1: 2014/07/07(月) 20:03:08
他の誰よりも高みにいられた僕にとって、空は身近な存在だった。

地表から見上げる時も、空翔る鳥と共に眺める時も

澄んだ空はどこまでも蒼く、どこまでも広がっていて

それは誰も知らない僕だけが知る秘密で、だから僕は空が好きだった。

あの日までは。

2: 2014/07/07(月) 20:03:37
ずっと続いた空は、突如現れた壁に遮られた。

だから僕は壊した。大切な空を取り戻す為に。

なのに、その日から世界は紅く染まってしまった。

3: 2014/07/07(月) 20:04:07
血塗られたあの日。

自ら壊したあの日。

家屋は炎を上げ、動かぬ肉片がそこかしこに散らばって

建物も、地面も、血で覆いつくされた。

そして空は、燃えるような紅い夕焼けに染め上げられていた。

4: 2014/07/07(月) 20:04:29
僕は…

知らなかった、こんな光景があるだなんて。

怖かった、空が僕を紅く見つめてくるのが。

その日から、僕は空が嫌いになった。

7: 2014/07/09(水) 00:22:35
…849年、夏。

エレン「あっちぃー…」

ライナー「こうも暑くちゃ部屋にいても熱中症になっちまうな」

エレン「だから風通しのいい外の日陰に来てんだろ。にしてもあっちぃな…」

マルコ「記録的猛暑らしいよ、今年」

ジャン「んな記録いらねえっての。あー、蝉もうるせぇ」

8: 2014/07/09(水) 00:24:31
ライナー「この暑い中、アルミンは補講か」

エレン「ああ…立体機動のな」

ライナー「行かなくて良かったのか」

エレン「自分でコツ掴まなきゃ実戦で役にたてないからって断られたんだよ…」

ライナー「なるほど」

9: 2014/07/09(水) 00:25:47
ジャン「気持ち悪いくらいいっつも一緒だしな」

エレン「気持ち悪いってなんだよ」

ジャン「そのまんまの意味だが?」

エレン「お前なぁ、って喧嘩する気力もねぇわ、あっちぃ」

ジャン「今日ばかしはお前に賛同してやるよ…」

10: 2014/07/09(水) 00:26:48
マルコ「大丈夫?コニー」

コニー「おう…」

ジャン「ハゲにゃこの日差しキツそうだな」

コニー「ハゲって言うなよ、坊主だ坊主」

ジャン「かわんねぇよ」

コニー「慣れれば楽だぜ?」

ジャン「俺はお断りだ」

11: 2014/07/09(水) 00:28:26
コニー「むしろツラいのはベルトルトだろ」

ベルトルト「え…?」

コニー「俺より太陽に30cm以上近いんだ。暑くないのか?」

ベルトルト「…変わらないと思うけど」

ジャン「数10cmで体感温度変わってたら、立体機動なんかできねぇよバーカ」

コニー「あーそうか」

12: 2014/07/09(水) 00:29:26
エレン「あー…雲になりてぇ…」

ライナー「雲?」

エレン「雲になったら、風に乗ってどこまでもいけるよな?」

ライナー「…まぁな」

エレン「壁の外にもさ…」

13: 2014/07/09(水) 00:30:37
ジャン「最近大人しいと思ったら、まーた始まったよ。この氏に急ぎが」

エレン「いいじゃねえか、夢くらい見たって」

ジャン「何が夢だ、壁の外は巨人がうようよしてんだぞ。行けるわけねえだろうが」

エレン「うっせぇ…」

ライナー「喧嘩なら余所でやれ、暑苦しい」

ジャン「お前が言うなって」

ライナー「むぅ…」

14: 2014/07/09(水) 00:31:58
マルコ「雲かぁ」

ジャン「んだよマルコ、お前まで雲になりたいってか?」

マルコ「いや…でもエレン、雲だと風の流れに逆らえないから、東にしか行けないよ」

