1: 2013/12/23(月) 21:49:58.22 ID:O82VYKAT0
─ 城下町 ─
ザワザワ…… ガヤガヤ……
町民A「聞いたかよ! ついに勇者様たちが魔王討伐の旅に出るらしいぜ!」
町民B「ああ、聞いた聞いた! 今、王様に謁見してるんだってな!」
町民A「勇者様なら、絶対魔王を倒してくれるぜ!」
町民B「なんたって、かつて魔王を封じた“勇者”の血をひく人だもんな!」
偽勇者「…………」
偽勇者(……ようやくか)
偽勇者(この時を待ってたんだ!)
偽勇者「ククク……勇者どもの手柄をかっさらってやるぜ」
ザワザワ…… ガヤガヤ……
町民A「聞いたかよ! ついに勇者様たちが魔王討伐の旅に出るらしいぜ!」
町民B「ああ、聞いた聞いた! 今、王様に謁見してるんだってな!」
町民A「勇者様なら、絶対魔王を倒してくれるぜ!」
町民B「なんたって、かつて魔王を封じた“勇者”の血をひく人だもんな!」
偽勇者「…………」
偽勇者(……ようやくか)
偽勇者(この時を待ってたんだ!)
偽勇者「ククク……勇者どもの手柄をかっさらってやるぜ」
3: 2013/12/23(月) 21:54:22.79 ID:O82VYKAT0
まもなく、勇者たちの出発式が盛大に行われた。
ワアァァァァァ……!
「頼むぞぉっ!」 「しっかりなっ!」 「頑張ってえっ!」
勇者「皆さん、行ってきます!」
戦士「俺の剣技で、必ず魔王を倒してくるぜ!」
魔法使い「ボクの魔法なら、魔王なんてチョチョイのチョイさ」
僧侶「私がこの三人を死なせはしません!」
偽勇者(この四人が、勇者パーティーか)
偽勇者(悪いが、お前たちには俺の踏み台になってもらうぜぇ……)
ワアァァァァァ……!
「頼むぞぉっ!」 「しっかりなっ!」 「頑張ってえっ!」
勇者「皆さん、行ってきます!」
戦士「俺の剣技で、必ず魔王を倒してくるぜ!」
魔法使い「ボクの魔法なら、魔王なんてチョチョイのチョイさ」
僧侶「私がこの三人を死なせはしません!」
偽勇者(この四人が、勇者パーティーか)
偽勇者(悪いが、お前たちには俺の踏み台になってもらうぜぇ……)
4: 2013/12/23(月) 21:59:19.36 ID:O82VYKAT0
─ 村 ─
偽勇者(まずは、近くの村に立ち寄った、か……)
村人「お願いします、たびたび村を襲う魔獣をやっつけて下さい!」
勇者「分かりました!」
戦士「俺たちに任せとけ!」
魔法使い「この程度のことなら、ボクだけでも十分だよ」
僧侶「村のために頑張りましょう!」
偽勇者(よし……こいつらが弱らせた魔獣を、俺がブッ倒して手柄にするとするか)
偽勇者(こういうコツコツとした積み重ねが大事だからな)
偽勇者(まずは、近くの村に立ち寄った、か……)
村人「お願いします、たびたび村を襲う魔獣をやっつけて下さい!」
勇者「分かりました!」
戦士「俺たちに任せとけ!」
魔法使い「この程度のことなら、ボクだけでも十分だよ」
僧侶「村のために頑張りましょう!」
偽勇者(よし……こいつらが弱らせた魔獣を、俺がブッ倒して手柄にするとするか)
偽勇者(こういうコツコツとした積み重ねが大事だからな)
6: 2013/12/23(月) 22:02:00.63 ID:36OsjY0/0
弱らせたのに放置はしないだろ
7: 2013/12/23(月) 22:03:41.78 ID:O82VYKAT0
─ 村の近く ─
魔獣「ガルルル……!」ザッ…
勇者「お前が村を襲う魔獣か! いざ勝負!」チャキッ
戦士「十秒で片付けてやるぜ!」スラッ…
魔法使い「やれやれ、つまらなそうな相手だ」
僧侶「回復はお任せを!」
偽勇者(なんだ、大したモンスターじゃねえな)
偽勇者(これじゃ弱らせる前に終わっちまうだろうな……)
偽勇者(ま、お手並み拝見といくか)
魔獣「ガルルル……!」ザッ…
勇者「お前が村を襲う魔獣か! いざ勝負!」チャキッ
戦士「十秒で片付けてやるぜ!」スラッ…
魔法使い「やれやれ、つまらなそうな相手だ」
僧侶「回復はお任せを!」
偽勇者(なんだ、大したモンスターじゃねえな)
偽勇者(これじゃ弱らせる前に終わっちまうだろうな……)
偽勇者(ま、お手並み拝見といくか)
8: 2013/12/23(月) 22:09:08.47 ID:O82VYKAT0
魔獣「ガルァ!」バッ
バシィッ!
勇者「ぐはぁっ!」ドサッ
偽勇者(え?)
化け物「ガルルァ!」
ドゴォッ!
戦士「ぐええっ!」ドサッ…
偽勇者(お前が十秒でやられてるじゃねえか!)
魔法使い「──いたっ!」ガリッ…
魔法使い「呪文唱えようとしたら、舌噛んじゃった……回復して!」
僧侶「あわわ、どうしましょ、どうしましょ~!」
偽勇者(魔法使いも、紅一点の僧侶も役立たずかよ!)
偽勇者(なんなんだ、こいつら!?)
バシィッ!
勇者「ぐはぁっ!」ドサッ
偽勇者(え?)
化け物「ガルルァ!」
ドゴォッ!
戦士「ぐええっ!」ドサッ…
偽勇者(お前が十秒でやられてるじゃねえか!)
魔法使い「──いたっ!」ガリッ…
魔法使い「呪文唱えようとしたら、舌噛んじゃった……回復して!」
僧侶「あわわ、どうしましょ、どうしましょ~!」
偽勇者(魔法使いも、紅一点の僧侶も役立たずかよ!)
偽勇者(なんなんだ、こいつら!?)
12: 2013/12/23(月) 22:14:42.45 ID:O82VYKAT0
勇者「くそ~っ!」ブンブン
戦士「まだまだァ!」ブンブン
キンッ! ギンッ!
魔獣「ガルルァ!」
偽勇者(あのモンスターの胴体は頑丈だ! あんな剣さばきじゃとても斬れねえ!)
偽勇者(頭を狙えよ、頭を!)
魔法使い「痛いよ……舌が痛いよ……!」シクシク…
僧侶「わ、私、どうしたらいいんでしょ……!」オロオロ…
偽勇者(後方支援のこいつらはこいつらで、パニックになっちまってるし……)
偽勇者(前線はどうしても頭に血が上るんだから、お前らは冷静じゃなきゃダメだろ!)
偽勇者(ああもう、しょうがねえなぁ!)
戦士「まだまだァ!」ブンブン
キンッ! ギンッ!
魔獣「ガルルァ!」
偽勇者(あのモンスターの胴体は頑丈だ! あんな剣さばきじゃとても斬れねえ!)
偽勇者(頭を狙えよ、頭を!)
魔法使い「痛いよ……舌が痛いよ……!」シクシク…
僧侶「わ、私、どうしたらいいんでしょ……!」オロオロ…
偽勇者(後方支援のこいつらはこいつらで、パニックになっちまってるし……)
偽勇者(前線はどうしても頭に血が上るんだから、お前らは冷静じゃなきゃダメだろ!)
偽勇者(ああもう、しょうがねえなぁ!)
13: 2013/12/23(月) 22:18:33.84 ID:O82VYKAT0
「勇者と戦士、頭だけを集中して狙え! あと剣を握る時はあまり力むな!」
勇者&戦士「!」ビクッ
勇者「はいっ!」チャキッ
戦士「お、おうっ!」ギュッ…
「魔法使い! 舌噛んだって死にはしねえ! 我慢して、小声で魔法を唱えろ!」
魔法使い「う、うん!」グスッ…
「僧侶! まずは落ちついて深呼吸しろ! お前が落ちつかなきゃ全滅するぞ!」
僧侶「分かりました!」スゥ…ハァ…
勇者「でりゃあああっ!」ブンッ
戦士「どりゃあああっ!」ブンッ
魔法使い「赤き火よ、敵を燃やせ!」ボッ…
ザシュッ! ズバァッ! ボワァッ!
