120:◆4xyA15XiqQ 2012/05/06(日) 03:16:29 ID:qn6E8v8E0
121: 2012/05/06(日) 03:17:09 ID:qn6E8v8E0
‐一週間後・お店‐
純「あっ、澪さーん!」
澪「やあ、純ちゃん……元気そうで何よりだ……」
純「対極的に澪さんはお疲れのようですけど……」
澪「もう憑かれてない!」
純「そっちじゃないですって」
純「あれ……ということは、もうお祓い行ったんですか?」
澪「そんなところだね。
……そのせいでこっちはクタクタだよ」
純「しつこい霊だったみたいですね」
澪「そうなんだ。
例えるならそう、まるでストーカーみたいだ……」
純「うわあー……」
澪「って、お坊さんが言ってたよ」
純「うわああー……」
第一〇一話「坊さん認定ストーカー」‐完‐
122: 2012/05/06(日) 03:18:24 ID:qn6E8v8E0
純「ところで、その霊っていうのは何で澪さんに憑いてたんでしょうね?」
澪「わからないけど、お坊さんは“女性の霊”だって言ってたよ。
それも、若くて綺麗な人みたいだ」
純「余計意味がわかりませんね……。
男の霊なら、澪さんの綺麗さに引き寄せられたという可能性もあったんですけど……」
澪「……多分、そういう理由なんだよ」
純「えっ?」
澪「例えるならそう、まるでストーカーみたいだ……」
澪「リアルな意味で」
純「うわあああー……」
澪「って、お坊さんがまた言ってたよ」
純「うわああああー……」
第一〇二話「坊さん認定ストーカー(リアルな意味で)」‐完‐
123: 2012/05/06(日) 03:19:23 ID:qn6E8v8E0
澪「年齢は私より一つか二つぐらい上で、長髪の女性らしいんだ」
純「そんな細かいことまでわかるんですか」
澪「評判のいいお坊さんを紹介してもらったからね」
純(どこで評判なんだろう)
澪「ただ、困ったことが一つあって……」
純「それは一体?」
澪「その霊、実は氏んだ人のものじゃないんだ」
純「どういうことですか」
澪「強すぎる思いが生み出した、生き霊なんだとか」
純「……つけられる可能性がありますね」
純「リアルな意味で」
第一〇三話「ストーカーは生氏を越えて」‐完‐
124: 2012/05/06(日) 03:20:10 ID:qn6E8v8E0
純「それにしても、だいぶ淡々と話してますね」
澪「何かおかしいかな?」
純「おかしいも何も、この前の澪さんを見る限り、怖いものが苦手のようでしたし」
純「それなのに、こんな怖い話を淡々とよく出来るなーと」
澪「……ああ、そういうことね」
純「怖いものに耐性でも付いたんですか?」
澪「うーん、そうとも言えるのかもしれない」
純「凄いですね、どうやったんですか?」
澪「私はこの一件を、夢の彼方に葬ったんだ」
純「耐性どころか受け止めてさえいないじゃないですか」
澪「私~だ~けの~ドリームタイムくだ~さい」
純「既に夢の中に追いやってますよ、自分を」
澪「今夜~も、お~やすみ~……ぐぅ……」
純「あっ、気絶した」
律「……無茶しやがって」
第一〇四話「ふらふら時間」‐完‐
125: 2012/05/06(日) 03:21:09 ID:qn6E8v8E0
‐ホール‐
梓「唯さん、唯さん」
唯「どうしたの?」
梓「少し相談したいことがあるんですが」
唯「ん?」
梓「猫を拾ってきたんですけど、どうすればいいんでしょう」
唯「ここって一応飲食店だよ」
第一〇五話「実はそうだった」‐完‐
126: 2012/05/06(日) 03:22:09 ID:qn6E8v8E0
‐キッチン‐
梓「律さん、律さん」
律「どうした?」
梓「少し聞きたいことがあるんですが」
律「おう、何だ」
梓「ここにキャットフードは置いてますか?」
律「一応言っておくぞ。この店は人間専用のお店だからな」
梓「品ぞろえの悪いキッチンですね」
律「キッチンは悪くねえよ」
第一〇六話「降りかかる火の粉」‐完‐
127: 2012/05/06(日) 03:23:08 ID:qn6E8v8E0
‐スタッフルーム‐
梓「紬さん、紬さん」
紬「無いわよ」
梓「はい」
第一〇七話「エスパーつむぎ~当たり前の如く~」‐完‐
128: 2012/05/06(日) 03:24:20 ID:qn6E8v8E0
‐お店の前‐
梓「二号、どうやらお前の居場所はここに無いみたいだね」
二号「にゃあ」
純「食べ物を扱うお店だから、無理もないでしょ」
梓「二号は、純みたいな人間にだけは騙されたらダメだよ」
純「どういう意味よ」
二号「にゃー!」
純「お前は元気に返事するな」
梓「そういえば純は猫飼ってたよね。
この子も飼ってみれば?」
梓「猫の一匹や二匹、変わらないでしょ」
純「あんたが決めることじゃないし、そもそもそんな簡単に飼えるわけないでしょ……」
梓「はあ、純はやっぱり純でしか無いんだね」
梓「ゴメンね二号、この人が純で」
純「この際黒猫の方を捨ててこようかな」
第一〇八話「梓イン蜜柑ボックス」‐完‐
129: 2012/05/06(日) 03:26:13 ID:qn6E8v8E0
‐ホール‐
梓「ウーン、どうすればいいのやら」
唯「……」
梓「拾ってあげた手前、再び捨てるというのも憚れるし」
唯「……」
梓「あー、どこかに優しい年上の人はいないかなー」
唯「……」
梓「優しい“年上”の人はいないかなー!」
唯「チラチラこっち見ないでよ」
梓「あっ、唯さん、丁度いいところにぃ~!」
唯「白々しいよ」
梓「そう見えてしまいました?」
唯「うん。ていうかさ」
唯「自分の家で飼えばいいんじゃないの?」
梓「……あっ」
唯「今更気付いたんだね」
梓「完全にそのことを失念していました」
梓「唯さんって、ちょっと頭いいんですね!」
唯「全然褒めてないよ」
第一〇九話「ちょっとのアイデアと超常識」‐完‐
130: 2012/05/06(日) 03:27:14 ID:qn6E8v8E0
梓「おかげさまで二号の家は決まりました。
なので、今度は二号の名前を募集したいと思います」
唯「ちょっと待って、ちょっと待って」
梓「はい?」
唯「この猫は二号なんだよね?」
梓「はい」
唯「それが名前なんだよね?」
梓「えっ、唯さんは猫に二号なんて名前をつけるんですか?」
唯「私がおかしいみたいに言わないで」
梓「三四号なら未だしも」
唯「むしろそっちの方が寒いからね」
唯「じゃあさ、なんで二号って呼んでたの?」
梓「一号がいるからじゃないですか」
唯「頭痛くなってきた」
梓「休憩しますか?」
唯「ううん、大丈夫(梓ちゃんを除いて)」
梓「それなら全部わかってくれましたね!」
唯「やっぱり大丈夫じゃない(梓ちゃんが)」
第一一〇話「猫でもわかる日本語術」‐完‐
131: 2012/05/06(日) 03:28:16 ID:qn6E8v8E0
唯「梓ちゃんが話してるとドンドン不思議な方向に会話が発展するから、
私からの質問にだけ“わかりやすい”ように答えてみて」
梓「要求が多いですね」
唯「一つしか言ってないよ」
梓「あれ?」
唯「まずね、この猫は“二号”と呼ばれているけど“二号”というのは名前ではない」
唯「イエス?ノー?」
梓「キリストです!」
唯「イエスなんだね」
梓「よくわかりましたね」
唯「ちょっと私の要求を見直してから出直してくれないかな」
唯「まあ、次。この猫が二号ということは、一号は既にいる」
唯「イエス?ノー?」
梓「Yeah!」
唯「なにが梓ちゃんをそんなノリノリにしてるの」
梓「唯さんです」
唯「複雑な気持ちだよ」
唯「じゃあ、一番聞きたいこと。“一号”ってなに?まだ猫がいるの?」
梓「猫と言われれば、遠からず近からずですかね」
梓「つまり私です」
唯「もっとわかりやすく言ってくれる?
頭の痛みがさらに酷くなってきそうだから」
梓「唯さん」
梓「私の前世は猫なんです」
唯「わかりやすいけど意味がわからないよ」
第一一一話「我輩は猫である」‐完‐
132: 2012/05/06(日) 03:29:14 ID:qn6E8v8E0
‐休憩室‐
紬「あら澪ちゃん」
澪「おお、ムギ」
紬「……」
澪「……」
紬「暇?」
澪「そうだな」
紬「花札やろう?」
澪「なんで?」
紬「だって持ってるよね?」
澪「うん。だからなんで(知ってるの)」
第一一二話「見えた光札」‐完‐
133: 2012/05/06(日) 03:30:55 ID:qn6E8v8E0
澪「……」←花札中
紬「……」←花札中
澪「……よし、“花見酒”!」
澪「で、こいこいだ!」
紬「じゃあ私の番ね」
紬「これ取って、タネ札五枚の“タネ”であがり。
こいこい返しで点数二倍ね」
澪「えっ」
第一一三話「見とけタネ札」‐完‐
134: 2012/05/06(日) 03:32:54 ID:qn6E8v8E0
紬「澪ちゃん、この状況でこいこいしちゃ駄目よ」
澪「そうか、ムギは既にタネ札を四枚持ってたし……」
澪「ありがとう、ムギ。
おかげで一つだけ強くなれた気がするよ」
紬「ふふ、どういたしまして。そろそろ交代の時間だから、行くわね?」
‐ホール‐
紬「唯ちゃーん、交代よー!」
唯「はーい!」
‐休憩室‐
唯「あれ澪ちゃん、何で花札を広げてるの?」
澪「さっきまでやってたんだよ。
唯、さっそくだけど勝負しないか?」
唯「うん、いいよ」
唯「……」←花札中
澪「……」←花札中
澪「……よし、 “猪鹿蝶”。そしてこいこいだ!」
澪(ふふ、唯の取った札を見たところ、強力な役は揃いそうに無い。
タネ札も殆ど無いようだし、こっちは猪鹿蝶でタネ札が既に三枚)
唯「えーとね」
澪(さっき取っておいたタネ札がもう一枚あるから、タネ札は合計四枚。
役の“タネ”は、タネ札が五枚で成立するから……)
唯「これ取って」
澪(次でタネ札を取り、追加点をあげた上であがることが出来る!)
