1: ◆w5ibf4k7GU 2016/01/18(月) 22:37:19 ID:rhB0JEaw0
秋吉理香子氏の著作「放課後に氏者は戻る」のパロディ
ですが、かなり改変してます
注意:氏ネタならびに不愉快な展開を含みます

2: 2016/01/18(月) 22:38:29 ID:rhB0JEaw0
ザァァ……

エレン(ここは……どこだ?)

ザァァ……

エレン(波の音……そうか、海だ)

エレン(崖の中腹? に、引っ掛かってるのか。俺は……)

………!

エレン(誰かが呼んでる……起きなきゃ。でも……)

エレン(体が重い……頭がぼうっとする。なんで……)

エレン(……そもそも、どうしてこんなところにいるんだっけ?)
進撃の巨人(34) (週刊少年マガジンコミックス)

3: 2016/01/18(月) 22:40:08 ID:rhB0JEaw0
『今日午後7時、岬で待つ』

エレン(そうだ……手紙で呼び出されて……誰に?)

???「おい!」  

エレン(誰だ……何か言ってる……)

ジャン「おい、大丈夫か!? 今救急車を呼んだからな!」

エレン(あの声……ジャンか? なんでここに……)

ジャン「うわ!?」ズルッ

エレン(………………あ)

氏―――――

4: 2016/01/18(月) 22:41:18 ID:rhB0JEaw0
………! ………ン!

エレン「う……」パチ

エレン(ここは……病院か?)

エレン(じゃあさっきのは……夢?)

―――よかった、目が覚めたんだね……

「ジャン!」

エレン「…………え?」

5: 2016/01/18(月) 22:42:15 ID:rhB0JEaw0
ジャン母「ほんとに、この子は心配ばっかりかけて……)

エレン「…………ちが」

エレン(俺はジャンじゃない、エレンだ。どうして……)

エレン(……まさか)

エレン「か……が、み」

ジャン母「鏡だって? はいはい、分かったよ」

エレン「……………………」

エレン(うそだろ…………)

エレン(間違いねえ。いつもの馬面……ジャンの顔だ)

6: 2016/01/18(月) 22:43:50 ID:rhB0JEaw0
以下、表記はエレンで統一しますが、見た目はジャンです
分かりづらくてすみません
ジャン父の性格が分からないので出しませんが、いる設定です

7: 2016/01/18(月) 22:44:48 ID:rhB0JEaw0
看護師「しばらく安静にしててくださいね」

ジャン母「せっかく助かったんだから、大事にするんだよ」

エレン「………………」

エレン(信じられねーけど……実際にこうしてジャンの姿になってるってことは)

エレン(崖からジャンが落ちた時、俺とぶつかって……その時入れ替わったとしか……)

エレン(そうだ! 入れ替わりってことは、俺の体には今頃……)

エレン「…………あの」

看護師「はい?」

エレン「俺……ほかに……運ばれ……」

医者「ゆっくり休んでいた方がいいですよ」

看護師「ここ一週間ずっと昏睡状態だったんですから。一時は本当に危なくて……」

医者「満足に体を動かせるようになるまで、まだ時間がかかるはずです」

ジャン母「あんた、お医者さん方に迷惑かけるんじゃないよ」

エレン(俺はそんなに眠ってたのか……くそ)

エレン(このまま馬面の姿で過ごすなんてごめんだ……早く元に戻る方法を考えないと)

8: 2016/01/18(月) 22:45:17 ID:rhB0JEaw0
エレン(体が動かせない……だったら、できるのは考えることだけだ)

エレン(思い出せ。あの日何があったのかを)

9: 2016/01/18(月) 22:46:11 ID:rhB0JEaw0
エレン(そう……確か夏休み前、終業式の日だった)

エレン(俺は机に入ってた手紙で呼び出されて……)

『今日午後7時、岬で待つ』

エレン(誰からの呼び出しだったかは分からない。どこかで見たような字だった気もする)

エレン(俺は約束の時間に岬に行った。あそこは高い崖があって、子どもだけで遊ぶのは禁止されてる……)

エレン(相手を待ちながら、俺はぼんやり海を見ていた。そこで誰かに)

突き落とされた。

10: 2016/01/18(月) 22:47:06 ID:rhB0JEaw0
エレン(間違いない。事故なんかじゃなくてあれは……人の手だった)

エレン(落ちる直前、何か音楽が聴こえた……携帯の着信音みたいな)

エレン(今のところ犯人の手掛かりはそれくらいか……)

エレン(崖の中腹にひっかかった俺は、ジャンの声を聞いた)

エレン(あいつは俺を助けようとしたのか……?)

エレン(ジャンはおそらく足をすべらせるか何かしたんだろう、崖から落ちてきて)

エレン(途中で俺とぶつかって、あとは真っ逆さまに……)

エレン(……その後の記憶は無い)

エレン(とにかくジャンと話をすることだ。あいつは犯人の姿を見たかもしれない)

11: 2016/01/18(月) 22:48:35 ID:rhB0JEaw0
ジャン母「それにしても、助かったのは本当に奇跡というほかないよ」

ジャン母「一緒に運ばれた子は、亡くなったそうだけどね……」

エレン「…………え」

エレン(俺が、氏んだ……)

エレン(いや、違う)

エレン(氏んだのは、俺じゃなくて……)

ジャン母「その子が守ってくれたのかもしれないねえ……」

エレン(ジャン……お前は、俺の身代わりに……)

エレン「うっ……」

看護師「大丈夫ですか!? どこか痛みますか?」

医者「すみませんが、お母様はしばらく席を外された方が」

ジャン母「ああ……ごめんね。また来るからね」

エレン「…………あ、どうも……」

ジャン母「なんだい、おかしな子だね」

12: 2016/01/18(月) 22:49:18 ID:rhB0JEaw0
――――誰だ。

俺を頃したのは、誰だ?

そいつはきっと今も――――

13: 2016/01/18(月) 22:50:06 ID:rhB0JEaw0
「記憶喪失……?」

エレン「はい……ここに来るまでのことが、何も思い出せないんです」

医者「自分の名前や、家族構成も?」

エレン「……全く覚えてません」

医者「特に脳に異常は見られないが……事故による精神的ショックでしょうか」

医者「普通に話したりはできるみたいですから、日常生活には困らないと思いますが……」

ジャン母「本当に何も覚えていないのかい……?」

エレン「すみません、お母さん」

ジャン母「いやだ……あんたにそんな風に呼ばれたの、何年振りかしらね」

エレン(ごめんなさい……でもこうするしかないんだ)

エレン(家族の前で完璧にジャンを演じきるなんて無理だ……それでも)

エレン(俺はこの体でやらなきゃならないことがある)

14: 2016/01/18(月) 22:50:48 ID:rhB0JEaw0
俺を……エレン・イェーガーを頃した犯人。

そいつをこの手で見つけだしてやる。

15: 2016/01/18(月) 22:51:32 ID:rhB0JEaw0
ジャン母「クラスのみんなから、またお見舞いの花が届いてたよ」

エレン「ああ……まだ、会う気しなくて」

エレン(あいつらの前でどう振る舞うか……退院するまでに考えておかなきゃな)

ジャン母「マルコ君と……アルミン君だっけ? すごく心配して、早く会いたがってたよ」

エレン(アルミンってそんなにジャンと仲良かったっけ……?)

16: 2016/01/18(月) 22:52:17 ID:rhB0JEaw0
ジャン母「それから、お医者さんが二学期中には学校に通えるようになるだろうって」

エレン「……あの」

ジャン母「ん? なんだい」

エレン「怖くないんですか、俺のこと」

ジャン母「あはは、何言ってんだいこの子は!」

エレン「…………」

ジャン母「記憶なんかなくったって、あんたは私の立派な息子だよ」

エレン「……ありがとう、ございます」

ジャン母「一番怖いのはその敬語だね。遠慮なんかしなくていいんだよ」

エレン(……いい家族だな)

エレン(俺は、この人たちを騙そうとしている……)

エレン(……俺の母さんは、親父は、今頃どうしてるだろう)

17: 2016/01/18(月) 22:53:05 ID:rhB0JEaw0
警察「ジャン・キルシュタイン君だね? 少し、お話を伺いたいんだが」

医者「彼は事故のショックで記憶を失っているんですよ」

警察「分かっています。……この人物について、何か知っていることはあるかい?」

エレン(ああ、よく知ってるよ。見慣れた自分の顔だ)

エレン「……いいえ」

警察「あの日の晩、いったい何があったのか……少しだけでもいいんだ、何か覚えていることは」

エレン「ごめん、なさい……何も……」

医者「さあ、もうここまでです。あまり刺激しないでいただきたい」

警察「……何か思い出したことがあったら、また連絡してほしい」

18: 2016/01/18(月) 22:53:56 ID:rhB0JEaw0
エレン(警察か……)

エレン(このまま記憶喪失を装って、情報を聞き出すか……いや)

エレン(さっきの様子だと、まるで俺のことを疑っているみたいだったぞ……)

エレン(記憶喪失でも犯人にされたりするんだろうか? 入れ替わりなんて絶対信じてもらえない……)

エレン(第三者を見たんですって証言するか? 誰かもわからないのに……)

エレン(そこだけ思い出すなんて不自然か……下手すりゃ記憶喪失を演じてるのがばれる)

エレン(そもそもジャンは何であの場所にいたんだ? それが説明できない)

エレン(だめだ……細かく追及されると絶対にぼろが出る)

エレン(他に目撃者はいないはず。だったら事故だと思ってくれた方がまだ……)

エレン(……それに)

エレン(……犯人については警察も把握していない……)

エレン(警察に先を越される前に、俺が必ず―――)

19: 2016/01/18(月) 22:54:37 ID:rhB0JEaw0
エレン(約二か月後。俺は無事退院することができた)

エレン(入院中、俺に気を使ってかジャンの両親も病院の人も一切事故のことを口にしなかった)

エレン(警察はあのあと数回訪れたが、俺から何も情報を引き出せないとわかり、しだいに姿を見せなくなった……)

20: 2016/01/18(月) 22:55:23 ID:rhB0JEaw0
エレン「ここが、俺の家……」

ジャン母「そうだよ。案内したげるからね」

エレン(こんなことにならなきゃ、来ることもなかっただろうな……)

ジャン母「ここがあんたの部屋だよ。すぐご飯作るから、待っててね」

エレン(ジャンの部屋か……)

エレン(何か事件の証拠とか……あるわけねーよな……)

エレン(携帯は落下の衝撃で駄目になって、新しいのを買ってもらった)

エレン(連絡先なんかは一から入れなおさなきゃならない……そういや俺、あいつの番号も知らなかったな)

21: 2016/01/18(月) 22:56:12 ID:rhB0JEaw0
エレン「…………」

エレン「落ち着かねえ……」キョロキョロ

エレン(部屋の配置とか色とか全部! まあ気が合わないんだし当たり前か)

エレン(あそこに立てかけてるのはギターか……そういや軽音部なんだっけ?)

エレン(おっ、工口本だ。ベッドの下に隠すなんて見つけてくれって言ってるようなもんだろ)ガサゴソ

エレン「……」パラパラ

ジャン母「ジャン! ご飯できたよ!」ガチャ

エレン「うわ!? ノックぐらいしてくださいよ!!」

ジャン母「すまないねぇ。……なんだか、前にも同じやり取りしたの、思い出したよ」

エレン「…………」

エレン(そうだ、あいつはここで暮らしてたんだよな……)

22: 2016/01/18(月) 22:56:52 ID:rhB0JEaw0
エレン「……美味しいです」モグモグ

ジャン母「まあ、あんたからそんな言葉が聞けるなんて! もう記憶戻らないほうがいいんじゃないのかい」

エレン「はは……」

エレン(学校はすでに二学期が始まっていて、翌日にも登校することになっている)

エレン(これからの身の振り方も考えなくちゃならないが、その前に―――)

エレン「あの、昔の新聞ってまだ置いてますか?」

ジャン母「包装用にとってあるかもね。何に使うんだい?」

エレン「ちょっと調べたいことがあるんです。それから、少し外に出たいんですけど」

ジャン母「ああ……外の空気を吸ってきた方がいいかもね。暗くなる前に帰るんだよ」

23: 2016/01/18(月) 22:57:21 ID:rhB0JEaw0
エレン「久しぶりだな……」

俺の家。

見た目は何も変わってない。でも……

24: 2016/01/18(月) 22:58:24 ID:rhB0JEaw0
ピンポーン

カルラ「はい。……あら、確かエレンと同じクラスの―――」

エレン(母さん……やつれてる……)

エレン「ジャンっていいます。……あの、事故に遭って、何も思い出せないんですけど」

カルラ「……」

エレン「エレンのこと、気を落とさないでください」

カルラ「……大丈夫よ」

カルラ「あの子はきっと帰ってくる。そう信じてるわ……」

カルラ「なんでもなかったように、ただいまって、きっとそうよ……」

カルラ「……ごめんなさいね」

25: 2016/01/18(月) 22:59:06 ID:rhB0JEaw0
エレン(ああ……)

エレン(今すぐ……俺がエレンだって名乗れば、母さんはどう思うんだろう)

エレン「……あの、親父さんは元気ですか?」

カルラ「ええ、今日も時間外診療みたいで……忙しい人なのよ」

カルラ「来る途中に診療所があったでしょう? あそこで働いているの」

エレン(親父、早く帰ってやれよ……)

カルラ「心配してくれてありがとう。……なんだか不思議ね、初めて喋った気がしないわ……」

エレン(これ以上はまずいか……)

エレン(早く教えてやりたい。俺は無事だって、ちゃんと生きてるって)

エレン(でも、犯人を見つけ出すまでは、まだ―――)

26: 2016/01/18(月) 22:59:50 ID:rhB0JEaw0
エレン(母さん、親父、もう少し待っててくれ)スタスタ

女子生徒「あれ、ジャンじゃん! おーい!」

エレン「ん?」

エレン(うちの学校の制服だ。見たことない顔だな)

女子生徒「なんで面会してくれなかったの? 連絡しても返事来ないし」

エレン「あー、悪いけど……誰だっけ」

女子生徒「ちょっと! いつから先輩にタメ口きけるほど偉くなったのよ!」

エレン(げっ、先輩だったのか)

エレン「すいません先輩。俺……記憶喪失で、何も覚えてないんです」

女子生徒「ええっ、うっそ! じゃあ私たちのことも全部忘れちゃったの!?」

エレン「……はい」

女子生徒「そっか……じゃあ、しょうがないか。バイバイ」

エレン(あいつの彼女か? 悪いことしたな……)

27: 2016/01/18(月) 23:00:26 ID:rhB0JEaw0
キース「もう、体は平気なのか?」

エレン「はい……まだ記憶は戻らないんですけど」

キース「……まあ、思い出さない方が幸せなこともある」

エレン「…………」

28: 2016/01/18(月) 23:01:11 ID:rhB0JEaw0
ガララッ

「ジャン!」

ザワザワ

マルコ「良かった……本当に心配したんだぞ」

アルミン「病院でも全然会ってくれないから……いったい、どうしたの?」

エレン「悪い……実は俺」

29: 2016/01/18(月) 23:02:04 ID:rhB0JEaw0
「記憶喪失!?」

マルコ「本当に、何も覚えてないのか……?」

エレン「ああ」

アルミン「そう、か……そうなんだ……」

エレン「……」

クリスタ「……よかった」

エレン「よかった……?」

クリスタ「えっ……ごめんね! 変な意味はないの」

ユミル「おい、よしとけって」

クリスタ「私はクリスタ。はじめまして、だね。彼女はユミル」

30: 2016/01/18(月) 23:02:56 ID:rhB0JEaw0
エレン「……」

エレン(なんだ、この感じ……)

ライナー「ライナーだ。……まあ、とにかく元気そうで何よりだな」

ベルトルト「……そうだね。あ、僕はベルトルト」

エレン(まるで……俺の記憶が戻らないことを望んでるみたいな……)

マルコ「とりあえず……僕はマルコ。あとで校舎を案内するよ」

エレン「ああ。よろしくな、マルコ」

エレン(これはこれで好都合かもしれないな……)

エレン(俺が記憶喪失なんかじゃないってことをみんなに知られてはならない)

エレン(ジャンは犯人の顔を見たかもしれないからな……)

エレン(――――そう)

エレン(俺を頃した犯人は、このクラスの中にいる)

34: 2016/01/19(火) 22:08:15 ID:4eEgfNeA0
エレン(犯人がこのクラスにいると考えた理由――)

エレン(それは、俺を呼び出した例の手紙のことだ)