魔獣「グギャアァァ……!」ドサッ
偽勇者(ふう、どうにか倒したようだな……)
勇者&戦士「!」ビクッ
勇者「はいっ!」チャキッ
戦士「お、おうっ!」ギュッ…
「魔法使い! 舌噛んだって死にはしねえ! 我慢して、小声で魔法を唱えろ!」
魔法使い「う、うん!」グスッ…
「僧侶! まずは落ちついて深呼吸しろ! お前が落ちつかなきゃ全滅するぞ!」
僧侶「分かりました!」スゥ…ハァ…
勇者「でりゃあああっ!」ブンッ
戦士「どりゃあああっ!」ブンッ
魔法使い「赤き火よ、敵を燃やせ!」ボッ…
ザシュッ! ズバァッ! ボワァッ!
魔獣「グギャアァァ……!」ドサッ
偽勇者(ふう、どうにか倒したようだな……)
14: 2013/12/23(月) 22:21:42.23 ID:ScQZSf/gO
ナイスアシスト
15: 2013/12/23(月) 22:23:23.68 ID:O82VYKAT0
勇者「さっきの声……いったいだれだったんだろう?」
戦士「なんにせよ、あの声がなければヤバかったぜ」
魔法使い「ボクも舌噛んだら、血がいっぱい出て死んじゃうと思ってたから……」
僧侶「あの声のおかげで、私も冷静になれましたわ……」ホッ…
偽勇者(オイオイ、マジかよ……)
偽勇者(こいつらについていって、こいつらが魔王を倒すところまできたら)
偽勇者(こいつら四人と魔王の両方を始末して、俺が丸ごと手柄をいただく計画……)
偽勇者(なんだか不安になってきたぞ)
偽勇者(いや、今日はたまたまこいつらの調子が悪かっただけだ、うん)
戦士「なんにせよ、あの声がなければヤバかったぜ」
魔法使い「ボクも舌噛んだら、血がいっぱい出て死んじゃうと思ってたから……」
僧侶「あの声のおかげで、私も冷静になれましたわ……」ホッ…
偽勇者(オイオイ、マジかよ……)
偽勇者(こいつらについていって、こいつらが魔王を倒すところまできたら)
偽勇者(こいつら四人と魔王の両方を始末して、俺が丸ごと手柄をいただく計画……)
偽勇者(なんだか不安になってきたぞ)
偽勇者(いや、今日はたまたまこいつらの調子が悪かっただけだ、うん)
16: 2013/12/23(月) 22:23:33.00 ID:itwni6ek0
天の声さんじゃないですか
17: 2013/12/23(月) 22:26:42.65 ID:O82VYKAT0
─ 村 ─
村人「ありがとうございました……!」
村人「おかげで村が救われました! この包帯と薬草を持っていって下さい!」
勇者「助かります!」
勇者「ですが、また村に魔物や魔獣が現れるかもしれないので」
勇者「村の警備を怠らないようにして下さい」
村人「はい!」
偽勇者(ったく、俺だったらもっといいもんよこせって文句つけるがな)
偽勇者(人のいいヤツだ……)
村人「ありがとうございました……!」
村人「おかげで村が救われました! この包帯と薬草を持っていって下さい!」
勇者「助かります!」
勇者「ですが、また村に魔物や魔獣が現れるかもしれないので」
勇者「村の警備を怠らないようにして下さい」
村人「はい!」
偽勇者(ったく、俺だったらもっといいもんよこせって文句つけるがな)
偽勇者(人のいいヤツだ……)
18: 2013/12/23(月) 22:30:21.12 ID:O82VYKAT0
─ 迷いの森 ─
勇者「険しい道だな……。みんな足元に注意して──」
戦士「おう」
魔法使い「いたっ!」ドデッ
魔法使い「っつぅ~……足をすりむいちゃった」
僧侶「今、回復を……」スッ…
偽勇者(バカか!?)
偽勇者(あんなケガでいちいち回復してたら、すぐ魔力切れを起こすだろうが!)
偽勇者(ったく……まるでなっちゃいねえな)イライラ…
勇者「険しい道だな……。みんな足元に注意して──」
戦士「おう」
魔法使い「いたっ!」ドデッ
魔法使い「っつぅ~……足をすりむいちゃった」
僧侶「今、回復を……」スッ…
偽勇者(バカか!?)
偽勇者(あんなケガでいちいち回復してたら、すぐ魔力切れを起こすだろうが!)
偽勇者(ったく……まるでなっちゃいねえな)イライラ…
19: 2013/12/23(月) 22:33:56.37 ID:O82VYKAT0
「僧侶!」
僧侶「へっ!?」ビクッ
「回復魔法なんか使うな!」
「さっきの村でもらった包帯や薬草を使えばいいだろ!」
「そんなケガで魔法を使ってたら、肝心なところで息切れしちまうぞ!」
勇者「この声は、村で俺たちを助けてくれた……!」
戦士「魔法を使うなっていってるぜ?」
僧侶「どうしましょう?」オロオロ…
勇者「ここは……声のいうとおり、魔力を温存しよう」
勇者「僧侶の回復魔法は切り札のようなものだからね」
僧侶「分かりました……では、私が包帯を巻きますわ!」
魔法使い「魔法でも包帯でもいいから早くしてぇ……」ズキズキ…
僧侶「へっ!?」ビクッ
「回復魔法なんか使うな!」
「さっきの村でもらった包帯や薬草を使えばいいだろ!」
「そんなケガで魔法を使ってたら、肝心なところで息切れしちまうぞ!」
勇者「この声は、村で俺たちを助けてくれた……!」
戦士「魔法を使うなっていってるぜ?」
僧侶「どうしましょう?」オロオロ…
勇者「ここは……声のいうとおり、魔力を温存しよう」
勇者「僧侶の回復魔法は切り札のようなものだからね」
僧侶「分かりました……では、私が包帯を巻きますわ!」
魔法使い「魔法でも包帯でもいいから早くしてぇ……」ズキズキ…
21: 2013/12/23(月) 22:36:35.33 ID:O82VYKAT0
僧侶「傷口に薬草を塗り込みましたが……」
僧侶「包帯の巻き方はこんな感じでいいのでしょうか?」グルグル…
勇者「いいんじゃないか?」
戦士「そんなもんだろ」
魔法使い「なんだか、すごく足が締めつけられてるんだけど……」
偽勇者(なんだ、あのメチャクチャな巻き方は!? ふざけてんのか!?)
偽勇者(あんな巻き方じゃ、傷はおかしくなるし、血管は傷めるし、ろくなことねえぞ!)
偽勇者(あぁ~もう!)ダッ
僧侶「包帯の巻き方はこんな感じでいいのでしょうか?」グルグル…
勇者「いいんじゃないか?」
戦士「そんなもんだろ」
魔法使い「なんだか、すごく足が締めつけられてるんだけど……」
偽勇者(なんだ、あのメチャクチャな巻き方は!? ふざけてんのか!?)
偽勇者(あんな巻き方じゃ、傷はおかしくなるし、血管は傷めるし、ろくなことねえぞ!)
偽勇者(あぁ~もう!)ダッ
23: 2013/12/23(月) 22:42:24.08 ID:O82VYKAT0
偽勇者「貸せ!」バッ
僧侶「きゃっ!?」
戦士「だれだてめえ!?」チャキッ
勇者「待った! あなたの声は──」
偽勇者「いいか、包帯の巻き方はな……こうしてこうしてこうするんだ」グルグル…
僧侶「なるほど……!」
戦士「すげえ、さっきと全然ちがうぜ!」
魔法使い「わっ、すごく足を動かしやすい!」クイクイッ
勇者「あ、あの……ぜひお名前を!」
偽勇者「名乗るほどのもんじゃねえよ、じゃあな!」ダッ
勇者「行ってしまった……」
僧侶「きゃっ!?」
戦士「だれだてめえ!?」チャキッ
勇者「待った! あなたの声は──」
偽勇者「いいか、包帯の巻き方はな……こうしてこうしてこうするんだ」グルグル…
僧侶「なるほど……!」
戦士「すげえ、さっきと全然ちがうぜ!」
魔法使い「わっ、すごく足を動かしやすい!」クイクイッ
勇者「あ、あの……ぜひお名前を!」
偽勇者「名乗るほどのもんじゃねえよ、じゃあな!」ダッ
勇者「行ってしまった……」
25: 2013/12/23(月) 22:46:27.52 ID:O82VYKAT0
勇者「あの後すぐ、巨大植物のモンスターが出てきたけど……」
勇者「僧侶の魔力を温存してたおかげで、どうにか乗り越えられた……」
戦士「あのアドバイスがなかったら、回復が間に合わず全滅してたかもな」
魔法使い「ボクの足も、あの人のおかげですっかりよくなったしね」
僧侶「名前さえ教えてくれませんでしたが、あの人はいったい……」
偽勇者(あの程度の食人植物に手こずりやがって……情けねえ)
偽勇者(俺がかげながら援護してなきゃ、全員食われてたぜ)
偽勇者(しかも、植物モンスターは根を壊さないと復活するっての……)
偽勇者(ま、根は俺が壊してやったけどな)
偽勇者(これも全て、俺が最後に手柄を奪うためだ!)
