1:◆4xyA15XiqQ   2012/03/08(木) 15:08:30 ID:Dpm8RFoU0

 こんにちは、平沢憂です。
 先日、お姉ちゃんがついに高校生になりました。
 妹の私としても感慨深いというもの……なのですが。

 お姉ちゃんは高校生だというのに、何もやろうとしないのです。
 確かに家でダラダラしているお姉ちゃんは可愛いいですが、これでは高校生である必要がありません。
 幼馴染の和ちゃんが言っていましたが、今のままだとお姉ちゃんは「ニート」になってしまうかもしれないのです。

 これはいけません。

 というわけで、私は早速お姉ちゃんに「仕事」をしてもらうことにしたのです。
 全ての準備は完璧に終え、ついにお姉ちゃんがバイトの面接に向かう日がやってきました。

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けいおん!Shuffle 3巻 (まんがタイムKRコミックス)
2: 2012/03/08(木) 15:10:00 ID:Dpm8RFoU0

 ‐平沢宅‐

憂「……というわけで、バイトの面接行ってらっしゃいお姉ちゃん!」

唯「憂、私バイトなんて初耳なんだけど」

憂「うん、だって初めて言ったもん」

唯「だよね、でもそれっておかしくない?」

憂「そうかな、面接1時間前に言うなんて普通だよ」

唯「待って、それも初耳なんだけど」

憂「うん、だって初めて言ったもん」

唯「もしかして、まだ言ってないことある?」

憂「バイトに関しては何も無いよ、お店の場所は言ってないけど」

唯「それ一番重要だよね」

憂「はい、これがお店までの地図」

唯「憂、これ日本地図だよ」

憂「でも、家もお店も載ってるよ?」

唯「載ってることが重要じゃないんだよ」

憂「それなら住所を書いた紙を渡しておくね」

唯「稚内って書いてあるよ」

憂「あ、間違えた。本当はこっち」

唯「何で稚内って紙に書いたのかが疑問だけどありがとう」

憂「それとね、お姉ちゃん」

唯「何、またバイト関係の話?」

憂「そこまで重要では無いんだけどね」

唯「うん」

憂「家の時計、30分遅れてるみたいなの」

唯「それ結構重要だよね、面接まで時間無くなっちゃったよね」

憂「あ、本当だ」

唯「本当だね」

憂「お姉ちゃん、いい加減起きないと遅刻しちゃうよ!」

唯「……ずっと起きてるよ!!」



第一話「第一関門、憂」‐完‐

3: 2012/03/08(木) 15:11:12 ID:Dpm8RFoU0

 ‐お店‐

店長「で、あなたが平沢さんね」

唯「はい」

店長「んー……採用よ!」

唯「はい」

唯「……はい?」



第二話「第二関門なんて無かった」‐完‐

4: 2012/03/08(木) 15:11:55 ID:Dpm8RFoU0

 ‐ホール‐

唯「というわけで、これからこちらで働かせて頂くことになりました、平沢唯です」

?「まあまあ、ご丁寧にどうも」

紬「私はフロア担当の琴吹紬と言います。
 初めは慣れないことばかりだと思うから、わからないことは私に聞いてくださいね?」

唯「はい、よろしくお願いします」

紬「ふふ……ねえ、私達同い年じゃない?
 敬語は止めましょ?」

唯「……あれ、私まだ自分の年齢言ってませんよね?」

紬「あー……」

唯「……」

紬「……」

唯「……しばらくは敬語を使わせて頂きます、いえ使わせてください」



第三話「エスパーつむぎ」‐完‐

5: 2012/03/08(木) 15:13:08 ID:Dpm8RFoU0

 ‐キッチン‐

律「おっす、私はキッチン担当の田井中律っていうんだ。
 よろしくな」

唯「よろしくお願いします」

律「もう一人キッチンスタッフいるんだけど、今は休憩中かな……?
 あっ、平沢さんって学生だよね?」

唯「高校一年ですよ」

律「私と同い年じゃん!
 ならさ、これからは“唯”って呼んでいい?
 唯も敬語じゃなくていいし、軽い呼び方で呼んじゃってよ」

唯「……じゃあ、私は“りっちゃん”って呼びま……呼ぶね」

律「おお、いいな。唯!」

唯「……りっちゃん!」

律「唯ー!!」

唯「りっちゃーん!」

律「唯ーーー!!」

唯「りっちゃーーーん!」

律「ゆーいー!!」

唯「りーっちゃーん!!」

律「ゆいいいいいイイイイイ!!!」

唯「……りっちゃん」



第四話「まともにうるさい人、りっちゃん」‐完‐

6: 2012/03/08(木) 15:14:14 ID:Dpm8RFoU0

 ‐休憩室‐

律「こいつがもう一人のキッチン担当、秋山澪だ」

澪「よ、よろしく……」

唯「うん、よろしく~」←澪は同い年だと既に聞いている

律「こいつは私の幼馴染で、同じ高校に通う同級生なんだ」

澪「まあな……」

唯「へー、凄く仲良しなんだね!」

律「そうだ、最高に仲良しの大親友なんだぜ!」

澪「いや別にそうでもない」

律「えっ」



第五話「まともにえげつない人、澪ちゃん」

7: 2012/03/08(木) 15:15:17 ID:Dpm8RFoU0

 ‐ホール‐

唯(今日はフロア担当の人がもう一人来てると聞いたけど……)

唯(挨拶ぐらいはしておきたいなあ。どこにいるんだろう?)

紬「あら、唯ちゃん」

紬「今日来ている、もう一人のフロア担当をお探し中ね?」

唯「まだ何も言ってないんですけど」

紬「それならあそこに座る、二つ結びの子がそうよ」

唯「人の話を……聞かなくてもわかるんですね、すみません。
 あの人ですか?どっからどう見てもお客さんに見えますけどね」

紬「サボってるのよ」

唯「わかってて放置してるんですか」

紬「私は平和主義なの~」

唯「平和が人を堕落させるなら、私は戦います」



第六話「お前が言うな」‐完‐

8: 2012/03/08(木) 15:15:50 ID:Dpm8RFoU0

唯「あのー……」

?「はい?」

唯「あなたフロア担当の……って、あれ?
 どこかで見たことある顔だなあ……」

?「ききききき気のせいですよ!!」

唯「お名前は?」

鈴木「鈴木です」

唯「ああ、純ちゃんか」

純「しまったあああアアア!!」



第七話「お馬鹿な正直者、純ちゃん」‐完‐

9: 2012/03/08(木) 15:30:02 ID:Dpm8RFoU0

純「ここは山田を名乗るべきでした……」

唯「なんで山田なの?」

純「バイトの偽名といえば山田だと、相場が決まっているんです」

唯「よくわからないけど、それ以前にさ」

唯「なんで中学三年生の純ちゃんが働いてるの?
 ここって高校生以上を募集してるんだよね?」

純「あわわわわ……。
 唯先輩、あまりそのことを言わないでください……」

唯「何で?」

純「私は高校一年生だとお店には言ってるんですから」

唯「そこでは嘘をつけるんだね」

純「ところで唯先輩は何でこんなところに?」

唯「バイトだよ」

純「えっ」

唯「信じられない、みたいな反応しないでよ」

純「だってあのぐーたらな唯先輩がですよ?」

唯「うん」

純「ぐーたらで、何の取り柄もない唯先輩がですよ?」

唯「……うん?」

純「ぐーたらで、何の取り柄も無くて、ニート予備軍とも疑われた唯先輩がですよ!?」

唯「ねえ」

純「ぐーたらで、何の取り柄も無くて、ニート予備軍とも疑われ、更に」

唯「まだ何かあるの!?私のメンタルも気遣ってよ!!」

純「憂から唯先輩を捲し立てて、やる気を引き出すように言われたので」

唯「あの台詞も憂が考えたの……?」

純「いえ、私の言葉ですよ」

唯「へえ……純ちゃん、私のことそう思ってたんだ」

純「違います!ただ、上手い言葉が見つからなくて……」

純「唯先輩の第一印象を思い出しながら、言ってみたんです」

唯「なるほどねー……えっ?」

純「あっ」



第七話「やっぱりお馬鹿な正直者、純ちゃん」‐完‐

11: 2012/03/08(木) 18:18:28 ID:Dpm8RFoU0
いいえ、違います。

12: 2012/03/08(木) 18:19:46 ID:Dpm8RFoU0

純「唯先輩、拗ねないでください!
 本当に、そう思ってたのは最初だけですから!」

唯「うぅ……後輩に馬鹿にされるなんて……」

純「あのですね、唯先輩をちゃんと知ってからは違う印象を持ったんですよ?」

唯「本当……?」

純「本当です!憂から散々唯先輩の話は聞いてますから」

唯「じゃあ、純ちゃんは私をどんな人だと思う?」

純「それはですねー……」

唯「……」

純「……」

唯「……ねえ」

純「そ、それはですねー……」

純(冷静に考えてみたら、憂からは“可愛い”以外のワードを聞いたことがなかった)