唯「……はい、カス札十枚で“カス”ね」
澪「あれ?」
第一一四話「見とこカス札」‐完‐
135: 2012/05/06(日) 03:34:09 ID:qn6E8v8E0
‐ホール‐
「ぱりーん!」
唯「あちゃー……」
純「また皿割っちゃいましたね」
唯「こういうドジは治らないみたいだねえ……。
ちょっとチリトリとホウキ取ってくるから、誰も近づかないように見ててくれる?」
純「了解です」
唯「あっ、それと」
唯「その頭でくれぐれも掃かないようにね」
純「私をどんな狂人だと思ってるんですか」
第一一五話「セルフ箒」‐完‐
136: 2012/05/06(日) 03:35:09 ID:qn6E8v8E0
唯「うん、片付いたね。後は破損報告表かな」
純「……くくっ……」
唯「ん、どうしたの純ちゃん」
純「いやあ、私思ったんですよ」
純「四ヶ月も働いても、唯先輩は唯先輩なんだなーって」
唯「一日も働いてない純ちゃんに言われたくないなあ」
純「私だって私のペースで働いてますよ」
唯「それを働いてないっていうんだよ」
純「しかし、あれですね。皿割りクイーンとサボり魔神……」
純「響きだけ聞くと、いいコンビだと思いません!?」
唯「響きだけでも不名誉だと思うんだけど」
第一一六話「不名誉の証」‐完‐
137: 2012/05/06(日) 03:36:22 ID:qn6E8v8E0
‐キッチン‐
梓「うーん……」
梓「にゃお太郎、にゃーたん、にゃんのすけ、にゃにまる、
にゃっくりん、ニャルニーニョ、ニャニャード三世……」
梓「候補はあるけど、どれも決定打に欠けるなあ」
梓「どれがいいんでしょう、律さん!?」
律「……せめてオスなのかメスなのかを教えてくれ」
第一一七話「不毛な候補戦」‐完‐
138: 2012/05/06(日) 03:37:28 ID:qn6E8v8E0
律「まさかキッチンに猫持ち込んでないだろうな?」
梓「大丈夫です、二号は外で待機してます」
律「二号……?それが立派な名前じゃないのか?」
梓「はぁ?」
律「呆れられてるな、何故か私が」
律「とりあえずオスなのか、メスなのかハッキリしてくれよ」
梓「あれはメスです。
それを踏まえた上で、先程の候補の中から選んでいただきたいんですが……」
律「待て、お前は最初からメスだってわかってたのか?」
梓「はい」
律「その上で“にゃお太郎”とか名づける気だったのか」
梓「可能性はゼロではありませんよ」
律「どこに何の可能性があったんだか、さっぱりわからん」
梓「真面目に考えてください」
律「えっ、それ私に言う台詞?」
律「……まあメスなら」
律「御菜(おんな)なんてどうだ!?」
梓「ヘー、イイ名前デスネー」
律「何で棒読みなんだ」
梓「ちょっと他の人の意見を採用しに行ってきます」
律「私の案が不採用であることを隠す気は無いんだな」
第一一八「ねえミングセンス」‐完‐
139: 2012/05/06(日) 03:39:36 ID:qn6E8v8E0
‐備品倉庫‐
澪「ましゅまろなんてどうだ?」
梓「三毛猫ですよ?」
‐ホール‐
紬「ホームズなんてどうかしら?」
梓「少々ストレートすぎます」
‐スタッフルーム‐
さわ子「キャサリンで決定ね!」
梓「あなた誰でしたっけ」
‐ホール‐
梓「というわけで、残ったのが唯先輩なんです。
全く皆さんは、猫の名付け方がなってませんよ」
唯「わかってると思うけど、それ適当にあしらわれただけだからね?」
純「あと何で私には聞かないの?」
第一一九話「たらい回しで回されない方」‐完‐
140: 2012/05/06(日) 03:40:48 ID:qn6E8v8E0
梓「んー、そういうことだったんですかー。
でも残りは唯先輩のみなので、唯先輩は適当にしたらいけませんよ?」
純「いや、だから私が」
唯「うーん、悩むなあ」
純「何言った事を素直に受け入れてるんですか、
今の梓の言葉にはおかしなポイントがあったはずですよ」
唯「私が名付けたので決定になっちゃうんでしょ?
これは結構難しいよ」
純「おかしなのは唯先輩も同じでしたか」
梓「どうですか、何か思い浮かびました?」
純「私は空気となるしかないのかもしれない」
唯「梓ちゃんが一号なんだから、この際“梓二号”とかで良くない?」
純「じゅーん」←空気になりきっている
梓「それは嫌ですね、自分のペットの名前を呼ぶ度に
自分を呼ぶことになるので」
純「じゅわー」←空気になりきっている
唯「確かにそうだね。じゃあ……」
純「じゅじゅじゅーん」←空気になりきっている
唯「梓ちゃんの猫だから……“あずにゃん”なんてどうかな?」
純「じゅわわわわーん」←空気になりきっている
純「……んっ?」←空気になりきれていない
梓「成る程、私の猫にゃんということで“あずにゃん”ですか」
純「……素晴らしいです唯先輩!」
純「あえて採用されなさそうな名前を提示することで、
仕方なくとはいえ、私に活躍の場を与えてくれたんですね!」
純「おかげで空気にならずに済みましたよ!」
唯「面倒になっただけだけどね。
あと空気になりきれてないよ、結構やかましかったよ」
純「まあまあ。いやあ、これで私も名付け親の一人になれますよー」
梓「それ、採用します」
唯・純「えっ」
第一二〇話「命名:あずにゃん」‐完‐
142: 2012/05/13(日) 18:43:15 ID:cxqnl7n20
‐十月某日・お店‐
梓「おはようございます」
唯「おはよう、梓ちゃん」
梓「……」
唯「どうしたの?」
梓「この感じ……間違いありません。あなた唯さんじゃありませんね?」
唯?「えっ」
梓「私にはわかるんです……。だって前世が猫なんですから!!」
唯?「なんだか良く分からないけど凄いね、梓ちゃん!!」
第一二一話「世にも奇怪な能力」‐完‐
143: 2012/05/13(日) 18:44:10 ID:cxqnl7n20
‐ホール‐
純「まあ、簡単に話すと唯先輩が風邪ひいちゃって、
その代理で憂が来たってところかな」
憂「そういうこと」
梓「唯さん、風邪なんだ……大丈夫かな」
憂「お姉ちゃんは大丈夫だよーって言ってたし、
私も早めに切り上げようと思ってるから大丈夫だよ」
純「しかし唯先輩も風邪ひくんだねえ」
純「ナントカは風邪をひかないっていうの、あれは迷信なのかもね」
梓「いや、そうとも言い切れないね」
憂「うん、そうだね」
純「何故こっちを見ながら言う」
第一二二話「視線の暴力」‐完‐
144: 2012/05/13(日) 18:45:10 ID:cxqnl7n20
‐キッチン‐
澪「へえ、憂ちゃんが代理に。偉いね」
憂「短い間ですけど、よろしくお願いします」
澪「難しい仕事は他の人に任せて、憂ちゃんは簡単な仕事だけしてればいいよ。
無理に来させてるわけだし」
憂「お気づかいありがとうございます、でも大丈夫です」
憂「仕事はお姉ちゃんから聞いて、全部覚えました!」
澪「良くできた子だなあ……」
憂「ついでにお店の人達の変人度も、全部覚えました!」
澪「ちょっと何言われたか言ってごらん?」
第一二三話「リーク→リーク」‐完‐
145: 2012/05/13(日) 18:46:11 ID:cxqnl7n20
‐ホール‐
憂「いらっしゃいませー!」
憂「はい、ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
憂「ドリンクバーはあちらとなっております。
ごゆっくりどうぞ!」
憂「三番卓の方、オムライスとミートドリアです!」
律「うぃーっす」
憂「えーと、後は……」
憂「あっ、ありがとうございましたー!」
憂「うーん、レジ打ちは流石に出来ないなあ」
憂「紬さーん、お願いしてもいいですかー?」
紬「任せて~」
憂「ありがとうございます!」
純「……」
梓「……」
純「……仕事が」
梓「無い」
憂「えっ?」
第一二四話「働きすぎる民」‐完‐
146: 2012/05/13(日) 18:47:06 ID:cxqnl7n20
‐キッチン‐
律「しっかし、憂ちゃんは凄い働き者だよなー。
どうせだし、そのまま此処で働き続けてくれるといいんだけど」
澪「まあ無理に引き止めても悪いし、何より本人は唯の代理だと思って
来てるんだから、それは叶いそうにないな」
律「だよなあ。こうなったら一番働いてない人と取り換える、とか?」
澪「人を一人減らせば、憂ちゃんは手伝いに来てくれるってことか……」
澪「そうだな、一番働いてない人といったら」
律「純ちゃんか?」
澪「……いや」
澪「店長だろうな」
律「店長……」
第一二五話「働かざる長」‐完‐
147: 2012/05/13(日) 18:48:25 ID:cxqnl7n20
‐外‐
憂「わあ、これが“あずにゃん”?」
猫「にゃあ」
梓「うん、そう」
梓「家に一匹で置いていくのは心配でね……。
店の外に置かせてもらってるんだ」
憂「可愛いね~」
梓「憂もそう思う?唯先輩も同じこと言ってたよ」
憂「でも、ちょっと恥ずかしい名前だよね~」
梓「憂もそう思う?唯先輩も同じこと言ってたよ」
純「命名者なのにね」
憂「お姉ちゃん、よく言ってるんだ~。
“猫は可愛い、けどあの名前は止めてほしい”って」
梓「はは、唯さんのセンスはわからないね」
純「その名前を採用した梓のセンスの方がわからないよ」
憂「私が“あずにゃん”って言うと、顔を赤らめて、
“止めて!もうその古傷を抉らないで!”って言うんだけど」
憂「その時のお姉ちゃんがとにかく可愛いの!
