964:◆6osdZ663So 2014/05/09(金) 00:16:46.86 ID:ppPWrB+Ho

シリアスもいいけど、ほのぼのもね!
と言う事で学園祭時系列のお話をー

965: ◆6osdZ663So 2014/05/09(金) 00:17:18.74 ID:ppPWrB+Ho


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ


 前回までのあらすじ


肇「高校生の皆さんが催しているスタンプラリー……」

肇「9ポイント分のスタンプを集めれば豪華景品が貰えるんですよね」

肇「何をもらえるのか、美穂さんは知ってますか?」

美穂「色々あるみたいだけど……私も全部は把握してないかな」

Pくん「まぁ?」


美穂と肇とプロデューサーくん

----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



966: 2014/05/09(金) 00:18:05.73 ID:ppPWrB+Ho



卯月「はい!それじゃあスタンプ1つ押しますねー♪」

肇「お願いします」 ペコリ


ポンッと卯月の持つスタンプが一度押されて、

肇の持つスタンプカードにまた1つ、可愛いスタンプが増えたのでした。


肇「これで残りは6つですねっ」

卯月「短時間で3ポイントも集めちゃうなんてすごいですっ!」

美穂「うんっ!本当にすごいよ、肇ちゃん!」

Pくん「マッ!」

肇「ふふっ、3人ともありがとうございます」


本日、学園祭のスタンプラリーイベントに参加している肇と美穂。(あと謎のくまのぬいぐるみのプロデューサーくん)

2人と1匹(?)は広い学園を回りながら、1ポイントスタンプを持つ人達3人(卯月ちゃんも含みます)と出会い、

現在、3ポイント分のスタンプを集めていたのでした。

967: 2014/05/09(金) 00:18:49.44 ID:ppPWrB+Ho

肇「ですが、私の休憩時間も残り半分ほどです……このままでは9ポイント集めるのは間に合いませんね」

肇「やはり、高得点スタンプを持っている『番人』の方との対決は不可欠でしょうか」

卯月「あっ、それなら美穂ちゃんに挑……」

美穂「う、卯月ちゃんっ!」

卯月が何か言いかけたのを美穂が遮り、

顔を近づけ小さな声でひそひそと話しはじめました。

美穂(わ私っ、今日はお休み中と言うかっ!そのっ!) ヒソヒソ

卯月(あれっ、そうでしたっけ?えへへー) ヒソヒソ


肇「……」

肇(美穂さん、内緒話のようですが聞こえています……)

まあ、彼女には丸ぎこえだったのですが。

肇(……うーん、たぶん話の流れからすると……美穂さんも高得点スタンプ持ちの『番人』の役だったのかな)

肇(でも、今は私に付き合ってもらってるから挑めないよね)

968: 2014/05/09(金) 00:19:40.56 ID:ppPWrB+Ho

美穂「う、卯月ちゃんっ、ほ、他には、この近くに『番人』は居るの?」

卯月「えっと……この近くだと」

露骨に焦りながら話を変えるために美穂が尋ねると、

卯月は、目を瞑り、考え込む仕種をしました。


卯月「あっ!そうです!」

そしてお次はポンっと手を叩き、思いついた仕種。

卯月「今の時間なら休憩スペースに菜帆ちゃんが居たはずですっ!」

肇「なほ……さん?」

卯月「はいっ!海老原菜帆ちゃん!(どやっ)」

美穂(……どうしてどや顔?)


969: 2014/05/09(金) 00:21:20.69 ID:ppPWrB+Ho

――

――


肇「高得点スタンプの番人、海老原菜帆さんでしたね。貴重な情報でした」

美穂「卯月ちゃん、すごく社交的だから、他校の子ともすぐに仲良くなれちゃって」」

美穂「きっとその子とも友達になったと思うんだけど……いったいどんな子なんだろう?」

肇「えっと、卯月さんは確か……」


( 卯月「菜帆ちゃんですか?そうですね……」

( 卯月「食べる事が好きで、おっとりした感じの……普通の女の子ですっ」 )


