1: 2012/03/28(水) 16:57:03 ID:TddNgtD.0
秋山探偵事務所
唯「今日もお菓子持ってきたよ~」
澪「……休憩時間は終わってるぞ」
唯「依頼一つも来てないじゃん」
唯「はいっ!今日はアイスクリームだよっ!」
澪「あのな……」
唯「チョコとバニラと抹茶があるけど、澪ちゃんはどれにする?」
澪「……バニラ」
唯「じゃあ、私は抹茶にしようかな~。はい、スプーン」スッ
澪「ん、ありがとう」スッ
唯「ん~!冷た~い!」
澪「(美味しい……)」
唯「暇だねぇー……」
澪「そうだな……」
澪「(探偵事務所を開いたのはいいけど……)」
澪「(殆ど依頼が無い……)」
澪「(助手の唯は失敗ばかりだし……)」
澪「(あぁ……唯が浮気相手の尾行に失敗したの思い出した……)」キリキリ
唯「美味しい~!」
澪「…………」
唯「今日もお菓子持ってきたよ~」
澪「……休憩時間は終わってるぞ」
唯「依頼一つも来てないじゃん」
唯「はいっ!今日はアイスクリームだよっ!」
澪「あのな……」
唯「チョコとバニラと抹茶があるけど、澪ちゃんはどれにする?」
澪「……バニラ」
唯「じゃあ、私は抹茶にしようかな~。はい、スプーン」スッ
澪「ん、ありがとう」スッ
唯「ん~!冷た~い!」
澪「(美味しい……)」
唯「暇だねぇー……」
澪「そうだな……」
澪「(探偵事務所を開いたのはいいけど……)」
澪「(殆ど依頼が無い……)」
澪「(助手の唯は失敗ばかりだし……)」
澪「(あぁ……唯が浮気相手の尾行に失敗したの思い出した……)」キリキリ
唯「美味しい~!」
澪「…………」
2: 2012/03/28(水) 17:19:42 ID:TddNgtD.0
澪は思い詰めたように窓の方を見た。西日が差し込み、部屋の中は蒸し暑い。普通の事務所なら、夏のこの時期にはクーラーが稼働している。しかし、唯はクーラーが苦手な体質だった。
それ以前にクーラーを取り付ける余裕も無かった。事務所の照明も暗い時以外は極力消すようにしていた。
澪「(暑い……)」
澪の額に汗が滲む。暑いだけでなく、今後の不安のせいもあった。目の前の唯は幸せそうにアイスクリームを食べている。
そんな唯を見ていると、安心するような気もした。
それ以前にクーラーを取り付ける余裕も無かった。事務所の照明も暗い時以外は極力消すようにしていた。
澪「(暑い……)」
澪の額に汗が滲む。暑いだけでなく、今後の不安のせいもあった。目の前の唯は幸せそうにアイスクリームを食べている。
そんな唯を見ていると、安心するような気もした。
3: 2012/03/28(水) 17:44:02 ID:TddNgtD.0
コンコン
澪唯「!!」
夕焼けで薄暗くなっている事務所にノックの音が鳴った。インターホンは付けていない。
澪「唯、出てくれ。新聞とか訪問販売なら断っといて」
唯「わかったー」トトト
唯は立ち上がって扉を開いた。
ガチャ
唯「はい?」
純「あのー、依頼に来たんですけど」
唯「へ?」
純「依頼に来たんですけど……」
純がそう言うと、唯は静かに澪の方へと振り返った。澪は黙って立ち上がり、二人の元へ歩いた。
純は不安な様子で二人を見た。澪と唯は体を震わせている。
純「あ、あのー……」
澪唯「確保ーっ!!」
純「ぎゃーっ!!」
絶叫が事務所に響き渡った。
澪唯「!!」
夕焼けで薄暗くなっている事務所にノックの音が鳴った。インターホンは付けていない。
澪「唯、出てくれ。新聞とか訪問販売なら断っといて」
唯「わかったー」トトト
唯は立ち上がって扉を開いた。
ガチャ
唯「はい?」
純「あのー、依頼に来たんですけど」
唯「へ?」
純「依頼に来たんですけど……」
純がそう言うと、唯は静かに澪の方へと振り返った。澪は黙って立ち上がり、二人の元へ歩いた。
純は不安な様子で二人を見た。澪と唯は体を震わせている。
純「あ、あのー……」
澪唯「確保ーっ!!」
純「ぎゃーっ!!」
絶叫が事務所に響き渡った。
4: 2012/03/28(水) 17:55:21 ID:TddNgtD.0
澪「見苦しい所をお見せして、すいません……」
純「いえいえ……(この部屋あっつ……)」
澪「あ、唯。お茶用意して」
唯「はいはーい」
澪「今日のご用件は何でしょうか?」
純「飼い猫が家から脱走してしまって、行方不明になってしまったんです」
澪「」ガクッ
澪は思わず、ソファから転げ落ちる所だった。
唯「お茶どうぞ~」
純「あ、ありがとうございます(助かった~……)」ゴクッ
純「(冷たくて美味しいー……)」ゴクッ
唯「冷たーい……」
純「いえいえ……(この部屋あっつ……)」
澪「あ、唯。お茶用意して」
唯「はいはーい」
澪「今日のご用件は何でしょうか?」
純「飼い猫が家から脱走してしまって、行方不明になってしまったんです」
澪「」ガクッ
澪は思わず、ソファから転げ落ちる所だった。
唯「お茶どうぞ~」
純「あ、ありがとうございます(助かった~……)」ゴクッ
純「(冷たくて美味しいー……)」ゴクッ
唯「冷たーい……」
5: 2012/03/28(水) 18:06:56 ID:TddNgtD.0
澪は考えた。
この事務所ではペット捜索は受け付けていなかった。貴重な依頼人には違いないが、本人の為にもここは断るしかない。こうしている間にも彼女のペットは遠くに行ってしまっているのかもしれない。
澪「あ、あのー……」
純「はい?」
澪「この事務所ではペットの捜索は行ってないんです……」
純「え?」
澪「ペット探偵というのもありますし、そちらに行かれた方がよろしいと思いますよ」
純「そんなのあるんですか?」
澪「はい、ありますよ」
澪「少しお待ちください、電話帳持って来ます」スッ
澪が立ち上がろうとしたその時。
唯「待って!澪ちゃん!」
澪「え?」
唯「これは……チャンスかもしれないよ……!!」
この事務所ではペット捜索は受け付けていなかった。貴重な依頼人には違いないが、本人の為にもここは断るしかない。こうしている間にも彼女のペットは遠くに行ってしまっているのかもしれない。
澪「あ、あのー……」
純「はい?」
澪「この事務所ではペットの捜索は行ってないんです……」
純「え?」
澪「ペット探偵というのもありますし、そちらに行かれた方がよろしいと思いますよ」
純「そんなのあるんですか?」
澪「はい、ありますよ」
澪「少しお待ちください、電話帳持って来ます」スッ
澪が立ち上がろうとしたその時。
唯「待って!澪ちゃん!」
澪「え?」
唯「これは……チャンスかもしれないよ……!!」
6: 2012/03/28(水) 18:50:09 ID:TddNgtD.0
澪「な、何の……?」
唯「私たちがこの状況を抜け出す切っ掛け……」
澪「…………」
バァン!
澪純「」ビクッ
突然、唯が机を叩いたので、澪と純は大きく反応した。
唯「私たちが絶対にあなたのペットを見つけます!」
純「は、はぁ……」
純は突然の事態に面食らっている。澪は我に返った。
澪「ちょっ……何勝手に話を……」
唯「大丈夫だよ、澪ちゃん」
唯「そんな気がするんだ!」
澪「唯……」
唯「私たちがこの状況を抜け出す切っ掛け……」
澪「…………」
バァン!
澪純「」ビクッ
突然、唯が机を叩いたので、澪と純は大きく反応した。
唯「私たちが絶対にあなたのペットを見つけます!」
純「は、はぁ……」
純は突然の事態に面食らっている。澪は我に返った。
澪「ちょっ……何勝手に話を……」
唯「大丈夫だよ、澪ちゃん」
唯「そんな気がするんだ!」
澪「唯……」
7: 2012/03/28(水) 20:58:01 ID:TddNgtD.0
唯はやる気に満ち溢れていた。澪にも唯のやる気は伝わっていた。
澪は再び考えた。
確かにペットの捜索は専門じゃないし、やったこともない。だけど、目の前にいる困っている人を見捨てる事なんて、できるわけがない。
──困っている人を助けたいんだ
澪は唯と交わした約束を思い出した。
~~~~~
唯『澪ちゃんはどうして探偵になろうと思ったの?』
澪『うーん……そうだなぁ……』
澪『……子どもの頃、デパートで迷子になったことがあるんだ』
澪『怖くて一人で泣いていたら、お姉さんが来て、私が泣き止むまで励ましてくれたんだ』
澪『それから、マ……お母さんと合流して、大丈夫だったんだけど、その時のお姉さんが忘れられなくてさ』
澪『だから、私も困っている人を助けたいんだ』
唯『そのお姉さん、きっと喜ぶよ』
澪『そ、そうかな……』
唯『じゃあ、これからも頑張らなくちゃね!』
澪『うん!』
唯『あっ!そうだ!約束しようよ!』
澪『な、何を?』
唯『“絶対に最後まで諦めないこと”!』
澪『……わかった、約束だ!』
唯『うん!約束!』
~~~~~
澪は再び考えた。
確かにペットの捜索は専門じゃないし、やったこともない。だけど、目の前にいる困っている人を見捨てる事なんて、できるわけがない。
──困っている人を助けたいんだ
澪は唯と交わした約束を思い出した。
~~~~~
唯『澪ちゃんはどうして探偵になろうと思ったの?』
澪『うーん……そうだなぁ……』
澪『……子どもの頃、デパートで迷子になったことがあるんだ』
澪『怖くて一人で泣いていたら、お姉さんが来て、私が泣き止むまで励ましてくれたんだ』
澪『それから、マ……お母さんと合流して、大丈夫だったんだけど、その時のお姉さんが忘れられなくてさ』
澪『だから、私も困っている人を助けたいんだ』
唯『そのお姉さん、きっと喜ぶよ』
澪『そ、そうかな……』
唯『じゃあ、これからも頑張らなくちゃね!』
澪『うん!』
唯『あっ!そうだ!約束しようよ!』
澪『な、何を?』
唯『“絶対に最後まで諦めないこと”!』
澪『……わかった、約束だ!』
唯『うん!約束!』
~~~~~
8: 2012/03/28(水) 21:54:51 ID:TddNgtD.0
澪「わかりました、この依頼……引き受けます!」
純「本当ですか!?」
澪「はい!任せてください!」
唯「猫の特徴は?」
純「あ、写真持って来ました」ゴソゴソ
純「どうぞ」スッ
純は机の上に一枚の写真を提出した。澪がそれを手に取り、唯が横から覗き込んだ。
唯「か、可愛い~!」
純「そうですか……えへへ……」
純は照れ臭そうに笑みを浮かべた。しかし、その表情もどこか影が潜んでいるように見えた。そんな様子の純を見て、澪の思いは一層強くなった。
澪「(絶対に見つけてみせる……!)」
澪「じゃあ、それ以外の細かい特徴や猫がいなくなった時刻などを教えてください」
澪「唯、メモ帳取って」
唯「はい!」
純「えーと、猫の特徴は……」
~~~~~
澪「なるほど……」
澪「わかりました、今日はお聞きした事をまとめて、調査の予定を組んでおきます」
純「はい、お願いします」
唯「気をつけて帰ってね~」
純「はい、ありがとうございましたー」
ガチャン
澪「……なんで、タメ口なんだよ」
唯「あれ?そうだね、いつのまにか」
澪が話を聞いている最中にも、唯は純に話しかけていた。純は少し戸惑いながらも、リラックスしているようだった。唯のおかげなのかもしれない。
澪「よーし、まずは鈴木さんの住所、猫の特徴、他の細かい所をまとめないとな」
唯「え……今日やるの……?」
澪「当たり前だろ?善は急げだ」
唯「帰って見た~いテレビがあるんだけど……」
澪「今は仕事の方が大事だ!」
唯「うわ~ん!」
純「本当ですか!?」
澪「はい!任せてください!」
唯「猫の特徴は?」
純「あ、写真持って来ました」ゴソゴソ
純「どうぞ」スッ
純は机の上に一枚の写真を提出した。澪がそれを手に取り、唯が横から覗き込んだ。
唯「か、可愛い~!」
純「そうですか……えへへ……」
純は照れ臭そうに笑みを浮かべた。しかし、その表情もどこか影が潜んでいるように見えた。そんな様子の純を見て、澪の思いは一層強くなった。
澪「(絶対に見つけてみせる……!)」
澪「じゃあ、それ以外の細かい特徴や猫がいなくなった時刻などを教えてください」
澪「唯、メモ帳取って」
唯「はい!」
純「えーと、猫の特徴は……」
~~~~~
澪「なるほど……」
澪「わかりました、今日はお聞きした事をまとめて、調査の予定を組んでおきます」
純「はい、お願いします」
唯「気をつけて帰ってね~」
純「はい、ありがとうございましたー」
ガチャン
澪「……なんで、タメ口なんだよ」
唯「あれ?そうだね、いつのまにか」
澪が話を聞いている最中にも、唯は純に話しかけていた。純は少し戸惑いながらも、リラックスしているようだった。唯のおかげなのかもしれない。
澪「よーし、まずは鈴木さんの住所、猫の特徴、他の細かい所をまとめないとな」
唯「え……今日やるの……?」
澪「当たり前だろ?善は急げだ」
唯「帰って見た~いテレビがあるんだけど……」
澪「今は仕事の方が大事だ!」
唯「うわ~ん!」
9: 2012/03/29(木) 02:59:35 ID:v.84tkEg0
翌日 秋山探偵事務所
唯「ふぅ~……昨日は疲れたよ……」
唯はため息をつきながら、ソファーに倒れこんだ。その横で澪は忘れ物が無いか荷物の点検をしていた。
澪「書類よし、貼り紙よし、手帳・メモ帳よし、鞄よし」
澪「準備完了!鈴木さんの家に行こう!」
唯「うん!」
二人は事務所を後にした。
鈴木家
ピンポーン
純「あ、きたきた」
インターホンのチャイムがなり、純は玄関へ小走りで向かった。
ガチャ
澪「おはようございます」
唯「おはよ~」
純「おはようございます。寝不足なんですか?」
あくびをしながら、朝の挨拶をする唯を見て、純は笑いながら言った。
唯「うん、仕事は少し久しぶりだったからちょっと手間取っちゃって」
純「(久しぶり?)」
澪「鈴木さんは今日、お仕事ですか?」
純「はい。両親も今日は出かけてます」
唯「ふぅ~……昨日は疲れたよ……」
唯はため息をつきながら、ソファーに倒れこんだ。その横で澪は忘れ物が無いか荷物の点検をしていた。
澪「書類よし、貼り紙よし、手帳・メモ帳よし、鞄よし」
澪「準備完了!鈴木さんの家に行こう!」
唯「うん!」
二人は事務所を後にした。
鈴木家
ピンポーン
純「あ、きたきた」
インターホンのチャイムがなり、純は玄関へ小走りで向かった。
ガチャ
澪「おはようございます」
唯「おはよ~」
純「おはようございます。寝不足なんですか?」
あくびをしながら、朝の挨拶をする唯を見て、純は笑いながら言った。
唯「うん、仕事は少し久しぶりだったからちょっと手間取っちゃって」
純「(久しぶり?)」
澪「鈴木さんは今日、お仕事ですか?」
純「はい。両親も今日は出かけてます」
10: 2012/03/29(木) 03:22:59 ID:v.84tkEg0
澪「そうですか」
そう言うと、澪は持っていた鞄の中からファイルを取り出した。ファイルの中には何百枚もの行方不明の猫の特徴を記載した貼り紙が入っていた。
澪「今日の予定はまず近所に聞き込みをしようと思います。それから、この貼り紙を配って回ろうと思います」
純「はい、お願いします」
澪「それじゃあ、行ってきます。お仕事頑張ってください」
純「そちらも頑張ってください」
唯「うん!頑張るよ~!」
澪「(もうつっこまない……)」
澪は立ち止まって地図に目を落とした。
澪「よし、まずは隣の家から……」
ピンポーン
『はい』
澪「すいません、秋山探偵事務所の秋山と申しますが、隣の鈴木さんの家の飼い猫が脱走したそうなのですが、何かご存知ありませんか?」
『いえ、知らないです』
澪「そうですか、ご協力ありがとうございました」
ブツッ
澪「ここは無しか……」キュッ
澪は地図の上にバツ印を付けた。
澪「よし、次の家に行こう」
唯「澪ちゃん、猫のチラシは?」
澪「そうだった……」
澪はファイルから一枚貼り紙を取り出し、郵便受けに投函した。
澪「改めて、行こうか」
そう言うと、澪は持っていた鞄の中からファイルを取り出した。ファイルの中には何百枚もの行方不明の猫の特徴を記載した貼り紙が入っていた。
澪「今日の予定はまず近所に聞き込みをしようと思います。それから、この貼り紙を配って回ろうと思います」
純「はい、お願いします」
澪「それじゃあ、行ってきます。お仕事頑張ってください」
純「そちらも頑張ってください」
唯「うん!頑張るよ~!」
澪「(もうつっこまない……)」
澪は立ち止まって地図に目を落とした。
澪「よし、まずは隣の家から……」
ピンポーン
『はい』
澪「すいません、秋山探偵事務所の秋山と申しますが、隣の鈴木さんの家の飼い猫が脱走したそうなのですが、何かご存知ありませんか?」
『いえ、知らないです』
澪「そうですか、ご協力ありがとうございました」
ブツッ
澪「ここは無しか……」キュッ
澪は地図の上にバツ印を付けた。
澪「よし、次の家に行こう」
唯「澪ちゃん、猫のチラシは?」
澪「そうだった……」
澪はファイルから一枚貼り紙を取り出し、郵便受けに投函した。
澪「改めて、行こうか」
11: 2012/03/29(木) 03:51:42 ID:v.84tkEg0
~~~~~
澪「ふぅ……」
唯「ちょっと、疲れたね」
二人は夏の住宅地を歩き回っていた。澪は帽子を持って来ればよかったと後悔した。
澪「情報は無しか……」
二人は鈴木家の左右三件ずつを訪問した。しかし、有力な情報は得られなかった。
次は、向かいの列の住宅を訪れた。
まずは、鈴木家の向かいの家へ。
ピンポーン
『はい』
澪「お忙しい所失礼します。秋山探偵事務所の秋山と申します」
澪「向かいの鈴木さんの飼い猫が脱走したそうなのですが、何かご存知ありませんか?」
『知らないです』
澪「そうですか、ご……」
『それが、ウチの猫もいなくなってるんですよ』
澪「え?」
「ご協力ありがとうございました」、と言いかけた所で澪は止まった。
澪「ちなみに、いつ頃からでしょうか?」
『昨日からです。朝ごはんをあげた後だから、八時以降の午前中かしら……いつの間にか、いなくなってたんです』
澪は鞄の中から、別のファイルを取り出した。そして、猫の失踪に関してまとめた紙を見た。
“七月十八日、午前九時頃に失踪”と書いてある。純の猫と同じ時間帯に失踪している。
澪「ふぅ……」
唯「ちょっと、疲れたね」
二人は夏の住宅地を歩き回っていた。澪は帽子を持って来ればよかったと後悔した。
澪「情報は無しか……」
二人は鈴木家の左右三件ずつを訪問した。しかし、有力な情報は得られなかった。
次は、向かいの列の住宅を訪れた。
まずは、鈴木家の向かいの家へ。
ピンポーン
『はい』
澪「お忙しい所失礼します。秋山探偵事務所の秋山と申します」
澪「向かいの鈴木さんの飼い猫が脱走したそうなのですが、何かご存知ありませんか?」
『知らないです』
澪「そうですか、ご……」
『それが、ウチの猫もいなくなってるんですよ』
澪「え?」
「ご協力ありがとうございました」、と言いかけた所で澪は止まった。
澪「ちなみに、いつ頃からでしょうか?」
『昨日からです。朝ごはんをあげた後だから、八時以降の午前中かしら……いつの間にか、いなくなってたんです』
澪は鞄の中から、別のファイルを取り出した。そして、猫の失踪に関してまとめた紙を見た。
“七月十八日、午前九時頃に失踪”と書いてある。純の猫と同じ時間帯に失踪している。
12: 2012/03/29(木) 20:04:06 ID:f.Ff7Bwo0
澪「……わかりました。ご協力ありがとうございました」
唯「ダメだったね」
澪「あぁ」
澪「まぁ、この列の残りを回って行こう」
唯「そうだね」
~~~~~
澪「はい、ありがとうございました」
澪「ここもダメか」
結局、鈴木家の周辺住宅では、有力な情報は何一つ得られなかった。澪は地図の上に新たに印を書き加えた。
唯「この辺りにはいないのかなぁ」
澪「まぁ、貼り紙を配って回ろうか」
唯「暑い~……」
~~~~~
喫茶店
唯「涼しいー……」
澪「半分くらいは配ったかな」
貼り紙の入ったファイルは半分程に減っていた。喫茶店は程よい冷房が効いていて、唯はリラックスした表情になった。
唯「本当にどこにいるんだろうね」
唯はアイスティーを飲んでのんびりと寛いでいた。澪はアイスコーヒーを口にした。アイスコーヒーが午前中の喉の渇きを潤す。
澪「飼い猫の場合、外に慣れてないからその場でじっとしている事が多いってネットで見たけど」
唯「動き回られても困るけど、見えない所でじっとされても困るね」
澪「明日までだからな……」
捜索期間は明日までと、昨日の話し合いで決めていた。
唯「ダメだったね」
澪「あぁ」
澪「まぁ、この列の残りを回って行こう」
唯「そうだね」
~~~~~
澪「はい、ありがとうございました」
澪「ここもダメか」
結局、鈴木家の周辺住宅では、有力な情報は何一つ得られなかった。澪は地図の上に新たに印を書き加えた。
唯「この辺りにはいないのかなぁ」
