び飛び散った肉片が集り、グリフォンの体が元に戻り始める。

ネロ『嘘だろ…』

上条「なんなんだ!?どうなってんだよ!?」

ネロ『ありえねえ…こんな事…!』

ありえない。

その言葉が上条の脳内に響く。

ありえないだと―――?

ネロがありえないということは―――。

320: 2010/03/03(水) 19:35:00.63 ID:zEd69/Q0
上条「―――」

上条は再生しつつあるグリフォンへ一気に突進する。

ネロ『おい!!!』

上条はとにかく突っ込む。

グリフォンの再生が完了してしまえば恐らく上条は一蹴されて氏ぬ。

その前に。

あの現象が終わる前に。

この右手を。

悪魔のネロがありえないと言うのなら。

効果があるかわからない一か八かの賭け。

上条「おぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

322: 2010/03/03(水) 19:42:41.88 ID:zEd69/Q0
グリフォンの体の損傷してる部分があと僅かになった時に。

上条の右手がグリフォンの巨大な足に触れた。

グリフォンの全身に赤い稲妻が走った。

上条「うぉ!!!」

上条は一瞬失敗したかと思った。
だが次の瞬間。

グリフォンの体は風に吹かれるように消えていった。
その時、かすかに声が聞こえた。


『…すまぬ…』


上条「…」

その言葉に顔を上げたときには既にグリフォンの姿は完全に消えた。

323: 2010/03/03(水) 19:47:03.88 ID:zEd69/Q0
その最期の言葉はネロの耳にも入っていた。

ネロ『…なんだかわかんねえが…苦しんでる奴がいるみてえだ』
ネロ『とにかくこの事態を解決しなきゃな』

上条「だな…」

上条は右手を見ながら返事をする。
どうやら予想通り、あの再生はその悪魔が持つ本来の魂の力では無いらしい。

外部からの人為的な、魔術的な何かで強引に行われている。

今までの経験上、恐らく右手の効果があるのは再生中の僅かな時間の間だけ。
だが決定的な切り札になる。

上条「…」

あの最期の声。恐らくあの悪魔の声。
安らかな声だった。

ネロ『あんたの右手、使わせてもらうぜ』

上条「ああ!」
右手を強く握る。

上条「行こう!」

―――

325: 2010/03/03(水) 19:52:54.39 ID:zEd69/Q0
―――

魔帝『さあ、もっと盛り上げようではないか』

その言葉と同時に穴の中の魔法陣が輝きを増す。
世界が揺れる。

その瞬間、学園都市のありとあらゆる場所に魔帝の創造した悪魔達が姿を現した。

街には大量のフロストやゴートリングが溢れ、空には巨大な魚のような悪魔、『リヴァイアサン』が何体も現れた。
そして彼らは皆、不氏身。学園都市はいまや魔窟と化した。

魔帝『素晴らしい風景だ。そう思わないか小僧共』

ダンテ『おい…ふざけんじゃねえぞクソ野郎』

バージル『凄い力だな』

魔帝『お前にはわかるようだな。バージル。嬉しいぞ』

バージル『だが』

バージル『醜い。反吐が出る』

魔帝『…ほう』

326: 2010/03/03(水) 19:58:20.26 ID:zEd69/Q0
ダンテは穴の中の魔法陣を見る。

あそこからファントムや、街中の悪魔へ力が注がれている。

ダンテ『(あれか…)』

あの魔法陣を破壊する。それは簡単だ。だがその魔法陣の核は魔帝ムンドゥス。
魔法陣だけを破壊してもすぐに修復されるだろう。

完全に止めるには魔帝を頃す。

ダンテ『(まいったぜ…)』

ダンテはもともと封印するつもりだった。
だがこのまま封印しても、あの魔法陣があるかぎり街の悪魔達は消えない。
まさか完全復活した魔帝がこんな面倒な仕掛けをしてくるとは思ってもいなかった。

327: 2010/03/03(水) 20:04:46.74 ID:zEd69/Q0
ファントムが再び咆哮を上げる。

ダンテ『…キリがねえな』

リベリオンを肩に乗せる。このファントムと戦うのは少し気が進まない。

永遠の穏やかな休息から叩き起こされた哀れな魂。
あの中で凄まじい苦痛に悶えているファントムの魂が見えるような気がする。

その時だった。

ファントムの八本の足に巨大な浅葱色の剣が突き刺さった。
バージルの幻影剣だ。

バージル『殺せぬのなら』

そして一際大きな幻影剣がファントムの背中に突き刺さり、地面に磔にした。

バージル『拘束すれば良い』

329: 2010/03/03(水) 20:10:31.57 ID:zEd69/Q0
バージル『つまらん』

バージル『茶番はもう良い』

ダンテは少し安堵した。
このファントムを再び頃すのは回避できた。

さすが兄貴、かしこいかしこい冷静冷静 と頭の中で呟く。


バージル『さっさとやれ』


魔帝『…よかろう』

その言葉と同時に穴の中の三つの光点の輝きが増した。
その瞬間、穴が一気に広がった。黒い影が周囲のもの全てを覆っていく。

ビルが消えた。道路が消えた。街が消えた。全てがかき消されていく。

周囲の景色は一変した。

漆黒の空。

足元はまるで金属のように固く平らな、漆黒の地面が延々と広がっていた。

魔帝は己の全ての力を使うため、それに耐えうる異世界をその場に創造した。

331: 2010/03/03(水) 20:16:53.16 ID:zEd69/Q0
ダンテはその光景を目にしたのは二度目だ。
前回の魔帝との戦いも、周りの風景をかき消すように異世界が出現し、そしてあの魔帝が姿を現した。

魔帝『さあ、待たせたな。始めよう』

ダンテ『相変わらず…胸糞が悪くなるかっこだなそれ』

バージル『…醜い』

ダンテ『バージル』

ダンテ『悪いが、ちょっと席を外すぜ。済ませなきゃなんねえ事がある』

バージル『知るか』

ダンテ『ハッ!!俺の分までとっておいてくれよ!!』

そう言い、ダンテは思いっきり後方へ跳躍した。
10m程跳んだところで姿がかき消されるように消滅した。

バージル『…さあな』

333: 2010/03/03(水) 20:20:48.34 ID:zEd69/Q0

魔帝『まずは貴様か。来るが良い小僧。その首をへし折ってやる』

バージル『やってみろ』

そう言い放つと、魔人化しているバージルの体の輝きが更に増す。
その力によってこの頑丈な異世界ですら軋む。


バージル『ハァァァァァァ!!!!!』


『閻魔刀』を抜刀する。


ありとあらゆる物全てを破断する青白い光の線が放たれる。

魔帝は手を高く掲げた。

赤い稲妻のようなものが発生し、剣を形作った。

世界が震える。

魔帝はその赤い大剣を振るった。


バージルの特大の次元斬と魔帝の赤い稲妻の剣撃が衝突する

―――

334: 2010/03/03(水) 20:29:50.48 ID:zEd69/Q0
―――


ダンテはその異世界から外に飛び出した。

再び学園都市の地面に降り立つ。
振り返ると、直径100m程の黒い球体が浮かんでいた。

あの中に無限の頑丈な空間が広がっており、バージルとムンドゥスがいる。

ダンテは人間界への無用な負荷を避けるため魔人化を解いた。

ダンテ「さて…」

やることは二つ。

まず学園都市中に野放しになっている不氏身の悪魔達をなんとかして抑えること。
そしてこの異世界の戦場から漏れ出す力の余波をできるだけ抑える策をとること。

ダンテ「まず…あいつらにやらせるか」

ダンテ「ケルベロス!!!アグニルドラ!!!ネヴァン!!!」

その声と同時に青いヌンチャク、赤い剣と青い剣、
そして紫の大鎌がどこからともなく飛んで来てダンテの前の地面に突き刺さった。

337: 2010/03/03(水) 20:35:05.18 ID:zEd69/Q0
ダンテ「お前ら、まず元の姿に戻れ」

すると青いヌンチャクのケルベロスは氷を纏った巨大な三頭の魔狼の姿になり、

赤い剣と青い剣のアグニルドラは首の無い巨人に、

紫の大鎌のネヴァンは妖艶な美しい女性の姿になった。

ネヴァン『あら、遂にあたしの体が恋しくなったの?坊や』

ダンテ「生憎だが今回は違うぜ、また今度な」

ケルベロス『我が牙で何をすれば良いのだ?』

ダンテ「この街にいる悪魔達を片っ端からぶっ飛ばせ。不氏身だから半頃しにして拘束しな」

アグニ『不氏身だと?』
ルドラ『不氏身とな?』

アグニ『それは』
ルドラ『それは』

アグニ&ルドラ『面白い』

ダンテ「…まあいい今は好きに喋りな」

ダンテ「とにかくそういう事だ。人間は絶対に頃すなよ。久々の体だろ、好きに暴れてきな」

339: 2010/03/03(水) 20:44:07.29 ID:zEd69/Q0
ダンテに命令され、三体(四体?)の大悪魔は嬉々として街へ向かっていった。

ダンテ「…ネロのこと伝えるの忘れてたぜ…まあなんとかなるか」

早速やや離れた場所でケルベロスの物であろう巨大な氷柱がビルより高く聳え立った。

それに続けて別の場所では巨大な炎の竜巻が天を貫き、あの双子の悪魔の咆哮が響く。

空のリヴァイアサンは紫の影のような刃でバラバラに寸断されて地に落ちていく。
至る所に紫の巨大な雷が落ちている。

街中に聞きなれたBGMが大音量で流れている。
恐らくネヴァンだ。

ダンテがよくネヴァンで弾いていた曲だ。
知らず知らずの内にダンテは体でリズムを取る。

ダンテ「ハッハ!すげえはしゃいでるなあいつら!」
主の影響のせいか結構やりすぎなのだが、ダンテはそんな事は一切思わなかった。

飼い主がペットの紐を外して野原を自由に駆け回させている感覚に似ているだろうか。

解き放たれたダンテの使い魔達は久々の自由を満喫し、大暴れしていた。

ダンテ「さあて」

残るは力の余波を抑える事。

345: 2010/03/03(水) 20:52:11.12 ID:zEd69/Q0
ダンテ「『スパーダ』があればな…」

『スパーダ』があれば問題ない。ダンテが命じれば『スパーダ』そのものを防波堤にもできるし、
今持っているリベリオンを防波堤にして『スパーダ』でムンドゥスと戦っても良い。
だが今は手元に無い。

