307: ◆hJ5a7d.jWc 2015/07/27(月) 01:51:25.94 ID:XUsTgzw/0

前回:【艦これ】電「電ですが、鎮守府の空気が最悪なのです」こんにちは!ゴーヤちゃん 前編

最初から:【艦これ】電「電ですが、鎮守府の空気が最悪なのです」



えー大変お待たせしました。後編です。

308: 2015/07/27(月) 01:51:59.08 ID:XUsTgzw/0
その日は月のない夜でした。

時刻は午前4時。この時間になると、夜通し遊んでいる放置艦の人たちもさすがに眠り始め、鎮守府からはなんの物音もしなくなります。

私はそっと宿舎から抜け出し、明かりの消えた鎮守府の廊下を歩いていきます。

目はひどく冴えていて、気持ちも落ち着いていました。
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309: 2015/07/27(月) 01:53:10.72 ID:XUsTgzw/0
潜水艦専用部屋の大きな扉を、ノックせずに静かに開きます。

ゴーヤさんは眠っていました。天蓋付きのベッドで、氏んだように身を横たえています。

彼女がオリョールから帰ってきたのはほんの30分前。彼女に許されている睡眠時間はたったの2時間です。

枕元には超短期型の睡眠薬が置かれています。

これでわずかな睡眠を無理やり深いものにすることで、連日の激務をどうにかこなせる程度に疲労を回復させているのです。

310: 2015/07/27(月) 01:54:08.26 ID:XUsTgzw/0
電「よいしょ・・・・・・と」

寝息すら立てているのか怪しいほどに熟睡する、ゴーヤさんの小さな体を担ぎ上げます。

私も力のある方ではありませんが、その体はぞっとするくらい軽く、簡単に持ち上げられました。

しばらくは何をしても起きないでしょうが、なるべく慎重にゴーヤさんを背負い、潜水艦専用部屋を出ます。

311: 2015/07/27(月) 01:55:11.63 ID:XUsTgzw/0
鎮守府から外に出たあたりで、これが提督さんにバレたらどうなるかな、と少し考えます。

バレた後の計画についてはすでに立ててあります。ですが、それが100%うまく行くとは限りません。

怒られる、どころでは済まないでしょう。営倉入りを命じられるかもしれません。私が解体される可能性だってありえます。

だけど、不思議と気になりませんでした。むしろ清々しい気持ちなくらいです。

312: 2015/07/27(月) 01:56:01.73 ID:XUsTgzw/0
ゴーヤ「・・・・・・何してるでちか、電」

電「ゴーヤさん? 起こしてしまいましたか?」

ゴーヤ「最近、薬の効き目が悪いでち・・・・・・」

私に背負われながら、ゴーヤさんが蚊の鳴くような声でそう言います。まだ覚醒しきってはいない様子です。


313: 2015/07/27(月) 01:56:44.02 ID:XUsTgzw/0
ゴーヤ「もう、出撃の時間でちか・・・・・・?」

電「いいえ。出撃ではないですよ」

ゴーヤ「じゃあ、なんでゴーヤを運んでいるでちか・・・・・・もう少し寝かせてくだち」

電「ごめんなさい、少しだけ頑張ってください。そしたらもう、出撃しなくても良くなりますから」

ゴーヤ「何を言ってるでちか・・・・・・?」

314: 2015/07/27(月) 01:57:49.43 ID:XUsTgzw/0
それには答えず、私はどんどん歩みを進めます。

鎮守府を裏切る行為をしているのに、足取りがとても軽く感じました。

理由はわかっています。私は今、自分で正しいと思っていることを、自分の意志で行っているからです。

ようやく海が見えてきました。月もない夜の海は真っ暗で、水平線の向こうにはどこか遠くの明かりが小さく灯っています。

私は防波堤の先まで歩いて、そこで足を止めました。

315: 2015/07/27(月) 01:58:23.84 ID:XUsTgzw/0
電「着きました。ゴーヤさん、降りられますか?」

ゴーヤ「・・・・・・一体何なんでちか」

やはりまだ眠いのでしょう、ゴーヤさんはおぼつかない足取りで地面に立ちます。

ゴーヤ「ここは・・・・・・鎮守府の防波堤でちか?」

電「はい。いいですか、ゴーヤさん。ここから泳いで、ずっと東に向かってください」

ゴーヤ「は・・・・・・?」

電「しばらく泳げば大きな灯台の明かりが見えてくるはずですから、今度はその明かりを目指して泳いでください」

316: 2015/07/27(月) 01:59:26.58 ID:XUsTgzw/0
電「その灯台のある場所は、ラバウル基地という別の鎮守府があります。慈愛の女神が治める平和な鎮守府だそうです」

