764: ◆llXLnL0MGk 2014/01/19(日) 11:48:20.97 ID:mBDesi1u0


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ



長くなったけど憤怒の街の太眉堕天使迎撃戦はじまるよー!

765: 2014/01/19(日) 11:50:03.90 ID:mBDesi1u0

「それ」を最初に感じ取ったのは、街の郊外にいた魔法少女だった。

カインド「――――!」

グレイス「何よ……この悪寒……!?」

ファイア「今になって……何か厄介なのが来たようね……」

店長「何だって……!?」

少し遅れて、隣に居た見習い魔法使いも身震いする。

裕美「…………また、何か来たの……!?」

深き者と共生する少女は、黙って空を見据えている。

里美「……………………」

琴歌「里美ちゃん……?」

少し離れた場所で。

謎多き二人は、ただ笑っていた。

周子「おー、元気なのが来たみたいだね。どうする?」

志乃「心配いらないわ。彼女たちなら自力で切り抜けられるでしょう」

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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




766: 2014/01/19(日) 11:51:00.34 ID:mBDesi1u0
街の内部。

少女を見初めた若き神が、不快そうに空をにらみつけた。

若神P「悪魔……じゃない、堕天使か……こんな時にはた迷惑だな……!」

みりあ「だてん、し……?」

マリナ「天国から地獄に落ちて、悪魔みたいになっちゃった天使の事よね。それが来たっての?」

別の場所で。

未熟な魔法使いの少女がパニックを起こす。

さくら「えっ? えっ? ええっ? な、な、何ですかぁ今のお!?」

芽衣子「お、落ち着いてさくらちゃん! 何があったかは知らないけど、とにかく落ち着いて!」

病院で。

普段飄々としているある魔法使いの表情から、笑顔が消えた。

イヴ「……スゴイ邪気ですね~……」

ネネ「い、イヴさん……?」

ここ『憤怒の街』に居る、魔力と関わる全ての者が、「それ」の到来を感じ取った。

「それ」は、神によって強くされた者。

「それ」は、かつて「傲慢」に唆された元・天使。

「それ」は…………。

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767: 2014/01/19(日) 11:52:09.25 ID:mBDesi1u0
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――――――――――――

