58: ◆tsGpSwX8mo 2014/02/04(火) 14:00:58.22 ID:vintP25bo

59: 2014/02/04(火) 14:02:20.03 ID:vintP25bo
深い深い樹海の奥にある洞窟。そのなかにはとんでもないお宝が眠っている。しかし、その宝を守る番人が宝を氏守しており、だれもお宝の内容を知らない……。

そんな伝説が世に知れ渡り十数年。宝の番人綾瀬穂乃香は洞窟の前で刀を振るっていた。

穂乃香の心中には数日前に来たあの男、そう言えば名前を聞いていなかったな、と思案する。

刀を振りながら物思いに更ける。

(私は、あの男に傷をつけることすら出来なかった……)

男のあの固い鎧を思いだし、倒すことが出来なかった悔しさに歯噛みする。腕には自信があったのだが……。

もしあの男が仲間を引き連れてやって来たら、次は勝てないだろう。
----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




60: 2014/02/04(火) 14:03:03.99 ID:vintP25bo
その為に、今は修行中である。

刀を振る腕を止め、息を吸う。そして、刀を構えた。ただし、刃の反対側、峰を向けている。

「綾瀬流剣術………」

これは穂乃香の父が編みだし、そしてもっとも得意とした技であった。

「刀代無双!」

ブオォン!と風を切り降り下ろした刀が大木に直撃する。

大木はミシッと音をたてたが、倒れなかった。

綾瀬流剣術『刀代無双』とは、簡単にいってしまえば「物凄い峰打ち」である。穂乃香の父がかつて戦った相手が、とても強固な盾を持っていたのだが、それを打ち破るために編み出したのがこの『刀代無双』だ。

父曰く、「切れないなら砕いてしまえ」とのこと。それを聞いたまだ幼かった穂乃香は、幾らなんでもむちゃくちゃだろう、と思ったが、今その技の修行をしているのだから笑える話だ。

61: 2014/02/04(火) 14:03:44.67 ID:vintP25bo
(くっ……やはり私にはこの技の習得は無理なのか……?)

穂乃香は父と違い、細く、華奢であった。だから、力がない代わりに素早さを重視した戦い方をする。

穂乃香の父は豪腕の持ち主で、だからこそ『刀代無双』を使えたのだが……。

「はぁ……」

思わずため息をついた。頬を汗が伝うが、気にもしなかった。

62: 2014/02/04(火) 14:04:43.18 ID:vintP25bo
刀を鞘に納める穂乃香。休憩をしようとした、その瞬間、

「!」

穂乃香の顔めがけてナイフが飛んできた。すぐさま刀を抜き、弾き落とす。

弾き飛ばされたナイフは空中をくるくると回転し、地面に刺さった。

「………」

切り株の側に置いといた二本目の刀を持ち、ナイフが飛んできた方向に目を向ける。

「あちゃ~弾かれちゃったか~。ついてないな~」

妙に間延びした声が聞こえた。声の主はナイフを拾い上げ、穂乃香に目を向ける。

「う~ん、流石、宝の番人さんだ。巷で化け物と呼ばれるだけのことはあるね~」

それは少女だった。年齢は穂乃香と同じか、年下。白いワンピースの上に左肩から右腰にかけて太いベルトが巻き付けられていた。透き通るような銀色の髪をツインテールにしている。右が赤、左が青のオッドアイが穂乃香を見つめる。