他の魔具を使うことを考えたが、全て基準を満たさなかった。

確かに力だけ見れば充分すぎる魔具はいくつかあるが、
穴を塞いで力をせき止めるという使い方には適さないものばかりだ。

防御を無視した超攻撃型の魔具ばかり集めていたツケがこんな所に回ってきた。

ふと一人の人間の少年の事も思い出す。ツンツン頭の少年。あの右手なら防波堤がわりに使えるかもしれない。
だがその人物もここにはいない。

ダンテ「どうすっかな…」

その時、何気なく顔を上げると100m程離れたところにいる白髪の少年が目に入った。

ダンテ「…あの羽…」



―――

349: 2010/03/03(水) 20:59:45.02 ID:zEd69/Q0

一方通行はただ見てるしかなかった。

あのバージルらしき異形の者と魔帝が問答していたと思いきや、
赤いコートの男が乱入し、その男も異形の姿になり、

そして蜘蛛の怪物が現れたと思いきや巨大な黒い球体が現れ、二人の異形の者を取り込んだ。

今度はその球体の中から赤いコートの男が戻ってきて、何やら奇妙な武器が突然出現したと思ったら
その武器が巨大な怪物になり街へ向かっていったり。

一方通行『(…一体何がどうなってやがンだ?)』

そして何やら腕組して顎をさすっていた赤いコートの男と目があった。

一方通行『(…!?)』

その男はゆっくりと近づいてくる。
警戒し、黒い羽を大きく展開する。

ダンテ「よう、お前、けっこういいもん持ってるじゃねえか」

352: 2010/03/03(水) 21:05:20.89 ID:zEd69/Q0
一方通行『…あン?』

ダンテ「その羽」

ダンテが一方通行の羽を眺める。一枚が20m以上の黒い羽。

ダンテ「ハッハ~♪ その匂い、バージルとやりあったんだな。強度は…ギリギリってとこか」

一方通行『テメェ何を…?』

ダンテ「あの黒い玉、その強度を保ったまま全部覆えるか?」

一方通行『…あァ?』
何を言っているのかわからない。

ダンテ「答えろ」

一方通行『…ッ!』
一瞬強烈な威圧感が襲ってきた。

ダンテ「覆ってくれないとよ、この街が消し飛ぶかもしれねえぜ?」

一方通行『…!』
嘘を言ってるようでは無い。それにそんな事を言われれば覆えないとは答えられない。
聞いてるのは建前でこれは命令だ。

一方通行『ッたよクソが!!!覆えばいいんだろ!!!』

355: 2010/03/03(水) 21:13:22.28 ID:zEd69/Q0
一方通行は最大強度を保ったまま羽を限界まで拡大させる。

一方通行『オァァァァァァァア!!!!』

頭痛が襲う。だがそんな事を言ってられない事態だというのがなんとなくわかる。
この男が何者なのかはわからないが、街を守らせようとしてるあたりどうやら味方のようだ。

一方通行『どうだァ!!!』

羽は長さ150m程にまで伸びた。

ダンテ「OKOK充分だ。俺が入ったらすぐに覆ってくれ」
そう言い男は跳躍する姿勢をとった。

ダンテ「ツンツン頭の坊やが来たら通してくれ。それ以外は誰も入れるな。いいな」

一方通行『わァったよ』

356: 2010/03/03(水) 21:18:36.52 ID:zEd69/Q0
ダンテ「…特に、銀髪に青いコートで、赤い大剣を持ってる奴は絶対に…」

通すな そう言いたかった。

なんだかあの戦場にネロを入れてはいけない気がしたのだ。
バージルに合わせるとやっかいな事になりそうだが、他にも何かある気がする。

いつもはかっらきしだが、こういう時のダンテの勘はよく当たる。
妙な胸騒ぎがするのだ。

だが、この少年にあのネロを止められるとは思えなかった。

それならネロが来る前にさっさと倒せば良い。

一方通行『…?』

ダンテ「いや、何でもねえ。じゃあ頼んだぜ」

そしてダンテは跳躍して黒い玉の中へ飛び込んでいった。

一瞬「ツンツン頭の少年」という言葉が一方通行の頭に引っかかったが、
すぐに振り払い、すかさず一方通行はその黒い玉を黒い羽で覆った。


―――

364: 2010/03/03(水) 22:00:44.34 ID:zEd69/Q0
―――

インデックスと神裂はただ座ってその場にいた。

二人とも何も喋らない。

目の前には冷たくなったステイルが横たわっていた。
インデックスはまだ彼の手を握っている。

離れたところから凄まじい轟音が聞こえる。
学園都市中で何者かが戦っているのだろう。

だが二人は静かにその場に佇んでいた。

ふと神裂が顔を上げる。

神裂「…トリッシュさん?」

そこには肩で息をするトリッシュが立っていた。

禁書「トリッシュ…?」

トリッシュ「…見つけたわよ!!!」

二人は状況が良く理解できなかった。

トリッシュ「禁書目録!!!ちょっと頭貸しなさい!!!行くわよ!!!」



―――

367: 2010/03/03(水) 22:05:15.88 ID:zEd69/Q0
―――

御坂と黒子は迫り来る無数の悪魔を退けながら、あの黒い球体へ向かっていた。
彼女の傍らには、電磁力で浮かんでいる『スパーダ』。

あの金髪の女性は、あの後に 用事があるから と言うとどこかへ消えていった。

御坂「どうなってんのよ!!!」

倒しても倒しても、悪魔達はすぐに復活する。

黒子「お姉さま!!!」

振り向くと一体の悪魔がすぐ傍にまで迫っていた。

御坂「あああああ!!!!」
ダンテから預かったエボニーを連射する。悪魔は簡単にバラバラになる。だがすぐに元に戻る。

黒子「キリがありませんの!!!!」
黒子は周囲の瓦礫を飛ばし悪魔の頭部を削り取るも効果が無い。

御坂「…くッ!!!!」

周囲を見渡す。完全に囲まれている。

御坂「(マズイ…!!!)」

その時、突然の轟音と共に悪魔の群れが一気に凍りに覆われた。

369: 2010/03/03(水) 22:12:20.58 ID:zEd69/Q0
御坂「…へ?」

黒子「…何がおこったんですの?」

周囲の悪魔はみな氷の中に閉じ込められている。

二人が状況を掴めずにキョロキョロしていると、
突然地響きが起こり巨大な三頭の狼のような悪魔が姿を現した。

その体は氷に覆われている。

ケルベロス。

御坂「…!!!」
咄嗟に構える。だが人間の彼女ですらわかる。
到底この目の前の怪物には叶わない と。

『なぜ人間の小娘が『スパーダ』を持っておる?』

御坂「…へ?!あ、あんたには関係ないでしょ!!!」

『その剣、そしてその銃は我が主の物。部外者は貴様らだ』

御坂「この銃の主…?もしかしてダンテ?」

370: 2010/03/03(水) 22:18:09.88 ID:zEd69/Q0
『そうだ。英雄スパーダの息子にして我が主、ダンテだ』

御坂「(もしかして味方?敵も倒してくれたし…)」
御坂「ねえ、この剣ダンテに届けて欲しいんだけど?」

『なんだと?』

御坂「この剣、ダンテに届けなきゃならないの」

『成る程…我が主の友であったか…これは無礼を』
『だがその剣、我は持てぬ』

ケルベロスも大悪魔だ。今は完全に解き放たれ、己の肉体を有している。
そのケルベロスにも『スパーダ』は妨害を強めてきている。
あれを直に咥えて持って行くなど不可能だ。

御坂「そんな!なんとか持ってってよ!あたし達じゃ無理!!!」

ケルベロスはふと閃く。
この人間ごと運べば良い。
直接触れて運ぶよりは遥かにダメージは少ない。

『我が背中に乗るが良い。連れて行ってやる。だが運ぶのはお主だ』

374: 2010/03/03(水) 22:24:09.72 ID:zEd69/Q0
御坂「へ?」

ケルベロスはまるで普通の犬のように地面に伏せた。

『何をしておる?乗れ』

御坂「…黒子行くわよ」

黒子「は、はいですの!」

二人の少女は恐る恐るその背中に這い上がった。
ケルベロスは彼女達に傷をつけない為、できるだけ背中の氷の温度を上げる。

それでもかなり冷たいのだが。二人はその巨大な背中に伏せるようにしてしがみ付く。
その上に御坂の力でスパーダが浮いている。

黒子「…お腹が…冷えますの…」

御坂「…我慢しなさい…」

『掴まっておれ』

そしてケルベロスは一気に跳躍し、学園都市を凄まじい速度で駆け抜けた。

伝説の大悪魔、魔狼ケルベロスに二人の人間の少女が乗る。

これだけでも充分物語の題材になりそうなとんでもない事である。
二人の少女は知る由は無いが。

―――

377: 2010/03/03(水) 22:29:30.66 ID:zEd69/Q0
―――

バージルの次元斬と魔帝の赤い斬撃が衝突する。

そしてその場で大爆発を起こした。
お互いが互角であったため相殺されたのである。

バージルはその爆風をもろともせずに一気に駆けていく。

魔帝は翼を大きく広げる。翼全体に赤い稲妻が走る。
そして赤く輝いた羽を大量にバージル目がけて飛ばす。

バージル『ハッ!!!!』

Air trick―――

バージルの体が消える。バージルが一瞬前までいた空間に大量の羽が降り注ぎ、とてつもなく頑丈な異世界の地面が砕ける。

魔帝『―――』

そしてバージルが魔帝の目の前に突如現る。

バージル『ハァァァァァァ!!!!』

魔帝の顔面へ向けて神速で抜刀する。

空中連斬―――

僅かな時間の間にとてつもない回数、『閻魔刀』を叩き込む。
切っ先から発せられた青い巨大な衝撃波が弧を何重にも描く。

379: 2010/03/03(水) 22:35:41.57 ID:zEd69/Q0
だが魔帝もただやられている訳ではなかった。
あの赤い稲妻の大剣が手から離れて浮かび、バージルへ向かう。