澪「まぁ、貼り紙を配って回ろうか」
唯「暑い~……」
~~~~~
喫茶店
唯「涼しいー……」
澪「半分くらいは配ったかな」
貼り紙の入ったファイルは半分程に減っていた。喫茶店は程よい冷房が効いていて、唯はリラックスした表情になった。
唯「本当にどこにいるんだろうね」
唯はアイスティーを飲んでのんびりと寛いでいた。澪はアイスコーヒーを口にした。アイスコーヒーが午前中の喉の渇きを潤す。
澪「飼い猫の場合、外に慣れてないからその場でじっとしている事が多いってネットで見たけど」
唯「動き回られても困るけど、見えない所でじっとされても困るね」
澪「明日までだからな……」
捜索期間は明日までと、昨日の話し合いで決めていた。
13: 2012/03/30(金) 02:18:22 ID:T7ZoPpaY0
唯「紙を見て誰かが見つけてくれるといいね」
澪「そうだな、これだけ配れば一人ぐらいは猫を見ていると思うけどなぁ」
唯「何とかして、見つけたいね」
澪「うん」
澪は返事をして、アイスコーヒーを一気に飲み干した。
澪「よしっ、休憩終わり!」
澪「今日の後半戦に行こう!」
唯「うん!頑張ろう!」
~~~~~
二人は数時間かけて、駅前の施設を歩き回り何とか全て配り終えた。
唯「ふぅ~終わったね~」
澪「この辺りはもう配ってたからちょっと手間取ったな」
唯「初めてだから仕方無いよ」
既に日は暮れて、辺りも暗くなっていた。事務所に帰る前に二人は鈴木家に立ち寄った。
ピンポーン
純『はい』
澪「あ、秋山探偵事務所の秋山ですけど」
純『あ、ちょっと待っててください』
純はインターフォンを切った。澪はその間に服装を正し、唯の横に並んだ。
ガチャ
純「猫は見つかりましたか?」
澪「近隣で聞き込みしましたが、この周辺で見た人はいないそうです」
純「そうですか……」
澪「…………」ギュッ
純は落胆した様子だった。その様子を見て、澪は少し胸が苦しくなり、思わずスーツの胸元を握り締めた。
澪「そうだな、これだけ配れば一人ぐらいは猫を見ていると思うけどなぁ」
唯「何とかして、見つけたいね」
澪「うん」
澪は返事をして、アイスコーヒーを一気に飲み干した。
澪「よしっ、休憩終わり!」
澪「今日の後半戦に行こう!」
唯「うん!頑張ろう!」
~~~~~
二人は数時間かけて、駅前の施設を歩き回り何とか全て配り終えた。
唯「ふぅ~終わったね~」
澪「この辺りはもう配ってたからちょっと手間取ったな」
唯「初めてだから仕方無いよ」
既に日は暮れて、辺りも暗くなっていた。事務所に帰る前に二人は鈴木家に立ち寄った。
ピンポーン
純『はい』
澪「あ、秋山探偵事務所の秋山ですけど」
純『あ、ちょっと待っててください』
純はインターフォンを切った。澪はその間に服装を正し、唯の横に並んだ。
ガチャ
純「猫は見つかりましたか?」
澪「近隣で聞き込みしましたが、この周辺で見た人はいないそうです」
純「そうですか……」
澪「…………」ギュッ
純は落胆した様子だった。その様子を見て、澪は少し胸が苦しくなり、思わずスーツの胸元を握り締めた。
14: 2012/03/30(金) 02:33:16 ID:T7ZoPpaY0
澪「ご、ごめんなさい……」
純「いえいえ、仕方無いですよ。猫なんてほら、小さくてすばしっこいし」
澪「…………」
純は気丈に振る舞い二人を労った。そんな純を見て澪は何を話せばいいのかわからなくなった。
純「明日もありますし、今日はゆっくり休んでください」
純「一日中歩き回ってたんでしょう?」
澪「はい……」
純「じゃあ、明日もよろしくお願いしますね」
澪「はい、お伺いします」
唯「失礼しました」
純「はーい」
ガチャン
澪「……帰ろっか」
唯「うん」
二人は事務所へ向けて歩き始めた。
純「いえいえ、仕方無いですよ。猫なんてほら、小さくてすばしっこいし」
澪「…………」
純は気丈に振る舞い二人を労った。そんな純を見て澪は何を話せばいいのかわからなくなった。
純「明日もありますし、今日はゆっくり休んでください」
純「一日中歩き回ってたんでしょう?」
澪「はい……」
純「じゃあ、明日もよろしくお願いしますね」
澪「はい、お伺いします」
唯「失礼しました」
純「はーい」
ガチャン
澪「……帰ろっか」
唯「うん」
二人は事務所へ向けて歩き始めた。
15: 2012/03/30(金) 03:05:41 ID:T7ZoPpaY0
澪「…………」トコトコ
唯「…………」トコトコ
澪は普段からベラベラと話すタイプではなかったが、今日はいつも以上に口を開かなかった。唯はそんな澪を心配そうに覗き込んだ。
唯「ねぇ、澪ちゃん」
澪「何?」
唯「大丈夫?」
澪「…………」
澪は答えられなかった。澪が俯いて答えあぐねていると、唯が澪の正面に立ち止まった。
唯「大丈夫だよ、必ずどこかで見つかるよ!」
澪「唯……」
澪は唯の顔を見た。唯は澪を元気づけるように微笑んでいた。澪の中で熱い何かが湧き上がってきた。
澪「(そうだ……諦めるんじゃない……まだ途中じゃないか……!)」
澪「(まだ、明日がある……。諦めちゃ駄目だ!)」
澪「唯、ごめん!」
澪「最後まで諦めちゃ駄目だ!」
唯「そうだよ! 澪ちゃん! ファイトだよ!」グッ
澪の顔が晴れた様子を見て、唯は拳を握り締めた。
唯「絶対に見つけるぞっ!」
唯「おーっ!」バッ
澪「おーっ!」バッ
唯は勢いよく握り締めた拳を上に上げた。澪も遅れてそれに続いた。二つの拳には強い意志が込められていた。
唯「…………」トコトコ
澪は普段からベラベラと話すタイプではなかったが、今日はいつも以上に口を開かなかった。唯はそんな澪を心配そうに覗き込んだ。
唯「ねぇ、澪ちゃん」
澪「何?」
唯「大丈夫?」
澪「…………」
澪は答えられなかった。澪が俯いて答えあぐねていると、唯が澪の正面に立ち止まった。
唯「大丈夫だよ、必ずどこかで見つかるよ!」
澪「唯……」
澪は唯の顔を見た。唯は澪を元気づけるように微笑んでいた。澪の中で熱い何かが湧き上がってきた。
澪「(そうだ……諦めるんじゃない……まだ途中じゃないか……!)」
澪「(まだ、明日がある……。諦めちゃ駄目だ!)」
澪「唯、ごめん!」
澪「最後まで諦めちゃ駄目だ!」
唯「そうだよ! 澪ちゃん! ファイトだよ!」グッ
澪の顔が晴れた様子を見て、唯は拳を握り締めた。
唯「絶対に見つけるぞっ!」
唯「おーっ!」バッ
澪「おーっ!」バッ
唯は勢いよく握り締めた拳を上に上げた。澪も遅れてそれに続いた。二つの拳には強い意志が込められていた。
16: 2012/03/30(金) 03:24:27 ID:T7ZoPpaY0
翌日 鈴木家
澪と唯は鈴木家の前に立っていた。澪はインターフォンを押す前に唯の顔を見た。唯は黙って頷き、澪を見つめ返した。澪は正面へ向き直り、インターフォンを押した。
ピンポーン
ガチャ
純「おはようございます」
澪「おはようございます!」
唯「おはようございまーす!」
澪は元気良く挨拶をした。純は立ち直った様子の澪を見て、一瞬微笑んだ。
澪「今日は仕事ですか?」
純「今日はちょっと友達と出掛けようと」
澪「わかりました」
純「今日もよろしくお願いします」
澪「すいませんが、今、猫の好きな食べ物や遊び道具はありますか?」
純「えーと……キャットフードと猫じゃらしが……」
澪「お借りしても構わないですか?」
澪と唯は鈴木家の前に立っていた。澪はインターフォンを押す前に唯の顔を見た。唯は黙って頷き、澪を見つめ返した。澪は正面へ向き直り、インターフォンを押した。
ピンポーン
ガチャ
純「おはようございます」
澪「おはようございます!」
唯「おはようございまーす!」
澪は元気良く挨拶をした。純は立ち直った様子の澪を見て、一瞬微笑んだ。
澪「今日は仕事ですか?」
純「今日はちょっと友達と出掛けようと」
澪「わかりました」
純「今日もよろしくお願いします」
澪「すいませんが、今、猫の好きな食べ物や遊び道具はありますか?」
純「えーと……キャットフードと猫じゃらしが……」
澪「お借りしても構わないですか?」
17: 2012/03/30(金) 18:28:14 ID:T7ZoPpaY0
純「いいですよ、ちょっと待っててください」
ガチャン
純は駆け足で家の中に戻り、指示された物を用意した。
ガチャ
純「持って来ました~」
澪「ありがとうございます」
澪はキャットフードと猫じゃらしを受け取った。
純「これ使うんですか?」
澪「はい、今日はそれを使って捜索しようと思います」
澪は後になって後悔しないように、できる限りの事をしようと考えていた。
澪「じゃあ、行ってきます」
純「気をつけてくださいね」
唯「絶対に見つけますから!」グッ
純「……はい! 待ってます!」
意気込んだ唯を見て純は再び微笑んだ。
ガチャン
純は駆け足で家の中に戻り、指示された物を用意した。
ガチャ
純「持って来ました~」
澪「ありがとうございます」
澪はキャットフードと猫じゃらしを受け取った。
純「これ使うんですか?」
澪「はい、今日はそれを使って捜索しようと思います」
澪は後になって後悔しないように、できる限りの事をしようと考えていた。
澪「じゃあ、行ってきます」
純「気をつけてくださいね」
唯「絶対に見つけますから!」グッ
純「……はい! 待ってます!」
意気込んだ唯を見て純は再び微笑んだ。
18: 2012/03/30(金) 18:51:29 ID:T7ZoPpaY0
澪「よーし、唯は猫じゃらしを持って」
澪「私はキャットフードを持つから」
唯「匂いでおびき寄せるんだね?」
澪「あぁ、低い位置に持てば来てくれるんじゃないかな」
唯「なるほど」
澪「よし、行こう!」
唯「猫ちゃ~ん、出ておいで~」フリフリ
唯「美味しい、美味しいご飯があるよ~?」フリフリ
唯「隠れてちゃ食べられないよ~?」フリフリ
唯は猫じゃらしを振り回しながら、猫に呼びかけた。路駐している車があれば、その下を覗き込んだ。
澪「猫ちゃーん」
澪も茂みの中を掻き分けてみたりしたが、気配は感じられなかった。
唯「猫ちゃ~ん!」
澪「どこにいるんだーっ」
~~~~~
唯「い、いない……」
澪「(もう何周位回ったんだろう……)」
二人はあの後から、住宅地を何度も歩き回っていたが、野良猫一匹すら見つけられなかった。
澪「私はキャットフードを持つから」
唯「匂いでおびき寄せるんだね?」
澪「あぁ、低い位置に持てば来てくれるんじゃないかな」
唯「なるほど」
澪「よし、行こう!」
唯「猫ちゃ~ん、出ておいで~」フリフリ
唯「美味しい、美味しいご飯があるよ~?」フリフリ
唯「隠れてちゃ食べられないよ~?」フリフリ
唯は猫じゃらしを振り回しながら、猫に呼びかけた。路駐している車があれば、その下を覗き込んだ。
澪「猫ちゃーん」
澪も茂みの中を掻き分けてみたりしたが、気配は感じられなかった。
唯「猫ちゃ~ん!」
澪「どこにいるんだーっ」
~~~~~
唯「い、いない……」
澪「(もう何周位回ったんだろう……)」
二人はあの後から、住宅地を何度も歩き回っていたが、野良猫一匹すら見つけられなかった。
19: 2012/03/30(金) 20:26:15 ID:T7ZoPpaY0
日は徐々に暮れて、夕方に差し掛かろうとしていた。
二人が公園の前を通ると、子供たちが元気良く遊んでいた。
唯「元気だねぇ……」
澪「そうだな、私たちも負けてられないな」
二人が公園を横切ろうとしたその時。
「あっ! 猫だ!!」
澪「!!?」
子どもの声を聞いた瞬間、澪の体に電撃が走った。唯も同様に固まっていた。
唯「澪ちゃん……!」
澪「行こうっ!」バッ
二人は子どもたちが集まっている場所に駆け寄った。
澪「ねぇ、君たち! 猫がいるって聞こえたんだけどどこにいるの?」
「トイレの裏の草むらだよ」
唯「本当に!?」
「本当だよ!」
澪「ありがとう、私たち今行方不明の猫を探してるんだ」
「へ~そうなんだ」
澪と唯は忍び足で公衆トイレの裏手に回った。すると、茂みの中からガサガサと音がする。
澪「…………」ゴクリ
澪は緊張して、生唾を飲み込んだ。その音は普段よりも大きく聞こえた気がした。
二人が公園の前を通ると、子供たちが元気良く遊んでいた。
唯「元気だねぇ……」
澪「そうだな、私たちも負けてられないな」
二人が公園を横切ろうとしたその時。
「あっ! 猫だ!!」
澪「!!?」
子どもの声を聞いた瞬間、澪の体に電撃が走った。唯も同様に固まっていた。
唯「澪ちゃん……!」
澪「行こうっ!」バッ
二人は子どもたちが集まっている場所に駆け寄った。
澪「ねぇ、君たち! 猫がいるって聞こえたんだけどどこにいるの?」
「トイレの裏の草むらだよ」
唯「本当に!?」
「本当だよ!」
澪「ありがとう、私たち今行方不明の猫を探してるんだ」
「へ~そうなんだ」
澪と唯は忍び足で公衆トイレの裏手に回った。すると、茂みの中からガサガサと音がする。
澪「…………」ゴクリ
澪は緊張して、生唾を飲み込んだ。その音は普段よりも大きく聞こえた気がした。
20: 2012/03/30(金) 21:03:08 ID:T7ZoPpaY0
ガサガサ
唯「猫じゃらしだよ~」フリフリ
澪「美味しいご飯もあるから出ておいでー」
ガサガサッ
澪「」スッ
唯と子どもたちが見つめる中、澪が一歩踏み出そうとしたその時。
バッ!
澪「うわああああああああああっ!!!!!」
子供達「うわあああああああああああっ!!!!!」
突然、何かが飛び出し、澪は驚いて尻餅をついた。子どもたちは驚いた澪に驚いた。
唯「あっ!」
澪に尻餅をつかせたのは猫だった。しかし、捜していた純の猫ではなかった。焦げ茶色の目つきの悪い野良猫だった。
澪「違う……のか……」
野良猫は一同を一瞥すると、どこかへ歩いて行った。
「捜してた猫じゃなかったの?」
唯「うん……」
澪「…………」
唯「猫じゃらしだよ~」フリフリ
澪「美味しいご飯もあるから出ておいでー」
ガサガサッ
澪「」スッ
唯と子どもたちが見つめる中、澪が一歩踏み出そうとしたその時。
バッ!
澪「うわああああああああああっ!!!!!」
子供達「うわあああああああああああっ!!!!!」
突然、何かが飛び出し、澪は驚いて尻餅をついた。子どもたちは驚いた澪に驚いた。
唯「あっ!」
澪に尻餅をつかせたのは猫だった。しかし、捜していた純の猫ではなかった。焦げ茶色の目つきの悪い野良猫だった。
澪「違う……のか……」
野良猫は一同を一瞥すると、どこかへ歩いて行った。
「捜してた猫じゃなかったの?」
唯「うん……」
澪「…………」
21: 2012/03/30(金) 21:44:21 ID:T7ZoPpaY0
澪「一体どこにいるんだ……」
澪は座ったまま、ため息交じりに呟いた。
「大丈夫だよ」
唯「え?」
唯は思わず、子どもたちの顔を見た。
「きっとその辺りに怖がって隠れてるんだよ」
「絶対に見つかるよ!」
「応援してるよ! お姉ちゃんたち!」
気がつくと子どもたちが二人を激励していた。二人は聞き入っていたが、ふと我に返った。
澪「そうだ! 残り時間も少ないんだ……!」
澪「ごめん、ありがとう!」
唯「ありがとう! 最後まで諦めないよ!」
「頑張ってねー!」
「ばいばーい!」
唯「ばいばーい!」
唯は振り返って両手を振って別れを告げた。
澪「(疲れてたから、どうかしてたんだ!)」
澪「(急がないと!)」ダッ
澪は座ったまま、ため息交じりに呟いた。
「大丈夫だよ」
唯「え?」
唯は思わず、子どもたちの顔を見た。
「きっとその辺りに怖がって隠れてるんだよ」
「絶対に見つかるよ!」
「応援してるよ! お姉ちゃんたち!」
気がつくと子どもたちが二人を激励していた。二人は聞き入っていたが、ふと我に返った。
澪「そうだ! 残り時間も少ないんだ……!」
澪「ごめん、ありがとう!」
唯「ありがとう! 最後まで諦めないよ!」
「頑張ってねー!」
「ばいばーい!」
唯「ばいばーい!」
唯は振り返って両手を振って別れを告げた。
澪「(疲れてたから、どうかしてたんだ!)」
澪「(急がないと!)」ダッ
22: 2012/03/31(土) 00:53:26 ID:6xjIsyz.0
夕日も沈み、辺りも暗くなり始めている。それに比例して、澪たちの焦りも膨れ上がっていく。
唯「出ておいで~」フリフリ
澪「出ておいで~。お腹減ってるだろ~」
唯「いないね」
澪「…………」
純「秋山さん、平沢さん!」
唯「あっ」
二人が振り返ると、後ろに純が立っていた。純は帰宅途中のようだった。
純「まだ……見つかってないんですか?」
澪「はい……」
澪は消え入るような声で答えた。それを聞いて、純は組んでいた腕を解いた。
純「それなら私も手伝います!」
唯「え?」
澪「そそ、そんな……悪いですよっ!」
純「構いませんよ! 一緒に手伝わせてください!」
澪は少し迷ったが、今となっては手段は選べない。
澪「……それじゃあ、お願いします!」
純「はいっ!」
唯「出ておいで~」フリフリ
澪「出ておいで~。お腹減ってるだろ~」
唯「いないね」
澪「…………」
純「秋山さん、平沢さん!」
唯「あっ」
二人が振り返ると、後ろに純が立っていた。純は帰宅途中のようだった。
純「まだ……見つかってないんですか?」
澪「はい……」
澪は消え入るような声で答えた。それを聞いて、純は組んでいた腕を解いた。
純「それなら私も手伝います!」
唯「え?」
澪「そそ、そんな……悪いですよっ!」
純「構いませんよ! 一緒に手伝わせてください!」
澪は少し迷ったが、今となっては手段は選べない。
澪「……それじゃあ、お願いします!」
純「はいっ!」
23: 2012/03/31(土) 01:13:46 ID:6xjIsyz.0
日は完全に沈み、空は完全に黒色で覆われている。その中で月と数多の星々が一際明るく輝いている。
タイムリミットが刻一刻と迫る。正確なタイムリミットは午後七時である。
純「出ておいで~。みんな心配してるよー!」
唯「お腹空いてるでしょ~! 出てきなよ~」
残り三分
澪「(どこにいるんだ……)」
澪「(お願いだから出てきて……!)」
澪「(仕事の成功や失敗なんかどうでもいい……!)」
澪「(ただ、あの人の悲しむ姿は見たくないんだ!)」
残り一分
唯「っ……」
澪「ぐっ……!」
純「…………」
澪「(諦めない……!)」
澪「(最後まで……!!)」グッ
澪は最後の意地で足を踏み出した瞬間
ピピー ピピー ピピー ピピー
タイムリミットが刻一刻と迫る。正確なタイムリミットは午後七時である。
純「出ておいで~。みんな心配してるよー!」
唯「お腹空いてるでしょ~! 出てきなよ~」
残り三分
澪「(どこにいるんだ……)」
澪「(お願いだから出てきて……!)」
澪「(仕事の成功や失敗なんかどうでもいい……!)」
澪「(ただ、あの人の悲しむ姿は見たくないんだ!)」
残り一分
唯「っ……」
澪「ぐっ……!」
純「…………」
澪「(諦めない……!)」
澪「(最後まで……!!)」グッ
澪は最後の意地で足を踏み出した瞬間
ピピー ピピー ピピー ピピー
24: 2012/03/31(土) 01:33:50 ID:6xjIsyz.0
無情にもアラームが終了の合図を告げる。
澪「あ…………!!」
唯「あ…………」
ピピー ピピー ピピー ピピー
澪が鳴り響くアラームを静かに止めた。澪は恐る恐る振り返ると、純は微笑んでいた。
純「帰りましょう」ニコッ
澪「…………はい」
鈴木家
ここに着くまでの帰路の間は誰一人として何も話さなかった。
純「終わりましたね」
唯「…………」
いつも元気なはずの唯も今は暗く俯いていた。今までも、仕事のミスがあれば落ち込んでいたが、ここまで落ち込んでいるのは初めてだった。
純「二日間、ありがとうございました!」
純「えーと、依頼の料金は……」
澪「すいませんでしたっ!」
唯「すいませんでしたっ!」
澪が大きな声で謝罪した。それを見た唯も澪に続いた。あまりにも突然の事に純は面食らってしまった。
澪「あ…………!!」
唯「あ…………」
ピピー ピピー ピピー ピピー
澪が鳴り響くアラームを静かに止めた。澪は恐る恐る振り返ると、純は微笑んでいた。
純「帰りましょう」ニコッ
澪「…………はい」
鈴木家
ここに着くまでの帰路の間は誰一人として何も話さなかった。
純「終わりましたね」
唯「…………」
いつも元気なはずの唯も今は暗く俯いていた。今までも、仕事のミスがあれば落ち込んでいたが、ここまで落ち込んでいるのは初めてだった。
純「二日間、ありがとうございました!」
純「えーと、依頼の料金は……」
澪「すいませんでしたっ!」
唯「すいませんでしたっ!」
澪が大きな声で謝罪した。それを見た唯も澪に続いた。あまりにも突然の事に純は面食らってしまった。
25: 2012/03/31(土) 02:09:47 ID:6xjIsyz.0