エレン(俺があの手紙を見つけたのは、終業式の日……掃除の後だった)

エレン(掃除のとき、机は中身を全部出して、教室の後ろに積んでたはず)

エレン(俺は外掃除から帰ってきて、机の中の手紙を見つけた……)

エレン(掃除の前には確かに何もなかった。だから手紙を入れたのは掃除中、このクラスの誰かに違いない……)

35: 2016/01/19(火) 22:10:17 ID:4eEgfNeA0
サシャ「私はサシャです! 今日から文化祭の準備が始まりますよ!」

ライナー「復帰早々授業が少なくて良かったな。あの鬼教師は記憶がなかろうと加減しなさそうだ」

コニ―「俺は天才コニー! 勉強わかんなくなったら俺が教えてやるぜ」

マルコ「それは……あまり期待できないかな……」

エレン(文化祭か……)

エレン(あいつも演奏とかしたんだろうか)

エレン(………………)

エレン(……やめよう。事件のことを考えるんだ……)

36: 2016/01/19(火) 22:11:36 ID:4eEgfNeA0
エレン(あのとき外掃除だったのは俺とジャンとミカサ。何故か喧嘩になったから覚えてる……)

エレン(あの二人に手紙を入れるチャンスはなかったはず。だから除外してよさそうだ)

エレン(そもそもあいつらを疑うこと自体ばかばかしいけどな……)

エレン(……いや。それを言ったらほかの連中だって……)

37: 2016/01/19(火) 22:12:29 ID:4eEgfNeA0
エレン(俺の席は……確かあそこ、だよな)

エレン「……あ」

エレン(花瓶が置かれてる。本当に、氏んじまったんだな……)

アルミン「……また……」スタスタ

ヒョイッ

エレン「えっ?」

38: 2016/01/19(火) 22:15:28 ID:4eEgfNeA0
アルミン「捨ててくる」

エレン「お前……それ、何で」

アルミン「いいんだ、ジャンは気にしなくていいから」

一同「…………」

エレン(……どうして……)

ユミル「呆れた奴がいるもんだな」

39: 2016/01/19(火) 22:16:18 ID:4eEgfNeA0
マルコ「ジャン……気になると思うけど、あれは」

エレン「くそっ……!」ダッ

マルコ「ジャン!?」

エレン「おい! アルミン!」

エレン「どこいった……あいつ」キョロキョロ

アニ「何だ、思ってたより元気そうだね」

ミーナ「ジャン、ホントに生きてたんだ……」

エレン「……あ」

40: 2016/01/19(火) 22:17:31 ID:4eEgfNeA0
アニ「あんた、何も覚えてないんだって?」

エレン「ああ……悪い」

ミーナ「へえ、そうなんだ……」

アニ「じゃあ、仕方ない……むしろその方がいいか……」

エレン「……花瓶、お前が持ってたのか」

アニ「そうだけど?」

エレン「それ、飾るんだよな?」

アニ「まあ……これくらいしかできることないからね」

ミーナ「アニってこう見えて優しいんだよ」

41: 2016/01/19(火) 22:18:24 ID:4eEgfNeA0
エレン「……ありがとな」

アニ「別に、私がやりたくてやってるだけだから」

アニ「……って、何であんたが?」

エレン「あ、いや……気になるだろ、そりゃ」

エレン「氏んじまったんだよな、そいつ」

アニ「…………」

ミーナ「…………」

エレン「なあ……そいつ、どんな奴だった?」

エレン(こんなこと訊いてどうするんだ……)

アニ「……さあ」

アニ「いい奴だったと、思うよ」

42: 2016/01/19(火) 22:19:20 ID:4eEgfNeA0
コトッ

エレン「後ろのロッカーの上に置くのか?」

アニ「文化祭の準備が始まるからね」

エレン「なあ、名前教えてもらっていいか?」

アニ「アニだけど」

ミーナ「ミーナだよ。よろしくね」

アルミン「……」ジーッ

エレン(なんだよ、あいつ……)

43: 2016/01/19(火) 22:20:24 ID:4eEgfNeA0
エレン(…………)

エレン(俺の机は空っぽのまま。帰ってこない持ち主を待っている……)

エレン(ハートのスタンプ。懐かしいな……)

エレン(前の持ち主が残してったやつ。いくら消しても落ちなかったんだよな)

エレン(確かお揃いスタンプを押された机があって、よくからかわれたっけ……)

エレン(それを知ったミカサもなぜか自分の机に……)

エレン(………………)

エレン(ミカサの奴、遅いな)

44: 2016/01/19(火) 22:21:49 ID:4eEgfNeA0
ガララッ

キース「本日より学園祭の準備が始まる。クラスで出し物を考えておくように」

ザワザワ

オバケヤシキ-! イヤイヤ、メイドキッサ-! ……

エレン「……なぁ、ミーナ」

ミーナ「えっ!? ……ジャン。どうしたの?」

エレン「あの席のやつ……どうしたんだ?」

ミーナ「ああ、やっぱり気になるんだ? 記憶が無くなっても、想いは変わらないんだね」

エレン(……? どういう意味だ?)

ミーナ「あの子、ずっと学校に来てないの」

45: 2016/01/19(火) 22:23:28 ID:4eEgfNeA0
エレン「えっ」

ミーナ「色々、辛いんだと思う……何とかしてあげたいけど……」

エレン(ミカサ……)

エレン「……そんなに、ショックだったのか」

ミーナ「うん……私とエレン……あそこの空いた席の人ね、二人の机にハート柄のスタンプが押されてたの」

エレン(ああ……)

ミーナ「それでよくからかわれたんだけど……ミカサがそれを知って、自分の机にもスタンプを押したの」

エレン「……」

ミーナ「周りは冗談半分だったと思うんだけど、ミカサは本気だったから」

ミーナ「それだけエレンのことを想ってたんだろうなあって」

ミーナ「そのエレンが氏んじゃったでしょ、だから……」

エレン「…………」

エレン(俺は、ミカサになんて言えば……)

46: 2016/01/19(火) 22:24:41 ID:4eEgfNeA0
ライナー「おい、聞いてるのか、ジャン」

エレン「え……? 何だっけ?」

サシャ「出し物がお化け屋敷に決まったんですよ!」

エレン「へえ……そうなのか」

コニ―「なんだよ、ノリ悪いな」

ミーナ「いいじゃん、楽しそう」

エレン(今の俺が幽霊みたいなもんだけど。なんてな……)

ベルトルト「まあ、あんなことがあったばかりだし……」

ライナー「おい、その話はしない約束だろう」

ベルトルト「あ、ごめん……」

47: 2016/01/19(火) 22:25:35 ID:4eEgfNeA0
クリスタ「ミカサも、文化祭までには学校来られるといいな……」

アルミン「……」

エレン「そいつ、ずっと休んでるんだよな?」

ユミル「ああ。様子見に行ってやったらどうだ?」

エレン「言われなくても行くよ」

ユミル「そうか……エレンの奴、何やってんだか。ミカサが馬面に取られちまうぞ」

エレン「はっ?」

クリスタ「ごめんね、悪気があるわけじゃないの」

ユミル「ああ悪かった。ちなみに、馬面ってのはお前のことだからな」

クリスタ「もう!」

48: 2016/01/19(火) 22:26:07 ID:4eEgfNeA0
エレン(授業は早めに終わり、文化祭の準備が始まった)

エレン(コニ―はともかく……マルコがノートを貸してくれたから、授業についていけずに困ることはなさそうだ……)

49: 2016/01/19(火) 22:27:44 ID:4eEgfNeA0
マルコ「とりあえず、役割分担からだね」

サシャ「私お化け役やりたいです!」

ミーナ「隣の人が実は幽霊だったりしたら怖いよね」

ライナー「体力の余ってるやつは大道具を手伝ってくれ」

アニ「私はひ弱だから小道具にしとくよ」

マルコ「ジャンはどうする?」

エレン「空いてるやつを手伝うよ」

エレン(みんなから話を聞くチャンスだ)

50: 2016/01/19(火) 22:29:17 ID:4eEgfNeA0
ライナー「怪奇! はるか昔に実在したとされる人喰い巨人の正体とは!? 2000年もの時を経て、取材班

     たちの前に姿を現す驚愕の真実!! 歴史的瞬間を見逃すな! 今夜、あなたは真実の目撃者となる

     ……ずいぶん長いタイトルだな」 

エレン「ああ。俺その番組がすげえ気になってたらしくて、メモしてたんだ」

エレン「たぶん入院してて見逃したんだよ。お前見てないか?」

ライナー「残念だが見ていないな」

エレン「そうか。ひょっとして、隣町の花火大会に行ってたのか?」

ライナー「いや、確か走り込みをしていて見た記憶があるな……」

エレン「へえ。俺も行きたかったな……なあ、そこのお前はどうだ?」

エレン(まさにその日、俺は殺されたんだ)

エレン(新聞でその日の出来事を調べておいた)

エレン(7時からやってたテレビ、6時から8時までの花火大会……)

エレン(できるだけ遠まわしに攻めるしかない。勘のいい奴は気づくかもしれないが……)

51: 2016/01/19(火) 22:30:38 ID:4eEgfNeA0
ベルトルト「巨人? 知らない。図書館でずっと花火の音を聞いてた覚えがあるよ」

マルコ「巨人? 知らない。7時過ぎには図書館にいて、ベルトルトに会ったんだ」

マルコ(事故に遭ったのはその日のはずだ……偶然なのか?)

アニ「巨人? 知らない。騒がしいのは嫌いだから、家にいたよ」

ミーナ「巨人? 知らない。その日は学校終わってずっと家にいたよ」

サシャ「巨人? 知らないです。花火もいいけど屋台は最高でしたよ!」

コニ―「巨人? 知らねーよ。花火大会行ったけど途中でサシャとはぐれちまって大変だったなー」

クリスタ「巨人? 知らない。花火きれいだったよ。後で写真送るね」

ユミル「巨人? 知るか。クリスタと花火見に行ってたな、確か」

キース「巨人? 知らんな。7時過ぎまで職員会議が長引いていたからな」

52: 2016/01/19(火) 22:31:49 ID:4eEgfNeA0
アルミン「ああ、その番組なら見てたよ」

エレン「ホントかよ! あれ見てたの、お前が初めてだぞ」

アルミン「うん。だから事故のあった日、岬には行っていない」

エレン「え……」

アルミン「君が知りたいのはそこなんだろう?」

エレン「何、言ってんだよ。ただの偶然」

アルミン「ねえ君、本当に記憶喪失なの?」

エレン「は!? なんでそんな……」

アルミン「だったら訊くけど、どうして僕の名前を知ってたの?」

エレン「え?」

53: 2016/01/19(火) 22:32:27 ID:4eEgfNeA0
アルミン「僕が花瓶を持って出て行ったとき、名前を呼んだよね?」

アルミン「その時はまだ名乗ってなかったのに」

エレン「あ……」

エレン「……面会を何度か希望してたみたいだから、そこで名前を知ったんだよ」

エレン「病院でも会ってくれなかったみたいに言ってただろ? だからそうじゃないかと思ったんだ」

アルミン「そう、分かったよ。変なこと言ってごめん」

アルミン「例の事故について知りたいのは僕も同じなんだ。何か分かったことがあったら、教えてくれるかな?」

エレン「ああ」

エレン(協力してくれるのか? それともなにか思惑があって……)

エレン(何考えてんだ俺。アルミンを疑うなんて……)

54: 2016/01/19(火) 22:34:06 ID:4eEgfNeA0
放課後

マルコ「とりあえず今日はここまで解散かな」

ザワザワ

エレン(ミカサの家に寄っていこう……あ)

エレン「なあ、連絡先教えてくれよ」

マルコ「ああ、前の携帯はだめになったのか」

ライナー「おう、いいぞ」

クリスタ「改めてよろしくね、ジャン」

サシャ「なんだか、今のジャンは素直ですね!」

アニ「……そういや、前のあんたの番号知らなかったね」

エレン(ほかの奴は帰っちまったか……まあ後でいいか)

55: 2016/01/19(火) 22:35:30 ID:4eEgfNeA0
エレン(ミカサの家は確かこっちだったな)スタスタ

???「……」スタスタ

エレン「……あ」

エレン「おい! ミカサ!」

ミカサ「……ジャン?」

エレン「お前、一体どこほっつき歩いてたんだよ!?」

ミカサ「ジャン、もう平気なの」

エレン「あ、ああ……」

ミカサ「そう……それはよかった……」

エレン「…………」

56: 2016/01/19(火) 22:36:35 ID:4eEgfNeA0
ミカサ「記憶喪失、だと聞いた。本当に何も覚えていないの? エレンのことも」

エレン(…………)

エレン(ミカサにだけは、本当のことを話してもいいんじゃないのか……?)

エレン(入れ替わりなんてすぐには信じてくれないだろうけど……)

エレン(……いや、だめだ)

エレン(一人に話したら、他の奴にも……決心が鈍っちまう)

エレン「ああ。ごめんな」

ミカサ「でも、私の名前を知っていた」

エレン(げっ、また同じ失敗を……)

エレン「お、お前のこと忘れるわけねえだろ。なんてな……」

エレン(ごめんなジャン、勝手にキャラ作っちまった)

ミカサ「……そう」

57: 2016/01/19(火) 22:37:44 ID:4eEgfNeA0
エレン「それより、エレンのことだけどな」

ミカサ「……」

エレン「あんま気落とすなよ。それから、早く学校に……」

ミカサ「大丈夫。エレンは私が助けるから」

エレン「な……」

ミカサ「ジャンは心配しなくていい」

エレン「……あのなミカサ。エレンはもう氏んだんだぞ」

ミカサ「え……?」

ミカサ「エレンが氏んだ……? どうして……?」

エレン「どうしてって、そりゃ」

ミカサ「あなたが、頃したの?」

エレン「……まあ、俺が頃したようなもんだな」

58: 2016/01/19(火) 22:38:39 ID:4eEgfNeA0
ミカサ「……! この……!!」ガシッ

エレン「!!」

ミカサ「……かえして」

エレン「あ……」

ミカサ「お願い。エレンに会わせて……」

エレン「…………」

エレン「悪い。あいつのことは、もう忘れてくれ……」ギュ

エレン(ごめんな、ミカサ)

ミカサ「…………」

エレン「じゃあな」

ミカサ「……あの、待って」

ミカサ「あなたは……」

ミカサ「……」

ミカサ(いや、そんなはずは……)

59: 2016/01/19(火) 22:39:36 ID:4eEgfNeA0
アルミン「ミカサ!」

ミカサ「アルミン?」

アルミン「ジャンに変なことを言われなかった?」

ミカサ「……いえ、別に」

アルミン「本当に?」

ミカサ「……エレンのことはもう忘れろ、とだけ」

アルミン「やっぱりか……まずいな」

ミカサ「エレンは生きている。そうでしょう?」

アルミン「……うん」

ミカサ「私が救い出してみせるから……」

アルミン「それは僕がやるよ。ミカサは、しばらく出歩かない方がいい」

ミカサ「……わかった」

60: 2016/01/19(火) 22:47:14 ID:4eEgfNeA0
ピロリロリン

アルミン「……もしもし? ……うん、もう少し様子を見て……」

61: 2016/01/19(火) 22:48:36 ID:4eEgfNeA0
エレン(また、来ちまった)

エレン(母さん、元気にしてるかな……今日は休診日だから、親父も家にいるはずだ)

エレン(何回も訪問するのはさすがに不自然だよな、でも……)

ピンポーン

カルラ「はい。……あら、また来てくれたの」

エレン(母さん……)

カルラ「誰かが訪ねてくるたびに、エレンかと思ってしまうの」

カルラ「あの子がチャイムを鳴らすはずないのにね……」

エレン「……そのうちエレンに会えますよ、きっと」

エレン(こんなの気休めにもならない。それどころか、もっと傷を深くするだけなんじゃないのか……?)

カルラ「そう……優しいのね」

エレン「…………」

エレン「あの、親父さんは」

カルラ「今日は休診日のはずなんだけど、最近忙しいみたいで……」

エレン「……そうですか」

62: 2016/01/19(火) 22:55:21 ID:4eEgfNeA0
エレン(親父は何やってるんだ……?)

女子生徒「あっ! いたいた!」

男子生徒A「お、久しぶりじゃん。って覚えてないんだっけか」

男子生徒B「マジでよく生きてたなー、お前」

エレン(ああ……ジャンの彼女(仮)と、あと二人も先輩か?)

