1: 2023/11/25(土) 21:53:09 ID:eqnz.qNI00
すみれ「どしたのかのん。珍しいわね」

かのん「家でギター触ってたらお客さん来ちゃって」

すみれ「で、うち?」

かのん「可可ちゃんちはマンションだし。ちぃちゃんはバイトだし」

恋「良いじゃないですか、すみれさん。ちょうどお茶してたんですから」

かのん「そうそう。それになんでさも当然みたいに恋ちゃんここいるのか知りたいし」

すみれ「……まあ、お茶くらいなら」スタスタ

恋「ふふふ」ニコニコ

かのん「お茶菓子付けてくれたら一曲弾くよ」

すみれ「じゃあ何もつけない」

かのん「ええー」

3: 2023/11/25(土) 21:54:22 ID:eqnz.qNI00
──────

────

──縁側

かのん「私ずっと思ってたんだけどさ」

恋「はい?」

すみれ「……」ズズゥ

かのん「二人、逆じゃない?」

恋「……?」キョトン

すみれ「なにが?」

かのん「すみれちゃん、好きな食べ物は?」

すみれ「卵かけご飯。あとメロン。ついでに緑茶」

かのん「花のJKが卵かけご飯って。恋ちゃん、好きな食べ物は?」

すみれ「うっさいわねぇ」

恋「いちごが好きです。それとコンソメスープですかね。後は紅茶が好きです。特にダージリンが」

かのん「ね? 私のイメージと逆なんだよね」

すみれ「……」ズズゥ

恋「……?」キョトン

4: 2023/11/25(土) 21:55:16 ID:eqnz.qNI00
かのん「すみれちゃんは金髪でさ? 如何にも洋風って感じなんだよ」

すみれ「人を食べ物みたいに言わないでくれる?」

恋「ええと、私、和風ですか?」

かのん「和風だよね」
すみれ「大和撫子ね」

恋「……なんだか、ちょっと照れちゃいますね」

かのん「でも、恋ちゃんが好きなものって紅茶とコンソメスープで……洋風なんだよね……」

恋「ご期待に沿えずすみません……でも、紅茶とコンソメスープが好きなんです。ずっとずっと。昔から」

かのん「そうなんだ。どうして?」

すみれ「ちょっと、かのん」

恋「いいんですすみれさん。……お母様が淹れてくれた紅茶が、私、大好きだったんです。家族三人、サヤさん、チビ、皆で楽しくお話しながら飲んだ紅茶が……好きだったんです」

5: 2023/11/25(土) 21:56:08 ID:eqnz.qNI00
かのん「……」

すみれ「……」スッ ナデナデ

恋「すみれさん? あの……頭を……ええと……?」

すみれ「私も紅茶、今よりもっと上手に淹れられるようになりたいわ」

恋「すみれさんが淹れてくださる紅茶も美味しいですよ?」

すみれ「……そうね。でも……もっと、恋が──」

恋「私が……?」

すみれ「なんでもない。おせんべ持ってくるわ。かのん、あんたは?」

かのん「あ……あぁ……わたし……ちがくて……」

恋「かのんさん?」

すみれ「あんたデリカシーないくせに小心者なのよね」

恋「……あ!? 違うんですよ!? 別にお母様との思い出を引き摺っているとか未だに囚われているとかそういう類いの話ではありませんので!?」

かのん「あぁぁ……ここから消え去りたいよぉ……」

すみれ「恋、かのんの懺悔でも聴いてあげなさい」スタスタ

6: 2023/11/25(土) 21:56:58 ID:eqnz.qNI00
恋「あの、かのんさん、本当にお気になさらず……」

かのん「……」

恋「……かのんさん? あの、顔を上げてくださいな……」

かのん「……デリカシーないからついでに聞いていい……?」

恋「え。あ、はい。なんでしょう?」

かのん「すみれちゃんとは……もしかして……?」

恋「え、と。もしかして、とは?」

かのん「その……ネンゴロなカンケイ……だったりする?」

恋「……」

かのん「……え? ほんと? うそ?」

恋「はい。私とすみれさんは、お付き合いしています」

かのん「おおおお……ほんとだった……ほんとだった……」

7: 2023/11/25(土) 21:57:41 ID:eqnz.qNI00
恋「わかってしまいましたか?」

かのん「ううん、この前二人で渋谷歩いてるの見かけて、その……距離が……ちっかくて……今日もこううやって二人っきりでなんか良い感じだったし……?」

恋「そうですね。すみれさんとは文化祭の後からお付き合いを始めました」

かのん「え!? 嘘!? そんな前から!?!?」

──かのんうるさい!

