134: 2010/06/18(金) 00:34:34.70 ID:0uALgWw0

【禁書目録】垣根「友達が欲しいんだが」

麦野「友達って、なるもんじゃないんだ」

麦野「もう細かい話は良いよ……」

絹旗「麦野、私達はこの件について断固とした決意を新たにしています。一言で言い表すなら、超麦野も程ほどにして下さい」

フレンダ「いくら麦野でもそろそろ直すべきだよそういうのは!」

麦野「良いじゃない別に……、限定だか何だか知らないけどお菓子食べただけでしょ?」

絹旗「でもあの時滝壺本当に落ち込んでたんですよ! 超鬱だったんですよ!」

麦野「ああもう、また新しいの買ってあげれば良いんじゃない! それで文句出ないわね?」

フレンダ「結局そういう問題じゃないんだって……」

絹旗「そんな考え方ずっとしてたらいつか後悔しますよ?」



麦野「…………っせえ」

麦野「うっせえんだガキ共!! 仲良くピーチク雑音垂れ流してんじゃねえぞ!!」
とある魔術の禁書目録外伝 とある科学の未元物質 (電撃コミックスNEXT)

135: 2010/06/18(金) 00:35:40.26 ID:0uALgWw0
フレンダ「で、でもそうやって嫌な事からずっと目を背け続けられる訳ない訳よ!」

絹旗「ち、ちょっフレンダそれ超言い過ぎですって!」

フレンダ「こっちだって少しは麦野の事を本当に思って――――」

麦野「纏めて明日のゴミに出されたいのかよ!? ァア!?」ブンッ

フレンダ「…………!!」ビクッ

滝壺「…………そうやって、力を振りかざすの?」

麦野「ぐッ――――――!」



絹旗「麦野……」

フレンダ「……」

麦野「ァァ判った! こんな場所ごときッこっちから願い下げってなァァァ!! テメェら纏めて野垂れ氏にやがれ畜生共がッッ!」ゴガァァァァァァン!

136: 2010/06/18(金) 00:36:54.45 ID:0uALgWw0



絹旗「超凄い勢いで出て行きましたね…………」

フレンダ「あっちゃあ。ごめん、ここまで言うつもりは無かったんだけどつい……」

滝壺「でも、むぎのは私達に危害を加えなかった」

絹旗「にしては玄関のドアが超ボロボロ……、物に当たって人に当たらず、ですか」

フレンダ「ま、なんにしても暫くすれば帰って来ると思う訳よ。今は優先度高い依頼も無いし、アイテムは開店休業って所ね」

滝壺(むぎの大丈夫かな……)

フレンダ「当面の問題は、開けっぴろげ風通しが良くなった扉をどうするか、って訳かー」

絹旗「とりあえずござでもぶら下げときますかね」ガサガサ

137: 2010/06/18(金) 00:39:10.92 ID:0uALgWw0
学園都市において七人のみ認められている超能力者(レベル5)。その第四位、麦野沈利は鼻息も荒く都市を闊歩していた。

事の発端、そしてその理由は至極単純なものだった。
彼女が、彼女の属している『アイテム』、その組織のメンバーである滝壺理后という少女が大切にしていた(らしい)お菓子を食べてしまった、というものである。

落ち込む滝壺理后を慰めたのは絹旗最愛とフレンダという同じく『アイテム』所属の二人の少女。彼女らにも何か溜まったものがあったらしく、三人は結束して麦野に直訴しに来たというだけの話だった。
勿論、そこで麦野沈利が己の非を認めて謝罪していたならば違った道があったのかもしれない。

しかし、かもしれない、というのは起こり得なかった仮定の話で、実際に麦野沈利の口から飛び出たのは「代わりの品を買ってくれば文句無いでしょう」との発言だ。それは、世間一般で言うところの見事なまでの逆切れである。
その一連の流れの結果として、麦野沈利は感情の赴くままに自身の住まうマンションを後にして冒頭に至る、そういう訳だ。



暫く当ても無く歩く事で、彼女の頭も適度に冷え始めている。だからといって、つい先ほど飛び出してきた場所に引き返すつもりなど毛頭無い。
そんなことは彼女のプライドが許さないし、何より帰ったとしても気まずいことこの上ないだろう。その空気を霧散させる為にやるべきことは一つだと彼女の明晰な頭脳は弾き出してはいたが、それこそやはり彼女のプライドが許す行為ではなかった。

ただ、あの時。フレンダの発した言葉に我を忘れた麦野沈利を止めたのは。
激情に任せて振りかぶった手を止めさせたのは、恐怖でも威嚇でもなかった滝壺理后の自身を見る静かな眼差しだった。
その眼差しを思い起こした彼女は、辺りをはばからず忌々しげに大きく舌打ちの音を響かせた。

138: 2010/06/18(金) 00:40:59.47 ID:0uALgWw0


それから少しの時間がたった時。麦野沈利は、第六学区にあるゲームセンターまで足を伸ばしていた。
理由は特にない。徒歩でブラブラとしていた時に、目についたのがこのゲームセンターだったからだ。

麦野(ゲーセンかぁ……、暫くこんなとこにも来てなかったなぁ)

そんな思考に導かれるように入った店内は、一瞬その中の喧騒で音が聞こえなくなるような錯覚を覚えるという懐かしいものだった。
適当にぶらついていると、いくつもの機種、筐体が目に付く。逆に、全く見たことも無いような目新しい機種等も同様だ。
ふと目に入った横一列に並ぶダーツのゲームは、以前『アイテム』でゲームセンターに赴いた時に皆それなりにできる中でもフレンダが異様なまでの実力を発揮していたものだった事を思い出す。

麦野沈利は、ズキリ、と胸が痛むのを感じた。唇をかみ締めている彼女の端正な顔は僅かに歪んでいた。

彼女が漠然と感じていたのは、孤独だった。
誰一人自分を理解しようとせず、恐る恐る遠巻きに眺めてはこちらの視線に気がつくと体を震わせてその身を隠そうとする。擦り寄ってくる奴らは皆すべからく下心の持ち主だ。
『アイテム』等といっても、所詮は恐らく同じようなものだったのだろう。彼女達は麦野沈利の能力の下に集っているのであり、決して彼女の人格が認められているわけではない。
今日の事が良い例だ。あの瞬間のフレンダの、恐怖に硬直した表情。あんなものを、これから自分は永遠に見ていかねばならないのか。それも生きている限りずっと。

いや、コレこそがきっと学園都市において七人しかいないレベル5、超能力者の背負うべき業なのだ。
絶大な力には、当然絶大なる責任が伴う。そのツケを自分は払っているだけなのだ――――――、と。
麦野沈利は自身を守るため、そう無理やり自分を納得させた。心に残る寂しさから目を背けたままに。

139: 2010/06/18(金) 00:43:59.14 ID:0uALgWw0
「――――――!」
「――――――!」
「――――――!」

麦野(……あぁ、うるせぇな)



騒いでいるバカの声が耳障りだ、と彼女は思った。同時に、これだけ機嫌の悪い自分の側で騒いでしまった事を悔いろ、とも。

彼女が行おうとする事を有体に言えば、完全な八つ当たりだ。腹が立っている側で騒がれた。ムカつく。ぶち頃し確定だ。ただそれだけのシンプルな理屈だった。
哀れな子羊のツラを拝ませてもらおうと俯いていた顔を上げた彼女は、途端ぽかんと口を開いたまま硬直する。

自身の目が節穴になったかと錯覚した。寧ろ、錯覚していて欲しいとも願った彼女の思いとは裏腹にそれは間違いなく現実のものだった。

一方「ァァァァァ! なンでこういうときに限ってトリプルに当たるンですかァァァ!?」デレレンッ

垣根「ひゃはは! ざまあ見やがれ神様ってのはなぁ、日ごろの行いとやらをちゃぁぁぁんとご覧になってるってなあ!!」

一方「ほォ、吠えやがるか未元物質」

垣根「今更真面目に言ってもおせえんだよ! この俺の華麗なる投擲で勝利をこの手に掴むところを刮目してやがれ!!」

一方「クソがァ……、勝ち誇るにはまだはえェぞ……」

垣根「オマエこそ諦めが悪い。どこに当たっても俺の得点はお前の得点を下回る、ヤバげなら態と外しちまえばいいってなあ……。――――絶望しろ、一方通行」ビュッ ポウンッ バキーン

垣根「なん……だと……?」

一方「ぎゃははwwwwwww神様ァ見てるもンだなァ、垣根くゥゥゥゥゥゥンwwwwww 一発目からど真ん中とァ流石の俺でも予想だにしなかったぜェ!!」



騒ぐ子羊達の正体は、そう。泣く子も黙る我らが学園都市第一位第二位のコンビであったのだ。
ハイテンションに騒ぐ彼ら。空いた口が塞がらない彼女。ゲームセンターの喧騒から切り離されたこの不思議空間。そんな奇妙な光景から、この物語は始まる――――

149: 2010/06/21(月) 00:15:51.51 ID:kxSj00I0
友達って良いよね。俺も100人友達欲しいんだけど
二度三度フレンダ期待のレスを目撃したのでほんの少しだけフレンダを登場させるシーンを追加しました、結構先でだけどなww

見てくれる人がいるなんて、こんなに嬉しい事は無い……
二部の流れがもう少ししたら整理し切れるから、そしたら投下始めます
相変わらずハエが止まるような速さだけど頑張るよ!

153: 2010/06/21(月) 01:12:37.44 ID:kxSj00I0
垣根「チッ、なんであんな時に限ってBULLに当たるかねえ」

一方「運不運も合わせて実力だってなァ。48点で勝てるたァ思っちゃいなかったけどよ」

垣根「49点だったんだから……三点でも二点でも勝ちだったんだ……、神は氏んだ……」

一方「おう、約束なンだから飲みもン買って来いよ。俺ァコーヒーな」

垣根「オマエコーヒー以外頼んだ試しねえじゃねえかよ一方ちゃんよお……、まあ約束は約束だ。涙を飲んで――――ん?」

一方「ン? 今更ごねたって何もかわンねェぞ」

垣根「おい、あそこ見てみろ」ボソボソ


一方「ァあン? …………オマエが好きそォなちょっと年上の女じゃねェか。ありゃ何点だよ」ボソボソ

垣根「間違っちゃいねえがそんな事が言いたい訳じゃない。ありゃあ第四位だ」ボソボソ

一方「第四位? 超能力者かよ。……アレが原子崩しか、そりゃそォとなンでこっちみて間抜けに口開けっ放しなンだよ。しゃぶりてェってのか?」ボソボソ

垣根「俺に聞くなよ。取り合えずあんだけ見られてっと落ちつかねえ。声かけてみようぜ」ボソボソ

一方「ま、俺ァ別に構わねェがな」ボソボソ

154: 2010/06/21(月) 01:17:48.29 ID:kxSj00I0
一方「おゥおゥ、そンなに食い入るようにこっち見て誘ってやがるンですかァ?」

麦野「――――――!」

垣根「コイツの言う事は置いといても、俺達に何か用かよ?」

一方「中々愉快なスルーかましてくれるじゃねェか垣根くゥン……」

麦野「て、テメェらなんでこんな所で和気藹々としてんのよ!!」

垣根「なんで、って突っ込まれてもな。ダーツしてたんだよ、ダーツ。狙った場所にタマ突っ込んでく最近のマイブーム」

一方「と、その付き合いだ。能力無しってのも悪くァねェもンだな」

垣根「これこそ本当の技術力の勝負だよな」

麦野「そんな事聞いてんじゃねえッてんだろうが……」ビキ

155: 2010/06/21(月) 01:26:00.78 ID:kxSj00I0
麦野「私が聞いてんのは、学園都市の第一位様と第二位様がガン首並べてなぁに仲良しこよしやってんだってんのよ……」

垣根「そういうオマエは一人で来てるみてえだな、学園都市第四位原子崩し」

麦野「――――ッッ!!」

麦野(一人でいる事が看破されてる!? クソが、情報が回るのが早すぎる……!)

麦野(このままじゃマズい……、滝壺も絹旗もいない状況でトップツーを纏めて敵に回すのはあまりに分が悪すぎだ)

麦野(なんとか状況の打破を――――!)