今すぐにでも抱きしめて、家に持ち帰りたいぐらいの可愛さなんだ~!」
純「唯先輩の家は君の家でもあるよね?」
梓「つい愛でたくなる可愛いさか、わかるなあー……」
純「わからないよ」
第一二六話「I don't know...」‐完‐
148: 2012/05/13(日) 18:49:26 ID:cxqnl7n20
‐ホール‐
紬「あら純ちゃん、こんなところに座ってどうしたの?」
純「……これが私のスタンダードですよ」
紬「でも、いつもならお客さんが座る椅子と同じ椅子に
座ってなかった?」
純「そうでしたねえ」
紬「こんなお客さんの邪魔にならなそうな場所で休むなんて、純ちゃんらしくないわ……。
一体何があったっていうの!?」
純「いやー、これはですね」
紬「わかった!純ちゃん、唯ちゃんがいなくて調子が出ないんでしょ!?」
純「違います」
紬「わかった!純ちゃん、実はちょこっと体調が悪いとか!?」
純「違いますって」
紬「わかった!純ちゃん、自分のサボりスキルがスランプ気味なのね!?」
純「……私だって成長してるんです!!」
第一二七話「ちょこっとの成長の兆し」‐完‐
149: 2012/05/13(日) 18:50:11 ID:cxqnl7n20
‐休憩室‐
憂「あ、澪さん休憩中ですか?」
澪「そうだよ。憂ちゃんも休憩かな?」
憂「はい」
憂「あの、お姉ちゃんがお店でどんな風なのか、聞いてもいいですか?」
澪「いいよ」
澪「……唯はね、よくミスをするけど一生懸命なんだ」
憂「一生懸命……。でも、そのミスでお店に迷惑をかけたりとか……?」
澪「……サボる純ちゃんを注意する役目を、唯が引き受けてくれたんだ」
澪「おかげで前より純ちゃんが働く回数は(少ないけど)増えてる」
澪「そういう働きのおかげで、周りに迷惑をかけているというイメージは無いし、
むしろ士気を高めてくれているイメージがあるかな」
澪「まあ、破損報告表には唯の名前ばっかりだけどね」
憂「良かった……。私、実はお姉ちゃんに悪いことしちゃったんじゃないかなーって、
ずっと思ってたんです」
澪「悪いこと?」
憂「はい。このままではいけないと思って、
勝手に(コスプレをさせるような)お店に働きに行かせてしまったわけですし」
澪「ふふ……唯は憂ちゃんが思ってるほど、困ってないよ」
澪「そりゃあ純ちゃんの扱いには困ってるだろうけど、
自分が無理してるわけでもない様子だしね……」
澪「本当かどうか気になるなら、本人に聞いてみなよ。
唯なら正直に話してくれると思うよ」
憂「……じゃあ、大丈夫なんですね」
澪「ああ、何も問題なんてないよ」
憂「この“全米を震撼させる衣装”を着させても」
澪「ごめん、前言撤回」
第一二八話「全米震撼の前言撤回」‐完‐
150: 2012/05/13(日) 18:51:22 ID:cxqnl7n20
憂「えっ、でもお姉ちゃんはいつもこんなの着てるって、店長が言ってましたよ?」
澪「あの店長の言葉は7割のセクハラと3割の戯言で出来てるんだ」
憂「全体的にロクでもないんですね」
澪「そうなんだ」
憂「しかし残念です」
澪「ん?」
憂「これを着させるということが、いかに理に適ったことかということを
証明出来るはずだったんですけど……」
澪「私には道理の欠片も見当たらないんだけどなあ」
憂「非道な点を見つけることの方が難しいですよ!」
澪「確かに木を隠すなら森の中とは言うよね」
憂「こうなってしまえば手段は一つしか残りません」
澪「それは?」
憂「“強制”の二文字です」
澪「“中止”という二文字は残ってなかったんだね」
憂「私達は強いられてるんです!」
澪「唯の方は強いられてるね」
憂「幸い今日のお姉ちゃんは風邪で寝込んでます」
澪「幸いじゃない、唯が危ない」
憂「なので、今日は早めにあがらせてもらいますね」
澪「憂ちゃん、流石にそんな悪魔のようなことは止めておこう」
憂「澪さん、私はですね……」
憂「お姉ちゃんのためなら、悪魔にも魂を売れます!」
澪「もう悪魔に成り果ててたか」
第一二九話「デビちゃん降臨」‐完‐
151: 2012/05/13(日) 18:52:12 ID:cxqnl7n20
‐ホール‐
憂「というわけで今晩が楽しみなんだー」
純「それを聞いた私はどうすればいいの」
憂「純ちゃんも家に来る?」
純「憂とは逆の意味で行った方がいいのかもしれないね」
憂「つまり?」
純「止めに行くから」
憂「例え純ちゃんを敵に回しても、私は歩みを止めるつもりはないよ」
純「カッコイイけどサイテーな言葉だ」
憂「虎穴に入らずんば虎児を得ずって、素敵な言葉だよね~」
純「虎穴に放り込まれるのは唯先輩だけどね」
憂「というわけで、よろしくね純ちゃん!」
純「……何をよろしくされてしまったんだろう」
第一三〇話「虎穴によろしく」‐完‐
152: 2012/05/13(日) 18:53:16 ID:cxqnl7n20
姫子(私の名前は立花姫子)
姫子(この見た目のせいで皆からの第一印象は)
姫子(“近づきにくい”)
姫子(というものが非常に多い)
姫子(だけども、本当の私を知ってくれた人は)
姫子(そんな第一印象なんて無かったかのように接してくれる)
姫子(そう、皆が仲良く接してくれるんだ……)
姫子(……)
姫子(……だけど)
梓「あっ、姫子さん、私のあずにゃん知りません?」
姫子(この店の皆は第一印象の方がマトモです)
第一三一話「マイノリティの結集」‐完‐
153: 2012/05/13(日) 18:54:37 ID:cxqnl7n20
‐スタッフルーム‐
紬「憂ちゃん、今日は本当にお疲れ様。
唯ちゃんにお大事にって、伝えておいてくれる?」
憂「はい、わかりました。
お疲れ様でした」
紬「はい、お疲れ様~」
純「お疲れ様でーす」
紬「純ちゃんには言ってないわよ?」
純「でも、私もお仕事終了の時間ですよ?」
紬「純ちゃんには個人で話があるのよ」
純「えっ、私、呼び出されるようなことした覚えは多少しかありませんよ!?」
紬「多少あるならお話しましょう」
第一三二話「バイト後ミーティングタイム」‐完‐
154: 2012/05/13(日) 18:55:31 ID:cxqnl7n20
紬「純ちゃん、あなた嘘ついてない?」
純「どれですか?」
紬「そんなにあるのね」
純「嘘です一つです」
紬「ほら、また嘘ついた」
紬「……さて、どうやって嘘を暴いていこうかしら」
純「まるで全てを知ってるような口ぶりですね」
紬「知ってるわ。例えば」
紬「あなたが中学生であることも」
純「……」
第一三三話「唯一の嘘」‐完‐
155: 2012/05/13(日) 18:56:26 ID:cxqnl7n20
純「……それで、いつから知ってたんですか?」
紬「もうずっと前から」
純「私、辞めさせられるんですか?」
紬「そんなつもりは無いわ。
ただ、純ちゃんはどうするつもりなの?」
純「……さて、なんの話ですか」
紬「……バイトやめなさいって、お母さんに言われたんでしょう?」
純「えっ……!」
紬「いくら模試で高い合格率を出していても、受験生がバイトをしてるなんて“心持ち”が足りない」
紬「そう、言われたんでしょう?」
純「……紬さん」
純「何故お母さんが言ったことを一語一句違えずに知ってるんですか」
紬「企業秘密よ」
純「自宅で言われた言葉なんですけど」
紬「黙秘権を行使しま~す」
第一三四話「エスパーつむぎ~その秘密の裏に~」‐完‐
156: 2012/05/13(日) 18:57:20 ID:cxqnl7n20
純「まあ、それは事実です」
純「……私も六月ぐらいまでは違ってたんですけどねー」
紬「つまり七月……夏休みで、大体の子が本格的に勉強に取り組む時期に、
純ちゃんの意識が変わったのね」
純「はい。私の周りにも少しずつ勉強ムードが漂い始めていました」
純「そんな中で、内申を上手く取ってるだけの私が一人、
取り残されているような気がしてたんです」
純「でも、孤独感とは別に、このお店を簡単に辞めたくない自分もいたんです」
純「……いや、これが別だと錯覚していたことに最近気付いたんですがね」
純「これを別だと思っていた時期は、二つをどれだけ比べても答えは出ませんでした」
純「孤独感を払拭したい自分とお店に居場所を作る自分は、
所詮イコールなんだから、天秤がどちらにも傾くはずもなかったんです」
純「……本当に長い時間を掛けてしまいましたよ」
紬「それで、どうするの?」
純「まだ答えは出していません。
当然、今の状況が良いとも思ってませんけど」
紬「答えはすぐに出せそう?」
純「ふふ、今から出してきますよ」
紬「そう……」
純「……では」
純「今日はお疲れ様でした!」
第一三五話「決意の分岐点に、向かう」‐完‐
159: 2012/05/19(土) 11:33:23 ID:Q9i4ABmE0
‐平沢宅‐
純「お邪魔しまーす」
憂「純ちゃん本当に来たんだ」
純「うん、まあお見舞いってことで」
憂「ありがとうね。でも心配しないで、お姉ちゃん、もう元気になってきてるから」
純「おお、それは良かった」
憂「全米が震撼する衣装を着させられないのは、本当に残念なんだけどね」
純「うん、本当に良かった」
第一三六話「全米の安堵」‐完‐
160: 2012/05/19(土) 11:34:15 ID:Q9i4ABmE0
‐唯の部屋‐
純「……唯先輩ー?」
唯「純ちゃん?」
純「はい、全米が認めた美少女純ちゃんです」
唯「良かった、確かに純ちゃんだ」
純「一応お見舞いにきたんですけど、大丈夫そうで良かったです」
唯「……全然大丈夫じゃないよ」
純「え?」
唯「憂の衣装を見たらね、こう、体が勝手に元気を装いはじめて」
純「とんだ荒療治ですね」
唯「防衛反応と言って欲しいな」
純「あれですか、個別的自衛権を行使したんですか」
唯「出来ることなら集団的自衛権で純ちゃんも助けてよ」
純「おっと、私がそれを行使することは違憲ですので」
唯「そんな国単位のことじゃないんだから」
純「確かに」
唯「……」
純「……」
純「ところで唯先輩」
純「さっき言った言葉の意味、ちゃんとわかってますか?」
唯「私も同じこと思ったよ、純ちゃん」
第一三七話「知ったかぶり同盟」‐完‐
161: 2012/05/19(土) 11:35:29 ID:Q9i4ABmE0
純「それぐらい元気なら大丈夫ですね」
唯「今ので元気な私を感じ取ってくれたとしたら、それはそれで複雑だよ」
純「まあいいじゃないですか、私と唯先輩の仲なんですから」
唯「そんな親密な仲だったんだ、非常に複雑な気持ちだよ」
純「ヒドい!」
唯「……まあ、純ちゃんは十二番目ぐらいに仲良しだと思ってるよ」
純「高いのか低いのか、わからない順位ですね」
純「一番は誰なんですか?」
唯「憂かなー」
純「ほほう」
純「唯先輩って実はドMなんですね!」
唯「純ちゃんは、ちょっと頭のネジが足りないのかな?」
第一三八話「ネージー巻き巻き」‐完‐
162: 2012/05/19(土) 11:36:10 ID:Q9i4ABmE0
純「何言ってるんですか、私の頭は十分色んなものが詰まってますよ」
唯「そっか、だからそんなに頭が爆発してるんだね」
純「これは髪の毛です」
純「いや、だってですよ?
