1: 2020/09/14(月) 22:22:22.39 ID:JwosRg690


勇者「魔王は一体どこにいる?」シリーズです

最初から:勇者「魔王は一体どこにいる?」
前回:勇者「魔王は一体どこにいる?」リメイク【その3】

続編なので前作読まないと分からない事が多々あるかと思いますのでご注意ください

2: 2020/09/14(月) 22:28:12.15 ID:JwosRg690
エルフの繁殖

それは精霊樹への祈りによって行われ

その希少な果実の実より生れ出たエルフは純血種として誕生する

しかし彼らは生殖器を持たない訳ではない

体構造の似た人間との間でその生殖器を用い

まれに亜種を生む事がある

ハーフエルフ

人間とエルフの特徴を持ち合わせた種ではあるが

純血種の下位として扱われ

エルフ界では忌み嫌われる存在となっている

特に人間の特徴を色濃く持った子は

災いを招くという理由で

誕生して直ぐに森を追放され遺棄される運命を持つ



その子は

生まれた時から不幸だった

エルフの特徴をほとんど持っていない奇形種

醜くい小さい

そして人間の中でも勇者の特徴として言い伝えられる青い瞳

その瞳は直ぐに封印され

盲目となったその子は

魔物への捧物として森の外へ遺棄されたのである

3: 2020/09/14(月) 22:28:44.08 ID:JwosRg690
『トアル町』

妖精(そのまま真っすぐ歩いて…)

妖精(あーーぶつかる!止まって!)ドンッ

ごろつき「おい…気をつけろ!!」

旅人(す、すいません)ガクブル

ごろつき「聞いてんのかゴルァ!」

旅人(あぅ・・あぅ)

妖精(立って歩くのはもう少し練習が必要だね…立てる?)

旅人(大丈夫…もう少し壁寄りを歩いてみる)

ごろつき「ケッどこの言葉をしゃべってやがる!キチOイか?」

妖精(僕達の言葉とは違うんだよ)

旅人(何を言ってるのか分からないや…怒ってるのかな?)

妖精(離れた方が良さそうだね)

ごろつき「ん?盲者か?一人でブツブツ気持ち悪りぃんだよ!」

通行人「どうした!?」

ごろつき「あぁ何でもねぇ、盲目の精神病者だ、体当たりして来やがった」

旅人(何かマズイ雰囲気になってきた…走れるかな?)

ごろつき「謝りもしねぇで良くわかんねぇ事言ってやがる。気持ち悪りぃ」

通行人「目が見えてなさそうだなぁ…君!隠者は道の真ん中を歩くもんじゃない」グイ

ごろつき「そうだ!!隠者らしく隅で物乞いでもやってろ」

妖精(今行けるよ…走って!!)タッタッタ

ごろつき「お、おい!!聞いてんのか」

4: 2020/09/14(月) 22:29:12.01 ID:JwosRg690
『路地』

妖精(ちょっとここら辺で休もうか?)

旅人(……)

妖精(気にしてるのかい?)

旅人(僕はどういう風に見えているのかな…)

妖精(気にしてるとキリが無いよ?人間の町は人の心も汚れてるから)

旅人(う、うん)

妖精(早く僕を見える人を探さないとね)

旅人(さっきの人達も見えてなかったみたいだね)

妖精(人の多い所に来れば居るかもしれないと思ったんだけど…)

旅人(言葉が通じないと人間の町も不便だなぁ…)

妖精(また今日も野宿になりそうかぁー)

旅人(慣れてるから良いよ)

シュン!ポカッ!

旅人(痛っ)

婆「やい!浮浪者め!こんな所に居られると商売に影響が出るんだよ!!」

女「おばあさんおやめ下さい」グイ

婆「あっちへお行き!!シッシッ」ポイッ ポカ

旅人(…イタタ)

女「何も石を投げなくても…ごめんな…さ??」

女「あなた…目が?見えないのね?瞳が無い…」

妖精(…行こうか)

旅人(人目を避けた方が良さそうだね)

女「え!?何?…どこの言葉?」

婆「ほれ見ぃ異教の言葉に違いない…こんなのが居ると異端審問されかねんぞい」

女「おばあさん…私が何とかしますからお店に戻ってください」

婆「シッシッ」ジロリ

旅人(……)

チャリーン

女「これで許してね…おばあさん行きますよ」

妖精(お!?銀貨!!やったね儲け~♪)


---人間の世界ってこういう物なのかな?---

5: 2020/09/14(月) 22:29:38.14 ID:JwosRg690
『屋台』

妖精(もう少し右…そう!それ!後は…アレとコレと)

妖精(銀貨を台の上に置いて待てば良いよ)チャリーン

店主「おぉ?金は持ってるんだな?釣りはこれだけだ」

妖精(右手を差し出して…うん!それで良い)ジャラリ

旅人(こういう時何て言えば良いの?)ヒソ

妖精(あ・り・が・と・う)

旅人「あり、が、と…う」

店主「お、おぅ。まぁ…何ていうか体に気をつけな!!」

旅人「ありが…とう」

店主「用が済んだら行った行った」


妖精(買い物出来たね!!)

旅人(うん…緊張したよ)

妖精(これでしばらくは飢えないで済むね)

旅人(良かった)

タッタッタ

妖精(ん?)

女「あ!居た…探したんだから」グイ

旅人(え?あ…チョット)

女「付いてきてね?あなたをかくまってあげる。こっちよ」

6: 2020/09/14(月) 22:30:58.49 ID:JwosRg690
『倉庫』

女「入って」ギー ガチャン

妖精(親切な人も居るもんだね。今日はここで夜を過ごせそう)

旅人(大丈夫かなぁ?)

女「どこの言葉を話しているの?あなた目はどうしたの?」

女「…それにしても、その動物の毛皮で作ったフードと羽織…臭うわね」クンクン

女「洗濯してあげるから脱いでもらって良いかしら?」

旅人(何て言ってるの?)

妖精(えーと…)

女「顔を良く見せて…」ファサ

!!!ズザザッ!!!

女「待って!!怯えなくて良いの…ほら…構えないで?…落ち着いて?」

旅人(どうすれば?)

妖精(フードと羽織を脱いでだってさ。洗ってくれるみたい)

旅人(あぁ…そういう事か)

女「暴れないでね?」ファサ

女「え!?あなた…女?こんな姿で…汚れてるけど…でも素は良さそうね」

妖精(人間からみると君は女に見えるみたいだね)

旅人(そう言ってるの?驚いた口調だけど)

妖精(まぁ仕方ないさ。合わせてあげたら?)

女「ちょっと待っててね」ガコン ギー


旅人(…隠し階段か何かかな?)



7: 2020/09/14(月) 22:31:28.13 ID:JwosRg690
『数分後』

女「お待たせ…こっちに入って?」クイッ クイッ

旅人(何だろう?来いって事かな?)

妖精(そうだよ。行ってみたら?)

旅人(この閉ざされた空間は苦手だよ。歩きにくい。風が読めない)

女「あ…そうか目が見えないのね…手を」グイ

妖精(僕の羽音があれば分かる?)パタパタ

旅人(助かる)

女「あなた…いつも一人でお話してるの?あ…ここ階段。気を付けて」

旅人「ありがと…う」

女「え?話せる?」

旅人「ありがとう…ありがとう」

女「他には?」

旅人「ありがとう」

女「フフッ…それで充分なのかもね」


娘1「あ!!来た来た」

娘2「見せて~」

娘3「あんたは早く着替えなよ」

娘4「水汲んで来たよ~」


女「こっちよ」グイ

女「娘1~!!着替えと水をこっちに持って来て」

娘1「はーい。お姉ぇその子どうしたの?」

女「後で話すから早く持ってきて」

娘2「水持って行くね」

女「お客さん来る前にあなたは早く準備しなさい!!娘1~!早くー」

8: 2020/09/14(月) 22:31:59.50 ID:JwosRg690
『小部屋』

女「…じゃぁ私は一旦部屋を出るから今着てる物を全部脱いでこっちの籠に入れておいて」

女「水はこれしかないから大事に使ってね。特に髪の毛の汚れを落としておいて…分かる?」

女「えーと…こう…こうする…」ヌギ ゴシゴシ ジャブジャブ

女「んーー目が見えない子にどうやって教えるかなぁ…」

女「まぁ何とかなるか!!えーと着替えはこっちね?」サワサワ

女「ああぁ時間がない…後でね?」ギー バタン タッタッタ


旅人(なんだか…慌ただしいなぁ)

旅人(この水で洗って着替える…で良いのかな?)

妖精(そうだよ。随分水浴びはしてなかったからね)

旅人(この着替えには替えたくないなぁ)

妖精(面白そうだからあの女に合わせてみようよ)

旅人(だってコレ…触った感じかなり薄手の…旅には向かないというか…)

妖精(あの女の人の物かな)

旅人(んんんー)

妖精(それを着てれば隠者に見えないと思えば易いと思うけどね)

旅人(仕方ないかぁ…)

妖精(似合うと思うよ…エルフ達はみんなそういう格好をしてる)

旅人(僕はエルフでは無いと思うけど)

妖精(何度も言ってるけれど僕には分かるよ…君からエルフの様な匂いがする)

妖精(風や音を感じる感覚は普通の人間には難しい)

妖精(黄泉の狭間を感じる君は間違いなくエルフに関係するよ)

旅人(またその話か…もういいよ着替えるよ)

9: 2020/09/14(月) 22:32:34.62 ID:JwosRg690
『別の部屋』

女「…そう。あまりに不憫に思って連れてきたら女だったのよ」

娘1「目が見えない…かぁ」

娘2「よく今まで暮らせてこれたね」

娘3「あんまり面倒事は背負わない方が良いんじゃない?」

女「でも放っておけないでしょ?あのまま路地に居たら異教徒とか言われて捕まるのがオチよ」

娘4「番台の婆さんにはどう説明するの?また怒られるよ?」

女「稼ぎが在れば良いのよ」

娘4「そんなに急にお客さんが増えると思えないけどなぁ…最近みんなケチだし」

女「本人に覚悟が必要だけど…私たちの仲間が一人増えると思えば良いのではなくって?」

娘1「あぁーそうかぁ…目が見えないのは良い事とも言えるのかぁ」

娘2「娘1さぁ…その子見て来たんでしょ?やって行けそうなの?ここで」

娘1「超美人…私達の誰よりも」

娘3「ええ!?そんなに?ムキー!!」

娘4「早く見てみたいなー」

女「仕事が終わったらあとで髪を揃えてあげようと思うの…その時に」

娘1「お姉ぇは今日早いの?」

女「いつもの男よ…さっさと終わらせて戻ってくる…あなた達も病気にだけは気を付けて」

娘1「分かってるよ!新規さんは十分確認する」

娘3「お姉ぇは良いなーお金持ち相手で」

女「あなたも良い相手見つけなさい?…そろそろ行くわね」タッタッタ

娘4「あ!!お姉ぇ!!薬忘れてるー」

女「今日はいらないわ!!あなたが使って!!」


10: 2020/09/14(月) 22:33:26.99 ID:JwosRg690
『小部屋』

旅人(…なんか落ち着かないなぁ)

妖精(ケラケラケラ似合ってるよアハハハハ)

旅人(そういう意味じゃないよ)

妖精(あーごめんごめん。まさかそんなに肌が出てるとは思ってなかったから)

旅人(エルフは肌をあまり出さない事くらい知ってるよ。だからそうじゃなくて…)

妖精(じゃぁ何?)

旅人(ここは地下だから人の気配が少ないのは良いけど)

妖精(けど?)

旅人(風の音も木々の音も感じ難い…無機質な物がどこにあるか分からないんだ)

妖精(僕が飛んでいないと音の反射も感じ無いかい?君が音を出せば良いだろう?)

旅人(だから落ち着かないんだよ)

妖精(虚無に吸い込まれそう?)

旅人(こういう場所は嫌いだよ…野宿の方がずっと落ち着く)

妖精(目が見えても、見たくないものまで目に入るから落ち着かないのは一緒だよ)

旅人(…人間の町に慣れなければいけないのかな)

妖精(魔女を探すなら慣れなきゃいけないね…相手は人間なんだから)

旅人(僕一人で探さなきゃいけない?)

妖精(黄泉の狭間からあまり遠く離れた所に妖精は行けないよ…知ってるでしょ?)

旅人(自信が無いよ…)

妖精(君を導く人が現れればやって行けるさ)

旅人(あ!!あの人が来る)


コンコン ガチャリ

11: 2020/09/14(月) 22:33:59.46 ID:JwosRg690
女「あら?また一人でお話?…あなたは不思議な子ね…明かりも付けないで」

女「ん?光る虫?…が居るようね?蛍かな?」

女「明かり付けるわね」シュボ

女「似あってるじゃない…でも髪が伸びっぱなしね」

女「…にしても私が言った事は理解してそうね。言葉は通じる?あなたは誰?どこから来たの?」

旅人「…」

妖精(この人…妖精をすこし見えてるかも)

女「え?何?誰?…あなた?」キョロ

女「気のせいね…今からあなたの髪を揃えてあげる…分かる?こう」チョキチョキ

女「おとなしくしていてね」

女「入っていいわ」

旅人(向こうに居た4人が来る様だ)

妖精(見世物だねぇ…辛抱しときなよ)

娘1「お姉ぇの洋服は少し小さいね」

娘2「うゎぁ本当だ綺麗」

娘3「ムキー!!ムキー!!」

娘4「前髪伸びすぎだね」

女「目が見えてないから気にならないのかもね」

娘4「あ!本当だ…瞳が無い」

女「さぁ切るわよ…おとなしくしててね?」チョキ

旅人(どうしよう…)

妖精(髪の毛くらいどうって事ないよ。やらせておきなよ)

娘1「ねぇこの子何しゃべってるのかな?こんな言葉聞いた事無いよ」

娘2「エルフだったりして?あれ?でも耳が長くないなぁ」

娘3「瞳が無いとなんか気持ち悪いね」フフリ

女「アイレンズの赤いやつが合った筈…探してきて」チョキ

娘4「あれ高いんじゃないの?良いの使って?」

女「良いのよ。どうせみんな使ってないのでしょう?」チョキ

女「ハイ!終わり!アイレンズまだぁ~?」

娘1「持ってきたよ!」ホイ

女「さぁ仕上げに…これはあなたの瞳の代わり」ペタ

旅人(あ…なんだこれ)

女「心配しないで?すぐ慣れるわ。ちょっと立って見て?」グイ


娘達「わおおぉ」

12: 2020/09/14(月) 22:34:29.84 ID:JwosRg690
『翌日』

チュンチュン

旅人(あの女の人は協力してくれるかな?)

妖精(僕のことをしっかり見ることが出来れば話は通じるかもね)

旅人(もう少し黄泉の狭間に近づかないと?)

妖精(満月の夜だと確実かな)

旅人(まだ先だね…ずっとここに居る訳にもいかないだろうし)

妖精(他にもう少し探してみようか)

旅人(…そうだね)


トントン ガチャリ


女「おはよう。早起きなのね」

女「少し外を歩いてみる?…でもね?あなたの話す言葉…これは他の人に聞かれてはいけないわ」

旅人(何て言ってるの?)

妖精(外に連れて行ってくれるらしい。でもしゃべらないでって)

旅人(おかしい人と思われる?)

妖精(多分そうだよ)

女「ほら…また独り言…誰かとお話をしてるの?それとも何かの呪文?」

女「お口チャック…私のいう事が聞けて?」チャック

妖精(首を縦に振れば良いよ)

旅人「…」コクリ

女「!?あら…分かるのね?」ニコリ

女「私の手を放さないでね…目が見えないと歩くのに困るでしょう?」グイ

女「こっちよ」トコトコ

娘1「あ!お姉ぇどこ行くの?その子も一緒?大丈夫?」

女「少しお話をしてみようと思うの…孤児院の方までお散歩しながらね」

女「あなたたちは休んでいなさい?」

娘達「はーい」

女「さぁ…こっちよ。この階段を上がって…」

13: 2020/09/14(月) 22:35:07.38 ID:JwosRg690
『宿屋』

婆「その子はだれだい?見ない顔だねぇ」ジロリ

女「…はい。昨日から仕事を見せてます」

婆「ほぅほぅ新しい子かね?良く見つけて来たねぇ…こんなべっぴんを」

女「はぁ…まだ決まった訳では無いですけれど」

婆「若さだけが売りの俗な商売女…いやだねぇ」

女「……少し出かけてきます」カラン タッタッタ

婆「ちゃんと稼がせるんだよ!!」



『露店のある路地』

女「あなたには見えてないでしょうけど、この路地の奥に孤児院があるのよ」

女「途中で食事をしていきましょう」

武器屋店主「お!?どこ行くんだい?女!!」

女「いつもの孤児院周りよ」

武器屋店主「そうかい。また遊びにいくなー」ノシ

防具屋店主「今日は2人で散歩かい?」

道具屋店主「おぉーまた可愛いねーちゃん連れてるなぁ?新入りかー?」

女「…みんなあなたを見てるわね?」

旅人「…」

パン屋店主「買い出しかね?」

女「パン2つ…それと肉と野菜も付けて。お代はここに」ジャラリ

パン屋店主「まいど!!連れの子は誰だい?」

女「ひ・み・つ。またねー」ノシ

女「行きましょ」トコトコ


女「ここのベンチで食事をしていきましょ?」ハイ モグ

旅人「…」

女「んー何かおかしいなぁ…目が見えていないのならもっとゆっくり歩くと思って居たのに…」

女「段差にも躓かないし…どうして悠々と歩けるのかしら?慣れるとそういう物なの?」

女「あとあなたの周りに小さな光がチラチラしてるのは何?魔法か何か?」

女「本当…不思議な子ねぇ。ほら早く食べて?」グイ

旅人「…」モグ


チュンチュン


女「どうしてかしら?小鳥たちもあなたに興味があるの?」

旅人「…」ポイ ポイ


チュンチュン

14: 2020/09/14(月) 22:35:43.56 ID:JwosRg690
『孤児院』

ザワザワ ザワザワ

女「えっ!!あれは法王庁の馬車…まさか…」

旅人「???」

女「人が集まってる…あなた!私から離れないでね」グイ タッタッタ

男「!!おぉ…女か!!マズイことになった」

女「子供達は?」

男「全員馬車の中だ」

女「どうして中に入れたの!?あなたは何を…」

男「無理やり入ってきやがった…隠し部屋もバレてたんだ…誰か密告しやがった」

女「もう!!何してたのよ!!どうしよう…」

男「こんな朝っぱらから法王庁が直々に来るとは思ってねぇよ…手が出せねぇ」

女「私が言いに行く!」

男「待て!!やめておけ!!お前もとっ捕まるぞ」グイ

女「このままあの子たちを見捨てるつもり?」

男「俺だって何とかしたい…だが相手が悪い…今は無理だ」



法王の使い「これは神のご意思なのです。あなた達は神に選ばれたのです。大変喜ばしい事なのですよ?」

子供達「え~ん;;」

法王の使い「神の御許でのお仕えが許されたあなた達は神のご加護が約束されます。祈るのです。さぁ祈るのです」


タッタッタ


女「子供たち!!無事?」

法王の使い「!?」

子供たち「たすけて~~」

法王の使い「助けてとは何事ですか!!神の御許へ行くのですよ?」

女「法王の使い様…どうか子供たちがもう少し大きくなるまで待って頂けないでしょうか?」

法王の使い「法王庁の決定は神のご意思。それは絶対。神のご意思に背く事を何と言うか言ってみなさい」

女「…」

法王の使い「あなたぁぁ!!それとあなたもぉぉぉ」

旅人「???」

法王の使い「言えないのですか?」

女「…」

法王の使い「教えてあげましょう!!…それはあなたが罪人であるからに他ならないぃぃ!!」

法王の使い「私に許しを請うのであれば神の名の下慈悲を下しましょう」

法王の使い「本来であれば八つ裂きの刑になるところですが…鞭打ちの刑に致しましょう」

法王の使い「神の御慈悲に感謝するのです。さぁ祈りなさい」

15: 2020/09/14(月) 22:36:22.61 ID:JwosRg690
ヒソヒソ何が慈悲だよ

ヒソヒソ狂ってやがる

ヒソヒソ誰か何とかしてよ

ヒソヒソ巻き添え食らうぞ



妖精(もう!!黙ってみてられないなぁ…逃げよう)

旅人(良くない事が起きてるのはわかるけど…)クンクン

妖精(説明は後…こっちへ)

旅人(あの女の人はどうする?)

妖精(良いから早く!!)ダダッ


法王の使い「待ちなさ~い!!あなたぁぁぁ!!聞きましたよ呪いの言葉をぉぉ」

女「あ!!ダメ」

法王の使い「衛兵!!あの女を捕まえなさい!!」

衛兵「ハッ!!」

16: 2020/09/14(月) 22:36:51.84 ID:JwosRg690
『孤児院の前』


男「だから言わんこっちゃねぇ!!女!!今の内だ!逃げろ!!」

女「あの子…目が見えてないの…すぐに捕まるわ」ダダッ

男「誰なんだ?あの女は?」

女「追う」ダダッ

男「おい!今は逃げる時だろ!!面倒ごとに首突っ込むな!!」

女「ああぁ!!危ない!!」

男「!!?」


衛兵「待てぇー」

ピョン クルクルクル シュタッ

女「ええっ!?…木に…飛び乗った」

男「なんだあの女!!えらく身軽じゃねぇか…」

衛兵「囲め囲めぇ!!」

旅人(1,2,3,4,5,6…)クンクン

衛兵「もう逃げられないぞ」

旅人(この匂い)

妖精(気付いたね?風上からゴブリン)

旅人(多い…これは大きな戦いになる…小鳥たちが言ってた通りだ)

衛兵「邪教徒めぇ!!呪文をやめろぉ!!」

旅人(振り切るならゴブリンの方に向かった方が良さそう)

妖精(距離は読める?)

旅人(もうすぐそこに来てる…戻るよ)タッ シュタッ

衛兵「捕らえろぉ!!」


ピョン クルクルクル シュタッ


男「うぉ!!戻って来た…なんだありゃ四つ足で走ってやがる…ウルフか?」

女「信じられない…あの子」

男「おい待て!!どうする気だ!!?どこに行く?」

女「あわわ…衛兵が来てる」

男「ええぃ!!追うしかねぇな…行くぞ」ダダッ

17: 2020/09/14(月) 22:37:28.97 ID:JwosRg690
『孤児院』

ゴブリン「グエーグエーギギギ」

衛兵「散開!!散開!!」

法王の使い「ぐぬぬぬ…これは邪教徒の仕業…あの女は何としても捕えなければいけなぁぁい!!」

衛兵「法王の使い様!!ここは私共が引き受けます。馬車にて御退避下さい」

法王の使い「ふむ…わかりました…これも神の御心…あなた達の事は法王様にご報告をしておきます」

法王の使い「これを打破し、何としてもあの女を捕らえるのです」

衛兵「ハッ!!全隊第一戦闘態勢を取れぇぇ!!騎兵を前面に移動!!」


タッタッタ


男「…何か様子がおかしいぞ?」

女「ちょっと…アレ」

男「ゴ、ゴブリン!?おいおぃ…大変な事になってるじゃねぇか…どうなってんだ?」

女「これは…チャンスかもしれないわ」

男「おい!あのウルフみてぇな女は突っ込んで行くぞ?」

女「…あの子がゴブリンを呼んだのかしら?」

男「それしか考えられんが…しかしそんなに早く呼べるものか?」

女「でもこの状況は利用しないと…子供たちを連れ出したいわ」

男「分かった!俺が馬車に入ってる牢のカギを開ける…その間近づく奴を何とかしてくれ」

女「!?あの子…旋回してる?」

男「掻き回してる様だな…ありゃ目が見えてないのはウソだ…いくぞ!!」

18: 2020/09/14(月) 22:38:03.42 ID:JwosRg690
『馬車』

カチャカチャ カチャカチャ

男「ちょっと待ってろ…今出してやる」

男「他の子供たちはもう一つの馬車の方か?」

男「チッ見当たらねぇな…逃げたか」ガチャン

男「開いた!!出ろ!!」

男「おい!!女!!子供たちを連れてけぇ!!」

女「いけない…衛兵が押されてる…町の方までゴブリンが」

男「子供たち!!泣いてねぇでしっかり歩け!!」

子供たち「え~ん」

女「こっちよ…早く」

男「宿屋の地下か?」

女「そこにしか行くところが無いわ」

男「よし…俺が先に町まで走る!!戦える奴を集めてくる!!」

女「おねがい…わたし達は迂回して宿屋の地下に行くわ」

男「…にしても法王庁の衛兵は役に立たなさすぎだな」

女「おぼっちゃまばかりよ」

男「じゃ!後は頼む!行ってくる」

女「生きてたら酒場で!」

男「分かってる!じゃぁな」

19: 2020/09/14(月) 22:38:34.80 ID:JwosRg690
『孤児院』

シュタタッ シュタタッ

旅人(1,2,3,4,5,6…22)

妖精(その服はやっぱり動き難そうだねフフ)

旅人(足回りがキツイ)

妖精(そろそろ逃げようか)

旅人(この数のゴブリンだと町の方まで行きそうだね)

妖精(一旦戻って隠れて様子見る?)

旅人(着替えは返してもらいたいかな)

妖精(夜まで待って取りに行こう)

旅人(この町はもう離れた方がよさそうだね?)

妖精(僕は楽しんでるよ)

旅人(そうかい?)

妖精(後でゆっくり教えてあげるよ。人間たちの話していた事をさ)

旅人(少しだけ分かるようになってきたよ)

妖精(へぇ)

旅人(人間は言葉の中に感情が含まれているんだ…だから何を言ってるのか想像がつく)


安心、不安、感謝、幸福、欲望、恐怖、勇気…

全部言葉の中に隠れているんだ



その日

ゴブリンの襲撃で法王庁の衛兵は壊滅した

町からの守備隊によりゴブリンを撃退したものの

被害は大きく30名程の氏者が出た

20: 2020/09/14(月) 22:39:03.14 ID:JwosRg690
『酒場』

ガヤガヤ痛てぇぇ

ガヤガヤなんで急にゴブリンが

ガヤガヤお前の所は大丈夫だったのか?

