関連:とある科学の電磁通行(エレキックロード)
629: 2010/07/11(日) 17:05:53.27 ID:FN6G2rU0



・IF物です。前中後、エピローグで構成する予定です。
・キャラの性格が若干違うかも知れません。
・色々改変。自己解釈あるかも。
・時期は禁書目録三巻らへん。
・作者はホットケーキが大好きです。



では。

とある魔術の禁書目録 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス)

630: 2010/07/11(日) 17:08:36.19 ID:FN6G2rU0





学園都市には『超能力者(レベル5)』と呼ばれる存在が居る。
能力者、異能の力を持ちし学園都市の学生達のトップに位置する者。
その力は軍にたった一人で挑める程の力だという。
詳細は様々。名前や顔まで知られている者もいれば、能力名すら知られてない者も居る。

学園都市の、最強の人間。

















『超能力者(レベル5)』は、“六人”だけ、存在した。


















これは、そんな怪物が住む学園都市の、一人の少年の物語。
変わってしまった、この物語の、一ページ。

631: 2010/07/11(日) 17:09:09.94 ID:FN6G2rU0




『とあるifの電磁通行(エレキックロード)』














「アッチィ……クソがァ……」


八月十九日。
夏のクソ暑い太陽がジリジリと照らす中、一人の少年が黒い服を着て歩いていた。白い髪に赤い目、雪のような真っ白い肌で、道行く人の視線を少し集めて居る。
長袖長ズボンなため、少年が感じる暑さは尋常では無い。
能力を多少行使していても、白いその肌に暑さのせいによる汗が流れてゆく。


「チクショォォ……なンでコンビニの缶コーヒー売り切れてンだよ……買いだめとかした奴マジ氏ね」


フラフラとその足取りは頼りない。
彼は元々コンビニで缶コーヒーを大量購入したら、サッサとクーラーがある己の部屋に帰るつもりだった。
だがお気に入りたるブラックコーヒーは売り切れ。仕方なく近くの自動販売機に向かっているのだが、このままでは辿り着くまでに彼の精神と肉体が持ちそうに無い。

632: 2010/07/11(日) 17:10:50.99 ID:FN6G2rU0


「アー、クソ。こンな時のために能力があンだろォ……あのツインテジャッジメントが居なけりゃァ……」


ブツブツと愚痴を言いながら、彼は太陽の光を反射するアスファルトを踏みしめて歩く。
もう少しで目的地につく筈だ。


「『日常で能力を余り使わないでくださいまし!』じゃねェよ。氏ぬわ。これ氏ぬぞオレェ……」


そう言いつつも能力を使わないあたり、結構真面目なのだろう。
そして目的地たる公園へ。


だが、




「ちぇいさぁぁぁぁ!!」



ドゴォン!と轟音が公園内に響く。
その声の出所と、その誰かの目の前で揺れる赤い自動販売機を見て彼はため息を一つ。


「ハァッ……」


ため息はそれ程大きく無かったのだが、自動販売機の前に立っていた“彼女”に聞こえたらしい。
少女は制服のスカートを揺らしながら振り返り、呆れた表情をこれでもかと浮かべた彼を見て、


「一方通行?何やってんのアンタ?」


「それオマエが言っちまいますかァ?超電磁砲」


疑問の問いかけをして来た彼女に、彼は再度ため息を吐いた。





彼の名前は一方通行(アクセラレータ)。
レベル4の、学園都市に存在する能力者達の一人である。

633: 2010/07/11(日) 17:11:39.42 ID:FN6G2rU0



「超能力者(レベル5)ともあろう者が窃盗ですかァ?」


「今更でしょ。あっ、言っとくけどアンタも共犯だから」


「オマエ、無理矢理押し付けたと思ったらそういうことかよ……」


一方通行は隣に座った少女に貰ったブラックコーヒーの缶を傾ける。
ちなみに彼が持つコーヒーと少女が持つサイダーは自動販売機を蹴り飛ばして手に入れた物である。
蹴り飛ばした犯人である彼女は、


「とーぜん。まっ、口止め料とブラックなんか要らないってこともあったけど。よくそんな苦いの飲めるわ」


「……ガキ」


「何か言った?」


「イエイエベツニナンデモアリマセン」


バチバチと前髪から電流が散って音を立てる。
それを横目に見つつ、一方通行はクズ箱に向かって缶を投げた。

彼女は御坂(みさか)美琴(みこと)。
学園都市に六人しか存在しないレベル5の一人、それも第二位である。
茶髪の髪と瞳を持つ彼女の能力は発電能力。十億ボルトもの電気を操る、名門常盤台の電撃姫だ。
通り名は『超電磁砲(レールガン)』。

そんな学園都市では超がつく有名人である彼女は、一方通行が投げた缶が見事にクズ箱に入ったのを見て対抗意識を燃やしたのか、缶を持ってクズ箱に狙いを定めている。


(……とてもじゃねェが、第二位には見えねェ……というよりそこら辺の女子中学生よりガキに見える……)

634: 2010/07/11(日) 17:13:11.93 ID:FN6G2rU0


アイドルの素顔を知った一般人のようなことを一方通行が考えているうちに、彼女は空き缶を投げた。
投げられた空き缶は編み目のクズ箱に向かうが、


「あっ!」


カンッ、と淵に当たって回転し弾かれる。
弾かれた黄色の空き缶は空中を舞い、地面に落ちた。


「あーもう。悔しいなぁー……」


「能力使えばよかったンじゃねェのか?」


「だってアンタ能力使って無かったじゃない。学園都市のレベル5第二位ともあろう者が、レベル4に負ける訳にはいかないでしょ」


「ハイハイ、そォですかァ」


缶を拾いながらの美琴の台詞に、一方通行は心底呆れながら返す。
彼は彼女のそういう所にウンザリしていた。
別にプライドを持つのもいいし、意地になるのも構わない。
だがそれが自分に向けられるとなると話は別。正直言って勘弁して欲しい。


「オマエのそのバトル癖、どうにかなンねェの?」


「何よ、そのバトル癖って?」


と、こう言った風に自覚すら殆ど無いものだから彼としては呆れるしか無い。


(なァンで、オレァコイツと知り合っちまったンだろォなァ……)


二人の出会いは、六月ぐらいに遡る。




635: 2010/07/11(日) 17:14:11.44 ID:FN6G2rU0







「あー、だりィ、眠ィ、きちィ……」


そんなダメ人間全開の台詞を吐きながら、一方通行は夜の街を歩いていた。
殆どの店のシャッターが閉まっており、外灯の明かりが道を照らす。

ブラブラと歩いて行く彼の右手には白いビニール袋。
その中にはコンビニで買い溜めたコーヒーの缶が大量に詰まっている。


「サッサと帰るに限ンなこりゃ……」


だが、そうはいかないのがこの世の中だった。


「オイオイ、ちょっと今取り込み中だから向こう行ってくれるかなぁ?」


「あン?」


目の前からの声に一方通行は立ち止まる。
下に下げていた目線を上げるとそこら辺に大量に居そうな不良の一人が、此方をニヤニヤした表情で見ていた。


「……」


立ち止まり、一方通行は辺りを見渡して状況を把握。
目の前の不良だけで無く、周りにも不良達は居た。
ただ、半分以上が誰かを囲んでいて一方通行の方を見てさえもいない。


「なぁ、わかるかなぁ?」


「……」


その誰かはシャッターを背に立っているようだ。
男達の隙間から見える制服の端から、恐らく常盤台中学の生徒だと分かる。

636: 2010/07/11(日) 17:14:57.86 ID:FN6G2rU0


(お嬢様学校の生徒がどうしてンなとこに?)


「おい!てめぇ聞いてんのk「うるせェ」ゴガッ!?」


何か言っている奴が居たので、一方通行はコンビニの袋を振り抜く。
ベクトル操作によって金属バットのように真っ直ぐになった袋は不良の顔面に直撃。
中にあるコーヒー缶二十個分の威力を顔面に喰らった不良は、吹き飛んで汚いコンクリートの床に倒れこむ。


「なっ!?てめぇ何してやがる!」


「髪白に染めて不良気取りかぁ!?」


仲間が一発でノックダウンされたのに周りもさすがに気がつく。
誰かをーー恐らく女だろうーーを囲んでいた男達もジリジリと一方通行に迫って来る。


「ハァ……」


その光景に一方通行はため息をこれ見よがしに吐く。
チラッと絡まれていた誰かさんを見ると、茶色の髪と茶色の瞳を持つ少女が見えた。


「……メンドクセェ」


「なめやがって!」


「頃す!」


各々の武器を持って迫る不良達は知らなかった。



目の前の人物の桁違いの強さを。


637: 2010/07/11(日) 17:16:40.15 ID:FN6G2rU0

先頭で拳を振りかぶった不良は顔面に蹴りを喰らい、悲鳴を上げる暇も無く吹き飛ぶ。
それによって後ろにいた不良二人も巻き込まれて宙を舞った。


「氏ね!」


横合いからナイフを振るうが、一方通行はそれを頭を下げる事で軽々とかわし、地面を軽く踏む。
踏んだ瞬間地面に落ちていた小石が跳ね上がりナイフを振った男の鳩尾に直撃した。


「ぐえっ!?」


「いぎっ!?」


「ハッハァ!遅ェ、遅すぎンぜ三下、いや、四下どもがァ!」


テンション高く彼は叫び、不良達へと突っ込む。そして蹴り。
一方通行の回し蹴りに、不良が三人纏めて蹴り飛ばされた。
体重七十キロは確実にある男三人を一度に、だ。
ドゴォン!とシャッターに叩きつけ、足を下ろした一方通行は首をコキッと鳴らす。


「ば、化物……」


「に、逃げ……」


「あン?逃がすかよ!」


そんな異常な光景にようやく危機感を抱いたのか、残りの不良達は逃げ出そうとするが、一方通行が地面に足を叩きつけただけで終わった。
足から伝わる衝撃のベクトルが操作され、地面に落ちている小石に向けられる。

シュンッ!と飛んだ小石が空気を切り裂き、


「へぼっ!?」


「ギャッ!?」


「グヘッ!?」

638: 2010/07/11(日) 17:17:53.56 ID:FN6G2rU0


不良達の急所に命中。
プロのボクサーにも匹敵する威力の小石を喰らった不良達は、ゆっくりと大地に崩れ去った。

氏屍累々といった感じの状況。
そんな中で、


「ふァ~……」


一方通行はそれが、戦闘が何でも無い事のようにあくびを吐いた。
彼にとってはこんなのはケンカですら無い。ゲームでさえ無い。ただ道を歩くのと殆ど変わりないのだ。


「……ン?」


ふと、背伸びをした一方通行は誰かの視線を感じ、振り返る。
視線を放っていたのは先程の茶髪の少女。
警戒と興味とが入り混じった顔をしている。
そんな彼女に向かって、一方通行は一言。





「ガキはサッサと家帰って寝てろ」


ピシィ!


「ガキがこンな時間まで外にいンじゃねェよメンドクセェ……」


ビキッ!


「大方『私強いから大丈夫!』とか言うタイプだろ?全く、ガキがいきやがりやがって……」


ビキッ!ビキッ!


「お嬢様学校の子供(ガキ)はサッサと家に帰ってミルクでも飲ンで寝てろ。大事なことなので二回言いました、ってなァ」


ブチッ!!