あれだけ色々してくる憂が一番なんて、ちょっとおかしいですよ」
唯「まあ、純ちゃんにはそう見えるよね。純ちゃんだし」
純「なんか馬鹿にされた気分です」
唯「そんなつもりは少ししかないよ」
純「少しあるんですか」
唯「うん、あのね、憂は確かに私に対して暴走することが多いかもしれないけどね」
純「はい」
唯「それ以上に感謝しきれないほど、家事を進んでやってくれてるの」
唯「私には想像出来ないぐらいの回数だけ、憂はこんな私のためにご飯を作ってくれるの」
純「なるほど」
唯「今の私は、そんな憂がいないとダメなんだ」
唯「あの可愛くて、自慢の妹がね」
純「唯先輩……」
「いよっしゃああああああぁぁぁぁーーー!!!!!」
唯・純「えっ」
第一三九話「雄叫びの憂」‐完‐
163: 2012/05/19(土) 11:37:08 ID:Q9i4ABmE0
唯「……」
純「……」
純「……えーと」
純「自慢の妹ですか?」
唯「今のは聞かなかったことにしようね、純ちゃん」
純「いや、でもあれは確かに憂の声で」
唯「何も無かったよね、純ちゃん?」
純「わあー不思議です、さっきまで何かを気にしていたようだったのに、
今は何を気にしていたのかすら覚えていませんよー」
唯「そうそう、何も無かったんだよ」
純「そんな“自慢の妹”を持ってる唯先輩に質問です」
唯「やけに“自慢の妹”を強調しないでよ、何?」
純「もし一番仲良しな憂が、自分の身の回りから離れたら悲しみますか?」
唯「悲しむよ」
純「では、十二番目ぐらいの人はどうですか?」
唯「……悲しむんじゃないかな、きっと」
純「意外ですね」
唯「そう?」
純「はい」
純「迷うことなく悲しまないと思ってました」
唯「二十番目ぐらいに格下げするよ、純ちゃん」
第一四〇話「悲しみランキング」‐完‐
164: 2012/05/19(土) 11:39:15 ID:Q9i4ABmE0
純「冗談ですって」
唯「そう?まあ私も冗談だよ」
唯「友達にランキングなんかつけられないもん。
憂は家族だから別格だけど」
純「成る程、つまり仲良しな人なら誰でも悲しむと」
唯「そうだね」
純「……じゃあ、私は唯先輩を少し悲しませるかもしれませんね」
唯「えっ?」
純「今日はこれで帰ります。
治りかけとはいえ、安静にしておいてくださいね」
唯「ちょっと純ちゃん?どういうこと?」
純「まあ、その時が来たら話しますよ」
唯「今話せることじゃないの?」
純「それどころか、今決めた話なんですけどね」
唯「なら今すぐに話してよ!」
純「唯先輩は安静にしててください」
唯「ねえってば!」
純「……特に珍しいことでも無いですし、こんなに前もって伝えることでも無いと思いますが」
純「私、年末にバイトを辞めようと思ってます」
第一四一話「決意した日」‐完‐
165: 2012/05/19(土) 11:40:10 ID:Q9i4ABmE0
唯「……ふーん。そうなんだ」
純「そうなんです」
唯「まあ、バイトだもんね、うん。
純ちゃんは受験生でもあるんだし、仕方ないよ、うん」
純「そうです、仕方ないんですよ」
純「では、私はこれで帰ります。お邪魔しました」
唯「うん」
純「……えーと、どうかお大事に」
唯「うん」
純「……」
唯「早く行かないと、風邪うつっちゃうよ?」
純「そうですね」
唯「……」
純「唯先輩」
純「服の裾を掴まないでください。動けません」
唯「純ちゃんだって、病人の手を払えないほど弱っているようには見えないけど?」
純「振り払ってほしいんですか?違いますよね?」
唯「……純ちゃんのばか。分からず屋」
純「えいっ」
唯「本当に振り払った!?」
純「分からず屋と言われたので、つい」
唯「こっちの方が余計に分からず屋だよ!」
純「まあ、でもあれですよ。その分、約束はしますから」
純「それでいいですよね、唯先輩?」
唯「……わかったよ。それなら」
唯「私もそれに釣り合う約束をするよ」
唯「残りの二ヶ月、純ちゃんをびしばし働かせちゃうから」
純「私はそれを、精一杯笑ってやり過ごすことを約束しますよ」
第一四二話「約束した日」‐完‐
168: 2012/05/25(金) 19:01:29 ID:dcEG18m20
‐十二月某日・平沢宅‐
憂「お姉ちゃん!朝だよ!」
唯「うーん、あと八十秒だけ……」
憂「残り十秒でお姉ちゃんのベッドにダイブするから待っててね」
唯「憂、おはよう」
憂「十秒以内に起きた場合は、手っ取り早くお姉ちゃんを襲うよ」
唯「憂、おやすみ」
第一四三話「寝ても地獄、覚めても地獄」‐完‐
169: 2012/05/25(金) 19:02:14 ID:dcEG18m20
憂「そんなことよりお姉ちゃん」
唯「なに?」
憂「私、お姉ちゃんに隠してたことがあるんだ……」
唯「嫌な予感しかしないけど、なに?」
憂「実は」
憂「そんなことよりお姉ちゃん」
唯「ちょっと待って、今何か言おうとしたんだよね?」
憂「えっ?」
唯「とぼけないでよ」
憂「お姉ちゃんの言っていることが良く分からないよ」
唯「私も良く分からないよ、憂のことが」
憂「まあ、一つ確かなことといえば」
憂「お姉ちゃんが私の全てを知りたくて仕方ないってことだよね!」
唯「間違ってないんだけど、間違った意味に聞こえるなあ」
第一四四話「間違い探し」‐完‐
170: 2012/05/25(金) 19:03:02 ID:dcEG18m20
唯「それはともかく、そんなはぐらかし方では騙されないよ」
唯「一体、憂は何を隠してたの?」
憂「……」
憂「あのね、お姉ちゃん――」
‐お店‐
紬「――そうなの。わかったわ」
純「唯先輩には伝えないでください。
無駄な心配はかけさせたくありません」
紬「わかったわ」
純「じゃあ、働きに行ってきますね――」
‐平沢宅‐
唯「――行ってくる」
憂「どこに行くの?」
唯「お店だよ」
憂「今日はシフト入ってないでしょ?」
唯「違うんだよ、憂」
唯「私は、私の仕事を終わらせる義務があるから行くんだよ」
唯「行ってくるね!」
第一四五話「最後の一仕事」‐完‐
171: 2012/05/25(金) 19:04:08 ID:dcEG18m20
‐お店‐
‐キッチン‐
律「澪」
澪「ん、どうしたんだ?」
律「今までありがとうな」
澪「いきなり改まってどうしたんだよ」
律「いや、今じゃないと言えないと思ってよ」
澪「えっ、どういうことだ……?」
律「……実は私、来月には引っ越すんだ」
澪「そうか、じゃあな、達者でな」
律「えっ、反応薄くね」
澪「三つもメッセージを送ったじゃないか」
律「確かに“心ない、味気ない、素っ気ない”の三拍子は揃ってるけど」
澪「“三拍子揃ってる”って言われると、何か良いことを言った気分になるよな!」
律「ならねえよ」
第一四六話「三三三拍子」‐完‐
172: 2012/05/25(金) 19:05:06 ID:dcEG18m20
律「なあ澪~、もう少し心配してくれてもいいだろ~?」
澪「律」
律「ん?」
澪「律は確かに引っ越すんだよな」
律「ああ、うん」
澪「……そういうことなら、安心したよ。
律だけが悲しむようなことじゃないみたいで」
律「……どういうことだよ?」
澪「私もな、来月にこの町を出るんだ」
律「えっ」
澪「丁度よかったんじゃないか?どうせ別れるなら、な」
律「……嫌だよ……」
澪「そうか?」
律「何だよ、お前が引っ越すなんて聞いた事ねえよ!」
澪「言ってないからな」
律「もう少し早く伝えてくれても良かったんじゃないのか!?」
澪「お前だって、同じじゃないのか?」
律「あれは作り話だよ!!」
澪「私もだ」
律「えっ」
第一四七話「目には目を、嘘には嘘を」‐完‐
173: 2012/05/25(金) 19:06:04 ID:dcEG18m20
澪「何というか、律は素直でいい子だな」
律「人をこうも簡単に騙すなんて、ひでえやつだよお前は」
澪「先に嘘をついたのはそっちだろ?」
