1: 2016/05/06(金) 03:31:26.14 ID:L0+ZPqEt.net
「あとはよろしくね…海未ちゃん…」

「ーーーーーー!!!ーーーーー!!!」

____________________________

_____________


____

2: 2016/05/06(金) 03:32:05.92 ID:L0+ZPqEt.net
海未「………朝、ですか…」

外は既に小鳥がさえずり、太陽が眩しく輝いている

布団の横のデジタル時計は8:00を表示しており、それは海未がいつも起床する時間より2時間も遅れている事を示していた

海未「おっと…早く支度しないと学校に遅れてしまいますね…今日の朝稽古は諦めましょう。」

海未が布団から出ようとすると自分の体の異変に気づく。

3: 2016/05/06(金) 03:32:42.04 ID:L0+ZPqEt.net
海未「体がとても重い…、汗もたくさんかいていいます」

海未「しかし風邪ではないようです…不思議と頭はすっきりしてますし…何か悪い夢でも、、」

見たのでしょうか。と言いかける前に先ほどまで見ていた夢の内容を思い出す。

海未「………ふぅ。悪夢ではありませんでしたしやはりこれは風邪の前兆の汗なのでしょう。今日はあまり無理をしないように気をつけましょう」

やっとの思いで体を起こして朝の支度を急いで始める 少し憂鬱な気分だったが顔を洗って少し払拭されたようだった

大急ぎで身支度を済ませ、前日に用意しておいた玄関のカバンを持ち戸を開け外に出た。太陽の光を浴び少しのびをしてみた。

4: 2016/05/06(金) 03:33:25.05 ID:L0+ZPqEt.net
海未「とても気持ちのいい朝ですね。新しい詞を思いつきそうです」

機嫌を取り戻した海未は軽くスキップするように弾みながら歩き出した。すると、家の前のかどを曲がったところで、微笑みながらこちらを見ている友人に気づいた

海未「こ、ことり…!」

ことり「おはよう海未ちゃん♪」

海未「お、おはようございます…み、見ていたのですか」

ことり「うん♪ 今日はご機嫌さんだね」

海未「は、恥ずかしいです//忘れてください!」

ことり「海未ちゃんのスキップ姿なんか普段拝めないからびっくりしちゃった」

ことり「とっても可愛かったよ♡海未ちゃん♡」

海未「うぅ…!ことりは意地悪です…」

5: 2016/05/06(金) 03:33:57.82 ID:L0+ZPqEt.net
ことり「なにかいい事でもあったの?」

海未「いい事…は特になかったのですが、今日の夢はとてもいい夢でした…」

ことり「へぇ~、どんな夢?」

海未「それが、全く覚えてないんです。とても懐かしいような、優しいような、とにかくいい夢だったんです」

ことり「覚えてないのに懐かしかった??不思議な夢だね…」

海未「う~んなんというか…うまく言い表せませんね。これでは作詞者失格です」

ことり「そんなことないよ~、ことりも夢の内容なんか全然覚えてない時の方が多いよ?」

海未「やはりそういうものですか。しかし今朝の夢はほんとに不思議な感じでした」

6: 2016/05/06(金) 03:34:39.04 ID:L0+ZPqEt.net
海未「あ、そういえば夢で女の子と出会っていた気がします」

ことり「女の子?」

海未「はい。女の子といっても私たちと同じくらいの年齢だったようなきがしますね」

ことり「女の子かぁ。懐かしいって言ってたから昔会ったことある子かもしれないね どんな子だったの?」

海未「うーんそこまでは…」

ことり「流石におぼえてないか…あ!早く学校行かないと遅刻しちゃう!走ろう海未ちゃん!」

海未「そうでした!急ぎましょう!」

7: 2016/05/06(金) 03:36:13.42 ID:L0+ZPqEt.net
海未(しかし夢で出会った女の子は誰だったのでしょうか…。確か…ああそうでした。)






海未(…太陽のように笑う子でしたね)

8: 2016/05/06(金) 03:37:05.04 ID:L0+ZPqEt.net
_____________

______



キーンコーンカーンコーン…

放課後音ノ木坂学院部室にて___

にこ「いーい?私たちアイドル研究同好会の集大成として、このラブライブに参加するのよ!」

凛「めんどくさいにゃ~」

花陽「凛ちゃん!」

凛「ふぇ~かよちんが怒ったよ~」

絵里「凛、ちゃんと聞きなさい」

凛「はーい…」

9: 2016/05/06(金) 03:37:55.80 ID:L0+ZPqEt.net
にこ「まったくもう…別に勝ちたいとか、そういう目的で出るわけじゃないの」

にこ「私たち今までライブらしいライブをしてこなかったじゃない?」

真姫「確かに…今まであまりライブしようなんて言い出す人、出てこなかったものね」

ことり「音楽活動って感じだったね」

にこ「そこでこのスクールアイドルしか出れないっていうラブライブに、私たちでチームを組んで最後にアイドルやってやろうってことなのよ!」

花陽「ラブライブ!?」

凛「凛はあんまり人前に立ちたくないな…向いてないし…」

10: 2016/05/06(金) 03:38:25.31 ID:L0+ZPqEt.net
絵里「にこの言うことはもっともだけど、ラブライブにでなくても他にもやり方はあるんじゃないかしら?」

ことり「ことりも、ステージに自分が立つなんてちょっと嫌かな…なんて」

にこ「なによあんた達…あんまり乗り気じゃないの?」

花陽「アイドルを見るのは好きだけどやるのは…」

にこ「…海未、あんたはどうなのよ」

海未「…」

11: 2016/05/06(金) 03:39:08.60 ID:L0+ZPqEt.net
にこ「うみ!」

海未「は、はい!なんでしょう!?」

にこ「もうダメだこりゃ…」

絵里「海未、あなた今日ずっとぼーっとしてるわよ?どうかしたの?」

海未「あ、いえ…少し考え事を。」

ことり「海未ちゃんは今朝の夢の女の子が気になってしょうがないんだよね♪」

海未「…実はそうなんです。夢に出てきた女の子…もう少しで思い出せそうなのですが」

絵里「夢?ゆめもいいけど、しっかりしてもらわなきゃ困るわよ 次期生徒会長さん?」

海未「そ、そんな…!私は何度もお断りしてるじゃないですか!」

12: 2016/05/06(金) 03:39:46.18 ID:L0+ZPqEt.net
絵里「え~残念ね… 私は海未以外考えられないのだけれど」

海未「ことりでいいじゃないですか!」

ことり「私はそんな柄じゃないよ~」

絵里「困ったわね…」

にこ「もおっ! とりあえず、ラブライブの話みんな考えときなさいよ!」

にこ「あんまりいい返事は聞けそうにないけど…」

トントン

花陽「は、はい!」
ガチャ

希「えりちおる?」

13: 2016/05/06(金) 03:40:37.58 ID:L0+ZPqEt.net
凛「わ~希先輩だ~!遊びに来たんですか?」

希「ううんちゃうんよ、ちょっと生徒会の方が忙しくなってきたからエリチにも手伝ってもらおうと思って呼びに来ただけなんよ」

凛「なーんだー残念」

希「また今度遊ぼね♡」

凛「わーい!」

絵里「希、今行くわ ちょうど一段落ついたとこだし…」

絵里「そういうわけで私は生徒会の方に戻るわね ラブライブの件、考えとくわにこ」

にこ「…」ムスッ

14: 2016/05/06(金) 03:42:14.33 ID:L0+ZPqEt.net
 
 

希「ラブライブって?」

絵里「なんだかにこが面白い事考えてるみたい。アイドルを、私たちがやろうってね」

希「へ~おもしろそうやん」

絵里「だったら希もやればいいじゃない」

希「ウチはだめなんよ…もう一人くらいメンバーがいれば、入っても良かったんやけどね」

絵里「8人も9人も変わらないわよ」

希「確かにそうなんやけどね…まぁウチはみんなを見てるだけで楽しいから…ね?」

絵里「希らしいわね」

希「やろ?…えへへ」

絵里「ふふっ」

15: 2016/05/06(金) 03:43:38.06 ID:L0+ZPqEt.net
 
 
 
真姫「で、どうするのよ。今日これ以上何もしないなら私帰るけど」

凛「あ、じゃあ真姫ちゃん一緒に帰ろ!」

真姫「まぁ、たまにくらいならいいわ」

凛「わーい!かよちんも早く帰ろ~!」

花陽「わわっ、早いよ凛ちゃん~」

にこ「今日はもう解散しかないわね…まったく」

ことり「海未ちゃん、私たちも帰ろ?」

海未「ええ、そうしましょう」

_____________

17: 2016/05/06(金) 03:44:22.24 ID:L0+ZPqEt.net
__

___帰り道


海未(うーん女の子…女の子…)

ことり「……もう、海未ちゃん!」

海未「あわわ、は、はい!」

ことり「女の子もいいけど、やっぱり夢は夢だよ。」

ことり「確かにいい夢だったのかもしれないけどそれは夢だよ。所詮夢なんだよ?」

ことり「寝ればいつかまた会えるかもしれないし、起きてる間までその子のこと考えてても仕方ないでしょ?」

18: 2016/05/06(金) 03:44:56.74 ID:L0+ZPqEt.net
海未「ええ……ですよね。」

海未「ふぅ…どうかしていましたね。ふふっ」

海未「ことりにお説教されるとは思いませんでした。もう、夢のことはすっぱり忘れることにします!」

ことり「そうそう♪ もっとほら…ラブライブのこととか考えよ?」

海未「らぶらいぶ?はて…?」

ことり「もうっ!ことり怒っちゃうよー!」

そう言ってことりは少しほっぺたを膨らませて怒っている素振りを見せた。が、すぐに笑顔に戻りラブライブについて説明してくれた。

19: 2016/05/06(金) 03:45:31.00 ID:L0+ZPqEt.net
もう夢の事は忘れよう…
そう決めたはずでしたが私はなにかとても大切なものを一緒に忘れてしまうきがしてやはり断ち切る事はできないような気がしていました

ことり「あ、そうだ海未ちゃん」

ことり「こんどお母さんと遊園地に行くんだけど海未ちゃんももし良ければ一緒に行かない?」

海未「おや、それはとても楽しそうです。ちょっと待ってくださいスケジュールを確認しますね…」

海未「ケータイはと……」ガサゴソ

海未「はっ!ケータイを部室に忘れてきてしまったようです…私としたことが…」

ことり「今日の海未ちゃん、やっぱりなんか抜けてるね~」フフッ

海未「すぐ取ってくるのでことりは待っていて下さい!すぐ取ってきますから!」

20: 2016/05/06(金) 03:46:17.93 ID:L0+ZPqEt.net
そういうと海未は全力疾走で今来た道を戻っていった。

ことり「…。女の子、かぁ。」

ことり「海未ちゃんとは昔からの付き合いだから、私ももしかしたら知ってる人なのかも…。」

そんな事を考えながらことりは近くの公園のベンチで海未を待つことにした。




「ハァハァ…!」

「…ふぅ…」

海未「なんとか学校まで戻ってこれました。ぎりぎり閉門までに間に合って良かったです」

海未「さてと部室に早く行かないと…おや?」

21: 2016/05/06(金) 03:46:54.02 ID:L0+ZPqEt.net
部室の窓の方を見るとなにやら人影が動いていた まだ誰か残っていたのだろうか

海未「にこ、でしょうか。こんな時間までどうしたんでしょう。」

不思議に思いながらも、駆け足で部室まで来た海未は躊躇なくドアを開けた。

海未「…?」

しかし、部室に人が残っている気配は感じられなかった。

海未「さっきのは見間違いだったのでしょうか…まぁそんなことよりケータイです。えぇーと確かここら辺に…」

海未「あ、ありました。すぐことりの元へ戻りましょう。」

22: 2016/05/06(金) 03:47:25.99 ID:L0+ZPqEt.net
また駆け足で部室からでていこうとした刹那、海未は部室の異変に気付く

海未「こんなノートあったでしょうか…」

部室のテーブルの真ん中にぽんと1冊のベージュのノートが置かれていた。ノートには大きなト音記号が描かれておりその横にMUSIC NOTEと書かれていた

海未「誰かの忘れ物でしょうか」

なんとなく内容が気になり、海未は表紙をめくってみる
しかしそこには何も描かれておらず、真っ白なページが堂々と居座っているだけであった

更に何枚かめくってみるが特に何か記入されている様子はなかった

海未「何故白紙のノートがここに置かれているのでしょうか…誰の持ち物か検討がつきません」

23: 2016/05/06(金) 03:50:13.43 ID:L0+ZPqEt.net
面白くもないのでノートをそのままにして去ろうとした時、最後のページに何か書かれている事に気づいた

海未「おや?」

そこには

赤い文字で




'太陽を奪ったのは'




とだけ書かれていた





_____________


 

24: 2016/05/06(金) 03:50:46.89 ID:L0+ZPqEt.net
______

__公園、ベンチにて


ことり「海未ちゃん遅いなぁ…」

ことり「もう30分くらいたってるよ…」

ことり「ことりのこと忘れて帰っちゃったのかなぁ」

そんなネガティブ思考になりつつあることりだったが、公園脇をゆっくりと歩く友人の姿を見つけてテンションを取り戻した

ことり「海未ちゃんだ…!おーい海未ちゃん!」

25: 2016/05/06(金) 03:51:28.83 ID:L0+ZPqEt.net
すると友人もこちらに気づき手を振った

ことり「もう、遅いよ海未ちゃん!」

海未「すみません…少し手間取ってしまって!」

ことり「何かあったの?」

海未「いえ、ケータイが心当たりのある場所に無くてですね…」

ことり「もう、しっかりしてようみちゃん~!」

海未「すいません…」

その後、遊園地の詳細を決めてからお互いの帰路へと別れていった。

ことり(海未ちゃん。なんだか様子がおかしかったような…?気のせいかな?)

ことり(まぁ今日の海未ちゃんは1日変だったけど、明日には直ってるかな)

ことり(後で一応心配のメールだけでも送っとこうっと♪)

26: 2016/05/06(金) 03:52:05.73 ID:L0+ZPqEt.net
_夜、園田家にて

海未は縁側で正座をしながら1人、夜空を眺めていた。

海未「今日は星が綺麗ですね。月も一際明るいように感じます」

海未(しかしやはり気になりますね… 太陽を奪ったのは、でしたか。)

海未(時期が悪いだけかも知れませんが夢の女の子の事をよぎりますね)

風が少し冷えてきた
月は雲に隠れた
いくら春にさしかかったとはいえ、まだ2月では薄着で外に長居するのは宜しくないかもしれない

27: 2016/05/06(金) 03:56:12.09 ID:XlbvK1jM.net
海未(そういえば今朝はあまり体調が良くなかったんでしたっけ。今夜は早く眠りましょう)

そう考え、すぐに床につく海未であったがすぐ頭に夢と部室のノートの事を考えてしまう
あのノートの持ち主
夢の女の子
太陽…
深く考えれば考えるほど泥沼にはまっていくようで、それはトンネルの中を目隠しで歩いている様な感覚だった。

海未(やはりなかなか寝付けませんね…。もう一度、持ち帰ったあのノートでも調べてみましょうか)

そう考え、海未は部室からちゃっかり持ち帰ったノートが入ったカバンを探った。
しかし、そこにノートの姿は見当たらない

海未(おかしいですね…確かにここに…あれ…?)

ノートが…ない?

海未「お、おかしいです、、そんなはずは…!」ガサゴソ

29: 2016/05/06(金) 03:57:39.30 ID:XlbvK1jM.net
 
海未母「海未さん…?どうかしましたか?」

海未「は、母上!な、何でもないのです…何でも…!」

海未母「そうですか?ならいいのですけれど…」

海未母「今朝は寝坊したらしいじゃないですか、夜更かしは程々にしておいた方がよろしいですよ?」

海未「はい。わかりました。今日は早くねることにしますね おやすみなさい」

海未母「おやすみなさい」

そういうと母は自室へと戻っていった

海未「無くすハズがないのですが…誰かに盗られた、というのもおかしな話ですし、そのうち出てくるでしょう…今日はもう寝ましょう」

その後、不思議と海未はすぐに寝付く事ができた。そして海未は夢を見た

30: 2016/05/06(金) 03:59:05.72 ID:XlbvK1jM.net
 


海未(こ、ここは…?)

海未(これは夢…ですよね。音ノ木坂の校舎のようですが…)

海未(どうやら自由に歩けるようですね…少し探索してみましょう)

海未(しかし、ここまで意識がはっきりした夢は久々ですね。まるで夢じゃないかのようです…)

海未(さて、とりあえず私たちの部室に向かってみましょうか)

少し視界が歪んでいるのは夢のせいだろうか
フラフラと海未は歩を進めていく

海未(女の子どころか…他に人がいる気配がしませんね。というよりどうやら今は夜のようですね 外に月が見えます)

31: 2016/05/06(金) 03:59:34.62 ID:XlbvK1jM.net
海未(部室に着きました)

何を思ったわけでもなくなんとなく気になっていたので部室の中を調べてみる
が、いつも使っている部室と何も変わらないようだ。
壁にはにこの好きなアイドルのポスター
棚にはにこの私物のグッズやDVDなど、そっくりそのまま揃っている

海未(こうみるとにこのものばかりですねこの部室…私も何か置いてみましょうか、、なんて)

海未(あまり面白くないですね。屋上で空でも眺めたい気分です)

夢にしては妙に面白みがない、というよりあまりにも現実的すぎる状況に飽いてしまった故に普段はできないようなことがしてみたかった。
星を見るのは好きだ。心が落ち着くというか、癒されるというか。
とにかく、夢でしかできないことをやってみようと思い立ち屋上へと海未は進んだ

32: 2016/05/06(金) 04:01:26.40 ID:XlbvK1jM.net
屋上のドアは 夢だからだろうか 不思議と鍵はかかっておらずすんなり開いた。

屋上にはアイドル研究同好会で何回か練習に使っただけであまり来たことは無かった
はしごを登ると街も夜空も一望できそうなのでちょっぴり怖かったがはしごを登ることにした

33: 2016/05/06(金) 04:02:35.55 ID:XlbvK1jM.net
 



空にはすっかり星達がちりばめられ、少し冷たい空気がそれを一層際立てているようだ。


よたついた手で、まだ見ぬ景色を拝むためはしごを掴み、1段ずつ登っていく


屋上へ登ると不意に胸が熱くなった
初めて来たはずなのに、何故か前にも来たことがあるようなそんなデジャヴに襲われた



その日の夜は 今まで見たどんな景色よりも美しく 星はいつまでも輝いていた




 

34: 2016/05/06(金) 04:03:50.40 ID:XlbvK1jM.net
 
不意に夢で会った女の子の事を思い出した。
何故だろう
胸がとても熱い
太陽のように笑う少女
名前は…


海未「______穂乃果…?」

海未「穂乃果は…どこへ…?」



月は 優しく微笑んでいた



 

35: 2016/05/06(金) 04:04:35.65 ID:XlbvK1jM.net
_____________

_____________


ピピピ…ピピピ…ピピピ…

布団の横のアラームがけたたましく鳴り響いている

海未「……。」

意識ははっきりしている

しかしアラームを止める気にはなれなかった

36: 2016/05/06(金) 04:05:01.27 ID:XlbvK1jM.net
ピピピ…ピピピ…ピピピ…

そろそろ母が私を起こしに来るかもしれない
仕方なくアラームに手をかけ止めたがやはりまだ体を起こす気にはなれない

頭の中を一つの名前が何度も何度も巡っている

「穂乃果」

太陽のように笑う少女穂乃果

何故かは分からないが私は知っていたのだ
夢で会っただけの少女の名前を
しかしまったく誰なのか分からない

海未母「海未さん?起きてますか?」コンコン

海未「大丈夫ですよ母上!ちゃんと起きてます!」

37: 2016/05/06(金) 04:05:27.98 ID:XlbvK1jM.net
海未母「そうかしら?昨日から調子でも悪いのですか?」

海未「いえいえ!そんな事はありません!園田海未、絶好調です!」

海未母「まぁ!元気がよろしくて」フフッ

海未母「どうやら杞憂だったみたいですね。あまりお寝坊はよろしくありませんよ?」

海未「わかってますよ」

海未「ところで母上」

海未母「どうかしました?」

海未「穂乃果…という名前に心当たりはありませんか?」

38: 2016/05/06(金) 04:06:02.10 ID:XlbvK1jM.net
海未母「穂乃果……?うーんどうだったかしら…あまり聞き覚えない名前ですね…その方がどうかされたのですか?」

海未「いえ、何でもないんです ただ知ってるかどうか確かめたかっただけなので…」

海未母「そうですか? 海未さん、最近変な事多いわね」フフッ

海未「そ、そんなに変でしょうか…!」

海未母「そうね…昨日も夜中にゴソゴソなにかしてらしたし、朝は寝坊するし…」

海未「ほ、ほんとにココ最近だけなんです!明日からはちゃんと戻りますよ!」

海未母「期待しておくわ 朝ごはんできてるから食べにいらっしゃってね」

39: 2016/05/06(金) 04:06:45.92 ID:XlbvK1jM.net
海未「はい、ありがとうございます」

母はそう言って私の部屋から出ていった

やはりあの夢を見てから私は変になってしまったのだろうか
ことりにお説教されたばかりなのにまた夢の女の子の事を考えてしまっている

しかしもう私の探究心は抑えきれない

海未「穂乃果… 手がかりはそれだけですが、見つけて見せます…!」





こうして私の太陽探しが始まった



 

49: 2016/05/06(金) 16:03:53.14 ID:L0+ZPqEt.net
再開

50: 2016/05/06(金) 16:04:47.37 ID:L0+ZPqEt.net
 

母が作ってくれた目玉焼きを完食してからすぐに身支度を済ませるといつもより20分早く学校へと向かった
とりあえず、屋上に何か手がかりがあるはずだ。屋上へ行けばなにかわかるはずなのだ
海未は自然と早歩きで、かつ大股で歩を進めていた。

海未(ああいけない、ことりに『先に学校へ行く』と連絡しなくては)

ことりに連絡しようとケータイをカバンから出し、メールを打とうとした時だった
前方にことりらしき人影が学校に向かっているのが見えた

海未「あのとさかは…間違いなくことりですね」

ことりはすぐに校門をくぐり校舎の中へと入っていった

51: 2016/05/06(金) 16:05:23.16 ID:L0+ZPqEt.net
海未「こんなに朝早くからどうしたのでしょうか… まさか私の持ち帰ったノートの持ち主はことりだったのでしょうか?」

その肝心のノートは無くしているが…
何はともあれことりがこんなに朝早くから学校に来てるのは異常な事態だ。
毎日待ち合わせをしていて、3分でも遅刻しようものならすぐに連絡をしてくるくらいなのに今日に限って何も連絡無しというのはやはりおかしい
少し嫌な予感がしたので後をつけてみるつもりでタイミングをずらしながら部室へと向かった



海未「少し…ドキドキしますね。。」

ドアノブにゆっくりと手をかける
そういえば人が全く見当たらない
やはり朝早く来る物好きは少ないのだろうか。。といっても20分早く来ただけなのだが

52: 2016/05/06(金) 16:05:52.09 ID:L0+ZPqEt.net
そんな事を考えながらドアノブを引いてドアを開ける

部室の中を見渡すが人がいる気配はない

海未「…?ことりは部室には来てないのでしょうか?」

ことり「海未ちゃん?」

突然背後からとろけるような、甘い声が聞こえてきた。

53: 2016/05/06(金) 16:06:20.37 ID:L0+ZPqEt.net
しかし唐突だったため思わず海未は体を震わせて身構えた

海未「こ、ことり…?! あ、朝早くからどうしたのですか?」

冷静を装って対応しようとするが、こういう時の私はまるでダメだ
自分でも分かるくらい動揺してしまっている
声がうわずり、少し冷や汗もかいてるかもしれない
しかし本能的に何か危険を感じる海未の体の硬直は解けない つまり今私は戦闘態勢にある

相手が何をしてこようが対応できる自信はある
ことりはよく知る相手の為寧ろ少し手加減してこの場を制圧する事も可能だろう

背後を取られたにしては素晴らしい対応だと自負している
今私は膝を少し落とし、拳を軽く握り相手に警戒されない程度に力を貯めている
くるならこいといわんばかりの体制だ

54: 2016/05/06(金) 16:06:53.80 ID:L0+ZPqEt.net
ことりは相変わらず笑顔を貼り付けたままこちらを見ている

ことり「……ぷぷっ、あはは♪」

ことり「う、海未ちゃんどうしたの?」

海未「ど、どうかしたのはことりでしょう?私に連絡も無しにこんなに早く学校に来てるなんて何かあるとしか思えませんよ?」ダラダラ

ことり「今日は学校も同好会もお休みだよ?」

海未「………へ?」

55: 2016/05/06(金) 16:07:19.91 ID:L0+ZPqEt.net
その瞬間海未の体から魂が抜けるかのように硬直が解けた

海未「…な、そんな…先に言っておいて下さいよ!」

ことり「先にもなにも、昨日先生言ってたよ…?今日は3年生だけ登校だよぉ?」

体が熱い
耳が、顔が沸騰しているかのようだ

恥ずかしい…!