純「ど、どうしたんですか!? 顔を上げてくださいよ!」
唯「大切なペットのはずなのに……グスッ……見つけられなくて……!」
唯は自分の不甲斐無さに悔しくて、悲しくて泣き出した。言葉では表せないような、様々な思いがどんどん湧き上がってきた。涙が溢れ出て止まらない。
澪「唯……」
泣いている唯の姿を見て、澪も目に涙を浮かべた。
突然、二人の肩に手が置かれた。顔を上げると、純が優しく笑っていた。
純「いいんです。気にしなくていいですよ」
唯「で、でも……グスッ……」
純「二人とも格好良かったです。最後まで諦めない姿勢が素敵でした」
純「それだけでも依頼して良かったと思います」
純「だから、元気出してください!」
唯「グスッ……あ、ありがとう……グスッ……」
澪「ほら、唯」スッ
澪「鼻水出てるぞ……」
差し出されたティッシュを見た直後、唯はさらに泣き出した。まるで、ダムが決壊しているかのようだった。
唯「な、なんで……グスッ……こんなにも良い人が……グスッ……こんなにも……」
ボロボロと泣いている唯を見て、純は安心した表情を浮かべた。
純「お茶でも飲んでいってください」
澪「え、でも……」
純「いいですよ、……ね?」
純は支えている唯を見てから付け加えた。澪も唯を落ち着かせる必要があると思った。
澪「それじゃあ……」
澪も唯のもう片方の肩を支えようとしたその時
「ニャー」
澪唯純「……へ?」
唯「大切なペットのはずなのに……グスッ……見つけられなくて……!」
唯は自分の不甲斐無さに悔しくて、悲しくて泣き出した。言葉では表せないような、様々な思いがどんどん湧き上がってきた。涙が溢れ出て止まらない。
澪「唯……」
泣いている唯の姿を見て、澪も目に涙を浮かべた。
突然、二人の肩に手が置かれた。顔を上げると、純が優しく笑っていた。
純「いいんです。気にしなくていいですよ」
唯「で、でも……グスッ……」
純「二人とも格好良かったです。最後まで諦めない姿勢が素敵でした」
純「それだけでも依頼して良かったと思います」
純「だから、元気出してください!」
唯「グスッ……あ、ありがとう……グスッ……」
澪「ほら、唯」スッ
澪「鼻水出てるぞ……」
差し出されたティッシュを見た直後、唯はさらに泣き出した。まるで、ダムが決壊しているかのようだった。
唯「な、なんで……グスッ……こんなにも良い人が……グスッ……こんなにも……」
ボロボロと泣いている唯を見て、純は安心した表情を浮かべた。
純「お茶でも飲んでいってください」
澪「え、でも……」
純「いいですよ、……ね?」
純は支えている唯を見てから付け加えた。澪も唯を落ち着かせる必要があると思った。
澪「それじゃあ……」
澪も唯のもう片方の肩を支えようとしたその時
「ニャー」
澪唯純「……へ?」
26: 2012/03/31(土) 02:31:52 ID:6xjIsyz.0
三人が振り向くと、小さな猫が行儀良く座っていた。
純「ああーっ!? ウチの猫だ!!」
澪唯「えーーーーっ!?」
純は急いで駆け寄り、抱き上げた。
純「どこに行ってたの!? 心配したんだからっ!?」
猫「ニャー」
純「もう……絶対に離さないんだから……」
純は泣きながら猫を優しく抱きしめた。猫を見た澪は体の力が抜けて、その場に座り込んだ。
澪「はは……良かった……良かった……」
澪が力無く笑っていると、横から小さな影が現れた。
雄猫「ニャー」
唯「へ?」
澪「この猫は……?」
純「あっ、この猫は確か向かいの家の……」
澪「そういえば、聞き込みの時に向かいの家の猫もいなくなったって言ってた!」
唯「ってことは……この猫たちは二人でデートしてたってこと……?」
澪「そう……だな……」
ドサッ
唯も体の力が抜けたのか、澪と同じ様に座り込んだ。
唯「良かった……本当に……」
澪「そうだな……」
二人は夜空を見上げた。そこには見る者を安心させる、優しい月の輝きがあった。
純「ああーっ!? ウチの猫だ!!」
澪唯「えーーーーっ!?」
純は急いで駆け寄り、抱き上げた。
純「どこに行ってたの!? 心配したんだからっ!?」
猫「ニャー」
純「もう……絶対に離さないんだから……」
純は泣きながら猫を優しく抱きしめた。猫を見た澪は体の力が抜けて、その場に座り込んだ。
澪「はは……良かった……良かった……」
澪が力無く笑っていると、横から小さな影が現れた。
雄猫「ニャー」
唯「へ?」
澪「この猫は……?」
純「あっ、この猫は確か向かいの家の……」
澪「そういえば、聞き込みの時に向かいの家の猫もいなくなったって言ってた!」
唯「ってことは……この猫たちは二人でデートしてたってこと……?」
澪「そう……だな……」
ドサッ
唯も体の力が抜けたのか、澪と同じ様に座り込んだ。
唯「良かった……本当に……」
澪「そうだな……」
二人は夜空を見上げた。そこには見る者を安心させる、優しい月の輝きがあった。
27: 2012/03/31(土) 03:06:47 ID:6xjIsyz.0
翌日 秋山探偵事務所
純「向かいの家の人も感謝してました。ありがとうございますって」
唯「まさか、二件も解決するとはね……」
唯「……あれ? この事務所を始めて、依頼を解決するって初めてじゃない?」
澪「あ、本当だ」
純「えぇっ! そ、そうなんですか?」
澪「はい、言ってませんでしたか?」
純「(デンジャー!! 知らなかったーっ!!)」
唯「やったーっ!!」
唯はあちこちで飛び回り、喜びを全身で表した。そんな唯を見て澪と純は微笑んだ。
澪「これからも頑張ろう!」
唯「うん! 仕事が増えるといいね!」
純「え? 仕事無かったんですか?」
澪「えぇ、今までも数件依頼はありましたけど、失敗ばかりで……」
純「(ますます、デンジャー!!)」
純「(……だけど、本当に嬉しそう)」
純「…………」
笑顔一杯の唯を見ていると、純の心もどこか暖かくなってきた。
純「……仕事初達成おめでとうございます!!」
純「それじゃあ、ここで失礼します!」
澪「気をつけてお帰り下さい」
純「はい、ありがとうございました!」
唯「またねー!」
ガチャン
唯「ふぅー……解決できてよかったぁー……」
純「向かいの家の人も感謝してました。ありがとうございますって」
唯「まさか、二件も解決するとはね……」
唯「……あれ? この事務所を始めて、依頼を解決するって初めてじゃない?」
澪「あ、本当だ」
純「えぇっ! そ、そうなんですか?」
澪「はい、言ってませんでしたか?」
純「(デンジャー!! 知らなかったーっ!!)」
唯「やったーっ!!」
唯はあちこちで飛び回り、喜びを全身で表した。そんな唯を見て澪と純は微笑んだ。
澪「これからも頑張ろう!」
唯「うん! 仕事が増えるといいね!」
純「え? 仕事無かったんですか?」
澪「えぇ、今までも数件依頼はありましたけど、失敗ばかりで……」
純「(ますます、デンジャー!!)」
純「(……だけど、本当に嬉しそう)」
純「…………」
笑顔一杯の唯を見ていると、純の心もどこか暖かくなってきた。
純「……仕事初達成おめでとうございます!!」
純「それじゃあ、ここで失礼します!」
澪「気をつけてお帰り下さい」
純「はい、ありがとうございました!」
唯「またねー!」
ガチャン
唯「ふぅー……解決できてよかったぁー……」
28: 2012/03/31(土) 03:08:43 ID:6xjIsyz.0
唯「あれ?」
唯が振り向くと、澪は俯いて体を震わせている。顔は髪で隠れていて窺うことができなかった。
唯「澪ちゃん、どうしたの? 具合でも悪いの?」
澪「やっ……たぁ~~~~!!!」
澪「やった! やった! 初めてだ~!」
唯「み、澪ちゃん……落ち着いて……」
澪「落ち着いてなんていられるか!」
澪「そうだ! 記念にパーティーでもしよう!」
澪「唯、何が食べたい?」
唯「え、えーと……」
澪「えぇい! もう今日は出掛けよう! 外食だ!」
唯「え、ちょっ……澪ちゃん……」
澪「さぁ、行こう行こう!」
唯「わかったからちょっと落ち着いて。ねっ!」
ガチャン
事務所には誰もいなくなり、静寂が訪れた。事務所の扉の向こうからは、澪の陽気な声と唯の笑い声が聞こえた。
唯が振り向くと、澪は俯いて体を震わせている。顔は髪で隠れていて窺うことができなかった。
唯「澪ちゃん、どうしたの? 具合でも悪いの?」
澪「やっ……たぁ~~~~!!!」
澪「やった! やった! 初めてだ~!」
唯「み、澪ちゃん……落ち着いて……」
澪「落ち着いてなんていられるか!」
澪「そうだ! 記念にパーティーでもしよう!」
澪「唯、何が食べたい?」
唯「え、えーと……」
澪「えぇい! もう今日は出掛けよう! 外食だ!」
唯「え、ちょっ……澪ちゃん……」
澪「さぁ、行こう行こう!」
唯「わかったからちょっと落ち着いて。ねっ!」
ガチャン
事務所には誰もいなくなり、静寂が訪れた。事務所の扉の向こうからは、澪の陽気な声と唯の笑い声が聞こえた。
29: 2012/03/31(土) 03:26:36 ID:6xjIsyz.0
数日後 秋山探偵事務所
唯「あ~つ~い~……」
澪「仕方無いだろ、我慢しろ」
唯「う~……溶けそう……」
唯は机に顔を突っ伏してうなだれていた。澪は両手を組んでじっとしていた。
依頼が一件も入ってないので、二人は時間を持て余していた。
唯「こうやって年を取っていくのかなぁ……」
澪「な、なんだよ急に……」
唯「こんな風に、時間だけが流れていくのかなぁー……って思って」
澪「うっ……」
澪も何度かそんな風に考えた事はあった。このまま何もせずに終わってしまうのだろうか。そんなことばかり考えるとネガティブ思考に陥ってしまう。
澪「そんな後ろ向きな考えじゃ駄目だ!」
澪「もっと、前向きじゃないと。じゃないと、来るものも来なくなるだろ」
唯「じゃあ、いつ来るの~……?」
澪「そ、それは……」
澪「今すぐにでも来るかもしれない!」
コンコン
澪「へ?」
唯「き、来た……! 来たよっ!」
唯「あ~つ~い~……」
澪「仕方無いだろ、我慢しろ」
唯「う~……溶けそう……」
唯は机に顔を突っ伏してうなだれていた。澪は両手を組んでじっとしていた。
依頼が一件も入ってないので、二人は時間を持て余していた。
唯「こうやって年を取っていくのかなぁ……」
澪「な、なんだよ急に……」
唯「こんな風に、時間だけが流れていくのかなぁー……って思って」
澪「うっ……」
澪も何度かそんな風に考えた事はあった。このまま何もせずに終わってしまうのだろうか。そんなことばかり考えるとネガティブ思考に陥ってしまう。
澪「そんな後ろ向きな考えじゃ駄目だ!」
澪「もっと、前向きじゃないと。じゃないと、来るものも来なくなるだろ」
唯「じゃあ、いつ来るの~……?」
澪「そ、それは……」
澪「今すぐにでも来るかもしれない!」
コンコン
澪「へ?」
唯「き、来た……! 来たよっ!」
31: 2012/03/31(土) 03:39:32 ID:6xjIsyz.0
唯「あ、開けるよ……?」ギュッ
澪「う、うん……」
唯はドアノブに手を掛けた。
ガチャ
唯「は、はい?」
純「あ、どうも」
唯「え? どうしたの?」
純「あー……依頼に来ました」
澪「まさか、またいなくなったんですか!?」ガタンッ
澪は勢いよく立ち上がった。その衝撃で座っていた椅子は倒れてしまった。
純「あ、それは大丈夫です。猫は元気にしてますよ」
純「で、依頼は私からじゃないんですよ」
唯「じゃあ、誰からの依頼なの?」
純「私の友達からです」サッ
純が脇に退くと、後ろに小柄な少女が立っていた。
梓「初めてまして、中野梓です」
澪「う、うん……」
唯はドアノブに手を掛けた。
ガチャ
唯「は、はい?」
純「あ、どうも」
唯「え? どうしたの?」
純「あー……依頼に来ました」
澪「まさか、またいなくなったんですか!?」ガタンッ
澪は勢いよく立ち上がった。その衝撃で座っていた椅子は倒れてしまった。
純「あ、それは大丈夫です。猫は元気にしてますよ」
純「で、依頼は私からじゃないんですよ」
唯「じゃあ、誰からの依頼なの?」
純「私の友達からです」サッ
純が脇に退くと、後ろに小柄な少女が立っていた。
梓「初めてまして、中野梓です」
32: 2012/04/01(日) 23:30:10 ID:xAFde3pM0
澪「あ、中へどうぞ」
梓「失礼します」
唯が部屋の中に手招きすると、梓は軽く会釈した。そして、一歩足を踏み入れた瞬間
梓「(うっ……なにこの部屋……暑い……)」
澪「あ、唯。お茶用意して」
唯「はーい」トトト
純「(見たことあるような光景……)」
唯「お茶どうぞー」
梓「あ、どうもすいません」
唯は梓と純にお茶を配ると澪の隣に座った。
澪唯「(なんていうか……)」
澪唯「(小さくて(ちっちゃくて)可愛い……)」
梓「あのー……」
澪「はっ! すいません!」
唯「(ネコみたいで可愛い……)」
梓「失礼します」
唯が部屋の中に手招きすると、梓は軽く会釈した。そして、一歩足を踏み入れた瞬間
梓「(うっ……なにこの部屋……暑い……)」
澪「あ、唯。お茶用意して」
唯「はーい」トトト
純「(見たことあるような光景……)」
唯「お茶どうぞー」
梓「あ、どうもすいません」
唯は梓と純にお茶を配ると澪の隣に座った。
澪唯「(なんていうか……)」
澪唯「(小さくて(ちっちゃくて)可愛い……)」
梓「あのー……」
澪「はっ! すいません!」
唯「(ネコみたいで可愛い……)」
34: 2012/04/03(火) 03:28:59 ID:QJG8ExD20
澪「今日はどういったご用件で」
澪が尋ねると、梓は一呼吸おいてから話し始めた。
梓「最近、私の家に変な手紙が来るようになって……」
唯「変な手紙?」
梓「初めは無視してたんですけど、どんどん酷くなって無視できなくなってしまって…… 」
純「二人に手紙見せてみなよ」
梓「あ、そうだね。手紙持ってきたんです」スッ
机の上に大量の手紙の束が置かれた。
澪「見せてもらいますね」
澪と唯は手紙を取って読んでみた。筆跡が特定されないようにする為なのか、定規を使って書かれたと思われる汚い文字だった。
“アナタノことがスキデス,付き合ッテ欲シいデス”
“梓さんヘ ぼくはずっとアナタノこトヲ見てまス”
“疲レテルノ? 君ノソバニイテ苦労ヲ分合イたい”
“永遠ニ一緒ニイヨウネ。ぼくはイツマデも待ツカラネ”
澪「(な、なんだこれ……)」ザワッ
澪の背筋に寒気が走った。手紙から目を逸らし、ちらりと梓の顔を窺った。梓は憔悴した顔で、よく見ると目の下にうっすらと隈ができていた。
澪が尋ねると、梓は一呼吸おいてから話し始めた。
梓「最近、私の家に変な手紙が来るようになって……」
唯「変な手紙?」
梓「初めは無視してたんですけど、どんどん酷くなって無視できなくなってしまって…… 」
純「二人に手紙見せてみなよ」
梓「あ、そうだね。手紙持ってきたんです」スッ
机の上に大量の手紙の束が置かれた。
澪「見せてもらいますね」
澪と唯は手紙を取って読んでみた。筆跡が特定されないようにする為なのか、定規を使って書かれたと思われる汚い文字だった。
“アナタノことがスキデス,付き合ッテ欲シいデス”
“梓さんヘ ぼくはずっとアナタノこトヲ見てまス”
“疲レテルノ? 君ノソバニイテ苦労ヲ分合イたい”
“永遠ニ一緒ニイヨウネ。ぼくはイツマデも待ツカラネ”
澪「(な、なんだこれ……)」ザワッ
澪の背筋に寒気が走った。手紙から目を逸らし、ちらりと梓の顔を窺った。梓は憔悴した顔で、よく見ると目の下にうっすらと隈ができていた。
35: 2012/04/03(火) 03:31:45 ID:QJG8ExD20
梓「両親も心配してくれて警察にも相談しましたけど、実害がないと動けないらしくて……」
そう言い終えると、梓は暗い表情を浮かべて俯いた。それを見た純は澪の顔へ視線を動かした。
純「この子本当に困ってるんです……」
純「最近、何話してもあまり笑わなくなったし、全然楽しそうじゃないんです。そんな梓をもう見たくないんです!」
純「助けてあげられませんかっ!?」
純の気迫に澪は気圧された。純の瞳は真剣そのもので、心の底から困っている友人を助けたいという気持ちが込められていた。
澪「わかりました、引き受けましょう」
純「本当ですか!」
澪「はい、困っている人を見捨てる事なんてできませんから!」
純「…………」
純は目を丸くして、呆然と澪を見つめた。
梓「あ、ありがとうございます……!」
梓は感謝の言葉を述べると同時にぽろぽろと涙をこぼし始めた。突然の事態に他の三人は困惑した。
純「あ、梓、大丈夫!?」
唯「どどど、どうしたの!?」
澪「ほら、ハンカチで拭いて!」
梓「すいません……グスッ……」
梓はハンカチを受け取り、目を拭った。澪は心配そうに梓を見守っていた。
そう言い終えると、梓は暗い表情を浮かべて俯いた。それを見た純は澪の顔へ視線を動かした。
純「この子本当に困ってるんです……」
純「最近、何話してもあまり笑わなくなったし、全然楽しそうじゃないんです。そんな梓をもう見たくないんです!」
純「助けてあげられませんかっ!?」
純の気迫に澪は気圧された。純の瞳は真剣そのもので、心の底から困っている友人を助けたいという気持ちが込められていた。
澪「わかりました、引き受けましょう」
純「本当ですか!」
澪「はい、困っている人を見捨てる事なんてできませんから!」
純「…………」
純は目を丸くして、呆然と澪を見つめた。
梓「あ、ありがとうございます……!」
梓は感謝の言葉を述べると同時にぽろぽろと涙をこぼし始めた。突然の事態に他の三人は困惑した。
純「あ、梓、大丈夫!?」
唯「どどど、どうしたの!?」
澪「ほら、ハンカチで拭いて!」
梓「すいません……グスッ……」
梓はハンカチを受け取り、目を拭った。澪は心配そうに梓を見守っていた。
36: 2012/04/03(火) 03:41:12 ID:QJG8ExD20
純「……格好いいです」
不意に純が呟いた。
澪「え?」
純「格好いいですっ!」バッ
大きな声と共に、純は勢いよく立ち上がった。
澪「ど、どうしたんですか?」
純「秋山さんのこと、澪さんって呼んでもいいですか? 私のことも呼び捨てで、タメ口でいいですから!」
澪「な、何でっ!?」
唯「はいっ! じゃあ、私は純ちゃんのこと純ちゃんって呼んでもいい?」バッ
純「全然構いませんよ!」
純「……って、もう呼んでるじゃないですか」
澪「お、おい! お客様……依頼人なんだぞ!」
澪「そんな馴れ馴れしく……」
澪は厳格な態度を示すように腕を組んだ。
唯「え~? 別にいいんじゃないの? 本人もそう言ってるんだし」
純「そうですよ、私の方が年下ですし」
澪「そ、それでも……仕事中はだな……」
梓「プッ」
澪「え?」
不意に純が呟いた。
澪「え?」
純「格好いいですっ!」バッ
大きな声と共に、純は勢いよく立ち上がった。
澪「ど、どうしたんですか?」
純「秋山さんのこと、澪さんって呼んでもいいですか? 私のことも呼び捨てで、タメ口でいいですから!」
澪「な、何でっ!?」
唯「はいっ! じゃあ、私は純ちゃんのこと純ちゃんって呼んでもいい?」バッ
純「全然構いませんよ!」
純「……って、もう呼んでるじゃないですか」
澪「お、おい! お客様……依頼人なんだぞ!」
澪「そんな馴れ馴れしく……」
澪は厳格な態度を示すように腕を組んだ。
唯「え~? 別にいいんじゃないの? 本人もそう言ってるんだし」
純「そうですよ、私の方が年下ですし」
澪「そ、それでも……仕事中はだな……」
梓「プッ」
澪「え?」
37: 2012/04/03(火) 04:11:53 ID:QJG8ExD20
梓「すいません、ちょっと可笑しくて……」
梓はまだ涙を浮かべていたが、それは笑い涙だった。
澪はきょとんとした顔を浮かべたが、その直後にどこか温かい安堵感を覚えた。
人が笑う。ただそれだけで。
澪「すいません……」
澪も話が脱線したことを謝罪した。そして、咳払いをして仕切り直した。
澪「それじゃあ、まず、いつ頃から手紙を送られ始めたのか教えてもらえますか?」
梓「はい、確か……」
~~~~~
澪「わかりました。では、本日はお聞きした事をまとめて何をするか考えようと思います」
梓「お願いします」
純「どうか、お願いします」
澪「はい、全力でやらせてもらいます」
純「……私にはタメ口で言ったじゃないですか~」
澪「し、仕事中ですから……」
純「は~い……頑張って下さい」
梓「失礼します」
ガチャン
唯「忙しくなるね~」
澪「まったく……」
澪はため息をつきながら事務椅子へ腰を下ろした。唯はコップに残っているお茶を飲んでソファーで横になって寛いでいた。
梓はまだ涙を浮かべていたが、それは笑い涙だった。
澪はきょとんとした顔を浮かべたが、その直後にどこか温かい安堵感を覚えた。