バージルの『閻魔刀』と赤い稲妻の大剣が何度も激突する。

魔帝『オァァァァァ!!!!』

バージルは閻魔刀を振り上げ、一気に叩き下ろす。

バージル『Sayaaaaaa!!!!』

兜割り―――

魔帝も赤い稲妻の大剣を振るう。

世界すら破壊させる程の二つ刃が激突する。

衝突の眩い光が暗い異次元世界を照らす。

お互いが弾かれた。

バージルは100m程後ろに跳んで軽く着地する。

魔帝は地響きを立てて50m程押しのけられた。

380: 2010/03/03(水) 22:40:23.81 ID:zEd69/Q0
魔帝『素晴らしい。依然刃を交えた頃とは比べ物にならぬ程強くなっておるな』

バージル『貴様は大して変わってないな。それで完全復活だと?笑わせる。興醒めだ』

魔帝『だが所詮その程度だ。貴様らの父は更に強かったぞ』

バージルは鼻で笑った。

そして再び攻撃を仕掛けようとした時。

弟が帰ってきた。

ダンテ「よう、とっておいてくれたのか?」

バージル『…』

ダンテ「俺も混ざるぜ」

バージル『…好きにしろ』

381: 2010/03/03(水) 22:47:04.08 ID:zEd69/Q0
ダンテは再び魔人化する。

ダンテ『俺は左から行くぜ』

バージル『黙れ』

バージルは左へ向って飛び出した。

ダンテ『相変わらずだぜ全く!!』

ワンテンポ遅れてダンテは右へ向かう。

二手に分かれた兄弟を見るや、魔帝は両手に赤い稲妻の大剣を発生させた。
そして牽制の為に赤い羽を大量に放つ。

さらに周囲へ球体のような物を複数出現させ、そこから赤い槍を放って弾幕を張る。

赤い光の筋が大量に降り注ぐ。

二人はその中を凄まじい速度で駆けて行く。

バージルは軽く身を捻ってかわし、ダンテはリベリオンで弾きながら突き進む。

385: 2010/03/03(水) 22:54:36.65 ID:zEd69/Q0

バージル『ハッ!!!』

バージルは先と同じように再び姿を消す。

魔帝はすぐに反応する。そして己の目の前へ右手の赤い大剣を振り上げた。
その真下にバージルが出現する。

魔帝『二度目は無い!!!』

一気に振り下ろす。

魔帝『…』

だが手ごたえは無かった。いたはずのバージルの姿が無い。

バージル『こっちだウスノロ』

突如背後から声が聞こえ、それと同時に腰の辺りに強烈な衝撃。

魔帝『ぐッ!!!』

バージルは腰の辺りにいる。その位置を予測して左手の赤い大剣を振り向きながら振るう。

そして振り向いた時。
顔から僅か3mの宙に赤い魔人がいた。

ダンテ『よう!!!』

魔帝の顔面目がけて強烈な突きが放たれた。

387: 2010/03/03(水) 23:01:29.07 ID:zEd69/Q0
魔帝『…が!!』

魔帝の固い外皮にヒビが入る。

ダンテ『ハァァァァァァァァァァ!!!!!』

猛烈な速度で突きが連続で放たれる。

ヒビが更に拡大する。

魔帝は左手の大剣を下から凄まじい速度でダンテへ振り上げた。

だがその大剣から妙な感触が伝わってきた。

魔帝『―――』

すぐに原因はわかった。

青い魔人が猛烈な速度で飛んで来て、魔帝の顔面へ『閻魔刀』を突き立てた。
バージルは魔帝の剣の上に乗っていたのである。

そしてその振り上げられる慣性を利用したのである。

魔帝『―ぐぉぉぉぉぉ!!!』

バージルの『閻魔刀』が魔帝の固い外皮を貫く。

390: 2010/03/03(水) 23:09:45.69 ID:zEd69/Q0
魔帝『小僧!!!』

バージルはそのまま魔帝の顔面に着地し、体を横にずらす。

そしてダンテがリベリオンを大きく振り上げ―――


ダンテ『楽しい楽しい工作の時間だぜ!!!』


『閻魔刀』の柄頭へ叩き付けた―――



何度もぶっ叩く。

『閻魔刀』が杭、『リベリオン』が槌となって魔帝の頭を打ち付ける。

そして遂に『閻魔刀』の刃が全て魔帝の頭部へめり込んだ。

バージル『ハァァァァァァ!!!!』

『閻魔刀』の鍔が魔帝の外皮に当たった音と同時に、
バージルが魔帝の顔面を踏み一気に『閻魔刀』を横へ押し出す。

ダンテも『閻魔刀』の柄を横から蹴る。

身の毛がよだつ様な切断音と共に、魔帝の鼻から左側へ『閻魔刀』が突き進み、
耳を切断して振りぬかれた。

魔帝『おおおおおお!!!!』

393: 2010/03/03(水) 23:18:11.44 ID:zEd69/Q0

突如魔帝の全身が赤く輝き始めた。

何かを察知したダンテとバージルは跳躍する。

その瞬間、魔帝の全身から赤い衝撃波が発生した。

二人はそれぞれがその衝撃波へ斬撃を放ち相頃し、魔帝から150m程離れた場所へ着地した。


ダンテ『ハッ!!いいねえ!スカーフェイスはモテるって言うし良かったじゃねえか!』

魔帝の顔に巨大な切れ込み。
相当のダメージを負ったのか、体が僅かに震えている。

体中にダンテとバージルがつけた傷。

ダンテ達からは見えないが、腰の部分にもバージルが作った巨大な傷があった。

バージル『…興醒めだな』

395: 2010/03/03(水) 23:26:13.88 ID:zEd69/Q0

魔帝『…凄まじい…貴様ら二人なら、かのスパーダに匹敵するかもしれぬな』

ダンテ『その魔法陣を解いて大人しく封印されるってんなら命だけは見逃してやんぜ』

魔帝『…一つ…スパーダがなぜ我を殺せなかったかわかるか?』

ダンテ『俺と同じく優しかったんだろ?』
ダンテがふざけながら答える。


魔帝『違うな。我は不氏身だからだ』


その言葉と同時に背後の魔法陣の輝きが増す。

ダンテ『…つくづく嫌気が指すぜ…』

バージル『…同感だ』

みるみる魔帝の体の傷が塞がっていく。
そして完全に無傷になった。

魔帝『これが我が真の力だ』

魔帝は己でさえ創造できるのである。

不滅の存在。

398: 2010/03/03(水) 23:33:56.47 ID:zEd69/Q0
ダンテ『人の事は言えねえけどよ…あれはかなりの反則だぜ』

バージル『ああ』

さすがのこの二人も、魔帝の真の力を目の当たりにして驚いていた。

バージル『…面倒だ』

ダンテ『…だな』


魔帝は己を作り直すと同時に、力の構成も変えたのか、全身から更に力が溢れていた。


より攻撃的になっている。


魔帝が手を掲げる。そして赤い稲妻が巨大な剣を形作った。

魔帝『準備運動は終わりだ。そろそろ本番といこうではないか』

魔帝『来ぬのか?ならばこっちから行くぞ』

魔帝はその巨大な赤い剣をダンテたちへ向けて投げた。
大気を切り裂いて凄まじい速度で突き進んでくる。

399: 2010/03/03(水) 23:40:38.40 ID:zEd69/Q0
ダンテ『―――』

二人は瞬時に横に跳ねてそれをかわす。

放たれた赤い大剣が地面に突き刺さり、地響きを立てて巨大な粉塵をあげる。
その攻撃は、人間界程度の世界なら一撃で崩壊してしまう程のとんでもない力が篭っていた。

事実、魔帝はかつてこの赤い稲妻の大剣でいくつもの世界を破壊させてきた。

この頑丈な異世界ですら大きく軋んだ。

あれが直撃したらダンテやバージルですらタダでは済まない。

ただ、直撃したらの話だ。

この二人の歴戦の猛者がそう易々と食らう訳がなかった。

ダンテ『どこ狙ってやがる!!!』

魔帝は両手を広げる。
その上に今度は10本、赤い稲妻の大剣が現れた。そして更に増えつつある。

ダンテ『ハッハ~♪こいつは大盤振る舞いだぜ!』

魔帝『ほざいてろ小僧』

そして二人のスパーダの息子へ赤い大剣が放たれた。

400: 2010/03/03(水) 23:48:02.72 ID:zEd69/Q0
ダンテとバージルにはそれぞれ五本ずつ放たれた。

ダンテは最初の二本を難なくかわす。
そして三本目を避けようとした時。向かってくる大剣達が突然向きを変え、進路を修正した。

ダンテ『うぉ!』

体を捻り、三本目と四本目をギリギリの所でかわす。
強烈な剣風によって魔人化している頑丈な外皮に、僅かに筋が入り赤い液体が散った。
そして五本目が目の前に迫っていた。

