231: ◆hJ5a7d.jWc 2015/07/20(月) 05:05:57.74 ID:txWUAnP80

前回:【艦これ】電「電ですが、鎮守府の空気が最悪なのです」番外編:提督による沖ノ島海域攻略日誌

最初から:
【艦これ】電「電ですが、鎮守府の空気が最悪なのです」

 短めのエピソードになる予定だったのですが、思った以上に長くなりそうなので前編、後編に分けて投稿します。

それでは前編です。

232: 2015/07/20(月) 05:06:29.28 ID:txWUAnP80
電ですが、鎮守府の空気が最悪なのです5 こんにちは! ゴーヤちゃん(前編)

233: 2015/07/20(月) 05:06:57.03 ID:txWUAnP80
電「わ・・・・・・私は、なんてことを・・・・・・」

工廠にて、私は立ち尽くしてしまいました。取り返しの付かないことをしてしまったのです。

きっかけは提督さんからの指示でした。
艦隊これくしょん -艦これ- 電 1/7スケール PVC製 塗装済み完成品フィギュア
234: 2015/07/20(月) 05:08:00.43 ID:txWUAnP80
提督「まったく建造しないのもあれだから、俺の代わりに建造やっておいてくれないか。潜水艦レシピのやつで」

先日の無礼講のせいで、案の定、鎮守府の資源は丸々消えてなくなりました。

そのために鎮守府は遠征以外の活動停止を余儀なくされ、資源がある程度貯まるまで、出撃、開発、建造も行わない予定でした。

ですが、建造をすることでデイリーの任務報酬を貰えるので、それだけはやっておこうというのです。

私は特に気にすることもなく、それを引き受けました。きっと潜水艦は出ないだろうと思ったのです。

235: 2015/07/20(月) 05:08:46.56 ID:txWUAnP80
それは当然、提督さんのドロップ運が悪いからです。提督さんにとって、成功率3割は3%に等しいと思います。

私は甚だしい勘違いをしていました。その建造を行うのは運の低い提督ではなく、私なのです。

236: 2015/07/20(月) 05:09:22.13 ID:txWUAnP80
ゴーヤ「こんにちはー! 伊58です! ゴーヤって呼んでほしいでち!」

電「えっ、え? う、うそ・・・・・・!?」

軍指定の水着に、セーラー服。見まごうことなき、潜水艦の艦娘です。

やって、しまいました。提督さんが喉から手が出るほど欲しがっていた、潜水艦を引き当ててしまいました。

提督さんは喜ぶでしょう。しかし、ダメなのです。潜水艦の子は、この鎮守府に来てはいけないのです。

237: 2015/07/20(月) 05:09:50.72 ID:txWUAnP80
ゴーヤ「あれ、あなたは秘書艦の人でちか? てーとくはどこでち?」

電「あ、あの・・・・・・提督さんは、ちょっと外してて・・・・・・」

ゴーヤ「なら、さっそく挨拶に行くでち! てーとくのところに案内してほしいでち!」

電「ま、待ってください。ちょっと考えますから・・・・・・」

ゴーヤ「でち?」

238: 2015/07/20(月) 05:10:23.60 ID:txWUAnP80
どうしたらいいのでしょう。彼女を提督さんのところへ連れて行くことはできません。

それだけは、できないのです。どうにかして、彼女を提督さんの目から隠さなくては・・・・・・

電「・・・・・・ついてきてください、こっちです!」

ゴーヤ「はい、でち!」

私が彼女の手を握って歩き出すと、ゴーヤさんは嬉しそうについてきます。

239: 2015/07/20(月) 05:11:08.43 ID:txWUAnP80
私達、艦娘の使命は海域の平和を守ることです。

ですが、私は思うのです。目の前の笑顔すら守れずに、平和を守ることなんてできない、と。

だから私は、ゴーヤさんを守ります。足早に工廠を出て、鎮守府内を抜けていきます。

240: 2015/07/20(月) 05:11:57.39 ID:txWUAnP80
ゴーヤ「ちょ、ちょっと速いでち。ゴーヤ、陸ではあんまり足速くないんでち」

電「ごめんなさい。でも、急いでほしいのです」

ゴーヤ「でち? あ、そういえばまだ、あなたの名前を聞いてないでち」

電「えっと、私は秘書艦をしている、駆逐艦の電です」

ゴーヤ「電でちか! じゃあ、電はゴーヤの最初の友達でちね!」

電「あは・・・・・・そう、ですね」

241: 2015/07/20(月) 05:12:38.12 ID:txWUAnP80
無邪気な笑顔が心に突き刺さります。この笑顔が消え去るようなことはあってはなりません。

