48: ◆EBFgUqOyPQ 2013/11/24(日) 23:34:05.56 ID:3GmMhi9+o


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ



イルミナP「まったく、日本のメイドは最高だぜ!!」


49: 2013/11/24(日) 23:34:48.01 ID:3GmMhi9+o

 唯とイルミナPの二人はそれなりにこの学園祭を満喫した。

 そして日も傾いて、人々の脚は家路へと向かい始めていた。
 生徒たちは今日の分の片付けを始めており、朝とは違った意味での人の流れができている。

 そんな中、イルミナPと唯も傾いた太陽に照らされながら出口である校門を目指していた。

「今日は楽しめましたか?唯」

「どちらかというとゆいよりもイルミナPちゃんの方が楽しんでなかった?」

「そうですか?そんなことはないと思いますが……」

「ぜったいそうだよね!」

 そんな風に今日のことを話しながら歩いていると、ふと唯の鼻先に水滴が落ちてきた。

「ちべたっ!んー?雨かな?」

 唯はそう言って空を見上げるが雲はほとんどなくオレンジがかった太陽は依然輝いている。

「ん?唯、どうしました?……おや?」

 唯が急に上を向いたので何事かと思いイルミナPは唯の方を向くがちょうど彼の頭にもぽつりと一粒の水滴が落ちてくる。
 その雨粒は徐々に量を増してそれなりの雨量になってきた。

「どうやら今日も、平和なだけでは終わらないみたいだね♪」

 唯は少しだけ楽しそうに言う。
 そう、雨は依然ざあざあと振っているのにもかかわらず頭上には雨雲はない。

 どこからともなく雨が降ってきているのだ。
 周囲を歩いていた人々は突然の謎の雨から逃れようと雨のしのげそうな場所へと向かっていく。


----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




50: 2013/11/24(日) 23:35:27.90 ID:3GmMhi9+o

 そんな風に雨宿りをし始めた人々はそこでようやくその雨の異常さに気づく。
 その雨はまるで墨汁を溶かしたかのような濁った黒色で辺りに真っ黒のな水たまりを作っていっているのだ。

「雨……ではないですね。触れても濡れないようですし」

「イルミナPちゃんもなんとなく気が付いてるよね。この雨、カースだよ」

 唯のその言葉の後に周囲の水たまりが隆起してカースが湧いて出てきた。
 それを見ていた人々はパニックになりながら悲鳴を上げ、その場から逃げ惑う。

「どうやらこの雨を降らしている本体がいる可能性が高いですね」

 周囲にはごく普通の黒い泥状のカースのみ。
 比較的この雨は規模が大きく、この状況を引き起こしているのは普通のカースではないことがわかる。

「どうする?放っておく?」

 唯はそんなことをイルミナPに尋ねていると背後から一体のカースが唯に跳びかかってくる。
 しかし唯は振り向くことなく、隣に魔方陣が出現。その中から炎の矢が飛び出てきてカースを貫いて蒸発させる。

 そして核だけが残り、跳びかかった来た勢いのまま唯の方へと飛んできたのを唯は手に取って口に含んだ。

「このカース。強欲だね」

 唯はカースの核を口内で転がしながら言う。

「少し気になるので寄り道してもいいですか?」

「うん!全然オッケーだよ」

「了解です。唯が手を出す必要はありませんよ」

51: 2013/11/24(日) 23:36:37.20 ID:3GmMhi9+o

 イルミナPは唯の了承を取ると、右手の皮手袋を取ってタキシードの懐に仕舞った。
 そして右手を腕まくりして、肩を軽く2,3回まわした。

 露わになったのは艶のある金属光沢を放つ義手であった。
 その義手は作り物のようでもなく筋繊維までも一つの金属で再現されていた。

 それこそがイルミナPの最高傑作でありメインウェポン。
 機構魔導義手、マジックハンドである。

「Release Lightning……Spread」

 三単語の詠唱。そしてイルミナPは右手を振るう。
 右腕の表面に魔術文字が高速で走っては消える。そして閃光が走り、右手から放たれた雷撃は周囲のカースをすべて焼き尽くす。