勇者「僧侶の魔力を温存してたおかげで、どうにか乗り越えられた……」
戦士「あのアドバイスがなかったら、回復が間に合わず全滅してたかもな」
魔法使い「ボクの足も、あの人のおかげですっかりよくなったしね」
僧侶「名前さえ教えてくれませんでしたが、あの人はいったい……」
偽勇者(あの程度の食人植物に手こずりやがって……情けねえ)
偽勇者(俺がかげながら援護してなきゃ、全員食われてたぜ)
偽勇者(しかも、植物モンスターは根を壊さないと復活するっての……)
偽勇者(ま、根は俺が壊してやったけどな)
偽勇者(これも全て、俺が最後に手柄を奪うためだ!)
26: 2013/12/23(月) 22:52:23.44 ID:O82VYKAT0
─ 洞窟 ─
暗闇の中を進む勇者パーティー。
フッ……
勇者「しまった! たいまつの炎が消えてしまった!」
戦士「げえっ! 暗くてなにも見えねえよ!」
魔法使い「ボクも火を出そうにも、もう魔力が……!」ボシュッ…
僧侶「ど、ど、ど、どうしましょう! く、暗いのは怖いです、苦手です!」
ドタバタ……
偽勇者(暗闇で一番やっちゃいけないのは、パニックになることだ!)
偽勇者(ただでさえ目が利かないんだからな!)
偽勇者(なんでこいつら、そんなことも知らないんだよ!)イライラ…
暗闇の中を進む勇者パーティー。
フッ……
勇者「しまった! たいまつの炎が消えてしまった!」
戦士「げえっ! 暗くてなにも見えねえよ!」
魔法使い「ボクも火を出そうにも、もう魔力が……!」ボシュッ…
僧侶「ど、ど、ど、どうしましょう! く、暗いのは怖いです、苦手です!」
ドタバタ……
偽勇者(暗闇で一番やっちゃいけないのは、パニックになることだ!)
偽勇者(ただでさえ目が利かないんだからな!)
偽勇者(なんでこいつら、そんなことも知らないんだよ!)イライラ…
27: 2013/12/23(月) 22:52:31.66 ID:ScQZSf/gO
アフターケアも万全か…
30: 2013/12/23(月) 22:56:44.77 ID:O82VYKAT0
偽勇者「こっちだ! 俺についてこい!」ボッ…
勇者「あっ、あなたは!? 村や森で俺たちを助けてくれた……」
戦士「アンタ、たいまつ持ってたのか……おかげで洞窟を楽に歩けるぜ!」
偽勇者「いや、これは消す」ジュッ…
魔法使い「な、なんでさ!?」
僧侶「そうですよ! この暗闇じゃ、たいまつは必須です!」
偽勇者「お前らが暗闇に慣れるためだ!」
偽勇者「いいか、暗闇では絶対パニックになるな!」
偽勇者「落ちついて、空気の流れや気配を肌で感じ取るんだ!」
偽勇者「そうすりゃ、そのうち外と同じように動けるようになる! 分かったか!」
勇者「は……はいっ!」
勇者「あっ、あなたは!? 村や森で俺たちを助けてくれた……」
戦士「アンタ、たいまつ持ってたのか……おかげで洞窟を楽に歩けるぜ!」
偽勇者「いや、これは消す」ジュッ…
魔法使い「な、なんでさ!?」
僧侶「そうですよ! この暗闇じゃ、たいまつは必須です!」
偽勇者「お前らが暗闇に慣れるためだ!」
偽勇者「いいか、暗闇では絶対パニックになるな!」
偽勇者「落ちついて、空気の流れや気配を肌で感じ取るんだ!」
偽勇者「そうすりゃ、そのうち外と同じように動けるようになる! 分かったか!」
勇者「は……はいっ!」
31: 2013/12/23(月) 22:58:22.96 ID:V/KKtqVo0
しかしこの偽勇者
ストーカーである
ストーカーである
32: 2013/12/23(月) 22:59:47.02 ID:ScQZSf/gO
ニセがピッコロさんで再生される
33: 2013/12/23(月) 23:00:40.15 ID:O82VYKAT0
ようやく洞窟を抜けた勇者たち。
魔法使い「やったぁ~! やっと洞窟を抜けられたぁ~!」
僧侶「これで暗闇とはお別れですね……だいぶ慣れましたけど」
戦士「太陽がまぶしいぜ……」
偽勇者「少しずつ慣らしていけよ。目がやられちまうぞ」
勇者「あ、あの……ありがとうございました」
偽勇者「あ? 気にすんな。じゃあな」ダッ
勇者「あっ……」
勇者(何者なんだろう……。彼も冒険者だろうけど、俺とは大違いだ……)
勇者「さて、もう少し歩けば“東の王国”だ」
勇者「城に着いたら事情を説明して、魔王討伐に力を貸してもらおう!」
魔法使い「やったぁ~! やっと洞窟を抜けられたぁ~!」
僧侶「これで暗闇とはお別れですね……だいぶ慣れましたけど」
戦士「太陽がまぶしいぜ……」
偽勇者「少しずつ慣らしていけよ。目がやられちまうぞ」
勇者「あ、あの……ありがとうございました」
偽勇者「あ? 気にすんな。じゃあな」ダッ
勇者「あっ……」
勇者(何者なんだろう……。彼も冒険者だろうけど、俺とは大違いだ……)
勇者「さて、もう少し歩けば“東の王国”だ」
勇者「城に着いたら事情を説明して、魔王討伐に力を貸してもらおう!」
34: 2013/12/23(月) 23:06:29.34 ID:O82VYKAT0
─ 東の王国 城 ─
東国王「ふ~む……おぬしらの魔王討伐に協力、か……」
東国王「どう思うかね、大臣」
東大臣「我が国はまだ魔王軍に侵略されておりません」
東大臣「また、侵略されても問題ありません」
東大臣「彼らが勝手にやっていることです。手助けの必要はないでしょう」
東国王「うむ、余もそう思っていた。我が国は魔王など恐れぬ」
勇者「しかし……! 魔王軍は神出鬼没です! 現に他の国では──」
東国王「もう下がりたまえ。余は忙しいのだ」
東大臣「…………」ニヤッ
偽勇者(こっそりついてきたが……あの大臣、犬歯が妙に長くねえか……?)
偽勇者(……揺さぶってみるか)
東国王「ふ~む……おぬしらの魔王討伐に協力、か……」
東国王「どう思うかね、大臣」
東大臣「我が国はまだ魔王軍に侵略されておりません」
東大臣「また、侵略されても問題ありません」
東大臣「彼らが勝手にやっていることです。手助けの必要はないでしょう」
東国王「うむ、余もそう思っていた。我が国は魔王など恐れぬ」
勇者「しかし……! 魔王軍は神出鬼没です! 現に他の国では──」
東国王「もう下がりたまえ。余は忙しいのだ」
東大臣「…………」ニヤッ
偽勇者(こっそりついてきたが……あの大臣、犬歯が妙に長くねえか……?)
偽勇者(……揺さぶってみるか)
37: 2013/12/23(月) 23:10:20.80 ID:gFV4T8hx0
ゴクリ…
38: 2013/12/23(月) 23:11:02.56 ID:O82VYKAT0
「ヘイ、勇者たち! まだ斬らねえのかい!?」
勇者「へ?」
「城内で人間に化けてる魔物を、謁見中に斬り殺すって手はずだったろ!?」
「モタモタしてんなよ!」
戦士(この声はあの人だが……なんの話だ!?)
東大臣「ちいっ……」シュウウ…
勇者「!?」
魔物「まさかバレていたとはなァ……!」シュウウ…
正体を明かす大臣。
東国王「大臣っ!?」
魔物「スキを突いて勇者たちを暗殺し、その後ゆっくり国を乗っ取る予定だったが……」
魔物「さすがは勇者といったところか!」
勇者(ま、まさか大臣が魔物だったなんて……!)
魔物「まぁいい……。まずは勇者、お前から死ねいっ!」シュバッ
勇者「へ?」
「城内で人間に化けてる魔物を、謁見中に斬り殺すって手はずだったろ!?」
「モタモタしてんなよ!」
戦士(この声はあの人だが……なんの話だ!?)
東大臣「ちいっ……」シュウウ…
勇者「!?」
魔物「まさかバレていたとはなァ……!」シュウウ…
正体を明かす大臣。
東国王「大臣っ!?」
魔物「スキを突いて勇者たちを暗殺し、その後ゆっくり国を乗っ取る予定だったが……」
魔物「さすがは勇者といったところか!」
勇者(ま、まさか大臣が魔物だったなんて……!)