エレン「え、なんでだ」

マルコ「風は西から東に流れてるからさ。南からの風もあるけど、上空は東に向かって流れてる。立体機動の講義でやったろ?」

ジャン「やめとけやめとけ、馬鹿は体でしか覚えられねぇんだからさ」

エレン「…確かに覚えてなかったけどよ。でもそうか、雲だと東にしか行けないのか」

15: 2014/07/09(水) 00:33:08
マルコ「どこか行きたいとこでもあるのかい?」

エレン「…海に」

マルコ「うみ?…あぁ、塩の湖だったっけ。ホントにあるのかな」

エレン「あるんだよ。アルミンの爺ちゃんの本に書いてあったし」

マルコ「へぇ。でも珍しいね、君がアルミンのいないところでこんな話するだなんて」

エレン「…まぁな」

16: 2014/07/09(水) 00:34:44
マルコ「いないから、ってこともあるのかな」

ジャン「あ?」

マルコ「なんでも。しかし、うみ?か…どこにあるんだろうね」

エレン「東にあるかなぁ」

マルコ「どうだろうね…」

17: 2014/07/09(水) 00:35:44
ベルトルト「…風は西からやってくるんだよ」

エレン「ん?」

マルコ「ああ、そうか。雲も西からやってきて、この地域に雨をもたらす」

ベルトルト「…うん」

エレン「んん?」

マルコ「エレン、雲は水蒸気からできるって習わなかった?」

エレン「それは聞いたことがあるな」

マルコ「水蒸気を発生させるには何が必要かな」

18: 2014/07/09(水) 00:36:40
エレン「そりゃあ水だが…」

マルコ「雲くらいの大きさの水蒸気を作るには?」

エレン「………ああ!」

マルコ「わかった?」

エレン「海は西にあるのか!?」

マルコ「さあ、そこまでは僕もわからないけどね」

19: 2014/07/09(水) 00:37:44
エレン「じゃあ雲になるのは却下だな」

ジャン「却下も何も、なれねぇって」

エレン「うっせぇなぁ…」

マルコ「西かぁ。どこまで行けばいいんだろ」

20: 2014/07/09(水) 00:38:28
ベルトルト「…太陽なら」

マルコ「うん?」

ベルトルト「太陽なら、西に行けるよ」

マルコ「あ、そっか」

エレン「太陽?」

21: 2014/07/09(水) 00:39:16
マルコ「東の端からのぼって、西に沈んで行くだろ?」

エレン「ああ、そうか!」

ジャン「…生きてるか?」

コニー「最初っから聞いてねぇし」

ジャン「天才だな」

コニー「まぁな」

22: 2014/07/09(水) 00:40:04
マルコ「けどベルトルト。よくわかったね、うみの場所」

ベルトルト「まぁ…」

ライナー「本の虫だからな、こいつ」

マルコ「成る程」

23: 2014/07/09(水) 00:41:05
ライナー「お前も少しは見習ったらどうだ」

エレン「いいんだよ、そういうのはアルミンが担当なんだ」

ライナー「いつまでも一緒とは限らんだろ」

エレン「……」

ライナー「ま、頭のすみにでも置いておけ」

エレン「あぁ…」

24: 2014/07/09(水) 00:42:47
マルコ「太陽か…うん、そうだね。太陽だ」

ジャン「なんだ?」

マルコ「エレンって、太陽みたいだからさ」

ジャン「はあ?」

マルコ「みんなの注目の的で、力強くて、熱い心を持ってる」

ジャン「暑苦しいの間違いだな」

マルコ「…君はなんだろな、月?」

25: 2014/07/09(水) 00:43:58
ベルトルト「僕が?」

マルコ「うん。そういえば、エレンとベルトルトって、なんだか反対だね」

エレン「俺とベルトルトが?」

マルコ「なんだろ、静と動っていうのかな。あるいは、火と水。太陽と月?」