一方「ンだよ只の寂しがりやさンかよ。ぼっちの僻み入りましたァー」

垣根「おい言ってやんなよ、気にしてるかもしれねえだろうが!」

麦野「………………」

麦野「……はァ?」ポカーン

156: 2010/06/21(月) 01:31:33.09 ID:kxSj00I0
一方「ンだよ、混ざりたかったンなら最初からそォ言えやまだるっこしィな。一緒にやンぞ」

麦野「あ? い、いや私は」

垣根「金は最初に全部払ってやり放題だから気にする事はねえよ。原子崩し、お前ダーツできんのか?」

一方「パッと見はできそうには見えねェけどな」

麦野「ル、ルール位はわからなくも……、そ、それより質問に答えてくれない? 何トップツーの二人が日和ってんのかって事を……」

一方「ンじゃあ、オマエこそ何で一人で突っ立ってたンだ?」

麦野「こんな昼間っから男二人でイチャイチャやってるのは何でだっつってんのよ気持ち悪ィな?」ビキ

垣根「女一人で干上がってた奴に言われたくねえよ。そんなことよりダーツしようぜ」

一方「ぎゃはは! 干上がって!!! 確かにコイツァ干物だァ!」

麦野「だ・か・ら、なぁぁぁんで、お二人は、仲良くダーツに興じてるの? って、平和的に、聞いてるの、わかる?」ビキビキ

一方「直訳:私も混ぜてよ仲間外れはズリィ。又は意訳、絶対勝てねェんでマジかンべンして下さい」

麦野「」ビキビキビキビキ

157: 2010/06/21(月) 01:39:37.48 ID:kxSj00I0
麦野「上等だコラァァァァァ返り討ちにしてやるっつってんのよォおおおおおおお!!」ピカーーー

垣根「よっしゃ、じゃあ最初だし01やろうぜ。さっきの負けはノーカンにしといてやるよ、喜べよ一方ちゃん」シュッシュッシュッ、ボウンッ

一方「垣根くン調子のンな。最初なンだから301からな。原子崩し、テメェの実力の程見せてもらおうじゃねェか。俺らに喧嘩売ったこと後悔して絶望しなァ」ウズウズ

麦野「……」

麦野(どうしてこうなった……)





垣根「そんじゃジャンケンだ。さーいしょーはグー、ジャーンケーン」

三人「「「ポンッ!」」」バババッ



一方「俺が一番だな。ハッ、速攻で終わらせてやンぜェ!!」

垣根「原子崩しもいんだからそんな飛ばすんじゃねえよ。でもま、大トリに期待はしなきゃなあ」

麦野(なんで私こんなことやってんだろ)

垣根「あ、ダブルインダブルアウトは無しな。ダーツは俺の予備の貸してやるよ」

麦野「――――あ、ありがと」

一方「よっしゃァ、始めンぜェ!!」ヒュッヒュッヒュッ 

158: 2010/06/21(月) 01:42:54.26 ID:kxSj00I0
垣根「20のダブルに20シングル、それに1か……幸先良いじゃねえか一方通行」

一方「カカカッ、モタモタしてっと終わらせちまうぜ垣根くンよォ!」

垣根「俺は俺のペースを崩さねえ。ダーツは、自分との闘いだ」


一方「ダーツは、自分との闘いだ」キリッ

一方「おィィ原子崩し今の聞いたかよォォ!! コイツマジ調子乗っちゃってンですけどォ!」プークスクス

垣根(無視無視)ヒュッヒュッヒュッ

麦野(学園都市ってこんなんがトップツーだったの……?)

159: 2010/06/21(月) 01:46:05.49 ID:kxSj00I0
一方「14シングル11シングル、14シングルか……、相変わらずの左寄せしてンなァ」

垣根「俺は考えた。考えた末に結論付けた。確かに20点やど真ん中は取れれば美味しい。しかしその左右は一点と五点に囲まれている」

垣根「高いリスクを負うにしては20点は割りに合わねえ……。なら中心の少し左側を狙えば? 集まっているのは14、11、8、16、最低でも8点。上手くいきゃ16トリプルで48点にもなる」

垣根「調子が良いラウンドは二投目又は三投目でBULLを狙い更に高得点を狙うわけだ……、この俺の理論に氏角はねえ。聞いてっか一方よお!」ババーン

一方「なげェ」

垣根「ごめん」シュン

麦野(あー、成る程ね。こいつ等初心者なんだ)



一方「さァて、次は期待の新星原子崩しな訳だが」

垣根「プレッシャーかけてんじゃねえよ。どんなに下手でも笑うのは最低な行為だ」

麦野「んじゃ、投げよっかなあ。ダーツなんか久しぶりね」グッグッ

一方「……やけに様ンなってやがンな」

垣根「そうか? 俺にはよくわからねえが」

麦野「…………」ヒュッ ポウンッ


二人「「――――!」」
二人((い、いきなりBULLだと……?))

160: 2010/06/21(月) 01:51:31.07 ID:kxSj00I0
麦野「…………」ヒュッ トン

一方「い、いきなりブル当てられてビビっちまったじゃねェか! ま、3のシングルは残念だったがよォ!」

垣根(いや待て……、横の軸は殆どブレてねえ……。まさか)

麦野「…………」ヒュッ ポウンッ

麦野「ん……久々だけどやっぱり体が覚えてるもんねえ」デレレンッ


一方「」
垣根「oh......」


一方「え? え? ン? あれ、おィおィ原子崩しァ、能力は無しだぜ? ずっこいじゃねェか」

麦野「電子飛ばしてどうすんだよ。ボードごと撃ち抜けっての?」

垣根「原子崩しオマエ……、『投げ込んで』いるなっ!」

麦野「一時期凝ってた位だね。流石に本職やら常習者には負けるけど、そこそこ位なら狙った場所には行くのよ」

一方「マジかよ…………、ンなの聞いてねェぞ……。フェアじゃねェンじゃねーの?」

麦野「テメェらから売った喧嘩に負けて吠えてりゃ世話無いわ。言いたい事があんならまず勝つ所から始めなさいよ」

垣根「クソが……、残念だが口では分が悪いぞ一方通行……」

一方「ケッ! 勝負はまだまだ終わっちゃいねェンだよォッ!」ヒュヒュヒュッ

161: 2010/06/21(月) 01:56:28.52 ID:kxSj00I0
麦野「私の勝ちかな」

一方「」ズゥーン
垣根「ナンテコッタイ」

麦野「口程にも無いってこのことね」

一方「五ラウンド目で終わられるとか……、氏にてェ……」

垣根「お前に七ラウンド目で終わられたせいで俺がビリっけつじゃねえか、一方通行大爆発しろ」

一方「原子崩しが圧倒的過ぎたせいで負けた気しかしねェ……」

麦野「『どんなに下手でも笑うのは最低の行為だ』」キリッ

麦野「勿論私は笑ったりはしないけどね」ニコッ

一方「」プルプルプルプル
垣根「」プルプルプルプル

162: 2010/06/21(月) 02:01:05.75 ID:kxSj00I0
垣根「畜生だが負けは負けだ仕方ねえ……、飲み物買ってくっか、クソ。第四位、とんだダークホースだったぜ……」

垣根「一方ちゃんはコーヒーな。……原子崩しは何が良いよ」

麦野「え、わ、私?」

一方「テメェ以外に原子崩しはいねェだろォが。ビリがジュース奢りって決めてたンだ、遠慮するこたァねェよ」

麦野「……そう? じゃあ午後々ティーで」

垣根「いってくるぜ」スタスタ




一方「…………」ソワソワ

一方「……さて、原子崩しァさン。ちィィィっとばかし聞きたい事があるンですが」

麦野「!」

麦野(腐っても第一位か? 何か釘を刺されることは覚悟しておかないと……)

一方「あのよ……その、だな。うン」

麦野「……なにさ、焦らしプレイがお望みなの?」

一方「どうやったらダーツそンなに上手くなるンですかァ?」


麦野「……」

麦野「…………うん、やっぱそんなこったろうと思ったわ」

163: 2010/06/21(月) 02:03:35.25 ID:kxSj00I0
垣根「あー、ココアうめえ。……ん? あいつら……」タタッ

垣根「おうコラ、なぁに仲良しこよしに談笑しちゃってんだ? そろそろ混ぜろよー」

一方「っせェテメェは黙ってろ! 俺ァ今原子崩しさンにダーツの極意を伝授してもらってンだよ!」

垣根「――!? テメェ抜け駆けする気かよ! 原子崩しのあの実力を見た途端に媚売ろうってか、誇りに欠けた強者程見てて痛々しいもんはねえなあ一方通行!」

一方「抜け駆けってこたァ、テメェも手取り足取り腰取りナニ取り教えてもらう気マンマンヤル気マンマンなンじゃないですかァ?」

麦野(コイツらも力に擦り寄ってきてる奴ら……なのかしら? よくわかんないわね)

垣根「ぐっ…………。オマエがコーヒーを欲しくねえって事はよくわかった。ほらよ、原子崩し」

麦野「あ、ストレートだ。ありがと」

一方「おィ。そォいうの、あンま良くないンじゃないの?」

垣根「ありがとうございますはどーしたぁ一方ちゃんよ」

一方「ありがとン」

164: 2010/06/21(月) 02:04:41.40 ID:kxSj00I0
垣根「ほらよ」ポイッ

一方「サンキュ」パシッ

麦野「――――ああ、おいしいわ。けど午後々ティーのストレートって何がストレートなのかしら」

垣根「俺も前々から思ってたな。原材料に砂糖が入ってんのにストレートとか名に偽りありじゃねえか」

一方「コーヒーうめェ」

垣根「そういや一方ちゃん、お前MAXIMUMコーヒーって飲んだ事あるか?」

一方「ン、飲んだことねェな。うまいのか?」

垣根「悪くなかった。今度お前も飲んでみろよ」

一方「ふーン」

麦野「それあの黄色い缶のやつの事? ゲロ甘で飲めたもんじゃ無かったんだけど」

垣根「あっバカ」

一方「ゲロ甘……? そりゃ甘党のテメェが好きそうなゲテモンだなァ未元物質」ハンッ

垣根「……空気読めや原子崩し、何も言わずに飲ませて噴出すコイツの素敵なザマぁ特等席見たかったのに……」

麦野「砂かぶりってか砂糖かぶりの席? ぶっ掛けられんのは流石に御免だわ」

一方「ぶっかけとかなンか工口くね?」

垣根「最低だな一方通行、俺もちょっとだけ連想したけどな」

麦野「下ネタとかあからさま過ぎて引いちゃうよ」

俺「お前が言うな」

166: 2010/06/21(月) 02:11:31.50 ID:kxSj00I0
垣根「まあ取り合えずダーツ教えろよダーツ」

麦野「……まあ、我流だけどアンタ達よりはマシだからね。取り合えずそこ。そこにあっち向いて二人とも並びな」

垣根「おう」
一方「ウス」


麦野(――――あれ? ひょっとして、このまま後ろから吹き飛ばしたりできないのかな……)

一方「原子崩しァさンまだー」ウズウズ

麦野「急かすんじゃないわよ、ガキじゃあるまいし」

垣根「……」プププッ

一方「……」ビキビキ

167: 2010/06/21(月) 02:12:50.35 ID:kxSj00I0
麦野「そんでもって的に当てるつもりで投げるまね!」


一方「おらァ!」ヒュッ
垣根「――!」ヒュッ


麦野「……一方通行は論外。投げようとする時に肩とヒジが開いて少し振りかぶってる」

一方「」

麦野「未元物質はパッと見それっぽいかな。後はただ漠然と投げるんじゃなくて上手く投げれた時のイメージを意識して投げると良いよ、あくまでイメージだけどね」

垣根「成る程な、参考になりやがる。ただ、名前で呼んで欲しいもんだな。俺には垣根帝督って名前があるんだからよ」

麦野「ならまず相手の名前から呼ぶのがマナーでしょ。私の名前は麦野沈利、復唱」

垣根「麦野沈利……ね。良い名前じゃねえか、悪くねえ」

168: 2010/06/21(月) 02:18:51.86 ID:kxSj00I0
垣根「お前はいつまでいじけてんだよ」

一方「いいンだいいンだ、どうせ俺なんか論外だし本名不詳なンだ……」シュン

麦野「肩とか使うんじゃなくて腕だけで投げれば良いんだって。こう、シュッって」

一方「それやると届かなかったりする上にすぐ疲れンだよォ」

麦野「……アンタヒョロすぎ。触ったら折れちゃいそうって男に使う言葉じゃないんだよ?」

一方「――――――――――」ズゥーン


垣根「おい、言いすぎだ! コイツ一旦落ち込むと長えんだぞ!」ボソボソ

麦野「なーんかこれまでそれなりに苦労して生きてきたのが馬鹿らしくなってきたわ」

169: 2010/06/21(月) 02:22:43.12 ID:kxSj00I0
垣根「ダーツに熱中してたらもう昼過ぎて暫くかよ……、時間も切れるしそろそろ愉快にお昼ゴハンと洒落込もうか」

一方「…………チッ、イライラすンのも全部空腹のせいにしちまうか。確かにいい加減腕が重てェし」

麦野「アンタら何時から投げてたのよ」

一方「十時だな。そっから投げっぱ」

麦野「開店時間じゃない、どれだけやる気勢なんだか」

垣根「なあ原子……麦野、お前も暇なら一緒にメシ食い行かねえか?」

麦野「――――ハァ? なんで私がアンタらと?」

一方「ォ、良いねていとクン良い意見だァ! 麦野さンも一緒にメシ食おうぜェ、ついでにダーツ教えてくれやがれ!」

垣根「テメェはダーツ教わりたいだけじゃねえのかよ。ま、取り合えずファミレスで良いよな?」スタスタ

一方「よォし。さっさとメシ行くぞメシだァ」スタスタ

麦野「あ、お、おいちょっと!」




ナァーニヤッテンデスカァー?  サッサトコイヨー


麦野「…………一体もう、何がなんなんだか……」スタスタ

180: 2010/06/21(月) 23:01:28.01 ID:kxSj00I0
ごちそうさま
心理掌握はこっちのイメージで作るんや
それじゃあ頑張るよ

181: 2010/06/21(月) 23:03:46.48 ID:kxSj00I0
ガヤガヤ


麦野(それにしても…………)

麦野(流れでファミレス入っちゃったけど、一体全体どういう状況なのこれ。学園都市が誇るレベル5が三人揃ってファミレスで談笑? 笑わせてくれるね)

一方「あー、コーヒーうめェ」

垣根「抹茶ラテまじうめえ」

麦野(コイツらはコイツらで完全にくつろいでる……、気ィ張ってる自分が滑稽に思えてきたじゃない)