魔物「まぁいい……。まずは勇者、お前から死ねいっ!」シュバッ
39: 2013/12/23(月) 23:14:03.90 ID:ZLRkoviU0
手柄譲ってる件
目標は魔王だし良いのか…
目標は魔王だし良いのか…
42: 2013/12/23(月) 23:15:35.73 ID:O82VYKAT0
キンッ!
魔物「むっ!?」
勇者(俺だって、あの人のようになりたくて特訓してるんだ!)
勇者(力をほどよく抜いて、剣を振るうっ!)
ズバァッ! ザクッ! ザンッ!
魔物「ぐ、はァ……!」ドサッ…
勇者「ふう……なんとか倒せた……」
勇者(あの人がいなかったら……俺たちはみんな殺されてただろう……)
勇者「王様、これでも魔王は恐ろしくない、といえますか?」
東国王「い、いや……余が甘かった。まさか大臣が魔物だったとは……」
東国王「我が国も、全力を挙げて君たちをバックアップさせてもらうよ」
勇者「ありがとうございます!」
魔物「むっ!?」
勇者(俺だって、あの人のようになりたくて特訓してるんだ!)
勇者(力をほどよく抜いて、剣を振るうっ!)
ズバァッ! ザクッ! ザンッ!
魔物「ぐ、はァ……!」ドサッ…
勇者「ふう……なんとか倒せた……」
勇者(あの人がいなかったら……俺たちはみんな殺されてただろう……)
勇者「王様、これでも魔王は恐ろしくない、といえますか?」
東国王「い、いや……余が甘かった。まさか大臣が魔物だったとは……」
東国王「我が国も、全力を挙げて君たちをバックアップさせてもらうよ」
勇者「ありがとうございます!」
43: 2013/12/23(月) 23:18:38.56 ID:O82VYKAT0
─ 宿屋 ─
戦士「いやぁ~、こんな豪華な宿まで用意してもらえて」フカフカ…
戦士「きわどい場面も多いが、旅は絶好調だな!」
勇者「ああ……」
魔法使い「大臣が魔物だったと知って、王様もとたんに態度を変えたからね」
僧侶「でも、本当に危ないところでした」
勇者「うん……」
勇者「ところで、いつも危ないところで俺たちにアドバイスしてくれるあの人は」
勇者「いったい何者なんだろう?」
戦士「いやぁ~、こんな豪華な宿まで用意してもらえて」フカフカ…
戦士「きわどい場面も多いが、旅は絶好調だな!」
勇者「ああ……」
魔法使い「大臣が魔物だったと知って、王様もとたんに態度を変えたからね」
僧侶「でも、本当に危ないところでした」
勇者「うん……」
勇者「ところで、いつも危ないところで俺たちにアドバイスしてくれるあの人は」
勇者「いったい何者なんだろう?」
46: 2013/12/23(月) 23:21:59.60 ID:tosBFmrA0
偽勇者だけでいいんじゃね?
48: 2013/12/23(月) 23:24:37.59 ID:O82VYKAT0
戦士「俺は最初、勇者の血筋が流れる人間だと思ってたけどよ」
戦士「お前の親戚ってわけでもないんだろ?」
勇者「うん、ちがう。あんな人、見たこともないよ」
僧侶「じゃあ、いったい……」
魔法使い「もしかして、ずっと昔からやってきたかつての勇者、だったりして」
戦士「ああ~……たしかに。あの落ちつき具合は、ベテランって感じだもんな」
僧侶「ロマンがある話ですね」
勇者「勇者……か」
勇者(あの人が何者であれ、実力でいえばあの人こそが勇者に相応しい)
勇者(でもどうして、表舞台に出てこようとしないんだろうか)
勇者(なにか、表舞台に出られない理由があるんだろうか……)
戦士「お前の親戚ってわけでもないんだろ?」
勇者「うん、ちがう。あんな人、見たこともないよ」
僧侶「じゃあ、いったい……」
魔法使い「もしかして、ずっと昔からやってきたかつての勇者、だったりして」
戦士「ああ~……たしかに。あの落ちつき具合は、ベテランって感じだもんな」
僧侶「ロマンがある話ですね」
勇者「勇者……か」
勇者(あの人が何者であれ、実力でいえばあの人こそが勇者に相応しい)
勇者(でもどうして、表舞台に出てこようとしないんだろうか)
勇者(なにか、表舞台に出られない理由があるんだろうか……)
49: 2013/12/23(月) 23:29:47.00 ID:O82VYKAT0
東の王国でも、勇者たちは大人気となった。
ワアァァァァァ……!
東国王「たった数日間滞在しただけで、今や余をもしのぐ人気だ」
東国王「これが勇者殿の持つ人徳というものであろうな」
勇者「いえ、そんなことは……」
東国王「いや……余もおぬしをすっかり気に入ってしまっておる」
東国王「大臣に化けていた魔物を倒してくれたこととは関係なく、な」
東国王「おぬしほど誠実な若者はそうはおらぬ」
勇者「そこまでおっしゃっていただけて、光栄です」
東国王「この国を出れば、すぐ“剣の王国”だ」
東国王「世界でもっとも剣術の栄えた国……きっと魔王討伐の役に立つ情報もあろう」
東国王「ぜひ立ち寄ってみるといい」
勇者「はいっ!」
ワアァァァァァ……!
東国王「たった数日間滞在しただけで、今や余をもしのぐ人気だ」
東国王「これが勇者殿の持つ人徳というものであろうな」
勇者「いえ、そんなことは……」
東国王「いや……余もおぬしをすっかり気に入ってしまっておる」
東国王「大臣に化けていた魔物を倒してくれたこととは関係なく、な」
東国王「おぬしほど誠実な若者はそうはおらぬ」
勇者「そこまでおっしゃっていただけて、光栄です」
東国王「この国を出れば、すぐ“剣の王国”だ」
東国王「世界でもっとも剣術の栄えた国……きっと魔王討伐の役に立つ情報もあろう」
東国王「ぜひ立ち寄ってみるといい」
勇者「はいっ!」
51: 2013/12/23(月) 23:34:15.06 ID:O82VYKAT0
─ 剣の王国 ─
魔法使い「この国は剣術がとても盛んなんだってね」
僧侶「首都にある闘技場では、今度剣術大会が開かれるそうですよ」
戦士「へぇ……。なあ勇者、俺たちも出てみないか?」
勇者「えぇっ!? 俺たちは魔王退治の旅の途中だぞ!」
戦士「だからこそ、だよ」
戦士「もしここで苦戦するようなら、魔王なんかとても倒せねえぞ?」
勇者「たしかに……」
勇者(おそらくあの人でも、そうするだろうな)
勇者「分かった! 挑戦してみよう!」
偽勇者「…………」
魔法使い「この国は剣術がとても盛んなんだってね」
僧侶「首都にある闘技場では、今度剣術大会が開かれるそうですよ」
戦士「へぇ……。なあ勇者、俺たちも出てみないか?」
勇者「えぇっ!? 俺たちは魔王退治の旅の途中だぞ!」
戦士「だからこそ、だよ」
戦士「もしここで苦戦するようなら、魔王なんかとても倒せねえぞ?」
勇者「たしかに……」
勇者(おそらくあの人でも、そうするだろうな)
勇者「分かった! 挑戦してみよう!」
偽勇者「…………」
53: 2013/12/23(月) 23:38:57.43 ID:O82VYKAT0
─ 闘技場 ─
キィンッ! ギンッ! キンッ!
闘技者A「ま、参った! ──完敗だ!」
勇者「こちらこそ、いい試合ができたよ」
闘技者B「ぐおおっ……力で押し切られたか」ガクッ
戦士「よっしゃあ!」
ワアァァァ……! オオォォォ……! ワアァァァ……! オオォォォ……!
魔法使い「すごいよ、二人とも! 他の参加者たちを全く寄せつけない!」
僧侶「当然ですよ、過酷な冒険をくぐり抜けてきたお二人ですもの!」
魔法使い「それに、大会が進むにつれて、二人のファンが増えてるね」
僧侶「二人とも、正々堂々相手の力を引き出しつつ、打ち負かしてますからね」
偽勇者(今のあいつらなら、この程度の大会は余裕だろう)
偽勇者(そして……薄々感じてはいたが、やはり奴らは俺とはちがう……)
キィンッ! ギンッ! キンッ!
闘技者A「ま、参った! ──完敗だ!」
勇者「こちらこそ、いい試合ができたよ」
闘技者B「ぐおおっ……力で押し切られたか」ガクッ
戦士「よっしゃあ!」
ワアァァァ……! オオォォォ……! ワアァァァ……! オオォォォ……!