肇「……と言っていましたね」

美穂「卯月ちゃんが言うならたぶん普通なはずだけど……たぶん」

肇「どんな方かは、行ってみればわかるはずです」

美穂「……そうだね、確かすぐ近くの屋外休憩スペースだっけ?」

肇「早速向かいましょうか」

美穂「うんっ!」

Pくん「マっ!」

970: 2014/05/09(金) 00:22:36.86 ID:ppPWrB+Ho

――

――


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
しし‐るいるい【氏屍累累】
 
[ト・タル][文][形動タリ] 
たくさんの氏体が折り重なって倒れており、非常にむごたらしいさま。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

美穂「by g○○辞書です」



「……もう……食え……ねえ」

「…………あくまだ……和菓子のあくま……」

「あんこは……いやだ……あんこはもう……」

「むりぽ……」


菜穂「もぐもぐ、ごくっ……これも美味しかったですね~♪」

『ごちそうさまでした~♪あ、次の挑戦者の方いますか~?』



肇、美穂「……」

休憩スペースを訪れた2人の目に飛び込んで来たのは、

志半ばにして、腹膨れ倒れた猛者の氏体の山と、

その中央に君臨するぷにょほわの女帝でした。


肇「まさに氏屍累々と言った感じですね……」

美穂「普通の女の子って一体……」

971: 2014/05/09(金) 00:23:26.62 ID:ppPWrB+Ho

菜穂「……あれれ?あの~?次の挑戦者の方~?」

『うーん?流石にもういませんかね~?』


――「……おい、挑戦者居ないのかよ?」

――「無理だよ……京華学園甘党四天王がやられたんだぞ……」

――「な、なに?!京華学園甘党四天王がっ!?」

――「そんな……もう……この学園はお終いだ……」

――「くそっ!あの悪魔に次々と和菓子が食われるのを……俺たちは指を咥えて見ているしかできないのかっ!」


美穂(なんだかものすごい事になってる雰囲気……)

肇「……早食い勝負、なるほど、これに勝てれば5ポイントなんですね」

美穂「えっ……!は、肇ちゃんもしかして挑戦するつもりなの?!」

肇「コイントスの時とは違って順番待ちはなさそうです」

肇「すぐにでも挑戦できるのなら、時間の少ない私たちにはこの催しはぴったりかと」

肇「時間制限もあるようですから、大きくタイムロスをする事もないでしょうし」

美穂「で、でも……この勝負はちょっと勝てないんじゃないかな……」

美穂「ここは引いて……別の『番人』の人を探したほうが……」

美穂「プロデューサーくんもそう思うよね?」

背中に引っ付いていたはずの小さな熊に声を掛ける美穂だったが、

美穂「ってあれ?プロデューサーくん……?」

お探しの熊は既にそこには居らず、

972: 2014/05/09(金) 00:24:28.71 ID:ppPWrB+Ho

Pくん「マぁぁ♪」

菜帆「あら~?」

『おやおや~?かわいい小熊さんですねえ~?』

Pくん「まっ♪まっ♪」

ぷにょふわ女帝の見つめる先、

そこには倒れ伏した挑戦者達の残した和菓子をキラキラした目で見つめる小さな熊がいました。


美穂「!?プロデューサーくん!食べられちゃうよっ!」(※食べられません)


菜帆「あれ?そこに居るのはひなたん星人さんじゃないですか~、お久しぶりですね~」

美穂「えっ」


ざわっ!


その女帝の一言で、周囲の注目が美穂に集まる。

973: 2014/05/09(金) 00:25:10.03 ID:ppPWrB+Ho

――「何だって!?ひなたん星人!今ひなたん星人って言ったのか!?」

――「ひなたん星人って……最近地元で噂になってるヒーローの?」

――「えっ、ヒーロー来てんの?サイン貰っちゃってもいいのかな~」


美穂「あっ、あわわっ!あのっ!そそそのっ!今はそのっ!」


――「もしかして……ひなたん星人が次の挑戦者?」

菜帆「え?そうなんですか~?」

『もしかして強敵の登場ですかね~?』


美穂「ええぇっ!い、いえっ!そそんなっ!わ、私はっ!」

美穂(ど、どどどどどどうしよう!)

