508: 2014/11/25(火)22:08:46 ID:wB8


ヤムチャ「プロレス団体から俺にオファーが来たぞ!」シリーズです
シリーズ一覧はコチラからどうぞ



前回:ヤムチャ「プーアル!俺はプロレス団体に就職して頑張るぞ!」【前編】


最初:ヤムチャ「プーアル! プロレス団体から俺にオファーが来たぞ!」





 そしてーー


豪鬼「……ぬぅんっ!」ズガァッ

リュウ「……グガッ!」


実況「さぁ、豪鬼が自らの腕にチェーンを巻きつけ……そのまま、リュウにカウンターのラリアットだぁ!」


豪鬼「……ぬんっ!」ガスッ

リュウ「……ぐっ!」


実況「そして、ダウンしているリュウに、パイプ椅子攻撃! 叩きつけるのではなく……そのまま、投げつけたぁ!」


豪鬼「……殺っ!」ドスッ

リュウ「……グッ!」


実況「そしてさらに、その上からフットスタンプっ! パイプ椅子の上から、リュウを踏みつける!」
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509: 2014/11/25(火)22:18:04 ID:wB8
プーアル「ヤ、ヤムチャ様……?」

ヤムチャ「お、おう……なんだよ、この試合……凄ぇブーイングだな……」

プーアル「えぇ……中盤から、ずっと豪鬼さんの反則攻撃のオンパレードですね……?」

ヤムチャ「序盤は、蹴りとかの攻防があって勉強になったけど……中盤から、ずっと反則手しか使ってねぇじゃねぇか……」

ケン「おいおい……豪鬼さん、何やってんだよ……ハードコアデスマッチやってんじゃねぇんだからよぉ……?」

ヤムチャ「……ハードコアデスマッチ?」

ケン「あぁ、ハードコアデスマッチってのは、反則制限一切無しの……まぁ、パイプ椅子やら、チェーン……凶器攻撃をどれ程上手く使って、盛り上げるかの試合だな……」

ヤムチャ「……ほう」

ケン「バイソンなんかが、結構得意だな……まぁ、俺やおめぇは、ベビーだからやる機会はねぇよ……」

ヤムチャ「……俺達は凶器攻撃する訳にもいかないっすからね」

ケン「今日の豪鬼さんの動きは……お前、真似するんじゃねぇぞ……? 寧ろ、反面教師として、覚えておきな……」

ヤムチャ「う、うっす……! 勿論、わかってます……!」

511: 2014/11/25(火)22:23:48 ID:wB8
実況「……さぁ、これがベルトを掛けた一戦と言ってもいいのでしょうかねぇ!?」

元「よくないね……こんな試合は、いけません……」

実況「リング上には……パイプ椅子に、チェーン、そして木製テーブル! ありとあらゆる凶器が散乱しております!」


豪鬼「……ぬんっ」ガガッ


実況「おっと、ここで豪鬼がコーナーポストに、テーブルを立てかけるっ! あそこにリュウをぶつけようというのか!?」

元「……おそらく、そうでしょうね」


ブー、ブーブー

実況「場内からは、大ブーイング! いいのか!? ベルトを掛けた一戦が、こんな試合でいいのか、豪鬼っ!?」

512: 2014/11/25(火)22:31:29 ID:wB8
ダン「おめぇ、いい加減にしろよっ!?」

豪鬼「……」


実況「さぁ、ここでレフェリーが豪鬼を制止しにいきます!」


ダン「いい加減にしろっ! ハードコアデスマッチやってんじゃねぇんだよ! とりあえず、この机片付けろ! バカっ!」

豪鬼「……邪魔だっ!」グイッ

ダン「やめろっ……! 胸ぐら掴むんじゃねぇよ!」

豪鬼「うぬは……どいてろっ……! ぬぅんっ……!」ブンッ

ダン「うっ……! うおおぉぉっ……!」


実況「おっと、ここで豪鬼がレフェリーの胸ぐらを掴み……そのまま、投げ飛ばしました!」

元「うわっ、危ない……レフェリーの人、大丈夫かなぁ……?」

実況「レフェリーは、そのまま場外に避難します……少し、頭を抱えているようですが、心配ですねぇ……? さぁ、その間に豪鬼は悠々とテーブルのセッティングを行います!」

513: 2014/11/25(火)22:37:39 ID:wB8
豪鬼「さぁ、起きろっ……!」

リュウ「……ううっ」ヨロッ


実況「さぁ、そして豪鬼はリュウを引き起こし……恐らく、狙いはコーナーだ! テーブルが立て掛けられているコーナーだ!」


豪鬼「……ぬぅんっ!」ブンッ

リュウ「……う、うおっ!」


実況「そして振ったぁ! テーブル目掛け……リュウの身体を振り投げるっ!」


リュウ「……ぐっ!」ドスッ

豪鬼「……フン」


実況「リュウの身体がテーブルに突き刺さるっ! そして、豪鬼はパイプ椅子を手に取ったぞ!? 次は、パイプ椅子攻撃か!?」

514: 2014/11/25(火)22:44:22 ID:wB8
リュウ「くっ、くそっ……卑怯な手ばかり、使いやがって……これがベルトを掛けた試合なのかよ……」

豪鬼「……」カチャカチャ


実況「おっと、ここで豪鬼はパイプ椅子攻撃にいかず……パイプ椅子をリュウの目の前に広げて、セッティングっ! そして、リングの中央へと戻った!」


リュウ「おいっ……! 聞いているのか、豪鬼っ!」

豪鬼「……」グルグル


実況「おっと、そして今度はチェーン手に取り……自らの足に巻きつけ始めたぞ!?」

元「何か、良からぬ事を……狙ってるねぇ……?」


豪鬼「ぬぅんっ……! 行くぞ、リュウっ……!」ダダッ

リュウ「くそっ……!」


実況「そして、チェーンを自らの足に巻きつけたまま、リュウに向かって走ったぁ!」

515: 2014/11/25(火)22:54:32 ID:wB8
豪鬼「ぬおおぉぉっ……!」ガシッ!

リュウ「……何っ!?」


実況「おっと、そして、豪鬼は先程セッティングしたパイプ椅子を踏み台にして、高く跳んだぁ!」


豪鬼「天魔空刃脚っ……! ぬおおぉぉっ……!」ズガアァァッ

リュウ「ぐ、ぐわああぁぁっ……!」


実況「そして、そのままチェーンを巻きつけた足で、リュウを串刺しに! 串刺しの天魔空刃脚でいいのか!? この技は!?」

実況「天魔空刃脚はトップロープからのミサイル攻撃ですが……まぁ、名前をつけるなら、そういう技になるんじゃないですかねぇ……?」

実況「あまりの衝撃に、リュウの背のテーブルもバキっと音を立てて折れるっ! 豪鬼の凶器をフルに使った、串刺しの天魔空刃脚だぁ!」

516: 2014/11/25(火)23:03:11 ID:wB8
レフェリー、ナニヤッテンダー! シッカリシロー!

ダン「くそ、わかってるよ……そんな事は……うおおぉぉっ……!」ダダッ


実況「おっと、ここでレフェリーがリング上に戻ってきた!」

元「とにかく、彼がなんとかして、正常な試合にしなきゃ……悪いけど、チャンピオンベルトの掛かってる試合には見えないよ、僕には……」


リュウ「ぐっ……う、うぅっ……」

豪鬼「邪魔なテーブルだ……フンっ……!」ブンッ


実況「さぁ、豪鬼は真っ二つに折れたリュウの背中テーブルを、乱暴に退けて……何狙うか!?」


ダン「アイツは、話にならねぇ……もうダメだ……! とにかく……このリング上にある凶器だけでも何とかしねぇと……!」


実況「……おっと、レフェリーはリング上に散らばっている数々の凶器を、リング外へと放っています!」

元「そうだね。先ずは、あの凶器だけでもリングの外に捨てて……通常の試合に戻さないとね……」

517: 2014/11/25(火)23:12:05 ID:wB8
豪鬼「……ぬぅんっ!」グイッ

リュウ「……ううっ」


実況「さぁ、そして豪鬼はリュウの身体をコーナーポストの上に担ぎ上げたぁ! 雪崩式攻撃を狙っているっ!」


豪鬼「リングの中央にパイプ椅子を置いておいた……今から、うぬをそこに叩きつけてやる……」

リュウ「くそっ……卑怯な奴め……」

豪鬼「さぁ、いくぞ……? 準備はいいか……?」ググッ


ダン「……残念だったな! パイプ椅子は、とっくに片付けちまったぜ!」

豪鬼「……ぬ?」

ダン「リング上を汚すんじゃねぇよ! 俺は掃除屋じゃなくて、レフェリーなんだ! 俺の言う事聞かねぇなら……おめぇ、反則負けになっちまうぞ!? わかってんのか、あぁ!?」


実況「さぁ、リュウはコーナーポストの上で捕まっている状況のままですが……とりあえず、リングの上からは凶器はなくなりましたかねぇ、元さん?」

元「そうだね。これで、凶器攻撃ももう出来ないんじゃないかな?」

518: 2014/11/25(火)23:18:41 ID:wB8
豪鬼「まぁ、よい……パイプ椅子がないならないで……やりようはある……」

リュウ「……うぅ」

豪鬼「いくぞっ……! ぬおおぉぉっ……!」ググッ

リュウ「ぐっ……! う、うおっ……!」


実況「さぁ、豪鬼がリュウを抱え上げたっ! これは、トップロープからの雪崩式ブレーンバスターか!?」

元「ちょっと、待って……これ、豪鬼君狙ってるよ……? 多分……!」

実況「……狙っている?」


豪鬼「頭から落ちろっ……! 垂直落下式だっ……! ぬおおぉぉっ……!」

リュウ「う、うおおぉぉっ……!」


ズドーンッ

519: 2014/11/25(火)23:24:19 ID:wB8
豪鬼「……フン」

ダン「お、おいっ……! 豪鬼、おめぇ……!」


キャー! リュウー!

実況「おぉ~っと! これは、垂直落下だ! 垂直落下っ! トップロープから、リュウ頭を垂直落下にリングへと落としていったぁ!」

元「……やっぱり、垂直落下式狙ってたね」

実況「リュウの身体がピクリとも動かないっ! この技はデンジャラスすぎる! デンジャラスすぎるっ!」


豪鬼「さぁ、レフェリーよ……フォールだ……カウントを取ってくれ……」

ダン「おめぇ、ひょっとしてウチの選手を潰しに来たのか……?」

豪鬼「ほらほら、フォールに入ったぞ……? うぬは、中立の立場じゃないのか……? だったら、カウントを取れ……」

ダン「……くそっ!」

520: 2014/11/25(火)23:31:39 ID:wB8
実況「さぁ、そして豪鬼がフォールに入ったぁ! ここでカウントが取られますっ!」


ダン「ワンっ……!」

リュウー!タッテー!

ダン「ツーっ……!」

リュウー! シッカリー!

ダン「……スリーっ!」


実況「ここで、スリーカウントっ! 試合が決まってしまったぁ!」

元「う~ん……流石に、あの技はねぇ……」

実況「豪鬼の雪崩式垂直落下式ブレーンバスターで試合は決着ですっ! 豪鬼が二度目のベルトの防衛に成功しました! 今、勝名乗りが挙げられます!」

521: 2014/11/25(火)23:35:51 ID:wB8
実況「さて、本来なら……ここで、ベルトの贈呈式が行われるのですが……」


ダン「おい、リュウ! 大丈夫か、しっかりしろっ!」

コーディ「リュウさん、大丈夫ですか!?」

ガイ「しっかりして下さいっ!」

リュウ「……」


実況「ピクリとも動かないリュウが心配です! 若手のコーディやガイも、リュウに駆け寄っています!」


コーディ「リュウさん、しっかりして下さい!」

ガイ「大丈夫ですか!?」

リュウ「……」

522: 2014/11/25(火)23:44:53 ID:wB8
豪鬼「フハハハハ、友情……想い……願い……また、ここでも見れたか……いいものだな……」

ダン「……あぁ? てめぇ、何笑ってやがる?」

豪鬼「我に構っている暇があるのか……そこの倒れている奴を、何とかしてやれ……そうでないと、ベルトの贈呈式が出来ないからなぁ?」ニヤニヤ

ダン「てめぇ、ウチの選手にめちゃくちゃやっておいて、何ニヤついてやがる! あぁ!?」

豪鬼「大丈夫だ……そいつはここで終わるような、人間ではない……もし、終わるようならば……そこまでよ……」


リュウ「……う、うぅ」ムクッ

コーディ「リュウさん!」

ガイ「リュウさん!」


実況「おっと、ここでリュウが起き上がったぞ!? 大丈夫だったのか!?」


豪鬼「ほれ、大丈夫だっただろう……? ここで終わるような小さな漢ではないわ……」

ダン「お、おい……! リュウ、大丈夫だったのか……!? あまり、無茶して動くんじゃねぇぞ!?」

523: 2014/11/25(火)23:54:49 ID:wB8
リュウ「うぅ、ダンさん……俺は大丈夫だ……それより、マイクを貸してくれ……」ヨロヨロ

ダン「……マイク?」

リュウ「奴に言いたい事があるんだっ……!いいから、マイクを貸してくれっ……!」

ダン「お、おう……わかったけど、変な挑発したりするんじゃねぇぞ……? おめぇ、もうボロボロなんだからよぉ……?」


実況「さぁ、ここで……リュウがヨロヨロと立ち上がり、マイクを握りますっ! 何か、豪鬼に言いたい事がありそうだ!」

ザワ……ザワ……

実況「場内が騒めくっ! さぁ、リュウは何を言うんだっ!? まぁ、ここはリュウの言葉を静かに待ちましょう!」

元「……あんたが一番うるさいよ」

528: 2014/11/26(水)22:17:37 ID:BtU
リュウ「……おい」

豪鬼「……」

リュウ「……おい、豪鬼」

豪鬼「……」


実況「さぁ、ここでリュウが口を開いたっ!」


リュウ「……何だ、この試合は」

豪鬼「……」

リュウ「何だ、この試合はっ……! これがチャンピオンベルトを賭けた試合なのかよっ!? えぇっ!?」


ザワ……ザワ……

実況「さぁ、やはりリュウはこの試合に納得していない様だっ! 怒りを豪鬼にぶつける!」

529: 2014/11/26(水)22:25:21 ID:BtU
豪鬼「うぬが、何をいっているのか……我にはさっぱり、わからんな……」


ザワ……ザワ……

実況「おぉ~っと、だがしかし! 豪鬼は、我知らぬ存じぬという素振りで……両手を大きく広げて、惚けている!」


リュウ「ふざけるのも、いい加減にしろっ!」

豪鬼「……ぬ?」

リュウ「お前……リングの外、見てみろよ……? 何がある……? 何が、あるんだそこにはよ……?」

豪鬼「……ふむ」キョロキョロ


実況「さぁ、豪鬼も……リング外を見回しています……」

元「……ねっ。リュウ君の言う通りだよ」

実況「リングの外には……パイプ椅子に、チェーン……! 豪鬼の用意した、凶器の数々が、まだ散らばったままです!」

530: 2014/11/26(水)22:33:17 ID:BtU
リュウ「お前はわからないかもしれないけどな……?」

豪鬼「……ぬ?」

リュウ「このリングは……俺達、ストリートプロレスの人間が……魂を賭けて……生き様を賭けて……必氏にやってるリングなんだよぉ!」

豪鬼「……ふむ」


ソウダソウダー!


リュウ「それを……なんだ、これは……! 必氏にやっている、俺達のリングを土足で踏み荒らしやがって……!」

豪鬼「……」

リュウ「これが、お前の戦い方なのか……? なぁ、豪鬼……?」

豪鬼「……」

リュウ「こんな試合……! 納得出来る訳ねぇだろうがっ! これがチャンピオンの試合なのかっ!? お前の戦い方なのかっ!? えぇっ!?」バシッ


実況「おっと、ここでリュウがマイクを叩きつけます! やはり、試合内容にかなり納得いっていない様だ!」

元「まぁ、そりゃ、リュウ君の言う通り……チャンピオンベルトを賭けた試合が、こんな内容じゃねぇ……」

532: 2014/11/26(水)22:38:51 ID:BtU
ザワ……ザワ……


実況「さぁ、場内がまだ騒めいております……これは、ひょっとしたら、再試合……という事もあり得るか……!?」

元「う~ん……まぁ、今日はリュウ君もダメージ受けているし、無理そうだけど……まぁ、日を改めてって事なら……」


豪鬼「……フン」


実況「おっとおっと……!? ここで、豪鬼がマイクを手にしたぞ!?」

元「豪鬼君も、何か言いたい事があるのかな……?」

ザワ……ザワ……

実況「場内が騒めいております! さぁ、何を言うんだ!? とにかく、ここは静かに豪鬼の発言を待ちましょう!」

元「……だから、あんたが一番うるさいって」

533: 2014/11/26(水)22:47:00 ID:BtU
豪鬼「……リュウよ」

リュウ「……」


実況「おっと、ここで豪鬼が初めて『リュウ』と、リュウの名を呼んだぁ!」

元「豪鬼君、相手の事は『うぬ』って呼んでるしね……何か、リュウ君個人に……言いたい事でもあるのかな……?」


豪鬼「……先日の挑戦表明の時に、我に言った言葉を覚えているか?」

リュウ「……あぁ?」

豪鬼「友情……想い……願い……自分は、そういったものを背負って戦う、とな……?」

リュウ「……」

豪鬼「今日の戦い……我は、うぬからそういった物を感じたぞ……? リュウよ……」


実況「おぉ~っと! ここで……豪鬼が、リュウの事を認めた……と、でも言えばいいのか!?」

534: 2014/11/26(水)22:52:29 ID:BtU
豪鬼「だが……まだ、足りん……うぬには、まだ……足りていない……」

リュウ「……何?」

豪鬼「リュウよ……? うぬの瞳に、写っている物とは何だ……?」

リュウ「……あぁ?」


ザワ……ザワ……


豪鬼「うぬの瞳には……我が用意した、数々の凶器が写っている……」

リュウ「……」

豪鬼「そして……うぬは、友情……想い……願い……そういった、形のない物も……自らの瞳で見る事が出来る……」

リュウ「……」

豪鬼「……だが」ヒョイ

535: 2014/11/26(水)22:58:57 ID:BtU
実況「おっとここで、豪鬼がチャンピオンベルトを手に取って……!」


豪鬼「……このベルトは、うぬの瞳には写っていない」

リュウ「!」


ザワ……ザワ……


豪鬼「今、ベルトを手にしているのは、誰だ……? チャンピオンなのは、誰だ……?」

リュウ「……」

豪鬼「それは、我だ……! 過程などは、どうでも良い……ベルトを手にしたという、結果を持っているのは、この我だ……!」ヒラヒラ


実況「ここで、豪鬼がベルトを掲げて、リュウに見せつけます!」

536: 2014/11/26(水)23:08:26 ID:BtU
豪鬼「……リュウよ」

リュウ「……」

豪鬼「……世迷い言に惑わされるな!」

リュウ「!」


ザワ……ザワ……

実況「おっと、ここで豪鬼が声を張り上げます!」


豪鬼「見るものは一つ……! このベルトだけだ!」

リュウ「……ベルト?」

豪鬼「欲望のままに、忠実に生きろっ……! 野心を抑えつけるな……! 本能の赴くままに生きるのだっ……!」

リュウ「……」

豪鬼「うぬにない物はそこだ! チャンピオンをベルトを手にするのは、そんな甘い道のりではないっ! 我は、それを伝えに、この場所にやってきたのだっ!」

リュウ「……」

537: 2014/11/26(水)23:14:46 ID:BtU
ザワ……ザワ……

実況「おぉ~っと、これは……この試合を通して……豪鬼は豪鬼で、リュウに伝えたい事があったという事なんでしょうかねぇ、元さん……?」

元「う~ん……口ぶりからすると……そういう風にも取れるけど……」


リュウ「……」

豪鬼「リュウよ……貴様は一度、我と共に……」

「ガーハッハッハっ!」

豪鬼「……ぬ?」


実況「おぉ~っと! この笑い声……この笑い声は……!」


ザンギエフ「ガーハッハッハっ! おい、豪鬼! うちの団体の連中に、あまりおかしな事を吹き込まないでくれるかな!」

豪鬼「……ザンギエフか」


実況「ザンギエフですっ! ザンギエフが花道から、現れました! マイクを握っての登場です!」

539: 2014/11/26(水)23:22:28 ID:BtU
オー! ザンギエフー! イイゾー!


ザンギエフ「豪鬼よ……チャンピオンになる為に、一番大切な物を、俺が教えてやろう……」

豪鬼「……」


実況「さぁ、ザンギエフが今、ゆっくりと花道を歩いて、リングに向かいます!」


ザンギエフー! リベンジシロー! ベルト、トリカエセー!

ザンギエフ「チャンピオンになる為に必要な物……それは、たった一つ……シンプルな物だ……」

豪鬼「……」

ザンギエフ「それは『諦めない心』ただ、それだけだ……それを持っていれば、何度でも立ち上がる事が出来る! この俺の様にな!」


実況「さぁ、そして……ここでザンギエフが、今リングイーンっ!」

540: 2014/11/26(水)23:32:57 ID:BtU
ワー!ワーワー!


ザンギエフ「地獄から、舞い戻ってきたぜ……豪鬼……」

豪鬼「……フン」

ザンギエフ「一度や二度の負けで……この『赤きサイクロン』の心は折れん……! 勝つまでやるのが、俺の美学よ!」


イイゾー! ザンギエフー!


ザンギエフ「他団体のお前に、この俺自身がベルトを取られたのは……恥じるべき失態だ……」

豪鬼「……」

ザンギエフ「だが……! 失態ばかりを気にしていては、人間前に進む事は出来んっ……! そうだろ、祖国の民よ!?」


ソウダソウダー! ザンギエフ、トリカエセー!

541: 2014/11/26(水)23:40:33 ID:BtU
ザンギエフ「リベンジマッチといこうじゃないか……なぁ、豪鬼……?」

豪鬼「ほう……」


ワー! ワーワー!

実況「さぁ、ここで……ザンギエフが豪鬼に挑戦表明ですっ!」


ザンギエフ「この俺の美学と、お前の美学……どちらが正しいか……皆に決めてもらおうではないか……?」

豪鬼「……」

ザンギエフ「さぁ、豪鬼……! お前の返事を聞かせてくれっ! と言っても、この赤きサイクロンからは逃げられんぞ? 何度でも、貴様の目の前に現れてやる!」


ゴウキー! チョウセン、ウケロー! ニゲルナー!

実況「さぁ、このザンギエフのリベンジを賭けた、挑戦表明に豪鬼はどう応える! どう応えるんだ!?」

542: 2014/11/26(水)23:51:30 ID:BtU
豪鬼「……面白い。受けてやろう」

ザンギエフ「……いいじゃないか」ニヤリ


ワー! ワーワー!

実況「さぁ、ここで豪鬼が挑戦表明を受けました! 次の試合はザンギエフ対豪鬼! ザンギエフ対豪鬼でございます!」


豪鬼「うぬをもう一度、叩き潰し……二度と、その減らず口を叩けない様にしてやろう……」

ザンギエフ「ガッハッハ! 二度はやられんよ、二度は!」

豪鬼「ベルトは我の手にある……ストリートプロレスの手にではなく……この我の手に、な……?」ヒラヒラ

ザンギエフ「……ふむ」

豪鬼「うぬをもう一度、叩き潰し……二度と、このベルトを、ストリートプロレスの手に、戻らぬ様にしてやろう……」

ザンギエフ「そうはいかんぞ……? 豪鬼よ……?」

豪鬼「次の防衛戦を楽しみにしているぞ……?」


実況「さぁ、そして豪鬼が退場します! 豪鬼の三度目の防衛戦は、再びザンギエフです! こいつも波乱の一試合となりそうだぁ!」

543: 2014/11/27(木)00:00:51 ID:YDX
ザワ……ザワ……

実況「さぁ、場内がまだ騒めいておりますが……おっと、ここでザンギエフが……また、何か言うのでしょうか!?」

元「……うん、マイク手にしたね」


ザンギエフ「ガッハッハ! 結構、背水の陣という奴みたいだな!?」

ソンナコトナイゾー! ベルト、トリカエセー!

ザンギエフ「豪鬼は強い……一度は土をつけられた……」

ソンナコトネェー! リベンジダー!

ザンギエフ「だが、ここにいるリュウ……! そして、ベガっ……! 彼らは必氏に豪鬼に挑んでくれたんだ!」

リュウ「……ザンギエフ」

ザンギエフ「私も若い奴から、学ぶ事も多いみたいだな……あんなに、ガッツのある所を見せられると……」

ワー!ワーワー!

ザンギエフ「私だって、ガッツのある所を見せねばいかん! この団体のトップとしてな!」

イイゾー! ザンギエフー!

544: 2014/11/27(木)00:14:51 ID:YDX
ザンギエフ「祖国の民よぉ! 今、ここで約束しよう! 私は次の試合で……必ずベルトを取り戻す!」

イイゾー! ザンギエフー!

ザンギエフ「このストリートプロレスの底力を……豪鬼……奴に思い知らせてやるわっ!」

ワー!ワーワー!