かのん「うそだぁ……うそだぁ……ええ……? どっちが……」

恋「どっちが、とは……?」

かのん「恋ちゃんとすみれちゃん、どっちが告白したの……?」

恋「すみれさんからです」

かのん「……」スック ドタドタドタ

恋「かのんさん?」

──やってんねぇ!

──いった!?

8: 2023/11/25(土) 21:58:50 ID:eqnz.qNI00
すみれ「なるほど……見られてたのね、あれ。恋、かのんに変なこと言ってないでしょうね」

恋「いつからお付き合いしているのかと、どちらが告白したのかと聞かれたので」

すみれ「……はぁ」

かのん「いやいや、すみれちゃんどういうこと? 恋ちゃんのこと好きだったの? 最初っから」

すみれ「恋、かのんにだけは絶対話しちゃダメ」

恋「そうなのですか?」

かのん「ちょちょちょちょちょ、なんで?」

すみれ「かのんの口の軽さだけは、信用してるから」

かのん「ええ~人望皆無~!」

すみれ「あるわけないでしょ」

かのん「恋ちゃん~すみれちゃんになんて告白されたの~?」

恋「ごめんなさい。すみれさんから止められてしまったので」

かのん「ええー……気になる~」

9: 2023/11/25(土) 21:59:48 ID:eqnz.qNI00
すみれ「あんたギター触りに来たんじゃないの」

かのん「ん? ああ、そうだった。ここで弾いていい?」

すみれ「まあ参拝者もいないし。良いんじゃない」

恋「わぁ。私かのんさんのギター好きなんです」

かのん「ほんと~? ありがと! こういう素直な感想が私一番うれしいんだよね! じゃあ気合い入れて弾いちゃお! 部屋に置いたギター持ってくるね!」ドタドタ

すみれ「ったく。調子いいんだから」

恋「あの。言ってよかったのですよね……?」

すみれ「ええ。別によかったわよ。公言する気はないけど、隠す気もないし。恋の幸せに、公言するしないは関係ないでしょう?」

恋「それは、そうですけど……」

すみれ「恋は嫌じゃなかったの? 恥ずかしいとか、そういうの」

10: 2023/11/25(土) 22:00:43 ID:eqnz.qNI00
恋「すみれさんとお付き合いしていること、恥ずかしいと思っていませんから……特には?」

すみれ「っ……そ、そう……」

かのん「……やっぱり私居ないほうがいい?」ヌッ

すみれ「うわっ!?」

恋「ええと、どうしてそんなことを……私、かのんさんのギター楽しみにしてたのですが」

かのん「いや二人めちゃくちゃ距離近いよ。なにこれ。二人の肩の間、ギターの一弦すら通らないんだけど。何この距離。何さりげなく腰に手回してんのすみれちゃんは」

すみれ「なにって別におかしくないでしょ」

かのん「恋ちゃんもなんで当然みたいな格好してるの」

恋「ええと。こうやって話するのは、いつものことなので……?」

かのん「やだー! すみれちゃんがなんかやらしい!!」

すみれ「失敬な。ねえ、恋?」

恋「……はい」

11: 2023/11/25(土) 22:01:22 ID:eqnz.qNI00
かのん「なんでちょっと間があったの!?」
すみれ「なんでちょっと間があったの!?」