麦野(…………まあ、私だって……。何度か空気に呑まれかけちゃってたけどさ)

一方「麦野さンは紅茶派なンだな」

麦野「……え? ああまあ、紅茶はよく飲むかな。砂糖はあんまり入れないけど」

垣根「俺は甘いの好きだからな。紅茶には砂糖ガンガン入れる派だ」←甘党

一方「コーヒーはブラックに限るだろォ」←そもそも紅茶飲まない

麦野(日和ってるコイツらどうにか利用して何かできれば文句無いんだけど……そう上手くいくとは思えないし……)

182: 2010/06/21(月) 23:11:43.54 ID:kxSj00I0
一方「取り合えずいつも通りドリンクバーだけ頼ンじまったが、メシも頼もうぜメシも。腹ァ減って力が出ねェよ」

垣根「麦野は何食うんだ?」

麦野「うーん……、垣根? と……、一方通行は何食べるつもりよ」

一方「あれェ? 何故か呼び名俺だけハブられてねェ? ……俺ァミックスグリルとグリルソーセージな」

麦野「だってアンタさっき自分で本名不詳って言ってたじゃないの」

垣根「一方(アクセラ)ちゃんで良いんじゃねえの? あ、俺は若鶏のみぞれ煮な。ライス大盛りで、サイドメニューは……麦野アスパラ食えるよな?」

麦野「全然大丈夫」

垣根「じゃあそれにピザ頼むわ」

一方「まァたみぞれ煮かよ。よく飽きねェな、いつもそれ食ってるし」

垣根「暫くこれ以外食べる気が起きない位惚れこんでるからな。――――浮気、ダメ、絶対」

183: 2010/06/21(月) 23:18:48.93 ID:kxSj00I0
麦野「――――――垣根に一方ねえ…………、ゆーめーじんが急に身近になった感じなのかな。なんだか実感わかねーわ」

一方「ン、なンか言ったかよ?」

麦野「べぇつにぃ?」

垣根「早く決めろよー」

麦野「ん…………、鮭とか無いのかな」

一方「鮭ェ? あったっけか?」

垣根「モーニングのメニューにはあった。と、思うがな。まあ試しに聞いてみようぜ、押すためにある横車もあるもんだ」ピッ  ピーンポーン

店員「ご注文お決まりでしたらお伺いいたします」

垣根「あ、すいませんけどモーニングのメニューの焼鮭朝食ってまだ大丈夫ですかね?」

店員「――――ええと、少々お待ちください」スタスタ

一方「ァ、ダメだった時用のも一応決めとけよ」

麦野「そうねー。じゃあもしダメだったら銀ひらすの西京焼きね。でもひらすって何かな、しらすには見えないけど」

垣根「しらすをどうやって西京焼きするんだよ、炭になってでて来るぞ」

一方「腹ァ減ったぜェ…………」グゥゥゥー

184: 2010/06/21(月) 23:26:55.08 ID:kxSj00I0
店員「特別にご用意させて頂く事になりました」

垣根「お、ラッキー。あざーす」

一方「あー、ミックスグリルにライス大。それとォ若鶏のみぞれ煮にライス大。あと焼鮭? 一つ。ンでグリルソーセージとアスパラベーコンピザ」

店員「以上でよろしいでしょうか?」

一方「麦野さン他になンかあるか?」

麦野「……特に無し」

一方「ンじゃ以上で」

店員「かしこまりましたー」


一方「よし、飲みもン取ってくる」ガタッ

垣根「じゃあ俺待ってるから一方ちゃん入れてきてくれ。抹茶ラテな」

一方「泥水のようなコーヒーを入れてきてやンよ」

麦野「……じゃあ私もお願い。ローズヒップね」

一方「テメェは来いよ、楽しよォとしやがって! お年で足腰に来てるンですかァ!?」

麦野「…………聞かなかった事にしといてやるよ」ピクピク

垣根「いいからさっさと行って来いって」

185: 2010/06/21(月) 23:33:37.63 ID:kxSj00I0
垣根「抹茶ラテうめぇー」

一方「コーヒーうめェ」

麦野「……ローズヒップすっぱい」

一方「外れか?」

麦野「入れ方間違えたかな……」

垣根「いや、ローズヒップはそもそもすっぱいもんだ。間違っちゃいねえだろうよ」

麦野「純粋にミステイクだったっぽいわね……」

垣根「そういやよ、麦野はゲーセンとかよく行ってんのか?」

麦野「結構前に足繁く通ってた、けど最近は全然って所。今日はたまたまだし」

一方「あンな場所ででも会わなきゃ声かけることなンざねェだろうしな。運が良かったってか」

垣根「成る程な、今日は仕事もねえって事かよ」

一方「仕事? 麦野さンやっぱ年――――なンでもねェ」

麦野「…………」ビキビキ

麦野(腑抜けてるだけならまだしもよくもまあ人をイラつかせてくれるわねコイツら…………)

麦野(…………でも、『アイテム』も……こんな感じだったっけ……?)

186: 2010/06/21(月) 23:40:08.62 ID:kxSj00I0
垣根「んー、俺の記憶が確かなら、麦野は『アイテム』とかいう組織のリーダーはってた筈じゃねえか?」

一方「ンだそりゃ? 聞いたことねェぞ。スキルアウトの親戚か?」

垣根「暗部の組織系統の一つだよ。俺のいた『スクール』と同じようなもんだ」

麦野「『いた』? なにさ垣根、アンタ『スクール』から抜けた訳?」

垣根「籍はまだ残ってるだろうな。が、そりゃ俺がいねえと組織がまわらねえからだ。歯車が壊れても取替えりゃ機械は動くが、駆動機が働かないんじゃ前提条件すら満たせてねえ」

一方「つまりは垣根くンにやる気が一切無いと、そういう訳だ」

垣根「自主休学、とでもしとけよ。『スクール』だけに」

麦野「なにそれつまんない」

187: 2010/06/21(月) 23:48:28.04 ID:kxSj00I0
一方「結局麦野さンの仕事は今日はねェって話か?」

麦野(ここは隠しておくべき所、か……? ――――いや)

麦野(本当の事を言っても別にデメリットは無い、か。そもそも相手の組み合わせが悪すぎるわ)

麦野「それは違う。私も垣根と似たようなもんよ」

垣根「俺と? 自主休学か?」

麦野「もうそれは良いからね。色々あって三行半叩きつけて来たの」


店員「お待たせいたしましたー、ミックスグリルとライス大のお客様」

一方「ン」

店員「若鶏のみぞれ煮とライス大のお客様」

垣根「俺俺」

店員「前失礼します。焼鮭朝食のお客様」

麦野「私ね」

垣根「あ、ピザとソーセージはここに」

店員「かしこまりました。ご注文は以上でおそろいですか?」

麦野「多分これで全部かな?」

店員「ごゆっくりどうぞー」


一方「うーン、ミックスグリルとグリルソーセージでソーセージがダブってしまった」

垣根「それ言いたくて狙ってやっただけだろテメェ。ああ、飲み物とってくる」ガタッ

麦野「わー鮭だー」

188: 2010/06/21(月) 23:53:03.33 ID:kxSj00I0
一方「やっぱ肉だろ肉ゥ」ガツガツ

垣根「みぞれ煮の美味さは異常」パクパク

麦野(鮭おいしい)モグモグ

一方「あ、ソーセージとピザも勝手に食えよ」

麦野「あんがと」モグモグ

垣根「どこまで話したっけ?」

一方「なンでか西京焼きだけ覚えてる」

垣根「それ結構前じゃねえ?」

麦野「私が『アイテム』に三行半って所までじゃない?」モグモグ

一方「あァそこまでだ。なンか理由でもあンのか」

麦野「別にぃ? ウザかったからでて来ただけだよ」

一方「麦野さン短気っぽいしなァ。たまに口汚ェし」

垣根「……ほんとかよ。それだけか?」

麦野「――あん? 誰に口聞いてんだ、私は超能力者(レベル5)で第四位の原子崩し(メルトダウナー)だ。気にいらねえもんほっぽり捨てて何か悪い事でもあるっての……?」




一方「今思い出したけど俺も超能力者で第一位だったな」

垣根「俺も俺も」

麦野「そういやそうだった」ウッカリ

189: 2010/06/21(月) 23:58:28.52 ID:kxSj00I0
垣根「いやな、そこそこ前に麦野と……『アイテム』? が町を歩いてんのを見たことがある。ユルそうな女に、キツそうな金髪に、やかましそうなガキだったが……」

垣根「あの時それなりに麦野も楽しそうに見えたのは多分俺の気のせいじゃねえ」

麦野「ハッ、それがどうしたんだって?」

一方(なンか、ここは空気読ンで黙っとくか)モグモグ

垣根「俺がクソッタレな『スクール』を『自主休学』してんのはあそこが俺の居場所じゃねえからだ。本当の意味で俺を見てる奴が只の一人もいなかったからだ」

麦野「アンタと私の何処が違うって? かきねぇ、アイテムの内部事情も知らないくせに大きな口叩くんじゃねえよ」

垣根「お前が心の底からそう思ってるなら、戻らなきゃ良い。んな事は自分だけの自由だ。俺もそこまで口を出そうとは思ってねえし」

一方(あ、このピザうめェ)パクパク

190: 2010/06/22(火) 00:03:06.18 ID:4h0v3Jg0
垣根「ま、居場所なんてもんは欲しがって気がついたら出来ちまうもんだ。麦野もちょいと落ち着きゃ案外すぐ見つかるかもしんねえぞ」

垣根「幸せの青い鳥っつーのは気付かない程近くにあったりするってのが定石――――」チラッ

一方(このピザマジでうめェな)パクパクモグモグ

垣根「――――って一方通行テメェ! まだ俺ピザ食ってねえのにほとんど食いやがったコイツ信じられねえ!」クワッ

一方「――――あ、やべっ」

垣根「あ、やべっ じゃねえよ……。美味かったか?」

一方「気がついたら無くなってる程にはな。いや、悪ィ」

垣根「謝ってもゆるさねえ、スズメバチに刺されて氏ねよ」

一方「虫は得意じゃねェンだがな……」


麦野(居場所だぁ? んなもん何処にあるっつうのよ、この化け物一歩手前の超能力者を。腕の一振りで自分を消し飛ばせる人間の形をした兵器を受け入れる奴が何処にいるってのよ)

麦野(…………でも垣根は、私以上の化け物の筈のコイツは居場所とやらを見つけていると暗に言ってやがった)

麦野(第一位と第二位、所詮誰からも理解されない奴同士が馴れ合って傷を舐め合ってるようにしか私には見えない。その筈なのに…………)

麦野(羨ましい、のか? 私は?)モグ

191: 2010/06/22(火) 00:07:58.99 ID:4h0v3Jg0
垣根「悪いな、このバカが調子乗って食いすぎやがってピザあとちょっとしかねえわ」

麦野「(ケロッとしやがって……)別に良いよ、欲しかったらまた頼むし」

麦野「――――――――――ん?」

麦野「…………」ゴソゴソ

麦野「あれー? そんなはず……あれー……?」

一方「どうした麦野さン」

麦野「財布とケータイが無い……」



一垣「「な、なんだってー!」」



麦野「私どっかでどっちか取り出してたりしてなかったっけ?」

一方「ダーツは俺らが最初に払ってたし飲みもンは垣根くンが買ってたな」

垣根「見てねえよ。そもそも麦野手ぶらだったぞ」

麦野「んー…………、あ」

麦野「そもそも出て来る時に財布もケータイもカードも全部忘れてきた、かも……」

一方「麦野さン文無しかよ。こういうときってほンとに皿洗いさせられたりすンのかねェ」

垣根「まあ家に取りに帰れば良いだろ。もしアイテムに会っても別にやましいことも無いんだから堂々と行けば良いんじゃねえの」

一方「まァココ位は出すから、今度なンか奢れ」

麦野「う、うーん……取りに帰り辛いってか帰りたくないってか帰れないってか……」ボソボソ

一垣「「…………」」

192: 2010/06/22(火) 00:13:41.50 ID:4h0v3Jg0
一方「で、話戻すけどよ。結局麦野さンはなンで『アイテム』出て来たンだっけ?」

麦野「じ、自分から出て来たって言ったでしょ」

垣根「果たして本当か? もし事実自分で出て来たなら清々してる爽やか麦のん☆ な筈だろ。つまりなんか込み入った事情があるんだぜきっと」

一方「どういうことかね、ていとクン!」

垣根「つまり真の事情が存在する、という事だ」キラン

麦野「んなわけないでしょうが。下らない事話してんじゃないよ」

196: 2010/06/22(火) 00:19:21.47 ID:4h0v3Jg0
一方「『ンだが、その麦野さンの発言。――ブラフ』」

垣根「して、その実態は?」

麦野「…………」

一方「素直に言うンだ麦野さン、今ならまだ傷は浅いぞ」


麦野「…………」ギリッ
麦野「……い出されたのよ」

二人「え?なに?聞こえない」

麦野「」プッツゥゥゥン
麦野「オォォイだされたッッつッてんだよォォォォおおおおおお!!!」ピカー

垣根「バ、バカッ声がでけえ!!」

店長「――――」スタスタ

一方「すンませン! マジすンませン! 静かにするンで!」

店長「…………」クルッ スタスタ
ザワザワ ザワザワ

一方「麦野さァんここ出禁になったらどうしてくれるンだよォ……」ボソボソ

垣根「抹茶ラテ飲めなくなっちまうじゃねえか、あれ置いてる所そんなねえんだぞ」ボソボソ

麦野(……なーんか本格的にどうでもよくなってきた)