魔法使い「すごいよ、二人とも! 他の参加者たちを全く寄せつけない!」
僧侶「当然ですよ、過酷な冒険をくぐり抜けてきたお二人ですもの!」
魔法使い「それに、大会が進むにつれて、二人のファンが増えてるね」
僧侶「二人とも、正々堂々相手の力を引き出しつつ、打ち負かしてますからね」
偽勇者(今のあいつらなら、この程度の大会は余裕だろう)
偽勇者(そして……薄々感じてはいたが、やはり奴らは俺とはちがう……)
54: 2013/12/23(月) 23:41:37.70 ID:ScQZSf/gO
成長してたか
55: 2013/12/23(月) 23:41:41.88 ID:O82VYKAT0
決勝戦──
ギィンッ!
戦士「ぐっ……降参だ!」
審判「そこまで! 剣の王国闘技大会、優勝者は──勇者!」
ワアァァァァァ……!
戦士「へっ……やられたぜ。さすが勇者」
勇者「こっちこそヒヤッとしたさ。強い仲間を持つことができて、嬉しいよ」
「すごいぞ、勇者!」 「戦士もよく頑張った!」 「二人ともカッコイイぞ!」
魔法使い「勇者も戦士も、もうすっかりヒーローだ……!」
僧侶「お二人の激闘が、剣が盛んな国の人々の心を掴んだんですね」
ギィンッ!
戦士「ぐっ……降参だ!」
審判「そこまで! 剣の王国闘技大会、優勝者は──勇者!」
ワアァァァァァ……!
戦士「へっ……やられたぜ。さすが勇者」
勇者「こっちこそヒヤッとしたさ。強い仲間を持つことができて、嬉しいよ」
「すごいぞ、勇者!」 「戦士もよく頑張った!」 「二人ともカッコイイぞ!」
魔法使い「勇者も戦士も、もうすっかりヒーローだ……!」
僧侶「お二人の激闘が、剣が盛んな国の人々の心を掴んだんですね」
56: 2013/12/23(月) 23:45:09.86 ID:O82VYKAT0
─ 剣の王国 城 ─
剣国王「君たちが勇者パーティーか。なるほど、みごとなものだ」
勇者「いえ、この国の闘技者たちも、強い人ばかりでした」
勇者「まだまだ修業が足りないことを思い知らされました」
剣国王「いやいや、君たちほど強い剣士を、私は見たことがないよ」
戦士「へへへ、剣の王国のお墨付きだ!」
剣国王「うむ。他に君たちほど強い剣士は──」
剣国王「……いや。一人だけ……いたな」
魔法使い「え?」
僧侶「勇者さんや戦士さん並みに、強い剣士の方がいたんですか?」
剣国王「うむ……強さだけならば、我が国の歴史上でも一番だったかもしれない」
剣国王「君たちが勇者パーティーか。なるほど、みごとなものだ」
勇者「いえ、この国の闘技者たちも、強い人ばかりでした」
勇者「まだまだ修業が足りないことを思い知らされました」
剣国王「いやいや、君たちほど強い剣士を、私は見たことがないよ」
戦士「へへへ、剣の王国のお墨付きだ!」
剣国王「うむ。他に君たちほど強い剣士は──」
剣国王「……いや。一人だけ……いたな」
魔法使い「え?」
僧侶「勇者さんや戦士さん並みに、強い剣士の方がいたんですか?」
剣国王「うむ……強さだけならば、我が国の歴史上でも一番だったかもしれない」
59: 2013/12/23(月) 23:50:39.54 ID:O82VYKAT0
剣国王「だが……剣士としてはあまりにも非道だった」
剣国王「剣を相手を殺すための道具としか見なしておらず」
剣国王「ひとたび戦いとなれば、相手が降参しようと容赦なく命を奪い」
剣国王「名誉欲や支配欲が強く、自分を認めない人間がいると徹底的に攻撃し」
剣国王「喝采を浴びたいがために、人をそそのかして騒動や事件を起こさせ」
剣国王「それを自分で解決するなどといった工作もやっていた」
戦士「とんでもねえヤロウだ……」
魔法使い「力はあるのに、その使い方を間違っちゃったタイプだね」
剣国王「むろん、皆もバカではない」
剣国王「すぐさまそれらの悪事は知れ渡り、奴はこの国に居場所を失った」
剣国王「誰よりも強かったが、誰よりも嫌われていた男だった……」
剣国王「皆に好かれる勇者殿とは正反対──いや、比べることすら失礼かもしれん」
剣国王「剣を相手を殺すための道具としか見なしておらず」
剣国王「ひとたび戦いとなれば、相手が降参しようと容赦なく命を奪い」
剣国王「名誉欲や支配欲が強く、自分を認めない人間がいると徹底的に攻撃し」
剣国王「喝采を浴びたいがために、人をそそのかして騒動や事件を起こさせ」
剣国王「それを自分で解決するなどといった工作もやっていた」
戦士「とんでもねえヤロウだ……」
魔法使い「力はあるのに、その使い方を間違っちゃったタイプだね」
剣国王「むろん、皆もバカではない」
剣国王「すぐさまそれらの悪事は知れ渡り、奴はこの国に居場所を失った」
剣国王「誰よりも強かったが、誰よりも嫌われていた男だった……」
剣国王「皆に好かれる勇者殿とは正反対──いや、比べることすら失礼かもしれん」
61: 2013/12/23(月) 23:54:28.09 ID:O82VYKAT0
勇者「ところで、その剣士は今どこに……?」
剣国王「……分からん」
剣国王「あの性格を正さぬ限り、どこにいってもやってはいけないだろう」
剣国王「案外今もどこかで、懲りずに悪巧みをしているのかもしれない」
剣国王「いや、これは余計な話をした。どうか忘れて欲しい」
剣国王「今日は我が国を挙げて、優勝者であり英雄である君たちを歓迎しよう!」
戦士「やったぜ!」
魔法使い「ありがとうございます!」
僧侶「剣の王国の王様だけあって、さっぱりした気風の方ですね」
勇者「…………」
剣国王「……分からん」
剣国王「あの性格を正さぬ限り、どこにいってもやってはいけないだろう」
剣国王「案外今もどこかで、懲りずに悪巧みをしているのかもしれない」
剣国王「いや、これは余計な話をした。どうか忘れて欲しい」
剣国王「今日は我が国を挙げて、優勝者であり英雄である君たちを歓迎しよう!」
戦士「やったぜ!」
魔法使い「ありがとうございます!」
僧侶「剣の王国の王様だけあって、さっぱりした気風の方ですね」
勇者「…………」
63: 2013/12/23(月) 23:59:31.78 ID:O82VYKAT0
─ 剣の王国 城外 ─
偽勇者「懐かしい景色だぜ……」
偽勇者「この国に帰ってくるのも、何年ぶりかな……」
偽勇者「さすがにこの国では顔を知られすぎてて」
偽勇者「ずっとあいつらについてるワケにゃいかねえな」
偽勇者(勇者たちが優勝した闘技大会……)
偽勇者(俺もずっと昔、対戦相手を全員ブッ殺して優勝したが、拍手や喝采はなかった)
偽勇者(あれから俺はどうしても皆に認められたくて、あれこれ策を練ったが)
偽勇者(どれも裏目に出て……この国を追い出されるはめになった)
偽勇者(おっと……イヤなこと思い出しちまった)
偽勇者「懐かしい景色だぜ……」
偽勇者「この国に帰ってくるのも、何年ぶりかな……」
偽勇者「さすがにこの国では顔を知られすぎてて」
偽勇者「ずっとあいつらについてるワケにゃいかねえな」
偽勇者(勇者たちが優勝した闘技大会……)
偽勇者(俺もずっと昔、対戦相手を全員ブッ殺して優勝したが、拍手や喝采はなかった)
偽勇者(あれから俺はどうしても皆に認められたくて、あれこれ策を練ったが)
偽勇者(どれも裏目に出て……この国を追い出されるはめになった)
偽勇者(おっと……イヤなこと思い出しちまった)
68: 2013/12/24(火) 00:08:23.43 ID:cYz+Xt/G0
剣の王国を出発し、勇者たちの旅はいよいよ佳境を迎えた。
─ 魔王軍基地 ─
勇者「──よし! 魔王軍幹部を討ち取ったぞ!」
戦士「こいつの指揮がなきゃ、俺ら人間界の軍隊がだいぶ有利になるぜ!」
魔法使い「ボクらの旅も……ついに終わりが見えてきたね」
僧侶「もうひと踏ん張りです。頑張りましょう、皆さん!」
偽勇者(まだまだ俺から見りゃ、スキだらけだが──)
偽勇者(こいつら、だいぶやるようになったじゃねえか)
偽勇者(──ん?)
─ 魔王軍基地 ─
勇者「──よし! 魔王軍幹部を討ち取ったぞ!」
戦士「こいつの指揮がなきゃ、俺ら人間界の軍隊がだいぶ有利になるぜ!」
魔法使い「ボクらの旅も……ついに終わりが見えてきたね」
僧侶「もうひと踏ん張りです。頑張りましょう、皆さん!」
偽勇者(まだまだ俺から見りゃ、スキだらけだが──)
偽勇者(こいつら、だいぶやるようになったじゃねえか)
偽勇者(──ん?)