エレン「あの、すいませんけど誰」

女子生徒「さっき見てたよー、アツいね」ツンツン

エレン「えっ!? いや違いますよ、あれはただの」

女子生徒「かわいい彼女いたのにもう乗り換えたんだ。薄情者め」

エレン「……すみません」

男子生徒B「別に謝るこたねーだろ。女なんていくらでもいるしな」

女子生徒「ひどっ」

63: 2016/01/19(火) 22:57:41 ID:4eEgfNeA0
男子生徒A「なあ、つーかお前マジで記憶喪失なの」

エレン「はい。何も思い出せなくて」

男子生徒A「なんか前より素直になったな」

男子生徒B「マジかよー、じゃあもう歌うのも無理?」

エレン「歌う……?」

女子生徒「そうだ! 曲聴いたら思い出すんじゃない?」

男子生徒B「おっいいね。お前んち案内しろよ」

エレン(ああ、軽音部の人たちだったのか)

64: 2016/01/19(火) 22:58:43 ID:4eEgfNeA0
男子生徒A「ちわーす」

ゾロゾロ…

ジャン母「まあ、こんなにお友達連れてきて」

男子生徒B「センパイっすよ、一応」

女子生徒「へー、結構部屋片付いてるね」

男子生徒B「うお、結構高いだろこのギター。どれどれ」

♪~

エレン(あれ? どっかで聴いたような……)

男子生徒A「どうだ? なんか思い出したか?」

エレン「……すみません、何も」

女子生徒「やっぱり駄目かあ」

65: 2016/01/19(火) 23:02:05 ID:4eEgfNeA0
男子生徒B「ウソだろー、お前が歌ってくれなきゃチケット捌けねえよー」

男子生徒A「それどころかスタジオ貸してくれるかも厳しいな」

エレン(結構本格的に活動してたのか)

エレン「なんか、俺のせいで……本当すみません」

男子生徒A「まあしょうがねえだろ。無事だっただけでも良いことだし」

女子生徒「気にしなくていいよ、また新しいボーカル探せばいいんだから」

男子生徒B「もう邪魔者もいないことだしな」

男子生徒A「おい、やめろって……」

エレン「邪魔者? それってどういう」

女子生徒「ただの変質者よ。それじゃね」

66: 2016/01/19(火) 23:10:23 ID:4eEgfNeA0
エレン(あの音楽……どこで聴いたんだ?)

ジャン母「ジャン、ご飯できたよ」

エレン「あ、すぐ行きます」

ジャン母「今日はあんたの好物にしてみたよ」

エレン「いただきます」

エレン(オムライスか……ガキっぽい奴だな)

エレン(でも、確かに美味しいな。早く元に戻って、母さんの手料理が食べたいけど……)

ジャン母「いやだ、泣くほど美味しかったのかい? あんたはやっぱりオムオムが好きなんだね」

エレン「え……?」ポロポロ

67: 2016/01/19(火) 23:10:55 ID:4eEgfNeA0
エレン「なんでもないです」ゴシゴシ

エレン(何考えてんだ、俺)

エレン(元に戻るなんてもうできないのに)

エレン(じゃあ、どうする? このままずっとジャンとして生きるのか?)

エレン(いつまでもこんな生活続けていられると本気で思ってんのかよ?)

エレン(だったら? 何もかも打ち明けるのか? ……俺は、この人たちを捨てるのか?)

エレン(しょうがないだろあいつはもう氏んじまったんだから)

エレン(……そうだ。何もかも犯人の奴が悪いんだよ)

エレン(今はそいつを捕まえることだけ考えろ)

68: 2016/01/19(火) 23:12:20 ID:4eEgfNeA0
エレン(今日訊いてみた限りだと……)

エレン(アルミン、アニ、ミーナ、サシャ、コニーも……事故のあった時間帯のアリバイがない)

エレン(……)

エレン(だから?)

エレン(こいつらの中に犯人がいるって?)

エレン(二人でいた連中も口裏合わせてるだけかもしれない)

エレン(家にいた連中の家族に確認を取ってみるか? いや、家族だって庇うか……)

ピロリロリン

エレン「お、メールだ。誰から――」

69: 2016/01/19(火) 23:13:03 ID:4eEgfNeA0
エレン「!?」

これ以上あれこれ嗅ぎまわるのはやめろ。

エレン「なんだ……これ……」

エレン(フリーメールか。いったい誰が……)

70: 2016/01/19(火) 23:13:57 ID:4eEgfNeA0
エレン(とりあえず返信してみるか)ポチポチ

お前は何者だ?

エレン「……」ドキドキ

ピロリロリン

エレン「来た!!」

真実を知っている者だ。余計な真似はするな。

エレン(どういうことだ……?)

71: 2016/01/19(火) 23:14:51 ID:4eEgfNeA0
エレン(真実って……まさか、俺の正体を?)

エレン(そんな……いや待てよ)

エレン(このアドレスを知っている人間がどれだけいるか……)

エレン(今日アドレス交換したやつ、元々ジャンのアドレスを知ってるやつ……)

エレン(くそ、前の携帯のデータが生きてればな……)

エレン(俺が事件のことを調べてるのに気づいたんだ……こいつが犯人に間違いない)

エレン(必ず尻尾をつかんでみせる)

74: 2016/01/20(水) 23:38:17 ID:g5VJ8RZ20
翌日

マルコ「今日は皆で協力して背景を作ろう」

サシャ「段ボールで仕切りと、ビニールで草むらも作るんですよね!」

コニ―「俺、壁に手形つけるやつやりてーなー」

エレン「すげえ本格的なんだな」

クリスタ「はい、これエレンの分! 数が多いから手分けしてやらなきゃ」

エレン「ああ」

ミーナ「頑張ってね」

75: 2016/01/20(水) 23:39:03 ID:g5VJ8RZ20
ワイワイ

マルコ「とりあえず床面から作っていこうか」

ライナー「みんな進捗具合はどうだ?」

サシャ「小道具は半分くらいできましたよ! コンニャクは当日ですね。鮮度が大事なので!」

コニー「食っちまうんじゃねえぞ!」

サシャ「私そこまで食い意地張ってませんよ!」

クリスタ「幽霊役の衣装のペイントもそろそろ考えておかなきゃ」

エレン(……)

エレン(俺の花瓶は今日も後ろのロッカーに置かれてる。誰か水を替えてくれたんだろうか)

アニ「面倒だね……」

ミーナ「じゃあ私がやろっか? なんて」

エレン「おい、人に押し付けてんじゃねえよ」

アニ「……は?」

ライナー「おい、やめないか……」

76: 2016/01/20(水) 23:39:55 ID:g5VJ8RZ20
アニ「別に、押し付けようとなんかしてないけど」

ミーナ「いいのいいの! 私のことは気にしなくていいから」

エレン「でも」

コニー「おーい! 段ボール持ってきたぞー」ドンッ

コニー「やべっ、なんか当たった?」

アニ「あ」

ミーナ「花瓶が……!」

エレン「危ねえ!!」ドンッ

ガシャーン

一同「!!」

77: 2016/01/20(水) 23:41:18 ID:g5VJ8RZ20
エレン「ふぅ……二人とも無事だ。よかった……」

一同「……」ホッ

アニ「……どうも」

ミーナ「ありがとう、エレン」

コニー「悪い……花瓶割っちまったな」

エレン「いいんだよ、こんなもんは」

コニー「こんなもんってお前」

ミーナ「そうだね……命のほうが大事だよ」

アニ「花瓶、新しいのを貰ってくるよ」

エレン「あ、俺も行く」

78: 2016/01/20(水) 23:42:06 ID:g5VJ8RZ20
アニ「……さっきは、悪かったね」

エレン「ああ、俺も悪かったよ」

ミーナ「よかった、仲直りできて」

アニ「あんたさ、帰ってきてから別人みたいだね。記憶ないから当たり前だけど」

エレン「……俺の記憶、戻らない方がいいと思うか?」

アニ「さあ、どっちでもいい……と言いたいところだけど」

エレン「ん?」

アニ「記憶が戻ったら、私はあんたのことを許さないかも」

エレン「え……?」

アニ「そうじゃないことを願ってるけどね。すべてはあんた次第だよ」

ミーナ「……」

エレン(どういうことだ……?)

79: 2016/01/20(水) 23:42:49 ID:g5VJ8RZ20
ライナー「おっ、戻ってきたな」

エレン「ああ、心配かけたな」

サシャ「なんだかエレンを思い出しますねー、今のジャンって」

一同「……」

コニー「おいバカ、お前のせいで葬式になっちゃったじゃねーか」

ユミル「何が葬式だ、馬鹿はお前だろ」

コニー「おい、バカって言った方がバカなんだぞ!」

クリスタ「でも似た者同士だったよね、二人って」

エレン「はあ? あんな奴と似てたまるかよ」

アルミン「……」

80: 2016/01/20(水) 23:43:47 ID:g5VJ8RZ20
クリスタ「そういえば、いつだったかジャンがエレンみたいな変装してたことがあったね」

ユミル「ああ、あれは笑ったな」

エレン「はっ?」

ユミル「変装つってもカツラかぶってただけだけどな」

クリスタ「なんだか深刻そうな顔してたから、話しかけられなかったの」

エレン(そんなことが……)

コニー「分かんねーなー、仲悪いのになんでそんなことしたんだ?」

ユミル「さあな、エレンに間違えられるとでも思ったんじゃねえのか? ありえないけどな」

エレン(そんなことをする意味が分からないし、他に理由があるはずだ)

マルコ「……」

「そういや、ミカサってまだあんな奴のこと――」

81: 2016/01/20(水) 23:47:24 ID:g5VJ8RZ20
♪~

エレン「!?」

コニー「うお、びっくりしたー」

ライナー「ああすまん、俺だ。もしもし……」スタスタ

エレン「なあ、今の曲……」

ベルトルト「えっ? 最近流行ってるバンドの歌みたいだけど」

ベルトルト「記憶がなくても音楽の好みは一緒なのかな……?」

クリスタ「私も好きだよ! 最近よく聴いてるの」

ユミル「意外とミーハーさんだなお前」

ミーナ「いい曲だよねー。ジャンもよくライブで歌ってたんだよ」

エレン「俺が、ライブであの歌を……」

コニー「おっ? なんか思い出したのか?」

サシャ「そういえば軽音部でしたね」

クリスタ「ジャンの歌、聴いてみたいな」

ユミル「お前ボーカルだったのかよ。聴かせてやれ……ってさすがに無理か」

82: 2016/01/20(水) 23:48:19 ID:g5VJ8RZ20
ライナー「……なんなんだ? 全く」

ベルトルト「誰からだったの?」

ライナー「無言電話だ。公衆電話からかけたみたいだが……」

ベルトルト「間違い電話かな?」

エレン(…………)

エレン(間違いない。あの着信音は……)

エレン(俺が崖から落ちるときに聴いた曲だ)

エレン(それから、昨日ギターで聴かされたのも同じ曲だった……)

エレン「アルミン。後でちょっといいか?」ボソッ

アルミン「……うん」

83: 2016/01/20(水) 23:49:00 ID:g5VJ8RZ20
エレン「まずはこのメールを見てくれ」

これ以上あれこれ嗅ぎまわるのはやめろ。

アルミン「……脅迫文めいた文章だね」

エレン「ああ。犯人のやつは俺が探りを入れてることに気づいたんだ」

アルミン「そうだね……」

エレン「一刻も早く犯人を見つけねーと。それから、さっきの着信音なんだけどな……」

アルミン「あれがどうかしたの?」

エレン「俺、思い出したんだよ。エレンの奴が崖から突き落とされる前にあの曲を聴いたんだ。だから……」

アルミン「…………そうか」

アルミン「じゃあ、犯人はやっぱり……」

エレン「ああ……」

84: 2016/01/20(水) 23:49:33 ID:g5VJ8RZ20
アルミン「君なんだね?」

エレン「…………は?」

85: 2016/01/20(水) 23:50:57 ID:g5VJ8RZ20
アルミン「君はいま自白したも同然なんだよ」

エレン「何言って―――あ」

エレン(そうか、表向きは不慮の事故ってことになってるんだ……くそ)

アルミン「君は自分の犯行が誰かに目撃されたのではないかと恐れていた」

アルミン「だから記憶喪失を装って、事故のあった日に皆がどこにいたか知ろうとしたんじゃないのかい?」

アルミン「そしてアリバイのない人間を犯人に仕立て、僕の警戒を解いて情報を引き出そうと……」

エレン「おい、いいかげん怒るぞ」

アルミン「昨日もエレンの家の周りをうろついてたみたいだね……何を調べてるの?」

エレン(ばれてたのか!!)

エレン「まあ、色々あってな……」

アルミン「エレンと仲が悪かったこと、思い出したんだよね?」

エレン「え?」

アルミン「さっき、あんな奴に似てたまるかって言ってたじゃないか」

エレン「ああ……そうだな」

86: 2016/01/20(水) 23:52:17 ID:g5VJ8RZ20
アルミン「じゃあ、どうしてエレンのことを気にするの?」

エレン「だって……気になるだろ、目の前で氏なれちゃ」

アルミン「……どういうこと?」

エレン「俺はあの日……たまたま目撃したんだ」

アルミン「犯人の顔は見たの?」

エレン「いや……」

アルミン「着信音が聴こえるほど近くにいたのに?」

エレン「その前に、俺も突き落とされたんだよ。そうだ、今思い出した」

アルミン「たった今、それだけのことを?」

エレン「……ああ」

アルミン「そう……まあ、筋は通ってるか……」

エレン(アルミンは、ジャンが俺を頃したと思ってるのか?)

エレン(そんな訳ないだろ。自分で突き落としといて、救急車なんて呼ぶもんか……)

87: 2016/01/20(水) 23:52:49 ID:g5VJ8RZ20
アルミン「もしもし、ミカサ。今日はずっと家に……え!?」

88: 2016/01/20(水) 23:53:19 ID:g5VJ8RZ20
マルコ「ジャン、アルミンと何話してたの?」

エレン「別に何でもねえよ。それより、訊きたいことがあるんだ」

マルコ「いいよ、答えられることなら……」

エレン「なあ……事故の前に俺、変質者がどうこう言ってなかったか?」

マルコ「ああ、そういえば下駄箱に……」

89: 2016/01/20(水) 23:55:48 ID:g5VJ8RZ20
ジャン『うげっ、またかよ』

マルコ『どうしたんだ?』

まもなく天罰が下る。覚悟しろ。

マルコ『これは……』

ジャン『たちの悪い嫌がらせだよ』クシャクシャ

マルコ『ここまで恨まれるなんて、お前何かしたのか』

ジャン『俺は何もしてねえよ。じきに飽きてやめるだろ……』

90: 2016/01/20(水) 23:56:33 ID:g5VJ8RZ20
マルコ「手紙だけじゃなかったみたいで、他にも誰かにつけ狙われてるとか……ずいぶん参ってたみたいだったよ」

エレン(そいつが例の邪魔者ってやつか。でももういないってことは……?)

マルコ「どうしていきなりそんな……もしかして何か思い出したのか?」

エレン「いや、そいつが何か事件に関わってるのかと思ったんだよ」

マルコ「事件って……あれは事故だろう?」

エレン「事件にしちゃまずいのか?」

マルコ「……あの、辛いことは無理に思い出さなくてもいいと思うんだ」

エレン「俺が思い出したら都合の悪いことでもあるのか?」

マルコ「いや、そんなわけじゃないけど……」

エレン「悪い。また明日な」

マルコ「うん……」

エレン(何イラついてんだ、俺)

91: 2016/01/20(水) 23:57:19 ID:g5VJ8RZ20
エレン(アルミンには明らかに怪しまれてる。俺の家にはもう行かない方がいいか……?)スタスタ

女子生徒「……」スタスタ

エレン「……あ」

エレン「あの、すいません」

女子生徒「え? ああ……まだ何か用?」

エレン「昨日言ってた変質者について、もっと教えてほしいんですけど」

女子生徒「……別にあたし、何も知らないし」

エレン「でも、脅されてたんですよね?」

女子生徒「さあ? あんたが何かしたんでしょ」

エレン「本当に何も知らないんですか?」

女子生徒「しつこいなぁ! それで別れ話がこじれたんじゃないの? ……って覚えてないんだっけか」

エレン「…………」

女子生徒「とにかく、もう私とあんたは何も関係ないから。じゃあね」

92: 2016/01/20(水) 23:58:14 ID:g5VJ8RZ20
男子生徒A「なに話してるんだろうな、あいつら。まさか記憶が戻ったとか?」

男子生徒B「痴話喧嘩じゃねーの?」

男子生徒A「それはないだろ。例の変質者について知りたいとか……」

男子生徒B「もったいねーことするよなー。結構いい女だったのに」

男子生徒A「…………」

93: 2016/01/20(水) 23:58:40 ID:g5VJ8RZ20
エレン(ジャンってああいう性格キツいのがタイプだったのか……)

エレン(とにかく、もうこれ以上の話は聞き出せそうにないな)

94: 2016/01/20(水) 23:59:26 ID:g5VJ8RZ20
エレン(親父、今日も診療やってるかな……)

ガララッ

看護師「こんにちは。どうされましたか?」

エレン「あの、イェーガー先生に会いたいんですけ……ミカサ!?」

ミカサ「……ジャン」

エレン「お前、どこか悪いのか!?」

ミカサ「別になんということはない。少しすりむいただけ」

エレン「何で……何やってんだよ、お前」

ミカサ「大丈夫。心配しなくていい」

エレン「いいわけねえだろ! もう自暴自棄になんのやめろよ、見てらんねえ……」

95: 2016/01/20(水) 23:59:55 ID:g5VJ8RZ20
エレン(……待てよ)

エレン(ミカサがこうなったのは俺のせいじゃねえか)

エレン(俺が真実を打ち明けてれば……どうする? 今からでも……)

エレン(……いや、だめだ)

エレン(ミカサに本当のことを言ったら、自分も犯人を捜すと言い出すかもしれない)

エレン(そして、犯人は俺の行動を監視している)

エレン(ミカサを巻き込むわけには……)

エレン(そういえば……犯人は俺の正体が分かってるはずなのに、なんで襲ってこないんだ?)