ゴーヤさんを守るために、私は呪われた部屋の前に彼女を連れてきました。

ゴーヤ「なんでちか? ここ・・・・・・大きな扉でち。あっ! 表札に『潜水艦専用』って書いてあるでち!」

電「はい。ここは提督さんが特別に用意した、潜水艦の方の専用部屋なのです」

ゴーヤ「ゴーヤ以外にも潜水艦の子はいるでちか?」

電「いいえ。ゴーヤさんが初めてです」

ゴーヤ「じゃあ、実質1人部屋でちか! 贅沢でちね!」

242: 2015/07/20(月) 05:13:15.65 ID:txWUAnP80
ゴーヤさんは目をキラキラさせながら、潜水艦専用部屋・・・・・・かつてのNKB48部屋の扉を見つめています。

元々は倉庫に改修予定だったのですが、今後必要になるときが必ず来ると考えた提督さんにより、多額の予算を消費してこの部屋が作られました。

一体、この部屋は何なんでしょう。那珂ちゃん専用流刑室の次は、こんな・・・・・・呪われているとしか思えません。

ともかく、この部屋を利用してゴーヤさんを守ります。

243: 2015/07/20(月) 05:14:23.88 ID:txWUAnP80
電「あの・・・・・・実は提督さんは2,3日の間、遠征に出かけているのです」