なぜか挑戦者にされそうな雰囲気になっていた。

急な展開についていけずに美穂は焦る。


「いいえ、今回の美穂さんは応援ですよ」

菜帆、美穂「!」

そんな美穂の窮地を救う、少女の一声。


肇「この勝負、挑戦するのは私です!」


美穂「肇ちゃんっ!」

974: 2014/05/09(金) 00:26:00.87 ID:ppPWrB+Ho

――「……女の子?あの子が挑戦するのか?」

――「見た感じ、そんなに食べそうには見えないが……」


肇「お久しぶりですね、菜帆さん」

菜帆「はい、お久しぶりですね~」

早食い勝負の『番人』の前に立ち、恭しくお辞儀をする肇。

対する菜帆もニコニコと挨拶をする。


美穂「え、えっと……2人は知り合い?」

菜帆「あれ?ひなたん星人さんは覚えてませんか?」

『祟り場の舞台、とても素敵でしたよ~』

美穂「えっ、祟り場……あっ!」

祟り場と聞いて、やっと少女はティンと来る。

美穂「あ、あの時の!なんだか凄そうな集まりの中に居た!」

菜帆「はい~、海老原菜帆です~」

『暴食を司る悪魔ベルゼブブです~』

美穂「あっ、こ、小日向美穂ですっ!……すみませんっ、すぐに思い出せなくってっ」

美穂「その……あの時、祟り場に居た人とこんな所で偶然出会うなんて思ってなくて……」

菜帆「いえいえ~、気にしないでください~」

美穂「そう言っていただけるなら…………あと悪魔って?」

『あ、それもあんまり気にしないでください~』

美穂(えっ、すっごく気になる)

菜帆「うふふ~」『うふふ~』 ニコニコ

美穂(と言うか……菜帆ちゃんから声が2つ聞こえるような……?)

美穂(……亜里沙先生みたいな例もあるし……深く突っ込まない方がいいのかな)

975: 2014/05/09(金) 00:27:01.83 ID:ppPWrB+Ho


『それよりも菜帆ちゃん。どうやら肇ちゃんが挑戦してくれるみたいですよ~』

菜帆「みたいですね~。私が『番人』を勤める…」

菜帆「『この早食い対決にっ!』」


肇「はい、是非とも。お相手願いたく思います」


鬼の少女と和菓子の女帝、一見穏やかな少女達。

しかし2人の目には闘志が宿り、交わす視線の間には電流が走るっ!