仮にも何かされると思って迎撃体制までとってしまった自分の勘違い、ことりのことをすこしでも怪しいと感じてしまっていた自分を叩き潰したい衝動に駆られている

海未「あ、あははは…いえ、なに、ことりが朝早くから学校に向かうのが見えたので少し追ってみただけなんですよ」

ことり「? ことり、ついさっき学校に来たばっかりだよ?」

56: 2016/05/06(金) 16:07:53.79 ID:L0+ZPqEt.net
ことり「海未ちゃんがソロソロ部室に向かってたから、怪しいなぁ~って思ってちょっと声かけてみたの♪」

ことり「そしたら海未ちゃん大慌てだからことりびっくりしちゃいました♪」

相も変わらずことりは笑顔で説明する

海未「まぁ、慌てたというか、ちょっぴりびっくりしただけですよ!」

ことり「ふぅ~ん♪」ニヤニヤ

海未「あ、あの、ことりは何故休みなのに学校へ?」

ことり「あ、ことりはぁ…」

57: 2016/05/06(金) 16:08:22.31 ID:L0+ZPqEt.net
ことり「…内緒!」

海未「え、えぇ~?!ずるいですよことり!」

ことり「うふふ、教えたくない時もあるんです♪」

海未「そ、そんなぁ…」

ことり「それより早く部室に入ろ?」

海未「あ、ええそうですね。立ちっぱなしもなんですしね」

少し落ち着きを取り戻した海未が部室のドアをくぐり、椅子に座ろうと手をかけた時であった

58: 2016/05/06(金) 16:09:45.79 ID:L0+ZPqEt.net
部室のテーブルに、ベージュの、例のノートが置いてあることに気がついた

海未「!!!?」

海未「何故、ノートが…!?」

ことり「ノート?」

ことり「あ、ほんとだ このノートは海未ちゃんの?」

海未「い、いえ。私のものではないのですが…」

ことり「ちょっと中身見ちゃおっと♪」

ことり「どれどれぇ~?」

海未「あ、よしたほうがいいかと…」

ことり「…?なんにも書いてないよ?」

59: 2016/05/06(金) 16:10:12.36 ID:L0+ZPqEt.net
海未「え?あ、そ、そうなんですよ、、新品みたいで、名前も書いてなくて、誰の物なのか分からないんです」

ことり「なんだ~、そうなんだね 明日にでもみんなに聞いてみようかな」

海未「そうですね。それがいいと思います。」

海未(しかしなぜ持ち帰ったハズのノートがここに… いや、果たして同じノートなんでしょうか)

海未(ことりが見た限りでは何も書かれていなかったようですが…)

気になった海未はノートをペラペラと最後のページまでめくる…


ことり「ところで海未ちゃん」

ことり「夢の女の子はもういいの?」

60: 2016/05/06(金) 16:10:49.24 ID:L0+ZPqEt.net
海未「はっ!」

すっかり忘れていた…
やはり最近の私はどうも抜けているようだ…

海未「そうでした!ことりは穂乃果という名前に聞き覚えはありませんか?」

ことり「ほのか…?」

海未「そうです。穂乃果です」

ことり「それが…夢の女の子の名前なの?」

海未「どうやらそのようなんです。もしかしたら違うかも知れませんが…」

ことり「うぅん??…ちょっと曖昧かなぁなんて思うけど、夢だもんね 仕方ないね」

ことり「残念だけど穂乃果っていう名前には聞き覚えないなぁ」

61: 2016/05/06(金) 16:11:20.64 ID:L0+ZPqEt.net
海未「ううむ…やはりそうですか。」

海未「致し方ありませんね…」

海未「あ、あと屋上に登りたいのですが、今日は鍵は空いてるのでしょうか」

ことり「えぇとぉ、多分空いてると思うけど空いてなかったらお母さんに言えば開けてくれると思うよ♪」

海未「そうですか…ありがとうございます。」

海未「そういえば今日は3年生が登校しているようですが ということは、にこと絵里は学校に来てるのですよね?」

ことり「うんそうだよ あ、でも絵里ちゃんは生徒会長だから忙しいかも」

ことり「時期生徒会長が決まらないからとっても焦ってるみたいだったよ?」

62: 2016/05/06(金) 16:11:51.51 ID:L0+ZPqEt.net
ことり「今絵里ちゃんに会うと勧誘されちゃうかもね♪」フフッ

海未「確かにそうですね…気をつけることにしましょう。」

海未「ご忠告ありがとうございますことり」

ことり「どういたしまして♪」

海未(ぜひにこと絵里にも穂乃果の名前を知っているか聞いておきたいですね…もちろん絵里の勧誘には気を付けなければならないですが)

海未(とりあえず屋上に向かってみることにしましょうか)

結局ことりが何の用事で来たのかはよくわからなかったが、とりあえず部室に残るらしいので軽く別れの挨拶を済ませてから部室を後にした

昨日の夢の時とは違い、外には太陽がさんさんと輝いており校舎にも窓ガラスを通して日光が差し込んでいる

海未(最近は晴れてる日の方が多くなってきましたね 春の訪れを感じるようです)

63: 2016/05/06(金) 16:12:23.15 ID:L0+ZPqEt.net
海未(さて、屋上につきましたが…)

海未(…よし。鍵は開いてるみたいですね)

昨日と同じようにドアを開け、屋上のはしごを登ってみる。
青空が広がっておりとても気持ちがいい

海未「うーん素晴らしい景色ですね」

海未「しかし、ここに来ればなにか分かるかと思いましたが特に何もないようです…」

海未「困りましたね。」

海未「いえ、しかしあまりにも気持ちがいい天気です。少しこのままぼーっとするのもいいでしょう」

海未は腰を落としてしばらく空を眺めていた

海未(最近は一気に色々なことが起きて頭が少しこんがらがっているようです 少し整理してみましょう)

64: 2016/05/06(金) 16:12:51.14 ID:L0+ZPqEt.net
海未(まず始まりはあの夢ですね)

海未(夢で、ある少女に出会いました。太陽の様に笑う女の子…、内容はよく覚えていませんがその子の微笑む姿だけは記憶に残っています)

海未(そしてその日、夢の事をばかり考えながら過ごしていた日に学校へ忘れ物を取りに帰った時部室でノートを発見しましたね)

海未(ノートには赤い文字で 太陽を奪ったのは と、そう書いてありました)

海未(太陽、というのは当然比喩表現だとは思いますが私にはあの夢の少女穂乃果をどうしてもイメージしてしまいます 少しこじつけがすぎるかも知れませんが)

海未(このノートについては何も関係ないかもしれませんしあまり考えないようにはしたいですが、気になるのは持ち帰ったはずなのにまた部室に置いてあった事ですね)

海未(誰かに盗られてまたあそこに戻されたのか…はたまた私が勘違いしていただけなのか…ノートが勝手に移動したのか…どれも可能性としては極めて低いです)

海未(ノートの移動と文章の意図、持ち主など謎が多いですがあまり関わりたくはない気がします。これについてはもう本当に勘としか言いようがないですが)

65: 2016/05/06(金) 16:13:21.08 ID:L0+ZPqEt.net
海未(さて、ノートを無くした事に気づいたその日、というか最初に穂乃果と出会った夢の次の日の夢ですが)

海未(夜の音ノ木坂の校舎を歩く夢でしたね 今のように屋上まで登りましたが、そこで穂乃果の名前を知りました。)

海未(原理はよく分かりませんが…まるで今まで忘れていた物を突然思い出すような、そんな感覚で穂乃果の名前を知ることができました。何が起因しているかは、やはりこれも謎です)

海未(そして今私は屋上になにか原因があるのではと思いここにいますがあまり関係はなかった…)

海未(最近起こった出来事はこんなところですかね。 さて、何はともあれ、穂乃果探しは始まったばかりです)

海未(となればにこと絵里に聞き込みですね…!)

海未(知っている可能性はゼロに近いかもしれませんがあらゆる人に聞いておいて損はないでしょう)

66: 2016/05/06(金) 16:15:08.30 ID:L0+ZPqEt.net
海未は少し長めの考え事を済ませると屋上を後にし、3年の教室へと向かった

海未(ええと…にこのクラスはと…ありました。これですね)

教室の扉から教室を覗くと、始業前だからだろうか、クラスの半分程の生徒は既に居て友人達と談笑しているようだった

そんな教室の後ろ端の角の席で、頰杖をつきながら外を眺めて座っているツインテールの少女 矢澤にこがいた

にこはアイドル研究同好会の会長で、アイドルへの情熱に燃える女子高生だ
同好会自体はにこが1年生の時に設立されたらしいが、少し発足時のメンバーといざこざがあったらしく結果、にこだけが残りそのままクラスメイトとは疎遠気味になっているようだ

現に私は絵里や希先輩以外に、にこが3年生と一緒にいるところを見たことが無いし今もクラスの仲間と喋る気配もないようだ

67: 2016/05/06(金) 16:15:37.18 ID:L0+ZPqEt.net
私なら少し寂しく感じてしまいそうだが、にこは芯が強いし何より絵里と希先輩、そして同好会メンバーがいる。同好会に私達が入らなければどうなってたことやら…

海未(まぁそんなことはさておき、にこに少し話かけてみましょうか)

海未「にこ、少し話があるのですが…」

にこ「…?、う、海未?驚かさないでよ。どうしたの?」

海未「いえ、特に用事ではないのですがお尋ねしたい事がありまして」

にこ「へぇ、なにかしら」

海未「穂乃果、という名前 ご存知ではないですか?」

にこ「ほのか…?さぁ、知らないわね」

にこ「一体だれなの?それ」

68: 2016/05/06(金) 16:16:08.45 ID:L0+ZPqEt.net
海未「私もよく知らないのですがその穂乃果に私は会いたくてこうして誰かご存知ではないかと聞き回ってるんです」

にこ「ふぅん?よくわかんないけど」

にこ「特徴とかはないの?」

海未「特徴、そうですね…太陽のように笑う。というところでしょうか」

にこ「太陽?笑顔ならにこの方がプリティだけど」

海未「知らないならいいんです知らないなら」

海未「突然失礼致しました では」

にこ「あ。ちょっと待ちなさいよ!ラブライブの事はかんがえてるんでしょーね!?」

これはまずいと感じた海未はバレバレの聞こえないふりをして颯爽と3年の教室から立ち去った

69: 2016/05/06(金) 16:16:56.18 ID:L0+ZPqEt.net
 
海未(危ないところでした…ふぅ)

海未(さて、次は絵里に聞いてみましょうか 教室には見当たらなかったので生徒会室でしょうか)

海未(そういえば最近はやっと 絵里 と自然に呼べるようになってきましたね…)

私が同好会に入る前は、生徒会長の綾瀬絵里といえばとても厳格で近寄り難いイメージでした
しかしいざ同好会に入って距離が近づくとそのイメージは間違いだったと気づき、少々抜けているところもありますが基本的には頼れるお姉さん、と言ったところでしょうか そんなイメージに変わりましたね

お互い呼び捨てにして、親交を深めましょうというのも絵里の提案だ。

海未(最近ではたまに自分はかしこいかわいいエリーチカだったなんて事を言っていますがあれは一体なんのアピールなのでしょうか…)

70: 2016/05/06(金) 16:17:40.41 ID:L0+ZPqEt.net
海未(…生徒会室に着きました)

海未はとりあえずドアをノックしてみる
中から「どうぞ?」と絵里の声がした

ドアを開けてみるとそこにはテーブルの上の書類とにらめっこしている絵里と、その横でニコニコとシークワーサーらしき物を撫でている希先輩がいた。

希「あら、海未ちゃん どうしたん?今日は海未ちゃんはお休みのはずやろ?」

絵里「あら本当だわ もしかしてやっと生徒会長になる気になってくれたのかしら?」

ぐっ、早速勧誘ですか…

海未「ち、違います!少々手違いで登校してしまっただけで用事が済んだら帰ります!」

71: 2016/05/06(金) 16:18:06.85 ID:L0+ZPqEt.net
絵里「あら残念ね… それで?用件はなにかしら」

絵里も半ば諦め気味なのだろうか
今日はしつこく勧誘してこないようだ

海未「あ、いえ ほんとに大した用事じゃないのですが」

海未「少し人さがしをしておりまして…穂乃果という方、ご存知ではないですか?」

絵里「ほのか……珍しい名前ね 1度聞いたら忘れなさそうなものだけど、残念ながら記憶にないわ」

海未「そうですか… 希先輩はどうです?」

ついでなので、ということで海未は希にも尋ねることにした

72: 2016/05/06(金) 16:18:53.19 ID:L0+ZPqEt.net
海未(希先輩はとてもミステリアスな方で色々な事を知っているイメージですね)

いつも絵里と一緒にいる希先輩
とにかく謎が多く、同好会メンバーが集まったのも密かにこの人の働きなのではないかと私は睨んでいますが真実はわかりません
同好会メンバーではないのですがよく部室に来ては助言やアドバイスをしてくれる、いわばお助けキャラのような方ですね とても助かっています…
同好会メンバーにいつも勧誘はしていますが頑なに入ろうとはしません…「うちは違う」とか、「人数が」とか。意外と照れ屋なのかもしれませんね

希「そうやねぇ…ほのか か」

希「いい名前やね♪」

73: 2016/05/06(金) 16:19:16.70 ID:L0+ZPqEt.net
海未「あの、名前の感想ではなくてですね…」

絵里「希、私職員室に書類の提出に行ってくるから留守番よろしく頼むわね」

希「アイアイサー!了解やでエリチ!」

絵里「テンション高いわね… まぁいいわ」

そういう絵里は何枚か書類を手に、生徒会室から出ていった

海未「それで、穂乃果についてなんですが…」

希「あーうちは知らんよ?」

海未「ですよね…」

希「でもな海未ちゃん」

希「あんまりその名前、ペラペラと喋らん方がいいと思うよ」

74: 2016/05/06(金) 16:20:26.44 ID:L0+ZPqEt.net
海未「?」

海未「何故でしょうか」

希「これはうちの勘なんやけどね、その名前を大勢が知って良いことはないと思うんよ」

希「いや、そもそも海未ちゃんが知ってること自体間違いなのかも…まぁそれはともかく、」

希「その人が案外近くにいたとして、自分の名前がお尋ね者で広まってたら嫌やろ?」

海未「それは確かにそうですね 希先輩の言う通りです」

希「そ、だから あんまり広めんといてあげて?」

海未「分かりました…ですが私が知っていること自体が間違いというのはどういうことでしょうか?」

希「あぁそれはちょっとした言葉の綾や。わすれといて?」

75: 2016/05/06(金) 16:21:05.82 ID:L0+ZPqEt.net
海未「うぅむ、分かりました。ではこれからは必要最低限にしか名前を出さないようにしますね」

希「素直でよろしい!」

希「…あとね海未ちゃん」

海未「はい、まだなにか?」

希「これは大切な話やからよく覚えといてほしいんやけどね」




希「人って案外簡単に氏ぬんよ」

76: 2016/05/06(金) 16:21:44.44 ID:L0+ZPqEt.net
海未(…?)

希「それは誰かの意図なのか、世界の意思なのかは分からないんやけど ちょっとしたことで氏ぬようになってるのよ」

海未「よく、意味が分かりませんね… 希先輩はなんの話をしているのでしょうか」

希「例えば会話でうっかり'言ってはいけないワード'なんか喋っちゃったり、突然の出来事に動揺した挙句間違った選択肢を選んじゃったり、守るべきものを間違えたり、絶対に氏ぬはずないと過信して行動した結果しんじゃったり」

77: 2016/05/06(金) 16:22:16.17 ID:L0+ZPqEt.net
 
海未は冷や汗をかいていた
目の前の人が真剣な表情で喋っている事が何の事を言っているのか本当に理解できない
希先輩はミステリアスな人だとは思っていたがこれはもうそんな甘いものではない

異常だ

まるで何人もの氏を見てきた経験を話しているかのような、そんな雰囲気を醸し出している

 

78: 2016/05/06(金) 16:23:03.91 ID:L0+ZPqEt.net
希「だからね海未ちゃん、危険なことは絶対にせんといてね」

希「どうしても困ったら1人で悩まないで」

希「いつだって、大切な物がなんなのかを考えて選択してほしいんよ」

最近は本当に私は変なのかもしれない
でも
どうしても私は聞きたかった



この人は多分知っている


手に汗をかいているのがよくわかる
緊張しているのだろうか



私はこの答えを知ってどうしようというのか

でも、今聞かないと一生後悔するような気がした



海未「希先輩…」

海未「太陽を奪ったのは…誰なんですか?」







 

92: 2016/05/08(日) 03:57:37.92 ID:Pbv8aLR2.net
_____________

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私は、特別な力を手に入れた

夢を見る力だ

正確には多分、夢ではないのだろうけどとりあえず夢と言っておこう
この力は寝ている時にしか発動しないらしい

私は長い長い夢を見ていた

そこでは私は音ノ木坂学院で結成されたスクールアイドル「μ's」の1員だった

μ'sは、太陽…穂乃果に導かれてスクールアイドルの大会 ラブライブで優勝するまでに到った

93: 2016/05/08(日) 03:58:27.45 ID:Pbv8aLR2.net
優勝するまでにはもちろん様々な困難や問題があって…それでも私達は負けずに立ち向かい、果てに決して途切れることの無い絆を手に入れた

お互いに成長し合い、励まし合い、協力し合っていろんなライブをしていろんな人を笑顔にしてきた

でも、μ'sは決して避けることのできない「終わり」を迎えた

終わりというのは形あるものすべてに訪れるもので、それはμ'sも例外ではなかった

終わりを先延ばしにする方法はあるにはあった

私達は散々悩んだし、話し合った

私はどちらかというと終わりを先延ばしにしたかった ただの夢といえば夢なのだけど、それでもμ'sは綺麗で、美しくて、
できれば永遠にあり続けて欲しいと、そう願いたかった

94: 2016/05/08(日) 03:59:42.48 ID:Pbv8aLR2.net
 
でも、太陽曰く、「今が最高」なんだそうだ

μ'sの3年生が卒業式を迎えた日
私はその日で夢が醒めた

せめて3年生をきちんと送り出したかったものだが、能力の限界なのだろうか
私はそれ以上はその夢の世界にはいられなかったようだ

目が覚めて私は気づいた

この世界には太陽がいない
探しても探しても太陽は見つからなかった
もちろんμ'sなんて存在するはずなかった

一応、「アイドル研究同好会」なんていうまがい物はあったが太陽が無ければ意味がない

95: 2016/05/08(日) 04:01:22.44 ID:Pbv8aLR2.net
太陽はどこへ行ったのだろうか

太陽が無ければ、人間は、人は、私は生きていけないのだ

太陽は…奪われたのだろうか、
太陽を…奪ったのは誰…?

私は無意識のうちにノートに「太陽を奪ったのは」なんて事を書いてしまっていた


太陽なんかはじめから、この世界にはなかったという事に本当は気づいているはずなのに…

私は多分、この先もあるはずのない太陽を探して生き続けるのだろう

太陽無き世界で




____

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96: 2016/05/08(日) 04:02:38.58 ID:Pbv8aLR2.net
 




海未が部室から出ていったあと、
ことりは部室で困惑していた

たまたま見つけたノートに書いてあった意味深な文字列。
困ったことにことりはこの文字の書き方に見覚えがある

ことり「海未ちゃんには思わず何も書いてないって言っちゃったけど…」

ことり「この書き方、見たことあるんだよね」

ことり「どうしよう…でも、別に危ない事を書いてるわけじゃないし…人が困るようなこと、でもないよね」

ことり「ことりも無意味に変なこと書きたくなる時あるし…多分そういうことなんだよね」

ことり「'太陽を奪ったのは'、か…」

97: 2016/05/08(日) 04:03:29.71 ID:Pbv8aLR2.net
ことり「なんにも言わずにかえしてあげるのが1番いいかな!うん、そうだよね!」

若干、引いてしまうような文章な為本人からしたら人に見られたというだけでも相当に恥ずかしい事だろう ならば他の人の目に触れる前に返してあげるのが1番だ

そう考えたことりはノートをカバンにしまい、部室を後にすることにした

ことり(それにしても海未ちゃんには意味深な事言っちゃったな…ホントは部室に裁縫セット忘れたから取りにきただけなのに変に疑い深くさせちゃったかも)

ことり(ことり、ちょっぴり反省です)

98: 2016/05/08(日) 04:04:01.34 ID:Pbv8aLR2.net
 
ことりが部室で1人反省をしていた時、生徒会室では海未と希が2人、無言のまま見つめあっていた

海未は希の返事をじっと待っている
返事を急かしたい気持ちでいっぱいだったがそれらを抑え、ただひたすらに希の事を見つめていた

希は海未の視線に耐えられなくなったのか、部室のテーブルに置いてあったタロットカードをシャッフルし始めた

1度テーブルにタロットの山札をバラけさせ、円を描くように混ぜた後にまたそれらを集め山札を作っていく

希は完成した山札から1枚カードを引いた
引いたカードをじっと見つめながら希は重い口をやっと開いた

99: 2016/05/08(日) 04:04:33.26 ID:Pbv8aLR2.net
 




希「…太陽を奪った人なんていないんよ」

希「みんな、見失っただけなんよ」

希「夜に太陽を探しても見つかるはずないやろ?」

希「でもね、これだけは覚えといて」

希「月は太陽がないと輝けないのよ」


 

100: 2016/05/08(日) 04:05:15.93 ID:Pbv8aLR2.net
 
海未「…そう、ですか」

海未「やはりどうも、希先輩の言うことは私には難しいようです」

希「うふふ、分からなくてもいいんよ」

希「ちょっと喋りすぎてしまったみたいやね」

希「まぁ今喋った事は頭の片隅にちょっと置いといてくれるだけでいいんよ?」

希「あんまり難しく考えても、頭痛くなっちゃうからね」

海未「はぁ…そうですか」

101: 2016/05/08(日) 04:06:49.72 ID:Pbv8aLR2.net
ノートの持ち主は希ではなかったのだろうか
さっきの話を聞いてなんとなく希先輩なのではと考えたが太陽を奪った人はどうやらいないらしい…、いや話を私はよくわかっていないのだが

海未「まぁ、これから穂乃果という名前は気をつけて使いますね」

希「うん♪それがいいと思うよ」

そう希が笑顔で返したと同時に、生徒会室の扉が開かれた

絵里「ふぅ~、少し提出に手こずって遅くなっちゃったわ。ごめんなさいね?」

希「いいんよエリチ、海未ちゃんとそのあいだお話できたしね」

絵里「あら?そうかしら それは良かったわ」

絵里「それで、用件は済んだのかしら?海未」

海未「あ、はい 大丈夫ですよお騒がせいたしました」

海未「それでは私はこれで失礼しますね」

そう言うと海未はそそくさと生徒会室から出ていった

102: 2016/05/08(日) 04:07:35.56 ID:Pbv8aLR2.net
絵里「なんかちょっと海未変じゃなかった?希、あなた何かしたの?」

希「うぅんうちはなんにもしてないよ」

絵里「…ふぅん」



海未(結局、穂乃果についての情報は全然得られませんでしたね…)

海未(しかもあまり名前を出すなと忠告される始末です)

海未(これから一体どうすればいいのでしょうか)

海未(とりあえず今日のところはもう帰りましょう…)

途方にくれた海未は学校を後にし、帰宅した

103: 2016/05/08(日) 04:08:34.96 ID:Pbv8aLR2.net
 

海未(穂乃果を探すのに、聞き込み以外でいい方法はないのでしょうか…)

海未(というより、本当に穂乃果はこの世界に存在するのでしょうか…私は、存在するはずのない人間を探しているのではないでしょうか)

海未(そもそも穂乃果なんていうのは私の妄想なのかもしれません)

海未(…そうです。やはり最近の私はどうかしていました。夢で会った少女を、何故だか勝手に穂乃果と名前をつけて現実の世界で探していたのです)

海未(異常と言わざるを得ないですね…まったく。)

海未(もうやめです!こんな無駄な事は!)