ザンギエフ「豪鬼っ! 首を洗って待っておくんだな! ガーハッハッハ!」


実況「さぁさぁ、ザンギエフのリベンジ宣言で……次の試合はザンギエフ対豪鬼! 豪鬼の三度目の防衛は……また、キツい道のりになりそうですねぇ!?」

元「まぁ、そうだけど……結構、ストリートプロレスも追い詰められてると思うよ、僕は……」

実況「……ほう」

元「だって、もし豪鬼君が勝ったら……ザンギエフ君が二度負けて……もう、豪鬼君の事、止めようがないじゃない……! 本当にベルトが手の届かない所に行っちゃうよ!?」

実況「先程、ザンギエフ本人も言っていましたが……正に、背水の陣で挑む一戦になりそうですねぇ、これは……」

元「ザンギエフ君対豪鬼君……これは、二度目の試合だけど……どうなるか、予想はつかないねぇ……」

実況「これは、次の試合も目が離せない事になりそうですね!? さぁ、残念ながら、ここらでお時間となってしまいました! 本日の『ストリートプロレス』の中継はここまでです! 実況は私と……」

元「解説は私、元でお送りしました」

実況「次回のストリートプロレスも……必ず見て下さいね!? それでは、さようなら~!」

551: 2014/11/27(木)22:15:36 ID:YDX
ーーー


ベガ「……お疲れ様でした」

豪鬼「……うむ。あれで、良かったのか?」

ベガ「えぇ、後は、リュウの決断次第です……少し、奴にも考えさせる時間を与えてやって下さい……」

豪鬼「……あまり、長々と考えられても困るぞ? 私には時間がないのでな」

ベガ「……はい」


ザンギエフ「大丈夫だ。リュウは必ず、説得してみせる……」

ベガ「ザンギエフさん、お疲れ様です」

豪鬼「なかなかいいタイミングで乱入してくれたじゃないか? ザンギエフよ……」

ザンギエフ「あれ以上、話を続けられると……後戻り出来ん様になるからな……」

豪鬼「……ふむ」

ザンギエフ「現場監督の権限を使えば、楽な所なのだがな……まぁ、親心とでも言えばいいのかな……やはり、リュウには、自分自身で決めてもらいたい」

豪鬼「私も、そう思うよ」

552: 2014/11/27(木)22:26:13 ID:YDX
ザンギエフ「リュウと戦ってみて、どうだった……? 豪鬼よ……?」

豪鬼「……いい選手だと、思うぞ? 彼なら、きっとエースに相応しいだろうと思う」

ザンギエフ「そうか……」

豪鬼「彼に足りてない物があるとすれば……」

ザンギエフ「……うむ」

豪鬼「恐らく、それは我々の残した、負の遺産……そのせいだろう……」

ザンギエフ「……」

豪鬼「やはり、ファイトスタイルの違いを感じたよ。 ベビーとヒール……そんな物ではなく……旧世代と、新世代の違いをな……?」

ザンギエフ「……世代交代か」

豪鬼「これからは彼らのような、新世代が中心となっていかねばならないのに……リングには、我々旧世代の戦いの幻影が残っておる……」

ザンギエフ「……」

豪鬼「そして、その戦いを求めている者もいる……伸び悩んでいるとすれば……そのせいかもしれないな……」


リュウ「……」

ベガ「リュウも戻ってきたようだな……? リュウ、メインイベント、よくやってくれたな? いい試合だったぞ」

553: 2014/11/27(木)22:42:39 ID:YDX
リュウ「……何が、いい試合だよ。ふざけんじゃねぇよ」ボソッ

豪鬼「確かに、今日の試合……リュウ君が割りを食った所があるかもしれんな……」

リュウ「何が、割りを食っただよ……? あぁ!? おめぇらの、踏み台にされただけじゃねぇか!? あぁ!?」

ザンギエフ「リュウ……そうしたのには、理由があってな……」

リュウ「あぁ、そうだろうな! 首、腰、足に爆弾抱えて、何時までも続けやがってよぉ!? 俺を踏み台にしなきゃ、おめぇらまともな試合、出来そうにもねぇからなぁ!」

ベガ「リュウ……! 言葉が過ぎるぞ……!」

リュウ「ベガ、おめぇもだよっ! おめぇだって、爆弾ばかり抱えやがって……! まともに試合ができねぇ身体なら、とっととサガットにシャドルーのトップ、渡しちまえっ!」

豪鬼「……」

リュウ「豪鬼、おめぇもだっ! 自分の団体で干されかけてるような、人間がよぉ……? うちの団体に来て、チャンピオン面するんじゃねぇよ! あぁ!?」

豪鬼「……」

リュウ「あのフィニッシュホールドは何だ……? 脳天から、落としやがって……俺も、おめぇ達みてぇな爆弾持ちの身体にする気か……? あぁ……?」

豪鬼「安全には、気を使ったつもりだが……確かに、危ない技だったな……申し訳ない……」

リュウ「おめぇらが、いつまでも上で続けてやがるから……俺達、新世代の戦いが、いつまで経っても認められねぇんだよ! 俺は、お前らの噛ませ犬じゃねぇんだ! ふざけんじゃねぇっ!」

ベガ「リュウ……! お、おい……待て……! リュウ……!」

リュウ「……うるせぇっ!」

554: 2014/11/27(木)22:56:17 ID:YDX
ベガ「豪鬼さん……! すいませんっ……!」

豪鬼「構わんよ……私が干されかけているのは、事実だし……彼の言葉も、自分の団体の現場監督から、そのまま言われた言葉だ……」

ベガ「……しかし」

豪鬼「世代交代の苦労は、何処も同じなのだな……? それ程、我々の残した負の遺産は大きかった様だ……なぁ、ザンギエフよ……?」

ザンギエフ「……」

豪鬼「我々の世代では……目の前の事柄に、全力でぶつかり……疲れた身体に鞭を打ち……そして、時には脳天から落ちるような危険な技を受け……」

ベガ「……」

豪鬼「そうする事が、正しい道だと信じて誰も疑わなかった……身体の傷が増える度に、それだけ自分が生きた証として、誇りに思う事を疑わなかった……」

ザンギエフ「……」

豪鬼「それが、この身体だ……もう、昔のような動きは出来ん……そろそろ限界だよ……」

ベガ「……豪鬼さん」

555: 2014/11/27(木)23:10:36 ID:YDX
豪鬼「スポーツ医学の発達で……肉体に負担を掛ける事の危険性……そして、その疲労を回復させる事の重要性……そういった物が、もう証明されてしまった」

ザンギエフ「……」

豪鬼「……こんな危険な事をしているのは、プロレスだけだよ」

ベガ「……」

豪鬼「我々の志は、間違ってはいなかったが……進むべき道は、間違っていたようだな……?」

ザンギエフ「……」

豪鬼「我々のような、肉体に負担を掛ける試合など……もう、沢山だ……犠牲者は、我々の世代だけでよい……」

ベガ「……」

豪鬼「これからは、リュウ君達の様な、新世代が……新しい、プロレスを作っていかねばいかん……旧世代の戦いは、彼らに求めてはいけない……」

ザンギエフ「……だが、その旧世代の戦いがまだ、ファンに求められているのも事実」

豪鬼「……」

ザンギエフ「だからこそ、俺達はまだ上で続けねばならん……リュウ達に、同じ事をさせる訳には、いかんからな……」

豪鬼「……その結果が、彼ら新世代の芽を摘む事になったとしてもか?」

ザンギエフ「……」

556: 2014/11/27(木)23:21:40 ID:YDX
豪鬼「やはり、リュウ君には自分自身で、チャンピオンになる為のスタイルを作ってもらった方がいいだろう……」

ベガ「……豪鬼さん」

豪鬼「私の殺意の波動スタイルは……危険な技や、受け身などを使い……肉体に負担を掛けていく物だ……きっと、選手寿命を縮める事になる……」

ベガ「そんな事ありませんよ……! 今日の雪崩式垂直落下式ブレーンバスターだって、そうならない様、気を使って落としていたではないですか!?」

豪鬼「一年後、同じ事をやれと言われたら、私は同じようにやる自信はない……だが、ファンは一年後も同じように……期待してくれているだろうな……」

ベガ「……豪鬼さん」

豪鬼「もう、このスタイルは封印するべきなのだよ……そして、新しいプロレスをお客さん達に見せていかなければならない時代が来たんだ……」

ザンギエフ「……豪鬼」

豪鬼「……どうした?」

ザンギエフ「お前の、残されたレスラーとしての時間……それを俺に全てくれ……必ず、リュウは説得してみせる……!」

557: 2014/11/27(木)23:33:53 ID:YDX
ザンギエフ「時代築いた、お前の殺意の波動……それを時代の波に埋もれさせたりはしないさ……」

豪鬼「……」

ザンギエフ「リュウならば、きっとやってくれる……お前の旧世代の殺意の波動と……自分の新世代のスタイルを合わせて……」

豪鬼「……」

ザンギエフ「きっと、我々世代のファンも納得させるような、新世代の殺意の波動を作ってくれるはずだ! 奴には、その器があるっ!」

豪鬼「……本人は乗り気じゃないのではないか? 我々世代は、彼らにとって、ただの目の上のたんこぶだ」

ザンギエフ「そこは、俺が説得してみせるっ! 現場監督などの権限ではなく……一、レスラー……一人の男としてのザンギエフがな!」

豪鬼「……」

ザンギエフ「だから、お前の残された時間を全て、俺に預けてくれっ……! 俺達が目指した志は……必ず、リュウに託してみせるっ……!」

豪鬼「……自分の後継者も、まだ見つかってないのにか? T・ホーク君の育成はどうなってるんだ?」

ザンギエフ「フッ、奴は、まだまだ荒いよ……チャンピオンの道は、まだまだ遠いな……」

558: 2014/11/27(木)23:41:22 ID:YDX
豪鬼「……一つ、聞きたい」

ザンギエフ「……どうした?」

豪鬼「……何故、他団体の私をそこまで気にかける? 何故、私をそこまで持ち上げる?」

ベガ「……」

豪鬼「確かに私は、殺意の波動で、時代を築いた男だが……自分の団体では、干されかけてる身だ……他団体から、声も掛かる事は多くない……」

ザンギエフ「……」

豪鬼「そんな中……私をメインストーリーに絡めて……ベルトを賭けた試合をやらせてくれるなんて、この団体だけだぞ……?」

ベガ「……」

豪鬼「無駄に格だけはあるから、ギャラは安くはない……そんな私を、何故お前達はそこまで、気にかける……?」

ザンギエフ「……フッ、何を言っとるか、バカめ」

豪鬼「……ぬ?」

559: 2014/11/27(木)23:49:08 ID:YDX
ザンギエフ「同じ時代を共に闘った仲間であり……そして、ライバル……それが、理由だからだ……」

豪鬼「……」

ザンギエフ「お前の様な時代を築いた男が、最後の最後で根無し草……なんてのは、キャラには合っているだろうが……一、レスラーとしては、勿体無さすぎる……」

豪鬼「……フッ」

ザンギエフ「だから、高いギャラを払って……うちの団体に来てもらったんだ……」

豪鬼「……そうか」

ザンギエフ「オファーさえ、受けて貰えれば、後はこっちのもんだ! メインの試合で責任を負ってもらうし……メインストーリーにも、組み込ませてもらうさ!」

豪鬼「……なるほど」

ザンギエフ「どうせ、自分の団体に帰っても居場所はないんだろう……? だったら、その事も利用して、長期なストーリーを組ませてもらったよ! ガーハッハッハ!」

豪鬼「……ザンギエフ、ありがとう」

560: 2014/11/27(木)23:55:34 ID:YDX
ザンギエフ「お前は、この三試合……うちの団体への外敵として、いい仕事をしてくれたよ……」

豪鬼「メインイベントなんて、久しぶりだからな……私も楽しかったよ……」

ザンギエフ「だが、まだ後一試合残っておる……次は、俺との勝負だ……」

豪鬼「あぁ、ベルトを返さねばな……」

ザンギエフ「ギャラ以上の働きをしてくれよ、豪鬼……? お前との試合は、いつも名勝負と言われるからな……今回も名勝負にしてもらわにゃ、困るわ……」

豪鬼「……フッ、面白い」

ザンギエフ「旧世代の意地を……リュウ達にも、見せてやらんとな……! 次の試合は、最高の試合にしてくれよ、豪鬼……!」

豪鬼「あぁ、私の最後になるかもしれないメインイベントだからな……最高に手こずってもらうぞ、ザンギエフよ……!」

568: 2014/11/28(金)22:16:45 ID:2z0
ーーー


ダン「お~い、ヤムチャ~! 待っててくれたのか~!?」

ヤムチャ「あっ、ダンさん、お疲れ様っす」

ケン「お疲れ様っす」

ダン「いつもの居酒屋でサガット達と飲み会だろ? わざわざ、待っててくれるなんて、おめぇ可愛い所あるじゃねぇか!」

ヤムチャ「ダンさんに言われても、あまり嬉しくありませんねぇ……」

ケン「まっ、ダンさんと合流出来たんだったら……早い所、サガット達の所に行っちまいな……」

ヤムチャ「……えっ?」

ケン「バカ……あんな試合で、リュウの奴が納得してる訳ねぇだろが……多分、今頃怒り狂ってると思うぜ……?」

ダン「おう、チラッと見たけど……リュウの奴、かなり怒ってやがったぜ……」

ヤムチャ「お、おぉ……そりゃ、マズいな……」

569: 2014/11/28(金)22:24:48 ID:2z0
ケン「だから……バックドロップの事、蒸し返されなくなかったら……早い所雲隠れしちまえ……」

ヤムチャ「う、うっす……!」

ダン「……あっ、そうだぞ、ヤムチャ? おめぇ、試合中、何発バックドロップ打つ気なんだ? お客さんは、おめぇのバックドロップショーを見に来てるんじゃ……」

ケン「あっ、大丈夫ですよ、ダンさん。ヤムチャの奴には、俺から言っておいたんで……こいつも、同じヘマを二度する様なバカじゃないでしょう」

ダン「あっ、ケン……おめぇが直接指導してくれたのか……? 悪ぃな……」

ケン「だから、ダンさんとヤムチャは……早い所、サガット達と合流して下さい……リュウの奴、こいつの顔見ると……また、暴れるかもしれないんで……」

ダン「おめぇは、来ないのか……? ケン……?」

ケン「今日の俺は、あいつの愚痴に付き合いますよ……アイツはエースになる漢なんだ……」

ダン「……」

ケン「あいつなりの苦悩や……葛藤があるでしょう……それを聞いてやれるのは、タッグパートナーの俺が適任です……」

570: 2014/11/28(金)22:38:02 ID:2z0
ダン「……なぁ、ケン?」

ケン「……どうしました?」

ダン「いつもいつも、すまねぇな! おめぇ達に構ってやれなくてよぉ?」

ケン「何ですか、いきなり……」

ダン「中立の立場の俺はよぉ……本来なら、リングの外でも、お前達にも同じ様に接してやらねぇといけねぇのによぉ……?」

ケン「……」

ダン「やっぱり、ヒールの連中と連携を取る事が多いからな……いつも、サガット達と行動を共にしちまう……俺の悪い癖だ……」

ケン「……レフェリーは、そんな物でしょう? 仕方ないですよ」

ダン「派閥とか、とっぱらっちまってよぉ……? 皆で楽しむ事があっても、いいんじゃねぇか……?」

ケン「……」

ダン「ベビーとヒールが、仲良く居酒屋で飲んでる所を見られても、もういい時代が来たんじゃねぇか……? リングの中の事を……外に持ち出しちゃいけないなんて、誰が決めたんだよ……? お前らのずっと前のレスラー達の決まり事なんじゃねぇのか、それは……?」

ケン「どうなんすかね……? まぁ、リュウはそういう考えじゃなさそうですが……」

ダン「おっと、長話しすぎちまったかな……? 流石に、リュウがそろそろ戻ってきちまうな……」

ケン「そうっすね……ダンさん、ヤムチャ……もう、行って下さい……」

ダン「こいつは、まだ顔はそこまで売れてねぇが、ヒールの奴らと一緒に飲んでるんだ……おめぇらだって、いいとは思うけどねぇ……よし、ヤムチャ、そろそろ行くか!」

ヤムチャ「う、うっす……!」

571: 2014/11/28(金)22:47:21 ID:2z0
居酒屋ーー


ヤムチャ「う~っす。お疲れ様~っす」

ダン「う~っす。姉ちゃん、いつもの焼酎くれや」


サガット「おっ、ヤムチャ君とダンさんも来たな……」

バルログ「さぁさぁ、楽しい楽しい反省会の始まりですよ……と、言いたい所、ですが……」

ヤムチャ「……ん?」


さくら「コラ、バイソンさ~ん……! 自分の酒が飲めないって言うんすか……? 生意気言ってんじゃ、ねぇっすよ……!」

バイソン「いやいやいや……何か、ソレ……グロテスクな色してるよ……? それ、飲んだら絶対ヤバいってっ……!」

さくら「さくら特製の日本酒の、ウイスキー&ブランデー割りっす……! さぁ、バイソンさん……男らしく、一気飲みしてもらうっすよ!」

バイソン「日本酒の、ウイスキー&ブランデー割りは……サガットがいつも寝酒に飲んでるよね……? だから、それはサガットに飲んで貰おう! サガットに一気してもらおう!」


サガット「俺に振るんじゃねぇよ、バイソン……! そんな得体のしれない物など、飲んだ事ないわ!」

バイソン「助けて下さいっ……! さくらさんが止められないんですよ!」

572: 2014/11/28(金)22:54:29 ID:2z0
ヤムチャ「お、おう……さくらちゃんって、絡み酒だったんだなぁ……」

さくら「おうおう、やってきましたね……スーパールーキー、ヤムチャさん……?」

ヤムチャ「スーパールーキーって……何、言ってんすか……そんなのじゃないって言ったのは、さくらちゃん達でしょうが……」

さくら「第五試合でやってる人が何、言ってるっすか……? ほれ、このお酒……一気飲みしてみせるっす!」グイッ

ヤムチャ「えっ……何、コレ……? 何か、グロテスクな色してるよ、コレ……」

さくら「ほれほれ、一気するっす……! 第五試合でやってる人間の意地見せるっす……!」グイグイ

ヤムチャ(う、うおぉ……ど、どうっすかねぇ……コレ……)


ダン「まぁまぁまぁ……さくら……絡み酒はよくねぇよ……」

さくら「……ダンさん」

574: 2014/11/28(金)23:01:10 ID:2z0
ダン「愚痴なら俺が、聞いてやるし……酒も気が済むまで付き合ってやるからよぉ……?」

さくら「……うぅ」

ダン「悪い酒の飲み方だけは、やめとけや……? いくら、明日がオフだからって、そんな飲み方してたら、試合に影響出ちまうぞ……?」

さくら「うぅ……ダンさん……」

ダン「おい、サガット! 悪いけど、反省会はおめぇらだけでやってくれねぇか……?」

サガット「あっ、はい……わかりました……」

ダン「俺は、こっちで、さくらの愚痴聞いてやってるからよぉ……? ヤムチャの事は、おめぇらに任せるぞ!?」

サガット「わかりました……! よろしくお願いします……」


さくら「うぅ……ダンさん、聞いて下さいよぉ……」

ダン「はいはい、聞きます聞きますよ~っと。何でも、おじちゃんに言って下さいねぇ……」

575: 2014/11/28(金)23:08:20 ID:2z0
ヤムチャ「いやぁ……何か、さくらちゃん、荒れてますねぇ……どうしたんですか……?」

サガット「……まぁ、女子部の話だな」

バルログ「今日の、春麗さんとキャミィさんの試合……あったでしょう……?」

バイソン「俺達の試合にも、影響が出たヤツ……」

ヤムチャ「あぁ、春麗さんが、怪我しちゃって……試合時間が15分、短くなっちゃったヤツですね……?」

サガット「まっ……その事で、荒れていると、いう訳だ……」

バイソン「絡み酒はよくねぇと思うな……! うんうん、お酒は人それぞれ、自分のペースで飲まないといけないからね!」

バルログ「……普段のバイソンも、結構似たような物ですけどね」

バイソン「ガハハ! これまたバルログ君、御冗談を!」

バルログ「……いやいや、マジでマジで」

577: 2014/11/28(金)23:20:42 ID:2z0
さくら「女子部はずっと、第三試合で……! 文句の一つも言わずに、頑張ってたっすよ!」

ダン「おう、そうだっ! 女子部の頑張りは素晴らしい! 皆、真似せねばいかんっ!」

さくら「それぞれが……メインイベントを張るだけの力は、持ってるっす! それでも、女子だけって事で、認められないっす!」

ダン「そうだそうだ! 女子部はメインイベント張れるぞぉ! 舐めてんじゃねぇ、ザンギエフっ!」

さくら「ようやく、チャンスを貰えたっすよ! ようやく、チャンスを貰えて、
第四試合に格上げして貰えたっすよ!」

ダン「そうだそうだ! 女子部の第四試合は当然だぁ! 舐めんじゃねぇっ!」

さくら「でも、どうして……そんな大事な試合で、あんな結果になっちゃうんすかねぇ……?」グスッ

ダン「おいおい……落ち込むんじゃねぇよ……? とりあえず、言いたい事言って、すっきりしちまえよ……? なっ……?」

さくら「このままじゃ、また第三試合に逆戻りっすよ……折角、第四試合に上がれたのに……」

ダン「大丈夫だって……結局、キャミィが上手く終わらせてくれたじゃねぇか……? ザンギエフは、そこん所も見ててくれてるよ……」

さくら「そんな気はしないっすよ……また、第三試合の日々が続く事になりそうっす……」

ダン「だから、そうやってネガティブに考えてんじゃねぇよ……いつもみたいに元気出せよ!」

580: 2014/11/28(金)23:32:39 ID:2z0
サガット「……以前、うちの団体の第三試合は、大抵女子部が務めると話しただろう?」

ヤムチャ「あ~、言ってましたね……」

サガット「そして……第四試合……第五試合……第六試合と、試合が進むに連れて……重要な試合になっていくとも、話したな……?」

プーアル「天下一武道での、準々決勝……準決勝……そして、決勝みたいな物だって、例えてくれましたね」

サガット「女子部が、大抵第三試合……その位置で止まっている理由を挙げるとすれば、やはり男と女の違いにあると思う……」

ヤムチャ「……はぁ」

サガット「俺達と同じ様なテクニックや、動きを見せても……やはり、男がやってるのと、女やってるのでは印象が違う……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「大柄で筋力もある、男達がやった方が……お客さんの目には迫力のある物に映るだろうな……」

ヤムチャ「……確かに」

サガット「だが、女子部だって……第三試合で満足している様な、人間ではない……」

581: 2014/11/28(金)23:40:53 ID:2z0
サガット「俺達が、メインイベントで、やりたい……ベルトを賭けた重要なポジションで戦ってみたいと、思うように……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「さくらちゃんや、春麗……それに他の女子部のメンバーだって、第四試合……第五試合……一つでも上のポジションで、試合をしてみたいと思っている……」

プーアル「もっと、天下一武道会の決勝に近いような位置で……って、事ですね。 確かに、ヤムチャ様だって……次こそは天下一武道会の一回戦負けになりたくないって、毎回意気込んで……」

ヤムチャ「やめろ、プーアルっ! 俺はベスト8を誇りに思っているぞ! 一回戦負けで何が悪い!?」

サガット「そんな中、今日の試合は……女子部が第四試合だった……」

ヤムチャ「……はい」

サガット「当然、女子部にとっては、チャンスだ……今日、戦った春麗とキャミィだけではなく……さくらちゃんや、他のメンバーにとってもな……?」

582: 2014/11/28(金)23:51:14 ID:2z0
サガット「ここで結果を出して、お客さんに『女子部の試合も凄いな! 男に負けないぐらいの面白さがあるじゃん!』なんて事を、思わせる事が出来れば……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「再び、女子部の試合が、第四試合で組まれる事もあるだろう……お客さんが期待しているんだ……」

ヤムチャ「お客さんの期待には応え……俺達は、試合の結末や、試合時間、試合展開などを自由に操作できるんだから、当然ですね……」

サガット「そう……そして、そこで女子部がいい試合を続ける事が出来れば……」

ヤムチャ「大抵第三試合の女子部の試合が……メインに近い位置……第四試合が行われる事が、定番になる、と……」

サガット「そう……そして、そこからは同じ事の繰り返しだ……同じ様に、お客さんの期待に応え、第五試合に……そして、その第五試合でも期待に応える事が出来れば……」

ヤムチャ「男達の戦いの中で、女性のさくらちゃん達が、メインイベントを、出来る……って、事っすね……?」

サガット「そう……さくらちゃん達は、厳しい環境の中で、戦ってると思うようよ……」

ヤムチャ「……」


さくら「うぅ……ダンさん……」グスッ

ダン「だから、泣くんじゃねぇって……! チャンスはすぐ来るから! きっとまたすぐ来るから!」

590: 2014/11/29(土)22:15:22 ID:KQH
サガット「そんな中、今日の春麗とキャミィの試合は……まぁ、アレだっただろ……?」

ヤムチャ「……」

サガット「春麗も、恐らく第三試合から抜け出そうと必氏だったんだろうよ……俺には、いつもりハードな試合をしようとしている様に、思えたよ……」

ヤムチャ「……そうだったんですか」

サガット「だが、その結果がアレだ……少し、無茶をしすぎたようだな……試合の序盤で、失敗してしまった……」

ヤムチャ「……第四試合が、たった五分で終わってしまったっすね」

サガット「……あぁ、ヤムチャ君にも迷惑を掛けたな?」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「その結果、俺達の試合が10分伸びて……アドリブを強要する事になってしまった……」

ヤムチャ「いや……俺は、別に……」

サガット「だが、女子部は女子部で必氏だったんだ……それは、わかってやってほしい……」

ヤムチャ「だ、大丈夫っすよ……! 俺は、別に気にしてないっすよ……! 今日の試合は、勉強になりましたし……よかったって言っちゃ、おかしいけど……ま、まぁ……」

サガット「……ありがとうな」

591: 2014/11/29(土)22:25:55 ID:KQH
ーーー


ザンギエフ「……春麗の怪我はどうなんだ?」

ベガ「幸い、長期離脱にはなりませんが……まぁ、一ヶ月前後は試合に出られないでしょうね……」

ザンギエフ「……チッ、チャンピオンが何をやっているんだ」

ベガ「まぁ、ベルトは今キャミィが持っていますが……」

ザンギエフ「……暫くは、さくらやキャミィを中心に回してもらうしかなさそうだな」

ベガ「まぁ、さくらなら上手くストーリーを考えてくれるでしょう……この機会にキャミィの会場人気を、もっと上げて貰えれば……」

ザンギエフ「……春麗クラスまで、上がってくれればいいのだがな」

ベガ「……いっそ、シャドルーが洗脳して、ヒールターンさせてみるというのは、いかかでしょう?」

ザンギエフ「キャミィの意思もあるし……まぁ、そこはさくらとの相談だな……」

ベガ「……そうですか」

ザンギエフ「まぁ、春麗が復帰するまでは……暫くは、第三試合でやってもらうしかなさそうだな……」

ベガ「……そうですね」

ザンギエフ「しかし、そうするとタッグのベルトをどうするかが問題だな……ユンとヤン……くそっ、ナッシュとガイルにまた、任せないといかんのか……」

ベガ「……」

592: 2014/11/29(土)22:36:46 ID:KQH
ーーー


ヤムチャ「俺、試合が終わった後……ケンさんに言われたんですよね……」

サガット「……どんな事を?」

ヤムチャ「俺のミスは、空手軍団のミスで……空手軍団のミスは、リュウさんや、ケンさんのミスになるって……」

サガット「……ほう」

ヤムチャ「その時は、リュウさんに殴られないように、これからはしっかりしなきゃ……なんて、思ってただけなんですが……」

サガット「……ふむ」

ヤムチャ「なんか、今日のさくらちゃん見てると……一つのミスは、リュウさんやケンさんだけじゃなく……もっと、沢山の人に迷惑を掛ける事になるんだって、思いましたよ……」

サガット「そうだな……試合時間の引き延ばす事を、強要されてしまったヤムチャ君や、俺達にも、迷惑がかかってしまったな……」

ヤムチャ「い、いやっ……! 俺は、気にしてないっすけど……勉強になりましたし……おかげで、課題も出きたような気もしますし……!」

サガット「ほ~う、課題か……試合中にでも、見つけたか……? 自分自身で、足りない物を見つけるというのは、いい事だな……? アドバイスしてやるぞ……?」

ヤムチャ「え~っとね……あっ、それは最後にして……先ず、試合中に気になった事を聞いていきますよ? 時間が経って、忘れちゃったら困るんで」

サガット「……ふむ」

594: 2014/11/29(土)22:44:28 ID:KQH
ヤムチャ「え~っとね……先ず、最初に……先発でサガットさんが出てきたじゃないですか……?」

サガット「……ふむ」

ヤムチャ「あれは、どういった意図だったんですか……? 俺は、バイソンさんが出てくると思ってたんですけど……」

サガット「なるほどね……よし、では先ずはレスラーの格から、教えよう……」

ヤムチャ「……格?」

サガット「先ず、ヤムチャ君達、空手軍団……リュウ君、ケン君、そしてヤムチャ君……この三人を強い順に並べたら、どういう順になる……?」

ヤムチャ「え~っと、それは……リュウさん、ケンさん……それで、最後に俺……そういう順番ですよね……?」

サガット「……そうだな、正解だ」

ヤムチャ「それくらい、わかりますよ……今日だって、俺のせいで負けた事になってるんですから……サガットさん、ひょっとしてバカにしてます……?」

サガット「ハハハ、バカにはしていないよ。それじゃあ、次は俺達、シャドルーだ」

595: 2014/11/29(土)22:50:34 ID:KQH
サガット「俺達、ここにいるシャドルーの三人を、強い順に並べたら、どういう順になる……?」

ヤムチャ「え~っと、ベガさんは抜きで……って事っすね……? だったら、一番は……サガットさん……」

サガット「……ふむ」

ヤムチャ「それで、二番は……バルログさんですね……?」

バルログ「そうですね。正解です」

ヤムチャ「それで、最下位は……バイソンさんですよ」

バイソン「最下位って言い方は、酷ぇなぁ! 鉄砲玉とか、切り込み隊長って言ってくれた方が嬉しいな!」

ヤムチャ「なぁ~んすか、ソレ……!? 自分の事、美化しすぎでしょう、バイソンさん!」

バイソン「ガハハ! まぁ、正解だけどね! サガット、話を続けてやってくれよ!」

597: 2014/11/29(土)22:59:52 ID:KQH
サガット「レスラーによって、強い設定や、弱い設定が存在する……まぁ、ここまではわかったかい……?」

ヤムチャ「あっ、はい……」

サガット「では、その強い設定……弱い設定を、どう生かすかが、ポイントになってくる訳だな……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「ベガさん抜きの、シャドルー軍団で一番強い、俺を倒す為には……空手軍団では、誰を俺にぶつけるべきかな……?」

ヤムチャ「一番強いサガットさんなんだから……やっぱり、こっちも一番強い、リュウさんですね……」

サガット「そう。俺にリュウぶつければ、俺にダメージを与える事が出来るな……リュウが俺に、攻撃を仕掛ける度に……俺は、ダメージを喰らっていくという訳だ……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「では、リュウ君と全く同じ攻撃を……空手軍団、ナンバー2のケン君が俺に、仕掛けたらどうなる……?」

ヤムチャ「えっ……? ケンさんが……?」

サガット「そうだ……ナンバーツーのケンだ……」

598: 2014/11/29(土)23:10:36 ID:KQH
ヤムチャ「え~っとね……リュウさん程のダメージではないけど……まぁまぁ、そこそこのダメージを与えられる……」

サガット「……」

ヤムチャ「な、なんか……変な説明だけど、合ってますよね……? リュウさんより、効果のない攻撃……! みたいな感じで……?」

プーアル「……ヤムチャ様、答えが雑すぎです。もっと、簡潔に答えて下さい」

ヤムチャ「いやいやいやっ……! これを簡潔に答えるのは、難しいぞ……プーアル……?」

サガット「……まぁ、そんな感じで正解だな。リュウ君より、弱いケン君が、リュウ君と同じ攻撃を仕掛けても、同じだけのダメージを与える事は出来ない」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「ケン君が俺を倒したいのならば……リュウ君より、手数を増やしたり……リュウよりもっと、大技を仕掛けたりする必要があるという事だ……」

ヤムチャ「ほらほら、プーアル……だいたい合ってるじゃん……? 俺、正解じゃん!」


プーアル「あっ、バルログさん、グラス空ですよ……? 僕、注いで差し上げますね?」

バルログ「あっ、ありがとうございます。プーアル君は、いつも気が効きますね」

ヤムチャ「……話、聞けよ! ビール注いでるんじゃねぇ!」

600: 2014/11/29(土)23:17:12 ID:KQH
サガット「では、ナンバースリーのヤムチャ君……ヤムチャ君が、同じ攻撃を俺に仕掛けたら、どうなる……?」