恋「そ、そんなことはどうでもよくて! 別にかのんさんが邪魔と言う訳ではありませんからね!?」

かのん「……まあ、うん。二人がそういうなら……良いんだけど」

恋「かのんさんは……私たちがお付き合いしていること、気になりませんか?」

かのん「え? ええと。二人が……ってこと?」

すみれ「そうね。あんたは一応Liella!のリーダーだし。まあ、しれっと暴露したけど……私たちは、つまりそういう……人間だから」

恋「……もし不愉快なのであれば、私たちは……Liella!を──」

かのん「ちょ、ちょっと待って!? そんな重く考えないでよ!? 別に、そんな、私は気にしないし! きっと可可ちゃんもちぃちゃんも気にしないし……」

すみれ「可可と千砂都は気にしないって言ってたわ」

かのん「うんうんそうだよね……って私だけが知らなかったの!?」

恋「可可さんにも千紗都さんにもこちらから何か言ったわけではなかったのですが……ある日、ぽつりと」

かのん「嘘だぁ……?」

すみれ「あんたデリカシーないから分かんないだろうなとは思ってたけどね」

かのん「……結構ショック……」

12: 2023/11/25(土) 22:02:15 ID:eqnz.qNI00
恋「すみません、騙すようなことをしてしまって。決してかのんさんを信じていなかったわけではなかったのです。ただ、もし不愉快に思わせたくはない──そう思っていただけなので」

かのん「それは信じてるよ、そこにショックを受けてるわけじゃないから……」

すみれ「私もそういうことよ、かのん。歌を取り戻せたあんたの居場所を、私は色恋でややこしくしたくなかったの」

かのん「優し……でも私は全然気にならないよ。二人が幸せなら、私も嬉しい」

恋「ありがとうございます、かのんさん」

すみれ「ありがと、かのん」

かのん「ううん。こっちこそ。でもメイちゃん、衝撃だろうね。まさか先輩たちが付き合ってたなんて。推しのスクールアイドルが、部内でくっついてたなんて」

すみれ「そうね。あの子が入部する前からずっとなんだし。まさかこんなことになってる──」

かのん「えええええええええええええええ!?!?!?!?!?!?」

恋「げほっ! げほげほ!!」

すみれ「恋! 大丈夫!? ちょっとかのんうるさいわよ!」

かのん「待って、待って待って待って。今なんてった!?」

13: 2023/11/25(土) 22:03:02 ID:eqnz.qNI00
すみれ「なんてって……メイたちが入部する前から付き合ってたわけだから──」

かのん「文化祭って、今年の文化祭じゃなくて私たちが一年生のころの文化祭!?」

恋「ごほごほ……えほ……」

すみれ「そうよ。去年の文化祭の後くらいからよ。恋、大丈夫? 水要る?」

恋「いえ、大丈夫です。かのんさん、急に大きな声を出さないでください、驚いてしまいます」

かのん「驚いたのは私の方!! なに?! 二人はもう一年以上前から付き合ってんの!?」

すみれ「そうだけど。何か問題ある?」

かのん「ないけど! めっちゃある!!」

恋「どちらなのでしょうか?」

すみれ「まともに受け取っちゃだめよ。馬鹿なんだから」

14: 2023/11/25(土) 22:03:59 ID:eqnz.qNI00
かのん「ええ……じゃあちぃちゃんと可可ちゃんはまさか……ずっと……?」

すみれ「そうね。割と去年のうちに二人とも勘付いて聞かれたわね」

恋「かのんさんはてっきり気付いた上で黙認しているのかなと思っていました」

すみれ「言ったじゃない。かのんは絶対気付いてないって」

かのん「そこはかとなく馬鹿にされてる~!!!!!」

すみれ「実際気付いてなかったし」

恋「あっ! 別に馬鹿にしているわけではないんですよ!?」

かのん「いーよいーよ。私はどうせにぶいバカですよーだ」

すみれ「ったく。いじけてないでさっさとギターかき鳴らしてなさい」

恋「かのんさん、今日は何の曲を弾くんですか?」

かのん「……なんかカップルを前に弾き語るのめっちゃ恥ずかしいんだけど」

15: 2023/11/25(土) 22:04:41 ID:eqnz.qNI00
すみれ「さっさとしなさいよ。ほら」

恋「……」ワクワク

かのん「……じゃあ、一年前からお付き合いしていた二人にぴったりな曲! 『君じゃなきゃだめみたい』!」

すみれ「ベッタベタね……」

恋「わぁ~!」パチパチパチ

すみれ(恨めしそうな溜息を吐いたかのんは、けれどわずかに微笑んで、ギターをかき鳴らし始めた)

すみれ(かのんのギターの音色と、かのんの歌声が、青空に溶けていく。隣で恋が楽しそうに体を揺らしていて──こんな休みの日も悪くないな、と思った昼下がりだった)

16: 2023/11/25(土) 22:05:37 ID:eqnz.qNI00
おしまい

引用: かのん「やっほーすみれちゃーん」恋「かのんさん。こんにちは」