海未(…………でも何故でしょうか)

海未(どうしても穂乃果が現実にいるのだと信じている私がいます)

104: 2016/05/08(日) 04:08:59.62 ID:Pbv8aLR2.net
海未(そもそも私は穂乃果と会って何をしたいのでしょうか)

海未(何故私は……)

海未(…………夢の中で見た星。とても綺麗でしたね)

海未(屋上へ…昼の屋上ではなく、夜の屋上へ登ってみたいものです)

海未(…はぁ、なんだか疲れました。今日はもう布団に入って眠ることにしましょう)

海未(…いい夢がみたいものです)

105: 2016/05/08(日) 04:09:36.63 ID:Pbv8aLR2.net
海未は少しの期待を胸に床に就いた
しかしその日、海未は夢を見ることはなかった
目が覚めると既にもう朝だった


海未「ふぅ…よく眠ったようです とても清々しい朝ですね」

今日も外はすっかり晴れているようだ
冬晴れというのだろうか。少し空気は冷たいが春を予感させるような気候だ

海未「さてと、今日こそはちゃんと学校がある日です。昨日は間違えて登校してしまいましたが今日はもう自信を持って登校しましょう!」

海未は日課の朝稽古を済ませ、母親が調理してくれた朝ごはんをしっかり平らげるといつものように前日にきちんと用意した玄関に置いてあるカバンを持って家を出た

106: 2016/05/08(日) 04:10:03.85 ID:Pbv8aLR2.net
ことりとの待ち合わせ場所にいつもより5分程早くついたが既にことりはそこにいた

ことり「おはよう海未ちゃん♪」

海未「おはようございますことり」

海未「さて、学校へ向かいましょうか」

ことり「うん♪ そういえば海未ちゃん、夢の女の子…見つかった? 穂乃果ちゃんだっけ」

海未「ええ…その事なんですが…あまりいい方向には進んでないようなんです…」

ことり「そっかぁ…。やっぱりむずかしいよね」

ことり「ことりに出来ることがあったら言ってね ことりもきになるから力になりたいな」

海未「それは心強いですね ありがとうございます」

ことり「…会えるといいね」

107: 2016/05/08(日) 04:15:33.63 ID:Pbv8aLR2.net
海未は内心少し諦め気味になっていたがことりにはその旨は伝えずにいることにした
多分ことりも現実にその女の子が存在しているなど本気で思ってはいないのだろう
ことりのことだ、もしいたら素敵程度にしか考えてないかもしれない
私も、もしかしたら穂乃果にいて欲しいという願望があるだけなのかもしれない…

そんな事を考えているうちに学校へと着いた

その日は少し気の抜けたまま授業を受け、黒板に書かれた文字を写すだけで後は穂乃果探しの方法を考えることに時間を費やすだけだった。
幸い、先生に指されたりする事もなく平穏に1日が過ぎていった

108: 2016/05/08(日) 04:32:20.28 ID:QKMGE4CU.net
そしてその日の放課後、部室にて

にこ「いーい?みんな集まったかしら」

にこ「それじゃ前に言ったラブライブの件の返事聞かせて貰おうじゃないの」

凛「かよちん最近太ったかにゃ?」

花陽「エエ~!!!? 嘘…花陽、太ったように見える?」

真姫「確かに…ちょっと花陽太ったかもしれないわ」

花陽「ま、まきちゃんまで~! そんな…気をつけてたのに…」

凛「今日はお昼休み教室でこーーんなにでっかいおにぎり食べてたもんね」

真姫「そりゃ、あんなにでかいおにぎり毎日食べてたら太るわよ…」ハァ

ことり「あ、それ私も見たなぁ~ とっても美味しそうに食べてたよねかよちゃん♪」

花陽「う、うぅ……分かりました。。明日からおにぎりは小さくします。。」

絵里「そもそも炭水化物がいけないんじゃないかしら もっとこう…例えばサラダだけにしてみたり?」

花陽「お米は欠かせないんですっ!作るのも簡単だし、何より美味しい…♪ あぁまたお米食べたくなってきちゃいました」

にこ「はぁ全く呆れるわね花陽!にこなんかねぇ…ま、毎日三食サラダよ!!」

花陽「エエ゛~!!!?」

ことり「そ、それはちょっとやりすぎかも…」

海未「それでは逆に栄養が偏って、健康ではなくなってしまいますよ」

にこ「わ、わかってるわよそれくらいっ!」

109: 2016/05/08(日) 04:49:24.34 ID:QKMGE4CU.net
にこ「って、そうじゃなくてラブライブよ!ラブライブ!」

海未「あ、それに関してなのですが少し提案があるのですが宜しいですか」

にこ「なによ、しょーもないことだったら許さないからね」

真姫「珍しいわね、海未から提案なんて」

海未「いえ、ほんとにちょっと思っただけなのですが、このメンバーで合宿をしませんか?」

海未以外「合宿~!?」

123: 2016/05/12(木) 14:05:39.11 ID:VTttlpRn.net
にこ「って、そうじゃなくてラブライブよ!ラブライブ!」

海未「あ、それに関してなのですが少し提案があるのですが宜しいですか」

にこ「なによ、しょーもないことだったら許さないからね」

真姫「珍しいわね、海未から提案なんて」

海未「その………合宿、しませんか?」


海未以外「合宿~!?」

124: 2016/05/12(木) 14:06:13.64 ID:VTttlpRn.net
凛「なんだか面白そうにゃ!」

にこ「な、なんでまた急に…」

ことり「ど、どこでするの?」

海未「唐突で混乱させてしまい申し訳ないです」

海未「しかし、ラブライブ出場については1度みんなでゆっくり考える必要があると思うのです」

海未「それに…3年生はもうあとひと月足らずで卒業してしまいます。ラブライブに出るかどうかはともかく、最後にはやはり活動実績として、私はみんなで歌いたいです」

海未「そうなるとやはり合宿を通して話し合いや質の高い練習をした方が良いと私は思ったのですが…どうでしょう」

海未「あ、場所は学校がいいと思ってます。意外と練習環境も揃っていますし、なにより合宿を学校でするって…素敵ではありませんか?」

125: 2016/05/12(木) 14:06:37.31 ID:VTttlpRn.net
にこ「……あんた、そんな事いうキャラだっけ」

にこ「なにか計算され尽くしたものを感じる提案だけど…でも、いいんじゃない?」

絵里「ええ!とてもいい意見だと思うわ!学校で合宿…!素敵な響きね!」ハラショー

凛「学校でお泊まりなんて凛、初めてだよ~!楽しみだねかよちん!」

花陽「うん!ワクワクするね!」

真姫「もう、まだ決まったわけじゃないでしょ?」

絵里「あら?真姫は反対なのかしら?」

真姫「ち、違うわよ!私だっていい意見だと思うわ!」

ことり「じゃあ決まりだね♪」

海未「となると後は学校の許可ですが…ことり、お願いできますか?」

ことり「うん。頑張ってみるね」

海未「ありがとうございます」

126: 2016/05/12(木) 14:08:02.43 ID:VTttlpRn.net
海未(よし…ここまではうまく行きました)

海未(もちろん、合宿を提案した理由は先ほど言ったとおりなのですが私個人の目的は学校に泊まる所にあります)

海未(学校に泊まり、夜の屋上に登りそこで夢と同じシチュエーションにするのです)

海未(もしそれでも何も手がかりなく終わるようでしたら私はもう夢の人探しなんて事はもうやめます…)

海未(これは穂乃果探し最後の頼みの綱なのです。)

ことり「…?海未ちゃん?どうかした?」

海未「…はっ、またぼーっとしてしまっていたようです すみません!」

ことり「………まだ女の子のこと考えてるの?」

絵里「あれ?そういえばこの前穂乃果さん…だっけ、そんな人探しているようなこと言ってたわね」

凛「ほのか…?」

花陽「…!?」

真姫「だれよ…」

127: 2016/05/12(木) 14:08:37.76 ID:VTttlpRn.net
海未(やってしまいました…!希先輩に名前はもう出すなと言われていたのに…!)

海未(まぁまだ同好会の1年生で良かったです…全く、絵里ときたら…)

海未「それはもう終わったんです。だから大丈夫ですよ お騒がせしました」

絵里「そう…?ならいいのだけど」

絵里「あまり考えすぎは体に良くないわよ」

海未「そうですね 気をつけます」

海未(あなたにはもう少し考えて発言して欲しいものですが)

真姫「じゃあ、とにかくことり…お願いするわね」

ことり「うん任せて♪」

海未(どうやら合宿の件は上手く行きそうですね)

128: 2016/05/12(木) 14:09:03.42 ID:VTttlpRn.net
それから数日後…

理事長の娘であることりのおかげか、合宿はすんなりと許可を貰えたので土日を使って決行する事になった。海未は最後の希望を信じて当日を迎えた

勿論、合宿までに何度か就寝はしたが結局夢を見ることなくぐっすり眠っていた

もしかしたらまた夢で穂乃果と会えるのではと淡い期待を抱いていたが当然のように儚く砕かれた…。

合宿当日、音の木坂学院部室___。

にこ「さて…という訳で今日から一泊二日で練習と話し合いをしていくわけだけど…」

129: 2016/05/12(木) 14:09:27.87 ID:VTttlpRn.net
凛「凛今日ラーメンの材料持ってきたんだっ!」

花陽「エエェ!?凛ちゃん夜ご飯にラーメン作るのォ?!」

凛「うん!できたらかよちんにもあげるにゃ!」

花陽「わぁ!ありがとう凛ちゃん!楽しみ~!」

絵里「夜は電気を消すのかしら?」

真姫「何言ってるのよ…、消すに決まってるでしょ」

絵里「消さないっていう選択肢、たまにはいいと思わない?」

真姫「はぁ?いみわかんない 明るくて眠れないでしょ?」

海未「う~ん穂乃果…穂乃果…」ブツブツ

ことり「わぁこのマカロンおいしぃ♡」

にこ「…あんた達…ぶれないわね」

にこ「いーい!?あんた達!折角こんな機会を用意したんだから今までみたいなふわふわした雰囲気じゃなくて…こう、びしっと、、」

にこ「とにかく練習よ練習!!」

130: 2016/05/12(木) 14:09:56.75 ID:VTttlpRn.net
凛「何を練習するの?」

にこ「まずはにっこにっこにー100回よ!」

花陽「にっこにっこにー♡」

凛「…やりたくないにゃ」

花陽「…!?」

にこ「ぬぁんですってー!!?」

海未「まずは歌の練習からですね」

絵里「そうね、あと体力づくりも一通りやっておきたいわね」

にこ「じゃあそれでいくわよ!」

にこ「しっかりついてきなさい!」

花陽(なんだかなぁ…)

ことり「本格的になってきたね♪」

海未「ラブライブに出るとなれば、もっと前から練習しておかないと全然足りないくらいですが…まぁできる限りの事はやりましょう。」

131: 2016/05/12(木) 14:10:59.06 ID:VTttlpRn.net
真姫「海未から提案したんでしょ?もっと気合い入れなさいよ!」

海未「おや、真姫はやる気まんまんですね」

真姫「ち、違うわよ ただ、やるからには全力でやりたいだけよ」

海未「それをやる気まんまんというのでは?」

真姫「もう!馬鹿なこと言ってないで練習するわよ!」

凛「よーし、練習いっくにゃ~!」

・・・・・・・・・・・・・・・・

132: 2016/05/12(木) 14:11:47.39 ID:VTttlpRn.net
・・・・・・・・・・・・・

花陽「ふぅ~、やっぱり普段練習してないと体が疲れるね。。」

凛「凛はまだまだ元気だよ!」

真姫「さ、さすがね凛…ま、まぁ私もまだまだいけるけ、ど…」フラフラ

ことり(まきちゃん具合悪そう…)

にこ「あーらまきちゃんもう疲れてるにこ?ま、にこは全然平気だけどね~」

真姫「うるさいわね~まだいけるって言ってるでしょ!」

にこ「そんな事言っちゃって~ 無理しなくていいにこよ?」

真姫「にこちゃんだって、足、震えてるじゃない!」

にこ「え、えぇ!?これは足を震えさせる練習よ!」

真姫「意味わかんない!」

133: 2016/05/12(木) 14:12:16.99 ID:VTttlpRn.net
絵里「ほら、にこ…ラブライブ出場について話し合うんでしょ?」

にこ「ああそうだったわね…」

にこ「というわけで、あんた達ちゃんと考えてきたんでしょーね?!」

にこ「なにか意見ある?」

凛「………凛はやっぱり出たくないな…」

凛「凛はやっぱり、女の子らしくないし…仮にもアイドルをやるのは嫌だな…」

花陽(凛ちゃん…)

花陽「花陽も凛ちゃんと同じ、出たくないな」

花陽「人前に立つのも私は嫌だし、なによりラブライブに出るとしてもこの地区にはA-RISEっていうスクールアイドルが派遣を握ってて…いい思い出にさえならないと思うな」

絵里「…私は色々考えたんだけれど、出たいと思うわ」

134: 2016/05/12(木) 14:12:45.38 ID:VTttlpRn.net
絵里「最後だもの。シンプルにみんなと一緒に何かしたいわ」

にこ「私も同じ」

にこ「スクールアイドルって、学生のうちにしかできないの」

にこ「最後の学生生活をあんた達とラブライブに出たってなったら私は絶対後悔しないわ」

ことり「ことりは…出ない方がいいと思うな」

ことり「思い出を無理して作らなくても、充分私達は奇跡みたいな学校生活してたと思うよ」

ことり「最後までこのままっ…っていうのもいいんじゃないかなぁ」

真姫「みんなバラバラね… でも私は出たいわ」

真姫「みんなと一緒に歌って踊って…そんなの最高じゃない」

ことり「みんな一通り意見は出たかな…あ、海未ちゃんからまだ何も聞いてないね」

海未「私は…」

135: 2016/05/12(木) 14:13:19.92 ID:VTttlpRn.net
出ない方がいいと思ってます

そう言いかけた時、不意に希の言葉を思い出した

本当に大切なものは何かよく考えろ

確かそのような事を言っていた

「いつだって、大切な物がなんなのかを考えて選択してほしいんよ」

ここで安易に答えを出すのは果たして良いのだろうか

私はここで、選択を誤ってはいけない
ここで間違えると一生後悔する
そんな予感がする

ラブライブに出るべきなのか 否か


海未「………保留でも宜しいですか?」

にこ「はぁ?」

海未「じっくり、考えたいのです」

海未「私にとって…いえ、私達にとってこれはとても大事な決断だと思います」

絵里「…確かにそうね」

にこ「そんな事言ってもエントリーまでもう時間無いんだけど…」

にこ「まぁいいわ。ぎりぎりまで考えて。そこで最後に私達みんなの意見を決めましょ、それでいいわね?」

136: 2016/05/12(木) 14:13:50.41 ID:VTttlpRn.net
海未「申し訳ありません。」

花陽「私、海未ちゃんが出たいって言うんだったら出るよ」

海未「それはどういうことでしょうか」

花陽「海未ちゃんが考えて考えて、最後に出した結論が出場っていうなら私なんかのワガママで潰したくないよ」

凛「凛もそうするよ」

凛「凛も3年生の最後でワガママ通したいわけじゃないよ」

凛「ただ、みんなが望んで出たいんだったら凛だって頑張るし、少しでも不満を感じてる人がいるんだったら他の方法にして欲しいって…それだけ」

海未「花陽…凛…」

ことり「うふふ。海未ちゃん責任重大だね」

海未「全くです…ことりは、どちらかというと反対なのですよね?」

ことり「ことりは…いつだって海未ちゃんの味方だよ?」

海未「…そ、そうですか」

凛「あー!海未ちゃん顔赤くなってるにゃ!」

海未「そ、そんなことはないですよ!」

絵里「うふふ… じゃあ海未、しっかり考えてね。私達海未の答えに期待してるわ」

137: 2016/05/12(木) 14:14:14.72 ID:VTttlpRn.net
海未「絵里に言われるとプレッシャーを感じますね…」

にこ「よし!じゃあ話し合いも一段落ついたところで、夜ご飯にしましょうか!」

凛「わーーー!ご飯だ~♪」

_____________

_____________

138: 2016/05/12(木) 14:14:40.09 ID:VTttlpRn.net
_____________



___夜


にこ「……よし、食器は片付いたわね」

にこ「1年生達は夜ご飯のあとはしゃぎすぎて疲れたみたいね…もう寝ちゃってるわ」

にこ「絵里もなんだか散々怖がってたみたいだけど結局すぐ寝ちゃったわね」

にこ「私も早く寝ますか…」

既ににこ以外の全員が就寝している、布団を敷き詰めた部室ににこも足を踏み入れる

夜はすっかり更けていて、時計は12時を指す直前だった

にこ「まったく…美容に悪いわね、こんな時間まで起きてると肌が荒れちゃうじゃない」

にこはそう言いながら、いつものきゅうりの顔パックを当て、そのまま床に就いた

にこ(それにしても学校で合宿するなんて思いもよらなかったわ)

にこ(それなりに楽しかったし、海未には感謝ね)

そんな事を考えるうちににこは深い眠りへと誘われていった

139: 2016/05/12(木) 14:15:07.65 ID:VTttlpRn.net
それから1時間後、

ブブブ ブブブと海未のケータイが静かに振動した
その微かなバイブで海未は待ってましたと言わんばかりに目覚めた

海未(遂に…遂に屋上に登ることができます!)

海未(ここまで色々苦労しましたが遂に!努力が実を結びました!)

上手くいったことに大喜びする海未
少し浮き足だっていたが、みんなを起こさないように静かに起き上がり、そろりそろりと部室から出ていった…

海未(夢以来ですね…夜の音の木を歩くのは)

海未(あの時はとても視界がふわふわしていましたが、今はそれもしっかりしています)

海未(それにしても思ったより学校は暗いのですね ちょっぴり怖いです…)

海未(早いとこ屋上へ登ってしまいましょう)

そう思い海未は少し早歩きで屋上への階段を登った
屋上へ上り詰めたところで、ゆっくりとドアノブに手をかけた。

140: 2016/05/12(木) 14:15:32.28 ID:VTttlpRn.net
海未(さて、)

海未(この先で何かあるのでしょうか)

海未(穂乃果と私を繋ぐ手がかりはあるのでしょうか)

海未(現実的に考えればそんなものはありません)

海未(でも、もうここしかないのです 穂乃果の手がかりがある可能性はここだけ… ここに無かったら私はもう穂乃果の事を忘れましょう)

ドアをゆっくりと開ける

その先にはとても綺麗な星空が輝いてた
月は残念ながら少し雲に隠れているようだ

海未「やはりここの景色は美しいのですね」

海未「早速はしごを登ってみましょうか」

夢で登ったはしごを一段一段ゆっくりと手をかけ登っていく

屋上は少し冷たい風が吹いていたが、海未の体を不思議とそれを感じなかった

海未「………………………」

しばらく海未はじっと夜空を眺めていた

10分程経っただろうか

吸い込まれそうな夜空をいつまでもいつまでも見ていたかった

141: 2016/05/12(木) 14:16:02.78 ID:VTttlpRn.net
海未「……………」

海未「穂乃果の手がかりなんてものは」

海未「存在する筈ないのです」

海未「だって夢のお方ですから」

海未「現実にいるはずないんです」

海未「私は、何を期待していたんでしょうか」

そう、最初から分かっていたはずなのだ
夢の女の子に会うなんて不可能だということは

海未「しかしこの夜空を現実で見れたのは、夢の女の子の…穂乃果のお陰ですね」

海未「穂乃果。という名前も私の勝手な妄想かも知れませんが…」

少し自虐的になりながら、海未は諦めてはしごを降りようとした瞬間

誰かがはしごを登ってくる音がした

海未「……!?」

トン、トン、とリズムよく何の躊躇もなく登ってくる

海未(何故…!?一体誰が!?)

海未は唐突すぎる来訪者を少し身構えて登ってくるのを待った

トン、トン、トン、

145: 2016/05/12(木) 17:07:15.55 ID:VTttlpRn.net
花陽「ふぅ…あ、海未ちゃん」

海未「は、花陽!?」

花陽「ごめんね?驚かせちゃったかな」

海未「驚きましたよ…!何故花陽がここに?」

花陽「ちょっと目が覚めちゃってね…眠れなくて、外の風に当たりたいなって思って……」

海未「なるほど…」

花陽「海未ちゃんはなんでここにいたの?」

海未「あ、私は……星を見に来たのです」

花陽「海未ちゃんお星様好きなの?」

海未「はい 星を眺めていると落ち着きます」

146: 2016/05/12(木) 17:07:41.87 ID:VTttlpRn.net
花陽「私もね、星、すきなんだ…!」

花陽「お家に天体望遠鏡があって、暇な時はいつもそれで星を観察してるの」

海未「それはとてもいいですね ぜひ私も望遠鏡で眺めてみたいものです」

花陽「今度花陽のおうちに来てください!星を見に!」

海未「いいのですか? それはとても楽しみです」

花陽「……見て、海未ちゃん」

そう言って花陽は街の方を指さした

花陽「とっても綺麗だと思わない?光の海みたいで…」

街は深夜だというのに光が沢山うごめいていた

海未「そうですね…」

海未「この一つ一つが、みんな誰かの光なんですよね…」

147: 2016/05/12(木) 17:08:54.26 ID:VTttlpRn.net
その時、今まで微かに感じていた既視感が一気に繋がるような衝撃を海未は覚えた

雷に打たれたような感覚
頭の中にキーンと鳴り響く耳鳴り

鼓動が早くなり、血が熱くなる


私はーー、前にも同じことをーー、ここでーーー!!?


花陽「どうしたの?海未ちゃん」

海未「……いえ、なんでもありませんよ」

海未「もう遅いですし中に戻りましょう」

花陽「そうだね… 」

148: 2016/05/12(木) 17:10:10.63 ID:VTttlpRn.net
2人ではしごを降り、また中へと戻っていく…

海未はドアを開け、中に入ろうとしたところで少し振り返り空を見上げた

海未(なんとなく…分かってきました)

海未(多分私はここに前も来たことがあります)

海未(それもひとりではなく、穂乃果を含めた大人数で…)

海未(ですがそれは、現実ではなく夢の中の話です。夢で、私は穂乃果と学生生活を送っていたきがするのです…)

海未(多分、素敵な夢だったのでしょう)

海未(いつ見たのかは忘れましたが、キラキラした宝物のような日々だったかと思います)

海未(穂乃果は、現実にははじめから存在しなかったのです。夢の中の私の親友。ただそれだけだったんです)

海未(そう、太陽は初めから無かったのです 私は在るはずのない太陽を求めていたのです)

海未(でも悲しくはないです だってまたきっと会えます)

夜空を見る視界が霞む…
海未の頬に光が伝った

海未「穂乃果… 夢でまた逢いましょう」




雲に隠れていた月が顔を出した

月の光は海未を優しく照らしていた

_____________

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___

149: 2016/05/12(木) 17:10:45.45 ID:VTttlpRn.net
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私は太陽のない世界で生きると決めていた

太陽にはこの力でしか会えない

現実でいくら探しても見つからないのは分かっていた

私はこのμ'sのまがい物の同好会でどうでもいい日々を送っていくのだとばかり思っていた

しかし私はそこで信じられない名前を耳にした

穂乃果

私の…私達の太陽の名前だった

私以外に太陽に会う術を持っている者が存在するのだろうか

いや、もしかして本当にこの世界に穂乃果が存在するのだろうか

私は海未という人物を問い詰めたくなった

恐らく太陽を奪った者がいるとしたら…

海未だ

1度は諦めた太陽探しを私はまた始めていた




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_____________

150: 2016/05/12(木) 17:16:58.12 ID:VTttlpRn.net
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その日は朝から曇っていた

今にも雨が降り出しそうなどんよりとした雲で、ケータイの天気予報も午後からは傘が必要だと訴えていた


にこ「まったく…これじゃ外でダンスの練習はできないわね」

ことり「でも、歌の練習はできるんじゃない?」

絵里「そうね…でも、それならそれで早く移動しないと大雨で学校から出れなくなっちゃうわよ」

真姫「傘…持ってきてないものね」

凛「あ、ねぇねぇ!駅前にでっかいカラオケ屋さんできたよね!あそこで練習しようよ!」

にこ「そうねぇ、確かにあそこならいいかも」

ことり「じゃあそうしよっか♪」

155: 2016/05/12(木) 18:54:49.37 ID:68TnrX40.net
にこ「そうと決まればさっさと片付けて、荷物まとめたらすぐに学校でるわよ!」

海未「カラオケ…ですか」

海未「中学生の頃にことりと行った時以来でしょうか」

ことり「あ、覚えてたんだ♪」

海未「忘れる訳ありませんよ」

海未(同じ空間でずっとあの声を聞かされるわけですからね…頭がおかしくなるかと思いました)

海未「ただ…大人数で行ったことがないので少し緊張してしまいますね」

絵里「カラオケって何かしら?」

花陽「そこからなんだ…」

みんなが慌ただしく荷物をまとめ始める

156: 2016/05/12(木) 18:55:14.89 ID:68TnrX40.net
海未(それにしても昨日の夜から気分がとても晴れやかです)

海未(やはり屋上へ登ったのは正解でしたね)

海未(今ならラブライブに出てもいいんじゃないかとさえ思いますね)

にこ「ほら海未!ちゃんと荷物片付けなさい!すぐ出るのよ!」

海未「すみません!すぐに片付けますね!」

にこ「海未、なんかいいことでもあったの?」

海未「え?…いえ特には」

にこ「そう?なんか嬉しそうだったから…」

海未(やはりそう見えるのでしょうか。何故でしょう 元気が溢れる感じがします)

海未(というより最近の私が考え事ばかりで周りを全く気にしていなかっただけかも知れませんが)

海未(しかし肩の荷が降りたのは確かです 頭のモヤモヤが払拭できたと思います)

少し軽快になった自分の体をテキパキと動かし、海未は荷物をまとめていく

丁度自分がまとめ終わったところでほかの皆も準備ができたようだ

157: 2016/05/12(木) 18:55:41.80 ID:68TnrX40.net
絵里「よし!じゃあみんな、駅前のカラオケに向けて出発よ!」

凛「よーし!いっくにゃー!」

花陽「今日はみんな元気だなぁ」

真姫「駅前までちょっと移動するだけでしょー?」

ことり「うふふ♪ なんだか楽しいね」

にこ「ほら早くしないと雨降るわよー?」

海未「はっ、もう雷の音が遠くから聞こえます!」

凛「急げ急げー♪」

凛が勢いよく階段を駆け下り下駄箱へ向かう
それに続きみんなもパタパタと階段を降りる

下駄箱ですぐさま靴を履き替えた凛は勢いよく校舎から飛び出していった

花陽「凛ちゃん早いよ~!」

ことり「凛ちゃんはいつも元気だね」

海未「まったく…私にも分けて欲しいくらいです」

ことり「あれ?海未ちゃんすっかり元気になってるよ?」フフッ

ことりが少しイタズラな笑顔を見せる

海未「そ、そんなことはないですよ!」

ことり「そうかなぁ~?」

158: 2016/05/12(木) 18:56:08.75 ID:68TnrX40.net
海未も靴を履き替え外に出ようとしたが、そこで異変に気づく

海未「凛…?」

先に飛び出した筈の凛が、校舎から校門へと続く道の途中で立ち止まっている

よく見れば他のみんなも校舎から少し出たところで何やら立ち止まっている

ことり「ど、どうしたの?みんな…」ハッ

ことりも異変にきづいたようだ

海未も嫌な予感を胸に校舎の外へと踏み出した

絵里「な、なによこれ………」

真姫「…」

花陽「どうして…どうしてなの……?!」

にこ「なんなの…」

159: 2016/05/12(木) 18:56:41.42 ID:68TnrX40.net
 



校舎から校門へと続く桜並木
そのアスファルトには
赤いカラースプレーで大きく



'太陽を奪ったのは'

と、書かれていた





 

160: 2016/05/12(木) 18:57:12.18 ID:68TnrX40.net
見覚えのある文書に海未は思わず固唾を飲む

嫌な汗が額から顎にかけてツーと流れる

海未「どうして…誰が…!?」


嫌なことというのは連続して起きるもので、そこに音ノ木坂学院の理事長…つまり、ことりの母がタイミング悪くやってきた

理事長は最初 驚愕の表情をして立ち止まっていたが、すぐに厳しい顔つきになりこう言った

理事長「これをやったのは誰ですか…!?」

理事長「あなた達なの…!?」


雨がポツリ、ポツリと降ってきたようだ

理事長「少し話を聞きましょうか…!あなた達はすぐに理事長に来なさい…!」

雨はすぐに強まってきて、私達は校舎の中に入らざるを得なかった

雨は轟音となり、時々雷のつんざくような音が鳴り響く





私は、太陽のいない世界で生きているのだと再認識させられた

161: 2016/05/12(木) 18:59:10.94 ID:68TnrX40.net
キリいいのでここで止めてまたしばらく書き溜めますね

199: 2016/05/18(水) 15:56:18.88 ID:zjutvi5N.net
 



音ノ木坂学院 理事長室____

呼び出された同好会メンバー達は渋々と理事長室に集まり、7人全員が思い思いに立ち尽くしていた。

理事長も同様に、机を挟んで少し距離を置いて立っているが先程から窓の外を眺めているため背を向けた状態になっており、その表情は読み取れない

理事長「…あれはどういう事なのか説明して頂戴」

海未「お言葉ですが理事長」

理事長「なにかしら… 園田海未さん?」

海未「あんな落書き私達はつい先程まで知りませんでしたし、やったのはもちろん私達ではありません」

海未「たまたまその場に居合わせたというだけで本当に何も知らないんです」

200: 2016/05/18(水) 15:57:07.35 ID:zjutvi5N.net
理事長「…そう。」



理事長「でもね園田さん」

理事長「学校には宿泊許可をとったあなた達しかいなかったし、私が昨日退勤する時にはあんな落書きは無かったわ」

理事長「あなた達が泊まっている夜の間にあの落書きはされたってことよ 」

理事長「状況的にはあなた達が描いた以外考えられないわ」

海未「外部犯の可能性が…!!」

理事長「本気でそう思っているのかしら?」


理事長「機械警備もある夜の音ノ木に侵入して、わざわざ意味のわからない落書きをしてそれで帰っていく…。」

理事長「そんな人いるかしら?……可能性は確かにゼロではありません。百歩譲ってそうだったとしましょう」

理事長「でも、これはあなた達が宿泊してる間に起きたことなの」

理事長「外部犯だとしてもあなた達の責任が大きいわ」



理事長「…私からの要求は一つよ」

201: 2016/05/18(水) 15:59:05.48 ID:zjutvi5N.net
 
理事長「あなた達で犯人を見つけなさい」

海未「そんな…!」

絵里「警察に通報すればいいんじゃないでしょうか!?」

理事長「…絢瀬さん。あなたはよく分かっている筈よ 警察なんかに相談でもしたらまた汚名を着せられるわ」

理事長「まぁ、最終的にはそれもいいかもしれませんね」ニコッ


絵里「っ…!」

絵里「…分かりました 私達で犯人を見つけられるよう努力します」

海未「絵里…?!」

理事長「理解してくれて助かったわ… 幸い、犯人はすぐ見つかると思うわ」

海未「……?」

理事長「どうやらあなた達の中に、犯人に心当たりある人が何人かいるようよ?」


海未「そんなわけ…!」

202: 2016/05/18(水) 15:59:38.84 ID:zjutvi5N.net
そういいながら海未は後ろを振り返った

そこには不安そうに周りを見渡す面々が、それぞれ険しい表情で立っている。

ことりに至っては明らかに冷や汗をかきながら挙動不審な動きをしている

海未「……。」

理事長「それじゃ、よろしく頼むわね。アイドル研究部さん?」

凛(………?)