197: 2010/06/22(火) 00:22:25.38 ID:4h0v3Jg0
一方「しかしわりィ麦野さン……、別に何もねェだろとか思って逆に調子のっちまった……」

麦野「…………あー、別に良いわよ。いっぺん叫んでむしろスッキリしたわ」

垣根「王様の耳は、だな。穴に向かってじゃねえのが唯一にして最大の問題だったが」

一方「追い出されたって、なンかしでかしたのかよ。穏やかじゃねェぞ」

麦野「それがねー」



麦野説明中



絹旗「誤解しないでほしいのが」

絹旗「別に超追い出した訳じゃなくて、麦野が勝手に出て行っただけなんですけどね……」

絹旗(それはそうと)

絹旗(私なんで急にこんなこと口走ったんでしょうか……、超不審者じゃないですか……)

滝壷「きぬはた、何か言った?」

絹旗「いえ何も」

222: 2010/06/27(日) 01:10:20.69 ID:cHCwViw0
麦野「――――って事があってさ」

一方「…………」
垣根「…………」

一方(いやそこは謝れよ……)
垣根(……俺も『スクール』の連中相手なら似たような事言ってたかもしれねえな)


麦野「ほら聞いてんのか一方(アクセラ)ぁ! アンタが聞いたんでしょうが!」

一方「な、なンで俺だけ怒られるンですかァ!?」

麦野「私も喋ったんだし何かアンタも喋んなさいよ。それが公平ってもんじゃない」

一方「なァに言ってンだこの人……、別に最近特に変わった事ァねェよ?」

麦野「ふーん……、学園都市は今日も今日とて平和なのかしら。つまんない」

一方「それはそうと、『アイテム』だったか? 麦野さンの事考えて言ってくれてンなら良い奴らじゃねェか。大事にしとけよ」

麦野「……ふんっ」

垣根「やれやれだぜ」

225: 2010/06/27(日) 01:19:02.30 ID:cHCwViw0
垣根「ん、思ったんだが。なんで一方は麦野『さん』なんだ?」

一方「目上だろォ? 後ダーツうめェし」

麦野「……目上扱い、嬉しくないなぁ……」

垣根「マジか。じゃあ俺も麦野さんって呼んでみっかな」

麦野「そういうのはアンタに合ってないんじゃない? 気色悪いわ」

垣根「……なんか俺今すげえ酷いこと言われなかった?」

一方「気のせいだろ」ズズッ

226: 2010/06/27(日) 01:25:33.36 ID:cHCwViw0
一方「そういや、原子崩しってどンな能力してんだ?」

麦野「――――そう簡単に自分の手の内明かすと思う?」

垣根「いや、調べりゃ大体の事はわかるからな? 電子を中庸な状態で固定、とは又規模の割には応用の難しい能力だな」

麦野「まあ……今更かしら。その応用性が高けりゃもう少し上狙えたのに、って愚痴られながら育ったわよ。やっぱ子供は褒めて伸ばすもんなのかしら」

一方「ンー……、電子っつっても素粒子なンだから垣根の能力に近いのか?」

垣根「いや、俺の能力は存在しない物を『現出させ、操る事』だ。存在する物に対して働きかけてやるのは確かに近いが全くの別もんだろ」

一方「話を聞く限りだと、電磁気学的な側面からじゃなくもっと直接的に……電子に対してアプローチをかけてる変質交じりの『念動力(テレキネシス)』って側面があるんじゃねェのか?」

垣根「……あっさりと否定したい所だが、わかんねえ所だな。おい麦野、お前って『電撃使い』だったか?」

麦野「厳密には違うらしいよ。発電効率が絶望的らしいんだわ」

一方「だから、在る状態の『原子を崩す者』ってわけだな。危険極まりねェ……炉心溶融(メルトダウン)すんじゃねェぞ。麦野さンも危ねェだろうしな」

垣根「もう少し、ちょっとした事に使えるような能力だったら便利だったのにな。こう、寝ながらテレビのチャンネル変えたりとかゲーム中に痒い背中をかいたりとか」

麦野「アンタそんな事に能力使ってんの……? てか『未元物質』と『一方通行』の汎用性に勝てる能力なんてあるわけないじゃない」

一方「いや、勝手な解釈だが俺ン『一方通行』は言うほど高尚な能力じゃねェって考え方もできンだ」

麦野「アンタの能力が量産されてたらこの世の終わりでしょうが」

垣根「能力無い一方ちゃんが量産されても同じくらい対処に困るぜきっと」

一方「喧嘩のバーゲンセールやー」

227: 2010/06/27(日) 01:34:19.58 ID:cHCwViw0
一方「念動力は、動いて無いもンを動かす力だ。ベクトル変換は、既に所持してる運動エネルギーの方向を変えるだけの能力。ハンドルさえ付いてりゃ、止まってる車を動かすのと走る車を曲げるのどっちが楽かって話なンだよ」

垣根「ヨガフレイムとヨガファイヤー、実はよりすげえのはヨガファイヤーだ、みたいなもんかよ。飛んでくし」

麦野「垣根はよくわかんないけど、そういう意味じゃ単純に縦に並べられるような能力でもなさそうね」

一方「その意味じゃ垣根と麦野さンは似たタイプの能力者だろ。変質と生産の違いはあるにしろなァ」

垣根「……電撃使いの最先鋒が『超電磁砲』、みたいなもんだっつうのか?」

麦野「随分と胡散臭い話になってきたわね。研究者だったら、諸説あるがで打ち切ろうとするような話題だし」

一方「その辺、科学じゃ限界があンのかもしれねェってよ。『自分だけの現実』なんて一人用の代物を、万人に理論を啓蒙するための科学で扱えるわけねェだろうが。って話だ」

麦野「うわ、学園都市全否定」

垣根「それ、誰の受け売りだ?」

一方「判ってて聞くんじゃねェぞ。ま、演算云々が絡むと何だかんだで俺のが優秀らしいけどな」

垣根「自慢かよ」

228: 2010/06/27(日) 01:46:12.13 ID:cHCwViw0
一方「大分話が逸れた、麦野さンの財布の話だっけか」

垣根「取りいけないならどうするつもりなんだ? いくらレベル5でもその辺での野宿なんざ襲ってくださいって誘ってるようなもんだろ、」

麦野「うーん…………」

一方「ていとくンそォ思うんなら泊めてやれよ、ダーツ教えて貰ったろ」

垣根「テメェもじゃねえか」

一方「ウチは木原くンいるから無理だろ」

垣根「だが男と女一つ屋根はまずい、常識的に考えりゃな」

一方「『常識は通用しねえ』が口癖だったあン頃の未元物質はどこへ行ったンですかァ」

垣根「常識は俺に通用しねえ訳じゃねえだろ! ――――ああ、お前も来いよ一方通行」

一方「俺もォ? お泊り会ですってか?」

垣根「そんなら大丈夫…………肝心の麦野の話聞いてなかったな、悪い」

麦野「ん……垣根んちに泊まれって?」

一方「ああ、麦野さン泊まるとこねェなら垣根くンち泊まれば良いだろォ」

麦野「そうねえ……」

229: 2010/06/27(日) 01:50:57.64 ID:cHCwViw0
麦野(最悪名乗って照合取ればホテルでも何でも泊まれるんだけど…………そんな気分でも無いし)

麦野(コイツらが血迷って私に盛るとも思えないな……、寧ろこの二人がその気だしゃ対処できるやつはいないか)

麦野(それにしてもコイツら本当に本物の一位と二位かしら? あまりにも無警戒ってかなんていうか……)


一方「おーい、麦野さーン?」

麦野(コイツら利用してなんたら、って気分じゃもっとない…………かな。ほんとに毒抜かれちゃったよ)

麦野「……じゃあ、お願いするわ」

垣根「よっしゃあ、そんじゃ速めに出て買い物行こうぜ」

一方「おォ? 何買うんだよ」

垣根「食い物に酒にツマミに……」

麦野「え? 鮭?」

垣根「買ってもいいけどつっこまねえぞ」

一方「突っ込む?」

垣根「それももう良いからな?」

230: 2010/06/27(日) 01:54:30.74 ID:cHCwViw0
垣根「そういや一方も麦野も酒は飲めるよな」

一方「嗜む程度にはな…………、って一度言ってみたかった」

麦野「どっちよ。私は普通に飲めるけどマズいのは勘弁」

垣根「そりゃ不味いもん飲み食いしたがる奴は普通いねえだろ。よし、抹茶ラテも満足したしそろそろ出るか? ウチで食うなら買い物もしなきゃだろうが」

麦野「ん、私は構わないけど。それにしても何杯飲んだのよ。飲みすぎじゃない?」

垣根「だいぶ飲んだ、もう暫く抹茶は見たくねえ」

一方「とか言ってまた来たら抹茶ラテ飲んでンだぜ?」

麦野「それに多分若鶏のみぞれ煮のセット頼むよきっと」

垣根「テメェらが俺の事を余すことなく理解してくれてて冥利に尽きるぜホント」ハァ

231: 2010/06/27(日) 01:59:43.96 ID:cHCwViw0
麦野「……あー、ちょっとお金かカード貸してくれない? 色々準備があってね」

垣根「まあ別に麦野が金に困ってんのは今だけだからかまわねえよ? 何するんだ」

麦野「野暮な聞くんじゃないよ」

一方「バラけるなら連絡取れないとまずいだろォ。麦野さンケータイ持ってねェしな」

垣根「じゃあどっちも俺の貸しとくから、後で返せよ」

麦野「さんきゅさんきゅ、じゃあ又後でねー」スタスタスタ

垣根「何か込み入った事情でもあんのかありゃ?」

一方「女だし色々あンじゃねェの? 違ェかもしンないけどな」

垣根「まあ、別にどうでもいいな。俺らはスーパーでも行って色々買っとこうぜ」

一方「堅揚げポテトもな」



ざわ……
  ざわ……


垣根「スーパーに到着した訳だが」
一方「デケェ。とにかくデケェ」
垣根「俺は酒と飲み物類を集めとくから、お前はツマミ類を集めとけ。適当に揃ったらレジの近くで突っ立っとけよ」スタスタ
一方「ン」スタスタ

232: 2010/06/27(日) 02:07:03.03 ID:cHCwViw0
一方「スナック菓子は基本だよなァ……、後チョコレートとか色々……。――キャベツもか。ゴマ油とか焼肉ダレは垣根くンちにあるか」

一方「ナスの漬もンとかも食えるし大根も……、鮭フレークも一応買っとくかァ、余ったら垣根くンちにおいときゃいいし」

一方「チーズにソーセージに、あ、コーヒーだァ。これもこれも」ガシャガシャ

一方「後はなンか缶詰でも…………、鮭缶と……鯖缶かァ。コイツも持ってくか」パッ

パッ

一方「――――ン?」
?「――――ん?」

233: 2010/06/27(日) 02:11:45.90 ID:cHCwViw0
一方「ンだテメェ」

?「それはこっちの台詞よ。何の用よ」

一方「質問には答えましょォっておかーさン教えてくれませンでちたでちゅかァー?」

?「な、何よ腹立つ事言ってくれちゃって! 結局さっさとその缶詰から手ぇ離しなさいよ、それは私のだってーの!」ムキー!

一方「絡む相手見てから絡めやメスガキ、俺の手の方が早く缶持ってたンだから俺のもンに決まってンだろォが」

?「結局私の手に絡んでんのはアンタの指でしょうが! どっちも最後の一個じゃない、缶詰の価値崇高さもわからなさそうなアンタなんかに渡したら勿体無い訳よ!」グググ

一方「こっちにも鮭大好きな人いるンですゥゥ、年がら年中鮭食べてないと全身の皮膚が溶けて口から手が出て胃液が鉄を溶かす位分泌されちまうンですゥゥ」グググ

?「何処の地球外生命体な訳よそいつ……」


?「……それはそうと、どうせ絡んだんだからちょっとだけ聞いて欲しい事があるんだけど」パッ

一方「ハッ、たちどころに聞き流してやらァ」

234: 2010/06/27(日) 02:14:26.60 ID:cHCwViw0
?「私の知り合いにも鮭缶好きな人いるんだけどさー……ちょっと仲違いしちゃった訳なのよね。んで居所不明になっちゃったから探したりもしてるんだけど」

一方「ならとっとと探しゃァ良いだろ」

?「でも結局仲違いって言っても、多分間違ってるのはあっちなのよ。見つけても、又意見のすれ違いになりそうなのよね。どうすれば良いと思う?」

一方「ンな事知るか。とっとと仲直りすりゃ良いだけじゃねェか」

?「簡単に言わないでよ、私の言い方もキツかったかもしれないけど正直悪いのは結局あっちなんだから。こっちから折れたらあっちの為にならない訳よ」

一方「ふーン。なら謝ってくンの待てば良いだろ」

?「それじゃいつ帰って来るかわからないでしょ――――――はぁ、結局通りすがりなんかに相談したのが間違いだった訳かー」

一方(どう答えりゃ良いのかぜンっっぜンわっかンねェ訳だが……)