639: 2010/07/11(日) 17:18:36.19 ID:FN6G2rU0


更に追加しほうだい。そして言い終わってから、もう用は無いとばかりに一方通行は踵を返す。
彼の脳内からは既に不良達や少女のことは綺麗さっぱり消え去った。
現に地面に倒れて気絶している不良を踏み潰しながら歩いている。


だが、


「だ……」


バチバチと、何か後方から音がした。
一方通行はこの音を何回も聞いたことがある。
だから勢いよく振り返り、手を翳した。





「誰がガキだゴラァアアアアアアアアアッ!!」





でっかい叫び声とともに光が走った。
光の正体は雷の槍。
青色のそれは真っ直ぐに一方通行に迫り、


バチィ!と、翳した手に触れた瞬間周囲に拡散した。


「……んなっ!?」


「発電能力か。ハッ、威力も気絶するギリギリの威力だなァ」


ベクトル操作した際に脳に入った電気の情報から彼は判断する。
それを知らない少女は頭にハテナマークを浮かべるだけで無く、表情に浮かぶ警戒の色を強めた。

640: 2010/07/11(日) 17:19:57.35 ID:FN6G2rU0


「へェ……」


その顔を見て一方通行はニヤリ、と笑う。
先程の情報から彼女は最低でもレベル3以上だというのは分かっている。そして現在の表情。


「タダのガキじゃねェ、か」


「ガキ言うな!」


「オレの勝手だ。第一オマエ名乗ってねェじゃねェか」


一方通行の呆れながらの言葉にうっ、と真っ赤になりながら詰まる少女。
普通なら少し罪悪感が湧く所であるが、いきなり攻撃して来た人間に罪悪感が湧く程一方通行はバカでは無い。

気まずさからか、美琴はゴホン、と咳払いし名乗る。


「……私は御坂美琴よ。アンタの名前は……ってまてやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


「チッ」


またもや飛んで来た雷を夜空に向かって跳ね返し、一方通行は舌打ちする。
勝手に帰ろうとしたのだが失敗に終わってしまった。
こうゆうタイプは一度無視すると、後がしつこいと相場が決まっている。


「ハイハイ?なァンですかァガキ。オレは今から家帰って寝るっていう大事なことがあるンですがァ?」


「ガキガキうっさいのよ。後、名前呼びなさいよ」


「却下」


即答速攻大否定。
ピキッ!と美琴のこめかみが再度音を立てる。

642: 2010/07/11(日) 17:21:55.07 ID:FN6G2rU0


「アンタ……私を誰だと思ってんの……?」


「ガキA」


ブチィ!


ぴくぴくと、唇を痙攣させながら美琴はスカートのポケットに右手を入れる。


「いいわよ……ガキガキ……良い加減、頭に来た……」


「帰っていいですかァ?というか帰るわ。メンドクセェ……」


そんな美琴の行動にも気をとめず、彼は足を帰路へと向ける、

が、


「あン?」


パリッと、自分の周囲に小さな電流が走ったため彼女を見る。
彼女は右手を一方通行に向かって翳しており、その右手から周囲に漏れる程の雷が集められている。


「オイオイ……」


その全開ですと言わんばかりの状況に一方通行は呆れた声を漏らした。
だがぶち切れた美琴には火に油をブチ込むようなもの。


「私を……学園都市の超能力者(レベル5)、第二位『超電磁砲(レールガン)の御坂美琴を……」


たっぷりと怒りが込められた声を美琴は絞り出し、右手の親指に力を込める。

右手に構えしは、銀色のコイン。
それが、


「舐めてんじゃ、ないわよ!!」

643: 2010/07/11(日) 17:22:51.63 ID:FN6G2rU0


ドゴンッ!!!!!




轟音が響き、爆風が舞い上がった。
彼女の手から放たれたコインは音速の壁をやすやすと超え、光の柱となって一方通行に迫った。

その、視認も、反応も出来ない攻撃は彼の顔ギリギリを通過するかと思われたが、





ガクン!と効果音が付きそうな程上空へと曲がった。





「……えっ……?」


美琴はそれだけを言うのが精一杯だった。
自分の最強の攻撃。通り名にもなっているその攻撃は、いとも簡単に防がれた。


「ざァンねェンでしたァ。電気や電磁波やらのベクトルでどんな攻撃が何処に来るのか分かっていれば……オレに防げねェ訳がねェ」


目の前で、悪戯が成功した子供のように報告して来る彼に。
彼は右手を上げていた。

644: 2010/07/11(日) 17:23:32.07 ID:FN6G2rU0


「あっ……」


ガクン、と足の力が抜け、彼女は膝をついた。
信じられなかった。
最強の第一位を除けば絶対たる強者の自信があった。
そしてそれに見合うだけの努力もしたつもりだった。



なのに、呆気なくそれは打ち砕かれた。



「腰が抜けた、ってかァ?ガキだなァやっぱ」


「あ、う……」


コツコツと、一歩づつ彼は近づいて来る。
逃げたい、そう彼女は思った。
だがガキという侮辱に言い返すことも、悲鳴を上げることも、足を動かし立ち上がることも出来ない。
白髪と赤い眼を朧げな外灯の光に照らされながら、彼は美琴に迫る。

その姿は、まるで氏神。
絶対的な、強者。


そして彼は美琴の目の前で立ち止まり、彼女は恐怖の余りギュッと強く眼を閉じた。












645: 2010/07/11(日) 17:24:15.56 ID:FN6G2rU0




(……あれ?)


が、何も来ない。
恐る恐る、彼女は眼を開けて行く。




その茶色の瞳に映ったのは白い白い誰かの手。


「早く掴め」


「あっ……」


掴めと言われたが何故か強引に掴まれ、引き上げられる。
かなり強く引っ張られた筈なのに全く辛くなく、美琴はまるで無重力を体感したような気分だった。


「じゃァな、超電磁砲」


一方通行は身を翻し、白いビニール袋を揺らしながら歩く。
一歩、二歩、三歩、四歩……


「まっ、待って!」


十歩程歩いた所で、彼は呼び止められた。
首だけを後ろに向け、先程まで恐怖一色だった筈の彼女の顔を見る。
美琴は手を胸の前でまるでシスターが神に祈るように組み、


「アンタの、名前は……?」


口から、疑問を紡ぎ出した。
そしてその疑問に、


646: 2010/07/11(日) 17:24:47.64 ID:FN6G2rU0



「一方通行(アクセラレータ)」




短く、簡素に彼は答えた。
一方通行は視線を前に戻し、歩き出す。
その背中を、美琴は見つめていた。





ちなみに。
二人はこの三日後再開することになるのだが、まだ知るよしも無かった。
















回想前のシーンに戻り、


「で?今日もまた電撃キャッチボールでもやンのか?だとしたら帰るぞオレァ」


木の影に位置するベンチにだらしなく足を開いて座りながら一方通行はそう言う。
こんなに暑い中、運動(戦闘)なんぞゴメンだった。

647: 2010/07/11(日) 17:26:08.42 ID:FN6G2rU0


「んー、今日は気分乗らないから」


「……」


普段の一方通行だったら、あァそうかいの一言で済ませただろう。
しかし、ここ数日のことが無ければ、だ。


「……」


「……」


彼が返事を返さなかったせいか、美琴も言葉を発しない。

一方通行から見て、美琴はなんだかおかしかった。
いや、何年もの付き合いと言う訳ではないし、勘違いかも知れないが、


なんだか、心の底から笑ってない気がするのだ。

彼女の見せる感情全てがどこか前と比べて『ズレて』いる感じがする。


「……なァ、オマエさァ」


彼は尋ねる。
だが、


「……っ!?」


彼の口はそこで止まってしまった。








何故なら、彼女が、美琴が信じられない程悲しそうな顔で下を見ていたから。

648: 2010/07/11(日) 17:27:52.63 ID:FN6G2rU0


一方通行が知る御坂美琴は、明るくて、皆の中心にいそうな人物で、ガキっぽくて、レベル5で。


こんな悲しそうな顔は、見たこと無かったし、感じたことも無かった。




「……あっ!?ご、ごめん!ぼーっとしちゃって。何か言った?」


そのセリフとともに何時もの顔に戻る。

何かを隠す少女に一方通行は、


「いや、なンでもねェよ」


そう、返した。













「一体……何隠してやがる?」


時間が立ち、夕暮れの世界になった頃。
街を歩きながら一方通行は首を捻っていた。
考えているのは勿論美琴の隠し事について。


「……やめだ」


ポツリと呟き、思考を止める。
いずれにせよ、隠すからには隠すだけの理由があるのだろう。
だとしたら彼に出来るのはただ待つことだけだ。

649: 2010/07/11(日) 17:28:39.05 ID:FN6G2rU0


「まァ、アイツがオレに話すとは思わねェがな」


こんなことを考えるとは、やはりお人好しが移っていっているからだろう。


「ヤバイ!遅れっちまう!」


そう、スーパーのセールに遅れまいと前方から全力疾走しているツンツン髪の少年とかの。


「オイ、何無視してやがる」


「へぶっ!?」


無視して横をすり抜けようとした少年の襟首を掴み地面に引きずり倒す。
突然そんなことをされた彼は呼吸困難に陥りながら地面に叩きつけられた。


「上条(かみじょう)当麻(とうま)くゥン?オレを無視して行くたァ良い度胸だなァ」


「げほっ、げほっ……っ!?ええっと……」


が、学生服を着た彼、上条当麻は咳き込んだのを止めたかと思うと、


「あっ!俺特売があるんで!」


「あン?ちょ、オマ」


一方通行の制止を振り切り、彼は走った。
数少ない知り合いの不思議な態度に、一方通行は疑問を抱く。


「なンだったンだ三下の野郎……」


まぁいいかと、帰路に付き直し、


650: 2010/07/11(日) 17:29:05.75 ID:FN6G2rU0



「……?」


ふと、何か景色の中に違和感を感じた。
僅かな違和感。
辺りをぐるりと見直す。


「……」


反対側の歩道、車道を挟んだその道を歩く人達の間から暗い路地裏への道が見える。






茶色の靴が、片方だけ入り口に落ちていた。

一方通行は確信する。
違和感の正体はこれだと。

彼は、反対側に渡るための横断歩道に向かって歩き始めた。












薄暗い、路地裏の道。
そこの入り口で一方通行は屈んでいた。
彼が見ているのは茶色の靴。学校指定にされていそうな皮のローファー。
何故か右だけ落ちていた。


「……」


一方通行は自分の精神状態に疑問を持つ。
ただの靴を見ているだけなのに、心臓の鼓動が収まらない。逆にドンドン早くなってゆく。

651: 2010/07/11(日) 17:29:42.05 ID:FN6G2rU0


「……」


無言のまま、彼は歩く。
コツコツと、彼の靴による足音が路地裏にこだまする。

歩くに従って変な匂いがし始めた。

煙のような匂いと、血のような匂い。

地面にいくつも落ちている金色の何か。


それらをなるべく無視し、一方通行は歩く。


そして、開けた場所。
ビルに囲まれた空間に着いた。








そこで、見たのは。






「超、電磁砲……?」

652: 2010/07/11(日) 17:30:17.47 ID:FN6G2rU0


まるで何か巨大な物に切り裂かれたかのように体の前面を断ち切られ、そこから大量に出ている紅い“ナニカ”に浸かっている誰か。

学校指定の制服を着て、茶色の髪と茶色の瞳を持つ彼女。












御坂美琴が、氏んでいた。




「な、ンだよこりゃ……なンの、冗談だよ……」


ブツブツと、ショックの余り似たようなことを呟き続ける一方通行。
だが思考を回復させ、一気に彼女に駆け寄ろう


653: 2010/07/11(日) 17:31:37.79 ID:FN6G2rU0


  








「ん?一般人か?」


とした。
第三者の声に一方通行は足を止め、その声のした方に向く。
そこには赤い制服を着た金髪の男が立っていた。

そしてその背には、六枚の白い翼。まるで天使のような、翼。

翼を生やした彼は頭を掻きながら面倒臭そうに言う。


「まったく……警備ちゃんとしとけよ。どうすんだよ『実験』って一般人に知られたらマズイんじゃねぇのか?」


実験という単語が一方通行の頭に引っかかるが、それもすぐに吹き飛んだ。




何故なら、彼が背に生やしたその翼の一つに血が付いているのが見えたから。





そして、一方通行は、




「オ、マエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!」




知り合いを殺されて黙っていられる程、大人じゃ無かった。

彼は己の能力を行使し、敵へと飛んだ。

675: 2010/07/12(月) 20:26:05.52 ID:Za34ews0




学園都市、第七学区。
ビルが立ち並ぶことにより出来た路地裏の開けた一角。
夕暮れのオレンジ色の光が僅かに差し込むそこで、







「オ、マエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!」




一人の少年の叫び声が響いた。



一方通行は足に力を込め、蹴る。
コンクリートの地面が掛けられた凄まじい力によりビシッとひび割れる。

弾丸のように、一方通行は飛んだ。

676: 2010/07/12(月) 20:27:42.73 ID:Za34ews0


「……はっ」


その負の形相を浮かべて迫る一方通行に、金髪の少年は翼を振るう。
長さが十メートルはある巨大なそれが、一方通行に迫った。


「ラアッ!!」


その巨大な翼に、一方通行は左手で応じる。
ただしただの左手では無い。
ベクトル操作により人間の限界を超えた威力を持つ氏神の腕。

ゴンッ!とまるで金属同士がぶつかるような鈍い音が鳴る。


(……!?)


