551: ◆zvY2y1UzWw 2013/12/29(日) 00:57:40.22 ID:Vz/sJEz70


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ



学園祭一日目終了間際の時間軸でお送りします

552: 2013/12/29(日) 00:58:21.57 ID:Vz/sJEz70
「雨あめふれふれ母さんがー♪」

『蛇の目でお迎え嬉しいナー♪』

「ぴっちぴっち♪」

『ちゃっプちゃっぷ♪』

『「らんらんらん!」』

歌声とともに周囲のカースが切り裂かれる。

学園祭を襲ったカースの雨、ナニカと黒兎もそれの相手をしていた。

「ねぇねぇ、ジャノメってなぁに?」

『知らヌ』

「だよねー」

巨大な獣と化した黒兎が、ナニカを背に乗せて爪と牙でカースを殲滅していく。

そして若干残る倒し損ねたカースは、ナニカが背から生み出す生命体が泥を喰らい、核を破壊していた。

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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




553: 2013/12/29(日) 00:59:13.71 ID:Vz/sJEz70
生み出した蝙蝠を黒兎が改造した、足が異様に長くそして翼が傘のように変貌した生きた蝙蝠傘をさして、一応カースの雨に触れないようにしている。

「やっぱりなんでもいいから食べたいよ、お金ないけど…たこ焼きとかクレープとか食べたいのー」

『お金がないって悲しいコトなンだ…』

「お姉ちゃんみたいにバイトってできないの?」

『変身すればできなクはないだろうけどサ…多分仁加には無理。アタシは言うまでもなく』

「そっか、うーん…」

人々は屋内に逃げたり戦える人は戦ったり。

ナニカと黒兎は周囲に人がいないことをいいことにストレスを発散するように暴れまわっていた。

554: 2013/12/29(日) 01:01:17.91 ID:Vz/sJEz70
「白ちゃんは大丈夫かな?」

『白は白で何とかしてるだろ、あいツはカースとかに負けるほど弱クないし』

黒兎は黒兎で遠距離からアンチメガネカースを操り、感染増殖を怠らない。多数のカースが固まっているスタジアムの方向に行くようにという指示をこっそり飛ばす。

「うーん…お腹すいてるけどカースって美味しくないんだよねー甘くもない、味しない、つまんない!」

『水と同じじゃン』

「カースはちょっと暴れるからお水と一緒にしたらダメなの!お菓子食べたい!」

『…』

会話しながらも、暴れるように四肢と尾をフル活用してカースを蹴散らす。ナニカは背につかまっているだけだが落ちる気配はない。

そして黒兎はスタジアムのアンチメガネカースにある程度集まったら人気のない方へ行くようにこっそり指示を飛ばす。

555: 2013/12/29(日) 01:02:29.32 ID:Vz/sJEz70
そして、その雨もついに止んだ。

「あ、雨止んだ?」

『お、マジだ…帰るか?』

「うん!」

『…アーでもちょっと待って、アタシ用事があるンだった』

「なになにー?」

アンチメガネカースを、学園の外へ誘導し、完全に解き放つつもりだ。誘導だけではいざという時全滅しかねない。

今、かなり増えたとは言え…ピク○ンのごとく、一気に全滅なんて事もヒーロー達に遭遇してしまえば有り得てしまう。

だから誘導兼ガードマンをやるのだ。この学園から放流するまで。

『フハハ、ノーコメントだよ』

「ずるーい!!」

『ずルくなーい、ズルくなーい!先に帰ってナよ。ホラ降りて』

「…やだ」

『わがまま言うナって、また明日もくるだろ?』

「…むー」