96: 2016/01/21(木) 00:01:19 ID:52BS1UTo0
グリシャ「騒がしいな、いったい――」

エレン「あ……」

エレン(親父……)

グリシャ「君は、確か」

エレン「エレンと同じクラスのジャンっていいます。……あの事故に遭って、記憶を失ってしまって」

グリシャ「記憶喪失……か」

エレン「あの、エレ」

グリシャ「ああ、うちのことはもう大丈夫だ」

エレン「え……」

グリシャ「心配してくれなくていい。わざわざ来てくれたのに悪かったね」

エレン「あの、でも」

グリシャ「そろそろ予約の時間だ。君も早く家に帰った方がいい」

エレン「ああ、はい……お邪魔してすみません」

ミカサ「ありがとうございました」ペコリ

看護師「お大事に」

97: 2016/01/21(木) 00:02:03 ID:52BS1UTo0
エレン(なんだよ、あんな邪険に扱わなくてもいいだろ……)

ミカサ「ジャン、さっきの話の続きを」

エレン「……お前、もうエレンのことを考えるのはやめろ」

ミカサ「でも」

エレン「あいつのせいでお前が傷つくのは嫌なんだよ」

エレン「それにあいつだってもうガキじゃねえんだから、お前に世話焼かれても迷惑なんだよ」

エレン「弟や子供扱いすんのやめろよな。だいたいお前は―――あ」

エレン(しまった、喋りすぎたか?)

ミカサ「…………」

98: 2016/01/21(木) 00:03:15 ID:52BS1UTo0
ミカサ「あなたは、エレンなの……?」

エレン「な、何言ってんだよ!? 眼科行った方がいいんじゃねえのかお前!?」

ミカサ「ごめんなさい。つい、おかしなことを……」

エレン「…………」

ミカサ「でも、もうエレンに会えないと思うと……」

エレン(……だめだ)

エレン(俺にはこいつを見捨てることなんかできない)

エレン(ジャン、おばさん、おじさん、ごめんな……俺のせいで酷い目に遭ったのに……)

エレン(犯人を捕まえたら、俺は―――)

エレン「……なあ、もうすぐエレンに会わせてやるから、それまで――」

アルミン「ミカサ!!」

エレン「!?」

99: 2016/01/21(木) 00:03:45 ID:52BS1UTo0
ミカサ「アルミン? どうしてここに」

アルミン「よかった……間に合った」ゼェゼェ

エレン「間に合ったって……? どういう」

アルミン「ミカサはこれから僕と用事があるんだ。また学校でね」

ミカサ「待って、いったい何を」

エレン「ああ……そうだったのか。またな」

100: 2016/01/21(木) 00:04:27 ID:52BS1UTo0
ミカサ「アルミン、どういうつもり?」

アルミン「……あまりジャンと関わらない方がいいよ」

ミカサ「でも、今のジャンを見ているとエレンを思い出す」

アルミン「それはミカサの気を引くためにわざとやっているんだ。だまされちゃ駄目だよ」

ミカサ「そう、なの……」

ミカサ「……でも、もうすぐエレンに会わせてくれると言っていた」

アルミン「え?」

アルミン「そんな……まさか」

アルミン「仕方がない……もう、こうするしか……」ブツブツ

ミカサ「アルミン?」

アルミン「……今から、僕の言うことをよく聞いてほしいんだ」

101: 2016/01/21(木) 00:05:32 ID:52BS1UTo0
エレン(犯人を捕まえたら、すべて正直に打ち明ける……)

ジャン母「……ン。ジャンってば」

エレン「え?」

ジャン母「どうしたんだい、ぼうっとして」

エレン「ああ、いや……」

ジャン母「もうすぐ文化祭なんだろう? 見に行くからね」

エレン「……いいですよ、別に」

ジャン母「何か嫌なことでもあったのかい?」

エレン「すみません、ちょっと気分が……」ガタッ

ジャン母「ああ、すまないね……ゆっくり休んでな」

エレン(だめだ、これ以上打ち解けちゃ……本当のこと話すとき辛いだろ)

エレン(俺はもう決めたんだ、この人たちを切り捨てるんだ)

エレン(あなたの息子さんは本当はもう氏んでるんです、俺が勝手に演じてただけなんです……)

エレン(…………)

エレン(最初から、正直に話していれば……)

102: 2016/01/21(木) 00:08:01 ID:52BS1UTo0
エレン(あいつはどんな思いで氏んだんだろうな……)

エレン(俺と入れ替わったことにも気づかなかったんだろうか……)

ピロリロリン

エレン「なんだよ、こんな時に……」

忠告を聞くつもりはないみたいだな。

エレン「!!」

エレン(犯人からのメール……!!)

103: 2016/01/21(木) 00:12:07 ID:52BS1UTo0
エレン(そうだ、こいつのせいで何もかも……!!)ポチポチ

全部わかってるなら、名乗り出ろ!

ピロリロリン

安い挑発には乗らない。お前を必ず追いつめる。

エレン(ふざけんな。その前に、俺が必ずお前を捕まえる)

110: 2016/01/22(金) 00:33:39 ID:mbgqiDJw0
翌日

ガララッ

アルミン「みんな、おはよう」

ミカサ「……おはよう」

エレン「ああ、おは……ミカサ!?」

ザワザワッ

クリスタ「ミカサ、よかった! ……でも、本当に大丈夫なの?」

ミカサ「ええ。もう心配いらない」

ライナー「正直、もう来ないかと思っていたぞ」

ミカサ「文化祭の準備、あまり手伝えなくて悪かった。今日からは皆の10倍働く」

マルコ「すごく頼もしいな……」

コニー「なんか、しばらくぶりに会った気がするなー」

ミーナ「ホントに、立ち直ったんだ……すごい……」

エレン「…………」

111: 2016/01/22(金) 00:34:24 ID:mbgqiDJw0
エレン(なんか言えよ、ミカサが元気そうでよかったじゃねえか……)

ミカサ「ジャン」

エレン「え……? なんだ?」

ミカサ「放課後、二人きりで話がしたい」

一同「お……?」

「おおおおおおおおおっ!!?」

ユミル「マジかよ……」

コニ―「なんかわかんねーけどスゲーなお前!」

サシャ「ああっ、でも記憶がないのが残念ですね……」

エレン「……ああ、わかっ」

アルミン「待ってくれ。僕も一緒にいいかな?」

112: 2016/01/22(金) 00:34:54 ID:mbgqiDJw0
一同「ええっ、まさかの!?」

ミカサ「アルミン、私は大丈夫」

アルミン「でも」

ミカサ「二人きりで話がしたいと言っている」

アルミン「…………」

一同「…………」ゴクリ

ライナー「こいつは大変なことになったな……」

ベルトルト「うん(たぶん皆が思っているより、ずっと深刻に見えるのは気のせいかな……)」

113: 2016/01/22(金) 00:35:21 ID:mbgqiDJw0
アルミン「……分かったよ。くれぐれも、無茶しないでくれ……」

一同「おおおおおおおおっ!!!」

ミーナ「……よかったね、ジャン」

マルコ「ああ。記憶を失う前のお前に教えてやりたいよ……」

エレン「あ、ああ……」

エレン(何が「よかった」なんだ……?)

114: 2016/01/22(金) 00:35:47 ID:mbgqiDJw0
エレン(授業中もミカサは特に変わった様子はなかった)

エレン(休み時間はずっとアルミンと一緒にいて、何となく話しかけづらかった。まあ、放課後までの我慢だ……)

エレン(何の話があるのかはともかく、こうして無事学校に来られただけでも喜ぶべきだろう)

エレン(クラスの連中がひっきりなしに冷やかしてくるのは少しうっとうしかったけど)

115: 2016/01/22(金) 00:36:20 ID:mbgqiDJw0
マルコ「だいぶ完成が近づいてきたな」

クリスタ「衣装もできたよ! ちょっと、血のりつけすぎたかな……?」

ライナー「大丈夫だ、きっと似合うぞ」

ユミル「クリスタは宣伝係だけどな。つられた男どもを恐怖のどん底に叩き落として、収益もガッポリ見込める計画だ」

ベルトルト「恐ろしいビジネスモデルが出来上がっている……」

クリスタ「でも、幽霊役もやってみたかったな」

ユミル「だめだ、どさくさにまぎれてセクハラしようとする奴がいるからな」

アニ「その場で昏倒させればいいんじゃない? いい刺激になるだろ」

コニー「もはやお化け屋敷でも何でもねえ!」

116: 2016/01/22(金) 00:36:58 ID:mbgqiDJw0
サシャ「ミカサがいてくれて仕事がぐんと楽になりましたよ!」

ミカサ「ありがとう。……トイレに行ってくる」

アルミン「あ、僕も」

エレン(トイレまで一緒かよ……何なんだあいつら)

117: 2016/01/22(金) 00:37:27 ID:mbgqiDJw0
「しかし、あのミカサがジャンをなあ……」

「ホントだよなー」

「なあジャン、いったいどうやって落としたんだよ?」

エレン「はあ? 落とすって何をだよ」

ユミル「……何かひっかかるんだよな」

クリスタ「えっ?」

ユミル「あのミカサが、エレンのことをきっぱり忘れたとは思えないってことだ」

一同「…………」

「愛想尽かされたんじゃねえの。だってあいつ」

ライナー「おい、よせ」

エレン(……?)

118: 2016/01/22(金) 00:38:04 ID:mbgqiDJw0
ベルトルト「エレンについて、何か訊きたいことがある……とか?」

ユミル「それも考えたが、こいつは何も覚えてないみたいだしな……」

マルコ「無理に思い出させようとしても、いいことなんて何も……」

アニ「…………」

ミーナ「…………」

ユミル「もしかしたら、こいつの中身がエレンだったりしてな」

エレン「はっ!?」

一同「そ、そんな……」

一同「わけないじゃんwwwwwww」

ユミル「……駄目だな、私も人のこと言えない馬鹿だ」

コニー「おう、バカって言った方がバカなんだぞ!」

エレン(いや、それであってるよ……)

119: 2016/01/22(金) 00:38:43 ID:mbgqiDJw0
エレン「……それで、何の話だよ」

ミカサ「……」

一同「……」ジーッ

アルミン「……そこで何をしているんだい?」

一同「ちぇっ」ゾロゾロ

120: 2016/01/22(金) 00:39:14 ID:mbgqiDJw0
ミカサ「ジャン、あなたにお願いがある……」

エレン「…………」

ミカサ「自首してほしい」

エレン「え……?」

エレン「なんだよ、自首ってどういう……」

ミカサ「あなたがやったことはもう分かっている」

エレン「はぁっ!?」

ミカサ「あなたはもう既に一人頃している。これ以上罪を重ねる前に……」

エレン「待てよ! お前、もしかしてアルミンに何か吹き込まれたのか?」

ミカサ「いいえ。私は自分の意志で喋っている」

エレン(嘘を言っているようには見えない……どうして……)

121: 2016/01/22(金) 00:40:23 ID:mbgqiDJw0
ミカサ「あなたにも事情があったのだと思うけど、やったことは許されるべきではない」

エレン「何、言ってんだ……全然わかんねえ……」

ミカサ「ええ、記憶喪失になってしまったのならば仕方がない」

ミカサ「恐らく自分の犯した罪の重さに耐えきれなくなったのだと思う」

ミカサ「でも……だからと言って、罪が消えるわけではないから」

エレン「…………」

エレン(違う、違うんだ……俺を頃したのはジャンじゃない……)

エレン(でもそれをどうやって証明する? 記憶喪失を装ってる以上、絶対にやってないなんて言うのは不自然だ……)

エレン(あれ? でも確か俺はアルミンに……)

ミカサ「アルミンはジャンが苦し紛れの嘘をついたのだと言っていた」

ミカサ「でも私はそうではないと信じたい」

ミカサ「あなたに抱きしめられたとき……うまく言えないけれど、なぜだかとても懐かしい感じがした」

ミカサ「あのときのあなたの全てが、嘘だったと思いたくはない……」

ミカサ「エレンを頃したなんて言ったのも、無意識のうちに後悔の念が――」

エレン「違う」

122: 2016/01/22(金) 00:40:53 ID:mbgqiDJw0
ミカサ「ジャン……」

エレン「違う。俺は」

エレン(まだ捕まるわけにはいかない……もう、言うしかない)

エレン「俺は……俺が、エレンなんだ」

エレン「信じられないかもしれねえけど……」

ミカサ「…………」

ミカサ「……どうして」

123: 2016/01/22(金) 00:41:25 ID:mbgqiDJw0
ミカサ「どうして、そんなことを言うの?」

エレン「……え」

ミカサ「私には、あなたが分からない……」

エレン「本当なんだ。ミカサ、信じてくれ……」

ミカサ「ごめんなさい」

ミカサ「さようなら」

エレン(……そうか、そりゃそうだよな……)

エレン(ミカサからの信用も失った。もう俺は……)

124: 2016/01/22(金) 00:42:01 ID:mbgqiDJw0
アルミン「これで分かっただろう、もう話し合いの余地はないよ」

アルミン「すぐにでも警察に……」

ミカサ「待って」

アルミン「ミカサ……」

ミカサ「もう少し、時間を与えてほしい……」

アルミン「……分かった。文化祭の日まで待とう」

125: 2016/01/22(金) 00:43:43 ID:mbgqiDJw0
エレン(どうする……どうすれば信じてもらえる……)スタスタ

マルコ「ジャン!」

エレン「……お前、待ってたのか」

マルコ「ああ、ちょっと心配で……」

エレン「……なあ」

マルコ「ん?」

エレン「俺は、人を頃した」

マルコ「…………」

126: 2016/01/22(金) 00:44:39 ID:mbgqiDJw0
マルコ「……そうか、全部思い出したのか……」

エレン「って言ったら信じるか? ……そう言おうと思ったんだけどな」

マルコ「えっ?」

エレン「なあ、そういうことなんだろ? みんな知ってんだよな?」

マルコ「……あ、違うんだ、今のは」

エレン「もういい」

マルコ「待ってくれ、ジャン!」

127: 2016/01/22(金) 00:45:23 ID:mbgqiDJw0
エレン(そうだ……)

エレン(俺を頃したのはジャンだ。そう考えた方がすっきりするじゃねえか)

エレン(あいつは、もし俺を頃し損ねた時に備えて芝居を打ったんだ)

エレン(俺を心配してるふりをして、救急車を呼び、自分も突き落とされたように見せかける)

エレン(こうすれば誰も犯人だとは思わないだろう)

エレン(そう。俺は誰かがジャンを突き落とした瞬間を目撃したわけじゃない)

エレン(あれは不慮の事故だと思ってたが、自分でやったんじゃないのか?)