海未「っ………失礼しました…!」

苦虫を噛み潰したような顔で海未は理事長室から出ていった

それに続いて同好会メンバーも次々と退出していく

海未(なぜ……なぜこんなことになったのでしょう)

海未(私達は楽しく合宿をしていただけではありませんか)

海未(犯人を見つけてこい? 無茶ですそんなの…見つけられるわけが…)

203: 2016/05/18(水) 16:00:46.24 ID:zjutvi5N.net
 


海未(……そういえば…)

海未(…私には心当たりがあることを忘れていました… あの'太陽を奪ったのは'という文字 あれは1度見たことがあります)

海未(そう、初めて穂乃果と夢で会った日… ケータイを忘れて部室に取りに帰った時…)

海未(あの日見つけたノートにも確かに同じ文章が書かれていました…)

海未(つまり、あのノートの持ち主が犯人である可能性が非常に高いはずです… )

海未(まずはノートについて思い出す事から始めましょうか、、、)

海未(あの日、ノートを見つけた私はちゃっかりと自分のカバンに入れて持って帰りました…。そして、夜にまた見返そうとカバンの中を探しましたが何故かノートは見つからず結局無くしたと思っていました)

海未(つぎの日間違えて学校へ向かったのですが途中でことりを見つけてそのまま追うようにして部室へ入りました。すると、なくしたと思っていたノートが部室にあって驚きましたね…)

海未(まぁ驚いたといえばその時にことりが後ろから急に声をかけて来た時の方が驚きましたが。。)

海未(ことりが面白そうにノートをパラパラとめくっていましたが白紙だと言って、あの文字を見つけるまでには至ってはなかった様子でしたね…。そしてその後私は部室をあとにして・・・)

海未(あれ? その後ノートはどうなったんでしょう?)

海未(ノートはそのまま部室に残ったままの筈ですが、あの後何度か部室へ行っていますがそういえばノートはありませんでしたね…)

海未(と言うことはまさかあの時部室に残っていたことりがノートを持ち帰ったのでしょうか…? これはことりに話を聞くしかありませんね…)

海未(ええ、そうです。まずはことりに話を…)

204: 2016/05/18(水) 16:01:26.88 ID:zjutvi5N.net
 



ことり「あの・・・海未ちゃん?」

海未「はっ!ことり…!どうしたのですか?」

ことり「いや、どうしたのって…海未ちゃんの方こそどうしたの?」

ことり「絵里ちゃんが もう今日は解散にしましょう って言ってみんな帰っちゃったよ?」

海未「なんと…!」

海未(全然気づきませんでした… 考え事をするとやはり周りが見えなくなってしまうのがわたしの悪い癖ですね)

海未「分かりました。それでは今日は帰りましょうか」

ことり「そうだね、、」

海未「あの、一つことりに聞きたい事があるのですが」

ことり「…奇遇だね。ことりも、海未ちゃんに言っておきたいことがあるんだ」

海未「な、なんでしょうか…」

ことり「私は後でいいよ♪ 海未ちゃんからどうぞ」

海未「そうですか では私から」

海未「…部室にあったノート、どこにいったか知りませんか?」

205: 2016/05/18(水) 16:02:14.50 ID:zjutvi5N.net
 


ことり「…海未ちゃんならそう聞いて来ると思ったよ」

ことり「あのね海未ちゃん、私が言いたいことって言うのはね」





ことり「私、犯人を知ってるの」




海未「犯人を…知っている…!?」

206: 2016/05/18(水) 16:03:10.61 ID:zjutvi5N.net
 

ことり「海未ちゃんは、あのノートの最後に書いてあった文字を見たんだよね?」

海未「はい…」

海未「ことりも見たのですね… 部室の時は何も書いていないと言っていたように記憶していますが…」

ことり「それは咄嗟だったから… もしかしたら海未ちゃん、気づいてないのかな?って思ってね」

ことり「でもさすがだね 海未ちゃんはやっぱり気づいてたんだね」

海未「私は多分、そのノートの持ち主が犯人なのではないかと睨んでいますが…」




ことり「そのとおりだよ」

海未「!?」

ことり「…私ね、あのノートの最後の文字を見た時にすぐ気づいちゃったんだ」

ことり「私のよく知ってる書き方だし、筆跡も特徴的なんだよね」

海未「それは…誰なんです…!?」


海未「この同好会に犯人がいるというのですか…?!」

207: 2016/05/18(水) 16:03:57.20 ID:zjutvi5N.net
 


ことり「………海未ちゃん」

海未「…なんでしょう」

ことり「犯人が例えば同好会メンバーにいるとして、その人を捕まえてどうするの?」

海未「それは……!」




ことり「私はね」

ことり「この犯人は追わない方がいいと思うんだ」

ことり「捕まえてもなにもいいことないよ」

ことり「多分、このまま捕まえなかったら海未ちゃんの返事は関係なしにラブライブには出れないと思うよ?最後に許可するのはお母さんだからね」

ことり「でもね、捕まえて、それが同好会メンバーだったら私達は…少なくとも犯人とは関係が悪くなっちゃうよね」

ことり「下手すると犯人は罰として停学になっちゃうかも…」

ことり「どちらにせよ、ラブライブにはもう出れないし、それだったら私達はこのまま黙って犯人は外部犯でした…ってことにすれば少なくとも同好会の関係は悪くならないと思うんだ」

ことり「ことりは最後の最後で仲違いなんてやだよ…」

208: 2016/05/18(水) 16:04:44.27 ID:zjutvi5N.net
 
ことり「ねぇ海未ちゃん…」



気がつくと、ことりの目は涙で潤んでいた




ことり「犯人はつかまえなくていいんじゃないかなぁ」


 

209: 2016/05/18(水) 16:06:20.83 ID:zjutvi5N.net
海未「…確かに、そうかもしれませんね」

海未「ことりの、言う通りです」

海未「分かりました。犯人は悪いようにはしません」

海未「ですが…」


海未(ですが、私は犯人に聞かなければならない事があるのです)

海未('太陽を奪ったのは' の意味を)

海未(気まぐれで意味もなく意味深な落書きをするはずが無いのです)


海未「恐らく犯人は…穂乃果を知っている」

ことり「へ?」

海未「私にはそんな気がしてならないんです」

ことり「そ、そんな…だって穂乃果ちゃんは海未ちゃんの夢の人なんでしょ?」

ことり「他の人が知るはずないよ…!」

海未「そうですよね…。普通に考えればそうなんです」


海未「私ももう、穂乃果が現実に存在するとは思っていません」


海未「ですが、穂乃果を追いかけていく先に何かがある気がするんです」


海未「この'太陽を奪ったのは' の太陽が穂乃果の比喩であるなら…と期待してしまうのです」


海未「まだ会ったこともないですし、よく知りもしないお方です」


海未「でも、穂乃果の事を思うと…何故か懐かしい気持ちになるんです…」


海未「私は…穂乃果の事が知りたいです」

海未「だから、その為にも犯人は見つけます」

ことり「海未ちゃん…」

210: 2016/05/18(水) 16:07:36.16 ID:zjutvi5N.net
ことり(海未ちゃんがここまで頑なになるなんて…)


ことり「…わかったよ。私も、応援するよ」

ことり「でも、犯人は私からは教えられないな」

海未「な、何故です?! 教えるくらいいいじゃないですか!」

ことり「海未ちゃん…その、穂乃果ちゃんの夢を見てからずっとそればっかりでしょ?」

ことり「ことりの事あんまり見てくれなくて…ちょっぴり嫉妬してるんです♪」

先程まで泣きそうだったその顔は今度はイタズラっぽい、無邪気な笑顔へと変わった

海未「し、嫉妬……!!?」

ことり「だからぁ・・・ことりからは何も言いません♪」

海未「そ、そんなぁ~!」

ことり「うふふ♡ 頑張ってね 海未ちゃん!」

海未「…ことりには敵いませんね」

ことり「もう今日は帰ろ?」

ことり「難しい事は明日から考えようよ?」

海未「そうですね 今日はもう帰ってゆっくりしたいです」

ことり「うん その方がいいよ」

211: 2016/05/18(水) 16:08:42.06 ID:zjutvi5N.net
 
ことり「じゃあ私はお母さんと帰るから海未ちゃんは先に帰って大丈夫だよ」

海未「おや、そうですか… では私は先に帰りますね」

海未「…分かっているとは思いますが、犯人を分かっているからといって理事長に安易に喋ってはいけませんよ?」

ことり「うん! それくらい分かってるよぉ~!」

海未「ですよね、、 それでは失礼します さようならことり」

ことり「うん!じゃあね海未ちゃん また明日♪」


海未は軽く会釈をしてからその場を去った

212: 2016/05/18(水) 16:13:19.76 ID:zjutvi5N.net
 

どうやらまだ雨は降り続いてるらしく、止む様子は無かったので仕方なくカバンの中の、事前に用意しておいた小さい折りたたみ傘を使って帰る事にした

海未(一体いつまでこの雨は続くのでしょうか…)

海未(…おや?)

靴を履き替え、折りたたみ傘を開きながら外へ出た海未はまたもや異変に気付く

校舎から校門へ通じる桜並木のアスファルトに描かれた例の文字は、既に消えかかっていた

海未(何故でしょう…文字がもう薄くなっていますね…)

海未(まさか水性のカラースプレーで書いたのでしょうか?)

海未(今日の雨ですぐに消えてしまいそうですね…油性のスプレーでしたら消すのが大変なので良かったといえば良かったですが…)

海未(何故すぐに消える水性で…?うーん何か引っかかりますね…)

海未「とりあえず今日はことりに言われた通りに、明日から難しい事は考えることにしましょう。」

海未はそのまま消えかかっている文字の上を、雨の中歩いて帰宅していった…


 

213: 2016/05/18(水) 16:17:42.05 ID:zjutvi5N.net
 

ことり「海未ちゃんは帰ったみたいだね」

ことり「よし はやくお母さんの所に行かなきゃ!」

海未の帰る姿を確認したことりは、小走りで理事長室へと向かった

コンコン
ことり「失礼します! お母さん、ことりです!」

理事長「どうぞ」

ことり「もう同好会メンバーはみんな帰ったよ、お母さん」

理事長「あらそう。ご苦労様……じゃあ早速なのだけれど」





理事長「ことりは、もう見当はついてるのよね?」

ことり「うん♪」

理事長「一体誰なのかしら…聞かせて?」











ことり「海未ちゃんだよ♪」ニコッ







 

214: 2016/05/18(水) 16:24:01.30 ID:zjutvi5N.net
 

理事長「そう…やっぱり園田さんだったのね。私の思った通りね」


理事長「偉いわことり…よく頑張ったわね」


理事長「こっちへいらっしゃい 頭を撫でてあげるわ」


ことり「やったぁ♪ えへへ、嬉しいなぁ…!」


ことり「お母さん大好き♡」

理事長「私もよ、ことり…」




冷たい雨が降り続いてる
時折光る雷だけが、暗い理事長室を照らした

雨はまだ止まない

247: 2016/05/24(火) 00:11:25.57 ID:YmGwvdg7.net
 





降り続く雨の中、花陽と凛は傘をさしながら無言で歩き続ける

楽しく合宿をしていた帰りに、まさか理事長室に呼び出されるような事態になるとは2人は思ってもいなかった

重たい雰囲気のままある程度歩を進めたところで、永遠に続くかと思われたその沈黙は凛によって破られた

凛「かよちん…今日、かよちんの家に泊まってもいいかな…?」

花陽「え、うん…いいけど、どうして?」

凛「凛ね…怖いんだ。 このままだと何か悪いことが起きるようなきがしてね」

凛「不安で不安で仕方ないの」

凛「このままみんなが離れ離れになっちゃうんじゃないかって…」

花陽「……私も同じ気持ちだよ」

花陽「不安に押しつぶされそうで、怖いんだ」

凛「かよちん…」

248: 2016/05/24(火) 00:12:16.82 ID:YmGwvdg7.net
凛「じゃあ、今日はお泊まりで楽しい事しよ?」

凛「元気になって、それからどうすればいいのか考えよう!」

花陽「そうだね…!」

花陽「…凛ちゃんといるとやっぱり元気になれるよ」

花陽「ありがとう…凛ちゃん」

凛「凛は何もしてないよ」

凛「かよちんといるから、かよちんだからこそ元気になれるんだよ!」

花陽「凛ちゃん…」

凛「かよちんの家行ったら何しようかなー!この前かよちんが言ってたゲームやりたいなぁ!」

花陽「うん!そうしよ!」

重苦しかった雰囲気は和らぎ、どこかぎこちなかった2人の歩幅も元に戻る

凛(かよちんが元気になってくれて良かった!)

凛(理事長室の時のかよちんなんか今にも倒れそうってくらい動揺してて…凛、心配してたから本当に良かったよ…)



この時、凛は心の底から安心しきっていた

先の問題は何一つ解決出来ていないにもかかわらず、目の前の友人を笑顔にできた喜びでいっぱいになってしまっていた

249: 2016/05/24(火) 00:13:15.54 ID:YmGwvdg7.net
 



そして凛はこのあと、自身の安易な選択を悔やむことになる





花陽宅_____________


凛「わー!また負けちゃったにゃ!」

凛「かよちん強すぎるにゃ~」

花陽「そ、そんなことないよ…練習すれば誰にでもできるよ!」

凛「そうなのかな~」

凛「もう一回やろ!かよちん!」

花陽「いいよ!」

トントン
ガチャ

花陽母「失礼~♪ 花陽、凛ちゃん、お風呂の準備できたわよ~」

花陽「あ、お母さん。ありがとう」

凛「ありがとうにゃ!」

花陽母「冷めないうちに入っちゃってね~」
バタン

250: 2016/05/24(火) 00:13:50.82 ID:YmGwvdg7.net
花陽「…………じゃあ、お風呂入ろっか」

凛「そうだね、かよちん先入ってきていいよ!」

花陽「凛ちゃん、そんな事言ってこの前無理やり一緒に入ってきたよね?今日はそんな事しちゃダメだよ?」

凛「…! そ、そんなことしないにゃ、、」

花陽「じゃあゆっくりししててね凛ちゃん お風呂入ってきます」

凛「うん!行ってらっしゃい!」

花陽は 怪しいなぁ と小声で呟くも、笑顔で部屋から出ていった



凛「…ふぅ。。この前のはちょっとふざけすぎちゃったよね」

凛「かよちん、やっぱり嫌だったのかなぁ」

凛「今日は大人しく、かよちんがお風呂上がるのを待とうっと」

凛(それにしてもかよちんの部屋、ほんとにいい匂い…)

凛(凛の部屋とは全然違うなぁ~ あ、ベランダにあるのは望遠鏡かな?そういえば最近星を見るのにはまってるって言ってたっけ)

花陽の部屋をしばらく観察していると、花陽のカバンがふと目に付いた

251: 2016/05/24(火) 00:15:45.54 ID:YmGwvdg7.net
よく見るとカバンからは何かはみ出ているようだ

凛「…?タオルがカバンのチャックに挟まってはみ出てる…何か慌ててしまったのかな?」

凛は厚意で挟まっているものをしっかりカバンの中にしまおうとチャックを開けた

カバンの中には何やらタオルに包まれたモノがしまってあった

凛「何かを包んでるタオルがカバンのチャックに挟まってたんだね 慌ててたのかな?結構雑に包まれてるにゃ」



本当に厚意だった

少し整えて戻すつもりだった

しかしタオルに包まれていたものは

凛の予想の範疇を超えており、

これが動揺と混乱を引き起こした

凛「こ、これって…!」





凛「赤色のカラースプレー…!」

252: 2016/05/24(火) 00:16:12.15 ID:YmGwvdg7.net
花陽のカバンに 赤色のカラースプレーが入っているという事態

これが普段だったら 確かに謎ではあるが別段何も怪しむことなく凛はそのままタオルを整えて元に戻したであろう

しかし今は状況が違う

なにせ先程理事長には、学校に落書きをした犯人を見つけてこいと言われたばかりなのだ

落書きに使われたのは赤いカラースプレー。

今凛が見つけたものも赤いカラースプレー。

それは花陽のカバンから発見された。つまり…




凛「かよちんが……落書きの犯人…?」



ガチャ
花陽「ふぅ~いいお湯だった♪凛ちゃんもどうぞ・・・って」

253: 2016/05/24(火) 00:17:22.23 ID:YmGwvdg7.net
 

花陽「なに…してるの?」

凛「…………え、あの、かよちん…?」

凛「これ、、、スプレー…」

言葉がうまく出てこない

自分が花陽に何を言いたいのか分からない



花陽「………凛ちゃんも私のこと疑うの?」


花陽「凛ちゃんも、私がやったと思うの…!?」


花陽「…ねぇっ!!?」


凛「えっ……、いやその、」

凛「凛は…」



花陽「私じゃないっっ!!」

花陽「私じゃないのにっっ!!!」

花陽「どうしてみんな私のこと虐めるの!??」


花陽「私は…ただ…!!」

花陽「ただ夢を見てただけなのに…!!!」


凛「か、かよちん………?」


花陽「凛ちゃん、今日はもう帰って…」

凛「……え?」

花陽「帰ってよ…? お願い…」



花陽は泣いていた

254: 2016/05/24(火) 00:18:13.94 ID:YmGwvdg7.net
 



凛「………………うん。」

凛「…………………凛、帰るね」

凛はそれだけ言うと自分の荷物を即座にまとめ、花陽の部屋から出ていった

途中、花陽の母に声をかけられたが特に返事をすることなく足早に外へと向かった

外は思ったよりも冷えており、小雨だが雨も降っていた


凛「凛はどこで何を間違えたんだろう」

凛「凛は…どうすれば良かったの…?」

凛「…かよちんに嫌われちゃった…」

凛「…」

小雨に打たれ、顔には水が滴っている
それは涙と同化して凛の頬を滑り落ちていった

暗く、寒い夜の中
凛は1人途方に暮れていた




 

255: 2016/05/24(火) 00:42:51.63 ID:YmGwvdg7.net
 



同じ時刻、雨の降る夜
にこと真姫は傘を片手に2人で公園を散歩していた

少し前ににこが、真姫に「これからのことを話したい」と呼び出した為だ

当然2人の間の空気は重く、公園で合流してから言葉は交わさずに、ただ時間だけが過ぎていく状況だった

しかし当の真姫はこれを特に悪い状況とは思っておらず、雨の降る公園で夜、にこちゃんと無言で過ごすのもいいかなと呑気に考えていた

ゆっくり ゆっくりと公園の舗装されたコンクリートの上を歩く2人

そこで不意ににこが話を切り出した

にこ「・・・真姫ちゃん」

にこ「これからどうしたらいいと思う?」

真姫「どうしたら…というのは、同好会の事?それとも落書きの犯人の事?」

にこ「どっちもよ。どっちも」

にこ「もう考えること多すぎて頭いっぱいなのよ…こっちは」

真姫「それは皆同じでしょ?」

真姫「楽しいはずの合宿がこんな結末になるなんて誰もまだ受け入れられてないわよ」

真姫「ラブライブについても結局、海未に判断を委ねるって決まっただけで出場するかどうかは決まってないし…」

真姫「今日理事長室に呼ばれた時も、みんな不安そうで…特に花陽なんかクラクラしてて心配だったわ」

にこ「真姫ちゃんは犯人の検討ついてる?」

真姫「全然よ…わかるわけ無いじゃない」

256: 2016/05/24(火) 00:43:24.54 ID:YmGwvdg7.net
真姫「確かに私たちの合宿中に起きたことだけど、外部犯の可能性だって全く無いわけじゃないでしょ?」

真姫「そもそも私達も全員、アリバイがあるようで無いものよ」

にこ「どういうこと?」

真姫「私たちはみんな、ほとんど同じ空間で過ごしてたでしょ?」

真姫「だからお互いがお互いのアリバイ証明になる…筈なんだけど、傍から私たち全員の犯行だと見られたら終わりだし」

真姫「そもそも寝てる間に私たちの内の誰かがこっそり描きに行ってたら分からないしね」

にこ「私たちの中に犯人がいるっていうの!?」

真姫「そうじゃないわよ…ただ可能性はあるって話」

真姫「現に、何人かは夜中にこっそり起きて何かしてたみたいだしね」

にこ「えぇ?! それ早く言いなさいよ!怪しさMAXじゃない!誰がこそこそやってたのよ?」

真姫「私も寝ぼけてたからはっきりとは覚えてないけど…海未と花陽…だったかしら」

にこ「海未と花陽…」

にこ「どっちも落書きなんかするような子じゃないとは思うけど…でも、最近海未の様子は確かにおかしい節はあったわね」

真姫「そうね。ぼーっとしてたり、夢がなんちゃらとか」

にこ「だからと言って落書きの犯人に繋がるとは到底思えないわね」

257: 2016/05/24(火) 00:43:54.48 ID:YmGwvdg7.net
にこ「全く…理事長も理事長よね。落書きくらいであんなに怒らなくていいのに…」

真姫「そうよにこちゃん」

真姫「私が一番怪しいと思ってるのはそこよ」

にこ「そこって……理事長の怒ってる理由?」

真姫「あの落書きであそこまで怒ることってある?それも犯人は私たちに見つけろなんて言ってきて…」

真姫「私には何か他の目的があるような気がするのよね」

にこ「そーかしら?ただの更年期なんじゃない?あとほら…'例の件'もあるし」

真姫「あぁそうね…それが大きいのかもね」

真姫「でもあれはほぼ理事長n…」
にこ「凛…?」

にこ「あれ凛じゃない!?」

真姫「えぇ?…どれよ」

にこ「ほらあれっ! ベンチに座ってるの!」

真姫「ほ、ほんとね…!傘さしてなかったから分からなかったわ」

真姫「凛ー?! どうしたの?」

258: 2016/05/24(火) 00:44:22.68 ID:YmGwvdg7.net
 
公園のベンチで1人、雨に濡れながら下を向いて座る少女___星空凜を見つけたにこと真姫は思わず駆け寄る

2人に気づいた凛は慌てて逃げようとしたが、にこの手が凛を掴み、そうさせなかった

にこ「待ちなさいよ!あんたこんな所で傘もささずに何やってんのよ!」

真姫「にこちゃん興奮しないで」

真姫「凛…?どうしたのよ?泣いてるの?」

真姫「落ち着いてからでいいから何があったか話して?」

凛は案外すぐに泣きやみ、深呼吸を1回挟んでからゆっくりと、しかしたどたどしく説明し始めた

259: 2016/05/24(火) 00:44:56.58 ID:YmGwvdg7.net
 
凛「…………………あのね、」

凛「凛ね、かよちんの家に泊まろうと思って、かよちんの家に行って、その時かよちんのカバン覗いたらね、、スプレーが、、、」

真姫「スプレー?」

凛「うん。。赤い、カラースプレー」

にこ「それって…!?」

凛「そしたらかよちん、すごく怒って…」

凛「帰ってって…。。 凛、かよちんに嫌われちゃったのかな…?」

真姫「・・・要は、花陽のカバンに赤いカラースプレーがあって、凛は花陽が落書きの犯人だと思った訳ね?」

凛「ち、違う!かよちんは私じゃないって…!だけど凛、その時びっくりして何にも言えなくて…」

にこ「なるほどね。花陽は否定したのに凛が庇ってあげられなくて、それで凛は花陽に嫌われたと思ったのね?」

凛「うん…。。」

にこ「花陽は、違うって言ったのね?」

凛「うん、」

にこ「じゃあ、信じてあげなさいよ」

にこ「今からでも遅くないわ。凛は信じてるって言ってあげなさい」

にこ「今傷付いてるのは花陽も同じはずよ」

にこ「信じてるなら、友達なら一緒にいてあげなさい」

凛「……わかった…!そうだよね。すぐかよちんの元に戻るよ。」

凛「にこちゃん、真姫ちゃん、ありがとう」

真姫「私も信じてるわ…そう言ってあげて」

凛「うん。わかったよ。 じゃあね」

真姫「待って!凛…」

260: 2016/05/24(火) 00:45:34.37 ID:YmGwvdg7.net
凛「…?」

真姫「もしかしてそのスプレー… タオルかなにかに包まれてなかった?」

凛「え、うん…そうだけど」

真姫「そう、じゃあいいわ。気をつけてね」

凛「…? 何だか分からないけど、真姫ちゃんの事だから凛はあまり突っ込まないよ」

凛「じゃあね、ありがとう」

それだけ言うと凛は雨の中駆け足で花陽の家の方へと向かっていった


にこ「花陽……どうしちゃったのかしら」

にこ「私たちも行ってあげた方がいいかしら」

真姫「そうね…そうしてあげるべきなのかもね」

にこ「……花陽が犯人なのかしら」

真姫「違うわ」

真姫「花陽は、違う」

261: 2016/05/24(火) 00:46:03.05 ID:YmGwvdg7.net
真姫「…………私、やることができたから先に帰るわね」

にこ「……………なにするつもりよ。どうせ何か1人で解決しようとしてるんでしょ」

真姫「にこちゃんは、例えば花陽が犯人だとしたらどうするの?」

にこ「…どうもしないわね。きっと。強いて言うなら花陽の気持ちを理解してあげられるように努力するわ」

真姫「そうよね… 犯人は、無闇やたらに捕まえればいいってものじゃないのよね」

真姫「だから、私はこれから少し話をしに行くだけ」

にこ「…犯人、分かったの?」

真姫「犯人かどうかは分からないけど、確実に怪しい人を知ってるわ」

真姫「穏便に済ませたいの。だから、今日のところはにこちゃんは静かにしててよね」

にこ「わかったわよ…。あんまり危ない事はしちゃだめよ?」

真姫「そうね。気をつけるわ。…じゃあねにこちゃん また明日」

にこ「また明日にこ…!」

にこは微笑みながら、傘を持っていた為片手でにこにーポーズを軽く見せて去っていった

多分、彼女なりのエールなのであろう

真姫「ふぅ……。さて、行きますか。」

そして真姫も、目的地へ向かう為に同じく公園を去っていった。



 

262: 2016/05/24(火) 00:49:07.08 ID:vurOOayH.net
 




同時刻、園田家___

海未は懸命に考えていた

必氏に思考していた

ことりは犯人を知っていた…
ノートの持ち主が犯人…
太陽を奪ったのは…

様々な視点から犯人を考え、推理していたが

海未「う~~~~ん。分かりません!」

海未「まっったく分かりません!」

海未「ことりも意地悪です…犯人など、ちょっと教えてくれるだけでよいのに…」

海未「はっ!まさか同好会メンバーに犯人などいないのでは!?」

海未「…いえ、しかしノートの筆跡を、『よく知る筆跡』と言っていたので、同好会メンバー内にいると見て間違いないでしょう…」

海未「はぁ~~~。。」

思考は行き詰まり、海未は顔をしかめ肩を落とした

海未「全く分かりませんね…」

海未「だいたい、唯一の手がかりのノートも結局どこにあるか分かりませんし、、」

海未「ん?でもことりはノートを回収してその後どうしたのでしょう?」

海未「持ち主を完全に断定していた所を見ると、おそらく持ち主にノートを返したのでしょう…」

海未「しかしいつ返したのでしょう?」

海未「ことりは学校にいる間は殆ど私と居ますし、他の学年の教室へ行ったとは特に聞いてませんね…」

海未「あ、そういえば1度だけ少し用事があるとか言って昼休みに何処かへ行っていたような………」

海未「あぁ思い出せません!!どうして私は肝心な時にダメなのでしょう!?」

海未「う~~~~~~…」

263: 2016/05/24(火) 00:50:09.57 ID:vurOOayH.net
 
1人唸る海未

この唸り声は、海未の部屋の前を通りかかった母に聞こえており、海未の母はやはりまだ体調が治っていないのだろうかと密かに心配していたが海未は知るよしもなかった

海未(ことりの行動を思い出すのですっ!海未!)