プーアル「ヤムチャ様、答えは簡潔にお願いします」

ヤムチャ「よ~し……だったら、簡潔に答えてやろうじゃないか……」

サガット「……ふむ」

ヤムチャ「答えは『効かない』……! これで、どうだ!?」

サガット「まぁ、そういう事になるな……ヤムチャ君の攻撃は、俺には効かない……」

ヤムチャ「お、おいっ……! 合ってるのかよ!?」

サガット「……まぁ、モノの例えだ」

ヤムチャ「じゃあ俺、サガットさんと戦う時、どうしたらいいんだよ……攻撃効かねぇ相手に戦ったって、無意味なんじゃねぇのか……?」

サガット「そこを狙って……今日は俺が先発で出たという訳だ……」

プーアル「……あ~、なる程」

602: 2014/11/29(土)23:25:47 ID:KQH
サガット「今日の試合は10分引き延ばせと言われただろう?」

ヤムチャ「はい」

サガット「つまり、激しい攻防ではなく……ゆったりとした攻防を繰り返す必要がある……と、いう訳だ……」

ヤムチャ「……ふむふむ」

サガット「だが、リングにいる人間が、何もしない訳にはいかない……何か、行動……攻撃をする必要がある……」

プーアル「そこで……ナンバースリーのヤムチャ様の出番と!」

サガット「そう、ナンバースリーのヤムチャ君の、『効かない攻撃』を繰り返す事によって……試合は引き伸ばしているが……試合展開は進まないという、時間を作ったという訳だ……」

ヤムチャ「なる程……確かに、サガットさん、全然効いてなさそうでしたしね……」

サガット「実際は、痛いよ……だが、俺は打撃攻撃に強い体格のいい漢という設定だからな……痛くても我慢だ……」

ヤムチャ「あっ、やっぱり我慢とかしてるんですね……」

サガット「この攻防は、あまりやりすぎるのも、よくないぞ? 『ダラダラやってんじゃねぇ』なんて……野次が飛んでくる事もあるからな……」

ヤムチャ「野次……うっ、怖ぇな……」

604: 2014/11/29(土)23:31:52 ID:KQH
ヤムチャ「……って事は」

サガット「……ふむ」

ヤムチャ「俺の攻撃は、サガットさんには……ノーダメージで……」

サガット「……うむ」

ヤムチャ「バルログさんには……そこそこのダメージ……」

バルログ「そうですね」

ヤムチャ「そして……バイソンさんには、ダメージを与えれる攻撃……って、事か」

バイソン「だから、これからの抗争で、俺とヤムチャ君は長い付き合いになるって事だな!」

ヤムチャ「なる程、ナンバースリー同士の戦い……同レベルの力を持った人間の戦いが増えるという事か……」

バイソン「そういう事だな! まぁ、ヤムチャ君、仲良くやろうぜ!」

ヤムチャ「あっ、ハイ……バイソンさん、よろしくお願いします……」

サガット「……これが、格というワケだ」

606: 2014/11/29(土)23:40:27 ID:KQH
プーアル「でも、サガットさん?」

サガット「……どうした、プーアル君?」

プーアル「ヤムチャ様もサガットさんと戦う機会はありますよね?」

サガット「そうだな。空手軍団対シャドルー軍団だ……ヤムチャ君だって、何処かで俺と戦う場面は、出てくる」

プーアル「……そういった時、ヤムチャ様はどういう風に戦えばいいんですかねぇ?」

ヤムチャ「あっ、そうだな……今日の試合は、試合時間を引き延ばす為だったから、別にいいけど……20分の試合で、そんな『効かない攻撃』を繰り返す訳にもいかねぇからな……」

サガット「うむ、それは……今、ここで答えを出せる訳ではないが……」

ヤムチャ「……えっ? 答えないんですか!?」

サガット「まぁ、俺よりバイソンの方が、答えに近い物は持っているだろう……」

ヤムチャ「……バイソンさん?」

バイソン「あぁ、俺もヤムチャ君と同じナンバースリーだからな! ヤムチャ君と同じように、格上のリュウや、ケンと戦う事も多い日々だ!」

ヤムチャ「あっ、そっか……ナンバースリーのバイソンさんの攻撃も……リュウさんや、ケンさんにとっては『効かない攻撃』って事になりますもんね……」

613: 2014/11/30(日)22:11:34 ID:0cR
バイソン「まぁ、俺の場合は……基本的に反則攻撃を使う事にしてるね!」

ヤムチャ「……ほぅ」

バイソン「まともにリュウとケンと戦っても、俺には勝ち目はねぇんだ……だったら、まともに戦っちゃいけないだろう?」

ヤムチャ「そうっすよね」

バイソン「正攻法で戦うリュウ、ケンに対して……ルールに縛られないようにやってる、バイソン……」

ヤムチャ「……ふむふむ」

バイソン「同じ、条件の戦いではなく……違う条件での戦いに持ち込む事を心がけてるよ」

ヤムチャ「そっか……今日だって、シャドーボクシングからの頭突きをケンさんにしてましたけど……」

バイソン「あぁ! それは汚ぇ不意打ちって事だな! リュウやケンなんかは、汚ぇ不意打ちなんてしねぇだろ」

615: 2014/11/30(日)22:18:26 ID:0cR
プーアル「……でも、バイソンさん?」

バイソン「……ん? どうした、プーアル君?」

プーアル「それは、バイソンさんがヒールだから……そういう事が出来るんですよねぇ……?」

バイソン「おう、そうだ!」

プーアル「でも、ヤムチャ様はベビーだから……そういう事は出来ないじゃないですか? 反則攻撃や、不意打ちなんてするのは、正義のヒーローらしくないですよ……」

ヤムチャ「そうっすよ。俺は、そういう事する訳にもいかないっすよねぇ? そんな事したら、またリュウさんに怒られる事になりますよ!」

バイソン「まぁまぁ、ヤムチャ君……話には続きがある……」

ヤムチャ「……ん?」

バイソン「反則攻撃ってのは……あくまで、結果だ……そこに辿り着くまでの過程を聞いてくれ……多分、答えはそこにあるだろうな……」

ヤムチャ「……過程?」

617: 2014/11/30(日)22:34:04 ID:0cR
バイソン「さっきは流されちまったが……俺はシャドルーの鉄砲玉であり……切り込み隊長だ……」

ヤムチャ「……ふむ」

バイソン「ベガ様や、サガットは俺に出番を譲る時……切り込み隊長としての働きを期待している訳だな……」

ヤムチャ「……ほうほう」

バイソン「試合開始と同時に……先ず、バイソンが出て、様子を伺ってくれ、とか……今日は一気にシャドルーのペースになるような、試合にしてくれ、とか……」

ヤムチャ「大将がいきなり出るんではなく……鉄砲玉を使って、様子を探る……って事ですね……」

バイソン「相手はナンバーツーだけど……今、相手はダメージを受けているから……格下のバイソンでも、今なら戦えるだろう、とか……」

ヤムチャ「その間に、ベガさんやサガットさんは、スタミナ温存の為に休むと……」

バイソン「相手はナンバーワンの人間だけど……こっちは、ナンバーワンもナンバーツーも、ダメージを受けていて、今動けるのはバイソンしかいない……」

ヤムチャ「……ふむ」

バイソン「十中八九、負ける勝負だが、バイソンしかいないんだっ……! 頼む、バイソンなんとかしてくれっ……! なんて、思いながら俺を送り出すわけだな……」

ヤムチャ「ダメージの効かない相手と、戦う事になりますね……」

バイソン「さぁ、どうするっ!? 勿論、自分自身でも相手には勝てないってわかっているっ! だが、仲間が期待してくれているんだ! どうやって、相手と戦う? ヤムチャ君?」

ヤムチャ「……えっ? 俺の話になるんすか?」

619: 2014/11/30(日)22:41:41 ID:0cR
バイソン「それが、答えだよ」

ヤムチャ「え~っと……どうしたら、いいですかねぇ……?」

バイソン「仲間がピンチで……残っている人間は自分しかいない……そんな状況で、みみっちい攻撃は人は仕掛けねぇだろう……?」

ヤムチャ「そうっすよね……必氏になんとかしようと思いますよね……」

バイソン「例え、相手が格上でダメージの効かない奴だって……なんとか、ダメージを与えてやろうって、必氏に考えるだろう……」

ヤムチャ「今、その事を考えているんですけどねぇ……」

バイソン「俺の場合は、それの答えが反則攻撃って、事だよ……なりふり構わずに、反則攻撃を使って使って……シャドルーの力になる為になんとかするよ」

ヤムチャ「……ふむふむ」

バイソン「だから、基本的にリュウやケンと戦う時のバイソン君は、物凄く必氏な訳なんだ」

621: 2014/11/30(日)22:52:09 ID:0cR
バイソン「ヤムチャ君の場合……反則攻撃をする訳にはいかねぇが……」

ヤムチャ「……そうっすよね」

バイソン「やっぱり、俺と同じ様な状況になったら……空手軍団のナンバースリーである、ヤムチャ君はチームの為に必氏で相手にダメージを与えようとするだろう……?」

ヤムチャ「そうっすね……答えは出てませんが……まぁ、必氏にやろうとはしますね……」

バイソン「そういう意思を感じた時……相手はダメージを受ける訳だな! 相手が、どのくらいダメージを与えようとしているか……なんて、受ける方は考えているからな……」

ヤムチャ「状況状況に合った、やられ方をしてくれますもんねぇ……」

バイソン「だが、これはお客さんにも感じさせないといけねぇぞ……?」

ヤムチャ「えっ、お客さんにも……?」

バイソン「あぁ、お客さんだって『まぁ、バイソンじゃリュウには勝てないだろうな』なんて事は、当然思っているだろうからな……」

ヤムチャ「俺も、同じ様に思われてる、と……」

バイソン「何処かで『あれ? 今日のバイソン、ちょっと違う? これ、リュウに勝っちゃうんじゃね?』なんて事を思わせるような戦い方をしなければならねぇ……」

ヤムチャ「うわぁ……難易度高ぇなぁ……」

622: 2014/11/30(日)23:04:13 ID:0cR
バイソン「まぁ、実際……俺がリュウに勝つなんて事はねぇけどね……一撃、大技喰らわせるのが、いい所だよ……」

ヤムチャ「……ふむふむ」

バイソン「まぁ、でも……リュウに一撃喰らわしたいなら、そういう意識でやってるね……何か特別なバイソンで戦ってやろうって」

ヤムチャ「なる程……特別な戦い方か……」

バイソン「ノーガード戦法でも……スピードで撹乱するでも……戦い方は、いくらでもあるんだ……」

ヤムチャ「……ふむ」

バイソン「そういった時……ベビーで空手軍団の三番手のヤムチャ君だったら……どんな戦い方をするのが、一番格好いいか……一番『今日のヤムチャは違うぞ』ってお客さんに思ってもらえるような戦い方か……」

ヤムチャ「正義の味方らしい戦い方に……いつもとは違うとは思われるような戦い方……まだ、答え見つかってねぇのに、また新しい戦い方の課題が出てきたきやがったよ……」

プーアル「ヤムチャ様、文句ばかり言わない! ヤムチャ様はまだ新入りなんですから!」

ヤムチャ「……まぁ、そうだけどさ」

バイソン「……まぁ、それが答えだね。俺の場合はなりふり構わず、反則攻撃使ってでも、状況を変える為に動くよ」

ヤムチャ「……なる程」

624: 2014/11/30(日)23:16:36 ID:0cR
サガット「……ケンが最初に、俺と戦った時の事を覚えているかな?」

ヤムチャ「え~っと……蹴りの攻防でしたよね……?」

サガット「あぁ、そうだ。俺とケンとの蹴りの攻防だったが……ケンは俺の攻撃を避け……そして、俺はケンの攻撃を喰らっていただろう……?」

ヤムチャ「あ~、はいはい。そんな感じでした」

サガット「あれは、きっと俺と真正面から蹴りの打ち合いをしたら……格上の俺の方が、ダメージ量が多くて自分が先に倒れる事になると考えたケンが、工夫してくれたんだろう」

ヤムチャ「あ~、なる程……」

サガット「ケンはここで自分が有利になって、俺にダメージを与える時間を作りたいんだろうな……なんて、感じたから、俺はケンに避けてもらう為に……ワザと大振りで打ったという訳だ……」

ヤムチャ「あ~、やっぱりケンさんも考えてやってるんだなぁ……」

サガット「難しく考えすぎるのも、良くない事じゃないかな? 蹴りでも、タックルでも……とにかく、何か工夫してみる事が大切だな」

ヤムチャ「そうっすね。サガットさんや、バイソンさんだったら……わかってくれると思いますしね……」

サガット「勿論、その工夫をお客さんに伝える為の努力は怠るなよ? 自分が今、お客さんの目にどう映っているか……それを考える事が、何よりも重要だ」

ヤムチャ「うっす!」

625: 2014/11/30(日)23:29:59 ID:0cR
バルログ「でも、今日のケン君……凄く頑張ってましたねぇ……」

サガット「……そうだな。序盤の攻防は殆どあいつに作ってもらったようなもんだ」

バイソン「私も、何かサブミッション、あった方がいいですかねぇ……あぁいった時の場合に……」

サガット「バルログは、飛び技や丸め込みが中心だからな……ロメロとかは、使えないのか……?」

バルログ「ロメロ・スペシャルは使えますけど……やっぱり、決め技にもなる、サブミッションっていいじゃないですか……? サガットのSTFみたいに……」

サガット「……そういう時は、基礎に戻って、腕ひしぎ逆十字だ」

バルログ「今さら……腕ひしぎ逆十字って……」

サガット「ケンの飛びつき式みたいに、何か応用は効かんのか……? ルチャ系の腕ひしぎ……俺は見てみたいぞ……?」

バルログ「う~ん……それはそれで、説得力を作るのがまた、難しくありません……?」


ヤムチャ「……」

プーアル「……ヤムチャ様、大丈夫ですか? お話、ついていけてます?」

ヤムチャ「あっ、ゴメン……ちょっとついていけてねぇ……プーアル、ビール注いでくれよ?」

626: 2014/11/30(日)23:40:36 ID:0cR
バイソン「おい、このサブミッションマニア! ヤムチャ君が、話についていけてねぇぞ! 男だったら、ガツンと拳一つで戦いやがれ!」

サガット「……おっと、ヤムチャ君、すまなかったな?」

ヤムチャ「あっ、いえ……大丈夫っすよ……それより……」

サガット「……どうした?」

ヤムチャ「ケンさんが、序盤の攻防を作っていてくれたって……どういう事ですかね……?」

サガット「あぁ、今日の試合……ケンは試合を引き延ばす為に……いつもより、サブミッションを多めに仕掛けてくれたからな……」

ヤムチャ「……サブミッション?」

サガット「関節技の事だな。俺も、ヤムチャ君に仕掛けただろう……? 足を締め付ける技と、顔と腰と足を同時に締め付ける技だ」

ヤムチャ「あ~、あの痛い技ですね! ロープに逃げたら、やめてもらえる技の事をサブミッションって言うんですね!」

サガット「そうだ。相手をギブアップさせる為に使う技だが……ケンは上手く使ってくれたよ……」

ヤムチャ「……上手く使う?」

633: 2014/12/01(月)22:25:54 ID:Wyo
サガット「まぁ、関節技ってのは……拳で殴るのと同じように、プロレスで使うにはある意味、難しかったりする技なんだ……」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「腕を折る……までとはいかなくても、本気で決まれば一瞬で靭帯損傷などの、大怪我にも繋がりかねん……」

ヤムチャ「確かに……そもそも関節技ってのは、そういう事をして、相手を戦闘不能に持っていくもんですしね……」

サガット「総合格闘技なんかは、それをする為に、真剣勝負で相手の腕を取ろうと体制を入れ替え……自分に少しでも有利なポジションを取って、相手の関節を決めようとする為の攻防をしている……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「ファンからしたら、そこが面白い。大の男が、相手を戦闘不能にする為に……必氏に、関節を取ろうと狙っている男達の攻防なんだからな」

ヤムチャ「そうっすね。やっぱり、緊張感のある試合してますよね」

サガット「だが、その攻防は、プロレス向きの攻防では……ないかもしれないな……」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「俺達は、派手な技を見せる為に相手を高々と抱えて投げたり……コーナーポストから跳んでの攻撃をしたりしている……」

ヤムチャ「……確かに」

サガット「そんな中、グラウンドで大の男達が、手や足を決めようとする為にモゾモゾモゾモゾと動いて……あまり、プロレス的な動きでは、ないな……」

ヤムチャ「……そうっすね。地味に見えちゃうかもしれませんね」

サガット「真剣勝負の総合格闘技には、総合格闘技の面白さがある……勝敗が決まっているプロレスにはプロレスの面白さがあるんだ。それを知ってる上で、それでもプロレスの方が好きと言ってくれるお客さんだっている」

ヤムチャ「……ふむ」

634: 2014/12/01(月)22:38:45 ID:Wyo
サガット「そもそも俺達は、関節技を仕掛けたいから、腕を取らせてくれ……
なんて事を思えば、相手は腕を出してくれる……一瞬で相手を戦闘不能に、持っていく事の出来る技を、簡単にかけれる事が出来るんだ……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「だったら、そこで……簡単に、腕を取らせてもらえました……そして、その取らせてもらった腕で、相手を戦闘不能に持ち込みました……なんて、攻防を作るのは勿体無いだろう……?」

ヤムチャ「確かに……例え、相手を一瞬で決めれるような技でも……もっと、派手に……もっとお客さんが盛り上がるような攻防があった方がいいですね……」

サガット「プロレスの関節技ってのは、どちらかと言うと、相手の身体に部分的ダメージを与えるような使い方をしているな……」

ヤムチャ「ほう……部分的ダメージ……?」

サガット「あぁ、俺が今日仕掛けた、ヤムチャ君への技だが……アンクルロック……足を仕掛けた技あるだろう……?」

ヤムチャ「はいはい、チョップの攻防の後、してくれましたねぇ……」

サガット「その、アンクルロックと……俺が、仕掛けたボディスラム……それのダメージ量を比較してみよう……ダメージ量というのも、可笑しな話だがな……」

ヤムチャ「まぁ、その攻撃を受けて……俺がどのくらい、ダメージを受けたつもりで、その後行動してたか……って、事っすよね……?」

サガット「まぁ、そんな感じだな」

635: 2014/12/01(月)22:57:54 ID:Wyo
サガット「ヤムチャ君の体力は100だ。俺のチョップ一発で2ダメージだ」

ヤムチャ「……ふむ」

バイソン「その場合、俺はサガットより格下だから、パンチ一発で1ダメージになるな!」

ヤムチャ「……ほうほう」

サガット「まぁ、実際ここまで計算して試合をしろって言ってる訳ではないけどな……ゲームじゃないんだ……お客さんだって、ヤムチャ君がどれくらいスタミナが残ってるなんかなんて、大雑把にしかわからないよ……」

ヤムチャ「まぁ、そうっすよね……」

サガット「だが、どれくらいダメージを受けたか……ぐらいは、わかるだろう……? この場合、俺のボディスラムのダメージを数字にすると、いくつだ……?」

ヤムチャ「う~ん……まぁ、でも10ぐらいなんじゃないですかねぇ……? 数字すると難しいっすけど……まぁ、そのくらいのダメージを受けたつもりで、行動はしてましたよ……」

サガット「まぁ、それくらいが妥当じゃないかな……? チョップより、派手な見栄えの技なんだから……当然、ダメージ量も多い……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「投げ技や打撃攻撃の場合だったら、ある程度、強い技……弱い技……それをお客さんに伝える事が出来るだろう」

ヤムチャ「派手な技程、強くなる……俺の狼牙風風拳は、派手だから必殺技ですもんね……」

636: 2014/12/01(月)23:15:38 ID:Wyo
サガット「では、俺のアンクルロック……あれは、どれくらいのダメージだ?」

ヤムチャ「足にダメージ与える技ですよね?」

サガット「そうだ。チョップ一発で、1……そして、ボディスラムで10……その場合、アンクルロックのダメージを数字にしてみると、どれくらいになる?」

ヤムチャ「難しいなぁ……10秒で1ダメージぐらいなのかなぁ……? でも、それだったら、1分で6ダメージになるから、それくらいがいいのかなぁ……?」

サガット「おっと、意地悪な問題を出したつもりだったが……案外、いい線をついてきたな……」

ヤムチャ「あっ、そういう事で、ケンさんが関節技を多めに仕掛けてたんですね!? 試合時間を引き延ばす為に!」

サガット「まぁ、そういう事になるな……ケンはそうやって、俺にじわりじわりとダメージを与えるような攻撃方法を選び……試合時間を引き延ばしたって訳だ……」

ヤムチャ「なる程ね……関節技ってのは、そういう事か……」

サガット「まぁ、だが……投げ技と違い……技を繰り出したその場で、相手ダメージを与える攻撃ではない事は分かってくれたかな?」

ヤムチャ「はい、関節技は……じわりじわりと相手にダメージ与える技……って、事っすね……?」

637: 2014/12/01(月)23:31:08 ID:Wyo
サガット「使い方はそれだけではない……この時、ポイントになるのは、『相手の何処にダメージを与えているか』だ……」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「例えば、俺がアンクルロックをヤムチャ君に仕掛けた……足にダメージを与える技だ……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「最初に、お客さんは……サガットはじわりじわりと、ヤムチャ君の体力を奪いにいったな……と、思う……」

ヤムチャ「関節技ってのは、そういう使い方ですもんね」

サガット「そのまま、ずっとヤムチャ君に技をかけ続けると……お客さんの考えも変わってくる……」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「サガットは、ヤムチャ君の足にずっと攻撃をしている……とな?」

ヤムチャ「足に、ダメージ与える技ですもんね」

サガット「そのまま、さらに続けると……ヤムチャ君の足のダメージ、大丈夫かな……? 関節技をずっと喰らって、危ないんじゃないかな……? なんて、思われるだろう」

ヤムチャ「そうっすね。長時間、足にダメージを受け続けてますもんね」

サガット「……そして最終的には」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「いつまで、アンクルロックを仕掛けているんだよ! 違う技をしろ! ……なんて、野次が飛んでくる」

ヤムチャ「……うっ!」

サガット「何事も、程々に……引き際も肝心だ……」

ヤムチャ「……大丈夫っす。ケンさんにも言われたから、そこはわかってるっす」

638: 2014/12/01(月)23:46:14 ID:Wyo
サガット「まぁ、でも……ヤムチャ君の足のダメージ、大丈夫かな……? 関節技を受け続けて、危ないんじゃないかな……? のタイミングで技を、上手く解けたしよう」

ヤムチャ「はい」

サガット「『足にダメージを与え続けていた』という印象をお客さんに残す事が出来るだろう?」

ヤムチャ「ほうほう、それが……部分的ダメージと……」

サガット「腕に仕掛ける技なら、腕に……腰に仕掛ける技なら腰に……相手の身体のピンポイントに、ダメージを蓄積させる事が出来る……」

ヤムチャ「……ふむふむ」

サガット「例えば、ヤムチャ君が一対一で、俺と戦ったとしよう……ナンバーワンと、ナンバースリーの戦いだ……」

ヤムチャ「格上のサガットさん相手にですね……」

サガット「先ず、ヤムチャ君が、俺の足に関節技を仕掛ける……お客さんは、ヤムチャ君はヤムチャ君は足にダメージを与えにいったな……と、思う……」

ヤムチャ「……ふむふむ」

サガット「俺に反撃され……ダメージ受けてしまったが、再びヤムチャに反撃チャンスが来た……」

ヤムチャ「……そこで、もう一度関節技を仕掛けるんすか?」

サガット「いや、ここでは仕掛けない方がいいな……蹴りにしてみようか……? また、同じ関節技かよ! なんて、野次は聞きたくないだろ?」

ヤムチャ「あっ、聞きたくないっす……」

639: 2014/12/02(火)00:02:04 ID:RG8
サガット「蹴りを打ち込む場所は……俺の足にだ……関節技を受け続けて、ダメージ受けている、俺の足にだな……」

ヤムチャ「そうっすね、次は違った攻め方をした方がいいっすね」

サガット「お客さんは、今日のヤムチャ君はサガットの足を重点的に攻めているな……と、思うだろうな……」

ヤムチャ「関節技で……足を狙っている事を印象付けて……違った攻撃ですけど……同じ部分を狙っていますもんね……」

サガット「試合も中盤に差し掛かり……ある程度、違う技を出した後……再び、盛り上がり所を見て、俺の足に関節攻撃を仕掛ける……」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「すると、お客さんは……ヤムチャ君が試合を決めにいったな……サガットの足に狙いを定めているな……と、思い始める……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「……いつもとは、違う戦い方だな」

ヤムチャ「……おっ?」

サガット「さぁ、試合はいよいよクライマックス……この辺りで、ようやく長々と仕掛け続けた関節技が生きてくる」

641: 2014/12/02(火)00:19:50 ID:RG8
サガット「そのまま、足に攻撃を仕掛けて……決めに行ってもいい……」

ヤムチャ「いつもの試合じゃなく、足狙いの試合にしてますからね」

サガット「狼牙風風拳で決めたいのなら……俺の足にでも打ち込めばいい」

ヤムチャ「足にダメージを与えられ続けている、サガットさんの足に打ち込めば……」

サガット「……当然、俺は激しくフラつく。仮に俺が有利な展開でも、一発逆転の大チャンスが生まれるだろうな」

ヤムチャ「……なる程」

サガット「足にダメージを受け続けたせいで、足が動かなくなり……普段は、仕掛けるべき所で、仕掛ける事の出来なかったサガット……なんて状況も生まれるかも知らんな……」

ヤムチャ「……ほうほう」

サガット「そういった、相手の一部分を重点的に狙って……試合の終盤に大きく動かす為の布石作っておく……プロレスでは、こういった使い方もある」

ヤムチャ「……なる程」

サガット「勿論、関節技とは優れた技なんだ。派手な投げ技と同じように、お客さんを納得させれる様な、フィニッシュホールドに出来るのなら……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「総合格闘技などと同じ様に相手を破壊する技として使い……フィニッシュホールドにしてもいいという事だな」

647: 2014/12/02(火)22:16:21 ID:RG8
ヤムチャ「俺も、何か関節技使えた方がいいのかもなぁ……サガットさん、何か教えてくれません?」

サガット「おっと、新しい技を覚えたいのか?」

プーアル「……ヤムチャ様、大丈夫なんですか? 今だって、ボディスラムとバックドロップはまともに使えてないじゃないですか?」

ヤムチャ「……いやいやいや」

プーアル「まだ、投げ技の課題をクリアしてないのに……次の技覚えたいなんて、言っちゃって……ヤムチャ様は、そんなにポテンシャル高くないんですよ? わかってるんですか?」

ヤムチャ「まぁまぁ、ボディスラムとバックドロップはさぁ……継続して、もっと見栄えが良くなるように頑張るよ……でもさぁ……?」

サガット「……ふむ」

ヤムチャ「今日の試合の後、ケンさんにも俺が使える技の数が少ないんじゃないか? って言われたんですよね?」

サガット「……ほう」

ヤムチャ「実際、俺も感じました……トラースキックを出し惜しみして……まぁ、その結果がアレですよ……勉強にはなりましたけどね……?」

サガット「確かに、バックドロップの連発……あれは頂けなかったな……」

ヤムチャ「……でしょ?」

648: 2014/12/02(火)22:30:53 ID:RG8
ヤムチャ「具体的に言うと、トラースキックより弱いけど……俺の見栄えの悪いボディスラムとバックドロップより、ダメージが多そうに見える……そんな技があれば便利だな、と思いました」

サガット「なる程……今回は、はっきりとした目的を持っての、希望という事か……」

プーアル「……目的?」

サガット「あぁ、トラースキックを教えたのは……試合終盤で繰り出す狼牙風風拳の為に繋ぐ技として、俺達は教えたが……」

プーアル「そうですね」

サガット「そのトラースキックに繋ぐ為に……チョップや蹴りより強い技があればいい……そういった目的が、今回ははっきりとあるわけだ……」

プーアル「……なる程」

サガット「技を覚えてから、その技を生かす為への戦い方を覚えるのではなく……自分の戦い方のバリエーションを増やす為に……技を覚えると、いう事だな……」

ヤムチャ「勿論、ボディスラムとバックドロップは、継続して見栄えが良くなる様、努力はします」

サガット「なる程ね……試合中に見つけた課題とは、そういう事か……」

ヤムチャ「はい、何かいい技、ありませんかねぇ……?」


プーアル「はぁ……ヤムチャ様も、結構考えてやってるんですねぇ……?」

ヤムチャ「……そうだろ、プーアル? 皆が色々と考えてやってるんだから、俺だってちょっとは考えるよ」

649: 2014/12/02(火)22:45:32 ID:RG8
サガット「まぁ、丁度いいだろう……実は、俺も今日の試合で……ヤムチャ君に新技を教えてやろうかと、思っていたんだ……」