エレン(そして結局、失敗して氏んじまった。間抜けな野郎だ)

エレン(しかも、お前が呼んだ救急車のおかげで俺はこうして生きてるぞ……)

128: 2016/01/22(金) 00:45:49 ID:mbgqiDJw0
ジャン母『一緒に運ばれた子は、亡くなったそうだけどね……』

ジャン母『その子が守ってくれたのかもしれないねえ……』

エレン(ああ、本当にその通りだよ。感謝するぜ……)

129: 2016/01/22(金) 00:46:49 ID:mbgqiDJw0
エレン(メールは、おそらくアルミンあたりが送ったんだろう)

エレン(真実ってのは俺の正体じゃなくて、お前が犯人だってことだ)

エレン(あいつは頭がいいからすぐに気づいたはずだ……)

エレン(いや、誰にでもわかる。俺は他のやつに恨まれるようなことは何もしていない)

エレン(……ジャンにも恨まれる理由は特に思い当たらねーけど……)

エレン(とにかく、アルミンは一刻も早く犯人を捕まえるために面会を望んだ)

エレン(そして、ミカサにも自分の推理を話したんだ……)

エレン(……そうだ)

エレン『……なあ、もうすぐエレンに会わせてやるから、それまで――』

エレン(この台詞を犯人が喋ってるんだとすると、エレンの次にミカサも殺そうとしているようにしか聞こえない)

エレン(だからアルミンは、俺からミカサを守るために――)

130: 2016/01/22(金) 00:47:46 ID:mbgqiDJw0
エレン(ジャンを犯人だとすると、他にも腑に落ちることがたくさんある)

エレン(崖から落ちる直前に聴いた着信音……あれはジャンの携帯のものだったんだ)

エレン(ライナーの携帯が鳴った時、ベルトルトとミーナがジャンもあの曲が好きだったみたいなこと言ってただろ?)

エレン(軽音部でも練習してたみたいだしな)

エレン(ジャンがなぜあの場所にいたのか? それはあいつが犯人だからだ)

エレン(アリバイなんて勿論あるわけがない)

131: 2016/01/22(金) 00:48:14 ID:mbgqiDJw0
エレン「……完璧じゃねえか」

エレン「みんな、みんな知ってたんだ。俺が人頃しだって」

エレン「だから記憶が戻らない方がいいって……」

エレン「……はは」

エレン「あははははっ!!!!!」

エレン「…………」

エレン「……くだらねえ」

132: 2016/01/22(金) 00:48:42 ID:mbgqiDJw0
エレン「…………」フラフラ

エレン(すっかり遅くなっちまった)

エレン(母さん、親父……さすがにもう寝てるか)

エレン(もう、この家には帰れない……人頃しの面しといて、どうして息子だなんて名乗れる?)

エレン(親父の態度が冷たかったのも、母さんに「エレンに会える」なんて言ったから……)

ガサガサッ

エレン「!?」

エレン「おい、誰だ!?」ダッ

133: 2016/01/22(金) 00:49:16 ID:mbgqiDJw0
エレン「……」キョロキョロ

エレン(誰もいない。見失ったか……)

エレン(泥棒か? ……二人は無事なのか!?)

ガチャガチャ

エレン(鍵は閉まってる。中には入れなかったってことか)ホッ

エレン(また狙われるかもしれない。注意しとかねーと)

エレン(……いや、こいつの顔なんか見たくねえか……)

エレン(……ごめんな)

134: 2016/01/22(金) 00:49:59 ID:mbgqiDJw0
エレン「……ただいま」ガチャ

ジャン母「あんた!! こんな時間までいったい何やってたんだい!!」

エレン(ずっと待ってたのか……)

エレン「……すみません」

ジャン母「……」

ジャン母「何かあったんだろう? 昨日からあまり元気もないし……どうしたんだい?」

エレン「どうもしてません。放っといてください」

ジャン母「嘘だね。あんたは昔から根は正直な子だから、すぐ分かるんだよ」

エレン(違うよ、あんたの息子は狡猾な嘘つき野郎で人頃しだ……)

エレン(…………)

エレン(……俺は、何てことを)

エレン「ちくしょう……!!」ダッ

ジャン母「待っておくれ、ジャン!!」

135: 2016/01/22(金) 00:50:27 ID:mbgqiDJw0
ジャン母「早く出てきな、怒ったりしないから大丈夫……」ドンドン

エレン「うるせえ!!」ドカッ

ジャン母「……晩御飯ここに置いとくからね」

エレン「…………」

エレン「くそっ!!!!」

エレン(お前のせいで……俺はこんな目に……)

ドガッ バキッ ガシャアアアン

エレン「氏ねっ、氏ね、氏んじまえ馬鹿野郎……!!」ハァハァ

エレン(あ……もう氏んでるか……)

エレン(…………)

136: 2016/01/22(金) 00:50:56 ID:mbgqiDJw0
エレン(……なんで、こんなことになったんだろう?)

エレン(そうだ。俺があの日、待ち合わせ場所に行かなければ……)

エレン(…………)

エレン(……待てよ)

エレン(手紙の件があるじゃねえか。俺と外掃除をしてたジャンが、机に手紙を入れることは不可能だ……)

エレン(こんな簡単なことを見落としてたなんて……)

エレン「……バカって言った方が、バカなんだよな」

137: 2016/01/22(金) 00:51:31 ID:mbgqiDJw0
エレン(……ずいぶん散らかしちまったな。あとで謝らないと)

カサッ

エレン「ん……?」

エレン(このメモ帳の柄、どっかで見た覚えが……)

エレン(前のページが千切られてる。何か字を書いた跡がうつってるな……)

エレン(確かこういうのって、鉛筆でなぞったら出てくるんだっけ……)

エレン「…………」ゾクッ

エレン(嫌な予感がする……)

エレン「…………」ドキドキ

エレン(やめろ、やめるんだ……)

エレン(きっと、見てはいけないものが……)

138: 2016/01/22(金) 00:51:55 ID:mbgqiDJw0
エレン(―――出てきた)

今日午後7時、岬で待つ

エレン「……………………」

139: 2016/01/22(金) 00:52:21 ID:mbgqiDJw0
エレン(……そうだ)

エレン(何もジャンが手紙を入れる必要なんかない)

エレン(むしろ、共犯者を利用して自分の無実を証明しようとしたんだろう)

エレン(じゃあ、手紙を入れたのは誰なんだ?)

140: 2016/01/22(金) 00:53:03 ID:mbgqiDJw0
エレン(マルコか?)

エレン(ライナーか?)

エレン(アニか?

エレン(ミーナか?)

エレン(ベルトルトか?)

エレン(ユミルか?)

エレン(サシャか?)

エレン(クリスタか?)

エレン(コニーか?)

エレン(キース先生か?)

エレン(アルミンか?)

エレン(まさか、みんな……)

エレン(ミカサ。お前だけは、違うんだよな……?)

エレン(…………)

エレン「……誰でもいい。どうでもいいんだ、もう……」

142: 2016/01/24(日) 00:46:23 ID:PnJoMr8Q0
翌日

エレン「……おはようございます」

ジャン母「おはよう」

エレン「あの、昨日はすいませんでした」

ジャン母「ん? 何のことだい?」

エレン「……」

エレン(そうだ、ジャンはともかく……この人たちは何も悪くないじゃないか)

エレン(俺にできることは、せめて悲しませないように……)

エレン(……だめだ。俺は殺人容疑で捕まるはずだ。どうあがいても不幸にさせちまう……)

エレン「……行ってきます」

143: 2016/01/24(日) 00:47:19 ID:PnJoMr8Q0
エレン(学校に行くつもりはない)

エレン(もう、皆は何もかも知ってるんだろう)

エレン(こんな結末は知りたくなかった。知らなきゃよかったんだ)

エレン(何もかも忘れてこの姿で生きてた方がずっと幸せだったのに)

エレン(……いや、そもそもあの時、氏んでれば……)

エレン(何のために、俺は生き残ったんだろう?)

エレン(これ以上生きてる意味ってあるのか?)

カーンカーンカーンカーン

エレン(例えば、いま俺が氏んだら――)

エレン(おじさんとおばさんは息子が人頃しだって知らずに済むんじゃないのか……)

144: 2016/01/24(日) 00:47:58 ID:PnJoMr8Q0
ガタンゴトン

エレン(あ、電車だ)

エレン(いま飛び込んだら、いける、かも……)フラッ

???「駄目!!!」ガシッ

エレン「!?」

ガタンゴトン…

エレン「何すんだ、離せよ……!」バシッ

エレン「……あ」

ミカサ「……」

エレン「ミカサ……」

145: 2016/01/24(日) 00:48:30 ID:PnJoMr8Q0
ミカサ「ジャン、早まるのはよくない」

エレン「ああ……もっと人に迷惑のかからない方法を選ぶべきだったな」

ミカサ「人に迷惑のかからない自殺などない」

エレン「…………」

ミカサ「昨日は、色々と言いすぎて悪かった」

エレン「別にいいよ、もう気にしてねえし」

エレン「どうせ俺がやったんだろ、もういいんだ……」

ミカサ「……どうして、あんなことを言ったの?」

エレン「え?」

146: 2016/01/24(日) 00:49:03 ID:PnJoMr8Q0
ミカサ「昨日、確かに自分のことをエレンだと言った」

エレン「……ああ」

エレン「入れ替わったんだよ。俺とジャンが」

ミカサ「入れ替わり……?」

エレン「まあ、信じられるわけないよな」

ミカサ「……とにかく、話を聞かせてほしい」

ミカサ「その話が本当だとしたら、どうしてジャンのふりを? 記憶喪失を装ってまで」

エレン「俺を殺そうとした犯人を見つけるためだ」

エレン「なるべく俺が生きてるってことを知られたくなかった。犯人は俺の身近にいるって分かってたから」

ミカサ「……私に話してくれれば」

147: 2016/01/24(日) 00:49:46 ID:PnJoMr8Q0
エレン「そんなこと言ったらお前、自分も犯人を捜すって言い出すだろ?」

エレン「犯人は俺の行動を監視してる。お前らに危害が及ぶのは避けたかった」

ミカサ「……」

エレン「笑っちまうよな。身近どころか、俺自身が犯人だったなんて」

ミカサ「……」

エレン「無駄に生き残っちまった。こんな命、もうどうだってい……!?」

ミカサ「……」ギュッ

エレン「ミカサ……?」

148: 2016/01/24(日) 00:52:08 ID:PnJoMr8Q0
ミカサ「あなたが電車に飛び込もうとしたとき、私はなぜかこう思った」

ミカサ「この人を絶対に失いたくないと」

ミカサ「その気持ちが嘘ではないのなら……」

エレン「……」

ミカサ「……私は」

ミカサ「エレンを信じたい。でも……」

エレン「信じてくれるのか……?」

ミカサ「アルミンとも話し合う必要がある」

エレン「……そうだな」

ミカサ「気分がすぐれないなら、しばらく学校には来なくてもいい」

ミカサ「でも、文化祭の日には必ず来てほしい」

ミカサ「そこで決着をつけることになっているから」

エレン「……ああ、わかった」

149: 2016/01/24(日) 00:52:57 ID:PnJoMr8Q0
文化祭当日

ワイワイ ガヤガヤ

「おかえりなさいませ、ご主人様!」

「体育館でお笑いライブやるんで、よかったら見に来てください!」

キャアアアアア!!!!!

「!?」

「うわああああ!!! 助けてええええ!!!!」ダダダッ

「びっくりしたー、何あれ?」

「お化け屋敷か? どんだけ怖いんだよ」

クリスタ「ドキドキしたい人ー! ぜひ寄ってみて下さいね!」

「おっ、俺ちょっと行ってみようかな」

ウワアアアアアア!!!!!

150: 2016/01/24(日) 00:53:36 ID:PnJoMr8Q0
ユミル「以下無限ループ……と。よしよし、お前のおかげで絶好調だ。偉いぞクリスタ」

クリスタ「こんなにたくさん来てくれるなんて思わなかったなあ」

コニー「なあ、これって詐欺っていうんだっけ?」

ユミル「よく知ってるなお前」

コニー「天才だからな」

マルコ「中はそろそろ交代の時間かな?」

マルコ(ジャンは大丈夫かな……何でもないようにふるまってたけど……)

151: 2016/01/24(日) 00:54:13 ID:PnJoMr8Q0
ベルトルト「う、うらめしや~」ヌッ

「きゃああ!! ごめんなさいー!!」

ベルトルト「あっ、ごめん……大丈夫?」

ライナー「おいおい、お化けがそんな弱気でどうする」

ベルトルト「そうだ、もう交代なんだっけ」

ライナー「ああ。参加者と同じルートを辿って交代するシステムだからな」

ベルトルト「じゃあ、頑張ってね」スタスタ

「いやーっ! さっきのお化けが追いかけてくるー!!」

ベルトルト「いや、もう交代したから大丈夫だよ……」

アニ「バラしてどうすんのさ」ヌッ

ベルトルト「うわああああーっ!!!」

152: 2016/01/24(日) 00:54:45 ID:PnJoMr8Q0
エレン「……」ボケー

サシャ「ジャン、何ボーっとしてるんですか? コンニャク食べちゃいますよ?」

エレン「食うなよ。そうか、もう交代か。ほらよ」スッ

サシャ「よーし! 張り切りますよー!」ダッ

エレン「おい、持ち場ここだって!」

エレン「…………」

ミーナ「みんな楽しそう……ジャン、早く抜けた方がいいんじゃない?」

エレン「ああ、何か疲れちまって……お前、服くらい着替えろよ」

ミーナ「私は女子高生の幽霊役だからいいの。ほら、早く出た出た」

エレン「分かったよ」

エレン(……あ)

アルミン「……」スタスタ

153: 2016/01/24(日) 00:55:40 ID:PnJoMr8Q0
アルミン「もしもし……うん、屋上で。今日捕まえるよ」

エレン(……)

154: 2016/01/24(日) 00:56:13 ID:PnJoMr8Q0
エレン(今日、すべてが決まる……)タッタッ

エレン「アルミン!!」

アルミン「……よく来たね、ミカサも」

エレン「えっ」

ガシッ

ミカサ「ごめんなさい。悪く思わないでほしい」

エレン「……ミカサ」

アルミン「あとは、“彼”の到着を待つだけだ……」

155: 2016/01/24(日) 00:56:48 ID:PnJoMr8Q0
タッタッ

アルミン「……来た」

???「おい、ホントに捕まったのか!?」

エレン「!!」

ミカサ「……」

アルミン「うん、ジャンが捕まったよ」

???「この野郎、よくも……」ギリッ

156: 2016/01/24(日) 00:57:47 ID:PnJoMr8Q0
アルミン「そこにいる、君がね」

ジャン「…………は??」

エレン「よう。久しぶりだな、俺」

159: 2016/01/26(火) 00:01:31 ID:t7D1YEq.0
前日

アルミン『入れ替わり……だって……?』

エレン『ああ。信じられない……よな、やっぱり』

ミカサ『……』

アルミン『……とりあえず話を聞かせてくれ』

エレン『ああ。俺はジャンに手紙で岬に呼び出されたんだ』

アルミン『ジャンが、君を……?』

エレン『そこで突き落とされた。落ちる前に、ジャンが何か呼びかけてたが……』

エレン『そんなことはもうどうでもいい。あいつが犯人だったんだからな』

アルミン『……まさか』

160: 2016/01/26(火) 00:02:00 ID:t7D1YEq.0
エレン『そうだ、俺は犯人を捜してた。入れ替わったジャンの姿で』

エレン『結局そいつは自分自身だったってわけだ。……けど、本人はもう氏んじまってる。だからもう』

アルミン『ちょ、ちょっと待ってくれ。今なんて』

エレン『だから、ジャンが犯人で、もうあいつ……つまり俺は氏んだんだろ?』

ミカサ『エレンは氏んでいない』

エレン『……だから俺が』

ミカサ『私はエレンと話した。電話で』

エレン『え……?』

アルミン『そうなんだ。君は勘違いしている。エレンは生きてるんだよ』

エレン『う、うそだろ……?』

エレン(俺が、生きてる……?)