「とりあえずは本体に会いに行きましょうか」

 そしてイルミナPは校門へと続く道から外れるように脇にある林の中へを入っていく。
 それに続くように唯も付いていった。

 依然林の中でも黒い雨は降り続け、周囲からはカースがひっきりなしに襲い掛かってくる。

「Release Blizzard Wide」

 前方扇状に大気を凍てつかせる冷気を放出する。
 そのまま草木ごとカースは凍り付いて勝手に砕け散って塵となる。

52: 2013/11/24(日) 23:37:22.54 ID:3GmMhi9+o

 さらに右方からカースが跳びかかってくるがイルミナPはそれを一瞥して右手をそのカースに出す。

「Rlease Melt」

 跳びかかってきたカースは右手に触れる直前で何かに遮られるように溶けるように蒸発する。
 しかしその隙を狙ったかのように四方からカースの触手が伸びてきた。

 背後についていた唯は個人空間ですぐ上空へと転移する。
 その場に残されたイルミナPに鋭い触手は届きそうになる。

「疾風よ。我が力に従い、万物引き裂く暴風の刃を!トルネイド・ブリンガアァーーー!」

 イルミナPは魔術の詠唱後、周囲360度の回し蹴りをする。
 その脚からは幾重にも重なった風の刃が放出され、周囲の木々ごとカースを切り刻む。

 そしてイルミナPを中心にして竜巻に巻き込まれたかのように木々が倒れて見晴らしがよくなる。
 しかしそれでも雨は止まず新たなカースが湧いて出てきた。

 イルミナPは上から降ってきた唯を両手でキャッチする。

「ナイスキャッチ♪それにしてもこのカース、大概強欲か色欲だよねー」

 唯はイルミナPの腕の中でそう言う。

「全くゴキブリのごとく湧いて出てきますね。さっさと原因が出てきてくれればいいんですけどね」

『全くゴキブリとは失礼だな。俺の愛する子供たちのことをよ』

53: 2013/11/24(日) 23:38:06.14 ID:3GmMhi9+o

 イルミナPがため息を吐きながらそんなことを言っていると前方から新たな声。
 その声はカースの声のようにくぐもった声にもかかわらず、流ちょうな言葉を話している。

 その前方の木の陰から出てきたのは不健康そうな男だった。
 やせ形で簡素な服装をしながら、整えたことないような髪型をしている。
 しかしそれ以上に目を引くのがその男の眼球が真っ黒く白目がないことに加えて、全身から黄金色をした炎と桃色がかった炎がところどころ立ち昇っていることだ。

 その炎は全身のあちこちからは発火しているのにも関わらず服には全く引火していないことから普通の炎ではないことは明白だった。

「わざわざ出てきてくれるとは手間が省けましたよ。愛する子供たちがやられたから出てきたんですか?」

『まさか!俺がわざわざ出てきたのはその嬢ちゃんに用があるからだよ』

「ん?ゆいのこと?」

 男は下品な顔をしながら唯を嘗め回すように見る。

『いやなぁ……あんたものすごくかわいいからよぉ……欲しくなっちゃったんだ。ああもう我慢できねぇ。嘗め回してオカシテボロボロニシテコレクションシテエヨォオオーーー!!!』

 男はだんだんと言葉がカースのような喋り方になりながら頭をかきむしりながらせわしなく舌なめずりをする。

「うわー。これがよく聞くヘンタイってやつなのかな?」

「ええ、まぎれもない変質者ですよ。唯はこんな下品な男にかまわず下がっていてください」

 イルミナPはそう言って唯をそっとおろして唯の前へと出る。

「じゃあここはイルミナPちゃんに任せるね。さっき上にいたときに変わったもの見つけたからちょっと出かけてくる♪」

 そう言いながら唯は手のひらを広げる。
 そこにはすでに壊されていたがプロペラの着いたカメラのようなものが握られていた。

「わかりました。ここはお任せください」

 その声を聞いた唯は個人空間でどこかへ転移してこの場を後にする。
 そして残ったのはイルミナPをさっきからずっと興奮して頭をかきむしりながらくねくねした動きをする男、それと周囲の大量のカースだけとなった。