律「そりゃそうだけどよ」
律「だったら何だ、私が嘘をついてるってわかってた上で、
そんな嘘をついてきたのか?」
澪「ああ」
律「……私って、そんなにわかりやすいやつだったんだなあ」
澪「違うよ」
澪「私だから、律のことがわかったんだ」
律「え?どういうこと?」
澪「これからもよろしくな、律。
そろそろ私、休憩の時間だから、うん」
澪「じゃあな」
律「あっ、澪……」
律(行っちゃった)
律「……」
律「そもそも、あいつ休憩時間じゃねえし」
律「……」
律「だあああ!照れるだろうがあああ!!」
第一四八話「それは相手も同じこと」‐完‐
174: 2012/05/25(金) 19:07:04 ID:dcEG18m20
‐スタッフルーム‐
さわ子「シャウトしてるわね」
紬「してますね」
さわ子「青春ねえ」
紬「だとしたら、店長はとても青春してたことになりますね!」
さわ子「何故私の高校時代を知ってるの?」
紬「世の中には知らないことの方が多いものですよ」
さわ子「年下にそれを言われるとは思わなかったわ」
紬「私、店長の迷台詞も知ってるんですよ」
紬「“お前らどんと来いで~す!”」
さわ子「それは知ってるうちに入るのかしら」
第一四九話「迷台詞は腐っても迷台詞」‐完‐
175: 2012/05/25(金) 19:08:07 ID:dcEG18m20
さわ子「“お前らが来るのを待っていた”を再現したかったのよね?」
紬「……あ、それでした~」
さわ子「実は知らなかったみたいね」
紬「ふふ、わざと間違えてみたんです」
さわ子「わざと?」
紬「はい、店長みたいに道を間違えるのも面白そうですし」
さわ子「いつから私は道を間違えていたのかしら」
紬「私が知った時には、もう……」
さわ子「手遅れだったみたいに言わない」
さわ子(一体私の何が悪かったのかしら……)
第一五〇話「A、働いてないこと」‐完‐
176: 2012/05/25(金) 19:08:45 ID:dcEG18m20
紬「そういえば店長、一ついいですか?」
さわ子「どうしたの?」
紬「実は、純ちゃんがこのお店を辞めちゃううんです」
さわ子「あら」
紬「それで、フロアスタッフが不足するんですけど……」
さわ子「わかったわ、早速バイトの募集をしましょう」
紬「店長が働いてくれませんか?」
さわ子「でも、私は私で結構忙しいのよー?」
紬「お仕事で忙しいところを見たことありませんけど~」
さわ子「なかなか鋭いわねムギちゃん。
ただ、それ以前の問題なのよ」
さわ子「ムギちゃんは嘘をついている」
紬「えっ……」
さわ子「人員不足なんてありえないわ……」
さわ子「だって純ちゃん、元々働いてないもの!」
紬「あっ!」
さわ子「だから私が働くような理由は無いのよ!」
紬「それはあります」
第一五一話「苦し紛れの名推理」‐完‐
177: 2012/05/25(金) 19:09:33 ID:dcEG18m20
紬「それに、最近の純ちゃんは働いてくれてる方ですよ」
さわ子「そうなの?」
紬「はい、二ヶ月前から徐々に働き出しました」
さわ子「やっとあの子も改心したのね」
紬「店長には言われたくないと思いますよ~」
さわ子「そう?」
紬「さわ子店長が働き者だったら違いますけどね」
さわ子「……わかった、働き者になればいいのね」
紬「えっ……」
紬「……えーと、今、なんて言いました?」
さわ子「わかったって言ったのよ」
紬「……」
さわ子「……」
紬「……あっ、すみません。あまりの驚きで言葉が詰まってしまいました」
さわ子「そんなに驚くとこあった?」
紬「ついに、ついに店長が働くんですね!?」
さわ子「そうよ」
紬「とてもいい働きぶりを見せてくれるんですね!?」
さわ子「期待してなさいよ?」
紬「はい!」
さわ子「まずは」
さわ子「新しいコスプレを考えるために旅に出ましょう!」
紬(そういう業界に転職すればいいと思いますよ、店長)
第一五二話「裏切らない裏切り」‐完‐
178: 2012/05/25(金) 19:10:06 ID:dcEG18m20
‐ホール‐
純「えっとー……」
梓「純、四番卓のお客様がお呼びだよ」
純「ん、りょーかい」
梓「……」
梓(純、変わったなー)
純「ご注文をお伺いします」
梓(ちゃんと働いてること、これが一番大きな変化だよね)
純「ご注文を繰り返させていただきます」
梓(うわー、まるで店員みたい。店員なんだけど)
純「ふう……」
梓(うん、まるで店員みたいなんだけど)
純「働くことって、楽しいものなんだなあ」
梓(あれはもはや誰なんだろう)
第一五三話「世にも奇妙な純ちゃん」‐完‐
179: 2012/05/25(金) 19:11:06 ID:dcEG18m20
梓「純、一体どうしちゃったの!?」
純「え?」
梓「働き者の純なんて、ただの人間だよ!」
純「私は元々人間だ」
梓「人間に謝りなよ」
純「まず私に謝れ」
梓「で、どうしちゃったの純。今までの純なら
“最後ぐらい休ませてくださいよー”って言って、
“初めから休んでばっかりでしょ”って唯さんにツッコまれてるはずだったのに」
純「今までの私とは一線を画してるのだよ」
梓「普通に働いてるだけでそう言える身分が羨ましいよ。
あっ、これ純を馬鹿にした言葉だからね」
純「知ってる」
純「……まあ、ほら、最後じゃん?」
梓「そうだね」
純「だから流石の私も、働かないとなーって」
梓「まあ良い傾向だね」
純「それに、こう思ったんだ」
純「終わり良ければ全て良し」
梓「もっと言葉は選ぼうよ」
第一五四話「初めも肝心」‐完‐
180: 2012/05/25(金) 19:12:09 ID:dcEG18m20
梓「でもそっか、辞めちゃうんだね」
純「くく、寂しいでしょ?」
梓「そうだね」
純「ん、意外な返事だね」
梓「このモフモフヘアーも見納めだと思うと」
純「私のメインは髪の毛か」
梓「髪の毛は大事にしなよ、女の子なんだから」
純「今、その言葉を言われても嬉しくないなー」
梓「そんなこと言うならバッサリ切れば?」
純「右手にバリカン握りしめながら言わないで」
純「いや、何でバリカンなんか持ってるの」
梓「純に必要かなと思って」
純「何する気!?」
第一五五話「ツインテールの微笑」‐完‐
181: 2012/05/25(金) 19:13:04 ID:dcEG18m20
梓「気にしなくていいよ。ところでコンセントどこにあるかな?」
純「気になる一言が聞こえたことは気にしないことにしよう」
梓「……純」
純「なに?」
梓「思い切ることって大事だと思うんだ」
純「余計に不安を駆り立てないで」
梓「とりあえず休憩室に行こう?コンセントあるみたいだし」
純「人の話聞いてよ」
梓「ほら、愛しの休憩室だよ?」
純「自分の髪の方が愛しいよ!」
梓「あっ、逃げた」
梓「休憩室の方に」
第一五六話「前方不注意につきカットエンド」‐完‐
182: 2012/05/25(金) 19:14:06 ID:dcEG18m20
‐休憩室‐
純(しまった、自ら最悪な展開をスタートさせてしまった)
純(……あれ?)
純「澪さん、うずくまってどうしたんですか」
澪「……やあ純ちゃん」
純「顔から火吹き出しそうなぐらい赤いですけど、何かありました?」
澪「……うわあああ!恥ずかしすぎる!」
純「はい!?」
澪「あの場から逃げ出しなんかしたら、余計恥ずかしくなっちゃうだろ!?
そう思わないかな、純ちゃん!」
純「話が見えてきません」
澪「恥ずかしさを紛らわすために、花札をしよう純ちゃん!」
純「本っ当に話が見えてきません、あとついでに私を助けてください」
第一五七話「花札わーるどへ逃げましょ」‐完‐
183: 2012/05/25(金) 19:15:04 ID:dcEG18m20
澪「……」←花札中
純「……」←花札中
澪「……純ちゃんは」
純「はい」
澪「五光札を優先して取っていくね」
純「それが基本じゃないですか?