美穂「は、肇ちゃん。本当に大丈夫なの?」

傍らにそびえる氏体の山に目を向け、肇を心配する美穂。

当然だろう。どう見てもこの早食い勝負、普通ならば勝ち目はない。

肇「きっと大丈夫ですよ」

しかし肇、涼しい顔でそう答える。

976: 2014/05/09(金) 00:28:01.44 ID:ppPWrB+Ho

美穂「で、でもこれだけの氏体の数だよ……」

美穂「それだけ菜帆ちゃんに挑んだ男の人たちが蹴散らされてるってことで……」

――「いや、氏んではいないけどな」

美穂「すすすみませんっ、つい……」

美穂「あのっ、この勝負って勝てた人は今まで居るんですか?」

美穂は、ギャラリーの中に居た男にこれまでの勝敗の模様を尋ねる。

――「……さっきな……一度だけ勝てた奴を見たよ」

――「化け物みたいな……そう化け物みたいな女の子だった……」


肇「ほら、美穂さん。女の子でも勝てるんですよ」

美穂「肇ちゃん、ちゃんと聞いてた?女の子につく形容じゃなかったよ?」


肇「ふふっ、本当に大丈夫ですよ。美穂さん」

肇「私も考えなしと言う訳ではなく、ちゃんと勝算もありますからっ」

美穂「えっ?」

美穂の心配に反して、やはり肇は自信を持ったようすで答えるのだった。

977: 2014/05/09(金) 00:29:04.84 ID:ppPWrB+Ho

――

――


『では~改めまして、ルールの説明です』

『目の前のお皿に置かれた和菓子を制限時間内に食べきってくださいね~』

菜帆「『番人』の私より先に食べ終われたら5ポイント差し上げます~」

『シンプルで簡単なルールですね~』


美穂「か、簡単って……あ、あれを全部食べるんだよね?」

それを見た瞬間、氏体の山がどうやって築き上がったかを美穂は理解する。


それはまるで和菓子のチョモランマ。

餡子の暗雲を突き抜けて、そびえ立つ砂糖細工の塔。

色彩豊かな飴の散らばる寒天の大海、そこに潜むは主たる真っ白な大魚(鯛焼き)。

若草の草原を駆ける団子の大家族。餡蜜の香り漂う丘には羊羹の館。

それはもはや一皿に表現された芸術的楽園模様。

だが、とても……とてもじゃないが人間の胃袋に納まる量ではない。


美穂「……見てるだけでお腹一杯に」

Pくん「マぁぁ♪」

見た目の甘さに、美穂の傍の小熊はよだれを垂らすが、

この勝負は、その見た目の様には甘くはない。

美穂「肇ちゃん……」

ギャラリーに混じり美穂は、挑戦者席に座る肇の様子を伺う。


肇「……」

彼女はやはり、とても落ち着いた様子でそこに座っていた。


――レディー

そして、開始のコールが鳴り響く。

菜帆、肇「「いただきますっ!」」

978: 2014/05/09(金) 00:30:27.76 ID:ppPWrB+Ho

コールと同時に女帝の手が動き、

菜帆「もぐもぐもぐもぐ」

そして、口が動くっ!!


美穂「っ!!は、速いっ!!」

――「ああ、とても10皿以上あの山を完食した人間の早さじゃねえ」

――「少しもペースが落ちねえんだ、普通は満腹感や飽きだとかで速度が落ちるって言うのに」

――「『そんなに食べるはずが無い』『あの速度を維持できるわけがない』」

――「そう言って、帰ってこなかったフードファイターは少なくないぜ」


見る見るうちに皿に積み上げられた甘味が消化されていく。

そう、まさに消化!手に取られた甘味は瞬時に口に取り込まれ、女帝の胃袋へと消えていくのだっ!

菜帆「おいしい♪」

『ですね~♪』

しかもそれでいてちゃんと味わっているらしい。

女帝の舌はっ胃袋はっ!喰らう喜びを少したりも逃さないっ!!



――「おいっ、挑戦者の女の子がっ!」

美穂「はっ!」

思わず女帝の気迫に気を取られてしまい、挑戦者側の席に座る少女の様子を伺っていなかった。


美穂「肇ちゃんっ!!」


果たして、鬼の少女は――――っ!!

979: 2014/05/09(金) 00:31:28.00 ID:ppPWrB+Ho


肇「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」


――「はっ速ぇぇえ!」

――「ど、どう言うことだ!?『番人』にも引けをとらない速度だぞっ!!」

菜帆(!!)


挑戦者側に座る鬼の少女もまた!

女帝と同じく、切り崩すように甘味の山をたいらげていく。

その速度!ぷにょふわ女帝にさえもまったく劣らないっ!!


――「っ!!まるで女帝が二人居る見てえだっ!!」

――「でもなんだこの不思議な感じは……」

――「うまく説明できねえが……とにかく見ていて不思議な感覚があるぜっ」

美穂(……)


ギャラリーは気づかなかったが、

ただ1人挑戦者の友人である少女が、不思議の正体を知っていた。


美穂(肇ちゃん……菜帆ちゃんと同じ速さで食べることができてる……)

美穂(そう、鏡写しみたいに正確にっ!同じ速さっ!)

美穂(そんな事ができる方法を私は知っているっ!)

美穂(『鬼心伝心』!!)

980: 2014/05/09(金) 00:32:21.91 ID:ppPWrB+Ho

肇(早食いと言うのは、突き詰めれば技術の勝負です)

肇(如何に、目の前のお皿の上に立ちはだかる山を切り崩すか)

肇(菜帆さん、今日10皿以上はこれを平らげたあなたはその方法をよく知っているはずです)

肇(そして『鬼心伝心』は、そんな菜帆さんの心・技・体の動きをそのまま写し取る妖術)

肇(つまり……)


肇「もぐもぐもぐっ!」

肇(菜帆さんがぷにょふわのもちもちなら、私もぷにょふわのもちもちと言う事ですっ!)