235: 2010/06/27(日) 02:17:16.32 ID:cHCwViw0
一方「結局、その間違ってる奴ってのはテメェのダチなンだろ?」

?「ダチって……、そう思ってるのはひょっとしたら私だけなのかも知れない訳で……」

一方「テメェがそう思ってンなら大人しく信じて待っててやンな。そいつがダチならちゃァンと帰って来て謝ってくるだろうからよ」

?「……結局気休めじゃん」

一方「ンでその鮭缶好きな奴が謝ったら御褒美にコイツでもくれてやれ」ヒョイ

?「――――あ、鮭缶」パシ

一方「ンじゃな。俺ァ行くぞ、ツレも待ってるしよ」スタスタ


?「…………」ポカーン

?「かっこいいつもりな訳? あれ。ただの変人じゃん」

?「……麦野、謝ってくるかなぁ」

?「ま、あの変人の顔を立てて暫く待ってみようかな。麦野を信じるねえ……案外結局、そんなことしたこと無かったかも」

?「…………結局鯖缶持ってかれた訳よ」

236: 2010/06/27(日) 02:20:21.92 ID:cHCwViw0
垣根「おい、何処で油売ってたんだよ一方通行。遅かったじゃねえか、焦らされるのにも限度ってもんがあるんだがな」

一方「悪ィな、変なンに絡まれてて遅くなった。……カートとか気合入ってンな」

垣根「ま、大いに越した事はねえからよ。っつーか変なの? スキルアウトかなんかか? テメェが遅れを取る相手が俺以外にいるとは思えねえ」

一方「ガキも加えとけ、相手すンのが面倒臭ェったらありゃしねェ」

垣根「ま、いいけどな。麦野に連絡取ったか?」

一方「ああまだだァ。レジ通っててくンねェ? メール打っとくから」

垣根「カードよこせカード。今俺一文無しみてえなもんだからな」

一方「ホレ」シュ

垣根「サンキュ」パシ







ブーン ブーン ブーン


麦野「――――メールだ」

麦野「一方からね……短っ! ……待ち合わせ場所は、そこでいいわよ、と」

麦野「垣根の奴もケータイにカードなんて渡しちゃって無警戒にも程があるわね」

麦野「……でもただ日和ってるだけでもなく何かされても処理できるって自信の表れかしら」

麦野「…………」

麦野「……一方通行の分類が友達、ねぇ」

273: 2010/06/30(水) 23:13:09.98 ID:pwNn63k0
垣根「麦野より先に着いちまったみてえだな」

一方「ソーセージに魚ソーもチーズもジャーキーもポテチも氷結もコーヒーもキャベツとレタスもコロッケも刺身も他にも色々買った……、もう買うもンねェだろ」

一方「そういやオマエんち行った事無かったな、近くにコンビニとかあンのかよ?」

垣根「一応ある。後今日のメシピザの出前で良いよな?」

一方「俺もォ散々食ったぞ」

垣根「そのせいで俺と麦野が食えなかったんだろうが。答えは聞いてねえ、今日はピザの出前を取る」

一方「俺に聞く意味あったのかよ」

垣根「味位は選ばせてやるよ。…………ああ、あれ麦野だろ」

一方「でっけェ袋二つも抱えてやがンな。おォーい麦野さァーン」

274: 2010/06/30(水) 23:20:39.27 ID:pwNn63k0
麦野「おっまたせー、まあ別にそんな待ってないよね?」

一方「なンだその袋、何買って来たンだよ?」

麦野「乙女の秘密ね、見たら叩ッコロシ確定。そっちも随分と大荷物だねー……、それより多分アンタら缶チューハイとかそんなんばっかだろうと思ったからこんなのも買っといたよ」ズンッ
垣根「乙女(笑)、俺の家はこっちだぜ。……瓶? 焼酎か」

一方「ンて読むんだこりゃ……とみのほうさん?」

麦野「富乃宝山、まあウマイからアンタらも飲みなさいよ。後は鮭とば沢山買ってきちゃった、垣根にプリンも買ったかな」

垣根「よくやったと言わざるをえねえ」

一方「俺にはねェのかよ俺には」

麦野「一方にはさっきババァよわばりされたし、そんなに量持てないんだから買ってこなかったわ」

一方「ンのババァ! 干物が干物しゃぶって悦ンでアヘ面晒してンじゃねェぞ!! 男日照りが調子ン乗りやがって!!」クワッ

麦野「……折角の極上のインスタントコーヒーとオリーブオイルポテトチップスはドブに流されていく運命にあるみたいだねぇあぁぁくせらぁぁぁ」クワワッ

一方「っつゥ、ていとくンの心の声が聞こえましたァ」

麦野「次言ったら実行するからね。I can do it. これは演習ではない」

一方「ウス」

垣根「おいテメェらじゃれてねえでさっさと行くから付いて来い」

275: 2010/06/30(水) 23:31:52.94 ID:pwNn63k0
一方「垣根くンちって学生寮なのか、一応」

麦野「第七学区だしそうなんじゃないの? 一方んちもココ?」

一方「いや、俺ンとこは八学区にある。一緒に住ンでンのがそこにいるからよ」

垣根「麦野も第七か?」

麦野「相当遠いよ? 一応同じ学区内だけど」

一方「出歩いてても、麦野さンとバッタリ、なんて事今まで無かったしなァ……学園都市は狭ェようで広い」

垣根「一方が周り見なさすぎなんだろうが。いっつも顔が斜め三十度下向いてんだからよ」

一方「一応前向いちゃいンぞ。……猫背直せとは言われるけどよォ」

麦野「上目遣い、なんて可愛げあるツラでもないわこりゃ。……ん、ここ?」

垣根「おう、ちょっと待ってな今ここのユルマン開けてやるよ」ピッピッピッ

一方「セキュリティしょっぺェのか?」

垣根「ま、それなりの奴がやる気出しゃ、あって無いようなもんという意見も無きにしも非ず」ウィーン

276: 2010/06/30(水) 23:39:02.41 ID:pwNn63k0
垣根「よっと」ガチャ

一方「お邪魔しまァす」

麦野「へぇ、案外良い部屋じゃない。テレビとかもしっかりしてるし」

垣根「まあ金はねえわけじゃねえしな。――――ああカードとケータイ机んとこ置いといてくれ」

麦野「はいはい」ガチャガチャ

一方「たけのこの里山の宇治抹茶ミルク味が箱で積まれてンな…………抹茶好き過ぎて引くわァ……」

垣根「部屋漁ってないでとっとと冷蔵庫に荷物ぶち込むの手伝えよ!」

一方「ン」

麦野「……この冷蔵庫だけやけに旧式じゃない? なんでこんなの使ってんのよ」

垣根「使ってる内に情が沸いちまってな。なんだか知らんが他人の気がしねえんだ」

冷蔵庫「…………」

278: 2010/06/30(水) 23:45:14.39 ID:pwNn63k0
一方「そういや垣根、テメェ料理とかしてンのか?」

垣根「I can't do it. できるわけねえだろ、お茶汲みとレンジでチンを料理と言うなら話は別だが」

麦野「だよね。台所こんな新品なわけないし」

一方「じゃあ外食ばっかかよ。栄養偏ってンだろ」

麦野「なんかお母さんみたいな事言い出したじゃない一方」

垣根「別に平気じゃねえの? この年からコレステロール気にしたくはねえよ」

一方「そういう油断が成人病に繋がって手遅れになってからじゃ遅ェンだよガキが!」

垣根「って、木原くンが言ってた?」

一方「うン」

垣根「相変わらずの人だなあの人……」

279: 2010/06/30(水) 23:54:03.32 ID:pwNn63k0
麦野「そういえば木原くんって誰? 友達?」

垣根「コイツの保護者。一度会ったが顔面刺青のイカツいおっさんだった。言っちゃ悪いがツラだけで言えば完全に何人か頃してそうな感じだったぜ」

一方「」ピク

麦野「完全にヤクザかスキルアウトのカッコじゃない、そんなのに育てられてりゃ一方もガラ悪くなるか」

垣根「一方の話聞いてんと面倒見は良いらしいんだが過保護なんだと。見た感じもアンバランスだったが完全に子供の心配する親だった」

麦野「子離れできてないのかしらね、いかついのに。私も一回会って見たいわ」

一方「おいテメェら、木原くンの悪口はそこまでだ」


麦野「……何コイツちょっと可愛い」

垣根「まあ保護者がいるだけ幸せってもんだよな、置き去りなんかに比べりゃ」

一方「……俺ァ垣根みてェに上見て誰かいるなンて事が無かったしな、木原くンいなかったらどうなってたか知れたもンじゃねェよ」

麦野「第一位は第一位で色々あるわけか。当たり前だけど忘れちゃいそうになる事よね」

280: 2010/06/30(水) 23:59:44.86 ID:pwNn63k0
垣根「さて、もうブツはあるべき場所に収まったがまだメシ食うには速すぎるな……、取り合えずなンかして時間潰すか」

一方「ああ、ゲームあンだな。何か良いのはねェかな、と」ガサガサ

麦野「ねー垣根、空いてる部屋とかある?」

垣根「そこの手前の洋室は空いてんだろ、そこ使って良いぜ」

麦野「んじゃ使わせてもらうわ」ガチャ

一方「垣根くゥゥン、部屋まだ空いてたりしねえのか?」

垣根「なーに猫撫で声出してんだ、気色悪いぜ。テメェはソファか風呂場で寝てろ」

一方「随分と態度が違ェじゃねェか、俺も客の一人なンだぞ」


垣根「え? 客?  …………オマエが?」

一方「そういうナチュラルに驚くみたいな真似はよせ、マジで傷つく……」

麦野「なーに落ち込んでんのよあくせらぁ」バタン

一方「うっせェ……」ガサガサ

281: 2010/07/01(木) 00:06:39.38 ID:1SvwEsg0
一方「それにしてもゲームもねェ訳じゃないが一人用かよくわかんねェのばっかだな」

垣根「うっせえ。人呼ぶことなんざこれまでまるで念頭に無かったんだから当たり前だ。パーティーゲームばっかあっても逆に引くだろうが」

一方「逆に引く。間違いねェわ。一人でマリパとか桃鉄とか人生ゲームやる虚しさは凄まじいもンだ」

垣根「マジかよ糞箱売ってくる」

麦野「今から夕飯って言うのも先走りが過ぎるかな。……ほらほら、何か時間潰すこと考えなさいよ」

垣根「あー、さっきも言ったけど晩はさっき食えなかった分ピザ取るってな。これ、近所のピザ屋のチラシ」

一方「デノミピザだな。ハーフで適当に一人一種を二枚分頼みゃ足りンだろ。俺ァミートセブンな」

麦野「私はそこまで拘り無いなぁ……じゃあデラックス? で」

垣根「じゃあ俺はプライムシーフード…………後一つは適当で良いよな」

一方「ン」

麦野「問題ナシ」

垣根「んー……、マヨじゃがにするか」メモメモ

282: 2010/07/01(木) 00:09:03.21 ID:1SvwEsg0
一方「それにしてもゲームもねェ訳じゃないが一人用かよくわかんねェのばっかだな」

垣根「うっせえ。人呼ぶことなんざこれまでまるで念頭に無かったんだから当たり前だ。パーティーゲームばっかあっても逆に引くだろうが」

一方「逆に引く。間違いねェわ。一人でマリパとか桃鉄とか人生ゲームやる虚しさは凄まじいもンだ」

垣根「マジかよ糞箱売ってくる」

麦野「今から夕飯って言うのも先走りが過ぎるかな。……ほらほら、何か時間潰すこと考えなさいよ」

垣根「あー、さっきも言ったけど晩はさっき食えなかった分ピザ取るってな。これ、近所のピザ屋のチラシ」

一方「デノミピザだな。ハーフで適当に一人一種を二枚分頼みゃ足りンだろ。俺ァミートセブンな」

麦野「私はそこまで拘り無いなぁ……じゃあデラックス? で」

垣根「じゃあ俺はプライムシーフード…………後一つは適当で良いよな」

一方「ン」

麦野「問題ナシ」

垣根「んー……、マヨじゃがにするか」メモメモ

283: 2010/07/01(木) 00:15:36.28 ID:1SvwEsg0
垣根「どうせ時間あるんだしツマミの用意でもしようぜ」

一方「よしきた」

麦野「本格的な宅飲みみたくなってきたじゃん。何作んの?」

垣根「俺も一方も料理できねえしな、ホントに簡単で即席のもんをでっちあげるだけになりそうだ。麦野は料理――」

麦野「あると思う? 経験」

垣根「――半ば判ってて聞いた、すまねえ。試行錯誤で何とかやんぞ」

二人「「おー」」

286: 2010/07/01(木) 00:28:12.91 ID:1SvwEsg0
麦野「一方、手まで卸さないでよ」ジャー

一方「怖ェ事言うなよ、ベクトル操作すりゃ大根なんてまるで野菜扱いだぜェ」ゴリゴリゴリゴリ

キャベツ「刻むのは半分位でも良いよな?」トントントン

一方「おゥ。焼肉ダレだの卸しだのソースだの……万能すぎンだろ」ゴリゴリゴリ

垣根「うし、終わりだ。後は冷蔵庫に入れといて食う少し前に洗やいい」

麦野「もやしもこんなもんかな」

一方「…………」ゴリゴリゴリ

一方「疲れてきた」グデー

麦野「もやし(笑)」

垣根「もやし(裏声)」

289: 2010/07/01(木) 00:33:48.14 ID:1SvwEsg0
垣根「よしじゃあ後は時間だけじゃねえか。なーにして潰すかな」

麦野「垣根は普段なにしてるのよ」

垣根「最近は……そうだな、DVD屋で映画を何個かレンタルしてきたからそれ見たりしてるな」

一方「それで良いンじゃねえの。ここに積んである奴か?」

麦野「工口いのだったりしたらドン引きにも程があるけどそれはそれで面白いよね」

一方「垣根くンは年上好きっぽいからな。口リもンとかよりは熟女もンじゃねェかな」

垣根「おいこらそこ、勝手な憶測で物を言うんじゃねえ。そもそも、そんなもんをんなとこに出しとくわけねえだろうが」

麦野「後で家捜しフラグがビンビンだー」

一方「ザ・フライ1・2、ディープ・ブルー、ターミネーター、パイレーツオブカリビアン、マトリックス……節操ねェな」

垣根「ターミネーターとパイレーツオブカリビアンはもう俺見ちまったから抜いといてくれよ」

麦野「マトリックスは私一回見たけど……、派手なのは良いとして途中からよくわからなかったわ」

一方「そうかァ? 俺は色々頑張ってて良かったンじゃねェのとか思ったンだがよ。ただ、銃弾は止まって武器は止まらン理由が判ンなかった位だ」

垣根「おい、まだ見てねえんだからネタバレだけはやめろ」

292: 2010/07/01(木) 00:39:38.09 ID:1SvwEsg0
一方「消去法だと……ザ・フライかディープ・ブルーか」

垣根「ディープブルーにしようぜ。ザ・フライとかグロものっぽいしな実は得意じゃねえんだよ」

麦野「じゃあ何で借りてきたのよ」

垣根「B級フェアとかでワゴンにあったからな。借りる権利をやろう、とかおにぎりみたいなキャラが書いてあった」

一方「パッケージ見る限りサメ物だな。じゃあこれにすっか。一本見たら丁度腹減る頃合なンじゃねえか?」

垣根「終わる少し前に注文だな。忘れないようにしねえとな」

麦野(そういえば絹旗が前騒いでた映画もそんなんだったっけ……、なんて言ってたかな…………)