54: 2013/11/24(日) 23:38:43.01 ID:3GmMhi9+o

「おい、そこのキモ男」

 イルミナPはその気色悪い動きをする男に話しかける。
 そこでようやく男は動きを止めてイルミナPの方を見る。

『あれ?あのカワイコチャンはどこ行ったんだ?おい、おいどこいったんだヨォーー!』

「あの方をお前のような気色悪い男の前にさらしておくのは忍びなかったんでね。この場を離れてもらいましたよ」

『ハァ?おいふざけんなよ帰ったとかどういうことだよお前と一緒なんかなんもうれしくねえんだよフザケンナフザケンナフザケンアアアアァァァァ!』

 イルミナPの言葉を聞いたその男は四つん這いになりながら地面に何度も何度も頭を打ち付ける。
 そしてしばらく打ち付けていた後に急にぴたりと止まって四つん這いのままゆっくりとイルミナPの方へと顔を向けた。

『殺ス』

 その瞬間男は四つん這いのまま蛙のように上に跳びあがった。
 それを合図にするかのように周囲のカースたちもイルミナPに迫ってくる。

「Release Fire Circle」

 イルミナPがその言葉を発した後に右手を振れば彼を周囲を円状に炎が立ち上る。
 当然迫ってきていたカースたちは炎に焼かれて次々と塵になっていく。

 しかしその炎の壁を突き破って黒い触手のようなものが弾丸のようにイルミナPに襲い掛かってきた。
 イルミナPはそれを横に軽く飛ぶように避けるがその触手は先ほどまでイルミナPがいた場所で動きを急に止めると、イルミナPが回避した方向に向かって直角に曲がって迫ってきた。

55: 2013/11/24(日) 23:39:20.42 ID:3GmMhi9+o

「くっ。Release Melt!」

 それに対して右手を突き出して応戦する。
 触手はその右手に存在する不可視の溶解壁に対して溶かされながらも勢いを殺さずに貫こうとしてくる。

『キェエエエェェ―――!!!』

 さらに炎の壁は消え去って再びカースが進行してくる中にあの男は奇声を上げながらイルミナPの方向へと迫ってきていた。
 先ほどからイルミナPに襲い掛かってきた泥で出来た触手は男の口の中から舌のように伸びており、それは溶解されるたびに絶えず喉から放出されていたのだ。

 しかもどういう原理かはわからないがその男は空中の何もないところを四つん這いで蹴りながら加速して接近してきた。
 そしてイルミナPの右手の前まで迫った直前で伸ばした触手を回収、再び空中を蹴りあげてイルミナPの頭上を通過する。

 イルミナPは急いで右手の魔術を解除。振り向いて防御の態勢に入ろうとする。
 男はイルミナPの背後に両手から地面へ着地して、足を浮いたまま丸めて、腕は腕立ての要領で曲げていく。
 そして腕のばねを開放するように伸ばして両足をそろえてイルミナPへと鋭い蹴りを決める。