海未(何か怪しいところは無かったか…)

海未(用事があると言っていた昼休みはいつだったか…)

海未は脳細胞を限界までフル稼働させ、自分の記憶を貪るように思い返した

そして1つの答えにたどり着く


海未「お、思い出しました…!」

海未「あれは、私が合宿の提案をした日…!ラブライブについて話し合った日です…!」

海未「あの時、ことりは…」

264: 2016/05/24(火) 00:50:45.03 ID:vurOOayH.net
~ ~ ~ ~ ~

にこ『いーい?みんな集まったかしら』

にこ『それじゃ前に言ったラブライブの件の返事聞かせて貰おうじゃないの』

凛『かよちん最近太ったかにゃ?』

花陽『エエ~!!!? 嘘…花陽、太ったように見える?』

真姫『確かに…ちょっと花陽太ったかもしれないわ』

花陽『ま、まきちゃんまで~! そんな…気をつけてたのに…』

凛『今日はお昼休み教室でこーーんなにでっかいおにぎり食べてたもんね』

真姫『そりゃ、あんなにでかいおにぎり毎日食べてたら太るわよ…』ハァ

ことり『あ、それ私も見たなぁ~ とっても美味しそうに食べてたよねかよちゃん♪』

花陽『う、うぅ……分かりました。。明日からおにぎりは小さくします。。』


~ ~ ~ ~ ~

265: 2016/05/24(火) 00:51:38.78 ID:vurOOayH.net
海未「あの時は聞き流していましたが、昼休みにことりが花陽の大きいおにぎりを目撃してるということは、その場にいたということです!」

海未「他学年の教室に行く用事はノートを返しに行った以外に無いはずです」

海未「というかそもそもその日しかことりが昼休みに居なかった日は無いはず…」

海未「つまり1年生にノートの持ち主が存在している可能性が強い…!」

海未「真姫…凛…花陽…」

海未「………というか、合宿をしていた日、夜中に起きていた人物が私以外にいるじゃないですか」

海未「どちらにも共通しているのは…花陽…」




海未「落書きの犯人は………花陽…?」


海未「花陽であれば、私と屋上に登った後…もしくは登る前でも落書きをする時間は充分にあったはずです」



海未「…………決まりですね。」

海未「こうしてはいられません!花陽に話を聞きにいかなくては…!」



自分の導き出した回答を確かめたい気持ちと、ノートの持ち主に穂乃果の事を聞けるのではないかという思いが、海未をその場に留めなかった

266: 2016/05/24(火) 00:53:24.14 ID:vurOOayH.net
いても立ってもいられなくなった海未は即座に花陽に電話をかけたが留守電になっていたので直接、家に向かうことにした

母親に、「後輩の家に行ってくる」と伝えた時、母親はこんな夜に失礼ですよと注意されたが海未はもう聞く耳持たずの状態だった

母親が「末期なのかしら…」と呟いた気がしたがそんな事はどうでもよかった


海未(花陽…あなたが犯人だったのですね)

海未(あぁ…早く太陽のことについて聞きたいです…!)

海未(花陽も夢で穂乃果と会ったのでしょうか?)

海未(だから屋上に来たのでしょうか?)

海未(貴方には聞きたいことばかりです…!)

海未(もう気持ちを抑えきれません…!走って花陽の家まで行きましょう!)


異常なまでに興奮している海未は夜中に全速力で花陽の家まで駆け抜けた


花陽の家についた頃にはもう、胸の動悸が走ったせいなのかそれとも話が楽しみでワクワクしている為なのか分からなくなっていた


小雨が降る夜中に人の家の前で息が上がっている様子はどう見ても変質者のそれだった


海未(い、息が詰まりそうです…!)

海未(このインターホンを押せば、真実が全てわかるかもしれないと思うと…)

海未(ふぅ…)ドキドキ


海未(よし…!)

267: 2016/05/24(火) 01:05:13.86 ID:vurOOayH.net
…ピンポーン



家のチャイムが鳴り響く

しかしきっと母親が来客対応をしてくれるだろうと思ったので何も気にしない

花陽はずっとベッドにうつ伏せになって寝転び、ただ時が流れるのを感じていた

明日、学校に行ったら凛ちゃんになんて言おう…

謝ったら、仲直りできるかな…



不意にドアが開いた

母親はいつもノックをするので、いつも突然に入ってくる凛かと勘違いした花陽は飛び跳ねる様にして起き上がった


そこに居たのは予想外の来客だった

海未「花陽のお母様に花陽を出してくれと頼んだのですが、どうやら体調が悪いようだと聞いて、こうしてお部屋に上がらせて頂きました」

花陽「う、海未ちゃん…」

花陽「どうしたの?花陽はほんとに体調が悪いから大した用事じゃなかったら今日は帰って欲しいな…」



海未「大切な話です」



花陽「…」





海未「落書きの犯人…'太陽を奪ったのは'と書かれたノートの持ち主は…あなたですね?」

268: 2016/05/24(火) 01:16:35.72 ID:vurOOayH.net
 


_____________

_____________







真姫「落書きの犯人… あなたよね?」


真姫「…ことり」


ことり「…………」










それぞれの思いが交錯する雨の夜

静かに雨は流れ、夜もそれに溶けていく

夜は太陽を知らない

雨はまだ止まない

283: 2016/05/27(金) 01:44:49.87 ID:FnqUVJ9j.net
 



ことり「・・・どうしてことりが犯人だと思うの?」

ことり「冗談きついなぁ真姫ちゃん」

ことり「というか、いきなり部屋に入ってきて第一声がそれって…」


真姫「いきなり家にお邪魔した事は謝るわ」

真姫「でも、どうしても確かめておかないと私が不安でね」


真姫「もちろん貴方が犯人だと思ってるのは冗談なんかじゃないわ」


真姫「花陽のカバンに赤いカラースプレーをいれたの、貴方よね?」


ことり「うーん。何のことかなぁ?」

284: 2016/05/27(金) 01:45:50.88 ID:FnqUVJ9j.net
真姫「とぼけないで」



真姫「下駄箱で皆が靴を履き替えていた時。花陽がカバンを置いた時に貴方がサッと何かをタオルに包んで入れてたのは見てたわ」

真姫「まさかそれが赤いカラースプレーだとは思わなかったけど」


ことり「ふ~ん…。タオルに何を包んでたか知ってるってことは、もうかよちゃんには会ったの?どんな顔してたかなぁ?」


真姫「私は直接会ってないわ。凛が見つけたらしいの」

真姫「それより貴方。その発言は花陽のカバンに入れた事は認めるってわけね」


ことり「そうだよ。別に入れた入れてないを隠しても仕方ないかなって」

ことり「確かに私が入れてないって言えばこの場はどうにか出来るかもしれないけど、警察沙汰になってタオル調べられたら私のって多分分かっちゃうからね♪」

285: 2016/05/27(金) 01:47:08.15 ID:FnqUVJ9j.net
 

真姫「…何故自分の罪を花陽に被せるようなことしたの?私たち仲間じゃなかったの?」



ことり「あぁん真姫ちゃん! 早い早い。早いよぉ♪」


真姫「…なに?…早い?」イラッ

ことり「早とちりはいけませんよぉ~?」

ことり「確かにカラースプレーを入れたのは私♡ それは認めたけど、まだ犯人が私って決まった訳じゃないよぉ?」


わざとなのか、ことりの声はいつもより甘ったるく聞こえる

それが余計真姫を苛立たせる


真姫「はぁ…? どう考えても貴方が犯人でしょう?」

286: 2016/05/27(金) 01:48:14.03 ID:FnqUVJ9j.net
真姫「犯人じゃなかったらそもそもカラースプレーなんか持って無いはずだし、それをしかも他人のカバンに入れるなんて事はしないわ」


真姫「それともなに…?あなたは落書きの事は何も知らず、たまたまカラースプレーを持ってて、何を思ったかふと花陽のカバンに入れて…、」

真姫「って、そんな偶然あるわけないでしょ。犯人が貴方じゃ無かったとしても、犯人と相当繋がりがあるのは間違いないわ」

ことり「そうだね♪」

ことり「でも、私はやってないよ♪私はぁ、かよちゃんのカバンにカラースプレーを入れただけ♡落書きをしたのは私じゃないよ♪」


真姫「あなた…そんな事で言い逃れ出来ると思ってるの?」


ことり「出来ると思ってるよ」


真姫「はぁ…?」



ことり「だって本当に落書きしたのは私じゃないよ」

287: 2016/05/27(金) 01:49:35.97 ID:FnqUVJ9j.net
ことり「案外真姫ちゃんだったりしてね~?」

イラッ

真姫「だから…予め落書きがされるってことを知らないと、他人のカバンにカラースプレーを入れるなんて行動は取らない筈よ」

真姫「犯人か、もしくはそれに協力してる人じゃないとその行動に何のメリットもないってこと」


真姫「わかる?」


ことり「うんよくわかったよ♪」


ことり「ことりは犯人を知ってる。それで、その人に協力してる。だからことりは犯人じゃない・・・・って言う事だよ。筋は通ってるよね?」

真姫「共犯者じゃない…」


真姫「じゃあその犯人って誰なのよ?」

ことり「教えないよ♪」


ことり「教えるわけないよね?」


真姫「はぁ…そうよね。聞いた私が馬鹿だった」イライラ

288: 2016/05/27(金) 01:50:29.06 ID:FnqUVJ9j.net
 
真姫「分かったわ。じゃあ貴方は共犯者だし、犯人も知ってるけどそれは言わない。」

真姫「でも、どうして花陽に罪を被せるような真似したの?それも犯人の指示?」



ことり「・・・ホントはそういう事教えちゃダメって言われてるんだけど、ここまでたどり着いた真姫ちゃんに免じて教えてあげる♪」

ことり「全部、その人の指示だよ?ことりがやったこと全て…」


真姫「ふ~ん・・・・・」ニヤ

289: 2016/05/27(金) 01:52:12.77 ID:FnqUVJ9j.net
 

真姫「・・・あぁそうそう。1つ言い忘れてた」


真姫「'これ'も貴方がやった…って事で良いのよね?」ジャラ



ことり「・・・・・・・・・!!?」



真姫「ふぅ」


真姫「…やっと、気持ち悪いほどの笑顔が無くなったわね?」


ことり「っ………!」


ことり(…やられた…!!真姫ちゃんは初めから本当の犯人がわかってここに来たんだ…!!)

ことり(全部気づいてるの…!!?音ノ木坂学院の事も…!!夢の事も…!?!)

ことり(全く予想の範疇になかった…!ことりが…甘かったせいで…!)



真姫「どうしたのことり?汗…かいてるわよ?」


真姫「心拍数も上がってるみたい…」


真姫「薬でもあげましょうか?」ニヤ


ことり(~~~~~~!!!)

290: 2016/05/27(金) 01:53:22.52 ID:FnqUVJ9j.net
ことり(ここで…なんとかしなきゃ!)


ことり(真姫ちゃんをどうにかしないと全部おしまい…!どうすれば…!)


真姫「さぁ、、ゆっくり聞かせて?私、ことりに聞きたいこと沢山あるの」

ことり「…………」




ことり「真姫ちゃん」


ことり「真姫ちゃんは'夢'…見たの?」


真姫「夢…?何が?」


ことり「真姫ちゃんもそうだったんだね。」



ことり「ことりもね。夢、見れないんだ」



ことり「私には素質が無いみたい…だから皆から仲間はずれ…」

291: 2016/05/27(金) 01:54:33.24 ID:FnqUVJ9j.net
 
ことり「私だって…夢、見たいよ…!」


真姫「何なのよ…さっきから…」


真姫「何よ…夢って…」

ことり「…やっぱりそこまではたどり着けなかったんだね…♪」



ことり「私と同じ…仲間はずれだね♪」

真姫「だ、だからなによ、、意味わかんないわよ、、」


真姫は自分の頭の中に警鐘が響いているのを感じていた

ここから今すぐ逃げなければ大変な事になる
そんな予感がする

状況的には自分が相手を完全に追い詰めた筈なのに…

292: 2016/05/27(金) 01:55:33.94 ID:FnqUVJ9j.net
狭い部屋の中、ことりはゆっくりと真姫に詰め寄る


ことりは振り子のようにゆっくりと、ゆっくりと左右に体を揺らしながら近づいてくる


真姫(に、逃げなきゃ…!!でもどうやって?!)

真姫(後ろには窓…でもここは二階…!飛び降りて無事に済むかどうかわからない…!)

真姫(ことりを無理やり押しのけて逃げる…?いや、ことりが何か武器を隠してるかもしれない!危険だわ!)

真姫(あ、あとは…ええと!なにか…逃げる方法は…!!)


真姫は必氏に思考を張り巡らせていた

ここから逃げ出す最善の方法を一生懸命模索していた

しかし、それらは全て無駄な時間となってしまう

ことりのへやのドアが開き、新たな人物が踏み込んできた

真姫はその人物を見た時、心の中でこう思った


自分はなんて、馬鹿だったんだ…!、と

負けを悟った真姫は、手を挙げて全面降伏の意思を示した。

しかし無慈悲にも真姫は、来訪した人物によって手際よくみぞおちを殴られ、気絶させられてしまう事となった…



真姫は薄れいく意識の中、最後の力を振り絞ってケータイを取り出す

真姫(にこ…ちゃ…)



真姫(たすけ………)

_____________

______

_

293: 2016/05/27(金) 01:58:20.31 ID:FnqUVJ9j.net
花陽宅_______



花陽「・・・・・海未ちゃんが私の部屋に来るのは、一緒に星を見るためだと思ってたけどまさか…」


花陽「私が…犯人? 落書きの…?」


海未「そうです。」


海未「私は、花陽が描いたのではと疑っています」


花陽「海未ちゃんも、凛ちゃんも、みんな、、みんな花陽の事疑うんですね…!」


花陽「みんな…みんな…おかしいよ…!」


花陽(でも…所詮まがい物はまがい物だよね…)

花陽(私たちには元々、心の底から信じ合える絆なんて無いんだよね…)



花陽「いいよ海未ちゃん。…花陽が犯人だっていう理由、聞かせて?」


花陽「聞く前に1つ言っておくけど…」




花陽「私は、海未ちゃんの事疑ってるからね…?」




海未「な…!?」

海未「なんですって…!?」

332: 2016/06/01(水) 23:59:25.96 ID:3WIcM5kg.net
______

_



花陽宅_______

花陽「海未ちゃんが私の部屋に来るのは、一緒に星を見るためだと思ってたけとまさか…」


花陽「私が…犯人? 落書きの…?」

海未「そうです。」

海未「私は、花陽が描いたのではと疑っています」

花陽「みんな…みんな…おかしいよ…」

花陽(でも…所詮まがい物はまがい物だよね…)

花陽(私たちには元々、心の底から信じ合える絆なんて無いんだよね…)

花陽「いいよ海未ちゃん。…花陽が犯人だっていう理由、聞かせて?」

花陽「聞く前に1つ言っておくけど…」

花陽「私は、海未ちゃんの事疑ってるからね…?」

333: 2016/06/02(木) 00:00:16.10 ID:AnJEIyw0.net
海未「な…!?」


海未「なんですって…!?」

海未「それは一体どういうことなのですか…!」


花陽「どういう…? 海未ちゃんは私のこと、疑ってるんだよね?」

花陽「それと同じじゃないかな。それなりの理由があるから海未ちゃんも花陽の事疑ってるんだよね?」


海未「…私には、全く心当たりがありません。」


花陽「私だってないよ… でも、もう引き返せないよ」

花陽「海未ちゃん… どうして私を犯人だと思ったの?」


海未「・・・・理由はいくつかありますが、決めてはやはりノートですね」

334: 2016/06/02(木) 00:01:11.81 ID:AnJEIyw0.net
海未「ある日、放課後に部室へ忘れ物を取りに行った時があったんです。そこで私は'太陽を奪ったのは'と書かれたノートを見つけました」

海未「誰のものか検討はつきませんでしたが、後にことりがノートを持ち主に返したと言っていました… ことりの行動から1年生に接点があると気付いたのです」

海未「さらに、落書きの前夜に花陽は屋上にいた…つまり夜中に動くチャンスはいくらでもあったということです」


花陽「…」


海未「どちらも共通しているのは花陽、あなただけなのです」

海未「さぁ…どうでしょうか。認めてくれますか?」



花陽「あのね海未ちゃん」

花陽「悪いんだけど…それって私が犯人って決まる要素一つもないよね」

花陽「確かにノートの持ち主は私だよ。それは認めるけど、それだけじゃ犯人にはならないよね?」

花陽「しかも、屋上にいたから落書きのチャンスがあったって…、それは海未ちゃんも同じだよね」

 

335: 2016/06/02(木) 00:02:09.57 ID:AnJEIyw0.net
海未「そ、それはそうですが…」


花陽「あのね、しかも私はあのノートはほかの誰にも見せたくなかったの。。なのに…」


花陽「・・・海未ちゃんが忘れ物を取りに部室に来た時、私実はその時部室にいたの。」

海未「えぇ!?」

花陽「丁度ノートに例の文章を書いてたらね、急に海未ちゃんが来るからびっくりして机の下に隠れてたの…」

花陽「そしたら海未ちゃん、ノートカバンにしまって帰っちゃうからびっくりしたよ」


海未「あ、あぁ…それは申し訳ありません」

海未「しかし、まさかあの時花陽がいたとは…」

海未「確かに校門から部室を見た時人影があったのを覚えていますが…あれが花陽だったとは思いもしませんでした」


花陽「わたし、なんとか取り返そうと思ったんだけど、どうしようもなくて…。そしたら、しばらく経ってからことりちゃんが返しに来てくれたの」

海未「ああ…昼休みにことりが居なくなった時ですね」

花陽「うん。だから…あのね、海未ちゃんに見られたのは本当に予想外な出来事だったって事で、あの文章はできれば誰にも見られたくなかったの」

花陽「今回の落書き…私のノートと同じことが書いてあって本当にびっくりしたよ、、」

336: 2016/06/02(木) 00:02:45.74 ID:AnJEIyw0.net
花陽「でね、ノートの文章を見た上に夜に屋上にいた海未ちゃんが犯人なんじゃないかな…って私は思ったの」


海未「なるほど…確かにあの落書きはノートを見てないとできませんね。」

海未「そうなると私を疑うのも仕方ない気がします…」


花陽「だよね?」


海未「ですが……私は、犯人ではないんです。」

海未「信じてもらえないかも知れませんが…ほんとに違うのです」

337: 2016/06/02(木) 00:04:00.77 ID:AnJEIyw0.net
花陽「・・・」


海未「・・・話は少し変わりますが、花陽、'太陽を奪ったのは'というのはどういう意味なのですか」




花陽「・・・海未ちゃんは、夢、見たことある?」


花陽「とっても綺麗な夢」


花陽「私達が、宝物みたいな青春を過ごす夢」


花陽「その世界には太陽もあって」


花陽「みんな…みんな輝いてた」


海未「…」



花陽「キラキラしてて…、泣いたり、笑ったり」


花陽「私たちの絆は永遠なんだって、本当にそう思えた…」



花陽「そんな夢…海未ちゃんは見たことない?」


海未「・・・何の話でしょうか…」

海未「さっぱり・・・」

338: 2016/06/02(木) 00:04:52.41 ID:AnJEIyw0.net
 
自分の中で矛盾が生まれている事に海未は気づきはじめた


記憶にないはずの夢ーーー


花陽「見たことないんだ」


花陽「じゃあなんで」


花陽「穂乃果ちゃんの名前を知ってるの?」


海未「……!!?」



花陽「私はね、別に落書きをしたのが海未ちゃんだと疑ってる訳じゃないの」




花陽「'太陽を奪った'のが海未ちゃんだと疑ってるの」

339: 2016/06/02(木) 00:05:40.10 ID:AnJEIyw0.net
花陽「'夢'みてないのに、穂乃果ちゃんの名前を知ってるなんておかしいよね」


花陽「海未ちゃんは必氏に穂乃果ちゃんを探してるみたいだったけど、本当は分かってるよね」


花陽「'夢'見てないなんて嘘だよね」


花陽「穂乃果ちゃんは…どこ…!?」


花陽「海未ちゃんホントは知ってるんでしょ…?」


花陽「ねぇ! 教えてよ海未ちゃん…!」



海未「私は… …」


海未「私は本当に…」

海未(私は本当に夢をみてないのでしょうか)

海未(私は…本当に穂乃果を知らないのでしょうか)


海未(あの夜の屋上で…私は、何を思い出したんでしょうか)


海未「私は…」


 

340: 2016/06/02(木) 00:06:09.51 ID:AnJEIyw0.net
 

 
「かよちんっ!!!!」



 

341: 2016/06/02(木) 00:08:36.32 ID:AnJEIyw0.net
花陽「凛ちゃん…!」
海未「凛…!」


凛「あ!海未ちゃん?!かよちんに何か変なこと言った!?かよちん泣いたら、凛が許さないよ!」ハァハァ


海未「い、いえ…!私はそんな…」


凛「かよちんっ!」

花陽「は、はぃ…!」ビクッ

凛「さっきはごめんね…凛、何も言えなくて…」


凛「でもねかよちん、今なら言える!」


凛「凛はかよちんの味方だよ!みんなが敵になっても凛はずっと…ずぅ~っとかよちんの味方!」


凛「にこちゃんも、真姫ちゃんも、かよちんのこと信じてるって!」



凛「だからもう…泣かないで!」



花陽「凛…ちゃん…」


花陽(これはまがい物…!にせもの…!ホントじゃない…!)


花陽(この世界にはμ'sはいない…!)


花陽(まがい物の筈なのに…!)