ゴーヤ「そこにゴーヤを行かせて、どうするでちか」

電「ゴーヤさんは貴重な潜水艦ですから、きっとそこでも受け入れられるはずです。だから、ここから逃げてください」

ゴーヤ「・・・・・・逃げる?」

電「はい。後のことは気にしないでください。全部私がなんとかしますから」

ゴーヤ「・・・・・・ああ、そういうことでちか」

317: 2015/07/27(月) 02:00:33.10 ID:XUsTgzw/0
ゴーヤさんは立っているのが疲れたのか、海べりへ静かに腰を降ろしました。

傷だらけの足を降ろし、子供みたいにぷらぷらと足を揺らしています。

ゴーヤ「電は・・・・・・なんでこんなことをするでちか」

電「ゴーヤさんを助けたいからです。他の理由は特にありません」

ゴーヤ「このことがバレたら厳罰でちよ。解体されるかもしれないでち」

電「気にしないでください。私がこうするって決めたんですから」

ゴーヤ「・・・・・・そうでちか」

318: 2015/07/27(月) 02:01:40.24 ID:XUsTgzw/0
ゴーヤさんは暗い水面をじっと見つめます。そこから動こうとする気配はまったくありません。

電「あの・・・・・・急がないと見つかってしまうかもしれません。早く海に・・・・・・」

ゴーヤ「ゴーヤはどこにも行かないでち」

その言葉に、私は少なからず驚きました。言葉の意味以上に、その響きが明確な決意を感じさせるものだったからです。

319: 2015/07/27(月) 02:02:46.39 ID:XUsTgzw/0
電「・・・・・・私のことは心配しないでください。この後のことはちゃんと考えてありますから」

ゴーヤ「電は勘違いをしているでち。オリョクルはゴーヤが望んでやっていることでちよ」

電「は?」

ゴーヤさんの言ったことを頭のなかで反芻して、それでも意味を理解することができませんでした。

単艦オリョクルは資源不足を無理やり解決するために提督さんが計画したものです。

回避を上げる装備も、贅沢な部屋も、疲労をなくす薬物も、アヘンも、ヒロポンも、潜水艦の艦娘を酷使するために用意されました。

なのに、ゴーヤさんがオリョクルを自分の意志で行っている・・・・・・?