黒兎がくるりとその場で宙返りをして、ナニカは真上に飛び上がる。黒兎はそのままある程度体を小さくさせて駆け出し、ナニカは小さな翼を広げてふわりと着地した。

556: 2013/12/29(日) 01:03:28.39 ID:Vz/sJEz70
『じゃア、教会で!』

去っていく黒兎に手を軽く振る。

「…もうみんな帰ってるしアタシも帰ろーっと」

不機嫌になりながら、ナニカは道を学園祭から去ろうと歩き出す。

先程の騒動もほぼ終わり、数名ほどのけが人は運ばれていったがそれでも被害はそこまで出なかったようだ。

雨が止んで、戦っていたり避難していた人々も帰り始めていた。

小さな少女が一人で帰るのはどうしても目につく。ナニカは帰る人々が怪しまないように、できる限り紛れるように歩いていた。

そして彼女の瞳は見間違うことなく、もはや宿命か運命のように加蓮を見つけてしまった。

557: 2013/12/29(日) 01:04:23.11 ID:Vz/sJEz70
「…」

記憶操作で彼女は自分の事は覚えていない。自分が忘れさせたのだから。

だから、加蓮は自分を知っている筈がない。見つかっても問題ない筈だ。

それでもすこし距離を置いて、ナニカは物陰に隠れる。

「…」

やっぱり、寂しい。

自分で行動して、それに納得している筈なのに。

(なまえをよんでよ)

無茶な事を思い、願う。それが不可能だと知っているのに。

(ひとりにしないで)

もう完全な一人ぼっちじゃないけれど、それでも一番愛しい人は天地がひっくり返ろうとも愛しいまま。

その愛しい人の記憶を消して、それでも愛されることを願う。

けれど夢の記憶ごと全てを思い出す事を恐れている。

(ねぇ、まってよ)

声に出さないように、物陰に座り込む。

(お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん…)

ポロポロと涙が流れる。

558: 2013/12/29(日) 01:05:48.05 ID:Vz/sJEz70
許されないと、そう自分で決めていた。自分で自分の首を絞めていた。

(…アタシ、何がしたいのかわからなくなってくるの、助けてよ…)

世界をシアワセにしても、会う事は許されますか?

記憶を戻して、真実を知っても、この化け物を愛してくれますか?

貴方も化け物だということを、知っても愛してくれますか?

(これじゃあシアワセになれないよ。お姉ちゃんが好きでいてくれないといやだよ)

(ぜんぶ、いちばんさいしょからやり直したらうまくいくのかな…?)

(夢の事、なかったことにして、さいしょからやりなおす?)

夢で会うことを止めて、夢での記憶を刺激しないようにする…つまり『初めまして』として会えば…そうすればナニカは現実である程度会う事はできるだろう。

しかし、それを決心するのも、ナニカにはできなかった。

…だが、ナニカの存在が確立された今、夢の中の『僕ら』『私達』が存在する場所以外、加蓮が介入するのは難しくなりつつある。

…つまり、お互いに夢が独立しつつあるのだ。繋がりを失っていくように。

決断は早めにすべきなのだろう。一歩を踏み出す時なのだろう。しかし、今のナニカには踏み出す勇気も、後押しされるような展開も無い。

今、ナニカはただの臆病な少女だ。自分が一歩踏み出したせいで全てが壊れることを恐れている。

(…わかんない、わかんない)

幼い見た目の割には賢い存在だったナニカも、やはり精神面は未熟な子供で。

ただ寂しくて、返事を心のどこかで期待して、彼女を呼ぶ。

「…お姉ちゃんっ…!」

しかし、その声は風にかき消されてしまった。

559: 2013/12/29(日) 01:06:15.52 ID:Vz/sJEz70
「…?」

(誰かに呼ばれたような気が…)

