157: 2020/09/15(火) 00:00:54.30 ID:s4Ww8Seh0


勇者「魔王は一体どこにいる?」シリーズです

最初から:勇者「魔王は一体どこにいる?」
前回:勇者「魔王は一体どこにいる?」【白狼の盗賊団・前編】


 カン カン カン

女海賊「魔女の婆ちゃん何作ってるんだろ?」

女エルフ「魔方陣のペンダントを作っているそうよ」

魔女「さぁ出来た…剣士?あなたのペンダントを作りました…着けておきなさい」

剣士「僕に?」

魔女「光の魔法はエルフが使うエレメンタルの魔法と違って魔方陣が必要なのです…さぁ着けてごらんなさい?」

剣士「はい…」

魔女「あなたは魔方陣の勉強をしていないから代わりにこのペンダントを作りました…これで千里眼を使えるでしょう」

剣士「ありがとう…」

魔女「早速使ってみなさい?」

剣士「えっと…千里眼!」ポワ

魔女「何が見えますか?」

剣士「うわぁ…何だ!!上にも下にも…頭の中に沢山の何かが入って来る」キョロ

魔女「初めて見えるという体験をしたのですね…それが見えるという事です」

剣士「何だ…これは何だ!?動いている?」

魔女「今あなたが見ている物はとてもゆっくり動いているでしょう…時間の流れが違うのです」

剣士「想像していた物と全然違う…何が何だか分からない…」

魔女「ここに居る間は見えることに慣れておいた方が良いですね」

女海賊「剣士の反応がウケるww」

女戦士「無理もないな…目からの情報が多すぎるのだ」

女海賊「他人の視点ってどう見えるんだろ?自分が見てるのと違ってたらやっぱ混乱するかな?」

女戦士「他人がもしも虫だったとしたらどう思う?」

女海賊「虫!?…そういう事かぁ…そりゃ混乱するなぁ」

女戦士「そういう事だ」

剣士「うわぁぁ…はぁはぁ…」



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158: 2020/09/15(火) 00:01:24.33 ID:s4Ww8Seh0
女エルフ「何してるの?」

女海賊「ミツバチの観察…どうやらこいつらさぁ…」

女エルフ「何かの発見?」

女海賊「気にしたこと無かったんだけど多分こいつら妖精だわ」

女エルフ「フフフ私知ってた…その子達はもうすぐ妖精になるの」

女海賊「ミツバチのクセに自由に狭間出入りしてて変だと思ったんだよ」

女エルフ「ミツバチだけじゃないのよ?鳥たちも自由に狭間を行き来出来るの」

女海賊「へぇ~…そういやあんたさぁ…足大分良くなったぽいね?」

女エルフ「魔女様に蘇生魔法を掛けてもらったの…もう痛まない」

女海賊「そりゃ良かったねぇ」

女エルフ「私魔女様にお会いできて本当に良かった」

女海賊「何でも知ってる婆ちゃんだね…てか私もあのペンダント欲しいさ」

女エルフ「魔女様に借りたこの魔術書にあのペンダントと同じ形の魔方陣が書いてある」

女海賊「お!?そんなもんあんだ!?見せて?」

女エルフ「エルフは書物をあまり読まないから挿絵の部分しか分からない…あなた読める?」

女海賊「興味ある本は読める!!…無い本は一行目で無理」

女エルフ「ほら?ここの所に同じ魔方陣が書いてある…」

女海賊「どれどれ…あああああぁぁ無理無理無理!!文字が多すぎる」

女エルフ「大魔法には重力や磁力を操る魔法もあるのよ?知ってる?」

女海賊「むむ!!重力…磁力!!んんんん…ちっと読んでみるかぁ…」

女エルフ「文字が読めるのが羨ましい」

女海賊「エルフはどうやって勉強すんの?」

女エルフ「知識の伝搬はオーブという物を聞くの…人間の書物と同じ」

女海賊「そっちのが全然ラクじゃん?そっちのが羨ましいって!!」



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159: 2020/09/15(火) 00:02:00.84 ID:s4Ww8Seh0
女海賊「もう3日もここに居るのに全然お腹空かないね」

女戦士「そろそろ飽きたか?」

女海賊「あんまり休んでるとさぁ…落ち着かない」

女戦士「本でも読んだらどうだ?」

女海賊「今魔術書読んでるんだけどさぁ…文字が多すぎて途中でイヤになる」

女戦士「お前が魔術書を読むとは意外だな」

女海賊「はっきし言ってクッソ面白くねぇ!!でも重力と磁力の秘密が書いてあんのよ」

女戦士「ほう…それは興味あるな…その魔術書は持って帰れるのか?」

女海賊「写本だから持って帰って良いってさ…その代わり全部読めって言われた」

女戦士「それを読んだらお前も魔術師か?」

女海賊「無理っぽい…精神の修行がなんたらかんたら…私には絶対ムリなやつ」

女戦士「我慢する系の奴だな…まぁお前向きでは無いな」

女海賊「剣士ってさぁ…ずっとあそこでブツブツ言ってるけど大丈夫なん?」

女戦士「随分落ち着いて来たように見えるが?」

女海賊「女エルフが寄り添ってんのが気に入らんムキーーー」

女戦士「ハハ嫉妬か?聞こえてるぞ?あれは見えてる物が何なのか教えているんだ…」

女海賊「元の世界はまだ夜中だよね?何が見えてるんだか…」

女戦士「察するに森の中で何かしているのだろうな…もしかすると人間と戦っているのかもしれん」

女海賊「初めて見るにしちゃぁ優しい絵じゃないね」

女戦士「まぁ…祈りの指輪の在りかが見えてるとなると私も黙っている訳には行かなくなった」

女海賊「奪うつもり?」

女戦士「場合によってはな…人間やダークエルフの手に渡るのはマズイ」

女海賊「魔女の婆ちゃんは戦争の事知ってんのかな?」

女戦士「知らん訳が無いだろう…千里眼ですべてお見通しだ」

女海賊「あーーピーンと来た!!法王庁がなんで魔女狩りをするのか…」

女戦士「今頃気付いたのかお前は…」

女海賊「なんで夜行動するのかも…狭間に逃げ込まれるのを追う為なんだ…」

女戦士「その通りだ」

女海賊「んーむ…やっぱり狭間をコントロールする装置作りたいなぁ…」



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160: 2020/09/15(火) 00:02:32.63 ID:s4Ww8Seh0
剣士「…何か大きな生き物と話している様だ」

女エルフ「形は分かる?」

剣士「すごく大きくてゴツゴツしている…後ろの方に大きな何かが付いている」

女エルフ「それは多分ドラゴン…後ろにあるのは多分羽ね」

剣士「その羽の後ろに何かが…乗ってる?」

女エルフ「乗ってる?どんな形?」

剣士「あれは…人なのか?」

女エルフ「人型?…手に弓の様な物を持っていない?」

剣士「あぁ!!あれが弓なのか…だとするとこれは矢筒…沢山の矢筒がある」

女エルフ「それはドラゴンライダー…ドラゴンの背に乗っているのはハイエルフの男」

剣士「あれがドラゴンとハイエルフか…」

女エルフ「他にドラゴンライダーは見える?」

剣士「今の位置からだと見えない…あ!目が動く…上の方だ」

女エルフ「どう?」

剣士「丸い物光っている…あれは浮いてるのか?」

女エルフ「それは月ね…他には?」

剣士「あれが月か…その周りを黒いものが回ってる…123…6個」

女エルフ「多分それも飛んでいるドラゴン…全部で8匹居るはず」

剣士「大分分かるようになってきたぞ…遠くの物は小さい近くの物は大きい…そういう事だね?」



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161: 2020/09/15(火) 00:03:08.91 ID:s4Ww8Seh0
女戦士「剣士の様子はどうだ?」

女エルフ「慣れてきたみたい…」

女戦士「ん?どうした?浮かない顔をして…」

女エルフ「ハイエルフ達が戦いの準備をしているの…ドラゴンライダーを知ってる?」

女戦士「伝説くらいはな…それを言い出すという事は準備しているのはドラゴンライダーだな?」

女エルフ「…」コクリ

女戦士「人間も愚かな物だ…ただの魔物退治で済ませておけば良い物をエルフを追い込んでしまった」

女エルフ「ハイエルフが前線に出る様な状況だとトロールもケンタウロスも…」

女戦士「状況が悪い方向にばかり行く…私なら一旦和平交渉だな…被害が大きすぎる」

女エルフ「一番傷つくのは森…人間は草木一つ一つに魂が宿っている事を分かっていない」

女戦士「質問がある…ハイエルフが祈りの指輪を持っていたことはお前は知らなかったのだな?」

女エルフ「知らなかった」

女戦士「伝説では祈りの指輪を生んだのはエルフだと聞く…破壊の方法を知っているのもエルフだけなのか?」

女エルフ「わからない…」

女戦士「魔王を復活させてしまう可能性を持つ指輪を何故破壊しなかったと思う?賢いエルフが…」

女エルフ「製法ははるか昔に失われたの…破壊しなかった理由は精霊の魂を呼び戻す為と…」

女戦士「為と?」

女エルフ「まだ他に祈りの指輪が残っているかもしれないから」

女戦士「やはりそう思うか…もう一つの指輪で魔王を復活させられた場合の対抗手段…だな?」

女エルフ「…でも可能性なだけ」

女戦士「指輪をひた隠しにする理由はある程度理解できる…しかし何か引っかかる」

女エルフ「指輪を守ろうとする理由はそれで充分なのでは?」

女戦士「それ程精霊の魂にこだわる理由が解せん」

女エルフ「魂の無い抜け殻になった精霊樹はやがて枯れてしまう」

女戦士「ハイエルフが生まれなくなる訳だな?…しかし…やはり引っかかるな」

女エルフ「どうして?」

女戦士「ハイエルフ同士で子を産み育てる事を何故しない?」

女エルフ「それは…純血が途絶えるから」

女戦士「戻るか分からない精霊の魂と引き換えにしても純血を守りたいというのか?」

女エルフ「…」

女戦士「他に何か理由がある気がするな…魔女様に聞いてみよう」



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162: 2020/09/15(火) 00:03:40.62 ID:s4Ww8Seh0
魔女「…あなたたちは核心に近づいていますね」

女戦士「やはり指輪を破壊しない理由が他にも?」」

魔女「指輪が破壊されてしまうと世界は滅んでしまうでしょう」

女戦士「滅ぶ?…どうして?」

魔女「200年前の大破壊の時…狡猾な魔王はすでに滅びの一手を打っているのです」

魔女「私たちは何としても精霊の魂を解放しないといけない…その為には祈りの指輪が必要なのです」

女戦士「滅びの一手とは?」

魔女「エルフの森のさらに北の山頂に命の泉がある事を知っていますか?」

女戦士「そこはドラゴンのねぐら…」

魔女「この世界の命の源であるその場所に魔王は魔槍を突き立てて水を汚してしまいました」

女戦士「ただの伝説だと…」

魔女「いいえ…それは本当の事…その水を必要とする私たち生き物すべて魔王に汚されているのです」

女エルフ「人間の心が汚れているのはそのせい…」

魔女「そう…そうやって滅びの道を歩んでいるのです…それは人間だけではなくあなた達エルフも同じ」

女戦士「それと精霊の魂とどんな関係が?」

魔女「魔槍を抜き…汚れた水を浄化できるのは精霊の加護を受けた勇者ただ一人…」

女戦士「精霊が封印されたままでは勇者は生まれないと?」

魔女「精霊が不在となった今…私たちは心を浄化される事もなく憎悪ばかりが増え続けやがて魔王は甦る」

女戦士「祈りの指輪が無くても魔王は甦る?」

魔女「魔王は実体が無くとも現世に住む者の心へ影響を及ぼすのです…その結果が破壊の連鎖を呼ぶ」

女戦士「事が重大過ぎて言葉を失うな…今まさに戦争が起きている…」

魔女「このような世界だからこそ…意味のある育てられ方をされてきたあなた達は世界を救う最後の希望」

女戦士「魔女様…ご教授ありがとうございました…私はこれからやる事が少し見えてきました」

魔女「前に訪ねてきたアサシンはお元気かしら?」

女戦士「程なく邁進しております」

魔女「もう会えないかもしれないから…彼に会ったら伝えておいて下さい…命を大事にと」

女戦士「承知しました」



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163: 2020/09/15(火) 00:04:14.18 ID:s4Ww8Seh0
妖精「…僕はここで待ってる」

剣士「わかったよ…しばらくは魔女と一緒にいるの?」

妖精「魔女が亡くなったら魂を導くんだ…黄泉はすぐそこだけど」

剣士「目が見える様になったら直ぐに戻るよ」

魔女「必ず戻ってくるのですよ?…あなたには教えておかなければならない事があります」

妖精「女エルフ?剣士の目の代わり頼んだね!」

女エルフ「はい…」

女海賊「あぁぁなんか5日ってあっという間だったなぁ…」

魔女「魔術書は全部読んでおくのですよ?」

女海賊「はいはい分かってるって…」

魔女「さぁ子供達…そろそろ行く時間です…気を付けて行ってらっしゃい」

女戦士「魔女様!お元気で!!」

魔女「そうだ…忘れていたわ…剣士?その光の魔方陣を拵えたペンダントは照明魔法も使えるの」

剣士「照明魔法?」

魔女「目が見える様になったら役に立つでしょう…暗い時に試してみなさい」

剣士「はい!」

魔女「ここから出る時は元来た道をまっすぐ帰るのです…振り返ってはいけませんよ?迷ってしまうから」

妖精「あーー僕案内してくる!!」

魔女「それなら大丈夫ね…さぁお行きなさい?」

女海賊「じゃね~」ノシノシ


164: 2020/09/15(火) 00:04:43.46 ID:s4Ww8Seh0
『追憶の森』

ホーホー ホーホー

妖精「じゃぁ僕はここまで!後は大丈夫だよね?」

女戦士「ありがとう妖精!」

剣士「すぐ戻るから!魔女を見守ってあげてて!」

妖精「じゃ又~」ヒラヒラ

女海賊「まだ暗いね?5日もブランクあると勘が鈍っちゃってる…夜明けまでどんくらいだろ?」

女戦士「今夜は小望月…もう直ぐ沈む」

女海賊「剣士?照明魔法試してみなよ…月の光が届かなくて暗いんだ」

剣士「触媒が何か教えてもらってない」

女エルフ「光の魔法はエレメンタル魔法じゃないから触媒は要らない」

剣士「やってみる!照明魔法!」ピカー

女海賊「おぉ!!ちょい明るすぎ…」

女戦士「皮袋を被せておけ…それで十分だ」

女海賊「おっけ…じゃ戻ろうか」

女エルフ「待って…魔女様に足に回復魔法を掛けなさいと言われているの…剣士お願い」

剣士「回復魔法!」ボワー

女エルフ「ぁ…」

女海賊「工口い声出すな…行くよ!!」

女戦士「気球が心配だ…早く戻ろう!走れるか?」

女エルフ「足が動く!走れる!剣士!手を…」グイ タッタッタ


165: 2020/09/15(火) 00:05:09.41 ID:s4Ww8Seh0
『気球』

女戦士「はぁはぁ…気球は無事だな?」

女海賊「こっちの世界じゃ半日しか経ってないっしょ?あぁぁ!!気球に魚入れっぱだった」

女戦士「日が昇る前にここを離れるぞ…食事はその後だ」

女海賊「おっけ!私は球皮膨らませるから剣士は火起しといて!」

剣士「おっけ!火炎魔法!」メラ パチ

女海賊「…魚焼いといて!」

剣士「おっけ!火炎魔法!」チリチリ

女海賊「…なんかムカ付くんだけど…触媒無駄遣いしないでくれる?」

剣士「おっけ!」

女海賊「木に縛ってあるロープも外しておいて…もう飛ぶよ」


フワフワ


女戦士「ふむ手際良い…火起こしの早さがそのまま飛ぶまでの時間短縮になった様だ」

女海賊「お姉ぇ!行き先どうする?戦場に直行?」

女戦士「そうだな…エルフの森南部までは1日掛かるな?その間に千里眼で目標を定めよう」

女海賊「よっし!!風に乗る!!剣士…縦帆開くのお願い!2つとも展開して」


ビョーーーーウ バサバサ


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166: 2020/09/15(火) 00:05:40.08 ID:s4Ww8Seh0
女戦士「さて…この広大な森の中にいる対象をどうやって探すかだ…何か目標物は見えんのか?」

剣士「森の中を歩いている」

女戦士「それでは探せんな」

女海賊「お姉ぇ!女エルフが森の地図を描いてくれてる…見て!?」

女戦士「…荒すぎるが…この南北に走る線は何だ?」

女エルフ「それは断崖…そこから東は低地になっていて飛び降りることも戻る事も出来ない所」

女戦士「ふむ…私が人間の立場なら断崖を背にして野営を張るな」

女海賊「断崖のこっち側なら気球でも安全だね」

女戦士「一旦断崖を目指して人間側の陣の張り具合を見るか…」

剣士「あ!!沢山の人が集まっている…20人くらい」

女エルフ「耳が長い?」

剣士「…長い人も居るけれど…少し違う格好のひとも居る」

女エルフ「違う格好?…なんだろう?」

剣士「布の様な物を渡された…これが文字なのかな?何かの模様が沢山見える」

女エルフ「エルフは文字を使わない…それは人間」

剣士「周りの人が弓を構え始めた」

女戦士「どうやら何か交渉を始めているな…当然の流れだが」

女エルフ「弓を構えているのはエルフ?人間?」

剣士「エルフ…耳が長い」

女戦士「ふむ…人間側が交渉を持ちかけたな?ドラゴンは見えるか?」

剣士「今は見えない」

女戦士「私がエルフなら交渉を有利に進める為に隠し玉のドラゴンライダーを見せるな」

女海賊「私が人間だったら捕虜を見せる…どっちが有利?」

女エルフ「…人間が有利」

女戦士「いや…この場合エルフ有利だ…伝説が本当ならばドラゴンライダーで5万の兵は壊滅する」

女海賊「マジか…じゃ捕虜を盾にする」

女戦士「人間側はそれしか生き残る術が無い…だから交渉しているのだ」

167: 2020/09/15(火) 00:06:20.03 ID:s4Ww8Seh0
---夜---

女戦士「あとどれくらいで断崖だ?」

女海賊「夜明け前には着くよ…野営していればもう火が見えててもおかしくないよ」

女戦士「靄が掛かっていて見えんな」

女海賊「もう少し高度下げようか?」

女戦士「そうしてくれ」


ビョーーーウ バサバサ


女海賊「どう?」

女戦士「靄が濃い」

女海賊「女エルフ!?断崖の高さってどれくらい?あんまり高度下げると正面からぶつかっちゃうよね?

女エルフ「200メートルくらい」

女海賊「高っか…聞いてて良かった」

女戦士「それ程の高さなら目視出来る筈…まだ先か?」

女エルフ「森で覆われていて分かりにくいと思う…100メートルを超える木も沢山あるから」

女戦士「聞いたことがあるな…木の上に木が生えているらしい」

女海賊「あぁぁ…だから森っていう字なんだ…納得」


ワオーーーーーン ワンワン


女海賊「遠吠え…剣士!?何言ってるか分かる?」

剣士「侵入者…」

女戦士「ん?こんな所でか?今は断崖の下の筈だ…戦隊の展開を読み違ったか?」

剣士「高度上げないと断崖にぶつかるよ…」

女戦士「やってるって!!お姉ぇちゃんと前見てて!!少し旋回しながら上げる」

女戦士「ちぃ…靄が濃い」

剣士「…この土の匂い」クンクン

女エルフ「トロールね」

剣士「上にトロール!!」

女戦士「上だと!?うわ!!」


ヒューー ドシーン

168: 2020/09/15(火) 00:06:46.89 ID:s4Ww8Seh0
女戦士「…落ちて行った」

女海賊「あぶぶ…断崖すぐソコじゃん!!やっぱ暗い所で高度下げるの無いわ…」

女エルフ「見て!!断崖の淵」

女戦士「なるほど…トロールの足をすくって谷底に落としてる訳か」

女エルフ「こっちに気付いた様子は無さそう」

女戦士「野営跡が見えるな…という事はここは最後尾だ!断崖沿いに北へ進路を変えろ」

女海賊「アイアイサー!!」


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女戦士「見えた…断崖から少し森に入った所にちょとした拠点を作っている…あれが本隊だ」

女海賊「見せて見せて?…んんん?攻城塔が沢山ある」

女戦士「木の上が寝床になっているのだろう…長期戦の構えなのだが…」

女海賊「あの攻城塔は弓が怖くて近づけないなぁ」

女戦士「射程外の高さを維持しろ…おそらく徒歩で1日程前方が最前線だ」

女海賊「こんな場所に拠点構えてさぁ…補給どうすんだろ?」

女戦士「ドラゴンさえ居なければ気球で問題ないな…しかし今は補給出来ん状況…だから交渉なのだ」

女海賊「それにしても良くこんな拠点作ったね…堀も柵もあるし」

女戦士「人海戦術の成せる業だな…」

女海賊「これさぁ…私たちの所にドラゴン来たらどうすんの?」

女戦士「こっちにはエルフが居る…襲って来ん事を願うのだな」

女エルフ「下!!」

女戦士「んん?行軍してるな…夜明け前だというのに」

女海賊「前に光が沢山見えてきた」

女戦士「多い!!…包囲しているのか?…違うなトロールを焼いているな」

女海賊「燃えているのはトロール?」

女戦士「そうだ…トロールは火で炙ると動きが鈍くなる」

女海賊「良い目印!トロールの向かう先に行く!」

女戦士「待て!!場所は把握した…夜明けまで高度を上げて様子を見る」

女海賊「おっけ!」

女戦士「剣士!千里眼の用意は良いか?ピンポイントで対象に接触したい…出来るだけ詳細に頼む」

169: 2020/09/15(火) 00:07:33.06 ID:s4Ww8Seh0
---夜明け---

女海賊「…東と南の方にもドラゴンが飛んでる…やっぱり旋回してるだけ」

女戦士「ちぃ…随分広範囲で分かれてるな…的が絞れん」

女エルフ「やっぱりドラゴンは全部で8匹」

女戦士「剣士!どこら辺なのかまだ分からんか?」

剣士「目印になるものが何も無いよ」

女戦士「まだ人間と会話しているのだな?」

剣士「何かを待ってる…」

女戦士「むぅ…どの部隊と接触しているのだ?」

女海賊「もう少し高度下げよっか…」

剣士「あ!!あれは馬か?馬車が何台も来てる」

女戦士「夜行軍の部隊か!!東の方角だ…引き返せ!!」

女海賊「おっけ!高度下げながら行く」

剣士「馬車の中から…エルフが沢山出てくる」

女戦士「なるほど…捕虜の交換だな」

剣士「…歩き始めた」

女戦士「行き先をよく見ておけ救出するぞ」

剣士「馬車の方に向かってる…ん?黒いエルフ…ダークエルフとすれ違った」

女エルフ「ダークエルフと交換?」

剣士「振り返った…ドラゴンが1匹見える」

女海賊「見つけたぁぁぁぁ!!あそこ!!あのドラゴンだけ1匹」

女戦士「交渉中だ…高度下げて様子を伺う!!」

剣士「はっ!!倒れた…」

女戦士「なにぃ!!」

剣士「ナイフが胸に刺さってる…ダークエルフにやられた」

女エルフ「ああぁぁ…マザーエルフ様!」

女海賊「ドラゴンが火を吹き始めた!!やっぱりあそこ!!」

剣士「逃げて!!逃げて!!早く!!うぁぁぁぁぁ」

女戦士「弓のギリギリ射程外まで下げて近づけ!!」

女海賊「やってる!!」

女戦士「こちらを見つけたな!?女エルフ!!弓で応射しろ!!」

女エルフ「…」ギリリ シュン

女海賊「お姉ぇ!!これ以上高度下げれない…危険すぎる」

女戦士「とにかくあのハイエルフを追え!!」

女海賊「こんな高さじゃ降りらんないよ?」

剣士「…」ダダダ

女戦士「剣士!!何をする!!」

女海賊「ロープ?」

170: 2020/09/15(火) 00:08:10.74 ID:s4Ww8Seh0
女戦士「おい!待て!!早まるな!!」

剣士「助けに行く」シュルシュルシュル

女エルフ「あ!!剣士…私も援護に行く」

女戦士「むぅ…仕方あるまい…矢を多めに持って行け!」ポイ

女エルフ「ありがとう」シュルシュルシュル

女海賊「どうするどうするどうする…」

女戦士「剣士!女エルフ!最後の集合場所は星の観測所だ!!」

女エルフ「分かった」


シュンシュンシュンシュン ストストストスト


女海賊「ヤバ!!矢が届いてんじゃん…離脱!!」

女戦士「二人とも氏ぬな!!必ず戻れ!!」

171: 2020/09/15(火) 00:08:45.44 ID:s4Ww8Seh0
『前線第一部隊』

---前夜---

部隊長「…エルフはこちらの要求を呑むという事だな?」

特使「条件付きですが…」

部隊長「こちらが出せる条件だろうな?」

特使「全捕虜とダークエルフとの交換で指輪を持つハイエルフがこちらに来るようです」

部隊長「ハイエルフが来るのか…厄介だな」

特使「その様で…」

部隊長「貴族の連中がハイエルフに魅了されるのは目に見えている…しかしこちらも厳しい状況」

精鋭兵「これ以上の損耗は士気を下げてしまいます…」

部隊長「捕虜の移送は間に合うな?」

精鋭兵「馬車を使えば明日の朝には前線入り出来ます」

部隊長「問題はダークエルフの方だが…」

精鋭兵「ダークエルフ含む法王庁の部隊はたった二個中隊で我々の左前方に位置します」

部隊長「分かっている…漁夫の利を得ようと最前線より前に出ている事もな…小賢しい」

精鋭兵「何故かトロールの襲撃を受けていないのも怪しい」

部隊長「ダークエルフを査問で捕らえられるか?大将からの書状は私が後で何とかする」

精鋭兵「法王庁が言う事聞くでしょうか?」

部隊長「法王庁は和平交渉の件は知らぬ筈…勝手に動かれるのも困るのだ」

精鋭兵「大将からの書状では無く第一皇子からの書状という事になりませぬか?」

部隊長「私に偽装せよと言うのか?」

精鋭兵「交渉が上手く行けば第一皇子の株も上がりましょうと言う物…しいては大将及び部隊長も…」

部隊長「軍法会議ものだが早期決着の為にはやむを得んか…」

精鋭兵「急ぎで私がダークエルフを捕らえて参ります」

部隊長「よし!!特使!!本部へ戻って大将に和平成立を先行して報告して来い」

特使「ハッ」スタ

部隊長「精鋭兵!書状は直ぐに書く…必ずダークエルフを捕らえてこい」

精鋭兵「ハッ」


172: 2020/09/15(火) 00:09:16.64 ID:s4Ww8Seh0
---朝---


第二部隊方面ドラゴン2匹

第三部隊方面ドラゴン2匹

第四部隊方面ドラゴン1匹

後方本隊方面ドラゴン2匹

観測主「ドラゴンは上を尚旋回中!戦闘の意思は無い模様…ん?未確認の気球1機がさらに上空を飛んでいます!」

部隊長「行き先は分かるか?」

観測主「旋回してこちらへ回頭しています」

部隊長「後方の本隊は視認できるか?」

観測主「狼煙は見えますが隊の展開状況は視認できません」

部隊長「前方の交渉状況を報告しろ!」

観測主「特使がエルフと3匹と接触…捕虜交換の最中です…上空のドラゴンは低空で威嚇しています」

部隊長「部隊の展開状況は?」

観測主「弓兵隊配置完了!歩兵隊は包囲網を展開中!」

観測主「未確認の気球!!さらに接近!!弓兵隊が威嚇を始めました」

部隊長「回避する様子は!?」

観測主「ありません!!応射して来てます!!」

部隊長「むぅ…法王庁の気球か?第2皇子の別働隊か?」

観測主「捕虜交換開始!!女型のハイエルフが一人でこちらに来ます!!」

部隊長「よし!!順調だな?」

観測主「捕虜解放!!ゆっくり2匹のエルフの方へ向かいます…あ!!女型ハイエルフが倒れました!!」

部隊長「なにぃ!!」

観測主「ドラゴンが戦闘態勢!!背中にエルフを乗せています!!ドラゴンライダーです!!」

部隊長「くそう!!謀られた…エルフめぇぇぇ全隊戦闘態勢!!」

観測主「女型ハイエルフ…動きません」

部隊長「捕らえろ!!盾にして後退戦に移行する!!」

観測主「ドラゴンがブレスを吐き始めました!!弓隊一斉射撃開始…未確認の気球から何か降りてきます!!」

部隊長「撃ち落とせ!!弓隊!!女型ハイエルフが逃げる前に足を撃て!!」シュンシュン シュンシュンシュン

観測主「女型ハイエルフ動きます!!東方向…弓ヒット!!転倒」

部隊長「東か…トロール用のベアトラップに追い込め!!ん?気球から降下してきているのは…」

観測主「白いウルフ1匹と女型エルフ弓タイプ!!自軍の前方に降下します」

部隊長「気球を打ち落とせぇ!!」ギリリ シュン シュンシュン シュンシュンシュン

観測主「各部隊…戦闘開始した模様!!開戦の合図が出ています!」



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173: 2020/09/15(火) 00:10:00.00 ID:s4Ww8Seh0
部隊長「ハァハァ…女型ハイエルフはまだ捕らえられんか?」