人が笑う。ただそれだけで。
澪「すいません……」
澪も話が脱線したことを謝罪した。そして、咳払いをして仕切り直した。
澪「それじゃあ、まず、いつ頃から手紙を送られ始めたのか教えてもらえますか?」
梓「はい、確か……」
~~~~~
澪「わかりました。では、本日はお聞きした事をまとめて何をするか考えようと思います」
梓「お願いします」
純「どうか、お願いします」
澪「はい、全力でやらせてもらいます」
純「……私にはタメ口で言ったじゃないですか~」
澪「し、仕事中ですから……」
純「は~い……頑張って下さい」
梓「失礼します」
ガチャン
唯「忙しくなるね~」
澪「まったく……」
澪はため息をつきながら事務椅子へ腰を下ろした。唯はコップに残っているお茶を飲んでソファーで横になって寛いでいた。
38: 2012/04/03(火) 04:33:25 ID:QJG8ExD20
唯「あの二人仲良いね」
澪「うん、そうだな」
澪は純の姿を思い出した。友達を懸命になんとかして助けようとする素晴らしい光景だった。
唯「私もあんな風になってみたいなぁ……」
澪「……唯は良い奴だよ」
唯「え? 本当に?」
澪「あぁ」
澪がそう答えると、唯の顔は花が咲いたように明るくなった。
唯「澪ちゃんも素敵で良い人だよ!」
澪「そうか……よかった……」
唯「これからも、お互いに支え合っていこうね!」バッ
そう言って、唯は拳を上に振り上げた。
澪「……唯」
唯「どうしたの?」
澪「頼みがあるんだ」
唯「何でも言ってよ! 支え合う仲間……親友だからねっ!」
澪「……今日は残業してくれないか?」
唯「……へ?」
澪「中野さんから聞いた事をまとめるんだ」
唯「……あ、あれ~? 何だか急に眠くなってきたような……」
澪「そうか! じゃあ、早く仕上げないとな!」
澪「何ならコーヒーでも奢るぞ!」
唯「うわ~ん!」
澪「うん、そうだな」
澪は純の姿を思い出した。友達を懸命になんとかして助けようとする素晴らしい光景だった。
唯「私もあんな風になってみたいなぁ……」
澪「……唯は良い奴だよ」
唯「え? 本当に?」
澪「あぁ」
澪がそう答えると、唯の顔は花が咲いたように明るくなった。
唯「澪ちゃんも素敵で良い人だよ!」
澪「そうか……よかった……」
唯「これからも、お互いに支え合っていこうね!」バッ
そう言って、唯は拳を上に振り上げた。
澪「……唯」
唯「どうしたの?」
澪「頼みがあるんだ」
唯「何でも言ってよ! 支え合う仲間……親友だからねっ!」
澪「……今日は残業してくれないか?」
唯「……へ?」
澪「中野さんから聞いた事をまとめるんだ」
唯「……あ、あれ~? 何だか急に眠くなってきたような……」
澪「そうか! じゃあ、早く仕上げないとな!」
澪「何ならコーヒーでも奢るぞ!」
唯「うわ~ん!」
40: 2012/04/03(火) 18:15:42 ID:QJG8ExD20
翌日 秋山探偵事務所
澪「えーと、メモ帳はどこだっけ……」
唯「パソコンの横じゃないの」
唯は口元を手で押さえてあくびをした。昨晩は二人で遅くまで残っていたので寝不足気味だった。
澪「あ、あった」
澪はメモ帳を鞄に入れ、もう一度点検した。
澪「よし、準備完了だ」
唯「まだ眠いよー……」
澪「私だって眠いよ。さ、行くぞ」
唯「はーい」
中野家
純「そろそろ、来る時間だね」
梓「うん。お茶とか用意した方がいいかな?」
純「そうだね」
ピンポーン
梓「あ、来た」
梓「はい」
澪『秋山探偵事務所の秋山ですが』
モニターに畏まり、堅い表情をしている澪が映った。その横にまだ寝ぼけている唯がいた。
梓「はい、今開けますね」
澪「えーと、メモ帳はどこだっけ……」
唯「パソコンの横じゃないの」
唯は口元を手で押さえてあくびをした。昨晩は二人で遅くまで残っていたので寝不足気味だった。
澪「あ、あった」
澪はメモ帳を鞄に入れ、もう一度点検した。
澪「よし、準備完了だ」
唯「まだ眠いよー……」
澪「私だって眠いよ。さ、行くぞ」
唯「はーい」
中野家
純「そろそろ、来る時間だね」
梓「うん。お茶とか用意した方がいいかな?」
純「そうだね」
ピンポーン
梓「あ、来た」
梓「はい」
澪『秋山探偵事務所の秋山ですが』
モニターに畏まり、堅い表情をしている澪が映った。その横にまだ寝ぼけている唯がいた。
梓「はい、今開けますね」
41: 2012/04/03(火) 19:57:39 ID:QJG8ExD20
梓は玄関に行きドアを開いた。
ガチャ
澪「お邪魔します」
唯「お邪魔しまーす」
梓「どうぞ、上がって下さい」
梓は二人をリビングまで案内した。
澪唯「おー……」
澪と唯はリビングに飾られている膨大な数のレコードに感嘆の声を上げた。
純「澪さん、唯さん!」
声の出所の方を見ると、ソファーに純が座っていた。
唯「あっ! 純ちゃん!」
澪「来てたんだ」
純「はい!」
純は一瞬笑みを浮かべて答えた。
澪「それじゃあ、予定を話します」
澪と唯はソファーに座った。梓と純は気を引き締めて耳を傾けた。
ガチャ
澪「お邪魔します」
唯「お邪魔しまーす」
梓「どうぞ、上がって下さい」
梓は二人をリビングまで案内した。
澪唯「おー……」
澪と唯はリビングに飾られている膨大な数のレコードに感嘆の声を上げた。
純「澪さん、唯さん!」
声の出所の方を見ると、ソファーに純が座っていた。
唯「あっ! 純ちゃん!」
澪「来てたんだ」
純「はい!」
純は一瞬笑みを浮かべて答えた。
澪「それじゃあ、予定を話します」
澪と唯はソファーに座った。梓と純は気を引き締めて耳を傾けた。
43: 2012/04/06(金) 18:01:34 ID:JIX3ZgUs0
澪「郵便受けの周辺にこれを仕掛けます」ゴソゴソ
澪は鞄の中から小型のビデオカメラを取り出した。机の上に置くと、カメラに視線が注がれた。
澪「これを見えない場所に設置して、犯人の顔を撮影します」
梓「はぁ……」
澪「それを一週間続けてから、どのくらいの頻度で来るのか調べて、その次に犯人を直接捕まえます」
純「なるほど……」
澪「解決までに数日は掛かりますけど、構わないですか?」
梓「はい、解決できるのなら!」
澪「わかりました。じゃあ、カメラの設置を始めましょう」
~~~~~
澪「よし! 設置完了しました!」
唯「暑い~……汗びっしょりだよ~……」
澪と唯は炎天下の中、カメラの取り付け作業を終えた。夏の日照りで二人は全身汗まみれになっていた。
カメラを三台設置して、犯人の顔を撮り逃す事の無いように注意を払った。
澪は鞄の中から小型のビデオカメラを取り出した。机の上に置くと、カメラに視線が注がれた。
澪「これを見えない場所に設置して、犯人の顔を撮影します」
梓「はぁ……」
澪「それを一週間続けてから、どのくらいの頻度で来るのか調べて、その次に犯人を直接捕まえます」
純「なるほど……」
澪「解決までに数日は掛かりますけど、構わないですか?」
梓「はい、解決できるのなら!」
澪「わかりました。じゃあ、カメラの設置を始めましょう」
~~~~~
澪「よし! 設置完了しました!」
唯「暑い~……汗びっしょりだよ~……」
澪と唯は炎天下の中、カメラの取り付け作業を終えた。夏の日照りで二人は全身汗まみれになっていた。
カメラを三台設置して、犯人の顔を撮り逃す事の無いように注意を払った。
44: 2012/04/06(金) 18:04:45 ID:JIX3ZgUs0
梓「お疲れ様です、中に入って休んでください」
唯「はぁ~……どてっ……」
唯はリビングに入った瞬間に大の字になって寝そべった。クーラーが苦手な唯のために既にクーラーは切ってあった。
梓「紅茶入れたのでどうぞ飲んでください」
澪「ありがとうございます」
唯「これで生き返るぅ~……」
澪がカップに触れると、とても冷えていた。そのせいか、疲労でぼんやりとした意識が覚醒した。一口飲むと、澪は生き返ったようになった。
澪「あー……美味しいー……」
澪はこの至福の時をゆっくりと満喫した。どこか遠くから蝉の鳴き声が聞こえる気がした。
~~~~~
澪「それじゃあ、今日から録画を開始して明日の昼頃に回収して、メモリーカードを交換しますね」
澪「撮影した映像は事務所で確認させてもらいます」
梓「はい、お願いします」
澪「それじゃあ、失礼します」
梓純「ありがとうございました!」
唯「またねー!」
唯が笑顔で二人に手を振り、別れを告げた。
唯「はぁ~……どてっ……」
唯はリビングに入った瞬間に大の字になって寝そべった。クーラーが苦手な唯のために既にクーラーは切ってあった。
梓「紅茶入れたのでどうぞ飲んでください」
澪「ありがとうございます」
唯「これで生き返るぅ~……」
澪がカップに触れると、とても冷えていた。そのせいか、疲労でぼんやりとした意識が覚醒した。一口飲むと、澪は生き返ったようになった。
澪「あー……美味しいー……」
澪はこの至福の時をゆっくりと満喫した。どこか遠くから蝉の鳴き声が聞こえる気がした。
~~~~~
澪「それじゃあ、今日から録画を開始して明日の昼頃に回収して、メモリーカードを交換しますね」
澪「撮影した映像は事務所で確認させてもらいます」
梓「はい、お願いします」
澪「それじゃあ、失礼します」
梓純「ありがとうございました!」
唯「またねー!」
唯が笑顔で二人に手を振り、別れを告げた。
45: 2012/04/06(金) 18:09:00 ID:JIX3ZgUs0
唯「何だか本格的になってきたね!」
澪「うーん……最初の頃を考えるとそうだなぁ」
澪は顎に手を当てて考え込むような仕草をした。その横顔を盗み見た唯は微笑んだ。
唯「でも、梓ちゃんのためにも頑張らないとね!」
澪「うん、絶対に犯人を突き止めよう!」
唯「うんっ!」
唯は元気よく大きな声で返事をした。その次の瞬間
唯「あれ?」
唯の中である違和感が生まれた。自分にとって何か重大な事を見落としている、そんな予感がしていた。
唯「……調査期間は一週間だったっけ」
澪「え? あぁ……」
澪「一週間“毎日”だ!」
唯の体に強力な電撃が走った。澪は魂が抜けかけて、放心状態になりつつある唯の顔を覗き込んだ。唯の体は小刻みに震えていた。
唯「ににっ、日曜日も……?」
澪「もちろんだ!」
唯「」
澪は当然とばかりにきっぱりと言いのけた。それを聞いた唯は完全に魂が抜け出してしまった。
澪は抜け殻と化した唯を引きずるようにして事務所まで連れて帰った。
澪「うーん……最初の頃を考えるとそうだなぁ」
澪は顎に手を当てて考え込むような仕草をした。その横顔を盗み見た唯は微笑んだ。
唯「でも、梓ちゃんのためにも頑張らないとね!」
澪「うん、絶対に犯人を突き止めよう!」
唯「うんっ!」
唯は元気よく大きな声で返事をした。その次の瞬間
唯「あれ?」
唯の中である違和感が生まれた。自分にとって何か重大な事を見落としている、そんな予感がしていた。
唯「……調査期間は一週間だったっけ」
澪「え? あぁ……」
澪「一週間“毎日”だ!」
唯の体に強力な電撃が走った。澪は魂が抜けかけて、放心状態になりつつある唯の顔を覗き込んだ。唯の体は小刻みに震えていた。
唯「ににっ、日曜日も……?」
澪「もちろんだ!」
唯「」
澪は当然とばかりにきっぱりと言いのけた。それを聞いた唯は完全に魂が抜け出してしまった。
澪は抜け殻と化した唯を引きずるようにして事務所まで連れて帰った。
46: 2012/04/06(金) 18:52:26 ID:JIX3ZgUs0
翌日 中野家
ピンポーン
梓『はい』
澪「おはようございます。秋山です」
梓『あっ、今行きます』
ブッ
唯はカメラの状態を確認した。移動した痕跡は無く、誰にも気づかれてはいないようだった。
唯「カメラは大丈夫だよ~」
澪「よし、ばれてないみたいだな」
ガチャ
梓「おはようございます」
澪「今日は手紙は来てませんか?」
梓「今日はまだ来てないです」
澪「そうですか。じゃあ、メモリーカードを持ち帰って事務所で確認しますね」
梓「お願いします」
ピンポーン
梓『はい』
澪「おはようございます。秋山です」
梓『あっ、今行きます』
ブッ
唯はカメラの状態を確認した。移動した痕跡は無く、誰にも気づかれてはいないようだった。
唯「カメラは大丈夫だよ~」
澪「よし、ばれてないみたいだな」
ガチャ
梓「おはようございます」
澪「今日は手紙は来てませんか?」
梓「今日はまだ来てないです」
澪「そうですか。じゃあ、メモリーカードを持ち帰って事務所で確認しますね」
梓「お願いします」
47: 2012/04/06(金) 18:58:44 ID:JIX3ZgUs0
澪は鞄の中から三枚のメモリーカードを取り出した。唯が録画停止ボタンを押して、ビデオカメラからメモリーカードを抜き取った。
澪「これでよし……っと」カチッ
澪は新たなメモリーカードを差し込み、録画開始ボタンを押した。映像が正しく撮れてるかどうか確認した後に梓の方へ向き直った。
澪「じゃあ、明日もよろしくお願いします」
梓「はい」
唯「またね~、梓ちゃん!」
唯はいつものように元気よく手を振り、梓はそれに笑顔で答えていた。
秋山探偵事務所
唯「手紙は来てないのに確認するの?」
澪「あぁ、もしかすると、犯人が中野さんの家の周りをうろついているかもしれないしな」
唯「なるほど」
澪はノートパソコンにメモリーカードを差し込んだ。
澪「よし、準備完了!」カチカチッ
澪がマウスをすると、再生ボタンが表示された。
澪「これでよし……っと」カチッ
澪は新たなメモリーカードを差し込み、録画開始ボタンを押した。映像が正しく撮れてるかどうか確認した後に梓の方へ向き直った。
澪「じゃあ、明日もよろしくお願いします」
梓「はい」
唯「またね~、梓ちゃん!」
唯はいつものように元気よく手を振り、梓はそれに笑顔で答えていた。
秋山探偵事務所
唯「手紙は来てないのに確認するの?」
澪「あぁ、もしかすると、犯人が中野さんの家の周りをうろついているかもしれないしな」
唯「なるほど」
澪はノートパソコンにメモリーカードを差し込んだ。
澪「よし、準備完了!」カチカチッ
澪がマウスをすると、再生ボタンが表示された。
48: 2012/04/06(金) 19:52:13 ID:JIX3ZgUs0
唯「映像が3つあるって忙しそうだね……」
澪「だから、二人で見るんだろ」
唯「あと一人誰か欲しいよ~……」
唯はブーブー文句を言いながら澪の隣に腰掛けた。
澪「見てる最中に、気づいた事があれば停止ボタンを押すから言ってくれ」
澪「それじゃあ、再生するぞ」スッ
唯「待って! 澪ちゃん!」
澪「ど、どうしたんだ?」
唯が突然、大声を出したので澪は思わずマウスへ伸ばした腕を引っ込めた。
唯「トイレ行かせて!」タタタッ
唯は澪の返事を待たずにトイレへと駆け出して行った。トイレの扉が閉まる音を聞いた澪は一人静かにため息をついた。
澪「(確かに、助手が唯だけじゃ不安だな……)」
澪「(あと一人ぐらい助手が必要かな……)」
澪「……って仕事もほとんど回ってこないのにかわいそうか」
澪は静かに呟いた。その声の調子は諦め混じりだった。
澪「だから、二人で見るんだろ」
唯「あと一人誰か欲しいよ~……」
唯はブーブー文句を言いながら澪の隣に腰掛けた。
澪「見てる最中に、気づいた事があれば停止ボタンを押すから言ってくれ」
澪「それじゃあ、再生するぞ」スッ
唯「待って! 澪ちゃん!」
澪「ど、どうしたんだ?」
唯が突然、大声を出したので澪は思わずマウスへ伸ばした腕を引っ込めた。
唯「トイレ行かせて!」タタタッ
唯は澪の返事を待たずにトイレへと駆け出して行った。トイレの扉が閉まる音を聞いた澪は一人静かにため息をついた。
澪「(確かに、助手が唯だけじゃ不安だな……)」
澪「(あと一人ぐらい助手が必要かな……)」
澪「……って仕事もほとんど回ってこないのにかわいそうか」
澪は静かに呟いた。その声の調子は諦め混じりだった。
49: 2012/04/08(日) 17:39:12 ID:ebTM.y4.0
唯「ふぅ~お待たせ~」
澪「まったく……」
ため息こそついたものの、澪の感情に怒りは無かった。
澪「始めるぞ」カチカチッ
3つの映像が同時に再生された。澪と唯は食い入るように画面だけをじっと見つめた。映像の中は通行人や車が通り過ぎるだけで、変化は特に無かった。
唯「何も起きないね」
澪「監視カメラも普段はこんな感じなんだろ」
唯「そうなのかな」
その後も似たような光景がしばらく続いた。
車、人、車、人……
唯「ねぇ、澪ちゃん」
澪「……なんだ?」
唯「その~……早送りはどうかなぁ~と思いまして……」
唯は遠慮がちにどこかの店員のように両手を組んで提案した。澪は停止ボタンを押して大きなため息をついた。
とは言え、澪も単調で大きな変化もない映像にどこか退屈してきていた。
澪「まったく……」
ため息こそついたものの、澪の感情に怒りは無かった。
澪「始めるぞ」カチカチッ
3つの映像が同時に再生された。澪と唯は食い入るように画面だけをじっと見つめた。映像の中は通行人や車が通り過ぎるだけで、変化は特に無かった。
唯「何も起きないね」
澪「監視カメラも普段はこんな感じなんだろ」
唯「そうなのかな」
その後も似たような光景がしばらく続いた。
車、人、車、人……
唯「ねぇ、澪ちゃん」
澪「……なんだ?」
唯「その~……早送りはどうかなぁ~と思いまして……」
唯は遠慮がちにどこかの店員のように両手を組んで提案した。澪は停止ボタンを押して大きなため息をついた。
とは言え、澪も単調で大きな変化もない映像にどこか退屈してきていた。
50: 2012/04/08(日) 17:42:14 ID:ebTM.y4.0
澪「じゃあ、少しだけだぞ」カチッ
澪がすると、本来の映像よりも少し早く動き始めた。
澪「早くなったから注意しないとな」
唯「うん、わかってるよ」
再び、二人は画面に注目した。少し早くなっただけで、やはり目に留まる変化は無かった。
映像の中は辺りが暗くなり、夜になった。普通なら見えなくなる可能性もあるが、近くの街灯のおかげで映像は鮮明に映っていた。
澪「やっぱり来るとすれば夜かな……?」
唯「私が犯人だったらバレないように夜に行くかなぁ」
澪「(人目を気にするのなら、普通は夜を選ぶはず……)」
澪「(もし見られても、薄暗いし顔もバレる確率は低い……)」
~~~~~
結局、映像は夜を過ぎて明け方になり、朝になって回収する時間までに犯人らしい怪しい人物は映っていなかった。
澪「ふぅー……」
唯「長かったね」
澪「そうだな」
流石の澪も普段とは違った疲れを感じていた。唯は隣で伸びをしていた。
澪がすると、本来の映像よりも少し早く動き始めた。
澪「早くなったから注意しないとな」
唯「うん、わかってるよ」
再び、二人は画面に注目した。少し早くなっただけで、やはり目に留まる変化は無かった。
映像の中は辺りが暗くなり、夜になった。普通なら見えなくなる可能性もあるが、近くの街灯のおかげで映像は鮮明に映っていた。
澪「やっぱり来るとすれば夜かな……?」
唯「私が犯人だったらバレないように夜に行くかなぁ」
澪「(人目を気にするのなら、普通は夜を選ぶはず……)」
澪「(もし見られても、薄暗いし顔もバレる確率は低い……)」
~~~~~
結局、映像は夜を過ぎて明け方になり、朝になって回収する時間までに犯人らしい怪しい人物は映っていなかった。
澪「ふぅー……」
唯「長かったね」
澪「そうだな」
流石の澪も普段とは違った疲れを感じていた。唯は隣で伸びをしていた。
51: 2012/04/08(日) 18:08:56 ID:ebTM.y4.0
澪「今日は帰ろうか」
唯「うん、お腹空いた~」
唯は疲れきった表情をしながらお腹を擦った。
唯「今日の晩ご飯はなんだろう~」
唯「一週間仕事が続くって言ったら、今日はご馳走にするって憂が言ってたんだ!」
澪「憂ちゃんって唯の妹だっけ?」
唯「うん、何でもしてくれて優しいんだよ!」
澪「何でも……」
唯がリビングで寝転んでダラダラしている姿が想像できた。
唯「そうだっ! 澪ちゃんも今日ウチでご飯食べない?」
澪「え?」
唯の突然の提案に澪は帰り支度で動かしていた手を止めた。
唯「みんなで食べた方が美味しいよ~!」
澪「唯のパパとマ……お父さんとお母さんがいるから迷惑なんじゃないかっ!?」
澪は唯と一緒に夕飯の時を過ごすのが嫌なのではなく、会ったこともない人といるのにどこか気が引けた。普段は仕事と割り切っているが、仕事が終わると、どこか消極的になっていた。
唯「うん、お腹空いた~」
唯は疲れきった表情をしながらお腹を擦った。
唯「今日の晩ご飯はなんだろう~」
唯「一週間仕事が続くって言ったら、今日はご馳走にするって憂が言ってたんだ!」
澪「憂ちゃんって唯の妹だっけ?」