あっ、あと“菊に盃”なんかも優先して取ります」
澪「うん、間違いではないんだ。
だけど純ちゃんには、人は思い込みに騙されるってことを知って欲しいな」
純「それは一体何のことを言ってるんです?あっ、こいこい!」
澪「純ちゃんがさっき取った“柳に小野道風”は確かに五光札……」
澪「だけど」
澪「三光が揃わないと価値の出ない札を優先して取るのは、得策じゃないんだ」
澪「……カスで上がり!」
第一五八話「番傘より盃」‐完‐
184: 2012/05/25(金) 19:16:04 ID:dcEG18m20
純「んー……負けました」
澪「“柳に小野道風”は五光札でありながら、
三光にはなれないし、当然タネ札やカス札にもなれない」
澪「だから普通はコレよりタネ札やタン札等を優先して取った方がいいんだ」
澪「純ちゃんは五光札という肩書きだけで、これを重要な札と思い込んでたんじゃないか?」
純「確かにそれはありますが、何故そんなことを私に?」
澪「中途半端な情報は、人に違った認識を与えかねないってことだよ」
澪「……まあ、この言葉をどういう意味で受け取るのかは、純ちゃん次第だ」
純「……」
澪「いいのか、あいつに何も言わなくて」
純「……あの人は此処にはいません」
純「私が、あの人のいない日を選んだんですから」
澪「あいつはそういうの関係無しに来るよ」
純「そうですかね?」
澪「八ヶ月も一緒に働いたんだ。
純ちゃんもあいつのこと、色々わかるんじゃないか?」
澪「例えば、意外と色んなことに敏感なこととか」
純「そうですね……たまにそう思うかもしれません」
純「ですけど、あの人がここに来れるはずが」
「純ちゃん」
純「……えっ!?」
澪「……役者は揃ったみたいだね」
澪「最後の飾り方は自分で決めるんだよ、純ちゃん」
第一五九話「Cagayake!GIRLS」‐完‐
187: 2012/05/27(日) 10:11:28 ID:dvWD33GI0
‐ホール‐
澪「……」
梓「あれ、澪さん、キッチンに戻らないんですか?」
澪「今キッチンに戻ったら顔から火を吹くからな」
梓「それはリアルな意味にですか?」
澪「リアルな意味で私が火を吹くと思うか?」
梓「澪さんは真面目ですからね」
澪「反応に困るなあ」
梓「素直に喜んでいいんですよ」
澪「喜ぶ場面だったのか」
梓「もっと自分に自信を持ってください!」
澪「やっぱり反応に困るなあ」
第一六〇話「OVER THE 理解」‐完‐
188: 2012/05/27(日) 10:12:06 ID:dvWD33GI0
梓「それより、あの人来たんですね」
澪「ん?……ああ、そうだな」
梓「あの二人は、何だかんだでいいコンビですよね」
澪「梓もそう思うか?」
梓「はい」
澪「一緒にいる時間が長いからかな、あの二人が仲良く見えるのは」
梓「なんで長いでしょうね」
澪「何でだろう、考えてみよう」
梓「私も考えてみます」
澪「んー……」
梓「……」
澪「……」
梓「……あっ!」
澪「わかったのか?」
梓「多分、純の担当が唯さんだからだと思います」
澪「担当?」
梓「言い換えますと」
梓「面倒事を押し付けられることです」
澪「もう一度言い換えてごらん」
第一六一話「再変換の必要性」‐完‐
189: 2012/05/27(日) 10:12:46 ID:dvWD33GI0
澪「その言い方は純ちゃんに酷いんじゃないか?」
梓「確かに言い過ぎかもしれませんね」
澪「一応最近は働く頻度が増えてるし」
梓「それは間違いなくゼロから出発しているせいです」
「にゃあ~!」
澪「ん?」
梓「……あっ、外であずにゃんが鳴いてますね」
澪「あの猫か?」
梓「ちょっと行ってきます」
澪「なあ、梓。私思ったんだけど、最近梓もあんまり働いてないよな」
澪「それ雇われてる身として、どうなんだ?」
梓「その点は大丈夫です」
梓「私、バイトじゃないので」
澪「えっ」
第一六二話「そうか、忘れてた」‐完‐
190: 2012/05/27(日) 10:13:16 ID:dvWD33GI0
‐休憩室‐
純「……」
唯「……ねえ」
純「あっ、どうも」
唯「挨拶はいいから」
純「挨拶は大切ですよ」
唯「挨拶の大切さについて談議するつもりも無いよ」
純「ぽぽぽーん」
唯「えーしー、って何言わせてるの」
純「魔法の言葉で楽しい仲間が」
唯「ぽぽぽーん」
純「……」
唯「……何言わせてるの」
第一六三話「ついつい」‐完‐
191: 2012/05/27(日) 10:14:03 ID:dvWD33GI0
純「唯先輩の可愛い一面を見れたので、早速仕事に戻りますかー」
唯「二重の意味で止めて」
純「ほお、唯先輩が仕事をさせないとは」
純「明日は嵐かもしれませんね」
唯「純ちゃんが働いても嵐にならないから大丈夫だよ」
純「今の私は当時と一線を画してますので」
唯「当時の自分を反省しているなら、何よりだね」
純「反省?」
唯「え?」
純「唯先輩、冗談はやめてくださいよ~」
唯「……純ちゃんからまるで成長の兆しが見えないよ」
純「何言ってるんですか、私は常に成長していますよ」
純「なんたって、常に前を向いて生きている女なんですから!」
唯「それが問題なんだよ」
第一六四話「過去は振り返らない女です」‐完‐
192: 2012/05/27(日) 10:14:39 ID:dvWD33GI0
純「それで、私の仕事を止めてまで何か話したいことがあるんですよね?
真剣に聞きますから、どうぞ話してください!」
唯「話したいといえば、話したいことなんだけど」
唯「何で私に言ってくれなかったのかなーって」
純「乙女には秘密が多いものですからね、どのことを言っているのかサッパリです」
唯「本当はわかってるでしょ、純ちゃん?」
純「あっ、もしかして今日が最後の日だって言ってませんでした?
いやあ、それでしたら言い忘れてたんですね」
唯「それは随分前から聞いてるよ。私が言いたいのは、その後」
唯「純ちゃん、私と同じ高校に来るとか言ってたよね?
言ってたのに、何でさ……」
唯「明日引っ越すことは言ってくれないの?」
第一六五話「Please tell me...」‐完‐
193: 2012/05/27(日) 10:16:02 ID:dvWD33GI0
純「えーと……誰から聞きました?」
唯「憂から。憂には話してたんだね」
純「なるほど、そうでしたか」
唯「どうして言ってくれなかったの?」
純「余計な心配をするかと思ったからです」
唯「引っ越すことを私が知ることは、余計なの?」
唯「引っ越したら、遠くに行っちゃうんでしょ?
私と同じ高校に入るかどうかも、わからないんじゃないの?」
純「……」
唯「このお店では別れたとしても、学校ではまだ会えると思ったから、
今まで自分を慰められたのにさ」
唯「……いや、ごめん。独りよがりだってことは、十分わかってるよ」
純「いえ、やっぱり中途半端に伝えた私が悪かったですね。その点は謝ります」
唯「いいんだよ、別に」
純「……さて、私の休憩時間はとっくに過ぎてるんですが……。
唯先輩、シフトは入って無くても、あなたの仕事はありますよね?」
唯「うん、そうだね、そうだったよね」
唯「……ほら、純ちゃん!サボってないで、働いて!」
純「はい!」
第一六六話「Don't say ”lazy”」‐完‐
197: 2012/06/01(金) 14:59:39 ID:d0aRmYIc0
‐ホール‐
梓「唯さん」
唯「ん?」
梓「今までお疲れさまでした、とても面倒だったでしょうけど。
あっ、ちなみにこれは」
唯「純ちゃんのことだね」
梓「理解される方も可哀想なものです」
唯「面倒だって初めに言ったのは梓ちゃんだよ」
梓「そうでした」
梓「ところで知っていると思いますが、私は中学三年生です。
つまり、来年から高校一年生となります」
唯「そうだね」
梓「というわけで、よろしくお願いしますね、唯先輩」
唯「えっ?」
梓「そういうことです」
唯「本当なの?」
梓「唯先輩」
梓「私の前世は猫なんです」
唯「だから余計に信じられないんだよ」
第一六七話「猫を被るとは言うけれど」‐完‐
198: 2012/06/01(金) 15:00:44 ID:d0aRmYIc0
梓「唯先輩」
唯「なに?」
梓「んー、何か違和感がありますね。
今まで“唯さん”と呼んでいたせいでしょうか」
唯「私は何も問題ないんだけど」
梓「そこで提案なんですが」
梓「“ゆいにゃん”なんてどうですか?」
唯「どうしようもないよ」
梓「可愛いですよ、ゆいにゃん」
唯「思いっきり私のこと舐めてるよね?」
第一六八話「ゆいにゃん、にゃんにゃん」‐完‐
199: 2012/06/01(金) 15:01:14 ID:d0aRmYIc0
梓「何ですか、そんなにペロペロされたいんですか?」
唯「そんな物理的な意味じゃなくて」
梓「ちょっと待っててください、今から憂に確認取りますから」
唯「どういうことなの」
梓「オーケーだそうです」
唯「どういうことなの」
梓「憂もすぐに来るみたいです」
唯「本当にどういうことなの!?」
第一六九話「猫達のランチタイム」‐完‐
200: 2012/06/01(金) 15:02:01 ID:d0aRmYIc0
‐キッチン‐
姫子「おーい、注文だよー」
律「……」
姫子「何々、オーバーヒート?どうしたの律」
律「姫子、次の選択肢のうち一つを選んでくれ」
律「一つ、私にドライアイスをぶっかける。二つ、私を冷凍庫に閉じ込める」
律「どっちだ!?」
姫子「私が犯罪者になるという点では、選択肢が無いんだけど」
第一七〇話「Beef or Beef?」‐完‐
201: 2012/06/01(金) 15:02:35 ID:d0aRmYIc0
‐ホール‐
姫子「はい、こちらカルボナーラです」
唯「ありがとー」
姫子「……ねえ」
唯「ん?」
姫子「何で梓ちゃんはこっちを睨んでるの?」
唯「えーと、ランチタイムを邪魔されたからかな?」
姫子「……あー、なるほど」
姫子「ごゆっくり」
唯「理解したなら助けてよ」
第一七一話「空気を読む≠意図を読む」‐完‐
202: 2012/06/01(金) 15:03:08 ID:d0aRmYIc0
梓「さあ、私のランチタイムの始まりですね」
唯「梓ちゃん、本当にそれだけは止めて」
梓「……仕方ないですね、わかりました。
唯先輩がそんなに嫌がるのなら、止めておきましょう」
唯「梓ちゃんが人の気持ちをわかる人で良かった」
梓「私はそういう気持ちの動きに敏感なんです。前世が猫だったので」
唯「そう思うなら、もっと前に止めて欲しかったな」
姫子「唯先輩……って、どゆこと?」