精鋭兵「歩兵隊でベアトラップ地帯に追い込んでいます!」

部隊長「弓隊の射撃が薄くなってきたな…」

精鋭兵「ドラゴンライダーです…アレに乗っているハイエルフの弓が正確すぎる!!」

部隊長「ベアトラップの向こう側は第2部隊が展開している筈だ…粘って合流する」

観測主「報告!報告!女型ハイエルフがベアトラップに掛かりました!」

部隊長「ようし!!でかした!!」

観測主「新敵発見!!ケンタウロス槍タイプ4体…後方です」

部隊長「むぅ…弓隊の被害状況は?」

精鋭兵「半数が怪我を負って今交代中です」

部隊長「歩兵隊で女型ハイエルフ捕獲に動け!弓隊と盾隊は後方のケンタウロスに当たれ!」

精鋭兵「歩兵隊!!前進!!」

部隊長「降下した白いのとエルフは何処へ行った?」

観測主「見失いました…いえ!!横!!すぐそこ居ます!!回避!!回避!!」

部隊長「精鋭兵隊!!迎え撃て!!」

精鋭兵「白いのを狙い打てぇ!!…速い」シュンシュンシュン シュンシュンシュン


ピョン ピョン クルクル シュタ


精鋭兵「おのれぇ…ちょこまかと…」

部隊長「なんだあの白いウルフは…木から木を飛び移つ…ぐぁ!!」シュン グサ

精鋭兵「部隊長どの!!精鋭兵隊!!観測塔を中心に守備!!」

観測主「女型エルフの弓が木の陰から飛んできます!!」

精鋭兵「目標を女型エルフに変更!!撃てぇ!!」シュンシュン シュンシュン

観測主「外しましたぁ!!あ!!白いのが炎を出しています…ブレス!?」

部隊長「な…なにぃ!?ウルフでは無いのか?」

観測主「小型ブレスを吐きます…あの魔物は報告にありません!!新型です!!」

精鋭兵「ブレス来るぞぉぉ!!散開!!散開!!」


ボゥ ボゥ ボゥ メラ


観測主「観測塔!!燃えます…消化急いで!!」

精鋭兵「くそぅ…叩いて消せ!!」パン パン

観測主「白いのはベアトラップ方面に移動…うわぁぁぁ女型エルフが狙って…ぎゃぁぁぁ」シュン グサ

部隊長「たった2匹に翻弄されるか…」

観測主「ゆ…弓隊が後退しています…ケンタウロスを倒せていま…せん」

部隊長「全隊!!ベアトラップ方面に後退する!!第2部隊と合流する…続けぇ!!」



----------

174: 2020/09/15(火) 00:10:33.65 ID:s4Ww8Seh0
ゴォォォォォ

部隊長「なんだアレは…竜巻か?」

観測主「徒歩だとしっかり確認できませんが竜巻魔法のトルネードと思われます」

部隊長「あの女型ハイエルフはメイジ型だという事か」

観測主「トルネード3つ見えます」


チュドーーン ゴゴゴゴ


観測主「火柱に変わりました!!高位魔法のボルケーノです!!」

部隊長「先行している歩兵隊は見えんか?」

観測主「ちょっと待ってください…木の隙間の煙が切れれば…」

精鋭兵「歩兵隊が敗走して戻ってくる様です…やられたか」

観測主「見えました!!女型ハイエルフは依然ベアトラップに掛かっています…あ!!」

部隊長「どうした!?」

観測主「膝から下を切り落としました…這って逃げています!第2部隊方面」

部隊長「ようし!!…まだ包囲している状況だ!逃がさん…」

観測主「上空のドラゴンは後れを取っている弓隊と戦闘中の模様」

部隊長「精鋭兵!!ベアトラップはまだ在る筈だな?」

精鋭兵「2重に置いています…このまま進めばもう一度掛かります」

部隊長「一気に捕獲する!前進!!」

観測主「女型ハイエルフ目視!!前方…追いつけます!!」

部隊長「捕獲して第2部隊に合流するぞ!!後れを取るな!!」

精鋭兵「見えた!!走るぞ!!んん?しめた…またベアトラップに掛かった…確保!確保!」


ピョン クルクル シュタ ザク


精鋭兵「ぎゃぁぁ…白い奴」メラメラ

観測主「白い新型は燃える武器を所持!!アレは人型です…頭部がウルフ?」

部隊長「ウェアウルフか!!ええぃ邪魔をするな」ダダダ ブン

精鋭兵「精鋭兵隊!!盾を構えろ…はぁはぁ」

部隊長「ブレスに注意しろぉ!!…ぐぁ!!」シュン グサ

精鋭兵「後ろから弓…女型エルフかぁ!!」

部隊長「…精鋭兵…指揮を変われ…まか…せ…た」ドタリ

精鋭兵「くそぅ…指揮官をピンポイントで狙ってくるとは…出来る」

観測主「白い新型の動きが止まりました!!何か来ます!!」

精鋭兵「盾で守備!!そのまま前進しろぉ!!」

175: 2020/09/15(火) 00:11:03.48 ID:s4Ww8Seh0
ガガーン ビリビリ


精鋭兵「な…落雷だと!?」

観測主「分かりました!!白い新型はメイジ型です!!今のは雷魔法…うゎぁぁ」ボウ メラ

精鋭兵「火炎魔法…むむむ色々やる…全隊!!新型に構わず強硬突破!!女型ハイエルフの確保優先!!」

観測主「お…遅かった…女型ハイエルフはもう一つの足も切り落として逃げています…東方向」

精鋭兵「お前は走れるか?」

観測主「なんと…か」ノソ

精鋭兵「良し…まだ見える!この先は崖だったな?」

観測主「う…上にドラゴン」

精鋭兵「万事休す…全隊!!ブレスに備えろぉぉぉ」


ギャオーーース ゴゥ ボボボボボボボ


精鋭兵「ぐはぁ…圧倒的ではないか」

観測主「第2部隊が上手く捕獲するのを願うしか…」

精鋭兵「全隊…各自小隊に分かれて第2部隊に合流せよ…第1部隊は指揮系統壊滅」

176: 2020/09/15(火) 00:11:35.76 ID:s4Ww8Seh0
『第2部隊』

ドーン ドーン

観測主「第1部隊方面で激しい爆発が続いています…こちらの方に移動中と思われます」

部隊長「ううむ…こちらは崖を背にして退路が無い」

観測主「南方面に未確認の気球が旋回しています」

部隊長「上空のドラゴン2匹は何処に行った?その気球はドラゴンに襲われんのか?」

観測主「敵の観測用気球でしょうか?」

部隊長「部隊の展開状況が筒抜けという訳か…撤退せねばならん」

観測主「ドラゴンは現在第1部隊方面へ向かった我が隊の斥候隊上空と思われます」

部隊長「よし…斥候隊を囮に我が隊は崖沿いを南へ回る!!全隊移動開始!!」

観測主「第1部隊方面より敗走兵が来ています」

部隊長「衛生兵!!保護して状況を聞き出せ!!」

観測主「我が隊の弓兵隊が北方向に弓を撃っています!!」

部隊長「確認急げ!!」

観測主「ん?足の無いハイエルフ…が森を這って出てきます」

部隊長「なに!!もしかすると捕虜交換のハイエルフかもしれん!!」

観測主「4つ足で割と速いスピードで東方面に移動中…我が隊の弓がそこそこ当たっている模様」

部隊長「恐るべき生命力だなハイエルフは…ここから確保に向かえそうか?」

観測主「東は崖で行き止まりです…飛び降りなければ間に合います」

部隊長「騎兵隊!!足のないハイエルフの確保に向かえ!!その他は南に移動を継続!!」

観測主「報告!!森の切れ目周辺に小爆発!!」


ドーン ドーン

177: 2020/09/15(火) 00:12:12.49 ID:s4Ww8Seh0
観測主「出てきました!!白い魔物と女型エルフ…爆発の正体は白い魔物です!!」

部隊長「こちらに来るか?」

観測主「いえ…足の無いハイエルフ方面へ向かってます」

部隊長「こちらの騎兵隊はハイエルフまで接触どれくらいだ?」

観測主「あと2~3分…森から小隊がいくつか出てきます…やはりハイエルフを追っている様です」

部隊長「やはりそのハイエルフがキーマンな様だな…ドラゴンは何処行った?」

観測主「あぁぁ…ドラゴンもハイエルフ方面へ…2匹です」

部隊長「私も目視する…上に登るぞ」

観測主「白い魔物の吐くブレスで友軍が近づけない様です…このままでは騎兵隊も…うぁ!!」シュン グサ

部隊長「なにぃ!!ドラゴンライダーからの弓はあんな所から届くのか…」

観測主「部隊長…ここは危ないです隠れてください」シュン スト

部隊長「構わん!!盾に隠れて見る」シュン カン!

観測主「ハイエルフは崖に到着しました…ドラゴンは友軍と戦闘開始!!」

部隊長「よし…騎兵隊がハイエルフを取り囲んだな?」


ピカッ チュドーーーン


観測主「ハイエルフ!!爆発!!」

部隊長「魔法か…騎兵隊はどうなった!?観測できるか!?」

観測主「騎兵隊消失…」

部隊長「なんという事だ…これでは勝てん!!全隊!!南の本隊への合流を急ぐ!!」

観測主「ハイエルフの生存確認!!崖を飛び降ります…」

部隊長「我々は敵を知らなさ過ぎた…魔物がこれほどまで強力になっているとは…」

観測主「友軍…森の中へ撤退しています!…あ!!白い魔物に女型エルフが乗りました」

部隊長「ん?アレは何なのだ?ウルフなのか?…どうするつもりだ?」

観測主「崖の方へ…」

部隊長「まさか飛ぶ…?」

観測主「崖を走って…え?下に走ってる」

部隊長「我が軍は完敗だ…本体と合流し撤退戦に移る」

178: 2020/09/15(火) 00:13:26.38 ID:s4Ww8Seh0
『森の最奥』

シュタタ シュタタ ズザザー

女エルフ(剣士!!無事?)

剣士(大丈夫…あっちだ)シュタタ

女エルフ(森がクッションになってくれている)

剣士(あの木の横)シュタタ

マザーエルフ(ぅぅぅ…はぁはぁ)

剣士(回復魔法!回復魔法!回復魔法!)ボワー

女エルフ(マザーエルフ様…)

マザーエルフ(あ…あなた達はハーフエルフですね?私はもう助かりません…この指輪を持ってハッ!!)

剣士(回復魔法!回復魔法!回復魔法!)ボワー

マザーエルフ(坊や…その目は坊や?…こちらを向きなさい)

剣士(…)

マザーエルフ(早く…この指輪を使ってあなたの目を望みなさい…私の命が尽きてしまう前に)

剣士(今助ける!回復魔法!)ボワー

マザーエルフ(言う事を聞きなさい!心臓が止まってしまう前に…)

女エルフ(剣士!!言う事を聞いて!!先に目を望んで!!)

剣士(…この指輪で)

マザーエルフ(早く…)

剣士(僕の瞳を!!)

女エルフ(剣士!?…あなた…瞳が青い)

マザーエルフ(はぁぁぁ本当に…間に合って良かった…あなたは特別な子)

剣士(見える…母さん?)

マザーエルフ(その指輪を使って夢幻から精霊を解放しなさい…これはあなたにしか出来ません)

剣士(どうして僕の瞳を奪ったの?どうして白狼に預けたの)

マザーエルフ(光の無い世界で生きたあなたは真実を見る眼が養われた筈です…夢幻の中で真実を探しなさい)

剣士(夢幻?真実?)

マザーエルフ(ごめんなさいね…あなたを捨てるつもりはありませんでした…でも仕方のなかった事)

剣士(…)

マザーエルフ(正しい心を持ち…真実を見る眼を養う為にはエルフの森から出る以外に無かったのです)

剣士(母さん…僕はもう失いたくない)

マザーエルフ(エルフの魂は森の一部になるからいつでも会えますよ?ゴホゴホ)グッタリ

女エルフ(マザーエルフ様…心臓の音が…)

マザーエルフ(最後に一目坊やの顔が見れて良かった…大きくなり…ました…ね)ナデ

剣士(ぁぁぁ…母さん)ギュー

マザーエルフ(………)


ダダダッ ドン!! シュタッ

179: 2020/09/15(火) 00:14:02.98 ID:s4Ww8Seh0
剣士(うぁ!!)ズザザ

ダークエルフ(悪いがこの指輪は頂く!!痛い目を見たくなければ手を引け!!)

剣士(お前は!!母さんの心臓にナイフを…)

女エルフ(ダークエルフがその指輪を使って何をする気!?)ギリリ

ダークエルフ(おっと…同族頃しはお前もダークエルフになるぞ?いいのか?)

女エルフ(答えなさい!!)

ダークエルフ(ふっ…ハイエルフは祈りの指輪の使い方を間違ってんだよ…これは破壊しなければならない)

女エルフ(その為に戦争を扇動したのはあなたね!?)

ダークエルフ(ハイエルフが黙って指輪を差し出せばこうはならなかったんだ!自業自得だ)

剣士(うぅぅぅぅ…)スラーン チャキ

ダークエルフ(やる気か?)

剣士(火炎魔法!)ゴゥ

ダークエルフ(おっとあぶねぇ…お前らに構って…うぉ!!」ザク

剣士(このぉ!!)ダダッ ザク ザク

ダークエルフ(この動き…お前!犬神だな?)タジ ポタ ポタ

剣士(火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!)ゴゥ ゴゥ ドーン

ダークエルフ(分が悪いか…)ヒラリ ダダッ

剣士(逃がさない!)ピョン シュタタ

ダークエルフ「ピーーーーーー」

女エルフ(笛!?剣士!!気を付けて!!)


シュンシュンシュン シュンシュンシュン


女エルフ(上にも下にも敵が居る!!ウルフの遠吠えは軍の侵入だったって事?)

剣士(うぁぁぁぁ!!)ダダ ザク

ダークエルフ(ぐぁ…)ボトリ

女エルフ(片手を切り落とした…)

剣士(グルルルル…こっちの手じゃない!!)

女エルフ(ダメ!!剣士…弓が狙ってる)


シュンシュンシュン シュンシュンシュン

180: 2020/09/15(火) 00:14:40.02 ID:s4Ww8Seh0
剣士(ワオォォォォン!!グルルルル)シュン グサ

女エルフ(下がって剣士!!…あぁぁぁ矢が当たってる)

剣士(ガルル)ピョン クルクル シュタ


シュンシュンシュン シュンシュンシュン


女エルフ(敵が多すぎる!!剣士ダメ!!ハァハァ…我を失ってる)



----------



観測主「ダークエルフ戻ってきます!負傷している模様!!」

隊長「衛生兵!保護して後方部隊まで下がれ」

観測主「敵は2匹!!メイジ型と弓型!!押し通って来ます」

隊長「メイジ型に集中して撃て!!」


シュンシュンシュン シュンシュンシュン


観測主「ヒット!!怯みません!!自己回復しながら押し通って来ます」

隊長「単騎で特攻か…信じられんな…歩兵で止めろ!!」

観測主「魔法を連射して来ます!!回避!!回避!!」


ドーン ドーン パーン

181: 2020/09/15(火) 00:15:12.43 ID:s4Ww8Seh0
観測主「前衛部隊全滅!!ダークエルフ捕まりました!!あ!!足を切り落とされて転倒」

隊長「ええい!!ダークエルフはもう放置だ!!弓隊!!集中砲火」


シュンシュンシュン シュンシュンシュン


観測主「ヒット!!歩兵が取り付きました…ああ!!なんだ!?ダークエルフの手足が生えてきた…え?」

隊長「なに!?何が起こっている?」

観測主「歩兵が何故か手足を負傷…ダークエルフ逃げ帰ってきます…どうなってるんだ?」

隊長「観測主!!正確に報告しろぉ」

観測主「は…はい!!メイジ型は魔法連射で前衛は近寄れません!!被害甚大!!」

隊長「弓だ!!ハチの巣にしろぉ!!」

観測主「後方でウルフの群れが現れた模様!!混戦になります!!」

隊長「弓隊はメイジ型に集中砲火続けろ!!」

観測主「ヒット!!メイジ型が止まりました…あ!!弓型がメイジ型を引っ張って行きます」

隊長「よし!下がったな?今の内に後方のウルフへ向かい本隊へ合流する」

観測主「敵2匹は木の陰に隠れました!!視認できません」

隊長「そっちはもう良い!!矢を何十発も受けて無事で居るものか!!後方へ移動!!」



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182: 2020/09/15(火) 00:15:49.77 ID:s4Ww8Seh0
女エルフ(あぁぁどうしよう…血が止まらない!剣士!剣士!?)

剣士(ガルル)

女エルフ(動かないで…精霊よお許しください)

女エルフ(回復魔法!回復魔法!回復魔法!)ボワー

女エルフ(あぁぁ血が止まらない…そうだ!!魔女様が私にも出来ると…)

女エルフ(魔方陣のペンダント…これを下に置いて)

女エルフ(蘇生魔法!)ポワ

女エルフ(回復魔法!回復魔法!回復魔法!)ボワー

女エルフ(矢を抜かないと…)ブシュ ブシュ ブシュ

剣士(グルル)


ギャオース バッサ バッサ


女エルフ(ドラゴンライダー!!)

ドラゴンライダー(指輪は無事か!?)

女エルフ(ダークエルフに奪われました!…まだ近くに居るはず)

ドラゴンライダー(トロールが動ける夕刻までここで待機しろ!我々は南進する!)

女エルフ(私たちは?)

ドラゴンライダー(森の声を聞いて集結しろ!指輪を奪い返す!)


ギャオース バッサ バッサ


女エルフ(剣士…あなたは怒りで心がどこかへ行ってしまった)

女エルフ(目を閉じて瞑想で私に重なって…連れ返してあげる)

女エルフ(ここに居るから重なって…)


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183: 2020/09/15(火) 00:16:26.44 ID:s4Ww8Seh0
『気球』

ビョーーウ バサバサ

女海賊「だめだぁ…高度上がんない」

女戦士「一旦離れて直すしかないな…」

女海賊「こんな所で降りたら木に引っかかっちゃうよ」

女戦士「崖を北に沿って行け…森が切れていた筈だ」

女海賊「エルフの森にちょー近いじゃん!大丈夫かなぁ…」

女戦士「祈れ…それにしても剣士たちを見失ってしまったのが…」

女海賊「どうせドンパチの真下なんじゃないの?」

女戦士「これほど激しいともう近寄れんな…まさか竜巻が出るとは思っても居なかった」

女海賊「球皮が破れるかと思ったよ」

女戦士「見ろ…またドラゴンがブレスを吐き始めたぞ」

女海賊「ドラゴンに乗ったエルフもヤバイね」

女戦士「うむ…制空権を完全に制されていては人間側に勝ち目がないな…引くしかない」

女海賊「下から矢を撃ちすぎでさぁ…それを拾われて使われてるの分かってないのかなぁ」

女戦士「現場は必氏なのだろう…相手の補給の事など考える暇も無い」

女海賊「矢が切れればドラゴンライダーも攻め切れないのにね」

女戦士「私はこれからが本番だと見る…トロールを前面に出してゴブリンの歩兵隊…そしてケンタウロス」

女海賊「うへぇ…」

女戦士「ドラゴンライダーからのピンポイント射撃ではまだ決定的に数を減らせていない」

女海賊「人間側は立て直して来るって事?」

女戦士「戦争は最後に歩兵の数で勝つのだ…両者どれだけ相手の歩兵を減らせるかだな」

女海賊「長引きそうだね」

女戦士「うむ…気球を直したら一旦シャ・バクダまで引き返すぞ」

女海賊「剣士たちは置いていくの?」

女戦士「私たちは何も出来ん!仕方あるまい」

女海賊「んんんん!!なんかこんなお別れの仕方したくなかったな」

女戦士「無事に帰って来る事を祈れ…私たちには他にやる事がある」

女海賊「もう!!しょうがないなぁ…」

女戦士「砂漠方面に敗走兵が沢山出るぞ…物資補給で商隊も溢れる事になる」

女戦士「盗賊団も黙って見ているだけでは済まなくなりそうだ」

女戦士「徴兵で戦場に出なければいけなくなる可能性もある…やる事が山積みだ」

女海賊「へぃへぃ…あそこに一旦降りるよ?」


フワフワ ドッスン


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184: 2020/09/15(火) 00:17:17.21 ID:s4Ww8Seh0
その後エルフの森南部で侵略を進める人間軍と衝突した魔物群は

山岳地域からのミノタウロス、オーク、ハーピー

砂漠地域からのリザードマンが加わり勢力を増し

人間軍を押し返す形で南進を進める

魔物群の大反撃が始まったのである

185: 2020/09/15(火) 00:17:53.25 ID:s4Ww8Seh0
『星の観測所』


女戦士「戻ったな?様子はどうだ?」

女海賊「ハズレ町の方に兵隊が逃れて来てるっぽい」

女戦士「うむ…やはり戦線が南に下がった様だな」

女海賊「やっぱり商隊がごった返してるよ…お姉ぇが言った通りだ」

女戦士「こちらも情報が入ってきた…セントラルに軍船が多数入港しているそうだ」

女海賊「どっから?」

女戦士「西方の土の国フィン・ニッシュ」

女海賊「おぉぉ軍国と同盟だ」

女戦士「察するに第2皇子が外交で師団を編成しようとしているな」

女海賊「剣士たちの情報とか何も無いの?」

女戦士「白い魔物の噂はあるが…それだけだ」

女海賊「あぁぁ…もうすぐ1か月だけど氏んじゃったかもしれないと思うとやるせない」

女戦士「…それが戦争だ…あの二人はエルフだから戦いは避けられなかったのだ」

女海賊「なんかイライラする!紛らわせに明るい内に遺跡調査行ってくるよ」

女戦士「アダマンタイトか…まだあきらめて居ないのか?」

女海賊「小さい欠片を探してんだけどさぁ…砂に埋もれててなかなか見つかんないんだ」

女戦士「この間持って帰ってきた奴ではダメなのか?」

女海賊「色んな大きさで試したいんだ」

女戦士「まぁ遺跡は魔物が出ないから迷子にならん様にだけ気を付けろ」

女海賊「分かってるって…じゃ行ってくる!!」ノシ


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186: 2020/09/15(火) 00:18:32.01 ID:s4Ww8Seh0
若い衆「マスター代理!」

女戦士「どうした?」

若い衆「コブラ酒と赤ワインの注文が入りました…グラスは2つ」

女戦士「どこの宿屋だ?」

若い衆「入ってすぐの馬宿です」

女戦士「む…アサシンが帰ってきたか?」

若い衆「分かりません…兵隊の恰好をしているそうです」

女戦士「変だな…暗号が知られてしまったか」

若い衆「どうしましょう?」

女戦士「私が直接行く…逃走用にラクダを馬宿に付けておいてくれ」

若い衆「承知」

女戦士「私もラクダですぐに向かう」タッタッタ

187: 2020/09/15(火) 00:19:18.40 ID:s4Ww8Seh0
『宿屋』

カラン コロン

店主「いらっしゃいま…」キョロ

女戦士「どこの部屋だ?」

店主「奥の大部屋に居座っています」

女戦士「どんな奴だ?」

店主「いつの間に大部屋に籠ってしまいまして…中から兵隊の鎧の音がガシャガシャと」

女戦士「男か?」

店主「女の声です…中から例の物を注文してきました」

女戦士「私の逃走経路を確保しておけ…酒を持って中に入る」

店主「かしこまりました…酒とグラスは用意しております」

女戦士「…この部屋だな?」

店主「はい…」


トントントン


女戦士「ご注文をお届けに参りました…」

店主(返事がありませんな…)

女戦士「扉を開けてもらえませんか?」


ガチャリ


女戦士「お酒をお持ちいたしま…女エルフ!!生きていたか!!剣士はどうした!?」

女エルフ「剣士が氏にそう…もう魔法の触媒が無いの」

剣士「ぅぅぅ…」

女戦士「待ち合わせは星の観測所だと言った筈だ…ここがどれほど危ないか…まぁ良い…それは後だ!」

女エルフ「触媒を…」グッタリ

女戦士「お前も怪我をしているのか…おい!!店主!!事態が変わった…魔法の触媒を入手して来い!」

店主「何がご入用で?」

女エルフ「水とミネラル…それから薬草も」

店主「ミネラルも薬草もこの辺りでは中々…」

女戦士「セントラルから商隊が来てる…なんとか探せ」

店主「わかりました…急いで探してきます」タッタッタ

女戦士「ここよりもエルフの森の方が安全だっただろうに…」

女エルフ「私はもうエルフの森へは帰れないの…ここにしか来るところが無かった」

女戦士「…そうか…禁じられていた魔法を使ったか」

女エルフ「剣士の心臓が止まってしまいそう…」

女戦士「失血がひどいな」

女エルフ「傷口からもう出てくる血が無いの」

女戦士「人間の技ではな輸血という手法がある…女エルフ!お前の血を剣士に半分移すぞ」

女エルフ「私の血を!?」

女戦士「すこし待っていろ…準備してくる」


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188: 2020/09/15(火) 00:19:45.11 ID:s4Ww8Seh0
チク

女エルフ「っ…」

女戦士「この管を通ってお前の血が剣士の中に入る」

剣士「はぁはぁ…うげぇ」オェ

女エルフ「苦しんでる?」

女戦士「他人の血が体の中に入るのだ…多少の反応はある」

女エルフ「剣士の傷跡から血が染み出て…」

女戦士「お前の血だ…血を抜きすぎる前に終わるぞ?お前が倒れたら元も子もない」スポ

女エルフ「止血しないと…」クラ

女戦士「横になってろ!私がやる」グイ グイ ギュー


ガチャリ


店主「ミネラルありました…先にこれだけ」

女戦士「店主!アジトに女海賊が居るはずだ…若い衆に深夜気球で迎えに来いと伝えるよう言っておいてくれ」

店主「わかりました」

女戦士「女エルフ!まだ動けるか?魔法の触媒だ…回復魔法で処置頼む」

女エルフ「回復魔法!」ボワー

女戦士「自分にも掛けておけ」

女エルフ「回復魔法!」ボワー

女戦士「よし!これでひとまず氏ぬ事は無いな?エルフは精力付けるのに何を食らう?」

女エルフ「木の根」

女戦士「そんな物は砂漠には無いな…サボテンの根でどうだ?」

女エルフ「食べた事無い」

女戦士「まぁ良い…採ってきてやる!食ってみろ」


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189: 2020/09/15(火) 00:20:24.31 ID:s4Ww8Seh0
女戦士「…なるほど魔物達は祈りの指輪で魔王を復活させられるのを恐れているのだな?」

女エルフ「エルフとドラゴンは少し目的が違うけれど…」

女戦士「ダークエルフに指輪を破壊されてしまっては困るか…」

女エルフ「とにかく指輪を奪い返せばそこで一旦終わる筈」

女戦士「人間側からすると魔物に攻め立てられている様にしか見えんな」

女エルフ「誰も魔王の復活なんて望んでいないのにこんな風になってしまった」

女戦士「そして…指輪は今どこに?」

女エルフ「森の中央で一番深い所…何層にも森が積み上がっいて迷いの森と呼ばれているの」

女戦士「断崖の下だな?」

女エルフ「そんなところまで人間が入ってきているなんて思わなかった」

女戦士「森の中でのゲリラ戦ではドラゴンも攻め入り難かろう」

女エルフ「このままではもう直ぐ森の南部に出てしまう」

女戦士「まずいな…戦争が森の中だけでは納まらんな」

女エルフ「セントラルまで逃げられてしまうと海からも魔物が来てしまう」

女戦士「クラーケンか…陸に上がるのか?」

女エルフ「わからないけれどドラゴンはクラーケンも恐れているの…ドラゴンよりもずっと大きいから」

女戦士「大惨事になるな…なんとか奪い返せんものか…」

女エルフ「良い手が思いつかない…」

女戦士「うむ…」

190: 2020/09/15(火) 00:20:54.39 ID:s4Ww8Seh0
---深夜---


ガチャリ

女海賊(お姉ぇ!来たよ!)