避けられない―――。

ダンテはそのまま一気に前に踏み出し、リベリオンに全ての力を集中させる。

ダンテ『Yeeeeeeeeahhh!!!!!!!』

Stinger―――

ダンテの十八番の『突き』。単純にして一撃の破壊力は最大級。
ダンテは全ての力を剣先に集中させて、全力で赤い大剣へ向けて放つ。

401: 2010/03/03(水) 23:53:44.31 ID:zEd69/Q0
二つの莫大な力が衝突する。

お互いの赤い光が混ざり輝く。

異世界全体が大きく震えた。

凄まじい地響きと共に硬い地面が捲り上がる。

そして相殺された。

放たれた赤い大剣の威力を正確に知ることができた。
魔人化ダンテが全ての力を篭めた本気のStingerと互角だ。

ダンテ『(ありゃあ、直撃したらマジでヤバイな)』

限度は3発程度だろう。4発直撃したらさすがのダンテでも氏ぬ。

ふとバージルの方を見た。どうやらバージルも避けきれずに相殺せざるを得なかったらしい。

立ち止まっていて、その前の地面が大きく抉れていた。


―――

409: 2010/03/04(木) 00:09:15.59 ID:0sEXJ3Q0


ネロと上条は黒い球体へ向かっていた。

ネロの右手が僅かに光っている。
あの球体の中にダンテとダンテの兄、そして魔帝がいる。

だが反応はなぜか凄く小さい。
何かに遮られている様な感覚だ。

思いを巡らせていると、目の前が急に開けた。

ここでもかなり大規模な戦いがあったのか、周囲500m程が更地になっていて瓦礫で覆われていた。

そしてあの黒い球体の全体が見えた。

上条「…?」

上条はふと気付く。

黒い球体の傍に白髪の少年が立っている。
背中から黒い何かが伸び、あの球体と繋がっている。

ネロもその人物に気付いたようだ。

上条「一方通行…?」

ネロ「知り合いか?」

上条「…ああ」

―――

435: 2010/03/04(木) 17:20:25.79 ID:0sEXJ3Q0
―――

一方通行『ぐァ…!!!』

一方通行は球体から溢れ出てくる力をなんとか押さえ込んでいた。
球を覆っている黒い羽が軋む。

とんでもない力だった。

まるで巨大な核爆弾がマシンガンのように連続で爆発し続けているようだ。
その波が延々と押し寄せてくる。

一方通行『…はッ…』

全てを演算に集中させる。
頭痛が激しくなる。だがここでやめる訳にはいかない。
僅かでもこの力を外に漏らせば学園都市は吹き飛んでしまう。

状況の全体像は掴めないがこれだけはわかる。

中で凄まじい力を持った者同士が戦っているのだ。
彼の羽が抑えてるこの力はその戦いから滲み出た僅かな副産物にしか過ぎない。

この学園都市最強の名前を冠する自分が、虫けら同然の強大な戦い。

最強と思っていた己の力が、今は塵に等しい。

だが。

436: 2010/03/04(木) 17:24:55.92 ID:0sEXJ3Q0
その怪物の一人であろうあの赤いコートの男が託してきた。

今、一方通行にしかできない事。

それをやっている。

一方通行『…ははッ…!』

嬉しかった。

殺戮しかできなかったこの力が世界を、あの少女をしっかりと守っている。

破壊を引き起こす矛ではなく、破壊を防ぐ盾として。

破壊者では無く、守護者として。

一方通行『…上等だぜェ…!』

今の自分は決して禍の者ではない。

己の命に。

存在に価値があった。

一方通行は笑っていた。
それはいつもの邪悪な笑みではなかった。

438: 2010/03/04(木) 17:29:17.64 ID:0sEXJ3Q0
その時、一方通行は気配に気付き振り向いた。

一方通行『テメェ…戻ってきたのか?』

少し離れた場所にあのツンツン頭の少年が立っていた。
その隣には青いコートに銀髪の、巨大な赤い大剣を背負ったちょうど20歳あたりの青年。

上条「お前、何やってんだ?」

一方通行『るせェ…話かけんじゃねェ…』

上条はその一方通行のつらそうな顔を不思議そうに眺めた。

ネロ「力を押さえ込んでんのか」

ネロには一方通行が何をやっているのかがわかった。

一方通行『…あァ…そうだ』

上条「…」

上条「なあ、この中に赤いコートの男入って行かなかったか?」

一方通行『…はッ!!』
彼はわかった。ツンツン頭の少年。あの男が言っていたのはこの上条の事だ。

一方通行『入るならさっさと入りやがれ…少し開けてやるからよォ』

439: 2010/03/04(木) 17:35:24.72 ID:0sEXJ3Q0
上条「…ああ」

ネロ「行くか」

一方通行「おっと、テメェはいれねえぞ」
ネロを見て言う。あの男に言われたのだ。ツンツン頭以外は入れるなと。

上条「おい!!!待てよ!!!この人も関係者だぜ!!!ってか俺よりもこの人を入れてくれよ!!!」

ネロ「無理やりでも入るぜ。二人でな」

一方通行はネロを見る。良く見ると、あのバージルや赤いコートの男とそっくりだ。
それに全身から強烈な威圧感を発している。

一方通行『(チッ…こいつも『怪物』かよ…)」
もうなんとなくわかる。何度もこの感じは味わった。この男は自分より遥かに強い。この中で戦うレベルの者だ。

一方通行『なンならさっさと入りな!!』

上条「おう!!…ん?」

ふと上条は視界の先のあるものに気付く。球体の向こう側に何かが見える。
球体の陰になっていて良くわからない。

上条「ちょっと待ってくれ」

上条はそっちの方へ歩いていく。
気になったネロもついていく。

440: 2010/03/04(木) 17:39:32.82 ID:0sEXJ3Q0
上条「…!」

そこには、あのバージルの浅葱色の剣で地面に磔にされている巨大な蜘蛛がいた。

上条「こいつも…不氏身なのか?」

ネロ「…だろうな」

その蜘蛛は呻きながら苦しそうに悶えていた。

上条「『解放』しようぜ」
なぜ『解放』という表現を使ったのかは上条自身でも良くわからなかった。
あの巨大な鳥の最期を見たせいなのか、自然にその言葉が出た。

ネロ「だな」

ネロはその蜘蛛の頭の横に行き、レッドクイーンを掲げた。

そして振り下ろし、首を切り落とした。

すかさず上条が右手で触れる。
巨大な蜘蛛はゆっくりと蒸発するように消えていった。

その最中、安堵したかのような深く息を吐く音が上条とネロの耳に聞こえた。

上条「…」

ネロ「行くぞ」

442: 2010/03/04(木) 17:43:32.64 ID:0sEXJ3Q0
一方通行『いィか、開けるのは一瞬だけだぞ』

上条「ちょっと待ってくれ、ほんの少しだけ試しに開けてくれないか?俺の右手が効くかどうか試したいんだ」
もしもこの力の乱流に効かなかったら上条は一瞬で砕け散ってしまうだろう。

一方通行『わァったよ。構えてろ』
そう言い、上条に当たるように僅かに羽に穴を開けた。

その瞬間中から凄まじい爆風が噴き出してきた。
ほんの僅かなのに巨大な地響きが起こり、地面が割れ始め、
周囲の瓦礫がその力を浴びて存在を確立できずに粉となって散っていく。