ゴーヤ「え? てーとく自身が遠征に出かけるでちか?」

電「そういうこともあるのです。ですから、提督さんが帰ってくるまで、この部屋でしばらく生活していてもらえますか?」

ゴーヤ「わかったでち! でも、その前に鎮守府をいろいろ案内してほしいでち!」

電「だ、ダメです! それはできないのです!」

ゴーヤ「どうしてでちか?」

電「えっと・・・・・・この鎮守府、潜水艦にトラウマのある人が多いのです。ですから、なるべく出歩かないようにしてほしいのです」

ゴーヤ「あー、そういうことでちか・・・・・・ならしょうがないでち」

244: 2015/07/20(月) 05:15:32.57 ID:txWUAnP80
納得してくれて助かりました。そのことは必ずしも嘘ではないですし。

龍田さんなんかが潜水艦を見かけたら、条件反射で攻撃してしまいそうです。

私の目的はゴーヤさんを一時的に隠して、その後に鎮守府の外に逃してあげることです。

この潜水艦専用部屋は、たまに妖精さんが掃除をしにくるだけです。灯台下暗し、ここなら提督さんから隠しておけるはずです。

妖精さんには賄賂にこんぺいとうでもあげておけば口止めできるでしょう。あとは、ゴーヤさんを逃がす計画を考えるだけ・・・・・・

提督「電? なにしてるんだ、そんなところで」

245: 2015/07/20(月) 05:16:27.60 ID:txWUAnP80
電「あっ・・・・・・」

目を疑いました。普段は執務室からめったに出ない提督さんが、なぜこんなところを歩いているのでしょうか。

提督「手持ちの薬が切らしたから、その部屋にある分を拝借しようと思ったんだが、まさかその隣の子は・・・・・・」

ゴーヤ「あなたがてーとくでちか? なんだ、てーとくいらっしゃるじゃないでちか」

電「あ、はは・・・・・・そうですね。なんででしょうね」

提督「き・・・・・・君、名前は・・・・・・?」

ゴーヤ「はじめまして! 伊58、またの名をゴーヤでち!」

提督「お、おぉおお・・・・・・!」

246: 2015/07/20(月) 05:17:07.09 ID:txWUAnP80

提督さんは歓喜の嗚咽を漏らすと、私の肩をがしっと掴みました。

提督「引き当てたのか、電! さすが我が鎮守府の秘書艦、持ってるものが違うな!」

電「あ、はい・・・・・・ありがとう、ございます」

ゴーヤさんを守る。そのための計画は、この瞬間、すべて白紙になりました。

提督さんがこれから何をしようとしているのか、私は知っています。知っているのに、もう止める方法がわからないのです。

247: 2015/07/20(月) 05:17:37.23 ID:txWUAnP80
提督「ようこそゴーヤ! 君は待望の潜水艦だ、我が鎮守府は君を歓迎する!」

ゴーヤ「うれしいでち! ゴーヤ、張り切って戦うでち!」

提督「ありがとう、では君の部屋を紹介しよう!」

そう言って提督さんは、その大きな扉を勢い良く開きました。

248: 2015/07/20(月) 05:18:15.03 ID:txWUAnP80
扉の向こうは、まさにスイートルームと呼べるような贅沢な部屋でした。

ふかふかのカーペット、綺羅びやかなシャンデリヤ、大きな冷蔵庫、天蓋付きのベッド。浴室、トイレも専用のものが備え付けられています。

まるでお姫様のお部屋です。この部屋が提督さんの狂気じみた計画によって作られたとはとても思えません。

249: 2015/07/20(月) 05:18:56.01 ID:txWUAnP80
ゴーヤ「わあー! すごいでち、こんなリッチな部屋を使っていいんでちか!」

提督「もちろんだ。本当は共同部屋になる予定だったが、今はゴーヤの1人部屋だぞ」

ゴーヤ「本当でちか! あの王様みたいなベッドで寝ていいんでちか! うれしいでち!」

提督「冷蔵庫にはお菓子とジュースが入っているから、好きに飲み食いしていいぞ。減ったら妖精さんが補充してくれるからな」

ゴーヤ「そこまで待遇がいいんでちか! ゴーヤ、この鎮守府に来て良かったでち!」

250: 2015/07/20(月) 05:20:06.03 ID:txWUAnP80
提督「任務は大変だろうから、疲れたらそこの戸棚を開けてみるといい。役に立つものが入ってる」

ゴーヤ「役に立つもの、ってなんでちか?」

提督「説明書が付属してるから、読めばわかる。そうだ、薬を取りに来たんだったな」

ゴーヤ「でち?」

提督さんは戸棚の端にある引き出しを開けて、薬を何錠かポケットに入れました。

251: 2015/07/20(月) 05:21:01.53 ID:txWUAnP80
鎮守府内で艤装の装備が禁止されていることを、これほど悔やんだことはありません。今のうちに、いっそあの戸棚を破壊してしまえたら・・・・・・

提督「さあ、ゴーヤ。早速で悪いんだが、出撃のほうをお願いしたい」

ゴーヤ「待ってたでち! こんなに良くしてもらえるんでち、ゴーヤ頑張るでち!」

提督「ありがとう。さあ、ドックへ行こう。まずは君のために取っておいた装備を取り付けようじゃないか」

ゴーヤ「わかったでち! ところで、出撃する場所はどこでちか?」

その質問に、提督はにっこりと笑って、あの場所の名前を告げました。

提督「オリョールだ」

252: 2015/07/20(月) 05:21:46.14 ID:txWUAnP80
―――ゴーヤさんが来てから、一ヶ月が過ぎました。

潜水艦専用部屋に向かうよう命じられて、私は再びあの扉の元へ向かっています。自分の足取りがひどく重いです。

扉をノックしました。返事はありません。

電「あの・・・・・・ゴーヤさん、入りますね」

返答がないことはもうわかっています。同じことを何度か繰り返していますから。

253: 2015/07/20(月) 05:22:30.71 ID:txWUAnP80
そっと扉を開けると、とうとう嗅ぎ慣れてしまった甘酸っぱい匂いが鼻をつきました。

電「うっ・・・・・・」

吸い込んでしまわないよう、厚手のハンカチで口と鼻を覆います。

ゴーヤさんは天蓋付きベッドに横たわっていました。高級クッションを背中に当て、その手には筒状のパイプを握っています。

その周りにはパイプと、ゴーヤさんの唇から漏れる白い煙が薄く立ち込めていました。

254: 2015/07/20(月) 05:23:09.81 ID:txWUAnP80
ゴーヤ「・・・・・・なんでちか。休憩時間中でち」

電「あの、もう休憩時間を過ぎています。出撃のお時間なのです・・・・・・」

ゴーヤ「・・・・・・そうでちか」

うつろに返事をするゴーヤさんの瞳は、燃え殻のように乾いていて、なんの光も灯っていません。

ゴーヤさんは再びパイプを口元に持って行き、唇に当てて煙をゆっくりと吸い込みます。その瞳が一層どろりと濁りました。

255: 2015/07/20(月) 05:23:46.28 ID:txWUAnP80
電「あ、あの・・・・・ほどほどにしないと、体に悪いのです」

ゴーヤ「うるさい、ゴーヤに指図するなでち」

電「・・・・・・ごめんなさい」

ゴーヤ「ふん・・・・・・とっくに体なんてボロボロでち」

256: 2015/07/20(月) 05:24:23.00 ID:txWUAnP80
唇から白煙をくゆらせながら、吐き捨てるようにそう言って、ゴーヤさんはパイプを床に放りました。