唯「うん、何でもしてくれて優しいんだよ!」
澪「何でも……」
唯がリビングで寝転んでダラダラしている姿が想像できた。
唯「そうだっ! 澪ちゃんも今日ウチでご飯食べない?」
澪「え?」
唯の突然の提案に澪は帰り支度で動かしていた手を止めた。
唯「みんなで食べた方が美味しいよ~!」
澪「唯のパパとマ……お父さんとお母さんがいるから迷惑なんじゃないかっ!?」
澪は唯と一緒に夕飯の時を過ごすのが嫌なのではなく、会ったこともない人といるのにどこか気が引けた。普段は仕事と割り切っているが、仕事が終わると、どこか消極的になっていた。
52: 2012/04/08(日) 18:13:24 ID:ebTM.y4.0
唯「大丈夫だよっ!」
しかし、唯は気にも留めない。澪の密かな悩みの種にまったく気づいていないようだった。
澪「大丈夫だよって……いきなり押しかけたら迷惑だろ」
唯「うちの両親はいつも仕事で海外に行ったりしてるから、ほとんど家にいないんだ」
澪「そうなんだ……」
唯の話を聞くたびに、澪の中での平沢家のイメージが様々なものへと変化した。
唯「憂に聞いてみるね?」スッ
唯は素早く携帯を開いて電話を掛けた。
澪「おいっ! まだ返事してないだろ!」
澪が唯に手を伸ばした。しかし、既にコール音が鳴り、澪な静かに項垂れた。
澪「う……」ガクッ
唯「あっ! 憂~? 今日の晩ご飯なんだけど、澪ちゃんも一緒に食べてもいいかな?」
唯「量が足りない? 三人で分ければ大丈夫だよ~!」
唯「わかった、ありがとう~! 今から帰るね」
パタン
唯「大丈夫だってさ!」
澪「う、うん。ありがとう……」
唯「それじゃあ、帰ろっか!」
澪「そんなに急がなくても……」
唯は澪を急かすように背中を押し、意気揚々と事務所の扉を閉めた。
しかし、唯は気にも留めない。澪の密かな悩みの種にまったく気づいていないようだった。
澪「大丈夫だよって……いきなり押しかけたら迷惑だろ」
唯「うちの両親はいつも仕事で海外に行ったりしてるから、ほとんど家にいないんだ」
澪「そうなんだ……」
唯の話を聞くたびに、澪の中での平沢家のイメージが様々なものへと変化した。
唯「憂に聞いてみるね?」スッ
唯は素早く携帯を開いて電話を掛けた。
澪「おいっ! まだ返事してないだろ!」
澪が唯に手を伸ばした。しかし、既にコール音が鳴り、澪な静かに項垂れた。
澪「う……」ガクッ
唯「あっ! 憂~? 今日の晩ご飯なんだけど、澪ちゃんも一緒に食べてもいいかな?」
唯「量が足りない? 三人で分ければ大丈夫だよ~!」
唯「わかった、ありがとう~! 今から帰るね」
パタン
唯「大丈夫だってさ!」
澪「う、うん。ありがとう……」
唯「それじゃあ、帰ろっか!」
澪「そんなに急がなくても……」
唯は澪を急かすように背中を押し、意気揚々と事務所の扉を閉めた。
53: 2012/04/08(日) 18:39:54 ID:ebTM.y4.0
平沢家
唯「ただいま~!」
憂「おかえり、お姉ちゃん」
澪「お、お邪魔します」
憂「どうぞ、上がって下さい。お仕事ご苦労様です」
澪は目を丸くして憂を見つめた。双子の様に瓜二つだったことはもちろんだが、本当に同じ姉妹なのかと疑った。礼儀正しさ、言葉遣い、立ち居振る舞い、どれを取っても唯よりも完璧にこなしていた。
ただ、雰囲気だけは二人とも同じだった。一緒にいると、どこか安心する。澪の緊張はいつの間にか解けていた。
リビングに入ると、テーブルの上にすき焼き鍋と牛肉が置かれていた。
憂「今日はすき焼きです」
牛肉やその他の具材を見て、澪は急に空腹感を覚えた。
唯「お腹空いたよ~憂~」
憂「はーい、ちょっと待っててね」
憂は嫌な顔一つせずに唯を宥めた。
憂「心配だったので買い足して来ました」
よく見ると、机の隅の方に追加分の牛肉が入ってると思われるビニール袋があった。その横には皺一つ無いレシートと小銭があった。
澪「すいません、急に押しかけたりして」
憂「敬語なんて使わないで下さいよ~」
憂は笑いながら、食事の準備を始めていた。無駄な動作は一切無かった。
唯「ただいま~!」
憂「おかえり、お姉ちゃん」
澪「お、お邪魔します」
憂「どうぞ、上がって下さい。お仕事ご苦労様です」
澪は目を丸くして憂を見つめた。双子の様に瓜二つだったことはもちろんだが、本当に同じ姉妹なのかと疑った。礼儀正しさ、言葉遣い、立ち居振る舞い、どれを取っても唯よりも完璧にこなしていた。
ただ、雰囲気だけは二人とも同じだった。一緒にいると、どこか安心する。澪の緊張はいつの間にか解けていた。
リビングに入ると、テーブルの上にすき焼き鍋と牛肉が置かれていた。
憂「今日はすき焼きです」
牛肉やその他の具材を見て、澪は急に空腹感を覚えた。
唯「お腹空いたよ~憂~」
憂「はーい、ちょっと待っててね」
憂は嫌な顔一つせずに唯を宥めた。
憂「心配だったので買い足して来ました」
よく見ると、机の隅の方に追加分の牛肉が入ってると思われるビニール袋があった。その横には皺一つ無いレシートと小銭があった。
澪「すいません、急に押しかけたりして」
憂「敬語なんて使わないで下さいよ~」
憂は笑いながら、食事の準備を始めていた。無駄な動作は一切無かった。
57: 2012/04/08(日) 23:29:20 ID:ebTM.y4.0
忙しそうに働いている憂を見て、澪は何か手伝わなければいけない気がして立ち上がった。
澪「何か手伝うことないかな?」
憂「あ、構わずに座っていてください」
澪「う、うん。ごめんね?」
憂「いえいえ」
澪「(できた妹だなぁ……)」
澪は感心するように憂の横顔を見つめた。後ろにいる唯を盗み見ると、リビングでのんびりと寛いでいる。
唯「はぁ~……」
澪「(駄目な姉だ……)」
澪は少し微笑みながら、ため息をついた。その姿も唯らしいと思った。
~~~~~
憂「お待たせしました~」
唯「おぉっ!! できたっ!?」
憂「遅くなってごめんね?」
唯「ううん! じゃあ、食べよっか!」
唯「いただきま~す!」
澪憂「いただきます」
各々が自分の好きな具材を食べていった。澪は疲れていたせいもあって、箸が進んだ。憂が作った影響もあったのかもしれない。
澪「何か手伝うことないかな?」
憂「あ、構わずに座っていてください」
澪「う、うん。ごめんね?」
憂「いえいえ」
澪「(できた妹だなぁ……)」
澪は感心するように憂の横顔を見つめた。後ろにいる唯を盗み見ると、リビングでのんびりと寛いでいる。
唯「はぁ~……」
澪「(駄目な姉だ……)」
澪は少し微笑みながら、ため息をついた。その姿も唯らしいと思った。
~~~~~
憂「お待たせしました~」
唯「おぉっ!! できたっ!?」
憂「遅くなってごめんね?」
唯「ううん! じゃあ、食べよっか!」
唯「いただきま~す!」
澪憂「いただきます」
各々が自分の好きな具材を食べていった。澪は疲れていたせいもあって、箸が進んだ。憂が作った影響もあったのかもしれない。
58: 2012/04/08(日) 23:34:29 ID:ebTM.y4.0
~~~~~
唯「ふぅ~! 食べた、食べた!」
唯は後ろに倒れ込んで大きく息を吐いた。唯は微睡んでいるようだった。澪も思ってた以上に食べたせいで、無意識のうちにお腹を擦っていた。
澪「ありがとう、憂ちゃん。美味しかったよ」
憂「喜んでもらえて嬉しいです」
憂は肩を寄せながら、照れ笑いを浮かべた。その様子も可愛らしかった。
憂「明日も早いんですか?」
澪「うん、十時に依頼人の家に行かないといけないんだ」
憂「そうですか。梓ちゃんも大変だなー……」
澪「え? し、知ってるの?」
憂「はい、梓ちゃんと純ちゃんは私の友達なんです」
澪「そうだったんだ……」
憂「純ちゃんが澪さんの探偵事務所に依頼しに行った事を聞いた時は驚きました」
憂「でも、ネコが見つかった後、純ちゃんは本当に嬉しそうでしたよ」
憂「あの探偵事務所に頼んで本当に良かった、って」
憂「だから、梓ちゃんの依頼も澪さんたちに勧めたんだと思います」
澪「そっか……」
澪「よかった……」
澪は嬉しかった。達成感のようなものが湧き上がって来る。澪は探偵をやっていてよかったと心から思うことができた。
唯「ふぅ~! 食べた、食べた!」
唯は後ろに倒れ込んで大きく息を吐いた。唯は微睡んでいるようだった。澪も思ってた以上に食べたせいで、無意識のうちにお腹を擦っていた。
澪「ありがとう、憂ちゃん。美味しかったよ」
憂「喜んでもらえて嬉しいです」
憂は肩を寄せながら、照れ笑いを浮かべた。その様子も可愛らしかった。
憂「明日も早いんですか?」
澪「うん、十時に依頼人の家に行かないといけないんだ」
憂「そうですか。梓ちゃんも大変だなー……」
澪「え? し、知ってるの?」
憂「はい、梓ちゃんと純ちゃんは私の友達なんです」
澪「そうだったんだ……」
憂「純ちゃんが澪さんの探偵事務所に依頼しに行った事を聞いた時は驚きました」
憂「でも、ネコが見つかった後、純ちゃんは本当に嬉しそうでしたよ」
憂「あの探偵事務所に頼んで本当に良かった、って」
憂「だから、梓ちゃんの依頼も澪さんたちに勧めたんだと思います」
澪「そっか……」
澪「よかった……」
澪は嬉しかった。達成感のようなものが湧き上がって来る。澪は探偵をやっていてよかったと心から思うことができた。
59: 2012/04/08(日) 23:39:20 ID:ebTM.y4.0
ふと横に目をやると、唯が寝息を立てていた。
澪「あ、寝てる……」
憂「本当だ」
そう言って、憂は立ち上がりリビングから姿を消した。再び、憂が現れると、毛布を手にしていた。憂は寝ている唯を起こさないように慎重に毛布を掛けた。
憂はそのまま食器を台所へと運び始めた。
澪「あ、私も手伝うよ」
憂「大丈夫ですよ。澪さんは休んでいてください」
澪「……わかった、お願いするね」
しつこく食い下がる理由も無いので、すぐに憂の提案に乗った。澪も唯のように後ろに倒れ込んだ。大きなあくびが出た。
澪「(これからも、困っている人を助けていきたい……)」
澪「(もっと頑張らなくちゃ……)」
急に視界がぼやけ始めた。強烈な眠気が澪を襲った。澪は懸命に頭を働かせようとしたが、眠気は攻撃を緩めてくれない。
結局、澪もその場で眠ってしまった。その寝顔は安堵の表情を浮かべているようだった。
~~~~~
憂「澪さん、今日はもう遅いから泊まっていきますか?」
憂の問いかけに返事は無かった。憂は横になっている澪の顔を覗き込んだ。
憂「あれ、寝てる……」
子どもの様に安らかな寝顔の澪と唯を見て、憂も温かい笑みを浮かべた。
澪「あ、寝てる……」
憂「本当だ」
そう言って、憂は立ち上がりリビングから姿を消した。再び、憂が現れると、毛布を手にしていた。憂は寝ている唯を起こさないように慎重に毛布を掛けた。
憂はそのまま食器を台所へと運び始めた。
澪「あ、私も手伝うよ」
憂「大丈夫ですよ。澪さんは休んでいてください」
澪「……わかった、お願いするね」
しつこく食い下がる理由も無いので、すぐに憂の提案に乗った。澪も唯のように後ろに倒れ込んだ。大きなあくびが出た。
澪「(これからも、困っている人を助けていきたい……)」
澪「(もっと頑張らなくちゃ……)」
急に視界がぼやけ始めた。強烈な眠気が澪を襲った。澪は懸命に頭を働かせようとしたが、眠気は攻撃を緩めてくれない。
結局、澪もその場で眠ってしまった。その寝顔は安堵の表情を浮かべているようだった。
~~~~~
憂「澪さん、今日はもう遅いから泊まっていきますか?」
憂の問いかけに返事は無かった。憂は横になっている澪の顔を覗き込んだ。
憂「あれ、寝てる……」
子どもの様に安らかな寝顔の澪と唯を見て、憂も温かい笑みを浮かべた。
60: 2012/04/11(水) 00:31:06 ID:WO2kcr1A0
翌日
澪「ん……」
澪は薄明るいリビングで横になっていた。遠くから鳥の囀りが聞こえた。気がつくと、毛布がかけられていた。
澪「…………」
澪「しまった! いつの間にか寝ていた!」
事の重大さに気づき、澪は一瞬で覚醒した。立ち上がって時計を見ると、七時を示していた。階段の方から足音が聞こえたので、振り向くと、憂が立っていた。
憂「あ、起きたんですね」
澪「ご、ごめん! つい寝ちゃってて」
憂「いえいえ、すぐに朝ごはん作りますから」
憂はすぐに台所へと向かった。
澪「…………」
下を見ると、まだ唯が寝息を立てていた。澪は静かに座り直した。
しばらくすると、憂がトーストとジャムを持ってきた。
憂「起きて、お姉ちゃん! 朝だよ!」
唯「う~ん……あと少しだけ……」
憂「朝ごはんできたよ! 澪さんも待ってるよ!」
唯「え……?」
唯は瞼を半分程開きながら状態を起こした。そうして、しばらくの間澪の顔を見つめていた。
澪「ん……」
澪は薄明るいリビングで横になっていた。遠くから鳥の囀りが聞こえた。気がつくと、毛布がかけられていた。
澪「…………」
澪「しまった! いつの間にか寝ていた!」
事の重大さに気づき、澪は一瞬で覚醒した。立ち上がって時計を見ると、七時を示していた。階段の方から足音が聞こえたので、振り向くと、憂が立っていた。
憂「あ、起きたんですね」
澪「ご、ごめん! つい寝ちゃってて」
憂「いえいえ、すぐに朝ごはん作りますから」
憂はすぐに台所へと向かった。
澪「…………」
下を見ると、まだ唯が寝息を立てていた。澪は静かに座り直した。
しばらくすると、憂がトーストとジャムを持ってきた。
憂「起きて、お姉ちゃん! 朝だよ!」
唯「う~ん……あと少しだけ……」
憂「朝ごはんできたよ! 澪さんも待ってるよ!」
唯「え……?」
唯は瞼を半分程開きながら状態を起こした。そうして、しばらくの間澪の顔を見つめていた。
61: 2012/04/11(水) 00:33:28 ID:WO2kcr1A0
唯「あ、澪ちゃん。おはようー……」
澪「おはよう、唯」
唯「今、何時……?」
憂「七時半前だよ」
唯「そっか……歯磨きしなくちゃ」
唯は寝ぼけながらも、ゆっくりと立ち上がり、洗面所へ向かって歩いた。
憂「あ、澪さんも歯磨きしますよね? 予備があるはずなので使ってください」
澪「ありがとう、使わせてもらうね」
澪も立ち上がり、唯の跡を追いかけた。
~~~~~
憂「それじゃあ、食べましょうか!」
唯「いただきまーす」
澪「いただきます」
澪はジャムをトーストに付け、一口かじった。程よい食感とジャムの甘さがたまらなく美味しかった。唯も目を覚ましたようだった。
憂「紅茶入れました~」
唯「やった!」
澪「ありがとう」
三人は八時前まで朝食の時間を寛いだ。
澪「おはよう、唯」
唯「今、何時……?」
憂「七時半前だよ」
唯「そっか……歯磨きしなくちゃ」
唯は寝ぼけながらも、ゆっくりと立ち上がり、洗面所へ向かって歩いた。
憂「あ、澪さんも歯磨きしますよね? 予備があるはずなので使ってください」
澪「ありがとう、使わせてもらうね」
澪も立ち上がり、唯の跡を追いかけた。
~~~~~
憂「それじゃあ、食べましょうか!」
唯「いただきまーす」
澪「いただきます」
澪はジャムをトーストに付け、一口かじった。程よい食感とジャムの甘さがたまらなく美味しかった。唯も目を覚ましたようだった。
憂「紅茶入れました~」
唯「やった!」
澪「ありがとう」
三人は八時前まで朝食の時間を寛いだ。
63: 2012/04/12(木) 00:43:27 ID:CvV6Dqdo0
唯「ふぅー、シャワー浴びてすっきりしたね!」
澪「そうだな」
憂「それじゃあ、気をつけて行ってください!」
澪「何から何までお世話になりっぱなしでありがとうね、憂ちゃん」
憂「また来てくださいね」
唯「そうだよ、澪ちゃん! いつでも遊びに来てね!」
澪「また、機会があったらな」
唯「それじゃあ、行ってくるねーっ!」
憂「行ってらっしゃーい!」
憂は手を振って二人を見送った。二人も憂が見えなくなるまで手を振り返した。
澪「いやー……本当にすごかったなぁ……憂ちゃん……」
唯「自慢の妹ですからっ!」
唯はまるで自分が褒められたように胸を張って言った。
澪「唯は憂ちゃんよりできることは無いのか?」
唯「え? うーん……」
唯は両腕を組んで、考え込んだ。しかし、何一つ思い浮かばないようだった。
唯「う~ん……私が憂に勝ってるもの……」
唯「あっ! 年だ! 私、憂より年上だよっ!」
澪「いや、それは違うだろ」
澪「そうだな」
憂「それじゃあ、気をつけて行ってください!」
澪「何から何までお世話になりっぱなしでありがとうね、憂ちゃん」
憂「また来てくださいね」
唯「そうだよ、澪ちゃん! いつでも遊びに来てね!」
澪「また、機会があったらな」
唯「それじゃあ、行ってくるねーっ!」
憂「行ってらっしゃーい!」
憂は手を振って二人を見送った。二人も憂が見えなくなるまで手を振り返した。
澪「いやー……本当にすごかったなぁ……憂ちゃん……」
唯「自慢の妹ですからっ!」
唯はまるで自分が褒められたように胸を張って言った。
澪「唯は憂ちゃんよりできることは無いのか?」
唯「え? うーん……」
唯は両腕を組んで、考え込んだ。しかし、何一つ思い浮かばないようだった。
唯「う~ん……私が憂に勝ってるもの……」
唯「あっ! 年だ! 私、憂より年上だよっ!」
澪「いや、それは違うだろ」
64: 2012/04/12(木) 00:46:04 ID:CvV6Dqdo0
中野家
澪「よーし、押すぞ」
唯「どうぞっ!」
ピンポーン
梓『はい』
澪「あ、秋山ですけど」
梓『今、行きますねー』
梓が来るまでの間、二人はビデオカメラの位置を確認した。やはり、カメラの位置は寸分違わない。
ガチャ
梓「おはようございます」
澪「おはようございます」
唯「おはよー」
澪「今日は手紙来てますか?」
梓「今日はまだ確認してないんです。親にも言って、二人が来たら確認することになって」
梓「今、見ますね」
梓は少し屈んで、郵便受けの蓋を開けた。
澪「よーし、押すぞ」
唯「どうぞっ!」
ピンポーン
梓『はい』
澪「あ、秋山ですけど」
梓『今、行きますねー』
梓が来るまでの間、二人はビデオカメラの位置を確認した。やはり、カメラの位置は寸分違わない。
ガチャ
梓「おはようございます」
澪「おはようございます」
唯「おはよー」
澪「今日は手紙来てますか?」
梓「今日はまだ確認してないんです。親にも言って、二人が来たら確認することになって」
梓「今、見ますね」
梓は少し屈んで、郵便受けの蓋を開けた。
65: 2012/04/12(木) 01:06:36 ID:CvV6Dqdo0
梓「えーと、新聞と……」
梓が新聞を手に取り、もう一度覗き込んだ瞬間に固まってしまった。表情が強張り、よろよろと後ずさりした。
梓「ひっ……!」
梓は短い悲鳴を上げて、郵便受けの中の一点だけを見つめている。澪と唯も急いで中を覗き込んだ。
唯「あっ」
澪「これは……」
中には便箋が一つ置かれていた。澪の背筋が氷を直に当てたように寒くなった。澪は冷や汗をかいていた。
澪「開けてもいいですか……?」
梓は口が開かなかったのか、顔を真っ青にして黙って数回頷いた。
澪が開封すると、それはストーカーからの手紙だった。
“ボクはアナタだけヲ見テイル。コノオモイはキット梓サンのモトヘ”
澪「ぐっ……!」
澪はストーカーからの手紙を破り捨てたい衝動に駆られた。持っているだけで、粘着質な悪意が染み渡り、自身の体を蝕む気がした。
澪と唯が横を見ると、梓は体を震わせていた。両腕で抱き寄せて震えを止めようとするものの、震えは一向に止まる気配を見せなかった。
梓「う……あ……」ガクガクガク
唯「大丈夫だよ、梓ちゃん……」ギュッ
唯が梓を優しく抱きしめた。梓はきょとんとして何が起こっているかわからないようだった。
唯「私たちが梓ちゃんを守るから……」
梓「…………」
気がつくと、梓の体の震えは止まっていた。震えが止まっているのに気づいた唯はゆっくりと梓から離れ、梓の顔を見つめた。
梓が新聞を手に取り、もう一度覗き込んだ瞬間に固まってしまった。表情が強張り、よろよろと後ずさりした。
梓「ひっ……!」
梓は短い悲鳴を上げて、郵便受けの中の一点だけを見つめている。澪と唯も急いで中を覗き込んだ。
唯「あっ」
澪「これは……」
中には便箋が一つ置かれていた。澪の背筋が氷を直に当てたように寒くなった。澪は冷や汗をかいていた。
澪「開けてもいいですか……?」
梓は口が開かなかったのか、顔を真っ青にして黙って数回頷いた。
澪が開封すると、それはストーカーからの手紙だった。
“ボクはアナタだけヲ見テイル。コノオモイはキット梓サンのモトヘ”
澪「ぐっ……!」
澪はストーカーからの手紙を破り捨てたい衝動に駆られた。持っているだけで、粘着質な悪意が染み渡り、自身の体を蝕む気がした。