69: 2013/12/24(火) 00:14:35.32 ID:cYz+Xt/G0
少年魔族「た、助けて……」ガタガタ…
戦士「生き残りがいたのか。気は進まねえが、復讐に来られたら面倒だしな」チャキッ
勇者「待ってくれ、戦士!」
戦士「! なんだよ……? なんで止めるんだよ?」
勇者「俺たちは魔族を滅ぼすために戦ってるんじゃない」
勇者「人間を守るために戦っているんだ……これ以上、血を流す必要はない」
戦士「へっ……分かったよ」スッ…
勇者「おい、君」
少年魔族「は、はい!」
勇者「これは戦いだ……俺たちがやったことを、君に謝るつもりはない」
勇者「だけど、もし恨みを忘れられなかったら、直接俺に挑みにきてくれ」
勇者「俺はいつでも受けて立つ」
勇者「みんな、行こう。魔王城はもう目の前だ!」クルッ
偽勇者「…………」
戦士「生き残りがいたのか。気は進まねえが、復讐に来られたら面倒だしな」チャキッ
勇者「待ってくれ、戦士!」
戦士「! なんだよ……? なんで止めるんだよ?」
勇者「俺たちは魔族を滅ぼすために戦ってるんじゃない」
勇者「人間を守るために戦っているんだ……これ以上、血を流す必要はない」
戦士「へっ……分かったよ」スッ…
勇者「おい、君」
少年魔族「は、はい!」
勇者「これは戦いだ……俺たちがやったことを、君に謝るつもりはない」
勇者「だけど、もし恨みを忘れられなかったら、直接俺に挑みにきてくれ」
勇者「俺はいつでも受けて立つ」
勇者「みんな、行こう。魔王城はもう目の前だ!」クルッ
偽勇者「…………」
70: 2013/12/24(火) 00:18:24.55 ID:cYz+Xt/G0
─ 魔王城付近 ─
勇者「いよいよ明日……魔王城に乗り込む」
勇者「今さら夜襲もないだろう。今夜はぐっすり休んでくれ」
戦士「おうよ!」
魔法使い「念のため、周囲には結界を張っておくけどね」
勇者「ありがとう。それじゃ俺は、少し夜風に当たってくるよ」
僧侶「勇者さんも、早めに眠るようにして下さいね」
一人きりになった勇者。
勇者「…………」ザッ…
勇者「そこにいらっしゃるんでしょう?」
偽勇者「!」ピクッ
勇者「いよいよ明日……魔王城に乗り込む」
勇者「今さら夜襲もないだろう。今夜はぐっすり休んでくれ」
戦士「おうよ!」
魔法使い「念のため、周囲には結界を張っておくけどね」
勇者「ありがとう。それじゃ俺は、少し夜風に当たってくるよ」
僧侶「勇者さんも、早めに眠るようにして下さいね」
一人きりになった勇者。
勇者「…………」ザッ…
勇者「そこにいらっしゃるんでしょう?」
偽勇者「!」ピクッ
74: 2013/12/24(火) 00:24:58.77 ID:cYz+Xt/G0
偽勇者「俺の気配に気づくとは……ずいぶん成長したな」
偽勇者「なにもかもがド素人だったあの頃が、まるでウソのようだぜ」
勇者「俺が……いや、俺たちが強くなれたのはあなたのおかげです」
勇者「元々俺たちは血筋や学校の成績だけで、魔王討伐を任された四人だったんです」
勇者「素質こそあったんでしょうが、実戦経験はゼロでした」
勇者「あなたがいたから俺たちは強くなることができ、増長することもなかった」
勇者「本当に……感謝しています」
偽勇者「……で、話はそれだけじゃなさそうだな?」
勇者「あなたが何者なのか、俺にはもう分かっています」
偽勇者「……剣の王国で聞いたのか」
勇者「はい」
勇者「あなたがなぜ、俺たちを助けてくれてたのかも、分かったつもりです」
偽勇者「それで……どうするつもりだ?」
偽勇者「邪心を抱く悪党を……この場で倒そうってか?」
偽勇者「俺はかまわんぜぇ?」ニィッ
偽勇者「なにもかもがド素人だったあの頃が、まるでウソのようだぜ」
勇者「俺が……いや、俺たちが強くなれたのはあなたのおかげです」
勇者「元々俺たちは血筋や学校の成績だけで、魔王討伐を任された四人だったんです」
勇者「素質こそあったんでしょうが、実戦経験はゼロでした」
勇者「あなたがいたから俺たちは強くなることができ、増長することもなかった」
勇者「本当に……感謝しています」
偽勇者「……で、話はそれだけじゃなさそうだな?」
勇者「あなたが何者なのか、俺にはもう分かっています」
偽勇者「……剣の王国で聞いたのか」
勇者「はい」
勇者「あなたがなぜ、俺たちを助けてくれてたのかも、分かったつもりです」
偽勇者「それで……どうするつもりだ?」
偽勇者「邪心を抱く悪党を……この場で倒そうってか?」
偽勇者「俺はかまわんぜぇ?」ニィッ
75: 2013/12/24(火) 00:30:56.23 ID:cYz+Xt/G0
勇者「いえ……逆です」
偽勇者「?」
勇者「どうか……俺たちの仲間になってくれませんか」
勇者「いや、俺の代わりに勇者になってくれませんか!?」
偽勇者「な……!」
勇者「過去の経歴はどうあれ、あなたの性格がどうであれ」
勇者「俺たちがここまでこれたのは、全てあなたのおかげです」
勇者「それに実力でいえば、まだまだあなたの方が上でしょう」
勇者「現に俺は、魔王には勝てる自信があるが、あなたに勝てる自信はまるでない」
勇者「たとえ他の三人と一緒に戦ったとしても、です」
勇者「世界を救ったという名誉、魔王を倒したという快挙──」
勇者「俺よりも、あなたにこそ相応しい」
勇者「戦士たちも、まちがいなく納得してくれるはずです」
偽勇者「…………」
偽勇者「?」
勇者「どうか……俺たちの仲間になってくれませんか」
勇者「いや、俺の代わりに勇者になってくれませんか!?」
偽勇者「な……!」
勇者「過去の経歴はどうあれ、あなたの性格がどうであれ」
勇者「俺たちがここまでこれたのは、全てあなたのおかげです」
勇者「それに実力でいえば、まだまだあなたの方が上でしょう」
勇者「現に俺は、魔王には勝てる自信があるが、あなたに勝てる自信はまるでない」
勇者「たとえ他の三人と一緒に戦ったとしても、です」
勇者「世界を救ったという名誉、魔王を倒したという快挙──」
勇者「俺よりも、あなたにこそ相応しい」
勇者「戦士たちも、まちがいなく納得してくれるはずです」
偽勇者「…………」
77: 2013/12/24(火) 00:37:58.86 ID:cYz+Xt/G0
偽勇者「ありがたい話だが、俺にそんなつもりはねえよ」
勇者「なぜです? ……あなたは、勇者になることを望んでたはずだ!」
偽勇者「そう……そのとおりだ」
偽勇者「俺は誰よりも強くなりたかった。目立つことや褒められることが大好きだった」
偽勇者「だから、体がイカれるほど修業して、あれこれ策を練った」
偽勇者「だが……やり方をミスっちまって、慕われるどころか皆から嫌われて」
偽勇者「残ったのは……放浪生活で得た経験と、剣の腕だけだった」
偽勇者「やがて俺は、勇者の血を引く人間が住むという国に流れ着いた」
偽勇者「俺はこれが最後の大逆転チャンスだと悟った」
偽勇者「魔王とお前らを始末して、魔王を倒した勇者になっちまえば──」
偽勇者「みんなから慕われることができると!」
勇者「そうだ……あなたには資格がある。少なくとも、俺よりずっと!」
偽勇者「そう、俺もそう思ってた」
偽勇者「戦いのイロハも知らねえお前より、俺こそが勇者に相応しいと思っていた」
偽勇者「だが……そうじゃなかった」
勇者「なぜです? ……あなたは、勇者になることを望んでたはずだ!」
偽勇者「そう……そのとおりだ」
偽勇者「俺は誰よりも強くなりたかった。目立つことや褒められることが大好きだった」
偽勇者「だから、体がイカれるほど修業して、あれこれ策を練った」
偽勇者「だが……やり方をミスっちまって、慕われるどころか皆から嫌われて」
偽勇者「残ったのは……放浪生活で得た経験と、剣の腕だけだった」
偽勇者「やがて俺は、勇者の血を引く人間が住むという国に流れ着いた」
偽勇者「俺はこれが最後の大逆転チャンスだと悟った」
偽勇者「魔王とお前らを始末して、魔王を倒した勇者になっちまえば──」
偽勇者「みんなから慕われることができると!」
勇者「そうだ……あなたには資格がある。少なくとも、俺よりずっと!」
偽勇者「そう、俺もそう思ってた」
偽勇者「戦いのイロハも知らねえお前より、俺こそが勇者に相応しいと思っていた」