亜季「……クッ、キリがないでありますな……」

街の上空。

ある学校の敷地内に集まったカースを、亜季は淡々と狙撃していく。

亜季「チッ、これも弾切れ……回収! マイシスター!」

亜季の手から大型のガトリングガンが消え、別のガトリングガンが現われた。

狙撃が長引き、弾切れを起こす武器が増えてきている。

本部からの弾薬データアップデートは先ほど済まされたばかりだ。

向こうにも他の職務がある以上、こちらのワガママを通してもらうわけにもいかない。

亜季「ガトリングの弾をケチる羽目になるとは……。…………ッ、そこぉ!!」

亜季は突然懐からナイフを一本取り出し、背後へ向けて投擲した。

??「あら。……危ない危ない、当たる所だった」

それをいとも容易く回避したのは、黒い翼を生やした少女だった。

768: 2014/01/19(日) 11:53:08.33 ID:mBDesi1u0
彼女は亜季を無視し、彼方へ飛んでいくナイフをじっと見つめている。

亜季「何者でありますか、お前は……?」

??「あ、私? ……どうしようかな、黙っててもいいけど……」

少女は亜季から目をそむけ、一人で何か呟いている。

亜季「お喋りがお好きなようですな。嫌な気配を隠しきれていないでありますっ!」

亜季が懐から取り出した拳銃を構え、少女へ向けて三度引き金を引いた。

??「……いけない、また口に出てた。いい加減直さなきゃ。あと、隠す気はないのよね」

少女はそれをひょいと避け、腹が立つほどの澄まし顔を亜季へ向けた。

亜季「もう一度聞きます。お前の名は? 所属と目的は?」

拳銃を構えたまま、亜季は少女に問いかける。

??「……うん、悪いけど、名乗る気は……」

769: 2014/01/19(日) 11:54:00.30 ID:mBDesi1u0
「…………アザエル…………!」

どこからか響いてきた、鐘が鳴るような涼しい声で、少女の言葉は遮られた。

千鶴「この声…………参ったな、もう追いついたの?」

松尾千鶴――アザエルは振り向き、また独り言をもらした。

亜季「お前……直す気ないでありましょう。というか、今のは一体……」

アザエルに一言突っ込んでから、亜季も声のした方へ目を向ける。

聖「…………」

グリフォン(雪美)「…………」

そこにいたのは、白い翼を生やした少女、望月聖――ミカエル。

そして、獅子の体躯に鷲の頭と翼を持った幻獣、佐城雪美――グリフォンだった。

千鶴「ミカエル……思ったより早いのね」

腕組みしたアザエルは、聖と雪美に蔑むような、哀れむような目を向けた。

770: 2014/01/19(日) 11:55:08.34 ID:mBDesi1u0
聖「あなたの好きには……させない……」

千鶴「追いつくのは結構だけれど、分かっているでしょう? あなた達じゃ私には勝てないって」

聖「…………」

グリフォン(雪美)「…………」

アザエルの言葉に、二人は反論できず押し黙る。

アザエルの能力、すなわち「自分に向けられた術を先読みし、相手より速くそれを返す」能力。

それがある限り、二人に勝ち目は無いだろう。

聖「…………確かに、私たち『だけ』ではあなたに勝てない。でも…………」

聖はそこで言葉を切り、右手の人差し指をすうっとアザエルの後方へ向けた。

亜季「…………へっ? わ、私でありますか?」

急に指差され、亜季は戸惑う。

771: 2014/01/19(日) 11:56:04.76 ID:mBDesi1u0
聖「そう、あなた。あなたの助けがあれば、きっと勝てる。ここと似た別世界から来た、羽ばたく機兵……」

亜季「! ……知っているのですか? 平行世界の事も、私の事も……」

聖の言葉に、亜季が食いつく。

聖「知っていたわけじゃない……今、知ったの。お願い、助けて」

亜季はその言葉を受けしばし黙っていたが、やがてアザエルに拳銃を向けた。

千鶴「あら?」

亜季「こんな何を信じればいいか分からない状況ですが……お前のその嫌な気配だけははっきりと信じられるであります!」

聖「……ありがとう。私は、聖。この子は……雪美」

亜季「私は大和亜季であります。行きましょう! 聖殿、雪美殿!」

亜季の言葉の直後、聖は雪美の背に飛び乗った。

772: 2014/01/19(日) 11:57:04.43 ID:mBDesi1u0
グリフォン(雪美)「aaaaaaaaaaaaaaa!!!」

咆哮と共に、雪美が鋭い鉤爪をアザエルに突き立てる。しかし、

千鶴「……はぁ、当たるわけないのにね」

アザエルはそれを軽々と回避した。

しかも、ため息と独り言のオマケ付きだ。

亜季「こちらも!」

アザエルの回避地点へ向けて、亜季がガトリングガンを掃射するも、

千鶴「やめておいた方がいいわよ。弾の無駄になるもの」

腕組みしたままのアクロバット飛行で、大道芸のように避けられてしまった。

亜季「くぅっ……速すぎる……! 聖殿、奴に何か弱点は!?」

聖「彼女は……自分を標的とした魔法を先読みして、それを自分の術として撃てるの……相手よりも速く……。
 だから、物理的は攻撃ならダメージは与えられる。だけど……」

千鶴「それすら私には当たらないって、今身をもって理解したと思うけど?」

アザエルが聖の言葉を遮る。

773: 2014/01/19(日) 11:57:59.74 ID:mBDesi1u0
聖「ええ……あなたが地上の銃火器の弾よりも速く動けることは、計算外だった……」