第八話「これが情報統制」‐完‐

13: 2012/03/08(木) 18:20:30 ID:Dpm8RFoU0

紬「唯ちゃーん!今から仕事の内容とか説明するから、こっちに来てくれるかしらー?」

唯「あ、はい!」

純「あれ、唯先輩って紬さんに対して敬語使ってるんですか?
 同い年のはずですよ?」

唯「純ちゃん、社会は年齢とか関係ないんだよ」

純「はあ」

唯「そんな甘いものじゃないんだよ」

純「社会に出た初日に何を悟ったんですか」

唯「超常現象かな」

純「大体わかりました」

唯「わかっちゃうんだ」

紬「唯ちゃーん?」

唯「あっ、すみません、今すぐに行きます!」

唯「というわけで純ちゃん、次会う時には私のイメージを言ってもらうからね」

純「覚えてたんですか」

唯「数分前のことを忘れるほどボケてないよ」

唯「じゃあ、私は紬さんのところ行ってくるから!」

純「はい、行ってらっしゃい」

純「……」

純「憂にメールしようかな」



第九話「これが二の舞」‐完‐

15: 2012/03/08(木) 19:08:10 ID:Dpm8RFoU0

 ‐キッチン‐

律「澪~、ヒドイよ~!」

澪「あー、もう悪かったって!
 頼むから刃物を扱ってる時に、身体を揺らさないでくれ!」

律「じゃあ、澪から言ってくれ。
 私と澪は、絶対的に仲良しだよな?」

澪「……はあー……」

律「呆れられた!?」

澪「そんなこと再確認して、どうするんだ?」

律「だってよー……“再”確認……?」

澪「黙って仕事しろよ、律ー」

律「……おう」



第十話「言葉にした方がいいけど、しなくてもわかること」‐完‐

16: 2012/03/08(木) 19:09:50 ID:Dpm8RFoU0

 ‐ホール‐

紬「……と、仕事はこんなとこかしら」

唯「大体わかりました」

紬「さっきも言ったけど、わからないところは私に聞いてね?
 じゃんじゃん頼っちゃっていいんだから!」

唯「はい。ところで紬さん」

紬「もう、敬語じゃなくていいのに。
 それでなーに?」

唯「さっきから会うバイトの人が全員女性なんですけど、これは偶然ですか?」

紬「いいえ、そういう意向よ」

唯「でもバイトの募集要項に“女性限定”なんて書いてませんでしたよ……」

紬「チェーン店だもの、勝手なことは出来ないわ」

唯「いや、でも十分勝手なことしてますよね?」

紬「これは勝手なことではないわ」

紬「ニーズに応える工夫よ!」

唯「モノは言い様ですね」



第十一話「魔法の言葉」‐完‐

17: 2012/03/08(木) 19:11:09 ID:Dpm8RFoU0

唯「そういえば私、店長の名前知らないんですけど」

紬「あの人は山中 さわ子っていう名前よ。
 美人さんだけど、怒ると怖いから気をつけてね」

唯「はい、ありがとうございます、気をつけます」

唯「後、私何もせずに採用されちゃったんですけど、何で採用なのかわかりますか?」

紬「ええ」

唯「え、わかるんですか!?
 いくら考えてもわからなかったので……教えてください!」

紬「コスプレが似合いそうじゃない!」

唯「私、明日でバイト辞めますね」



第十二話「魔界に迷い込んだ羊」‐完‐

18: 2012/03/08(木) 19:12:22 ID:Dpm8RFoU0

紬「ちょちょちょちょっと待って!
 何ですぐに辞めようとするの!?」

唯「むしろそういう疑問を抱かれることが意外でした、
 誰だってそうなるものだと思ってました」

紬「だって店長さんの作るコスプレは可愛いものが一杯なのよ?」

唯「店長さんが作ってるんですか!?」

紬「ええ、毎日仕事もせずに」

唯「もう本当に碌でなしですね」

紬「って、問題はそこじゃないのよ」

唯「そこが一番の問題だったように思えますが、お店にとって」

紬「まあ一度、コスプレの衣装を見てみて。
 本当に可愛いものが一杯だから」

唯「いずれ見せてもらいます」

紬「そして、私の前でコスプレを着るのよ?」

唯「いえ、着るかどうかは別問題……」

紬「私の前でコスプレを着るのよ!」

唯「ですから……」

紬「私の前で!!」

唯「……何でそこを強調してるんですか」



第十三話「溢れだす鼻息と欲望」‐完‐

19: 2012/03/08(木) 19:14:40 ID:Dpm8RFoU0

 ‐スタッフルーム‐

さわ子「唯ちゃん、今いるスタッフの皆には挨拶出来たかしら?」

唯「はい、おかげ様でバイトを辞めるところでした」

さわ子「面白い冗談ね、唯ちゃん!
 始まってすらいないものを辞めるなんて出来ないわよー?」

唯「私は本気だったんですけど。
 ……いえ、まあ辞めませんけど」

さわ子「そう、それなら明日から頼むわね。
 これがあなたのシフトよ」

唯「あっ、どうも。ほぼ毎日出勤ですね」

さわ子「暇だって聞いたから、こうしたんだけど……。
 駄目だったら言ってね?」

唯「駄目じゃないんですけど、誰に聞いたんですか?」

さわ子「あなた自身が言ってたじゃない?」

唯「えっ」



第十四話「ほくそ笑む、平沢憂」

20: 2012/03/08(木) 19:20:17 ID:Dpm8RFoU0

 ‐平沢宅‐

唯「ただいまー」

憂「おかえり、お姉ちゃん!」

唯「憂ー、疲れたよー!
 あの店、変な人ばっかりだよー!」

憂「ゴメンねお姉ちゃん……私がわざとそういう店を選んだから……」

唯「う……ん、憂?」

憂「コスプレ姿のお姉ちゃんが見れると聞いて、あんな店を選んで……」

唯「憂さん?」

憂「朝、あんな無茶苦茶な態度でお姉ちゃんと接していたのには理由があるの。
 あれぐらいじゃなきゃ、お姉ちゃんは動いてくれないと思ってたから……」

唯「憂さーん?」

憂「全ては可愛いお姉ちゃんを見るため……お姉ちゃんのためなんだよ!」

唯「それ全部自分のためだよ!!
 私のために何一つなってないよ!!」

憂「お姉ちゃんの幸せは、私の幸せ……逆もまた然り。
 これが姉妹ってものだよって、前にお姉ちゃん言ってくれたよね?」

唯「こんな特殊なシチュエーションは想定してないよ!!
 憂の馬鹿ーーー!!」

憂「あっ、お姉ちゃん待って!」

憂「……本当はね、お姉ちゃんに何かを取り組んでほしかったの。
 それは勉強でも部活でもよかった」

憂「だけどそれをお姉ちゃんはしようとしなかった。
 それがお姉ちゃんの選んだことなんだって、私は納得しようとしてたよ?」

憂「でもね、やっぱり何かに取り組んでいる姿が一番かっこいいし、素敵だと思う。
 私はどんなお姉ちゃんでも好きだけど、かっこよくて素敵なお姉ちゃんは最高に好き!」

唯「憂……」

憂「勝手なことしちゃったのは、悪いことだってわかってるの。
 だけど、こうでもしないと本当にお姉ちゃんは……」

唯「ううん、お姉ちゃんが悪かったよ憂。
 何もせずに生きているなんて、ズルイことかもしれないね」

唯「私、頑張るよ。憂の期待に応えられるかはわからないけど、バイトに全力で取り組む!」

唯「だから憂は、そんなお姉ちゃんを好きでいてくれるかな……?」

憂「お姉ちゃん……当然だよ!大好き!」

唯「ありがとうね憂……よーし、張り切っちゃうぞー!」

憂「うん、楽しみにしてるね!」

唯「任せてよ」

憂「お姉ちゃんのコスプレ!!」

唯「えっ?」

唯「……え?」

憂「メイド服かな……巫女服も可愛いだろうなあ……!」

唯「……」



唯「憂の馬鹿ーーーーーー!!!」



第十五話「満面の笑み、平沢憂」‐完‐

24: 2012/03/12(月) 12:21:47 ID:Y633qUuk0

 ‐ホール‐

唯「はぁ……」

純「唯先輩、どうしたんですか?」

唯「ちょっと身内の人に嵌められたみたいでね……」

純「それは大変ですね、何かお助けしましょうか?」

唯「ううん、いいよ。純ちゃんは自分の仕事をこなして」

純「大丈夫です、基本的に私は仕事しないんで」

唯「しようよ」

純「それに、今日は働き者の人が来てくれますから」

唯「まだ私が会ってないバイトさん?」

純「いえ、お客さんです」

唯「お客!?」



第十六話「客もスタッフも、元を辿れば皆人間」‐完‐

25: 2012/03/12(月) 12:26:03 ID:Y633qUuk0

唯「客に仕事をやらせるとは、一体どういうことなの……?」

純「見てればわかりますって……おっ、噂をすれば何とやらですね。
 来ましたよ」

?「……あ、また純サボってる!?」

純「はは、梓が来ると期待していたからね」

梓「応えたくない期待ってあるんだね」

純「まあまあ、私だっていつもサボってるわけじゃないんだよ?
 梓が来たときだけだってば」

梓「嘘つき、いつでもサボってるでしょ?」

唯「えーと……梓ちゃんっていうの?」

梓「あ、純から聞いています、平沢唯さんですよね」

梓「中野梓です、よろしくお願いします」

唯「うん、よろしく」

梓「早速で悪いんですが、一つ質問してもいいですか?」

唯「何?」

梓「唯さんは変わった人ですか?」

唯「いきなりそんな質問してくるほど苦労してるんだね」



第十七話「苦労人(?)、梓ちゃん」

26: 2012/03/12(月) 12:29:07 ID:Y633qUuk0

唯「ねえ梓ちゃん」

梓「はい何でしょう」

唯「凄く自然に仕事してるところ悪いけど、梓ちゃんはお客さんなんだよね」

梓「そうですよ。私は中三ですから、ここでバイトなんて出来ません」

唯「なら、何で仕事してるの?」

梓「お金が欲しいからです」

唯「素直でいい子だね」

唯「質問を変えよう、梓ちゃんは何で純ちゃんの代わりに働いてるの?
 普通にバイトすればいいのに」

梓「私はバイト出来ませんよ、中三ですから」

唯「そうだね、普通はそうだったね。
 普通に純ちゃんがおかしいだけだったね」

梓「はい」

純「おい」

唯「でも、純ちゃんみたいに年齢詐称してバイトすればいいんじゃないかな?」

梓「私は嘘と純みたいなのが嫌いなので」

唯「その気持ちわかるよ」

純「わからないでください」

唯「そうだな、じゃあ単刀直入に聞くよ」

唯「ここで働くようになったきっかけは?
 こんな純ちゃんみたいなのがいるんだよ」

梓「こんなのがいるからこそですよ」

純「こんなの言うな」



第十八話「こんなの程度の純情」‐完‐

27: 2012/03/12(月) 12:32:04 ID:Y633qUuk0

唯「それで、きっかけは?」

梓「あれは偶然この店に立ち寄った日でした」

梓「店に入った私は、瞬時に変人電波をいくつもキャッチしたんです」

唯「体の中にアンテナでもあるの?」

梓「そう言っても差し支えはありませんね」

唯「便利だね」

梓「前世は猫だと言われたもので」

唯「それ関係無いよね」

梓「そんなことはありませんよ」

純「何が関係あるのさ」

梓「まあとにかく、まだマシな変人電波を発してる方向へ行ったんです」

唯「変わった人が多いからね、このお店」

梓「そうして私が進んだ先には、茶色いモップがありました」

梓「それが純でした」

唯「成る程ね」

純「納得しないでください」

梓「純は慣れた手つきでサボっていました」

唯「既に慣れてたんだ」

梓「そして私は察知しました。
 こいつ、私と同い年のくせに働いている、と……」

唯「働いてないけどね」

純「たまに働いてます」

唯「それにしても、よく察知出来たね。
 またアンテナかな?」

梓「前世は猫だったみたいなので」

唯「梓ちゃんの中でアンテナは猫なんだね」

梓「アンテナはアンテナ、猫は猫ですよ?」

唯「ああ、私変なこと言っちゃったよゴメンね」

梓「いえ、純ほどではありません」

純「ちょい待て」

梓「あとは取引をするだけです。
 私は純が中三だと黙っているから、私にバイト代を半分渡せと」