女戦士(来たな?運ぶのを手伝え!)

女海賊(おぉぉぉぉ!!剣士と女エルフ!!無事でよかったぁぁぁ)ギュー

女戦士(話は後だ…剣士が動けんのだ)

女海賊(重っも…女エルフは剣士を背負ってきたの?)

女エルフ(私が背負うから先導お願い)ノソリ

女海賊(おっけ!こっち…暗いから気を付けて)

女戦士(しばらく見ないうちに剣士は一回り大きくなったな)

女エルフ(剣士はまだ成長期…成体になるともっと大きくなる)

女海賊(あんたさぁ細っそい体してんのに力持ちだよね?)

女戦士(エルフはそういうものだ…女でも人間の男と変わらん)

女海賊(へぇ…こんな重いのが空中でクルクルしてんだ?)

女戦士(ドワーフの男はもっと重くて硬いんだがな)

女海賊(パパの事?アレは別格っしょ?多分石か鉄で出来てるよ)

女戦士(無駄口は良いから急げ!見つかると面倒だ!)

女海賊(はいはい分かってるって!気球乗ったらすぐ飛ぶよ!)

女エルフ(乗った…ふぅ)ヨッコラ セ

女海賊(アジト向かうね)

191: 2020/09/15(火) 00:21:23.67 ID:s4Ww8Seh0
『星の観測所』


女戦士「やっと落ち着いたのだ…少し休んだらどうだ?」

女エルフ「私は大丈夫…」

女海賊「あ!!そうだ!!夜が明けてしまう前に試したいことがある」

女戦士「んん?どうしたんだ急に?」

女海賊「アダマンタイトの実験がさぁどうしても上手く行かないんだ」

女戦士「魔女からやめておけと言われているのだ…あきらめろ」

女海賊「だから試したいんだよ…女エルフ?あんた魔法使っちゃったって言ったよね?」

女エルフ「うん…それが?」

女海賊「照明魔法使える?」

女エルフ「剣士の魔方陣のペンダントがあれば使えるかもしれない」

女海賊「それ必要ない」

女エルフ「え?どうして?魔方陣が無いと光の魔法は使えないの」

女海賊「良いから!ちょっとこっち来て?…ここで使ってみて」

女エルフ「魔方陣が無いと…」

女海賊「良いから唱えてみて!早く!」

女エルフ「照明魔法!」ピカー

女海賊「キタコレ!!!やっぱこれが原因だ!!」

女戦士「何なんだ?どうした?」

女海賊「シャ・バクダ遺跡の周辺ってさぁ…オアシスいっぱいあるじゃん?」

女戦士「話を変えるな…意味が分からん」

女海賊「ぃぁだからさぁ…気球で上からオアシスの位置を見たらさぁ…光の魔方陣と一致してんの」

女戦士「なに!?」

女海賊「魔女からもらったこの魔術書見て?…光の魔方陣の形…交点がオアシスと一致してんのさ」

女エルフ「巨大な魔方陣という事?」

女海賊「そういう事になる…今の照明魔法で証明できた」

女戦士「…これはアサシンも知らない事実だぞ…シャ・バクダは封印されているという事なのか?」

女海賊「えっと…」

192: 2020/09/15(火) 00:21:52.92 ID:s4Ww8Seh0
魔女の塔はアダマンタイトで出来て居たよね?だからあそこは狭間の奥にあるんだ

でも魔女の塔の近くだけは空があったよね?それは魔方陣で無理やり狭間を遠ざけていると思う

シャ・バクダ遺跡には沢山のアダマンタイトがある…だから本当は狭間の奥になる筈なんだ

でも空はあるし魔物も出ない…なんでか?

それはオアシスで作られた巨大な魔方陣の中で無理やり狭間を遠ざけられたから…

魔術書にさぁ…光の魔方陣で退魔の方法が書いてあるんだよね…多分コレ


女戦士「だとすると何故封印してある?」

女海賊「それは分かんない…」

女戦士「アサシンが居ない間に勝手に調べる訳にもいかんな…」

女海賊「でもさぁアダマンタイトの実験が上手く行かないのが魔方陣の中に居るからだと思うんだよね」

女戦士「お前は何の実験をしようとしているのだ?」

女海賊「狭間をコントロールする…狭間の奥に入れば人間からは見えなくなると思うんだ…つまり消える」

女戦士「そんな事が本当に出来るのか?」

女エルフ「エルフの森を人間が見つけられないのは狭間の奥にあるから」

女海賊「そゆ事」

女エルフ「もしそれが出来るなら祈りの指輪を取り返すチャンスが出来るかもしれない」

女海賊「ん?何々?何の話?ちょっと私の分かんない話しないでくれる?」

女戦士「お前は天才だ…アサシンが見込むだけの事はある」

女海賊「指輪を取り返すって何さ!?教えてよ」

女戦士「夜明けに気球でオアシスの外側で安全な場所へ行って試してみよう」

女海賊「ねぇちょっと聞いてんの?」

女エルフ「初めから話すと…祈りの指輪で…」カクカク シカジカ


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193: 2020/09/15(火) 00:22:38.54 ID:s4Ww8Seh0
---夢---


ビョーーーーウ バサバサ

小さい人「やっと少し落ち着いて話が出来るね…」

ぼく「…」---君はだれ?---

小さい人「君の事が知りたいんだ」

ぼく「…」---ぼくは君を知らない---

小さい人「ハハまず僕達の事から話した方がよさそうだね…どこから話そうかな」

大きい人「僕から話す…僕はもともと選ばれた勇者として…」

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---

小さい人「…という訳さ…ややこしいでしょ?」

大きい人「そんな中僕はこの世界が幻だという事に気が付いた」

小さい人「君はどう思ってる?…この世界を」

ぼく「…分からない…僕は昔の記憶が無い…ただ精霊の声は聞こえる」---話が頭に入って来ない---

小さい人「精霊の声?…どんな風に聞こえるのかな?」

ぼく「耳を澄ませると精霊の声がする…心の中で導かれる」---いつも聞こえる声---

小さい人「導きねぇ…」



ぼくはいつの間にか…気が付いたら旅をしていた

その昔の記憶は無い

精霊の声に導かれていつの間にかここに居る

その声…いや…音は僕に常に語りかけていた

そんな旅の最中ぼくは常に命を狙われ

心の中の声に導かれるまま終わりの国まで来て

あなた達と出会った

194: 2020/09/15(火) 00:23:07.45 ID:s4Ww8Seh0
小さい人「よく分からないな…君は本当に勇者なのかい?」

ぼく「今、精霊の声はハッキリと聞こえる…」---ぼくは勇者?---


”目を覚まして…”

”起きないなぁ…”

”置いていく?”

”あ!動いた!!”

195: 2020/09/15(火) 00:23:52.58 ID:s4Ww8Seh0
---朝---

女エルフ「目を覚ました?気分はどう?」

女海賊「起きたぁぁぁ!!…ってあんたその目!!マジか!!お姉ぇ!!ヤバイ来て!!」

女戦士「サボテンの根を採ってきた…んん?」ジロリ

女海賊「アサシンが探してた青い目!マジかマジか!あんたエルフじゃなかったの?」

女戦士「まぁ騒ぐな…まだ起きたばかりだ…腹が減っているだろう?コレを食べるんだ」

剣士「あ…」モグ

女戦士「旨くは無いかもしれんが精が付く…女エルフはすぐに良くなった」

剣士「なんだこれ…」モグ

女エルフ「痛む所は無い?」

剣士「…」スック

女戦士「立てるのか?」

剣士「体は大丈夫みたいだ…」ヨロ

女戦士「血が足り無さそうだな?しばらくは無理せん方が良い」

女エルフ「私の血が足りなかった?」

女海賊「なぬ!!どういう事?まさか輸血したの?」

女戦士「失血がひどくて氏ぬ寸前だったのだ…女エルフが居なければ氏んでいたぞ」

剣士「僕の体に女エルフの血が流れている?」

女戦士「そうだな…全部入れ替わったかもしれんなハハ」

女海賊「ハハじゃねぇ!!…なんかイライラすんだけど」

女戦士「嫉妬は見苦しいぞ?エルフにドワーフの血を入れるよりマシな方法だ」

女海賊「女エルフ!!後で血ぃ貸しな!!ドワーフの血と混ぜるとどうなるか実験する」

剣士「実験?ハハハ実験?くっくっく…」

女海賊「お!?笑った」

女戦士「やっぱりお前はバカなのか天才なのか分からんな…剣士!気球で少し外に出るがお前も行くか?」

剣士「行きたい…オアシスを見てみたい」

女海賊「そら来た!!気球準備してくる!!女エルフ!!手伝え!!」

196: 2020/09/15(火) 00:24:30.63 ID:s4Ww8Seh0
『気球』

ビョーーーウ バサバサ

女海賊「ほら!やっぱり光の魔方陣と一致してるっしょ?」

女戦士「やはり何かあるな…中心に遺跡が位置する…間違いなく何かを封印しているな」

女海賊「アサシンがもう一つの入り口を探していた理由だよきっと」

女戦士「こんな事が出来るのは…魔女くらいのものか」

女海賊「魔女の婆ちゃん何か隠してそうだね」

女戦士「いや…魔女だけではない…アサシンも何か隠しているぞ?」

女海賊「アサシンは核心的な事はなかなか教えてくんないんだよなぁ…」

女戦士「それはお前の口が軽いからだ…いう事も聞かんしな」

女海賊「ちゃんと言いつけ守ってんじゃん?」

女戦士「アダマンタイトの件はどう説明する?」

女海賊「むむ!…それはアレよ…てか私に魔術書を渡した魔女の婆ちゃんが悪い」

女エルフ「そういうのもお見通しだと思うの…魔女様が言っているのは気を付けなさいという事」

女海賊「そうだよソレそれ!!」

女エルフ「魔術書を全部読みなさいという事も謎を解くヒントだと思う」

女戦士「託されたという事か」

女海賊「謎ねぇ…なんだろ?」

女戦士「魔術書は全部読んだのか?」

女海賊「無理無理!!相当好きじゃないと読んでも理解不能」

女エルフ「私も内容が知りたい」

女海賊「ちょちょ…自分で読めよ!!まさか私に読ませる訳?」

女戦士「魔女とはそういう約束だったな?」

女エルフ「あなたが言ってた退魔の方法とかも教えてほしい」

女海賊「フフん!!ひざまずけ!!私はエルフに勝った…」ドヤ

女戦士「そろそろオアシスの外側だ…向こうの砂丘の上に降りろ」

女海賊「おっけ!」


フワフワ ドッスン

197: 2020/09/15(火) 00:25:00.17 ID:s4Ww8Seh0
『砂丘』

サラサラ サラサラ

剣士「…これが砂漠」

女エルフ「想像していた砂漠と違う?」

剣士「全然違う…僕が感じていた世界と今見ている世界が全然違う…」

女エルフ「どんな風に?」

剣士「言葉で言い表し難い…目を閉じるといつもの世界…目を開くと違う世界…このギャップに戸惑う」

女海賊「お~い!!実験やるぞぉぉ!!こっちぃぃぃ」

女エルフ「剣士?行こ?」グイ

女戦士「さて…見ものだな」

女海賊「行くよ?まず小さいアダマンタイトから…磁石を引っ付けて右に90°回す…」サー

剣士「うわ!!空が落ちる!!」

女戦士「…驚いたな」

女エルフ「ここは狭間の奥…スゴイ」

女海賊「ちょっと範囲を調べたい…アダマンタイト持ってて?ホイ」ポイ

女戦士「ん?どこに行く?…」

女海賊「お!?ここまで範囲があるかぁ…次は」タッタッタ

女戦士「範囲の外に出ると空が見えるのだな?」

女海賊「そだよ?魔女の塔と同じ…で次はアダマンタイトにもっかい磁石引っ付けて反対に回す…」サー

剣士「空が浮かんだ…」

女海賊「やっぱ私の理論で合ってた!!多分範囲はアダマンタイトの重さに比例する…あと時間の流れもかな」

女戦士「時間の流れもコントロール出来るのか?」

女海賊「ほら魔女の塔ってさ時間がゆっくり流れてたじゃん?」

女戦士「なるほど…」

女海賊「重たいアダマンタイトで狭間にしたらそこは時間の流れが遅いと思うんだ…つまり」

女戦士「高速で移動が可能になるな」

女海賊「お!?正解!!もし気球に重たいアダマンタイト乗せれたら一瞬で移動出来る筈」

女戦士「古代魔法には一瞬で行きたい場所に行く魔法があったそうだ…実在した訳か」

女海賊「小さいアダマンタイトでもちょっとは効果あると思うんだよね」

女戦士「まだ時間はたっぷりある…検証しろ」

女海賊「おっけ!!剣士と女エルフはさぁ…気球でゆっくりしてて良いから観察してて」

女エルフ「うん…狭間の外側から見てる」

198: 2020/09/15(火) 00:25:41.28 ID:s4Ww8Seh0
『気球』

サラサラ サラサラ

女エルフ「…どうして目を閉じているの?」

剣士「こっちの方が落ち着くんだ」

女エルフ「あなたが感じていた世界の事を教えて?」


僕が感じていた世界はもっと狭くて賑やかだった

風の音…砂の音…すぐ近くに感じる沢山の命

でも目を開けて見ると風は見えないし砂もほとんど動いていない

近くに感じていた命は見つけられない…全然違っていたんだ

僕が感じていたよりもずっと向こう側まで世界があったのは

それはまるで未来を見ている様に感じる

…なんていうか…夢を見ているみたいだ


女エルフ「夢?」

剣士「…でも現実なんだ…ずっと向こう側で起こっている事も現実だった」

女エルフ「人間達との戦いの事を言っているの?あなたの魔法はすごく遠くに届く」

剣士「夢の中でも同じように何かと戦っていた…良いのか悪いのか分からないまま」

女エルフ「夢を思い出したの?」

剣士「少しだけね…この砂漠も夢の中で見た…だから全部夢みたいなんだ」

女エルフ「オアシスを見たいと言っていたのは?」

剣士「夢を思い出すかもしれないと思ったんだ」

女エルフ「話が飛び飛びになっている…混乱しているのね?」

剣士「混乱しているのかな?ただ…遠くで起こっている事が現実だったように…」

女エルフ「…」

剣士「夢で起きている事も現実の様な気がする…僕には同じに感じる」

女エルフ「あなた…それが真実だと思う?それが真実を見る目?」

剣士「わからないよ…だから目を閉じて落ち着かせているんだ」



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199: 2020/09/15(火) 00:26:22.84 ID:s4Ww8Seh0
女エルフ「女海賊たちは何をしているのかな?消えたり…現れたり…」

剣士「ん?僕にはずっとあの辺でウロウロしている様に感じる」

女エルフ「え?あなた…目を閉じているから?」

剣士「もう帰って来るよ」


女海賊「お~い!!どんくらい時間経った?」タッタッタ

女エルフ「…まだそんなに待ってない」

女海賊「私らは半日くらい実験してたんだけど」

女エルフ「そんなに?」

女海賊「やっぱ思った通りだ!!お姉ぇ!!これヤバイ発見だ…世界が変わる」

女戦士「なるほどな…魔女が言うように手を出してはいけない物だと良く分かった」

女海賊「いーじゃんいーじゃん!?…で女エルフさぁ…私らどんな風に見えてた?」

女エルフ「消えたり…現れたり」

女海賊「おぉ!!エルフでも消えて見えるって事はやっぱ時間の流れが原因だ!!」

女エルフ「どうして?」


多分さぁ今の現実世界って一番時間の流れが早い場所だよ

狭間の奥は時間の流れが遅くてそのもっと奥は止まるくらい遅い

狭間の奥に入ると時間に置いて行かれて

現実世界からは見えなくなってしまう…つまり消える


女エルフ「それを使えば指輪を奪い返せる?」

女海賊「絶対イケる…自信ある!」

剣士「どうやって?」

女海賊「この一番小さいアダマンタイトなら自分だけ狭間に入れる…これ使えばいつでも姿を消せる」

女戦士「危険だが良い作戦だ」

女海賊「狭間に入っちゃうと自分も向こう側が見えなくなるけど…剣士なら多分行ける」

剣士「え?」

女海賊「あんたは目が見えなくても目が見えてるから…アレ?変な事言ったな…」

剣士「感じる事は出来ると?」

女海賊「ソレそれ!!あんたなら指輪奪って戻って来れる」

女エルフ「すごい…私ドワーフに負けを認める」

女海賊「…あのね…ドワーフって強調しないでくれる?イラっとするから」

女エルフ「ごめんなさい」

女戦士「まぁ先ずは剣士の体力回復が先だ…その後その作戦で行けるか?剣士…」

剣士「分かった…マザーエルフ…いや母さんが命を懸けて守ろうとした指輪…必ず取り返す」

女戦士「よし!良い気構えだ!!とりあえず帰ってバーベキューでもするか」

女海賊「おぉぉぉ良いねぇ!!帰ろ帰ろ」

200: 2020/09/15(火) 00:26:54.30 ID:s4Ww8Seh0
『星の観測所』

ジュー ジュー

女海賊「ほら!あんたも気取ってないで食えよ…山賊焼きってんだホイ」ポイ

女エルフ「私は…」

女海賊「生の川魚よりよっぽど旨いよ?」モグモグ

女戦士「人間はこうやって精を付けるんだ…一回食べてみたらどうだ?」

女エルフ「…」パク

女戦士「剣士はまだ横になっているのか?」

女海賊「呼んでこよっか?」

女戦士「いや…女エルフ?剣士にも肉を持って行ってやってくれ」

女海賊「おっとぉ!!剣士はさぁ…こういう骨付きの肉が好きなんだぁホイ」ポイ


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女エルフ「剣士?起きてる?食事持ってきた」

剣士「うん…ありがとう」モグ

女エルフ「体調はどう?」

剣士「大丈夫だよ…あのサボテンの根だっけ?あれ良いね」

女エルフ「フフ美味しくは無いけどね」

剣士「君は肉を食べてみた?」

女エルフ「少しだけね」

剣士「僕は焼いた肉がちょっと苦手かな…でも慣れないといけないと思って食べてる」

女エルフ「慣れる?」

剣士「人間のやり方を少しでも真似てみないと生きていけないよ…」

女エルフ「私も慣れないといけないのかな?」


僕は小さい頃にね…自分は母さんと同じウルフだって信じ込んでいたんだ

ある時森の中に迷った人間が来たことがあってね

その人は僕を抱き上げて連れて帰ろうとしたんだ

びっくりしたよ

まさかウルフを怖がらないで抱き上げるなんて思わなかった

その時母さんが教えてくれた

僕は人間と同じ姿をしているんだって

201: 2020/09/15(火) 00:27:21.16 ID:s4Ww8Seh0
剣士「一人で生きていくなら人間にならなきゃいけないって言ったんだ」

女エルフ「私はエルフの姿をしている…それでも人間の真似をしなければいけない?」

剣士「僕はその差が良く分からないんだ…目を閉じればエルフも人間もウルフも同じ」

女エルフ「私たちは見た目で差別や偏見を持つ?」

剣士「うーん…少し生き方が違うだけなのに…変だよね?」

女エルフ「生き方が少し違うだけで他人を否定してしまう…だから合わせなければいけない」

剣士「目を閉じればみんな同じなのにね」



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剣士「寝れないの?」

女エルフ「眠りたくないの」

剣士「どうして?」

女エルフ「嫌な夢を見てしまうから…」

剣士「どんな夢?」

女エルフ「言いたくない…でも気になる人がいつも出てくる」

剣士「気になる人?」

女エルフ「誰なのかは分からないけれど…その人に付いて行って最後に私は精霊樹になる」

剣士「精霊樹か…エルフらしい夢だね」

女エルフ「不思議な人…音や空気を使って私の心を触ろうとするの」

剣士「心を触る…」

202: 2020/09/15(火) 00:27:49.32 ID:s4Ww8Seh0
---遠い記憶---


??「わらわは祈りの指輪で命を繋いでおる」

??「わらわの命はすでにもう無い…命を吸えば灰になるじゃろう」

??「じゃがわらわはそなたと常に共にあることを忘れんで欲しいのじゃ…」

??「…わらわは常に傍におるぞよ」

---この人は常に愛を説き感じる事を求めてきた---

---ぼくの記憶を常に確かめようとした---

---どうしてぼくは感じようとしなかった?---

---この人は何かを伝えようとしていたのに---


剣士「魔女…」

女エルフ「え?」

剣士「赤い瞳の魔女…」

女エルフ「どうしたの?急に…魔女様の事?」

剣士「夢を思い出した…僕は赤い瞳の魔女に会わなければいけない…」

女エルフ「魔女様の目は白く濁っていた…」

剣士「赤い目の少女が居たって言ったよね?」

女エルフ「…シン・リーンの姫の事?」

剣士「その子は魔女だ…夢の中で何かを伝えようとしていた」

女エルフ「指輪を取り戻したら魔女様の所に帰りましょう…きっとその子の事も知っている筈」

203: 2020/09/15(火) 00:28:15.53 ID:s4Ww8Seh0
---翌朝---

剣士「おはよう」

女戦士「起きたな?今日は顔色が良さそうだな」

剣士「調子が良いよ…女エルフの血のおかげかな?体中に女エルフを感じるよ」

女海賊「朝から何工口い事言ってんだ?なめてんの?」

女エルフ「ごめんね?私の汚れた血で…」

剣士「え?」

女エルフ「血をあなたに入れている間に吐きそうになって居たから拒否しているのかと…」

剣士「ハハそんな事あったんだ?全然気にならないよ」

女エルフ「良かった」

剣士「小さい頃大きな怪我をしたことがあってね…その時に白狼の母さんの血を入れられた事がある」

女戦士「ほう…ウルフの血でも良いのか?」

剣士「その時と同じだよ…母さんみたいにあったかい」

女海賊「ぶっ…母さん?」

女戦士「さて!今日はどうする?もう少し休むか?」

剣士「僕はもう大丈夫!行こうか」

女海賊「そらキタ!!気球は準備おっけー荷物も積んであるよ」

女戦士「そうか…善は急げと言うが…」

女海賊「まさかお姉ぇは行かないつもり?ギルドの事はもう若い衆に任せておきなって」

女戦士「分かっている!今回の件は事が事だ…私も同行する」

女海賊「セントラルまでは5日くらいかなぁ~?アダマンタイトで狭間に入れば2~3日って感じ?」

女戦士「いきなり実践するのか?危険では無いか?」

女海賊「狭間の空って飛べるんかなぁ?」

女エルフ「鳥や虫たちは普通に狭間を飛んでいるよ?」

女海賊「お?そういえばミツバチも飛んでたかぁ…じゃ行けそう」

女戦士「一回試してみるか…」

女海賊「そらキタ!!早速行こう!!」

女戦士「よし…まず森に沿って南下してセントラル方面に飛ぶ…その間千里眼で目標を探す」

女海賊「おっけ!気球準備してくる!用意できたら乗って!すぐ出るよ」

204: 2020/09/15(火) 00:28:44.13 ID:s4Ww8Seh0
『気球』

ビョーーーウ バサバサ

女海賊「高度安定!進路よし!定常飛行!」

女戦士「おい!なぜ望遠鏡が分解されているのだ?」

女海賊「あー秘密兵器作ってる」

女戦士「私の望遠鏡を勝手に持ち出して分解をするな!」

女海賊「ちょっと待って!…この黒い布の上にレンズ置いて…剣士!?これに千里眼やってみて?」

剣士「え?誰の?」

女海賊「はぁ?誰のって…指輪持ってる奴探すんじゃないの?」

剣士「どこにいるか分からない人の目なんか見えないよ…」

女海賊「ちょいちょいちょい…それじゃ役に立たないじゃん!誰か知ってる人居ないの?」

剣士「知ってる人…知ってる人…女盗賊くらいしか居ない」

女海賊「セントラルか…まぁ誰でもいいや千里眼やってみて!」

剣士「ちょっと待って…匂いを思い出す」

女海賊「匂い?そんなんで良いの?」

剣士「千里眼!」

女海賊「…」

女戦士「何か見えるか?」

女海賊「アレ?おっかしいなぁ…魔術書にはさぁ…本来水晶に映して使うって書いてたんだけどさぁ」

女戦士「レンズは水晶では無いぞ?使い方を間違っているのではないか?」

女海賊「使い方…お!!ピーンと来たぞ…女エルフ!照明魔法やって!」

女エルフ「え!?照明魔法!」ピカー

女海賊「この光をレンズに通して…壁に映す!!どうよ?」

女戦士「む…何か見えるな…ピントをしっかり合わせろ」

女海賊「こうかな?」

女戦士「…走っている?いや…逃げているな…何だ?」

女海賊「え?なんか様子が変だ…!!振り返った…」

女エルフ「ドラゴン!?」

女戦士「レンズを動かすな!!こ…これは!!まさかもうドラゴンがセントラルに!?」

女海賊「まずいじゃん…どうしよどうしよ」

女戦士「アダマンタイトを使え!!」

女海賊「おっけ!…狭間に入るよ?」サー

女戦士「千里眼の動きが遅くなった…成功の様だな?」

女海賊「でもさぁ周り真っ黒で方向分かんなくなる…風に流されていないか心配」

女戦士「磁石は使えんのか?」

女海賊「ダメ…試してみたら磁石がクルクル回る」

剣士「大丈夫!この方向で合ってる」

女海賊「あんた方向分かんの?」

剣士「千里眼の感じる方向が分かる」

女海賊「じゃ気球の操作はあんたがやって?縦帆の動かし方は分かるでしょ?」

剣士「分かった」


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205: 2020/09/15(火) 00:29:10.62 ID:s4Ww8Seh0
女戦士「今の所ドラゴンは1匹の様だ」

女海賊「衛兵達は何と戦ってる?…これってリザードマンじゃない?」

女戦士「その様だが…他人の目では思うように見たい所が見えんな」

女海賊「あ!怪我人が運ばれてきた…」

女戦士「この場所は何処だ?」

女海賊「貧民街にあるカク・レガという酒場だよ」

女戦士「戦火に巻き込まれなければ良いが…」

剣士「気球の後方に何か付いてきてる!」

女戦士「なにぃ!?」

女エルフ「妖精が言ってた言葉…狭間の奥はレイスが出るって」

女海賊「速さは?」

剣士「気球と同じくらい」

女戦士「まずいな…後ろに2~3体追いかけて来ている…狭間から出るか」

女海賊「ちょい待ち!レイスは光に弱いって魔術書に書いてあった」

女戦士「光?照明魔法か?」

女海賊「女エルフ!?あんた照明魔法使えるよね?矢にくっつけて光の矢に出来ない?」

女エルフ「やってみる…照明魔法!」ピカー

剣士「右前方!!黒いのが近づいて来るよ!!」

女海賊「うわ…でか!!女エルフ!!打ち落としてみて!!…やばかったら狭間から出る!!」

女エルフ「…」ギリリ ブン!