声は聞こえなかったけれど、その姿を見かけることはなかったけれど、加蓮は振り返っていた。

その加蓮の後ろで、影が揺らめいたような気がした。

560: 2013/12/29(日) 01:07:23.41 ID:Vz/sJEz70
そして別の場所。木々が生い茂る人目につかない場所に黒兎はいた。

「…サて、アンチメガネカースの皆の衆。いっぱい増えてアタシは嬉しいよ!」

『ウォォ!!マザー!マイマザー!』

人型の姿をした黒兎が、森の中、大量のアンチメガネカースを集結させ、まるで教祖のように演説をしていた。

「諸君、眼鏡は排除すべき存在ダ。それをしっかり世界中の人々に教えなくてはならない!!」

『オオオオオオオオ!!』

「眼鏡のせいで怯えて暮らす少女がいる!それだけで我ラの活動理由は十分だ!諸君には全国に散ってもらわなクてはならない!もちろんある程度の手助けはするゾ!」

『メガネハイジョー!!』

「いいか、まずハ全員一つに固まッてくれー!」

『メガネハテキー!!』

黒兎の号令で、アンチメガネカースはその大量の透き通った黒い体を1つの個体に集結させていく。

それはどんどん巨大化して、全盛期の強欲の王より2回りほど小さい大きさになった。

561: 2013/12/29(日) 01:08:39.10 ID:Vz/sJEz70
「よーし、デハ、安全なところまでアタシが先導してやろう!」

黒兎が翼を生やした獣の姿になって、動き出すと、それは木々に隠れるように体をぺったんこにさせて、まるで水が地を這うように動き出した。

誰にも見つかることなく、それは暗くなってきた森の中を這う。

学園からかなり遠くに来ると、森も途絶えようとしていた。

「…よし、散レ!!」

黒兎の号令で、大きな体のそれは破裂するように小さな大量の個体に別れた。

再び大量になったアンチメガネカースは街に、森に…散って行った。

「よーし、オ仕事完了!あとは帰るだけー!」

それを見届けると、のんきに陽気に黒兎は翼をはためかせて飛び去った。

…アンチメガネカースは、ゆっくりとメガネへの嫌悪感を植え付けていく。

562: 2013/12/29(日) 01:09:44.08 ID:Vz/sJEz70
結局、何もできずにナニカは教会へ戻っていた。

帰り道が少し荒れている事に警戒心を抱くが、周囲に気配がない事を確認すると、安心したように歩き出す。

帰り道、白兎も黒兎も戻ってきた所を遭遇したため、二人をぬいぐるみの姿にして抱きかかええる。

ナニカが教会の扉を開くと、クラリスと神父が待っていた。

「…ただいま、クラリスお姉ちゃん、神父のおじちゃん」

「ああ、心配したんですよ…!…やはり学園祭に行っていたのですか?」

少しだけ気まずそうに、けれど楽しかったことを思い出しながらナニカは答える。

「うん、お金なかったけど、楽しかったよ?」

そこに、神父が顔にはあまり出していないが、確実に少し怒っていると感じさせながらナニカに注意する。

「…あまり勝手に外に出ると、クラリスが心配してしまう。どこかに行きたいなら、どこに行くか言うんだ。いいな?」

「…うん、わかった」

ナニカは『ごめんなさい』は言えない。それでも躾と言うのはある程度効果はあるようだった。

563: 2013/12/29(日) 01:10:45.76 ID:Vz/sJEz70
「お祭り…明日も行っていい?明日はね、今日と違うんだって!」

無邪気に、彼女はお願いをする。

「あのね、リサお姉ちゃん、歌うの明日からなんだって…だから」

そういうナニカの頭にクラリスがポンと手を置いて撫でる。

「大丈夫ですよ、ちゃんとどこに行くのか教えてくれるなら、怒りませんから」

「…うん、そうする」

「…けれどせっかくのお祭りなのにお金がないのは…そうだ、あまり大きなお金ではありませんけど…」

クラリスが、教会のどこからか小さなポシェットと小銭入れを出してくれた。

「…少しだけ、ですけど…お祭りで何か食べてきてもいいんですよ?」

「…!クラリスお姉ちゃんありがとー!!」

「いえいえ、楽しんできてくださいね?」

「うん!」

その小銭入れが入ったポシェットを大切そうに持つと、彼女は部屋に走って戻って行った。

564: 2013/12/29(日) 01:11:50.19 ID:Vz/sJEz70
「…いいのか?」

「大丈夫ですよ、私の問題がない範囲で出しましたので…大金ではないですし」

「いや、クラリス…お前はいいのか?」

「…あの子、少し不機嫌な事が多い子なんです。…それで、あの楽しそうな顔の為だったら少しくらい大丈夫って…」

「…そうか…昼飯くらいは奢ってもいいんだぞ?」

「うふふ、牛丼ですか神父様?」

565: 2013/12/29(日) 01:13:29.79 ID:Vz/sJEz70
ナニカは自室に戻る。与えられたのはポシェットだけじゃない。数着だが普通の子供が着るような服もある。