亜季「そんな……打つ手無しですか!?」

千鶴「そうなるわね」

アザエルがゆっくりと両腕を広げる。

彼女の両手の平に、大きな黄色い球体が複数出現した。

亜季「カースの核!? しかも、憤怒じゃない……!」

千鶴「そりゃあ、堕天したんだもの。カースくらいは作れるわ」

傲慢を司る黄色い核から黒い泥がみるみる溢れ出し、翼を持った数体のカースになった。

『カァァァァァァァァ!!』

『アオォォォォォォォ!!』

『キィィィィィィィィ!!』

聖「ッ…………」

千鶴「さあ、行きなさ……」

774: 2014/01/19(日) 11:59:15.40 ID:mBDesi1u0
ドシャッ

アザエルが号令をかけるよりも速く、二筋の『銀』がアザエルの両脇に羽ばたくカースを貫いた。

『イァァァァァァ?!』

『ジェアァァァァ!?』

千鶴「…………!?」

聖「…………何…………?」

亜季「……人……?」

亜季が辛うじて捉えた『銀』の正体は、二人の女性だった。

片方は、全身を銀の鎧で包み、右手に一振りの剣を持っている。

もう片方はまだ幼さが残る、少女といっていいほどの年齢に見える。

その両足には、不可思議な銀の靴が履かれていた。

一同が呆気に取られていると、鎧の女性は聖達の前にゆっくりと降下し、靴の少女はマイシスターの上にふわりと着地した。

775: 2014/01/19(日) 12:00:16.17 ID:mBDesi1u0
??「あなたが堕天使ってやつ? 若神P君の言ってた通り、なんか嫌~な感じねえ」

??「幼き少女に怪物をけしかけるなど……その悪行、断じて許せません!」

千鶴「……何よ、あなたたち?」

突然現われた二人に向けて、聖がゆっくりと口を開く。

聖「……遥かな海の底で自由を求めた翼……。……遥かな星の果てから降り立った鋼の舞姫……」

??「あら? お姉さんの事知ってるのかしら?」

??「ええと……何処かでお会いしましたでしょうか?」

二人は不思議そうな表情を浮かべつつも、そのまま言葉を続けた。

マリナ「知ってるなら隠さなくても良さそうね。あたしはマリナ、しがない海底人よ」

琴歌「西園寺琴歌と申します。義によって、皆様に助太刀いたします!」

亜季「あ、これはどうもご丁寧に。私は大和亜季、こちらは聖殿と雪美殿で…………ん?」

776: 2014/01/19(日) 12:01:31.85 ID:mBDesi1u0
二人の自己紹介に返そうとした亜季だったが、ふと「ある事」が引っかかった。

亜季(海底人……? それにあの鎧……まさか)