パイプの先からは、相変わらず甘酸っぱい匂いの白い煙・・・・・・アヘンの煙が、ゆらゆらと筋を作って立ち上っています。

ゴーヤ「そこをどくでち。ゴーヤは出撃の準備をするでち」

電「あ、はい・・・・・・」

257: 2015/07/20(月) 05:24:49.55 ID:txWUAnP80
ゴーヤさんがベッドを降ります。床に立つその細い足の、いくつものあかぎれがとても痛々しいのです。

つま先もボロボロで、爪が剥がれている指もあります。

おぼつかない足で歩き出したゴーヤさんのために道を開けると、私の足がくしゃりと何かを踏みました。

それは空になった錠剤のアルミニウムフィルムでした。数十錠分がすでに使い切られています。

258: 2015/07/20(月) 05:25:24.72 ID:txWUAnP80
よく見ると、床にはそういったものがいくつも落ちています。

錠剤の種類は、向精神薬、抗不安剤、超短期型睡眠薬、鎮痛剤・・・・・・乱用してはいけない薬ばかりです。

妖精さんたちは、最近この部屋をほとんど掃除していません。ゴーヤさんが妖精さんを殴るようになったためです。

ゴーヤさんはそうしたゴミを踏みつけながら、あの戸棚に向かいました。戸棚から取り出したのは、液体の入ったアンプルと注射器です。

そのアンプルのラベルには、こう書かれています。ヒロポン、と。

259: 2015/07/20(月) 05:26:11.90 ID:txWUAnP80
ゴーヤさんは震える指でアンプルの頭を折り、その中身を注射器に吸わせます。

そのまま慣れた手つきで、なんの躊躇いもなく針を腕に差し込みました。

ゴーヤ「うっ・・・・・・!」

痛みでわずかに震えたゴーヤさんは、その一瞬だけ正気に戻ったかのように、泣きそうな顔で天井を見上げました。

それもほんの一瞬です。すぐに元の乾いた、なんの感情もない瞳に戻って、注射器を床に投げ捨てます。パリンと割れて、液体が床にシミを作りました。

260: 2015/07/20(月) 05:27:00.11 ID:txWUAnP80

ゴーヤ「はあっ・・・・・・! う、ふぅ・・・・・・!」

薬が効いてきたのか、よろよろとよろめきながら、今度は冷蔵庫に向かいます。

中からコーラの缶を取り出して、そのまま一気に飲み干しました。空になった缶は当たり前のように床に投げ捨てられます。

ゴーヤさんはそのまま、動けなくなったかのように頭を垂れていました。

261: 2015/07/20(月) 05:27:32.26 ID:txWUAnP80
しばらくして、ゴーヤさんがゆっくりと頭を上げます。乾いた唇が小刻みに震えていますが、ほんの少し楽になったような表情です。

ゴーヤ「・・・・・・気分がよくなってきたでち。それじゃあ、行くでち」

電「はい・・・・・・」

ようやく、私達は潜水艦専用部屋を後にします。この部屋も、以前と比べて見る影もないほど汚れてしまいました。

床には空き缶や錠剤ケースが散乱し、ジュースや薬品のシミも数えきれません。

部屋中にアヘンの甘酸っぱい匂いが染み付いて、布か何かで口元を塞がなければ呼吸すら満足にできないのです。

262: 2015/07/20(月) 05:28:01.99 ID:txWUAnP80
ゴーヤ「今日の出撃場所はどこでちか? 楽しみで仕方がないでち」

電「あの・・・・・・すみません、今日もオリョールです」

ゴーヤ「あはっ、アハハハハッ! そんな顔するなでち、知ってて聞いてみただけでち!」

ゴーヤ「さ、今日もオリョールで楽しくクルージングでち! アッハハハハハハ!」

263: 2015/07/20(月) 05:28:34.73 ID:txWUAnP80
突然、別人のようにゴーヤさんは笑い出しました。いつものことです、薬が完全に効いてきたのでしょう。