63: 2014/02/04(火) 14:05:24.50 ID:vintP25bo
「……」

黙ったままの穂乃香に向かって、少女は話しかける。

「あれぇ~?なんで黙ってるの~?」

首をかしげ、左手の人差し指でこめかみを指す。

穂乃香は、少女ののんびりとした雰囲気の裏に隠された強い殺気を感じた。

この少女は、間違いなくただ者ではない。ナイフを投げる距離まで近づいたのなら、穂乃香がその存在に気づかないはずがない。しかし、穂乃香は気づかなかった。

64: 2014/02/04(火) 14:06:05.95 ID:vintP25bo
「あなたは、何者ですか?」

刀を下ろすことはせず、少女に問う。

「ん~、宝が隠されてる場所に来たら、やることはひとつだと思うんだけどな~。まぁ、いいや。教えて上げる」

少女は左手の人差し指で、自分を指差し、言った。

「私の名前はシニストラだよ~。よろしくね、番人さん」

そのまま人差し指を穂乃香の背後に向ける。

「で、番人さんの後ろにいるのが、私のお姉ちゃん、デストラだよ~」

穂乃香の体に衝撃が走る。

弾かれたように後ろを振り向くと、そこには先程シニストラと名乗った少女と瓜二つの容姿の少女が、ナイフで穂乃香を向けていた。

大きく跳躍し避ける。

「………おい、シニストラ」

少女が、さっきまで穂乃香に話していた少女、シニストラに話しかける。

65: 2014/02/04(火) 14:06:57.02 ID:vintP25bo
少女、デストラはシニストラと同じく銀色の髪をツインテールにしており、白いワンピースを着ていたが、シニストラとは違いベルトを右肩から左腰に掛けて巻き付けていた。左が赤、右が青のオッドアイが、シニストラを睨み付ける。

「貴様が余計なことをするから仕留められなかっただろうが!」

デストラの怒鳴り声に動じることなく、シニストラは飄々とした態度で答えた。

「いいジャ~ン。お姉ちゃん、強いんだし~」

反省する気が0の妹を見て諦めたのか、ため息をつくデストラ。

「……はぁ。貴様のような馬鹿が私の妹……。認めたくない……」

「あはは♪それは残念だね、お姉ちゃん?」

66: 2014/02/04(火) 14:07:26.91 ID:vintP25bo
そんな二人のやり取りを、穂乃香は茫然としたようすで見ていた。

穂乃香は信じられなかった。自分の背後に音も気配もなく立った少女の存在が。

しかし、すぐに彼女は正気を取り戻した。

そして、

「綾瀬流剣術」

刀を構え、二人に突進した。先手必勝である。

「疾風怒刀!」

67: 2014/02/04(火) 14:07:56.01 ID:vintP25bo
しかし、

「おっと」

「ふん」

瓜二つの姉妹は、穂乃香の不可視の剣技『疾風怒刀』を、いとも簡単に避けた。

「番人さ~ん、私たち今お話ししてたのに~。邪魔するなんて、空気読んでよね?」

「はっ、会話ならこいつを頃した後でいくらでもできる」

「そだね」

左手にナイフを持ったシニストラと、右手にナイフを持ったデストラが、穂乃香に向かって来た。

「!!」

それは信じられないほどのスピードだった。下手すれば穂乃香よりも早い。

二人の猛攻を防ぐのに穂乃香は精一杯だった。

「ほらほらほらほら!」

「はははははははは!!!受けるのが精一杯か!」

68: 2014/02/04(火) 14:08:29.70 ID:vintP25bo
刀とナイフがぶつかり合い、火花が飛ぶ。

これは不味いと考えた穂乃香は、自分の早さを最大限に利用し、二人の背後に移動した。

そして、切る標的を失った二人の無防備な背中に『力戦奮刀』を繰り出し、

「っ!また!」

当たらなかった。二人が避けたのである。

「鬼さんこーちら♪」

「手のなる方へ!!」

穂乃香の左右を挟んだ二人の手に握られたナイフが、穂乃香の腕に突き刺さる。

「あぁ!!」

焼けるような痛みに思わず悲鳴を上げる。今までの敵は、殆んどが穂乃香に攻撃を当てることが出来なかった。だから、穂乃香は「傷を受ける」という経験を殆どしなかったのだ。

「あはははははは!!あぁ、だって~!かっこ悪~い」

シニストラの嘲笑が穂乃香の耳に届いた。

「ふふふふふふ、やはり宝の番人も、我らの敵ではなかったか」

69: 2014/02/04(火) 14:09:11.52 ID:vintP25bo
顔のすぐ近くでデストラの声が聞こえる。

そのとき穂乃香の髪が引っ張られ無理矢理に顔を上げさせられた。

「さて、こいつの首を切り落とすかな」

その瞳の冷たさにぞくりとした。その一方で、自分もこんな目をしていたのかな、と至極どうでもいい考えが頭を掠めた。

「ねぇねぇ、そんなよわっちいのなんかほっといてさ~、早く宝を取りに行こうよ~」

シニストラの気の抜けた声が穂乃香の耳に突き刺さった。

「自分は強い」という絶対的なプライドを打ち砕かれ、穂乃香の心の底から怒りがわいてきた。

「……ざ……な」

「ん?なんかいったか?雑魚」

「ふざけるなああああ!!!」

刺されて血がだらだらと流れる腕に力を込めて刀をふる。

デストラはそれを避けた。そして冷たい瞳で穂乃香を見つめる。

「ふん、まだ動けるか」

「弱いのに無理しちゃって~。もういいじゃん、番人さんは十分頑張ったよ。もう諦めなよ」

70: 2014/02/04(火) 14:09:40.94 ID:vintP25bo
二人の言葉の一つ一つが、穂乃香の心に突き刺さる。二人の持つナイフよりするどく、穂乃香の心に深い傷をつける。