320: 2015/07/27(月) 02:03:41.93 ID:XUsTgzw/0
電「ゴーヤさん、あなたはまさか・・・・・・!」

ゴーヤ「ハハっ、電が何を考えているかはわかるでち。別にゴーヤは暗示や洗脳にかかってるわけじゃないでち」

電「なら、どうして・・・・・・っ!」

ゴーヤ「回天を知ってるでちか、電」

電「・・・・・・知ってます、けど」

人間魚雷回天。人が中に入って操縦する魚雷。脱出装置はなく、端から生還を期されていない悪名高き特攻兵器です。

ゴーヤ「前世のゴーヤはあれを積んでいたでち。出撃のたびに、何度も、何度も人の乗ったあれを発進させたでち」

ゴーヤ「あれを積まなくていいなら、今の出撃なんて楽なもんでち」

321: 2015/07/27(月) 02:05:04.51 ID:XUsTgzw/0
電「それとこれとは関係が・・・・・・!」

ゴーヤ「関係あるでち。電は何のために艦娘として生まれ変わったでちか?」

電「それは、海域の平和を守るためです」

ゴーヤ「ゴーヤも同じでち。あんな戦争が二度と起こらないようにするため、艦娘になったでち」

ゴーヤ「そして、それは罪滅ぼしをするためでもあるんでち」

322: 2015/07/27(月) 02:05:58.66 ID:XUsTgzw/0
電「罪って・・・・・・回天のことを言っているんですか?」

ゴーヤ「そうでちよ。あれは本当に最悪な代物でち」

ゴーヤ「乗る前まではみんな笑ってるんでちよ。お国のために役に立てて嬉しいって、笑顔でみんなと話してるんでち」

ゴーヤ「でも、乗った後は・・・・・・聞こえるんでちよ、中から。みんな、みんな中で泣いているんでち」

ゴーヤ「あの中はとても狭くて暗いでち。そんなところに1人っきりで閉じ込められるなんて、きっとたまらなく怖いんでちよ」

ゴーヤ「お母さん、って叫ぶ人もいたでち。出してって泣き叫ぶ人もいたでち。そんな人たちをゴーヤは敵に向けて放ったんでち」

ゴーヤ「あの泣き叫ぶ声が、いつまでも耳にこびりついて・・・・・・ずっと消えないんでちよ」

ゴーヤ「だから今のゴーヤは自分の罪を償っているんでち。逃げるわけにはいかないでちよ」

323: 2015/07/27(月) 02:07:08.97 ID:XUsTgzw/0
電「そんな・・・・・・そんなの間違っています! それはゴーヤさんのせいじゃ・・・・・・」

ゴーヤ「間違ってるっていうなら、最初から全部、何もかも間違っていたんでち」

ゴーヤ「ただ、ゴーヤは耳にこびりついた悲鳴を消したいだけでち」

電「でも、ゴーヤさんは悪くないじゃないですか! 悪いのは回天を作り、使うよう命じた人たちのはずです!」

ゴーヤ「そうでちか? 命じた人たちも、戦争に勝つために氏に物狂いだっただけかもしれないでち」

ゴーヤ「だいたい誰が悪いなんてものはないんでちよ。ゴーヤはしたいからやっているんでち」

電「でも、提督さんは自分のためにゴーヤさんを利用してるんですよ! ゴーヤさんはそれでいいんですか!?」

ゴーヤ「てーとくが何を考えていようと関係ないでち。だから・・・・・・ゴーヤのことは放っておいてほしいでち」

324: 2015/07/27(月) 02:07:57.30 ID:XUsTgzw/0
電「・・・・・・そんなこと、できません。ゴーヤさん、あんなに笑ってたじゃないですか。ここに来たばかりのときは、あんなに・・・・・・」

ゴーヤ「ああ・・・・・・そんなときもあったでちね」

そのとき、ゴーヤさんはこの日初めて、私を見ました。初めて会った時とは似ても似つかない、寂しそうな笑顔でした。

ゴーヤ「あのときはゴーヤも浮かれてたでち。電には勘違いさせて悪かったでちね」

ゴーヤ「まあ、確かに・・・・・・オリョクルは辛いでち。今だって体中痛くて、心と体がバラバラになりそうでちよ」

ゴーヤ「でも。ゴーヤが辛い思いをすれば、それだけあの悲鳴が薄れていく感じがするんでち。だから、今日もオリョクルを続けるでち」

325: 2015/07/27(月) 02:08:56.52 ID:XUsTgzw/0
電「そんな・・・・・・そんな、おかしいです。ゴーヤさんは悪くないのに、苦しいばっかりじゃないですか・・・・・・」

ゴーヤ「そうでちね。でも、悪いことばっかりじゃないでち」

電「・・・・・・どうしてですか?」

ゴーヤ「今、電がこうしてゴーヤのことを想ってくれてるのは少し嬉しいでち。ゴーヤはそれで十分でちよ」

326: 2015/07/27(月) 02:10:06.40 ID:XUsTgzw/0

そう言って、ゴーヤさんはふらつく足で立ち上がりました。

ゴーヤ「部屋に戻るでち。まだ眠いから、時間まで寝ておきたいでち」

おぼつかない足取りで、ゴーヤさんが防波堤の上を歩き出そうとします。

ほんの2、3歩で、すぐにゴーヤさんは、倒れそうになりました。

電「あっ、あぶないです!」

慌ててその小さな体を支えます。ゴーヤさんは立っているのがやっとのように、私の腕に体重を預けています。

327: 2015/07/27(月) 02:10:58.09 ID:XUsTgzw/0
電「もう限界じゃないですか。それでも、まだ続けるっていうんですか・・・・・・?」

