1: 2016/08/15(月) 01:23:50.24 ID:IPmg/frH.net
 
千歌「だから今日は千歌の部屋に泊まるのだ!」

果南「まさかそのために私の上着とブラをしいたけに食べさせたの?」

千歌「ふふふ」

果南「でも残念でした。私はウェットスーツ持ってきたから」

千歌「ああ!…… そうだった」

果南「千歌、なんでこんなことしたの?」

果南「ただのイタズラだったら怒るよ」

千歌「――だって」

千歌「最近、果南ちゃん全然私に構ってくれなくて」

千歌「寂しかったんだもん……」

果南「千歌……」

果南「……」フゥ

果南「いいよ、おいで」

千歌「え……?」

果南「ハグしてあげる♪」

千歌「わーい!」

   ギュ
 

2: 2016/08/15(月) 01:25:27.87 ID:IPmg/frH.net
 
   チュンチュン


果南「んっ――」

果南「もう朝か」

千歌「zzz」スー スー

果南「ふふ」ナデナデ

果南「さて、帰ろうか」

千歌「かなんちゃん……」

果南「ん、千歌、起きてた――」

千歌「zzz」スピー

果南「……寝言か」

千歌「だいすき……」

果南「!」

果南「///」

果南「もうちょっと、寝てようかな……」

千歌「zzz」グー 

果南「ありがと」ナデナデ
 

3: 2016/08/15(月) 01:26:09.89 ID:IPmg/frH.net
 
千歌「でね! ここの振り付けは上手くいったと思うの」

果南「へえ、千歌ってばホント真面目にやってるんだ」

千歌「ええー!? それどういう意味!?」

果南「だって、いつも何か思いついては中途半端に投げ出して」

千歌「ひどいよー!」

果南「そうは言うけどね、毎回付き合わされるこっちの身にもなってよ」

千歌「むう……」

千歌「どーせ私は普通どころか半端星人ですよーだ!」

果南「あはは、ごめん。冗談だから怒らない怒らない」

果南「でも良かったね。夢中になれるものがやっとできて」

千歌「え?」

果南「千歌ってば、事あるごとに自分には何もない、何もないって言って」

果南「これでもけっこう、心配してたんだよ」

千歌「そう、なの……?」

果南「頑張りなよ。応援してるからさ」

千歌「……」

千歌「ねえ、果南ちゃん」

果南「ん?」

千歌「――ううん」

千歌「泊まってくれてありがとう」

果南「私も、久々に楽しかったよ」

果南「服なくなったのは痛いけど」

千歌「じゃあ今度お詫びに、いっぱいみかん持っていくね!」

果南「そういう問題じゃ――ま、いっか」
 

4: 2016/08/15(月) 01:27:01.44 ID:IPmg/frH.net
 
果南「じゃ、家に帰るよ」

千歌「服、ホントにごめんね」

果南「そう思ってるなら、もう二度としない。いい?」

千歌「うん」

果南「――でも千歌の気持ち、嬉しかったよ」

   ハグ

千歌「えへへ///」

果南「またね」


   ジャバジャバジャバ


千歌「果南ちゃんってば、また泳ぐの早くなってる」

千歌「毎日、お客さん相手に潜ってるからかな」

千歌「本当なら学校に行く時間も、ずっと――」

千歌「……」


千歌(やっぱり、誘えないよね)

千歌(だって、二人暮らししているおじいちゃんが入院して)

千歌(果南ちゃんはいま、ダイビングショップの経営で忙しいんだから)