 イルミナPは腕を交差させて間一髪その蹴りを防ぐ。
 しかしその衝撃で数歩背後に押し下げられたうえに、義手でない左手は蹴りによって痺れている。

『はっ!この程度かマジシャンよぉ!』

 男は両手足をそろえて地面に着地すると両手をイルミナPの方へ向けてそこから体に纏っているものと同色の炎を打ち出す。

「チッ!Release Ice Wall」

 イルミナPも右手を男に向けて突き出す。
 そうするとイルミナPの前に炎を防ぐように氷の壁が形成される。

56: 2013/11/24(日) 23:40:02.58 ID:3GmMhi9+o

『無駄だっつーの!はたしていつまで持つかな!?』

 乱発される火炎弾は氷の壁に当たるたびに、それを溶かし、削っていく。
 当たらずに後方に反れていった火炎弾は着弾するたびにそこから新たなカースが出現していく。

 よってイルミナPの背後からはそのカースが迫ってきていた。

『まっさに前門のオレェ!後門の我が子たちってヤツだぁ!絶体絶命!さっさと氏ねぇ!』

 男はその言葉の後にさらに火炎弾の射出速度を上げる。
 氷の壁は削れていき、そしてトドメと言わんばかりの一回り大きい火炎弾を射出、それが着弾すると見事に氷の壁は砕け散った。

 氷の壁が溶けた際の蒸気によって視界は悪く男からはイルミナPを確認できない。
 だからこそ聞こえてくるのは声だけだった。

「全く……数だけは多いってのが何よりも面倒なんですよ。だから出し惜しみはやめてさっさと終わりにしましょうか」

『ハァ!?何いってんだぁ?オマエヨォ!』

「Liberation Gluttony」




 

57: 2013/11/24(日) 23:40:35.76 ID:3GmMhi9+o




 京華学院から少し離れたとあるビルの屋上、そこで黒いスーツに身を包んだ男が目を瞑りながら座っていた。

「カメラを壊されたか……」

 彼は目を開けて立ち上がる。
 彼はサクライP直属のエージェントであり、少し前に放流された複数の属性を持つカースの監視の任務に就いていた。
 ただしサクライPからは監視はほどほどに済ませ、存続が容易でない場合にはすぐに撤退しろとの命令も受けていた。

 その理由として彼の監視するカースは放流されたカースの中でも原罪に至るにおいて最初期の失敗作であり最大の失敗作でもあったからだ。
 しかし利用価値そのものは低くはないので重要視するほどではないことを前提にして監視を付けていたのだ。

 そして監視していたカメラは破壊され、あのカースを監視することは難しくなった。
 このままいけばあの二人組にカースは始末されるだろうと彼は考えたのでこの任務を切り上げようとしたのだった。

 彼はそのまま屋上から降りるために屋内からの出口へと向かおうとする。
 しかし彼は足を止めた。止めざるをえなかった。

 背中を伝う冷や汗。
 背後からねっとりと絡みついてくる嫌な気配。
 男はゆっくりと振り向く。

「ちーっす♪」

58: 2013/11/24(日) 23:41:19.79 ID:3GmMhi9+o

 彼の背後に突如として魔方陣が現れてその中から一人の少女が出てきた。
 彼にはその少女の見覚えがあったのだ。
 つい先ほどまでカメラで監視をしていて、そしてそのカメラを壊した張本人なのだから。

「キミかなー?盗撮していた人は?」

 彼はすぐに能力を使ってその場を離脱した。
 もはや反射的にと言ってもよかっただろう。
 あの場所に、彼女の前にいたくなかったからだ。

 彼の能力は電気を操ることができた。
 『あの日』以前は所詮は静電気をため込みやすい程度の体質だった彼だが能力を得てから少し経ったのちに彼は自身の能力によって家族を失った。
 その際に自暴自棄になっていた彼をエージェントとして雇い、居場所を作ったのがサクライPだったのだ。
 だから彼にとってサクライPは恩人であり尽くすべき雇用主となったのである。

 彼は電気を操る能力によってカメラから発せられていた電波を直接視覚情報として収集していた。
 また電気を操ったり、宙に飛び交う電波に介入することも可能であった。
 その汎用性と能力そのものが強力なこと、さらにはその忠誠心の高さからサクライPからはエージェントの中でも重宝されてきた人物である。
 そして彼の能力の中でも究極にして最高の、一日一回限りの大技。それが『電子化』である。
 自身を一時的に電子に変換して光の速さで移動や攻撃ができるこの技は彼にとっても一度も破られたことはない技である。