ゴーヤ「眠いだけでち。少し休めば多少は元気になるでち。だから・・・・・・」

私の手を振りほどいて、ゴーヤさんはまた歩き出そうとします。この手を離すことだけは、どうしてもできませんでした。

電「・・・・・・わかりました。わかりましたから、せめて・・・・・・お部屋に戻るお手伝いだけは、させてください」

ゴーヤ「・・・・・・悪いでち」

328: 2015/07/27(月) 02:11:38.30 ID:XUsTgzw/0
それっきり、ゴーヤさんは話疲れたかのように黙ってしまいました。

私に支えられながら、ゴーヤさんは鎮守府の中へ戻るために歩き出します。

那珂ちゃんや、ほかのダブった艦娘の子たちを解体室に連れて行くときのことを、私は思い出していました。

ゴーヤさんをお部屋へ戻すために歩くのは、それ以上に辛いことでした。

329: 2015/07/27(月) 02:12:18.15 ID:XUsTgzw/0
ゴーヤ「・・・・・・大和に謝っておいてほしいでち」

電「え?」

鎮守府内の廊下に差し掛かったあたりで、ゴーヤさんが再び口を開きました。

ゴーヤ「あの子にゴーヤは酷いことを言ったでち。大和は悪くないのに・・・・・・電にも八つ当たりをしてしまったでち」

電「気にしてなんかいませんよ。大和さんも、ゴーヤさんも悪くありません。悪いのは提督さんですから・・・・・・」

ゴーヤ「別に、てーとくが悪いとも思っていないでち」

電「・・・・・・それはなぜですか?」

ゴーヤ「あの男は、ただちっぽけなだけでちよ」

独り事のようにそう零して、あとは話しかけても、もう応えてくれなくなりました。

330: 2015/07/27(月) 02:13:03.10 ID:XUsTgzw/0
とうとう潜水艦専用部屋に着いてしまいました。大きな扉を開け、ゴミだらけの床を踏み越え、ベッドにゴーヤさんを横たえます。

電「何か欲しいものはありますか? できれば薬以外の、お水とか・・・・・・」

ゴーヤ「いらないでち」

電「・・・・・・そう、ですか。じゃあ、私はこれで・・・・・・」

ゴーヤ「待って」

立ち去ろうとした私の服の裾を、ゴーヤさんが弱々しくつまみました。そのあかぎれた、細い指で。

ゴーヤ「手を・・・・・・」

電「えっ?」

ゴーヤ「ゴーヤが眠るまで、手を握っていてほしいでち」

電「・・・・・・はい。わかりました」

331: 2015/07/27(月) 02:13:54.05 ID:XUsTgzw/0
請われるままに、彼女の冷たい手を両手で包むように握ります。

ゴーヤさんの小さな脈が、手のひら越しに伝わってきます。生きている。その鼓動は、弱々しくもそう叫んでいるみたいでした。

ゴーヤ「ああ・・・・・・電の手は、あたたかいでち」

それっきり、ゴーヤさんは静かに目を閉じて、眠りの中に落ちていきました。

手を離すことはしませんでした。この手を離してしまったら、二度とゴーヤさんが起きないような気がして・・・・・・

夜明けの日がかすかに窓から見え始めても、私はその手を離しませんでした。

332: 2015/07/27(月) 02:14:35.33 ID:XUsTgzw/0
来てほしくなんてないのに、朝がやってきます。2時間に設定されていた、部屋のアラームがけたたましく鳴り響きました。