垣根「ああ、お前ら飲み物いるか?」

一方「俺ァさっきの缶コーヒーな」

麦野「私は何でも良いよ。お茶お願い」

垣根「何でも良くねえだろそれ……」トプトプトプ

293: 2010/07/01(木) 00:46:00.07 ID:1SvwEsg0
垣根「よし、じゃあ始めるか」ピッ

麦野「映画見るとき喋らないタイプ?」

一方「パニック系とかビビらせる奴なら見逃すことあるから集中してた方が良いだろォ」

垣根「そうだな、終わってから言いたいことあったらピザでも食いながら話すか」

麦野「りょーかい。静かに鑑賞しましょうか」

一方「お、始まった始まった」

294: 2010/07/01(木) 00:54:58.15 ID:1SvwEsg0
滝壺「あ、ふれんだ。おかえり」

フレンダ「たーだいまぁー、あー結局結構重かった訳よ」ドサドサ

絹旗「買い物超お疲れ様でした。麦野は見つかりましたか?」

フレンダ「ううん。……でも変人は見つけたかな」

滝壺「変人? ふれんだ?」

フレンダ「私が新しい自分発見してどうするのよ! 結局なんかちょいムカつく奴だったけど、良い事もちょぴっと言ってた訳だし」クルクル

絹旗「それは……超、鮭缶ですか」

フレンダ「そ。麦野がもし帰ってきてもし……ううん、麦野が帰ってきたらあげる訳よ」

滝壺「……よくわからないけど、ふれんだ楽しそうだね。いい事だと思うよ」

絹旗「超意味不明なんですが……、物に釣られるような麦野では無いと信じたいですね」

フレンダ「あは、そんなところ信じてどうする訳?」

329: 2010/07/05(月) 00:45:22.07 ID:GNQUe420
麦野(やれやれ、仲良すぎて逆に疑いそうだわアイツら。変な趣味でも持ってんじゃねえかってさ)

麦野(――――嫌われもの同士の傷の舐め合い……、だと思ってたけど)

麦野(でも……)

麦野(今、私がこいつらとこうやってツルんでんのは、只の傷の舐め合いなのか……? それとも、何か考えがあってこいつらの側にいるのか?)

麦野(それは違う。私が一緒にいんのは一方通行と未元物質じゃない、アクセラと垣根帝督だ。誰がなんと言おうと私がそう決めてる。アイツらといる時間は悪くない、そう思った事は私の中でのそのまま決定事項だ。それが私の選んだ自由ってやつよ)

麦野(ならこれまであいつらと一緒にいた私は。そして、私に付いてきてくれてるあいつらにも自由があるなら、それでも尚あいつらが付いてきてくれていたなら)

麦野(きっとそれと同じように……私がこれまで一緒にいたのは……)

麦野(『アイテム』じゃなくて――――――)

330: 2010/07/05(月) 00:51:49.01 ID:GNQUe420
フレンダ『麦野ぉー、この鯖缶一口食べてみてよ! すっごいおいしくてほっぺた千切れる訳よ!』
フレンダ『え、理由? そんなの、楽しく楽しむ為に決まってるじゃない!』

滝壺『鮭弁、おいしい? …………そう、よかった』
滝壺『うん――――私の居場所はここにあるから、かな』

絹旗『あぁー、たまの休日ってやつは超心のオアシスってやつですねー麦野』
絹旗『……超クソッタレな人生での唯一の希望は、新しい誰かと出会える事位でしょうか。麦野と会えたみたいに』



麦野(………………)



絹旗『そんな考え方ずっとしてたらいつか後悔しますよ?』

フレンダ『で、でもそうやって嫌な事からずっと目を背け続けられる訳ない訳よ!』
フレンダ『こっちだって少しは麦野の事を本当に思って――――』

滝壺『…………そうやって、力を振りかざすの?』



麦野(…………)



垣根『ま、居場所なんてもんは欲しがってようが気がついたらいつのまにか出来ちまってるもんだ。麦野もちょいと落ち着きゃ案外すぐ見つかるかもしんねえぞ』

一方『『アイテム』だったか? 麦野さンの事考えて言ってくれてンなら良い奴らじゃねェか。大事にしとけよ』



麦野(……)

331: 2010/07/05(月) 01:00:45.61 ID:GNQUe420
麦野(あーあ。何だよ、結局悪いの私なんじゃない)

麦野(帰ったら……そうだねえ……、フレンダにはさっきの鯖缶でも持ってってやるかな。絹旗と滝壺にも何かあげるべきかしらね、公平じゃないし)

麦野(でも……今更ってのもちょっと虫が良すぎるかな。……そこで開き直るのも私らしさ、かなぁ)

一方「おーい、麦野さンドア開けてくれよ手がいっぱいでよォ」

麦野(…………ま、後でいっか)

麦野「はいはい、ちょっと待ってなさいって」トタトタ

332: 2010/07/05(月) 01:21:37.00 ID:GNQUe420




一方「――――このピザ結構でけェな」

垣根「こんなもんじゃねえのか? もし余ればしまっておきゃ良いだろうからな」

麦野「ツマミのセットも出来たし良いから早く乾杯するわよ」

垣根「せっかちは嫌われんぞ。…………何に乾杯すんだ?」

一方「何かに乾杯とか面倒くせェな、とにかく乾杯だ乾杯」チーン

垣根「かんぱーい」チーン

麦野「はいかんぱーい」チーン

333: 2010/07/05(月) 01:22:13.20 ID:GNQUe420
一方「ピザうめェェェェ」モッキュモッキュ

垣根「お前昼からそればっかだな」

麦野「くぅぅぅ、ビールうまいわー」プハー

一方「麦野さンオヤジくせえ」

麦野「ちょっと一方、花も恥らう乙女にその言い草は酷いんじゃない?」

垣根「突っ込みてえ、が、突っ込まねえ。未元物質は突っ込まない」

麦野「鮭とばも良いけど何でシャケ弁ってあんなおいしいのかしらね」

一方「あ、そっちのピザ取ってくれよ」

垣根「これか?」

一方「ン、サンキュ」

麦野「あー、垣根私にもそれ取って」

垣根「……お前らちょっとは自分で動きやがれってんだ」

334: 2010/07/05(月) 01:24:49.14 ID:GNQUe420
一方「思う。キャベツと大根おろしは万能すぎンな」

垣根「とりあえず何にでも合わせられなくはないからな。楽なのも尚良い」

麦野「外で頼むと割高なんだけど……ついつい頼んじゃうわよね」

一方「判るぜェ」

麦野「そういやアンタら二人、ツルむようになった切っ掛けってあんの?」

一方「あァ、あるぜ。結構前に垣根くンが俺ンとこ押しかけt」

垣根「てて、テメェッッ! そのヘリウムみてえにド軽い口に未元物質詰め込んでやろうか!!」ゴパァー

一方「ムゴッ……いきなり何しやがンだアァン!?」

垣根「良いか言うなよ! 絶対に口が縦に割けても言うんじゃねえぞ!」

麦野「垣根、それフリにしか聞こえないから。ほら一方ぁ、ちゃっちゃと言っちゃいな!」

垣根「良いか一方通行、あの事言ってみやがれ。と、次の瞬間俺の火炎物質が火を吹く事になる。覚えとけよ」

一方「二度としねェさ、もうあんな火炎物質はゴメンだよ……でもねェだろ。別に良いじゃねェか、減るもンでもなかろォが」

垣根「減らなきゃ良いってもんじゃねえぞコラァ!」

335: 2010/07/05(月) 01:26:10.69 ID:GNQUe420
垣根「お前ら実験とかやっぱ日ごろ受けるだろ? 何やってんだよ」

一方「最近は打ち止めって所かねェ、すべき事も一通りオシマイで今はツリーダイアグラムに何かやらせてるらしいが。ああ、実験で少なくとも脳味噌に棒ッ切れ突っ込まれた事ァねェぞ」

麦野「私もあんまりないなぁ。――――ああ棒っきれじゃないわよ? 伸び代が無いとか思われてるのかな、その分暇できて良いけど」

垣根「まあ能力開発ったって俺ら位まで来ると前例も少なすぎて手探りになるのはしゃあねえな」

一方「実験って言えば結構前にあった話なンだがな」

垣根「ほう」

一方「前っつっても相当前だぞ。俺がまだこン位の時に研究所に呼ばれてよ、研究者に実験の指示されたンだ」

麦野「ここまではありがちな話ね」

一方「頭にセンサーとか機材色々つけてなァ。やらされた事がなンと盆踊り」

麦野「…………夏にやるアレ?」

垣根「月がー、でたでーたー、のアレか?」

一方「月がー、でたァ、のアレだな。ご丁寧にBGMまで流れてやがった」

垣根「意味わかんねえwwwww」

麦野「で、一方踊ったの?」

一方「踊ったな。比較的素直に」

麦野「素直な一方wwwwwwwあんま想像できないわwwwww」

336: 2010/07/05(月) 01:31:02.58 ID:GNQUe420
一方「ンでその実験の目的なンだが」

垣根「盆踊りをする事によって大脳真皮が活性化する仮説の実験」

麦野「バカをやってる能力者を見て笑う会」


一方「麦野さンが近ェな。意図不明な行為を強制された時の能力者の通常時と比較した演算能力とその脳波の推移の計測、だとよ。しかも大真面目だ」

垣根「知ってっか、昔の人は良い事を言った。曰く、頭が良いのと勉強が出来るのは違う、ってよ」

麦野「勉強すればするほどバカになってくってある意味真理よね」

一方「又世の中に勉強をしない理由が一つ増えちまったなァ」

338: 2010/07/05(月) 01:39:34.46 ID:GNQUe420
一方「ま、オチなンだが。その事実が判明して、こンな糞みてェな実験なンざしやがって人おちょくってンのかドカスがァ! って責任者ぶン殴った」

麦野「一方ちっちゃい頃にしてはエキサイトしてるわね。やる時はやる子供だったの?」

一方「いや、木原くンが」

垣根「木原さんワンパン入りましたァァァ!」

麦野「どんだけかわいがってんのよwwwwwwwwww」

一方「今考えりゃ意味わかンねェがそン時は木原くンが輝いて見えたなァ……返り血で」

垣根「木原さんあのガタイで研究者なんだろ? 筋肉の研究しかしてねえだろ実は」

一方「まだ見ぬ木原さんへの想いが良い感じに膨らんできたにゃーん」

339: 2010/07/05(月) 01:41:22.68 ID:GNQUe420
垣根「ああ、俺トイレ行ってくるわ」

麦野「いってらー」

一方「おう」



麦野「…………」
麦野「さぁて、鬼がトイレ行ってる間にさっさと洗濯済ませちゃいましょうか」

一方「洗濯ゥ? なンか零したのか?」

麦野「違うわよ馬鹿ね、アンタらつるむようになった訳よ。学園都市第一位と第二位はいがみ合ってる、みたいなのが定説だった筈だけど」

一方「ン? あァ、いやァそれが聞いてくれよ麦野さン、結構前の事なンだけどよォ」

麦野「ふんふん」

一方「アイツがファミレスでコーヒー飲んでた俺ンとこ急に来やがって、いやに深刻な面ァ見せやがるから何事かと身構えたら第一声が『友達が欲しいんだが』」キリッ

麦野「――――――――プ」

麦野「あああぁぁっっはっはっはっはwwwwwwwwww何それ腹痛えぇぇえぇえwwwwwww」バンバンバン

一方「いやwwwwww俺も最初はビビったぜwwwwwなんせコレまでやけに絡んできやがってた第二位が急にだからなァ」

麦野「流行のツンデレってやつなんじゃないのwwwwwwwいやぁ、ここにきて学園都市トップツーの株が大暴落してうなぎのぼりだわwwwwwww」

一方「なンだそりゃ。ツンドラとは違ェのか」

麦野「また懐かしい単語だすわねえ、アパルトヘイトとか無駄な単語ってなーんでか頭から離れないのよ。……ツンデレだったかしら、小学生みたいなもんよ。好きなあの子に対してだからそっけなくとかキツく接しちゃう、みたいなwwww」