「私が、弱いだと?!宝を取りに行くだと!?私が、今までどんな気持ちで、宝を守ってきたと思っている!?」

血を吐くような叫び声。それは長年穂乃香の心のそこに蓄積していた憤怒の叫びだった。

しかし、デストラもシニストラも、穂乃香の叫びに臆することはなかった。

「知るか」

「そんなこと私たちの知ったことじゃないよ」

この言葉に穂乃香は完全にキレた。いつもの冷静さは影を潜め、二人に突進する。

「……ふん、そのまま抵抗しなければ見逃してやろうとも考えていたのだがな」

「お馬鹿さんだね~♪」

穂乃香の二本の刀と、デストラとシニストラのナイフが交差する。

71: 2014/02/04(火) 14:10:49.47 ID:vintP25bo
パキイィン、と音を立てて折れたのは穂乃香の刀だった。

その時、穂乃香は見た。折れた刀の刀身が、やけにゆっくりと地面に落下するのを。

そして悟った。こいつらは私より素早いのではない、私が遅くなっていたのだ、と。

だから私より早く動けるし、『疾風怒刀』もよけれたのだ。

おそらく、どちらかが能力者なのだろう。それで私が二人に追い付けなかったのだ。

そんな穂乃香の思考は、次の瞬間放たれた二人の持つ刃に切られたことで闇に落ちた。

72: 2014/02/04(火) 14:11:15.45 ID:vintP25bo

ドサッ、と倒れる血まみれの番人。それを見下ろす二人の少女。

少女たちの体は返り血により真っ赤に染まっていた。

シニストラが、姉のデストラに顔を向ける。

同じくデストラも、妹のシニストラに顔を向けた。

二人は同時に口を開き、そして同時に言葉を発した。

「やったね♪」

「やったな」

73: 2014/02/04(火) 14:12:30.42 ID:vintP25bo
しかし、まだ喜んではいられない。洞窟に目を向けた。

「さて、後は宝を奪うだけだな」

その時、二人の脳内に埋め込まれた通信装置を通じて声が聞こえた。

《デストラ?シニストラ?二人とも無事?怪我はない?》

心底心配そうな声が、二人の頭に響く。

《心配ないよ、マーノ姉さん》

安心しろと言わんばかりの調子でデストラ。先程とはまるで違う別人のような優しい声だった。

《怪我はないよ~、マーノ。だから安心してよ》

《よかった、私のために二人が怪我したらどうしようかと……》

《ははは、姉さんは心配性だな。私たち三人でいつも成功してきたじゃないか。今度も大丈夫だよ》

《それにマーノの加護もあったしね♪》

いま彼女たちと会話をしているもう一人の女性は、彼女たちの姉である。名はマーノといった。この洞窟から数メートル離れた場所にある木の影に凭れるようにして立っていた。

デストラとシニストラと同じく銀髪をツインテールにした、鮮やかな紫色の目の持ち主であった。

この三人の見た目がここまでそっくりなのは三人が三つ子の姉妹だからである。そして、フリーの傭兵でもある。

彼女も戦闘はできるが、今回はとある理由から援護に回ってほしいと二人の妹に言われて今回この場所で二人の援護をしていたのだ。そう、体感速度を遅くする能力は、彼女の持つ能力だったのだ。

74: 2014/02/04(火) 14:12:59.14 ID:vintP25bo
《じゃ、私たちが宝を持ってくるから、マーノはそこで待っててね~》

《……その、ごめん》

妹たちに押し付けた事に罪悪感を感じ、謝ろうとしたマーノの声を、デストラの声が遮った。

《姉さん、どこに謝る必要がある?》

それに同調するようにシニストラ。

《そうだよ~。マーノと、姉さんの幸せは私の幸せでもあるんだから》

《そうだ。姉さんとシニストラのの幸せは私の幸せ。私とシニストラの幸せは姉さんの幸せでもある。私たち三人は、三人で一人。ずっとそうだったろ?》

75: 2014/02/04(火) 14:14:12.15 ID:vintP25bo
三人に親はいない。自分の親がどんな人だったかは覚えていない。親もいなければ家もなかった。毎日毎日、餓えの苦しみに耐えてきた。