ガヤガヤ母ちゃ~んうぇっうぇっ

ガヤガヤ酒でも飲まねぇとやってらんねぇ

ガヤガヤまた襲ってくるかも知れんなぁ


女「…あの子無事かしら?」

娘「お姉ぇまだ気にしてるの?」

女「不思議な子だったなぁ~…」


カラン コロン


男「よう!無事だったか」

女「あなたもね!?平気?」

男「ここもすっかり難民キャンプみてぇになったな」

女「あら?怪我してるじゃない」

男「あぁ大したこと無い…それより子供たちは?」

女「下で寝てるわ」

男「例のウルフ女は?」

女「それは私の方が聞きたい」

男「居なくなったか…」

女「どうしたの?気になるの?」

男「いやな…あんな立ち回りをする奴は見たことが無くてな」

女「私も驚いた」

男「四つ足で走る女…これだけでオカシイんだが、あの運動量があり得ない」

女「もののけ…ね…あ!!そうそうあの子は初め動物の毛皮を羽織ってたの」

男「ほぅ」

女「灰色の毛皮だったから…多分ウルフね」

男「…なるほど人の姿をしたウェアウルフって訳か…だとしたらあり得る」

女「目の中に瞳が無いのは何か関係が?」

男「さぁな?目が見えてないようには思えんが?」

女「私もおかしいと思ったのよね…」

男「その毛皮は何処にある?見せろ」

女「下にあるわ…来て!目立たないように裏の倉庫からね」

21: 2020/09/14(月) 22:39:52.10 ID:JwosRg690
『宿屋の地下』

キャッキャ アハハ

男「…子供たち起きてるじゃねぇか」

女「おかしいわね」

男「こっちか?」

子供1「妖精さん待てぇ~」

子供2「いじめちゃだめだよぅ」

子供1「もっとお話ししてよぅ」

子供2「え~どうしてぇ?おねんねしないとダメ~?」


男「ん?誰と話ししてるんだ?」シー


子供1「明日も来る~?」

子供2「うん…うん…でもさぁ信じてくれるかなぁ?」

子供1「…分かったぁこうすれば良い~?」

子供2「動かないよ~これで良い?」


ガチャリ

男「誰と話しているんだ?」

子供1「来たぁぁ」

子供2「妖精さんが居るの~ウフフ」

男「妖精?…寝ぼけてんのか?…はやく寝ろ」

女「待って!子供たちの後ろ…あなた帰ってきてたのね」

男「ん?暗くて見えんが…ウルフ女か?」

女「やめて!子供たちを人質にするなんて…」

男「おぃおぃ穏やかに行こうぜ、こっちは丸腰だぜ?」

子供1「妖精さんがね?大人たちとお話がしたいんだって~」

男「そいつぁ妖精じゃねぇだろ」

子供2「違うの~ほらここを飛んでる」

男「見えん!」

女「待って…小さな光…もしかしてこれが?」

男「お前も何言ってんだ?妖精だと?」

子供2「ほらぁやっぱり信じないよ?」

22: 2020/09/14(月) 22:40:25.61 ID:JwosRg690
女「お話続けて?」

子供1「え~とね?この人は妖精が見える大人の人を探してるんだって」

子供1「言葉が違うから妖精さんからお話ししたいけど」

子供1「見つからなくて困ってるんだってさ~…これで良い?」

女「あなた達は妖精さんの声が聞こえるの?」

子供2「聞こえるよ~ウフフ」

女「驚くことばっかりね…」

男「まぁ事情が分からんでも無いが…そのナイフをまず下ろせんか?」

女「そうね…私たちは何もしないからお願い」

子供1「妖精さんがナイフしまってだってさ…え?これは言わなくて良いの?」

旅人「…」スッ

男「ふぅ…穏やかにな?穏やかに…女!!お前も妖精が見えるんだな?」

女「分からない…でも耳を澄ませば少し聞こえる気がするわ」


ヒソヒソ ヒソヒソ


女「え?蝋燭?狭間に近づく?何かしら…蝋燭を灯せば良いのね?」

男「なんだ?蝋燭なら持ってるぞ…」チッチ シュボ


ユラユラ ユラユラ

23: 2020/09/14(月) 22:40:56.80 ID:JwosRg690
『小部屋』

----

----

----

それから母ウルフが寿命で亡くなる前に言い残した言葉が

「お前は森の秩序を乱してしまうから森を出なさい」と…

言葉が通じないのに一人で森から出るのは危険だから

僕が一緒に居て目の代わりとこうやって通訳をしてるんだ

でも僕は黄泉との狭間から遠く離れる事が出来ない

だから協力してくれる人を探しているって訳さ


女「ちょっと待って?黄泉との狭間というのは?」


妖精「んー人間の言葉でいう「あの世」と「この世」の狭間…かな?本当は少し違うんだけど」

妖精「この世で氏んだ後にその魂は狭間を通ってあの世に行くんだよ」

妖精「妖精たちはみんな狭間に住んでいるんだ」

妖精「狭間はこの世界のどこにでもあるけど、遠くなったり近くなったりする」

妖精「例えば昼間より夜の方が近い、新月よりも満月の方が近い…」

女「…この蝋燭の灯も狭間に近づける為?」

妖精「そうだよ」

女「理解できた気がするわ…それで…魔女を探してるって言ったわね?」

妖精「古代の魔法の中に千里眼という魔法があってね…その魔法で目が見える様になるんだ」

女「魔女は…もう居ないかもしれない」

妖精「どうして?」

女「もう何年も前から法王庁からの魔女狩りが続いていて…魔法が使える人はみんな焼かれてしまったわ…」

妖精「困ったなぁ…」

女「…」

24: 2020/09/14(月) 22:41:31.80 ID:JwosRg690
男「…ん?話は終わったか?」

女「大体事情は把握できたわ」

男「俺にはお前が独り言を話してるようにしか聞こえんが…魔女を探してるんだな?」

女「そう言ってるわ」

男「大分遠くになるが…光の国「シン・リーン」に魔術院があったはずだ…生き残りが居るかもな」

女「遠すぎるわね…」

男「んむ…」

女「案内は無理そうね」

男「でもな?魔物がまた来るかも知れんことを考えると、子供たちをいつまでもここに居させる訳にもイカンとは思う」

女「…そうね」

男「…」

女「そういえば…私たちの自己紹介をしてなかったわ」

女「私は女盗賊、そしてこっちの男が盗賊…あなたの名前は?」

妖精「僕は妖精!!彼に名前は無いよ…必要が無かった」

女盗賊「名前が無いと呼び方に困るわ?」

盗賊「何でも良いだろ…ウルフ女にしとけ」

女盗賊「…どうも話によると女ではないらしいの」

盗賊「なぬ!?…オカマだってぇのか?」

女盗賊「私の勘違いで女装させてしまったみたいフフ」

盗賊「おいおぃ…もっと男らしく行けやぁ!!」ジロジロ

女盗賊「私が悪いのゴメンね?」

盗賊「…わかった…男らしく!!…そうだ!今からお前は剣士だ」

盗賊「剣士と妖精!!それで良いな!?」


---剣士、妖精、盗賊、女盗賊が仲間になった---

25: 2020/09/14(月) 22:42:42.86 ID:JwosRg690
『翌日』

チュンチュン

盗賊「よう!やけに起きるの早えな…着替え持ってきたからこれに着替えろ」

剣士「…」

盗賊「それからその赤い目ん玉…女が付ける物だ!どうせ見えねぇなら黒く塗ってやるから外せ」

盗賊「オカマみてぇで気持ち悪い」

剣士「…」

盗賊「…」

盗賊「んあぁ!おい!女盗賊!ちぃと面倒見てくれー」

女盗賊「話は通じてると思うわー。妖精さんが通訳してるから反応鈍いだけと思うの~」

剣士「…」ヌギヌギ

盗賊「…なんかテンポが合わんな」

剣士「…」ゴソゴソ ポイ

盗賊「このウサギみてぇな赤い目ん玉が変わるだけで女くささが無くなる筈だ…」ヌリヌリ

盗賊「…にしても目ん玉が無ぇと気味悪りぃなヌハハ…ほらよ!」ポイ

剣士「…」ゴソゴソ

盗賊「おぅ!ちったぁマシになったな…後は…そうだお前の毛皮…こりゃかなりの上物だぜ?」

剣士「…」ゴソゴソ

盗賊「おぉぉ山賊の様だが随分男らしいじゃねぇか」

女盗賊「その毛皮はね…母ウルフの一部だと言ってたわ」

盗賊「形見か…そりゃ大事にしないとな」

女盗賊「汚れて灰色になってたけど、洗濯したら白くなったわ」

盗賊「母ウルフは大型の白狼だったって訳か…ぬはは…「白狼の剣士」シブいな」

女盗賊「それなら私は「女狐盗賊」?フフ」

盗賊「俺は…なんだ…俺は!!…ん~思い付かん…まぁ良い」

女盗賊「それで…今日は何か考えがあって?」

盗賊「あぁ…ちぃと考えたんだが…商隊に話を付けてくる」

26: 2020/09/14(月) 22:43:14.46 ID:JwosRg690
女盗賊「どうするの?」

盗賊「どうせここに長い事居られないなら子供たちをセントラルに連れて行く」

女盗賊「商隊で行くのは目立ちすぎでは無くって?」

盗賊「そうだ…普通に行っても入国で引っかかるのは分かってる」

女盗賊「無理に決まってるじゃない」

盗賊「奴隷商人のフリをするんだ…子供達と娘4人、それからお前も奴隷になってもらう」

女盗賊「え!?」

盗賊「俺が奴隷商人のフリをして全員まとめて入国だ…鍵開けはまかせろ」

女盗賊「剣士はどうするの?」

盗賊「一緒に行くに決まってるだろ…傭兵役だ…俺と一緒に行動する」

女盗賊「…うまく行きそうね?」

盗賊「一つだけお前にやってもらわなければいけない事がある」

女盗賊「何?」

盗賊「お前は役人にコネがあったな?」

女盗賊「えぇ…」

盗賊「奴隷商人のパスを入手してくれ…出来るか?」

女盗賊「…やってみるわ」

盗賊「じゃぁ決まりだな…剣士を連れて行くぜ?…来い!剣士」

27: 2020/09/14(月) 22:43:42.72 ID:JwosRg690
『街道』

盗賊「俺の後ろから離れるなよ?」スタスタ

剣士「…」スタスタ

盗賊「…よしここなら見晴らしが良い…少し説明してやる」


お前は方角は分かるか?

ここから見えてるんだが、東にあるのが多分お前が来たであろう森だ

その森は南北にずっと続いていて素人が入っても簡単には出て来れねぇ

まぁお前なら知ってるな?

そして今居る場所がトアルという町…商隊の中継点だ

ここから南に3日ほど行くと海に出る

そこにあるのがこの大陸の首都セントラルだ…中立国になっている

貿易の中心地で他のどの国よりもでかい…そして法王庁もセントラルにある

北の方角には砂漠が広がっている…30日ほど行くと火の国シャ・バクダ

その途中にはトアルと同じ様な商隊の中継点がいくつかある

シャ・バクダから気球に乗って森を東へ抜けると光の都シン・リーン

お前が目指すのは恐らくシン・リーンだ…しかし遠すぎる


盗賊「俺たちがお前にどこまで付き合えるか分らんが…今の所シン・リーンに行く予定は無い」

剣士「…」

盗賊「まぁ…しばらくは行動を一緒にした方がよかろう」

盗賊「行くぞ」

盗賊「そうだ…お前に盗賊の極意を教えてやる」

盗賊「フードを深く被れ」ファサ

剣士「…」ファサ

盗賊「そうだ…顔を不用意に見せるな」

盗賊「次に歩き方だ…少し前傾で肩を張れ…これで暴漢には合いにくい」スタスタ

剣士「…」スタスタ

盗賊「その調子だ…もしも暴漢に出くわしても絶対に逃げ腰になるな」

剣士「…」??

盗賊「武器を抜くフリをして相手をビビらせろ…そして相手のスキを探せ」

盗賊「よし!着いたぞ」

盗賊「ここで待ってろ…馬車を調達してくる」

剣士「…」

28: 2020/09/14(月) 22:44:09.98 ID:JwosRg690
『酒場』

ガヤガヤ ガヤガヤ

女盗賊「娘1!水を汲んで来て」

女盗賊「娘2!包帯がもう無いから代わりの物を作って頂戴」

女盗賊「娘3!消毒用のお酒がもう無いから水を使って!!」

女盗賊「娘4!貼り付いた衣服をはがしてあげて!!」


ガヤガヤ痛てぇぇぇ

ガヤガヤ早くしてくれぇ


盗賊「戻ったぜ…又怪我人が増えてる様だな?何かあったのか?」

女盗賊「近くの村から避難してきてるらしいわ」

盗賊「魔物が来てるのはここだけじゃ無いって事か」

女盗賊「その様ね…手が足りないの!!手伝って!!」

盗賊「お、おぅ…馬車が調達出来た…裏の倉庫に入れてある」

女盗賊「いつ出発?」

盗賊「明後日の朝だ…例のやつは間に合うか?」

女盗賊「今晩会う約束をしたわ…多分大丈夫」

盗賊「落ち着いたら身の回りの整理をしとけ」

女盗賊「フフ私達は何も持ってないわ…大事な物は体だけよ」

盗賊「まぁ俺も何も持ってないんだがなヌハハ」

女盗賊「おしゃべりばかりしてないで手を動かして!」

盗賊「ほいほい…」

女盗賊「こんな時に魔法が使える人が居てくれれば…」

盗賊「ん!?…何か…夢で見た事がある気がするぞ」

女盗賊「あなたが夢の話?フフ合わないわ」

盗賊「回復魔法を連発する奴がな…だが顔も名前も覚えてねぇ」

女盗賊「何言ってるのよ…手を動かして!!」

盗賊「わーってるよ」

29: 2020/09/14(月) 22:44:44.42 ID:JwosRg690
『小部屋』

剣士(…ひとまず彼達と一緒の方が良いね)

妖精(理解してくれそうで良かったね)

剣士(光の都シン・リーンだっけ?)

妖精(目が見えなくても不自由しないなら無理に行かなくても…)


僕は生まれた時から見えるということがどういう事なのか知らないんだ

母さんがどんな姿をしてたのか

妖精の君がどうなのか、森、人間、僕の手や足だって

触った感触で僕の心の中に描いてる物

本当はどういう物なのか知りたい

綺麗ってどういう事?醜いってどんな風?

色って何?赤い瞳って何?母さんが白狼だった事も何の事か分からない

よく夢を見るんだ

すごく大事な事をしてる夢

その中に出てくる人が誰だったのかも分からない…思い出せない

すごく大事な事を、忘れてはいけない事を思い出せないのは

きっと今の僕が見えるという事がどういう事なのか知らないからだと思う

その形を見て、顔を見てみたら

大事な事を思い出す気がするんだ

わかるかい?


妖精(わかったよ…魔女を探そう)

剣士(うん…君には本当にお世話になってる)

妖精(わかればヨロシーーー♪)

剣士(ありがとう)

妖精(一つだけ君に教えてあげるよ)

剣士(なに?)

妖精(見えない方が、大事な事が何なのか分かる事だってあるんだよ)

剣士(覚えておくよ)


---すごく大事な事を言われた気がする---

---きっと目が見えない運命に理由がある---

30: 2020/09/14(月) 22:45:17.92 ID:JwosRg690
『宿屋の倉庫裏』

---夜---

盗賊「よし!全員馬車に乗ったな?」

女盗賊「私で最後よ…みんな静かにしてね?」

盗賊「鍵かけるぞ」ガチャリ

盗賊「しばらく苦痛かもしれんが我慢してくれ」

盗賊「眠たかったら寝てて良いぞ」

盗賊「剣士!お前は傭兵のフリをして俺に付いて来い」

女盗賊「完全に夜逃げねフフ」

盗賊「商隊の詰め所に着いたら囚人の様に振舞ってくれ」

女盗賊「分かってるわよ」

盗賊「特に子供達は笑わせないように注意してくれ」

盗賊「商隊と合流したら出発は夜明けだ」

盗賊「寝れるときにしっかり寝ておかないと3日間の移送はかなりしんどいぞ」

女盗賊「檻の中は私に任せて」

盗賊「頼む…じゃぁ行くぞ」グイ ヒヒーン


ガラゴロ ガラゴロ

31: 2020/09/14(月) 22:46:11.60 ID:JwosRg690
『商隊の詰め所』

商隊長「積み荷の確認をする」

盗賊「あぁ問題ない…あまり他には見せない様に頼む」

商隊長「荷物は何だ?」

盗賊「大きな声では言えんが…奴隷と食料だ」

商隊長「…」ジロリ

盗賊「他には大したもん積んでねぇ…見てくれ」バサ

商隊長「…女、子供か…いくらで売るんだ?」

盗賊「すでに売約済みだ…細かいことは聞きっこ無しで頼む」

商隊長「ケッ…行っていいぞ。夜明けに出る。この馬車は先頭の次に付け」

盗賊「わかった…ところで今回は馬車が多い様だが何運んでるんだ?」

商隊長「遺体だ」

盗賊「あぁ…法王庁の衛兵か」

商隊長「そうだ…金持ちの考えそうな事だ」

盗賊「金持ちのぼっちゃんを馬車一台に積み上げる訳に行かねぇってか…まったくもって無駄だな」

商隊長「奴隷商のお前が言う事かと言いたい所だが…まぁ同感だ」

盗賊「わるいわるい…野暮な事聞いたな…商隊、安全に頼む」



---朝---

盗賊「出発するぜ?」グイ ヒヒーン


ガラゴロ ガラゴロ


盗賊「トアルの町はこれでおさらばだ…子供たち!!馬車の隙間から最後に見ておけ」

盗賊「おまえたちの故郷だった場所だ」

子供達「え~ん;;とーちゃーん…おかあちゃーん」

女盗賊「もう!!泣かせないでよ」

盗賊「これで良いんだ…こうやって大人になる」

32: 2020/09/14(月) 22:47:13.76 ID:JwosRg690
『商隊1日目』

ガラゴロ ヒヒーン ブルル

盗賊「今日はここでキャンプだとよ」

女盗賊「柵は一応あるのね…」

盗賊「簡易中継点だな…魔物が来なきゃ良いが…」

女盗賊「寒いわ」ブルブル

盗賊「湯を沸かしてやる…待ってろ」

女盗賊「鎖に繋がれて移送されてると…なんだか気力が無くなっていくわ」

盗賊「そうか」

女盗賊「奴隷にされた人達はこうやってやつれて行くのね」

盗賊「だろうな…明日の身を案じながら絶望と戦うんだな」

女盗賊「戦う?…その気力が無くなって行くと思うわ」

盗賊「そうか…甘いのは俺の方か…絶望しながら憎悪や憎しみが沸くんだな」

女盗賊「そう…そんな感じ」


ヒラヒラ


妖精「…そして氏んだ後その魂は無念を抱えて狭間を彷徨う」

女盗賊「!?妖精さん?」

妖精「魂の行く先は黄泉」

女盗賊「狭間に近づいてるのね?」

妖精「その魂が黄泉で実体化した物が魔物」

女盗賊「妖精さんどこに居るの?」

妖精「魔物がちょっとしたきっかけで狭間に迷い込んで」

盗賊「ん?ブツブツ聞こえるな」

33: 2020/09/14(月) 22:47:42.79 ID:JwosRg690
妖精「狭間が遠くなった時にこの世界に取り残されるんだよ」

女盗賊「因果…人間たちの行いが魔物を呼んでるのね」

妖精「そう…そうやって「あの世」と「この世」は調和しているんだ」

女盗賊「その調和を乱しているのはもしかして…」

妖精「人間だよ…そして崩れた調和を戻すための大破壊が魔王の復活」

女盗賊「え…」

妖精「でも200年以上昔のお話」

女盗賊「…私の兄が言っていた事と同じ…本当にそんな事があったのかしら」

盗賊「んあ?兄?…あいつか盗賊ギルドマスター」

盗賊「話がよくわからんな…兄がどうした?」

女盗賊「剣士と妖精を兄に会わせた方が良いかもしれない」

盗賊「…なんだ急に!行き先が反対方向じゃねぇか…あいつはシャ・バクダに…」

女盗賊「そうね…話が急すぎるわね」

盗賊「まぁゆっくり考えてからにしろ」



----------



盗賊「湯を持って来たぜ」

女盗賊「ありがとう」

盗賊「水袋に小分けして今日はそれを抱いて寝ろ」

盗賊「毛布は今ある分しか無ぇから牢の中に牧草を多めに入れてやる…っよ」ガッサ ガッサ

盗賊「これで良いな?…あとは静かにしてろ」


ヒソヒソ ヒソヒソ

ムキー

ヒソヒソ ヒソヒソ


盗賊「特に娘たち4人…文句ばっかり言ってねぇでガマンしろ」

34: 2020/09/14(月) 22:48:23.60 ID:JwosRg690
『商隊2日目』

ガラゴロ ガラゴロ

盗賊「延々と馬のケツ見てるのもいい加減飽きるな…剣士!お前何か話せねぇのか?」

剣士「…」

盗賊「大した良い眺めでも無ぇしなぁ…」

女盗賊「久しぶりに模擬戦でもやってみたら?体なまってるのではなくって?」

盗賊「こいつとか?…んむ…面白そうだな」

剣士「…」???

盗賊「よし!今日のキャンプで一回やってみるか」

剣士「…」???

盗賊「まぁ心配すんな…木の枝を使って戦闘の立ち回りをやるだけだ…怪我しない程度にな」

盗賊「魔法とかそういうのは無しだ…使えるかどうか知らんが」

盗賊「武器の使い方を知らないなら教えてやる…まぁ一回やると大体適正は分かるな」

盗賊「お前も男ならちったぁ戦える様になった方が良い」



---夜---

盗賊「暗くなっちまったな…焚火付近でやるか…ホレ!」ポイッ

剣士「…」パス

盗賊「その枝が剣替わりだ…ゆっくり行くぞ?…防いでみろ」カン カン コン

盗賊「…そうだ!そんな感じだ」

盗賊「もう少し早く行く!!構えろ」ダダッ カンカン コン

盗賊「やるじゃねぇか…次は打ち込んで見ろ」

剣士「…」スッ

盗賊「おいおい待て…四つ足になんのか?それじゃ枝持てねぇんじゃねぇのか?」

剣士「…」

盗賊「…まぁ良い来てみろ」

剣士「…」スッ ピョン カン

盗賊「!!うぉ…あぶねぇ」タジ

盗賊「お前のその低い踏み込み…すげぇじゃねぇか!!」

35: 2020/09/14(月) 22:48:49.40 ID:JwosRg690
もう一回やってみろ!!

うぉ!!いで!!

んのやろう…

もう一回だ!! 

うらぁ!防いだぞ!!その後どうする!?

何ぃ…飛ぶのか

わかった本気出してやる…コイ!!


カン カン コン ビシ イデッ

ピョン クルクル シュタ ビシ アダッ

ダダッ カン ポカ イダッ


盗賊「ぜぇぜぇ…わかったわかった…お前にゃ敵わん」

盗賊「お前の剣筋は普通の剣士では無い事がよく分かった…はっきり言う…お前はすげぇ!!」

盗賊「今日はもうヤメだ…おぉイテテ」

36: 2020/09/14(月) 22:49:17.82 ID:JwosRg690
『馬車』

女盗賊「フフ完敗だったわね…怪我してない?」

盗賊「大した事は無いんだが…見てみろ…」

女盗賊「あら…急所にばかり当たってる様ね?」

盗賊「目が見えてないのは大したハンデでは無いな…ありゃ」

女盗賊「ここから見てても分かったわ…四つ足の地面を這う様な飛び込み」

盗賊「あぁ…たまげた…そこからの切り上げが見えんのだ」

女盗賊「戦い辛い?」

盗賊「そういうレベルでは無い…勝負にならん…速すぎる」

盗賊「普通は剣筋や目の動き、体の動きで攻撃の来る方向がある程度分かる筈なんだが…」

盗賊「ノーモーションであの速さは避けれん」

盗賊「低い所からの切り上げで…見ろ…内股、内腿、脇腹…痛い所にばかり当てて来やがる」

女盗賊「目で見て戦っていないからかしら?」

盗賊「…そうかもしれん」

女盗賊「あなたも教えてもらったら?」

盗賊「シャクだがそうさせて貰う」

女盗賊「フフ素直ね」

盗賊「いやな…悪いがあいつに勝てる戦士は限られると思うぞ…力こそ無いが動きがパネェ」

女盗賊「本当不思議な子ね」

盗賊「白狼の剣士…その名の通りだ」

37: 2020/09/14(月) 22:49:46.13 ID:JwosRg690
『商隊3日目』

ガラゴロ ガラゴロ

盗賊「おい見ろ!見えてきたぞ!中立の国セントラル」

盗賊「日没前には入れそうだな…今日は旨い物食えるぞ!もうちょい辛抱しろ」


ヒソヒソ ヒソヒソ

アーデモナイ コーデモナイ

ムキー ムキー

ヒソヒソ ヒソヒソ


盗賊「入国するまでは奴隷らしくしててくれぃ」

盗賊「あと剣士!何かあっても威圧的に振舞え…ナメられると暴漢に後を追けられる」

盗賊「女盗賊!もしはぐれたら貧民街の酒場で合流だ…おい聞いてんのか?」


----------


盗賊「なんだありゃ…200いや500くらい居るな?」

女盗賊「何?」

盗賊「兵隊だ…戦争にしちゃ少くねぇ…二個中隊ほどか」

女盗賊「何かあったのかしら?」

盗賊「物騒だな…今から移動するとなると夜行軍になるんだが何やってんだ?」

女盗賊「魔物退治かしら?」

盗賊「移動し始めてる…すれ違う形になるぞ!おしゃべりはここまでだ」


----------

38: 2020/09/14(月) 22:50:15.56 ID:JwosRg690
盗賊「ちぃ…商隊の先頭が止まりやがった…面倒だな」

盗賊「ちょいと足止めだ!おとなしくしてろよ?」

女盗賊「ちょっと…向こう側」

盗賊「ん?」

女盗賊「あの馬車」

盗賊「…法王庁か…面倒には巻き込まれたくねぇ」

女盗賊「この様子からすると大規模な奴隷狩り…」

盗賊「神様気取りの体の良い奴隷狩りな…糞くらえだ」

女盗賊「こっちに来ない事を祈るわ」

盗賊「法王庁が手薄なスキにお宝頂くって考え方もある」

女盗賊「前向きなのね」

盗賊「俺ぁ泥棒だ…子供たちを盗まれっぱなしじゃ気が済まねぇ…利子付きでキッチリとな」



----------



盗賊「ふぅ…行ったか」

女盗賊「夜行軍の理由はどう考えて?」

盗賊「トアルの孤児院に来たのも朝っぱらだ…目立たん様に行動してるんだろ」

女盗賊「あの数ではどのみち目立つのでは無くって?」

盗賊「ふむ…夜は狭間が近いと言っていたな?関係あるかも知れんな」

女盗賊「考えすぎでは?」

盗賊「まぁ…理由はわからんが…素人ではない軍隊の行動だから必ず理由はあるな」

39: 2020/09/14(月) 22:50:44.74 ID:JwosRg690
---門---

門番「荷物とパスを確認する!!」

盗賊「これがパスだ」ポイ

門番「荷物は…奴隷か…この後どこに行くんだ?」

盗賊「中央広場で取引相手を待つ…すでに売約済みなんだ」

門番「む…おかしいぞ。中央広場で奴隷の取引は禁止の筈だ」

盗賊「…知るかよ!そこに指定されてんだよ」

門番「取引相手は誰だ?」

盗賊「…言える訳ねぇだろが」---マズイ---

門番「衛兵を呼ぶ」

盗賊「おい待てよ!面倒事にすんなよ」(剣士!威圧するフリ行け!)ヒソ

門番「む…なんだこいつは」タジ

盗賊「そいつはアサシンだ…法王庁のな」

門番「脅迫か?」

盗賊「…もう分かるだろ?取引相手が誰だか」

門番「…話は聞いていない」

盗賊「あぁぁ面倒だな…俺がゲロったのバレたらお前もタダじゃ済まんぞ?」

門番「衛兵!衛兵!」

盗賊「っち…法王の使いだ!本当は法王庁に直接運ぶ予定だったんだが予定が変わったんだとよ」

盗賊「さっき門の外で法王の使いに会ったんだが、今引き取れないから広場で待てと指示されたんだよ」

盗賊「もう知らねぇからな?」

盗賊「俺ぁ厄介事には関わりたくねぇ…馬車ごと置いていくからお前らで何とかしろや!」

衛兵「どうした!?」ダダダッ

盗賊「上等な奴隷移送させておいてこの扱いかよ!!」ペッ

門番「……この商人を中央広場までお連れしろ…法王庁の御指示だ」

衛兵「はぁ?何でお前が指示するの?指示書はどうした?」

盗賊「分かれば良いんだよ…俺がゲロったのは秘密にしてくれ…裁判なんて御免だぜ」

衛兵「ゲロった?」

盗賊「…見てくれ…これが運んでる物だ」

衛兵「女、子供か」

盗賊「どういう意味か分かってんだろ?俺も本当は関わりたくねぇ」

衛兵「……付いて来い!!荷は隠せ!!」

40: 2020/09/14(月) 22:51:10.88 ID:JwosRg690
『中立の国セントラル』

ガヤガヤ ガヤガヤ

盗賊「ぶはぁ!!ヒヤッとしたぜぇ」カチャ カチャ

盗賊「今鍵開けてやるからな…出たら一旦人ゴミの中に入って皆別行動だ」カチャ カチャ

女盗賊「もう膝が痛くて…」

盗賊「金は持ってるな?」カチャ カチャ

女盗賊「大丈夫よ」

盗賊「集合場所は貧民街のカク・レガという酒場だ。俺は馬車を預けてから行く」カチャ カチャ

女盗賊「剣士は?」

盗賊「お前が手を引っ張ってやってくれ。忙しくて面倒見切らん」カチン

女盗賊「わかったわ」

盗賊「開いたぞ!!自由だ!!出て走れ!!」

女盗賊「行くわよ!!剣士!!手を!!」グイ


わ~い

ウフフ~

キャッキャ

ムキー


盗賊「ようし!!ひとまずこれで安全だな…あいつら速攻居なくなったな」


---旨い物でも食うかぁ!!---

41: 2020/09/14(月) 22:51:43.37 ID:JwosRg690
『中立の国セントラル』

ガヤガヤ ガヤガヤ

盗賊「ぶはぁ!!ヒヤッとしたぜぇ」カチャ カチャ

盗賊「今鍵開けてやるからな…出たら一旦人ゴミの中に入って皆別行動だ」カチャ カチャ

女盗賊「もう膝が痛くて…」

盗賊「金は持ってるな?」カチャ カチャ

女盗賊「大丈夫よ」

盗賊「集合場所は貧民街のカク・レガという酒場だ。俺は馬車を預けてから行く」カチャ カチャ

女盗賊「剣士は?」

盗賊「お前が手を引っ張ってやってくれ。忙しくて面倒見切らん」カチン

女盗賊「わかったわ」

盗賊「開いたぞ!!自由だ!!出て走れ!!」

女盗賊「行くわよ!!剣士!!手を!!」グイ


わ~い

ウフフ~

キャッキャ

ムキー


盗賊「ようし!!ひとまずこれで安全だな…あいつら速攻居なくなったな」


---旨い物でも食うかぁ!!---

42: 2020/09/14(月) 22:52:17.22 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』

カラン コロン

マスター「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」

盗賊「あぁ…カウンターで良い!!何がある?」

マスター「サボテンのテキーラが旬になりますが…」

盗賊「それで良い…ボトルで持ってこい」

マスター「かしこまりました」

盗賊「この店には女は居ねぇのか?」

マスター「あいにくこの辺りでは稼ぎが少なくて…その…中央の方に人が集まっておりまして」

盗賊「ヌハハそりゃ丁度良い…」

マスター「はい??」

盗賊「ここで連れと待ち合わせてるんだが…それらしい奴は来てねぇか?」

マスター「今日はまだ見えてない様です」

盗賊「そうか…待たせてもらう」

マスター「かしこまりました…ごゆっくりと」

盗賊「…ところで」

マスター「はい?」

盗賊「夕暮れ前に法王庁が大軍連れて外に出ていくのを見たんだが…何か知らんか?」

マスター「はぁ…このところ客足が遠のいておりまして…」

盗賊「まぁ仕方ねぇな…女が居ねぇと情報も集まらんだろうな」

マスター「よくご存じで…」

盗賊「…」ジロリ

マスター「な、何か?」

盗賊「口は堅い様だな」

マスター「御冗談を…」

盗賊「まぁ良い…女5人雇えるか?」

マスター「5人!?」

盗賊「上玉だ…まぁ本人達にやる気を聞いてみるのが先なんだがな」

マスター「どちらの女性で?」

盗賊「もう直ぐ来ると思うが…育ちは悪いが容姿は保証する」

43: 2020/09/14(月) 22:52:50.65 ID:JwosRg690
ペチャクチャ

お姉ぇここで合ってるの~?

あいつさぁ!!同じくらいじゃないの?

でも好みだなぁウフフ

この階段の下?

ペチャクチャ



盗賊「噂をすりゃ何とやら…来たぜマスター」

マスター「いらっしゃいま…」

娘1「あ!!いたー!!」

娘2「何このシケた店…」

娘3「みーっけウフフ」

娘4「ちょっと休んで良い~?」

女盗賊「待った?」

マスター「…」

盗賊「…と、まぁこんな感じだ」


----------

44: 2020/09/14(月) 22:53:20.40 ID:JwosRg690
盗賊「子供たちはどうした?」

女盗賊「近くの宿屋で剣士が付いてくれてるわ…もう寝てると思うけど」

盗賊「そうか…宿代はどうだ?」

女盗賊「それ程高くはないけれど…あまり長く居れる程余裕は無いわね」

盗賊「この人数じゃしょうがねぇか」

女盗賊「そうね…でも働く場所には困らないと思うわ」

盗賊「この店で女5人雇ってくれるとよ!!なぁマスター!!」

女盗賊「それはありがたいけれど大丈夫かしら…」

盗賊「稼ぎゃ良いんだよ!前とさして変わらん」

女盗賊「あなたはどうするの?」

盗賊「俺ぁ泥棒だ…稼ぎ方はそれしか無ぇ…ただ今は情報が欲しい」

女盗賊「盗賊ギルド支部は今機能してるのかしら?」

盗賊「さぁな?普段顔出さねぇ奴がノコノコ行って相手されるとは思わんがな」

女盗賊「それもそうね…」

盗賊「金が無くなるまでゆっくり情報集めが先だ」

女盗賊「そういえばさっき宿屋で妙な噂を聞いたわ」

盗賊「お!?」

女盗賊「近くで魔女が出たらしいの…捕まえたら金貨一袋らしいわ」

盗賊「近くというだけでは動けんな…それから金貨一袋ってのもケチくさい話だ」

女盗賊「その魔女の特徴が…赤い瞳」

盗賊「ぶっ!!…そりゃまさか」

女盗賊「噂が広まるのって早いものねフフ」

盗賊「…」

女盗賊「ん?どうしたの渋い顔して?」

盗賊「ぃぁ…まさかとは思うが…法王庁は魔女狩りに行った訳ではあるまいな?」

女盗賊「…可能性としては…有りね」

盗賊「二個中隊の軍隊だと近隣の村は蹂躙されるぞ」

女盗賊「考えたくないわね」

盗賊「そうだな…考え過ぎと思いたい!夜行軍の理由とも結び付かねぇし…」

盗賊「いや!そもそも魔女なんか俺は見てねぇ!」

盗賊「ぬあぁぁ何だか腹がムカムカする」

45: 2020/09/14(月) 22:54:02.05 ID:JwosRg690
『数日後』


---夜---

タッタッタ

盗賊「剣士!付いてきてるな?」

剣士「…」

盗賊「よし…お前はここで待機だ」

盗賊「俺はあの屋敷に入って金目の物をかっぱらって来る」

盗賊「追手が出て来たらお前は俺の逃げ道を確保してくれ」

盗賊「逃げるルートは今通って来た屋根を伝って中央の方向に向かう」

盗賊「出来るな?追手を軽く掻き回すだけだ…[ピーーー]なよ?」

剣士「…」

盗賊「よし!10分で戻る!」タッタッタ



---10分後---


ガチャーン パリーン

居たぞ!そっちだ!追え!

