21: ◆zvY2y1UzWw 2013/11/21(木) 00:35:44.02 ID:4/MZyyvO0


22: 2013/11/21(木) 00:36:32.95 ID:4/MZyyvO0
『何故に命を与えた?何を成すため生まれた?
神に祈りを捧げて届く願いは無いのに…』

ナニカの所へ帰りつつ、黒兎は歌う。誰にも、いや、誰かには聞こえる歌声で。

歌声に気付いた少女…ナニカは、振り返るとぬいぐるみの姿の黒兎を拾い上げた。

「黒ちゃん、お出かけしてたの?」

「そうダよー…えっと、お祭りだから楽しくなっちゃってサ」

「白ちゃんもー?」

「うん、ソウみたいだな」

「そっかー…」

どこか上の空のナニカに、黒兎は問いかけた。

「…加蓮来てるみたいだゾ?会いに行かないのか?」

「…やっぱり来てるんだ」

「感ジたのか?」

「うん…」

加蓮が来ている、それはなんとなく…なんとなくだが感じ取っていた。

でも、あの何でも有りだった混沌とした祟り場の時のように、軽々会いに行こうとは思えなかった。

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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




23: 2013/11/21(木) 00:37:25.23 ID:4/MZyyvO0
「思い出しちゃったら…もうお姉ちゃんが氏ねないって、氏なないって、思い出しちゃったら…ヤだもん」

憤怒の街で、彼女は何回氏を経験しただろうか。…覚えていない・氏んだと思っていないのが幸いだが、それでも…不安だった。

自らを犠牲に誰かを守ろうとするかもしれない。自ら苦しみを引き受けてしまうかもしれない。

でも…不氏でも、不老でも…体は痛みを感じるのだ。心は悲鳴を上げるのだ。

「お姉ちゃんが、ボロボロになるの、イヤ。それに、自分のカラダ…嫌いになったら、ヤだもん…夢は夢のままでいいの」

「…」

「…やだよ…お姉ちゃんには普通に生きてほしいのに…戦ってほしくないのにさ」

ぬいぐるみの姿の黒兎の腕を弄りつつ、少しだけ俯きながら彼女は言葉を吐く。

「でもさ、マタ会いたいのは事実だろ?」

「うん…」

「お祭り、一緒に楽しめばいいんじゃないカ?ほら、また記憶を消してもいいしサ?」

「…黒ちゃんはそう思うの?」

「んー…ちょっと知っている歌の歌詞ニ、こんなのあるんだけど…」

黒兎は再び歌う。

『無くしたくない記憶をくれた君には私を
忘れてなんて偽善ね何を願えばいいのか…』

それはナニカの今の状況に似ている気がした。

24: 2013/11/21(木) 00:38:17.73 ID:4/MZyyvO0
「結局さ、相手の心の声を聞かないで記憶消すのは偽善かもナ。…それでもイイカ?」