26: 2014/07/09(水) 00:44:54
ジャン「月ねぇ…夜ってことか。いいんじゃないか、暗くて主張に乏しいし」

マルコ「ジャン…君ってやつは」

ジャン「正直なだけさ。お前、もうちょっと自分出せよ。そしたら女にモテるぞ」

マルコ「ベルトルトは今のままでも十分モテてるよ。ね?」

ジャン「なっ…そうなのか?」

マルコ「この前、ユミルから聞いたんだけど…」

27: 2014/07/09(水) 00:45:58
ライナー「あまり困らせてやるなよ」

マルコ「ごめんごめん。でも、僕は今のままでもいいと思うよ。君には君の良さがあるから」

ベルトルト「…ありがと。でも僕、夜は好きだよ」

マルコ「夜が?」

ベルトルト「うん。空、綺麗だから」

マルコ「あぁ、星空は綺麗だね」

28: 2014/07/09(水) 00:46:57
ベルトルト「むしろ、明るい時間はあまり好きじゃないな」

エレン「俺は昼のが好きだな。確かに反対かもしれねえ」

マルコ「だね。でもどうして?」

ベルトルト「…眩しすぎて。特に、夕暮れは」

マルコ「夕暮れ?」

ベルトルト「……」

29: 2014/07/09(水) 00:47:35
ライナー「好みは人それぞれだからな。俺も夕暮れはあまり好きではないが」

エレン「そっか?真っ赤に染まって綺麗だと思うが」

ライナー「うーむ、なんで好きじゃないんだったか。まぁ1日がもうすぐ終わるって気になるからじゃないか」

エレン「だなぁ…昔は早く寝て、早く起きて遊びに行きたいと思ったもんだぜ」

30: 2014/07/09(水) 00:48:40
ライナー「お前は今でもそうなんじゃないか。次の日が立体機動訓練だとよ」

マルコ「座学以外、かな?」

ジャン「ちげえねぇ」

エレン「なんだよ、みんなして俺を馬鹿扱いしやがって」

ジャン「あいつ見てみろ、この暑さの中寝てやがんだぜ。あそこまで行くと天才だが、お前はただの馬鹿だ」

エレン「うっせぇ…オレも昼寝すっかな」

31: 2014/07/09(水) 00:50:21
…あの日から。

夜が好きになった。空が僕を見つけられないから。

あの紅い目が、太陽が、僕を見つめてこないから。

みんなが寝静まった後、宿舎を抜け出したら

そこには、僕だけの世界があったのだから。

僕だけの空が、そこにはあったのだから。

34: 2014/07/10(木) 18:05:30
…845年、開拓地。

ベルトルト(…まただ。また陽が沈もうとしている)

ベルトルト(息が苦しい。世界がまた、血の色に染まってしまう)

ライナー「どうした、ベルトルト」

ベルトルト「ごめ、ちゃんと、する」

35: 2014/07/10(木) 18:05:53
ライナー「…いい、休んでろ」

ベルトルト「でも…っ」

ライナー「お前がこの時間になると発作を起こすのは、周りも知ってる。
 『あの時間』にそうなるのは、何もお前だけじゃない」

ベルトルト「……」

ライナー「先に戻れ。俺ももう少ししたら終わる」

36: 2014/07/10(木) 18:06:33
ベルトルト(最初こそ3人とも衰弱もして混乱していたけれど、
 数日が経ってからも自分の体を制御できないのは僕だけだった)

ベルトルト(身体に疲れが残っているんだろうと、2人とも気を使ってくれていたけれども)

ベルトルト(疲れからじゃない…夕方になると、発作的に息が苦しくなる。
 周りにも同じ症状の子供達がいて、精神的に弱っているからだと診断された)

ベルトルト(そんな弱い子供達と、僕は一緒だった。こうして誰もいない建物の影で、
 ただ時間が過ぎるのを待つことしかできない。僕は、戦士なのに…)