ガタガタ タッタッタ


盗賊「見つかったぁ!!剣士!!頼む!!」タッタッタ

衛兵1「ピーーーーー!!」

剣士「…」---笛!?---

衛兵2「おい!!そこのやつを捕まえろ!!」

剣士「…」ピョン ドシ

衛兵2「ぬぁ!!お前も仲間かぁ!!」

衛兵3「捕まえろ!!」

衛兵4「どうした!?」

衛兵1「こいつら泥棒だ!!囲めぇ」

46: 2020/09/14(月) 22:54:35.50 ID:JwosRg690
ピョン クルクル シュタッ


衛兵1「もう一人逃げてる!!屋根に登ってるぞ!」

衛兵2「分かったぁ」

剣士「…」ピョン ドシ

衛兵2「ぐぁ…邪魔をするな!」

剣士「…」ヒョイ

衛兵2「おのれちょこまかと…衛兵!衛兵!」

衛兵1「ピーーーーー!!」


ピョン ピョン ピョン


衛兵3「何ぃぃ!!もう屋根の上に」

衛兵「追えーーー追うんだぁぁ」

47: 2020/09/14(月) 22:55:36.36 ID:JwosRg690
ピョン クルクル シュタッ


衛兵1「もう一人逃げてる!!屋根に登ってるぞ!」

衛兵2「分かったぁ」

剣士「…」ピョン ドシ

衛兵2「ぐぁ…邪魔をするな!」

剣士「…」ヒョイ

衛兵2「おのれちょこまかと…衛兵!衛兵!」

衛兵1「ピーーーーー!!」


ピョン ピョン ピョン


衛兵3「何ぃぃ!!もう屋根の上に」

衛兵「追えーーー追うんだぁぁ」

48: 2020/09/14(月) 22:56:15.27 ID:JwosRg690
『中央広場』

ピョン タッタッタ

盗賊「よし!追いついて来たな!?ちぃと荷物が重い…こっちを持て」ポイ

剣士「…」パス

盗賊「まだ衛兵は追ってきてるな?」

盗賊「中央の人混みでお宝の半分をバラ撒け…人に揉まれる前に逃げるぞ!!」

盗賊「俺からはぐれるなよ?行くぞ」タッタッタ

衛兵「まてぇぇぇぇぇ」


ガヤガヤ ガヤガヤ

ん?なんだ?白いフード?

どん!!おい!気を付けろ!!

バッサー キラキラキラ

うぉ!!金貨だ!うぉ!!宝石だぁ!

バッサー キラキラキラ

うおぉぉぉ金だぁぁぁ

バッサー キラキラキラ


衛兵「ぬぁ!どけ!!お前らどけぇ!!」

大衆「金だ金だぁぁぁぁ」ドヤドヤ

衛兵「んがぁぁ…」


盗賊「剣士!トンズラするぞ!!」タッタッタ

剣士「…」タッタッタ

盗賊「ぬははチョロいな…おっと俺としたことが…フードがはだけちまう所だったぜ」

盗賊「フードは深く被れ…盗賊の極意だ」ファサ

剣士「…」ファサ

49: 2020/09/14(月) 22:56:58.28 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』

ガヤガヤ

マスター「いらっしゃいませ」

盗賊「おう!マスター!ちったぁ客が入ってる様だな」

マスター「おかげさまで」

女盗賊「あら?いらっしゃい…飲んで行く?」

盗賊「あぁ頼む!剣士の分もだ!おい…例のやつ出してやんな」

剣士「…」ヨッコラ ドン

女盗賊「何かしら?」

盗賊「おしゃれな洋服だ!20着はある…その貧相な洋服じゃ客の入りも悪いだろ」

女盗賊「あら?気を使ってくれたのね?」

盗賊「それからコレはお前にだ」ポイ

女盗賊「ネックレス?」パス

盗賊「虹のしずくという物だ…偶然見つけたもんでな」

女盗賊「フフフ盗んだ物でわたしの気を引けると思って?…でも嬉しいわ…似合う?」

盗賊「幸運を呼ぶ物だそうだ…大事にしろ」

女盗賊「娘たち!?お土産を持ってきてくれたわ…おいで」


ムギャー ワタシコレ イマキガエテイイ?
エー アレモコレモ コッチカナ アッチカナ?
イーナイーナ キャー ズルイ ワタシモー
ムキー コレニアウ? エ? オッパイミセロ?

50: 2020/09/14(月) 22:57:26.78 ID:JwosRg690
盗賊「それからマスター!これで客に旨い酒出してやってくれ」ジャラリ

マスター「かなり多い様ですが良いのですか?」

盗賊「騒がしてる迷惑料だと思ってくれ」

女盗賊「どこに行ってたのよ」

盗賊「まぁな…今日の収穫はその洋服20着がメインだ…残りは剣士がほとんど捨てちまったヌハハ」

女盗賊「フフらしいわ」

盗賊「でもな?金貨一袋ぐらいは残ってる…お前が預かっとけ」ドン ジャラ

女盗賊「助かるわ…これで子供達を孤児院に預けられそう」

盗賊「あぁその方が安全だ」

女盗賊「他には何か収穫はあって?」

盗賊「まだ無いな…地理が大体わかって来たぐらいか」

盗賊「あぁそういや貴族居住区は割と警備が良いな…笛ですぐに衛兵が飛んでくる」

女盗賊「あまり無理は出来ないっていう事ね?」

盗賊「んむ…極力隠密で動く必要がある」

女盗賊「私に何か出来て?」

盗賊「逃げ道のルート確保は剣士で問題ない…俺が鍵開けをやっている間の見張りが欲しい」

女盗賊「分かったわ…次はいつ?」

盗賊「目標を決めたらまた連絡する」

51: 2020/09/14(月) 22:58:01.12 ID:JwosRg690
『貴族居住区』

盗賊「あそこの建屋だ」

女盗賊「もう少し夜が更けるまで待ったら?」

盗賊「いぁダメだ逃げ道で人に紛れんと足が付く」

女盗賊「中に人が居るのでは無くって?」

盗賊「…多分居ねぇ筈だ。この時間は貴族どもは食事パーティーに出てる」

女盗賊「今がチャンスね」

盗賊「剣士!この間と要領は一緒だ。お前はここで待て」

盗賊「必ず10分で戻る。それまで隠れていてくれ。ここを通れんとえらく大回りする事になっちまう」

剣士「…」コクリ

女盗賊「大分意思疎通出来るようになってきたわね?」

盗賊「無駄口叩いてないで行くぞ!来い!」タッタッタ

女盗賊「鍵開けの間に見張ってれば良いのね?」

盗賊「あぁ…裏の勝手口から行くぞ」



----------


??「よし!情報通り手薄な様だ…この通路の奥からアクセス出来る」

??「待って…誰かいる」

??「む…去るのを待つか」

??「あたし見てこよーか?」

??「むぅ…私が行こう…出来れば戦闘は回避したいのだがな」

??「奥の区画はここしか入るところ無いよ?」

??「仕方あるまい…一発で仕留める…クロスボウのボルトは何発持ってる?」

??「4…」

??「私が奴の背後に回って仕掛ける…やり損じた時はお前はここから援護するのだ」

??「アイアイサー」

??「私が仕掛けるまで動くな」

??「りょ」



----------

52: 2020/09/14(月) 22:58:38.29 ID:JwosRg690
??---妙だな…奴は何をしているというのだ…動かんな---

??---頃したくは無いのだが…えぇぃ邪魔な奴め---

??---恨むなよ--- シュン!!


剣士「…」---何か…来る--- ピョン ヒラリ

??「何ぃ!?奴は後ろが見えるいのか?」---援護撃て!--- シュン シュン

剣士「…」---挟まれている?--- ピョン クルクル シュタ

??「外したか!!えぇい!!笛を吹かれる前に!!」タッタッタ ブン

剣士「…」ヒラリ

??「お前は只者では無いな?法王庁の者か!?」ブン

剣士「…」 クルクル シュタ

??「最後の2本!!」シュン シュン

剣士「っつ!」ヒラリ

??「…一旦引くぞ」タッタッタ

??「わーーてるってコッチ!!」タッタッタ

??「今日は引き返す…あんなのが居るとは想定外だ」

??「追って来てないヨ」

??「衛兵では無いのか…同業者と見るか…いゃ」

??「あんな目立つ格好で?白い毛皮」

??「むぅ…作戦を変えるか…正攻法では城まで行けん様だ」

??「敵だったのかな?」

??「貴族居住区にあれほどの者が居るとなると下手に手は出せん」



----------


タッタッタ

盗賊「戻ったぜ!うまく行った…ん?」

剣士「…」フラ

盗賊「何かあったのか?…む?ボルトが落ちてんな」

女盗賊「あなた!血が出てるじゃない!どうしたの?肩ね…」

盗賊「衛兵には見つかってねぇ…今のうちにズラかるぞ」

女盗賊「走れて?…肩を」グイ

剣士「ぁぁぁ」

女盗賊「…ダメよ!抜いてはダメ…少しの辛抱よ」

盗賊「下から戻ろう…わざわざ屋根上行くこともあるめぇ」

女盗賊「見たところ大事には至ってなさそう…止血できればすぐに良くなるわ」

盗賊「ボウガン使うって事は同業者の可能性が大きいな」

女盗賊「相手は逃げてしまった?」

盗賊「引き際が早いのはプロだ…どこかで狙ってるかもしれんから建物の陰を走る」

女盗賊「後を付けられる可能性はどう考えて?」

盗賊「あぁ…仕方ねぇから中央で金バラ撒いて紛れる」



----------

53: 2020/09/14(月) 22:59:19.08 ID:JwosRg690
??「白いのが来たよ!?あと仲間が2人」

??「やはりここを通るか…私達を追っているか?」

??「わかんない…どうする?」

??「行くさ…私の邪魔をしたからにはツケは払ってもらう」

??「もうボルトが無いよ?」

??「構わん…何者なのか探る」

??「なんかオシャレな感じ」

??「白いのがリーダーと見るか?…フフ…お手並み拝見と行こう」

??「なんか歩き方がおかしい…ボルト当たってたかな?」

??「…そうだな…ぃゃしかし四足歩行…だと?何なのだあいつは…」

??「走って行っちゃうよ」

??「屋根伝いに追う」

??「中央の方向」

??「むぅ…人通りを避けんか…逃げられるなこれは」

??「あ!!!何かバラ撒いてる」

??「ちぃ…こうも予想外が続くとはな」

??「あぁぁ人混みに…」

衛兵「居たぞ!!屋根の上だ!!ピーーーーーー」

??「笛か!仕方ない私たちも人に紛れるぞ…後は分かるな?」

??「いちいちウルサイなぁ…分かってるって」

衛兵「ピーーーーー」

54: 2020/09/14(月) 22:59:50.51 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』

ワイワイ 

盗賊「…じゃ頼むぜ?」

マスター「話はつけておきます」

盗賊「明日には荷物も持って行きたいんだが…よろしく頼む」

娘「あ!お姉ぇ!!おかえりぃ」

盗賊「お?戻ってきたな…どうだ剣士の具合は?」

女盗賊「ボルトを抜くのにちょっと体力消耗しちゃったけど…しばらく安静にしていれば直ぐに良くなるわ」

盗賊「痛がってたか」

女盗賊「当たり所が悪くなくて良かったわ…もしも体に当たっていたらボウガンの貫通力だと命に係わるから」

盗賊「まぁ無事なら良い」

女盗賊「ボウガン使っていたのは2人だったそうよ」

盗賊「ふむ…同業者に間違いなさそうだが、いきなりボウガン撃つってなると盗賊ギルドの者では無さそうだな」

女盗賊「何かの抗争かしら?」

盗賊「頃してでもあそこより先に進みたい何かがあると見た…きなくせぇ」

女盗賊「まだ関わるつもり?」

盗賊「いや…しばらく休業だ」

女盗賊「その方が良いわ」

盗賊「十分稼いだからなヌハハ明日は引っ越すぞ」

女盗賊「あぁマスターが言ってた裏の空き家ね」

盗賊「聞くところによると下水へ行く抜け道があるらしい…俺達にはもってこいだ」

女盗賊「家の中に?」

盗賊「どうやら前住んでた奴が地下にだれか監禁してたらしく、そいつが逃げる為に壁に穴開けたんだとよ」

女盗賊「フフなんだか気持ち悪いわね」

盗賊「良いじゃねぇか!下水も俺たちのモンだ…引っ越した後は下水がどこに繋がってるか探検だ」

女盗賊「私は降りるわ」

盗賊「ケッ…勝手にしろやい」

55: 2020/09/14(月) 23:00:39.12 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』

ワイワイ 

盗賊「…じゃ頼むぜ?」

マスター「話はつけておきます」

盗賊「明日には荷物も持って行きたいんだが…よろしく頼む」

娘「あ!お姉ぇ!!おかえりぃ」

盗賊「お?戻ってきたな…どうだ剣士の具合は?」

女盗賊「ボルトを抜くのにちょっと体力消耗しちゃったけど…しばらく安静にしていれば直ぐに良くなるわ」

盗賊「痛がってたか」

女盗賊「当たり所が悪くなくて良かったわ…もしも体に当たっていたらボウガンの貫通力だと命に係わるから」

盗賊「まぁ無事なら良い」

女盗賊「ボウガン使っていたのは2人だったそうよ」

盗賊「ふむ…同業者に間違いなさそうだが、いきなりボウガン撃つってなると盗賊ギルドの者では無さそうだな」

女盗賊「何かの抗争かしら?」

盗賊「頃してでもあそこより先に進みたい何かがあると見た…きなくせぇ」

女盗賊「まだ関わるつもり?」

盗賊「いや…しばらく休業だ」

女盗賊「その方が良いわ」

盗賊「十分稼いだからなヌハハ明日は引っ越すぞ」

女盗賊「あぁマスターが言ってた裏の空き家ね」

盗賊「聞くところによると下水へ行く抜け道があるらしい…俺達にはもってこいだ」

女盗賊「家の中に?」

盗賊「どうやら前住んでた奴が地下にだれか監禁してたらしく、そいつが逃げる為に壁に穴開けたんだとよ」

女盗賊「フフなんだか気持ち悪いわね」

盗賊「良いじゃねぇか!下水も俺たちのモンだ…引っ越した後は下水がどこに繋がってるか探検だ」

女盗賊「私は降りるわ」

盗賊「ケッ…勝手にしろやい」

56: 2020/09/14(月) 23:01:20.17 ID:JwosRg690
『隠れ家』

ヨッコラ セト

盗賊「ふぅ…これで最後か?」

女盗賊「あとは着替えだけよ…後で持ってくるわ」

盗賊「剣士!お前は休んでろ」

剣士「…」イテテ

盗賊「俺はちぃとしたの下水見てくるぜ…あとの片づけは女盗賊と娘たちに任せた」

女盗賊「娘たち~!!ベット移動させて頂戴」

娘たち「ええぇぇぇぇ!?」

盗賊「じゃぁ行ってくるな!」

剣士「…」ノソ

盗賊「お?お前も行くか?」

女盗賊「昨日の今日なのに平気なの?」

盗賊「まぁゴロゴロしててもつまらんだろ…付いてこい」

盗賊「あぁそうだ!金は好きな様に使っていいぞ…宝石だけは残しとけ」

女盗賊「あら?良いの?」

盗賊「どうせパクッて来た金だ!全部使っちまえ!!ヌハハ」

娘たち「ぬぉぉぉぉっぉぉぉぉみなぎってキターー」

盗賊「行くぞ!!」タッタ

57: 2020/09/14(月) 23:01:49.96 ID:JwosRg690
『下水』

ピチョン ピチョン

盗賊「こりゃ迷路だな…あっちが海側…セントラル全域に下水が入り組んでるな」

盗賊「剣士!ちょっと待ってろ…地図買ってくる」

剣士「…」コクリ

盗賊「ここを動くなよ?迷子になるぞ」ダッ



---しばらく後---


盗賊「悪ぃわりぃ…こいつがなかなか手に入らなくてな…糸だ」

剣士「…」??

盗賊「測量しながら進むぞ…この地図の上に下水の見取り図を書き込む」

盗賊「ちぃと大変なんだがな」

盗賊「お前は風の流れてる方向はしっかり分かるな?」

剣士「…」コクリ

盗賊「指さしてくれ…なるほどそっちか…次はこの三差路はどっちだ?…そうか」

盗賊「よし!進むぞ…あとは…」

58: 2020/09/14(月) 23:02:21.41 ID:JwosRg690
---数日後---


盗賊「分かってきたぞぉ!!ここの水は貴族居住区の堀から落ちてきてる水だ」

盗賊「つまり堀に捨てればここで回収できる訳だ…うまい具合に枝が引っかかってるから全部あそこで回収出来る」

盗賊「よし!次行くぞ…ここの梯子は城の方まで繋がっていそうだ」

盗賊「だが何かおかしい…こんなに高さが必要な理由がわからんな…奥にでかい空間でもあるってのか?」

盗賊「うむ…風の向きもそっちから出てるな」

盗賊「剣士!ついて来れてるか?ん?」

剣士「…」ユビサシ

盗賊「なんだ?あぁ鉄格子か…これ以上行くのは無理だってか」

盗賊「ちぃと鍵が付いてないか見てくる」

盗賊「無ぇな…ナムサン」

剣士「…」ユビサシ

盗賊「ん?まだ何かあんのか?…動物の氏体か?骨が散らばってんな…こりゃ奥は魔物の巣になってんのか?」

盗賊「おい!今こそ妖精の出番だろ居るなら出てこい」

剣士「…」フリフリ

盗賊「ったく役に立たねぇ妖精だな…戻るしかねぇか」

盗賊「この鉄格子の隙間は俺じゃ入れんな…剣士だと行けそうなんだが…女盗賊に協力してもらうしか無ぇな」

盗賊「剣士!今日は一旦戻るぞ」

59: 2020/09/14(月) 23:02:47.61 ID:JwosRg690
『隠れ家』

盗賊「うはぁ…随分汚れたな」

剣士「…」フリフリ

女盗賊「二人とも一回水で流してきてよ…臭いわ」

盗賊「あぁ分かった…後で酒場に行く」

女盗賊「剣士もびしょ濡れじゃない」

盗賊「そりゃそうと随分色んなもの買いこんだな?」

女盗賊「良いから早くいって!!鼻が曲がりそう!!」

盗賊「あいあい」



『酒場』

ワイワイ ガヤガヤ

マスター「いらっしゃいませ」

盗賊「おぉマスター繁盛してるじゃねぇか」

マスター「おかげ様で」

盗賊「空いてるかぃ?」

マスター「カウンターでしたら」

盗賊「いつもの酒2つ頼む」

マスター「あいわかりました」


ポロロン ポロロン ♪

ぃょ~う アンコール


盗賊「お前は盗賊業は半端だが色んな事が出来るな…いつピアノを覚えた?」

女盗賊「只の趣味よ」

盗賊「手伝って貰いたい事があるんだが…」

女盗賊「まさかあの下水?」

盗賊「そのまさかだ」

女盗賊「私は降りるって言ったわ」

盗賊「まぁ聞いてくれ」

女盗賊「…」

盗賊「下水の見取り図を作ってるんだが、どうやら城か法王庁まで繋がってそうなんだ」

女盗賊「休業するのでは無くって?」

盗賊「いや…まぁ…俺ぁ子供たちを盗まれてしまってだな…行方が気になるのだ」

女盗賊「…」

盗賊「あの中に心臓の悪い子が居てな…どうしても気になる」

女盗賊「それで寝る間も惜しんで探索って…わけね」

盗賊「今のところ危険は無い…と思う」

女盗賊「自信無さげね…いいわ。やってあげる」

盗賊「すまん」

60: 2020/09/14(月) 23:03:20.28 ID:JwosRg690
『隠れ家』


---夜---

盗賊「今日は一応フル装備で行く…もしかすると戦闘になるかもしれん」

盗賊「剣士の肩の具合はどうだ?」

剣士「…」コクコク

盗賊「大丈夫そうだな…お前はロングソードとナイフを持て」

盗賊「女盗賊はいつもの弓だな」

盗賊「俺はダガーと泥棒用の道具一式だ」

盗賊「下水の見取り図はコレだ…海側に向かえば貧民街周辺に出るから、もしはぐれても何とかなる」

盗賊「今から行くのは…恐らく法王庁周辺だ…手薄な今しかチャンスは無いと見ている」

盗賊「目標は子供たちの安否確認と出来れば救出…だが俺は途中からそこには行けん」

盗賊「途中の鉄格子から奥は女盗賊と剣士で行ってもらわねばならん」

女盗賊「フフかなり危険じゃない」

盗賊「剣士が居れば何とかなる…と思う」

剣士「…」

盗賊「夜が明ける前に戻ってくるぞ…出発だ!!」

61: 2020/09/14(月) 23:04:00.99 ID:JwosRg690
『下水』

ピチョン ピチョン

女盗賊「よくこんなところまで探索したわね…臭くてもう鼻が利かないわ」

盗賊「そこから落ちてくる水は貴族居住区の水で割とキレイだ…汚れを落としておくと良い」ジャブジャブ

女盗賊「奥にある鉄格子が言ってたやつね」

盗賊「そうだ…いまからこの鉄棒で少し曲げる…うらっ!!」グイ グイ

女盗賊「この鉄格子を切るのは時間がかかりそうね」

盗賊「これで入れるか?」

女盗賊「んんん…何とか入れた」フゥ

盗賊「剣士も行けるか?」

剣士「…」グイ グイ

盗賊「行けそうだな?よしここで別行動だ…俺はこの鉄格子を道具で切って遅れて向かう」

盗賊「地図から察するに左手沿いに行けば法王庁方向の筈だ…俺も後で左手沿いに追う」

女盗賊「わかったわ…剣士は私から離れないで?」

剣士「…」コクリ

女盗賊「じゃぁ気を付けて」タッタッタ


----------


女盗賊「おかしいわ…どうして骨が散らばっているのかしら」

妖精「…るよ」

女盗賊「妖精の声…狭間が近いのね?」

妖精「…が彷徨ってる」

女盗賊「誰が?」

妖精「沢山の魂が彷徨ってる」

女盗賊「どういう事?ここは墓場だと言うの?」

妖精「それに近い何か…」

女盗賊「上に登る梯子!!…地図で行くと此処は…法王庁の内堀の筈」

女盗賊「妖精さん?先に様子を見ることは出来て?」

妖精「おっけー見てくる」パタパタ

女盗賊「どう?」

妖精「誰も居ないよ」

女盗賊「助かるわ」

妖精「言うことが盗賊とは違うね~~♪」



----------

62: 2020/09/14(月) 23:04:33.37 ID:JwosRg690
女盗賊「さすがに深夜というだけあって誰も居ないわね?…法王庁の居住区はどこかしら?」

剣士「…」ユビサシ

女盗賊「え?こっち?あなた人の気配がわかるの?」

妖精「剣士はとても耳と鼻が利くんだよ…目が無い代わりにね」

女盗賊「ム…中から寝息が聞こえる…沢山人が居そうね」

妖精「見てくる~」ヒラヒラ

女盗賊「私も見える場所無いかしら…」

妖精「中に100人位人がいるよ。大人も子供も」

女盗賊「困ったわ…子供たちだけ連れて帰る訳に行かなさそうね」

妖精「全員足かせが付いてるよ」

女盗賊「鍵開けも必要なのね…私も中を見てみたい」

妖精「動いてる人は居ないみたいだけど」

女盗賊「そこの窓から見えるかしら?」ヨッ

女盗賊「100人も居ると子供たちがどれなのか分からない」

妖精「あ!!」

剣士「…」スラーン チャキ

女盗賊「え!?」

妖精「あぶなーい!!」シュン シュン

剣士「…」ピョン クルクル ヒラリ

??「そこまでだ…」

女盗賊「あ…」ゴクリ

剣士「…」タジ

??「剣を下に置いてもらおうか…さもなくばこの女の命は無い」

女盗賊「剣士…ごめん…」ゴクリ

剣士「…」タジ

??「クロスボウで狙われているのも忘れないでもらいたい物だな」

妖精「まじやば…まじやば…」オロオロ

??「なに!?妖精までお前たちの仲間だと?お前たちは一体何者だ」

??「おぉぉ妖精は高く売れる~♪」

女盗賊「…この声は」

63: 2020/09/14(月) 23:05:03.59 ID:JwosRg690
??「答えて貰おうか…お前達の目的を…なぜ私の行く先で邪魔をしようとする!」

女盗賊「兄さん?」

??「何?…まさか」

妖精「アレレ?どういう展開?」

??「お前は…妹か!!」

??「ちょちょちょ…どうなっちゃってんの?どうするのこのクロスボウ」

??「顔を見せてみろ!!」ファサ

女盗賊「…」ゴクリ

??「なぜこんな所に居る!?私はお前に盗賊は止めろと言った筈だ!」

剣士「?」タジ

女盗賊「なぜここに居るかは私の方こそ聞きたいわ…兄さんはシャ・バクダに居なくてはいけないのでは無くって?」

兄「ちぃぃ時間が無い…私は今からここを爆破するのだ…」

女盗賊「中に子供たちが…」

兄「戻る気は無いと言うのか?…まぁ良い混乱に乗じて子供だけ連れて帰るんだ」

??「もう時間無いよ?そろそろ爆発するよ」

兄「ええぃ子供だけ連れてもう戻ってくるんじゃない!!分かったな!!」ダッ

女盗賊「兄さん!!貧民街の酒場『カク・レガ』待ってるわ」

兄「…お前も逃げる準備をしろ…巻き込まれるな」ダダダッ

64: 2020/09/14(月) 23:05:39.18 ID:JwosRg690
『下水』

ギコギコ ギコギコ ギコギコ ギコギコ ポキン

盗賊「ふぅぅぅやっと切れた…これで俺も…フン!フン!」グイ グイ

盗賊「ぬぁぁ…ギリギリ…通れ…いや通る」ズル

盗賊「あーいててスリ剥いちまった…急がんとな」タッタッタ


ドーン!!  ドーン!!  ドーン!!


盗賊「うぉ!!何だ何だぁぁぁ」パラパラ

盗賊「真上か!?こりゃヤバイ事になってそうだ…大丈夫か!?あいつら」ダッシュ

盗賊「急げ急げ急げ急げぇぇぇぇぇ」ダッシュ

盗賊「何なんだここは人骨ばかりじゃねぇか!!」

盗賊「お!!居た!!無事かぁ!?女盗賊」

女盗賊「ここの梯子から子供たち下すの手伝って!!」

盗賊「俺が受け止めるから落とせ!」

女盗賊「ほら!子供達飛んで!!」ピョン ゴスン

盗賊「いでぇ!!ちょ・・」

女盗賊「早く!!」ピョン ピョン ゴスン ゴスン

盗賊「ぐぁ!…ひでぶ!!…おい!足かせ付いてるなら先に言ってくれ…氏ぬ」

女盗賊「…私の背中につかまって…降りるわよ?」ノソノソ

盗賊「おい子供たち…足かせの鍵外すから動くな」カチャカチャ

女盗賊「剣士!もう限界よ!!あなたも来て!!」


ドーン!!  ドーン!!  ドーン!!