ゴーヤさんを起こしたくなくて、慌てて手を離しアラームを止めに行きます。スイッチを切って振り向くと、もうゴーヤさんは起き上がっていました。

ゴーヤ「・・・・・・それじゃあ、行ってくるでち」

電「・・・・・・ドックまでついていきます」

ゴーヤ「いいでち。これ以上、電に迷惑をかけたくないでち」

電「迷惑だなんて、そんな・・・・・・」

ゴーヤ「いいから、ついてくるな」

あまりにもはっきりとした拒絶に、私はもう何も言えなくなりました。部屋から出ていくゴーヤさんを見送ることしかできません。

333: 2015/07/27(月) 02:15:40.03 ID:XUsTgzw/0
ゴーヤ「・・・・・・もうゴーヤは大丈夫でち。まだまだ頑張れるでちよ」

電「・・・・・・もし、辛くなったらいつでも言ってください。絶対に私が助けますから」

ゴーヤ「ありがとうでち。でも、そうはならないでちよ」

電「・・・・・・うっ、うっ・・・・・・えぐ」

もう耐え切れませんでした。ずっと我慢していた涙が、両目から溢れ出します。

自分に何もできないことが、悔しくて、悔しくてたまりません。

334: 2015/07/27(月) 02:16:36.32 ID:XUsTgzw/0
ゴーヤ「なんで泣いてるんでちか、電」

電「だって・・・・・・ゴーヤさん、この鎮守府に来れて、嬉しいって言ってくれてたのに・・・・・・」

ゴーヤ「なら、泣くことはないでち。その気持ちは今も変わっていないでちよ」

電「・・・・・・え?」

ゴーヤ「だって、電がゴーヤの友達になってくれたでち」

335: 2015/07/27(月) 02:17:46.99 ID:XUsTgzw/0
顔をあげると、そこには・・・・・・あの頃のように無邪気な、ゴーヤさんの笑顔がありました。

ゴーヤ「これからも、電はゴーヤの友達でいてくれるでちか?」

電「はい、はい・・・・・・もちろんです。ゴーヤさんは、何があってもずっと、私の友達です」

ゴーヤ「嬉しいでち! それじゃあ、電。ゴーヤ、出撃するでち」

電「はい・・・・・・お気を付けて。行ってらっしゃいなのです」

ゴーヤ「はい、でち!」

336: 2015/07/27(月) 02:18:34.66 ID:XUsTgzw/0
―――それがゴーヤさんとの、最後の会話でした。

ゴーヤさんはその後、いつも通りにオリョールへ出撃して・・・・・・そして、2度と戻ってきませんでした。

337: 2015/07/27(月) 02:19:38.91 ID:XUsTgzw/0
単艦出撃で大破した場合、その艦娘は鎮守府の指示を待たず即座に帰投することが義務付けられています。

オリョールにて、ゴーヤさんは敵艦隊に対し戦術的勝利を収めたものの、爆雷を浴びて大破状態になりました。

そういうことは今までに何度もありました。いつもなら急いで帰投し、入渠すればいいことです。潜水艦の修理はすぐに終わりますから。

でも、ゴーヤさんは帰投せず、無断で大破進撃したそうです。

そのことに気付いた提督さんは慌てて帰投命令を発したそうですが、すでに通信は途絶していました。

338: 2015/07/27(月) 02:21:00.56 ID:XUsTgzw/0
救助艦隊を結成してのオリョール捜索も行われました。

捜索の結果、海面に浮いていた2つの強化型艦本式缶だけは回収できたそうです。それは、ゴーヤさんの装備していたものでした。

ゴーヤさん自身は、どれだけ偵察機を飛ばしても、電探で海底を探っても、見つかることはありませんでした。

ゴーヤさんを喪失したことにより、鎮守府は資源運用計画を根本的に見直す必要に迫られます。

大和さんの運用計画は立ち消えになり、彼女はしばらくのあいだ放置艦の仲間入りを果たすことになりました。

最近では軽巡、軽空母の人たちの賭博場で遊んでいる彼女の姿をよく見かけます。

建造、開発計画も縮小され、今はデイリー任務をこなすだけに留められています。

339: 2015/07/27(月) 02:21:38.41 ID:XUsTgzw/0
ハッピーラッキー艦隊は通常の出撃任務に戻り、あっさりと北方海域のモーレイ海を攻略してしまいました。