 そして今回、初めてその技を逃走の手段として使った。
 電子化した彼はそのまま光の速さでとある山の中へと着地する。

 電子化は消耗する技であるのですでに彼の息も上がっている。
 いや、それ以上に生で見ることによってはじめて感じたあの得体のしれない少女の存在が彼の精神を大きく摩耗させていた。

 彼はそのまま近くにあった木に寄りかかって深く深呼吸をする。
 ようやく落ち着いてきたのか、緊張も解け始めて脱力する。

「ここまで来ればさすがに大丈夫だろう」

59: 2013/11/24(日) 23:42:01.03 ID:3GmMhi9+o

 周囲は木々に覆われており、見たところほとんど人の手の入っていない原生林と考えられる。
 そう、さすがに自身でさえ偶然跳んだ先であるこの場所をピンポイントで探しあてられるわけないのだと高をくくっていた。

 彼は立ち上がって今回の情報をサクライPに送ろうと情報データを能力で送信する。
 そのデータは強力な電波となってサクライPの元へと届く……はずだった。

 なぜかその電波が自分の背後から戻ってきたからだ。

「すごいすごーい!一瞬でこんな遠くの山の中まで移動するなんてゆいびっくりしちゃったよー☆」

 彼の前に現れたのは見覚えのある魔方陣。
 当然その中からあの少女、大槻唯は出現した。

「ここら辺一帯はゆいがドーム状に個人空間の入り口と出口で囲んであるから、どんなものでも中から外には出られないんだよ☆」

 彼にとっては人生二度目の絶望だった。
 もはや逃げることはできないと彼は悟った。

「ぐ、う、うおおおおーー!」

 だからこそ、無駄だとわかっていても、悪あがきとしてその得体のしれない少女に自身の特大級の電撃を食らわせる。
 突き出した手のひらから放出される視界を奪うほどの眩い電撃。
 電撃は唯ごと周囲の木々を飲み込んでいく。
 さらに直接当たっていない周囲の木々にも引火すると同時に土煙や気の燃える煙によって少女の姿は見えなくなる。

「いきなり危ないなー!ゆいに当たったらどうしてくれるの?」

 その声は彼の背後から聞こえてくる。
 彼は急いで振り向くが、気が付いた時には彼は唯を見上げる形になっていた。

 視界に映るのは倒れる自身の首のない体と、見下ろす少女。
 その時点で彼は首を落とされたのだと自覚したと同時に、絶命した。

「頭だけあればいっか♪」

 唯はそう言って男の頭を拾い上げて、再び魔方陣の中へと消えていった。



60: 2013/11/24(日) 23:42:33.19 ID:3GmMhi9+o



 ここは京華学院の中に存在する裏山の一画である
 広大な裏山を散歩できるような遊歩道も存在するがそれ以外はほぼ自然のままでその地理については用務員のおじさんしか把握していない。
 ゆえにある程度派手に暴れたとしても騒ぎにはならないのだ。

『意味わかんねぇよ……。なんだよ……なんなんだヨォその腕!』

 その中で炎を身に纏った男は叫ぶ。
 その言葉の中には焦りや困惑が含まれていた。

「なんだっていいでしょう。あなたが知ったところで意味はないですし」

 イルミナPは冷めた目で男を見ながらそう言う。
 先ほどまで彼らの周囲には倒れた木々や炎によって燃え上がった樹木、またはカースがいた。

 しかし現在にはそれらは存在せず、イルミナPを中心にして半径約20メートルくらいは木が生えていた痕跡は全く存在せずに地面がむき出しになっていた。

 しかもその地面は何か大きな大顎によって噛みつかれたかのように抉られていた。

『いったいなんなんだヨその顎は!』

 男の視線はある方向を見ている。
 視線の矛先はイルミナPの右腕、マジックハンドであった。

61: 2013/11/24(日) 23:43:05.31 ID:3GmMhi9+o

 しかし彼のマジックハンドはさっきまでとは大きく違っていた。
 金属で出来たマジックハンドは今はまるで獣のように赤黒い剛毛で覆われている。
 そして何よりも目を引くのがその腕を挟むようにして浮いている巨大な獣の上顎と下顎の骨であった。