161: 2016/01/26(火) 00:02:34 ID:t7D1YEq.0
アルミン『本当だ。事故の日、彼から連絡がきた』

アルミン『ジャンに命を狙われている。あいつは危険だから気をつけろ。しばらく身を隠す……って』

エレン『なんで、何のためにそんな』

アルミン『僕はひそかにエレンと連絡を取り合っていたんだ。実際に会わせてはくれなかったけど』

アルミン『いつもは公衆電話からかけてたけど、ネットカフェからメールでもやり取りして……』

アルミン『メールが来たって言ってたよね? それはエレンが君に送ったものなんだよ』

エレン『待ってくれ! 俺とジャンは互いにアドレスも知らなかったんだ』

アルミン『……本当かい?』

162: 2016/01/26(火) 00:02:56 ID:t7D1YEq.0
エレン『ああ。だから“エレン”が俺の携帯にメールを送ることは不可能だ』

エレン『お前、“エレン”にジャンのアドレスを教えろって頼まれたか?』

アルミン『……いや』

エレン『だからそいつはエレンじゃないんだよ』

ミカサ『エレンは嘘をついていた……』

エレン『ジャンの奴、俺になりすましてたんだ。俺も人のこと言えねえけど……』

アルミン『そうか。自分のメールアドレスなら覚えてて当然だ……』

エレン『だから、とりあえずあいつに会わせてくれよ。話がしたい』

アルミン『うん。まだ気になることはたくさんあるけど……』

163: 2016/01/26(火) 00:03:38 ID:t7D1YEq.0
エレン「こそこそ隠れやがって。ようやく出てきたな」

エレン(俺……いや、ジャン。本当に生きてたのか……)

ジャン「てめえ……」ギロッ

エレン(俺、やっぱり恨まれてるのか? 何が原因で――)

ジャン「何言ってんだ、アルミン。俺はエレンだぞ」

アルミン「……」

エレン「エレンは俺だ。信じてくれ」

ミカサ「大丈夫。私は、あなたを信じることに決めた」

ジャン「エレンだと……? ふざけやがって」

エレン(何だ? この感じ……)

164: 2016/01/26(火) 00:04:19 ID:t7D1YEq.0
ジャン「お前ら、そいつに騙されるんじゃねえよ」

エレン「騙してるのはお前だろ。……俺もだけど」

ジャン「そいつは人頃しだぞ」

エレン「それはお前だろ。人頃し、いや未遂野郎」

ジャン「は?」

エレン「俺を殺そうとして失敗したお前は、入れ替わったのを良いことに俺になりすまし」

エレン「アルミンやミカサを騙して、俺に罪を着せて捕まえようとしたんだな?」

ジャン「……何ふざけたこと言ってやがる」

アルミン「僕が一番分からないのはそこなんだ」

アルミン「もし彼が本当にジャンなら、どうして自分を捕まえようとするんだい?」

165: 2016/01/26(火) 00:04:58 ID:t7D1YEq.0
エレン「それは……中身が俺だから、だろ。こいつには恨まれてるし……」

アルミン「二人とも生きてるんだから、いずれは元に戻る時が来るかもしれない」

アルミン「そうなれば一番困るのはジャンのはずだろう?」

アルミン「嫌いなエレンの振りまでして、そこまでのリスクを背負うのは……」

ミカサ「ジャンはエレンになることを望んでいた」

エレン「はっ?」

ミカサ「喧嘩の際にうらやましいとよく言っていたから。その夢が叶ったのだから、手放したくないと思った」

ミカサ「そこで元の自分が邪魔になり、逮捕させることにした」

166: 2016/01/26(火) 00:05:29 ID:t7D1YEq.0
エレン「嫌われてるどころかむしろ好かれてたのか? じゃあなんで俺は殺されかけたんだ?」

ミカサ「愛と憎しみは表裏一体だから」

ジャン「…………」

エレン「邪魔だったら殺せばいいのに、なんで逮捕なんて回りくどいことを考えたんだ?」

ミカサ「どうしても頃す事はできなかった。複雑な気持ちだったのだと思う」

ジャン「…………」

アルミン(二人の解釈はだいぶずれている。だけど……)

167: 2016/01/26(火) 00:06:06 ID:t7D1YEq.0
アルミン「まさか、それだけの理由で……家族を悲しませるような真似を?」

ジャン「…………」

アルミン「教えてくれ。君がもし自分で言っていたような、頭のいかれた人頃しじゃないのなら……」

ジャン「…………」

ジャン「そうだよ。俺はジャンだ。騙してて悪かったな」

エレン「……」

ミカサ「……」

アルミン「そうか……認めるんだね」

168: 2016/01/26(火) 00:06:49 ID:t7D1YEq.0
ジャン「これからずっとエレンとして生きていくつもりだったのに……畜生」

エレン「お前まだそんなこと言ってんのか……」

ミカサ「もう一度頭をぶつければ、元に戻るかもしれない」

エレン「ああ、俺もこの体にはもううんざりだ」

ジャン「そりゃそうだろうな」

アルミン「エレン、ずっと疑っててごめん」

エレン「いいんだ。俺がお前の立場でも同じようにしたと思う」

ジャン「白々しい奴だな。ミカサまで殺そうとしたくせに」

アルミン「……認めたんじゃなかったのか」

ジャン「俺がジャンだってことはな。でもそいつはエレンじゃない」

エレン「じゃあ誰だってんだよ」

169: 2016/01/26(火) 00:07:27 ID:t7D1YEq.0
ジャン「教えて貰わねーとわかんねえか? お前の名は―――――――」

ジャン「―――――――だろ?」

エレン「は……?」

エレン「なんで……なんでそいつの名前が出てくるんだ? 全然わかんねえよ……」

170: 2016/01/26(火) 00:07:59 ID:t7D1YEq.0
ジャン「まだとぼける気か!? 俺はこの目で見たんだ、お前がエレンを頃した瞬間を!!」

ミカサ「……え?」

アルミン「……まさか」

ジャン「ああそうだよ! エレンはもう氏んだんだ!!」

ジャン「俺が……俺が巻き込んだ……」

ジャン「だから、あいつの代わりに生きなきゃならなかったのに……」

エレン「待てよ、ジャン! ……お前、何か勘違いしてるんだ」

ジャン「勘違い……?」

エレン「全部話してくれ。お前に起こったこと全部」

ジャン「……ああ、分かったよ」

173: 2016/02/02(火) 00:33:07 ID:ko5jHpNA0
ジャン「始まりは事件の二週間くらい前だった」

ジャン『…………』スタスタ

???『…………』スタスタ

ジャン(誰だ? つけられてるような……気のせいか?)

ジャン『…………』スタスタ

???『…………』スタスタ

ジャン(やっぱり、気のせいじゃねえ……)

ジャン『……なあ』ピタッ

???『!!』ピタッ

ジャン『俺に何か用か――おい!!』クルッ

???『……』ダダダッ

ジャン(くっそ……見失った。どこに隠れやがった?)

ジャン(絶対に正体を暴いてやる)

174: 2016/02/02(火) 01:28:39 ID:ko5jHpNA0
ジャン『…………』スタスタ

???『…………』スタスタ

ジャン(……よし)ガチャ

???「!」

ジャン(俺は変装して公衆トイレの個室から出る)

ジャン(昨日の感じだと、俺と接触するのを避けてるみたいだった。中まで入ってくることはないはずだ)

ジャン(あいつもしばらくは近くに潜んでるだろうが、俺がいつまで経っても出てこないから、そのうち諦めて帰るだろう)

ジャン(そこを待ち伏せして確実に捕まえる)

ジャン(今度は俺がお前を追いつめる番だ)

ジャン『……』ガチャ

ジャン(追ってくる気配はない。やっぱりどこかに隠れたみたいだな)

ジャン(あとは出てくるまで待つだけだ)

クリスタ『エレン、どうしたんだろう?』

ユミル『いや、どう見てもジャンだろ……放っといたほうがよさそうだな』

175: 2016/02/02(火) 01:30:10 ID:ko5jHpNA0
ガシッ

ジャン『!? 誰だ!?』

マルコ『あの……ジャン、だよね?』

ジャン『ああなんだ、マルコかよ』ホッ

マルコ『どうしたの? そんな恰好で』

ジャン『いや、これは……』

???『……』スタスタ

ジャン(くそ、失敗か……)

176: 2016/02/02(火) 01:30:48 ID:ko5jHpNA0
マルコ『ジャンおはよう』

ジャン『ああ、おはよ……ひっ!?』ガチャ

マルコ『どうかしたのか?』

ジャン『な、なんでもねえよ』バタン

二度とステージに立てないようにしてやる。

ジャン(ふざけた嫌がらせしやがって……)

ジャン(ステージってことは、音楽関係か?)

177: 2016/02/02(火) 01:34:42 ID:ko5jHpNA0
女子生徒『何これ? 酷いね』

ジャン『……先輩たち、何か心当たりないっすか?』

女子生徒『さあ? 知らない』

男子生徒A『特に思い当たることはないな』

男子生徒B(うわ、やべ)

男子生徒B『……お前がなんかやらかしたんだろ、どうせ』

男子生徒A『……』

ジャン『……そうですか』

ジャン(俺は特に何をした覚えもない……ただの嫌がらせなのか?)

178: 2016/02/02(火) 01:35:36 ID:ko5jHpNA0
ジャン『うげっ、またかよ』

マルコ『どうしたんだ?』

まもなく天罰が下る。覚悟しろ。

マルコ『これは……』

ジャン『たちの悪い嫌がらせだよ』クシャクシャ

マルコ『ここまで恨まれるなんて、お前何かしたのか』

ジャン『俺は何もしてねえよ。じきに飽きてやめるだろ……』

ジャン(間違いない、あいつは俺を頃すつもりだ)

ジャン(その前に……)

179: 2016/02/02(火) 01:36:36 ID:ko5jHpNA0
ジャン「俺はあいつを呼び出すことにしたんだ」

アルミン「でも、脅迫者の居場所が分からないのにどうやって……あ」

ジャン「そう」

ジャン「俺が手紙を入れたのは、自分の下駄箱だ」

ジャン「あいつは毎日俺の下駄箱に脅迫文を入れてたから」

ジャン「絶対に手紙の内容を確認するはずだと思ったんだ」

180: 2016/02/02(火) 01:37:24 ID:ko5jHpNA0
事件当日

今日午後7時、岬で待つ

ジャン(今日はまだあいつは来てないみたいだな……よし)

ジャン「その手紙が、どうしてエレンのもとに渡ったかは分からないが――」

ジャン(手紙がなくなってる。了解した……ってことだな)

181: 2016/02/02(火) 01:38:49 ID:ko5jHpNA0
事件当日、午後7時

ジャン(あいつは……もう来てるのか?)キョロキョロ

ドンッ

ジャン『!?』

???『……』ハァハァ

ジャン『おい、お前!!』

???『!!』クルッ

???『どうして……』

ジャン『お、お前……なんで?』

???『……っ』ダッ

ジャン『待て!!』

ジャン(いや、それより今は……)

ジャン『もしもし、岬で人が倒れて――』

182: 2016/02/02(火) 01:39:30 ID:ko5jHpNA0
エレン『……』

ジャン『おい!!』

ジャン(エレンか……? 何でここに)

エレン『……う』

ジャン『おい、大丈夫か!? 今救急車を呼んだからな!』

ジャン(まだ息はあるみたいだ……助かるか? 早く――)

ジャン『うわ!?』ズルッ

ジャン(やべ……)

氏―――――

183: 2016/02/02(火) 01:40:20 ID:ko5jHpNA0
???『……』

???『……天罰が下った』

フワッ

184: 2016/02/02(火) 01:41:14 ID:ko5jHpNA0
ジャン『うっ……』

ジャン(痛ってえ……どこだここ)

ジャン(そうだ、確か崖から落ちて――)

ジャン『はっ!?』

ジャン(こいつが下敷きになってくれて助かったのか? 悪いことしたな――)

エレン『……』

ジャン『……は?』

俺?

185: 2016/02/02(火) 01:42:14 ID:ko5jHpNA0
ジャン『な、何で俺……氏ん』

エレン『……』

ジャン(まさか、幽体離脱ってやつなのか?)

ジャン(いや、まだ生きてる。それに、俺の体もちゃんと実体があるみたいだ)

ジャン(じゃあ、これは誰の体なんだ……?)

ジャン(誰か、他に――)キョロキョロ

???『』

ジャン(こいつも崖から落ちたのか……?)

ジャン(事故か……いや違う。自分から……?)

ジャン(……そうだ、こいつがエレンを――)

ジャン(いや、待て)

ジャン(他に落ちた奴はいないみたいだ。俺とあいつの体がここに……ってことは)

ジャン(いま俺の精神が入ってるのはエレンの体ってことか)

ジャン(だったら――)

186: 2016/02/02(火) 01:42:58 ID:ko5jHpNA0
エレン「あの場にもう一人いた……!?」

ジャン「ああ」

アルミン「……そういうことだったのか」

アルミン「つまり君は、三人の間で入れ替わりが起こったと思ったんだね?」

187: 2016/02/02(火) 01:43:54 ID:ko5jHpNA0
ジャン(俺の体にはあいつの精神が、あいつの体には――)

ジャン『おい、しっかりしろ!』ユサユサ

???『』

ジャン(駄目だ、この出血じゃもう……)

ジャン(何でエレンを……あいつは俺を憎んでたんじゃないのか?)

ジャン(まさか、間違えた……のか?)

ジャン(エレンは何かの間違いでここに来た。俺が軽はずみに変装なんてしなければ、氏ぬことはなかったはずだ……)

ジャン(こいつは俺の身代わりに氏んだってことか……)

ジャン『くそっ!』

エレン『……』

ジャン『お前が……どうして』

188: 2016/02/02(火) 01:44:51 ID:ko5jHpNA0
ピーポーピーポー

ジャン(救急車が近づいてくる……)

ジャン(……どうする? 入れ替わりの事実を知ってるのは今のところ俺だけだ)

エレン『……』

ジャン(頃して……おくべきなのか?)

ジャン(話をしようともせずエレンを突き落したような奴だぞ)

ジャン(でも、よりによってこいつが……何か理由があるんじゃないのか?)

ジャン(待て。それより、こいつが息を吹き返したらどうなるか、考えてみろ……)

ジャン(すぐに俺を頃しにくるならまだいい。問題は俺になりすまして家族を……)

ジャン(……駄目だ、こいつを生かしてちゃ……すぐ頃すべきだ。殺せ……)

エレン『……』

ジャン『……ねえよ』

ジャン(無理だ。自分を頃すなんて……)

189: 2016/02/02(火) 01:48:39 ID:ko5jHpNA0
ジャン(とりあえず、病院に運ばれてから……)

ジャン(……待てよ)

ジャン(こいつが目を覚ましたら、入れ替わりの事実に気づいて俺……エレンを頃しに来るはずだ)

ジャン(その時にエレンの家族や……ミカサが、見舞いに来てたらどうなる……?)

ジャン(ミカサは絶対にエレンを守ろうとするはずだ)

ジャン(俺のせいでこれ以上の被害を出すわけには……)

ジャン(入れ替わりのことを話すか? エレンが氏んだことを……)

ジャン(他ならないエレンの姿で? あいつが氏んだ原因を作ったのは俺なんだぞ)

ジャン(そんなことをして誰が幸せになれるんだ?)

ジャン(こうなった以上、俺はエレンとして生きるべきなんじゃないのか?)

ジャン(あいつはもう氏んじまったけど、そうすればあいつの家族や……ミカサは悲しまずにいられるんだ)

ジャン(俺にできることはもうそれくらいしか……)

ジャン(……だったら、どうすりゃいい?)

190: 2016/02/02(火) 01:51:53 ID:ko5jHpNA0
ピーポーピーポー

ジャン『……行ったか』

ジャン(とりあえず、身を隠すしかない)

ジャン(エレンは行方不明だということにしておく。そうすればこいつも、事情を知らない相手に滅多な真似はしないんじゃないか?)