だが、上条の周りだけは異変が無かった。
どうやら右手を中心にして2m程の範囲の世界の崩壊は打ち消しているようだった。

上条「…よし!大丈夫だ!」
少し安堵する。終わってみてから自分で思う。この実験、もし右手が効かなくて失敗してたらどうすんだと。

ネロ「なんならさっさと行くぜ」

上条「おう!!」

その言葉と同時に一方通行は羽にちょうど二人が通れるくらいの穴を開けた。

上条とネロがすぐに跳躍して飛び込む。

そして一方通行はすぐに再び穴を閉じた。


―――

443: 2010/03/04(木) 17:49:40.40 ID:0sEXJ3Q0
―――

ダンテとバージルは止まっていた。

二人ともやや呼吸が荒いでいる。

周囲の地面には、放たれた魔帝の赤い大剣によって作られた巨大な穴。
この世界の維持にも魔帝の力が使われているのか、
その穴が氷が軋むような音をたてて塞がっていく。

魔帝が同時に操れる赤い大剣は10本。
そしてそこに大量の赤い羽の弾幕。

ダンテとバージルは近付けないでいた。
そして魔帝も決定打を与えられなかった。

膠着状態だ。

だが分は魔帝にある。
ダンテとバージルには限界点があるが、不氏身の魔帝にはそのゲームオーバーの心配が無い。

ダンテ『バージル、どうするよ?』

バージル『…』

その時だった。突如二つの人影が現れる。

外からこの異世界に入ってきた者達。

上条とネロ。

444: 2010/03/04(木) 17:54:25.79 ID:0sEXJ3Q0
ダンテ『お前も…来たのか…?』

上条には来て欲しかった。あの右手は使える。

だがネロには来て欲しくなかった。

まさかこの二人が一緒に行動していたとは。

ネロは着地すると同時に固まった。

バージルの姿を見たのだ。
その瞬間、右手から言いようの無い奇妙な感情が溢れてきた。

ネロにはその感情が良くわからなかった。

彼は生まれつきの孤児。

知る術がなかったのだ。

その温もりが何なのかが。

ネロ「…あんた…」

そこで言葉は止まった。
何を喋ればいいか分からなかった。
聞きたい事がたくさんあるはずなのに。

445: 2010/03/04(木) 17:59:54.67 ID:0sEXJ3Q0
そのネロの沈黙を察してか、ダンテが大きな声をあげる。

ダンテ『…来ちまったもんはしゃあねえ!!』

ダンテ『イマジンブレイカーの坊や!!』

上条「…お、おう!!」
上条は魔帝の姿を見て呆然としていたが、そのダンテの声によって我に返る。

ダンテ『動けるか?』

上条「ああ!!!」

ダンテ『ネロ、色々あるだろうがそれは後だ。とにかくお前も加勢して貰うぜ』

ネロ「…ああ、わかったぜ!」
ネロの体が青く輝き、背後に青い巨人が現れた。

バージルはそんなネロの魔人化を静かに眺めていた。

その視線にもネロは気付く。
何だか良く分からないが嬉しくなった。

なぜか、もっと見て欲しい気持ちだ。

ネロ『(何だってんだこれ…)』

446: 2010/03/04(木) 18:02:58.22 ID:0sEXJ3Q0
ダンテ『実はな、あの野郎不氏身なんだ』

ネロ『それは経験済みだぜ』

上条「再生してるところなら俺の右手が効くぜ」

ダンテ『なら話は早え。俺ら三人であのお高くとまってる野郎をぶっ潰し、限界まで力を削る。そこにお前の右手だ』

バージルとダンテでだけではギリギリ間に合わないのだ。魔帝がすぐに自分を創り直してしまう。
だがそこにネロが加われば。

魔帝を頃しきる事ができる。

そしてそこに上条の右手。

猶予は僅かだ。魔帝はあの巨体でもすぐに創り直してしまう

上条「俺だな」

ダンテ『これでいいか?』
ダンテがバージルに問う。

バージル『…さっさとやるぞ』

ダンテ『OK!!!始めようぜ!』

448: 2010/03/04(木) 18:07:35.99 ID:0sEXJ3Q0
魔帝『話は終わったか?』

ダンテ『待たせたな!』

ネロ『魔帝か、ああいうカッコ見ると反吐が出るぜ』
かつてフォルトゥナに現れた『神』も似たような姿だ。

バージル『行くぞ』

その声と同時に三人の魔剣士が動く。
上条は巻き添えを食らわないように少し下がる。

左へバージル、右へダンテ、そしてネロが正面からそれぞれが猛烈な速度で駆けて行く。

魔帝『来い!!!』

魔帝は翼を広げ両手を掲げた。10本の赤い大剣が現れ、3本ずつそれぞれ三人の魔剣士へ放った。
それに続けて赤い羽が大量に降り注ぐ。

だが三人はその赤い大剣をかわす。そして赤い羽の弾幕も弾く。

魔帝『…止められぬか』

やはり止めるには一人に最低5本放てばならない。魔帝にとってやや分が悪い。
だが魔帝は笑っていた。残った一本を浮かべる。

魔帝『だが、まずは一匹』

そしてその赤い大剣を上条へ向けて放った。

449: 2010/03/04(木) 18:12:01.34 ID:0sEXJ3Q0
上条「へ?」

上条は全く反応できなかった。
ベオウルフを装備している今の彼でもあの大剣が近くを通っただけで蒸発する。

だが。

上条「…うぉ!!!」

その赤い大剣が上条の目の前で急停止した。
青い巨大な腕が鷲掴みにしていた。接触している部分から巨大な火花が散っている。

ネロ『おっと!』

ネロは頭上を通過していく赤い大剣をデビルブリンガーで掴んだのである。

ネロ『こいつは返品するぜ!!!』

そしてその赤い大剣を思いっきり引き寄せ―――

魔帝へ向けて投げ返した―――

457: 2010/03/04(木) 19:00:26.08 ID:0sEXJ3Q0
魔帝『なッ―――』

赤い大剣が魔帝の胸を貫く。
巨大な穴が空く。

魔帝『小僧ォォォォォォォ!!!』

ネロ『いいのか?足元がお留守だぜ!』

その言葉と同時に魔帝の膝の辺りに強い衝撃。
ダンテとバージルだ。

二人はそのまま魔帝の足を刻みながら一気に駆け上がる。

魔帝『おおおおお!!!!』
だが魔帝の全身が赤く輝き始める。

ダンテ『またかよ!!』

バージル『チッ…』

二人が跳躍して離れる。
その瞬間先と同じく赤い衝撃波発生した。

ネロは上条の前に立ち、デビルブリンガーをかざしてその衝撃波から彼を守った。

458: 2010/03/04(木) 19:05:13.16 ID:0sEXJ3Q0
上条「す、すまん…」

ネロ『気にすんな』

ダンテとバージルはゆっくりと着地する。

ネロ『おい、やっぱきついんじゃねえか?俺が離れちまうとこいつ氏んじまうぜ』
ネロが背後の上条を親指で指しながら言う。

上条「…」
上条はもどかしかった。切り札でありながら足かせにもなってしまっている。

ダンテ『どうするよ?』

バージル『…』

魔帝の胸の大穴はあの衝撃波が巻き起こる前に既に塞がっていた。
想像以上に創り直すスピードが速い。

460: 2010/03/04(木) 19:13:29.68 ID:0sEXJ3Q0

インデックスのジョージビームの何万倍何億倍もの力の塊なので。

魔帝『小僧ッ…!!貴様!!』

どうやらネロに胸を貫かれたのが気に入らないらしい。

いいじゃねえか、文字通り減るもんじゃねえし とダンテは頭の中で呟く。

魔帝『絶望を見せてやる。苦痛の中で無様に氏ぬが言い』

ネロ『へえ、何を見せてくれるってんだ?期待して良いのか?』

魔帝『これを見てもその軽口を続けられるか?』

その瞬間ダンテ達と魔帝の間、ちょうど中央に一人の女性が現れた。



ネロ『――――嘘―――だろ―――?』



その女性の事は良く知っている。

ネロの最愛の女性。

461: 2010/03/04(木) 19:19:37.17 ID:0sEXJ3Q0
ネロ『――――キリエ!!!』


ありえない。ここにいるはずが無い。あれは幻、まがい物だ。

そう頭で考えても彼の心が大きく揺れる。

横でダンテが何やら叫んでいるようだが耳に全く入ってこなかった。


そして。


キリエ『ネロ―――!』



その聞きなれた声で彼の理性が全て飛んだ。

ネロ『キリエェェェェェェェェェ!!!!』

一気にキリエに向かって駆け出す。

464: 2010/03/04(木) 19:24:14.70 ID:0sEXJ3Q0
ダンテ『行くな!!!ネロ!!!!』

魔帝は創造したのだ。ネロの最愛の人物と瓜二つの存在を。
ダンテは手を伸ばすも、僅かな差でネロがすり抜けた。
その時、青いもう一つの影が急に飛び出す。

バージル。
彼は無言のままネロを追う。ダンテも続く。

魔帝『はははははははは!!!』

魔帝は巨大な笑い声を上げた。
そして赤い大剣を五本ずつバージルとダンテへ放つ。

ダンテ『ッ!!!』

二人は足止めされる。その間にもネロは我を忘れて突き進む。

魔帝『さあ来い!!!見せてやる!!!』

ネロの手がキリエへ届きそうになった時。
魔帝の赤い目が光る。そしてそこから赤い槍が放たれた。

その槍はキリエの背中へ向かい―――

華奢な体を貫いた―――

キリエがネロの胸へ倒れこむ――

465: 2010/03/04(木) 19:29:39.11 ID:0sEXJ3Q0
ネロ『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!』

ネロの悲痛な叫びが響く。
ダンテ達は続けて放たれる赤い大剣と羽の弾幕によって近付けない。

ネロ『キリエ…!!!キリエ…!!!』

キリエ『ネ…ロ…』

完璧だった。体温、香り、ネロの顔にあたる息。全てが忠実に再現されていた。
もしネロに理性が残っていたとしてもこれを無視することなど不可能だった。
そして模造品のキリエは目を閉じた。呼吸が止まる。心音が停止する。

ネロの魔人化が解ける。

ネロ「キリ…エ…!!あ゛ぁ゛ぁ゛……!!!」

その体を抱きしめる。大粒の涙がネロの頬を伝う。
完全に彼の心は破壊された。絶望の底に叩き落された。
模造品のキリエは風にかき消されるように消えた。

ネロは呆然としたままゆっくりと顔を上げた。

その時。

彼の虚ろな目に迫ってくる赤い大剣が映る。

そのまま―――

魔人化していないネロの胸を貫いた―――

468: 2010/03/04(木) 19:34:34.53 ID:0sEXJ3Q0
バージル『―――』

ダンテ『Nero―――!』

地響きと共に後方に大きく吹っ飛ばされ、仰向けに倒れる。

その体が地面に叩き付けられた瞬間、胸を貫いていた赤い大剣は割れるように消滅した。






魔帝『素晴らしい』







魔帝『これで一人目だ』

469: 2010/03/04(木) 19:36:42.92 ID:0sEXJ3Q0
ネロ『―――』


薄れ行く意識の中で、ネロは感じ取っていた。

右手から。
魂の繋がっている相手から。

このダンテの兄から。


今、一つの感情が一気に流れ込んできた。

孤児のネロが今まで知らなかったもの。

しばらく前から感じていた、この不思議な温もり。

その正体がようやくわかった。


絶望の底へ叩き落された彼の心に一筋の光が差し込む。


その光が彼の心を癒す。

470: 2010/03/04(木) 19:41:28.96 ID:0sEXJ3Q0
ネロはその男の顔を見た。
魔人化しているせいで表情がわからない。

だが右手から感情が伝わってくる。

ネロ「…顔…見せてくれ…」

バージルは何も喋らなかった。

無言のまま魔人化を解き、『人』の姿に戻った。
その顔は普段と変わらず無表情だった。


ネロはその顔を見て満足したように微笑んだ。


そして。



ネロ「…親父…キリエを…」



その言葉を最期にして瞳孔が完全に開く。

ネロの瞳から命の光が失われた。

473: 2010/03/04(木) 19:47:13.52 ID:0sEXJ3Q0
バージル「―――Nero」

表情は変わらなかった。

だが。

彼が決して表に見せない感情に、瞳だけは素直に反応していた。
今まで以上に赤く輝く。

『閻魔刀』を右手で抜刀し、左手の鞘を投げ捨てる。

ゆっくりとネロへ近づいて行き傍に屈む。

そっとネロの顔に左手を被る。

そのまま彼のまぶたを撫でるようにおろした。


そしてネロのレッドクイーンを左手にとる。


立ち上がり再び魔人化する。

レッドクイーンのアクセルを捻る。

彼の力が流れ込んで青い炎が噴き出す。

右手の『閻魔刀』と左手のレッドクイーンを交互に振り、挙動を確認する。

478: 2010/03/04(木) 19:52:48.81 ID:0sEXJ3Q0

ダンテは無言のままそれを見ていた。

その顔はからはいつもの薄ら笑いが消えていた。
無表情。

ただ、いつもよりも遥かに強く赤く輝く瞳が彼の感情を表していた。


彼は完全にキレていた。


ダンテ『ギルガメス。来い』

静かに呟く。

その瞬間、ダンテの背中に金属製の小さな紫と銀の羽根が生え、
同時に両手・両足に同じ色の篭手と脛当てが出現した。

篭手と脛当てには鋭い刃がある歯車がついていた。

ダンテは調子を確かめるように手足に力を篭める。
それと同時に歯車が凄まじい速度で回転し、巨大な火花と熱風が発生した。

481: 2010/03/04(木) 19:58:07.45 ID:0sEXJ3Q0
もういい。

あの赤い大剣の直撃なんかどうでも良い。



何発でも食らってやる。



手足が無くなってでも。


氏んででも。

あのクズ野郎の四肢を切断し、頭を切り落とし、そしてミンチにする。


二人のスパーダの息子は完全に吹っ切れた。


最早人間の血は影を潜めていた。

頃す。

頃す。

どす黒い凶悪な怒りだけだった。

483: 2010/03/04(木) 20:03:16.44 ID:0sEXJ3Q0
上条は何も喋れなかった。
何を言えばいいか分からなかった。


ダンテ『下がってろ』


ダンテ『呼んだらすぐに来い』


ダンテが上条に向けて放った。
その声は強烈な殺意に溢れていた。
上条は言葉を返すこともできず、ただ下がる。


魔帝が再び手を掲げる。

赤い大剣が10本その上に現れた。


二人の魔剣士は一気に飛び出す。

485: 2010/03/04(木) 20:06:41.85 ID:0sEXJ3Q0
―――

一方通行は再び気配を感じた。

一方通行『(また誰かきやがったか)』

敵か味方か。敵だったらまずい。
今、彼は全ての力を球体の余波を押さえ込むのに使用している。

意を決して振り返る。

そこには三つの人影があった。

金髪の妖艶な女、黒髪に長い刀を持った奇妙なカッコをした女。

そしてあの白い修道服を着た少女。

インデックス、トリッシュ、神裂だ。

一方通行『テメェも戻ってきやがったのか!!!』
インデックスへ声を飛ばす。

彼女がいるということはどうやら敵ではないらしい。

トリッシュ「ありがとうね、時間稼ぎになったわ」

486: 2010/03/04(木) 20:11:33.06 ID:0sEXJ3Q0
一方通行『…あァ?』

トリッシュ「もうちょっとそのままにしてて。禁書目録、こっちに来て」

インデックス「…うん」

一方通行『…?』
インデックスの目がどこか虚ろだ。

そんな一方通行の視線を無視してトリッシュはインデックスの頭に手を乗せる。
その手が少し放電し、インデックスが一瞬小さく仰け反る。

一方通行『テメェ!!!何してやがる!!!』

インデックス「いいの!!」

トリッシュ「少し我慢してね」
しばらくして一際大きな電気が走る。
インデックスの体が大きく跳ね、その瞬間彼女の足元に直径10m程の魔法陣が出現した。

トリッシュの力が使われているため、金色に輝いている。

一方通行『なンなン…?』
一方通行は言いかけたところで異変に気付いた。

一方通行『…あァ?』

球体からの力が止まったのだ。

488: 2010/03/04(木) 20:15:28.04 ID:0sEXJ3Q0
トリッシュはインデックスの脳内の術式を組み合わせ、即席の防波堤を築いたのである。