しかし寂しくはなかった。いつも姉妹と一緒にいたからだ。苦しみも、喜びも、分かち合って生きてきた。

フリーの傭兵になってからは、報酬で得た金で飢えに苦しむことは無くなった。それなりに幸せな日常を送っていた彼女たちだが、ある日長女のマーノが、依頼を受けて護衛した資産家の息子に求婚されたのだ。

マーノは喜んだ。そして、デストラとシニストラも喜んだ。しかし、マーノは不安でもあった。自分は、仕事とはいえ、人を何人も頃してきた。そして、資産家の息子はそれを知らない。知っているのはフリーの傭兵であるということだけだ。

そしてある日マーノはその事を打ち明けた。資産家の息子はそれを聞いて、嫌がる素振りは見せなかった。それどころか、「それでも愛してる」と、手を握ってくれた。何人も殺めてきた、この人頃しの手を、握って結婚しようといってくれた。

76: 2014/02/04(火) 14:15:24.03 ID:vintP25bo
三人は幸せの絶頂に至った。

しかし、すぐにそれは崩れ去った。

資産家の息子が襲われて病院に搬送されたと聞き、三人揃って病院に飛んできたマーノが見たのは、氏人のような目で譫言のように「バアル・ペオル」と呟く資産家の息子の姿だった。

マーノは呆然としてて医者の話を聞いていなかったが、あとでデストラから聞いた話によると、資産家の息子は怠惰のカースドヒューマンにされ、このようなことになったこと、そして、彼の体内にある怠惰の核を摘出することは、資産家の全財産をつぎ込んでも難しいと。

しかし後日、医者の話を聞いたところによると、彼の怠惰の核は腎臓に寄生しており、摘出するのはまだ簡単な方であるとのこと。ただ、カースドヒューマンの核の摘出は前代未聞で、未知の領域であり、簡単であるといっても成功する確率は小数点以下である。と、医者はいっていた。