一ヶ月前、あんなに無邪気だったゴーヤさんとは思えない、気が触れてしまったような高笑いが鎮守府に響きました。

264: 2015/07/20(月) 05:29:44.99 ID:txWUAnP80
オリョールクルージング。略称オリョクル。その存在を、提督さんはずいぶん前から知っていました。

東部オリョール海域では、出撃して最初の敵さえ突破すれば、一定量の燃料を確実に得ることができます。

その出撃をもっとも低燃費で被弾もしにくい潜水艦に任せれば、燃料の収支がプラスになり、上手く行けば弾薬も稼げます。

潜水艦の方には苦労をかけることになりますが、その苦労は確実に資源運用の助けになるのです。

しかし、このオリョクルは潜水艦の艦娘が3人以上必要で、ゴーヤさん1人では不可能なはずでした。

265: 2015/07/20(月) 05:30:20.28 ID:txWUAnP80
ゴーヤ「昨日も建造は回したでちか。結果はどうでち」

電「えっと・・・・・・昨日は那加ちゃんが3連続で・・・・・・」

ゴーヤ「ぷっ、アハハハハッ! 那珂ちゃんのハットトリックでちか! 傑作でちね!」

ゴーヤ「それでオリョクル何回分の資源が消えたでちか。さっさと新しい潜水艦の建造を成功させるでち」

電「すみません。本当にすみません・・・・・・」

ゴーヤ「ハッ、謝られたって仕方がないでち。そんなヒマがあるならレシピの再検討でもしてるでち」

電「・・・・・・はい」

266: 2015/07/20(月) 05:31:02.06 ID:txWUAnP80
潜水艦が着任したら、提督さんはすぐさまオリョクルを実行する計画を立てていました。

しかし、潜水艦はとてもレアリティが高く、1人くらいならまだしも、3人揃えるとなると一体いつになるかわかりません。

そのために提督さんはあの部屋を作りました。単艦オリョクルを実行するために。

267: 2015/07/20(月) 05:31:29.16 ID:txWUAnP80
提督さんが膨大な資源を溶かして開発に成功した、虎の子の機関装備「強化型艦本式缶」×2。

これを装備すれば回避率が少なからず上昇し、敵の対潜攻撃を避けやすくなります。

提督さんは初日にゴーヤさんをオリョールに出撃させ、その被弾のしにくさと、まだ敵を突破する火力がないことを確認しました。

それから、ゴーヤさんはハッピーラッキー艦隊に一時的に組み込まれ、膨大な量の演習と出撃をこなしてレベルを一気に上げられました。

268: 2015/07/20(月) 05:32:21.28 ID:txWUAnP80
そうしてゴーヤさんが確実に1隻は敵を沈められるようになったとき、とうとう単艦オリョクルは始まりました。

それはゴーヤさんにとって地獄の始まりを意味します。

出撃、出撃、また出撃。大破しにくいということは、休む暇すら与えられないということです。

寝る暇すら与えられない出撃が続けば、当然疲労度がたまり、神経もすり減っていきます。そのためにあの部屋があります。

わずかな休息時間を出来る限り快適に過ごしてもらう。それでも辛いなら、あの戸棚にある薬を使ってもらう。

あの戸棚の中には、提督さんが大本営から取り寄せた、あらゆる種類の「疲労をなくす薬」が揃っています。

疲労をなくす・・・・・・そんなのは嘘っぱちです。ただ疲労をごまかして、無理やり体を動くようにしているだけです。

269: 2015/07/20(月) 05:33:05.61 ID:txWUAnP80
大和「あっ。どうもこんにちは、電ちゃん。そちらの方は?」

電「こ、こんにちは大和さん。あの、すみません。急いでいるので・・・・・・」

大和「あら、そうですか」

ご紹介します。大和型1番艦、戦艦の大和さんです。

そうです。とうとう提督さんが、大型艦建造で引き当てました。

最高レベルのレアリティである大和さんを、最低レベルのドロップ運である提督さんが、です。

270: 2015/07/20(月) 05:33:52.82 ID:txWUAnP80
建造に成功したのは、ごくごく単純な理論です。10回でダメなら100回やればいい、ということです。