厳密に言うと防波堤ではない。

球体の周りの空間と次元を捻じ曲げ、力が逆に流れるようにしたのである。
余波の流れは球体の外に出ると同時に180度向きを変え、今度は再び球体へ向かう。

トリッシュ「…うまくいったみたいね」

思いつきのやっつけの策が予想以上にうまく動いて安堵する。
だが完璧ではなかった。

非常に不安定で、いつ術式が崩壊するかわからない。

一方通行『よくわかンねェが…助かったぜ』
実は一方通行もそろそろ限界だった。もってあと10分って所だろう。

トリッシュ「あなたにはまだここにいてもらうわよ。これが壊れた場合の予備だからね」

どうやら一方通行はまだ解放されないらしい。
だが別に嫌ではない。ここまで来たのなら、最後まで付き合う。

その時、また別の気配を感じた。
そっちの方向に目をやると、これまた見知っている人物が立っていた。

一方通行『テメェもかよレールガン?』

489: 2010/03/04(木) 20:22:12.16 ID:0sEXJ3Q0
トリッシュ「あなた達まだ届けてなかったの!!?」

トリッシュが御坂と黒子、そしてその上に浮かぶ『スパーダ』を見ながら叫ぶ。

御坂「えッ!!あ、あッすみません!!!」

御坂がその大悪魔の剣幕に押されて慌てて謝る。
だが仕方ないのだ。

街中の悪魔達が皆この『スパーダ』に群がってきたのだ。

御坂達の後方からケルベロスがのそのそと現れた。
『スパーダ』に蝕まれながら、大量の悪魔を退け続けた彼はかなり疲弊していた。
普通の犬のように舌を出して激しく呼吸している。

ケルベロス『遅れたのは…我の責任だ』

トリッシュも落ち着く。

トリッシュ「まあ…しょうがないわね」

御坂「で、ダンテはどこ?剣を届けたいんだけど」

トリッシュ「あの中」
トリッシュは球体を指差す。

490: 2010/03/04(木) 20:24:31.01 ID:0sEXJ3Q0

トリッシュ「さて…どうしましょ」

あの力の乱流にこの少女は耐えられない。
中に入ってしまえば一瞬で体が消えてしまう。

トリッシュはこの魔法陣に力を供給しているため離れられない。
ケルベロスもかなり疲弊し、歩くのがやっとだ。
神裂もボロボロだ。

ふとトリッシュは一方通行を見た。

一方通行もその視線に気付き、状況をなんとなく理解する。

一方通行『俺が…届けりゃいいんだな』

トリッシュ「ええ」

492: 2010/03/04(木) 20:29:26.94 ID:0sEXJ3Q0
一方通行『レールガン、それ寄越せ』
そう言い、ベクトル操作で『スパーダ』を引き寄せる。

御坂「…あとこれも!!」

御坂はダンテから預かっていたエボニーを一方通行へ投げた。
一方通行はそれをベクトル操作して受け取る。

御坂「…頼むわよ!!!」

一方通行『ハッ!!』
一方通行は乱流に耐えるため、自分の体を黒い羽で覆う。

一方通行『穴開けてくれ』

トリッシュ「必要ないわ。その剣を前に突き出せばそのまま通れるわよ」

一方通行『そゥか』
『スパーダ』を体の前に持っていく。
大丈夫とは言われても、やはりあの中に飛び込むのは少し気が引ける。

一方通行『クソがッ!!!上等だッ!!!』
意を決して、黒い羽で体を飛ばす。

一方通行『―――』

『スパーダ』は何の抵抗も無く簡単に球体の中へめり込んだ。
そして一方通行もその後に続く。

493: 2010/03/04(木) 20:34:34.36 ID:0sEXJ3Q0
―――

ダンテとバージルは一気に突進する。

ダンテの足のギルガメスが地面と衝突して巨大な火花を散らす。

バージルの持つレッドクイーンから溢れ出た青い炎が尾を引く。

魔帝は再び赤い大剣を五本ずつ放った。

ダンテとバージルは先と同じように最初の四本をかわす。
だがそこに避けきれないコースで五本目が来る。

魔帝『バカの一つ覚えだな!先と同じだぞ小僧共!!』

だが。ダンテとバージルはそれを避けなかった。

二人の胸を同時に赤い大剣が貫通する。

しかしそのまま前に踏み出す。

魔帝『―――!』

ダンテは血が混ざった火花を。
バージルは血が混ざった青い炎を引きながらそのまま突進してくる。

魔帝は更に攻撃を加えようと再び赤い大剣を作り出す。

だがそれは間に合わなかった。

494: 2010/03/04(木) 20:38:52.25 ID:0sEXJ3Q0
ダンテ『Yeeeeeeeeahhh!!!!!!!』

バージル『Sayaaaaaaaaaa!!!!!!』

閻魔刀、リベリオンの強烈な力が魔帝の両足首へ激突する。

魔帝『ぐぉッ…!!』

魔帝はバランスを崩す。

二人は地面を蹴り高く跳躍する。

ダンテは魔帝の腹の辺りまで来ると腕を畳む。
同時にその手のギルガメスの歯車が凄まじい勢いで回転し、20m程の巨大な火花が飛び散る。

ダンテ『BLAST OFF!!!!!!』

そして強烈なアッパーを叩き込んだ。
直撃の瞬間凄まじい爆発を起こし、魔帝の固い外皮が砕け中の赤い肉が見える。

限界を超えた力で放ったためダンテの拳からも血が噴き出す。

魔帝の巨体が宙に舞う。

495: 2010/03/04(木) 20:45:38.35 ID:0sEXJ3Q0
だが魔帝は落ちて来なかった。

魔帝『小癪な!!!!』

魔帝は空中で己の体を止めたのである。
そして赤い大剣を真下のダンテへ向けて放とうとした時。

上から炎の音が聞こえた。

魔帝が上を見上げると同時に。

バージル『ハァァァァァァァァァァァァ!!!!!』

バージルが青い炎が噴き出しているレッドクーンをその顔面に一気に振り下ろした。


MAX ACT―――!

兜割り―――


魔帝の顔面の外皮が飛び散り、レッドクイーンは食い込む。
レッドクーンを握るバージルの手からも血が噴き出す

バージルは突き立てたまま更にレッドクイーンのアクセルを捻る。
青い炎が噴き出して魔帝の頭の中を焼く。

そしてその大きく開いた傷穴目がけて、『閻魔刀』で特大の次元斬りを放った。

496: 2010/03/04(木) 20:52:31.56 ID:0sEXJ3Q0
バージルの右手が軋む。激痛が襲う。
だがそれでも彼は力をセーブすることなく何度も閻魔刀を振るう。

そしてレッドクイーンを引き抜き、両手の剣を大きく振り上げ

二連兜割り―――

同時に叩きおろした。

魔帝『おおおおおおお!!!!』

魔帝の頭部上半分が無くなる。

そのまま地面に叩き付けられる―――

―――ところをダンテが真下からギルガメスで蹴り上げる。

背中へ強烈な蹴りを食らって魔帝はえびぞりになった。

更にダンテはギルガメスで連続蹴りを放つ。

ギルガメスの火花と、ダンテの足から噴き出した血と、魔帝の白い外皮の欠片が飛び散る。

ダンテ『ハァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!!』

魔帝の巨体が真下からのその連撃のせいで地面に落ちることができずに空中に止まり続ける。

498: 2010/03/04(木) 20:57:42.38 ID:0sEXJ3Q0
真上からバージルが、先ほどダンテがつけた魔帝の腹の傷へレッドクイーンを突き刺す。
そして柄頭を思いっきり蹴る。