ヤムチャ「えっ、マジっすか!?」

サガット「まぁ、関節技……ではなく、打撃攻撃の予定だったが……いい機会だし、何か関節技の新技も教えてやろう……」

プーアル「ヤムチャ様! これで、技が4つから6つになりますね!」

ヤムチャ「いやいや、ケンさんとのダブルトラースキックがあるから、7つだ……いい感じじゃねぇか……」

サガット「幸い、明日は試合がない、オフ日だ……道場にでも篭って……一日掛けて、新技を覚えてもらうとするか……それとも、何か予定があったりするかい?」


プーアル「大丈夫です! ヤムチャ様は……」

ヤムチャ「……プーアル、やめよう。それ以上、言うのはやめよう。 俺、明日頑張って、技覚えるからさぁ?」


サガット「よし、だったら……まぁ、道場で特訓だな……次の新技は、しっかりと覚えてくれよ?」

ヤムチャ「うっす!」

652: 2014/12/02(火)22:57:11 ID:RG8
ダン「おぉ~い、反省会はまだ続いてるのか? それとも、もう終わったのか?」

サガット「そうですね、だいたいは終わった感じです……」

ヤムチャ「ダンさん、さくらちゃん、放っておいて大丈夫なんですか……?」

ダン「あぁ、さくらは酔い潰れて……寝ちまったよ……仕方がねぇから、俺が送っていく事にするよ……」

サガット「さくらが、潰れるまで飲むなんて……相当、ショックだったんだろうな……大丈夫なんですかね……?」

ダン「まぁ、明日はオフだから、気晴らしにジミー連れて……パーっと遊びに行く事にするよ……俺達は荷物持ち係だけどな……」

サガット「……御苦労様です」

ダン「選手のメンタル管理も……大切な事だからな……なんだかんだ言って……やっぱり、さくらは女の子なんだからよぉ……?」

サガット「そうですね……普通の女の子と同じ様に、ショッピングや恋を楽しみたい年頃なのかもしれませんね……」

ダン「おめぇら図太くて助かるよ! でも、まぁなんだかんだ言ってストレスも溜まってるだろ? どうだ、明日おめぇらも一緒に来るか!?」

サガット「……我々も?」

ダン「……荷物持ちに付き合ってくれよ。さくらの奴と、買い物行ったら、いつも大変なんだって! 両手がパンパン! パンパンだ!」

653: 2014/12/02(火)23:11:11 ID:RG8
サガット「……だそうだ。ヤムチャ君、どうする?」

ヤムチャ「……えっ?」

ダン「なんで、ヤムチャに聞くんだよ? なんで、ヤムチャが決定権持ってんだ!」

サガット「いやぁ……反省会の結果、明日は新技をヤムチャ君に教える事になりましてね……?」

ダン「おめぇらは、本当に頑張るな!? マジで脳ミソも筋肉なんじゃねぇのか!? 休日ぐらい、身体休めろや、氏んじまうぞ!?」

サガット「まぁ、影響が出ないように……軽めにはするつもりですが……」

バイソン「俺は、皆で楽しく遊ぶのもいいと思うぜ! 遊園地行こうぜ! それで、その後美味しいパフェ食べて……え~っと、その後は……」

バルログ「……バイソン、どうしてそんな乙女趣味なんですか」

サガット「まぁ、ダンさんの言う通り……皆で遊びに行くのもいいかもしれないな……」

ヤムチャ「えっ……? 新技は……?」

サガット「ヤムチャ君が、新技覚えたいなら、それでいい……だが、長く続けるには、技術だけではなく……心と身体のバランスも大切だろうな……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「いきなり、こんな世界に飛び込んで来て……なんだかんだで、ヤムチャ君もストレスは溜まってるんじゃないかな? それが、試合に影響を出してしまう事は、よくない事だからな……」

654: 2014/12/02(火)23:23:18 ID:RG8
ヤムチャ「……う~ん、まぁ今の所は大丈夫ですかね?」

サガット「……ほう」

ヤムチャ「今は、遊びよりも特訓……俺は、そういった事がしたいです」

サガット「……ふむ」

ヤムチャ「新しい技を覚えないで……試合で失敗する事の方が、よっぽどストレスになりそうですからね!」

サガット「わかった……じゃあ、ダンさん、我々はそういう事なんで……」

ダン「ちぇっ……何だよ、荷物持ちは俺とジミーだけかよ……」

ヤムチャ「また、機会があったら遊びに連れてって下さい! 皆楽しく遊びましょうよ!」

ダン「まぁ、確かに今のおめぇは遊んでるより……技の一つでも、覚えた方がいいかもな……」


プーアル「……ヤムチャ様は昔、それで失敗しましたからね」

ヤムチャ「……うるせぇ、プーアル! ほじくり返すんじゃねぇ!」


ダン「まぁ、でもよ……ヤムチャ……? 一つだけ言っておくぞ?」

ヤムチャ「……ん?」

655: 2014/12/02(火)23:34:25 ID:RG8
ダン「おめぇは、もうちょっと周りに甘えなさい!」

ヤムチャ「……ん?」

ダン「自分一人で……技打ってなんとかするんじゃなくて……仲間がいる事を忘れんな!」

ヤムチャ「……仲間」

ダン「リングにいる、サガットやバイソンは……敵であり、仲間だ……レフェリーの俺だって……中立の立場であり、仲間だ……」

ヤムチャ「……」

ダン「おめぇが、一人で抱え込まなくても……周りがなんとかしてくれるんだ……新技覚えて、一人で試合動かそうなんて……そんなデケェ事は考えるじゃねぇぞ?」

ヤムチャ「……うっす!」

ダン「よ~し! 酔っ払いのダンさんのアドバイスはこれにて終了ですっ! それでは、皆さん! 私は、先に失礼させて頂きます!」

ヤムチャ「あっ、はい……お疲れ様でした……」

サガット「……お疲れ様でした」


ダン「お~い……さくら、起きろ……タクシーそろそろ来るからよぉ……? ほれ、しっかりしろ……!」

さくら「う、う~ん……飲みすぎたっす……」


ヤムチャ「……大丈夫かね? さくらちゃん?」

プーアル「まぁ、ダンさんがしっかり送ってくれるんじゃないですかね?」

657: 2014/12/02(火)23:47:13 ID:RG8
ヤムチャ「一人で試合を動かすな、か……」

バイソン「……まぁ、確かに、今日のヤムチャ君にはそういう所があったかもね?」

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「俺との攻防の時……ヤムチャ君は、トラースキックを打つの遠慮してたでしょ?」

ヤムチャ「はい……それで、バックドロップ連発して、失敗してしまいました……」

バイソン「あの時、仮にヤムチャ君がトラースキックを打った……自分がトラースキックを打つ事によって、急激に試合展開を動かす事になったとしても……」

ヤムチャ「……ふむ」

バイソン「戦っている俺には、その動き始めた、試合展開を元に戻す為の術がいくつかあったと思う……」

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「場外に逃げて、時間を稼いだり……早い時間にヤムチャ君の打った、トラースキックを避ける……もしくは、ガードしちまう、とかな……?」

ヤムチャ「……なる程」

バイソン「ヤムチャ君を打ったら、俺に大ダメージを与えてしまう……って、所までだろう? ヤムチャ君が考えていたのは」

ヤムチャ「……確かに」

バイソン「もう一つ、踏み込んでくれたら、有り難かったかな? 大ダメージを受けたバイソンは、その後、どういった行動が出来るか……そして、その行動をさせる為には、その後自分はどういった、動きをするべきなのか……」

ヤムチャ「そこまで、考えねぇといけねぇのか……」

663: 2014/12/03(水)22:26:26 ID:mdu
バルログ「結構ねぇ、ヤムチャ君はその場しのぎ……みたいな行動だったように、思えるんですよ……」

ヤムチャ「……はぁ?」

バルログ「以前、私のボディスラムは……ムーンサルトプレスを掛ける為の繋ぎの技……と、言いましたよね?」

ヤムチャ「そう言ってましたね」

バルログ「ムーンサルトプレス掛ける為に、相手にどう動いてもらうか……その為にボディスラムを仕掛けているんですが、別にそこはボディスラムじゃなくても構いません」

ヤムチャ「……ほうほう」

バルログ「そこは、ロープに走ってからの攻撃でも構いませんし……状況によっては、蹴りやパンチでも構いませんでしょうね」

ヤムチャ「とにかく、相手をダウンさせる事さえ出来れば……ムーンサルトプレスは仕掛けられますもんね……」

バルログ「流石に、攻撃を仕掛けて……ボディスラムを仕掛けて……そして、ムーンサルトプレス……一つ一つの事を考えてたら、次に何行動したらいいか、考えが追いつきませんよ……」

ヤムチャ「確かに……俺はガードしてもおうと思った攻撃が、バイソンさんにガードされちまって……そこから後は、何をしたらいいかわからなくなった所がありますかもねぇ……」

バルログ「もっと、遅い時間にトラースキックを打ちたいんだったら……他にも、行動はあった様な気はしますね……」

ヤムチャ「……そこで、焦ってバックドロップにいったのがいけなかったのかな?」

バルログ「焦って投げ技に行く前に、何か一呼吸置くような行動はあったんじゃないですかねぇ? そういった行動をすれば……例えば、バイソンが投げようとしているヤムチャ君の攻撃を、踏ん張って堪えようとしたり……」

ヤムチャ「……ふむ」

バルログ「試合展開を急激に加速させない方法も、バイソンにはあったと思いますよ」

ヤムチャ「そういや、投げる事ばかり考えていて……堪えてもらうって方法がある事なんて、すっかり抜けてたわ、俺……」

664: 2014/12/03(水)22:43:09 ID:mdu
サガット「まぁまぁ、ヤムチャ君……そう、あまり落ち込むな。失敗は誰にでもある……俺も、今日の試合で失敗した部分もあるしな……」

ヤムチャ「サガットさんも、何か失敗したんですか? 何処です?」

サガット「詳しくは言わんが……まぁ、ケンが上手くフォローしてくれて、なんとかなったよ……」

ヤムチャ「え~っと……何処だろ? わかんねぇな……」

サガット「俺が、そこで行動を早まり……自分一人で何とかしようと考えたのなら……きっと、ケンの助け舟が間に合う事はなかっただろう……」

ヤムチャ「……はぁ」

サガット「ケンが俺の助け舟に気づかなかったら……俺は一人で失敗した状況を変える為に、行動し……また、ケンの助け舟を求める為の行動を取るだろう……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「そして、その助け舟を出す行動にまたケンが気づかなかったら……状況が悪化した状態で俺は一人で行動する事になるな」

ヤムチャ「……うわぁ、怖ぇなぁ」

サガット「……そんな事はない。これは、最悪のパターンだ。助け舟に求めているのなら、必ず気づくよ。俺達はプロなんだ」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「そういった事が、積み重なって大きくなりすぎた時に……初めて失敗として、ブーイングが野次が飛んでくる……と、いうわけだ……」

ヤムチャ「……はい」

サガット「今日みたいに一人で展開を加速させずに……困ったなら困ったで、俺達に助け舟を出せばいいんだ……パンチを打つのも勇気だが……パンチを打たない事の勇気だってある」

ヤムチャ「……なる程」

サガット「……そういった事をダンさんも言いたかったんじゃないかな? まぁ、ヤムチャ君自身もわかっているであろう事を、何度も言う事になって悪いな」

ヤムチャ「いやいや、大丈夫っす! 勉強になってます!」

665: 2014/12/03(水)23:00:16 ID:mdu
サガット「まぁ、だが……確かに、そもそもの原因は、ヤムチャ君の技の少なさにあったのかもしれん……」

ヤムチャ「……はい」

サガット「少し、様子を見る為だけの技があったり……ヤムチャ君の言う通り、トラースキックより、少し弱い技があってもよかった……とは、思う……」

ヤムチャ「急に試合時間を10分伸ばせって言われて……打ち合わせがなくなりましたからねぇ……」

サガット「立ち回りだけで何とかする事を強要してしまったな……本当に、申し訳ないよ……」

ヤムチャ「いやいや……! 別に、怒ったり文句垂れたりしてる訳じゃないんですけどね……!?」

サガット「そう言ってくれると助かるよ……まぁ、でもその為にも、明日は頑張って貰うぞ?」

ヤムチャ「うっす! お願いします!」

サガット「きっと、ヤムチャ君の立ち回りのパターンも増えるし……バルログの言っている、この技に繋げようという、目標地点も増える……」

ヤムチャ「そうっすね。お願いします!」

サガット「勿論……引き続き、ボディスラムとバックドロップも見栄えが良くなるように努力するんだぞ?」

ヤムチャ「投げ技……難しいけど、プロレスの醍醐味ですもんね……」

サガット「まぁ、今日の反省会はこんなものかな……? とりあえず、明日道場に集合だ! バルログ、バイソン、お前達も付き合ってくれ」


バルログ「わかりました」

バイソン「よっしゃっ! 折角だから、付き合ってやるか! 感謝しろよ、ヤムチャ君?」

ヤムチャ「本当……いつも、ありがとうございますね」

666: 2014/12/03(水)23:08:52 ID:mdu
ーーー


ザンギエフ「……ヤムチャの事だが」

ベガ「指導はサガット達に任せています。まぁ、サガットなら立派に育ててくれるでしょう」

ザンギエフ「まぁ、まだ四試合だからな……仕方がないと言えば、仕方がないのだが……」

ベガ「四試合目にしては、よくやっていると思います。なんとか、対応しようとしていましたね」

ザンギエフ「確かに、春麗の試合のせいで……無茶を要求してしまったのは、一理ある……」

ベガ「……はい」

ザンギエフ「だが、あんなブーイングの飛び交う様な試合をしてもらっている様では困る……」

ベガ「……サガット達が上手くフォローしていましたが。まぁ、また起きても困りますしね」

ザンギエフ「とても、四試合目とは思えん程の動きをしているのだがな……やはり、無茶を要求しすぎているのかな……? ベガ……お前は、どう思う……?」

ベガ「……」

667: 2014/12/03(水)23:20:00 ID:mdu
ベガ「……シングル戦をさせてみるというのは、どうでしょう?」

ザンギエフ「……ふむ」

ベガ「自分一人での戦いなら……それだけ、甘える事の出来る人間の数が減ります……」

ザンギエフ「ヤムチャに……シングル戦か……」

ベガ「プロレス的な動き……振る舞いはそこそこ出来ている様に思えます……後は、それをどうすれば生かせるかの術を覚えるだけでしょう……」

ザンギエフ「確かに……いつまでも、サガットやリュウにおんぶに抱っこをさせてる訳にもいかんからな……」

ベガ「入場曲なら、私が手配しますが……どうされますか……?」

ザンギエフ「シングルか……少し、早い気もするが……どうするかね……?」

ベガ「今の状況で、続けると……その内、リュウの不満が爆発しますよ……?」

ザンギエフ「リュウは相当、俺の事を嫌っているからなぁ……まぁ、現場監督とはそういう物なんだろうけどね……」

669: 2014/12/03(水)23:29:22 ID:mdu
翌日ーー


ヤムチャ「う~っす! おはようございま~す!」

プーアル「皆さん、今日もヤムチャ様の事、よろしくお願いしますね!」


サガット「おっ、ヤムチャ君来たか……? バイソンとバルログは、もう準備出来ているぞ?」

バルログ「よっ……あっ、ヤムチャ君……んっ……おはようございます……」ググッ

バイソン「フンっ……! ヤムチャ君、おはようっ……! フンっ……フンっ……!」グイグイ


ヤムチャ「……皆さん、いつも思いますけど、そんな見た目しているのに身体柔らかいですよね?」

サガット「柔軟な身体をしていないと、大怪我にも繋がるからな……さぁ、ヤムチャ君も、先ずはストレッチからだ……」

ヤムチャ「う~っす、今日はよろしくお願いしま~す」

670: 2014/12/03(水)23:40:42 ID:mdu
ーーー


ヤムチャ「よしっ、準備完了って所だな! さぁ、サガットさん、新技教えて下さいよ!」

サガット「うむ、先ずは関節技から、教えるとしようか……」

ヤムチャ「よしよし……相手の何処痛めつける技ですか? 腕ですか、それとも足ですか?」

サガット「今回、ヤムチャ君に教えるのは、相手の腰にダメージを与える技……コブラツイストだ」

ヤムチャ「……コブラツイスト?」

サガット「ほら、試合中に、見たこともあるだろう? 俺がリュウに仕掛けて……ヤムチャ君が、カットして助け出した、あの技だよ……?」

ヤムチャ「あ~、はいはい! あの後ろから巻きついて……なんか、やってましたね!?」

サガット「色々と迷ったんだがな……まぁ、応用が効きそうなこの技にするよ……」

ヤムチャ「あの~? 言っちゃあ、なんですけど……あの技って、結構地味だったような気がするんですけど……」

サガット「……まぁ、地味だな。この技も、どちらかと言うと、基礎技だからな」

ヤムチャ「まぁ~た、基礎っすか!?」

672: 2014/12/04(木)00:02:24 ID:lao
サガット「まぁ、待て、ヤムチャ君……」

ヤムチャ「……ん?」

サガット「派手な技は、打撃攻撃の方でやってもらうさ……ヤムチャ君は、どちらかと言うと、そっちの方が向いていそうだしな……」

ヤムチャ「あっ、確かに……だって俺、トラースキックは一発でモノにしたもんなぁ……そっちの方が向いてそうですね……」

プーアル「ヤムチャ様、調子に乗らない!」

サガット「と言うか……そもそも、関節技というのは、全てが地味だ」

ヤムチャ「……ん?」

サガット「昨日、言っただろう……? 大の男が、グラウンドでモゾモゾモゾモゾと蠢いているんだ? そんな戦い……プロレス向きではないだろう……?」

ヤムチャ「あ~、確かに言ってましたね」

サガット「派手な関節技を見せたいのなら……バルログみたいな飛び回るようなテクニック合わせて使ったり……」

ヤムチャ「あ~、バルログさんって、いつも飛び回って、ワケのわかんない動きしてますよね……?」

バルログ「『ルチャ・リブレ』スペイン語でプロレスという意味です」

バイソン「スペイン語が出来るからって気取ってんじゃねぇぞ! 俺だって、英語ぐらい出来るんだぞ! 英語さえ、出来れば万国で通用するんだよぉ!」

バルログ「別に気取ってませんよ……まぁ、メキシコ流のプロレスですね。ロープワークを駆使したり……華やかな飛び技や、丸め込みなどが中心のプロレスです。そういった、ファイトスタイルの事を『ルチャ』と呼ぶんですね」

ヤムチャ「ふ~ん、バルログさん、スペイン語話せるんですね……? バイソンさんが英語出来るってのも、意外ですね……」

バルログ「いやいや、そこ触れる所じゃないですって……! 折角、私が『ルチャ・リブレ』の説明したのに……聞いて下さいよ!」

サガット「……ちなみに、俺はタイ語が出来るぞ? 俺だって、バルログやバイソンには負けてはいないさ」

バルログ「サガットも張り合わないで下さいよ! もう、言語の話はいいでしょう!」

674: 2014/12/04(木)00:05:33 ID:lao
今日はここまで

>>659
答えとして書けたかはわかんないけど
あぁいった状況を作らない為の方がよかったんじゃないかな? 後の祭りって言葉もあるしね

680: 2014/12/04(木)22:30:50 ID:lao
サガット「おっと、話が逸れたな。悪かった……もしくは……」

ヤムチャ「……もしくは?」

サガット「相手を一撃で、仕留める様な……まぁ、フィニッシュホールドとして使う事だな……」

ヤムチャ「総合格闘技の様な、相手を破壊する技として、使う……って、事ですね?」

サガット「あぁ。だが、ヤムチャ君の場合だったら、もう狼牙風風拳がある」

ヤムチャ「確かに、狼牙風風拳みたいにお客さんが反応してくれる関節技を覚えるとなると……グンとレベルが上がる様な気がしますね……」

サガット「だからこその……地味なコブラツイストを今回は、教えるという訳だ……」

ヤムチャ「ジワリジワリと相手を痛めつける技……そういう事ですね……?」

サガット「あぁ。ヤムチャ君の言っていた、トラースキックより弱そうに見えるが……見栄えの悪いボディスラムや、バックドロップより、ダメージがありそうに見える……そういった技にはぴったりじゃないかな?」

ヤムチャ「サガットさんも考えてくれたんですね? ありがとうございます!」

サガット「よし、さっそく技を覚えてもらうか! 今回はバイソンじゃなくて、ヤムチャ君自身に技かけて、それを身体で覚えてもらう」

ヤムチャ「うっす! よろしくお願いします!」

681: 2014/12/04(木)22:52:10 ID:lao
サガット「先ず、後ろから自分の足を……相手の足に掛け……ロックする……こんな感じだな……?」グイッ

ヤムチャ「ほうほう……足がロックされましたね……」

サガット「そして……相手の首を両腕で抱え込んで……相手の上体を逸らしていくのだが……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「この時、相手の片腕も同時に抱え込み……自分の背の方に押しやってしまおう……そうする事によって、相手の片腕の自由が効かなくなる……」

ヤムチャ「あっ、本当だ……まだ、左手は自由に動きますけど……俺の右手はサガットさんの背中で押しやられて、なぁ~んも出来ませんね……?」

サガット「そして……後は、上体を逸らす事によって……」ググッ

ヤムチャ「あだだだだっ……! 痛い痛い痛いっ……! サガットさん、痛いって……!」

サガット「……とまぁ、こうなる訳だ」

ヤムチャ「ギブっ……! ギブアップっ……! サガットさん、やめてっ……! やめて下さいっ……!」


バルログ「ヤムチャ君、ちょっとギブアップ早すぎですねぇ」

バイソン「まぁ、身を持って、身体の柔軟さの重要さをわかってもらわねぇとな! これも勉強だ!」

682: 2014/12/04(木)23:04:50 ID:lao
サガット「よっと……ヤムチャ君、わかってくれたかな……?」

ヤムチャ「いてて……わかりましたけど……何だ、この技っ!?」

サガット「……ん?」

ヤムチャ「腰を痛めつける技って言ってたじゃないですか!?」

サガット「あぁ、そうだ」

ヤムチャ「肩も痛ぇ! 背中も痛ぇ! 色んな部分が痛ぇよ、この野郎っ!」

サガット「ハハハ、まぁ、そういう技だ。反撃を防ぐ為に、右腕もロックしているからな。同時に肩にも多少のダメージはあるだろう」

ヤムチャ「多少ってもんじゃないでしょう……いってぇ、もっとストレッチやっておけばよかったかな……?」

サガット「まぁ、でも基本的には、腰を痛める技……として、お客さんの印象がある技だ」

ヤムチャ「……基本的?」

サガット「実際、肩や背中……そして、腰……そんなに複数の部分にダメージがあるだなんて……ヤムチャ君みたいに生で喰らわないとわからないだろう……?」

ヤムチャ「確かに……俺も、この前サガットさんがリュウさんにコレ仕掛けてる時は……こんな痛い技だなんて、思ってませんでしたよ……」

サガット「効率より、見た目の派手さだ……いくら、このコブラツイストが優れた技だとしても……やはり、見た目は地味だ……だからこそ、腰だけにダメージを与えるという印象なんだな……」

ヤムチャ「……なる程ねぇ」

683: 2014/12/04(木)23:19:23 ID:lao
サガット「まぁ実際、試合中にここまで本気で技を掛ける事はないだろうから、ヤムチャ君が仮に相手の肩や腰にダメージを与える為に使おうとなんて考えても……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「相手は、そういった反応はしてくれないだろうし……相手がヤムチャ君に仕掛けてきた場合も同じだ」

ヤムチャ「肩や背中のダメージは、ない物として考えろ……って事ですね?」

サガット「そうだ。ここまで本気のコブラツイストなんて……もう受ける事はないだろう……仮に、相手が本気のコブラツイストを仕掛けてきたら……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「それは、ヤムチャ君にギブアップしてくれとサインを送っているんだろうな。下手に我慢して、身体を壊す事になるのは大変だ。迷わず、ギブアップしろ」

ヤムチャ「もう、二度と喰らいたくないっすけどね……本気のコブラツイストなんて……」

サガット「まぁ、ヤムチャ君は仕掛ける側だ。掛け方はもう、覚えたかい? それとももう一度掛けてやろうか?」

ヤムチャ「い、いやいやっ……! もう、いいっす! もう、覚えました! もう、大丈夫っす!」

サガット「よしっ、じゃあ早速やってみようか……掛けるのは、俺よりバイソンの方が体格的にもいいだろう……バイソン、頼む!」


バイソン「……ちぇっ、また俺が喰らい役かよ」

バルログ「バイソンは身体も柔らかいし、受け身も上手い……高い技術を持っているからこそですよ! ヤムチャ君の新技の為です! 犠牲になって下さい!」

バイソン「犠牲って……まぁ、いいや! よっしゃ、ヤムチャ君、来いやっ!」

684: 2014/12/04(木)23:25:30 ID:lao
ヤムチャ「よしっ……! じゃあ、バイソンさん行きますよ……?」

バイソン「おっしゃ! 来いやっ!」

ヤムチャ「うるぁっ! 先ずは、相手の足を……ロック……!」グッ

バイソン「……ぬっ?」

ヤムチャ「そして……! 首を抱えると同時に……相手の腕もロックするっ……!」ググッ

バイソン「……何っ!?」

ヤムチャ「最後に……上体を伸ばして……うるあぁっ!」ググッ

バイソン「あだだだだ……! 痛いっ……! 痛ぇって……!」


サガット「……ふむ」


ヤムチャ「……って、感じでどうですかね?」

バイソン「うん、フォームはしっかりしてるね。いい感じだと思うよ?」

ヤムチャ「よっしゃっ! 関節技も一発クリアじゃねぇか! いい感じじゃねぇか!?」

695: 2014/12/05(金)00:38:54 ID:Nku
サガット「……う~む」

ヤムチャ「あれ……? サガットさん、その反応……俺、何か間違ってます……?」

サガット「うむ……フォームは100点なのだが……バルログ、どう思う……?」

バルログ「少し、モタついているように感じましたねぇ……」

ヤムチャ「……モタついている?」

サガット「あぁ、そもそも関節技というのは、相手を一撃にで決める為に……ジワリジワリとした攻防を進めながら仕掛けていく物だ……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「相手の腕を取る為に、少しでも有利なポジショニングを取り……自分の腕を取られないようにしながら、少しでも有利なポジショニングを取り……そして、一撃で仕留めるという訳だ……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「その攻防がプロレスでは、逆に退屈な攻防となってしまう事もあるからこそ……俺達は、スッと手や足を出し……あっさりと関節技を掛け、もしくは掛けられ……試合展開でお客さんを楽しませるという訳だろ?」

ヤムチャ「そうっすね」

サガット「今のヤムチャ君の、掛け方は少し、プロレス的な動きでは、遅い……技に入るのにモタついている様に感じたかな?」

ヤムチャ「……もっと手順良く仕掛けないといけないって事ですかねぇ?」

686: 2014/12/04(木)23:44:03 ID:lao
サガット「まぁ、ある程度の慣れもいるだろうが……まぁ、もっと素早く掛けてもらうのが理想だな……」

ヤムチャ「……今日、一日でマスター出来るかねぇ?」

サガット「素早く、仕掛けるのが理想ではあるが……別にゆっくり仕掛けるならゆっくり仕掛けるで構わないぞ? そこに格好いい戦い方があるのならな?」

ヤムチャ「……格好いい戦い方?」

サガット「あぁ、足をロックして、一発相手を殴って動きを止めて…そして、相手の首を取り、もう一度殴って動きを止める……」

ヤムチャ「……ふむふむ」

サガット「そして、最後にコブラツイストにいく……という訳だ……」

ヤムチャ「なる程……手順と手順の隙間に、他の行動を入れて……モタついていないように、感じさせると……」

サガット「……ヤムチャ君に教える関節技で、コブラツイストを選んだのは、理由がある」

ヤムチャ「……理由?」

サガット「あぁ、お客さんの反応を見てもらいたいんだ」

687: 2014/12/04(木)23:57:19 ID:lao
サガット「この技は、地面に寝そべって仕掛ける技ではなく……立ったまま仕掛けられる技だろう?」

ヤムチャ「そうっすね」

サガット「関節技は時間を掛けて、相手にダメージを与える技だ……つまり、関節技を仕掛けている間は、無理に動いて行動をしなくてもいい」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「自分が次に何を行動すればいいか……ここから、試合をどういう風に組み立てればいいか……そういった事を考える余裕も出来る」

ヤムチャ「あ~、確かに……そういう風にゆっくり考えれる時間は有難いかもしれませんね」

サガット「俺達とアイコンタクトを取ってもいい……なんだったら、俺がこの前した様に、技の威力を弱める事にもなるが、直接指示をしてくれたっていい」

ヤムチャ「この前は、汗を拭ってサインをくれましたもんね」

サガット「しかし、あまり考えすぎると、お客さんも飽きてしまう……いつまで、関節技を仕掛けているんだ? なんて思いを表情に出してしまうかもしれない」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「そういった、雰囲気……会場の空気……そういった物を確認するには、寝そべっているより、立っている方が見渡しやすいだろう?」

ヤムチャ「……なる程」

サガット「俺は、試合中、ただ行動をするのではなく……そういった事も考えてながら、ヤムチャ君に行動してもらいたかったから、スタンディングで仕掛けれる、コブラツイストを選んだという訳だ」

688: 2014/12/05(金)00:05:42 ID:Nku
サガット「だから、そのコブラツイストも……ただ、教えられた事をそのままするのではなくて……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「どうやったら、格好良く見せれるか……華やかに見せれるか……なんて事を考えながら、やってみてほしい」

ヤムチャ「そう言われると……やっぱり、もっと手順良く仕掛けれた方がいい気はしますね……」

サガット「今、ここにはお客さんはいないが……お客さんに見られていると、意識するだけで、動きはもっと良くなると思うぞ?」

ヤムチャ「……うっす!」

サガット「プロレス的には、モタついてると感じ動きではあったが……決して、悪い動きではなかった。打撃攻撃程ではないが、ヤムチャ君は関節技もセンスがある方じゃないかな?」