盗賊「上はどうなってんだ?」カチャカチャ

女盗賊「兄に会ったわ」

盗賊「なんで又セントラルに…この爆発はあいつの仕業か」カチャカチャ

女盗賊「多分ね」

盗賊「こりゃ面白くなってきたな」カチャカチャ

女盗賊「もう!!こんなに派手にやっては被害が大きすぎるとどうして考えないのかしら…」

盗賊「子供たち4人だけか…大分衰弱してるな…背負って行くしかあるまい」

盗賊「俺が2人背負ってやる…ズラかるぞ」


---よう!お前は何とか無事だったな---

---心臓苦しくねぇか?---

---落ち着いたら旨い物食わせてやる---

65: 2020/09/14(月) 23:06:07.18 ID:JwosRg690
『セントラル外れ』

女海賊「ねぇ!私も連れてってよぉ」

アサシン「遊びでは無いのだぞ?」

女海賊「いいじゃん」

アサシン「では付いてこい…あまりはしゃぐな」スタスタ

女海賊「あの白い奴ってさぁ…仲間かなぁ?」

アサシン「私の妹と一緒に行動している以上、敵では無い…むしろ今は人手が欲しい」

女海賊「あの身のこなしは只者じゃないよね~」

アサシン「暗殺者の攻撃をこう何度もかわされてしまっては…認めざる負えんな…世の中には私たちより出来る者が居るという事を」

女海賊「私のクロスボウは百発百中なんだけどなぁ…」

アサシン「自惚れは氏を招くぞ?」

女海賊「今度はボルトに炸裂弾仕込む!!絶対当てるんだから!!」

アサシン「もう敵では無い…しかしその向上心は君を強くする」

女海賊「ねぇねぇ…ここら辺ってさぁ…」

アサシン「お前にも見えるか…彷徨う魂を」

女海賊「ゾンビが出てきそう」ブルブル

アサシン「墓標は無いが…ここは墓場だ…この先に貧民街がある」

女海賊「走っていこうよぉ~気持ち悪い」

66: 2020/09/14(月) 23:06:44.26 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』

ワイワイ ガヤガヤ

女盗賊「いらっしゃい…ま…兄さん!」

アサシン「…女になったな」

マスター「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」

アサシン「良い店だな…空いているかね?」

マスター「奥の方へどうぞ」

女海賊「へぇ~女の子いっぱい居るんだ」

アサシン「ワイン酒2つと果物を頼む」

マスター「かしこまりました…ごゆっくりと」


----------


アサシン「怪我は無いようだな?子供たちは連れて出られたのか?」

女盗賊「4人だけね…後は…」

アサシン「捉えられていた者たちは自力で脱出している者も多い…心配するな」

女盗賊「どうしてあんな事を…」

アサシン「拿捕されている者たちの解放と…法王庁への抵抗組織があるという民衆へのアピールだ」

女盗賊「やりすぎでは無くって?」

アサシン「人への被害は最小限に収めているつもりだよ」

女盗賊「盗賊ギルドが先導しているのかしら?」

アサシン「いや…ギルドは関わっていない…私が個人的に行っている」

女盗賊「シャ・バクダの本部はギルマス不在で良いのかしら?」

アサシン「ギルマスの代わりなどいくらでもいるのさ…出来るやつに任せている」

女盗賊「そう…いつからセントラルに?」

アサシン「…それは私の質問だよ…まだ盗賊を続けているのか?」

女盗賊「好きでやっている訳では無いわ…生きる為に仕方ないのよ」

アサシン「お前は医術や音楽の才がある…まっとうに生きて幸せになるのだ」

女盗賊「兄さんの方こそまだ勇者暗殺を考えてるの?」

アサシン「…兄さんというのはもう止めにしないか?むずがゆい…アサシンで良い」

女盗賊「もう勇者暗殺なんて馬鹿な事考えるのを止めて?昔の兄さんに戻って?」

アサシン「ハハ勇者暗殺は目的では無い…手段の一つだ」

女盗賊「なら他の手段を選べば良いのでは無くって?」

アサシン「…そうだな…魔王の復活を阻止する術が他に在れば…な」

女盗賊「…大破壊こそ魔王の復活と…妖精が話してくれた」

アサシン「それだ!!どうやって妖精を仲間にした?私はそれを聞きに来た」

女盗賊「…兄さん…私を気遣って来たのではなくて…利用しようとしているのね」

アサシン「すまない…言い方が悪かった」

女盗賊「もういいわ!!出て行って…」

女海賊「あ~あ女心分かってないなぁ…この場合アサシンが悪い」グビ

67: 2020/09/14(月) 23:07:15.28 ID:JwosRg690
女盗賊「…」

アサシン「…紹介が遅くなった…こっちは女海賊だ…私の助手をしている」

女海賊「どもども!!」ビシ

女盗賊「初めまして…兄がお世話になっています」ペコリ

女海賊「ねぇねぇ妖精が見えるってどういう事か知ってる?」

女盗賊「え!?知らないわ?どういう事かしら…」

女海賊「普通の人が見えない物が見える…言い方を変えると特別な人…もっと言い方を変えると狭間に行くことの出来る人」

女盗賊「それがどうしたというのかしら?」

女海賊「妖精はそういう人を導く役目を持ってんの」

女盗賊「私たちは導かれてる?」

女海賊「どうしてだと思う?…それはね魔物と仲直りする為」

女盗賊「仲直りだなんて…そんなに簡単に行くとでも思って?」

アサシン「女盗賊…お前はいつから妖精が見えてたんだ?子供の頃からか?」

女盗賊「兄さんはずっと見えてた…の?」

アサシン「妖精を追いかけて…200年前シャ・バクダが滅んだ理由を知ったのだ…子供の頃にな」

女盗賊「…それでずっと一人で戦っていたの?」

アサシン「私たちは妖精の導きに従い…魔物たちとの調和をしなければならない」

女盗賊「調和…」

アサシン「人間は頃しすぎなのだよ…それは憎悪しか生まない…やがて魔王を生んでしまう」

女盗賊「勇者暗殺と話は逆行するのでは無くって?」

アサシン「勇者と魔王は対なるもの…勇者を封じれば魔王も生まれない…そうやって調和を保つ」

女盗賊「そんなの屁理屈だわ…第一勇者がどこにいるのかさえ分かってないじゃない…魔王だって」

アサシン「雲を掴むような話に聞こえると思うが…シャ・バクダでかつて起きた事と同じ事象がいくつかある」

女盗賊「…それを調べにセントラルに来た…そういう訳ね」

アサシン「分かってくれるか?」


----------

68: 2020/09/14(月) 23:07:42.92 ID:JwosRg690
盗賊「いょぅ!!やっぱり来てたか」

アサシン「盗賊か!!お前まで居たのか…どうりで手際が良い訳だ」

盗賊「ギルマス直々にどうしたってんだ?」

アサシン「あぁ…色々あってな」

盗賊「女盗賊!?どうしたんだ?ふくれっ面で…」

女盗賊「構わないで欲しいわ…」

盗賊「こっちの娘は誰だ?アサシンの女にしちゃ…お前口リコンだったのか?」

アサシン「あぁ紹介する…ドワーフの女海賊だ…工作専門で私の助手だ」

女海賊「ハロハロ~」グビ

女盗賊「剣士はどうしていて?」

盗賊「んぁ…ありゃ今まで一緒にいたんだがどこ行った?」

アサシン「…私に気付いたか…警戒しているな」

女盗賊「剣士!?大丈夫よ…今はもう敵ではないの…出ていらっしゃい?」

剣士「…」ソロリ

盗賊「そりゃそうと女盗賊と女海賊は名前がかぶってて混同するな」

アサシン「私もそう思うな…女盗賊!お前に盗賊は似合わない…もうやめておくんだ」

女盗賊「そんなの私の勝手よ」

盗賊「まぁスリも鍵開けも出来んしなぁ…どっちかってーと医者とか踊り子なんだが」

女盗賊「そんなのイヤよ」

盗賊「ハンターはどうだ?お前は弓使いだろ?」

女盗賊「もう!!勝手にして」プン

盗賊「あぁ分かった分かった…やっぱりお前は女盗賊だ…中身は医者だが…それで良いな!?」

女盗賊「私はこれで失礼するわ!…お店の方が忙しいの」プリプリ

アサシン「ところで剣士君…君はどういう人間なんだね?」

剣士「…」

女海賊「うん!!近くで見るとやっぱりカッコイイね!!」

アサシン「見たところその毛皮は白狼…むぅ??…目をどうした?」

盗賊「ちぃと話は長くなるんだがな…」


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カクカク シカジカ

69: 2020/09/14(月) 23:08:27.36 ID:JwosRg690
アサシン「…盲目の狼少年という訳か…盲目であれほど戦えるとはな」

盗賊「お前はどうしてセントラルに来てる?」

アサシン「古き時代の秘宝『いのりの指輪』を探している」

盗賊「なんだそりゃ?古代の魔術師が使ってたとかいうやつか?それがセントラルに?」

アサシン「魔王の復活にはいのりの指輪が関わっている筈なのだ」

盗賊「なんでセントラルにあると思ってんだ?確かな情報は何かあるのか?」

アサシン「前にも言ったことがあると思うが…」



私はシャ・バクダが200年前に滅んだ理由を探していた

何度もシャ・バクダの遺跡に足を運び見つけたものが

古い古文書と地下に巨大なカタコンベ

私はそのカタコンベで彷徨う魂が渦を巻いているのを見た

200年たった今でもだ

大量の骸は数え切れる物ではない…数百万の骸が

残虐な拷問ののち遺棄されたのは見て明らかだった

古文書に記されていたのは

神々の戦い…つまり精霊と魔王の戦い

そのどちらも人々の祈りによってこの世界で実体化するらしい

いのりの指輪を使って…



盗賊「何だお前魔王にでもなるつもりか?」

アサシン「違う!誰かが魔王を復活させてしまう前に指輪を破壊したいのが第一」

アサシン「第二は魔王と対になる勇者を暗殺…もしも魔王が復活してしまったなら…」

盗賊「おまえの言うことは決定打が無いな…女盗賊が反対するのも理解できる」

アサシン「…知っているか?セントラルの地下に巨大空洞があることを?」

70: 2020/09/14(月) 23:08:58.06 ID:JwosRg690
盗賊「なぬ!?」

アサシン「私はそこでシャ・バクダと同じ過ちをしているのでは無いかと疑っている」

盗賊「むぅぅ…」

アサシン「何か知っているのか?」

盗賊「下水の見取り図を作っていたんだがな…法王庁の下に怪しい区画がある」

アサシン「下水から行けるのか?」

盗賊「近くまでは行けるが…その奥まで繋がっているかは行ってみないと分からねぇ」

アサシン「私が見てくる」

盗賊「待て待て焦るな…そのいのりの指輪のありかは分かってないのか?」

アサシン「確たる情報は無いが…法王が切望しているという噂は聞いたことがある」

盗賊「その指輪を使って魔王を祈ると復活する…そういう話なんだな?」

アサシン「憎悪の渦が実体化する…古文書にはそう書いてある」

盗賊「勇者の方はどうなんだ?何か手掛かりは無いのか?」

アサシン「無い…」

盗賊「ぐはぁ…話になんねぇな本当…雲を掴む様な話だ…女盗賊の言う通りだぜまったく!!」

アサシン「ただ分かっているのは200年前の大破壊の時、魔王が倒される間際に精霊を夢幻に封印したという事」

盗賊「なんだか良くわからんが…それは関係の無い話だと思わんか?」

アサシン「いや…精霊は夢幻に封印されてもなお祈りを続けているのだ」

盗賊「夢幻の意味が分からん」

アサシン「勇者は精霊の祈りによって生まれる…この意味が分かるか?…勇者は夢幻から来る」

盗賊「昔話だぞ!?そんなもん信じてんのか?」

アサシン「これは事実…私は石となり眠る精霊をこの目で見た」

盗賊「どこにあんだ?」

アサシン「光の都シン・リーン」

盗賊「…そこで勇者を待つってのか?アホらしい…」

アサシン「そうだ…いつまでも待っている訳に行かないからこうやって魔王復活の兆しを探している」

盗賊「…ともあれ、その話じゃ今いまどうすりゃ良いか皆目見当がつかん」



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71: 2020/09/14(月) 23:09:33.84 ID:JwosRg690
盗賊「怒ってんのか?」

女盗賊「怒ってなんかないわ…呆れてるの」

盗賊「お前の兄はやっぱり頭逝かれてんな…こう言っちゃ悪いが…」

女盗賊「本質的には正義感の塊で根はやさしいの…でもね自分が見えてないというか…」

盗賊「まぁ分かる…なんとかしたい気は分かるが具体性が無ぇ」

女盗賊「利用されて巻き込まれない様に気を付けて」

盗賊「ただな…言ってることが合致してる事が一部あるんだ」

女盗賊「聞いてたわ…下水の奥の事でしょう?」

盗賊「人骨がやたら散らばってたんだ…あいつが言ってる事と合ってる」

女盗賊「…そういえば」

盗賊「ん?」

女盗賊「下水の奥は狭間が近くて妖精とお話が出来たわ…」

盗賊「調べてみる必要がありそうだが…今はその時では無いな」

女盗賊「わたしもそう思うわ…子供たちの回復と、セントラルの混乱が落ち着くまではね」

盗賊「早いとこ子供たちに旨い飯食わしてやりてぇ」

女盗賊「フフあなたのそういう所好きよ」



----------



アサシン「急にこんな話をしてすまなかった…私は少し熱くなっていたようだ」

女盗賊「…」ジロリ

アサシン「まずはお前の安否が確認できて良かった…本当にそう思っている」

女海賊「女心を分かってないなぁ~!!君!!ヒック…心配でしょうがないと素直にさぁ~ヒック」

アサシン「今日は一旦おいとまする…女海賊!飲みすぎだぞ!」

女海賊「交渉決裂~~ヒック」

盗賊「アサシン!お前はこれからどうするつもりなんだ?」

アサシン「私は引き続き調査を続けるつもりだ」

盗賊「まぁ…あれだ…内容によっては協力してやっても良い」

女盗賊「盗賊!!」

盗賊「勇者の暗殺には協力する気は無ぇ…というか居るかどうかも分かんねぇんだからな」

アサシン「…」

女海賊「言っちゃいなよ~~金が欲しいってさぁ~ヒック」

盗賊「金?ぬはは…盗賊ギルドマスターが金欠か?笑っちまうぜ」

アサシン「船が必要なのだ…私はドワーフの国へ行かねばならん」

盗賊「…またぶっ飛んだ話だな…だが金が居るならやりようは在る」

アサシン「協力してもらえる…という事で良いか?妹よ…」

女盗賊「私は盗賊は辞めたわ…」

アサシン「ハハ…」

女盗賊「盗賊と剣士がどうするのかまで私は決められない…勝手にしたら良いのよ」

女海賊「ねぇねぇ女心分かる~~?今のはオッケーってことだよ?ヒック」

盗賊「もう一回言うぞ?勇者暗殺は俺たちはやらねぇ!」

女海賊「商談成立~~♪」

72: 2020/09/14(月) 23:10:03.20 ID:JwosRg690
『隠れ家』

アーデモナイ コーデモナイ

アサシン「…つまり貴族居住区の堀に盗んだものを放り投げれば下水で回収できるのだな?」

盗賊「そういう事だ」

アサシン「貴族居住区へのゲートは全部破壊してあるからどのエリアでも出入りは出来る」

盗賊「ほぅ~そりゃやり易いな」

アサシン「逃走ルート確保は剣士が衛兵の足止めをする…鍵開けの担当は盗賊…見張りは女海賊」

アサシン「私は手当たり次第に盗んだものを堀へ投棄…良い作戦だ」

アサシン「逃走時は人に紛れる為に中央経由で金をばら撒く…盗賊の手際には頭が下がる」

盗賊「俺達ぁ泥棒だ!!全部頂いちまおう」

アサシン「よし!装備整えて行くぞ」

女海賊「ちょっと待って~みんなコレ着て行って」ドサ

アサシン「これは?…白い毛皮のマント」

女海賊「泥棒もさぁ…恰好良くないといけないと思ってさ」

盗賊「おいおい…これじゃ剣士と同じじゃねぇか…派手すぎやせんか?」

アサシン「ハハまぁ良いではないか普通の盗賊ギルドとは違うという所を見せてやろうじゃないか」

盗賊「まぁギルドに迷惑かける訳にもいかんしな…仕方ねぇか」

女海賊「白狼の盗賊団!!かっこいいいいい♪」

73: 2020/09/14(月) 23:10:40.54 ID:JwosRg690
『貴族居住区』

---夜---

衛兵「ピーーーーーー」

アサシン「剣士!足止め頼む!」タッタッタ

女海賊「よろぴこ~」ピョン

盗賊「いつも通りでな?無理すんなよ?」ダダダ

アサシン「私に続け!!」

衛兵「居たぞ!撃て!」シュン シュン

剣士「…」ピョン クルクル シュタ

衛兵「またこいつらか!!」

近衛「弓隊!!撃て!!」シュン シュン シュン シュン…

衛兵「逃がすなぁぁぁぁピーーーーーー」

近衛「何故当てられん!!撃て撃てぇぇ」シュン シュン シュン シュン…

剣士「…」ピョン ピョン ピョン

衛兵「逃げまーす!!」

近衛「先回りは!!?」

衛兵「行ってる筈です…追え!!追うんだぁ!!」

剣士「…」ピョン クルクル シュタ

衛兵「あぁぁぁ…向こうの屋根に…」

近衛「何と言う鮮やかさ…あれはもののけか?…」


---白狼の盗賊団の暗躍は---

---セントラルを震撼させた---

---事に四つ足で闇夜を飛び回るその姿は---

---民衆を引き付け魅了し---

---憧れの対象となった---

74: 2020/09/14(月) 23:11:09.84 ID:JwosRg690
『中央広場』

ガヤガヤ ガヤガヤ

女海賊「安いよ安いよ~白銀の毛皮!!たったの1金貨!!買った買ったぁ」

女海賊「今なら狼人形もセットだよぉぉぉ!ほら買ったぁぁ!!」

盗賊「…」

盗賊「…」

女海賊「ほらそこの兄さん!!」

盗賊「…なにやってんだお前…居ないと思ったらこんな所で売り込みか?」

女海賊「テヘ…見つかっちゃった」

盗賊「売れてるんか?」

女海賊「めっちゃ売れる!!一日金貨一袋行けるヨ」

盗賊「…この毛皮はウルフの毛皮じゃ無ぇな…ヤギだ」

女海賊「お!?お目が高い!!そんなお客様にはコチラ!!」

盗賊「…そりゃウサギだ」

女海賊「テヘ…」

盗賊「テヘじゃねぇ!!まぁ…有名になっちまったから偽装したいのは分かるんだがな?…」

女海賊「良いじゃないホラそこら中に白い毛皮着てる人…私のおかげなんだかんね!」

盗賊「まぁちっと大人しくしてろや」

女海賊「あんたこそ何してんのさぁ!!ウロウロしてて良いの?」

盗賊「俺は町の状況をだな…」

女海賊「私とおんなじじゃないのぉ」

盗賊「あー分かった分かった…とにかく…目を付けられんように気を付けろ」

女海賊「わーってるって!!うるさい人シッシッシ」

75: 2020/09/14(月) 23:11:41.15 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』

ポロロン ポロロン♪

女盗賊「こんな昼間からお酒?」

盗賊「いや…ピアノの音が聞こえてきたから寄っただけだ」

女盗賊「兄さんは?」

盗賊「知らん…どこかの調査にでも行ってるんだろ」

女盗賊「きっと船の買い付けだわ」

盗賊「あぁ…そうかも知れんな」

女盗賊「あなた達の噂…あなた知ってて?」

盗賊「まぁな…潮時だ」

女盗賊「少し目立ちすぎたわね?…爆破の事件も全部背負ってしまったわ」

盗賊「もう侵入は無理と見た方が良い…警備が厚すぎる」

女盗賊「兄の策略にまんまと乗ってあげた…そういう事なんでしょ?」

盗賊「…ツケが回ってくるかも知れんのは考えておかないとな」

女盗賊「ツケ?」

盗賊「ここも安全ではなくなるかも知れんという事だ」

女盗賊「私はここが気に入ったわ…そして私は関与していません」

盗賊「そうだな…盗んだものは一旦船に積んで沖にでも出さんとガサ入れで言い訳出来ん」

女盗賊「そうね…兄に言っておくわ…早く出て行ってって」

盗賊「その場合俺と剣士もしばらく離れなければならん…背格好がバレてるからな」

女盗賊「…さみしくなんかないわよ?娘たちも子供たちも居るのだから…」

盗賊「ぬはは…そうだなそれで良い」

女盗賊「さて!私はピアノの練習…邪魔しないでね?」

盗賊「黙って聞いておく」

ポロロン ポロロン♪

76: 2020/09/14(月) 23:12:14.85 ID:JwosRg690
『隠れ家』


---数日後---

アサシン「船の買い付けが決まった…サンタマリア型帆船だ…乗員も十分集まった」

アサシン「私はこの船で明日ここを離れようと思う…ただその前に一つやっておきたい事がある」

盗賊「んん?もう泥棒は出来ねぇぞ」

アサシン「法王庁の地下の調査だ…これだけはやっておきたい」

盗賊「下水か…そこまでは衛兵の手は回ってねぇか…」

アサシン「調査は私一人でも良い…奥に何があるのかだけ知りたいのだ」

盗賊「まぁそれなら案内してやっても良い」

アサシン「悪いな…恩に着る」

盗賊「その後船でドワーフの国か?何の用事がある」

アサシン「君たちには秘密を言っておこう…」

盗賊「そんな大層な秘密か?」

アサシン「ドワーフが憎悪を浄化する作用を持つ金属を発見したのだ…その名をミスリル銀と言う」

盗賊「また魔王がらみか…」

アサシン「そのミスリル銀を用いれば憎悪に満ちた魂を浄化できるかも知れんのだ…価値は高い」

盗賊「それで大金が必要だった訳か…独り占めでは無いんだな?」

アサシン「私は金になど興味は無い…魔王復活を阻止したいだけだ」

盗賊「…で俺たちはどうすんだ?」

アサシン「女海賊は一旦シャ・バクダに戻るように言ってある…もし剣士が光の都シン・リーンを目指すなら付いて行くが良い」

盗賊「ふむ…別れる訳だな?…お前は一人で良いのか?」

アサシン「私は一人になっても戦い続ける…今までそうして来たように」

盗賊「…んーむ」

女盗賊「何迷ってるの?私はあなたたちが居ない方が安全なのよ?兄の面倒を見てあげて?」

盗賊「うむ…そうだな…俺はアサシンに同行するのが最善だな」

女盗賊「子供たちは心配しなくて良くってよ?」

アサシン「船への荷物の積み込みは今晩行うように乗員には伝えてある」

アサシン「法王庁の調査が終わったら私はそのまま乗船して出発するつもりだ」

盗賊「今晩が最後の仕事って訳だな」

アサシン「そうだ…これで白狼の盗賊団は解散する」

女盗賊「フフ自惚れ屋さんの様なこと言うのね…らしいわ」

アサシン「馬鹿にするなよ…これでも大真面目なんだ」

77: 2020/09/14(月) 23:13:10.99 ID:JwosRg690
『下水』

---夜---

盗賊「あんな奴らに金銀財宝運ばせて良いのか?」

アサシン「少々無くなっても構わんよ…私の金ではない」

盗賊「俺にとってもどうでも良い金なんだが今までの苦労がな…」

アサシン「中央で金をばら撒くのと大差ない」

盗賊「んむ…まぁ良いか」

アサシン「剣士と女海賊は相性が良さそうと見るがどうだ?」

盗賊「あのあばずれは意外と面倒見が良いな…剣士の引導の仕方をよく工夫している」

アサシン「やはりそう見るか…シン・リーンまで連れていけと言っておいた」

盗賊「そうかそりゃ良い…だがよく言う事聞いたな?」

アサシン「私の気球を前から欲しがっていてな…それと引き換えなのだよ」

盗賊「なるほどな…おっともうすぐ梯子だ!その先に鉄格子がある」


78: 2020/09/14(月) 23:13:43.75 ID:JwosRg690
---鉄格子の向こう側---

ピチョン ピチョン

アサシン「見取り図が出来ているのはここまでか…この奥の区画が謎のエリアだな?」

盗賊「そうなる…ここから先はまだ行ったことがねぇ」

女海賊「もう!!何なのさココ!!人骨ばかりで気持ち悪い」

妖精「…くないよ」

女海賊「あ!!妖精の声!?」

アサシン「私にも聞こえるぞ」

盗賊「むぅ…俺だけ聞こえないってか?俺ぁ鈍感なのか?何て言ってんだ?」

妖精「ここはあまり良くない所だよ…狭間が近すぎる」

アサシン「どういう事だね?どちらの方向が良くない方向なのか?」

剣士「…」スラーン チャキリ

女海賊「剣士?どうしたの?」

アサシン「向こうに何か居るな…あっちか!」

盗賊「なんだありゃ…でかいネズミ…ラットマンの巣になってんのか!!」

女海賊「あわわ来る来る来る来る」イソイソ

ラットマン「ギャース」ドドド

アサシン「押し通る!!剣士!!援護しろ!!」ダダッ シュバ

盗賊「暗いな…俺は明かり役だここまで引き付けろ」

剣士「…」ザク ザク シュバ

アサシン「剣士!なかなかやる…このまま奥の方へ」カン ブシュ

盗賊「女海賊!!お前はケツに付け…遅れんな!」

アサシン「妖精!!どっちの方向だ!?妖精!!妖精!!ちぃぃこう忙しくては聞こえんか…」

剣士「…」ユビサシ

アサシン「そっちか!剣士が先導しろ!!」

剣士「…」ダッシュ シュバ シュバ

ラットマン「ギャァギャァ…」

アサシン「んん??鉄格子か…鍵は付いて無いのか?」

盗賊「だめだぁ…こりゃ切るのに時間かかるぜ」

アサシン「女海賊!!ヤレ」

女海賊「アイアイサー!!みんな離れてて?」ゴソゴソ

盗賊「おぉ…爆破すんだな?」

アサシン「音で上の連中が気付く…この先で何も無ければ引き返す…リミットは10分だ」

女海賊「いくよぉぉぉ…」ドーン!!パラパラ

盗賊「うひょぉぉ派手だねぇ…壁に穴開けやがった」

アサシン「行くぞ…来い!!」

79: 2020/09/14(月) 23:14:18.57 ID:JwosRg690
『カタコンベ』

盗賊「…なんだこりゃ」

剣士「ううう」ブン ブン

盗賊「剣士!何やってる!!何と戦ってる!?」

剣士「うぁぁぁ」ブン クルクル シュタ

女海賊「剣士の周りに何か獲り付いてる…」

妖精「帰ろう!!帰ろう!ここは危ない!レイスが来る!早く帰ろう!」

剣士「あぁぁぁぁ」ブン スカ

盗賊「おい!剣士!!やめろ!!」

アサシン「盗賊…お前も見たな…この屍の山を」

盗賊「こりゃお前の言ってた通りだな」

アサシン「上を見てみろ…ここからでは行けないがあそこの穴の向こう側に処刑場があるはずだ」

盗賊「あそこから氏体を捨ててるんだな…うぇぇ…吐きそうだ…なんだってこんなにグチャグチャになってる」

アサシン「想像を絶する拷問の後…ここに遺棄されるのだ…だがまだシャ・バクダの数には及ばない」

女海賊「やばいよやばいよ…剣士が狂いそうだよぉぉ」

剣士「うああぁぁぁぁぁぁぁ」ブン ブン ブン

盗賊「考えたくねぇが…女、子供達の連れられて行く先はココだな?」

アサシン「最終的にはそうなるだろう…これは人間のやる事ではない」

アサシン「なぜこんな事が出来る?なぜこれほど命を欲しがる?悪魔の仕業としか思えんのだ…私はこれを止めさせたい」

女海賊「もう!!そっちはダメ!!こっち!!」グイ

剣士「うあああああぁあぁぁぁぁぁ」ブン ブン

女海賊「もうだめ!!私は剣士引っ張って先に帰る」グイ

盗賊「どうするアサシン!?」

アサシン「十分だ…戻るぞ」


---私はこの殺戮を止めさせたいのだ---

---そのすべてを破壊しようとする魔王---

---それを阻止しようとする勇者---

---私にはどちらが正しいのか分からない---

80: 2020/09/14(月) 23:14:54.43 ID:JwosRg690
『下水の出口』

アサシン「ここが海へつながっている場所だな?」

盗賊「このまま船着き場まで走るのか?」

アサシン「女海賊!剣士!ここで別れる…お前たちは隠れ家に戻れ」

女海賊「りょ!!シャ・バクダで待ってるね~」ノシノシ

盗賊「…まぁ仕方ねぇか!!女海賊!!みんなにはよろしく言っといてくれ」

女海賊「あれれ~?名残惜しいの~?」

盗賊「今生の別れじゃねぇからな…ほとぼり冷めたら帰ってくると伝えとけ」

女海賊「アサシン!!パパによろしく言っといて!!」

盗賊「パパ!?なんだ!?」

アサシン「ドワーフの国に女海賊の父が居るのだ…取引先はそこだ…行くぞ!夜明け前に出港する」

女海賊「またね~」ノシノシ



『船着き場』

アサシン「…あの船だ」

盗賊「ん?あいつ…こんな所に来てたらダメだろうが…誰かに見られたらどうすんだ」

女盗賊「遅かったじゃない…寒くて凍える所だったわ」

アサシン「一人で待ってたのか?」

女盗賊「大丈夫よ…誰にも見られてないわ」

アサシン「もうすぐ夜が明ける…このまま出港する」

女盗賊「次、戻るのはいつくらいになって?」

アサシン「分からん…早くて3か月という所か」

女盗賊「盗賊!?兄が馬鹿なことしないように見張ってて?」

盗賊「分かってる」

アサシン「女盗賊…もうこんな盗賊のような事をするんじゃない…お前は医者か音楽家になれ」

女盗賊「知ってるわ…しばらく会えなくなる家族を見送りに来ただけよ」

アサシン「うむ…良い女になるんだぞ?お前はやさしい子だ…」

女盗賊「兄さんの方こそ体には気を付けて」

アサシン「分かってるさ…私は必ず帰ってくる主義でな」

盗賊「湿っぽくなる前に出るか!女盗賊…またお前の歌を聞きに来る!じゃぁな」

アサシン「よし!急ぐぞ!!」

盗賊「船乗りはどこだぁぁ!!碇を上げさせろぉぉ!!」

アサシン「出港する!!…警備船を見つけても止まらず押し通れ!!」

81: 2020/09/14(月) 23:15:28.09 ID:JwosRg690
『隠れ家』

女海賊「あ!帰ってきた…もうどこ行ってたのさぁ!!」

女盗賊「ちょっとね」

女海賊「アサシンと盗賊は行っちゃったよ」

女盗賊「良いのよ…あなたも疲れてるでしょう?少しお休みなさい?」

女海賊「えーと何だっけな…盗賊がよろしく言っとけってさ」

女盗賊「分かってるわ…あの二人なら上手くやるわ」

女海賊「私まだ休めない~商隊に加わる話を付けてくる」

女盗賊「一人で行けて?」

女海賊「これを見て!!」ビシ

女盗賊「あら?貴族の身分証ね?」

女海賊「これを使えば簡単だと思うんだ!」

女盗賊「いつ出発する予定かしら?」

女海賊「わかんないけど出来るだけ早く」

女盗賊「少し休んでからでも良いのでは無くって?」

女海賊「早くシャ・バクダに行きたいんだ!」

女盗賊「せっかちなのねフフ…まぁお好きになさい?」

女海賊「剣士はあっちで横になってる…怪我は無いけど調子悪そう」

女盗賊「そう…見てくるわ」

女海賊「私はちっと出かけてくるね~」ノシ

女盗賊「気を付けてね」

82: 2020/09/14(月) 23:15:57.92 ID:JwosRg690
『部屋』


剣士「ぅぅぅぅぅぅ」ブルブル

女盗賊「平気?どこか痛むのかしら?」

妖精「混乱しているんだよ」

女盗賊「はっ…妖精の声!?」

妖精「今日は満月…もうすぐ沈んでしまうけど」

女盗賊「どうしたの?何があったの?」

妖精「沢山の魂に触れてしまったんだ」

女盗賊「下水の奥で何が?」

妖精「剣士は目が見えない分彷徨う魂を感じやすいんだ…沢山の魂を感じて混乱してる」

女盗賊「そんなに沢山の魂が…」

妖精「剣士の魂を連れて行こうとしてた…亡くなった人達の魂の渦が」

女盗賊「熱とかは無さそうね…どうすれば良くなるかしら」

妖精「魂が連れていかれないように心を閉ざしているんだよ…安心させてあげないと」

女盗賊「安心…こう?これで良い?」ギュゥ

剣士「ぅぅぅ」ガクガク ブルブル

女盗賊「怖かったのね?安心なさい?…あなた…体は大きいけど子供みたいなのねフフ」

妖精「僕も入れて~」スポ

女盗賊「歌を歌ってあげましょうか…子供を寝かせる歌なんだけどね」

女盗賊「こんなに大きいのに困った子ですねぇ…」

女盗賊「寝んね~ん寝~♪」

ルルル~♪

ララ~♪

----------

----------

----------

83: 2020/09/14(月) 23:16:32.74 ID:JwosRg690
『夢』

ぼく「…」

??「あんたさぁ…聞いてんの?」

ぼく(きみは…誰?)

??「何訳の分かんない事言ってんのよ!こっちに来なさい!」

ぼく(いや…そんなつもりじゃ)

??「ちょっと顔見せなさいよ」ファサ

ぼく(あ…)

??「あれれ!?ちょちょ…え?きれいな目してるじゃん」

ぼく(え?目?)

??「はっは~ん!!あんた一人?」

ぼく(え~と…ぼくは…だれだ?)