青い炎を吹きながらレッドクイーンは魔帝の体を貫通し、裏側のダンテの方へ飛び出す。

ダンテは飛び出して来たレッドクイーンを掴み取り、
アクセルを捻りなおして魔帝に突き刺し、バージルと同じように柄頭を蹴る。

レッドクイーンがその主の仇を討つかのように魔帝の腹を焼き双子の間を往復する。

バージルはそのレッドクイーンが帰ってきて飛び出して来たと同時に閻魔刀で渾身の一撃を振るた。
ダンテもリベリオンを振るった。

二つのとてつもない斬撃を受け、魔帝の体が腹部から切断され二つになった。

ダンテ『来い!!!!』

ダンテはすかさず上条を呼んだ。

上条「おぁあああああああ!!!!」

その声に反応して上条も一気に突進する。

500: 2010/03/04(木) 21:02:49.97 ID:0sEXJ3Q0
その時、上条の耳に一つの声が。

「とうま」

上条「―――」

ダンテ『止まるんじゃねえ!!!!』

魔帝の罠―――

上条は一瞬怯んだ。
わかっている。

あの声は――

まがい物だ――

上条「あああああああああああ!!!!」

その一瞬の怯みが仇となった。

501: 2010/03/04(木) 21:05:27.88 ID:0sEXJ3Q0
上条はその声を振り払いなんとか進む。

そして横たわる魔帝の傷だらけの体まであと10mまで迫った時。

魔帝の体が赤く輝く。


間に合わなかった―――


赤い衝撃波が発生する。

上条「―――」

その衝撃波は右手で抑えれるかはわからなかった。

上条の視界を赤い光が覆った。

503: 2010/03/04(木) 21:10:35.25 ID:0sEXJ3Q0
ダンテは跳躍しその嵐から離脱した。

ダンテ『おい!!!!』
上条の姿を探す。



上条は反射的に目を瞑ってしまっていた。
氏んだと思った。

だが。

上条「(生きてる…?)」

恐る恐る目を開けると。

上条「…!?」

目の前にバージルがいた。足元には大きな血溜り。

バージルは身を盾にしてあの赤い衝撃波から上条を守ったらしかった。

バージル『下がれ。次はヘマをするな』

上条は返事をするのも忘れて咄嗟に下がる。

505: 2010/03/04(木) 21:16:11.16 ID:0sEXJ3Q0
ダンテとバージルも一度下がる。

二人とも無言だ。肩が激しく上下している。
体中から血が溢れ、足元に大きな血溜りを作っている。

ダンテ『もう一度だ…』

バージル『…』

その時だった。

倒れていたネロの傍に一人の少年が現れた。

一方通行。

そしてその傍には『スパーダ』。

507: 2010/03/04(木) 21:21:49.97 ID:0sEXJ3Q0
ダンテ『…スパーダ…!!』

ダンテはあの剣を使うことを半ば諦めていた。

バージルも目を大きく開いている。

一方通行『…ッ!!!…届け物だぜ!!!』
目の前のネロの遺体に気付き少し驚いた後、
つらそうにダンテ達へ喋る。

ダンテ『…?』

バージル『…』

その時ダンテとバージルが気付いた。

一方通行『…おァ!!なンなンだよ!!!』

『スパーダ』が突然眩く輝き始めたのである。

ダンテやバージルの手に触れる前に完全に覚醒したのである。

508: 2010/03/04(木) 21:25:39.60 ID:0sEXJ3Q0
ダンテ『―――はは』

ダンテは笑った。
当然、この人間の少年が覚醒させたわけではない。

原因はただ一つ。

ネロの氏だ。

氏によって完全に覚醒する。

それがスパーダの作り出した魔剣の特徴だ。

ダンテも過去にその身で味わった。

今、このスパーダは正当な主をようやく定めたのだ。


それはダンテでもバージルでも無かった。


ネロの体の下に広がっていた血溜りが、
一方通行へ、スパーダの方へ伸びていく。

509: 2010/03/04(木) 21:30:39.56 ID:0sEXJ3Q0
バージルは一方通行へ向かって歩いていく。

バージル『貸せ』

一方通行は一瞬ダンテの顔を見る。ダンテがにやけながら頷く。
バージルは『スパーダ』を受け取ると、ネロの遺体の傍に行き、大きく振り上げた。

上条「おい何を―――」

バージルはそのまま勢い良くスパーダをネロの腹へ突き刺した。

上条「おい!!!」

一方通行「…!!?」

二人の人間の少年はバージルが何をしているのか意味がわからなかった。


ダンテ『さあ…おはようの時間だ。坊や』


『スパーダ』の輝きが更に増す。赤い光が溢れる。

息子が、父の手によって、祖父の力で完全に覚醒する。

誇り高き魂が世代を越えて受け継がれる。

524: 2010/03/04(木) 22:00:43.75 ID:0sEXJ3Q0
ネロの体がいきなり跳ねる。

ダンテ『お、結構早いな』
ダンテのその声には先程までのどす黒い感情は篭っていなかった。

魔帝が察し、赤い大剣をネロへ向けて放つ。

だがその間にバージルとダンテが入り、強烈な攻撃を放って相頃する。

二人の体から血が噴き出す。

だが二人はそれを無視していた。

ダンテに至っては嬉しそうに笑っている。



ダンテ『ネロ!!!!さっさと来い!!!!お前のパーティだぜ!!!!』



それに返事をするかのように。


ネロ『オァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!』

ネロが咆哮し、目が開く。

528: 2010/03/04(木) 22:05:39.16 ID:0sEXJ3Q0
ネロ『アアアアアア!!!!』

胸に『スパーダ』が刺さったままネロが起き上がる。
肉が避ける音が響く。

だがネロは構わず起き上がる。

そして自分の血が大量についた『スパーダ』を乱暴に引き抜く。


ネロ『ハァァァァァァァ!!!!』


そして体が輝く。


青と赤の閃光が絡みあい、そして光の爆発を起こした。

531: 2010/03/04(木) 22:07:39.57 ID:0sEXJ3Q0
ダンテ『お目覚めか!!!』

その光が収まると。

完全に魔人化したネロが姿を現した。


後ろの青い巨人はもういない。


ネロの体そのものが悪魔化していた。


その姿は今までのあの青い巨人と瓜二つ。


『スパーダ』を持った『ネロ・アンジェロ』。


スパーダの一族として、ネロは完全に覚醒した。

532: 2010/03/04(木) 22:13:14.43 ID:0sEXJ3Q0
ダンテ『気分は?』


ネロ『…最高だぜ』


バージル『さっさと始めるぞ』

ネロはバージルを見て微笑んだ。魔人化しているので表情は変わらないのだが。
魂が繋がっているせいで伝わったのか、バージルがネロに言葉を返す。

バージル『集中しろ』

ネロ『ああ』

ダンテ『さぁて、家族がもう一度そろったととこだし、そろそろフィナーレだ』

ダンテ『おいイマジンブレイカー!!準備しとけ!!!』

上条「お、おう!!!」


そして三人の魔人は再び突進する。


全てに終止符を打つ為に。

535: 2010/03/04(木) 22:19:57.74 ID:0sEXJ3Q0
魔帝『小癪なッ!!!!』
誰が聞いてもその声には焦りの色が混ざっているのがわかる。

スパーダに匹敵する者が三人同時に来るのだ。

魔帝『おおおおお!!!!』

魔帝は手を掲げ、赤い大剣を再び作る。

ネロ『ワンパターンなんだよ!!!』

ネロは右手を畳みそして思いっきり手を突き出した。

デビルブリンガー。

青い半透明の腕が伸びる。

今でも健在だ。
それどころか以前よりも遥かに力が増している。

その巨大な腕が凄まじい速度で伸び、魔帝の頭を鷲掴みにした。

魔帝『―!』

ネロ『お高くとまってんじゃねえよ!!!』

そして思いっきり引き寄せる。

538: 2010/03/04(木) 22:23:21.46 ID:0sEXJ3Q0
ネロのとんでもない怪力によって、魔帝が一気に引き寄せられる。
100mの距離が一瞬で縮む。

その凄まじい速度で向かってくる魔帝の体に。

ダンテは右からリベリオンを。

バージルは左から閻魔刀を。

ダンテ&バージル『ハァァァァァァァァァ!!!!』

二人の咆哮が重なり、二つの刃が放たれる。

魔帝『ぐぉぉぉぉぉ!!!』

その二つの刃はそれぞれ両肩に辺り、外皮が砕ける。

だがその凄まじい衝撃を受けても魔帝の体は後方へ飛ばされることを許されなかった。

ネロのデビルブリンガーによって。

541: 2010/03/04(木) 22:27:58.27 ID:0sEXJ3Q0
ダンテはすかさずギルガメスの蹴りを。
バージルはレッドクイーンを続けて叩き込む。

ダンテ『Break!!!!!!』

バージル『Die!!!!!!!』

ネロもスパーダを振り上げた。スパーダから巨大な赤い刃が伸びる。

ネロ『Time to die!!!!! Then down hell to you go!!!!! COCKSUCKER!!!!!』

そしてデビルブリンガーで押さえ込んでいる魔帝の頭へ渾身の一撃を。
その凶悪な程の破壊力を秘めた攻撃は一発で魔帝の頭部の外皮を砕いた。
再び振り上げ、また叩きおろす。

何度も。
何度も。

ネロ『FuckFuckFuckFuck!!!!!!!Get lost!!!!!!Mother Fucker!!!!!!!!!』

全ての怒りをぶつける。

例え模造品でも―――

キリエを汚した野郎はぶち頃す―――

この手で握りつぶす―――

542: 2010/03/04(木) 22:34:11.12 ID:0sEXJ3Q0
三人の完全にブチ切れた魔剣士の、
己の体へのダメージを無視した猛攻に魔帝はなす術がなかった。
外皮がどんどん剥げ、その内側の赤い肉がむき出しになる。
だが三人は止まらない。