亜季「ウェンディ族……でありますか?」

マリナ「あら、そっちも知ってたんだ。まあ知ってるなら話は早いわよね。手伝ってあげる!」

言うが早いか、マリナは剣を構えなおし、アザエルに向けて突進していった。

亜季「えっ…………カイを狙っているわけではない……のでしょうか……?」

琴歌「私も! はぁっ!」

思案する亜季をよそに、琴歌もアザエルに向けて飛び掛る。

千鶴「わっと……話が終わったならそう言ってよね、全く……行きなさい」

マリナの剣と琴歌の蹴りを回避した千鶴がカースへ改めて指示を出す。

777: 2014/01/19(日) 12:02:20.87 ID:mBDesi1u0
『ギィィィン!!』

グリフォン(雪美)「aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

飛んできたカースの一体に、雪美が喰らいつく。

マリナ「うっひゃあ、ド迫力……っとぉ!」

マリナはカースの突進を回避し、そこへハンドガンを数発撃ち込んだ。

『ギェィィィ!?』

ヴーン ヴーン

『ガオッ! ギッ! ゴアアア!!』

マイシスターが高速で飛びまわり、一体のカースを翻弄する。

琴歌「やああっ!!」

宙を蹴って舞う琴歌の鋭い廻し蹴りが、カース三体の体を纏めて両断する。

『タッ!?』

『トッ!?』

『バァァァッ!?』

778: 2014/01/19(日) 12:03:15.34 ID:mBDesi1u0
亜季「マイシスター、回収! ならば私は、これで!」

味方が増えて誤射を警戒した亜季はガトリングガンを回収させ、懐からビームソードを取り出した。

亜季「せぇやああああっ!!」

そのままビームソードをアザエルへ振り下ろす。

千鶴「ッ……今のは少し危なかったか。ハッ!」

間一髪でビームソードを回避したアザエルの手の平から放たれた黒い光弾が、亜季の腹に直撃する。

亜季「ぐぅっ……!?」

マリナ「亜季ちゃん!」

琴歌「亜季さん!」

二人がハンドガンと飛び蹴りで救援に入るも、アザエルはそれすら回避してみせた。

千鶴「頭数が増えても、結局は同じよね。フンッ!!」

アザエルが両腕をバッと広げると、彼女の周囲に無数の黒い光弾が浮かんだ。

779: 2014/01/19(日) 12:04:47.08 ID:mBDesi1u0
千鶴「……消えなさい」

アザエルが指をパチンと鳴らすと、その光弾が一斉に弾け、亜季達を襲った。

亜季「っ! マイシスター!!」

亜季の号令で、マイシスターが三枚の大きな鉄板を射出する。

一枚は琴歌へ、一枚は聖と雪美へ、最後の一枚はマリナへ。

射出の直後にマイシスターは琴歌の背後へ回り、亜季もマリナの元へ急ぐ。が、

亜季「うぁあああああっ!?」

マリナ「亜季ちゃん!?」

寸でのところで間に合わず、無数の光弾が亜季を襲った。

780: 2014/01/19(日) 12:05:42.43 ID:mBDesi1u0
琴歌「亜季さん! っはぁ!!」

琴歌が鉄板をアザエルへと蹴飛ばす。

千鶴「だから、無駄だって言うのに」

アザエルは最早、避けもしない。

次々と黒い光弾で鉄板を穿ち、ただの鉄屑へと変えた。

亜季「…………クッ……!」

マリナ「……ねえ、誰か魔法の心得とかあったりしない? それなら……」

マリナの言葉に、聖が小さく首を振る。

聖「駄目……彼女は、相手の魔法を先取り出来るの……」

琴歌「そんな……!」

781: 2014/01/19(日) 12:06:29.26 ID:mBDesi1u0
千鶴「ええ、そうね。一部魔法の弾速なら私を捉えられるかも知れないけど……」

亜季「魔法は、そのまま奴の攻撃になる……!」

マリナ「ちょっと、これって滅茶苦茶やばくない?」

今まで余裕ぶっていたマリナの顔に、焦りの色が見える。

琴歌はマイシスターの上から、ただアザエルをにらみつけている。

亜季は腹部を押さえながら、なおもビームソードを構えた。

千鶴「……はぁ。そろそろ、お喋りはおしまいにしないかしら?」

大きなため息をついて、アザエルは再び無数の黒い光弾を生み出す。

亜季「ッ! ま、まずい!」

亜季唯一の防御手段、三枚の鉄板は今しがたボロボロに破壊されたばかり。

あの無数の光弾を、防ぐ術は無い。

千鶴「ふふふ…………」

アザエルは嘲り、指を盛大に鳴ら……

782: 2014/01/19(日) 12:07:22.98 ID:mBDesi1u0
ズドッ

千鶴「…………え?」

呆然とした表情を浮かべるアザエル。

アザエルの集中が途切れた為か、光弾も次々と消えていく。

千鶴「…………は、はぁぁぁぁっ!?」

自分の体に何が起こったかを大体把握したアザエルは絶叫した。

右の翼に、丸い穴が空いている。それも、比較的大きな。

羽の乱れ方からして、「何か」が飛んできたのはアザエルの真後ろ。

聖「…………清らかなる、一矢…………」

アザエルが振り向くと、遥かな彼方。街の郊外に、「何か」を撃った人物がいた。

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783: 2014/01/19(日) 12:08:16.51 ID:mBDesi1u0
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グレイス「……ひゅう」