??「まぁいいや!こっち来て…ちょっと手伝って」

ぼく(どうすれば)

??「そっちを押すの…せーの!えい!!」

ぼく(???)

??「何やってのさ!あんた男でしょ!!もう一回!!」

ぼく(え?え?え?)

??「せーの!!」ズリ

??「もう一回!!せーの!!」ズリ

??「おっけおっけ!乗って」

ぼく(これに?)

??「良いから早く乗って!!」グイ

ぼく(あ…)

??「歩くよりこっちの方が早いの!…とりあえず町に向かうよ?」

??「マスト下すからどいて」

??「何やってんのさ!!もうノロマかあんたは!!」

84: 2020/09/14(月) 23:17:01.83 ID:JwosRg690
??「そこの箱に入ってる物食べて良いよ…お腹空いてんでしょ?わたしも一個取って?」

ぼく(これ?)

??「わかってんじゃん…ほら…あんたも食いなよ」モグ

ぼく(…)モグ

??「海の上は風が強いから体冷やさないように!!…聞いてんの?」

ぼく「ありがとう」

??「あんたしゃべれるんじゃん!!ちょっと寒いからこっちに来い!」

ぼく(???)

??「毛布なんか積んでないさ…ほらこうやって体よせて…おい!!)

ぼく(???)

??「あっち向いて背中向いて!!背中合わせがあったかいの…手足は自分で何とかして」

ぼく(あったかいなぁ…)

??「あんたの名前は?」

ぼく「ぼくは…」

??「ん?あぁピーンと来た!ちょっと記憶が無い系のアレね」

ぼく「ぼくは…ぼくは…」

??「わたしのなまえは…」


---きみは誰だっけ?---

---ぼくは誰だっけ?---

---それにしてもあったかいなぁ---

85: 2020/09/14(月) 23:17:29.13 ID:JwosRg690
『翌日』


---夕方---

グイグイ

女海賊「…きろ!!起きろ~~」ポカ

女盗賊「困ったわねぇ」

女海賊「明日の朝出発するのにぃぃムキーー」

剣士「…」ゥゥ

女海賊「あ!!動いた!!おい!!」グイグイ

剣士「…」パチ

女盗賊「良かった~起きたわね?…お腹空いてるでしょう」

女海賊「あんた昨日から寝っぱなしだったの!ホイこれ食べて」グイ

女盗賊「明日の朝に商隊キャラバンでシャ・バクダに向かうのよ」

女海賊「そう!私は貴族の娘役…あんたは従士という設定ね…わかった?」

女盗賊「まぁ…起きたばっかりで頭が回ってないようね…食べたら荷物の整理しておいてね」

剣士「…」モグ

女海賊「あんた大した荷物持ってないじゃん」

女盗賊「フフ本当あなたはせっかちなのね」

女海賊「うるさいなぁ…剣士に手伝って貰おうと思ってたこと全部私がやったんだからイライラしてるの!」

女盗賊「そんなに大変だったの?」

女海賊「女一人だと商隊の連中は言う事聞かないんだよ!子ども扱いされて腹立つ!ムキーー」

女盗賊「ここを出るのは夜中かしら?」

女海賊「明日の日の出前に出発するから夜中の間に商隊の詰め所に行く」

女盗賊「それなら最後に今晩バーベキューでもしましょうかフフ」

女海賊「おぉぉぉ良いねぇぇ!!」

女盗賊「子供たちがバーベキュー大好きなの…娘たちもね」

女海賊「肉買ってくるぅぅぅ」

女海賊「お願いするわ…子供たちも連れて行ってもらって良いかしら?」

女海賊「おっけーーー来ーーーいお前らぁ私に続けい!!」

わ~い キャッキャ

86: 2020/09/14(月) 23:18:29.39 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』


---夜---

ジュージュー ワイワイ

女海賊「おいひいね」モグモグ

娘1「お姉ぇ~こっち肉余ってない?」

女盗賊「足りないの?」

娘1「お客さんの分がちょっと足りない」

娘2「早く~」

女盗賊「仕方ないわね…子供たちの分は残しておくのよ」

娘1「分かってるって…ちょっと持って行くね~」

女盗賊「しっかりお酒も飲ませておくのよ?」

娘1「あ~い」

女海賊「お店の客にも振舞うと盛り上がっちゃうね」

女盗賊「あっちの方は放って置けば良いのよ」

女海賊「ところでその子…どこか悪いの?」

女盗賊「…この子はね生まれつき心臓が悪いの」

女海賊「見た感じ普通だけどね」

女盗賊「体は小さいけどあなたと同じくらいの年頃に思うわ?」

女海賊「ええ?この子が?立ってみて?」

女盗賊「ご挨拶なさい?」

少年「やぁ!初めてお話するね」

女海賊「本当だ…背の高さは同じくらい」

女盗賊「体は弱いけどとても賢いのよ」

87: 2020/09/14(月) 23:19:01.78 ID:JwosRg690
少年「僕もシャ・バクダには行ってみたかったんだ」

女盗賊「ダメよ…もう少し体が強くなってからね」

少年「分かってるさ…次来たときは僕も一緒に頼むよ」

女海賊「おぉー見どころあるねぇ!しっかり鍛えるのだぞ?少年」

女盗賊「フフ剣士はどこかしら?」

女海賊「あっちで食べてるよ」

女盗賊「そろそろ準備した方が良いのでは無くって?」

女海賊「剣士ぃ!!そろそろ行くぞぉ~」タッタッタ グイ

剣士「…」モグモグ

女盗賊「剣士!?無事にシン・リーンまで行けると良いわね?」

剣士「…」

女盗賊「あなた達が居て楽しかったわ…元気でね?用が済んだら又遊びにいらっしゃい?」

剣士「ありがとう」

女海賊「うお!!しゃべった!!」

女盗賊「フフそれで良いのよ…そういう時に使うの」

剣士「ありがとう…ありがとう…ありがとう」

女海賊「あんたぁ!!しゃべれるならしゃべれるって言いなさいよ!!」

女盗賊「教えてあげれば良いのではなくって?しばらくは馬車なのでしょう?」

女海賊「んむぅぅメンドクサイけど話す相手が居ないのもツマラナイしなぁ…」

女盗賊「よろしくお願いね?」

女海賊「今度来たときはさぁ!!気球に乗せてあげる!!」

女盗賊「楽しみにしておくわ…いってらっしゃい」

女海賊「ほい剣士!!行くよ!!じゃまたね~」ノシノシ

88: 2020/09/14(月) 23:19:29.74 ID:JwosRg690
『商隊詰め所』

商隊長「ふぁ~ぁ…」

女海賊「おい!!」

商隊長「ん?…身分証…」

女海賊「前見せたじゃない!この顔をもう忘れたの!?」

商隊長「覚えてるが規則なんでね…こっちがお前の従士か?」

剣士「…」

商隊長「身分証を早くしろ」

女海賊「あぁぁイライラするなぁ!もう!!」パス

商隊長「貴族の娘…お前が貴族じゃなきゃ相手にしないんだがな」

女海賊「通って良いの!!?」

商隊長「こんな小娘を商隊の特定馬車とは…貴族は良いなぁケッ…通って良いぞー」

女海賊「むむむむむ…パパに言いつけるぞ!」

商隊長「おぉ怖い怖い…お嬢様…あちらのかぼちゃの馬車にてございます…これで良いんか?」

女海賊「剣士!!行くよ!!」プリプリ

商隊長「一つ注意してもらいたい事がある」

女海賊「何よ!?」

商隊長「身分を不用意に知られる様な事はしないでもらいたい…わかるかな?お嬢ちゃん」

女海賊「子供じゃないんだから分かってるよ」

商隊長「貴族と悟られると誘拐されるリスクがあってこちらが困る」

女海賊「はいはいわかりました」

商隊長「手を掛けさせないでくれな…お嬢ちゃん?」

女海賊「いちいち勘に障ること言わないで!…おっさん!」

商隊長「あっはっは…3番目の馬車だ…早く乗れ」

女海賊「いーーーーーだ!!」ベー



----------

89: 2020/09/14(月) 23:20:12.14 ID:JwosRg690
『商隊馬車』

ガタゴト ガタゴト

女海賊「おい!出てこい妖精!!」

女海賊「…今日は出てこないの?…んぁぁぁヒマ」

女海賊「あんたさぁ…何かしゃべろよ!!」

剣士「…」

女海賊「わたしの言ってる事分かる!?…ちょっとまねしてみて!?」

剣士「…」

女海賊「こんにちは」

剣士「こんにちは…」

女海賊「お!?できんじゃん」

剣士「おできじゃん」

女海賊「ご主人さま」

剣士「ご主人たま」

女海賊「あなたは」

剣士「あたまは…」

女海賊「とても…」

剣士「とても…」

女海賊「美しい」

剣士「…」

女海賊「おい!!!」

剣士「おい」

女海賊「もう一回最初から!!」

剣士「もういかいから」

女海賊「ご主人さま、あなたはとても美しい!」

剣士「ご主人さま、あなたはとてもむずかしい」

女海賊「…あのね」

剣士「あ…のね」

女海賊「ご主人さま、あなたはとてもう・つ・く・し・い!!!!」

剣士「ご主人様、あなたはとてもむ・ず・か・し・いのね」

女海賊「のねは付けなくても良いの!!あ~イライラする」

剣士「ご主人様、あなたはとてもむずかしいイライラする」

女海賊「ムキーーーーーーーーーー」

90: 2020/09/14(月) 23:20:42.89 ID:JwosRg690
『トアル町』

ガヤガヤ

商隊長「…一日休憩を取る。明後日の夜明け前までに集合する事!!解散!!」

----------

女海賊「剣士!行くよ!!早く行かないと宿埋まっちゃう」

剣士「はいご主人様」

女海賊「…なんか気持ち悪いなぁ」

剣士「はいご主人様」

女海賊「もうご主人様は付けなくて良いから」

剣士「はいご主人様」

女海賊「もう!!はい!!だけで良いの!!」

剣士「…はい」

女海賊「付いてきて!?行くよ」タッタッタ

妖精「なんか前と雰囲気ちがうなぁ」

女海賊「来た事あるの?」

妖精「ゴブリンの襲撃から逃げてきたんだ」

女海賊「そっかぁ…ここから来たんだね」

妖精「前はもっと人が居たんだよ」

女海賊「商隊の商人達が物売りし始めたら人が出てくるんじゃない?」

剣士「におう」クンクン

女海賊「え?何?どこ?」

剣士「あっち」ユビサシ

女海賊「んん?…なんだろアレ…もしかして火刑跡!?」

妖精「魔女狩りかぁ」

女海賊「気になるけど…今は宿屋が先!!今日泊まれないと休めなくなる」

91: 2020/09/14(月) 23:21:12.23 ID:JwosRg690
『宿屋』

カラン コロン

店主「い、いらっしゃいませ」ビクビク

女海賊「2人泊まれるかな?」

店主「食事は付きませんがよろしいでしょうか?」

女海賊「ベットが使えればおっけー…で?何かあったの?」

店主「2ヶ月ほど前に魔女狩りがありまして…皆疑心暗鬼になっております」

女海賊「やっぱ外にあるのは火刑跡なんだ」

店主「ここで番台をしていたお婆さんが犠牲になってしまいまして…」

女海賊「へぇー魔女だったんだ?」

店主「いえ異教徒を見たと騒いでおりましたら本人が審問に掛けられてしまいまして…その」

女海賊「??」

店主「町の住人がお婆さんこそ魔女だと言い始めたのがきっかけで結局火刑にされてしまいました」

女海賊「ずっと外に放置してあるの?」

店主「はい…魔女は復活しない様100日間見張るのだとか…」

剣士「いこう」グイ

女海賊「あーメンゴ!!あんたがお話ししてくれないから…ツイ」

店主「お部屋にご案内いたします」

92: 2020/09/14(月) 23:21:39.88 ID:JwosRg690
『路地のベンチ』

シーン

妖精(そろそろ帰ろうよ)

剣士(…)

妖精(女海賊が怒るよ?)

剣士(ここで食べたパン…おいしかったんだ)

妖精(あー初めて人間からもらったパンだったね)

剣士(空っぽになったあの宿屋が寂しい)

妖精(君が寂しいって感じるとは思わなかった)

剣士(あの人は母さんみたいだった)

妖精(良い人だったね)

剣士(どんな顔だったのかな?心にその顔も描けないから心から消えてしまいそうなんだ)

妖精(だからここに?)

剣士(ここの匂いの中にあの人がいた事を思い出す)

妖精(はやく見える様になると良いね)

剣士(うん)


女海賊「あ!!!居たぁぁ!!もう!!探したんだからぁ!!!」タッタッタ

剣士「あ…ごめんさない」

女海賊「行くなら行くって言ってよ!!心配かけんなタコ!!」

剣士「タコ?」

女海賊「そう!!タコ!」プンスカ

剣士「あはははは」

女海賊「あれ?笑った?あんた初めて笑ったじゃん…タコが面白いの?」

剣士「ごめんね?タコ」

女海賊「はぁ?あんた舐めてんの?…もう!帰るよ!!」グイ

93: 2020/09/14(月) 23:22:15.60 ID:JwosRg690
『商隊5日目』

ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「はぁぁぁアッと言う間にお休みが終わった…」

妖精「次の休憩は4日後って言ってたね」

女海賊「え~と…地図によると…次はシケタ町という所」

妖精「行ったことある?」

女海賊「アサシンと何回か来てると思うけどどんな所かは忘れた」

剣士「来る!」クンクン

女海賊「え!?こんどは何!?」

剣士「まて」ダダッ

女海賊「どどどこ行くの?」

馭者「うぉ!!…おいおいどこ登ってんだ…降りろ」

女海賊「剣士!!どうしたの?」ヒョイ

剣士「うえ!」ユビサシ

女海賊「上?…なんだろ…何か飛んでる」

馭者「飛んでるだとう?…まさかドラゴンじゃないよな?」

女海賊「そのまさか…かも」

馭者「うわわわ…先導は気付いて無いぞ?…お嬢ちゃんそこの笛取ってくれんか?」

女海賊「これ?」ポイ

馭者「ピーーーーーーーー」

女海賊「ドラゴンもまだこっちに気付いてないかも…」

馭者「衛騎兵が来たら嬢ちゃんが伝えてくれぃ…わしゃ手が離せん」

女海賊「何て?」

馭者「ドラゴンの数と方向だな…それだけで伝わると思うで」

衛騎兵「どうしたぁぁ!」ドドド

女海賊「西の方角にドラゴンが見えるの!!こっちに向かってる!!」

衛騎兵「なんだとぉ…うわっ…こりゃまずい…ピーーーーーーーー」ドドド

馭者「嬢ちゃん!刃物何か持って無いかい?」

女海賊「どうするの?」

馭者「ドラゴンが来たら馬車切り離して馬で逃げなあかん」

女海賊「おっけー準備する!」

剣士「来る!!」

女海賊「え?え?え?もう?」

94: 2020/09/14(月) 23:22:46.02 ID:JwosRg690
ドラゴン「ギャーーース」バッサ バッサ



女海賊「うわっ…でか」

馭者「先頭は止まらんな…どうするんじゃ?」ドギマギ

女海賊「ドラゴンは上で旋回してる…見てるのか…な?」

馭者「商人どもが変な荷物運んでなければ襲っては来んのじゃが…」

女海賊「ん?離れて行く…助かったかも…どうして?」

馭者「行ったかぁ?…うへぇ助かったわい」

女海賊「東の方向に飛んで行った」

剣士「もり…いった」

女海賊「あーびっくりしたね…もう大丈夫そうかな?」

馭者「先頭が速度上げてるぞい」ハイヤ ヒヒーン

女海賊「剣士!?もう居ないから中に入って?」

剣士「…はい」ノソリ

女海賊「どうしてドラゴン行っちゃったんだろね?」

妖精「僕が見えたからだと思うよ」

女海賊「こんなちっちゃいのに?」

妖精「ドラゴンは人間よりずっと目が良いよ」

女海賊「妖精が居れば襲って来ないんだ?」

妖精「ちょっと違うけどドラゴンは妖精の役割を知ってる」

女海賊「…役割ねぇ…ふ~ん」

妖精「ドワーフも同じ筈なんだけどなぁ?」

女海賊「あんたぁ!妖精のクセに生意気だよ!!」

95: 2020/09/14(月) 23:23:36.65 ID:JwosRg690
『シケタ町』

タッタッタ

女海賊「まずいぃぃ!あんたのせいで宿屋泊まれなかったらどーすんのさ!!」

剣士「君が寝てた」

女海賊「さっさと起こせよ!スカポンタン!!」

剣士「スカポンタン?」

女海賊「あぁぁぁ宿屋が人だかりになってる…もう!!」

剣士「バーベキューしよう」

女海賊「お?いいねぇ…キャンプでもいっか」

剣士「近くに川の音聞こえる」

女海賊「暗くなる前に肉買いに行くよ!付いて来な!」タッタッタ



----------


メラメラ パチ

女海賊「…ほら剣の先に肉を刺して…そのまま火の中に入れる」ジュー

女海賊「焼けたら一口食べて又火に入れる」ガブ モグ

女海賊「これが山賊焼き」

女海賊「やってみな?」

剣士「こう?」ガブ モグ

女海賊「…なんかさぁ…あんたといっつもこんな事してる気がするんだよなぁ…」

剣士「どうして?」

女海賊「なんでだろ?前世は私の奴隷だったとか?」

剣士(僕は君の顔が分からない…)

女海賊「はぁ!?何訳の分かんない事言ってんの?」

剣士「!!?」ハッ

女海賊「はっ…また既視感…何なのコレ?」

剣士「…その声」

96: 2020/09/14(月) 23:24:03.87 ID:JwosRg690
女海賊「あのさぁ!?あんた良くしゃべってる言葉…何なの?」

剣士「森の言葉」

女海賊「森?そんな言葉があるんだ…でもねあんま使わない方が良いんだよね」

剣士「ごめん」

女海賊「他の人に聞かれなきゃ良いんだけどさ…で?その言葉誰に通じるの?」

剣士「森の住人」

女海賊「おぉぉなんかすげーじゃん?…で住人て誰よ?エルフ?トロール?」

剣士「みんな」

女海賊「なんかメンドクサイな…でも興味ある…今度教えて?」

剣士「はい」

女海賊「ちょっと冷えてきたなぁ…あんたは良いね毛皮着ててさ!!」

剣士「母さんの一部…あたたかい」

女海賊「ちょっと背中借りるよ…こうするとあったかいんだ」グイ

剣士「…」

女海賊「動かないでよ?」


---この背中…誰だっけ---


97: 2020/09/14(月) 23:24:38.65 ID:JwosRg690
『商隊20日目』

ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「…もうウンザリ…気球もらったら二度と商隊になんか入んない!」

馭者「嬢ちゃん…そう言いなさんなって」

女海賊「まだ着かないの?」

馭者「日没前にはハズレ町に着く筈じゃ…でもな?盗賊が出るから気を付けなアカン」

女海賊「いーのいーの」

馭者「嬢ちゃんは世間を知らねぇ…衛兵団から離れたらイカンで?」

女海賊「あのおっさん共は私に色目使うからキライ」

馭者「あっはっは…しょうがあるめぇ商隊に若い娘が入ることなんざ滅多にねぇもんでな」

女海賊「ハズレ町は2日の休憩って言ってたよね?」

馭者「商隊の再編成があるんじゃ…ゆっくりしとくとええ」

女海賊「なんかある?」

馭者「露店が沢山出てる筈じゃ…買い物も良いがスリに合わん様にな」

女海賊「買い物かぁ…おい!剣士!あんたのその冴えない服を私色に染めてあげる!」

剣士「このままで良いよ」

女海賊「私の従士なんだからさぁ!その貧乏くさい旅人の服じゃ恰好付かない」

馭者「嬢ちゃんのヒマつぶしに付き合ってやりーな」

98: 2020/09/14(月) 23:25:04.18 ID:JwosRg690
『ハズレ町』

ワイワイ ガヤガヤ

女海賊「よっし!宿屋も取れたし買い物いくよ!付いてコイ!!」

妖精「露店がいっぱいだね」

女海賊「とりあえず剣士の辛気臭い旅人の服を買い替える」

剣士「辛気臭い?」

女海賊「だっさいって意味!」

剣士「だっさい?」

女海賊「あぁぁメンドクセーなあんたは!!良いから付いてコイ!」グイ

妖精「あ!?…あの恰好は…」

女海賊「んぁ?…あぁアレは法王庁だね。こんな所まで来てたんだ…無視無視」

妖精「ちょっと様子見てくる」ヒラヒラ

女海賊「いってら!!剣士は私に付いてコイ」

剣士「…」

女海賊「あんた聞いてんの?うんとかスンとか言えよタコ」

剣士「スン」クンクン

女海賊「…何立ち止まってんのさ!何かあんの?」

剣士「何か居る気がする」

女海賊「また魔物?」

剣士「いいえ…森の匂い」

女海賊「そんなんどうでも良い!いくよ!」グイ

99: 2020/09/14(月) 23:25:32.10 ID:JwosRg690
【露店】

防具商「らっしゃい!何か買ってくかい?」

女海賊「おすすめは何?」

防具商「ラクダの革鎧が安いよ」

女海賊「そんな臭い物おすすめするの?もうちょっとマシなの無いの?」

防具商「はぁ…すこし値が張るけど金属糸で出来た旅人の服は臭わないですが…」

女海賊「お?ちょい見せて?」

防具商「…こちらですが」ゴソリ

女海賊「おぉ光ってる!!剣士!?サイズ合わせてみて?」

防具商「こちらの方ですね?」

女海賊「私も合わせてみる…おい剣士!何ぼーっとしてんのよ!」

剣士「はい…」クンクン

女海賊「…もう!まぁ良いや適当に見繕って着替えさせて」

防具商「かなりお高いですがよろしいでしょうか?」

女海賊「いくらよ?」

防具商「2着で10金貨ですが…」

女海賊「ハイハイ…」ジャラリ

防具商「うは…どちらの貴族様で?」

女海賊「うっさいなぁ…私は他の露店見てくるから着替えさせておいて!」

防具商「かしこまりました」ニヤ

女海賊「剣士!着替えたらここで待ってて」

剣士「はい…」



----------

100: 2020/09/14(月) 23:26:04.61 ID:JwosRg690
防具商「…これで良しと」ゴソゴソ

剣士「…」

防具商「こちらがお連れ様の分ですが…お戻りが遅い様で」ニヤニヤ

剣士「…」

防具商「ここら辺はスリが多いですからねぇ…あなたは何も持っていない様ですが」

剣士「…」---女海賊大丈夫かな---

防具商「わたしはこれで店を終いますので失礼します…ではお気を付けて」スタコラ


ヒラヒラ ヒラヒラ


妖精(剣士!探したよ!大変な事が起きてる)

剣士(どうしたの?)

妖精(エルフが捕らえられてる)

剣士(やっぱり!…その匂いだったか)

妖精(法王庁の馬車の中)

剣士(どうしよう…女海賊がまだ帰って来ない)

妖精(エルフは僕の姿を見て助けをお願いしてきた)

剣士(僕だけで助ける事が出来そうかな?)

妖精(牢の鍵の場所は分かる…でも人が交代で見張ってるよ)

剣士(夜になれば…)

妖精(状況はあんまり良くないんだ)

剣士(どうして?)

妖精(法王庁の衛兵が交代交代でエルフを凌辱してる…夜になっても続いてると思う)

剣士(鍵を開けた所を襲うしか)

妖精(そうだね…)

剣士(僕たちの馬車の中に樽があったよね?一旦その中に隠そう)

妖精(馬車までは僕が誘導するよ…でもエルフが言う事聞くかな?)

剣士(一旦安全な所まで避難しないと逃げようが無いと思う)

妖精(エルフを説得してくる…)

剣士(今日の夜行こう)

妖精(分かった!エルフの所に行ってくる)ヒラヒラ



----------

101: 2020/09/14(月) 23:26:31.14 ID:JwosRg690
タッタッタ

女海賊「やほーー待った?」

剣士「大丈夫?」

女海賊「何が?」

剣士「スリ」

女海賊「え!?…アレ?ない!!…ない!!…」ゴソゴソ

剣士「体が無事なら良い」

女海賊「ほーん…言うじゃない…でも買い物終わったからお金はもう良い」

剣士「宿屋のお金は?」

女海賊「フフフフフフフ海賊をなめんなよ?大事な物は大事な所に隠しているのだ!!」

剣士「良かった」

女海賊「あ~でも…ちょっとやりすぎたかなぁ」

剣士「??」

女海賊「拾ったサソリ2匹を金貨の入った袋に入れておいたんだ」

剣士「サソリ?」

女海賊「まぁ良いじゃん!?ところでさぁ…いっぱい買い物したんだ!早く宿屋に帰って装着するぞ!!」

剣士「はい…」

102: 2020/09/14(月) 23:27:06.90 ID:JwosRg690
タッタッタ

女海賊「やほーー待った?」

剣士「大丈夫?」

女海賊「何が?」

剣士「スリ」

女海賊「え!?…アレ?ない!!…ない!!…」ゴソゴソ

剣士「体が無事なら良い」

女海賊「ほーん…言うじゃない…でも買い物終わったからお金はもう良い」

剣士「宿屋のお金は?」

女海賊「フフフフフフフ海賊をなめんなよ?大事な物は大事な所に隠しているのだ!!」

剣士「良かった」

女海賊「あ~でも…ちょっとやりすぎたかなぁ」

剣士「??」

女海賊「拾ったサソリ2匹を金貨の入った袋に入れておいたんだ」

剣士「サソリ?」

女海賊「まぁ良いじゃん!?ところでさぁ…いっぱい買い物したんだ!早く宿屋に帰って装着するぞ!!」

剣士「はい…」

103: 2020/09/14(月) 23:27:41.71 ID:JwosRg690
『宿屋』

女海賊「おぉーこの金属糸の服!軽くて良いね」ゴソゴソ

剣士「…」

女海賊「見えてないのは分かってるけど…あっち向いて!!」

剣士「…」クルリ

女海賊「臭いも嗅ぐな!!息を止めて!!」

剣士「…」ピタリ

女海賊「私が裸の時は気を使えよ」ゴソゴソ

剣士「くるし…い」

女海賊「もう良い」

剣士「僕はこれをどうすれば…」

女海賊「それは狼の仮面…あんたはどうせ目が見えてないから顔を全部隠す」

剣士「こう?」ゴソゴソ

女海賊「おー超かっこいいじゃん!…私はこの機械式望遠ゴーグル…じゃーん!!って見えてないか」

女海賊「それからクロスボウのホルダーと小物入れ付きベルト…めっちゃスチームパンク」

剣士「見てみたい」

女海賊「私の美貌を見れないなんてあんた不幸だねぇ」

剣士「僕はどういう風に見える?」

女海賊「その仮面と白い毛皮着てれば私の番犬ポチ」

剣士「ウルフに見える?」

女海賊「夜ならそう見えるかもね」

剣士「…」---よし!都合が良い---

女海賊「あ~やっと馬車から解放されてゆっくり休める」

剣士「僕は休めない」

女海賊「なんでさ?」

剣士「え~と…」

妖精「剣士じゃ説明できないから僕が代わりに…」


カクカク シカジカ

104: 2020/09/14(月) 23:28:12.64 ID:JwosRg690
女海賊「…で夜に助けに行くのか…う~ん危険だなぁ…」

妖精「エルフに今日の夜行くともう伝えたよ」

女海賊「まだ一日この町に居なきゃいけないのがね…もう少し別の騒ぎ起こさないと明日困るなぁ」

妖精「爆弾使う?」

女海賊「いまいちだなぁ…あんたさぁウルフの大群とか呼べないの?」

剣士「え?」

女海賊「ほら…ウルフって遠吠えで仲間呼んだりするじゃん?」

妖精「賢い!!デザートウルフが居るかもしれない」

女海賊「フフフフフフフ面白くなってきたぞぉ!私は養羊場の柵を爆破してくる」

妖精「羊が交換条件だね?出来る?剣士」

剣士「呼んでみる」

女海賊「今夜は上弦の月…よし!月が沈む時に爆破するからエルフの方は剣士と妖精で行って」

剣士「わかった」

女海賊「エルフを樽に隠したら宿屋に戻って来る事…分かった?」

剣士「はい」

女海賊「よっし!いっちょ働くかぁ!!あんたの遠吠え楽しみにしてるよ」



105: 2020/09/14(月) 23:28:45.43 ID:JwosRg690
『丘の上』


ワオーーーーーーン アオーーーーーーーン

妖精(デザートウルフは来るかな?)

剣士(返事があった…来る)

妖精(法王庁の馬車は宿舎の方…こっちだよ行こう)ヒラヒラ

剣士(今の月は?)

妖精(もうすぐ沈むよ)


ドーン


剣士(予定通りだね)

妖精(ストップ!!…この先の馬車)

剣士(声が聞き取りにくい…もう少し近づく)ソロリ


ギシギシ

衛兵1「おい!早くしろよ…交代だ」

衛兵2「待ってくれ…こう無反応じゃ気が入らんのだ」

女エルフ「…」

衛兵2「もうちょっと抵抗するとか無いのかよ」ヌプヌプ

女エルフ「…」

衛兵1「開けるぞ」

衛兵2「待て待て…もう出る…うっ」ハァハァ

女エルフ「…」

衛兵1「終わったか?」

衛兵2「こんなに綺麗な顔してても無反応じゃなぁ…」シンナリ

衛兵1「みんな待ってんだ!早く出ろ!」ガチャリ


アオーーーーーーン

106: 2020/09/14(月) 23:29:32.23 ID:JwosRg690
衛兵1「今日はヤケに犬が鳴いてるな…うぉ!めちゃくちゃ美形だな」

衛兵2「助けてやるとか口説いても無駄だぞ」ゴソゴソ

衛兵1「汚されきって舐める気は起きんな…早く変われぐふふふ」

衛兵2「今出る…ん?この女エルフ動いたぞ?おい暴れ…」

女エルフ「…」バタバタ

衛兵2「おい!おとなし…ぐぁ」

衛兵1「な、なんだなんだぁ?」ドン!

妖精(助けに来たよ!今の内に檻から出て)

衛兵1「犬!?いや…ウルフか?」タジ

衛兵2「エルフが逃げちまう檻を閉め…」

女エルフ「…」ダッ ガブ

衛兵2「いでぇ!!ぬぁぁぁぁ血がぁぁ俺の○○がぁぁぁ」

女エルフ「…」ペッ ボトリ

衛兵1「このぉ!!」スラーン

女エルフ(待ってた…足を怪我してて走れない)

剣士(チャンスを見て僕の背中に乗って!)

衛兵1「ウルフが人間様に勝てると思ってんのか!!」ブン

剣士(早く出て!!)ピョン クルクル シュタ

衛兵2「いでぇ…いでぇ…」ジタバタ

女エルフ(乗る!)ピョン ドシ

衛兵1「な!?…ウルフに乗るだと?」

剣士(つかまって!!走る…ぅ)シュタタ

衛兵1「逃がすかぁ!!」ダダッ

妖精(剣士!?走れる?)