レイス「ンギャーーーー」


女エルフ「落ちて行った…」

女戦士「行ける!!剣士!!光の矢をどんどん作れ…矢は腐る程ある」

剣士「分かった」

女戦士「私も弓で戦う…ちょうど体を慣らしたかった所だ」

女海賊「やばいよやばいよ!!どんどん増えてるよ!!」

女戦士「私は気球の右側をやる…女エルフは左側をやれ」

女エルフ「…」ギリリ ブン!

女戦士「…」ギリリ シュン!


レイス「ンギャァァァーーーーー」



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206: 2020/09/15(火) 00:29:40.53 ID:s4Ww8Seh0
女戦士「はぁはぁ…弓で応戦もなかなかラクでは無いな」ギリリ シュン!

女海賊「ちょっと待って!!魔術書で退魔の方法を調べてるから…えっと」

女エルフ「どうして数が減らないの?キリが無い」ギリリ ブン!

女海賊「お姉ぇ!!印って何か分かる?印を結ぶってのが何の事なのか分かんない!」

女戦士「印…なんだ?形とかでは無いのか?」

女海賊「形?これか?古代文字を手の形で表すやつ…剣士!?この手の形出来る?」

剣士「見せて?」

女海賊「この4つの印を呪文を唱えながら結ぶ…分かる?」

剣士「こう?」クイ クイ クイ

女海賊「それを魔方陣の上で4つの印を結ぶ」

剣士「退魔魔法!」

女海賊「一緒にやるの!」

剣士「退魔魔法!」クイ クイ クイ ピカー

女海賊「お?あんたの魔方陣のペンダントがうっすら光ってる…」

剣士「…これをどうする?」

女エルフ「ねぇ…レイスが止まった…近寄って来ない」

女戦士「こっちもだ」

女海賊「剣士に近寄れない?…いや魔方陣の光に近寄れない感じ?」

女エルフ「ふぅ…」

女戦士「何とかなったな」

女海賊「剣士!あんた何でも出来るね!スゴイじゃん」

女戦士「狭間に長く居るならこの退魔魔法は必須になるな」

女海賊「そだね…魔女の塔もこれの応用だと思う」

女エルフ「剣士?私にも後で教えて?」

剣士「うん」



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207: 2020/09/15(火) 00:30:10.58 ID:s4Ww8Seh0
女海賊「レイスずっと追いかけてくるね…キモ!」

女戦士「気が抜けんな…狭間の深さはコントロール出来んのか?」

女海賊「無理!!アダマンタイトの重さに依存する」

女戦士「気球は高度を上げれば速度が増すな?振り切れんか?」

女海賊「んんん…寒いよ?…この荷室の木壁の隙間がなんとかなればなぁ…」

女エルフ「エレメンタル魔法の中に空気を操る風魔法があるの」

女海賊「ん?なんか良いアイデアあんの?」

女エルフ「その魔法は空気の薄い空間を作って風を起こす魔法」

女海賊「お!?それさぁ…球皮の前にやったら速くなるかも」

女エルフ「触媒は水と銀…でもうまく使わないと竜巻が起きる」

女海賊「竜巻はヤバイ…球皮の抵抗になってる空気がちょっと薄くなるだけで大分違うと思うんだけどなぁ」

剣士「やってみようか?」

女海賊「銀貨はちょっと持ってる…ホイ」チャリン

女戦士「やってみるのは良いが気球を落とすな?」

女海賊「球皮の先端に付いてる棒を狙って」

剣士「行くよ?…風魔法!」ヒュー

女海賊「お!?んーーーー早くなってるかどうか分かんないね」

女エルフ「後ろのレイスが少しづつ離れて行く」

女戦士「よし…これで少し休めるな…ふぅ」



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208: 2020/09/15(火) 00:30:40.14 ID:s4Ww8Seh0
女海賊「エルフのエレメンタル魔法ってさぁ…工夫次第で何でも出来るんじゃない?」

女エルフ「風魔法で竜巻を起こした後に火炎魔法で火柱」

女海賊「それハイエルフが使ってたやつだね」

女エルフ「火柱に氷結魔法で爆発…全部応用が利くの」

女海賊「魔術書読むより面白そうじゃん!!」

女エルフ「触媒さえ十分持っていればね」

女海賊「あー触媒が入手しにくい物だと困るな…そもそも硫黄なんか簡単に手に入んないな」

女戦士「さっきの風魔法はどのくらい持続するのだ?」

女エルフ「触媒の量次第…」

女海賊「銀貨1枚がどんくらいの量になるのか分かんないね」

女エルフ「普通は銀砂を使う」

女海賊「塗料に使うやつ?それなら重さ的にかなり持ちそうだね?」

女エルフ「それよりも剣士の体力の方が…」

女海賊「え?体力使うの?…なるる!それで無口になんだね?」

剣士「僕は大丈夫だよ」

女戦士「レイスは振り切った様だ…疲れているなら休んでいて良い」

女海賊「これさぁ…狭間の中だと空が真っ黒で全然面白くないね…何もやる事無い」

女戦士「千里眼でも見ていろ」

女海賊「動きが遅くて見ててイライラすんのよ…てかすぐ飽きる」

女戦士「では魔術書でも読み進めておけ」

女海賊「そうする…重力魔法がちょースゴイんだ!時空の穴作って隕石呼べるっぽい」

女戦士「ほう…シャ・バクダに落ちた隕石群はそれだな?」

女海賊「あのオアシスで出来た魔方陣ってさぁ…ひょっとして魔女がやったのかな?」

女戦士「魔女は何も言わないが…その可能性はある」


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209: 2020/09/15(火) 00:31:07.51 ID:s4Ww8Seh0
女戦士「む!女盗賊の所に何か起きているぞ…」

女海賊「マジ?」

女戦士「子供達を避難させているな…この家は地下に何かあるのか?」

剣士「家の地下は下水に繋がっている」

女戦士「ふむ…地下の方に何か居る様だが」

女海賊「あ!!ラットマン見えた!!」

剣士「え!?鉄格子から抜け出ているのか…」

女海賊「あー私が爆破した所か…てことはそこらじゅうにラットマン出て来てるかもね」

女戦士「空からドラゴン…地上からリザードマン…内側からラットマン」

女海賊「なんかヤバイね…海からクラーケンとか出てきたりして」

女戦士「西の軍国フィン・イッシュから軍船が来ているのが救いだ…簡単には攻略されんだろう」

女海賊「セントラルは大混乱かな?」

女戦士「この程度ではまだまだ大丈夫だが攻め込まれると被害は免れん」

女海賊「あ!!やば…家の外にもラットマン居る!!逃げろ逃げろ…」

女戦士「防戦している者が少ない!!武器所持の規制が裏目に出ているでは無いか!!」

女海賊「衛兵何やってんのさ!!…貧民街にも衛兵増やせよ!!」

女戦士「ええい!見ているだけがこれほどもどかしいか…」

女海賊「あれ?千里眼が終わった?」

剣士「え?」

女海賊「剣士!?もう一回千里眼お願い…」

剣士「うん…千里眼!」

女海賊「映らなくなった…なんで?」

剣士「女盗賊…」

女戦士「最後に転倒しそうになったが…何かに当たって気を失ったか…ちぃ」

女海賊「まずいじゃん…女盗賊やられちゃうじゃん!」

女戦士「…一旦狭間を出ろ…現在地を確認する」

女海賊「お姉ぇ…平気なの?動揺しないの?」

女戦士「黙って言う事を聞け…ネガティブな考えはするな…どうやって問題を解決するかに集中しろ」

女海賊「くあぁぁぁ見なきゃ良かった!!ちょーイライラする!!」



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210: 2020/09/15(火) 00:31:33.58 ID:s4Ww8Seh0
女戦士「森の形で現在地判別出来るか?」

女海賊「ムリ!!どこも同じ形で分かんない…でも下に商隊の列が見える」

女戦士「特産品を運んでいる馬車は見えないか?」

女海賊「わかんない…どんな馬車?」

女戦士「望遠鏡を貸せ…ふむラクダが馬車を引いているな?ハズレ町からシケタ町の定期便だ」

女海賊「…って事は半分よりちょい先に進んでる感じかな?」

女戦士「ここまで丁度2日程度だ…あと1日でセントラルに着く計算になる」

女海賊「おぉぉメチャ早いね!風魔法は効果あり!!」

女戦士「私たちにはあと1日だがセントラルではあと何時間か…大惨事になって居なければ良いが…」

女海賊「女盗賊の事が心配…」

女戦士「考えるな…指輪が森の南部にあったとしてセントラルまで約3日…」

女エルフ「丁度私たちが到着するのと合ってる?」

女戦士「上手く行けばな…速攻で奪って一旦収束させたいが目標が見つけられん事には…」

女海賊「ドラゴンライダーが追い回してるっしょ」

女エルフ「ドラゴンの目は遠くまで見えるの…多分見失っていない」

剣士「それか!!ドラゴンの匂いを覚えている」

女海賊「お!?イイね!!」

剣士「何処にいるか分からないけれど探してみる!」

女戦士「やってみてくれ」

女海賊「私たちはもっかい狭間に戻ろう」

女戦士「そうだな…セントラルまで急ごう」



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211: 2020/09/15(火) 00:32:03.12 ID:s4Ww8Seh0
剣士「見つけた!!森の方じゃない…セントラルの上だ」

女海賊「こっちのレンズに映して!」

剣士「千里眼!」

女戦士「…見える!空を旋回しているのか?」

女海賊「ちょ…なんかめっちゃ見辛いんだけど!何コレ?」

女戦士「ドラゴンは左右の目が違う所を見ているのだな」

女海賊「酔う…うっぷ」

女戦士「軍船が大砲を撃っているでは無いか…まさかクラーケンが上陸しているのか?」

女海賊「お姉ぇ!こっち側…外郭の外」

女戦士「リザードマンか…外郭を登ろうとしているな?大砲が壁に当たったらどうするつもりなのだ?」

女海賊「壁に穴空いたらなだれ込んでくるね」

女戦士「セントラルは戦術が無いのか!弓兵で迎え撃て!!」

女海賊「無理じゃない?ドラゴンが上に居るし」

女戦士「読めたぞ…ドラゴンはセントラルを攻める気など無い!リザードマンとラットマンが暴走しているのだ」

女エルフ「私もそう思う…ドラゴンはただ指輪を奪い返そうとしているだけ」

女海賊「だから旋回してるだけなのか…でもセントラル側からするとドラゴン居ると怖いよね?」

女戦士「…これは大砲を止めさせないと直に誤爆で壁を破壊してしまうぞ」

女海賊「他にドラゴンは居なさそうだね…このドラゴンは多分偵察」

女戦士「その様だな」

女海賊「これさぁ…ちょっと気が付いたんだけどドラゴンって正面見えてないよね?」

女戦士「うむ」

女海賊「あと真下も見えてないね…正面からお腹の下に爆弾投げたら倒せそう」

女戦士「お前は何を考えているんだ?ドラゴンスレイヤーにでもなるのか?」



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212: 2020/09/15(火) 00:32:35.27 ID:s4Ww8Seh0
女海賊「お姉ぇ…少しは休んだら?」

女戦士「私に構うな…大惨事を前にして休んでなど居れるものか!」

女海賊「ドラゴンの目は暗くても良く見えるね」

女戦士「今からが魔物側の本番なのだが…やはり数が違い過ぎる…セントラルまで逃げられるな」

女海賊「森から出た後はドラゴンも全然ダメっぽいね」

女戦士「弓が多すぎて近寄れんのだな…森の方がまだ良い」

女海賊「そろそろ狭間から出てみよっか?」

女戦士「そうだな…難民の具合も気になるしな」

女海賊「じゃ出るよー」サー

剣士「月が明るい!」

女戦士「現在地を特定する…高度下げろ」

女海賊「おっけ!進行方向に灯台の光はまだ見えないからもうちょい先かな?」

女エルフ「下に光の列が見える」

女戦士「ん?商隊か?夜行しているのなら避難民が疎開しているのかもしれんな」

女海賊「あーー進路少しズレてる!セントラルはここから東の方向だ」

女戦士「…という事はドラゴン達はセントラルを挟んで向こう側だな?」

女海賊「危なく通り過ぎる所だったぽい」

剣士「東の方に小さな光が消えたり光ったり…」

女海賊「それ多分セントラル海岸沿いの灯台…何番目の灯台かなぁ結構風に流されてるっぽいぞ」

女戦士「難民が歩いて来れる距離だ…そう遠くはあるまい?」

女海賊「そだね…1~2時間で到着するかな?」

女エルフ「みて!?千里眼のドラゴンの目」

女戦士「むぅ!目標はあの隊の中心に居るのだな?」

女海賊「うわぁ…矢をすり抜けて…うっぷ目が回るぅ」

女戦士「数千の矢を掻い潜ってドラゴンライダーが狙っているのは…アレか!!」

剣士「見つけた!!黒い馬車?」

女戦士「あれは陸戦用の戦車という物だ…おそらくアレに第2皇子が乗っている」

女海賊「あれさぁ!!鉄で出来てるよね?ドラゴンじゃ無理じゃん」

女戦士「歩兵で制圧しないとあの戦車は落とせんな…間違いなくセントラルまで逃げる」

女海賊「どうする?」

女戦士「よし…第2皇子の行先は多分法王の所だ…法王庁で待ち伏せる」

女海賊「法王庁か…なら下水から安全に侵入出来るよ」

女戦士「問題は気球をどこに隠すかだな」

剣士「下水は海の方から入れる筈」

女海賊「あーーーアサシンの船に荷物運んだ所か…そこなら人目に付かなくて良いね」

女戦士「決まりだな?海辺に気球を隠して下水から法王庁を目指す…そして待ち伏せ」

女海賊「女盗賊はどうする?探さないの?」

女戦士「それは後だ…指輪を奪い返せば戦闘も落ち着く」



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213: 2020/09/15(火) 00:33:07.51 ID:s4Ww8Seh0
女戦士「アリの子を散らしたように避難民がセントラルから出ているな」

女海賊「お姉ぇ…これマジやばい!港で軍船が沢山沈みかけてる」

女戦士「クラーケンか…地獄だな」

女海賊「セントラルの外壁も崩れてる」

女エルフ「あそこ!!クラーケンが上陸してる…」

女海賊「海岸に降りちゃうよ?」

女戦士「降りろ…作戦は予定通りだ」

剣士「これが…セントラル」

女戦士「お前は初めて見るのだな?良い眺めでは無いな…まさに地獄」

女海賊「もうドラゴンも見えてるよ」

女戦士「ちぃ…急ぐぞ!!女エルフは矢を多めに持て」

女エルフ「はい…」

女戦士「私が盾で向かってくる敵を抑える!女エルフは弓で敵を射抜け!剣士は下水を先導しろ」

女海賊「降りるよ~」


フワフワ ドッスン


女海賊「そこの横穴が下水に繋がってる」

女戦士「行くぞ!!当面はラットマンとリザードマンが敵だ」

214: 2020/09/15(火) 00:33:41.36 ID:s4Ww8Seh0
『下水』

ラットマン「ギャーース」ドドド

女戦士「はあっ!!撃て!!」ガチッ

女エルフ「…」ギリリ ブン

ラットマン「ギャーース」ドタリ


女戦士「狭い場所では私の盾が有効だ…進むぞ!!」

女エルフ「狭間が近い…彷徨う魂が見える」

女海賊「ここの奥が法王庁の真下になってるらしいよ?」

女戦士「人骨が散乱している理由はお前は知っているのか?」

女海賊「アサシンが言うにはカタコンベになってるってさ…そういえば剣士は大丈夫?」

剣士「今は大丈夫…多分退魔の効果だと思う」

女海賊「前に来た時は剣士が悪霊に憑りつかれそうになってた」

女戦士「カタコンベか…見たくない物だな」

女海賊「女エルフも気を付けな?ヤバイくらい氏体が散乱してるから」

女戦士「ラットマンはその氏肉を餌にしている訳だな?」

女海賊「だろうね?」

女戦士「さて…まず目指すは法王庁…こっちで良いんだな?」

女海賊「お姉ぇはどういうつもり?」

女戦士「こんな穴倉に居ては状況が掴めん…一旦法王庁に出て隠れて様子を伺う」

女海賊「こっちだよ…この柵の奥が法王庁」

剣士「待って!!奥に沢山の人の気配」

女戦士「数は!?」

剣士「数え切れない…こっちに向かってくる」

女戦士「隠れるぞ!こっちへ来い」



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215: 2020/09/15(火) 00:34:08.17 ID:s4Ww8Seh0
ガチャリ ギー

兵長「よし!このまま海側へ出て船団と合流だ」

衛兵「指揮はあちらに従う形をお考えですか?」

兵長「仕方あるまい…こちらは指示系統が外に出ておる」

衛兵「はぁ…しかしフィン・イッシュの軍を許可なく城まで招き入れて良いとは…とても…」

兵長「我ら衛兵団の役目は市民を守る事だ…今は政治云々言っている余裕が無い」

衛兵「兵長殿に責任が…」

兵長「ハハその程度で済むなら安い安い!所詮わしは安月給の下士官…居なくなってもどうという事は無い」

衛兵「船団側とコンタクトは取れているのでしょうか?」

兵長「伝令が途中で氏んで居なければそろそろ上陸してくる手筈…」

兵長「こちらは海側から魔物を退治しながら貧民街を制圧しつつ上陸ルートを確保する」

衛兵「外に出ている本隊は間に合いますかね?」

兵長「んむ…わからん」

衛兵「…」

兵長「全体!!急いで海側へ抜けろ!!」




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216: 2020/09/15(火) 00:34:37.52 ID:s4Ww8Seh0
女戦士「よし…行ったな?」

女海賊「お姉ぇ今の話」

女戦士「そうだな…察する所…思っていたより事態は悪くない」

女戦士「恐らくセントラル自体は内側から湧いて来るラットマンと少数のリザードマンに混乱しているだけだ」

女海賊「中立都市で武器所持禁止してるのがねぇ」

女戦士「外側でドラゴンとクラーケンが暴れているのがなお更な」

女海賊「このまま法王庁まで行く?」

女戦士「そうだな…屋根に上がって指輪の所持者が戻るまで見物と行くか」

女海賊「女盗賊が心配だなぁ」

女戦士「剣士!千里眼で見えないか?」

剣士「やってる…見えない」

女戦士「この場合気絶してるとしか考えられんな」

女海賊「あぁぁイライラする」

女戦士「まぁ仕方がない…行くぞ」

217: 2020/09/15(火) 00:35:07.13 ID:s4Ww8Seh0
『屋根の上』


女戦士「…夜明けだ」

女海賊「船団から小さな船で港に兵隊が沢山上陸してきてるよ」

女戦士「ひとまず人間側の勝利という所か…日が上がってしまってはトロールが動けん」

女海賊「クラーケンは陸に上がっても海からあんまり離れられないっぽい」

女戦士「剣士!黒い戦車の方はどうなっている?」

剣士「ドラゴンの視界の中にずっとあるよ」

女戦士「あそこの下だな?あと数時間でこちらにに到着する距離だな」

女海賊「…なんか静かだね」

女戦士「魔物側はあの様な平地では攻め手が無いのだ…数が違い過ぎる」

女海賊「ウチ達が指輪盗んだらコレ終わると思う?」

女戦士「…指輪が魔物か人間のどちらかに渡ったとなればまだまだ続くだろうな」

女エルフ「私たちが行方不明にさせる?」

女戦士「それが一番良いだろう…ただし第三者が持ち去ったという事をどうやって知らしめるかだ」

女海賊「何か考えある?」

女戦士「無い…今は剣士が奪って逃げるくらいしか思いつかない」

女海賊「ピーンと来た!!!」

女戦士「何だ?言ってみろ」

女海賊「白狼の盗賊団」

女戦士「セントラルでのお前達の事だな?」

女海賊「ここでは割と有名なんだ…あとエルフの森でも白い魔物の暗躍は敗残兵の中で有名になってる」

女戦士「それでは魔物の手に渡ったという事になるでは無いか」

女海賊「ちょい待ち…この街では義賊って感じでヒーローだよ」

女戦士「ふむ…」

女エルフ「エルフ側から見ても白い剣士はエルフの敵には見えていない」

女戦士「なるほど謎の第三勢力に偽装出来る可能性がある訳だな」

女海賊「そして今丁度4人居る…背格好もほぼ同じ」

女戦士「面白い…それで行こう」

女海賊「たしか隠れ家の地下に毛皮のマントはまだあった筈…下水から行ける」

女戦士「30分で戻れるか?」

女海賊「十分!!剣士!?一緒に来て」

剣士「分かった」

タッタッタ



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218: 2020/09/15(火) 00:35:38.00 ID:s4Ww8Seh0
女エルフ「別行動にして良かったのかな?」