37: 2014/07/10(木) 18:07:02
アニ「いつまでそうしてるつもり」

ベルトルト「え…」

アニ「数日なら、あんたのアレは体に負担があったんだと見逃してやったけど。
 今のあんたは、ただ逃げてるだけだ」

ベルトルト「そんなこと、言われても…」

アニ「1ヶ月だよ。あれから。いい加減にしてくれなきゃ、次の行動に移れない」

38: 2014/07/10(木) 18:07:23
ベルトルト「……」

アニ「…ほんと、なんであんたなんかが選ばれたんだろ」

ベルトルト「…ごめん」

アニ「謝るなら顔くらい上げたらどうなんだい」

39: 2014/07/10(木) 18:07:41
ベルトルト「……ぁ」

アニ「なに」

ベルトルト「いや、その…」

アニ「変な奴。もう行くから。明日から私は1人で動くって、アイツに伝えといて」

ベルトルト「あっ、あのっ」

アニ「…なに」

ベルトルト「えっと…その、僕、」

40: 2014/07/10(木) 18:07:57
アニ「……」

ベルトルト「明日から、は…大丈夫、だと思う…」

アニ「そ。思うじゃなく行動に移しな」

ベルトルト「う、うん。あの…」

アニ「…なにさ」

41: 2014/07/10(木) 18:08:20
ベルトルト「1人で、動くの?」

アニ「バレた時に3人一緒よりリスクは減るだろ」

ベルトルト「そうだけど…寂しくはないの」

アニ「馬鹿馬鹿しい。そんな気持ちでここに来たの?」

ベルトルト「違うよ、でも」

アニ「たいして知りもしないあんたらと一緒にいたって楽しくもないだろ」

42: 2014/07/10(木) 18:08:40
ベルトルト「そうかもしれない、けど…」

アニ「でも、けど、ばかりだねあんた。不愉快だ」

ベルトルト「ごめん…」

アニ「そうやってすぐ謝るのもね。私は1人がいいんだよ」

ベルトルト「うん…ライナーにも、伝えとく…」

アニ「定期的に報告はする」

…あの時から、僕は夕方になっても発作は起こさなくなった。

43: 2014/07/10(木) 18:09:02
…849年。夜、某所。

アニ「そんなこともあったかな」

ベルトルト「あの時は、ごめん。自分の力が…ほんの少し蹴り上げただけで、
 あんな混乱を起こせることを受け入れきれなかったんだ」

アニ「そう。あの日初めて見たけど、確かにあんたのは破壊兵器そのものだった。
 それにビビッてしまったってわけだ」

ベルトルト「…まぁ、そうかな」

44: 2014/07/10(木) 18:09:19
アニ「はっ、だらしない」

アニ「あんた、裏でなんて呼ばれてるか知ってる?…ライナーの腰巾着、だよ」

ベルトルト「へぇ。うまいこと言うもんだね」

アニ「呆れた。男なら汚名を返上しようと思わないわけ」

ベルトルト「…裏でなんて呼ばれようと、僕らには関係ないだろ」

アニ「そりゃそうだけれども」

45: 2014/07/10(木) 18:09:58
ベルトルト「男だから、とか…そんなこと気にしてたら、やっていけない」

アニ「確かにね。アイツは違うみたいだけど」

ベルトルト「……」

アニ「最悪、切り捨てることも考えなきゃいけない。その時は、わかってるだろうね」

ベルトルト「…さすが、『氷の女』だね」

アニ「ふ…そう思われてる方が楽だよ。あんただって、そうなんだろ」

ベルトルト「…わかってる。でも、最悪の状況は出来るだけ避けよう」

アニ「ああ…」

46: 2014/07/10(木) 18:10:23
夜は僕を隠してくれた。

夜は何も隠さなくて良かった。

そこに時々、僕だけの空がいてくれた。