「…また貰っちゃった」

ポシェットを机の上に置く。眺める表情は少しだけ不機嫌そうで、少しだけ嬉しそう。嬉しいのを不機嫌で誤魔化すようだった。

神を信じる者がクラリスを許してしまうなら、ナニカはクラリスを許した瞬間自分が駄目になってしまう気がするのだ。

566: 2013/12/29(日) 01:14:40.33 ID:Vz/sJEz70
「…瑞樹ちゃーん、入っていい?」

ナニカの部屋はキヨミと瑞樹の部屋の間だ。そういえば見かけてないなと彼女の部屋の扉をノックする。

「…いいわよ、入ってらっしゃい」

「うん!」

透けた体の彼女は、ソーセージ売りのおじさんが預けに来た、同じくらいの年の女の子。

どうも話を盗み聞ぎしたところ、『追われている』らしい。

それを知らないふりして、ナニカは彼女と仲良くなろうとしている。

「瑞樹ちゃんはお祭り行かないの?」

「…お祭り…ああ、秋炎絢爛祭ね…わかるわ」

彼女は中学校の教師だった。だからもちろん知っていた。

…教え子と過ごす青春の場が、また一つ奪われていた。

「行かないの?」

「…無理よ、こんな姿は目立つわ。それに私はあまり外に出たくないのよ」

いつレヴィアタンに見つかるかもわからない。

クラリスというシスター、神父、騎士団を名乗る3人組、そして目の前の彼女。…見つかったら巻き込んでしまいそうで、怖いのだ。

「…そっか」

二つのぬいぐるみを抱きかかえたまま、座っていたナニカは立ち上がる。

「…瑞樹ちゃん、お祭りの時間が終わったら、アタシと遊んで?」

「…そうね、少しだけなら…いいわよ」

「ありがとう!じゃあまたね!」

手を振ってナニカは扉を閉じた。

567: 2013/12/29(日) 01:15:35.13 ID:Vz/sJEz70
ナニカ就寝後、白兎は動き出す。

「あの二人組は櫻井財閥の裏組織、エージェントの一員。目的は神の洪水計画に関わる女からの事情聴取」

独り言を呟いて、頭の中の情報を整理する。

「消去法であの瑞樹って子だよなぁ…狙われてるのって…まぁ関係ないか、神なんて洪水起こそうがぶっ頃すだけだし」

「そしてあの女は元アイドルヒーロー…アイドルヒーロー同盟なら良い能力者が何人か見つかるかも」

そして彼女はこの思いを胸に、アイドルヒーロー同盟を襲撃することになる。…失敗したが。

「…しかし解せないな、あの女、情報探っても不氏なんてどこにもない」

刀の事、悪魔の事…手に入れた様々なあの二人に関する情報を閲覧して、白兎はある事実に気付き、笑いながら怒る。

「…嘘をついたな。このアタシに嘘をついたなあの女!!あはは、これは許されないなぁ…よりにもよって不氏を偽るか!」

気狂い兎は許さない。『正義』は嘘を許さない。

568: 2013/12/29(日) 01:17:34.83 ID:Vz/sJEz70
「本当に不氏だったと仮定して、頃してやろう。『正義』に嘘を吐いた罰を受けてもらわないとな、不氏を頃すための攻撃で!」

精神が崩壊する程の『氏の拷問』。不氏であろうとも精神が氏んでしまえばただの道具。

そう、奈緒の精神が壊滅したように…何度も頃してやると、決める。

「そうだ、あいつの『カリスマ』を否定してもいいな…アタシが究極生命体である為に生物の頂点だと、思い知らせて…」

痛めつけることを考え始めた思考回路を戻す。

「…セイラ、アタシは『悪』のお前を許さない。櫻井も、エージェントも『悪』だ。『正義』の化身のアタシが断定してやる」

だが…潰すのはまだ先にして、精々利用してやる。

白い影が、夜の教会の一室で小さな笑い声を上げていた。

569: 2013/12/29(日) 01:21:57.78 ID:Vz/sJEz70
以上です
ナニカと波乱万丈な学園祭(一日目)はこれで終わり、二日目待機です
加蓮、クラリス、神父、口リ島さん、名前だけ梨沙、キヨミ、櫻井財閥と聖來さんとエージェントをお借りしました

・ナニカの思考がぐらぐらしてます
・アンチメガネカースが本格的に放流されました
・白兎がエージェントを利用できる悪と認識しました

570: 2013/12/29(日) 02:36:54.69 ID:g7up3LpGo
おつー

聖來さん……アカン……
本当に教会を尋ねるどころじゃなくなってた件




【次回に続く・・・】


引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part8