ヤムチャ「マジっすか!?」

サガット「恐らく、一日掛ければ、モノには出来るだろう。とにかく、数をこなそう」

ヤムチャ「うっす、わかりました! 格好いいコブラツイスト……やってやりますよ!」

700: 2014/12/05(金)22:11:18 ID:Nku
数時間後ーー


ヤムチャ「……うるぁっ!」ググッ

バイソン「……ぐっ!」


サガット「いいじゃないか……これなら、お客さんの目の前で仕掛けても大丈夫だろう……」


ヤムチャ「結構、コツを掴んで来ましたよ……足をフックすると同時に、首も一緒に抱え込んじまうんですよ……」

サガット「……ほう」

ヤムチャ「背筋を伸ばしてダメージを与えるのは……一呼吸置いてからでも、いいかもしれませんね……技を仕掛ける行動と、ダメージを与えている行動の区別がつきやすくなるかもしれません……」

サガット「入りはもう問題はなさそうだな……よし、合格だ!」

ヤムチャ「よしっ……! 少し、時間はかかっちまったけど、コブラツイストは何とかモノにしたな!」

サガット「応用を効かせれば、走り込んで来る相手にカウンターで仕掛ける……なんて仕掛ける方も出来るぞ?」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「カウンターで狙ってもいい……ヤムチャ君が相手をロープに振ってもいい……」

ヤムチャ「そういや、皆さん、いつもリング上を結構走り回ってますねぇ……」

サガット「リングを走り回る事で、お客さんには動きのある試合を見せる事が出来る……その為に、自分が走りながらの攻撃をしたり……走ってくる相手に、カウンター攻撃を当てる……と、いう訳だな……」

701: 2014/12/05(金)22:28:58 ID:Nku
バルログ「サガット……貴方が関節技が好きなのは、わかりますが……もう、コブラツイストはこの辺にしておいた方がいいんじゃないですかねぇ……?」

サガット「……ん?」

バルログ「ホラ、打撃攻撃の方も教えませんと……時間、なくなっちゃいますよ……?」

サガット「おっと、そうだったな……今日は、もう一つヤムチャ君に技を教えるんだった……」

ヤムチャ「おっ……? 今度は打撃攻撃の方ですね……?」

サガット「今回、ヤムチャ君に教える新技は、『延髄斬り』だ」

ヤムチャ「延髄斬り……?」

サガット「あぁ、漫画やアニメなどで、相手を気絶させる為に、背後から首筋に手刀を当てる……なんて、場面をよく見るだろう……? その場所が、人間の急所……延髄だ……」

バイソン「一流の頃し屋なんかは、そっと相手の背後に忍び寄り……そこに、銃弾を打ち込んだりするそうだぜ!」

ヤムチャ「……バイソンさん、おっかねぇ事知ってますね。まぁ、悟空とかは天下一武道会の予選では、相手に怪我させないように、そこに一撃当てて終わらす、なんて事をよくしてるもんなぁ」

サガット「その名の通り……延髄……相手の急所を狙って、攻撃を仕掛ける訳だな……」

ヤムチャ「そりゃ、強そうな攻撃ですね! なんたって、相手の急所を狙う訳なんですから!」

702: 2014/12/05(金)22:43:24 ID:Nku
サガット「勿論、本気で打ち込んではいけない……試合中に失神でもされたら、大変だ」

ヤムチャ「とにかく、相手の延髄に攻撃を仕掛けている……と、お客さんに感じさせる事が重要と……」

サガット「その通り……だから、そういう時は、出来るだけ派手なモーションで、相手の延髄を狙う訳だな……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「一番メジャーなのは、飛び蹴りだろう。ハイキック……足を高々と上げて、蹴りを打ち込むのではなく……自らジャンプしての飛び蹴りを仕掛けるんだ……」

ヤムチャ「……ほうほう」

サガット「相手の背後から……弧を描く様な軌道で、ジャンプして蹴りを延髄に当てろ……いっそ、自分の体勢が崩れる事になってもいい」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「蹴りを打った後……自分自身が上手く着地する事なんて、考えてなくてもいい……自らも倒れこむ勢いで、ジャンプしての無理矢理の蹴りを打つのが理想だ」

ヤムチャ「なる程……確かに、そんな無理矢理の蹴りなんて……プロレスじゃないと出来そうにありませんねぇ……」

703: 2014/12/05(金)22:52:12 ID:Nku
サガット「手本を見せようか……? それとも、今の説明だけで大丈夫かい?」

ヤムチャ「う~ん……とりあえず、やってみます! 打撃攻撃には、自信あるんで!」

プーアル「……また、調子に乗っちゃって」

ヤムチャ「まぁまぁ、プーアル見ててくれよ……? それじゃあ、バイソンさん、お願いしま~す」

バイソン「よしっ! じゃあ、やってやるか! 俺の身体の為にも……一発クリアしてくれよ……? タフネスバイソン様も、そう何発も持たねぇからなぁ……」

ヤムチャ「いやいや……プレッシャー与えるの止めて下さいよ……」

バルログ「大丈夫ですって! バイソンは、頑丈なんだから! ヤムチャ君、気にせずやっちゃって下さい!」

バイソン「酷ぇな、バルログの奴……まぁ、いいや! よしっ、ヤムチャ君、来いやぁ!」

ヤムチャ「よし、後ろ向きのバイソンさんの、延髄に狙いをつけて……行くぜっ……!」ググッ

704: 2014/12/05(金)22:58:23 ID:Nku
ヤムチャ「……うるあぁっ!」ガスッ

バイソン「……ぐわっ」バタッ

ヤムチャ「……う、うおっと」ドスッ


バルログ「おぉ! いいじゃないですか!」

プーアル「凄いっ! まさかの一発成功!」


ヤムチャ「プーアル、『まさかの』って何だよ……? 俺、打撃攻撃には、センスあるんだって……サガットさん、どうでしたか……?」

サガット「うむ。85点って所だな……」

ヤムチャ「あれ……? 満点じゃないんですか……? 何か、可笑しな所、ありましたか?」

サガット「無理矢理打ち込む蹴り……それは、プロレス的な動きで完璧だ……だが、その結果受け身を失敗してしまっただろう……?」

ヤムチャ「あ~、ちょっと、無理矢理すぎましたかねぇ……?」

705: 2014/12/05(金)23:06:54 ID:Nku
サガット「ヤムチャ君は、バイソンに深刻なダメージを与えないように、気を使っていたが……」

ヤムチャ「……はい」

サガット「その結果、自分の身体を傷つける事になってしまっては意味がない」

ヤムチャ「あっ……」

サガット「バイソンの身体を気遣うのと、同じように……自分の身体の事も気遣ってやろう……そうでないと、いつか何処かで相手ではなく、自分自身が壊れてしまう事になるぞ?」

ヤムチャ「す、すんません……」

サガット「いや、別に怒っている訳ではないぞ? ヤムチャ君は、プロレス初心者だから、あえて辛口の評価をしているまでだ」

ヤムチャ「うっす」

サガット「蹴り自体は完璧だった。受け身にさえ、気をつけてくれれば問題ないさ。次は100点を取れるだろう」

ヤムチャ「うっす、ありがとうございます!」

サガット「やはり、ヤムチャ君は打撃攻撃にはセンスがあるみたいだな……これだったら、俺の考えていた次のステップにも進めそうだろう……」

ヤムチャ「……ん? 何か、まだ考えててくれたんですか?」

706: 2014/12/05(金)23:17:50 ID:Nku
サガット「延髄斬りを教えようと思ったのは、この前の試合中の出来事が、キッカケでな……」

ヤムチャ「ん……? 何か、ありましたっけ……?」

サガット「ヤムチャ君打った蹴り足を、俺が捉え……ヤムチャ君が片脚立ちのままになった状況があっただろう……?」

ヤムチャ「あ~、確かに……最後の方にありましたね……」

サガット「あの時と同じように、今俺に足を渡してみてくれないか……? あの状況を再現してみよう」

ヤムチャ「うっす……じゃあ、はい、どうぞ……」ヒョイ

サガット「……よし、これでいいな」ガシッ

ヤムチャ「俺はサガットさんに、右足を掴まれて……左足、一本で片脚立ちをしている状況……前は、こんな体勢でしたよね……?」

サガット「……うむ」

ヤムチャ「で、ここで俺がラリアットを打ち込まれたんですよね……確か……?」

サガット「そうだ。よく覚えているじゃないか」

707: 2014/12/05(金)23:37:43 ID:Nku
サガット「さぁ、俺に片脚を掴まれているこの状況から……」

ヤムチャ「はい」

サガット「今、教えた延髄斬りを打つ事が出来るように思えないかい……?」

ヤムチャ「えっ……? この状況から……!?」

サガット「片脚でジャンプして……そのまま正面にいる、俺に飛び蹴りをするんだ……無理に延髄を狙わなくてもいい……当てるのは、首筋だっていい……」

ヤムチャ「う~ん……ちょっと、怖いなぁ……そもそも、この状況で打ったら、それこそ受け身取れませんよ?」

サガット「結構、プロレスでは定番のムーブだ……ヤムチャ君が蹴りを仕掛けると同時に、相手は捉えている足を離してくれる……」

ヤムチャ「……はい」

サガット「この状況で、ヤムチャ君が飛べば……必ず相手は、ヤムチャ君がしっかり受け身を取れるようにと、この捉えている足を離してくれるんだ。 相手がヤムチャ君の足を掴んだまま倒れ……受け身が取れずに骨折……なんて、状況はこない……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「無茶な体勢で……無茶な蹴りを打つ事にはなるが……これは、プロレスだ……ヤムチャ君が相手がを怪我させないように、技を打つのと同じように、相手もヤムチャ君を怪我させないように、技を受けてくれる……」

708: 2014/12/05(金)23:45:00 ID:Nku
ヤムチャ「じゃあ、とりあえず……やってみます……」

サガット「よし、じゃあ打ってみろ……」

ヤムチャ「……うっす」

サガット「今は、間違えても蹴りを綺麗に見せようだなんて、考えるなよ……? とにかく、受け身をとる事だけを考えろ……ヤムチャ君が飛べば、俺は足を離す……だがら、受け身の事だけ考えるんだ……」

ヤムチャ「じゃあ、タイミング……合わせてもらいたいんで……いち、にの、さん……で、行きますね……?」

サガット「よし、わかった……来いっ……!」

ヤムチャ「よし……いち……にの……さんっ……!」ググッ

サガット「……よしっ!」

ヤムチャ「……うるあぁっ!」ガスッ

サガット「……ぐおっ!」バタッ

ヤムチャ「う、うおっ……!」ドスッ

709: 2014/12/05(金)23:52:23 ID:Nku
ヤムチャ「ど、どうでしたかね……?」

サガット「バルログ、バイソン……それに、プーアル君……どう見えた……?」


バルログ「……ダメですね」

バイソン「これじゃあ、使えねぇな……」

プーアル「さっきの奴は、格好良かったのに……今回のは、いつものヤムチャ様って、感じがしました」


ヤムチャ「ねぇ、プーアル……? いつも、俺の事どんな目で見てるの……? ねぇねぇ?」


バルログ「目に見えて、受け身の事を考えてる蹴りでしたからね……迫力は、一切ありませんでしたね」

バイソン「ヤムチャ君は、サガット事信用しきれてねぇよ! もっと、ガツンと行け、ガツンと! いいタイミングで、サガットは足を離してくれるんだからよ!」


ヤムチャ「いやぁ……まぁ、今のは、自分でもビビってたのがわかりましたよ……次は、しっかりやります……」

710: 2014/12/06(土)00:09:14 ID:yYq
サガット「延髄斬りでも、この使い方を覚えれば……足を取られてピンチになってしまったヤムチャ君だが、そこから状況を切り返して、反撃のチャンスを生み出す……なんて攻防を作り出す事が出来るようになるな」

ヤムチャ「……なる程」

サガット「有利な状況から、相手にダメージを与える事使い方もあるし……ピンチの状況から、相手にダメージを与える事も出来る……」

ヤムチャ「この使い方は、ピンチな状況から、相手にダメージを与える使い方ですね……」

サガット「応用を効かせれば、試合の終盤でこの使い方をする為に……試合の前半に足を取られておいて、そこでは延髄斬りをせずに……意図的に相手の反撃を喰らう……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「試合の終盤に、また足を取られて反撃を喰らうのか……と、思ったお客さんを驚かせる目的もあるが……」

ヤムチャ「……あるが?」

サガット「試合の序盤に、意図的に自分でピンチの状況を作る事も出来るんだ」

ヤムチャ「……なる程」

サガット「自分のダメージ量を増やしておいた方が、試合展開をコントロールしやすい事だって、あるだろう……」

ヤムチャ「そうっすね」

サガット「相手の反撃を待つだけではなく、相手に反撃のキッカケを与えてやる事も大事だからな……前の試合で、ワザと大振りに蹴りを打ってくれたヤムチャ君なら、もうわかっているだろう?」

ヤムチャ「……うっす!」

サガット「延髄斬りを覚えれば……試合の序盤をコントロールする事にも応用が効きそうだと思ったんだな……前の試合で、ヤムチャ君の足を捉えた時にな?」

ヤムチャ「……なる程ねぇ」

712: 2014/12/06(土)00:19:31 ID:yYq
サガット「だが、それをする為には、この片脚を取られている状況からの延髄斬りを上手く使いこなせなければ、話にならん」

ヤムチャ「そうっすね、やっぱり、お客さんには派手に見せないといけませんもんね」

サガット「普通に打つ延髄斬りの方は、もう出来ているんだ。後は、片脚立ち状態から打つ延髄斬りだ……別にこっちは、無理に覚えなくても構わない……他に、戦い方を見出せるのなら、それでもいい……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「だが、どうせなら、折角技に延髄斬りがあるのなら、こういった使い方も覚えてもらいたいな」

ヤムチャ「いや、大丈夫っす……! 今日中にマスターしてみせますよ!」

サガット「……ほう」

ヤムチャ「戦い方のバリエーションを増やす事は、俺の課題ですし……それに、さっきのでもう感じは掴みました!」

サガット「……ふむ」

ヤムチャ「片脚立ちから繰り出す反撃技の延髄斬り……今日中にお客さんに見せれるような見栄えの技にしてみせますよ!」

サガット「……いいじゃないか、ヤムチャ君」

ヤムチャ「もう一丁、お願いします。サガットさん! 足、取って下さい!」

サガット「よし、きた……任せろ……」

717: 2014/12/06(土)22:09:44 ID:yYq
数時間ーー


ヤムチャ「…うるあぁっ!」ガスッ

サガット「……ぐっ!」ガクッ

ヤムチャ「よっと……!」


バイソン「いいんじゃねぇか!? 片脚立ちからの延髄斬りも、もうマスターしたんじゃねぇか!?」

バルログ「やはり、打撃攻撃にはセンスを感じますねぇ……これなら、お客さんの前で仕掛けても、問題なさそうです」


ヤムチャ「よし……! 延髄斬りも……前のよりかは時間はかかっちまったけど、なんとかマスターしたぜ!」

サガット「前が早すぎただけだ。今日一日で二つの技を覚えたんだ。それだけで、もう立派な事だ」

ヤムチャ「うっす! ありがとうございます!」

サガット「だが、重要なのは……試合中のどのタイミングで使うか、だ……そして、そのタイミングを作る為にも、試合の序盤から考えて行動せねばならんぞ?」

ヤムチャ「まぁ、技が増えた事で……自分の行動の選択肢も増えた様な気もしますよ。今度は、失敗しないで……格好いい試合にしてやります!」

サガット「頼もしい返事だ」

719: 2014/12/06(土)22:29:52 ID:yYq
サガット「よし……では、今日の練習はこれまでだ!」

ヤムチャ「あれ……? もう、終わりですか? 俺、まだまだ動けますよ?」

サガット「……ほう」

ヤムチャ「出来れば、どのタイミングで出せばいいかとか……そういう練習もやってみたいんですけど、付き合ってもらえませんかねぇ……?」

サガット「まぁまぁ、ヤムチャ君……あまり、疲労を残すのも良くない……」

ヤムチャ「……はぁ」

サガット「今日は大丈夫でも……試合は明日もある……そして、明後日もあるんだ……」

ヤムチャ「はい」

サガット「無理をしすぎて、身体パンクしてしまったら、元も子もないだろう……? そもそも、今日は試合がないオフ日なんだ……そんな日にヤムチャ君は、練習している」

ヤムチャ「……はい」

サガット「身体を休ませれる時間が出来たのなら、しっかりと休ませる……そういった事も長く続ける為には、重要になってくる……時間はまだ、あるがここらで切り上げないと、後に影響が出てしまうかもしれない」

ヤムチャ「……わかりました」

サガット「技を出すタイミングなんかは、打ち合わせの時に決めていけばいいさ……今日一日で二つの技を覚えた……それだけで、十分すぎる出来だよ……」

ヤムチャ「わかりました。じゃあ、細かい部分はまた、明日にでも決めましょうかね?」

サガット「ヤムチャ君は成長が早くて助かるよ……その調子なら、きっと明日の試合で上手く使いこなす事が出来るさ」

ヤムチャ「そうですよね! やっぱり、センスありますよね! なんたって俺は天下一武道会ベスト……」


プーアル「ヤムチャ様、調子に乗らない!」

721: 2014/12/06(土)22:40:53 ID:yYq
翌日ーー


バイソン「フンっ……! フンっ……フンっ……!」グイグイ

ヤムチャ「あだだだだ……バイソンさん、本当に身体柔らかいですねぇ……俺、そこまで身体曲がりませんよ……?」

バイソン「フンっ……! お酢を飲めば、身体が柔らかくなるって、よく聞くぜ……? 毎晩お酢を飲めばいいんじゃねぇのかな……? フンっ、フンっ……!」グイグイ

バルログ「そういうのって、迷信じゃないですかねぇ……? あっ、ヤムチャ君、背中押すの手伝ってあげましょうか?」

ヤムチャ「うっす、それじゃあ、バルログさんお願いしま~す!」

バルログ「はい、行きますよ……? よっと……!」ググッ

ヤムチャ「あ~だだだだ……あ~、これ、身体ももっと柔らかくしねぇといけねぇなぁ……」

バルログ「はいはい、後5秒その体勢のままで……頑張って下さ~い……」ググッ


プーアル「ストレッチ中の所、失礼しま~す! 今日の試合の予定表をザンギエフさんから貰ってきましたよ~!」

サガット「おっ、プーアル君、いつもありがとう。早速、見てみるとするか」

ヤムチャ「よっしゃ! ストレッチも終わって、準備完了だぜ! よ~し、今日の試合は~っと……」

722: 2014/12/06(土)22:53:43 ID:yYq
本日の予定試合


第一試合(10分決着)
◯コーディ ー ガイ×

第二試合(10分決着)
×ブランカ ー ヤムチャ◯

第三試合(15分決着)
×かりん ー ローズ
さくら キャミィ◯

第四試合(15分決着)
ソドム ー ヤン
×ロレント ユン◯

第五試合(20分決着)
ケン バルログ
◯リュウ ー サガット×

第六試合(35分決着)
◯ザンギエフ ー 豪鬼×

725: 2014/12/06(土)22:58:38 ID:yYq
ヤムチャ「あれ……? 今日はリュウさんとケンさんだけ……? 俺は、試合なしかな……?」

プーアル「ヤムチャ様……もっと、上の所見て下さい……もっと、上の所……」

ヤムチャ「上……? 何、言ってるんだよ、プーアル……? え~っと……んっ……?」


サガット「……ザンギエフさん、そう来たか」

バイソン「ちぇっ、折角ヤムチャ君もいい感じになってきたってのによぉ……」

バルログ「まぁ、ザンギエフさんの事だから、何か考えがあるんでしょう……」


ヤムチャ「お、おいっ……! ちょっと待ってくれよ……! 俺、第二試合になってるじゃねぇか!?」

727: 2014/12/06(土)23:07:07 ID:yYq
ブランカ「失礼しまぁ~す……」

ヤムチャ「……ん?」


サガット「あっ、ジミーさん……おはようございます……」

バルログ「ヤムチャ君との、打ち合わせですか? ジミーさん」


ブランカ「別にブランカでいいですよ。最近、ジミーの方が呼び慣れないんでね……ブランカの方がしっくりきてます……」

ヤムチャ「え~っと……? サガットさん、バルログさん……? この方は……?」

ブランカ「あっ、自分は本名はジミーって言うんですけど……リングネームはブランカです。主に、第二試合でダルシムさんと、若手の育成にあたってますね」

ヤムチャ「……芸名みたいな事かな?」

ブランカ「今日の試合……初顔合わせだから、打ち合わせだけしておこうと思いましてね……今日の試合、よろしくお願いします」

ヤムチャ「俺、今日、この奇抜な格好をした人と戦うんですか!?」

728: 2014/12/06(土)23:16:13 ID:yYq
サガット「まぁ、ブランカさんは野生児って設定だからな……」

ヤムチャ「……野生児?」

ブランカ「飛行機事故で偶然生き残った人間が、そのままジャングルの奥地で成長して……その身体能力を買われて、プロレスに誘われた……って設定になってますね……」

ヤムチャ「な、なんだ……そのめちゃくちゃな設定は……!」

ブランカ「まぁ、そんな設定だから……リング上では、レフェリーの言葉がわからず、無茶したり……相手に噛み付いたりして……そうやって、第二試合を成立させつつ、若手の育成をしていますね……」

ヤムチャ「噛み付くって……バイソンさんより、無茶苦茶な人が現れたなぁ……」

ブランカ「まぁ、ヤムチャ君だけではなく……空手軍団と抗争している、シャドルーの皆さんにも、関係のある話だと思うんで……ザンギエフさんからの、指示を話しますね?」

ヤムチャ「……指示?」


サガット「ふむ……ジミーさん、お願いします……」

730: 2014/12/06(土)23:24:53 ID:yYq
ブランカ「ヤムチャ君には、これからしばらく第二試合でやってもらう事になります」

サガット「それは……やはり、あのバックドロップの一件で……?」

ブランカ「恐らく、そういう事でしょうね。なるべく、試合展開をガッツリ打ち合わせはせず……最低限の打ち合わせだけで、試合をするようにと、指示されていますから……」

バルログ「ヤムチャ君が、空手軍団から脱退する……と、いう事ですか……?」

ブランカ「いや、状況によっては、そこで戦ってもらう事もありそうです。まぁ、シャドルーとの抗争の最中に……自分の見合った相手との修行……って、設定じゃないですかね……?」

バイソン「……それは、俺じゃダメなんですかね?」

ブランカ「……今の状況でヤムチャ君とシングルをして、満足させれる第五試合を見せる事出来ますか?」

バイソン「そ、それは……」

ブランカ「バイソンさんは、そういう位置でやってるんですよ……育成は、自分やダルシムさんに任せて下さい」

731: 2014/12/06(土)23:35:23 ID:yYq
ブランカ「大丈夫です。ヤムチャ君の試合はいつも見ています……日に日に動きが良くなっているのは、わかっています」

サガット「……はい」

ブランカ「数試合で、必ずそちらの戦力になるように育成して……また、そちらの抗争の方でやってもらいますから」

バルログ「わかりました……」

ブランカ「第二試合は、空気を読む勉強をするにはいい位置です。その事は、バイソンさんもよくわかっているでしょ? バイソンさんが、そのポジションまで登りつめたのも……第二試合で、恥を捨てた事にあるでしょう?」

バイソン「……まぁ、そうっすね」

ブランカ「だから、ヤムチャ君の育成は……自分やダルシムさんに、任せて下さい……」

ヤムチャ「……」

ブランカ「シャドルーの皆さんは、そういう事よりも……この団体を盛り上げる為に、空手軍団といい試合をして下さい。お願いします」

サガット「わかりました……ジミーさん、ヤムチャ君の事……よろしくお願いします……」

ブランカ「大丈夫です! 必ず、すぐそっちに戻してみせますよ! それが、自分の仕事です!」

734: 2014/12/06(土)23:46:23 ID:yYq
ブランカ「それじゃあ、ヤムチャ君……シャドルーの皆さんの邪魔になるといけないから……打ち合わせは、違う部屋でやろうか……?」

ヤムチャ「えっ……!? あっ、いやっ……!」

サガット「ジミーさん、俺達は別にここで打ち合わせしてくれても……」

ブランカ「側で聞いてたら、絶対口出したくなるでしょ? 自分も人の打ち合わせには、口出す所はありますし」

サガット「いや、でも……」

ブランカ「そんな人の状況を気にしてても……第五試合には上がれません。上に登るには、先ず目の前の試合に全力で取り組む事です」

サガット「……はい」

ブランカ「ねっ……? じゃあ、ヤムチャ君部屋移そうか? 今日から、指導係は自分ですから。長い付き合いにならないように、頑張って下さいね?」

ヤムチャ「い、いやっ……ちょっと……ちょっと待って下さいよ……!?」

ブランカ「現場監督の指示は全体なんだから……ほら、第五試合への未練はもう忘れる! 行くよっ!」グイグイ


バイソン「……なぁ~んか、今、俺ドナドナのテーマが頭ん中に流れてるわ」

バルログ「折角、ヤムチャ君もらしくなってきたのに……ザンギエフさんも嫌な所を見てますねぇ……」

サガット「……大丈夫だ。ヤムチャ君はすぐにこっちに戻ってくるさ」


ヤムチャ(くそっ……! やめろっ……! やめてくれっ……! そんな哀しい瞳で俺を見つめないでくれっ……!)