一方「なにそれこわい」

342: 2010/07/05(月) 01:42:17.45 ID:GNQUe420
垣根「おうただいま。……麦野がやけにテンション高えな、どうしたんだよ」

麦野「垣根ちゃんの純真無垢な一面が聞けて高ぶってた所ねー」

垣根「――――おい、一方ちゃん、オマエまさか」

一方「垣根『友達が欲しいんだが』までしゃべった」

垣根「」



垣根「テメェエエエエエエエエエエエエエエエエ」ブワァァァァァ

344: 2010/07/05(月) 01:46:50.82 ID:GNQUe420
麦野「笑わないよ、笑うわけないじゃん。私もレベル5なんだからそんくらいわかるわ」

一方「あんだけ爆笑してる上に進行中でニヤけててよく言うな麦野さン。重苦しいのは字面だけだァ」

垣根「おい麦野、テメェ誰にも言うんじゃねえぞわかってんな」

麦野「アンタもそういうフリ好きだね。リアクション芸は長持ちしないわよ?」

垣根「フリじゃねえっつってんだろ未元物質ケツにぶち込まれてえのか!」

一方「ただし、その未元物質も尻からでる」

麦野「ほんとに只のクソじゃんwwwwwwww垣根最低wwwwwwww」

垣根「えー……今の俺の発言じゃねえだろ……」

一方「あ、酒切れた。次の取ってくれよ麦野さン」

麦野「レモンでいいわね。はい」

一方「どォも」

垣根「マジに言うんじゃねえぞ……こっ恥ずかしいだろうが……」

356: 2010/07/06(火) 20:51:13.80 ID:kod8cBA0
腹へって氏にそうだからもう暫くしたら投下する
関係ないけど、今三話の途中を書いてる。と、言うことは五話構成だから折り返し過ぎた筈なんだ
しかし一話分の長さが毎回少しずつ伸びてってるせいで終わる気がしない。どういうことだってばよ

362: 2010/07/06(火) 22:12:50.13 ID:kod8cBA0
ワイワイガヤガヤ




一方「カハハハ、つゥぎはなァにを飲もうかなァァァァああ??」ガサガサ

麦野「ねー垣根、コイツ顔真っ赤だけど大丈夫なの? 普段白いからほんっとに目立って怖いんだけど。氏ぬ予兆とかじゃない?」

垣根「何度か飲もうみたいになった時は外で飲んでたからな……、環境が違うと酔いも進むのかね。ま、氏にゃしねえだろ」

一方「おゥおゥ、おソトではベェェェクトル変換してるンですゥゥ、今はかきねくンちだから素で飲んでんだァ」グビ

麦野「昼間も100%シラフとは言えない喋りだったけどこりゃ完全に酔ってるわ」

一方「ふっざけんじゃねェぞ麦野さァン、俺ァ120%シラスだぜェ」

垣根「俺はもう何もつっこまねえぞ。……俺の酒も切れたな、次のカン、と。麦野はいるか?」スクッ

麦野「あー、ゆずの頂戴」

垣根「おう……ほらよ」

麦野「あんがとね」

一方「芋焼酎のコーヒィ割りってうめェかなァ?」

垣根「オラ、わかったから歩き回るな。じゅうたんの上で吐くんじゃねえぞ」

363: 2010/07/06(火) 22:30:53.42 ID:kod8cBA0
麦野「…………ハァ、自分がこういう馬鹿をやれるなんて、あんまり思ってなかったなー。良くも悪くも普通な感じに?」

垣根「なんでだよ」

一方「堅揚げうめェェ」バリバリ

麦野「言わなくたってわかるでしょアンタらなら。嫉妬と、恐怖と、下心と、物を見るような目に、ほんのちょっと同情?」

麦野「そんな視線の海でいつまでたゆたってれば良いのかわかんなかったし。こっちも見下すか叩き潰すか、ごっこ遊びしかできないし」

麦野「ほんとにおさかなよ。口パクパクあけてんの、苦しい苦しいってさ」

垣根「それでどうしたんだ?」

麦野「……能力以外で何かを手に入れる、そんな発想もなかったからね。せめて『堕ちる』より『堕りてやる』って後ろ暗い仕事を始めたわ。今考えりゃ私なりの反抗期だったのかしら」

垣根「随分規模のでけェ反抗期だ」

一方「酒うめェェ」グビグビプハー

麦野「――もしかしたら只の後付けの屁理屈かもしれないけどさあ。後ろ暗い事やるような奴なら、そのまま私を見んじゃないかな? って思ったのかもね。今となっては昔の事だからはっきりしないんだコレが」

垣根「この若白髪と付き合ってても、時々思うな。俺とコイツの関係だって馴れ合いと指刺されりゃ完全否定は困難だ。勿論、ただ言わせるつもりも更々ねえが」

一方「うおォン 俺ァまるで人間火力発電所だァ」バリバリモグモグ

垣根「が、ある意味開き直る事にしたんだ。人同士の付き合いなんて大なり小なり傷の舐め合いだ、歯車にだって潤滑油使うんだからな。人間様にだって必要だろうよ」

麦野「……アンタが良い事いってんだろうけどほんとコイツのせいで台無しだわ」

垣根「当のコイツのお陰な部分もあンのが腹立たしいがな」

麦野「……でも、私がこんな風に考えてんのもアンタらのお陰よきっと、全部じゃないけど」

垣根「随分曖昧だな?」

麦野「なんていうか……アンタらのユルさ馬鹿らしさがさ、なんていうか、うん。……なんだかいいな、って思っちゃったのよね」

麦野「アンタらがそうなら私もって事。うーん、朝の私に会ったらブチコロサレ確定かな。なーに半日ぽっちで飼い慣らされてんだ、って」

一方「飼い慣らすも何もよォ、なァかよくなるのに頭使って考えンのとかアホくせェだろォよォ」

垣根「いきなり話に混ざってくんじゃねーよ酒臭え……あーあ完全に酔ってんなコイツ」

367: 2010/07/06(火) 22:45:42.85 ID:kod8cBA0
麦野「でもね一方、私はこれまで結構調子乗ってたんだよ。『アイテム』の奴らにも色々と上からだったしね」

麦野「せめて言い訳をさせてもらうとしよっかな。……私と同格の人間もいなかったし、贔屓目じゃなくあいつらは私に恩がある。だから、良くも悪くもあいつらは私のもんだと思ってた。だから、意見されるとイラついてたのよ。今考えりゃ私が一番ガキだった気もするかもね」

麦野「そんな私が、今更図々しくも謝って仲良しこよししようなんて……あいつらからすれば虫が良すぎる話だって思われても仕方なくない?」

一方「ハァ? 『アイテム』は麦野さンのダチなンだろォ? なら別に考えることねェじゃンよ。謝って、許してもらってそンでしまいだろォがァ」ゲフ

一方「ほらアレだ! ダチっつーもんは……アレだ、えーと……アレなんだよ……」

垣根「指示語が多すぎてわかんねえよ」

一方「あー、えー……、俺あの時なンて言ったっけ垣根くン」

垣根「『友達は、態々友達であることを確認したりはしねえ』」

一方「そうそれだァ。つまりはそういうこった」

麦野「なんか良い事言ってるっぽいけどさ、それってちょっと意味違うんじゃないの?」

垣根「だな、あんまかみ合ってねえ。所詮酔っ払いだなw」

一方「あれェ……、おっかしいなァ……」

一方「とにかくゥ、麦野さンは『アイテム』の奴らの事が好きなンだろ? それならそれで解決なンだよォォォぉろろろろろろろ」

垣根「ば、バカクソ野郎口から未元物質吐きやがった!! ぞ、雑巾雑巾っ!!!」ダダッ

369: 2010/07/06(火) 22:50:44.88 ID:kod8cBA0
麦野「――――――あは」

麦野「はっは、あぁぁぁっはっはっはっはwwwwwwwww」ゲラゲラ

一方「」グデー

垣根「オイコラ麦野! 笑ってねえで一方の背中でもさすってろ!」ドタドタ

垣根「雑巾で拭いて消臭物質を……」パァァ

麦野「ひぃwwwwwあーwww楽しいねぇかきねぇあくせらぁ!」

垣根「楽しいわけあるかドカス! あぁぁ絨毯が……」フキフキ

一方「」グデー

372: 2010/07/06(火) 22:58:22.23 ID:kod8cBA0
垣根「やれやれ、やっと落ち着いたか」ハァ

麦野「垣根おつかれー」

垣根「ずっと笑ってやがって……覚えとくぞ……」

一方「ゥゥう、気持ちわりィ……」

垣根「ほら横んなってな。確かこういうとき毛布かけときゃ良いんだっけか?」バサ

麦野「体あっためると良いとか聞くけどねえ……」

垣根「水だけ飲んどけ、後が酷いからな」

一方「……」グビグビ

垣根「後は寝とけ。ったく……世話かけるクソ野郎が……考えて飲めってんだよ」

麦野「垣根ママ(笑)」

垣根「ぶっとばすぞ」

374: 2010/07/06(火) 23:01:51.39 ID:kod8cBA0
麦野「さっきの話の続きだけど。やけにインパクトある事に流されちゃったけどね」

垣根「インパクトありすぎだろ……口から激流葬だったろありゃ」

麦野「好きならそれで良い、ね。酔っ払いに言われてちゃ世話ないわ。私があいつらの事好きねえ……、あー好きかも」

垣根「ま、間違っちゃいないんじゃねえか? 時に、ガキの言うこと程真理を突くってのは良くある笑い話の一つだ」

麦野「酔っ払ったら大人も子供も皆ガキかしらね。ほら、注いであげるわ」トプトプ

垣根「ん、サンキュ」トットットッ

377: 2010/07/06(火) 23:11:08.09 ID:kod8cBA0




一方「」スースー

麦野「寝顔は素直そうで可愛いわねーコイツ」プニプニ

垣根「性根が単純なんだろうな。中二病だがよ」

麦野「でもそんな所も好き、かなぁ垣根くぅん?」

垣根「気色悪い事言うんじゃねえよ……。だが、友達兼居場所であることは残念ながら否定できねえな」

麦野「それと同じように……きっと私の『アイテム』は最初から私の居場所だったんだね。アンタらに会わなきゃ多分『気付けなかった』、感謝してやってもいいわ」

垣根「俺と一方通行はなんでもなくただ勝手に一緒に騒いでツルんでただけだろ。それを麦野が勝手に見ただけだ、俺らが特別なんかした訳じゃねえぜ」

麦野「序列だのなんだのに嫌気が差して離れた筈が、いつのまにかそれに縋り付くようになってたんだから世話無いわ。でもアンタも。そのなんでもない事が欲しかったんじゃないの?」

垣根「……まあガキの頃からの本当に欲しかったものが手に入った、んだと思う。何を欲しがってたって訳でもねえが手に入って思った。ああ、これが幸せって事なのか? ってな」

垣根「幸せってのは、楽しいに似てたな。寂しくなくて、面白い、だ」

麦野「詩人みたいな事いうじゃない。楽しいわね、何かの受け売り?」

垣根「整理していって要素を挙げていっただけだろ。ただ、この幸せってもんはずっと同じ形をしてる訳じゃねえだろうしな」

垣根「勿論小さくもなるだろうが……それを恐れて前に進まねえ奴は損してるって事だけははっきりしてる」

麦野「随分とメルヘン極まりない発言じゃん、能力だけじゃなくて性格もメルヘンかな?」

垣根「喧嘩売ってんじゃねえぞー」

378: 2010/07/06(火) 23:15:39.52 ID:kod8cBA0
麦野「……そうね、私たちも普通に人間やってんだもんね」

垣根「そんな当たり前の事がわからねえ程馬鹿だった時期もあったがな」

麦野「友達って、なるもんじゃないんだ」

垣根「そうだな。気がついたらなってるもんだな」


麦野「ねえ、垣根」

垣根「ん?」

麦野「好きなものが友達ならさ」

麦野「私とコイツや……。私と、アンタも――――――」

垣根「……」



麦野「――――ははっ、なんでもないんだにゃーん」

垣根「――――やれやれ、ピロートークでもあるまいししんみり談笑なんてガラじゃねえわ。酒の後戯もここまでだ、後ろで苦しみも悲しみもなさそうな面でグースカしてるそいつみたいに寝ちまいな」