「…ぎぜん…?」

「嘘の親切だよ。大好きなお姉ちゃんの記憶を奪うのは、本当に親切カってコト。思い出を奪ってるんだから。最終手段ってことにしておけバ?」

「…お姉ちゃんの…思い出」

ギュッと、抱きしめながら、ナニカは思考する。

「…黒ちゃん、いい子だね」

「よせやい。アタシは仁加も加蓮も奈緒もスキだけど、もっと好きな人が居るんだ。その人の為なら仁加も裏切れるヨ?」

「好きな人?」

「マダ会ったこともないケどな」

「ん?…ふーん?」

ナニカにはよく分からなかった。会ってもいないのに好きになれるものなのだろうか。

会ってどんな人間か見なければ好きにも嫌いにもなれないと思うのだが…。

25: 2013/11/21(木) 00:40:03.90 ID:4/MZyyvO0
「ところでなんでずっと同ジ所にいるんだ?」

黒兎が飛び出した頃からナニカは同じところをウロウロしていたようだった。正直言っておかしい。

「…お金ないの」

「オ、おう…」

切実だった。

「…アタシが『拾って』こようか?」

「どこから?」

「え…あーあーんっと…誰かが自販機の下に落としてるかもしれないダロ?」

嘘だ。本当はちょっとそこらへんの目についたのを襲ってくるつもりだった。

「…」

「と、取りあえず歩こう?ずっと座ってるのはツマラナイだろ?」

「でもお腹すくよー?」

「…ガンバレ」

「えー…」

そう言いながらも立ち上がった所で、会話に夢中になっていた黒兎とナニカはやっとある気配に気づいた。

『メガネドウゾー』『マァマァ、オカネヨリメガネデショ』

「あ、ウっかりしてたワー…結構接近してたんだなぁー」

黒兎は己のうっかりをちょっと呪った。よりによってメガネのカースとは不運すぎる。

26: 2013/11/21(木) 00:42:49.07 ID:4/MZyyvO0
「あ…や、やだぁ…」

ナニカは激しく動揺する。後ずさりをしようとしたが、躓いて尻餅をついてしまった。

(おぅ…アタシがとっちめるべきだなこれは…アンチメガネカースになってモラおーっと)

怯えるナニカを守るべく、黒兎が動き出そうとする。

『メガネー』

「い、いやああああああああ!!やだぁ、やだぁ!!」

パニックになっていた。相手がメガネカースでなければ犯罪臭がする程に悲鳴を上げる。

「ちょ、離せ、離して、落ちツイて…!」

「いやああ!置いてかないでぇ!」

しかし、ナニカがギュッと抱きしめて、泥化しないと抜けられそうにない。

だが泥化して抜け出せばナニカはさらにパニックになりそうだった。

「ほラ、神父さん言ってただろ!素数数えろ!素数!」

「素数なんて知らないのぉ!」

「ですよねー!」

『メガネ!ホラメガネダヨー!』『メガネダヨー』

「いやだぁ…もういやだよぉ…こんなの食べたくもないし触りたくもないのにぃ…!」

ナニカは戦闘態勢に入ろうか、やっと決めようとしていた。

27: 2013/11/21(木) 00:44:11.52 ID:4/MZyyvO0
「コアさん!行くよ!」

『ブモッ!』

そこに、コアラの様な、機械のようなモノを引きつれた一人の少女が現れた。

そして少女の声に答えたコアラの様なそれは、変形すると鎧のように少女に装備された。

「喰らえっ!」

『メガネッ!?』

腕のパーツの金属の爪を振り下ろし、メガネのカースの一体を切り裂く。

「続けてもう一つ!」

『メーガーネー!?』

今度は周囲を飛んでいた二つのレーザーユニットから発せられたレーザーがもう一体を貫いた。

「ふぅ…あの変なカースモドキ、こんな所にまで湧いてるのかぁ…めんどくさいなぁもう!休憩くらいさせてよねー!」

『ブモ~』

周囲にカースがいない事を確認すると、装備はコアラの形に戻った。

28: 2013/11/21(木) 00:45:37.35 ID:4/MZyyvO0
「…助けてくれたの?」

『ブモッ!』

「アタシを誰だと思ってるの?アイドルヒーローのRISAこと、的場梨沙!これを恩に思って投票イベントがあったら投票してよね!」

『ブモ…』

梨沙はアイドルヒーローとして売れることでパパが喜んでくれると思っている。だからこうして名を売ることを忘れない。

…少々、押しつけがましいと思えなくもないが…駆け出しアイドルヒーローで、さらに子供だから仕方ない。

「アイドルヒーロー…リサ…んー?」

ナニカのアイドルヒーローの知識はあまり無い。存在は知っていてもどういった人物がアイドルヒーローだったかはあまり記憶にない。

強いて言えばカミカゼは知っている程度だろうか。

そしてあまりぱっとしないナニカの表情を見て、少し不満げ小声で愚痴る。

「…やっぱり、アタシのファンって偏ってない?大人の男の人ばっかり!」

『ぶも~…』

その様子を見て、ナニカは思い出したかのようにお礼を言う。

「えっと…助けてくれてありがとう、リサお姉ちゃん!アレ怖いから苦手なのー」

「もう、怖いし戦えないならパパとかママとかと一緒にいなさいよね!」

ここで誤解が発生した。梨沙はナニカを無能力者だと判断したのだ。

…実際はメガネが苦手なだけで恐ろしい程の化け物なのだが。

29: 2013/11/21(木) 00:47:31.41 ID:4/MZyyvO0
「あー…えっと、あたしね…パパもママもいないの。でも今は黒ちゃんと一緒だよ?」