燃料と弾薬はゴーヤさんが血反吐を吐きながらオリョールから持ってきます。

ならば遠征艦隊を鋼材とボーキサイトの確保に集中させることで、相当量の資源を確保することができました。

そうして考えるだけでもめまいがする量の資源を消費し、とうとう提督さんは大和の建造を成功させました。

大和さんが消費する資源の量は半端ではないので、ハッピーラッキー艦隊への配属は現状見送られています。

その代わりに決戦用戦艦として運用するために、度重なる演習は行われています。結果、燃料と弾薬がまた減るのです。

271: 2015/07/20(月) 05:34:21.09 ID:txWUAnP80
電「それじゃ、その、またあとで」

大和「はい。ごきげんよう」

私はゴーヤさんを大和さんに近づけないよう、体を盾にしながら通りすぎようとしました。背後のゴーヤさんから冷たい殺気を感じます。

ゴーヤ「・・・・・・おい」

大和「えっ?」

ゴーヤ「どこへ行くでち。ゴーヤに挨拶もなしでちか」

大和「え、その・・・・・・は、初めまして」

ゴーヤ「お前、ゴーヤを舐めてるんでちか?」

大和「あ、あの。電さん?」

電「ゴーヤさん、ダメです。落ち着いてください。お願いですから・・・・・・」

ゴーヤ「触るなでち!」

272: 2015/07/20(月) 05:34:58.70 ID:txWUAnP80
ゴーヤさんが私の手を振り払います。言葉の刺々しさとは裏腹に、その力はあまりに弱々しいものでした。

ゴーヤ「お前がここにいるのは誰のおかげか分かっているでちか? ゴーヤのお陰でち!」

ゴーヤ「お前を建造したした資源も、お前が食い散らかした資源も! 全部ゴーヤが集めてきたものでち!」

ゴーヤ「それなのに! ゴーヤを見て何食わぬ顔で立ち去ろうだなんて、ふざけてるでちか!」

ゴーヤ「ゴーヤに感謝するでち! 這いつくばって足でも舐めるでち! お前はそれくらいのことをして当然でち!」

電「ゴーヤさん、もうやめてください・・・・・・! 行きましょう。もう時間ですから・・・・・・」

273: 2015/07/20(月) 05:35:50.77 ID:txWUAnP80

気炎を上げるその小さな体を抱くと、ゴーヤさんは痛々しいほどの力の無さで私に体を預けました。

そのまま呆然としたままの大和さんを取り残して、ゴーヤさんは私に引きずられるようにしてその場を離れました。

ゴーヤ「・・・・・・あー、今日は薬の効きがおかしいでち。電、部屋からインデラルとゾロフトを持ってくるでち」

電「・・・・・・ダメです。これ以上の薬はもう・・・・・・」

ゴーヤ「ふん、まあいいでち。あー・・・・・・今日も薄汚い海でちね」

鎮守府の外に出て、ゴーヤさんはごみの山でも見るような目で海を眺めました。

274: 2015/07/20(月) 05:36:34.64 ID:txWUAnP80
ゴーヤ『きれいな海でち・・・・・・それじゃ、行ってくるでち!』

初めての出撃のとき、無邪気に笑っていたゴーヤさんの表情は、もう思い出すことができません。

ゴーヤさんはまるで身を投げるように潜水して、今日も出撃していきました。

何時間か後に帰ってきて、それからすぐにまた出撃、出撃、出撃・・・・・・

遠からず来るゴーヤさんの限界よりも先に、私の限界が来てしまいそうなのです。



後編へ続く

275: 2015/07/20(月) 05:38:29.51 ID:txWUAnP80
後編は明日の予定です。

言い忘れましたがゴーヤが好きな人は見ないほうがいいんじゃないでしょうか。
私はゴーヤのことはかなり好きです。

276: 2015/07/20(月) 05:46:20.10 ID:txWUAnP80
すみません誤字がありました。

NKB48部屋→NAKA48部屋

277: 2015/07/20(月) 07:57:40.35 ID:jsF7kwkeo
乙 まあ今は単艦させるならゆーだけどな

1-5でドロップできないとかまっこと屑だのうこの提督


次回:【艦これ】電「電ですが、鎮守府の空気が最悪なのです」こんにちは!ゴーヤちゃん 後編


引用: 電ですが、鎮守府の空気が最悪なのです