741: 2014/12/07(日)22:10:03 ID:ZAS
ーーー


ブランカ「さて、ヤムチャ君……じゃあ、打ち合わせ始めようか?」

ヤムチャ(くそっ……折角、新技を覚えたってのに……重要な第五試合から、第二試合にされちまうなんて……)

ブランカ「……ヤムチャ君、聞いてる?」

ヤムチャ「あっ、はい……聞いてますよ……!? 打ち合わせですよね……?」

ブランカ「ここで、結果を出せば……また、第五試合に戻れますから……ねっ? 今は目の前の試合をなんとかしましょう……」

ヤムチャ「くそっ……わかりました……」

ブランカ「今回、ヤムチャ君に注文する事は……二点……いや、三点か……」

ヤムチャ「……はい」

ブランカ「先ず、一つ……試合中、自分がヤムチャ君に噛みついて攻撃を仕掛けます」

ヤムチャ「その攻撃は……避けずに喰らえって事ですね……?」

ブランカ「いや、それだけじゃありません……」

ヤムチャ「……ん?」

742: 2014/12/07(日)22:21:46 ID:ZAS
ブランカ「自分の噛みつき攻撃を喰らった後は……ヤムチャ君は、ずっとダウンし続けていて下さい」

ヤムチャ「その後に、何か大技を仕掛けるんですか……?」

ブランカ「いえ、その間に私が笑いを取りにいくので……ヤムチャ君に、私の行動の邪魔をしてもらいたくないんです」

ヤムチャ「……はぁ? 笑い?」

ブランカ「ここぞという、タイミングでヤムチャ君が起き上がり、試合再開です……そのタイミングは、敢えて指示しません……空気を読んで、立ち上がって下さい……」

ヤムチャ「……何か、雑な打ち合わせですねぇ? こんな感じでいいんですか? サガットさん達とは、もっとしっかりした打ち合わせしてましたよ?」

ブランカ「ザンギエフさんから、そういう風に指示されてますから……」

ヤムチャ「……」

ブランカ「試合中の空気を読む事も重要です。先日のバックドロップ……あれは、空気を読めなかった事の結果ですよね……?」

ヤムチャ「……それは、俺もわかってますよ。でも、もうあんな事はしませんよ」

ブランカ「それを、現場監督のザンギエフさんに認められるよう……この試合で、見せて下さい……ヤムチャ君は、もう二度とあんな事はしないだろうな、とザンギエフさんを認めさせる事が出来れば……」

ヤムチャ「……はい」

ブランカ「再び、ヤムチャ君は第五試合で出来るようになるでしょう。頑張って下さい」

ヤムチャ「……くそっ」

744: 2014/12/07(日)22:31:08 ID:ZAS
ブランカ「では、二つ目……これも、ザンギエフさんの指示ですね」

ヤムチャ「……はい」

ブランカ「試合中……どのタイミングで仕掛けるかは、言いませんが……」

ヤムチャ「ふむ」

ブランカ「自分が……ヤムチャ君の股間に攻撃します……」

ヤムチャ「……はぁ!?」

ブランカ「股間を攻撃されたら……ヤムチャ君は悶えて……股間を抑えて……とにかく、苦しんで下さい……」

ヤムチャ「なんだ、それ……」

ブランカ「そして、苦しんでいる自分の姿をお客さんに見せて……笑いを取って下さい」

ヤムチャ「……何で、わざわざそんな事して笑われなきゃいけないんですよ!?」

ブランカ「『笑われる』……ではなく、『笑わせる』です……」

ヤムチャ「そんなもん、同じでしょうが! 股間を攻撃されて、悶えてたら……そりゃ、笑い者にもなるでしょうが!」

ブランカ「……第二試合とは、そういう試合ですからね。お客さんを笑わせる為に、試合をしています。その中で、同時に上に行く為の術を学んでいってもらいます」

747: 2014/12/07(日)22:44:59 ID:ZAS
ブランカ「自分も……個人的には、ヤムチャ君に足りない部分は、そういう所だと思います……」

ヤムチャ「……はぁ?」

ブランカ「バイソンさんを見てたら、感じませんか……? 彼も、長らく第二試合でそういう事をしていました……」

ヤムチャ「……バイソンさんも?」

ブランカ「彼の場合は、お尻を連続で蹴られて……オーバーなリアクションを取る……みたいな感じでしたけどね?」

ヤムチャ「……はぁ」

ブランカ「彼はその経験を生かして、今のポジションにいます。お客さんに笑ってもらう事を知った彼は……ただただ、ラフファイトで攻めるのではなく……独自の空気を作れるようになりました」

ヤムチャ「……」

ブランカ「第五試合で続けたいのなら……きっと、そういった部分も必要になってくるでしょう……何処かで笑いを取る事も時には、重要です」

ヤムチャ「あ~、くそっ……! たった一度の失敗なのに……何で、こんな事に……!」

ブランカ「ショックなのは、わかります……だけど、やはりヤムチャ君にはまだまだ荒削りな所があります。だけど、これを受け入れないと……ザンギエフさんは、この位置のままで続けてもらうと、判断するでしょうね……」

749: 2014/12/07(日)22:56:49 ID:ZAS
ブランカ「そして、三つ目……まぁ、これは今更、言う必要もない事でしょうが……最後は、ヤムチャ君の勝利で終わって下さい……試合時間は10分です……」

ヤムチャ「……はい」

ブランカ「ただ、その時……狼牙風風拳は、使わない方がいいでしょうね……」

ヤムチャ「……俺、必殺技も使えないんですか」

ブランカ「まぁ、第二試合でそういった派手な攻防をするのは好ましくないですからね……ボディスラムとバックドロップの練習には、調度いい位置じゃないですか? これを機会に、もっといい見映えの技にしましょうよ」

ヤムチャ「……くそっ」

ブランカ「それに……狼牙風風拳を、自分のような人間に使ってしまうと……技が腐ってしまいますよ……」

ヤムチャ「……はぁ?」

ブランカ「狼牙風風拳は、この団体の強い人間に使う技です……シャドルーや、ザンギエフさんなどの強敵に使って……ようやく、勝てたという試合を作る為にあります」

ヤムチャ「……はい」

ブランカ「自分のような、団体の下から数えた方が早い人間なんかに使ったら、オーバーキルもいい所ですよ……ヤムチャ君の目標は、あくまで第五試合でやる事です……この位置は、そこに戻るまでのステップだという事を忘れないで下さい」

ヤムチャ「ケンさんに、封印されたの解禁してもらったのに……また、封印かよ……」

ブランカ「ヤムチャ君の必殺技には、トラースキックがありましたよね? あぁいった技で決めてもらうのが理想です」

750: 2014/12/07(日)23:06:50 ID:ZAS
ブランカ「……注文は以上です。何か質問はありますか?」

ヤムチャ「……いい試合をしたら、俺は第五試合に戻れるんですよね?」

ブランカ「まぁ、そういう事になりますが……ヤムチャ君、勘違いしてはいけませんよ……?」

ヤムチャ「……ん?」

ブランカ「ここは第二試合……お笑いマッチをする場所です……お笑いマッチには、お笑いマッチのいい試合があるんのです……」

ヤムチャ「……」

ブランカ「以前のような迫力のある試合をしてしまったら……我々の後に試合を控えている人達は、我々より迫力のある試合を行うようにと、強要されてしまいます……」

ヤムチャ「……」

ブランカ「今日の第三試合は、春麗さんの抜けた女子部……さくらさんや、キャミィさんに迷惑をかけてしまいます……」

ヤムチャ(うっ……さくらちゃん……)

ブランカ「第四試合には、初めて第四試合に上がったソドムさん……そして、防衛戦をするユンさんと、ヤンさんがいます……」

ヤムチャ「……はい」

ブランカ「メインイベントは、現場監督のザンギエフさんと……他団体の豪鬼さんです……」

751: 2014/12/07(日)23:15:51 ID:ZAS
ブランカ「彼らに迷惑をかける事は……逆に第五試合の道が遠のいてしまいますよ……?」

ヤムチャ「……はい」

ブランカ「第二試合は、地味な試合でいいんです……とにかく、笑いを取るんです……下手な派手さなんていりません……この位置での、派手な攻防なんて、今のヤムチャ君には無理です」

ヤムチャ「……わかりました」

ブランカ「それでは……打ち合わせは以上です……そろそろ、試合の準備に行きましょうか……?」

ヤムチャ「……えっ?」

ブランカ「……第二試合は、試合時間も早いです。若手の試合の次ですからね?」

ヤムチャ「いつもは、まだこの時間は、サガットさん達とまだ打ち合わせしてたけど……もう、始まるのか……」

ブランカ「……それだけ、重要な位置ですからね。彼らには、入念な打ち合わせも必要でしょう。では、ヤムチャ君、行きましょうか?」


ヤムチャ(くそっ……! この一試合で……必ず、サガットさん達の所に戻ってやるっ……!)

752: 2014/12/07(日)23:26:56 ID:ZAS
ーーー


ヤムチャ「……なんか、会場寂しいねぇ?」

プーアル「ヤムチャ様の出番になったら、きっと満員になりますって! 今頃、お客さんは会場に向かって来てるんじゃないですか!?」

ヤムチャ「……そんな気はしないけどねぇ」

プーアル「大丈夫ですって! なんせ、ヤムチャ様はカリスマ! 女性にも持てるし、力も強い! それに、え~っと……」

ヤムチャ「……なぁ、プーアル?」

プーアル「な、なんですか!? 僕、嘘なんて言ってませんよ……!? ヤムチャ様のカリスマ性を今、説明して……」

ヤムチャ「……そうじゃなくて、さ?」

プーアル「……どうしたんですか?」

ヤムチャ「以前……サガットさんは、言ったよな……? 第六試合が、天下一武道会の決勝で……第五試合は、準決勝って……」

プーアル「……言ってましたね」

ヤムチャ「第四試合は、準々決勝……第三試合は、一回戦で言ってた……」

プーアル「……はい」

ヤムチャ「……じゃあ、この第二試合は何なんだよ?」

753: 2014/12/07(日)23:33:12 ID:ZAS
プーアル「予選会……って、事になるんじゃないですかね……?」

ヤムチャ「そうだよな……普通は予選会だ……でも、違うんだよ……」

プーアル「……えっ?」

ヤムチャ「サガットさんも、ブランカさんも、はっきり言ってた……これはお笑いマッチだ……ってね?」

プーアル「……」

ヤムチャ「予選にすら、なってねぇんだよ、この試合は……」

プーアル「……」

ヤムチャ「俺さぁ……第五試合に戻る為に、頑張ろうと思ってたけど……やっぱり、わかんなくなってきたよ……」

プーアル「……」

ヤムチャ「こんな試合、誰も見てねぇじゃねぇかよ! 会場に人がいねぇじゃねぇかよ!?」

プーアル「……多分、すぐ来ますよ」

ヤムチャ「こんな、誰にも注目されてない試合……予選にすらなってねぇ試合で……俺、どんな気持ちで、この試合に臨んで……どんな気持ちで、股間に攻撃されればいいんだよ!? わかんねぇよ!?」

754: 2014/12/07(日)23:42:50 ID:ZAS
プーアル「以前の試合に比べて……お客さんは少ないですが……」

ヤムチャ「……」

プーアル「それでも、ヤムチャ様の戦いを見てくれてる人達は……ここにいます……」

ヤムチャ「……」

プーアル「……僕だって、ヤムチャ様の事を見てます」

ヤムチャ「……」

プーアル「その人達を満足させれるような試合をしたら……きっと、ヤムチャ様はまたサガットさん達と一緒に出来ますよ……」

ヤムチャ「……」

プーアル「ほら、コーディさんとガイさんの試合が終わりました……小さいですが、勝者のコーディさんへの拍手もあるじゃないですか……?」

ヤムチャ「……」

プーアル「そろそろ出番じゃないですか、ヤムチャ様……? きっと、見てくれてる人は見てますよ……だから、頑張って下さい……」

ヤムチャ「……この一試合だけだぞ!? 俺は、すぐにサガットさん達の所に戻るからな!」

758: 2014/12/07(日)23:54:27 ID:ZAS
ーーー


ダン「さて、皆様……お楽しみいたただいているでしょうか!? ストリートプロレス!」

ダン「それでは、続いては……第二試合をお届けしますっ!」

ダン「密林の戦士……ブランカ選手の、入場ですっ!」


パチパチ……パチパチ……


ブランカ「ウォゥ! ウォッ、ウオオォゥ!」


クスクス……クスクス……


実況「さぁ、雄叫びをあげながら……今、密林の戦士、ブランカ選手の入場です! 少し変わった経歴を持った、このブランカ! 本日はどのような戦いを見せるのかっ!?」

759: 2014/12/08(月)00:00:58 ID:RhN
ブランカ「……コレ、クイモノ?」

ダン「おい、ブランカ……? 何やってんだよ? 早く、リングインしろよ?」

ブランカ「コレ、ウナギ、ミタイダ……食エソウダ……」ガジガジ

ダン「なぁ~に、やってんだブランカっ! ロープは鰻じゃねぇ! 噛むなっ!」

ブランカ「硬イ……噛ミキレナイ……」ガジガジ

ダン「ロープを噛むんじゃねぇっ! 早くリングインしちまえよ、バカっ!」


実況「おぉ~っと、早速、野生児大暴れ! ロープに噛み付いています! そいつは食べ者じゃないぞ!? 良い子は真似するなよ!」


ダン「ほらっ……! 早くリングインしろや……!」グイグイ

ブランカ「ウガガ……ウガッ……!」

760: 2014/12/08(月)00:04:25 ID:OIA
ブランカさんwwwプロやwww

761: 2014/12/08(月)00:07:35 ID:RhN
ダン「続きましては……空手軍団、三番弟子……」

ダン「ヤムチャ選手の入場ですっ!」


パチパチ……パチパチ……


ヤムチャ(チッ……まぁ、こうなったらやるしかねぇ……割り切って考えるか……)


実況「さぁ、お次は空手軍団三番弟子……ヤムチャ選手の入場です!」


ヤムチャ(昨日、練習で覚えた技……それに、ボディスラムとバックドロップの見栄え……俺には、まだ課題が山積みなんだ……)


実況「さぁ、寡黙な表情での入場だ!」


ヤムチャ(いきなり発表して……ヘマしちまうのは、サガットさん達にも迷惑を掛けちまうからな……今日の試合は、その為の練習試合……ただ、それだけだ……!)


実況「そして、今、ヤムチャがリングイ~ンっ!」

769: 2014/12/08(月)22:18:00 ID:RhN
実況「さて、それでは早速第二試合の実況をしていきましょう! 尚、本日のゲスト解説には、ナッシュさんにお越し頂きました!」

ナッシュ「はい、どうも。よろしくお願いします」


キャー、ナッシュー


実況「いやぁ~、女性の声援が羨ましいですね! 私にも、分けてもらいたいものです!」

ナッシュ「アハハ……そんな事ないですよ……」

実況「ナッシュさんと、言えば……やはり、ガイルさんとの名タッグチームで有名ですが……やはり、こういったファンの声援は力になったりするんですかねぇ?」

ナッシュ「あっ、そうですね。やはり、ファンの声援は、僕やガイルの力になってくれますからね。いつもいつも、ありがとうございます」

実況「先日の、タッグチャンピオンベルトを賭けた試合……私、非常に興奮しました! 実に迫力のある試合でしたよ!」

ナッシュ「ありがとうございます。結果はね……まぁ、負けてしまいましたけど……必ず、ガイルと二人でリベンジしたいと思います」

実況「現在、ベルトを持っているのは、ユンとヤンの二人です……!」

ナッシュ「そうですね。なかなか手強い、コンビですが……まぁ、僕達も負けてられませんね」

770: 2014/12/08(月)22:30:06 ID:RhN
実況「ナッシュから見た目線で……ユンとヤンのコンビの強さといったものは、どういった所にあると思われますか……?」

ナッシュ「そうですね……やっぱり、コンビネーションが凄いですね」

実況「ほう」

ナッシュ「やっぱり、お互い息ぴったりという感じでね……先日の試合は、そこを上手くつかれた様な気がします……」

実況「……なる程。やはり、タッグマッチなんかでは、コンビネーション攻撃なんかが重要になってきますからね?」

ナッシュ「そうですね。次の試合は……僕達もね、そういった部分を生かしながらの展開に持ち込めればいいな、と思っています」

実況「ナッシュさんとガイルさんのコンビネーションも、素晴らしいですからね!?」

ナッシュ「はい。僕達も、そういったものには自信がありますよ」

実況「やはり、そういったコンビネーションを作る為には……おっと、おっと! そうこうお話している内に、ゴングが鳴らされ試合が始まってしまいました!」

ナッシュ「……ヤムチャが仕掛けましたね?」

実況「それでは、ナッシュさん達のお話は、また後程……と、いう事で、お願いします!」

ナッシュ「はい。よろしくお願いします」


実況「さぁ、それでは早速、試合の実況をしていきましょう! 先に仕掛けたのは、ヤムチャ! チョップをブランカの胸板に打ち込んでいきます!」

772: 2014/12/08(月)22:39:57 ID:RhN
ヤムチャ「……うるあぁっ!」バシッ

ブランカ「……ウオッ!」

ヤムチャ「……もう、一丁っ!」バシッ

ブランカ「ウ、ウオッ……!」


実況「さぁさぁ、先ずはヤムチャが仕掛けていきます! チョップを二発……そして、三発とブランカの胸板に打ち込んでいく!」


ヤムチャ(……先ずは、チョップでダメージを与えてっと)

ブランカ「ウゥ……チクショウ……」

ヤムチャ「……オラァっ! 次は、蹴りだぁっ!」シュッ

ブランカ「……ウオッ!」

ヤムチャ(頃合いを見て、少しずつダメージの多そうな攻撃に切り替えていく……俺の場合、チョップより蹴りの方が強そうに見えるだろ……)


実況「そして、ヤムチャのローキック! ブランカに打ち込んでいきます!」

773: 2014/12/08(月)22:52:20 ID:RhN
ヤムチャ(今は蹴りを続けて、ブランカさんの行動の様子見だ……ブランカさんの対応次第で……俺の取るべき行動も、変わってくるしな……)

ブランカ「ウググ……」

ヤムチャ(ダメージを喰らって、崩れてくれてもいい……俺を反撃を仕掛けてくれてもいい……その後の対応は、もう考えてあるぜ……)

ブランカ「ウグ……チクショウ……」

ヤムチャ「……おらぁっ! もう一発っ!」シュッ

ブランカ「……ウオッ!」


実況「さぁさぁ、先ずはヤムチャが得意の打撃攻撃で攻めていきます!」

ナッシュ「いい感じに自分のリズムを作っていっていますね」

実況「空手スタイルの蹴り……これは、ナッシュさんのスタイルとも似ていますね?」

ナッシュ「僕の場合は、マーシャルアーツですけどね。まぁ、リズムよく打撃攻撃を与えていって……試合のリズムを作っていくというのは、確かに似ていますね」

775: 2014/12/08(月)23:01:39 ID:RhN
実況「ナッシュさんとガイルさんは、マーシャルアーツをアレンジしたスタイルですよね?」

ナッシュ「そうですね」

実況「マーシャルアーツと空手の、具体的な違いというものは、どういった部分なんでしょうか?」

ナッシュ「まぁ、西洋と東洋の違い……って、事になるんですかね?」

実況「なる程……では、マーシャルアーツの使い手から見て……空手スタイルのヤムチャの蹴りというものは、ナッシュさんの目には、どうお映りで?」

ナッシュ「なかなか鋭い、いい蹴りだと思いますよ? 僕も、見習う部分がありそうです」


ヤムチャ(あの解説、うるせぇな……ちょくちょく、耳に入ってくるんだよ……)

ブランカ「クソッ、素早イ蹴リシテルナ……コイツ……」

ヤムチャ(さぁ、ブランカさんはどう動くか……? オラっ、もう一発!)シュッ

777: 2014/12/08(月)23:10:27 ID:RhN
ブランカ「……舐メルナッ!」ガシッ

ヤムチャ「……何っ!?」


実況「おっと!? ここで、ヤムチャの蹴りをブランカが強引に受けとめた! ヤムチャの片足を捉えています!」


ヤムチャ(おっ……? よし、足を取ってくれたな……? フラついたら、ボディスラムを仕掛ける予定だったが……こっちの方が理想的な展開だ……)

ブランカ「……コノ野郎」


実況「さぁさぁ、ブランカはヤムチャの脚を取り、ヤムチャは片脚立ち! 流れが変わってしまったか、これは!?」


ブランカ「……ウオオオォォッ!」グイッ

ヤムチャ「う、うおおっ……!」


実況「さぁ、そしてそのままヤムチャを突き飛ばす! 捉えた脚を押し込んで、ヤムチャを強引に押し倒していくっ!」

779: 2014/12/08(月)23:18:46 ID:RhN
ヤムチャ「……くっ!」ドスッ


実況「さぁ、ヤムチャは大きく尻餅! 少し、リズムが崩されてしまったかぁ!?」


ブランカ「悪イ奴ヲ、ヤッツケタゾ!」

ヤムチャ「……ん?」

ブランカ「ウオゥ! ウオゥ! ウオオオォゥ!」


実況「さぁ、ここでブランカが、雄叫びだぁ! まるで、ゴリラの様な動きをしながら、大きく大きく吠えています!」

ナッシュ「……本当、ゴリラに似ていますよね」

実況「流石、ジャングルの奥地で育ったこのブランカっ! 空手やマーシャルアーツではなく……まさに、野生の本能だけで戦うファイトスタイルだぁ!」

780: 2014/12/08(月)23:26:57 ID:RhN
ヤムチャ(……ブランカさん、攻撃してこねぇのかな? だったら、また俺がいくしかねぇか)

ブランカ「ウオゥ! ウオゥ! ウオオオォゥ!」

ヤムチャ(とりあえず、終盤での延髄斬りポイントは……これで完成したから、次はボディスラムに繋げてみっか……)ムクッ


実況「おっと、だがしかしヤムチャはすぐに立ち上がり……」


ヤムチャ「……うらぁっ! 行くぜっ!」ダダッ

ブランカ「……ウガッ?」


実況「そしてそのまま、ブランカに突っ込んで行ったぁ!」


ヤムチャ「……オラァっ!」ドスッ

ブランカ「……ウオッ!」


実況「そして、ショルダータックル! ブランカに強烈なタックルだ!」

783: 2014/12/08(月)23:35:10 ID:RhN
ブランカ「……クソッ! 舐メルナ!」

ヤムチャ「……ん?」

ブランカ「俺ダッテ……ヤッテヤル……!」ダダッ


実況「おっと、ここでブランカがロープに走った! こいつは、タックル勝負を仕掛けてきたか?」

ナッシュ「……おそらく、そうでしょうね」

実況「実際、ブランカはかなり特殊な、ファイトスタイルだと思うんですが……ナッシュさんの見解では、どう思われます?」

ナッシュ「そうですね……やっぱり、かなり特殊なファイトスタイルだと思いますよ」


ブランカ「……ウオオォッ!」ドスッ

ヤムチャ「……くっ!」


実況「さぁ、ブランカのタックル! ナッシュさん、具体的にどういった点が……?」

ナッシュ「……そうですねぇ」

786: 2014/12/08(月)23:44:27 ID:RhN
ブランカ「次ハ、オ前ガ来イッ……!」

ヤムチャ「上等だ……! やってやるぜ……!」ダダッ


ナッシュ「実際、僕のマーシャルアーツの基礎みたいなものがあるのではなく……やっぱり、野生児の本能みたいな物で戦っている所があると、思うんですよ……」

実況「さぁ、お次はヤムチャがロープに走った! あっ、ナッシュさん、続けてどうぞ?」

ナッシュ「ですから……ここで、そんな攻撃するんだ? みたいな予想外の行動が結構多いんですよ……何するか読めないって所が、結構あります……」

実況「平たく言えば……アホ、と……?」

ナッシュ「い、いやぁ……アホってワケではないと思いますが……」


ヤムチャ「……うらぁっ!」ドスッ

ブランカ「……ウ、ウオッ!」ヨロッ


実況「さぁ、ロープの反動をつけたヤムチャのタックル! 少し、ブランカがフラついたか!?」

787: 2014/12/08(月)23:54:18 ID:RhN
ブランカ「ウガァァァァ!」

ヤムチャ「……ん?」

ブランカ「オ前、悪イ奴! 俺ノ事、苛メル!」


実況「お、お~っと……これは、ブランカが少し、怒っているようですね……?」

ナッシュ「そう……ですね……?」


ブランカ「オ前、覆面シテナイケド、悪イ奴! 俺ヲ苛メル!」

ヤムチャ(何やってんだ、ブランカさん……?)

ブランカ「オ前ノ事、嫌イ! 嫌イ嫌イ嫌イ! オ前、悪イ奴!」ジタバタ


実況「これは、ブランカなりの怒り表現なのか!? まるで、幼稚園児が駄々をこねる姿にそっくりです!」

ナッシュ「あぁいう所が読めないんですよ……」

実況「……つまりアホと?」

ナッシュ「そういう事、あまり言いたくないんですけどね……まぁ、あの姿は……アホです……」

793: 2014/12/09(火)22:16:17 ID:Iza
ブランカ「ウガガ! モウ怒ッタ! ヤッツケテヤル!」


クスクス……クスクス……

実況「さぁ、場内のお客さんもこの野生児の姿には、思わず笑ってしまう!」

ナッシュ「まぁ、本人は頑張っていると思いますよ……? その姿が……まぁ、ちょっとね……」

実況「……ゴリラそっくりと?」

ナッシュ「ボカして言うつもりだったのに……なんで、ハッキリ言っちゃうんですよ……」


ヤムチャ(なる程ねぇ……これが、第二試合……予選以下の試合って事か……)

ブランカ「オ前モ、ろーぷニ走レッ!」

ヤムチャ「……ん?」

ブランカ「タックル勝負ダッ! 悪イ奴ヲヤッツケテヤル!」

ヤムチャ(おっ……? タックル勝負のお誘いか……ここは、勝ってもいい場面なのかな……?)

794: 2014/12/09(火)22:23:13 ID:Iza
実況「さぁ、ゴリラがロープを指差し、ヤムチャを誘ったぁ!」

ナッシュ「……ゴリラじゃありません。一応、人間です」


ブランカ「……行クゾッ!」ダダッ

ヤムチャ「……来やがれっ!」ダダッ


実況「さぁ、ヤムチャがロープに走ったぁ! そしてゴリラも同じ様にロープに走るっ! 見様見真似で、人間の動きを必氏に真似してみる!」

ナッシュ「……だから、ゴリラじゃありませんって!」


ブランカ「……ウオオオォォッ!」

ヤムチャ「……うおおぉぉっ!」


実況「両者がロープの反動をつけ……人間対ゴリラの異種格闘技戦……! この勝負を制するのは、人間か!? それとも、ゴリラなのかぁ!?」

ナッシュ「……本当に怒られますよ!? あの人、怒ったら怖いんですよ!?」

796: 2014/12/09(火)22:30:40 ID:Iza
ブランカ「……ウガアアァァッ!」ドスッ

ヤムチャ「……うるああぁぁっ!」ドスッ

ブランカ「グッ……ウ、ウオッ……」バターンッ

ヤムチャ(あら……? ブランカさんが倒れてくれた……?)


実況「さぁ、ダウンしたのはブランカ! タックル勝負を制したのは、ヤムチャだ!」


ヤムチャ(おいおい……俺ばっかり、攻撃してねぇか……? 大丈夫かね……?)

ブランカ「グググ……チクショウ……」

ヤムチャ(とりあえず……ボディスラムの練習して……その後、コブラツイスト仕掛けて……そこで、また考えてみっか……)


実況「さぁ、ヤムチャは、ゆっくりとダウンしたブランカへと近づきます!」

797: 2014/12/09(火)22:37:18 ID:Iza
ヤムチャ「おらっ! 起きろっ!」

ブランカ「ウウゥ……」ヨロッ


実況「さぁ、ここでヤムチャがダウンしたブランカを引き起こし……」


ヤムチャ「……うおぉぉっ!」グイッ

ブランカ「ウ、ウオッ……!」


実況「そのまま、強引に持ち上げたぁ! ボディスラムか!?」

ナッシュ「……ですかね?」


ヤムチャ「……うらぁっ! ボディスラムだっ!」

ブランカ「……グッ!」ドシーンッ


実況「そして、そのままマットに叩きつける! ヤムチャの荒々しいボディスラム! ナッシュさん、今の攻撃は、ブランカに効きましたかねぇ?」

ナッシュ「……う~ん」

798: 2014/12/09(火)22:48:01 ID:Iza
ナッシュ「まぁ、なんだかんだでブランカには、筋肉もありますし……そこまで効いてはいないんじゃないですかね……?」

実況「確かに……! ブランカも、ジャングルの奥地で生き抜く為の鋼鉄の身体があるっ! 筋肉こそ、野生児のファッションだ!」

ナッシュ「まぁ、でも……ヤムチャのメインの攻撃は打撃にあると思うんですよ」

実況「……ほう」

ナッシュ「ですから、ここからどうやって、そういった攻撃で自分のリズムを作っていくかが、ポイントになるんじゃないですかね?」

実況「やはり、似たようなマーシャルアーツで戦うナッシュさんも……そういった事を意識されてる部分はあるんですかね?」

ナッシュ「あぁ、結構ありますよ。自分のリズムで戦う事は……常に意識してますね……」

実況「なる程!」


ヤムチャ(今日は、お客さんの歓声が少ないから……大声で喋っているあんた達の声……結構、聞こえるよ……?)

ブランカ「……ウググ」

ヤムチャ(まぁ、そう言われるって事は……ボディスラムはまだ出来てないんだな……まぁ、いいや……次は、コブラツイストだ……ブランカさんはダウンしているけど……この体勢から、上手く繋いでやる……!)

799: 2014/12/09(火)22:53:42 ID:Iza
ヤムチャ「……行くぜっ!」ダダッ


実況「おっと、ここでヤムチャが再び、ロープに走った!」


ヤムチャ(派手に見せる為には、リングを走り回る事も重要って、言われたからな……ここで、ロープの反動をつけて……そのまま……)


実況「さぁ、ヤムチャはロープの反動をつけて、ダウンしているブランカに向かうっ!」


ヤムチャ「……オラァ!」ズガッ

ブランカ「……グ、グオォッ!」


ナッシュ「……おっ?」

実況「そして、そのままダウンしているブランカにスライディングキックっ! 脇腹辺りに突き刺さったか!?」

800: 2014/12/09(火)23:03:58 ID:Iza
ヤムチャ「おらっ、起きろっ! このまま決めてやるぜ!」

ブランカ「ウウゥ……痛イ……痛イ……」ヨロッ

ヤムチャ(いきなり、起こさずに……一つ行動を挟んだ……腰に蹴りを入れたんだ……)


実況「さぁ、そしてヤムチャがブランカを引き起こします! ブランカは、まだ脇腹辺りを抑えて、苦しんでいますねぇ?」

ナッシュ「そうですね」


ヤムチャ(そして……ここで、仕掛けるっ……!)シュッ

ブランカ「……ヌッ?」


実況「おっと、そしてここでヤムチャが素早く、コブラツイストの体勢だ!」

ナッシュ「腰に狙いを定めましたね」


ヤムチャ(これなら……お客さんも、反応してくれるんじゃねぇか……? よし、新技のコブラツイスト……行くぜっ……!)

ブランカ「ウガガ……! 止メロ……止メロ……!」

ヤムチャ「……うるあぁっ!」グイッ

ブランカ「アガガガガッ……!」


実況「そして、ヤムチャがコブラツイストを仕掛けます!」

801: 2014/12/09(火)23:19:21 ID:Iza
シーン


ヤムチャ(うわぁ、何にも反応がねぇや……だって、そもそもお客さん少ないもん……)

ブランカ「アガガガガ……! アガガガガ……!」

ヤムチャ(サガットさんは、この状況でお客さんの反応見ろとか言ってたけど……そもそも見るお客さんがいねぇじゃねぇか……誰の反応見ればいいんだよ……あの解説の二人か……?)


実況「さぁ、ヤムチャがじわりじわりとブランカの体力を奪っていきます!」

ナッシュ「自分のリズムで……いい感じに戦っていっていますね?」

実況「では、この間に、本日のゲスト解説の、ナッシュさんのタッグマッチでの戦績を振り返っていくしましょうか?」

ナッシュ「あっ、はい。よろしくお願いします」

実況「え~、ナッシュさんは……ガイルさんとのタッグで……」


ヤムチャ(おいおい、あの二人、雑談始めちまったぞ……!? これ、技解かねぇといけねぇのか……!?)