エンジェリックグレイス――兵藤レナが小さく肩を竦める。

ファイア「カインディングアロー……相変わらずの命中精度ね」

カインド「いえ……本当は、体を狙ったんですけど……僅かに逸れてしまって……」

ベテラン魔法少女、エンジェリックカインドこと三船美優。

彼女の放った光の矢……カインディングアローが、遥か遠方に浮くアザエルの翼を穿ったのだ。

店長「いやいや、当てるだけでも大したものだろう。……そら、敵さんの反撃だ!」

店長――シビルマスクの言葉の直後、無数の黒い光弾がこちらへ向けて飛来してきた。

ファイア「任せて。ファイアズムサイズ、リフレクト!」

前に進み出たエンジェリックファイア――服部瞳子が、手に持った黒い炎の鎌を高速で回転させる。

その鎌が、飛んでくる光弾を次々と弾き飛ばした。

グレイス「んー、パターンが単調ね。頭に血が上ってるのかしら?」

店長「それだったら、あっちの連中も多少は楽になるかな?」

店長はそう言って目を細め、光弾が飛んでくる方向を見据えた。

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784: 2014/01/19(日) 12:09:07.70 ID:mBDesi1u0
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千鶴「このっ! このっ! このっ! このぉっ!!」

結論から言えば、グレイスの言葉は当たっていた。

アザエルは目の前の聖達に目もくれず、闇雲に郊外へ向けて光弾を乱射している。

聖「…………分かった。彼女の能力の、弱点」

アザエルに聞こえないよう、聖は小さく口を開いた。

琴歌「弱点……?」

マリナ「今の矢で、分かったっての?」

琴歌とマリナが、それに同じく小声で聞き返した。

聖「今の矢も、魔法と似た性質を持つモノ。だから…………」

亜季「…………そういうわけでありますか」

納得のいった様子で亜季が頷く。

聖「みんなは……彼女の注意を引いて。彼女が、足元を気にする暇が無いくらいに……」

785: 2014/01/19(日) 12:10:18.68 ID:mBDesi1u0
亜季「了解しました。琴歌殿、マリナ殿、ごにょごにょごにょごにょ……」

亜季が琴歌とマリナにそっと耳打ちすると、二人は大きく頷いた。

マリナ「ええ、それで行きましょう」

琴歌「当てられないなら……ということですわね」

聖「雪美も……お願いね」

グリフォン(雪美)「a」

雪美の返事を聞いた聖は少し微笑み、雪美の背を降りた。

亜季「行きますよ……すぅっ……マイシスター!!」

亜季の大声に反応してマイシスターが二門のバズーカを射出し、アザエルが振り向く。

千鶴「ッ……、はぁ、また何かする気? 言っておくけど、無駄よ」

亜季「やってみれば分かるでありますよ! ファイアー!!」

亜季は両腕に構えたバズーカの引き金を引き、計六発の弾頭を発射した。しかし、

千鶴「……ねぇ、当てる気あるの?」

アザエルが回避するまでもなく、バズーカの弾は六発とも、まるで見当違いな方向に飛んでいく。

786: 2014/01/19(日) 12:11:34.14 ID:mBDesi1u0
しかし亜季は慌てない。それどころか、にぃっと笑みさえ見せた。

亜季「コイツを当てる気なんて、さらさら無いでありますよ! ……今です!!」

亜季の言葉で、琴歌、マリナ、雪美が飛び出した。

千鶴「陽動!? でも避けられない訳じゃ…………えっ?」

咄嗟に回避しようとしたアザエルだったが、誰一人としてアザエルの方へは向かってこない。

琴歌も、マリナも、雪美も。飛んでいくバズーカ弾を追いかけていく。

千鶴「え? な、何? 何なの?」

その光景を唖然としながら見つめるアザエル。

亜季「…………聖殿、今のうちに」

聖「ええ…………」

その隙に、亜季がそっと聖に耳打ちする。

アザエルの足元に、じゃら、と小さく金属音が鳴ったが、当のアザエルはそれに一切気付いていない。