もうすぐ、キス島沖攻略が始まります。駆逐艦戦力が整っていない現状では、厳しい戦いが予想されるでしょう。

私はキス島沖攻略用艦隊の旗艦となることがすでに決まっています。

ゴーヤさんの残した強化型艦本式缶は、私が装備することになるでしょう。

提督「電、久しぶりの出撃になる。気合い入れておけよ」

電「・・・・・・はい」

340: 2015/07/27(月) 02:22:20.16 ID:XUsTgzw/0
潜水艦専用部屋は掃除だけをして、まだそのまま残っています。

あの戸棚の薬は、最近は提督さんが消費するようになりました。

アヘンやヒロポンには辛うじて手を出していないようですが、向精神薬などは頻繁に使っているみたいです。

大本営から届く書類の中に、提督さんを糾弾する内容のものが増えるようになりました。

原因は作戦進行の遅れ、および消費資源の量と保有する戦力が釣り合っていないことに対するもののようです。

提督さんも追い詰められているのだと思います。単艦オリョクルは、その状況を打破するための苦肉の策だったのでしょう。

ゴーヤさんの言っていた「提督はちっぽけなだけ」という言葉の意味は大体理解できました。

今の私も、提督さんは小さな人だと思っています。

341: 2015/07/27(月) 02:23:32.16 ID:XUsTgzw/0
駆逐艦隊を組んで、久しぶりの演習をこなしながら、私はゴーヤさんのことを考えます。

どうして彼女は大破進撃なんてしたのでしょうか。

普通に考えれば、オリョクルを続けることに疲れて、自ら轟沈することを選んだということになります。

だけど、それだけは違うように思えてなりません。

ゴーヤさんが疲労でせいで、正常な判断ができなくなっていたことは間違いないでしょう。

私は思うのです。ただ彼女は、逃げることができなかったのではないかと。

342: 2015/07/27(月) 02:24:26.49 ID:XUsTgzw/0
人間魚雷回天は、一度放たれればもう、生還の術はありません。ひたすら操縦桿を繰り、敵に向かって進むしか残された道はないのです。

それを何度も放ってきたゴーヤさんは、自分だけが逃げるということを許せなくなったのではないしょうか。

だから、大破してなお進撃を選んだ。それが生還を度外視した特攻だったとは、私には思えません。

彼女は生きようとしたに決まっています。その身が大破していようとも敵を打ち破り、勝利を収めて帰還するつもりだったはずです。

ゴーヤさんは生きるために最後まで戦った、私はそう信じています。

343: 2015/07/27(月) 02:25:31.52 ID:XUsTgzw/0
電「提督さん。ひとつ聞きたいことがあるのです」

提督「なんだ?」

電「提督さんは、何のために戦っているのですか?」

提督「・・・・・・平和のために決まっているだろう、もちろん」

その目がわずかに泳いだことを、私は見逃しませんでした。

いいでしょう。今のところは、その言葉を信じてあげましょう。いつまで信じられるかはわかりませんが。

今は演習をこなし、キス島沖への出撃に備えます。私が旗艦となる以上、絶対に犠牲者は出しません。

ゴーヤさん、どうか待っていてください。この戦いが終わったら、必ずあなたを迎えに行きますから。

だって、ゴーヤさんは私の・・・・・・大切な、友達ですから。



続く

344: 2015/07/27(月) 02:55:58.27 ID:XUsTgzw/0
~~~~~~~~お知らせ~~~~~~~~

本SSの作者は長年に渡って「鬱エンド以外を書くと氏ぬ病」との闘病生活を続けて参りましたが、
つい先程、その病状の完治が確認されました。
今後は鬱エンドではないハッピーなシナリオを書いていく所存ですので、
むしろ鬱シナリオをお待ちいただいている方々には、恐縮ですがご期待に添えかねることをここにお知らせいたします。

次回「氏闘! 間宮アイス争奪戦」は作者が趣味に走った挙句、無駄に力を入れた内容になる予定のため、
遅れる、もしくは前、後編に分けての投稿となる見込みです。

燃え展開の予定ですのでどうかよろしくお願いします。

345: 2015/07/27(月) 06:21:37.10 ID:LKMr45DTO

引用: 電ですが、鎮守府の空気が最悪なのです