花陽(…あったかいよぉ…!」グスッ

 

342: 2016/06/02(木) 00:11:38.25 ID:AnJEIyw0.net
 
凛「あぁ泣いちゃダメだってかよちん…!かよちんまで泣いたら凛も…!」グスッ


花陽「凛ちゃん…!ありがとう…!」ボロボロ

花陽「私…凛ちゃんに嫌われるようなこと言っちゃって…!」


凛「ううん大丈夫だよ…!かよちんは優しいから…凛に心配かけたくなかったんだよね…巻き込みたく無かったんだよね…!」

花陽「ごめん…ごめんね…!」グス



海未「・・・はぁ。これじゃどうしようもありませんね」


海未「今日のところは何も聞かずに帰ることにします…」


海未「では…「待って!」


花陽「海未ちゃん…これ、」


花陽は、先ほど凛に発見されたタオルに包まれたスプレーを差し出す


海未「これは…!?」

花陽「これは、きっと犯行に使われたモノ」

花陽「誰かが花陽のカバンに入れたの」

花陽「海未ちゃんなら何か分かるかも…持って行って!」

海未「わ、分かりました…」

花陽「さっきはあんなこと言ったけど…この世界に太陽がはじめから無いのはわかってるから…」

343: 2016/06/02(木) 00:13:02.41 ID:AnJEIyw0.net
花陽「だから、気にしないで。海未ちゃんが本当に夢を見ないでここまでたどり着いたんだとしたら、もうゴールは近いはずだよ」


海未「ゴール…?」


花陽「落書きの犯人…きっと、穂乃果ちゃんを知ってるよ。」

海未「!!」

海未「…なるほど。分かりました。」


凛「あ、あのね!」

凛「真姫ちゃんが何か知ってるようなこと言ってたよ!明日、真姫ちゃんに聞いてみるといいかも!」

凛(凛には何のことかよくわからないけど…)


海未「そうですか…ありがとうございます。凛」

海未「必ず犯人を見つけますね…! それでは今日は帰ります さようなら」


花陽「うん…じゃあね」

凛「頑張ってね!」



寄り添い支え合う2人を背中に海未は花陽の家から自宅へと向かった
時刻は既に23:00を回っており、海未の通常の就寝時刻を過ぎていた
まだ小雨も続いており、海未は傘を持ってきてはいなかったが気にせず帰ることにした…
その手には、タオルとカラースプレーが握られていた。


_____________

_____________

344: 2016/06/02(木) 00:14:12.78 ID:AnJEIyw0.net
_____________


にこ「……」prrrr

にこ「…だめね、真姫に電話が繋がらない…」

にこ「何かあったのかしら…」





長い夜が終わり、それぞれはそれぞれの思いを胸に新しい朝を迎える
しかしまだ雨は止んではいなかった…



 

345: 2016/06/02(木) 00:15:47.62 ID:AnJEIyw0.net






長い夜を終えた次の朝
海未は朝一でことりから「今日は先にいってて!」というメールを貰い、その為学校へは1人で登校していた。

学校に着いて、まずはじめに注目したのは落書きだ。昨日は日曜だったので一般の生徒は登校していない為目撃はされてない筈だが、今日まで残っていたらそれは全員に目撃されることになる

しかし、振り続ける雨のおかげか落書きは綺麗さっぱり洗い流されていたようだった


海未(つまり、あの落書きはやはり水性のスプレーで書かれたということですね…)

海未(何故すぐ消える水性で描いたのかはなぞですが、大事にはならなさそうで何よりです)

海未(…花陽の言っていた通り、ゴールは近いはずです。犯人の検討はあらかたついています。)

海未(これをより確実なものにする為にまずは真姫に話を聞きたいのですが…)


「あ、海未ちゃん!」


海未「?」

凛「おはよう海未ちゃん!」
花陽「おはよう海未ちゃん♪」


海未「凛、花陽… おはようございます」

海未「昨日はよく眠れましたか?」

凛「うん!かよちんと一緒にお泊まりしたから、安心してぐっすり眠れたにゃー」

花陽「花陽も、ぐっすり眠れました」

346: 2016/06/02(木) 00:16:35.26 ID:AnJEIyw0.net
海未「あ、花陽…その」


花陽「うん分かってる。いろいろ、聞きたいことあるよね… 同好会の後にでも話そう?」

海未「そうですね、よろしくお願いします」

海未「ところで二人とも、真姫を知りませんか?」


花陽「そうなんだよね…昨日から電話しても出てくれなくて、凛ちゃんと2人で心配してたんだ…」

凛「今日の朝も、いつもの場所に集合しよってLINEしたんだけど既読もつかなかったんだよね」

海未「うーん、心配ですね… あのしっかり者の真姫が音信不通とは…」



にこ「 なにかあった、としか思えないわね…!」


海未「にこ!」
凛花「にこちゃん!!」

347: 2016/06/02(木) 00:22:25.26 ID:AnJEIyw0.net
海未「にこは真姫について何か知らないのですか?」

凛「にこちゃん、昨日の夜真姫ちゃんと会ってたよね?」


にこ「ええその通りよ… でも、凛と別れたあとすぐに真姫も『犯人に心当たりがある』って言ってどっか行っちゃったのよ…」

海未「1人で行かせたのですか!?」


にこ「真姫は穏便に済ませたいって…1人で大丈夫だからって言ってたのよ…それに、犯人って言っても殺人犯追ってる訳じゃないし、、」


花陽「でも、それから連絡取れないんだよね…?」

にこ「うっ… そうだけど・・・」


凛「ど、どうしよ~!!真姫ちゃんしんじゃったりしてないかな!?」アセアセ

海未「そ、そんなことになったら…!!」アワアワ



「なになに~?何の話してるのぉ??」

聞き覚えのある甘い、とろける声が聞こえてきた

振り向くとその声の主はいつもと変わらず笑顔を貼り付けてこちらに微笑みかけている

348: 2016/06/02(木) 00:23:27.55 ID:AnJEIyw0.net
 
その隣には今正に安否を心配していた人物___西木野真姫が、不機嫌そうに立っていた


海未「ことり……!と、真姫……!!?」

凛「真姫ちゃん心配してたんだよ!」

にこ「どうして電話に出なかったのよ!」


真姫「ご、ごめんなさい…」

真姫「昨日はずっとケータイの電源切れてて…」


にこ「あら?そうだったの… それなら早く言いなさいよ!心配しちゃったじゃない」

海未「ところで何故ことりと真姫が一緒に?」


ことり「…真姫ちゃんとは朝、たまたま会っただけだよ!」

真姫「そ、そうよ。たまには一緒に行くのも悪くないわねって…」


凛「ふーん。」

にこ「まぁ無事だったんだし何よりだわ。そろそろ授業始まるし解散しましょ」

ことり「そうだね♪ 海未ちゃんいこっ」

海未「ええ… それでは失礼します。」

凛「バイバイにゃ」

花陽「また放課後だね」


にこ「あ!真姫!」

真姫「…なによ」

349: 2016/06/02(木) 00:24:14.52 ID:AnJEIyw0.net
にこ「昨日は…何とも無かったの…?」



真姫「・・・・何とも、なかったわ」


にこ「そう。ならいいわ…また放課後会いましょ」

真姫「ええ。」


凛「ほらほら~真姫ちゃんいこっ!」

花陽「授業遅れちゃうよぉ」





にこ(何ともなかった…? そんなはずないでしょ。何があったの…?真姫……)

350: 2016/06/02(木) 00:25:20.53 ID:AnJEIyw0.net
 



海未「ことり…真姫に何かしましたか?」


ことり「なにか? なにかって何?ことりはなんにもしてないよぉ?」


海未「そうですか…。いえ、少し真姫の様子が変だと感じただけです」

ことり「心配しすぎなんじゃないかなぁ」

海未「…そうだといいのですが」





海未(真姫には話を聞きそびれましたが、もう私の中でほぼ犯人の目星はつきました……)

海未(ゴールは近い、はずです・・・・)

_____________

_________

_____

351: 2016/06/02(木) 00:26:13.50 ID:AnJEIyw0.net
 



放課後、同好会部室ーーーー


それぞれ思惑を抱えた7人の少女達が部室に集まり席に着く。


そこに軽い談笑は存在せず、お互いの顔色や挙動を探りながら、なおかつ自分の隙は見せないような無言ゆえの圧力的な雰囲気が漂っている

そこでその中の1人ーーー、矢澤にこが席を立ち呼びかける

にこ「・・・いーいあんた達。少し雰囲気が重すぎるから言っとくけど、」

にこ「確かに私達は理事長から犯人を探せとは言われたわ。」

にこ「でも、犯人を見つけても事態はいい方向に進むことはない。それはみんなよくわかってる筈よ」


にこ「大切なのはこの事態をどう解決するかよ」

にこ「この事態をうまく解決しないと、私達も気まずいままだし…それに、ラブライブだって」
ことり「えぇ?!」


にこ「・・・なによことり」

ことり「にこちゃん、まだラブライブ出る気でいたのぉ?」



にこ「・・・はぁ?」

352: 2016/06/02(木) 00:28:13.29 ID:AnJEIyw0.net
ことり「ラブライブなんかもう無理だよぉ」


ことり「部活の大会に出る時は理事長の、お母さんの許可が必要でしょ?」


ことり「でも犯人を見つけないとお母さんはきっと許可してくれないと思うし、例え犯人を見つけても、その犯人が私達の中にいたら元も子もないよぉ?」

ことり「にこちゃんだって分かりきってるよねぇ?」




にこ「・・・・ゎよ」


ことり「?」



にこ「・・わかってるわよっ!!」

にこ「悪かったわねっ!夢見てて!!」


にこ「私はまだみんなでスクールアイドルやる夢が捨てきれて無いだけよ!最後まで希望持ってちゃだめなの!!?」



にこ「・・・それに、この中に犯人がいると決まった訳じゃないわ。」

にこ「ほかの…外部犯の可能性だって残ってるし」


ことり「ええ~?まだそんなこと思ってたの?じゃあ言っていいかなぁ?」チラッ

花陽「」ビクッ


ことり「わたし、見ちゃったんだぁ」


ことり「かよちゃんが落書きしてるとこ♪」


花陽「~~~~っ、、」グッ

353: 2016/06/02(木) 00:29:05.78 ID:AnJEIyw0.net
にこ「は、、、え?…嘘でしょ…?花陽…?」


海未「……」

真姫「……っ!!」キッ



花陽「わ、私じゃないよぉ…!」

凛「…ことりちゃん。それは、いつ見たのかにゃ?」


ことり「…朝方、みんなが起きる前だよ」

ことり「窓からみえたの」


凛「…へぇ~。。」

354: 2016/06/02(木) 00:35:14.67 ID:AnJEIyw0.net
 



絵里「…ちょっといいかしら?」


ことり「なーに?絵里ちゃん」


絵里「あなた…何故それを見た時に止めなかったの?普通なら見た時になにかしらアクションを起こす筈よ」

絵里「それに…今の今まで黙ってた理由はなに?私達に言うタイミングならいくらでもあったわよね?」


ことり「…えぇ~?そうかなぁ。ことり以外と忙しいから言うタイミングなかったよぉ」

ことり「それに、私が最初落書きの現場を見た時はかよちゃんがまさか落書きしてるなんて思わなかったよぉ」


ことり「なにしてるのかなぁって、ちょっと目に入っただけだったから♪」


 

355: 2016/06/02(木) 00:36:36.73 ID:AnJEIyw0.net
 


絵里「…まぁいいわ。花陽、どうなの?あなたがやったの?」



花陽「…私じゃ、ありません…!」


絵里「…だって。」


絵里「花陽は違うらしいわよ?ことり」


ことり「えぇ?それだけで信じちゃうの?」


絵里「それだけで信じるに値する関係じゃなかったかしら?私達」


ことり「そうだったかなぁ。'夢'でも見たんじゃないかなぁ?」


絵里「ことりこそ、夢でも見たんじゃない?」

絵里「物的証拠でもない限り、貴方の発言は弱いわ。花陽を犯人と決め付けるのは早いわよ」



ことり「……物的証拠ぉ?」ニヤッ


その時、ことりが待ってましたと言わんばかりの表情に一瞬だけ変わったのを海未と絵里は見逃さなかった

356: 2016/06/02(木) 00:37:26.01 ID:AnJEIyw0.net
絵里はその表情に悪寒と、嫌な予感を感じた。

自分はもしかして'言ってはいけないワード'を口にしてしまったのでは…?

何か取り返しのつかない事をしてしまったのではと酷く不安になった


海未も、絵里と同様 微かではあるが嫌な予感がした。

2人が感じた予感は見事に的中し、事態は最悪へ向かって加速する



ことり「物的証拠かぁ」


ことり「そういえば真姫ちゃん、さっき何か言いたそうだったね?」



ことり「何か言いたいこと、あるんじゃない?」


真姫「ーーーーーーー。」キッ



真姫「凛から、花陽がスプレーを持ってたって、、、聞いたわ…」


凛「!!?」
花陽「な、なんで…!?」
にこ「…真姫っ!?」

357: 2016/06/02(木) 00:40:58.99 ID:AnJEIyw0.net
 
絵里「は、花陽…?それは…本当なの?」ガクガク



花陽「…確かに、私はカラースプレーを「ちょっと待って下さい!」



海未「みなさん、何か勘違いしていませんか?」

海未以外「…?」


海未「スプレーを持っていたのは」

海未「私ですよ?」


ことり「!!?」


凛「えっ!?それは昨日凛が海未ちゃんに渡した…うぐっ!」

海未「凛は少し黙っててください」ボソボソ



海未「ほら…ちゃんとここにあります」ヒョイ

海未「私はカラースプレーを持っていますが、これは犯行に使われたものかどうかは分かりません。」

海未「このカラースプレーは昨日、学校の近くで拾ったものです」

海未「真姫は凛から『花陽のカバンから出てきた』と聞いたかも知れませんが、それは間違いで、正しくは私のカバンから出てきました」


絵里「…別に海未が元々持ってたという訳ではないのね?」


海未「ええ。これはただの拾い物ですから。ですが落書きに使われた可能性が非常に高いです」

海未「警察にでも調べて貰えば、持ち主が分かるかも知れません」

358: 2016/06/02(木) 00:42:42.57 ID:zci4CVjB.net
海未「私が責任を持って今日保管して、明日も有力な手がかりが得られなければ警察に提出することにします」


絵里「それはいい考えね!そうすればすべて解決ね…!もう、こうなった以上私達で解決まで導くのは厳しいものね」


海未「ええ。外部犯だった時には私達の力ではどうしようもありませんから」

海未「理事長もきっと納得してくれます…。ですよね?ことり」



ことり「…………っ! そうだね!」

ことり「さすが海未ちゃん!だね!」

ことり「いや~尊敬しちゃうな!」



にこ「な、なんだかよくわからないけど…要は明日有力な情報が無かったら、それを海未が警察に届けるって事でいいのね?」


海未「ええ…ついでに落書きの件も相談します」


花陽「そっか…。でも仕方ないね」


海未「私は外部犯だと信じていますから。きっと警察が犯人を捕まえてくれる筈です」

359: 2016/06/02(木) 00:45:58.96 ID:zci4CVjB.net
凛「…そうだね!」


絵里「うまく纏まったみたいね!じゃあ今日の所は解散にしましょうか…」


にこ「そうね。こんな雰囲気で練習しても効率的じゃないわ 今日は帰りましょ」


にこの言葉をきっかけに、重苦しかった雰囲気は無かったかのようにそれぞれが帰宅の準備を始める

凛「かよちーん!この前言ってたラーメン屋さんいこっ!」


花陽「あ、ごめん!…私このあと海未ちゃんと話したいことあるんだ…にこちゃんと行けば?」


にこ「しょーがないわねぇー!今日は凛についてってあげるわ!」


凛「やったー!」



ことり「……」

海未「ことり?大丈夫ですか…気分がすぐれないようですが」

ことり「うん…大丈夫だよ…ことりは大丈夫」

海未「・・・ならいいのですが・・」


海未「今日は少し花陽と用事があるので一緒には帰れないのですが…」


ことり「ん…今日は真姫ちゃんと帰るよ」

海未「おや…そうですか。分かりました 気をつけて下さいね」

360: 2016/06/02(木) 00:51:50.80 ID:zci4CVjB.net
ことり「真姫ちゃん…帰ろ?」ニコッ

真姫「」ゾクッ


真姫「…わかったわよ」


絵里「ほら~もう部室締めるわよ~」


凛「大変だにゃ!急げ急げ~」ドタドタ

花陽「あぁ凛ちゃん早いってばぁ~」

にこ「ちょっ、急かさないでよ!」


絵里の煽りを受けて、次々とメンバーが退室していく


真姫「さ、帰りましょことり」

ことり「うん」


にこ「あちょっと真姫!!」


真姫「なによ」


にこ「あんたどうしてことりと…まぁそれはいいけど…少しくらい、昨日の話してくれてもいいんじゃない?」

真姫「……何も話すことはないわよ。じゃあね、にこちゃん」

そう言って真姫は軽く手を振り部室から出ていった

361: 2016/06/02(木) 01:04:38.27 ID:zci4CVjB.net
 
しかしその退室の間際、真姫の手から何かが落ちた


にこ「? 真姫、なんかこれ落としたわよ…ってもういないか」

にこ「なにかしら…これ。紙くず?ゴミかしら」

にこ「ん?何か…書いてある?」


絵里「どうしたのにこ?もう部室締めるわよ?」


にこ「あぁいやちょっと…、、!?」


紙くずのように丸まったメモ紙を広げたにこは驚愕した


絵里「な、どうしたのよにこ…なに?これに何か書いてあるのかしら?」


そしてクシャクシャになったそのメモ紙をのぞき込んだ絵里も同様に驚愕の表情を浮かべた

362: 2016/06/02(木) 01:05:25.83 ID:zci4CVjB.net
 



真姫からこぼれ落ちたその丸まったメモ紙には
消え入りそうな細い、薄い文字で



「た す け て」

の四文字だけが書かれていた



にこ「な、なによこれ…!!」


絵里「え、え? これは一体なんの暗号なの?」


にこ「バカッ!暗号なんかじゃないわよ!そのまんまの意味!!」


にこ「真姫は…私達に助けを求めてるっ!」


絵里「!!?」

363: 2016/06/02(木) 01:17:05.44 ID:zci4CVjB.net
_ _ _ _ _ _ _



一方、音ノ木坂の空き教室では花陽と海未が机を挟んで向かい合っていた

夕暮れ時で、本来であれば夕日が差し込みいい雰囲気になったであろうこの時間

しかし今日も雨が降っており外はどんより暗い


花陽「海未ちゃん…犯人は、もう分かったの?」


海未「ええ…恐らくですが、というかもうみんなも分かっているとは思いますが…」



海未「・・・ことり、でしょうね」

花陽「・・・だよね。怪しさは満点だよね」


海未「…はっきり言って、最近のことりは異常です。何が…とは、はっきりとは言えませんが」

海未「なにか狂気のようなものを感じるんです…」


花陽「うん…私にもなんとなくわかるよ」

海未「ですがまだ決定的な証拠が足りません…」


花陽「…自白してくれるのが1番なんだけどね。」



花陽「まあ、今はそんなこと言っても仕方ないよね。うん…じゃあ、海未ちゃん」

364: 2016/06/02(木) 01:21:20.90 ID:zci4CVjB.net
 
花陽「早速だけど、私が持ってる情報 聞きたいこと全部教えるよ」


海未「遂に…ですか…!」


花陽「太陽の…ううん。穂乃果ちゃんのこと、知っておいた方がいいと思うんだ。」

花陽「きっとこの落書きも、穂乃果ちゃんの事が関係してると思う…」


海未「私もそう思っています…」


海未「花陽、お願いします。穂乃果について…教えてください」


花陽「うん…」


花陽は下を向きしばらく考え込んではいたが、考えが纏まったのか、すぐに頭を上げこちらをそのつぶらな瞳で見つめた

外はまだぽつぽつと雨が降り続いている
しかし確実に雨足は弱くなっている

明日頃には晴れているのだろうか




花陽はゆっくりと'夢'について話し始めた・・・

411: 2016/06/12(日) 17:05:14.54 ID:m/bXtMiq.net
 
花陽「私が夢を見たのは、音ノ木坂学院の入学式前日…」

花陽「その日は緊張しちゃってなかなか寝付けなくてね」


花陽「・・・気づいたら私、教室で自己紹介をしてたの。」

花陽「その時は困惑したよ、さっきまで自分の部屋のベットにいたはずなのに急に教室だもん。なんとかその場をやり過ごしたんだけど何が起こってるのかイマイチ分からなかったな」



_______それが夢だって気付いたのはだいぶ後の話。それまで私は長い長い夢を楽しんでた


初めて穂乃果ちゃんに出会った時、私は「なんてあたたかい人なんだろう」って思った

笑顔が眩しくて、思い切りがあって、元気いっぱいで…


スクールアイドルを目指すから、その部員になって欲しいって… 初ライブをやるから見に来て欲しいって言ってた

私がライブを見に来た時には私以外人がいないみたいで、もう中止する寸前だったらしいんだけど私一人の為に結局やることになったんだ


ステージには海未ちゃん、ことりちゃん、穂乃果ちゃんの3人が居てね

一言で言うと、
とっても輝いてた

412: 2016/06/12(日) 17:06:20.92 ID:m/bXtMiq.net
海未「・・・・・私がその中に居たのですか?」

花陽「うん。すごくキラキラしてたよ。海未ちゃん踊りがとっても上手で…」

海未「・・・わ、私がステージで踊るとは想像もつかないです…」

花陽「…穂乃果ちゃんのお陰、かな」

海未「なるほど・・・話を続けて下さい」



私達はめぐり合わせで、続々とスクールアイドルのメンバーが集まっていって…

遂に、アイドル研究部のスクールアイドル
μ'sが結成されたの


結成されてからいろんな事があったよ


穂乃果ちゃんがライブ前に熱を出したり…
ことりちゃんが留学しそうになったり…
μ'sで廃校を救ったり…
合宿したり…
A-RISEとラブライブ予選で戦ったり…

私が見た夢ではね、私達μ'sはラブライブで優勝するの。そこに至るまでには色んな苦しみとか、壁とか、とにかく色々あった…


でもね、そのどれもがとてもキラキラしてた

青春っていうのかな

本当にいつも輝いてた



でもそんなμ'sにも終わりが来ることは避けられなかった。

413: 2016/06/12(日) 17:07:22.78 ID:m/bXtMiq.net
 
海未「終わり…?」


花陽「うん。スクールアイドルは学生の間しか続けられないの」

花陽「私達9人は…9人でμ'sだったから、どうしても形を変えたくなかった…」

海未「ま、まって下さい!9人…というのは、誰を含めているのでしょうか?」


花陽「あ…そこら辺も説明しなきゃだね」

花陽「μ'sは…、今のアイドル研究同好会に、穂乃果ちゃんと希ちゃんが加わった感じかな。」


海未「希先輩が…?」


花陽「うん。信じられないよね 今の希ちゃんってそういう事する人に見えないから…」

海未(希先輩…。そういえばあれ以来会っていませんね…)

花陽「希ちゃんはμ'sの名付け親でもあるんだ」

花陽「ダンスもとっても上手で…って、そこら辺の話はいいよね、、」




海未「・・・μ'sは最後、どうなったんでしょうか?」

414: 2016/06/12(日) 17:08:40.39 ID:m/bXtMiq.net
 

花陽「・・・私の夢は卒業式の前日で終わったの。ラブライブに優勝して…、さぁ3年生を送り出そうって、覚悟も決めて、… でも気づいたら私は夢から覚めてた」


花陽「最初は、今まで見てたものが全部夢だったなんて信じられなかったよ。」

花陽「でも、学校に行ったら随分前に終わったはずの入学式で…、絵里ちゃんが前で挨拶してるの。」

花陽「思わず入学式の後、絵里ちゃんに声をかけたけど…私の事なんて全然知らないって。。」




花陽「・・・時々思うの。今こうしてる私がいる世界…こっちの世界がホントは夢で、穂乃果ちゃんがいた…μ'sのあった世界が現実なんじゃないかってね。」

花陽「でも、気づいたの」

花陽「穂乃果ちゃんは私の夢の、現実にはいない存在」


花陽「私が見た夢は…暖かすぎたの」


花陽「もう一度だけ穂乃果ちゃんに会いたいって願いながらずっとここまで生きてた」

花陽「もう一度その暖かさに触れたい…って」



花陽「でも凛ちゃんが教えてくれたんだ」

花陽「この世界に穂乃果ちゃんはいないけど…凛ちゃんがいる。海未ちゃんも…他のみんなも」

花陽「現実にも暖かい場所があるって知ったから、私はもう太陽の夢を見ること…やめたんだ。」




海未「・・・花陽はそれでいいのですか?」

415: 2016/06/12(日) 17:09:32.59 ID:m/bXtMiq.net
花陽「うん…。夢にしがみついて生きてても、前に進めないって分かったの。」


花陽「私は、私の夢を見たいの」


花陽「言ったっけ。私…アイドルが大好きなの。夢の中でも、最初はラブライブに出るのは抵抗あったんだ」

花陽「でも…みんなと歌って踊って…みんな笑顔になって…」


花陽「いつの間にか私、アイドルになりたいって思ってた。」

花陽「だから花陽は、これからこの世界で自分がアイドルになる為に頑張ろうって思うの」


花陽「…私は、アイドルになる夢を叶えたい!」



海未「・・・そうですか。」

海未「花陽は…か弱い女の子だと思っていました。」

海未「でも、とても強い人だったのですね…」

416: 2016/06/12(日) 17:10:51.33 ID:m/bXtMiq.net
 
海未「、、私はまだ花陽みたいに強くなれません…まだ見ぬその夢を見たいと今も強く願っていますし、なにより穂乃果に会いたいです」



花陽「 …海未ちゃんほんとになにも分からないの?穂乃果ちゃんの名前…どこで知ったの?」


海未「すみません…本当にわからないんです。夢の内容も初めて耳にしましたし、μ'sというグループがあったというのも知りませんでした…」

海未「穂乃果、という名前は夢の中で知ったんです」



花陽「夢? …私が話した夢じゃなくて?」


海未「はい…何の変哲もない夢でした。夜の音ノ木坂に私がいる夢です」

海未「その夢で屋上に登った時に、何故か穂乃果の名前が頭に浮かんだのです」


海未「…この前私が合宿をしようと言ったのも実は現実の世界で屋上に登ることが目的でして、、登れたのはいいものの、落書きの犯人と疑われるハメになりましたが。。」


花陽「そっか…だから合宿の夜、屋上で会ったんだね。」


花陽「…私の夢でもね、ラブライブの予選決勝前にみんなで合宿したの。それも…穂乃果ちゃんの提案でね」

花陽「その時はμ'sのメンバーみんなで屋上に登ったんだ。とっても綺麗だったよ…。海未ちゃんと見た星空も綺麗だったけどね」

417: 2016/06/12(日) 17:12:53.11 ID:m/bXtMiq.net
海未「…! やはりそうでしたか…」

花陽「やはり…?」


海未「私…何となくそんな気がしてたんです…」

海未「以前も来たことがある…ような気が」


花陽「! やっぱり海未ちゃん夢を見たんじゃ…!」


海未「いえ、微かにそのような気がするだけで夢を見たかは分かりません…」

海未「花陽の言う通り、夢を見たことがあるのにそれを忘れているだけか… もしくは気のせいか…。」


花陽「…本当に気のせいかな」

花陽「同じ夢を複数の人が見る確率って…どれくらいなのかな?」



海未「……………ですよね」


海未「いえ、全くその通りです…!」


海未「やはり…その'夢'には何かあるのでしょうか…!いえ、何かあるはずです!」

花陽「花陽もそう思います!」

海未「…捕まえましょう!犯人…!必ず何か知っているはずです!」


花陽「うん…!」

海未「まずは怪しいことりに話を聞きましょう」


花陽「でももう暗いよ…?」


気がつけば時刻は18:00を回っており、それは同好会の解散から30分以上経っている事を示していた

418: 2016/06/12(日) 17:14:01.11 ID:m/bXtMiq.net
恐らくことりはもう家に着いている頃であろう

海未「・・・いえ、善は急げです!今すぐことりを追いかけましょう!」

花陽「やるきだね海未ちゃん…!花陽も応援します!」


海未「さぁ!走りますよ!」


2人は閉門ギリギリの学院から駆け足でことりの家へと向かった。


雨はもうほとんど止んでおり、霧雨のように雨粒が漂うだけであった

視界と足元は悪かったが構わず海未は駆けた

それに負けじと花陽がついていく


すると海未の元に一本の電話が届いた


海未(おや…?誰でしょうか… にこ?)prr

海未「・・・もしもし」

419: 2016/06/12(日) 17:14:50.70 ID:m/bXtMiq.net
にこ「あ!海未?! ことりと真姫探してるんだけど知らない?!」


海未「おや…にこもですか…申し訳ありません。私と花陽も今ことりを探している所なのです…」


にこ「え!…そうなの?どうして?」


海未「…ことりが落書きの犯人ではないかという結論に至ったからです」


にこ「・・・そう。 まぁ私と絵里と凛もいま似たような理由でことりと真姫を探し回ってるのよ」


海未「なにかあったのですか?」


にこ「真姫が…助けを求めてる」


にこ「ことりと何かあったんだわ… 今ことりの家に行ったけど留守みたいなの」


海未「留守…? 分かりました。周辺を探してみましょう」

にこ「ええ…よろしく。見つけたらすぐに電話するわ!」



海未「…気をつけましょうね、お互い。」

にこ「…そうね」

プツ

420: 2016/06/12(日) 17:16:10.60 ID:m/bXtMiq.net
花陽「にこちゃん何て?」


海未「ことりの家に行ったらしいのですが留守だったようです… 一体どこへ向かったのか」


花陽「に、逃げたのかな…? 真姫ちゃんはなんでことりちゃんと……あれ?」

海未「…?」



花陽は急に眉を寄せて遠くにじっと目を凝らす


花陽「あれ…ことりちゃんと真姫ちゃんじゃない?」


釣られて海未もその視線を追う


海未「えぇ!? た、確かにあそこにいるのは…しかし…」


よく見ると少し離れた橋の上で2人の女子…ことりと真姫が何やら揉めているようだ


・・・というよりことりが真姫を橋から落とそうとしているように見える!