5: 2016/08/15(月) 01:27:38.75 ID:IPmg/frH.net
 
         ※


千歌「それでね! 私たち明日東京行くことになったの!」

果南「へえー」

千歌「『へえ』って、それだけー!?」

果南「いや、凄いことなんだと思うけど、あんまり実感湧かなくて」

千歌「もお」

果南「でも、その日は休日だから、応援どころか見送りにもいけないや」

果南「稼ぎ時だしね」

千歌「う、ううん、気にしないで」

果南「お土産、期待してるよ」

千歌「観光で行くんじゃないよ」

果南「私、ほら、あの『ひよこ』ってのが食べたいな」

千歌「聞いてよー」ユサユサ

果南「楽しみにしてるからねー」ユレユレ
 

6: 2016/08/15(月) 01:28:14.76 ID:IPmg/frH.net
 
千歌「ただいまー」

果南「千歌、もう帰って来たの?」

千歌「だから観光じゃないって言ったでしょー」

千歌「まあいいや。はい、これ」

果南「『ひよこ』だね。買ってきてくれたんだ」

千歌「あれだけしつこく言ってたからね」

果南「そうだっけ?」

千歌「もー」

果南「なんてね、ありがと千歌」

千歌「あとこれも。――はい!」

果南「……またみかん? それもこんな大量に」

千歌「こないだ言ったでしょ。服ダメにしたお詫びにみかんあげるって」

果南「ああ、そんなこともあったね」

千歌「……果南ちゃん、最近忘れっぽくなってない?」

果南「そうかな? まあ、それだけ仕事に追われてるのかも」

千歌「あ――そうだよね」

果南「それより、せっかく来てくれたんだから、夕食うちで食べてかない?」

千歌「いいの!?」

果南「ちょうど作り過ぎててさ」

果南「それに、千歌の東京遠征ライブの話も聞きたいし」

千歌「!」

果南「千歌?」

千歌「う、ううん、なんでも……」

果南「?」
 

8: 2016/08/15(月) 01:29:00.55 ID:IPmg/frH.net
 
   ハハハ

果南「それにしても、Aqoursってホントみんな個性的だね」

千歌「うん!」

果南「曜と2人で始めた時はどうなるかと思ったけど」

千歌「みんないい人でさー」

千歌「こんな私にも、まだついてきてくれて――」

千歌「――!」ハッ

果南「こら、千歌はリーダーでしょ? もっと自信もちなよ」

千歌「う、うん――あ、そういえば東京で曜ちゃんってば巫女さんのコスプレ――」

果南「それで、肝心のイベントはどうだったの?」

千歌「……!」

果南「どうしたの?」

千歌「……話さなきゃ、ダメ?」

果南「だってそれがメインなんでしょ、東京行った」

果南「そりゃあやっぱり聞きたいよ」

千歌「……あのね」

千歌「出場者みんな、とってもすごくて……」

千歌「とくに、セイントス・ノーマン・パーって二人組はプロみたいで……」

果南「へえ、それはまた熱い闘いだったね」

果南「で、結果はどうなったの?」

千歌「うん……で、負けちゃったんだ。大半のグループに」

果南「そっか」
 

9: 2016/08/15(月) 01:30:05.04 ID:IPmg/frH.net
 
千歌「……」ギュ

千歌「……なんかね、あんな凄いの見せられて」

千歌「私、ちょっと、自信なくしちゃったっていうか……」

果南「そう」

果南「まあ、現実は厳しいって言うし、仕方ないよ」

千歌「――果南ちゃんだったらどうする?」

千歌「もし、これまでの頑張りが全部否定されて」

千歌「絶対、この人たちには敵わないって、思い知らされて」

千歌「失敗もして、自分たちのパフォーマンスなんか本番じゃ全然できなくて!」

果南「……」

果南「そうだね、私だったら」

果南「すっぱり辞めるかな」

千歌「え……」

果南「自分に才能がないっていう道なら、見切りをつけてあきらめる」

千歌「そっか……ううん、そうだよね」

千歌「それが普通なんだよね」

千歌「なら、やっぱり私も――」

10: 2016/08/15(月) 01:31:02.10 ID:IPmg/frH.net
 
果南「千歌、おいで」

千歌「え?」

果南「いいから、おいで」

千歌「……」スッ


  ダキッ ギュッ


千歌「///」

果南「アイドル、辞めたくなったの?」

千歌「!」

千歌「……」

果南「答えて」

千歌「……そんなわけ、ない」

千歌「私、スクールアイドルが大好き」

千歌「Aqoursが、大好きだもん!」

果南「そう、良かった」

千歌「え?」

果南「私も、アイドルやってる千歌が大好き」

千歌「か、果南ちゃん///」

果南「正直ね、驚いてるんだ」

果南「だって、あの千歌がだよ」フフ

千歌「なにそれぇ!?」

果南「あの千歌が、これまで見たことなかったくらい」

果南「どんなアイドルにも負けないくらい」