偽勇者「だが……そうじゃなかった」
78: 2013/12/24(火) 00:44:30.96 ID:cYz+Xt/G0
偽勇者「お前らは冒険の途中で、大勢の人間に勇気を与えた」
偽勇者「たとえ、活躍に見合わない報酬でも文句一ついわず」
偽勇者「闘技大会では、負かした相手を決して貶めず、称えさえした」
偽勇者「時には、敵である魔族にすら情けをかけた」
偽勇者「これは……とても俺じゃできねえことだ」
偽勇者「剣は殺すもの、弱い奴が死ぬのは当然、ってのが心の根っこにある俺じゃあな」
偽勇者「“勇者”は強いだけじゃダメだ。それがようやく分かったんだよ」
偽勇者「そして──これを俺に教えてくれたのも、お前だ」
偽勇者「もう俺に、お前に取って代わろうなんて気はねえのさ」
勇者「だけどッ!」
偽勇者「もういいッ! これ以上頼まれたら、また野心が戻ってきちまいそうだ……」
偽勇者「行け、勇者!」
偽勇者「明日……魔王をブッ倒してこい!」
勇者「……はい!」
そして、翌日──
偽勇者「たとえ、活躍に見合わない報酬でも文句一ついわず」
偽勇者「闘技大会では、負かした相手を決して貶めず、称えさえした」
偽勇者「時には、敵である魔族にすら情けをかけた」
偽勇者「これは……とても俺じゃできねえことだ」
偽勇者「剣は殺すもの、弱い奴が死ぬのは当然、ってのが心の根っこにある俺じゃあな」
偽勇者「“勇者”は強いだけじゃダメだ。それがようやく分かったんだよ」
偽勇者「そして──これを俺に教えてくれたのも、お前だ」
偽勇者「もう俺に、お前に取って代わろうなんて気はねえのさ」
勇者「だけどッ!」
偽勇者「もういいッ! これ以上頼まれたら、また野心が戻ってきちまいそうだ……」
偽勇者「行け、勇者!」
偽勇者「明日……魔王をブッ倒してこい!」
勇者「……はい!」
そして、翌日──
79: 2013/12/24(火) 00:46:53.91 ID:DvpwffjUO
偽…
80: 2013/12/24(火) 00:50:29.13 ID:cYz+Xt/G0
─ 魔王城 ─
魔王「ククク……ついに来たか、勇者よ」
魔王「しかし、しょせん人間ではこのワシには勝てぬ!」
魔王「魔族の王たるワシの力と恐ろしさをその身に焼きつけて、地獄にゆけいッ!」
勇者「みんな、行くぞ!」チャキッ
戦士「正真正銘ラストバトルだ! 思う存分暴れさせてもらうぜ!」スラッ…
魔法使い「ボクの魔法には、冒険の途中で出会った人の想いも詰まってるんだ!」ボッ
僧侶「回復はお任せを! 安心して戦って下さい!」
勇者「うおおおおっ!」ブオンッ
魔王「ぬううううっ!」シュバァッ
ガキンッ!
魔王「ククク……ついに来たか、勇者よ」
魔王「しかし、しょせん人間ではこのワシには勝てぬ!」
魔王「魔族の王たるワシの力と恐ろしさをその身に焼きつけて、地獄にゆけいッ!」
勇者「みんな、行くぞ!」チャキッ
戦士「正真正銘ラストバトルだ! 思う存分暴れさせてもらうぜ!」スラッ…
魔法使い「ボクの魔法には、冒険の途中で出会った人の想いも詰まってるんだ!」ボッ
僧侶「回復はお任せを! 安心して戦って下さい!」
勇者「うおおおおっ!」ブオンッ
魔王「ぬううううっ!」シュバァッ
ガキンッ!
82: 2013/12/24(火) 00:56:51.15 ID:cYz+Xt/G0
戦士「でやあっ!」シュバァッ
ザシュッ!
魔王「ぐぬうっ……! こしゃくな……!」
魔法使い「さあ、みんなの防御力を上げるよ!」ボァァ…
僧侶「大回復魔法です! これで皆さんの傷は癒えます!」パァァ…
魔王(完璧なコンビネーションだ……よもやここまでやるとは!)
魔王「ぐっ……おのれ、人間どもがぁっ!」
魔王「カァッ!!!」
ズガガガガッ!
勇者「ぐわっ……! まだまだァ!」
ザシュッ!
魔王「ぐぬうっ……! こしゃくな……!」
魔法使い「さあ、みんなの防御力を上げるよ!」ボァァ…
僧侶「大回復魔法です! これで皆さんの傷は癒えます!」パァァ…
魔王(完璧なコンビネーションだ……よもやここまでやるとは!)
魔王「ぐっ……おのれ、人間どもがぁっ!」
魔王「カァッ!!!」
ズガガガガッ!
勇者「ぐわっ……! まだまだァ!」
84: 2013/12/24(火) 01:01:26.61 ID:cYz+Xt/G0
勇者「うおおおおっ!」シュバッ
魔王「ぐ……ぬうっ!」シャッ
ギィンッ!
勇者(こうして俺たちが魔王相手に互角以上に戦えているのは──)
勇者(あの人のおかげだ……!)ザッ
戦士「ハァ、ハァ……トドメはくれてやるぜ、勇者!」
魔法使い「いっけえ!」
僧侶「勇者さん、お願いします!」
勇者「うおりゃあああああッ!!!」
魔王「ぐうっ……!」ヨロッ…
偽勇者(……終わらせろ、勇者!)
魔王「ぐ……ぬうっ!」シャッ
ギィンッ!
勇者(こうして俺たちが魔王相手に互角以上に戦えているのは──)
勇者(あの人のおかげだ……!)ザッ
戦士「ハァ、ハァ……トドメはくれてやるぜ、勇者!」
魔法使い「いっけえ!」
僧侶「勇者さん、お願いします!」
勇者「うおりゃあああああッ!!!」
魔王「ぐうっ……!」ヨロッ…
偽勇者(……終わらせろ、勇者!)
85: 2013/12/24(火) 01:07:08.45 ID:cYz+Xt/G0
ザンッ……!
魔王「ぐはっ……! バ、バカな……!」
魔王「このワシが……人間如き、にィ……! ──ごふっ!」
魔王「も、もうし、わけ……」グラッ…
ドサァッ……
勇者「か、勝ったぁ……!」
戦士「よっしゃあああああっ! さすが勇者だぜ!」
魔法使い「やった……やったんだね!」
僧侶「ええ、ついに魔王を倒したんです、私たち!」
偽勇者(どうやら、最終決戦は……俺の出る幕はなかったようだな)
魔王「ぐはっ……! バ、バカな……!」
魔王「このワシが……人間如き、にィ……! ──ごふっ!」
魔王「も、もうし、わけ……」グラッ…
ドサァッ……
勇者「か、勝ったぁ……!」
戦士「よっしゃあああああっ! さすが勇者だぜ!」
魔法使い「やった……やったんだね!」
僧侶「ええ、ついに魔王を倒したんです、私たち!」
偽勇者(どうやら、最終決戦は……俺の出る幕はなかったようだな)
88: 2013/12/24(火) 01:11:06.81 ID:Gl39czA10
ハッピーエンドだな
89: 2013/12/24(火) 01:13:07.40 ID:cYz+Xt/G0
戦士「ところで……いつものあの人はどこにいるんだ?」
戦士「せっかく魔王を倒したんだ。あの人にも来て欲しいぜ」
魔法使い「なんならボクの魔法で探してみるかい?」
僧侶「そうですね、もしかしたら近くにいるかもしれませんし!」
戦士「もし見つけたら、一緒に王国に帰って──」
勇者「いや……やめておこう」
魔法使い「えっ、どうして?」
勇者「あの人は……そういうことは望んでないと思うんだ」
勇者「だから俺たちは、このまま四人で帰るのが一番いいんだ」
僧侶「たしかに……表に出たがるような人ではありませんでしたね」
魔法使い「うん、勇者がそういうのなら……やめとこっか」
戦士「んじゃあ、とっととこんな辛気臭いところからはおさらばしようぜ!」
戦士「せっかく魔王を倒したんだ。あの人にも来て欲しいぜ」
魔法使い「なんならボクの魔法で探してみるかい?」
僧侶「そうですね、もしかしたら近くにいるかもしれませんし!」
戦士「もし見つけたら、一緒に王国に帰って──」
勇者「いや……やめておこう」
魔法使い「えっ、どうして?」
勇者「あの人は……そういうことは望んでないと思うんだ」
勇者「だから俺たちは、このまま四人で帰るのが一番いいんだ」
僧侶「たしかに……表に出たがるような人ではありませんでしたね」
魔法使い「うん、勇者がそういうのなら……やめとこっか」
戦士「んじゃあ、とっととこんな辛気臭いところからはおさらばしようぜ!」
92: 2013/12/24(火) 01:19:35.19 ID:cYz+Xt/G0
偽勇者(……あいつらは帰ったか)
偽勇者(魔王を倒したのはまちがいなくお前たちの力だ。胸を張って帰れよ)
偽勇者(これで、俺の偽勇者としての生活も終わりだな……)
偽勇者(またあてもなく旅でもするか……)
偽勇者(──ん?)