唯「いや、梓ちゃんが私と同じ高校に進むみたいでさー」
姫子「えっ!?」
梓「そうなんです」
姫子「じゃあ私の後輩にもなるわけだ?」
姫子「よろしくね、梓ちゃん」
梓「はい」
梓「……ひめにゃんは無いかな」
梓「姫子先輩、よろしくお願いします」
姫子「今さりげなく、凄いこと言わなかった?」
唯「逆に、なんで私ならいいの?」
第一七二話「見えない線引き」‐完‐
203: 2012/06/01(金) 15:03:45 ID:d0aRmYIc0
‐外‐
純「ふふふふふーん」←鼻歌
憂「純ちゃーん!」
純「おぉ、憂。どこか行く途中?」
憂「うん、お店に用があってね」
純「じゃあ一緒に行くかー」
憂「純ちゃんは何してたの?サボり?」
純「買出しだよ、買出し。
何でもかんでも私とサボりを結び付けんじゃない」
憂「えー、だって純ちゃんだよー?」
純「最近の私は、働くことを苦としていないからね!」
憂「へえ……噂には聞いてたけど、純ちゃん凄い変わったね!」
純「ふふん、仕事出来る私はカッコいいかい?」
憂「えっ」
純「何かごめん」
第一七三話「容赦もえげつもない」‐完‐
204: 2012/06/01(金) 15:04:48 ID:d0aRmYIc0
‐ホール‐
憂「お姉ちゃん、食べにきたよ」
唯「こちらがカルボナーラとなっております」
憂「そんなジョークは通用しないよ」
唯「えっ、割と真剣だったんだけど」
憂「だって梓ちゃんが電話で言ってたよ」
唯「それは止めてもらったから」
憂「私に独占させようとしてくれたんだね」
唯「憂はポジティブすぎるよ」
憂「仕方ないなあ」
唯「潔く諦めてくれて、良い子だね」
憂「梓ちゃん、ディナーが楽しみだね」
唯「それどういう意味」
梓「全くだよ」
唯「梓ちゃん」
憂「今日の晩御飯はお刺身だね!」
唯「……生々しいよ!」
第一七四話「純粋無垢に邪な気持ち」‐完‐
205: 2012/06/01(金) 15:05:24 ID:d0aRmYIc0
姫子「これが唯の妹……。色々な意味で危なさそうだね」
憂「大丈夫です、お姉ちゃん相手にしかこんなことしません」
唯「私が相手だと大丈夫じゃないってことだよね」
唯「そんなことより、姫子ちゃん。あの準備は出来てる?」
姫子「うん、ばっちりだよ」
唯「そっか、良かった」
純「何かやるんですか?」
唯「まあ、色々とね」
梓「純のお別れパーティーみたいなものですか?」
唯「えっ」
姫子「あっ」
梓「へっ?」
第一七五話「ネタばらしサプライズ」‐完‐
206: 2012/06/01(金) 15:06:05 ID:d0aRmYIc0
‐スタッフルーム‐
梓「誠に申し訳ありませんでしたー!」←土下座
唯「いや、あのさ」
唯「そういうことを思いついてもさ、言っちゃダメだよね」
唯「実際ありそうなことなんだし」
梓「でも、まさか当たるとは思わなかったですし」
唯「実際有り得るから可能性があると思ったから、梓ちゃんはあんな予想したんじゃないの?」
梓「全くその通りです……」
姫子「まあさ、梓ちゃんには悪気なかったんだし、その辺にしといたら?」
唯「……そうだね」
唯「バレたところで純ちゃんを楽しませられることに変わりは無いし」
梓「確かにそうですよ」
梓「純は単純ですし」
唯「うん、もう少し反省させようかな」
姫子「ちょっと私も参加していいかな」
第一七六話「謝罪と反省の二乗」‐完‐
207: 2012/06/01(金) 15:06:41 ID:d0aRmYIc0
‐キッチン‐
律「澪、料理の準備は順調か?」
澪「……ああ」
律「そっか。こっちも大方仕上がってきたよ」
澪「……」
律「しっかし、すげえことするよな唯も。
“私がお金払うから、このお店のメニューで純ちゃんのお別れ会したい”だっけ?」
澪「……」
律「今まで稼いできたお金を、今まで働いてない純ちゃんのために使うなんて、
普通のやつじゃ出来ないことだぜ?」
澪「……そうだな」
律「やっぱり唯は、何だかんだで純ちゃんのこと大切に思ってたんだな」
澪「……」
律「おーい。お前は、まだ立ち直れないのかー?」
澪「……だって」
律「お前が言ったことが発端だろ?」
澪「そうだけど……」
律「……あー、もうわかった!
お前は私のことわかってるつもりなんだろうけど、実は全然わかってないってことにしろ!」
澪「え?」
律「いいか、お前はまだ私のことなんか、これっぽちもわかってないんだ」
律「だからあの時、お前が言った事は何も恥ずかしくない、
ただの戯言だったってこと!」
律「だからお前が赤くなる必要は一ッ切無い!」
澪「そんな……」
律「……だからさ、お互いがさらに理解を深められるように、
これからもずっと一緒にいような、澪」
澪「……え?」
律「……」
澪「……律、その台詞の方がよっぽど恥ずかしいんじゃないか?」
律「うわああああああ!やっぱり、訂正!やり直し!」
澪「はははっ、律って面白いな、やっぱり」
律「くそー……待ってろ、もう一回違う言葉で仕返ししてやるからなー……」
澪「その必要は無いよ、私も同じ気持ちだから」
律「へっ?」
澪「手が止まってるぞー、律。ちゃんと働けー」
律「……はいよ!」
第一七七話「昇華、そして結束」‐完‐
208: 2012/06/01(金) 15:07:19 ID:d0aRmYIc0
‐スタッフルーム‐
純「はあ……」
紬「あら、どうしたの純ちゃん」
純「いえ、盛大なネタばれを食らっちまいまして、
どんな態度で皆と接すればいいのか、悩んでいたところです」
紬「それは深刻な問題ね」
純「本当に迷惑な話です」
紬「そういう時こそ、いつもの自分でいればいいんじゃないかしら?」
純「いつもの私ですか」
紬「……あっ、ダメね」
純「ダメですか」
第一七八話「こうして歴史は繰り返される」‐完‐
209: 2012/06/01(金) 15:07:50 ID:d0aRmYIc0
紬「でも、ここで悩んでるだけっていうのは、得策じゃないわ。
最後の日だからこそ、ちゃんと働かないと!」
純「そうですよね、最後の日ぐらい」
純「……まあ、働いてきます。私なりに、私の仕事をしてきますね」
紬「行ってらっしゃい、純ちゃん」
‐ホール‐
純「憂ー、何かご注文はあるー?」
憂「お姉ちゃんを一人」
純「これはいつもの私でも対応出来ません、紬さん」
第一七九話「万事休す」‐完‐
210: 2012/06/01(金) 15:08:30 ID:d0aRmYIc0
‐休憩室‐
唯「さて、純ちゃん。帰る時間ではあるけど、ちょっと待ってくれる?」
純「わー、楽しみですねー、お別れ会」
唯「梓ちゃんのおかげでこの有様だね」
純「でも、まあ。有難いことには変わりありませんよ」
唯「それなら良かった。じゃあ、付いて来て」
211: 2012/06/01(金) 15:09:05 ID:d0aRmYIc0
‐ホール‐
「せーの……」
「純ちゃん、今までお疲れ様でした!」
純「わーお……」
律「へへ、今日はこのメニューにあるやつ、何でも食べていいからな?」
純「本当ですか!?」
澪「唯が全部何とかしてくれるって言ってたよ?
大切にされてるじゃないか、純ちゃん!」
純「唯先輩……!」
律「あんま働いてなかったけど、お疲れ様。高校受験、頑張ってくれよな」
純「ありがとうございます!」
澪「引っ越しもするんだよね?
受験に引っ越しで、凄い忙しくなる時期だと思うけど、挫けずに頑張って」
純「はい、頑張ります!」
梓「まあ、私は純の代理だからね。
純がいなかったら、ここにいなかったわけだし、一応感謝してるよ」
純「素直じゃないなあ、梓ー!」
梓「うるさい」
紬「純ちゃん。次に会う時には、純ちゃんがちゃんとした
働き者になってることを私は願ってるからね」
純「はい、任せてください!」
さわ子「あなたの頭の形、次回KSTの参考にさせてもらうわ」
純「止めてください、あとCSTです」
さわ子「まあまあ、いつでも遊びにいらっしゃい!」
純「……はい!」
姫子「純ちゃんがいたこのお店の雰囲気は、すごい楽しそうなものだったよ」
姫子「それも純ちゃんのおかげかもね。楽しい時間を、ありがと!」
純「いえいえ、私の方も楽しませていただきました、ありがとうございます!」
憂「私はお店の人じゃないから、ちょっと違う言葉を送るね」
憂「……純ちゃんといたお姉ちゃんは、とっても楽しそうだったんだ」
憂「だから、お姉ちゃんと一緒にいてくれたこと、本当に感謝してるからね!」
純「私も唯先輩といて楽しかったよ、ありがと!」
212: 2012/06/01(金) 15:10:03 ID:d0aRmYIc0
唯「……」
純「ほらほら、唯先輩の番ですよ?」
唯「……純ちゃん」
唯「純ちゃんは本当、何もしないでグータラ過ごして」
唯「働きもしないで」
唯「お喋りばかりして」
唯「本当ロクでも無かったよ」
純「そんなですか……」
唯「本当に」
唯「毎日、純ちゃんを働くように仕向けることが当たり前になっちゃって」
唯「働きもしないような純ちゃんに、こんなお別れ会なんか開いちゃって」
唯「楽しい楽しいお喋りしかしないで」
唯「どうして、どうして純ちゃんはそんなに私を幸せにしちゃうの?」
純「唯先輩……」
唯「どうして、もっと早く会わなかったんだろうね」
唯「そしたらさ、もっと長い間、一緒にいれたんだろうけど」
唯「行かないで、なんて言わないよ。仕方のないことだもん」
唯「だけど純ちゃん」
唯「また会おうね」
純「……はい、約束します!」
唯「うん、約束。破ったら針千本飲ますから」
純「飲むはずがないじゃないですか」
純「私は自分には嘘をつかない、正真正銘の正直者ですよ?」
唯「ふふ、そうだったね」
さわ子「……はい、それじゃあ純ちゃんのお別れパーティー、盛大に始めるわよ!」
「おーっ!」
213: 2012/06/01(金) 15:11:24 ID:d0aRmYIc0
――
――――
――――――
こんばんは、平沢憂です。
今、私達は純ちゃんのお別れパーティーをやっています。
すごい盛り上がり様で、しんみりムードなんてまるでありません。
これが今までお姉ちゃんと一緒に過ごしてきた方達と、
その空間だと思うと、私は自分のしたことを誇らしく思ってしまいます。
梓「タダとはいえ、あんまり食べられそうにないです……」
律「梓は少食だなあ。そんなだから伸びないんだぞ?」
年の差なんて関係無しに。
澪「さわ子店長、酔ってません?」
さわ子「んなことは無いわよ~」
姫子「これが普段通りだとしたら、逆にタチ悪いですよ」
立場も関係無しに。
憂「紬さん、あの」
紬「お礼なんてしなくてもいいのよ?