剣士(なんとか…)---重い---

妖精(一人追いかけてくるよ)

女エルフ(追いつかれる…)

剣士(大丈夫!行ける!デザートウルフの方に向かう)

衛兵1「待てぇ!!俺はまだヤって無ぇ!!逃がさん!!」タッタッタ

剣士(…くぅぅ…もう少し…もう少し)シュタタ

妖精(あ!!居た居た!!)ハラハラ

デザートウルフ「ガルルルル…」

衛兵1「うぉ!!ウルフの大群…やべ」タジ

剣士(このまま馬車まで行く!妖精!…先導して)

妖精(こっち!)パタパタ

女エルフ(あなたは…エルフ?ウルフ?…それとも人間?)

剣士(いろいろ事情があってね)シュタタ

女エルフ(私は重い?)

剣士(背中に誰かを乗せて走った事なんか無い)

妖精(おっけー誰も居ないよ…馬車までまっすぐ行けそう)

剣士(良かった…)

107: 2020/09/14(月) 23:29:59.95 ID:JwosRg690
『馬車』

女エルフ(…人間が仕掛けたベアトラップにかかってしまって)

妖精(この足の怪我は治るのにしばらくかかると思う)

剣士(治るまでは一緒に居た方が安全かな)

女エルフ(この樽の中に隠れておけば良いの?)

剣士(明後日にこの町から離れる…それまでは隠れて居て)

女エルフ(わかった…)

剣士(その毛皮は君に貸しておくよ)

女エルフ(白狼の毛皮…)

剣士(君が裸だったのは知らなかったんだ…何も用意していなかった)

女エルフ(ありがとう…あなた…やっぱりエルフね?)

剣士(君も妖精と同じ事を言うんだね…僕は自分が何なのかよく分からない)

女エルフ(きっと私と同じハーフエルフ)

剣士(その話は今度じっくりしよう…僕が今ここに居るのはあまり良くない…怪しまれる)

妖精(そうだよ…見つかる前に戻ろう)

剣士(狭いけど…樽の中で休んで居て?)

女エルフ(…)コクリ

剣士(このナイフを渡しておくよ…もしもの時に使って)ハイ

妖精(行こう!)パタパタ

剣士(じゃぁ…明後日の朝に)シュタタ

108: 2020/09/14(月) 23:30:30.58 ID:JwosRg690
『宿屋』

ガヤガヤ ガヤガヤ

外はウルフが居て危ねぇぞ

駐屯してる衛兵は何やってんだ

オラの羊さ心配だべぇ~ヒック

ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「お!?上手くいった?」

剣士「うん」

女海賊「もっと遅くなると思ってた」

剣士「デザートウルフが来て助かった」

女海賊「50匹は来てるよ!あちこち走り回ってる」

剣士「町の人は建物に?」

女海賊「隣の酒場に居た連中が帰れなくてここに来てるくらい…被害は殆ど無いよ」

剣士「よかった」

女海賊「そろそろ寝るかぁ!!ふぁ~あ…アレ?あんた!そういえば毛皮と仮面はどうしたの?」

剣士「馬車に置いてきた」

女海賊「ほ~ん…まぁ良いけど…」ジロリ

剣士「なに?」

女海賊「あやしぃ…あんたぁ!!エルフに貸したな?」

剣士「うん」

女海賊「惚れたか!?」

剣士「ハハ僕は見えない」

女海賊「ドワーフとエルフ!!どっちが良いかハッキリしな!!」

剣士「どっちも同じ…」

女海賊「ん~む…同じねぇ…腹立つ回答だけど悪い気はしないなぁ」

剣士「休もう」

女海賊「私はこっち!あんたはそっち!寝るよ!」プン

109: 2020/09/14(月) 23:31:09.09 ID:JwosRg690
『夢』


ぼく「回復魔法!」ボワー

??「へぇ~魔法使えるんだ?すごいじゃん」

ぼく「大丈夫?」

??「もう平気!!あんたが持ってるその剣ってさぁ…変わった色してるね」

ぼく「銀…かな?」

??「どこで手に入れたの?私も欲しいんだけど」

ぼく「覚えてないんだ」

??「ちょっと貸して」

ぼく「はい」ポイ

??「お?軽~い」フォン フォン

ぼく「気に入った?」

??「振ると不思議な音が鳴るんだね」フォン フォン

ぼく「気が付かなかった」

??「返すよ」ポイ パス

ぼく「行こうか」

??「日暮れまでに馬宿まで行かないとまた野宿になるなぁ」

ぼく「向こうの谷の下に見えるやつかな?」

??「まだ遠いなぁ…こんどウルフが出たらあんたが追い払って」

ぼく「わかったよ」

??「足が少し痛む」

ぼく「回復魔法!」ボワー

??「さんきゅ!」

ぼく「急ごう…」

??「馬宿まで行けたら定期馬車に乗れるかも」

ぼく「楽になるね」


---魔法なんて使えたっけ?---

110: 2020/09/14(月) 23:31:56.44 ID:JwosRg690
『翌日』

ガチャリ バタン

女海賊「はぁはぁ…まずい事になっちゃったなぁ…」

剣士「どうしたの?」

女海賊「ちょっと目立ちすぎたかも…後を付けられてる」

剣士「誰に?」

女海賊「多分同業者…盗賊ギルドの連中」

剣士「なら仲間だと教えて…」

女海賊「簡単に信じる訳無いじゃん?ったくぅ…」

女海賊「私がギルドマスターの助手だって事分かってないんだよね~あのバカ共」

女海賊「きっと商隊に混ざって追ってくる…どうすっかなぁ」

女海賊「馬車の中に食料と水はどれくらい残ってた?」

剣士「5日分くらい」

女海賊「あんたさぁ…馬車の馭者出来る?」

剣士「え!?…やったこと無い」

女海賊「馬のおしりペチンペチンやってりゃ良いのよ!!トンズラするよ!!」

剣士「前の馭者の人は?」

女海賊「置いてくに決まってんじゃん」

剣士「マジで言ってる?」

女海賊「…その言い方…私の真似?てか教え方が悪いか…とにかく今夜逃げる」

女海賊「このまま商隊で移動してると絶対面倒な事になる」

剣士「どうして?」

女海賊「相手はプロだよ?こっちはエルフかくまってるしバレると絶対襲われる」

女海賊「商隊は明日の朝に出発予定だから馬の締結は夜までに終わってる筈」

女海賊「この部屋の明かりは付けたまま日が暮れたら出来るだけ早く出発するよ」

女海賊「ウルフが沢山うろついてる時に単独で出発するとは誰も思わない」

剣士「…ゆっくり話してくれないと良く分からない」

女海賊「シッ…」

剣士「??」

女海賊「私のカンは超当たる…次は誰かこの部屋を確認に来る」

剣士「…」クンクン

女海賊「誰か来る?」

剣士「食べ物の匂い」

女海賊「…ルームサービスか…一部屋づつ回ってるな…来ても開けないで!」

剣士「はい」

女海賊「部屋がバレるのも時間の問題…どうするどうする?」キョロキョロ

剣士「爆弾」

女海賊「こんな所で?ダメダメ…ん?まてよ?」

女海賊「窓から投げてドーン→人が集まる→衛兵来る→明かり付けたまま今逃げる…いいな」

女海賊「で…どこに隠れる?」ソワソワ

111: 2020/09/14(月) 23:32:26.82 ID:JwosRg690
トントン


??「お食事を届けに参りました」

女海賊(ああぁぁもう来た…どうするどうする?)

剣士(…)ノソリ

女海賊(シーッ…出ないで!え~いもうやっちゃう!…爆弾投げるよ)チリチリ ポイ

??「いらっしゃいませんか?」ガチャガチャ

女海賊(人が集まってきたら窓から出るよ!準備して)

剣士(丘の上に行こう)

女海賊(隠れるところあんの?)

剣士(風通しが良くて誰も居ない)

女海賊(おっけ!あんたが先導して)

??「いないのですか~?ここを開け…」ドンドンドン


ドーン パラパラ


??「うゎ!!な、なんだぁ?」ドタドタ

??「外か?」タッタッタ



----------



ガヤガヤ ガヤガヤ

なんの騒ぎだ

けが人は!?

この木が破裂したのか?

ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「よし!今行ける!窓から飛び降りて!」ピョン 

剣士「付いてきて」ピョン シュタ

女海賊「よっし!!撒ける」タッタッタ

112: 2020/09/14(月) 23:32:56.59 ID:JwosRg690
『丘の上』

サワサワ サワサワ

女海賊「付けられて無いね?」キョロ

剣士「この木に登る」

女海賊「こんなでっかい木を私に登らせる訳?」

剣士「引っ張る」ピョン ピョン シュタ

女海賊「あんたはサルか!」

剣士「手を…」

女海賊「よっ…と」ピョン ピョン ガシ

剣士「おっけ」グイ

女海賊「その言い方…だんだん私になってるな」ヨイショ

剣士「完璧!」

女海賊「フフフフフかんぺーき!!さて…馬車はどっちだ?」

剣士「あっちの方角」ユビサシ

女海賊「…あれだな?今こそこの望遠ゴーグルを使う時だ!!装~着!!」ビシ

女海賊「おぉぉ見える見えるぅ…丁度馬締結してる所だ」

剣士「エルフは?」

女海賊「分かんない…牧草と水は馬車の中に入れ終わってる模様」


チュンチュン


女海賊「あんたぁ何やってんのよ?」

剣士「鳥達とお話」

女海賊「はぁぁ?何メルヘンやってんのさ…焼き鳥用に捕まえといてよ」

剣士「エルフが元気ないらしい」

女海賊「そういや妖精は?全然見ないけど」

剣士「多分エルフの所に居ると思う」

女海賊「あ!!馬の締結終わった…あの馭者…町の方に戻って行く」

女海賊「なんちゅー不用心な」

女海賊「荷物積んで無いのが良かったぽい」

女海賊「まだ夕暮れ前だけど人が居ない今がチャンスかも」

女海賊「商人達の馬車が商隊詰め所に入ってくる前に行っちゃおう!」

剣士「もう行く?」

女海賊「私は待てない性格なの!行くよ!」ピョン

剣士「ちょちょ…」ピョン

113: 2020/09/14(月) 23:33:44.40 ID:JwosRg690
『馬車』

ヒヒーン ブルル

女海賊「よし!誰も居ない!ひとまず馬車の中へ」ピョン

剣士「おっけ」ピョン

女海賊「誰か来たら教えて…この樽の中ね?」

妖精「女エルフの足の怪我が良くないよ」

女海賊「今は見てあげらんない…町出るまで待って」

剣士(女エルフ大丈夫?)

女エルフ(ぅぅぅ…)

女海賊「もう!!しょうがないなぁ…樽開けるよ?妖精!!誰か来ないか見張ってて」パカ

妖精「しょうち!」ビシ パタパタ

女海賊「ドワーフとエルフのご対面~わぉ綺麗な金髪」

女エルフ(ドワーフ?…聞いてない)

剣士(この子はドワーフの女海賊らしい)

女海賊「私の分かんない言葉使うな!…足見せて?」

女エルフ(ドワーフに体見せるなんて…屈辱)

剣士(大丈夫…言う事聞いて?)

女エルフ(…)スッ

女海賊「お?立った…て細っそ!そこに横になって足見せて?」

女エルフ(…)ソロリ

女海賊「ああぁぁ~血は止まってるけど骨が露出してるじゃん!剣士コラ!なんで怪我の事言わないのさ!」

剣士「分からなかった」

女海賊「壊氏しかけてる…これは薬草じゃどうにもならないよ…どうしよう」

女海賊「んんんん切断しないと氏ぬよ?」

剣士「え?そんなに」

女エルフ「足を無くすくらいなら…」

女海賊「お?しゃべれるんじゃん」

剣士「医者に見せよう」

女海賊「何バカな事言ってんの?この子はエルフだよ?捕まって言い様にされるに決まってんじゃん」

剣士「切断しか方法は無い?」

女エルフ「イヤ…そんなのイヤ」ブルブル

女海賊「んんんんシャ・バクダまで持つかなぁ?…回復魔法とかあればなぁ…」

剣士「…」---回復魔法?---

114: 2020/09/14(月) 23:34:22.56 ID:JwosRg690
女海賊「このハズレ町からシャ・バクダまで早くて5日…薬草で何とか持たせるのに賭けるか」

剣士「触るよ?」

女エルフ「え?」

女海賊「おい!!裸の女に勝手に触るな!!」

剣士「回復魔法!」シーン

女海賊「何やってんの!あんたはバカか?」

女エルフ「あなた魔法使えるの?回復魔法は触媒に水とミネラルが要るの」

剣士「触媒?」

女海賊「ミネラルは爆弾の材料で少し持ってるケド…あんたのメルヘンに付き合ってる場合じゃ無い」

剣士「貸して」

女海賊「もう!勝手にしな!!私は薬草作る」

妖精「もうすぐ日が沈むよ」

女海賊「ああぁぁいろいろ忙しいなぁ…メルヘンは早く終わって馭者やってよ」

剣士「もう一回…回復魔法!」ボワー

女エルフ「ぁ…」

女海賊「お?光った?マジ?…」

剣士「回復魔法!」ボワー

女エルフ「ぁぁ…ん」

女海賊「マジでマジか!!でも待って…その光は目立ちすぎる…町出てからにして」

剣士「わかった…馭者試してみる」

女海賊「馬は夜目が効かないから走らせるなら馭者が必要…妖精!!剣士の目になってあげて」


ヒヒーン ブルル

ガラゴロ ガラゴロ


女海賊「お?動いた…丁度良い!人通りさけて町を出て」

妖精(もっと右…そうそう)

女海賊「あんた!?手綱持ってないの?」

剣士「馬とお話した」

女海賊「フフフフあんたは便利だねぇ…条件何だったの?」

剣士「おしりを叩かない約束と牧草」

女海賊「馬は夜に目が見えないよ?手綱持っときな」

剣士「妖精が馬の目の代わりやってる」

女海賊「馭者は妖精で良いってわけ?…さっすが妖精!今度わたしのおっOいの真ん中で寝かせてあげる」

妖精「先約があるので…」

女海賊「ムッキーーまさか…」ジロリ

女エルフ「…」プイ

115: 2020/09/14(月) 23:35:10.17 ID:JwosRg690
『荒野』

ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「真っ暗だね…すこし進路を東よりに変えて森が見えたら馬を休息させよう」

剣士「デザートウルフが様子伺ってる」

女海賊「あんたが居りゃ大丈夫っしょ?」

剣士「友達では無いよ」

女エルフ「私には襲って来ない筈」

剣士「…そういう事か…距離を保ってる」

女海賊「それはある意味守られてると思って良さそう」

剣士「馭者は妖精に任せるよ」ノソリ

女海賊「ここまで離れればいっかぁ…ちょいもう一回さっきの魔法見せて?」

剣士「足の具合は?」

女海賊「薬草乗せてるけど骨が露出してるのはどうにもならないよ」

剣士「行くよ?回復魔法!」ボワー

女エルフ「ぁ…」

女海賊「いちいち工口い声出すなって」

女エルフ「すごくラク」

剣士「回復魔法!」ボワー

女海賊「!!?あんたぁ!!」

剣士「え?」

女海賊「あんたが魔法使えるの私知ってたカモ…私の夢ん中出てくるのあんただね?」

剣士「夢?」

女海賊「…って何メルヘンな事言ってんだ私…」

剣士「回復魔法!」ボワー

116: 2020/09/14(月) 23:35:36.16 ID:JwosRg690
女海賊「んんんんんどうも…何回も見てる気がするんだよなぁ」

女エルフ「魔法が使えるのは才能のある限られた人だけ」

女海賊「あんたは使えんの?」

女エルフ「ハーフエルフは純血のハイエルフから魔法を使うことを禁止されているの」

女海賊「そんな事は聞いてないよ…使えるか使えないか」

女エルフ「エルフはみんな使える…でも使うとエルフの森から追放される」

女海賊「他にどんな魔法があるか知ってる?」

女エルフ「沢山」

女海賊「シャ・バクダまで5日くらい掛かる…剣士!!全部教えてもらいな?」

剣士「出来るかな?」

女海賊「私の勘は超当たる…あんたは本当は魔法使いだ…夢で見た」

剣士「ハハ夢?」

女海賊「それはそうと…女エルフ?あんた相当ヤられたね?」

女エルフ「…」

女海賊「恥部見せてみな?あちこちアザだらけじゃん」

女エルフ「…」

女海賊「どうせ剣士は目が見えてないから…ハイ足開いて」

女エルフ「…」パカ

女海賊「…やっぱりね…あんた良くこんなんで我慢してたね?剣士!!こっちも回復魔法」

剣士「回復魔法!」

女エルフ「ぁぅぅ」

女海賊「上着を買っておいたから体がラクになったら着て」ポイ

女エルフ「ありがとう」

女海賊「あんたさぁ…本当は瀕氏だったんだね…涼しい顔してるケド」

女エルフ「人間達から見たらエルフはみんなそう見えるの…」

117: 2020/09/14(月) 23:36:22.70 ID:JwosRg690
『翌日』

ブルル~ ガフガフ

女海賊「ふぁ~あ…おはよう…馬の機嫌は?」

剣士「2匹とも良い」

女海賊「そりゃ結構!牧草食べ終わったら出発出来る?」

剣士「多分ね…女エルフを気に入ったみたい」

女海賊「んん?馬のくせに?」

剣士「馬は人間が思ってるよりずっと賢いんだよ」

女海賊「女エルフはどこ?」

剣士「馬とお話してるよ」

女海賊「もう歩けるの?」

剣士「やっと傷は塞がった」

女海賊「あれからずっと回復魔法してたの?」

剣士「うん…」

女海賊「女エルフ!!無理しないで横になってて?傷跡を見せて?」

女エルフ「ごめんなさい」ヨロ

女海賊「あ…あんた…悔しいケドめっちゃ綺麗ね」

女エルフ「言われて悪い気はしないけど…そう見えてるだけよ」

剣士「僕には二人とも同じくらい素敵な人だよ」

女海賊「目を閉じればおんなじかぁ…ほら傷見せて?」

女エルフ「…」ソロリ

女海賊「おおぉ傷が塞がってる…でも氏んだ骨が再生するのはまだ時間が掛かる感じかな?」

妖精「出発するよ~」


ヒヒーン ガラゴロ ガラゴロ


女海賊「妖精とウルフ、ドワーフにエルフ…全員魔物じゃんwwwwww何このパーティー」

女エルフ「剣士はウルフというよりも私と同じハーフエルフ」

女海賊「やっぱそうなん?」

女エルフ「ほら?私の耳も小さい」

女海賊「本当だ…でもちょっと尖ってるね」

女エルフ「妖精から剣士の話を聞いたの…ウルフに育てられたって」

女海賊「そういや詳しく聞いたことなかったっけな」

女エルフ「目の無いハーフエルフの事…私知ってる」

剣士「え!?マジで?」

女海賊「…あんたさぁ!私の真似やめて」

女エルフ「私がまだ小さい頃…」

118: 2020/09/14(月) 23:36:54.22 ID:JwosRg690
目の無いハーフエルフの赤ん坊が森から追放される儀式があったの

その子はエルフの特徴が一つも無かった

人間との間で生まれたハーフエルフはみんな耳が小さい

だからエルフの森では下級エルフと言われていじめられる

特にエルフの特徴を一つも持っていなかったその子は

まだ赤ん坊なのに森の外へ追放された

私はその追放の儀式の時にその子見たことがある

目の中に瞳が無かった


女エルフ「剣士の顔を見て思い出した…あの時の子かもしれないって」

女海賊「言われてみると女みたいな顔立ちだもんねぇ…エルフだったら納得」

剣士「それはどれくらい昔の話?」

女エルフ「私はまだ24年目…その時6年目くらいだから18年くらい前」

女海賊「ええええええええ!?あんたまだ18歳なの?ガキじゃん!!」

女エルフ「体が小さいのはまだ成長しきっていないから…」

女海賊「…あんたはなんで人間に捕まったのさ?」

女エルフ「ハイエルフは森を出る事は殆どなくて外の見回りはハーフエルフの役割」

女海賊「小間使いって訳だ?」

女エルフ「人間達が森を荒らしてエルフ狩りをしているの」

女海賊「あんたの他にも捕まっているエルフがいっぱいいるんだ?」

女エルフ「人間の数は私たちエルフよりも100倍も200倍も多いの」

女海賊「ふむぅ…人間は悪い事ばっかりするねぇ…」

女エルフ「人間さえいなければ不幸なハーフエルフも生まれないのに…」

女海賊「むむ…ピーンと来たぞ!?お腹の中に子供が出来てるのかも?」

女エルフ「…」

女海賊「なるほど理解できた…エルフの森でハーフエルフが迫害される理由」

女エルフ「エルフは同族を殺めてはいけない掟」

女海賊「だから追放という方法しか取れないのか」

女エルフ「もしお腹の中に子供が出来ていたら私はその子を愛せるか自信が無い」

剣士「…もうその話は聞きたくない」

女エルフ「ごめんなさい」

剣士「僕の母さんはここに居る」

女海賊「白い毛皮…」

剣士「ずっと僕を愛してくれている…それで良い」



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119: 2020/09/14(月) 23:37:21.53 ID:JwosRg690
女エルフ「火炎魔法の触媒は硫黄と松脂」

女海賊「両方とも爆弾の材料だよ…持ってる」

女エルフ「電撃魔法は銅の欠片」

女海賊「銅貨コインでいける?」

女エルフ「罠魔法は植物の種と水」

女海賊「種…鳥の餌でいけるんかな?」

女エルフ「これらはエレメンタルの力を借りる代わりに支払う対価」

女海賊「はぁ?何のこっちゃ?」

妖精「物質の無いあの世では高価な物なんだよ?こう言えば分かるかな?」

女エルフ「魔法は古にエレメンタルと交わした契約に沿って行うの」

女海賊「なんかよくわかんないけど…隕石とかも落とせる?」

女エルフ「それは大魔法の一種…人間の魔女達が研究しているもの…」

女海賊「そっか…200年以上前にシャ・バクダが滅んだのは隕石だってアサシンが言ってたからさ」

女エルフ「アサシン?」

妖精「女海賊の飼い主だよ…人間だけどね」

女エルフ「あなた…人間に協力しているのね?」

女海賊「協力というか…ドワーフの教えはちゃんと守ってる」

女エルフ「ドワーフの教え…勇者の保護ね?」

女海賊「どこに居るのか分かんないんだけどさぁ…アサシンが勇者を探してるから便乗してるって感じかな」

女エルフ「私たち魔物の敵は人間…の筈」

女海賊「人間も悪い奴ばっかりじゃ無いよ?あんたも半分人間でしょうに?」

女エルフ「私は…私は…」

女海賊「かくいう私もドワーフと人間のハーフなんだけどね」

女エルフ「あなたもハーフ」

女海賊「パパが言ってたさ…複雑な心を持っているのが人間だって」

女エルフ「私の心は人間…なの?」

女海賊「犬猿の仲のドワーフとエルフがこうやってお話出来るのも人間の心があるからかもね?」

女エルフ「ドワーフとこんなに話が出来るなんて…」

女海賊「あんたん所のハイエルフは話が通じると思う?」

女エルフ「…」

女海賊「…そういう事」



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120: 2020/09/14(月) 23:38:00.21 ID:JwosRg690
剣士「火炎魔法!」ボワ

剣士「罠魔法!」ザワザワ シュルリ

剣士「電撃魔法!」ビビビ

女海賊「剣士!!それを左手でやって?…私の夢ん中だと右手に剣、左手で魔法使ってる」

剣士「こう?火炎魔法!」ボワ

女海賊「そうそう!そんな感じでソレを剣に塗る」

剣士「塗る?こうかな?」

女海賊「ちょーかっけぇ!!それで火炎切り…待て待てここでやらないで」

女エルフ「炎はやめて!馬が怯えてる」

女海賊「あんたにこんな才能があったとは…濡れる」

剣士「僕も驚いてる」

女海賊「ひょっとしてさぁ…あんた勇者じゃね?」

剣士「僕が!?」

女エルフ「勇者は人間…あなたは間違いなくハーフエルフ…匂いで分かる」

女海賊「匂いなんかすっかなぁ?」クンクン

女エルフ「後10年もすれば分かる…あなたは人間の様に老いない」

女海賊「私は10年も待てない…待つのキライ」

剣士「どっちでも良いよ…僕はぼく」

女エルフ「瞑想を教えてあげる…これはエルフにしか出来ない」

剣士「瞑想?」

女エルフ「エルフは睡眠の代わりに瞑想をするの」

女海賊「あんたちゃんと寝てんじゃん?」

女エルフ「誘導してあげる…魂を感じて付いてきて?」

剣士「…」

女エルフ「狭間の方へ…こっち」


---重なって一つになるの---

---ほら他の魂も重なってきた---

---考えると瞑想が覚めてしまうから---

---そのまま感じるだけ---

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121: 2020/09/14(月) 23:38:27.99 ID:JwosRg690
ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「もう!!何なのさあの2人は!!おい妖精!私の相手しろ」プン

妖精「ケラケラアハハ」

女海賊「何が可笑しいのよ!もう半日も息もしないであのまんま…私も連れてけってんだ」プリプリ

妖精「エルフには普通の事だよ…瞑想で体を癒すんだよ」

女海賊「まぁこれで剣士はハーフエルフってことが確定か…」

妖精「瞑想の方が寝るよりずっと良いんだよ?」

女海賊「私にも出来る?」

妖精「ドワーフは瞑想じゃなくて宝石とか金属で癒されるんじゃないの?」

女海賊「お!?あんた分かってるねぇ…金属とか機械大好き!見てると飽きない」

妖精「今身に着けてる金属糸の服は?」

女海賊「最高!!ぐっすり寝れる」

妖精「それと同じだよ」

女海賊「納得…でもさぁ2人でなんかイチャイチャしてる感じが腹立つ」イライラ

妖精「君のその短気な所はやっぱりドワーフなんだね」

女海賊「はぁ!?あんたぁ!!妖精のクセに生意気なんだよ!!」

妖精「あ!!瞑想から覚めた」

剣士「…」パチリ

女エルフ「…」パチリ

女海賊「おい!!なんで起きるタイミングも一緒なのさ!!腹立つんだけど」

女エルフ「どう?」

剣士「一つになった」

女エルフ「それで良いの」

女海賊「はぁぁぁ?一つになった?何工口い事言ってんの?あんた達何してたのよ」

剣士「あ…ごめん女海賊…どれくらい瞑想してたの?」

女海賊「半日!!あんたら2人で一つになったとか何してんのよ!?」プン

女エルフ「違うの…虫や草木、動物たちの魂と一つになるの」

女海賊「虫!?てっきりあんたら2人で一つになってるのかと…」

妖精「ドワーフの嫉妬は怖いよぉぉ」

女海賊「うるさい!バカ妖精!!羽ムシルぞ」

女エルフ「私の言った通りでしょう?あなたはハーフエルフ」

剣士「目も耳も鼻も必要ない…この感じ」

女エルフ「そう…それが証拠よ」

122: 2020/09/14(月) 23:39:05.57 ID:JwosRg690
『単独行動3日目』

ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「商隊に居るより全然こっちのがラク」

剣士「自由に出来るからね」

女海賊「エルフが居ればウルフも襲って来ないし」

剣士「全然他の馬車とすれ違わないね」

女海賊「こんな所危なくて単独馬車で移動なんか出来ないよ」

妖精「ドラゴンがまた来たりして」

女エルフ「ドラゴンはエルフの味方よ?…又ってどういう事?」

女海賊「商隊が一回ドラゴンに襲われかけた」

女エルフ「エルフを捕らえていない限りドラゴンは襲って来ない筈…あ!」

剣士「僕を見に来た?」

女エルフ「そうだと思う」

女海賊「なるほどぅ…つじつまが合うね」

女エルフ「ドラゴンは何処へ向かってたか分かる?」

女海賊「トアル町の東の方向」

女エルフ「森の最南部ね…鳥達の噂と合致してる」

女海賊「何かあんの?」

女エルフ「人間達の大部隊がエルフを探して北上してるらしいの」

女海賊「法王庁の衛兵達もその一部かな?…シャ・バクダに着いたらお姉ぇに聞いてみよう」

女エルフ「お姉さん?その人もドワーフ?」

女海賊「今は盗賊ギルドマスターを代行してる」

剣士「アサシンの代わりの人って?」

女海賊「私のお姉ぇ…ドワーフ2人とエルフ2人フフフ私らって一体何だろね?」



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123: 2020/09/14(月) 23:39:38.20 ID:JwosRg690
女海賊「…そう!気球をもらったらエルフの森を飛び越えて東の光の都シン・リーンに行く」

女海賊「途中で降ろしてあげても良いけどどうする?」

女エルフ「…剣士の目を治す為…か」

女海賊「千里眼という魔法があるんだってさ」

女エルフ「知ってる…でもそれは遠くにある物を見通す魔法」

剣士(目は治らなくても良い…ただ見たいだけ)

剣士(君たちの顔も世の中のすべても全部…僕が勝手に想像して心に描いてる)

剣士(夢でよく見る人が誰なのかも何もかも思い出せない)

剣士(それは見えないから…僕が勝手に想像してる物だから)

女エルフ(夢の中でも魂は同じ筈)

剣士(夢の中でそれを感じれるほど機転が利かないんだ)

剣士(いつも自分が誰だったか夢の中では覚えていない)

女エルフ(あなた…夢幻に捕らわれている)

剣士(夢幻?)

女エルフ(エルフは夢を見ないの…寝むる代わりに瞑想をするから)

剣士(瞑想の間は自我を保てる…夢は自我がどこかにいってしまう…どうしてだろう?)

女エルフ(それはあなたの夢では無いから)

女海賊「おい!!ちょっとさぁ!!私の分かんない言葉で会話しないでくれる?」

剣士「ごめん…難しい言葉だったから」

女海賊「…でどうすんの?女エルフ?」

女エルフ「剣士の見る夢に興味が出てきた…精霊の見ている夢かもしれない」

女海賊「はぁ?なんで急に精霊とか言い出す訳?ひょっとして昔話のやつ?」

女エルフ「その昔話がどういうのかは知らないけれど…200年前に精霊が夢幻に閉じ込められたお話」

女海賊「うんそれそれ…アサシンがしきりにその話をしてた…それって本当なのかなぁ?」

女エルフ「エルフの森には精霊樹があるの…」


精霊樹は祈りによって純血のエルフを生むの

でも200年前から精霊樹はエルフを生まなくなった

それは魂が居なくなってしまったから

このままではあと100年もすればハイエルフは絶滅してしまう

だからハイエルフ達は精霊の魂が再び戻る事をずっと祈ってるの

ではどうして精霊の魂が居なくなってしまったのか?