ジャン(その間に何とか証拠を掴んであいつを捕まえる。そして……)

ジャン『……あ』

ジャン(そうだ……あいつが俺になりすますってことは、家族を人質に取られてるも同然ってことじゃねえか)

ジャン(こっちからうかつには動けない。畜生……やっぱり、頃しておけば……)

191: 2016/02/02(火) 01:53:50 ID:ko5jHpNA0
ジャン(やめろ。今さら悔やんでもしょうがねえだろ……)

ジャン(これからのことを考えるんだ。とにかく、協力者が必要だな)

ジャン(頭がよくて、秘密を守り、俺よりもエレンを信頼してそうなやつ……)

ジャン(……アルミンに頼むか)

ジャン(ミカサは駄目だ。あいつは普段は冷静だが、エレンのことになると無茶するから)

ジャン(連絡方法は? なるべくこの姿で人と接触するのは避けたい。公衆電話かネカフェか……)

193: 2016/02/02(火) 23:18:44 ID:ko5jHpNA0
ジャン(アルミンの家電は……ここか)パラパラ

プルルルル

ジャン(あいつは両親が共働きで、遅くまで帰ってこないと言っていた。本人が出るはず……)

アルミン『もしもし? どなたですか』

ジャン『アルミンか? 俺だ』

アルミン『エレン? どうして家電に……それも公衆から』

ジャン『落ち着いて聞いてくれ……実は俺、ジャンに命を狙われてるんだ』

アルミン『ジャンに……? 一体どういうこと?』

ジャン『俺だってわかんねえよ。手紙で岬に呼び出されて、そしたらあいつ急に……』

アルミン『もしかして、どこか怪我を!?』

ジャン『いや……偶然俺たちの争いを目撃してて、止めに入った???があいつもろとも俺の身代わりに崖から……』

アルミン『そんな……』

ジャン『俺も様子を見ようとして足を滑らせちまったけど、何とか軽傷で済んだんだ』

194: 2016/02/02(火) 23:19:30 ID:ko5jHpNA0
ジャン『???はもう駄目だ。救急車は呼んだが、恐らくすでに……』

ジャン(これで???の名誉は守られるはずだ。入れ替わりなんて言い出すことはないだろう……)

ジャン『でもジャンの奴は生きてる。また襲ってくるかもしれない』

ジャン『俺はしばらく身を隠すことにする。頼むから警察には言わないでくれ』

アルミン『……警察にちゃんと言って保護してもらった方がいい』

ジャン『駄目だ。崖に落ちたのはあいつのほうだから、逆に俺が犯人扱いされるかもしれない』

アルミン『……』

ジャン『それに……このことを知ったら、ミカサの奴が無茶な行動に出るかも……』

アルミン『……』

195: 2016/02/02(火) 23:20:14 ID:ko5jHpNA0
アルミン(ジャンがエレンを殺そうとするなんて。あまり考えたくはないけど……)

アルミン(理由があるとしたらミカサ以外には考えられない)

アルミン(ミカサがこのことを知ったら、何としてもエレンを守ろうとするはず……それを見たジャンはどんな行動をとるか……)

ジャン『頼む、これ以上の被害は避けたいんだ。もう既に俺のせいで一人頃しちまった……』

アルミン『……わかった。携帯番号さすがに覚えてないだろうから、今言うね―――今度からはこっちにかけてきてほしい』

ジャン『……ありがとな』

ジャン『とにかく、あいつが目覚めたら注意してくれ。とぼけるかもしれないが、絶対に捕まえたい』

アルミン『うん、何とかして自白を引き出せばいいんだね?』

ジャン『ああ、あいつがおかしな発言をしたら俺に教えてくれ』

ジャン『電話は俺からしか掛けられないが、ネカフェでメールのやり取りもしたいと思う』

アルミン『フリーメールか。分かった、僕も取得しておくよ』

196: 2016/02/02(火) 23:20:49 ID:ko5jHpNA0
アルミン『お金と宿はどうするつもり? 何だったら僕が』

ジャン『いやいい。自分でなんとかする』

アルミン『……そうか。苦しくなったらいつでも来ていいから』

アルミン『エレンがいなくなったらジャンはミカサに接触すると思うけど、僕が見張っておくから心配しないでくれ』

ジャン(もうバレてんだな……)

ジャン『悪いな……迷惑かけちまって』

アルミン『いいんだ。全てが終わったら、戻って来てくれるよね?』

ジャン『……ああ』

197: 2016/02/02(火) 23:21:19 ID:ko5jHpNA0
ジャン(……これでいい)ガチャッ

ジャン(アルミンにはああ言ったが、俺はあいつを警察に突き出すつもりはない)

ジャン(そもそもアルミンには本当のことを話すつもりはないし、あいつも勘違いされたままじゃ納得しないだろう)

ジャン(それに、あいつが何であんなことをしたのか? せめて理由だけでも知りたい)

ジャン(失言かなにか……決定的な証拠を引き出せたらアルミンと三人で会う。できるだけ高い場所で)

ジャン(そこで二人きりで話したいとか何とか口実をつくる。あいつもきっと従うはずだ)

ジャン(そこで理由を聞いたら、あいつは……)

ジャン(あいつはきっと、罪を悔やんで自頃する)

198: 2016/02/02(火) 23:22:00 ID:ko5jHpNA0
ジャン(あいつが崖に飛び込んだのは、俺が落ちて氏んだと思ったからだろう)

ジャン(無関係のエレンを頃してしまったことも後悔してるはずだ……)

ジャン(俺を頃すことだけがあいつの生きる目的だとすれば……)

ジャン(あいつは俺を道連れに氏のうとするかもしれない)

ジャン(でも俺にはやるべきことが残っている。氏ぬわけにはいかない)

ジャン(あいつは一人で氏ぬ。俺はそれを見頃しに……)

ジャン(自殺か、事故か、正当防衛か……)

ジャン(俺が黙っていれば真相は誰にもわからない。アルミンも言いふらすようなことはしないはずだ……)

ジャン(息子は殺人犯として氏ぬわけじゃない。両親も悲しまずに済むだろう……)

ジャン(警察にどれだけ追求されるか……俺たちは仲が悪いから事故だと見なされるか?)

ジャン(エレンの失踪と岬の事故を関連付けられたらどうする……?)

ジャン(何とか……できるかじゃねえ、しなくちゃならねえんだ)

199: 2016/02/02(火) 23:23:17 ID:ko5jHpNA0
ジャン(……本当にこれでいいのか?)

ジャン(あいつを頃して、両親を見捨てて、エレンとしてのうのうと生きていくつもりなのか?)

ジャン(そしてあわよくばミカサと……なんて考えてるんじゃないだろうな?)

ジャン(やめろ。勘違いするな)

ジャン(自分が生かされている意味を忘れるな)

ジャン(俺は……ジャン・キルシュタインはもう氏んだ)

ジャン(これからはエレンとして生きなくちゃならない……)

ジャン(……)

ジャン(あんなに羨ましいと思ってたのにな……)

200: 2016/02/02(火) 23:23:49 ID:ko5jHpNA0
エレン「……まずお前、よく生きてたな……」

ジャン「……ああ、それは多分お前のおかげだ」

ジャン「自分自身が下敷きになってたこともそうだが、お前は元々崖の中腹に引っかかってたから衝撃が少なかったんだよ」

エレン「それから、ずっと逃げ回ってたってことか? よく見つからなかったな」

アルミン「誘拐事件でもない限り、高校生の失踪なんて家出扱いされて大した捜査もされないんだよ」

アルミン「……でも、今回は事情が特殊だった」

アルミン「二人が崖から落ちて、一人は氏亡、もう一人は記憶喪失」

アルミン「同時期に同じクラスの生徒が行方不明とくれば……」

エレン「まさか……俺が犯人だと思われてたのか? 警察に写真を見せられたのも」

アルミン「いや……エレンが疑われている限り逃亡生活は厳しそうだと思った僕は、警察に嘘の証言をしたんだ」

アルミン「その日は7時半くらいまで僕の家で一緒にいた。その後の行方は分からないって」

201: 2016/02/02(火) 23:24:21 ID:ko5jHpNA0
アルミン「あの日、岬に行くとき家族にはなんて言った?」

エレン「……友達と会う約束がある、って」

アルミン「そうか……そのおかげで、僕の証言はだいぶ信用を得たみたいなんだ」

アルミン「僕が嘘をついていて、逃亡の手助けをしてるんじゃないかと噂する人もいたけど……結果的にそれは当たってたことになるね」

エレン(クラスの一部の連中の態度が辛辣だったのはそういうわけか。俺が逃亡中の犯人だと思ってたから)

アルミン「ともかく、警察の追及はそれでいくぶんか収まった。君にエレンのことを尋ねたのも形式的なものだったのだと思う」

アルミン「エレンはただの家出として扱われ……あまりに長いからもう氏んだなんて言い出す人もいた」

エレン「……じゃあ、俺の机の花瓶は」

アルミン「エレンが氏んだと思っているのか、逃亡犯への悪意かはともかく、僕はエレンが生きていることを知っていたから」

エレン「……それで、花瓶を捨ててくるって」

アルミン「そうなんだ。誤解したみたいで……悪かったね」

エレン「いや、あれでよかったんだ。本当に氏んじまった気がしてたからな」

202: 2016/02/02(火) 23:25:23 ID:ko5jHpNA0
エレン(クラスの連中はエレンの話をするのを避けてるみたいだった)

エレン(それは、ジャンを突き落した逃亡犯だと疑ってるやつがいるから……気を遣ってたってことか)

エレン(そこまでしてジャンの記憶が戻るのを止めたかった理由は……?)

203: 2016/02/02(火) 23:26:16 ID:ko5jHpNA0
アルミン「でも、エレンは生きていると思ってる人は僕以外にもいた」

ユミル『呆れたやつがいるもんだな』

エレン(あれは花瓶を置いたやつに対しての発言だったのか)

204: 2016/02/02(火) 23:26:52 ID:ko5jHpNA0
エレン「他にも気になることがある。こないだ家の近くで見かけた泥棒って……」

ジャン「ああ、着替えを取りに行ってたんだよ。あとお前の貯金いくつか使っちまった。後で返す」

エレン(だから鍵が閉まってたのか。自分の家の鍵なら持ってて当たり前だもんな)

ジャン「今考えりゃ不法侵入だが……その時は自分の家になるはずだと思ってたからな」

エレン「俺もお前の彼女と勝手に別れちまったし、お互い様だろ」

ジャン「はぁ? 何やってんだよ俺のいない間にうらやましい」

エレン(そんなに別れたかったのか?)

ジャン「つーかお前にはミカサが」

ミカサ「いいから、話を続けてほしい」

ジャン「あっ、悪い」

205: 2016/02/02(火) 23:34:14 ID:ko5jHpNA0
アルミン「ライナーの携帯の件は覚えてる?」

エレン「ああ、確か公衆から……ってまさか」

ジャン「俺が掛けたんだよ。……着信音があいつと一緒だったことを思い出して、お前が何か言い出すことを期待してな」

アルミン「予想通りの答えだったけれど、君にとっては意味が違ったんだね」

エレン「ああ……俺は一瞬本気でライナーを疑っちまってたけど、お前らにとっちゃ罪をなすりつけてるように見える……」

206: 2016/02/03(水) 00:13:13 ID:IyvqNP3k0
アルミン「ばれないようにマナーモード解除するのは大変だったけど……」

エレン「お前、そこまでして……」

アルミン「記憶喪失を装ってる君から情報を引き出すのは大変だと思ったんだ」

アルミン「でも君は絶対にエレンの場所を知りたがると思ったから、そのためにはまず自分の疑いを晴らさなければならない」

アルミン「君も何かきっかけを探していたはず。着信音がその取っ掛かりになるかと考えた」

アルミン「……それにもしかしたら本当に記憶喪失なのかもしれない。そういう時には音楽が効果的かと思って」

エレン「でも、あの着信音は俺を突き落としたやつの……」

ジャン「俺も同じやつにしてたんだよ。まあ流行ってるからな」

エレン「……そうか。だいぶすっきりしたよ、ありがとな」

207: 2016/02/03(水) 00:18:41 ID:IyvqNP3k0
ミカサ「私は……エレンがいそうな場所をずっと探していた」

エレン(こいつがずっと学校休んでて、あんなボロボロだったのも……)

ミカサ「けれど、見つからないのも無理はなかった」

ジャン「中身は俺だったからだ。……悪かったな」

ミカサ「いいえ、帰って来てくれて嬉しい」

ジャン「あ、ああ」

ジャン(だめだ、勘違いしちまう……)

エレン「俺も本当のこと言えなくて、心配かけちまったな」

ミカサ「無事だったのならそれでいい」

208: 2016/02/03(水) 00:19:25 ID:IyvqNP3k0
エレン「そうだお前、母さんにも心配かけやがって……顔出してやってもよかっただろ」

ジャン「俺が接触したらあいつに狙われると思ったんだよ……」

エレン「考えることは一緒か……あ」

ジャン「どうかしたのか?」

エレン「お前、親父に会ったよな?」

ジャン「……何で分かったんだ?」

エレン「親父の態度、明らかにおかしかった。お前なんか吹き込んだだろ」

ジャン「ああ……崖から落ちちまったから、一応診てもらおうと思ってな。階段で転んだとか何とか言って」

エレン「そうか、親父の診療所に」

ジャン「ああ。もちろんいろいろ訊かれたが……」

エレン「……」

209: 2016/02/03(水) 00:20:12 ID:IyvqNP3k0
ジャン「事件については何も言わなかった。……でも何となく察したんだろうな」

エレン「それで岬の事故と関わってる俺の姿を見て怪しんでたのか……」

アルミン「僕があとで話を合わせたんだ」

アルミン「エレンは僕の家を出た後行方不明ということになっている。怪我をしたなんて言うと周りは心配するだろうから、そのことは言わなかった」

アルミン「通報したらエレンは逃亡中の殺人犯とみなされる。だから個人で色々と調べてたみたいで……」

ミカサ「……ずいぶんと忙しそうだった。普段通りの診療はこなさなければならないし、エレンやおばさんのことも気がかりで」

エレン(そうだったのか……)

ジャン「……悪いことしたな」

エレン「いくらでも謝れよ……帰ってきたんだから」

ジャン「……そうだな」

210: 2016/02/03(水) 00:20:57 ID:IyvqNP3k0
アルミン「二人はこれからどうするの?」

エレン「早く元に戻りてえ」

ジャン「同感だな」

ミカサ「もう一度頭をぶつけたら……その前に」ギュ

ジャン「!?」

ミカサ「今までありがとう。エレンの魂を守ってくれて」

エレン「……ああ。そうだな」

ジャン(うらやましい、俺)

アルミン「……」

アルミン「……そうだね。いつまでも互いの振りをするのも大変だし……」

211: 2016/02/03(水) 00:21:26 ID:IyvqNP3k0
エレン「そういやお前、本当に俺として生きていくつもりだったのか?」

ジャン「……無関係のお前を巻き込んじまった俺にできることは、それしかないと思ったんだよ」

ジャン「それにミカサが……いや何でもねえ」

アルミン「……」

ミカサ「最初から正直に言ってくれればよかった。二人とも」

エレン「……ああ」

ジャン「悪かったよ」

アルミン「やっぱり、二人は似た者同士なんだね」

エレン「似てねえよ」

ジャン「ふざけんな」

212: 2016/02/03(水) 00:23:17 ID:IyvqNP3k0
エレン「……はは」

ジャン「何だよ、気色悪い」

エレン「俺を頃した奴なんて、最初からいなかったんだな……」

ジャン「ああ」

ジャン「ってことは、あいつは自分のまま一人で氏んじまったってことか……」

エレン「……」

エレン「なあ、そいつって、さっき言ってた」

ジャン「……」

ミカサ「……」

アルミン「……」

213: 2016/02/03(水) 00:24:17 ID:IyvqNP3k0
エレン「なんであんなことを…話聞いてくる」

ジャン「もう無理だ……氏んじまったからな」

エレン「ああ、そうだったか―――」

エレン「―――っ!?」

ミカサ「どうしたの、エレン?」

エレン(氏んじまった……?)