ブランカ「……そのまま続けておいて下さい」ボソッ

ヤムチャ「……えっ?」

ブランカ「自分が返すので……それまでは、そのまま続けておいて下さい……」ボソッ

802: 2014/12/09(火)23:27:56 ID:Iza
実況「今、画面右下に出ているのが、ナッシュさんとガイルさんのベルト戦績ですね!」

ナッシュ「はい」

実況「先日の試合では、ベルトを奪われてしまいましたが……やはり、こうして見ると、華やかしい物がありますね!」

ナッシュ「アハハ、ありがとうございます」

実況「やはり、次の試合ではベルトを奪還して、再び防衛記録を……?」

ナッシュ「そうですね。ガイルと二人で……最多防衛記録……狙っていきますよ……?」

実況「ありがとうございました! それでは、試合の実況に戻っていきましょう!」

ナッシュ「はい」


ヤムチャ(いつまで続けりゃいいんだよ……この技……無反応って怖いんだよ……)

ブランカ(おっ……? そろそろ、頃合いかな……? それじゃあ……)


実況「さぁ、ヤムチャのコブラツイストでブランカの体力は奪われていく! こうなってくると、腰へのダメージも心配か!?」

ナッシュ「そうですね」

803: 2014/12/09(火)23:37:05 ID:Iza
ダン「おい、大丈夫か……? ギブアップするのか……?」

ブランカ「大丈夫ジャナイ……ダケド、ぎぶあっぷハシナイ……」

ダン「……言ってる事、矛盾してねぇか、それ?」

ブランカ「痛イ……腰ガ痛イ……助ケテ……」

ダン「……レフェリーの俺に助けを求めるんじゃねぇよ。痛ぇんだったら、とっととギブアップしやがれ」

ブランカ「ぎぶあっぷハシナイ……ダカラ……」

ダン「……あのなぁ?」

ブランカ「だんサン……! 助ケテ……!」グイッ

ダン「う、うおっ……! 何、すんだよ……! 掴みかかってくるんじゃねぇよ!」


実況「おっと……ここで、ブランカがレフェリーに掴みかかりました! コブラツイストを受けつつも、左手でレフェリーの胸ぐらを掴み、自分の元に引き寄せた!」


ブランカ「助ケテ……! コイツ、悪イ奴……! 今スグ止メサセテ……!」グイグイ

ダン「やめろよっ……! おめぇ、力強いんだから、掴むんじゃねぇっ……! とっとと離せ!」

ヤムチャ(おっ……おおっ……? 何だ、何だ……?)

804: 2014/12/09(火)23:43:37 ID:Iza
ブランカ「だんサン……! 助ケテ……!」グイグイ

ダン「いいから、離せって……! う、うおっ……! 引っ張んじゃねぇっ!」ヨロッ


実況「これは、レフェリーに暴行を加えている……のでしょうか……?」

ナッシュ「というより……何か、必氏に助けを求めているような気がしますねぇ……?」

クスクス……クスクス……

実況「ブランカは、必氏にレフェリーに助けを求めていますが……これ、レフェリーからしたら、いい迷惑でしょう!?」

ナッシュ「……ですよね」


ブランカ「だんサン……! 助ケテ……! 早ク早ク……!」グイグイ

ダン「お、おいっ……!」

806: 2014/12/09(火)23:53:05 ID:Iza
ダン「う、うおおぉぉっ!」ドサッ

ヤムチャ「ん……? う、うおおっ……!」ドサッ


実況「おぉ~っと、これはこれは!? ブランカに掴まれていた、レフェリーが転倒してしまい……そのまま、ヤムチャとブランカの元に倒れこんでしまったぞ!?」

ナッシュ「折角、コブラツイストを仕掛けてたのに……巻き揉まれて、転倒しちゃいましたね」

実況「ヤムチャに、ブランカ、そして、レフェリー! リング上で、三人仲良く転倒でございます! 仕掛けていた、コブラツイストのロックも解けてしまったか!?」


ダン「くっ、痛ぇ……やめろよな……俺を巻き込むのは……」

ヤムチャ(おう、何だ何だ……こんな、無理矢理逃げ出す方法があったのか……これは、技解かなきゃいけねぇよなぁ……?)

ブランカ「ヤッタ! 痛イノ、無クナッタ!」ムクッ


実況「先に、立ち上がったのはブランカ! 何だか、表情が生き生きしております!」

812: 2014/12/10(水)22:14:16 ID:csw
ヤムチャ(まぁ、これでブランカさんが反撃してくれるのかな……? このまま、少し様子を見てみるか……)

ブランカ「ウオッ! ウオッ! 起キロッ!」

ヤムチャ(……ん?)


実況「さぁ、ここでブランカがダウンしているヤムチャを引き起こそうと近づきます……」

ナッシュ「ん……? アレっ……?」


ブランカ「起キロッ……! 立ッテクレッ……! ホラ、早クッ……!」

ダン「ううぅ、痛ぇなぁ……俺、巻き込むんじゃねぇよ、この野郎……」ムクッ


実況「おっと、ブランカが引き起こしたのは、ヤムチャではなく、レフェリーだ! これは一体、どういう事なんでしょうねぇ?」

ナッシュ「……どういう事なんでしょう?」


ヤムチャ(おいおい……ブランカさん、俺放ったらかしにして何やってんだよ!?)

813: 2014/12/10(水)22:25:53 ID:csw
ブランカ「だんサン、アリガトウ! だんサンノ、オカゲデ、痛イノ無クナッタ!」

ダン「……あのなぁ?」

ブランカ「だんサンハ、俺ノ友達! 俺、友達デキテ嬉シイ!」

ダン「おめぇが勝手に巻き込んだだけだろうが! 俺に迷惑掛けんじゃねぇよ!」

ブランカ「俺、友達出来テ嬉シイ! コレカラ、仲良クシヨウ!」ピョンピョン

ダン「……俺の周りをピョンピョン跳ね回ってるんじゃねぇよ! 試合をしろ、試合をよぉ!」


実況「おぉ~っと、ブランカは飛び跳ねながら、レフェリーの周りをグルグルと回っております」

ナッシュ「……楽しそうですね」

実況「これは、喜びのダンスとでも言えば、いいんでしょうか? ブランカは、レフェリーがコブラツイストから助けてくれたとでも思っているのでしょうか?」

ナッシュ「彼が勝手に巻き込んだだけなんですけどね……でもまぁ、野生児の考えは僕には分かりません」


ブランカ「だんサント俺ハ友達! 今度、魚料理、御馳走スル!」ピョンピョン

ダン「やかましい! 魚料理は、まぁ頂くけど……今は試合をしろっ!」

814: 2014/12/10(水)22:32:12 ID:csw
ヤムチャ(茶番だ……完全に茶番だ……)


クスクス……クスクス……

実況「さぁ、ブランカの姿に会場からは笑い声が聞こえます! やはり、野生児の考えは人間には理解出来ない所があるのか!?」

ナッシュ「………ですねぇ。僕もちょっと、何考えてるかわかりません」


ヤムチャ(あの人、攻撃する気、一切ねぇじゃねぇか……笑いを取る事しか考えてねぇじゃねぇか……)


ブランカ「だんサン、アリガトウ! 俺達、友達!」ピョンピョン

ダン「うるせぇっ! いいからお前は試合をしろっ!」


ヤムチャ(そんなに笑いが欲しいなら……芸人でもやってろよ……ちくしょう、また俺が攻めなきゃいけねぇのか……)

815: 2014/12/10(水)22:40:14 ID:csw
ヤムチャ(くそっ……次は、どうやって攻めるか……? ボディスラムと、コブラツイストは使っちまったし……バックドロップかな……?)ムクッ


実況「さぁ、ここで遅れてヤムチャが今、起き上がります!」


ヤムチャ(そこに繋げる為には……蹴りで責めるのは、使ったし……タックルも使っちまった……くそっ、次はどうやって責めるかな……?)


ダン「ほらっ! ヤムチャが起き上がったぞ! あいつは、悪い奴だ! 早く試合をしろ!」

ブランカ「だんサンモ、一緒ニ戦オウ!」

ダン「うるせっ! 俺を巻き込むんじゃねぇっ!」


ヤムチャ(くそっ……あの人、攻撃せずに笑いに走ってばかりだから、俺ばかり攻撃する羽目になってるじゃねぇか! くそっ、どうすっかね……)

ブランカ(ふむ……少し、困った表情をしたかな? よし、それなら……)

816: 2014/12/10(水)22:48:55 ID:csw
ブランカ「ジャア、だんサン! 俺、頑張ッテ戦ウ! 見テテクレ!」

ダン「えっ……? お、おう……」

ブランカ「……イクゾ」

ヤムチャ「……ん?」

ブランカ「……ウオオオォォォッ!」ギュルンッ

ヤムチャ「うおっ……! 何っ……!? 早っ……!」ドスッ


実況「おっと、ここでブランカのローリングアタックっ! 自らの身体を抱え……回転体当たりをヤムチャに仕掛けます! なんという身体能力だ!」

ナッシュ「こういう所が読めないんですよ。不思議なタイミングで繰り出してきますよね」

実況「攻撃を喰らったヤムチャは、大きく尻餅をつきます!」


ヤムチャ「な、なんだ……今のは……」

ブランカ「見テクレ、だんサン! 悪イ奴ガ、尻餅ツイテイルゾ!」

ダン「……俺に振るんじゃねぇよ。試合をしろ、試合を」

817: 2014/12/10(水)22:55:48 ID:csw
ブランカ「俺ハ強ンダ! 皆、見テクレタカ!?」

ヤムチャ「……ん?」

ブランカ「ウオッ! ウオッ! ウオオオォォォッ!」


実況「さぁ、ここでブランカが自分の強さを見せつけるかのように、お客さんに大アピールしている!」

ナッシュ「そうですね」

クスクス……クスクス……

実況「だが、残念っ! 会場からは、声援ではなく笑い声が飛び交う! 何故なら、その姿がゴリラそっくりだからだぁ!」

ナッシュ「だから、そういう事言うのって、よくありませんってば!」


ヤムチャ(この人、完全に攻撃する気ねぇじゃねぇか……笑いの方ばかりやってやがる……)

ブランカ「ウオッ! ウオッ! ウオオオォォォッ!」

ヤムチャ(これが、第二試合かよ……ちくしょう、舐めやがって……だったら、俺が攻撃してやるよ……!)

819: 2014/12/10(水)23:03:34 ID:csw
ヤムチャ「ちくしょう、舐めやがって……だったら……!」ムクッ


実況「おっと、ここで尻餅をついているヤムチャが立ち上がり……」


ヤムチャ「バックドロップの練習台にしてやるよ……! 先ずは、蹴りからだ、うるあぁっ!」シュッ


実況「そして、ブランカに仕掛けたっ! ハイキックだっ!」


ブランカ「……フンッ!」

ヤムチャ「……何っ!?」スカッ


実況「おっと、だがここでブランカはタイミングを合わせて、バク宙で避けたぞ!? 素晴らしい身体能力だ!」

ナッシュ「……動物の本能って凄いですよね」


ヤムチャ(何だよ、これは避けるのかよ……この人、真面目にやってんのか、やってねぇのか、さっぱり読めねぇ……)

ブランカ「……イクゼッ!」

820: 2014/12/10(水)23:10:43 ID:csw
実況「さぁ、そしてブランカは身体を丸め、そのまま高く飛んだぁ!」


ヤムチャ(うおっ、何だよ……凄ぇ高く飛びやがった……)

ブランカ「……ウオオオォォォッ!」ギュルンッ

ヤムチャ(う、うおっ……! そのまま……落ちてきやがったぞ……!?)


実況「さぁ、そのまま頭上からの……回転体当たり攻撃だぁ!」

ナッシュ「……凄い不思議な動きしてますよね」


ブランカ「……ウオオオォォォッ!」

ヤムチャ「う、うおっ……!」ドスッ


実況「こいつはブランカのバックステップローリング! トリッキーな動きでヤムチャを翻弄しての攻撃だ! ヤムチャは、これを喰らい、またも尻餅をついてしまう!」

821: 2014/12/10(水)23:19:34 ID:csw
ブランカ「悪イ奴ガ倒レタゾ! ヨシッ、イクゼ……!」シュッ


実況「おっと、ここでブランカが素早く尻餅をついている、ヤムチャの元へと近づきます!」


ヤムチャ(おぉ、やっと攻撃してくれるのか……)

ブランカ「俺、歯ハ丈夫ダ! 毎日、歯磨キ、シッカリシテイル!」

ヤムチャ「えっ……? 歯……?」

ブランカ「ダカラ……悪イ奴、噛ミチギッテヤルッ……!」ガァーッ

ヤムチャ(ここで、噛み付いてくるのかよ……! この人……やっぱり、完全に真面目に試合する気ねぇじゃねぇか……!)


実況「おっと……? これは、噛みつき攻撃か!? ブランカが、ヤムチャに噛みつき攻撃を仕掛けているのか!?」

ナッシュ「……ですねぇ」


ブランカ「イッタダキマース!」ガジガジ

ヤムチャ「ぐわわぁっ……! くそっ……! 何、しやがるこの野郎……!」

ブランカ(なんだかんだで、いいリアクションしてくれるし……ヤムチャ君って、真面目な子なんだなぁ……)

822: 2014/12/10(水)23:27:52 ID:csw
ブランカ「……噛ミチギッテヤルッ!」ガジガジ

ヤムチャ「ぐわわぁっ……! やめろよっ……! 俺は食い物じゃねぇんだっ……!」ジタバタ


実況「さぁ、野生児らしい、ブランカの噛みつき攻撃ですが……」

ナッシュ「……ヤムチャは苦しんでますね」

実況「当然、人間社会では反則攻撃! 今、レフェリーが制止に向かいます!」


ダン「おいっ! 何やってんだ! 噛み付いてるんじゃねぇよ!」

ブランカ「コイツ、悪イ奴……ダカラ、噛ミツイテ、ヤッツケル!」

ダン「噛みつきは、反則なんだって……! いいから、やめろやっ!」

ブランカ「反則ッテ何ダ……? 美味イノカ、ソレ……?」

ダン「あ~、くそっ……コイツ、話が通じねぇなぁ……どうすっかねぇ……」


実況「さぁさぁ、レフェリーも野生児には言葉が通じないのでしょうかねぇ……? 少し、頭を悩ましているようにも見えます……」

ナッシュ「でも、さっきあの人に懐いてたみたいですから……あの人の言う事なら聞くんじゃないですかねぇ?」

823: 2014/12/10(水)23:37:10 ID:csw
ダン「……俺達、友達だろっ!? 友達の言う事は、ちゃんと聞けや!」

ブランカ「……友達?」ガジガジ

ダン「ブランカ、『待て』だ! 友達の言う事はちゃんと聞けるな!? 『待て』だ!」

ブランカ「……ウッ」ピタッ


実況「おっと、ここでブランカの動きが止まったか!?」

ナッシュ「……レフェリーの人、どんな説得をしたんでしょう?」


ダン「おっ、何だよ……コイツ、話わかるじゃん……そうか、犬と接する時の感じでいけばいいんだな……わかったぞ……」

ブランカ「……ヤッパリ、噛ミツク」

ダン「あ~、ダメダメダメダメ! ノーだ、ノー! へい、ブランカ、カモンカモン! こっちに来い、オヤツの時間だ! オヤツの時間!」

ブランカ「オヤツ……? オヤツ、俺、食ベタイッ!」

ダン「よしっ……だったら、ヤムチャから離れて、こっちに来い……! へいへい、ブランカ、カモンカモン!」


実況「おぉ~っと! 野生児がヤムチャから離れた! これは、人間社会に踏み込む為の大きな一歩だ!」

ナッシュ「……レフェリーは、どんな説得をしたんでしょうね?」

824: 2014/12/10(水)23:45:23 ID:csw
ブランカ「オヤツ、何処!? オヤツ、何処何処!?」キョロキョロ

ダン「まぁ、待て待て待て……とりあえず、待て待て……」

ブランカ「オヤツ食ベタイッ! オヤツ! オヤツ!」

ダン「我が儘言うんじゃねぇよ……とりあえず、ブランカ……『伏せ』だ!」

ブランカ「……」ビシッ


実況「おぉ~っと、レフェリーが……ブランカに何かを命令したら、ブランカはリング上で伏せたぞ!?」


ダン「よ~し、いい感じだ……よしっ! 次は『お手』だっ!」

ブランカ「……」バシッ


実況「おぉ~っと、そしてまたも、レフェリーがブランカに何かを支持したら、ブランカは自分の手を差し出したぞ!? これは、ひょっとして、『お手』ではないのか!?」

ナッシュ「そう見えますねぇ……」

実況「という事は、先程のは『伏せ』か!? おぉ~っと、今度は『チンチン』だ! ブランカは『チンチン』をしています!」

ナッシュ「……犬の芸の方の奴ですね」


ダン「よし、ブランカ! 『チンチン』だ!」

ブランカ「……」ビシッ

826: 2014/12/10(水)23:51:14 ID:csw
クスクス……クスクス……

ヤムチャ(茶番だ……完全に茶番だ……)


クスクス……クスクス……

ダン「よ~し、ブランカ、そうだな……次は……」

ブランカ「ブランカ、何デモ、デキルゾ! ドントコイ!」


クスクス……クスクス……

ヤムチャ(長めにダウンしてろって、言われたけど……その間に、こんな茶番劇繰り広げてやがるのか……)


クスクス……クスクス……

実況「さぁ、レフェリーは、ついにブランカを手懐ける事に成功しました!」

ナッシュ「完全に、犬扱いですけどね……」


クスクス……クスクス……

ヤムチャ(ふざけんじゃねぇよ……こんな試合……俺は、やりたくねぇんだよ……)ムクッ

834: 2014/12/11(木)22:11:26 ID:Y6Z
ヤムチャ「くそっ……ふざけやがって……」ズガズガ


実況「おっと、ここでヤムチャが立ち上がり、ブランカに近づきます! 少し、怒っているんでしょうかね? 表情からは、怒りが捉えられます」

ナッシュ「……さっきの噛みつき攻撃で、怒っちゃったんですかねぇ?」


ダン「よ~し、次は、そうだな……じゃあ、三回回って……」

ブランカ「三回回ッテ、ドウスルンダ!? ごりらノ真似カ? 俺、上手ダゾ!?」

ヤムチャ「……ふざけてんじゃねぇよっ!」

ブランカ「……ん?」

ヤムチャ「……オラァっ!」シュッ

ブランカ「……アガッ!」


実況「おぉ~と、ここでヤムチャがブランカの背後から、蹴りを当てました! 側頭部辺りに命中したか!?」


ブランカ「アガガ……痛イ……痛イ……」クラクラ

ヤムチャ「真面目に試合をしやがれっ! 真面目によぉ!」

835: 2014/12/11(木)22:20:19 ID:Y6Z
ブランカ「だんサン、痛イッ……! 俺、蹴ラレタッ……! 助ケテッ……!」

ダン「おいおい、俺に助けを求めんじゃねぇよ……それに、怒らせたのは、お前自身じゃねぇか……?」

ブランカ「何、言ッテルカ、分カラナイッ! トニカク、助ケテクレ……!」

ヤムチャ(……この野郎)


実況「ブランカはコレ、怯えてるんでしょうかねぇ……? レフェリーに助けを求めています、が……」

ナッシュ「……レフェリーもいい迷惑ですよ」


ヤムチャ(この野郎……とことん、試合をやる気はねぇってか……)

ブランカ「だんサン、助ケテッ……! アイツ、怒ッテル……! 俺、怖イッ……!」

ダン「あのなぁ? 俺に、助けを求めるんじゃねぇよ!」

ヤムチャ(こんな試合で何を学べってんだよ……この人がお笑いショーやってるだけじゃねぇか……)ワナワナ

836: 2014/12/11(木)22:27:24 ID:Y6Z
ブランカ「……ヒイイィ! アイツ、怒ッテル! ブランカ、怖イ!」

ヤムチャ(いいから、何か仕掛けてこいや……試合をしろよ、試合をよぉ……)

ブランカ「ココハ、逃ゲルガ勝チ! ブランカ、逃ゲルッ!」

ヤムチャ「……ん?」

ダン「……ん?」

ブランカ「……ウオオオォォォッ!」ダダッ


実況「おぉ~と、これはこれは……ブランカが相手に背を向け、逃げ出しました! 敵前大逃亡であります!」


ヤムチャ(……戦えよ、オイっ! 何で、逃げんだよっ! ここから、俺に何しろってんだよ!?)

ブランカ「ウオゥ! ウオゥ! 捕マエテミロヨ! ブランカ、足ハ早インダゾッ!」

ヤムチャ「……くそっ!」

837: 2014/12/11(木)22:34:01 ID:Y6Z
ヤムチャ「くそっ……! 待ちやがれ、こらっ……!」ダダッ

ブランカ「ヘヘーン! 捕マンナイヨ~ダッ!」ダダッ


実況「さぁ、敵前逃亡したブランカを、今捕まえようとヤムチャが追いかけ、リング上をグルグルグルグル走り回ってますが……」

ナッシュ「……逃げ足、早いですねぇ」

実況「何だか、私、その姿が檻から逃げ出したゴリラを追いかける、動物園の飼育員の様に見えてきました!」

ナッシュ「……僕もです」


クスクス……クスクス……

ヤムチャ(くそっ……また、いつの間にか、ブランカさんのお笑いショーになってるじゃねぇか……)

ブランカ「何ダカ、鬼ゴッコミタイダ! 楽シイッ!」

ヤムチャ「くそっ、逃げんじゃねぇよ……! 試合をしろ、試合をよぉっ!」

838: 2014/12/11(木)22:40:41 ID:Y6Z
ブランカ「……ン?」ドスッ

ヤムチャ(はぁ……はぁ……これで、やっと終わりか……?)


実況「おっと、ここでブランカがコーナーに追い詰められました! ついにゴリラの捕獲に成功したか!?」

ナッシュ「……まぁ、何仕掛けてくるかわかんないし、まだ油断は出来ませんけどね」


ブランカ「アッ、シマッタ……ヤバイ……逃ゲ場ガナイ……」

ヤムチャ(もう疲れたよ……早く、試合を終わらせたい……)

ブランカ「ゴ、ゴメン……俺、噛ミツイタ事ハ謝ル……ダカラ……」

ヤムチャ「……うるせぇっ!」シュッ

ブランカ「……痛イッ!」


実況「さぁ、そしてブランカをコーナーに追い詰め……ヤムチャが得意の打撃攻撃を仕掛けていきます!」

ナッシュ「あそこは、逃げ場もないですからね。いいポジションです」

839: 2014/12/11(木)22:48:28 ID:Y6Z
ヤムチャ「……おらぁっ!」シュッ

ブランカ「……グッ!」

ヤムチャ「……うるぁっ!」シュッ

ブランカ「俺ガ、悪カッタ……! ゴメン……! ゴメンナサイ……!」

ヤムチャ「黙ってろっ……! オラッ……!」シュッ

ブランカ「……グッ!」


実況「さぁさぁ、ヤムチャの怒りの連続攻撃っ! その威圧感に押され、ブランカ、手も足も出ませんっ! 防戦一方です!」

ナッシュ「かなり、怯えてますね。あそこまで、ポーカーフェイスの出来ない人ってのも、逆に珍しいですよね?」


ヤムチャ(今は早く終わらせたい……いくらプロレスだからって……こんな試合、俺はやりたくねぇんだよ……!)

ブランカ(そろそろかな……? よし、では狙いを定めて……よっとっ……!)シュッ

ヤムチャ(……この野郎っ!)


チーン

842: 2014/12/11(木)22:57:05 ID:Y6Z
実況「おっと、おっと……!? ブランカの足が、ヤムチャの股間に、ヒットしてしまったか!? ヤムチャの動きが止まりました!?」

ナッシュ「……また、嫌な所に当たりましたねぇ。狙ってたんですかね?」


ヤムチャ(このタイミングで、仕掛けてくるのかよ……? まだ、お笑いがやりてぇのかよ、この野郎……)

ブランカ(さぁ、ヤムチャ君……急所攻撃をしたよ……後は、苦しんで……君が笑いを取ってくれ……)

ヤムチャ(ふざけやがって……この野郎……)ガクッ


実況「さぁ、ヤムチャは股間を抑えて、崩れ落ちてしまいますっ! 男にとってこれは辛い辛い攻撃だぁ!」

ナッシュ「……ですね」


ブランカ(言われた事を、しっかりやってくれて……彼は、本当に真面目なんだと思う……正直、リアクション取ってくれるか、不安な部分もあったしね……)

ヤムチャ(これさえ、我慢すれば、この試合はもう終わりだ……! 今だけの我慢……今だけの我慢だ、ちくしょうっ……!)ブルブル

843: 2014/12/11(木)23:04:21 ID:Y6Z
実況「さぁ、ヤムチャは蹲っております! こいつは辛いっ!」


ブランカ(だけど、そうじゃない……そうじゃないんだ……)


ヤムチャー、ダイジョウブー?

実況「お客さんも、ヤムチャの事を心配しております!」

ナッシュ「こういう時の声援って、逆に辛い物があったりするんですけどね」


ヤムチャ(くそっ……昔の、嫌な記憶が蘇ってきたじゃねぇか……ふざけんじゃねぇぞ……!)

ブランカ(君がする事は『お客さんに心配してもらう』事じゃないんだ……『笑ってもらう事』なんだよ……)


ヤムチャー、ガンバレー

ブランカ(……だから、もう少しだけ辛い思いをしてもらうよ。ゴメンね)スッ

実況「おっと、ここでブランカがヤムチャに近づきます! 攻撃を仕掛けるのでしょうか?」

844: 2014/12/11(木)23:12:02 ID:Y6Z
ブランカ「ゴ、ゴメン……ワザトジャナイ……大丈夫カ……?」

ヤムチャ(……あぁ?)


実況「おっと、両手を合わせて、ブランカがヤムチャに謝っています……どうやら、先程のは故意ではなく、事故だったようですね!?」

ナッシュ「……ですねぇ?」


ブランカ「ココ、叩クト……楽ニナル……俺、手伝ッテヤル……ソコ、蹴ラレルト、痛イノ知ッテル……」

ヤムチャ(……こいつ)

ブランカ「大丈夫カ? シッカリシロ……)トントン


実況「おっと、ここでブランカがヤムチャの腰の辺りにを、トントンと叩き……ヤムチャの事を楽にしてあげようとしているのか!?」

ナッシュ「……野生児でも、そういう知識はあるんですね?」

実況「本能的な物なのか!? こいつは、驚きです! なんと、急所攻撃によって、人類と野生児の友情が芽生えました! こいつは奇跡の瞬間です!」

845: 2014/12/11(木)23:18:24 ID:Y6Z
クスクス……クスクス……

ブランカ「大丈夫カ……? 皆、心配シテイル……シッカリシロ……」トントン

ヤムチャ(……とことん、俺を笑い者にしようってのか、コイツ)


クスクス……クスクス……

実況「さぁ、人類と野生児の友情が芽生えた奇跡の瞬間っ! なのに、何故か何処か可笑しい! これは、どういった事だ!?」

ナッシュ「……キッカケがアレですからね」


クスクス……クスクス……

ブランカ「ソロソロ楽ニナッタカ……? モウ、大丈夫カ……?」トントン

ヤムチャ(そりゃ、こんだけ笑われれば……もう十分だよなぁ……? くそっ、もう、こんな試合そろそろ終わらしてやるぜ……そろそろ時間も10分だろ……!)ムクッ

846: 2014/12/11(木)23:26:49 ID:Y6Z
パチパチ……パチパチ……

実況「おっと、ここでヤムチャが立ち上がりました! 会場からは暖かい拍手です!」


ブランカ「大丈夫カ……? ソレナラ試合ヲ……」

ヤムチャ「……うるせぇっ!」ピョンッ

ブランカ「……ン?」

ヤムチャ「……うるぁっ!」バシッ

ブランカ「……グッ!」ヨロッ


実況「おぉ~っと、起き上がったヤムチャはそのままブランカに、正面飛びの延髄斬りっ! ブランカは、大きくフラつきます!」

ナッシュ「折角芽生えた、友情……破壊しちゃいましたね……」

実況「急所蹴りから芽生える友情など、この世には存在しないっ! ヤムチャの怒りの蹴りは当然の行いだぁ!」

ナッシュ「い、いやっ……! 貴方が先に言ったんでしょう……?」


ブランカ「……ウゥッ」フラッ

ヤムチャ(何だよ、フラついて、後ろ向きやがって……バックドロップ仕掛けろって、言ってんのか……? 散々やりまくった後に……ようやく真面目に試合する気になったってか……!?)

847: 2014/12/11(木)23:32:38 ID:Y6Z
ヤムチャ「……くそっ!」ガシッ

ブランカ「……グッ!」


実況「おぉ~っと、そしてヤムチャは、素早く起きあがり、そのままブランカの背後を掴む!」

ナッシュ「……何か、狙ってますね」


ヤムチャ「こっちは、とっとと終わらせてぇんだ! だったら、望み通り仕掛けてやるよぉ……!」ググッ

ブランカ「ウ、ウオオォッ……?」

ヤムチャ「……うるああぁぁっ!」ドシーンッ

ブランカ「……グッ!」


実況「そして、そのまま決めたぁ! ヤムチャのバックドロップ! ブランカを背後から投げていったぁ!」

ナッシュ「なんだかんだで、ブランカはヤムチャの、神経を逆撫でする様な事ばかりしてますからね……そろそろ怒りが爆発したんじゃないですか?」

848: 2014/12/11(木)23:39:27 ID:Y6Z
ブランカ「ウウゥ……痛イ……」

ヤムチャ(これで、終わらせてやる……)ググッ


実況「さぁ、そしてここでヤムチャが構えた! これはトラースキックの構えだ! ブランカの起きあがりのタイミングを慎重に測っている!」

ナッシュ「逃すと、また何しでかすかわかりませんからね……ここで、決めたいですよね……」


ブランカ「ウウゥ……ウウゥ……」ムクッ

ヤムチャ「……今だっ!」


実況「さぁ、そして今……ブランカが立ち上がり……」


ヤムチャ「……うるああぁぁっ!」スパーンッ

ブランカ「!」


実況「タイミングを合わせてぶち当てたぁ! ヤムチャのトラースキックっ! いいの入ったんじゃありませんかねぇ、ナッシュさん!?」

ナッシュ「えぇ、いいの入ったと思いますよ!?」

実況「そのままブランカは、大きくダーウンっ!」

849: 2014/12/11(木)23:43:46 ID:Y6Z
ヤムチャ「……カウントっ!」

ダン「お、おい……ヤムチャ……そんなに起こるんじゃねぇよ……」


実況「さぁ、そしてヤムチャがフォールの体制に! 今、カウントが取られます!」


ダン「ワンっ……!」

シーン

ダン「ツーっ……!」

ヤムチャ(くそっ……試合を決めに行ってるのに、反応がねぇ……何だよ、この試合は……!)