「…いない…?それってどういう…」

親がいない。その意味が一瞬理解できなかった梨沙が問いかけようとしたが、後ろから人影が接近してきた。

「梨沙!戦闘態勢に入ったと思ったんだが…無事に終えたようだな」

担当プロデューサー…パップだ。監視されている梨沙は、戦闘態勢に入った瞬間、それが伝わるようになっている。

「当然!あんな雑魚、楽勝よ!ちゃんとこの結果、パパに報告してよ!」

「ああ、わかって…ん?」

パップは、ナニカを視界に入れると、梨沙に問いかける。

「この子を助けたのか?」

「…そうだけど?」

「おおっ!偉いじゃないか!ちゃんと小さい子を守れて!」

わしゃわしゃと頭を撫でようとするも、全力梨沙に抵抗される。

「頭撫でないでって言ってるでしょ!それにあんたに褒められる筋合いはないでしょ!もうっ!」

振り払われると、やれやれという仕草をして、ナニカに近づく。

…その光景がどう見ても犯罪臭がするが触れてはいけない。

「君も怪我がないようでよかった!子供が怪我するのは遊んでいる時だけで十分だからな!はっはっはっ!」

「おじちゃん、リサお姉ちゃんの知り合いさん?」

「お、おじ…ははっ、素直でよろしい!自分はアイドルヒーローRISAのプロデューサーだ。君もアイドルになるかい?名前は?」

「あたし?仁加だよー?」

「ちょっと、無能力者をスカウトする必要ないでしょ!もう、ヘンタイ!」

「名前を聞いただけでか!?」

「当たり前でしょ!」

小さい子供が好きなパップは、どうやらナニカを気に入ったようで…やっぱりどう見ても怪しい光景である。危ない香りが半端ない。

それをよく分かってないナニカは、のんきに黒兎に問いかけていた。

「アイドル…黒ちゃんどう思う?」

「お断りしまス。と答えさせてもらおうか」

30: 2013/11/21(木) 00:48:29.00 ID:4/MZyyvO0
「…君、それは?」

腰にベージュの人形を下げたパップは、言葉を発するぬいぐるみを持つナニカに咄嗟に質問してしまった。

「黒ちゃんだよ?あたしのお友達なのー」

「黒兎ダ。それ以上でもそれ以下でもない、タダの可愛らしいぬいぐるみさんダヨー」

「…そうか」

カースの核を埋め込んだ人形は、ちゃんと大人しくしている。そして目の前の黒いぬいぐるみからは、少なくとも似た感じはしなかった。

(それ以前に、カースを埋め込んだぬいぐるみなんて、こんな小さな子供が持っているわけがないな。自分としたことが思わず聞いてしまった…)

ただ単に、ぬいぐるみを操作できる能力を持っているのだろう。パップはそう判断した。

「…とりあえず、君はもっと人気のある場所に居なさい。はぐれたなら迷子預り所まで行くかい?」

「行かなーい。迷子じゃないから大丈夫だもん。お祭りにはお姉ちゃんも来てるから、探さなくても大丈夫!」

(パパとママはいないのにお姉ちゃんは居るんだ…よくわからない家族ね)

首を傾げる梨沙に、ナニカは駆け寄る。

「さっきは本当にありがとう!リサお姉ちゃん、アイドルヒーロー頑張ってね!」

「う、うん…」

そう言って笑顔で手を握ると、ナニカは手を振りながら去って行った。

…お互いに知らない事実。それは二人はとある少女に正反対の感情を抱く者同士と言う事。

加蓮に溢れるほどの愛を抱く少女と、加蓮に激しい憎悪を抱く少女。

お互いにそれを知っていたら、こうして触れ合う事もなかっただろうに。

それを、この場の誰も、知らない。

31: 2013/11/21(木) 00:50:48.59 ID:4/MZyyvO0
「…で、結局どうするンだ?加蓮を探すのか?」

「…まだ、決めてないよ。でもメガネに見つかるのイヤだもん!」

「そうか、まあゆっくり決めたらいいサ」

黒兎と会話しながらナニカは行く。

先程の少女が、加蓮を廻って敵になりそうだなんて微塵も思わずに。

32: 2013/11/21(木) 00:52:53.63 ID:4/MZyyvO0
以上です
嫌な予感がする?ハハハ、気のせい気のせい(目逸らし)
梨沙とパップお借りしました

イベント情報
・黒兎とナニカがセットで行動中。今は加蓮に対してどう動くかは未定

33: 2013/11/21(木) 01:04:50.32 ID:QbSLlRcZO
乙ー

その時はまさかあんな事になるとは思っていなかった……って、フレーズが浮かんだ(震え声




【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part8