エレン(そうだ、俺は氏んでなかったんだから、花瓶があるってことは)

エレン「じゃあ、教室の後ろに置いてあった花瓶は、あいつの」

エレン(それに、俺と一緒に病院に運ばれたやつが氏んだって……)

エレン「……そういうことだったのか」

214: 2016/02/03(水) 00:25:03 ID:IyvqNP3k0
エレン(でも、なんであいつが……? 信じられねえ)

エレン(みんなが嘘をついてるなんてことは……)

エレン(いや、思い出せ……)

エレン「……そういえば」

エレン(あの時も、あの時も……)

エレン「……」

エレン「お前は、いなかったのか……」

215: 2016/02/03(水) 00:25:51 ID:IyvqNP3k0
エレン「……あ」

???「……」サッ

エレン「待て!!」ダッ

ミカサ「エレン、どこへ!?」

エレン「……話したいことがあるんだ。あいつが消えちまう前に」

223: 2016/02/14(日) 22:51:08 ID:yPI345x60
エレン(クラスの連中は俺に気を遣って、事故のことはほとんど何も教えてくれなかった)

エレン(あいつも普通に振る舞ってて……畜生、何で今まで気付かなかったんだよ)

エレン(俺は氏んでなかった。ずっと行方不明だった)

エレン(それなのに、エレンは氏んだと断定した人物がいる)

『そのエレンが氏んじゃったでしょ、だから……』

エレン(そう言い切れるのは……自分が突き落したからだ)

エレン(それに、手紙のこともこれで説明がつく……)

エレン「空き教室……ここにいたのか」

???「……」

224: 2016/02/14(日) 22:53:20 ID:yPI345x60
エレン「お前はジャンの下駄箱から手紙を持ち帰り、机の中にしまった」

エレン「そして掃除のとき、手紙を取り出すのを忘れ……」

エレン「机はそのままで持ち主が入れ替わったんだ」

エレン「模様なんていちいち見たりしないもんな……わかりやすい目印があるんだから」

『うん……私とエレン……あそこの空いた席の人ね、二人の机にハート柄のスタンプが押されてたの』

エレン「そうだろ? ミーナ」

225: 2016/02/14(日) 22:53:56 ID:yPI345x60
ミーナ「……もう、全部わかってるんだ?」

エレン「……ああ」

ミーナ「エレン、生きてたんだ。ごめんね……巻き込んで」

エレン「なんで、お前があんなこと……」

ミーナ「……」

226: 2016/02/14(日) 22:55:02 ID:yPI345x60
ミーナ「初めてジャンのライブに行ったのはね、友達の付き添いだったの」

ミーナ「何だかすごく感動しちゃって。歌ってたのが私の好きな曲だったってこともあるんだけど」

エレン(それで着信音に……)

ミーナ「ライブのあと出待ちして感想言いに行ったら、すごく驚いてた。ほんの悪戯心だったんだけどね」

ミーナ「でも、普段の自分を知ってるやつの意見は参考になるとかで、また来いよって言ってくれたの。すごく嬉しかった」

エレン「……あ、もしかしてあいつの彼女って」

ミーナ「違うよ。全然そんなのじゃないの。勘違いしてた人はいるかもしれないけど……」

エレン(あの先輩が言ってた別れ話がどうこうってのは、それが事件に関わってると勘違いしてたってことか)

エレン「お前、ジャンと仲良かったのか。じゃあなんで……」

ミーナ「それは……」

227: 2016/02/14(日) 22:55:51 ID:yPI345x60
男子生徒A『ふー、今日のライブも結構盛り上がってたな』

男子生徒B『この分だと在学中にデビューも夢じゃねーかもな! ジャンもそう思うだろ?』

ジャン『そうっすね……先輩も遊んでないでもっと腕磨いた方がいいんじゃないすか』

男子生徒B『はは、痛てーとこ突かれちまったわ』

ジャン『トイレ行ってきます』ガチャ

228: 2016/02/14(日) 22:57:17 ID:yPI345x60
男子生徒B『はぁー、あいつ年下のくせに態度でかくてマジウゼェわ』

男子生徒A『まあ言ってることは間違ってねーと思うけど、言い方がちょっとな』

女子生徒『でもジャンのボーカルじゃないと人集まんないよ?』

男子生徒B『それなんだよなあ……おっ』

♪~

男子生徒B『あいつの携帯鳴ってら』

男子生徒A『おいおい、勝手に見んなって』

男子生徒B『なになに? 今日は公園で待ってる~だってよ』

女子生徒『ああ、最近よく来てる娘だっけ?』

男子生徒B『けっ、自分だって女と遊んでるくせによ。はい削除っと』ポチ

女子生徒『うわ、ひどーい』

男子生徒A『いくらムカつくからってお前なぁ』

男子生徒B『そうだ、良いこと考えた。なあ……』ヒソヒソ

男子生徒A『はぁ!? お前何言ってんだよ、さすがに酷いぞ』

男子生徒B『はは、冗談だって』

229: 2016/02/14(日) 22:57:47 ID:yPI345x60
ジャン『あの、俺の携帯鳴ってなかったっすか?』

男子生徒B『いや俺のだわ。やっぱこの曲流行ってんのな』

男子生徒A(あーあ……)

女子生徒(知ーらない、っと)

230: 2016/02/14(日) 22:58:30 ID:yPI345x60
ミーナ(ジャン、遅いな……)

男子生徒B『よう』

ミーナ『もう、遅……って誰?』

男子生徒B『なあ、暇してんだろ? 俺と遊ばね?』

ミーナ『嫌よ。私待ち合わせしてるから』

男子生徒B『ジャンなら来ねえよ』

ミーナ『えっ?』

男子生徒B『俺の好きにしていいってさ。お前捨てられたんだよ』

ミーナ『嘘……』

男子生徒B『嘘じゃねーって。だったら何であいつは来ないんだよ?』

ミーナ『そ、それは……』

男子生徒B『きっと今頃ほかの女と遊んでるんだろうぜ。なあ、俺なら悪いようにはしねえからさ』

ミーナ『い、いやだ!!』

男子生徒B『逃げんなよ! どうせ若くて音楽やってる男なら誰でもいいんだろ!?』

ミーナ『やめて! 離してよ!!』

231: 2016/02/14(日) 22:59:03 ID:yPI345x60
ミーナ「それから、私がそいつに何をされたか……」

エレン「やめろ」

ミーナ「顔は隠してて見えなかった。何も……できなかった」

エレン(きっとあのバンド仲間だ)

エレン「許せねえ。頃す。頃してやる……」

232: 2016/02/14(日) 22:59:34 ID:yPI345x60
ミーナ「……ありがとう」

ミーナ「……あの後、どうやって家に帰ったかも覚えてないけど……」

ミーナ「とにかくショックで、何も考えられなくて……」

ミーナ「……その時だった」

233: 2016/02/14(日) 23:00:47 ID:yPI345x60
♪~

ミーナ(誰? こんな時に……)

ミーナ(!! ジャンから――)

さっきの感想教えてくれよ。

ミーナ『……っ!!』

234: 2016/02/14(日) 23:01:28 ID:yPI345x60
ミーナ「……許せなかった。あいつ、どんな気持ちであんなこと……」

ミーナ「学校でもいつもと変わらない態度で。私怖かったの。だから……」

エレン「あいつに嫌がらせを?」

ミーナ「何度も頃してやろうかと思った。でも、どうしても勇気がわかなくて……」

ミーナ「そうしているうちに岬に呼び出されたの。……殺されると思った。だからその前に」

ミーナ「……気が動転してたの。前に変装してたからって、エレンとジャンを間違えるなんてね……」

エレン「……お前、きっと勘違いしてるんだよ」

ミーナ「……」

エレン「本当は分かってたんじゃねえのか? あいつがあんなことする訳ないって……」

ミーナ「……」

235: 2016/02/14(日) 23:02:08 ID:yPI345x60
ミーナ「……最初から、ちゃんと話し合ってればよかったんだね……」

エレン「……」

ミーナ「最初に話しかけられたときはびっくりしたけど」

ミーナ「でも、エレンと話せて……楽しかったよ。ありがとう」

エレン「……ミーナ」

ミーナ「ごめん。そろそろ行かなきゃ……」

エレン「待て!! まだ……」

ジャン「おい!!」

236: 2016/02/14(日) 23:03:58 ID:yPI345x60
ミーナ「……あ」

ジャン「お前、ふざけんなよ……」

エレン「待てよジャン、こいつは」

ジャン「人を犯罪者扱いして、関係ないやつ巻き込んで、挙句勝手に氏にやがって……」

ジャン「ずっと一人きりで……バカじゃねえの、お前……なんで」

ミーナ「……ごめんね」

ミーナ「ジャンの歌、好きだったよ。……ありがとう」

ジャン「……ミーナ」

エレン「待てよ……!!」ダッ

スカッ

エレン「あ……」

237: 2016/02/14(日) 23:04:32 ID:yPI345x60
ミーナ「さようなら」

フワッ

エレン「ミーナ……!!」

ジャン「よせ、エレン!!」ガシッ

ズルッ

エレン「あ……」

ジャン「やべ……」

ドサドサッ

238: 2016/02/14(日) 23:05:22 ID:yPI345x60
――!  ―――ン!!

エレン「……ん」パチ

エレン「ここは……?」キョロキョロ

カルラ「……エレン」

エレン「……あ、母さ……」

エレン「いや、エレンのお母さ……!?」

カルラ「よかった……」ギュッ

エレン(母さん……)

グリシャ「……無事に戻ってきてくれたんだな」

エレン(……そうか)

エレン(俺、やっと元の体に……)

239: 2016/02/14(日) 23:08:26 ID:yPI345x60
ミカサ「エレン……なの?」

エレン「ああ。久しぶり……ってのも変か」

アルミン「やっと、元の体に戻ったんだね」

ミカサ「無事でよかった……」

エレン「ミカサ、アルミン。俺……」

ミカサ「二人は空き教室の窓から落ちた。たいした怪我はないようだったけど、ずっと目が覚めないから……」

エレン「ジャンは? あいつは無事なのか!?」

アルミン「無事だよ。さっき目が覚めたばかりなんだ」

エレン「そうか。……よかった」

アルミン「……君は、本当にエレンなんだね?」

エレン「ああ。嘘ついてどうすんだよ?」

アルミン「……それもそうか」

240: 2016/02/14(日) 23:09:11 ID:yPI345x60
少し前

ジャン「……ん」パチ

ジャン母「ジャン!」

ジャン「俺……」

マルコ「よかった、今度はどうなることかと思ったよ……」

ジャン「ああ、悪いな……」

ジャン母「もしかして、またショックで記憶が飛んだなんてことは……」

ジャン「はあ? 何だよそりゃ……って」

ジャン(まさか、元の体に戻った……のか?)

ジャン母「あんた、まさか頭打って記憶が戻ったのかい?」

ジャン「あ、ああ……そうみたいだな」

241: 2016/02/14(日) 23:09:51 ID:yPI345x60
ジャン「エレンは? 無事なのか?」

マルコ「……まだ意識が戻らないみたいで」

ジャン「……そうか」

ガチャ

アルミン「エレンが目を覚ましたよ」

マルコ「本当か! よかった」

ジャン「……まあ、氏なれたら気分悪いからな」

ジャン母「こら、お友達になんてこと言うんだい」

ジャン「友達じゃねえよ」

ジャン母「記憶戻らない方がよかったかねえ」

ジャン「うるせえな」

アルミン「ところで、君は本当にジャンなんだね?」

ジャン「ああ。嘘ついてどうすんだよ?」

アルミン「それもそうだね」

242: 2016/02/14(日) 23:10:30 ID:yPI345x60
エレン「三日も眠ってたのか、俺……」

カルラ「三日どころの騒ぎじゃないわ。本当に心配したんだから……」

グリシャ「……何があったか、話してくれるか?」

エレン「ああ……その前に」

ミカサ「……」コクッ

アルミン「……」コクッ

エレン「……あの、こいつらと三人きりにしてくれませんか?」

243: 2016/02/14(日) 23:11:03 ID:yPI345x60
エレン「……結局あの後どうなったんだ?」

ミカサ「文化祭は無事に終わった。今回の事故のことは一部の人にしか伝えていないけれど、じきに広まると思う」

エレン「そうか……」

エレン「……ミーナのこと、なんだけどな」

アルミン「……」

ミカサ「……」

エレン「あいつ、勘違いでジャンを殺そうとしてたんだ」

エレン「でも悪いやつは他にいて……本当だ、俺はあいつと話したんだ。ジャンにも見えてた。だから……」

ミカサ「犯人は捕まった」

244: 2016/02/14(日) 23:11:32 ID:yPI345x60
エレン「え!? あの野郎が自首したのか!? まさか……」

アルミン「……あのあと、軽音楽部の先輩から連絡がきたんだ」

アルミン「ジャンの姿でエレンが飛び出したよね? そのあと携帯、僕が預かってたから……」

エレン「……なんて書いてあったんだ」

アルミン「……男子生徒Bがお前の彼女に酷いことをしちまったかもしれない、って」

エレン「やっぱり、あいつが……」

アルミン「バンドメンバーはミーナをジャンの恋人だと思ってたから」

アルミン「二人の間に何らかの諍いがあって、岬の事故に至ったのだと思われてた……でも」

アルミン「男子生徒Bはミーナに悪戯することを目論んでたみたいで、さすがに冗談きついと思ったそうだけど」

アルミン「その後の対応から、もしかして本当に何かやらかしたんじゃないかと思ったそうだ」

245: 2016/02/14(日) 23:12:06 ID:yPI345x60
男子生徒A『なに話してるんだろうな、あいつら。まさか記憶が戻ったとか?』

男子生徒B『痴話喧嘩じゃねーの?』

男子生徒A『それはないだろ。例の変質者について知りたいとか……』

男子生徒B『しかしもったいねーよなー。結構いい女だったのに』

男子生徒A『…………』

246: 2016/02/14(日) 23:12:46 ID:yPI345x60
アルミン「変質者っていうのはつまりジャンに嫌がらせをしていたミーナのことだけど」

アルミン「こうなった原因はジャンではなく、男子生徒Bにあるんじゃないかって……」

アルミン「でもジャンは記憶喪失なわけだし、わざわざ辛いことを教える意味はあるのか?って、ずいぶん悩んだそうだよ」

エレン「……知ってて黙ってたんなら同罪だろ。それで、警察に言ったのか?」

ミカサ「その必要はない」

ミカサ「ミーナには蹴り技の得意な友達がいるから。警察とどっちがいいかと訊かれて、迷わず出頭した」

アルミン「……もう滅多なことはできないだろうね」

エレン「……そうか」

エレン(アニがジャンのことを許さないかもと言っていたのは、あいつがミーナの氏の原因を作ったのかもしれないと思ってたからか)

247: 2016/02/14(日) 23:13:29 ID:yPI345x60
エレン「……みんなが、ジャンの記憶喪失を歓迎してるような気がしてたんだ。あれは……」

アルミン「ああ……実は」

ミカサ「……」

アルミン「彼女は妊娠していた、って噂が広まってたんだ」

エレン「え……!?」

アルミン「もちろん実際のことは分からない。そんなことをわざわざ公表したりもしないだろう……」

アルミン「でも一度生まれてしまった噂は、歯止めが利かないから」

248: 2016/02/14(日) 23:14:01 ID:yPI345x60
アルミン「先生たちもジャンが事故のことを思い出すのを避けようとしたはずだ」

キース『……まあ、思い出さない方が幸せなこともある』

エレン「そうか……それで」

アルミン「うん。岬の事故で、エレンを含めた三人の間にどんな争いがあったのか……想像するに難くないだろう?」

アルミン「だから、ジャンの前でミーナの名前を出さないよう気を付けた。事故やエレンのこともなるべく口にしないように」

アルミン「そういうわけで、みんなはジャンの記憶が戻らないことを望んだんだ」

エレン「……そう、だったのか」

249: 2016/02/14(日) 23:14:32 ID:yPI345x60
エレン(ミーナ。お前は、ずっと一人で教室に……)

エレン(どんな気持ちだったんだよ……?)

エレン(成仏、できたんだよな……)

エレン(もう、思い残すことはなくなったのか……?)

エレン(……あいつは、どう思ってるだろう)

250: 2016/02/14(日) 23:15:05 ID:yPI345x60
ジャン「……俺のせいだ」

マルコ「ジャン……」

ジャン「俺が先輩たちに生意気な態度取らなけりゃ、あいつが巻き込まれることはなかった……」

マルコ「……」

ジャン「俺は、どうすれば……」

マルコ「……音楽、やめるなよ」

ジャン「え……」

マルコ「ミーナは、ジャンの歌が好きだったんだろう? だったら、歌い続けるべきだ」

ジャン「……」

ジャン「……そうだな」

251: 2016/02/14(日) 23:16:00 ID:yPI345x60
アルミン「そろそろ僕らは帰ろうか。……そうだ」

アルミン「ジャンと話を合わせた方がいいかな? いろいろ訊かれるかもしれない」

エレン「いや、いい。自分で話す」

アルミン「……入れ替わりのことも?」

エレン「まだ何て言うかまとまってねえけど、俺の言葉で正直に伝えた方がいいと思ったんだ」

アルミン「……うん。そうだね」

ミカサ「ええ。……エレン」

エレン「ん?」

ミカサ「ありがとう」

エレン「何だよ……俺は何もしてねえぞ。むしろ迷惑かけて」

ミカサ「無事でいてくれて」

エレン「……ああ。信じてくれて、ありがとな」

252: 2016/02/14(日) 23:17:09 ID:yPI345x60
エレン(……この数日間、本当にいろんなことがあった)

エレン(ジャンは……あいつの両親は今頃どうしてるだろう?)

エレン(この事件がなけりゃ、考えることもなかっただろうな……)

エレン(……これから)

エレン(両親、クラスメイト、先生、警察……色々訊かれるだろうな。ジャンの方も……)

エレン(……でも、とりあえず今は)

253: 2016/02/14(日) 23:18:15 ID:yPI345x60
カルラ「エレン。お友達とのお話はもう終わったの?」

エレン「ああ」

グリシャ「……まだ、お前に大切なことを言っていなかったな」

「おかえり」

エレン「ただいま」

254: 2016/02/14(日) 23:19:26 ID:yPI345x60
おしまい

更新遅くてすみませんでした
かなり改変したので矛盾等色々あるかもしれません
見てくださった方々ありがとうございました

引用: エレン「俺を殺したのは誰だ?」