それは200年前の大破壊の時

魔王が倒される間際に精霊を夢幻に閉じ込めてしまったから…

124: 2020/09/14(月) 23:40:10.91 ID:JwosRg690
女海賊「…そう!気球をもらったらエルフの森を飛び越えて東の光の都シン・リーンに行く」

女海賊「途中で降ろしてあげても良いけどどうする?」

女エルフ「…剣士の目を治す為…か」

女海賊「千里眼という魔法があるんだってさ」

女エルフ「知ってる…でもそれは遠くにある物を見通す魔法」

剣士(目は治らなくても良い…ただ見たいだけ)

剣士(君たちの顔も世の中のすべても全部…僕が勝手に想像して心に描いてる)

剣士(夢でよく見る人が誰なのかも何もかも思い出せない)

剣士(それは見えないから…僕が勝手に想像してる物だから)

女エルフ(夢の中でも魂は同じ筈)

剣士(夢の中でそれを感じれるほど機転が利かないんだ)

剣士(いつも自分が誰だったか夢の中では覚えていない)

女エルフ(あなた…夢幻に捕らわれている)

剣士(夢幻?)

女エルフ(エルフは夢を見ないの…寝むる代わりに瞑想をするから)

剣士(瞑想の間は自我を保てる…夢は自我がどこかにいってしまう…どうしてだろう?)

女エルフ(それはあなたの夢では無いから)

女海賊「おい!!ちょっとさぁ!!私の分かんない言葉で会話しないでくれる?」

剣士「ごめん…難しい言葉だったから」

女海賊「…でどうすんの?女エルフ?」

女エルフ「剣士の見る夢に興味が出てきた…精霊の見ている夢かもしれない」

女海賊「はぁ?なんで急に精霊とか言い出す訳?ひょっとして昔話のやつ?」

女エルフ「その昔話がどういうのかは知らないけれど…200年前に精霊が夢幻に閉じ込められたお話」

女海賊「うんそれそれ…アサシンがしきりにその話をしてた…それって本当なのかなぁ?」

女エルフ「エルフの森には精霊樹があるの…」


精霊樹は祈りによって純血のエルフを生むの

でも200年前から精霊樹はエルフを生まなくなった

それは魂が居なくなってしまったから

このままではあと100年もすればハイエルフは絶滅してしまう

だからハイエルフ達は精霊の魂が再び戻る事をずっと祈ってるの

ではどうして精霊の魂が居なくなってしまったのか?

それは200年前の大破壊の時

魔王が倒される間際に精霊を夢幻に閉じ込めてしまったから…

125: 2020/09/14(月) 23:40:51.43 ID:JwosRg690
女海賊「…そう!気球をもらったらエルフの森を飛び越えて東の光の都シン・リーンに行く」

女海賊「途中で降ろしてあげても良いけどどうする?」

女エルフ「…剣士の目を治す為…か」

女海賊「千里眼という魔法があるんだってさ」

女エルフ「知ってる…でもそれは遠くにある物を見通す魔法」

剣士(目は治らなくても良い…ただ見たいだけ)

剣士(君たちの顔も世の中のすべても全部…僕が勝手に想像して心に描いてる)

剣士(夢でよく見る人が誰なのかも何もかも思い出せない)

剣士(それは見えないから…僕が勝手に想像してる物だから)

女エルフ(夢の中でも魂は同じ筈)

剣士(夢の中でそれを感じれるほど機転が利かないんだ)

剣士(いつも自分が誰だったか夢の中では覚えていない)

女エルフ(あなた…夢幻に捕らわれている)

剣士(夢幻?)

女エルフ(エルフは夢を見ないの…寝むる代わりに瞑想をするから)

剣士(瞑想の間は自我を保てる…夢は自我がどこかにいってしまう…どうしてだろう?)

女エルフ(それはあなたの夢では無いから)

女海賊「おい!!ちょっとさぁ!!私の分かんない言葉で会話しないでくれる?」

剣士「ごめん…難しい言葉だったから」

女海賊「…でどうすんの?女エルフ?」

女エルフ「剣士の見る夢に興味が出てきた…精霊の見ている夢かもしれない」

女海賊「はぁ?なんで急に精霊とか言い出す訳?ひょっとして昔話のやつ?」

女エルフ「その昔話がどういうのかは知らないけれど…200年前に精霊が夢幻に閉じ込められたお話」

女海賊「うんそれそれ…アサシンがしきりにその話をしてた…それって本当なのかなぁ?」

女エルフ「エルフの森には精霊樹があるの…」


精霊樹は祈りによって純血のエルフを生むの

でも200年前から精霊樹はエルフを生まなくなった

それは魂が居なくなってしまったから

このままではあと100年もすればハイエルフは絶滅してしまう

だからハイエルフ達は精霊の魂が再び戻る事をずっと祈ってるの

ではどうして精霊の魂が居なくなってしまったのか?

それは200年前の大破壊の時

魔王が倒される間際に精霊を夢幻に閉じ込めてしまったから…

126: 2020/09/14(月) 23:41:31.36 ID:JwosRg690
女エルフ「剣士が見る夢はもしかすると精霊が見ている夢なのかもしれないと思ったの」

女海賊「びっくり…アサシンが言ってる事とまったく同じ…散々聞かされたんだ」

女エルフ「精霊の魂はあなた達が見る夢の中に居るのかもしれない」

剣士「僕は何か夢で見ている気がする…でもどうしても思い出せない」

女海賊「とにかく!!女エルフは一緒に行くって事ね?」

女エルフ「足手まといにはならないようにする」

女海賊「ねぇねぇ…エルフってさぁ結構おしゃべりだよね?」

女エルフ「あなた達が人間では無いから話せるだけ…人間相手にお話しする事なんて無いの」

女海賊「ふ~ん…その偏見はエルフの傲慢だよ?とだけ忠告しとく」

女エルフ「…覚えておくわ」

127: 2020/09/14(月) 23:42:09.45 ID:JwosRg690
『単独行動5日目』

ガラゴロ ガラゴロ

女海賊「見えてきた!あそこのオアシスがシャ・バクダの町」

女エルフ「人間はこんな所に住んでいるんだ…」

女海賊「そっか森から出た事無いんだね…えっと」ゴソゴソ

女海賊「女エルフ!あんたはこれに着替えて?ニカーブっていう衣だよ」

女海賊「あんたの顔は美形すぎてすぐにエルフだってバレる…目の部分だけ見える様になってるから」

女エルフ「…」ゴソゴソ

女海賊「剣士はいつも通り毛皮のフードを深く被ってて」

剣士「おっけ」

女海賊「その言い方やめて…ほんで今日はひとまず宿屋に入る」

女海賊「なんでか知りたい?フフフフフフフフ」

剣士「…別に」

女海賊「おい!!盗賊ギルドのアジトは沢山あって今どこにあるか私も知らない」

女海賊「向こうからコンタクトしてくるのを待つのさ!どうだ!!」

剣士「…」

女海賊「何か言えよ!!」

妖精「クスクスケラケラアハハ」

女海賊「何よ!?」

妖精「君はワンパターンなんだよ」

女海賊「はぁ?あんた舐めてんの?」

剣士「羽ムシルぞ!!」

女海賊「うん!!そうだ!!…ておい!」

妖精「ケラケラアハハハ」

女エルフ「ウフフ」

女海賊「…あんた達さぁ…私をバカにしてんね?分かった!こっちにも考えがある」

剣士「その機械式望遠ゴーグル良いね?」

女海賊「お!!あんた分かってんねぇ!これってさぁ…ん?…マテあんた見えてないじゃん!!」

剣士「アハハ」

女海賊「ムキーーーーー!!」

剣士「そんな君が好きだよ」

女海賊「…なんちゅった?もっかい言ってみ?」

剣士「そんな君が…」

女海賊「君が…」ワクワク

128: 2020/09/14(月) 23:42:46.93 ID:JwosRg690
『火の国シャ・バクダ』

ワイワイ ガヤガヤ

おひかえなすって…入りやす カラカラ

半か丁か!…半!半!丁!……

ぐぁぁぁぁ!!いかさましやがってぇぇ!!

ワイワイ ガヤガヤ


剣士「あんなところに馬車置いていくの?」

女海賊「いーのいーの!あんな馬車もう要らないよ…馬だけ宿に預ける」

剣士「人が多くて…不安だなぁ」

女海賊「馬引いてる人にわざわざぶつかって来る奴なんか居ないよ!手綱離すんじゃないよ!」

剣士「ん?なんだろう…この音」

女エルフ「ラクダの匂い」

女海賊「あ~ラクダレースだね…向こう側でやってると思うよ」

剣士「へぇ」

女海賊「2~3日ゆっくりするから行ってみたら?私は興味ないからパス」

女エルフ「行き交う人が私から目をそらすのはなぜ?」

女海賊「ニカーブを着ている人と目が合ってはダメなんだよ…あんたを隠すのに丁度良いって訳」

女海賊「…ここの宿屋だよ…馬は裏で預ける付いてきて?」

129: 2020/09/14(月) 23:43:26.51 ID:JwosRg690
『宿屋』

カラン コロン

店主「いらっしゃいませ…3名様ですか?」

女海賊「大部屋空いてる?しばらく泊まりたいんだけど」ジャラリ

店主「何日程泊まられますか?」

女海賊「この金貨で泊まれるだけ…用が済んだら勝手に居なくなるから先払いで」

店主「ええと…この金貨ですと半年ほど泊まれますが」

女海賊「良いよ…後さぁコブラ酒と赤ワイン持ってきて」

店主「…のちほど」ジロリ

女海賊「案内して?」

店主「こちらへどうぞ」ジロジロ

女海賊「あぁ忘れてたグラスはタンブラー3つ」

店主「かしこまりました」ニコ

女海賊「この部屋?」

店主「はい…飲み物は少し遅くなるかもしれません」

女海賊「おっけ」

店主「ごゆっくり…」ガチャリ バタン


女海賊「はぁぁぁぁぁ無事付いたぁぁぁぁ」ドタリ

剣士「お酒飲むの?」

女海賊「さっきのは合図…3人案内しろっていう意味」

剣士「なるほど…」

女海賊「もう自由にしてて良いよ!水浴びしたいなら隣の部屋で出来るよ!私は寝る」

剣士「外に出ても?」

女海賊「おっけ…女エルフは二カーブ脱がない条件で好きに出回って良いよ」

女エルフ「え…人間の町を歩き回るの不安」

女海賊「剣士!あんたが付いて行きな!まぁ…何かあってもどうせ行先は盗賊ギルドなんだけど…」

剣士「お金が欲しい」

女海賊「あぁ忘れてたホイ!」ジャラジャラ

剣士「ありがとう」

女海賊「私はちょー眠い!寝る寝る寝る寝るーーー」スヤ

130: 2020/09/14(月) 23:44:05.00 ID:JwosRg690
『街道』

ワイワイ ガヤガヤ

女エルフ(あなた…人間の町に慣れてるのね)

剣士(買い物は目が見えないから苦手だよ…今みたいに教えてくれないとどれが良いか分からない)

女エルフ(私はこの匂いが苦手)

剣士(僕も同じだよ…雑音が多すぎて方向も分からなくなる)

女エルフ(でも不思議…エルフ二人が人間の町をこんな風に歩いてるなんて…)

剣士(エルフ…かぁ)

女エルフ(まだ認めていないの?)

剣士(実感が無いんだ…そんなに差があるのかも正直分からない)

女エルフ(目が無くてもそれほど不自由しないのは感覚がエルフだからよ?)

剣士(妖精も同じ事言ってたよ…それより…さっき買ったその弓は良さそう?)

女エルフ(少し調整が必要だけど十分使えそう)

剣士(僕にも使える?)

女エルフ(遠くの獲物を射止めるのは目が必要なの…多分使えない)

剣士(結構遠くまで感じれてると思うんだけどな)

女エルフ(音は少し遅れて聞こえて来るの…分かるかな?)

剣士(見えるよりも遅れてるっていう事?)

女エルフ(そうよ…感じてる所に撃ってもそこにはもう居ない)

剣士(少し広いところで試してみたいな)

女エルフ(砂の向こう側にオアシスが見えてる…行ってみる?)

剣士(水の匂いのする方だね…オアシスってどんなだろう?)

女エルフ(砂の上にある大きな水たまりよ)

剣士(ん?…何だこの感じ?)クンクン

女エルフ(どこ?)キョロ

剣士(オアシスの方向…上)クンクン

女エルフ(…ドラゴン…来る!)

131: 2020/09/14(月) 23:44:51.38 ID:JwosRg690
ガヤガヤ ガヤガヤ

おい!何か飛んでるぞ!!

ありゃドラゴンだ…こっち来る!!

リザードマンの次はドラゴンか!?

アレを仕留めたらガッポリ儲かるぞ?

おい!人集めてこい!!

ガヤガヤ ガヤガヤ


ギャーーース ドッシーン


通行人1「うわぁぁぁ…たたたすけてくれぇぇ」スタコラ

通行人2「でけぇ…おい!そこの二人!!突っ立ってねぇで逃げろぉ!!」


剣士(…)タジ

女エルフ(動かないで?)

ドラゴン”エルフが斯様な所で何をしている”

ドラゴン”汝らは人間に汲みするのか?”

女エルフ(ドラゴン…これには訳があります)

ドラゴン”森へ戻れ”

ドラゴン”エルフの秘宝が奪われる前に”


衛兵達「撃てぇぇぇ!!」シュン シュン シュン シュン


剣士(危ない!伏せて)グイ

女エルフ(あ…)


バッサ バッサ


野郎共「飛んだぞ!!逃がすな!撃て撃て撃てぇ!!」シュン シュン シュン シュン


女エルフ(ドラゴン!秘宝とは何の事でしょうか?森で何が?)

剣士(行こう!流れ矢に当たる!)グイ タッタッタ

132: 2020/09/14(月) 23:45:26.50 ID:JwosRg690
『宿屋』

カラン コロン

店主「お帰りなさいませ…外が騒がしい様ですが何か?」

剣士「ドラゴンが来た」

店主「え!?それは大変な事になってるじゃないですか!?」

剣士「みんな弓で応戦してる」

店主「私もちょっと見てきます!!あ…お連れ様が部屋の方に起こしになっています」

剣士「部屋に戻るよ」


ガチャリ


女海賊「あ!帰ってきた…寝る暇ないよぅ」

??「この二人だな?」

女海賊「紹介するよ!!お姉ぇフード脱いで?」

??「信用して良いのか?」ヌギ

女海賊「盗賊ギルドマスター代理の女戦士!私のお姉ぇだよ」

女戦士「お初にお目に掛かる…話は妹から聞いた…世話になっている様だな」

女海賊「あんたさぁ美女3人に囲まれてどうよ?」

剣士「いぁ…それどころじゃないんだ」

女エルフ「町にドラゴンが来たの」

女戦士「何ぃ!?今居るのか?」ダダッ

女海賊「あああああぁぁ…あんた達がエルフだっての忘れてた…」

女戦士「どこだ?ここからは見えんか?」

剣士「多分森の方へ飛んで行った」

女戦士「どれほど被害が出ている?」

剣士「殆ど無いよ…弓で追い払われた」

女戦士「私は少し町の様子を見てくる!お前たちはここで待っていろ…すぐ戻る」タッタッタ

剣士「この町の人は戦闘の準備が早い…すぐ弓で応戦を始めた」

女海賊「あぁソレね…シャ・バクダは元々戦闘民族だったんだって」

剣士「それで武器類が沢山売ってるのか…」

女海賊「ん?女エルフは弓買ったんだ…それってさぁヘビークロスボウの弓の部分じゃない?」

剣士「女エルフが選んだんだけど…」

女海賊「そんな硬い弦を手で引けるの?」

女エルフ「…」ギリリ ブン!

133: 2020/09/14(月) 23:46:11.35 ID:JwosRg690
女海賊「え!?マジか!!エルフってそんな硬い弓使うんだ?ちょっと貸して」

女エルフ「ドワーフなら使えるかもね」ポイ

女海賊「ふんっ…」ギリ

剣士「…無理そうだね?」

女海賊「んむむむむ…無理!なんで?あんたの方が手足細いじゃん?なんで私より強いの?」

女エルフ「慣れかな?」

女海賊「なんかムカツクんだけど…背が高くて美人な上に強いとかさぁ」

剣士「壁に爆弾で穴を開けるのは君にしか出来ないんじゃない?」

女海賊「なんかスッキリしないなぁ」

剣士「そういえばお土産買ってるのを忘れてた…この石」

女海賊「はぁ?あんた舐めてんの?石なんか要らねぇよ!!」

剣士「女エルフが見つけてくれたんだ…磁石という物らしい」

女海賊「え!!?マジ!!?見せて見せて?」

剣士「はい…なんか服に引っ付く」ポイ

女海賊「おおおおおおお!!これは!!マジもんだ!!これで色々出来る…みなぎってきた!!」


----------


ガチャリ バタン

女海賊「あ!お姉ぇ…どうだった?」

女戦士「大した事は無い…だがお前たち二人!!ドラゴンと何か話したな?」

剣士「エルフが人間の味方をするのか問いてきた」

女戦士「それを大衆に見られているのがマズイ」

女エルフ「ドラゴンの声は他人には聞こえない筈」

女戦士「大衆には話している様に見えているのだ…衛兵がもうお前たちを探し始めているぞ」

女海賊「まずいじゃん!」

女戦士「ゆっくりしてもらう予定だったが…すぐにアジトへ移動した方が良い」

女海賊「どうしたら良い?」

女戦士「裏の馬小屋に着けている馬2頭はお前たちの馬だな?」

女海賊「そうだよ」

女戦士「よし!あれは荷馬だ二人づつ乗ってアジトへ向かう」

女海賊「了解!!」ビシ

女戦士「それからその二カーブは脱いでおけ…衛兵が探しているのは二カーブの女だ」

女海賊「すぐエルフってバレちゃわない?」

女戦士「その白い毛皮に着せ替えろ…行くぞ」

134: 2020/09/14(月) 23:46:44.56 ID:JwosRg690
『オアシスの丘』

パカパカ パカパカ

女戦士「もうフードは脱いで良いぞ…顔を見せてみろ」

女エルフ「…」ファサ

女戦士「…なるほどな…一目でエルフと分かるな」

女戦士「ドラゴンとは何の話をしたんだ?」

女エルフ「…」

女戦士「フフ初対面の相手にペラペラ話す気にはなれんか…エルフだなフフ」

女戦士「まぁ良い…私の独り言だ」

女戦士「町から少し離れると人間の匂いは気にならんだろう?」

女戦士「この砂漠の砂は汚いものをすべて洗い流してくれる」

女戦士「触ってみると分かると思うが神聖さを感じるほど清らかだ」

女戦士「エルフなら感じるか?かつて此処が広大な森だった事を」

女エルフ「え?」

女戦士「200年前の大破壊ですべて焼き払われた結果だ」

女戦士「見てみろ…あのオアシスは隕石が落ちた後に出来た物だ」

女戦士「そんなオアシスがこの周辺には何百と在る」

女戦士「どれほどの大破壊だったか想像できるか?」

女エルフ「ここが…森」

女戦士「フフ…口を開いたな?」

女戦士「耳を立てて砂漠の声を聞いてみろ」

女エルフ「…砂?…虫?」

女戦士「大破壊とは只の破壊では無い…新たに生まれる者も居るという事だ」

女エルフ「再生…」

女戦士「かつて魔王が成そうとした事は大破壊という再生だった考えると…」

女戦士「それ阻止しようとする勇者は善か悪か?」

女戦士「我らドワーフが勇者を保護しようとするのは善か悪か?」

女戦士「精霊の一部である森を守ろうとするエルフは善か悪か?…いったいどちらなのだ?」

女エルフ「…ドラゴンにも同じ様に問われた」

女戦士「我々はその答えを探求しているのだ…」

女戦士「エルフとこういう話を共有出来るのは感慨深い」

女エルフ「どうして人間は戦いを止めないの?どうして森を侵略しようとするの?」

女戦士「人間は恐れているのだよ」

女エルフ「エルフを?森を?私たちは何もしていない…」

女戦士「…何か持っているのではないか?」

女エルフ「…秘宝の事?」

女戦士「ん?秘宝?何の事だ?」

女エルフ「わからない…ドラゴンが言ってた」

女戦士「ふむぅ…なるほどな…つじつまが合う…そういう事か」

女エルフ「何か知っているの?」

女戦士「後でアジトに皆が居る時に話す」

135: 2020/09/14(月) 23:47:24.37 ID:JwosRg690
----------



パカパカ パカパカ

女海賊「もう真っ暗だよ?何も見えないよ?ちゃんと付いて行ってる?」

剣士「僕は初めから何も見えてないよ」

女海賊「お姉ぇの馬の音聞こえてる?」

剣士「大丈夫…」

女海賊「星は見えてるんだけどさぁ…足元が真っ暗すぎて落下しそう」

剣士「ハハ落下?ハハハハハ」

女海賊「目を開けても閉じても真っ暗…あんたさぁいっつもこんな?」

剣士「そうだよ?…耳を澄ましてみて?」

女海賊「パカパカ パカパカ…」

剣士「もっと…砂が引っかかる音…砂が落ちる音…蹄が沈む音…」

女海賊「…」

剣士「風が耳をすり抜ける音…遠くの音…近くの音」

女海賊「ぁぁ…分かる!」

剣士「地面を砂が転がる音…あっちにもこっちにも」

女海賊「ちょ…マジ?私にも見える…砂の起伏」

剣士「ん?これが見えるっていう事なのかな?」

女海賊「見える見える!音だけで見えるんだぁ!」

剣士「あ!前の馬が止まった」

女海賊「んんん…何かの影が見えるなぁ…なんだろう」

剣士「到着したみたいだ…馬を降りてる」

女海賊「結構大きな建物みたいだなぁ」


パカパカ パカパカ


女戦士「着いたな?ここは星の観測所だ…明かりを付けるぞ」チリチリ

女海賊「お姉ぇ良く足元見えるね?」

女戦士「砂漠も海も同じだぞ?お前は昔から黒い海がキライだな」

剣士「馬はどこに繋げば?」

女戦士「放しておいて良い…牧草と水はここにしか無いから逃げん」

女海賊「ここってさぁ?誰も居ないの?」

女戦士「今は移設の最中だ…直に若い衆が出入りする様になる…こっちだ!入れ」ギー バタン

136: 2020/09/14(月) 23:47:52.42 ID:JwosRg690
『盗賊団のアジト』

女海賊「おおおおおおおお!!望遠鏡!!」

女戦士「気に入ったか?一つ持って行って良いぞ」

女海賊「なんでこんなにいっぱいあんの?」

女戦士「趣味で買い集めた…町の様子もここから伺えるぞ?見るか?」

女海賊「見る見るぅ!!」

女戦士「これがオアシス方面…こっちが町…これが…」

女海賊「今日さぁ~女エルフからコレ貰ったんだ!!磁石」

女戦士「見せてみろ…んむ良い物だ…良く見つけたな?」

女海賊「少しあげよっか?」

女戦士「良いのか?」

女海賊「望遠鏡のお礼だよ」

女エルフ「ウフフあなた達…やっぱりドワーフねウフフフ」

女戦士「ん?何だ?今のは嫌味か?」

女エルフ「珍しい石とか鉄…機械が大好き」

女海賊「いちいちウルサイやい!あんたは虫とお話でもしてな!」

剣士「今日は少し疲れたかな…横になる所はある?」

女戦士「あぁ悪い…馬車での長旅の後だったな…こっちだ」

女戦士「今日はゆっくり体を休ませろ…話は明日だ」

剣士「そうさせてもらうよ…女エルフ?少し休もう」

女エルフ「私は疲れていないから少し星を見てみる」

女海賊「お!?興味出た?ここの穴から見るんだよ?」

剣士「じゃぁ先に休む」

137: 2020/09/14(月) 23:48:24.10 ID:JwosRg690
『翌日』

女海賊「おはー!!寝れた?」

女エルフ「少しだけ…」

女海賊「眠り方分かんない?」

女エルフ「こんな風に横になるのは子供の時以来…」

女海賊「夢見れた?なんか覚えてる?」

女エルフ「誰かと空を飛ぶ夢…誰だったんだろう」

女海賊「おぉ!!エルフも夢見れるんじゃん」

女エルフ「人間の部分…なのかな」

女海賊「その夢!正夢になるぞ!…お姉ぇ~~~!!起きてる?」

女戦士「朝から騒がしいな…お前も食事を作るの手伝え」

女海賊「うぉ!お姉ぇが食事作んの?食える?」

女戦士「客が来た時くらいは私も作る…黙って手伝え」

女海賊「お姉ぇは知らないと思うけどさぁ…こいつらはあんまり食わないよ?」

女エルフ「寝るとすこしお腹が減るみたい」

女海賊「かなりの偏食だよ?鳥の餌とか食ってるし」

女戦士「エルフが何を食するくらい知っている…良いから手伝え」グイ

女海賊「ちょ…あぁぁ何だコレ…木の実、木の芽…もうちょっと腹の足しに…」

女戦士「…」スラーン チャキリ

女海賊「ちょちょちょ…待った待った!分かったやるって…」

女戦士「…これで木の実を割っておけ」ポイ

女海賊「はいはい分かりました!…ところでさぁアサシンから指示書預かってるんだ」

女海賊「お前はそうやって話をすり替えて逃げる気だな?黙って手を動かせ…指示書は後で見る」

女海賊「…へいへい分かりました」

女エルフ「クスクス…食べ物は気にしなくていいの」

女海賊「と申しておりますが…」

女戦士「…痛い目を見ないと分からないようだな」ジロリ



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138: 2020/09/14(月) 23:48:59.95 ID:JwosRg690
女海賊「おい!起きろぉ!!」グイグイ

剣士「う~ん…おはよう」ムニャ

女海賊「あんたが一番遅いんだよ!飯だ飯ぃ!!」

剣士「なんか機嫌悪い?」

女海賊「あっちでみんな集まってんだ!早くして!」

剣士「今行く…」イソイソ


女戦士「起きたな?この辺りでは珍しい木の実と木の芽だ…野菜もあるぞ?」

剣士「ごちそうでは無いけどイイね…いただくよ」モグ

女海賊「お姉ぇ指示書読んだ?」

女戦士「あぁ…セントラルの情報収集に人駆を回せという件だな?何が起こっている?」

女海賊「ぃぁそこじゃない…気球を私にくれるっていう所」

女戦士「気球はまだ移送中だ今日の日暮れまでには届く…それまで待て」

女海賊「夕方かぁ…望遠鏡の取り付けとか改造したかったのに」ブゥ

女戦士「それよりセントラルの状況だ…数万の兵で森へ魔物討伐に出ていると聞くがどうなっているのだ?」

女海賊「え!?初耳」

女戦士「シャ・バクダにも徴兵に来ていたのだが…」

女エルフ「数百ではなく数万?…そんな…」

剣士「2か月ほど前に法王庁の衛兵がセントラルから出たのは知ってる…2個中隊って言ったかな…」

女戦士「ふむ…それは別動隊だな…アサシンからは何も聞いて居ないのか?」

女海賊「う~ん政治的な事は教えてくれないなぁ…てか私が理解出来ない」

女戦士「…そうか仕方が無いな…その様子だとセントラルの第3皇子が戦氏したのも知らんな?」



セントラルでは随分前からゴブリンとリザードマンの襲撃があってな

若い第3皇子は功を焦って魔物討伐隊を指揮したのだが

ゴブリンの放った流れ矢に当たって戦氏したのだ

ここで第1皇子と第2皇子の権力抗争が始まる

魔物にやられたままでは体制維持が難しいと考えた第1皇子は

権力基盤を固める狙いで仇討ちを称し魔物討伐隊を再編成する

その規模は2個師団…約5万の兵を招集し森に進軍したのだ

139: 2020/09/14(月) 23:49:36.86 ID:JwosRg690
女戦士「私が知っているのはここまでだ…気になるのが第2皇子の動きなのだが…」

女エルフ「私…森へ戻らなければ…」

女海賊「無理無理!あんたのその足は治るまでもうちょい掛かる…走れるようになってからにしな!」

女戦士「さてここからが本番だ…法王庁が動いていると言ったな?」

女戦士「法王庁は第2皇子の管轄なのだ…そして第2皇子の側近にダークエルフが居るという報告もある」

女エルフ「ダークエルフが!?絶滅した筈」

女戦士「5万の兵が森を北へ進軍し法王庁が漁夫の利を狙ってエルフが持つ秘宝とやらを奪う…」

女戦士「ダークエルフが居れば不可能な事ではあるまい?」

女エルフ「ドラゴンが…動いている理由が分かった気がする」

剣士「僕たちが前にドラゴンに会ったときはもっと南だった」

女海賊「そういえば…昨日ここに来てるって事は…戦場になっている場所は近い?」

女戦士「どちらの方向に飛んで行ったのか分かるか?」

女エルフ「東南東の方向」

女戦士「ふむ…やはり少し北上しているな…指示書には気球で光の国シン・リーンへ導けとあるが…」

女海賊「ちょっと急がないと戦場の上を飛ぶ感じになりそう」

女戦士「明日出発するとなると戦場になりそうなのは帰りだな」



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140: 2020/09/14(月) 23:50:07.07 ID:JwosRg690
剣士(その望遠鏡で何が見えるの?)

女エルフ(森の様子よ)

剣士(エルフの森が心配なのかい?)

女エルフ(私はゆっくりしている場合じゃないのに…)

剣士(足の具合は?)

女エルフ(痛みは耐らえれる…でも動かないの)

剣士(君一人が森へ戻っても危険なだけだ)

女エルフ(私一人では何もできないけれど…他のエルフが捕まえられる事を思うと…)

剣士(この戦いは不毛だよ…何も生まない)

女エルフ(そう…私も何が悪いのか分からなくなってきた)

剣士(エルフもダークエルフと何か因縁が?)

女エルフ(私たちよりも不幸な種…彼らがエルフへの復讐を扇動しているのなら業はエルフが払わなければいけない)

剣士(エルフがダークエルフを迫害したという解釈で合ってる?)

女エルフ(…)コクリ

剣士(人間はその中間で踊らされている…のかな?)

女エルフ(ダークエルフが戦争を引導しているとしか考えられない…人間は戦いに勝っても得るものが無いでしょう?)

剣士(エルフの秘宝と言うのは?)

女エルフ(私は知らない…でもダークエルフが欲しがるのは考えられる話)

剣士(なんか…泥沼に入った様な感じだね…決着しそうにない)

女エルフ(ドラゴンが加わってる以上エルフも絶対に引かない)

剣士(少し視点を変えてみるよ?人間からすると普段攻め入って来る魔物を退治するために兵を募ってる)

女エルフ(…)

剣士(森の奥へ進めば進むほどトロールやドラゴン…そしてエルフが抵抗してくる)

女エルフ(…)

剣士(人間からするとこれは正義の戦い…引く訳が無い…どうやって決着をつける?)