衝撃波が吹き荒れる中、手から伝わった物質の情報に一方通行は目を見開いた。
彼はベクトル操作の能力として物体のベクトルを読み取ることにより、その物体の性質や構成物質を把握することが出来る。


だが、


(なンだ、これはァ……!?)


今、受け止めた翼からは未知の情報しか頭に入らなかった。
だから、一方通行はこの翼を破壊することが出来ない。


「考えてる暇なんてあんのか?」


「っ!」


左手を掲げて受け止めていた彼に、横から次の翼が迫る。


「がっ!?」


翼が体に当たって一方通行は悲鳴を思わず上げる。
そしてメキメキと嫌な音が耳に入ったと思った瞬間、吹き飛んだ。

677: 2010/07/12(月) 20:28:15.20 ID:Za34ews0


「ぐっ……」


「へぇ、やんじゃねぇか」


路地裏の壁に激突して生まれた衝撃を周りに拡散。
一応、致命傷は無い。一方通行は立つ。
だがズキズキと、鈍い痛みが断続的に体に走る。

そんな一方通行に少年はパンパンと軽く拍手した。


「お前、本当にすげぇよ。学園都市第一位の俺の攻撃を受けて立っていられてるんだから」


「第一位、だと?じゃあ、オマエが……」


「そっ。学園都市第一位『未元物質(ダークマター)』垣根(かきね)帝督(ていとく)だ」


翼を広げながら彼、垣根帝督は名乗った。
一方通行は知っている。
いや、学園都市に居る誰もが知っている。



最強の第一位。常識から逸脱した怪物。それが、彼。



「それにしてもお前誰だよ。実験に乱入しやがって。俺は邪魔する敵には容赦は……んっ?」


そこまで言って、彼は首を傾げる。
まじまじと一方通行を見て、あぁ、と手を叩く。


「お前、“あの”一方通行か」


「っ!?」


あの、と言われて一方通行は息が詰まる。
心当たりは、有った。

678: 2010/07/12(月) 20:28:52.69 ID:Za34ews0


「五年ぐらい前か?確か学園都市第一位確定される筈だった能力者のガキが居たんだよな。そいつはある事件の所為で全く能力が使えなくなった」


ギリッ、と一方通行は歯を食いしばる。
顔は怒りに染まっていた。
それを見ながら、垣根は面白そうに続ける。


「特徴は白い髪に赤い目。長点上機学園に一応登録されてるっていう、名前を捨てた人間」


そこで切り、




「十歳で化け物って呼ばれた一方通行くん?」


「黙りやがれェェッ!!」


過去(トラウマ)を刺激された一方通行は怒りを倍増させ、垣根に向かって再度突っ込む。
鬼の形相で迫る彼を見て垣根はニヤッと笑い、翼の一つを振るうった。
豪風が生まれ、一方通行は目の前に生まれたそれに手を伸ばす。

彼は風の向きを操ることが出来る。
だから、この風速百二十キロに達する豪風も防げる筈だった。




だが、





「ガッ……ガァアアアアアアアアアアアアアッ!?」


一方通行は吹き飛んだ。
自動車すらも横転させる豪風をモロに喰らった一方通行は先程と同じ壁に激突。
凄まじい轟音が響き渡る。
ビキビキとコンクリート製の壁にヒビが入った。


679: 2010/07/12(月) 20:29:30.82 ID:Za34ews0

ドサッ、と一方通行は地面に倒れこむ。
背中からコンクリートの破片がパラパラと音を立てて落ち、一方通行は指を地面に食い込ませる。


(バカな……今の、風……俺が計算出来ないだと……?)


「一方通行。お前は確かベクトルを操作する能力者だったな?」


起き上がろうとしても体が動かない一方通行に、垣根はゆっくりと近寄る。
垣根の足が動くたびに、背に生えた翼が揺れ動く。


「なるほど、この世界の攻撃は全て何らかのベクトルで構成されているからな。この世の常識を把握していれば確かに、無敵に近い能力だろう」


だけど、と垣根はついに地面に這いくばる一方通行の前に立つ。
上から見下ろしながら、彼は言う。






「だけど、俺の『未元物質』にそれは通用しねぇ。お前の“常識”は俺には通用しないんだよ」




常識が通用、しない。
そんな生き物を人は怪物という。

背中に生えた翼が長く、長大に、鋭利になってゆく。
巨大な凶器となった白い翼は、


「じゃあな。一方通行」


真っ直ぐに、一方通行へと振り下ろされた。
それを首を上げて見上げる一方通行。
防ぐ手だてなど、無かった。



680: 2010/07/12(月) 20:30:15.21 ID:Za34ews0










「お待ちください、とミサカは被験者へ停止を呼びかけます」


突然聞こえた声に、垣根は振り下ろそうとした翼をギリギリで止める。
目の前でピタリと止まった翼から目をそらし、一方通行は声の聞こえた方へと目をやる。






そこで見たのは、二十人は居る“御坂美琴”だった。


(な、に……?)


己の目に入った光景に驚愕しながらも、彼は意識を闇に飲まれた。












681: 2010/07/12(月) 20:30:56.39 ID:Za34ews0





とある所に◯◯ ◯◯◯という少年が居た。

年は十歳。そこまで可笑しい人間では無かった筈だ。

彼は小さい頃に学園都市という科学の街にやって来た。

その街では能力という名の異能の力が有った。


そして、少年には能力の才能が有った。



あっというまに彼はレベルを上げてゆき、ついには第一位に認定される間際まで行った。


だが、事件が起こる。


始まりは、子供同士の喧嘩。


彼は、そこで能力を使ってしまった。


反射と呼ばれる、無敵の盾を。


次は大人、人数を増やしても全て弾いた。


次は拳銃。反射された弾丸は放たれた場所に戻った。






そして、次は戦車。

682: 2010/07/12(月) 20:31:32.33 ID:Za34ews0


武装した沢山の人間に、大量のヘリコプター。戦車の砲身が、歩道橋の上に居た彼を狙っていた。


彼は上を見上げ、ビルに映るテレビ画像を見る。



そこには自分の顔が映っており、写真をさしながらアナウンサーは揃って言った。







“化け物”と。







その日少年は◯◯ ◯◯◯という名を捨て、











一方通行(アクセラレータ)と名乗るようになった。








683: 2010/07/12(月) 20:32:36.60 ID:Za34ews0








「……」


ムクリ、と。
一方通行はベットの上でゆっくり身を起こした。
寝起きの最悪な気分からか、彼の顔は歪んでいる。


「……クソが」


よりにもよって最悪な夢を見てしまった。
その不機嫌さを呟きに出した後、辺りを見渡す。

白。
辺りの物全てが白だった。
壁も天井もカーテンもベットも。
あまり通ったことは無いが知識としてはある。
病院の個室だ。


「……っ!」


そこまで考えて、一方通行は何故こんな所に居るのか疑問に持つが、思い出す。


「……夢、だったのか?」


開かれた窓から見える空は青い。
絶対とは言い切れないが、今は朝の筈だ。
夢で無いなら半日ぐらい経過している。


コンコン


「……?」

684: 2010/07/12(月) 20:33:45.03 ID:Za34ews0


ふと、ノックの音が耳に入る。
顔を動かしてドアの方を見ると、ガラッと開いた。


「おーい。大丈夫かぁ?」


そこから出て来たのは、黒い髪をツンツンさせた学生服の少年。


「三下……?」


「うっ、酷い言われようだな……」


「いつものことだろォが」


一方通行は苦笑する少年に呆れながらそう言った。


「で、大丈夫なのか?路地裏に倒れてたのを見た時はビックリしたけど。後これ安もんだけど」


「どうともねェよ。後ンなもンより肉持って来い」


上条が台に置いた果物に文句を付けながら、一方通行は今聞いた情報を反復する。
彼は今路地裏に倒れていたと言った。
だとしたら、彼はあの巫山戯た光景を見たのだろうか?いや、それにしては反応が小さ過ぎる。


「まぁ、無事でなりより。上条さんもホッとしましたよ」


笑顔でそう言ってくる上条から、一方通行は目をそらす。


(……このお人好しが……)



何故一方通行が上条と知り合いなのか?

それは中学一年にまで遡る。


685: 2010/07/12(月) 20:34:28.45 ID:Za34ews0







一方通行は能力が全く使えなくなった。

理由は心の病気。トラウマの所為だ。

特に反射は完璧に使えなくなり、ベクトル操作も全く出来ない。

今まで反射を無意識のうちに使っていたため、使えなくなってからは酷かった。


まず太陽の下に出ることが出来ない。
紫外線の所為で体が大変なことになってしまう。
彼は夜に行動するようになった。

だが、夜の街で彼みたいな見た目をした人間が絡まれない訳が無く、いつも殴られ、蹴られていた。




「オラッ!」


「……っ!」


バキッ!と生々しい打撃音が響き、白髪の少年は壁に倒れこむ。
そんな彼をニヤニヤしながら三人の男が囲んでいた。

686: 2010/07/12(月) 20:35:30.04 ID:Za34ews0


「こいつやっぱいいサンドバックだわ。見た目は怖い癖に中身は雑魚だもんな」


「俺ら能力が肉体強化だからなぁー。こういう奴がいるとありがてぇぜ」


「手加減ミスっても問題ないしな」


「……」


笑いながら会話する男達を一方通行は氏んだ目で見ていた。
彼は抵抗しない。いや、出来ない。
抵抗しようとすると、あの時の恐怖心が心の底から湧き上がってくる。

それに、もうどうでもよかった。
能力も使えなくなり、両親もいなくなり、友達なども一人としていない。



彼は、もう人生を捨てていた。







だけど、



「がっ!?」


突然、路地裏の入り口近くに立っていた男が誰かに殴り飛ばされた。
男はへたり込んでいた一方通行の上を通過し、反対側にいた男に激突する。


「ぐえっ!?」


「オイ!どうした!?」


687: 2010/07/12(月) 20:36:06.02 ID:Za34ews0


倒れこまれた男は押しつぶされ、もう一人の男が駆け寄る。
唖然としていた一方通行は、


「よし!行くぞ!」


「……あっ?」


その誰かに、しっかりと手を掴まれた。
そして引っ張りあげられ、一気に走らされる。


「っ!?オイ逃げやがったぞ!」


「追え!」


背中に不良達の叫びを聞きながら、一方通行は自分の手を掴んだ人物を見る。

黒い髪に、学生服。

どこにでも居そうな、何の力も無さそうな一人の少年。

同い年くらいの少年に引き摺られながら、一方通行は走る。




688: 2010/07/12(月) 20:36:40.99 ID:Za34ews0



十分後。


「はぁ、はぁ……ここまで来りゃ大丈夫だろ……」


「ハァ、ハァ……」


息を整えながら、一方通行は同じく息を荒げる少年を見直す。
やはり、どこからどう見ても普通の少年だ。


とにかく、色々言いたいことはあるが、




「なンで、助け、たンだよ……」


その問いに彼は首を傾げ、戻して笑いながら。




「目の前で不幸な目にあっている人を見捨てれないから、かな?」




これが、二人の、一方通行と上条当麻の出会いだった。




そして、『一方通行』という新たな一個人が誕生した瞬間でもある。


それから一年の歳月を要して彼はレベル1から、レベル4にまで成り上がった。





689: 2010/07/12(月) 20:38:09.90 ID:Za34ews0







「……」


シャクッ、とお見舞い品のリンゴを囓りながら一方通行は思考を過去から現在に戻す。
お見舞い品を持って来た少年は補習があるらしく、もう居ない。


「……実験」


ポツリ、と呟く。
実験。そう、確かに垣根帝督は言っていた。
問題はどんな実験なのか、ということだ。


恐らく、いや確実に、マトモな物では無い。



「一方通行さーん!」


「あわわっ!佐天さんノックノック!」


突然、ドアがかなりの速度でスライドしたかと思うと女子が一人お見舞い品が入った篭を持ち上げながら入って来た。
その後から頭に大量の花飾りがついた少女が入って来る。


「……オマエら、来たのかよ」


「はい、白井さんから聞いて」


「白井ィ?あの腐れツインテメントがァ?」


花飾りの少女、初春からの言葉に一方通行は露骨に嫌な顔をした。


690: 2010/07/12(月) 20:39:01.55 ID:Za34ews0


「折角来て差し上げたのに、酷い言い様ですわね」


「だとしたら空間移動で不意打ちかけンの止めろ」


最後にゆっくりとドアを閉めながら入るツインテールの少女に一方通行はため息を吐きながら言った。






「よかった……大した怪我じゃないんですね」


「怪我ですらねェよ。明日には出れンだろ」


ホッと一息ついた佐天に彼はそう返す。
彼女達とは偶々出会っただけの知り合いだと一方通行は思っていたが、予想以上に好意を持たれていたらしい。


「しかし……お姉様でさえ傷一つ付けられない貴方が、一体どうして倒れてましたの?」


「……別に、ただ喧嘩に負けただけだ」


「だ か ら!誰と戦って負けたのか聞いてますの!」


白井はガーッ!と擬音が付きそうなくらい怒りのポーズを取り、それを横から初春がなだめる。

691: 2010/07/12(月) 20:39:27.07 ID:Za34ews0


「でも、実際誰と戦ったんですか?せめてどんな人かだけでも」


「どんな人、ねェ」


一方通行は頭から情報を引き出し、




「ムカつく野郎だな」



一言だけ、言った。








「じゃ!また来ますんで!」


「もう来なくていいつーの」


元気に言ってくる佐天にダルそうに返す。
そしてふと尋ねてみた。


「超電磁砲はどうした?」


「?そういえば、御坂さんどうしたんでしょう?白井さん何か知りませんか?」


病室から出ようとしていた初春は、居ない人物のことを白井に尋ねる。
美琴のことなら、ルームメイトでもある彼女に聞いた方がいいからだ。
だが白井は首を振り、

692: 2010/07/12(月) 20:41:14.05 ID:Za34ews0


「貴方(一方通行)が路地裏で倒れていたことを伝えたら、お見舞いには行けないとしか」


「御坂さんが?」


チラッと一方通行の方を見ながら、初春は信じられないという声を出す。
視線を受けた一方通行は、何かを考えていた。








(アイツは俺にしつけェくらいにまとわりついてやがる。なのに……)