 いまだに黒い雨は降り続け新たなカースが湧いて出てくる。
 そしてイルミナPに跳びかかっていくがイルミナPが右手をそちらの方へと向ける。

 それだけでカースは空間ごと削り取られた。まるでその大顎によって喰われたかのように地面に新たな牙の跡を刻み付けて。

『クソッ!』

 男はもはや勝てないと判断したのだろう。
 そのままイルミナPの方を向いたまま後ろへ飛んで林の中に逃げ込んだ。

 あの場から約20メートル圏内が射程限界だと判断した男は、とりあえず距離を取ろうとしたのだ。
 移動速度ならこちらの方が上であると考え、距離を取りつつカースと、自身の舌での狙撃が現状の最善。
 場合によっては逃げる算段も男は考えていた。

62: 2013/11/24(日) 23:43:39.64 ID:3GmMhi9+o

「逃げられるとでも?」

 イルミナPは男が逃げ込んだ林の方角に右手を突き出す。
 腕を挟むように浮いていた顎は、口を大きく開けるように右腕を中心にして離れていく。

 そしてその顎がガチリと大きな音を立てて閉じる。

 その瞬間、右腕前方の空間がその大顎に食われていくかのように削り取られていく。
 それは扇状に広がっていき、歯型を残しながら木々を食らい尽くしていった。

 『フザケンナ!オレハ……モット!!』

 不可視の咀嚼は逃げる男に迫っていく。
 そして男はそれに飲み込まれるように削り消えた。

 それと同時に振っていた黒い雨は止んだ。
 周囲にいたカースもどこかへと逃げていく。

「少々、やりすぎたか……」

 イルミナPは禿げ上がった周囲の林を見渡しながらそうつぶやいた。



63: 2013/11/24(日) 23:44:19.93 ID:3GmMhi9+o



 林の中を駆けていく一つの小さな影があった。
 それは黒いカエルであり、体からは鮮やかな炎が上がっている。

『くっ……寄生体は飲み込まれちまったが何とか本体である俺は逃げ切れたぜ』

 先ほどの男はこのカエルのカースに寄生されており、寄生体を犠牲にすることによってやられたことを偽装したのだ。

『まぁいいヤ、次は寄生体を探すとするか……。次は女の体でも狙ってみるかっと』

 そのカエルは進みながら前方に人影を見つけた。
 夕暮れ時の薄暗い林の中なのではっきりとはしないがその大きさ、体躯からして少女であることがわかる。

『ラッキー!せっかくだ。あの体をいただくぜ!』

 そしてカエルは気づかれないように近づいていき、背後から一気に跳びかかった。

「ん?」

64: 2013/11/24(日) 23:44:49.90 ID:3GmMhi9+o

『なぁ!?』

 しかしその少女に直前で振り向かれ、そのまま手でキャッチされてしまった。

『お……お前!あの時の嬢ちゃん!?』

「あー、さっきの変質者?ずいぶんとちっちゃくなったねー」

 カエルが跳びかかったのは、唯であった。
 もうこの時点でカエルは自身の失策に気が付いた。
 あの男、イルミナPと一緒にいた時点でただの少女ではないこと。
 さらにこのカエルは肌に触れさえすれば体内に侵食、寄生してその人間を内から食らうことができるのだが、素手で触れているこの少女の体内へとなぜか浸食ができないことに気が付いたからだ。