……それなんか違う。

あと食べながら言ってもあまりカッコつかない。


菜帆「もぐもぐっ!」

『驚きですね~』

とは言え、自身とまったく同じ速度で食べ続ける事のできる肇の様子に、

立ち塞がる『番人』もいささか驚いたようであった。

981: 2014/05/09(金) 00:33:16.50 ID:ppPWrB+Ho

――「まったく互角の勝負になってやがるっ……!」


『鬼心伝心』を発動中の肇の技量は、確かに菜帆とまったく同等。

確かに互角と言える。


――「けどよ、『番人』と同じ速度で食えたとしても……同じだけ食えるとは限らないよなぁ」

――「ああ、そうだ。実際に、番人より速く食ってた奴は居たけど……」

――「途中で和菓子の山を食うこと自体が辛くなったのかギブしていたしな」

――「先に”満腹”になっちまったらやっぱり負けだぜ?」


美穂(ううん、違う。肇ちゃんは満腹にはならない)

美穂(妖術は妖力……体内のエネルギーを使うからっ……)

美穂(肇ちゃんはいつも妖術を使った後はお腹を空かせてるっ)


肇(『鬼心伝心』を使い続けている限り、私はお腹一杯にはならないっ)

肇(そして、この和菓子に飽きることもないっ)

肇(だって『鬼心伝心』は技術だけでなく、心を通い合わせる妖術っ!)

肇「もぐもぐっっ!」

肇(菜帆さんっ、あなたの心が”食べる事に飽きる”なんて事あり得ないですよねっ!)

妖術『鬼心伝心』は、心を通じ合わせるための力。

その力によって肇も、菜帆と同じく和菓子を愛する心を得ている。

故に彼女も、和菓子を食べ飽きることは決してない!


菜帆「っ!もぐもぐもっ!」

『なるほど~、これは強敵ですね~』

982: 2014/05/09(金) 00:34:27.99 ID:ppPWrB+Ho


――「……挑戦者の女の子ペース落ちねえな」

――「ああ、むしろペースが上がってるくらいだぜ」

――「だが、加速してるのは『番人』側も一緒だ」

――「こりゃ完全に互角だな……」

――「ならひょっとすると……ひょっとするかもしれないな」


加速する『番人』の食欲にさえも、まったく引けを取らない挑戦者の様子にギャラリーも沸く。

女帝と鬼の少女、2人の皿の上の甘味は次々と姿を消していき、

残りはもう最初にあった量の1/5にも満たない……ここからはラストスパート……!

菜帆「もぐもぐもぐもぐ!」

肇「ぐもぐもぐもぐも!」


美穂(……勝てる)

美穂「これなら勝てるかも!」

Pくん「マッ!!」

実力も速度も拮抗しているならば、どちらが勝ってもおかしくはない。

むしろこの頃には、これまでの疲労が残っているだろう番人側が少し不利かもしれないなんて美穂は思っていた。


美穂「肇ちゃんっ!頑張って!!」

Pくん「マッマー!」

しかし、美穂は重大な事を見落としている。

他ならぬ彼女自身が、かつて「鬼心伝心」で同等の実力を発揮した肇を打ち破った事を。

983: 2014/05/09(金) 00:36:33.57 ID:ppPWrB+Ho


菜帆「もっぐもぐもぐも(流石ですね~)」

『ここまで追い詰められたのは初めて……あっ、いえ二回目でした~ふふふっ』

肇「もぐもぐもっ!(私を応援してくれる人がいますから……必ず勝って見せます!)」


皿に残る和菓子は、お互い後数口程度。

勝負の結果は、あと数秒ほどで決まる。


菜帆「もぐもぐもっ(その心意気いいですねえ~)」

『だからこそ、残念ですね~』

肇「……ぐもっ(何が……ですか?)」


菜帆「もぐん(決まってるじゃないですか~)」

984: 2014/05/09(金) 00:37:56.89 ID:ppPWrB+Ho


菜帆「 もぐりん!! (私が勝っちゃうことがですよ!!)」

肇「!!!」


次の瞬間、ぷにょふわ女帝の発したオーラに

その場に居た全ての者が――飲まれる!!!

そのオーラの正体は……食欲!!圧倒的な食欲!!!

もはや彼女の胃袋は、皿の上の山のみならず、

この場に存在する全ての……いや、世界中の……

いや!宇宙中の食べ物をその胃袋に収めんとするかのような!

まさにブラックホールの如き食欲の発する気迫!!!


菜帆「ふぅ、ごちそうさまです~」

肇「なっ!」

鬼の少女が気がつけば、女帝の前の和菓子は全てなくなっていた。

そして肇の皿の上には……


まだ手付かずのお饅頭が一つ。



―― ……っ!勝負あり!!