澪と唯が横を見ると、梓は体を震わせていた。両腕で抱き寄せて震えを止めようとするものの、震えは一向に止まる気配を見せなかった。
梓「う……あ……」ガクガクガク
唯「大丈夫だよ、梓ちゃん……」ギュッ
唯が梓を優しく抱きしめた。梓はきょとんとして何が起こっているかわからないようだった。
唯「私たちが梓ちゃんを守るから……」
梓「…………」
気がつくと、梓の体の震えは止まっていた。震えが止まっているのに気づいた唯はゆっくりと梓から離れ、梓の顔を見つめた。
67: 2012/04/13(金) 23:31:58 ID:qYRhlWec0
唯「もう大丈夫?」
梓「すいません……急に取り乱して……」
梓「もう大丈夫です」
唯「よかった」
澪はビデオカメラへ近づいて、メモリーカードを交換した。この小さな三枚のカードに犯人が映っていると思うと、カードを持つ手に力が入った。
澪「今日は犯人が映っているはずなので、気をつけて検証しますね」
梓「はい、お願いします」
澪「では、また明日に」
唯「またね、梓ちゃん!」
梓「はい!」
梓の元気を取り戻した様子を見て、唯はにっこりと笑った。
秋山探偵事務所
澪「よし! 今回は昨日よりも気合を入れないとな!」
唯「うん! 絶対に犯人を見つけるよ!」グッ
唯は力強く拳を握り締めた。
澪がパソコンにメモリーカードを差し込み、準備は整った。
澪「それじゃあ、始めるぞ」カチカチッ
映像が始まった。澪と唯と梓の三人の姿が映っていた。澪と唯が画面から消えて、すぐ後に梓も家の中へ戻った。
それから、一時間程経過した後に梓が家を出た。
梓「すいません……急に取り乱して……」
梓「もう大丈夫です」
唯「よかった」
澪はビデオカメラへ近づいて、メモリーカードを交換した。この小さな三枚のカードに犯人が映っていると思うと、カードを持つ手に力が入った。
澪「今日は犯人が映っているはずなので、気をつけて検証しますね」
梓「はい、お願いします」
澪「では、また明日に」
唯「またね、梓ちゃん!」
梓「はい!」
梓の元気を取り戻した様子を見て、唯はにっこりと笑った。
秋山探偵事務所
澪「よし! 今回は昨日よりも気合を入れないとな!」
唯「うん! 絶対に犯人を見つけるよ!」グッ
唯は力強く拳を握り締めた。
澪がパソコンにメモリーカードを差し込み、準備は整った。
澪「それじゃあ、始めるぞ」カチカチッ
映像が始まった。澪と唯と梓の三人の姿が映っていた。澪と唯が画面から消えて、すぐ後に梓も家の中へ戻った。
それから、一時間程経過した後に梓が家を出た。
68: 2012/04/13(金) 23:37:25 ID:qYRhlWec0
唯「やっぱり夜なのかなぁ」
澪「その可能性が高いな……」
更に、特に変化の無いまま数時間が経過して映像の時刻が夕方頃になると、梓が画面上に姿を現した。少し顔をしかめながら、恐る恐る郵便受けを覗き込んでいた。中に新聞以外の物が無い事を確認すると、胸を撫で下ろして家の中へと入った。
唯「梓ちゃん、かわいそうだね……」
澪「中野さんのためにも、絶対に犯人を探し出そう」
唯「そうだね」
そして、映像の世界は夜へと変化した。
真夜中の二時。ついに、その時がきた。
唯「あっ!」
澪「どうしたんだ!?」
唯「奥の方から人が……」
唯が指差した所を注意深く見てみると、黒い服を着た人影が中野家に近づいている。フードを被っていて顔は見えなかった。
そして、中野家の前でピタリと立ち止まった。
澪「これが……」
二人は画面に釘付けになって人影の様子を見張っていた。人影は数分の間、何もせず立ち尽くしていた。家をまっすぐに見つめているようだった。その後、ポケットから手紙を取り出して投函し、そそくさとその場を後にした。
その後も、残りの映像をチェックしてみたが、人影は姿を現さなかった。
唯「顔は見えなかったね……」
澪「フードを被ってたからな……」
澪「夜中の二時だから人通りも少ないし、聞き込みも厳しいだろうな」
澪「その可能性が高いな……」
更に、特に変化の無いまま数時間が経過して映像の時刻が夕方頃になると、梓が画面上に姿を現した。少し顔をしかめながら、恐る恐る郵便受けを覗き込んでいた。中に新聞以外の物が無い事を確認すると、胸を撫で下ろして家の中へと入った。
唯「梓ちゃん、かわいそうだね……」
澪「中野さんのためにも、絶対に犯人を探し出そう」
唯「そうだね」
そして、映像の世界は夜へと変化した。
真夜中の二時。ついに、その時がきた。
唯「あっ!」
澪「どうしたんだ!?」
唯「奥の方から人が……」
唯が指差した所を注意深く見てみると、黒い服を着た人影が中野家に近づいている。フードを被っていて顔は見えなかった。
そして、中野家の前でピタリと立ち止まった。
澪「これが……」
二人は画面に釘付けになって人影の様子を見張っていた。人影は数分の間、何もせず立ち尽くしていた。家をまっすぐに見つめているようだった。その後、ポケットから手紙を取り出して投函し、そそくさとその場を後にした。
その後も、残りの映像をチェックしてみたが、人影は姿を現さなかった。
唯「顔は見えなかったね……」
澪「フードを被ってたからな……」
澪「夜中の二時だから人通りも少ないし、聞き込みも厳しいだろうな」
69: 2012/04/14(土) 00:11:37 ID:ecqjs2E60
唯「撮影はあと何回だっけ?」
澪「あと、四回見る事になるかな」
唯「そっか、その間に来る日がわかるといいね」
澪「まぁ、こういう事をする人は頻繁に来るだろうから、あと二回ぐらいは来るかもしれないな」
そう言って、澪は手を叩いた。
澪「よし、映像を編集して中野さんにも見てもらおう!」
唯「わかった!」
唯も今回は思い入れが強いようだった。澪もそれは同じだった。
探偵として、同じ女性として、友達として、人として
澪「あと、四回見る事になるかな」
唯「そっか、その間に来る日がわかるといいね」
澪「まぁ、こういう事をする人は頻繁に来るだろうから、あと二回ぐらいは来るかもしれないな」
そう言って、澪は手を叩いた。
澪「よし、映像を編集して中野さんにも見てもらおう!」
唯「わかった!」
唯も今回は思い入れが強いようだった。澪もそれは同じだった。
探偵として、同じ女性として、友達として、人として
73: 2012/04/15(日) 01:33:52 ID:5duKmC5E0
翌日 中野家
純「犯人が映ってたんですか!?」
澪「はい、今日はそれを見てもらおうと思って」
今日は純も来ていた。
澪はテーブルの上にノートパソコンを置いて、画面を向かいのソファーに座っている梓と純へ向けた。
澪「これがその映像です」カチカチッ
澪がすると、映像がスタートした。犯人が姿を表す直前まで編集を済ましていた。梓と純は既にどこか顔を歪めていた。
フードの人影が見えた瞬間、梓は少し呻き声を上げた。
そして、手紙を投函して人影が立ち去った所で映像は終了した。
澪「以上です」
純「やっぱり顔は隠してたね~……」
梓「…………」
純は驚いた表情をして、梓は停止した画面を呆然と見ていた。
澪「これで、あと四回検証があるので、もし来れば大体の周期がわかるかもしれません」
純「あともう少しだよ、梓!」
梓「う、うん……!」
梓「残りの方もお願いします……!」
澪唯「はいっ!」
澪と唯は心を込めて全身全霊で挑む事を誓った。威勢の良い返事に、少し面食らった梓と純だったが、すぐに微笑んだ。
71: 2012/04/15(日) 00:36:07 ID:5duKmC5E0
その後、外に出て郵便受けを確認した。中には朝刊以外何も入っていなかった。直後に澪が振り返ると、梓は安堵した表情になっていて、少し胸が痛んだ。一刻も早く梓を苦しみから解放してあげたいと心の底から思った。
澪「唯、メモリーカードを交換しておいて」
唯「わかった~」
澪がメモリーカードを手渡すと、唯はそれぞれのカメラの元へ向かった。
純「大変ですね、探偵っていうのも」
純が一息ついてから静かに言った。
澪「いや、自分でやりたいと思った事だから……」
澪「やりたい事を仕事にすることができて良かったって思ってる……かな……」
澪はどこか照れ臭くて軽く俯いた。少し遠慮がちに言う澪を見て、純は微笑んだ。
唯「澪ちゃん、終わったよ~!」
作業を終えた唯が三人の元へやってきた。
澪「録画ボタンは押した?」
唯「もちろん!」
澪「よし、それじゃあ今日は帰りますね」
梓「今日はどうもありがとうございました」
澪「いえいえ。では、また明日」
唯「またね~」
純「頑張ってくださーい!」
唯「うんっ! バイバーイ!」
澪「唯、メモリーカードを交換しておいて」
唯「わかった~」
澪がメモリーカードを手渡すと、唯はそれぞれのカメラの元へ向かった。
純「大変ですね、探偵っていうのも」
純が一息ついてから静かに言った。
澪「いや、自分でやりたいと思った事だから……」
澪「やりたい事を仕事にすることができて良かったって思ってる……かな……」
澪はどこか照れ臭くて軽く俯いた。少し遠慮がちに言う澪を見て、純は微笑んだ。
唯「澪ちゃん、終わったよ~!」
作業を終えた唯が三人の元へやってきた。
澪「録画ボタンは押した?」
唯「もちろん!」
澪「よし、それじゃあ今日は帰りますね」
梓「今日はどうもありがとうございました」
澪「いえいえ。では、また明日」
唯「またね~」
純「頑張ってくださーい!」
唯「うんっ! バイバーイ!」
72: 2012/04/15(日) 00:50:02 ID:5duKmC5E0
秋山探偵事務所
澪「今回は手紙は来てなかったけど、一応確認しないとな」
唯「うん」
澪はメモリーカードをパソコンに差し込んだ。澪が画面を見つめていると、唯が紅茶を持ってきた。
唯「はい、澪ちゃん」
澪「ありがとう、唯」
唯「今日も頑張ろうね!」
澪「あぁ、もちろん!」
澪は答えると、して映像を開始した。
~~~~~
唯「今日は映ってなかったね」
澪「そうだな……」
今回の映像には犯人らしき人物は映っていなかった。念のために再度、深夜の時間帯を見直してみたが、やはりいなかった。
澪「(やっぱり手紙を出す時だけに来るのか……?)」
唯「ふぅー……」
唯も少しくたびれた様子だった。
やはり、犯人が現れないと、何の手掛かりも得られない。しかし、犯人が現すと今度は梓が苦しむ。澪はそれが心苦しかった。
澪「今日はもう終わりにしよう」
唯「わかった」
澪はカップに半分程残っている冷めた紅茶を一気飲みして立ち上がった。
澪「今回は手紙は来てなかったけど、一応確認しないとな」
唯「うん」
澪はメモリーカードをパソコンに差し込んだ。澪が画面を見つめていると、唯が紅茶を持ってきた。
唯「はい、澪ちゃん」
澪「ありがとう、唯」
唯「今日も頑張ろうね!」
澪「あぁ、もちろん!」
澪は答えると、して映像を開始した。
~~~~~
唯「今日は映ってなかったね」
澪「そうだな……」
今回の映像には犯人らしき人物は映っていなかった。念のために再度、深夜の時間帯を見直してみたが、やはりいなかった。
澪「(やっぱり手紙を出す時だけに来るのか……?)」
唯「ふぅー……」
唯も少しくたびれた様子だった。
やはり、犯人が現れないと、何の手掛かりも得られない。しかし、犯人が現すと今度は梓が苦しむ。澪はそれが心苦しかった。
澪「今日はもう終わりにしよう」
唯「わかった」
澪はカップに半分程残っている冷めた紅茶を一気飲みして立ち上がった。
74: 2012/04/15(日) 01:44:56 ID:5duKmC5E0
翌日 中野家
澪「今日も……来てませんね」
澪は郵便受けの蓋を閉めて立ち上がった。これはもはや、恒例の行事のようだった。
澪が郵便受けの中を確認し、それを唯と梓が不安げに見つめる。手紙が無ければ、胸を撫で下ろして安堵し、あれば顔を青ざめる。そして、そのどちらを見ても、気落ちする澪。
澪「じゃあ、唯。お願い」
唯「はーい」
澪はメモリーカードを唯に手渡して梓に向き直った。
澪「体調などはいかがですか?」
梓「昨日は犯人を初めて見たので、少し寝れなかったです……」
澪「…………」
確かに不眠が続いているのか、目の下には隈があり、顔色もよくなかった。ベッドで恐怖に震えている梓が想像できた。
唯「終わったよー!」
澪「それじゃあ、帰りますね」
唯「バイバーイ!」
梓「はい、気をつけてくださいね」
梓は軽く頭を下げた。小さなその体は見た目以上に小さいように思えた。
澪「今日も……来てませんね」
澪は郵便受けの蓋を閉めて立ち上がった。これはもはや、恒例の行事のようだった。
澪が郵便受けの中を確認し、それを唯と梓が不安げに見つめる。手紙が無ければ、胸を撫で下ろして安堵し、あれば顔を青ざめる。そして、そのどちらを見ても、気落ちする澪。
澪「じゃあ、唯。お願い」
唯「はーい」
澪はメモリーカードを唯に手渡して梓に向き直った。
澪「体調などはいかがですか?」
梓「昨日は犯人を初めて見たので、少し寝れなかったです……」
澪「…………」
確かに不眠が続いているのか、目の下には隈があり、顔色もよくなかった。ベッドで恐怖に震えている梓が想像できた。
唯「終わったよー!」
澪「それじゃあ、帰りますね」
唯「バイバーイ!」
梓「はい、気をつけてくださいね」
梓は軽く頭を下げた。小さなその体は見た目以上に小さいように思えた。
76: 2012/04/16(月) 19:02:10 ID:b1wxp4VI0
秋山探偵事務所
唯は暑さを紛らわすためにアイスティーを用意していた。机の上に置くと、氷がカップの側面に当たって音を鳴らした。
澪「じゃあ、始めよう」カチカチッ
澪がすると、映像が始まった。やはり、何も起こらない。澪も日の出ている間は何も起こらないと思っていた。
唯「夜……」
唯がほとんど聞こえないような小声で呟いた。澪は唯も同じ事を考えているのだろうと思った。
そして、映像は真夜中になった。一度、あの人影を見てからは深夜の時間帯になると脈拍が上がった。澪が一息つくためにカップに手を伸ばしたその時
唯「あっ!」
澪「!!」
唯が指差すまでもなく見つけた。フードを被った人影だ。前回と同様の黒い服を着ている。中野家の前で立ち止まり、家全体をじっと眺めている。
唯「…………」
唯は画面を凝視して人影を見つめている。しかし、人影はただ家を眺めているだけだった。しかも、前回よりも時間が長かった。ポケットに手を突っ込んだままだ。
唯「何もしないね……」
澪「…………」
さらに数分が経過した後に人影は立ち去った。
唯「帰っちゃった……」
澪「手紙を出さない日にも来るのか……!」
77: 2012/04/16(月) 20:44:16 ID:b1wxp4VI0
唯「見てるだけなのかな……」
澪「…………」
その後、朝になって交換するまでの間に犯人は現れなかった。
映像が止まると、澪は立ち上がって伸びをした。
澪「唯、疲れてないか?」
唯「うん、大丈夫だよ」
澪「じゃあ、犯人が映っている所を編集しよう」
唯「うん、わかった」
翌日 中野家
梓「えっ! 映ってたんですか!?」
澪「はい」
梓「昨日手紙は入って無かったのに……」
梓の表情が不安げなものになった。澪も胸に圧迫感を覚えた。
澪「手紙は入れずに家を眺めているようでした」
梓「…………」
梓は暗い表情をして俯くだけだった。それはまるで、黒い霧が顔の周りを覆っているようだった。
澪「…………」
その後、朝になって交換するまでの間に犯人は現れなかった。
映像が止まると、澪は立ち上がって伸びをした。
澪「唯、疲れてないか?」
唯「うん、大丈夫だよ」
澪「じゃあ、犯人が映っている所を編集しよう」
唯「うん、わかった」
翌日 中野家
梓「えっ! 映ってたんですか!?」
澪「はい」
梓「昨日手紙は入って無かったのに……」
梓の表情が不安げなものになった。澪も胸に圧迫感を覚えた。
澪「手紙は入れずに家を眺めているようでした」
梓「…………」
梓は暗い表情をして俯くだけだった。それはまるで、黒い霧が顔の周りを覆っているようだった。
80: 2012/04/17(火) 00:23:44 ID:OM/0CNYA0
秋山探偵事務所
澪「よし、始めるぞ」
唯「うん」
澪が指を動かすと映像が始まった。澪は既にどこか疲れていた。連日勤務しているのが原因ではなく、梓の事が心配だからである。唯も何となく疲れているようだ。
きっと自分もそんな表情なのだろう、と澪は思った。
~~~~~
澪「犯人、映ってなかったな」
唯「うん、でもよかったよ」
唯「梓ちゃんがかわいそうだから」
澪「そうだな……」
唯は両手でカップを持ち上げて一口啜った。澪も犯人が現れなくて嬉しかった。
そして、ある考えが浮かび上がった。
澪「もしかすると、犯人は一日置きに中野さんの家に行っているのかもしれないな……」
唯「え?」
唯は目を丸くして澪を見つめた。澪は頷いてから続けた。
澪「よし、始めるぞ」
唯「うん」
澪が指を動かすと映像が始まった。澪は既にどこか疲れていた。連日勤務しているのが原因ではなく、梓の事が心配だからである。唯も何となく疲れているようだ。
きっと自分もそんな表情なのだろう、と澪は思った。
~~~~~
澪「犯人、映ってなかったな」
唯「うん、でもよかったよ」
唯「梓ちゃんがかわいそうだから」
澪「そうだな……」
唯は両手でカップを持ち上げて一口啜った。澪も犯人が現れなくて嬉しかった。
そして、ある考えが浮かび上がった。
澪「もしかすると、犯人は一日置きに中野さんの家に行っているのかもしれないな……」
唯「え?」
唯は目を丸くして澪を見つめた。澪は頷いてから続けた。
81: 2012/04/17(火) 00:30:38 ID:OM/0CNYA0
澪「設置した次の日、初めて検証した時には人影は映ってなかっただろ?」
唯「う、うん」
唯は考え込むように顎に手を当てて答えた。
澪「で、二回目は手紙が投函されていて、大体想像はついていたけど、あの人影が映っていた」
澪「三回目はまたも映っていなかった」
澪「四回目の昨日は映っていた!」
澪が話を進めて行くと、唯の心の靄が晴れていくようだった。唯は心のどこかでそれを感じていた。
澪「そして、五回目の今日は来ていない……」
唯はさらに目を丸くして、口元に手を近づけた。
唯「本当だ……! 一日置きに来てる……!」
澪「つまり、今夜に犯人は中野さんの家に行く可能性が高い!」
唯「じ、じゃあ、今すぐ行って知らせてあげなくちゃ……!」バッ
唯は慌ててソファーから立ち上がり、事務所の玄関へ駆け出した。澪はその後を追って唯を引き止めた。
唯「ど、どうしたの!? 行ってあげなくちゃ!!」
澪「まだ来るかわからない」
唯「で、でも!」
唯は駄々を捏ねる子どものように澪の手を振り払おうとした。それでも、澪は唯の腕を離さなかった。
唯「う、うん」
唯は考え込むように顎に手を当てて答えた。
澪「で、二回目は手紙が投函されていて、大体想像はついていたけど、あの人影が映っていた」
澪「三回目はまたも映っていなかった」
澪「四回目の昨日は映っていた!」
澪が話を進めて行くと、唯の心の靄が晴れていくようだった。唯は心のどこかでそれを感じていた。
澪「そして、五回目の今日は来ていない……」
唯はさらに目を丸くして、口元に手を近づけた。
唯「本当だ……! 一日置きに来てる……!」
澪「つまり、今夜に犯人は中野さんの家に行く可能性が高い!」
唯「じ、じゃあ、今すぐ行って知らせてあげなくちゃ……!」バッ
唯は慌ててソファーから立ち上がり、事務所の玄関へ駆け出した。澪はその後を追って唯を引き止めた。
唯「ど、どうしたの!? 行ってあげなくちゃ!!」
澪「まだ来るかわからない」
唯「で、でも!」
唯は駄々を捏ねる子どものように澪の手を振り払おうとした。それでも、澪は唯の腕を離さなかった。
82: 2012/04/17(火) 00:54:53 ID:OM/0CNYA0
澪「待ってくれ、唯! あと、一日なんだ……!」
澪「あと、一日だけ我慢してくれないか!?」
唯「っ…………!」
唯は反論を試みたが、澪の瞳を見ると動きを止めた。気迫の込もった真剣な目つきに唯は圧倒された。唯は腕を下ろして俯いた。
澪「今日、犯人が来れば仮説が確信に変わるんだ!」
唯「…………」
唯「わかった……」
そう言って、唯は苦笑いした。
唯「ごめんね、澪ちゃん」
唯「梓ちゃんの事が心配で何も考えもせずに動こうとしちゃった……」
困ったような笑みを浮かべる唯を見て澪は少し俯いた。
唯「澪ちゃんみたいに冷静に考えられなかったよ……」
澪「あと、一日だけ我慢してくれないか!?」
唯「っ…………!」
唯は反論を試みたが、澪の瞳を見ると動きを止めた。気迫の込もった真剣な目つきに唯は圧倒された。唯は腕を下ろして俯いた。
澪「今日、犯人が来れば仮説が確信に変わるんだ!」