魔王「うっ、ぐぐぅ……」ズル…
偽勇者(まだ息があるじゃねえか……)
偽勇者(あいつらの詰めが甘いのか、こいつの生命力がとんでもないのか……)
偽勇者(ま……あれなら放っておいても、すぐくたばるだろうが……)
偽勇者(魔王を倒したのはまちがいなくお前たちの力だ。胸を張って帰れよ)
偽勇者(これで、俺の偽勇者としての生活も終わりだな……)
偽勇者(またあてもなく旅でもするか……)
偽勇者(──ん?)
魔王「うっ、ぐぐぅ……」ズル…
偽勇者(まだ息があるじゃねえか……)
偽勇者(あいつらの詰めが甘いのか、こいつの生命力がとんでもないのか……)
偽勇者(ま……あれなら放っておいても、すぐくたばるだろうが……)
94: 2013/12/24(火) 01:24:37.09 ID:cYz+Xt/G0
魔王「ク、クク……」ゲフッ
魔王「憎き勇者どもめ……いまいましい勇者どもめ……」
魔王「奴らは知らぬ……」
魔王「北の大地にて復活を遂げるであろう……大魔王様の存在、を……」
魔王「せいぜい、ワシを倒して浮かれておれ……クククッ……」
魔王「──ガハァッ!」ゲボッ
魔王「…………」ガクッ…
偽勇者「どうやら……まだ終わっちゃいないみたいだな」
魔王「憎き勇者どもめ……いまいましい勇者どもめ……」
魔王「奴らは知らぬ……」
魔王「北の大地にて復活を遂げるであろう……大魔王様の存在、を……」
魔王「せいぜい、ワシを倒して浮かれておれ……クククッ……」
魔王「──ガハァッ!」ゲボッ
魔王「…………」ガクッ…
偽勇者「どうやら……まだ終わっちゃいないみたいだな」
96: 2013/12/24(火) 01:32:19.73 ID:cYz+Xt/G0
一ヶ月後──
─ 城 ─
ワイワイ…… ガヤガヤ……
魔法使い「ふう……。国中、まだどこもかしこもお祭りムードだ。落ちつかないよ」
戦士「いいじゃねえか。もう俺たちが戦う相手はいねえんだしよ!」
僧侶「そうですよ! とことんパーっと楽しみましょう!」
魔法使い「とことん、ねえ……」
勇者「…………」
姫「どうしたのですか? 勇者様?」
勇者「いや、なんでもないよ……姫」
勇者(なんだろう……。なにかとんでもないことが起こるような、胸騒ぎがする)
勇者(いや……もう、すでに起こっているような……)
すると──
─ 城 ─
ワイワイ…… ガヤガヤ……
魔法使い「ふう……。国中、まだどこもかしこもお祭りムードだ。落ちつかないよ」
戦士「いいじゃねえか。もう俺たちが戦う相手はいねえんだしよ!」
僧侶「そうですよ! とことんパーっと楽しみましょう!」
魔法使い「とことん、ねえ……」
勇者「…………」
姫「どうしたのですか? 勇者様?」
勇者「いや、なんでもないよ……姫」
勇者(なんだろう……。なにかとんでもないことが起こるような、胸騒ぎがする)
勇者(いや……もう、すでに起こっているような……)
すると──
100: 2013/12/24(火) 01:39:43.79 ID:cYz+Xt/G0
兵士「大変です、陛下!」ザッ
国王「どうした?」
兵士「遥か北の大地にて、大量の魔族が現れ、南下を始めたという報告が──」
国王「なにい!?」ガタッ
勇者(やはり……!)
兵士「あったのですが──」
国王「ん?」
兵士「発見者である極北観測人が、もう一度状況を確認しにいったところ」
兵士「南下していたはずの魔族たちが全員死体になっていた、と……」
国王「なんだと……!?」
国王「どうした?」
兵士「遥か北の大地にて、大量の魔族が現れ、南下を始めたという報告が──」
国王「なにい!?」ガタッ
勇者(やはり……!)
兵士「あったのですが──」
国王「ん?」
兵士「発見者である極北観測人が、もう一度状況を確認しにいったところ」
兵士「南下していたはずの魔族たちが全員死体になっていた、と……」
国王「なんだと……!?」
101: 2013/12/24(火) 01:44:29.79 ID:KNK+FqoT0
もうあいつだけで良いんじゃないかな
103: 2013/12/24(火) 01:46:42.53 ID:cYz+Xt/G0
国王「それはいったい、どういうことだ……!?」
兵士「観測人によると、仲間同士で争ったとしか考えられない、と……」
国王「ふうむ……いずれにせよ助かった」
国王「もし同士討ちが起こらねば、今から勇者たちや兵士らを派遣しても」
国王「大勢の犠牲者が出ることは避けられなかっただろう……」
戦士「なんだよ、ビックリさせやがって……」
魔法使い「でも、ビックリで済んでよかったよ」
僧侶「まだ魔王軍が残っていたなんて……同士討ちしてくれたのは幸運でしたね……」
勇者「…………」
姫「どうしたの? 勇者様?」
勇者「いや、なんでもないよ」
勇者(これはまさか……あの人が……)
兵士「観測人によると、仲間同士で争ったとしか考えられない、と……」
国王「ふうむ……いずれにせよ助かった」
国王「もし同士討ちが起こらねば、今から勇者たちや兵士らを派遣しても」
国王「大勢の犠牲者が出ることは避けられなかっただろう……」
戦士「なんだよ、ビックリさせやがって……」
魔法使い「でも、ビックリで済んでよかったよ」
僧侶「まだ魔王軍が残っていたなんて……同士討ちしてくれたのは幸運でしたね……」
勇者「…………」
姫「どうしたの? 勇者様?」
勇者「いや、なんでもないよ」
勇者(これはまさか……あの人が……)
105: 2013/12/24(火) 01:54:13.37 ID:cYz+Xt/G0
その頃──
─ 北の大地 ─
大魔王「ぐぬぬぅ……ありえぬ! 勇者の血を引くわけでもない者が」
大魔王「たった一人で、我が直属の軍団をこうもたやすく壊滅させるとは……」
偽勇者「勇者の冒険は、魔王を倒した時点でもう終わってんだよ」
偽勇者「ようするに、お前は“蛇足”なんだ。ここで人知れず退場してもらうぜ」チャキッ
大魔王「キ、キサマ……何者だァッ!」
偽勇者「あ? 俺か? んなもん、勇者様に決まってんだろ」
偽勇者「ただし──」
偽勇者(勇者……こいつは俺に任せて、お前は仲間と平和になった世界を楽しみな)
偽勇者(こんな北の果てにも、ちゃんと勇者様はいるから安心しろい!)
偽勇者「──ニセモノだけどなあッ!!!」
─ 完 ─
─ 北の大地 ─
大魔王「ぐぬぬぅ……ありえぬ! 勇者の血を引くわけでもない者が」
大魔王「たった一人で、我が直属の軍団をこうもたやすく壊滅させるとは……」
偽勇者「勇者の冒険は、魔王を倒した時点でもう終わってんだよ」
偽勇者「ようするに、お前は“蛇足”なんだ。ここで人知れず退場してもらうぜ」チャキッ
大魔王「キ、キサマ……何者だァッ!」
偽勇者「あ? 俺か? んなもん、勇者様に決まってんだろ」
偽勇者「ただし──」
偽勇者(勇者……こいつは俺に任せて、お前は仲間と平和になった世界を楽しみな)
偽勇者(こんな北の果てにも、ちゃんと勇者様はいるから安心しろい!)
偽勇者「──ニセモノだけどなあッ!!!」
─ 完 ─
107: 2013/12/24(火) 01:56:17.37 ID:kdgvhPr00
乙
よかった
よかった
114: 2013/12/24(火) 02:00:20.89 ID:yf7FfCVw0
乙
面白かった
偽勇者かっこよす
面白かった
偽勇者かっこよす
104: 2013/12/24(火) 01:48:54.80 ID:VaaU4jK40
人の為と書いて偽ってジッちゃが言ってた
コメント
コメント一覧 (3)
けどかっこいい終わりだわ
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