女エルフ(この戦いを誘導してしまったのは…傲慢な私たちエルフ…でも人間に譲歩する事は考えられない)

剣士(終わらせるのには何か切っ掛けが必要だと思う…)

女エルフ(切っ掛け…どうすれば良いの?私に何もできないのが悲しい)



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141: 2020/09/14(月) 23:50:59.50 ID:JwosRg690
オーライ オーライ こっちこっちぃ!

女エルフ「あれが気球?たまに森の上を飛んでいるのとは形が違う」

女戦士「アサシンが改造した物だ…船の帆を張っているのだ」

女エルフ「空を船の様に進む?」

女戦士「うむ…アレの操作に関しては妹が秀でている…さすが海賊といった所か」

女海賊「お姉ぇ!!明日気球で出発するよね?」

女戦士「そうだな…」

女海賊「お姉ぇも行く?」

女戦士「それを考えているんだが…お前が魔女の住処まで案内出来るなら私はここに残る」

女海賊「えぇ~そんなん知らないよぉ…何処にいんの?」

女戦士「片道3日か…アジトの移設中で忙しい身なのだが…どうしたものか」

女海賊「若い衆に任せとけばいーじゃん」

女戦士「あと5日でお前たちが居たであろう商隊が到着するのもある」

女海賊「そういえばそんな予定だったなぁ」

女戦士「シン・リーンまで2日で行けないのか?」

女海賊「うーーーん風次第なんだけど…今行く?…丁度暗くなってきたし」

女戦士「水も食料もまだ到着していない」

女海賊「今ある分でなんとかなるっしょ!…エルフ2人は放っとけば良いよ!どうせ食わないし」

女戦士「よし!行くか!!若い衆に事を伝えてくる…お前たちは準備をしておけ」

女海賊「ハイキター!!剣士!!女エルフ!!荷物入れるの手伝って!!」

剣士「え…うん…どうすれば?」

女海賊「そこの鉄板と裏にある薪を出来るだけ沢山積んで!!女エルフ?剣士の目の代わりやってあげて」

女エルフ「わかった…剣士こっち」グイ

女海賊「あと10分で出発するよ!!」

剣士「そんなに急ぐの?」

女海賊「今は凪の時…風向き変わる前に上空の風に乗らないと反対方向に流される」

女海賊「私は球皮膨らませないと…」アセアセ

142: 2020/09/14(月) 23:51:47.48 ID:JwosRg690
『気球』

フワフワ

女海賊「あぁぁ日が沈んじゃう…お姉ぇはまだかな?」

剣士「…よっこらせと」フゥ

女エルフ「これで最後」

女海賊「後さぁ…寝るときに使ってた毛布も持ってきて!それからお姉ぇ見つけたらもう出発だって伝えて」

剣士「人使いが荒いなぁ…」

女エルフ「剣士?こっち」グイ

女海賊「んんんん…薪足りるかなぁ…高高度行ったら寒いんだよなぁ…」

女戦士「早いな?もう行けるか?」ドサ

女海賊「お姉ぇ!?それは?」

女戦士「弓と矢だ…これが無いと他の気球が寄って来る…アサシンから常に積んでおけと言われていてな」

女海賊「よっし全員揃った!!二人とも早く乗って!!」

剣士「これで荷物は最後かな?よっこらせと…女エルフも乗って」

女海賊「ロープ抜くよ!!」シュルリ


フワフワ フワフワ

143: 2020/09/14(月) 23:52:15.07 ID:JwosRg690
女戦士「夕日で砂漠が赤い海の様だ」

女海賊「一気に高度上げるよ!?剣士!!鉄板の上で火を起こして!?あんた魔法使えたよね?」

剣士「あ…うん」

女戦士「ほう…魔法を使うタイプのエルフなのか…見せてみろ」

剣士「火炎魔法!」ボウ メラメラ

女戦士「真近で見るのは初めてだ…手の中から炎が出てくるのは不思議な物だな」

女海賊「あんたも便利な男になったねぇ」

剣士「女エルフのおかげだよ」

女戦士「外を見てみろ…数百のオアシスが見渡せるぞ?」

女エルフ「…オアシス群の中央にあるのは?」

女戦士「かつての火の国シャ・バクダ遺跡だ…我らのアジトはそこら界隈を転々としているのだ」

女エルフ「この砂漠が全部森だったなんて信じられない」

女戦士「下にある今のアジトの場所は良く覚えておけ…何かあった場合はそこが集合地点になる」

女海賊「どれくらいあの星の観測所を使う予定?」

女戦士「そうだな…アサシンが戻るまでは持たせたいな…望遠鏡を見せてやりたい」

女海賊「アサシンは星になんか興味あんの?」

女戦士「星ではない…アサシンが探していたもう一つの遺跡の入り口を発見したのだ」

女海賊「お!?それは喜ぶかも!!もう行った?」

女戦士「さすがに一人で行く勇気は無い…あそこは呪われているのでな」

女エルフ「太陽が又昇ってる?」

女海賊「フフフフフ高度を上げるとそういう風に見えるのだ!!世界は丸い証拠なのだ!!」

女エルフ「え?…」

女海賊「エルフに勝った!!あんた達が森に引きこもってる間に私は世界を見てきたさ」ドヤ

女エルフ「これが私たちが住んでいる世界…」

女海賊「もう直ぐ雲の上に出るよ…毛布に包まっときな!ちょー寒いから」

女海賊「風向きが変わる!!剣士!!このロープ撒いて!!風に乗る」

剣士「えーと…回せば良い?」ドギマギ

女海賊「最後まで撒いて!!ちょいと傾くよ!?」


ビョーウ バサバサ

144: 2020/09/14(月) 23:52:58.37 ID:JwosRg690
『気球1日目』

---朝---

女戦士「日の出だ…今は丁度エルフの森の真上当たりでは無いか?」

女海賊「んんん森ばっかで何も見えないなぁ…」

女エルフ「私も見たい」

女海賊「おっけ…ほい」

女戦士「それにしても寒いな」

女海賊「やっぱちょっと薪が足りないなぁ…高度下げると遅くなるし…」

女戦士「お前は爆弾の材料を持ち歩いていたな?」

女海賊「あるよ」

女戦士「砂鉄、塩水、木炭、砂…これで暖を取れる」

女海賊「お!?全部爆弾の材料だ…混ぜれば良い?」

女戦士「砂鉄が7割だな…後は適当に皮袋に詰めて混ぜろ…いくつ作れる?」

女海賊「2つかな…砂鉄が足りないよ」コネコネ

女戦士「毛布の中に入れておけば大分違う筈だ」

女海賊「お!?あったかくなってきたぞぉ!!」コネコネ

女戦士「お前は少し寝ておけ…寝てないのだろう?」

女海賊「うん…ちょっと寝る~ふぁ~あ」ムニャ

女戦士「女エルフ!何か見えるか?」

女エルフ「いいえ」

女戦士「上から望遠鏡で見る森はいつもと違うか?」

女エルフ「現在地が分からない…見慣れている筈なのに…」

女戦士「そうか…遠すぎると森の感覚も分からんか」

女エルフ「森を自在に走っていた筈なのに…ここから見るとなんて私は小さかったのだろうと思う」

女エルフ「ハッ!!」キョロ

女戦士「ん?どうした?」

女エルフ「私…今誰とお話を…え?」

女戦士「どうしたんだ?急に?…ん?泣いているのか?」

女エルフ「夢?…」

女戦士「既視感でもあったのか?」

女エルフ「私…どうして涙が?」フキフキ

145: 2020/09/14(月) 23:53:31.67 ID:JwosRg690
女戦士「既視感は良くある事だ心配しなくても良い」

女エルフ「もしかして剣士が言っていた夢ってこういう事?」

女戦士「何を言っているのか良くわからんな…疲れているのではないか?」

女エルフ「剣士!?剣士!?」ユサユサ

剣士「…ぅぅ」パチ

女エルフ「私…夢の中の人を覚えてる」

剣士「おはよう…何の事?ふぁ~あ」ノビー

女エルフ「顔を覚えてる…でも誰なの?」

女戦士「フハハハ待て待て…女エルフ混乱しているのか?剣士は今起きたばかりだぞ?」

女エルフ「あ…ごめんなさい」

剣士「…君も夢を見たんだね?」

女エルフ「少ししか思い出せない…顔は分かっても誰だか分からないの」

剣士「僕も同じなんだ…今も夢を見ていた気がするけれど直ぐに思い出せなくなる」

女戦士「ふむ…夢か…アサシンが言ってた夢幻と何か関係するのか?」

女エルフ「それを確かめにこれから魔女に会いに行くの」

女戦士「まさかみんな同じ夢を見ている訳ではあるまいな?」

女エルフ「その可能性もある…」

女戦士「おんなバカな事がある訳…そういえば剣士の使う魔法をどこかで見た気がしたな」


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146: 2020/09/14(月) 23:53:59.28 ID:JwosRg690
女海賊「あぁ~良く寝たぁぁ!!」ノビー

女戦士「起きたか!丁度肉が焼けた所だ」

女海賊「おぉぉぉ腹減ってたんだ」ガブ モグ

女戦士「お前は今夢を見てたか?」

女海賊「はぁ?なんで急に夢の話?」モグモグ

女戦士「さっきまで剣士達と夢の話をしていてな」

女海賊「良くわかんないんだけどいっつもこんな感じで冒険してる夢だよ?」モグモグ

女戦士「フフやはりそうだよな?皆が別々の夢を見ている…普通はそうだな」

女海賊「お姉ぇはどうなん?」

女戦士「フフ笑うなよ?衛兵たちのアイドルをやっている」

女海賊「ぶっ…お姉ぇがアイドル…ぶはははは」

女戦士「アイドルというのは言い方が悪いが衛兵達から賛美される夢だな…」

女海賊「フリフリのドレスとか着ちゃって?ぶはははは…げほっげほ」

女戦士「そういうドレスも着た事がある…やはり只の夢だな」

女海賊「冗談やめて…ぶははは…ここ空気薄いんだから」ゼェゼェ

女戦士「ただ気になる男が居てな?ずっと私の傍に居たのに気が付いたら手放してしまった」

女海賊「それってフラれたんじゃね?ぶははは…氏ぬ…もうやめて…ぶははは」

女戦士「誰だったのか…お前!!笑い過ぎだ」スラーン 

女海賊「ゲラゲラちょ…ゲラゲラぶははは…ま」ゴロゴロ

女戦士「ふん!!」ペチン

女海賊「いで…ケツがぁ…やめでぇぇ…いだ!!」

147: 2020/09/14(月) 23:54:40.22 ID:JwosRg690
『気球2日目』

ビョーーーーウ バサバサ

女戦士「そろそろ森の切れ目だ…流石に早いな」

女海賊「えっと!高度下げ始めるよ?もう薪が無い…うぅぅさぶさぶ」ブルブル

女戦士「正面少し右にシン・リーンの城が見えている」

女海賊「んん?どこどこ~?あぁぁアレだな?木に囲まれてて分かり難いねぇ」

女戦士「城までは行くな…面倒事が起きる」

女海賊「アイアイサー!!ちょい手前の林に着陸する」

女戦士「丁度日暮れで隠すのに手間が要らんな…城の手前から林を少し入った所に追憶の森という場所がある」

女海賊「魔女が居る場所?」

女戦士「普通の人間では行く事の出来ない狭間の深い所に繋がっているのだ」

女海賊「妖精!!出てこい!!お前の出番だぞ!!」

剣士「妖精は今居ないよ?」

女海賊「最近ずっと出てこないじゃん!何やってんの?」

女エルフ「ずっと私の胸の中に居るけれど…空の上は狭間が遠い」

剣士「もう少し森に近づけば出て来るよ」

女海賊「もしかしてシャ・バクダからずっと狭間が遠かったん?」

剣士「星の観測所周辺は不思議とまったく狭間を感じなかった」

女海賊「私らはみんな半分魔物だから心配しなくておっけ?」

女戦士「場所は分かっている…行けば魔女が導いてくれる事を願うだな」

女海賊「あのさぁ…精霊の像もそこにあるって前にアサシンが言ってたんだけど見れるかなぁ?」

女戦士「無理だ…光の国シン・リーン王家の祭事の時にだけ一般公開がある…今はその時では無い」

女海賊「残念…見たかったなぁ」

女戦士「精霊の像が安置されている祠は厳重に警備されているから避けて通る」

女エルフ「精霊の魂が宿ると言われている像…」

女戦士「アサシンが言うにはそこに魂は宿っていないそうだ」

女エルフ「夢幻…」

女戦士「そう…魂は夢幻に閉じ込められたまま…その像はただ眠っているのだそうだ」

女海賊「大分高度下がってきたよ?あったかくなってきたぁ!!」



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148: 2020/09/14(月) 23:55:13.62 ID:JwosRg690
女戦士「あそこの林に降りろ」

女海賊「おっけ!剣士!?縦帆を畳んで!!」

剣士「えーと…このレバー回すんだっけ?」

女海賊「そうそう…終わったらロープ持って先に飛び降りて近くの木に結んで!?」

女エルフ「私も手伝う…」

女海賊「助かる」

女戦士「降りたら暗くなるまで気球に木の枝を詰めるだけ積んでおけ…木材なら尚良い」

女海賊「そうだね私は食材探してくる」

剣士「女エルフの方が鼻が利くから連れて行って」

女海賊「おっけ!あんたさぁ弓で川魚射れる?」

女エルフ「得意」

女海賊「よっし!日が暮れる前にさっさと終わらすぞ!っと」


フワフワ ドッスン


女戦士「すぅぅぅぅ…はぁぁぁ…久々の森の空気…良い物だな」

剣士「ずっと砂漠に?」

女戦士「なかなかシャ・バクダから離れられなくてな」

剣士「アサシンは戻るのに早くて3か月と言ってたけれど…」

女戦士「私の父に会いに行ったのだろう?それだけなら1~2か月の筈なのだがな」

剣士「ミスリル銀を取引するのだとか」

女戦士「知っている…それは特殊な銀で非常に希少なのだ」

剣士「武器を作るのに使う?」

女戦士「そうだ…特殊な音が鳴るのだ…その音は目に見えぬ物を切る」

剣士「目に見えない?」

女戦士「こう言えば分かるか?例えば縁を切る…絆を断つ…志を断つ…そういう物を切るのだ」

剣士「そうか…魂のつながりを切るのか」

女戦士「理解が早いな…正直私には良く理解出来ん」

剣士「アサシンは憎悪を浄化すると言ってた気がする」

女戦士「もしも魔王が居たとするなら憎悪の魂を断つ…そういう事だろうな」



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149: 2020/09/14(月) 23:55:41.55 ID:JwosRg690
女海賊「あああああ!!ちょ…マジか!!」

女戦士「どうした?何を騒いでいる?」

女海賊「女エルフがさぁ…獲った魚に生でかぶりついてんの」

女戦士「フフフお前は知らんのか?エルフは生きた肉しか食さんのだ」

女海賊「え!?じゃぁ剣士もこのまんま食うの?くっさ!!」

女戦士「魚がまだ生きているならそのまま持って行け」

剣士「僕はどちらでも良いよ…生きたままの方が食べ慣れてるけど」

女海賊「おぇぇぇ…ほい!一匹あげる」ポイ

剣士「ありがとう」ガブリ モグ

女海賊「女エルフはいつも澄ました顔してるけどさぁ…あの顔で生魚にかぶりついてんだよ?」

女エルフ「幻滅?これが普通よ?」

妖精「ぷはぁぁぁ…良く寝た」ヒョコ

女海賊「おぉぉそんな所から登場か!女エルフのおっOいは寝心地良いか?」

妖精「まぁまぁかな?…こっちの人は新入り?」

女戦士「…」ジロリ

妖精「なんかまずい事言ったみたい…」

女海賊「あんたが出てくるって事は狭間が近いね?」

女戦士「追憶の森はここから少し北だ…妖精が案内しないと我々でも迷う」

妖精「狭間の深い所はレイスが出てくるから危ないよ?」

女戦士「魔女が魔除けの結界を張っているそうだ…私は一度行ったことがあるから大丈夫」

妖精「へぇ~あっちの方だね行ってみようか?」ヒラヒラ

女戦士「うむ…日が暮れる前に行こう」

女海賊「ええぇぇ!!私まだ魚食ってないのにぃ!!」

150: 2020/09/14(月) 23:56:28.21 ID:JwosRg690
『追憶の森』

ホーホー ホーホー

妖精「こっちだよ」ヒラヒラ

女海賊「あ!!ちょい待ち…馬車が停めてある」

女戦士「ん?…あれは王家の馬車だな…ちとまずいな」

女海賊「魔女に先客かな?」

剣士「…」クンクン

女海賊「む!剣士がクンクンしてる…誰かいるぞ?」

女戦士「隠れてやり過ごす!こっちの影へ…」タッタッタ

剣士「10人位馬車の方向…」


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近衛兵「姫様…一旦お隠れにならなければここも危ないのです」

姫「わらわは行きとうない!ここに隠れておった方が安全じゃ」

近衛兵「お父上の命令にございます…わがままを言わないで下さい」

姫「何が来ようと狭間に居った方が安全じゃと言うておる」

近衛兵「ですから姫様…エルフ達は狭間に来る事もあると言う事なのです」

姫「エルフはわらわ達の仲間じゃ…攻めて来る訳がなかろう」

近衛兵「そういう状況ではなくなっているのです」

姫「攻めて来る理由が無いではないか!!」

近衛兵「姫を拘束し取引に利用される可能性があるのです」

姫「馬鹿げておる!!エルフは誇り高き種じゃ!!その様な卑怯な事は絶対にせん!!」

近衛兵「…今魔術師達は魔術院の方へ集まっております…そちらの方がここよりも安全とのご判断」

姫「どれくらいここを離れるのじゃ?わらわはまだ修行中であるぞ?」

近衛兵「中央セントラルとエルフの戦争が終結するまでにございます」

姫「わらわ達はエルフの仲間では無いのか?エルフに加勢するのが義であろう?」

近衛兵「状況はそう簡単ではないので御座います…ご理解いただきたい」

姫「父上にわらわが直接話す!もう帥とは話しとう無い」

近衛兵「ささ…馬車の方へ」

姫「これ!!無礼者!!触るでない!!」ペシン


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151: 2020/09/14(月) 23:56:55.12 ID:JwosRg690
女海賊「あの赤い目の子はシン・リーンの姫?」

女戦士「そうだ…護衛の近衛兵も世界屈指の腕を持つと聞く」

女海賊「三角帽子でちょーかわいい」

女戦士「女エルフ!今の話は本当なのか?エルフとシン・リーンとの友好の件」

女エルフ「ハイエルフ達は精霊樹に再び魂を宿らせる為に毎日祈りを続けているの…」


シン・リーンに安置されている精霊の像も精霊の魂が宿る器

行方不明になった精霊の魂を探すために

毎年行われている王家の祭事にハイエルフも参加しているの

友好の件は多分シン・リーン王家との密約

互いに不干渉の約束を立てて

年に一度エルフと人間との間で談話がある

エルフの森ではシン・リーンとの不可侵を守るのは皆知っている事


女戦士「なるほどな…祭事の時に王家参列者で身長2メートルを超える者を見た…ハイエルフだったか」

女エルフ「ハイエルフは私や剣士と違ってずっと大きいの」

女戦士「逸話では人間100人でも勝てんと聞くが?」

女エルフ「わからない…見た事無いから」

女海賊「馬車行っちゃったよ?」

女戦士「鉢合わせしなくて良かった…行こうか」


152: 2020/09/14(月) 23:57:22.22 ID:JwosRg690
『狭間の奥』

シーン

妖精「もうすぐだよ」ヒラヒラ

女海賊「なんか…空が黒い?日没まだだったよね?」

妖精「狭間の奥の方は空が無いんだよ…もっと向こう側が黄泉」

女海賊「私が氏んだらここを通る?」

妖精「多分迷うから妖精が案内するんだ」

女海賊「ってことは今半分氏んでんの?」

妖精「ケラケラそうかもね?心臓動いてる?」

女海賊「え!?…あ…止まってる?え!?マジ?」


剣士「何か…居る!」スラーン チャキ

妖精「剣士!?落ち着いて?」

女エルフ「え?何?見えない…」

女戦士「どうした!?」


剣士「うわぁぁ!」ブン ブン


妖精「落ち着いて!?それはこれから妖精になる魂」

剣士「妖精?ハァハァ…」

妖精「歓迎しているんだよ…落ち着いて?」


”おやめなさい”


女海賊「あ…声…」

”驚かせてしまいましたね”

”さぁ…中へお入りなさい”

”あなた達を待っていました”

女戦士「魔女の声だ…行くぞ」テクテク

女海賊「中ってどこよ?なんも無いじゃん?」

妖精「一歩前に進んで?」

女海賊「一歩?…うゎぁ!!」ソロリ

153: 2020/09/14(月) 23:58:05.30 ID:JwosRg690
『魔女の塔』

女海賊「え?どうなってんの?なんで昼間?」

女エルフ「エルフの森と同じフフフ」

女海賊「お花畑の真ん中にポツンと…塔?こんなん地図に無いぞ?」


”お上がりなさい”


女戦士「許可が出た…上がるぞ」テクテク

女海賊「なんかちょーすごくない?この塔って何で出来てる?石?鉄?」

女戦士「私も初めて来たときは驚いた」

女海賊「アサシンと一緒だったんだよね?隠してたなんてズルい!!」

女戦士「お前に話すと一人で探しにくるだろうに…言わんで正解だ」

女海賊「…あの椅子に座ってるお婆ちゃんが魔女?」

女戦士「そうだ…挨拶するぞ…魔女様…突然の訪問をお許しください」

魔女「良いのです…さぁ皆さん椅子にお掛けになって?」

女戦士「はい…」

魔女「ゆっくりして行って良いのですよ?」

女戦士「先ほど私たちを待っていたとおっしゃった様ですが?」

魔女「あなた…」

女戦士「??」キョロ

魔女「千里眼を求めてここに来ましたね?」

剣士「え!?あ…はい」

魔女「千里眼は光の魔法…これを授けるのは簡単な事です」

剣士「見えるという事がどういう事なのか知りたい…教えてください」

魔女「この魔法はあなたの目を治す物ではありません」

剣士「それでも良いです」

魔女「あなたの瞳は奪われたのです…奪われたその瞳の先を見ることが出来るでしょう」

剣士「え?」

女海賊「奪われたって…どうやって?」

魔女「祈りの指輪で光を奪われたのです」

女戦士「祈りの指輪だと!!…これはとんだ所で情報が入ってきたな…」

剣士「どうして僕の瞳を奪う必要が?」

魔女「それはいづれ分かる事でしょう…今は知る時ではありません」

女海賊「今教えてくれてもいーじゃん」

魔女「理由があるのです…あなたはとても大切な人…乗り越えなくてはならない試練があるのです」

女戦士「失礼ですが…魔女様はそれを知っていたという事ですか?」

魔女「18年前…あなたが光を奪われた時から私を求めここに導かれることは決まっていました…」

154: 2020/09/14(月) 23:58:35.22 ID:JwosRg690
あなたを育てた母の白狼は遥か昔から精霊樹を守る犬神の末裔なのです

そしてエルフが最も信頼しているのも白狼

あなたは理由があって瞳を奪われた後に

森から追放されたのではなく最も信頼のおける白狼へ預けられたのです

その時エルフは白狼に伝えました

瞳が必要になった時に魔女を訪ね千里眼を求めなさいと

なぜならその魔法が求める物に導くから

私は18年前にここに訪れたエルフに話を聞き

約束を果たせる時を待っていました

今がその時です…私の定命が尽きてしまう前で本当に良かった


女戦士「魔女様…お体を…」

魔女「私の命はもう長くはありません…人間が200年以上も生き永らえるのは狭間に居るお陰」

魔女「しかしそれもそろそろ限界でしょう」

剣士「僕は…千里眼を使ってどうすれば?」

魔女「あなたの瞳を追うのです…その先に祈りの指輪があります」

剣士「祈りの指輪で僕の瞳を求める?それで良いのですか?」

魔女「そう…あなたの瞳を持っている者こそ…あなたの本当の母」

剣士「母…」

魔女「あなたの母はその指輪で精霊を祈り、そして指輪を守り、あなたの瞳も守り続けています」

女エルフ「マザーエルフ…」

魔女「瞳が戻ったならば再びここを訪れなさい…精霊の魂を解放する術を教えます」

剣士「どうして僕の瞳を奪う必要があったんだろう…」

魔女「それは直ぐにわかりますよ…心配しないで?」

剣士「なんか…生い立ちを聞いてしまうと…僕が僕では無くなる様な感じが…する」

魔女「話が長くなってしまいましたね?ゆっくりしていきなさい?ここは時間がゆっくり流れているから…」

剣士「本当の母…どうして母さんは僕を捨てたの?」

女戦士「…剣士!少し休もうか…頭を整理した方が良い!明日の朝に出発だとすると5日間ここで休める」

女海賊「え?何言ってんの?お姉ぇ…狂った?」

魔女「ここの1日はあなた達の世界のたった2時間…ゆっくりして行って良いのです」

女戦士「そうだ…5日もあればゆっくり魔女と話が出来る」

魔女「焦らなくても良いのです…」

女海賊「マジかぁぁ!!やっと休めるぅ…ん?待てよ…」



女海賊「魔女は200歳だったとして1日が12倍て事は…2400年分の時間をここで過ごしてる?」

女海賊「ん?逆か?ここで200年分歳を取ってるって事は…16年しか経ってない?」

女海賊「いや…まてよ?16年分はどこで経つ?あああぁこんがらがってきた…もっかい最初から」




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155: 2020/09/14(月) 23:59:02.91 ID:JwosRg690
女エルフ「魔女様?私は人間の住まう所にこのような場所がある事を知りませんでした」

魔女「ここはエルフの森と同じ狭間の奥」

エルフ「こことエルフの森は繋がっているのですか?」

魔女「時間の流れ方が少し違うので直接行き来することは出来ません」

女エルフ「狭間の奥は私たち魔物の一族しか居ないと思っていました」

魔女「ここ以外にも同じ空間はあるのですよ?精神と時の門と呼ばれていて魔術師達はそこで修行をするのです」

女エルフ「人間の見方が変わりました…賢い人も居るのだと」

魔女「人間はあなた達エルフよりもずっと弱くて寿命も短い…賢く生きるには工夫が必要なのです」

女エルフ「魔女様の他に同じ様な人は居るのですか?」

魔女「私の知る限りでは恐らく居ないでしょう…しかし時代を紡ぐ者はすでに現れています」

女エルフ「もしかして…」

魔女「そう…あなた達がその役を担っているのです」

女エルフ「ここに来る時に赤い目の少女を見ました…あの少女は?」

魔女「あなた達と同じく次の時代を紡ぐ者の一人…命を大事にするのですよ?」

女エルフ「はい…」

魔女「…あなたのその足」

女エルフ「怪我をして動かなくなってしまいました…でも大丈夫!剣士に治してもらったから」

魔女「その足は骨が氏んでしまっていますね…このままでは治る事は無いでしょう」

女エルフ「そんな…」

魔女「大丈夫…私が蘇生魔法を掛けてあげましょう」

女エルフ「それは大魔法の一つ」

魔女「エルフも光の魔法は使うことが出来るのですよ?ほら…この魔方陣の上に足を置いて…」

女エルフ「はい…」ソロリ

魔女「蘇生魔法!」ポワ

女エルフ「あまり変わった感じはしません…」

魔女「ここに居る間は時間がゆっくり流れています…元の世界に戻った時に変化に気付くでしょう」

女エルフ「ありがとうございます」

魔女「回復魔法を忘れず掛けるのですよ?」

女エルフ「…ハーフエルフの私は魔法を使う事を禁じられているのです」

魔女「あなたが正しいと思う方を選択しなさい…掟を守り調和を保つのか…力を使い何かを守るのか」

女エルフ「何かを守る…」

魔女「ハーフエルフに科された掟にも意味があるのです」

女エルフ「え!?意味?…」

魔女「迫害される中で何を学びましたか?正しい事は何なのか学びませんでしたか?」

女エルフ「ハイエルフ達はそれを教える為に厳しい掟を作ったと?」

魔女「それが良い方法だったのかは私には分かりません…でも中には正しい心を持つエルフが育つのも事実」

女エルフ「魔女様…私はハイエルフに対して大きな勘違いをしていました」

魔女「それで良いのです…ハイエルフはそうやって次の世代のエルフを育てているのですから」



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156: 2020/09/14(月) 23:59:34.20 ID:JwosRg690
女海賊「う~ん…どうやってくっ付いてるんだぁ?」

女戦士「…」

女海賊「何見てんの?」

女戦士「お前は休むって事が出来んのか?さっきから何をしている?」

女海賊「この塔の壁ってさぁ…何で出来てんの?」

女戦士「アダマンタイトという石だそうだ…ドワーフが生んだミスリルの様な物だ」

女海賊「なんそれ?聞いたこと無い」

女戦士「古代魔術の遺産で製法は消失したと聞いた」

女海賊「お姉ぇ何で知ってんの?」

女戦士「前来たときにアサシンが魔女に同じ質問をしたのだ…同じ物がシャ・バクダ遺跡にもあるらしい」

女海賊「へぇ~…てことはシャ・バクダ遺跡に行けば手に入るんだね?」

女戦士「何に使う気だ?」

女海賊「これみて?」カチン!

女戦士「ん?磁石がくっつく?それがどうした?」

女海賊「取ってみてよ」

女戦士「ふん!…む!取れんな」

女海賊「磁石を90°回してみて?」

女海賊「こうか?」ポトリ

女海賊「不思議でしょ?」

女戦士「お前は天才かもしれんな…これは上手く使えば色々な物が作れる」

女海賊「これさぁ…アサシンに報告した方が良いと思うんだよね」

魔女「おやめなさい…それは危険な物です」

女海賊「魔女の婆ちゃん…なんでさ?」

魔女「アダマンタイトは狭間と密接な関係を持つのです…狭間を不用意に引き付けるのはとても危険な事です」

女海賊「狭間を引き付ける?」

魔女「古代の魔術師は魔方陣の代わりにアダマンタイトを使って狭間を引き寄せ魔法を使っていたのです」

魔女「狭間を遠ざける事を忘れてしまうと狭間から魔物が這い出てきてしまうのです」

女海賊「むむ!裏を返せば狭間の近い所にはアダマンタイトが眠ってるという事だね?」

魔女「古代の忘れ物でしょう」

女海賊「はっは~ん…この魔女の塔はアダマンタイトで出来ているから狭間の深い所にある!」

魔女「あなたは意外と賢いのですね…悪いことは言いませんからアダマンタイトを使うのはおやめなさい」

女海賊「わかったよ!!最後に一個教えて?狭間を遠ざけるのは磁力を90°回転させる…で合ってる?」

魔女「世界中の狭間を遠ざけるのはとても難しい事ですよ?」

女海賊「答えになってないけど…まいっか!!ありがとね」



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次回:勇者「魔王は一体どこにいる?」【白狼の盗賊団・後編】



引用: 勇者「魔王は一体どこにいる?」続編