ダン「……スリーっ!」


実況「さぁ、そしてここで3カウント! ヤムチャのトラースキックからの体固めで試合は決着です!」

860: 2014/12/12(金)22:17:57 ID:3BJ
実況「さぁ、試合はヤムチャの勝利という結果になりました! ナッシュさんは今の試合……どういった感想を抱かれましたか!?」

ナッシュ「そうですねぇ……え~っと、ヤムチャ選手?」

実況「はい!」

ナッシュ「やっぱり、三番弟子といえども、流石は空手軍団……鋭い打撃攻撃を持っていてね、流石空手軍団だなと思いましたね」

実況「いずれ、ナッシュさん達と戦う事になるかもしれませんね!?」

ナッシュ「そうですね。その時のタッグパートナーは、ケンになるのかな……? それとも、リュウかな……? アハハ、これまた強敵ですね」

実況「何をおっしゃいますか!? ナッシュさんとガイルさんだって、実力派コンビじゃありませんか!?」

ナッシュ「まぁ、きっといずれ、戦う機会が来ると思うんでね、その時はそういった部分に気をつけながら戦いたいと思いますよ……でも、まぁ……」

実況「……でも」

ナッシュ「やっぱり、今は目の前にいる、ユンとヤンですね。彼らからベルトを取り戻す事が一番です」

実況「では、ナッシュさん、最後に一言、ファンに向けて……意気込みなんかをお願いします!」

ナッシュ「はい。今日はありがとうございました。次の試合ではね……必ず、ベルトを取り戻すので……これからも応援、どうかよろしくお願いします!」

実況「それでは、ここらで第二試合の中継を終了したいと思いま~す! 本日のゲスト解説は……!」

ナッシュ「ナッシュです。ありがとうございました」

実況「では、CMの後は……第三試合……激しい激しい、女達の戦いです!」

861: 2014/12/12(金)22:24:54 ID:3BJ
パチパチ……パチパチ……

ヤムチャ(……くそっ!)

パチパチ……パチパチ……

ヤムチャ(股間を蹴られて……拍手を貰って……笑われて……)

パチパチ……パチパチ……

ヤムチャ(……何だよ、この試合っ!)

パチパチ……パチパチ……

ヤムチャ(それでも……俺は、自分に出来る事は、全てやったぞ……? 結果は、出しただろ!)

パチパチ……パチパチ……

ヤムチャ(こんな試合……二度とゴメンだよ……こっちは腐っても格闘家なんだっ……! お笑い芸人やりに来たんじゃねぇんだよ……!)

863: 2014/12/12(金)22:33:43 ID:3BJ
ーーー


プーアル「あ、あの……ヤムチャ様、お疲れさまでした……」

ヤムチャ「……」

プーアル「えっと……あの、試合よかったです……! ヤムチャ様、頑張ってましたね!?」

ヤムチャ「股間蹴られて、悶えてる試合が……良かったんだ……?」

プーアル「い、いやっ……! そ、そういう意味じゃなくて……!」

ヤムチャ「……じゃあ、どういう意味なんだよ?」

プーアル「えっと、ほら……? 練習したコブラツイストとか、格好良く出来たじゃないですか!? ヤムチャ様、格好良かったですよ! お客さんも、きっとそう思ってます!」

ヤムチャ「思ってねぇよ……股間蹴られて悶えて、笑い者にさせられたんだぞ……? どう考えても、そっちしか覚えてねぇだろが……」

プーアル(ヤムチャ様……やっぱり、怒ってる……昔の天下一武道会の事、思い出しちゃったかな……?)

ヤムチャ「……ふざけんじゃねぇよ。やってられねぇよ、こんな試合」

プーアル「……僕」

ヤムチャ「……ん?」

プーアル「……そんな怒った顔のヤムチャ様の事、好きじゃないです」

ヤムチャ「……」

プーアル「……」

864: 2014/12/12(金)22:50:47 ID:3BJ
プーアル「……ヤムチャ様のとりえは、いつも明るく優しい所にあるじゃないですか?」

ヤムチャ「……」

プーアル「天津飯さんに、やられても……ベジータさん達に殺されても……その後、恨みつらみを残さず、ヤムチャさんは仲間として、仲良く接してる、器の広い男じゃないですか……」

ヤムチャ「……」

プーアル「股間を蹴られたぐらい、いいじゃないですか? そんな事ぐらいで怒っているヤムチャ様なんて……なんだか、ヤムチャ様らしくありません……」

ヤムチャ「……」

プーアル「そりゃ、変な試合だったとは、思いますよ……? でも、ヤムチャ様は、練習した事をちゃんとそこで披露したじゃないですか!? 今日のコブラツイストは本当に格好良かったですよ!?」

ヤムチャ「……本当って、じゃあ、いつもは嘘ついてんのか? プーアル?」

プーアル「そういう事じゃ、ありませんってば……! ヤムチャ様は、結果を出したじゃないですか!? こんな試合、今日一日だけですよ! 明日からはちゃんとした試合、出来ますって!」

ヤムチャ「そうだよな……俺、結果は出したもんな……?」

プーアル「そうですよ! ヤムチャ様は本当は、出来る人なんですから!」

ヤムチャ「『本当は』って……だったら、いつもは出来ない人みたいじゃねぇかよ!?」

プーアル「アハハ、そういう意味じゃありませんってば……」

ヤムチャ「でもまぁ、そうだよな……こんな試合、今日だけだよな……なんか、お前に当たっちゃって悪かったな……プーアル……?」

プーアル「いえいえ! ヤムチャ様がストレス溜めすぎて、天津飯さんみたいになっちゃったら、困りますからね! ストレスが溜まったら、いくらでも僕に当たって下さいね!」

ヤムチャ「……それは、ハゲるという事か!? 言っておくけど、俺結構ふさふさなんだぞ!? 見た目より10歳は若く見られてんだからな!」

865: 2014/12/12(金)22:59:07 ID:3BJ
ブランカ「あっ、ヤムチャ君、お疲れさま」

ヤムチャ「……ん?」

プーアル「あっ、ブランカさん、お疲れ様です! ヤムチャ様の、指導ありがとうございました!」

ブランカ「思ってたより、全然筋が良かったよ。上手く、空気も読んでくれてたしね? ディージェ君なんかより、全然筋がある」

ヤムチャ「……そうっすか」

ブランカ「まぁ、これなら……しばらく、第二試合で続けてれば、早い段階で戻る事が出来るだろうね……まぁ、早い所第五試合に戻れる様、これからも頑張ろう!」

ヤムチャ「……はぁ!?」

ブランカ「多分、明日の対戦相手はダルシムさんじゃないかな……? ダルシムさんは僕程……」

ヤムチャ「ちょっと待って下さいよ! ブランカさん!」

ブランカ「……ん? どうしたの?」

ヤムチャ「どうしたじゃ、ないでしょう! 俺、結果は出したでしょうが! なんで、第二試合で続ける事になってるんですか!?」

866: 2014/12/12(金)23:06:52 ID:3BJ
ブランカ「……結果って?」

ヤムチャ「ブランカさんに、言われた通り、噛みつかれた後は、倒れ続けて時間を稼ぎました!」

ブランカ「うん、なかなかいいタイミングだったね。あれは良かったよ」

ヤムチャ「股間を蹴られて、悶えて笑い者にもなりましたよね!? あれも指示された通りです!」

ブランカ「嫌な役割だけど、よくやってくれたね。本当にありがとう」

ヤムチャ「新技のコブラツイストだって出しましたよ!? 練習の成果、見せたでしょうが!」

ブランカ「ヤムチャ君がコブラツイスト使ってるの見た事なかったからね……あれは、新しく覚えたんだ? 良かったと思うよ?」

ヤムチャ「こんだけ、結果は出してるんですよ!? もう、いいでしょう! もう十分でしょうが! サガットさん達とやっても大丈夫でしょうが!」

ブランカ「う~ん……いやぁ、サガット君達とするのは、まだ早いでしょう……大体、ヤムチャ君は、サガット君達とどんな試合をしたいの……?」

ヤムチャ「こんなふざけた試合じゃなくて……普通の試合ですよ! 普通の試合!」

867: 2014/12/12(金)23:14:50 ID:3BJ
ブランカ「普通の試合……まぁ、そう思うのも仕方ないか……ここはお笑いマッチをする場所だからね……」

ヤムチャ「そうっすよ! こんな試合……俺は、したくないんですよ! 普通の試合がしたいんですっ!」

ブランカ「でもさぁ……? ヤムチャ君は、普通の試合をしたいって言うけどさぁ……? そんな、普通の試合を作る能力……ヤムチャ君には、あるのかな……?」

ヤムチャ「……はぁ?」

ブランカ「今日の試合は、お笑いマッチだ……ヤムチャ君の言う所の、ふざけた試合だ……本当は、ヤムチャ君、こんな試合したくなかったでしょ? それは、試合中なんとなく感じたよ?」

ヤムチャ「そりゃ、こんな試合したくないっすよ……」

ブランカ「でも、結局する事になっちゃったよね……? そのふざけた試合をさぁ……? なんで、そんな試合をする事になったか、わかる……?」

ヤムチャ「そりゃ、あんたがふざけた事ばかり、やってるから……」

ブランカ「そう、ソコなんだよ……僕がふざけた事ばかり、やっているから、ふざけた試合になっちゃったんだね……? ヤムチャ君に、今足りないのはソコなんだよ」

ヤムチャ「……はぁ?」

870: 2014/12/12(金)23:25:00 ID:3BJ
ブランカ「今日の試合……ふざけた試合にしたい僕と……真面目な試合をしたいヤムチャ君のお互いの意思がぶつかったんだ……」

ヤムチャ「……はぁ?」

ブランカ「そして、その結果……僕が勝ったんだ……ヤムチャ君の意思は、僕の意思に飲み込まれ……ヤムチャ君の真面目な試合をしたいという意思は、消えてしまった……」

ヤムチャ「……何、言ってるんすか?」

ブランカ「試合全体の流れを思い返してみようよ……? あの試合……試合を作っていたのは、僕とヤムチャ君のどっちかな……? 僕ばかりが試合を作ってたんじゃないかな?」

ヤムチャ「……」

ブランカ「ヤムチャ君には、そういった試合をリードする能力が決定的に足りていない」

ヤムチャ「……何だって?」

ブランカ「第五試合の君は、まるで箱入り娘のように、丁寧に丁寧にサガット君やケン君達に甘やかされて育てられれいる」

872: 2014/12/12(金)23:42:39 ID:3BJ
ブランカ「サガット君や、ケン君は自分の意思を頃し……とにかく、君の事を第一に考えている」

ヤムチャ「……」

ブランカ「こういった行動をしたら、君が行動しやすいんじゃないか……その行動だったら、君はお客さんに受け入れてもらえるんじゃないか……なんてね……」

ヤムチャ「……」

ブランカ「ヤムチャ君は、相手におんぶに抱っこの戦い方なんだよ……そろそろ、第五試合でそれを続けるのは限界だ。サガット君や、ケン君の良さが氏んでしまうからね」

ヤムチャ「……」

ブランカ「自分が攻撃をしたいなら……その主張は自分自信でしなくてはいけない。相手の行動を中断させ……自分の作りたい試合展開に持ち込み……そして、自分のいい所を見せて、お客さんの歓声を貰う……」

ヤムチャ「……」

ブランカ「自分のいい所を見せたいってのは、皆同じ思いだ……リング上で、お互いがお互いに自分のいい所を見せようと、駆け引きを繰り返す戦いこそがプロレスだ」

ヤムチャ「……」

ブランカ「今、ヤムチャ君が、自分自信をよく見せる為だけに、好き勝手に行動したらどうなる……? 試合が壊れてしまう事にならないかい? だからこそ、今日は僕の注文に黙って従ってくれたんだろう?」

873: 2014/12/12(金)23:51:26 ID:3BJ
ブランカ「そういった能力……それを鍛える為に、しばらくこの位置で頑張ろう……」

ヤムチャ「……この位置?」

ブランカ「ここなら、仮に試合が壊れたとしても……そこまで大事にはならない……第三試合、第四試合、第五試合、そしてメインイベント……そこで、他の人達がフォローをしてくれる」

ヤムチャ「……」

ブランカ「面白くない第二試合だったな……なんて、思いで終わることはない……凄く、いいメインイベントを見れて楽しかったな……なんて、思いでお客さん達は帰ってくれる……僕達の試合は記憶に残らない……」

ヤムチャ「……そもそも、お客さんいませんもんね」

ブランカ「今の君の、成長の為には、この位置がベストだと思う。だから、しばらくこの位置で頑張ろう」

ヤムチャ「しばらく……それって、いつまでなんですよ……?」

ブランカ「10試合か、20試合か、はたまた50試合か……とにかく、君が試合を動かせるだけの力を手に入れるまでだ」

ヤムチャ「ハハハ、そんなにあるんすか?」

ブランカ「勿論、その中には、今日みたいな試合があるかもしれない……でも……」

ヤムチャ「……ふざけんじゃねぇっ!」

885: 2014/12/13(土)22:21:29 ID:ekG
ヤムチャ「10試合も、20試合も……こんな試合しろってか!? 毎日毎日、お笑い芸人の真似事してよぉ……?」

ブランカ「……君の成長の為だ」

ヤムチャ「股間蹴られて……笑い者になって……おまけに、誰の記憶にも残らない試合ってか!? だったら、こんなモン、やる意味ねぇよ!」

プーアル「ちょ、ちょっと……ヤムチャ様……!」

ヤムチャ「プロレスでもねぇ……お笑い芸人でもねぇ……どっちつかずの半端者の試合じゃねぇかよ!?」

ブランカ「……そんな事はない」

ヤムチャ「いくら、俺が格闘技で結果を出せねぇ半端者だからってよぉ、こんな試合やりたかねぇんだよ!? だったら、格闘技に行った方がマシだよ! 股間蹴られる事もねぇしな、あぁ!?」

プーアル「……ヤムチャ様っ!」

ヤムチャ「……やってられっか、プロレスなんて。もうウンザリだ。プーアル、行くぞ」

プーアル「えっ……? ヤムチャ様、何処に行くんですか……?」

ヤムチャ「……天津飯に修行をつけてもらう。ようやく、目が覚めたよ。俺は、武道家なんだ、こんな場所にいるのは間違いだった。プーアル、行くぞ」

プーアル「いやいやいや……今更、天津飯さんに修行なんかしてもらったって……悟空さん達に、追いつけるとでも思ってるんですか……!?」

ヤムチャ「……うるせぇ! 珍しく人がやる気になってるのに、茶々入れるんじゃねぇよっ!」

プーアル「あ、あの……ブランカさん……? 大丈夫です……! ヤムチャ様、ちょっと今、冷静じゃないだけで……大丈夫です! 明日もちゃんと来ますから……!」


ブランカ「……」

886: 2014/12/13(土)22:33:55 ID:ekG
ダルシム「……ナマステ」

ブランカ「あっ、ダルシムさん……」

ダルシム「盗み聞きするつもりはなかったんだがな……初めての第二試合のヤムチャ君に、声を掛けようと思ったら……君とヤムチャ君が言い争ってるのが聞こえてな……」

ブランカ「……彼は、若いですね」

ダルシム「彼の育成は、私がしようか……? 私は、君程笑いを取る試合はしない……ただただ、地味な試合だ……ヤムチャ君には、そっちの方がいいんじゃないか……?」

ブランカ「……う~ん」

ダルシム「私が、ヤムチャ君……そして、君がディージェイ君の担当だ……ディージェイ君は、君の試合にそこまで文句も言ってないだろう……」

ブランカ「でも、そうしたら……彼、堅物になっちゃいますよ……? 第五試合でも、急所を蹴られる事はあります……彼は、シャドルーと抗争中の身ですからね……」

ダルシム「だが、ここで彼に辞められては困るだろう……? 折角、空手軍団とシャドルーの力関係が拮抗してきたというのに……辞められては、元も子もないぞ……?」

ブランカ「とりあえず、今の僕の言葉は彼は聞く耳を持たないだろうから……その辺りは、ダンさんに説得してもらいますよ……時間空いたら、ダンさん伝えておきます……」

ダルシム「……大丈夫か? 相当、荒れてたみたいだが?」

ブランカ「……大丈夫ですよ。自分の場合は、彼よりもっと荒れてましたから」

889: 2014/12/13(土)22:48:58 ID:ekG
ダルシム「そう言えば、そうだったな……君の場合、控え室のありとあらゆるロッカーを破壊して……」

ブランカ「……止めに来た、貴方をぶん殴ったんですよね。 本当に、あの時は申し訳ありませんでした」

ダルシム「そして、そのまま現場監督の元に殴り込みに行ったんだったな?」

ブランカ「当時はね、若かったんですよ……いきなり、明日からお前は野生児だ……なんて、言われて……受け入れる事が出来ませんでした……」

ダルシム「あの時は、大変だったよ……現場監督監督にも手を出すわ……エース格の選手にも手を出すわ……本当に、団体の終わりかと思ったもんだ……」

ブランカ「でも、自分の場合……こういったキャラを作らなければ、生き残る事が出来なかった……きっと、あのまま続けてても、お客さんに受け入れられずに……何処かで終わってたでしょう……」

ダルシム「……」

ブランカ「……彼の場合は、自分とは違います。一生、やるわけではありません。しっかりと空手軍団という帰るべき場所があるんです」

ダルシム「……ふむ」

ブランカ「だけど、その場所で……お客さんに受け入れてもらう為には……こういった惨めな思いをする必要もあるんですよ……」

ダルシム「彼もまた……エース候補だからな……」

ブランカ「今は、いくらでも恨んでもらって構いません……二度と、この位置に戻りたくないと思って、主力の選手はやってるんでるよ……」

ダルシム「君にばかり汚れ役を押し付けて、申し訳ないな……同じ、第二試合での育成担当なのに……」

ブランカ「ダルシムさんは、根が優しいから、そういうのは向いてませんよ……今まで通り、私が鞭……そして、ダルシムさんが飴……そうしていった方が、上手くいきます」

ダルシム「……とりあえず、ダン君に、彼の事を引き止めてもらわないとな。ここで辞めてもらわれては、惜しすぎる」

ブランカ「……えぇ」

891: 2014/12/13(土)23:02:28 ID:ekG
ーーー


プーアル「ちょっと、ちょっと……! ヤムチャ様、落ち着いて下さいって……!」

ヤムチャ「……うるせぇ、プーアル。お前も荷物纏めるの手伝え! 今日でプロレスはおしまいだ」

プーアル「ヤムチャ様、ちょっと嫌な事があったぐらいで辞めるなんて……考え直して下さいよ……!?」

ヤムチャ「ちょっとじゃねぇ……これから、ずーっと、続くんだ……ずーっと、ずーっと、な……?」

プーアル「今、辞めたら、サガットさんや、ケンさんにまで迷惑掛かってしまうんですよ? わかってるんですか!?」

ヤムチャ「その為に自分を犠牲にする気はねぇ……俺はなぁ、悟空達との戦いでみっともねぇ所ばかり見せてるけど……プライドがねぇって訳じゃねぇんだよ!」

プーアル「それは、勿論、わかってますけど……!」

ヤムチャ「俺なりに修行して……強くなって……それで、勝てるかもって見込んで戦いに行ってるんだ……! それでも、一歩及ばす……毎回やられてるんだ……こっちは、最初から格好悪い所を見せる為にやってるんじゃねぇんだよ!」

プーアル「わかってますって! ヤムチャ様は、毎回毎回、必氏に努力をしてますよね……!? だから、ここでももうちょっとだけ、努力してみましょうよ! 折角お仕事決まったんですから!?」

ヤムチャ「……努力して、股間蹴られろってか? そんなもんは、努力じゃない。神様と戦った時に、身を持って知らされた事だ」

プーアル「そもそもねぇ……? 気に入らない事があったから、辞めるって、それじゃあアルバイトですよ……! ヤムチャ様は、就職したんだから、辞める時には、ちゃんと退職届を……って、あ~、そうじゃない! そうじゃない!」

892: 2014/12/13(土)23:11:01 ID:ekG
ガチャッ


ヤムチャ「……ん?」

プーアル「あっ……!」


さくら「あっ、ヤムチャさんっ……! お、お疲れさまっす……!」


ヤムチャ「……」

プーアル「さくらさん!」


さくら「あっ、えっと……ここ、男子更衣室っすよね……? ノックしてなかったすよね……? 申し訳ないっす……」


ヤムチャ「……どうしたの? こんな所にまで」

さくら「い、いや……あの~、ヤムチャさん……慣れない、第二試合だったじゃないっすか……?」

ヤムチャ「……」

さくら「それで、ヤムチャさん、試合終わりに険しい顔してたから……ちょっと、気になっちゃって……自分の試合中も、なんとなく気になっちゃって……」

ヤムチャ「……」

さくら「それで、今……自分の試合が終わったから……走ってここまで来て……それで、その……ノックを忘れて……」

ヤムチャ「……」

さくら「とりあえず、今に至るという訳っす……と、とりあえず、一回出てちゃんとノックをした方が、いいっすかねぇ……?」

ヤムチャ「……ノックはいいよ。ノックはさぁ」

893: 2014/12/13(土)23:20:40 ID:ekG
さくら「一昨日の飲み会は、申し訳なかったっす……!」ペコッ

ヤムチャ「……はぁ?」

さくら「あの……自分、酔ってて……あんまり、覚えてないんすけど……ヤムチャさんの事、スーパールーキーとか言って、煽っちゃったらしいっすね……? ダンさんから、昨日聞いたっす……」

ヤムチャ「……別に気にしてないよ、そんな事」

さくら「それなのに……ヤムチャさん、第二試合になっちゃって……怒ってる理由って、それっすよね……?」

ヤムチャ「……はぁ?」

さくら「だから……自分が変に煽っちゃったせいで……今日の第二試合……ヤムチャさん、そんなに怒ってるっすよね……?」

ヤムチャ「……そういう訳じゃないよ」

さくら「だ、だから、今日は自分が愚痴聞くっす! 今から、飲みに行きましょうよ!?」

ヤムチャ「……はぁ?」

プーアル「あっ、それいいですね! 嫌な事があったら、お酒を飲んで忘れる! しかも、女性と二人っきりですよ!? いいじゃないですか、ヤムチャ様!」

ヤムチャ「どうせ、プーアル……おめぇも来るんだろ……? 二人っきりじゃねぇよ……」

プーアル「僕は、ペットみたいなもんですよ。数には入っていません」

894: 2014/12/13(土)23:27:24 ID:ekG
さくら「あ、あの……」

ヤムチャ「……ん?」

さくら「……辞めないで欲しいっす」

ヤムチャ「……」

さくら「ヤムチャさんには、本当に迷惑ばっかり掛けてるっす……毎日毎日、ヤムチャさんは、ストレスを溜めてると思うっす……」

ヤムチャ「……」

さくら「だけど……辞めないで欲しいっす……ヤムチャさんは、まだまだ始まったばかりっす……」

ヤムチャ「……」

さくら「サガットさん達はまだ試合中だから……まだ来れないっすけど……自分は、もう試合が終わったから大丈夫っす……! この後は、ずっとずっと暇っす……!」

ヤムチャ「……」

さくら「だから、今度は自分が聞く番っす……ヤムチャさんの不満、全部自分にぶつけちゃって下さい……」

ヤムチャ「……」

さくら「それで……明日からも、またスッキリ、プロレス続けて欲しいっす……」

895: 2014/12/13(土)23:37:03 ID:ekG
プーアル「ほらほら、女性がここまで誘ってるんですよ!? ヤムチャ様、これに応えないと、男が廃りますよ!」

ヤムチャ「いやいや、さくらちゃんはそういう意味で言ってんじゃねぇだろが……」

プーアル「何、言ってんですか!? ほら、飲みに行きましょうよ! 夕方から飲むお酒って、凄く美味しいですって!」

さくら「そうっすよ! 今から、飲みに行きましょうよ! ほら、早く!」グイグイ

ヤムチャ「お、おい……さくらちゃん、引っ張らないでくれよ……結構、力強いんだね……?」

プーアル「そりゃ、さくらさんもレスラーなんだから、力ぐらいあるでしょう……ほらほら、ヤムチャ様、飲みに行きましょう……」グイグイ

ヤムチャ「おいおい……プーアルも押すんじゃねぇよ……わかったよ、飲みに行くからさぁ……? 引っ張るのと、押すのやめてくれよ……」

さくら「本当っすか!?」

プーアル「本当ですか!?」

ヤムチャ「何だよ、二人して気使いやがってさぁ……? 凄ぇ、今俺格好悪いじゃねぇか……こっちは、お前らの考えてる事、なんとなくわかってんだぞ!?」

プーアル「そんな事ないですよ。僕達は純粋にお酒が飲みたいだけです! ねぇ、さくらさん?」

さくら「そうっす! そうっす!」

ヤムチャ「プーアルは、いつもプーアル茶しか飲んでねぇじゃねぇか! 嘘ついてんじゃねぇぞ!」

896: 2014/12/13(土)23:48:19 ID:ekG
ヤムチャ「まぁ、とりあえずさ……? 辞めるのは、考え直すけど……」

さくら「……本当っすか!?」

ヤムチャ「……その変わり、今日はとことん愚痴に付き合ってもらうからね?」

さくら「勿論っす!」

ヤムチャ「本当、プロレスって、人間関係でストレスが溜まるんだね……リュウさんに、ケンさんに、ブランカさん……ベジータみたいな奴がいっぱいだ……」

さくら「ア、アハハ……その辺は気難しい人っすから……」

ヤムチャ「絶対、5試合で戻ってやる……俺は才能があるんだ……5試合で戻れなかったら……」

さくら(たった5試合って……そりゃ、いくらなんでも無茶っすよ……)

ヤムチャ「……そん時は、俺には才能がないんだろうね。悪いけど、辞めさせてもらうよ」

さくら「あっ……いや、あの……ヤムチャさん……?」

ヤムチャ「……ん?」

さくら(うぅ、どう言葉掛けていいかわからないっす……)

ヤムチャ「……どうしたの?」

さくら「あっ、いやっ……! 何でもないっすよ! ほら、早く飲みに行きましょうよ! 飲みに!」

ヤムチャ「……そうだね。さくらちゃんはブランカさんと違って優しいから助かるよ。このままじゃ、本当に俺、天津飯みたいにハゲちまうよ」

さくら「……天津飯? 誰っすか、ソレ?」

ヤムチャ「あ~、あ~、昔の仲間……あいつは、確か天下一武道会、ベスト2だったかな……? とにかく、俺と違って強い人だよ……」

897: 2014/12/13(土)23:53:39 ID:ekG
プーアル(ヤムチャ様、ギリギリ辞めるのは、踏みとどまってくれたけど……)


プーアル(5試合って……ヤムチャ様、大きく出たなぁ……本当に、たった5試合で戻れるもんなんでしょうかね……?)


プーアル(……5試合で、戻れなかったら、本当に辞めちゃうのかな?)


プーアル(折角、就職先が決まったっていうのに……心配だなぁ……)


プーアル(不安だなぁ……ヤムチャ様『プーアル! プロレス団体に就職したのは失敗だったぞ!』とか、言い出さなきゃいいなぁ……)



ヤムチャ「……お~い、プーアル何やってるんだよ! 早く来いよ! お前にも、愚痴付き合ってもらうからな!」

プーアル「も、勿論ですっ……! ヤムチャ様の成功の為なら……愚痴ぐらい、いくらでもお付き合いしますよ! 今、行きます!」

898: 2014/12/13(土)23:54:40 ID:ekG
ヤムチャ「プーアル! 俺はプロレス団体に就職して頑張るぞ!」


ーー完

899: 2014/12/13(土)23:56:54 ID:Im1
お疲れ様でした!
続きを楽しみにお待ちしてます!

901: 2014/12/14(日)00:12:30 ID:mKq
乙!
さくらちゃんナイス
続編も楽しみ

902: 2014/12/14(日)00:18:44 ID:LO6
乙!
ヤムチャの復活?はさくらちゃんにかかってる!
頼んだぞさくらちゃん!!




次回に続く:ヤムチャ「プーアル! プロレス団体に就職したのは失敗だったぞ!」【前編】


 

引用: ヤムチャ「プーアル!俺はプロレス団体に就職して頑張るぞ!」