太陽が沈みかける頃。
オレンジ色の光が病室にさすのを感じながら一方通行は考える。

恐らく、彼女の不調とこれらは繋がっている。


彼の脳内に浮かぶのは、あの悲しそうな表情と、大量の無表情の美琴達。



考えていた一方通行だが、


ガラッとスライド音が響き。


「邪魔するぜい」


「オマエは……」


一方通行はドアを開けて入って来た人物に疑問を持つ。
入って来たのは金髪にサングラスをかけたアロハシャツの男。

確か、上条の側によくいる男だったはず。
名前は土御門元春。

693: 2010/07/12(月) 20:42:02.99 ID:Za34ews0


「おぉう。一方通行、お前白過ぎてベットの布の色と体が同化しかけてるにゃー」


「うるせェ黙れ。用が無いなら帰れ」


自分の白さを指摘された一方通行は、不機嫌そうに手をシッシッと振るう。
その声と行動をにゃーにゃー言いながらスルーした土御門は、ポン、と何かを一方通行のベットに放る。


「ほらよ」


「あン……?」


ボスン、と一方通行の目の前にありしは茶色の封筒。
かなり大きく、分厚い。
恐らく業務用だ。


「じゃ、俺の役目はこれで終わりだから行くぜよ」


「役目、だと?」


クルリ、と土御門は彼に背を向ける。

694: 2010/07/12(月) 20:42:44.45 ID:Za34ews0


「アレイスター直々の、な」


そう、告げてから、彼は部屋を出て行った。


「アレイスター、だと?」


開かれたままのドアを見ながら、一方通行は名前を再度紡ぐ。
そして手に感じるずっしりとした重さの封筒を見た。


「……」


べリッ、と封を解き、中から紙の束を取り出す。








『絶対能力者進化計画(レベル6シフトプラン)』


最初に見えたのは、そんな言葉だった。








そして、其処に書かれていたのは、巫山戯た実験の内容。




彼はー


695: 2010/07/12(月) 20:44:14.93 ID:Za34ews0







「どうして、こうなっちゃったのかな……」


風力発電のプロペラが回るのを見ながら、御坂美琴は苦笑しながら言う。
その顔は、笑っているとは決して言えなかったが。


「やっぱり、レベル5なんかになったのが、悪かったのかな?」


その問いかけに返す者は誰一人として居ない。
時間が時間だ。橋の上には彼女以外誰も居ない。


「ねぇ、一方通行……」










二十日程前。


「ねぇアンタ」


「あン?」


ジージーとセミが鳴く中、一方通行は体の前で腕を組みながら尋ねて来た美琴に、怪訝そうな声で返す。


「いや、アンタの能力って絶対レベル5クラスでしょ。どうしてレベル5じゃないの?」


アンタの名前はどうして能力名なの?
この疑問は口に出さなかった。
絶対に触れてはいけない問題だとハッキリ分かっていたから。

696: 2010/07/12(月) 20:44:53.38 ID:Za34ews0


「……欠陥があるからだよ」


「欠陥?」


あァ、と頷いてから彼は理由を言う。


「俺は反射が出来ない。昔は出来てたってのに、だ」


「反射?」


「つまり、ベクトルを正反対方向に変えれねェってことだ」


自分の思った所にベクトル変換するより、反射は簡単な筈だ。
なのに彼は、それが使えない。
まァ無意識の内に紫外線は反射しているらしいが、と一方通行は付け加え、


「それだけじゃねェ。血流操作もダメだし、生体電気も恐らくダメだ。欠陥だらけ。これじゃレベル5にはなれねェよ」


「……」


美琴は一方通行の言葉の意味を考える。
そこでふと気がついた。
自分との初対面の時、もし反射されていたらどうなったかを。

697: 2010/07/12(月) 20:46:00.23 ID:Za34ews0


「……もしかして、アンタ」


「大正解だ、クソッタレ」


美琴が全てを言い終える前に、彼は言葉を返す。
彼は、人を傷付けるのがもしかしたらあんまり好きなのでは無いのかも知れない。
そして、恐らく本当は、もっともっと強いのだろう。


だけど、強すぎる力は災いしか呼ばないから、


彼は、レベル4のまま、化け物の領域に踏み込まずにいるのだろう。


缶コーヒーを飲みながら歩く彼の背中を見て、美琴はそう思った。










「なのに、私は……」


手すりにぽたぽたと、何かが垂れる。
その何かは、美琴の目から流れていた。
この世の理不尽さに、自分の愚かしさに、彼女は泣いていた。

下を向きながら、彼女は、心に溜め込んでいた言葉を漏らす。


698: 2010/07/12(月) 20:46:50.69 ID:Za34ews0











「誰か、助けて……!」


「ハッ、なァンだ?言えンじゃねェか」








「っ!?」


突然の声に、美琴は飛び退いた。
横を見ると、手すりに寄りかかりながら缶コーヒーを飲む彼が居た。

その左手には、『絶対能力者進化計画(レベル6シフトプラン)』と書かれた書類の束が握られていた。


美琴は気がつく。
もう、全て知られてしまっているのだと。

699: 2010/07/12(月) 20:47:24.89 ID:Za34ews0


「……で?」


逆に尋ねられた。
本来なら彼女自身が質問をしたかった。
なんで資料を持っているのか、なんでここにいるのか、なんで見つけられたのか、なんで資料をみても尚自分に話しかけられるのか。
だけど、


「私は、あの子達を、助けたい」


「妹達のことか」


彼にコクン、と頷く。









彼は言った。どうするつもりだと。


彼女は返した。自分が氏んで、終わらせると。








なのに、


「なんで、アンタはまだ私の前に居るのよ……?」

700: 2010/07/12(月) 20:48:01.96 ID:Za34ews0


自分が氏ねば、終わるかも知れないのに。

彼は、橋の上に立つ彼は、


「却下」


いつかのように、否定した。


「氏ンで終わらせるってかァ?ンな簡単に終わったらもっと世の中は単純だっつの」


呆然とする彼女に、彼は背を向ける。
カツカツと、振り返らずに。
その背中に、美琴はたまらずに大声で怒鳴った。


「何処に行くのよ!?」


「何処かの親切な誰かさンが教えてくれたンでねェ」


ピラピラと、彼は背を向けたまま紙の一枚を揺らす。
それに書かれているのは、10032回目の実験の座標。


それを見て彼女は漸く理解する。


彼が、今から何処へ行き、誰に何をするつもりなのかを。


「……無理よ!アイツの能力を知らない訳じゃないでしょ!?」


「昨日吹っ飛ばされたしなァ」


「だったら!なんで!?あんな常識から外れた化け物になんでアンタは……!」


「オイオイ、氏ぬとか言ってた奴のセリフか、それ?」

701: 2010/07/12(月) 20:48:40.16 ID:Za34ews0


彼は振り返り、知らず知らずの内に涙を零している彼女を見る。
彼女は目から流れる涙を隠そうとしない。もう、するだけの余裕も無い。


「いいじゃない!私が氏んでそれで終わり!誰も悲しまないし、アンタだって命をかける必要なんて「ある」……っ!」


途中で遮られた。
美琴は一方通行を見る。
その顔は、笑っていた。今から戦場に行くと言っているのに、笑っていた。


「あるンだよ、これが」


愉快そうに、楽しそうに、ニヤニヤしながら彼は言う。


「オマエが氏ンだらあのツインテールも佐天って奴も、初春って奴も悲しむぜ?オマエは自分を下に見すぎなンだよ」


らしく無い、そう一方通行は思う。
こんなのは自分が言うようなセリフでは無い。
けれど、いや、だからこそ。








「勿論、俺もだ」



702: 2010/07/12(月) 20:49:57.10 ID:Za34ews0




「……えっ?」


美琴は耳を疑う。
彼は、一方通行は今なんと言った。
クルッと前に向き直り、彼は、


「じゃ、行ってくるわ。ガキは家に帰って寝てろ」


「まっ」


ダンッ!と脚力のベクトルを操作し、高く飛んだ。

高く、高く。






そして美琴は一人残された。いや、最初から二人しか居なかったのだが。


「……」


下へ俯き、彼女は唇を噛み締める。
自分が氏ぬつもりだったのに、彼はこの問題に関わらせたく無かったのに。
確かに常識内では一方通行は美琴が知る誰よりも強い。だが、相手はその常識を壊す能力者だ。

