589: 2020/10/15(木) 18:32:28.83 ID:6+J6cz5f0


勇者「魔王は一体どこにいる?」シリーズです

最初から:勇者「魔王は一体どこにいる?」
前回:勇者「魔王は一体どこにいる?」【鎮魂の飛空艇編】


 『数年前_星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


魔女「闇が去って半年…やっと復興の兆しが見えて来たようじゃな」

アサシン「魔女はシン・リーンに帰らなくても良いのか?」

魔女「ちと気になる事があるのじゃ…」

アサシン「カタコンベか…除染するには人手が足りまい?」

魔女「そうじゃなぁ…魔術師だけでは焼き払い切れぬ…じゃが放っても置けぬしのぅ」

アサシン「義勇団から人出が欲しいか?」

魔女「そういう問題では無いのじゃ…中に溜まっておる液体が処理出来んのじゃ…どうしたもんかのぅ」

アサシン「なぜそれほど拘る?」

魔女「主は魔王にとどめを刺した後魔王は何処へ行ったか見て居ったか?」

アサシン「地面に吸い込まれて行ったが…黄泉へ還ったのでは無いというのか?」

魔女「器を変えただけかもしれぬと思うてな…下にはカタコンベがあるじゃろう?」

アサシン「何か在ると思っているのだな?」

魔女「わらわの師匠がこれほど大きな魔方陣を作って居るからのぅ…只事では無い」

アサシン「魔王がまだどこかに居るのか?」

魔女「分からぬ…じゃが魔方陣の中では魔王も何も出来ぬ筈じゃ…指輪で呼ばれぬ限りな」

アサシン「安息している場合では無いか…」

魔女「それはさておき…セントラルから派兵団が来ておる様じゃが…放って置いて良いのか?」

アサシン「良くない…恐らく新しい領主を立ててこの近辺を自治領にするだろう」

魔女「フィン・イッシュの王女も心配じゃな?…憔悴しきっておる」

アサシン「私はどう立ち回るか…」

魔女「主はもう決まっておろう…すでに王女の相談役になっておるでは無いか」

アサシン「私にフィン・イッシュは重い」

魔女「義を見てせざるは勇なきなりじゃ…王女と出会ったからには縁がある…主は義に背く気か?」

アサシン「魔女はフィン・イッシュ側に付く気なのだな?」

魔女「わらわは何も背負って居らぬ故自由じゃ…王女の境遇を見て捨て置く訳に逝かぬ」

アサシン「少し王女と話してみるか…」

魔女「行くのであればわらわも同行するぞよ?」
590: 2020/10/15(木) 18:33:07.15 ID:6+J6cz5f0
『南西のオアシス』


アサシン「王女…謁見失礼する」

王女「どうぞ…今日は何用ですか?」

魔女「お疲れでは無いか?鋭気が見えぬが…」

王女「お気になさらず…」

アサシン「先日セントラルから派兵団が来たのだがこちらにも来ていないか聞きに来た」

王女「その件ですか…派兵団から領有の件を聞かされましたがどう答えて良いか分からず…」

アサシン「やはり来てるか…して何か要求して来たか?」

王女「いえ…派兵団の本隊が後日到着するそうです…対談はその時にという事になりました」

アサシン「恐らくセントラルは新しい領主を立ててシャ・バクダを自治領とするだろう」

王女「はい…」

アサシン「その場合王女が拘束される可能性が高い…つまりフィン・イッシュは属国扱いになる」

王女「…」

魔女「わらわ達はそうならぬ様に進言しに参ったのじゃ…」

王女「…と言いますと?」

アサシン「ドラゴンの義勇団と魔女の魔術団をフィン・イッシュ下に置く事を明言するのだ」

王女「それは大変ありがたいのですが労多くして益少なしと言う状況になってしまいますが…」

魔女「わらわは元より益なぞどうでも良い…主の境遇を捨て置けんだけじゃ」

アサシン「私は義勇団の資産を守るという意味もある…差し押さえはされたく無いのでな」

王女「ありがとうございます…王都に先遣隊を送って兵が乏しくなり心細かったのです」

魔女「その様じゃな?顔がやつれておる」

王女「私には側近が一人も居ない物ですから…どうすれば良いか分からないのです」

アサシン「まずオアシス周辺を実効治安している姿を見せる必要がある」

王女「それはやっていますがオアシス間の移動がままならないので物資不足が深刻です」

アサシン「ラクダと気球が不足しているのか…義勇団も同じ状況だ」

王女「砂漠では馬車が使えないのが物流の課題です」

魔女「オアシス間に道があれば良いのじゃな?」

アサシン「何か手があるのか?砂漠に道を作れる程石も無いぞ?」

魔女「魔法で砂を焼けば硬くなるのじゃ…割って使えば砂レンガになる」

王女「砂レンガで道を作るというのですね?人出はどのくらい必要でしょう?」

魔女「それほど難しくはないぞよ?ボルケーノを操るだけじゃ…硬くなった砂を道なりに慣らせば良い」

アサシン「もしオアシス間に流通出来る道が出来れば随分状況が変わる…良い案だ」

魔女「そうと決まれば早速行くとするかの?」

王女「はい…道慣らしの人員を呼んできます」

591: 2020/10/15(木) 18:33:39.60 ID:6+J6cz5f0
『オアシスの道』


ゴゴゴゴゴ ボゥ


魔女「火炎地獄!」ゴゴゴゴゴ ボゥ

王女「あっという間に道が出来て行くのですね…」

アサシン「この調子だと数日で近隣のオアシスは道で繋がる…馬車が入用になるな」

王女「南西のオアシスには数台しかありません」

アサシン「道を作るのは魔女に任せて私は馬車の調達にシャ・バクダまで行って来る」

王女「そういう用件は私の兵にやらせても良いのですが…」

アサシン「いや…シャ・バクダの状況も見ておきたいのだ…私が行った方が良い」

王女「そうですか…なにか私に出来る事はありませんか?」

アサシン「物流の計画を立ててほしい…食料の配布が進めば治安も改善すると思われる」

王女「分かりました…各オアシスの物資状況を把握しておきます」

アサシン「木が生い茂っているオアシスもあるから木材の調達が出来るとやれる事が増える」

王女「そうですね…私も考えて見ます」




『数日後』


王女「道が出来るや否や早速人が往来する様になりましたね」

魔女「わらわも嬉しいのじゃ…見て見よ…道のわきにサボテンを植えて行く人も居る」

王女「復興の兆しが見えて私も元気が出てきました」

アサシン「この調子で実効治安していれば民はこちらの味方だ」

王女「各オアシスの調査をしていて分かったのですが緑化がかなりの速さで進んでいる様です」

アサシン「それは精霊樹の影響だな…どういう訳か遺跡に精霊樹が生えたのだ」

王女「遺跡はもう小さな森になってきていますね」

魔女「ここら一帯かつては広大な森じゃ…元に戻ろうとしておるんじゃな」

王女「おかげで羊が良く育っている様です」

アサシン「次は木材を使って羊を守る柵を作るのだな…ウルフが来てしまっては元も子もない」

王女「分かりました…手配させておきます」

アサシン「ねぎらい様の酒も用意した方が良い…この辺りはサボテン酒が名産だ」

魔女「さて…わらわはカタコンベの掃除に戻るとするかの…魔術師達に任せっきりじゃ悪いでのぅ」

王女「人出が欲しい場合は言ってください…少しは出せますから」

592: 2020/10/15(木) 18:34:12.57 ID:6+J6cz5f0
『南西のオアシス』


ザワザワ ザワザワ


魔女「これは何の騒ぎじゃ?」

アサシン「シャ・バクダの新しい領主が挨拶に来ているのだ」

魔女「主は王女の元に居らんで良いのか?」

アサシン「1対1の対談らしい…国家機密だから席を外せとの事だ」

魔女「それでは王女が危ないでは無いか!暗殺される可能性を考えんのか!!」

アサシン「近衛が遠くから弓で狙っている…恐らく何も起きん」

魔女「国家機密とはまた何を話しておるのやら…」

アサシン「闇が晴れたその日…ドラゴンライダーも飛空艇も見られているのだ」

魔女「セントラルは関係なかったじゃろうに」

アサシン「この地での惨劇は人づてに伝わって居る…王女が証人尋問される立場になってしまうのは分からんでもない」

魔女「早い所フィン・イッシュに引き上げた方が良いかも知れんのぅ」

アサシン「まだ時期尚早…もう少し辛抱せねばなるまい」


ガチャリ


領主「…では…良い返事を待っている」

王女「ご足労頂きありがとうございます…」

領主「…」ジロリ

アサシン「…」

魔女「…」

領主「お前は義勇団の者か?」

アサシン「はい…」

領主「身分は?」

アサシン「…」

王女「私の従士になります」

領主「ほう…ドラゴンはどうしたのだ?」

王女「国へ還りました」

領主「エルフとも手を結んでいると聞くが…」

アサシン「第2皇子の事でしょうか?」

領主「フハハハハ話が早いな」

アサシン「皇子は戦氏しました…骸は王都にあります」

領主「骸を引き渡すのも条件にするべきか…」

王女「…」

領主「第一皇子が王に即位した後ではどうでも良い話かフハハハ」

アサシン「…」

魔女「領主風情がえらく大きな口を叩くのじゃのぅ」

王女「魔女…良いのです」

領主「これは失敬…王女様でしたな?フハハハ」スタスタ



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593: 2020/10/15(木) 18:34:46.59 ID:6+J6cz5f0
魔女「なんと無礼な奴か…あのような者を領主になぞセントラルは何を考えておるんじゃ」

王女「あの方は直系ではありませんが王族の一人の様です」

アサシン「どんな条件を言われたのだ?」

王女「遺跡調査の主導をセントラルに渡せと」

魔女「狙いはカタコンベかえ?」

アサシン「むぅ…セントラルのカタコンベと言い…なぜ拘る?」

王女「理由は明かしてもらえなかったのですが軍が遺跡調査にあたるという事だけ分かりました」

魔女「魔術師だけで除染は手詰まりじゃったから丁度良いのかもしれんのう」

アサシン「ふむ…調査をやらせて探るか」

魔女「他に何か言って居らぬか?」

王女「シャ・バクダに通行税が掛かるようになります…つまりオアシス圏と分断する形に…」

魔女「良いのか悪いのか…」

アサシン「商隊がシャ・バクダ中心に編成される想定で居るのだな…オアシス圏に税金をかけて居るのと同じだ」

王女「そうですね…」

アサシン「近隣の村との商隊をこちらも計画すれば良い…通行税が無い分利はこちらにある」

魔女「じゃが軍がシャ・バクダに駐留するのであれば直に乗っ取られそうじゃな?」

アサシン「民次第だな…もともと戦闘民族だ…民を味方につけた方が強い」

王女「エルフとドラゴンもこちら側に居ると思っていますので手は出しにくいかと思います」

魔女「そうか…エルフと交流しておく手もあるのぅ」

王女「兵が言って居りましたが度々エルフが来ている様なのです」

アサシン「精霊樹か…」

魔女「おぉ!!わらわに案がある」

王女「何でしょう?」

魔女「わらわは精霊の御所の場所を知っておる…エルフを案内するのじゃ」

アサシン「そんな場所があるのか…それはまさか私が探していた地下への入り口か?」

魔女「多分そうじゃ…入り口はトロールが守って居って人間では入れぬ」

アサシン「なるほど…エルフなら入れる訳だな?」

魔女「わらわが精霊樹でエルフを待つ…話しをしてみる故主らは待っておれ」

王女「朗報をお待ちしております」


594: 2020/10/15(木) 18:35:17.09 ID:6+J6cz5f0
『砂漠』


ノッソ ノッソ


アサシン「ラクダに乗るのは慣れて来たか?」

王女「はい…でも楽では無いですね」

アサシン「徒歩よりも随分ラクダ」

王女「フフ…遺跡の方にテントが出来てますね」

アサシン「彼らがカタコンベをどうするのか見物だ…あのヘドロをどうするのかクックック」

王女「魔女はあれから帰って来ませんが大丈夫でしょうか?」

アサシン「並みの魔法使いでは無い…よほどの事が無い限り心配は無用だ」

王女「エルフが精霊樹を見に来る目的は何なんでしょう?」

アサシン「エルフの森にも精霊樹が生えているらしいが魂が無いらしい」

王女「こちらの精霊樹の魂を見に来ているという事ですね?」

アサシン「ハイエルフを生むのは精霊樹だ…彼らも存続が掛かっているからな」

王女「ではオアシス近郊が森になっていくとして又人間とエルフの摩擦が始まってしまいそうですね」

アサシン「そうならない様にうまく調和していくのが王女の役目でもある」

王女「私はいづれ王都に還らなければなりません…心配事が尽きませんね」

アサシン「私に一つ考えが思いついた」

王女「申して下さい」

アサシン「第2皇子はまだフィン・イッシュ地下墓地で椅子に繋がれているのだ」

王女「ゾンビになって氏んだのでは無かったのですね?」

アサシン「奴をここまで連れて来れば森の一部に生まれ変わるかもしれない…」

王女「弔いの代わりですか…」

アサシン「フィン・イッシュへ向かった先遣隊へ保護する様伝える事はできるか?」

王女「分かりました…伝令を気球で向かわせる様手配します」

アサシン「済まんな…一応戦友なのだ」

王女「存じております」

595: 2020/10/15(木) 18:35:49.91 ID:6+J6cz5f0
『星の観測所』



魔女「おぉ主らを探して居った所じゃ」

王女「帰って要らしたのですね…心配していました」

アサシン「エルフには無事に会う事が出来たのか?」

魔女「なかなか警戒しておって手こずったがな?無事にこちらの事情を説明出来た」

王女「精霊の御所へは案内出来たのですか?」

魔女「うむ…御所の中にて隠れて居る」

アサシン「やはり精霊樹を見に来ているのだな?」

魔女「それだけでは無いらしい…エルフもカタコンベを気にして居る様じゃ」

アサシン「何かあるのは確実という事か」

魔女「あそこに投棄されている骸にはエルフも多く含まれているそうじゃ…200年以上前の事じゃがな」

アサシン「ますます気になるな…」

魔女「師匠は何も語ろうとはせんかったが…一度リリスという名を口にしたことがある…それやもしれぬ」

アサシン「リリス…超古代の最初の女神の名…では無いか?」

魔女「主は物知りじゃのう?わらわは超古代の事には疎いのじゃ…知っている事を教えよ」

アサシン「これは情報屋の方が詳しい…悪魔の子を産んだという事くらいしか知らん」

魔女「悪魔の子のぅ…誰の事じゃろうか?」

アサシン「人間だよ…最初の人間を生んだのがそのリリスという女神だったとの事だ」

魔女「わらわはちと勉強不足じゃな…超古代の事をどうやって学べば良いのじゃ?」

王女「聖書に記されていると思います…私は持っていますがお読みになりますか?」

魔女「魔術書とは対になる書物であったか…道理で知らん訳じゃ」

王女「そうですね聖書では魔術を禁止していますものね…お読みにはなりませんか?」

魔女「ちと興味が出て来た…読んでみとうなった」

王女「後ほどお持ちします」

596: 2020/10/15(木) 18:36:42.92 ID:6+J6cz5f0
『10日後』


アーデモナイ コーデモナイ


アサシン「魔女…少しは外に出たらどうだ?」

魔女「聖書はなかなかに難解でのぅ…」

アサシン「祈りの言葉が書いてあるだけでは無いのか?」

魔女「祈りの意味じゃよ…誰に向けた言葉なのかを読み解くのじゃ…さすれば歴史が紐解けて往くのじゃ」

王女「この黒板に記された図は?」

魔女「神々の系統図じゃ…サタンとリリス…そしてアダムとイブが残した子孫の系統図を記しておる」

アサシン「サタンとリリスの子が人間…アダムとイブの子は英雄か?神か?」

魔女「概ねそうじゃな…注目すべきはここじゃ」バシ



人間がサタンに導かれてアダムとイブの子孫を頃してしまうのじゃ

ゴルゴダの丘という場所で槍に刺されて氏んだとなって居る

その槍は後に魔槍ロンギヌスと名付けられたそうな…つまりサタンは魔王じゃ

しかし氏んだ筈のアダムとイブの子孫はその後生き返り神の一人となった

次にその神に導かれた人間は母なるリリスに魔槍ロンギヌスを打ち首をはねた



魔女「聖書から読み取れるのはここまでじゃ…神々の戦いの一部じゃな」

アサシン「それは超古代の伝説にあたるのか?」

魔女「年代が記されて居らんから分からぬ」

王女「約1万年前の出来事と聞いた事があります」

魔女「それでじゃ…気になるのが魔王に導かれた人間が何度もリリスを蘇らせようとしている事じゃ」

アサシン「何度もと言うと?」

魔女「蘇生される度にうち倒されておるのじゃ…そういう呪いが掛けられておるらしい」

アサシン「…まさか1万年経った現代でリリスを蘇らせるとでも?」

魔女「200年前に滅びたシャ・バクダがどのような国であったか…主は知らぬ訳ではあるまい?」

アサシン「錬金術…」

魔女「そうじゃな…新たな生命を作る事も可能じゃった筈じゃ」

アサシン「リリスが蘇るとどうなるのかが謎だな」

魔女「聖書では魔王と同様にリリスも恐れられておるのじゃ…冥界の女王と言われておる」

アサシン「クックック魔王の次は冥界の女王と来るか…この世はどうにかしている」

魔女「カタコンベの深層が気になるのぅ…」

597: 2020/10/15(木) 18:37:16.62 ID:6+J6cz5f0
『南西のオアシス』



魔女「王女がわらわ達を呼びつけるなぞ何かあったのか?」

アサシン「さぁな?」

王女「お入りください…」

魔女「どうしたのじゃ?何かあったのか?」

王女「いえ…セントラルとの交わし毎が延期になりまして…その…何か知っている事は無いかと」

魔女「延期?領有の件かの?」

王女「はい…遺跡調査の件も宙に浮いたままになっているのです」

魔女「はて?何も知らぬが?」

アサシン「延期になったのはこちらとしては好条件では?」

王女「…そうなのですが…その理由がどうも不可解なのです」

魔女「策を練られておるのか?」

王女「領主が急に病氏しました…セントラルの特使もカタコンベに足を滑らせて液体の中に落下したとか…」

アサシン「呪いか何かだろう」

王女「他にも怪氏が続いているそうなのです」

魔女「むむ…アサシン…お主何かやっておるな?本職は暗殺者じゃろう」

アサシン「さぁ?何の事か?」シラジラ

魔女「あの領主は気に入らなかった故…わらわは何も言う気は無いが…他の者を巻き込むでない」

アサシン「王女…オアシスは落ち着いて来た…ここは一度王都に戻る機と見るがいかがか?」

王女「…そうですね」

アサシン「伝令はまだ戻って来ていないのか?」

王女「戻ってきています…海に逃れていた民が少しづつ帰ってきているとの事でした」

アサシン「女王として即位する事を宣言した方が良いと思うが」

魔女「そうじゃな…国の安定を促すにはそれが良いな」

アサシン「ここの遺跡調査も早くても半年は掛るだろう…」

王女「分かりました…ご一緒に来てくださいますよね?」

魔女「勿論じゃ」

アサシン「近衛を2人程連れて行って側近に置くと良い」

王女「アサシン様はどうされるのですか?」

アサシン「私も同行する…戦友を放ってはおけんしな」

王女「それを聞いて安心しました…ここに残る近衛に指示を伝えておきます」

魔女「出立はいつにするか?」

王女「早い方が良いかと…用事をすませて夕刻には出立できます」

アサシン「そうか…わたしもちと用を済ませて来る」

王女「はい…気球にてお待ちしております」

598: 2020/10/15(木) 18:38:00.57 ID:6+J6cz5f0
『星の観測所』


魔女「この観測所に魔術師達を住まわせて良いか?」

アサシン「構わん…義勇団の連中と仲良くやる様言っておいてくれ」

魔女「望遠鏡があるで占星術の修行には丁度良かったのじゃ」

アサシン「さて…わたしも用を済ませて来る」

魔女「わらわが千里眼を使えるという事を忘れるな?もう安易に人を殺めるのはやめるのじゃ」

アサシン「クックック次は違う…義勇団の連中に噂を流す指示をしてくるのだ」

魔女「噂?また何か企んで居るんじゃな?」

アサシン「只の呪いの噂だ…カタコンベに関わると呪いに掛かるというなクックック」

魔女「どんな効果を期待して居るんじゃ?」

アサシン「軍の士気を落とすだけだ…後に私たちの有利に働く様にな」

魔女「くれぐれも関係の無い者を殺めるでは無いぞ?主の業が増えるだけじゃからの」

アサシン「私は元々業の深い家柄なものでな…気にはしていない」

魔女「シャ・バクダ王家の末裔か…その業を清算せねば復活する事は無さそうじゃのぅ」

アサシン「クックック汚れた血が不氏者となって更に汚れ…勇者をも葬り…何処へ行くのだろうな?」

魔女「読めたぞ?主はフィン・イッシュからゾンビを操る技を持ち帰りここで第2皇子と共に不氏者の国を作ろうとしておるな?」

アサシン「フィン・イッシュの汚れた部分を私が取り除く」

魔女「王女に対する救いの手か…」

アサシン「私に出来るのはそれくらいなのだよ」

魔女「氏者に対し更に鞭を打って使うと言うのか…外道じゃ」

アサシン「それは違う…新たに精霊樹が生えたのだ…氏者の魂を精霊樹に導いてもらいたい」

魔女「…」

アサシン「過去の清算のつもりなのだ」

魔女「なるほど…理解した…光あれば又闇もありか…闇を引き受けると言うか」

アサシン「誓って魔王の下僕にはならん…氏者を天に還す」

魔女「氏者のエデンの園という訳か…」

599: 2020/10/15(木) 18:39:12.37 ID:6+J6cz5f0
『フィン・イッシュの気球』


フワフワ


近衛「ささっ…お乗りください」

魔女「待たせたのぅ」ノソリ

王女「お待ちしておりました」

魔女「同行するのは近衛2人と付き人2人か…定員じゃな」

王女「私が乗る気球が単独飛行するのは初めての事です…他の兵が心配しておりましたが…」

魔女「大丈夫じゃよ…わらわが居れば数百の兵と一緒だと思え」

王女「存じております…よろしくお願いします」

近衛「では出立致します…お気をつけ下さい」フワフワ

魔女「わらわも王女の身じゃが…お付きの近衛は差がある様じゃ…主の近衛は格が高いのぅ」

近衛「お褒めに預かり光栄です」

王女「フィン・イッシュでは有名なサムライなのです」

魔女「サムライとな?ではアサシンはニンジャという所かのぅ」

王女「この二人の近衛はシノビの訓練も受けていますので立ち振る舞いはアサシン様に似ています」

アサシン「クックック私はそれほど高尚な者では無いよ…買い被らないで欲しい」

近衛「フィン・イッシュ籠城の際は戦振りを拝見したしました…アサシン様は随一のシノビとお見受けします」

魔女「主も有名になっておる様じゃな?」

近衛「仕事がやり難くなる…口外するな」

王女「仕事?」

魔女「こ奴の仕事は暗殺じゃ…そうやって政治を動かしておるのじゃ」

アサシン「クックック…」

魔女「暴露されて顔色を変えぬか…」

アサシン「今更隠しておく間柄でも無いが…口外はしないでくれ」

王女「私は操られて居るのでしょうか?」

魔女「目的が同じ内は良いがな?違う志を持つ様になる時は注意しとった方が良い」

王女「私はアサシン様を信頼しています…私が寄り添う側になれば良いのです」

近衛「王女の命は我らが守ります」ビシ

アサシン「安心してくれ…私に王女は殺せん…亡き国王と誓いを立てたのだ」

王女「父上と…」

アサシン「人は最後の最後に誰かを守ろうとするのだ…亡き国王は身を呈して王女を逃した」

王女「父上の計らいで私は逃れて来られたのですね」

アサシン「私は助力しただけに過ぎん…父上に感謝するのだ」

王女「はい…」




------------------

600: 2020/10/15(木) 18:39:57.21 ID:6+J6cz5f0
ビョーーーウ バサバサ


魔女「国を背負うのは重いか?」

王女「いえ…今は民を救いたいと願っております…重くなどありません」

魔女「それなら良い」

王女「国王の座は兄が継ぐのだと思って軽く考えていた私が恥ずかしいです」

魔女「質問を変える…少女を捨てるのは辛ろう無いか?」

王女「アサシン様がおっしゃっていました…私は私のまま王になれと」

魔女「ほぅ…あ奴にしては良い事を言うたのぅ」

王女「私は生かされました…付いて来る人が居る以上私は期待に応えるだけ」

魔女「それを重荷にしてはイカンぞ?」

王女「はい…私は近衛も信じていますし付き人も信じています」

魔女「王道じゃ仁徳によって国を治めよ…面倒毎はアサシンに押し付けて置けば良い」

王女「それも任せろと言われています」

魔女「あ奴も自身の働き方を心得ておるか…では心配なさそうじゃの」

王女「ご助言感謝いたします」

601: 2020/10/15(木) 18:40:33.62 ID:6+J6cz5f0
『亡国フィン・イッシュ』


魔女「どうじゃ?久方ぶりに還ってみて…悲しいか?」

王女「建物は殆ど損壊していないのですね…人だけが居なくなった」

アサシン「ゾンビは略奪するでも無し…ただ生きている人を探し食らっていた」

王女「街があの時のままなのが余計に…心の中の穴に無常な風を吹かせます」

魔女「軍国を誇って居ったのは何だったのか…セントラルよりも兵は多かった筈なんじゃがな」

王女「身から出た錆びなのでしょう…不氏者を道具にしようとした罰ですね」

アサシン「私は周囲を見回って来るが…」

王女「私は城へ戻り状況の確認をしてきます」

魔女「わらわも共するぞよ?」

王女「近衛!気球は何台使えますか?」

近衛「私達の物を含めて10台程かと」

王女「その10台でオアシスとの定期便を日に2台運用させないさい」

近衛「はい…物資の移送でしょうか?」

王女「この状況ではこちらに物資が多くありすぎます…穀物と塩を送り羊毛と絹を仕入れましょう」

近衛「かしこまりました…手配させます」

魔女「早速交易か…良い事じゃ」

王女「私はもうこの国を軍国にはしません…城のすべての財を必要な所へ届けます」

アサシン「気球を増産して民間に運用させても良さそうだな」

王女「はい…そのつもりです」

魔女「すべての財を使うと言うのはどういう事じゃ?」

王女「私は寝る場所さえあれば他に何も要りません…元は軍国なものですから食料の備蓄は多いのです」

魔女「なるほど食料を蓄えておったのか…この時世食料は何よりも財になるのぅ」

アサシン「確か3年分は在ったな…ほとんど使わずに壊滅した」

王女「私の財は民です」


602: 2020/10/15(木) 18:41:10.59 ID:6+J6cz5f0
『数日後_城』


魔女「城も一般開放とな?」

王女「私の居室以外はすべて解放しました…入って来られないのは王の間だけですね」

魔女「衛兵も畑を耕しておるが主が指示しておるのか?」

王女「はい…私も畑を耕します…そして自由に街を歩き回ります」

魔女「それで近衛にもこのような格好をさせておるのか…町民と変わらぬ恰好を」

王女「私の顔を知らない方も居まして普通に接して下さるのです…それが私の楽しみになりました」

アサシン「頼まれていた物を持ってきたぞ」

王女「ありがとうございます」

アサシン「銀細工の仮面だ…目の部分だけだがな」

王女「どうですか?似合いますか?」

アサシン「フフ表情が読めなくなる点は合格だ」

王女「わたしはこれから女王としているときは仮面をつける事にしました」

魔女「なるほどのぅ…威厳は仮面に被せるか」

王女「わたしも町民として民の役に立ちたいのです…それには女王の肩書が邪魔でした」

アサシン「女王としての即位は公にしないのか?」

王女「即位式は1年ほど待っても良いと思っています…王の間で統制している姿を見せるだけで今は十分かと」

アサシン「セントラルがこちらに来ていないのが気に掛かるが…」

魔女「シャ・バクダ優先なんじゃろうな…立地的に対立して良い事は何も無いじゃろうて」

アサシン「建物の損壊が何も無いから攻めにくいと言うのもあるか…」

近衛「王女…準備出来ましたが街へは出かけられますか?」

王女「行きます…魔女とアサシン様もご一緒にどうですか?」

アサシン「構わんが…この恰好でも良いのか?」

王女「平服で結構…魔女はあやしい恰好なので着替えて行きましょう」

魔女「なんと!この恰好はあやしいと申すか…」

王女「…そのとんがり帽子だけでも脱いで頂けませんとあやしくて人目に付いてしまいます」

魔女「わらわのお気に入りなんじゃがのぅ…」ブツブツ

603: 2020/10/15(木) 18:41:58.53 ID:6+J6cz5f0
『街道』


ワーイ ワーイ


魔女「人はまばらじゃが子供が走って居るのは良いのぅ」

王女「女性と子供達は軍船で海に逃れていたそうです」

魔女「学び舎を用意してやってはどうか?」

王女「そうですね…城の教会を学校にしましょうか」

アサシン「空き家はどうしているのだ?」

王女「兵に片づけさせて一時的に国が預かる形にしています」

アサシン「持ち主が何処に行ったか分からん様では仕方が無いか」

王女「近隣からの移民に与えようと思っています」

アサシン「ここに来れば住む場所も食料も困らん訳か…」

王女「それだけでは備蓄の3年しか持ちませんので皆で畑を耕しているのです」

アサシン「この国は海も山も川もあり豊かな国だ…シャ・バクダとは違うな」

王女「国を流れる川の源流…見えますでしょうか?」

アサシン「山づてに流れて来ている川だな?」

王女「あの川に龍神が住まうと言われこの国を守って居るのだそうです」

魔女「ほぅ…山から海へ流る川に龍神とな?それは竜宮に繋がっておるのじゃな?」

王女「ご存じでしたか…竜宮は海の中にあると言われております」

アサシン「海の竜といえばリヴァイアサン…伝説に過ぎんか」

王女「その名は他国の方がそう呼んだ名です」

魔女「この国では別の呼び名があるのじゃな?」

王女「九頭龍大神…善女龍王…俱利伽羅竜王…沢山居ますが総じて竜王と称されています」

魔女「まてよ…聖書にはリリスの下半身は竜であったと書いておったが関係は無いか?」

王女「ラミアの事でしょうか?善女龍王伝説がそれにあたります」

魔女「気になるのぅ…」

王女「善女龍王伝説でしたら城の書庫に資料があります…後ほどご覧になって下さい」



604: 2020/10/15(木) 18:42:29.62 ID:6+J6cz5f0
『広場』


ジュージュー ワイガヤ


ごろつき「よぉネーちゃん又来たか!食ってけ」

王女「はい…賑わっていますね?」

ごろつき「そらそうよ!国から干物の配給がたっぷり合ってよ…焼き魚パーティーだ!ほれ食え」

王女「頂きます」モグ

ごろつき「あんさん達も避難民か?どっから来たんだ?」

アサシン「砂漠からだな」

ごろつき「そら遠くから大変だったろ!家貰えたか?」

アサシン「畑付きの家をな…」

ごろつき「俺もだガハハしかも種撒き終わった畑付きよ…収穫時期が来るのが怖えぇよ」

街の女「あっちで酒の配給あるみたいよ?ほら?」グビ

ごろつき「おぉぉ魚ばっかりで何か飲みたかった所だ!ちょいと行って来る」ダダ

街の女「あなた達は城の人?身なりが良さそうな格好してるけど」

魔女「わらわの事かえ?高貴な身分が染み出てしまうのかのぅ…」

街の女「あら?赤い目…あんた女なんだ…仲間じゃん」

魔女「なぬ!!女じゃと!?」

街の女「この辺は儲からないからさ…宿屋の通りの裏行くと良いよ」

魔女「余計なお世話じゃ…ふん」

ごろつき「おーい!あんさん達の分も持ってきたぞ!!」ガチャガチャ

605: 2020/10/15(木) 18:43:03.74 ID:6+J6cz5f0
『宿屋の裏』


おい…良いだろ?この間は金で良かったじゃないか

ダメダメもうお金要らないのよ

ちぇ物々交換なんて聞いた事無いぞ…何があれば良いんだよ

香料に香辛料…薬草ポーション…バターも良いかな


近衛「王女…この辺りは王女は来ない方が良いかと」

王女「良いのです」

近衛「まさかお売りになる訳ではありませんよね?」

王女「場合によっては…」

近衛「やはりこの道は行かせられません」

王女「冗談ですよ…民に何が必要なのか見て居るのです」

近衛「はぁ…」

アサシン「魔女は顔を隠しておいた方が良いな」

魔女「わらわの目かえ?」

アサシン「この業界では赤い目は合図として使われるのだ…面倒にはなりたくあるまい」

魔女「通りゆく男がわらわを見て行くのは品定めしておるという事か?」

アサシン「まぁそういう事だ」

魔女「ではなぜ声を掛けて来んのじゃ?魅力が足りぬと言うのか?」

アサシン「私や近衛を先客だと思っているんだろう」

魔女「なるほど…それならば仕方ないのぅ」ファサ

王女「女性の働き口が少ないのが背景にあるようですが…これはこれで良い文化なのかもしれませんね」

魔女「このように育む愛もある様じゃな」

王女「この一帯は歓楽街にして行きましょう…カジノを設置して女性の働き口を増やします」

アサシン「軍国から一転して歓楽の国か…王女の采配とは思えんなクックック」

王女「民が求める物を勘案した結果です…商業の国に転身します」

アサシン「商業?セントラルと張り合うと言うのか?」

王女「農産物を輸出して趣向品をキ・カイから買い入れて民の笑顔が見たい」

魔女「主は他の国と違った方向を向いておるのじゃな…ある意味良き王になるやもしれぬ」

王女「私も楽しみたいのですよ…顔料に香料…おしゃれも」

アサシン「ハハ王女は王女のままで良いと言ったが…そっちの方向か」

魔女「少女のままの王か…わらわはもうしばらく背後に座っておるかの」

606: 2020/10/15(木) 18:43:45.66 ID:6+J6cz5f0
『城の教会前』


ワイワイ ワイワイ


皆さんこんにちは

今日からみなさんの先生になりました

よろしくおねがいします

今日は始めに皆さんに自己紹介をして貰おうと思います

始めに先生から自己紹介をしますね…わたしは…


ワイワイ ワイワイ


アサシン「魔女は何か指導を担当するのか?」

魔女「少しだけじゃな…魔術は適性があるで全員には教えられぬ」

アサシン「私はやる事が無いから地下墓地にでも行って来る」

魔女「第2皇子か…エルフがゾンビになってしまうなぞ不幸じゃったのぅ」

アサシン「この国も少しは落ち着いた…精霊樹の元へ連れ帰りたいのだ」

魔女「そうじゃな…救われると良いがな」

アサシン「実は少し期待しているのだ…私はドラゴンの心臓を得て正気を保っているがドラゴンの心臓は寿命が長いだけだ」

魔女「エルフの心臓も寿命が長いが…同じ事を期待しておるのか?」

アサシン「そうだ…精霊樹の声を聞き目覚めないか…とな」

魔女「試してみる価値はありそうじゃな」

アサシン「魔女はどうする?しばらくフィン・イッシュに残るか?」

魔女「そうじゃなぁ…書庫の資料を一通り読んでから考えるかのぅ」


子供達「あ!!城のテラスから女王様が手を振ってる!!」ノシノシ


女王様見た事ある~?

あるよ!!銀色の仮面被ってるんだよ

仮面の女王様?


魔女「仮面の女王か…少しづつ認知されて来とるのぅ」

アサシン「インパクトは十分だな」

魔女「内政が良いお陰で不穏な噂は聞かぬが…仮面ではやはり不気味じゃのぅ」

アサシン「良い面もあるでは無いか…内政が良いのも仮面で顔を伏せているお陰でもある」

魔女「銀の仮面…魔除けには良い…ん?何故銀を選んだのじゃ?」

アサシン「フフ気付いたか…魔王除けだよ」

魔女「主が誘導しておるのか?」

アサシン「銀の仮面をつけてからの王女の行動は明らかに違うだろう?心を闇に染めない」

魔女「そういえば悲しい顔を見せなくなったのぅ」

アサシン「そういう事だ」

607: 2020/10/15(木) 18:44:29.01 ID:6+J6cz5f0
『書庫』


ブツブツ ブツブツ


王女「魔女…こちらに居ましたか…アサシン様はどちらへ?」

魔女「あ奴は地下墓地に行って居る…第2皇子に会いに行って居るのでおろう」

王女「そうですか…精霊樹に連れ帰る準備をされて居るのですね?」

魔女「行かせたくないのかえ?」

王女「いえ…そうではありません…姿が見えないと心配になったのです」

魔女「あ奴は主を裏切ったりはせぬ…故に心配は無用じゃ」

王女「アサシン様に宝具のドクロの杖をお渡ししようと思っていたのですが…」

魔女「ゾンビを操る杖じゃな?ネクロマンサーが用いる物じゃが何故そのような物がこの国の宝具になっておる?」

王女「父が生前にシャ・バクダで発掘されたものを買い入れたのです」

魔女「出所はシャ・バクダか…元の持ち主に戻る訳か」

王女「アサシン様にはこの杖が必要なのだと思っています」

魔女「そうじゃな…あ奴は200年前の清算をしようとしておるのじゃ…主も気付いて居ったか」

王女「魔女は書庫に籠っている様ですが何か分かった事は在るのでしょうか?」

魔女「善女龍王伝説…ラミアはやはり蘇生されたリリスの様じゃ…伝説の類似点が多すぎる」

王女「雨乞いの竜王というのがこの辺での定説です」

魔女「生贄に何を捧げたのかは知らぬが血を好むらしいのぅ」

王女「はい…男性の血を贄として雨乞いをする習わしです」

魔女「リリスはのぅ赤子を好むのじゃ特に生後8日までの男子を食らう…似て居ろう?」

王女「そうですね…」

魔女「実はな…シン・リーンの古代遺跡にもラミアおぼしき画が在っての…聖剣にて首を獲られておるのじゃ」

王女「それもリリスだとお考えですか?」


そうじゃ…光の国シン・リーンではな古来より女系が王座に座るのじゃ

何故かというと男系は神に贄として捧げる故に血が途絶えるのじゃ

そういう習わしが現代まで引き継がれてきたのじゃよ

1700年前の古代文明の伝承でも同じじゃ…それを今の今まで引き継いでおる

608: 2020/10/15(木) 18:45:09.74 ID:6+J6cz5f0
魔女「類似点は男を好んで食らうという点じゃな…それと下半身が竜じゃ」

王女「首を獲られたと言うのは?」

魔女「メデューサの首を聞いた事があるかの?」

王女「見ると石化するという伝説の…」

魔女「そうじゃ…この国ではラミアという名じゃがわらわの国ではメデューサじゃ…どちらも蘇生されたリリスじゃと思うておる」

魔女「そしてわらわの血筋はメデューサに由縁がある…この目じゃ…メデューサの目も赤いのじゃ」

王女「え!?魔女は…リリスの血を引いて居る?」


メデューサが首を獲られた時にな…滴り落ちる血は不老不氏の力を持つと言われておったのじゃ

時の支配者はその血を飲み力を得たのじゃが…同時に目を赤く染めた

強力な魔翌力を得た代わりに国は滅びの道を進みやがて時の王は国を屠った


魔女「魔道書に記された契約の言葉とメデューサの…いやリリスの生業が見事に一致するのじゃ」

王女「シャ・バクダ大破壊の本当の原因はリリスの封印なのですね?」

魔女「おそらくそうじゃと思う」

王女「魔王は人を操りリリスの復活をさせようとしている…」

魔女「実体を持たぬ魔王はこの世に何も出来ぬ…たとえ勇者を器にして蘇ったとしても只の人じゃ」

王女「でもあれほどの数のゾンビを操るほどの力を…」

魔女「まやかしで付き従いさせるだけじゃな…本当に力を持つのはリリスの方ではないかのぅ」

王女「カタコンベを何とかしないといけませんね」

魔女「うむ…封印されているとはいえ…心配じゃのう」

609: 2020/10/15(木) 18:45:49.01 ID:6+J6cz5f0
『気球』


アサシン「見送りに来たのか…」

王女「アサシン様…これを」

アサシン「ドクロの杖か…今必要だとは思って居なかったが借りて置く」

王女「私には必要ありませんのでお持ちください」

アサシン「クックックこの国には無い方が良いな…頂く」

王女「すぐお戻りになられますか?」

アサシン「そのつもりだ…第2皇子を精霊樹まで運んで帰って来る…心配するな」

魔女「わらわは残るぞよ?」

アサシン「私一人で良い…すぐに済むから魔女は書庫でも漁っていろ」

魔女「カタコンベの状況も見て来るのじゃぞ?」

アサシン「言われるまでも無い…呪いの噂がどうなって居るのかも楽しみなのだ」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴヴ…ガァァァ」ガチャンガチャン

アサシン「早く行けと騒いでいるな」

王女「本当に一人で大丈夫なのでしょうか?」

アサシン「大丈夫だ…ワインを血だと思って好んで飲む」

魔女「精霊の御所でエルフに会ったなら争うでないぞ?」

アサシン「相手次第だな…攻撃される様なら私も身を守る」

魔女「この貝殻を持て…何かあればこれでわらわが話しかける」

アサシン「千里眼か…常に見張られて居るのは気分がよい物では無いな…では行って来る」

王女「お気をつけて…」


フワフワ


------------------

610: 2020/10/15(木) 18:46:27.00 ID:6+J6cz5f0
ビョーーーーウ バサバサ


アサシン「さて…ワインでも飲むか?相棒」

エルフゾンビ「ガァァァァ…」ガチャンガチャン

アサシン「ふむ…鎖に繋がれていては不自由だな…ドクロの杖を試すか」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴヴ…」

アサシン「私を襲うな…大人しくワインを飲め」

エルフゾンビ「…」

アサシン「よし…鎖を外してやる」ガチャガチャ ガチン

エルフゾンビ「ヴヴヴ…」

アサシン「クックック大人しくなったな?ワインは瓶のままで良いか?」シュポン

エルフゾンビ「ゴクッ」ゴクゴク

アサシン「ほぉぉ飲みっぷりが良いな…乾いて居たか」

エルフゾンビ「ガァァァ…」

アサシン「こんな風にワインを飲める日が来るとは思わなかったな…相棒」


不氏者になっても酒の味は変わらんな

お前はどんな未来を望む?

森になりたいか?

私はな…勇者を屠って考えが変わったのだ

魔王を深淵に落としても意味が無いとな

もっと根底から変える必要がある様だ

何かはまだ分からんが

付き合ってみる気は無いか?


エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴ…ガァァ」

アサシン「そう入きるな…まだ始まったばかりだ…ゆっくり考えてくれ」ゴク

611: 2020/10/15(木) 18:47:09.86 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡上空』


ビョーーーーウ バサバサ


アサシン「クックック…やはりカタコンベの掃除は手こずって居る様だな」

アサシン「少し驚かせてみるか…ゾンビ共!我に付き従え」

アサシン「さぁどうなる?見て見ろ相棒!今からショータイムだ」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」



--------------------



衛兵1「ひぃひぃ…この液体はどんだけ溜まってるんだ」ザバー

衛兵2「バケツリレーじゃ効率が悪すぎる」ザバー

衛兵3「ゾンビ運びよりはマシだぞ…あっちは汚れて酷い事になってる」ザバー


うぉぉぉ!!なな…なんだぁ!!

ゾンビが動いてる…

おーい!!誰か武器持ってないのかぁ!!

ぎゃぁぁぁぁののの…のろいだぁぁ


衛兵1「なんか向こうの方が騒がしいな…」

衛兵2「ちょ…ちょちょちょ…足元!!」

衛兵3「手が…歩いてる」

衛兵1「うぉ!!あっちにも!!ちょいこれヤバく無いか?」

衛兵2「逃げろ!!」ダダッ

衛兵3「うわぁぁぁぁぁぁ」ダダッ



---------------------



アサシン「クックック蟻の子を散らすとはこの事を言うアッハッハ」

エルフゾンビ「ガァァァ」

アサシン「さて…精霊の御所は南西の方角か…あの木だな?」グイ

アサシン「さぁ相棒…精霊樹とご対面だ…自分の道は自分で選べ」


フワフワ ドッスン

612: 2020/10/15(木) 18:47:44.25 ID:6+J6cz5f0
『精霊樹』


ソヨソヨ ソヨソヨ


アサシン「たった数ヶ月でこれほど成長するか…相棒!精霊樹に寄り添え」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

アサシン「精霊樹…ゾンビになったエルフを連れて来た…導いてやってくれ」

精霊樹「…」サラサラ

アサシン「元はエルフだ…森の一部になれるかと思って連れて来た」

エルフゾンビ「ヴヴヴ…」ドタリ

アサシン「精霊樹に抱かれて逝ったか?」

エルフゾンビ「…」シーン

アサシン「後から他のゾンビがこの辺にやって来る…ついでに木にしてやって欲しい」

精霊樹「…」サラサラ

アサシン「…」

アサシン「まぁ…私には精霊樹の声など聞こえんな」


ズズズズ ズーン


アサシン「ん?何だ今の音は…」スチャ

??「武器を収めなさい」

アサシン「精霊樹の声か?」

??「そのエルフゾンビをこちらに連れて来なさい」

アサシン「エルフか?姿を見せろ…」

ハイエルフ「…」ノソー

アサシン「ハイエルフか…」---でかい---

ハイエルフ「他の人間に見られるといけません…早くそのエルフゾンビをこちらへ」

アサシン「あ…あぁ…相棒!あのハイエルフに付き従え」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

ハイエルフ「あなたもこちらに来なさい…精霊樹の導きです」

アサシン「私も行って良いのか?」---この階段は…私が探していた深層への入り口---

ハイエルフ「早く…」

アサシン「あぁ…」タッタッタ


ズズズズ ズーン

613: 2020/10/15(木) 18:48:33.44 ID:6+J6cz5f0
『精霊の御所』


アサシン「守って居るのはトロールか…この中が精霊の御所なのだな?」

ハイエルフ「精霊樹からいきさつは聞いて居ます…奥へ」ノソノソ

アサシン「いきさつ?」

ハイエルフ「…」ノソノソ

アサシン「ハイエルフが人間と会話するのは野暮という事か」


---かつてのシャ・バクダの森は生きていると聞いて居たが---

---深層部が根の森だったとは---

---魔女が千里眼で覗いた根の森がこれか---

---ここにオーブが眠って居るのだな---


エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

アサシン「相棒…森にはならなかったのだな?それともなれなかったのか?」


---間近にハイエルフを見るのは初めてだが---

---巨人だな2メートル20という所か---

---こいつは女の様に見えるが男なのか?---

---ドラゴンライダーに乗って居たのは---

---こんな巨人だったか…勝てる相手では無いな---

614: 2020/10/15(木) 18:49:04.77 ID:6+J6cz5f0
ハイエルフ「エルフゾンビを中央の器に…」

アサシン「器?この液体の中に漬ければ良いのか?」

ハイエルフ「…」

アサシン「余分な事は話さんか…相棒!器の中で横になれ」

エルフゾンビ「ヴヴヴ…」ズリズリ チャポン

ハイエルフ「人間よそこに掛けなさい」

アサシン「掛ける?この石か?」スッ

ハイエルフ「エルフゾンビは精霊樹の樹液…エリクサーに浸かっています…直に意識を取り戻すでしょう」

アサシン「おぉ…心は生きて居たか…ハイエルフでもゾンビになったハーフエルフを助ける事はあるのだな」

ハイエルフ「ここはエルフの森の外…精霊樹の導きに従ったまで」

アサシン「導きか…そうだなハイエルフが人間に関わるなど過去に例が無いな」

ハイエルフ「精霊樹があなたに質問をしています…勇者の行方を話しなさい」

アサシン「勇者…剣士の事か…まだ生きている筈だ…行方は分からない」

ハイエルフ「勇者の魂の一部を精霊樹が預かっている」

アサシン「魂の一部?話が読み込めんな」

ハイエルフ「勇者から零れ落ちた魂を掴まえたと言って居ます」

アサシン「剣士を連れて来れば良いのか?分かった…見つけたら連れて来る」

エルフゾンビ「ぐふっ…」

アサシン「おぉ!!気が付いたな?」

エルフゾンビ「私は…どうな…っている…ヴヴヴヴ」

ハイエルフ「瞑想で休みなさい」

エルフゾンビ「瞑…想?」

アサシン「人間の住まう環境で育ったハーフエルフだ…瞑想の仕方なぞ知らんと思う」

ハイエルフ「精霊樹が導くと言って居ます…目を閉じなさい」

エルフゾンビ「目…を…」

ハイエルフ「瞑想は半日ほど時間を要します…人間よ…あなたはどうする?」

アサシン「半日か…私もずっと寝て居ないのだ…少し横になる」

ハイエルフ「…」ノソリ ノソ ノソ



------------------

615: 2020/10/15(木) 18:49:48.44 ID:6+J6cz5f0
アサシン「…」パチ

エルフゾンビ「…」

アサシン「…」---久々に十分睡眠を得た---


---体が軽い---

---ハイエルフは何処へ行ったか---

---エルフゾンビは瞑想中か---

---よく見ると私が横になっていた石---

---これはトロールの一部だな---

---トロールに抱かれて寝てたのか---

---しかし…何と神聖な場所か---


アサシン「…」スック

エルフゾンビ「ぅぅぅ」

アサシン「相棒…目を覚ましたか?」

エルフゾンビ「アサシンか…」

アサシン「気分はどうだ?」

エルフゾンビ「悪くない」

アサシン「クックックお前も私と同じ体になったか」

エルフゾンビ「血に乾いた感覚は残って居る…アサシン…お前もか?」

アサシン「私は少量の血があれば事足りる様だ」

エルフゾンビ「私は生き血をすする真似はしたくない」

アサシン「クックックまだそれを言うか」

エルフゾンビ「どうやら私は精霊樹と共に生きて行かねばならん様だな」

アサシン「そのエリクサーが血の代わりか?それも良い」

エルフゾンビ「初めて瞑想という物を体験した…精霊樹の魂に触れたのだ」

アサシン「ほぅ…ゾンビになっても通じるのか」

エルフゾンビ「精霊樹の声が聞こえる…聞いたぞ?勇者と魔王の関わりを」

アサシン「そうか…わたしが屠った」

616: 2020/10/15(木) 18:50:19.11 ID:6+J6cz5f0
エルフゾンビ「知らずとは言え…わたしが指輪を奪った事が惨事の発端という事もな」

アサシン「クックック悔やむな…済んだことだ」

エルフゾンビ「フィン・イッシュはどうなった?王女は無事なのか?」

アサシン「王女が王となり復興しようとしている…もう手助けはいらぬ」

エルフゾンビ「それを聞いて安心した…セントラルは兄が治めているのか?」

アサシン「そうだな…前王よりも強行なスタンスだ」

エルフゾンビ「兄には兄の正義がある…貫こうとしているだけで悪い人ではない…問題はその側近だ」

アサシン「クックックお前も言えた義理ではない…法王の使いに見事にやられたではないか」

エルフゾンビ「言うな…反吐が出る」

アサシン「さて…これからどうしたい?」

エルフゾンビ「私は精霊樹を守る宿命な様だ…もうこの根の森から離れる事は出来ない」

アサシン「そうか…このドクロの杖をお前に授ける…ゾンビを導いてくれ」

エルフゾンビ「私に不氏者の王になれと言うか?」

アサシン「違う…彷徨うゾンビの魂を救って欲しいのだ…彼らを森の一部にな」

エルフゾンビ「森を作るのか…腐っても私はエルフか…」

アサシン「森を育てるのは精霊樹を守るのに等しいと思うが?」

エルフゾンビ「精霊樹がやりなさいと言っている…フフこんな私でも役に立てる事があるか」

アサシン「実はな…シャ・バクダ遺跡の地下に巨大なカタコンベがあるのだ」


そこには無数のゾンビが未だに彷徨っている…200年前の遺物だ

そしておそらく魔王の片輪も眠っていると思われる

名はリリスというそうだ

人間達はそれを知ってか知らずか掘り起こそうとしているのだ


アサシン「私はな…そのリリスという存在も屠る必要があると思っているのだ」

エルフゾンビ「フフ目覚めたばかりで重い話だな」

アサシン「これから育って行く森に爆弾を抱えたままでは落ち着けまい?」

エルフゾンビ「また精霊樹の声がやりなさいと言う…心の中で聞こえるのは勇者にでもなった気分だ」

アサシン「そうだ…私たちは導きを受けた勇者の一人なのだ…お前が言って居た言葉だ」

エルフゾンビ「フフそうだったな…」

617: 2020/10/15(木) 18:50:54.39 ID:6+J6cz5f0
『気球』


フワフワ


エルフゾンビ「ハイエルフは何も言わないが…放って置いて良いのか?」

アサシン「恐らく事情を知っているのだろう」

エルフゾンビ「同族ではあるが気味が悪い」

アサシン「森の守護者だトロールだって何も言わん…そういうものだ」

エルフゾンビ「カタコンベに行くのか?」

アサシン「お前に状況を見せておきたくてな…気球では目立つから私のアジトに置いて行く」

エルフゾンビ「砂漠に所々生えている木は?んん?倒れたゾンビから生えて居るのか?」

アサシン「どうやらその様だ…精霊樹の影響だな」

エルフゾンビ「なるほど…あの様に森にして行けば良いのか」

アサシン「もうすぐ私のアジト…星の観測所に着く…フードを深く被って顔を隠せ」

エルフゾンビ「もはや私の顔を覚えている者など居るまい?私は常に顔を隠してきた」

アサシン「そうでもない…お前の兄の側近が領主に選出されて来ている…私が屠ってやったが」

エルフゾンビ「不氏者になっても関りは途切れんか…」

アサシン「お前がシャ・バクダに居る事が知れれば又戦争が起きる…今は拗らせたくない」

エルフゾンビ「フィン・イッシュの事か?」

アサシン「再生の最中だ…王女を思ってやって欲しい」

エルフゾンビ「ふむ…読めて来たぞ…ここ遠隔の地にてセントラルとフィン・イッシュが対立関係になっているのだな?」

アサシン「まぁそんな所だシャ・バクダ街がセントラル…オアシス界隈がフィン・イッシュ」

エルフゾンビ「そして遺跡を巡って対立か…奪いたいセントラルと屠りたいフィン・イッシュ」

アサシン「…ここから見てセントラルのどの軍が来ているか分かるか?」

エルフゾンビ「特殊生物兵器部隊…父直下の部隊だった」

アサシン「私は見ていないな」

エルフゾンビ「見ている筈だ…下水でな」

アサシン「下水…ラットマンか?」

エルフゾンビ「ラットマンは成長すると人間を遥かに超える戦闘力を持つ…そして補給が不要」

アサシン「そうか…下水でラットマンを育成していたのか」

エルフゾンビ「さすがにラットマンを連れ歩いては居ないが…間違いなく特殊生物兵器部隊の一員だ」

アサシン「只事では無いのが理解できたか?」

エルフゾンビ「その様だ…」


フワフワ ドッスン

618: 2020/10/15(木) 18:51:30.78 ID:6+J6cz5f0
『星の観測所』


ノソリ ノソリ


アサシン「ここからはラクダで移動だ…乗れるか?」

エルフゾンビ「これでも王族の一人だ…乗馬は一通り経験している」

アサシン「馬とは足の運び方が違う…揺れるから重心に気を付けろ」

エルフゾンビ「このアジトは私が勝手に使っても良いのか?隠れるのには丁度良い」

アサシン「構わんが顔をさらすなよ?ドラゴンの義勇団の者だと言えば通る…後で義勇団の連中に言っておく」

エルフゾンビ「げふっ…げふっ…やはり喉が渇くな」

アサシン「血が欲しいか?ワインならあるが…どうする」

エルフゾンビ「すまん…」

アサシン「気球に積んである…もって来るから待っていろ」タッタッタ

エルフゾンビ「砂漠はゾンビの体にはキツイか…」

アサシン「一瓶持って行け」ポイ

エルフゾンビ「不氏者がワイン片手にラクダで砂漠を周遊か…贅沢な遊びだな」ゴキュ ゴキュ

アサシン「丁度私も喉が渇いていた所だった…お前とは気が合うな」ゴクゴク

エルフゾンビ「アルコールで酔えない…のか?この体は」

アサシン「そうだ…人生の半分を失った気分だ…だがな?私は見つけた…酔いを楽しみたいなら聖水だ」

エルフゾンビ「聖水か…フフ聖水で目を回すか…」

アサシン「不氏者も捨てたもんじゃないという事だ」

エルフゾンビ「フフフハハハ…」

619: 2020/10/15(木) 18:52:00.68 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡』


ガヤガヤ ガヤガヤ


アサシン「軍が居座っているな…100人程か」

エルフゾンビ「ここの下にカタコンベが在るのだな?」

アサシン「そうだが…この状況では近づけまい」

エルフゾンビ「もうじき日が落ちる…私がゾンビを操り騒ぎを起こしている間に中へ入る」

アサシン「同意…」

エルフゾンビ「リリスとやらを見つけたとして葬る手は持って居るのか?」

アサシン「このミスリスダガー2本しか無い…だが魔王を屠った武器だ」

エルフゾンビ「やってみるか」



---日暮れ---



アサシン「クックック…夜通しカタコンベの掃除をやっているのか」

エルフゾンビ「松明がある分夜目の利かないお前には良かったでは無いか」

アサシン「そろそろ行くか?」

エルフゾンビ「近くのゾンビ共…少し暴れまわれ」スチャ

アサシン「さてさて…どれくらい出て来るか」

エルフゾンビ「私の行いはネクロマンサーそのものだな」

アサシン「森を作っていると思え…氏者の魂も救っているのだ…お前は悪いエルフでは無い」

エルフゾンビ「そう言ってもらえると少しは気が落ち着く」

アサシン「出て来たぞ…ゾンビは砂に埋もれていた様だな」


また出たぁぁぁ!!

ゾンビだ…

戦える奴居ないのかぁぁ!!


ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

衛兵「砂の中から出て来る!!誰か武器もってこーーい!!」

アサシン「混乱し始めた…行くぞ」タッタッタ

620: 2020/10/15(木) 18:52:36.75 ID:6+J6cz5f0
『カタコンベ』


衛兵「お前は誰だ!?」

アサシン「又ゾンビが出ている!!こっちも危ない…」

衛兵「何だってぇぇ!!」

アサシン「一旦作業止めてゾンビ退治だ…武器は外のテントで配っている」

衛兵「分かった…お前はどうするんだ?」

アサシン「奥で作業している奴にも伝えに行く…早く行ってくれ」

衛兵「おい皆!!作業中止だ…外のゾンビ退治だ」ダダッ

アサシン「こっちだ…ここの下が巨大なカタコンベだ…おい!?」

エルフゾンビ「…この石造は」

アサシン「200年前の勇者の像だ…見覚えあるのか?」

エルフゾンビ「大剣…」

アサシン「夢幻の記憶か?」

エルフゾンビ「よく思い出せなくなったが…見覚えがある」

アサシン「今は良い…早く下に行くぞ」グイ

エルフゾンビ「済まない…」タッタッタ


外でゾンビが出てるらしい

どうする?俺らバケツしか持ってないぞ?

こっちでもいつ湧いて来るか分かんねぇ

ひとまず武器取りにいくぞ


衛兵「おい!お前!!武器を持っているな?何処に行く」

アサシン「カタコンベの安全確保だ…指示されて此処に来た」

衛兵「そうか…外はどうなって居る?」

アサシン「砂の中からゾンビが複数湧いてきて混乱している」

衛兵「複数…数は?」

アサシン「20体程だ」

衛兵「そんなに居るのか…やばいな武器が足りんかもしれん」

アサシン「早く行った方が良い」

衛兵「分かった…お前も気を付けろ…謎の物体が動いているからな」

アサシン「分かった…」---謎の物体?---

621: 2020/10/15(木) 18:53:30.71 ID:6+J6cz5f0
『深層』


エルフゾンビ「見つけたな…これがリリスか?」

アサシン「でかい心臓…なのか?悪魔の卵…か?」

エルフゾンビ「カタコンベの壁面に癒着しているな…これでは取り出せん」

アサシン「下半分はまだ液体の中か…」スチャ

エルフゾンビ「そのダガーでこの肉壁を貫けると思うか?」

アサシン「奥義!!デュアルストライク!!」ザクン ザクン

エルフゾンビ「無理だな…葬る方法を考え直した方が良い」

アサシン「バックスタブ!!」ザクリ グサァ

エルフゾンビ「中で何か動いている…蛇の様な物だ」

アサシン「リリスに間違いなさそうだ…見えるか?」

エルフゾンビ「何処が頭部なのか分からない…だが魔物である事は間違いなさそうだ」

アサシン「O房が見えるな」

エルフゾンビ「どこだ?」

アサシン「ここの薄い肉壁から少しだけ見通せる」

エルフゾンビ「人のO房か…首が無いぞ」

アサシン「見当たらんな」


”アサシン聞こえるか?”


エルフゾンビ「誰だ!?」

アサシン「魔女…聞こえる…こっちの声は届くのか?」ゴソゴソ

エルフゾンビ「貝殻から声が?」


”アサシン…帰って来るのじゃ…その魔物は主ではどうにもできぬ”

”危険じゃから戻って来い…石にされるぞよ”


アサシン「どうやら魔女の言う通りやもしれん…見ろ…私の手が動かん」

エルフゾンビ「引き上げるか…うぐっ…足が動か…ない」ドテ

アサシン「ちぃぃ石化が始まってるのか…」グイ

エルフゾンビ「私に肩を貸した状態で走れるか?」ズリズリ

アサシン「石化の進行が早い…俺達の命運は尽きたやもしれん」ヨタヨタ

エルフゾンビ「ゾンビ達よ…私達を精霊の御所まで運べ」

アサシン「クックック…ゾンビ頼みか」


そっちに行ったぞ!!囲めぇ!!

くっそ!こんな武器じゃゾンビを倒せない

おい!新手だ!!…でかい!!

うぉぉぉエルフだ!!逃げろ!!


アサシン「…ここまでだなフゥ…足がもう動かせん…済まんな巻き込んでしまって」

エルフゾンビ「フフ砂漠で飲んだワインは旨かったな」

622: 2020/10/15(木) 18:54:10.08 ID:6+J6cz5f0
ピョン クルクル シュタッ


ハイエルフ「…」グイ

アサシン「おぉぉハイエルフか…まさか助けに来るとは」

エルフゾンビ「フフフハハハまだまだ私たちは生かされるのか…ハハハ」

ハイエルフ「…」シュタタ シュタタ

623: 2020/10/15(木) 18:55:08.54 ID:6+J6cz5f0
『精霊の御所』


アサシン「ううん…ん?ここは…精霊の御所か…私は気を失っていたか」

エルフゾンビ「目を覚ましたな?手足は動くか?」

アサシン「動く…な」グッパ グッパ

エルフゾンビ「エリクサーには石化を治す効果もある様だ」

アサシン「そうか…助かったな…ハイエルフは何処に行った?」

エルフゾンビ「さぁ?私が目覚めた時にはもう居なかった」

アサシン「礼を言っておきたかったな」

エルフゾンビ「それには及ばない…どうやらハイエルフは人間の心を読める様だ」

アサシン「そうか…さて…私は一旦フィン・イッシュに帰るとするが…」

エルフゾンビ「私はゾンビを操ってカタコンベの邪魔をしておけば良いのか?」

アサシン「そこは任せる…事情はつかめただろう?」

エルフゾンビ「そうだな…私は精霊樹を守りながらリリスの状況を見守っておく」

アサシン「ハイエルフはこの森をどうするつもりなのか知っておきたかった…」

エルフゾンビ「私が話せる機会があれば聞いておく」

アサシン「では目覚めて早速だが行くとする…上手くやれ相棒!」



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624: 2020/10/15(木) 18:55:44.11 ID:6+J6cz5f0
『精霊の御所』


アサシン「ううん…ん?ここは…精霊の御所か…私は気を失っていたか」

エルフゾンビ「目を覚ましたな?手足は動くか?」

アサシン「動く…な」グッパ グッパ

エルフゾンビ「エリクサーには石化を治す効果もある様だ」

アサシン「そうか…助かったな…ハイエルフは何処に行った?」

エルフゾンビ「さぁ?私が目覚めた時にはもう居なかった」

アサシン「礼を言っておきたかったな」

エルフゾンビ「それには及ばない…どうやらハイエルフは人間の心を読める様だ」

アサシン「そうか…さて…私は一旦フィン・イッシュに帰るとするが…」

エルフゾンビ「私はゾンビを操ってカタコンベの邪魔をしておけば良いのか?」

アサシン「そこは任せる…事情はつかめただろう?」

エルフゾンビ「そうだな…私は精霊樹を守りながらリリスの状況を見守っておく」

アサシン「ハイエルフはこの森をどうするつもりなのか知っておきたかった…」

エルフゾンビ「私が話せる機会があれば聞いておく」

アサシン「では目覚めて早速だが行くとする…上手くやれ相棒!」



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625: 2020/10/15(木) 18:57:53.64 ID:6+J6cz5f0
『亡国フィン・イッシュ_王の間』


バン! ガチャリ


王女「魔女…どうされましたか?」

魔女「ふぅ…ふぅ…」

王女「粗ぶっておられますね?」

魔女「王女…世界中から書物を集めるのじゃ」

王女「はい」

魔女「シン・リーンへの書状をわらわが書く故…気球をすぐに飛ばすのじゃ」

王女「どうしたのですか?」

魔女「リリスは既に目覚めておる…わらわ達はまんまと魔王に乗せられシャ・バクダにて闇を祓った」

王女「乗せられ?どういう事でしょう?」

魔女「封印されておるリリスに注意を向けさせる為じゃ…今まで誰もあの地に足を踏み入れておらん」

王女「人間を使い掘り起こさせて居ると…」

魔女「そうじゃ…でなければわざわざあの地にゾンビを集めたりはせんじゃろう」


わらわが浅はかじゃった

師匠が森を焼いてでも封印した理由をもう少し考えるべきじゃった

魔王は初めから自ら蘇る気なぞ無いのじゃ

人間を勇者を利用してリリスを呼び覚ますのが目的じゃ


魔女「ややもすると既にリリスの腹の中に魔王が息づいているやもしれぬ…子宮は魔王の器になりうるでな」

王女「魔王は深淵に落ちたのでは無いと?」

魔女「そうじゃ…闇と一緒に子宮という器に収まった可能性があるのじゃ」

王女「いつごろ生まれて来るのでしょう?」

魔女「あれから半年は経っておる…あと3ヶ月も経てば生まれてしまうやもしれぬ」

王女「今動き出さないと間に合いませんね」

魔女「もうわらわが禁呪を用いるより他に無いやもしれん」

王女「書物の収集を急ぎます…」

626: 2020/10/15(木) 18:58:37.65 ID:6+J6cz5f0
『書庫』


ブツブツ ブツブツ


アサシン「魔女!!王女から話は聞いたぞ…」

魔女「おぉ無事に戻ったか」

アサシン「何か手はありそうか?」

魔女「調べておる…王女は一緒に来ておらぬのか?」

王女「はい…御用でしょうか?」

魔女「この地にクサナギという剣は伝わっておらぬか?」

王女「神事用の剣がクサナギという名を持っていますが劣化して剣としては使えないかと」

魔女「良い…之に持て」

王女「持って参ります」スタスタ

アサシン「その武器で倒すという事か?」

魔女「出来るかどうか分からぬ…じゃが伝説ではその武器で蘇生されたリリスを倒しておる様じゃ」

王女「お持ちしました…どうぞ」

アサシン「クックックどんな剣かと思えばダガーより少し長い程度か」

魔女「随分古そうじゃのぅ…」

アサシン「これはもう刃が付いて居ない…武器にはならんな」

魔女「そうか残念じゃ…やはりわらわが量子転移で穴を開けるしか無さそうじゃのぅ」

アサシン「穴だと?」

魔女「主のミスリルダガーではリリスを包んでおる肉壁に穴を開けられんであろう?」

アサシン「開けた後どうする?」

魔女「主がリリスの腹を裂き子宮を取り出せ」

アサシン「クックック出来ると思って居るのか?」

魔女「無理じゃろうのぅ…」

アサシン「量子転移という魔法は離れた場所からは使えないのか?」

魔女「手で触れる距離で無いと転移出来ぬ…わらわが量子転移で子宮を取り出すならリリスに触る必要があるのぅ」

アサシン「危険過ぎるな…1分弱で石化もある」

魔女「隕石を落としてもあの深さまで到達するか分からん上に被害が大きい」

アサシン「石化はエリクサーで凌ぐとして…どうする?」

魔女「主が魔王を屠った技は使えんのか?」

アサシン「ハートブレイクか…仮氏状態に出来るのは数分だが…それで行けるか?」

魔女「危険じゃが…わらわが量子転移で肉壁に穴を開け…主がリリスを仮氏状態にする…次にわらわが量子転移で子宮を奪う」

王女「本当に危険な作戦ですね…」

魔女「わらわの師匠が封印した魔物が目覚めていると知った以上もう放ってはおけぬ」

王女「そうですか…私はとても心配です」

627: 2020/10/15(木) 18:59:32.60 ID:6+J6cz5f0
『1週間後』


王女「シン・リーンから気球が帰ってきました」

魔女「やっと来たか…壺は在るか?」

王女「こちらです…書物は後ほど運びます」

魔女「シャ・バクダに行くとアサシンに伝えてくれぬか?わらわは準備する」

王女「わかりました…いつ出立されますか?」

魔女「次の定期便じゃな」

王女「私は行く事が出来ませんので…」

魔女「分かっておる…主は王の務めを果たせば良い」

王女「後ほどアサシン様を連れて気球の方へ行きます」




『気球』


伝令「あと10分ほどで出発します…」

アサシン「魔女!待たせたな」

魔女「間に合えば良い」

アサシン「気合が入っているな?子供の身なりとは…」

魔女「今回は失敗出来ぬ故…万全で挑むのじゃ」

アサシン「私もミスリルダガー2本を打ち直してミスリルショートソードにしてきた」

魔女「ほぅ…多少長くなったかの?」

アサシン「これが今の私の最強武器だ…心材に例のクサナギを使っている」

魔女「それは良いのぅ」

王女「少しでもお役に立てればと思いまして」

魔女「伝説の武器じゃ…心して使うのじゃ」

伝令「そろそろ出発します…」

王女「お気をつけて…ご武運をお祈りしています」


フワフワ

628: 2020/10/15(木) 19:00:00.80 ID:6+J6cz5f0
魔女「さてアサシン…主に言っておかねばならぬ事がある」

アサシン「何だ?」

魔女「わらわの魔法…量子転移の事じゃ…これは禁呪でのぅ…非常に危険なのじゃ」

アサシン「危険というと?」


この壺はな?封印の壺という物じゃ…この中に子宮を封じるつもりなのじゃが…

量子転移で中に封じる際に転移量が制御できない上…

わらわが次元の狭間に迷い込む可能性があるのじゃ…つまり主とはぐれる

わらわが消えてしもうたらこの壺を持って逃げるのじゃ…よいな?


アサシン「次元の狭間とはどこの事だ?」

魔女「制御出来ぬ…じゃが可能性があると言う話じゃ…迷わんで帰れる可能性もある」

アサシン「ふむ…魔女と逸れない為にはどうすれば良い?」

魔女「余裕があるならわらわの傍に居れば良い…じゃが同時に次元の狭間に迷うのは良いとは思わんな」

アサシン「壺が残されてしまうと言う事か?」

魔女「それも分からんのじゃ…故に禁呪となっておる」

アサシン「賭けだな…」

魔女「勇者は命を張ったのじゃ…わらわも命を張らぬとフェアでは無いじゃろう?」

アサシン「クックック気にしているのか」

魔女「そうじゃ…わらわは唯一女海賊に頭が上がらん…それほど純粋な愛を見せつけられたのじゃ」

アサシン「よし…私も気合が入って来た」

魔女「しばらくはゆるりとワインでも楽しもうぞ」


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629: 2020/10/15(木) 19:00:34.64 ID:6+J6cz5f0
『星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


魔女「随分セントラルの兵がうろついて居るのぅ」

アサシン「そうだな…ゾンビが出るから増援しているのだろう」

魔女「エルフゾンビは上手くやっている様じゃな…木が増えて居る」

アサシン「うむ…私は精霊の御所に行ってエリクサーを仕入れて来る…日暮れ前には戻るからここに居てくれ」

魔女「では望遠鏡でも覗いておこうかの…」



『日暮れ』


アサシン「戻った…暗くなる前に移動しよう」

魔女「エルフゾンビはどうするのじゃ?」

アサシン「今回は危険だから遠くで見ていろと言っておいた」

魔女「賢明じゃ…して?エリクサーは持って来たろうな?」

アサシン「2瓶づつだ」

魔女「十分じゃな…では行くぞよ?」

アサシン「衛兵達はどうする?強行突破する気か?」

魔女「考えておる…わらわが睡眠魔法で眠らせる故…心配するでない」

アサシン「全員眠らせられるのか?」

魔女「勿論じゃ」

アサシン「クックックそんな便利な魔法があるなら初めから使えると言って欲しかったものだ」

魔女「この魔法は魔王がつかうまやかしと似た作用じゃ…味方にも掛かってしまうでのぅ」

アサシン「私も寝てしまうというのか?」

魔女「幻惑魔法は知っている者には掛からぬ…故に主には効果が無い」

630: 2020/10/15(木) 19:01:08.66 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡』


ヒュゥゥゥ サラサラ


魔女「ちと詠唱に時間が掛かるで待っておれ」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

アサシン「…」

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「効果時間は?」

魔女「30分で切れるが明日の朝まで寝る者も居るじゃろうな」

アサシン「急ごう」グイ

魔女「これ引っ張るな」


衛兵「ぅぅぅ」スヤ

アサシン「…立ったまま寝てるのか?」

魔女「幻惑じゃ…寝て居るのと変わらぬ」

アサシン「これほど簡単に潜入できるとは…」

魔女「いくぞよ」ノソノソ

631: 2020/10/15(木) 19:01:51.21 ID:6+J6cz5f0
『カタコンベ_深層』


アサシン「肉壁を鎖で拘束しているな」

魔女「構わぬ…量子転移では関係ない…空間ごと切り取るでな」

アサシン「エリクサーを一口飲んでおく」ゴク

魔女「そうじゃな…」ゴク

アサシン「準備は?」スラーン チャキ

魔女「いくぞよ?量子転移!」シュン


ザバァァァァァァ


アサシン「中から液体が…」

魔女「まだリリスも動いて居らんな…液体が出切ってから中に入れ」

アサシン「やはり首から上が無い…こいつは脳が無いという事か?」

魔女「そうじゃな1700年前に切り取られたままなのじゃろう」

アサシン「体だけ蘇生しようとしていたのか」

魔女「リリスの子宮が狙いじゃな…アサシン!リリスが暴れる前に心臓を止めよ!」

アサシン「分かった!!ハートブレイク!!」ズン!!ズブズブ

リリス「!!?」ニョロニョロ

魔女「のたうち回っておるな…」タジ

アサシン「もう少しだ…」ズブズブ

リリス「…」ピク ピク

アサシン「今だ!!」

魔女「子宮は何処じゃ?透視魔法!」

アサシン「あと30秒」

魔女「見つけた…いくぞよ?量子転移!」シュン


ドクドクドクドク


アサシン「壺から血があふれて…」

魔女「量の制御が出来ぬ…こぼれた肉片を切り刻め!!」


ドクドクドクドク ボトン


アサシン「はぁ!!」ザクン ザクン スパ

魔女「よし…はぐれて居らぬな?」

アサシン「その様だ…壺はフタが出来ないのか!?」

魔女「やろうとしておる…むむむむ」ドクドク

アサシン「まずい…リリスの心臓が動き出した」

魔女「逃げるぞよ…」ノソノソ

632: 2020/10/15(木) 19:02:25.36 ID:6+J6cz5f0
アサシン「先に上がれ」ザブザブ

魔女「血が多いのぅ…むむむむ」


ニョロニョロ ドタ バタ


アサシン「リリスがのたうち回っている…」

魔女「なんと禍々しい姿か…」

アサシン「早く上に上がれ!!」

魔女「出口は何処じゃ?」

アサシン「来た道を…無い!!どういう事だ!?」

魔女「まずいのぅ…ここは次元の狭間じゃ…空間が歪んでおる」

アサシン「2人揃って次元の狭間に来たのか…ちぃぃぃ出る方法は?」

魔女「透視魔法!…見えぬ」

アサシン「ちょっと待ってくれ…石化が始まってる」

魔女「あぅぅ…」

アサシン「おい!!魔女!!エリクサーを!!」グビ

魔女「…」

アサシン「体が小さい分石化も早いのか…魔女!!飲め!!」クイ

魔女「…」

アサシン「ええい!!壺だけでも私が持ち帰る」グイ

魔女「…」

アサシン「フタを…ふん!!」ギュゥ

魔女「…」

アサシン「はぁ…はぁ…」


---どっちに行けば良い---

---出口はどこだ!?---

---私はどこを走っている?---


633: 2020/10/15(木) 19:02:56.54 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡』


ヒュゥゥゥ サラサラ


衛兵1「隊長!!しっかりしてください…」

隊長「ん…ぁぁぁ居眠りしていたか」ゴシゴシ

衛兵1「様子がおかしいです!」

隊長「又ゾンビが来たか!?」

衛兵1「いえ…みんな寝ている様です」

隊長「起こして回れ!!」

衛兵1「おい!!起きろ!!」パンパン

衛兵2「んぁぁ…」パチ

隊長「これは緊急事態だ!!全員起こして武器を持て!!」


突っ立って無いで動け!!

目を覚ませ!!

おい!!しっかりしろぉ

武器携帯指示だ…武器を持て!!


衛兵1「隊長!!カタコンベで何か起きている様です」

隊長「例の奴が動き出したのか?」

衛兵1「分かりません…行ってみましょう!」

隊長「分隊A班!!カタコンベ入り口に集合!!B班は後方で待て!!」


634: 2020/10/15(木) 19:03:45.29 ID:6+J6cz5f0
『カタコンベ』


隊長「下はどうなって居る?」

衛兵1「例の奴が鎖の中で暴れまわっています」

隊長「見られるか?」

衛兵1「はい…少し降りたら遠目に見えます」

隊長「なぜ血まみれなのか…だれか見て居ないのか?」

衛兵1「気が付いたらあの様な状態だったそうです」

隊長「急いで特殊生物兵器部隊に連絡しろ」

衛兵1「はっ!!」ダダ

隊長「見た所首が無いな…どういう事だ?何の魔物だ?」

衛兵2「鎖の一部が切れている様です…出て来るかもしれません」

隊長「退避した方が良いな…全体!!カタコンベ入り口まで退避!!」



その日カタコンベから這い出て来たリリスは

砂漠を宛てもなく這いずり回り流した血で砂漠を赤く染めた

軍隊は成すすべも無く見守るだけだったが

のちに到着した特殊生物兵器部隊により捕獲され

研究材料としてセントラルまで移送された



数年後

635: 2020/10/15(木) 19:04:31.24 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡』


調査員「先日出土した石造を見に来たのだが…」

作業員「はい…遺跡の1層目に3体並べてあります」

調査員「案内して欲しい」

作業員「入り口から入ってすぐ左ですよ」

調査員「すこし説明も聞きたい」

作業員「はぁぁしょうがないなぁ…何人目だ?」ブツブツ

調査員「すまないね」テクテク

作業員「…これですよ」

調査員「ふむ…どこら辺で出土したのかね?」

作業員「大きい方がこのフロアの側壁で小さい方が下層の側壁ですわ」ハァ

調査員「側壁…うーん」

作業員「もういいっすかね?」

調査員「他の調査員は年代とか何か話して居なかったかね?」

作業員「そこのでかい石造と明らかに年代が違うって…あんたまで俺を疑うんすかね?」

調査員「疑う?」

作業員「俺が出土したって嘘付いてる様な言い方…」

調査員「あぁそういう事か…疑う気は無い」

作業員「はいはい…じゃあ作業に戻りますんで」スタスタ

調査員「ありがとう…」---見るからに昨日作ったような石造だ---

調査員「…」---格好も古代の物には思えない---

636: 2020/10/15(木) 19:05:17.85 ID:6+J6cz5f0
『日暮れ』


作業員「そろそろ戻らないとオアシスまで帰れなくなりまっせ?」

調査員「あぁ…もうそんな時間か」

作業員「何か分かった事あんすか?」

調査員「うーん…この大きな方の石造は何か抱えていたような形をしているけれど…他になにか無かったかね?」

作業員「あぁ…同時に壺が出土してますわ」

調査員「その壺は?」

作業員「考古学者と名乗る人が昨日持って行ったんすよ」

調査員「ふむ…私が知らないという事はフィン・イッシュ国の調査員か…」

作業員「俺も早く帰りたいんでもう出て貰っていいっすか?」


ヴヴヴヴヴヴヴヴ


調査員「ん?何の音だ?」

作業員「うわ!!まずい…」

調査員「誰か来る…」

作業員「ゾンビだよゾンビ!!早く外に逃げて!!」グイ

調査員「ゾンビはもう出ないと聞いて居たが…」タッタッタ

作業員「知るかよ…たまに出るんだ」

調査員「衛兵は?」

作業員「もう帰ってるよ…はやくラクダに乗ってオアシスまで戻ってくれ」

調査員「誰か遺跡の中に入って行くが…」

作業員「え!?…もう日が落ちてるって言うのに」

調査員「君!!一人で戻るのか?」

作業員「しょうがないだろう…今の人も帰れなく…あ!!!」

調査員「石造を担いでる?」

作業員「あいつは盗掘だ!!…にゃろう!!」ダダ

ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…ガァァァ」ズリズリ

作業員「うわぁ…」

調査員「君!!だめだ…衛兵に連絡するのが先だ」

作業員「ちくしょう…又俺が嘘つきって言われる…」

調査員「私が証人になる…早くラクダに」

作業員「くそう!!」ダダ

637: 2020/10/15(木) 19:06:10.74 ID:6+J6cz5f0
『精霊の御所』


魔女「ぅぅぅ」

エルフゾンビ「気が付いたな?」

魔女「わらわはどうなっておるのじゃ?」

エルフゾンビ「エリクサーで石化の治癒待ちだ」

魔女「封印の壺はどうなった?」

エルフゾンビ「壺?何の事だ?」

魔女「わらわは壺を持って居らなかったか?」

エルフゾンビ「さぁ?」

魔女「アサシンが持って行ったな?…アサシンはどこじゃ」

エルフゾンビ「まだ目を覚まして居ない…アサシンも壺は持っていなかったぞ?」

魔女「どこぞに隠したか…わらわはまだ目が見えぬ」

エルフゾンビ「慌てないで治癒を待て」

魔女「頭が混乱しておる…どの様に次元の狭間より出たのじゃろう?」

エルフゾンビ「次元の狭間だと?お前たちは7年もの間行方不明だったのだぞ?」

魔女「何!?7年も石化して居ったのか?」

エルフゾンビ「ふむ…精霊樹が昨日突然お前たちを発見したのだ…7年間何処を探しても居なかった」

魔女「次元を超えたのじゃな…未来に来た様じゃ」

アサシン「げふっ…げほげほっ」

エルフゾンビ「おお!!目を覚ましたか!」

アサシン「俺は…何処を走ってる…げほっ」

魔女「アサシン!!壺は何処じゃ?」

アサシン「その声は魔女か…壺は俺が持ってる…目が見えない…俺はどうなってる!?」

エルフゾンビ「2人共落ち着け…ここは精霊の御所だ」

アサシン「又石化から救われた…のか?」

エルフゾンビ「そうだ…まだ石化の治癒が終わっていない」

魔女「待てぬ…わらわは壺を封印して居らぬ…壺のフタを…」

アサシン「フタは俺が閉じた…それで良かったか?」

魔女「ほっ…良い…良くやった」

アサシン「クックック兎に角…作戦は成功か?」

魔女「そうじゃ…壺に封印さえしてしまえば出る事は出来ぬ」

エルフゾンビ「壺は持っていなかった様だぞ?」

アサシン「私が抱えて…手が動かん…私は壺を持っていなかったのか?」

魔女「良くないのぅ…次元の狭間に置いて来てしもうたか…」

エルフゾンビ「お前たちはしばらくエリクサーに浸かっていろ…私が探してくる」

638: 2020/10/15(木) 19:07:05.52 ID:6+J6cz5f0
『数時間後』


アサシン「7年も未来に来てしまったのか…王女が心配だな」

魔女「千里眼で確認した…大丈夫じゃ…それよりも壺の行方じゃな」

アサシン「あの壺のフタを開けるとどうなる?中身が溢れ出すか?」

魔女「簡単には開かんが開けてしまうと出て来るじゃろうのぅ」

アサシン「簡単には開かないというと?」

魔女「封印の力を上回る力じゃな…わらわでは測れぬ」

アサシン「とりあえずは安心か…」

魔女「そうじゃが…誰も触れぬ場所に置くべきじゃ…何が起こるか分からんでの?」

アサシン「なるほど…そういう事か」

魔女「ん?」

アサシン「リリスの首が無いのはそうやって何処かに封印されたのだな?」

魔女「もう誰も封印された場所を知る者は居らぬ…古文書を見ても分からんじゃろうのぅ」

アサシン「クックック…アーッハッハ結局最後に魔王を屠ったのは私という訳か」

魔女「そういう言い方もあるが…格好良くは無いのぅ」

アサシン「これがクサナギの剣の効果か…クックック」

魔女「壺を隠すまでは仕事が残っておる」

エルフゾンビ「戻ったぞ…石化は解けた様だな?」

魔女「壺は無かったか?」

エルフゾンビ「何処を探しても見つからない…それよりも遺跡周辺で騒ぎになって居てこれ以上探せない」

アサシン「騒ぎ?どういう事だ?」

エルフゾンビ「お前達を運び出す所を人に見られたのだ」

魔女「わらわ達はカタコンベで石化しとったのじゃな?」

エルフゾンビ「そうだ…そこから運び出した」

魔女「ふむふむ…次元の狭間は時間だけを超える様じゃな…つまり過去の物を量子転移出来ると言う事か…」ブツブツ

魔女「ではどうやって触る?…待てよ過去とは記憶の事では無いのか?空間は過去に記憶として繋がっていると仮定して」ブツブツ

魔女「記憶を手で触るとはどういう事じゃ?もし記憶から量子転移出来るなら過去は丸ごと現在に繋がる…時間とは何じゃ」ブツブツ

アサシン「おい…」

エルフゾンビ「…」

アサシン「魔女はまだ混乱している様だ」

エルフゾンビ「夜明けまでまだ間がある…ゆっくりして行け」


ブツブツブツブツ…

ブツブツブツブツ…

639: 2020/10/15(木) 19:08:00.32 ID:6+J6cz5f0
『日の出』


アサシン「私は星の観測所まで行って来るが…魔女はどうする?」

魔女「わらわも行くぞよ?」

エルフゾンビ「あの場所はもう接収されて私は近づけない」

アサシン「何!?私の資産なのだが…」

エルフゾンビ「7年も経って居るのだ…状況は昔と違う」

アサシン「うーむ…まず情報収集だな」

エルフゾンビ「今は衛兵が出回って居るぞ?魔女の恰好は石造と同じではマズイと思うが?」

魔女「ほう?これで良いか?変性魔法!」グングングン

エルフゾンビ「はっ…大人に…」

アサシン「お前は知らなかったのか…魔女は変身するのだ」

エルフゾンビ「赤い目の魔女…まさか君が…」

魔女「少し法衣が小さいが動けん事も無い…これで良いか?」

エルフゾンビ「…」

魔女「変な目で見るでない…主は何を驚いておる」

アサシン「目の当たりにすると普通は驚く」

エルフゾンビ「私はセントラルの第2皇子だ」

魔女「じゃから何じゃ?」

エルフゾンビ「何も聞いて居ないのか?」

魔女「はて?知らんのぅ…何か有ったかのぅ?」

エルフゾンビ「婚約の話を…」

魔女「求婚が何度も来て居ったが…主だったのかえ?…わらわはその様な話に興味なぞ無い」

アサシン「クックック相棒!!見事に振られたぞクックック」

エルフゾンビ「フフ…第2皇子だったのは昔の話か…今は精霊樹を守るエルフゾンビだ」

魔女「エルフには興味あるがゾンビには興味が無い…アサシン行くぞよ?」

アサシン「酷い事を言うのだなクックック」



『オアシスへ続く林』


魔女「随分と風景が変わったのぅ…遺跡周辺はもう森になっておる」

アサシン「現在地が分からなくなるな…どこがどのオアシスだったのか…」

魔女「主はどうするつもりじゃ?」

アサシン「王女に私たちの無事を伝えなくてはな」

魔女「そうじゃな…壺を探すのは王女の手を借りた方が良いかもしれん」

アサシン「南西のオアシスまで歩くのは遠い…どこかでラクダを手に入れないとな」

魔女「一番近いのは星の観測所じゃが…先に行ってみるかえ?」

アサシン「一応様子を見て行こう…知った顔が居るかもしれん」

640: 2020/10/19(月) 21:05:42.65 ID:iNLvSB+c0
『星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