985: 2014/05/09(金) 00:38:45.09 ID:ppPWrB+Ho


――

――


肇「負けてしまいましたね」

美穂「うん……」

Pくん「マァ……」


早食い勝負に負けて、屋外休憩スペースを出てきた2人と1匹(?)。

肇の手には、スタンプの1つ増えたカードが1枚。

敗北したけれど「制限時間内の完食はした」と言う事で、

菜帆さんの好意で、おまけで1ポイントだけスタンプを貰えたのでした。


肇「敗因はやはり、気持ちでしょうね」

肇「和菓子への愛の強さ、それを私が真似できたとしても……」

肇「菜帆さんは、食べてる内にもっともっと好きになれている」

肇「ふふっ、素敵ですね。どんな時でも食事自体を楽しむ心意気」

肇「私は勝ち負けに拘って、そこに気を向けられてなかったかも」

美穂「……う、うーん」

美穂(あの気迫はそんな良い感じのお話の結果じゃなくって……)

美穂(もうちょっと恐ろしい何かの表れだった気がするけれど……)

具体的には食物連鎖の頂点たる捕食者のそれ。

美穂(まあ、戦った2人にしか分からない世界って言うのもあるよね)

とりあえず、そんな風に納得しておくことにした。

986: 2014/05/09(金) 00:40:10.02 ID:ppPWrB+Ho

美穂「とにかく、これで合計4ポイント」

肇「はい。私は残りは5ポイント分のスタンプを集める必要があります」

肇「そして、休憩時間の方は……残り半分を切ってますね」

美穂「うん……」

残り5ポイント。奇しくも早食い勝負の勝利報酬と同数。

つまり先ほどのような戦いに挑まなければ、間に合わないと言う事で。

先行きが不安である。


肇「だけど、今の私は絶好調ですよ!美穂さん!」

美穂「えっ」

肇「ふふっ、勝負にこそ負けましたけれど……たくさん和菓子を頂きましたからっ」

肇「先ほどまでとは違って、お腹一杯です。ですから今は妖力も漲っています…!」

美穂「あ、そっか」

鬼の少女、肇の妖力はなぜかお腹の減り具合とほぼ直結しているので、

たくさん和菓子を食べてお腹一杯の今は、絶好調と言う訳です。

987: 2014/05/09(金) 00:41:22.93 ID:ppPWrB+Ho

肇「この状態ならば、他の『番人』さんとの勝負には勝ちにいけるかもしれません」


例えば先ほどの勝負で『鬼心伝心』を使ったように、

妖術を十全に使えるならば、この後のスタンプ集めはスムーズに進められるかもしれない。ちょっとズルいけれど。


肇「ですからまだまだ諦めるには早いですよ、美穂さん」

美穂「……うんっ!そうだよね!」

美穂「私も精一杯応援するからね!肇ちゃんっ!」

肇の意気込みを聞いて、美穂もまた奮起する。

肇「はいっ!美穂さんに応援して頂けるなら百人力です!」

Pくん「マッ!!」

美穂「あっ、プロデューサーくんも応援してくれるみたい」

美穂の背中に張り付いている小さな白熊も、声援(?)を贈っています。

肇「ふふっ、ありがとう。プロデューサーくん」

Pくん「マァ♪」


肇「それでは美穂さん……次の『番人』を探しましょうか!」

美穂「うん!」


と言う訳で、肇と美穂。

今回は、和菓子の女帝・海老原菜帆に挑みましたが、

2人のスタンプラリーは、まだもう少し続くようです。


おしまい

988: 2014/05/09(金) 00:42:38.08 ID:ppPWrB+Ho

以上です、『鬼心伝心』の使い勝手の良さよ

菜帆、卯月、お借りしましたー

 

989: 2014/05/09(金) 00:49:35.23 ID:8vnsTlkk0
乙です
普通とはいったい…うごご
鬼心伝心は確かに使い勝手いいかも
ギャラリーもノリがいいなww

なお、黒兎はどうやって勝ったかというと単純に髪の毛(触手)でも掴んで手だけ以上の高スピードで食ってたという…確かに化け物だわ
黒兎「ウまうま♪」モグモグモグモグヒョイヒョイヒョイヒョイ



【次回に続く・・・】



引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part9