77: 2014/02/04(火) 14:15:51.62 ID:vintP25bo
しかし、それで諦める彼女たちではなかった。

その日から、どんな手を使ってても金を集めると決めた。それが今から五年前の一月一日であった。

そして、今日。ここに眠ると言われている宝を持ち帰れば、手術を受けられる。

そのために、彼女たちはここにいた。

78: 2014/02/04(火) 14:16:56.66 ID:vintP25bo
そして、場所は洞窟の中。

いままで誰も踏み込むことができなかった前人未到の洞窟のなかを、二人は緊張の面持ちで進む。

この先に、宝がある。私たちは、私は、幸せになれる。これまでずっと幸せになりたいと願ってきた。それを叶えるための第一歩だ。

しばらく進むと、奇妙なものが見えた。

それは薄汚れた黄色い三角錐だった。それが逆さまになって地面に突き刺さっている。

「……これが宝?」

いつもののんびりとした調子はなりをひそめ、シニストラはデストラに聞いた。

「……いや、宝ならもっと奥の方にあるんじゃないか?まだここは洞窟の中腹だ。それにこれはどうみたって宝じゃないだろう」

「……そだね。でも何もなかったらこれもって帰ろう?」

「馬鹿、何を言うか。宝はある、無くては困る」

二人は洞窟の奥に進んだ……。

79: 2014/02/04(火) 14:17:47.60 ID:vintP25bo
その頃、洞窟の前に倒れていた穂乃香にはまだ意識があった。

穂乃香は夢を見ていた。それは、走馬灯か、それとも悪夢か。恐らく後者だろう。

今まで自分が守るために頃してきた人々の顔が、浮かんでは消える。

穂乃香は心の奥底で、彼らを羨ましいと感じていた。使命に縛られた自分と違い、自由だった。だから、こんな場所までやって来て宝を奪うなどほざく余裕があるのだ。

命乞いをするのはまだ生きていたいと考えている証だ。穂乃香はもう、よくわからない宝を守ることに疲れていたのだ。

そして、命乞いをする人間を見るたびに、「自分には大切なものがあって、自由なのだ。お前とは違う」と言われてるような気がして、そのたびに怒りに任せて切り頃した。

最早、やってくる敵を頃して「自分は強い、負けない」と考える事が彼女の唯一のいきる意味となっていた。

しかし、それは先程すべて打ち砕かれた。

もう氏にたかった。

80: 2014/02/04(火) 14:18:48.07 ID:vintP25bo
穂乃香の目に微かに涙が浮かび、流れ落ちた。

そのまま意識を手放そうとした、その時、

「諦めるには、まだ、早いんじゃないかな?」

声が聞こえた。デストラとシニストラの声ではない。まったく別の声だった。男とも女ともつかない奇妙な声が穂乃香の頭上から降ってくる。

「ほら、これを使いなよ」

目の前になにかが落ちた。それは四つのカースの核だった。そして、一つの装置。それはベルトの形状をした装置。

「これはカースドライバー。そして、カースの核だよ。もしあなたに素質があれば、それはあなたの体にぴったり馴染むはずさ」

81: 2014/02/04(火) 14:21:30.71 ID:h/ucGa/yo
穂乃香はゆっくりと、核のひとつを手に取った。

ついさっきまで氏んでもいいと考えいたくせに、四つの核を見た瞬間、生きたいと強く願った。

核はするりと滑り込むように体に入った。他の三つも手に取る。同じように体に入り、そしてすぐに馴染んだ。

異様なほどに清々しい気分になった。

自分には声を掛けてきた何者かはすでにいなかったが、そんなことは気にしていない。

目の前に落ちている装置を手に取る。操作は聞いていないが、穂乃香にはそれをどう使うか手に取るようにわかった。

するすると腰に巻き付けられるベルト状の装置、カースドライバー。そして、地面に落ちていた四つの長方形のアイテム、カースキーをひとつ、カースドライバーに差し込むと、穂乃香の体は強固な鎧で包まれた。

そして、洞窟のなかに入った。

それを見つめる謎のせいぶつ。それは、緑色の体色をした、地球上に存在するどの生物にもにていない奇妙な生物だった。

その奇妙な生物が言った。

「ふふふ、おめでとう。今日から君はカースドライダー・シュラだ」

その声には喜びが混じっていた。

82: 2014/02/04(火) 14:22:02.10 ID:h/ucGa/yo
ざっざっざっざっ……。

足音が洞窟のなかで反響し大きな音をたてた。

「……以外と深い洞窟だね」

「あぁ、そうだな……」

ざっざっざっざっ……ざっざっざっざっ。

《……何かあったらすぐいってね》

マーノの声が響く。

《いいよ、気にしないで。たまには妹孝行させてよ》

いつもふざけているシニストラらしからぬ台詞である。

ざっざっざっざっ、ざっざっざっざっ……。

そのとき、デストラはピタリと足を止めた。明らかに警戒している。

「お姉ちゃん?どうしたの?」

シニストラが口を開くが、デストラは右手の人差し指を唇に当てた。

静かにしていると、シニストラにもデストラが警戒する理由がわかった。

ざっざっざっざっざっざっ…。

足音が、聞こえる。自分達はいま立ち止まっているのに、足音が聞こえるのだ。

83: 2014/02/04(火) 14:22:31.44 ID:h/ucGa/yo
「誰だ!」

足音のする方向に向けて声を出す。

そしてついにそれは姿を表した。

「……!」

鬼神のごとき風貌の鎧に声を失うデストラ。

「…………」

鎧は喋らない。

「……誰かはしらないけど、邪魔するなら頃すよ?こちとら割りと真面目なお使いにきてんだよ」

シニストラの声には怒気が含まれていた。

デストラも声を出さずにナイフを構える。

84: 2014/02/04(火) 14:23:18.88 ID:h/ucGa/yo
そして、脳内の通信機でマーノに声をかけた。

《マーノ、援護お願い》

《言われなくても》

通信機を通してマーノにも緊張が伝わっている。マーノの声も真剣そのものだった。

そのとき、はじめて鎧が声を出した。

「切れないなら、砕けばいい……」

「その声……!」

「番人か!なぜ生きてる」

しかし、二人の疑問に鎧、穂乃香は答えなかった。というか、返答するのが面倒だったので聞き流した。そして、穂乃香はもはや番人ではなかった。

「砕けないなら……」

その瞬間穂乃香、いや、カースドライダー・シュラの姿は消えた。

そして、シニストラがバラバラに切り刻まれた。血飛沫が、シュラの鎧とデストラの体を濡らす。断末魔すら上げられない、呆気ない最後だった。

数秒遅れて、シニストラが氏んだという事実を認識し、

「シニストラアアアアアアアアアアア!!!」

《嫌あああああああああああ!!!》

マーノとデストラの叫び声がこだました。

85: 2014/02/04(火) 14:23:45.41 ID:h/ucGa/yo
すぐさまナイフを振るうデストラ。

「貴様あああ!よくもシニストラをおおおお!!」

しかしそこにはすでに穂乃香の姿はない。

背後に回ったシュラの振るう刀が、デストラの右腕を切り落とした。

「ぐ、ぐわあああああああぁ!!」

激痛に悶える。

「ぐ、ぐううぅ」

呻きながら思案した。

なぜだ、なぜマーノの能力が聞いてない……?