唯「可愛い顔してむごいことするね」

純「中身は悪魔なんです」

梓「サボり魔は黙っててね」

梓「まあ、それだけでは流石に申し訳無いので、純の仕事をいくらか代わりにやってあげてるんです」

唯「いい感じにギブアンドテイクなんだね」

純「これで私の時給は実質400円ぐらいになるんですよ……」

唯「半分以上働いてないから十分でしょ」

純「いえ、これは労働基準法に違反しているレベルです!」

梓「働いてない人には適用されないんだよ、純」

純「たまには働いてるってばー!」

唯「……だから常に働こうよ!!」



第十九話「この世はギブアンドテイク」‐完‐

28: 2012/03/12(月) 12:36:11 ID:Y633qUuk0

唯「あれ?それでも、梓ちゃんが年齢詐称してバイトした方がいいよね?」

唯「結局梓ちゃんは働いちゃってるし」

純「そう、実にそうなんですよ」

梓「しかし、これには深い理由がありまして」

梓「私は嘘と純が嫌いなんですが……」

純「私自身!?」

梓「年齢詐称してでも稼ぎたい自分がいるのも確か」

唯「働きたいじゃなくて、稼ぎたいなんだね」

梓「そこで私は、お店側にこう言ったんです」

梓「“私は純と同い年の友人です、たまにお手伝いをさせてください。
 お金は一切いりません、社会勉強が目的ですから”と」

梓「するとあら不思議。
 私は大歓迎された揚句、純からお金まで貰える始末」

梓「しかも、私は嘘を一切ついていないというおまけ付きです!」

唯「おお、確かに嘘はついていないね」

梓「これで誰も傷つきません」

純「私がボロボロだよ」

唯「それにしたって、純ちゃんの代わりに働いてあげる梓ちゃんは偉いと思うよ。
 苦労してない?」

梓「いえ、実はですね」

唯「ん?」

梓「この店、お客さんがあまり来ないんで、大体暇なんですよ」

唯「えっ」

梓「よって、私は全然苦労していません!」

唯「……うん、大丈夫みたいだね(このお店以外は)」



第二十一話「結局苦労人じゃなかったよ、梓ちゃん」‐完‐

29: 2012/03/12(月) 12:38:11 ID:Y633qUuk0

 ‐キッチン‐

律「ホールスタッフのやつら、大分仲良くなってるな」

澪「梓はスタッフじゃないけどね」

律「純ちゃんよりはスタッフだろ」

澪「それは一理あるな」

律「というよりは真理だろうな」

澪「それも一理あるな」

律「純ちゃん、サボってばかりだからなー」

澪「給料を貰ってる身だという自覚が足りないんだな」

律「全くだ」

紬「二人とも、喋ってないで仕事してね?」



第二十二話「灯台下暗し」‐完‐

30: 2012/03/12(月) 12:39:21 ID:Y633qUuk0

 ‐ホール‐

律「なあ、澪」

澪「ん?」

律「私たちってさ、キッチンスタッフなんだよな?」

澪「今更何を言ってるんだ?
 当たり前だよ」

律「ホールのことはホールスタッフに任せるべきだよな?」

澪「だな」

律「それならさあ」

律「何で私たちは店の窓を拭いてるんだ?」

澪「暇だからだよ」

律「そうか」

紬「手を休めないの」



第二十三話「窓はいつでもピカピカよ」‐完‐

31: 2012/03/12(月) 12:40:59 ID:Y633qUuk0
あ、二十話抜けてる……

32: 2012/03/12(月) 12:42:08 ID:Y633qUuk0

 ‐休憩室‐

唯「あっ、澪ちゃん」

澪「唯も休憩時間?」

唯「大体の時間が休憩時間かな」

澪「それは一理あるな」

唯「……」

澪「……」

唯「暇だね」

澪「暇だな」

唯「トランプある?」

澪「花札ならあるよ?」

唯「その返答は予想してなかったよ。
 まあ暇だし、やろうか」

澪「私、ルール知らないんだ」

唯「何で持ってきたの」



第二十四話「花見酒は二十歳から」‐完‐

33: 2012/03/12(月) 12:44:11 ID:Y633qUuk0

澪「よし、花札やろう」←ルール覚えた

唯「うん」

律「澪の休憩時間終わりだぞー」

澪「……うん」

律「私と交代な」

唯「澪ちゃんが泣きそうなんだけど」

律「おっ、これ花札か?」

唯「りっちゃんは花札のルールわかる?」

律「いや、全くわからない」

唯「振り出しに戻った」



第二十五話「月見酒も二十歳から」‐完‐

34: 2012/03/12(月) 12:46:45 ID:Y633qUuk0

 ‐ホール‐

紬「梓ちゃん、頑張ってるわね」

梓「いい加減この時間帯ですから、お客さんも少しずつ入ってきますね」

紬「そうね」

梓「ところで紬さん」

紬「なに?」

梓「お客さんの十割が女性なんですけど」

紬「全員ね」

梓「何か女性に嬉しいキャンペーンやってました?」

紬「特に何もやってないわね」

梓「まさか男性客を門前払いしたわけじゃないですよね」

紬「そんなことして無いわ。
 門前にすら近寄らせるわけにはいかないもの」

梓「深く考えると怖いので、私は仕事しますね~」



第二十六話「賢い選択」‐完‐

35: 2012/03/12(月) 12:49:08 ID:Y633qUuk0

唯「あー、忙しい忙しい……」

純(唯先輩が頑張って働いている……)

唯「時間帯によって人の入りが全然違うよ~」

純(家では憂に頼り切りで、だらし無いと聞いていたけど)

唯「あっ、いらっしゃいませー!」

純(こんな唯先輩を見たら、憂は嬉しくて発狂するんじゃないかな?)

唯「ふう……」

純(写メって憂に送ろう)

唯「ん?」

純(ああ、唯先輩動かないで!
 ベストショットを撮らせてください!)

唯「おお、いらっしゃい!」

純(今だ!今しか撮れるタイミングは無い!)

憂「盗撮はいけないよ、純ちゃん」

純「ういょええええ!?」



第二十七話「罪には罰を」‐完‐

36: 2012/03/12(月) 12:52:05 ID:Y633qUuk0

純「憂、いつの間に!?」

唯「さっき来たんだよね?」

憂「うん、お姉ちゃんは気づいてくれたね!」

純(音も無くカメラの前に現れたんですが)

憂「それよりも純ちゃん。
 盗撮は良くないよ、めっ!」

純「うう、ゴメンなさい」

憂「きちんと許可を取ってから撮るんだよ?」

純「わかったよ」

憂「私の」

唯・純「憂の!?」



第二十八話「肖像権の行方」‐完‐

37: 2012/03/12(月) 12:55:02 ID:Y633qUuk0

唯「憂、普通必要なのは私の許可だよね?」

憂「普通はそうだね」

唯「でも憂は憂の許可が必要だって言ったよね」

憂「だって約束したんだもん」

唯「約束?」

憂「お姉ちゃんが」

唯「うん」

憂「私のものになるって」

唯「してないしてない、絶対してない」

憂「お姉ちゃんとはしてないよ」

唯「まず私以外とする約束じゃない」

憂「お星様としたんだよ」

唯「ましてや無生物としてはいけない」

憂「まあ、そんな冗談は別として」

唯「やっとスタート地点に戻れたね」

憂「お姉ちゃんは私のものである、という前提で話を進めるね?」

唯「スタート地点を間違えてるよ」



第二十九話「スタート以前の苦闘」‐完‐

38: 2012/03/12(月) 12:57:28 ID:Y633qUuk0

純「憂、いい加減タチの悪い冗談は止めなよ」

憂「純ちゃんにはわからないと思うけど、このやり取りには秘密があるんだよ」

純「え?」

憂「お姉ちゃんは、こういう理解不能な状況に立ち会うと」

憂「……覚醒するんだよ!」

唯「呆れてるんだよ」

憂「この時のお姉ちゃんの受け答えがね、とってもクールでカッコイイの」

純「まあ確かにダラダラしてる唯先輩とは一味違うけど、呆れてるみたいだから」

憂「でしょでしょ?だから定期的にクールお姉ちゃんを見るために、わざとこんな冗談を言ってるんだ~」

憂「まあ、いつものお姉ちゃんも素敵だよ?
 でもクールお姉ちゃん、通称かっこ唯お姉ちゃんはいつもとは違った魅力を備えてるんだよ……!」

純「……ねえ、憂」

憂「何?」

純「唯先輩がクールを通り越して、ドン引きのフリーズドライしてるよ」

唯(高校を卒業したら一人暮らしをしよう、絶対に)



第三十話「そうだ、一人になろう」‐完‐

44: 2012/03/19(月) 10:49:46 ID:y32qstaw0

唯「とりあえず憂はお客さんなんだよね?
 席に案内するから、ついてきて」

憂「お仕事してるお姉ちゃん、カッコいい……!」

純「……ふぅ、やっと行ってくれたか」

純(憂のお姉ちゃん好きがここまでとは……。
 学校で散々聞いていたとはいえ、実際に見ると違うんだな~)

梓「純~!」

純「ん、何?」

梓「店長がスタッフルームに来いだってさ」

純「えっ……」

純「この店って、店長いたの!?」

梓「流石にそれはないと思う」



第三十一話「店長、勝手に氏す」‐完‐

45: 2012/03/19(月) 10:50:52 ID:y32qstaw0

 ‐スタッフルーム‐

梓「店長、呼んできました」

さわ子「うん、御苦労さま」

純「店長、初めまして」

さわ子「あなたが鈴木純さんね、話には聞いているわ」

梓「えっ、本当に初対面なの?」

純「私は紬さんに採用されたからね。
 “今日の店長は準備で忙しいから、私が代わりに”って」

さわ子「そうそう、最近になって落ち着いてきたんだけどね」

梓「つまり、その準備はあらかた終わったってことですか?」

さわ子「ええ。それに今回二人を呼び出したことと、その準備には関係があるのよ」

純「それで、用件とは一体?」

さわ子「これを見てもらえるかしら?」

梓「これって……えー……」

純(コスプレ……だよねえ……)

さわ子「後はわかるわよね?」

梓「はい、あとはこの職場を辞めるだけですね」



第三十二話「No, Thank You!と言う勇気」‐完‐

46: 2012/03/19(月) 10:52:54 ID:y32qstaw0

さわ子「えー、どうして辞めるの?」

梓「コスプレを着たくないからじゃないでしょうか」

さわ子「可愛いのも一杯なのよ?」

梓「わあ、可愛い。今までありがとうございました、さようなら」

さわ子「このメイド服なんて特にオススメなのに!!」

純「本当に止める気あるんですか」

純「まず、そんなフリフリなものは私でも恥ずかしいですよ」

さわ子「……わかった、フリフリしてなければいいのね」

純「いえ、そういうわけでは」

さわ子「というわけで全然フリフリしていない、これを着させてあげるわ!」

梓「これはスクール水着です」

さわ子「全然フリフリしてないわよ?」

梓「根本的に解決していません」

さわ子「もう、二人とも贅沢なんだから」

純「正当防衛と言ってほしいですよ……」

さわ子「あっ、警察服もあるのよ?」

梓「純、この人を警察に引き渡すから手伝って」



第三十三話「この人にピンときたら110番」‐完‐

47: 2012/03/19(月) 10:53:57 ID:y32qstaw0

さわ子「ひ、ヒドイわ梓ちゃん……!
 そうやって私を脅迫しようとするのね!?」

梓「勝手な勘違いで濡れ衣を着せないでください」

さわ子「濡れ衣……。濡れたワイシャツというのもアリね!」

梓「勝手にレパートリーを増やすのも止めてください、どれも着ませんから」

梓「というか、反省の色全く無しですか。
 本当に此処の仕事辞めますよ?」

純「まあまあ梓、いきなり辞めるなんて言わないでさ……」

純(ん、待てよ)

純(ここで梓が辞めれば、私の給料が取られることは無くなるんじゃ?)

純(そうだ、絶対そうなんだ)

純(よって私の給料は今の二倍になって、時給425円労働から解放される!)

純(グッバイ、時給425円!ハロー、時給850円!)