『ま、マテ!さっきはすまなかった……だから!』

「待たない♪」

 そのまま唯はそのカエルを有無を言わさずに握りつぶした。

『グエッ』

 そして文字通り潰れたカエルのようなうめき声をあげて、そのカースは消滅した。
 唯は手のひらを開くと、そこにはビー玉大の一つの玉、そのカースの核が残っていた。

 色は金色と桃色が混じったようなマーブル色をしている。

「……とりあえずイルミナPちゃんとこに行こうっと☆」

 そして唯は生首を抱え、手のひらにカースの核を持ったまま魔方陣の中へと消える。

65: 2013/11/24(日) 23:45:28.63 ID:3GmMhi9+o

 そして唯はそのままイルミナPの隣に現れた。
 すでにイルミナPは林から出る少し前、近くに校門へと続く整備された道が見えている場所で唯を待っていた。

「どうやら派手にやったねみたいだねー!あとこれお土産ー」

 唯は抱えていた生首をイルミナPに投げ渡す。
 それを右手でキャッチした。

「誰です?こいつ」

「なんかゆいたちのこと盗撮してたから、やってきたんだっ☆」

 イルミナPはその生首の顔を見るが、そのイルミナPの表情から心当たりはないようだ。

「まぁ食ってしまえばわかるでしょう」

 右手に掴まれた生首は一瞬で消えた。
 右手の力で削り取ったのだろう。

「Restriction Gluttony」

 イルミナPの右腕が元の金属で出来た義手に戻る。
 そして懐から皮手袋を取り出して右手にはめなおす。

66: 2013/11/24(日) 23:46:00.21 ID:3GmMhi9+o

「なるほど……ね」

 そしてイルミナPは少し苦い顔をする。

「あの『仮面男』の差し金か……。これは」

「結局どういうことなの?イルミナPちゃん」

「どうやら先ほどのカースは、とある団体が作り出した新型のカースのようですね。その実証実験……とでもいえばいいですかね」

「とある団体?」

「ええ……。桜井財閥って知ってますよね」

「うん。あの桜井財閥だよね☆」

「どうやらそのトップがカースで何かを作り出そうとしているみたいですね……。さすがに食った男はそのことについては詳しくは知らないようでしたけど」

「ああ!そうだった」

 唯は思い出したように手に持っていたカースの核を差し出した。
 それをイルミナPは手に取る。

67: 2013/11/24(日) 23:46:33.92 ID:3GmMhi9+o

「これは……我々の『トーチ』に近いものですね」

「うん♪さっきの変質者の核だよっ!」

「なるほど……。通りで『雨』と『大罪の炎』が出ていたわけですね。つまりは複数の属性のカース……となると」

 イルミナPは手を口元にあてて考える。

「まさか『原罪』の生成か?あの『仮面男』ならたしかに考えそうなことか……」

「あのさー『仮面男』って誰?」

 唯のその質問に、イルミナPは思考を止めて唯の方を見る。

「ん……ああ。『仮面男』というのは私が勝手に呼んでるあだ名みたいなものですよ。『仮面男』とはサクライP、つまり財閥のトップの男のことですよ」

「んー?なんで『仮面男』っていうの?」

「えーっと……。数年前に一度会ったことがあるんですがね。ずっと仮面を被っていたんですよ」

 唯は仮面舞踏会のような派手な仮面をつけた男を想像する。

「その人も変態なのかな?」

「そういう意味での仮面じゃないです。ペルソナですよ。精神的な仮面。つまり何を考えているのかが全く読めなかったということですよ。

それに当時から底知れぬ不気味さもありましたし、正直様々な人間を見てきましたけどあれくらい気味の悪い人間は指折り数えるくらいしか見たことがありません」

 イルミナPはサクライPの顔を思い出しながら嫌な顔をする。

68: 2013/11/24(日) 23:47:04.42 ID:3GmMhi9+o

「あのころからずっと私の中で『もっとも嫌いな存在』の中に入ってますよ。あの男は、得体が知れないですからね。……予想通り、世界の多くを牛耳るようになりましたし」

 イルミナPは核を唯に投げ返した。

「それには特に利用価値はないので食べても構いませんよ」

「そう?じゃあー遠慮なく」

 そして唯は核を口の中に放り込んだ。

「ともかくその核は桜井財閥が『原罪』を作ろうとした際にできた失敗作ってところですね」

「『原罪』ねぇ……。いったい何に使うのか知らないけど」