唯「…………」
唯「わかった……」
そう言って、唯は苦笑いした。
唯「ごめんね、澪ちゃん」
唯「梓ちゃんの事が心配で何も考えもせずに動こうとしちゃった……」
困ったような笑みを浮かべる唯を見て澪は少し俯いた。
唯「澪ちゃんみたいに冷静に考えられなかったよ……」
83: 2012/04/17(火) 01:05:05 ID:OM/0CNYA0
唯「何もできないね……私……」
唯も視線を下ろした。少しして、澪はゆっくりと顔を上げた。
澪「……いや」
澪「私は唯に感謝してるよ」
唯「え……?」
唯は呆然と澪を見つめた。澪も強く見つめ返した。
澪「この前、純ちゃんの依頼を解決できたのは唯のおかげだ」
澪「実はあの時、私は消極的だったんだ。依頼もほとんど来ないし、仕事もどこか諦めかけていた……」
澪「犬の捜索なんてやった事無かったから断ろうと思ってた」
澪「けど、唯が依頼を引き止めてくれた……」
澪「あの時、私は初めて探偵としての自覚が持てたんだと思う」
澪「今も、探偵を続けているのは唯のおかげだよ」
澪は目を閉じて深呼吸してから言った。
澪「ありがとう」
澪は満面の笑みを唯に向けた。
しかし、唯は依然として呆然としている。澪は心配そうに両手を上下に動かした。
澪「ゆ、唯……?」
次の瞬間、唯の目から大粒の涙がボロボロと零れ落ちた。突然の事態に澪は大きく動揺した。
唯も視線を下ろした。少しして、澪はゆっくりと顔を上げた。
澪「……いや」
澪「私は唯に感謝してるよ」
唯「え……?」
唯は呆然と澪を見つめた。澪も強く見つめ返した。
澪「この前、純ちゃんの依頼を解決できたのは唯のおかげだ」
澪「実はあの時、私は消極的だったんだ。依頼もほとんど来ないし、仕事もどこか諦めかけていた……」
澪「犬の捜索なんてやった事無かったから断ろうと思ってた」
澪「けど、唯が依頼を引き止めてくれた……」
澪「あの時、私は初めて探偵としての自覚が持てたんだと思う」
澪「今も、探偵を続けているのは唯のおかげだよ」
澪は目を閉じて深呼吸してから言った。
澪「ありがとう」
澪は満面の笑みを唯に向けた。
しかし、唯は依然として呆然としている。澪は心配そうに両手を上下に動かした。
澪「ゆ、唯……?」
次の瞬間、唯の目から大粒の涙がボロボロと零れ落ちた。突然の事態に澪は大きく動揺した。
84: 2012/04/17(火) 01:07:49 ID:OM/0CNYA0
>>83 訂正
唯「何もできないね……私……」
唯も視線を下ろした。少しして、澪はゆっくりと顔を上げた。
澪「……いや」
澪「私は唯に感謝してるよ」
唯「え……?」
唯は呆然と澪を見つめた。澪も強く見つめ返した。
澪「この前、純ちゃんの依頼を解決できたのは唯のおかげだ」
澪「実はあの時、私は消極的だったんだ。依頼もほとんど来ないし、仕事もどこか諦めかけていた……」
澪「ネコの捜索なんてやった事無かったから断ろうと思ってた」
澪「けど、唯が依頼を引き止めてくれた……」
澪「あの時、私は初めて探偵としての自覚が持てたんだと思う」
澪「今も、探偵を続けているのは唯のおかげだよ」
澪は目を閉じて深呼吸してから言った。
澪「ありがとう」
澪は満面の笑みを唯に向けた。
しかし、唯は依然として呆然としている。澪は心配そうに両手を上下に動かした。
澪「ゆ、唯……?」
次の瞬間、唯の目から大粒の涙がボロボロと零れ落ちた。突然の事態に澪は大きく動揺した。
唯「何もできないね……私……」
唯も視線を下ろした。少しして、澪はゆっくりと顔を上げた。
澪「……いや」
澪「私は唯に感謝してるよ」
唯「え……?」
唯は呆然と澪を見つめた。澪も強く見つめ返した。
澪「この前、純ちゃんの依頼を解決できたのは唯のおかげだ」
澪「実はあの時、私は消極的だったんだ。依頼もほとんど来ないし、仕事もどこか諦めかけていた……」
澪「ネコの捜索なんてやった事無かったから断ろうと思ってた」
澪「けど、唯が依頼を引き止めてくれた……」
澪「あの時、私は初めて探偵としての自覚が持てたんだと思う」
澪「今も、探偵を続けているのは唯のおかげだよ」
澪は目を閉じて深呼吸してから言った。
澪「ありがとう」
澪は満面の笑みを唯に向けた。
しかし、唯は依然として呆然としている。澪は心配そうに両手を上下に動かした。
澪「ゆ、唯……?」
次の瞬間、唯の目から大粒の涙がボロボロと零れ落ちた。突然の事態に澪は大きく動揺した。
85: 2012/04/18(水) 00:12:45 ID:wfrEtrQ.0
澪「ど、どうしたんだ、唯!?」
唯「だっで澪ぢゃんが優しいから……グスッ……」
澪「…………」
澪は泣きじゃくる唯の顔を見てから、黙って唯の頭を撫でた。唯はきょとんとして澪の顔を見つめた。
唯「ごめんね、ちょっと不安になって……」
澪「心配しなくていいよ」
澪「唯といると頑張ろうって気持ちになれるからさ」
そう言って、照れ臭そうな表情を浮かべる澪を見ると、唯の不安は徐々に薄れていった。
唯「ありがとう……」
唯は涙を拭いてから、にっこりと笑った。その笑顔を見て澪も笑った。
澪「これからも一緒に頑張って行こう!」
唯「うん!」
唯「だっで澪ぢゃんが優しいから……グスッ……」
澪「…………」
澪は泣きじゃくる唯の顔を見てから、黙って唯の頭を撫でた。唯はきょとんとして澪の顔を見つめた。
唯「ごめんね、ちょっと不安になって……」
澪「心配しなくていいよ」
澪「唯といると頑張ろうって気持ちになれるからさ」
そう言って、照れ臭そうな表情を浮かべる澪を見ると、唯の不安は徐々に薄れていった。
唯「ありがとう……」
唯は涙を拭いてから、にっこりと笑った。その笑顔を見て澪も笑った。
澪「これからも一緒に頑張って行こう!」
唯「うん!」
86: 2012/04/18(水) 00:54:49 ID:wfrEtrQ.0
翌日 中野家
澪「今日で撮影は終わります」
梓「そうですか……」
やはり、梓はどこか元気がなかった。それを見た澪はある決意を固めた。
澪「昨日の検証である仮説が可能性が出てきました」
梓「ある可能性……?」
澪「はい、実は撮影期間の間に人影が現れるのは一日置きだったんです」
梓「一日置き……」
梓はこれまでの事を順を追って思い出してみた。すると、確かに姿を現すのは一日置きだった。
梓「あっ! 本当だ……!」
澪「昨日の検証では映っていませんでした」
澪「つまり、今日は映っている可能性が高いです」
梓「っ……」
梓は恐々とビデオカメラのある方向を見つめた。
澪「そして、その次に来るのが恐らく二日後……」
澪「その時に、犯人と直接会ってみようと思います」
梓が緊張の面持ちで澪を見つめていた。その瞳にはほんの僅かではあるが、光が差し込んでいるように見えた。
澪「今日で撮影は終わります」
梓「そうですか……」
やはり、梓はどこか元気がなかった。それを見た澪はある決意を固めた。
澪「昨日の検証である仮説が可能性が出てきました」
梓「ある可能性……?」
澪「はい、実は撮影期間の間に人影が現れるのは一日置きだったんです」
梓「一日置き……」
梓はこれまでの事を順を追って思い出してみた。すると、確かに姿を現すのは一日置きだった。
梓「あっ! 本当だ……!」
澪「昨日の検証では映っていませんでした」
澪「つまり、今日は映っている可能性が高いです」
梓「っ……」
梓は恐々とビデオカメラのある方向を見つめた。
澪「そして、その次に来るのが恐らく二日後……」
澪「その時に、犯人と直接会ってみようと思います」
梓が緊張の面持ちで澪を見つめていた。その瞳にはほんの僅かではあるが、光が差し込んでいるように見えた。
87: 2012/04/18(水) 00:57:06 ID:wfrEtrQ.0
梓「直接会って大丈夫なんですか……?」
梓は二人の身を案じていた。他の誰かに危険が及ぶのはなんとしても避けたかった。
澪「それは対策を立てておきます」
梓「そうですか……」
澪「もし、今日の検証で映っていたら、明日もお邪魔してお話しさせてもらっても構わないですか?」
梓「多分、大丈夫だと思います」
澪「ありがとうございます」
唯「ビデオカメラ全部回収したよ~」
鞄を下げた唯が二人の元へと歩いてきた。澪は唯の横に立ち並んだ。
澪「最後に郵便受けを見ます」
澪は堂々とした動きと態度で勢いよく蓋を開けた。すると、新聞の下に小さな便箋が入っていた。澪はそれを開封して中身を見た。
梓は二人の身を案じていた。他の誰かに危険が及ぶのはなんとしても避けたかった。
澪「それは対策を立てておきます」
梓「そうですか……」
澪「もし、今日の検証で映っていたら、明日もお邪魔してお話しさせてもらっても構わないですか?」
梓「多分、大丈夫だと思います」
澪「ありがとうございます」
唯「ビデオカメラ全部回収したよ~」
鞄を下げた唯が二人の元へと歩いてきた。澪は唯の横に立ち並んだ。
澪「最後に郵便受けを見ます」
澪は堂々とした動きと態度で勢いよく蓋を開けた。すると、新聞の下に小さな便箋が入っていた。澪はそれを開封して中身を見た。
88: 2012/04/18(水) 01:02:11 ID:wfrEtrQ.0
“梓さん……ドウシテぼくノ側にイテくれなイノ?”
“ぼくハイツモアナタを見ツメテイル”
澪は手紙を読むと、腕を頭の近くまで上げて、勢いよく紙を丸め込んだ。
梓「えっ!」
唯「澪ちゃん!?」
澪は全力で紙を握り潰した。澪はマグマのような怒りを指の一つ一つに込めた。唯と梓は呆気にとられて、ただその様子を見ているだけだった。
澪は手を解いて、クシャクシャになった紙屑を見つめた。
澪「もう、こんな事はさせません!」
澪は紙屑を握り締めた方の拳を梓に向けた。唯も梓の方へ向き直った。
唯「あと、少しだから待っててね!」
梓「……はいっ!」
梓は大きな声で返事をした。それを見た澪は大きく頷いた。
“ぼくハイツモアナタを見ツメテイル”
澪は手紙を読むと、腕を頭の近くまで上げて、勢いよく紙を丸め込んだ。
梓「えっ!」
唯「澪ちゃん!?」
澪は全力で紙を握り潰した。澪はマグマのような怒りを指の一つ一つに込めた。唯と梓は呆気にとられて、ただその様子を見ているだけだった。
澪は手を解いて、クシャクシャになった紙屑を見つめた。
澪「もう、こんな事はさせません!」
澪は紙屑を握り締めた方の拳を梓に向けた。唯も梓の方へ向き直った。
唯「あと、少しだから待っててね!」
梓「……はいっ!」
梓は大きな声で返事をした。それを見た澪は大きく頷いた。
90: 2012/04/18(水) 23:37:58 ID:wfrEtrQ.0
秋山探偵事務所
澪「今日で最後だな……」
唯「そうだね……」
澪は手の平にある三枚のメモリーカードに目を落とした。この小さなカードが全てを映し出す。澪はメモリーカードをパソコンに差し込んだ。タイミングよく、唯が紅茶を運んで来た。
澪「始めるぞ」
唯「うん」
カチカチッ
澪が軽快にして、最後の検証が始まった。
日が出ている時間帯はまったく姿を現さない。そんなことは、これまでの検証を通しても自明の理だ。
二人は夜の世界へと神経を集中させていた。
やがて、ディスプレーの中の世界は真夜中になった。
澪は無意識の内に姿勢が前のめりになっている事に気づいて座り直した。唯は紅茶を一口した後に息を吐いた。映像の中の時刻は午前二時過ぎを指していた。
唯「きたっ!」
澪「…………」
二人はパソコンを手前に引き寄せて、顔を引っ付けてディスプレーを覗き込んだ。
黒い人影が深夜の住宅街を徘徊している。そして、中野家の前で立ち止まった。
澪「今日で最後だな……」
唯「そうだね……」
澪は手の平にある三枚のメモリーカードに目を落とした。この小さなカードが全てを映し出す。澪はメモリーカードをパソコンに差し込んだ。タイミングよく、唯が紅茶を運んで来た。
澪「始めるぞ」
唯「うん」
カチカチッ
澪が軽快にして、最後の検証が始まった。
日が出ている時間帯はまったく姿を現さない。そんなことは、これまでの検証を通しても自明の理だ。
二人は夜の世界へと神経を集中させていた。
やがて、ディスプレーの中の世界は真夜中になった。
澪は無意識の内に姿勢が前のめりになっている事に気づいて座り直した。唯は紅茶を一口した後に息を吐いた。映像の中の時刻は午前二時過ぎを指していた。
唯「きたっ!」
澪「…………」
二人はパソコンを手前に引き寄せて、顔を引っ付けてディスプレーを覗き込んだ。
黒い人影が深夜の住宅街を徘徊している。そして、中野家の前で立ち止まった。
91: 2012/04/18(水) 23:42:05 ID:wfrEtrQ.0
澪「あとは手紙か……」
澪がそう呟いた直後に、ストーカーはポケットから手紙を取り出して投函した。その後も、中野家を眺めた後にその場を後にした。
そして、例の如くその後は姿を現さなかった。
澪「やっぱり一日置きか……」
唯「ってことは……」
唯「今夜は来ないから……明日の夜?」
澪「多分そういうことになるな」
唯「うーん……何とかしないとね……」
澪「それは明日、中野さんと一緒に話し合おう」
唯「そうだね」
澪「じゃあ、最後に編集して、今までの映像と合わせようか」
唯「わかった、頑張ろう」
澪「あぁ」
~~~~~
澪「ふぅー何とか完成した……」
澪は大きな伸びをした。唯はソファーであくびをしていた。
唯「澪ちゃん、今日はこれで終わり?」
澪「いつもならそうなんだけど、今日は頼みたい事があるんだ……」
唯「何でも言ってよ!」
唯は拳を握り締めて意気込みをアピールした。澪は組んでいた手を解いてから言った。
澪「一緒に買い物に来てくれないか?」
唯「え?」
澪が真剣な表情なのに対し、唯の目は丸くなった。
澪がそう呟いた直後に、ストーカーはポケットから手紙を取り出して投函した。その後も、中野家を眺めた後にその場を後にした。
そして、例の如くその後は姿を現さなかった。
澪「やっぱり一日置きか……」
唯「ってことは……」
唯「今夜は来ないから……明日の夜?」
澪「多分そういうことになるな」
唯「うーん……何とかしないとね……」
澪「それは明日、中野さんと一緒に話し合おう」
唯「そうだね」
澪「じゃあ、最後に編集して、今までの映像と合わせようか」
唯「わかった、頑張ろう」
澪「あぁ」
~~~~~
澪「ふぅー何とか完成した……」
澪は大きな伸びをした。唯はソファーであくびをしていた。
唯「澪ちゃん、今日はこれで終わり?」
澪「いつもならそうなんだけど、今日は頼みたい事があるんだ……」
唯「何でも言ってよ!」
唯は拳を握り締めて意気込みをアピールした。澪は組んでいた手を解いてから言った。
澪「一緒に買い物に来てくれないか?」
唯「え?」
澪が真剣な表情なのに対し、唯の目は丸くなった。
92: 2012/04/19(木) 00:13:38 ID:q4wV0Xpo0
翌日 中野家
ピンポーン
梓『はい』
澪「探偵事務所の秋山です」
梓『いま行きますね』
通話が切れ、梓が出て来るまでの間に澪は服装を正した。そして、玄関のドアが開き、姿を現したのは鈴木純だった。
唯「あ! 純ちゃん!」
澪「え?」
純「こんにちは! 澪さん、唯さん!」
澪「どうして今日は……」
純「ストーカーが今夜来るかもしれないんですよね?」
純「梓の親友として、私も黙っていられないですよ!」
純は当たり前のように言い切って腕を組んだ。
純「まぁ、中に入ってください」
澪「お、お邪魔しまーす……」
唯「お邪魔します」
澪は純の勢いに少し圧倒されながら、後に続いて家に入った。
ピンポーン
梓『はい』
澪「探偵事務所の秋山です」
梓『いま行きますね』
通話が切れ、梓が出て来るまでの間に澪は服装を正した。そして、玄関のドアが開き、姿を現したのは鈴木純だった。
唯「あ! 純ちゃん!」
澪「え?」
純「こんにちは! 澪さん、唯さん!」
澪「どうして今日は……」
純「ストーカーが今夜来るかもしれないんですよね?」
純「梓の親友として、私も黙っていられないですよ!」
純は当たり前のように言い切って腕を組んだ。
純「まぁ、中に入ってください」
澪「お、お邪魔しまーす……」
唯「お邪魔します」
澪は純の勢いに少し圧倒されながら、後に続いて家に入った。
93: 2012/04/19(木) 00:21:41 ID:q4wV0Xpo0
梓「あ、こんにちは」
梓はリビングで紅茶を注いでいた。やはり、壁を覆うレコードの数には圧倒された。
そして、四人はソファーに座って向かい合った。
澪「検証映像にやはりストーカーは映っていました。きっかり、一日置きです!」
梓「…………」
澪「だから、一日空けた今日の深夜……恐らく午前二時頃に来る可能性があります」
澪「今回はその場でストーカーと直接対決しようと思います!」
純「対決って……」
純「直接会って大丈夫なんですか?」
澪は純の質問が昨日の梓の物とまったく同じ事に気づいた。
梓「対策しておくって言ってましたけど……」
澪「はい、準備してきました」
澪は鞄をテーブルの上に置いて、ファスナーを開いた。そして、中にある荷物を取り出してテーブルに並べた。
梓「これは……」
唯「防犯グッズだよ!」
澪「話し合いに持ち込むつもりですが、もしもの時のために揃えてきました」
純は大量の防犯グッズを前に目を丸くした。その中でも一際目を引いたのが細長い黒い筒だった。純はそれを手に取って澪に尋ねた。
純「これって何ですか?」
澪「あぁ、それは引き金を引くと、中から網が飛び出て対象の動きを止めるんだ」
純「へぇー……」
純は筒を元の位置に戻した。
梓はリビングで紅茶を注いでいた。やはり、壁を覆うレコードの数には圧倒された。
そして、四人はソファーに座って向かい合った。
澪「検証映像にやはりストーカーは映っていました。きっかり、一日置きです!」
梓「…………」
澪「だから、一日空けた今日の深夜……恐らく午前二時頃に来る可能性があります」
澪「今回はその場でストーカーと直接対決しようと思います!」
純「対決って……」
純「直接会って大丈夫なんですか?」
澪は純の質問が昨日の梓の物とまったく同じ事に気づいた。
梓「対策しておくって言ってましたけど……」
澪「はい、準備してきました」
澪は鞄をテーブルの上に置いて、ファスナーを開いた。そして、中にある荷物を取り出してテーブルに並べた。
梓「これは……」
唯「防犯グッズだよ!」
澪「話し合いに持ち込むつもりですが、もしもの時のために揃えてきました」
純は大量の防犯グッズを前に目を丸くした。その中でも一際目を引いたのが細長い黒い筒だった。純はそれを手に取って澪に尋ねた。
純「これって何ですか?」
澪「あぁ、それは引き金を引くと、中から網が飛び出て対象の動きを止めるんだ」
純「へぇー……」
純は筒を元の位置に戻した。
96: 2012/04/19(木) 23:47:22 ID:q4wV0Xpo0
澪「これらを持って待ち伏せをします」
澪「そして、それぞれの配置場所なんですが……」
澪はスリープさせていたノートパソコンを起動させた。画面には中野家を眺めているストーカーの画像が映し出されていた。
澪「犯人は家の正面に立ちます」
澪「そこで、犯人の近くに一人配置します。いざという時の援護もすぐに可能です」
澪「唯は郵便受けの裏手に回ってくれないか」
唯「わかったー」
澪「私は近くの角からストーカーが来るまで待ちます」
澪「そして、ストーカーが立ち止まって、しばらくしたら、近づいて声をかけようと思います」
梓「なるほど……」
梓は澪の説明に頷いた。純はパソコンと澪を交互に見た。
純「で、私はどうすればいいんですか?」
澪「危ないから来ない方が……」
純「お願いです! 私にも手伝わせてくださいっ!」
澪は困ったように梓の方を見た。梓も困った表情で肩をすくめた。
澪「……わかりました」
純「やった!」
澪「けど、無茶はしないこと!」
澪「わかった?」
純「わかってますって!」
純は許可されたことが嬉しいのか、満面の笑みを浮かべていた。純の自信がどこからの物なのかはわからなかった。しかし、あまり表立って出すことは少ないが、親友をここまで心配している純を見て悪い気はしなかった。
澪「そして、それぞれの配置場所なんですが……」
澪はスリープさせていたノートパソコンを起動させた。画面には中野家を眺めているストーカーの画像が映し出されていた。
澪「犯人は家の正面に立ちます」
澪「そこで、犯人の近くに一人配置します。いざという時の援護もすぐに可能です」
澪「唯は郵便受けの裏手に回ってくれないか」
唯「わかったー」
澪「私は近くの角からストーカーが来るまで待ちます」
澪「そして、ストーカーが立ち止まって、しばらくしたら、近づいて声をかけようと思います」
梓「なるほど……」
梓は澪の説明に頷いた。純はパソコンと澪を交互に見た。
純「で、私はどうすればいいんですか?」