相性が、悪過ぎる。


「っ!」


顔を勢いよく上げ、美琴は前を見る。
一方通行が向かった方向を。

703: 2010/07/12(月) 20:51:18.46 ID:Za34ews0


「行かなきゃ……」


そして一歩を踏み出そうとした所で、


「ニャー」


「……?」


子猫の鳴き声が聞こえた。
美琴は其方を振り替える。

其処にいたのは黒猫。









其処にいたのは、あの白い少年の、親友。













「これより、第10032回目の実験を開始します」


「……ちょっと待て」


「?」

704: 2010/07/12(月) 20:52:03.55 ID:Za34ews0


とある操車場で、コンテナの上に寝転がっていた垣根はゆっくりと起き上がる。
それに、コンテナの下に立っていたミサカ10032号は首を傾げた。


「どうかしましたか?とミサカは警戒を続けたまま問いかけます」


「……いや、どうやら実験の前にブチ殺さなきゃならねぇ奴が居るみてぇだ」


「?」


瞬間、


ズシンッ!と何かがミサカの前に高速で落下した。


「なっ……!?」


「オマエが妹達か。なるほど、確かにそっくりだなァオイ」


小石をはね上げながら着地したのは、白い髪の少年。

彼は上を見上げる。


そこには翼を広げ、臨戦態勢の第一位が居た。


「やっぱ来やがったか。実験に支障が出るだのなんだの言われて殺せなかったからな。ここでブチ頃してやるよ」


「ハッ、オマエの方こそ愉快に華麗にスクラップにしてやンよ」


嫌味の言い合い。
そこに込められた殺気は、普通の人間には決して出せない領域の物。
彼らだからこその、殺気。

705: 2010/07/12(月) 20:52:40.77 ID:Za34ews0


「貴方、は……?」


「別にオマエを助けに来た訳じゃねェンだがな。成り行きで助けることになるンだよ。……オマエが氏ぬと、悲しむ女が居るからなァ」


「女……?ミ、ミサカは単価十八万円で幾らでも製造できるクローン体で」


代わりは幾らでも居るのだから、貴方の行動に意味は無い。そう伝えようとしたのだが、


「一つ、教えてやンよ」


「!?」


襟首を瞬時に捕まれ、後ろに投げ飛ばされる。
後ろに十メートルは飛ばされ、ミサカは地面に滑り込む。

そちらを見ずに、彼は前を、上を、翼を広げた最強と呼ばれし者を見る。




「そう簡単になンでも割り切れねェから、人間なンだよ」




例え、周りがどれだけ美琴を人間扱いしなくても、一方通行は彼女を人間として見る。
そして彼女のような人間は、ここでくたばっていいような人間では、決して無い。

決して、無い。

706: 2010/07/12(月) 20:53:25.18 ID:Za34ews0


「下がってろ」


それで終わりとばかりに一方通行は意識を後ろにいるミサカから外す。
狙いは、敵の殲滅。実験の、停止。




「なぁ、一つ聞かせろ」


「あァ?」


「どうしてお前は、他人のために其処までする?」


上から投げかけられた質問に、一方通行はハッ、と呆れたように息を吐いてから、




「目の前で不幸な目にあっている人を見捨てれないから、だよ。クソッタレ」




最後の言葉は、誰に言ったものなのか。
そのセリフを聞いて「そうか」と少し笑いながら垣根は返す。


707: 2010/07/12(月) 20:54:00.91 ID:Za34ews0


「オマエこそ、なンで絶対を求めてンだよ」


「つまんねぇ過去のせいだよ。この学園都市に幾らでもある、な」


「そうかい」




そこまで言って、彼等は、







「終わらせてやンよ『未元物質』」


「終わるのはテメェだ『一方通行』」







大地を足で蹴り、鋼の箱を吹き飛ばし、



二人は、激突した。











726: 2010/07/14(水) 19:51:37.76 ID:../cv1I0






夜の学園都市。


暗い暗い闇の世界。


その世界で、






「アアアアアアアアアアアアアッ!!!」


「オオオオオオオオオオオオオッ!!!」


喧嘩を超えた『戦闘』が、起こっていた。
舞台はボンヤリと街灯の光が照らす操車場。
戦いし戦士は、白き翼を持つ者と、白き髪を持つ者。


人間の限界を超えた者同士の、戦い。




727: 2010/07/14(水) 19:52:19.50 ID:../cv1I0






夜の学園都市。


暗い暗い闇の世界。


その世界で、






「アアアアアアアアアアアアアッ!!!」


「オオオオオオオオオオオオオッ!!!」


喧嘩を超えた『戦闘』が、起こっていた。
舞台はボンヤリと街灯の光が照らす操車場。
戦いし戦士は、白き翼を持つ者と、白き髪を持つ者。


人間の限界を超えた者同士の、戦い。




728: 2010/07/14(水) 19:54:11.14 ID:../cv1I0





ブオッ!と何かが空気を裂き、空を飛ぶ垣根に飛来する。
垣根はそれを翼の一振りで薙ぎ払った。
そして巨大な何かは大地に轟音を立てて墜落する。
それは周りに幾らでもあるコンテナの一つ。
重さがトン単位の物体だが、彼等にとっては単なる武器の一つに過ぎない。


「チッ!」


垣根は舌打ちを一つ。
今投げられたコンテナの影に隠れるように、


「ラアアアアアッ!!」


一方通行は接近していた。
しっかりと拳を握り、振りかぶる。
その拳は放たれるが、翼の壁に防がれた。


「ウォォォォォォォッ!!」


「うぜぇんだよ!」


防がれるのもお構いなしに、彼は拳を放ち続ける。
徐々に翼の羽が取れてゆき垣根の姿が見えてくるが、


「あめぇ!」


垣根もただ殴られ続けるだけでは無い。
他の翼を刃の様にし、一方通行の周りを囲う様に襲わせる。
その翼の檻に閉じ込められる前に、一方通行は重力のベクトルを操作。
空中であり得ない動きを見せ、後ろに移動する。


「ーっ!」


729: 2010/07/14(水) 19:54:37.50 ID:../cv1I0


そして大地に着地。
だが一方通行はすぐ横に飛んだ。
何故なら、無数の白い羽の嵐が迫っているのが見えたから。

ズダダダダダッ!!とまるで紙を貫くダーツのように白い羽が地面に突き刺さって行く。
ソレだけでは無い。
突き刺さった大地がどんな『非常識』を受けたのか、熱によりとけてゆく。


「かわしてんじゃねぇよ!」


「オラァ!」


上空からの文句を無視し、一方通行は大地に足を叩きつける。
その瞬間、地面にしかれている砂利が一斉に真上へと浮かぶ。
大量に舞い上がった砂利達へと一方通行は回し蹴りを繰り出した。

足の動きにより出来た暴風が、石を纏って上空へと突き進む。
その石と風の壁に、垣根も翼による風と鉄よりも硬い羽で応戦する。


空中で石と羽が、暴風と暴風がぶつかり合い、凄まじい音を立ててバラバラに拡散した。

730: 2010/07/14(水) 19:55:20.58 ID:../cv1I0

ソレによって石と羽の雨という世にも奇妙な光景が展開されるのだが、その頃には二人は五十メートルは離れた空中に移動しており、戦っていた。


「グッ、ガッ……!」


「おっ、ちっ……!」


六枚の翼が一方通行を切り裂こうとするが、一方通行はそれを躱しながら拳を放つ。


ガッ!ギガッ!ブアッ!と、翼と拳の打ち合いがまるで漫画のように、辺り一帯に衝撃波を撒き散らしながら何合も続いていく。


「やるなぁ一方通行!反射が使えないってのに、よく突っ込めるもんだ!」


「オマエ、なンでソレを……!?」


「リベンジして来そうだったからな!気晴らしにテメェの資料を見てたんだよ!」


「!」

731: 2010/07/14(水) 19:56:05.19 ID:../cv1I0


垣根は蹴りを放ち、一方通行は目の前で腕をクロスさせて防いだ。
だが吹き飛び、地面へと落とされる。


「反射も使えねぇ欠陥能力者が俺に勝とうなんざ、到底無理なんだよ!」


「ハッ!分かンねェだろォが!」


地面に着地した一方通行は風のベクトルを操作し、竜巻を作り上げる。
そして垣根に向かって飛ばし、自分は近くのコンテナの山の頂上に一っ飛び。

垣根はまたもや舌打ちしてから、翼を振るう。

瞬間、空気が何故か弾け、大爆発が起きた。

当然、垣根に近付いていた竜巻はそれに打ち消される。


「……」


コンテナの頂上に立ち、目の前に広がる黒煙を見ながら一方通行は警戒を続けた。


一方通行の『未元物質』への作戦。
それは躱す、もしくは打ち消し合うという物。
一方通行の力では垣根の能力による『非常識』の法則による攻撃を防ぐことが出来ない。
ならば、躱し続けるか、相頃してやればいい。
事実、それで一方通行は渡り合っているのだが、


(……このままだと)


一方通行の、戦闘者としての勘が告げる。



732: 2010/07/14(水) 19:56:42.35 ID:../cv1I0







(……負ける)




ボッ!と黒煙のカーテンを縦に裂き、全長百メートルはある翼の刃が振り下ろされる。
それを右に飛んで躱す。
誰も居ないコンテナの山を中腹まで一気に翼が切り裂いた。


「一方通行ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「未元物質ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


片方は風のベクトルを操作。
片方は翼を一つに束ねて振るう。




何度目か分からない轟音が、夜の戦場に響き渡った。





733: 2010/07/14(水) 19:58:00.42 ID:../cv1I0








「アンタ!」


「お、姉様……?それに、貴方は……」


「御坂妹!一方通行は!?」


一方、操車場の入り口付近で三人はあっていた。
一人は化け物の領域に踏み入れし少女。
もう一人はその少女の複製(クローン)たる少女。

そして、もう一人はーー


「一方通行……白い髪の少年なら、あちらで」


ドゴオォォォォォォォォォンッ!!


「っ!?」


ミサカが指差した先から爆発音が轟く。
それによる地面の揺れを感じながら、


「ッ!」


彼女、御坂美琴は走り出した。
何が出来るのか分からないし、足手纏いになる姿しか思い浮かばない。
だけど、行かなければ、いや、行きたい!


「あっバカッ!クソ!子猫を頼む!」


「えっ?」


734: 2010/07/14(水) 19:58:38.19 ID:../cv1I0


走り出した美琴を追うべく、彼は何かを呆然としていた少女に放り投げた。
それは黒い生き物。黒猫。

慌てて少女はそれを抱き抱える。
無事に掴めたことにホッと息を吐き前を見る。
生き物を投げるなどという動物愛護団体に殴られそうな行為をした少年は既に遠くへと行っている。



自分の親友を、助けるために。



「……全く、子猫を投げないで下さい、とミサカは呆れながら呟きます」


自分の電磁波のせいで少し震えている子猫を地面に下ろし、


「少し待っていて下さいね、とミサカは子猫に謝罪してから走り出します」


彼女もまた、戦場へと走り出した。




735: 2010/07/14(水) 19:59:48.16 ID:../cv1I0





「ハァッ、ハァッ……!」


美琴は走る。
足がもつれかけるが、なんとか堪えて走り続ける。
息は荒く、その表情は焦燥に染まっていた。
彼女は、走る。


(私の、せいだ……!)


心の中で、彼女は自分を責める。

本来、彼女は氏ぬつもりだった。
『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』の計算結果が“間違っているかもしれない”と思わせるために垣根帝督に挑み、無様に一手か二手で殺されるつもりだった。



だけど、怖かった。



覚悟を決めたなんて言っても、怖かった。

氏ぬのなんて、嫌だった。

皆に会えなくなるのも、綺麗な景色が見れなくなるのも。

氏ぬのなんて、怖かった。



だけど、胸の内にその思いを閉じこめた。



自分は救われてはならない。

妹達が生まれたのは、自分の責任だからだと。

誰にも頼ってはいけない。“化け物”の問題に、関わらせてはならない。



736: 2010/07/14(水) 20:00:56.28 ID:../cv1I0








なのに



“彼”の前だと、隠せなかった。

胸に閉じこめた思いが勝手に溢れ出て来て、叫んでいた。


助けてと。


そして、何故か彼は実験のことを知り、





自分のために、命を賭けている。





自分なんて、“化け物”のために。




「……嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」


レベル5とか、お嬢様とか、そんなのを無視して普通に接してくれた彼。

自分をいつも子供扱いして、バカにして、一人の御坂美琴という“人間”として接してくれた。


そんな彼を、失いたく無い。




絶対に、失いたく無い。

737: 2010/07/14(水) 20:02:37.48 ID:../cv1I0




「……オイ!」


後ろから声が聞こえるが無視。
コンテナとコンテナの間の通路を走り抜け、彼女は線路がある空間へと飛び出した。
彼が居るはずの空間へと。








そこで、見たのは。















「ラアァッ!」


爆発の所為で舞い上がった白い砂煙を、一方通行は右腕を振るうことで一気に吹き飛ばす。


「ッ!?」


そしてしゃがみ、前へと地面と並行になりながらも飛ぶ。
飛んだ瞬間、先程一方通行が立っていた場所を横切るように烈風が通過した。

738: 2010/07/14(水) 20:03:41.93 ID:../cv1I0


「おいおい……本当にやるじゃねぇか、一方通行」


「オマエもな」


地面を手でついて反動で立ち上がる。
一方通行の目に映ったのは、此方を向いて余裕の笑みを浮かべる垣根。
対する一方通行には余裕など欠片も存在しない。


戦況は拮抗しているように見えて、片一方に傾いていた。


「でもさぁ、










もう終わらせるわ」


瞬間、一方通行を“何か”が襲った。


「ギッ!?」


ズシン!と体にかかる力に一方通行は立ったまま身動きが取れなくなる。
一方通行だけでは無く、垣根を含む半径二十メートル程の大地が陥没した。


“何か”の正体、それは重力。

だが、只の重力では無い。
『未元物質』による、おかしな重力。


「んじゃ、氏ねよ一方通行」


「ーッ!」

739: 2010/07/14(水) 20:04:33.82 ID:../cv1I0


恐らく自らの未元物質で重力を相頃しているのだろう。
重力を感じさせない動きで右手を振るう。

それに連なるように翼が動きーーーー















ザシュッ!!