それだけで、僕はよかったのに。

なのに。

空は、どうして紅く染まってしまうのだろう。

47: 2014/07/10(木) 19:00:44
…資料室。

アルミン「ベルトルト、何か調べ物?」

ベルトルト「いや…大したことじゃないんだけど」

アルミン「『天候変化とその影響』?そんな課題なかったよね」

ベルトルト「…うん。個人的に、気になって」

アルミン「何かあったの?」

48: 2014/07/10(木) 19:01:10
ベルトルト「どうして空は、青くなったり赤くなったりするのかな、って」

アルミン「空の色に関する本、か…どこかで見かけたな」

ベルトルト「ほんと?どこだろう」

アルミン「確かこの辺………あった、これだよ」

49: 2014/07/10(木) 19:01:28
ベルトルト「……」

アルミン「その本にも書いてあるけど、まだ本当のことはわかってないんだ」

ベルトルト「みたいだね」

アルミン「ただ、太陽との距離が関係してるんじゃないかって」

ベルトルト「太陽…」

50: 2014/07/10(木) 19:01:47
アルミン「夜が真っ暗なのは、太陽が見えていないからなんだろうけど。
 本によっては、太陽の温度だって書いてあったりもするよ」

ベルトルト「温度?」

アルミン「火と一緒さ。赤い光を放つ火より、青い火の方が温度が高い。
 僕らの剣の加工は、やや青い光を使っているみたいなんだ」

ベルトルト「初耳だな」

アルミン「青い空、つまり昼間は暑くて、夕方は少し涼しいよね。だから、そんな説も」

51: 2014/07/10(木) 19:02:09
ベルトルト「なるほど…」

アルミン「僕としては距離説を推すけどね。何故なら――」

ベルトルト「あ、うん、ありがとう。僕そろそろ行かなきゃ、教官に手伝い頼まれてて」

アルミン「そうなんだ…また今度話せるかな?こういうことに興味持ってくれるの、ベルトルトしかいなくて」

52: 2014/07/10(木) 19:02:25
ベルトルト「…エレンは」

アルミン「えっと…そういうのは、難しいから、って…」

ベルトルト「…そう。まぁ…今度ね」

アルミン「うん!じゃあ、手伝い頑張って」

ベルトルト「ああ…」

53: 2014/07/10(木) 19:02:44
ベルトルト(空の色を決めるのは、太陽の光)

ベルトルト(君もいつか、紅く染まってしまうのだろうか)

ベルトルト(…嫌いだ、太陽なんて。ずっと夜が続けばいいのに)

※温度説なんかありません、多分。空の色は太陽との距離です。詳しく知りたい方はgoogleさんに聞いてください。

54: 2014/07/11(金) 07:57:39

55: 2014/07/12(土) 10:41:13
・・・・・

『俺達は兵士だろ』

やめてくれ

『教えてやってもいいけど』

もう

『お前はどっちだ』

嫌だ

『学習しなよ、力の使い方と女の子との話し方を』

やめてくれ!!

56: 2014/07/12(土) 10:41:33
君はどうして、僕から全てを奪おうとするのだろう。

僕が君から大切なものを奪い取ったから?

君達はどうして、こんなにも眩しいのだろう。

僕が闇に飲まれてしまっているから?

悪魔は君達のはずなのに

どうして僕が闇を彷徨っているのだろう?

57: 2014/07/12(土) 10:41:51
眩しくて、暖かくて、どうしようもなく心地よいのに

思い出すと、心が裂けそうに痛くなる。

1人は戻ってくることが出来なくなって

1人は泣くことも笑うことも出来なくなって

僕は…僕は…

僕は………?