麦野「あらあら、つれないじゃない。ま、もう寝ようかな。お肌にも悪いしねー」

垣根「曲がり角をもう通り過ぎ…………いや冗談だからな」

麦野「最後で台無しだわね。……おやすみ。入ってきたらブチコロスから」

垣根「寝ぼけないように祈っとくぜ」ヒラヒラ

379: 2010/07/06(火) 23:17:28.70 ID:kod8cBA0


音を立てて閉じたドアを暫く見やって、垣根帝督が笑みを浮かべた。

垣根「――――――青い鳥は結局、一番身近な所にいたのでした、かよ? 『アイテム』、ねえ」



別段返答を期待した訳でも無い。ポツリとこぼれただけの言葉に、途中からうっすらと意識を取り戻していた彼は言葉を返す。

一方「…………ハッ、このメルヘン野郎がァ」

悪意の一切が含まれていないこの辛辣な言葉に、垣根帝督は苦笑を零した。

垣根「心配するな。自覚はある」ゴロン



そのまま言葉を交わすことなく、部屋に残っていた二人もそのまま夢の世界へと落ちていった事で、部屋の中で動くものはいなくなった。
そして夜は更けていく。

380: 2010/07/06(火) 23:20:20.53 ID:kod8cBA0



朝より昼が近い時間帯、ほんの少し痛む頭を抑えながら垣根帝督は起床した。
カーテンからもれる陽光が瞳孔の開いている目には眩しい。細めた目で辺りを見回すと、そこは居間だった。
どうやら昨晩そのまま寝床に入らず寝てしまっていたらしい。すぐ近くで、丸くなって一方通行が寝息を立てているのが見える。


垣根「おい一方、起きろ」

一方「…………ンだよォ木原くゥン……もうちょっと待てよ……」

垣根「何寝ぼけてやがるんだ、さっさと起きろ」

一方「ァ……? あれ、垣根くンなんで俺ンちに……」

垣根「ここは俺んちだよ。昨日飲んで騒いだだろうが」


目を擦りながら未だにぼんやりしている一方通行を一瞥して、垣根帝督は立ち上がる。と、同時に眩暈でふらついた。
酒が入っていたせいか普段よりキツ目の眩暈を何とかやり過ごした所で、彼はあることに気付く。
昨日いた筈の人物がいない。麦野沈利がだ。

入るべからずとおどけていた洋室の扉は開いたままで、その向こう側に彼女の姿は無い。恐らく、自分達が寝ている間に出て行ったのだろう。
何も言わずに去って行った彼女を、僅かばかり心配したがすぐ思い直す。
昨日の最後のあの様子ならば、問題が起きることは多分無い。裏付けがあるわけでもなかったが、多分そうだろう。そうあれかしと、彼は結論付けた。

381: 2010/07/06(火) 23:21:46.77 ID:kod8cBA0
ふらついた足取りでトイレに向かう一方通行を横目に見ながら、垣根帝督は昨夜彼女が過ごした部屋を覗き込んだ。

当たり前だったが、昨日以前の自分が知る一室と殆ど変化は無い。丁寧にたたまれた布団と整えられたシーツが少し意外だなと言う考えは失礼に当たるのだろうか。
恐らくシャワーでも浴びていったのだろうか。シャンプーなのかどうかまで彼には良くわからなかったが、何かの残り香が微かに彼の鼻を擽った。


アイドリングも終わり本調子になってきた頭を首に乗せて居間に戻った垣根帝督は、とあるものを発見した。
昨日食べ散らかした状態のままの机上に、記憶にそぐわぬ一枚のメモ。
ふと手にとって見てみれば、一目見れば美しくともどちらかといえば豪快や、場合によっては野蛮とも言える言葉で形容されるであろう文字の紡ぎ手とは裏腹な、丸く可愛らしく女らしい文字がそのメモの上で踊っている。

383: 2010/07/06(火) 23:24:49.67 ID:kod8cBA0
一方「スッキリだァ……。なンだそりゃ」スタスタ

垣根「置手紙、じゃねえのか? 昨日ここにいて、今ここにいない奴からのな」

一方「ふーン……、なンて書いてあるよ」

垣根「ほらよ。お前も読んでみろ」

一方「『昨日は随分と色々世話になったね、ありがとう。取り合えず気持よさそうに寝てたアンタら起こすのも気が引けたし、今の気が変わらないうちに帰ってあいつらに言うこと言ってくるわ。
その後何をするかは、適当にあいつらと相談でもして決めようと思ってる。じゃあ、またいつか会いましょう PS、余ってた鯖缶だけ貰ってくわよ 麦野沈利』だとよ。何もいわねェとか水臭くねェか?」

垣根「ちょっと恥ずかしかったんじゃねえの? 言うこと言ってくるとか遠まわしに言ってるしよ」

一方「あー、十分ありえンな。ま、あの様子だとちゃんと謝れてンじゃねェかな」

垣根「テメェは半分くらいバカ酔いしてて話聞いてねえだろ」

一方「ンだと、麦野さンと人には言えねェ話をしてたのか……?」

おどけながらも一方通行の表情には、微塵の心配も無かった。麦野沈利の目的の達成は疑う余地が無い、そう確信している表情だった。そして、勿論垣根帝督も同様に。

384: 2010/07/06(火) 23:26:52.22 ID:kod8cBA0
垣根「ま、次会った時にでも解説付きで事の次第を拝聴しようぜ。……寝すぎたせいか腹減ったな。外で食うか」

一方「ああ、じゃあ顔だけ洗わせろ」

垣根「早くしろよ、次は俺だからな」


へいへい、と空返事をする一方通行に背を向けてカーテン、続けて窓を全開にする。途端世界が一際輝きを増したように錯覚するほどの陽光と爽やかな風が部屋に飛び込んでくる。
青天に座す太陽は殆ど真上から陽射しを注いでいた。彼女は、今頃何をしている所だろう。ここ出て行った時間もはっきりしなかったが、向かった先は定めて彼女の居場所で間違いあるまい。

麦野沈利は、またいつかと書き残して去っていった。そのまたいつかの日に果たして、彼女はどんなエピソードを聞かせてくれるのか。きっと、なんだかんだで面白い話になるのだろうが、催促するのもつまらない。
近い将来になれば良いと、またいつかの出来事を思い浮かべて。垣根帝督は空に向かって大きく欠伸をした。







おわり

385: 2010/07/06(火) 23:27:46.06 ID:kod8cBA0
恒例のおまけ(エピローグ)まで暫くお待ちください

387: 2010/07/06(火) 23:32:03.20 ID:kod8cBA0
休日の昼過ぎという時間故か、ファミリーレストランは普段にもまして客達の喋る声が響く。
その中でも既に珍しいものではなくなった光景、茶髪と白髪の二人組みはいつもと同じ様に窓際の席で他愛無い言葉を交わしながら各々の笑みを浮かべている。
カップ片手の談笑は途切れる兆しを見せない。昼時を少し過ぎて、空いた席もちらほら目立ち始めいていた。


ドアが軋む音と共に、入り口の扉が開く。女ばかりの四人連れが姦しい声と共に店内へ入ってくる。
各々が個性的な彼女達だが、四人共に酷く楽しそうな笑顔だった。誰が見ても、仲の良い友達グループなんだな、そんな感想を抱く程度には。


「あー、お腹ペコペコですよ! 一刻も早く食べなきゃお腹と背中が超くっつきますよ!」

「食べ過ぎると、お腹と背中がどんどんはなれてく」

「……食欲なくなるようなこと言わないでほしいんだけど。に、してもこんな中途半端に遠くのファミレス来るのなんて初めてじゃない?」

店員「いらっしゃいませー、四名様でよろしいですか?」


愛想の良い顔で店員が彼女達に声をかける。短い茶髪の少女がそうです、と答えた。
長い茶髪を躍らせている女性は店員に答えず店内をぐるりと見回した。その動きが、一点で止まる。
続いて、お世辞にも碌な事を考えていなさそうな笑い声を漏らした。まるで何か悪巧みが成功した時のような表情だった。


「いえ、知り合いいたから結構」スタスタ

「あ、ち、ちょっと麦野!」タタッ

388: 2010/07/06(火) 23:33:26.30 ID:kod8cBA0
後から慌てて付いてくる三人に構う事無く、先陣を切って歩く彼女は一つの席の前で足を止めた。
顔を上げる先客――、茶髪と白髪の少年達は、腰に手を当てて自分達を見下ろしている彼女を見てそれぞれ仔細は違うものの驚いている素振りを見せる。


麦野「案外早い再会だったわね、一方物質のお二人さん。相変わらずおアツいわ」

一方「またいつか、じゃなかったのかよ。いくらなンでも早すぎだろ、まだ日も沈んでねェよ」

垣根「電話番号は教えといた筈だろ、アポイントメント位取れ、礼儀がたんねえぞ」


呆れたようにぼやく一方通行とおどけて言う垣根帝督に、麦野沈利は口角を吊り上げて答える。


麦野「親しき仲にも礼儀ありって言葉はね、親しいと礼を欠く事が多いから使われるらしいわよ」

一方「ほンとかよ」

麦野「知らない」


その言葉に伏せられた意味を解して、垣根帝督は彼女に習って口角を吊り上げた。
その間後ろから何事かとこちらを窺っている三人の内に、一方通行は覚えのある人物をみとめる。

389: 2010/07/06(火) 23:35:26.53 ID:kod8cBA0
一方「テメェ、あンときの缶詰ガキじゃねェか」

フレンダ「……鯖缶持ってた変人じゃない」

滝壺「――ふれんだ、知り合い?」

フレンダ「ううん……結局縁があったって訳かな。ちょこっとだけ、アンタのお陰で助かったわ、ありがと」

一方「……缶詰はあるべきとこに収まっちまったのか、つまンね」


麦野「あら、二人で盛り上がってるとこ悪いけど。まだ紹介もしてないんだから早漏も程ほどにしてくれる?」

垣根「っつぅ事は後ろのそいつらが…………」


得心したように頷く垣根帝督を見ると、麦野沈利は後ろに視線を流して笑った。


麦野「そ、私の友達で、『アイテム』の主要メンバーよ」


コイツらは今朝の話の登場人物、麦野沈利がそう囁くと『アイテム』の三人は揃って目を丸くした。
茶色い短髪の少女は麦野沈利を見上げ。金髪の少女は、眉をひそめてこちらを観察している一方通行を観察し返し。残った少女は一人虚空を眺めていた。目が、空ろだ。


絹旗「あ、えっと……絹旗最愛です。超はじめましてですよ」

フレンダ「全く一期一会(笑)だわ、偉い人の言葉も結局当てにならないわねー……、私はフレンダ」

滝壺「私は滝壺。白い人も茶色い人もよろしく」ペコ

390: 2010/07/06(火) 23:37:06.55 ID:kod8cBA0
垣根帝督、一方通行両名は突如繰り出された自己紹介にあっけに取られたようだった。
どォも、等と思わず反射的に下げられた頭が間抜けに見えたらしい。少女達の顔から緊張と警戒が消える。
麦野沈利が視線と首で、次はお前らだろうと促していた。男二人は顔を見合わせると、観念したように口を開いた。


一方「あー、一方通行だ」
垣根「垣根帝督。よろしくってな」


双方の名乗りが終わると共に、『アイテム』の三人の視線が麦野を向く。
声に出されていなかったが、彼女達の視線に乗っていた疑問に麦野が答えた。


麦野「言ったとおり昨日一日、コイツらの世話してやってたのよ。やむを得なくだけどね」

垣根「ダウト、事実の捏造はよせよ。麦野も一緒に騒いでた癖して良く言うぜ」

滝壺「騒ぐ?」

垣根「ああ、そもそも昨日麦野がな……」

一方「フレンダっつー事はオマエがダーツマスターか……?」

フレンダ「マスター? ……ダーツは自信あるけど」

391: 2010/07/06(火) 23:39:50.93 ID:kod8cBA0
二組の、互いにまるで関係の無い会話が始まる。一方通行は妙にそわそわした様子でフレンダに声をかけ、垣根帝督は滝壺理后に事のあらましを説明し始めた。
少し置いていかれたように呆けていた絹旗最愛は、あっという間に打ち解けている彼らから視線を逸らさず問うた。


絹旗「麦野。ってことはこの白髪と茶髪の二人が…………」

麦野「そうね」


首を傾け、絹旗最愛を横目に眺めた麦野沈利はくつくつと喉を鳴らした。
絹旗最愛は、今朝の話の登場人物達と眼前の人物達を脳内で一致させようと努めているのだろう。そんな眉根を寄せて唸っている彼女の仕草が、麦野沈利にはとても愛おしく思える。
そしてそれ一つだけではなく、目の前視界に入る彼ら彼女らの悉くが、だ。


一度気付けば大したことは無い。一度認めてしまえば、もう何も恐ろしくなど無い。そもそも、これは初めから恐ろしいものなどではなかった。
私は、一人で生きてはいなかった。これまでも。そして、一人で生きていくつもりもない。これからも。
永遠に続く保障も無いが、暫くは私の人生は彼ら彼女らとともにあるだろう。
そしてそれがとこしえにそうあれかし、心の中で呟いて彼女は答える。
浮かんでいる表情は、とても魅力的な満面の笑みだった。


麦野「コイツらが私の、新しい友達よ」

392: 2010/07/06(火) 23:41:23.78 ID:kod8cBA0
麦野編 糸冬
よくみたらスレ立ててから三週間も立ってるじゃん、付き合ってくれててありがとな!

393: 2010/07/06(火) 23:41:52.24 ID:OEP1T2Eo
おい垣根さん美少女4人と知り合いですか

なんというリア充

394: 2010/07/06(火) 23:45:02.33 ID:wJR54AAO
ご馳走さま
フレンダとか一方物質に驚かないのな

399: 2010/07/06(火) 23:56:53.44 ID:kod8cBA0
三話目は前も言ってたけど心理掌握の話になるんや、オリジナル設定の固まりみたくなるけど勘弁な!
木原くン外伝とかその他外伝も書いてみたいんだけどまだ一文字も書いてないから延期しとく事になるw

【禁書目録】垣根「友達が欲しいんだが」【その3】

引用: 垣根「友達が欲しいんだが」