海未「た、大変です…!あのままでは真姫が!」


花陽「や、やだよぉ…!どうしよう!?」

海未「迷っている暇はありません!」ダッ


海未(橋まで約200メートル…!間に合うでしょうか…!)

421: 2016/06/12(日) 17:22:49.30 ID:m/bXtMiq.net
~~~~~~~~~~~~~~~



花陽と海未が2人を発見する少し前_____



真姫「ねぇことり…一体どこへ向かってるの?」

ことり「…ちょっとしたお散歩だよ♪どこに向かってるとかじゃないよぉ」


ことり「ことり、真姫ちゃんとゆっくりお話したいなぁって思ってたの」


真姫「へぇ…?私の体に'悪趣味なモノ'着けさせてる割に随分変なこと言うのね?」



ことり「真姫ちゃん…真姫ちゃんのせいで何もかも上手くいかなくなっちゃったよ…」

ことり「みんなから疑われて…'夢'も見れなくて…」



真姫「上手くいかなくなった?」

真姫「いいえ…いずれ貴方がやってる事は遅かれ早かれ誰かが暴いたはずよ」


ことり「違うよ真姫ちゃん…私の本当の目的はね」



ことり「μ'sをバラバラにすることだよ」

422: 2016/06/12(日) 17:23:30.25 ID:m/bXtMiq.net
真姫「…?」


ことり「私、ずっと考えてた。頑張って計画も練り上げて…みんながお互いを信じられなくなるような状況を作り上げたかった」

ことり「でもなんでかな。 みんな、バラバラになろうとしないんだ。」

ことり「気づいたら私だけが仲間はずれになりそうで… どこに行っても仲間はずれ。」

ことり「どうして私だけ… なんで…」



真姫「何言ってるのかよくわからないんだけど、μ'sってなんなのよ…」

真姫「私達がμ'sだっていうの…? 私達はアイドル研究同好会よ…?」

真姫「それに自業自得でしょ?あなたがあの人の言う通りにしか動いてなかったから…」

ことり「うるさいっ!」

真姫「!」ビクッ



ことり「私にもわからないよ…!! もうどうしていいか分からないの… どうしたらみんなバラバラになるの?」



ことり「ことり、いい事思いついたんです♪」

423: 2016/06/12(日) 17:24:50.01 ID:m/bXtMiq.net
真姫「…なによ」


ことりは急に立ち止まり真姫の方に振り返った

暗い霧雨の中、ことりの影が街の電灯に揺らめく



刹那、ことりが真姫に飛びついた

ことり「つかまえた♡」ガシ


真姫「な、何するのよ!離しなさいよ!」グググ

ことり「真姫ちゃんって泳げなかったよねぇ~?」

ことり「ここから落ちたらどうなるかなぁ~?」

気がつくと2人は橋の上におり、その下の川は連日の雨の影響からか流れが非常に急になっていた


真姫「あ、あなたもしかして最初からこのつもりで…っ!?」

真姫「や…やめて!離して…!」


ことり「最初からこうすれば良かったんだね…!やっぱりことりってうっかりさんだなぁ…!」グググ

ことりに両肩をしっかりと掴まれ、体を橋の手すりに徐々に寄せられていく

ことりの目には最早生気は宿っておらず、その瞳は暗く淀んでいるかのようだった

真姫にはことりに対抗できるほどに力は無く、間もなく橋の手すりに体が乗り出し始めた


もうダメだと真姫が力を入れる事を止めようとした瞬間

424: 2016/06/12(日) 17:25:52.48 ID:m/bXtMiq.net
 

「はぁっ!!!」




どこからともなく、威勢の良い掛け声と共にドロップキックが飛び込んできた

そのフォームは靭やかで美しく、低空飛行ながらも放物線を描くようにしてことりの横腹へと直撃した

ことり「っ!?」

真姫「!?」



海未「な、あれは…!?」

花陽「・・・にこちゃん!!」


その場を止めようと必氏に走っていた海未と花陽もタイミング良くその場に合流したが、一足先に状況を一瞬にして収束させたドロップキックに驚嘆を隠せずにいた



ドロップキックを決め込んだ人物…矢澤にこは倒れ込んだことりと共に地面に仲良く並んだ

唖然とした真姫は状況が分からずにただ立ち尽くしていた

にこ「いてて… 真姫、大丈夫?怪我はない?」


真姫「い、いやにこちゃんの方こそ大丈夫なの…?なによ今の…プロレスみたいだったわ」


花陽「にこちゃん凄かったよ…!」


にこ「体が勝手に動いてね…まぁ、受身は取れなかったけど」

425: 2016/06/12(日) 17:27:03.64 ID:m/bXtMiq.net
真姫「うん…ありがと、にこちゃん」


にこ「いいのよ。それよりことりよ…」

にこ「にこがやっといて何だけど、大丈夫?折れてたりしないわよね?」


ことり「……」


海未「こ、ことり…?」



ことり「…いてて、酷いなぁにこちゃん」

ことり「大切な仲間にキックなんて…」


ことりはフラフラとはしているものの体をゆっくり起こし、制服についた靴あとを少しはたきながら言った


にこ「はぁ? その大切な仲間にあなた今何しようとしてたの?」

ことり「今…? 私何かしてたかなぁ…」

ことり「あれ? どうして海未ちゃん花陽ちゃんがいるの…?」


海未「あなたを探していたのです」

ことり「え?」


花陽「海未ちゃんと私はね…ことりちゃんが犯人なんじゃないかって思ってるの」

ことり「犯人…? それって落書きの?」


にこ「私達は真姫から助けてって言われたしね」


真姫「あぁ気付いてくれたのね…良かった。心配だったのよ」

426: 2016/06/12(日) 17:29:33.86 ID:m/bXtMiq.net
にこ「直に凛と絵里もここに来るはずだわ」


ことり「えぇ?!凛ちゃんと絵里ちゃんも?なんでみんな…どうしたの?」

海未(…?)


真姫「あの…にこちゃん」

にこ「あ、噂をすれば凛と絵里が来たわ!」


辺りがすっかり暗くなった街の中、霧雨の橋の街灯に女子が7人集まった


凛「お待たせ…!真姫ちゃん、大丈夫だっ
た!?」


真姫「ええ…にこちゃんが助けてくれたわ」


絵里「ことり…あなた…」


ことり「?」


海未「さぁ…全て説明してもらいましょうかことり…!」

にこ「なんで真姫を突き落とそうとしたの?」


ことり「へ…へ?突き落とす…?嘘…私…」


絵里「突き落とそうと…?! なるほど状況を理解したわ。」

絵里「あなた大切な仲間になんて事を…!」

絵里「落書きの犯人も…あなたでしょ?」


ことり「わ、わかんないよ…!なんで…?!」


ことりは今にも泣き出しそうな顔で自分を取り囲む6人を見渡す

それぞれがことりを疑るような顔で見つめている


その中の1人__真姫が話を切り出した



真姫「聞いてみんな…今ことりに何を言っても無駄だわ」

427: 2016/06/12(日) 17:30:27.42 ID:m/bXtMiq.net
5人「?」


真姫「ことりはとぼけてる訳じゃなくて、本当に何も知らないの」


海未「で、てすが今真姫を突き落とそうと…!」


真姫「突き落とそうとしたのは…ことりであってことりじゃないの」


凛「??」


絵里「ことりであってことりじゃない…?どういうことかしら?」






真姫「ことりは…恐らく、二重人格よ」




 

441: 2016/06/14(火) 00:46:02.59 ID:5zLigne+.net
海未「は……へ?」


凛「二重人格って…人格が2つあるってこと?」

花陽「テレビとかでよくやってるあれかなぁ」


真姫「そう。正にそれよ。正確には解離性同一性障害とか言うらしいけどことりの場合は少し違うわ」

真姫「普通、多重人格とかっていうのは急激なストレスに耐えきれなくなって、自分以外の誰かがこの苦痛を受けてるんだって思い込むことでもう一つの人格が生まれるものなの」

真姫「だから、別人格っていうのは大体名前が違ったり、性格も真反対だったりするわ」

真姫「でもことりは違う…。この子は、'南ことり'という人格を2つ持ってるの」


海未「なっ…!?」


にこ「ど、どういう事よ!? だったら同じじゃない?」


真姫「私もまだ確証は掴めてないけど…多分本人に聞いた方が早いわ」



真姫「ねぇことり?」


ことり「え……分かんないよ…! 私、二重人格なの…?」



真姫「あなた…一体誰なの…?」

442: 2016/06/14(火) 00:47:21.69 ID:5zLigne+.net
ことり「ことりは…! うっ…!」



ことり「う…うぅ…」


絵里「だ、大丈夫ことり?!」


ことりは頭を抱え呻き出した。

が、しばらくすると満面の笑みを浮かべ顔をこちらに向けた


ことり「ことりは…ことりだよ♪」ニコッ


海未「!?」

凛「雰囲気が…」

真姫「なるほどね…」

にこ「あんた本当に誰なのよ…!」


ことり「だからぁ、言ってるよねぇ?私は南ことり、μ'sの衣装担当で穂乃果ちゃんの幼なじみ♡」


海未「これはまさか…!」

花陽「ゆ、夢の中のことりちゃんと一緒だ…!」


真姫「うん…やっぱりそうなのね」


絵里「ど、どういう事?私には何が何だか…」

凛「凛もさっぱりにゃ」

443: 2016/06/14(火) 00:48:31.94 ID:5zLigne+.net
真姫「私も詳しい事はよく分からないわ。ただ…ことりのこの人格は作られたものよ」


にこ「作られた…? 何のために?誰が?」


真姫「ことりをこんな事にした犯人がいるのよ」


海未「それは一体…?」



真姫「そうね。犯人は___」


ことり「おっと真姫ちゃん!やんやん♡それ以上はダメですよぉ~」

ことり「そんなこと言ったら真姫ちゃん氏んじゃうよぉ?」



海未「氏…!!?」

真姫「……。」


ことり「うふふ♡いい子だね! なんてったって真姫ちゃんには遠隔式電気ショック装置がついてるからね♡」


にこ「なによその物騒なの…!!まさかそれが原因で真姫があんたに大人しく従ってたってわけ!?」


真姫「ま、そういうことね。にこちゃんと別れて私が単独でことりの家に行った時、気絶させられた時に付けられたみたいなの」


そう言って真姫は自分の首筋から鎖骨の部分を指した。

444: 2016/06/14(火) 00:49:19.65 ID:5zLigne+.net
そこにはマイクらしき物と何やら禍々しい機械がテープで荒々と固定されていた


真姫「このマイクで常に私の発言は監視されててね。変な発言をしたらこの装置が起動して即心臓停止…そう説明されたわ」

真姫「メールや筆談で助けを求めようとしたけどケータイはことりに没収されてて、おまけに学校でもことりがぴったり付いてきてね。いつ装置が発動するか気が気じゃ無かったわ」



ことり「そういうこと♡ だから真姫ちゃんは何も喋らない方がいいよ?まだ氏にたくないもんね?」


真姫「…さぁ、それはどうかしら?」


ことり「…?」


真姫はそう言うと余裕を見せるようにして首筋に張り付いた装置を剥がし、さらにそれを地面に叩きつけた

ガシャン!という音と共に装置はバラバラになり、見るも無残な姿を晒した


ことり「ちょ、ちょっと…!装置を剥がしても氏ぬって言ったのに…!」


真姫「氏んでないけど?」

ことり「っ…!」

445: 2016/06/14(火) 00:50:04.74 ID:5zLigne+.net
真姫「さっきので確信したわ。これはタダのハリボテ。本当に頃すつもりなら私を橋から無理やり落とさなくても、この装置を使えば一瞬だったはずだしね」


真姫「それが出来なかったのはこの装置が偽物だから。まぁ…よく考えたらこんな小さい装置で心臓を止めるほどの電気ショックなんてまず無理だわ」


真姫「それにしてもいい作戦だとは思うわ。現に私は学校にいる間何も出来なかったもの。部室で何とかことりの目を逸らした時に紙に4文字を書く程度しか対抗できなかったわ。」

真姫「ま、敗因は真姫ちゃんが天才だった事かしら?」


ことり「うぅ……!なんでなんでなんで…!!?」

ことり「ひどいっ…!ひどいよっ…! うぅ」




海未「ことり…貴女は本当にことりなのですか?」

ことり「っ…! だからぁ!私は!」


海未「私の知ってることりは…少なくとも人を殺そうとなんてしませんし、脅したりもしません。常に人を気遣う優しい女子です」


海未「貴方は一体…誰ですか?」

ことり「私は…」


 

446: 2016/06/14(火) 00:50:42.37 ID:5zLigne+.net
真姫「ことりがこうなったのはつい最近の事だと私は思ってるわ。」


真姫「この子はよく…'夢'が見たいって言ってた。」


絵里「夢?」


真姫「そう。 花陽…あなた何か知ってるんじゃないの?」



花陽「うん。知ってるよ。 こうなった以上みんなにも話しておかないとね…」


凛「かよちん…」

_____________

________

___

447: 2016/06/14(火) 00:51:40.29 ID:5zLigne+.net
 



にこ「そんな夢が…、、花陽!もっと早く言いなさいよ!」


絵里「花陽が入学してすぐに話しかけて来たのはそういうことだったのね…!」



花陽「長い夢だよね。 でも、多分これがことりちゃんが見たがってた夢…そうだよね?ことりちゃん」


ことり「うん…。何度も聞かされたよその夢。」

ことり「素敵な夢…私、見たかった」



凛「・・・その穂乃果ちゃんって言うのは現実には居ないんだよね?」


海未「そうですよ。存在しません」


凛「じゃあなんで…夢を見てもないことりちゃんが'穂乃果ちゃんの幼なじみ'なんて言うの?」


ことり「…」


真姫「・・・そう教えこまれたからよ」


にこ「誰がそんな…」


真姫「夢を見たのは、花陽以外にもいるの」

「!?」


絵里「そ、それってもしかして海未?前に確か穂乃果を探してるとかなんとか…」


真姫「海未は特別。海未は夢を見てないらしいわ」


凛「って言うことは海未ちゃんは夢を見ないで穂乃果ちゃんを知ったってこと?そんなことあるの?」

448: 2016/06/14(火) 00:52:28.89 ID:5zLigne+.net
海未「すみません…そこは私にもよく分からないのです。」


海未「ですが、とりあえず私はことりにそんな事を教えた覚えはありませんね」



絵里「じゃあ誰が…?!」


真姫「・・・ことり、もう、いいわよね?」



ことり「・・・・・・・」

ことりは暫くの間沈黙していたが、微かに頷き言った



ことり「もう、ここまでバレたら仕方ないよ。私に出来ることはないよ」

ことり「結局、みんなから嫌われただけ…」

ことり「私はただの人形…」


ことり「これからも私は…穂乃果ちゃんの幼なじみ、μ'sの衣装担当南ことりとして…」


海未「それは違います」

ことり「?!」

449: 2016/06/14(火) 00:54:09.62 ID:5zLigne+.net
海未「貴方がどう思うかは分かりませんが、貴方はことりです。私の幼なじみ、親友です。」

海未「貴方が道を踏み外そうとしているなら私は必ず助けます」

海未「貴方を傷付けようとしている物がいれば私はそれを許しません」

海未「今回の件…貴方がその誰かしらに傷付けられた結果の行動なのであれば私はことりを傷付けた人物を絶対に許しません」

海未「真姫を橋から落とそうとしたのも、私は正直良くは思っていません。でも、ことりが苦しんで…苦しみ抜いた結果、あのような行動に出たのだとしたら」


海未「それは私の責任です。ずっと一緒に居たのに気づいてあげられなかった…」



海未「許して下さい…ことり。」




ことり「………………それは、」

ことり「'私'じゃなくて、海未ちゃんの幼なじみのことりに言ってあげて?」



ことり「うん…ちょっと心配だったんだ。'私'に比べて私はとっても弱い…」


ことり「でも、海未ちゃんがいるなら平気かもね…♪」ニコッ



ことりはいつもの様にとびきりの笑顔を見せた
しかしその笑顔はいつもとはどこか違う…まるで太陽の成分を含んでいるような暖かな笑顔だった



ことり「私は大人しく消えるよ…。」

ことり「最後に海未ちゃんに頼みたい事があるの」



ことり「聞いてくれる?」


海未「何でしょうか…?」

450: 2016/06/14(火) 00:55:47.52 ID:5zLigne+.net
 




ことり「お母さんを…助けてあげて…!」ドサッ



そういうとことりは魂が抜けたように膝から体勢を崩しその場に倒れ込んだ

海未は慌ててことりを抱き抱え、少し体を揺すって見たがどうやら寝ているだけのようだ



海未「・・・・ことりはお母さん、と言いました…」


海未「一体どういう…」

真姫「まだ分からないの?」




真姫「ことりを使って、私達の仲をめちゃくちゃにしようとし…意味深な落書きをした…」


真姫「そして花陽以外に'夢'を見た人物」


真姫「それは」



真姫「ことりの母…」





真姫「音ノ木坂学院の理事長よ」





 

454: 2016/06/14(火) 16:58:24.12 ID:5zLigne+.net
 






~・~・~・~・~・~・~・~・~





太陽は燦々と輝き、空は吸い込まれそうなほどの青が広がっていた


連日の雨もあってか、遊園地は大変賑わっておりどこのアトラクションも長蛇の列である


時折、ジェットコースターの降下に合わせて楽しそうな悲鳴が聞こえてくる

455: 2016/06/14(火) 16:59:04.86 ID:5zLigne+.net
そんな賑わいのなか1組、遊園地のアイスクリーム屋の脇のベンチで無言で座る、大変場に似つかわしくない者達がいた



1人は優雅に賑わう遊園地を眺めている

女性は白い帽子を被っており、一言でいうなら「気品溢れる女性」のオーラを纏っているようであった



もう1人は、これまた気品溢れる少女であった
姿勢よく背筋を伸ばし、膝に手を起きじっと前を見すいているようであった

少女の顔は険しく、じっと何かを堪えているような面持ちだ

456: 2016/06/14(火) 16:59:55.99 ID:5zLigne+.net
少女は言った


海未「やはりことりは来れませんでしたか」


女性が答える


理事長「そうね。今のところ絶対安静ね」

理事長「昨日の今日だから、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないわ」

理事長「あれだけ楽しみにしてた遊園地…せっかくの晴れなのに、残念ね」


海未「そうですか」


理事長「・・・」



海未「・・・」




理事長「昨日はびっくりしたわ。帰りが遅いと思ったら園田さんがことりを抱えて家まで来たから…何事かと思ったわ」


海未「そうですか」



理事長「・・・」

海未「・・・」

457: 2016/06/14(火) 17:00:53.61 ID:5zLigne+.net
 
理事長「・・落書きの犯人、見つかったかしら?」



海未「ええ。理事長…あなたです」



理事長「そう…。」




海未「・・・そもそも、あの学校は夜中機械警備があるので私達は昇降口を通る事は不可能でした。最初から冷静に考えれば外部犯なのは目に見えていました」


海未「さらに落書きに使われたのは水性スプレー。その日、雨が降ることは予報で分かっていた筈なのにわざわざ水性で落書きした…」


海未「これはつまり、校内で合宿していた私達しか落書きを発見することはできなかったのです。普通の落書きならばそんな事はしません。更にあの時理事長が、私達が落書きを発見したと同時に現れましたね?」


海未「あの時タイミング良く理事長が来なければ私達は隠蔽する事だってできたわけです。余りにも現れたタイミングが良すぎる…。そして何の躊躇も無く私達を犯人だと疑った理事長。疑問点を挙げればキリがありませんね」




理事長「別に今更言い逃れしようとは思っていないわ」

理事長「そもそもあの落書き、私達しか目撃してないのだから警察にも届けようがないのよ」


理事長「あの落書きは…崩壊のきっかけを作っただけに過ぎないわ」

458: 2016/06/14(火) 17:01:40.82 ID:5zLigne+.net
理事長「…あなた達の中に、'夢'を見た人物がいれば即崩壊する筈だったのよ…私の計画では」



理事長「ことりにも色々調査をさせてたのだけれどね、結局小泉さんが確定なのが分かっただけで他には夢を見た気配はないと判断したわ」


理事長「ことりは、最後まで園田さんを疑ってたわね…。夢をみた人物の調査ではしきりに海未ちゃんが、って言ってたわ」



理事長「ま、結局ことりの勘違いだったみたいね」



海未「ええ。私はその'夢'とやらを見たことはありません」



理事長「・・・」

海未「・・・」

459: 2016/06/14(火) 17:02:26.60 ID:5zLigne+.net
海未「太陽を奪ったのは と書いたのは何故ですか?」




理事長「・・・ことりがあなたを調査している時にね、そう、丁度この遊園地の日程を決めた日だと言ってたかしら」


理事長「忘れ物を取りに帰った園田さんが、戻ってくると挙動不審になっていたとことりは感じていたらしいわ」

理事長「ことりは学校で何かあったと考え、貴方のカバンを探ったらしいの その時に出てきたのが'太陽を奪ったのは'と書かれたノート」



海未「探った…?私のカバンを?いつ?」



理事長「あなた、玄関に次の日の用意をしたカバンを置く癖があるでしょ?ことりはそれをよく知ってたから、それを利用してノートを回収したらしいわ」


海未「成程…確かに、ことりは知っていたような気がしますね。しかし玄関に入って私のカバンを探ったという事ですか…行動力に恐れ入りますね」


海未「だからカバンに入れておいた筈の、ノートが無くなったのですね」



理事長「次の日はノートを元の場所に何事も無かったように戻せとことりに命令したのだけれど…勘違いして登校した貴方がやってきて上手くいかなかったわ」


海未「やっと謎だったノート転移のトリックが解けました…」



理事長「よかったわね」



海未「・・・」

理事長「・・・」

460: 2016/06/14(火) 17:03:09.92 ID:5zLigne+.net
海未「あなたの…」



海未「理事長の目的は、何だったのですか」



理事長「私の目的…そうね」



理事長「私はね」

理事長「つい数ヶ月前に夢をみたの」

理事長「内容は恐らく園田さんが聞いているものと同じよ」


理事長「高坂穂乃果さんのおかげですべてうまくいくって夢」



理事長「本当に素晴らしかったわ…。廃校の危機に直面した学生が力を合わせて学校を救う理事長としてこんなに嬉しいことは無いわ」


理事長「でも目覚めてみると…どう?」



理事長「私の学校は既に廃校が決定していて、それはもう覆せない」


理事長「果てには生徒会長が廃校を救うとか言って1人でつまらないスピーチを一生懸命作ってたわね」

461: 2016/06/14(火) 17:04:10.29 ID:5zLigne+.net
理事長「アレのお陰で絢瀬さんがなんて呼ばれたか知ってる?」



理事長「無能生徒会長よ」



理事長「いや…まさかそんな事になるとは私も思ってなかったわよ…あんなつまらないスピーチするくらいだったら、」

海未「少し黙ってください」




海未「絵里は誰よりも学校のことを考えての行動だったのです。他に学校を救おうと動いた人はいましたか…?」

海未「つまり、そういう学校なのです。貴方が経営する学校には絵里以外、存続させる気があった人物は皆無です」



理事長「・・・」


理事長「それも、そうかもしれないわね」



理事長「でもね園田さん。高坂さんがいれば違ったのよ?」



理事長「何故、この世界には高坂さんがいないのかしらね?」



理事長「本当は…知ってるんでしょう?園田さん」




海未「夢の…見過ぎです」


海未「穂乃果は…この世界にはいません」



海未「ここは…現実です」


理事長「・・・」

462: 2016/06/14(火) 17:05:06.81 ID:5zLigne+.net
理事長「私はね?」



理事長「廃校も阻止しないで喃喃とμ'sごっこをやってるあなた達が憎くてたまらなかったわ」



理事長「ことりには随分頑張って教育したものよ…?'μ'sの南ことり'にするのに苦労したわぁ」



海未「・・・そのせいでことりの人格が壊れてしまったのですよ?」


理事長「新しいものを作るのにはそれまでにあった物を壊さないといけないのよ?」




海未「・・ことりは貴方の人形かなにか
ですか?!」

海未「自分がことりに何をしたかわかっているのですか…?!」



理事長「分かっているわ 毎日毎日、夢の内容を復唱させて間違った所があったら覚えるまで叩き込んだわ」


理事長「そのうち、段々別人のようになっていくことりを、私はちゃんと見てたわ」



海未「何故…そんなことを…!!」



理事長「全てはあなた達を崩壊させるため」


理事長「太陽なきμ'sは最早ガラクタ以下よ」


理事長「その癖にラブライブに出場なんかしようとしたらしいじゃない?」




理事長「思い出作り?最後だから?」

463: 2016/06/14(火) 17:05:55.84 ID:5zLigne+.net
理事長「馬鹿にするのもいい加減にしなさい…!誰のせいでこんな…!こんな…!」




海未「理事長・・・貴方は、夢に魅せられ過ぎたのです」

海未「現実というのは、こういう物なのです」



海未「貴方がいくら喚こうが穂乃果はいません」

理事長「黙りなさい」





理事長「私はことりを利用してあらゆる手段であなた達を崩壊させようと目論んだわ…」


理事長「それでもあなた達はμ'sの劣化品の癖になかなか壊れなかった…」




理事長「そうそう、目的だったわね」


理事長「もうお分かりかもしれないけど、あなた達への復讐よ」




海未「復讐… 私達は何もしていませんが」



理事長「何もしなかった事への復讐よ」



海未「・・・」


海未「そうですか。失敗に終わってよかったです」

464: 2016/06/14(火) 17:07:04.04 ID:5zLigne+.net
理事長「失敗?」




海未「そう。失敗です」


海未「貴方は自分の娘を自ら壊して私達仲間を崩壊させようとしましたが、そうはならなかった」



海未「これのどこが成功なのでしょうか?」



理事長「・・この夢が覚めたら次こそ成功するわ。これはテストみたいなものよ」