お役に立つことが出来たなら、一緒にそれを喜びましょ!」
憂「……そうですね!」
喜びを分かち合える。
純「本当に食べ放題なんですよね?」
唯「足りない分は純ちゃんに払ってもらうからね」
純「えー、唯先輩、今は私が主役なんですよー?」
唯「主役は純ちゃんでも、主催は私だからね」
純「相変わらず手厳しいですね」
唯「純ちゃん相手だからね」
純「私に優しい唯先輩も、たまには見てみたいものですけどね」
唯「……見たい?」
純「えっ?」
「ぎゅう」
純「唯、先輩……?」
唯「こうやって純ちゃんを抱きしめるなんて、初めてじゃないかな」
純「そうですね……とても温かいです」
こんな素敵な場所。
和ちゃんが言っていました。お姉ちゃんはもう、立派に成長した。
少し寂しいけど、とても安心した、と。
今なら“安心した”という和ちゃんの言葉がよくわかります。
これなら、お姉ちゃんがどんな場所に行っても、楽しく過ごせる気がするからです。
いつまでも可愛くて、カッコいい、私の大好きなお姉ちゃんでいてくれる気がするからです。
こんな幸せな場所に出会えて、良かったねお姉ちゃん!
第一八〇話「最後のパートタイム」‐完‐
214: 2012/06/01(金) 15:12:12 ID:d0aRmYIc0
‐外‐
純「ふう、食べ過ぎましたかね」
唯「間違いなく食べ過ぎだよ」
純「唯先輩の財布、泣いてません?」
唯「誰のせいだと思ってるの」
純「ははっ、確かにそうですね」
純「……じゃあ、私はこれで帰ります」
唯「そっか」
純「明日からは此処にも来ませんし、引っ越しもしてしまいます」
唯「うん」
純「でも寂しがらないでください。必ず、また会えますから」
唯「……純ちゃあああん!」
純「うわっ!?」
梓「あー、純が唯先輩を泣かせた」
純「違わないけど違う!」
律「あーあ、女の子泣かせるなよー」
純「私だって女の子ですよ!」
澪「……純ちゃん、頑張って」
純「そのエールが心に刺さります」
純「ともかく!もう、行きますからね!」
唯「うぅぅ……」
憂「お姉ちゃん、ちゃんと純ちゃんを見送ってあげよう?」
姫子「顔上げなよ、唯」
唯「ありがとう、二人とも……」
紬「……じゃあ、行ってらっしゃい純ちゃん」
純「はい」
純「それでは……」
純「皆さん、お疲れ様でした!」
第一八一話「旅立ちの日に」‐完‐
215: 2012/06/01(金) 15:12:58 ID:d0aRmYIc0
・
・
・
・
「あっ、そうそう」
・
・
・
・
純「四月からまたよろしくお願いします」
唯「えっ」
梓「えっ」
律「えっ」
姫子「えっ」
澪「ああ、よろしくな」
紬「楽しみに待ってるわね」
憂「高校でもよろしくね」
唯「えっ」
「えっ……?」
唯「ちょっと純ちゃん」
純「はい?」
唯「それはどういう意味なの?」
純「ですから」
純「四月からまたここで働かせてもらうってことですよ」
唯「はい?」
純「あと予定通り、高校は唯先輩と同じところに通う予定です」
唯「……どういうことなの」
216: 2012/06/01(金) 15:13:49 ID:d0aRmYIc0
純「そもそも、違う高校に行くなんて一度も言ってませんよ?」
純「ましてや“遠くに”引っ越すなんて言ってませんし」
唯「えー……」
憂「お姉ちゃん、引っ越すことだけ聞いたら、お店に行っちゃうから……」
唯「早く言ってよ!」
澪「だから中途半端な情報は人に誤った認識を与えかねないって、“柳に小野道風”を例に挙げたのにな」
唯「何の話!?」
紬「てっきり知ってるかと思ってたのに」
唯「知ってたら、こんなパーティーは開かないよ!」
梓「えーと、なんで早い段階で純から言わなかったの?」
純「最初は近場に引っ越すだけだから、伝えなくてもいいと思って」
純「まあ話の中でポロッと言ったことはあるんだけどね。
おかげで澪さんと憂にはバレちゃうし」
純「まあ、結局、唯先輩にはバレることなく今日になったんだけど」
純「あっ、今日を最後の日に選んだのにも理由があって」
純「どうせ四月には戻るし、何かさせるのも悪いから、
唯先輩のいない日を最後の日にしようとしたんだ」
律「せめて四月に戻るってことは伝えられなかったのか……?」
純「なんの前触れもなく、いきなり私が職場復帰したらカッコイイじゃないですか!」
唯「まあ、大きな誤算が生じてしまうんですけど」
純「まさか今日、唯先輩が来てしまうとは想定外でした。
引っ越しのこともバレてるみたいでしたね」
純「見事に勘違いしてるんですけど」
純「そんな唯先輩を、初めは“勘違いしてる唯先輩も面白いなあ”と思いながら見てたんですけど」
純「梓のネタばれのおかげで、こっちが申し訳なくなってきて、
ネタばれをするタイミングを失っちゃって……」
純「今にずれ込んだって感じですかね!」
217: 2012/06/01(金) 15:14:29 ID:d0aRmYIc0
梓「……」
律「……」
唯「……」
唯「…………」
純「いやあ、本当にすみませんでした」
純「まさかこんなことになるとは思ってもいなくて……」
純「まあ、そんな訳ですので。お疲れ様です!」
律「じゃあなー」
梓「さっさと行っちゃいなよ」
唯「ばいばい」
純「いきなり素っ気なくないですか!?」
唯「そりゃあ、そうもなるよ」
唯「どうせまた会えるんだもん」
純「そうですけどー……」
唯「……また会えるんだもん」
純「ん、何か言いました?」
唯「……ほら、さっさと家に帰る!」
純「ちょちょちょっ、押さないでくださいよ!
さっきまで別れを惜しんでたくせに、いきなりどうしたんですか」
唯「うるさいよ、純ちゃんのくせに!」
純「何ですか、その理屈は……」
唯「大体勉強しないと、同じ高校に行けるかもわからないんだよ」
純「ですね」
唯「だったら早く帰って勉強だよ!」
純「そんなに私に同じ高校に行って欲しいんですか」
唯「同じ高校に進まなかったら、一緒に仕事してあげないからね」
純「それはまずいですね」
唯「そうでしょ?だったら、早く家に帰る!」
純「うー……」
唯「どうするの!?」
純「……わかりました。この鈴木純、私の大好きな先輩との約束を果たすために、
一生懸命の勉強することを誓いましょう!」
唯「……うん。その意気だよ」
純「では、また四月に会いましょう」
唯「じゃあね」
純「はい!」
218: 2012/06/01(金) 15:15:33 ID:d0aRmYIc0
――
――――
――――――
唯「……ふー……」
唯「……」
唯(行っちゃったか……)
唯「……」
唯「私も大好きだからね、純ちゃん」
第一八二話「四月へ告げる、始まりの約束」‐完‐
219: 2012/06/01(金) 15:17:04 ID:d0aRmYIc0
‐四月某日・お店‐
「……」
「それでですね」
「その話、何回目?」
「だって夢のマイホームですよ?
広いんですよ?」
「それはわかるけどさ」
「親には感謝しなくてはいけません。
あんな素晴らしいホームをありがとう!」
「はいはい。それよりも、お客様がお帰りのようだよ」
「本当ですね、行ってきてください」
「人に行かせないで、自分から行くんだよ」
「でも、この格好ですよ?店員と思われませんよ」
「まさかCSTで自分の高校の制服着るとは思わなかったけどさ、
なっちゃったもんは仕方ないよ」
「仕方ありませんか。それなら、一緒に行きましょうよ」
「……仕方ないなあ」
「……」
唯・純「ありがとうございましたー!またのご来店、お待ちしておりまーす!」
第一八三話「バイトやろーよ!~Let's WORK!~」‐完‐
‐ お し ま い ‐
220: 2012/06/01(金) 15:27:03 ID:d0aRmYIc0
今まで読んでくれた方々、ありがとうございました
これにて完結です
脇役の予定だった純がいつの間にか主役級になったり、
真面目組の予定だった梓がいつの間にか変人枠入りしたり、
おかげで良心的な存在の姫子を投入することになったり、
色々と自分でも想定外のことが多く起こりましたが、まあ書いてる方は楽しかったです
次は何を書こうとか、何も予定はありませんが、
いつか書き手と読み手として出会う機会があれば、
その時にはまたよろしくお願いします
これにて完結です
脇役の予定だった純がいつの間にか主役級になったり、
真面目組の予定だった梓がいつの間にか変人枠入りしたり、
おかげで良心的な存在の姫子を投入することになったり、
色々と自分でも想定外のことが多く起こりましたが、まあ書いてる方は楽しかったです
次は何を書こうとか、何も予定はありませんが、
いつか書き手と読み手として出会う機会があれば、
その時にはまたよろしくお願いします
221: 2012/06/01(金) 17:53:23 ID:jvnXohbQ0
乙
こういう定番オチも好きよ
こういう定番オチも好きよ
222: 2012/06/01(金) 23:12:37 ID:8UR5V3XQ0
面白かった
引用: 唯「放課後パートタイム!」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります