639: ◆zvY2y1UzWw 2014/04/15(火) 19:38:57.61 ID:b1gnELZX0


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ


夕美ちゃんの誕生日ですよ、誕生日!
って事で投下

640: 2014/04/15(火) 19:39:50.86 ID:b1gnELZX0
某日、某会場

サイリウムを持った人々が、今か今かとその時を待ち構えている。

ざわざわと、ざわざわと…落ち着きなく。

そこに、そのざわめきを完全に停止させる声が響いた。

菜々「会場に来ていただいたファンのみなさーん!!ちゃーんと、後ろの人まで、みえてますからねー!!」

「「「「「「「オオオオオオオオオオォォォ!!」」」」」」」

ざわめきは歓声に変わり、桃色の光を放つサイリウムで客席は染まる。

大人気アイドルヒーロー、ラビッツムーンこと安部菜々がステージの真ん中へ立ち、観客に手を振る。

菜々「みなさん、すごい歓声ですね~!!けど、今回の主役はナナじゃないんですからね!間違えないように!」

菜々「ではでは!今日の『相葉夕美・誕生日記念ライブ』!主役に登場してもらいましょう!!夕美ちゃーん!!」

「「「「「「「「夕美ちゃぁぁぁぁぁぁん!!」」」」」」」」

ピンクのサイリウムはひっこめられ、今度はオレンジと緑色の二色の光が観客席を染めた。
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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



641: 2014/04/15(火) 19:41:36.67 ID:b1gnELZX0
夕美「みんなー!今日のライブに来てくれて、ありがとーっ!誕生日をナナちゃんや、ファンのみんなと一緒に迎えられて、とっても嬉しいなっ!」

緑色の蝶の羽をきらめかせながら、アイドルヒーローのナチュラルラヴァースこと、相葉夕美が天井から降りてきた。

「「「「「「「「ワァァァァァァァッ!!」」」」」」」」

――せっかくの誕生日ライブなのに正式にはユニットではない菜々も一緒でいいのか?

――ファンに聞けばこう答えるだろう

――『菜々ちゃんさんは夕美ちゃんが自ら呼んでいるから問題ないんですよ』

――『というかむしろ何でユニットじゃないんですかね』

観客の上を旋回し、夕美はゆっくりと舞い降りる。

ステージに足をつけた瞬間に、イントロが流れ始めた。

夕美「じゃあ、さっそく一曲目!曲名は――」

642: 2014/04/15(火) 19:43:36.42 ID:b1gnELZX0
―――ライブ終了後、プロダクション経営女子寮・菜々の部屋

やっとライブも終わって、いろんな事を終わらせ、帰ってきたのは夜遅くだった。

菜々はベッドに座って、横に座った夕美を労わる。

菜々「ふぅ…夕美ちゃんの誕生日ライブ、盛り上がってよかったですね!」

夕美「うん、ファンのみんなも楽しそうだったね♪…でも…もう結構遅い時間だね…楽しかったのに、もうすぐ今日も終わっちゃう」

菜々「もう夜遅い時間ですねー…夕方からのライブでしたし、仕方ないことだとは思いますけど」

夕美「カースとかが近くに出なかっただけ運が良いのかな?誕生日プレゼントも今日は忙しくて殆どもらえてないなぁ…」

夕美「あっ、でもプロデューサーさんからケーキ貰っちゃった♪いい人だよね!今から食べる?」

菜々「い、いまからはちょっとキツイですね…そうそう、しっかりナナからもプレゼント、あるんですよ!」

夕美「ほんと!?…わぁ!ナナちゃんのプレゼント、待ってたんだよ!」

菜々「えへへ、そこまで楽しみでしたか?期待に応えられるのか、ちょっと不安ですけど…はい、プレゼントです!」

菜々が手渡したのは可愛らしくラッピングされた箱。そこそこの重量で、中身がアクセサリーなどではないと、夕美は直感した。

643: 2014/04/15(火) 19:45:58.63 ID:b1gnELZX0
夕美「…今ここで開けてみてもいいかな?」

クリスマスに枕元のプレゼントを見つけた子供のように、期待に満ちた表情で夕美は尋ねる。

菜々「もっちろんです!ささ、どうぞ一思いにババーンと!」

夕美「ばばーん…?えっと、待ってね。まずは包装を剥がさないと…」

菜々「あう、うっかりしてました…てへ☆」テヘペロ

夕美(ちょっと古い気がするけど、そんな事より菜々ちゃんかわいい)

リボンを解き、可愛らしいウサギが描かれた包装紙のセロハンテープを包装紙が破けないように丁寧に剥がす。

包装紙の中にはシンプルな茶色い箱。その蓋に手をそえる。…ちょっとした緊張か、思わず口から息が漏れる。

夕美「…じゃあ、ばばーんと開けちゃうね!」

宣言通りにババーンと開けると、綿に包まれたリスのぬいぐるみが中に入っていた。

オレンジ色のドレスに、シロツメクサの花冠。尻尾には赤いリボンが結ばれている。

菜々「お花とか、アクセサリーもいいかなっって考えたんですけど…これを見たら絶対夕美ちゃんに買わなきゃ!って思って…」

夕美「…」

夕美はそのぬいぐるみを箱の中から取り出して、ギュッと抱いてみた。

夕美「すごい、ふかふかでもふもふしてる…」モフモフモフモフ

菜々「でしょう!ドレスとか抜きでも、このぬいぐるみ単体でかなり高評価なモノなんですよ!菜々も前から気になってたんですっ」

644: 2014/04/15(火) 19:47:51.39 ID:b1gnELZX0
夕美「…このリボンも?」

尻尾の赤いリボンには、緑の糸で「YUMI」とちょっと歪んだ形で刺繍されていた。

菜々「えっと、それはナナが自分でやってみたんです。全部買ったものっていうのも夕美ちゃんに失礼な気がして…ヘン、でしたか?それともやっぱり蛇足?」

夕美「…ううん、じゃあこの子は世界で1つだけの、ナナちゃんがくれた私だけのぬいぐるみだね!」

菜々「そ、そうですよ!オンリーワン!ナンバーワンよりオンリーワンです!」

夕美「それにとってもかわいい…。ナナちゃんも、この子も…とってもかわいいよっ♪」

菜々「夕美ちゃんの誕生日なのに菜々が褒められてしまってるんですけど!?」

夕美「あっ…うーん、それじゃあ、ナナちゃんが私を褒めてみればいいんじゃないかな?」

菜々「その発想はありませんでした…!こほん、ぬいぐるみ抱っこしている夕美ちゃん、とーってもかわいいですよ!」

夕美「ホント?」

菜々「はいっ!ライブの時も、アイドルヒーローの時も…夕美ちゃんは頑張ってて、菜々も頑張ろうって気持ちになれます!」

夕美「菜々ちゃん、なんか恥ずかしくなってきた…えへへ」

菜々「…でもステージの上の夕美ちゃん、本当に楽しそうですよ?いつも、いつでも…」

夕美「ふふっ、前もそんな事言ってたよね。そんなに印象的?」

菜々「当たり前じゃないですか、ファンのみんなもきっとそう思ってますよ?」

645: 2014/04/15(火) 19:48:54.56 ID:b1gnELZX0
夕美「…」

あの日の前も、あの日の後も、精霊としての能力はほぼ隠しながら生きてきた。時々現れる植物を傷つける存在を懲らしめる程度で。

一般的な少女フリをしながら、自然の声を聞いて生きていた。

植物が自分の恋人だから。恋人さえいれば十分だと思っていた。友人などいなかった。

いつかこの星を植物で覆い尽くすから。…それでも当時から音楽や踊ることは好きだった。

生活に必要なお金は、ダンスを仕事にすることで細々と稼いでいた。

菜々との出会いは本当に偶然だったはずだ。あの時の自分はあるアイドルのバックダンサーで、菜々は観客だった。

菜々は何故か自分の事をよく覚えていた。本人は『今まで見たどんな人よりも、楽しそうだったから』と言っていたけど。

偶然お互いが戦えることを知って、お互いが異星の者だと知って、そして二人で踊り始めて、今のプロダクションにスカウトされた。

そして、菜々は友達の居なかった自分の親友になってくれた。

646: 2014/04/15(火) 19:50:02.98 ID:b1gnELZX0
『世界樹様、どうして私は人と同じ姿なのかな?他にも人みたいな子はいるけど、あの子は鳥の姿、あの子は葉の姿なのに…』

『ユミ、それは考えてはいけない。生まれた時からそう決まっていたんだ』

『決まっていた?』

『ユミ、お前は仕事をしていなさい。思考するのは自由だ。だがタブーもこの世にはある』

『…はい、世界樹様』

647: 2014/04/15(火) 19:51:16.54 ID:b1gnELZX0
…たまに自分の事がわからなくなる。何がしたいのか、何をすべきなのか。そして何が正しいのか、何が間違いなのか。

だから何故自分は人に似た姿で生まれてしまったのだろうと、思ってしまったことが何度かある。

だから自分で考え方を変えてみた。植物も、星も、世界樹も関係ない、『大精霊ユミ』ではない『相葉夕美』として、思考してみた。

『恋人たち』も、友達も、仲間も、大切。自分の歌で、自分の踊りで、喜んでくれるファンも…大切だ。

みんながいれば、植物も、生き物も…共生できる。そう『相葉夕美』は信じているのだ。…立場も目的も忘れた自分は。

少しだけ、夢見がちかもしれないけれど、信じている。

自分が人と似ているのは、心が似ているから?

本当の理由は知らないけれど、そう考えるといくらか気分は安らいだ。

悩むのも、苦しいのも、人と同じなら…一人ぼっちじゃないから。

誰かを愛おしく思うのも、音に身を任せて踊るのも…しっかりとした自分の思いだと信じられるから。

自分は、自分だ。

この星の担当は自分。なら、この星を守るのも…おかしくはない。それに、まだ時間はいくらでもある。

…自分に時間はあっても、彼女には無いのだろうけど。

648: 2014/04/15(火) 19:52:05.53 ID:b1gnELZX0
夕美「…ナナちゃん、ちょっと疲れちゃった。ケーキはこの部屋の冷蔵庫に入れたし、明日食べようかなぁ」

菜々「ふふっ、今日の夕美ちゃんはいつもより甘えん坊ですねぇ…」

夕美「そう言わないでよ、今日くらいいいでしょ?」

まるで子供を見守る母親か祖母のように菜々は膝に寝転んできた夕美の頭を撫でる。

菜々「今日はライブがあって無理でしたけど…明日は事務所の皆もお祝いしてくれると思いますよ♪」

夕美「そっか、それも楽しみだなぁ♪…それに、菜々ちゃんの誕生日だって丁度一か月後なんだよ?嬉しいなぁ…」

ポンッと音を立てて、夕美は省エネモードな小さい姿へ変わった。

僅かなエネルギーで人とほぼ同じ機能を使うにはこの体系が理想的なのだ。ぷちどると姿が似ているのは、そんなところが関係しているのだろう。

そのままぎゅっと抱き着いた。…その頭に小さな花が咲いていた。

菜々「…この花、勿忘草ですね?」

花に触れないように、優しく頭を撫でる。

菜々「この花は…夕美ちゃんとナナ、ふたりのおそろいの誕生花ですね。花言葉は…『真実の愛』。それに…『忘れないで』」

少しだけ…撫でる手も、唇も動きを止める。

菜々「…忘れませんよ、ナナは、夕美ちゃんの親友ですもん。ずっとお友達ですよ。…なーんて」

口にはせずに「嗚呼、でも」と唇だけが紡ぐ。それを夕美はしっかり感じていた。

ウサミン星の話は、菜々は夕美はまだ知らないと思っている。だから、苦しんでいるのかもしれない。

小さな夕美は、撫でる菜々の手を、静かに撫でる。

649: 2014/04/15(火) 19:52:33.95 ID:b1gnELZX0
夕美「忘れないよ、何年たっても。悩んでいるなら悩んでいいよ、納得できるまで」

ポンッと再び人の姿になって、真正面から夕美は菜々を見つめる。

夕美「私は、ナナちゃんの味方だよ。遠く離れても、近くに居ても」

菜々はその真剣な表情に少しだけ緊張し、その言葉にどこか安堵していた。

夕美は菜々の横に座り直して、何事も無かったようにぎゅっとリスのぬいぐるみを抱きしめる。

夕美「…この子、大切にするからね!じゃあおやすみなさい!」

菜々「…はいっ!おやすみなさい、夕美ちゃん!」

安定しているようで、どこか危うい二人の関係。

ずっと一人でいた為に、人との距離感なんて分からない夕美は、初めて仲良くなった菜々の近くに居ようとする。

長寿の菜々は常に人と一定の距離をとっていた。だからこそ、他の人以上に近くに居ようとする夕美に、少し特別な感情を抱いている。

その状態をお互いに分からずに、今の距離を保とうとして…でもそれを状況が許さない。

ウサミン星最大の問題は、彼女達にとっても最大の問題である。

650: 2014/04/15(火) 19:55:18.81 ID:b1gnELZX0
以上です
相葉ちゃん誕生日じゃー!!めでたい!!

いつまでもウジウジする菜々さんと、多分いろいろあった夕美ちゃんの話になりました
いつの間に百合っぽくなったのか、それは自分にもわからない。

ウジウジ菜々さんが故郷に帰る選択肢は取り合えずいろんな事件が落ち着いたらなのかなぁとは考えている感じではあるのですが…

651: 2014/04/15(火) 20:34:26.55 ID:IsCOdwoAO
おっつおっつ夕美ちゃんおめでとう!

百合ですか? 大好物です(真顔)



【次回に続く・・・】



引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part9