「まぁ桜井財閥が計画の邪魔にならなければいいんですけどね。正直あの『仮面男』はできるだけ相手取りたくないですし……」

 辺りはもう夕日に照らされており、若干暗くなってきていた。

「じゃあ今日は帰りましょうか。妙に疲れたことですしね」

「そうだねっ!今日は帰ろっか♪」

 そして二人は校門から出ていく。
 傍から見れば息が合っているような二人だったが、なぜかその歩調は合ってはいなかった。


69: 2013/11/24(日) 23:48:20.03 ID:3GmMhi9+o

 機構魔導義手『マジックハンド』
 表面の装甲としてアダマンタイトとオリハルコンの合金が使用されておりその強度だけでなく、魔力伝導性や電気伝導性はとても高い。
 魔術的加工によって、本物の筋肉のように自在に動かすことができるうえ、欠損などしても魔力を通わせれば時間はかかるものの自動で再生する。
 中心部分には特殊な回路が埋め込まれており、疑似的に保存領域を6次元空間まで拡張してあるので情報量の多い魔術であっても大量に記録、保存ができる。
 処理速度は全宇宙でもトップクラスを誇る小型のスーパーコンピュータ。
 ただし、この義手そのものがとある『モノ』を封じ込めておく封印となっているので実際には性能のうちの7割は封印に割かれている。

 「Release」を合図に保存された魔術の起動準備をし、それに続くように属性を設定することによって最低2単語の詠唱のみで魔術の発動が可能となる。
 さらに3単語目に範囲、規模などを指定する単語を組み込むことも可能。ただし『Melt』に関しては封印された『モノ』を利用したものなので規模指定はできない。

 Liberation/Restriction Gullutony
 『Release』に対して封印された『モノ』の力の一部を解放する呪文。
 解放後には右手は獣のような腕になり、それを挟むように巨大な獣の顎が出現する。ただし浮いている獣の顎は実体は存在せずエネルギーのようなものである。
 その右掌から前方を空間を削り取るように『捕食』することができる。射程は20メートルほどであり、瞬時に到達するわけではない。
 一部だけでも強力な力なので長時間解放したままにはできない。

70: 2013/11/24(日) 23:48:45.86 ID:3GmMhi9+o

 複数の属性を持ったカース
 今回の属性は『強欲』と『色欲』のカースでありカエル型である。桜井財閥の放ったカースの一体であり失敗作。
 属性の融合がうまくいかずに、『原罪』へと至る確率は3つの中でも特に低いものと考えられている。
 ただし属性の融合がうまくいかなかったことによって、その位相差によって感情のエネルギーが増幅し合い、通常よりも高い知性が宿った。
 その余剰の感情エネルギーは『大罪の炎』となって放出され、空に巻き上がった後に『雨』となって降り注ぎ新たなカースを生み出す。
 これに似た、より増殖性を強化したものとしてイルミナティは『トーチ』と呼ばれるカースを完成させている。
 またこのカエル型のカースはカースノイドとしての側面も持っており、本体はあまり力を持たない代わりに寄生能力を身に着けていた。

71: 2013/11/24(日) 23:49:44.74 ID:3GmMhi9+o

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

「おれは モバマスSSを書いていたと思ったら
いつのまにか童Oと変態の対決を書いていた」

な… 何を言っているのか わからねーと思うが 

おれも 何をされたのか わからなかった…

頭がどうにかなりそうだった… 中二病だとかその場のノリだとか

そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…


以上です。
わたしはまんぞくだよ

複属性カース使わせていただきました

72: 2013/11/25(月) 00:00:29.19 ID:StHJe6d1O
乙ー

童O強いなー。そして、唯ちゃんコワイ

73: 2013/11/25(月) 00:09:37.04 ID:W9Xo9FeV0
乙です
なにかよくわからんが強い…(確信)




【次回に続く・・・】


引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part8