787: 2014/01/19(日) 12:12:49.79 ID:mBDesi1u0
やがて、三人がバズーカ弾に追いついた。

琴歌「やあっ!!」

マリナ「それっ!!」

グリフォン(雪美)「aaa!!」

琴歌が足で、マリナが剣の腹で、雪美が爪でバズーカ弾を弾き飛ばした。

弾かれたバズーカ弾六発が、一斉にアザエルへ向けて飛んでくる。

千鶴「……なるほど、陽動に陽動を重ねたってわけ。でも、叩く力が強すぎたんじゃないかしら?」

アザエルは頬を掻きながら、問いかけとも独り言ともつかない言葉を漏らす。

千鶴「あれじゃ私に届く前に爆発するわよ。…………ほら」

アザエルの言葉どおり、バズーカ弾はアザエルに届くより遥かに速く爆発した。

その爆風も、アザエルには微かに届かない。

千鶴「……さて、万策尽き果てたって感……きゃあっ!?」

亜季と聖の方へ向き直ろうとしたアザエルが、突然叫び声をあげた。

アザエルの体は、突如足元から這い上がった金色の鎖で、瞬く間に雁字搦めにされてしまっていたのだ。

788: 2014/01/19(日) 12:13:55.71 ID:mBDesi1u0
千鶴「これはっ……大天使の鎖……!?」

亜季「言ったでありましょう、コイツを当てる気はさらさら無いと」

亜季が得意げにビームサーベルを仕舞い、ナイフを取り出す。

聖「あなたは、『陽動に陽動を重ねた』って言ったけど……ちょっと違う……」

突き出した手の平から金の光を放ち続ける聖の下へ、琴歌、マリナ、雪美が戻ってくる。

聖「陽動に陽動を重ねて、そこにもう一つ……陽動を重ねたの」

マリナ「反撃のきっかけは、さっきの聖なる矢の一撃をあなたが喰らった事ね」

琴歌「聖ちゃんはそこから、あなたの能力の弱点を見つけ出したのです」

聖「……あなたは、『自分に向けられている』と認識できた魔法しか、先取ることが出来ない」

千鶴「…………!!」

聖にピタリと言い当てられ、アザエルの顔が青ざめる。

亜季「そこでまず、お前に認識されずに拘束の魔法を撃つ必要があったのであります」

千鶴「その為に……あんなに回りくどい手を……!?」

789: 2014/01/19(日) 12:14:45.35 ID:mBDesi1u0
マリナ「まあ、バズーカも当たったら当たったで良かったんだけどね」

琴歌「少し、強く蹴りすぎてしまいました」

グリフォン(雪美)「a」

亜季「いえいえ、お三方ともグッジョブでしたよ」

バツの悪そうに笑う二人と、申し訳無さそうに頭を下げる雪美へ、亜季はグッとサムズアップを送った。

千鶴「クッ……!!」

その光景を、アザエルは恨めしそうににらみつけた。

マリナ「さて、トドメいっちゃいましょうか!」

マリナの鎧の一部が、サーフボード状に変形する。

聖「ええ。…………」

聖の手の平から溢れる光の粒子が、亜季のナイフを、琴歌の脚を、マリナのボードを包んでいった。

790: 2014/01/19(日) 12:16:01.27 ID:mBDesi1u0
亜季「これは……」

聖「『魔力を吹き飛ばす魔法』……それとほぼ同じもの。魔法と物理の複合なら……彼女にも届くはず」

琴歌「そういうことでしたら…………はぁっ!!」

マリナ「いやっほう!! スプラァァァッシュ……」

亜季「おおっ!!」

三人が光の粒子を纏ったまま、アザエルを取り囲むように飛び回る。そして、

琴歌「やあああああああっ!!」

マリナ「ストライィィィィクッ!!」

亜季「でぇああああああっ!!」

三つの『魔力を奪う一撃』が、三方向から同時にアザエルに襲い掛かった。

千鶴「きゃああああああああああああああああっ!!?!!?」

爆風と絶叫の中に、アザエルの姿は消えた。

791: 2014/01/19(日) 12:17:04.41 ID:mBDesi1u0
マリナ「ふぅー……やったか、でいいのかしら?」

聖の下へ降り立った三人の内、マリナがそう口を開く。

聖「いいえ。まだ氏んではいない……けど、あれだけの魔力を一気に失えば……当分は、何も出来ないはず……」