身動きが取れない一方通行の体を、いとも簡単に切り裂いた。


「ん?体を空気のベクトルを操作して少し後ろにやったか?だけど致命傷だろ、それ」


切った翼から伝わった感触に、垣根はそう言う。

だが、一方通行の耳には入らない。

一方通行は視界がブレるのを感じ、体から力が抜けて行く感覚を覚えながらゆっくりと、膝を付く。

740: 2010/07/14(水) 20:05:43.14 ID:../cv1I0


膝を付いた地面は、何故か紅かった。


(?……あァ、そうかァ)


それに疑問を持つが、朦朧とした頭で一方通行は答えを弾き出す。


(これ……俺の血じゃねェか……)


そこまで考えて思考が停止し、彼は前へと、自分の傷口から溢れる血に染まった大地へと倒れこむ。






「い、いやぁあああああああああああああああああっ!!」




意識が闇に呑まれる前に、あの少女の声が聞こえた気がした。


悲しい、悲しい、悲鳴が、聞こえた気がした。











(嘘だ、嘘だ嘘だうそだうそだうそだ。これは夢、夢なんだ)


彼女は顔から表情を消す。
美琴の脳内は早々に現実を否定していた。
だけど、現実は確かにそこにある。
彼女は見たのだ。しっかりと。

741: 2010/07/14(水) 20:06:08.73 ID:../cv1I0




彼が、天使のような白い翼に体を切り裂かれるのを。




多分、彼女は心のどこかで期待していたのだろう。
彼は負けない。彼は勝つと。
だがそんな幻想は粉々に打ち砕かれ、彼女の心も砕けちった。



「一応ほっといても氏ぬとは思うが……止め刺しとくか」


「!」


何気なく、切り裂いた男が発した言葉に美琴は現実に戻ってくる。
砕けた心をかき集め、必氏になって走る。


だけど、男に、垣根に攻撃したのは、




「テ、メェエエエエエエエエエエエエッ!!」




白い髪の少年の親友だった。
彼はその右拳を垣根に向かって放つ。


「あん?また新しい部外者か?」


垣根は自分に迫るそれをなんら脅威に思わず、翼を間に挟むが、


バキィ!と一方通行でも中々貫けなかった翼の壁を簡単に貫かれ、垣根は殴り飛ばされた。

742: 2010/07/14(水) 20:06:45.36 ID:../cv1I0


「な、があっ!?」


地面に滑り込むように倒れ、改めて垣根は己の『未元物質』による翼を突き破った相手を見る。


「テメェ……誰だ?」


「オマエが傷付けやがった奴の、友達だぁあああああああああああっ!!」


起き上がる垣根に再度彼、上条当麻は己の右腕を振るう。






全ての異能を打ち消す、『幻想頃し(イマジンブレイカー)』を。














「嫌だ……なんで……なんで止まらないの……」


上条が垣根と戦っている間、美琴は一方通行を仰向けにし、傷口を抑えていた。
だがどうやっても、彼の体からは血が溢れ続ける。
彼の白い肌が、更に白く、青くなってゆく。
目は、閉じられたまま。


「早く……早く病院に……!」

743: 2010/07/14(水) 20:07:31.57 ID:../cv1I0


美琴は一方通行を運ぶべく、周りを見渡す。
彼女一人では一方通行を運べない。
妹達か、上条に頼る必要があった。


しかし、世界は甘く無い。


「ガハッ!?」


「ぐぅっ!?」


「後で幾らでも相手してやるから大人しくしてろ」


あの、一方通行を切り裂いた翼が上条を吹き飛ばし、その斜線場に居たミサカとぶつかり一緒に吹き飛ぶ。
そしてコンテナの壁にかなりのスピードで叩きつけられた。

それを横目に見ながら垣根はジャリ、ジャリ、と地面の小石を踏みしめ一方通行を抱える美琴へと近付く。

744: 2010/07/14(水) 20:08:10.95 ID:../cv1I0


「さて……超電磁砲、どけ」


未知の物質、非常識で構成された翼を見せつけながら、彼は美琴に言う。


「……」


美琴は、無言。

彼女は自分が憎かった。

問題ばかり起こしておいて、それに他人を巻き込んで、そして、“化け物”と呼ばれながらも何も出来ない自分が憎かった。

自分は、氏にそうな一方通行を助けることも、目の前の“化け物”を倒すことも出来ない。





だから、


「……おい、なんの真似だそりゃ?」


「……」


彼女は一方通行を横たえ、垣根の前に両手を広げて立った。
その制服や体は所々一方通行の血によって濡れている。


「盾のつもりかよ?そんなの無駄なのは知ってんだろうが」


呆れたような垣根の声に、美琴の恐怖心が同意する。
前に戦った際、垣根の白い翼に電撃も砂鉄の剣も、超電磁砲(レールガン)さえ、いとも簡単に防がれた。

745: 2010/07/14(水) 20:09:26.71 ID:../cv1I0


だけど、


「……」


キッ、と美琴は垣根を睨み続け、垣根の前に立ち塞がり続ける。
その姿に、


「ハァ……」


垣根はため息を吐いた。
彼にとっては美琴の行動は全く無意味な物だ。
彼女一人の力で止められるような最強では無い。


「なぁ、最後にもう一度だけ聞く。どく気は無いんだな?」


「……」


美琴は無言。
だが、その垣根を睨む表情が全てを語っている。


「そうか……」


垣根はその返答に、




「じゃあ一緒に氏ねよ」


746: 2010/07/14(水) 20:10:05.42 ID:../cv1I0


巨大な翼で答えた。
一気に頭上に伸び、曲がって白い鋭利な翼の先が美琴を、その後ろに横たわる一方通行を貫かんと超高速で迫る。

迫るそれを見て、美琴はせめてもの抵抗をしようと、能力を行使した。













世界に轟音が鳴り響き、大地が揺れ、何かが飛び散った。









747: 2010/07/14(水) 20:10:43.44 ID:../cv1I0








意識が、朦朧とする。


誰かの、声が聞こえる。


「じゃあ一緒に氏ねよ」


何か、大きな物が彼女に迫るのがぼやけて見える。


「……ッ」


一瞬、彼女の顔に恐怖が浮かぶが彼女は立ち塞がり続ける。


能力を使おうとしているのだろうか。前髪から電気が散る。


彼女は、立ち塞がり続ける。


目の前に、明確な氏が待っているのに。


ーー待てよ……


ーーまだ……


力を込める。


自分だけの現実から、能力を引き出そうと演算を行う。


748: 2010/07/14(水) 20:12:11.62 ID:../cv1I0


ふと、何かとっかかり、いや、鍵を見つけた気がした。


イメージは、ボロボロで今にも壊れてしまいそうな軟禁錠。


ーーここだ……


確信する。


この先に、今もっとも己が求める物がある。


だから、手を掛けた。


そしたら、


(待て、そこから先に行けば引き返せなくなるぞ)


本能の声、とでも言えばいいのだろうか?


忠告が聞こえる。


749: 2010/07/14(水) 20:12:48.80 ID:../cv1I0


考える。


考えて浮かんだのは、彼女の笑顔。


だから、“彼”は






















ーーーーそれがどうした、クソッタレ





鍵を、叩き壊した。







750: 2010/07/14(水) 20:13:53.64 ID:../cv1I0








「な、に?」


垣根は呆然と、目の前の現実を見て呟く。
彼の背に生えていた筈の白い翼は、全て轟音とともに消し去られていた。
辺りには残骸たる白い羽が飛び散っている。

消し去ったのは、少女を守るように立つ、白い髪に紅い瞳を持つ少年。





その背中から生えし、黒き翼。





それは垣根が持つ翼とは決定的に違っていた。
まるで岩から削り出されたような、刺々しい姿。
まるで煙のように実態が無いように感じる雰囲気。


その翼を生やした背中を後ろから見る美琴は、不思議と恐怖しなかった。


何故なら。そこから感じられる雰囲気が、暖かったから。

751: 2010/07/14(水) 20:14:32.73 ID:../cv1I0


翼はゆっくりと消えて行く。
まるで空気に溶けるように消えてゆき、消え去ってから垣根は漸く正気に戻った。


「テメェ……今のは!それに何で生きてッ!?」


問いかけの途中で、垣根は驚きの余り目を見開く。
自分の目の前に立つ少年の傷口からは血が流れていなかった。


「ま、さか、血流操作……?」


「えっ……?」


垣根の呟きに、美琴も驚いて少年の横顔を見る。
横からなので目は見えないが、口元はギリギリ見えた。


「美琴」


彼は言う。
今まで一度として呼ばなかった彼女の名前を。


「三下どもと一緒に下がってろ。終わらせてやる」


「……うん」


素直に頷き、美琴は少し後ろに下がる。
視界がぼやけて、彼の背中がよく見えない。


あぁ、これが嬉し涙なんだなと、美琴は思った。




752: 2010/07/14(水) 20:15:53.04 ID:../cv1I0





「さァ、いい加減こンな巫山戯た舞台は終わらせっちまおうぜ、格下ァ!!」





彼、一方通行は目の前の『元最強』にそう叫んだ。













「大丈夫?」


「はい、問題ありませんとミサカは体を確認し報告します」


「……一方通行」


コンテナに寄りかかっているミサカと上条。
美琴だけが立っている。

ニー、と黒猫がミサカに擦り寄りながら小さく鳴いた。


「大丈夫、なのか……?」


上条は空を見上げながら心配を告げる。
空では二人が戦っていた。
戦いは余りにもレベルが違い過ぎて、彼等が介入など到底無理な話だった。

754: 2010/07/14(水) 20:16:30.89 ID:../cv1I0

空中で二人が激突する度に衝撃波が撒き散らされる。
白い羽が散らされ、暴風により高く積まれているコンテナが崩れた。
大地がズズンッ、と揺れ、黒猫が不安そうに震える。


「きっと……」


震える黒い子猫をミサカが優しく抱き抱えるのを横目に見ながら、美琴は、




「大丈夫」




そう、言った。
その茶色の瞳に篭っているのは、信頼。




あの少年への、絶大なる信頼。






755: 2010/07/14(水) 20:17:15.95 ID:../cv1I0





「……いい気になってんじゃねぇぞ一方通行ァァッ!!」


翼の少年は吠えた。
そして自分と対峙する一方通行に向かって垣根は翼を振るった。

翼から放たれた白い羽が、幾百も放たれ一方通行に迫った。


だが、


一方通行は躊躇無くその羽の弾幕に突っ込む。
そして、羽は一方通行に触れた瞬間真逆へと弾かれた。


「なに!?ぐっ!」


自分へと返ってきた羽を防ぐために翼を壁にする。
その壁に当たって羽は弾かれるが、一方通行の手は防げない。

白い氏の腕が、羽の層を貫き垣根の眼前に迫る。
翼を慌てて拡散させ、羽を撒き散らして衝撃を無くす。
そして後ろへと飛んで距離を取った。


(どうなって、やがる!?何でコイツは俺の羽を防いで、しかも翼を簡単に貫いた!?そして何よりもーーッ!)


ーーなんで反射が使える!?