バージルは二つの剣を交互に振るい刻んでいく。

ダンテはリベリオンをぶん回しながら強烈な蹴りを放つ。

ネロはスパーダで猛烈なラッシュを加える。

三人の力が共鳴し、この異世界が大きく歪み始める。この世界の耐えられるラインを遥かに超えた。

ダンテ&バージル&ネロ『BLAST!!!!!!!!』

掛け声が重なり、三人が同時に下から切り上げる。
魔帝の巨体が浮く。
ダンテとバージルが一気に跳躍し、浮き上がった魔帝の上まで跳ぶ。

そしてバージルはレッドクイーンと閻魔刀を、
ダンテはリベリオンを一気に振り下ろす

ダンテ&バージル『ハァァァァァァァァァァァァ!!!!!』

魔帝の頭部に直撃する。全ての外皮がはがれた。

543: 2010/03/04(木) 22:38:44.36 ID:0sEXJ3Q0
魔帝『おおおおおおおお!!!!!』

下へぶっ飛ばされる。

そこへネロのデビルブリンガーが真下から伸びてきた。

魔帝『ッ――』

むき出しになった魔帝の顔面が鷲掴みにされる。


ネロはそのまま―――




ネロ『Bye Bye!!!!!Checkmate!!!!!!!!』





魔帝の頭部を握り潰した―――

549: 2010/03/04(木) 22:46:39.07 ID:0sEXJ3Q0
地響きが響く。
上条達はその戦場からかなり離れた場所にいた。

魔帝の巨体すらかなり小さく見える。
そしてそれよりも遥かに巨大な青い筋と赤い筋が何本も走る。

これ以上近付けない。
この位置でさえ上条の右手がその溢れ出てくる力を消しきれずに肌が焼ける感覚がする。

上条は心配していた。魔帝は一瞬で元に戻る。
その間にこの距離を移動できるかどうか。

ふと上条は横の一方通行を見た。

一方通行『…なンだ?』

上条『…合図があったら俺を思いっきり魔帝に飛ばしてくれないか?』

一方通行『…なに言ってンd』

その時。

ダンテ『来い!!!!!』

上条は驚いて戦場に目を戻す。
あの魔帝の巨体が浮き、頭部が無くなっていた。

552: 2010/03/04(木) 22:52:23.11 ID:0sEXJ3Q0
上条『やってくれ!!!!いいから!!!!』
叫びながら上条は飛び上がる。

一方通行『―――ッたよ!!!』

黒い羽を展開して上条の足の裏に当て、そして全ての力をそそいで全力で打ち出した。

上条『おおおおおおおおおおお!!!!!』


上条の体が音速の数十倍にまで一気に加速された。

とてつもない濃度の力の領域に入って全身に激痛が走る。


上条「ああああああ!!!!」

だが怯まずに上条は右手を突き出す。


そして届く。

魔帝の硬い外皮に上条の右手が触れる。

その瞬間、稲妻が魔帝の体を走った。

558: 2010/03/04(木) 22:59:23.06 ID:0sEXJ3Q0
上条「まさか―――!」

再び失敗

その言葉が上条の脳裏をよぎる。その答えを見る前に突如目の前が青白くなった。

上条「へ?」

それはネロの巨大なデビルブリンガーの手のひら。

上条を守る為、やさしく包んでいた。

その中で上条は見ていた。眩い光と共に魔帝の体が崩れていくのを。


魔帝『おぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!』


そして凄まじい爆発を起こす。


魔帝は―――散った。

560: 2010/03/04(木) 23:05:14.61 ID:0sEXJ3Q0
赤い光がやむ。

魔帝の巨大な体は消えていた。


魔帝は跡形も無く散った。


上条「終わった…?」

ネロ「おい、降りて来な」

下から声がした。ネロは既に魔人化を解いていた。

上条「…ああ」
上条はぎこちなく立ち上がると飛び降りた。
同時にネロのデビルブリンガーが消える。

ダンテ「終わったな」

バージル「ああ」

二人も魔人化を解いていた。

561: 2010/03/04(木) 23:10:51.43 ID:0sEXJ3Q0
一方通行もやってくる。

一方通行『おィ…終わったのか?』

ダンテ「おう、お前も頑張ったな」

バージル「…」

バージルはレッドクイーンをネロに突き出す。

バージル「良い剣だ」

ネロ「…ああ」
ネロが少し照れくさそうにその剣を受け取る。

ネロ「なあ、この『スパーダ』は…どっちに?」

ネロがダンテとバージルを交互に見る。

ダンテとバージルが一度顔を見合わせる。
そしてバージルはそっぽを向き、ダンテはネロに目を戻す。

ダンテ「とっとけ。お前のだ」
顎でスパーダを指しながらネロに言う。

563: 2010/03/04(木) 23:15:32.12 ID:0sEXJ3Q0
ネロ「…は?」

ダンテ「閻魔刀はバージルのもんだ」

ダンテ「で、お前にはそれだ。お前の『魔剣』だ」

ネロ「…」

ネロは手にあるスパーダを見つめる。

ネロ「俺の…」

ダンテ「大事にしな」

ネロ「…ああ!」

ネロはスパーダに右手を当てる。
すると吸い込まれるようにしてスパーダが消え、彼の体の中へ吸収された。

565: 2010/03/04(木) 23:22:35.16 ID:0sEXJ3Q0
ダンテ「親父…良かったな」
ダンテはネロがスパーダを吸収していくのを見ながら一人呟く。

そんなダンテに声がかかる。

一方通行『おィ、これもテメェのだろ?』
ダンテへ黒い銃を突き出す。
エボニーだ。

ダンテ「それも持ってたか」

ふとあの少女を思い出す。
この少年が『ダンテの銃』というのを知ってるところを見ると、
どうやら無事らしい。


その時だった。


『おおおおおおおお!!!!!小僧ォォォォォォォォ!!!!!』

567: 2010/03/04(木) 23:25:24.27 ID:0sEXJ3Q0
振り向くと、少し離れた場所に巨大な肉塊が出現していた。
全身からは無数の腕が生え、三つの目玉がその中央にあった。

その魔帝の姿は余りにも醜かった。

僅かに残った力を集め、辛うじて存在を保っていた。

ダンテ「全くしぶとい爺さんだな!」

ネロ「うぜえ野郎だ!」

バージル「無様な奴だ」

上条「…あれ…ひでぇな」

一方通行「あァ…」

上条達にもわかる。最早あの醜い体からは何の力も感じられない。

572: 2010/03/04(木) 23:31:35.29 ID:0sEXJ3Q0
魔帝『我は!!!我は魔帝ムンドゥス!!!!不滅にして最強の存在!!!!』

ネロ「うるせえなぁ!黙ってろジジィ!!!」

ダンテ「バージル」
ダンテはバージルへエボニーを突き出す。

ダンテ「久々に決めようぜ」

バージルは無言で『エボニー』を受け取る。
ダンテは腰から『アイボリー』を引き抜く。
ネロも腰から巨大なリボルバー、『ブルーローズ』を抜き取る。

ネロ「今回使ってねえからな。最後くらい見せ場作ってやらねえと拗ねちまいそうだ」

ダンテ「合言葉はわかってるな?」

バージル「ああ」

ネロ「もちろん」

三人が前に出る。中央にネロ、左にバージル、右にダンテ。

そして銃口を魔帝へ向ける。

576: 2010/03/04(木) 23:34:47.07 ID:0sEXJ3Q0
ダンテとバージルは銃を横に倒し、銃身の上部をネロのブルーローズの銃身の横に当てる。
正面から見ると十字になっていた。

三人は銃へ力を注ぐ。三丁が輝く。

ダンテ「行くぜ!」

バージル「ああ」

ネロ「おう!」

そして。


「「「Jackpot!!!!!!!」」」


三丁の銃口から巨大な赤と青の光の矢が放たれ―――

魔帝の三つの目の中央に直撃する―――


魔帝『貴様らァァァァァァァァァ――――!!!!!』

その言葉を最期に、魔帝の体は弾け、消し飛んだ。

587: 2010/03/04(木) 23:41:48.00 ID:0sEXJ3Q0
ダンテ「汚え花火だぜ全く」

ネロ「ああ、最低だぜ」

バージル「…」
バージルは無言でエボニーをダンテに渡す。

上条と一方通行もようやく安堵する。

全て終わった。


魔帝は完全に滅んだ。


ダンテ「よう、それじゃあ帰るぜ」

その時、突然地響きが起こった。

上条「…!!」

この異世界全体が揺れている。
既に限界に達していたのだ。
魔帝の修復が無くなった今、崩壊が始まった。

589: 2010/03/04(木) 23:46:05.53 ID:0sEXJ3Q0
遠くの地面から徐々に消えていく。
崩壊のスピードが速い。

このままこの崩壊に巻き込まれれば、虚無の狭間の世界に落ちる。

そうすれば永遠に抜け出せなくなる。

ダンテ「さっさと外に出るぞ」

上条「ああ!!!」

上条と一方通行が跳躍する。20m程跳んだところで姿が消えた。

続けてネロも跳び、姿を消した。

ダンテ「バージル。行くぞ」

バージル「…」

バージルはそのまま静かに立っていた。

ダンテ「おい―――」

591: 2010/03/04(木) 23:49:49.90 ID:0sEXJ3Q0
バージルは静かに世界の崩壊を眺めていた。

幼い頃の、魔帝による母の氏。
そこから始まった闘争。

己の弱さを憎み、ただ力を求めた。

あの日からこの魂を繋ぎとめていた鎖が。

あの日からこの魂を磔にしていた楔が。

あの日からこの魂に圧し掛かっていた重りが。

今、全て無くなった。

バージルは己の魂が自由になるのを感じた。

同時に。

バージル「…全て…終わった…か」


空っぽになるのを感じた。

595: 2010/03/04(木) 23:53:50.44 ID:0sEXJ3Q0

全てが終わった。

人間を捨てて悪魔の道を選んだ己の人生に決着が。

滑稽だ。

力の闘争が無くなった自分がこれ程空っぽだったとは。
何も持っていなかったとは。

バージル「…」

もう何も無かった。
全てに終止符が打たれた。


『悪魔』のバージルはもう何も持っていなかった。

何も。

この崩壊の先にある虚無の空間と同じだ。

同じ。

バージル「…お似合だ」

598: 2010/03/04(木) 23:57:48.41 ID:0sEXJ3Q0
ダンテ「バージル。何を考えてやがる?」

バージル「さっさと行け」
バージル「俺は―――もういい―――」

バージルは背を向けたままダンテへ声を飛ばす。

ダンテ「まさか―また―――」

崩壊はすぐそこにまで迫っていた。

バージル「行け」

周りの全てが漆黒に包まれていく。

ダンテ「――お前もだ!!」

目前まで崩壊が迫る。

ダンテ「来い!!!」

ダンテが駆け寄り、手を伸ばしてバージルを掴もうとした時。
バージルが振り向きざまに閻魔刀をそのダンテの手に振るう。

あの時と同じように。

ダンテの手の平に閻魔刀の刃が食い込む。
同時にバージルの足元の地面が崩壊し、消失した。

599: 2010/03/05(金) 00:01:03.86 ID:6TkXh8U0
バージル「離せ―――」



ダンテ「ふざけんじゃねえよ」


ダンテ「氏んでも離さねえ」


ダンテはその閻魔刀を掴んでいた。

刃が食い込み、血が滴っている。


バージルの足元は消え、いまや彼を支えているのはこの閻魔刀だけであった。

600: 2010/03/05(金) 00:02:45.10 ID:6TkXh8U0
バージル「離せと言ってるんだ―――」



ダンテ「二度と離さねえよ―――兄貴」



バージル「そうか」
バージルの閻魔刀を握る手から力が抜ける。

ダンテ「―――!」

その時だった。

青白い巨大な手がそのバージルの手を閻魔刀ごと掴んだ。

ネロ「何やってんだよ!!!!!」

ネロが、ダンテの後ろの空間から上半身だけ出しながらデビルブリンガーを伸ばしていた。



バージル「…離せ。ネロ」



ネロ「誰が離すかってんだよ!!!氏んでも離さねえぞ!!!!」

601: 2010/03/05(金) 00:04:54.26 ID:6TkXh8U0
ダンテ「もういいだろ」

ダンテ「なあ兄貴。一緒に帰ろう」


ダンテ「俺達の『世界』へ」


ダンテ「『人間』界へ帰ろうぜ―――」


ネロ「―――親父!!!!」


バージル「―――」


崩壊の轟音でその言葉は聞こえなかった。だが何を言ったのかダンテとネロはわかった。

バージルが幻影剣を足元に作り―――

それを足場にして跳躍する―――

三人が抜け出したと同時にその異世界は消滅した。

――――

608: 2010/03/05(金) 00:09:16.96 ID:6TkXh8U0
すまん今日はここまで。最終章はこれでおわりとします。

明日はエピローグ。

再開も今日ぐらいから。

609: 2010/03/05(金) 00:10:02.81 ID:xuPsq4U0
おつ

611: 2010/03/05(金) 00:10:40.84 ID:VqL8lTk0
(´Д`)ノ 乙。楽しみにしてる

612: 2010/03/05(金) 00:10:53.08 ID:fwqESrco

次はエンディングとランク評価だな


 次回へ続く:【禁書×DMC】ダンテ「学園都市か」【その05】


引用: ダンテ「学園都市か」