果南「一生懸命で、わき目も振らないほど夢中で」

果南「輝いてるんだから」

千歌「――!」

果南「そりゃあ見惚れちゃうよ」

果南「まあ、身内のひいき目だと思うけど」

11: 2016/08/15(月) 01:31:41.55 ID:IPmg/frH.net
 
  スッ

果南「――さ、湿っぽい話は終わり。早くご飯食べちゃおう」

果南「せっかくの手料理、冷める前に食べてよ――」

  ギュ

果南「千歌?」

千歌「がなんぢゃーん」ズビー

果南「ちょ! 鼻水、服に鼻水があ!」

千歌「ありがどーー!」ズビー

果南「分かった、分かったから! はい、どうどうどう」ナデナデ

千歌「ふん!」チーン

果南「ハァ……」

果南「みかん、またいっぱい持ってきてよね」

12: 2016/08/15(月) 01:32:23.90 ID:IPmg/frH.net
 
  チュンチュン


果南「んー、今日もいい天気」


   カナンチャーン


果南「あの声は――」

千歌「おはよーう!」ダダダ

果南「千歌! うん、おはよう」

千歌「はあ、はあ」

果南「どうしたの? こんな朝早く?」

千歌「果南ちゃんにお願いがあるの!」

果南「お願い? なに?」

千歌「私たちと一緒に、スクールアイドルになってください!」

果南「!」

千歌「分かってるよ。ショップで忙しくて、そんなことやってる暇ないことくらい、分かってる」

千歌「でも、私は果南ちゃんと一緒にやりたい!」

千歌「本当は、ずっと言わないつもりだった」

千歌「でも昨日、やっと分かったの。私にはやっぱり果南ちゃんが――」

果南「千歌、ダメだよ」

千歌「……そう、だよね」

果南「私を頼りにしようなんて、そんなのはダメ」

千歌「え?」

果南「ちゃんと引っ張ってよね。リーダーは千歌なんだから」

千歌「じゃあ、果南ちゃん……」

果南「かわいい幼馴染みの頼みでしょ? そりゃあ手伝わなきゃね!」

13: 2016/08/15(月) 01:33:14.25 ID:IPmg/frH.net
 
千歌「でも、お仕事が――」

果南「ダンスの自主練は夜にでもできる」

千歌「疲れてないの?」

果南「全然」

千歌「あう……」

果南「というか、なんで最初に誘ってくれなかったの? けっこうショックだったよ」

果南「ずっと、待ってたんだからさ」

千歌「うう……」ジワ

千歌「がなんぢゃーん」ズビー

   ダキッ スカッ

千歌「ええ!? 避けられた!」

果南「服を守りたいからね」

千歌「ひどいよぉー」

果南「じゃあ、続きは――」

14: 2016/08/15(月) 01:33:57.51 ID:IPmg/frH.net
 
志満「あら、果南ちゃん。いらっっしゃい」

果南「お邪魔します」

美渡「どうしたの? こんな時間に」

果南「実は、今日千歌の部屋でアイドル活動について泊まり込みで話そうと」

美渡「え? 果南もアイドルやるの!?」

果南「ま、まあ」

美渡「うわ、意外」

果南「――だよね」
 

15: 2016/08/15(月) 01:34:40.84 ID:IPmg/frH.net
 
千歌「見てみて、一番星だよ」

果南「ほんとだ」

千歌「なんて名前だっけあれ」

果南「ベガ」

千歌「そうそう、デガ」

果南「わざとやってる?」

千歌「えへへ」

果南「はあ、まだまだ子どもだね、千歌」

千歌「純真を忘れないのがアイドルだよ」

果南「そうかな?」

千歌「そうかなん?」

果南「それより、私の振り付け部分なんだけど――」

千歌「あー、無視したー! 今のは果南ちゃんと疑問のかな――」

果南「説明しなくていい」

16: 2016/08/15(月) 01:35:21.45 ID:IPmg/frH.net
 
果南「――で、この曲の場合は」

千歌「ねえ、果南ちゃん」

果南「なに?」

千歌「あのぉ、大変言いにくいんですけどぉ」

果南「どうしたの、改まって?」

千歌「そろそろ、け、今朝の続きを……///」

果南「……」

果南「……」フゥ

果南「ハグしたいの?」

千歌「///」コクン

果南「いいよ、おいで♪」

千歌「わーい!」

  ギュ

果南「ふふ///」

千歌「えへへ///」
 

17: 2016/08/15(月) 01:36:26.08 ID:IPmg/frH.net
 
梨子(……あわわ///)

梨子(夜の部屋で、千歌ちゃんと果南さんが抱き合って///)ドキドキ

梨子(こ、これがもしや、リアル百合!///)ドキドキドキ

梨子(――――!)ドキドキドキドキ


梨子「何も言えねえ///」


おしまい

18: 2016/08/15(月) 01:38:31.62 ID:UeFgr5da.net

最高

引用: 千歌「果南ちゃんを手ブラで帰すわけにはいかないぞって」