女戦士「危険は承知…だが剣士は鼻が利く…隠密には適している」

女エルフ「剣士は…」

女戦士「お前も気付いているのだろう?キーマンは剣士だと」

女エルフ「はい…剣士を守らないといけない気がする」

女戦士「やはりあいつが勇者か?」

女エルフ「分からない」

女戦士「我らドワーフの一族に伝わる教え…それは勇者の保護だ…気付かぬ内にそうなって居るのかも知れん」

女エルフ「私たちエルフは森を守るのが役目…私はどうしてこんな…」

女戦士「ハハ実を言うとな…私はお前にも何かを感じているのだ」

女エルフ「え!?」

女戦士「まぁ…只の勘だよ…気にするな」

女エルフ「…」


---私は誰?---

---私は何?---

---私は最後に精霊樹になった---

---そんな夢を覚えている---

219: 2020/09/15(火) 00:36:06.33 ID:s4Ww8Seh0
『セントラル外れ』


ラットマン「ギャーース」

衛兵1「こっちだ!!まだ居たぞ」

衛兵2「こいつで最後か?」

衛兵1「分からん…こいつは俺がやる!!お前は後方に戻って衛生兵の支援を要請してくれ」

衛兵2「まだ瓦礫の下に人が…」

ラットマン「ギャーース」ダダダ

衛兵1「こっちだ!!ごるぁ!!」タッ ザクリ

ラットマン「グググググ…」

衛兵1「この!!このっ!!このーーー!!」ザク ザク ザク

衛兵2「よし…やったな?瓦礫に埋もれている人を!!」

衛兵1「こっちは俺に任せろ!!早く応援の要請を…火災が回ると助けられなくなる」

衛兵2「わ、わかった…待ってろ」

衛兵1「誰かぁぁぁ!!動ける者は居ないかぁぁぁ!!…そこの少年!!何をしている?動けないのか?」

少年「ハァハァ…」

衛兵1「…ここにも埋もれている人が居るのか」

少年「母さんを…助けないとハァハァ」

衛兵1「くそぅ!!船団の奴ら所構わず大砲ぶっぱなしやがって…」

少年「母さん!!母さん!!」

母「あうう…他の子ども達は無事?」

少年「先に避難したよ」

母「そう…良かった…あなたも避難しなさい?」

衛兵1「意識があるんだな?よし…もうじき衛生兵が来るからそれまで辛抱してくれ」

少年「母さん体の方は無事?」

母「瓦礫が重たくて動かせないの…息をするのがやっと」

衛兵1「む!!誰か居る!!おーいそこの人ぉぉ!!」

少年「…」

衛兵1「ちぃ…こんな時に略奪に回ってる輩だなアレは…アテに出来ん」

少年「海の方から衛兵達がこっちに向かってきてる…母さん!!助かるよ」

衛兵1「おぉぉ来たか…少年!君はまだ動けるな?あっちの衛兵に合図を送ってくれ」

少年「おーーい!!こっちー」

衛兵1「今から瓦礫どかすから体に障る様だったら声を出してくれ…ふん!!」ガッサー

220: 2020/09/15(火) 00:36:35.37 ID:s4Ww8Seh0
『帆船』

ザブン ザブーン

盗賊「こんなんじゃ入船出来んぞ…どうするアサシン」

アサシン「何か起ころうとしているな…手を拱いて見ている訳にいくまい」

盗賊「クラーケンがうじゃうじゃ出て来てる中を突っ切ろうってのか?」

アサシン「他に何か良い考えはあるか?」

盗賊「東に半日ほど行った先に小さな漁村がある…そこに停船させてだな…」

アサシン「それでは遅い…事は今起ころうとしているのだ」

盗賊「くぁぁぁ氏にに行くようなもんだぜ…ったく」

アサシン「クラーケンは理由無しに船を襲う事は無いのだ」

盗賊「俺らを襲う理由が無いってか?ミスリル武器たんまり積んでんだろ…その割に戦えるのは俺ら2人だけだ」

アサシン「ミスリル武器がダメならとっくの昔に襲われていておかしくない」

盗賊「…そういやそうだな」

アサシン「むしろ守られていると考えて良いかもしれんぞ」

盗賊「マジかよ…」

アサシン「さて…あの動乱…魔王復活の前兆と見て良いと思うが…お前はどう思う?」

盗賊「お前のおとぎ話にゃ付き合ってらんねぇよ」

アサシン「今ミスリルを持って私たちがそこに行こうとしている…役者が揃ってきているとは思わんか?」

盗賊「役者?」

アサシン「そう」

盗賊「誰だよ…ミスリル武器なんか誰でも使えるだろ…まさかお前が勇者にでも?」

アサシン「可能性はある」

盗賊「またまた…どーーーーもお前の話にゃ決定打が無い…」

アサシン「もしも魔王が復活してしまうというのであれば勇者もまたどこかに居る筈」

盗賊「本当…お前は頭が逝っちゃってるよ…女盗賊の言った通りだわ…夢見る男児」

アサシン「まぁ馬鹿にするな…直に誰が勇者なのか分かる」

盗賊「夢?…まてよ…俺は夢で勇者に会ったことがあるな…」

アサシン「お前も夢を見るのか?」

盗賊「でかい大剣を背中に…誰だ?」

アサシン「なっ!!なぜそれを知っている!!」

盗賊「うぉ!!なんだよいきなり」

アサシン「シャ・バクダの遺跡に残されていたのは大剣を持った大きな戦士像…それがかつての勇者だと魔女に教わった」

盗賊「俺が言ってるのは俺が見た只の夢だ…偶然だろ」

アサシン「私も同じ夢を見ているのだ…偶然にしてはおかしくないか?やはり私たちは皆夢幻を見ている」

盗賊「夢幻が何だってんだ」

アサシン「夢幻が精霊が見ている夢だったとするなら何故みんな同じ夢を見る?」

盗賊「何言ってるかさっぱりわかんねぇよ」

アサシン「精霊は夢を見せて私たちに何か伝えようとしているのではないか?」

盗賊「あぁぁあ始まった…その話は後で良い!桟橋まで直進するぞ…良いんだな?」

アサシン「あぁ…頼む」

221: 2020/09/15(火) 00:37:08.93 ID:s4Ww8Seh0
『桟橋』


ガコン ギシギシ

盗賊「よっし接弦!!碇降ろせえぇぇぇ!!」

船員「えっさほいさ」

盗賊「野郎共!!武器もって下船しろ!!許可取ってる場合じゃねぇからそのまま中央まで走れ!!」

船員「あいさー」

盗賊「アサシン!!衛兵が来るぞ…どうする」

アサシン「この惨事の中私たちをどうするという事もあるまい」

盗賊「…だな…にしてもどうなってんだこりゃ…陸でのたうち回ってんのはクラーケンか?」

アサシン「魔物の襲撃が市内まで及んでいる様だ…ラットマンとリザードマン」

盗賊「おい!上を見ろ…ドラゴンまで来てんぞ」

アサシン「全体の状況が見えないな…私たちも一旦中央まで行こう」

盗賊「俺たちの店が心配だぜ…火の手が上がってるじゃねぇか」

アサシン「これを持って行け」ポイ ポイ

盗賊「ミスリル武器の試し切りか」パス

アサシン「無くすなよ?」

盗賊「おい!来たぞ」

衛兵「おい!!お前等!!武器を持っているな?」

アサシン「この状況で武器の所持は許可願いたい」

衛兵「今は人手が足りん!!戦える者は魔物退治の要請をする」

盗賊「何に攻め入られてるんだ?」

衛兵「外郭の一部からリザードマンとゴブリンが入ってきているのだ…そちらに行ってもらえると助かる」

アサシン「内郭はどうなっている?」

衛兵「市民がそこに避難している。内郭壁の上には弓部隊が展開していてまだ無事だ」

盗賊「あんたペラペラそんな事しゃべって良いのか?」

衛兵「もうそんな事言ってる状況ではない…はやく応援に行ってくれぇ」

アサシン「よし!行こう!このまま貧民街を突っ切って一旦中央に出る」

盗賊「おい!ついでに店の前を通って行こう」

アサシン「そのつもりだ…行くぞ」タッタッタ

222: 2020/09/15(火) 00:37:37.78 ID:s4Ww8Seh0
『桟橋』


ガコン ギシギシ

盗賊「よっし接弦!!碇降ろせえぇぇぇ!!」

船員「えっさほいさ」

盗賊「野郎共!!武器もって下船しろ!!許可取ってる場合じゃねぇからそのまま中央まで走れ!!」

船員「あいさー」

盗賊「アサシン!!衛兵が来るぞ…どうする」

アサシン「この惨事の中私たちをどうするという事もあるまい」

盗賊「…だな…にしてもどうなってんだこりゃ…陸でのたうち回ってんのはクラーケンか?」

アサシン「魔物の襲撃が市内まで及んでいる様だ…ラットマンとリザードマン」

盗賊「おい!上を見ろ…ドラゴンまで来てんぞ」

アサシン「全体の状況が見えないな…私たちも一旦中央まで行こう」

盗賊「俺たちの店が心配だぜ…火の手が上がってるじゃねぇか」

アサシン「これを持って行け」ポイ ポイ

盗賊「ミスリル武器の試し切りか」パス

アサシン「無くすなよ?」

盗賊「おい!来たぞ」

衛兵「おい!!お前等!!武器を持っているな?」

アサシン「この状況で武器の所持は許可願いたい」

衛兵「今は人手が足りん!!戦える者は魔物退治の要請をする」

盗賊「何に攻め入られてるんだ?」

衛兵「外郭の一部からリザードマンとゴブリンが入ってきているのだ…そちらに行ってもらえると助かる」

アサシン「内郭はどうなっている?」

衛兵「市民がそこに避難している。内郭壁の上には弓部隊が展開していてまだ無事だ」

盗賊「あんたペラペラそんな事しゃべって良いのか?」

衛兵「もうそんな事言ってる状況ではない…はやく応援に行ってくれぇ」

アサシン「よし!行こう!このまま貧民街を突っ切って一旦中央に出る」

盗賊「おい!ついでに店の前を通って行こう」

アサシン「そのつもりだ…行くぞ」タッタッタ

223: 2020/09/15(火) 00:38:10.34 ID:s4Ww8Seh0
『桟橋』


ガコン ギシギシ

盗賊「よっし接弦!!碇降ろせえぇぇぇ!!」

船員「えっさほいさ」

盗賊「野郎共!!武器もって下船しろ!!許可取ってる場合じゃねぇからそのまま中央まで走れ!!」

船員「あいさー」

盗賊「アサシン!!衛兵が来るぞ…どうする」

アサシン「この惨事の中私たちをどうするという事もあるまい」

盗賊「…だな…にしてもどうなってんだこりゃ…陸でのたうち回ってんのはクラーケンか?」

アサシン「魔物の襲撃が市内まで及んでいる様だ…ラットマンとリザードマン」

盗賊「おい!上を見ろ…ドラゴンまで来てんぞ」

アサシン「全体の状況が見えないな…私たちも一旦中央まで行こう」

盗賊「俺たちの店が心配だぜ…火の手が上がってるじゃねぇか」

アサシン「これを持って行け」ポイ ポイ

盗賊「ミスリル武器の試し切りか」パス

アサシン「無くすなよ?」

盗賊「おい!来たぞ」

衛兵「おい!!お前等!!武器を持っているな?」

アサシン「この状況で武器の所持は許可願いたい」

衛兵「今は人手が足りん!!戦える者は魔物退治の要請をする」

盗賊「何に攻め入られてるんだ?」

衛兵「外郭の一部からリザードマンとゴブリンが入ってきているのだ…そちらに行ってもらえると助かる」

アサシン「内郭はどうなっている?」

衛兵「市民がそこに避難している。内郭壁の上には弓部隊が展開していてまだ無事だ」

盗賊「あんたペラペラそんな事しゃべって良いのか?」

衛兵「もうそんな事言ってる状況ではない…はやく応援に行ってくれぇ」

アサシン「よし!行こう!このまま貧民街を突っ切って一旦中央に出る」

盗賊「おい!ついでに店の前を通って行こう」

アサシン「そのつもりだ…行くぞ」タッタッタ

224: 2020/09/15(火) 00:39:03.30 ID:s4Ww8Seh0
『貧民街』


盗賊「こりゃ芳しくねぇな…瓦礫の山じゃねぇか」

アサシン「位置的に軍船がクラーケンに撃った砲弾がここに着弾した」

盗賊「その様だ…避難は済んでるみたいだな」

アサシン「ラットマンの屍が多い…下水から出てきたか」

盗賊「…となると下水は使えないと見るか」

アサシン「高い所で全体が見たい」

盗賊「貴族居住区だな」

アサシン「いつもの屋根伝いルートで行こう」

盗賊「ちぃ…隠密用の道具を置いて来ちまった」

アサシン「何に使う?」

盗賊「どうせ最後の行先は法王庁だろうよ…貴族居住区から行くとなると壁を登る必要がある」

アサシン「私を誰だと思っているのだ?」

盗賊「ヌハハ…そうだな正面から行くか」

アサシン「まずは状況把握だ…その後に行きたい先の兵士になれば良い」


225: 2020/09/15(火) 00:39:34.35 ID:s4Ww8Seh0
『中央広場』


ガヤガヤ ガヤガヤ

出兵してた兵隊さん戻ってきたみたい

これで魔物も引き返すと良い

外がどうなってるか誰か知らねぇか?

外郭に大砲運ばれてるよ

ガヤガヤ ガヤガヤ



---屋根の上---


盗賊「いつにもまして人がごった返してるな」

アサシン「第一皇子のご帰還という所か」

盗賊「ただの魔物討伐にしちゃ追って来る魔物が多すぎやしないか?」

アサシン「目視で見えるのはドラゴン2匹…恐らくもっと居るな」

盗賊「エルフ狩りだったのか?」

アサシン「さぁな?」

盗賊「盗賊ギルドの方で情報貰えないのか?」

アサシン「そうしたい所だが…アレを見ろ」

盗賊「城のゲートブリッジが開いている…アレの事か?」

アサシン「いや…その上だ」

盗賊「んんん?誰か居るな…弓を撃っているのか?」

アサシン「あそこで何か起こってる」

盗賊「あんなところまで魔物が行くとは思えんが」

アサシン「外郭側でもなにか起こりそうだ」


ドーーーーーン ドーーーーーン


盗賊「大砲の音!」

アサシン「外でも何か始まった…急ぐぞ」

盗賊「どっちに?」

アサシン「城に決まっている…来い」ダダッ

226: 2020/09/15(火) 00:40:05.88 ID:s4Ww8Seh0
『貴族居住区』


ドーーーーーン ドーーーーーン

アサシン「ちぃぃ城の様子が此処からでは見えん」

盗賊「おい!!やべぇ!!ドラゴンが降下してきてる」

アサシン「なにぃ!?」

盗賊「真上だ…8匹」

アサシン「衛兵は気付いて居ないな…外郭攻めは囮だ…城の中核をドラゴンで一点攻め」

盗賊「城の裏手も様子がおかしいぜ?見ろ…なんだありゃ」

アサシン「あちらには陸に上がったクラーケンが居たな…まさかクラーケンも城を目指しているのか?」


バコーーン


盗賊「うぉ!!触手が塔をへし折りやがった…こりゃマジもんでヤバいぞ」

アサシン「ドラゴンが速い…」

盗賊「来る!!!伏せろ!!!」


ドラゴン「ギャーーーース」ゴゥ ドーーン


盗賊「うぉ!!ブレス吐きやがった」

アサシン「…8匹のドラゴン…いやアレは噂に聞くドラゴンライダー」



ドラゴン「ギャーーーース」ゴゥ ドーーン



盗賊「あ…圧倒的じゃねぇか…城の駐留兵が一瞬でやられていく」

アサシン「こ、これは…滅ぶ」ボーゼン

盗賊「おい!何ボケっとしてんだ!!又来るぞ」グイ

アサシン「…」ボーゼン

盗賊「伏せろ!!」グイ

アサシン「…空が」


ドラゴン「ギャーーーース」バサッ バサッ

アサシン「…」

エルフ「…」ギロリ

227: 2020/09/15(火) 00:40:31.36 ID:s4Ww8Seh0
盗賊「うぁっ!!あぶねぇ!!」

アサシン「…」

盗賊「突っ立ってねぇでこっちに来い」

アサシン「ドラゴンライダーと目が合った…」

盗賊「良いから下に降りる…ぞ?…な、なんだ?空が落ちる?」

アサシン「…これは古文書にある100日の夜」

盗賊「なんだぁぁぁぁ!?いきなり夜だとぉぉぉ」

アサシン「間に合わなかった…」ガクリ

盗賊「ドラゴンが城に取り付いた…行くか?」

アサシン「あ…あぁ…すまない」

盗賊「こりゃ変装してる暇なんか無さそうだな」

アサシン「…」スラーン チャキ

盗賊「どうした?」

アサシン「悪霊が来る」

盗賊「レイスってやつか?」スラリ チャキ

アサシン「…」

盗賊「おい!!しっかりしてくれぇお前はギルマスだろうが…行って良いんだな?」

アサシン「悪い…古文書の通りだったから動転した」

盗賊「これが魔王復活なのか?」

アサシン「いや…ここは狭間の深い所だ…黄泉と繋がっている」

盗賊「三途の川の手前って事だな?」

アサシン「黄泉の一番奥に深淵があるらしい…魔王はそこに居る」

盗賊「ほう…そっから這い出て来る前にぶっ倒せば良い訳だな?」

アサシン「まぁ…そうなる」

盗賊「ほんじゃ行くぞ」

アサシン「ドラゴンライダーを目の当たりにして自分の小ささを思い知った」

盗賊「はぁ?どうしたんだよ大ぼら吹きのお前が言うセリフじゃねぇな」

アサシン「正直…力の差がありすぎて絶望している」

盗賊「今頃気付いたんか?おれぁ初めから絶望してんだよ!もう乗っちまった船だ諦めろ」

アサシン「…取り乱した」スック

盗賊「それで良い…ここまで来たんだ行く所まで行って真相を確かめる…だろ?」

アサシン「あぁ…すまんな…行こう」

228: 2020/09/15(火) 00:41:03.11 ID:s4Ww8Seh0
『ゲートブリッジ』


ゴーン ゴーン ドカーン


盗賊「戦闘音がヤバイな」

アサシン「ゲートブリッジ上の衛兵は全滅した様だな」

盗賊「このまま走って行けそうだ…あそこの倒れてる衛兵の装備かっぱらって行くか?」

アサシン「自由に動くならその方が良いが…」

盗賊「こりゃ急がんと下から兵隊上がってくんぞ」

アサシン「この暗さ…隠れるなら装備は今のままの方が都合良い…ヘルムだけにしよう」

盗賊「賛成…ほれ!!」ポイ

アサシン「急ごう」パス

盗賊「はぐれたら船に戻るで良いな?」

アサシン「それで良い…状況からしてミスリル武器を配らなければセントラルは全滅する」

盗賊「レイスか」

アサシン「セントラルの兵隊がレイスを対処出来るとは思えん」

盗賊「いや…そうとも言い切れんぞ?あいつらの中にはエルフ狩りの専門も居る」

アサシン「狭間での戦い方もある程度知っている者が居ると…」

盗賊「そういうこった…侮れない奴も中には居る訳だ」

アサシン「今の状況が狭間の奥だと知っている者…エルフ…待てよ?」

盗賊「どうした?」

アサシン「エルフはレイスを対処する術を持っていない…つまりもう直ぐこの戦闘は終わる」

盗賊「銀の矢くらい持ってんだろ…ってマテ…レイスはエルフの敵か?魔物側じゃねぇのか?」

アサシン「レイスは命有る者の敵という位置…氏霊だ…魂を刈り取る」

盗賊「って事は個体数の少ないエルフは引いた方が良いな」

アサシン「そういう事になる…そしてドラゴンはさらに少ない」

盗賊「あのドラゴンがレイスごときにやられるとは思えんが」

アサシン「違う…魂を奪われる…生きたまま氏ぬ」

盗賊「生きたまま氏ぬ…もしかしてお前が言う精霊はそうやって夢幻とやらに行ったのか?」

アサシン「分からんがそういう考え方も有りかもしれん」

229: 2020/09/15(火) 00:41:41.93 ID:s4Ww8Seh0
『園庭』


ブン ザクリ

レイス「ンギャアアーーーー」

盗賊「どっから出て来るか分からんな」

アサシン「見ろ…やはり法王庁にドラゴンが集まっている」

盗賊「あんなところに突撃しろってのか?」

アサシン「無理だな…しかしドラゴンに乗っていたエルフが見当たらん」

盗賊「どうせ中に入って行ってるんだろ」

アサシン「1匹足りないな…城の方か?」


ゴゥ ドーン


盗賊「ドラゴンが暴れ始めたぞ…あっちにもレイスが行ってるな?」

アサシン「法王庁は後にして先に城へ回ろう」

盗賊「おい!!あんな所に黒い戦車置いてあるぞ…なんで使わねぇんだよアホ衛兵が」

アサシン「待て…足枷の付いたダークエルフが這って…なんでこんな所にダークエルフが居るんだ?」

盗賊「どうする?助けるのか?」

アサシン「これはダークエルフの救出劇?…まさか」

盗賊「足枷って事は捕虜だな…あ!!まずいレイスが行った」

アサシン「今は下手に接触しない方が良い…迂回して城の方へ向かう」

盗賊「ダークエルフが暴れ始めたぞ?」

アサシン「城の方で戦闘音がする…生き残りが居るな」

盗賊「うぉ!!おいおいおい…レイスの野郎鎌で魂を引っこ抜きやがった…あれが魂の形か」

アサシン「見とれている場合では無い!行くぞ…向こうに人の気配がある」

盗賊「お、おう…倒れてる衛兵は氏んでるのか魂抜かれたのか見分け付かんな」

アサシン「後ろ!!」

盗賊「ん??下から上がってきた衛兵達だな…こりゃ混戦だ」

ドラゴン「ギャーーース」ゴゥ ドーン

衛兵「ブレーーース!!散開!!」

230: 2020/09/15(火) 00:42:11.11 ID:s4Ww8Seh0
『王城前』


レイス「ンギャアアーーー」

近衛「はぁ!!」ザクリ

盗賊「あんなんじゃ効かんだろうが」ダッシュ ザク

近衛「助かる!!」

盗賊「ここはどうなってる?」

近衛「お前達は誰だ?なぜ簡単にこの魔物を倒せる?」

盗賊「先に質問してるのは俺だ!どうなってんだ?」

近衛「援軍が来たのだな?国王がダークエルフの裏切りによって崩御された…第一皇子に至急戻られよと伝令を頼みたい」

アサシン「武器庫に銀製の武器は無いのか?」

近衛「その武器は銀製だというのだな…情報感謝する」

アサシン「ドラゴンは何処へ?」

近衛「国王の亡骸を確認して何処かへ去った…外で何が起こっているのかこちらが聞きたい」

盗賊「俺達も混乱の真っただ中だ…同じだよ」

近衛「我々は王女以下王室を守るため此処を離れる訳に行かない…伝令と援軍の要請を頼む」

盗賊「分かったよ…最後に…あとどれくらい戦力残っている?」

近衛「精鋭が200名ほど」

アサシン「全員に銀製の武器を持たせると良い」

近衛「あいわかった」

アサシン「そうだ第二皇子はどうした?」

近衛「法王様の下でお隠れになられておる」

アサシン「ふむ…盗賊!!ここには用が無い様だ…戻ろう」

231: 2020/09/15(火) 00:42:37.03 ID:s4Ww8Seh0
『法王庁』


レイス「ンギャアアーーー」

衛兵1「こいつ!!どうやって倒すんだ?」ブン ザク

衛兵2「ダメだ無理だ…ぐぁぁぁぁ」


アサシン「レイスに苦戦している様だな」ダッシュ ザクリ

レイス「ンギャアアアーーー」

アサシン「銀製の武器を持て!!銀で倒せる!!」

盗賊「ドラゴンは何処行った?」

衛兵1「上だ!!上で旋回している」

アサシン「見ているな?奴らは何を探しているというのだ」

盗賊「法王庁の中はどうなってる?」

衛兵1「一部隊強引に突入して行ったが代わりにエルフが中から出てきた」

盗賊「全滅か?」

衛兵1「内部の状況はよく分からん…部隊長も中に押入って行ってしまった」

アサシン「指示待ちの状況か…とにかく銀製の武器を集めてレイスの討伐に専念しろ」

衛兵1「お前たちは近衛か?」

アサシン「そうだ!!国王陛下崩御されたし!外に出ている第一皇子は至急帰還せよ…伝令だ」

衛兵1「国王陛下崩御…」

アサシン「師団も一旦戻した方が良いが…そこは皇子が判断すべき所」

盗賊「外からでもドラゴン襲撃は見えてんだろ」

アサシン「見えていても師団クラスはそんなに早く動けんよ…さて」

盗賊「俺らも突入すっか?」

アサシン「エルフも退散した様だし今なら安全だ」

盗賊「行くぞ」スタスタ

232: 2020/09/15(火) 00:43:03.57 ID:s4Ww8Seh0
『礼拝堂』


衛兵「ぅぅぅ…」

盗賊「おい!生きているか」パン パン

アサシン「急所は外れているが止血しないとマズイ」

盗賊「えらくでかい矢だな…これじゃ槍と変わらん」

アサシン「ハイエルフが使う矢だ」

盗賊「全員これでやられている…おい!!生きてっか?」

アサシン「外の衛兵に応援呼んでもらってくれ」

盗賊「わかった…ちょい待ってろ」スタ

アサシン(…弓でこれほど爆発跡が残るか?おかしいな)

アサシン(ドラゴンが入った形跡は無い…魔法の跡だろうか)

アサシン(む…礼拝堂の下にはもう一つフロアがありそうだ)

アサシン(どうも…魔王が復活した雰囲気は無い)

アサシン(裏の方にも出入口があるのか…開きっぱなしだな)

盗賊「戻ったぞ…衛生兵がもう少しで来るそうだ」

アサシン「下にもう一つフロアがありそうだ」

盗賊「こんだけ荒れてるのに氏体が少なくねぇか?」

アサシン「やはりそう思うか」

盗賊「下に行ってみよう」

233: 2020/09/15(火) 00:43:43.34 ID:s4Ww8Seh0
『法王庁下層』


アサシン「アレは…法王の法衣」

盗賊「氏んでるな…頭部が…こりゃ破裂したんか?」

アサシン「頭部だけじゃない全身破裂だ」

盗賊「ここも爆発跡が沢山あるな…なにかの実験でもやってたんかね」

アサシン「…どうも気分が悪い…なんだこの感覚」

盗賊「おい!!通路の奥の部屋…氏臭がひでぇ」

アサシン「カタコンベ…ここの下は恐らくカタコンベだ」

盗賊「うわぁ…見たくねぇな…どうせ拷問器具だらけなんだろ」

アサシン「鍵がかかっている」ガチャガチャ

盗賊「開けるか?」

アサシン「いや…今は良い…鍵がかかっているという事は今回の騒動に恐らく関係していない」

盗賊「そうだなエルフがわざわざ鍵かけるとは思えんな」

アサシン「法王が変氏している以外におかしな事は何か気付かないか?」

盗賊「魔王が復活したにしちゃ静かすぎるな」

アサシン「エルフはここで何をしたと思う?」

盗賊「法王を[ピーーー]としたらエルフは弓を使うよな?もう氏んでたと考えた方が良い」

アサシン「エルフがはるか遠くの森からどうしてこんな所まで攻め立てて来るのか?」

盗賊「エルフの大事な物って何だ?」

アサシン「エルフの秘宝はいのりの指輪だと聞く」

盗賊「何だそれ」

アサシン「もしかするとここにいのりの指輪があったとすると…つじつまが合う」

アサシン「いや待て…エルフから秘宝を奪ってここまで持って帰って来た…魔物が大群で攻め入る理由が出来る」

盗賊「俺達が海の向こうに行っている間に起きたってか?」

アサシン「情報が足りない…盗賊ギルドに行くぞ」

盗賊「おい!焦るな…じゃぁそのいのりの指輪ってやつは何処に行った?」

アサシン「ドラゴンはまだ上空で旋回しているな?…という事はまだ手に入れていない」

アサシン「魔王の手に渡ってしまったと考えるのが普通だが…どうも魔王の気配を感じない」

盗賊「空が落ちたのは普通なら魔王の仕業と考えると思うがな」

アサシン「なにか違う…ほかに手掛かりは無いか?」

盗賊「裏口があったよな?そっちに行ってみよう」

234: 2020/09/15(火) 00:44:18.10 ID:s4Ww8Seh0
『裏口の外』


盗賊「うおっとぅ!!こんな所に法王庁の衛兵の氏体が…じゃまだな」

アサシン「2体…弓でのヘッドショットだ」

盗賊「こりゃエルフの矢じゃねぇ…なんでこんなところで流れ矢に当たってんだ?」

アサシン「流れ矢がヘッドショットにはならん…どこから撃たれたか」

盗賊「向こうの屋根上だな…しかしあんな遠くから狙えるか?」

アサシン「ひとまず行ってみよう」タッタッタ

盗賊「よっ…よっ…」ピョン ピョン

アサシン「この屋根に上がるのは素人には無理だな」ピョン ピョン

盗賊「うはぁ…中央広場がえらい事になっとる…暗くて見にくいが」

アサシン「ここはゲートブリッジの上だ…そういう事か」

盗賊「俺らが中央の屋根上から見た人影だな?そういや弓使ってたな」

アサシン「ドラゴンが来る前にそいつらが法王庁に入っていたという事だ」

盗賊「なるほどそいつらが法王ぶっ頃して逃げた線が出てきた訳か」

アサシン「私の先を行く者がまた現れた」

盗賊「おい!!それより中央の混乱収めないとお前の妹が危ないぜ?」

アサシン「そうだな…まず目の前の問題解決…だな」

盗賊「ここは別れよう…俺は下水通って船からミスリル武器持って配りながら中央に行く」

アサシン「分かった…私は屋根伝いで先に中央へ行っておく」

盗賊「無理すんなよ?合流の目安は1時間後だ…そうだな屋根に上がった建屋周辺だ」

アサシン「オーケーグッドラック」

235: 2020/09/15(火) 00:44:49.12 ID:s4Ww8Seh0
『下水』

ピチョン ピチョン

盗賊(ラットマンとの戦闘跡があるな…)

盗賊(む…誰か居る)


衛兵「[ピーーー]ぇ!!」ブン グサ

ラットマン「ギャーース」ドタリ

盗賊「おっとー通るぜー」

衛兵「何処へ行く?海側は黒い魔物が出てきて危険だ!!」

盗賊「レイスの事か?」

衛兵「レイスと言うのか?奴らは普通の武器では倒せない」

盗賊「それで逃げ帰って来てるんだな?」

衛兵「撤退戦だ」

盗賊「今からレイスを倒せる武器を取りに行く所だ…お前も来るか?」

衛兵「それは本当か!?」

盗賊「見て見ろ…」スラーン

衛兵「それは?」

盗賊「特殊な銀の武器だ…これならレイスを簡単に倒せる」

衛兵「どこにあるんだ?」

盗賊「桟橋に停船しているサンタマリア型の帆船にある」

衛兵「一隻だけ船があったな…お前は海賊か何かか?」

盗賊「衛兵相手に私は海賊ですなんて言えると思うか?ただの魔物ハンターだよ」

衛兵「下水をうろついてる輩はどうせ賊くらいな者だが…今は信用しておく」

盗賊「ぬはは…そらそうだわな…こんな所うろつく一般市民なんて居らんな…ついて来い」

衛兵「先刻ここを通った者の仲間か?」

盗賊「知らんな…他にも不審者が居るという事か?」

衛兵「4人組の賊が走り去って行った…一人は怪我をしていた様だが」

盗賊「ほう…俺には関係ねぇな…こんな時に略奪なんざクソ野郎のやるこった」

衛兵「背格好からして白狼の盗賊団」

盗賊「んな訳ねぇだろ…」


---待てよ?法王を頃したやつは下水を通って逃げったって訳か---


盗賊「先刻と言ったな?どれくらい前だ?」

衛兵「1時間くらいか…お前…何か知っていそうだな」

盗賊「いやいや…俺を信用してくれ!!今は魔物を何とかしたい」

衛兵「同意だ…お前が悪人だったとしてももう顔を覚えた」

盗賊「へいへい…わたしゃー悪人じゃございやせん」

衛兵「見ろ!!前方にレイスらしき影」

盗賊「おっし!!この武器の性能を見てろ」ダダッ ブシュ

レイス「ンギャアアーーーーー」シュゥゥゥ

衛兵「おおおおぉ…倒せる」

236: 2020/09/15(火) 00:45:20.90 ID:s4Ww8Seh0
『帆船』


盗賊「武器は後方の船長室に入れてある…鍵は開けておくから他の衛兵にも配ってくれ」

衛兵「この船はお前の船なのか?」

盗賊「俺の物ではないが俺達の物と言った方が良いか…」

衛兵「やはりお前は海賊だな?」

盗賊「待て待て…今はそういうのは無しで頼む…そして良く見て見ろ…戦略兵器は何も乗って無い」

衛兵「確かに…大砲類は無いな」

盗賊「おっし俺は持てるだけ武器抱えて中央方面に向かう」

衛兵「お前は名を何と言う?」

盗賊「名乗る名なんかねぇよ」

衛兵「武器の譲与感謝する…身元が分からんと謝礼が出来んぞ?」

盗賊「…」---どうする---

衛兵「おい!!聞いているのか?…私の名は戦士だ」

盗賊「謝礼なんかいらねぇよ…じゃぁな!!気合入れて戦え!!」ダッシュ

衛兵「…」

---あの後ろ姿---

---走り方---

---身のこなし---

---間違いない---

---白狼の盗賊団---

237: 2020/09/15(火) 00:45:46.98 ID:s4Ww8Seh0
『中央広場』



ギャァァ助けてくれぇぇ

イヤー来ないでぇぇ

おい!しっかりしろぉ!

立て!走れぇぇ!




盗賊「にゃろぅ!!」ブン ザク

レイス「ンギャアアーーー」

盗賊「安全な場所は無ぇのかよ…おい!そこで倒れてる奴を引っ張って行けぇ!!」

市民「はひぃぃ」

盗賊「宿屋が比較的安全だ!!そこに置いとけ!!」

市民「ひぃひぃ」

アサシン「盗賊!!ここに居たか」

盗賊「おう!!やっと合流出来たな」

アサシン「武器は!?」

盗賊「まだあるぜ?ほれ」

アサシン「よし…それを持ってギルド支部に行こう」

盗賊「ここら辺はもう良いのか?」

アサシン「軍隊がレイスの対処をし始めてる…放っておいて良いだろう」

盗賊「セントラルの軍隊がか?」

アサシン「いやフィン・イッシュの方だ…軍国なだけあって手練れが多い」

盗賊「そりゃ良い」

アサシン「あちらの国ではゾンビが出るらしくてな…銀の武器を所持している」

盗賊「…てことはしばらく持ちこたえそうだな」

アサシン「かの軍隊は第二皇子の派閥だ…第一皇子派と揉めなければ良いが…」

盗賊「そういや第二皇子がどこに行ったか分からんな」

アサシン「まぁ今はそれどころではない…行くぞ」タッタッタ

238: 2020/09/15(火) 00:46:19.48 ID:s4Ww8Seh0
『盗賊ギルド支部』

ガヤガヤ ガヤガヤ

盗賊「なんだよここも避難所になってんじゃねぇか」

アサシン「妙だな…どうしてここにはレイスが来ない?」

盗賊「たまたまだろ…気を抜くなよ?」

アサシン「地面に盛り塩がある…これのお陰か?」

少年「ああああああ!!触らないで!!」

盗賊「おお!!お前…生きていたか」

少年「その声は盗賊かい?良かった…戻って来たんだね」

盗賊「他の奴らは無事か?」

少年「母さんが…」

盗賊「女盗賊がどうした!?氏んだのか?」

アサシン「なに!?妹がどうした」

少年「爆発に巻き込まれてしまって…」

アサシン「どこだ!?どこにいる!!」

少年「中で横になってる…こっちだよ」スタスタ

アサシン「生きているんだな…」ホッ

盗賊「こんなに人が出入りしてて盗賊ギルドだとバレたらどうすんだ?」

少年「看板は商人ギルドに挿げ替えてある…今は商人ギルドさ」

アサシン「少年…君がやったのか?」ジロ

少年「そんな目で見ないでよ…母さんがそうした方が良いって」

盗賊「お前心臓の方は大丈夫なのか?」

少年「最近は調子がいいさ…激しい運動しなければね」

盗賊「お!?娘たちも無事だな?」

アサシン「ギルドの連中が見当たらないのだが…」

少年「物資調達だってさ…外に出てるよ」

盗賊「略奪やってんだな?こんな時にいけすかねぇ」

アサシン「まぁそう言うな…私たちも同類だよ」

少年「母さん!!盗賊たちが帰って来たよ」

女盗賊「ぅぅん…ハァハァ」

アサシン「…これがあの美しかった私の妹か?…」

盗賊「ぉぃぉぃ…手足はどうなってる」

239: 2020/09/15(火) 00:46:48.57 ID:s4Ww8Seh0
少年「潰れてしまっている…治るかどうか分からない」

盗賊「処置は終わってるんだな?…顔も随分腫れちまってるな」

少年「酸欠のチアノーゼ跡がしばらく消えないって」

盗賊「こんなんなるって事は瓦礫か何かに埋もれたな?」

少年「そう…戦士っていう衛兵が掘り出してくれた」

アサシン「衛生兵はもう居ないのか?」

少年「処置が終わったら出て行ったよ…走り回ってる」

女盗賊「に…ぃさ…ん」

アサシン「無理して声を出さなくて良い…自分でも状況は分かっているな?」

女盗賊「…」ポロリ

盗賊「回復魔法があればな…」

アサシン「魔法…そうだ魔法師はどこかに居ないのか?」

盗賊「この国のアホ共は魔法を使える奴をみんな焼き頃した…居る訳ねぇ」

少年「魔法書なら持っているよ」

盗賊「お前は魔法を使えるのか?」

少年「使えない…使ったこと無い」

盗賊「魔法書だけじゃ意味ねぇな」

少年「…でも魔方陣なら少し分かる」

アサシン「…ひょっとして外にあった盛り塩は君が?」

少年「そう…退魔の魔方陣」

盗賊「ここにレイスが来ないのはそういう事か?」

少年「悪霊退散の方法が記されていたんだ…本当に効果があるのかは賭けだった」

アサシン「少年!!詳しく話が聞きたい」



----カクカクシカジカ---

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240: 2020/09/15(火) 00:47:20.41 ID:s4Ww8Seh0
『個室』

盗賊「ったくあいつは何時まで話込んでるつもりなんだよ」

女盗賊「…」

盗賊「痛むか?」

女盗賊「…」コクリ

盗賊「あぁ動かんで良いぞ…目で意思疎通は出来そうだな」

盗賊「お前なら分かると思うが…このまま氏にそうか?」

盗賊「んーその目は分からんという目だな…内臓の傷み具合が分からんか」

盗賊「その感じだと背骨も折れてるな」

盗賊「出血は大した事ない…やっぱり内臓次第だな」

盗賊「顔色からして痛んでそうなのは肝臓…肺って所だな」

盗賊「まぁ頭部が無事だっただけ幸いか」

盗賊「医者の判断として教えて欲しい…この状況で1か月生きたケースは」

盗賊「…無い…か」

盗賊「長く持って2~3週間か?」

盗賊「もっと短い…そりゃ参ったな」

盗賊「ちと考えて来るわ…寝てろ」


ギー バタン

241: 2020/09/15(火) 00:47:50.74 ID:s4Ww8Seh0
『別室』

ギー バタン

盗賊「おい!お前等いつまで話してんだ?」

アサシン「悪い…この少年…私が知らないことをいくつも知って居てな」

盗賊「お前の妹を放って置いて良いのか?」

アサシン「分かっている…が今は何もしてやれない」

盗賊「放って置いたらありゃ氏ぬぞ?」

アサシン「それも分かる」

盗賊「だったら手ぇくらい握ってやれよ」

アサシン「まぁ聞いて欲しい…今後の事だ」

盗賊「ちぃ!!お前全然分かってねぇ!!」

少年「待って待って…この場合結論から言った方が良い」

盗賊「お前は黙ってろガキがぁ!!」

少年「違うんだ…母さんを救う作戦だよ」

盗賊「…言ってみろ」

少年「シン・リーンまで行って魔女に回復魔法をお願いする…出来るだけ早く」

盗賊「アホか!!どんだけ遠いと思ってるんだ…待てよ?…船に買って来た気球の材料が乗ってるな」

アサシン「それだよ…後は察しが付くな?」

盗賊「組み立てに大工が居ても2~3日…いや…寝ないでやれば1日だ」

少年「僕も手伝うよ」

盗賊「いやお前は邪魔になる」

アサシン「退魔の魔方陣は少年が居ないと無理だ」

盗賊「…そうか…なら仕方ねぇな」

アサシン「組み立て1日…即出発して到着まで1週間…間に合うかどうかって感じだな」

盗賊「そんな簡単じゃねぇぞ?太陽か星が見えない様じゃ方向が定まらん」

少年「地形見ながら行くとかは?」

盗賊「んーむ…海よりはマシか…2週間だな…2週間も生きていられるか賭けだ」

アサシン「もう一つ秘密がある…今この世界は狭間の奥にいるのだとしたら時間がゆっくり流れている」

盗賊「意味が分からん」

少年「想定よりも長く生きている可能性が高いんだ」

盗賊「まぁ良い…その話はよく分からん…俺は今から人集めて気球を組み立てて来る」

アサシン「私は情報収集と物資の調達をしておく」

盗賊「おい!!まず初めに女盗賊の手を握ってこい!!」

アサシン「分かった分かった…」

少年「僕も母さんに作戦の事話してくる」

盗賊「直ぐに出発するから手短に済ませてこい…それから…もう母さんってのはヤメロ」

242: 2020/09/15(火) 00:48:18.63 ID:s4Ww8Seh0
『帆船』

ギシ ギシ

盗賊「よし!飛び乗れ」

少年「ほっ…」ピョン

盗賊「他の奴が来ないようにすこしだけ離岸する…そこのロープほどいてくれぇ」

少年「これだね?あ…梯子もあげておくよ」

盗賊「ふぅ…魔方陣ってのはどの辺にやれば良いんだ?」

少年「広い場所かな?出来るだけ大きく作りたい」

盗賊「なら甲板しか無ぇな」

少年「マストが邪魔だなぁ…下の方は?」

盗賊「マストは下まで貫通してんだよ!そこより広い場所は無い」

少年「そっか…じゃぁ2つ作るかな」

盗賊「あぁ任せた…レイスが出たら落ち着いて教えてくれ」

少年「分かったよ」

盗賊「あと見張りも頼む」

少年「一人で大丈夫?」

盗賊「手が欲しい時は言うからしっかり見張っとけ」

少年「大工さん欲しかったね」

盗賊「まぁしょうがねぇ…そんなに都合よく居る訳も無いしな」

少年「ここから貧民街が見えるね」

盗賊「あんだけ壊れてちゃぁもう戻れんな」

少年「あの家の生活は楽しかった…バーベキューおいしかったなぁ」

盗賊「どうやら今は時代の潮目だ…その思い出はもう閉まっておけ」

少年「もう一回作ろうって言わないの?」

盗賊「お前はドラゴンを見たか?」

少年「見たよ」

盗賊「見ろ!あそこの城壁にへばりついてるクソでかいクラーケンを」

少年「もう氏んでるみたいだね」

盗賊「俺達はあんなのを相手に戦ってんだ…安住の生活なんか今は考えられん」

少年「戦ってるって…盗賊は泥棒じゃないの?」

盗賊「ぬはは泥棒と声に出して言われて誇れる職業じゃねぇな…まぁ恥ずかしい事言わんでくれ」

盗賊「ただな?真っ暗闇に落ちたこの世界のど真ん中に俺達は居る…とにかく生き残るしかない」

少年「…知ってる…そう…同じような事を僕は誰かに言ったことがある」

盗賊「お?ガキのくせに一丁前な事を言った事があるか」

少年「僕は…僕は…誰だった?誰に言ったんだ?」

盗賊「なんだ?アサシンの影響か?あいつの話は半分で…いぁ十分の一で聞いておけ」

少年「違う…なんだろう?前世の記憶なんだろうか?」

盗賊「あああぁぁこれダメな流れ…もう良いそういう話はアサシンの与太話で聞き飽きた」

少年「なんだろう…すごく沢山覚えている…そうだ…僕は商人だ」

盗賊「もう良いから!!しっかり見張っとけ」

243: 2020/09/15(火) 00:48:47.22 ID:s4Ww8Seh0
---おそらく翌日---


トンテンカン トンテンカン


少年「少し休んだら?」

盗賊「あぁぁしんど…球皮の縫い合わせは終わったのか?」

少年「まだ…もう手が痛くて」

盗賊「お前舐めてんだろ!!女盗賊の命が掛かってるんだぞ?あいつはもっと痛い思いしてるぞ?」

少年「分かってるよ…あ!誰か桟橋に来てる」

盗賊「んん?なんだアサシンじゃねぇか」

少年「どうする?」

盗賊「ちっと休憩するか…桟橋に付ける」


ガコン ギー


盗賊「よう!!様子見に来たんか?」

アサシン「状況が変わった30分後に出港する」

盗賊「おいおい…船で行くんか?」

アサシン「詳しい話は後でする…馬車を入れるから荷室を桟橋に付けておいてくれ」

盗賊「この人数でこの船動かすのは無理だ!!船乗りはどうする?」

アサシン「もうそんな事を言ってる余裕は無い…何とかしてくれ」

盗賊「女盗賊はどうする?置いていくってんなら俺は降りるぜ?」

アサシン「馬車に乗せて連れて来る」

盗賊「マジかよ…動かすだけで氏ぬかもしれんぞ」

アサシン「黙れ…これを見ろ」パサ

盗賊「んん?人相書き…か?うぉ!!俺じゃねぇか」

アサシン「そういう事だ…この船も差し押さえ対象だ…馬車で飛び込むから即出港だ」

盗賊「少年!!荷室の左舷を開いて来い…俺は船を回頭させる」

少年「え!?分からないよ…」

盗賊「行って自分で考えろ!!10分でヤレ」



---ちぃぃあの衛兵に顔見せたのはマズかったか---

244: 2020/09/15(火) 00:49:16.86 ID:s4Ww8Seh0
盗賊「えっさほいさ…えっさほいさ…ぐあああああああ一人で帆を広げるとか無理に決まってんだろ!!」

少年「荷室空いたぁぁ!!」

盗賊「桟橋にロープひっかけて船が流されない様にしてくれぇぇ」

少年「碇は降ろさないの?」

盗賊「そんな余裕は無ぇ!!ロープ掛けたら上に上がって帆を張るの手伝え」

少年「ハァハァ…」

盗賊「お前は縦帆広げる準備だ!!ロープ緩めてその辺に垂らしておけ」

少年「盗賊!!見て!!中央の方で煙が上がってる」

盗賊「…なるほどアサシンがやってんな?」

少年「馬車が見えた!!貧民街を突っ切って来る」

盗賊「マジかよ…早えぇな」エッサホイサ


---メインマストしか開いてねぇのに---


盗賊「おい少年お前が舵ヤレ!!右に2回転回して置け!!その後下行って桟橋のロープ切る準備だ」

少年「ひぃひぃ…」ヨタヨタ

盗賊「良いか!!馬車が入ったらロープを切れ…反動がでかいから海に落ちるなよ」

少年「わ、わかった」

盗賊「まずいな…馬車が追われているな…船に入られるのが厄介だ」



---即出港してもこのままだと4~5人は入られる---

---桟橋を破壊するか…どうやって?---

---油がある…よし燃やす!!---


盗賊「どけぇ!!」ドブドブ

少年「その樽…どうするの?」

盗賊「桟橋を燃やす!!船長室の机の上に俺の道具箱があるから持ってきてくれ!!1分!!」

少年「行く!!」タッタッタ

盗賊「種火になるもん無ぇか?よし!!ロープのくずだな」ゴシゴシ

少年「道具持ってきたよハァハァ」ポイ

盗賊「そっから馬車見えるか?」パス

少年「見える!!あと3分」

盗賊「ギリギリだな…」チッチッ メラ

少年「ロープは?」

盗賊「予定通りお前が切れ!俺は甲板から弓を撃つ…お前の初仕事だ上手くやれよ」

少年「ハハ…ハハハ」

盗賊「笑うのが早えぇ…うまく行ったらバーベキューだ」

245: 2020/09/15(火) 00:49:43.44 ID:s4Ww8Seh0
『馬車』


ガタガタ ガタガタ


アサシン「もっと早く走れないのかこの馬は!!」パシン パシン

娘1「追って来てるぅぅどうしよどうしよ」オロオロ

アサシン「何人だ?」

娘1「20人くらい」

アサシン「馬に乗って来るやつは居ないか?」

娘1「馬は居ない」

娘2「何か投げる?」

アサシン「無駄だな…大人しく掴まっているんだ」

情報屋「船の方で火があがり始めた…大丈夫?」

アサシン「分かってる…アレくらいなら突っ切れる」

娘1「あぁぁウチらの家がぁぁ」

娘2「潰れてんじゃん」

アサシン「見納めだ」

娘1「お姉ぇ見える?」

女盗賊「…」

娘2「なんかこの半年でさぁ…色々あったね」

アサシン「揺れるぞ…みんなしっかり掴まれ!!」


ガコン ガコン  ガタガタ  ヒヒ~ン


娘1「熱っつ!!」

アサシン「娘達は馬車降りて幌に付いた火を消すんだ」

娘1「え?え?え?…」

娘2「イヤーー火事ぃぃ」

娘3「もう!!早く降りて!!熱い!!」アタフタ

娘4「水は!?どこ?」アタフタ

アサシン「水なんか要らん!!叩けば消える!!」

246: 2020/09/15(火) 00:50:13.54 ID:s4Ww8Seh0
『甲板』


ガコン ガコン ガタガタ ヒヒ~ン


盗賊「よし!!今だ!!ロープを切れ!!」

少年「切ったぁぁ!!」

盗賊「動け動け動け動け…」


グラリ ググググ ギー


盗賊「ぐぁぁぁ遅せぇ!!」ギリリ シュン

衛兵1「待てぇぇ…弓だと?」

衛兵2「ちぃぃぃ飛び移れ!!」

衛兵1「この火の中行けってのか?」

衛兵2「今ならまだ行ける」

衛兵1「ならお前が先に行け」

盗賊「アサシン!!飛び移って来る奴は処理頼む!!俺は縦帆張る」

アサシン「荷室の扉は馬車が邪魔で入って来れんよ…私たちの勝ちだ」

盗賊「そうか!そりゃ良い!!人手が欲しい!!動ける奴を甲板に回してくれぇ!!」

アサシン「…」

盗賊「おい!!聞いてんのか!?」

アサシン「…という事らしいが…娘達行けるか?」

娘1「え!?」

娘2「そんなん聞いてない」

娘3「ウチらはお姉ぇの看病役でしょ?」

娘4「マジで言ってる?」

盗賊「おーーーい!!誰か居ねぇのかぁぁ!?」

少年「ハハハ…アッハッハ…クックック」

アサシン「…はぁ…私が行ってくる」

少年「…母さん…無事かい?」

女盗賊「フフフ」

少年「痛くない?笑わない方が良いよ…ガマンして」

盗賊「おーーーい!!誰か手伝えって!!」

少年「さて…バーベキューの準備してくる」

女盗賊「…」ニコ

247: 2020/09/15(火) 00:50:52.08 ID:s4Ww8Seh0
『居室』

ワイワイ ワイワイ

盗賊「はぁぁぁぁもう動けん」

アサシン「まぁ上手く逃げられたのだから良いでは無いか」

盗賊「俺たち以外に船に乗ってるのは女と子供だけ…なんでこうなった?」

少年「僕は人数に数えられて無いんだ?」

盗賊「半人前にもならん!子供と同じだ」

アサシン「なってしまった事は仕方がない」

盗賊「あのネーちゃんは誰だ?」

アサシン「情報屋でな…盗賊ギルドの幹部に当たる」

盗賊「そいつしか居なかったのか?」

アサシン「どうも私は嫌われている様でな…付いてきたのは情報屋だけという訳だ」

盗賊「…ま、そらそうだわな…お前の顔を見てギルマスだと知る者がどれくらい居るのか…」

アサシン「言うなよ」

盗賊「おい!情報屋!!何か言ってみろ」

情報屋「あんた…気安く物言いしないでくれる!?」

盗賊「ヌハハ悪い悪い…まぁ肉でも食って機嫌直せ…ほれ」ポイ

アサシン「二人とも口は悪いが信用出来る…仲良くやってほしい」

盗賊「…で?アサシンは粗方情報貰ってんだろ?」

アサシン「まずこれを見てくれ」パサ

盗賊「人相書きだな…俺のは見たが他にもあんのか?」

アサシン「剣士と女海賊…それからシャ・バクダに居るはずの女戦士ともう一人謎の女」

盗賊「ぬはは良く似てるな…この謎の女は見た事ねぇな」

アサシン「まだある…私と女盗賊…娘達まで…白狼の盗賊団一味という事で特定指名手配されているのだ」

盗賊「うはぁぁ…もうセントラルには行けねぇな」

アサシン「だから娘4人と子供たちを連れて来ざるを得なかった」

盗賊「なるほどな…共通するのは酒場のマスターだ…口は堅いと思っていたんだがな」

アサシン「本題はここからだ」

アサシン「魔物襲撃事件の当日…白狼の盗賊団を多数の人間が目撃しているのだ」

盗賊「…やっぱりそうか…俺もその噂は聞いたぞ」

アサシン「セントラルでは国王の崩御と法王の変氏はまだ公開されていない」

アサシン「噂では白狼の盗賊団による暗殺という風になってしまっているのだ」

アサシン「さらに魔物襲撃も…空が落ちた件もすべて…白狼の盗賊団の仕業という事になっている」

盗賊「えらく有名になったもんだ…なにもしてないんだが」

アサシン「まぁ第一皇子と第二皇子の覇権争いの最中だ…当然の流れとも言える」

盗賊「ギルドの方には迷惑かかってないか?」

248: 2020/09/15(火) 00:51:18.34 ID:s4Ww8Seh0
アサシン「今ここに来てるのが情報屋だけと言いうのが答えだ…皆薄々知っていて関わろうとしない」

盗賊「…俺が大工探しても出てこないのはそういう事か」

アサシン「そこら辺の裏の事情を教えてくれたのが情報屋って訳だ」

盗賊「おぉ!!やるなネーちゃん…で?情報屋だけ何でここに居る…俺らの行動監視か?」

アサシン「まぁ気にするな…彼女は私の腹心の部下だ…彼女ありきでギルドが成り立っている」

盗賊「ではセントラルのギルド支部はもう解散か?」

アサシン「セントラルの惨状では盗賊ギルドはもう意味をなさない…不要だ」

盗賊「お前がそう言うならそれで良いけどなハハ」

アサシン「それで…話を戻す…事件の日に白狼の盗賊団をやったのは誰かという事だ」

盗賊「ぁぁぁ…手口からして剣士と女海賊は間違いなく絡んでいるな」

アサシン「情報筋からすると逃走ルートは下水…そこを使ってさらりと逃げるのは経験のある2人しか考えられない」

盗賊「残りの2人は関わっている筈の無い女戦士ともう一人…合ってるか?」

アサシン「正解…では剣士たちは法王庁で何をしたか」

盗賊「ぬあぁぁ分かった分かった…アレだろ?指輪…盗んでさっさとトンズラ…剣士達なら出来る」

情報屋「ビンゴ!!」

盗賊「ネーちゃんそんな所まで知ってるんか?」

情報屋「指輪を盗まれたからセントラルで特定指名手配されて大変な事になっているの!お分かり?」

アサシン「それでここからは予測になるが…指輪を持って何処に向かうと思う?」

盗賊「んんん…エルフに返す?…待てよそれなら盗む必要が無いな…分からんな」

アサシン「女海賊の行動癖で考えると一旦ドワーフの国に帰るというのも可能性がある」

少年「剣士たちが指輪を盗む動機って何だろうね?」

アサシン「女戦士には指輪が魔王復活のカギになっていると話した事はあるが…」

盗賊「それなら単純だな…復活を阻止するために盗んだ…んんんん…やっぱり行き先が読めんな」

アサシン「シン・リーンの魔女なら千里眼で行き先を探せる筈」

盗賊「それならとりあえず行き先が一致してる…早い所気球を組み立てないとな」

少年「食事終わったら僕も手伝うよ」

盗賊「何言ってんだ!!お前だけじゃねぇ!!全員手伝え」


249: 2020/09/15(火) 00:51:50.41 ID:s4Ww8Seh0
『甲板』


トンテンカン トンテンカン


盗賊「お?少年!!起きたか」

少年「その呼び名…何か気に入らないな」

盗賊「んあぁぁ!?なんだ今更…なら何て呼べば良いんだ?」

少年「僕は商人!昔から商人さ」

盗賊「ぬはは大した発音変わって無ぇじゃねえか…商人…これで良いんか?」

商人「イイね…すっぽり収まった感じだよ」

盗賊「ほんで…何か売りにでも来たんか?」

商人「勿論!興味あるかい?」

盗賊「何だよその言い回し…どっかで聞いた事あんな」

商人「まぁ良いじゃないか…やらせてくれよ」

盗賊「そうだな…そろそろ大人になっても良い頃だしな」

商人「…それで…買うかい?」

盗賊「おう!!買ってやる…何だ?」

商人「コレさ…」シャキーン

盗賊「…」ジロリ

商人「まぁ売るつもりは無いんだけどさ…」

盗賊「それは虹のしずくという物だ…何でお前が持ってる?」

商人「母さん…いや女盗賊が大事そうに持っていた物だよ…盗賊に渡してだってさ」

盗賊「悪い…それは買い取れねぇ…返してこい!」

商人「困ったなぁ…」

盗賊「良いから返してこい!!俺は忙しいんだ!!暇ならお前も手伝え!!」トンテンカン

商人「わ、わかったよ…でも盗賊も少し休んだ方が良いよ?」

盗賊「うるせぇ!!」トンテンカン トンテンカン

商人「居室で寝てる子供達もうるさくて眠れないってさ」

盗賊「お前はぶっ飛ばされないと分かんねぇ様だな!!」

商人「休んでよ…みんな心配しているんだ」

盗賊「クソがぁ!!アイツがソレを俺に渡すって事はいよいよヤバイって事だ!!」ボカッ

商人「痛っ!!分かったよ…僕も手伝う」

盗賊「氏ぬ気でやれぇ!!」トンテンカン トンテンカン


トンテンカン トンテンカン

ギコギコギコ ギコギコギコ


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250: 2020/09/15(火) 00:52:18.89 ID:s4Ww8Seh0
『居室』


トンテンカン トンテンカン

ギコギコ ギコギコ

トンテンカン トンテンカン

ギコギコ ギコギコ


女盗賊「…」---馬鹿な人ね---

女盗賊「…」---私はもう良いの---

女盗賊「…」---十分幸せだったわ---

女盗賊「…」---子供達をお願いね---


娘1「お姉ぇ!!お姉ぇ!!」

娘2「ヤバイもう…息してない」

娘3「アサシン呼んできて!!」

娘4「うぇぇぇん;;」タッタッタ

商人「母さん…」


女盗賊「…」


アサシン「ハァハァ…女盗賊!!」



トンテンカン トンテンカン

ギコギコ ギコギコ

トンテンカン トンテンカン

ギコギコ ギコギコ

251: 2020/09/15(火) 00:52:45.84 ID:s4Ww8Seh0
『甲板』


トンテンカン トンテンカン

ギコギコギコ ギコギコギコ


商人「盗賊!!…母さんが!!」

盗賊「んん?」

商人「母さんが氏んだ…うぅぅ」

盗賊「…」

盗賊「……」

盗賊「………」



ザブーン ザブーン

ユッサー

ザブーン ザブーン



盗賊「…今か?」

商人「うん…」

盗賊「…」

商人「行かないの?」

盗賊「見たく…無ぇ」

商人「こんなに早く氏ぬなんて…」

盗賊「魂は見たか?」

商人「いや…」

盗賊「まだ…そこに居るんだな?」

商人「魂?」

盗賊「よっこら…」テクテク

252: 2020/09/15(火) 00:53:13.15 ID:s4Ww8Seh0
『居室』


シクシク シクシク


アサシン「盗賊…」

盗賊「ぃょう…女盗賊!…ラクになったか?」

女盗賊「…」

盗賊「悪りぃな…ちっと間に合わなんだ」

女盗賊「…」

盗賊「またお前の歌が聞きたかったんだが…まぁ…しょうがねぇな」

女盗賊「…」

盗賊「聞いてんだろ?…おい!娘ぇ!!そこの酒持ってこい!!」

娘1「え!?」シクシク

盗賊「早くしろやぁ!!」

娘1「う、うん」タッタッ

盗賊「今頃気付いちまったぁ…俺はなぁ…こうやってお前と酒を飲んでる時が一番落ち着くってな」グビ

女盗賊「…」

商人「盗賊…」

盗賊「で…これからどうすんだ?どっか行くのか?」

女盗賊「…」

盗賊「俺ぁよ…妖精も魂も見えねぇんだ…そこに居るんだろ?なんか言えよ」

アサシン「盗賊…よせ!」

盗賊「おい!!アサシン!!想定よりも長く生きるとか言ってただろ!!ありゃウソか!!?」

アサシン「すまない…」

盗賊「ちぃと外の風にでも当たるか…空は見えんが潮の香はするぜ?」グイ

アサシン「どうする気だ?」

盗賊「お前も付いて来い…酒飲むぞ」

女盗賊「…」グッタリ

盗賊「女盗賊よぅ…お前俺にタメ張っといてこんなに軽かったんだな」ヨッコラ ヨッコラ

女盗賊「…」

盗賊「覚えてんだぜ~?お前の歌…ルル~ルラ~フフ~ン♪」


ザブーン ザブーン

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253: 2020/09/15(火) 00:53:50.22 ID:s4Ww8Seh0
『デッキ』


それでよぅ…あん時は先にお前が行った方が良かったんだ

まぁ結果的になんとかなったんだがな

それが原因で…見て見ろ…まだ傷跡が消えねぇ

お前が無傷で居たのは救いっちゃ救いだが

やっぱどう考えても作戦が悪かった…まぁ儲かったから良いかヌハハ


商人「ずっとあんな感じだよ…放って置いて良いのかな?」

情報屋「見ていて痛い…」

アサシン「…」

商人「盗賊と女盗賊はいつから一緒に居たんだろう」

アサシン「17年くらいか…私よりも長い」

商人「僕が生まれるよりも前なんだ…」

アサシン「私にしてもたった一人の肉親だったのだが…失ってしまうと胸が張裂けそうだ」

商人「…なんか放って置けないな」

アサシン「商人…君は知っているか?かつて精霊は最愛の人…勇者を目の前で失ったという事を」

商人「こんな時にどうしてそんな話を?」

アサシン「最愛の人を目の前で失ったとき…もし祈りの指輪で何かを祈るとしたら何を祈る?」

商人「え?…生き返らせたい」

アサシン「祈っても生き返らない場合は?」

商人「また会える事を祈る」

アサシン「どうやって?」

商人「どうやってって…方法なんか分からない」

アサシン「心の中で会えるのだ…だから最後に心の中の永遠を祈る」

商人「それって…まさか…夢幻?」

アサシン「私は魔女に会ってそれを教えてもらった」

商人「伝説では魔王によって夢幻に閉じ込められたって…」

アサシン「それは解釈が少し違う…自ら夢幻に閉じこもったという方が正しい」

情報屋「今の盗賊がまさにその状態ね…」

アサシン「そう…そこから精霊を救い出すのが私たちの目的だったのだが…」

アサシン「正直…目の前の盗賊を救い出すのすらためらってしまう」

商人「救い出すって…」

情報屋「あの姿を見て…現実を認めろって君に言えて?」

商人「そうか…もう少しそっとしておこう」

情報屋「私も心が痛むわ…」


ザブーン ザブーン

254: 2020/09/15(火) 00:54:24.45 ID:s4Ww8Seh0
『船首』


ユラーー ギシギシ


盗賊「なぁぁぁんも見えねぇなぁ…ルル~ルラ~♪」

女盗賊「…」

アサシン「…」

盗賊「お前も飲むか?ヒック」

アサシン「気が済んだか?」

盗賊「…ちいと考えたんだがよう…俺ぁもうお前とは組まねぇ」

アサシン「どうする気だ?」

盗賊「さぁな?なぁぁぁんも考えられねぇ…気ままにやるさ」

アサシン「巻き込んで悪かった…許してくれ」

盗賊「そんなこたぁ言ってねぇよ…只なんだ…俺が守りたかったものに気が付けなかった自分が許せねぇんだ」

アサシン「それは私も同じだ…」

盗賊「帰る所無くなっちまったんだ…どうすっかなぁぁ」

アサシン「女盗賊なら何て言うと思う?」

盗賊「何回も聞いてるんだけどよぅ…返事しねぇんだ」

アサシン「しっかりしてくれ!!盗賊らしくないぞ!?」

盗賊「黙れ!!お前に何が分かる!!妖精も魂も俺には見えなかった…どっか行っちまった…俺の魂もどこにあんのか分かんねぇ」

アサシン「良く聞け…女盗賊の魂はな…どこにも行っちゃいない!お前の中に居る!!」

盗賊「んぁ?分けわかんねぇ事言うな!!お前の与太話はもう聞き飽きたんだよ」

アサシン「正直…愛する人を目の前で失うのがこれほど辛いとは思わなかった…だから!!」

盗賊「だから何だよ」

アサシン「だからせめて夢の中だけでも会いたい!!それが夢幻なんだ」

盗賊「ケッ与太話かよ」

アサシン「与太話なんかではない!!目を閉じて思い出してくれ…掛け替えのない記憶を…そこに魂を感じてくれ」

盗賊「知ったような事を…俺ぁもう騙されねぇぞ」---知ってるさ…あいつならこう言う---


---なに渋い顔してるの?---

---私はもう良いのよ?---

---あの子たちを見捨てるつもり?---

---あとはお願いね---


アサシン「知ったような事を言ってしまって済まない…ただお前を突き動かすのは女盗賊の魂だ…信じてくれ」

盗賊「…一人にさせてくれ」

アサシン「あぁ…」


------------------

255: 2020/09/15(火) 00:55:01.38 ID:s4Ww8Seh0
盗賊「はぁぁぁぁ…何だこんな所に居たのか…居るなら居るって言ってくれやぁ」

盗賊「分かってるって…やりゃ良いんだろ?」

盗賊「只よぅ…見返りが少くねぇっていうかな?俺ぁお前と酒が飲みてぇだけなんだ」

盗賊「分かった…ほんじゃ次は何欲しいんだ?何でも盗ってきてやる」

盗賊「お?そりゃ良いな…みんなでバーベキューかぁ」

盗賊「分かった用意するわ…そん時歌ってくれな?」

盗賊「おいおい…そりゃ無ぇぜ…じゃどうすりゃ良いのよ?寝ろってか?」

盗賊「そういや随分寝て無ぇな…わーったわーーったんじゃ少し休むわ…約束は守れよ?」









256: 2020/09/15(火) 00:55:40.42 ID:s4Ww8Seh0
『デッキ』


ザブーン ギギギ ギギギ


商人「フンッ…」グルグル

情報屋「船の操作は初めてかしら?」

商人「うん…舵取りしか分からないよ…陸地を見失わないようにちょっとだけね」

情報屋「あと3日くらいで港町だと思うわ」

商人「へぇ…地理も詳しいんだ…アレ?…目をどうした?」

情報屋「もしかして腫れてるかな?」

商人「うん…泣いてたんだね」

情報屋「私とした事が…少し心揺さぶられちゃってね」

商人「盗賊の事か…」

情報屋「見直したわ…盗賊の事…彼って本当に不器用でひた向きで…まっすぐなんだなって」

商人「ハハ…やっぱり僕は子供だったよ」

情報屋「君は彼の養子…にあたるのかな?」

商人「んんん…どうなんだろう?孤児院から引き取られた…それって養子になるのかな」

情報屋「年齢的には親子でもおかしくないわね」

商人「君は?僕は君の事を何も知らないよ…見た感じ20台後半くらいかな」

情報屋「失礼ね!!って言いたいところだけど当たり」

商人「情報屋って言うくらいだから色んな事知ってるんでしょ?」

情報屋「まぁね…でももうコネクションは使えないし振り出しに戻ったかな」

商人「興味あるんだー情報屋っていう仕事に」

情報屋「今なら何でも教えてあげるぞ?少年」

商人「少年って言い方やめてよ…僕は商人だよ」

情報屋「こだわりあるんだね?どうして商人なのかな?少年」

商人「…あのね…まぁ良いや…実はね夢幻の記憶のほとんどを思い出したんだ」

情報屋「夢幻?…その情報が聞きたいの?」

商人「きっと僕の方が良く知ってると思う…今知りたいのはズバリ君は誰?」

257: 2020/09/15(火) 00:56:11.70 ID:s4Ww8Seh0
情報屋「え…難しい質問…その情報は持ってないわ」

商人「ハハハ答えられないかwwww良いんだよ…そう言うと思ってたよ」

情報屋「私の方が聞きたいわ…その夢幻の記憶って言うのを」

商人「正直言うと僕も結構混乱しているんだ…どこからどこまでが正しいか分からないんだよ」

情報屋「アサシンが言うにはみんな同じ夢を見ているって言うけど…本当なの?」

商人「時間軸が違うだけだと思う…多分みんな同じさ」

情報屋「私は思い出せない…何かコツとかある?」

商人「そうだな…昨日見た夢は僕もなかなか思い出せない…そうじゃなくて生まれるよりももっと前を思い出す感じ」

情報屋「生まれた時の記憶も無いのにそんなことが出来るの?」

商人「記憶を探っているとある時…そういえば50年前にこんな事があったって急に思い出す」

情報屋「50年前…」

商人「その記憶に集中すると次々と色んな出来事を思い出す…すごく遠い記憶…でも覚えてる」


遠い記憶だから顔はうっすらとしか覚えていない

でもその時感じた感情や聞いた言葉はしっかり残ってる

僕が何をしたのかも…僕が誰だったのかも

ただ君が誰だったのかはなかなか思い出せないんだ


情報屋「君って…私のこと?」

商人「君もそうだし他の人もみんな…僕の記憶の中の誰だったのか中々紐づかないんだよ…不思議だよね?」

情報屋「そうね…その夢幻の記憶というのは幸せな記憶?」

商人「一言じゃ言えないかな…いつも苦しんでる…でもその中に幸せは確かに有った」

情報屋「そっか…私がいつも見る夢もそんな感じだった気がする」

商人「お?やっと自分の事を話し始めた…もっと教えて?」

情報屋「フフ情報ありがとう…とても興味深いお話だったわ」

商人「なんかズルいなぁ…結局君から何も聞き出せていない」

情報屋「じゃぁ一つだけ…私が生まれたのはずっと南の大陸にある古都キ・カイ」

商人「知ってる知ってる!超古代文明の遺跡がある所だね!!その話聞きたい!!もっとお話ししようよ」

情報屋「ウフフ…それじゃぁこれは知ってる?…」


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258: 2020/09/15(火) 00:56:44.16 ID:s4Ww8Seh0
『荷室』


ゴソゴソ ゴソゴソ


商人「何の音かと思ったらアサシンだったのか」

アサシン「あぁ商人か」

商人「探し物?」

アサシン「物資の確認だ…どうやら水が不足している」

商人「もう無い?」

アサシン「樽に半分…ギリギリ3日という所か」

商人「港町まであと3日くらいだって情報屋が言ってたさ」

アサシン「下船出来るかが問題だ…レイスが沢山居るようでは子供達を連れて下船など出来ん」

商人「塩はどれくらいある?」

アサシン「塩は貴重品だから魔方陣を無駄に作るのは得策では無い」

商人「…そうか状況によっては塩が入手出来ないという事か」

アサシン「ほう…察しが早いな…なぜ分かった?」

商人「太陽が出ていないと塩の生産が出来ない…岩塩があるなら別だけど」

アサシン「ふむ…お前は商人の才があるようだ」

商人「この闇の世界では雨が降らないのも問題だね…穀物も家畜も氏に絶える」

アサシン「そこまで読んでいるか…ではお前ならどう生き残る?」

商人「100日分の水と食料の備蓄は結構大変だねぇ…少人数なら良いけど」

アサシン「資金もあまり余裕が無いのだ」

商人「川に近い漁村でひっそり暮らすのが良いかもね…魚が十分獲れる前提だけど」

アサシン「やはり生き抜くのは厳しい環境と言わざるを得ない…か」

商人「僕の考えでは世界の人口は半分以下まで減ると思う」

アサシン「さらりと恐ろしい事を言うのだな」

商人「物流が完全停止してるんだから当然かな…今資金が無いのは僕たちには致命的だよ」

アサシン「一旦シャ・バクダまで戻らねばならんな…」

商人「魔女の所へは?」

アサシン「気球を使えばシン・リーンを経由してシャ・バクダまで1週間…それくらい持たせる資金はある」

商人「ジリ貧かな…早く行動しないと」

アサシン「耳が痛い…お前は16歳にしては良く考えているな」

商人「ハハまぁね…こういうのは得意なんだ」

259: 2020/09/15(火) 00:57:10.38 ID:s4Ww8Seh0
トンテンカン トンテンカン



商人「!!?お?」

アサシン「盗賊…」

商人「良かった…立ち直ったみたい」

アサシン「すまんが私は盗賊に会わせる顔が無い…行ってやってくれんか?」

商人「分かったよ…きっと大丈夫さ」

アサシン「そうだと良い」

260: 2020/09/15(火) 00:57:38.64 ID:s4Ww8Seh0
『甲板』


トンテンカン トンテンカン


商人「やぁ盗賊!!元気になったかい?」

盗賊「あぁぁぁ頭痛てぇ…飲み過ぎたらしい」

商人「手伝うかい?」

盗賊「あたりめぇだろ!!娘たちはどうした!?呼んで来い…俺ぁまだ横になりてぇんだ」

商人「呼んでくるよ」

盗賊「子供達も全員連れてこい!!ロープの縛り方やら何やら教える事がいっぱいあるんだ」

情報屋「私もやるよ!!」

盗賊「おぅ!ネーちゃん助かる!!んん?どうしたぁ!?乙女な顔すんじゃねぇ!!」

商人「ハハハ盗賊!!情報屋のヒミツを知りたくないかい?」

盗賊「おぉ…ガセネタじゃ無ぇだろうな?」

商人「確かな情報さ…フフフ古都キ・カイに行った事あるかい?」

盗賊「おう!!こないだ行って来たんだ…アサシンと一緒にな」

商人「へぇ…それは聞いて無かった」

盗賊「で…どんなヒミツなんだ?」

商人「ズバリ言うよ…ホムンルクス」

盗賊「おぉ…聞いた事ある…アレだ人口生命体ってやつだ…どっかに眠っているらしい」

商人「それを盗みに行かないかって言う話なんだ…」

盗賊「マジか!!ちょい待て…それと情報屋のネーちゃんとどういう関係があるんだ?」

情報屋「おいコラコラ…人に言って良い話じゃないぞ!!」

盗賊「俺は商人と話してんだ割って入ってくんな」

商人「続けるよ?…ホムンルクスを手に入れた報酬は情報屋を自由にして良いっていう条件さ…つまり体のすべてのヒミツが手に入る」

盗賊「奴隷になるってんだな?…よし乗った…只なぁちょい先約があるんだ」

商人「先約?」

盗賊「先に片づけねーといけねー問題があってな…その後で良いか?」

商人「構わないよ…行けるようになったら言って欲しい」

情報屋「あのね…」

盗賊「さぁ!!遊びはここまでだ…早く娘と子供たちを呼んで来い!!」

商人「行ってくる」タッタッタ

261: 2020/09/15(火) 00:58:10.23 ID:s4Ww8Seh0
『港町の桟橋』

ザブーン ギシギシ


盗賊「こっちの方はレイスの被害があまり出ていないようだな」

アサシン「衛兵がこちらに気付いた様だ」

盗賊「接岸するぞ?」

アサシン「…なるほどアレは衛兵の恰好をしているが恐らく魔法師だ」

商人「見て!!あそこの光…光の魔法でレイスを焼き頃しているんだ」

盗賊「そりゃ頼もしいな…だが一般市民は見当たらんな」

商人「魔法師が居るとなると魔方陣での安全地帯も期待出来るね」

盗賊「碇降ろし始めてくれぇぇぇ!!接岸する」


ギギー ガコン


アサシン「衛兵と話をして来る…少し待っていてくれ」


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アサシン「下船許可が出た…私は商人と一緒に物資調達に出たいのだが盗賊はどうしたい?」

盗賊「確か丘の上に教会があったはずだ…ちとそこまで行ってくる」

アサシン「一人で行くのか?」

盗賊「女盗賊を背負って行く…蘇生魔法があるなら生き返らせる」

アサシン「…」

商人「魔術書によると蘇生魔法は…」

盗賊「うるせぇ…こいつは俺の女だ…他の奴の指図は受けねぇ」

情報屋「私はどうしよう?」

アサシン「盗賊と一緒に行動してくれないか?人を背負った状態ではレイスと戦えまい」

盗賊「娘と子供たちは留守番だ…まぁ船の中なら安全だろ」

アサシン「決まりだな?情報屋…このミスリルダガーを持って行け…対レイス用の護身用だ」ポイ

盗賊「無理に宿をとるより船の方が安全だ…集合は半日後に船…良いか?」

アサシン「構わない」

盗賊「お~い!!娘達!!土産買ってくるから子供達を頼んだ!!」

娘達「ムキーー」

262: 2020/09/15(火) 00:58:40.24 ID:s4Ww8Seh0
『港町』


シーン


盗賊「こりゃ買い物は期待出来ねぇな…」

情報屋「丘の上の教会までどのくらいかしら?」

盗賊「すぐソコだ…もう見えてる」

情報屋「本当に蘇生出来ると思っているの?」

盗賊「出来る事を最後までやるだけだ…バカにすんな」

情報屋「この闇の世界は亡くなった人も傷んで行かない様ね」

盗賊「それが最後の望みだ…普通なら1日経たずに腐って行きやがる」

情報屋「あなたのやっている事は見ていて本当に美しくて痛い」

盗賊「そりゃありがとよ…只まぁ哀れな男の末路だ…恥ずかしくて見せれん」

情報屋「うらやましい…」

盗賊「悪りぃな…俺は恥ずかしい」

情報屋「そんな事言って良いの?…彼女聞いてるよ?」

盗賊「あぁそうだったな…やべぇな…もう知らないって怒り出す…いやもう怒ってる」

情報屋「フフフ」

盗賊「着いたぞ…こりゃ参ったな…氏体だらけじゃねぇか」

情報屋「埋葬が間に合っていない様ね…蘇生出来るならこんな風には…」

盗賊「言うな…それでも良いんだ…行くぞ」

263: 2020/09/15(火) 00:59:10.27 ID:s4Ww8Seh0
『丘の上の教会』


ガチャリ ギー


盗賊「誰か居るか~?」

僧侶「はい…どのようなご用件でしょうか?」

盗賊「おぉ僧侶が居るのか…もう氏んで5日程経ってるんだが…蘇生魔法で生き返らせれないか?」

僧侶「こちらのご婦人ですね?」

盗賊「そうだ…頼む!!」

僧侶「蘇生魔法は魂が肉体から離れてしまった後では遅いのです」

盗賊「こいつの魂は俺の中にある!!俺が抱いておくから…それでもダメか?」

僧侶「…」

盗賊「頼む!!」

僧侶「それは生きているという事です…蘇生魔法の必要はありません」

盗賊「生きて…居る…だと?」

僧侶「体は亡くなってしまいましたが…その魂は別の体と結合して生きているのです」

盗賊「なら元に戻してくれ」

僧侶「その様な魔法は有りません…ですが祝福をすることは出来ます」

盗賊「祝福するとどうなる?」

僧侶「魂の結合を祝福します」

盗賊「どういう事だか分からん」

僧侶「魂の結合は永遠…それを祝福するのです」

情報屋「…結婚」

僧侶「俗世ではそういう言い方をしますね」

盗賊「違う…そうじゃない…」

情報屋「盗賊!!否定しちゃダメ…彼女は聞いているよ?」

盗賊「…悪りぃ…俺は祝福されたいのか?…お前はどうしたいんだ…いや違う知ってる」

盗賊「お前ならこう言う…そんなの分かってるでしょ?…俺はお前なのか?」

僧侶「…どうされますか?」

盗賊「…頼む」

僧侶「立会人はあなたでよろしいですか?」

情報屋「はい…祝福します」

僧侶「分かりました…」


主があなたを祝福しあなたの魂を守られますように

主が御顔をあなたに照らしあなたの魂を恵まれますように

主が御顔をあなたに向けあなたの魂に平安を与えられますように


僧侶「あなた達の永遠を祝福します」



---どうしてこうなった?---

264: 2020/09/15(火) 00:59:38.65 ID:s4Ww8Seh0
『海が見えるあばら家』


ヒュゥゥゥ


情報屋「ここは?」

盗賊「昔使ってた隠れ家だ…様子を見に来たがまだ使えそうだ」ガサガサ

情報屋「良い場所ね…」

盗賊「女盗賊…帰って来たぞ」ヨッコラ セト

女盗賊「…」

情報屋「彼女をどうするの?」

盗賊「教会の外で野ざらしには出来ねぇからしばらくここに居させてやるんだよ」

情報屋「埋葬しないんだ」

盗賊「落ち着いたら海が見える一等地に埋葬してやるよ…娘と子供達もここで生活できるようにする」

情報屋「それは良い考えね」

盗賊「只な?ここで泥棒稼業は稼ぎが少ねぇんだ…金持ちが居ねぇ」

情報屋「商人にでも転職したら?」

盗賊「その言い方…女盗賊にそっくりだよ…まぁそういう生き方も有りっちゃ有りだ」

盗賊「さて…ちぃとその辺片づけて必要な物盗んでくる…お前は女盗賊と一緒にここに居てくれ」

情報屋「分かったわ…家の中は少し掃除しておく」

盗賊「安全な場所じゃぁ無ぇからレイスには注意してくれ…じゃ行ってくるな」ダダッ

情報屋「いってらっしゃい…」


---2人はこういう風に生活していたんだ---

265: 2020/09/15(火) 01:00:10.10 ID:s4Ww8Seh0
『数時間後』

ヨイショ ヨイショ

情報屋「あら?お帰りなさい…随分沢山盗んできたのね?」

盗賊「おぅ…ちょいと荷を引くの手伝ってくれ…クソおめぇ」

情報屋「押せば良い?」グイ

盗賊「空き家が沢山あってな…資材はこれで困らん」

情報屋「これって馬車よね?馬で引いて来れば良かったのに」

盗賊「逃げたか氏んだか…どこにも居なかったんだ」

情報屋「馬車は何処に置くの?」

盗賊「裏の納屋に入れる…片づけは後にして一旦船に戻る」ヨッコラ

情報屋「戻る前に女盗賊に会って行って?」

盗賊「んぁ?何かあったのか?」

情報屋「部屋を片付けていたら多分彼女の昔の洋服が出て来てね…着替えさせてあげたの」

盗賊「おぉそりゃ良い!!着てた物が汚れっぱなしだったな…ふんっ!!」ヨッコラ セト

情報屋「お疲れ様…一人で馬車引っ張るなんて大変だったでしょう?」

盗賊「まぁな…さぁちぃとアイツに会って来るわ」タッタッタ


『部屋』

ギー バタン

盗賊「おぉ…綺麗になったじゃねぇか」

女盗賊「…」

盗賊「顔色も良くなったな」

情報屋「白粉と口紅をちょっとね」

盗賊「ありがとな…俺にはこんな事出来ねぇ」

情報屋「その胸につけてるネックレスは?」

盗賊「こりゃ俺がこいつにやった虹のしずくって言うレアアイテムだ…幸せを呼ぶ物らしい」

情報屋「本当に幸せを呼ぶのね」

盗賊「ヌハハそうだと良いな…さぁ船に戻るぞ…鍵掛けるから先に出ろ」

情報屋「うん」

盗賊「じゃぁ子供達連れて来るまでちぃと待ってろ…すぐ賑やかになるぞ?行ってくるな」ノシ

ガチャリ ガチャ

266: 2020/09/15(火) 01:00:40.58 ID:s4Ww8Seh0
『船』

ギシギシ

盗賊「戻ったぞ!!」

娘1「お帰り~~お土産は?」

盗賊「すげぇ土産がある」

娘2「アレ?お姉ぇは?」

盗賊「まだ秘密だ」

娘3「土産って何さ!!手ぶらじゃん」

盗賊「見てからの楽しみだ…ところでアサシンは帰ってるか?」

娘4「船長室で地図眺めてる…それより土産早くヨコセ」

盗賊「分かってる!!お前等!!船降りるぞ…身支度しろ」

娘1「え!?マジマジマジ?」

盗賊「子供達も全員身支度させろ…10分でヤレ」


うおぉぉぉぉぉみなぎってキターーー

ムキーーーーーー

ドタバタ ドタバタ



『船長室』

盗賊「戻ったぜ…そっちは物資買い付け済んだのか?」

アサシン「あぁ十分では無いが30日程度の食料は確保した…そっちは用事済んだのか?」

盗賊「まぁな…で…昔使ってたあばら家を子供達が住めるようにしてきた」

アサシン「船から降ろすのか?…良い案だ」

盗賊「馬車に荷物積んでこれから出て行く」

アサシン「…お前はどうするつもりだ?」

盗賊「商人にちと頼みたいことが合ってな…あばら家を魔方陣で安全に守ることが出来たなら一旦船に戻って来る」

アサシン「盛り塩で作るなら直ぐに風化してしまうな…得策では無い」

盗賊「これだ…」ガチャリ

アサシン「それは?…ゾンビ退治用の銀の杭か?」

盗賊「そうだ…これを地面に打って魔方陣に出来るならあばら家は安全になる」

アサシン「なるほど試してみる価値ありだな」

盗賊「お前も来るか?」

アサシン「私は荷物の到着を待っている必要がある…お前達だけで行ってこい」

盗賊「そうか…みんなでバーベキューしたかったんだがな」

アサシン「肉はあるのか?」

盗賊「盗んできた食い物がある…荷物受け取ったらお前も来い」

アサシン「場所が分からんな」

盗賊「情報屋!!お前はあばら家の場所を覚えているな?後でアサシン連れて来い」

情報屋「分かったわ…おいしいごちそうを楽しみにしておく」

盗賊「じゃ…船に積んでる酒も持って行くぜ?もうこの船には必要無いだろうしな」

アサシン「もう魔方陣が上手く行く前提なのだな…」

盗賊「やってダメなら戻って来る…簡単だろ?」

267: 2020/09/15(火) 01:01:11.20 ID:s4Ww8Seh0
『馬車』


ワイワイ ワイワイ


盗賊「よっし全員乗ったな!?」

娘「いえ~~~い!!」

子供達「ワイワイ…キャッキャ」

盗賊「これからお前たちの新しい家に行く!!その名はユートピア」

娘「ゆーとぴあああああ!!」

盗賊「出発!!」パシン ヒヒ~ン

商人「ハハハ良いのかい?こんなに期待させて…」

盗賊「お前の魔方陣次第だ…失敗はゆるさん」

商人「ハードル上げないでくれよ」

盗賊「塩の代わりに銀の杭…俺にしちゃナイスアイデアだろぅ?」

商人「まぁ退魔作用のある物なら何でも良いみたいだから…多分上手く行くね」

盗賊「どんだけ大きく作れるもんなんだ?」

商人「正確に測量出来れば大きさに制限は無いらしい…杭の数と質量次第かな」

盗賊「測量か…糸は10メートルくらいしか持ってないな」

商人「20メートル四方で作れば良いかな…十分でしょ」

盗賊「その銀の杭で数は足りるか?」

商人「…今計算してる…もっと入手出来るの?」

盗賊「出来るっちゃ出来るが…あまり盗んで足が付くのもイカン」

商人「ハハハ…全部盗んで来たんだ?」

盗賊「俺ぁドロボーだ…それしか能が無ぇ」

商人「今はね物価がものすごく上がっているんだ…今盗んだ物はとても貴重だと思うよ」

盗賊「そんな杭でもか?」

商人「この杭も武器になるよね?そのうち必ず価値が上がる」

盗賊「なら盗むなら今の内か」

商人「ハハハそうとも言うけど…ほどほどにね」

268: 2020/09/15(火) 01:01:36.48 ID:s4Ww8Seh0
『あばら家』

もうちょっと右…そうソコ!!

次で最後…向こうの木の根元あたり

この辺か?

糸をちゃんと引っ張って…そうそうそう

あと2歩右…ソコソコソコ


盗賊「これで井戸も範囲に入ってるか?」

商人「多分イケてる」

盗賊「結構広いな…しかし…効果が出ているのか分からん」

商人「上を見て」

盗賊「お?…光か?ここだけ光が届くのか?」

商人「驚いた…退魔の魔方陣は工夫すれば闇を祓えるという事だ…どういう理屈なんだろう」ブツブツ

盗賊「なんだか分からんが最高のユートピアになったじゃねぇか」

商人「良かったね」

盗賊「おーい!!子供達!!出てきて良いぞーー!!」

子供達「わーい!!」ゾロゾロ

娘達「うぉぉぉぉーーー」ドタバタ

盗賊「納屋に家財道具が入った馬車がある!!好きな物出して好きな所に置けぇ!!」

商人「みんなあんまり遠くには行かないで!!」


うおぉぉぉぉーーー

ムキーーーー

テンヤ ワンヤ

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269: 2020/09/15(火) 01:02:15.15 ID:s4Ww8Seh0
『庭』

ジュージュー

商人「やっぱりバーベキューは最高だね」パク モグ

盗賊「もうちっと旨い肉だと良かったんだがな」ガブガブ

娘1「お姉ぇにも持って行くね」

盗賊「そうしてやってくれぇ」

商人「アサシン達遅いね」

盗賊「噂をしてれば来るんじゃねぇか?ヌハハ」

商人「そういえば情報屋の事なんだけどさ」

盗賊「なんだ?」

商人「情報屋になったいきさつ…どうやら本気でホムンルクスを探しているらしいんだよ」

盗賊「あの話は冗談では無いのか?」

商人「聞いた話の受け売りなんだけど…ちょっと気になってね」

盗賊「なんで又お人形さんなんか欲しいんだ?」

商人「魂の器になってるとか…」

盗賊「ほう…てことは女盗賊の魂を入れれば動き出すって算段か?…それなら俺も関わらせろ」

商人「それが出来るかどうか分からないけど…彼女が言うには精霊の魂を入れる器になるらしい」

盗賊「…なるほどアサシンがあのネーちゃんを連れまわしてる理由がそれだな?」

商人「多分ね」

盗賊「でもそれじゃぁ情報屋がお人形さんを欲しがる理由の説明になって無ぇ」

商人「彼女の本当の職業は考古学者なんだよ」

盗賊「道理でお前等と話が合う訳だ」

商人「精霊起源説が専門なんだってさ…彼女はすごい詳しいよ」

盗賊「俺にゃあんまり興味のない話だな」

商人「あ!!噂をしてれば何とやら…」

アサシン「…これはどういう事だ?なぜ光が差す?」

情報屋「あらぁぁすごく良くなったじゃない」

商人「僕もビックリだよ…さぁさぁ2人ともそこに掛けて食べよう」

情報屋「じゃぁお言葉に甘えて…ウフフ」モグ

アサシン「…分かったぞ…これは魔女の所と同じ環境だ」

商人「へぇ~~そうなんだ…僕も行ってみたいな」

アサシン「食事が終わったら気球で向かう」

盗賊「今日くらいゆっくりして行けば良いじゃねぇか」

アサシン「そういう訳にも行かないのだ…港町の状況から推測してシャ・バクダの状況はもっと悪いと推測している」

商人「僕もそう思うよ…最悪全滅してる」

アサシン「シャ・バクダには銀も魔法も無い…戦う手段が無いうえに自給できる食料も乏しい」

商人「水も無いね」

アサシン「物流が商隊に依存しているのが致命的だ…逃げ場が何処にもないのだ」

270: 2020/09/15(火) 01:02:45.01 ID:s4Ww8Seh0
盗賊「ちぃぃ…今から酒飲もうと思ってたのによ」

アサシン「酒なら気球の中でも飲めるでは無いか」

情報屋「この小さな家では子供たちが寝たら私達が横になる場所なんかないわ…」

盗賊「まぁそうなるな…しゃーねぇ行くか」

商人「魔方陣が上手く行って安全そうだから娘たちに任せてしまって良さそうだね」

盗賊「おい!娘1!!今日からお前が女盗賊の代わりをヤレ…みんなの母さん役だ…出来るな?」

娘1「またどっか行くの?」

盗賊「大丈夫だ…用が済んだらすぐ帰って来る」

娘1「誰か来たらどうすんのさ?」

盗賊「お前が判断しろ…このミスリルダガーを渡しておく…何かあったらコレで子供たちを守れ」ポイ

娘1「魔物と私が戦うの?マジで言ってる?」

盗賊「大丈夫だ…女盗賊はそうやってお前たちを守って来たんだ…今度はお前の番だ」

商人「何かあっても家の中に逃げれば魔物は追って来ないよ」

盗賊「食い物は納屋の中に入れてある…上手い事節約して食え」

娘1「…分かった」

盗賊「それから俺の持ち金を預けておく…少しづつ使うんだぞ?いいな?」

娘1「心配しなくて良いよ…お姉ぇにいろいろ教えてもらったからさ」

盗賊「…ちょっと待て…知らん男を家に連れ込むのだけはヤメロ…俺が帰れなくなる」

商人「アハハハ」

娘1「ちょ…そんな訳無いじゃん」

盗賊「女盗賊とはそれが原因で揉めたんだ…もうやめてくれ」

娘1「お姉ぇは仕事なんだからしょうがなかったんじゃないの!?」

盗賊「ああああもう良い!兎に角だ…家族だけしっかり守れ…いいな?」

娘1「分かってるってうっせーな」

情報屋「ウフフ家族って良いね…うらやましい」

盗賊「じゃ食ったら行くぞ!!」ガブガブ

271: 2020/09/15(火) 01:03:19.01 ID:s4Ww8Seh0
『気球』


盗賊「よし…荷物これで全部だな?上げるぞ!!」


フワフワ


商人「初飛行…うまく飛びます様に」

情報屋「いきなり本番なんだ…怖いなぁ」

盗賊「テスト飛行なんかやってる暇無ぇんだよ…落ちるときゃゆっくり落ちるから安心しろ」

アサシン「私も気球の操作には慣れて置かないとな」

盗賊「気付くのが遅せぇんだよ…次から自分でやってみろ」

アサシン「縦帆の操作が分からん…どうやるのだ?」

盗賊「とにかく触って勘で掴め!風の受け方で進み具合に差がある…あとは風向きの先読み…これは経験だ」

商人「ちょっと!!マズイかも…レイスが飛んで来る」

盗賊「何ぃ!!飛ぶなんて聞いてねぇ!!アサシン!!俺は気球の操作で忙しい…なんとかしてくれ」

アサシン「分かっている…商人!!なんとか魔方陣を作れないか?」

商人「塩が足りない…銀が欲しい!!何か持ってない?」

盗賊「銀なんか持ち歩いてる訳無ぇだろ!!他に何か無いのか!!」

商人「銀砂とか水銀とか?」

盗賊「んなもん無ぇって…ん?銀貨!!ぬあぁぁぁぁぁ全部置いて来ちまった」

情報屋「私持ってる」ジャラリ

商人「ナイス!!って僕も持ってたよハハハ」

盗賊「ハンマーがある!!こいつで床に打ち込んどけ!!」ポイ ドサリ

商人「少し時間頂戴」

アサシン「来るな…ギリギリまで寄せて倒す…レイスが近くに来ても焦るな」

情報屋「私はどうすれば…」

アサシン「見張りだな…複数体来ると厄介だ」

盗賊「戦闘はアサシンに任せて良い…何も出来ん奴に見えるが戦闘だけは敵うやつが居ねぇ」

アサシン「一言多い」ダダッ サク


レイス「ンギャアアアーーー」シュゥゥゥ

272: 2020/09/15(火) 01:03:48.76 ID:s4Ww8Seh0
情報屋「上の方に沢山居る…数え切れない」

盗賊「地上より空の方に多い訳か」

アサシン「考え方を間違っていたかもしれん…剣士達は気球を使っていない可能性も出てきたな」

盗賊「よそ事考えてないでしっかり戦えい!!」

アサシン「分かっている…お前たちにレイスは近づけさせん」ダダッ サク ンギャアーーー

盗賊「これ以上高度上げると陸地が見えなくなる…もう速度は上げれん」

アサシン「振りきれる速さでは無いな…商人!魔方陣はまだか?」

商人「もう出来るよ…これで最後」トントントン

商人「これで良い筈」

情報屋「レイスは一定の距離で集まってる」

商人「…これだけ集まってると気球から降りるに降りられなくなりそう」

アサシン「何故空の方にレイスが多いのか…」

商人「理由がありそうだね?」

アサシン「温度が高いのが苦手…いや気圧か?」

商人「空に居た方が良い理由がある…違うなそこじゃなきゃいけない…なんでだろう」

アサシン「地上には少ない…うーむ」

商人「もしかしたら地下には居ないのかもね」

情報屋「古代文明は必ず地下にあるの…それって安全だから…よね?」

商人「分かったよ…空に行くほど狭間が深い…地上に行くほど浅い…つまり地下は狭間から遠いっていう事だ」

アサシン「商人…君は賢いな」

情報屋「古代人は厄災の時に起きる闇から逃れる為に地下に都市を作った…謎が一つ解けた」

商人「みんなを避難させる場所は地下が良いね」

情報屋「進化論での人魚の発生も説明が付く…これは大発見よ」

アサシン「我々が生き延びるヒントがこんな所で分かるとは…」

商人「確かめるまではまだ断定出来ないよ…何か方法無い?」

アサシン「思い当たるのはシャ・バクダ遺跡しか無いな…しかし深部への入り口はまだ発見していない」

盗賊「おい!!そういう話は後にしてマズこの状況をどう乗り切るか相談してくれぇ!!」

商人「盗賊?多分僕たちは魔方陣の中に居る限り何処に居ても安全だよ」

盗賊「うじゃうじゃ居るレイスに囲まれて居てもか?見て見ろ!!100じゃ効かねぇぞこりゃ…」

商人「百でも千でも安全な所からやれば全部処理できると思うな…レイスはこっちに手を出せないんだし」

アサシン「ハハハ君はさらりとスゴイ事を言うね…君の言うとおりだ」

盗賊「なら気にせず普通に着陸すりゃ良いってか?マジで言ってんのか?」

商人「そうだね…囲まれていても安全に変わりはない」

盗賊「お前…女盗賊が氏んでから人が変わったみてぇだな…俺にタメ張りやがる…あいつの影響か…」

商人「そうかい?昔からこういう風だよ…昔からね」

盗賊「わーったよ…もう俺は何も言わねぇ!!」

商人「じゃぁ続けようか…」

273: 2020/09/15(火) 01:04:19.90 ID:s4Ww8Seh0
古代文明と言えば確か光の国シン・リーンの地下にもあった筈だよね?

良く勉強したのね?そうよ…ただし深部への扉を開く方法がまだ未発見なの

他には無いの?

古都キ・カイは深部へ入る事は出来るけれどここからは遠すぎる

そもそも地下深く穴を掘ると水で埋まってしまうなぁ…

人間の力だけでは20メートルも掘るのが限界ね

やっぱりシャ・バクダ遺跡が現実的だね

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274: 2020/09/15(火) 01:04:46.08 ID:s4Ww8Seh0
『追憶の森上空』

フワフワ ビュゥゥゥ

盗賊「このまま高度下げていくぞ!」

商人「やっぱり仮説通りだ…レイスがこちらを見失って数が減り始めている」

盗賊「どういうこった?」

商人「アサシンが言うには狭間の深さで時間の流れが違うらしい…だから時間の向こう側が見えなくなる」

盗賊「空が黒い理由がそれだってか?」

商人「多分ね…このまま高度を下げればどんどんレイスは見えなくなっていくよ」

アサシン「魔女に教わったのだ…その原理を利用してエルフの森や魔女の住処を隠しているそうだ」

盗賊「魔女の住処の場所は分かってんのか?」

アサシン「一度行った事があるのだが妖精の案内無しでは迷うかもしれん」

盗賊「俺ぁ妖精が見えねぇんだけどよ…お前には見えてんだろ?今居ねぇのか?」

アサシン「空が落ちて以降一度も見ていない」

商人「そういえばそうだね…全然見なくなったなぁ」

盗賊「お前も見えてたんか!!」

商人「レイスに捕まらないように隠れて居るのかもね」

アサシン「まぁ心配するな大体の場所は覚えている」

盗賊「このまままっすぐ降りて良いのか?」

アサシン「もう直ぐ先に森の切れ目がある…草原に出るから適当な林を見つけてそこに降りてくれ」

275: 2020/09/15(火) 01:05:19.77 ID:s4Ww8Seh0
『追憶の森』

フワフワ ドッスン

盗賊「なんだよレイス一匹しか居ねぇじゃねぇか…心配して損したぜ」

アサシン「私が倒してくる…魔女は北の方角だ…直ぐに出発するから準備してくれ」

盗賊「商人!!気球を隠すから手伝え…情報屋は適当に木材拾って集めてほしい」


ンギャアアアーーーー シュゥゥ


アサシン「この道をまっすぐ行って目印を見つけたら右に林を入っていく」

盗賊「この道は馬車が通った跡があるじゃねぇか」

アサシン「シン・リーンの王家が魔女と精通しているのだ」

盗賊「てことはハチ合わせる可能性もあるな」

アサシン「ハチ合わせてもどうという事は無い…私はすこし面識があってな」

盗賊「王家とか?マジかよ…」

アサシン「…と言っても子供なのだがな」

盗賊「面識があっても意味無ぇじゃねぇか」

アサシン「まぁそう言うな…体は子供でも精神年齢は私よりずっと上なのだ」

情報屋「シン・リーンの王家は魔術の修行で精神と時の門へ入ると聞きました…もしかして」

アサシン「そうだよシン・リーンの姫だ…40年ほど修行したと聞いた…あれから4年…」

盗賊「意味わかんねぇな…」

アサシン「ずっと修行を続けていれば80年程という事になるか」

盗賊「計算が全然合わんのだが…」

商人「木に御札が貼ってある…目印ってコレの事かい?」

アサシン「そうだ…そこを右に分け入って20歩ほど歩いた先に入り口がある」

商人「20歩…なんか細かいね」

アサシン「20歩以上歩いてしまったら迷っている…そういう事だ」

商人「へぇ面白いね」

アサシン「ここから先は一歩づつ離れない様に歩いてくれ…一歩間違うと迷う」

盗賊「へいへい…」

情報屋「不思議ね」


1歩 2歩 3歩…………20歩

276: 2020/09/15(火) 01:05:52.80 ID:s4Ww8Seh0
『魔女の塔』

盗賊「うぉ!!なんだココ!!いきなり昼間…」

情報屋「お花畑と…塔!!これは遺跡の一部だわ!!」

アサシン「迷わず来れたな…しかし様子がおかしい」

盗賊「なんでだ?隠れるにゃ良い場所じゃねぇか」

アサシン「魔女からの挨拶が無い…ゴーレムも居ない…もしや」

情報屋「ここは火の光が差すのね…花を見て来て良いかしら?」

アサシン「待て…私から離れるな」

情報屋「あら?ミツバチ…」

盗賊「何か居る気配は無ぇぞ?」

アサシン「ゆっくり塔まで進む…私の後ろから離れるな」テクテク

商人「なんか安全そうだね…おかしな感じはしないけど」

アサシン「いや…やはりおかしい…妖精も居なければ鳥も居ない」キョロ

盗賊「静かっちゃ静かだが…あの塔に魔女が住んでるのか?」

アサシン「魔女!!私だ…アサシンが来た」


シーン…


盗賊「誰も居なさそうだな」

アサシン「私たちは案内されて居ないのだが…仕方あるまい行って見るか」

盗賊「そんなに気にする事か?」シュン スト!!

アサシン「!!!!」

盗賊「うぉ!!…矢だ」

??「動くな!!」

商人「女の声」

盗賊「にゃろう危ねぇじゃねぇか…」スラリ

アサシン「待て盗賊…武器を抜くな…相手がどれくらい居るのか分からん」

??「今のは警告だ…引き返せ」

アサシン「魔女に会いに来た…私は魔女に面識がある…お目通り願いたい」

??「魔女はもう居ない…亡くなった」

アサシン「それは本当か?」

??「繰り返す…引き返せ」

アサシン「お前は誰だ!?なぜここに居る…姿を現せ」

??「これ以上近づくと[ピーーー]事になる…引き返せ」チラリ

盗賊「エルフだ…やべぇな」

アサシン「エルフよ!!この場所をどうするつもりだ?」


シュン ザク

277: 2020/09/15(火) 01:06:27.54 ID:s4Ww8Seh0
アサシン「ぐぁ!…」

盗賊「アサシン!!」

女エルフ「エルフと人間は戦争中だ…ここに近づくことは許さない」シュン ザク

盗賊「がぁ!!…腕やられた」

商人「まずいね…塔の上からだと一方的だ」

アサシン「相手がエルフでは部が悪いか…下がる」

商人「僕たちは引き返す!!もう撃たないでくれ」

アサシン「エルフよ…最後に一つだけ…器は古都キ・カイに在ると魔女に伝えてほしい」

女エルフ「魔女は…もう居ない…立ち去れ」

盗賊「1匹しか姿を見せなかったがどう思う?」

アサシン「アレは囮だな…おそらく他にも数匹隠れて居る…戻るしかない」

商人「対話しようとしたら撃って来るのって…なにか隠してる気がする」

盗賊「そうだな…俺らを生きて返すっていうのも解せん」

アサシン「もともとエルフは殺生を好まない…普通なら捕らえられる…返すという事は理由がある筈」

商人「魔女の塔には魔女が住んでる以外に何かある?」

アサシン「情報屋がアレは遺跡だと言ったな?」

情報屋「遺跡の一部よ…もしかすると地下への入り口があるかもしれない」

商人「なにか不可解だなぁ…」

盗賊「ひとまず気球に戻って怪我の手当てが先だ…アサシンは腹に矢を食らっている」

アサシン「急所は外れている…氏にはせん…それより魔女が居ないとなると…手詰まり」

盗賊「一旦シャ・バクダへ戻るのか?」

アサシン「そうなるな…剣士達はそちらへ戻っている可能性もある」

盗賊「俺ぁちと考えたんだがよう…ここで降りる」

アサシン「…どうするつもりなんだ?」

盗賊「港町に残した子供たちが心配なんだ…あいつらを放っておけん」

アサシン「ううむ…」

盗賊「こんな状況じゃ泥棒やってる場合でもねぇし商人でもやって子供達を守ってやりてぇ」

アサシン「盗賊ギルドを抜けるのか?」

盗賊「抜けるって訳じゃねぇが今は協力出来ねぇ…女亡くして心の整理もつかねぇし」

アサシン「分かった…私は一旦本部へ戻って体制づくりをやる…盗賊は港町に残した船の管理を頼む」

盗賊「あの船は俺が自由に使わせてもらうぜ?まぁ…港町に来たら又寄ってくれぇ」

アサシン「商人!お前はどうする?」

商人「僕は元々盗賊の養子さ…僕も港町に戻って商人をやるよ」

アサシン「そうか…残念だが仕方あるまい」

盗賊「そうだな…100日経って闇の世界が開けたら又連絡する…それで良いか?」

アサシン「こちらからも連絡を送る…話は決まったな?」

盗賊「よう情報屋のネーちゃん…いろいろありがとよ…恰好悪い所を見せちまった

278: 2020/09/15(火) 01:07:03.37 ID:s4Ww8Seh0
情報屋「こちらこそ…家族の絆を見せてもらって良い経験をしたわ」

盗賊「まぁ…アサシンの事頼むわ…俺には手に負えんかった」

アサシン「おいおい…」

盗賊「んじゃここで分かれよう…おい商人!!今から馬盗みに行くぞ…付いてコイ」

商人「え?今?レイス来たらどうするの?」

アサシン「盗賊!!ミスリルダガー持っていくか?」

盗賊「要らねぇよ…俺にぁ銀の杭がある!これで十分だ…さぁ付いてコイ」

商人「ちょっと待ってよ…僕あんまり走れないからさぁ…」

盗賊「2Kmくらい東に小さな村があんだ…まずそこまで行くぞ」タッタッタ

商人「おーい!!待って」タッタ

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アサシン「さぁ…私たちは気球で本部へ戻るぞ…」

情報屋「一人で気球の操作は大丈夫かしら?」

アサシン「やってみる他にあるまい」

情報屋「私も手伝うわ」

アサシン「ハハハ当然じゃないか…君は私の助手だ」

情報屋「矢の傷は大丈夫?」

アサシン「これくらいはどうという事は無い…さて…行こうか」

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白狼の盗賊団編

   完


次回:勇者「魔王は一体どこにいる?」【ドラゴンの義勇団編】



引用: 勇者「魔王は一体どこにいる?」続編