琴歌「残った魔力を振り絞って、ワープ魔法を唱えた……ということでしょうか?」

聖「そのはず……」

琴歌の言葉に、聖がゆっくり頷いた。

亜季「……いやしかし、大変な強敵でしたな。雪美殿も、お疲れ様でありま……あれ?」

雪美「…………」

亜季が隣で羽ばたくグリフォンの方を見やると、グリフォンは小さな少女へとその姿を変えていた。

792: 2014/01/19(日) 12:17:49.82 ID:mBDesi1u0
琴歌「これが、雪美ちゃんの本来のお姿……ですか?」

マリナ「あら、可愛い」

雪美「……ひじ、り……」

雪美はふらふらと飛びながら、聖に抱きついた。

聖「……疲れたよね。うん、ゆっくり休んでていいから、ね……」

雪美「…………分かった…………すぅ……」

そのまま雪美は、聖の腕の中ですやすやと寝息を立て始めた。

聖「ふふ…………ぁ」

直後、聖の体が大きくふらつき、慌てたマリナに支えられた。

マリナ「ぉ危なっ! ……あらら、聖ちゃんもお疲れだったみたいね」

マリナの言葉どおり、聖も雪美を抱きしめたまま深い眠りに落ちている。

793: 2014/01/19(日) 12:18:30.45 ID:mBDesi1u0
琴歌「どこか、安全な場所へ運んでさしあげましょう」

マリナ「だったら、あそこに病院があったわよ。何人か能力者もいたみたいだし、あたしの家族も今そこにいるの」

マリナが指差した先には、少し遠いが確かに赤い十字の看板が見えた。

琴歌「決まりですわね」

亜季「あー、それではお二人のことはマリナ殿と琴歌殿にお任せしても構いませんか?」

亜季が申し訳無さそうに口を開いた。

亜季「どうも街の中は機械が正常に作動しないらしく、サイボーグである私が街へ降りるのは、少々危険なのです」

マリナ「そういうことなら、任せて」

琴歌「私たちが責任を持って、お二人をお守りします。では」

そう言うとマリナは雪美を、琴歌は聖を抱きかかえ、ゆっくりと病院の方角へと飛んでいった。

794: 2014/01/19(日) 12:19:35.78 ID:mBDesi1u0
亜季「お二人とも、お達者で! ……さて、マイシスターもお疲れ様であります」

ヴーン ヴーン

亜季「ん?」

マイシスターからのサインで、亜季はある事に気付いた。

亜季「弾薬がアップデートされている……そ、そんなに長い間戦っていたのでありますか……」

幸か不幸か、アザエルとの戦いが長引いた結果、弾薬データ更新の時間が来ていたのだ。

亜季「……まあ、結果オーライでありましょう。行きましょう、マイシスター!」

亜季はマイシスターから射出されたスナイパーライフルを手に取った。

亜季「ハッ!」

そしてそのまま、校庭で戦う高峯のあの背後に迫るカースを狙撃し、撃破した。

続く

795: 2014/01/19(日) 12:20:55.11 ID:mBDesi1u0
・イベント追加情報
アザエルが亜季、聖、雪美、琴歌、マリナ、美優によって撃退されました。

マリナと琴歌が、眠る聖と雪美を連れて病院へ向かっています。

若神Pとみりあが病院に来ています。


以上です
アザエルの能力に個人的解釈に基づく弱点をつけましたが、
こうでもしないと帰ってくれなさそうだったんですこの子(白目)

美優、レナ、瞳子、店長、裕美、里美、琴歌、周子、志乃、さくら、芽衣子、イヴ、ネネ、
千鶴、聖、雪美、名前だけのあお借りしました(登場順)、今更だけど多いなちくしょう

796: 2014/01/19(日) 15:47:43.81 ID:B8vybvpAO
間違えた
瞳子は借りてないわ

797: 2014/01/19(日) 16:00:36.22 ID:p85m5LJA0
乙です
アザエル千鶴撃退成功!やっぱ強いわ(確信)
弱点発覚して、なんとか撃退だもんなぁ




【次回に続く・・・】


引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part8