それは、カースドライダー・シュラのカースドキー、プライドライオンの特性である。プライドライオンには、自分を対象にした能力者の能力を無効にできるのだ。しかし、それをデストラは知らない。

86: 2014/02/04(火) 14:24:30.01 ID:h/ucGa/yo
「ふうぅ……ぐうぅうぅ!!」

シュラを睨み付け、そしてナイフを左手で持つ。

(なんだか知らないが、妹の仇はとらせてもらうぞ!)

そして跳躍し一気に肉薄した。

「氏いいいねええええええええええええええええ!!!」

ガキイイン!と音をたてて直撃したナイフは、しかしあっさりと折れてしまった。枯れ葉のような音が洞窟内に響き渡る。

「………!」

そして、デストラは最後にマーノに伝えた。

《逃げろ》

本当はもっと色々と言いたかったのだが、それはシュラが許してくれなかった。

「砕けないなら…殺せばいい」

次の瞬間、シュラの持つ刀がデストラを貫いた。

87: 2014/02/04(火) 14:25:03.46 ID:h/ucGa/yo
「うわああああああ!!!」

妹たちの氏を知り、マーノは一人絶望していた。

「うっ、うううぅ……」

鮮やかな紫色の瞳から涙がボロボロとこぼれ落ちていた。

「デストラ……シニストラ……。嫌よ、私は、皆で幸せになりたかったのに……これじゃ意味ないじゃない……!」

そして、マーノの声は次第に怒りが混じってきた。

「許せない……あの女!絶対に私の手で頃してやる!頃してやるううううぅ!」

しかし気づかない。彼女のすぐ背後にシュラが立っていたことを。

腰にさしたナイフを抜き取り、そして立ち上がる頃には、既にマーノの上半身と下半身は分断され真っ二つになっていた。

こうして三つ子の傭兵の不幸な人生はあっけなく幕を閉じたのだった。

88: 2014/02/04(火) 14:25:29.74 ID:h/ucGa/yo
そして、宝の番人の役目を放棄し、自らの欲望のためだけに生きると決めたカースドライダーシュラ、綾瀬穂乃香は、生い茂る樹海から姿を消した。

89: 2014/02/04(火) 14:31:12.13 ID:h/ucGa/yo
カースキー
 大罪と、それらに対応する動物や魔物の力が封じ込められた鍵。
 特殊なカースの核を加工して作られる。
 キーヘッドには様々な動物や魔物のレリーフが彫られている。
 カースキー単体ではただのアンティークキーでしかないが、カースドライバーに差し込むことで
 鍵に込められた呪いのエネルギーが解き放たれる。

カースドライバー
とある機関が発明した変身装置。しかし、その機関は現在存在しない。現在三つのカースドライバーが発明されている。

カースドライダー・シュラ
 穂乃香がカースドライバーで変身した姿。
 所持カースキーはプライドライオンキー、スロースベアーキー、エンヴィースネークキー、ラースドラゴンキー。

90: 2014/02/04(火) 14:32:12.90 ID:h/ucGa/yo
ハイブリッドカースドヒューマン

複数の核に寄生されたカースドヒューマン。
本来なら身体が拒絶反応を起こし、ただのカースへと成り果てるのだが…
稀に耐え切るモノがいる。
綾瀬穂乃香の場合は
押し付けられた運命に対する≪憤怒≫
日常や普通の生活へに対する≪嫉妬≫
番人の仕事をしたくないという≪怠惰≫
自身の強さに自信を持つ≪傲慢≫

の4つの核が体を蝕んでいる。

普段は憤怒と嫉妬と傲慢の3つの力を怠惰の力が抑えている。

が、戦闘に入ると感情の一つが解放され、それぞれに切り替えて行く。

91: 2014/02/04(火) 14:34:00.39 ID:h/ucGa/yo
投下終了です。ハイブリットカースドヒューマンとカースドライダー関連のネタはメタネタスレから拝借しました。ご協力ありがとうございました。

イベント
・穂乃香、番人やめるってよ

お目汚し失礼しました

92: 2014/02/04(火) 14:53:00.50 ID:5IyDQyXz0
乙です
心が豊かになった結果がこれだよ!
カースドライバーはこれからどうなるのやら
噛ませになった三つ子ェ



【次回に続く・・・】



引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part9