58: 2014/07/12(土) 10:42:08
・・・・・

エレン「…あれ、みんなまだ寝てんのか」

ベルトルト「うん」

エレン「あっちぃー…って、お前本なんか持ってきてたのかよ。ほんと好きなんだな」

ベルトルト「…まぁね」

59: 2014/07/12(土) 10:42:23
エレン「オレも本読んだ方がいいのかな…」

ベルトルト「…君は、読みながら寝そうだけど」

エレン「だよな…」

ベルトルト「人には得手不得手があると思うよ」

60: 2014/07/12(土) 10:42:40
エレン「なんかさ」

ベルトルト「うん」

エレン「オレとアルミンと、ライナーとお前って、なんか似てるよな」

ベルトルト「そうかな」

エレン「オレ達、お互い足りないとこ補ってるんじゃないかって、たまに思うんだ」

ベルトルト「…そう」

61: 2014/07/12(土) 10:42:58
エレン「お前らもそんな感じに見えるんだよ」

ベルトルト「…そう?」

エレン「ライナーって何でもできるけど、たまに無茶したり忘れたりするだろ?
 それをお前が止めたり思い出させたりしてさ」

ベルトルト「……」

エレン「信頼しあってるっていうか…なんか、いいなって思う」

ベルトルト「……」

62: 2014/07/12(土) 10:43:16
エレン「…オレも、アルミンに助けられてばかりだから。もっと強くなって、あいつを助けたいんだ」

ベルトルト「…ミカサは?」

エレン「あいつは助けなんかいらないだろ。…まぁ、それでも助けられるくらい強くなりてえんだけど」

ベルトルト「…わからなくもないね」

エレン「けどつえぇんだよな、あいつ」

63: 2014/07/12(土) 10:43:34
ベルトルト「…意外に弱いところもあるんじゃないかな」

エレン「ん?どこがだ?」

ベルトルト「それは君が見つけてあげないと」

エレン「ちぇっ」

64: 2014/07/12(土) 10:43:52
ベルトルト「…僕は、君が羨ましいよ」

エレン「ん?」

ベルトルト「感情を隠さずに生きることのできる君が」

エレン「どういうことだ?」

ベルトルト「……」

65: 2014/07/12(土) 10:44:17
エレン「…よくわかんねぇけど、言いたいことあるなら言ったほうがいいぞ。ジャンじゃねぇけどよ」

ベルトルト「…そうだね。そうできたら、どんなに良かっただろう」

エレン「なんかあったのか?オレでよけりゃ聞くが…頭わりぃけど」

ベルトルト「……」

66: 2014/07/12(土) 10:44:38
エレン「なぁ、」

ベルトルト「ありがとう。でも、君には言えない。たぶん、ここにいる誰にも言っちゃいけない。
 僕だけの心に留めなきゃいけない話なんだ」

エレン「…そっか」

ベルトルト「うん」

エレン「苦しいな、それ」

ベルトルト「そうだね」

エレン「いつか言える日が来るといいな」

ベルトルト「…そうだね」

67: 2014/07/12(土) 10:44:57
…85*年。

アニ「ホント、しつこい奴らだ」

ベルトルト「だね。このままじゃ追いつかれてしまう」

アニ「……」

ベルトルト「ねぇ、アニ」

アニ「なにさ」

68: 2014/07/12(土) 10:45:15
ベルトルト「先に行ってよ」

アニ「は?」

ベルトルト「僕はここに残る。この地形なら、ここを通らなきゃあそこには行けないだろ」

アニ「そうだけど」

ベルトルト「2人ともここで倒れるわけにはいかない。それは君もわかってるはずだ」

69: 2014/07/12(土) 10:45:35
アニ「けど、それだとあんたが」

ベルトルト「君の足ならたどり着ける。僕には無理だ」

アニ「でも」

ベルトルト「けど、でもは嫌いじゃなかった?」

アニ「……」

70: 2014/07/12(土) 10:45:53
ベルトルト「お父さんに、会うんだろ」

アニ「…うん」

ベルトルト「なら行くべきだ。大丈夫、僕は簡単には氏なない。
 むしろ君がいない方が存分に力を振るえる。破壊兵器だからね」

アニ「…私が、これまでしてきたことは知ってるんだよね」