澪「危ないから来ない方が……」
純「お願いです! 私にも手伝わせてくださいっ!」
澪は困ったように梓の方を見た。梓も困った表情で肩をすくめた。
澪「……わかりました」
純「やった!」
澪「けど、無茶はしないこと!」
澪「わかった?」
純「わかってますって!」
純は許可されたことが嬉しいのか、満面の笑みを浮かべていた。純の自信がどこからの物なのかはわからなかった。しかし、あまり表立って出すことは少ないが、親友をここまで心配している純を見て悪い気はしなかった。
97: 2012/04/19(木) 23:51:01 ID:q4wV0Xpo0
その後、梓の両親が帰ってきて、澪と唯と純は中野家と一緒に夕飯を共にした。梓の両親は何度も頭を下げて礼の言葉を述べた。
そして、いよいよ深夜になった。心配する梓の両親を普段通り寝室に向かわせ、中野家の照明を全て消した。梓は電気の無いリビングで待機することになった。
澪「それじゃあ、各場所に移動しよう」
唯「オッケー」
一同は待機場所に着くために玄関へ向かった。梓は心配そうに三人を見つめていた。
梓「本当に気をつけてくださいねっ!」
唯「わかってるよ」
梓「純も無茶しないでね!」
純「はいはい、わかってますよ」
純は素っ気ない返事をして先に玄関を後にした。澪と唯は梓へ向き直った。
澪「それじゃあ、行ってきます」
外に出ると、夏の生ぬるい風が吹いていた。すぐそこに唯の待機場所がある。
澪「じゃあ、唯はそこに」
唯「しゃがんどけばいいの?」
澪「うん。音を立てないように気をつけて」
澪は唯に警棒を手渡した。
そして、いよいよ深夜になった。心配する梓の両親を普段通り寝室に向かわせ、中野家の照明を全て消した。梓は電気の無いリビングで待機することになった。
澪「それじゃあ、各場所に移動しよう」
唯「オッケー」
一同は待機場所に着くために玄関へ向かった。梓は心配そうに三人を見つめていた。
梓「本当に気をつけてくださいねっ!」
唯「わかってるよ」
梓「純も無茶しないでね!」
純「はいはい、わかってますよ」
純は素っ気ない返事をして先に玄関を後にした。澪と唯は梓へ向き直った。
澪「それじゃあ、行ってきます」
外に出ると、夏の生ぬるい風が吹いていた。すぐそこに唯の待機場所がある。
澪「じゃあ、唯はそこに」
唯「しゃがんどけばいいの?」
澪「うん。音を立てないように気をつけて」
澪は唯に警棒を手渡した。
106: 2012/04/20(金) 23:41:50 ID:SJy2oEmA0
唯「わかった、気をつけるね」
唯は小声で返事をして、澪と純を見送った。
澪「さてと……」
純「私は澪さんと同じ場所ですよね!」
澪「うん……」
結局、純は澪と同じ場所に待機することになった。澪がストーカーに接近し、ストーカーが逆上すれば唯と二人で駆けつける、という計画だった。
澪は例の黒い筒とスタンガンを純に手渡した。
純「これで大丈夫ですね」
澪「あとはいつ来るのか……」
時計を見ると、時刻は十二時半を指していた。澪は息を吐いて、その時を待った。
純「なんだか探偵みたいですね」
澪「私は探偵だけど……」
純「澪さんは怖くないんですか?」
澪「…………」
怖くない、と言えば嘘になる。確かに澪は怖がっていた。少し足が震えている気がする。早くこんな薄暗い深夜の住宅街から抜け出して、家に帰りたい。
しかし、それ以上の気持ちがあった。
99: 2012/04/20(金) 00:06:42 ID:SJy2oEmA0
澪「怖い……けど……」
澪「やっぱり、困っている中野さんを放っておけない……」
純「…………」
澪「困っている人を見て見ぬ振りをする世の中になる方がよっぽど怖いと思う……」
純は俯きながら話す澪の横顔を見て、少し微笑んだ。
純「これからもずっと、そのままでいてください」
澪「え?」
澪は考え込んでいたため、よく聞こえなかった。しかし、純はそれ以上何も話さなかった。
時間が経過し、午前二時に突入した。二人の位置から唯の姿は見えなかった。澪は唯が現在時刻を確認できているかどうかハラハラしていた。
純「緊張しますね……」
澪「…………」
澪はストーカーが現れる場所に全神経を集中させていた。純の声も緊張の色を帯びていた。
澪はポケットに入れた警棒を強く握り締めた。
純「!!」
純が声を押し頃して澪に呼びかけた。澪が顔を上げると、パソコンで何度も見た姿があった。黒い上着を着て、顔をフードで隠している。紛れもなくストーカーだった。
澪「やっぱり、困っている中野さんを放っておけない……」
純「…………」
澪「困っている人を見て見ぬ振りをする世の中になる方がよっぽど怖いと思う……」
純は俯きながら話す澪の横顔を見て、少し微笑んだ。
純「これからもずっと、そのままでいてください」
澪「え?」
澪は考え込んでいたため、よく聞こえなかった。しかし、純はそれ以上何も話さなかった。
時間が経過し、午前二時に突入した。二人の位置から唯の姿は見えなかった。澪は唯が現在時刻を確認できているかどうかハラハラしていた。
純「緊張しますね……」
澪「…………」
澪はストーカーが現れる場所に全神経を集中させていた。純の声も緊張の色を帯びていた。
澪はポケットに入れた警棒を強く握り締めた。
純「!!」
純が声を押し頃して澪に呼びかけた。澪が顔を上げると、パソコンで何度も見た姿があった。黒い上着を着て、顔をフードで隠している。紛れもなくストーカーだった。
100: 2012/04/20(金) 00:25:15 ID:SJy2oEmA0
澪の動悸が一段と速くなる。まるで、体が石像になったかのように動かない。
ストーカーは中野家の前で立ち止まった。
澪「っ……」
純「……!」
澪はどのタイミングでストーカーに話しかけようか考えていた。純はそんな澪の背中を見つめることしかできなかった。
澪「(何か……何か動きを見せた時にしよう……!)」
ストーカーは家を眺め続けている。澪と純はその様子を眺めている。
澪「!!」
ストーカーがポケットに手を突っ込んだ。そして、その手が次に現れた時には白い便箋を手にしていた。
澪「(手紙を投函したら近づこう……!)」
ストーカーは腕を伸ばして手紙を投函した。一瞬遅れて、澪が一歩足を前に踏みだした。
澪「(今だっ……!)」
澪が角から姿を現したその時
唯「待ちなさいっ!!!」
唯の大声が深夜の住宅街に響き渡った。その声は怒りが込められていた。
ストーカーは中野家の前で立ち止まった。
澪「っ……」
純「……!」
澪はどのタイミングでストーカーに話しかけようか考えていた。純はそんな澪の背中を見つめることしかできなかった。
澪「(何か……何か動きを見せた時にしよう……!)」
ストーカーは家を眺め続けている。澪と純はその様子を眺めている。
澪「!!」
ストーカーがポケットに手を突っ込んだ。そして、その手が次に現れた時には白い便箋を手にしていた。
澪「(手紙を投函したら近づこう……!)」
ストーカーは腕を伸ばして手紙を投函した。一瞬遅れて、澪が一歩足を前に踏みだした。
澪「(今だっ……!)」
澪が角から姿を現したその時
唯「待ちなさいっ!!!」
唯の大声が深夜の住宅街に響き渡った。その声は怒りが込められていた。
103: 2012/04/20(金) 23:14:14 ID:SJy2oEmA0
ス「!!!」
ストーカーは驚きのあまり、その場で小さく飛び跳ねた。澪もあまりの予想外の出来事に、その場に釘付けになった。
澪「なっ……!」
唯「どうして梓ちゃんをストーカーするんですかっ!」
ス「っ……」スッ
ス「……!」
ストーカーは素早く唯に背中を見せて、駆け出そうとした。そこで初めて澪の存在に気づいた。澪は道路の中央に立って、ストーカーを挟み撃ちにした。
ス「な、何なんだ! お前たちは!」
澪「私たちは中野さんから依頼があって、あなたに会いに来ました!」
唯「どうして梓ちゃんを苦しめるんですか!?」
ス「そっ、そんなやつ知るかっ! 僕は偶然ここを通っただけだ!」
ス「そこを退けっ!」
澪「退きません!」
澪の大声にストーカーはたじろいだ。そして、ポケットから警棒を取り出した。それを見た澪は少し後ずさりした。
ストーカーは驚きのあまり、その場で小さく飛び跳ねた。澪もあまりの予想外の出来事に、その場に釘付けになった。
澪「なっ……!」
唯「どうして梓ちゃんをストーカーするんですかっ!」
ス「っ……」スッ
ス「……!」
ストーカーは素早く唯に背中を見せて、駆け出そうとした。そこで初めて澪の存在に気づいた。澪は道路の中央に立って、ストーカーを挟み撃ちにした。
ス「な、何なんだ! お前たちは!」
澪「私たちは中野さんから依頼があって、あなたに会いに来ました!」
唯「どうして梓ちゃんを苦しめるんですか!?」
ス「そっ、そんなやつ知るかっ! 僕は偶然ここを通っただけだ!」
ス「そこを退けっ!」
澪「退きません!」
澪の大声にストーカーはたじろいだ。そして、ポケットから警棒を取り出した。それを見た澪は少し後ずさりした。
104: 2012/04/20(金) 23:26:47 ID:SJy2oEmA0
ス「早くしろっ!」
犯人は澪と唯を交互に見て焦燥感を露わにした。
澪「絶対に退きませんっ!」
ス「そこを退けえええぇぇぇぇっ!!!」
ストーカーが澪目掛けて駆け出した。
純「澪さん!」
突如、横から純が飛び出して、犯人の腕を掴んだ。
ス「なっ……!」
澪「純ちゃん!」
ス「離せっ……この……!」 スッ
ストーカーは強引に純を振り払い、純に向けて警棒を振り上げた。純は顔が強張り、頭上の警棒を見つめた。
澪「危ないっ!」
澪は純に覆い被さるように飛びついた。直後、澪の頭に鈍い衝撃が走った。
ガッ ドサッ
純「いてて……」
純は尻餅をついて、痛みに顔を歪めた。気がつくと澪が自身に寄り添っていた。みるみる純の血の気が引いていった。
犯人は澪と唯を交互に見て焦燥感を露わにした。
澪「絶対に退きませんっ!」
ス「そこを退けえええぇぇぇぇっ!!!」
ストーカーが澪目掛けて駆け出した。
純「澪さん!」
突如、横から純が飛び出して、犯人の腕を掴んだ。
ス「なっ……!」
澪「純ちゃん!」
ス「離せっ……この……!」 スッ
ストーカーは強引に純を振り払い、純に向けて警棒を振り上げた。純は顔が強張り、頭上の警棒を見つめた。
澪「危ないっ!」
澪は純に覆い被さるように飛びついた。直後、澪の頭に鈍い衝撃が走った。
ガッ ドサッ
純「いてて……」
純は尻餅をついて、痛みに顔を歪めた。気がつくと澪が自身に寄り添っていた。みるみる純の血の気が引いていった。
105: 2012/04/20(金) 23:40:32 ID:SJy2oEmA0
唯「澪ちゃん!」
純「み、澪さんっ!」
唯が顔を真っ青にして駆けつけた。
ス「あ……」
純が体を揺すっても澪は何の反応も示さなかった。ストーカーは口を開けて呆然と倒れている澪の背中を見つめていた。
ス「う、うああああああぁぁっ!!!」
ストーカーは事の重大さに気づいて、がむしゃらに駆け出した。
純「っ!」スッ
純が黒い筒を構え、照準を定めた。
パーン
煙と共に網が飛び出した。網はストーカーに絡み付き、動きを止めた。ストーカーはその場で転び、網の中でジタバタともがいた。
唯「澪ちゃん! 澪ちゃん!」
純「澪さんっ!」
澪「う……」
澪は唯と純が抱きかかえてくれているのに気づいた。頭が熱かった。二人の声が頭に中で反響する。遠くからサイレンが聞こえる気がした。足音も聞こえてきた。澪は力を振り絞って横を見ると、梓がこちらに向かって走っているのが見えた。
澪の意識はそこで途切れた。
純「み、澪さんっ!」
唯が顔を真っ青にして駆けつけた。
ス「あ……」
純が体を揺すっても澪は何の反応も示さなかった。ストーカーは口を開けて呆然と倒れている澪の背中を見つめていた。
ス「う、うああああああぁぁっ!!!」
ストーカーは事の重大さに気づいて、がむしゃらに駆け出した。
純「っ!」スッ
純が黒い筒を構え、照準を定めた。
パーン
煙と共に網が飛び出した。網はストーカーに絡み付き、動きを止めた。ストーカーはその場で転び、網の中でジタバタともがいた。
唯「澪ちゃん! 澪ちゃん!」
純「澪さんっ!」
澪「う……」
澪は唯と純が抱きかかえてくれているのに気づいた。頭が熱かった。二人の声が頭に中で反響する。遠くからサイレンが聞こえる気がした。足音も聞こえてきた。澪は力を振り絞って横を見ると、梓がこちらに向かって走っているのが見えた。
澪の意識はそこで途切れた。
107: 2012/04/21(土) 01:32:16 ID:uMpjJKrk0
病院
澪「ん…………」
澪は眠りから覚めた。辺りを見るとそこが病院だということがすぐにわかった。白いカーテンの隙間から、日光が差し込んでいて、室内は明るかった。すると、扉が開く音がした。
唯「澪ちゃん!」
澪「唯!」
唯は澪の顔を見るなり、持っていたペットボトルを落として、急いで駆けつけた。
唯「大丈夫!? 澪ちゃん!?」
澪「あぁ、何とか」
唯「はぁー……よかったぁー……」
唯は大きなため息をついて椅子にストンと座った。
唯「あっ、そうだ。みんなにも連絡しなくちゃ」
澪「え?」
唯「梓ちゃんと純ちゃんが澪ちゃんが目を覚ましたら連絡が欲しいって言ってたから」
澪「そっか、何か迷惑かけちゃうな……」
唯「ちょっと待っててね」
そう言って、唯は部屋から出て行った。一人になった澪は外の景色を眺めた。雲一つ無い良い天気だった。
澪「ん…………」
澪は眠りから覚めた。辺りを見るとそこが病院だということがすぐにわかった。白いカーテンの隙間から、日光が差し込んでいて、室内は明るかった。すると、扉が開く音がした。
唯「澪ちゃん!」
澪「唯!」
唯は澪の顔を見るなり、持っていたペットボトルを落として、急いで駆けつけた。
唯「大丈夫!? 澪ちゃん!?」
澪「あぁ、何とか」
唯「はぁー……よかったぁー……」
唯は大きなため息をついて椅子にストンと座った。
唯「あっ、そうだ。みんなにも連絡しなくちゃ」
澪「え?」
唯「梓ちゃんと純ちゃんが澪ちゃんが目を覚ましたら連絡が欲しいって言ってたから」
澪「そっか、何か迷惑かけちゃうな……」
唯「ちょっと待っててね」
そう言って、唯は部屋から出て行った。一人になった澪は外の景色を眺めた。雲一つ無い良い天気だった。
108: 2012/04/21(土) 01:35:56 ID:uMpjJKrk0
その後、三十分ほどして、梓とその両親と純の四人がやって来た。
梓「澪さん! 大丈夫なんですか!?」
澪「はい、大丈夫です」
唯「もう一度検査して、何も無ければすぐに退院だって」
純「よかったー……」
梓父「怪我の状態はどうですか?」
澪「はい、痛みも特に無いので大丈夫です」
梓母「梓がご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした……」
澪「いえいえ! 気になさらないでください!」
澪は上体を起こして両手を振った。
澪「ところで、ストーカーはどうなったんですか?」
梓「あの後、近所の人が通報していたみたいで、警察が来て連れていかれました」
純「本当によかったね」
澪「そっか……」
澪「でも、純ちゃんがいてくれたおかげだよ」
澪「純ちゃんがいなかったら、ストーカーにはあのまま逃げられてたかもしれない……」
澪「ありがとう」
澪は笑みを浮かべながら、純に感謝した。
純「いえいえ」
純は頬を少し赤らめて、照れ隠しに両手と顔を振った。
梓「澪さん! 大丈夫なんですか!?」
澪「はい、大丈夫です」
唯「もう一度検査して、何も無ければすぐに退院だって」
純「よかったー……」
梓父「怪我の状態はどうですか?」
澪「はい、痛みも特に無いので大丈夫です」
梓母「梓がご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした……」
澪「いえいえ! 気になさらないでください!」
澪は上体を起こして両手を振った。
澪「ところで、ストーカーはどうなったんですか?」
梓「あの後、近所の人が通報していたみたいで、警察が来て連れていかれました」
純「本当によかったね」
澪「そっか……」
澪「でも、純ちゃんがいてくれたおかげだよ」
澪「純ちゃんがいなかったら、ストーカーにはあのまま逃げられてたかもしれない……」
澪「ありがとう」
澪は笑みを浮かべながら、純に感謝した。
純「いえいえ」
純は頬を少し赤らめて、照れ隠しに両手と顔を振った。
109: 2012/04/21(土) 01:39:45 ID:uMpjJKrk0
澪は安心して一息ついた。ふと、横を見ると唯が腕を組んで、ベッドに顔を預けて眠っていた。
澪「寝てる……」
梓「昨日の夜からずっと起きてたみたいですよ」
純「よっぽど心配だったんですね」
澪「そうなんだ……」
澪「…………」
澪は眠っている唯の頭を優しく撫でた。それは温かくて、どこか優しい気持ちにさせてくれた。
澪「ありがとう……唯……」
澪「寝てる……」
梓「昨日の夜からずっと起きてたみたいですよ」
純「よっぽど心配だったんですね」
澪「そうなんだ……」
澪「…………」
澪は眠っている唯の頭を優しく撫でた。それは温かくて、どこか優しい気持ちにさせてくれた。
澪「ありがとう……唯……」
110: 2012/04/21(土) 02:08:47 ID:uMpjJKrk0
数日後 秋山探偵事務所
梓「結局、ストーカーは罪を認めたみたいです」
澪「そうですか……よかったです!」
澪がそう言うと、梓もにっこりと微笑んだ。よく見ると、目の下の隈が消えていた。
唯「それじゃあ、一件落着だね!」
澪「そう……なるかな」
梓「はい!」
唯「やったー!」
唯「やったね、澪ちゃん!」
唯は例の如く、あちこちで飛び回って喜びを表した。
澪「うん」
梓「(純が言ってたのはこういう事だったんだ……)」
唯は子どものように喜び、澪も唯ほどではないが、満足げな表情だった。そんな二人を見ていると、不思議と満ち足りた気分になった。
梓「結局、ストーカーは罪を認めたみたいです」
澪「そうですか……よかったです!」
澪がそう言うと、梓もにっこりと微笑んだ。よく見ると、目の下の隈が消えていた。
唯「それじゃあ、一件落着だね!」
澪「そう……なるかな」
梓「はい!」
唯「やったー!」
唯「やったね、澪ちゃん!」
唯は例の如く、あちこちで飛び回って喜びを表した。
澪「うん」
梓「(純が言ってたのはこういう事だったんだ……)」
唯は子どものように喜び、澪も唯ほどではないが、満足げな表情だった。そんな二人を見ていると、不思議と満ち足りた気分になった。
111: 2012/04/21(土) 02:13:24 ID:uMpjJKrk0
梓は荷物を持って立ち上がった。
梓「それでは、本当にありがとうございました」
澪唯「はい!」
梓「あ、そうだ。最後にもう一つ言いたい事があります」
澪「何ですか?」
梓は少し照れ臭そうにしてから言った。
梓「私もお二人の事を名前で呼んでも構いませんか?」
梓「私の事はもう呼び捨てで構いません」
澪「え? で、でも……」
唯「仕事は終わってるんだよ? ここは、個人の意志を尊重しないと!」
唯はにこにこしながら、澪の肩に手を乗せた。
澪「え?」
澪「えーっと……」
澪は戸惑いながら俯いた。そして、顔を上げて梓の顔を見た。
澪「あ、梓ちゃん……」
梓「はいっ!」
梓は最高の笑みを浮かべて、返事をした。梓の元気な声が事務所によく響いた。
梓「それでは、本当にありがとうございました」
澪唯「はい!」
梓「あ、そうだ。最後にもう一つ言いたい事があります」
澪「何ですか?」
梓は少し照れ臭そうにしてから言った。
梓「私もお二人の事を名前で呼んでも構いませんか?」
梓「私の事はもう呼び捨てで構いません」
澪「え? で、でも……」
唯「仕事は終わってるんだよ? ここは、個人の意志を尊重しないと!」
唯はにこにこしながら、澪の肩に手を乗せた。
澪「え?」
澪「えーっと……」
澪は戸惑いながら俯いた。そして、顔を上げて梓の顔を見た。
澪「あ、梓ちゃん……」
梓「はいっ!」
梓は最高の笑みを浮かべて、返事をした。梓の元気な声が事務所によく響いた。
112: 2012/04/21(土) 02:14:44 ID:uMpjJKrk0
梓編終了
頑張ります
頑張ります
113: 2012/04/21(土) 06:42:14 ID:97yOS0v20
乙
他のキャラもはよ見たいな
他のキャラもはよ見たいな
114: 2012/04/21(土) 09:30:26 ID:O4x7A8Us0
引用: 澪「秋山探偵事務所」
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