理事長「次こそあなた達を崩壊に誘うわ」




海未「この夢が覚めたら……?」


理事長「ええ。」


海未「今、この場は夢だとでも言うのですか?」



理事長「そうよ?これも、長い長い夢。こんな何もかもうまくいかない事が現実であっていいわけないもの」




海未「・・・」




海未(哀れだ…。この人は…)



海未「もうあなたと何を話しても無駄のようですね。」

465: 2016/06/14(火) 17:08:00.80 ID:5zLigne+.net
 



海未「・・さようなら」




理事長「ええ、さようなら 」



理事長「次の夢でまた会いましょう」





海未「・・・」





海未は戯言を喚く、夢見る女性を置いてベンチからたちあがり、そのまま遊園地を後にした

466: 2016/06/14(火) 17:09:44.74 ID:5zLigne+.net
 
 
遊園地からでてすぐに電話がかかってきた

ーーにこからだ



海未「もしもし?」


にこ「あ、もしもし どうだったのよ?」


海未「・・・ダメでした。理事長はもう、」



にこ「あーいいわいいわ、聞きたくないわそんなの」

にこ「それにしてもよく頑張ったじゃない。絶対許さないとか言ってたから勢い余って理事長に怪我でもさせちゃうんじゃないかって心配してたのよ」



海未「そんなことしたら…ことりが悲しみます」


海未「私はことりから、お母さんを助けてと頼まれたのに…私にはできませんでした」


にこ「ま、ほんとに不幸だったわねとしか言えないわ。夢に取り憑かれたのね理事長は」

467: 2016/06/14(火) 17:10:50.58 ID:5zLigne+.net
 
海未(夢に取り憑かれた…ですか。私も一歩間違えば理事長の様になっていたのでしょうか…)



海未(穂乃果を追い求めて生きるだけの人形になっていたのでしょうか…)



にこ「…それで?これからどうするの」


にこ「あーちなみに言っておくけど、ラブライブにはもう出れないわよ?」



海未「そうなのですか?」


にこ「うん。ここ数日ドタバタしてて忘れてたけど昨日が出場エントリーの締切だったのよ…うっかりしてたわ」


海未「それは…残念でしたね。いえ、どちらにしてもことりが目覚めない事にはラブライブには出られなかったでしょう」

海未「これで、良かったんだと思います」


にこ「そうね。」



にこ「で、どうするの?今、同好会メンバーはことりと海未以外みんな部室に集まってるわよ?」


海未「そうですか…。分かりました。私も今から向かいます」

468: 2016/06/14(火) 17:12:38.19 ID:5zLigne+.net
海未「ですが少しやらなければいけない事があるので先にそれを済ませてから向かいますね」


にこ「わかったわ 日が暮れないうちに来なさいよ?」


海未「承知しました。では」


にこ「また後でね」

プツ





海未「さて、学校へ向かうとしましょうか」

海未「最後に…会わなければいけない人が居ますからね」

469: 2016/06/14(火) 17:13:22.43 ID:5zLigne+.net
ーーー音ノ木坂学院ーーー





海未は生徒会室の前に立っていた


以前ここに来た時はまだ穂乃果の存在をよく分かりもしないまま闇雲に聞き回っていた時だ


あの時、私はここで希先輩を異常だと感じていた


しかし今は違う



今日はすべてを理解する為にここに来たのだ


全ての始まりである'夢'



その正体を掴むため海未はここに来たのだ

470: 2016/06/14(火) 17:16:33.31 ID:5zLigne+.net
海未はゆっくりと扉を開く



希「ようこそ!生徒会長室へ!」

希「一体何の用?海未ちゃん」


希はまるで最初から海未が来ると分かっていたように、扉の前に立っていた


海未「聞きにきたのです」

海未「花陽と理事長がみた夢について…」

海未「その全ての真実を」

海未は生徒会室の中へ入り、適当な椅子へ腰掛けた



希「…真実?」


希「どうしてウチに?」



海未「希先輩が前に言ってたこと…とても気になってたんです」

海未「一体、希先輩が何を知っているのか、どう関わっているのかをすべて知りたいんです」


海未「このままみんなの元へ戻っても、多分解決した事にはなりません」


海未「今回の件は理事長の企みを阻止して…それで終わり、では済まないのです」


海未「'夢'に振り回された私の心の突っかかりはとれません」



海未「教えてください希先輩!夢とは何だったのでしょうか?」



希「…そっかぁ」



希「海未ちゃんも覚悟決めてここに来たんやね?顔つきがしっかりしてるもん」




希「いいよ…教えてあげる」

475: 2016/06/14(火) 20:44:54.41 ID:5zLigne+.net
 

希「海未ちゃんは、超能力って信じとる?」


海未「超能力…ですか。にわかには信じ難いですね」


希「そうやんね」



希「でもね、世の中にはやっぱあるんよ…そういうの」




希「・・・ウチにも超能力が備わってたんよ」


海未「希先輩に…超能力ですか。妙にマッチしますね」


希「ふふっ、ありがとう」



希「ウチの超能力は…夢を司る能力だった」


海未「夢を…司る?」


希「うん。夢を操るとか言った方が分かりやすいんかな?」



希「小さい頃からウチは見たい夢がそのとおり見れたし、それを人に見せることもできたんよ」

476: 2016/06/14(火) 20:46:12.66 ID:5zLigne+.net
希「色んな夢を見たんよ。本当に色んな…


希「・・・高校に入ってから急に夢が思い通りに見れなくなってな」



希「とっても…怖い夢を見るようになったんよ」


希「μ'sが…崩壊する夢」



海未「崩壊…?」ゴク



希「原因は色々あったんやけど、最終的に誰も他人を信じれなくなってね…最後にはμ'sは解散したんよ。もう続けられないってね」



海未「花陽の夢と随分違いますね」


希「そうなんよ。私が見た夢は綺麗でも輝いてもない…真っ暗な夢やった」



希「仲良しだったはずの9人がみんな疎遠状態になって…」



希「みーんな一人ぼっち、ウチも一人ぼっちになる夢」




希「寂しくて…暗くて…怖かった」




希「そんな夢にウチは耐えきれなくてね、ある日この能力が暴走したの」

477: 2016/06/14(火) 20:47:18.19 ID:5zLigne+.net
希「まるで頭が弾けるような感覚がしてね…気づいたらウチの夢を見る能力はなくなってた」



海未「無くなった…?」


希「うん。まぁ正確には分散したんやけど」


海未「それはつまり…?」


希「そう、花陽ちゃんと理事長…それから海未ちゃんにも少し能力が分散しちゃったのかな?」



海未「そ、そんな馬鹿な事が…!」


希「馬鹿だと思うやん?でもね、人が1年にも渡る夢を1夜で見るって言うのも馬鹿な話なんよ?」


希「しかも、理事長に至ってはウチの馬鹿な能力のせいでみんなを虐めるハメになったし…」



希「その点、分散した能力の半分は花陽ちゃんで良かったよ。エリチなんかが夢を見てたら理事長の二の舞やったかもね」



海未「…話が随分とでかくなってきたので少し整理させて貰ってもいいでしょうか?」


希「ええよ? 」

478: 2016/06/14(火) 20:48:44.77 ID:5zLigne+.net
海未「初めに、希先輩は花陽と理事長が見た夢とは違う…怖い夢を見た」


海未「その夢に耐えきれなくなった希先輩は能力を分散した」


海未「その分散した能力が理事長と花陽…そして私に影響して、今回のような事件が起きた。これでいいですか?」



希「うん。ええと思うよ」

希「もっとも、花陽ちゃんも理事長も能力の使い方が分からなくて突発的に見た夢だと思ってるみたいやけどね」


海未「そうですね…誰も超能力の類だとは思わないでしょう」





希「・・みんなには本当に申し訳なかったと思ってる。ウチが能力をさっさと自分の元に戻してればこんな事にはならなかったと思ってる」


希「みんなが苦しんでたのはよく知ってるよ」




希「・・・理事長が、音ノ木坂学院の至るところに盗聴器を仕掛けてたのは知ってる?」



海未「…ええ。真姫から聞きました。なんでも、同好会メンバーの行動を把握するためだとか、、
正直驚きました」

479: 2016/06/14(火) 20:49:39.13 ID:5zLigne+.net
 
希「そうなんよ。真姫ちゃんは賢いからね、それを発見してことりちゃんの家に突きつけに行ったけど返り討ちにあっちゃった見たいだったね」


海未「そうですね。私も真姫のように鋭ければ一緒に行ってあげられたのにとは思います…」


海未「その盗聴器がどうかしたんですか?」



希「うん…その盗聴器をウチも実は知ってて利用させて貰ってたんよ」



希「ウチは夢を見てから怖くて…あの同好会にも近づけなかった。」



希「でもいつかみんなの力になりたくて…、機械はそこそこ得意やったからね 理事長に届く音をウチにも届くようにしてみんなの状況を把握してた」




希「・・・でも、ウチは最後まで動けなかった…」


希「怖かったんよ…ウチは臆病者や」


希「自分がまいた種なのに黙って見てることしかできなかった。 もしウチが…何かしてれば…」

480: 2016/06/14(火) 20:50:24.74 ID:5zLigne+.net
希「誰も苦しい思いをせずに済んだかもしれない…そう思うと胸が痛いんよ。」




海未「・・・果たしてそうでしょうか?」


希「?」


海未「少なくとも花陽は、感謝している筈です」


海未「'夢'から力を貰い、自分の夢に…アイドルになる為に頑張ると言っていました」


海未「理事長もある意味は感謝していると思います」



希「そうかなぁ・・」


希「理事長、どうなったん?」



海未「…そうですね。何が夢なのか、現実なのか見れなくなっていました」


海未「もう元には戻れないでしょう」



希「そう、かあ…」


希「ウチってホントに酷いなぁ…!」

481: 2016/06/14(火) 20:51:53.41 ID:5zLigne+.net
海未「・・・」



涙ぐむ希を前に、海未は何も声をかけてあげられない事を悔やんだ




希「・・他に聞きたいことはある?」



海未「…私の、夢について」


希「あぁ…、ごめんね。海未ちゃんの夢についてはよく分からないんよ」


希「多分ウチの能力を中途半端に受け取って、花陽ちゃん達が見たような夢を完全には見れなかっただけだと思ってるんやけど…」



海未「そういうことなのですかね。」



海未「でも…。私、1番最初に見た夢が…誰とも内容が噛み合わないのです」


希「最初に見た夢…?どんな?」



海未「 ーー穂乃果に、何かを頼まれた気がするのです」



海未「後はよろしくね…海未ちゃん。 そう言われた気がします」


希「………?」

希「え…分からんなぁ。穂乃果ちゃんは何を頼んだんやろ…」



海未「私も内容は全く覚えていません。でも…穂乃果にあったのはそれが最初で最後です」




希「・・・気になる?」


海未「ええ。それが私の行動に起因していますから」

482: 2016/06/14(火) 20:53:44.18 ID:5zLigne+.net
 
希「 そうやなぁ…。海未ちゃん。 海未ちゃんには最後に選択肢が2つあるんよ」



希「1つは全てわすれる。夢なんか見なかった。そう思い込んで生きてく…。これが1番楽で、なんの後腐れもない安全な選択肢」



海未「…?」




希「もう一つが、穂乃果ちゃんに会う選択肢」



海未「穂乃果に…?!」

海未「そんなこと可能なのですか?!」



希「うん ウチの夢の力を全部使って、海未ちゃんに壮大な白昼夢を見せる事ができるんよ」



希「そうすればきっと穂乃果ちゃんに会えるよ。でもこれを使うと多分、ウチはもう能力をつかえなくなっちゃうんよ」


海未「どうしてですか?」



希「人が自分で見たい夢を見るのと、人に見させたい夢を見るのとでは根本的に違うんよ」



希「ウチの能力限界ギリギリまで使わなくちゃいけない…そうなると、花陽ちゃんと理事長に分散された能力もウチに戻さきやいけないやろ?」



希「海未ちゃんに白昼夢を見させる事に成功しても、ウチは多分能力を2度と使わないように封印すると思う。 もう怖い夢はこりごりやからね」



海未「そ、そんな…私のわがままで能力が使えなくなってしまっていいのですか!?」



希「 どちらにせよ、能力はもう封印するよ 災いの元やしね」

483: 2016/06/14(火) 20:54:26.34 ID:5zLigne+.net
希「それより心配なのは、この選択肢で海未ちゃんが理事長みたいに現実を見れなくなっちゃうかもしれないって事かな」



希「そんな事になったら本末転倒やん」





希「・・・どうする?海未ちゃん」




海未「・・・」

484: 2016/06/14(火) 20:55:11.01 ID:5zLigne+.net
 
海未「決まってるじゃないですか」




海未「私は、穂乃果に会うために、穂乃果を見つける為に動いてたのです」



海未「穂乃果に会えるとなれば、もう引けません」




海未「お願いします…!会わせて下さい…!」






希「海未ちゃんならそう言うと思った」



希「…夢に、負けちゃだめよ?」



海未「重々、承知しているつもりです」



希「分かった…。じゃあ、目を閉じて?」




海未はその目をゆっくりと言われるがまま閉じた

485: 2016/06/14(火) 20:56:10.49 ID:5zLigne+.net


意識が段々と深く、淀んでいく


そんな感覚に包まれ、次第に体がふわふわと宙に浮いているような、気持ちの良い感覚へと変わっていった



気がつくとそこは


夜の音ノ木坂学院の屋上ーー


穂乃果を求めて何度か足を運んだ場所であった



あたりは静かだが、遠くの方で夜の街の煌めきが見える


星は満点で、どこまでも澄んでいるようであった


空気は少し冷たいような…しかし心地のいいものであった

486: 2016/06/14(火) 20:57:12.60 ID:5zLigne+.net
 
海未「…ここは、夢の中なのでしょうか…?」



辺りを見回す。


屋上にある梯子の上…屋上で最も高い場所に、人影が確認できた



海未(…穂乃果?)



海未の体は反射的に梯子に手をかけていた



この梯子を登れば穂乃果に会える…!



梯子を一段一段しっかりと掴み登っていく



この梯子を登れば穂乃果に…!!




梯子を登り終えた先には、1人の少女が立っていた




少女は煌めく街と、その街の頭上に聳える月を眺めていた

少女は音ノ木坂の制服を着用しており、それが音ノ木坂学院の生徒である事を表していた

そのオレンジがかった髪はサイドテールにしており、夜風に棚引いていた


少女はこちらを向き言った

487: 2016/06/14(火) 20:58:35.26 ID:5zLigne+.net
「やっと逢えたね、海未ちゃん…!」

海未「…! 穂乃果…で宜しいのでしょうか?」


穂乃果「そうだよ!高坂穂乃果、音ノ木坂学院の2年生! μ'sのリーダーやってるんだ!」


海未「あなたが…そうですか。私の想像してた通りです」


穂乃果「想像してた通り…? 海未ちゃん、前にも穂乃果に会った事あるよね?」


海未「そうだったでしょうか」


穂乃果「うん。前にも1度、夢でこうして会ったんだよ?覚えてないの?」


海未「え、ええ…申し訳ありませんが記憶にないですね…。」


穂乃果「ひっどぉーい!海未ちゃん、忘れちゃったの!?穂乃果と約束したよね!!」


海未「約束…?」



穂乃果「うん! μ'sのみんなを救うって約束っ!」

488: 2016/06/14(火) 20:59:23.80 ID:5zLigne+.net
海未「μ'sを…救う?」


穂乃果「あ、そっちではアイドル研究同好会なんだっけ?」


穂乃果「どう?みんな大丈夫?」



海未「まぁ…なんとかみんな無事といえば無事ですよ…ラブライブには出られませんが」


穂乃果「ええっ!?ラブライブでなかったの!?」


海未「…締切が過ぎてしまったようで、エントリーできなかったんです」



穂乃果「そっかぁ…残念だね でも、みんなが無事で良かったよ!」



穂乃果「私…とっても心配だったの。理事長に変なことされてないかなって!」



穂乃果「でも、やっぱり海未ちゃんは流石だね! …ありがとう、海未ちゃん」



海未「・・穂乃果は、私達が理事長の企みに巻き込まれることを知っていたのですか?」


穂乃果「うん…知ってたっていうよりは、多分、そうなるんじゃないかなって思ってた」

489: 2016/06/14(火) 21:00:03.66 ID:5zLigne+.net
穂乃果「だって、全部夢だったって信じるのって難しいもん…」



穂乃果「花陽ちゃんも、実は心配だったんだ。私達と一緒に過ごした青春…それを、私はがいない状態でまた過ごすってとても辛いことだと思うんだ」



海未「…花陽は、強かったです。」


海未「私達が思っている以上に強いです。これからは自分の夢を叶えるために生きていくそうです」



穂乃果「そっかぁ…!よかった~!」




穂乃果「ねぇ…そっちで起こった事、穂乃果もっと聞きたいな…!」



海未「私も、そちらの話…聞きたいです…!」



穂乃果「ほら…こっちで座ってお話しようよ!」



穂乃果「みて…あの街。綺麗だよね…!いろんな光が溢れてて、星もキラキラしてて…」




穂乃果「これ…夢なんだよ?信じられる?」

490: 2016/06/14(火) 21:00:40.16 ID:5zLigne+.net
 


その言葉は、とても切ないものに感じた



今まで探し、求めてきた穂乃果とこうして出会えた筈なのにどうして哀しい気持ちになっているのだろう



これが全て幻想だと、心のどこかで理解しているからだろうか



朝が来れば全て消えてしまうのだろうか



穂乃果と会って…私はどうしたかったのだろう



 

491: 2016/06/14(火) 21:03:22.01 ID:5zLigne+.net
海未「お話もいいですが…」


海未「その前に、」




海未はそう言ってちょこんと体育座りをする穂乃果の横に腰掛けた




穂乃果は不思議そうな顔をして海未を見つめる




海未「少しだけ…こうさせていてください」



海未は、穂乃果に寄り添い目を閉じた



穂乃果「うん…いいよ」



海未「夜が明けたら、沢山お話しましょう」



穂乃果「そうだね 穂乃果、海未ちゃんに話したいこと沢山あるよ」



海未「私もです」

492: 2016/06/14(火) 21:04:06.41 ID:5zLigne+.net
 


海未「でも、ここまで来るのに少し疲れてしまったのです」




海未「だから、少しだけ…」




穂乃果「うん」



穂乃果「よく頑張ったね、海未ちゃん」








穂乃果「…ありがとう」





空に浮かぶ月は、寄り添い合うふたりを光で優しく包み込んだ



夜は決して明けることはなく、2人だけの為に星はいつまでも輝き続けた








 

493: 2016/06/14(火) 22:07:17.36 ID:7l4TUgub.net
 



音ノ木坂学院

アイドル研究同好会部室ーーー



花陽「海未ちゃんまだかなぁ~」


真姫「さっき電話してから随分経ったわね」


凛「まさか、忘れて帰っちゃったのかも!」


にこ「そんなわけないでしょ!ばかね~!」


絵里「もう、そんな事より早く考えましょ?」


凛「あ、同好会の最後に何するって奴かにゃ?」


絵里「そうよ、海未が帰ってくるまでにある程度考えを固めておかないと叱られちゃうわよ?」


凛「それは大変だにゃ!早く考えないと!う~ん… う~ん…」


花陽「この学校も、今年で終わるから飛び切りすごい事がしたいです!」


にこ「すごいこと…?何よ、凄いことって」



花陽「そ、それは…まだ、考えてないです。」シュン

494: 2016/06/14(火) 22:08:08.87 ID:7l4TUgub.net
トントン


真姫「あら?海未かしら」


真姫「どうぞー?」


ガチャ



ことり「お、お待たせ…///」


真姫「ことり…!!もう大丈夫なの!?」


ことり「うん…さっき目が覚めてね、とりあえず部室に来てみたの」


ことり「みんな居てびっくりしたよ…! あ、でも海未ちゃんがいないね?」


絵里「海未ならもう少しで来るはずよ?待ってたらそのうち…」

495: 2016/06/14(火) 22:09:40.23 ID:5zLigne+.net
「失礼します」トントン



凛「あ!海未ちゃんだ~!♡」


にこ「お疲れ様海未、」


にこ「どうだったの…?」




海未「・・・もう、大丈夫です。」


海未「全て終わりました…」



にこ「そう…ありがとう、海未」


絵里「本当にね。海未には感謝してもしきれないわ」


絵里「ありがとう」



それぞれが海未を感謝の眼差しで見つめる

海未はそれをしっかりと受け止める

受け止めた上で言った



海未「そ、そんなに見つめられると照れてしまいます…///」


ことり「あ、海未ちゃん顔赤いね♡かわい~!」


海未「やめてくださいことり!恥ずかしいです!」


花陽「ふふっ…! 海未ちゃんが元気そうで良かった!」


にこ「ちょっとあんた達!まだやること終わってないでしょ!?

496: 2016/06/14(火) 22:21:35.33 ID:5zLigne+.net
海未「やること…?」


ことり「…?」



にこ「あぁことりには説明してなかったわね」


にこ「まぁ、あれよ。この同好会の最後に… この学校の最後に私達は何をやろうかって話よ」


凛「やっぱり凛は楽しい事がしたいにゃー!」



海未「なるほど…」


ことり「へぇ~♪何だかワクワクするね!」



にこ「なんか意見ある?海未は」




海未「そうですね…」



海未「ずっと、考えてた事があるのです」

497: 2016/06/14(火) 22:24:24.69 ID:5zLigne+.net
 
「…?」


海未「…ライブをしませんか?ライブです!」



海未「私達は今まで、活動をほとんど公開せずにやってきました」



海未「だから、私達が何をやってきたのか…何を手に入れたかを伝えるためにライブをするんです!」



海未「それは…歌でもあり、ダンスでもあり、衣装作り…歌詞づくり…色々な事があると思うんです だからライブをしたいのです!

…どうでしょうか?」

498: 2016/06/14(火) 22:25:37.55 ID:5zLigne+.net
 

にこ「・・・最っ高じゃない!」


絵里「ハラショー!さすが海未ね♪」


花陽「み、みんなの前で歌うんですか!?」


凛「えー?かよちんまだ恥ずかしがってるの!最後なんだから歌おうよ~!」


花陽「ち、違うよぉ! 私も、素敵だと思ったの」


ことり「うん♪ ことりもいいと思うな!みんなの衣装作りは任せて!」


真姫「…決まりね 曲作りは天才真姫ちゃんに任せなさい?どんな歌詞でもモノにして見せるわ!」


絵里「よーし!そうと決まれば色々考えなきゃね~?日程とか…場所とか…」


凛「明日でいいんじゃないかにゃ?」


にこ「無理に決まってるでしょ!」


凛「えーだって、早くやりたいよ~」




海未「あ、真姫…!ちょっといいですか?」


真姫「…?なに?」


海未「…この歌詞で、曲を作って欲しいのですが…」


真姫「どれどれ? 随分走り書きなのね、

……へぇ、いい歌詞じゃない」



海未「そう言って頂けて嬉しいです…!どうでしょうか?作れますか?」


真姫「真姫ちゃんに不可能は無いのよ 任せときなさい、世界中が震撼するものを作ってあげるわ♪」



海未「ありがとうございます!真姫!」

499: 2016/06/14(火) 22:26:31.11 ID:5zLigne+.net
凛「どれどれ~?どんな歌詞? 凛にも見せて欲しいなー!」



花陽「わ、私も!」



海未「ええ…どうぞ」ピラ


にこ「あ!それ終わったら私にも見せなさいよね!」




凛「いい歌詞にゃ~!テンション上がるにゃ~!」


絵里「そ、そんなに良いの?私もちょっと見たいわ…」



花陽「うん!すっごくいい歌詞だと思うよ! …この歌詞、タイトルは何ていうの?」




海未「あぁタイトルですか…?」




海未「'SUNNY DAY SONG'です…!」

500: 2016/06/14(火) 22:27:16.28 ID:5zLigne+.net
 




空には太陽が輝き、澄んだ青空がどこまでも広がっている



それはこれからの未来を照らすかのような暖かい輝きで、春の訪れの予兆でもあった



夢との別れを告げた少女は、ただひたすらに前を目指した






夢でまた逢おうとは言わない

太陽はもう、見つかったから…











 

501: 2016/06/14(火) 22:28:23.35 ID:5zLigne+.net
 

おわり

502: 2016/06/14(火) 22:33:30.71 ID:5zLigne+.net
ここまで読んで下さった方々&保守して下さった方々、ありがとうございました

最後に臭めの作者語りをさせてもらうと、穂乃果と海未が屋上で寄り添うシーンが書きたいが為にここまでやりました。

途中自分の文章能力が無さ過ぎて絶望して辞めようと思いましたが、続けることで勉強になって良かったなとは思っております

またSSを上手くかけるようになったらリメイクでもしたいなぁと思ってます

プロットボロボロなので分からない所があったら説明できるものはしようかと思います。まぁ以下は好きなラーメンスレにして貰っても構いません
ありがとうございました

503: 2016/06/14(火) 22:35:06.07 ID:dUcndLBE.net
おつおつ
理事長が黒幕だったりとか、予想の裏をかいてくるのがすごい好き

526: 2016/06/15(水) 02:29:13.62 ID:SMYc/r0+.net
乙!

引用: 海未「夢でまた逢いましょう」