ベルトルト「だいたいね」

71: 2014/07/12(土) 10:46:11
アニ「なんで、信じてくれるの」

ベルトルト「賢い君なら気づいているよね。言葉にしてはいけない理由も」

アニ「…そう」

ベルトルト「それに、彼とは決着をつけなきゃならない。あの日からの、因縁ってやつさ」

アニ「……」

ベルトルト「…あとね」

アニ「うん」

72: 2014/07/12(土) 10:46:32
ベルトルト「一度くらい、男になってみようかなって」

アニ「は…あはははははっ」

ベルトルト「そこ笑うとこ?」

アニ「今、こんな時に、そんなこと考えてたの」

ベルトルト「こんな時だからこそ、かな」

73: 2014/07/12(土) 10:46:49
アニ「はっ…いいよ、認めたげる。あんたは男だ」

ベルトルト「どうも。…もう行きなよ。直にあいつらが来てしまう」

アニ「ああ。

……………ありがとう」

74: 2014/07/12(土) 10:47:08
・・・・・

エレン「ベルトルト!!」

ベルトルト「やあエレン、久しぶりだね」

エレン「…アニはどうした」

ベルトルト「先に行ってもらったよ。君と話がしたかったから」

エレン「そうかよ。オレは話したいことなんてない」

75: 2014/07/12(土) 10:47:32
ベルトルト「つれないな」

エレン「…お前から話なんて珍しいな」

ベルトルト「そうだね。僕、君のこと嫌いだったし」

エレン「ただの時間稼ぎだろ。アニはまだ近くにいる」

ベルトルト「少し前に立ったよ。でも彼女の足には、調査兵団の馬はもちろん、たとえ君でも追いつけない」

76: 2014/07/12(土) 10:47:59
エレン「見捨てられたのか」

ベルトルト「…少し昔話をしようか。君は太陽で僕が夜だと、みんなで話したことを覚えているかな」

エレン「…それがどうした」

ベルトルト「僕は、空が好きだった。でもあの日は夕焼けが紅かったよね。
 これから壁内でやっていく不安や恐怖…こんなことを言うと君は不愉快に感じるかもしれないけど、
 後悔もあって、その紅さに責められている気がして、僕は空が嫌いになった」

77: 2014/07/12(土) 10:48:21
ベルトルト「誰よりも、空を身近に感じていたからこそ、なのかな。
 それからはいつも監視されている気がして。だから僕は昼の空が嫌いになったんだ」

エレン「……」

ベルトルト「空にはいつも太陽があって、痛いくらい眩しかった。そして僕をいつも責めた。
 でも夜だけは…太陽が寝静まった夜だけは、空は僕を見つけられなかった。だから僕は夜が好きになった」

エレン「何が言いたい」

78: 2014/07/12(土) 10:48:42
ベルトルト「エレン、何が世界を紅く、そして蒼くしていると思う?太陽だよ。
 僕は蒼い空を知っているけど、それは同時に紅い夕焼けでもある。全て太陽が作り上げているんだ」

エレン「何が…」

ベルトルト「僕は空が嫌いだ。太陽が嫌いだ。でも、その二つを隠すのは夜の役目なんだ」

エレン「何が言いたいんだよ!!」

79: 2014/07/12(土) 10:49:11
ベルトルト「僕には僕だけの空がある。君に僕の空は渡さない。
 たとえ僕のものでなくても、あの空だけは渡すわけにはいかない」

エレン「わっかんねえよ!」

ベルトルト「だろうね。君、座学苦手だったし」

エレン「そこを通せ、ベルトルト。オレは全てを終わらせる」

ベルトルト「言っただろ、君に渡すわけにはいかない」

エレン「そうかよ…なら、やることは一つだ」

80: 2014/07/12(土) 10:49:42
空は僕のものだった。

僕は空が好きだった。

蒼い空が好きだった。

81: 2014/07/12(土) 10:50:20
ベルトルトに厨二的台詞を言ってもらおうとしてなんとなく作った。よくわからない話になりました。終わります。

82: 2014/07/12(土) 11:35:54

83: 2014/07/12(土) 17:55:10

引用: ベルトルト「空は僕のものだった」