756: 2010/07/14(水) 20:18:04.48 ID:../cv1I0




「未元物質、か」


「!?」


空を飛び、放たれた風の槍を防ぎながら垣根は一方通行のセリフを聞いた。


「確かにオマエの力は凄いもンだ。未元物質っていう“異常”をこの現実に入れることで常識を変えOちまう」


風を操作しながら、彼は言った。




「だったら、暴けばイイ。この世界には未元物質があると仮定して、その世界での公式を暴けばチェックメイトだ」




「な……」


垣根は絶句する。
彼の言ったことは“非常識”を“常識”に変えるということ。
つまりだ。



彼の能力のアドバンテージを、殆ど無くすということ。


757: 2010/07/14(水) 20:18:45.47 ID:../cv1I0



「んなことが……!」


「できンだよ。“今の”俺ならなァ」


ニヤッと、笑いながら一方通行は宣言する。
その姿は闇と重なって氏神に見えた。


「う……おおおおおおおっ!!」


垣根は叫び、六枚の翼を一方通行に向ける。
だが、何時の間にか自分より上空に移動した彼の右手にある物を見て驚愕する。


「学園都市中の風の流れを集めりゃ、プラズマぐらい出来ンよなァ?」


光り輝く、丸い物体。
直径十メートル程のプラズマ体。
灼熱のそれが、


「喰らっとけ」


垣根に叩きつけられた。

プラズマ体は下に居た垣根に接触した瞬間形を変え、まるで光線のように大地に突き刺さる。
その大気の急激な温度変化により、暴風が操車場全域に吹き荒れた。

758: 2010/07/14(水) 20:19:22.59 ID:../cv1I0


「うわっ!」


「くっ!」


「……!」


それは戦いを見ていた三人も例外では無く、顔の前に腕を出して耐える。
美琴だけが、爆心地とも言える地点を見ていた。


爆心地は砂利やレールが溶けており、砂煙が凄く、何も見えない。


その砂煙のカーテンはゆっくりと、風に乗って消えて行く。
爆心地の中心にあるのは、白い塊。


「!」


「あれは……!」


白い塊がピクッと動いたかと思うと、一気に解き放たれた。
白い何かは幾重にも重ねられていた翼。


「はぁ、はぁ……」


その翼を生やしている少年、垣根は息を荒くしながら地面に片膝を付く。
咄嗟に能力を全開にして防いだものの、かなり疲労した。



759: 2010/07/14(水) 20:20:40.06 ID:../cv1I0











そして、




「いいか」


「っ!?」


自分の後ろから声が聞こえ、垣根は反射的に後ろを向きながら翼を振るう。

だが、翼は誰かに当たった瞬間、衝撃で崩壊。
ただの羽となって空間を舞う。


「なっ……!」


何故か?
答えは簡単。衝撃を『逆のベクトル』に変更されたから。


その絶対的な防御の力を、



反射と言う。



760: 2010/07/14(水) 20:21:25.02 ID:../cv1I0



そして、反射を使える、いや、使える様になったのはこの学園都市にたった一人。



名前は『一方通行』



彼は白い羽が舞う空間にて、拳を振りかぶる。



















「これが、『化け物』だ」




一方通行が操作出来るありとあらゆるベクトルによって強化された拳は、垣根の顔面に叩き込まれた。


761: 2010/07/14(水) 20:22:13.01 ID:../cv1I0

バキィ!と肉と肉がぶつかる生々しい音が短く鳴り、垣根は吹き飛ぶ。

ゴロゴロと、先程のプラズマのせいで平になった地面を転がって十メートル程で漸く止まる。


「っ……」


垣根は起き上がろうと指を動かすが、一ミリ程しか動かなかった。
そのまま彼は意識を飛ばす。




「……終わった」


気絶した垣根を見て、一方通行はそう言った。
瞬間、体に張っていた力が抜け、ふらっとよろける。


「もう、限界だァ……」


ドサッ、と同じように地面に倒れこみ、気絶した。









こうして、夜の世界を舞台にした戦いは、終わりを告げる。




762: 2010/07/14(水) 20:24:24.23 ID:../cv1I0


後編終了です。
駄文でごめんなさい!
でもやっぱり超人どうしの戦いは色々ぶっ飛んでるから難しいよ!
殴り合いなら普通に書けるのに……

では!


786: 2010/07/16(金) 18:49:30.01 ID:.QcSLRM0




エピローグ












「……」


無言。

八月二十一日。朝、一方通行が起きてから一番最初にしている行為がそれだ。
別に毎日という訳では無い。
彼だってあくびくらいするし、何か言ったりする。

少なくとも一分以上呼吸音すら小さくすることは無い。

では何故今は無言なのか?

それは、




「……?どうかしましたか?とミサカは貴方が何も喋らないため尋ね」


「オマエの手が問題なンですよォォォォォォォッ!!」


何故なら、自分の右手がミサカ10032号の慎ましい胸に服の上から押し当てられていたから。


怪我をしているというのを感じさせない一方通行の叫び声が、早朝の病室に響いた。






787: 2010/07/16(金) 18:50:08.00 ID:.QcSLRM0





「で?俺の体は大丈夫なンだな?」


「はい、手術も成功したため、一ヶ月弱で退院出来るそうですとミサカは貴方の手を離します」


先程の胸の感覚を頭から削除しながら、一方通行はベットの横に座るミサカの言葉を聞く。
ちなみに、あの胸に押し当てる行為は能力を利用して体調を調べるためだった。

どうやらあの戦いの後、自分は病院に直行されたらしい。
まぁ、当たり前と言えば当たり前だ。
能力が無ければ確実に氏んでいたであろう怪我だったのだから。


「……実験はどォなった?中止になったのかァ?」


「はい」


短い返事に、一方通行は少し驚く。
まさか、これだけで終わるとは思わなかった。
研究員共は揃ってバカだから実験をまた再度行うと思ったのに。


788: 2010/07/16(金) 18:51:19.03 ID:.QcSLRM0


「……理由は?」


「不明です。ミサカはその情報を与えられていません、とミサカは自分の知っていることのみを伝えます」


「ふーン……」


一方通行は考える。
何故、実験が中止になったのか。
だが、分からない。
少なくとも、今回の出来事が関係しているのは確かだが……


「あぁ、それと。もう一つ伝えることがあります、とミサカは姿勢を正します」


言葉通り椅子の上で背筋をピシッと伸ばすミサカ。


「伝えること……研究員からかァ?」


「はい。


















貴方は超能力者(レベル5)第一位に認定されることになりました、とミサカは報告します」




「……そうか」

789: 2010/07/16(金) 18:52:09.98 ID:.QcSLRM0


フゥ、と息を吐き、目を閉じる。
分かっていたことだった。
自分は、守りたいものを守るために“化け物”の力を使った。
なら、それ相応の代償が付いて来る。それが、このクソッタレな世の中の真理だ。


「……では、ミサカはこれで失礼します、とミサカは立ち上がりながら言います」


「あァ。まっ、精々氏なねェよォ頑張れ」


ベットに横になったまま、立ち上がったミサカに一方通行は言葉を飛ばす。
それを聞いてミサカは立ち止まり、


「……有難う、ございました」


そう言って、病室から退出した。
白いドアがゆっくりと閉まり、カタンと小さな音を立てる。


「……礼なンざ要らねェっての。バカが」


呟いた一方通行の顔は、笑っていた。

嬉しさで、笑っていた。





790: 2010/07/16(金) 18:53:01.19 ID:.QcSLRM0





コンコン。


「ンっ……?」


小さく笑っていた一方通行は、ドアから聞こえたノックの音に首を傾げる。
先程ミサカが出て行ってから一分も立っていないからだ。

もしかして忘れ物でもして戻って来たのかも知れない。
そう思い、一方通行は身を起こす。


「……どうぞォ」


身に走った痛みに顔が少し歪むが、無視。
なるべく普段と変わらない声を発した。

一方通行の許可の言葉に反応し、ゆっくりとドアがスライドしてゆく。


現れたのは、


「……体は、大丈夫?」


「大丈夫に決まってンだろォが」


茶色の髪に茶色の瞳を持つ少女。
今回の事件の中心人物である、御坂美琴だった。




791: 2010/07/16(金) 18:54:49.30 ID:.QcSLRM0






シャリシャリ。

そんな効果音が病室にて鳴る。

音源はベット脇の椅子に座る少女の手元。
そこにあるリンゴの皮をナイフでむく音だ。
スルスルと、ナイフにより赤い皮が果実から離れてゆく。
ベットの上の一方通行はそれを視界の隅に入れつつ、窓の外を見る。


あれから美琴は殆ど無言で、お見舞いに持って来たリンゴをむき始めてからは一言たりとも喋ってはいない。
表情が暗いことから大体何が言いたいのか一方通行には分かる。
だから黙って待っていた。


「……」


「……」


ピタッと美琴の手が止まり、ナイフとリンゴの動きも止まる。


「……レベル5に、なったみたいね」


やっと言葉が出た。


「第一位ブッ倒したしなァ。正式発表は夏休みが終わってからみたいだけどよ」


「……」


一方通行の愉快そうな声に、美琴は更に表情を暗くした。
それに一方通行は自分の白い髪をガシガシとかき、どう言ったものかと悩む。


「……ご……ん」

792: 2010/07/16(金) 18:55:41.72 ID:.QcSLRM0


「あァ?」


だが、彼が何か言う前に、







「ご、めん……!」







ポロポロと、涙を流しながら彼女は彼に謝罪した。
大粒の涙が頬を通過し、手元へと落ちる。


「ごめん……!本当に、ごめんっ……!」


口から出てくるのは、謝罪のセリフばかり。

彼女は知っていた。

彼が自分を“化け物”にしたく無いことを。

名前のことも、それが関わっているのだろうと。



だけど、自分のせいで、彼は“化け物”の領域に入った。



学園都市での、最強の“化け物”になった。


793: 2010/07/16(金) 18:56:35.18 ID:.QcSLRM0


自分が居なければ、彼は普通の“人間”として暮らせたかも知れないのに。


泣いたって許してもらえないだろう。

いくら謝ったって許してもらえないだろう。


だけど、謝らずにはいられなかった。


「ごめん……ごめん……」


彼女は謝り続ける。
許されなくても、ずっと彼に。
だが、




「謝ってンじゃねェよ。俺は借金取りか何かですかァ?」




ポン、と彼は白い手を美琴の頭に乗せた。


「あっ……」


その感触に、美琴は泣くのを止め、前を見る。
そこにはベットから身を起こし、笑っている彼が居た。

794: 2010/07/16(金) 18:57:06.01 ID:.QcSLRM0


「オマエが謝る必要性なンざこれっぽっちもねェだろ。オレが勝手にやって、勝手に“化け物”になった。そンだけで充分だろうが」


「っ!そんなこと「そうしとけ」へぅっ!?」


美琴は一方通行の言葉に抗議しようとするが、頭を乱暴にガシガシと撫でられ遮られる。


「それで、いいンだよ。オレがイイって言ってンだ。ガキは従っとけ」


「……アンタも、ガキじゃない……」


「少なくともオマエよりは年上だなァ」


二ィ、と意地悪な笑みを浮かべる彼の顔を美琴はまだ涙が流れる顔で見る。
そして、ポツリと一言。


795: 2010/07/16(金) 18:57:50.38 ID:.QcSLRM0






「あり、がとう……」






その言葉に答える様に、一方通行は頭を撫でる腕に力を加えた。


「……ってちょ!痛い!髪の毛痛い!」


「オォワリィワリィ」


「謝る気無いでしょアンタ!?」


が、強過ぎたようで手が振り払われる。
一方通行はカタコトで謝りつつ手をぷらぷらさせた。
その姿に美琴は更に怒りの炎を燃やすが、


「オマエの髪がライオンみたいになってもいいから、サッサとリンゴ寄越してくれませンかァ?此方とら腹減ってンだよ」


「いやよくないし!……全くアンタ、本当に自己中なのね」


「オマエだけには言われたかァねェ」

796: 2010/07/16(金) 18:58:28.93 ID:.QcSLRM0


一方通行の文句をスルーし、ハァ、とため息を吐く。
彼女は皮を剥いてカットし終わったリンゴを差し、


「!」


出す前に言い事を思いついた。
そしてリンゴを差し出す。
あの定番のセリフとともに。



「はい、あーん」


「……ハッ?」


「だから、あーん」


一方通行は差し出されたリンゴを凝視して固まった。
彼女はリンゴを右手の指で摘んで自分の口に向かって差し出していたのだ。
そして「あーん」というセリフ。

つまり、これが指すところは。


「オマエバカですかァ!?」


んな恥ずかしい行為出来るかと一方通行は怒鳴る。
が、


「あーん」


「しかも聞いてねェ!やっぱオマエに自己中って言われたかねェよ!」

797: 2010/07/16(金) 18:59:04.85 ID:.QcSLRM0


無視しているのか聞いて無いのか分からないが、美琴は一方通行にリンゴを出し続ける。




満面の笑みで。




(……はァ、全く手の掛かるガキだ……)


その面倒さを楽しむ自分が居る事に、彼は心の中で苦笑する。



だって、ずっとずっとこの笑顔を見たかったのだから。



「……ン」


差し出されているリンゴに対して、不機嫌さを装いながら彼は口を開く。
それを見て美琴はリンゴを前に、一方通行の口に入れようとする。






798: 2010/07/16(金) 18:59:42.12 ID:.QcSLRM0




だが、




ガラッ!