純(……)

純(冷静に考えてみよう)

純(今、梓が仕事をしているのは梓自身の厚意であって、お金のためではない。
 だから梓がここで仕事を辞めても、私との契約は解除されない)

純(つまり私の給料は一切増えない)

純「ちくしょう!!」

梓「いきなり何!?」



第三十四話「押してダメなら引いてもダメ」

48: 2012/03/19(月) 10:55:05 ID:y32qstaw0

梓「大体、此処はコスプレで接客するようなお店じゃありません。
 健全かつ、閑古鳥も鳴くことをお休みする程のお店なんですよ」

さわ子「二番目の情報はいるのかしら」

梓「とにかく、私はコスプレなんてする気はありません」

さわ子「でも、あの二人はわかってくれちゃったんだけどなあ」

純「あの二人って、まさか唯先輩と紬さんですか?」

さわ子「そう、ホールスタッフの二人ね」

純「紬さんは謎が多いから置いておいて、唯先輩は意外だなあ。
 可愛いもの好きだとは聞いてるけど、こういうものには冷ややかな目を向けそうだし」

梓「唯さんはどんな風に了承したんですか?」

さわ子「えーとね、こう言っていたわ。
 “お姉ちゃんなら大丈夫です、何でも着せちゃってください”って」

純「それ憂ですよね」

さわ子「知ってるわよ」



第三十五話「本人は何も知らない」‐完‐

49: 2012/03/19(月) 10:56:09 ID:y32qstaw0

梓「本人の了承無しに事を進めてるんですか!?」

さわ子「んー、まあ後で説明すればいいでしょ」

梓「そんなことは無いと思いますけどね」

さわ子「そんなわけで、二人とも早く着替えてね」

梓「どんなわけですか」

さわ子「これは業務命令よ?
 業務上のことなら、嫌なことも引き受けなくてはいけない……」

さわ子「これが社会の厳しさよ!」

梓「ただのセクハラだと思います」



第三十六話「それは業務命令ですか?」‐完‐

50: 2012/03/19(月) 10:57:14 ID:y32qstaw0

さわ子「セクハラじゃないわ、これは立派な業務なのよ」

梓「そんな業務をするファミレスがどこにあるんですか……」

さわ子「ここ以外には見たことが無いわね」

梓「わかっててやってるんですか、余計にタチが悪い」

純(……やばいよやばいよー!)

純(この流れは否が応でもコスプレさせられる流れだ)

純(こうなったら仮病で早退して、この場を切り抜けるしかない……!)

純(まだだ、まだ口を開くな……タイミングを計るんだ!
 3……2……1……!)

紬「あら純ちゃん、仮病で早退なんてしないでね?」

純「はは、何を言ってるんですか!
 朝から元気過ぎて困ってるぐらいですよ、ちくしょう!!」



第三十七話「否が応でも承知しました」‐完‐

51: 2012/03/19(月) 10:58:01 ID:y32qstaw0

純「って、紬さんいつの間に!?」

紬「ふふ、そろそろ始まるもの」

純「何がですか?」

紬「このお店、最大のイベントよ」

さわ子「ムギちゃん、唯ちゃんは呼んでくれたかしら?」

紬「はい、あと少しで来ると思います!」

さわ子「ありがと。ふふ、ついにこの時が来たのね」

梓(嫌な予感しかしない)

唯「あのー……」

梓(ああ、これでホールスタッフが全員集まってしまった)

純「あっ、唯先輩こっちです!」

唯「純ちゃんと梓ちゃんも呼ばれたんだ?」

純「私たちは大分前に呼び出されてましたけどね」

唯「一体これから何が始まるの?」

純「あえて言うのであれば、公開処刑です」



第三十八話「無情な宣告」‐完‐

52: 2012/03/19(月) 10:58:36 ID:y32qstaw0

唯「純ちゃん、私の理解が追いつかないよ」

純「これは物の例えってやつです」

唯「処刑に例えられてる時点で惨いよね」

純「確かにそうですね」

さわ子「処刑に例えるなんて失礼しちゃうわ。
 実際はそんなこと無いの」

さわ子「ただのコスプレサービスタイム、略してKSTをしてもらうだけよ」

唯「名前聞いただけで寒気がしてきました」

さわ子「確かにゾクゾクしてくるわねえ……」

唯「そういうことじゃないです」

唯「しかもコスプレの頭文字は“C”です」

さわ子「細かいことはいいのよ。
 それじゃあ、CSTの概要について説明するわね」

純(直した……)

梓(直した……)

紬(直した……)

唯「直しましたね」

さわ子「細かいことはいいのよ!!」



第三十九話「人の振り見て我が振り直せ」‐完‐

53: 2012/03/19(月) 11:00:22 ID:y32qstaw0

さわ子「CSTはね、ホールスタッフが様々なコスプレをして接客することサービスなの」

さわ子「どのコスプレを着るかは、自由に選べる。
 種類はライトなものからコアなものまで、幅広く扱っているわ」

唯「何でそんなものが揃ってるんですか」

紬「お仕事を返上して店長が毎日頑張って作ってるもの」

唯「返上する方向が逆です」

紬「唯ちゃんには何を着せましょうか?」

唯「話を進めないでください」

さわ子「そうねえ、唯ちゃんはバーテーンダーの服を着させてあげるわ」

唯「着れるものは私が自由に選べるんじゃないですか」

さわ子「私が自由に選べるのよ」

唯「そんな独裁体制ありですか」

唯「まあ、バーテンダーならカッコいいで済むからいいですけど……」

さわ子「よしよし、ムギちゃんはお着替えの手伝いをしてちょうだい」

紬「わかりました!
 さあ唯ちゃん、着替えるからついて来て」

唯「私一人で着替えますよ」

紬「私について来て?」

唯「ですから」

紬「私の前で着替えて?」

唯「それが目的なんでしょう」



第四十話「ノリに乗る鼻息とともに」‐完‐

54: 2012/03/19(月) 11:04:00 ID:y32qstaw0

さわ子「さて、と……次は純ちゃんね」

純「余命宣告を受ける一分前って感じですよ」

純「まあ、普通に可愛いやつならノープロブレムの大歓迎なんですけどね」

さわ子「そうね、清掃要員なんてどうかしら?」

純「それで納得するとでも思ったんですか、あなたの頭は」

梓「モププッ……」

純「笑うな、モップ言うな」

さわ子「それならいっそのこと、可愛いモップコスなんてどうかしら?」

純「何でそんなコスプレがあるんですか、どんな客層にニーズがあるんですか!!」

さわ子「必要なのはニーズじゃないわ、愛よ」

梓「その愛護心で私たちを守ってほしいものです」



第四十一話「必要なのは愛とモップ」‐完‐

55: 2012/03/19(月) 11:05:19 ID:y32qstaw0

純「せめて人にしてください、ただし清掃要員以外でお願いします」

さわ子「それならこうしましょう。純ちゃんは犬耳、梓ちゃんは猫耳をつけるの!」

純・梓「はっ!?」

梓「何でここで私に飛び火するんですか!?」

さわ子「選択肢は二つよ。
 純ちゃんが清掃要員になるか、犬耳をつけるか」

さわ子「後者の場合は、梓ちゃんに猫耳をつけさせるわ」

純「唯先輩が羨ましい選択肢だよ」

梓「これは迷わず清掃要員だよね、純!」

純「迷うよ」

梓「私は迷わないなあ」

純「そこは迷ってほしいところだったよ、梓だから期待してなかったけど」

梓「それなら問題ないよね?」

純「うーん……あ、そうだ店長。
 清掃要員には清掃用具が必要ですよね?」

さわ子「そうねえ」

純「それなら私が清掃要員の格好をしたら、梓はモップになるべきではないでしょうか」

梓「えっ」

純「用具があってこそ、清掃要因は仕事が出来ると思うんです」

梓「ちょっと純さーん、あなた何を言ってるのかわかってるのかなー?」

純「わかっててやってるの」

さわ子「……そうね、そうしましょう」

梓「うわあああ、純の馬鹿ーーー!!」



第四十二話「Mop or Cat?」‐完‐

56: 2012/03/19(月) 11:07:19 ID:y32qstaw0

唯「で、結局二人とも犬耳と猫耳を選んだと」

梓「うう……純の馬鹿」

純「まあそういうわけです」

唯「猫耳梓ちゃんに比べて、犬耳純ちゃんは落ち着いてるね」

純「慣れました」

唯「早すぎない?」

純「順応性に優れてるとよく言われますので、純だけに」

唯「うーん、30点」

純「結構厳しいですね」

梓「その順応性とメンタルの強さを分けて欲しいよ、本当に」

梓「それにしても似合いますね、唯さんのバーテンダー」

唯「そうかな?」

梓「いつもより引き締まって、カッコよく見えます」

唯「本当?ありがとね~」

純「ちょっとヘアピン外してみてくださいよ」

唯「え?」

純「あと、このヘアアイロン貸してあげますから、ストレートにしてみてください」

唯「え?え?」

純「自分でやらないなら、私がやります。
 覚悟してくださいね」

唯「ちょっと純ちゃん、怖いよ?」

梓「純は唯さんだけがカッコイイ格好出来て羨ましいんです」

梓「だから髪型だけでも、いつもの唯さんからは考えられないものにしたいんじゃないんですね」

唯「つまり」

梓「嫉妬です」

唯「……やけにストレートだよ!!」



第四十三話「ストレート勝負」‐完‐

57: 2012/03/19(月) 11:08:50 ID:y32qstaw0

唯「はあ」←ストレートにされた

純「……」

唯「純ちゃん、ちょっと強引だよ?
 髪を痛めるかもしれないのに」

純「……」

唯「純ちゃん?」

純「カッコよすぎます」

唯「へ?」

純「唯先輩カッコよすぎです!
 恥ずかしがらせようと思ったら逆効果でしたよ、見てるこっちが照れるカッコよさですよ!!」

唯「そんな大袈裟な」

純「ご謙遜せずに、じゃんじゃん前に出てきてください!
 本当にカッコイイんですから!」

唯「それほどじゃないってば」

梓「いや、正直自慢していいレベルのカッコよさですよ」

唯「うーん……そこまで言われると、こっちが恥ずかしいよ」

純「それが狙いですから」

唯「謀ったね、純ちゃん」

純「計画通りです」



第四十四話「策士、策に溺れると見せかける」‐完‐

58: 2012/03/19(月) 11:11:13 ID:y32qstaw0

純「実際カッコいいことは事実なんですけどね。
 唯先輩が羨ましいです」

唯「そ、そうなの?」

純「それに比べて私はこれですよ。
 犬耳と、犬の尻尾が付いたウェイトレス服」

梓「普通に恥ずかしいです」

唯「うーん、でもさ」

唯「二人とも恥ずかしがる必要なんてないよ」

純「何でですか?」

唯「さっきチラッとホールの方を見てきたんだけど、お客さんが全員女性なんだよね」

梓「あっ、そういえば」

梓「紬さんが門前に近づかせる前に男性客は排除したとか言ってました」

唯「そこまで言ったかは疑問だけど、紬さんのおかげなんだね」

唯「これはつまり、私たちへの配慮なんだよ。
 女の子同士で可愛い格好して、女の子同士で盛り上がればいい」

唯「CSTって、そういうイベントなんだと思う」

純「なるほど……」

梓「何かちょっとだけ、前向きになれるような気がしました」

唯「それにね、今の二人はとっても」

唯「……可愛いよ?」

純・梓「……」

唯「それじゃあ、ホールに出ようか。
 頑張ってお仕事しようね、特に純ちゃんはサボらずに!」



第四十五話「輝くストレートフラッシュ」‐完‐

59: 2012/03/19(月) 11:13:14 ID:y32qstaw0

純「……行ったね」

梓「そうだね」

純「さっき、可愛いって言われた時、どきっとしたよ私」

梓「あの格好で、あの台詞はズルイって」

純「うん、確かに」

梓「ねえ純、私、恥ずかしいけど頑張ってみるよ」

純「そうだね」



純・梓「……さて、お仕事頑張りますか!」



第四十六話「トドメのロイヤルストレートフラッシュ」‐完‐

61: 2012/03/29(木) 13:50:47 ID:cSB7Cjss0

 ‐六月某日・平沢宅‐

唯(……朝が来た)

唯(今日もバイトだ、頑張ろう)

唯(あれ、メールが来てる)

唯(純ちゃんからだ)

唯(『気分が乗らないので今日のバイトはサボります』)

唯(……正直者すぎるよ純ちゃん)

唯(実際純ちゃんは、いてもいなくても変わらないんだけどね)

唯(働いてないから)

唯(働き者の梓ちゃんは来てくれるかな)

憂「お姉ちゃん、おはよー」

唯「おはよう」

憂「今日の朝ご飯はテーブルに置いてあるから。
 じゃあ行ってくるね」

唯「どこに?」

憂「純ちゃんの家に行くんだよ」

唯「サボったまま同僚の妹と遊ぶって何事なの」

憂「純ちゃんらしいよね」

唯「憂もそう思ってるなら直すように言ってくれないかな」

憂「ダメだよ」

唯「なんで?」

憂「今の純ちゃんからサボりを取ったら何が残るの」

唯「それはそれでどうなの」

憂「サボらない純ちゃんはもはや人面モップだよ」

唯「人ですら無くなるんだ」

憂「純ちゃんだもん」

憂「あっ、あとね」

唯「ん?」

憂「今日は梓ちゃんも一緒に遊ぶんだ~」

唯「それは困るなあ」



第四十七話「助っ人>>>バイト」‐完‐

62: 2012/03/29(木) 13:52:54 ID:cSB7Cjss0

憂「じゃあ純ちゃんか梓ちゃんをバイト先に行かせればいいんだね?」

唯「そういうこと、出来るなら梓ちゃんを」

憂「でも、わざわざサボってまで遊んでるぐらいだし、難しいと思うよ」

唯「大丈夫、梓ちゃんはサボってるわけじゃないから。
 その状態が普通なだけだから」

憂「しかも外は梅雨真っ盛りの大雨。
 あの純ちゃんのことだし、外に出すことすらままならないと見て間違い無いよ」

唯「この際、外に出すのは梓ちゃんだけでいいから、純ちゃんは家に置いといてもいいから」

憂「……さっきから梓ちゃん梓ちゃんって……」

唯「えっ?」

憂「お姉ちゃんはそんなに梓ちゃんと結婚したいの!?」

唯「いくつもステップを飛ばし過ぎだよ」

憂「まさか体目的!?」

唯「少し戻ったと思ったら違う方向に飛んじゃってるよ、違うよ」

憂「やっぱりお姉ちゃんは年下好きなんだあ……照れるなあ」

唯「なんで照れるの」



第四十八話「飛躍的トーク」‐完‐

63: 2012/03/29(木) 13:54:27 ID:cSB7Cjss0

憂「話を整理するね」

唯「うん」

憂「まずお姉ちゃんは口リコンじゃん?」

唯「どっから出てきたの、その言葉」

憂「だってお姉ちゃんは梓ちゃんが好きなんでしょ?」

唯「働くか働かないかの違いだよ、純ちゃんも好きな方だよ」

憂「ついに純ちゃんまでも狙うんだ……!
 お姉ちゃんは口リコンであり、モッコンでもあるんだね!」

唯「モッコンが何の略称だか分かりきってるから特にツッコまないけど、どっちも違うからね」

憂「どうでもいいけど、モッコンと毛根って発音似てるよね」

唯「本当にどうでもいいけど」

憂「以上のことから判断すると」

唯「判断材料が一つも無いよね」

憂「お姉ちゃんは今からシスコンになればいいと思うよ」

唯「ハッキリと言わせてもらうね」

唯「お断りだよ」



第四十九話「毛根とシスコン」‐完‐

64: 2012/03/29(木) 13:56:02 ID:cSB7Cjss0

憂「お姉ちゃんが聞こえてなかったみたいだから、もう一回言うね?」

唯「都合の悪いことを聞いてないのはそっちでしょうが」

憂「実の妹からシスコンになれって言われてるんだよ?
 こんな珍しいシチュエーションをお姉ちゃんは見逃すの?」

唯「うん、実の妹なんかに言われたら余計に避けたくもなっちゃうよね」

憂「因みに私はシスコンだよ」

唯「憂は同じことを二回繰り返させたいのかな」

憂「嘘だよ、結婚したい程度に好きなだけだよ」

唯「それもうゴールインしてるからね」

憂「じゃあ我慢して、結婚式を挙げるぐらいにするよ」

唯「同義だね」

憂「わかった、婚姻届に二人の名前を書くところまででいいよ」

唯「憂は同じことを二回繰り返させたいのかな」



第五十話「時を無駄遣いする少女」‐完‐

65: 2012/03/29(木) 13:57:10 ID:cSB7Cjss0

 ‐外‐

唯(とりあえず憂には二人のうち、どちらかを連れて来るようには伝えたし)

唯(私は普通にバイトしに行っていいんだよね?)

唯(これで二人とも来なかったら、今日はかなり忙しくなるよなあ)

唯(……あれ?)

唯(元々忙しいことなんて無かったような気がする)

唯(……それに、他のバイトの子が純ちゃんの代理で出勤するよう、誰かが頼んでいるかもしれない)

唯(純ちゃんはサボってるわけだけど)

唯(どっちにしろ、このままだと梓ちゃんに迷惑がかかるかもしれない)

唯(やっぱり梓ちゃんに迷惑かけるのは申し訳無い。
 憂に手間をかけさせるのも悪いし)

唯(やっぱり連れて来なくて大丈夫だって、憂に連絡しよう)

唯(……あっ)

唯「携帯忘れてるよ……」

唯「ゴメンね憂、梓ちゃん」

 ‐鈴木宅‐

純「……」



第五十一話「特に心配されない少女」‐完‐

66: 2012/03/29(木) 13:58:38 ID:cSB7Cjss0

 ‐外‐

澪「おっ、唯ー!」

唯「あ、澪ちゃんおはよう。
 澪ちゃんって、いつもはこの道使ってたっけ?」

澪「いや、最近使い初めたんだ」

唯「何で?こっちの方が近かったりするの?」

澪「ううん、こっちの道の方がいつもより遠いよ」

唯「じゃあ、何で……」

唯「……あれ、澪ちゃんっていつもは自転車でお店に来てたたよね?」

唯「見たところ、ここまで歩きで来たようだけど」

澪「唯、一つ言わせてくれ」

唯「うん」

澪「トマトを一日六個なんて無理だと思うんだ」

唯「ダイエットなんだね」



第五十二話「赤を食する少女」‐完‐

67: 2012/03/29(木) 14:00:12 ID:cSB7Cjss0

澪「まあそういうことなんだよ」

唯「澪ちゃん、太ってるようには見えないけど」

澪「外見に現れるようになったら、それはもう手遅れだろ?」

唯「納得だよ」

澪「だから世間が言うダイエットというには小規模なものかもしれないけど、
 今の内に出来ることはしておきたいんだ」

唯「澪ちゃんは努力家だなあ。
 ところで澪ちゃんの家って、ここからどれぐらい離れた場所にあるの?」

澪「ここから徒歩五分かな」

唯「やっぱり前言撤回させて」



第五十三話「徒歩五分の道も一歩から」‐完‐

68: 2012/03/29(木) 14:02:22 ID:cSB7Cjss0

 ‐お店‐

唯「おはようございます」

紬「あら唯ちゃん、おはよう。
 聞いてるかもしれないけど、今日は純ちゃんがお休みよ」

唯「そうみたいですね」

紬「そんなサボりの純ちゃんの分だけど、他のバイトの子が代わりに出勤してもらうことになったわ」

紬「おかげで唯ちゃんが過労氏する心配は無いから、安心してね」

唯「このお店に過労という概念はありませんよ」

唯「あと普通に流しちゃいましたけど、純ちゃんがサボりだって言い切ってますよ」

紬「違うの?」

唯「何当然のことを聞いてるような口で言ってんですか、そうですよ」

紬「あとトマトの摂取にはトマトジュースがオススメよ」

唯「いきなり何の話ですか」

紬「13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸の話よ」



第五十四話「専門的無駄知識」‐完‐

69: 2012/03/29(木) 14:04:09 ID:cSB7Cjss0

 ‐キッチン‐

律「澪~、何で今日は一人で行っちゃったんだよ~!」

澪「私にも事情があるんだよ」

律「事情って?」

澪「まあ、色々あるんだよ(ダイエット中だし)」

律「色々って何だよ?
 教えてくれたっていいだろ」

澪「私のことは放っといてくれよ(ダイエット中だし)」

律「悩みがあるなら教えてくれよ、私ならいつでも相談にのるからさ!」

澪「お前になんか相談出来るわけないだろ!(ダイエット中だし!)」

律「えー……」



第五十五話「言わなくちゃ伝わらないけど言いたくないこと」‐完‐

70: 2012/03/29(木) 14:05:30 ID:cSB7Cjss0

 ‐ホール‐

唯「あっ、純ちゃんの代理は姫子ちゃんなんだ」

姫子「ムギから電話があってね、暇なら来てくれないかって」

唯「どっちにしろ暇なんだけどね」

姫子「だね」

姫子「あ、そうそう。
 唯の友達だっていう子が来てるみたいだよ」

唯「えっ、どこどこ?」

姫子「あそこ」

憂「お姉ちゃーん、私アイスティーね!」

純「私はコーラでお願いします!」

梓「えーと……私はオレンジジュースで」

唯「アイスティーとオレンジジュースとタバスコ持ってきて、姫子ちゃん」



第五十六話「サボり魔神への手向け」‐完‐

71: 2012/03/29(木) 14:08:19 ID:cSB7Cjss0

純「あはは、私の注文忘れてますよ唯先輩」

唯「コーラもタバスコも似たようなものだよ、純ちゃんが倒れるか倒れないかの違いだよ」

純「それは似ていると言いませんよ」

梓「純にはわからないと思うけど、コーラもタバスコも同じ液体なんだよ?」

純「それぐらいわからないとでも思ってるのか!」

憂「それならわかるよね、タバスコとコーラが似ているものだって」

純「同じ液体だから似てるって言うなら、憂はタバスコとアイスティーが似てると思ってるの?」

梓「えっ」

憂「純ちゃん、色々と大丈夫?」

純「いや、先に言ったのそっちじゃ」

梓「とりあえず頭が悪そうだから、いい塾を紹介するよ」

憂「塾だけで何とかなるかな……」

梓「いざとなったら、私達も協力しようよ」

憂「そうだね、どんな純ちゃんでも純ちゃんだもんね」

純「……何でそこまで言われなくちゃいけないの!?」

唯「働いてないからだよ」



第五十七話「魔神に下される制裁」‐完‐

73: 2012/03/29(木) 14:10:10 ID:cSB7Cjss0

唯「純ちゃん元気そうだし、仕事したら?」

純「梓の方が元気そうじゃないですかー」

唯「梓ちゃんはバイトじゃないでしょ」

唯「それよりも、サボりの純ちゃんが働くべきだよ」

純「ふっふっふっ……」

唯「その不敵な笑いは何?」

純「唯先輩はわかってないようですね」

唯「えっ?」

純「私はバイトにでる度に、このようにサボっていたじゃないですか」

唯「うん」

純「つまりサボること自体が、私の仕事なんですよ」

唯「ん?」

純「よって、私は今めっちゃ仕事してるんです」

唯「働いてよ」



第五十八話「魔神のお仕事」‐完‐

74: 2012/03/29(木) 14:11:18 ID:cSB7Cjss0

 ‐キッチン‐

律(澪が私に相談出来ないこと……?)

律(相談出来るわけないだろ、とまで言われてしまったし)

律(私って、実は澪に信頼されてないのかな)

律(だよなあ、いつもちょっかいばっかり出してたしさあ)

律(親友であっても、相談相手では無いんだな)

律(……いつまでもクヨクヨしていても仕方ない!
 ちゃっちゃと仕事を済ませてやるか!)

姫子「律、タバスコあるかな?」

律「タバスコだな。
 ……ほら、これだろ?」

姫子「えっ、これは」

律「遠慮するなって」

姫子「いや、だってさ」

律「いいから丸ごと持ってけ泥棒!
 むしろお姫様!」

姫子「……」

 ‐ホール‐

唯「あっ、姫子ちゃんタバスコ持ってきてくれた?」

姫子「トマトジュースなら貰えたんだけど」

唯「……どゆこと?」



第五十九話「隠せぬ動揺の証、トマトジュース」

75: 2012/04/07(土) 14:33:05 ID:OAJbuMt20

 ‐休憩室‐

律「……」

紬「お悩みみたいね」

律「ああ、ムギか……。
 なんかさ、自分が思ってた関係がただの思い込みだったって、凄いショックなんだなあって」

紬「澪ちゃん関係かしら?」

律「よくわかったな」

律「……ホント、何で話してくれないんだろうな」

紬「何を?」

律「何で先に行っちゃったのか、その理由は何なのか、っていう話だよ。
 今まで同じ時間帯にバイトをする日には絶対一緒に行ってたのに、いきなり一人で行きだすんだぜ?」

紬(……なるほど)

律「理由を何も聞かされずに置いてかれた私の気持ちにもなれっての」

紬(焼き餅なのね!)

律「何に対してにやけてるのかは知らんけど、多分違うぞ」

紬「つまらないの」

紬「まあ、澪ちゃんがりっちゃんに話せない理由は予想できるわ」

律「ど、どんな理由だ!?」

紬「……恋よ!」

律「恋……?」



第六十話「むしろ故意」‐完‐

76: 2012/04/07(土) 14:34:21 ID:OAJbuMt20

律「確かに恋っていうのは、人になかなか相談しづらいものかもな……」

紬「そう、そうなのよ。
 ところでりっちゃんと澪ちゃんの学校は女子校よね?」

律「そうだけど、いつの間に調べ上げたんだ?」

紬「そのことは特に気にしないで」

律「そうだな」

紬「これがどういうことなのかわかる?」

律「ん……?」

律「あっ!」

紬「そう、女子校に行っている澪ちゃんが恋をしてしまったということは」

律「澪は男の先生に恋をしているのか」

紬「そっちじゃない!!」



第六十一話「どっちでもない」‐完‐

77: 2012/04/07(土) 14:36:09 ID:OAJbuMt20

律「違うのか……じゃあ何だ、外部の人間か?
 でもあいつ、そんなアクティブなやつじゃないんだけどなー」

紬「なら、選択肢は限られてくるよね?」

律「うーん……」

律「あっ」

紬「気付いたみたいね」

律「聡か!?」

紬「その発想を恥じなさい、聡だけに」

律「どういうことだよ」

紬「そのままの意味なのよ。
 どうでもいいけど、聡と恥って似てるわよね」

律「余計どういうことだよ」

紬「そのままの意味なのよ」

律「まあ聡はどうでもいいや。
 そろそろ休憩終わりだし、働いてくるわ」

紬「うーん、残念」

紬「せっかく面白いことになるかなーって思ったのに」

律「そういうのは私が休憩室を出てから言った方が良かったな」

紬「私は潔さがウリなのよ」

律「清々しいぐらい欲望に忠実だもんな」



第六十二話「恥も外聞も聡も無い」‐完‐

78: 2012/04/07(土) 14:37:09 ID:OAJbuMt20

 ‐ホール‐

唯「純ちゃん、コーラ美味しい?」

純「……」

唯「あれ、どうしたの?」

純「唯先輩、これ……」

純「ハバネロ並に辛いんですけど」

唯「入れたもん」



第六十三話「魔神の業火」‐完‐

79: 2012/04/07(土) 14:38:17 ID:OAJbuMt20

 ‐キッチン‐

姫子「澪、二つほど聞いていい?」

澪「どうした?」

姫子「まず律の様子がおかしいんだけど、何か知らない?」

姫子「トマトジュースとタバスコを間違えて渡すし」

澪「んー……私は知らないな。
 まあ、あいつのことだし、ちょっとすれば回復するんじゃないかな」

姫子「そっか、ならいいんだけどね。
 でさ、もう一つ聞きたいことがあるんだけど」

姫子「何でさっきから水ばっかり飲んでるの?」

澪「タバスコを飲んだからだよ」

姫子「何が起きちゃったの」



第六十四話「要らぬSynchronize」‐完‐

80: 2012/04/07(土) 14:39:09 ID:OAJbuMt20

 ‐休憩室‐

澪「あれ、梓」

梓「どうも」

澪「純ちゃんの代理なら、姫子がやってくれてるぞ?」

梓「まあ暇なので」

澪「なるほどな」

梓「……」

澪「……」

梓「どっちにしろ暇ですね」

澪「暇だな」

梓「花札あります?」

澪「花札ならあるぞ」

梓「ルールがわかりません」

澪「じゃあ何で聞いたんだ」



第六十五話「早過ぎた五光」‐完‐

81: 2012/04/07(土) 14:40:44 ID:OAJbuMt20

梓「とりあえず役は覚えました」

澪「よし、やるぞ」

梓「……」

澪「……」

梓「配らないんですか?」

澪「初め方がわからないんだ」

梓「何で持ってきたんですか」

澪「唯ならわかるかなって」

梓「ここに唯さんがいること前提ですか」



第六十六話「少し足りなかった雨入り四光」‐完‐

82: 2012/04/07(土) 14:42:14 ID:OAJbuMt20

 ‐キッチン‐

唯「りっちゃん、これ返すね」

律「ん、確かに受け取ったよ。
 ハバネロソースなんか何に使ったんだ?」

唯「あえていうなら自分の正義のためかな」

律「カッコイイな」

唯「そんなことより、りっちゃんどうしたの?
 どこか元気が無いみたいだけど」

律「聞いてくれるか」

唯「うん」

律「今日の朝、澪が何も言わずに先に行っちゃったんだ」

唯「ああ、澪ちゃんなら朝に会ったよ」

唯「ダイエット中とか言ってたなあ……。
 それで?」

律「……」

唯「……」

律「………」

唯「……」

律「…………」

唯「……あれ?」



第六十七話「悪気は無かった」‐完‐

83: 2012/04/07(土) 14:43:25 ID:OAJbuMt20

唯「りっちゃん……?」

律「唯」

唯「はい?」

律「お前ってさ」

唯「うん」

律「本当に馬鹿だよな!」

唯「世界で二番目にりっちゃんから言われたくない言葉だよ」



第六十八話「馬鹿って言った方も馬鹿」‐完‐

84: 2012/04/07(土) 14:44:51 ID:OAJbuMt20

 ‐更衣室‐

律「みーお」

澪「どうした?」

律「へっへっへっ……」

澪「どうしたんだよ」

律「いやいや~」

澪「結構気持ち悪いぞ」

律「澪ちゃんのダイエットのためなら、どんな気持ち悪い自分でも演じちゃうりっちゃんですよ」

澪「何言ってんだ……。って、今何て言った?」

律「だからー、ダイエッ」

澪「それ以上言うと私の“人指し指”が黙って無いぞ?」

律「一体何をされるんだ、人指し指で」

澪「眼潰しも辞さないつもりだ」

律「怖っ!」

澪「……で、誰から聞いた?」

律「唯が簡単に喋ったぞ」

澪「唯か……口止めするのを忘れてたから仕方ないとはいえ、
 律にだけは知られたく無かったのに」

律「何で?」

澪「馬鹿にされるじゃないか」

律「んー」

澪「馬鹿に馬鹿にされるじゃないか!!」

律「おい」



第六十九話「馬鹿にする馬鹿は馬鹿にされる馬鹿」‐完‐

85: 2012/04/07(土) 14:46:12 ID:OAJbuMt20

律「何やら許しがたい発言をしたような気がするけど、まあ気にしないでおこう」

澪「馬鹿だなー」

律「やっぱ許さねえ」

澪「男に二言は無いんだぞ、律」

律「私は女だ」

澪「まあ、とにかく」

律「それお前の台詞じゃないから」

律「ダイエットだっけ?
 澪は体型なんて気にすることないのに」

澪「こう見えても体重は着々と増えてるんだ」

律「どれぐらい?」

澪「……入学式の日と比べてニ、三キロぐらい」

律「んー、そんな風には見えないっていうか、
 元々の体重が普通なんだから、大して気にすることでも無いだろ」

澪「でも、これから水着とか着るような季節になるだろ?」

澪「醜い水着姿の自分を想像してみろ……。
 ああ恐ろしい!」

律「……全く、仕方ないな。私も協力出来ることはしてやるよ」

澪「え?」

律「澪が走るから、私も一緒に走るとかじゃないぞ。
 傍から応援したりするだけだからな」

律「必要なものがあるなら、私が揃えてやるよ。
 ただし、それ以上は何もしないからな」

澪「いいのか?
 ……私のこと馬鹿にしたりしなくていいのか?」

律「その聞き方はどうかと思うけど、しないよ。
 太ってんのかわからないお前を馬鹿にして、何が面白いんだ?」

澪「……ありがと」

律「よせやい。
 ま、帰りぐらいはゆっくり行きますかい」

澪「……だな」



第七十話「馬鹿以外を馬鹿にするのは本当の馬鹿」‐完‐

86: 2012/04/07(土) 14:47:27 ID:OAJbuMt20

 ‐外‐

律「……」

澪「……」

澪「ありがとう」

律「だからいいって」

澪「でも……」

澪「……」

律「……」

律「あっ」

律「トマトダイエットにはトマトジュースがオススメだぞ」

澪「えっ、何で?」

律「口の周り」

澪「ん?」

律「赤いからさ」

澪「ああ」

律「店でもトマト食ってたのか?」

澪「違うよ」

澪「これはタバスコだ」

律「……馬鹿だなあ、澪は」

澪「律ほどじゃないよ」

律「同じぐらいだよ」

澪「そのぐらいか」

律「……」

澪「……」



律・澪「ばーか」

律・澪「……」

律・澪「あははっ」



第七十一話「愛される馬鹿共」‐完‐

88: 2012/04/13(金) 02:04:10 ID:sAmERKXU0

 ‐平沢宅‐

純「お帰りなさい、唯先輩」

唯「うん、じゃあね」

純「今からまた仕事ですか、熱心ですね」

唯「さようならするのは純ちゃんだよ」

純「まあまあ頭を冷やしてください」

唯「まずはその頭を冷やせばいいと思うよ、爆発してるから」

純「これは私の標準スタイルです。
 ところで、私が此処にいる理由は非常に簡単なものなんですよ」

唯「私としては理由が簡単かどうかは非常にどーでもいいんだけど」

純「鍵を落としました」

唯「わあ単純だね、野宿してきなよ」

純「女子高生に野宿させるなんて、唯先輩はそれでも人間ですか!」

唯「純ちゃんはまだ中学生でしょ」

純「そういえば」

唯「純ちゃんが高校生なのはバイト先だけだよ」

純「どうやらあまりに正直に生きていたせいで、その設定が外にも溢れ出したようですね」

唯「うん、自分の願望にだけは正直に生きてると思うよ」



第七十二話「正直の使い道」‐完‐

89: 2012/04/13(金) 02:05:20 ID:sAmERKXU0

憂「あっ、お姉ちゃんお帰りなさい」

唯「ねえ憂、今から純ちゃんを野宿させようと思うんだけど」

憂「今から?時間的にちょっと遅すぎないかな?」

純「えっ、時間が問題なの?」

唯「そうだね、そろそろ野宿させる時間帯だよ」

純「人の話聞いてますか」

憂「流石に野宿は危ないから、押し入れの中に寝かせてあげようよ」

純「床でいいよ」

梓「床掃除にぴったりだね」

純「しれっと出てきて、何ナチュラルに毒吐いてんのよ」

憂「梓ちゃん、いらっしゃい。
 お姉ちゃんの部屋か私の部屋に布団敷くから、梓ちゃんはそこに寝てくれる?」

純「対応が私と正反対のような気がするんだけど」

憂「そんなことないよ、大体180度ぐらいしか変わらないよ」

純「それを正反対というんだよ」

唯「梓ちゃんはお客様だからでしょ」

純「私だって、ここではお客様です」

梓「お店でもお客様気分でしょ」

純「お店では従業員を兼業してるから全然違うよ」

唯「実質同じだよ」

憂「……純ちゃん、一つ言っておくよ」

純「うん」

憂「働かざる者、食うべからず!!」

純「それを当時の唯先輩に言ってほしかった」



第七十三話「失われた数年」‐完‐

90: 2012/04/13(金) 02:06:20 ID:sAmERKXU0

唯「そういえば梓ちゃんは何で家に泊まるの?」

梓「ただ遊びに来ただけですよ」

唯「なるほど」

梓「猫って、勝手に家を出て散歩とかするみたいですよ」

唯「そうなんだ。で、何でその話をしたの」

梓「特に意味はありません」

唯「余計に気になるよ」

梓「まあ、一つ付け加えるならば」

梓「私の前世は猫です」

唯「へえー」

唯「……ん?」



第七十四話「蛇足な補足」‐完‐

91: 2012/04/13(金) 02:07:08 ID:sAmERKXU0

 ‐リビング‐

純「この漫画面白いですね、続きあります?」

唯「純ちゃんに貸す漫画は無いよ」

梓「人の家にあがっておいてそれは流石に失礼だよ、純」

純「そんなこと言ってもなあ」

純「普段から誰かが働いている最中に堂々とサボってるから、失礼には慣れているというか」

純「もはや失礼が自分みたいな」

唯「自覚あったんだね」

純「いやですねー、冗談に決まってるじゃないですかー」

梓「それ冗談になってないから」



第七十五話「結局自覚は無い」‐完‐

92: 2012/04/13(金) 02:08:23 ID:sAmERKXU0

憂「お風呂できたよー」

梓「純は別として、誰から入るの?」

純「え、私だけ一番風呂の権利無しなの?」

梓「風呂に入る権利が無いんだよ」

純「さらに酷い!」

憂「まずは私とお姉ちゃんが二人で入ろっか?」

唯「また?」

梓・純「また!?」



第七十六話「いつも通りの光景」‐完‐

93: 2012/04/13(金) 02:09:24 ID:sAmERKXU0

純「またって……憂も憂ですが、唯先輩も唯先輩ですね」

唯「何が?」

純「高校生にもなって姉妹でお風呂に入るというのはどうかと」

唯「別に問題無いと思うけど?やましいことも無いし」

純「そういう問題じゃなくてですね」

梓「まさか純は、二人の間にやましいことがあると思ってるの?」

純「えっ」

憂「流石の私でもそれは無いよ……」

唯「そういう見方を今までしてたんだね、純ちゃん……」

梓「ちょっと引くよ……」

純「……何で私が責められてるわけ?」



第七十七話「完全アウェー戦」‐完‐

94: 2012/04/13(金) 02:10:08 ID:sAmERKXU0

梓「というわけで、一人ずつ入ることにしましょう」

梓「そうすれば入ってない二人で純を監視することが出来ます」

純「私は悪いことしてないし、しようともしてないし」

唯「むしろ純ちゃんを野宿させれば丸く収まるんじゃないかな」

純「まだ諦めてなかったんですか、私の不満が収まりませんよ」

憂「私とお姉ちゃんが二人一緒に入れば解決だよ」

純「あんたは何を言ってるんだ」

梓「一人ずつ」

唯「野宿」

憂「お姉ちゃん」

梓「わかりました、三人で入りましょう」

純「ついに梓が壊れた」



第七十八話「釣られ、狂いはじめた歯車」‐完‐

95: 2012/04/13(金) 02:11:12 ID:sAmERKXU0

 ‐浴室‐

唯「それでさ」

梓「はい」

唯「何で私達が一緒に入ってんだろうね」

梓「じゃんけんで決まったことに文句言っても無駄ですよ」

唯「別に一人ずつでいいよね」

梓「人の夢と書いて、儚いと読みます」

唯「つまり諦めろってことだね」

梓「理解が早くて助かります」

唯「……梓ちゃんってさ」

梓「はい」

唯「いわゆる貧にゅ」

梓「人の夢と書いて、儚いと読むんですよ、唯さん」

唯「……夢は叶わなかったんだね」

梓「理解が早くて泣けてきます」



第七十九話「人の夢は儚くて」‐完‐

96: 2012/04/13(金) 02:12:08 ID:sAmERKXU0

 ‐脱衣所‐

純「ねえ憂、大丈夫なの?」

憂「んー……二人とも仲良く話してるから、大丈夫かな」

純「そっちじゃなくて、盗み聞きしてることが大丈夫なのかって聞いてるの」

憂「それは大丈夫じゃないよ」

純「だよね」

憂「というわけで、純ちゃんに交代ね」

純「損得感情を抜きにしても、お断りしたいんだけど」

憂「何で?」

純「特にする理由が無いからだよ……」

憂「お姉ちゃんの声が聞けるんだよ!?」

純「外でも聞けるよ」

憂「梓ちゃんとの会話付きなんだよ!?」

純「外でも聞けるよ!!」

梓「……それなら出てってもらえない?」



第八十話「本末転倒」‐完‐

97: 2012/04/13(金) 02:13:07 ID:sAmERKXU0

 ‐リビング‐

純「……」

唯「憂の料理は世界一だね~」

憂「そんなことないよ~」

純「お腹すいた……」

梓「本当に美味しい……今度料理教えてもらえない?」

憂「うん、いいよ!」

純「あのー……」

唯「あれほど言ったのに覗こうとした罰だよ」

純「覗いてませんよ!
 仮に覗こうとしていても、首謀は憂ですよ!」

憂「純ちゃんヒドいよ、親友を売るつもりなの!?」

純「既に売り飛ばしたやつが言うな!」

梓「まあ憂はこうして美味しいご飯を作ってくれたわけだし」

梓「それに比べ、純は寝転がって床掃除をするだけ」

梓「そんなことで罪を償えると思ったら、大間違いだから」

純「そんな償いをした覚えも無いんだけど」

唯「仕方ないなあ純ちゃん、こっちにおいで」

純「唯先輩……!」

唯「はい、パセリ」

純「唯先輩……」



第八十一話「パセリの自給率は100%」‐完‐

98: 2012/04/13(金) 02:14:04 ID:sAmERKXU0

 ‐唯の部屋‐

唯「……」←寝ようとしてる

純「……はあ」←空腹で寝れない

純「……」

純「はあー……」

唯「……純ちゃん、うるさい」

純「口を閉じても、お腹が黙ってくれませんよ」

唯「なんで純ちゃんと同じ部屋で寝ることになっちゃったんだろう」

純「じゃんけんの決めたことに文句は言えませんよ」

唯「にしても……」

 「ぐうううぅぅ……」

純「ああ、お腹までうるさくなり始めたみたいですね」

唯「……もう仕方ないなあ、ちょっと付いてきて」

 ‐リビング‐

唯「カップ麺ぐらいしか無かったけど、はい」

純「え、食べていいんですか?」

唯「いらないなら私が貰うよ」

純「まだ食べれるんですか」

唯「余裕だよ」

純「でも唯先輩には食べさせません、私が全部食べます」

唯「どうぞ」

純「……」

唯「……」

純「……唯先輩」

唯「何?」

純「これ、凄く辛いんですが」

唯「そういうのしか無かったんだもん」



第八十二話「思い出される昼間のハバネロ」‐完‐

99: 2012/04/13(金) 02:15:06 ID:sAmERKXU0

純「……ごちそうさまでした!」

唯「じゃあ、さっさと片付けて部屋に戻ろうか」

純「……唯先輩」

唯「なに?」

純「ありがとうございました。
 私、唯先輩のことは割と好きですよ」

唯「うん、ありがとう」

 ‐唯の部屋‐

唯「……」

純「……あっ、そういえば気になってたんですけど」

唯「うん」

純「唯先輩って、正直働き者では無かったですよね?
 でも、バイトではそれなりに働いてますよね、失敗も多いですけど」

唯「一言多いよ、純ちゃん」

純「いやー、そこはやっぱり唯先輩なんだなーって」

唯「……まあ事実だけどさ」

唯「私がちゃんと働くきっかけはね、純ちゃんなんだよ」

純「えっ?」

唯「純ちゃんのサボりっぷりを見てると……皆が働く中でダラけてる人がいるって、
 こういうことなんだなって」

唯「こう、駄目なコトっていうのを実際に目にすることが出来たんだよ」

純「……」

唯「つまり純ちゃんと自分を重ねることで、初めて自分を客観的に見ることが出来たんだ。
 そこで決心したよ、私は変わるんだってね」

純「……そうでしたか。というか」

純「ストレートに私を駄目な人みたいに言ってますよね」

唯「言ってるよ」



第八十三話「きっかけ」‐完‐

100: 2012/04/13(金) 02:16:08 ID:sAmERKXU0

純「ストレートに傷付きました」

唯「そっか、じゃあ傷を癒すために早く寝なくちゃね、おやすみ」

純「まだ寝るには早いですよ」

唯「もう一時なんだけど」

純「十一時ですか、まだまだですね」

唯「一時だよ」

純「お昼も間近ですか、早いですね」

唯「十三時でも二十三時でもなくて、一時だよ」

純「むう……折角色々と話したいことがあったのに……」

唯「例えば?」

純「よく考えたら特にありませんでした」

唯「よく考えてから発言しようね」

純「あっ、そういえば」

純「私、唯先輩と同じ高校に行くかもしれません」

唯「それが話したかったことじゃないの?」

純「そうでした」

唯「よく考えてから発言しようね」

唯「でも純ちゃん、バイトしてるのに勉強大丈夫なの?」

純「提出物とテストは一夜漬けで頑張ってるので、内申はいいんですよ」

純「というわけで推薦で入ります」

唯「何か不服だなあ」

純「そうですか?」

唯「そうなんだよ」

唯「……でも」

唯「来てくれるなら、私は歓迎するよ」

純「おお、ありがとうございます……」

唯「……まあ、私も純ちゃんのこと割と好きだし、ね」

純「……」

唯「……」

純「……」

唯「……なんで黙るの、恥ずかしいじゃん」

純「……」

唯「……あれ?」

純「……」


唯「……寝てるのかい、純ちゃん!?」


第八十四話「おやすみ」‐完‐

103: 2012/04/27(金) 17:38:45 ID:/vpN3KaY0

 ‐翌日・朝‐

唯「というか、昨晩の“お昼も間近”って違うよね、本当に十三時だったら既にお昼だよね」

純「ツッコミが遅いですね唯先輩。
 まあ、先輩のツッコミスキルもまだまだということですね」

唯「……単純に純ちゃんが言い間違えただけだよね?」

純「何のことやら」



第八十五話「単純ちゃんミス」‐完‐

104: 2012/04/27(金) 17:39:21 ID:/vpN3KaY0

 ‐八月某日・お店‐

唯「おはようございまーす」

さわ子「おはよう、唯ちゃん」

唯「えーと……」

唯「どちら様でしたっけ?」

さわ子「解雇するわよ?」



第八十六話「真夏に見た幻影」‐完‐

105: 2012/04/27(金) 17:40:02 ID:/vpN3KaY0

唯「あっ、店長。おはようございます」

さわ子「店長の顔を忘れるなんて、酷いことしてくれるじゃない?」

唯「なんせ四月の後半以降、一度も会ってませんからね」

さわ子「あら、そうだったかしら?」

唯「ところで久々に顔を出した、ということは……」

さわ子「そう、KST(コスプレサービスタイム)の準備が出来たのよ!!」

唯「CSTです」



第八十七話「真夏に見たデジャヴュ」‐完‐

106: 2012/04/27(金) 17:41:11 ID:/vpN3KaY0

さわ子「細かいことは置いといて、今回唯ちゃんに着てもらうCSTの衣装は……」

唯(直した……)

さわ子「ギリギリセーフの、スクール水着です!」

唯「ぶっちぎりのアウトです」

さわ子「法律に引っ掛からなければ大丈夫よ!」

唯「これなら余裕で訴えられますね」

さわ子「もう、流石にこれは冗談よー。
 こっちのメイド服が本命なんだから!」

唯「まあ、それぐらいなら」

律「いいのかよ」

唯「おぉ、りっちゃん、いつの間に。ともかくおはよ~」

律「ん、おはようさん。えーと」

律「……この人、誰?」

唯「変人」

さわ子「店長よ!!」



第八十八話「真夏に見たデジャヴュの第二幕」‐完‐

107: 2012/04/27(金) 17:42:05 ID:/vpN3KaY0

 ‐キッチン‐

律「澪、おはよ!」

澪「……あぁ」

律「どうした、元気ないぞー?」

澪「……今日の朝の占いで、山羊座が十二位だったんだ……!」

律「たかが星座占いで、何をそこまで気にしてんだよ」

澪「水難に合う可能性が高いって言われてるんだぞ……。
 キッチン仕事の私が水難だぞ!?」

律「大丈夫だ、お前は水難じゃない」

澪「そんな国語の先生みたいな返しは期待してないから」

律「ごめん」

澪「何も起きなければよかったんだけど、朝から酷い目にあったし……」

律「何が起きたんだ?」

澪「水難、とは言い難いものかもしれないけど」

澪「歩く先々で水道管が破裂していったんだ」

律「水難というより心霊現象だな」



第八十九話「水道の相」‐完‐

108: 2012/04/27(金) 17:43:15 ID:/vpN3KaY0

 ‐スタッフルーム‐

紬「……というわけで、このお店でも水道が使えなくなっちゃったみたいなの」

唯「いや、どういうわけですか」

さわ子「復旧までお店を開くことはできないから、しばらく皆はお休みね。
 とりあえず今日はこれで帰っていいわ」

純「喜んで!」

唯「正直に喜びすぎだよ、純ちゃん」

純「いつも私は自分に正直ですよ?」

唯「どの口が言ってるの?」

唯「……いや、いつも自分のサボり欲には正直だったね」

唯「そんな純ちゃんは、水道管の修理でも手伝ってくればいいんじゃない?」

澪「そうか、せめて何かを手伝うだけでも……!」

唯「いや、澪ちゃんじゃなくて」

唯「……というか、何で澪ちゃんが責任感じてるの?」

律「つかれてるからな、大目に見てやってくれ」

唯「へえ澪ちゃん、まだ午前なのにそんなに疲れてるの?」

律「ああ、お祓いに行った方がいい程度には」

唯「……もしかして憑かれてる?」



第九十話「憑かれてる澪ちゃん」‐完‐

109: 2012/04/27(金) 17:44:16 ID:/vpN3KaY0

 ‐翌日・海‐

純「砂浜。それは灼熱の太陽が照りつける、砂漠にも似た戦場」

唯「砂漠って……目の前に広がる海を見て出てきた言葉とは思えないよ、純ちゃん」

純「砂漠にも水はあるんですよ」

唯「海は全体が水だよ」

純「見渡す限りは、人の海が広がってますけどね。
 これが人海戦術というアレですか」

唯「別に何とも戦ってないよね」

純「むしろ自分以外敵ですよ、この混み具合だと」

唯「それは一理あるね」

唯「……あ、そういえば夏休みだった。人が多いわけだよねえー」

純「おお、仕事人間となった唯先輩はついに夏休みを忘れていましたか!」

唯「うん、最近、仕事と休暇の区別がつかないんだよ」

純「それまたどうしてです」

唯「目の前の人が相も変わらず休んでるからねえ」

純「そんな人がいるんですか……。
 一体誰なんでしょうね、実にけしからん!」

唯「夏だからかな、目の前の人がおかしなことを言い出した」



第九十一話「オールシーズン・バケーション」‐完‐

110: 2012/04/27(金) 17:45:14 ID:/vpN3KaY0

梓(……あれは昨日のことでした)

梓(澪さんが憑かれてしまった事件はさておき、
 外の水道管が次々に破裂してしまう事件が発生しました)

梓(おかげでしばらくお店はお休みに。
 そのせいで、バイトを入れていた人は空いた時間が出来ちゃったのです)

梓(こうしてバイト仲間全員が、纏まった休みを取れるというのは滅多に無いこと。
 紬さんの提案で、暇な人は一緒に海水浴にでも行こうということになったのですが)

梓「……水着を忘れたよ」



第九十二話「水着が肝心」‐完‐

111: 2012/04/27(金) 17:46:11 ID:/vpN3KaY0

律「澪ー、水難の相ならぬ水道の相はどんな調子だー?」

澪「全く問題ないよ。
 むしろ調子がいいぐらいだ、山羊座は今日の占いで一位だったし」

律「そりゃ良かった」

澪「今日は何か幸せなことが起こりそうな気がする……」

律「それはめでたいな」

澪「ところでさっき海岸で、こんなお魚を拾ったんだけど」

律「それは鯛だな」

澪「朝からツイてるなあ!」

律「ああそうだな、確実に憑いてる」



第九十三話「霊で鯛を釣る」‐完‐

112: 2012/04/27(金) 17:47:09 ID:/vpN3KaY0

憂「……紬さん、ですよね?」

紬「あら、確か唯ちゃんの……」

憂「お姉ちゃんの恋人以上、夫婦程度の平沢憂です」

紬「あらあらあら、ご丁寧にどうも。
 私は琴吹紬、唯ちゃんのお店でフロアチーフをやってます」

憂「いつも私のお姉ちゃんがお世話になってます」

紬「その“私の”っていうのは、どういう意味で使ってるのかしら?」

憂「正確な意味でしか使ってませんよ?」

紬「ふふふ、なるほどね」

憂「ふふっ、そういうことです」

紬「ふふふふふ……」

憂「ふふふふふっ……」

紬・憂「ふふふふふふふふ……」



第九十四話「両者の手中に輝くは、カメラのレンズ」‐完‐

113: 2012/04/27(金) 17:48:08 ID:/vpN3KaY0

律「唯ー!」

律「……はっ」

律「唯だと思ったらフジツボだった」

唯「その間違え方が間違いだよ」



第九十五話「珍誤答」‐完‐

114: 2012/04/27(金) 17:49:22 ID:/vpN3KaY0

梓「あれ、澪さんうずくまってどうしたんですか」

澪「……」

梓「えーと、悩みとかあるなら聞きますよ?」

澪「……み」

梓「み?」

澪「みみみみ、見えないし聞こえないからな!!」

梓「存在否定!?」



第九十六話「見ざる聞かざる」‐完‐

115: 2012/04/27(金) 17:50:21 ID:/vpN3KaY0

律「おっ、澪ここにいたのか」

梓「律さん、私存在を否定されたんですけど、私そんな酷いことしましたっけ」

律「そうか大変だな」

律「それより澪さ」

梓「労るだけじゃダメです!」

律「そうか」

律「でさ澪、さっきはああ言ったけど、実際のところ」

梓「そんな適当な返しで許されるほど些細な問題じゃないんですよ!?」

律「わかった、真剣に言う。うるさいから黙ってろ」

梓「……私、何かしました?」

律「煩い」



第九十七話「適当な返し」‐完‐

116: 2012/04/27(金) 17:51:21 ID:/vpN3KaY0

律「澪、いい加減見えないやら、聞かないやらで済ませてたらダメだぞ?」

澪「嫌だ!誰が信じるもんか……」

梓「なんの話なんですか?」

律「こいつに言ってやったんだよ。
 ……お前には何か悪い霊が憑いてるって」

澪「そんな訳ないだろ!悪い冗談は止めてくれ!」

律「……と、まあこんな具合に信じてくれないんだ。
 正直、昨日から心霊現象じゃないと説明つかないことばっかり起きてるしなあ」

梓「昨日は相次ぐ水道管の破裂でしたけど、今日は何かありました?」

律「まず海岸で鯛を拾っただろ?」

澪「それは偶然だよ」

律「空から鯛が降ってきただろ?」

澪「それも偶然だ」

律「砂浜から鯛が生えてきただろ?」

澪「それだって」

梓「流石に無理があると思いますよ」



第九十八話「偶然の限界」‐完‐

117: 2012/04/27(金) 17:52:13 ID:/vpN3KaY0

梓「正直一つ目からして怪しいんですが、三つ目で確信しました。
 何か悪いモノが憑いてますね、絶対に」

澪「梓まで止めてくれよ……怖いじゃないか……」

律「私からすれば、お前の偶然に対する妄信ぶりが怖いわ」

梓「確かに信じがたい気持ちはわかりますが、
 ここまで来たら現実から目を背けたらいけませんよ」

律「そういうこと。現実から逃げずに、偶然で片づけるなー」

澪「……ふ、ふふ……そうだな、これは偶然じゃないよな」

律「そうそう」

澪「全部夢だったんだな!!」

律「ついに現実まで捨ておった」



第九十九話「リアルをダストシュート」‐完‐

118: 2012/04/27(金) 17:53:51 ID:/vpN3KaY0

澪「やだ、やだーーー!
 お祓いになんか行きたくないよーーー!」

梓「いきなり子供っぽくなった……」

律「澪はそういうやつだ。
 とりあえず近くにお寺が無いか、調べてみるぞ」

梓「あっ、そういえば……。
 純の祖父母の家はお寺だったような気がします」

律「おお、それは都合がいいな」

梓「早速純のところに行きましょう」

 ‐海の家‐

梓「というわけでお願いだよ、純」

純「えーと……」

澪「見えないし聞こえないぞー……」

律「澪もこの様子だし、頼れるのは純ちゃんだけなんだ」

唯「ふーん……」

梓「澪さんと全国の水道管のために、お願い!」

純「水道管って……」

唯「んー……」

唯「ねえ、純ちゃん」

純「はい」



唯「純ちゃんの実家がお寺とか初耳なんだけど」

純「実は私もです」



第一〇〇話「捏造と偶像」‐完‐

119: 2012/04/27(金) 21:35:10 ID:ZBH8gqTM0
百話まできたかー

120: 2012/05/06(日) 03:16:29 ID:qn6E8v8E0

引用: 唯「放課後パートタイム!」