男「待て待て…お前たちは誰だ?」

アサシン「私はこの建屋の持ち主だったのだがドラゴンの義勇団は何処に行った?」

男「ドラゴンの義勇団?わーっはっは…いつの話をしているのか」

アサシン「私の気球はどうなった?」

男「知らんなぁ…お前は義勇団の関係者なのか?」

アサシン「どう答えて良いか分からんが…」

男「う~ん…女連れかぁ」

アサシン「この建屋の今の持ち主は誰だ?」

男「フィン・イッシュ領事が使われている」

アサシン「ほう…それは都合が良い…領事に目通り出来るか?」

男「今は不在だ」

アサシン「そうか…中で待たせてもらう」ツカツカ

男「おとととと…待て待て…勝手に入って貰っては困る」

アサシン「こういえば伝わるか?ドラゴンの義勇団のアサシンが帰って来た」

男「んん?うーん…女連れ…もしかして女王様が探してる2人か?」

アサシン「多分そうだな…通って良いか?」

男「何か証拠になるような物は持って無いのか?」

アサシン「…」スラーン

男「おっとぉ…いきなり武器を抜くたぁどういう事よ」

アサシン「クサナギの剣だ…柄の銘を見ろ」

男「おぉ…龍神の文様と刻印」

アサシン「入って良いな?」

男「こりゃぁ大ごとだ…領事が帰って来るまで中で待っててくれ」

アサシン「そうさせてもらう」

男「俺ぁ伝令の所まで走って来るからよぅ…勝手に居なくならないでくれな?」

641: 2020/10/19(月) 21:06:58.50 ID:iNLvSB+c0
『部屋』


魔女「荷物は昔のままじゃな?王女が確保しておいてくれた様じゃ」

アサシン「さきほどの話では女王になった様だな」

魔女「7年も経っておればもう少女では無いであろうな」

アサシン「しかし…随分平和そうだ」

魔女「そうじゃな」

アサシン「見た所セントラルと摩擦が起きている様子も無い」

魔女「んむ…拍子抜けじゃな」

アサシン「壺ごと未来に飛んだからなのか?」

魔女「その可能性もあるのぅ…」


ドタドタ


男「おぉぉ良かった…見張ってろと叱られて来た所だ」

アサシン「領事の行先は?」

男「遺跡の方で何かあったらしいんだ…軍が集まって大ごとになってる」

魔女「わらわ達のせいじゃな」

男「どういう事だ?」

アサシン「話すとややこしい…とにかく私たちが帰って来た事に起因するな」

男「領事を探しに遺跡の方に行ってみるか?」

魔女「わらわは歩き疲れておる…気球は無いのかえ?」

アサシン「厄介ごとに首を突っ込むのはよそう…大人しく待っていよう」

男「そうか…」

642: 2020/10/19(月) 21:07:32.18 ID:iNLvSB+c0
アサシン「ところで…セントラルの兵が見えん様だが?どうなって居る?」

男「シャ・バクダ街の方だ…オアシスの方にはほとんど来ない」

アサシン「遺跡の調査を主導していた筈だったが?」

男「あんた知らないのか?もしかして記憶が無いとかそういうやつか?」

アサシン「話せば長くなるのだが…まぁ記憶が無いのと等しいか…」

男「7年くらい前だったか…遺跡から蛇の様な魔物が出て来てこの一帯は大混乱したんだ」

魔女「リリスじゃな…どうなったのじゃ?」

男「その魔物の血を浴びると石化するもんだから軍隊でも手を焼いてな…」

アサシン「なるほど…それで石化したのだな」

男「何か月も掛けてセントラルの大部隊がやっと捕獲したんだ」

魔女「討伐ではなく捕獲じゃと?」

男「鎖でグルグル巻きにしてどっか持って行った…その後セントラルは遺跡の調査を中止したんだ」

アサシン「今は遺跡の調査をフィン・イッシュが主導しているのか?」

男「女王様があんた達を探すのにオアシス全域の領有を主張したんだ…だから今はオアシス全域フィン・イッシュ領だ」

アサシン「それでセントラルの兵はこちらに来ないのか…」

男「それもあるが…エルフといざこざが起きて忙しいらしい」

魔女「懲りん奴らじゃ…それにしてもアサシン…」

アサシン「あぁ…リリスは特殊生物兵器部隊に持って行かれた様だ」

魔女「んん?始めて聞く名じゃが…セントラルはその様な部隊を持って居るのじゃな?」

アサシン「エルフゾンビ曰くセントラルの主力だ…生物兵器としてリリスの血を使うつもりで捕獲したのだろう」

魔女「…という事は…行先はセントラルか」

アサシン「今は壺の方が先決だ」

643: 2020/10/19(月) 21:08:02.10 ID:iNLvSB+c0
『数時間後』


なぜもっと早く知らせに来んのだ

探したんですがなかなか見つからなかったもので…

伝令は飛ばしたのか?

はい…定期便に乗せました


ドタドタ


魔女「来たようじゃのぅ?」

アサシン「…」

領事「これはこれはアサシン様と魔女様に御座いますね?」

アサシン「単刀直入に聞く…遺跡で壺を見ていないか?これくらいの大きさの壺だ」ゴソゴソ

領事「え…あ…あのですね」

魔女「知って居る様じゃな?話せ」

領事「紛失してしまったのです…」

アサシン「どこに行ったか分からないと言うのか?」

領事「先先日に我が国の考古学者と名乗った者が壺を持ち出したのですが…そのような者は我が国に居ませんでして…」

アサシン「なるほど…セントラル側に忍び込まれているという事か」

領事「恐らく…」

アサシン「シャ・バクダ街の方へは捜索に人を出しているか?」

領事「数名出していますが未だ行方知れずです」

アサシン「うーむ…的が絞れん」

領主「実は石造2体も紛失してしまって捜索中なのですが…もしかするとお二人の事ですかね?」

アサシン「石造の捜索はもうしなくて良い…壺に絞って欲しい」

領主「はぁぁぁ良かった…女王様に何と申し開きしようかと困って居たのです」ホッ

魔女「女王に石造の件は連絡しておるのか?」

領主「はい…出土したその日に伝令を飛ばしております」

魔女「こちらに来るかのぅ?」

領主「アサシン様と魔女様の関係でしたら直々に参られると思います」

魔女「では女王が来るまでは動けんのぅ…来るのは早くて1週間程か?」

領主「はい…大体それくらい掛かると思います」

アサシン「私は落ち着けんな…一人でシャ・バクダ街まで見に行って来る」

魔女「わらわは主の邪魔になりそうじゃな?」

アサシン「そうだな…一人の方が何かと融通が利く…魔女はこの辺で情報収集していてくれないか?」

魔女「おい男!!ラクダを用意せい…オアシスを回るぞ」

男「ええ!?俺!?俺はこの場所の管理を任されて…」

魔女「そんな仕事は領事にやらせておけ…早う準備せい!行くぞよ」

領事「オアシスのご案内は私めが…」

魔女「主は嘘付きの顔をしとるで信用できぬ…わらわは頭の回らん男の方が好きじゃ」

男「んん?俺のことか?」

領事「…」

魔女「何をしとるんじゃ早う行くぞ」ゴツン

男「あだっ…杖でどつくな…痛てぇな…」

644: 2020/10/19(月) 21:08:41.54 ID:iNLvSB+c0
『数日後』


わらわは下着を履いておらんと言うたじゃろう!!何故買って来なかったのじゃ

女物の下着なんか俺が分かる訳無いだろ

またどつかれたい様じゃな…もう一度行って買って来い

なんで俺がお使い役なんか…あだっ!!わかったわかった…


魔女「おぉアサシン帰って来たか…んん?誰じゃ祖奴は?」

アサシン「骨董品屋だ…この男の手を見てやってくれ」

魔女「どうしたのじゃ?」

骨董品屋「手が黒くなって動かなくなっちまってなぁ…医者に見せても分からんと言うもんでなぁ」

アサシン「回復魔法で治せないか?」

魔女「やってみても良いがこれは怪我なぞでは無いようじゃな?回復魔法!」ボワー

魔女「どうじゃ?動かせるか?」

骨董品屋「動かんなぁ…これじゃ仕事にならんなぁ」

魔女「消毒魔法!」ボワ

骨董品屋「動かんなぁ…」

魔女「何じゃろうな?動かぬという事は石化かも知れん…わらわの魔法では治せぬ」

アサシン「石化か…魔女はまだエリクサーが余っていたな?」

魔女「おぉ!!忘れておった…これを一口飲んでみぃ」スチャ

骨董品屋「…」ゴク

魔女「直ぐには治らんよって…まてよ?黒色化に石化…もしやこれは黒氏病では無いか?」

骨董品屋「それは悪い病気なんかなぁ?」

魔女「体の一部が石になる伝染病じゃ…他にこの様な症状の者は居らんのか?」

アサシン「私が見る限り一人しか見ていないが…彼は壺の鑑定を露店でやって居るのだ」

魔女「壺を見つけたのかえ?」

アサシン「いや…沢山鑑定している様だから封印の壺が有ったのかは分からん…だが触った可能性はある」

魔女「急に石化する病気が出て来るのはあきらかにおかしいのぅ…壺の影響と考えた方が良いな」

アサシン「…となると商隊でどこかに運ばれた可能性も出て来るな」

魔女「おい骨董品屋!主が鑑定した壺はどうなるのじゃ?」

骨董品屋「良い物は商隊に回してよその町で買い取ってもらうんだなぁ…」

魔女「これくらいの黒い壺じゃ…覚えて居らんのか?」

骨董品屋「いっぱいあるんだなぁ…どれがどれだかなぁ…」

アサシン「この調子なのだ聞いても意味が無い…探し物の魔法とか無いのか?」

魔女「あればとっくに使っておるわい…んーむどうしたもんか…」



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645: 2020/10/19(月) 21:09:24.12 ID:iNLvSB+c0
女王「近衛2人だけ私に同行してください…他の者は見張りをお願いします」

衛兵「はっ!!」

女王「二人は中にいらしていますか?」

領事「はいお待ちしております」

女王「案内してください」

領事「こちらです…どうぞ」ササッ


ガチャリ バタン


女王「あぁぁぁアサシン様…魔女様…よくご無事で」

魔女「おぉぉ女王らしくなったのぅ」

女王「今までどうされて居たのですか?何の音沙汰も無く本当に心配していました」

魔女「わらわ達には主と別れてまだ10日程しか経って居らん」

女王「え!?どういう事なのでしょう?」

魔女「立って話すのも何じゃ…座ってゆるりと話そうでは無いか」

女王「はい…」

魔女「わらわ達はあれから…」


カクカク シカジカ

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646: 2020/10/19(月) 21:09:53.14 ID:iNLvSB+c0
魔女「…禁呪を使った影響で次元の狭間に迷い未来に飛んでしもうたのじゃ」

女王「そうだったのですね…では壺にリリスの子宮を封じるのは成功したのですね」

魔女「7年間この世界で何事も無く平和が続いたのは壺ごと未来に飛んだからかも知れぬ」

女王「でも無事に戻られて本当にほっとしています」

アサシン「そう安心しても居られない様なのだ」

魔女「そうじゃ…封印の壺を紛失してしもうた」

女王「それは先ほど領事に聞きました…盗掘に遭ってしまったと」

アサシン「シャ・バクダでは盗掘で生計を立てている者も多いから仕方の無い事ではある…特に壺となれば値も張る」

魔女「今探しておるが他にも沢山壺がある様でのぅ…見つからんのじゃ」

女王「黒氏病の話も聞きましたが?関係しているのでしょうか?」

アサシン「その話だが…恐らく封印の壺が感染源になって居そうだ」

魔女「伝染病じゃからこれから感染者が増えてしまうよって手を打って置かんと拡大するぞよ?」

アサシン「エリクサーは量に限りがあるが少しなら入手が出来る」

女王「まずは感染の拡大を防ぐのが先ですね…どうすれば防げると思いますか?」

魔女「防げるかどうか分からんがくちばし付きの被り物で病を予防したと言うのは何かで読んだ事がある」

女王「被り物…マスクの事でしょうか?くちばしマスクでしたら趣向品で入手する事が出来ます」

アサシン「趣向品で良いのか?」

魔女「目と鼻と口が覆えれば良いのでは無かろうか?病気の専門家に聞いた方が良いな」

女王「分かりました…医者に聞いて手配を急がせます」

アサシン「壺はどう探す?」

女王「商隊の行先は陸路のセントラルか空路のフィン・イッシュどちらかです」

アサシン「壺の買い入れが多いのは?」

王女「税金の安いフィン・イッシュの方が儲かる筈ですが貴族は圧倒的にセントラルの方が多い」

魔女「どっちか分からんという事か…」

女王「はい…」

アサシン「やはり二手に分かれるか…女王は王都に戻る必要があるのだろう?」

女王「そうですね…私は公の会談以外でセントラルに行く事は出来ません」

アサシン「分かった…私と魔女でセントラルへ向かう…女王はエルフゾンビにエリクサーを融通してもらって王都に戻れ」

女王「エルフゾンビ…第2皇子はお元気ですか?」

アサシン「後で会わせてあげよう…見違えるほど元気にしている」

女王「そうですか…良かった」



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647: 2020/10/19(月) 21:10:19.45 ID:iNLvSB+c0
女王「なんだかタイムスリップした様な錯覚をします」

アサシン「んん?私たちが昔のままだからか?」

女王「はい…あの時のまま…何も変わらず魔王の影を追っている姿が…とても不思議です」

アサシン「7年の月日か…君は随分変わったな…大人になった」

女王「私は私の顔が見えませんから…お二人を見て変に錯覚してしまいます」

アサシン「私は正直7年も経った実感が無い…ただ混乱している」

女王「あれから随分お二人を探したのですよ?近衛には迷惑をかけっぱなしでした」

アサシン「砂漠をか?」

女王「おかげでホラ?筋肉ムキムキ」

アサシン「クックック砂漠で足腰を鍛えたか…女王の足では無いな」

女王「畑仕事も沢山やりました」

アサシン「それで一回り大きく見えたのだな」

女王「今日お二人に会えてとても報われた気持ちになりました…信じて良かったって」

アサシン「君は君のまま女王をやれば良い」

女王「はい…その言葉を信じて今までやって来ました」

アサシン「良い国になって居る様では無いか」

女王「落ち着いたらフィン・イッシュにいらして下さい」

アサシン「ほう?自信がある様だな?」

女王「不思議とみんな筋肉ムキムキなのです…軍国はやめたのですけれどね」

アサシン「歓楽の国になったのか?」

女王「民がおしゃれ祭りや筋肉祭りをやる様になって色んな歓楽が楽しめます」

アサシン「クックック変な国だな…筋肉祭りとは…一体何を祭るのかクックック」

648: 2020/10/19(月) 21:10:46.54 ID:iNLvSB+c0
『遺跡の外れ』


女王「近衛は気球で待機していて下さい」

近衛「はっ!!アサシン殿…魔女殿…女王の安全をお願いします」

魔女「わらわが居れば大丈夫じゃ…安心して待たれよ」

女王「ここから歩くのですか?暗くなって来ましたが…」

アサシン「エルフゾンビは暗くならないと出て来んのだ」

女王「そうでしたか…この周辺も私は良く歩きましたが夜にならないとお会い出来なかったのですね」

アサシン「この先に精霊の御所への入り口がある」

女王「はい…閉ざされた遺跡があるのは存じております」

アサシン「トロールが守って居るのだ…閉ざしているのはトロールなのだよ」

女王「そうだったのですか」

アサシン「エルフゾンビの隠れ家になっている…他言しない様にな?」

女王「はい…」


ズズズズズズ ズーン


女王「今の音は?」

魔女「トロールが道を開けた音じゃな…入っても良いという事じゃろう」

女王「この様な仕掛けがあったのですね…何処で見ているのでしょう?」

魔女「わらわ達も仕掛けは良く分からんが森のどこかで見て居るのじゃろうな?」

アサシン「さぁ…早く入るのだ」

女王「はい…」


ズズズズズズ ズーン

649: 2020/10/19(月) 21:11:17.77 ID:iNLvSB+c0
『精霊の御所』


魔女「これエルフゾンビ!客が来たぞ?」

エルフゾンビ「…」

魔女「瞑想しておるのか?これ…起きんか!」ユサユサ

エルフゾンビ「…」

魔女「待つしか無い様じゃ…折角女王を連れて来たのにのぅ…」

アサシン「まさか誰かが入って来るとは思って居なかった様だな」

女王「ここがかつての精霊の御所なのですか?」

アサシン「…そうらしい…私は詳しい事は知らん」

女王「木の根で作った城なのですね…とても神秘的です」

魔女「どれくらいトロールが居るのか分からんがトロールがこの根の森を守っておる」

女王「私が小さい頃トロールに乗るのが夢でした」

魔女「何故にトロールなのじゃ?」

女王「童話では森に住むトロールは小鳥を肩に乗せて居たのです…私はその小鳥の様に肩に乗りたかった」

エルフゾンビ「…来ていたのか」スゥ

女王「エルフゾンビ様…お久しぶりです」

エルフゾンビ「姫か…元気そうで何より」

魔女「もう姫ではないぞよ?女王じゃ」

女王「どちらでも良いです」

エルフゾンビ「今日は揃ってどうした?用が有って来たのだろう?」

アサシン「エリクサーを持って女王と一緒にフィン・イッシュに行かないか?」

エルフゾンビ「私は精霊樹を守る役目がある…行けんな」

アサシン「実はなリリスの子宮を封じた壺が黒氏病という石化する病気を発生させている様なのだ」

エルフゾンビ「石化する病気…それでエリクサーが入用という訳か」

アサシン「私は魔女と共にセントラルまで壺を探しに行こうと思う」

エルフゾンビ「なぜそれほど遠方まで探しに行く?」

アサシン「壺が商隊で運ばれているのだ…行先はセントラルかフィン・イッシュのどちらかだ」

エルフゾンビ「なるほど女王と共に壺を探してくれという事か」

アサシン「女王の立場上自由に動けないのは分かるな?」

エルフゾンビ「しかし遺跡へ立ち入る人間がこうも多くてはな…エルフがこちらへ来られないのだよ」

女王「遺跡への立ち入りを国として禁止する事が出来ます」

魔女「その方が良いじゃろうのぅ…もう遺跡の調査は必要無かろう?」

エルフゾンビ「私の顔を見て見ろ…既に人前に出られる顔では無い」

魔女「それ程変では無いがな?エルフにしては肌色が悪い程度じゃ」

アサシン「クックック気にし過ぎだ…プライドが許さんか?」

女王「気になる様でしたら仮面を用意致します…フィン・イッシュでは流行って居るのです」

エルフゾンビ「ふむ…」

魔女「精霊樹は何か言うておらんのか?」

エルフゾンビ「何も言って居ないがお前たちが此処に入って来られたという事は協力しろという意味だ」

魔女「では決まりじゃな?」

650: 2020/10/19(月) 21:11:49.22 ID:iNLvSB+c0
『女王の気球』


近衛「エリクサーの樽は1つで良いのでしょうか?」

女王「はい…もう一つは星の観測所に残して行きます」

領事「お預かりいたします…」

女王「観測所の警備を増やして盗まれないようにして下さいね」

領事「承知致しました」

女王「領事…くれぐれも遺跡の方へ人を近づけてはいけません…分かりましたね?」

領事「警備の衛兵も撤収でしょうか?」

女王「そうしてください…何人も立ち入り禁止と致します」

近衛「領事…次はヘマをしない様にな?女王様は何も言わないが私たちは見ているぞ?」

女王「近衛!もう良いのです…領事…お願いしますね?」

領事「御意…」

魔女「アサシン…わらわが主に渡した貝殻を女王に持たせよ」

アサシン「あぁ…」ゴソゴソ

女王「これは?魔女様の声を聞く貝殻ですね?」

魔女「そうじゃ…こちらの様子をその貝殻で知らせる故…常に持っておくのじゃ」

女王「わかりました…これが在れば安心ですね」

アサシン「私達が使って良い気球は…」

女王「貨物用の気球を用意しました…セントラルへの入国が許可されている気球です」

アサシン「おぉそれは良い」

女王「案内人を一人付けますので気球の操作と入国は彼にお任せください」

魔女「何から何まで済まんのぅ」

女王「セントラルは武器の携帯が制限されていますので貨物の中に入れて入国してください」

アサシン「その辺は上手くやる」

女王「はい…今度は行方不明にならないで下さいね」

魔女「毎日貝殻で報告するで心配するでない」

女王「わかりました…それではご無事で」


フワフワ

651: 2020/10/19(月) 21:12:21.58 ID:iNLvSB+c0
『貨物用の気球』



魔女「こりゃまたヘンテコな気球じゃな…3人乗りかえ?」

案内人「そうだ…」

魔女「おろ!?主は男では無いか…観測所の警備はクビになったんかえ?」

案内人「女王様の命令だ…」

魔女「何故それほど暗い顔をしておる…わらわは主が案内人で嬉しいぞよ?」

アサシン「魔女に気に入られた様だなクックック」

案内人「もう出発して良いのか?」

アサシン「そうだな…」

案内人「行先はセントラル直行かい?」

アサシン「ハズレ町~シケタ町~トアル町経由でセントラルに入る」

案内人「商隊の陸路を追うんだな?…途中のキャンプは無視して良いのか?」

アサシン「君は詳しい様だな…キャンプでは荷の確認が出来ないだろうから無視しても良いと思うが?」

案内人「密売品の場合は荷の検閲回避の為にキャンプで積み替えをやるポイントがあるんだ」

魔女「密売品とはどういう物じゃ?」

案内人「くすりやエルフ…それから美術品…骨董品とか取引価格の高い奴だ」

魔女「骨董品か…アサシンどう思う?」

アサシン「ふむ…確認しなければならない場所が多いな…虱潰しか」

魔女「そうじゃなぁ…」

案内人「…」

652: 2020/10/19(月) 21:12:58.19 ID:iNLvSB+c0
『数日後_キャンプ』


魔女「戻ったな?どうじゃ…手がかりは見つかったかの?商隊は随分こちらを警戒しておる様じゃが…」

アサシン「一通り荷は見て回ったが手がかりは無い」

魔女「残念じゃのぅ…」

アサシン「次はシケタ町か…う~む…」

魔女「何か気に掛かる事でもあるのか?」

アサシン「私はこれほど的を絞れず探し物をする事はしないのだ…どうも調子が狂う」

魔女「手がかりの一つでもあればのぅ…」

アサシン「女王の方はどうなって居る?フィン・イッシュでは手掛かり無いのか?」

魔女「千里眼で見る限り未だ見つかって居らぬ様じゃ」

アサシン「何か変だ…」

案内人「…」

魔女「む?案内人…お主落ち着きが無さそうじゃのぅ」

案内人「俺は関係ねぇ」

アサシン「…」ジロリ

案内人「…」

アサシン「そういえば女王は私達に会いに来た時…近衛を傍に付けていたな?」

魔女「む…主も気になって居ったか…わらわ達に会うのに近衛を付けるのは今まで無かった事じゃ」

アサシン「精霊の御所では単独で付いてきた…つまり私達は信用されている」

魔女「星の観測所で同席して居ったのは領事と案内人じゃな」

アサシン「…」スラーン ピタ

案内人「お…おい!俺は関係無ぇ!!」

アサシン「なに?…俺は関係無いだと?…領事は関係あると言うのだな?」

案内人「俺は指示された通り商隊の裏行動まで案内しろと…」

アサシン「魔女…千里眼で領事の目を覗け」

魔女「千里眼!」

アサシン「領事は何をしている?」

魔女「酒を飲んでおるな…女が居る…どこぞの酒場じゃ」

アサシン「酒場だと?オアシスにろくな酒場など無い…シャ・バクダ街だな?」

魔女「建物の中という事しか分からんが…ぬ!骨董品屋が一緒では無いか」

アサシン「謀られたな…」ブスリ

案内人「ぐあぁぁぁ…待て!!俺は本当に関係ない!!」

アサシン「私を誰だと思っている…生きて帰れると思うな」グイ

案内人「本当だ!!俺は何も知らない…たたた助けてくれぇ」

アサシン「…」ギロ

案内人「りょ…領事は…元諜報員という事しか…知らん…ぐふっ」

アサシン「魔女…回復してやれ」

魔女「主は手加減を知らんのか?回復魔法!」ボワー

案内人「げふっ…げふ…」

アサシン「星の観測所に戻る…急いで用意しろ」

653: 2020/10/19(月) 21:13:37.25 ID:iNLvSB+c0
『貨物用の気球』


ビョーーーウ バサバサ


アサシン「女王が案内人を私達に同行させたのは偶然か?」

案内人「俺が昔商隊長やってたのを領事が女王に進言したんだ」

アサシン「なかなかあの領事はヤリ手だな」

魔女「領事がセントラル側の人間じゃったとすると色々とマズイのぅ…」

アサシン「そうだな…フィン・イッシュ軍が遺跡から引き揚げた現状セントラル軍が遺跡に入る…エリクサーが欲しい筈だ」

魔女「森が燃やされるかもしれぬ…それでもフィン・イッシュ軍は遺跡に入れんでは無いか」

アサシン「領事は壺の中身も知ってしまっている…始末せねばなるまい」

魔女「案内人!!主はこうなると思わんかったんか!!」

案内人「俺は本当に領事のやっている事は何も知らない…ただ信用出来なかった」

魔女「ぐぬぬぬぬ何でも良いから領事の事を話せ」

案内人「良く行く酒場は確かにシャ・バクダ街の店だ…それ以外は本当に知らない」

アサシン「フィン・イッシュ領事がシャ・バクダ街で豪遊かクックックそれがおかしいと思わないお前は無能だ」

案内人「くっ…領事には逆らえなかった」

魔女「女王に知らせておくかえ?」

アサシン「話は一方通行だな?」

魔女「そうじゃ」

アサシン「う~む…あの領事が居たから摩擦が回避出来ていたとも考えられるな」

魔女「主はあの領事を泳がす気か?」

アサシン「女王はそれを承知で使っていたのでは無いか?」

魔女「むぅ…そういえば近衛の指摘を諫めておったな…」

アサシン「エリクサーの樽を1つ置いて行ったのは領事に対して上手く使えという事では無いか?」

魔女「女王はセントラルの民も案じておるのじゃな?」

アサシン「そうだ…つまり勝手に領事を始末するのは女王の意に反する可能性がある」

魔女「わらわ達は壺さえ戻れば良いが…」

アサシン「クックック…」ニヤリ

魔女「考えがあるなら話せ…」

アサシン「まぁ待て…もう少しで分かる」

654: 2020/10/19(月) 21:14:16.25 ID:iNLvSB+c0
『数時間後』


案内人「うっ…ぅぅぅ」

魔女「これ!!さぼるでない」

案内人「悪い…体の調子がおかしい…ぅぅぅ」

アサシン「クックック…これを見ろ」スラーン

魔女「クサナギの剣か?…ん?刀身が錆びておるのか?」

アサシン「血だ…拭いても落ちん」

魔女「何と!!リリスの呪いか?」

アサシン「どうやらそうらしい…クックック」

案内人「お…おい…俺はその剣で刺されている…どうなるんだ?」

アサシン「刺された場所を見て見ろ」

案内人「なにぃ!!…うぉ!!黒い…」

魔女「黒氏病じゃな」

案内人「助けてくれよ…俺はまだ氏にたくねぇ」

魔女「わらわのエリクサーを一口飲め…少しだけじゃぞ?」

案内人「…」グビ

アサシン「決まりだな…これで領事を脅す」

魔女「主はえげつない男じゃな…エリクサーを取り上げて黒氏病にするんじゃな?」

アサシン「案内人の10倍は痛い目を見てもらう…蘇生は任せる」

魔女「切断してしもうたら治せんよって手加減せいよ?」

アサシン「私は正直あの領事を許せんのだ…身内を騙すような奴をな」

案内人「…」ゴクリ

アサシン「案内人…私がやる事を良く見て立ち振る舞いを考える事だ…」

魔女「恐ろしい男よのぅ…」

655: 2020/10/19(月) 21:14:46.35 ID:iNLvSB+c0
『シャ・バクダ遺跡上空』


フワフワ


アサシン「やはりセントラルの兵が遺跡を探索しているな」

魔女「気球が4つ飛んでおるな」

アサシン「案内人!上から近付け」

案内人「はい…」

アサシン「魔女…魔法で気球の球皮を焼いて落とせるか?」

魔女「4ついっぺんに落とすなら竜巻魔法の方が良いのぅ…火は森を焼いてしまうで」

アサシン「任せる」

魔女「竜巻魔法!竜巻魔法!竜巻魔法!」ゴゴゴゴゴゴ

案内人「うぉ!…」バサバサ

魔女「風が巻くで気を付けい!!」

アサシン「勝手にフィン・イッシュ領に入るとどうなるか教えておかないとな」

魔女「高位魔法を詠唱するで敵の兵に近寄るのじゃ…」アブラカタブラ クラウドコントロール アッシドレイン

魔女「広範囲毒霧魔法!!」モクモク

案内人「霧?」

魔女「吸い込むでないぞ?調子が悪うなるで…」

アサシン「よし…風上から迂回して星の観測所に戻る」

案内人「観測所に直接降ろして良いのか?」

アサシン「構わん…後は私に任せろ」


656: 2020/10/19(月) 21:15:16.26 ID:iNLvSB+c0
『星の観測所』


フワフワ ドッスン


衛兵「これはアサシン殿…セントラルに向かったのでは?」

アサシン「ちと忘れ物が在ってな…領事は何処にいる?」

衛兵「今は外に出ておりますが直に戻って来るかと思います」

アサシン「中で待たせてもらう」

衛兵「はっ…ところで遺跡の方で何か起きている様ですが気球からは見えて居ないですか?」

アサシン「竜巻が起きていたな…気にしなくて良い」

衛兵「そうですか…」

アサシン「案内人!ワインの樽を持ってエリクサーの樽と交換しておけ」

案内人「あぁ…分かった」ヨッコラ

アサシン「魔女…領事が来たら周辺の衛兵を例の睡眠魔法で眠らせてくれないか?」

魔女「ふむ…他の者を巻き込まん様にするのじゃな?」

アサシン「あまり身内を殺めたく無いのでな…騒ぎにはしたくない」

魔女「中で待つとするか…」ノソノソ

657: 2020/10/19(月) 21:15:57.10 ID:iNLvSB+c0
『1時間後』


ドタドタ


領事「これはこれはアサシン殿ご一行…何故お戻りに?」

アサシン「人を払ってはくれんか?」

領事「さて?なぜにその様な事を言うのですやら?」

アサシン「まぁ良い…遺跡にセントラル兵が入っている様だが?放って置いて良いのか?」

領事「女王様から侵入を禁止されておりまして…その」

アサシン「何人も入れるなという命令では無かったか?」

領事「我が国の者は何人も入れておりませぬ」

アサシン「あぁ…もう良い」

領事「女王様にご報告されるおつもりでしょうか?」

アサシン「領事…お前に質問をする」

領事「私が先に質問をしているのですがお答えにならない様でしたら…」

アサシン「シャ・バクダ街の酒場で豪遊とは大した身分だな」

領事「はて?何の事でしょう?何か証拠でもあるのでしょうか?」タラリ

アサシン「どうやら話しても無駄な様だ…」スラーン

領事「抜刀とは頂けませんな…女王様の従士とはいえ捨て置けませんぞ?衛兵!!取り押さえよ!!」

衛兵「…」スヤ

領事「何をしておる!!」

衛兵「…」スヤ

領事「ええぃ役立たずめ!!」スラーン ダダダ ズン

アサシン「…」

領事「フフフフ心の臓に当たってしまいましたな?」

アサシン「終わりか?」

領事「なに!!」ズン ズン

アサシン「そうか刺客の技も持って居たか…どうりで女王は近衛を払わん訳だ」

領事「このぉ化け物が!!」ザクザク

658: 2020/10/19(月) 21:16:30.23 ID:iNLvSB+c0
アサシン「剣はこうやって使うのだ」ブン スパー

領事「ぎゃぁぁぁ手が…手がぁぁ」

アサシン「さて…壺はどうした?」

領事「はぁ…はぁ…何の事か…こんな事をしてお前!!許されると思うな!!」

アサシン「指は10本あるな?」ボキ ボキ ボキ ボキ

領事「ぐぁ…やべて…ぎゃぁぁ」ボキ ボキ ボキ ボキ

アサシン「神経をな…直接触るとどんな感じするか知っているか?」ザク ギュゥゥゥ

領事「いぎゃあああああああああああああああああああああああああ…あひあひ」

アサシン「もう一度聞くぞ?壺をどうした?」

領事「ひょひょ…あへ」

アサシン「聞こえんな…背骨の神経はもっと効くらしいな」ズン ギュゥゥゥ

領事「ぐぇぇぇぇががあがが」ピクピク

アサシン「魔女…少し休憩しよう」

魔女「回復魔法!」ボワー

領事「ブクブク…うげぁ」ゲロゲロ

アサシン「もう一回始めからだ」グサ

領事「やべて…くだじゃい」

アサシン「聞こえんなぁ」ザク ギュゥゥゥ

領事「いぎゃああああああああああああああああああ」ピク

アサシン「壺をどうした?」

領事「ききき…きゅうで…」

アサシン「気球で何だ…聞こえんな」

領事「ぜんどらりゅ…うぉぇっ」ゲロ

アサシン「ほう?誰だ…」

領事「きぞ…くとっくに…はぁはぁ…おくった」

魔女「そろそろ良いじゃろう…見ているわらわが吐きそうじゃ」

アサシン「もう一度教えてやる…女王に逆らうとどうなるかな…」

領事「やべ…やべて」プルプル

アサシン「ハートブレイク!」ズン ズブズブ

領事「ぐはぁぁぁあ…」

アサシン「案内人…しっかり見たな?」

案内人「お…おい…始めから生かす気なんか無いのか?」

アサシン「さぁな?」

659: 2020/10/19(月) 21:17:09.93 ID:iNLvSB+c0
『数分後』


魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

案内人「血は止まったな…」

領事「…ぁぅぁぅ」グッタリ

魔女「神経を触られておるでな…しばらくショックが抜けんじゃろう…体も強張っておる」

アサシン「案内人…汚れた床を掃除しろ…反吐が出る」

案内人「お…おう…」イソイソ

アサシン「さて領事…盗賊ギルドのマスターは聞いた事があるだろう…私の事だ」

アサシン「セントラルの諜報員となれば知らぬ訳は無いな?我らの秘密を知ったからにはどうなるか想像つくな?」

領事「ぁひ…」ブルブル

アサシン「お前は女王に生かされて居るのだ…どう立ち回るのだ?」

魔女「こ奴はまだ話せぬ…質問は無駄じゃ」

アサシン「まぁ良い…見ている事だ…貴族は一人残らず居なくなるぞ?何故だか分かるか?」

アサシン「私は心臓を突かれても氏なんな?不氏者の王だからだ…私は貴族を一人残らず葬る力が在ると知れ」

領事「…」ゴクリ

アサシン「もう一つ教えてやる…お前は既に黒氏病に感染している…だがお前にエリクサーをやる気は無い」

アサシン「ゆっくり氏ぬか女王の慈悲にすがるかは自分で選べ」

魔女「もう良い…アサシン…行こうぞ」

アサシン「壺の行先が分かったのだ…慌てる事もあるまい」

魔女「領事の怯えた姿を見ていてわらわは落ち着かぬ…居心地が悪いのじゃ」

アサシン「心底腐った奴にはな…これでも足りんのだ」

魔女「主はまだやる気かえ?」

アサシン「口は封じておかねばならん…領事!答えろ…壺の秘密を洩らした者は誰だ?」

領事「いいいいい居ません…ぅぅっぅ」フリフリ

アサシン「案内人!領事の部屋に行って関係者の名前をすべて調べろ…家族もだ…皆頃しにする」

案内人「ええぇ!!?」

魔女「アサシン!やり過ぎじゃ…自国の者も居るじゃろうて」

アサシン「良いから調べて来い」スラーン

案内人「いいいいい今行って来る…」ダダダ

領事「だだ誰に…も教えて…居ない!本当だ…」ブルブル

アサシン「こういうのはな…生首を並べられて初めて本音が出るのだクックック」

魔女「アサシンこうするのはどうじゃ?わらわが領事に服従の呪いを掛ける故…それで許してくれぬか?」

アサシン「どんな効果なのだ?」

魔女「服従に背くと血が凍るのじゃ…こ奴の血が必要じゃが血の繋がった者はすべて凍る」

アサシン「ほう?人質が取れると言うのだな?」

魔女「わらわに免じて関係の無い者まで手に掛けるのは止めよ」

アサシン「領事!…そういう事らしい…救われたな?」

領事「あぅあぅ…」ブルブル

660: 2020/10/19(月) 21:17:45.19 ID:iNLvSB+c0
『貨物用の気球』


フワフワ


アサシン「クックック魔女も大した演技力では無いか…呪いなんて本当にあるのか?」

魔女「無い…主も悪い男よのぅ皆頃しにするなど始めから考えて居らんのじゃろう?」

案内人「ええ!?そうだったのか…」

アサシン「皆頃しなど出来ん事は無いが面倒くさい上にリスクも大きい」

魔女「エリクサーはどうしたのじゃ?置いてきたのじゃろう?」

アサシン「衛兵隊長に事情を話して渡してきた…どうしても必要な時に使えとな」

魔女「これで領事は大人しくなるかのぅ?」

アサシン「しばらくは黒氏病で苦しむだろうが…改心してもらわんとな」

魔女「主は人間の神経を痛め付けるのは普段からやっておるのか?」

アサシン「クックック相手によってはな?普通は騒がない様に急所を狙うのだ」

魔女「あれはやってはイカン…筋肉が強張って回復出来ん様になる…魔法では治せぬ」

アサシン「魔法が効かないのか…それは知らなかったな」

魔女「とてつもない激痛じゃぞ?精神が分裂する寸前じゃ…もう2度とやってはイカン」

アサシン「分かった…やっている私も虫唾が走る」

魔女「本真に主は恐ろしい奴じゃ…鬼じゃな」

アサシン「気付いたのだが私は不氏者になってから高揚感を感じなくなった様だ」

魔女「わらわから見ても分かるのぅ…淡々と作業をこなす姿が逆に恐ろしいのじゃ…人では無い」

アサシン「人では無いか…どうも心が寒いな」

魔女「ほれ…ワインじゃ」ポイ

アサシン「心を満たす物は…ワインぐらいか…」グビ

661: 2020/10/19(月) 21:18:12.88 ID:iNLvSB+c0
『セントラル』


ガヤガヤ ガヤガヤ


荷の確認をする…見せろ

はい…羊毛と織物…それから酒

この箱は何だ?

中古の武器と防具…素材用ですわ

ふむ…乗って居るのは3人だな?顔を見せろ



アサシン「…」

検問「顔色が悪いな?病気か?」

アサシン「フフまぁそんな感じだ」

検問「お前は?」グイ

魔女「わらわに触るでない」

検問「ふむ…人相書きの女ではない様だな…赤い目…女か?」

魔女「…」ギロ

検問「おぉぉ怖い怖い」

案内人「しばらく滞在するんで気球は置いて行く」

検問「邪魔になるから荷出しは手短にヤレ…入国許可!」

662: 2020/10/19(月) 21:18:45.94 ID:iNLvSB+c0
『中央広場』


ザワザワ ザワザワ


魔女「城から煙が出て居るのぅ?何かあった様じゃな?」

アサシン「うむ…ざわついて要るな?」

案内人「とりあえず宿を取って来るが…注文はあるか?」

アサシン「酒場が付いて居れば何処でも良い」

案内人「なら商隊御用達の宿屋だな…情報が集まりやすい」

アサシン「場所だけ教えてくれ…私は少し周りを見てから行く」

案内人「商人ギルドの横の建屋だが…分かるか?」

アサシン「あぁ…大丈夫だ」

魔女「わらわは宿屋に行って先に休むぞよ?ちと水浴びがしたいでな」

アサシン「夕刻までには戻る」


おぉぉ倒れる倒れる!! ガラガラ ドーン


アサシン「内郭の観測塔が崩れたな…何が起こっているのだ?」

魔女「こりゃ只事では無さそうじゃな?」

アサシン「まさかリリスが暴れている訳ではあるまいな?…急いで見て来る」タッタッタ

魔女「案内人!ボケっとしとらんで早う宿屋まで連れて行くのじゃ」

案内人「それどころじゃ無さそうだが…」

魔女「わらわはもう何日も水浴びをしとらんのじゃ…気持ちが悪い」

案内人「んあぁぁ分かった分かった…」

663: 2020/10/19(月) 21:19:27.02 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』


魔女「ふぅ…髪の毛から砂が取れただけで大分スッキリしたわい」

案内人「着替えを買ってきて置いたぞ…ベットの上だ」

魔女「おぉ気が利く様になったのう…部屋から出ておれ…およ?下着も買って来たのか…要らんかったのにのぅ」

案内人「要らんだと?前はえらく怒ってたじゃねぇか」

魔女「砂漠では砂が下に入って痛いのじゃ…ここでは不要じゃ」

案内人「俺は女の事は分かんねぇ…勝手にしてくれ」ガチャリ バタン


-----------------


魔女「もう入って良いぞ?」

案内人「…」ガチャリ バタン

魔女「アサシンは遅いのぅ…城で何があったんじゃろう?」

案内人「さっき外で聞いたんだが城の方で爆発事故があったらしい」

魔女「いつの話じゃ?」

案内人「一昨日だそうだ」

魔女「2日も経っておるのにまだ鎮火して居らんのか…何が燃えて居るんじゃろうか?」

案内人「下水が破壊されて城まで水が運べないそうだ」

魔女「高台に城が在る故に消火出来ぬか…不便じゃな」

アサシン「戻った…」ガチャリ バタン

魔女「おぉ…どうじゃった?何が爆発したのじゃ?」

アサシン「城の真下だな…下水が立ち入り禁止になっていて詳細は不明だ」

魔女「やはりリリスかのぅ?」

アサシン「魔女…エリクサーはどれくらい残って居る?」

魔女「1瓶と少しじゃな…なぜそのような事を聞くのじゃ?」

アサシン「下水から海へ赤い液体が流れて行って居る…リリスの血では無いかと思う」

魔女「それは良くないのぅ」

アサシン「私はもうエリクサーを持って居ないのだ…黒氏病に掛かってしまう様であれば一度フィン・イッシュに戻らねばならんな」

魔女「症状が出てから少しづつ飲めば10回は持ちそうじゃが?」

アサシン「あまりリスクを抱えたく無いな…今晩貴族特区に向かい壺を頂いて早めに引き返そう」

魔女「主はその場所を知っているのかえ?」

アサシン「貴族特区は屋敷が4棟しか無い…魔女の睡眠魔法を使って行けば探索は直ぐに終わる」

案内人「貴族特区に行くまで貴族居住区を抜けなければならないぞ?」

魔女「魔法は何度でも使える寄って気にせんでも良いが?」

アサシン「行くのはもう少し夜が更けてからだ…まだ間がある故酒場で食事を済ませておこう」

664: 2020/10/19(月) 21:20:17.31 ID:iNLvSB+c0
『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


マスター「いらっしゃいませ…3人様ですね?」

アサシン「あぁ…食事も用意できるか?」

マスター「お任せ下さい席にお持ち致します…こちらです」スタスタ


白狼の盗賊団が出たんだってよ?

へぇ~?お金ばら撒いてたのかな?わたしも見たかったな~

正体がお面を被った子供だったらしい

子供が?それ本当?


アサシン「クックック…子供のごっこ遊びか」

魔女「白狼の盗賊団は主らの事じゃよな?」

アサシン「私は後方支援だ…主役は盗賊と剣士だな…風体は女海賊か」

魔女「子供らが真似をしておるのか…良いのか悪いのか…」

アサシン「魔女は千里眼で彼らが何処に行ったのか見ていないのか?」

魔女「皆バラバラじゃ」

アサシン「女海賊と剣士は?」

魔女「心苦しゅうて見て居らん…と言うよりどういう対策をして居るのか知らんが見えんのじゃ」

アサシン「そうか…魔女でも分からない事があるか」

魔女「女戦士は船に乗っておるな…ドラゴンの義勇団の旗印を使って居る」

アサシン「あの旗印は元々女戦士が使っていた旗印なのだ…たまたま星の観測所に掛けてあっただけだ」

魔女「魔王の影を追っておるのはわらわ達だけじゃのぅ…」


マスター「お食事をお持ち致しました…どうぞ」


アサシン「マスター…何か面白い話は聞けて居ないか?」

アスター「面白くない話ばかりですねぇ…」

アサシン「ほう?景気が悪いか?」

マスター「下水爆発事故の後処理が全然出来ていないそうですよ」

アサシン「ラットマンが出て来ていると聞いたが?それでは無いのか?」

マスター「下水から血のような汚染水が流れ出して手が付けられないのだとか」

アサシン「あぁ…海に流れ出ているやつだな」

マスター「大量の氏体と言い…何なんですかねぇ?」

アサシン「氏体…」---爆発はカタコンベだったのか---


---いよいよリリスが怪しいな---

665: 2020/10/19(月) 21:20:57.24 ID:iNLvSB+c0
『貴族居住区』


魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「案内人は宿屋に戻って待機しろ…ここからは私達だけで行く」

案内人「分かった…」

アサシン「もし戻らない場合は状況を説明しに女王の所に行くのだ」

案内人「戻らない場合なんてあるのか?」

アサシン「私は割と勘が働くのだ…状況はひどいと言わざる終えん…城がまだ燃えているのが証拠だ」

魔女「案内人…これを持って行け…エリクサーじゃ…まだ一口あるでな?」

案内人「お…おう」

アサシン「魔女…急ぐぞ」タッタッタ



『貴族特区』


アサシン「待て…ここは衛兵が守っているのでは無いな」

魔女「何じゃ…あの大きな鎧を着た魔物は」

アサシン「あれが成長したラットマンか…まるでミノタウロスでは無いか」

魔女「立ちんぼになっておるから睡眠魔法は効いておりそうじゃ」

アサシン「魔女はここで待っていろ…私が忍び込んで壺を探してくる」

魔女「いいや…離れぬ方が良かろう…方陣が敷いてあるで仕掛けがあるやも知れぬ」

アサシン「魔方陣?ここの貴族はそういう技を持った者が居るのだな?」

魔女「あの方陣はシン・リーンの光の方陣じゃ…魔術師が居るのであればあの方陣は避けて通らんと見つかるぞよ?」

アサシン「なぜ魔術師が居る…」

魔女「それはわらわの方が知りたいのぅ…念のためもう一度睡眠魔法を掛けて置く」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「魔女…私の背後から離れるな?」

魔女「分かっておる」ノソノソ

アサシン「ここの屋敷が一番大きい…ここから入るぞ」

魔女「正面から入るのかえ?」

アサシン「それが一番早い」ガチャリ ギー

魔女「誰も居らん様じゃな?」ノソ

アサシン「…骨董品ばかりでは無いか」

魔女「これはシン・リーンの宝物庫よりも良い物がありそうじゃ…」

アサシン「シャ・バクダの宝飾品もある…ここの持ち主は一体…」

魔女「見て見よ…伝説の絵画じゃ…あれはシン・リーンの古代遺跡の壁画と同じじゃ」

アサシン「どうやら壺はここに間違いなさそうだな…セントラルにこの様な収集家が居たとは…」

魔女「驚いたな…精霊の石造がここにもある」


シュン グサ


666: 2020/10/19(月) 21:21:35.21 ID:iNLvSB+c0
魔女「はぅぅ…」

アサシン「魔女!!」

魔女「回復魔法!…しもうた!!ここは魔結界の中じゃ…魔法が発動せぬ」

アサシン「なにぃ!!」


??「捕らえろ」


ラットマンリーダー「がおおおぉぉ」ドシドシ

魔女「くぅぅ放せ…触るでない」ジタバタ

アサシン「しまった…」タジ


??「又泥棒かと思えば…シン・リーンの魔術師か」


魔女「何じゃと?主は誰じゃ!!」

アサシン「スキ有り!!」シュン ザクリ

??「ほう?良い腕を持って居るな…しかし神秘の体を持つ私には無意味」

魔女「神秘の体じゃと?」

アサシン「お前は誰だ?」

??「ヌハハハハハハ…答える必要があると思うか?小物よ」

魔女「分かったぞよ…主は師匠が探して居った時の王じゃな?」

??「…そうか」

アサシン「時の王だと?」

??「お前は私の子孫だったか…目を見せてみろ」

魔女「理解したぞ…すべてを仕組んだのは主じゃな?200年前に精霊と勇者を屠ったのも主じゃな?」

時の王「ヌハハハハ流石は私の子孫…察しが早い…しかしこうして見ると感慨深い」

アサシン「赤い目…どういう事だ?」

魔女「こ奴は1700年前のシン・リーン古代文明をも屠った赤き瞳の王じゃ…リリスの血を飲み不老不氏となっておる」

時の王「正確にはリリスの生き血だよ…氏に血を飲んでも不老不氏にはならん」

魔女「どうでも良い…それよりも主は何をする気じゃ?」

時の王「人間の絶滅以外に考えられると思うか?」

魔女「何故じゃ…主は時の勇者を支えた英雄だった筈じゃ…それが何故魔王に汲みする立場に居る!」

時の王「私の子孫か…特別に教えてやろう」

667: 2020/10/19(月) 21:22:41.09 ID:iNLvSB+c0
確かに私は勇者と共に魔王を退けリリスを討ち取り時の英雄となった

後に精霊シルフと共に憎悪に満たされたこの世界を光に導く為に尽力した

だが悟ったのだ…人間こそが魔王そのものだと

私は精霊シルフに過去の伝説のすべてを聞いた

悪魔とリリスの子リリン…悪魔の子と呼ばれたリリンは人間だ

そして神と位置付けられるアダムとイヴ

神が生み育てた英雄はことごとく人間に屠られた

後に志のある人間が最初の人工知能を作り出し名付けたのが神の名に因んでアダム

アダムの知能を元にして作られた超高度AIをイブとして神を復活させた

しかしやはり悪意のある人間はまたもやアダムを破壊しついにはイブをも手に掛けようとしている

イヴとはお前たちが良く知っている精霊シルフの事だ

精霊はどうやって悪魔の心を持つ人間と戦おうとしているか分かるか?

人間以外の生物…エルフやドワーフ…ドラゴン…クラーケンにトロールを生み

世界の秩序を保とうとした

だがやはり人間は抵抗を重ね殺戮を繰り返す

私と勇者はその根源にあるのが魔王だと思い込み退けて来たがそれは一過性の事だった

根源は人間の憎悪なのだ…これを滅しない限り殺戮は終わらない

しかし…精霊にはそれが出来ない…故に私がやるのだ

668: 2020/10/19(月) 21:23:22.47 ID:iNLvSB+c0
魔女「それでは200年前に精霊と勇者を屠った説明になって居らぬ…精霊は主の味方であったであろう?」

時の王「あれは事故だ…精霊が止まるとは考えていなかった」

魔女「結局最後に精霊を裏切ったのも人間という訳か…」

時の王「人間の罪は人間が贖う…私一人でそれを背負っているのだ」

魔女「その罪を許したのが神では無かったのか?精霊は人間の罪をゆるしておるのでは無いか?」

時の王「ゴルゴダの丘…」

魔女「じゃから人間は生きて行くしか無いのじゃろう?未来へ繋ぐ為に…」

時の王「ええい!!お前まであの女と同じ事を言うか!!」

魔女「師匠じゃな?師匠は狭間で1200年生き尚…主の事を案じておった」

時の王「フフあの女は精霊が止まって逆鱗してな?私の計画をすべて封じたのだ…お陰でリリスの首は何処にあるか分からぬ」

魔女「リリスの子宮はわらわが封じた…どこにあるのじゃ?」

時の王「ヌハハハハハ探し求めて来たという訳か…遅かったな」

魔女「遅いじゃと?」

時の王「盗まれたのだ…もう何処に行ったか分からぬ…しかしそれでも良い…リリスは復活する」

魔女「首が無いのにどうやって復活すると言うのじゃ」

時の王「他の首で補えば良い…錬金術で縫合など容易いものだ」

アサシン「キマイラだな?」

時の王「その名を良く知っているな?さてはシャ・バクダの末裔か」

アサシン「ふん!だからどうした?」

時の王「キマイラを諫める歌は伝わって居ないのか?私ではキマイラを制御出来ないのでな」

アサシン「歌…だと?」

時の王「その様子では知らぬ様だな…子守歌なのだが女にしか伝わらん歌かも知れんな」

魔女「…よいな?歌じゃ…歌を探すのじゃ」

時の王「貝を使って念話をしているのか…フフフあの女と同じだな」

魔女「わらわ達を捕らえてどうする気じゃ?」

時の王「子孫をわざわざ殺めたくは無いのでな…大人しく牢に入っていてもらおう」

アサシン「余裕そうだな?」

時の王「ラットマンリーダーに人質を取られて勝てると思うか?」

アサシン「くっ…」---ここは掴まっておいた方が良さそうだ---

魔女「くそう…魔法さえ封じておられなければ」ジタバタ

時の王「私の邪魔建てはもうされたくは無いのでな…食事の心配はするな大切な捕虜だからなフハハハ」

魔女「母上と取引するつもりじゃな?」

時の王「フハハハハハハハ…」

669: 2020/10/19(月) 21:24:12.67 ID:iNLvSB+c0
『牢』


アサシン「この牢は脱出できそうに無いな」

魔女「しかし2人揃って牢に入れて持ち物も全部持たされたままじゃ…よほど自信がある様じゃな」

アサシン「窓付きで外が見えるのは良いが…」

魔女「見通せるかえ?」

アサシン「見える範囲が限られてて一部しか見えんな…奥行きが1メートルもある石造りの牢だ」

魔女「ふむ…魔法もここでは使えんのぅ…こまったもんじゃ」

アサシン「使えるのは貝殻だけか…」

魔女「仲間のあぶり出しを狙っておるんじゃろうな?女王にはここに来るなと言っておいた」

アサシン「頼みの綱はエルフゾンビだな…奴なら地理が分かっている」

魔女「しかし…時の王がセントラルに居ったとは…師匠がずっと探して居ったんじゃが魔結界の中では見つからん筈じゃ…」

アサシン「時の王も魔術師なのか?」

魔女「少しは使えるじゃろうが伝説では戦士じゃな…リリスの血を飲んで目が赤くなっておるだけじゃ」

アサシン「道理で…切り込んだ際に間合いがズラされた」

魔女「そういえば時の王はシャ・バクダの歌の事を言っておったが主は知らんのか?」

アサシン「私は覚えていない…もしかしたら妹が覚えていたのかもしれん」

魔女「盗賊が歌っておった歌かのぅ?わらわも聞いたぞよ?ルル~ルラ~♪ルル~ルラ~♪」

アサシン「その歌は違う…子守歌では無い」

魔女「フィン・イッシュに各国の書物が集まっておるから女王が探せると良いがな」

670: 2020/10/19(月) 21:25:19.22 ID:iNLvSB+c0
『1週間後』


ガリガリ ガリガリ


魔女「何を作っておる?」

アサシン「魔女は魔法の触媒で硫黄を持ち歩いていたな?」

魔女「あるが?爆弾でも作るのかえ?」

アサシン「石を削って砂にしている」

魔女「砂鉄はどうするんじゃ?」

アサシン「私の着ている服は金属糸で結った物だ…これをロープ代わりにして残りは砂鉄にする」

魔女「ほう…考えたのぅ?」

アサシン「私はこういう時に大人しく出来ない性分でな…よし…金属糸を解くのを手伝ってくれ」

魔女「わらわは巻けば良いか?」

アサシン「体に巻き付けて行ってくれ」ゴソゴソ


コーーーーーン コーーーーーーン


アサシン「んん?この音は…ミスリル銀を叩く音だ」

魔女「良い音がするのぅ」


ラットマンリーダー「ガオオオォォ」ドタバタ


アサシン「外のラットマンリーダーが騒いでいるな…ミスリル銀の音が嫌なのか?」

671: 2020/10/19(月) 21:25:47.07 ID:iNLvSB+c0
魔女「逃げ出すチャンスかも知れんのぅ」

アサシン「魔女…硫黄を分けてくれ」

魔女「ほれ…」ポイ

アサシン「よし…これで爆弾の出来上がりだ…窓に設置する」ゴソゴソ

魔女「もうやるんか?」

アサシン「この爆弾では窓の穴を少し広げる程度にしかならん…逃げるのは魔女一人だ」

魔女「主はどうするのじゃ?」

アサシン「魔女は魔結界から出た後に姿を変えて街に紛れろ…出来ればエルフゾンビと合流するのだ」

魔女「分かったが…しかし」

アサシン「魔女一人でラットマンリーダーの相手は無理だ…私の救出は機を伺ってからで良い」

魔女「ふむ…この体に巻いた糸で下まで降りて行けば良いのじゃな?」

アサシン「そうだ…あとは上手くやってくれ」

魔女「任せておくのじゃ…魔法さえ使えればわらわは何でも出来る」

アサシン「よし…こっちのテーブルの裏に隠れろ」チリチリ


3…2…1  ドーン パラパラ


アサシン「魔女!穴の中に入れ」グイ

魔女「むむむむ狭いのぅ…」モゾモゾ

アサシン「押すぞ!!」グイ グイ

魔女「痛たたたた…あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」グルグル ドテ

アサシン「よし…上手く行ったな?クックック」

アサシン「…」---さて片づけるか---


---金属糸は回収---

---ベッドに膨らみを作って---

---私はテーブルで食事でもしておこう---

---頼むぞ魔女---

672: 2020/10/19(月) 21:26:20.89 ID:iNLvSB+c0
『気球発着場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


またお前か!今度の荷は何だ?…見せろ

はい…くちばしマスクと薬…それから酒

この箱は何だ?

趣向品と玩具…夜のおもちゃですわ…見ますかね?

ふむ…乗って居るのはお前だけか?



案内人「他に居る様に見えるかい?」

検問「ふむ…儲かっているのか?」ジロジロ

案内人「まぁそこそこには…」

検問「病気が流行っているから気を付けろ!入国許可!」

案内人「へいへい…」ヨッコラ


------------------


案内人「クッソ重いな…」ヨタヨタ ドサ

案内人「エルフは体の割に重いのだな…出ても良いぞ」パカ

エルフゾンビ「ふぅ…」パンパン

案内人「久しぶりの故郷はどうだい?」

エルフゾンビ「このような入国はしたことが無いのでな…緊張するものだ」

案内人「さて…ひとまず宿に落ち着けよう」

エルフゾンビ「私は宿になど泊まった事が無い…案内してくれ」

案内人「その仮面を外すなよ?」

エルフゾンビ「分かっている…お前の方こそしっかりくちばしマスクを付けて置け」

案内人「この恰好は逆に目立つのがなぁ…」

673: 2020/10/19(月) 21:26:50.08 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』


ガヤガヤ ガヤガヤ


案内人「女王様が言うにはこの宿の前で魔女が待っているとの事だったが…」

魔女「目の前に居るでは無いか」

案内人「あぁ嬢ちゃんちっと邪魔だ…あっち行っててくれ」

魔女「何を言うておる」ボカ

案内人「あだっ!!何すんだこのガキ…ん?…その杖」

魔女「わらわは金を持っておらなんだ故ずっと野宿しとったのじゃ…早う飯を食わせろ」

案内人「なんで又こんなに小さくなってるんだ?」

魔女「つべこべ言うでない…早うせい」ボカ

案内人「わかったわかった…どつくのはヤメロ」


店主「そのお子さんのお連れ様ですか?」

案内人「…まぁそうだな」

店主「聞き分けの無い子でして何度言ってもそこを離れようとしなかったのです」

魔女「言い訳は聞きとうない…不親切な店主じゃ」ブツブツ

店主「ハハ3名様でよろしかったですか?」

案内人「あぁ…食事をすぐに持って来てほしい」

店主「かしこまりました…二階の右手の部屋にてお待ちください」ソソクサ


674: 2020/10/19(月) 21:27:25.92 ID:iNLvSB+c0
『部屋』


エルフゾンビ「女王から話は聞いて居る…アサシンは貴族特区で捕らえられて居るのだな?」

魔女「そうじゃ…食事はしっかり出る故心配は無いのじゃがラットマンリーダーが守って居ってな」

エルフゾンビ「やはり時の王卿が先導していたか」

魔女「主は会うた事があるのじゃな?」

エルフゾンビ「時の王は表に顔を出すことは無いのだ…私ですら話しか聞いた事が無い」

魔女「奴は人間を絶滅させる気で居る様じゃ」

エルフゾンビ「前王の父も…恐らく兄も人間を絶滅するなど考えて居ない」

魔女「欺かれておるのじゃな」

エルフゾンビ「正義感の強い兄が何故時の王に従う行動をしているのか…」

魔女「逆に時の王を欺こうとしている可能性は無いのか?」

エルフゾンビ「指輪…父が祈りの指輪で何をしたかったのか…もしや指輪で時の王を葬ろうとしていたのか?」

魔女「兄はどうじゃ?」

エルフゾンビ「兄は騎士道を貫く…弱き者を滅することなど決してしない」

魔女「何かおかしいのぅ…」

エルフゾンビ「正統派でしか動かない…つまりやるなら真っ向勝負」


コーーーーーーン コーーーーーーン


エルフゾンビ「ん?この音は?」

魔女「アサシンがミスリル銀を鍛冶で打つ音じゃと言うておった…憎悪を払うらしいが?」

エルフゾンビ「そうか…兄は正当な方法で邪悪と戦おうとしているのだ」

魔女「ふむ…どうやら皆の歯車が少しづつ違って回って居るな…噛み合って居らぬ」


グラリ


案内人「うぉっとお!!何だ?」


グラグラグラグラグラグラ


魔女「どこぞで地震が起きとる様じゃな?これは大きな津波が来るやも知れぬ」

案内人「ここは海に近すぎる」

エルフゾンビ「一応建屋の上に避難しておくか…」

魔女「わらわはまだ食事をして居らぬが…」

案内人「建屋の上まで持って行ってやる」グイ

魔女「これ!!引っ張るでない…およよ?」バタバタ

案内人「肩の上に乗ってろ」

魔女「これ!!わらわは下着を履いて居らぬ…降ろさんか!!」

案内人「上に行こう」タッタ

エルフゾンビ「…」タッタ


675: 2020/10/19(月) 21:28:02.69 ID:iNLvSB+c0
『屋上』


ザブン ザブン ドバーーーー


エルフゾンビ「…絶句だな…これは」

魔女「皆屋根に上がって避難しとるが…」

案内人「水は引いて行ってる様だが…散らかった物がみんな波に持って行かれる」

エルフゾンビ「これでは動けんな…」

魔女「折角合流出来たのに困ったのぅ」

エルフゾンビ「アサシンを救出するなら混乱している今がチャンスと見るが…」

案内人「津波は何回も来る…今は止めて置いた方が…」

魔女「小さな隕石をあの屋敷に落とす…牢の壁だけ壊せば良かろう」

エルフゾンビ「ほう?」

魔女「詠唱に時間が掛かるのじゃ…ゾンビを使役して詠唱の時間を稼げるか?」

エルフゾンビ「使役出来るゾンビがどのくらい要るかだが?」

魔女「元はカタコンベが有ったのじゃ幾らでもおろう?」

エルフゾンビ「やってみるか…ゾンビ共よ我に付き従え」ブン

魔女「貴族居住区まではわらわの睡眠魔法で行ける筈じゃ…貴族特区から出て来る者をゾンビで足止めするのじゃ」

案内人「この水の中を歩いて行くのか?小さい体では流される」

魔女「わらわは主の肩に乗って詠唱するでわらわを運べ」

案内人「お前等と居ると危ない事ばかりだな…」

魔女「つべこべ言うな…水が張っておる今がチャンスじゃ!行くぞ」

案内人「ええい…乗れ!」グイ

676: 2020/10/19(月) 21:28:40.64 ID:iNLvSB+c0
『貴族居住区』


ザブザブ


案内人「はぁはぁ…ここまで来りゃ水は上がって来ねぇ…」

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

案内人「どっちに行けば良いんだ?」

エルフゾンビ「こっちだ!!」タッタッタ

案内人「ひぃひぃ…」

魔女「見えて来たのぅ…この先にはラットマンリーダーが居る…ゾンビで引き付けて欲しいのじゃが?」

エルフゾンビ「まだゾンビが追い付いて居ない…もう少し待て」

魔女「詠唱に10分掛かるのじゃ…その間わらわは会話が出来ぬ」

エルフゾンビ「長いな…ゾンビでは持たん」

魔女「では先に詠唱を始める故…詠唱が終わるまでに屋敷が見える位置に居れば良い…出来るか?」

エルフゾンビ「やるしか無いのだろう?」

魔女「屋敷に近づき過ぎる出ないぞ?隕石は破裂するでな…」

エルフゾンビ「よし!やろう…案内人…私の後ろから離れるな?」スラーン

案内人「お…おう」

魔女「詠唱を始める…」アブラカタブラ メテオスウォーム コイコイコイコイ

エルフゾンビ「ゾンビ共…急いで我の下へ来るのだ」


ヴヴヴヴヴヴヴヴ ガァァァァ


案内人「…」ゴクリ

エルフゾンビ「20という所か…よし!ラットマンリーダーの注意を引き付けろ」

ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

案内人「ゾンビというよりスケルトンだな…」

エルフゾンビ「肉はラットマンに食われた様だな」


ラットマンリーダー「ガオォォォォ」ドスドス


エルフゾンビ「来い!!あの一体だけ倒す」シュタタ ザクリ

案内人「おぉすげぇ…腕を切り落とした」

エルフゾンビ「ゾンビ共!次のラットマンリーダーを倒せ」タッタッタ


-------------------

677: 2020/10/19(月) 21:29:18.08 ID:iNLvSB+c0
案内人「他のラットマンリーダーも集まって来た…」

エルフゾンビ「魔女!まだか!?」

案内人「ゾンビが食われてる…」

エルフゾンビ「時間稼ぎになるのならそれで良い」


シュン スト


エルフゾンビ「ちぃぃ見つかった!案内人!私の後ろに隠れろ」

案内人「おう…」

エルフゾンビ「この距離では弓はそうそう当たらん」シュン シュン

案内人「一人だ…あれが時の王か?」

エルフゾンビ「こちらに来る気は無さそうだな…」シュン カキン!

魔女「隕石魔法!」

エルフゾンビ「おぉ!!間に合ったか」

魔女「もうすぐ落ちて来よるで逃げるのじゃ…急いで離れろ」

エルフゾンビ「案内人!!先に戻れ」

案内人「おう!!」タッタッタ


シュゴーーーーーーーーー


エルフゾンビ「来た…あれが隕石か…」

魔女「早う来い!!巻き込まれる」


パパパパパン!! チュドーーーーン パラパラ


エルフゾンビ「うぉ!!」ピョン クルクル シュタ

魔女「隕石で注意がこちらに向いたで早う逃げるぞ…走れ案内屋!!」

エルフゾンビ「…」タッタッタ


---津波にゾンビの襲来---

---そして隕石---

---セントラルも末だ---

678: 2020/10/19(月) 21:29:52.68 ID:iNLvSB+c0
『宿屋の屋上』


ガヤガヤ ガヤガヤ


案内人「ふぅ…ずぶ濡れだ」

魔女「ご苦労じゃった…少し休め」

エルフゾンビ「私も役に立てたか?」

魔女「そうじゃな…主が居ったから成功したのじゃ」

エルフゾンビ「アサシンは無事か?千里眼で見えるのだよな?」

魔女「千里眼!ふむ…どこぞを泳いでおる…じゃが怪我をして居る様じゃ」

エルフゾンビ「フフ不氏者が怪我か?」

魔女「隕石のすぐ近くに居ったからのぅ…少し心配じゃな」

エルフゾンビ「私も怪我をしている様だが自分では見えん」

魔女「背中じゃな?むむ!隕石の破裂片に当たったな?」

エルフゾンビ「空中で破裂しながら落ちて来るとは思わなかったのだ…油断した」

魔女「ここで回復魔法をするのは目立ちすぎる…部屋に戻るのじゃ」

案内人「そうだな…部屋が二階で良かった」



『部屋』


魔女「回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「不氏者でも傷口は塞がるのだな?」

魔女「気休めかも知れぬが傷口が開いたままよりはマシじゃろう」

エルフゾンビ「すこし喉が渇いた」

魔女「案内人!主の荷物にワインが有ったな?」

案内人「あぁ女王様に持たされた…エルフゾンビの喉の渇きを癒す様だ…ホレ」ポイ

エルフゾンビ「むぐ…」ゴクリ

魔女「血の代わりにワインか…不便な体じゃな?」

エルフゾンビ「これはこれで良い所もあるのだ」グビ

魔女「さて…わらわも少し休むかのぅ…疲れたわい」

案内人「俺は外でアサシンが迷わない様に待っている」

魔女「そうじゃな…わらわは少し寝るで任せたぞ?」

679: 2020/10/19(月) 21:30:56.56 ID:iNLvSB+c0
『翌日』


エルフゾンビ「アサシンはまだ戻って来ないのか?」

魔女「様子を見てみる…千里眼!」

エルフゾンビ「どうだ?」

魔女「どこぞの砂浜じゃな…動く気配が無い」

エルフゾンビ「砂浜だけでは迎えに行けん…何か目標物は見えないか?」

魔女「遠巻きにセントラルの城が見えて居る…位置的に東の方じゃな」

エルフゾンビ「よし迎えに行こう…動けない理由がありそうだ」

魔女「そうじゃな…石化しとるかもしれんな」

エルフゾンビ「エリクサーは持って居る…魔女はそのまま走れそうか?」

魔女「大丈夫じゃ子供の恰好の方が走りやすい」

エルフゾンビ「行こう」タッタッタ

680: 2020/10/19(月) 21:31:26.59 ID:iNLvSB+c0
『砂浜』


魔女「居った!!ここじゃ…やはり石化して動けぬ様じゃ」

エルフゾンビ「フフ三度目だな…飲め」グイ

アサシン「うぐぐ…」グビ

魔女「意識はある様じゃな?回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「リリスの血に浸かったな?石化の進行が早そうだ」

アサシン「グッグッグ…」

エルフゾンビ「私が背負って行く…」ヨッコラ

魔女「本真に厄介な石化じゃ…」

エルフゾンビ「エリクサーが少ないから回復は少し間が必要だな」

魔女「とにかく救出できて良かったのぅ」

エルフゾンビ「血が海に流れ出て居ては黒氏病が広がってしまうな」

魔女「うむ…どうにか止めんとイカン…リリスは永久に血を流しよる」

エルフゾンビ「時の王が魔結界から出ない理由…もしかすると石化は魔法の一種では?」

魔女「そうじゃ土属性の高位魔法じゃ」

エルフゾンビ「やはりそうか…時の王はやはり魔法を恐れているか」

魔女「わらわも考えた…量子転移を使われたく無いのじゃと思う」

エルフゾンビ「どういう事だ?」

魔女「量子転移はな?過去から物質などを丸ごと転移する事が出来る様じゃ…じゃから200年間一歩も魔結界からは出て居らん」

エルフゾンビ「過去から…」

魔女「祈りの指輪も同じ効果を持つ…過去の記憶を丸ごと転移すると術者は過去に戻る…つまり現在に丸ごと転移するのじゃ」

エルフゾンビ「魔結界の中ではその魔法自体無効…そういう事か?」

魔女「じゃろうな?隕石の様に物理的な魔法でなければ効果が無いじゃろう」

エルフゾンビ「なるほど…」

魔女「時の王が姿を隠しているのも他の者の記憶の中に自分が残るのを避けて居るからじゃと思う」

エルフゾンビ「だから書状でやり取りをしていたのか…」

魔女「セントラル王家はなぜそのような者を膝元に置いて居るのか?」

エルフゾンビ「特殊生物兵器部隊の絶対的な権威だ…人間では太刀打ち出来ない」

魔女「それこそセントラルが横暴に走る原因じゃな」

アサシン「グッグッグ…」

681: 2020/10/19(月) 21:32:10.60 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』


案内人「津波が断続的に来ている…貧民街の方はもうダメだ」

エルフゾンビ「波が小さくなっては来ているな?」

案内人「アサシン様が戻った事だしフィン・イッシュに帰るか?」

エルフゾンビ「いや…私にやりたい事が出来た」

魔女「んん?何じゃ?」

エルフゾンビ「魔女の貝殻は他には無いのか?」

魔女「貝殻に魔術を掛けるのは簡単じゃ…何に使う気じゃ?」

エルフゾンビ「その貝を兄に届けたい…一方通行で良いから話をしたいのだ」

魔女「ふむ…話を続けるのじゃ」

エルフゾンビ「私達が噛み合って居ないのは話をして居ないからだ…こちらの考えを兄に伝えれば必ず分かってもらえる」

魔女「セントラルを仲間にするというのじゃな?」

エルフゾンビ「声を兄だけに伝えたい…他の側近に聞かれては意味が無い」

魔女「よし…わらわがシン・リーン特使として書状と貝殻をセントラル国王へ届ける様はからう」

エルフゾンビ「出来そうか?」

魔女「従士が居らん様ではちと危険なのじゃが…案内人ではちと役不足じゃ」

エルフゾンビ「私は顔が出せん…アサシンの回復を待ってからだな」


682: 2020/10/19(月) 21:32:40.96 ID:iNLvSB+c0
『数日後』


魔女「案内人はわらわの右…アサシンは左じゃ」

魔女「2人共くちばしマスクでしっかり顔を隠しておくのじゃ…良いな?」


門番「止まれ!セントラル王城に何用で参られた!?」

魔女「わらわは光の国シン・リーン第3王女じゃ…特使として参った」

門番「シン・リーン王女だと!?聞いて居ない…顔を見せろ」

魔女「やれやれ…隠密で来て居るのじゃ…騒がぬ様にな?」ファサ

門番「従士は2人か?う~む…」

魔女「我らは魔術師じゃという事を忘れるな?狼藉はせぬ様に…氏人は出しとう無い」

門番「して…何用か?」

魔女「密書を届けに参った…国王に之を持て」

門番「書簡と…貝殻か?」

魔女「そうじゃ…危険な物では無い故しっかり確認しても構わぬ」

門番「ふむ…よこせ」

魔女「密書の開封は国際法違反になるで注意せい…国王に不利益となるでな?」

門番「大使と面会はして行かんのか?」

魔女「大使に用なぞ無い…隠密で来て居るのじゃ理解せい」

門番「ふむ…失礼した」

魔女「わらわは行くぞ?…くれぐれも狼藉は避けよ…良いな?」クルリ ノソノソ


--------------------


魔女「どうじゃ?後を付けて来よるか?」

アサシン「遠目にな…どうする?」

魔女「やれやれ側道に入るぞよ?主らは方々に去れ」

アサシン「宿屋までの道は分かるな?」

魔女「大丈夫じゃ…側道に入ったら変身するで上手く巻くのじゃ」

アサシン「クックック…魔女も慣れたものだ」

魔女「変性魔法!」グングン

アサシン「案内人はあっちだ!私はこっちに行く」

案内人「宿屋で…」

魔女「やはり服がピチパチになってしまうのぅ…下着を履いて居らんのじゃが…」



あれ!?何処に行った?

一人あっちに行ってる

向こうにも…

王女は何処に行った?

探せ!!

683: 2020/10/19(月) 21:33:21.27 ID:iNLvSB+c0
『中央広場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ

ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ

ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ


何の音だ!?

空が叫んでるのか…

何この声…怖い


ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


嫌やぁああああああ

何処から聞こえて来るんだ!?

こ…これは魔王の声じゃないのか!?


ザワザワ ザワザワ

684: 2020/10/19(月) 21:33:54.56 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』



魔女「はぁはぁ…アサシン!エルフゾンビ!今の音を聞いたかえ?」

アサシン「空から音が鳴った…気球に行くぞ!!」

エルフゾンビ「案内人は!?」

魔女「外で空を見とる」

エルフゾンビ「連れて行く…先に気球へ行っててくれ」

アサシン「魔女!!こっちだ…手を離すな?」タッタッタ

魔女「これは何か起きる音じゃ…胸騒ぎが止まらぬ」タッタ

案内人「お~い待ってくれ…どういう事だ?」

アサシン「空が異常だ…気球で周りを見たい」

案内人「宿の代金をまだ払ってない…」

アサシン「それは後で良い…とにかく非常事態だ…私は気球の場所を知らないから案内人が先導してくれ」

案内人「あぁこっちだ!」タッタッタ




『貨物用気球』


ドドドドドドド


アサシン「動物か?地響きがするな…まだ飛べないか?」

案内人「もう少しかかる!」ワッセワッセ

エルフゾンビ「雲の様子が変だ…あのような雲は見たことが無い」

アサシン「南の方から何かが来た様な感じだな?」

案内人「上がるぞ!!」フワフワ

魔女「…そうか!!これはインドラの矢じゃ古文書に音の事が書いてあった」

アサシン「海が引いて行ってる…」

案内人「又津波か!?」

魔女「津波じゃと?…エルフゾンビ!!ゾンビを使って民を貴族居住区に追い立てるのじゃ」

エルフゾンビ「避難か…」

魔女「案内人!セントラルの上を飛べ…わらわが照明魔法で民の逃げる方向に目印を付ける」

案内人「わかった…」グルグル

魔女「エルフゾンビ!!貝殻を使って兄に呼びかけよ…大きな津波が来るとな」

アサシン「お!?セントラルから照明弾が上がった…兵の緊急招集だなアレは」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー

アサシン「光の矢印か…良い考えだ」

案内人「この海の引き具合だとあと1時間以内に来るぞ」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー

685: 2020/10/19(月) 21:34:30.32 ID:iNLvSB+c0
『1時間後』


アサシン「よし…いいぞ衛兵が民を誘導している!避難が間に合う!!」

案内人「海を見てくれ…段差が出来てる…アレが津波だ」

エルフゾンビ「ゆっくり流されて行くな…」

魔女「あの高さじゃと貴族居住区も浸かるかもしれんのぅ」

アサシン「自然の力の前で私達は何と無力か…ゆっくりと中央広場が水没して行く」

魔女「これは防ぎ様が無さそうじゃ」

アサシン「いつぞや見せた氷結魔法で凍らせられないか?」

魔女「この量は無理じゃが貴族居住区の門を塞ぐ程度なら出来るやもしれぬ」

アサシン「案内人!貴族居住区の上を飛ばせ」

魔女「水が上がって来たら魔法を発動させてみるぞよ」アブラカタブラ アブソリュート ゼロ

案内人「だめだ…中央は全域屋根まで浸かってる」

アサシン「魔女に掛けるしかない」

魔女「広範囲絶対零度魔法!」カキーン 


ガガガ ガリガリ 


アサシン「おぉ!!氷河が門に詰まって塞き止めが出来ている」

魔女「氷結魔法!氷結魔法!氷結魔法!」カキーン

エルフゾンビ「見ろ!!外郭の壁が崩落した…これで水位が下がるかもしれない」

アサシン「凌いだか!?」

エルフゾンビ「水が草原の方まで行ってる…信じられない光景だ」

案内人「海の中に浮かぶセントラル城…」

エルフゾンビ「あそこにどれだけの命が犇めいているのか…」

魔女「しかし…誰がインドラの矢を使ったかじゃな」

アサシン「千里眼で見通せないか?」

魔女「やって居るが盗賊も商人も…誰の目も見えんのじゃ…狭間の中に居るのじゃろうか?」

アサシン「狭間の中は見通せないのか?」

魔女「時間の流れが違うのでな?逆だと見えるのじゃがのぅ」

案内人「フィン・イッシュも心配だが…」

アサシン「あちらは海から少し離れた丘の上だ…セントラル程では無かろう」

魔女「今女王の目を見て居る…川が氾濫しておるな」

アサシン「逆流か!」

魔女「じゃが沿岸部だけじゃな…大した被害では無さそうじゃ」

アサシン「そうか…軽微で良かった」ホッ

魔女「わらわ達は眺めている事しか出来ぬ…唖然とはこの事を言うのじゃな…言葉が出ぬ」

686: 2020/10/19(月) 21:35:01.15 ID:iNLvSB+c0
『翌日』


フワフワ


アサシン「水が渦を巻きながら引いて行っている…リリスの血が見当たらないが…」

魔女「流されて行ったかのぅ?」

アサシン「海に消えた…のか?」

魔女「それはそれでセントラルの危機は去ったかもしれぬが…良くないのぅ?」

アサシン「カタコンベに入れてあったとすると濁流で下水から流れ出た可能性は高いな」

魔女「しばらく様子を見んと分からんな」

アサシン「カタコンベの掃除には丁度良かったと言う言い方も出来るな」

魔女「時の王はどうするかのぅ?顔が見てみたいわ」

案内人「セントラルの方は人が出てき始めたが…俺達はどうする?」

アサシン「このまま降りると気球を接収されそうだな…向こうの気球は流された模様だ」

魔女「しばらく待機じゃな…」

アサシン「女王の方はどうだ?フィン・イッシュに余裕があるなら救援を頼むのも良い」

魔女「女王はもう動いて居る様じゃぞ?何やら指示を出して軍船を見て居る」

アサシン「支援物資を積んだ軍船が来るのは外交的に非常に良い…来るとしたら2週間後か」

魔女「ところでエルフゾンビは貝殻に向かって話をして居ったが気が済んだか?」

エルフゾンビ「フフ一方的に話をするのは気持ちの悪いものだ」

魔女「聞いて居る方は楽しみに待っているもんじゃがのぅ…」

エルフゾンビ「ひとまず言いたいことは言ったつもりだが反応が無いのがな…」

魔女「反応を要求してみれば良かろう」

エルフゾンビ「どうやって?」

魔女「そうじゃな…白旗を上げろとか光を出せとかじゃな?」

アサシン「この気球にお前が乗っている事を話して居るのか?」

エルフゾンビ「こちらの居場所を特定できる事は何も言って無い…私の考えを話しただけだ」

魔女「この気球から派手に魔法を撃っておるんじゃ…向こうも察して居るじゃろう」

アサシン「…まぁそうだな…今更隠し立てしても遅いと言えば遅い」

魔女「そうじゃ…ミスリル銀を打って鳴らせという要求はどうじゃ?」

エルフゾンビ「もう一度話してみる」



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687: 2020/10/19(月) 21:35:38.16 ID:iNLvSB+c0
アサシン「今回の件でシン・リーンとフィン・イッシュが手を組んでいる様にセントラルには見えている…」

魔女「セントラルの方が国力が大きいで力関係は崩れて居らんと思うが?」

アサシン「いや甘い…貴族達の利害バランスが変わるのだ…それを是とするかどうかだな」

魔女「わらわの国の元老院制も対外じゃが貴族院制も同じなのじゃな?」

アサシン「国王は只の飾りなのだよ調印するための道具だ」

魔女「わらわは聞き分けの無い元老を何人か焼き頃したが咎められて居らんぞ?」

アサシン「それは魔術の絶対的権威があるからだ…シン・リーンはどちらかというと絶対王政に近い」

魔女「ではいくらエルフゾンビが兄の国王に取り入っても無駄という事じゃな?」

アサシン「エルフゾンビは法王制を施行しようとして失墜したのだ…代わりに貴族院が絶対的権威を持つことになった」

魔女「根が深いのぅ…」

アサシン「政治とはそういうものだ…だから私のような暗殺者が暗躍する」

魔女「主は言って居ったな?貴族を皆頃し出来ると」

アサシン「訂正する…時の王の様な存在が居ると分かった以上それは出来ない」

魔女「時の王がすべてを牛耳っていると思うか?」

アサシン「違うな…結果的にそうなっているだろうが奴は背後に座っているだけだ」

魔女「では誰が貴族院を掌握しておると言うのじゃ?」

アサシン「民衆のすべてだ…貴族それぞれの支持者達がマジョリティーとなって動かしている…だから」

アサシン「時の王はすべての人間を絶滅させたいのだ」

魔女「主は時の王の考えを支持するのじゃな?」

アサシン「支持では無い…理解だと解釈して欲しい」

魔女「うーむ…国王同士仲良くすれば上手く行くと言うのは考えがお花畑じゃったな…」

アサシン「魔女が提案したミスリル銀を打ち鳴らすというのはマジョリティを導くには良いのかも知れん」

魔女「それを知って実際に行動しているセントラル国王は優秀なのかも知れんな」

アサシン「…だが邪魔する者も出て来るのだ」

魔女「邪魔…」

アサシン「私達は民衆を貴族居住区に避難させたな?貴族は民衆を保護した形になった…つまり貴族院を支持したのだ」

魔女「わらわ達の行いが邪魔じゃったと…」

アサシン「人間はその様にうまく混ざり合わない…時の王が言いたいのはそういう事だ」



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688: 2020/10/19(月) 21:37:09.30 ID:iNLvSB+c0
コーーーーーーーン コーーーーーーーーン


エルフゾンビ「聞こえた!!返事をして来た…」

魔女「良かったのぅ…兄と通じ合った様じゃな」

エルフゾンビ「兄は…兄は同志だ」

魔女「その様じゃ…わらわ達と同じ様に魔王の影と戦っておる…立場が違うがな」

アサシン「弟が生きていると知ってさぞ喜んでいるだろう…周りには言えぬだろうが」

魔女「その貝殻は主にやるで一方通行でも話をしてやるのじゃ」

エルフゾンビ「わかっている…」

アサシン「さて…セントラルに用は無くなった…一度フィン・イッシュに戻るか」

魔女「そうじゃな…わらわも読み残した書物が沢山あるで一旦身を落ち着けたいのぅ」

アサシン「案内人!フィン・イッシュに戻るぞ」

案内人「はいよ!!」


ビューーー バサバサ



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 時の王編

   完

689: 2020/10/20(火) 09:31:40.11 ID:QyXZyXMu0
おつ


次回:勇者「魔王は一体どこにいる?」【淫魔の呪い編】



引用: 勇者「魔王は一体どこにいる?」続編