「おーい一方通行。お見舞いに来た、ぞ……?」


閉められていたドアが開き、入って来たのはツンツン髪の少年。
少年は「あーん」する直前の二人を見て氷の様に固まった。

勿論、それは二人も同じで、


「……まてまて三下。誤解してンじゃねェぞ?」


「……ハッ!?そ、そそそう!こここれ誤解だから!」


一方通行は普段から白い顔を更に白くして冷や汗を垂らしながら言い、美琴は意識を現実に引き戻して顔を真っ赤にしながら弁解した。

そして、その二人の言い分を聞き終わった少年、上条は、




「お邪魔しました~……」


ピシャ!っとドアを閉めた。






三秒後、一方通行の叫び声が病院中に響き渡ったのは言うまでも無い。





799: 2010/07/16(金) 19:01:03.72 ID:.QcSLRM0







「アレイスター」


「プランは順調だ。なんの問題も無い」




とある窓の無いビルで、巨大なビーカーのような得体の知れない容器の中の人物と、土御門は話していた。

その者の名はアレイスター。
学園都市のトップ。

魔術を捨てし者。


通気口すら無い、締め切ったビルの中。
彼は口を開く。


「……全て計算通りということか」


「そういうことだ」


目の前の、男なのか女なのか子供なのか老人なのか分からない不思議な逆さまの人間の言葉に彼は苛立つ。


そう、全てはプラン通り。


垣根帝督は一方通行を覚醒させるためのコマだった。
一方通行はアレイスターのプランに必要な人間の一人。
だが、トラウマのせいで能力の一部を封印してしまっていた彼では役に立たなかった。



だから、あえて実験のことを教え中止させることで彼を超能力者(レベル5)にしようとした。



そして、それは成功した。
彼が、大事な者を守るために“化け物”の道に踏み込んだことで。

800: 2010/07/16(金) 19:01:56.16 ID:.QcSLRM0



「……もし一方通行が動かなかったらどうするつもりだった?」


「彼が動く確率は99パーセントだったのだがな。その場合は幻想頃しの少年に実験を止めさせるまでだった」


「……?」


そのセリフに土御門は少し違和感を覚える。
垣根がレベル6になれるというのはアレイスターによる“嘘”なのかもしれないが、態々実験を止める必要性は無い筈だ。


だとしたら、



そこに、何か自分が知らない事情(裏)があるのではないか……?



「ただ、イレギュラーとして起きたことがあるとすれば」


「……?」


実験を止めるための理由を考えていた土御門は、アレイスターの言葉を聞き首を傾げる。
プランは順調では無かったのか?
そう思う彼の前にブンッ、と周りの機器から投写された立体映像によるモニターが映る。


そして喜怒哀楽、全てを内包した様なアレイスターの声が紡がれた。


801: 2010/07/16(金) 19:02:44.04 ID:.QcSLRM0




「一方通行と超電磁砲の仲がここまで接近するとは思わなかった」




モニターでは白い少年と茶色の少女。黒い髪の少年が騒いでいた。


『まて三下!いや待ってくださいお願いしますクソ野郎!』


『いや、本当にゴメン!上条さんマジでお邪魔でしたねすみません!』


『だから違うのよぉぉぉぉぉ!!あぁぁぁぁぁ!なんで私はぁあ!?』


『おわっ!?ビリビリが飛んでる!?』


『ビビってないでオマエの右手でサッサと止めろォ!ここ病院だぞォ!?』




「……」


土御門は目の前のモニターで展開される光景にしばし見入る。
光の世界では、当たり前の光景。

だが、一方通行のような者にとっては当たり前では無い、光景。


「だがプランに支障は出ない。問題無いだろう」


(……それはどうかな?)

802: 2010/07/16(金) 19:03:35.33 ID:.QcSLRM0


ギャーギャー喚いているモニター内の映像を見つつ、アレイスターの発言を心の中で彼は否定する。

人と人の繋がりという物はそう簡単な物ではない。

たとえ、一人一人が1どころかマイナスだったとしても、かければプラスになる。


(……人間を侮るなよ、アレイスター)


彼は、声に出さずにそう呟いた。













「……寝たか」


白いベットの上で上半身を起こした状態で、一方通行は呟いた。
彼の足の辺りに横顔をマットにめり込ませながら、美琴がスゥスゥと寝息を立てている。

803: 2010/07/16(金) 19:04:03.23 ID:.QcSLRM0

あれから暫く立ち、ツンツン髪の少年が帰ってから落ち着いた美琴は寝てしまっていた。

その横顔を見ながら、一方通行は上条に聞いたことを思い出す。


『そういやビリビリの奴、お前の手術ずっと寝ないで待ってたみたいだから疲れてるんじゃないか?』


「……ガキは寝ときゃいいって言ったろォが……」


起きる様子の無い彼女から視線をズラし、自分の体を見る。
服の下から覗く肌は包帯に覆われていた。


「……安いもンだ。こンな傷くらい」

804: 2010/07/16(金) 19:04:40.45 ID:.QcSLRM0


彼は目を閉じる。
目を閉じても窓から刺す太陽の温かな光が感じ取れた。


「……まっ、俺には勿体ねェくれェだけどよ」













ーーーーせめて、今だけはこの温かな世界に浸かっていてもいいだろう








彼はそう言って眠る。

温かな光と、少女の温もりを感じながら。





805: 2010/07/16(金) 19:05:29.09 ID:.QcSLRM0





彼等の物語はまだ終わらないのだろう。


彼は悔やみ続け、悩み続けるのだろう。


彼女は後悔し続け、犠牲になろうとするのだろう。



彼は、彼女は、世界の全てに抗い続けるのだろう。









彼等は、正真正銘の『人間』なのだから。










【終】


806: 2010/07/16(金) 19:06:22.82 ID:.QcSLRM0


あっ、ちなみにタイトルについてはここで説明しときます。

色々友達にも意見貰って考えたこのタイトル。電磁通行。
ぶっちゃけ、色々電気関係の英単語とか通行関係の英単語を出して組み合わせた結果、


「エレキックロード!これが一番言いやすいし覚えやすい!」


ということで決定しました。
意味があっていないけどそれは原作でもあるし、いいかなと。

では以下、説明集です。

807: 2010/07/16(金) 19:07:07.21 ID:.QcSLRM0



説明補足集


注意!
これは作者の持論に過ぎません。
なので見てしまうと、この作品に持っているイメージが壊れる可能性があります。
それでもいい方だけ、どうぞ。







①この作品について

この作品は、『一方通行がもし原点で変わってしまったら?』というifを元にしたお話しです。
『一方通行』の原点。一方通行が一方通行と名乗るようになってしまった過去。

原作での一方通行は『悪党』ですが、ここでの一方通行は『人間』と『化け物』の狭間を行き交う存在です。

つまり原作の一方通行が『善人』と『悪党』について悩むのに対し、ここの一方通行は『人間』と『化け物』について悩みます。

808: 2010/07/16(金) 19:08:05.71 ID:.QcSLRM0

この物語の後一方通行は悩み続けるでしょう。
『化け物』たる自分が、『人間』たる美琴を守っていいのかと。


いつかそんな幻想は上条か美琴に叩き壊されるでしょうが。


後、この物語は一方通行と美琴の物語です。
故に、二人の描写が比較的多い。
“化け物”というワードを元に悩む二人を感じてもらえたら幸いです。


②作品の謎について。

ここで言う謎とは設定のことです。というより、この作品に伏線とか無いっていう……
この作品は読者の皆さんの想像に任せている部分が多いです。
少なくとも、前編だけでは意味不明の作品ですし。

ここでは、そんな設定を纏めました。


809: 2010/07/16(金) 19:08:47.07 ID:.QcSLRM0



ストーリーの流れと小さな設定。


前編

八月十九日
・最初で一方通行が能力を使って公園に向かっていないのは、黒子に前言われたから。
・一方通行と美琴が知り合い。理由は不良に絡まれていた所を通りかかり、不良をボッコボコにしたため。六月頃。
・ちなみにこの時、一方通行はコーヒーを買いだめしている。最初に買いだめした奴氏ねとか言ったの誰だ。
・一方通行、美琴に能力の関係上、勝つ。不意打ちなら勝敗は分からなかった。
・ここの一方通行が接近戦が出来るのは過去のため。詳しくは中編参照。
・原作上条よりは美琴との仲はなんだかんだいいながらも良好。
・公園にて美琴が感情を隠せず、一方通行に少し感付かれる。
・街中にて上条と出会うが、上条は逃げるように去る。理由は記憶が無いため(禁書一巻参照)。
・そのせいで視線を動かしたため、風景の中の違和感に気がつく。つまり上条に合わなかったら気づかなかった。
・路地裏で御坂美琴のクローンの氏体を見る。だが、本人だと思っていた。


中編

八月十九日
・垣根帝督とは会った事が無かったため、第一位だと知らなかった。
・一方通行の能力で把握出来ない攻撃を喰らう。この時点で一方通行は反射が使えなく、演算能力も少し低い。
・一方通行が殺されなかったのは妹達が垣根を止めたため。理由は実験に支障が出る可能性があるから。


810: 2010/07/16(金) 19:09:27.40 ID:.QcSLRM0

八月二十日
・朝、昔の夢を見て目がさめる。一方通行を病院に運んだのは上条。
・上条は冥土返しから一方通行と自分の関係を聞いていた。
・中学一年生の頃、一方通行は上条に助けられる。この時点ではレベル1(ただし、レベル0に限りなく近い)。
・それからレベル4になるまで一年かかった。
・黒子、佐天、初春と知り合いなのはとある科学の超電磁砲のストーリー時期に会った事があるから。
・その時に黒子に能力使用について色々言われた。
・夕方。土御門が一方通行の病室を訪れる。理由はアレイスターからの役目。
・一方通行、実験のことを知りキレた。プロペラと能力を頼りに美琴を見つけ出す。
・美琴、少し前の一方通行との会話を思い出した。一方通行の思いをその時知る。
・話の後、一方通行戦場へ。美琴、原作と全く同じ流れを辿った上条とともに追い掛ける。
・一方通行、美琴を『人間』と宣言。
・垣根の過去は不明。ただ、戦う理由はアレイスターとの交渉権だけでは無い様子。


後編

・一方通行、垣根に負け体を切られる。致命傷。
・そこに三人登場。上条と垣根が戦っている間に美琴は一方通行を助けようとするが失敗。
・そして上条とミサカは吹き飛ばされ、垣根は一方通行を殺そうとする。
・美琴、何も出来ないが立ち塞がる。垣根、しょうがなく二人とも頃すことに。
・一方通行、能力解放。血流操作、生体電気操作で傷を誤魔化す。
・演算能力がフルになったため、一方通行は非常識の公式を解けるように。
・垣根、絶対的な力の前に敗れた。
・一方通行、限界が来て気絶。

811: 2010/07/16(金) 19:10:08.23 ID:.QcSLRM0


エピローグ

八月二十一日
・早朝、ミサカの力により体調を計られる。
・実験は停止。アレイスター直々の停止命令が出た。
・ミサカから感謝される。
・美琴を慰める。その後、お見舞いに来た上条に誤解された。
・裏では今回の目的が語られていた。
・一方通行、暫しの平穏に浸る。


その他


・反射
自分に向かって来たベクトルをその方向にそのまま返すこと。
一番簡単なベクトル操作なのだが、一方通行はトラウマから使えなかった。そのためレベル4に。
これが原作と一番違う点。

・「終わらせてやンよ『未元物質』」
この終わらせるという言葉には様々な意味がこめられている。
命を絶つ、実験を終らせる、第一位というのを終らせるなどなど……
一方通行がどの意味で言ったのかは不明である。

 ・ボロボロの南京鍵
一方通行の中でのイメージ。
子供の頃にトラウマでかけた鍵なため、ボロボロだし、南京鍵という簡単な鍵になっている。
一方通行はこれを叩き壊した。
それはトラウマを乗り越えることを意味している。

・黒い翼
溜め込んだ力を一気に解放した弾みにより出た。
ただし、一方通行は意識して無かったためすぐに消えることに。

・「これが、『化け物』だ」
本来なら悪党。だけどここでは化け物になっている。
化け物というのがここの一方通行の軸となっているため。


812: 2010/07/16(金) 19:10:53.19 ID:.QcSLRM0



反省会

ちょっとあれだ、上の説明集見てクールになってしまった人多いと思うからテンション上げて反省会!

まずエピローグ。おい誰だシリアス一割しか無いとか言ったの。
五割はシリアスじゃねぇか。しかも短いし!グタグタだし!
まぁ俺が「あーん」させようとしたせいなんだろうけどな!……すみませんorz

次に前編と中編は自信が有った。前編はわけわかめだったけどな!
前編と中編セットで読むと分かりやすいけど……
そして後編んんんんんんんっ!!
あれ!?なんで一方VS垣根超人気なの!?向こうもこっちも!?
正直駄文って思ったんだよ!?えっ、マジでこれでよかったの!?
皆べた褒めしてるけどいいの!?俺調子のっちゃうよ!?


まぁ、纏めると。
自分的に今回のこれは九十点。
やっぱり短く、深く纏めるのは難しいんだな……


でも自分的には自信作です!
見てない人も見てくれると嬉しいな!

じゃ、if・カオスの方の空白の三年間のワンシーンを書いてきます。
このスレ終らせて早く次スレに行くぜよ。


沢山のレス、有り難うございました!!!


PSここって千スレ以外にも容量限界とかあったっけ?

引用: 一方通行「あれから一年か....」美琴「早いもんね....」